(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】水素化分解方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
C10G 65/12 20060101AFI20240822BHJP
C10G 47/00 20060101ALI20240822BHJP
C10G 45/02 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
C10G65/12
C10G47/00
C10G45/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024516631
(86)(22)【出願日】2022-09-14
(85)【翻訳文提出日】2024-05-13
(86)【国際出願番号】 CN2022118720
(87)【国際公開番号】W WO2023040890
(87)【国際公開日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】202111072186.8
(32)【優先日】2021-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503191287
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】523143774
【氏名又は名称】中石化石油化工科学研究院有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】胡志海
(72)【発明者】
【氏名】莫昌芸
(72)【発明者】
【氏名】任亮
(72)【発明者】
【氏名】毛以朝
(72)【発明者】
【氏名】庄立
(72)【発明者】
【氏名】蔡新恒
(72)【発明者】
【氏名】趙毅
(72)【発明者】
【氏名】趙広楽
(72)【発明者】
【氏名】厳張艶
(72)【発明者】
【氏名】趙陽
【テーマコード(参考)】
4H129
【Fターム(参考)】
4H129CA07
4H129KA05
4H129KA09
4H129KA12
4H129KC03X
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4H129MA01
4H129MA07
4H129MA13
4H129MB13A
4H129MB17A
4H129MB20B
4H129MB20C
4H129NA22
4H129NA45
(57)【要約】
水素化分解のための方法およびシステム。ワックス油原料油および水素の混合物を、まず、水素化処理ユニットの手段によって接触反応させ、次に反応流出物を第1の水素化分解ユニットに入れて水素化分解触媒Iと反応させて、パラフィン炭化水素に富む軽質留分Iおよび環状炭化水素に富む重質留分Iを得て、当該重質留分Iを水素と混合し、次に第2の水素化分解反応ユニットに入れて反応させて、環状炭化水素に富む重質留分IIを得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)水素化処理ユニットにおいて、ガス油原料と水素ガスとの混合物を、水素化保護剤、任意の水素化脱金属触媒、および水素化精製触媒と順次接触させることによって反応させて、反応流出液を生成する;
(2)第1の水素化分解ユニットにおいて、ステップ(1)から得られた前記反応流出液を前記第1の水素化分解ユニットに送り、水素ガスの存在下で水素化分解触媒Iと接触させることによって反応させ、得られた反応流出液を分離して、少なくとも、軽質留分Iおよび重質留分Iを生成し;前記軽質留分Iはパラフィンに富み、前記軽質留分I中のパラフィンの質量分率は少なくとも82%であり、前記重質留分Iはナフテンおよび芳香族に富み、前記重質留分Iの350℃超の留分の炭化水素組成において、ナフテンおよび芳香族の質量分率の合計は82%より高い;
(3)第2の水素化分解ユニットにおいて、ステップ(2)において得られた前記重質留分Iを前記第2の水素化分解ユニットに送り、水素ガスの存在下で水素化分解触媒IIおよび/または水素化処理触媒と接触させることによって反応させ、得られた反応流出液を分離して、少なくとも、軽質留分IIおよび重質留分IIを生成する;
を含む、水素化分解方法。
【請求項2】
前記ガス油原料は、300~350℃の初期沸点を有し、且つ常圧ガス油、減圧ガス油、水素化ガス油、コーカーガス油、接触分解重質サイクル油、および脱れき油のうちの1種以上であることを特徴とする、先の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項3】
前記水素化処理ユニットにおいて、前記水素化処理ユニットの触媒全体を基準として、前記水素化保護剤、前記任意の水素化脱金属触媒、および前記水素化精製触媒の担持体積分率は、それぞれ3%~10%;0%~20%;および70%~90%であることを特徴とする、先の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項4】
前記水素化処理ユニットは、以下の反応条件を有していることを特徴とする、先の請求項のいずれか1項に記載の方法:
水素分圧:3.0MPa~20.0MPa、例えば8.0MPa~17.0MPa、
反応温度:280℃~400℃、例えば340~430℃、
LHSV(前記水素化精製触媒に基づく):0.5h
-1~6h
-1、例えば0.5h
-1~2.0h
-1、
H
2/オイルの体積比:300~2000、例えば600~1000。
【請求項5】
前記水素化保護剤は、担体と、当該担体上に担持された活性金属成分とを含み、前記担体は、アルミナ、シリカ、およびチタニアのうちの1種以上であり、前記活性金属成分は、第VIB族金属、および第VIII族非貴金属のうちの1種以上であり、前記水素化保護剤の重量を基準として、酸化物として、前記活性金属成分を0.1~15重量%含有し、前記水素化保護剤は、0.5~50.0mmの粒径、0.3~1.2g/cm
3のかさ密度、および50~300m
2/gの比表面積を有していることを特徴とする、先の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記水素化脱金属触媒は、担体と、当該担体上に担持された活性金属成分とを含み、前記担体は、アルミナ、シリカ、およびチタニアのうちの1種以上であり、前記活性金属成分は、第VIB族金属、および第VIII族非貴金属のうちの1種以上であり、前記水素化脱金属触媒の重量を基準として、酸化物として、前記活性金属成分を3~30重量%含有し、前記水素化脱金属触媒は、0.2~2.0mmの粒径、0.3~0.8g/cm
3のかさ密度、および100~250m
2/gの比表面積を有していることを特徴とする、先の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記水素化精製触媒は担持触媒であり、前記担体はアルミナおよび/またはシリカ-アルミナであり、前記活性金属成分は第VIB族金属から選択される少なくとも1種および/または第VIII族金属から選択される少なくとも1種であり;前記第VIII族金属はNiおよび/またはCoであり、前記第VIB族金属はMoおよび/またはWであり、前記水素化精製触媒の総重量を基準として、酸化物として、前記第VIII族金属の含有率は1~15重量%であり、前記第VIB族金属の含有率は5~40重量%であることを特徴とする、先の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記水素化精製触媒の前記活性金属成分は、Ni、MoおよびWのうちの2種または3種の金属であることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記水素化処理ユニットにおいて、原料の芳香族飽和率は58%以下に制御され;任意に、原料の芳香族飽和率=100%×(原料中の芳香族の含有率-水素化処理ユニットの反応流出液中の芳香族の含有率)/原料中の芳香族の含有率であることを特徴とする、先の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の水素化分解ユニットは、以下の反応条件を有していることを特徴とする、先の請求項のいずれか1項に記載の方法:水素分圧:3.0MPa~20.0MPa、例えば8.0MPa~17.0MPa、反応温度:280℃~430℃、例えば280℃~400℃、または340~430℃、LHSV:0.5h
-1~6h
-1、例えば0.7h
-1~3.0h
-1、H
2/オイルの体積比:300~2000、例えば800~1500。
【請求項11】
前記第1の水素化分解ユニットにおける350℃超の留分の転化率は、以下の範囲に制御されることを特徴とする、先の請求項のいずれか1項に記載の方法:
100×(A重量%/ガス油原料中の350℃超の留分の質量分率)から100×(B重量%/ガス油原料中の350℃超の留分の質量分率)まで、
ここで、Aはガス油原料中のパラフィンの質量分率であり、Bはガス油原料中のパラフィン、モノシクロパラフィン、および単環芳香族の質量分率の合計であり、
ここで、前記第1の水素化分解ユニットにおける350℃超の留分の転化率=100%×(ガス油原料中の350℃超の留分の質量分率-前記第1の水素化分解ユニットの反応生成物中の350℃超の留分の質量分率)/ガス油原料中の350℃超の留分の質量分率。
【請求項12】
前記水素化分解触媒Iは、担体および活性金属成分を含み、当該担体は、耐熱性無機酸化物およびモレキュラーシーブを含み、当該耐熱性無機酸化物は、シリカおよびアルミナのうちの1種以上であり、前記活性金属成分は、第VIB族金属及び第VIII族金属のうちの少なくとも2種の金属成分であり;水素化分解触媒Iの全体を基準として、酸化物として、第VIB族金属を10重量%~35重量%含有し、第VIII族金属を2重量%~8重量%含有し;
前記担体を基準として、前記モレキュラーシーブを10重量%~75重量%、好ましくは20重量%~60重量%、例えば35重量%~45重量%含有し、残部は前記耐熱性無機酸化物であり;
前記モレキュラーシーブは、シリカ/アルミナのモル比が20~50、細孔径が0.4nm~0.58nm、好ましくは比表面積が200m
2/g~400m
2/gであることを特徴とする、先の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記モレキュラーシーブは、モレキュラーシーブZSM-5、ZSM-11、ZSM-12、ZSM-22、ZSM-23、ZSM-48、ZSM-50、IM-5、MCM-22、およびEU-1のうちの1種以上であり、好ましくはZSM-5であることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第2の水素化分解ユニットは、以下の反応条件を有していることを特徴とする、先の請求項のいずれか1項に記載の方法:水素分圧:3.0MPa~20.0MPa、例えば8.0MPa~17.0MPa、反応温度:280℃~430℃、例えば280~400℃、LHSV:0.5h
-1~6h
-1、例えば0.7h
-1~3.0h
-1、H
2/オイルの体積比:300~2000、例えば800~1800。
【請求項15】
前記第2の水素化分解ユニットにおける350℃超の留分の転化率は、5%~80%の範囲に制御されることを特徴とする、先の請求項のいずれか1項に記載の方法:
ここで、前記第2の水素化分解ユニットにおける350℃超の留分の転化率=100%×(重質留分Iの350℃超の留分の質量分率-重質留分IIの350℃超の留分の質量分率)/重質留分Iの350℃超の留分の質量分率。
【請求項16】
前記水素化分解触媒IIは、担体および活性金属成分を含み、当該担体は、耐熱性無機酸化物およびY型モレキュラーシーブを含み、当該耐熱性無機酸化物は、シリカ、アルミナ、およびチタニアのうちの1種以上であり、前記活性金属成分は、第VIB族金属及び第VIII族金属のうちの少なくとも2種の金属成分であり;水素化分解触媒IIの全体を基準として、酸化物として、第VIB族金属を10重量%~35重量%含有し、第VIII族金属を2重量%~8重量%含有し;
前記担体を基準として、前記Y型モレキュラーシーブを5重量%~55重量%含有し、残部は前記耐熱性無機酸化物であり;
任意で、前記第2の水素化分解ユニットに前記水素化分解触媒が装填されている場合、第2の水素化分解ユニットの反応温度は、前記第1の水素化分解ユニットの前記温度よりも0~30℃高いことを特徴とする、先の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記水素化処理触媒は担持触媒であり、前記担体はアルミナまたはシリカ-アルミナであり、前記活性金属成分は第VIB族金属から選択される少なくとも1種および/または第VIII族金属から選択される少なくとも1種であり、前記第VIII族金属はNiおよび/またはCoであり、前記第VIB族金属はMoおよび/またはWであり、前記水素化処理触媒の総重量を基準として、酸化物として、第VIII族金属の含有率は1~15重量%であり、第VIB族金属の含有率は5~40重量%であり;
任意で、前記第2の水素化分解ユニットに前記水素化処理触媒が装填されている場合、第2の水素化分解ユニットの反応温度は、前記第1の水素化分解ユニットの前記温度よりも0~35℃低いことを特徴とする、先の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
得られた前記第1の水素化分解ユニットの反応流出液を分離して軽質留分Iおよび重質留分Iを生成し、軽質留分Iは20℃~30℃の初期沸点を有し、軽質留分Iと重質留分Iとのカットポイントは65℃~120℃、好ましくは65~105℃であり;前記軽質留分I中のパラフィンの質量分率は、少なくとも85%であることを特徴とする、先の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
得られた前記第1の水素化分解ユニットの反応流出液を分離して軽質留分Iおよび重質留分Iを生成し、軽質留分Iは20℃~30℃の初期沸点を有し、軽質留分Iと中間留分Iとのカットポイントは65℃~120℃、好ましくは65~105℃であり、中間留分Iと重質留分Iとのカットポイントは160~180℃であり、前記軽質留分Iはパラフィンに富み、好ましくは前記軽質留分I中のパラフィンの質量分率は、少なくとも85%であることを特徴とする、先の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
軽質留分IIは、65℃~100℃の初期沸点を有し、軽質留分IIと重質留分IIとのカットポイントは、155℃~180℃であり;前記軽質留分IIは、ナフテンおよび芳香族の総質量分率が少なくとも58%であり、重質留分IIの350℃超の留分中のナフテンの質量分率が少なくとも50%であることを特徴とする、先の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記ガス油原料の炭化水素中の芳香族+ナフテンの質量含有率は、70%超、例えば70%~90%、75%~90%、80%~90%、85%~90%、75%~85%、80%~85%であることを特徴とする、先の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記第1の水素化分解ユニットの反応温度、LHSV、H
2/オイル比および反応圧力の処理条件パラメータは、前記原料中のパラフィンの転化率が56%~95%であり、ナフテンおよび芳香族の総転化率が10%~65%であるように調整および制御されることを特徴とする、先の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記第1の水素化分解ユニットに送られ処理されるストリームは、10重量%~40重量%の芳香族質量含有率を有し、芳香族の含有率が100重量%であることを基準として、単環芳香族の含有率は、60重量%~85重量%であることを特徴とする、先の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記第2の水素化分解ユニットに送られ処理されるストリームは、75重量%~90重量%のナフテンおよび芳香族の総質量含有率を有していることを特徴とする、先の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記第1の水素化分解ユニットにおいて、前記水素化分解触媒Iは、担体および活性金属成分を含み、当該担体は、耐熱性無機酸化物およびモレキュラーシーブを含み、前記担体を基準として、前記モレキュラーシーブを10重量%~75重量%、好ましくは20重量%~60重量%、例えば35重量%~45重量%含有し、残部は耐熱性無機酸化物であり;前記モレキュラーシーブは、シリカ/アルミナのモル比が20~50、細孔径が0.4nm~0.58nm、好ましくは比表面積が200m
2/g~400m
2/gであることを特徴とする、先の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記第1の水素化分解ユニットにおいて、留分のカットは、65℃~120℃、好ましくは65℃~105℃で行われ、任意に、留分のカットは、160℃~180℃で行われることを特徴とする、先の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記ガス油原料は、300~350℃の初期沸点、520~650℃の最終沸点、および0.890g/cm
3~0.940g/cm
3の20℃での密度を有し;前記ガス油原料の炭化水素中の芳香族+ナフテンの質量含有率は、70%超、例えば70%~90%、75%~90%、80%~90%、85%~90%、75%~85%、80%~85%であり;及び前記ガス油原料は、常圧ガス油、減圧ガス油、水素化ガス油、コーカーガス油、接触分解重質サイクル油、及び脱れき油のうちの1種以上であることを特徴とする、先の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記第1の水素化分解ユニットにおいて、前記第1の水素化分解ユニットの反応温度、LHSV、H
2/オイル比および反応圧力のうちの1つ以上の処理条件パラメータ、好ましくは反応温度およびLHSVは、前記原料中のパラフィンの転化率が56%~95%であり、ナフテンおよび芳香族の総転化率が10%~65%であるように、調整および制御され、
ここで、パラフィンの転化率=(前記原料中のパラフィンの含有率-前記第1の水素化分解ユニットの生成物の350℃超の留分中のパラフィンの含有率×前記第1の水素化分解ユニットの生成物中の350℃超の留分の質量分率)/前記原料中のパラフィンの含有率;
ナフテンおよび芳香族の総転化率=(前記原料中のナフテンおよび芳香族の総含有率-前記第1の水素化分解ユニットの生成物の350℃超の留分中のナフテンおよび芳香族の総含有率×前記第1の水素化分解ユニットの生成物中の350℃超の留分の質量分率)/前記原料中のナフテンおよび芳香族の総含有率
であることを特徴とする、先の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
先行する請求項のいずれか1項に記載の方法を実施するためのシステムであって、水素化処理ユニット、第1の水素化分解ユニット、および第2の水素化分解ユニットを備え;
前記水素化処理ユニットは、ガス油原料の入口、水素ガスの入口、および反応流出液の出口が設けられており、前記水素化処理ユニットには、水素化保護剤、任意で水素化脱金属触媒、および水素化精製触媒が順次装填され;
前記第1の水素化分解ユニットには、第1の水素化分解システムおよび第1の分離システムが設けられており、前記第1の水素化分解システムには、水素化分解触媒Iが装填され、前記第1の水素化分解システムには、前記水素化処理ユニットの前記反応流出液の出口と連通する、前記水素化処理ユニットの前記反応流出液のための入口が設けられており、前記第1の水素化分解システムの反応流出液の出口は、前記第1の分離システムの入口と連通し、前記第1の分離システムには、少なくとも、第1の水素に富むガスの出口、軽質留分Iの出口および重質留分Iの出口が設けられており;
前記第2の水素化分解ユニットには、第2の水素化分解システムおよび第2の分離システムが設けられており、前記第2の水素化分解システムには、水素化分解触媒IIおよび/または水素化処理触媒が装填され、前記第2の水素化分解システムには、前記第1の分離システムの前記重質留分Iの出口と連通する、重質留分Iのための入口が設けられており、前記第2の水素化分解システムの反応流出液の出口は、前記第2の分離システムのための入口と連通し、前記第2の分離システムには、少なくとも、第2の水素に富むガスの出口、軽質留分IIの出口、および重質留分IIの出口が設けられている、システム。
【請求項30】
先行する請求項のいずれか1項に記載の装置であって、
前記第1の水素化分解ユニットにおいて、前記水素化分解触媒Iは、担体および活性金属成分を含み、当該担体は、耐熱性無機酸化物およびモレキュラーシーブを含み、前記担体を基準として、前記モレキュラーシーブを、10重量%~75重量%、好ましくは20重量%~60重量%、例えば35重量%~45重量%含有し、残部は耐熱性無機酸化物であり;前記モレキュラーシーブは、シリカ/アルミナのモル比が20~50であり、細孔径が0.4nm~0.58nmであり;
前記第1の水素化分解ユニットにおいて、65℃~120℃、好ましくは65~105℃で行われる留分のカットを制御する制御装置が設けられ、任意に、160~180℃で行われる留分のカットを制御する制御装置が設けられている、装置。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、炭化水素原料処理の技術分野に関し、特にガス油原料を水素化分解する方法およびシステムに関する。
【0002】
〔背景〕
原油の二次加工技術の中で、水素化分解技術は、原料の適応性が強く、生産操作および製品計画が柔軟であり、製品品質が優れているという長所を有している。それは、原料油をクリーンな燃料および化学原料に変換することができ、精製および化学企業において、製品分布および製品品質を調整し、且つ油と化学製品とを組み合わせるための重要な処理技術の一つである。
【0003】
水素化分解用の原料油は、通常、ガス油(タール油または燃料油)である。ガス油原料は、パラフィン、ナフテンおよび芳香族分子から構成され、炭素数の範囲は約20~40である。既存技術において、従来の水素化分解触媒は、主にY型またはβ型モレキュラーシーブを触媒材料として使用し、その触媒材料の酸性機能を利用して連鎖分解反応を行う。従って、従来の水素化分解技術を用いるガス油原料の転化のプロセスにおいて、ナフテンの開環分解反応に加えて、連鎖分解反応は、パラフィン、芳香族、ナフテン分子の長い側鎖でも起こり、パラフィン、側鎖を有するナフテン、および側鎖を有する芳香族が、各生成物留分中に同時に存在することになり、その結果、水蒸気分解によってエチレンを製造するための原料(テール油、軽質ナフサ)については、水素化分解生成物中のパラフィンの効率的な濃縮を達成することが困難となり、改質材料(重質ナフサ)については、その生成物中のナフテンおよび芳香族の効率的な濃縮を達成することが困難となる。
【0004】
CN87105808Aは、水素化分解または溶剤脱ろうされた潤滑油ベースストックを、水素化脱ろう活性を有する触媒床および水素化仕上げ触媒床に連続的に通過させ、それによって曇点が低下した潤滑油ベースストック製品を製造することを含む、水素化分解された潤滑油ベースストックを水素化脱ろうするための改良された方法を開示している。
【0005】
CN102959054Aは、統合された炭化水素の水素化分解および脱ろう方法を開示している。この方法において、原料油は、連続的に水素化処理され、次いで第1の水素化分解反応ゾーンにおいて反応されて第1の水素化分解反応流出液が得られ、この反応流出液は、第1の触媒脱ろう反応ゾーンに送られて反応される。得られた反応流出液を分離および分留して、ナフサ留分、第1のディーゼル留分およびボトム生成物留分を得、ボトム生成物留分を第2の水素化分解反応ゾーンまたは第2の触媒脱ろう反応ゾーンにおいて反応させる。得られた反応流出液は、分離および分留されて、第2のディーゼル留分および潤滑油生成物留分が生成される。
【0006】
CN102311785Aは、ナフテン系蒸留油を水素化して潤滑油基油を製造する方法を開示している。この方法は、ナフテン系原料油を原料として使用し、β型モレキュラーシーブを含有する水素化処理触媒と、ZSM-5型モレキュラーシーブを含有する水素化縮合点低下触媒とを使用し、水素化補助精製法を併用して、低流動点のゴム充填油製品を製造する。
【0007】
CN102971401Bは、統合された炭化水素の水素化分解および脱ろう方法を開示している。この方法において、まず原料油を水素化分解し、水素化分解生成物を分離して、触媒脱ろう反応および水素化分解反応のための液相残渣を得る。反応流出液は、分離および分留されて、ディーゼル生成物留分および潤滑油基油生成物留分が得られる。
【0008】
CN10669803Aは、高粘度指数水素化分解テール油製造用触媒およびその調製方法を開示している。この方法は、マクロポーラスアルミナ、改質USYモレキュラーシーブおよび改質ZSM-48モレキュラーシーブを混合して触媒を調製することを含む。原料は、この触媒を用いて水素化開環反応および水素異性化反応を受けて、低直鎖アルカン含有量、高異性体炭化水素含有量および高粘度指数を有する潤滑油基油製品を製造する。
【0009】
上記の既存技術から、従来の水素化分解技術の主な問題点は以下であることがわかる:第一に、従来の水素化分解技術は、主にY型モレキュラーシーブを含有する水素化分解触媒を使用して、ガス油原料を沸点範囲の低い製品留分に転化する。しかし、分子構造組成に応じた対応する分解反応が起こらず、炭化水素分子構造型に応じたガス油原料炭化水素分子の効率的な転化が達成できず、製品の品質および付加価値が低い。第二に、高付加価値のナフテン系特殊製品を製造する場合、既存の水素化分解技術ではナフテン系ガス油しか使用できないという制約があるか、または触媒脱ろう反応ユニットを用いてノルマルパラフィンを分岐鎖を有するイソパラフィンに転化して、製品の低温流動性を向上させる方法では、複雑な工程、高い設備投資、および高い運転コストが必要となる。
【0010】
したがって、鎖構造と環構造とに応じたガス油原料分子の分離転化に対応できる炭素鎖カスケード転化および水素化分解技術の開発は、ガス油原料の有効利用を実現する上で重要な実用的意義を有する。
【0011】
〔発明の概要〕
本発明は、既存の水素化分解技術における、ガス油原料の分子構造の無差別な転化に起因する、低付加価値生成物およびガス油原料分子の低利用効率の問題を解決することを目的とする。
【0012】
本発明の第1の態様は、
(1)水素化処理ユニットにおいて、ガス油原料と水素ガスとの混合物を、水素化保護剤、任意の水素化脱金属触媒、および水素化精製触媒と順次接触させることによって反応させて、反応流出液を生成する;
(2)第1の水素化分解ユニットにおいて、ステップ(1)から得られた前記反応流出液を前記第1の水素化分解ユニットに送り、水素化分解触媒Iと水素ガスの存在下で接触させることによって反応させ、得られた反応流出液を分離して、少なくとも軽質留分Iおよび重質留分Iを生成し;前記軽質留分Iはパラフィンに富み、前記軽質留分I中のパラフィンの質量分率は少なくとも82%であり、前記重質留分Iはナフテンおよび芳香族に富み、前記重質留分Iの350℃超の留分の炭化水素組成において、ナフテンおよび芳香族の質量分率の合計は82%より高い;
(3)第2の水素化分解ユニットにおいて、ステップ(2)において得られた前記重質留分Iを前記第2の水素化分解ユニットに送り、水素化分解触媒IIおよび/または水素化処理触媒と水素ガスの存在下で接触させることによって反応させ、得られた反応流出液を分離して、少なくとも軽質留分IIおよび重質留分IIを生成する;
を含む、水素化分解方法を提供する。
【0013】
本発明において、前記ガス油原料は、300~350℃の初期沸点を有し、且つ常圧ガス油、減圧ガス油、水素化ガス油、コーカーガス油、接触分解重質サイクル油、および脱れき油のうちの1種以上である。
【0014】
本発明は、ガス油原料中の炭化水素分子の利用価値を向上させるために、炭化水素の分子構造特性に基づく水素化分解方法を提供する。本発明によれば、まず、水素化処理ユニットにおいて、ガス油原料と水素ガスとの混合物を接触反応させる。反応流出物は、第1の水素化分解ユニットに送られ、水素化分解触媒Iと反応させて、ガス油原料の鎖構造の選択的転化を達成し、パラフィンに富む軽質留分Iおよび環状炭化水素(ナフテンおよび芳香族)に富む重質留分Iを得る。重質留分Iは、水素ガスと混合された後、第2の水素化分解ユニットに送られ、水素化分解触媒IIおよび/または水素化処理触媒と反応させることにより、ナフテンおよび芳香族に富む軽質留分II、および低温流動性の良好な環状炭化水素に富む重質留分IIが得られる。本発明は、炭化水素分子の鎖構造および環構造の種類に応じたガス油原料の選択的かつ効率的な転化を完全に実現し、パラフィンに富む生成物留分および環状炭化水素に富む生成物留分をそれぞれ得る。
【0015】
分離の態様に応じて、反応流出物をカットするための様々なプランがある。本発明の一実施形態において、得られた第1の水素化分解ユニットの反応流出物は、軽質留分Iおよび重質留分Iを生成するように分離される。軽質留分Iは、20℃~30℃の初期沸点を有する。軽質留分Iと重質留分Iとのカットポイントは、65℃~120℃、好ましくは65℃~105℃である。軽質留分Iはパラフィンに富み、好ましくは軽質留分I中のパラフィンの質量分率は少なくとも85%である。パラフィンに富む軽質留分Iは、水蒸気分解によりエチレンを製造するための高品質の原料として使用することができる。得られた重質留分Iは、ナフテンおよび芳香族に富む。重質留分Iの350℃超の留分の炭化水素組成において、ナフテンおよび芳香族の質量分率の合計は82%超である。
【0016】
本発明の別の実施形態において、得られた第1の水素化分解ユニットの反応流出物は、軽質留分I、中間留分Iおよび重質留分Iを生成するように分離される。軽質留分Iは、20℃~30℃の初期沸点を有する。軽質留分Iと中間留分Iとのカットポイントは、65℃~120℃、好ましくは65℃~105℃である。中間留分Iと重質留分Iとのカットポイントは、160℃~180℃である。軽質留分Iはパラフィンに富み、好ましくは軽質留分I中のパラフィンの質量分率は少なくとも85%である。中間留分Iは、別個の生成物として使用することができ、あるいは第2の水素化分解ユニットの分留塔に送り、さらにカットして軽質留分II成分および重質留分II成分の一部を得ることができる。得られた重質留分Iは、ナフテンおよび/または芳香族に富む。重質留分Iの350℃超の留分の炭化水素組成において、ナフテンおよび芳香族の質量分率の合計は82%超である。
【0017】
本発明によれば、重質留分I中の炭化水素分子の利用価値をさらに向上させるために、重質留分Iは、選択的分解反応のために第2の水素化分解ユニットに送られる。得られた反応流出物は、軽質留分IIおよび重質留分IIを生成するために分離される。本発明の一実施形態において、得られる軽質留分IIは、65℃~100℃の初期沸点を有する。軽質留分IIと重質留分IIとのカットポイントは、155℃~180℃、好ましくは160℃~175℃である。軽質留分IIは、ナフテンおよび芳香族の質量分率の合計が少なくとも58%であり、高品質の改質材料である。異なる生成物のプランに応じて、得られた重質留分IIのカットには様々なプランがある。様々なカットプランに応じて、重質留分IIは、高比重ジェット燃料留分、変圧器油基油および冷凍機油などの様々なナフテン系特殊油にカットすることができる。本発明の一実施形態において、得られた重質留分IIの350℃超の留分中のナフテンの質量分率は少なくとも50%である。ナフテンに富む重質留分IIは、良好な低温流動性を有する。この重質留分IIは、各種の高付加価値のナフテン系特殊油として使用することができる。
【0018】
本発明の一実施形態において、水素化処理ユニットの触媒全体を基準として、水素化処理ユニットにおける、水素化保護剤、任意の水素化脱金属化触媒、および水素化精製触媒の担持体積分率は、それぞれ3%~10%;0%~20%;および70%~90%である。
【0019】
水素化保護剤は、当該技術分野における通常の重質炭化水素油処理用の水素化保護剤であり、ガス油水素化保護剤、残渣油水素化保護剤、またはそれらの組合せに限定されない。
【0020】
好ましくは、水素化保護剤は、担体および担体上に担持された活性金属成分を含み、担体は、アルミナ、シリカおよびチタニアのうちの1種以上であり、活性金属成分は、第VIB族金属および第VIII族非貴金属のうちの1種以上であり、水素化保護剤の重量を基準として、酸化物として、活性金属成分を0.1重量%~15重量%含有し、水素化保護剤の粒径は0.5mm~50.0mmであり、かさ密度は0.3g/cm3~1.2g/cm3であり、比表面積は50m2/g~300m2/gである。
【0021】
水素化脱金属触媒は、当該技術分野における通常の重質炭化水素油処理用の水素化脱金属触媒であり、ガス油水素化脱金属触媒、残渣油水素化脱金属触媒、またはそれらの組合せに限定されない。
【0022】
好ましくは、水素化脱金属触媒は、担体および担体上に担持された活性金属成分を含み、担体は、アルミナ、シリカおよびチタニアのうちの1種以上であり、活性金属成分は、第VIB族金属および第VIII族非貴金属のうちの1種以上であり、水素化脱金属触媒の重量を基準として、酸化物として、活性金属成分を3重量%~30重量%含有し、水素化脱金属触媒の粒径は0.2mm~2.0mmであり、かさ密度は0.3g/cm3~0.8g/cm3であり、比表面積は100m2/g~250m2/gである。
【0023】
本発明において、「任意の」は、対応するステップ、触媒または成分が任意であるが必要ではないこと、すなわち、そのステップ、触媒または成分が存在してもしなくてもよいことを意味する。
【0024】
本発明の一実施形態において、水素化精製触媒は担持された触媒であり、担体はアルミナおよび/またはシリカ-アルミナであり、活性金属成分は第VIB族金属から選択される少なくとも1種および/または第VIII族金属から選択される少なくとも1種であり、第VIII族金属はNiおよび/またはCoであり、第VIB族金属はMoおよび/またはWであり、水素化精製触媒の総重量を基準として、酸化物として、第VIII族金属の含有率は1重量%~15重量%であり、第VIB族金属の含有率は5重量%~40重量%であり、
好ましくは、水素化精製触媒の活性金属成分は、Ni、MoおよびWのうち2つまたは3つの金属である。
【0025】
本発明の一実施形態において、水素化処理ユニットは、以下の反応条件を有する:水素分圧:3.0MPa~20.0MPa、反応温度:280℃~400℃、LHSV(液体時空間速度):0.5h-1~6h-1、H2/オイルの体積比:300~2000。
【0026】
好ましくは、水素化処理ユニットにおいて、原料の芳香族飽和率を58%以下に制御する。本発明の発明者が鋭意研究を行った結果、芳香族飽和率が高すぎると、水素化処理ユニットの反応流出物を第1の水素化分解ユニットに送る際に、第1の水素化分解ユニットにおけるナフテンの開環分解反応の増大につながり、ガス油原料の鎖構造および環構造に応じた指向性のある転化の反応効果に悪影響を及ぼすことを見出した。
【0027】
原料の芳香族飽和率=100%×(原料中の芳香族含有率-水素化処理ユニットの反応流出物中の芳香族含有率)/原料中の芳香族含有率。
【0028】
本明細書において、含有率は、特に断りのない限り重量に基づくものである。
【0029】
本発明の実施形態において、第1の水素化分解ユニットは、以下の反応条件を有する:水素分圧:3.0MPa~20.0MPa、反応温度:280℃~400℃、LHSV:0.5h-1~6h-1、H2/オイルの体積比:300~2000。
【0030】
炭化水素分子の鎖構造および環構造の種類に応じたガス油原料の選択的かつ効率的な転化をよりよく実現するために、本発明の一実施形態において、第1の水素化分解ユニットにおける350℃超の留分の転化率は、以下の範囲に制御される:
100×(A重量%/ガス油原料中の350℃超の留分の質量分率)から100×(B重量%/ガス油原料中の350℃超の留分の質量分率)まで、
ここで、Aはガス油原料中のパラフィンの質量分率、Bはガス油原料中のパラフィン、モノシクロパラフィンおよび単環芳香族の質量分率の合計であり、
ここで、第1の水素化分解ユニットにおける350℃超の留分の転化率=100%×(ガス油原料中の350℃超の留分の質量分率-第1の水素化分解ユニットの反応生成物中の350℃超の留分の質量分率)/ガス油原料中の350℃超の留分の質量分率である。
【0031】
同様に、炭化水素分子の鎖構造および環構造の種類に応じたガス油原料の選択的かつ効率的な転化をよりよく実現するために、本発明の一実施形態において、第1の水素化分解ユニットにおいて、第1の水素化分解ユニットの反応温度、LHSV、H2/オイル比および反応圧力の1つ以上の処理条件パラメータ、好ましくは反応温度およびLHSVは、原料中のパラフィンの転化率が56%~95%、ナフテンおよび芳香族の総転化率が10%~65%になるように調整される。
ここで、パラフィンの転化率=(原料中のパラフィンの含有率-第1の水素化分解ユニットの生成物の350℃超の留分中のパラフィンの含有率×第1の水素化分解ユニットの生成物中の350℃超の留分の質量分率)/原料中のパラフィンの含有率であり;
ナフテンおよび芳香族の総転化率=(原料中のナフテンおよび芳香族の総含有率-第1の水素化分解ユニットの生成物の350℃超の留分中のナフテンおよび芳香族の総含有率×第1の水素化分解ユニットの生成物中の350℃超の留分の質量分率)/原料中のナフテンおよび芳香族の総含有率である。
【0032】
原料の芳香族飽和率、ならびに第1の水素化分解ユニットにおける350℃超の留分の転化率、パラフィンの転化率、およびナフテン+芳香族の転化率については、当業者であれば、水素分圧または反応圧力、反応温度、LHSV、およびH2/オイルの体積比などの運転パラメータを適切に設定することによって、これらを制御する方法を知っている。例えば、反応温度およびLHSV、特に反応温度は、飽和率/転化率に最も大きな影響を与える。
【0033】
原料の芳香族飽和率、ならびに第1の水素化分解ユニットにおける350℃超の留分の転化率、パラフィンの転化率、およびナフテン+芳香族の転化率については、飽和率および/または転化率を制御するために、運転パラメータが以下のように決定される:
(1)実際の飽和率/転化率と目標の飽和率/転化率との差の目標値、例えば20%を設定する、
(2)水素分圧または反応圧力、反応温度、LHSV、H2/オイルの体積比を含む運転パラメータ群を事前に決定し、事前に決定された運転パラメータの下で実際の飽和率/転化率を決定する、
(3)実際の飽和率/転化率と目標の飽和率/転化率との差の絶対値が目標差より大きい場合、あるステップサイズを初期ステップサイズとし、実際の飽和率/転化率と目標の飽和率/転化率との差の絶対値が目標差より小さくなるまで運転温度を増減させる;
このステップサイズで運転温度を上昇または下降させ、実際の飽和率/転化率と目標の飽和率/転化率との差の絶対値が目標差より小さくなることが運転温度範囲内で達成できない場合、ステップサイズを減少させ、所定温度から開始し、実際の飽和率/転化率と目標の飽和率/転化率との差の絶対値が目標差より小さくなるまで運転温度を上昇または下降させる;
(4)ステップ(3)で決定した温度をステップ(4)の所定温度とし、ステップ(3)の初期ステップサイズより小さいステップサイズをステップ(4)の初期ステップサイズとし、ステップ(3)の目標差より小さい目標差をステップ(4)の目標差とし、ステップ(3)を繰り返す;
(5)実際の飽和率/転化率と目標の飽和率/転化率との差の絶対値が所望の値に達するまで、ステップ(3)または(4)を実行するか、またはステップ(4)を繰り返すことにより、運転温度を決定し、飽和率/転化率の制御を実現する;
任意に、実際の飽和率/転化率と目標の飽和率/転化率との差の絶対値が目標差より小さいことが達成できない場合、または、実際の飽和率/転化率と目標の飽和率/転化率との差の所望の絶対値が達成できない場合、ステップ(2)の運転パラメータを再決定し、例えば、水素分圧または反応圧力、LHSV、およびH2/オイルの体積比の1つ以上を、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、またはそれより高い値または低い値だけ増減させ、ステップ(2)を繰り返す。
【0034】
例えば、当業者であれば、まず運転パラメータ群を事前に決定し、事前に決定された運転パラメータの下で、実際の飽和率/転化率を決定することができる。実際の飽和率/転化率と目標の飽和率/転化率との差が20%を超える場合、実際の飽和率/転化率と目標の飽和率/転化率との差が20%未満になるまで、運転温度を16℃のステップサイズで増減させ;運転温度を16℃のステップサイズで増減させても、実際の飽和率/転化率と目標の飽和率/転化率との差を20%未満にすることができない場合、ステップサイズを8℃、4℃、2℃または1℃に変更する。実際の飽和率/転化率と目標の飽和率/転化率との差が20%未満である場合、所望の飽和率/転化率が達成されるまで、必要に応じて、温度を8℃、4℃、2℃および1℃のステップサイズに順次変更する。所望の飽和率/転化率を達成できない場合は、運転パラメータ群を再度事前に決定し、上記の方法を繰り返す。
【0035】
当業者は、所望の飽和率/転化率を達成するために、特定の運転条件、例えば反応温度、空間速度、水素の油に対する比および水素分圧を所定の運転条件の範囲内で選択する方法を知っている。本出願の技術的解決手段には、固定床水素化分解方法が使用される。通常、ある原料処理能力の下では、空間速度、水素の油に対する比および水素分圧の調整範囲は比較的小さい。当業者は主に、分解反応温度を調整することにより、第1の水素化分解ユニットにおける350℃超の留分の転化率、パラフィンの転化率、およびナフテン+芳香族の転化率に影響を与える。したがって、転化率を制御するために、操作パラメータを以下のように決定することもできる:
第1の水素化分解ユニットの反応温度と、第1の水素化分解ユニットにおける350℃超の留分の転化率、パラフィンの転化率、およびナフテン+芳香族の転化率との間に、以下の関係を満たす線形関係が決定される:
y転化率=a×反応温度値-B、
ここで、aの範囲は0.10~4.0であり、Bの範囲は30~300であり;
第1の水素化分解ユニットにおける350℃超の留分の転化率について、線形関係式におけるパラメータaの範囲は0.3~3.0であり、パラメータBの範囲は100~300であり;
パラフィンの転化率について、線形関係式におけるパラメータaの範囲は0.2~2.0であり、パラメータBの範囲は40~150であり;
ナフテン+芳香族の転化率について、線形関係式におけるパラメータaの範囲は0.25~2.5であり、パラメータBの範囲は60~250であり;
運転温度は、上記の転化率の線形関係式で決定される。
【0036】
本発明において、ガス油原料中の「モノシクロパラフィン」とは、主として側鎖の長い単環ナフテンをいい、ガス油原料中の「単環芳香族」とは、主として側鎖の長い単環芳香族炭化水素をいう。長鎖炭化水素の炭素数は20より大きい。
【0037】
本発明の一実施形態において、水素化分解触媒Iは、担体および活性金属成分を含み、担体は、耐熱性無機酸化物およびモレキュラーシーブを含み、耐熱性無機酸化物は、シリカおよびアルミナのうちの1種以上であり、活性金属成分は、第VIB族金属および第VIII族金属のうちの少なくとも2種の金属成分であり、水素化分解触媒Iの全体を基準として、酸化物として、第VIB族金属を10重量%~35重量%含有し、第VIII族金属を2重量%~8重量%含有し;
担体を基準として、モレキュラーシーブを10重量%~75重量%、好ましくは20重量%~60重量%、例えば35重量%~45重量%含有し、残部は耐熱性無機酸化物であり、モレキュラーシーブはシリカ/アルミナのモル比が20~50であり、細孔径が0.4nm~0.58nmである。
【0038】
好ましくは、モレキュラーシーブは、モレキュラーシーブZSM-5、ZSM-11、ZSM-12、ZSM-22、ZSM-23、ZSM-48、ZSM-50、IM-5、MCM-22、およびEU-1のうちの1種以上であり、さらに好ましくはZSM-5である。
【0039】
本発明の一実施形態において、第2の水素化分解ユニットは以下の反応条件を有する:水素分圧:3.0MPa~20.0MPa、反応温度:280℃~400℃、LHSV:0.5h-1~6h-1、H2/オイルの体積比:300~2000。
【0040】
本発明の一実施形態において、第2の水素化分解ユニットにおける350℃超の留分の転化率は、5%~80%の範囲に制御される。本発明の一実施形態において、冷凍機油生成物を得るために、好ましくは、第2の水素化分解ユニットにおける350℃超の留分の転化率は、5%~20%の範囲に制御される。本発明の一実施形態において、変圧器油生成物を得るために、好ましくは、第2の水素化分解ユニットにおける350℃超の留分の転化率は、21%~40%の範囲に制御される。引き続き350℃超の留分の転化率を高めることにより、高芳香族潜在改質原料をより高い収率で得ることができる。
【0041】
第2の水素化分解ユニットにおいて制御される、350℃超の留分の転化率が高すぎると、軽質留分IIのナフテンおよび芳香族の含有率が低下するだけでなく、重質留分II生成物の分留品質指標がナフテン系特殊油の品質要件を満たさなくなる。
【0042】
ここで、第2の水素化分解ユニットにおける350℃超の留分の転化率=100%×(重質留分Iの350℃超の留分の質量分率-重質留分IIの350℃超の留分の質量分率)/重質留分Iの350℃超の留分の質量分率である。
【0043】
本発明の一実施形態において、水素化分解触媒IIは、担体および活性金属成分を含み、前記担体は、耐熱性無機酸化物およびY型モレキュラーシーブを含み、前記耐熱性無機酸化物は、シリカ、アルミナおよびチタニアのうち1種以上であり、前記活性金属成分は、第VIB族金属および第VIII族金属の少なくとも2種の金属成分であり、水素化分解触媒IIの全体を基準として、酸化物として、第VIB族金属を10重量%~35重量%含有し、第VIII族金属を2重量%~8重量%含有し;
担体を基準として、Y型モレキュラーシーブを5重量%~55重量%含有し、残部は耐熱性無機酸化物である。
【0044】
本発明の一実施形態において、水素化処理触媒は担持された触媒であり、担体はアルミナまたはシリカ-アルミナであり、活性金属成分は第VIB族金属から選択される少なくとも1種および/または第VIII族金属から選択される少なくとも1種であり、第VIII族金属はNiおよび/またはCoであり、第VIB族金属はMoおよび/またはWであり、水素化処理触媒の総重量を基準として、酸化物として、第VIII族金属の含有率は1重量%~15重量%であり、第VIB族金属の含有率は5重量%~40重量%である。
【0045】
本発明の第2の態様は、水素化分解システムを提供し、このシステムは、水素化処理ユニット、第1の水素化分解ユニット、および第2の水素化分解ユニットを備え;
水素化処理ユニットは、ガス油原料の入口、水素ガスの入口、および反応流出物の出口が設けられ、水素化処理ユニットには、水素化保護剤、任意の水素化脱金属触媒、および水素化精製触媒が順次装填され;
第1の水素化分解ユニットには、第1の水素化分解システムおよび第1の分離システムが設けられ、第1の水素化分解システムには、水素化分解触媒Iが装填され、第1の水素化分解システムには、水素化処理ユニットの反応流出物のための入口が設けられ、この入口は、第1の水素化処理ユニットの反応流出物の出口と通じ、第1の水素化分解システムの反応流出物の出口は、第1の分離システムの入口と通じ、第1の分離システムには、少なくとも、第1の水素に富むガスの出口、軽質留分Iの出口、および重質留分Iの出口が設けられ;
第2の水素化分解ユニットには、第2の水素化分解システムおよび第2の分離システムが設けられ、第2の水素化分解システムには、水素化分解触媒IIおよび/または水素化処理触媒が装填され、第2の水素化分解システムには、重質留分Iのための入口が設けられ、この入口は、第1の分離システムの重質留分Iの出口と通じ、第2の水素化分解システムの反応流出物の出口は、第2の分離システムの入口と通じ、第2の分離システムには、少なくとも、第2の水素に富むガスの出口、軽質留分IIの出口、および重質留分IIの出口が設けられている。
【0046】
本発明の一実施形態において、第1の分離システムおよび第2の分離システムのそれぞれには、個別の気液分離器および分留塔が設けられている。これらは、本発明の分離要件を満たす限り、高温高圧分離器、低温高圧分離器、高温低圧分離器および低温低圧分離器と分留カラムとの様々な組合せに限定されない。
【0047】
本発明は、ガス油原料中の炭化水素分子の利用価値を向上させるため、炭化水素の分子構造特性に基づく水素化分解方法およびシステムを開示する。
【0048】
本発明は、炭化水素分子の鎖構造および環構造の種類に応じて、ガス油原料の選択的かつ効率的な転化を実現し、パラフィンに富む生成物留分および環状炭化水素に富む生成物留分を得ることができることを特徴とし、パラフィンに富む軽質留分Iは、パラフィンの含有率が82重量%以上を満たすことができ、水蒸気分解によりエチレンを製造するための高品質の原料として使用することができ;環状炭化水素に富む軽質留分IIは、ナフテンおよび芳香族の質量分率の合計が58重量%以上を満たすことができ、高品質の改質原料として使用することができ;さらに、ナフテンに富む重質留分II生成物は、低温流動性が良好であり、高付加価値のナフテン系特殊油として使用することができる。
【0049】
本発明は、ガス油原料中の鎖状炭化水素と環状炭化水素(ナフテンおよび芳香族)との分離転化を完全に実現し、それらを各生成留分中にそれぞれ濃縮することにより、追加の処理を必要とせず、化学原料として使用可能なパラフィンに富む軽質ナフサおよび高付加価値のナフテン系特殊油を直接得ることができ、精製会社および化学会社にとって、ガス油原料の高付加価値利用を低コストで実現する上で大きな意義がある。
【0050】
〔図面の説明〕
図1は、本発明により提供される水素化分解方法の一実施形態の概略図である。
【0051】
〔詳細な説明〕
以下、添付の図面とともに本発明をさらに説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0052】
図1は、本発明により提供される水素化分解方法の一実施形態の概略図である。
図1に示すように、ガス油原料1および水素ガス2は、水素化処理ユニットにおいて、水素化保護剤、任意の水素化脱金属触媒、および水素化精製触媒と順次接触させて反応させる。得られた反応流出物3は、第1の水素化分解ユニットに送られ、水素ガスの存在下で水素化分解触媒Iと接触させて反応させる。得られた反応流出物4は分離器Iで分離され、水素に富むガス5、第1の液相ストリーム6および重質留分I10が生成される。得られた第1の液相ストリーム6は、分留ユニットIに送られ、低炭素軽質炭化水素7、軽質留分I8、ボトムオイル9(中間留分I)を生成するために分留される。得られたボトムオイル9は、さらなる分留のために分留ユニットIIに送ることができる。得られた重質留分I10および水素ガス11は、第2の水素化分解ユニットにおいて、水素化分解触媒IIおよび/または水素化処理触媒と接触させて反応させる。得られた反応流出物12は分離器IIで分離され、水素に富むガス13および第2の液相ストリーム14が生成される。得られた第2の液相ストリーム14は、トップオイル15、軽質留分II16および重質留分II17を生成するための分留のために、分留ユニットIIに送られる。得られたトップオイル15は、さらなる分留のために分留ユニットIに送ることができる。
【0053】
本発明は、以下の技術的解決手段およびその任意の組合せを提供する:
1.(1)水素化処理ユニットにおいて、ガス油原料と水素ガスとの混合物を、水素化保護剤、任意の水素化脱金属触媒、および水素化精製触媒と順次接触させることによって反応させて、反応流出液を生成する;
(2)第1の水素化分解ユニットにおいて、ステップ(1)から得られた前記反応流出液を前記第1の水素化分解ユニットに送り、水素ガスの存在下で水素化分解触媒Iと接触させることによって反応させ、得られた反応流出液を分離して、少なくとも、軽質留分Iおよび重質留分Iを生成し;前記軽質留分Iはパラフィンに富み、前記軽質留分I中のパラフィンの質量分率は少なくとも82%であり、前記重質留分Iはナフテンおよび芳香族に富み、前記重質留分Iの350℃超の留分の炭化水素組成において、ナフテンおよび芳香族の質量分率の合計は82%より高い;
(3)第2の水素化分解ユニットにおいて、ステップ(2)において得られた前記重質留分Iを前記第2の水素化分解ユニットに送り、水素ガスの存在下で水素化分解触媒IIおよび/または水素化処理触媒と接触させることによって反応させ、得られた反応流出液を分離して、少なくとも、軽質留分IIおよび重質留分IIを生成する;
を含む、水素化分解方法。
【0054】
2.前記ガス油原料は、300~350℃の初期沸点を有し、且つ常圧ガス油、減圧ガス油、水素化ガス油、コーカーガス油、接触分解重質サイクル油、および脱れき油のうちの1種以上であることを特徴とする、先の技術的解決手段のいずれか1つに記載の方法。
【0055】
3.前記水素化処理ユニットにおいて、前記水素化処理ユニットの触媒全体を基準として、前記水素化保護剤、前記任意の水素化脱金属触媒、および前記水素化精製触媒の担持体積分率は、それぞれ3%~10%;0%~20%;および70%~90%であることを特徴とする、先の技術的解決手段のいずれか1つに記載の方法。
【0056】
4.前記水素化分解ユニットは、以下の反応条件を有していることを特徴とする、先の技術的解決手段のいずれか1つに記載の方法:水素分圧:3.0MPa~20.0MPa、例えば8.0MPa~17.0MPa、反応温度:280℃~400℃、例えば340~430℃、LHSV(前記水素化精製触媒に基づく):0.5h-1~6h-1、例えば0.5h-1~2.0h-1、H2/オイルの体積比:300~2000、例えば600~1000。
【0057】
5.前記水素化保護剤は、担体と、当該担体上に担持された活性金属成分とを含み、前記担体は、アルミナ、シリカ、およびチタニアのうちの1種以上であり、前記活性金属成分は、第VIB族金属、および第VIII族非貴金属のうちの1種以上であり、前記水素化保護剤の重量を基準として、酸化物として、前記活性金属成分を0.1~15重量%含有し、前記水素化保護剤は、0.5~50.0mmの粒径、0.3~1.2g/cm3のかさ密度、および50~300m2/gの比表面積を有していることを特徴とする、先の技術的解決手段のいずれか1つに記載の方法。
【0058】
6.前記水素化脱金属触媒は、担体と、当該担体上に担持された活性金属成分とを含み、前記担体は、アルミナ、シリカ、およびチタニアのうちの1種以上であり、前記活性金属成分は、第VIB族金属、および第VIII族非貴金属のうちの1種以上であり、前記水素化脱金属触媒の重量を基準として、酸化物として、前記活性金属成分を3~30重量%含有し、前記水素化脱金属触媒は、0.2~2.0mmの粒径、0.3~0.8g/cm3のかさ密度、および100~250m2/gの比表面積を有していることを特徴とする、先の技術的解決手段のいずれか1つに記載の方法。
【0059】
7.前記水素化精製触媒は担持触媒であり、前記担体はアルミナおよび/またはシリカ-アルミナであり、前記活性金属成分は第VIB族金属から選択される少なくとも1種および/または第VIII族金属から選択される少なくとも1種であり;前記第VIII族金属はNiおよび/またはCoであり、前記第VIB族金属はMoおよび/またはWであり、前記水素化精製触媒の総重量を基準として、酸化物として、前記第VIII族金属の含有率は1~15重量%であり、前記第VIB族金属の含有率は5~40重量%であることを特徴とする、先の技術的解決手段のいずれか1つに記載の方法。
【0060】
8.前記水素化精製触媒の前記活性金属成分は、Ni、MoおよびWのうちの2種または3種の金属であることを特徴とする、技術的解決手段7に記載の方法。
【0061】
9.前記水素化処理ユニットにおいて、原料の芳香族飽和率は58%以下に制御され;任意に、原料の芳香族飽和率=100%×(原料中の芳香族の含有率-水素化処理ユニットの反応流出液中の芳香族の含有率)/原料中の芳香族の含有率であることを特徴とする、先の技術的解決手段のいずれか1つに記載の方法。
【0062】
10.前記第1の水素化分解ユニットは、以下の反応条件を有していることを特徴とする、先の技術的解決手段のいずれか1つに記載の方法:水素分圧:3.0MPa~20.0MPa、例えば8.0MPa~17.0MPa、反応温度:280℃~430℃、例えば280℃~400℃、または340~430℃、LHSV:0.5h-1~6h-1、例えば0.7h-1~3.0h-1、H2/オイルの体積比:300~2000、例えば800~1500。
【0063】
11.前記第1の水素化分解ユニットにおける350℃超の留分の転化率は、以下の範囲に制御されることを特徴とする、先の技術的解決手段のいずれか1つに記載の方法:
100×(A重量%/ガス油原料中の350℃超の留分の質量分率)から100×(B重量%/ガス油原料中の350℃超の留分の質量分率)まで、
ここで、Aはガス油原料中のパラフィンの質量分率であり、Bはガス油原料中のパラフィン、モノシクロパラフィン、および単環芳香族の質量分率の合計であり、
ここで、前記第1の水素化分解ユニットにおける350℃超の留分の転化率=100%×(ガス油原料中の350℃超の留分の質量分率-前記第1の水素化分解ユニットの反応生成物中の350℃超の留分の質量分率)/ガス油原料中の350℃超の留分の質量分率。
【0064】
12.前記水素化分解触媒Iは、担体および活性金属成分を含み、当該担体は、耐熱性無機酸化物およびモレキュラーシーブを含み、当該耐熱性無機酸化物は、シリカおよびアルミナのうちの1種以上であり、前記活性金属成分は、第VIB族金属及び第VIII族金属のうちの少なくとも2種の金属成分であり;水素化分解触媒Iの全体を基準として、酸化物として、第VIB族金属を10重量%~35重量%含有し、第VIII族金属を2重量%~8重量%含有し;
前記担体を基準として、前記モレキュラーシーブを10重量%~75重量%、好ましくは20重量%~60重量%、例えば35重量%~45重量%含有し、残部は前記耐熱性無機酸化物であり;
前記モレキュラーシーブは、シリカ/アルミナのモル比が20~50、細孔径が0.4nm~0.58nm、好ましくは比表面積が200m2/g~400m2/gであることを特徴とする、先の技術的解決手段のいずれか1つに記載の方法。
【0065】
13.前記モレキュラーシーブは、モレキュラーシーブZSM-5、ZSM-11、ZSM-12、ZSM-22、ZSM-23、ZSM-48、ZSM-50、IM-5、MCM-22、およびEU-1のうちの1種以上であり、好ましくはZSM-5であることを特徴とする、技術的解決手段12に記載の方法。
【0066】
14.前記第2の水素化分解ユニットは、以下の反応条件を有していることを特徴とする、先の技術的解決手段のいずれか1つに記載の方法:水素分圧:3.0MPa~20.0MPa、例えば8.0MPa~17.0MPa、反応温度:280℃~430℃、例えば280~400℃、LHSV:0.5h-1~6h-1、例えば0.7h-1~3.0h-1、H2/オイルの体積比:300~2000、例えば800~1800。
【0067】
15.前記第2の水素化分解ユニットにおける350℃超の留分の転化率は、5%~80%の範囲に制御されることを特徴とする、先の技術的解決手段のいずれか1つに記載の方法:
ここで、前記第2の水素化分解ユニットにおける350℃超の留分の転化率=100%×(重質留分Iの350℃超の留分の質量分率-重質留分IIの350℃超の留分の質量分率)/重質留分Iの350℃超の留分の質量分率。
【0068】
16.前記水素化分解触媒IIは、担体および活性金属成分を含み、当該担体は、耐熱性無機酸化物およびY型モレキュラーシーブを含み、当該耐熱性無機酸化物は、シリカ、アルミナ、およびチタニアのうちの1種以上であり、前記活性金属成分は、第VIB族金属及び第VIII族金属のうちの少なくとも2種の金属成分であり;水素化分解触媒IIの全体を基準として、酸化物として、第VIB族金属を10重量%~35重量%含有し、第VIII族金属を2重量%~8重量%含有し;
前記担体を基準として、前記Y型モレキュラーシーブを5重量%~55重量%含有し、残部は前記耐熱性無機酸化物であり;
任意で、前記第2の水素化分解ユニットに前記水素化分解触媒が装填されている場合、第2の水素化分解ユニットの反応温度は、前記第1の水素化分解ユニットの前記温度よりも0~30℃高いことを特徴とする、先の技術的解決手段のいずれか1つに記載の方法。
【0069】
17.前記水素化処理触媒は担持触媒であり、前記担体はアルミナまたはシリカ-アルミナであり、前記活性金属成分は第VIB族金属から選択される少なくとも1種および/または第VIII族金属から選択される少なくとも1種であり、前記第VIII族金属はNiおよび/またはCoであり、前記第VIB族金属はMoおよび/またはWであり、前記水素化処理触媒の総重量を基準として、酸化物として、第VIII族金属の含有率は1~15重量%であり、第VIB族金属の含有率は5~40重量%であり;
任意で、前記第2の水素化分解ユニットに前記水素化処理触媒が装填されている場合、第2の水素化分解ユニットの反応温度は、前記第1の水素化分解ユニットの前記温度よりも0~35℃低いことを特徴とする、先の技術的解決手段のいずれか1つに記載の方法。
【0070】
18.得られた前記第1の水素化分解ユニットの反応流出液を分離して軽質留分Iおよび重質留分Iを生成し、軽質留分Iは20℃~30℃の初期沸点を有し、軽質留分Iと重質留分Iとのカットポイントは、65℃~120℃、好ましくは65~105℃であり;前記軽質留分I中のパラフィンの質量分率は、少なくとも85%であることを特徴とする、先の技術的解決手段のいずれか1つに記載の方法。
【0071】
19.得られた前記第1の水素化分解ユニットの反応流出液を分離して軽質留分Iおよび重質留分Iを生成し、軽質留分Iは20℃~30℃の初期沸点を有し、軽質留分Iと中間留分Iとのカットポイントは65℃~120℃、好ましくは65~105℃であり、中間留分Iと重質留分Iとのカットポイントは160~180℃であり、前記軽質留分Iはパラフィンに富み、好ましくは前記軽質留分I中のパラフィンの質量分率は、少なくとも85%であることを特徴とする、先の技術的解決手段のいずれか1つに記載の方法。
【0072】
20.軽質留分IIは、65℃~100℃の初期沸点を有し、軽質留分IIと重質留分IIとのカットポイントは、155℃~180℃であり;前記軽質留分IIは、ナフテンおよび芳香族の総質量分率が少なくとも58%であり、重質留分IIの350℃超の留分中のナフテンの質量分率が少なくとも50%であることを特徴とする、先の技術的解決手段のいずれか1つに記載の方法。
【0073】
21.前記ガス油原料の炭化水素中の芳香族+ナフテンの質量含有率は、70%超、例えば70%~90%、75%~90%、80%~90%、85%~90%、75%~85%、80%~85%であることを特徴とする、先の技術的解決手段のいずれか1つに記載の方法。
【0074】
22.前記第1の水素化分解ユニットの反応温度、LHSV、H2/オイル比および反応圧力の処理条件パラメータは、前記原料中のパラフィンの転化率が56%~95%であり、ナフテンおよび芳香族の総転化率が10%~65%であるように調整および制御されることを特徴とする、先の技術的解決手段のいずれか1つに記載の方法。
【0075】
23.前記第1の水素化分解ユニットに送られ処理されるストリームは、10重量%~40重量%の芳香族質量含有率を有し、芳香族の含有率が100重量%であることを基準として、単環芳香族の含有率は、60重量%~85重量%であることを特徴とする、先の技術的解決手段のいずれか1つに記載の方法。
【0076】
24.前記第2の水素化分解ユニットに送られ処理されるストリームは、75重量%~90重量%のナフテンおよび芳香族の総質量含有率を有していることを特徴とする、先の技術的解決手段のいずれか1つに記載の方法。
【0077】
25.前記第1の水素化分解ユニットにおいて、前記水素化分解触媒Iは、担体および活性金属成分を含み、当該担体は、耐熱性無機酸化物およびモレキュラーシーブを含み、前記担体を基準として、前記モレキュラーシーブを10重量%~75重量%、好ましくは20重量%~60重量%、例えば35重量%~45重量%含有し、残部は耐熱性無機酸化物であり;前記モレキュラーシーブは、シリカ/アルミナのモル比が20~50、細孔径が0.4nm~0.58nm、好ましくは比表面積が200m2/g~400m2/gであることを特徴とする、先の技術的解決手段のいずれか1つに記載の方法。
【0078】
26.前記第1の水素化分解ユニットにおいて、留分のカットは、65℃~120℃、好ましくは65℃~105℃で行われ、任意に、留分のカットは、160℃~180℃で行われることを特徴とする、先の技術的解決手段のいずれか1つに記載の方法。
【0079】
27.前記ガス油原料は、300~350℃の初期沸点、520~650℃の最終沸点、および0.890g/cm3~0.940g/cm3の20℃での密度を有し;前記ガス油原料の炭化水素中の芳香族+ナフテンの質量含有率は、70%超、例えば70%~90%、75%~90%、80%~90%、85%~90%、75%~85%、80%~85%であり;及び前記ガス油原料は、常圧ガス油、減圧ガス油、水素化ガス油、コーカーガス油、接触分解重質サイクル油、及び脱れき油のうちの1種以上であることを特徴とする、先の技術的解決手段のいずれか1つに記載の方法。
【0080】
28.前記第1の水素化分解ユニットにおいて、前記第1の水素化分解ユニットの反応温度、LHSV、H2/オイル比および反応圧力のうちの1つ以上の処理条件パラメータ、好ましくは反応温度およびLHSVは、前記原料中のパラフィンの転化率が56%~95%であり、ナフテンおよび芳香族の総転化率が10%~65%であるように、調整および制御され、
ここで、パラフィンの転化率=(前記原料中のパラフィンの含有率-前記第1の水素化分解ユニットの生成物の350℃超の留分中のパラフィンの含有率×前記第1の水素化分解ユニットの生成物中の350℃超の留分の質量分率)/前記原料中のパラフィンの含有率;
ナフテンおよび芳香族の総転化率=(前記原料中のナフテンおよび芳香族の総含有率-前記第1の水素化分解ユニットの生成物の350℃超の留分中のナフテンおよび芳香族の総含有率×前記第1の水素化分解ユニットの生成物中の350℃超の留分の質量分率)/前記原料中のナフテンおよび芳香族の総含有率
であることを特徴とする、先の技術的解決手段のいずれか1つに記載の方法。
【0081】
29.原料の芳香族飽和率、ならびに第1の水素化分解ユニットにおける350℃超の留分の転化率、パラフィンの転化率、およびナフテン+芳香族の転化率について、飽和率/転化率を制御するために、運転パラメータが以下のように決定されることを特徴とする、先行する技術的解決手段のいずれか1つに記載の方法:
(1)実際の飽和率/転化率と目標の飽和率/転化率との差の目標値、例えば20%を設定する、
(2)水素分圧または反応圧力、反応温度、LHSV、H2/オイルの体積比を含む運転パラメータ群を事前に決定し、事前に決定された運転パラメータの下で実際の飽和率/転化率を決定する、
(3)実際の飽和率/転化率と目標の飽和率/転化率との差の絶対値が目標差より大きい場合、あるステップサイズを初期ステップサイズとし、実際の飽和率/転化率と目標の飽和率/転化率との差の絶対値が目標差より小さくなるまで運転温度を増減させる;
このステップサイズで運転温度を上昇または下降させ、実際の飽和率/転化率と目標の飽和率/転化率との差の絶対値が目標差より小さくなることが運転温度範囲内で達成できない場合、ステップサイズを減少させ、所定温度から開始し、実際の飽和率/転化率と目標の飽和率/転化率との差の絶対値が目標差より小さくなるまで運転温度を上昇または下降させる;
(4)ステップ(3)で決定した温度をステップ(4)の所定温度とし、ステップ(3)の初期ステップサイズより小さいステップサイズをステップ(4)の初期ステップサイズとし、ステップ(3)の目標差より小さい目標差をステップ(4)の目標差とし、ステップ(3)を繰り返す;
(5)実際の飽和率/転化率と目標の飽和率/転化率との差の絶対値が所望の値に達するまで、ステップ(3)または(4)を実行するか、またはステップ(4)を繰り返すことにより、運転温度を決定し、飽和率/転化率の制御を実現する;
実際の飽和率/転化率と目標の飽和率/転化率との差の絶対値が目標差より小さいことが達成できない場合、または、実際の飽和率/転化率と目標の飽和率/転化率との差の所望の絶対値が達成できない場合、ステップ(2)の運転パラメータを再決定し、
例えば、水素分圧または反応圧力、LHSV、およびH2/オイルの体積比の1つ以上を、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、またはそれより高い値または低い値だけ増減させ、ステップ(2)を繰り返す。
【0082】
30.第1の水素化分解ユニットにおいて、350℃超の留分の転化、パラフィンの転化、およびナフテン+芳香族の転化のために、転化率を制御するための操作パラメータが以下のように決定されることを特徴とする、先行する技術的解決手段のいずれか1つに記載の方法:
第1の水素化分解ユニットの反応温度と、第1の水素化分解ユニットにおける350℃超の留分の転化率、パラフィンの転化率、およびナフテン+芳香族の転化率との間に、以下の関係を満たす線形関係が決定される:
y転化率=a×反応温度値-B、
ここで、aの範囲は0.10~4.0であり、Bの範囲は30~300であり;
第1の水素化分解ユニットにおける350℃超の留分の転化率について、線形関係式におけるパラメータaの範囲は0.3~3.0であり、パラメータBの範囲は100~300であり;
パラフィンの転化率について、線形関係式におけるパラメータaの範囲は0.2~2.0であり、パラメータBの範囲は40~150であり;
ナフテン+芳香族の転化率について、線形関係式におけるパラメータaの範囲は0.25~2.5であり、パラメータBの範囲は60~250であり;
運転温度は、上記の転化率の線形関係式で決定される。
【0083】
31.先行する技術的解決手段のいずれか1つに記載の方法を実行するためのシステムであって、水素化処理ユニット、第1の水素化分解ユニット、および第2の水素化分解ユニットを備え;
前記水素化処理ユニットには、ガス油原料の入口、水素ガスの入口、および反応流出液の出口が設けられており、前記水素化処理ユニットには、水素化保護剤、任意で水素化脱金属触媒、および水素化精製触媒が順次装填され;
前記第1の水素化分解ユニットには、第1の水素化分解システムおよび第1の分離システムが設けられており、前記第1の水素化分解システムには、水素化分解触媒Iが装填され、前記第1の水素化分解システムには、前記水素化処理ユニットの前記反応流出液の出口と連通する、前記水素化処理ユニットの前記反応流出液のための入口が設けられており、前記第1の水素化分解システムの反応流出液の出口は、前記第1の分離システムの入口と連通し、前記第1の分離システムには、少なくとも、第1の水素に富むガスの出口、軽質留分Iの出口および重質留分Iの出口が設けられており;
前記第2の水素化分解ユニットには、第2の水素化分解システムおよび第2の分離システムが設けられており、前記第2の水素化分解システムには、水素化分解触媒IIおよび/または水素化処理触媒が装填され、前記第2の水素化分解システムには、前記第1の分離システムの前記重質留分Iの出口と連通する、重質留分Iのための入口が設けられており、前記第2の水素化分解システムの反応流出液の出口は、前記第2の分離システムのための入口と連通し、前記第2の分離システムには、少なくとも、第2の水素に富むガスの出口、軽質留分IIの出口、および重質留分IIの出口が設けられている、システム。
【0084】
32.先行する技術的解決手段のいずれか1つに記載の装置であって、
前記第1の水素化分解ユニットにおいて、前記水素化分解触媒Iは、担体および活性金属成分を含み、当該担体は、耐熱性無機酸化物およびモレキュラーシーブを含み、前記担体を基準として、前記モレキュラーシーブを、10重量%~75重量%、好ましくは20重量%~60重量%、例えば35重量%~45重量%含有し、残部は耐熱性無機酸化物であり;前記モレキュラーシーブは、シリカ/アルミナのモル比が20~50であり、細孔径が0.4nm~0.58nmであり;
前記第1の水素化分解ユニットにおいて、65℃~120℃、好ましくは65~105℃で行われる留分のカットを制御する制御装置が設けられ、任意に、160~180℃で行われる留分のカットを制御する制御装置が設けられている、装置。
【0085】
以下、実施例を参照して本発明をさらに説明する。しかしながら、これは本発明を何ら限定するものではない。
【0086】
実施例および比較例において、ガス油原料の炭化水素組成データは、SH/T 0659「高電離電圧質量分析法によるガス油飽和留分の炭化水素タイプ分析のための標準試験方法」によって得られた。
【0087】
軽質留分Iおよび軽質留分IIの炭化水素組成データは、SH/T 0714「キャピラリーガスクロマトグラフィーによるn-ノナンを通じた石油ナフサの詳細な分析のための標準試験方法」によって得られた。
【0088】
重質留分Iの350℃超の留分および重質留分IIの350℃超の留分の炭化水素組成データは、SH/T 0659「高電離電圧質量分析法によるガス油飽和留分の炭化水素タイプ分析のための標準試験方法」によって得られた。
【0089】
表1に、本発明で使用するガス油原料の特性を示す。
【0090】
表2および表3に、本発明の実施例および比較例で使用した各触媒の物理的特性および化学的特性を示す。なお、商品名のある触媒は、いずれもシノペック社の触媒部門で製造されたものであり、商品名のない触媒は、いずれも固定床で使用される通常の担持された水素化触媒の調製方法で得られたものである。
【0091】
表1からわかるように、本発明で使用するガス油原料中のパラフィンの質量分率(A)は20.4であり、
ガス油原料中のパラフィン、モノシクロパラフィンおよび単環芳香族の質量分率の合計(B)は49.3である。
【0092】
本発明によれば、第1の水素化分解ユニットにおける350℃超の留分の転化率は、以下の範囲に制御される:
100×(A重量%/ガス油原料中の350℃超の留分の質量分率)から100×(B重量%/ガス油原料中の350℃超の留分の質量分率)まで、
ここで、Aはガス油原料中のパラフィンの質量分率、Bはガス油原料中のパラフィン、モノシクロパラフィンおよび単環芳香族の質量分率の合計である。
【0093】
そして、第1の水素化分解ユニットにおける350℃超の留分の転化率は、22.7%~54.7%の範囲に制御されるべきである。
【0094】
本発明の実施例および比較例において、低炭素軽質炭化水素の収率、軽質留分Iの収率、軽質留分IIの収率、および重質留分IIの収率は、すべてガス油原料を基準として計算される。
【0095】
本発明の実施例および比較例において、重質留分Iの350℃超の留分の質量分率は重質留分Iの質量を基準とし、重質留分IIの(280℃~370℃)の留分の質量分率は重質留分IIの質量を基準とし、重質留分IIの350℃超の留分の質量分率は重質留分IIの質量を基準とした。
【0096】
〔実施例1〕
ガス油原料を、水素化処理ユニットにおいて、水素化保護剤(保護剤)、水素化脱金属触媒(脱金属剤)、および水素化精製触媒(精製触媒)と順次接触させて反応させた。得られた反応流出物を第1の水素化分解ユニットに送り、ZSM-5モレキュラーシーブを含む水素化分解触媒I(分解剤1)と接触させて反応させた。得られた反応流出物を分離して、軽質留分Iおよび重質留分Iを生成し、得られた重質留分Iを第2の水素化分解ユニットに送り、水素化処理触媒(処理剤)と接触させて反応させた。得られた反応流出物を分離し、軽質留分IIおよび重質留分IIを生成した。具体的な反応条件および生成物の特性を表4に示す。
【0097】
本実施例の反応方法において、水素化処理ユニットの芳香族飽和率を50%に制御し、第1の水素化分解ユニットの350℃超の留分の転化率を49.4%に制御し、第2の水素化分解ユニットの350℃超の留分の転化率を20%に制御した。
【0098】
表4からわかるように、得られた軽質留分Iは、パラフィンの含有率が92.7重量%であり、水蒸気分解によりエチレンを製造するための高品質の原料として使用でき;得られた軽質留分IIは、ナフテン+芳香族の含有率が62.0重量%であり、高品質の改質原料として使用でき;得られた重質留分Iの350℃超の留分は、ナフテン+芳香族の含有率が82.8重量%であり;得られた重質留分IIの(280℃~370℃)の留分は、凝集点が-50℃未満であり、40℃における動粘度が6.944mm2/sであり、多環芳香族(PCA)含有率が3.0%未満であり、変圧器油として使用でき;得られた重質留分IIの350℃超の留分は、ナフテン+芳香族の含有率が77.8重量%であり、凝集点が-38℃であり、冷凍機油などの高品質のナフテン系特殊油として使用できる。
【0099】
〔比較例1および比較例2〕
比較例1および比較例2は、比較例1において、第1の水素化分解ユニットにY型モレキュラーシーブを含む水素化分解触媒(分解剤2)を担持させ、比較例2において、第1の水素化分解ユニットにβ型モレキュラーシーブを含む水素化分解触媒(分解剤3)を担持させたこと以外は、実施例1と同様の工程を用いた。反応は、水素化処理ユニットの芳香族飽和率、第1の水素化分解ユニットの350℃超の留分の転化率、および第2の水素化分解ユニットの350℃超の留分の転化率を、実施例1と同様の条件に制御しながら行った。具体的な反応条件および生成物の特性を表4に示す。
【0100】
表4からわかるように、比較例1および比較例2の軽質留分I生成物は、パラフィンの含有率がそれぞれ54.9重量%および47.9重量%であり、軽質留分II生成物は、ナフテン+芳香族の含有率がそれぞれ60.1重量%および58.6重量%であり、重質留分I生成物の350℃超の留分は、ナフテン+芳香族の含有率がそれぞれ59.0重量%および72.4重量%であり、重質留分II生成物の350℃超の留分は、ナフテン+芳香族の含有率がそれぞれ54.0重量%および68.2重量%であり、凝集点がそれぞれ+28℃および+8℃であった。
【0101】
以上の結果から、Y型またはβ型のモレキュラーシーブ触媒を用いた従来の水素化分解の実施では、原料のパラフィンおよびナフテンへの効率的かつ選択的な転化を達成することが困難であることが示された。しかしながら、本発明の方法を使用することにより、ガス油原料の鎖構造および環構造に応じた方向性のある転化を実現することができ、それにより、高品質の化学原料および高付加価値のナフテン系特殊油の製造を達成することができる。
【0102】
〔実施例2〕
ガス油原料を、水素化処理ユニットにおいて、水素化保護剤(保護剤)、水素化脱金属触媒(脱金属剤)、および水素化精製触媒(精製触媒)と順次接触させて反応させた。得られた反応流出物を第1の水素化分解ユニットに送り、ZSM-5モレキュラーシーブを含む水素化分解触媒I(分解剤1)と接触させて反応させた。得られた反応流出物を分離して、軽質留分I、中間留分Iおよび重質留分Iを生成し、得られた中間留分Iを第2の水素化分解ユニットの分留塔に送り、分留した。得られた重質留分Iを第2の水素化分解ユニットに送り、水素化処理触媒(処理剤)と接触させて反応させた。得られた反応流出物を分離し、軽質留分IIおよび重質留分IIを生成した。具体的な反応条件および生成物の特性を表5に示す。
【0103】
本実施例の反応方法において、水素化処理ユニットの芳香族飽和率を38.6%に制御し、第1の水素化分解ユニットの350℃超の留分の転化率を47.1%に制御し、第2の水素化分解ユニットの350℃超の留分の転化率を5%に制御した。
【0104】
表5からわかるように、得られた軽質留分Iのパラフィンの含有率は91.74重量%であり、水蒸気分解によりエチレンを製造するための高品質原料として使用でき;得られた軽質留分IIのナフテン+芳香族の含有率は61.55重量%であり、高品質の改質原料として使用でき;得られた重質留分Iの350℃超の留分は、ナフテン+芳香族の含有率が84.7重量%であり;得られた重質留分IIの(280℃~370℃)の留分は、凝集点が-50℃未満であり、40℃における動粘度が7.790mm2/sであり、多環芳香族(PCA)含有率が3.0%未満であり、変圧器油として使用でき;得られた重質留分IIの350℃超の留分は、ナフテン+芳香族の含有率が81.7重量%であり、凝集点が-38℃であり、冷凍機油などの高品質のナフテン系特殊油として使用できる。
【0105】
〔実施例3〕
実施例2と同じ方法を用いた。具体的な反応条件および生成物の特性を表5に示す。
【0106】
本実施例の反応方法において、水素化処理ユニットの芳香族飽和率を56.4%に制御し、第1の水素化分解ユニットの350℃超の留分の転化率を44.4%に制御し、第2の水素化分解ユニットの350℃超の留分の転化率を5%に制御した。
【0107】
表5からわかるように、得られた軽質留分Iは、パラフィンの含有率が90.18重量%であり、水蒸気分解によりエチレンを製造するための高品質の原料として使用でき;得られた軽質留分IIは、ナフテン+芳香族の含有率が60.82重量%であり、高品質の改質原料として使用でき;得られた重質留分Iの350℃超の留分は、ナフテン+芳香族の含有率が83.5重量%であり;得られた重質留分IIの(280℃~370℃)の留分は、凝集点が-50℃未満であり、40℃における動粘度が7.065mm2/sであり、多環芳香族(PCA)の含有率が3.0%未満であり、変圧器油として使用でき;得られた重質留分IIの350℃超の留分は、ナフテン+芳香族の含有率が80.5重量%であり、凝集点が-38℃であり、冷凍機油などの高品質のナフテン系特殊油として使用できる。
【0108】
〔比較例3〕
水素化処理ユニットの芳香族飽和率を59.2%に制御したこと以外は、実施例2と同じ方法を使用した。具体的な反応条件および生成物の特性を表5に示す。
【0109】
表5からわかるように、得られた軽質留分Iは、パラフィンの含有率が86.08重量%であり、得られた軽質留分IIは、ナフテン+芳香族の含有率が56.42重量%であり;得られた重質留分Iの350℃超の留分は、ナフテン+芳香族の含有率が81.3重量%であり、得られた重質留分IIの350℃超の留分は、ナフテン+芳香族の含有率が79.8重量%であり、凝集点は-38℃であった。
【0110】
以上の結果から、本比較例は、本発明の好ましい範囲を採用していないことがわかった。また、水素化処理ユニットにおける芳香族飽和率を高めると、第1の水素化分解ユニットにおけるナフテンの開環分解反応の増大につながり、ガス油原料の鎖構造および環構造に応じた方向転化の反応効果に悪影響を及ぼすであろう。
【0111】
〔実施例4〕
ガス油原料を、水素化処理ユニットにおいて、水素化保護剤(保護剤)、水素化脱金属触媒(脱金属剤)、および水素化精製触媒(精製触媒)と順次接触させて反応させた。得られた反応流出物を第1の水素化分解ユニットに送り、ZSM-5モレキュラーシーブを含む水素化分解触媒I(分解剤1)と接触させて反応させた。得られた反応流出物を分離して、軽質留分Iおよび重質留分Iを生成した。得られた重質留分Iを第2の水素化分解ユニットに送り、水素化分解触媒II(分解剤4)と接触させて反応させた。得られた反応流出物を分離し、軽質留分IIおよび重質留分IIを生成した。具体的な反応条件および生成物の特性を表6に示す。
【0112】
本実施例の反応方法において、水素化処理ユニットの芳香族飽和率を38.6%に制御し、第1の水素化分解ユニットの350℃超の留分の転化率を47.1%に制御し、第2の水素化分解ユニットの350℃超の留分の転化率を56.25%に制御した。
【0113】
表6からわかるように、得られた軽質留分Iは、パラフィンの含有率が91.74重量%であり、水蒸気分解によりエチレンを製造するための高品質原料として使用でき;得られた軽質留分IIは、ナフテン+芳香族の含有率が64.37重量%であり、高品質の改質原料として使用でき;得られた重質留分Iの350℃超の留分は、ナフテン+芳香族の含有率が84.7重量%であり;得られた重質留分IIの(280℃~370℃)の留分は、凝集点が-50℃未満であり、40℃における動粘度が7.801mm2/sであり、多環芳香族(PCA)含有率が3.0%未満であり、変圧器油として使用でき;得られた重質留分IIの350℃超の留分は、ナフテン+芳香族の含有率が65.1重量%であり、凝集点が-38℃であり、冷凍機油などの高品質のナフテン系特殊油として使用できる。
【0114】
〔実施例5〕
実施例4と同じ方法を用いた。具体的な反応条件および生成物の特性を表6に示す。
【0115】
本実施例の反応方法において、水素化処理ユニットの芳香族飽和率を38.6%に制御し、第1の水素化分解ユニットの350℃超の留分の転化率を47.1%に制御し、第2の水素化分解ユニットの350℃超の留分の転化率を72.4%に制御した。
【0116】
表6からわかるように、得られた軽質留分Iは、パラフィンの含有率が91.74重量%であり、水蒸気分解によりエチレンを製造するための高品質原料として使用でき;得られた軽質留分IIは、ナフテン+芳香族の含有率が59.64重量%であり、高品質の改質原料として使用でき;得られた重質留分Iの350℃超の留分は、ナフテン+芳香族の含有率が84.7重量%であり;得られた重質留分IIの(280℃~370℃)の留分は、凝集点が-50℃未満であり、40℃における動粘度が6.725mm2/sであり、多環芳香族(PCA)含有率が3.0%未満であり、変圧器油として使用でき;得られた重質留分IIの350℃超の留分は、ナフテン+芳香族の含有率が63.0重量%であり、凝集点が-35℃であり、冷凍機油などの高品質のナフテン系特殊油として使用できる。
【0117】
〔比較例4〕
第2の水素化分解ユニットにおいて、350℃超の留分を高い転化率(88.5%)で使用したこと以外は、実施例4と同じ方法を使用した。具体的な反応条件および生成物の特性を表6に示す。
【0118】
表6からわかるように、本比較例の製法における、軽質留分I生成物のパラフィンの含有率は91.74重量%であったが;軽質留分II生成物のナフテン+芳香族の含有率は55.9重量%に過ぎず、重質留分II生成物の350℃超の留分のナフテン+芳香族の含有率は43.9重量%であり、凝集点は-30.0℃であった。この生成物の特性は、高品質のナフテン系特殊油の品質要件を満たすものではなかった。
【0119】
以上の結果から、第2の水素化分解ユニットを制御して、350℃超の留分の転化率を過度に高くすると、軽質留分II中のナフテンおよび芳香族の含有率が低下するだけでなく、重質留分II生成物の品質指標が、ナフテン系特殊油の品質要件を満たさなくなることがわかった。
【0120】
〔比較例5〕
第1の水素化分解ユニットにおいて、350℃超の留分を高い転化率(65%)で使用したこと以外は、実施例4と同じ方法を使用した。具体的な反応条件および生成物の特性を表6に示す。
【0121】
表6からわかるように、本比較例の製法における、軽質留分I生成物におけるパラフィンの含有率は88.25重量%であり;軽質留分II生成物におけるナフテン+芳香族の含有率は61.36重量%であり、得られた重質留分Iの350℃超の留分は、ナフテン+芳香族の含有率が80.4重量%であり、得られた重質留分IIの350℃超の留分は、ナフテン+芳香族の含有率が59.9重量%であり、凝集点は-45℃であった。第1の水素化分解ユニットにおける転化率を高く制御することにより、適格な特性を有する生成物を得ることもできるが、第1の水素化分解ユニットにおける転化率が高すぎると、低炭素軽質炭化水素(C3+C4)生成物の質量分率が18.5重量%と高くなり、反応の化学水素消費量が高くなりすぎ、目標生成物分布が不合理になることに注意すべきである。
【0122】
以上の結果から、第1の水素化分解ユニットにおいて、350℃超の留分の転化率を過度に高く制御すると、反応方法が不経済になることがわかった。
【0123】
〔実施例6、比較例6~7〕
ガス油原料を、水素化処理ユニットにおいて、水素化保護剤(保護剤)、水素化脱金属触媒(脱金属剤)、および水素化精製触媒(精製触媒)と順次接触させて反応させ、得られた反応流出物を第1の水素化分解ユニットに送り、ZSM-5モレキュラーシーブを含む水素化分解触媒I(分解剤5~7)と接触させて反応させた。得られた反応流出物を分離して軽質留分Iおよび重質留分Iを生成し、得られた重質留分Iを第2の水素化分解ユニットに送り、水素化処理触媒(処理剤)と接触させて反応させた。得られた反応流出物を分離し、軽質留分IIおよび重質留分IIを製造した。具体的な反応条件および生成物の特性を表7に示す。
【0124】
モレキュラーシーブの含有率が低すぎると、パラフィンの転化が不十分となる。一方、モレキュラーシーブの含有率が低すぎても高すぎても、ナフテンおよび芳香族の開環率が高くなるという問題がある。また、モレキュラーシーブの含有率が高すぎると、副生成物における軽質炭化水素の含有率が高くなるという問題がある。
【0125】
〔実施例7〕
ZSM-5の代わりにIM-5およびZSM-48などの他のモレキュラーシーブを使用したこと以外は、実施例6と同じ工程を使用し、適格な特性を有する生成物を得た。
【0126】
表8は、変圧器油および冷凍機油の生成物の品質指標である。
【0127】
【0128】
【0129】
【0130】
【0131】
【0132】
【0133】
【0134】
【図面の簡単な説明】
【0135】
【
図1】
図1は、本発明により提供される水素化分解方法の一実施形態の概略図である。
【国際調査報告】