(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】トブラマイシン吸入溶液を含む薬学的組立品及びその使用
(51)【国際特許分類】
A61M 11/00 20060101AFI20240822BHJP
A61P 11/08 20060101ALI20240822BHJP
A61K 31/7036 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
A61M11/00 300D
A61P11/08
A61K31/7036
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024517039
(86)(22)【出願日】2022-07-26
(85)【翻訳文提出日】2024-05-14
(86)【国際出願番号】 CN2022107735
(87)【国際公開番号】W WO2023040467
(87)【国際公開日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】202111095755.0
(32)【優先日】2021-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524100840
【氏名又は名称】健康元▲薬▼▲業▼集▲団▼股▲フン▼有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】524100851
【氏名又は名称】▲広▼州健康元呼吸▲薬▼物工程技▲術▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110003845
【氏名又は名称】弁理士法人籾井特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金 方
(72)【発明者】
【氏名】黄 娟
(72)【発明者】
【氏名】▲ダン▼ ▲ウェイ▼
(72)【発明者】
【氏名】▲楊▼ 霞
(72)【発明者】
【氏名】▲リ▼ 旻
(72)【発明者】
【氏名】▲兪▼ 雄
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA09
4C086MA13
4C086MA57
4C086MA59
4C086NA13
4C086ZA61
(57)【要約】
トブラマイシン吸入溶液を含む薬学的組立品及びその使用。薬学的組立品は、(a)トブラマイシン吸入溶液と、(b)トブラマイシン吸入溶液と組み合わせて使用する振動スクリーン噴霧器とを含み、振動スクリーン噴霧器の金属メッシュの中央領域は1400個~1800個の微細孔を有する。トブラマイシン吸入溶液の液滴径については、D10が0.5μm~2.5μmであり、D50が2.0μm~4.2μmであり、D90が6.0μm~9.0μmであり、5.39μm未満の空気力学的粒径を有する粒子は、トブラマイシン吸入溶液の少なくとも45%の質量パーセンテージを有する。薬学的組立品は気管支拡張症の治療に使用される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
気管支拡張症の治療のための薬学的製品の製造におけるトブラマイシン吸入溶液を含む薬学的組立品の使用であって、
該薬学的組立品が、
(a)該トブラマイシン吸入溶液と、
(b)該トブラマイシン吸入溶液に適合する振動スクリーン噴霧器と、
を含み、
該振動スクリーン噴霧器の金属メッシュの中央領域が1400個~1800個の微細孔を有し、
該トブラマイシン吸入溶液の液滴径が以下の通りである:D
10が0.5μm~2.5μmであり、D
50が2.0μm~4.2μmであり、D
90が6.0μm~9.0μmであり、該トブラマイシン吸入溶液において5.39μm未満の空気力学的粒径を有する粒子の質量パーセンテージが少なくとも45%である、薬学的組立品の使用。
【請求項2】
前記振動スクリーン噴霧器の金属メッシュの前記中央領域が1600個~1800個の微細孔を有することを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記振動スクリーン噴霧器における前記微細孔の断面が階段状に分布し、30度~50度のテーパーを有することを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項4】
3.8μm~4.2μmの直径を有する前記微細孔の数が、前記微細孔の総数に対して少なくとも80%であることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項5】
前記振動スクリーン噴霧器が110KHz~160KHzの振動周波数を有することを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項6】
前記振動スクリーン噴霧器が0.47ml/分~0.55ml/分の噴霧速度を有することを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項7】
前記振動スクリーン噴霧器が1A、±2%の電流、及び5V、±2%の電圧を有することを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項8】
前記トブラマイシン吸入溶液において5.39μm未満の空気力学的粒径を有する粒子の前記質量パーセンテージが45%~84%であることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項9】
前記トブラマイシン吸入溶液の前記液滴径が以下の通りである:D
10が0.5μm~1.5μmであり、D
50が3.0μm~3.5μmであり、D
90が6.0μm~8.5μmであることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項10】
前記トブラマイシン吸入溶液が、4%~8%(重量/体積)のトブラマイシンと、0.1%~0.9%(重量/体積)の塩化ナトリウムとを含有し、4.5~7.5のpHを有することを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項11】
トブラマイシン吸入溶液を含む薬学的組立品であって、該薬学的組立品が、
(a)該トブラマイシン吸入溶液と、
(b)該トブラマイシン吸入溶液に適合する振動スクリーン噴霧器と、
を含み、
該振動スクリーン噴霧器の金属メッシュの中央領域が1400個~1800個の微細孔を有し、
該トブラマイシン吸入溶液の液滴径が以下の通りである:D
10が0.5μm~2.5μmであり、D
50が2.0μm~4.2μmであり、D
90が6.0μm~9.0μmであり、該トブラマイシン吸入溶液において5.39μm未満の空気力学的粒径を有する粒子の質量パーセンテージが少なくとも45%である、薬学的組立品。
【請求項12】
前記振動スクリーン噴霧器の金属メッシュの前記中央領域が1600個~1800個の微細孔を有することを特徴とする、請求項11に記載の薬学的組立品。
【請求項13】
前記振動スクリーン噴霧器における前記微細孔の断面が階段状に分布し、30度~50度のテーパーを有することを特徴とする、請求項11に記載の薬学的組立品。
【請求項14】
3.8μm~4.2μmの直径を有する前記微細孔の数が、前記微細孔の総数に対して少なくとも80%であることを特徴とする、請求項11に記載の薬学的組立品。
【請求項15】
前記振動スクリーン噴霧器が110KHz~160KHzの振動周波数を有することを特徴とする、請求項11に記載の薬学的組立品。
【請求項16】
前記振動スクリーン噴霧器が0.47ml/分~0.55ml/分の噴霧速度を有することを特徴とする、請求項11に記載の薬学的組立品。
【請求項17】
前記振動スクリーン噴霧器が1A、±2%の電流、及び5V、±2%の電圧を有することを特徴とする、請求項11に記載の薬学的組立品。
【請求項18】
前記トブラマイシン吸入溶液において5.39μm未満の空気力学的粒径を有する粒子の前記質量パーセンテージが45%~84%であることを特徴とする、請求項11に記載の薬学的組立品。
【請求項19】
前記トブラマイシン吸入溶液の前記液滴径が以下の通りである:D
10が0.5μm~1.5μmであり、D
50が3.0μm~3.5μmであり、D
90が6.0μm~8.5μmであることを特徴とする、請求項11に記載の薬学的組立品。
【請求項20】
前記トブラマイシン吸入溶液が、4%~8%(重量/体積)のトブラマイシンと、0.1%~0.9%(重量/体積)の塩化ナトリウムとを含有し、4.5~7.5のpHを有することを特徴とする、請求項11に記載の薬学的組立品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬の技術分野、特に、トブラマイシン吸入溶液を含む薬学的組立品(assembly)及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
アミノグリコシド系抗生物質は、その分子構造が全て1つのアミノ環式アルコールと1つ以上のアミノ糖分子とを有することから名付けられ、グリコシドはグリコシド結合を介して形成され、ほとんどが極性化合物であり、消化管で吸収されにくく、一般に注射して投与する必要がある。通常、聴毒性及び腎毒性等の有害事象は、注射投与により臨床的に発生する。聴毒性は、(1)前庭機能障害(ストレプトマイシン、カナマイシン、ゲンタマイシン及びトブラマイシンに一般に見られ、投与後の発生率は、カナマイシン>ストレプトマイシン>ゲンタマイシン>トブラマイシンの順である)、(2)蝸牛神経障害(カナマイシン、アミカシン、シソマイシン、ゲンタマイシン等に一般に見られ、投与後の発生率は、カナマイシン>アミカシン>シソマイシン>ゲンタマイシン>トブラマイシンの順であり、これらの「無症状性難聴」の発生率は約10%~20%である)に分けることができる。腎毒性の順序はカナマイシン及びシソマイシン>ゲンタマイシン及びアミカシン>トブラマイシン及びストレプトマイシンであり、一般に10日超の全身投与後に腎毒性が発生しやすい。
【0003】
トブラマイシン(TOB)はストレプトミセス属(Streptomyces)から天然に産生されるアミノグリコシド系抗生物質であり、主に細胞膜の透過性の変化、細胞外皮の進行性破壊、及び最終的にタンパク質合成阻害により引き起こされる細胞死によって、その阻害濃度と同等又はそれよりわずかに高い濃度で殺菌性を示す。トブラマイシンは、第2世代のアミノグリコシド系抗生物質であり、第1世代のアミノグリコシド系抗生物質と比較して、治療効果が高く、毒性が低く、臨床的な薬剤耐性が少ないという利点を有し、世界で最も広く使用されているアミノグリコシド系抗生物質の1つとなっている。
【0004】
気管支拡張症は一般的な慢性呼吸器疾患であり、疾患の経過が長く、不可逆性病変を有し、繰り返し感染しやすい。特に、広範な気管支拡張症は、患者の肺組織及び機能に深刻な損傷を与え、患者の生活の質に深刻な影響を及ぼし、同時に大きな社会的及び経済的負担を引き起こす可能性がある。
【0005】
シュードモナス・エルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa)は一般的な日和見病原体である。シュードモナス・エルギノーサがコロニー形成した気管支拡張症患者の肺機能はより急速に低下し、疾患の重症度はより高いことが研究により示されている。一方、シュードモナス・エルギノーサはコロニー形成しやすく、変異しやすく、多剤耐性であるという特徴を有するため、従来の抗生物質介入では排除することが困難である。特に、多剤耐性シュードモナス・エルギノーサにより引き起こされる感染症を合併する気管支拡張症等の下気道感染症は高い死亡率を有し、治療が困難である。
【0006】
気管支拡張症患者に対して、現在、中国における従来の臨床治療ではトブラマイシンの静脈注射が依然として採用されているが、トブラマイシンの静脈内投与後に少量の薬物しか肺組織に入ることができず、ほとんどの患者は、標準的な経口又は静脈内投与後にシュードモナス・エルギノーサを依然として排除することができない。
【0007】
現在、経口投与又は静脈内投与の欠点を克服するためにトブラマイシン吸入溶液が使用されているが、吸入溶液は一般にジェット噴霧器を介して投与され、ジェット噴霧器はパイプラインを介して圧縮機と接続され、圧縮機は圧縮空気を利用して微細ノズルを介して高速気流を形成し、発生した陰圧は液体又は他の流体を一緒に障害物に噴霧するように駆動し、高速衝撃で周囲に飛散して、液滴を霧状の粒子に変化させて空気出口管から噴出させることを可能にする。ジェット噴霧器を投与に使用する場合、液滴径分布の広さ、幾何学的標準偏差の大きさ、容量の大きさ、持ち運びの不便さ、高騒音、高エネルギー消費、残存する液体医薬の容量の多さ、治療時間の延長、服薬遵守の低下等の幾つかの欠点がある。
【0008】
したがって、上記の課題を解決するために、トブラマイシン吸入溶液を含む薬学的組立品を開発する必要がある。
【発明の概要】
【0009】
従来技術の欠点を克服するために、本発明は、トブラマイシン吸入溶液を含む薬学的組立品及びその使用を提供する。本発明によるトブラマイシン吸入溶液を含む薬学的組立品は、トブラマイシン吸入溶液を振動スクリーン噴霧器と組み合わせて使用することにより、液滴径の分布が集中し、肺に到達する小粒子の比率が大幅に増加し、残存する液体医薬の容量が明らかに減少し、気管支拡張症に対する治療効果が明らかに向上する。
【0010】
本発明の目的を達成するための技術的解決策は、以下の通りである。
【0011】
1つの態様において、本発明は、気管支拡張症の治療のための薬学的製品の製造におけるトブラマイシン吸入溶液を含む薬学的組立品の使用であって、
薬学的組立品が、
(a)トブラマイシン吸入溶液と、
(b)トブラマイシン吸入溶液に適合する振動スクリーン噴霧器と、
を含み、
振動スクリーン噴霧器の金属メッシュの中央領域が1400個~1800個の微細孔を有し、
トブラマイシン吸入溶液の液滴径が以下の通りである:D10が0.5μm~2.5μmであり、D50が2.0μm~4.2μmであり、D90が6.0μm~9.0μmであり、トブラマイシン吸入溶液において5.39μm未満の空気力学的粒径を有する粒子の質量パーセンテージが少なくとも45%である、薬学的組立品の使用を提供する。
【0012】
好ましくは、噴霧粒子の微粒子用量(FPD)(5.39μm未満の空気力学的粒径を有する)は135mg以上である。より好ましくは、噴霧粒子の微粒子用量(FPD)(5.39μm未満の空気力学的粒径を有する)は135mg~270mgである。
【0013】
好ましくは、振動スクリーン噴霧器の金属メッシュの中央領域は1600個~1800個の微細孔を有する。
【0014】
好ましくは、振動スクリーン噴霧器における微細孔の断面は階段状(stepped manner)に分布し、30度~50度のテーパーを有する。
【0015】
好ましくは、3.8μm~4.2μmの直径を有する微細孔の数は、微細孔の総数に対して少なくとも80%である。
【0016】
好ましくは、振動スクリーン噴霧器は110KHz~160KHzの振動周波数を有する。
【0017】
好ましくは、振動スクリーン噴霧器は0.47ml/分~0.55ml/分の噴霧速度を有する。
【0018】
好ましくは、振動スクリーン噴霧器は1A、±2%の電流、及び5V、±2%の電圧を有する。
【0019】
好ましくは、トブラマイシン吸入溶液において5.39μm未満の空気力学的粒径を有する粒子の質量パーセンテージは45%~84%である。
【0020】
好ましくは、トブラマイシン吸入溶液の液滴径は以下の通りである:D10が0.5μm~1.5μmであり、D50が3.0μm~3.5μmであり、D90が6.0μm~8.5μmである。
【0021】
好ましくは、トブラマイシン吸入溶液は、4%~8%(重量/体積)のトブラマイシンと、0.1%~0.9%(重量/体積)の塩化ナトリウムとを含有し、4.5~7.5のpHを有する。
【0022】
別の態様において、本発明は、トブラマイシン吸入溶液を含む薬学的組立品であって、薬学的組立品が、
(a)トブラマイシン吸入溶液と、
(b)トブラマイシン吸入溶液に適合する振動スクリーン噴霧器と、
を含み、
振動スクリーン噴霧器の金属メッシュの中央領域が1400個~1800個の微細孔を有し、
トブラマイシン吸入溶液の液滴径が以下の通りである:D10が0.5μm~2.5μmであり、D50が2.0μm~4.2μmであり、D90が6.0μm~9.0μmであり、トブラマイシン吸入溶液において5.39μm未満の空気力学的粒径を有する粒子の質量パーセンテージが少なくとも45%である、薬学的組立品を提供する。
【0023】
好ましくは、噴霧粒子の微粒子用量(FPD)(5.39μm未満の空気力学的粒径を有する)は少なくとも135mgである。より好ましくは、噴霧粒子の微粒子用量(FPD)(5.39μm未満の空気力学的粒径を有する)は135mg~270mgである。
【0024】
好ましくは、振動スクリーン噴霧器の金属メッシュの中央領域は1600個~1800個の微細孔を有する。
【0025】
好ましくは、振動スクリーン噴霧器における微細孔の断面は階段状に分布し、30度~50度のテーパーを有する。
【0026】
好ましくは、3.8μm~4.2μmの直径を有する微細孔の数は、微細孔の総数に対して少なくとも80%である。
【0027】
好ましくは、振動スクリーン噴霧器は110KHz~160KHzの振動周波数を有する。
【0028】
好ましくは、振動スクリーン噴霧器は0.47ml/分~0.55ml/分の噴霧速度を有する。
【0029】
好ましくは、振動スクリーン噴霧器は1A、±2%の電流、及び5V、±2%の電圧を有する。
【0030】
好ましくは、トブラマイシン吸入溶液において5.39μm未満の空気力学的粒径を有する粒子の質量パーセンテージは45%~84%である。
【0031】
好ましくは、トブラマイシン吸入溶液の液滴径は以下の通りである:D10が0.5μm~1.5μmであり、D50が3.0μm~3.5μmであり、D90が6.0μm~8.5μmである。
【0032】
好ましくは、トブラマイシン吸入溶液は、4%~8%(重量/体積)のトブラマイシンと、0.1%~0.9%(重量/体積)の塩化ナトリウムとを含有し、4.5~7.5のpHを有する。
【0033】
本発明における振動スクリーン噴霧器は、振動子を介して上下に振動し、ノズル型メッシュスプレーヘッドの孔を使用することにより液体医薬を押し出し、微小な超音波震動及びメッシュ型スプレーヘッドにより液滴を形成する。液体医薬の残存する容量が少なく、噴霧時間が短く、噴霧プロセス中の明らかな温度上昇がなく、投与容量が少なく、噴霧効率がより高く、組立品は持ち運びすることができる。特に指定がない限り、本発明において使用される振動スクリーン噴霧器は従来のものであり、例えば、中国特許出願公開第111569200号に記載されているようなものである。
【0034】
気管支拡張症の臨床研究に薬学的組立品を使用した場合、対照群と比較して、呼吸器症状を伴う試験群の関連する生活の質スコア(QOL-B-RSS)は明らかに改善され、2つの群間には統計的有意差があり(P<0.001)、試験群におけるシュードモナス・エルギノーサの負荷値は対照群よりも有意に低く、2つの群間には統計的有意差があった(P<0.001)。
【0035】
従来技術と比較して、本発明は少なくとも以下の有益な技術的効果を有する。
(1)本発明は、気管支拡張症の特徴に基づいて、トブラマイシン吸入溶液及びトブラマイシン吸入溶液に適合した振動スクリーン噴霧器を提供し、振動スクリーン噴霧器の孔数、開口部、振動周波数、電流、電圧及び噴霧速度を調整し、トブラマイシン吸入溶液の液滴径、粒径パラメータ(D10\D50\D90)等も制御することにより、気管支拡張症に対する良好な臨床効果を達成するだけでなく、残存する液体医薬の容量の少なさ、使用における利便性、携帯性及び低騒音の利点を有する。
(2)本発明の薬学的組立品は、経口投与又は静脈内投与では少量の薬物しか肺組織に入ることができず、シュードモナス・エルギノーサを排除することができないという欠点を克服するだけでなく、より広い液滴分布、幾何学的標準偏差のより大きな範囲、より大きな容量による持ち運びの不便さ、より高い騒音、より高いエネルギー消費、残存する液体医薬の容量の多さ、治療時間の延長、服薬遵守の低下等のような他の吸入製品の欠点も克服する。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明の目的、技術的解決策及び利点をより明らかにするために、本発明の技術的解決策を以下で明確及び完全に説明する。明らかに、記載された実施例は例示に過ぎず、本出願の全ての技術的解決策を表すものではない。本発明の実施例に基づいて、当業者がいかなる創意工夫もなしに得た他の技術的解決策は、本出願の保護範囲に属する。
【0037】
以下の実施例において、噴霧器の測定方法は以下の通りである。
【0038】
データはレーザ粒子分析器(シンパテック(Sympatec) GmbH)により測定し、その原理は光散乱であった。
【0039】
薬物の有効吸入量を、7段及び1つの微孔性コレクターを有するカスケードインパクターにより収集し、収集した薬物の有効吸入量を高速液体クロマトグラフィーにより測定した。
【0040】
L字型のスロートパイプに接続したカスケードインパクターを5℃で90分間置き、薬物の有効吸入量を取り出した後5分以内に試験し、5μm未満のカットオフ粒径を有する粒子を収集し、次に、高速液体クロマトグラフィーにより測定した。
【0041】
特に指定がない限り、以下の実施例及び適用例において使用される振動スクリーン噴霧器は、中国特許出願公開第111569200号に記載されている通りであり、電流は1A、±2%であり、電圧は5V +/-2%であった。
【0042】
特に指定がない限り、以下の実施例において使用されるトブラマイシン吸入溶液の処方は、以下の2つから選択した。
処方1:トブラマイシン(6重量/体積%)、塩化ナトリウム(0.225重量/体積%)、硫酸(適量)、水酸化ナトリウム(必要に応じて適量を添加)、及び注射用水。硫酸(適量)及び水酸化ナトリウム(必要に応じて適量を添加)を使用して、pH値を4.5~7.5に調整した。
処方2:トブラマイシン(6重量/体積%)、塩化ナトリウム(0.225重量/体積%)、クエン酸(0.4重量/体積%)、硫酸(適量)、水酸化ナトリウム(必要に応じて適量を添加)、及び注射用水。硫酸(適量)、水酸化ナトリウム(必要に応じて適量を添加)を使用して、pH値を4.5~7.5に調整した。
【0043】
実施例1
トブラマイシン吸入溶液(処方1)に適用した場合の噴霧効果を試験するために、孔数は異なるが他のパラメータは同じである振動スクリーン噴霧器を選択し、結果を表1に示した。
【0044】
【0045】
実施例2
トブラマイシン吸入溶液(処方1)に適用した場合の噴霧効果を試験するために、微細孔の直径は異なるが他のパラメータは同じである振動スクリーン噴霧器を選択し、結果を表2に示した。
【0046】
【0047】
実施例3
トブラマイシン吸入溶液(処方2)に適用した場合の噴霧効果を試験するために、振動周波数は異なるが他のパラメータは同じである振動スクリーン噴霧器を選択し、結果を表3に示した。
【0048】
【0049】
実施例4
トブラマイシン吸入溶液(処方2)に適用した場合の噴霧効果を試験するために、全微細孔数に対して3.8μm~4.2μmの微細孔直径を有する微細孔数の比率(孔径分布)は異なるが他のパラメータは同じである振動スクリーン噴霧器を選択し、結果を表4に示した。
【0050】
【0051】
実施例5
トブラマイシン吸入溶液(処方1)を振動スクリーン噴霧器と圧縮空気噴霧器との間で噴霧したときの効果を比較し、振動スクリーン噴霧器は本発明の要件を満たす噴霧器であり、圧縮空気噴霧器は輸入された噴霧器(パリ・ターボボーイN(Pari TurboBoy N))であり、2つの噴霧器で同時に液体医薬を噴霧して投与効果を比較し、結果を表5に示した。
【0052】
【0053】
実施例6
トブラマイシン吸入溶液(処方1)に適用した場合の噴霧効果を試験するために、市場で購入した異なるブランドの振動スクリーン噴霧器及び本発明による振動スクリーン噴霧器を選択し、本発明による振動スクリーン噴霧器のパラメータを表6に示し、結果を表7に示した。
【0054】
【0055】
【0056】
実施例7
本発明による振動スクリーン噴霧器のパラメータを表8に示し、トブラマイシン吸入溶液(処方1)を使用して試験し、テーパーの違いが噴霧速度に及ぼす影響を調査し、結果を表9に示した。
【0057】
【0058】
【0059】
実施例8~実施例11
処方:トブラマイシン(6重量/体積%)、塩化ナトリウム(0.225重量/体積%)、硫酸(適量)、水酸化ナトリウム(必要に応じて適量を添加)、及び注射用水、pH6.2。
プロセス:75kgの注射用水を液体調製タンクに添加し、温度を60℃以下に制御し、原料及び副原料を添加し、撹拌して完全に溶解させ、pH値は約6.2とした。形成された溶液に100kgまで注射用水を追加し、10分間撹拌し、5mlの低密度ポリエチレンボトルに封入した。液滴径を制御し、送達速度、総送達量及び微粒子用量を決定した。表10に実施例8~実施例11の液滴径を示した。
【0060】
【0061】
送達速度、総送達量:2020年版中国薬局方四部一般原則0111吸入溶液における吸入液体調製物の項の「送達速度及び総送達量」([delivery rate and total delivery amount] under terms of 0111 inhalation liquid preparation in an inhalation solution, four general principles, Chinese Pharmacopoeia, 2020 edition)の規定に従って決定した。
微粒子用量:2020年版中国薬局方四部一般原則0951吸入溶液における微粒子の空気力学特性の測定法(0951 determination method of aerodynamics properties of fine particles in inhalation solutions, four general principles, Chinese Pharmacopoeia)に従って、NGI装置を使用することにより測定した。測定結果を表11に示した。
【0062】
【0063】
適用例1:トブラマイシン吸入溶液の臨床試験
試験薬物:
試験群:トブラマイシン吸入溶液の処方:トブラマイシン(6重量/体積%)、塩化ナトリウム(0.225重量/体積%)、硫酸(適量)、水酸化ナトリウム(必要に応じて適量を添加)、及び注射用水、pH6.0。
対照群:プラセボ、生理食塩水(0.9重量/体積%)
投与量:
製品は吸入専用であった。推奨投与量は、体重に応じて投与量を調節することなく、毎回1つ(300mg)、28日間1日2回であった。
製品の適用期間は28日であり、2つの適用期間の間隔は28日間である必要があり、すなわち、患者は28日間連続して薬物を摂取した後、28日間中止し、その後再開する。
1日2回の適用期間の間隔は、可能な限り12時間に近づける必要があり、少なくとも6時間である必要がある。薬物を1回摂取し忘れた場合は、次の投与予定時間の少なくとも6時間前までに可能な限り早く補給する必要がある。次の投与予定時間から6時間未満の時間であった場合は、補給を必要とせず、当初の投与予定時間に従って薬物を投与した。
使用説明書:
振動スクリーン噴霧器(パラメータを表12に示した)を使用し、各噴霧について1本の製品のボトルを用いた。ボトルのキャップを回して開けた後、液体医薬を噴霧器の噴霧カップに完全に押し出し、噴霧器のスイッチを入れ、噴霧が完了するまで(すなわち、霧が発生しなくなるまで、約10分~15分)口から吸入した。
種々の吸入療法を受けている患者は、製品を吸入する前に他の薬物を吸入することが推奨される。製品は、噴霧器内で希釈したり、他の薬物と混合したりすることはできず、皮下注射、静脈内注射又は髄腔内注射に使用することはできない。
製品を使用する前に、使用者情報マニュアルをよく読んで、製品の使用方法について詳細を確認し、振動スクリーン噴霧器の使用及びメンテナンスについての指示に従う。製品を吸入するときに、患者は背筋を伸ばして座るか又は直立し、噴霧器を立てて保持しておき、噴霧器のマウスピース/マスクを通して正常に呼吸する必要がある。
【0064】
【0065】
プロジェクトチームは、肺のシュードモナス・エルギノーサ感染症を伴う成人気管支拡張の治療におけるトブラマイシン吸入溶液の有効性及び安全性を試験するために、多施設、無作為化、二重盲検、基本治療、プラセボ対照、並行臨床試験を実施した。この研究において合計594名の気管支拡張症患者をスクリーニングし、357名の患者を最終的に登録した。スクリーニング期間中に全ての検査を完了し、研究者による評価に合格した対象に、2A喀痰培養試験について問診した。試験結果が組み入れ基準を満たす対象に、2B試験について問診した。対象を試験群又は対照群に無作為に割り振って、治療期間に入った。治療期間中、トブラマイシン吸入溶液(300mg/5ml/回及び2回/日)又はプラセボ(生理的食塩水)(5ml/回及び2回/日)をそれぞれ吸入により投与し、試験薬物及び対照薬物の両方を間欠投与モードで28日間投与し、28日間中止し、2回繰り返した。
【0066】
試験において2つの主要な有効性エンドポイント指標を使用した。1)治療後29日目のシュードモナス・エルギノーサ(PA)の喀痰培養におけるベースラインからの負荷の変化、2)治療後29日目のベースラインからのQOL-B-RSSスコアの変化。
【0067】
試験結果:改変治療企図解析(MITTS)では、グループ化因子、中心因子、無作為化対照及び欠損値の補充を補正した後、ベースラインを共変量として用いることにより共分散分析を実施し、試験群(すなわち、本発明による技術的解決策)におけるPA負荷の最小二乗平均値は2.50Log10cfu/g(SE:0.28)減少し、対照群におけるPA負荷の最小二乗平均値は0.76Log10cfu/g(SE:0.27)減少し、2群間の差は1.74Log10cfu/gであり、95%CIは1.12~2.35(P<0.001)であり、中心効果は有意ではなかったことから、試験群におけるPA負荷の減少値は対照群におけるものよりも効果的であることが示される。
【0068】
MITTSでは、グループ化因子、中心因子、無作為化対照及び欠損値の補充を補正した後、ベースラインを共変量として用いることにより共分散分析を実施し、試験群(すなわち、本発明による技術的解決策)におけるQOL-B-RSSスコアの最小二乗平均値は8.48(SE:0.97)増加し、対照群におけるQOL-B-RSSスコアの最小二乗平均値は0.56(SE:0.97)増加し、2群間の差は7.91であり、95%CIは5.72~10.11(P<0.001)であり、中心効果は有意ではなかったことから、試験群におけるQOL-B-RSSスコアは対照群におけるものよりも効果的であることが示される。
【0069】
本発明者は、処方2を照準とする上記実験を実施し、処方1と同様の臨床治療効果を達成した。
【国際調査報告】