(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】口腔内スキャン又は口腔外スキャン用の歯科アバットメント
(51)【国際特許分類】
A61C 8/00 20060101AFI20240822BHJP
A61C 19/04 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
A61C8/00 Z
A61C19/04 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024516888
(86)(22)【出願日】2022-09-16
(85)【翻訳文提出日】2024-05-07
(86)【国際出願番号】 EP2022075755
(87)【国際公開番号】W WO2023041700
(87)【国際公開日】2023-03-23
(32)【優先日】2021-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522285129
【氏名又は名称】エロス・メドテック・パイノール・エー/エス
【氏名又は名称原語表記】Elos Medtech Pinol A/S
【住所又は居所原語表記】Engvej 33, 3330 Gorlose, Denmark
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アンデルセン, ヘンリック
(72)【発明者】
【氏名】オルセン, ゾーレン
(72)【発明者】
【氏名】イネゲマン, アンドレアス バク
(72)【発明者】
【氏名】ブック-ラーセン, ニクラス ホルスト
【テーマコード(参考)】
4C052
4C159
【Fターム(参考)】
4C052NN03
4C052NN04
4C052NN15
4C159AA41
4C159AA51
(57)【要約】
本発明は、インプラント治療用装置の分野に関する。より具体的には、本発明は、歯科インプラントに装着された状態で高精度の口腔内スキャンに適した歯科インプラント用のスキャンボディ又はスキャンアバットメントを提供する。スキャンボディは、インプラントアナログに装着された場合、例えば患者の口腔の模型に装着された場合のスキャンにも適している。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯科インプラントの中又は上に、又はインプラントアナログの中又は上に挿入可能であり、かつスキャンボディの向き及び位置を見つけるように配置された光学スキャンシステムで認識可能な前記スキャンボディ(1、19、20)であって、
- 遠位端部(3)、中間部(4)及び近位端部(5)を有する第1の中空部材(2)と、
〇 前記遠位端部(3)は、光学スキャンシステムで認識可能な少なくとも1つの幾何学的特徴(6)を備え、
〇 前記中間部(4)は、開口部(7、21、22、23)を備え、
- 前記スキャンボディを歯科用インプラント又はインプラントアナログに締結するための第2の部材(29)であって、
〇 上部(10)及び端ねじ部分(9)を有する細長部品(8、24、25、26、27、28、32)であって、前記端ねじ部は、前記第1の中空部材の前記近位端部から延在する、細長部品(8、24、25、26、27、28、32)と、
〇 前記細長部品の少なくとも一部を前記第1の中空部材内に保持するための保持手段(11、14、15、16、18、34)であって、前記細長部品の前記上部に締結する保持手段(11、14、15、16、18、34)と
を備える第2の部材(29)と
を備え、
前記遠位端部及び前記近位端部は、前記スキャンボディの長手方向軸に沿った開口部(12、13)を有し、前記中間部開口部(7、21、22、23)は、前記第2の部材の前記保持手段を前記第1の中空部材に挿入することを可能にするように構成され、前記保持手段は、前記遠位端部及び前記近位端部開口部(12、13)の断面の最大寸法よりも大きい少なくとも1つの寸法を有し、前記断面は前記長手方向軸に対して垂直であり、それによって、前記細長部品(8、24、25、26、27、28、32)の少なくとも一部を前記第1の中空部材内に保持し、かつ前記遠位端部開口部(12)は、締め付け具の挿入を可能にするように構成される、
スキャンボディ(1、19、20)。
【請求項2】
前記中央部開口部(7、21、22、23)が、前記先端部及び前記近位端部開口部(12、13)の断面の最大寸法よりも大きい少なくとも1つの寸法を有し、前記断面が、前記長手方向軸に対して垂直である、請求項1に記載のスキャンボディ(1、19、20)。
【請求項3】
前記中間部開口部(7、21、22、23)が、前記第1の中空部材内の中空領域の洗浄を可能にするように構成され、それによって、前記中間部開口部を通してアクセス可能な前記中空領域の洗浄を可能にする、請求項1又は2に記載のスキャンボディ(1、19、20)。
【請求項4】
前記中間部開口部(7、21、22、23)が、安全スレッドなどの安全手段の締結を可能にするように構成されており、それによって、使用時の前記スキャンボディの誤配置を防止する、請求項1乃至3のいずれかに記載のスキャンボディ(1、19、20)。
【請求項5】
前記近位端開口部(13)が、前記保持手段(11、14、15、16、18)の締結の前に前記細長部品(8、24、25、26、27、28、32)の挿入を可能にするように構成されている、請求項1乃至4のいずれかに記載のスキャンボディ(1、19、20)。
【請求項6】
前記保持手段(11、14、15、16、18、34)が、ヘッド部品を備える、請求項1乃至5のいずれかに記載のスキャンボディ(1、19、20)。
【請求項7】
前記ヘッド部品(11、14)又は前記細長部品(8、24、25、26、27、28、32)の前記上部が、前記遠位端開口部を通して挿入可能な締め付け具と係合するように構成され、それによって、前記スキャンボディを歯科インプラント又はインプラントアナログに締結することを可能にする、請求項1乃至6のいずれかに記載のスキャンボディ(1、19、20)。
【請求項8】
前記保持手段(11、14、15、16、18、34)が、前記細長部品の前記上部(10)に係合するように構成されている、請求項1乃至7のいずれかに記載のスキャンボディ(1、19、20)。
【請求項9】
前記保持手段(11、14、15、16、18、34)が、前記細長部品の前記上部に係合するように構成されたボール又は円筒状ヘッド(14、15)であるか、又は当該ボール又は円筒状ヘッドを備える、請求項1乃至8のいずれかに記載のスキャンボディ(1、19、20)。
【請求項10】
前記保持手段は、前記細長部品の前記上部を囲むリング(16)であるか、又は当該リングを含み、前記リングは、前記細長部品(8、24、25、26、27、28、32)の少なくとも一部を前記第1の中空部材内に保持するように構成される、請求項1乃至9のいずれかに記載のスキャンボディ(1、19、20)。
【請求項11】
前記保持手段が、
前記細長部品の前記上部に圧入されるように構成された前記保持手段の上の1つ以上の外部突起か、
前記保持手段に圧入されるように構成された前記細長部品の前記上部の上の1つ以上の外部突起か、
接着剤によってか、
レーザー溶接によってか、
前記保持手段及び前記上部の対応するねじ山によってか
のうちの少なくとも1つの手段によって、前記細長部品の前記上部に締結される、請求項1乃至10のいずれかに記載のスキャンボディ(1、19、20)。
【請求項12】
先行する請求項のいずれかに係るスキャンボディを組み立てる方法(17)であって、
前記近位端開口部を通して前記第2の部材の前記細長部品(8、24、25、26、27、28、32)を前記第1の中空部材に挿入することと、
前記中間部開口部を通して前記第2の部材の前記保持手段を前記第1の部材に挿入すること、
前記中間部開口部を通して操作することにより、前記保持手段を前記細長部品の前記上部に締結することと
を含む、方法(17)。
【請求項13】
前記締結が、レーザー溶接、接着、ねじ切り、圧入、スナップフィット又は締まりばめによる、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インプラント治療用の装置の分野に関する。より具体的には、本発明は、歯科インプラントに装着された状態で高精度の口腔内スキャンに適した歯科インプラント用のスキャンボディ又はスキャンアバットメントを提供する。スキャンボディは、インプラントアナログに装着された場合、例えば患者の口腔の模型に装着された場合のスキャンにも適している。
【背景技術】
【0002】
患者の顎骨に締結されたインプラントに装着するためのクラウン又はブリッジなどのカスタムメイドの歯科アバットメントは、通常、スキャンに基づいて製造される。スキャンは、患者の口腔の模型におけるインプラントアナログ、すなわち患者の口腔外に装着されたスキャンボディ要素又はスキャンボディ又はスキャンアバットメントに対して行われる。あるいは、スキャンは、患者の顎骨に、すなわち口腔内に埋め込まれたインプラントに装着されたスキャンボディで患者の口腔内で行うことができる。スキャンボディ上で認識可能な特徴のスキャンは、スキャンボディ要素の位置及び向きについての正確な情報を提供することに役立ち、これによって、インプラント又はインプラントアナログの位置及び向きについての情報も提供し、患者の口腔をデジタルで表現することを可能にし、それらのデータを使用して、インプラントに正確に適合するカスタムアバットメント又はブリッジを作成する。
【0003】
公知のスキャンボディは、インプラントにねじ込まれるねじ付きベース部を含む。ベース部がインプラントアナログに締結されると、歯科医又は外科医は、ポリマーキャップをベース部の上部に手動で位置決めして押す。ポリマーキャップは、その後のスキャンで認識可能な特徴を有する。
【0004】
他の公知のスキャンボディは、使用時に分解されて不正確な口腔内スキャン又は患者の口腔内でのスキャンボディの一部の紛失につながる危険性のあるいくつかの部分を備える。
【0005】
公知のスキャンボディの例は、国際公開2019/162446号に開示されている。
【0006】
これらのシステムは、スキャン要素がインプラントにねじ込まれた別の部分に装着されているため、インプラントの向きについてのスキャン結果の精度がかなり低くなり、よって、インプラントの傾斜角の決定に誤差が生じる可能性をもたらす。従って、そのようなスキャンに基づいて製造された結果の歯科用ブリッジ又はバーは、例えば感染及び骨の劣化などの様々な健康上の問題を引き起こし得るインプラントへの不正確な取り付けとなるかもしれず、よって、患者に追加のコスト及び痛みをもたらす。一般に、非常に高い精度、例えば5~6μm未満の公差が要求される。
【0007】
さらに、スキャンを行うために必要な各部分をインプラントに個別に締結することは、特にスキャンが口腔内で行われる場合には、かなり煩雑なプロセスとなり得る。公知のスキャンボディでは、締結すると望ましくない破損につながる可能性がある。
【0008】
さらに、スキャンボディを経口的に使用する場合には、安全性及び衛生上の問題が発生する可能性がある。
【0009】
従って、高度の堅牢性を示し、かつ口腔内使用のためのより安全で衛生的なアプローチを提供する改良されたスキャンボディが有利であろう。よって、改良されたスキャンボディが有利であり、特に、より信頼性が高く、堅牢で、洗浄が容易で、安全で、かつ製造が容易なスキャンボディが有利であろう。
【0010】
従って、本発明の目的は、洗浄が容易に可能なスキャンボディを提供することである。
【0011】
本発明の目的はまた、経口的に使用しても安全なスキャンボディを提供することである。
【0012】
本発明の目的はまた、信頼性が高くスキャンボディを一体で供給するスキャンボディの組立方法を提供することである。
【0013】
本発明の目的はまた、インプラント又はインプラントアナログに締結する際に望ましくない破損を回避する堅牢なスキャンボディを提供することと見なし得る。
【0014】
本発明のさらなる目的はまた、従来技術に代わるものを提供することと見なし得る。
【0015】
特に、最適化された開口部の構成を有することにより、インプラント又はインプラントアナログに締結するために使用することができる、改良された堅牢性、洗浄及び安全性の特徴を有するスキャンボディを提供することを本発明の目的と見なし得る。
【発明の概要】
【0016】
上述の目的及びいくつかの他の目的は、本発明の第1の態様において、歯科用インプラントの中又は上、又はインプラントアナログの中又は上に挿入可能であり、かつスキャンボディの向き及び位置を見つけるために配置された光学スキャンシステムで認識可能なスキャンボディによって得られることが意図されており、スキャンボディは、第1の中空部材と、スキャンボディを歯科用インプラント又はインプラントアナログに締結する又は固定するための第2の部材とを備える。
【0017】
スキャンボディは、インプラントの中又は上に直接、又はインプラントアナログの中又は上に直接、挿入することができる。しかし、場合によっては、スキャンボディは、中間構造、例えば、インプラント又はインプラントアナログの中又は上に装着されたアバットメントの中又は上に挿入されてよい。
【0018】
第1の中空部材は、遠位端部、中央部又は中心部、及び近位端部を有することを特徴とし、遠位端部は、光学スキャンシステムで認識可能な少なくとも1つの幾何学的特徴を備え、中央部は、中央部開口部と呼ばれる開口部を備える。
【0019】
スキャンボディを歯科用インプラント又はインプラントアナログに締結するための第2の部材は、上部及び端ねじ部を有する細長部品と、第1の中空部材の近位端から延在する端ねじ部と、細長部品の少なくとも一部を第1の中空部材内に保持する保持手段であって、細長部品の上部を締結する保持手段とを備える。
【0020】
第2の部材の存在により、スキャンボディを歯科インプラント又はインプラントアナログに締結することが可能になる。第2の部材又は内部部材は、少なくとも部分的に第1の中空部材の中空領域内に位置する。
【0021】
いくつかの実施形態では、第1の中空部材は、円筒形又は円錐形であってよい。しかし、第1の中空部材は、他の幾何学的形状であってもよい。
【0022】
第1の中空部材の遠位端は、使用時に歯科用インプラント又はインプラントアナログから離れて位置する端部である。
【0023】
遠位端は、光学スキャンシステムで認識可能な少なくとも1つの幾何学的特徴を備える。
【0024】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの幾何学的特徴は、光学スキャンで認識可能な部分であり、この部分は、スキャンボディの長手方向軸に対して断面平面の第1表面を有することによって角度位置について認識可能である。
【0025】
遠位端は、スキャンボディの長手方向軸に沿った開口部を有し、遠位端開口部という。
【0026】
遠位端開口部は、ドライバ又はドライバ先端などの締め付け具の挿入を可能にするように構成される。
【0027】
遠位端開口部、例えば貫通孔は、ドライバ先端の挿入などの締め付け具の挿入のために配置された少なくとも1つの寸法などの寸法を有する。
【0028】
「寸法」という語は、本発明では、長さ、幅、深さ又は高さなどの特定の種類の測定可能な範囲として言及される。
【0029】
遠位端開口部の寸法、形状又はサイズは、締め付け具の挿入を可能にする最小の断面を有するように最適化される。
【0030】
小さい遠位端開口部は、遠位端上面の表面積を最大にするために好ましく、これは最適かつより正確なスキャンのために好ましい。
【0031】
いくつかの実施形態では、遠位端開口部は、1.4mm未満の直径などの寸法を有する。いくつかの実施形態では、遠位端開口部は、近位端開口部よりも小さい直径などの寸法を有する。
【0032】
第1の中空部材の近位端部は、使用時に歯科用インプラント又はインプラントアナログにより近い位置にある端部である。
【0033】
近位端は、スキャンボディの長手方向軸に沿った開口部を有し、近位端開口部という。
【0034】
長手方向軸は、遠位端開口部から近位端開口部までのスキャンボディの長さに亘る軸である。
【0035】
近位端開口部は、第2の部材の細長部品の挿入を可能にするように構成される、すなわち、第2の部材の細長部品の挿入のために配置された少なくとも1つの寸法などの寸法を有する。第2の部材の細長部品の挿入は、保持手段の締結の前に行われる。細長部品は、近位端開口部から遠位端開口部の方向に第1の中空部材の中空領域内に挿入される。
【0036】
いくつかの実施形態では、第2の部材の細長部品は、円筒形又は円錐形であってよい。しかし、第2の部材の細長部品は、他の幾何学的形状であってもよい。
【0037】
近位端開口部の機能は、第2の部材の細長部品の挿入を可能にすることであり、その寸法、サイズ又は形状は、少なくとも細長部品の断面と同じ大きさである。
【0038】
遠位端開口部は、直径などの寸法を有し、細長部品が挿入されると、細長部品が近位端開口部内で回転することを可能にする。
【0039】
いくつかの実施形態では、遠位端開口部は、1.4mm~3mmの直径などの寸法を有する。
【0040】
第1の中空部材の中央部は、遠位端と近位端の間の第1の中空部材の領域である。
【0041】
中央部は、いくつかの機能を有する開口部、すなわち中央部開口部の存在によって特徴づけられる。
【0042】
いくつかの実施形態では、中央部開口部は、近位端開口部の断面の最大寸法より大きい1つの寸法を有し、この断面は長手方向軸に対して垂直である。
【0043】
さらにいくつかの実施形態では、中央部開口部は、第2の部材の保持手段を第1の中空部材に挿入することを可能にするように構成される。
【0044】
中央部開口部は、近位端開口部を通して挿入されると、細長部品の上部に固定される保持手段の導入を可能にする機能を有する。
【0045】
保持手段が、細長部品の少なくとも一部を第1の中空部材内に保持できるように、近位端開口部の断面の最大寸法より大きい少なくとも1つの寸法を有するので、中央部開口部は、対応する適切な寸法を有する必要がある。
【0046】
遠位端開口部は、その唯一の機能が締め付け具の先端を収容することであるので、近位端開口部よりもはるかに小さく、よって、中央部開口部は、遠位端開口部の断面の最大寸法より大きい少なくとも1つの寸法を有し、この断面は長手方向軸に対して垂直である。
【0047】
いくつかの実施形態では、中間部開口部は、第1の中空部材内の中空領域の洗浄を可能にするように構成され、それによって、中間部開口部を通してアクセス可能な中空領域の洗浄を可能にする。
【0048】
本発明のスキャンボディは、口腔内での使用における衛生性を向上させる点で特に有利である。
【0049】
中央部開口部はまた、第1の中空部材の中空領域内の望ましくない残留材料の洗浄を可能にする寸法、形状及びサイズを有する。
【0050】
中央部開口部は、円形、楕円形、スロット形状、又はその機能を果たすことができる他の適切な形状を有してよい。
【0051】
いくつかの実施形態では、中央部開口部は、1.4mm~3mmの範囲の直径などの少なくとも1つの寸法を有する。
【0052】
中央部開口部は、貫通孔であってもよいし、又は中央部の片側のみの開口部であってもよい。
【0053】
いくつかの実施形態では、中央部開口部は、側面開口部、すなわち、第1の中空部材の側の開口部である。
【0054】
いくつかの実施形態では、中央部開口部は、安全スレッドなどの安全手段の締結を可能にするように構成され、それによって、使用時のスキャンボディの誤配置を回避する。
【0055】
本発明のスキャンボディは、患者の口腔内に望ましくない物体を落とすリスクを低減する点で、口腔内での使用に特に有利である。
【0056】
これは、細長部品を第1の中空部材の中空領域内に締結させることによって達成され、よって、患者の口腔内で望ましくない物体を紛失するいかなる可能性も妨げる。
【0057】
さらに、安全機能は、中央部開口部にかつ/又は中央部開口部を通して締結され得る。よって、歯科医又は外科医は、患者の口腔内で一体成形のスキャンボディをより安全に取り扱うことができる。これにより、患者の口腔内にスキャンボディを落として回収しなければならないリスクが大幅に低減される。
【0058】
中央部開口部は、中央部の中央線の下に位置してもよい。
【0059】
いくつかの実施形態では、中央部開口部は、第1の中空部材の近位端に向かう端部などの中央部の下端に位置する。
【0060】
いくつかの実施形態では、中央部開口部は、第1の中空部材の中央線の下に位置する中心を有する。
【0061】
さらにいくつかの実施形態では、中央部開口部は、第1の中空部材の近位端の底面からよりも、遠位端の上面から離れた中心を有する。
【0062】
いくつかの実施形態では、中央部開口部は、スキャンボディの長手方向軸と交差する中心軸を有する。
【0063】
他のいくつかの実施形態では、中央部開口部の中心軸は、長手方向軸に対して垂直である。
【0064】
いくつかの実施形態では、保持手段は、遠位端開口部及び近位端開口部の断面の最大寸法よりも大きい少なくとも1つの寸法を有し、この断面は長手方向軸に対して垂直であり、それによって、細長部品の少なくとも一部を第1の中空部材内に保持する。
【0065】
保持手段は、細長部品の上部に締結されることにより、細長部品の少なくとも一部を第1の中空部材内に保持する機能を有する。
【0066】
その機能に適合するために、保持手段は、近位端開口部の最大寸法よりも大きい外径などの少なくとも1つの外部寸法を有しなければならず、かつ細長部品の上部に締結されなければならない。
【0067】
いくつかの実施形態では、保持手段は、細長部品の上部に係合するように構成される。
【0068】
細長部品は、保持手段を締結する前に、スキャンボディの長手方向軸に沿った近位端開口部に対して位置を変えることができる。
【0069】
いくつかの実施形態では、保持手段は、細長部品の上部に圧入されるように構成された保持手段上の1つ以上の外部突起によって細長部品の上部に締結される。
【0070】
他のいくつかの実施形態では、保持手段は、保持手段に圧入されるように構成された細長部品の上部の上にある1つ以上の外部突起によって細長部品の上部に締結される。
【0071】
さらにいくつかの実施形態では、保持手段は、接着剤によって、レーザー溶接によって、かつ/又は保持手段及び上部の対応するねじ山によって細長部品の上部に締結される。
【0072】
保持手段及び細長部品の上部は、バイオネット接続を通して締結されてもよい。
【0073】
いくつかの実施形態では、保持手段は、細長部品の上部に係合するように構成されたボール又は円筒状ヘッドであるか、又は当該ボール又は円筒状ヘッドを備える。
【0074】
他のいくつかの実施形態では、保持手段は、細長部品の上部を囲むリングであるか、又は当該リングを備え、このリングは、細長部品の少なくとも一部を第1の中空部材内に保持するように構成される。
【0075】
上部又はヘッド部分は、細長部品の断面の最大直径などの細長部品の最大直径よりも十分に大きい直径を有する細長部品の上部を囲む、ロックリングなどのリングであってもよく、又は当該リングを備えてもよい。
【0076】
リングは、本明細書では、細長部品を近位端開口部から外へとスライドさせる際に障害となる、細長部品の1つの寸法、よって近位端開口部の寸法よりも大きい外径などの少なくとも1つの寸法を有する任意の小円又は開放小円として定義される。
【0077】
他のいくつかの実施形態では、保持手段は、正方形、矩形又は三角形などの円形以外の形状であってよく、保持手段が細長部品に締結されると、近位端開口部を通して細長部品からスライド又は引き出すことを回避するという、同じ機能を有する。
【0078】
いくつかの実施形態では、保持手段は、ヘッド部品又はヘッド部材を備える。
【0079】
ねじ頭などのヘッド部品は、少なくとも部分的にねじ切りされた領域を有し、かつ細長部品の上部のねじと係合するように構成されてよい。
【0080】
いくつかの実施形態では、ヘッド部品は、遠位端開口部を通して挿入可能な締め付け具と係合するように構成され、それによって、スキャンボディを歯科インプラント又はインプラントアナログに締結することを可能にする。
【0081】
いくつかの実施形態では、ヘッド部品は、遠位端開口部を通して締め付け具を受けるための凹部を備える。
【0082】
他のいくつかの実施形態では、細長部品の上部は、遠位端開口部を通して挿入可能な締め付け具と係合するように構成される一方、ヘッド部品は、単に細長部品を保持する機能を有する。
【0083】
ヘッド部品は、接着剤、レーザー溶接によって、かつ/又は保持手段及び細長部品の上部の対応するねじ山によって締結可能なねじ頭であってもよい。
【0084】
いくつかの実施形態では、第1の中空部材及び/又は第2の部材は、PEEK、セラミック、テフロン(登録商標)、ポリオキシメチレン(POM)又はそれらの組み合わせを含むポリマーから作られ得る。
【0085】
他のいくつかの実施形態では、第1の中空部材及び/又は第2の部材は、チタン、ジルコニウム及び鋼という元素又は合金の少なくとも1つを含む金属又は合金で作られてよい。
【0086】
さらにいくつかの実施形態では、第1の中空部材及び/又は第2の部材は、生体適合性材料から作られてよく、口腔内の使用のために配置されてもよい。
【0087】
第2の態様では、本発明は、第1の態様に係るスキャンボディを組み立てる方法に関し、当該方法は、近位端開口部を通して第2の部材の細長部品を第1の中空部材に挿入することと、中央部開口部を通して第2の部材の保持手段を第1の部材に挿入することと、中央部開口部を通して操作することにより、保持手段を細長部品の上部に締結することとを含む。
【0088】
締結とは、所定の位置にロックされるなど、固定されたと言及され得る。
【0089】
いくつかの実施形態では、締め付けは、レーザー溶接、接着、ねじ切り、圧入、スナップフィット又は締まりばめによる。
【0090】
本発明の第1、第2及び他の態様及び実施形態は、それぞれ他の態様及び実施形態のいずれかと組み合わせてよい。本発明のこれら及び他の態様は、以下の実施形態から明らかとなり、かつ当該実施形態を参照して明確に説明されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0091】
本発明に係るスキャンボディ及び方法について、ここで添付の図に関してより詳細に説明する。図は、本発明を実施する1つの態様を示しており、添付の請求項一式の範囲内に該当する他の可能な実施形態に限定されるものとは解釈されない。
【
図1】
図1は、本発明のいくつかの実施形態に係るスキャンボディの2つの側面図を示す。
【
図2】
図2は、本発明のいくつかの実施形態に係るスキャンボディの2つの側面図を示す。
【
図3】
図3は、本発明のいくつかの実施形態に係るスキャンボディの
図2に示される軸AAに沿った断面を示す。
【
図4】
図4は、異なる側面開口部によって特徴付けられるスキャンボディの2つの異なる実施形態の側面図を示す。
【
図5】
図5は、異なる側面開口部によって特徴付けられるスキャンボディの2つの異なる実施形態の側面図を示す。
【
図6】
図6は、本発明のいくつかの実施形態に係る細長部品の正面図を示す。
【
図7】
図7は、本発明のいくつかの実施形態に係る
図6の細長部品の断面を示す。
【
図8】
図8は、保持手段が細長部品に固定される前後の、本発明のいくつかの実施形態に係る第2の部材の三次元図及び断面図を示す。
【
図9】
図9は、保持手段が細長部品に固定される前後の、本発明のいくつかの実施形態に係る第2の部材の三次元図及び断面図を示す。
【
図10】
図10は、保持手段が細長部品に固定される前後の、本発明の他のいくつかの実施形態に係る第2の部材の三次元図及び断面図を示す。
【
図11】
図11は、保持手段が細長部品に固定される前後の、本発明の他のいくつかの実施形態に係る第2の部材の三次元図及び断面図を示す。
【
図12】
図12は、保持手段が細長部品に固定される前後の、本発明のさらにいくつかの実施形態に係る第2の部材の三次元図及び断面図を示す。
【
図13】
図13は、保持手段が細長部品に固定される前後の、本発明のさらにいくつかの実施形態に係る第2の部材の三次元図及び断面図を示す。
【
図14】
図14は、本発明のいくつかの実施形態に係る保持手段の三次元図である。
【
図15】
図15は、本発明のいくつかの実施形態に係る細長部品の三次元図である。
【
図16】
図16は、本発明の一態様に係るスキャンボディを組み立てる方法のフローチャートを示す。
【
図17】
図17は、本発明のいくつかの実施形態に係るスキャンボディの概略図である。
【
図18】
図18は、本発明のいくつかの実施形態に係るスキャンボディの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0092】
図1及び
図2は、本発明のいくつかの実施形態に係るスキャンボディ1の2つの側面図を示す。
【0093】
スキャンボディ1は、スキャンボディの向きや位置を見つけるための光学スキャンシステムで認識可能な幾何学的特徴6を示す。
【0094】
図1では、スキャンボディ1の第1の中空部材の3つのセクションが示されている。第1の中空部材は、遠位端部3、中間部4及び近位端部5を示す。
【0095】
図3は、
図2に示される軸AAに沿ったスキャンボディ1の断面を示す。
【0096】
図3では、遠位端部3、中間部4及び近位端部5を有する第1の中空部材2が示されている。
【0097】
第2の部材29は、第1の中空部材2の中空領域に位置する。第2の部材29は、上部10と端ねじ部9とを有する細長部品8を備える。細長部品8は、近位端開口部13を通して第1の中空部材2の中空領域内に挿入される。
【0098】
保持手段11は、細長部品8の少なくとも一部を第1の中空部材内に保持するように、細長部品8の上部10に固定される。
【0099】
保持手段11は、中間部開口部7を介して第1の中空部材2の中空領域内に導入される。
【0100】
先端開口部12は、スキャンボディ1を歯科インプラント又はインプラントアナログに締結するためにドライバ又はドライバ先端などの締め付け具を挿入することを可能にする。
【0101】
図4及び
図5は、楕円及び矩形の側面又は中間部開口部21及び22によって特徴付けられるスキャンボディ19及び20の側面図を示す。中間部開口部21及び22は、それぞれの機能を果たすことを可能にするのに適した形状を有している。
【0102】
図6及び
図7は、本発明のいくつかの実施形態に係る細長部品24の正面図及び断面図を示す。
【0103】
細長部品24は、上部31及び端ねじ部30によって特徴付けられる。
【0104】
図8及び
図9は、保持手段がヘッド部品14を備える第2の部材の三次元図及び断面図を示す。
【0105】
ヘッド部品、すなわちボールヘッド14は、スナップフィット機能によって細長部品25の上部に固定される。ボールヘッド14の外径は、近位端開口部の最大寸法よりも大きく、細長部品25の最大寸法よりも大きい。
【0106】
図10及び
図11は、保持手段がボールヘッド15などのヘッド部品を備える第2の部材の三次元図及び断面図を示す。ボールヘッド15は、細長部品26の上部に係合するように構成される。
【0107】
ボールヘッド15は、先端開口部を通して締め付け具を受けるための凹部も備える。
【0108】
図12及び
図13は、保持手段18が細長部品27に固定される前後の第2の部材の三次元図及び断面図を示す。
【0109】
保持手段18は、近位端開口部の最大寸法よりも大きい外径を有するボールヘッドである。
【0110】
ボールヘッド18が細長部品27の上部にスナップフィットされると、スキャンボディの長手方向軸に沿った動きが妨げられる。
【0111】
細長部品27は、先端開口部を通して挿入可能な締め付け具と係合するように構成された上部を有し、それによって、スキャンボディを歯科インプラント又はインプラントアナログに締結することを可能にする。
【0112】
図14は、開放リング16である保持手段の三次元図である。
【0113】
図15は、細長部品28の三次元図である。開放リング16は、細長部品28の上部に固定されると、細長部品15の少なくとも一部を第1の中空部材内に保持する。
【0114】
細長部品28は、先端開口部を通して挿入可能な締め付け具と係合するように構成された上部を有し、それによって、スキャンボディを歯科インプラント又はインプラントアナログに締結することを可能にする。
【0115】
図16は、本発明の一態様に係るスキャンボディを組み立てる方法17のフローチャートを示す。
【0116】
スキャンボディを組み立てる方法17は、
【0117】
- S1、すなわち、近位端開口部を通して第2の部材の細長部品を第1の中空部材に挿入するステップと、
【0118】
- S2、すなわち、中央部開口部を通して第2の部材の保持手段を第1の部材に挿入するステップと、
【0119】
- S3、すなわち、中央部開口部を通して操作することにより、保持手段を細長部品の上部に締結するステップとを含む。
【0120】
図17及び
図18は、スロット形開口部23を有するスキャンボディの概略図及び概略断面図である。
【0121】
細長部品32が近位端開口部33を通して導入されると、保持手段34は、スロット形開口部23を通して導入されて、細長部品32の上部に締結することができる。
【0122】
以上、本発明を特定の実施形態に関連して説明したが、本発明は、いかなる態様でも提示された実施例に限定されるものと解釈されるべきではない。本発明の範囲は、添付の請求項一式によって定められる。請求項の文脈において、「comprising(備える)」 又は 「comprises(備える)」 という用語は、他の可能な部材又はステップを除外しない。また、「a」又は「an」等の言及は、複数を除外するものと解釈すべきではない。図面に示された部材に関する請求項における符号の使用もまた、本発明の範囲を限定するものと解釈してはならない。さらに、異なる請求項に記載された個々の特徴は、有利に組み合わせられ得るものであり、かつ異なる請求項においてこれらの特徴を記載することは、特徴の組み合わせが可能かつ有利であることを排除するものではない。
【国際調査報告】