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特表2024-531810歯科用途に用いるカテコール含有材料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】歯科用途に用いるカテコール含有材料
(51)【国際特許分類】
   A61K 6/30 20200101AFI20240822BHJP
   A61K 6/60 20200101ALI20240822BHJP
   A61K 6/79 20200101ALI20240822BHJP
   A61K 6/20 20200101ALI20240822BHJP
   A61K 6/40 20200101ALI20240822BHJP
【FI】
A61K6/30
A61K6/60
A61K6/79
A61K6/20
A61K6/40
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024517577
(86)(22)【出願日】2022-09-20
(85)【翻訳文提出日】2024-05-17
(86)【国際出願番号】 US2022076734
(87)【国際公開番号】W WO2023044506
(87)【国際公開日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】63/245,959
(32)【優先日】2021-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/287,124
(32)【優先日】2021-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523112806
【氏名又は名称】マッセル・ポリマーズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Mussel Polymers, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(74)【代理人】
【識別番号】100197583
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 健
(72)【発明者】
【氏名】アンダーソン,エリック
【テーマコード(参考)】
4C089
【Fターム(参考)】
4C089AA01
4C089AA10
4C089BC03
4C089BD01
4C089CA03
4C089CA09
(57)【要約】
本開示は、カテコール含有モノマー、ポリマー、又はオリゴマーを含んで成るポリマー層を対象とし、カテコールは、第1級アミン又は第2級アミンの存在なしに、カテコールとして及び/又はセミ-キノンとして及び/又はキノンとして存在し、ポリマー層は場合によりカテコール又はキノンと反応しない反応性材料を含んで成る。本開示はまた、バルク接着剤層と隣接・接触して配置されるカテコール含有モノマー、ポリマー、又はオリゴマーを含んで成るポリマー層を対象としている。本開示はまた、本明細書に記載される層を用いて基材をコーティングする方法を対象としている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カテコール含有薄膜を含むポリマー層であって、
歯科用接着剤の接着強度を向上させるカテコール、セミ-キノン、又はキノンを含むポリマーを含んで成る、ポリマー層。
【請求項2】
カテコール含有薄膜は、モノマー、オリゴマー、又はポリマーのカテコール又はカテコール含有材料を含んで成り、カテコールがアミンの存在なしに、カテコールとして及び/又はセミ-キノンとして及び/又はキノンとして存在し、ポリマー層は場合により、a)カテコール又はカテコール含有材料とは別の反応種、及びb)触媒、共触媒又は促進剤の少なくとも一つを含んで成る、請求項1に記載のポリマー層。
【請求項3】
ポリマー層は、カテコール又はカテコール含有材料とは別の反応種を含んで成り、反応種がアクリル、シラン、シリコーン、メタクリレート、ポリビニルアルコール(PVA)又はそれらの組合せを含んで成る、請求項2に記載のポリマー層。
【請求項4】
ポリマー層は、カテコール又はカテコール含有材料とは別の反応種を含んで成り、反応種が、2,2-ビス[4-(2-ヒドロキシ-3-メタクリロイルオキシプロポキシ)フェニル]プロパン(BisGMA)、エトキシ化ビスフェノール-Aジメタクリレート(EBPADMA)、トリエリレングリコールジメタクリレート(TEGDMA)、ウレタンジメタクリレート(UDMA)、tert-ブチルフェノキシBisGMA(MtBDMA)、変性ウレタンジメタクリレート、アミド変性ビスフェノール-A、CHBisGMA、酸性ビスフェノール-Aジメタクリレート、シクロ脂肪族エポキシドからのジメタクリレート、芳香族ウレタンジメタクリレート、ウレタン変性BisGMA、酸性芳香族ジメタクリレート、オキシジフタル酸ジメタクリレート、フェニルジヒドロキシメタクリレートジホスホネート、酸性ビスフェノール-Aジメタクリレート、モルホリンカルボニルメタクリレート、フェニルカーボネートメタクリレート等のアクリルである、請求項3に記載のポリマー層。
【請求項5】
アクリレート重合開始剤等のフリーラジカル重合開始剤(例えば、過酸化ベンゾイル(BPO)、2,3-ボルナンジオン(カンファーキノン)、エチル-4-(ジメチルアミノ)ベンゾエート(EDMAB)、2-(エチルヘキシル)-4-(ジメチルアミノ)ベンゾエート(ODMAB)、2-(エチルヘキシル)-4-(ジメチルアミノ)ベンゾエート(TPO)、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-ホスフィンオキシド又はこれらの組合せ等の光活性化されるものを含む)を更に含んで成る、請求項1に記載のポリマー層。
【請求項6】
反応種がアクリレートである、請求項3に記載のポリマー層。
【請求項7】
ポリマー層は歯科用基体上に配置される、請求項1に記載のポリマー層。
【請求項8】
歯科用基体は、1又はそれより多いセラミック、ポリマー、コンポジット及び金属を含んで成る、請求項7に記載のポリマー層。
【請求項9】
セラミックは、ジルコニア又はポーセリンを含んで成り、ポリマーがアクリル、ポリプロピレン、ポリ(メチルメタクリレート)、又は1又はそれより多いそれらの組合せを含んで成り、コンポジットはエナメル質、象牙質、又はそれらの組合せの1又はそれより多くを含んで成り、金属はチタン、ステンレススチール、金、クロム、又は1又はそれより多いそれらの組合せの1又はそれより多く含んで成る、請求項8に記載のポリマー層。
【請求項10】
ポリマー層は、1又はそれより多いプライマー層、接着層、又は層状修復材を含んで成る、請求項1に記載のポリマー層。
【請求項11】
ポリマー層は、約10ナノメートルから約500ミクロンの厚みを有する、請求項1に記載のポリマー層。
【請求項12】
カテコール又はカテコール含有材料は、ポリ-カテコールスチレン(PCS)を含んで成る、請求項1に記載のポリマー層。
【請求項13】
PCSはPCSの0.1%溶液を含んで成る、請求項12に記載のポリマー層。
【請求項14】
カンファーキノン(CQ)、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、過酸化ベンゾイル、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、及び1又はそれより多いそれらの組合せの1又はそれよりも多くを含む、1又はそれより多い光開始剤を更に含んで成る、請求項1に記載のポリマー層。
【請求項15】
歯科用接着剤の接着寿命は、カテコール含有材料を含まない歯科用接着剤よりも向上する、請求項1に記載のポリマー層。
【請求項16】
基体をコーティングする方法であって、
請求項1のポリマー層を基体の表面上に配置することを含んで成る、方法。
【請求項17】
基体は、1又はそれより多いセラミック、ポリマー、コンポジット及び金属を含む歯科用基体を含んで成り、セラミックはジルコニア又はポーセリンを含んで成り、ポリマーはアクリル、ポリプロピレン、ポリ(メチルメタクリレート)、又は1又はそれより多いそれらの組合せを含んで成り、コンポジットは、エナメル質、象牙質、又はそれらの組合せの1又はそれより多くを含んで成り、及び金属はチタン、ステンレススチール、金、クロム、又は1又はそれより多いそれらの組合せの1又はそれより多くを含んで成る、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
基体は、濡れている、乾燥している、セミ-ウェットである又は湿っている、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
基体は、対象の口腔内にある、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
歯科用接着剤の接着寿命は、カテコール含有材料を含んでいない歯科用接着剤よりも向上する、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、米国仮出願第63/245,959(2021年9月20日出願)・及び、米国仮出願第63/287,124(2021年12月8日出願)の利益を主張する。かかる出願は、参照によりその全体が本明細書に組込まれる。
【技術分野】
【0002】
本開示は、歯科用途で用いるための、カテコール含有モノマー、ポリマー、又はオリゴマーを含んで成る薄層に関する。カテコール含有材料は、実質的な接着剤マトリクスの改良なく、2つの材料間の接着性を向上させることを示す。本開示はまた、カテコール含有ポリマー、又はオリゴマー、ポリ(カテコール-スチレン)(PCS)を含む薄層の製造方法及び使用方法にも関する。
【背景技術】
【0003】
歯の表面とコンポジット充填材料(又は複合詰め物材料、composite filling material)、歯列矯正デバイス、及び修復用セラミックスとの間の強く、耐久性のある接着剤は、健康、安全、及び幸福に影響を及ぼす歯科分野において長年に渡る、困難で費用の掛かる問題である。歯科用接着剤は、濡れた歯の表面に対して強く接着しなければならなく、濡れた口腔環境において強度を維持しなければならない。処方されるアクリル樹脂は、歯科で最も一般的に用いられる接着化学物質である。これらの樹脂は、液状のモノマーの形で適用(又は塗布)され、その場で重合される。アクリル樹脂の重合は、しばしば光で活性化されるが、自己重合化学物質も用いられる。
【0004】
アクリル接着剤は、濡れた表面に対して接着が不十分なため、患者の歯の表面は通常、最初にリン酸でエッチングされ、風乾される。接着強度をさらに高めるため、基体をプライマー(又は下塗剤、primer)で処理する場合もある。適用が容易なため、歯科医は、単一製剤中のエッチング剤、接着剤、及びプライマーの組合せで構成されるマルチ成分接着システム(multi-part adhesive systems)を用いる場合もある。適用時、この接着強度のほとんどは、ミクロメカニカルな結合(又はインターロッキング、interlocking)に由来する。歯科用接着剤と歯組織との間の化学結合は比較的限定されるが、化学結合が接着寿命を決定する主要な要因であると示唆している研究もある。
【0005】
しかしながら、たとえ初めの接着装着(アタッチメント、attachment)が強くても、アクリル接着剤は、時間の経過とともに着実に接着強度を失う。進行する接着強度の低下が、多く研究されてきており、いくつかの要因(例えば、アクリル接着剤の加水分解、活性化マトリクス・メタロプロテアーゼによる象牙質コラーゲンの分解、湿潤な象牙質やエナメル質に対するアクリル接着剤の初期接着性が低い)の結果であることがわかってきている。
【0006】
更に、エッチングによるヒドロキシアパタイトの除去は、永久的に歯のエナメル質を損ない、将来の齲蝕の可能性を増加させる。液状エッチング剤が歯肉に流れ、組織を刺激し得る。患者は、エッチング剤に対してアレルギー反応を示し得る。
【0007】
従って、口腔の湿潤条件(又は湿っている条件、wet condition)において、歯科用接着剤の接着強度及び寿命を向上させるカテコール含有材料を好都合に使用する必要性が存在する。
【発明の概要】
【0008】
ある要旨において、本発明は、歯科用接着剤の接着強度を向上させるカテコール、セミ-キノン、又はキノンを含むポリマーを含んで成るカテコール含有薄膜を含むポリマー層に関する。いくつかの態様では、カテコール含有薄膜は、モノマー、オリゴマー、又はポリマーのカテコール又はカテコール含有材料を含んで成り、カテコールがアミンの存在なしに、カテコールとして及び/又はセミ-キノンとして及び/又はキノンとして存在し、ポリマー層は場合により、a)カテコール又はカテコール含有材料とは別の反応種、及びb)触媒、共触媒又は促進剤の少なくとも一つを含んで成る。
【0009】
いくつかの態様では、ポリマー層は、カテコール又はカテコール含有材料とは別の反応種を含んで成り、反応種がアクリル、シラン、シリコーン、メタクリレート、ポリビニルアルコール(PVA)又はそれらの組合せを含んで成る。
【0010】
いくつかの態様では、ポリマー層は、カテコール又はカテコール含有材料とは別の反応種を含んで成り、反応種が、2,2-ビス[4-(2-ヒドロキシ-3-メタクリロイルオキシプロポキシ)フェニル]プロパン(BisGMA)、エトキシ化ビスフェノール-Aジメタクリレート(EBPADMA)、トリエリレングリコールジメタクリレート(TEGDMA)、ウレタンジメタクリレート(UDMA)、tert-ブチルフェノキシBisGMA(MtBDMA)、変性ウレタンジメタクリレート、アミド変性ビスフェノール-A、CHBisGMA、酸性ビスフェノール-Aジメタクリレート、シクロ脂肪族エポキシドからのジメタクリレート、芳香族ウレタンジメタクリレート、ウレタン変性BisGMA、酸性芳香族ジメタクリレート、オキシジフタル酸ジメタクリレート、フェニルジヒドロキシメタクリレートジホスホネート、酸性ビスフェノール-Aジメタクリレート、モルホリンカルボニルメタクリレート、フェニルカーボネートメタクリレート等のアクリルである。
【0011】
いくつかの態様では、本明細書で意図されている本発明は、アクリレート重合開始剤等のフリーラジカル重合開始剤(例えば、過酸化ベンゾイル(BPO)、2,3-ボルナンジオン(カンファーキノン)、エチル-4-(ジメチルアミノ)ベンゾエート(EDMAB)、2-(エチルヘキシル)-4-(ジメチルアミノ)ベンゾエート(ODMAB)、2-(エチルヘキシル)-4-(ジメチルアミノ)ベンゾエート(TPO)、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-ホスフィンオキシド又はこれらの組合せ等の光活性化されるものを含む)を更に含んで成る。
【0012】
いくつかの態様では、反応種がアクリレートである。
【0013】
いくつかの態様では、ポリマー層は歯科用基体上に配置される。いくつかの態様では、歯科用基体は、1又はそれより多いセラミック、ポリマー、コンポジット及び金属を含んで成る。いくつかの態様では、セラミックは、ジルコニア又はポーセリンを含んで成り、ポリマーがアクリル、ポリプロピレン、ポリ(メチルメタクリレート)、又は1又はそれより多いそれらの組合せを含んで成り、コンポジットはエナメル質、象牙質、又はそれらの組合せの1又はそれより多くを含んで成り、金属はチタン、ステンレススチール、金、クロム、又は1又はそれより多いそれらの組合せの1又はそれより多く含んで成る。
【0014】
いくつかの態様では、ポリマー層は、1又はそれより多いプライマー層、接着層、又は層状修復材を含んで成る。いくつかの態様では、ポリマー層は、約10ナノメートルから約500ミクロンの厚みを有する。いくつかの態様では、カテコール又はカテコール含有材料は、ポリ-カテコールスチレン(PCS)を含んで成る。いくつかの態様では、PCSはPCSの0.1%溶液を含んで成る。

【0015】
いくつかの態様では、本明細書で意図されている本発明は、カンファーキノン(CQ)、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、過酸化ベンゾイル、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、及び1又はそれより多いそれらの組合せの1又はそれよりも多くを含む、1又はそれより多い光開始剤を更に含んで成る。いくつかの態様では、歯科用接着剤の接着寿命は、カテコール含有材料を含まない歯科用接着剤よりも向上する。
【0016】
ある要旨において、本発明は基体をコーティングする方法であって、請求項1のポリマー層を基体の表面上に配置することを含んで成る方法を供する。
【0017】
いくつかの態様では、基体は、1又はそれより多いセラミック、ポリマー、コンポジット及び金属を含む歯科用基体を含んで成り、セラミックはジルコニア又はポーセリンを含んで成り、ポリマーはアクリル、ポリプロピレン、ポリ(メチルメタクリレート)、又は1又はそれより多いそれらの組合せを含んで成り、コンポジットは、エナメル質、象牙質、又はそれらの組合せの1又はそれより多くを含んで成り、及び金属はチタン、ステンレススチール、金、クロム、又は1又はそれより多いそれらの組合せの1又はそれより多くを含んで成る。
【0018】
方法のいくつかの態様では、基体は、濡れている(wet)、乾燥している、セミ-ウェット(semi-wet)である又は湿っている(moist)。方法のいくつかの態様では、基体は、対象の口腔内にある。いくつかの態様では、歯科用接着剤の接着寿命は、カテコール含有材料を含んでいない歯科用接着剤よりも向上する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、コンポジット充填材を用いて歯科修復物を配置する(又は取り付ける、placing)ための例示的な手順の模式図を描いている。2016年にJain,Aから入手したこの模式図は、光硬化型コンポジット修復物を配置するための例示的な技術を描いている。
【0020】
図2図2は、コンポジット充填材の装着を示す模式図である。
【0021】
図3図3は、ブリッジワーク及び歯科用インプラントのためのセラミックスの使用を示す模式図である。
【0022】
図4図4は、カテコールと種々の種類の表面との例示的な相互作用の模式図である。
【0023】
図5図5は、ポリドーパミンの自動-重合及び構造を示す模式図である。
【0024】
図6図6は、ポリ(カテコール-スチレン)(PCS)下塗用エナメル質が、歯科用アクリルと歯科用ブラケットとの接着を促進することを示す。下塗り(アセトン中の0.1%PCS)が、汎用(又は万能)自己-エッチング歯科用接着剤(Henry Schein Natural Elegance Universal One)を用いて、エナメル質表面へのブラケットの接着を向上させる。サンプルを水中で48時間硬化し、ブラケットを変位させるために必要な力を測定した。エラー・バーは、平均の標準誤差である。
【0025】
図7図7は、PCS下塗りが湿潤ジルコニアに対して接着強度を高めることを示している。PCS又はシラン系/10-メタクリロイルオキシデシルリン酸二水素(10-MDP)含有歯科用プライマーを用いる下塗り後、歯科用接着剤を、乾燥又はプレ-ウェット状態のいずれかのジルコニアのサンプルに適用した。左図は、実験のセットアップの模式図を描いている。右図は、PCS下塗りが湿潤セラミック表面への接着を向上させることを示す結果を描いている。
【0026】
図8図8は、PCS下塗りが長期間の象牙質への接着を提供することを示す結果を示している。左図は、接着剤がどのように適用されるかの模式図を描いている。湿潤又は乾燥ジルコニアを、シラン/MDP又はPCSを用いて下塗りした。次に、汎用歯科用接着剤を適用し、光硬化した。変位力をその後測定した。右図は、曲げ強度が描かれている。PCSは、湿潤ジルコニアに適用する場合、強度を向上させる。
【0027】
図9図9は、PCSの存在下においてUDMAの転化を示している。0.5w/w%カンファーキノン/共開始剤と共にUDMAの転化率を、FTIR-ATRを用いて時間経過とともに測定した。PCSの異なる濃度を用いた製剤を、ATR結晶上でその場で照射した。
【0028】
図10図10は、象牙質表面上の歯科用アクリルの接着促進剤として光開始剤添加と共にプライマーとして、PCSを用いた接着強度データを示している。0.1%カンファーキノン(CQ)光開始剤添加を含む0.1%PCSプライマー層が、象牙質表面への歯科用アクリル(FILTEK(登録商標)、CR社)の接着を向上させ、促進させるのに十分であるという結果を示している。サンプルを24時間硬化した後、せん断試験をした。エラー・バーは平均の標準偏差である。
【0029】
図11図11は、バルクPCSの還元が、アルミニウムへの接着を増加させることを示している。PCSを100%アセトン又は90%アセトン及び10%酢酸に溶解した。酸性化が、著しく接着強度を増加させた。エラー・バーは標準誤差である。
【0030】
図12図12は、接着促進剤として0.1%PCSプライマーを用いる場合、歯科用アクリルが48時間後十分に重合されることを示している。左図は、歯科用アクリル(Clearfil SE Bond)が、接着促進剤としてPCSを用いて十分に重合させる最適な硬化時間が48時間であることを示している。48時間後にサンプルをせん断試験したが、接着が十分に硬化され、少なくとも24時間安定したままであることを示している。右図は、最適なPCSの割合が、アセトン中で約0.1%であることを示している。サンプルを、乾燥状態で硬化した。エラー・バーは、平均の標準誤差で表している。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本開示では、単数形”a”、”an”及び”the”は複数の言及を含んでおり、特定の数値への言及は、文脈で明確に断らない限り、少なくともその特定の値を含む。従って、例えば”a material”への言及は、当業者等に知られているそのような材料及びその他の同等物の少なくとも1つへの言及である。
【0032】
本開示では、”対象(subject)”という用語は、ヒト又はヒトでない動物のいずれをも含んでいる。ある態様では、対象は、ヒト又はヒトでない哺乳類である。ある態様では、対象はヒトである。
【0033】
”約(about)”又は”実質的に(substantially)”という記述を用いることによって、近似値として値を表現する際、特定の値が別の態様をも構成していると理解されよう。一般的に、”約”又は”実質的に”という用語の使用は、開示される対象によって得ようとする所望の特性に依拠して変化し得る近似値を示し、その機能に基づいて、それが使用される特定の文脈で解釈されるべきである。当業者は、日常的な事項としてこれを解釈することができるだろう。場合によっては、特定の値に用いられる有効数字の数が、”約”又は”実質的に”という用語の範囲を決定する1つの非限定的な方法であり得る。他の場合では、連続的な値で用いる階調が、各値の”約”又は”実質的に”という用語に用いることができる意図する範囲を決定するために用いられ得る。本明細書では、全範囲が包括的で、組合せ可能である。つまり、範囲で記載された値の言及は、その範囲内の全ての値を含む。
【0034】
リストを示す際、特に断りがない限り、そのリストの各個別の要素及びそのリストの全ての組合せは、別々の態様として解釈すべきであると理解されたい。例えば、”A、B、又はC”として示される態様のリストは、”A”、”B”、”C”、”A又はB”、”A又はC”、”B又はC”又は”A、B、又はC”の態様を含むとして解釈されるべきである。
【0035】
別々の態様の文脈で本明細書の明確のために、記載される本開示の特定の特徴はまた、単一の態様において組合せて供され得ることを理解されたい。即ち、明確に相容れない又は除外されない限り、個々の態様のそれぞれは、他のいずれの態様とも組合せ可能とみなされ、そのような組合せが、別の態様とみなされる。逆に言うと、簡潔さのために、単一の態様の文脈で記載される本開示の多様な特徴は、また別々に又はあらゆるサブ・コンビネーションにおいても供され得る。更に本請求項は、いずれかの任意の要素を除外するために起草され得ることを留意されたい。従って、この記述を請求項要素の記載に関連して”solely”、”only”等のように排他的な専門用語を使用するために、又は”否定の(negative)”制限を使用するために、予めの根拠として機能することを意図する。最後に、態様が一連の工程の部分又はより一般的な構造の部分として記載され得、上記工程のそれぞれはまた、それ自体において独立した態様と考えられ得る。
【0036】
海産イガイ(marine mussel)接着たんぱく質は、少なくとも部分的には、水の存在下で広範囲の基体に対して強く接着するため、かなりの研究的関心を集めている。
【0037】
イガイはムール貝の足糸タンパク質(mussel foot proteins、Mfps)を分泌し、湿潤環境(wet environment)で、様々な表面(例えば、岩、木、金属表面、海の生き物の殻等)に付着することが可能である。Mfpsの重要な構成物質の一つは、比較的多量の稀なアミノ酸3,4-ジヒドロキシ-L-フェニルアラニン(DOPA)である。DOPAは、カテコール側鎖を含み、このカテコール基が、Mfpsの注目すべき接着特性の主な要因であると示されている。カテコールは、表面と広範囲で可逆的な結合(例えば、水素結合、カチオン-π相互作用、及び金属イオン錯体化)を形成することができる。カテコールはまた、自己架橋だけでなく、特定の接着表面(例えば、たんぱく質表面)と共有結合を形成することもできる(図4)。
【0038】
この注目すべきカテコール化学の理解は、広範囲な用途に使用され得、カテコール含有生体接着剤及び生体材料の発展を刺激してきた。
【0039】
カテコール基は、セミ-キノン又はキノンに酸化されやすい。いくつかの研究では、酸化が無機表面への接着を著しく低下させると文献で報告されている。キノンへのカテコールの酸化プロセス中、副生成物として反応性酸素種(ROS)が生産される。
【0040】
無機表面への強力な付着にはカテコール(還元物)が必要であるが、キノン(酸化物)は、シッフ塩基付加(又は添加、addition)又はマイケル反応を介して有機材料と共有結合できる。イガイから着想を得た生体模倣接着剤を、二作用を有する”カテコール・キノン”混合物とみなすことができる。
【0041】
本発明のカテコール含有材料を、歯又は他の歯科用基体用のプライマー、接着剤、シーラントの修復材料として用いることができる。カテコール含有材料は、接着剤、修復用の修復材料の部分、又はシーラント等として用いられてよい。カテコール含有材料は、接着性又は歯科用材料の性能を向上させるため、1又はそれより多い歯科用材料(例えば1又はそれより多い市販の接着剤、充填物等を含む)と共に用いられ得る。カテコール含有材料が、例えばプライマーとして用いられ得る。いくつかの態様では、歯科用基体は、例えばセラミック表面等(例えばジルコニア又はポーセリン)を有する人工歯などの歯科用インプラント、天然の歯質(例えばエナメル質、象牙質又はこの2つの組合せ)を含む歯基体、口腔ブラケット(例えば、チタン、ステンレススチール、金、クロム、ポリプロピレン、アクリル、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、又は他の安定した材料)を含む固定矯正デバイス、及び/又はセラミック修復デバイス(例えば、ジルコニア・クラウン等)を含む。
【0042】
一つの要旨では、本開示はポリマー層を対象とし、図6でPCSプライマー層として示されるように、カテコール含有モノマー、ポリマー、又はオリゴマーを含んで成り、カテコールは第1級アミン又は第2級アミンの存在なしに、カテコールとして及び/又はセミ-キノンとして及び/又はキノンとして存在し、ポリマー層はまた、カテコール又はキノンと反応しない反応性材料を含んで成る。
【0043】
一つの要旨では、本発明はポリマー層を対象とし、図6でPCSプライマー層として示されるように、カテコール含有モノマー、ポリマー又はオリゴマーを含んで成り、カテコールが、第1級アミン又は第2級アミンの存在なしに、カテコール及び/又はセミ-キノン及び/又はキノンとして存在し、ポリマー層は場合により、カテコール又はキノンと反応しない反応性材料を含んで成り、ポリマー層は、図6にて汎用接着剤(又は万能接着剤、universal adhesive)層として示されるバルク接着剤層を更に含んで成り、これはポリマー層と隣接・接触して配置されている。
【0044】
一つの要旨では、本開示はカテコール含有モノマー、ポリマー又はオリゴマーを含んで成るポリマー層を対象とし、カテコールが、第1級アミン又は第2級アミンの存在なしに、カテコール及び/又はセミ-キノン及び/又はキノンとして存在し、ポリマー層は、ポリマー層と隣接・接触して配置されているバルク接着剤層を更に含んで成る。
【0045】
図6は、カテコール含有モノマー、ポリマー、又はオリゴマー及び本明細書で記載されるポリマー層を含む層状物品を含んで成るポリマー層の一態様の一般的な模式図を描いている。層状物品は、ポリマー層が上に接触して配置される基体を有してよい。層状物品はまた、ポリマー層の上にポリマー層と接触して配置されるバルク接着剤層を有していてもよい。
【0046】
いくつかの態様では、ポリマー層中のカテコール含有モノマー、ポリマー、又はオリゴマーはモノマーである。いくつかの態様では、ポリマー層中のカテコール含有モノマー、ポリマー、又はオリゴマーはオリゴマーである。ポリマー層中のカテコール含有モノマー、ポリマー、又はオリゴマーはポリマーである。
【0047】
いくつかの態様では、ポリマー層はカテコール又はカテコール含有材料とは別の反応種を含んで成り、反応種は例えば、2,2-ビス[4-(2-ヒドロキシ-3-メタクリロイルオキシプロポキシ)フェニル]プロパン(BisGMA)、エトキシ化ビスフェノール-Aジメタクリレート(EBPADMA)、トリエチレングリコールジメタクリレート(TEGDMA)、ウレタンジメタクリレート(UDMA)、tert-ブチルフェノキシBisGMA(MtBDMA)、変性ウレタンジメタクリレート、アミド変性ビスフェノール-A、CHBisGMA、酸性ビスフェノールAジメタクリレート、 シクロ脂肪族エポキシドからのジメタクリレート、芳香族ウレタンジメタクリレート、ウレタン変性BisGMA、酸性芳香族ジメタクリレート、オキシジフタル酸ジメタクリレート、フェニルジヒドロキシメタクリレートジホスホネート、酸性ビスフェノール-Aジメタクリレート、モルホリンカルボニルメタクリレート、フェニルカーボネートメタクリレート等のアクリルである。
【0048】
いくつかの態様では、ポリマー層は、アクリレート重合開始剤等のフリーラジカル重合開始剤(例えば、過酸化ベンゾイル(BPO)、2,3-ボルナンジオン(カンファーキノン)、エチル-4-(ジメチルアミノ)ベンゾエート(EDMAB)、2-(エチルヘキシル)-4-(ジメチルアミノ)ベンゾエート(ODMAB)、2-(エチルヘキシル)-4-(ジメチルアミノ)ベンゾエート(TPO)、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-ホスフィンオキシド又はそれらの組合せ等の光活性化されるものを含む)を含む。
【0049】
いくつかの態様では、アクリレートはビニル基、並びにカルボキン酸エステル及びカルボン酸ニトリルの少なくとも一つを含むアクリレートモノマーであり、アクリレートは直線又は分岐している。いくつかの態様では、アクリレートはエチルアクリレート、エチレンメチルアクリレート、メチルメタクリレート、2-クロロエチルビニルエーテル、2-ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ブチルアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレオト(TMPTA)又はそれらの組合せである。
【0050】
一つの要旨では、ポリマー層が約10ナノメートル~約100ミクロンの厚みを有する。いくつかの態様では、ポリマー層は約15ナノメートル~約50ミクロンの厚みを有する。いくつかの態様では、ポリマー層は約15ナノメートル~約15ミクロンの厚みを有する。いくつかの態様では、ポリマー層は約150ナノメートル~約15ミクロンより薄い厚みを有する。いくつかの態様では、ポリマー層は約150ナノメートル~約1.5ミクロンの厚みを有する。
【0051】
いくつかの態様では、ポリマー層は約10ナノメートル~約100ミクロン、又は約10ナノメートル~約100ナノメートル、又は約100ナノメートル~約150ナノメートル、又は約150ナノメートル~約200ナノメートル、又は約200ナノメートル~約250ナノメートル、又は約250ナノメートル~約300ナノメートル、又は約300ナノメートル~約350ナノメートル、又は約350ナノメートル~約400ナノメートル、又は約400ナノメートル~約450ナノメートル、又は約450ナノメートル~約500ナノメートル、又は約500ナノメートル~約550ナノメートル、又は約550ナノメートル~約600ナノメートル、又は約600ナノメートル~約650ナノメートル、又は約650ナノメートル~約700ナノメートル、又は約700ナノメートル~約750ナノメートル、又は約750ナノメートル~約800ナノメートル、又は約800ナノメートル~約850ナノメートル、又は約850ナノメートル~約900ナノメートル、又は約900ナノメートル~約950ナノメートル、又は約950ナノメートル~約1000ナノメートルの厚みを有する。
【0052】
いくつかの態様では、ポリマー層は約1ミクロン~約1.5ミクロン、又は約1.5ミクロン~約5ミクロン、又は約5ミクロン~約10ミクロン、又は約10ミクロン~約15ミクロン、又は約15ミクロン~約20ミクロン、又は約20ミクロン~約25ミクロン、又は約25ミクロン~約30ミクロン、又は約30ミクロン~約35ミクロン、又は約35ミクロン~約40ミクロン、又は約40ミクロン~約45ミクロン、又は約45ミクロン~約50ミクロン、又は約50ミクロン~約55ミクロン、又は約55ミクロン~約60ミクロン、又は約60ミクロン~約65ミクロン、又は約65ミクロン~約70ミクロン、又は約70ミクロン~約75ミクロン、又は約75ミクロン~約80ミクロン、又は約80ミクロン~約85ミクロン、又は約85ミクロン~約90ミクロン、又は約90ミクロン~約95ミクロン、又は約95ミクロン~約100ミクロンの厚みを有する。
【0053】
一つの要旨では、ポリマー層中のカテコール含有モノマー、ポリマー、又はオリゴマーは、ポリ-カテコールスチレン(PCS)を含んで成る。
【0054】
いくつかの態様では、PCSは1又はそれよりも多い適切な溶媒中で調製される。例えば、PCSはアセトン、tert-ブチルアルコール、エタノール、イソプロピルアルコール、又はそれらの組合せ、又は当該技術分野で理解されるような1又はそれよりも多い適切な溶媒中の溶液として調製され得る。いくつかの態様では、PCSはアセトン中の溶液として調製される。いくつかの態様では、PCSはtert-ブチルアルコール中の溶液として調製される。いくつかの態様では、PCSはイソプロピルアルコール中の溶液として調製される。いくつかの態様では、PCSはエタノール中の溶液として調製される。
【0055】
いくつかの態様では、PCSは約0.001%~10%PCS、約0.05%~約5%PCS、約0.01%~約2%PCS、約0.5%~約1%PCS、約0.1%~約0.5%PCS、及びこれらの間のいずれかの割合及び割合の範囲のPCSを含有する溶液を含んで成る。
【0056】
いくつかの態様では、PCSは約20%~約22%のカテコール、又は約22%~約24%のカテコール、又は約24%~約26%のカテコール、又は約26%~約28%のカテコール、又は約28%~約30%のカテコール、又は約30%~約32%のカテコール、又は約32%~約34%のカテコール、又は約34%~約36%のカテコール、又は約36%~約38%のカテコール、又は約38%~約40%のカテコールを含む。
【0057】
いくつかの態様では、ポリマー層がカテコール又はキノンと反応しない反応性材料を含んで成る。いくつかの態様では、反応性材料は、周辺温度でカテコール又はキノンと反応しない。いくつかの態様では、反応性材料は、低温ではカテコール又はキノンと反応しない。
【0058】
いくつかの態様では、カテコール又はキノンと反応しない反応性材料は、樹脂、オリゴマー、ポリマー、又はモノマーである。いくつかの態様では、反応性材料はオリゴマーである。いくつかの態様では、反応性材料はポリマーである。いくつかの態様では、反応性材料はモノマーである。
【0059】
一つの要旨では、ポリマー層は連続層である。一つの要旨では、ポリマー層が非連続層である。一つの要旨では、ポリマー層はパターン化層又はテクスチャー層である。
【0060】
いくつかの態様では、ポリマー層は1又はそれより多い添加剤を含む。いくつかの態様では、1又はそれより多い添加剤は、1又はそれより多い触媒(例えば、1又はそれより多い光開始剤)を含む。1又はそれより多くの光開始剤は、カンファーキノン(CQ)、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、過酸化ベンゾイル、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、及び1又はそれより多いそれらの組合せの1又はそれよりも多くを含み得る。いくつかの態様では、光開始剤は、例えば1又はそれよりも多い過酸化物、脂肪族アゾ化合物等を含む、1又はそれより多い付加的な光増感剤又は共開始剤を含み得る。いくつかの態様では、触媒、共触媒、又は促進剤;触媒、共触媒、又は促進剤は、アクリレート重合反応を促進するアクリレート触媒又はそれらの組合せである。
【0061】
いくつかの態様では、光開始剤はCQである。CQは約0.01%~約1%、約0.05%~約0.75%、約0.1%~約0.5%、及びこれらの間のいずれかの割合及び割合の範囲の光開始剤で用いられ得る。いくつかの態様では、CQが0.1%の濃度で用いられる。
【0062】
一つの要旨では、バルク接着剤層は、1又はそれよりも多い適切な歯科用樹脂を含んで成る。いくつかの態様では、バルク接着剤層は1又はそれよりも多いメタクリレートを含んで成る。いくつかの態様では、バルク接着剤層はカテコール含有モノマー、オリゴマー、又はポリマーを含んで成る。いくつかの態様では、カテコール含有モノマー、オリゴマー、又はポリマーはPCSを含んで成る。
【0063】
一つの要旨では、バルク接着剤層は、自己-硬化接着剤であり、適用中に触媒が活性化される。いくつかの態様では、バルク接着剤層は光硬化接着剤である。いくつかの態様では、バルク接着剤層が、自己-硬化接着剤及び光硬化接着剤の双方を含むか、双方の性質を有するデュアル硬化接着剤である。いくつかの態様では、バルク接着剤層は、湿気(moisture)-硬化接着剤である。
【0064】
一つの要旨では、本開示は、基体表面に配置される本明細書で記載されるポリマー層を対象にしている。いくつかの態様では、基体は、例えばセラミック表面等(例えばジルコニア又はポーセリン)を有する人工歯などの歯科用インプラント、歯基体(例えばエナメル質、象牙質又はこの2つの組合せ)、矯正用ブラケット(例えばチタン、ステンレススチール、金、クロム、ポリプロピレン又は他の適切な材料)を含む固定矯正デバイス、及び/又はセラミック修復デバイス(例えばジルコニア・クラウン等)を含んで成る。いくつかの態様では、基体は濡れている(wet)、乾いている(dry)、セミ-ウェット(semi-wet)である、又は湿っている(moist)。
【0065】
いくつかの態様では、基体がセラミック表面等、例えばジルコニア又はポーセリンを有する人工歯などの歯科用インプラントである。いくつかの態様では、基体は歯基体、例えばエナメル質、象牙質、又はこの2つの組合せである。いくつかの態様では、基体が1又はそれよりも多い固定矯正デバイス、例えば1又はそれよりも多い矯正用ブラケット、又は人工歯を装着するためのチタンポストのような、装着ポストである。いくつかの態様では、1又はそれよりも多い固定矯正デバイスが、例えばチタン、ステンレススチール、金、クロム、ポリプロピレン、PMMA又は他の適切な材料を含む1又はそれよりも多い適切な材料で作られている矯正用ブラケットである。いくつかの態様では、基体が1又はそれよりも多い、例えばジルコニア・クラウンのようなセラミック修復デバイスである。
【0066】
いくつかの態様では、基体はポリマー化合物である。いくつかの態様では、基体が象牙質である。いくつかの態様では、基体はエナメル質である。いくつかの態様では、基体がセラミック(例えばジルコニア又はポーセリン)である。いくつかの態様では、基体は金属(例えばチタン)である。
【0067】
いくつかの態様では、基体は滑らかな表面を有する。いくつかの態様では、基体は粗い表面を有する。いくつかの態様では、基体は平らな面を有する。いくつかの態様では、基体が平らでない表面を有する。
【0068】
いくつかの態様では、基体は濡れている。いくつかの態様では、基体が乾いている。いくつかの態様では、基体はセミ-ウェットである。いくつかの態様では、基体は湿っている。
【0069】
いくつかの態様では、基体がリジッド(又は硬質の、rigid)基体である。いくつかの態様では、基体がセミ-リジッド基体である。いくつかの態様では、基体はフレキシブル(又は可撓性を有する)基体である。
【0070】
いくつかの態様では、接着強度がカテコール含有ポリマーを含むことにより向上する。例えば、いくつかの態様では、図6で示されるように、カテコール含有プライマー・コーティング層を、接着層と共に組合せて基体に適用する場合、接着剤のみで被覆した基体の接着強度と比較して、接着強度が向上する。
【0071】
いくつかの態様では、接着耐久性がカテコール含有ポリマーを含むことにより向上する。例えば、いくつかの態様では、図8で示されるように、カテコール含有プライマー・コーティング層を、接着層と共に組合せて基体に適用する場合、接着剤のみで被覆した基体の接着強度と比較して、持続時間後の接着強度が向上されている。いくつかの態様では、1日までの期間、約1日から約7日までの期間、約1日から約14日までの期間、約7日から約28日までの期間、約28日から約60日までの期間、約30日から約90日までの期間、約60日から約120日までの期間、約90日から約180日までの期間、約120日から約240日までの期間、約180日から約360日までの期間、約240日から約480日までの期間、約360日から約720日までの期間、及びこれらの間のいずれの日数においても接着強度が接着剤単体よりも向上する。
【0072】
一つの要旨では、本開示は、本明細書で記載されるポリマー層を基体の表面上に配置することを含んで成る基体をコーティングする方法を対象にしている。いくつかの態様では、基体が例えば歯基体(例えばエナメル質、象牙質、又はこの2つの組合せ)、固定矯正デバイス(例えば、矯正用ブラケット)、セラミック修復デバイス(例えば、ジルコニア・クラウン)等の歯科用基体である。コーティングは、その場で歯科用基体に適用されてよい。例えば、コーティングを対象の口腔内部のそのままの状態の歯に適用してよい。コーティングは、生体外で適用してよい。例えば、口腔内に配置する前にコーティングを歯科用デバイスに適用してよい。本明細書に記載するポリマー層を配置する方法は、特に限定されず、そのことは当業者によって認識されるであろう。
【0073】
いくつかの態様では、基体をコーティングする方法は、スピン・コーティング、浸漬コーティング、スプレー・コーティング、インク・ジェット・プリンティング、又は同様の方法によって基体上にポリマー層を配置することを含む。いくつかの態様では、方法が、スピン・コーティングによって基体上にポリマー層を配置することを含んで成る。いくつかの態様では、方法が、浸漬コーティングによって基体上にポリマー層を配置することを含んで成る。いくつかの態様では、方法が、スプレー・コーティングによって基体上にポリマー層を配置することを含んで成る。いくつかの態様では、方法が、インク・ジェット・プリンティングによって基体上にポリマー層を配置することを含んで成る。
【0074】
いくつかの態様では、基体をコーティングする方法は、基体上にポリマー層を配置することを含んで成り、ポリマー層を溶液として基体に適用する。いくつかの態様では、溶液は約0.001重量%~約10重量%のカテコール含有モノマー、ポリマー、オリゴマーを含んで成る。いくつかの態様では、溶液は約0.01重量%~約5重量%のカテコール含有モノマー、ポリマー、オリゴマーを含んで成る。いくつかの態様では、溶液は約0.01重量%~約1重量%のカテコール含有モノマー、ポリマー、オリゴマーを含んで成る。いくつかの態様では、溶液は約0.1重量%~約1重量%のカテコール含有モノマー、ポリマー、オリゴマーを含んで成る。
【0075】
いくつかの態様では、溶液は、約0.001重量%~約0.005重量%のカテコール含有モノマー、ポリマー、オリゴマー;約0.005重量%~約0.01重量%のカテコール含有モノマー、ポリマー、オリゴマー;約0.01重量%~約0.02重量%のカテコール含有モノマー、ポリマー、オリゴマー;約0.02重量%~約0.03重量%のカテコール含有モノマー、ポリマー、オリゴマー;約0.03重量%~約0.04重量%のカテコール含有モノマー、ポリマー、オリゴマー;約0.04重量%~約0.05重量%のカテコール含有モノマー、ポリマー、オリゴマー;約0.05重量%~約0.06重量%のカテコール含有モノマー、ポリマー、オリゴマー;約0.06重量%~約0.07重量%のカテコール含有モノマー、ポリマー、オリゴマー;約0.07重量%~約0.08重量%のカテコール含有モノマー、ポリマー、オリゴマー;約0.08重量%~約0.09重量%のカテコール含有モノマー、ポリマー、オリゴマー;約0.09重量%~約0.1重量%のカテコール含有モノマー、ポリマー、オリゴマー;約0.1重量%~約0.11重量%のカテコール含有モノマー、ポリマー、オリゴマー;約0.11重量%~約0.12重量%のカテコール含有モノマー、ポリマー、オリゴマー;約0.12重量%~約0.13重量%のカテコール含有モノマー、ポリマー、オリゴマー;約0.13重量%~約0.14重量%のカテコール含有モノマー、ポリマー、オリゴマー;約0.14重量%~約0.15重量%のカテコール含有モノマー、ポリマー、オリゴマー;約0.15重量%~約0.2重量%のカテコール含有モノマー、ポリマー、オリゴマー;約0.2重量%~約0.25重量%のカテコール含有モノマー、ポリマー、オリゴマー;約0.25重量%~約0.3重量%のカテコール含有モノマー、ポリマー、オリゴマー;約0.3重量%~約0.35重量%のカテコール含有モノマー、ポリマー、オリゴマー;約0.35重量%~約0.4重量%のカテコール含有モノマー、ポリマー、オリゴマー;約0.4重量%~約0.45重量%のカテコール含有モノマー、ポリマー、オリゴマー;約0.45重量%~約0.5重量%のカテコール含有モノマー、ポリマー、オリゴマー;約0.5重量%~約0.75重量%のカテコール含有モノマー、ポリマー、オリゴマー;約0.75重量%~約1重量%のカテコール含有モノマー、ポリマー、オリゴマー;約1.25重量%~約1.5重量%のカテコール含有モノマー、ポリマー、オリゴマー;約1.5重量%~約1.75重量%のカテコール含有モノマー、ポリマー、オリゴマー;約1.75重量%~約2重量%のカテコール含有モノマー、ポリマー、オリゴマーを含んで成る。
【0076】
いくつかの態様では、溶液中で用いられるカテコール含有モノマー、ポリマー、又はオリゴマーは、ポリ-カテコール・スチレン(PCS)である。いくつかの態様では、溶液は約0.001重量%~約10重量%のPCSを含んで成る。いくつかの態様では、溶液が約0.01重量%~約5重量%のPCSを含んで成る。いくつかの態様では、溶液が約0.01重量%~約1重量%のPCSを含んで成る。いくつかの態様では、溶液がPCSを約0.1重量%~1重量%を含んで成る。
【0077】
いくつかの態様では、溶液は約0.001重量%~約0.005重量%のPCS、又は約0.005重量%~約0.01重量%のPCS、又は約0.01重量%~約0.02重量%のPCS、又は約0.02重量%~約0.03重量%のPCS、又は約0.03重量%~約0.04重量%のPCS、又は約0.04重量%~約0.05重量%のPCS、又は約0.05重量%~約0.06重量%のPCS、又は約0.06重量%~約0.07重量%のPCS、又は約0.07重量%~約0.08重量%のPCS、又は約0.08重量%~約0.09重量%のPCS、又は約0.09重量%~約0.1重量%のPCS、又は約0.1重量%~約0.11重量%のPCS、又は約0.11重量%~約0.12重量%のPCS、又は約0.12重量%~約0.13重量%のPCS、又は約0.13重量%~約0.14重量%のPCS、又は約0.14重量%~約0.15重量%のPCS、又は約0.15重量%~約0.2重量%のPCS、又は約0.2重量%~約0.25重量%のPCS、又は約0.25重量%~約0.3重量%のPCS、又は約0.3重量%~約0.35重量%のPCS、又は約0.35重量%~約0.4重量%のPCS、又は約0.4重量%~約0.45重量%のPCS、又は約0.45重量%~約0.5重量%のPCS、又は約0.5重量%~約0.75重量%のPCS、又は約0.75重量%~約1重量%のPCS、又は約1.25重量%~約1.5重量%のPCS、又は約1.5重量%~約1.75重量%のPCS、又は約1.75重量%~約2重量%のPCSを含んで成る。
【0078】
いくつかの態様では、溶液はまた水性又はカテコール含有モノマー、ポリマー、オリゴマーを溶解するための有機溶媒を含んで成る。いくつかの態様では、有機溶媒はアセトン、tert-ブチルアルコール、エタノール、イソプロピルアルコール、又はそれらの組合せである。
【0079】
いくつかの態様では、有機溶媒はアセトンである。いくつかの態様では、有機溶媒はtert-ブチルアルコールである。いくつかの態様では、有機溶媒がエタノールである。いくつかの態様では、有機溶媒はイソプロピルアルコールである。いくつかの態様では、有機溶媒が、アセトン、tert-ブチルアルコール、エタノール、イソプロピルアルコールの1又はそれよりも多い組合せである。いくつかの態様では、有機溶媒はアセトンであり、カテコール又はカテコール含有材料はPCSである。いくつかの態様では、有機溶媒はtert-ブチルアルコールであり、カテコール又はカテコール含有材料はPCSである。いくつかの態様では、有機溶媒はエタノールであり、カテコール又はカテコール含有材料はPCSである。いくつかの態様では、有機溶媒はイソプロピルアルコールであり、カテコール又はカテコール含有材料はPCSである。いくつかの態様では、有機溶媒はアセトン、tert-ブチルアルコール、エタノール、イソプロピルアルコールの1又はそれよりも多い組合せであり、カテコール又はカテコール含有はPCSである。いくつかの態様では、有機溶媒は更に1又はそれよりも多い酸化剤又は酸性化剤を更に含んで成る。例えば、いくつかの態様では、有機溶媒は更に酢酸を含んで成る。
【0080】
溶液のpHは、特に限定されない。いくつかの態様では、溶液のpHが約3、又は約3.5、又は約4、又は約4.5、又は約5、又は約5.5、又は約6、又は約6.5、又は約7、又は約7.5、又は約8、又は約8.5、又は約9、又は約9.5、又は約10、又は約10.5、又は約11である。
【0081】
いくつかの態様では、溶液のpHは約3~3.5、又は約3.5~4、又は約4~4.5、又は約4.5~5、又は約5~5.5、又は約5.5~6、又は約6~6.5、又は約6.5~7、又は約7~7.5、又は約7.5~8、又は約8.5~9、又は約9~9.5、又は約9.5~10、又は約10~10.5、又は約10.5~11である。
【0082】
いくつかの態様では、基体をコーティングする方法は、基体上にポリマー層を配置することを含んで成り、基体がポリマー化合物、象牙質、エナメル質、セラミック、金属、又はそれらの組合せを含んで成り、基体は濡れている、セミ-ウェットである、又は湿っている。いくつかの態様では、基体をコーティングする方法は、対象の口腔内で行うことを含んで成る。
【0083】
いくつかの態様では、基体をコーティングする方法は、ポリマー化合物を含んで成る基体上にポリマー層を配置することを含んで成る。いくつかの態様では、方法は、象牙質を含んで成る基体上にポリマー層を配置することを含んで成る。いくつかの態様では、方法は、エナメル質を含んで成る基体上にポリマー層を配置することを含んで成る。いくつかの態様では、方法は、セラミック(例えばジルコニア又はポーセリン)を含んで成る基体上にポリマー層を配置することを含んで成る。いくつかの態様では、方法は、金属(例えばチタン、ステンレススチール、金、クロム、又は他の適切な金属)を含んで成る基体上にポリマー層を配置することを含んで成る。いくつかの態様では、方法は、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、ポリプロピレン、又は他の適切なプラスチックを含んで成る基体上にポリマー層を配置することを含んで成る。
【0084】
いくつかの態様では、基体をコーティングする方法は、濡れている基体上にポリマー層を配置することを含んで成る。いくつかの態様では、方法は、乾いている基体上にポリマー層を配置することを含んで成る。いくつかの態様では、方法は、セミ-ウェット状態の基体上にポリマー層を配置することを含んで成る。いくつかの態様では、方法が湿っている基体上にポリマー層を配置することを含んで成る。
【0085】
いくつかの態様では、基体をコーティングする方法は、乾燥環境で基体上にポリマー層を配置することを含んで成る。いくつかの態様では、基体をコーティングする方法は、周辺環境で基体上にポリマー層を配置することを含んで成る。いくつかの態様では、基体をコーティングする方法は、湿潤環境で基体上にポリマー層を配置することを含んで成る。いくつかの態様では、基体をコーティングする方法は、水性環境で基体上にポリマー層を配置することを含んで成る。いくつかの態様では、環境は対象の口腔を含んでいる。
【0086】
いくつかの態様では、基体の製造方法は、基体上にポリマー層を連続層として配置することを含んで成る。いくつかの態様では、基体の製造方法は、基体上にポリマー層を非連続層として配置することを含んで成る。いくつかの態様では、基体の製造方法は、基体上にポリマー層をパターン化層又はテクスチャー層として配置することを含んで成る。
【0087】
いくつかの態様では、基体をコーティングする方法は、基体上にポリマー層を、スピン・コーティング、浸漬コーティング、スプレー・コーティング、フラッド・コーティングブラッシング、ワイピング又は同様の方法によって配置することを含んで成る。いくつかの態様では、方法は基体上にポリマー層を、スピン・コーティングによって配置することを含んで成る。いくつかの態様では、方法は基体上にポリマー層を、浸漬コーティングによって配置することを含んで成る。いくつかの態様では、方法は基体上にポリマー層を、スプレー・コーティングによって配置することを含んで成る。いくつかの態様では、方法は基体上にポリマー層を、インク・ジェット・プリンティングによって配置することを含んで成る。いくつかの態様では、方法は基体上にポリマー層を、フラッド・コーティングによって配置することを含んで成る。いくつかの態様では、方法は基体上にポリマー層を、ブラッシングによって配置することを含んで成る。いくつかの態様では、方法は基体上にポリマー層を、ワイピングによって配置することを含んで成る。
【0088】
一つの要旨では、本開示は、本明細書で記載されるポリマー層を基体の表面に配置することを含んで成る基体の製造方法を対象とし、ポリマー層上にバルク接着剤層を配置することを更に含んで成る。本明細書で記載するバルク接着剤層を配置する方法は、特に限定されず、このことは当業者によって認識されるであろう。
【0089】
いくつかの態様では、基体の製造方法は、ポリマー層上にバルク接着剤層をスピン・コーティング、浸漬コーティング、スプレー・コーティング、インク・ジェット・プリンティング、フラッド・コーティング、ブラッシング、ワイピング、又は同様の方法によって配置することを含んで成る。いくつかの態様では、方法は、ポリマー層上にバルク接着剤層をスピン・コーティングによって配置することを含んで成る。いくつかの態様では、方法は、ポリマー層上にバルク接着剤層を浸漬コーティングによって配置することを含んで成る。いくつかの態様では、方法は、ポリマー層上にバルク接着剤層をスプレー・コーティングによって配置することを含んで成る。いくつかの態様では、方法は、ポリマー層上にバルク接着剤層をインク・ジェット・プリンティングによって配置することを含んで成る。いくつかの態様では、方法は、ポリマー層上にバルク接着剤層をフラッド・コーティングによって配置することを含んで成る。いくつかの態様では、方法は、ポリマー層上にバルク接着剤層をブラッシングによって配置することを含んで成る。いくつかの態様では、方法は、ポリマー層上にバルク接着剤層をワイピングによって配置することを含んで成る。
【0090】
いくつかの態様では、基体の製造方法は、乾燥環境でポリマー層上にバルク接着剤層を配置することを含んで成る。いくつかの態様では、方法は、周辺環境でポリマー層上にバルク接着剤層を配置することを含んで成る。いくつかの態様では、方法は、湿潤環境(humid environment、例えば対象の口腔内)でポリマー層上にバルク接着剤層を配置することを含んで成る。いくつかの態様では、方法は、水性環境でポリマー層上にバルク接着剤層を配置することを含んで成る。
【0091】
いくつかの態様では、基体の製造方法は、基体上のポリマー層上にバルク接着剤層を連続層として配置することを含んで成る。いくつかの態様では、方法は、ポリマー層上にバルク接着剤層を非連続層として配置することを含んで成る。いくつかの態様では、方法は、ポリマー層上にバルク接着剤層をパターン化層又はテクスチャー層として配置することを含んで成る。
【0092】
いくつかの態様では、バルク接着剤層を非連続層として配置する又はポリマー層を非連続層として配置するための方法は、規則的パターン又は確立的(又はランダム)パターンで層を配置することを含んで成る。
【0093】
いくつかの態様では、規則的パターンは、ストライプ、グリッド、同心円又はドット・パターンを含んで成る。いくつかの態様では、方法は、バルク接着剤層及び/又はポリマー層をストライプとして配置することを含んで成る。いくつかの態様では、方法はバルク接着剤層及び/又はポリマー層をグリッドとして配置することを含んで成る。いくつかの態様では、方法はバルク接着剤層及び/又はポリマー層を同心円として配置することを含んで成る。いくつかの態様では、方法は、バルク接着剤層及び/又はポリマー層をドット・パターンとして配置することを含んで成る。
【0094】
いくつかの態様では、方法はバルク接着剤層及び/又はポリマー層をランダムに配置することを含んで成る。
【0095】
バルク接着剤層及び/又はポリマー層を、特定の形状又は不定形的に配置することができる。いくつかの態様では、方法は、バルク接着剤層及び/又はポリマー層をドット、円、正方形、長方形、五角形、六角形として、又は不定形として配置することを含んで成る。
【0096】
一態様では、バルク接着剤層及び/又はポリマー層はドットとして形作られる。一態様では、バルク接着剤層及び/又はポリマー層は円として形作られる。一態様では、バルク接着剤層及び/又はポリマー層は楕円として形作られる。一態様では、バルク接着剤層及び/又はポリマー層は三角形として形作られる。一態様では、バルク接着剤層及び/又はポリマー層は正方形として形作られる。一態様では、バルク接着剤層及び/又はポリマー層は長方形として形作られる。一態様では、バルク接着剤層及び/又はポリマー層は五角形として形作られる。一態様では、バルク接着剤層及び/又はポリマー層は六角形として形作られる。一態様では、バルク接着剤層及び/又はポリマー層は不定形である。
【0097】
いくつかの態様では、方法はバルク接着剤層及び/又はポリマー層がグリッド線、十字線、ランダム線、同心円、偏心円、スパゲッティ・パターン及びフラット・ストリップとして配置することを含んで成る。
【0098】
一態様では、バルク接着剤層及び/又はポリマー層は、グリッド線として形作られる。一態様では、バルク接着剤層及び/又はポリマー層は、十字線として形作られる。一態様では、バルク接着剤層及び/又はポリマー層は、ランダム線として形作られる。一態様では、バルク接着剤層及び/又はポリマー層は、同心円として形作られる。一態様では、バルク接着剤層及び/又はポリマー層は、偏心円として形作られる。一態様では、バルク接着剤層及び/又はポリマー層は、スパゲッティ・パターンとして形作られる。一態様では、バルク接着剤層及び/又はポリマー層は、フラット・ストリップとして形作られる。
【0099】
一つの要旨では、本開示は本明細書で記載されるポリマー層を含む層状構造体を対象としている。いくつかの態様では、層状構造体が本明細書で記載される複数(又は多数、multiple)のポリマー層を含んで成る。いくつかの態様では、層状構造体が本明細書で記載される2つのポリマー層を含んで成る。いくつかの態様では、層状構造体が本明細書で記載される3つのポリマー層を含んで成る。いくつかの態様では、層状構造体が本明細書で記載される4つのポリマー層を含んで成る。いくつかの態様では、層状構造体が本明細書で記載される5つのポリマー層を含んで成る。
【0100】
一つの要旨では、本開示はバルク接着剤層と隣接・接触して配置されている本明細書で記載されるポリマー層を含んで成る、層状構造体を対象としている。
【0101】
いくつかの態様では、層状構造体は本明細書で記載される複数のバルク接着剤層を含んで成る。いくつかの態様では、層状構造体は本明細書で記載される2つのバルク接着剤層を含んで成る。いくつかの態様では、本明細書で記載される3つのバルク接着剤層を含んで成る。いくつかの態様では、本明細書で記載される4つのバルク接着剤層を含んで成る。いくつかの態様では、本明細書で記載される5つのバルク接着剤層を含んで成る。
【0102】
以下実施例は、本開示内に記載されるいくつかの概念を説明するために供される。実施例は、態様を供するものと考えられるが、本明細書に記載される、より一般的な態様を制限するものと考えるべきでない。
【実施例
【0103】
実施例1-PCS下塗エナメル質による、歯科用ブラケットの歯科用アクリルによる接着の促進
【0104】
本明細書で意図する本発明のいくつかの態様は、固定矯正デバイス、コンポジット樹脂、又は歯科表面(例えばエナメル質又は象牙質)へのセラミック修復材料の接着を高めるプロセスに関する。この接着は、アクリル接着剤のような接着剤、及びPCSのようなプライマー層を用いて行う。このプライマー層は、触媒、共触媒又は促進剤のような他の化学的構成成分を含み得る。PCSプライマー層が接着強度に及ぼす影響を評価するために、アクリル歯科用接着剤を用いて接着する歯科用ブラケットの破壊強度を試験した。
【0105】
材料
【0106】
CUSP-LOK(商標)I歯科用ブラケット(Xemax;Pasadena、カルフォルニア州)を用いて、試験用に歯構造体へ接着した。簡潔に述べると、非齲蝕で抜歯された大臼歯(17歳<年齢<33歳)を入手し、洗浄し、使用前にクロラミンTに4℃で保管した。ブラケットは、ステンレススチール製の矯正用ブラケットに装着される3/4インチの14K金チェーンで構成した。ブラケットは、表面3mm×4mmの接着面積を有した。
【0107】
ブラケットを、NATURAL ELEGANCE(登録商標)Universal One(Henry Schein;Melville,ニューヨーク州)の歯科用接着剤を用いて歯に接着した。これは光硬化、自己エッチング(pH2.8)ビスフェノールA・グリシジル・メタクリレート(bis-GMA)接着剤である。群青エッチング・ジェル(40%リン酸)(Henry Schein社;Melville,ニューヨーク州)を用い、接着剤を、5W LED硬化光ランプ(ORILAO(登録商標)、中国)を用いて硬化させた。
【0108】
Amazing Casting Resin(ALUMILITETM(商標); Galesburg,ミシガン州)の2液系のエポキシ系樹脂を使用して、歯を埋め込んで試験デバイスに取り付けた。
【0109】
22-ゲージの銅ワイヤー(Hillman Group;シンシナティ,オハイオ州)を、歯科用ブラケット上に取り付けた。
【0110】
装着歯にPCSプライマーを用いて下塗りした。使用したプライマーは、アセトンで希釈されたPCSポリマーの0.1%溶液である。確立された合成アプローチを用いてジョン・ウィルカー教授(Professor Jon Wilker、パデュー大学)の実験室で、PCSを合成した。
【0111】
接着強度測定は、Instru-Metモデル15kポンド(Instru-Met;ユニオン、ニュージャージー州) の接着強度試験機を用いて実施した。このデバイスは、10ポンド張力ロードセル(INSTRON(登録商標);ノーウッド、マサチューセッツ州)が装備されていた。
【0112】
ジルコニアへの接着
【0113】
方法
【0114】
KATANA(商標)Zirconia STML試験体を分割、焼結し、アクリル樹脂に組み込んだ。試験体表面を、冷却水を用いて600グリットの炭化ケイ素砥粒で仕上げ、50μmの酸化アルミニウムで空気粒子摩耗(air-particle abraded)した。合計100(n=25)サンプルを準備し、4つの試験グループに分け、最初の2つは比較参照として役目を果たしている:乾燥表面上のセラミック・プライマー(CLEARFIL(商標) Ceramic Primer Plus)、湿潤表面上のセラミック・プライマー、乾燥表面上の実験用プライマー、及び湿潤表面上の実験用プライマー。10秒のプライマー適用後、表面をエアースプレーし、接着剤(OPTIBOND(商標)Solo Plus)でミクロ・ブラッシングし(micro brushed)、20秒間光硬化した。シリンダー状のコンポジット・サンプル(直径2.1mm、高さ3mm)を、シリンダー型のプラスチック・マトリクスの中に材料を詰め、40秒間光硬化で硬化することによって、ジルコニア表面へ接着した。試験体を48時間、室温(24℃)で保管し、その後万能試験機に取り付けた。SBSを0.5mm/minのクロスヘッド速度で測定し、MPaで表現した。分散分析(ANOVA)及びチューキー検定を用いた一対比較を、統計分析に用いた。
【0115】
結果
【0116】
平均SBS値は、乾燥及び湿潤比較参照グループでそれぞれ33.6MPa及び25.4MPaであった。平均SBS値は、乾燥及び湿潤実験用グループではそれぞれ32.1MPa及び32.7MPaであった。乾燥グループの結果は相違なかったが(p>0.05)、湿潤実験用と湿潤比較参照グループとの間で、統計学的に大きく違った(p<0.05)。図7で示すように、湿潤表面は実験用プライマーの接着性能を変化させなかった。
【0117】
結論
【0118】
イガイ-生体模倣プライマーを用いたジルコニア表面の前処理は、湿潤表面条件において表面への接着強度を向上させ得る。
【0119】
実施例2-PCS用いた象牙質への下塗りによるアクリル接着剤の耐久性向上
【0120】
PCS下塗りが、初期接着強度を高める能力のみを有するだけでなく、アクリル/象牙質接着の耐久性もまた高めることができ得る可能性があるという仮説の検証のため、先の説明と同様に、マイクロメカニカル疲労試験を用いて、象牙質への接着耐久性を試験した。理論に拘束されることなく、酸化されたカテコール部分(キノン)は、シッフ塩基又は遊離-NH2及び-SH基へのマイケル付加を介して、露出したコラーゲンに共有結合できるという仮説があった。(Guvendirenら他、2009年;LaVoieら他、2005年;Burzioら他、2000年)
【0121】
材料
【0122】
非齲蝕で抜歯された大臼歯(17歳<年齢<33歳)を入手し、分割し、象牙質ブロックを2×2×2mm片に切断した。34%リン酸ジェルであるDENTSPLY SIRONA(登録商標)(ヨーク、ペンシルベニア州)のコーキング材(充填物、caulk)を、象牙質をエッチングするために用いた。SCOTCHBOND(登録商標)万能接着剤(3M(登録商標);セントポール、ミネソタ州)の全(又は総、total)エッチング、自己エッチング及び選択的エッチング接着剤を組み合わせたプライマー-接着剤を用いた。光硬化、万能ナノ-ハイブリッドの充填物に用いられるコンパクトにできるコンポジット樹脂材料である、G-aenial SCULPT(商標) (東京、日本) コンポジットを、コンポジットとして用いた。
【0123】
方法
【0124】
象牙質への歯科用接着剤の接着に対するPCS下塗りの効果を、2013年Mutluayら他によって記載されるように樹脂-象牙質界面疲労試験(interface fatigue test)を用いて評価した。簡潔に述べると、プロセスは15秒間象牙質ブロックを酸エッチングし、次いで水ですすぎ、空気乾燥することを含む。PCS(アセトン中0.1%)をその後、象牙質接着表面に刷毛塗りし、10秒間空気乾燥させた。SCOTCHBOND(登録商標)(3M(登録商標)のプライマー+接着剤の組合せ、セントポール、ミネソタ州)を、その後追加し、15秒光硬化させた。G-aenial SCULPT(商標)コンポジット材料を追加し、30秒間光硬化させた。サンプルをその後24時間水中に浸し、最初の接着強度の測定値を読み取った。残りのサンプルを、その後HBSS(ハンクスのバランス・ソリューション)の中にエイジングのため37℃でインキュベートした。インキュベート10日後、接着強度測定値を、再度評価した。
【0125】
結果
【0126】
図8に示すように、比較参照サンプルの接着強度がアッセイ期間にわたり著しく(~40%)低下しており、PCS-下塗りサンプルは、実質的には10日のエイジング期間を通じて強度の損失を示さなかった。PCS-下塗りサンプルは、当初は比較参照に比べてより低い強度であった。これは、PCSが、カテコールのフリーラジカル補足によりアクリル接着剤の重合を抑制し、重合が不十分であったことに起因した可能性がある。
【0127】
実施例3-プライマーとしてのPCSと光開始剤添加による象牙質表面における歯科用アクリルの接着促進
【0128】
PCSプライマー中において光開始剤添加を用いる効果を評価するために、接着強度測定を実施した。象牙質を露出させるため、水冷式の研磨ホイール(ECOMET III(商標)グラインダー、(株))の600グリット表面で歯を研磨することよって、平坦な接着部位をヒト抜去歯の頬側面に準備した。各試験グループは、12~15歯で実施した。
【0129】
酸コンディショニング、すすぎ、乾燥を避けるための拭い取り乾燥(blot drying)を実施して象牙質に、各接着剤の前処理を適用した。最初に、プライマー溶液を象牙質に添加し、空気中で短時間乾燥させた。下塗り溶液は、アセトン中の0.1w/w%PCSであった。一組のサンプルにおいて、光-架橋剤をプライマーに添加した。例えば、カンファーキノン(CA)及び第3級アミンの共開始剤を用いた。
【0130】
ULTRADENT(商標)せん断接着試験装置を用いて直径2.37mmのシリンダーを作り、接着された組立体を形成した。テフロン(登録商標)・フォーマーに押し出した後、コンポジット材料試験体をVALO(商標) Grand LED光硬化を用いて30秒間光重合化させた。その後、試験体を試験体型から外し、サンプルをせん断試験前に24時間硬化させた。せん断試験の間、ULTRADENT(商標)切欠きノミ(notched chisel)を備えているMTS INSIGHT(商標)試験フレーム中に、接着された組立体を設けた。試験体をその後、接着部位に対して平行となるようにノミ形状に位置合わせした。各シリンダーを、破片が発生するまで1mm/分の連続荷重下で配置した。せん断接着強度をMPaで記録した。
【0131】
図10に示される結果は、PCSプライマーに光開始剤を含めることが接着強度の向上に供することを示している。
【0132】
ウレタンジメタクリレート(UDMA)の転化を評価するため、PCS濃度を増やした場合による光開始剤のUDMA転化率を測定した。
【0133】
UDMA(ウレタンジメタクリレート)転化を評価するため、0.5%w/wのCQを用いてメタクリレート樹脂中のカンファーキノン(CQ)消費を、経時的に測定した。簡単に述べると、UDMAを混合し、CQを可視光増感剤として用いた。樹脂を歯科用光源で光活性化し、フーリエ変換赤外分光法-減衰全反射率(FTIR-ATR)を用いてサンプル試験体中の転化率(%)を評価した。図9で示す結果は、PCSの量が増加するに伴い転化率が低下することを示している。
【0134】
実施例4-バルクPCSの還元によるアルミニウムへの接着の増加
【0135】
PCS中の酸化官能基(キノン)が、象牙質接着の耐久性を高める役割を果たすか否か判断するため、金属表面へのPCS接着における酸処理の効果を評価した。キノンは金属への接着が不十分であり、カテコールは強く接着するので、金属への接着強度の増加が達成されるか否かを判断するため、酸によるキノンからカテコールへの転化を評価した。
【0136】
簡単に述べると、アルミニウムのサンプルを、80%バルクPCSを用いて接着した。用いる溶媒は、それぞれ100%アセトン、又は90%アセトン及び10%酢酸であった。酸がヒドロキシ基へのキノンの還元を促進するかどうかを評価するため、10%氷酢酸溶液を用いた。室温で1時間、サンプルをクランプから外して放置し、22時間55℃のオーブンの中で保持し、室温で1時間冷却し、その後引張強度試験をした。結果を図11に示す。エラー・バーは平均の標準誤差を表す。
【0137】
酸存在化で金属への接着強度における一貫性のある増加が観察され、PCSが部分的に酸化されキノンになっていることが示唆される。これらのキノンは、耐久性のある象牙質への共有結合を促進することを示した。
【0138】
実施例5-サンプル調製の最適化
【0139】
最適な硬化時間を決定するために、0.1%PCSプライマーを用いて前述のように調製されるサンプルの破壊強度を、時間を48時間まで延長して接着強度試験を実施した。図12に示す結果は、最大接着強度が硬化時間の24時間で達成され、48時間まで維持されることを示している。
【0140】
更に、PCSの濃度の増加による接着強度を測定することにより、PCSプライマー濃度の最適なパーセントを評価した。図12に示す結果はまた、最大接着強度が約0.01%~約0.1%PCSで達成され、アセトン中0.1%PCSで最も安定していることも示している。従って、アセトン中又は他の安定した溶媒中の0.1%PCSを本明細書で示される実験において用いた。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【国際調査報告】