(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】様々な分子量のポリビニルアルコールの混合物をベースにする有効成分の含有量が高い急速崩壊性経口薄膜/発泡体
(51)【国際特許分類】
A61K 9/70 20060101AFI20240822BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20240822BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20240822BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20240822BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20240822BHJP
A61P 15/18 20060101ALI20240822BHJP
A61P 25/02 20060101ALI20240822BHJP
A61P 25/04 20060101ALI20240822BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20240822BHJP
A61P 25/24 20060101ALI20240822BHJP
A61P 23/00 20060101ALI20240822BHJP
A61P 25/36 20060101ALI20240822BHJP
A61K 31/57 20060101ALI20240822BHJP
A61K 31/137 20060101ALI20240822BHJP
A61K 31/485 20060101ALI20240822BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240822BHJP
A61K 31/495 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
A61K9/70
A61K47/32
A61K47/26
A61K47/36
A61K47/10
A61P15/18
A61P25/02
A61P25/04
A61P25/28
A61P25/24
A61P23/00
A61P25/36
A61K31/57
A61K31/137
A61K31/485
A61P29/00
A61K31/495
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024516801
(86)(22)【出願日】2022-09-06
(85)【翻訳文提出日】2024-04-18
(86)【国際出願番号】 EP2022074724
(87)【国際公開番号】W WO2023041375
(87)【国際公開日】2023-03-23
(32)【優先日】2021-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】300005035
【氏名又は名称】エルテーエス ローマン テラピー-ジステーメ アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】フランク・ザイベルツ
(72)【発明者】
【氏名】マリウス・バウアー
(72)【発明者】
【氏名】マルレーネ・フールマン
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル・リン
(72)【発明者】
【氏名】マルコ・エムゲンブロイフ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA89
4C076BB01
4C076CC01
4C076CC17
4C076DD38
4C076DD67
4C076EE06
4C076EE38
4C076FF04
4C076FF06
4C076FF15
4C076FF39
4C076FF43
4C076FF51
4C076FF52
4C076FF53
4C076FF61
4C086AA01
4C086BC50
4C086CB23
4C086DA10
4C086MA02
4C086MA05
4C086MA57
4C086NA10
4C086ZA08
4C086ZA12
4C086ZA21
4C086ZA81
4C086ZC39
4C206AA01
4C206FA08
4C206KA01
4C206MA02
4C206MA05
4C206MA77
4C206NA10
4C206ZA04
4C206ZA21
(57)【要約】
本発明は、少なくとも1つのマトリックス層を含む経口薄膜であって、少なくとも1つのマトリックス層は、低い平均分子量を有する少なくとも1つのポリビニルアルコールおよび高い平均分子量を有する少なくとも1つのポリビニルアルコールおよび少なくとも1つの医薬品有効物質を含む経口薄膜に関する。本発明はまた、薬剤としての経口薄膜の使用にも関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのマトリックス層を含む経口薄膜であって、少なくとも1つのマトリックス層は、10,000~約75,000g/molのより低い平均分子量を有する少なくとも1つのポリビニルアルコールおよび140,000~300,000g/molのより高い平均分子量を有する少なくとも1つのポリビニルアルコールおよび少なくとも1つの有効医薬品成分を含み、より低い平均分子量を有する前記少なくとも1つのポリビニルアルコールおよびより高い平均分子量を有する前記少なくとも1つのポリビニルアルコールは、マトリックス層の総重量に対して、15~70wt%の総量でマトリックス層中に存在し、より低い平均分子量を有する前記少なくとも1つのポリビニルアルコールとより高い平均分子量を有する前記少なくとも1つのポリビニルアルコールとの重量比は20:1~2:1の範囲である、経口薄膜。
【請求項2】
より低い平均分子量を有する少なくとも1つのポリビニルアルコールは、10,000~約40,000g/mol、好ましくは25,000~35,000g/molの範囲の平均分子量を有し、および/または、より高い平均分子量を有する少なくとも1つのポリビニルアルコールは、140,000~220,000g/mol、好ましくは200,000~210,000g/molの範囲の平均分子量を有する、請求項1に記載の経口薄膜。
【請求項3】
より低い平均分子量を有する少なくとも1つのポリビニルアルコールおよびより高い平均分子量を有する少なくとも1つのポリビニルアルコールは、マトリックス層の総重量に対して、20~55wt%、より具体的には25~40wt%の総量でマトリックス層中に存在する、請求項1~2のいずれか1項に記載の経口薄膜。
【請求項4】
より低い平均分子量を有する少なくとも1つのポリビニルアルコールとより高い平均分子量を有する少なくとも1つのポリビニルアルコールとの重量比は、15:1~3:1、好ましくは10:1~2:1、より具体的には9:1~7:1の範囲である、請求項1~3のいずれか1項に記載の経口薄膜。
【請求項5】
マトリックス層中のより高い平均分子量を有する少なくとも1つのポリビニルアルコールの量は、マトリックス層の総重量に対して、1~18wt%、好ましくは1~12wt%、具体的には好ましくは2~10wt%、より具体的には3~4wt%の範囲である、請求項1~4のいずれか1項に記載の経口薄膜。
【請求項6】
より低い平均分子量を有する少なくとも1つのポリビニルアルコールはポリビニルアルコール4-88であり、および/または、より高い平均分子量を有する少なくとも1つのポリビニルアルコールはポリビニルアルコール40-88である、請求項1~5のいずれか1項に記載の経口薄膜。
【請求項7】
マトリックス層は、好ましくは糖、糖アルコール、デンプンおよびデンプン誘導体、またはそれらの混合物から選択される、3つを超える炭素原子を有する少なくとも1つの吸湿性の添加剤をさらに含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の経口薄膜。
【請求項8】
3つを超える炭素原子を有する少なくとも1つの吸湿性の添加剤は、ソルビトール、マンニトール、イソマルト、ラクチトール、ソルビトール(グルシトール)およびキシリトール、トレイトール、エリスリトール、デンプン誘導体を含むデンプン、スクラロース、または2つまたはそれ以上のこれらの化合物の混合物から選択される、請求項7に記載の経口薄膜。
【請求項9】
3つを超える炭素原子を有する少なくとも1つの吸湿性の添加剤は、マトリックス層の総重量に対して、5~20wt%、好ましくは5~15wt%の量で存在する、請求項7または請求項8に記載の経口薄膜。
【請求項10】
少なくとも1つの有効医薬品成分は、ウリプリスタル酢酸エステル、好ましくは微粒子化されたウリプリスタル酢酸エステル、もしくはケタミン、好ましくは(S)-ケタミン、もしくはナロキソン、もしくはナルメフェン、もしくはボルチオキセチン、もしくはそれぞれの薬学的に許容されるその塩を含み、またはウリプリスタル酢酸エステル、好ましくは微粒子化されたウリプリスタル酢酸エステル、もしくはケタミン、好ましくは(S)-ケタミン、もしくはナロキソン、もしくはナルメフェン、もしくはボルチオキセチン、もしくはそれぞれの薬学的に許容されるその塩であり、ウリプリスタル酢酸エステルまたはケタミンが具体的には好ましい、請求項1~9のいずれか1項に記載の経口薄膜。
【請求項11】
少なくとも1つの有効医薬品成分または薬学的に許容されるその塩は、マトリックス層の総重量に対して、10~60wt%、好ましくは20~55wt%、より好ましくは30~50wt%の量でマトリックス層中に存在する、請求項1~10のいずれか1項に記載の経口薄膜。
【請求項12】
マトリックス層は、着色剤、香味料、甘味料、可塑剤、味覚マスキング剤、乳化剤、増強剤、崩壊剤、溶解補助剤、pH調節剤、保存剤および/または抗酸化剤からなる群から選択される少なくとも1つの賦形剤をさらに含み、マトリックス層は、1つまたはそれ以上の可塑剤、好ましくはグリセリンを含むことが好ましい、請求項1~11のいずれか1項に記載の経口薄膜。
【請求項13】
マトリックス層は非発泡マトリックス層または発泡マトリックス層であり、マトリックス層は発泡体であることが好ましい、請求項1~12のいずれか1項に記載の経口薄膜。
【請求項14】
マトリックス層の基本重量は、50~220g/m
2、好ましくは50~150g/m
2、より好ましくは70~130g/m
2である、請求項1~13のいずれか1項に記載の経口薄膜。
【請求項15】
薬物として、好ましくは緊急避妊薬として、または疼痛および/もしくはうつ病の処置もしくは予防において、または麻酔薬として、ならびに/またはオピエートの過剰摂取の処置において使用するための、請求項1~14のいずれか1項に記載の経口薄膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの有効医薬品成分を含有する経口薄膜およびこのような経口薄膜の薬物としての使用に関する。
【背景技術】
【0002】
経口薄膜(OTF)は、ポリマーマトリックスをベースにし、薬物送達のための有効成分が充填された、薄くて柔軟な膜である。経口薄膜は、経口摂取され口の中ですぐに溶解するか、または粘膜に適用される。この経口薄膜は、舌の上もしくは下または頬側に置かれ、そこで溶解し、または崩壊する。
【0003】
経口薄膜は、非発泡膜(non-foamed films)として、または発泡膜(foamed films)もしくは発泡体(foam)として形成される。OTFは、経口薄膜と称されることもある。
【0004】
特許文献1は、有効成分ウリプリスタル酢酸エステルを開示する。ウリプリスタル酢酸エステルは、周知の緊急避妊薬(「モーニングアフターピル」)である。この緊急避妊薬は、微粒子化されたウリプリスタル酢酸エステル30mg、ならびにさらなる成分としてラクトース一水和物、ポビドン、クロスカルメロースナトリウム、およびステアリン酸マグネシウムを含有する錠剤(「EllaOne(登録商標)」)として投与される。EllaOne(登録商標)は、2009年に欧州連合において承認された。
【0005】
ケタミンは、より具体的には、疼痛の処置または予防のために使用されるもう1つの公知の有効医薬品成分である。
【0006】
例えば、有効成分として単回用量あたりに30mgのウリプリスタル酢酸エステルを含む経口薄膜など、一部の有効医薬品成分を投与するために、経口薄膜の薬物充填性が高いことが望まれる。しかし、単回用量あたりに高い薬物充填性を有するこのような経口薄膜または経口発泡体(oral foams)の問題は、脆い膜が生じないように、許容される柔軟性を有する膜または発泡体を生成するため、比較的多量のポリマーが必要とされることである。しかし、ポリマーの含有量が高いと、膜または発泡体の厚さまたは基本重量が増加する。その結果、これらの製剤は、崩壊時間の増加を示す。これは、口の中で非常に速く崩壊するべきである膜または発泡体に望ましくない。
【0007】
有効成分としてウリプリスタル酢酸エステルを含有し、低分子量を有するポリビニルアルコール(PVA)(PVA4-88、MWおよそ31,000Da)をベースにした試験された第1の発泡体製剤において、PVAの含有量は63.9%であった。この濃度の場合、良好な触覚特性を有するウリプリスタル酢酸エステル発泡体を生成することができた(実験項の製剤A1を参照されたい)。しかし、上記のように、ポリマーの濃度が高いと、基本重量(180g/m2)および崩壊時間が増加した。
【0008】
さらに、有効成分の充填性が高い公知の経口薄膜は、最大基本重量、したがってそこに含有される有効医薬品成分の量が、その製造時に経口薄膜を乾燥させることによって決定されるという欠点を有する。経口薄膜の基本重量が高いほど、より多くの有効医薬品成分を含有することができるが、これによって経口薄膜の乾燥時間が、もはや経済的に許容されない時間まで引き延ばされ、経口薄膜中の有効成分が不均一に分布する可能性もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、上記の欠点を取り除くことである。より具体的には、本発明の目的は、高い薬物充填性を可能にすると同時に、許容される膜の厚さおよび適用時の急速な崩壊時間を有する柔軟で安定的な経口薄膜/発泡体を提供することである。
【0011】
この目的は、驚くべきことに、マトリックス層中に異なる分子量を有するポリビニルアルコールの混合物を使用することによって、請求項1に従って達成された。さらなる改善が、保湿剤、より具体的には、ある特定の糖アルコールまたはデンプン誘導体を添加することによって達成された。
【課題を解決するための手段】
【0012】
したがって、本発明は、少なくとも1つのマトリックス層を含む経口薄膜であって、少なくとも1つのマトリックス層は、10,000~約75,000g/mol、好ましくは10,000~約40,000g/molのより低い平均分子量を有する少なくとも1つのポリビニルアルコールおよび140,000~300,000g/mol、好ましくは140,000~220,000g/molのより高い平均分子量を有する少なくとも1つのポリビニルアルコールおよび少なくとも1つの有効医薬品成分を含み、より低い平均分子量を有する前記少なくとも1つのポリビニルアルコールおよびより高い平均分子量を有する前記少なくとも1つのポリビニルアルコールは、マトリックス層の総重量に対して、15~70wt%、好ましくは15~65wt%の総量でマトリックス層中に存在し、より低い平均分子量を有する前記少なくとも1つのポリビニルアルコールとより高い平均分子量を有する前記少なくとも1つのポリビニルアルコールとの重量比は20:1~2:1の範囲である、経口薄膜に関する。
【0013】
独立クレームは、本発明による経口薄膜の使用に関する。好ましい実施形態は、従属クレームに示されている。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下では、PVAは、ポリビニルアルコールの省略形として使用される。本発明により使用される10,000~約75,000g/mol、好ましくは10,000~約40,000g/molのより低い平均分子量を有するポリビニルアルコールは、以下で、「低分子量ポリビニルアルコール」または「低分子量PVA」とも称される。140,000~300,000g/mol、好ましくは140,000~220,000g/molのより高い平均分子量を有するポリビニルアルコールは、以下で、「高分子量ポリビニルアルコール」または「高分子量PVA」とも称される。本明細書において、「含むこと(comprising)」は、「からなること(consisting of)」も意味することができる。
【0015】
例えば6wt%などの比較的低い濃度の、例えばPVA40-88などの高分子量PVAを低分子量PVAに添加することによって、驚くべきことに、前の製剤の寸法安定性を失うことなく、かつ崩壊時間を目に見えて増加させることなく、製剤中の総ポリマー濃度を著しく低下させることができた(実施例では、65.8%(製剤A1)から39%(製剤A2))。例えばPVA4-88/40-88などの本発明によるPVA混合物によって、より低い総ポリマー濃度を使用することが可能になることから、例えば180から109.5g/m2など、経口膜の基本重量を著しく低下させることもできた。これによって、低分子量PVAのみを含有する製剤と比較して、崩壊時間が改善された。
【0016】
いかなる理論によっても拘束されることを望むものではないが、この混合物中のPVA40-88のようなより長い鎖のPVAは、より低い濃度のPVAを組み込むことを可能にする一種の構造形成剤となると想定される。
【0017】
本発明による経口薄膜は、少なくとも1つのマトリックス層を有する。この少なくとも1つのマトリックス層は、10,000~約75,000g/mol、好ましくは10,000~40,000g/mol、より好ましくは25,000~35,000g/molの範囲のより低い平均分子量を有する少なくとも1つのポリビニルアルコール、および140,000~300,000g/mol、好ましくは140,000~220,000g/mol、より好ましくは200,000~210,000g/molの範囲のより高い平均分子量を有する少なくとも1つのポリビニルアルコールを含む。
【0018】
別段に明記しない限り、記載したポリマーの全ての平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィーによって決定される重量平均分子量(Mw)を指す。
【0019】
PVAを生成するために、通常ポリ酢酸ビニルが最初に生成され、次いでそのアセテート基が加水分解される。市販されているポリビニルアルコールは、84~92mol%、好ましくは86~90mol%の加水分解度を有する場合があり、したがってアセチル基の残留含量を未だ含有し;98~99または86~89mol%の加水分解度は一般的である。
【0020】
本発明によれば、約31,000g/molの平均分子量を有する少なくとも1つのポリビニルアルコールおよび約205,000g/molの平均分子量を有する少なくとも1つのポリビニルアルコールの組合せが具体的には適している。
【0021】
好ましい実施形態において、したがって、経口薄膜は、より低い平均分子量を有する少なくとも1つのポリビニルアルコールがポリビニルアルコール4-88もしくはポリビニルアルコール8-88であり、および/またはより高い平均分子量を有する少なくとも1つのポリビニルアルコールがポリビニルアルコール40-88であるマトリックス層を含む。これらのポリビニルアルコールは、市販されている。より高い平均分子量を有するポリビニルアルコールの分子量が高すぎる場合、得られる混合物は粘稠すぎ、粘稠すぎる混合物は加工を困難にし、またはほとんど不可能にする。分子量が低すぎる場合、得られる混合物の十分な構造化は達成されないであろう。
【0022】
マトリックス層中のより低い平均分子量を有する少なくとも1つのポリビニルアルコールおよびより高い平均分子量を有する少なくとも1つのポリビニルアルコールの総量は、マトリックス層の総重量に対して、15~65wt%、好ましくは20~60wt%、より好ましくは22~58wt%、より具体的には24~56wt%または22~50wt%または25~40wt%の範囲である。
【0023】
より低い平均分子量を有する少なくとも1つのポリビニルアルコール(A)とより高い平均分子量を有する少なくとも1つのポリビニルアルコール(B)との重量比(A:B)は、20:1~2:1、好ましくは15:1~3:1、より好ましくは12:1~4:1、または10:1~4:1もしくは10:1~2:1、より具体的には9:1~7:1の範囲である。
【0024】
マトリックス層中のより高い平均分子量を有する少なくとも1つのポリビニルアルコールの量は、マトリックス層の総重量に対して、例えば、1~18wt%または1~16wt%または1~12wt%、好ましくは2~10wt%、より具体的には3~4wt%の範囲など比較的少なくすることができる。
【0025】
より低い平均分子量を有する少なくとも1つのポリビニルアルコールは、より低い平均分子量を有するポリビニルアルコールであり、より高い平均分子量を有する少なくとも1つのポリビニルアルコールは、より高い平均分子量を有するポリビニルアルコールであることが好ましい。
【0026】
使用したポリビニルアルコールは、ポリマーマトリックスを含むマトリックス層のマトリックス形成剤として機能する。これらのポリビニルアルコールの他に、他のポリマー、より具体的には他のマトリックス形成ポリマーが、マトリックス層中に含有されないことが好ましい。他のポリマーが含まれる場合、記載したポリビニルアルコール以外のポリマーの量は、マトリックス層の総重量に対して、好ましくは15wt%以下、より好ましくは10wt%以下である。該当する場合、使用される他のポリマーの例としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ポリエチレングリコール(PEG)、またはこれらのポリマーの混合物が挙げられる。
【0027】
本発明による経口薄膜のマトリックス層は、例えば1つの有効医薬品成分または2つまたはそれ以上の有効医薬品成分の組合せなど、少なくとも1つの有効医薬品成分をさらに含む。少なくとも1つの有効医薬品成分は、原則としていかなる制約も受けないが、経口投与および/または経粘膜投与することができる全ての有効医薬品成分から選択されることが好ましい。本発明によれば、有効医薬品成分は、例えば、それぞれの有効医薬品成分の全ての薬学的に許容される塩および溶媒和物も包含する。
【0028】
少なくとも1つの有効医薬品成分は、例えば、緊急避妊薬、鎮痛薬、ホルモン、睡眠薬、鎮静薬、抗てんかん薬、アンフェタミン、精神神経薬(psychoneurotropic agents)、神経筋遮断薬、鎮痙薬、抗ヒスタミン薬、抗アレルギー薬、強心薬、抗不整脈薬、利尿薬、血圧降下薬、昇圧剤、抗うつ薬、鎮咳薬、去痰薬、甲状腺ホルモン、性ホルモン、抗糖尿病薬、抗腫瘍薬、抗菌薬、化学療法薬および麻薬の有効成分のクラスの有効医薬品成分などから選択され、このリストは網羅的ではない。
【0029】
少なくとも1つの有効医薬品成分は、マトリックスまたはポリマーマトリックス中に分散された粒子状の有効医薬品成分であることが好ましい。少なくとも1つの有効医薬品成分は、水溶性の有効成分または水に難溶性もしくは不溶性の有効成分であってもよい。ここで、水溶性有効成分とは、20℃の温度で10g/L超の水への溶解度を有する有効成分を指す。ここで、難水溶性有効成分または非水溶性有効成分とは、20℃の温度で10.0g/L以下の水への溶解度を有する有効成分を指す。この規格は、欧州薬局方の定義に由来する。
【0030】
有効成分は、経口薄膜を調製するための製剤中に、溶解された形態、懸濁された形態または溶解および懸濁された両方の形態で存在してもよい。
【0031】
有効成分は、粒子形態の出発原料として存在し得る。有効成分の出発原料が粒子状である場合、この出発原料は、微粒子化された粒子または微粒子化されていない粒子であってもよい。粒径は、例えば、0.2μm~1mmにわたり得る。
【0032】
好ましい実施形態において、少なくとも1つの有効医薬品成分は、ウリプリスタル酢酸エステル、好ましくは微粒子化されたウリプリスタル酢酸エステルであり、またはウリプリスタル酢酸エステル、好ましくは微粒子化されたウリプリスタル酢酸エステルを含む。ウリプリスタル酢酸エステルは、以下の化学式を有する17-アセトキシ-11-(4-N,N-ジメチルアミノフェニル)-19-ノルプレグナ-4,9-ジエン-3,20-ジオン)である。
【0033】
【0034】
有効成分ウリプリスタル酢酸エステルは、マトリックス層のポリマーマトリックス中に分散される。マトリックス層中に、ウリプリスタル酢酸エステルは、粒子として、好ましくは固体形態で、より具体的には結晶形態で存在する。
【0035】
出発原料としてのウリプリスタル酢酸エステルは、例えば、微粒子化されていないウリプリスタル酢酸エステルまたは微粒子化されたウリプリスタル酢酸エステルであってもよい。ウリプリスタル酢酸エステルの粒径は、例えば、0.2~100.0μmまたは0.5~40.0μmなど、0.2μm~1mmの範囲であってもよい。
【0036】
粒径とは、体積加重粒径d90を指し、例えば、レーザー回折解析、動的光散乱法またはふるい分析によって決定され得る。当業者に公知なように、体積加重粒径d90とは、90%の分布がより小さな粒径であり、10%がより大きな粒径である体積加重粒径を指す。
【0037】
別の好ましい実施形態において、少なくとも1つの有効医薬品成分は、ケタミンもしくは薬学的に許容されるその塩を含み、またはケタミンもしくは薬学的に許容されるその塩である。ケタミンは、(S)-(±)-2-(2-クロロフェニル)-2-(メチルアミノ)シクロヘキサン-1-オン、(R)-(±)-2-(2-クロロフェニル)-2-(メチルアミノ)シクロヘキサン-1-オン、およびラセミ体(RS)-(±)-2-(2-クロロフェニル)-2-(メチルアミノ)シクロヘキサン-1-オンを意味するものとしてここでは理解される。ケタミンは、好ましくは(S)-ケタミンまたは薬学的に許容されるその塩であり、ケタミンは、好ましくは(S)-ケタミンHClのようなHCl塩または(S)-ケタミンHClのような遊離塩基として存在する。ケタミンは、鎮痛薬、抗うつ薬、または麻酔薬として使用される。
【0038】
出発原料としてのケタミンは、微粒子化された粒子としてまたは微粒子化されていない粒子として存在してよい。好適な平均粒径は、例えば、1~1000μmまたは5~500μmまたは10~200μmの範囲である。粒径は、例えば、光学顕微鏡を使用して決定され得る。
【0039】
別の好ましい実施形態において、少なくとも1つの有効医薬品成分は、ナロキソン、より具体的にはナロキソンHCl二水和物を含み、またはナロキソン、より具体的にはナロキソンHCl二水和物である。ナロキソンは、オピオイド拮抗薬であり、全てのオピオイド受容体に対する競合的拮抗薬として作用する純粋なオピオイド拮抗薬の群に属する。したがって、それらの拮抗薬は、オピエートおよびオピオイドによって引き起こされる影響を、部分的にまたは完全に打ち消す。
【0040】
別の好ましい実施形態において、少なくとも1つの有効医薬品成分は、ナルメフェン、より具体的にはナルメフェンHClを含み、またはナルメフェン、より具体的にはナルメフェンHClである。ナルメフェンはオピオイド拮抗薬であり、したがってオピエートおよびオピオイドによって引き起こされる影響を、部分的にまたは完全に反転させる。ナルメフェンは、アルコール依存症の処置においても使用される。
【0041】
別の好ましい実施形態において、少なくとも1つの有効医薬品成分は、ボルチオキセチン、より具体的にはボルチオキセチンHBrを含み、またはボルチオキセチン、より具体的にはボルチオキセチンである。ボルチオキセチンは、多様な作用機序を有する抗うつ薬である。
【0042】
少なくとも1つの有効医薬品成分または薬学的に許容されるその塩は、マトリックス層の総重量に対して、10~60wt%、好ましくは20~55wt%、より好ましくは30~50wt%の範囲の量でマトリックス層中に存在することが好ましい。
【0043】
特に好ましい実施形態において、マトリックス層は、好ましくは糖、糖アルコール、デンプンおよびデンプン誘導体、またはそれらの混合物から選択される、3つを超える炭素原子を有する少なくとも1つの吸湿性の添加剤をさらに含む。
【0044】
糖、糖アルコール、デンプン、および/またはデンプン誘導体のような吸湿性の賦形剤をさらに包含すると、崩壊時間がさらに顕著に低下する(実施例の製剤A2を参照されたい)。理論によって拘束されることを望むものではないが、この効果は、吸湿性の賦形剤が製剤中に水を速く「取り込む」ことに基づき、次いでこのような吸湿性の賦形剤を含まない参照製剤と比較して、ポリマーの濃度が低いことにより、より速い崩壊時間になると想定される。
【0045】
3つを超える炭素原子を有する好適な吸湿性の賦形剤の好ましい具体例は、マンニトール、イソマルト、ラクチトール、ソルビトール(グルシトール)およびキシリトール、トレイトール、エリスリトール、デンプン誘導体を含むトウモロコシデンプンもしくはコメデンプンのようなデンプン、スクラロース、または2つまたはそれ以上のこれらの化合物の混合物である。特に好ましい吸湿性の添加剤は、ソルビトールである。吸湿性の添加剤は、ここでは崩壊剤とも記載される。
【0046】
1つの吸湿性の賦形剤または2つまたはそれ以上の吸湿性の賦形剤の組合せを組み込むことができる。3つを超える炭素原子を有する少なくとも1つの吸湿性の賦形剤は、使用される場合、マトリックス層の総重量に対して、例えば、最大20wt%の量で、好ましくは5~20wt%、より好ましくは5~15wt%の量でマトリックス層中に存在してよい。
【0047】
マトリックス層は、例えば、着色剤、香味料、甘味料、可塑剤、味覚マスキング剤(taste-masking agents)、乳化剤、増強剤、pH調節剤、崩壊剤、溶解補助剤、保存剤、消泡剤(膜生成のためのみ)、および/または抗酸化剤からなる群から選択される少なくとも1つの賦形剤をさらに含んでもよい。マトリックス層は、1つまたはそれ以上の可塑剤、好ましくはグリセリンを含むことが好ましい。
【0048】
これらの賦形剤のそれぞれは、存在する場合、マトリックス層の総重量に対して、0.1~15wt%、好ましくは0.1~10wt%または0.1~5wt%の量でマトリックス層中に存在することが好ましい。
【0049】
経口薄膜のマトリックス層は、非発泡マトリックス層または発泡マトリックス層であってよく、マトリックス層は、好ましくは発泡体である。非発泡マトリックス層としての構成または発泡マトリックス層としての構成は、当業者に公知である。
【0050】
発泡マトリックス層の場合、層は、ガス、ガス混合物、液体、または液体混合物で充たされた空間または空洞を有する固化発泡体の形態であってもよい。このようなOTFは通常、「発泡体OTF(foam OTFs)」と称される。発泡体OTF中の空洞および関連する膜のより大きな表面積は、剤形の溶解および有効成分の放出を促進することができる。
【0051】
発泡体の生成に加えて、本発明によるマトリックス層の成分は、有効成分の充填性が高く(例えば、43%)、許容される崩壊時間(製剤A4の例を参照されたい)を有する非発泡OTFの生成も可能にする。高分子PVAを添加しない場合、有効成分の最大充填量をより低くしなければならなくなり、したがって基本重量を増加させることによって補われなければならないだろう。その結果、より長い崩壊時間になるだろう。非発泡OTFの場合、発泡体と対照的に、基本重量の増加の可能性が非常に限られるというさらなる複雑な問題がある。基本重量が170g/m2超に達した場合、乾燥プロセスが非常に時間のかかるものになり、したがって収益性が悪くなる。
【0052】
マトリックス層の基本重量は、好ましくは50~220g/m2、より好ましくは50~150g/m2、具体的には好ましくは70~130g/m2の範囲である。
【0053】
本発明による経口薄膜のマトリックス層は、例えば、0.3~20cm2、好ましくは1~10cm2の範囲の表面積を有する。マトリックス層の厚さは、例えば、10~3000μm、好ましくは90μm~2000μm、より好ましくは40~400μmの範囲とすることができる。
【0054】
好ましい実施形態において、マトリックス層は、有効成分を少なくとも1mg、好ましくは少なくとも20mg、より好ましくは少なくとも30mg、例えば、有効成分を、より具体的にはウリプリスタル酢酸エステル、ケタミン、ナロキソン、ナルメフェンまたはボルチオキセチンを、より具体的にはナロキソンHCl二水和物またはナルメフェンHClまたはボルチオキセチンHBrを、25~150mg、好ましくは30~150mg含む。
【0055】
より低い平均分子量を有する少なくとも1つのポリビニルアルコールとより高い平均分子量を有する少なくとも1つのポリビニルアルコールとの重量比、ならびにより低い平均分子量を有する少なくとも1つのポリビニルアルコールおよびより高い平均分子量を有する少なくとも1つのポリビニルアルコールのそれぞれの総量は、経口薄膜に含有される有効成分に適合されることが具体的には好ましい。
【0056】
したがって、より具体的には上記で定義されたように、ウリプリスタル酢酸エステルまたは薬学的に許容されるその塩が有効医薬品成分として存在する経口薄膜において、より低い平均分子量を有する少なくとも1つのポリビニルアルコールとより高い平均分子量を有する少なくとも1つのポリビニルアルコールとの重量比は、10:1~4:1の範囲であることが好ましい。追加的にまたは独立的に、より低い平均分子量を有する少なくとも1つのポリビニルアルコールの量は、マトリックス層の総重量に対して、20~40wt%の範囲であることが好ましい。追加的にまたは独立的に、より高い平均分子量を有する少なくとも1つのポリビニルアルコールの量は、マトリックス層の総重量に対して、2~10wt%であることが好ましい。追加的にまたは独立的に、ウリプリスタル酢酸エステルまたは薬学的に許容されるその塩の量は、マトリックス層の総重量に対して、35~45wt%であることが好ましい。
【0057】
さらに、より具体的には上記で定義されたように、ケタミンまたは薬学的に許容されるその塩が有効医薬品成分として存在する経口薄膜において、より低い平均分子量を有する少なくとも1つのポリビニルアルコールとより高い平均分子量を有する少なくとも1つのポリビニルアルコールとの重量比は、10:1~4:1の範囲であることが好ましい。追加的にまたは独立的に、より低い平均分子量を有する少なくとも1つのポリビニルアルコールの量は、マトリックス層の総重量に対して、20~40wt%、好ましくは25~35wt%の範囲であることが好ましい。追加的にまたは独立的に、より高い平均分子量を有する少なくとも1つのポリビニルアルコールの量は、マトリックス層の総重量に対して、2~10wt%であることが好ましい。追加的にまたは独立的に、ケタミンまたは薬学的に許容されるその塩の量は、マトリックス層の総重量に対して、35~45wt%であることが好ましい。
【0058】
さらに、より具体的には上記で定義されたように、ナロキソンまたは薬学的に許容されるその塩が有効医薬品成分として存在する経口薄膜において、より低い平均分子量を有する少なくとも1つのポリビニルアルコールとより高い平均分子量を有する少なくとも1つのポリビニルアルコールとの重量比は、10:1~2:1の範囲であることが好ましい。追加的にまたは独立的に、より低い平均分子量を有する少なくとも1つのポリビニルアルコールの量は、マトリックス層の総重量に対して、45~60wt%、好ましくは50~58wt%の範囲であることが好ましい。追加的にまたは独立的に、より高い平均分子量を有する少なくとも1つのポリビニルアルコールの量は、マトリックス層の総重量に対して、5~20wt%であることが好ましい。追加的にまたは独立的に、ナロキソンまたは薬学的に許容されるその塩の量は、マトリックス層の総重量に対して、5~15wt%、好ましくは約10wt%であることが好ましい。
【0059】
さらに、より具体的には上記で定義されたように、ナルメフェンまたは薬学的に許容されるその塩が有効医薬品成分として存在する経口薄膜において、より低い平均分子量を有する少なくとも1つのポリビニルアルコールとより高い平均分子量を有する少なくとも1つのポリビニルアルコールとの重量比は、10:1~2:1の範囲であることが好ましい。追加的にまたは独立的に、より低い平均分子量を有する少なくとも1つのポリビニルアルコールの量は、マトリックス層の総重量に対して、45~60wt%、好ましくは50~58wt%の範囲であることが好ましい。追加的にまたは独立的に、より高い平均分子量を有する少なくとも1つのポリビニルアルコールの量は、マトリックス層の総重量に対して、5~20wt%であることが好ましい。追加的にまたは独立的に、ナルメフェンまたは薬学的に許容されるその塩の量は、マトリックス層の総重量に対して、5~15wt%、好ましくは約10wt%であることが好ましい。
【0060】
さらに、より具体的には上記で定義されたように、ボルチオキセチンまたは薬学的に許容されるその塩が有効医薬品成分として存在する経口薄膜において、より低い平均分子量を有する少なくとも1つのポリビニルアルコールとより高い平均分子量を有する少なくとも1つのポリビニルアルコールとの重量比は、10:1~2:1の範囲であることが好ましい。追加的にまたは独立的に、より低い平均分子量を有する少なくとも1つのポリビニルアルコールの量は、マトリックス層の総重量に対して、20~40wt%、好ましくは30~40wt%の範囲であることが好ましい。追加的にまたは独立的に、より高い平均分子量を有する少なくとも1つのポリビニルアルコールの量は、マトリックス層の総重量に対して、2~12wt%であることが好ましい。追加的にまたは独立的に、ボルチオキセチンまたは薬学的に許容されるその塩の量は、マトリックス層の総重量に対して、25~35wt%であることが好ましい。
【0061】
本発明による経口薄膜は、その構造に関していかなる制約も受けない。以下の構成は、マトリックス層が発泡であるかまたは非発泡であるかは無関係である。
【0062】
本発明によるOTFは、単層膜または多層膜として形成され、単層膜が好ましい。したがって、本発明による経口薄膜は、単層経口薄膜として存在してもよく、したがって上記で定義されたマトリックス層のみからなる。
【0063】
別の実施形態において、OTFは、多層OTFとして存在してもよく、したがって上記で定義されたマトリックス層に加えて、さらなる層を含有する。これらのさらなる層は、互いの上に直接積層されるか、互いの上に被覆されるか、または接着層を間にして接着されてもよい。接着層は、DIN EN 923:2016-03で定義されるように、接着剤として作用する層と理解されている。したがって、非接着層は、上記で定義された接着剤として作用し得ない。
【0064】
他の層は、例えば、pHを調整するための緩衝層、または経口薄膜を早すぎる侵食から保護する徐溶性層もしくは不溶性層であり得る。あるいは、他の有効医薬品成分または香味料または味覚マスキング成分を含有する他のマトリックス層が存在してもよい。他の考えられる層は、接着層および保護最上層である。
【0065】
本発明による経口薄膜は、当業者に公知の従来の方法によって調製され得る。本発明の経口薄膜を調製するための従来の方法は、例えば、以下の工程、
a)例えば、水中の分散体または水とアルコールの混合物中の分散体など、本発明によるマトリックス層の成分を含む溶液、分散体または溶融物を調製する工程と;
a1)場合により、ガスもしくはガス混合物の導入によって、化学ガスの発生によってもしくは溶解ガスの膨張によって、または発泡機を用いて、工程a)の溶液、分散体または溶融物を起泡する工程と;
b)工程a)の溶液、分散体もしくは溶融物、または場合により工程a1)の起泡された溶液、分散体もしくは溶融物を、型の表面上または中に広げるかまたは注ぎ、冷却または乾燥させる工程と
を含む。
【0066】
本発明はさらに、薬物として使用するための上記のような経口薄膜にも関する。
【0067】
好ましい実施形態において、経口薄膜は、緊急避妊薬として使用される。この場合、OTFは、有効医薬品成分として緊急避妊薬、好ましくはウリプリスタル酢酸エステルを含有する。ウリプリスタル酢酸エステルの好ましい実施形態に関する上記の詳細が、その使用にも明らかに適用される。
【0068】
別の好ましい実施形態において、経口薄膜は、疼痛および/もしくはうつ病の処置もしくは予防に、または麻酔薬として使用される。この場合、OTFは、より具体的には有効医薬品成分として鎮痛薬、麻酔薬、または抗うつ薬、好ましくはケタミンまたはボルチオキセチンを含有する。ケタミンまたはボルチオキセチンの好ましい実施形態に関する上記の詳細が、その使用にも明らかに適用される。
【0069】
別の好ましい実施形態において、経口薄膜は、オピエートの過剰摂取の処置において使用される。この場合、OTFは、より具体的には有効医薬品成分としてオピオイド拮抗薬、好ましくはナロキソン、より具体的にはナロキソンHCl二水和物、またはナルメフェン、より具体的にはナルメフェンHClを含有する。
【0070】
本発明は、非限定的な例を参照して、以下でより詳細に説明される。
【実施例1】
【0071】
実施例1の以下の製剤の全てについて、これらの製剤から得られた単回投与剤形は、表面積7.04cm2を有することを意図し、本発明による実施例のために、ウリプリスタル酢酸エステルまたはケタミンの少なくとも30mgの単回用量を含有することを意図した。
【0072】
【0073】
この製剤はPVA4-88しか含有しないことから、64.2%の高いポリマー含有量で、したがって高い基本重量でしか生成できない。ポリマーの含有量が低い場合、膜は脆すぎると思われ、最悪の場合、もはや作り上げることができない恐れがある。さらに、高い基本重量は、崩壊時間に悪影響をもたらす。
【0074】
【0075】
この製剤は、参照製剤よりも低い基本重量を有する。さらに、この製剤は、許容される触覚特性および参照よりも著しく短い崩壊時間を有する。
【0076】
【0077】
ソルビトールを取り除くことによって、発泡体の崩壊時間が増加する(それでも参照よりはるかに速いが)。これは、製剤中の糖アルコールまたはデンプン誘導体によって、崩壊が改善されることを示す。糖アルコールまたはデンプン誘導体の親水性が高いことにより、これらは発泡体または膜に水を取り込み、それによって溶解度が改善される。
【0078】
【0079】
膜は、高濃度の有効成分および低い基本重量を有する。これは膜であるが、この製剤は、参照製剤よりも短い崩壊時間を有する。
【0080】
【0081】
【0082】
上記の製剤の崩壊時間
崩壊時間を、重り(weight)およびプレートを用いて、方法Ph.Eur.2.9.1を使用して決定した。
【0083】
【実施例2】
【0084】
経口薄膜を、有効成分としてナロキソンHCl二水和物およびナルメフェンHClを用いて調製し、これらの崩壊時間を、重りおよびプレートを用いて、方法Ph.Eur.2.9.1に従って決定した。
【0085】
【0086】
【0087】
【0088】
【0089】
【0090】
【0091】
【0092】
【0093】
【実施例3】
【0094】
経口薄膜を、有効成分としてボルチオキセチンHBrを用いて調製し、これらの崩壊時間を、重りおよびプレートを用いて、方法Ph.Eur.2.9.1に従って決定した。
【0095】
【0096】
【0097】
【0098】
上記の製剤D1~D3について、in-vitro透過を、37℃でFranz拡散セル(体積10mL)を使用して行った。予め決められた切り替え時間で、それぞれの場合で使用した受容体培地(acceptor medium)を、新しい培地に完全に交換し、これらの受容体溶液中の透過した有効成分の含有量を、HPLCを使用して決定した。
【0099】
リン酸緩衝液pH7.4を、受容体培地として使用した。
【0100】
400μmの層厚さでブタの食道から採皮した(Dermatomized)皮膚を、皮膚モデルとして使用した。
【0101】
【図面の簡単な説明】
【0102】
【
図1】実施例3の製剤D1~D3の透過流束を示すグラフである。
【国際調査報告】