(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】大型の車両向けの車輪スリップに基づいた運動制御
(51)【国際特許分類】
B60W 30/02 20120101AFI20240822BHJP
B60W 40/064 20120101ALI20240822BHJP
【FI】
B60W30/02 300
B60W40/064
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024517129
(86)(22)【出願日】2021-09-21
(85)【翻訳文提出日】2024-05-14
(86)【国際出願番号】 EP2021075901
(87)【国際公開番号】W WO2023046259
(87)【国際公開日】2023-03-30
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512272672
【氏名又は名称】ボルボトラックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100169018
【氏名又は名称】網屋 美湖
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(72)【発明者】
【氏名】ボーラ,テオドロ
(72)【発明者】
【氏名】レグネルト,ヴィクトル
(72)【発明者】
【氏名】サリフ,ラマダン
【テーマコード(参考)】
3D241
【Fターム(参考)】
3D241BA19
3D241DB27Z
3D241DC47Z
(57)【要約】
大型の車両(100)による運動を制御するための方法では、車両は、車両の少なくとも1つの駆動輪(102)の目標縦方向車輪スリップ(λ
target(k+1))に基づいて制御されるように配置される。方法は、車両(100)の加速度(v’
x(k))を監視する(S1)ことと、少なくとも1つの駆動輪(102)の現在の縦方向車輪スリップ(λ
x(k))を監視する(S2)ことと、監視された現在の縦方向車輪スリップ(λ
x(k))が減少していない間に、車両(100)の監視された加速度(v’
x(k))が低下する場合、少なくとも1つの駆動輪(102)の目標縦方向車輪スリップ(λ
target(k+1))を減少させる(S3)ことと、目標縦方向車輪スリップ(λ
target(k+1))に基づいて少なくとも1つの駆動輪(102)の車輪スリップを制御する(S4)ことと、を含む。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
大型の車両(100)による運動を制御するための方法であって、
前記車両は、該車両の少なくとも1つの駆動輪(102)の目標縦方向車輪スリップ(λ
target(k+1))に基づいて制御されるように構成され、
前記方法は、
前記車両(100)の加速度(v’
x(k))を監視する(S1)ことと、
前記少なくとも1つの駆動輪(102)の現在の縦方向車輪スリップ(λ
x(k))を監視する(S2)ことと、
前記監視された現在の縦方向車輪スリップ(λ
x(k))が減少していない間に、前記車両(100)の前記監視された加速度(v’
x(k))が低下する場合、前記少なくとも1つの駆動輪(102)の前記目標縦方向車輪スリップ(λ
target(k+1))を減少させる(S3)ことと、
前記目標縦方向車輪スリップ(λ
target(k+1))に基づいて前記少なくとも1つの駆動輪(102)の車輪スリップを制御する(S4)ことと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記現在の縦方向車輪スリップ(λ
x(k))に基づいて、減少後の前記目標縦方向車輪スリップ(λ
target(k+1))が決定される(S31)、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記減少後の前記目標縦方向車輪スリップ(λ
target(k+1))は、以前の目標縦方向車輪スリップ(λ
target(k))に基づいて決定される(S32)、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記監視された現在の縦方向車輪スリップ(λ
x(k))が減少していない間に、前記車両(100)の前記監視された加速度(v’
x(k))が低下しない場合、前記少なくとも1つの駆動輪(102)の前記目標縦方向車輪スリップ(λ
target(k+1))を増加させる(S33)ことを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記監視された現在の縦方向車輪スリップ(λ
x(k))が減少する間に、前記車両(100)の前記監視された加速度(v’
x(k))が増加する場合、前記少なくとも1つの駆動輪(102)の前記目標縦方向車輪スリップ(λ
target(k+1))を減少させる(S34)ことを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記目標縦方向車輪スリップ(λ
target(k+1))は、加速度の変化(Δv’
x(k))に基づいて決定される(S35)、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記目標縦方向車輪スリップ(λ
target(k+1))は、現在の縦方向車輪スリップの変化(Δλ
x(k))に基づいて決定される(S36)、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記目標縦方向車輪スリップ(λ
target(k+1))は、前記加速度の変化(Δv’
x(k))と、前記現在の縦方向車輪スリップの変化(Δλ
x(k))との重み付き組み合わせ(w
1、w
2)に基づいて決定される(S37)、請求項6及び請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記目標縦方向車輪スリップ(λ
target(k+1))は、ループゲイン係数(k
r、k
d)に加えて前記加速度の変化(Δv’
x(k))及び前記現在の縦方向車輪スリップの変化(Δλ
x(k))に基づいて決定される(S38)、請求項6~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記ループゲイン係数(k
r、k
d)は、前記監視された現在の縦方向車輪スリップ(λ
x(k))が減少していない間に、前記車両(100)の前記監視された加速度(v’
x(k))が低下するか否かにかかわらず異なる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ループゲイン係数(k
r、k
d)及び/または前記重み付き組み合わせでの係数(w
1、w
2)は、走行シナリオに基づいて動的に更新される、請求項7~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記現在の縦方向車輪スリップ(λ
x(k))は、駆動輪(102)と非駆動輪との間の速度差から決定される、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記加速度(v’
x(k))は加速度計から取得される、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記加速度(v’
x(k))は、前記車両(100)の速度から取得される、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記加速度(v’
x(k))は、前記駆動輪(102)の縦方向加速度である、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
大型の車両(100)による運動を制御するための制御ユニット(630、660、400)であって、
前記車両は、該車両の少なくとも1つの駆動輪(102)の目標縦方向車輪スリップ(λ
target(k+1))に基づいて制御されるように構成され、
前記制御ユニットは、処理回路(410)、前記処理回路(410)に結合されたネットワークインタフェース(420)、及び前記処理回路(410)に結合されたメモリ(430)を含み、前記メモリは、機械可読コンピュータプログラム命令を含み、
前記機械可読コンピュータプログラム命令は、前記処理回路によって実行されたとき、前記制御ユニット(630、660、400)に、
前記車両(100)の加速度(v’
x(k))を監視させ、
前記少なくとも1つの駆動輪(102)の現在の縦方向車輪スリップ(λ
x(k))を監視させ、
前記監視された現在の縦方向車輪スリップ(λ
x(k))が減少していない間に、前記車両(100)の前記監視された加速度(v’
x(k))が低下する場合、前記少なくとも1つの駆動輪(102)の前記目標縦方向車輪スリップ(λ
target(k+1))を減少させ、
前記目標縦方向車輪スリップ(λ
target(k+1))に基づいて前記少なくとも1つの駆動輪(102)の車輪スリップを制御させる、制御ユニット(630、660、400)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、大型の車両の車両運動管理、すなわち、サービスブレーキ、推進装置、及びパワーステアリングなどの運動支援装置の協調制御に関する。本発明は、トラック、バス、及び建設機械などの大型の車両に適用されることができる。本発明は、セミトレーラ車両及びトラックなどの貨物運送車両に関して主に記載されているが、本発明は、この特定のタイプの車両に限定されず、乗用車などの他のタイプの車両に使用されてもよい。
【背景技術】
【0002】
車両は、機械学、空気力学、油圧工学、エレクトロニクス、及びソフトウェアの点で、ますます複雑になりつつある。現代の大型の車両は、燃焼エンジン、電気機械、摩擦ブレーキ、回生ブレーキ、ショックアブソーバ、エアベローズ、及びパワーステアリングポンプなどの広範囲の異なる物理的装置を含むことができる。これらの物理的装置は、運動支援装置(MSD:Motion Support Devices)として一般に知られている。MSDは、例えば、ある1つの車輪に摩擦ブレーキをかけることができ、すなわち、負のトルクを加えることができ、一方、電気機械によって、車両の別の車輪、おそらくは、もっと言えば、同じ車軸にある別の車輪が同時に使用されて、正のトルクを発生させるように、個別に制御可能であり得る。
【0003】
最近提案された車両運動及び電源管理(VMPM:vehicle motion and power management)機能は、例えば中央車両制御ユニット(VCU:vehicle control unit)などで実行されるが、または電子制御ユニット(ECU:electronic control units)のネットワークを介して分散されるが、MSDの組み合わせに依存して、車両の安定性、費用効果、及び安全性を維持すると同時に、所望の運動効果を得るように車両を操作する。WO2019072379A1は、大型の車両による旋回操作を補助するためにホイールブレーキを選択的に使用する、そのような一例を開示している。VMPM制御は、有利には、VMPMからMSD制御ユニットに送信される車輪速度要求または車輪スリップ要求に基づき得、MSD制御ユニットは、要求された車輪スリップまたは車輪速度の値に可能な限り近い車輪挙動を維持することを目的とした、低遅延、高帯域幅制御ループによって様々なMSDを制御する。また、VMPM制御は、VMPMからMSD制御ユニットに送信される、より従来のトルクに基づいた要求を含み得る。
【0004】
車輪スリップに基づいた制御戦略は、通常、タイヤ力と車輪スリップとの間の関係に関する何らかのモデルに依存する。これらのようなモデルで高い精度を得ることは、通常、困難な課題である。例えば、モデルは、路面特性に依存し得るが、路面特性は、ルートに沿って変動する可能性があり、多くの場合、センサから正確に推論することが困難である。したがって、車輪スリップ限界を課すような車輪スリップに基づいた制御では、ある程度平均的なシナリオのモデルを使用する傾向があるが、これはほとんどの場合に最適ではない。改善された車輪スリップに基づいた制御方法及び制御アーキテクチャが必要である。
【発明の概要】
【0005】
本開示の目的は、改善された車両制御のための方法及び制御ユニットを提供することである。この目的は、大型の車両による運動を制御するための方法により少なくとも部分的に達成される。車両は、車両の少なくとも1つの駆動輪の目標縦方向車輪スリップ(target longitudinal wheel slip)に基づいて制御されるように構成されている。本方法は、車両の加速度を監視すると同時に、そのうえ少なくとも1つの駆動輪の現在の縦方向車輪スリップを監視することも含む。本方法は、監視された現在の縦方向車輪スリップが減少していない間に、車両の監視された加速度が低下する場合、少なくとも1つの駆動輪の目標縦方向車輪スリップを減少させることと、目標縦方向車輪スリップに基づいて少なくとも1つの駆動輪の車輪スリップを制御することと、を含む。
【0006】
目標縦方向車輪スリップの減少は、基本目標スリップ計算に加えて、それに伴う不確実性(例えば、タイヤモデルから計算)に対処するためのセーフティネットとして機能することを意図した介入であり得る。換言すれば、開示された方法は、特定の状況では最適ではない基本スリップ目標を、車両制御により適した値に調整することができる。本開示は、車輪スリップ目標を動的に更新することができる。これにより、例えば、最適ではない基本目標スリップによる車両のストールを回避する可能性が高まる。開示された方法では、目標スリップは純粋に測定に基づいていることができ、他の車輪スリップに基づいた制御方法で一般に必要とされる、路面、車両、タイヤ、または摩擦と相関することが知られている任意の他の環境条件に関する知識を必要としない。
【0007】
それは、縦方向車輪スリップが増加している、または維持されていると同時に、加速度(タイヤ力に比例)が低下しているシナリオでは通常望ましくない。したがって、開示された方法は、スリップが一定に保たれているか増加しているかいずれかの間に、車両が加速度を失っていることを認識すると、すぐに、目標スリップを減少させることによってインタフェアをするアルゴリズムを使用して車輪スリップを制御する。これにより、車両にシンプルで効果的な制御スキームが提供される。例えば、車両が上り坂の砂利道で走行するまたは発進する場合、基本目標スリップの設定が高すぎるため、車両は過度にスリップして加速度が失われる可能性がある。監視された現在の縦方向車輪スリップが減少していない間に、車両の監視された加速度が過度の車輪スリップにより低下するため、目標縦方向車輪スリップは、砂利道を上がり走行するのにより適した値まで減少する。
【0008】
態様によれば、減少した目標縦方向車輪スリップは、現在の縦方向車輪スリップに基づいて、及び/または以前の目標縦方向車輪スリップに基づいて決定される。このようにして、シナリオによっては、所望の現在の車輪スリップに迅速に達することが可能になる。
【0009】
前述のように、通常、縦方向車輪スリップが増加している、または維持されていると同時に、加速度が低下しているシナリオになることは、通常、現在の走行条件に対して目標縦方向車輪スリップの設定が高すぎることを意味することから望ましくない。加速度の変化及び車輪スリップの変化の他のすべてのシナリオでは、多くの場合、発生した車輪力の増加を路面が支持することができるため、代わりに目標縦方向車輪スリップを増加させることが望ましい。したがって、態様によれば、また本方法は、監視された現在の縦方向車輪スリップが減少していない間に、車両の監視された加速度が低下しない場合、すなわち、低下していない場合、少なくとも1つの駆動輪の目標縦方向車輪スリップを増加させることを含んでもよい。これにより、車両にシンプルで効果的な制御スキームが提供され、知られている以前の制御方法と比較して、現在の車輪スリップにより最適な値を、いくつかの異なるシナリオに対して取得することができる。
【0010】
態様によれば、本方法は、監視された現在の縦方向車輪スリップが減少している間に、車両の監視された加速度が増加する場合、少なくとも1つの駆動輪の目標縦方向車輪スリップを減少させることを含む。一部のシナリオでは、この結果、車両はより早くピーク加速度に達する。
【0011】
態様によれば、目標縦方向車輪スリップは、車両による加速度の変化に基づいて、及び/または現在の縦方向車輪スリップの変化に基づいて決定される。目標縦方向車輪スリップが加速度及び/または現在の車輪スリップの変化の大きさ(複数可)に基づいていることは、所望の最適な現在の車輪スリップにより早く達する良い方法であることができる。
【0012】
態様によれば、目標縦方向車輪スリップは、加速度の変化と現在の縦方向車輪スリップの変化との重み付き組み合わせに基づいて決定される。このようにして、重み/正規化係数を選択して、加速度の変化及び車輪スリップの変化が目標縦方向車輪スリップに与える相対的な重要度を調整することができる。これらの係数は、重み及び/または正規化を含むことができ、現在の運送業務、現在の動作環境、及び/または現在の車両のタイプまたは積載量に依存して設定され得る。
【0013】
態様によれば、目標縦方向車輪スリップは、ループゲイン係数に加えて、加速度の変化及び現在の縦方向車輪スリップの変化に基づいて決定される。このようにして、以下でより詳細に説明するように、目標縦方向車輪スリップの変化率をより効率的に制御することができる。ループゲイン係数は、監視された現在の縦方向車輪スリップが減少していない間に、車両の監視された加速度が低下するかどうかによって異なるように設定されることができる。このようにして、あり得ない定常状態の状況では、スリップ目標が漸近的に安定することを意味する、特定の値付近で、目標縦方向車輪スリップを安定させることができる。
【0014】
態様によれば、ループゲイン係数及び/または重み付き組み合わせにおける係数は、走行シナリオに基づいて動的に更新される。車輪スリップの変化と比較した加速度の変化の相対的な重要度は、異なる摩擦を有する様々な地面条件などのシナリオに応じて異なる場合がある。同様に、シナリオに応じて変化率(つまり、ループゲイン)を調整することが望ましい場合がある。
【0015】
態様によれば、現在の縦方向車輪スリップは、駆動輪と非駆動輪との間の速度差から決定される。これは、車輪スリップを取得するシンプルで正確な方法である。
【0016】
態様によれば、加速度は加速度計から取得される。これにより、正確な加速度値を取得する、費用対効果の高い方法が提供される。代わりに、またはそれを組み合わせて、加速度は車両の速度から取得される。当然のことながら、レーダまたはライダセンサなどのセンサを使用して、車両の加速度を正確な方法で決定することもできる。
【0017】
態様によれば、加速度は、駆動輪の縦方向加速度である。このようにして、加速度は、タイヤモデルによって車輪スリップに関連があることができる。
【0018】
本明細書では、上述の利点と関連付けられたコンピュータプログラム、コンピュータ可読媒体、コンピュータプログラム製品、制御ユニット、及び車両も開示される。
【0019】
全般的に、特許請求の範囲において使用される全ての用語は、本明細書において特に明確に規定されない限り、技術分野におけるその通常の意味に従って解釈すべきである。「要素、装置、コンポーネント、手段、ステップなど」への全ての言及は、特に明確に述べられない限り、要素、装置、コンポーネント、手段、ステップなどの少なくとも1つの例を指すものとしてオープンに解釈すべきである。本明細書で開示した任意の方法のステップは、特に明確に述べられない限り、開示した正確な順番で行う必要はない。本発明のさらなる特徴及び本発明に伴う利点は、添付の特許請求の範囲及び以下の説明を検討すれば明らかになる。当業者であれば理解するように、本発明の異なる特徴を組み合わせて、本発明の範囲から逸脱することなく、以下で説明するもの以外の実施形態を作成し得る。
【0020】
添付図面を参照して、例として引用した本発明の実施形態を以下により詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図2A】タイヤ力対車輪スリップの例を示すグラフである。
【
図2B】タイヤ力対車輪スリップの例を示すグラフである。
【
図3】加速度対車輪スリップを示すプロットである。
【
図5】例示的なコンピュータプログラム製品を示す図である。
【
図6】運動支援装置の制御構成の例を示す図である。
【
図8】車両制御機能アーキテクチャの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明を、本発明の特定の態様を示す添付図面を参照して、以下でより十分に説明する。しかし、本発明は、多くの異なる形態で具体化してもよく、本明細書で述べる実施形態及び態様に限定されると解釈してはならない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が完全かつ完璧であり、本発明の範囲を当業者に完全に伝えるように、一例として提供される。同符号は、説明の全体を通して同様の構成要素を指す。
【0023】
本発明は、本明細書に説明され、図面に示される実施形態に限定されるものではなく、むしろ、当業者は、添付の特許請求の範囲内で多くの変更及び修正がなされ得ることを認識するであろうことを理解されたい。
【0024】
図1を参照すると、トラックの形状をした車両100が示されている。車両は、複数の車輪102を備え、車輪102のそれぞれは、それぞれの運動支援装置(MSD)104を備えている。
図1に示される実施形態は、車輪102のそれぞれにMSDを示しているが、当然ながら、例えば、1対の車輪102が、そのようなMSD104なしで構成されてよいことが容易に理解されるべきである。また、MSDは、例えばディファレンシャル装置を介して、2つ以上の車輪に接続されて配置されてよい。さらに、MSD104は、好ましくは、車両の各車輪または車軸の両方の車輪にトルクを発生させるためのMSDである。MSDは、例えば、車両100の車輪(複数可)に縦方向の車輪力を提供するように構成された電気機械106などの推進装置であってよい。したがって、そのような電気機械は、車両100のバッテリ(図示せず)または他のエネルギー貯蔵システム(複数可)を充電するための回生制動モードで構成されるだけでなく、推進トルクを生成するように適合されてよい。電気機械は、エネルギーを蓄えずに制動トルクを生成してもよい。例えば、制動抵抗器などを使用して、制動中に電気機械から余分なエネルギーを放散してよい。
【0025】
さらに、各MSD104は、MSD104の動作を制御するために構成されたそれぞれのMSD制御システム630に接続されている。MSD制御システム630は、好ましくは分散運動支援システム630であるが、集中型の実装も可能である。さらに、無線リンクを介して車両からアクセス可能なリモートサーバ120など、MSD制御システムの一部の部品は、車両から離れた処理回路上で実装されてよいことを理解されたい。さらに、各MSD制御システム630は、有線、無線、または有線と無線の両方であってよいデータバス通信装置114を介して車両100の車両運動管理(VMM)システムまたは機能660に接続されている。これにより、車両運動管理システム660とMSD制御システム630との間で制御信号を送信することができる。車両運動管理システム660及びMSD制御システム630については、
図6及び
図8を参照して以下でさらに詳細に記載する。
【0026】
一般に、車両100上のMSDは、例えば、摩擦ブレーキ、パワーステアリング装置、アクティブサスペンションなどとして実現されてよい。特に、これらのMSDは、車両によって所望の運動を得るために協調されることが多い。例えば、2つ以上のMSDを一緒に使用して、所望の推進トルクまたは制動トルクを生成してよい。
【0027】
当然ながら、本明細書で開示される方法及び制御ユニットは、ドローバー接続を備えたトラック、建設機械、バスなどの他のタイプの大型の車両にも有利に適用することができる。車両100は、3つ以上の車両ユニットを含んでもよい。すなわち、台車車両ユニットを使用して2つ以上のトレーラを牽引してよい。
【0028】
VMMシステム660及びMSD制御システム630は、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、プログラマブルデジタル信号プロセッサ、または別のプログラマブルデバイスを含み得る。システムは、さらに、または代わりに、特定用途向け集積回路、プログラマブルゲートアレイまたはプログラマブルアレイロジック、プログラマブルロジックデバイス、またはデジタル信号プロセッサを含み得る。システム(複数可)が、上述のマイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、またはプログラマブルデジタル信号プロセッサなどのプログラマブルデバイスを含む場合、プロセッサは、プログラマブルデバイスの動作を制御するコンピュータ実行可能コードをさらに含み得る。様々な車両ユニット処理回路の実施態様は、
図4に関連して以下でより詳細に説明する。
【0029】
図2Aは、達成可能なタイヤ力の例200を縦方向車輪スリップの関数として示すグラフである。縦方向車輪スリップλ
xは、SAE J670(SAE Vehicle Dynamics Standards Committee January 24,2008)に従って、以下のように規定され得る。
【数1】
式中、Rは有効車輪半径(メートル)であり、ω
xは車輪の角速度であり、v
xは車輪の(車輪の座標系における)縦方向速度である。したがって、λ
xは、-1~1の間に制限され、車輪が路面に対してどの程度スリップしているかを定量化する。車輪スリップは、本質的に、車輪と車両との間で測定される速度差である。したがって、本明細書で開示した技術は、任意のタイプの車輪スリップ定義と使用するために適応できる。また、車輪スリップ値は、車輪の座標系において表面に対する車輪の速度を考慮した車輪速度値と同等であることも理解される。VMM660及びオプションでMSD制御システム630もオプションでv
x(車輪の基準フレームで)に関する情報を維持する一方、車輪速度センサなどを使用してω
x(車輪の回転速度)を決定することができる。
【0030】
車輪(またはタイヤ)が車輪力を生成するためには、スリップが発生する必要がある。スリップ値が小さい場合、スリップと生成される力との関係はほぼ線形であり、比例定数はタイヤのスリップ剛性として表されることが多い。タイヤには、縦力Fx、横力Fy、及び垂直抗力Fzがかかる。垂直抗力Fzは、いくつかの重要な車両特性を決定するための鍵である。例えば、垂直抗力は、車輪によって達成可能なタイヤ横力Fyを大部分決定する。なぜなら、通常はFx≦μFzであり、μは道路摩擦条件に関連付けられた摩擦係数であるからである。所与の横スリップに対して利用可能な最大横力は、Hans Pacejkaによる「Tyre and vehicle dynamics」、Elsevier Ltd.2012,ISBN978-0-08-097016-5に記載されているように、いわゆるマジックフォーミュラによって表すことができる。
【0031】
タイヤ縦力Fx1、Fx2は、小さな車輪スリップに対してほぼ直線的に増加する部分210を示し、その後、大きな車輪スリップに対してより非線形の挙動を示す部分220が続く。タイヤモデルFx1は高摩擦のシナリオ、つまり良好なタイヤを使用した乾燥した道路を表し、Fx2は摩擦が減少したシナリオを表す。達成可能なタイヤ力はμとともに低下し、ピーク値230、240は走行条件に応じて変化することに留意されたい。
【0032】
図2Bは、達成可能なタイヤ力の例を車輪スリップの関数として示す別のグラフ250である。この図は、タイヤ縦力F
xと、縦方向車輪スリップが比較的小さいところでも急速に減少する、取得可能なタイヤ横力F
yとを示す。また、必要に応じて十分なタイヤ横力をそこで発生させることができるため、車両の動作を線形領域210内に維持することが望ましい。現在の車輪スリップがピークを超えすぎる場合、横力がほとんど発生しなくなる可能性があるため、車両は道路から外れたり、またはコーナリング操作を実行できなくなったりする可能性がある。
【0033】
線形領域210において車両動作を維持することが望ましい。線形領域210では、適用されたブレーキコマンドに応じて取得可能な縦方向の力がより予測しやすく、必要に応じて十分なタイヤ横力を生成することができる。この領域での動作を確保するために、例えば0.1程度の車輪スリップ限界λlimを所与の車輪に課すことができる。車輪スリップがより大きいところ、たとえば0.1を超えるところでは、より非線形の領域220が見られる。この領域での車両の制御は困難な場合があるため、回避されることが多い。トラクション制御のためにより大きなスリップ限界が好まれ得るオフロード条件などでのトラクションには関心深くあり得るが、路上運転ではそうではない。
【0034】
車両の車輪にステアリングとオプションでトルクも伝えることができるVMMとMSDとの間のインタフェースは、従来、車輪スリップを考慮せずに、VMMから各MSDへのトルクベースの要求に焦点を当ててきた。ただし、このアプローチには重大な性能上の制限がある。安全を最重視すべき、または過度のスリップ状況が生じた場合、別個の制御ユニットで動作される関連する安全機能(トラクション制御、アンチロックブレーキなど)は、通常、スリップを制御に戻すために、介入してトルクオーバーライドを要求する。このアプローチに関する問題は、アクチュエータの一次制御とアクチュエータのスリップ制御とが、異なる電子制御ユニット(ECU)に割り当てられるため、それらの間の通信に伴う待ち時間によって、スリップ制御性能が著しく制限されることである。さらに、実際のスリップ制御を実現するために使用される2つのECUで行われる、関連するアクチュエータとスリップの仮定が一致しない可能性があり、これにより準最適な性能につながり得る。代わりに、VMM660と1つまたは複数のMSDコントローラ630との間のインタフェースで車輪速度または車輪スリップベースの要求を使用することにより、大きな利点を実現することができ、これによって、難しいアクチュエータ速度制御ループをMSDコントローラに移行し、MSDコントローラは一般的に、VMM機能のサンプル時間と比較してかなり短いサンプル時間で動作する。このようなアーキテクチャによって、トルクベースの制御インタフェースと比較してはるかに優れた外乱除去を得ることができ、したがって、タイヤ道路接地面において生成される力の予測可能性が改善される。
【0035】
ここで、
図6を参照すると、全体の車両制御システム600は、1つまたは複数の車両ユニットコンピュータ(VUC)上で実装されてよい。VUCは、ある機能が、上位層の交通状況管理(TSM)ドメイン670に含まれてよく、他の機能が、下位機能層に存在する車両運動管理(VMM)ドメイン660に含まれてよい階層化された機能アーキテクチャに従って編成された車両制御方法を実行するように構成されてよい。
【0036】
図6は、ここでは摩擦ブレーキ620(ディスクブレーキまたはドラムブレーキなど)、推進装置640、及びステアリング装置631を含むいくつかの例示的なMSDによって、車両100の例示的な車輪610を制御するための機能600を模式的に示す。摩擦ブレーキ620及び推進装置は、車輪トルク生成装置の例であり、1つまたは複数の運動支援装置制御ユニット630によって制御することができる。制御は、例えば、車輪速度センサ650から得られる測定データと、レーダセンサ、ライダセンサ、ならびにカメラセンサ及び赤外線検出器などの視覚ベースのセンサなどの他の車両状態センサから得られる測定データとに基づく。MSD制御システム630は、1つまたは複数のアクチュエータを制御するように構成されてよい。例えば、MSD制御システム630が車軸上の両方の車輪を制御するように構成されていることは珍しくない。
【0037】
TSM機能670は、10秒程度の計画対象期間で運転操作を計画する。この時間枠は、例えば、車両100がカーブなどを通過するのにかかる時間に対応する。TSM機能によって計画及び実行される車両の操作は、所与の操作で維持される車両の前方方向及び旋回の所望の目標車両速度を記述する加速度プロファイル及び曲率プロファイルに関連付けることができる。TSM機能は、安全かつロバストな方法でTSM機能からの要求を満たす力配分を実行するVMM機能660から所望の加速度プロファイルareq及びステアリング角(または曲率プロファイルcreq)を継続的に要求する。VMM機能660は、約1秒未満程度のタイムスケールで動作する。VMM機能660については、以下でより詳細に説明する。
【0038】
車輪610は、縦方向速度成分v
x及び横方向速度成分v
yを有する。縦方向の車輪力F
xと横方向の車輪力F
yがあり、車輪には垂直抗力F
zも作用する(
図6には示されていない)。特に明記しない限り、車輪力は車輪の座標系で定義される。つまり、縦方向の力は車輪の回転面に向けられ、横方向の車輪力は車輪の回転面に垂直に向けられる。車輪の回転速度はw
x、半径はRである。
【0039】
図2A及び
図2Bに示す種類のタイヤモデル200は、VMM660によって使用されて、ある車輪で所望のタイヤ力を生成することができる。VMMは、所望のタイヤ力に対応するトルクを要求する代わりに、所望のタイヤ力を等価の車輪スリップ(すなわち、対地速度に対する車輪速度)に変換し、このスリップを代わりに要求することができる。主な利点は、MSD制御デバイス630が、例えば、車輪速度センサ650から取得された車両速度v
xと車輪回転速度ω
xとを使用して、所望の車輪スリップでの動作を維持することにより、はるかに高い帯域幅で要求されたトルクを伝達できることである。また縦方向車輪スリップは、駆動輪102と非駆動輪との間の速度差から決定されることができる。ここで、駆動輪とは、何らかのMSDの影響を受ける車輪であり、非駆動輪とは、いかなるMSDの影響も受けない、すなわち自由回転する車輪である。車両速度v
xは、全地球測位システム(GPS)受信機などと組み合わせた、レーダ、ライダ、視覚ベースのセンサなどの様々な車両センサから取得することができる。したがって、車輪スリップがいくつかの異なる方法で決定されることができ、安全性を高めるために車両がこれらのいくつかを冗長システムで実装し得ることが理解される。
【0040】
上述のように、正確なタイヤモデル200を取得することは容易でないことが多く、車両制御システムに路面特性などの正確なデータを提供することは困難であることが多い。これにより、車輪スリップ限界が課されている場合、または速度制御動作モードもしくは車輪スリップ制御動作モード中に特定の車輪スリップがMSDから直接要求される場合の両方で、制御が最適ではない。
【0041】
したがって、本開示は、スリップ目標を動的に更新することを提案する。これにより、最適ではない基本目標スリップによる車両のストールを回避する可能性が高まる。目標スリップは純粋に測定に基づいていることができ、路面、車両、タイヤ、または摩擦と相関することが知られている任意の他の環境条件に関する知識を必要としない。上述のように、車輪スリップ及び車輪速度が車両速度vxによって相互に直接関連しているため、スリップ目標が多くの点で車輪速度目標と同等であることが理解される。
【0042】
図2A及び
図2Bに戻り参照すると、それは、線形領域210(多くの場合、ある程度の余裕がある)内にあることが望ましく、非線形領域220内にあることは望ましくない。それは、縦方向車輪スリップが増加している、または維持されていると同時に、加速度(タイヤ力に比例)が低下しているシナリオでは特に望ましくないことがわかった。これは、正確な形状のタイヤモデルの曲線が不明な場合にも当てはまる。このシナリオは、
図2A及び
図2Bでは、曲線Fx1またはFx2に沿って右下に移ることに相当する。したがって、開示された方法は、スリップが一定に保たれているか増加しているかいずれかの間、車両が加速度を失っていることを認識するとすぐに、目標スリップを減少させることによってインタフェアをするアルゴリズムを使用して車輪スリップを制御する。ある意味、本明細書に開示される方法は、この方法で目標車輪スリップを調整することによって、タイヤ力曲線のピーク位置がどこにあるかを検出しようとするものである。
【0043】
換言すれば、
図7に示されるような大型の車両100によって運動を制御するための方法が本明細書に開示される。車両は、車両の少なくとも1つの駆動輪102の目標縦方向車輪スリップλ
target(k+1)に基づいて制御されるように構成されている。本方法は、車両100の加速度v’
x(k)を監視する(S1)ことと、少なくとも1つの駆動輪102の現在の縦方向車輪スリップλ
x(k)を監視する(S2)ことと、監視された現在の縦方向車輪スリップλ
x(k)が減少していない間に、車両100の監視された加速度v’
x(k)が低下する場合、少なくとも1つの駆動輪102の目標縦方向車輪スリップλ
target(k+1)を減少させる(S3)ことと、目標縦方向車輪スリップλ
target(k+1)に基づいて少なくとも1つの駆動輪102の車輪スリップを制御する(S4)ことと、を含む。
【0044】
したがって、本方法は、現在の車輪スリップと現在の加速度との両方が望ましくない方法で変化していることが観察される場合、すなわち、監視された現在の縦方向車輪スリップλ
x(k)が維持されている、または増加している間、車両100の監視された加速度v’
x(k)が低下する場合、新しい目標車輪スリップ、すなわち、減少した目標車輪スリップを設定する。これは、
図2A及び
図2Bで左方向に移ることに相当する。
【0045】
開示された方法は、車両の前方方向での加速度、すなわち、車両の前方方向での速度の増加を含む所望の車両運動を主に目標とする。開示された方法は主として、負の加速度(制動)、すなわち、車両の前方方向での速度の低下を含む所望の運動を目標としたものではないが、本明細書に開示された技術の多くの態様が制動にも適用可能である。ただし、車両の前方方向に対する加速度変化率は、正または負であることができる。開示された方法は、例えば、丘を登る車両、または停止状態から発進する車両に適している。
【0046】
目標車輪スリップは、車輪スリップの制御が車輪スリップ限界の上限を課すことを意味する車輪スリップ限界であることができる。代替に、目標車輪スリップは、直接の車輪スリップ要求の値、または車輪速度要求の値であることができる(その後、車両速度に応じて設定されることができる)。いずれの場合も、現在の車輪スリップと現在の加速度との両方が望ましくない方法で変化している場合、目標車輪スリップを減少させることが望ましい。
【0047】
車輪スリップの監視及び制御を車両の単一車輪に適用することができる。代替に、監視及び制御を複数の車輪に適用することができる。その場合、監視及び制御は駆動輪ごとに個別に行われてもよい。代替として、またはそれらを組み合わせて、監視及び制御は、複数の車輪に何らかの平均化を利用してもよい。例えば、平均車輪スリップを監視することができてから、複数の車輪を単一目標車輪スリップに基づいて制御する。
【0048】
図3は、加速度対スリップを示すプロット300である。ここで、b(k)は加速度の変化及びスリップの変化を表すベクトルであり、kは時間(単一時刻またはある期間)を表す。さらに具体的には以下である。
【数2】
【0049】
ベクトルb(k)は、
図3の任意の方向を指すことができる。原点310が加速度及びスリップのゼロ値を表しておらず、開始点(以前の時刻での)にすぎないことに留意されたい。ベクトルは現在の加速度及びスリップを指す。
図3の特定の例では、ベクトルは原点から始まり、北東(右上)を指す。これは、加速度とスリップとの両方の増加に相当する。開示された方法によれば、車輪スリップλ
x(k)が減少していない間、加速度v’
x(k)が低下する場合、目標縦方向車輪スリップλ
target(k+1)は減少する。これは、
図3の南東または真南を指すベクトルb(k)に相当する。
図3では、この象限には参照符号320が割り当てられている。
【0050】
加速度v’x(k)、及び現在の縦方向車輪スリップλx(k)を経時的に監視することで、経時的な変化を観察することが可能になる。変化Δλx(k)、Δv’x(k)を決定することは、現在の値を以前の値と比較することを意味することができる。現在の値及び/または以前の値は、単一時刻での単一値であってもよく、または一定期間にわたる何らかの平均値であってもよい。現在の値、以前の値、及び/または差は、例えばノイズを考慮して、フィルタリングされることができる。
【0051】
道路のカーブでは、対地加速度は、駆動輪の縦方向での縦方向加速度とは若干異なる場合がある。対地加速度は、トラック、車両組み合わせの一部、または車両組み合わせのある平均の伸長方向にあることができる。好ましくは、開示された方法は、タイヤモデルに関連していることができる、駆動輪の縦方向での縦方向加速度を使用する。ただし、代わりに対地加速度を使用しても、車両制御の向上という技術的効果は同じである。さらに、多くの場合、異なる加速度の間に著しい差はない。換言すれば、加速度v’x(k)は、駆動輪102の縦方向加速度であることが好ましい。いくつかの車輪が監視されて制御される場合、異なる車輪が異なる方向に回転する可能性があるため、車輪ごとに個別の加速度値が観察される可能性がある。
【0052】
加速度v’x(k)は、加速度計から取得されてもよく、ピッチ(傾斜)と車両対地加速度との両方を含むことができる。加速度は、車両100の速度からなど、他の方法でも取得されることができる。いずれかのそのようなデータは、全地球測位システム(GPS)受信機などと組み合わせた、レーダ、ライダ、視覚ベースのセンサなどの様々な車両センサによって取得されることができる。
【0053】
通常、車輪スリップが直接の車輪スリップ要求によって制御される場合、測定された現在の車輪スリップは要求とほぼ正確に同じ値になる。さらに、車輪スリップが車輪スリップ限界によって制御される場合、通常、現在値は常に目標値以下になる。したがって、車輪スリップがどのように制御されても、通常はλx(k)≦λtarget(k)となる。
【0054】
態様によれば、今後の車輪スリップ目標は、現在の測定値か以前の目標値かいずれかに基づいている。換言すれば、目標縦方向車輪スリップλtarget(k+1)は、現在の縦方向車輪スリップλx(k)に基づいて決定され得る(S31)。例えば、目標縦方向車輪スリップλtarget(k+1)の減少(S3)は、現在の縦方向車輪スリップλx(k)からの減少、すなわち、λtarget(k+1)=λx(k)-オフセットであってもよい。オフセットを選択することができる方法の様々な例を以下で説明する。現在の縦方向車輪スリップは、ある時刻での単一値、または一定期間にわたる何らかの平均値であることができる。この値は、例えばノイズを考慮するために、フィルタリングされてもよい。
【0055】
目標縦方向車輪スリップλtarget(k+1)は、以前の目標縦方向車輪スリップλtarget(k)に基づいて決定され得る(S32)。例えば、目標縦方向車輪スリップλtarget(k+1)の減少(S3)は、以前の目標縦方向車輪スリップλtarget(k)からの減少、すなわち、λtarget(k+1)=λtarget(k)-オフセットであってもよい。オフセットを選択することができる方法の様々な例を以下で説明する。以前の目標車輪スリップは、以前の時刻での以前の値、または一定期間にわたる何らかの平均値を意味することができる。この値は、例えばノイズを考慮するために、フィルタリングされてもよい。
【0056】
前述のように、
図2A及び
図2Bでは南東または南に移ることは、その車両が非線形の領域220内にあり、さらにそこに移ることを示すため、望ましくない。ただし、他の方向(すなわち、南西、西、北西、北、北東、及び東)に移る場合には、望ましい。車輪スリップを減少させるよりも増加させることが望ましい場合がある。このようにして、曲線のピーク、つまり、何らかの路面条件が与えられた場合に可能な最大加速度に達することが可能になってよい。これは、タイヤモデルが不正確である、または最適ではない場合に特に有利である。換言すれば、方法は、監視された現在の縦方向車輪スリップλ
x(k)が減少していない間に、車両100の監視された加速度v’
x(k)が低下しない場合、少なくとも1つの駆動輪102の目標縦方向車輪スリップλ
target(k+1)を増加させる(S33)ことを含み得る。
【0057】
目標車輪スリップλtarget(k+1)は、加速度の変化Δv’x(k)に基づいて決定され得る(S35)。例えば、目標縦方向車輪スリップλtarget(k+1)の減少(S3)は、現在の縦方向車輪スリップλx(k)から加速度の変化Δv’x(k)だけ減少させたもの、すなわち、λtarget(k+1)=λx(k)-Δv’x(k)であってもよい。この変化を取得する様々な方法については前述した。加速度の変化には、正規化及び/または重み付けの目的で何らかの係数、すなわち、w2Δv’x(k)を割り当ててよい。好ましくはこの変化を正規化して、単位のない値を取得する。それは、例えば、現在の値v’x(k)または以前の値Δv’x(k-1)によって正規化されてよい。係数w2は、代わりに、またはそれらを組み合わせて、加速度の変化が新しい目標車輪スリップλtarget(k+1)に与える効果を調整するための重みを含んでよい。
【0058】
目標車輪スリップλtarget(k+1)は、現在の縦方向車輪スリップの変化Δλx(k)に基づいて決定され得る(S36)。例えば、目標縦方向車輪スリップλtarget(k+1)の減少(S3)は、現在の縦方向車輪スリップλx(k)から車輪スリップの変化Δλx(k)だけ減少させたもの、すなわち、λtarget(k+1)=λx(k)-Δλx(k)であってもよい。この変化を取得する様々な方法については前述した。車輪スリップの変化には、正規化及び/または重み付けの目的で何らかの係数、すなわちw1Δλx(k)を割り当ててよい。係数w1は、車輪スリップの変化が新たな目標車輪スリップに与える効果を調整するための重みであってよい。
【0059】
目標車輪スリップλtarget(k+1)は、加速度の変化Δv’x(k)と、現在の縦方向車輪スリップの変化Δλx(k)との重み付き組み合わせw1、w2に基づいて決定され得る(S37)。例えば、目標縦方向車輪スリップλtarget(k+1)の減少(S3)は、現在の縦方向車輪スリップλx(k)から、加速度の変化Δv’x(k)と、車輪スリップの変化Δλx(k)との両方だけ減少させたもの、すなわち、λtarget(k+1)=λx(k)-|b(k)|(式中、b(k)=[w1Δλx(k)、w2Δv’x(k)])であってよい。このようにして、これら係数w1、w2を選択して、加速度の変化及び車輪スリップの変化が新たな目標車輪スリップに与える相対的な重要度を調整することができる。前述のように、係数w1、w2は、重み付け及び/または正規化を含むことができる。
【0060】
目標車輪スリップλtarget(k+1)は、ループゲイン係数kr、kdに加えて加速度の変化Δv’x(k)及び現在の縦方向車輪スリップの変化Δλx(k)に基づいて決定され得る(S38)。例えば、目標縦方向車輪スリップλtarget(k+1)の減少(S3)は、λtarget(k+1)=λx(k)-kr|b(k)|であってもよい。ループゲイン係数はベクトルb(k)の方向によって異なる場合がある。例えば、ループゲイン係数kr、kdは、監視された現在の縦方向車輪スリップλx(k)が減少していない間に、車両100の監視された加速度v’x(k)が低下するか否かにかかわらず異なってよい。言い換えれば、ベクトルb(k)は、南東または南を指す場合に値krを有し得、ベクトルb(k)は、いずれかの他の方向を指す場合に別の値kdを有し得る。
【0061】
当然のことながら、目標車輪スリップを決定するための上記のメカニズムのいずれかの組み合わせも、場合によっては重み付け方法で使用されることができる。
【0062】
重み付き組み合わせではループゲイン係数kr、kd及び/または係数w1、w2は、現在の走行シナリオに基づいて動的に更新され得る。車輪スリップの変化と比較した加速度の変化の相対的な重要度は、異なる摩擦を有する様々な地面条件などの異なるシナリオに応じて異なる場合がある。同様に、異なるシナリオに応じて変化率(つまり、ループゲイン)を調整することが望ましい場合がある。
【0063】
開示された方法の例示的な実施形態によれば、目標縦方向車輪スリップは次のように決定される。
【数3】
式中、w
1、w
2は正規化及び/または重み付けのための係数であり、k
dは降下ループゲイン係数であり、k
rは上昇ループゲイン係数である。さらに、k
d>>k
r(例えば、10倍だけ)。このようにベクトルb(k)の向き及び長さに基づいて目標車輪スリップを決定する。新しい目標車輪スリップは、方向が南東または南の場合(つまり、現在の車輪スリップが維持されているか、増加しているかいずれかの間に加速度が低下する場合)、|b(k)|に比例して減少し、そうでなければ|b(k)|に比例して増加する。
【0064】
目標車輪スリップが減少しているとき、新しい目標は、現在測定されたスリップに基づいて計算されるが、目標車輪スリップが増加しているときには、以前の目標車輪スリップに基づいて計算される。即時減少及び漸進的ゲインを繰り返すことによって、この方法を繰り返すと、特定の値付近で安定する傾向があり、つまり、あり得ない定常状態の状況では、スリップ目標が漸近的に安定する。
【0065】
態様によれば、目標車輪スリップは、ベクトルb(k)が南/南東を指すときと、それが北西を指すときとの両方で減少する。換言すれば、方法は、監視された現在の縦方向車輪スリップλ
x(k)が減少している間、車両100の監視された加速度v’
x(k)が増加する場合、少なくとも1つの駆動輪102の目標縦方向車輪スリップλ
target(k+1)を減少させる(S34)ことを含み得る。一部のシナリオでは、この結果、車両はより早くピーク加速度に達する。例示的な実施形態では、これは次のように説明されることができる。
【数4】
【0066】
図8は、本明細書で開示の方法に適用可能な車両制御機能アーキテクチャの例を示し、TSM機能670は、車両運動要求675を生成し、車両運動要求675は、車両が従うべき所望のステアリング角δまたは同等の曲率c
reqを含んでよく、所望の車両ユニット加速度a
reqと他のタイプの車両運動要求も含んでよく、それらは一緒に、所望の速度プロファイルで所望の経路に沿った車両による所望の運動を記述する。運動要求は、操縦を成功裏に完了するために生成する必要がある必要量の縦力及び横力を決定または予測するためのベースとして使用できることが理解される。
【0067】
VMM機能660は、約1秒程度の計画対象期間で動作し、TSM機能からの加速プロファイルareq及び曲率プロファイルcreqを車両100の様々なMSDによって作動される車両運動機能を制御するための制御コマンドに継続的に変換し、MSDは、能力をVMMに報告し、次にそれらは、車両制御の制約として使用される。VMM機能660は、車両の状態または運動推定810を実行する。すなわち、VMM機能660は、MSDに接続していることが多いが必ずしも接続しているわけではない車両100に配置された様々なセンサを使用して動作を監視することによって、車両の組み合わせの様々なユニットの位置、速度、加速度、及び連結角度を含む車両状態sを継続的に判断する。
【0068】
運動推定810の結果、すなわち、推定された車両状態sは、力生成モジュール820に入力され、力生成モジュール820は、車両100を必要な加速度プロファイルa
req及び曲率プロファイルc
reqに従って移動させ、所望の車両挙動に従って動作させるように様々な車両ユニットに必要とされる全体的な力V=[V
1,V
2]を決定する。必要な総力ベクトルVは、MSD協調機能830に入力され、MSD協調機能830は、車輪力を割り当て、ステアリングやサスペンションなどの他のMSDを協調させる。MSD協調機能は、i番目の車輪に対するMSD制御割り当てを出力し、これは、トルクT
i、縦方向の車輪スリップλ
i、車輪回転速度ω
i、及び/または車輪ステアリング角δ
iのいずれかを含み得る。次に、協調されたMSDは一緒に、連結車両100によって所望の運動を得るために、車両ユニットへの所望の横力F
y及び縦力F
x、ならびに必要なモーメントM
zを提供する。特に、MSD協調機能830は、
図7に関連して上述したタイプの車輪スリップ制御を実行し得る。
【0069】
例えば、全地球測位システム、視覚ベースのセンサ、車輪速度センサ、レーダセンサ、ステアリング角センサ、及び/またはライダセンサを使用して車両ユニットの運動を決定し、この車両ユニットの運動を所与の車輪610のローカル座標系に変換することによって(例えば、縦及び横の速度成分に関して)、車輪基準座標系における車両ユニットの運動を、上記のように、車輪610に関連して配置された車輪速度センサ650から得られるデータと比較することによって、リアルタイムで車輪スリップを正確に推定することが可能になる。
図2A及び
図2Bに関連して上述したタイヤモデルを使用して、所与の車輪iの所望のタイヤ縦力Fx
iと、車輪の等価の縦方向車輪スリップλ
iとの間を変換することができる。このような制御は、
図7に関連して前述した車輪スリップ制御と組み合わせて使用されることができる。
【0070】
本開示のいくつかの態様によれば、VMM機能660は、力生成及びMSD協調の両方を管理する。すなわち、VMM機能660は、例えば、TSMによって要求される要求加速プロファイルに従って車両を加速させる、及び/または同じくTSMによって要求される車両による特定の曲率運動を生成するTSM機能670からの要求を満たすために車両ユニットで必要とされる力を決定する。力には、例えば、ヨーモーメントMz、縦方向力Fx、及び横方向力Fy、ならびに異なるホイールに加えられる異なる種類のトルクが挙げられ得る。力は、TSM機能670によって生成された制御入力に応答して、例えば、TSM機能によって予期される車両挙動を生成するように決定される。
【0071】
図4は、本明細書の論述の実施形態による、いくつかの機能ユニット、制御ユニット630、660、400のコンポーネントに関して、概略的に示す。処理回路410は、例えば、記憶媒体430の形態のコンピュータプログラム製品に記憶されたソフトウェア命令を実行することができる適切な中央処理ユニット(CPU)、マルチプロセッサ、マイクロコントローラ、デジタル信号プロセッサ(DSP)などのうちの1つまたは複数を任意に組み合わせて使用して提供される。処理回路410は、少なくとも1つの特定用途向け集積回路(ASIC)、またはフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)としてさらに提供されてよい。
【0072】
具体的には、処理回路410は、
図7に関連して論述された方法などの動作のセットまたはステップを、制御ユニット630、660、400に行わせるように構成される。例えば、記憶媒体430は、動作のセットを格納し得、処理回路410は、記憶媒体430から動作のセットを取得し、制御ユニット630、660、400に動作のセットを行わせるように構成され得る。一連の動作は、実行可能命令のセットとして提供してもよい。したがって、処理回路410は、それによって、本明細書に開示の命令を実行するように構成される。
【0073】
また記憶媒体430には永続記憶装置が含まれていてもよい。これは、例えば磁気メモリ、光メモリ、ソリッドステートメモリ、またはさらに遠隔に取り付けられたメモリのうちの任意の単一のものまたは組み合わせとすることができる。
【0074】
制御ユニット630、660、400は、少なくとも1つの外部デバイスと通信するためのインタフェース420をさらに含み得る。したがって、インタフェース420は、アナログ及びデジタルコンポーネントと、好適な数の有線または無線通信用ポートとを含む1つ以上の送信機及び受信機を含んでいてもよい。
【0075】
処理回路410は、例えば、インタフェース420及び記憶媒体430にデータ及び制御信号を送信することにより、インタフェース420からデータ及びレポートを受信することにより、ならびに記憶媒体430からデータ及び命令を取得することにより、制御ユニット630、660、400の通常の動作を制御する。制御ノードの他のコンポーネントならびに関連する機能は、本明細書で提示した考え方を不明瞭にしないように省略する。
【0076】
換言すれば、大型の車両100によって運動を制御するための制御ユニット630、660、400が本明細書に開示される。車両は、車両の少なくとも1つの駆動輪102の目標縦方向車輪スリップλtarget(k+1)に基づいて制御されるように構成されている。制御ユニットは、処理回路410、処理回路410に結合されたネットワークインタフェース420、及び処理回路410に結合されたメモリ430を含む。メモリは、機械可読コンピュータプログラム命令を含み、これら機械可読コンピュータプログラム命令は、処理回路によって実行されたとき、制御ユニット630、660、400に、
車両100の加速度v’x(k)を監視させ、
少なくとも1つの駆動輪(102)の現在の縦方向車輪スリップλx(k)を監視させ、
監視された現在の縦方向車輪スリップλx(k)が減少していない間に、車両100の監視された加速度v’x(k)が低下する場合、少なくとも1つの駆動輪(102)の目標縦方向車輪スリップλtarget(k+1)を減少させ、
目標縦方向車輪スリップλtarget(k+1)に基づいて少なくとも1つの駆動輪102の車輪スリップを制御させる。
【0077】
図5は、制御ユニット630、660、400によって実行可能な動作のセット520を含むコンピュータプログラム製品500を概略的に示す。動作のセット520は、制御ユニット630、660、400内の記憶媒体430にロードされ得る。動作のセットは、
図7に関連して上述された方法に対応し得る。
【0078】
図5の例では、コンピュータプログラム製品500は、CD(コンパクトディスク)またはDVD(デジタルバーサタイルディスク)またはブルーレイ(登録商標)ディスクなどの光ディスク510として示される。またコンピュータプログラム製品は、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、消去可能プログラマブル読み出し専用メモリ(EPROM)、または電気的に消去可能プログラマブル読み出し専用メモリ(EEPROM)のようなメモリとして、そしてさらに特に、USB(ユニバーサルシリアルバス)メモリ、またはコンパクトフラッシュ(登録商標)メモリなどのフラッシュメモリのような外部メモリ内のデバイスの不揮発性記憶媒体としても具現化され得る。したがって、コンピュータプログラムが本明細書では、図示された光ディスク上のトラックとして概略的に示されており、コンピュータプログラムは、コンピュータプログラム製品に適している任意の方法で格納されることができる。
【国際調査報告】