(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】ソーワイヤおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
B24B 27/06 20060101AFI20240822BHJP
H01L 21/304 20060101ALN20240822BHJP
【FI】
B24B27/06 E
H01L21/304 611W
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024533158
(86)(22)【出願日】2022-06-23
(85)【翻訳文提出日】2024-02-13
(86)【国際出願番号】 EP2022067240
(87)【国際公開番号】W WO2023016690
(87)【国際公開日】2023-02-16
(31)【優先権主張番号】102021121134.4
(32)【優先日】2021-08-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524057522
【氏名又は名称】フェストアルピネ・ワイヤー・ロッド・オーストリア・ゲー・エム・ベーハー
【氏名又は名称原語表記】VOESTALPINE WIRE ROD AUSTRIA GMBH
【住所又は居所原語表記】DRAHTSTRASSE 1, 8792 ST. PETER/FREIENSTEIN, AUSTRIA
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】ベルガー,ヴァルター
【テーマコード(参考)】
3C158
5F057
【Fターム(参考)】
3C158AA05
3C158DA03
5F057AA23
5F057AA37
5F057AA44
5F057BA01
5F057BB03
5F057CA02
5F057DA15
5F057EA01
5F057EA06
5F057EA29
5F057EB24
(57)【要約】
本発明は、構造化されたソーワイヤの製造方法に関し、少なくとも二次元構造を有する金属ワイヤは、ワイヤの長手方向軸に沿ってワイヤが膨らみを伴って主に塑性変形するようにクリンピングされることによって形成され、クリンピングの際にワイヤ断面全体の最大20%、特に最大10%が弾性変形の領域にあるのに対して、ワイヤの残りの断面積は、塑性変形される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造化されたソーワイヤの製造方法であって、金属ワイヤは少なくとも二次元構造を有するように、前記ワイヤの長手方向軸に沿って、前記ワイヤが膨らみを伴って主に塑性変形するようにクリンピングされることによって形成され、前記クリンピングの際に、ワイヤ断面全体の最大20%、特に最大10%が弾性変形の領域にあるのに対して、前記ワイヤの残りの断面積は塑性変形されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記ワイヤは、三次元構造を生成するために、複数の互いに角度をなす平面においてクリンピングされることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ワイヤは、前記クリンピング時において塑性ヒンジを形成し、曲げ半径は前記ワイヤの直径の1から3倍の寸法であるため、外繊維の実質伸長は、10%と30%の間、特に約17%から約23%であることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記クリンピングの際に、前記ワイヤに対して引張力を付与することにより、塑性変形が実施される平面が拡大されることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一つに記載の方法。
【請求項5】
前記引張応力は、引張強度Rmとワイヤ断面積Aとの積の少なくとも8%、特に少なくとも12%であり、最大35%、特に最大24%であることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
クリンプされた前記ワイヤの外側における前記クリンピングの位置において、応力が残留引張応力となる前に、圧縮応力が、表面の下20から40μmに達するように設定される、ことを特徴とする、請求項1から5のいずれか一つに記載の方法。
【請求項7】
前記ワイヤは、特に歯車の適切に形成された歯または規則的に打ち込む形成ピンを用いて、丸みを帯びた先端の周りを曲げられることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一つに記載の方法。
【請求項8】
前記ワイヤの上に二つの方向から当たる変形の間隔は、前記ワイヤの直径の約10倍であり、よって、波長が前記直径の約20倍となることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一つに記載の方法。
【請求項9】
前記構造は、80から90度オフセットされた方向から独立して被着され、その際に生成される波長が可能な限り大きい最小公倍数を有するように注意を払うことを特徴とする、請求項1から8のいずれか一つに記載の方法。
【請求項10】
前記ワイヤの視直径、すなわち長手方向における包絡円が、ワイヤソーのワイヤフィールドの作業張力において、実際のワイヤ直径よりも約8から約12μm、特に10μm、および/または応力が付与されない場合には8から24%、特に10から20%大きくなるように振幅を設定することを特徴とする、請求項1から9のいずれか一つに記載の方法。
【請求項11】
ワイヤ材料の降伏比Re対Rmは、85から95%、特に90%に設定されることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一つに記載の方法。
【請求項12】
特に請求項1から11のいずれか一つに記載の方法を用いて製造されるソーワイヤであって、前記ソーワイヤは、一つまたは複数の互いに対して角度をなす平面においてクリンプされ、ソーワイヤ材料の降伏比Re対Rmは、85から95%、特に90%であることを特徴とする、ソーワイヤ。
【請求項13】
曲げ半径は前記ソーワイヤの直径の1から2倍であり、前記ワイヤ上に二つの方向から当たる変形の間隔は前記ソーワイヤの直径の5から15倍、特に10倍であり、波長は前記ソーワイヤの直径の10から30倍、特に20倍であることを特徴とする、請求項12に記載のソーワイヤ。
【請求項14】
クリンプされた前記ソーワイヤの外側における前記クリンピングの位置において、応力が残留引張応力となる前に、圧縮応力が表面の下20から40μmに達するように設定されることを特徴とする、請求項12に記載のソーワイヤ。
【請求項15】
引っ張られた前記ソーワイヤの引張強度Rmは、3000と4200の間、特に3200と4000、さらに好ましくは3400と3800MPaの間にあり、引っ張られた前記ソーワイヤの降伏強度は、2500と4000の間、特に2900と3800の間、好ましくは3000と3450MPaの間にあることを特徴とする、請求項12から14のいずれか一つに記載のソーワイヤ。
【請求項16】
前記ソーワイヤは、0.12から0.17mmの直径、および三次元のクリンプ構造を有し、曲げ半径は0.24から0.34mmであり、振幅は0.14から0.2mmであり、波長は2と4mmの間であることを特徴とする、請求項12から15のいずれか一つに記載のソーワイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソーワイヤおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
以下、電子部品を製造するための金属材料や鉱物材料、特にウェーハを切断するために用いられるソーワイヤについて説明する。
【0003】
例えば、目的のためにシリコン棒からスライスを切断することが知られており、切断は、ガイドローラによって金属ワイヤが周回状に案内されることによって実施され、被切断棒が切断領域に存在し、棒が切断ワイヤによって研磨的に切断される。
【0004】
より正確には、被切断棒の材料が切断ワイヤ自体によってではなく、ワイヤによって切断隙間に運搬されるスラリー中の研磨成分によって切断される。よって、このことはワイヤソースライス(Drahttrennlaeppen)とも称され、ここではワイヤがその長手方向に巻出リールから巻取りリールへと移動され、一方向のみのワイヤ動作の場合と、移動方向が常に方向反転するワイヤ動作の場合との実施形態がある。よって、ワイヤは、研磨成分を切断隙間に導入し、切断隙間において研磨成分が被切断材料に対してこすれるように作用するようにしなければならない。スラリーは、例えば比較的高い粘度を有するグリセリンとシリコンカーバイド粒子の混合物である。硬くて小さいシリコンカーバイド粒はここで、被加工材料の基本マトリックスから微粒子を砕く。もちろん、その他のオイルまたは液状の担持媒体およびその他硬質材料も可能である。
【0005】
しかしながら、そもそもこのようなスラリー(独:Schlaemme)を同伴するために、ソーワイヤは、高粘度のスラリーの同伴を可能にする表面構造を必要とする。円筒状のみのワイヤが、付着相互作用のみによってスラリーを担持するが、切断プロセスは、スラリーの迅速な剥離と切断効果の損失とにつながる。
【0006】
スラリーに対するワイヤの搬送性を向上させるために、ソーワイヤには構造が設けられ、構造は、いわゆるクリンピングによって被着される。ここでのクリンピングは、規則的な曲げ加工であり、曲げ加工において、例えば二つの90度オフセットされた歯車を用いて、ワイヤを機械的に中央の中心位置から塑性的に撓ませたり曲げたりすることで、ワイヤに構造を押し込む。構造は、例えば適切に形成された歯車の歯など、丸みを帯びた先端の周りにワイヤを曲げることによって形成される。
【0007】
このようなワイヤが当然、切断プロセスにおいて摩損に晒されるのは、同伴される研磨粒子が、被切断材料だけではなくワイヤに対しても研磨作用を及ばし、また、被切断材料がワイヤに対しても研磨作用を及ぼし得るからである。ワイヤは、特にクリンピングの外側で摩耗し、摩耗が大きくなりすぎるとこれによりクリンピングが失われたり、ワイヤが伸びてもはや十分にスラリーを同伴することができなくなったりする可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2018/149631号
【特許文献2】国際公開第2015/119344号
【0009】
WO2018/149631 A1よりワイヤソー、ワイヤガイドローラおよび棒から複数のスライスを同時に切断する方法が公知である。ここでは、前述の方法のためには、平滑で丸い鋼ワイヤからなる、構造化されたワイヤが特に重要であり、ワイヤは、周期的にその全長に亘ってその断面の形状または大きさが変わらず、ワイヤの長手方向に対して垂直に等量変位された断面を有することが記載されている。このような変位は、一般的にクリンプと称され、変位の量がクリンプの振幅、また変位の間の長手方向における長さが波長と称されると記載されている。同文献において、クリンプの間の空間がポケットまたはリザーバーとして機能し、同程度の直径を有する平滑なワイヤを用いた場合よりも多くのスラリーが、剥離されずにワイヤの長手方向に移動する場合に、ワイヤによって同伴し得ることも記載されている。構造化のワイヤの場合、外被は、構造化ワイヤ全体を完全に含む、最小直径の直円筒であると定義される。直円筒の底面積が構造化のワイヤの有効断面および円筒の底面積の直径が有効直径として、さらに円筒の外被の長手方向軸が構造化のワイヤの長手方向軸として定義される。芯ワイヤの直径は、130μmから175μmであるべきであり、構造化のワイヤの外被の直径は、芯ワイヤの直径の1.02から1.25倍であるべきである。摩耗により、クリンプの露出した先端の領域において、異方性の摩耗が生じることにより領域においてワイヤは楕円形になる。
【0010】
WO2015/119344 A1より構造化のソーワイヤが公知であり、ソーワイヤは、張力下でもクリンプ特性を維持すべきである。当該文献においても、切断材料を同伴させるために、ワイヤの構造を切断条件下において維持する必要性について言及している。ソーワイヤは、ジグザグ状に連続したクリンピングを有するべきであり、実際のクリンプの曲げ半径は、ワイヤの直径の5から20倍であるべきである。切断時にワイヤは、長手方向への応力に晒され、応力は、クリンプの曲げを開くことを目的とする。これにより、クリンプ振幅が減少し、ワイヤが伸長される。なお、ワイヤの直径の5倍以下にしか相当しない曲げ半径の場合、既に製造中においてワイヤの破損につながり得るオーバーベンディングが生じ得ることに注意すべきである。一方、ワイヤの直径の20倍より大きい曲げ半径の場合、切断応力を付与した際に、切断ワイヤが伸びやすくなるため、ワイヤの摩耗度合いが極めて大きくなり、切断効率が低下する。さらに、クリンピングを二次元だけではなく、クリンピングが長手方向軸を中心に回転することによりクリンプが交互にXZ平面とYZ平面上に存在し、これにより螺旋が生成されるようにすることで三次元にも構成するようにされている。これにより、スラリーの同伴が改善されることによって切断性能が向上する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、先行技術と比べて改善されていることでより摩耗に非依存である形状寸法的な形状安定性を有するソーワイヤを製造するためのソーワイヤの製造方法を創出することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
課題は、請求項1の特徴を有する方法によって解決される。
【0013】
有利である発展態様は、請求項1に従属する従属請求項によって特徴づけられる。
【0014】
本発明のさらなる課題は、形状変化に依存しないことにより、摩耗材料を同伴する性能を維持することで、耐摩耗性が改善された形状寸法的な形状安定性を有するソーワイヤを創出することにある。
【0015】
課題は、請求項12の特徴を有するソーワイヤによって解決される。
【0016】
有利である発展態様は、請求項12に従属する従属請求項によって特徴づけられる。
【0017】
形状安定性を確保するために、ワイヤの残留引張応力を増加させるアプローチが先行技術より公知である。しかしながら、本発明者らは、残留引張応力がより高くなっても、残留引張応力はワイヤの外側の相にあり、1から3μmの深さを有する残留引張応力の影響は、塑性変形によって直ちに減少されるため、残留引張応力が影響を無視することが可能であることを発見した。
【0018】
本発明によると、ソーワイヤが構造化される。構造化がアポロニウスの問題の解決策を構成する、すなわちワイヤは、変形のために使用される三つの歯車の先端(二つの先端は対向し、一つの先端は押し込むように)の間の位置を見つけようとする。この際、ワイヤは、クリンピングの位置において塑性ヒンジを形成し、歯車の先端は適切な半径を有するべきである。適切な半径は、例えばワイヤの直径の1から3倍の寸法である。これにより、外繊維の実質の伸長は、10%と30%の間、特に約17%から23%であり得る。これに応じて、ワイヤ断面全体の最大20%、特に最大10%が弾性変形の領域にあるのに対して、ワイヤの残りの断面積は、塑性変形される。塑性変形が高いことにより、塑性ヒンジの定格荷重に相当するワイヤの引張強度を全体でも2から6%しか低下させない。
【0019】
これに応じて、クリンピングの位置においてクリンプされたワイヤの外側で圧縮応力が生じ、圧縮応力は、直径に依存して表面の下20から40μmに達し、その後、応力が箇所において構造化ワイヤにおける必要なモーメント平衡によって残留引張応力となる。高い塑性変形により、ワイヤが外部条件の変動によってほとんど影響を受けないのは、摩耗が0.3から0.8μmであり、よって機械的条件の変化が1から2%のみであるためである。
【0020】
本発明によるとクリンピングの間にワイヤに引張力を付与することにより、可能なワイヤ形状の領域を広げることが可能である。特に当該引張力が引張強度Rmとワイヤ断面積Aの積の少なくとも8%、特に少なくとも12%であり、最大35%、特に最大24%であるように引張力を形成することが有利であることが証明された。引張応力は、塑性変形領域のさらなる拡大につながるため、外部摩耗条件によるワイヤ形状への影響がさらに軽減されてワイヤ形状の可能な形状に対する制限がはるかに少なくなる。
【0021】
クリンプ時において引張力から生じる引張応力は、システムに起因してクリンプ後にはもはや存在し得ないため、完成したワイヤにおいては外繊維に圧縮応力のみが発生する。
【0022】
本発明による影響変数は、ギアヘッドの寸法形状、特に歯車の歯の半径、構造化中の伸長力および降伏比Re/Rmである。
【0023】
本発明は、特に構造化のソーワイヤの製造方法に関し、少なくとも二次元構造を有する金属ワイヤは、ワイヤの長手方向軸に沿って、ワイヤが膨らみを伴って塑性変形するようにクリンピングされ、クリンピングの間にワイヤの引張強度の10から20%の範囲の引張応力が付与されることによって形成される。
【0024】
一発展態様においてワイヤは、三次元構造を生成するために、複数の互いに角度をなす平面においてクリンピングされる。
【0025】
一発展態様においてワイヤは、クリンピング時に塑性ヒンジを形成し、曲げ半径は、ワイヤの直径の1から2倍の寸法であるため、実際の伸長が約17%から23%、特に20%前後となる。
【0026】
一発展態様において降伏点が1.5から1.7%にて開始し、ワイヤ断面全体の最大5から20%が弾性変形の領域にあるのに対して、ワイヤの残り80から95%は塑性変形されるため、塑性変形により塑性ヒンジの定格荷重に相当するワイヤの引張強度を合計で2から6%しか低下させない。
【0027】
一発展態様において、クリンプされたワイヤの外側におけるクリンピングの位置において、応力が残留引張応力となる前に、圧縮応力が、表面の下20から40μmに達するように設定される。
【0028】
一発展態様においてワイヤは、特に歯車の適切に形成された歯または規則的に打ち込む形成ピンを用いて、丸みを帯びた先端の周りに曲げられる。
【0029】
一発展態様において(ワイヤの上に二つの方向から当たる)変形の間隔は、ワイヤの直径の約10から約15倍であり、よって、波長が直径の20から約30倍となる。
【0030】
一発展態様において構造は、80から90度オフセットされた方向から独立して被着され、その際に、生成される波長が可能な限り大きい最小公倍数を有するように注意を払う。
【0031】
一発展態様において、ワイヤの視直径(長手方向における包絡円の直径)が、ワイヤソーのワイヤフィールドの作業張力において、実際のワイヤ直径よりも約8から12μm,特に10μm、および/または応力が付与されない場合には8から24%、特に10から20%大きくなるように振幅を設定する。
【0032】
一発展態様において、ワイヤ材料の降伏比Re対Rmは、85から95%、特に90%に設定される。
【0033】
本発明のさらなる態様は、特に前述の一方法を用いて製造されるソーワイヤに関し、ワイヤは、一つまたは複数の互いに対して角度をなす平面においてクリンプされている。
【0034】
一発展態様において、クリンピングの点における曲げ半径は、ワイヤの直径の1から2倍であり、ワイヤ上に二つの方向から当たる変形の間隔は、ワイヤの直径の5から15倍、特に10倍であり、波長はワイヤの直径の10から30倍、特に20倍である。
【0035】
一発展態様において、外側におけるクリンプされたワイヤのクリンピングの位置において圧縮応力が存在し、圧縮応力は残留引張応力となる前に、ワイヤの表面の下20から40μmに達する。
【0036】
一発展態様において引っ張られたワイヤの引張強度Rmは、3000と4200の間、特に3200と4000、さらに好ましくは3400と3800MPaの間にあり、引っ張られたワイヤの降伏強度は、2500と4000の間、特に2900と3800の間、好ましくは3000と3450MPaの間にある。
【0037】
一発展態様において、ワイヤは0.12から0.17mmの直径、および三次元のクリンプ構造を有し、曲げ半径は0.24から0.34mmであり、振幅は0.14から0.2mmであり、波長は2と4mmの間である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0039】
本発明を一実施例に基づいて説明し、
図1における表は、対応するデータを示す。
【0040】
0.15mmの直径を有するワイヤに三次元のクリンプ構造を設け、曲げ半径は直径の倍、すなわち0,3mmである。これにより得られる振幅は0.17mmであるのに対し、波長は3.1mmである。外繊維における必要な伸長は20%であり、材料に起因する降伏点は1.7%である。これに応じて塑性伸長率は18.3%である。これにより得られる中心線から降伏点までの間隔は5.61μmであるのに対して、縁からゼロ応力線までの間隔は35.36μmである。曲げ加工終了時、緩和後の外繊維における残留伸長は、-1.6%(圧縮)である。
【0041】
降伏比Re対Rmは90%であり、引っ張られたワイヤの引張強度Rmは3600MPaであった。引っ張られたワイヤの降伏強度は3240MPaである。
【0042】
前述の条件下において、外繊維に453MPaの残留応力が設定されたが、残留応力は、構造化の際に8ニュートンの降伏応力が加えられたことにも起因する。よって、構造化の際に、引っ張られたワイヤの3600MPaである引張強度Rmに対して、約12.6%の長手方向の応力が付与され、0.2%のプレストレッチをもたらしたことが確認できる。
【0043】
引っ張られたワイヤの外繊維に生じている残留応力は、ワイヤの降伏強度の近くまで到達することがあり得るが、最後の伸長ステップにおいて最終的なより小さい形状へと意図的に少し縮小される。一例として、1500MPaの残留引張応力が想定されるものの、残留引張応力は、約3μmの深さまでゼロになる。0.8%の最大プレストレッチを有する残留応力によって、降伏点により迅速に到達することにつながり、よって、塑性変形の開始から最終的なワイヤ特性に対する影響をすぐに失う。
【手続補正書】
【提出日】2024-03-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造化されたソーワイヤの製造方法であって、金属ワイヤは少なくとも二次元構造を有するように、前記
金属ワイヤの長手方向軸に沿って、前記
金属ワイヤが膨らみを伴って主に塑性変形するようにクリンピングされることによって形成され、前記クリンピングの際に、ワイヤ断面全体の最大20%、特に最大10%が弾性変形の領域にあるのに対して、前記
金属ワイヤの残りの断面積は塑性変形されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記
金属ワイヤは、三次元構造を生成するために、複数の互いに角度をなす平面においてクリンピングされることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記
金属ワイヤは、前記クリンピング時において塑性ヒンジを形成し、曲げ半径は前記
金属ワイヤの直径の1から3倍の寸法であるため、外繊維の実質伸長は、10%と30%の間、特に約17%から約23%であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記クリンピングの際に、前記
金属ワイヤに対して引張力を付与することにより、塑性変形が実施される平面が拡大されることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一つに記載の方法。
【請求項5】
前記
引張力は、引張強度Rmとワイヤ断面積Aとの積の少なくとも8%、特に少なくとも12%であり、最大35%、特に最大24%であることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
クリンプされた前記
金属ワイヤの外側における前記クリンピングの位置において、応力が残留引張応力となる前に、圧縮応力が、表面の下20から40μmに達するように設定される、ことを特徴とする、請求項1から
3のいずれか一つに記載の方法。
【請求項7】
前記
金属ワイヤは、特に歯車の適切に形成された歯または規則的に打ち込む形成ピンを用いて、丸みを帯びた先端の周りを曲げられることを特徴とする、請求項1から
3のいずれか一つに記載の方法。
【請求項8】
前記
金属ワイヤの上に二つの方向から当たる変形の間隔は、前記
金属ワイヤの直径の約10倍であり、よって、波長が前記直径の約20倍となることを特徴とする、請求項1から
3のいずれか一つに記載の方法。
【請求項9】
前記
三次元構造は、80から90度オフセットされた方向から独立して被着され、その際に生成される波長が可能な限り大きい最小公倍数を有するように注意を払うことを特徴とする、請求項1から
3のいずれか一つに記載の方法。
【請求項10】
前記
金属ワイヤの視直径、すなわち長手方向における包絡円が、ワイヤソーのワイヤフィールドの作業張力において、実際のワイヤ直径よりも約8から約12μm、特に10μm、および/または応力が付与されない場合には8から24%、特に10から20%大きくなるように振幅を設定することを特徴とする、請求項1から
3のいずれか一つに記載の方法。
【請求項11】
ワイヤ材料の降伏比Re対Rmは、85から95%、特に90%に設定されることを特徴とする、請求項1から
3のいずれか一つに記載の方法。
【請求項12】
特に請求項1から
3のいずれか一つに記載の方法を用いて製造されるソーワイヤであって、前記ソーワイヤは、一つまたは複数の互いに対して角度をなす平面においてクリンプされ、ソーワイヤ材料の降伏比Re対Rmは、85から95%、特に90%であることを特徴とする、ソーワイヤ。
【請求項13】
曲げ半径は前記ソーワイヤの直径の1から2倍であり、前記
金属ワイヤ上に二つの方向から当たる変形の間隔は前記ソーワイヤの直径の5から15倍、特に10倍であり、波長は前記ソーワイヤの直径の10から30倍、特に20倍であることを特徴とする、請求項12に記載のソーワイヤ。
【請求項14】
クリンプされた前記ソーワイヤの外側における前記クリンピングの位置において、応力が残留引張応力となる前に、圧縮応力が表面の下20から40μmに達するように設定されることを特徴とする、請求項12に記載のソーワイヤ。
【請求項15】
引っ張られた前記ソーワイヤの引張強度Rmは、3000と4200の間、特に3200と4000、さらに好ましくは3400と3800MPaの間にあり、引っ張られた前記ソーワイヤの降伏強度は、2500と4000の間、特に2900と3800の間、好ましくは3000と3450MPaの間にあることを特徴とする、請求項1
2に記載のソーワイヤ。
【請求項16】
前記ソーワイヤは、0.12から0.17mmの直径、および三次元のクリンプ構造を有し、曲げ半径は0.24から0.34mmであり、振幅は0.14から0.2mmであり、波長は2と4mmの間であることを特徴とする、請求項12
に記載のソーワイヤ。
【国際調査報告】