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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】可変パルスを伝達する装置
(51)【国際特許分類】
   A61N 2/04 20060101AFI20240822BHJP
   A61N 1/36 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
A61N2/04
A61N1/36
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024517512
(86)(22)【出願日】2022-12-01
(85)【翻訳文提出日】2024-03-19
(86)【国際出願番号】 CN2022135868
(87)【国際公開番号】W WO2023134322
(87)【国際公開日】2023-07-20
(31)【優先権主張番号】63/299,002
(32)【優先日】2022-01-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/357,624
(32)【優先日】2022-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523245207
【氏名又は名称】ヴェニタス リサーチ センター インク
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】ホ、コンウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ジン、デレック ハーツ
【テーマコード(参考)】
4C053
4C106
【Fターム(参考)】
4C053JJ02
4C053JJ06
4C053JJ21
4C106AA06
4C106BB21
4C106CC03
(57)【要約】
【課題】プログラマブル設計rTMS設備は、可変パルス間隔を有しているrTMSパルスを伝達するための磁気コイルを備えている。前記可変パルス間隔は確率変数のパルス間隔であり、前記可変パルス間隔は、ガウス分布、ホワイトノイズ関数、或いはピンクノイズ関数により決定される。また、前記可変パルス間隔的時間は66.00ms~200.00msの間の範囲である。前記設備は脳機能障害の治療に有効である。可変パルス間隔の設定はEEGデータに基づくのではなく、EEGデータまたは他の生体特性の測定に由来する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可変パルス間隔を有しているrTMSパルスを伝達するための磁気コイルを備え、前記可変パルス間隔は確率変数のパルス間隔であり、前記可変パルス間隔はガウス分布、ホワイトノイズ関数、或いはピンクノイズ関数により決定されることを特徴とするプログラマブル設計rTMS設備。
【請求項2】
コンピュータプログラムを更に含み、前記コンピュータプログラムは、前記可変パルス間隔を有しているrTMSパルスを伝達するように前記磁気コイルをガイドすることを特徴とする請求項1に記載のプログラマブル設計rTMS設備。
【請求項3】
前記可変パルス間隔は、前記ホワイトノイズ関数または/及び前記ピンクノイズ関数により決定されることを特徴とする請求項1に記載のプログラマブル設計rTMS設備。
【請求項4】
前記可変パルス間隔は、間隔を置いた連続的時間間隔であり、前記連続的時間間隔はガウス分布に基づいて決定され、前記ガウス分布は、決定ピーク値及び前記連続的時間間隔の両端にある既定カットオフ点を有していることを特徴とする請求項1に記載のプログラマブル設計rTMS設備。
【請求項5】
前記決定ピーク値は100.00msのパルスであり、第1の前記既定カットオフ点は125.00msのパルスであり、第2の前記既定カットオフ点は83.00msのパルスであることを特徴とする請求項4に記載のプログラマブル設計rTMS設備。
【請求項6】
前記可変パルス間隔の時間は66.00ms~200.00msの間の範囲であることを特徴とする請求項1に記載のプログラマブル設計rTMS設備。
【請求項7】
可変パルス間隔を有しているrTMSパルスを伝達するための磁気コイルを備え、前記可変パルス間隔は確率変数のパルス間隔であり、前記可変パルス間隔は、ガウス分布、ホワイトノイズ関数、或いはピンクノイズ関数により決定されることを特徴とするrTMS設備及びプログラマブル設計システム。
【請求項8】
a.2つ以上の電極パッチと、
b.前記電極パッチに対して電流を発生させる電源と、
c.可変パルスを有している電気刺激をガイドするためのデジタルプログラムと、を備え、
前記可変パルスは可変パルス間隔で伝達され、前記可変パルス間隔は、ガウス分布、ホワイトノイズ関数、或いはピンクノイズ関数により決定されることを特徴とする電気刺激装置。
【請求項9】
前記電源は電池であることを特徴とする請求項8に記載の電気刺激装置。
【請求項10】
前記電気刺激装置は、経皮的神経電気刺激装置(TENS Unit)または脳深部刺激装置(DBS)であることを特徴とする請求項8に記載の電気刺激装置。
【請求項11】
前記可変パルス間隔は前記ホワイトノイズ関数または/及び前記ピンクノイズ関数により決定されることを特徴とする請求項8乃至10の何れか1項に記載の電気刺激装置。
【請求項12】
前記可変パルス間隔は、間隔を置いた連続的時間間隔であり、前記連続的時間間隔はガウス分布に基づいて決定され、前記ガウス分布は決定ピーク値及び前記連続的時間間隔の両端にある既定カットオフ点を有していることを特徴とする請求項8乃至10の何れか1項に記載の電気刺激装置。
【請求項13】
前記決定ピーク値は100.00msのパルスであり、第1の前記既定カットオフ点は125.00msのパルスであり、第2の前記既定カットオフ点は83.00msのパルスであることを特徴とする請求項12に記載の電気刺激装置。
【請求項14】
前記可変パルス間隔の時間は66.00ms~200.00msの間の範囲であることを特徴とする請求項8乃至10の何れか1項に記載の電気刺激装置。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本国際出願は、2022年01月12日に米国特許庁に出願された米国特許出願第63/299002号に基づく優先権、2022年06月30日に米国特許庁に出願された米国特許出願第63/357624号に基づく優先権の全内容を本国際出願に参照により援用する。
【技術分野】
【0002】
本発明は反復経頭蓋磁気刺激(repetitive transcranial magnetic stimulation、rTMS)により哺乳動物の脳の活動を調節する装置であり、可変パルス間隔を有しているrTMSを施術することで脳の活動時間を十分調節し、生理状況または臨床状況を改善する目的を達成する。rTmsのパルス間隔は66.00ミリ秒(ms)~200.00ミリ秒の間の範囲である。また、本発明は脳の活動時間を十分調節し、可変電気パルス間隔を施術することで脳を電気刺激し、生理状況または臨床状況の改善を実現する。可変電磁気パルス間隔はランダムに伝送される。前述の磁気刺激及び電気刺激におけるパルス間隔時間の設定は脳波図(Electroencephalography、EEG)や哺乳動物の他の生体特性データ(biometric data)に依存せず、それらから派生したものではない。本発明は電気または磁気刺激を提供するための可変パルス間隔の電磁気刺激設備を更に備え、好ましくは、可変パルスは患者のEEGデータに基づかず、EEGデータまたは他の生体特性の測定に由来する。
【背景技術】
【0003】
反復経頭蓋磁気刺激は既に多くの精神及び医療の疾病の治療に用いられており、例えば、重度の鬱病、パーキンソン病、心的外傷後ストレス障害、アルツハイマー病、自閉スペクトラム症(autism spectrum disorder、ASD)、統合失調症、疼痛管理(pain management) 等がある。最近では、Jin氏及びPhillips氏による米国特許公開第2009/0082690号明細書には、rTMSを使用した治療方法が開示されている。そのrTMSの磁場出力は患者のEEG固有周波数に基づいて調整し、患者の固有EEG周波数の改変を試みている。米国特許第9308385号明細書では異なる方法を使用してrTMSを管理しており、前記方法は生体特性測定(biological metric)の周波数、または特性測定の調和波に基づいている。
【0004】
他の治療方法では、様々な方法を使用して患者の治療に用いる最良の周波数を正確に識別している。脳を電磁気刺激する全ての既存の治療方法の技術は、患者のEEGデータを用いて電磁気刺激を管理する電磁気周波数を決定している。
【0005】
本発明以前に、rTMS治療には所定の強度で単一の周波数を電磁気刺激として伝達することが既に含まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は新規のrTMS伝達システムを提供し、これが伝達するrTMSまたは電気刺激は可変パルス間隔(variable pulse intervals)を有し、パルスの時間間隔の確率は既定のタイプのノイズ関数(noise function)により決定され、例えば、ガウス、ピンクノイズ、或いはホワイトノイズがある。電磁気刺激のパワー/強度は可変でもよい。また、電気及び磁気刺激装置は、磁気刺激または電気刺激の可変パルス間隔を伝達するためにプログラミングされる。単一の周波数磁または電気刺激を伝達する従来技術に比べると、本発明は大きな利点を提供する。従来技術では固定周波数の刺激を提供するか、或いは、(a)患者のEEGまたはECG、及び(b)生体特性データを解析して更に明晰な検出パターン(pattern)を獲得した後、データに対して主観的に解釈する必要があった。
【0007】
本発明に係る哺乳動物の脳の活動を調節する装置は、66.00ミリ秒(ms)と200.00ミリ秒との間で変化するパルス間隔の反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)を、哺乳動物に施術することで実現する。前記装置は、大脳に施術する可変電気刺激を管理することも可能である。脳機能障害の疾病や身体の状況の治療には、前記装置が有効である。磁気刺激及び電気刺激に用いる可変パルス間隔は、予めプログラムするノイズ発生器(noise generator)により発生させ、例えば、ガウス、ピンクノイズ、またはホワイトノイズであり、且つ大脳の活動リズムにマッチする範囲をカットオフする。この設定方式ではEEGデータ、EEGから派生したデータ、或いは他の生体特性(例えば心拍数、呼吸数、または類似する特性)を使用しない。
【0008】
本発明により脳の活動を調節することで改善する生理状況及び医療状況は、脳の活動異常に起因する特定の条件におけるあらゆる状況である。治療する病症として、自閉スペクトラム症(autism spectrum disorder、ASD)、アルツハイマー病(Alzheimer's Disease、AD)、心的外傷後ストレス障害(Post Traumatic Stress Disorder、PTSD)、外傷性脳損傷(traumatic brain injury、TBI)、記憶障害、鬱病、疼痛、依存症、物質使用障害(substance use disorder、SUD)、強迫性障害(Obsessive Compulsive disorders、OCD)、不安障害、パーキンソン病、高血圧、性機能障害、運動機能異常、小人症、ストレス、肥満、睡眠障害、摂食障害、注意力散漫、言語障害、知的障害、認知症、注意欠如・多動症(Attention Deficit Hyperactivity Disorders、ADHD)、統合失調症、昏睡、双極性障害(bipolar disorders)、耳鳴り、線維筋痛症、慢性ライム病、関節リウマチ(Rheumatoid Arthritis、RA)、他の自己免疫疾患、通風、糖尿病、関節炎、創傷の回復、運動パフォーマンス、認知機能改善、新型コロナ後遺症(long COVID)の症状(特に嗅覚及び/または味覚の喪失)及び中風を含むが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0009】
本発明の実践において特に興味深い点は、確率変数パルス間隔を有している反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)を患者に施術し、施術時間は患者の大脳の活動を十分調節であり、その生理状況または臨床状況を改善する。前述の改善とは、同時に患者及び患者の医療従事者の臨床評価から観察された改善を指す。磁気刺激のパワーまたは強度は通常患者の運動閾値より低く、好ましくは、患者の運動閾値の50%~90%であるが、但し、強度は更に高くても低くてもよい。
【0010】
本発明のTMSは同様に脳の電気刺激に適用し、例えば、脳深部刺激(deep brain stimulation)、または経皮的電気刺激(例えば、Alpha-Stim頭蓋電気刺激療法(cranial electrotherapy stimulation、CES))装置による。哺乳の脳の活動は、哺乳動物に可変電気パルス間隔を有している電気刺激を施術することで調整し、施術時間は脳の活動時間を十分調節し、その生理状況または臨床状況を改善する。好ましくは、電気刺激はランダム形式で行う。
【0011】
他の実施例では、確率変数のパルス間隔は間隔を置いた時間間隔(time period)であり、前記時間間隔はガウス分布に基づいて決定され、前記ガウス分布は決定ピーク値及び連続的時間間隔の両端にある既定カットオフ点を有している。前記実施例は本明細書の前記特定の脳機能障害の疾病や身体状況に関連する特定の脳波の複数の周波数/複数の領域を治療するために応用される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係るrTMS設備を使用して患者を治療する例示である。
図2】本発明に係る電気刺激装置を使用して患者を治療する例示である。
図3】本発明に係る電気パルスまたは磁気パルスのトランジスタ-トランジスタ論理(transitor-transtor-logic、TTL)シーケンスの6秒の治療サイクルにおける変動性である。
図4】本発明に係るガウス分布確率曲線図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の目的に関連する定義について説明する。本明細書で使用する「哺乳動物」という用語は、あらゆる哺乳動物を含み、特にヒトを含み、ヒト以外の哺乳動物としてヒト以外の霊長類動物、動物園の動物、ペット動物(犬、猫)、及びパフォーマンス動物(例えば、競走馬、繁殖用動物)を含む。本明細書に記載のあらゆる「人」に関する内容は、同じ生理または医療状況を表現する他の哺乳動物にも適用する。本明細書中使用あらゆる「患者」に関する内容は、前記患者に関連する特定の病症を患ったあらゆる哺乳動物(好ましくは、ヒト)に適用する。rTMSについて言及する場合、「可変パルス間隔(variable pulsed interval)、ランダムパルス間隔、可変パルス間隔、確率変数パルス間隔」という用語は、磁気刺激が時間に従って伝達される際に、異なる時間間隔で伝達されることを指し、同じ時間間隔(すなわち、周波数)で伝達されるのではない。可変の時間間隔はソフトウェアプログラムにより完全にランダムに生成され、治療方法に含まれる各パルスの確率は、既定の平均値及び標準偏差を有するガウス分布により重み付けされる。ランダムパルス間隔はホワイトノイズ関数または/及びピンクノイズ関数に基づいてもよい。好ましくは、予めプログラムしたホワイトノイズ発生器及びピンクノイズ発生器によりランダムパルス間隔を決定してもよい。
【0014】
本発明を実施する場合、患者の脳の活動が少なくとも部分的に身体または医療状況を招いており、前記身体または医療状況を有すると診断されると、66.00ミリ秒(ms)と200.00msとの間で変化するTMSパルスを施術して治療を行う。コンピュータプログラムはTTLパルスまたは他のトリガーを生成するために用いられ、TMS設備により可変パルス間隔を生成し、好ましくはランダムパルス間隔である。好ましくは、経頭蓋磁気刺激は反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)形式で伝達する。rTMSは可変パルス間隔で患者に施術し、施術時間は大脳の活動を十分調節し、生理状況または治療時の臨床状況を改善する。
【0015】
本発明の好ましい実施形態では、確率変数パルス間隔はrTMS操作に応用し、前記操作の時間は大脳の活動を十分調節し、生理状況または臨床状況を改善する。好ましくは、前記治療は毎日行い、且つ1週間継続した後、患者の進展を再度評価する。反復パルスの正確な時間は重要ではない。パルス間隔の可変性は医療従事者が治療で定義する特定のパルス間隔を選択することで予め確定する。ただし、最も好ましくは、rTMS設備に対してプログラミングを行い、66.00ms~200.00msのランダムパルス間隔を提供する。毎分6秒パルス列を30分間持続させ、30分間の治療期間を作るのが好ましい。磁気パルスの最大強度の設定は、通常患者の運動閾値に制限されるか、それより低くなっているが、但し、患者の運動閾値により管理を行う。rTMSのピーク値パルスのパワー/強度は、好ましくは、患者の運動閾値の約50~90%に設定し。通常は、パワー/強度は運動閾値の0.1~99%、運動閾値の10~90%、或いは運動閾値の40~85%でもよい。
【0016】
他の実施例では、可変パルス間隔は間隔を置いた連続的時間間隔であり、前記連続的時間間隔はガウス分布に基づいて決定され、前記ガウス分布は決定ピーク値及び連続的時間間隔の両端にある既定カットオフ点を有している。前記実施例は治療及び特定の脳機能障害や身体状況に関連する特定の脳波周波数/領域に用いられる。ガウス分布のピーク値及びピーク値の両側にあるカットオフ点の数値は、本発明の実施にとって重要ではなく、患者の医療従事者が考慮する様々な要因に基づいている。例えば、α波機能障害に関連する疾病や病症を治療する場合、パルス間隔のピーク値は100.00msであり、カットオフ点は125.00ms及び83.00msであり、各シーケンスのパルス間隔は全てその時間間隔中でランダムに発生する。
【0017】
図4を参照し、表示される時間間隔図の例にはガウス分布を示し、図に示す如く、X軸は時間間隔(単位:ミリ秒)であり、Y軸は確率の関係である。中心線C2はガウス分布のピーク値を示す。カットオフ点C1及びC3はC2の両側にあるカットオフ点を示す。図4に示す如く、ガウス分布が示す応用は、C1が125.00msであり、C2が100.00msであり、C3が83.00msであり、すなわち、ランダムパルス間隔の時間間隔は83.00msと125.00msとの間の範囲にある。ちなみに、図に示す如く、X軸の単位は、時間間隔からその逆数に変換し、(すなわち、時間間隔を毎秒出現する回数に変換する)、C1からC2までのX軸における距離と、C2からC3までのX軸における距離とは等距離となる。換言すれば、ランダムパルス間隔にはガウス分布の数値が示され、それが毎秒出現する回数を指す。
【0018】
本発明に係るrTMS治療は、磁気コイルを用いた従来の治療方法により行う。設定される時間間隔内に実際に磁気刺激を行う時間は、各臨床表現に基づいて変化する。施術する磁気刺激は、最も好ましくは、rTMS治療セッション(rTMS session)において毎分連続6秒間行う。治療セッションは15~60分間持続し、最も好ましくは30分間持続する。磁気コイルは患者の頭部に近接または当接され、好ましくは前頭葉に近接されるように配置される。
【0019】
表1には30分間の治療期間におけるランダム磁気パルス間隔を列挙する。左列(下に向けて)は列番号に対応し、すなわち、毎分1回6秒間の治療を行う。水平行は特定の各列(すなわち、T1、T2、T3等)からのパルスの間に対応し、ミリ秒(ms)を単位とする開始時間は127msである。例えば、T1は初期パルスの127ms後にトリガーし、T2はT1の95ms後にトリガーし、T3はT2の70ms後にトリガーし、このように#列1の水平行は類推する。#列1の期間は6秒である。好ましくは、各6分間列のパルスは新規にランダム生成されたものである。1分間後に、#列2が同じ方式で開始する。スペースの制限のため、T11~T43は省略するが、これらはランダムパルスである。図3に示す如く、本発明に基づいて、6秒間の治療期間中のTLLパルスの可変性は、単一の周波数を採用した方法と比べると、単一の周波数の方法の全てのパルスは、6秒間の治療期間中に互いに等距離を置いている。
【0020】
<表1>
【0021】
図1に示す如く、本発明に係る磁気刺激装置は、コイル201と、電源202と、可変パルスの刺激パラメーターを制御するコンピュータ203と、を備えている。電源202及びコンピュータ203は単一のユニット制御モジュールとして製造されてもよい(図示省略)。一般的には、制御モジュールは、TTLパルス、及びコイル201から伝達される磁気刺激を制御する。電源202を起動すると、電流がコイルを通過して磁場を発生させ、コンピュータ203は、本発明に係る可変パルスを発生させるようにコイル201を駆動するようにプログラミングされている。患者に磁気刺激治療を施術する場合、パッケージされた磁気コイル組立部材を頭部に位置決めするか近接させ、治療を受けさせる。
【0022】
電気刺激設備は、頭皮に接着される2つ以上の電極パッチ(electrode pad)を備え、電源は前述の電極パッチに電流を発生させる電極として配置され、コンピュータプログラムは前記可変パルスの電気刺激をガイドする。電気刺激設備の好ましくは実施例では、電気刺激設備の電源は電池であり、非処方の家庭用経皮的電神経刺激(TENSユニット)装置による医療の治療に使用可能である。患者に電気刺激治療を施術する場合、電極パッチを接続位置(contiguous placement)に直接接触するように位置決めするか、治療を受ける身体の部位に隣接させる。
【0023】
他の実施例では、脳深部刺激(deep brain stimulation、DBS)はランダム電気パルスを患者に施術し、様々な脳機能障害を制御する。脳深部を刺激する際に、大脳の機能が失調した部位に電極を埋め込む。電極が電気パルスを大脳の目的部位に伝達させ、且つ電線を介して電極がパルス発生器または神経刺激器に接続される。パルス発生器または神経刺激器は電流を電極に供給し、ランダム電気パルスを目標の大脳部位に伝達させる。必要に応じて、パルス発生器または神経刺激器はランダム電気パルスを提供するようにプログラミングされている。パルス発生器/神経刺激器は、通常手術により皮下に埋め込む。ランダム電気パルスの伝達は、患者のEEGデータや患者のEEGから派生したデータに基づいてはいない。
【0024】
図2に示す如く、本発明に係る電池により給電を行う電気刺激装置は、電池(図示省略)により給電を行う電気パルス発生器301と、導線302、303を介して電気パルス発生器301の制御モジュールに接続される1対の電極パッチ304、305と、を備えている。制御モジュールはアース線を介して接地されている。制御モジュールのデジタルまたはコンピュータプログラムは本発明に関わる可変電気刺激をガイドする。
【0025】
以下、例を示しながら本発明をどのように実践するか説明するが、これは特許請求の範囲を制限すると解釈してはならない。これらの例において、EEGデータまたはEEG派生データを使用せずに可変パルス間隔またはランダムパルス間隔をプログラムする。
【0026】
<例示1:PTSD(心的外傷後ストレス障害候群)及び物質使用障害(SUD)の治療>
25歳の男性退役軍人患者1名が、PTSD及びSUDを患っていると診断され、本発明の確率変数の反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)により4日間の治療が行われた。rTMS治療の前に、患者の運動閾値を確定した。患者は60秒毎に6秒間のランダム磁気刺激を受け、30分間持続し、パワーは患者の運動閾値の80%である。その後、患者に対して行う後続の検査において、夜間の睡眠、情緒、耳鳴り、筋肉痛、断酒、大麻の服用停止、注意力の持続時間の反応において、4日間毎日治療した後に改善が見られた。
【0027】
<例示2:新型コロナ後遺症(long COVID)の治療 >
56歳の女性患者1名が、新型コロナ後遺症と診断され、且つ1年以上嗅覚が失われた。本発明の確率変数の反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)により2週間の治療が行われた。rTMS治療の前に、患者の運動閾値を確定した。患者は60秒毎に6秒間のランダム磁気刺激を受け、30分間持続し、パワーは患者の運動閾値の80%である。第1回の治療後、彼女の嗅覚がすぐに回復した。その後、患者に対して行われた後続の検査では、夜間の睡眠、反応、筋肉痛、及び頻呼吸の反応において改善が見られた。
【0028】
<例示3:アルツハイマー病の治療>
72歳の女性患者1名が、中度のアルツハイマー病と診断され、本発明の確率変数の反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)により2週間の治療が行われ、計10回のrTMS治療が行われた。rTMS治療の前に、患者の運動閾値を確定した。患者は60秒毎に6秒間のランダム磁気刺激を受け、30分間持続し、パワーは患者の運動閾値の75%である。その後、女性患者に対する後続の検査において、夜間の睡眠、記憶力、会話及び閲読問題、新たな状況の処理問題、及び注意力の持続時間の反応において、4日間毎日治療した後に改善が見られた。
【0029】
<例示4:自閉症スペクトラム障害の治療>
非言語(non-verbal)の16歳の男性患者1名が、自閉症スペクトラム障害(ASD)と診断され、本発明の確率変数の反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)により治療2日間の治療が行われた。rTMS治療の前に、患者の運動閾値を確定した。患者は60秒毎に6秒間のランダム磁気刺激を受け、30分間持続し、パワーは患者の運動閾値の80%である。2回のrTMS治療後の3日目に、患者は単語を発話するようになった。2週間後に、患者は文章を発話するようになった。
【0030】
<例示5:体力の向上>
54歳のバハ1000の男性競技者1名が耐久力の向上を希望し、長距離レースにおける競争力を高めるため、本発明の確率変数の反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)により5週間の治療が行われた。rTMS治療の前に、競技者の運動閾値を確定した。競技者は60秒毎に6秒間のランダム磁気刺激を受け、30分間持続し、パワーは患者の運動閾値の70%である。治療開始から6週間後に、バハ1000レースにおける彼のパフォーマンス、注意力、耐久力、及び注意力には明らかな改善が見られた。
【0031】
<例示6:改善注意欠陥障害(ADD)及び焦燥>
60歳の男性患者1名が慢性注意欠陥障害(ADD)及び焦燥を患い、本発明の確率変数の反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)による治療が行われた。rTMS治療の前に、患者の運動閾値を確定した。患者は60秒毎に6秒間のランダム磁場を受け、30分間持続し、パワーは患者の運動閾値の80%である。その後、患者に対して行われた後続の検査において、4日間毎日治療を行った後、夜間の睡眠、情緒、及び注意力の持続時間の反応において改善が見られた。
【0032】
<例示7:下半身麻痺からの回復>
経験豊富なスキューバダイバーの41歳の男性1名が、水面下150フィート以下の潜水に参加したが、水面に急浮上したため、腰以下が7.5年間麻痺した。麻痺した男性は本発明の確率変数の反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)により6週間(月曜から金曜まで)の治療を受けた。rTMS治療の前に、麻痺したダイバーの運動閾値を確定した。麻痺したダイバーは60秒毎に6秒間のランダム磁気刺激を受け、30分間持続し、パワーは患者の運動閾値の70%である。治療開始から2週間後に、ダイバーは腿の感覚を感じるようになり、つま先を動かせるようになった。5週間が過ぎると、ダイバーは立てるようになった。
【0033】
<例示8:てんかんの発作の減少及び認知、協調性、筋肉の制御の改善>
8歳の女性患者1名が、3歳の頃から自力で歩けなくなり、会話や左腕が不自由になり、毎日70~100回、或いはそれ以上に制御不能なてんかん発作が起こるようになった。ランダムパルスrTMS治療の前に、前記女児はてんかん発作が毎日70~100回、或いはそれ以上起こった。本発明の確率変数の反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)により女児に対して3週間(月曜から金曜まで)の治療が行われた。rTMS治療の前に、女児の運動閾値を確定した。女児は60秒毎に6秒間のランダム磁気刺激を受け、30分間持続し、パワーは女児の運動閾値の85%である。治療開始から3週間以内(15回の治療セッション)に、女児は歩けるようになり、会話もできるようになり、左手で物を掴めるようになった。女児の毎日のてんかん発作回数が70~100回から毎日20回未満まで減少した。
【0034】
<例示9:ガウス分布に基づいてrTMSを使用してアルツハイマー病患者を治療>
83歳の男性患者1名が、中度から重度のアルツハイマー病と診断され、確率変数の反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)治療を受け、2週間以内に計10回rTMS治療を受け、パルス間隔は83ミリ秒及び125ミリ秒の間の範囲である。パルスはガウス分布モードにより管理を行い、ピーク値は100ミリ秒であり、カットオフ点は83ミリ秒及び125ミリ秒である。rTMS治療の前に、患者の運動閾値を確定した。患者は60秒毎に6秒間のランダム磁気刺激を受け、30分間持続し、パワーは患者の運動閾値の80%である。その後、男性患者に対して行われた後続の検査において、前記男性患者は、夜間の睡眠、記憶力、会話及び閲読の問題、注意力の持続の反応において、2日間毎日治療を行った後に改善が見られた。
【0035】
本発明は、その精神又は主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形態で実施することができる。そのため、上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本明細書には何ら拘束されない。更に、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、すべて本発明の範囲内のものである。
【符号の説明】
【0036】
201 コイル
202 電源
203 コンピュータ
301 電気パルス発生器
302 導線
303 導線
304 電極パッチ
305 電極パッチ
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2023-04-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可変パルス間隔を有しているrTMSパルスを伝達するための磁気コイルを備え、前記可変パルス間隔は確率変数のパルス間隔であり、前記可変パルス間隔の時間間隔及び前記可変パルス間隔の確率は直角座標系のX軸及びY軸であり、前記確率は前記直角座標系に構築した前記時間間隔の分布に対応し、ガウス分布図形、ホワイトノイズ関数図形、またはピンクノイズ関数図形に適合し、前記パルス間隔の設定は生体特性データまたは前記生体特性から派生したデータに依存しないことを特徴とするプログラマブル設計rTMS設備。
【請求項2】
コンピュータプログラムを更に含み、前記コンピュータプログラムは、前記可変パルス間隔を有しているrTMSパルスを伝達するように前記磁気コイルをガイドすることを特徴とする請求項1に記載のプログラマブル設計rTMS設備。
【請求項3】
前記確率は前記直角座標系に構築した前記時間間隔の分布に対応し、前記ホワイトノイズ関数図形または前記ピンクノイズ関数図形に適合することを特徴とする請求項1に記載のプログラマブル設計rTMS設備。
【請求項4】
前記確率は前記直角座標系に構築した前記時間間隔の分布に対応し、前記ガウス分布図形に適合し、前記ガウス分布図形は、決定ピーク値及び前記時間間隔の両端にある既定カットオフ点を有していることを特徴とする請求項1に記載のプログラマブル設計rTMS設備。
【請求項5】
前記決定ピーク値は100.00msのパルスであり、第1の前記既定カットオフ点は125.00msのパルスであり、第2の前記既定カットオフ点は83.00msのパルスであることを特徴とする請求項4に記載のプログラマブル設計rTMS設備。
【請求項6】
前記可変パルス間隔的時間は66.00ms~200.00msの間の範囲であることを特徴とする請求項1に記載のプログラマブル設計rTMS設備。
【請求項7】
可変パルス間隔を有しているrTMSパルスを伝達するための磁気コイルを備え、前記可変パルス間隔は確率変数のパルス間隔であり、前記可変パルス間隔の時間間隔及び前記可変パルス間隔の確率は直角座標系のX軸及びY軸であり、前記確率は前記直角座標系に構築した前記時間間隔の分布に対応し、ガウス分布図形、ホワイトノイズ関数図形、またはピンクノイズ関数図形に適合し、前記パルス間隔の設定は生体特性データまたは前記生体特性から派生したデータに依存しないことを特徴とするrTMS設備及びプログラマブル設計システム。
【請求項8】
a.2つ以上の電極パッチと、
b.前記電極パッチに対して電流を発生させる電源と、
c.可変パルスを有している電気刺激をガイドするためのデジタルプログラムと、を備え、
前記可変パルスは可変パルス間隔で伝達され、前記可変パルス間隔の時間間隔及び前記可変パルス間隔の確率は直角座標系のX軸及びY軸であり、前記確率は前記直角座標系に構築した前記時間間隔の分布に対応し、ガウス分布図形、ホワイトノイズ関数図形、またはピンクノイズ関数図形に適合し、
前記パルス間隔の設定は生体特性データまたは前記生体特性から派生したデータに依存しないことを特徴とする電気刺激装置。
【請求項9】
前記電源は電池であることを特徴とする請求項8に記載の電気刺激装置。
【請求項10】
前記電気刺激装置は、経皮的神経電気刺激装置(TENS Unit)または脳深部刺激装置(DBS)であることを特徴とする請求項8に記載の電気刺激装置。
【請求項11】
前記確率は前記直角座標系に構築した前記時間間隔の分布に対応し、前記ホワイトノイズ関数図形または前記ピンクノイズ関数図形に適合することを特徴とする請求項8乃至10の何れか1項に記載の電気刺激装置。
【請求項12】
前記確率は前記直角座標系に構築した前記時間間隔の分布に対応し、前記ガウス分布図形に適合し、前記ガウス分布図形は、決定ピーク値及び前記連続時間間隔の両端にある既定カットオフ点を有していることを特徴とする請求項8乃至10の何れか1項に記載の電気刺激装置。
【請求項13】
前記決定ピーク値は100.00msのパルスであり、第1の前記既定カットオフ点は125.00msのパルスであり、第2の前記既定カットオフ点は83.00msのパルスであることを特徴とする請求項12に記載の電気刺激装置。
【請求項14】
前記可変パルス間隔の時間は66.00ms~200.00msの間の範囲であることを特徴とする請求項8乃至10の何れか1項に記載の電気刺激装置。
【国際調査報告】