IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 吉林省中研高分子材料股▲ふん▼有限公司の特許一覧

特表2024-531783ポリエーテルエーテルケトン及びその製造方法
<>
  • 特表-ポリエーテルエーテルケトン及びその製造方法 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】ポリエーテルエーテルケトン及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 65/40 20060101AFI20240822BHJP
【FI】
C08G65/40
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024516995
(86)(22)【出願日】2022-09-13
(85)【翻訳文提出日】2024-03-15
(86)【国際出願番号】 CN2022118390
(87)【国際公開番号】W WO2023040819
(87)【国際公開日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】202111088630.5
(32)【優先日】2021-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524052701
【氏名又は名称】吉林省中研高分子材料股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】謝懐傑
(72)【発明者】
【氏名】平仕衡
【テーマコード(参考)】
4J005
【Fターム(参考)】
4J005AA24
4J005BB01
(57)【要約】
本発明は、ポリエーテルエーテルケトン及びその製造方法を開示する。本発明の方法は、ビスフェノール化合物を含む容器内にアルゴンガスを導入して、ビスフェノール化合物の錯体を得るステップと、フルオロケトン、アルカリ金属炭酸塩、ビスフェノール化合物の錯体及び溶媒を混合し、混合物に対して昇温プログラミング処理を行って、ポリエーテルエーテルケトンを生成するステップとを含む。これにより、ポリエーテルエーテルケトンを製造する前に、ビスフェノール化合物がフルオロケトン及びアルカリ金属炭酸塩との反応時にキノン類に酸化されないように、ビスフェノール化合物をアルゴンガスで保護して、色度値Lがより高く、色がより白くなる固体のポリエーテルエーテルケトンが得られる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビスフェノール化合物を含む容器内にアルゴンガスを導入して、ビスフェノール化合物の錯体を得るステップと、
フルオロケトン、アルカリ金属炭酸塩、ビスフェノール化合物の錯体、及び溶媒を混合し、当該混合物に対して昇温プログラミング処理を行って、ポリエーテルエーテルケトンを生成するステップとを含む、ポリエーテルエーテルケトンの製造方法。
【請求項2】
前記錯体は、Ar原子を含み、前記錯体の形成は、
ビスフェノール化合物を含む容器内にアルゴンガスを流量20~100ml/minで導入し、加熱してビスフェノール化合物を溶融させるステップと、
アルゴンガスの流量を150~250ml/minに増加させ、ビスフェノール化合物を第1の所定温度に加熱して保持して、ビスフェノール化合物の錯体を得るステップとを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ビスフェノール化合物が溶融した後、撹拌条件下でアルゴンガスを導入し続け、撹拌時の回転速度は、70~100rpmである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
アルゴンガスの純度は、80%~100%である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
第1の所定温度は、178℃~248℃である、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
昇温プログラミング処理は、
フルオロケトン、アルカリ金属炭酸塩、ビスフェノール化合物の錯体及び溶媒の混合物を第2の所定温度に昇温して、第1の溶液を得るステップと、
第1の溶液を第3の所定温度に昇温して保持して、第2の溶液を得るステップと、
第2の溶液を第4の所定温度に昇温して保持して、第3の溶液を得るステップとを含み、
第2の所定温度は、190℃~210℃であり、
第3の所定温度は、270℃~290℃であり、
第4の所定温度は、300℃~320℃である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
昇温プログラミング処理は、不活性ガスの保護下で行われ、前記混合物を第2の所定温度に昇温する前に、前記混合物が溶融するまで前記混合物を加熱するステップをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
ビスフェノール化合物は、ヒドロキノン又はビフェノールのうちの少なくとも1つを含み、ヒドロキノンの純度は、90%~103%である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
ヒドロキノンの純度は、98%~102%である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
フルオロケトンは、4,4’-ジフルオロベンゾフェノン、3,4’-ジフルオロベンゾフェノン、2,4’-ジフルオロベンゾフェノンのうちの少なくとも1つを含み、
アルカリ金属炭酸塩は、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ストロンチウム、炭酸セシウムのうちの1つ又は2つを含み、
溶媒は、スルホラン、ジフェニルスルホン、ジメチルスルホキシド及びメチルピロリドンのうちの少なくとも1つを含み、
ビスフェノール化合物、フルオロケトン及びアルカリ金属炭酸塩のモル比は、(1~1.2):1:(1~1.1)である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
ポリエーテルエーテルケトンを含む混合溶液に対して分離精製処理を行って、固体のポリエーテルエーテルケトンを得るステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
ポリエーテルエーテルケトンの色度値(L)は、(81.15~88.26)である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
ポリエーテルエーテルケトンの色度値(L)と引張強度(Rm)との積の範囲は、9975≧Rm*L*≧5100である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
不活性ガスは、アルゴンガスである、請求項7に記載の方法。
【請求項15】
請求項1から13のいずれか一項又は請求項14に記載の方法で製造された、固体のポリエーテルエーテルケトン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子材料の分野に関し、具体的には、ポリエーテルエーテルケトン及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリ(アリールエーテルケトン)ポリマーは、1970年代後半に研究開発された新規な半結晶性芳香族熱可塑性エンジニアリングプラスチックであり、耐高温性、耐薬品腐食性、高強度、高弾性率、高破壊靭性及び優れた寸法安定性などを有する直鎖芳香族高分子材料である。ポリ(アリールエーテルケトン)ポリマーの代表的なものが、ポリエーテルエーテルケトンであり、そのガラス転移温度(Tg)は143℃であり、融点は334℃であり、到達可能な最大結晶化度は48%であり、一般的に20%~30%である。アモルファス状態での密度は1.265g/cmであり、最大結晶化度時の密度は1.32g/cmである。その結晶形により、優れた耐熱性及び機械的特性を有し、連続使用温度は260℃であり、瞬間使用温度は300℃に達することができ、400℃で短時間で分解しない。ポリエーテルエーテルケトンは、優れた総合特性を有するため、多くの分野で幅広く応用されている。現在市販されているポリエーテルエーテルケトンの合成方法は、ジフェニルスルホンを溶媒とし、4,4’-ジフルオロベンゾフェノン及び1,4-ベンゼンジオールが炭酸塩の存在下で求核及び共重合反応を行って製造することであり、このような方法で製造されたポリエーテルエーテルケトンは、色が黄色くなり、主に様々な産業の部品などの分野に応用され、幅広く応用されている。
【0003】
しかしながら、特定の分野において、色がより白いポリエーテルエーテルケトンが要求されるため、現在のポリエーテルエーテルケトン及びその製造方法をさらに改善する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする技術的課題は、色度値Lがより高く、色がより白いポリエーテルエーテルケトンを如何に製造するかということである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このため、本発明の1つの目的は、ポリエーテルエーテルケトンの製造方法を提供することである。本方法は、ビスフェノール化合物を含む容器内にアルゴンガスを導入して、ビスフェノール化合物の錯体を得るステップと、フルオロケトン、アルカリ金属炭酸塩、ビスフェノール化合物の錯体及び溶媒を混合し、混合物に対して昇温プログラミング処理を行って、ポリエーテルエーテルケトンを生成するステップとを含む。これにより、ポリエーテルエーテルケトンを製造する前に、ビスフェノール化合物がフルオロケトン及びアルカリ金属炭酸塩との反応時にキノン類に酸化されないように、ビスフェノール化合物をアルゴンガスで保護して、色度値Lがより高く、色がより白い固体のポリエーテルエーテルケトンが得られる。
【0006】
本発明の実施例において、当該錯体は、Ar原子を含み、錯体の形成は、ビスフェノール化合物を含む容器内にアルゴンガスを流量20~100ml/minで導入し、加熱してビスフェノール化合物を溶融させるステップと、アルゴンガスの流量を150~250ml/minに増加させ、ビスフェノール化合物を第1の所定温度に加熱して保持して、ビスフェノール化合物の錯体を得るステップとを含む。これにより、ポリエーテルエーテルケトンを製造する前に、ビスフェノール化合物がフルオロケトン及びアルカリ金属炭酸塩との反応時にキノン類に酸化されないように、ビスフェノール化合物をアルゴンガスで保護して、色度値Lがより高く、色がより白い固体のポリエーテルエーテルケトンが得られる。
【0007】
本発明の実施例において、ビスフェノール化合物が溶融した後、撹拌条件下でアルゴンガスを導入し、撹拌時の回転速度は、70~100rpmである。これにより、ビスフェノール化合物とアルゴンガスが十分に接触し、反応が十分に進行する。
【0008】
本発明の実施例において、アルゴンガスの純度は、80%~100%である。これにより、ビスフェノール化合物の錯体の収率を向上させることができる。
【0009】
本発明の実施例において、第1の所定温度は、178℃~248℃である。これにより、ビスフェノール化合物とアルゴンガスが十分に反応する。
【0010】
本発明の実施例において、昇温プログラミング処理は、フルオロケトン、アルカリ金属炭酸塩、ビスフェノール化合物の錯体及び溶媒の混合物を第2の所定温度に昇温して、第1の溶液を得るステップと、第1の溶液を第3の所定温度に昇温して保持して、第2の溶液を得るステップと、第2の溶液を第4の所定温度に昇温して保持して、第3の溶液を得るステップとを含み、第2の所定温度は、190℃~210℃であり、第3の所定温度は、270℃~290℃であり、第4の所定温度は、300℃~320℃である。これにより、反応が十分に進行する。
【0011】
本発明の実施例において、第2の所定温度の保持時間は、60~70分間であり、第3の所定温度の保持時間は、50~60分間であり、第4の所定温度の保持時間は、110~130分間である。
【0012】
本発明の実施例において、昇温プログラミング処理は、不活性ガスの保護下で行われ、混合物を第2の所定温度に昇温する前に、混合物が溶融するまで混合物を加熱するステップをさらに含む。これにより、反応が十分に進行する。
【0013】
本発明の実施例において、不活性ガスは、アルゴンガスである。
【0014】
本発明の実施例において、ビスフェノール化合物は、ヒドロキノン又はビフェノールのうちの少なくとも1つを含み、ヒドロキノンの純度は、90%~103%である。これにより、副反応の発生を低減することができる。
【0015】
本発明の実施例において、ヒドロキノンの純度は、98%~102%である。これにより、副反応の発生を低減することができる。
【0016】
本発明の実施例において、フルオロケトンは、4,4’-ジフルオロベンゾフェノン、3,4’-ジフルオロベンゾフェノン、2,4’-ジフルオロベンゾフェノンのうちの少なくとも1つを含み、アルカリ金属炭酸塩は、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ストロンチウム、炭酸セシウムのうちの1つ又は2つを含み、溶媒は、スルホラン、ジフェニルスルホン、ジメチルスルホキシド及びメチルピロリドンのうちの少なくとも1つを含み、ビスフェノール化合物、フルオロケトン及びアルカリ金属炭酸塩のモル比は、(1~1.2):1:(1~1.1)である。これにより、反応を十分に進行させることができる。
【0017】
本発明の実施例において、本方法は、ポリエーテルエーテルケトンを含む混合溶液に対して分離精製処理を行って、固体のポリエーテルエーテルケトンを得るステップをさらに含む。これにより、反応で生成された他の生成物を除去して、ポリエーテルエーテルケトンの純度を向上させることができる。
【0018】
本発明の実施例において、ポリエーテルエーテルケトンの色度値(L)は、(81.15~88.26)である。これにより、白色のポリエーテルエーテルケトンが得られる。
【0019】
本発明の実施例において、ポリエーテルエーテルケトンの色度値(L)と引張強度(Rm)との積の範囲は、9975≧Rm*L*≧5100である。これにより、ポリエーテルエーテルケトンの特性が向上する。
【0020】
本発明の別の態様では、固体のポリエーテルエーテルケトンを提供する。当該固体のポリエーテルエーテルケトンは、前述の方法で製造されたものであるため、前述の方法で製造されたポリエーテルエーテルケトンの全ての特徴及び利点を有し、ここでは説明を省略する。一般に、色度値(L)が高く、色が白いという利点を少なくとも有する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
本発明の上記及び/又は追加の態様及び利点は、以下の図面を参照して実施例を説明することにより、明らかになって理解されやすくなる。
【0022】
図1】本発明の一態様に係るポリエーテルエーテルケトンの製造方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施例を詳細に説明する。以下に説明される実施例は、例示的なものであり、本発明を解釈するものに過ぎず、本発明を限定するものと理解すべきではない。実施例において具体的な技術又は条件が明記されない場合、本分野の文献に記載されている技術、条件に従うか又は製品仕様書に従うものとする。使用される試薬又は機器は、メーカーが明記されない場合、いずれも市販で入手できる通常の製品である。
【0024】
本発明の一態様では、ポリエーテルエーテルケトンの製造方法を提供する。本方法は、ビスフェノール化合物を含む容器内にアルゴンガスを導入して、ビスフェノール化合物の錯体を得るステップと、フルオロケトン、アルカリ金属炭酸塩、ビスフェノール化合物の錯体及び溶媒を混合し、当該混合物に対して昇温プログラミング処理を行って、ポリエーテルエーテルケトンを生成するステップとを含む。これにより、ポリエーテルエーテルケトンを製造する前に、ビスフェノール化合物がフルオロケトン及びアルカリ金属炭酸塩との反応時に酸化されないように、ビスフェノール化合物をアルゴンガスで保護して、色度値Lが高く、色が白い固体のポリエーテルエーテルケトンを得る。
【0025】
理解を容易にするために、以下、まず、本方法が上記有利な効果を奏することが実現できる原理を簡単に説明する。
【0026】
前述したように、現在市販されているポリエーテルエーテルケトンの合成方法は、ジフェニルスルホンを溶媒とし、4,4’-ジフルオロベンゾフェノン及び1,4-ベンゼンジオールが炭酸ナトリウムの存在下で求核及び共重合反応を行って製造することであり、このような方法で製造されたポリエーテルエーテルケトンは、色が黄色くなり、主に様々な産業の部品などの分野に応用され、幅広く応用されている。しかしながら、特定の分野において、色がより白いポリエーテルエーテルケトンを必要とするが、市場にこのような製品がなく、特定の分野のニーズを満たすことができない。本発明者は、現在の方法で製造されたポリエーテルエーテルケトンの色が黄色くなる原因が、求核置換反応過程において、ヒドロキノンがキノン類に酸化され、キノン類が一定の色になることであることを見出した。本発明に係る方法では、ヒドロキノンが4,4’-ジフルオロベンゾフェノン及び炭酸ナトリウムと反応する前に、まず、アルゴンガスでヒドロキノンを保護し、Ar原子を含むヒドロキノン錯体を生成することにより、ヒドロキノンが後続の求核置換反応過程において1,4-ベンゾキノンに酸化されず、ヒドロキノン錯体が炭酸ナトリウムと直接反応してナトリウムフェノラートを生成して求核置換を行うことができ、この方法で製造されたポリエーテルエーテルケトンの色が白くなる。
【0027】
以下、本発明の実施例に基づいて、本方法の各ステップを詳細に説明する。図1に示すように、本方法は、ステップS100、S200及びS300を含んでもよい。
【0028】
ステップS100:ビスフェノール化合物を含む容器内にアルゴンガスを導入する。
【0029】
当該ステップにおいて、ビスフェノール化合物を含む容器内にアルゴンガスを流量20~100ml/minで導入し、加熱してビスフェノール化合物を溶融させる。
【0030】
本発明のある実施例において、アルゴンガスの流量は、特に限定されず、当業者であれば、必要に応じて自由に選択することができ、具体的には、30、50、80ml/minなどであってもよい。本発明のある実施例において、当該ステップにおいて、ビスフェノール化合物を加熱して溶融させた後、アルゴンガスの流量を増加させ、ビスフェノール化合物を第1の所定温度に加熱して保持して、Ar原子を含むビスフェノール化合物の錯体を得てもよい。本発明のある実施例において、アルゴンガスの流量は、特に限定されず、当業者であれば、ビスフェノール化合物の錯体を得るために、必要に応じて自由に選択することができ、例えば200ml/minであってもよい。
【0031】
本発明者は、上記処理により、ビスフェノール化合物がビスフェノール化合物の錯体を形成することができ、具体的には、ビスフェノール化合物におけるフェノール性水酸基がAr原子とともに弱い化学結合を形成することができることを見出した。当該錯体におけるフェノール性水酸基とAr原子との間の結合力は弱く、常温で長期間安定して存在できない。これにより、当該錯体は、後続の過程において、アルカリ金属炭酸塩とともにフェネートを形成し続けることができるため、後続のポリエーテルエーテルケトンの生成に影響を与えない。しかしながら、当該ステップにおいて形成された錯体におけるAr原子は、フェノール性水酸基に対して一定の保護作用を有するため、ビスフェノール化合物がフェネートを形成する前にキノン類化合物に酸化されることを防止することができる。
【0032】
本発明の実施例において、ビスフェノール化合物は、ヒドロキノン又はビフェノールのうちの少なくとも1つを含み、上記ヒドロキノンの純度は、90%~103%であり、好ましくは98%~102%である。これにより、副反応の発生を低減する。
【0033】
本発明のある実施例において、アルゴンガスの純度は、80%~100%であり、好ましくは99.0%~99.9%であり、最も好ましくは99.999%である。これにより、ビスフェノール化合物の錯体の収率を向上させる。
【0034】
本発明のある実施例において、ビスフェノール化合物が溶融した後、ビスフェノール化合物が十分に錯体を形成するように、撹拌条件下でアルゴンガスを導入し続けてもよい。当該ステップにおいて、撹拌時の回転速度は、70~100rpmであってもよく、具体的には80rpmであってもよい。この場合、アルゴンガスの流量を増加させてもよく、例えば、アルゴンガスの流量を150~250ml/min、具体的には約200ml/minに増加させてもよい。これにより、ビスフェノール化合物とアルゴンガスが十分に接触して、反応が十分に進行する。
【0035】
本発明のある実施例において、当該ステップにおいて、反応後の生成物の重量は、反応前の投入原料の重量より大きく、また、実験過程において、錯体が完全に生成される前に、容器の排気口のアルゴンガスの流速は、吸気口のアルゴンガスの流速より小さい。これにより、容器内に導入されたアルゴンガスが反応に関与しており、当該ステップにおいて得られたものが純粋な溶融したビスフェノール化合物ではないと判断することができる。本発明のある具体的な実施例において、当該ステップにおいて得られるのは、Ar原子を含むヒドロキノン錯体である。
【0036】
本発明者は、当該ステップにおいて、アルゴンガスの導入流量及び時間を錯体の形成状況に応じて調整できることを見出した。具体的には、アルゴンガスとビスフェノール化合物との反応は界面で集中するため、当該ステップにおける容器の体積及び界面の面積などの状況に応じて、導入されるアルゴンガスの流量を調整することにより、容器の内部に、界面でビスフェノール化合物とタイムリーに反応させるのに十分なアルゴンガスを有することを保証する。ビスフェノール化合物が溶融した後、反応をより速く進行させるように、撹拌条件下でアルゴンガスの流量を増加させてもよい。容器の入口と出口のアルゴンガスの流量が一致すると検出された場合、反応が完了したと判断することができ、例えば、第1の所定温度の保持時間は、1h(時間)である。
【0037】
本発明のある実施例において、第1の所定温度は、178℃~248℃である。具体的には、188℃、198℃、208℃、218℃、228℃、238℃などであってもよい。これにより、ビスフェノール化合物とアルゴンガスが十分に反応する。なお、ビスフェノール化合物の加熱速度は、特に限定されず、当業者であれば、実験要件を満たすことができる限り、必要に応じて選択することができる。
【0038】
ステップS200:フルオロケトンと、アルカリ金属炭酸塩と、上記ビスフェノール化合物の錯体と、及び溶媒とを混合する。
【0039】
当該ステップにおいて、フルオロケトン、アルカリ金属炭酸塩、ビスフェノール化合物の錯体及び溶媒を混合し、混合物に対して昇温プログラミング処理を行う。
【0040】
本発明の実施例において、フルオロケトンの種類は、特に限定されず、例えば、4,4’-ジフルオロベンゾフェノン、3,4’-ジフルオロベンゾフェノン、2,4’-ジフルオロベンゾフェノンのうちの少なくとも1つを含んでもよい。当業者であれば、実験条件を満たす限り、必要に応じて選択することができる。これにより、本方法で得られたポリエーテルエーテルケトンの特性をさらに向上させることができる。
【0041】
本発明のある実施例において、アルカリ金属炭酸塩は、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ストロンチウム、炭酸セシウムのうちの1つ又は2つを含む。これにより、本方法で製造されたポリエーテルエーテルケトンの特性をさらに向上させることができる。
【0042】
本発明の実施例において、溶媒の具体的な種類は、特に限定されず、例えば、スルホラン、ジフェニルスルホン、ジメチルスルホキシド及びメチルピロリドンのうちの少なくとも1つを含んでもよい。当業者であれば、実験条件を満たす限り、必要に応じて選択することができる。具体的には、上記高沸点不活性プロトン性溶媒を使用することにより、本方法で得られたポリエーテルエーテルケトンの特性をさらに向上させることができる。
【0043】
本発明のある実施例において、ビスフェノール化合物の錯体、フルオロケトン及びアルカリ金属炭酸塩のモル比は、(1~1.2):1:(1~1.1)であり、具体的には(1~1.2):1:1.1であってもよく、より具体的には1:1:1.1であってもよい。
【0044】
本発明者は、アルカリ金属炭酸塩が上記モル比を満たす場合、分子量が小さく、機械的特性に優れたポリエーテルエーテルケトンを得ることができ、また、アルカリ金属炭酸塩の量が過剰にならないため、後続の生成物の分離及び精製に有利であることを見出した。
【0045】
本発明の実施例において、昇温プログラミング処理は、フルオロケトンと、アルカリ金属炭酸塩と、ビスフェノール化合物の錯体と、及び溶媒の混合物とを第2の所定温度に昇温して、第1の溶液を得るステップと、第1の溶液を第3の所定温度に昇温して保持して、第2の溶液を得るステップと、第2の溶液を第4の所定温度に昇温して保持して、第3の溶液を得るステップとを含み、第2の所定温度が190℃~210℃であり、第2の所定温度を保持しながら60~70分間反応させ、第3の所定温度が270℃~290℃であり、第3の所定温度を保持しながら50~60分間反応させ、第4の所定温度が300℃~320℃であり、第4の所定温度を保持しながら110~130分間反応させ、具体的には、第2の所定温度が200℃であり、第2の所定温度を保持しながら60分間反応させ、第3の所定温度が280℃であり、第3の所定温度を保持しながら60分間反応させ、第4の所定温度が305℃であり、第4の所定温度を保持しながら120分間反応させる。これにより、昇温プログラミングにより加熱することで、反応過程における局部過熱を回避し、反応の均一性を向上させて、ポリエーテルエーテルケトンの特性を向上させることができる。なお、混合物を第2の所定温度に昇温し、第2の所定温度から第3の所定温度に昇温し、第3の所定温度から第4の所定温度に昇温するときの昇温速度は、特に限定されず、当業者であれば、要求を満たす限り、必要に応じて選択することができる。
【0046】
本発明の実施例において、昇温プログラミング処理は、不活性ガスの保護下で行われ、上記混合物を第2の所定温度に昇温する前に、上記混合物が溶融するまで上記混合物を加熱するステップをさらに含む。これにより、反応が十分に進行する。ヒドロキノンが酸化されることをさらに防止するために、不活性ガスは、好ましくは、アルゴンガスである。
【0047】
本発明の実施例において、昇温プログラミング処理は、撹拌条件下で行われ、例えば、撹拌時の回転速度は、60rpmであってもよい。
【0048】
ステップS300:分離精製処理
【0049】
当該ステップにおいて、第3の溶液を冷蒸留水に入れると、白色の塊状固体を得ることができる。
【0050】
本発明のある実施例において、固体のポリエーテルエーテルケトンを得るために、得られた白色の塊状固体に対して分離精製処理をさらに行う必要がある。これにより、反応で生成された他の生成物を除去して、ポリエーテルエーテルケトンの純度を向上させることができる。
【0051】
本発明のある実施例では、当該ステップにおいて、白色の塊状固体を粉末に粉砕した後、エタノールで5~6回洗浄して溶媒のジフェニルスルホンを除去し、蒸留水で5~6回洗浄して反応で生成されたフッ化ナトリウムを除去して、白色のポリエーテルエーテルケトン粉末を得る。
【0052】
本発明のある実施例において、ポリエーテルエーテルケトンの色度値Lは、(81.15~88.26)である。これにより、白色のポリエーテルエーテルケトンが得られる。
【0053】
本発明の実施例において、上記ポリエーテルエーテルケトンの色度値(L)と引張強度(Rm)との積の範囲は、9975≧Rm*L*≧5100である。これにより、ポリエーテルエーテルケトンの特性を向上させる。
【0054】
本発明の別の態様では、固体のポリエーテルエーテルケトンを提供する。当該固体のポリエーテルエーテルケトンは、前述の方法で製造されたものであるため、前述の方法で製造されたポリエーテルエーテルケトンの全ての特徴及び利点を有し、ここでは説明を省略する。一般に、色度値Lが高く、色が白いという利点を少なくとも有する。
【0055】
以下、本発明の具体的な実施例に基づいて、本発明を説明する。実施例において具体的な技術又は条件が明記されない場合、本分野の文献に記載されている技術、条件に従うか又は製品仕様書に従うものとする。使用される試薬又は機器は、メーカーが明記されない場合、いずれも市販で入手できる通常の製品である。
【0056】
特性試験
色度試験方法について
380℃の条件下でサンプルを標準色度サンプルプレートに射出成形し、比色計で色度値Lを測定する。
【0057】
引張強度について
射出成形機により標準試験サンプルプレートに射出成形した後、島津AG-Xplus万能試験機を使用して、ISO 527に準拠してサンプルの引張強度を検出し、試験方法として、まず、サンプルを射出成形機により標準試験サンプルプレートに射出成形し、金型を利用して50×4mmのサンプルストリップに切断し、サンプルストリップの両端を万能試験機の引張金型に固定し、引張速度が2mm/minであり、各サンプルについて試験を3回繰り返してその平均値を取る。
【0058】
粘度について
還元粘度(RV)は、ASTM D2857-95(2007)に準拠して、25℃で濃硫酸(1wt.%/vol)中で測定される。粘度計チューブは、50番のCannon Fenskeである。使用される溶液は、1.0000±0.0004gの樹脂を100ml±0.3mlの濃硫酸(95%~98%、密度=1.84)に溶解して調製される。g/dlでの濃度Cは、ポリマーの重量(g)を体積(dl)で割ったものに等しい(100ml=1dl)。このような溶解を促進するために、粉砕された粉末(およそ平均粒径200~600μm)を使用する。このサンプルを室温で(加熱せずに)溶解する。
【0059】
溶液を使用前にガラスフリット(中間ポロシティ)で濾過する。以下の式に示すようにRVを計算する。
【数1】
【0060】
ここで、t溶液とt溶媒はそれぞれ、当該溶液とブランク溶媒について測定された流出時間である。流出時間は、少なくとも3回の測定結果の平均値を使用する。これらの条件下では、流出時間は、200sより長く、運動エネルギーを補正しないはずである。
【0061】
濃硫酸中で当該ポリマーのスルホン化反応が起こる可能性があるため、溶液調製後の3時間以内に当該溶液の流出時間を測定する必要がある。
【0062】
下記実施例におけるヒドロキノンの純度は、いずれも99.5%以上であり、最高純度は、99.9%に達する。
【0063】
実施例1
500mlの四つ口フラスコに300gのヒドロキノンを加え、四つ口フラスコの真ん中の口部から撹拌棒を挿入し、1つの側口部に三方管を挿入し、三方管に温度計とアルゴンガス吸気口をそれぞれ接続し、もう1つの側口部から通気管を四つ口フラスコの底部に挿入し、さらに1つの側口部にアリーン冷却器を排気口として接続する。四つ口フラスコを電気加熱マントルに入れ、四つ口フラスコに高純度アルゴンガスを2つの吸気側口部から導入し、アルゴンガスの流量は50ml/min(分)であり、アルゴンガスの純度は≧99.999%である。ヒドロキノンが溶融するまで加熱し、アルゴンガスの流量を200ml/minに調節し、撹拌を開始し回転速度を80rpmに増加させ、溶融したヒドロキノンの温度を178℃に保持し、反応を1h継続し、溶融したヒドロキノンを収容した四つ口フラスコを熱したオイルバスに入れて室温まで冷却し、アルゴンガスの導入を止めて、ヒドロキノンとアルゴンガスの錯体を得て、フラスコ内のヒドロキノン錯体を取り出し、質量を量ると301.12gである。
【0064】
三つ口フラスコに521.34gのジフェニルスルホン、218.2gの4,4’-ジフルオロベンゾフェノン、121.89gの炭酸ナトリウム及び110.51gのヒドロキノン錯体を加え、高純度アルゴンガスを導入し、溶融するまで加熱し、撹拌を開始し回転速度を60rpmに増加させ、200℃に昇温して1h保持し、引き続き280℃に加熱して1h保持し、305℃に昇温し、その温度を保持しながら2h反応させ、材料を冷蒸留水に入れて、白色の塊状物を得て、白色の塊状物を粉砕し、エタノールで5~6回洗浄して溶媒のジフェニルスルホンを除去し、蒸留水で5~6回洗浄して反応で生成されたフッ化ナトリウムを除去して、白色の粉末を得る。
【0065】
実施例2
500mlの四つ口フラスコに300gのヒドロキノンを加え、四つ口フラスコの真ん中の口部から撹拌棒を挿入し、1つの側口部に三方管を挿入し、三方管に温度計とアルゴンガス吸気口をそれぞれ接続し、もう1つの側口部から通気管を四つ口フラスコの底部に挿入し、さらに1つの側口部にアリーン冷却器を排気口として接続する。四つ口フラスコを電気加熱マントルに入れ、四つ口フラスコに高純度アルゴンガスを2つの吸気側口部から導入し、アルゴンガスの流量は50ml/minであり、アルゴンガスの純度は≧99.999%である。ヒドロキノンが溶融するまで加熱し、アルゴンガスの流量を200ml/minに調節し、撹拌を開始し回転速度を80rpmに増加させ、溶融したヒドロキノンの温度を188℃に保持し、反応を1h継続し、溶融したヒドロキノンを収容した四つ口フラスコを熱したオイルバスに入れて室温まで冷却し、アルゴンガスの導入を止めて、ヒドロキノンとアルゴンガスの錯体を得て、フラスコ内のヒドロキノン錯体を取り出し、質量を量ると301.66gである。
【0066】
三つ口フラスコに521.34gのジフェニルスルホン、218.2gの4,4’-ジフルオロベンゾフェノン、121.89gの炭酸ナトリウム及び110.71gのヒドロキノン錯体を加え、高純度アルゴンガスを導入し、溶融するまで加熱し、撹拌を開始し回転速度を60rpmに増加させ、200℃に昇温して1h保持し、引き続き280℃に加熱して1h保持し、305℃に昇温し、その温度を保持しながら2h反応させ、材料を冷蒸留水に入れて、白色の塊状物を得て、白色の塊状物を粉砕し、エタノールで5~6回洗浄して溶媒のジフェニルスルホンを除去し、蒸留水で5~6回洗浄して反応で生成されたフッ化ナトリウムを除去して、白色の粉末を得る。
【0067】
実施例3
500mlの四つ口フラスコに300gのヒドロキノンを加え、四つ口フラスコの真ん中の口部から撹拌棒を挿入し、1つの側口部に三方管を挿入し、三方管に温度計とアルゴンガス吸気口をそれぞれ接続し、もう1つの側口部から通気管を四つ口フラスコの底部に挿入し、さらに1つの側口部にアリーン冷却器を排気口として接続する。四つ口フラスコを電気加熱マントルに入れ、四つ口フラスコに高純度アルゴンガスを2つの吸気側口部から導入し、アルゴンガスの流量は50ml/minであり、アルゴンガスの純度は≧99.999%である。ヒドロキノンが溶融するまで加熱し、アルゴンガスの流量を200ml/minに調節し、撹拌を開始し回転速度を80rpmに増加させ、溶融したヒドロキノンの温度を198℃に保持し、反応を1h継続し、溶融したヒドロキノンを収容した四つ口フラスコを熱したオイルバスに入れて室温まで冷却し、アルゴンガスの導入を止めて、ヒドロキノンとアルゴンガスの錯体を得て、フラスコ内のヒドロキノン錯体を取り出し、質量を量ると301.95gである。
【0068】
三つ口フラスコに521.34gのジフェニルスルホン、218.2gの4,4’-ジフルオロベンゾフェノン、121.89gの炭酸ナトリウム及び110.82gの実施例1のヒドロキノン錯体を加え、高純度アルゴンガスを導入し、溶融するまで加熱し、撹拌を開始し回転速度を60rpmに増加させ、200℃に昇温して1h保持し、引き続き280℃に加熱して1h保持し、305℃に昇温し、その温度を保持しながら2h反応させ、材料を冷蒸留水に入れて、白色の塊状物を得て、白色の塊状物を粉砕し、エタノールで5~6回洗浄して溶媒のジフェニルスルホンを除去し、蒸留水で5~6回洗浄して反応で生成されたフッ化ナトリウムを除去して、白色の粉末を得る。
【0069】
実施例4
500mlの四つ口フラスコに300gのヒドロキノンを加え、四つ口フラスコの真ん中の口部から撹拌棒を挿入し、1つの側口部に三方管を挿入し、三方管に温度計とアルゴンガス吸気口をそれぞれ接続し、もう1つの側口部から通気管を四つ口フラスコの底部に挿入し、さらに1つの側口部にアリーン冷却器を排気口として接続する。四つ口フラスコを電気加熱マントルに入れ、四つ口フラスコに高純度アルゴンガスを2つの吸気側口部から導入し、アルゴンガスの流量は50ml/minであり、アルゴンガスの純度は≧99.999%である。ヒドロキノンが溶融するまで加熱し、アルゴンガスの流量を200ml/minに調節し、撹拌を開始し回転速度を80rpmに増加させ、溶融したヒドロキノンの温度を208℃に保持し、反応を1h継続し、溶融したヒドロキノンを収容した四つ口フラスコを熱したオイルバスに入れて室温まで冷却し、アルゴンガスの導入を止めて、ヒドロキノンとアルゴンガスの錯体を得て、フラスコ内のヒドロキノン錯体を取り出し、質量を量ると302.37gである。
【0070】
三つ口フラスコに521.34gのジフェニルスルホン、218.2gの4,4’-ジフルオロベンゾフェノン、121.89gの炭酸ナトリウム及び110.97gのヒドロキノン錯体を加え、高純度アルゴンガスを導入し、溶融するまで加熱し、撹拌を開始し回転速度を60rpmに増加させ、200℃に昇温して1h保持し、引き続き280℃に加熱して1h保持し、305℃に昇温し、その温度を保持しながら2h反応させ、材料を冷蒸留水に入れて、白色の塊状物を得て、白色の塊状物を粉砕し、エタノールで5~6回洗浄して溶媒のジフェニルスルホンを除去し、蒸留水で5~6回洗浄して反応で生成されたフッ化ナトリウムを除去して、白色の粉末を得る。
【0071】
実施例5
500mlの四つ口フラスコに300gのヒドロキノンを加え、四つ口フラスコの真ん中の口部から撹拌棒を挿入し、1つの側口部に三方管を挿入し、三方管に温度計とアルゴンガス吸気口をそれぞれ接続し、もう1つの側口部から通気管を四つ口フラスコの底部に挿入し、さらに1つの側口部にアリーン冷却器を排気口として接続する。四つ口フラスコを電気加熱マントルに入れ、四つ口フラスコに高純度アルゴンガスを2つの吸気側口部から導入し、アルゴンガスの流量は50ml/minであり、アルゴンガスの純度は≧99.999%である。ヒドロキノンが溶融するまで加熱し、アルゴンガスの流量を200ml/minに調節し、撹拌を開始し回転速度を80rpmに増加させ、溶融したヒドロキノンの温度を218℃に保持し、反応を1h継続し、溶融したヒドロキノンを収容した四つ口フラスコを熱したオイルバスに入れて室温まで冷却し、アルゴンガスの導入を止めて、ヒドロキノンとアルゴンガスの錯体を得て、フラスコ内のヒドロキノン錯体を取り出し、質量を量ると305.40gである。
【0072】
三つ口フラスコに521.34gのジフェニルスルホン、218.2gの4,4’-ジフルオロベンゾフェノン、121.89gの炭酸ナトリウム及び112.09gのヒドロキノン錯体を加え、高純度アルゴンガスを導入し、溶融するまで加熱し、撹拌を開始し回転速度を60rpmに増加させ、200℃に昇温して1h保持し、引き続き280℃に加熱して1h保持し、305℃に昇温し、その温度を保持しながら2h反応させ、材料を冷蒸留水に入れて、白色の塊状物を得て、白色の塊状物を粉砕し、エタノールで5~6回洗浄して溶媒のジフェニルスルホンを除去し、蒸留水で5~6回洗浄して反応で生成されたフッ化ナトリウムを除去して、白色の粉末を得る。
【0073】
実施例6
500mlの四つ口フラスコに300gのヒドロキノンを加え、四つ口フラスコの真ん中の口部から撹拌棒を挿入し、1つの側口部に三方管を挿入し、三方管に温度計とアルゴンガス吸気口をそれぞれ接続し、もう1つの側口部から通気管を四つ口フラスコの底部に挿入し、さらに1つの側口部にアリーン冷却器を排気口として接続する。四つ口フラスコを電気加熱マントルに入れ、四つ口フラスコに高純度アルゴンガスを2つの吸気側口部から導入し、アルゴンガスの流量は50ml/minであり、アルゴンガスの純度は≧99.999%である。ヒドロキノンが溶融するまで加熱し、アルゴンガスの流量を200ml/minに調節し、撹拌を開始し回転速度を80rpmに増加させ、溶融したヒドロキノンの温度を228℃に保持し、反応を1h継続し、溶融したヒドロキノンを収容した四つ口フラスコを熱したオイルバスに入れて室温まで冷却し、アルゴンガスの導入を止めて、ヒドロキノンとアルゴンガスの錯体を得て、フラスコ内のヒドロキノン錯体を取り出し、質量を量ると313.52gである。
【0074】
三つ口フラスコに521.34gのジフェニルスルホン、218.2gの4,4’-ジフルオロベンゾフェノン、121.89gの炭酸ナトリウム及び115.07gのヒドロキノン錯体を加え、高純度アルゴンガスを導入し、溶融するまで加熱し、撹拌を開始し回転速度を60rpmに増加させ、200℃に昇温して1h保持し、引き続き280℃に加熱して1h保持し、305℃に昇温し、その温度を保持しながら2h反応させ、材料を冷蒸留水に入れて、白色の塊状物を得て、白色の塊状物を粉砕し、エタノールで5~6回洗浄して溶媒のジフェニルスルホンを除去し、蒸留水で5~6回洗浄して反応で生成されたフッ化ナトリウムを除去して、白色の粉末を得る。
【0075】
実施例7
500mlの四つ口フラスコに300gのヒドロキノンを加え、四つ口フラスコの真ん中の口部から撹拌棒を挿入し、1つの側口部に三方管を挿入し、三方管に温度計とアルゴンガス吸気口をそれぞれ接続し、もう1つの側口部から通気管を四つ口フラスコの底部に挿入し、さらに1つの側口部にアリーン冷却器を排気口として接続する。四つ口フラスコを電気加熱マントルに入れ、四つ口フラスコに高純度アルゴンガスを2つの吸気側口部から導入し、アルゴンガスの流量は50ml/minであり、アルゴンガスの純度は≧99.999%である。ヒドロキノンが溶融するまで加熱し、アルゴンガスの流量を200ml/minに調節し、撹拌を開始し回転速度を80rpmに増加させ、溶融したヒドロキノンの温度を238℃に保持し、反応を1h継続し、溶融したヒドロキノンを収容した四つ口フラスコを熱したオイルバスに入れて室温まで冷却し、アルゴンガスの導入を止めて、ヒドロキノンとアルゴンガスの錯体を得て、フラスコ内のヒドロキノン錯体を取り出し、質量を量ると307.45gである。
【0076】
三つ口フラスコに521.34gのジフェニルスルホン、218.2gの4,4’-ジフルオロベンゾフェノン、121.89gの炭酸ナトリウム及び112.84gのヒドロキノン錯体を加え、高純度アルゴンガスを導入し、溶融するまで加熱し、撹拌を開始し回転速度を60rpmに増加させ、200℃に昇温して1h保持し、引き続き280℃に加熱して1h保持し、305℃に昇温し、その温度を保持しながら2h反応させ、材料を冷蒸留水に入れて、白色の塊状物を得て、白色の塊状物を粉砕し、エタノールで5~6回洗浄して溶媒のジフェニルスルホンを除去し、蒸留水で5~6回洗浄して反応で生成されたフッ化ナトリウムを除去して、白色の粉末を得る。
【0077】
実施例8
500mlの四つ口フラスコに300gのヒドロキノンを加え、四つ口フラスコの真ん中の口部から撹拌棒を挿入し、1つの側口部に三方管を挿入し、三方管に温度計とアルゴンガス吸気口をそれぞれ接続し、もう1つの側口部から通気管を四つ口フラスコの底部に挿入し、さらに1つの側口部にアリーン冷却器を排気口として接続する。四つ口フラスコを電気加熱マントルに入れ、四つ口フラスコに高純度アルゴンガスを2つの吸気側口部から導入し、アルゴンガスの流量は50ml/minであり、アルゴンガスの純度は≧99.999%である。ヒドロキノンが溶融するまで加熱し、アルゴンガスの流量を200ml/minに調節し、撹拌を開始し回転速度を80rpmに増加させ、溶融したヒドロキノンの温度を248℃に保持し、反応を1h継続し、溶融したヒドロキノンを収容した四つ口フラスコを熱したオイルバスに入れて室温まで冷却し、アルゴンガスの導入を止めて、ヒドロキノンとアルゴンガスの錯体を得て、フラスコ内のヒドロキノン錯体を取り出し、質量を量ると300.22gである。
【0078】
三つ口フラスコに521.34gのジフェニルスルホン、218.2gの4,4’-ジフルオロベンゾフェノン、121.89gの炭酸ナトリウム及び110.18gのヒドロキノン錯体を加え、高純度アルゴンガスを導入し、溶融するまで加熱し、撹拌を開始し回転速度を60rpmに増加させ、200℃に昇温して1h保持し、引き続き280℃に加熱して1h保持し、305℃に昇温し、その温度を保持しながら2h反応させ、材料を冷蒸留水に入れて、白色の塊状物を得て、白色の塊状物を粉砕し、エタノールで5~6回洗浄して溶媒のジフェニルスルホンを除去し、蒸留水で5~6回洗浄して反応で生成されたフッ化ナトリウムを除去して、白色の粉末を得る。
【0079】
比較例1
三つ口フラスコに521.34gのジフェニルスルホン、218.2gの4,4’-ジフルオロベンゾフェノン、121.89gの炭酸ナトリウム及び110.1gのヒドロキノンを加え、高純度アルゴンガスを導入し、溶融するまで加熱し、撹拌を開始し回転速度を60rpmに増加させ、200℃に昇温して1h保持し、引き続き280℃に加熱して1h保持し、305℃に昇温し、その温度を保持しながら2h反応させ、材料を冷蒸留水に入れて、白色の塊状物を得て、白色の塊状物を粉砕し、エタノールで5~6回洗浄して溶媒のジフェニルスルホンを除去し、蒸留水で5~6回洗浄して反応で生成されたフッ化ナトリウムを除去して、白色の粉末を得る。
【0080】
比較例2
三つ口フラスコに521.34gのジフェニルスルホン、218.2gの4,4’-ジフルオロベンゾフェノン、121.89gの炭酸ナトリウム及び110.1gのヒドロキノン錯体を加え、高純度窒素ガスを導入し、溶融するまで加熱し、撹拌を開始し回転速度を60rpmに増加させ、200℃に昇温して1h保持し、引き続き280℃に加熱して1h保持し、305℃に昇温し、その温度を保持しながら2h反応させ、材料を冷蒸留水に入れて、白色の塊状物を得て、白色の塊状物を粉砕し、エタノールで5~6回洗浄して溶媒のジフェニルスルホンを除去し、蒸留水で5~6回洗浄して反応で生成されたフッ化ナトリウムを除去して、白色の粉末を得る。
【0081】
実施例1~8から分かるように、ヒドロキノン錯体を生成する過程において、投入原料はいずれも300gであり、生成物の重量はいずれも300gより大きいことから、ヒドロキノンとアルゴンガスがヒドロキノン錯体を生成すると判断できる。
【0082】
実施例1~8を比較すると、異なる温度で製造されたヒドロキノン錯体の収率が異なる。温度が上昇するにつれて、ヒドロキノン錯体の収率が増加し、280℃での収率が最も高く、その後、温度が上昇するにつれて、収率が減少する。実施例1~8と比較例1及び2とを比較すると、ヒドロキノン錯体で製造されたポリエーテルエーテルケトンの色度値Lがより大きく、即ち、得られた固体のポリエーテルエーテルケトンがより白い。
【0083】
実施例1~8と比較例2とを比較すると、求核置換反応時の反応物におけるヒドロキノンはいずれもAr原子を含むヒドロキノン錯体であり、実施例1~8における不活性ガスはアルゴンガスであり、比較例2における不活性ガスは窒素ガスである。表1から分かるように、比較例2で生成されたポリエーテルエーテルケトンの色度値Lは低く、これは、求核置換反応過程における不活性ガスがアルゴンガスであるとき、ヒドロキノンが酸化されることをさらにある程度防止することができることを示す。
【0084】
本願明細書の説明において、用語「一実施例」、「ある実施例」、「例」、「具体的な例」、「ある例」などを参照する説明は、当該実施例又は例を組み合わせて説明された具体的な特徴、構造、材料又は特性が本発明の少なくとも1つの実施例又は例に含まれることを意味する。本願明細書において、上記用語の例示的な表現は、必ずしも同一の実施例又は例に限定されるものではない。そして、説明された具体的な特徴、構造、材料又は特性は、任意の1つ又は複数の実施例又は例において適切に組み合わせることができる。また、互いに矛盾しない場合、当業者であれば、本願明細書で説明された異なる実施例又は例、及び異なる実施例又は例の特徴を結合するか又は組み合わせることができる。
【0085】
以上、本発明の実施例を示し、説明したが、理解できるように、上記実施例は、例示的なものであり、本発明を限定するものと理解すべきではなく、当業者であれば、本発明の範囲で上記実施例に対して変更、修正、変更及び変形を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明に係るポリエーテルエーテルケトンの製造方法で製造されたポリエーテルエーテルケトンは、色度値(L)が高く、色が白く、特定の電子分野、例えばウェハキャリア、電子絶縁膜などの製造に応用できる。
図1
【国際調査報告】