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特表2024-531791インクジェットプリントヘッド用の泡ストッパ物体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】インクジェットプリントヘッド用の泡ストッパ物体
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/175 20060101AFI20240822BHJP
【FI】
B41J2/175 141
B41J2/175 201
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024517072
(86)(22)【出願日】2022-09-22
(85)【翻訳文提出日】2024-05-20
(86)【国際出願番号】 EP2022076441
(87)【国際公開番号】W WO2023046864
(87)【国際公開日】2023-03-30
(31)【優先権主張番号】21198380.4
(32)【優先日】2021-09-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】311007051
【氏名又は名称】シクパ ホルディング ソシエテ アノニム
【氏名又は名称原語表記】SICPA HOLDING SA
【住所又は居所原語表記】Avenue de Florissant 41,CH-1008 Prilly, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】モレロ, ジョヴァンニ
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA26
2C056FA03
2C056FA10
2C056KB27
2C056KC12
2C056KC15
2C056KC21
2C056KC25
(57)【要約】
本技術は、インクジェット印刷の分野に関する。本技術は、インクリザーバ(10)とスタンドパイプ(11)との間に配設されたフィルタ(12)であって、フィルタ(12)が、インクリザーバ(10)からのインク(25)がスタンドパイプ(11)に入る前に、不要な物質を濾過し除去するように構成されている、フィルタ(12)と、フィルタ(12)を介してインクリザーバ(10)からインク(25)を受容するように構成されたスタンドパイプ(11)であって、スタンドパイプ(11)が、スタンドパイプ(11)内に配設された物体(28、29)を備え、物体(28、29)が、物体(28、29)に投じられた受容されたインク(25)の流れを、物体(28、29)内の1つ以上の通路を通して導くことによって、気泡の成長を妨げるように構成されている、スタンドパイプ(11)と、備える、プリントヘッド(1)を提供する。
【選択図】 図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクリザーバ(10)とスタンドパイプ(11)との間に配設されたフィルタ(12)であって、前記フィルタ(12)が、前記インクリザーバ(10)からのインク(25)が前記スタンドパイプ(11)に入る前に、不要な物質を濾過し除去するように構成されている、フィルタ(12)と、
前記フィルタ(12)を介して前記インクリザーバ(10)からインク(25)を受容するように構成された前記スタンドパイプ(11)であって、前記スタンドパイプ(11)が、前記スタンドパイプ(11)内に配設された物体(28、29)を備え、前記物体(28、29)が、気泡の成長を妨げて、前記物体(28、29)に投じられた前記受容されたインク(25)の流れを前記物体(28、29)内の1つ以上の通路を通して促進するように構成されている、前記スタンドパイプ(11)と、
を備える、プリントヘッド(1)。
【請求項2】
前記フィルタ(12)が、メッシュフィルタに相当する、請求項1に記載のプリントヘッド(1)。
【請求項3】
前記物体(28、29)が、変形可能である、請求項1に記載のプリントヘッド(1)。
【請求項4】
前記物体(28)が、メッシュ構造体を含み、さらに、前記メッシュ構造体が、円筒形状または円錐形状を有する、請求項1に記載のプリントヘッド(1)。
【請求項5】
前記メッシュ構造体が、一方の端部が部分的に摘まれた、巻き上げられた多角形メッシュシート(27)によって形成されている、請求項4に記載のプリントヘッド(1)。
【請求項6】
前記メッシュ構造体が、ステンレス鋼材料で構成されている、請求項4に記載のプリントヘッド(1)。
【請求項7】
前記メッシュ構造体のメッシュサイズが、前記フィルタ(12)のメッシュサイズよりも大きい、請求項4に記載のプリントヘッド(1)。
【請求項8】
前記物体(29)が、多孔質構造体を含む、請求項1に記載のプリントヘッド(1)。
【請求項9】
前記多孔質構造体が、平行六面体形状を有する、請求項8に記載のプリントヘッド(1)。
【請求項10】
前記多孔質構造体が、オープンセル発泡体材料を含む、請求項8に記載のプリントヘッド(1)。
【請求項11】
前記スタンドパイプ(11)が、前記物体(28、29)を通って流れた前記インク(25)を受容するように構成された開口部(13)に取り付けられており、さらに、前記開口部(13)が、前記プリントヘッド(1)に外付けされたマイクロ流体デバイス(2)への前記受容されたインク(25)の流れを促進にするように構成されている、請求項1に記載のプリントヘッド(1)。
【請求項12】
前記マイクロ流体デバイス(2)が、前記マイクロ流体デバイス(2)が1つ以上の電気接点パッド(3)を介して電気的に活性化されたときに、1つ以上のインク滴(23)を吐出するための1つ以上の吐出ノズル(9)を備える、請求項11に記載のプリントヘッド(1)。
【請求項13】
前記1つ以上の通路が、前記物体(28)内の1つ以上のメッシュを含む、請求項4に記載のプリントヘッド(1)。
【請求項14】
前記1つ以上の通路が、前記物体(28)の隣接するループ間の1つ以上の空間を含む、請求項4に記載のプリントヘッド(1)。
【請求項15】
プリントヘッド(1)用のスタンドパイプ(11)であって、前記スタンドパイプ(11)が、フィルタ(12)を介してインク(25)を受容するように構成されており、かつ前記スタンドパイプ(11)内に配設された物体(28、29)を備え、前記物体(28、29)が、前記物体(28、29)に投じられた前記受容されたインク(25)の流入が前記物体(28、29)内の1つ以上の通路を通して流れるような様式で、気泡の成長を妨げるように構成されている、スタンドパイプ(11)。
【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
[0001]本発明は、インクジェットプリントヘッド技術の分野に関し、特に、サーマルインクジェットプリントヘッドに関する。
【発明の背景】
【0002】
[0002]サーマルインクジェットプリントヘッドは、プリントヘッドの電気的活性化に基づいてインクを印刷するためにインクジェットプリンタにおいて使用される。プリントヘッドが電気的に活性化されたとき、インクの層が気化されて高圧蒸気泡になる。高圧蒸気泡はさらに膨張し続け、連続的な膨張は周囲のインクの急速な動きを引き起こす。これにより、その後、プリントヘッドのノズルからインク滴が吐出される。
【0003】
[0003]従来のインクジェットプリントヘッドに関連する課題は、窒素および酸素などの外部大気ガスがプリントヘッドの本体内の特定の透過性部分に入り、インク内に溶存する傾向があることである。インクが吐出されると、溶存ガスの一部のみは放出され得るが、溶存ガスがプリントヘッドから完全に放出されない場合がある。その結果、プリントヘッド内の残留溶存ガスがプリントヘッド内に気泡を形成し、インクの流れを部分的または完全に目詰まりさせる可能性がある。これにより、プリントヘッドの目詰まりがさらに発生し、プリントヘッドの自然寿命が尽きる前であっても、最終的には印刷を停止させ得る。
【0004】
[0004]したがって、上記の課題を克服し、プリントヘッドの目詰まりを防止する解決策を提案する必要がある。
【発明の概要】
【0005】
[0005]上記の技術的課題を解決するために、本発明は、プリントヘッドの目詰まりを低減または防止するための物体を含むプリントヘッドを提供する。本明細書に提示される実施形態によれば、物体は、後により詳細に説明するように、泡の形成または成長を妨げることによってプリントヘッドの目詰まりを低減または防止するためのインサートであり得る。
【0006】
[0006]具体的には、本発明は、インクリザーバとスタンドパイプとの間に配設されたフィルタであって、フィルタが、インクリザーバからのインクがスタンドパイプに入る前に、不要な物質を濾過し除去するように構成されている、フィルタと、フィルタを介してインクリザーバからインクを受容するように構成されたスタンドパイプと、を含む、プリントヘッドを提供する。さらに、スタンドパイプは、スタンドパイプ内に配設された物体を含み、物体は、気泡の成長を妨げて、物体に投じられた受容されたインクの流れを物体内の1つ以上の通路を通して促進するように構成されている。本明細書では、「不要な物質」は、製造中に生成されたデブリおよび粒子、ならびに/または気泡を含み得る。本明細書では、「気泡の成長」は、整流拡散によって抽出されたより多くのガスの取込みによる、および/または複数の気泡がスタンドパイプ11内で合流してより大きな気泡を形成することによる、気泡自体の成長を指し得る。
【0007】
[0007]好ましくは、フィルタは、メッシュフィルタに相当する。
【0008】
[0008]好ましくは、物体は、変形可能である。
【0009】
[0009]好ましくは、物体は、メッシュ構造体を含む。一実施形態では、メッシュ構造体は、円筒形状または円錐形状を有する。メッシュ構造体は、一方の端部が部分的に摘まれた、巻き上げられた多角形メッシュシートによって形成されている。加えて、メッシュ構造体は、ステンレス鋼材料で作製されている。一実施形態では、メッシュ構造体のメッシュサイズは、フィルタのメッシュサイズよりも大きい。1つ以上の通路は、物体内に1つ以上のメッシュを含む。1つ以上の通路は、追加的または代替的に、物体内の隣接するループ間の1つ以上の空間を含む。
【0010】
[0010]好ましくは、物体は、平行六面体形状を有する多孔質構造体を含む。一実施形態では、多孔質構造体は、多孔質セル発泡体材料を含む。
【0011】
[0011]好ましくは、スタンドパイプは、物体を通って流れたインクを受容するように構成された開口部に取り付けられており、さらに、開口部は、プリントヘッドに外付けされたマイクロ流体デバイスへの受容されたインクの流れを促進にするように構成されている。
【0012】
[0012]好ましくは、マイクロ流体デバイスは、マイクロ流体デバイスが1つ以上の電気接点パッドを介して電気的に活性化されたときに、1つ以上のインク滴を吐出するための1つ以上の吐出ノズルを含む。
【0013】
[0013]本発明の実施形態によれば、物体に投じられたインクは、物体内の1つ以上の通路を通り物体を通って流れ、スタンドパイプ内に存在するあらゆる気泡は、物体によって捕捉され、スタンドパイプ内の気泡の成長が妨げられるように所定の位置に留まる。したがって、本明細書に提示される実施形態は、プリントヘッドの自然寿命の間のスタンドパイプ内のインクの早期の目詰まりの可能性を低減する。
【0014】
[0014]本発明の非限定的かつ非網羅的な実施形態を、以下の図面を参照して例によって説明する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】当技術分野で知られているような、インクジェットプリンタのプリントヘッドの斜視概略図を示す。
図2】当技術分野で知られているような、プリントヘッドに取り付けられたマイクロ流体デバイスの断面図を示す。
図3a】一実施形態によるプリントヘッドの分解図を示す。
図3b】一実施形態によるプリントヘッドの断面分解図を示す。
図4】一実施形態による、プリントヘッド内に含まれるシリコンチップの断面図を示す。
図5a】一実施形態による、気泡を含むスタンドパイプの概略図を示す。
図5b】より大きな気泡を含むスタンドパイプの概略図を示す。
図6a】一実施形態によるメッシュシートを示す。
図6b】一実施形態による、プリントヘッド内の目詰まりを防止するためにプリントヘッド内に配設され得るメッシュシートで作製された物体を示す。
図7】一実施形態による、物体を含むプリントヘッドを示す。
図8】実施形態によるオープンセル発泡体を示す。
図9】一実施形態による、プリントヘッド内の目詰まりを防止するためにプリントヘッド内に配設され得る多孔質物体を示す。
【実施形態の詳細な説明】
【0016】
[0027]本発明の上記および他の特徴ならびに利点をより明確にするために、本発明を以下の添付図面と組み合わせてさらに説明する。本発明の特定の実施形態は例示的なものであり、限定することを意図したものではないことを理解されたい。
【0017】
[0028]図1は、当技術分野で知られているような、インクジェットプリンタ(図示せず)のプリントヘッド1の斜視概略図を示している。図1に示すように、プリントヘッド1は、衝撃、振動、および環境汚染物質などの外部要因からプリントヘッド1の内部構成要素を囲むための本体4を含み得る。一例では、本体4は、本体4を外部要因から十分に保護するプラスチックまたは任意の他の好適な材料で構成され得る。さらに、マイクロ流体デバイス2は、限定はされないが、シーリング糊または当技術分野で知られている他の接着剤などの好適な接着剤によって本体4に外付けされている。シーリング糊は、マイクロ流体デバイス2とプリントヘッド1の本体4との間の接合部に機械的強度および気密性を提供し得る。ここで、マイクロ流体デバイス2は、プリントヘッド1内に含まれるインクリザーバ(図1には図示せず)と流体連結し得る。したがって、一例では、マイクロ流体デバイス2は、後述するように、スタンドパイプおよびメッシュフィルタを介してインクリザーバに連結され得る。
【0018】
[0029]一実施形態では、マイクロ流体デバイス2は、本体4に取り付けられた1つ以上の電気接点パッド3を介して電気的に活性化されるように構成され得る。この態様は、図2の文脈でより詳細に説明される。
【0019】
[0030]図2は、プリントヘッド1に取り付けられたマイクロ流体デバイス2の断面図を示している。図2に示すように、マイクロ流体デバイス2は、複数の抵抗器5を含み得る。複数の抵抗器5の各々は、流体回路7内に含まれ得る複数の吐出チャンバ6に対応する。さらに、ノズルプレート8がマイクロ流体デバイス2の頂部に設置され得る。ノズルプレート8は、複数の吐出チャンバ6の各々に対して1つ以上の吐出ノズル9を含み得る。吐出ノズル9は、後述するように、プリントヘッド1からのインクの吐出を促進し得る。
【0020】
[0031]一実施形態では、突然の電流パルスが、実質的に薄い膜内に含まれる抵抗器5を介してオンデマンドで印加され得る。この電気的活性化は、吐出チャンバ6の下方で利用可能なインクの薄層の急速な気化を引き起こし得る。一実施形態では、抵抗器5を通る突然の電流パルスは、当技術分野で知られているジュール効果のために抵抗器5内の温度の急速な上昇を引き起こし得る。そのため、抵抗器5とインクとの間に、薄膜の薄い誘電体層を介して、抵抗器5からインクへ熱流が生じ得る。この実施形態では、抵抗器5は、インクから電気的に絶縁されなければならない。したがって、抵抗器5は、この実施形態を実装するために、インクに向かってかなりの熱流を可能にするのに十分に薄い、薄い誘電体層によって覆われている。抵抗器5に最も近いインクの層(すなわち、薄い誘電体膜と接触しているインクの層)は、インク流によって突然過熱され、一例では圧力が数十バールの蒸気になる。高い値の蒸気圧は、さらに蒸気泡の膨張を引き起こし得、これにより吐出ノズル9から上方のインクが引き出され得、それによって吐出ノズル9を介してインク滴の吐出が生じる。インクが吐出されると、新たなインクがインクリザーバから回収されて、吐出ノズル9が再び補充される。
【0021】
[0032]図3aは、一実施形態によるプリントヘッド1の分解図を示している。図3aに示すように、プリントヘッド1の本体4は、毛細管多孔質部材14を含み得る。一実施形態では、毛細管多孔質部材14は、プリントヘッド1のインクリザーバ(図3bに示す)内に負圧を生成する多孔質材料であり得る。吐出ノズル9を通るインク流は、インクジェットプリンタで高品質の印刷を実現するための必須の前提条件のうちの1つであるため、正確に制御されなければならない。毛細管多孔質部材14は、インクリザーバ内にわずかに負圧を生成し得る背圧システムとして作用することによって、インク流のこの制御を提供するのを補助し得る。この負圧は、インクを通って吐出チャンバ6まで延びる。負圧は、毛細管多孔質部材14の細孔のネットワークの毛細管効果によって生じ得る。一例では、多孔質材料は、当技術分野で知られているように、オープンセル発泡体、繊維状部材、または2つ以上の要素の組合せであり得る。インクリザーバ内の負圧は、インクの意図しない漏れを防止する。そうでなければ、このような漏れが、インクを使用するプリントヘッド1がアイドリングしているとき、またはプリントヘッド1の取扱い中にインクリザーバが突然の加速にさらされたときに発生する可能性がある。
【0022】
[0033]さらに、プリントヘッド1の本体4は、本体蓋15によって頂部が囲まれ得る。加えて、本体4はまた、本体4の底部に、マイクロ流体デバイス2に向かうインク流を促進するためのインク流開口部13を含み得る。プリントヘッド1の本体4はまた、図3bの文脈で説明されるメッシュフィルタ12を含む。
【0023】
[0034]図3bは、一実施形態によるプリントヘッド1の断面分解図を示している。図3bに示すように、本体蓋15には、インク充填孔16が設けられ得、針が、インク充填孔16を通り毛細管多孔質部材14を貫通して、(本体4内に収容された)インクリザーバ10をインクで充填し得る。外部大気圧との好適な連通を提供するために、本体蓋15は、インク充填孔16の直径と比較してより小さい直径を有する追加の通気孔17を含み得る。通気孔17は、本体蓋15の表面に成形された浅い蛇行通気チャネル18の一方の端部で本体蓋15内に作製され得る。
【0024】
[0035]さらに、スタンドパイプ11は、インクリザーバ10との境界でメッシュフィルタ12が頂部に設けられ得、メッシュフィルタ12の反対側の端部のインク流開口部13によって他方の端部で終端し得る。インク流開口部13は、インクリザーバ10からスタンドパイプ11に外付けされたマイクロ流体デバイス2に向かうインク流を可能にし、インク流開口部13においてインクは吐出チャンバ6に供給される。一例では、スタンドパイプは、メッシュフィルタ12と開口部13との間に位置決めされた管状構造体であり得る。開口部13は、スタンドパイプ11の端部部分に配置され得、この例では、スタンドパイプ11に成形され得る。
【0025】
[0036]図4は、一実施形態による、マイクロ流体デバイス2に含まれるシリコンチップ19の断面図を示している。シリコンチップ19の表面上には、層スタック20が配設され得る。層スタック20は、当技術分野で知られているように、薄膜技術で実現される好適な導体、抵抗器(例えば、抵抗器5)、および誘電体層を含み得る。層スタック20上には、流体回路7が、バリア層21とも呼ばれ得る好適にパターニングされたポリマーによって実現される。バリア層21は、ノズルプレート8によって頂部が閉鎖され得、ノズルプレート8において吐出ノズル9が実現される。一実施形態では、蒸気泡22が、抵抗器5を介して送られる電流パルスを印加することによって形成され得る。蒸気泡22の膨張により、吐出ノズル9からインク滴23が吐出され得る。さらに、貫通スロット24が、本体4のインク流開口部13を介して流体回路7とインクリザーバ10とを連通させ得る。そのため、インク25は、インクリザーバ10からメッシュフィルタ12、スタンドパイプ11、インク流開口部13、貫通スロット24を通って流れ、その後、吐出チャンバ6に到達する。
【0026】
[0037]図5aは、一実施形態による、気泡26を含むスタンドパイプ11の概略図を示している。
【0027】
[0038]インク25の気化中、温度の上昇により、インク25内に溶存する大気ガスが部分的に放出され得、インク25内のガスの溶解度が低下する。蒸気泡発生段階の間の熱伝達により、気化層内に溶存するガスだけでなく、周囲のインク内に含まれるガスの一部も放出され得る。インク25が極度に飽和している場合、インクの加熱および気化中に大量のガスが放出され得る。
【0028】
[0039]一例では、放出されたガスの一部は印刷中にインクとともに吐出され得るが、一部のガスは依然としてプリントヘッド1内、吐出チャンバ6内、またはスタンドパイプ11内に留まり得る。インク25から放出されたガスの再吸収は、インク25からの脱離よりも遅いため、放出されたガスは、しばらくの間、気泡26としてプリントヘッド1内に滞留し得る。気泡26のサイズが実質的に小さい場合、表面張力が気泡26よりも優勢であり得る。そのため、気泡26は、インク25によって再吸収され、気泡26自体が消失するまで収縮し得る。反対に、気泡26が十分に大きい場合、気泡26はインク25内で気泡26の存在を維持し、スタンドパイプ11内で経時的にインク25を通って移動し得る。
【0029】
[0040]気泡26のサイズが、気泡26のスタンドパイプ11内の移動を可能にするまでは、図5aに示すように、印刷品質を損なうことなくインクがノズルに向かって移動するための利用可能な側部通路が常に存在し得る。
【0030】
[0041]一方、図5bに示すように、気泡26のサイズが、気泡26がスタンドパイプ11を塞ぐほど十分に大きい場合、インク25はインクリザーバ10から吐出ノズル9に流れない可能性がある。このような状況は、特に高密度印刷のために強いインク流が必要とされるときに、プリントヘッド1の目詰まりを引き起こす。この状況では、インクリザーバ10と吐出チャンバ6との間に外部から加えられる強い圧力差のみが、気泡を押し退け、プリントヘッド1の機能を回復させ得る。これは、たとえインクリザーバ10内部にまだ十分なインクがあったとしても印刷を停止することになり得る、サーマルプリントヘッドの信頼性にとって深刻な課題である。この問題は、複数のリザーバが同じインクカートリッジ内に埋め込まれているカラープリントヘッドのように、スタンドパイプ11のサイズが小さい場合によりさらに頻繁に発生する可能性がある。
【0031】
[0042]上述のシナリオにおいて、気泡26の第1の推定される影響は、吐出中のインク25の規則的な気化の乱れである。気泡26がプリントヘッド1の抵抗器5の近くにある場合、蒸気の核生成が局所的に予測され得、送達された熱エネルギーが上にあるインク全体に均一に拡散するのを防止する。インク25の蒸気泡22の生成は不完全という結果となり、吐出されたインクの滴り23は運動エネルギーおよび方向性を欠く可能性がある。その後の印刷ショットのうちの1つの間に気泡26が排出され得るとしても、新たなガスが放出され得、プリントヘッドの機能に乱れが生じる。
【0032】
[0043]気泡26の存在の第2の影響は、気泡26自体の成長であり、いわゆる整流拡散によって、インクによって抽出されたより多くのガスを取り込み得る。整流拡散は、音場で発生する泡成長現象である。振動圧力波を受けたとき、好適なサイズ範囲の気泡は膨張および圧縮を受ける。このような振動圧力波は、インクの気化が周囲のインクに数十バールの圧力ストロークを引き起こすため、サーマルプリントヘッドでは非常に一般的である。気泡の膨張が最大である間、気泡の内圧は大気圧未満である。この振動の間、気泡内の圧力は、気泡が膨張するにつれて減少し、気泡が圧縮するにつれて増加する。その結果、気泡の内部と外部との圧力差により、ガスが気泡の内外に拡散する。いくつかの影響が、気泡の内外への不均等な拡散につながり、その結果、気泡のサイズが増大する。さらに、環境圧および温度の変動、ならびにインク溶媒のゆっくりとした蒸発にも起因して、気泡は、多くの場合、長期的に自発的に成長する傾向がある。
【0033】
[0044]さらに、複数の気泡がスタンドパイプ11内を移動し、合流してより大きな気泡26を形成する可能性がある。このような気泡は、特にプリントヘッドがプリンタ内に直立して位置決めされており、ノズルが下を向いているときに、スタンドパイプ11内で集結する傾向がある。これらの気泡は、スタンドパイプ11の頂部上のメッシュフィルタ12に当たるまで、スタンディングパイプ11内で自然に上方に移動し得る。メッシュフィルタ12は、メッシュフィルタ12の細かいメッシュによって及ぼされ得る強い毛細管圧のために、気泡26によって克服することが困難である。したがって、形成された大きな気泡26は、スタンドパイプ11内に滞留する傾向があり、経時的に成長する。
【0034】
[0045]図6aは、一実施形態によるメッシュシート27を示している。一例では、メッシュシート27は、ステンレス鋼または変形可能な任意の他の好適な材料で構成され得る。一例では、メッシュシート27は、多角形、または巻き上げられて円筒形もしくは円錐形のメッシュ構造体を形成し得る任意の他の好適な形状を有し得る。一実施形態では、多角形メッシュシート27が巻き上げられてメッシュ構造体を形成し、一方の端部が部分的に摘まれて、プリントヘッド内の目詰まりを低減または防止するためにプリントヘッド1内に配設されるインサートとしての物体28を形成し得る。この態様は、図6bの文脈でより詳細に説明される。
【0035】
[0046]図6bは、一実施形態による、プリントヘッド1内に配設され得る物体28を示している。一例では、図6aに示すメッシュシート27が巻き上げられて、円筒形状または円錐形状のメッシュ構造体を形成し得る。一例では、メッシュ構造体は、一実施形態によれば、一方の端部で部分的に摘まれるかまたは押し潰されて、恒久的に形成された物体28を形成し得る。
【0036】
[0047]一例では、物体28はステンレス鋼で作製され得、ある特定の弾性を有し得る。しかしながら、物体28が巻かれる場合、物体28は恒久的な変形を保持し得、これは物体28の一方の端部を摘むことによってより安定され得る。例えば、物体28が一方の端部で摘まれる場合、物体28の形状は円筒形ではなく「円錐形」になり得る。物体28は、当技術分野で知られているように、好適な産業デバイスによって摘まれ得るおよび/または巻かれ得る。
【0037】
[0048]図7は、物体28の存在により、スタンドパイプ11内の気泡の成長が妨げられるか、またはそうでなければスタンドパイプ11内に閉じ込められたあらゆる気泡のサイズが増大するのが防止される、もしくは複数の気泡が合体してより大きな泡になるのが防止されるように、物体28に投じられたインク25が通って流れ得るいくつかの通路(例えば、メッシュ孔)を物体28が提供するような様式でプリントヘッド1のスタンドパイプ11内に配設され得る物体28を示している。これは、物体28のメッシュ構造体のために、インク25が物体28内の1つ以上の通路を通過し得ることを意味し得る。一実施形態では、物体28は、物体28を通るインクの流れのための複数の通路を提供し得る。例えば、そのような通路の一例は、物体28のメッシュ構造体内の1つ以上のメッシュによって作り出された流路を含み得る。さらに、メッシュシートが巻き上げられているため、物体28の隣接するループ間の1つ以上の狭い空間は、インクの流れに追加の通路を提供するための第2の流路として作用し得る。
【0038】
[0049]さらに、物体28は、プリントヘッド1の本体4に取り付けられたメッシュフィルタ12によって頂部で閉鎖され得るしたがって、本明細書に提示される実施形態は、物体28の存在が気泡の成長を妨げるため、インク流の妨害を低減または防止する。一例では、物体28は、この図に示すように、スタンドパイプ11内に斜めに挿入され得る。この例では、物体28は、メッシュフィルタ12と物理的に接触し得る。しかしながら、別の例では、物体28は、物体28がメッシュフィルタ12と物理的に接触しないような様式でスタンドパイプ11内に挿入され得る。
【0039】
[0050]一実施形態では、物体28は、メッシュフィルタ12のメッシュサイズと比較してより大きなメッシュサイズを有し得る。したがって、たとえスタンドパイプ11内に大きな気泡が存在するとしても、インクは、物体28を横切るか、または物体28とスタンドパイプの内壁との間のいずれかの、好適な通路を見つけることができる。これにより、スタンドパイプ11が気泡によって占められている状況であっても、インク25の規則的な流れが確実になり得る。本明細書に提示される実施形態によれば、物体はメッシュ構造体を有する。物体28のメッシュ構造体、および物体28の包まれた表面は、気泡が空間内および物体28を貫通するための、高レベルのエネルギー閾値を有する空間を作り出すことが可能であり得る。したがって、本明細書に提示される実施形態は、物体28内または物体28の側部にインクの流れのための1つ以上の通路が常に存在して、連続的なインク流を提供することを保証する。
【0040】
[0051]図8は、実施形態によるオープンセル発泡体29を示している。一例では、オープンセル発泡体29は、液体(例えば、インク)が細孔を通って流れる透過性を可能にするいくつかの細孔を有する平行六面体形状の構造であり得る。
【0041】
[0052]図9は、一実施形態による、目詰まりを低減または防止するためにプリントヘッド1のスタンドパイプ11内に配設され得る多孔質物体29を示している。一例では、多孔質物体29は、オープンセル発泡体29または多孔質構造を有する繊維系材料であり得る。したがって、多孔質物体29は、インクリザーバ10から吐出ノズル9へのインク通路の確立を促進するように、気泡の成長が妨げられるような、気泡が貫通するための実質的に高レベルのエネルギー閾値を有する複数の連通空間を作り出し得る。図9に示すように、変形可能な多孔質物体29は、スタンドパイプ11内に都合よく挿入されて、連続的なインク流を維持し得る。別の例では、オープンセル発泡体の代わりに、物体29は、上述のような同様の機能を達成するためのステンレスの「スチールウール」を含み得る。
【0042】
[0053]本明細書に提示される実施形態によれば、物体28および29は、スタンドパイプ11内に挿入された場合、これらの物体に投じられたインクの連続的な流れを維持する。物体28および29に設けられた通路(メッシュ孔または細孔)は、スタンドパイプ11内の気泡の成長を妨げることによってインクの連続的な流れを確実にし、それによって、スタンドパイプ11内のインクの目詰まりを低減または防止する。したがって、本明細書に提示される実施形態は、早期の目詰まりの可能性を低減または防止することによって、プリントヘッド1がプリントヘッド1の自然寿命を通して動作することを可能にする。さらに、すべての実施形態は、製造プロセスフローにおける生産の微調整において実装することができ、プリントヘッドの信頼性に対する費用効果の高い改善を表す。
【0043】
[0054]上述した様々な技術的特徴は、任意に組み合わせられ得る。様々な技術的特徴のすべての可能な組合せが記載されているわけではないが、これらの技術的特徴のすべての組合せは、矛盾しない限り、本明細書に記載された範囲内にあるとみなされるべきである。
【0044】
[0055]実施形態と組み合わせた本発明の説明にもかかわらず、当業者は、上記の説明および図面は例示的なものにすぎず、限定的なものではなく、本発明は開示された実施形態に限定されないことを理解するであろう。本発明の概念から逸脱することなく、様々な修正および変形が可能である。
【符号の説明】
【0045】
1 プリントヘッド
2 マイクロ流体デバイス
3 電気接点パッド
4 プリントヘッドの本体
5 抵抗器
6 吐出チャンバ
7 流体回路
8 ノズルプレート
9 吐出ノズル
10 インクリザーバ
11 スタンドパイプ
12 メッシュフィルタ
13 インク流開口部
14 毛細管多孔質部材
15 プリントヘッドの本体蓋
16 インク充填孔
17 通気孔
18 蛇行通気チャネル
19 シリコンチップ
20 層スタック
21 バリア層
22 蒸気泡
23 インク滴
24 貫通スロット
25 インク
26 スタンドパイプ内の気泡
27 メッシュシート
28 巻き上げられたメッシュシートによって形成された物体(泡ストッパインサート)
29 多孔質セル発泡体材料によって形成された物体(泡ストッパインサート)
図1
図2
図3a
図3b
図4
図5a)】
図5b)】
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2024-05-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクリザーバ(10)とスタンドパイプ(11)との間に配設されたフィルタ(12)であって、前記フィルタ(12)が、前記インクリザーバ(10)からのインク(25)が前記スタンドパイプ(11)に入る前に、不要な物質を濾過し除去するように構成されている、フィルタ(12)と、
前記フィルタ(12)を介して前記インクリザーバ(10)からインク(25)を受容するように構成された前記スタンドパイプ(11)と、
を備えるプリントヘッド(1)であって、
前記スタンドパイプ(11)が、前記スタンドパイプ(11)内に配設された物体(28、29)を備え、前記物体(28、29)が、気泡の成長を妨げて、前記物体(28、29)に投じられた前記受容されたインク(25)の流れを前記物体(28、29)内の1つ以上の通路を通して促進するように構成されていることを特徴とする、
プリントヘッド(1)。
【請求項2】
前記フィルタ(12)が、メッシュフィルタに相当する、請求項1に記載のプリントヘッド(1)。
【請求項3】
前記物体(28、29)が、変形可能である、請求項1に記載のプリントヘッド(1)。
【請求項4】
前記物体(28)が、メッシュ構造体を含み、さらに、前記メッシュ構造体が、円筒形状または円錐形状を有する、請求項1に記載のプリントヘッド(1)。
【請求項5】
前記メッシュ構造体が、一方の端部が部分的に摘まれた、巻き上げられた多角形メッシュシート(27)によって形成されている、請求項4に記載のプリントヘッド(1)。
【請求項6】
前記メッシュ構造体が、ステンレス鋼材料で構成されている、請求項4に記載のプリントヘッド(1)。
【請求項7】
前記メッシュ構造体のメッシュサイズが、前記フィルタ(12)のメッシュサイズよりも大きい、請求項4に記載のプリントヘッド(1)。
【請求項8】
前記物体(29)が、多孔質構造体を含む、請求項1に記載のプリントヘッド(1)。
【請求項9】
前記多孔質構造体が、平行六面体形状を有する、請求項8に記載のプリントヘッド(1)。
【請求項10】
前記多孔質構造体が、オープンセル発泡体材料を含む、請求項8に記載のプリントヘッド(1)。
【請求項11】
前記スタンドパイプ(11)が、前記物体(28、29)を通って流れた前記インク(25)を受容するように構成された開口部(13)に取り付けられており、さらに、前記開口部(13)が、前記プリントヘッド(1)に外付けされたマイクロ流体デバイス(2)への前記受容されたインク(25)の流れを促進にするように構成されている、請求項1に記載のプリントヘッド(1)。
【請求項12】
前記マイクロ流体デバイス(2)が、前記マイクロ流体デバイス(2)が1つ以上の電気接点パッド(3)を介して電気的に活性化されたときに、1つ以上のインク滴(23)を吐出するための1つ以上の吐出ノズル(9)を備える、請求項11に記載のプリントヘッド(1)。
【請求項13】
前記1つ以上の通路が、前記物体(28)内の1つ以上のメッシュを含む、請求項4に記載のプリントヘッド(1)。
【請求項14】
前記1つ以上の通路が、前記物体(28)の隣接するループ間の1つ以上の空間を含む、請求項4に記載のプリントヘッド(1)。
【請求項15】
プリントヘッド(1)用のスタンドパイプ(11)であって、前記スタンドパイプ(11)が、インクリザーバ(10)とスタンドパイプ(11)との間に配設されたフィルタ(12)を介してインク(25)を受容するように構成され
前記スタンドパイプ(11)内に配設された物体(28、29)を備え、前記物体(28、29)が、前記物体(28、29)に投じられた前記受容されたインク(25)の流入が前記物体(28、29)内の1つ以上の通路を通して流れるような様式で、気泡の成長を妨げるように構成されていることを特徴とする、スタンドパイプ(11)。
【国際調査報告】