(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】サフィナミドを調製する方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/165 20060101AFI20240822BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20240822BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
A61K31/165
A61P25/16
A61K9/20
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024516581
(86)(22)【出願日】2022-06-08
(85)【翻訳文提出日】2024-05-08
(86)【国際出願番号】 EP2022065612
(87)【国際公開番号】W WO2023041209
(87)【国際公開日】2023-03-23
(32)【優先日】2021-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511074590
【氏名又は名称】ザック システム
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】フォルカト, マッシミリアーノ
(72)【発明者】
【氏名】ルメルシエ, オーレリアン
(72)【発明者】
【氏名】コクレル, ジェラール
(72)【発明者】
【氏名】カルティニ, ヨアン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA37
4C076BB01
4C076CC01
4C076FF01
4C076FF36
4C076GG01
4C076GG08
4C206AA01
4C206AA04
4C206GA19
4C206MA01
4C206MA04
4C206MA55
4C206MA72
4C206MA90
4C206NA03
4C206NA20
4C206ZA15
(57)【要約】
本発明は、サフィナミドまたは薬学的に許容されるその塩の球状凝集体を調製する方法と、それによって得られる凝集体と、この凝集体を含む医薬組成物を調製する方法とに関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サフィナミドまたは薬学的に許容されるその塩の球状凝集体を調製する方法であって、
(a)炭化水素溶媒中でサフィナミドまたは薬学的に許容されるその塩の懸濁液を調製する工程;
(b)得られた懸濁液に、凝集が観察されるまで架橋液を添加する工程;
(c)得られた球状凝集体を単離する工程
を有する方法。
【請求項2】
炭化水素溶媒がC5~C13の直鎖または分岐鎖アルカンまたはC5~C7のシクロアルカンである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記C5~C13のアルカンがn-ヘキサンまたはn-ヘプタン、好ましくはn-ヘプタンである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
上記C5~C7のシクロアルカンがシクロヘキサンまたはメチルシクロヘキサン、好ましくはシクロヘキサンである、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
工程(a)が約20℃~約50℃の範囲の温度で実施される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
上記架橋液が極性溶媒、好ましくは非プロトン性極性溶媒である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項7】
上記非プロトン性極性溶媒がアセトニトリルまたはプロピオニトリル、好ましくはアセトニトリルである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
工程(b)で使用される温度が、工程(a)で使用される温度と同じである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項9】
工程(b)で使用される温度が、工程(a)で使用される温度と同じ範囲内であるが異なっている、請求項1または2に記載の方法。
【請求項10】
工程(b)において、約30分~約2時間の範囲の時間にわたって上記架橋液を上記懸濁液に添加する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項11】
工程(a)および(b)が無水条件下で実施される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項12】
工程(c)が濾過によって実施される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項13】
得られた固体を乾燥させる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
上記炭化水素溶媒の上記架橋液に対する比が約18:1v/v~約8:1v/vの範囲である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項15】
メタンスルホン酸サフィナミドを調製するための、請求項1または2に記載の方法。
【請求項16】
請求項1または2に記載の方法によって得られるサフィナミドまたは薬学的に許容されるその塩の球状凝集体。
【請求項17】
(a)請求項1または2に記載の方法によってサフィナミドまたは薬学的に許容されるその塩の球状凝集体を調製する工程;
(b)得られた球状凝集体を1つ以上の薬学的に許容される賦形剤に添加する工程
を有する方法によって得られる医薬組成物。
【請求項18】
上記組成物が経口剤形である、請求項17に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、球形造粒法(spherical agglomeration process)によってサフィナミドまたは薬学的に許容されるその塩を調製する方法に関する。本発明はまた、それによって得られる凝集体と、この凝集体を含む医薬組成物を調製する方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
サフィナミド((S)-2-[[4-[(3-フルオロフェニル)メトキシ]フェニル]メチルアミノ]プロパンアミド)は、線条体の細胞外ドーパミン濃度を増加させる高選択性可逆的MAO-B阻害剤である。サフィナミドは、電位依存性ナトリウムチャネル(Na+)の状態依存的阻害およびグルタミン酸塩の刺激放出の調節に関連している。
【0003】
メタンスルホン酸サフィナミドは、フィルムコート経口錠として投与されるEMA承認薬(Xadago(登録商標))の有効成分である。Xadago(登録商標)は、中後期変動患者において単剤でのまたは他のパーキンソン病薬と併用した定用量のレボドパ(L-ドパ)の追加療法として特発性パーキンソン病成人患者の治療に適応があり、サフィナミドは、ドーパミン作動性および非ドーパミン作動性の両方の作用機序で作用する。
【0004】
Xadago(登録商標)錠は速放性を特徴としており、有効成分を賦形剤(内相)と混合して乾燥圧密し、圧密材料を別の賦形剤(外相)と混合し、最終混合物を圧縮して錠剤とし、これを着色ポリマーフィルムでコーティングすることで得られる。
【0005】
サフィナミドおよびその塩を調製する各種の方法が欧州特許出願公開第3 772 510号明細書に記載されている。
【0006】
典型的には、サフィナミドまたは薬学的に許容されるその塩は針状結晶として単離される。このように特異な粒子形態は流動性が低いため、経口錠を製造する下流の製剤化プロセスにおいて非効率となりかつ堅牢性に劣る原因となる可能性がある。さらに、針状結晶は大規模(工業規模)での取り扱いおよび加工が困難である。したがって、多くの場合、有効成分(API)を所望の経口剤形に製剤化する前に粉砕工程を追加する必要がある。
【0007】
さらに、原薬の固体物性は、剤形の開発、安定性、及び薬物のインビボ性能に決定的な影響を与える。形状および大きさなどの薬物粒子のマイクロメートル特性は、固体用量単位の製剤化に不可欠である。
【0008】
今回、サフィナミドまたは薬学的に許容されるその塩、好ましくはメタンスルホン酸サフィナミドの球状凝集体が得られることが見出された。このような凝集体は、(凝集していない)針状結晶と比較して流動性が高い。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
一態様において、本発明は、サフィナミドまたは薬学的に許容されるその塩の球状凝集体を調製する方法であって、
(a)炭化水素溶媒中でサフィナミドまたは薬学的に許容されるその塩の懸濁液を調製する工程;
(b)得られた懸濁液に、凝集が観察されるまで架橋液を添加する工程;
(c)得られた球状凝集体を単離する工程
を有する方法に関する。
【0010】
別の態様において、本発明は、上記方法によって得られるサフィナミドまたは薬学的に許容されるその塩の球状凝集体に関する。
【0011】
別の態様において、本発明は、
(a)上記方法によってサフィナミドまたは薬学的に許容されるその塩の球状凝集体を調製する工程;
(b)得られた球状凝集体を1つ以上の薬学的に許容される賦形剤に添加する工程
を有する方法によって得られる医薬組成物に関する。
【0012】
以下に記載した添付の図面を参照して、本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1A】凝集前のメタンスルホン酸サフィナミドの粒子を表す。
図1Aの画像は、JEOL社製JCM-5000 NeoScope(商標)走査型電子顕微鏡を使用して得られたものである(倍率10~20,000倍)。
【
図1B】本発明の方法に従って得られたメタンスルホン酸サフィナミドの凝集体から個別化した粒子を表す。
図1Bの画像は、HIROX社製KH-7700デジタル顕微鏡を使用して得られたものである(レンズ情報は画像の凡例に記載)。
【
図2A】本発明の方法に従って得られたメタンスルホン酸サフィナミドの凝集体のSEM画像を表す。
図2Aの画像は、JEOL社製JCM-5000 NeoScope(商標)走査型電子顕微鏡を使用して得られたものである(倍率10~20,000倍)。
【
図2B】本発明の方法に従って得られたメタンスルホン酸サフィナミドの凝集体のSEM画像(断面)を表す。
図2Bの画像は、JEOL社製JCM-5000 NeoScope(商標)走査型電子顕微鏡を使用して得られたものである(倍率10~20,000倍)。
【
図3】結晶性メタンスルホン酸サフィナミドの粉末X線回折図であって、商品名Xadago(登録商標)として入手可能なもの(灰色/下側の曲線)および本発明の球形造粒法で得られたもの(黄色/上側の曲線)を表す。
【0014】
粉末X線回折ピークの相対強度は、試料の調製法、試料の設置手順、および使用する具体的な機器によって異なり得る。
【0015】
結晶性メタンスルホン酸サフィナミドのX線回折図は、Cu Kα線源およびLynx Eye検出器(Bruker)を備えたD8 Discover回折計(Bruker)で測定した。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、球形造粒法によってサフィナミドまたは薬学的に許容されるその塩のミクロン粒子の凝集体を効率的に製造する方法を提供する。
【0017】
サフィナミドまたは薬学的に許容されるその塩の凝集体は、
(a)炭化水素溶媒中でサフィナミドまたは薬学的に許容されるその塩の懸濁液を調製する工程;
(b)得られた懸濁液に、凝集が観察されるまで架橋液を添加する工程;
(c)得られた球状凝集体を単離する工程
を有する方法によって調製できることが見出された。
【0018】
本発明の方法は、2つの溶媒の系を使用した、サフィナミドまたは薬学的に許容されるその塩、好ましくはメタンスルホン酸サフィナミドの球形造粒で構成される。サフィナミドまたは薬学的に許容されるその塩を良溶媒、すなわち炭化水素溶媒に分散させる工程と、凝集を促進する粒子間バインダーとして作用する架橋液の存在下で凝集する工程とを含む。上記架橋液は、炭化水素溶媒と混和せず、かつサフィナミド粒子に対する濡れ性がより大きいことが望ましいが、接着剤のように作用することで、炭化水素溶媒中に懸濁させたサフィナミドまたは薬学的に許容されるその塩の粒子間に固液界面での毛管負圧および界面張力による液体架橋を形成することで、当該粒子同士をくっ付ける。
【0019】
本発明に係るサフィナミドの薬学的に許容される塩としては、硝酸、塩酸、硫酸、過塩素酸、もしくはリン酸等の無機酸との付加塩、または酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、乳酸、シュウ酸、マロン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、もしくはサリチル酸等の有機酸との付加塩が挙げられる。
【0020】
いくつかの実施形態において、サフィナミドの薬学的に許容される塩はメタンスルホン酸塩である。
【0021】
まず、サフィナミドまたは薬学的に許容されるその塩、好ましくはメタンスルホン酸サフィナミドを炭化水素溶媒に懸濁させる(工程(a))。
【0022】
いくつかの実施形態において、炭化水素溶媒は、C5~C13の直鎖または分岐鎖アルカンまたはC5~C7のシクロアルカンである。いくつかの実施形態において、炭化水素溶媒はC5~C10の直鎖または分岐鎖アルカンである。いくつかの実施形態において、C5~C10の直鎖または分岐鎖アルカンとしては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、デカン、それらの異性体、およびそれらの混合物が挙げられる。いくつかの実施形態において、C5~C10の直鎖または分岐鎖アルカンとしては、ヘキサン、ヘプタン、それらの異性体、およびそれらの混合物が挙げられる。いくつかの実施形態において、C5~C10の直鎖または分岐鎖アルカンとしては、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、およびn-デカンが挙げられる。いくつかの実施形態において、C5~C10の直鎖または分岐鎖アルカンとしては、n-ヘキサンおよびn-ヘプタンが挙げられる。いくつかの実施形態において、C5~C10の直鎖または分岐鎖アルカンはn-ヘプタンである。いくつかの実施形態において、炭化水素溶媒はC5~C7のシクロアルカンである。いくつかの実施形態において、C5~C7のシクロアルカンとしては、シクロヘキサンおよびメチルシクロヘキサンが挙げられる。いくつかの実施形態において、C5~C7のシクロアルカンはシクロヘキサンである。
【0023】
いくつかの実施形態において、工程(a)は、約20℃~約50℃の範囲の温度、例えば25℃、30℃、35℃、または40℃等で実施される。
【0024】
いくつかの実施形態において、懸濁液は、約30分~約3時間の範囲の時間にわたって調製される。
【0025】
いくつかの実施形態において、炭化水素溶媒の量は、約8~約30L/kg、好ましくは約8~約15L/kgの範囲である。
【0026】
サフィナミドまたは薬学的に許容されるその塩、好ましくはメタンスルホン酸サフィナミドの懸濁液を調製したら、この懸濁液に架橋液を添加する(工程(b))。
【0027】
いくつかの実施形態において、架橋液は、懸濁液溶媒と混和しない極性溶媒である。いくつかの実施形態において、架橋液は、非プロトン性極性溶媒等の極性溶媒である。いくつかの実施形態において、非プロトン性極性溶媒としては、アセトニトリルおよびプロピオニトリルが挙げられる。いくつかの実施形態において、非プロトン性極性溶媒はアセトニトリルである。
【0028】
いくつかの実施形態において、炭化水素溶媒の架橋液に対する比は約18:1v/v~約8:1v/vの範囲である。いくつかの実施形態において、炭化水素溶媒の架橋液に対する比は約18:1v/v~約10:1v/vの範囲である。
【0029】
いくつかの実施形態において、工程(b)は、約20℃~約50℃の範囲の温度、例えば25℃、30℃、35℃、または40℃等で実施される。いくつかの実施形態において、工程(b)で使用される温度は、工程(a)で使用される温度とは異なる(ただし同じ範囲内である)。いくつかの実施形態において、工程(b)で使用される温度は、工程(a)で使用される温度と同じである。
【0030】
いくつかの実施形態では、架橋液は、約30分~約2時間の範囲の時間にわたって懸濁液に添加される。
【0031】
いくつかの実施形態では、架橋液を添加した後、約1時間~約8日間の範囲、例えば約1時間~約3日、約1時間~約1日、約1時間~約12時間、または約1時間~約8時間の範囲等の期間にわたって反応を実施する。
【0032】
いくつかの実施形態において、工程(a)および(b)は無水条件下で実施される。
【0033】
いくつかの実施形態において、工程(a)および/または工程(b)の反応は、撹拌下で実施される。いくつかの実施形態において、撹拌は、分散タービンを用いて約250rpm~約600rpm、例えば約350rpm~約600rpmまたは約350rpm~約500rpmの範囲の速度で実施される。
【0034】
反応の最後に、サフィナミドまたは薬学的に許容されるその塩の球状凝集体を単離する(工程(c))。
【0035】
いくつかの実施形態において、サフィナミドまたは薬学的に許容されるその塩の球状凝集体は、濾過によって単離される。いくつかの実施形態において、濾過した凝集体は、必要に応じて真空下で、例えば約50℃の温度まで、乾燥される。
【0036】
いくつかの実施形態において、サフィナミドまたは薬学的に許容されるその塩、好ましくはメタンスルホン酸サフィナミドの凝集体は、直径1cm以下で得られる。いくつかの実施形態において、メタンスルホン酸サフィナミドの凝集体は、直径1mm以下で得られる。いくつかの実施形態において、メタンスルホン酸サフィナミドの凝集体は、約100μm~約500μmの範囲の直径で得られ、メタンスルホン酸サフィナミドの個々の粒子は、平均粒径が数ミクロンである(
図1B参照)。
【0037】
上述した方法により、サフィナミドまたは薬学的に許容されるその塩の大きい凝集体が得られる。得られた粉末は粒状であるため、より扱いやすい。さらに、凝集体は、生理的媒体に入ると容易に分解して一次微粒子となるため、原薬のバイオアベイラビリティに対する影響は限定的であるか、または全くない。また、本発明の造粒方法は、基質として使用される有効成分の多形および結晶形に影響を及ぼさないことも注目に値する。
【0038】
したがって、本発明の一態様は、上述した方法によって得られるサフィナミドまたは薬学的に許容されるその塩、好ましくはメタンスルホン酸サフィナミドの球状凝集体に関する。上記凝集体は、医薬組成物の調製に使用できる。
【0039】
したがって、本発明の別の態様は、
(a)上述した方法によってサフィナミドまたは薬学的に許容されるその塩の球状凝集体を調製する工程;
(b)得られた球状凝集体を1つ以上の薬学的に許容される賦形剤に添加する工程
を有する方法によって得られる医薬組成物に関する。
【0040】
賦形剤の選択は、具体的な投与様式、溶解性および安定性に対する賦形剤の影響、ならびに剤形の性質等の要因に大きく依存することになる。
【0041】
医薬組成物は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,第19版(Mack Publishing社、1995年)等に記載されているような従来の方法によって調製できる。本文献は参照により本明細書に組み込まれる。
【0042】
いくつかの態様において、医薬組成物は経口剤形である。
【0043】
上述した方法は工業的製造であり、サフィナミドまたは薬学的に許容されるその塩を調製する効率的かつ経済的な代替手段となる。
【0044】
本発明者らは、従来の物理的手段、すなわちミクロナイザーまたは流体エネルギー衝撃装置による微粒子化を回避し、その後の製剤化で医薬剤形とするのに適した大きさのAPI、好ましくはメタンスルホン酸サフィナミドを得ることができる独自の方法を開発した。
【0045】
図3から分かるように、得られたメタンスルホン酸サフィナミドの凝集体は、承認薬Xadago(登録商標)中のメタンスルホン酸サフィナミドと一致するXRD回折パターンを示す。
【0046】
実質的に、本発明の方法は、
(a)APIが容易かつ効率的に単離されること、
(b)ミクロナイザーまたは流体エネルギー衝撃装置による微粒子化が不要となること、
(c)粒子の物理的応力が低減すること、
(d)閉じ込めが発生する恐れが低減されること、
(e)多形または結晶形が変換される恐れがないこと
を提供する。
【0047】
実例として提示される以下の実施例を参照して、本発明をよりよく理解できる。
【0048】
(実施例1)
サフィナミド1.00kg(3.31モル)をアセトン8.2Lおよび脱塩水0.6Lに溶解させた溶液を45±5℃まで加熱し、アセトン0.4Lですすいだ。溶液を30分間加熱還流した後、メタンスルホン酸0.32kg(3.327モル;0.99当量)を20分間かけて添加した。温度は55±5℃で保持した。脱塩水0.12Lを添加した。温度を20±2℃に調整し、45分間または懸濁液が流動化するまで保持した。懸濁液を-7±5℃まで冷却し、その温度で2時間保持し、濾過し、アセトン2.0Lを用いて5±5℃で洗浄した。得られた固体を真空下40℃で乾燥して、メタンスルホン酸サフィナミドを得た。
【0049】
続いて、メタンスルホン酸サフィナミドを以下のように再結晶した。メタンスルホン酸サフィナミド1kgをアセトン8.2Lおよび脱塩水0.8Lに溶解させた。溶液を45±5℃まで30分間加熱し、清澄化し、20±2℃まで冷却した。流動化するまで反応媒体を撹拌し、-7±5℃まで冷却した。得られた懸濁液を2時間後に濾過し、アセトン2Lですすいだ。湿潤残渣を真空下40℃で乾燥して、純粋なメタンスルホン酸サフィナミド(99.95%)を75%の収率で得た。
【0050】
(実施例2)
500mLの晶析装置内で、実施例1で得られた生成物30.30gをn-ヘプタン(HPLCグレード)300mLに30℃で添加した。次いで、分散タービンを用いて425rpmで系を撹拌した。1時間平衡させた後、アセトニトリル(HPLCグレード)25mLを1時間かけて滴下した(n-ヘプタンのアセトニトリルに対する体積比=12)。アセトニトリルを添加した後、反応媒体を同条件(425rpm、分散タービン)でさらに6時間撹拌した。
【0051】
異なる時間(2時間、5時間)に系の進展をモニタリングした。2時間撹拌後、生成物が凝集していた。晶析装置の壁に付着した固体の存在が認められた。
【0052】
アセトニトリルの添加から5時間後、反応媒体は部分的に脱凝集しており、より多くの固体が壁に付着していた。1時間後、反応媒体を濾過した。真空下30℃で乾燥した後、メタンスルホン酸サフィナミドのやや大きな凝集体(直径0.5~1cm)が得られた。
【0053】
(実施例3)
実施例1で得られた生成物30.00gおよびアセトニトリル20mL(n-ヘプタンのアセトニトリルに対する体積比=15)を用いて、実施例2の手順を繰り返した。真空下30℃で乾燥した後、メタンスルホン酸サフィナミドの凝集体(直径500μm)が得られた。
【0054】
(実施例4)
500mLの晶析装置内で、実施例1で得られた生成物21.00gをn-ヘプタン(HPLCグレード)300mLに30℃で添加した。次いで、分散タービンを用いて475rpmで系を撹拌した。1時間平衡させた後、アセトニトリル(HPLCグレード)22mLを1.1時間かけて滴下した(n-ヘプタンのアセトニトリルに対する体積比=13.6)。アセトニトリルを添加した後、反応媒体を同条件(475rpm、分散タービン)でさらに6時間撹拌した。
【0055】
2時間撹拌後、生成物が凝集していた。減圧下45℃で乾燥した後、メタンスルホン酸サフィナミドの小さな凝集体(直径700μm)と、それより大きな凝集体(直径1000μm)とが得られた。
【0056】
(実施例5)
500mLの晶析装置内で、実施例1で得られた生成物21.00gをn-ヘプタン(HPLCグレード)300mLに30℃で添加した。次いで、分散タービンを用いて400rpmで系を撹拌した。1時間平衡させた後、プロピオニトリル(HPLCグレード)25mLを1.5時間かけて滴下した(n-ヘプタンのプロピオニトリルに対する体積比=12)。アセトニトリルを添加した後、反応媒体を同条件(400rpm、分散タービン)でさらに6時間撹拌した。
【0057】
2時間撹拌後、生成物が凝集していた。減圧下45℃で乾燥した後、メタンスルホン酸サフィナミドの凝集体(直径1000μm)が得られた。
【0058】
(実施例6)
500mLの晶析装置内で、実施例1で得られた生成物21.00gをメチルシクロヘキサン(HPLCグレード)300mLに30℃で添加した。次いで、分散タービンを用いて400rpmで系を撹拌した。1時間平衡させた後、アセトニトリル(HPLCグレード)25mLを1.5時間かけて滴下した(メチルシクロヘキサンのアセトニトリルに対する体積比=12)。アセトニトリルを添加した後、反応媒体を同条件(400rpm、分散タービン)でさらに2時間撹拌した。
【0059】
2時間撹拌後、生成物が凝集していた。減圧下45℃で乾燥した後、メタンスルホン酸サフィナミドの凝集体(直径1000μm)が得られた。
【0060】
(比較例1)
実施例1で得られた生成物30.00gおよびアセトニトリル15mL(n-ヘプタンのアセトニトリルに対する体積比=20)を用いて、実施例2の手順を繰り返した。メタンスルホン酸サフィナミドの凝集体は得られなかった。
【0061】
(比較例2)
実施例1で得られた生成物30.00gおよびアセトニトリル60mL(n-ヘプタンのアセトニトリルに対する体積比=5)を用いて、実施例2の手順を繰り返した。メタンスルホン酸サフィナミドの凝集体は得られなかった。
【国際調査報告】