(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】電解二酸化マンガンの調製方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/505 20100101AFI20240822BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20240822BHJP
【FI】
H01M4/505
H01M4/525
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024516760
(86)(22)【出願日】2022-09-09
(85)【翻訳文提出日】2024-04-10
(86)【国際出願番号】 US2022043048
(87)【国際公開番号】W WO2023043668
(87)【国際公開日】2023-03-23
(32)【優先日】2021-09-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524097610
【氏名又は名称】イーエムディー アクイジション エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】ジェガデン、 ローリー、 アイ.
(72)【発明者】
【氏名】ストーリー、 フィリップ、 エム.
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA08
5H050BA17
5H050CA09
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA07
5H050HA19
(57)【要約】
一般式Li1+xMn2-x-y-zMyM’zO4(式中、xは一般に0.25未満であり、yは約0.5未満であり、zは約0.1~約0.7であり、Mは三価の遷移金属であり、M’は二価の遷移金属である)を有する改良されたカソード材料が開示される。一般式Li1+xMn2-x-y-zMyM’zO4のカソード材料を有する改良された二次電池も開示される。一実施形態では、方法は、典型的には粉末又はチップの形態のマンガン金属を鉱酸に溶解することによってMn++イオンの溶液を調製することを備える。溶液中のMn++の最終濃度は、約20g/L~約254g/Lである。典型的には、溶液は、約47g/LのMn++を含む。Mn++を含む溶液の最終pHは、約2~約8の範囲であり得る。しかしながら、典型的な操作pHは、約5.5~約7.0である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムマンガン酸化物を含むカソード材料を含む二次電池であって、
前記リチウムマグネシウム酸化物は、Li
1+xMn
2-x-y-zM
yM’
zO
4(式中、xは一般に0.25未満であり、yは約0.5未満であり、zは約0.1~約0.7であり、Mは三価の遷移金属であり、M’は二価の遷移金属である)で表される、
二次電池。
【請求項2】
前記二次電池は、少なくとも115mAhr/gのLi
1+xMn
2-x-y-zM
yM’
zO
4の最大容量を有する、請求項1に記載の二次電池。
【請求項3】
前記二次電池は、前記電池の容量が最大容量の80%未満に低下する前に、少なくとも370回の充放電サイクルを行うことができる、請求項1に記載の二次電池。
【請求項4】
M’がニッケルである、請求項1に記載の二次電池。
【請求項5】
Mが、前記カソード材料の15重量%までである、請求項1に記載の二次電池。
【請求項6】
M’が、前記カソード材料の約3重量%~約24重量%である、請求項1に記載の二次電池。
【請求項7】
前記カソード材料が、30ppm未満のAl、130ppm未満のCa、90ppm未満のK、75ppm未満のMg、及び35ppm未満のFeを含む、請求項1に記載の二次電池。
【請求項8】
前記リチウムマンガン酸化物中の前記Mn
2O
3粒子が、約0.5m
2/g~約5m
2/gの表面積を有する、請求項1に記載の二次電池。
【請求項9】
前記カソード材料が、三価の金属を含まない、請求項1に記載の二次電池。
【請求項10】
前記カソード材料が、三価の金属を含まず、前記カソード材料が、Li
1+xMn
2-x-zM’
zO
4で表され、xは0.25以下であり、zは約0.1~約0.7である、請求項1に記載の二次電池。
【請求項11】
zが約0.2~約0.7である、請求項1に記載の二次電池。
【請求項12】
リチウムマンガン酸化物を含むカソード材料であって、
前記リチウムマグネシウム酸化物は、Li
1+xMn
2-x-y-zM
yM’
zO
4(式中、xは一般に0.25未満であり、yは約0.5未満であり、zは約0.1~約0.7であり、Mは三価の遷移金属であり、M’は二価の遷移金属である)で表される、カソード材料。
【請求項13】
M’がニッケルである、請求項12に記載のカソード材料。
【請求項14】
Mが、前記カソード材料の15重量%までである、請求項12に記載のカソード材料。
【請求項15】
M’が、前記カソード材料の約3重量%~約24重量%である、請求項12に記載のカソード材料。
【請求項16】
前記カソード材料が、30ppm未満のAl、130ppm未満のCa、90ppm未満のK、75ppm未満のMg、及び35ppm未満のFeを含む、請求項12に記載のカソード材料。
【請求項17】
前記リチウムマンガン酸化物中の前記Mn
2O
3粒子が、約0.5m
2/g~約5m
2/gの表面積を有する、請求項12に記載のカソード材料。
【請求項18】
前記カソード材料が、三価の金属を含まない、請求項12に記載のカソード材料。
【請求項19】
前記カソード材料が、三価の金属を含まず、前記カソード材料が、Li
1+xMn
2-x-zM’
zO
4で表され、xが0.25以下であり、zが約0.1~約0.7である、請求項12に記載の二次電池。
【請求項20】
zが約0.2~約0.7である、請求項19に記載の二次電池。
【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
一般式Li1+xMn2-x-y-zMyM’zO4(式中、xは0.25以下であり、yの値は0.5以下であり、zは約0.1~約0.7であり、Mは一以上の三価の遷移金属であり、M’は二価の遷移金属、例えば、Niであるがこれに限定されない)を有する改良されたリチウムマンガン酸化物(LMO)が本明細書に開示される。リチウムマンガン酸化物は、175ppm未満の微量金属(trace metals)を有する。具体的には、LMOは、30ppm未満のAl、130ppm未満のCa、90ppm未満のK、75ppm未満のMg、35ppm未満のFe及び50ppm未満のNaを有する。本明細書で使用されるLMOという用語は、二次電池での使用に適したカソード(cathode)材料を指す。
【0002】
別の実施形態では、本開示は二次電池に関する。二次電池は、Li1+xMn2-x-y-zMyM’zO4を使用するカソード材料を含む。二次電池は、少なくとも115mAhr/gのカソード活物質の最大容量を有し、二次電池は、二次電池が最大容量に達した後、当該電池の再充電可能容量が最大容量の80%未満に低下する前に、少なくとも370回の充放電サイクルを行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0003】
本開示は、以下の説明を参照することにより、より容易に理解することができる。以下の説明は、本明細書に記載される実施形態の範囲を限定するものとはみなされない。また、本明細書で使用される表現(phraseology)及び用語(terminology)は、説明のためのものであり、そのように示されている場合を除き、限定するものとみなされるべきではない。さらに、本開示全体を通じて、用語(term)「約(about)」、「近似(approximate)」、及びその変形は、当業者に認識されるように、その値が、使用される装置、システム、又は測定方法に固有の変動又は誤差を含む値を示すために使用される。
【0004】
開示されたカソード材料は、金属マンガンのMnO2への変換を提供する以下の方法に従って調製することができる。その後、その方法は、MnO2(EMD)のMn2O3への変換を提供する。
【0005】
一実施形態では、方法は、典型的には粉末又はチップの形態のマンガン金属を鉱酸に溶解することによってMn++イオンの溶液を調製することを備える。典型的には、その方法は硫酸を利用する。しかしながら、少なくとも47g/lのMn++を溶解することができる硝酸及び他の鉱酸は、十分に機能する。溶液中のMn++の最終濃度は、約20g/L~約254g/Lである。典型的には、溶液は、約47g/LのMn++を含む。Mn++を含む溶液の最終pHは、約2~約8の範囲であり得る。しかしながら、典型的な操作pHは、約5.5~約7.0である。
【0006】
Mn++を含む鉱酸溶液が一連の電解セルに流れる。電流は、約2.5Amp/ft2~6Amp/ft2の電流密度で電解セルを通過する。電流の印加中に、MnO2が電解セルのアノード上にメッキされる。メッキプロセスは、酸溶液がセルを流れるとき、一般に約93℃~約99℃の温度で行われる。セルを出る酸溶液は、実質的にMn++イオンが枯渇している。枯渇した酸は、追加のマンガン金属を溶解するために使用され、セルに戻される。典型的には、メッキプロセスは、示された電流密度で行われるとき、約3日~約40日間継続する。
【0007】
電解セルをオフラインにした後、すなわちメッキプロセスの完了時に、MnO2はアノードから収集され、中和に適したサイズに粉砕(ground)又は粉砕され(crushed)、塩基で処理して中和され、濾過され、乾燥され、さらなる粒子還元ステップを受ける。
【0008】
収集されたMnO2の粉砕(grinding)又は粉砕(crushing)は、限定されるものではないが、プレートクラッシャー又はプレートグラインダーを含む任意の従来の方法を使用して行うことができる。粉砕プロセスは、粒子の表面積を増加させ、それによって、その後の中和ステップを改善する。得られるMnO2は、一般に、2mm以下の粒子径を有する。
【0009】
中和工程に使用される塩基溶液は、約8~約12のpHを有し、固体MnO2に汚染物質を導入してはならない。典型的には、中和工程は、水酸化リチウム、炭酸リチウム、重炭酸リチウム、水酸化アンモニウム又はそれらの混合物を使用する。水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム及び水酸化カリウムなどの塩基は、得られるMnO2を望ましくないカルシウム、ナトリウム及びカリウムで汚染する可能性が高いため、好ましくない。水酸化アンモニウムは、得られるMnO2粒子の加熱中に除去される可能性があるため、中和工程中に特に有利である。中和工程は、非常に高純度のEMDを生成する。すなわち、Ca、Al、K、Mg及びNaなどの微量元素は、濃度が極めて低いか、得られるEMD中に見出されない。具体的には、カソード材料は、10ppm未満のAl、50ppm未満のCa、50ppm未満のK、15ppm未満のMg及び50ppm未満のNaを有する。
【0010】
中和工程は、室温からスラリー又は溶液の沸点付近までの範囲の温度で、約20分~約120分の期間にわたって行うことができる。一般に、中和工程は、粒子又は粒子のスラリーからの排出物のpHが5.5を超える場合に完了したと考えられる。この方法では、中和は拡散限定プロセスである。その結果、中和溶液は、拡散を促進するために過剰な塩基を含有しなければならない。塩基溶液の分布を促進し、生成物の表面からのアニオンの洗浄を促進するために、中和溶液の好ましいpHは約8~約10の範囲である。中和工程中に生成された過剰な液体は、生成した塩と共に廃棄される。
【0011】
中和、乾燥及び回収に続いて、生成したMnO2粒子は、サイズ縮小及び分級を受ける。典型的には、サイズ縮小工程はジェットミルを利用する。しかしながら、他の装置も満足な粒子を提供する。所望の生成粒子は、一般に、約100nm~約300マイクロメートルの範囲の粒子径を有する。MnO2粒子の典型的なバッチは、約10マイクロメートルのメジアン粒子径(median particle size)を有することができる。しかしながら、Mn2O3への変換に適したMnO2のバッチは、3マイクロメートルと低いメジアン粒子径を有することができ、他のバッチは、35マイクロメートルと大きいメジアン粒子径を有することができる。
【0012】
上記の方法によって生成された最終的なEMDは、非常に高純度である。例えば、リットル当たり47.3gのMn
++を含む硫酸溶液を用いて、温度96℃、電流密度5.6Amp/ft
2で生成されたEMDを、従来のEMDと比較した。高純度EMDと従来のEMDの不純物値を以下の表1に示す。注釈(note):リチウム成分の添加によってカソード材料中の最終的な不純物レベルが低下するため、後続のカソード材料中の不純物レベルはEMDの不純物レベルとは異なる。
【表1】
【0013】
所望のMnO2粒子の単離に続いて、その方法は、空気雰囲気下で約700℃~約850℃の温度で約1~約24時間加熱することにより、MnO2粒子、すなわち高純度EMDをMn2O3に変換する。一般に、加熱は、約725℃~約775℃の間で、約2時間~約12時間の時間行われる。好ましくは、加熱は、約700℃で約12時間行われる。得られるMn2O3粒子は、約0.5m2/g~約5m2/gの表面積を有する。
【0014】
以下の実施例によって示されるように、得られるMn2O3粒子は、リチウムマンガン酸化物(LiMn2O4)カソード材料の製造における使用に適している。Mn2O3粒子は、ドーピング材料として、Li2CO3、LiOH、Li2O、HLiCO3及び追加の金属酸化物と組み合わされる。好ましい金属酸化物は、限定されるものではないが、NiCO3、NiO、酢酸ニッケル、硝酸ニッケル、水酸化ニッケル及びカソード材料に含めるのに適した他の形態のニッケルを含む。
【0015】
カソード材料の最終組成(formulation)は、一般に、Li1+xMn2-x-y-zMyM’zO4であり、ここで、xは0.25以下であり、yは約0.5以下であり、zは約0.1~約0.7であり、Mは一以上の三価の遷移金属であり、M’は二価の遷移金属であり、例えば、Niであるがこれに限定されない。より典型的には、最終組成では、zは0.2~0.7である。したがって、最終組成は、約15重量%までの一以上の三価の遷移金属を含んでよく、約3~約24重量%の二価の遷移金属を含んでよい。好ましい二価の遷移金属は、現在、ニッケルである。典型的には、二価の遷移金属は、カソード材料の約6~約22.4重量%の範囲で存在する。
【0016】
さらに、使用されるカソード材料は、175ppm未満の微量金属を有する。具体的には、カソード材料は、30ppm未満のAl、130ppm未満のCa、90ppm未満のK、75ppm未満のMg、及び35ppm未満のFeを有する。より典型的には、カソード材料は、20ppm未満のAl、110ppm未満のCa、80ppm未満のK、65ppm未満のMg、及び25ppm未満のFeを有する。注釈(Note):別の実施形態では、改善されたカソード材料は、三価の金属を含まない。この実施形態では、改善されたカソード材料の一般式は、Li1+xMn2-x-zM’zO4であり、xは0.25以下であり、zは約0.1~約0.7である。より典型的には、最終組成では、zは0.2~0.7である。
【0017】
この実施例では、上記に概説した方法に従って調製された1648.6グラムのMn2O3粒子(10マイクロメートルのメジアン粒子径)を、826.4グラムのNiCO3と混合して、均一な混合物を得た。得られた混合物を空気中で925℃に24時間加熱し、次いで室温に冷却した。冷却後、生成物を分解し、514.5グラムのLi2CO3と混合して、均一な混合物を得た。得られた混合物を750℃に10時間加熱し、次いで1℃/分で室温まで冷却した。次いで、式LiMn1.5Ni0.5O4を有する最終生成物を粉砕し、スクリーニングして、45マイクロメートルより大きい粒子を除去した。Li1+xMn2-x-y-zMyM’zO4で表されるカソード材料の最終組成がx及びyに対して0の値を有する場合、1つの適切な組成は、LiMn1.5Ni0.5O4、x=0、y=0及びz=0.5であり得る。表2は、改良された二次電池で使用される、式LiMn1.5Ni0.5O4の処方を有するカソード材料中の微量金属濃度を示す。
【0018】
最終生成物から調製されたカソードは、炭素アノードを有する改良された二次電池の一部として試験された。すなわち、改良された二次電池は、ハーフセルではなくフルセルである。改良された二次電池は、室温、すなわち約25℃で、一回の完全放電を3時間で完了させ、その後、平均作動放電値4.7Vを得るために、3時間で4.9Vのレベルまで充電する速度で繰り返しサイクルされた。改良された二次電池は、0.054%/サイクルの平均フェード率(average fade rate)及び少なくとも115mAhr/gの最大容量を有した。式LiNi0.5Mn1.5O4のカソードを用いて製造された二次電池の理論的容量は、カソード材料中の利用可能なリチウムによって決定されるように、146.2mAhr/gである。したがって、二次電池の最終的な最大容量は、理論値の78.7%である。
【0019】
当業者に知られているように、二次電池は、必ずしも初期充電で全容量に達するとは限らない。したがって、再充電電池、すなわち二次電池の寿命及びフェード率(fade rate)は、電池の最大容量に基づいて決定される。典型的には、最大容量を達成した後、二次電池が再充電されるたびに、二次電池の最終充電容量は減少する。電池が最大容量の80%まで充電できなくなると、電池は「寿命の終わり」にあると考えられる。記載された改善された材料から調製された再充電可能な電池は、少なくとも370回の充放電サイクルを提供する。注釈(Note):Li1+xMn2-x-y-zMyM’zO4のカソード組成によって提供される改善を決定するために使用された二次電池は、アノードとしてグラファイトを使用したが、グラファイトの代わりに他のアノード材料を置換することができる。
【0020】
直接的な比較例を提供するために、従来のリチウム中和アルカリ電池グレードの電解(electrolytic)二酸化マンガン(EMD)をMn
2O
3に変換し、上記の実施例に記載されたステップに従って処理して、LiMn
1.5Ni
0.5O
4の組成を有するカソード材料を調製した。この従来のカソード材料はニッケルを含有するが、主要な不純物(Al、Ca、Fe、K、Mg)が、改善された二次電池のカソード材料に使用されるLiMn
5Ni
5O
4の改善された組成における不純物濃度よりも、現在得られるカソード材料(下記表2参照)に典型的に見られるよりもかなり高い濃度で存在するという点で、上記のニッケルを含有するカソード材料とは異なる。従来のアルカリ電池グレードのEMDは、硫酸マンガンから調製され、従来の方法に従って精製される。従来のリチウムマンガン酸化物材料から調製されたカソードを有する二次電池は、0.067%/サイクルのフェード率と110mAhr/gの最大放電容量を有した。この材料から調製された電池は、約300回の充放電サイクルを経験した後、80%の容量保持を下回ると予想される。さらに、電池は理論容量のわずか75%の最大放電容量を有する。
【表2】
【0021】
したがって、上記のニッケルを含有するリチウムマンガン酸化物カソードから調製されたカソードを使用する改良された二次電池は、従来のアルカリ電池グレードのEMDで合成されたリチウムマンガン酸化物から調製された電池と比較して、改善された平均フェード率を有する。本明細書に開示された改良されたカソード材料は、再充電サイクル当たりわずか0.054%の平均フェード速度を生じたが、従来のカソード材料は、再充電サイクル当たり0.067%の平均フェード速度を示した。改良されたカソード材料は、少なくとも370回の充放電サイクルの有用な寿命を有する。これに対して、従来のカソード材料は、わずか300回の充放電サイクルで最大容量の80%を下回った。したがって、Li1+xMn2-x-y-zMyM’zO4の組成を有するカソードを用いた二次電池は、ニッケルを含む従来のカソード材料と比較して、充放電サイクルを23%改善し、フェード率を23%改善した。
【0022】
さらに、二次電池に組み込まれた場合、一般式Li1+xMn2-x-y-zMyM’zO4を有するカソード材料は、ニッケルを含まない従来のカソード材料よりも高い電圧を提供する。Li1+xMn2-x-y-zMyM’zO4の組成を用いて調製されたカソードを含む二次電池は、4.0を超える作動電圧を有する。例えば、LiNi0.5Mn1.5O4を含む電池は、4.7ボルトの作動電圧を提供する。対照的に、LiMnO4の組成を用いたカソードを含む電池は、4ボルトの作動電圧を有する。
【0023】
改善されたニッケル含有カソード材料のさらなる予想外の特性は、カソードの安定性である。具体的には、改善されたカソード材料中のニッケルの存在による劣化の程度は予想よりも小さく、それによって、作動電圧、フェード率及び充電/再充電サイクルの改善を提供するカソード材料中のニッケルの使用を可能にする。当業者に知られているように、カソード材料中のニッケルの存在は、再充電サイクル中にカソード材料の構造にストレスを与える。このストレスは、一般に、カソードの急速な劣化をもたらす。結果として生じる劣化は、二次電池が最大容量の80%未満に低下する前の充放電サイクル数を著しく減少させる。したがって、当業者は、一般式-Li1+xMn2-x-y-zMyM’zO4-のカソード材料が、フェード率及び充放電サイクル数に関して比較例のものと同様に機能することを期待するであろう。しかし、二次電池に使用される場合、開示された組成は、最大容量を増加させるだけでなく、上述のように二次電池の寿命に達する前の充放電サイクル数を増加させる。さらに、改善されたカソード材料は、フェード率の改善及びサイクル寿命の増加によって証明されるように、二次電池における電解質の劣化を減少させる。
【0024】
本発明の他の実施形態は、当業者には明らかであり、したがって、前述の説明は、本発明の一般的な使用及び方法を可能にし、説明するだけである。したがって、以下の請求項は、本発明の真の範囲を定義する。
【国際調査報告】