(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】バルク弾性波共振構造およびその製造方法、弾性波デバイス
(51)【国際特許分類】
H03H 9/02 20060101AFI20240822BHJP
H03H 9/17 20060101ALI20240822BHJP
H03H 9/05 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
H03H9/02 Z
H03H9/17 F
H03H9/05
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024518177
(86)(22)【出願日】2022-09-23
(85)【翻訳文提出日】2024-03-21
(86)【国際出願番号】 CN2022121118
(87)【国際公開番号】W WO2023061191
(87)【国際公開日】2023-04-20
(32)【優先日】2021-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519340020
【氏名又は名称】ウーハン イエンシー マイクロ コンポーネンツ カンパニーリミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジャン ダーポン
(72)【発明者】
【氏名】リン リー-チン
(72)【発明者】
【氏名】リアオ ペイ-チュン
(72)【発明者】
【氏名】ホアン ウェイ-ション
(72)【発明者】
【氏名】コー ジーウェイ
【テーマコード(参考)】
5J108
【Fターム(参考)】
5J108AA07
5J108BB05
5J108BB08
5J108DD06
5J108EE03
5J108EE07
5J108KK01
5J108KK03
(57)【要約】
本発明の実施例は、バルク弾性波共振構造およびその製造方法、弾性波デバイスを提供する。バルク弾性波共振構造は、基板と、基板上に順次配置された反射構造、第1電極、圧電層および第2電極と、を含み、ここで、前記基板における第1電極の正投影と、基板における圧電層の正投影と、基板における第2電極の正投影との重畳領域は、第1重畳領域であり、第1電極は、第1部分、第2部分および第3部分を含み、第2部分は、第1部分と第3部分とを接続し、ここで、基板における第1部分の正投影は、第1重畳領域内に入り、第1部分は、基板の表面に平行な方向に沿って延在し、基板における第2部分の正投影と第3部分の正投影は、第1重畳領域以外の領域に入り、第2部分は、基板の表面に対して傾斜角度を有し、第3部分は、基板の表面に平行な方向に沿って延在し、第1部分は、基板の表面に垂直な方向において第3部分より高い。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルク弾性波共振構造であって、
基板と、
前記基板上に順次配置された反射構造、第1電極、圧電層および第2電極と、を含み、前記基板における前記第1電極の正投影と、前記基板における前記圧電層の正投影と、前記基板における前記第2電極の正投影との重畳領域は、第1重畳領域であり、
前記第1電極は、第1部分、第2部分および第3部分を含み、前記第2部分は、前記第1部分と前記第3部分とを接続し、
前記基板における前記第1部分の正投影は、前記第1重畳領域内に入り、且つ前記第1部分は、前記基板の表面に平行な方向に沿って延在し、
前記基板における前記第2部分の正投影と前記第3部分の正投影は、前記第1重畳領域以外の領域に入り、前記第2部分は、前記基板の表面に対して傾斜角度を有し、前記第3部分は、前記基板の表面に平行な方向に沿って延在し、
前記第1部分は、前記基板の表面に垂直な方向において、前記第3部分より高い、前記バルク弾性波共振構造。
【請求項2】
前記第1電極はさらに、第4部分と第5部分を含み、
前記基板における前記第4部分の正投影と前記第5部分の正投影は、前記第1重畳領域以外の領域に入り、前記第4部分は、前記基板の表面に対して前記傾斜角度を有し、前記第5部分は、前記基板の表面に平行な方向に沿って延在し、
前記第4部分は、前記第3部分と前記第5部分とを接続し、前記第3部分は、前記基板の表面に垂直な方向において前記第5部分より高く、前記第5部分は、前記圧電層と前記基板との間に位置する、
請求項1に記載のバルク弾性波共振構造。
【請求項3】
前記第5部分は、前記基板と直接接触する、
請求項2に記載のバルク弾性波共振構造。
【請求項4】
前記第3部分は、前記圧電層と前記基板との間に位置し、且つ前記第3部分は、前記基板と直接接触し、
前記第3部分の前記第1重畳領域から相対的に離れた側は、前記圧電層と接触する、
請求項1に記載のバルク弾性波共振構造。
【請求項5】
前記基板の表面に垂直な方向における前記第3部分の厚さは、前記基板の表面に垂直な方向における前記第1部分の厚さより大きい、
請求項4に記載のバルク弾性波共振構造。
【請求項6】
前記基板は、前記第3部分に向かって突出する第1突起を含み、前記第1突起は、前記第3部分と直接接触し、
前記第1突起の前記第1重畳領域から相対的に離れた側は、前記圧電層と接触し、
前記第1突起の前記第1重畳領域に相対的に近接する側は、前記反射構造と接触する、
請求項4に記載のバルク弾性波共振構造。
【請求項7】
前記バルク弾性波共振構造はさらに、前記圧電層と前記基板との間に位置する第1隙間を含み、
前記第3部分の前記第1重畳領域から相対的に離れた側は、前記第1隙間と接触する、
請求項1に記載のバルク弾性波共振構造。
【請求項8】
前記第1隙間は、前記基板の表面に垂直な方向において第1高さを有し、前記第3部分は、前記基板の表面に垂直な方向において第2高さを有し、前記第1高さは、前記第2高さと等しく、前記第1高さは、前記第1重畳領域内で、前記基板の表面に垂直な方向における前記反射構造の高さより小さい、
請求項7に記載のバルク弾性波共振構造。
【請求項9】
前記バルク弾性波共振構造はさらに、前記第3部分に向かって突出する第2突起を含み、前記第2突起は、前記第3部分と直接接触し、
前記第1隙間は、前記基板の表面に垂直な方向において第1高さを有し、前記第3部分は、前記基板の表面に垂直な方向において第2高さを有し、前記第2突起は、前記基板の表面に垂直な方向において第3高さを有し、前記第1高さは、前記第2高さと前記第3高さとの合計に等しい、
請求項7に記載のバルク弾性波共振構造。
【請求項10】
前記バルク弾性波共振構造はさらに、第2隙間を含み、前記第2隙間は、前記圧電層と前記第2部分および第3部分との間に位置し、
前記第2隙間の前記第1重畳領域に相対的に近接する側は、前記第2部分と接触し、
前記第2隙間の前記基板に相対的に近接する側は、前記第3部分と接触する、
請求項1に記載のバルク弾性波共振構造。
【請求項11】
前記バルク弾性波共振構造はさらに、前記第2電極に接続された電極リードを含み、前記基板における前記電極リードの正投影は、前記第1重畳領域以外の領域に位置し、
前記第2部分と前記第3部分は、前記第1重畳領域を包囲して設けられ、前記基板における前記第2部分の正投影と前記第3部分の正投影は、前記基板における前記電極リードの正投影以外の領域に入る、
請求項1に記載のバルク弾性波共振構造。
【請求項12】
前記バルク弾性波共振構造はさらに、第3隙間と第4隙間を含み、前記第3隙間は、前記圧電層と前記第2部分および第3部分との間に位置し、前記第4隙間は、前記電極リードと前記圧電層との間に位置する、
請求項11に記載のバルク弾性波共振構造。
【請求項13】
前記第2部分と前記第3部分の長さの合計は、0.2μm以上である、
請求項1に記載のバルク弾性波共振構造。
【請求項14】
請求項1ないし13のいずれか一項に記載のバルク弾性波共振構造を備える、弾性波デバイス。
【請求項15】
バルク弾性波共振構造の製造方法であって、
基板を提供し、前記基板の表面に犠牲層を形成することと、
前記犠牲層に溝を形成することと、
前記溝を被覆し且つ前記犠牲層の表面まで延在する第1電極を形成することであって、前記第1電極は、第1部分、第2部分および第3部分を含み、前記第2部分は、前記第1部分と前記第3部分とを接続し、前記第3部分は、前記溝の底部を被覆し、前記第1部分は、前記基板の表面に平行な方向に沿って延在し、前記第2部分は、前記基板の表面に対して傾斜角度を有する、ことと、
前記犠牲層と前記第1電極を被覆する圧電層を形成することと、
前記圧電層の前記基板から相対的に離れた側に第2電極を形成することと、
前記圧電層を貫通する少なくとも1つのエッチング孔を形成することであって、前記エッチング孔を介して前記犠牲層を解放して、反射構造を形成する、ことと、を含む、前記バルク弾性波共振構造の製造方法。
【請求項16】
バルク弾性波共振構造の製造方法であって、
基板を提供し、前記基板の表面に犠牲層を形成することと、
前記犠牲層を貫通する開口を形成して、分離された第1犠牲構造および第2犠牲構造を形成することと、
前記開口を被覆し且つ前記第2犠牲構造の表面まで延在する第1電極を形成することであって、前記第1電極は、第1部分、第2部分および第3部分を含み、前記第2部分は、前記第1部分と前記第3部分とを接続し、前記第3部分は、前記開口の底部を被覆し、前記第1部分は、前記基板の表面に平行な方向に沿って延在し、前記第2部分は、前記基板の表面に対して傾斜角度を有する、ことと、
前記第1犠牲構造、前記第2犠牲構造および前記第1電極を被覆する圧電層を形成することと、
前記圧電層の前記基板から相対的に離れた側に第2電極を形成することと、
前記圧電層を貫通する少なくとも1つのエッチング孔を形成することであって、前記エッチング孔を介して前記第1犠牲構造を解放して、第1隙間を形成する、ことと、
前記エッチング孔を介して前記第2犠牲構造を解放して、反射構造を形成することと、を含む、前記バルク弾性波共振構造の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本願は、2021年10月15日に提出された、出願番号が63/262,586である米国仮特許出願に基づいて提出されるものであり、当該米国仮特許出願の優先権を主張し、当該米国仮特許出願のすべての内容が参照によって本願に組み込まれている。
【0002】
本発明は、半導体技術分野に関し、特に、バルク弾性波共振構造およびその製造方法、弾性波デバイスに関する。
【背景技術】
【0003】
携帯電話などの広く普及している通信機器には、通常、弾性波を使用する弾性波デバイスを通信機器とするフィルタが含まれる。弾性波デバイスの一例として、表面弾性波(SAW:Surface Acoustic Wave)を使用するデバイス、またはバルク弾性波(BAW:Bulk Acoustic Wave)を使用するデバイスなどがある。弾性波デバイスの性能は、通信機器の通信効果に影響を与える。
【0004】
通信技術の発展に伴い、通信機器の集積化と小型化の進展に合わせて、弾性波デバイスの性能を如何に向上させるかは、解決すべき課題となっている。
【発明の概要】
【0005】
第1態様によれば、本発明の実施例は、バルク弾性波共振構造を提供し、前記構造は、基板と、基板上に順次配置された反射構造、第1電極、圧電層および第2電極と、を含み、ここで、基板における第1電極の正投影と、基板における圧電層の正投影と、基板における第2電極の正投影との重畳領域は、第1重畳領域であり、第1電極は、第1部分、第2部分および第3部分を含み、第2部分は、第1部分と第3部分とを接続し、ここで、基板における第1部分の正投影は、第1重畳領域内に入り、第1部分は、基板の表面に平行な方向に沿って延在し、基板における第2部分の正投影と第3部分の正投影は、第1重畳領域以外の領域に入り、第2部分は、基板の表面に対して傾斜角度を有し、第3部分は、基板の表面に平行な方向に沿って延在し、
第1部分は、基板の表面に垂直な方向において、第3部分より高い。
【0006】
第2態様によれば、本発明の実施例は、上記の実施例に係るバルク弾性波共振構造を備える、弾性波デバイスを提供する。
【0007】
第3態様によれば、本発明の実施例は、バルク弾性波共振構造の製造方法を提供し、前記方法は、
基板を提供し、基板の表面に犠牲層を形成することと、
犠牲層に溝を形成することと、
溝を被覆し且つ犠牲層の表面まで延在する第1電極を形成することであって、第1電極は、第1部分、第2部分および第3部分を含み、第2部分は、第1部分と第3部分とを接続し、第3部分は、溝の底部を被覆し、第1部分は、基板の表面に平行な方向に沿って延在し、第2部分は、基板の表面に対して傾斜角度を有する、ことと、
犠牲層と第1電極を被覆する圧電層を形成することと、
圧電層の基板から相対的に離れた側に第2電極を形成することと、
圧電層を貫通する少なくとも1つのエッチング孔を形成することであって、エッチング孔を介して犠牲層を解放して、反射構造を形成する、ことと、を含む。
【0008】
第4態様によれば、本発明の実施例は、バルク弾性波共振構造の製造方法を提供し、前記方法は、
基板を提供し、基板の表面に犠牲層を形成することと、
犠牲層を貫通する開口を形成して、分離された第1犠牲構造および第2犠牲構造を形成することと、
開口を被覆し且つ第2犠牲構造の表面まで延在する第1電極を形成することであって、第1電極は、第1部分、第2部分および第3部分を含み、第2部分は、第1部分と第3部分とを接続し、第3部分は、開口の底部を被覆し、第1部分は、基板の表面に平行な方向に沿って延在し、第2部分は、基板の表面に対して傾斜角度を有する、ことと、
第1犠牲構造、第2犠牲構造および第1電極を被覆する圧電層を形成することと、
圧電層の基板から相対的に離れた側に第2電極を形成することと、
圧電層を貫通する少なくとも1つのエッチング孔を形成することであって、エッチング孔を介して第1犠牲構造を解放して、第1隙間を形成する、ことと、
エッチング孔を介して第2犠牲構造を解放して、反射構造を形成することと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施例に係るバルク弾性波共振構造の例示的な上面図を示す。
【
図2】本発明の実施例に係るバルク弾性波共振構造の断面の第1概略図を示す。
【
図3】本発明の実施例に係るバルク弾性波共振構造の断面の第2概略図を示す。
【
図4】本発明の実施例に係るバルク弾性波共振構造の断面の第3概略図を示す。
【
図5】本発明の実施例に係るバルク弾性波共振構造の断面の第4概略図を示す。
【
図6】本発明の実施例に係るバルク弾性波共振構造の断面の第5概略図を示す。
【
図7】本発明の実施例に係るバルク弾性波共振構造の断面の第6概略図を示す。
【
図8】本発明の実施例に係るバルク弾性波共振構造の断面の第7概略図を示す。
【
図9】本発明の実施例に係るバルク弾性波共振構造の断面の第8概略図を示す。
【
図10】本発明の実施例に係るバルク弾性波共振構造の断面の第9概略図を示す。
【
図11】本発明の実施例に係るバルク弾性波共振構造の断面の第10概略図を示す。
【
図12】本発明の実施例に係るバルク弾性波共振構造の断面の第11概略図を示す。
【
図13】本発明の実施例に係るバルク弾性波共振構造の断面の第12概略図を示す。
【
図14】本発明の実施例に係るバルク弾性波共振構造の断面の第13概略図を示す。
【
図15】本発明の実施例に係るバルク弾性波共振構造の断面の第14概略図を示す。
【
図16】本発明の実施例に係るバルク弾性波共振構造の製造方法の第1の例示的なフローチャートを示す。
【
図17a】本発明の実施例に係るバルク弾性波共振構造の製造方法のプロセスに対応する断面の第1概略図を示す。
【
図17b】本発明の実施例に係るバルク弾性波共振構造の製造方法のプロセスに対応する断面の第1概略図を示す。
【
図17c】本発明の実施例に係るバルク弾性波共振構造の製造方法のプロセスに対応する断面の第1概略図を示す。
【
図18】本発明の実施例に係るバルク弾性波共振構造の製造方法の第2の例示的なフローチャートを示す。
【
図19a】本発明の実施例に係るバルク弾性波共振構造の製造方法のプロセスに対応する断面の第2概略図を示す。
【
図19b】本発明の実施例に係るバルク弾性波共振構造の製造方法のプロセスに対応する断面の第2概略図を示す。
【
図19c】本発明の実施例に係るバルク弾性波共振構造の製造方法のプロセスに対応する断面の第2概略図を示す。
【
図19d】本発明の実施例に係るバルク弾性波共振構造の製造方法のプロセスに対応する断面の第2概略図を示す。
【
図19e】本発明の実施例に係るバルク弾性波共振構造の製造方法のプロセスに対応する断面の第2概略図を示す。
【
図20a】本発明の実施例に係るバルク弾性波共振構造の製造方法のプロセスに対応する断面の第3概略図を示す。
【
図20b】本発明の実施例に係るバルク弾性波共振構造の製造方法のプロセスに対応する断面の第3概略図を示す。
【
図20c】本発明の実施例に係るバルク弾性波共振構造の製造方法のプロセスに対応する断面の第3概略図を示す。
【
図20d】本発明の実施例に係るバルク弾性波共振構造の製造方法のプロセスに対応する断面の第3概略図を示す。
【
図20e】本発明の実施例に係るバルク弾性波共振構造の製造方法のプロセスに対応する断面の第3概略図を示す。
【
図21a】本発明の実施例に係るバルク弾性波共振構造の製造方法のプロセスに対応する断面の第4概略図を示す。
【
図21b】本発明の実施例に係るバルク弾性波共振構造の製造方法のプロセスに対応する断面の第4概略図を示す。
【
図21c】本発明の実施例に係るバルク弾性波共振構造の製造方法のプロセスに対応する断面の第4概略図を示す。
【
図21d】本発明の実施例に係るバルク弾性波共振構造の製造方法のプロセスに対応する断面の第4概略図を示す。
【
図22a】本発明の実施例に係るバルク弾性波共振構造の製造方法のプロセスに対応する断面の第5概略図を示す。
【
図22b】本発明の実施例に係るバルク弾性波共振構造の製造方法のプロセスに対応する断面の第5概略図を示す。
【
図22c】本発明の実施例に係るバルク弾性波共振構造の製造方法のプロセスに対応する断面の第5概略図を示す。
【
図22d】本発明の実施例に係るバルク弾性波共振構造の製造方法のプロセスに対応する断面の第5概略図を示す。
【
図22e】本発明の実施例に係るバルク弾性波共振構造の製造方法のプロセスに対応する断面の第5概略図を示す。
【
図22f】本発明の実施例に係るバルク弾性波共振構造の製造方法のプロセスに対応する断面の第5概略図を示す。
【
図23a】本発明の実施例に係るバルク弾性波共振構造の製造方法のプロセスに対応する断面の第6概略図を示す。
【
図23b】本発明の実施例に係るバルク弾性波共振構造の製造方法のプロセスに対応する断面の第6概略図を示す。
【
図23c】本発明の実施例に係るバルク弾性波共振構造の製造方法のプロセスに対応する断面の第6概略図を示す。
【
図23d】本発明の実施例に係るバルク弾性波共振構造の製造方法のプロセスに対応する断面の第6概略図を示す。
【
図24】本発明の実施例に係るバルク弾性波共振構造の試験結果の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図面において、特に明記しない限り、複数の図面における同じ参照番号は、同じまたは類似した部品または要素を示す。これらの図面は、必ずしも縮尺通りに描かれたものではない。理解すべきこととして、これらの図面は、本願に係るいくつかの実施形態のみを示しており、本願の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0011】
以下では、図面および具体的な実施例を参照して、本発明の技術的解決策についてさらに詳細に説明する。
【0012】
本発明の実施例において、「第1」、「第2」等の用語は、類似した対象を区別するためのものであり、特定の順番または先後順序を説明するために使用されるものではない。
【0013】
本発明の実施例において、「AはBと接触する」という用語は、AがBと直接接触する場合、またはAとBが他の構成要素を介在して間接的に接触する場合を含む。
【0014】
本発明の実施例において、「層」という用語は、厚さを有する領域を含む材料部分を指す。層は、下方または上方構造の全体にわたって延在してもよいし、または下方または上方構造の範囲よりも小さい範囲を有してもよい。さらに、層は、連続構造の厚さよりも薄い厚さを有する均質または不均質の連続構造の領域であってもよい。例えば、層は、連続構造の頂面と底面の間に位置してもよいし、または層は、連続構造の頂面と底面の任意の水平面対の間に位置してもよい。層は、水平、垂直および/または傾斜面に沿って延在してもよい。また、層は、複数のサブ層を含んでもよい。
【0015】
理解できるように、本発明における「…上」、「…上にある」や「…上方にある」の意味は、最も広範に解釈されるべきであり、「…上」は、中間特徴や層を介さずに何かの「上」にある(即ち、直接に何かの上にある)ことを含むだけでなく、何かの「上」にあり且つその間に介在する中間特徴や層があることも含む。
【0016】
共振器は、誘電体共振器、表面弾性波共振器およびバルク弾性波共振器を含む。誘電体共振器は、電力容量が大きいという利点があるが、その体積が大きいためチップの小型化と集積化の進展にうまく対応できず、さらに、現在のモバイル通信分野では、異なる周波数帯域間の周波数差がますます小さくなるにつれて、フィルタの信号選択性に対する要求が高まっているため、デバイスは、より高い品質係数(Q値)を備える必要がある。
【0017】
表面弾性波共振器は、動作周波数が高く、位相ノイズが低く、Q値が高く、挿入損失が低く、2GHz周波数帯域以下での製造工程が簡単であるため、商用製品に広く使用されている。しかし、5G通信の発展に伴い、櫛形型電極のサイズ制限により、高周波数通信分野における表面弾性波共振器の応用は制限されている。
【0018】
バルク弾性波共振器の共振周波数は、圧電材料、異なる製造方法および製造プロセスの影響などの様々な要因、特に圧電材料の材料厚さに依存する。バルク弾性波共振器は、表面弾性波共振器よりもはるかに高い動作周波数を達成することができ、そのサイズも周波数が高くなるにつれて小さくなるため、体積が小さいという利点があり、通信分野で重要な役割を果たし、その中で、バルク弾性波共振器の一種である薄膜バルク弾性波共振器(FBAR:Film Bulk Acoustic Resonator)は、通信技術の発展に伴い大幅に改良され、関連するフィルタやデュプレクサなどは、高周波数通信分野で大規模に商業応用されている。
【0019】
薄膜バルク弾性波共振器の性能を測定するための多くのパラメータかあり、主なパラメータとしては、品質係数(Q値)を含む。バルク弾性波共振器の上部電極および下部電極に電気エネルギが印加されると、上部電極および下部電極に位置する圧電層が圧電効果により弾性波を発生する。圧電層内では、縦波に加えて、横方向剪断波(横方向剪断波は、横波またはせん断波とも呼ばれる)も発生する。横方向剪断波の存在は、主縦波のエネルギに影響を与え、横方向剪断波は、エネルギの損失を引き起こし、バルク弾性波共振器のQ値の悪化をもたらす。
【0020】
例えば、モバイル端末では、複数の周波数帯域が同時に使用される場合があるため、モバイル端末におけるフィルタまたはデュプレクサには、急峻なスカートとより小さな插入損失が必要になる。フィルタの性能は、それを構成する共振器によって決まり、共振器のQ値を高くすることで、急峻なスカートと小さな插入損失を実現することができる。さらに、共振器の過剰な寄生共振も、フィルタまたはデュプレクサの性能に悪影響を及ぼす。
【0021】
これを鑑み、バルク弾性波共振器の寄生共振を如何に低減し、バルク弾性波共振器のQ値を向上させるかは、解決すべき課題となっている。
【0022】
図1は、本発明の実施例に係るバルク弾性波共振構造100の例示的な上面図を示し、
図2は、
図1に示すバルク弾性波共振構造100のA-A’方向に沿った断面の概略図である。
図2を参照すると、バルク弾性波共振構造100は、基板101と、基板101上に順次配置された反射構造102、第1電極103、圧電層104および第2電極105と、を含み、ここで、基板101における第1電極103の正投影と、基板101における圧電層104の正投影と、基板101における第2電極105の正投影との重畳領域は、第1重畳領域106であり、第1電極103は、第1部分131、第2部分132および第3部分133を含み、第2部分132は、第1部分131と第3部分133とを接続し、
ここで、基板101における第1部分131の正投影は、第1重畳領域106内に入り、第1部分131は、基板101の表面に平行な方向に沿って延在し、基板101における第2部分132の正投影と第3部分133の正投影は、第1重畳領域106以外の領域に入り、第2部分132は、基板101の表面に対して傾斜角度を有し、第3部分133は、基板101の表面に平行な方向に沿って延在し、第1部分131は、基板101の表面に垂直な方向において、第3部分133より高い。
【0023】
なお、第1電極103の各部分の位置を直観的に説明するために、
図2に示すバルク弾性波共振構造100は、第1電極103を強調表示した局部断面の概略図である。第1電極103の各部分を明確に示すために、
図2では、第1電極103の第2部分132と第3部分133を局部的に拡大表示している。
図2に示すバルク弾性波共振構造は、本発明の実施例の一例に過ぎず、本発明の実施例におけるバルク弾性波共振構造の特徴を限定するためのものではなく、後続の実施例には、本発明の実施例のバルク弾性波共振構造の他の例も示されている。ここで、
図2は、第1電極103が圧電層104と反射構造102との間に位置し、第1電極103が基板101と接触していない例を示す。
【0024】
実際の適用において、基板101の構成材料は、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)などを含んでもよい。
【0025】
第1電極103は、下部電極とも呼ばれ、それに対応して、第2電極105は、上部電極とも呼ばれ、電気エネルギは、当該上部電極と下部電極を介してバルク弾性波共振構造100に印加されることができる。第1電極103と第2電極105の構成材料は、同じであってもよく、当該構成材料は、アルミニウム(Al)、モリブデン(Mo)、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)、クロム(Cr)またはプラチナ(Pt)などの導電金属または上記の導電金属の合金からなる導電材料を含んでもよい。例示的に、第1電極103と第2電極105の構成材料は、いずれもモリブデン(Mo)である。
【0026】
圧電層104は、逆圧電特性に従って振動を生成し、第1電極103と第2電極105に負荷された電気信号を弾性波信号に変換し、電気エネルギから機械エネルギへの変換を実現するために使用されることができる。
【0027】
実際の適用において、圧電層104の構成材料は、圧電特性を有する材料を含む。例えば、窒化アルミニウム、酸化亜鉛、タンタル酸リチウム、チタン酸ジルコン酸鉛またはチタン酸バリウムなどを含む。圧電層104の構成材料は、ドーピングにより圧電特性を有する材料を含んでもよく、ドーピングされたものは、遷移金属または希少金属であってもよく、例えば、スカンジウムをドーピングした窒化アルミニウムなどが挙げられる。
【0028】
ここで、反射構造102は、弾性波信号を反射するように構成される。圧電層104によって生成された弾性波信号が反射構造102に向かって伝播するとき、弾性波信号は、第1電極103と反射構造102とが接触する界面で全反射され、これにより、弾性波信号を圧電層104に反射させることができる。このようにして、圧電層104によって生成された弾性波信号のエネルギは、圧電層104内に局在化させることができ、弾性波信号のエネルギ損失を低減し、バルク弾性波共振構造の主共振モードの弾性波エネルギを増加させることができる。
【0029】
なお、
図1に示すバルク弾性波共振構造は、本発明の一例に過ぎず、実際の適用において、バルク弾性波共振構造は、反射構造102の形態の違いに応じて、第1タイプのキャビティ型の薄膜バルク弾性波共振器(FBAR:Film Bulk Acoustic Wave Resonator)、第2タイプのキャビティ型FBAR、SMR(Solid Mounted Resonator)型の共振構造などに具体的に分類することができる。本発明の実施例による解決策は、上記の異なる種類のバルク弾性波共振構造に適用することができる。
【0030】
例示的に、バルク弾性波共振構造100が第1タイプのキャビティ型FBARを含む場合、反射構造102は、第1電極103の上向き突出部と基板101の表面との間に形成される第1キャビティを含む。バルク弾性波共振構造100が第2タイプのキャビティ型FBARを含む場合、反射構造102は、基板101の表面の下向き凹部と第1電極103との間に形成される第2キャビティを含む。ここで、バルク弾性波共振構造100が第1タイプのキャビティ型FBARを含むことを例として説明する。
【0031】
実際の適用において、
図2に示すように、基板101における第1電極103の正投影と、基板101における圧電層104の正投影と、基板101における第2電極105の正投影との重畳領域は、第1重畳領域106である。第1重畳領域106は、共振領域または活性領域とも呼ばれ、第1重畳領域106以外の領域は、非共振領域とも呼ばれる。共振領域の有効領域(または主共振領域)は、第1重畳領域106であり、第1重畳領域106内で、バルク弾性波共振構造の主共振モードが生成される。
【0032】
図2に示すように、第1重畳領域106の縁部近傍(非共振領域)には、基板101の表面に対して傾斜角度を有する第2部分132が設けられている。例示的に、第2部分132の傾斜角度は、10°~80°である。バルク弾性波共振構造の設計サイズに応じて傾斜角度を改善することもできる。第1電極103は、傾斜面(即ち、第2部分132)を有し、傾斜面を設けることにより、第2電極105の縁部から第1電極103の縁部までの距離が長くなり、これにより、第2電極105から第1電極103までの電気力線が長くなり、非共振領域の電界強度が小さくなる。電界強度が小さくなると、電気的変位が減少し、圧電共振の効果が小さくなるため、第1重畳領域の縁部付近(即ち、共振領域の内側に位置する可能性もあるし、共振の外側に位置する可能性もある)の寄生共振が低減され、共振領域への寄生共振の伝播が低減され、それにより、バルク弾性波共振構造のQ値を高めることができる。
【0033】
1つの実施例において、第1部分131、第2部分132および第3部分133の構成材料は同じであり、例えば、第1部分131、第2部分132および第3部分133の構成材料は、モリブデン(Mo)を含む。別の1つの実施例において、第1部分131と第2部分132の構成材料は異なり、第2部分132と第3部分133の構成材料は同じであり、例えば、第1部分131の構成材料は、アルミニウム(Al)を含み、第2部分132と第3部分133の構成材料は、モリブデン(Mo)を含む。
【0034】
図3は、本発明の実施例に係るバルク弾性波共振構造の断面の第2概略図を示す。
図3は、
図1に示すバルク弾性波共振構造100のB-B’方向に沿った部分断面の概略図である。第1電極103の各部分を明確に示すために、
図3では、第1電極103の第2部分132と第3部分133を局部的に拡大表示している。なお、
図2および
図3は、2つの異なる反射構造102を示している。
図2に示すように、第1重畳領域106における反射構造102の高さは、第1重畳領域106以外の領域における反射構造102の高さと同じである。
図3に示すように、第1重畳領域106における反射構造102の高さは、第1重畳領域106以外の領域における反射構造102の高さより高い。理解できるように、
図3に示すバルク弾性波共振構造における反射構造102は、第1重畳領域106以外の領域(非共振領域)の第1電極103と第2電極105との間の距離をさらに増加させることができ、これにより、非共振領域の電界を弱めることができる。
【0035】
本発明の実施例において、第1重畳領域106以外の領域、即ち、非共振領域で、傾斜面を有する第1電極103を設けることにより、第1重畳領域106の縁部近傍(非共振領域)の第1電極103と第2電極105との間の距離を増加させ、第1重畳領域106に隣接する非共振領域の電界強度を小さくすることができ、これにより、第1重畳領域106の縁部近傍の寄生共振を低減し、共振領域への寄生共振の伝播を低減し、それにより、バルク弾性波共振構造のQ値を高めることができる。
【0036】
いくつかの実施例において、
図4を参照すると、第1電極103はさらに、第4部分134と第5部分135を含み、ここで、基板101における第4部分134の正投影と第5部分135の正投影は、第1重畳領域106以外の領域に入り、第4部分134は、基板101の表面に対して傾斜角度を有し、第5部分135は、基板101の表面に平行な方向に沿って延在し、第4部分134は、第3部分133と第5部分135とを接続し、第3部分133は、基板101の表面に垂直な方向において第5部分135より高く、ここで、第5部分135は、圧電層104と基板101との間に位置する。
【0037】
なお、第1電極103は、少なくとも1つの傾斜面を含む。例示的に、第1電極103は、2つの傾斜面(例えば、
図4または
図5に示す第2部分132と第4部分134)を有することができ、この場合、第1電極103の第5部分135は、圧電層104と基板101との間に位置する。1つの実施例において、
図4に示すように、第5部分135は、基板101と直接接触している。別の1つの実施例において、
図5に示すように、第5部分135は、基板101と接触していない。
【0038】
具体的には、
図4に示すように、第1電極103は、2つの傾斜面(
図4の第2部分132と第4部分134)を有し、反射構造102は、2つの傾斜面を有し、この場合、第1電極103の第2部分132と第4部分134は、反射構造102の傾斜面に沿って延在する。このようにして、第5部分135は、基板101と直接接触する。
【0039】
図5に示すように、第1電極103は、2つの傾斜面(
図5の第2部分132と第4部分134)を有し、ここで、反射構造102は、3つの傾斜面を有し、この場合、第1電極103の第2部分132と第4部分134は、反射構造102の3つの傾斜面のうちの2つの傾斜面に沿って延在する。このようにして、第5部分135は、基板101と接触しない。
【0040】
例示的に、第2部分132と第4部分134の傾斜角度は、10°~80°である。第2部分132と第4部分134の傾斜角度は、同じであってもよいし、異なってもよい。バルク弾性波共振構造の設計サイズに応じて傾斜角度を改善することもできる。
【0041】
本発明の実施例において、第1電極103は、複数の傾斜面(例えば、2つの傾斜面)を有する。第1電極103に1つのみの傾斜面を設ける方式と比較して、本発明は、複数の傾斜面を有する第1電極103を設けることにより、非共振領域における第1電極103と第2電極105との間の距離をさらに増加させ、第1重畳領域106に隣接する非共振領域の電界強度を小さくすることができ、これにより、第1重畳領域106の縁部近傍の寄生共振を低減し、共振領域への寄生共振の伝播を低減し、バルク弾性波共振構造のQ値を高めることができる。なお、第1電極103に複数の斜面を設ける方式と比較して、第1電極103に1つのみの斜面を設ける方式は、工程が単純で実施が容易であり、コストを節約し、製造工程を簡略化することができる。
【0042】
いくつかの実施例において、
図4を参照すると、第5部分135は、基板101と直接接触している。
【0043】
例示的に、
図4に示すように、第1電極103の第2部分132と第4部分134は、反射構造102の傾斜面に沿って延在しており、この場合、第5部分135は、基板101の表面まで延在して、基板101と直接接触する。このように、第1電極103が延在して基板101と直接接触することにより、バルク弾性波共振構造をより安定させ、さらに、第1電極103が基板101と直接接触することにより、基板101を介して熱を放散することができ、バルク弾性波共振構造の性能をさらに向上させることができる。
【0044】
いくつかの実施例において、
図6を参照すると、第3部分133は、圧電層104と基板101との間に位置し、第3部分133は、基板101と直接接触しており、
第3部分133の第1重畳領域106から相対的に離れた側は、圧電層104と接触している。
【0045】
図6に示すように、第1電極103は、1つの傾斜面(第2部分132)を有する。第3部分133は、基板101の表面まで延在して、基板101と直接接触する。このように、第1電極103が延在して基板101と接触することにより、バルク弾性波共振構造をより安定させ、さらに、第1電極103が基板101と直接接触することにより、基板101を介して熱を放散することができ、バルク弾性波共振構造の性能をさらに向上させることができる。
【0046】
第3部分133は、基板101および圧電層104とそれぞれ直接接触しているため、第1電極103と圧電層104との間に良好な支持があり、圧電層104が破損する確率が低減し、それにより、バルク弾性波共振構造の安定性が向上し、アンカー損失が低減する。
【0047】
いくつかの実施例において、
図7を参照すると、基板101の表面に垂直な方向における第3部分133の厚さは、基板101の表面に垂直な方向における第1部分131の厚さより大きい。
【0048】
例示的に、基板101の表面に垂直な方向における第3部分133の厚さは2μmであり、基板101の表面に垂直な方向における第1部分131の厚さは1μmである。
図7に示すように、第1電極103は、1つの傾斜面(第2部分132)を有しており、増厚された第3部分133は、基板101の表面まで延在して、基板101と直接接触する。
【0049】
本発明の実施例において、第1電極103の各部分の厚さが均一である、
図6に示すバルク弾性波共振構造と比較して、本発明の実施例では、増厚された第3部分133により、第1電極103の電気損失をさらに低減することができ、これにより、バルク弾性波共振構造の性能を向上させることができる。
【0050】
いくつかの実施例において、
図8を参照すると、基板101は、第3部分133に向かって突出する第1突起111を含み、第1突起111は、第3部分133と直接接触し、第1突起111の第1重畳領域106から相対的に離れた側は、圧電層104と接触し、第1突起111の第1重畳領域106に相対的に近接する側は、反射構造102と接触する。
【0051】
図8に示すように、バルク弾性波共振構造の第1電極103の各部分の厚さは均一である。第1電極103の厚さを変更せずに第1電極103を基板101と直接接触させるために、基板101上に第1突起111を設ける。例示的に、第1突起111と基板101の構成材料は同じである。
【0052】
本発明の実施例において、第1電極103の延在された第3部分133は、基板101の第1突起111と直接接触し、これにより、バルク弾性波共振構造をより安定させる。第3部分133が基板101と直接接触することにより、基板101を介して熱を放散することができ、バルク弾性波共振構造の性能をさらに向上させることができる。第3部分133の厚さをより厚くする必要がある
図7に示すバルク弾性波共振構造と比較して、本発明の実施例では、増厚された第3部分133を形成せず、第1電極103の各部分の厚さは均一であるため、同一の工程で形成でき、それにより、コストを節約し、製造工程を簡略化することができる。
【0053】
いくつかの実施例において、
図9を参照すると、バルク弾性波共振構造はさらに、第1隙間107を含み、第1隙間107は、圧電層104と基板101との間に位置し、第3部分133の第1重畳領域106から相対的に離れた側は、第1隙間107と接触する。
【0054】
実際の適用において、第1隙間107の材料は、空気または弾性波を反射するための機能性材料を含む。例示的に、第1隙間107は、真空隙間を含んでもよいし、他のガス媒体空隙であってもよい。第1隙間107の材料が空気が含む場合、圧電層104の縁部の一部を空気に露出させることで、横方向剪断波を効果的に抑制することができる。第1隙間107はまた、炭化シリコン(SiC)、二酸化シリコン(SiO2)などの音響インピーダンスの低い機能性材料を採用してもよい。
【0055】
図9に示すように、第1隙間107は、第1重畳領域106以外の非共振領域に位置し、これにより、横方向剪断波が非共振領域に伝播された場合、第1隙間107は、横方向剪断波の漏れを減少、更には抑制することができる。
【0056】
図9に示すように、第3部分133の第1重畳領域106から相対的に離れた側は、第1隙間107と接触しており、すると、第1隙間107は、第1電極103の延在された第3部分133の縁部に設けられる。例示的に、第1隙間107の材料は、空気を含み、第1電極103の縁部は、空気に露出され、これにより、非共振領域の電界強度をさらに小さくすることで、第1重畳領域106の縁部の寄生共振を低減することができ、これにより、共振領域への寄生共振の伝播を低減することができる。
【0057】
なお、
図9および
図10は、2つの異なる反射構造102を示している。
図9に示すように、第1重畳領域106における反射構造102の高さは、第1重畳領域106以外の領域における反射構造102の高さと同じである。
図10に示すように、第1重畳領域106における反射構造102の高さは、第1重畳領域106以外の領域における反射構造102の高さより高い。理解できるように、
図10に示すバルク弾性波共振構造における反射構造102は、第1重畳領域106以外の領域(非共振領域)の第1電極103と第2電極105との間の距離をさらに増加させることができ、これにより、非共振領域の電界強度を小さくすることができる。
【0058】
理解できるように、
図9または
図10に示す圧電層104は、溝141を含み、当該溝141は、圧電層104の堆積工程において、圧電層104の下表面の形態に応じて自然に形成されたものである。
【0059】
本発明の実施例において、第1隙間107は、横方向剪断波の漏れを低減し、バルク弾性波共振構造のQ値を高めることができる。好ましくは、第1隙間107の材料は空気を含み、このようにして、非共振領域の電界強度をさらに小さくすることができ、バルク弾性波共振構造の主共振モードの弾性波エネルギの増加により有益である。
【0060】
いくつかの実施例において、
図11を参照すると、第1隙間107は、基板101の表面に垂直な方向において第1高さを有し、第3部分133は、基板101の表面に垂直な方向において第2高さを有し、ここで、第1高さは第2高さと等しく、第1高さは、第1重畳領域106内の基板101の表面に垂直な方向における反射構造102の高さより小さい。
【0061】
図11に示すように、第1電極103は、1つの傾斜面(第2部分132)を有し、増厚された第3部分133は、基板101の表面まで延在して基板101と直接接触する。第3部分133の第1重畳領域106から相対的に離れた側は、第1隙間107と接触しており、すると、第1隙間107は、第1電極103の延在された第3部分133の縁部に設けられる。第1電極103の縁部は、空気に露出され、これにより、非共振領域の電界強度をさらに小さくして、第1重畳領域106の縁部の寄生共振を低減することができ、これにより、共振領域への寄生共振の伝播を低減することができる。例示的に、基板101の表面に垂直な方向における第3部分133の第2高さは2μmであり、基板101の表面に垂直な方向における第1隙間107の第1高さは2μmである。
【0062】
本発明の実施例において、第1電極103の各部分の厚さが均一である、
図9または
図10に示すバルク弾性波共振構造と比較して、本発明の実施例では、基板101の表面に垂直な方向における第1隙間107の第1高さは、基板101の表面に垂直な方向における第3部分133の第2高さと等しく、即ち、第1電極103は、増厚された第3部分133を含み、これにより、第1電極103の電極損失をさらに低減することができ、さらに、バルク弾性波共振構造の性能を向上させることができる。さらに、第1隙間107は、横方向剪断波の漏れを低減し、バルク弾性波共振構造のQ値を高めることができる。好ましくは、第1隙間107の材料は空気を含み、このようにして、非共振領域の電界強度をさらに小さくすることができ、バルク弾性波共振構造の主共振モードの弾性波エネルギの増加により有益である。
【0063】
いくつかの実施例において、
図12を参照すると、バルク弾性波共振構造はさらに、第3部分133に向かって突出する第2突起112を含み、第2突起112は、第3部分133と直接接触し、第1隙間107は、基板101の表面に垂直な方向において第1高さを有し、第3部分133は、基板101の表面に垂直な方向において第2高さを有し、第2突起112は、基板101の表面に垂直な方向において第3高さを有し、ここで、第1高さは、第2高さと第3高さとの合計に等しい。
【0064】
図12に示すように、バルク弾性波共振構造の第1電極103の各部分の厚さは均一である。第1電極103の厚さを変更せずに第1電極103を基板101と直接接触させるために、基板101上に第2突起112を設ける。例示的に、第2突起112と基板101の構成材料は同じである。
【0065】
例示的に、第1隙間107の材料が空気を含むことを例として説明する。
図12に示すように、第1隙間107は、第1重畳領域106以外の非共振領域に位置し、このようにして、横剪断波が非共振領域に伝播された場合、第1隙間107は、横方向剪断波の漏れを減少、更には抑制することができる。
【0066】
図12に示すように、第1電極103は、1つの傾斜面(第2部分132)を有し、第3部分133は、第2突起112の表面まで延在して、第2突起112と直接接触している。第3部分133の第1重畳領域106から相対的に離れた側は、第1隙間107と接触しており、すると、第1隙間107は、第1電極103の延在された第3部分133の縁部に設けられる。第1電極103の縁部は、空気に露出され、これにより、非共振領域の電界強度をさらに小さくして、寄生共振を低減することができる。例示的に、基板101の表面に垂直な方向における第1隙間107の第1高さは2μmであり、基板101の表面に垂直な方向における第3部分133の第2高さは1μmであり、基板101の表面に垂直な方向における第2突起112の第3高さは1μmである。
【0067】
理解できるように、異なる実施例において、基板101上の異なるバルク弾性波共振構造を説明するために、基板101上の突起をそれぞれ、第1突起111(
図8に示す)、第2突起112(
図12に示す)と命名する。実際の適用において、第1突起111と第2突起112は、基板101上の同じ突起であってもよい。
【0068】
本発明の実施例において、第1電極103の延在された第3部分133は、基板101の第2突起112と直接接触し、このようにして、バルク弾性波共振構造をより安定させる。第3部分133が基板101と直接接触することにより、基板101を介して熱を放散することができ、バルク弾性波共振構造の性能をさらに向上させることができる。第3部分133の電極厚さを増加する必要がある
図11に示すバルク弾性波共振構造と比較して、本発明の実施例では、増厚された第3部分133を形成せず、第1電極103の各部分の厚さは均一であるため、同一の工程で形成でき、それにより、コストを節約し、製造工程を簡略化することができる。
【0069】
いくつかの実施例において、
図13を参照すると、バルク弾性波共振構造はさらに、第2隙間108を含み、第2隙間108は、圧電層104と第2部分132および第3部分133との間に位置し、第2隙間108の第1重畳領域106に相対的に近接する側は、第2部分132と接触し、第2隙間108の基板101に相対的に近接する側は、第3部分133と接触する。
【0070】
実際の適用において、第2隙間108の材料は、第1隙間107を参照することができ、ここでは繰り返して説明しない。
【0071】
図13に示すように、第2隙間108は、第1重畳領域106以外の非共振領域に位置し、このようにして、横方向剪断波が非共振領域に伝播された場合、第2隙間108は、横方向剪断波の漏れを減少、更には抑制することができる。
【0072】
図13に示すように、第1電極103の第2部分132と第3部分133は、第2隙間108と接触している。例示的に、第2隙間108の材料は、空気を含み、第1電極103の第2部分132と第3部分133はいずれも空気に露出され、これにより、非共振領域の電界強度をさらに小さくして、寄生共振を低減することができる。
【0073】
本発明の実施例において、第2隙間108は、横方向剪断波の漏れを低減し、バルク弾性波共振構造のQ値を高めることができる。好ましくは、第2隙間108の材料は空気を含み、このようにして、非共振領域の電界強度をさらに小さくすることができ、バルク弾性波共振構造の主共振モードの弾性波エネルギの増加により有益である。第1隙間107により第3部分133の縁部を露出させること(例えば、
図12に示すように)と比較して、第2隙間108により第1電極103の第2部分132と第3部分133を露出させることにより、非共振領域の電界強度をさらに小さくして、寄生共振を低減することができる。
【0074】
いくつかの実施例において、
図1を参照すると、バルク弾性波共振構造はさらに、第2電極105に接続された電極リード151を含み、基板101における電極リード151の正投影は、第1重畳領域106以外の領域に位置し、
第2部分132と第3部分133は、第1重畳領域106を包囲して設けられ、基板101における第2部分132の正投影と第3部分133の正投影は、基板101における電極リード151の正投影以外の領域に入る。
【0075】
例示的に、電極リード151は上部電極リードであり、上部電極リードは、第2電極105(上部電極)と同層に設けられ、上部電極リードは、第2電極105(上部電極)に接続される。なお、バルク弾性波共振器はさらに、下部電極リード1031を含み、下部電極リード1031は、第1電極103(下部電極)と同層に設けられ、下部電極リード1031は、第1電極103(下部電極)に接続される。
【0076】
実際の適用において、電極リード151は、第2電極105に接続され、電極リード151は、上部電極リードである。第1電極103は、第1部分131、第2部分132および第3部分133を含み、ここで、基板101における第2部分132の正投影と第3部分133の正投影は、第1重畳領域106以外の領域に入り、すると、第2部分132と第3部分133は、第1電極103の延在部分である。基板101における第1電極103の延在部分の正投影は、基板101における上部電極リード(電極リード151)の正投影以外の領域に入る。
図1に示すように、第1電極103の延在部分は、第1重畳領域106を包囲して設けられ且つ閉じられていない。
【0077】
なお、第1電極103は、複数の部分を含み、ここで、第1電極103の、基板101における正投影が第1重畳領域106以外の領域に入る部分は、すべて第1電極103の延在部分である。例示的に、基板101における第1電極103の延在部分の正投影と、基板101における上部電極リードの正投影とを組み合わせて閉環状とする。
【0078】
いくつかの実施例において、
図14を参照すると、バルク弾性波共振構造はさらに、第3隙間109と第4隙間110を含み、第3隙間109は、圧電層104と第2部分132および第3部分133との間に位置し、第4隙間110は、電極リード151と圧電層104との間に位置する。
【0079】
実際の適用において、第3隙間109と第4隙間110の材料は、空気または弾性波を反射するための機能性材料を含む。第3隙間109と第4隙間110の材料は、同じであってもよいし、異なってもよい。例示的に、第3隙間109と第4隙間110の材料は、空気を含む。
【0080】
図14に示すように、第3隙間109と第4隙間110は、第1重畳領域106以外の非共振領域に位置し、これにより、横方向剪断波が非共振領域に伝播された場合、第3隙間109と第4隙間110は、横剪断波の漏れを減少、更には抑制することができる。
【0081】
図14に示すように、第1電極103の第2部分132と第3部分133は、第3隙間109と接触している。第3隙間109の材料は、空気を含み、第1電極103の第2部分132と第3部分133はいずれも空気に露出される。第1隙間107により第3部分133の縁部を露出させること(例えば、
図12に示すように)と比較して、第3隙間109により第1電極103の第2部分132と第3部分133を露出させることにより、非共振領域の電界強度をさらに小さくして、寄生共振を低減することができる。
【0082】
電極リード151と圧電層104との間に隙間がない方式(例えば、
図13に示すように)と比較して、電極リード151と圧電層104との間に第4隙間110を設けることにより、電極リード151の長さを長くし、非共振領域の電界強度をさらに小さくして、寄生共振を低減することができる。
【0083】
本発明の実施例において、第3隙間109と第4隙間110は、横方向剪断波の漏れを低減し、バルク弾性波共振構造のQ値を高めることができる。好ましくは、第3隙間109と第4隙間110の材料は空気を含み、このようにして、非共振領域の電界強度をさらに小さくすることができ、バルク弾性波共振構造の主共振モードの弾性波エネルギの増加により有益である。
【0084】
いくつかの実施例において、
図15を参照すると、第1電極103はさらに、第6部分136と第7部分137を含み、ここで、基板101における第6部分136の正投影と第7部分137の正投影は、第1重畳領域106以外の領域に入り、第6部分136は、基板101の表面に対して傾斜角度を有し、第7部分137は、基板101の表面に平行な方向に沿って延在する。
【0085】
第6部分136は、第3部分133と第7部分137とを接続し、第3部分133は、基板101の表面に垂直な方向において第7部分137より高く、ここで、第7部分137は、基板101と直接接触する。
【0086】
図15に示すように、第1電極103は、2つの傾斜面(
図15の第2部分132と第6部分136)を有し、第6部分136は、基板101まで延在し且つ基板101と直接接触しており、これにより、バルク弾性波共振構造をより安定させることができる。第6部分136が基板101と直接接触することにより、基板101を介して熱を放散することができ、バルク弾性波共振構造の性能をさらに向上させることができる。
【0087】
なお、
図15に示す第3隙間109と第4隙間110は、
図14に示すバルク弾性波共振構造における第3隙間109と第4隙間110の作用を参照することができ、ここでは繰り返して説明しない。
【0088】
本発明の実施例において、第1電極103は、複数の傾斜面(例えば、2つの傾斜面)を有する。第1電極103に1つのみの傾斜面を設ける方式と比較して、本発明は、複数の傾斜面を有する第1電極103を設けることにより、非共振領域の第1電極103と第2電極105との間の距離をさらに増加させることができ、これにより、第1重畳領域106に隣接する非共振領域の電界強度を小さくして、第1重畳領域106の縁部の寄生共振を低減し、共振領域への寄生共振の伝播を低減し、バルク弾性波共振構造のQ値を高めることができる。さらに、第3隙間109と第4隙間110は、横方向剪断波の漏れを低減し、バルク弾性波共振構造のQ値をさらに高めることができる。
【0089】
いくつかの実施例において、第2部分132と第3部分133の長さの合計は、0.2μm以上である。なお、第1電極103は、複数の部分を含み得、ここで、第1電極103の、基板101における正投影が第1重畳領域106以外の領域に入る部分は、すべて第1電極103の延在部分である。
図2に示すように、基板101における当該延在部分の正投影の長さはLである。例示的に、長さLの範囲は、0.2μm以上を含む。長さLは、1.5~3.5μmであることが好ましい。
【0090】
1つの例において、第1電極103は、第1部分131、第2部分132および第3部分133を含み、ここで、基板101における第2部分132の正投影と第3部分133の正投影は、第1重畳領域106以外の領域に入り、すると、第2部分132と第3部分133は、第1電極103の延在部分である。第1電極103の延在部分の長さは、基板101における第2部分132の正投影と第3部分133の正投影の長さの合計である。
【0091】
別の1つの例において、第1電極103は、第1部分131と第2部分132を含み、基板101における第2部分132の正投影は、第1重畳領域106以外の領域に入る。第1電極103の延在部分の長さは、基板101における第2部分132の正投影の長さである。例示的に、基板101における第2部分132の正投影の長さは0.2μmである。
【0092】
本発明の実施例は、上記の実施例に記載のバルク弾性波共振構造を備える、弾性波デバイスを提供する。本発明の実施例において、弾性波デバイスにおけるバルク弾性波共振構造の具体的な説明については、前述した実施例におけるバルク弾性波共振構造を参照することができ、ここでは繰り返して説明しない。
【0093】
図16は、本発明の実施例に係るバルク弾性波共振構造の製造方法の第1の例示的なフローチャートを示す。上記のバルク弾性波共振構造に基づいて、本発明の実施例は、バルク弾性波共振構造の製造方法を提供し、前記方法は、
図16に示すように、以下のステップを含む。
【0094】
ステップS10において、基板を提供し、基板の表面に犠牲層を形成する。
【0095】
ステップS20において、犠牲層に溝を形成する。
【0096】
ステップS30において、溝を被覆し且つ犠牲層の表面まで延在する第1電極を形成し、第1電極は、第1部分、第2部分および第3部分を含み、第2部分は、第1部分と第3部分とを接続し、第3部分は、溝の底部を被覆し、第1部分は、基板の表面に平行な方向に沿って延在し、第2部分は、基板の表面に対して傾斜角度を有する。
【0097】
ステップS40において、犠牲層と第1電極を被覆する圧電層を形成する。
【0098】
ステップS50において、圧電層の基板から相対的に離れた側に第2電極を形成する。
【0099】
ステップS60において、圧電層を貫通する少なくとも1つのエッチング孔を形成し、エッチング孔を介して犠牲層を解放して、反射構造を形成する。
【0100】
基板、第1電極、圧電層、第2電極、反射構造の構成材料については、上記のバルク弾性波共振構造の各実施例の関連説明を参照することができ、ここでは繰り返して説明しない。なお、
図1~
図15は、本発明に係るバルク弾性波共振構造の例示的な概略図であり、
図1~
図15に示す第1電極103(下部電極)と第2電極105(上部電極)の側壁角度は90°である。
図17a~
図17cおよび
図19a~
図23dは、本発明に係るバルク弾性波共振構造の製造方法のプロセスに対応する断面の概略図であり、製造工程プロセスにおける第1電極103(下部電極)と第2電極105(上部電極)の側壁角度は90°未満であり、これは、バルク弾性波共振構造の実際の製造状況をより反映している。
【0101】
図17a~
図17cは、1つの例示的な実施例に係るバルク弾性波共振構造の製造方法のプロセスに対応する断面の概略図を示す。
図17aを参照すると、ステップS10~S20が実行される。いくつかの実施例において、基板101上に犠牲材料を堆積し、犠牲材料をエッチングして犠牲層102aを形成する。例示的に、犠牲層102aの構成材料は、リンケイ酸ガラス(PSG:Phospho Silicate Glass)または二酸化シリコンなどを含むが、これらに限定されない。犠牲層102aの構成材料が二酸化シリコンであることを例として説明すると、反応ガスとしてシラン(SiH
4)と酸素(O
2)を使用して、化学気相堆積工程によって、基板101の第1表面に犠牲層102aを形成することができる。
【0102】
図17aに示すように、犠牲層102aは、基板101上に形成されることができ、犠牲層102aは、基板101の上面から突出している。犠牲層102aは、後続の工程プロセスで除去されて、上凸のキャビティ型の反射構造102を形成することができる(
図17cを参照)。
【0103】
図17aを参照すると、エッチング工程により、犠牲層102aに溝Hが形成される。溝Hの底部は、基板101の表面と平行であり、溝Hの側壁は、基板101の表面に対して傾斜角度を有する。例示的に、傾斜角度は、10°~80°である。バルク弾性波共振構造の設計サイズに応じて傾斜角度を改善することもできる。
【0104】
図17bを参照すると、ステップS30~S50が実行される。溝Hの底部と側壁を被覆し且つ犠牲層102aの表面まで延在する第1電極材料を形成し、第1電極材料をパターニングして第1電極103を形成する。犠牲層102aと第1電極103を被覆する圧電層104を形成する。圧電層104の表面を被覆する第2電極材料を形成し、第2電極材料をパターニングして第2電極105を形成する。
【0105】
実際の適用において、基板101における第1電極103の正投影と、基板101における圧電層104の正投影と、基板101における第2電極105の正投影との重畳領域は、第1重畳領域106である。第1重畳領域106は、共振領域または活性領域とも呼ばれ、第1重畳領域106以外の領域は、非共振領域とも呼ばれる。
【0106】
なお、第1電極103を堆積する前に、まず、下部電極材料の結晶軸配向を改善するための、一層のシード層を堆積することにより、結晶格子を圧電層に近づけ、後続で堆積される圧電層の格子欠陥を低減することができる一方、シード層は、第1電極103のエッチング阻止層として機能することもできる。シード層の構成材料は、圧電層の構成材料と同じである。
【0107】
図17cを参照すると、ステップS60が実行される。エッチング孔を形成し、エッチング孔を介して犠牲層102aを解放して、反射構造102を形成する。1つの実施例において、エッチング孔を利用してエッチング剤を放出して犠牲層102aを除去する。ここで、エッチング孔は、基板101の表面が露出されるまで、圧電層104および犠牲層102aを貫通することができる。別の1つの実施例において、エッチング孔は、犠牲層102aの表面が露出されるまで、圧電層104のみを貫通することができ、即ち、エッチング孔は、犠牲層102aを貫通する必要がない。
【0108】
例示的に、適切なエッチング剤を選択し、エッチング孔内にエッチング剤を注入することにより、エッチング剤が、露出した犠牲層102aと接触して化学反応して、ガス状生成物を生成するようにして、犠牲層102aを除去することができる。具体的には、犠牲層102aの構成材料が二酸化シリコンである場合、ドライエッチング工程を採用して、エッチング剤としてフッ化水素(HF)を選択して犠牲層102aを除去することができる。フッ化水素が、エッチング孔から露出した犠牲層102aと反応すると、ガス状のフッ化シリコン(SiF4)とガス状の水が生成される。
【0109】
いくつかの実施例において、当該方法は、第2電極105を薄くするステップをさらに含む。薄くすることにより、バルク弾性波共振構造の厚さと体積をさらに低減することができ、バルク弾性波共振構造の小型化および集積化に有利である。
【0110】
本発明の実施例において、第1重畳領域106以外の領域、即ち、非共振領域において、傾斜面を有する第1電極103を設けることにより、非共振領域の第1電極103と第2電極105との間の距離を増加させ、第1重畳領域106に隣接する非共振領域の電界強度を小さくすることができ、これにより、第1重畳領域106の縁部の寄生共振を低減し、共振領域への寄生共振の伝播を低減し、バルク弾性波共振構造のQ値を高めることができる。
【0111】
図18は、1つの例示的な実施例に係るバルク弾性波共振構造の製造方法の第2の例示的なフローチャートを示す。上記のバルク弾性波共振構造に基づいて、本発明の実施例は、バルク弾性波共振構造の製造方法を提供し、前記方法は、
図18に示すように、以下のステップを含む。
【0112】
ステップS100において、基板を提供し、基板の表面に犠牲層を形成する。
【0113】
ステップS200において、犠牲層を貫通する開口を形成して、分離された第1犠牲構造および第2犠牲構造を形成する。
【0114】
ステップS300において、開口を被覆し且つ第2犠牲構造の表面まで延在する第1電極を形成し、第1電極は、第1部分、第2部分および第3部分を含み、第2部分は、第1部分と第3部分とを接続し、第3部分は、開口の底部を被覆し、第1部分は、基板の表面に平行な方向に沿って延在し、第2部分は、基板の表面に対して傾斜角度を有する。
【0115】
ステップS400において、第1犠牲構造、第2犠牲構造および第1電極を被覆する圧電層を形成する。
【0116】
ステップS500において、圧電層の基板から相対的に離れた側に第2電極を形成する。
【0117】
ステップS600において、圧電層を貫通する少なくとも1つのエッチング孔を形成し、エッチング孔を介して第1犠牲構造を解放して、第1隙間を形成する。
【0118】
ステップS700において、エッチング孔を介して第2犠牲構造を解放して、反射構造を形成する。
【0119】
ここで、バルク弾性波共振構造がさらに第1隙間107を含むことを例として説明する。なお、ステップS100~ステップS700において、基板101、反射構造102、第1電極103、圧電層104および第2電極105を形成する具体的なプロセスについては、上記の第1の例示的なフローチャートの説明を参照することができる。
【0120】
図19a~
図19eは、本発明の実施例に係るバルク弾性波共振構造の製造方法のプロセスに対応する断面の概略図を示す。
図19aを参照すると、ステップS100~S200が実行される。いくつかの実施例において、基板101上に犠牲材料を堆積し、犠牲材料をエッチングして犠牲層を形成する。
図19aに示すように、犠牲層を貫通する開口H2を形成して、分離された第1犠牲構造102bと第2犠牲構造102cを形成する。
【0121】
第1犠牲構造102bと第2犠牲構造102cは、基板101上に形成され、第1犠牲構造102bと第2犠牲構造102cは、基板101の上面から突出している。第2犠牲構造102cは、後続の工程プロセスで除去され、上凸のキャビティ型の反射構造102を形成することができる(
図19eを参照)。
【0122】
図19aを参照すると、エッチング工程により、犠牲層に開口H2が形成される。開口H2の底部は、基板101の表面と平行であり、開口H2の側壁は、基板101の表面に対して傾斜角度を有する。例示的に、傾斜角度は、10°~80°である。バルク弾性波共振構造の設計サイズに応じて傾斜角度を改善することもできる。
【0123】
図19bを参照すると、ステップS300が実行される。なお、製造工程プロセスにおける第1電極103(下部電極)の側壁角度は90°未満であり、これは、バルク弾性波共振構造の実際の製造状況をより反映している。
図19cを参照すると、第1電極103を形成した後、第1電極103の左側と第1犠牲構造102bとの間に、一層の犠牲材料を形成して、隙間犠牲構造102b’を形成する。後続の工程プロセスで第1犠牲構造102bと隙間犠牲構造102b’を除去して、第1隙間107を形成することができ(
図19eを参照)、このようにして、後続で第1電極103の左側が第1隙間107と接触するようにする。
【0124】
図19dを参照すると、ステップS400~S500が実行される。第1犠牲構造102b、隙間犠牲構造102b’および第1電極103を被覆する圧電層104を形成する。圧電層104の表面を被覆する第2電極材料を形成し、第2電極材料をパターニングして第2電極105を形成する。
【0125】
実際の適用において、基板101における第1電極103の正投影と、基板101における圧電層104の正投影と、基板101における第2電極105の正投影との重畳領域は、第1重畳領域106である。第1重畳領域106は、共振領域または活性領域とも呼ばれ、第1重畳領域106以外の領域は、非共振領域とも呼ばれる。
【0126】
図19eを参照すると、ステップS600が実行される。エッチング孔を形成し、エッチング孔を介して第2犠牲構造102cを解放して、反射構造102を形成する。エッチング孔を介して第1犠牲構造102bを解放して、第1隙間107を形成する。ステップS600の具体的なプロセスについては、
図16に示す第1の例示的なフローチャートのステップS60の説明を参照することができ、ここでは繰り返して説明しない。
【0127】
本発明の実施例において、第1重畳領域106以外の領域、即ち、非共振領域において、傾斜面を有する第1電極103を設けることにより、非共振領域の第1電極103と第2電極105との間の距離を増加させ、第1重畳領域106に隣接する非共振領域の電界強度を小さくすることができ、これにより、第1重畳領域106の縁部の寄生共振を低減し、共振領域への寄生共振の伝播を低減し、バルク弾性波共振構造のQ値を高めることができる。第1隙間107は、横方向剪断波の漏れを低減し、バルク弾性波共振構造のQ値を高めることができる。好ましくは、第1隙間107の材料は空気を含み、このようにして、非共振領域の電界強度をさらに小さくすることができ、バルク弾性波共振構造の主共振モードの弾性波エネルギの増加により有益である。
【0128】
バルク弾性波共振構造において、第1電極103が2つの傾斜面を含むことを例として説明すると、本発明の実施例は、バルク弾性波共振構造の製造方法を示し、前記方法は、以下のステップを含む。
【0129】
図20a~
図20eは、本発明の実施例に係るバルク弾性波共振構造の製造方法のプロセスに対応する断面の概略図を示す。
図20aに示すように、基板101上に第1犠牲構造102bと第3犠牲構造102c’を形成する。具体的には、基板101を提供し、基板101上に犠牲材料を堆積し、犠牲材料をエッチングして犠牲層を形成する。犠牲層を貫通する開口H2を形成して、分離された第1犠牲構造102bと第2犠牲構造102cを形成する。当該プロセスについては、
図19aを参照することができ、ここでは繰り返して説明しない。第2犠牲構造102cを部分的にエッチングして、段差を有する第3犠牲構造102c’を形成する(
図20aに示すように)。
【0130】
図20bに示すように、開口H2を被覆し且つ第3犠牲構造102c’の表面まで延在する第1電極103を形成する。なお、製造工程プロセスにおける第1電極103(下部電極)の側壁角度は90°未満であり、これは、バルク弾性波共振構造の実際の製造状況をより反映している。
図20cを参照すると、第1電極103を形成した後、第1電極103の左側と第1犠牲構造102bとの間に、一層の犠牲材料を形成して、隙間犠牲構造102b’を形成する。後続の工程プロセスで第1犠牲構造102bと隙間犠牲構造102b’を除去して、第1隙間107を形成することができ(
図20eを参照)、このようにして、後続で第1電極103の左側が第1隙間107と接触するようにする。
【0131】
図20dに示すように、第1犠牲構造102b、隙間犠牲構造102b’、第3犠牲構造102c’および第1電極103を被覆する圧電層104を形成し、圧電層104の基板から相対的に離れた側に第2電極105を形成する。当該ステップの具体的なプロセスについては、上記の第2の例示的なフローチャートのステップS300~ステップS500の説明を参照することができ、ここでは繰り返して説明しない。
【0132】
図20eに示すように、圧電層104を貫通する少なくとも1つのエッチング孔を形成し、エッチング孔を介して第1犠牲構造102bを解放して、第1隙間107を形成し、エッチング孔を介して第3犠牲構造102c’を解放して、反射構造102を形成する。当該ステップの具体的なプロセスについては、上記の第2の例示的なフローチャートのステップS600~ステップS700の説明を参照することができ、ここでは繰り返して説明しない。
【0133】
図11に示す構造を備えるバルク弾性波共振構造を例として説明すると、本発明の実施例は、バルク弾性波共振構造の製造方法を示し、前記方法は、以下のステップを含む。
【0134】
図21a~
図21dは、本発明の実施例に係るバルク弾性波共振構造の製造方法のプロセスに対応する断面の概略図を示す。
図21aに示すように、基板101上に第1犠牲構造102bと第3犠牲構造102c’を形成する。当該プロセスについては、
図20aの説明を参照することができ、ここでは繰り返して説明しない。第3犠牲構造102c’の第1犠牲構造102bに近接する側に第1凸部103aを堆積する。第1凸部103aの構成材料は、第1電極103と同じである。
【0135】
図21bに示すように、開口H2と第1凸部103aを被覆し且つ第3犠牲構造102c’の表面まで延在する第1電極材料層を形成し、第1凸部103aと第1電極材料層とが第1電極103を形成する。なお、製造工程プロセスにおける第1電極103(下部電極)の側壁角度は90°未満であり、これは、バルク弾性波共振構造の実際の製造状況をより反映している。
図21bを参照すると、第1電極103を形成した後、第1電極103の左側と第1犠牲構造102bとの間に、一層の犠牲材料を形成して、隙間犠牲構造102b’を形成する。後続の工程プロセスで第1犠牲構造102bと隙間犠牲構造102b’を除去して、第1隙間107を形成することができ(
図20eを参照)、このようにして、後続で第1電極103の左側が第1隙間107と接触するようにする。
【0136】
図21cに示すように、第1犠牲構造102b、隙間犠牲構造102b’、第3犠牲構造102c’および第1電極103を被覆する圧電層104を形成し、圧電層104の基板から相対的に離れた側に第2電極105を形成する。当該ステップの具体的なプロセスについては、上記の第2の例示的なフローチャートのステップS300~ステップS500の説明を参照することができ、ここでは繰り返して説明しない。
【0137】
図21dに示すように、圧電層104を貫通する少なくとも1つのエッチング孔を形成し、エッチング孔を介して第1犠牲構造102bを解放して、第1隙間107を形成し、エッチング孔を介して第3犠牲構造102c’を解放して、反射構造102を形成する。当該ステップの具体的なプロセスについては、上記の第2の例示的なフローチャートのステップS600~ステップS700の説明を参照することができ、ここでは繰り返して説明しない。
【0138】
図12に示す構造を備えるバルク弾性波共振構造を例として説明すると、本発明の実施例は、バルク弾性波共振構造の製造方法を示し、前記方法は、以下のステップを含む。
【0139】
図22a~
図22fは、本発明の実施例に係るバルク弾性波共振構造の製造方法のプロセスに対応する断面の概略図を示す。
図22aに示すように、基板材料を提供し、基板材料をエッチングして、基板101および基板上に位置する第1突起111を形成する。
【0140】
図22bに示すように、基板101上に第1犠牲構造102bと第3犠牲構造102c’を形成する。当該プロセスについては、
図20aの説明を参照することができ、ここでは繰り返して説明しない。
【0141】
図22cに示すように、第1突起111および第3犠牲構造102c’を被覆する第1電極103を形成する。なお、製造工程プロセスにおける第1電極103(下部電極)の側壁角度は90°未満であり、これは、バルク弾性波共振構造の実際の製造状況をより反映している。
図22dを参照すると、第1電極103を形成した後、第1電極103の左側と第1犠牲構造102bとの間に、一層の犠牲材料を形成して、隙間犠牲構造102b’を形成する。後続の工程プロセスで第1犠牲構造102bと隙間犠牲構造102b’を除去して、第1隙間107を形成することができ(
図20eを参照)、このようにして、後続で第1電極103の左側が第1隙間107と接触するようにする。
【0142】
図22eを参照すると、第1犠牲構造102b、隙間犠牲構造102b’、第3犠牲構造102c’および第1電極103を被覆する圧電層104を形成し、圧電層104の基板から相対的に離れた側に第2電極105を形成する。当該ステップの具体的なプロセスについては、上記の第2の例示的なフローチャートのステップS300~ステップS500の説明を参照することができ、ここでは繰り返して説明しない。
【0143】
図22fに示すように、圧電層104を貫通する少なくとも1つのエッチング孔を形成し、エッチング孔を介して第1犠牲構造102bを解放して、第1隙間107を形成し、エッチング孔を介して第3犠牲構造102c’を解放して、反射構造102を形成する。当該ステップの具体的なプロセスについては、上記の第2の例示的なフローチャートのステップS600~ステップS700の説明を参照することができ、ここでは繰り返して説明しない。
【0144】
第2隙間108を含むバルク弾性波共振構造を例として説明すると、本発明の実施例は、バルク弾性波共振構造の製造方法を示し、前記方法は、以下のステップを含む。
【0145】
図23a~
図23dは、本発明の実施例に係るバルク弾性波共振構造の製造方法のプロセスに対応する断面の概略図を示す。
図23aに示すように、基板101を提供し、基板101上に第3犠牲構造102c’を形成する。第3犠牲構造102c’を形成するプロセスについては、上記の実施例の説明を参照することができ、ここでは繰り返して説明しない。
【0146】
図23bに示すように、第3犠牲構造102c’を被覆する第1電極103を形成し、第1電極103の縁部を被覆する第2凸部102dを形成する。第2凸部102dの構成材料は、第3犠牲構造102c’の構成材料と同じである。
【0147】
図23cに示すように、第2凸部102d、第1電極103および第3犠牲構造102c’を被覆する圧電層104を形成し、圧電層104の基板から相対的に離れた側に第2電極105を形成する。当該ステップの具体的なプロセスについては、上記の第2の例示的なフローチャートのステップS300~ステップS500の説明を参照することができ、ここでは繰り返して説明しない。
【0148】
図23dに示すように、圧電層104を貫通する少なくとも1つのエッチング孔を形成し、エッチング孔を介して第2凸部102dを解放して、第2隙間108を形成し、エッチング孔を介して第3犠牲構造102c’を解放して、反射構造102を形成する。当該ステップの具体的なプロセスについては、上記の第2の例示的なフローチャートのステップS600~ステップS700の説明を参照することができ、ここでは繰り返して説明しない。
【0149】
いくつかの実施例において、
図7のバルク弾性波共振構造の製造方法は、
図21a~
図21cを参照することができ、基板101上に第3犠牲構造102c’を形成する(第1犠牲構造102bは形成されない)。第3犠牲構造102c’の一方の縁部に第1凸部103aを堆積する。第1凸部103aの構成材料は、第1電極103の構成材料と同じである。開口H2と第1凸部103aを被覆し且つ第3犠牲構造102c’の表面まで延在する第1電極材料層を形成し、第1凸部103aと第1電極材料層とが第1電極103を形成する。第3犠牲構造102c’および第1電極103を被覆する圧電層104を形成し、圧電層104の基板から相対的に離れた側に第2電極105を形成する。圧電層104を貫通する少なくとも1つのエッチング孔を形成し、エッチング孔を介して第3犠牲構造102c’を解放して、反射構造102を形成する。
【0150】
いくつかの実施例において、
図8のバルク弾性波共振構造の製造方法は、
図22a~
図22dを参照することができ、基板101上に第1突起111と第3犠牲構造102c’を形成する(第1犠牲構造102bは形成されない)。第1突起111および第3犠牲構造102c’を被覆する第1電極103を形成する。第3犠牲構造102c’および第1電極103を被覆する圧電層104を形成し、圧電層104の基板から相対的に離れた側に第2電極105を形成する。圧電層104を貫通する少なくとも1つのエッチング孔を形成し、エッチング孔を介して第3犠牲構造102c’を解放して、反射構造102を形成する。
【0151】
いくつかの実施例において、
図5、
図14および
図15に示すように、第1電極103を堆積する工程において、第1電極103の傾斜面の数と傾斜面の傾斜角度は、下方の犠牲層の表面形態に応じて自然に形成され、犠牲層は、後続の工程で除去されて、反射構造102を形成する。具体的には、基板上に犠牲層を堆積し、犠牲層の構成材料は、SiO
2を含むが、これに限定されない。犠牲層上にフォトレジストを均一に塗布し、露光現像により、必要なフォトレジストパターンが得られ、エッチングにより、フォトレジストによって被覆されていない犠牲層を除去し、最後に、フォトレジストを除去して、第1パターンの犠牲層および第1角度を形成する。第1パターンの犠牲層上にフォトレジストを均一に塗布し、エッチングにより第2角度を形成し、フォトレジストを均一に塗布し続け、エッチングにより第3角度を形成する。ここで、第1角度、第2角度および第3角度はそれぞれ、基板の表面に対する犠牲層の各側壁の傾斜角度であり、傾斜角度は、10°~80°である。
【0152】
なお、シミュレート試験によれば、
図2または
図3に示すバルク弾性波共振構造のQ値は約1449.1であり、
図4に示すバルク弾性波共振構造のQ値は約1443.3であり、
図9または
図10に示すバルク弾性波共振構造のQ値は約1406.2であり、
図6に示すバルク弾性波共振構造のQ値は約1415.2である。試験結果によると、バルク弾性波共振構造において、第1電極103に傾斜延在部分を設けることにより、非共振領域の第1電極103と第2電極105との間の距離をさらに増加させ、第1重畳領域106に隣接する非共振領域の電界強度を小さくすることができ、これにより、非共振領域の寄生共振を低減し、バルク弾性波共振構造のQ値を高めることができる。改善されたバルク弾性波共振構造のQ値は、10%~20%増加することができる。
【0153】
図24を参照すると、
図2に示すバルク弾性波共振構造における第1電極103の延在長さについて試験を行った。延在長さは、基板101における第1電極103の延在部分の正投影の長さLを表す(
図2に示すように)。
図24に示すように、系列1は、延在長さが0であることを示し、系列2は、延在長さが2μmであることを示し、系列3は、延在長さが3μmであることを示し、系列4は、延在長さが3μmであり且つ延在端部の尖端を丸めしたことを示す。試験結果によると、
図24の点線枠内に示すように、系列2は、インダクタンス値を効果的に高め、通過帯域における高周波数帯域の信号抑制能力を高めることができるため、第1電極103の延在長さは2~3μmであることが好ましい。
【0154】
上記の内容は、本発明の特定の実施形態に過ぎず、本発明の保護範囲はこれに限定されない。本発明で開示された技術的範囲内で、当業者が容易に想到し得る変更または置換は、すべて本発明の保護範囲内に含まれるべきである。
【手続補正書】
【提出日】2024-03-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルク弾性波共振構造であって、
基板と、
前記基板上に順次配置された反射構造、第1電極、圧電層および第2電極と、を含み、前記基板における前記第1電極の正投影と、前記基板における前記圧電層の正投影と、前記基板における前記第2電極の正投影との重畳領域は、第1重畳領域であり、
前記第1電極は、第1部分、第2部分および第3部分を含み、前記第2部分は、前記第1部分と前記第3部分とを接続し、
前記基板における前記第1部分の正投影は、前記第1重畳領域内に入り、且つ前記第1部分は、前記基板の表面に平行な方向に沿って延在し、
前記基板における前記第2部分の正投影と前記第3部分の正投影は、前記第1重畳領域以外の領域に入り、前記第2部分は、前記基板の表面に対して傾斜角度を有し、前記第3部分は、前記基板の表面に平行な方向に沿って延在し、
前記第1部分は、前記基板の表面に垂直な方向において、前記第3部分より高い、前記バルク弾性波共振構造。
【請求項2】
前記第1電極はさらに、第4部分と第5部分を含み、
前記基板における前記第4部分の正投影と前記第5部分の正投影は、前記第1重畳領域以外の領域に入り、前記第4部分は、前記基板の表面に対して前記傾斜角度を有し、前記第5部分は、前記基板の表面に平行な方向に沿って延在し、
前記第4部分は、前記第3部分と前記第5部分とを接続し、前記第3部分は、前記基板の表面に垂直な方向において前記第5部分より高く、前記第5部分は、前記圧電層と前記基板との間に位置する、
請求項1に記載のバルク弾性波共振構造。
【請求項3】
前記第5部分は、前記基板と直接接触する、
請求項2に記載のバルク弾性波共振構造。
【請求項4】
前記第3部分は、前記圧電層と前記基板との間に位置し、且つ前記第3部分は、前記基板と直接接触し、
前記第3部分の前記第1重畳領域から相対的に離れた側は、前記圧電層と接触する、
請求項1に記載のバルク弾性波共振構造。
【請求項5】
前記基板の表面に垂直な方向における前記第3部分の厚さは、前記基板の表面に垂直な方向における前記第1部分の厚さより大きい、
請求項4に記載のバルク弾性波共振構造。
【請求項6】
前記基板は、前記第3部分に向かって突出する第1突起を含み、前記第1突起は、前記第3部分と直接接触し、
前記第1突起の前記第1重畳領域から相対的に離れた側は、前記圧電層と接触し、
前記第1突起の前記第1重畳領域に相対的に近接する側は、前記反射構造と接触する、
請求項4に記載のバルク弾性波共振構造。
【請求項7】
前記バルク弾性波共振構造はさらに、前記圧電層と前記基板との間に位置する第1隙間を含み、
前記第3部分の前記第1重畳領域から相対的に離れた側は、前記第1隙間と接触する、
請求項1に記載のバルク弾性波共振構造。
【請求項8】
前記第1隙間は、前記基板の表面に垂直な方向において第1高さを有し、前記第3部分は、前記基板の表面に垂直な方向において第2高さを有し、前記第1高さは、前記第2高さと等しく、前記第1高さは、前記第1重畳領域内で、前記基板の表面に垂直な方向における前記反射構造の高さより小さい、
請求項7に記載のバルク弾性波共振構造。
【請求項9】
前記バルク弾性波共振構造はさらに、前記第3部分に向かって突出する第2突起を含み、前記第2突起は、前記第3部分と直接接触し、
前記第1隙間は、前記基板の表面に垂直な方向において第1高さを有し、前記第3部分は、前記基板の表面に垂直な方向において第2高さを有し、前記第2突起は、前記基板の表面に垂直な方向において第3高さを有し、前記第1高さは、前記第2高さと前記第3高さとの合計に等しい、
請求項7に記載のバルク弾性波共振構造。
【請求項10】
前記バルク弾性波共振構造はさらに、第2隙間を含み、前記第2隙間は、前記圧電層と前記第2部分および第3部分との間に位置し、
前記第2隙間の前記第1重畳領域に相対的に近接する側は、前記第2部分と接触し、
前記第2隙間の前記基板に相対的に近接する側は、前記第3部分と接触する、
請求項1に記載のバルク弾性波共振構造。
【請求項11】
前記バルク弾性波共振構造はさらに、前記第2電極に接続された電極リードを含み、前記基板における前記電極リードの正投影は、前記第1重畳領域以外の領域に位置し、
前記第2部分と前記第3部分は、前記第1重畳領域を包囲して設けられ、前記基板における前記第2部分の正投影と前記第3部分の正投影は、前記基板における前記電極リードの正投影以外の領域に入る、
請求項1に記載のバルク弾性波共振構造。
【請求項12】
前記バルク弾性波共振構造はさらに、第3隙間と第4隙間を含み、前記第3隙間は、前記圧電層と前記第2部分および第3部分との間に位置し、前記第4隙間は、前記電極リードと前記圧電層との間に位置する、
請求項11に記載のバルク弾性波共振構造。
【請求項13】
前記第2部分と前記第3部分の長さの合計は、0.2μm以上である、
請求項1に記載のバルク弾性波共振構造。
【請求項14】
請求項1ないし13のいずれか一項に記載のバルク弾性波共振構造を備える、弾性波デバイス。
【請求項15】
バルク弾性波共振構造の製造方法であって、
基板を提供し、前記基板の表面に犠牲層を形成することと、
前記犠牲層に溝を形成することと、
前記溝を被覆し且つ前記犠牲層の表面まで延在する第1電極を形成することであって、前記第1電極は、第1部分、第2部分および第3部分を含み、前記第2部分は、前記第1部分と前記第3部分とを接続し、前記第3部分は、前記溝の底部を被覆し、前記第1部分は、前記基板の表面に平行な方向に沿って延在し、前記第2部分は、前記基板の表面に対して傾斜角度を有する、ことと、
前記犠牲層と前記第1電極を被覆する圧電層を形成することと、
前記圧電層の前記基板から相対的に離れた側に第2電極を形成することと、
前記圧電層を貫通する少なくとも1つのエッチング孔を形成することであって、前記エッチング孔を介して前記犠牲層を
除去して、反射構造を形成する、ことと、を含む、前記バルク弾性波共振構造の製造方法。
【請求項16】
バルク弾性波共振構造の製造方法であって、
基板を提供し、前記基板の表面に犠牲層を形成することと、
前記犠牲層を貫通する開口を形成して、分離された第1犠牲構造および第2犠牲構造を形成することと、
前記開口を被覆し且つ前記第2犠牲構造の表面まで延在する第1電極を形成することであって、前記第1電極は、第1部分、第2部分および第3部分を含み、前記第2部分は、前記第1部分と前記第3部分とを接続し、前記第3部分は、前記開口の底部を被覆し、前記第1部分は、前記基板の表面に平行な方向に沿って延在し、前記第2部分は、前記基板の表面に対して傾斜角度を有する、ことと、
前記第1犠牲構造、前記第2犠牲構造および前記第1電極を被覆する圧電層を形成することと、
前記圧電層の前記基板から相対的に離れた側に第2電極を形成することと、
前記圧電層を貫通する少なくとも1つのエッチング孔を形成することであって、前記エッチング孔を介して前記第1犠牲構造を
除去して、第1隙間を形成する、ことと、
前記エッチング孔を介して前記第2犠牲構造を
除去して、反射構造を形成することと、を含む、前記バルク弾性波共振構造の製造方法。
【国際調査報告】