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特表2024-531736軸力の支持を改善したメカニカルシールアセンブリ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】軸力の支持を改善したメカニカルシールアセンブリ
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/34 20060101AFI20240822BHJP
【FI】
F16J15/34 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024516536
(86)(22)【出願日】2022-08-02
(85)【翻訳文提出日】2024-05-10
(86)【国際出願番号】 EP2022071652
(87)【国際公開番号】W WO2023041242
(87)【国際公開日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】102021124115.4
(32)【優先日】2021-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510151348
【氏名又は名称】イーグルブルクマン ジャーマニー ゲセルシャフト ミト ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディトゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦
(72)【発明者】
【氏名】フェスル,アンドレーズ
(72)【発明者】
【氏名】ランクル,ステファン
(72)【発明者】
【氏名】バウアー,フロリアン
【テーマコード(参考)】
3J041
【Fターム(参考)】
3J041BA02
3J041BA08
3J041BB04
3J041BB05
(57)【要約】
本発明は、回転部品(7)上の高圧領域(8)と低圧領域(9)の間を封止するためのメカニカルシールアセンブリ(1)であって、第1摺動面(30)を有する回転摺動リング(3)と第2摺動面(40)を有する固定摺動リング(4)を備え、前記摺動面(30、40)の間にシールギャップ(5)が画定された、メカニカルシール(2)と、回転固定した状態で前記回転摺動リング(3)を回転部品(7)に接続するよう構成され、スリーブ領域(32)を備えた、回転摺動リング(3)用の摺動リングキャリア(31)と、前記メカニカルシールアセンブリ(1)にかかる軸力(F)を支持するよう構成された力支持機構(6)とを備え、前記力支持機構(6)は、前記摺動リングキャリア(31)のスリーブ領域(32)の端面(32a)に配置され、前記力支持機構(6)は、クランプスリーブ(60)と、円錐スリーブ(61)と、少なくとも2つのセグメント(621、622)を有する分割リング(62)とを備え、前記クランプスリーブ(60)の第1円錐面(60a)と前記円錐スリーブ(61)の第2円錐面(61a)との円錐接続部が、前記クランプスリーブ(60)と前記円錐スリーブ(61)との間に形成され、前記クランプスリーブ(60)は前記スリーブ領域(32)の端面(32a)に当接し、前記円錐スリーブ(61)は前記分割リング(62)の側面(62a)に当接する、メカニカルシールアセンブリ(1)に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転部品(7)上の高圧領域(8)と低圧領域(9)の間を封止するためのメカニカルシールアセンブリ(1)であって、
第1摺動面(30)を有する回転摺動リング(3)と第2摺動面(40)を有する固定摺動リング(4)を備え、各摺動面(30、40)の間にシールギャップ(5)が画定された、メカニカルシール(2)と、
回転固定した状態で前記回転摺動リング(3)を回転部品(7)に接続するよう構成され、スリーブ領域(32)を備えた、回転摺動リング(3)用の摺動リングキャリア(31)と、
前記メカニカルシールアセンブリ(1)にかかる軸力(F)を支持するよう構成された力支持機構(6)と、
を備え、
前記力支持機構(6)は、前記摺動リングキャリア(31)のスリーブ領域(32)の端面(32a)に配置され、
前記力支持機構(6)は、クランプスリーブ(60)と、円錐スリーブ(61)と、少なくとも2つのセグメント(621、622)を有する分割リング(62)とを備え、
前記クランプスリーブ(60)の第1円錐面(60a)と前記円錐スリーブ(61)の第2円錐面(61a)との円錐接続部が、前記クランプスリーブ(60)と前記円錐スリーブ(61)との間に形成され、
前記クランプスリーブ(60)は前記スリーブ領域(32)の端面(32a)に当接し、前記円錐スリーブ(61)は前記分割リング(62)の側面(62a)に当接する、
メカニカルシールアセンブリ(1)。
【請求項2】
前記クランプスリーブ(60)が、前記円錐スリーブ(61)を収容する収容スペース(16)を備える、請求項1に記載のメカニカルシールアセンブリ(1)。
【請求項3】
前記クランプスリーブ(60)の前記収容スペース(16)が第1内側円錐面(60a)を有し、前記円錐スリーブ(61)が第2外側円錐面(60a)を有する、請求項2に記載のメカニカルシールアセンブリ(1)。
【請求項4】
前記円錐接続部が、前記メカニカルシールアセンブリ(1)の中心軸(X―X)に対して35°±8°の角度(α)を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載のメカニカルシールアセンブリ(1)。
【請求項5】
前記分割リング(62)の平均直径(D2)が、前記円錐スリーブ(61)の内径(D1)よりも大きい、請求項1~4のいずれか一項に記載のメカニカルシールアセンブリ(1)。
【請求項6】
前記摺動リングキャリア(31)、前記クランプスリーブ(60)、前記円錐スリーブ(61)、前記分割リング(62)が金属材料からなる、請求項1~5のいずれか一項に記載のメカニカルシールアセンブリ(1)。
【請求項7】
前記分割リング(62)は、前記回転部品(7)の溝(70)内に収容されるよう構成されている、請求項1~6のいずれか一項に記載のメカニカルシールアセンブリ(1)。
【請求項8】
前記クランプスリーブ(60)と前記円錐スリーブ(61)との間の内周領域には、軸方向ギャップ(10)が形成されている、請求項1~7のいずれか一項に記載のメカニカルシールアセンブリ(1)。
【請求項9】
前記クランプスリーブ(60)と前記摺動リングキャリア(31)との間にネジ接続部が形成されている、請求項1~8のいずれか一項に記載のメカニカルシールアセンブリ(1)。
【請求項10】
前記摺動リングキャリア(31)と前記回転摺動リング(3)との間に、弾性二次シール要素を有さない金属シール(34)が形成されている、請求項1~9のいずれか一項に記載のメカニカルシールアセンブリ(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動作中にメカニカルシールアセンブリに作用し得る軸力の支持を改善して、シャフト上の高圧領域と低圧領域との間を封止するためのメカニカルシールアセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
メカニカルシールアセンブリは、従来より様々な構成のものが知られている。 特にガスシールの場合、200×10Paを超える圧力による高圧用途では、非常に大きな軸力がメカニカルシールアセンブリの部品に作用することもある。これらの大きな力を吸収するには、円周方向の複数のセグメントから構成される、いわゆる分割リングを用いて、軸力をシャフトなどに伝達することが知られている。この分割リングが変形すると周方向にうねりが発生し、極端な場合には弾性変形により摺動リングの摺動面にまで押し込まれる場合がある。ただし、メカニカルシールの性能を不必要に制限しないためには、摺動面のうねりは絶対に避けなければならない。従来技術では、分割リングとメカニカルシールとの間に弾性の二次シール要素を使用して、分割リングから摺動面に伝達され得るうねりを低減していた。これらは、軸力が発生したときに弾性変形することができるため、メカニカルシールの摺動面に望ましくないうねりが伝わるリスクが軽減される。高圧用途や、封止対象媒体が高温になる封止作業では、弾性の二次シール要素は使用できない、もしくは限られた範囲でしか使用できない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そこで、本発明は、分割リングからメカニカルシールアセンブリの摺動面へのうねりの伝達を防止することができる、簡単な構造かつシンプルで低コストの製造が可能な、特に高圧用途や高温用途に適したメカニカルシールアセンブリを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的は、請求項1の特徴を有するメカニカルシールアセンブリによって達成される。従属請求項は、本発明の好ましい実施形態を特定する。
【0005】
一方、請求項1の特徴を有する本発明に係るメカニカルシールアセンブリは、メカニカルシールアセンブリにかかる軸力を大幅に良好に吸収し、回転部品に伝達できるという利点が得られる。特に、軸力が発生した際にメカニカルシールアセンブリの摺動面にうねりが加えられるのを防止することができる。本発明によれば、メカニカルシールアセンブリが、第1摺動面を有する回転摺動リングと、第2摺動面を有する固定摺動リングとを備え、シャフトなどの高圧領域と低圧領域との間を封止するためのメカニカルシールを備え、シールギャップが摺動リングの摺動面の間に画定されることによって達成される。さらに、回転摺動リングには摺動リングキャリアが設けられ、回転部品、特にシャフトとの回転固定された接続を行うよう構成されている。摺動リングキャリアはスリーブ領域を備える。さらに、メカニカルシールアセンブリは、メカニカルシールアセンブリにかかる軸力を支持するよう構成された力支持機構を備える。この力支持機構は、摺動リングキャリアのスリーブ領域の端面に配置される。力支持機構は、クランプスリーブと、円錐スリーブと、少なくとも2つのセグメントを有する分割リングとを備える。分割リングは、メカニカルシールアセンブリの半径方向にいくつかの円周セグメントに分割されており、組み立てられた状態では回転部品上で互いに接続されている。さらに、クランプスリーブと円錐スリーブとの間には円錐接続部が形成されている。クランプスリーブは、摺動リングキャリアのスリーブ領域の端面に当接し、円錐スリーブは分割リングの側面に当接する。
【0006】
このように、メカニカルシールアセンブリにかかる軸力が発生すると、摺動リングキャリアからクランプスリーブへ、クランプスリーブから円錐スリーブへ、円錐スリーブから分割リングへ、そして分割リングから回転部品へと力が伝達される。従って、軸力は、4つの接続面、すなわち、スリーブ領域とクランプスリーブとの間の第1接続面、クランプスリーブと円錐スリーブとの間の円錐接続部における第2接続面、円錐スリーブと分割リングとの間の第3接続面、分割リングと回転部品との間の第4接続面を介して伝達される。
【0007】
本発明に係る構成の特別な利点は、クランプスリーブと円錐スリーブとの間の円錐接続部によって、半径方向の軸力成分を、円錐スリーブの内周を介して回転部品に直接伝達できることである。これにより、最終的に第4接続面に残って回転部品に伝達される軸力が大幅に軽減される。これにより、分割リングの分離点がメカニカルシールアセンブリの摺動面に押し付けられるのを防止する。
【0008】
可能な限り最もコンパクトな構成を達成し、クランプスリーブから円錐スリーブへ確実に力を伝達するために、クランプスリーブは、円錐スリーブを収容する収容スペースを備えることが好ましい。円錐スリーブは、その大部分、特に軸方向の80%以上の範囲がクランプスリーブの収容スペース内に配置可能であることが好ましい。
【0009】
クランプスリーブの収容スペースは第1内側円錐面を備え、円錐スリーブは第2外側円錐面を備えることが好ましい。この2つの円錐面は、クランプスリーブと円錐スリーブとの間の円錐接続部を形成する。
【0010】
円錐接続部は、メカニカルシールの中心軸X―Xに対して35°±8°、特に35°±3°の角度αで配置されることが好ましい。角度α<45°の選択によっては、分割リングの方向の軸力の伝達よりも、円錐スリーブを介した回転部品への半径方向力の伝達の方が大きくなる。
【0011】
分割リングの平均直径が円錐スリーブの内径よりも大きいことが特に好ましい。これにより、円錐スリーブから分割リングへと力が好適に加えられる。特に、分割リングのこの接触領域では、分割リングに固有の変形が軽減される。
【0012】
クランプスリーブ、分割リング、摺動リングキャリア、円錐スリーブは、金属材料、特に同じ金属材料からなることが特に好ましい。この金属材料としては、鋼を用いることが好ましい。これは、特に、高温により弾性シール要素が破壊されるため、弾性シール要素の使用が不可能な高温用途や、分割リングを使用すると摺動リングの摺動面にうねりが発生する可能性が高い高温用途でメカニカルシールアセンブリが使用可能であることを意味する。クランプスリーブ、分割リング、摺動リングキャリア、円錐スリーブに異なる材料を使用する場合、その異なる材料は同じまたは非常に類似した(±10%)熱膨張係数を有することが好ましい。
【0013】
分割リングは、回転部品の溝、特にシャフトの溝に配置されることが特に好ましい。
【0014】
軸方向ギャップも、クランプスリーブと円錐スリーブとの間の内周領域に設けられることが好ましい。これにより、軸力が導入されたときに、力支持機構に少なくとも一定の減衰特性が与えられる。従って、力伝達経路を介して摺動リングキャリアのスリーブ領域から回転部品へと確実に軸力を伝達することが可能となる。
【0015】
軸力の伝達をさらに改善するために、摺動リングキャリアのスリーブ領域とクランプスリーブとの間にネジ接続部を形成することが好ましい。このネジ接続部は、円周に沿って配置された多数のねじボルトを備えることが好ましく、これらのねじボルトは、クランプスリーブを介して挿入され、スリーブ領域の端面にねじ留めされる。
【0016】
また、メカニカルシールアセンブリは、ガス状媒体を封止するためのガスシールであることが好ましい。このガス状媒体は、好ましくは200×10Pa以上の高圧下、かつ、特に400℃以上の高温下であることが特に好ましい。
【0017】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。図面は以下の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の好ましい実施形態によるメカニカルシールアセンブリの概略断面図である。
図2図1のII―II線に沿った概略断面図である。
図3図1のメカニカルシールアセンブリの概略的な拡大部分断面図である。
図4図1のメカニカルシールアセンブリのクランプスリーブの概略断面図である。
図5図1のメカニカルシールアセンブリの円錐スリーブの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図1図5を参照して、本発明の好ましい実施形態に係るメカニカルシールアセンブリ1について詳細に説明する。
【0020】
図1から分かるように、メカニカルシールアセンブリ1は、回転摺動リング3および固定摺動リング4を備えたメカニカルシール2を備える。回転摺動リング3は第1摺動面30を有し、固定摺動リング4は第2摺動面40を有する。摺動リング3、4の2つの摺動面30、40の間にはシールギャップ5が画定されている。
【0021】
図1からも分かるように、メカニカルシールアセンブリ1は、シャフト7上の低圧領域9から高圧領域8を封止する。高圧領域8には、特に200×10Pa以上の高圧下で封止対象媒体であるガスが存在することが好ましい。
【0022】
回転摺動リング3は、摺動リングキャリア31によって共回転するようにシャフト7に接続されている。摺動リングキャリア31は、シャフト7上に配置されたスリーブ領域32と、回転する摺動リング3を部分的に取り囲む保持領域33とを備える。これにより、シャフト7が回転すると、シャフト7から摺動リングキャリア31へ、そこから回転シールリング3へと力が伝達される。
【0023】
また、摺動リングキャリア31と回転摺動リング3との間には、弾性二次シールのない金属シール34が形成されることが好ましい。これは、摺動リングキャリア31と回転摺動リング3との間には、高圧用途と高温用途の両方が問題なく行えるよう、これら2つの構成要素の間のギャップを封止するのに弾性二次シール要素を設ける必要がないことを意味する。
【0024】
メカニカルシールアセンブリ1は、力支持機構6をさらに備える。力支持機構6について、図3に詳細に示す。力支持機構6は、クランプスリーブ60、円錐スリーブ61、分割リング62を備える。
【0025】
分割リング62は、2つの円周セグメントに分割されたリングであり、この例示的な実施形態では、分割リング62は、第1セグメント621と第2セグメント622とを備える。この2つのセグメントは、ネジ接続部63(図2参照)を介して互いに接続される。あるいは、分割リングは、スリーブをその上に押し込むことによって保持される。
【0026】
分割リング62は、シャフト7の溝70内に配置される。
【0027】
クランプスリーブ60について、図4に詳細に示す。特に、クランプスリーブ60は、第1円錐面60aと収容スペース16とを備える。第1円錐面60aと同様に、収容スペース16は、径方向内側、すなわち、クランプスリーブ60のシャフト7に対向する側に形成されている。収容スペース16は、図1および図3に示すように、円錐スリーブ61を収容する役割を果たす。
【0028】
円錐スリーブ61について、図5に詳細に示す。円錐スリーブ61は、第2円錐面61aを備える。さらに、円錐スリーブ61は内周61bを有し、円錐スリーブ61はそれによってシャフト7上に配置される。
【0029】
力支持機構6は、メカニカルシールアセンブリ1にかかる軸力Fを支持するように構成されている。このような軸力Fは、メカニカルシールアセンブリの動作中に、特にシール対象機械上の負荷に応じて、また、特に負荷が変化した場合に発生する可能性がある。
【0030】
図1および図3に示すように、クランプスリーブ60と円錐スリーブ61との間に円錐接続部が形成され、この接続部はクランプスリーブ60の第1円錐面60aと円錐スリーブ61の第2円錐面61aによって形成される。円錐スリーブ61は、クランプスリーブ60の収容スペース16に収容される。
【0031】
図1および図3に示すように、クランプスリーブ60は、組み立てられた状態で摺動リングキャリア31のスリーブ領域32の端面32aに当接する。さらに、円錐スリーブ61は、分割リング62の側面62aに当接する。
【0032】
さらに、円錐スリーブ61は、分割リング62の平均直径D2よりも小さい内径D1を有する(図1参照)。これにより、分割リング62の径方向内側領域へと確実に力が伝達され、大きなレバレッジ効果を伴うことなく分割リング62からシャフト7へと軸力が伝達される。
【0033】
クランプスリーブ60と円錐スリーブ61との間の円錐接続部は、メカニカルシールアセンブリ1の中心軸X-Xに対して角度αを有する(図1参照)。角度αは、35°±3°の範囲内であることが好ましい。
【0034】
クランプスリーブ60は、ボルト15によって摺動リングキャリア31のスリーブ領域32に接続されている。いくつかのボルト15がクランプスリーブの円周方向に沿って互いに等距離に配置されていることが好ましい。
【0035】
摺動リングキャリア31、クランプスリーブ60、円錐スリーブ61、分割リング62はすべて鋼材、好ましくは同じ鋼材からなる。これにより、メカニカルシールアセンブリ1が高温用途だけでなく高圧用途にも使用可能となる。
【0036】
また、図3に示すように、摺動リングキャリア31とシャフト7との間には、軸力Fを伝達するために、4つの接続面が設けられている。第1接続面11は、スリーブ領域32とクランプスリーブ60との間に形成されている。円錐接続部を形成する第2接続面12は、クランプスリーブ60と円錐スリーブ61との間に形成されている。第3接続面13は、円錐スリーブ61と分割リング62の側面62aとの間に形成されている。第4接続面14は、溝70の領域において分割リング62とシャフト7との間に形成されている(図3参照)。
【0037】
このように、メカニカルシールアセンブリ1の動作中に軸力Fがメカニカルシールアセンブリ1に作用すると、この力は摺動リングキャリア31を介してシャフト7上に配置された力支持機構6に伝達される。クランプスリーブ60と円錐スリーブ61との間に円錐形の第2接続面12を設けることで、力Fは軸方向成分F1と半径方向成分F2に分割される。そして、半径方向成分F2は、円錐スリーブ61の内周61bを介してシャフト7に直接伝達される。これにより、円錐スリーブ61から分割リング62へ、そしてそこから溝70を介してシャフト7へ伝達される残りの力が大幅に減少する。
【0038】
これにより、特に、軸力Fが発生した際の分割リング62の変形により発生する荷重によるうねりを、摺動リングの摺動面30、40にうねりが付加されない程度に低減することができる。
【0039】
さらに、クランプスリーブ60と円錐スリーブ61との間には軸方向ギャップ10が存在する(図3参照)。この軸方向ギャップ10は、軸力Fが発生した際に一定の減衰効果を発揮し、これにより力支持機構6の構成要素に固有のある一定の変形が可能になる。
【0040】
摺動リングキャリア31、クランプスリーブ60、円錐スリーブ61、分割リング62の材料として用いられる鋼の変形は比較的小さいため、メカニカルシールアセンブリ1の構成要素の構成も改善することができる。
【0041】
特に、分割リング62によって摺動面30、40上に生じるうねりの導入の大きさは、クランプスリーブ60と円錐スリーブ61との間の円錐接続部の角度αを選択することによって最大にすることができる。
【符号の説明】
【0042】
1 メカニカルシールアセンブリ
2 メカニカルシール
3 回転摺動リング
4 固定メカニカルシール
5 シールギャップ
6 力支持機構
7 シャフト/回転部品
8 高圧領域
9 低圧領域
10 軸方向ギャップ
11 第1接続面
12 第2接続面
13 第3接続面
14 第4接続面
15 ボルト
16 収容スペース
30 第1摺動面
31 摺動リングキャリア
32 スリーブ領域
32a スリーブ領域の端面
33 保持領域
34 金属シール
40 第2摺動面
60 クランプスリーブ
60a 第1円錐面
61 円錐スリーブ
61a 第2円錐面
61b 内周
62 分割リング
62a 分割リングの側面
63 ネジ接続部
621 第1セグメント
622 第2セグメント
70 溝
D1 円錐スリーブの内径
D2 分割リングの平均直径
F 軸力
F1 軸力の軸方向成分
F2 軸力の半径方向成分
X-X 中心軸
α 角度
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2024-05-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転部品(7)上の高圧領域(8)と低圧領域(9)の間を封止するためのメカニカルシールアセンブリ(1)であって、
第1摺動面(30)を有する回転摺動リング(3)と第2摺動面(40)を有する固定摺動リング(4)を備え、各摺動面(30、40)の間にシールギャップ(5)が画定された、メカニカルシール(2)と、
回転固定した状態で前記回転摺動リング(3)を回転部品(7)に接続するよう構成され、スリーブ領域(32)を備えた、回転摺動リング(3)用の摺動リングキャリア(31)と、
前記メカニカルシールアセンブリ(1)にかかる軸力(F)を支持するよう構成された力支持機構(6)と、
を備え、
前記力支持機構(6)は、前記摺動リングキャリア(31)のスリーブ領域(32)の端面(32a)に配置され、
前記力支持機構(6)は、クランプスリーブ(60)と、円錐スリーブ(61)と、少なくとも2つのセグメント(621、622)を有する分割リング(62)とを備え、
前記クランプスリーブ(60)の第1円錐面(60a)と前記円錐スリーブ(61)の第2円錐面(61a)との円錐接続部が、前記クランプスリーブ(60)と前記円錐スリーブ(61)との間に形成され、
前記クランプスリーブ(60)は前記スリーブ領域(32)の端面(32a)に当接し、前記円錐スリーブ(61)は前記分割リング(62)の側面(62a)に当接する、
メカニカルシールアセンブリ(1)。
【請求項2】
前記クランプスリーブ(60)が、前記円錐スリーブ(61)を収容する収容スペース(16)を備える、請求項1に記載のメカニカルシールアセンブリ(1)。
【請求項3】
前記クランプスリーブ(60)の前記収容スペース(16)が第1内側円錐面(60a)を有し、前記円錐スリーブ(61)が第2外側円錐面(60a)を有する、請求項2に記載のメカニカルシールアセンブリ(1)。
【請求項4】
前記円錐接続部が、前記メカニカルシールアセンブリ(1)の中心軸(X―X)に対して35°±8°の角度(α)を有する、請求項1に記載のメカニカルシールアセンブリ(1)。
【請求項5】
前記分割リング(62)の平均直径(D2)が、前記円錐スリーブ(61)の内径(D1)よりも大きい、請求項1に記載のメカニカルシールアセンブリ(1)。
【請求項6】
前記摺動リングキャリア(31)、前記クランプスリーブ(60)、前記円錐スリーブ(61)、前記分割リング(62)が金属材料からなる、請求項1に記載のメカニカルシールアセンブリ(1)。
【請求項7】
前記分割リング(62)は、前記回転部品(7)の溝(70)内に収容されるよう構成されている、請求項1に記載のメカニカルシールアセンブリ(1)。
【請求項8】
前記クランプスリーブ(60)と前記円錐スリーブ(61)との間の内周領域には、軸方向ギャップ(10)が形成されている、請求項1に記載のメカニカルシールアセンブリ(1)。
【請求項9】
前記クランプスリーブ(60)と前記摺動リングキャリア(31)との間にネジ接続部が形成されている、請求項1に記載のメカニカルシールアセンブリ(1)。
【請求項10】
前記摺動リングキャリア(31)と前記回転摺動リング(3)との間に、弾性二次シール要素を有さない金属シール(34)が形成されている、請求項1~9のいずれか一項に記載のメカニカルシールアセンブリ(1)。
【国際調査報告】