(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】経カテーテル心房中隔閉鎖デバイス
(51)【国際特許分類】
A61B 17/00 20060101AFI20240822BHJP
【FI】
A61B17/00 500
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024517049
(86)(22)【出願日】2022-09-15
(85)【翻訳文提出日】2024-05-10
(86)【国際出願番号】 US2022043638
(87)【国際公開番号】W WO2023043906
(87)【国際公開日】2023-03-23
(32)【優先日】2021-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524101032
【氏名又は名称】タヴァー ソリューションズ,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110003797
【氏名又は名称】弁理士法人清原国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ドゥジンスキー,デイビッド
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160DD62
4C160DD65
4C160MM33
(57)【要約】
【解決手段】本発明は、心房中隔欠損を封止するための閉鎖デバイスを提供する。閉鎖デバイスは、遠位閉鎖部分と近位閉鎖部分とを備える。遠位閉鎖部分は、遠位平面内に延在する複数の遠位フィンガーを覆う遠位膜を備える。近位閉鎖部分は、近位平面内に延在する複数の近位フィンガーを覆う近位膜を備える。閉鎖デバイスはまた、複数の遠位フィンガーと複数の近位フィンガーとの間に軸方向に延在する胴部を備える。遠位閉鎖部分は、中隔壁の左側または右側の一方に密封係合するように構成され、近位閉鎖部分は、中隔壁の左側または右側のもう一方に密封係合するように構成され、胴部は、左中隔壁と右中隔壁との間の心房中隔欠損の中心に位置するように構成される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織壁内の開口部を閉鎖するためのデバイスであって、
連続的な単一体のフレームであって、
遠位平面内に延在する、半径方向に延在可能な複数の遠位フィンガーと、
近位平面内に延在する、半径方向に延在可能な複数の近位フィンガーであって、前記近位平面は、前記遠位平面とは異なる方向に延在する、複数の近位フィンガーと、
前記複数の遠位フィンガーと前記複数の近位フィンガーとの間に軸方向に延在する、拡縮可能な胴部と
を備える、フレームと、
前記複数の遠位フィンガーの少なくとも一方の面を覆う遠位膜と、
前記複数の近位フィンガーの少なくとも一方の面を覆う近位膜と
を備え、
前記デバイスは、前記フレームが軸方向に伸長する半径方向に折り畳まれた構成から、前記フレームが軸方向に短縮する半径方向に拡張された構成に拡張可能であり、
前記半径方向に拡張された構成では、前記胴部は、前記組織壁内の前記開口部内に位置するように構成され、前記複数の遠位フィンガーは、前記開口部を画定する前記組織壁の一方の面に係合するように構成され、前記複数の近位フィンガーは、前記開口部を画定する前記組織壁の他方の面に係合するように構成されることによって、前記遠位膜および前記近位膜が前記組織壁の面に押し付けられて前記開口部を封止する、
デバイス。
【請求項2】
前記複数の遠位フィンガーおよび前記複数の近位フィンガーは、遠位フィンガーが近位フィンガーに直接隣接するように交互になっている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記近位膜または前記遠位膜に取り付けられた糸をさらに含み、前記糸は、前記デバイスを送達デバイスの中に装填、回収および/または再装填するために引っ張られるように構成される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記糸は前記近位膜または前記遠位膜の中心に取り付けられる、請求項3に記載のデバイス。
【請求項5】
前記遠位膜、前記近位膜、またはその両方は、
フルオロポリマーを含む外表面と熱可塑性ポリマーを含む内表面とを備える第1のシートと、
フルオロポリマーを含む外表面と熱可塑性ポリマーを含む内表面とを備える第2のシートであって、前記第2のシートの前記内表面が前記第1のシートの前記内表面にラミネートされる、第2のシートと、
前記第1のシートと前記第2のシートとの間に配置され、交点で交差し、前記フレームに取り付けられた端部を有する、第1の補強フィラメントおよび第2の補強フィラメントであって、前記糸が前記交点で前記第1の補強フィラメントおよび前記第2の補強フィラメントに取り付けられる、第1の補強フィラメントおよび第2の補強フィラメントと
を備える、請求項4に記載のデバイス。
【請求項6】
前記フルオロポリマーはポリテトラフルオロエチレンであり、前記熱可塑性ポリマーはポリエチレンテレフタレートである、請求項5に記載のデバイス。
【請求項7】
前記近位膜または前記遠位膜に接着された補強材をさらに備え、前記糸は前記補強材に取り付けられる、請求項3に記載のデバイス。
【請求項8】
前記糸はポリマー繊維またはワイヤーである、請求項3に記載のデバイス。
【請求項9】
前記複数の近位フィンガーおよび前記複数の遠位フィンガーは各々、それぞれの近位膜および遠位膜のための取り付け点を備え、前記取り付け点は、縫合糸を受けられるようにサイズ調整されたアイレットを備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項10】
前記アイレットに結ばれた縫合糸の結び目をさらに備える、請求項9に記載のデバイス。
【請求項11】
前記フレームが形状記憶材料から作製される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項12】
前記複数の遠位フィンガーおよび前記遠位膜は、中隔壁の左側または右側の一方に密封係合する大きさおよび形状であり、前記複数の近位フィンガーおよび前記近位膜は、前記中隔壁の左側または右側のもう一方に密封係合する大きさおよび形状であり、前記胴部は、左中隔壁と右中隔壁の間の心房中隔欠損の中央に位置するような大きさおよび形状である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項13】
前記近位膜および/または前記遠位膜は、再穿刺可能である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項14】
少なくとも一部が生体吸収性である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項15】
前記フィンガーの少なくともいくつかが花弁形状を有する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項16】
前記近位膜および前記遠位膜は、それぞれ、前記近位膜および前記遠位膜を通るように延在する開口部を画定する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項17】
組織壁内の開口部を閉鎖するためのデバイスであって、
連続的な単一体のフレームであって、
遠位平面内に延在する、半径方向に延在可能な複数の遠位フィンガーと、
近位平面内に延在する、半径方向に延在可能な複数の近位フィンガーであって、前記近位平面は、前記遠位平面とは異なる方向に延在する、複数の近位フィンガーと、
前記複数の遠位フィンガーと前記複数の近位フィンガーとの間に軸方向に延在して覆う、拡縮可能な胴部と
を備える、フレームと、
前記拡縮可能な胴部を覆う膜と
を備え、
前記デバイスは、前記フレームが軸方向に伸長する半径方向に折り畳まれた構成から、前記フレームが軸方向に短縮する半径方向に拡張された構成に拡張可能であり、
前記半径方向に拡張された構成では、前記胴部は、前記組織壁内の前記開口部内に位置するように構成され、前記複数の遠位フィンガーは、前記開口部を画定する前記組織壁の一方の面に係合するように構成され、前記複数の近位フィンガーは、前記開口部を画定する前記組織壁の他方の面に係合するように構成されることによって、前記複数の遠位フィンガーおよび前記複数の近位フィンガーが前記組織壁の面に押し付けられて前記開口部を封止する、
デバイス。
【請求項18】
前記膜が、前記膜を通るように延在する開口部を画定する、請求項17に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年9月16日に出願された米国仮出願第63/244,746号に対する優先権を主張する。
【0002】
本開示は、心房中隔欠損を封止するための、閉塞または閉鎖デバイスに関する。
【背景技術】
【0003】
心臓は、心房中隔および心室中隔として知られている2つの内側の隔壁または中隔によって隔てられた2つの部分を有する。心臓の右側は、酸素が欠乏した血液を体から受け取り、肺の中に圧送し、そこで酸素を加える。心臓の左側は、酸素が豊富な血液を肺から受け取り、体へ圧送する。心房中隔は心臓の上室を隔て、心室中隔は心臓の下室を隔てる。それぞれの中隔は、心臓の右側と左側との間の血液の混合を防止する役割を果たす。
【0004】
心臓の中隔の開口または穴は、心臓を通る正常な血流に影響を及ぼし得る欠陥である。このような開口は、先天的に生じることもあれば、医療デバイスなどによる穿刺を含む医療処置によって生じることもある。心臓の2つの上室間の心房中隔の開口は心房中隔欠損(「ASD」)として知られており、二次孔型心房中隔欠損(secundum ASD)はASDの中に最も一般的な形態である。ASDは、酸素が豊富な血液と酸素が欠乏した血液との混合を引き起こす可能性がある。このような異なる酸素含有量の血液が混合することは、酸素含有量の多い血液が体ではなく肺へ圧送され、酸素含有量の少ない血液が肺ではなく体へ圧送されることを引き起こす可能性があり、これは血液短絡(blood shunting)として知られている。これは、開口の大きさまたは血液短絡の量によって、様々な疾患をもたらす可能性があり、限定されないが、心拍異常、肺動脈の血圧の異常上昇、鬱血性心不全、塞栓現象、および脳卒中が挙げられる。
【0005】
過去数十年の間に、低侵襲の治療技術が開発され、経カテーテルの治療技術はASDを治療し、他の治療技術に共通する有害な副作用を回避するための好ましい技術となっている。具体的には、経皮的な経カテーテルの治療技術は、より安全で低侵襲の医療処置を提供する。しかし、既知の経皮的な経カテーテル治療技術で使用される閉塞または閉鎖デバイスには、欠点がないわけではない。多くの経カテーテルの閉塞または閉鎖デバイスは、一般的にASDを閉塞または閉鎖するために傘状の構造を採用している。既知の閉塞または閉鎖デバイスは、いくつかの特有の欠点を有しており、限定されないが、裂けるまたは破れることを起こす傾向、心臓組織を含む身体組織の穿孔を起こす傾向、残留物漏出の傾向、血栓による合併症のリスクの増加、心房壁および大動脈壁を侵食する傾向、移動、および他の欠点が挙げられる。さらに、多くの既知の閉塞または閉鎖デバイスは、高プロファイルを有し、ニチノール、過剰量の閉塞または閉鎖膜またはファブリックなどの大きな異物塊を含み、患者の身体によるデバイスの適応を妨げる可能性がある。
【0006】
既知の閉塞または閉鎖デバイスの別の欠点は、患者が後続の経中隔の処置を必要とし得る場合、展開したまたは埋め込まれたデバイスの存在は一般的に、中隔を再横断する、または心房間の再進入を目的とした、デバイスを経中隔的に穿刺することの能力を妨げる。この欠点は、展開したまたは埋め込まれたデバイスの構造が、特定の大きさのシースまたはその他の医療器具が中隔を通ることを妨げ得ること、および/または、そこを通る単回もしくは反復の、経中隔穿刺もしくは心房間の再進入をさせることが不可能な材料を含むことから生じる。さらに、このような閉塞デバイスは、穿刺された後再封止されることができない。
【0007】
既知の閉塞または閉鎖デバイスの別の欠点は、そのような閉鎖または閉塞デバイスが、三尖弁または僧帽弁と相互作用または干渉する恐れがあるため、心臓またはその中隔の比較的低い位置にある穴または開口を閉塞または閉鎖する能力が限られているか、または完全にできないことである。
【発明の概要】
【0008】
本開示は、身体組織壁の開口部を閉鎖するためのデバイス(本明細書では「閉鎖デバイス」とも称する)に関する。デバイスは、例えば、人工、先天性、後天性の異常な開口部を治療するために使用できる。一態様において、連続的な単一体のフレームを備える閉鎖デバイスを提供する。フレームは、遠位平面内に延在する、半径方向に延在可能な複数の遠位フィンガーと、近位平面内に延在する、半径方向に延在可能な複数の近位フィンガーとを有する。近位平面は、遠位平面とは異なる方向に延在する。フレームは、複数の遠位フィンガーと複数の近位フィンガーとの間に軸方向に延在する胴部をさらに備える。閉鎖デバイスはまた、複数の遠位フィンガーの少なくとも一方の面を覆う遠位膜と、複数の近位フィンガーの少なくとも一方の面を覆う近位膜とを備える。閉鎖デバイスは、フレームが軸方向に伸長する、半径方向に折り畳まれた構成から、フレームが軸方向に短縮する、半径方向に拡張された構成に拡張可能である。半径方向に拡張された構成では、胴部は、組織壁内の開口部内に位置するように構成され、複数の遠位フィンガーは、開口部を画定する組織壁の一方の面に係合するように構成され、複数の近位フィンガーは、開口部を画定する組織壁の他方の面に係合するように構成されることによって、遠位膜および近位膜が組織壁の面に押し付けられて開口部を封止する。閉鎖デバイスは、裂けるまたは断裂する傾向が低く、経中隔穿刺または心房間の再進入を可能にし、心臓の大動脈、三尖弁、もしくは僧帽弁などの隣接組織、または干渉もしくは相互作用が望ましくない他の隣接組織と、相互作用または干渉を起こさないように構成される。さらに、金属がほとんど使われていないため、閉鎖デバイスはより展性がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】本開示の一態様による閉鎖デバイスのフレームの上面図である。
【
図5】本開示の一態様による閉鎖デバイスの斜視図である。
【
図7】
図6の心臓中隔に対して配置された閉鎖デバイスの概略図である。
【
図9】本開示の一態様による、送達デバイスの中に装填する前の伸長した位置の閉鎖デバイスの概略図である。
【
図10】本開示の一態様による閉鎖デバイスの遠位膜および/または近位膜の概略図である。
【
図11】引張糸を取り付けた
図10の遠位膜および/または近位膜の概略図である。
【
図12】
図9の閉鎖デバイスの側面図を示す概略図である。
【
図13】カテーテルの中に装填された
図9の閉鎖デバイスの概略図である。
【
図14】心臓中隔がシリコーンシートで表現され、シリコーンシートの開口がASDを表現する、心臓中隔のASDへ挿入する前の
図9の閉鎖デバイスの概略図である。
【
図15】ASDを通して挿入された
図9の閉鎖デバイスの概略図である。
【
図16】心臓中隔の左側に展開された
図9の閉鎖デバイスの遠位閉鎖部分の概略図である。
【
図17】心臓中隔の右側に対して展開および位置した
図9の閉鎖デバイスの近位部分の概略図である。
【
図18】完全展開位置における
図9の閉鎖デバイスの概略図である。
【
図19】本開示の一態様による閉鎖デバイスのフレームの斜視図である。
【
図22】本開示の一態様による閉鎖デバイスのフレームの斜視図である。
【
図25】本開示の一態様による閉鎖デバイスの上面図である。
【
図26】本開示の一態様による閉鎖デバイスの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示は、先天性心臓欠損を含む身体組織の開口部を閉塞または閉鎖するための医療デバイスに関する。このような医療デバイスは、カテーテルまたはシースを通じて送達できる、折畳み可能かつ展開可能な心房中隔閉塞または閉鎖デバイスを含む。
【0011】
本明細書で使用される場合、記載された要素に関して、「a」、「an」、および「the」という用語は、別段の指示がない限り、それらの組合せを含め、記載された要素の少なくとも1つ以上を含む。さらに、「または(or)」と「および(and)」という用語は、別段の指示がない限り、「および/または(and/or)」およびそれらの組合せを指す。「実質的に(substantially)」とは、記載された要素の形状または構成が、記載された要素の数学的に正確に記載された形状または構成を有する必要はないが、全体的またはおおよそに記載された要素の記載された形状または構成を有するものとして当業者が認識することのできる形状または構成を有することができることを意味する。「第1(first)」、「第2(second)」などの用語は、ある要素を別の要素と区別するために使用され、別段の指示がない限り、量的な意味で使用されない。「一体型(integral)」または「一体化された(integrated)」とは、記載される構成要素が、製造中に固着される1つの部品もしくは複数の部品として作製されること、またはさもなくば、記載される構成要素が、構成要素のうちいずれかの完全性を損なうことなく(すなわち、引き裂かれることなく)正常な量の力を使用して分離することができないことを意味する。正常な量の力は、別の構成要素から分離されることになる構成要素を、いずれの構成要素も損傷させることなく除去するためにユーザが使用する力の量である。本明細書で使用される場合、「患者」は、人間などの哺乳動物を含む。本明細書に記載される場合、全ての閉鎖デバイスは、医療目的のために使用され、したがって無菌である。図面は、閉鎖デバイスの特定の要素を組合せで示すが、このような要素は、他の図面に図示もしくはその他の方法で本明細書に記載される他の実施形態または態様に含まれ得ることに留意されたい。換言すると、本開示の開示された態様および実施形態のそれぞれは、個別に、または参照により本明細書に援用される特許出願を含む本開示の他の態様および実施形態と組み合わせて検討されてもよい。
【0012】
図1は、右心房12と、左心房14と、心房中隔16と、中隔開口22とを有するヒトの心臓10を図示する。心房中隔16は、一般的に、一次中隔18および二次中隔20を含む。中隔16の解剖学的構造は集団内で大きく異なることがある。例えば、一部の人々では、一次中隔18がかなり薄い場合がある。本明細書で使用される場合、「左」は、左心房14および左心室を含む心臓10の左室を指し、「右」は、右心房12および右心室を含む心臓10の右室を指す。
【0013】
図2~
図5を参照すると、連続的な単一体のフレーム26を備える閉鎖デバイス24が提供される。フレーム26は、遠位平面P1に延在する、半径方向に延在可能な複数の遠位フィンガー28と、近位平面P2に延在する、半径方向に延在可能な複数の近位フィンガー30とを備える。
図5で確認できるように、平面P1と平面P2とは、非平行で異なる方向に延在する。このように非平行な位置合わせでは、身体開口部を画定する組織の側面のそれぞれに対して複数のフィンガーがより大きな圧縮力を与えることで、デバイスを組織の側面に固定して、身体開口部を十分に封止し、その中を通る液体の流れを阻止することができる。フレームは連続的な単一体構造とすることができるため、複数の近位フィンガーおよび複数の遠位フィンガーは機械的に分離されず、一体的に接続されるか、または連続的に取り付けられる。例えば、フレームは、一体型の単一のワイヤーまたは管状構造を備えることができる。特定の態様において、複数の遠位フィンガーおよび複数の近位フィンガーは、遠位フィンガーが近位フィンガーに直接隣接し、その逆も同様であるように交互になっている。このような態様において、1本おきのフィンガーが遠位フィンガーとなり、残りのフィンガーは近位フィンガーとなる。
図1および
図2は、遠位フィンガー28a(例えば)と近位フィンガー30a(例えば)との間に介在するフィンガーが存在しないことにより遠位フィンガー28aが近位フィンガー30aに直接隣接するような交互パターンを図示する。換言すると、いずれかの所与の遠位フィンガーにおいて、そのようなフィンガーは、所与の遠位フィンガーと直接隣接する近位フィンガーとの間に介在する遠位フィンガーが存在しないように、近位フィンガーに直接隣接することができる。同様に、いずれかの所与の近位フィンガーにおいて、そのようなフィンガーは、所与の近位フィンガーと直接隣接する遠位フィンガーとの間に介在する近位フィンガーが存在しないように、遠位フィンガーに直接隣接することができる。全ての遠位フィンガーおよび近位フィンガーにおいてこのような交互パターンを繰り返す構成は、
図3および
図5で最もよく図示される。しかし、遠位フィンガーの数は、近位フィンガーの数より多くすることができ、その逆も可能である。
図4に示されるように、フレーム26は、複数の遠位フィンガー28と複数の近位フィンガー30との間に胴部34を備える。胴部34は、直接隣接し合うフィンガー間の複数の頂点32によって画定されるとともに、身体開口部内に位置するように構成され、例えば、身体開口部に密封係合するように、身体開口部を画定する組織の壁に接触することができる。
【0014】
上記デバイスは、欠損の開口に対して適宜サイズ調整されるか、またはそれよりも大きくされなければならない。複数のフィンガーおよび胴部の大きさおよび形状は、身体開口部および隣接組織の大きさと対応することができ、身体開口部の場所に応じて変動させることができる。例えば、複数のフィンガーは、身体開口部を閉塞するために身体開口部の側面に密封係合するような大きさおよび形状にすることができ、胴部は、身体開口部内に位置決めできるような大きさおよび形状にすることができる。フィンガーはまた、例えば僧帽弁、三尖弁、および肺静脈などの周囲の身体構造および/または医学的構造に対して起こり得るあらゆる相互作用または干渉を回避するような形状および設計にすることができる。
図2、
図3、および
図5に最もよく図示されるように、複数の遠位フィンガーおよび複数の近位フィンガーは、それぞれ円弧状の先端を有することができる。特定の態様において、各フィンガーは略同じ大きさである。他の態様において、フィンガーの1つ以上は、異なる大きさとすることができる。いずれの場合も、フィンガーの形状は、ASDを有する心臓の中隔などの身体開口部を画定する組織側面に、フィンガーが留め具またはクランプのように係合するのを可能にする形状を画定する。
図19~
図21を参照すると、特定の態様において、閉鎖デバイス27は花弁形状のフィンガー29を有する。このような花弁形状のフィンガーは、フレームの片側の花弁がすべて、配置時に浅い円錐の表面に沿って半径方向に位置するように、異なる平面内に延在することができる。具体的に、片側のフィンガー29は、非伸張/非圧縮のバネと同様に作用する非拘束状態で仮想平面(
図21に参照符号Pで示す)と交差する。交差するフィンガーは、例えば中隔の間に配置されると撓む。このような非拘束状態からの撓みにより、フレームを適所に固定するための締付力が得られ、膜は中隔の表面に密着し、漏れが減少する。換言すると、このようなフィンガーの「交差(crisscrossing)」によってフィンガーに予負荷をかけることで、中隔上での締付けが良好となり、封止膜は中隔壁に位置するように引き寄せられ、漏れが最小限に抑えられる。
【0015】
上述したように、フレームは、ワイヤーまたは管状構造を備えることができる。ワイヤーまたは管状構造の直径または厚さは、全体として閉鎖デバイスの大きさに比例し得る。例えば、ワイヤーまたは管状構造の直径または厚さは、約50μm~約2000μmの間とすることができる。他の態様において、直径は、約200μm~約1000μmの間とすることができる。他の態様において、直径は、約200μm~約300μmの間とすることができる。さらに他の態様において、直径は、およそ300μmとすることができる。
【0016】
以下により詳細に説明されるように、閉鎖デバイスは可撓性であり、フレームが軸方向に伸長する半径方向に折り畳まれた構成、およびフレームが軸方向に短縮する半径方向に拡張された構成の両方を呈するように構成される。フレームの可撓性は、様々な形状および大きさの身体開口部および隣接組織に適応するようにデバイスを拡張、収縮、および位置調整することを可能にする。さらに、フレームは折畳み可能または変形可能であり得るため、その結果、デバイスをとりわけ経カテーテル技術によって配置することができる。したがって、フレームは、例えば、鉄、マグネシウム、白金、ステンレス鋼、コバルト-クロム-ニッケル合金、またはニッケルチタン金属合金(ニチノールなど)など、可撓性で操作可能な材料(例えば、金属またはポリマー)から作製することができる。特定の態様において、フレームは、デバイスが送達デバイスから解放されるかまたは他の方法で配置された後にデバイスの意図した形状を維持することができる、例えばニチノールなどの自己拡張型の形状記憶材料から作製される。フレームはまた、生物分解性材料、PLA、PLLA、他のマグネシウム系材料、またはそれらの適切な組合せを含むことができる。フレームは、ニチノールなどの可撓性材料の平らなシートをレーザー切断することによって、または可撓性材料からフレームを形成することによって作製することもできる。
【0017】
図5を参照すると、ある実施形態において、閉鎖デバイス24は、複数の遠位フィンガー28の少なくとも一方の面を覆う遠位膜36(「遠位閉鎖部分48」と総称する)と、複数の近位フィンガー30の少なくとも一方の面を覆う近位膜38(「近位閉鎖部分50」と総称する)とをさらに備える。あるいは、
図22~
図24を参照すると、閉鎖デバイス31は、拡縮可能な胴部35を覆う単一の膜33を備えることができる。膜は、封止すべき身体開口部を画定する組織側面に密封係合するように適合される。複数のフィンガーは、それぞれの膜を実質的に張った状態に保持することができる。
図25~
図27を参照すると、特定の態様において、一方の心房内の過剰な圧力を緩和するために、膜内に開口を備える閉鎖デバイスが提供される。このような開口は、圧力がより低いもう一方の心房に血液をシャントすることができる。
図25は、開口41が膜39内に位置する閉鎖デバイス37を図示する。
図26~
図28は、フレーム45を覆う封止膜47を有する閉鎖デバイス43を図示する。閉鎖デバイス43のフィンガー49は、より広い花弁形状を有し、膜47をフレームに交互にかつより確実に取り付ける。
【0018】
膜は、十分な弾力性と可撓性を有し、膜の完全性を損なうことなく配置後の医療用穿刺を可能にする十分な耐久性を有する材料から作製してもよい。例えば、膜は、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)または生体再造形可能(bioremodelable)材料、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、延伸ポリテトラフルオロエチレン、ポリエステルファブリックなどのファブリック、テフロン(登録商標)系材料、心膜組織、他の生体適合性または生体吸収性材料、またはそれらの適切な組合せから作製してもよい。特定の態様において、膜はシルク、ナイロン、シリコーン、ポリエチレン、ポリプロピレン、またはフルオロポリマーの膜を含むことができる。しかし、膜は、好ましくは、顕著な炎症反応または石灰化反応を起こさない生体適合性を有する材料、例えば、PTFE、ePTFE、ポリエチレンテレフタレート(PET)、または他のポリエチレン膜、心膜、または他のポリマーを含む。好ましくは、膜は、血液の通過を阻害する一方で、配置後の経中隔穿刺および心房間の再進入も可能にする材料から作製される。膜は、PETメッシュ、PETで焼成したPTFEラミネート(以下に説明)、または他の適切な材料であってもよい。膜は、縫合糸、または接着剤、にかわ、ヒートシール、電気の使用、重合、溶接などの他の適切な取り付けデバイスおよび方法によって、対応する複数のフィンガーに取り付けることができる。複数の近位フィンガーおよび複数の遠位フィンガーは各々、それぞれの近位膜および遠位膜のための取り付け点を備えることができる。例えば、取り付け点は、縫合糸を受容するようにサイズ調整されたアイレット62である。アイレットはフィンガーの遠位端に位置してもよい。
図10に図示するように、縫合糸の結び目64は、アイレットに結ぶことができる。縫合糸がフレーム上の所定位置からずれることがないため、アイレットは、膜65のフレームへの強固な固定を提供することができる。
【0019】
図9に図示する糸、ケーブル、または他の抵抗性のある細長い材料40は、近位膜38Aに取り付けることができる(遠位膜36Aに取り付けることもできる)。糸は、例えば、ポリマー繊維またはワイヤーであってもよい。糸は、近位膜または遠位膜の中心に取り付けることができる。以下に詳細に説明するように、糸は、デバイスを解放または配置することを容易にすることができ、デバイスを送達または配置する前に、デバイスを送達デバイスの中に引き込むために使用することができる。上記のように、縫合糸の結び目は、フィンガーの遠位端に位置し得る、フレームのアイレットに取り付けることができる。縫合糸(ひいては膜)をフィンガーの遠位端にのみ取り付けることによって、糸が近位膜または遠位膜の中心から近位方向に引っ張られると、膜はフレームから離れるように旋回することが可能になる。これは、膜がフレームの他の部分に取り付けられる場合には不可能であり得る。これは、閉鎖デバイスをより小さな直径を有する送達カテーテルの中に装填することを可能にするため、有利であり得る。送達カテーテルの直径が小さければ小さいほど、患者に対する処置が容易になり、より多くの患者集団を治療することができる。
【0020】
図11および
図12を参照すると、特定の態様において、遠位膜/近位膜66は、フルオロポリマーを含む外表面と熱可塑性ポリマーを含む内表面とを備える第1のシート68を備える。膜は、フルオロポリマーを含む外表面と熱可塑性ポリマーを含む内表面とを備える第2のシート70をさらに備えることができる。フルオロポリマーは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)またはいずれかの他の適切なフルオロポリマーとすることができ、熱可塑性ポリマーは、ポリエチレンテレフタレート(PET)またはいずれかの他の適切な熱可塑性ポリマーであってもよい。第2のシートの内表面は、第1のシートの内表面にラミネートすることができる(
図11は、明確化のために2枚のシートの間に空間を描写するが、2枚のシートが合わせてラミネートされるとき、このような空間は存在する必要がない。さらに、シート70は、明確化のために実線で描写される)。第1の補強フィラメント72および第2の補強フィラメント74は、第1のシート68と70との間に配置し、交点76で交差することができる。第1の補強フィラメント72は、フレーム80に取り付けられた端部78aおよび78bを有することができ、第2の補強フィラメント74は、フレーム80に取り付けられた端部82aおよび82bを有することができる。具体的には、第1のフィラメント72および第2のフィラメント74は、第1のシート68および第2のシート70をフレーム80に固定することができ、膜66の負荷および回収負荷を担うことができる。
図11に示されるように、補強フィラメントの端部は、フレームのアイレットに結んで、必要な固定用の結び目を設けることができる。
図12に示されるように、糸40Aは、交点76において第1の補強フィラメントおよび第2の補強フィラメントに取り付けることができる。糸40Aが交点76でループ状に通される場合、負荷力が交差したフィラメントに伝達し、第1のシートおよび第2のシートの軟質フルオロポリマーに負荷をかけて変形させることなく、糸40Aを近位方向に引っ張ることができる。
【0021】
図13を参照すると、特定の態様では、閉鎖デバイス90は、近位膜または遠位膜94に取り付けられた補強材92を備える。上述の糸は、補強材92の中心に取り付ける(例えば、ループ状に通される)ことができる。上述のように、糸は、デバイスを解放または配置することを容易にすることができ、デバイスを送達または配置する前に、デバイスを送達デバイスの中に引き込むために使用することができる。
【0022】
閉鎖デバイスは、一連の形状から移行するように構成される。例えば、半径方向に折り畳まれた構成では、フレームは軸方向に伸長する。このような伸長した形状は、閉鎖デバイスを標的部位に経皮的に送達することができるように閉鎖デバイスを送達デバイスの中に装填させることが可能である。半径方向に拡張された構成に移行すると、フレームは軸方向に短縮する。このような半径方向に拡張された構成では、胴部は、身体開口部内に位置し、複数の遠位フィンガーは、身体開口部を画定する組織壁の一方の面に係合し、複数の近位フィンガーは、身体開口部を画定する組織壁の他方の面に係合するため、遠位膜および近位膜が組織壁の面に押し付けられて身体開口部を封止する。半径方向に拡張された構成では、遠位平面および近位平面は、例えば軸方向に間隔を置いた関係を含む特定の間隔を置いた関係に維持することができる。特定の態様において、閉鎖デバイスは、付勢されて所望の形状になるが、送達デバイスなどによって生じるあらゆる拘束力から解放されたときに、半径方向に拡張された構成になるように構成される。
【0023】
特定の態様において、閉鎖デバイスはASDを治療するために使用される。
図6は、左中隔壁44と右中隔壁46との間のASD42を図示する。
図7は、遠位閉鎖部分48が左中隔壁44に密封係合し、近位閉鎖部分50が右中隔壁46に密封係合する、展開した位置にある閉鎖デバイス24を図示する。進入方向によっては、遠位閉鎖部分48が右中隔壁46に密封係合し、近位閉鎖部分50が左中隔壁46に密封係合することができると理解されたい。遠位フィンガーおよび近位フィンガーの交互パターンは、フィンガーがASDを越えて中隔を把持することを容易にし、閉鎖デバイスを所定位置に保持することができる。このようなクランプ動作はまた、閉鎖デバイスの膜を心臓中隔のそれぞれの側面に対して保持することができる。交互パターンはまた、閉鎖デバイスを穿刺する必要がある潜在的な後続処置に干渉し得る、金属または他の加工材料の量を最小限に抑える。
図8に図示するように、胴部34は、ASD42内に位置する。閉鎖デバイスの胴部は、デバイスがASD内で自ら中央に位置するように機能し、その結果、近位膜および遠位膜をASDの上に中央に位置させ、ASDを十分に封止する。
【0024】
図9および
図14~
図19は、閉鎖デバイス24Aを使用する方法の概略図を提供する。
図9は、フレームが軸方向に伸長する半径方向に折り畳まれた構成の閉鎖デバイス24Aを図示する。閉鎖デバイス24Aを半径方向に拡張された構成に移行するために、近位閉鎖部分50Aの膜38Aの中心をループ状に通されているように示される糸40を近位方向に引っ張ることができる。閉鎖デバイス24Aを送達デバイスの中に装填するために、糸40は、送達デバイスの遠位端を通して引っ張ることができる。膜38Aを中央で引き込むことによって、閉鎖デバイスを、必要に応じて、回収すること、または送達デバイスの中に再装填することが可能である。
図14は、カテーテル52の中に装填された閉鎖デバイス24Aを図示する。カテーテル52は、その中に装填される構成要素をより良く図示するために、透明であるように示されることに留意されたい。
図15は、右心臓中隔壁54に向かって位置するカテーテル52を図示する。
図16は、心臓中隔58のASD56を通るように誘導されるカテーテル52を図示する。
図17に図示するように、カテーテル52は、遠位閉鎖部分48Aを展開するために後退することができる。次いで、
図18に図示するように、カテーテル52は、近位閉鎖部分50Aを右心臓中隔壁54に位置するために、さらに後退することができる。これで、デバイスは完全に展開され、遠位閉鎖部分48Aが左中隔壁60に密封係合し、近位閉鎖部分50Aが右中隔壁に密封係合する。前述と同様に、進入方向によっては、遠位閉鎖部分と近位閉鎖部分の位置が逆になってもよい。完全に解放する前に、閉鎖デバイスの位置を変更する、または閉鎖デバイスを回収することができる。完全に展開されたおよび埋め込まれた構成では、デバイスは中隔を跨ぎ、閉鎖デバイスの胴部はASDの中央に位置する。近位閉鎖部分および遠位閉鎖部分は、互いの上に配置しても依然として密封でき、必要に応じて開口部を再封止することを可能にする。
【0025】
上記で参照した説明は主にASDについて言及するが、閉鎖デバイスは、卵円孔開存部(PFO)、他の動静脈吻合部、動脈管開存部、および他の人工、先天、または後天的な開口部(例えば、疾患によって生じた開口部など)など、身体組織の他の開口部を低侵襲で閉塞するために使用することができる。さらに、デバイスは、成人患者および/または小児患者に使用するように構成することができる。
【0026】
本開示の開示された態様および実施形態の各々は、個別に、または本開示の他の態様、実施形態、および変形と組み合わせて考慮され得る。さらに、本開示の実施形態および態様の特定の特徴は、特定の図のみに示されるか、または本開示の特定の部分に説明されることがあるが、このような特徴は、本開示の他の図または他の部分に示される他の実施形態および態様に組み込まれることができる。同様に、本開示の特定の図に示されるか、または特定の部分で説明される本開示の実施形態および態様の特定の特徴は、任意選択であるか、またはそのような実施形態および態様から削除することができる。さらに、ある範囲について説明する場合、その範囲内のすべての点が本開示に含まれる。
【国際調査報告】