(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】代用皮膚組成物ならびにそれを製造および使用する方法
(51)【国際特許分類】
C12N 5/10 20060101AFI20240822BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20240822BHJP
C12N 15/17 20060101ALI20240822BHJP
C12N 15/27 20060101ALI20240822BHJP
C12N 15/113 20100101ALI20240822BHJP
C12N 5/071 20100101ALI20240822BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240822BHJP
C12N 15/861 20060101ALI20240822BHJP
C12N 7/01 20060101ALI20240822BHJP
C12N 1/00 20060101ALI20240822BHJP
C12N 1/04 20060101ALI20240822BHJP
A61L 15/00 20060101ALI20240822BHJP
A61L 27/36 20060101ALI20240822BHJP
A61L 27/60 20060101ALI20240822BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20240822BHJP
G01N 33/68 20060101ALI20240822BHJP
A61J 3/00 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
C12N5/10 ZNA
C12N15/12
C12N15/17
C12N15/27
C12N15/113 Z
C12N5/071
C12N15/63 Z
C12N15/861 Z
C12N7/01
C12N1/00 G
C12N1/04
A61L15/00
A61L27/36 400
A61L27/36 300
A61L27/60
A61P17/02
G01N33/68
A61J3/00 301
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024533162
(86)(22)【出願日】2022-08-13
(85)【翻訳文提出日】2024-04-05
(86)【国際出願番号】 IB2022057587
(87)【国際公開番号】W WO2023017494
(87)【国際公開日】2023-02-16
(32)【優先日】2021-08-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524056927
【氏名又は名称】トリオヴァンス ホールディング リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(74)【代理人】
【識別番号】100221741
【氏名又は名称】酒井 直子
(74)【代理人】
【識別番号】100114926
【氏名又は名称】枝松 義恵
(72)【発明者】
【氏名】エスパルザ シルヴァ アナ ルイーザ
(72)【発明者】
【氏名】セグーラ パシェコ ブランカ アンジェリカ
【テーマコード(参考)】
2G045
4B065
4C047
4C081
【Fターム(参考)】
2G045AA25
2G045CB01
2G045DA36
4B065AA93X
4B065AA95X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065BB02
4B065BB19
4B065BB31
4B065BB32
4B065BC41
4B065BD09
4B065BD36
4C047CC30
4C047GG37
4C081AA02
4C081BA17
4C081CD34
4C081DA02
4C081DC01
4C081EA01
4C081EA11
(57)【要約】
重層表皮を含む代用皮膚組成物を本明細書において提供し、該重層表皮の細胞は、組換え成長因子および組換えインスリンを産生、例えば分泌する。いくつかの局面では、本開示はさらに、代用皮膚を製造する方法に関し、かつ、対象の処置のために、例えば創傷治癒のために、本組成物を使用する方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基底層、有棘層、顆粒層、および角質層を含む重層表皮を含む代用皮膚であって、
該重層表皮の細胞が、組換え成長因子および組換えインスリンを発現する、
前記代用皮膚。
【請求項2】
組換え成長因子および組換えインスリンが、重層表皮の細胞から分泌可能である、請求項1記載の代用皮膚。
【請求項3】
重層表皮が厚さ100~200μmである、請求項1または請求項2記載の代用皮膚。
【請求項4】
組換え成長因子および組換えインスリンを発現する重層表皮の細胞が、基底層の細胞を含む、請求項1~3のいずれか一項記載の代用皮膚。
【請求項5】
組換えインスリンが、組換えヒトインスリンであるかまたは組換えヒトインスリンを含む、請求項1~4のいずれか一項記載の代用皮膚。
【請求項6】
組換えインスリンが、
(i)SEQ ID NO:5に示されるアミノ酸配列;
(ii)SEQ ID NO:5と少なくとも85%、少なくとも90%、もしくは少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する機能性バリアント;または
(iii)A鎖およびB鎖を含む、(i)もしくは(ii)の2鎖形態
を含み、
任意で、該A鎖と該B鎖とがジスルフィド結合によって連結されている、
請求項1~5のいずれか一項記載の代用皮膚。
【請求項7】
組換えインスリンが、
(i)SEQ ID NO:5に示されるアミノ酸配列、または
(ii)SEQ ID NO:5と少なくとも85%、少なくとも90%、もしくは少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する機能性バリアント
をコードするポリヌクレオチドによってコードされる、請求項1~6のいずれか一項記載の代用皮膚。
【請求項8】
組換えインスリンが、SEQ ID NO:5に示される野生型インスリンと比較して改変ヒトプロインスリンのB鎖内の位置10にヒスチジンからアスパラギン酸への変異を含むAspB10インスリン類似体である、請求項1~7のいずれか一項記載の代用皮膚。
【請求項9】
エンドペプチダーゼArg31-Arg32切断部位またはエンドペプチダーゼLys64-Arg65切断部位の代わりに少なくとも1つのフューリン認識配列を含むプロインスリンをコードするポリヌクレオチドを含む、請求項1~8のいずれか一項記載の代用皮膚。
【請求項10】
少なくとも1つのフューリン認識配列が、エンドペプチダーゼArg31-Arg32切断部位およびエンドペプチダーゼLys64-Arg65切断部位の代わりにある、請求項9記載の代用皮膚。
【請求項11】
少なくとも1つのフューリン認識配列が、コンセンサス配列:
Xが任意のアミノ酸である、R-X-R-R(SEQ ID NO:8)、または
Xが任意のアミノ酸である、R-X-K-R(SEQ ID NO:9)
を含む、請求項9または請求項10記載の代用皮膚。
【請求項12】
少なくとも1つのフューリン認識配列が、RTKR(SEQ ID NO:10)またはRQKR(SEQ ID NO:42)である、請求項9~11のいずれか一項記載の代用皮膚。
【請求項13】
組換えインスリンが、
(i)SEQ ID NO:6に示されるアミノ酸配列;
(ii)SEQ ID NO:6と少なくとも85%、少なくとも90%、もしくは少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する機能性バリアント;または
(iii)A鎖およびB鎖を含む、(i)もしくは(ii)の2鎖形態
を有し、
任意で、該A鎖と該B鎖とがジスルフィド結合によって連結されている、
請求項1~12のいずれか一項記載の代用皮膚。
【請求項14】
組換えインスリンが、SEQ ID NO:6に示される配列;または、A鎖およびB鎖を含むSEQ ID NO:6の2鎖形態を含み、任意で、該A鎖と該B鎖とがジスルフィド結合によって連結されている、請求項1~13のいずれか一項記載の代用皮膚。
【請求項15】
組換えインスリンが、SEQ ID NO:36に示されるA鎖およびSEQ ID NO:41に示されるB鎖を含み、任意で、該A鎖と該B鎖とがジスルフィド結合によって連結されている、請求項1~14のいずれか一項記載の代用皮膚。
【請求項16】
組換えインスリンが、SEQ ID NO:2に示される配列と少なくとも85%もしくは少なくとも約85%、少なくとも90%もしくは少なくとも約90%、または少なくとも95%もしくは少なくとも約95%の配列同一性を有する配列を含むポリヌクレオチドによってコードされる、請求項1~15のいずれか一項記載の代用皮膚。
【請求項17】
組換えインスリンが、SEQ ID NO:2に示されるポリヌクレオチド配列を含む、請求項1~16のいずれか一項記載の代用皮膚。
【請求項18】
組換え成長因子が、上皮細胞成長因子(EGF)、エリスロポエチン(EPO)、線維芽細胞成長因子(FGF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、肝細胞成長因子(HGF)、インスリン様成長因子(IGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、形質転換成長因子αおよびβ、血管内皮成長因子(VEGF)、上皮細胞成長因子受容体(EGFR)、線維芽細胞成長因子受容体(FGFR)、ならびにそれらの任意のアイソフォームまたは選択的スプライシングされたバリアントからなる群より選択される、請求項1~17のいずれか一項記載の代用皮膚。
【請求項19】
組換え成長因子が、VEGFまたはそのアイソフォームもしくは選択的スプライシングされたバリアントである、請求項1~18のいずれか一項記載の代用皮膚。
【請求項20】
VEGFが、SEQ ID NO:4に示される配列と少なくとも85%もしくは少なくとも約85%、少なくとも90%もしくは少なくとも約90%、または少なくとも95%もしくは少なくとも約95%の配列同一性を有するポリヌクレオチド配列によってコードされる、請求項19記載の代用皮膚。
【請求項21】
VEGFが、SEQ ID NO:4に示される配列を含むポリヌクレオチド配列によってコードされる、請求項19または請求項20記載の代用皮膚。
【請求項22】
VEGFが、
SEQ ID NO:7に示される配列と少なくとも85%もしくは少なくとも約85%、少なくとも90%もしくは少なくとも約90%、または少なくとも95%もしくは少なくとも約95%の配列同一性を有するポリペプチド配列、または
シグナルペプチドを欠如するその配列
を含む、請求項19~21のいずれか一項記載の代用皮膚。
【請求項23】
VEGFが、
SEQ ID NO:7に示される配列、または
シグナルペプチドを欠如するその配列
を含む、請求項19~22のいずれか一項記載の代用皮膚。
【請求項24】
VEGFが、SEQ ID NO:44に示される配列と少なくとも85%もしくは少なくとも約85%、少なくとも90%もしくは少なくとも約90%、または少なくとも95%もしくは少なくとも約95%の配列同一性を有するポリペプチド配列を含む、請求項19~23のいずれか一項記載の代用皮膚。
【請求項25】
VEGFが、SEQ ID NO:44に示されるポリペプチド配列を含む、請求項19~24のいずれか一項記載の代用皮膚。
【請求項26】
組換え成長因子および組換えインスリンが、バイシストロン性エレメントによって分離された組換え成長因子をコードするポリヌクレオチドおよび組換えインスリンをコードするポリヌクレオチドを含むバイシストロン性発現カセットによってコードされる、請求項1~25のいずれか一項記載の代用皮膚。
【請求項27】
バイシストロン性エレメントがIRESである、請求項26記載の代用皮膚。
【請求項28】
組換え成長因子をコードするポリヌクレオチドおよび組換えインスリンをコードするポリヌクレオチドが、プロモーターと機能的に連結されている、請求項1~27のいずれか一項記載の代用皮膚。
【請求項29】
プロモーターが構成的プロモーターまたは誘導性プロモーターである、請求項28記載の代用皮膚。
【請求項30】
プロモーターがCAGプロモーターである、請求項28または請求項29記載の代用皮膚。
【請求項31】
組換え成長因子をコードするポリヌクレオチドが、バイシストロン性発現カセット内の組換えインスリンをコードするポリヌクレオチドの上流にある、請求項26~30のいずれか一項記載の代用皮膚。
【請求項32】
任意で管腔形成アッセイで評価した場合、重層表皮の細胞が、組換え成長因子または組換えインスリンのいずれかを単独で含むさらなる代用皮膚と比べてより大きな改善を血管新生再構築の1つまたは複数のマーカーにもたらすレベルで組換え成長因子および組換えインスリンを分泌する、請求項1~31のいずれか一項記載の代用皮膚。
【請求項33】
血管新生再構築の1つまたは複数のマーカーが、少なくとも3つのコード(chord)の結合部位として定義されるノードまたはユニオンの数における増加である、請求項32記載の代用皮膚。
【請求項34】
血管新生再構築の1つまたは複数のマーカーが、2つ以上のノードによって囲まれた閉回路として定義されるウェブの数における増加である、請求項32記載の代用皮膚。
【請求項35】
血管新生再構築の1つまたは複数のマーカーが、2つのノードを一緒に結合するコードとして定義される主セグメントの数における増加である、請求項32記載の代用皮膚。
【請求項36】
重層表皮の細胞が、定量化可能なレベルの組換え成長因子および組換えインスリンを継続的に分泌する、請求項1~35のいずれか一項記載の代用皮膚。
【請求項37】
重層表皮の細胞が、組換え成長因子および組換えインスリンを、最大2日もしくは約2日、最大3日もしくは約3日、最大4日もしくは約4日、最大5日もしくは約5日、最大6日もしくは約6日、最大7日もしくは約7日、最大8日もしくは約8日、最大9日もしくは約9日、最大10日もしくは約10日、最大11日もしくは約11日、最大12日もしくは約12日、最大13日もしくは約13日、または最大14日もしくは約14日にわたって継続的に分泌する、請求項1~36のいずれか一項記載の代用皮膚。
【請求項38】
重層表皮の細胞が、組換え成長因子および組換えインスリンを、最大1週間もしくは約1週間、最大2週間もしくは約2週間、最大3週間もしくは約3週間、最大1~2週間もしくは約1~2週間、または最大2~3週間もしくは約2~3週間にわたって継続的に分泌する、請求項1~37のいずれか一項記載の代用皮膚。
【請求項39】
重層表皮の細胞が、最大2日もしくは約2日、最大3日もしくは約3日、最大4日もしくは約4日、最大5日もしくは約5日、最大6日もしくは約6日、最大7日もしくは約7日、最大8日もしくは約8日、最大9日もしくは約9日、最大10日もしくは約10日、最大11日もしくは約11日、最大12日もしくは約12日、最大13日もしくは約13日、または最大14日もしくは約14日にわたって検出できる定量化可能なレベルの組換え成長因子およびインスリンまたはCペプチドを分泌する、請求項1~38のいずれか一項記載の代用皮膚。
【請求項40】
重層表皮の細胞が、最大1週間もしくは約1週間、最大2週間もしくは約2週間、最大3週間もしくは約3週間、最大1~2週間もしくは約1~2週間、または最大2~3週間もしくは約2~3週間にわたって検出できる定量化可能なレベルの組換え成長因子およびインスリンまたはCペプチドを分泌する、請求項1~39のいずれか一項記載の代用皮膚。
【請求項41】
重層表皮の細胞が、対象の皮膚における終末糖化産物(AGE)のレベルを低減するレベルの組換え成長因子および組換えインスリンを分泌する、請求項1~40のいずれか一項記載の代用皮膚。
【請求項42】
重層表皮の細胞がケラチノサイトから分化した細胞である、請求項1~41のいずれか一項記載の代用皮膚。
【請求項43】
ケラチノサイトがヒトケラチノサイトである、請求項42記載の代用皮膚。
【請求項44】
ケラチノサイトがHaCaTケラチノサイト細胞である、請求項42または請求項43記載の代用皮膚。
【請求項45】
組換えヒト成長因子および組換えインスリンをコードするポリヌクレオチドを含む、バイシストロン性発現カセット。
【請求項46】
組換えインスリンが、組換えヒトインスリンであるかまたは組換えヒトインスリンを含む、請求項45記載のバイシストロン性発現カセット。
【請求項47】
コードされる組換えインスリンが、
(i)SEQ ID NO:5に示されるアミノ酸配列を有する、または
(ii)SEQ ID NO:5と少なくとも85%、少なくとも90%、もしくは少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する機能性バリアントである、
請求項45または請求項46記載のバイシストロン性発現カセット。
【請求項48】
コードされる組換えインスリンが、SEQ ID NO:5に示されるアミノ酸配列を含む、請求項45~47のいずれか一項記載のバイシストロン性発現カセット。
【請求項49】
コードされる組換えインスリンが、SEQ ID NO:5に示される野生型インスリンと比較して改変ヒトプロインスリンのB鎖内の位置10にヒスチジンからアスパラギン酸への変異を含むAspB10インスリン類似体である、請求項45~48のいずれか一項記載のバイシストロン性発現カセット。
【請求項50】
組換えインスリンをコードするポリヌクレオチドが、エンドペプチダーゼArg31-Arg32切断部位またはエンドペプチダーゼLys64-Arg65切断部位の代わりに少なくとも1つのフューリン認識配列を含むプロインスリンをコードする、請求項45~49のいずれか一項記載のバイシストロン性発現カセット。
【請求項51】
少なくとも1つのフューリン認識配列が、エンドペプチダーゼArg31-Arg32切断部位およびエンドペプチダーゼLys64-Arg65切断部位の代わりにある、請求項50記載のバイシストロン性発現カセット。
【請求項52】
少なくとも1つのフューリン認識配列が、コンセンサス配列:
Xが任意のアミノ酸である、R-X-R-R(SEQ ID NO:8)、または
Xが任意のアミノ酸である、R-X-K-R(SEQ ID NO:9)
を含む、請求項50または請求項51記載のバイシストロン性発現カセット。
【請求項53】
少なくとも1つのフューリン認識配列が、RTKR(SEQ ID NO:10)またはRQKR(SEQ ID NO:42)である、請求項50~52のいずれか一項記載のバイシストロン性発現カセット。
【請求項54】
コードされる組換えインスリンが、
(i)SEQ ID NO:6に示されるアミノ酸配列を有する、または
(ii)SEQ ID NO:6と少なくとも85%、少なくとも90%、もしくは少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する機能性バリアントである、
請求項45~53のいずれか一項記載のバイシストロン性発現カセット。
【請求項55】
コードされる組換えインスリンが、SEQ ID NO:6に示される配列を含む、請求項45~54のいずれか一項記載のバイシストロン性発現カセット。
【請求項56】
組換えインスリンをコードするポリヌクレオチドが、SEQ ID NO:2に示される配列と少なくとも85%もしくは少なくとも約85%、少なくとも90%もしくは少なくとも約90%、または少なくとも95%もしくは少なくとも約95%の配列同一性を有する配列を含む、請求項45~55のいずれか一項記載のバイシストロン性発現カセット。
【請求項57】
組換えインスリンをコードするポリヌクレオチドが、SEQ ID NO:2に示される配列を含む、請求項45~56のいずれか一項記載のバイシストロン性発現カセット。
【請求項58】
コードされる組換え成長因子が、上皮細胞成長因子(EGF)、エリスロポエチン(EPO)、線維芽細胞成長因子(FGF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、肝細胞成長因子(HGF)、インスリン様成長因子(IGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、形質転換成長因子αおよびβ、血管内皮成長因子(VEGF)、上皮細胞成長因子受容体(EGFR)、線維芽細胞成長因子受容体(FGFR)、およびそれらの任意のアイソフォームまたは選択的スプライシングされたバリアントからなる群より選択される、請求項45~57のいずれか一項記載のバイシストロン性発現カセット。
【請求項59】
組換え成長因子が、VEGFまたはそのアイソフォームもしくは選択的スプライシングされたバリアントである、請求項45~58のいずれか一項記載のバイシストロン性発現カセット。
【請求項60】
成長因子をコードするポリヌクレオチドが、SEQ ID NO:4に示される配列と少なくとも85%もしくは少なくとも約85%、少なくとも90%もしくは少なくとも約90%、または少なくとも95%もしくは少なくとも約95%の配列同一性を有する配列を含む、請求項59記載のバイシストロン性発現カセット。
【請求項61】
成長因子をコードするポリヌクレオチドが、SEQ ID NO:4に示される配列を含む、請求項59または請求項60記載のバイシストロン性発現カセット。
【請求項62】
コードされるVEGFが、SEQ ID NO:7に示される配列と少なくとも85%もしくは少なくとも約85%、少なくとも90%もしくは少なくとも約90%、または少なくとも95%もしくは少なくとも約95%の配列同一性を有する配列、またはシグナルペプチドを欠如するその配列を含む、請求項59~61のいずれか一項記載のバイシストロン性発現カセット。
【請求項63】
コードされるVEGFが、SEQ ID NO:7に示される配列またはシグナルペプチドを欠如するその配列を含む、請求項59~62のいずれか一項記載のバイシストロン性発現カセット。
【請求項64】
コードされるVEGFが、SEQ ID NO:44に示される配列と少なくとも85%もしくは少なくとも約85%、少なくとも90%もしくは少なくとも約90%、または少なくとも95%もしくは少なくとも約95%の配列同一性を有する配列を含む、請求項59~63のいずれか一項記載のバイシストロン性発現カセット。
【請求項65】
コードされるVEGFが、SEQ ID NO:44に示される配列を含む、請求項59~64のいずれか一項記載のバイシストロン性発現カセット。
【請求項66】
組換え成長因子をコードするポリヌクレオチドおよび組換えインスリンをコードするポリヌクレオチドが、バイシストロン性エレメントによって分離されている、請求項45~65のいずれか一項記載のバイシストロン性発現カセット。
【請求項67】
バイシストロン性エレメントがIRESである、請求項66記載のバイシストロン性発現カセット。
【請求項68】
組換え成長因子をコードするポリヌクレオチドおよび組換えインスリンをコードするポリヌクレオチドが、プロモーターと機能的に連結されている、請求項45~67のいずれか一項記載のバイシストロン性発現カセット。
【請求項69】
組換え成長因子をコードするポリヌクレオチドおよび組換えインスリンをコードするポリヌクレオチドが、同じプロモーターと機能的に連結されている、請求項68記載のバイシストロン性発現カセット。
【請求項70】
プロモーターが、構成的プロモーターまたは誘導性プロモーターである、請求項68または請求項69記載のバイシストロン性発現カセット。
【請求項71】
プロモーターがCAGプロモーターである、請求項68~70のいずれか一項記載のバイシストロン性発現カセット。
【請求項72】
組換え成長因子をコードするポリヌクレオチドが、バイシストロン性発現カセットにおいて組換えインスリンをコードするポリヌクレオチドの上流にある、請求項68~71のいずれか一項記載のバイシストロン性発現カセット。
【請求項73】
請求項45~72のいずれか一項記載のバイシストロン性発現カセットを含む、ベクター。
【請求項74】
ウイルスベクターである、請求項73記載のベクター。
【請求項75】
ウイルスベクターがアデノウイルスベクターである、請求項74記載のベクター。
【請求項76】
非複製的5型アデノウイルスである、請求項73~75のいずれか一項記載のベクター。
【請求項77】
前記非複製的アデノウイルスが、機能性E1およびE3領域を欠如または欠失しており、任意で、該E1およびE3が遺伝子破壊を含む、請求項76記載のベクター。
【請求項78】
バイシストロン性発現カセットが、前記E1領域に挿入されている、請求項73~77のいずれか一項記載のベクター。
【請求項79】
(1)ケラチノサイトを重層表皮に分化させる段階であって、該重層表皮が基底層、有棘層、顆粒層、および角質層を含む、段階;ならびに
(2)代用皮膚を産生させるために請求項45~72のいずれか一項記載のバイシストロン性発現カセットまたは請求項73~78のいずれか一項記載のベクターを該重層表皮の細胞に導入する段階であって、該代用皮膚が、組換え成長因子および組換えインスリンを含む、段階
を含む、代用皮膚を製造する方法。
【請求項80】
導入する段階が、請求項73~78のいずれか一項記載のウイルスベクターの形質導入による、請求項79記載の方法。
【請求項81】
(1)ケラチノサイトを重層表皮に分化させる段階であって、該重層表皮が基底層、有棘層、顆粒層、および角質層を含む、段階;ならびに
(2)代用皮膚を産生させるために請求項73~78のいずれか一項記載のウイルスベクターを該重層表皮の細胞に形質導入する段階であって、該代用皮膚が、成長因子およびインスリンを含む、段階
を含む、代用皮膚を製造する方法。
【請求項82】
(1)ケラチノサイトを重層表皮に分化させる段階であって、該重層表皮が基底層、有棘層、顆粒層、および角質層を含む、段階;ならびに
(2)代用皮膚を産生させるために改変プロインスリンおよび成長因子をコードするアデノウイルスベクターを該重層表皮の細胞に形質導入する段階であって、該代用皮膚が、成長因子およびインスリンを含む、段階
を含む、代用皮膚を製造する方法。
【請求項83】
導入または形質導入する時点で、重層表皮の細胞がオクルディンおよびクローディンを発現する、請求項79~82のいずれか一項記載の方法。
【請求項84】
前記導入または形質導入する段階が、前記基底層の細胞内への導入または形質導入である、請求項79~83のいずれか一項記載の方法。
【請求項85】
段階(1)における分化の前に、ケラチノサイトを低カルシウム培地中で2週間、3週間、4週間、5週間、または6週間、任意で4週間または約4週間にわたって培養する段階を含む、請求項79~84のいずれか一項記載の方法。
【請求項86】
低カルシウム培地が、前記細胞を播種する時点でまたは前記培養する段階の際に0.01~0.1mMのカルシウム濃度を含む、請求項85記載の方法。
【請求項87】
低カルシウム培地が、前記細胞を播種する時点でまたは前記培養する段階の際に最大0.05mMまたは約0.05mMのカルシウム濃度を含む、請求項85または請求項86のいずれか一項記載の方法。
【請求項88】
低カルシウム培地が、前記細胞を播種する時点でまたは前記培養する段階の際に約0.03mMであるカルシウム濃度を含む、請求項85~87のいずれか一項記載の方法。
【請求項89】
低カルシウム培地が、上皮細胞成長因子(EGF)およびウシ下垂体抽出物(BPE)をさらに含む、請求項85~88のいずれか一項記載の方法。
【請求項90】
低カルシウム培地が、前記細胞を播種する時点でまたは前記培養する段階の際に0.05ng/mL~1ng/mlのEGFおよび1μg/ml~100μg/mlのBPEを含む、請求項89記載の方法。
【請求項91】
低カルシウム培地が、前記細胞を播種する時点でまたは前記培養する段階の際に0.2ng/mlまたは約0.2ng/mlのEGFおよび30μg/mlまたは約30μg/mlのBPEを含む、請求項89または請求項90記載の方法。
【請求項92】
ケラチノサイトがヒトケラチノサイトである、請求項79~91のいずれか一項記載の方法。
【請求項93】
ケラチノサイトがHaCaTケラチノサイト細胞である、請求項79~92のいずれか一項記載の方法。
【請求項94】
段階(1)が、細胞外マトリックス基質上でケラチノサイトを培養することを含む、請求項79~93のいずれか一項記載の方法。
【請求項95】
細胞外マトリックス基質がコラーゲンである、請求項94記載の方法。
【請求項96】
細胞外マトリックス基質がヒトへの使用の認定を受けている、請求項94または請求項95記載の方法。
【請求項97】
ケラチノサイトが、細胞外マトリックス基質上に5×10
6個/mlから50×10
6個/mlの間の細胞密度で播種される、請求項94~96のいずれか一項記載の方法。
【請求項98】
細胞密度が、10×10
6個/ml、20×10
6個/ml、30×10
6個/mlもしくは40×10
6個/ml、または約10×10
6個/ml、20×10
6個/ml、30×10
6個/mlもしくは40×10
6個/ml、または前記のいずれかの間の任意の値である、請求項97記載の方法。
【請求項99】
細胞密度が、20×10
6個/mlまたは約20×10
6個/mlである、請求項97または請求項98記載の方法。
【請求項100】
細胞外マトリックス基質が、トランズウェルインサート上にコーティングされている、請求項94~99のいずれか一項記載の方法。
【請求項101】
段階(1)における培養が約23~28日間である、請求項94~99のいずれか一項記載の方法。
【請求項102】
段階(1)における培養が、低カルシウム培地中での第1のインキュベーションおよび高カルシウム培地中での第2のインキュベーションを含む、請求項94~100のいずれか一項記載の方法。
【請求項103】
低カルシウム培地中での第1のインキュベーションが約3~5日間であり、高カルシウム培地中での第2のインキュベーションが約20~23日間である、請求項102記載の方法。
【請求項104】
低カルシウム培地が、0.01~0.1mMのカルシウムを含む、請求項102または請求項103記載の方法。
【請求項105】
高カルシウム培地が、1.0~3.0mMのカルシウムを含む、請求項102~104のいずれか一項記載の方法。
【請求項106】
低カルシウム培地が、0.03mMのカルシウムを含み、高カルシウム培地が、2.4mMのカルシウムを含む、請求項102~105のいずれか一項記載の方法。
【請求項107】
低カルシウム培地および高カルシウム培地が、EGFおよびBPEをさらに含む、請求項102~106のいずれか一項記載の方法。
【請求項108】
低カルシウム培地および高カルシウム培地が、0.05ng/mL~1ng/mlのEGFおよび1μg/ml~100μg/mlのBPEを含む、請求項107記載の方法。
【請求項109】
低カルシウム培地および高カルシウム培地が、0.2ng/mlまたは約0.2ng/mlのEGFおよび30μg/mlまたは約30μg/mlのBPEを含む、請求項107または請求項108のいずれか一項記載の方法。
【請求項110】
高カルシウム培地が、ヒドロコルチゾンをさらに含む、請求項102~109のいずれか一項記載の方法。
【請求項111】
高カルシウム培地が、0.1~1.0μg/mlのヒドロコルチゾンを含む、請求項110記載の方法。
【請求項112】
高カルシウム培地が、0.4μg/mlまたは約0.4μg/mlのヒドロコルチゾンを含む、請求項110または請求項111記載の方法。
【請求項113】
低カルシウム培地が無血清培地である、請求項85~112のいずれか一項記載の方法。
【請求項114】
高カルシウム培地が無血清培地である、請求項102~113のいずれか一項記載の方法。
【請求項115】
第2のインキュベーションの間に高カルシウム培地中でケラチノサイトを培養する際に気液界面が導入され、基底層の細胞が、高カルシウム培地に曝露されるが気体環境には曝露されない、請求項102~114のいずれか一項記載の方法。
【請求項116】
第1のインキュベーションの間に低カルシウム培地が毎日交換される、請求項102~115のいずれか一項記載の方法。
【請求項117】
第2のインキュベーションの間に高カルシウム培地が毎日交換される、請求項102~116のいずれか一項記載の方法。
【請求項118】
段階(2)の後で、凍結保護物質を用いて代用皮膚を製剤化する段階をさらに含む、請求項79~117のいずれか一項記載の方法。
【請求項119】
凍結保護物質が、ヒトアルブミンおよびグルコースを含む、請求項118記載の方法。
【請求項120】
段階(2)の後に代用皮膚を凍結させる段階をさらに含む、請求項79~119のいずれか一項記載の方法。
【請求項121】
代用皮膚に品質管理評価を行う段階をさらに含み、任意で、該品質管理評価が、凍結保護物質を用いて代用皮膚を製剤化する前に行われる、請求項79~120のいずれか一項記載の方法。
【請求項122】
段階(2)の完了から品質管理段階の間に最大24時間または約24時間が経過する、請求項121記載の方法。
【請求項123】
品質管理段階が、プロインスリン、改変プロインスリン、インスリン、インスリンバリアント、Cペプチド、成長因子、およびそれらのバリアントからなる群より選択される1つまたは複数のポリペプチドを検出することを含む、請求項121または請求項122記載の方法。
【請求項124】
吸収ガーゼ上に代用皮膚を配置する段階をさらに含む、請求項79~123のいずれか一項記載の方法。
【請求項125】
ケラチノサイトが不死化ケラチノサイトを含む、請求項79~124のいずれか一項記載の方法。
【請求項126】
ケラチノサイトが、HaCaT細胞株、NM1細胞株、もしくはNIKS細胞株からの細胞、および/またはHaCaT細胞株、NM1細胞株、もしくはNIKS細胞株に由来する細胞を含む、請求項79~125のいずれか一項記載の方法。
【請求項127】
請求項79~126のいずれか一項記載の方法のいずれかによって産生された、代用皮膚。
【請求項128】
請求項1~44または請求項127のいずれか一項記載の代用皮膚および凍結保護物質を含む、凍結保存された代用皮膚。
【請求項129】
凍結保護物質が、ヒトアルブミン(0.02g/mL)およびD-グルコース(0.09g/mL)を含む、請求項128記載の凍結保存された代用皮膚。
【請求項130】
請求項1~44もしくは請求項127のいずれか一項記載の代用皮膚または請求項128もしくは請求項129記載の凍結保存された代用皮膚と、吸収ガーゼとを含む代用皮膚ドレッシングであって、該凍結保存された代用皮膚が該吸収ガーゼ上に載置されている、前記代用皮膚ドレッシング。
【請求項131】
吸収ガーゼがワセリンペトロラタム(Vaseline Petrolatum)ガーゼである、請求項130記載の代用皮膚ドレッシング。
【請求項132】
凍結保存された代用皮膚のサイズが、約40~50cm
2、約40~45cm
2、または約45~50cm
2であり、吸収ガーゼのサイズが、約40~60cm
2、約45~60cm
2、約45~55cm
2である、請求項130または請求項131記載の代用皮膚ドレッシング。
【請求項133】
凍結保存された代用皮膚のサイズが、41cm
2または約41cm
2、42cm
2または約42cm
2、43cm
2または約43cm
2、44cm
2または約44cm
2、45cm
2または約45cm
2、46cm
2または約46cm
2、47cm
2または約47cm
2であり、吸収ガーゼのサイズが、約47cm
2または約47cm
2、48cm
2または約48cm
2、49cm
2または約49cm
2、50cm
2または約50cm
2、51cm
2または約51cm
2、52cm
2または約52cm
2、53cm
2または約53cm
2である、請求項130または請求項131記載の代用皮膚ドレッシング。
【請求項134】
無菌である、請求項1~44もしくは127のいずれか一項記載の代用皮膚、請求項128もしくは請求項129記載の凍結保存された代用皮膚、または請求項130~133のいずれか一項記載の代用皮膚ドレッシング。
【請求項135】
請求項1~44もしくは127のいずれか一項記載の代用皮膚、請求項128もしくは請求項129記載の凍結保存された代用皮膚、または請求項130~133のいずれか一項記載の代用皮膚ドレッシングを含む、容器。
【請求項136】
バッグである、請求項135記載の容器。
【請求項137】
無菌であり、かつ/または熱密封されている、請求項135または136記載の容器。
【請求項138】
バッグである、請求項135~137のいずれか一項記載の容器を含むパッケージ。
【請求項139】
無菌であり、かつ/または熱密封されている、請求項138記載のパッケージ。
【請求項140】
請求項1~44もしくは127のいずれか一項記載の代用皮膚または請求項128もしくは129記載の凍結保存された代用皮膚を吸収ガーゼ上に配置する段階を含む、代用皮膚ドレッシングを調製するための方法。
【請求項141】
吸収ガーゼがワセリンペトロラタムガーゼである、請求項140記載の方法。
【請求項142】
凍結保存された代用皮膚のサイズが、約40~50cm
2、約40~45cm
2、または約45~50cm
2であり、吸収ガーゼのサイズが、約40~60cm
2、約45~60cm
2、約45~55cm
2である、請求項140または請求項141記載の方法。
【請求項143】
凍結保存された代用皮膚のサイズが、41cm
2または約41cm
2、42cm
2または約42cm
2、43cm
2または約43cm
2、44cm
2または約44cm
2、45cm
2または約45cm
2、46cm
2または約46cm
2、47cm
2または約47cm
2であり、吸収ガーゼのサイズが、約47cm
2または約47cm
2、48cm
2または約48cm
2、49cm
2または約49cm
2、50cm
2または約50cm
2、51cm
2または約51cm
2、52cm
2または約52cm
2、53cm
2または約53cm
2である、請求項140または請求項141記載の方法。
【請求項144】
請求項1~44もしくは請求項127のいずれか一項記載の代用皮膚、請求項128もしくは請求項129記載の凍結保存された代用皮膚、または請求項130~133のいずれか一項記載の代用皮膚ドレッシングを創傷に適用する段階を含む、創傷治癒を促進する方法。
【請求項145】
代用皮膚が微生物感染を予防する、請求項144記載の方法。
【請求項146】
代用皮膚が、急性創傷および/または慢性創傷に適用される、請求項144または請求項145記載の方法。
【請求項147】
創傷が、びらん、開放創、潰瘍、および膿瘍からなる群より選択される、請求項144~146のいずれか一項記載の方法。
【請求項148】
代用皮膚が、糖尿病患者の創傷に適用される、請求項144~147のいずれか一項記載の方法。
【請求項149】
創傷が糖尿病性潰瘍である、請求項144~148のいずれか一項記載の方法。
【請求項150】
創傷が糖尿病性足潰瘍である、請求項144~149のいずれか一項記載の方法。
【請求項151】
創傷が静脈性下肢潰瘍である、請求項144~150のいずれか一項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年8月13日に出願された米国仮特許出願第63/233,196号の優先権を主張し、このそれぞれの内容は、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
配列表の参照による組み入れ
電子的な配列表(166312000140SEQLIST.xml;サイズ:65,924バイト;および作成日:2022年8月12日)の内容は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0003】
分野
本開示は、いくつかの局面では重層表皮を含む代用皮膚組成物に関し、該重層表皮の細胞は、組換え成長因子および組換えインスリンを産生、例えば分泌する。いくつかの局面では、本開示はさらに、代用皮膚の製造方法および対象の処置のために、例えば創傷治癒のために組成物を使用する方法に関する。
【背景技術】
【0004】
背景
代用皮膚または皮膚等価組成物は、それを必要とする対象において創傷治癒を引き起こすために有用である。しかし、このような組成物の創傷治癒能力は限られており、創傷治癒の間に組成物の数回の適用を必要とすることなどにより、対象の高いコンプライアンスを要する。最小限の対象介入で強力な創傷治癒を引き起こす、改良された組成物が必要である。このような必要を満たす組成物および方法が、本明細書に提供される。
【発明の概要】
【0005】
概要
いくつかの局面では、代用皮膚が本明細書に記載される。任意の態様のいくつかでは、代用皮膚は、基底層、有棘層、顆粒層、および角質層を含む重層表皮を含み、この重層表皮の細胞は、組換え成長因子および組換えインスリンを発現する。任意の態様のいくつかでは、組換え成長因子および組換えインスリンは、重層表皮の細胞から分泌可能である。任意の態様のいくつかでは、重層表皮は厚さ100~200μmである。任意の態様のいくつかでは、組換え成長因子および組換えインスリンを発現する重層表皮の細胞は、基底層の細胞を含む。任意の態様のいくつかでは、組換えインスリンは、組換えヒトインスリンであるか、または組換えヒトインスリンを含む。
【0006】
任意の態様のいくつかでは、組換えインスリンは、(i)SEQ ID NO:5に示されるアミノ酸配列、(ii)SEQ ID NO:5と少なくとも85%、少なくとも90%、もしくは少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する組換えインスリンの機能性バリアント;または(iii)A鎖およびB鎖を含む(i)もしくは(ii)の2鎖形態を有する。任意の態様のいくつかでは、A鎖とB鎖とはジスルフィド結合によって連結されている。任意の態様のいくつかでは、組換えインスリンは、(i)SEQ ID NO:5に示されるアミノ酸配列、または(ii)SEQ ID NO:5と少なくとも85%、少なくとも90%、もしくは少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する機能性バリアントをコードするポリヌクレオチドによってコードされる。任意の態様のいくつかでは、組換えインスリンは、SEQ ID NO:5に示される野生型インスリンと比較して改変ヒトプロインスリンのB鎖内の位置10にヒスチジンからアスパラギン酸への変異を含むAspB10インスリン類似体である。
【0007】
任意の態様のいくつかでは、代用皮膚は、プロインスリンをコードするポリヌクレオチドを含み、このプロインスリンは、エンドペプチダーゼArg31-Arg32切断部位またはエンドペプチダーゼLys64-Arg65切断部位の代わりに少なくとも1つのフューリン認識配列を含む。任意の態様のいくつかでは、少なくとも1つのフューリン認識配列は、エンドペプチダーゼArg31-Arg32切断部位およびエンドペプチダーゼLys64-Arg65切断部位の代わりにある。任意の態様のいくつかでは、少なくとも1つのフューリン認識配列は、コンセンサス配列R-X-R-R[ここでXは任意のアミノ酸である](SEQ ID NO:8)、またはR-X-K-R[ここでXは任意のアミノ酸である](SEQ ID NO:9)を含む。任意の態様のいくつかでは、少なくとも1つのフューリン切断部位は、RTKR(SEQ ID NO:10)またはRQKR(SEQ ID NO:42)である。
【0008】
任意の態様のいくつかでは、組換えインスリンは、(i)SEQ ID NO:6に示されるアミノ酸配列、(ii)SEQ ID NO:6と少なくとも85%、少なくとも90%、もしくは少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する機能性バリアント;または(iii)A鎖およびB鎖を含む(i)もしくは(ii)の2鎖形態を有する。任意の態様のいくつかでは、A鎖とB鎖とは、ジスルフィド結合によって連結されている。任意の態様のいくつかでは、組換えインスリンは、SEQ ID NO:6に示される配列、または、A鎖およびB鎖を含む(i)もしくは(ii)の2鎖形態を含む。任意の態様のいくつかでは、A鎖とB鎖とは、ジスルフィド結合によって連結されている。任意の態様のいくつかでは、組換えインスリンは、SEQ ID NO:36に示されるA鎖およびSEQ ID NO:41に示されるB鎖を含む。任意の態様のいくつかでは、A鎖とB鎖とは、ジスルフィド結合によって連結されている。
【0009】
任意の態様のいくつかでは、組換えヒトインスリンは、SEQ ID NO:2に示される配列と少なくとも85%もしくは少なくとも約85%、少なくとも90%もしくは少なくとも約90%、または少なくとも95%もしくは少なくとも約95%の配列同一性を有する配列を含むポリヌクレオチドによってコードされる。任意の態様のいくつかでは、組換えヒトインスリンは、SEQ ID NO:2に示される配列を含む。任意の態様のいくつかでは、組換え成長因子は、上皮細胞成長因子(EGF)、エリスロポエチン(EPO)、線維芽細胞成長因子(FGF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、肝細胞成長因子(HGF)、インスリン様成長因子(IGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、形質転換成長因子αおよびβ、血管内皮成長因子(VEGF)、上皮細胞成長因子受容体(EGFR)、線維芽細胞成長因子受容体(FGFR)、ならびにそれらの任意のアイソフォームまたは選択的スプライシングされたバリアントからなる群より選択される。任意の態様のいくつかでは、組換え成長因子は、VEGFまたはそのアイソフォームもしくは選択的スプライシングされたバリアントである。
【0010】
任意の態様のいくつかでは、VEGFは、SEQ ID NO:4に示される配列と少なくとも85%もしくは少なくとも約85%、少なくとも90%もしくは少なくとも約90%、または少なくとも95%もしくは少なくとも約95%の配列同一性を有するポリヌクレオチド配列によってコードされる。任意の態様のいくつかでは、VEGFは、SEQ ID NO:4に示される配列を含むポリヌクレオチド配列によってコードされる。任意の態様のいくつかでは、VEGFは、SEQ ID NO:7に示される配列と少なくとも85%もしくは少なくとも約85%、少なくとも90%もしくは少なくとも約90%、または少なくとも95%もしくは少なくとも約95%の配列同一性を有する配列、またはシグナルペプチドを欠如するその配列を含む。任意の態様のいくつかでは、VEGFは、SEQ ID NO:7に示される配列またはシグナルペプチドを欠如するその配列を含む。
【0011】
任意の態様のいくつかでは、代用皮膚はVEGFを含み、VEGFは、SEQ ID NO:44に示される配列と少なくとも85%もしくは少なくとも約85%、少なくとも90%もしくは少なくとも約90%、または少なくとも95%もしくは少なくとも約95%の配列同一性を有する配列を含む。任意の態様のいくつかでは、VEGFは、SEQ ID NO:44に示される配列を含む。任意の態様のいくつかでは、組換え成長因子および組換えインスリンは、バイシストロン性エレメントによって分離された、組換え成長因子をコードするポリヌクレオチドおよび組換えインスリンをコードするポリヌクレオチドを含むバイシストロン性発現カセットによってコードされる。
【0012】
任意の態様のいくつかでは、バイシストロン性エレメントはIRESである。任意の態様のいくつかでは、組換え成長因子をコードするポリヌクレオチドおよび組換えインスリンをコードするポリヌクレオチドは、プロモーターと機能的に連結されている。任意の態様のいくつかでは、プロモーターは、構成的プロモーターまたは誘導性プロモーターである。任意の態様のいくつかでは、プロモーターはCAGプロモーターである。任意の態様のいくつかでは、組換え成長因子をコードするポリヌクレオチドは、バイシストロン性発現カセット内の組換えインスリンをコードするポリヌクレオチドの上流にある。
【0013】
任意の態様のいくつかでは、重層表皮の細胞は、組換え成長因子または組換えインスリンのいずれかを単独で含む代用皮膚と比べてより大きな改善を血管新生再構築の1つまたは複数のマーカーにもたらすレベルで組換え成長因子および組換えインスリンを分泌する。任意の態様のいくつかでは、血管新生再構築の1つまたは複数のマーカーにおける改善は、管腔形成アッセイで評価することができる。任意の態様のいくつかでは、血管新生再構築のマーカーは、少なくとも3つのコード(chord)の結合部位として定義されるノードまたはユニオンの数における増加である。任意の態様のいくつかでは、血管新生再構築のマーカーは、2つ以上のノードによって囲まれた閉回路として定義されるウェブの数における増加である。任意の態様のいくつかでは、血管新生再構築のマーカーは、2つのノードを一緒に結合するコードとして定義される主セグメントの数における増加である。
【0014】
任意の態様のいくつかでは、重層表皮の細胞は、定量化可能なレベルの組換え成長因子および組換えインスリンを継続的に分泌する。任意の態様のいくつかでは、重層表皮の細胞は、組換え成長因子および組換えインスリンを、最大2日もしくは約2日、最大3日もしくは約3日、最大4日もしくは約4日、最大5日もしくは約5日、最大6日もしくは約6日、最大7日もしくは約7日、最大8日もしくは約8日、最大9日もしくは約9日、最大10日もしくは約10日、最大11日もしくは約11日、最大12日もしくは約12日、最大13日もしくは約13日、または最大14日もしくは約14日にわたって継続的に分泌する。任意の態様のいくつかでは、重層表皮の細胞は、組換え成長因子および組換えインスリンを、最大1週間もしくは約1週間、最大2週間もしくは約2週間、最大3週間もしくは約3週間、最大1~2週間もしくは約1~2週間、または最大2~3週間もしくは約2~3週間、継続的に分泌する。
【0015】
任意の態様のいくつかでは、重層表皮の細胞は、最大2日もしくは約2日、最大3日もしくは約3日、最大4日もしくは約4日、最大5日もしくは約5日、最大6日もしくは約6日、最大7日もしくは約7日、最大8日もしくは約8日、最大9日もしくは約9日、最大10日もしくは約10日、最大11日もしくは約11日、最大12日もしくは約12日、最大13日もしくは約13日、または最大14日もしくは約14日にわたって検出できる定量化可能なレベルの組換え成長因子およびCペプチドを分泌する。任意の態様のいくつかでは、重層表皮の細胞は、最大1週間もしくは約1週間、最大2週間もしくは約2週間、最大3週間もしくは約3週間、最大1~2週間もしくは約1~2週間、または最大2~3週間もしくは約2~3週間にわたって検出できる定量化可能なレベルの組換え成長因子およびCペプチドを分泌する。
【0016】
任意の態様のいくつかでは、重層表皮の細胞は、対象の皮膚における終末糖化産物(AGE)のレベルを低減するレベルの組換え成長因子および組換えインスリンを分泌する。任意の態様のいくつかでは、重層表皮の細胞は、ケラチノサイトから分化したものである。任意の態様のいくつかでは、ケラチノサイトはヒトケラチノサイトである。任意の態様のいくつかでは、ケラチノサイトはHaCaTケラチノサイト細胞である。
【0017】
いくつかの局面では、組換えヒト成長因子および組換えインスリンをコードするポリヌクレオチドを含むバイシストロン性発現カセットが、本明細書に提供される。任意の態様のいくつかでは、コードされる組換えインスリンは、(i)SEQ ID NO:5に示されるアミノ酸配列を有する、または(ii)SEQ ID NO:5と少なくとも85%、少なくとも90%、もしくは少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する機能性バリアントである。任意の態様のいくつかでは、組換えインスリンをコードするポリヌクレオチドは、(i)SEQ ID NO:5に示されるアミノ酸配列を含む、または(ii)SEQ ID NO:5と少なくとも85%、少なくとも90%、もしくは少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する機能性バリアントである。
【0018】
任意の態様のいくつかでは、コードされる組換えインスリンは、SEQ ID NO:5に示される野生型インスリンと比較して改変ヒトプロインスリンのB鎖内の位置10にヒスチジンからアスパラギン酸への変異を含むAspB10インスリン類似体である。任意の態様のいくつかでは、組換えインスリンをコードするポリヌクレオチドは、エンドペプチダーゼArg31-Arg32切断部位またはエンドペプチダーゼLys64-Arg65切断部位の代わりに少なくとも1つのフューリン認識配列を含むプロインスリンをコードする。任意の態様のいくつかでは、少なくとも1つのフューリン認識配列は、エンドペプチダーゼArg31-Arg32切断部位およびエンドペプチダーゼLys64-Arg65切断部位の代わりにある。任意の態様のいくつかでは、少なくとも1つのフューリン認識配列は、コンセンサス配列R-X-R-R[ここでXは任意のアミノ酸である](SEQ ID NO:8)またはR-X-K-R[ここでXは任意のアミノ酸である](SEQ ID NO:9)を含む。任意の態様のいくつかでは、少なくとも1つのフューリン切断部位は、RTKR(SEQ ID NO:10)またはRQKR(SEQ ID NO:42)である。
【0019】
任意の態様のいくつかでは、コードされる組換えインスリンは、(i)SEQ ID NO:6に示されるアミノ酸配列を有する、または(ii)SEQ ID NO:6と少なくとも85%、少なくとも90%、もしくは少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する機能性バリアントである。任意の態様のいくつかでは、コードされる組換えインスリンは、SEQ ID NO:6に示される配列を含む。任意の態様のいくつかでは、組換えインスリンをコードするポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:2に示される配列と少なくとも85%もしくは少なくとも約85%、少なくとも90%もしくは少なくとも約90%、または少なくとも95%もしくは少なくとも約95%の配列同一性を有する配列を含む。
【0020】
任意の態様のいくつかでは、組換えインスリンをコードするポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:2に示される配列を含む。任意の態様のいくつかでは、コードされる組換え成長因子は、上皮細胞成長因子(EGF)、エリスロポエチン(EPO)、線維芽細胞成長因子(FGF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、肝細胞成長因子(HGF)、インスリン様成長因子(IGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、形質転換成長因子αおよびβ、血管内皮成長因子(VEGF)、上皮細胞成長因子受容体(EGFR)、線維芽細胞成長因子受容体(FGFR)、およびそれらの任意のアイソフォームまたは選択的スプライシングされたバリアントからなる群より選択される。
【0021】
任意の態様のいくつかでは、組換え成長因子は、VEGFまたはそのアイソフォームもしくは選択的スプライシングされたバリアントである。任意の態様のいくつかでは、成長因子をコードするポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:4に示される配列と少なくとも85%もしくは少なくとも約85%、少なくとも90%もしくは少なくとも約90%、または少なくとも95%もしくは少なくとも約95%の配列同一性を有する配列を含む。任意の態様のいくつかでは、成長因子をコードするポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:4に示される配列を含む。任意の態様のいくつかでは、コードされるVEGFは、SEQ ID NO:7に示される配列と少なくとも85%もしくは少なくとも約85%、少なくとも90%もしくは少なくとも約90%、または少なくとも95%もしくは少なくとも約95%の配列同一性を有する配列、またはシグナルペプチドを欠如するその配列を含む。
【0022】
任意の態様のいくつかでは、コードされるVEGFは、SEQ ID NO:7に示される配列またはシグナルペプチドを欠如するその配列を含む。任意の態様のいくつかでは、コードされるVEGFは、SEQ ID NO:44に示される配列と少なくとも85%もしくは少なくとも約85%、少なくとも90%もしくは少なくとも約90%、または少なくとも95%もしくは少なくとも約95%の配列同一性を有する配列を含む。任意の態様のいくつかでは、コードされるVEGFは、SEQ ID NO:44に示される配列を含む。
【0023】
任意の態様のいくつかでは、組換え成長因子をコードするポリヌクレオチドおよび組換えインスリンをコードするポリヌクレオチドは、バイシストロン性エレメントによって分離されている。任意の態様のいくつかでは、バイシストロン性エレメントはIRESである。任意の態様のいくつかでは、組換え成長因子をコードするポリヌクレオチドおよび組換えインスリンをコードするポリヌクレオチドは、プロモーターと機能的に連結されている。任意の態様のいくつかでは、プロモーターは同じである。任意の態様のいくつかでは、プロモーターは、構成的プロモーターまたは誘導性プロモーターである。任意の態様のいくつかでは、プロモーターはCAGプロモーターである。任意の態様のいくつかでは、組換え成長因子をコードするポリヌクレオチドは、バイシストロン性発現カセットにおいて組換えインスリンをコードするポリヌクレオチドの上流にある。
【0024】
いくつかの局面では、本明細書に提供される任意の態様のバイシストロン性発現カセットを含むベクターが、本明細書に提供される。任意の態様のいくつかでは、ベクターはウイルスベクターである。任意の態様のいくつかでは、ウイルスベクターはアデノウイルスベクターである。任意の態様のいくつかでは、ベクターは非複製的5型アデノウイルスである。任意の態様のいくつかでは、非複製的アデノウイルスは、E1およびE3領域を欠如または欠失している。任意の態様のいくつかでは、バイシストロン性発現カセットはE1領域に挿入されている。
【0025】
いくつかの局面では、代用皮膚を製造する方法が、本明細書に提供される。任意の態様のいくつかでは、方法は、1)ケラチノサイトを重層表皮に分化させる段階であって、重層表皮が基底層、有棘層、顆粒層、および角質層を含む、段階;ならびに2)代用皮膚を産生させるために、提供される態様のいずれかのバイシストロン性発現カセットまたは提供される態様のいずれかのベクターを重層表皮の細胞に導入する段階であって、代用皮膚が、組換え成長因子および組換えインスリンを含む、段階を含む。任意の態様のいくつかでは、導入する段階は、提供される態様のいずれかのウイルスベクターの形質導入による。
【0026】
いくつかの局面では、代用皮膚を製造する方法が、本明細書に提供される。任意の態様のいくつかでは、方法は、1)ケラチノサイトを重層表皮に分化させる段階であって、重層表皮が基底層、有棘層、顆粒層、および角質層を含む、段階;ならびに2)代用皮膚を産生させるために、提供される態様のいずれかのウイルスベクターを重層表皮の細胞に形質導入する段階であって、代用皮膚が、成長因子およびインスリンを含む、段階を含む。
【0027】
いくつかの局面では、代用皮膚を製造する方法が、本明細書に提供される。任意の態様のいくつかでは、方法は、1)ケラチノサイトを重層表皮に分化させる段階であって、重層表皮が基底層、有棘層、顆粒層、および角質層を含む、段階;ならびに2)代用皮膚を産生させるために改変プロインスリンおよび成長因子をコードするアデノウイルスベクターを重層表皮の細胞に形質導入する段階であって、代用皮膚が、成長因子およびインスリンを含む、段階を含む。
【0028】
任意の態様のいくつかでは、導入または形質導入する時点で、重層表皮の細胞は、オクルディンおよびクローディンを発現する。任意の態様のいくつかでは、基底層の細胞は、導入または形質導入される。任意の態様のいくつかでは、段階1)における分化の前に、方法は、基底層を培養するためにケラチノサイトを低カルシウム培地中で2週間、3週間、4週間、5週間、または6週間培養する段階を含む。任意の態様のいくつかでは、段階1)における分化の前に、方法は、基底層を培養するためにケラチノサイトを低カルシウム培地中で4週間または約4週間培養する段階を含む。
【0029】
任意の態様のいくつかでは、低カルシウム培地は、前記細胞を播種する時点でまたは前記培養する段階の際に0.01~0.1mMのカルシウム濃度を含む。任意の態様のいくつかでは、低カルシウム培地は、前記細胞を播種する時点でまたは前記培養する段階の際に最大0.05mMまたは約0.05mMのカルシウム濃度を含む。任意の態様のいくつかでは、低カルシウム培地は、前記細胞を播種する時点でまたは前記培養する段階の際に約0.03mMであるカルシウム濃度を含む。
【0030】
任意の態様のいくつかでは、低カルシウム培地は、上皮細胞成長因子(EGF)およびウシ下垂体抽出物(BPE)をさらに含む。任意の態様のいくつかでは、低カルシウム培地は、前記細胞を播種する時点でまたは前記培養する段階の際に最大1ng/mlもしくは約1ng/mlのEGFおよび最大100μg/mlもしくは約100μg/mlのBPEを含む。任意の態様のいくつかでは、低カルシウム培地は、前記細胞を播種する時点でまたは前記培養する段階の際に最大0.2ng/mlもしくは約0.2ng/mlのEGFおよび最大30μg/mlもしくは約30μg/mlのBPEを含む。任意の態様のいくつかでは、ケラチノサイトはヒトケラチノサイトである。任意の態様のいくつかでは、ケラチノサイトはHaCaTケラチノサイト細胞である。
【0031】
任意の態様のいくつかでは、段階1)は、細胞外マトリックス基質上でケラチノサイトを培養することを含む。任意の態様のいくつかでは、細胞外マトリックス基質はコラーゲンである。任意の態様のいくつかでは、細胞外マトリックス基質は、ヒトへの使用の認定を受けている。任意の態様のいくつかでは、ケラチノサイトは、細胞外マトリックス基質上に5×106個/mlから50×106個/mlの間の細胞密度で播種される。任意の態様のいくつかでは、細胞密度は、10×106個/ml、20×106個/ml、30×106個/mlもしくは40×106個/ml、または約10×106個/ml、20×106個/ml、30×106個/mlもしくは40×106個/ml、または前記のいずれかの間の任意の値である。任意の態様のいくつかでは、細胞密度は、20×106個/mlまたは約20×106個/mlである。任意の態様のいくつかでは、細胞外マトリックス基質は、トランズウェルインサート上にコーティングされている。
【0032】
任意の態様のいくつかでは、段階(1)における培養は、約23~28日間である。任意の態様のいくつかでは、段階(1)における培養は、低カルシウム培地中での第1のインキュベーションおよび高カルシウム培地中での第2のインキュベーションを含む。任意の態様のいくつかでは、低カルシウム培地中での第1のインキュベーションは約3~5日間であり、高カルシウム培地中での第2のインキュベーションは、約20~23日間である。任意の態様のいくつかでは、低カルシウム培地は、0.01~0.1mMのカルシウムを含む。任意の態様のいくつかでは、高カルシウム培地は、1.0~3.0mMを含む。任意の態様のいくつかでは、低カルシウム培地は、0.03mMのカルシウムを含み、高カルシウム培地は、2.4mMのカルシウムを含む。
【0033】
任意の態様のいくつかでは、低カルシウム培地および高カルシウム培地は、EGFおよびBPEをさらに含む。任意の態様のいくつかでは、低カルシウム培地および高カルシウム培地は、0.05ng/mL~1ng/mlのEGFおよび1μg/ml~100μg/mlのBPEを含む。任意の態様のいくつかでは、低カルシウム培地および高カルシウム培地は、0.2ng/mlまたは約0.2ng/mlのEGFおよび30μg/mlまたは約30μg/mlのBPEを含む。任意の態様のいくつかでは、高カルシウム培地は、ヒドロコルチゾンをさらに含む。
【0034】
任意の態様のいくつかでは、高カルシウム培地は、0.1~1.0μg/mlのヒドロコルチゾンを含む。任意の態様のいくつかでは、高カルシウム培地は、0.4μg/mlまたは約0.4μg/mlのヒドロコルチゾンを含む。任意の態様のいくつかでは、低カルシウム培地は無血清培地である。任意の態様のいくつかでは、高カルシウム培地は無血清培地である。
【0035】
任意の態様のいくつかでは、第2のインキュベーションの間に高カルシウム培地中でケラチノサイトを培養する際に気液界面が導入され、その際、基底層の細胞は、該高培養培地に曝露されるが、気体環境には曝露されない。任意の態様のいくつかでは、低カルシウム培地は、第1のインキュベーションの間に毎日交換される。任意の態様のいくつかでは、高カルシウム培地は、第2のインキュベーションの間に毎日交換される。
【0036】
任意の態様のいくつかでは、段階2)の後で、方法は、凍結保護物質を用いて代用皮膚を製剤化する段階をさらに含むことができる。任意の態様のいくつかでは、凍結保護物質は、ヒトアルブミンおよびグルコースを含む。任意の態様のいくつかでは、提供される方法は、段階2)の後に代用皮膚を凍結させる段階をさらに含む。任意の態様のいくつかでは、提供される方法は、代用皮膚に品質管理評価を行う段階をさらに含むことができる。任意の態様のいくつかでは、品質管理評価は、凍結保護物質を用いて代用皮膚を製剤化する前に行われる。任意の態様のいくつかでは、段階2)の完了から品質管理段階の間に最大24時間または約24時間が経過する。任意の態様のいくつかでは、品質管理段階は、プロインスリン、改変プロインスリン、インスリン、インスリンバリアント、成長因子、およびそれらのバリアントからなる群より選択される1つまたは複数のポリペプチドを検出することを含む。
【0037】
任意の態様のいくつかでは、提供される方法は、吸収ガーゼ上に代用皮膚を配置する段階をさらに含むことができる。任意の態様のいくつかでは、ケラチノサイトは、不死化ケラチノサイトを含む。任意の態様のいくつかでは、ケラチノサイトは、HaCaT細胞株、NM1細胞株、もしくはNIKS細胞株からの細胞、および/またはHaCaT細胞株、NM1細胞株、もしくはNIKS細胞株に由来する細胞を含む。
【0038】
いくつかの局面では、提供される方法のいずれかによって産生された代用皮膚が、本明細書に提供される。いくつかの局面では、提供される態様のいずれかの代用皮膚および凍結保護物質を含む凍結保存された代用皮膚が、本明細書に提供される。任意の態様のいくつかでは、凍結保護物質は、ヒトアルブミン(0.02g/mL)およびD-グルコース(0.09g/mL)を含む。
【0039】
いくつかの局面では、提供される態様のいずれかの代用皮膚または提供される態様のいずれかの凍結保存された代用皮膚と、吸収ガーゼとを含む代用皮膚が本明細書に提供され、該凍結保存された代用皮膚は、吸収ガーゼ上に載置されている。任意の態様のいくつかでは、吸収ガーゼはワセリンペトロラタム(Vaseline Petrolatum)ガーゼである。任意の態様のいくつかでは、凍結保存された代用皮膚のサイズは、約40~50cm2、約40~45cm2、または約45~50cm2であり、吸収ガーゼのサイズは、約40~60cm2、約45~60cm2、約45~55cm2である。任意の態様のいくつかでは、凍結保存された代用皮膚のサイズは、41cm2または約41cm2、42cm2または約42cm2、43cm2または約43cm2、44cm2または約44cm2、45cm2または約45cm2、46cm2または約46cm2、47cm2または約47cm2であり、吸収ガーゼのサイズは、約47cm2または約47cm2、48cm2または約48cm2、49cm2または約49cm2、50cm2または約50cm2、51cm2または約51cm2、52cm2または約52cm2、53cm2または約53cm2である。任意の態様のいくつかでは、提供される態様のいずれかの凍結保存された代用皮膚または提供される態様のいずれかの代用皮膚ドレッシングは、無菌であることができる。
【0040】
いくつかの局面では、代用皮膚を含む容器が、本明細書に提供される。任意の態様のいくつかでは、容器は、提供される態様のいずれかの代用皮膚、提供される態様のいずれかの凍結保存された代用皮膚、または提供される態様のいずれかの代用皮膚ドレッシングを含むことができる。任意の態様のいくつかでは、容器はバッグである。任意の態様のいくつかでは、容器は無菌であり、かつ/または熱密封されている。
【0041】
いくつかの局面では、提供される態様のいずれかの容器を含むパッケージが、本明細書に提供される。任意の態様のいくつかでは、パッケージはバッグである。任意の態様のいくつかでは、パッケージは無菌であり、かつ/または熱密封されている。
【0042】
いくつかの局面では、代用皮膚ドレッシングを調製するための方法が、本明細書に提供される。任意の態様のいくつかでは、方法は、提供される態様のいずれかの代用皮膚または提供される態様のいずれかの凍結保存された代用皮膚を吸収ガーゼ上に配置する段階を含む。任意の態様のいくつかでは、吸収ガーゼはワセリンペトロラタムガーゼである。
【0043】
任意の態様のいくつかでは、凍結保存された代用皮膚のサイズは、約40~50cm2、約40~45cm2、または約45~50cm2であり、吸収ガーゼのサイズは、約40~60cm2、約45~60cm2、約45~55cm2である。任意の態様のいくつかでは、凍結保存された代用皮膚のサイズは、41cm2または約41cm2、42cm2または約42cm2、43cm2または約43cm2、44cm2または約44cm2、45cm2または約45cm2、46cm2または約46cm2、47cm2または約47cm2であり、吸収ガーゼのサイズは、約47cm2または約47cm2、48cm2または約48cm2、49cm2または約49cm2、50cm2または約50cm2、51cm2または約51cm2、52cm2または約52cm2、53cm2または約53cm2である。
【0044】
いくつかの局面では、創傷治癒を促進する方法が、本明細書に提供される。任意の態様のいくつかでは、提供される方法のいずれかは、提供される態様のいずれかの代用皮膚、提供される態様のいずれかの凍結保存された代用皮膚、または提供される態様のいずれかの代用皮膚ドレッシングを創傷に適用する段階を含む。
【0045】
任意の態様のいくつかでは、代用皮膚は微生物感染を予防する。任意の態様のいくつかでは、代用皮膚は、急性創傷および/または慢性創傷に適用される。
【0046】
任意の態様のいくつかでは、創傷は、びらん、開放創、潰瘍、および膿瘍からなる群より選択される。任意の態様のいくつかでは、代用皮膚は、糖尿病患者の創傷に適用される。任意の態様のいくつかでは、創傷は糖尿病性潰瘍である。任意の態様のいくつかでは、創傷は糖尿病性足潰瘍である。任意の態様のいくつかでは、創傷は静脈性下肢潰瘍である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図1A】
図1Aは、重層表皮を含む代用皮膚の製造方法に関与する代表的な段階を描く略図を示す。
【
図1B】
図1Bは、基質上で培養した25日目の、パラフィン包埋しヘマトキシリンエオジン染色した代用皮膚の代表例を示し、図中、分化したケラチノサイトによって形成された角質層、顆粒層、有棘層、および基底層を示す。
【
図2】
図2は、ウイルスベクター、ならびに成長因子、インスリン、および調節エレメントを含む例示的な発現構築物の図解を示す。
【
図3】
図3Aは、重層表皮を含む代用皮膚からのタンパク質放出のインビトロ研究において1日目、4日目、および6日目に検出されたCペプチドの平均レベル(ng/mL)を示す。
図3Bは、重層表皮を含む代用皮膚からのタンパク質放出のインビトロ研究において1日目、4日目、および7日目に検出されたVEGFの平均レベル(ng/mL)を示す。実験を3つ組(n=3)で行った。
【
図4】
図4A~
図4Cは、内皮細胞管腔形成アッセイでVEGF(MOI=12)、インスリン(MOI=24)、またはVEGFとインスリンとの組み合わせ(それぞれMOI=12およびMOI=24)に応答する創傷治癒のマーカーを示す。
図4Aは、陰性および陽性対照、VEGF、インスリン、またはVEGF+インスリンに応答して観察されたウェブの数を示す。
図4Bは、陰性および陽性対照、VEGF、インスリン、またはVEGF+インスリンに応答して観察されたノードの数を示す。
図4Cは、陰性および陽性対照、VEGF、インスリン、またはVEGF+インスリンに応答して観察された主セグメントの数を示す。実験を3つ組で行い、データを平均±標準偏差として示す。
【
図5】
図5Aは、標準的な創傷ドレッシングで処置された健康なラットおよび糖尿病ラット、ならびにVEGFおよびインスリンの両方を分泌する代用皮膚で処置された糖尿病ラットにおける21日間にわたる開放創面積のパーセントを示す。各群に合計7匹のラットがおり、データを平均±標準偏差として示す。
図5Bは、標準的な創傷ドレッシングで処置されたまたはVEGF/インスリン代用皮膚で処置された健康ラットおよび糖尿病ラットの皮膚における創傷開始(1日目)および創傷閉鎖の程度(21日目)の代表的な画像を示す。
【
図6】
図6は、ガーゼドレッシングで処置された健康なラット(左)、ガーゼドレッシングで処置された糖尿病ラット(中央)、およびVEGF/インスリン代用皮膚で処置された糖尿病ラット(右)における創傷開始後21日目のラット創傷のパラフィン包埋ヘマトキシリンエオジン染色切片の代表的な画像を示す。
【
図7】
図7Aは、ガーゼドレッシングで処置された健康なブタ(n=3)および糖尿病ブタ(n=3)、ならびにVEGF/インスリン代用皮膚で28日間処置された糖尿病ブタ(n=3)の間の創傷面積(cm
2)の比較を示す。
図7Bは、ガーゼドレッシングで処置された糖尿病ブタおよびVEGF/インスリン代用皮膚で52日間処置された糖尿病ブタの間の創傷面積(cm
2)の比較を示す。データを平均±標準偏差として提示する。
【
図8】
図8は、ガーゼドレッシングで処置された健康ブタ(上)および糖尿病ブタ(中央)、ならびにVEGF/インスリン代用皮膚で処置された糖尿病ブタ(下)における創傷の代表的な画像を示す。
【
図9】
図9は、創傷開始後1日目および7日目のガーゼドレッシングで処置された糖尿病ブタ(上)およびVEGF/インスリン代用皮膚で処置された糖尿病ブタ(下)の創傷面積の代表的な画像を示す。
【
図10】ガーゼドレッシングで処置された健康ブタおよび糖尿病ブタ、ならびにVEGF/インスリン代用皮膚で処置された糖尿病ブタの創傷開始前および創傷開始後11日目のグルコースレベル(mg/dL)を示す。データを平均±標準偏差(n=3)として提示する。
【
図11】
図11は、ガーゼドレッシングで処置された健康ブタおよび糖尿病ブタ、ならびにVEGF/インスリン代用皮膚で処置された糖尿病ブタから創傷開始時点および創傷治癒時点で採取された皮膚試料における終末糖化産物(AGE)のレベル(ng/mgタンパク質)を示す。データを平均±標準偏差(n=3)として提示する。
【
図12】
図12は、HaLow細胞(ウシ胎仔血清を有しない低カルシウム培地中で成長したHaCat細胞)を培養で増殖させた後の当該細胞の細胞遺伝学的分析に対応するカリオグラムを示す。
【
図13】
図13は、hEGFを発現しているアデノウイルス(Ad-CMV-hEGF)を形質導入された代用皮膚におけるヒト上皮細胞成長因子(hEGF)の発現の定量化を示すグラフを示す。非形質導入代用皮膚を実験対照として包含した。結果を繰り返しの平均±SEMとして表現する。*は、対照と比較してp<0.05。
【発明を実施するための形態】
【0048】
詳細な説明
重層表皮を含む代用皮膚の組成物であって、重層表皮の細胞から組換え成長因子および組換えインスリンが分泌可能である組成物が、本明細書に提供される。いくつかの局面では、重層表皮を含む代用皮膚を製造する方法であって、その細胞が、組換え成長因子および組換えインスリンを産生する、例えば分泌する、方法が、本明細書に提供される。他の局面では、糖尿病対象などの創傷治癒を必要とする対象を処置する方法が、本明細書に提供される。
【0049】
創傷治癒は、複雑なプロセスであり、ある特定の患者集団、例えば糖尿病対象において、障害されている。糖尿病対象の高い血中グルコースレベルは、終末糖化産物(AGE)の形成を促進する。AGEは、皮膚の構造と血管系の両方に変化を引き起こし、非糖尿病対象と比べて創傷治癒の遅延または創傷閉鎖までの時間の延長をもたらす。創傷治癒過程をさらに複雑にすることに、糖尿病患者は、感染症、例えば、細菌および/または真菌感染症に罹りやすい。
【0050】
ある特定の代用皮膚組成物が、創傷治癒用途に、具体的には糖尿病性足潰瘍を処置するために、FDAによる承認を取得している。現在利用可能な代用皮膚のいくつかの制限として、高額な費用、複数回の適用の必要性、および創傷治癒過程の重要な構成要素である適切な瘢痕化を促進または達成できないなどによる限定された有効性が挙げられる。これに対して、本明細書に提供される代用皮膚組成物は、わずかな適用で、糖尿病対象において、瘢痕形成を含めた創傷治癒を促進することができる。いくつかの場合、非糖尿病対象において観察されるものと同等な創傷治癒(例えば、創傷閉鎖までの時間)をもたらすのに、わずか1回の適用しか必要ない。さらなる利点では、本明細書に提供される代用皮膚は、微生物感染を防ぐことができ、それにより創傷治癒過程への任意のさらなる合併症を阻止することができる。
【0051】
本明細書に提供される代用皮膚は、重層表皮を形成する分化したケラチノサイトから構成される。重層表皮の基底層の細胞に、成長因子およびインスリンをコードする組換えポリヌクレオチドを形質導入することにより、重層表皮の細胞からの成熟型の成長因子およびインスリンの分泌が容易になる。代用皮膚によって分泌されるVEGFおよびインスリンのレベルは、それぞれ、報告されている腫瘍誘発または全身グルコース減少を引き起こすのに必要なレベルよりも低い。その代わり、代用皮膚から分泌可能なレベルのVEGFとインスリンの組み合わせは、VEGFまたはインスリンのいずれか単独より大幅に血管新生を強力に促進することができる。この組み合わせは、対象の皮膚中のAGEの量を減少させることもできる。さらに、成長因子およびインスリンの分泌レベルは、少なくとも7日間にわたって持続することができ、それにより、この創傷治癒の組み合わせの持続放出を提供することができる。
【0052】
本出願において言及される特許文書、科学論文およびデータベースを含むすべての刊行物は、あたかも各々個々の刊行物が個別に参照により組み入れられるのと同じ程度まで、すべての目的でその全体が参照により組み入れられる。本明細書に示される定義が、参照により本明細書に組み入れられる特許、出願、公開出願および他の刊行物に示される定義と相反するか、または別の形で一致しない場合は、本明細書に示される定義が、参照により本明細書に組み入れられる定義よりも優先される。
【0053】
本明細書において用いられるセクションの見出しは、構成を目的としたものにすぎず、記載されている主題を限定するものと解釈されるべきではない。
【0054】
I. 定義
別途定義される場合を除き、本明細書において使用されるすべての専門用語、表記法、ならびに他の技術用語および科学用語または用語法は、請求項に記載されている主題が関係する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有することが意図される。いくつかの場合では、一般的に理解されている意味を有する用語が、明快さのために、かつ/または即座の参照のために本明細書において定義され、そして、そのような定義が本明細書に含まれることは、当技術分野において一般に理解されていることを超える実質的な違いを表すものと必ずしも解釈されなければならないことはない。
【0055】
本明細書において使用される場合、単数形の「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、文脈がそうではないことを明確に示す場合を除き、複数形の指示対象を包含する。例えば、「1つの(a)」または「1つの(an)」は、「少なくとも1つの」または「1つまたは複数の」を意味する。本明細書に記載される様々な局面および変形は、様々な局面および変形「からなる」こと、ならびに/あるいは様々な局面および変形「から本質的になる」ことを包含するものと理解される。
【0056】
本開示の全体を通して、請求項に記載されている主題の様々な局面が範囲形式で提示される。範囲形式での記載は、単に便宜および簡潔性のためであり、請求項に記載されている主題の範囲に対する柔軟性のない限定として解釈されるべきではないと理解しなければならない。したがって、範囲の記載は、可能な部分範囲だけでなく、その範囲に含まれる個々の数値もすべて具体的に開示していると見なされるべきである。例えば、値の範囲が与えられる場合、その範囲の上限と下限の間のそれぞれの中間の値、およびその指定された範囲における任意の他の指定された値または中間の値が、請求項に記載されている主題の範囲内に包含されることが理解される。これらのより小さい範囲の上限および下限がこれらのより小さい範囲に独立して含まれてもよく、これらはまた、指定された範囲における任意の具体的に除外された限界点に従うことを条件にして、請求項に記載されている主題の範囲内に包含される。指定された範囲が限界点の一方または両方を含む場合、そのような含まれた限界点のどちらかまたは両方を除外する範囲もまた、請求項に記載されている主題の範囲内に包含される。このことは、範囲の広さにかかわらず、当てはまる。
【0057】
「約」という用語は、本明細書において使用される場合、この技術分野の当業者に良く知られているそれぞれの値についての通常の誤差範囲のことを指す。本明細書における「約」の付記された値またはパラメーターについての言及は、その値またはパラメーターそのものに向けられる態様を包含する(記載する)。例えば、「約X」に言及している記載は、「X」の記載を包含する。「約」という用語はまた、変動を包含することもでき、最大±5%であることができるが、±4%、3%、2%、1%などであることもできる。「約」という用語によって修飾されているか否かにかかわらず、特許請求の範囲は、量に対する均等物を包含する。
【0058】
「発現」という用語は、本明細書において使用される場合、ポリペプチドが遺伝子などの核酸分子のコード配列に基づいて産生されるプロセスのことを指す。このプロセスは、転写、転写後制御、転写後修飾、翻訳、翻訳後制御、翻訳後修飾、またはそれらの任意の組み合わせを含み得る。
【0059】
本明細書において使用される場合、「対象」は、任意の生きている生物、例えば、ヒトおよび他の哺乳動物を含む。哺乳動物には、ヒト、ならびに飼育動物、競技用動物、齧歯類およびペットを含むヒト以外の動物が含まれるが、これらに限定されない。
【0060】
本明細書において使用される場合、「機能的に連結される(operably linked)」または「機能的に連結される(operatively linked)」は、適切な分子(例えば、転写活性化因子タンパク質)が調節配列に結合している場合に遺伝子発現を可能にするような、DNA配列(例えば、異種核酸)などの成分と調節配列との会合のことを指す。よって、このことは、記載される成分が、意図される様式で機能することを可能にする関係性にあることを意味する。
【0061】
本明細書において使用される場合、「配列同一性パーセント(%)」および「同一性パーセント」は、ヌクレオチド配列(参照ヌクレオチド配列)またはアミノ酸配列(参照アミノ酸配列)に関して使用される場合、それぞれ、最大の配列同一性パーセントを達成するように配列をアライメントし、必要ならば、ギャップを導入した後の、参照配列中の残基と同一である候補配列中のヌクレオチド残基またはアミノ酸残基の割合として定義される。配列同一性パーセントを決定するためのアライメントは、当技術分野における技能の範囲内にある様々な方法で、例として、BLAST、BLAST-2、ALIGNまたはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなどの公開されているコンピュータソフトウェアを使用して達成することができる。当業者は、最大のアライメントを比較されている配列の全長にわたって達成するために必要な任意のアルゴリズムを含め、配列をアライメントするための適切なパラメーターを決定することができる。
【0062】
「ベクター」という用語は、本明細書において使用される場合、それが連結されている別の核酸を増幅可能な核酸分子のことを指す。この用語は、自己複製する核酸構造物としてのベクターだけでなく、それが導入された宿主細胞のゲノムに組み込まれるベクターも含む。ある特定のベクターは、機能的に連結されている核酸の発現を指令可能である。そのようなベクターは、本明細書において「発現ベクター」と称される。中でも、ベクターは、ウイルスベクター、例えばアデノウイルスベクターである。
【0063】
「代用皮膚」という用語は、本明細書において使用される場合、その組成物の特性に応じて、一時的にまたは恒久的に、皮膚の1つまたは複数の機能、例えば創傷治癒と置き換わるおよび/またはそれを増強する材料のことを指す。代用皮膚の構造は、哺乳動物表皮および/または哺乳動物真皮と構造および機能の面で類似した成分を含むことができる。
【0064】
「重層上皮」という用語は、本明細書において使用される場合、上皮細胞の2つ以上の層を含む上皮のことを指す。上皮細胞の複数の層は、生化学組成によっておよび顕微鏡法を使用した外観検査によって識別可能である。例えば、完全に重層された上皮は、基底層(基底膜層)、棘状層または有棘層(有棘膜層)、顆粒層(顆粒膜層)、および角層(角質層)を含むヒト表皮の組成を模倣することができる。
【0065】
II. 成長因子およびインスリンを産生する代用皮膚
重層表皮から構成される代用皮膚であって、重層表皮中の細胞が成長因子およびインスリンを産生する、例えば分泌する、代用皮膚が、本明細書に提供される。いくつかの態様では、成長因子およびインスリンは、重層表皮の細胞に対して異種である組換え配列である。いくつかの態様では、代用皮膚は、ケラチノサイトから構成される。いくつかの態様では、代用皮膚は、分化したケラチノサイトから構成される。いくつかの態様では、代用皮膚は、不死化ケラチノサイトおよび/または分化した不死化ケラチノサイトから構成される。
【0066】
いくつかの態様では、組換え成長因子および組換えインスリンが、代用皮膚の細胞から分泌可能である。いくつかの態様では、代用皮膚は、基底層、有棘層、顆粒層、および角質層を含む重層表皮から構成され、ここで、重層表皮の細胞は、組換え成長因子および組換えインスリンを発現する。いくつかの態様では、組換え成長因子および組換えインスリンを発現する重層表皮の細胞は、基底層の細胞を含む。いくつかの態様では、重層表皮は、約50μm~約300μmの厚さである。いくつかの態様では、重層表皮は、約100μm~約250μmの厚さである。いくつかの態様では、重層表皮は、約100μm~約200μmの厚さである。いくつかの態様では、重層表皮は、少なくとも50μm、75μm、100μm、125μm、150μm、175μm、200μm、225μm、250μm、275μmもしくは300μm、または約50μm、75μm、100μm、125μm、150μm、175μm、200μm、225μm、250μm、275μmもしくは300μmの厚さであるか、または前述の値のいずれかの間の厚さを有する。
【0067】
A. 成長因子
提供される代用皮膚の態様では、重層表皮を構成する細胞(例えば、基底細胞)は、組換え成長因子を産生および/または分泌する。例示的な組換え成長因子は、本明細書に記載される。いくつかの態様では、組換え成長因子が、重層表皮から分泌可能である。いくつかの態様では、組換え成長因子が、重層表皮の基底細胞から分泌可能である。いくつかの態様では、重層表皮を構成する細胞(例えば、基底細胞)はまた、組換えインスリン、例えば下記セクションBに記載されるいずれかを産生および/または分泌する。
【0068】
成長因子は、当技術分野において公知である。成長因子には、例えば、骨形成タンパク質(BMP)、上皮成長因子(EGF)、エリスロポエチン(EPO)、線維芽細胞成長因子(FGF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、肝細胞成長因子(HGF)、インスリン様成長因子(IGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、トランスフォーミング成長因子αおよびβ、ならびに血管内皮成長因子(VEGF)、ならびにそれらのアイソフォームまたは選択的スプライスバリアントが含まれる。
【0069】
いくつかの態様では、成長因子は、上皮成長因子(EGF)、エリスロポエチン(EPO)、線維芽細胞成長因子(FGF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、肝細胞成長因子(HGF)、インスリン様成長因子(IGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、トランスフォーミング成長因子αおよびβ、血管内皮成長因子(VEGF)、上皮成長因子受容体(EGFR)、線維芽細胞成長因子受容体(FGFR)、ならびにそれらの任意のアイソフォームまたは選択的にスプライシングされたバリアントである。
【0070】
いくつかの態様では、組換え成長因子は、成長因子の分泌を容易にするシグナルペプチドを含有する成長因子配列をコードするポリヌクレオチドによってコードされる。いくつかの態様では、シグナルペプチドは、前駆成長因子配列中に存在し、切断されることで、分泌可能な成熟成長因子を形成する。いくつかの態様では、シグナルペプチドは、成長因子の内因性または天然シグナルペプチドである。いくつかの態様では、シグナルペプチドは、異なるタンパク質由来の異種シグナルペプチドである。いくつかの態様では、シグナルペプチドは、代用皮膚の細胞から成長因子が発現される際に切断される。いくつかの態様では、分泌可能な成長因子配列は、シグナルペプチドを欠いている。いくつかの態様では、成長因子が、細胞から分泌可能である。いくつかの態様では、組換え成長因子が、重層表皮から分泌可能である。いくつかの態様では、重層表皮の細胞は、組換え成長因子を分泌する。
【0071】
いくつかの態様では、成長因子は、VEGF-Aであるか、またはそのアイソフォームもしくは選択的にスプライシングされたバリアントである。VEGF-Aは、血管新生の重要なメディエーターであり、VEGF受容体(VEGFR)のクラスIVチロシンキナーゼ受容体ファミリーを介してシグナル伝達する。VEGF-Aリガンドは、VEGFR1とVEGFR2の両方に結合するが、これらは主にVEGFR2を介してシグナル伝達し、内皮細胞の増殖、生存、遊走および血管透過性をもたらす。別個のVEGF-Aアイソフォームが選択的スプライシングから生じる。VEGF-R(例えば、VEGFR2)に結合する能力を保持するVEGF-Aの任意のアイソフォームまたは選択的にスプライシングされたバリアントが、提供される代用皮膚において企図される。通常、VEGF-Aアイソフォームは、その長さが異なり、VEGF xxx(ここで、xxxは、最終タンパク質配列中に存在するアミノ酸の数を表す)と命名される。
【0072】
例示的なVEGF-Aアイソフォームには、血管内皮成長因子A(VEGF-A)ポリペプチドのVEGF 206(SEQ ID NO:11)、VEGF-AのアイソフォームVEGF 189(SEQ ID NO:19)、VEGF-AのアイソフォームVEGF 183(SEQ ID NO:20)、VEGF-AのアイソフォームVEGF 148(SEQ ID NO:21)、VEGF-AのアイソフォームVEGF 145(SEQ ID NO:22)、VEGF-AのアイソフォームVEGF 165B(SEQ ID NO:23)、VEGF-AのアイソフォームVEGF 121(SEQ ID NO:24)、VEGF-AのアイソフォームVEGF 111(SEQ ID NO:25)、VEGF-AのアイソフォームVEGF 165(SEQ ID NO:7)、VEGF-AのアイソフォームL-VEGF165(SEQ ID NO:26)、VEGF-AのアイソフォームL-VEGF 121(SEQ ID NO:27)、VEGF-AのアイソフォームL-VEGF 189(SEQ ID NO:28)、VEGF-AのアイソフォームL-VEGF 206(SEQ ID NO:29)、VEGF-Aのアイソフォーム15(SEQ ID NO:30)、VEGF-Aのアイソフォーム16(SEQ ID NO:31)、VEGF-Aのアイソフォーム17(SEQ ID NO:32)、またはVEGF-Aのアイソフォーム18(SEQ ID NO:33)が含まれるが、これらに限定されない。また、細胞から発現および産生された際に切断されてシグナルペプチドを欠いたその成熟配列も含まれることが理解される。
【0073】
いくつかの態様では、重層表皮を構成する細胞(例えば、基底細胞)は、SEQ ID NO:7、11および19~33のいずれか1つに示されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%もしくは少なくとも約80%、少なくとも85%もしくは少なくとも約85%、少なくとも90%もしくは少なくとも約90%、または少なくとも95%もしくは少なくとも約95%の配列同一性を有し、VEGFR(例えば、VEGFR-2)への結合を保持する組換えヒトVEGF-Aアイソフォームをコードするポリヌクレオチドを含む。いくつかの態様では、重層表皮を構成する細胞(例えば、基底細胞)は、SEQ ID NO:7、11および19~33のいずれか1つに示される組換えヒトVEGF-Aアイソフォームをコードするポリヌクレオチドを含む。いくつかの態様では、該ポリヌクレオチドは、シグナルペプチドを含有するタンパク質をコードし、シグナルペプチドは、シグナルペプチドを欠いたタンパク質が構成性分泌経路などを介して分泌されるように、タンパク質分解により切断および除去される。いくつかの態様では、代用皮膚の重層表皮の細胞は、組換えVEGF-Aを産生する、例えば、分泌する。いくつかの態様では、代用皮膚の重層表皮の基底細胞は、組換えヒトVEGF-Aアイソフォームを産生する、例えば、分泌する。
【0074】
いくつかの態様では、重層表皮を構成する細胞(例えば、基底細胞)は、SEQ ID NO:7、11および19~33のいずれか1つに示されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%もしくは少なくとも約80%、少なくとも85%もしくは少なくとも約85%、少なくとも90%もしくは少なくとも約90%、または少なくとも95%もしくは少なくとも約95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有し、VEGFR(例えば、VEGFR-2)への結合を保持する、VEGF-Aアイソフォームを含む。いくつかの態様では、重層表皮を構成する細胞(例えば、基底細胞)は、SEQ ID NO:7、11および19~33のいずれか1つに示される組換えVEGF-Aアイソフォームを含む。いくつかの態様では、該タンパク質は、シグナルペプチドを欠いており、シグナルペプチドは、コードされたタンパク質がSEQ ID NO:7、11および19~33のいずれか1つに示されるシグナルペプチドを欠く(例えば、アミノ酸残基1~26を欠く)ようにタンパク質分解により切断および除去される。いくつかの態様では、組換えヒトVEGF-Aは、構成性分泌経路などを介して分泌される。いくつかの態様では、代用皮膚の重層表皮の細胞は、組換えVEGF-Aを産生する、例えば、分泌する。いくつかの態様では、代用皮膚の重層表皮の基底細胞は、組換えヒトVEGF-Aアイソフォームを産生する、例えば、分泌する。
【0075】
いくつかの態様では、組換えヒトVEGF-Aは、SEQ ID NO:4に示される配列に対して少なくとも80%もしくは少なくとも約80%、少なくとも85%もしくは少なくとも約85%、少なくとも90%もしくは少なくとも約90%、または少なくとも95%もしくは少なくとも約95%の配列同一性を有する配列を含むポリヌクレオチドによってコードされる。いくつかの態様では、組換えヒトVEGF-Aは、SEQ ID NO:4に示される配列を含むポリヌクレオチドによってコードされる。いくつかの態様では、組換えヒトVEGF-Aは、SEQ ID NO:4に示されるポリヌクレオチドによってコードされる。いくつかの態様では、組換えヒトVEGF-Aは、SEQ ID NO:7に示される配列に対して少なくとも80%もしくは少なくとも約80%、少なくとも85%もしくは少なくとも約85%、少なくとも90%もしくは少なくとも約90%、または少なくとも95%もしくは少なくとも約95%の配列同一性を有する配列、あるいはシグナルペプチドを欠いているその配列を含む。いくつかの態様では、組換えヒトVEGF-Aは、SEQ ID NO:7に示される配列またはシグナルペプチドを欠いているその配列を含む。いくつかの態様では、組換えヒトVEGF-Aは、SEQ ID NO:7またはシグナルペプチドを欠いているその配列に示される。いくつかの態様では、代用皮膚の重層表皮の細胞は、組換えヒトVEGF-Aを産生する、例えば、分泌する。いくつかの態様では、代用皮膚の重層表皮の基底細胞は、組換えヒトVEGF-Aを産生する、例えば、分泌する。
【0076】
いくつかの態様では、組換えVEGFは、VEGFの分泌を容易にするシグナルペプチドを含有する成長因子配列をコードするポリヌクレオチドによってコードされる。いくつかの態様では、シグナルペプチドは、前駆成長因子配列中に存在し、切断されることで、分泌可能な成熟成長因子を形成する。いくつかの態様では、シグナルペプチドは、成長因子の内因性または天然シグナルペプチドである。いくつかの態様では、シグナルペプチドは、異なるタンパク質由来の異種シグナルペプチドである。いくつかの態様では、シグナルペプチドは、
として示される配列である。いくつかの態様では、シグナルペプチドは、代用皮膚の細胞からVEGFが発現される際に切断される。いくつかの態様では、分泌可能なVEGF配列は、シグナルペプチドを欠いている。いくつかの態様では、組換えヒトVEGF-Aは、SEQ ID NO:44に示される配列に対して少なくとも80%もしくは少なくとも約80%、少なくとも85%もしくは少なくとも約85%、少なくとも90%もしくは少なくとも約90%、または少なくとも95%もしくは少なくとも約95%の配列同一性を有する配列を含む。いくつかの態様では、組換えヒトVEGF-Aは、SEQ ID NO:44に示される配列を含む。いくつかの態様では、組換えヒトVEGF-Aは、SEQ ID NO:44に示される。いくつかの態様では、VEGFが、細胞から分泌可能である。いくつかの態様では、組換えVEGFが、重層表皮から分泌可能である。いくつかの態様では、重層表皮の細胞は、組換えVEGFを分泌する。
【0077】
いくつかの態様では、成長因子は、PDGF/VEGFファミリーのタンパク質のメンバーである。いくつかの態様では、成長因子は、血管内皮成長因子B(VEGF-B)ポリペプチド(例えば、SEQ ID NO:12)、c-fos誘導成長因子(FIGF)ポリペプチド(VEGF-Dとも称される)(例えば、SEQ ID NO:13)、血小板由来成長因子A(PDGF-A)ポリペプチド(例えば、SEQ ID NO:14)、血小板由来成長因子B(PDGF-B)ポリペプチド(例えば、SEQ ID NO:15)、または胎盤成長因子(PLGF)ポリペプチド(例えば、SEQ ID NO:16)、およびそれらの任意のアイソフォームまたは選択的にスプライシングされたバリアントである。
【0078】
いくつかの態様では、重層表皮を構成する細胞(例えば、基底細胞)は、SEQ ID NO:12~16のいずれか1つに示されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%もしくは少なくとも約80%、少なくとも85%もしくは少なくとも約85%、少なくとも90%もしくは少なくとも約90%、または少なくとも95%もしくは少なくとも約95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する組換えヒト成長因子、あるいはその選択的にスプライシングされた形態またはアイソフォームを含む。いくつかの態様では、重層表皮を構成する細胞(例えば、基底細胞)は、SEQ ID NO:12~16のいずれか1つに示される組換えヒト成長、またはその選択的にスプライシングされた形態もしくはアイソフォームを含む。いくつかの態様では、重層表皮を構成する細胞(例えば、基底細胞)は、SEQ ID NO:12~16のいずれか1つに示される組換えヒト成長を含む。いくつかの態様では、該タンパク質は、シグナルペプチドを欠いており、シグナルペプチドは、コードされたタンパク質がSEQ ID NO:12~16のいずれか1つに示されるシグナルペプチドを欠くようにタンパク質分解により切断および除去される(例えば、配列表を参照のこと)。いくつかの態様では、組換えヒト成長因子は、構成性分泌経路などを介して分泌される。いくつかの態様では、代用皮膚の重層表皮の細胞は、組換えヒト成長因子を産生する、例えば、分泌する。いくつかの態様では、代用皮膚の重層表皮の基底細胞は、組換えヒト成長因子を産生する、例えば、分泌する。
【0079】
B. インスリン
提供される代用皮膚の態様では、重層表皮を構成する細胞(例えば、基底細胞)は、組換えインスリンを産生および/または分泌する。例示的な組換えインスリンは、本明細書に記載される。いくつかの態様では、組換えインスリンが、重層表皮から分泌可能である。いくつかの態様では、組換えインスリンが、重層表皮の基底細胞から分泌可能である。いくつかの態様では、重層表皮を構成する細胞(例えば、基底細胞)はまた、組換え成長因子、例えば上記セクションAに記載されるいずれかを産生および/または分泌する。
【0080】
インスリンは、グルコースレベルを制御するホルモンである。投与経路および用量に応じて、インスリンは、全身または局所で利用可能であり得る。一例では、全身性インスリンが、血糖コントロールの治療薬として、例えば糖尿病患者において使用される。別の例では、局所性インスリン活性は、全身グルコースレベルに影響を与えない。いくつかの態様では、本明細書に提供される代用皮膚の細胞は、局所グルコースレベルに影響を及ぼすレベルでインスリンを産生する。いくつかの態様では、本明細書に提供される代用皮膚の細胞は、全身グルコースレベルに影響を及ぼさないレベルでインスリンを産生する。
【0081】
インスリンは、細胞で発現されると二本鎖型へとプロセシングされるプレプロタンパク質として産生される。通常、ヒトインスリンは、タンパク質を小胞体(ER)に誘導する24アミノ酸シグナルペプチドを含有する110アミノ酸前駆体ポリペプチドであるプレプロインスリンとして翻訳され、シグナル配列が小胞体(ER)で切断されて、その結果、プロインスリン(SEQ ID NO:5)になる。プロインスリンは、さらにプロセシングされて、31アミノ酸Cペプチド、または連結鎖ペプチドを放出する。野生型インスリンでは、プロインスリンは、エンドペプチダーゼ(例えば、PC-2およびPC-3エンドペプチダーゼ)によって、ヒトプロインスリン上の2つの部位Arg31Arg32(B鎖/C鎖ペプチドジャンクション)およびLys64Arg65(C鎖/A鎖ペプチドジャンクション)のカルボキシル基側で協調的に切断されて、成熟インスリンのAおよびB鎖、Cペプチド、ならびに遊離塩基性アミノ酸を生成する。例として、野生型ヒトインスリンでは、結果として生じたインスリンは、ジスルフィド結合によって架橋されている、SEQ ID NO:36に示される21アミノ酸A鎖(SEQ ID NO:5に示されるプロインスリンポリペプチドのアミノ酸残基66~86に対応する)およびSEQ ID NO:40に示される30アミノ酸B鎖(SEQ ID NO:5に示されるプロインスリンポリペプチドのアミノ酸残基1~30に対応する)を含有する。通常、適正に架橋されたヒトインスリンは、3つのジスルフィド橋を含有する:1つはA鎖の7位とB鎖の7位の間、2番目はA鎖の20位とB鎖の19位の間、そして、3番目はA鎖の6位と11位の間。
【0082】
いくつかの態様では、組換えインスリンは、一本鎖または二本鎖型のインスリンポリペプチドを生じるプロインスリンポリペプチドをコードするポリヌクレオチドによってコードされる。いくつかの態様では、インスリンは、A鎖およびB鎖を含有する一本鎖ポリペプチドである。いくつかの態様では、コードされたインスリンは、ケラチノサイトにおいて、ジスルフィド結合などによって連結されたA鎖およびB鎖を含有する二本鎖型へとプロセシングされることが可能である。いくつかの態様では、代用皮膚の重層表皮の細胞は、組換えインスリンを産生する、例えば、分泌する。いくつかの態様では、代用皮膚の重層表皮の基底細胞は、組換えヒトインスリンを産生する、例えば、分泌する。いくつかの態様では、A鎖およびB鎖を含有する二本鎖型が、重層表皮の細胞(例えば、基底細胞)から分泌可能である。
【0083】
いくつかの態様では、組換えインスリンは、天然または野生型インスリンポリペプチドであるレギュラーインスリンである。これらには、組換え型のヒトインスリン、ならびにウシ、ブタおよび他の種由来のインスリンが含まれる。いくつかの態様では、組換えインスリンは、Humulin(登録商標)R、Novolin(登録商標)RおよびVelosulin(登録商標)として販売されているレギュラーヒトインスリンの組換えインスリンである。いくつかの態様では、組換えインスリンは、Iletin II(登録商標)として販売されているレギュラーブタインスリンの組換えインスリンである。
【0084】
いくつかの態様では、インスリンは、組換えヒトインスリンである。いくつかの態様では、重層表皮を構成する細胞(例えば、基底細胞)は、インスリンのプロインスリン前駆体型をコードするポリヌクレオチドを含む。いくつかの態様では、ヒトインスリンの前駆体は、ヒトプロインスリンである。いくつかの態様では、重層表皮を構成する細胞(例えば、基底細胞)は、SEQ ID NO:5に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%もしくは少なくとも約80%、少なくとも85%もしくは少なくとも約85%、少なくとも90%もしくは少なくとも約90%、または少なくとも95%もしくは少なくとも約95%の配列同一性を有するヒトプロインスリンアミノ酸配列を含むポリヌクレオチドを含む。いくつかの態様では、重層表皮を構成する細胞(例えば、基底細胞)は、SEQ ID NO:5に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%もしくは少なくとも約80%、少なくとも85%もしくは少なくとも約85%、少なくとも90%もしくは少なくとも約90%、または少なくとも95%もしくは少なくとも約95%の配列同一性を有するヒトプロインスリンアミノ酸配列を含む。いくつかの態様では、コードされたプロインスリンは、ケラチノサイトにおいて、ジスルフィド結合などによって連結されたA鎖およびB鎖を含有する二本鎖型へとプロセシングされることが可能である。いくつかの態様では、代用皮膚の重層表皮の細胞は、組換えインスリンを産生する、例えば、分泌する。いくつかの態様では、代用皮膚の重層表皮の基底細胞は、組換えヒトインスリンを産生する、例えば、分泌する。いくつかの態様では、A鎖およびB鎖を含有する二本鎖型が、重層表皮の細胞(例えば、基底細胞)から分泌可能である。
【0085】
いくつかの態様では、重層表皮を構成する細胞(例えば、基底細胞)は、SEQ ID NO:5に示されるヒトプロインスリンをコードするポリヌクレオチドを含む。いくつかの態様では、重層表皮を構成する細胞(例えば、基底細胞)は、SEQ ID NO:5に示されるヒトプロインスリンを含む。いくつかの態様では、インスリンは、一本鎖ポリペプチドである。いくつかの態様では、そのプロインスリン形態は、A鎖およびB鎖を含有する二本鎖型へとプロセシングされる。いくつかの態様では、SEQ ID NO:5のA鎖およびB鎖を含有するインスリンの二本鎖組換え型が、重層表皮を構成する細胞(例えば、基底細胞)から分泌可能である。いくつかの態様では、コードされたインスリンは、SEQ ID NO:36に示されるA鎖およびSEQ ID NO:40に示されるB鎖を含有する二本鎖型へとプロセシングされる。いくつかの態様では、代用皮膚の重層表皮の細胞は、組換えインスリンを産生する、例えば、分泌する。いくつかの態様では、代用皮膚の重層表皮の基底細胞は、組換えヒトインスリンを産生する、例えば、分泌する。いくつかの態様では、SEQ ID NO:36に示されるA鎖およびSEQ ID NO:40に示されるB鎖を含有するインスリンの二本鎖組換え型が、重層表皮を構成する細胞(例えば、基底細胞)から分泌可能である。
【0086】
いくつかの態様では、組換えインスリンは、ヒトインスリンのバリアント、例えば機能的バリアントまたは種もしくはアレルバリアントであるか、あるいは活性を有するヒトインスリンの切断型である。いくつかの態様では、アレルおよび種バリアント、スプライスバリアントによってコードされるバリアントならびに他の機能的バリアント、例えばインスリン類似体または他の誘導体型もしくは修飾型を含む、インスリンのバリアントは、インスリンがヒトインスリン受容体に結合して、グルコース取り込みおよび貯蔵の増大ならびに/または内因性グルコース産生の減少をもたらすシグナル伝達カスケードを始動させる限り、SEQ ID NO:5に示されるヒトインスリンに対してまたはAおよびB鎖を含有するそのプロセシングされたインスリンに対して少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の配列同一性を有するポリペプチドを含む。いくつかの態様では、コードされたプロインスリンは、ケラチノサイトにおいて、ジスルフィド結合などによって連結されたA鎖およびB鎖を含有する二本鎖型へとプロセシングされることが可能である。いくつかの態様では、代用皮膚の重層表皮の細胞は、組換えインスリンを産生する、例えば、分泌する。いくつかの態様では、代用皮膚の重層表皮の基底細胞は、組換えヒトインスリンを産生する、例えば、分泌する。いくつかの態様では、A鎖およびB鎖を含有する二本鎖型が、重層表皮の細胞(例えば、基底細胞)から分泌可能である。
【0087】
例えば、組換えインスリンは、ヒトインスリンの種バリアントを含み得る。これらには、ウシおよびブタに由来するインスリンが含まれるが、これらに限定されない。ウシインスリンは、ヒトインスリンと、A鎖のアミノ酸8および10とB鎖のアミノ酸30が異なる(SEQ ID NO:17)。ブタインスリンは、ヒトインスリンと、B鎖のアミノ酸30だけが異なり、そこには、ウシ配列のように、トレオニンの代わりにアラニン置換がある(SEQ ID NO:18)。いくつかの態様では、重層表皮を構成する細胞(例えば、基底細胞)は、インスリンがヒトインスリン受容体に結合して、グルコース取り込みおよび貯蔵の増大ならびに/または内因性グルコース産生の減少をもたらすシグナル伝達カスケードを始動させる限り、ウシまたはブタインスリンのプロインスリン前駆体型、例えばSEQ ID NO:17のプロインスリン型(例えば、SEQ ID NO:17のアミノ酸25~105)またはSEQ ID NO:18のプロインスリン型(例えば、SEQ ID NO:18のアミノ酸25~105)、あるいはSEQ ID NO:17もしくはSEQ ID NO:18に示されるインスリンに対してまたはAおよびB鎖を含有するそのプロセシングされたインスリンに対して少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の配列同一性を有する配列をコードするポリヌクレオチドを含む。いくつかの態様では、B鎖は、SEQ ID NO:17またはSEQ ID NO:18のアミノ酸25~54に対応し、A鎖は、SEQ ID NO:17またはSEQ ID NO:18のアミノ酸85~105に対応する。いくつかの態様では、コードされたインスリンは、SEQ ID NO:17またはSEQ ID NO:18に示されるA鎖およびB鎖を含有する一本鎖ポリペプチドである。いくつかの態様では、コードされたプロインスリンは、ケラチノサイトにおいて、ジスルフィド結合などによって連結されたA鎖およびB鎖を含有する二本鎖型へとプロセシングされることが可能である。いくつかの態様では、コードされたインスリンは、SEQ ID NO:17またはSEQ ID NO:18に示されるA鎖およびB鎖を含有する二本鎖型へとプロセシングされる。いくつかの態様では、代用皮膚の重層表皮の細胞は、組換えインスリンを産生する、例えば、分泌する。いくつかの態様では、代用皮膚の重層表皮の基底細胞は、組換えヒトインスリンを産生する、例えば、分泌する。いくつかの態様では、SEQ ID NO:17またはSEQ ID NO:18のA鎖およびB鎖を含有するインスリンの二本鎖組換え型が、重層表皮を構成する細胞(例えば、基底細胞)から分泌可能である。
【0088】
また、インスリンのバリアントには、ヒトインスリンと比較して1つまたは複数のアミノ酸修飾を含有するインスリン類似体も含まれる。例示的なインスリン類似体(AおよびB鎖)は、速効性および遅効性の類似体型または超活性インスリンを含む(例えば、Vajo et al. 2001 Endocrine Reviews 22:706-717を参照のこと)。速効性インスリン類似体は、通常1つまたは複数のアミノ酸変化を含有するインスリンの修飾型である。該類似体は、レギュラーインスリンと比較して吸収率および作用発現を高める目的で、インスリン分子の自己会合が減少するように設計される。例えば、インスリン類似体には、グルリジン(LysB3、GluB29)、HMR-1 153(LysB3、IleB28)、HMR-1423(GlyA21、HisB32)、インスリンアスパルト(AspB28)、インスリンリスプロ(LysB28、ProB29)およびAspB10が含まれるが、これらに限定されない。上のすべての例で、類似体の命名法は、鎖のN末端から番号付けしてインスリンのAまたはB鎖上の特定位置にあるアミノ酸置換の記述に基づいており、配列の残部は、天然ヒトインスリンの配列である。
【0089】
いくつかの態様では、組換えインスリンは、インスリンAspB10である。インスリンAspB10は、野生型インスリン中の10位にある天然に存在するヒスチジン(H)がアスパラギン酸(D)に置換される(例えば、HからDへの置換(substation))B鎖の単一アミノ酸変化を含有するヒトインスリン類似体ポリペプチドである。置換の結果、レギュラーインスリン(例えば、野生型ヒトインスリン)より2倍速く吸収される超活性インスリンになる。いくつかの局面では、インスリンAspB10は、レギュラーインスリン(例えば、野生型ヒトインスリン)と比較して増加したインスリン受容体への結合親和性を有する。インスリンAspB10のA鎖の配列は、SEQ ID NO:36に示され、B鎖は、SEQ ID NO:41に示される。いくつかの態様では、重層表皮を構成する細胞(例えば、基底細胞)は、SEQ ID NO:36に示されるA鎖およびSEQ ID NO:41に示されるB鎖を含有するインスリンAspB10のプロインスリン前駆体型をコードするポリヌクレオチドを含む。いくつかの態様では、コードされたプロインスリンは、ケラチノサイトにおいて、ジスルフィド結合などによって連結されたA鎖およびB鎖を含有する二本鎖型へとプロセシングされることが可能である。いくつかの態様では、コードされたインスリンは、SEQ ID NO:36に示されるA鎖およびSEQ ID NO:41に示されるB鎖を含有する二本鎖型へとプロセシングされる。いくつかの態様では、代用皮膚の重層表皮の細胞は、組換えインスリンを産生する、例えば、分泌する。いくつかの態様では、代用皮膚の重層表皮の基底細胞は、組換えヒトインスリンを産生する、例えば、分泌する。いくつかの態様では、SEQ ID NO:36に示されるA鎖およびSEQ ID NO:41に示されるB鎖を含有するインスリンの二本鎖組換え型が、重層表皮を構成する細胞(例えば、基底細胞)から分泌可能である。
【0090】
いくつかの態様では、組換えインスリンは、インスリングラルギンである。B鎖のC末端への2つのアルギニンの付加のせいで、グラルギンインスリンの等電点はシフトして、酸性pHでより可溶性になる。酸感受性のアスパラギンに起因する脱アミド化および二量体化を防ぐために、A鎖にさらなるアミノ酸変化(N21G)が存在する。グラルギンインスリンのA鎖の配列は、SEQ ID NO:34に示され、B鎖は、SEQ ID NO:35に示される。いくつかの態様では、重層表皮を構成する細胞(例えば、基底細胞)は、SEQ ID NO:34に示されるA鎖およびSEQ ID NO:35に示されるB鎖を含有するインスリングラルギンのプロインスリン前駆体型をコードするポリヌクレオチドを含む。いくつかの態様では、コードされたプロインスリンは、ケラチノサイトにおいて、ジスルフィド結合などによって連結されたA鎖およびB鎖を含有する二本鎖型へとプロセシングされることが可能である。いくつかの態様では、コードされたインスリンは、SEQ ID NO:34に示されるA鎖およびSEQ ID NO:35に示されるB鎖を含有する二本鎖型へとプロセシングされる。いくつかの態様では、代用皮膚の重層表皮の細胞は、組換えインスリンを産生する、例えば、分泌する。いくつかの態様では、代用皮膚の重層表皮の基底細胞は、組換えヒトインスリンを産生する、例えば、分泌する。いくつかの態様では、SEQ ID NO:34に示されるA鎖およびSEQ ID NO:35に示されるB鎖を含有するインスリンの二本鎖組換え型が、重層表皮を構成する細胞(例えば、基底細胞)から分泌可能である。
【0091】
いくつかの態様では、組換えインスリンは、インスリンリスプロである。ヒトインスリンリスプロは、B鎖の28および29位に、野生型インスリン中のこの位置にあるPro-LysがLys-Proに反転するようなアミノ酸変化を含有するインスリンポリペプチド製剤である。これら2つのアミノ酸の反転の結果、自己会合する傾向が低下したポリペプチドになり、これにより、より迅速な作用発現が可能になる。具体的には、B鎖中の配列反転は、2つの疎水性相互作用の排除と、二量体を安定化させる2つのベータプリーツシート水素結合の弱体化をもたらす(DeFelippis et al., Insulin Chemistry and Pharmacokinetics. In Ellenberg and Rifkin's Diabetes Mellitus 2002 pp. 481-500, McGraw-Hill Professional)。アミノ酸修飾により、インスリンリスプロは、レギュラーインスリンよりも迅速に作用する。インスリンリスプロのA鎖の配列は、SEQ ID NO:36に示され、B鎖は、SEQ ID NO:37に示される。いくつかの態様では、重層表皮を構成する細胞(例えば、基底細胞)は、SEQ ID NO:36に示されるA鎖およびSEQ ID NO:37に示されるB鎖を含有するインスリンリスプロのプロインスリン前駆体型をコードするポリヌクレオチドを含む。いくつかの態様では、コードされたプロインスリンは、ケラチノサイトにおいて、ジスルフィド結合などによって連結されたA鎖およびB鎖を含有する二本鎖型へとプロセシングされることが可能である。いくつかの態様では、コードされたインスリンは、SEQ ID NO:36に示されるA鎖およびSEQ ID NO:37に示されるB鎖を含有する二本鎖型へとプロセシングされる。いくつかの態様では、代用皮膚の重層表皮の細胞は、組換えインスリンを産生する、例えば、分泌する。いくつかの態様では、代用皮膚の重層表皮の基底細胞は、組換えヒトインスリンを産生する、例えば、分泌する。いくつかの態様では、SEQ ID NO:36に示されるA鎖およびSEQ ID NO:37に示されるB鎖を含有するインスリンの二本鎖組換え型が、重層表皮を構成する細胞(例えば、基底細胞)から分泌可能である。
【0092】
いくつかの態様では、組換えインスリンは、インスリンアスパルトである。ヒトインスリンアスパルトは、ヒトインスリンのB鎖の28位にプロリンからアスパラギン酸へのアミノ酸置換を含有するインスリンポリペプチド製剤である。インスリンアスパルトにおける修飾は、負に荷電した側鎖カルボキシル基を付与して、電荷反発を生じさせ、単量体-単量体相互作用を不安定にする。さらに、プロリンの除去は、単量体間の重要な疎水性相互作用を排除する(DeFelippis et al., Insulin Chemistry and Pharmacokinetics. In Ellenberg and Rifkin's Diabetes Mellitus 2002 pp. 481-500, McGraw-Hill Professional)。インスリンアスパルトのA鎖の配列は、SEQ ID NO:36に示され、B鎖は、SEQ ID NO:38に示される。いくつかの態様では、重層表皮を構成する細胞(例えば、基底細胞)は、SEQ ID NO:36に示されるA鎖およびSEQ ID NO:38に示されるB鎖を含有するインスリンアスパルトのプロインスリン前駆体型をコードするポリヌクレオチドを含む。いくつかの態様では、コードされたプロインスリンは、ケラチノサイトにおいて、ジスルフィド結合などによって連結されたA鎖およびB鎖を含有する二本鎖型へとプロセシングされることが可能である。いくつかの態様では、コードされたインスリンは、SEQ ID NO:36に示されるA鎖およびSEQ ID NO:38に示されるB鎖を含有する二本鎖型へとプロセシングされる。いくつかの態様では、代用皮膚の重層表皮の細胞は、組換えインスリンを産生する、例えば、分泌する。いくつかの態様では、代用皮膚の重層表皮の基底細胞は、組換えヒトインスリンを産生する、例えば、分泌する。いくつかの態様では、SEQ ID NO:36に示されるA鎖およびSEQ ID NO:38に示されるB鎖を含有するインスリンの二本鎖組換え型が、重層表皮を構成する細胞(例えば、基底細胞)から分泌可能である。
【0093】
いくつかの態様では、組換えインスリンは、インスリングルリジンである。ヒトインスリングルリジンは、ヒトインスリンのB鎖の配列と比較して、B鎖のB3位にアスパラギンからリシンへのおよびアミノ酸B29にリシンからグルタミン酸へのアミノ酸置換を含有するインスリンポリペプチド製剤である。この修飾は、ポリペプチド分子を、ヒトインスリンと比較して自己会合しにくくする。インスリングルリジンのA鎖の配列は、SEQ ID NO:36に示され、B鎖は、SEQ ID NO:39に示される。いくつかの態様では、重層表皮を構成する細胞(例えば、基底細胞)は、SEQ ID NO:36に示されるA鎖およびSEQ ID NO:39に示されるB鎖を含有するインスリングルリジンのプロインスリン前駆体型をコードするポリヌクレオチドを含む。いくつかの態様では、コードされたプロインスリンは、ケラチノサイトにおいて、ジスルフィド結合などによって連結されたA鎖およびB鎖を含有する二本鎖型へとプロセシングされることが可能である。いくつかの態様では、コードされたインスリンは、SEQ ID NO:36に示されるA鎖およびSEQ ID NO:39に示されるB鎖を含有する二本鎖型へとプロセシングされる。いくつかの態様では、代用皮膚の重層表皮の細胞は、組換えインスリンを産生する、例えば、分泌する。いくつかの態様では、代用皮膚の重層表皮の基底細胞は、組換えヒトインスリンを産生する、例えば、分泌する。いくつかの態様では、SEQ ID NO:36に示されるA鎖およびSEQ ID NO:39に示されるB鎖を含有するインスリンの二本鎖組換え型が、重層表皮を構成する細胞(例えば、基底細胞)から分泌可能である。
【0094】
いくつかの態様では、インスリンのプロインスリン型は、プロインスリンがA鎖およびB鎖を含有する二本鎖型へと容易に切断されるように修飾される。いくつかの場合、ヒトケラチノサイト、例えば、HaCaT細胞は、成熟インスリンの産生のためにプロインスリンを効率的に切断する上で必要な酵素を欠いている。例として、エンドペプチダーゼ、例えばPC-2およびPC-3が存在しないか、またはインスリンの切断に十分な高いレベルでは存在しない。その代わり、ケラチノサイトは、サブチリシン様プロタンパク質転換酵素ファミリーの酵素に属するカルシウム依存性切断酵素である、フューリンを発現する。いくつかの態様では、ヒトプロインスリンは、修飾されたヒトプロインスリンである。いくつかの態様では、修飾されたヒトプロインスリンは、ケラチノサイト、例えば、HaCaT細胞において発現される酵素、例えば、プロテアーゼによって認識される配列を含み、これにより、コードされたプロインスリンは、ケラチノサイトにおいて、ジスルフィド結合などによって連結されたA鎖およびB鎖を含有する二本鎖型へとプロセシングされることが可能になる。いくつかの態様では、プロテアーゼは、フューリンであり、修飾されたヒトプロインスリンは、少なくとも1つのフューリン認識配列を含む。いくつかの態様では、修飾されたヒトプロインスリンは、Arg31-Arg32切断部位(B-Cジャンクション)およびLys64-Arg65切断部位(C-Aジャンクション)を含有する配列の代わりに導入された2つのフューリン認識配列を含む。いくつかの態様では、少なくとも1つのフューリン認識配列は、コンセンサス配列R-X-R-R[ここでXは任意のアミノ酸である](SEQ ID NO:8)またはR-X-K-R[ここでXは任意のアミノ酸である](SEQ ID NO:9)を含む。いくつかの態様では、フューリン切断部位は、RTKR(SEQ ID NO:10)である。いくつかの態様では、フューリン切断部位は、RQKR(SEQ ID NO:42)である。
【0095】
いくつかの態様では、プロインスリンは、SEQ ID NO:36に示されるA鎖およびSEQ ID NO:41に示されるB鎖を含有するAspB10インスリンであり、プロインスリンはさらに、2つのフューリン認識配列を含有する。いくつかの態様では、フューリン認識配列の各々は、コンセンサス配列R-X-R-R[ここでXは任意のアミノ酸である](SEQ ID NO:8)またはR-X-K-R[ここでXは任意のアミノ酸である](SEQ ID NO:9)を含む。いくつかの態様では、フューリン切断部位の1つは、RTKR(SEQ ID NO:10)である。いくつかの態様では、フューリン切断部位の1つは、RQKR(SEQ ID NO:42)である。いくつかの態様では、修飾されたヒトプロインスリンは、SEQ ID NO:6に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%もしくは少なくとも約80%、少なくとも85%もしくは少なくとも約85%、少なくとも90%もしくは少なくとも約90%、または少なくとも95%もしくは少なくとも約95%の配列同一性を有する配列を含み、プロインスリンは、フューリン認識部位およびB鎖の10位にAspのアミノ酸置換を含有する。いくつかの態様では、修飾されたヒトプロインスリンは、SEQ ID NO:6に示されるアミノ酸配列を含む。いくつかの態様では、修飾されたヒトプロインスリンは、SEQ ID NO:6に示される。いくつかの態様では、コードされたインスリンは、SEQ ID NO:36に示されるA鎖およびSEQ ID NO:41に示されるB鎖を含有する二本鎖型へとプロセシングされる。いくつかの態様では、代用皮膚の重層表皮の細胞は、組換えインスリンを産生する、例えば、分泌する。いくつかの態様では、代用皮膚の重層表皮の基底細胞は、組換えヒトインスリンを産生する、例えば、分泌する。いくつかの態様では、SEQ ID NO:36に示されるA鎖およびSEQ ID NO:41に示されるB鎖を含有するインスリンの二本鎖組換え型が、重層表皮を構成する細胞(例えば、基底細胞)から分泌可能である。
【0096】
任意の提供される態様のいくつかにおいて、プロインスリンをコードするコードポリヌクレオチドは、成長因子の分泌を容易にするシグナルペプチドをさらに含有するプレプロインスリンである。いくつかの態様では、シグナルペプチドが、コードされたプレプロインスリンから切断されて、分泌可能な成熟プロインスリンを形成する。いくつかの態様では、シグナルペプチドは、代用皮膚の細胞からインスリンが発現される際に切断される。いくつかの態様では、成熟プロインスリン型は、記載の通りにAおよびB鎖を含有する二本鎖型である組換えインスリンへとさらにプロセシングされる。いくつかの態様では、シグナルペプチドは、インスリンの内因性または天然シグナルペプチドである。いくつかの態様では、シグナルペプチドは、異なるタンパク質由来の異種シグナルペプチドである。いくつかの態様では、該配列は、シグナルペプチド
をコードする。いくつかの態様では、組換えインスリンが、細胞から分泌可能である。いくつかの態様では、分泌可能な組換えインスリン配列は、シグナルペプチドを欠いている。
【0097】
いくつかの態様では、組換えヒトインスリンは、SEQ ID NO:2に示される配列に対して少なくとも80%もしくは少なくとも約80%、少なくとも85%もしくは少なくとも約85%、少なくとも90%もしくは少なくとも約90%、または少なくとも95%もしくは少なくとも約95%の配列同一性を有する配列を含むポリヌクレオチドによってコードされ、コードされたプロインスリンは、フューリン認識部位およびB鎖の10位にアスパラギン酸(Asp、D)のアミノ酸置換を含有する。いくつかの態様では、組換えヒトインスリンは、SEQ ID NO:2に示される配列を含むポリヌクレオチドによってコードされる。いくつかの態様では、組換えヒトインスリンは、SEQ ID NO:2に示されるポリヌクレオチドによってコードされる。いくつかの態様では、代用皮膚の重層表皮の細胞は、組換えインスリンを産生する、例えば、分泌する。いくつかの態様では、代用皮膚の重層表皮の基底細胞は、組換えヒトインスリンを産生する、例えば、分泌する。いくつかの態様では、SEQ ID NO:36に示されるA鎖およびSEQ ID NO:41に示されるB鎖を含有するインスリンの二本鎖組換え型が、重層表皮を構成する細胞(例えば、基底細胞)から分泌可能である。
【0098】
C. 代用皮膚の例示的な特徴
いくつかの態様では、代用皮膚の重層表皮の細胞は、組換えヒト成長因子(例えば、セクションII. Aに記載されるいずれか)および組換えヒトインスリン(例えば、セクションII. Bに記載されるいずれか)、例えば、A鎖およびB鎖を含有する二本鎖インスリン型を産生する、例えば、分泌する。いくつかの態様では、代用皮膚の重層表皮の基底細胞は、組換えヒト成長因子(例えば、セクションII. Aに記載されるいずれか)および組換えヒトインスリン(例えば、セクションII. Bに記載されるいずれか)、例えば、A鎖およびB鎖を含有する二本鎖インスリン型を産生する、例えば、分泌する。
【0099】
いくつかの態様では、組換えヒト成長因子は、VEGFであり、SEQ ID NO:4に示されるポリヌクレオチドによってコードされ、組換えヒトインスリンは、SEQ ID NO:2に示されるポリヌクレオチドによってコードされる。いくつかの態様では、組換えヒト成長因子は、VEGFであり、SEQ ID NO:7に示され、組換えヒトインスリンは、SEQ ID NO:6に示されるか、またはジスルフィド結合などによって連結されたA鎖およびB鎖を含有するその二本鎖型である。いくつかの態様では、代用皮膚の重層表皮の細胞は、組換えVEGFおよび組換えインスリンを産生する、例えば、分泌する。いくつかの態様では、代用皮膚の重層表皮の基底細胞は、組換えヒトVEGFおよび組換えヒトインスリンを産生する、例えば、分泌する。いくつかの態様では、そのアミノ酸残基1~26を欠くSEQ ID NO:7に示されるVEGFならびにSEQ ID NO:36に示されるA鎖およびSEQ ID NO:41に示されるB鎖を含有するインスリンの二本鎖組換え型である組換えヒトインスリンが、重層表皮を構成する細胞(例えば、基底細胞)から分泌可能である。いくつかの態様では、そのアミノ酸残基1~26を欠くSEQ ID NO:7に示されるVEGFならびにSEQ ID NO:36に示されるA鎖およびSEQ ID NO:40に示されるB鎖を含有するインスリンの二本鎖組換え型である組換えヒトインスリンが、重層表皮を構成する細胞(例えば、基底細胞)から分泌可能である。
【0100】
いくつかの局面では、管腔形成アッセイで評価した場合に、成長因子またはインスリンのいずれか単独と比べて有意により大きな改善を血管新生再構成の1つまたは複数のマーカーにもたらすレベルで組換え成長因子および組換えインスリンを産生する、例えば分泌する、代用皮膚が、本明細書に提供される。インビトロ管腔形成アッセイは、既存血管からの新生血管の発生である血管新生への見識を提供することができる(DiCicco-Skinner, J Vis Exp. 2014; (91): 51312)。血管新生は、臓器成長、胚発生および創傷治癒を含めた様々なプロセスの重要な構成要素である。管腔形成アッセイにおいて評価できる血管新生または血管新生再構成のマーカーには、ノード、ウェブおよび主要セグメントの存在、またはその相対的増加が含まれるが、これらに限定されない。ユニオンとも称されるノードは、少なくとも3つのコードの結合部位、すなわちコネクションとして定義することができる。ウェブは、2つ以上のノードに囲まれた閉回路として定義することができる。主要セグメントは、2つのノードを一緒につなぐコードとして定義することができる。
【0101】
いくつかの局面では、重層表皮を含む代用皮膚であって、重層表皮の細胞が定量可能なレベルの組換え成長因子および組換えインスリンを継続的に分泌する代用皮膚が、本明細書に提供される。いくつかの態様では、重層表皮の細胞は、組換え成長因子および組換えインスリンを、最大2日間もしくは約2日間、最大3日間もしくは約3日間、最大4日間もしくは約4日間、最大5日間もしくは約5日間、最大6日間もしくは約6日間、最大7日間もしくは約7日間、最大8日間もしくは約8日間、最大9日間もしくは約9日間、最大10日間もしくは約10日間、最大11日間もしくは約11日間、最大12日間もしくは約12日間、最大13日間もしくは約13日間、または最大14日間もしくは約14日にわたって継続的に分泌する。いくつかの態様では、重層表皮の細胞は、組換え成長因子および組換えインスリンを、最大1週間もしくは約1週間、最大2週間もしくは約2週間、最大3週間もしくは約3週間、最大1~2週間もしくは約1~2週間、または最大2~3週間もしくは約2~3週間にわたって継続的に分泌する。
【0102】
いくつかの態様では、重層表皮の細胞は、定量可能なレベルの組換え成長因子およびインスリンならびに/またはCペプチドを分泌する。プロインスリンから切断されるCペプチドは、細胞からも分泌されるインスリン産生の副生成物である。Cペプチドは、内因性インスリンに対して等モル量で産生される。Cペプチドは、膵臓ベータ細胞の機能の尺度として広く使用されており、糖尿病の診断および管理の指標となる(Leighton et al., Diabetes Ther. 2017; 8(3):475-487)。
【0103】
成長因子およびインスリンならびに/またはCペプチドを検出および定量する方法は、当技術分野において公知である。一例として、成長因子およびインスリンならびに/またはCペプチドのインビトロ検出は、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)の使用を含むことができる。Cペプチドの検出用ELISAキットには、例えば、Epitope Diagnostics, Inc社のKT-881 C-Peptide ELISA KitおよびAbcam社のab178641 C-Peptide ELISA Kitが含まれる。あるいは、遺伝子発現を、PCR、例えば、RT-qPCRによって定量することができる。定量可能なレベルは、特定のアッセイの定量限界を超えるかまたはそれに等しい任意のレベルとして定義することができる。
【0104】
いくつかの局面では、組換え成長因子および組換えインスリンを、対象の皮膚中の終末糖化産物(AGE)を低減させるレベルで産生する、例えば分泌する、代用皮膚が、本明細書に提供される。いくつかの態様では、対象は、ヒトである。AGEは、糖に曝露されると糖化されるタンパク質または脂質である。AGEの、例えば皮膚への蓄積は、細胞の構造および/または機能を妨害し得る(Goldin et al., Circulation. 2006;114:597-605)。AGEを検出する方法は、当技術分野において公知である。いくつかの例では、AGE複合体を、ELISA(例えば、abx054078, Advanced Glycation End Product (AGE) ELISA Kit, Abexxa、およびSTA-817, OxiSelect(商標)Advanced Glycation End Product (AGE) Competitive ELISA Kit, Cell Biolabs, Inc.を参照のこと)、分光蛍光分析(例えば、Villa et al., Metabolism 2017;71:64-69を参照のこと)、クロマトグラフ法、比色分析法、分光法、質量分析法、および血清学的方法(Perrone et al., Oxidative Medicine and Cellular Longevity 2020; vol. 2020, Article ID 3818196, 18 pages)を使用して検出することができる。
【0105】
III. 代用皮膚を調製する方法
重層表皮から構成される代用皮膚を生産する方法であって、重層表皮の細胞が成長因子およびインスリンを産生する方法が、本明細書に提供される。いくつかの態様では、本方法は、以下の段階:1)ケラチノサイトを重層表皮へと分化させる段階であって、重層表皮が基底層、有棘層、顆粒層、および角質層を含む、段階と、2)重層表皮にポリヌクレオチドを導入して代用皮膚を生産する段階であって、代用皮膚が成長因子およびインスリンを産生および分泌する、段階を含む。いくつかの態様では、本方法の段階1)は、不死化ケラチノサイトを分化させることを含み、段階2)のポリヌクレオチドの導入は、ウイルスベクターを用いた形質導入を含む。
【0106】
いくつかの態様では、代用皮膚を生産するための方法は、(1)培養したケラチノサイトが、ヒト表皮を表すように3D系に再構成されている系;(2)ケラチノサイト(初代または不死化細胞)が、基板上で3D培養される系;(3)培養した皮膚細胞が、ヒト皮膚を表すように3D系に再構成されている系;および/または(4)ケラチノサイト(初代または不死化細胞)が、マトリックス、例えば、皮膚マトリックス上で培養される系を含み得る。
【0107】
いくつかの態様では、重層表皮の細胞がオクルディン(occluding)またはクローディンなどのタイトジャンクションタンパク質を発現するように、細胞が分化する。表皮のタンパク質は、透過性バリアとしてのその役割に寄与する。例えば、タイトジャンクションおよびデスモソームは、表皮のバリア様機能に寄与する。タイトジャンクションは、哺乳動物表皮の細胞間で細胞間結合を形成する多タンパク質ネットワークである。タイトジャンクションのストランドは、タンパク質の多重遺伝子族であるオクルディンおよびクローディンを含む。オクルディンは、タイトジャンクションに局在する内在性原形質膜タンパク質である。クローディン、例えば、クローディン-1、クローディン-2、およびクローディン-4は、内在性膜タンパク質である。クローディンは、タイトジャンクションストランドの骨格を形成し、オクルディンは、これらのストランドに共重合される(Furuse et al., J. Cell Biol. 1999;147(4):891-903)。デスモソームは、細胞間ジャンクションに局在し、組織の機械的完全性の維持を担っている、接着タンパク質複合体である。デスモソームカドヘリンは、ある種のアデノウイルスの付着受容体として作用することが示されている。例えば、アデノウイルス血清型Ad3、Ad7、Ad11およびAd14は、デスモグレイン2と相互作用するが、Ad2またはAd5は、相互作用しないことが見いだされた(Wang et al., Nat Med. 2011;17(1): 96-104.)。
【0108】
培養条件は、上皮透過性を決めるタンパク質の局在および量に影響を与える。例えば、HaCaT細胞を集密培養状態まで成長させると、デスモソーム超付着性が促進され、その結果、細胞シート完全性が増強され、透過性が低下することが示された(Kimura et al., J Invest Dermatol 2007;127, 775-781)。培養中のカルシウムレベルに関し、カルシウムのレベルを、例えば0.1mMから2mMに増大させると、ヒトケラチノサイトにおいてデスモソーム形成および層化が誘導されることが示された(Watt et al., J Cell Biol. 1984; 99(6):2211-2215)。低いまたは枯渇したカルシウムレベル、例えば0.03mM Ca2+は、タイトジャンクションの解離および透過性の増加と関連している。これに対して、正常ヒトケラチノサイトを高レベルのカルシウムに曝露させると、層化が誘導され、バリア機能が改善する、すなわち、透過性が低下することが示された。上昇したカルシウムレベル(1.8mM Ca2+)に応答して、細胞境界および下位表皮層で、クローディン-1、クローディン-4、およびオクルディンの局在増加が検出可能になり、これが、経上皮電気抵抗の増強に寄与している可能性が高い(Yuki et al., Exp Dermatol. 2007;16(4):324-30)。
【0109】
A. 不死化ケラチノサイトの分化および培養
不死化ケラチノサイト株の例には、HaCaT(Boukamp et al., J Cell Biol. 1988;106:761-771)、NM1(Baden et al., In Vitro Cell Dev Biol. 1987;23:205-213)、およびNIKS(Allen-Hoffmann et al., J Invest Dermatol. 2000;114:444-455)が含まれるが、これらに限定されない。本明細書に記載される場合、「ケラチノサイト」についての言及は、不死化ケラチノサイトについての言及を含む。ケラチノサイトは、4つの形態学的かつ生化学的に異なる層(基底層、有棘層、顆粒層、および角質層)から構成される重層表皮へと分化することができる。ケラチノサイトの成長および分化は、培養中のカルシウムレベル、細胞密度および温度を含めた多様な因子によって影響され得る。例えば、高いレベルまたは濃度のカルシウムは、HaCaT細胞において分化を誘導することができ、高い細胞密度もそれが可能である。初代ケラチノサイトと、不死化ケラチノサイト、例えばHaCaT細胞との間の1つの主な違いは、分化した不死化細胞はその増殖能を保持しているが、初代ケラチノサイトは分化を停止していることである。したがって、HaCaT細胞のような分化した不死化ケラチノサイトは、特定条件下で無制限に増殖することができる(Wilson, Methods Mol Biol. 2014;1195:33-41)。
【0110】
1. 重層表皮の構造的特徴および生化学成分
ケラチノサイトの形態は、未分化の細胞と分化した細胞との識別因子として役立ち得る。重層表皮は、顕微鏡法を使用して同定および確認することができる。重層表皮は、細胞層を1つだけ含む単層上皮とは視覚的に異なる。重層表皮はまた、上皮の側底面まで伸びた単一の伸長層を含む偽重層上皮とも視覚的に異なる。重層表皮を含む代用皮膚を視覚的に評価する方法は、当業者に公知である。例えば、電子顕微鏡法を、重層上皮を視覚化するために使用することができる。いくつかの例では、走査電子顕微鏡法を、重層上皮を視覚化するために使用することができる。
【0111】
ある特定のタンパク質、例えば、トランスグルタミナーゼ、フィラグリンおよびラミニンの検出も、分化した表皮層の識別を援助することができる。分化および/または層化のマーカーとして作用し得るある特定のタンパク質を検出する方法は、当業者に公知であり、例えば、免疫蛍光顕微鏡法(例えば、Schoop et al., J. Invest Derm 1999;112(3):343-353を参照のこと)、RT-PCR(例えば、Kikkawa et al., Biol Pharm Bull. 2010;33(2):307-10を参照のこと)、およびRNAseqを含むことができる。ケラチノサイトは、表皮の主要な細胞構成要素であり、成人ヒト皮膚における細胞の約80%を含む。すべての上皮が、分子量が40kDaから70kDaまでの範囲のI型およびII型ケラチンを発現する。異なる上皮組織が、特殊なペアのケラチンを発現する。分化したケラチノサイトによって産生されるタンパク質の局在および相対量を、重層表皮の異なる層を識別するために使用することができる。いくつかの例では、トランスグルタミナーゼ、例えば、ケラチノサイトトランスグルタミナーゼアイソザイムTGKを、重層表皮の層を識別するために検出することができる。いくつかの例では、ケラチン線維に結合するフィラメント結合タンパク質であるフィラグリン(fillagrin)を、重層表皮の層を識別するために検出することができる。いくつかの例では、細胞外マトリックス糖タンパク質であるラミニンを、重層表皮の層を識別するために検出することができる。いくつかの例では、ケラチンを、重層表皮の層を識別するために検出することができる。いくつかの例では、細胞外膜タンパク質であるインボルクリンを、重層表皮の層を識別するために検出することができる。いくつかの例では、カドヘリン接着分子(例えば、N-、E-およびP-カドヘリン、これらはバリア機能および形成において役割を果たす)を、重層表皮の層を識別するために検出することができる(Allen-Hoffmann, US 2014/0127170)。
【0112】
基底層細胞は、円柱の形状であり、ケラチンK5およびK14を産生する。いくつかの例では、基底層の細胞は、真皮または真皮等価物と表皮とを分離する基底膜と呼ばれる構造上に存在する。ラミニンは、基底膜の細胞外マトリックス中に見いだされ得る。真皮-表皮ジャンクションが存在しない構造、例えば、表皮成分のみ有する代用皮膚では、ラミニンは、基底層の陥入部に見いだされ得る。いくつかの例では、基底膜が、例えば代用皮膚を対象に適用した際に形成され得るかどうかを判定するために、ラミニン、例えば、ラミニン5の発現が検出される。
【0113】
最初の基底上ケラチノサイト層は、有棘膜層(有棘層)であり、隣接細胞間の多くのデスモソーム接触部の棘状の外観からそのように命名されている。この層のケラチノサイトはもはや、K5およびK14を産生し得ないが、その代わり、分化特異的ケラチンK1およびK10を合成することができる。ケラチノサイトは、上部有棘膜層においてインボルクリンおよび表皮特異的トランスグルタミナーゼを産生し始めることができる。形態学的に、有棘細胞は、基底細胞より大きく、より平坦である(Holbrook, 1994)。
【0114】
ケラチノサイトがさらに分化するにつれ、これらは顆粒膜層(顆粒層)を形成する。タイトジャンクションタンパク質は、顆粒層および表皮の深部層で同定されている(Brandner et al., Open Dermatol. J. 2010; 4:14-20)。この層の細胞は、フィラグリンのタンパク質前駆体であるプロフィラグリンを含有する、明瞭な電子密度の高いケラトヒアリン顆粒を特徴とする(Dale et al., 1994)。顆粒細胞はまた、脂質で満たされた顆粒を含有し、これは、顆粒膜層と角質層との間の移行帯の途中で、原形質膜と融合し、その内容物を細胞外空間に放出し、これにより表皮表面に疎水性を付与する。分化しているケラチノサイトが顆粒から角化層、すなわち、角層または角質層に移行するにつれ、プロフィラグリンが切断されて、フィラグリンを生成し、これが、マクロフィブリルと呼ばれるケラチン束のジスルフィド結合を介した整列および凝集に関与する。マクロフィブリルは、角化膜の基本構造単位である。正常な皮膚片では、フィラグリンは、顆粒層中に局在し、角化シート中に見いだされ得る(Sandilands et al., J Cell Sci. 2009; 122(9):1285-1294)。フィラグリンに対する抗体は、プロフィラグリンもその切断産物も検出する。
【0115】
最上部表皮層は、角質層である。インボルクリンを角質層の分化マーカーとして使用することができる。この層の細胞は、分化過程が完了しており、その核およびすべての代謝機能を喪失している。角化膜は、原形質膜の下に形成される非常に安定した不溶性のタンパク質構造であり、この構造は、界面活性剤および還元剤に抵抗性であり、最上部表皮層の最終分化した細胞に強度および剛性を付与する。角質細胞としても知られる角質の細胞は、修飾されたデスモソームによって一緒につながれており、最終的には皮膚の表面からシート状に剥離する。角質層または角化層について、ケラチノサイト分化に気液界面の導入が必要である(Prunieras et al., J Invest Dermatol. 1983 Jul;81(1 Suppl):28s-33s)。
【0116】
2. ケラチノサイトの細胞培養
無血清条件中の低レベル、例えば約0.3mMのカルシウムは、基底未分化表現型でのケラチノサイトの増殖を促進し、またウシ脳下垂体抽出物(BPE)の補充も増殖および細胞生存を増強することができる。低カルシウムから高カルシウムな条件への切り替え(「カルシウムスイッチ)」)は、分化のマーカーを誘発できるが、他の因子が、表皮層への最適な分化に寄与する場合がある。一例では、細胞を血清含有培地中で培養すること、および温度を例えば37℃から31℃に下げることを、カルシウムスイッチと組み合わせると、分化のマーカーが大規模に誘導されることが見いだされた(Borowiec et al., Plos One 2013: 8(10):e77507)。分化したケラチノサイトは、低カルシウム培地への曝露によって、その基底状態に戻ることができる。しかしながら、例えば細胞集密度75~80%を上回る高い細胞密度、および37℃を超える温度は、HaCaT細胞において、たとえ低カルシウム条件下であっても、分化を誘発することができる(Wilson, Methods Mol Biol. 2014;1195:33-41)。
【0117】
いくつかの態様では、ケラチノサイトを低カルシウム培地中で培養して、基底層を培養する、例えば、得る方法が、本明細書に提供される。いくつかの態様では、非初代ケラチノサイトを低カルシウム培地中で培養して、基底層を培養する、例えば、得る方法が、本明細書に提供される。いくつかの態様では、不死化ケラチノサイトを低カルシウム培地中で培養して、基底層を培養する、例えば、得る方法が、本明細書に提供される。いくつかの態様では、HaCaTケラチノサイトを低カルシウム培地中で培養して、基底層を培養する、例えば、得る方法が、本明細書に提供される。いくつかの態様では、ケラチノサイトが、低カルシウム培地中で約2~約6週間培養され、基底層が形成される。いくつかの態様では、低カルシウム培地中で約3~約4週間培養され、基底層が形成される。いくつかの態様では、ケラチノサイトが、低カルシウム培地中で約2週間、約3週間、約4週間、約5週間または約6週間培養され、基底層が形成される。いくつかの態様では、ケラチノサイトが、低カルシウム培地中で約4週間培養され、基底層が形成される。
【0118】
いくつかの態様では、本明細書に提供される方法は、ケラチノサイトおよび/または真皮線維芽細胞の成長を支援し、基底ケラチノサイトとも称される重層表皮の基底層を形成するために使用できる、細胞培養培地を含む。いくつかの態様では、重層表皮の基底層を培養するために無血清培地を使用できる。いくつかの態様では、重層表皮の基底層を培養するためにカルシウム不含培地を使用できる。いくつかの態様では、重層表皮の基底層を培養するための初期培地として、無血清かつカルシウム不含培地を使用できる。いくつかの態様では、基底層を培養するために使用される培養培地は、重層表皮の基底層を形成するために、最終低カルシウムレベル、例えば、約0.01mM Ca2+、約0.02mM Ca2+、約0.03mM Ca2+、約0.04mM Ca2+、約0.05mM Ca2+、約0.06mM Ca2+、約0.07mM Ca2+、約0.08mM Ca2+、約0.09mM Ca2+、または約0.1mM Ca2+に調整することができる。
【0119】
いくつかの例では、基底層を培養するために使用される培養培地は、内皮成長因子(EGF)および/またはウシ脳下垂体抽出物(BPE)をさらに含むことができる。いくつかの態様では、低カルシウム培養培地は、約0.1ng/ml、約0.2ng/ml、約3ng/ml、約4ng/ml、約5ng/mlもしくは約6ng/ml EGF、および/または約10μg/ml、20μg/ml、30μg/ml、40μg/ml、50μg/ml、60μg/mlもしくは70μg/ml BPEをさらに含む。いくつかの態様では、基底層を培養するための低カルシウム培養培地は、約0.1ng/ml、約0.2ng/mlもしくは約0.3ng/ml EGF、および/または約20μg/ml、30μg/ml、または40μg/ml BPEをさらに含む。いくつかの態様では、基底層を培養するための低カルシウム培養培地は、約0.2ng/ml EGFおよび約30μg/ml BPEをさらに含む。いくつかの態様では、基底層を培養するために使用される低カルシウム培地は、無血清である。いくつかの態様では、基底層を培養するために使用される低カルシウム培地は、無血清のケラチノサイト培養培地である。
【0120】
いくつかの態様では、本明細書に記載の通りに基底層を形成するために培養されていた基底ケラチノサイトを「カルシウムスイッチ」に曝露する方法であって、重層上皮の形成を促進するために培養培地中のカルシウムレベルを低レベルから高レベルに変化させる方法が、本明細書に提供される。いくつかの局面では、基底ケラチノサイトを低カルシウム培地中で培養し、その後続いて、基底ケラチノサイトを高カルシウム培地中で培養し、重層表皮を含む代用皮膚を形成する方法が、本明細書に提供される。いくつかの態様では、基底非初代ケラチノサイトを低カルシウム培地中で培養し、その後続いて、基底非初代ケラチノサイトを高カルシウム培地中で培養し、重層表皮を含む代用皮膚を形成する方法が、本明細書に提供される。いくつかの局面では、基底不死化ケラチノサイトを低カルシウム培地中で培養し、その後続いて、基底不死化ケラチノサイトを高カルシウム培地中で培養し、重層表皮を含む代用皮膚を形成する方法が、本明細書に提供される。いくつかの局面では、基底HaCaTケラチノサイトを低カルシウム培地中で培養し、その後続いて、基底HaCaTケラチノサイトを高カルシウム培地中で培養し、重層表皮を含む代用皮膚を形成する方法が、本明細書に提供される。
【0121】
いくつかの局面では、カルシウムスイッチ(低カルシウム培地から高カルシウム培地への移行)の前に、基底ケラチノサイトを低カルシウム培地中の基板上で培養できる方法が、本明細書に提供される。基底ケラチノサイトと接触する面、すなわち、基板は、側壁を含んでよく、かつ/または、インサートもしくはカップの形態であることができる。いくつかの態様では、基板は、ウェルの開口部に適合する。いくつかの態様では、基板は、適切なサイズ、例えば、ケラチノサイトの重層表皮への成長および分化を支援するサイズの直径および孔を有する面を含むことができる。いくつかの態様では、基板は、多様な孔および直径サイズから構成されてよい。いくつかの態様では、基板は、メッシュまたはトランズウェルインサート、例えば、少なくとも50mmもしくは約50mm、少なくとも75mmもしくは約75mm、少なくとも100mmもしくは約100mm、または少なくとも125mmもしくは約125mmの直径、および少なくとも1.0μmもしくは約1.0μm、少なくとも2.0μmもしくは約2.0μm、少なくとも3.0μmもしくは約3.0μm、少なくとも4.0μmもしくは約4.0μm、または少なくとも5.0μmもしくは約5.0μmの孔サイズを有する、トランズウェルインサートである。いくつかの態様では、基板は、トランズウェルインサートまたはリング、例えば、クローニングリングである。いくつかの態様では、基板は、メッシュ、例えば、ワイヤメッシュを含んでよく、播種される基底ケラチノサイトは、メッシュ上、例えば、基板の上および/または下に位置付け可能であり得る。いくつかの態様では、基板は、プラスチック製または金属製であってよい。いくつかの態様では、基底ケラチノサイトは、液体透過性基材の上、例えば、孔を含むワイヤメッシュまたはプラスチックの上および/または下に播種されてよい。
【0122】
いくつかの態様では、基板は、例えば、ゲルで被覆される。いくつかの態様では、ゲルは、コラーゲン、すなわち、ゼリー状コラーゲン、および/またはヒドロゲルであり得る。いくつかの態様では、インサートの表面を、ヒトでの使用が認定された中和ウシコラーゲン溶液で覆うことができる。いくつかの態様では、溶液、例えば、コラーゲン溶液を使用して、基板を被覆することができ、次いで、溶液で被覆された基板を、溶液がゼリー状になる、例えば、ゼリー状コラーゲンを形成するまで十分な時間インキュベートすることができる。いくつかの態様では、基板または被覆基板は、基底ケラチノサイトを播種する前に、例えば、PBSで洗浄される。
【0123】
いくつかの態様では、基底ケラチノサイトは、最終低カルシウムレベルまで補充した無血清かつ/またはカルシウム不含培地中、基板、例えば、被覆基板上に播種することができる。いくつかの態様では、基底ケラチノサイトは、最終低カルシウムレベルまで補充した無血清かつ/またはカルシウム不含培地中、いかなる追加補充もなく、基板、例えば、被覆基板上に播種することができる。いくつかの態様では、基底ケラチノサイトは、最終低カルシウムレベルまで補充した無血清かつ/またはカルシウム不含培地中、追加補充ありで、基板、例えば、被覆基板上に播種することができる。いくつかの態様では、基底ケラチノサイトは、最終低カルシウムレベルまで補充した無血清かつ/またはカルシウム不含培地中、EGFおよび/またはBPEを補充して、基板、例えば、被覆基板上に播種することができる。
【0124】
いくつかの態様では、低カルシウム培養培地は、0.01mM Ca2+もしくは約0.01mM Ca2+、0.02mM Ca2+もしくは約0.02mM Ca2+、0.03mM Ca2+もしくは約0.03mM Ca2+、0.04mM Ca2+もしくは約0.04mM Ca2+、0.05mM Ca2+もしくは約0.05mM Ca2+、または0.06mM Ca2+もしくは約0.06mM Ca2+である最終低Ca2+レベルまで補充される。いくつかの態様では、低カルシウム培養培地は、約0.1ng/ml、約0.2ng/ml、約3ng/ml、約4ng/ml、約5ng/mlもしくは約6ng/ml EGF、および/または約10μg/ml、20μg/ml、30μg/ml、40μg/ml、50μg/ml、60μg/mlもしくは70μg/ml BPEをさらに含む。いくつかの態様では、低カルシウム培養培地は、約0.1ng/ml、約0.2ng/mlもしくは約0.3ng/ml EGF、および/または約20μg/ml、30μg/mlもしくは40μg/ml BPEをさらに含む。いくつかの態様では、低カルシウム培養培地は、約0.2ng/ml EGFおよび約30μg/ml BPEをさらに含む。いくつかの態様では、基板上でケラチノサイトを培養するために使用される低カルシウム培地は、無血清である。いくつかの態様では、基板上でケラチノサイトを培養するために使用される低カルシウム培地は、無血清のケラチノサイト培養培地である。
【0125】
いくつかの態様では、細胞は、約1×106個の細胞/ml、10×106個の細胞/ml、20×106個の細胞/ml、30×106個の細胞/ml、40×106個の細胞/ml、または50×106個の細胞/mlの密度で、基板と接触するように播種することができる。いくつかの態様では、細胞は、基板の下、基板の上、または基板の下および上に播種される。いくつかの態様では、細胞は、約1×106個の細胞/ml、10×106個の細胞/ml、20×106個の細胞/ml、30×106個の細胞/ml、40×106個の細胞/ml、または50×106個の細胞/mlの密度で、被覆基板と接触するように播種することができる。いくつかの態様では、細胞は、被覆基板の下、被覆基板の上、または被覆基板の下および上に播種される。
【0126】
いくつかの態様では、基板上への播種後、例えば、被覆基板の上および下に播種された後、基底ケラチノサイトは、低カルシウム培地中で約2~約6日間、約3~約5日間または約3~約4日間インキュベートされる。いくつかの態様では、基板上への播種後、例えば、被覆基板の上および下に播種された後、基底ケラチノサイトは、低カルシウム培地中で約2日間、約3日間、約4日間、約5日間、約6日間または約7日間インキュベートされる。いくつかの態様では、低カルシウム培養培地は、毎日交換される。いくつかの態様では、低カルシウム培養培地は、1日おきに交換される。いくつかの態様では、低カルシウム培地は、無血清である。いくつかの態様では、低カルシウム培地は、無血清のケラチノサイト培養培地である。
【0127】
いくつかの態様では、ケラチノサイトを培養する方法であって、培養下の気液界面の導入およびカルシウムレベルの増大が重層表皮へのケラチノサイト分化を刺激する方法が、本明細書に提供される。いくつかの態様では、気液界面および増大したカルシウムレベルは、基板との低カルシウム培地中での培養の3日目、4日目、5日目、6日目または7日目に導入することができる。いくつかの態様では、気液界面を導入したら、低カルシウムケラチノサイト培養培地は、廃棄され、比較的高いカルシウムレベルに調整された培地と取り換えられる。いくつかの態様では、高いカルシウムレベルは、1~5mM Ca2+、1~4mM Ca2+、1~3mM Ca2+、2~4mM Ca2+もしくは2~3mM Ca2+、または約1~5mM Ca2+、1~4mM Ca2+、1~3mM Ca2+、2~4mM Ca2+もしくは2~3mM Ca2+である。いくつかの態様では、高いカルシウムレベルは、1.5mM Ca2+、1.6mM Ca2+、1.7mM Ca2+、1.8mM Ca2+、1.9mM Ca2+、2.0mM Ca2+、2.1mM Ca2+、2.2mM Ca2+、2.3mM Ca2+、2.4mM Ca2+、2.5mM Ca2+、2.6mM Ca2+、2.7mM Ca2+、2.8mM Ca2+、2.9mM Ca2+もしくは3mM Ca2+、または約1.5mM Ca2+、1.6mM Ca2+、1.7mM Ca2+、1.8mM Ca2+、1.9mM Ca2+、2.0mM Ca2+、2.1mM Ca2+、2.2mM Ca2+、2.3mM Ca2+、2.4mM Ca2+、2.5mM Ca2+、2.6mM Ca2+、2.7mM Ca2+、2.8mM Ca2+、2.9mM Ca2+もしくは3mM Ca2+である。
【0128】
いくつかの態様では、高カルシウム培地に、EGF、ウシ脳下垂体抽出物(BPE)、および/またはヒドロコルチゾンが補充される。いくつかの態様では、高カルシウム培地に、0.09ng/ml EGFもしくは約0.09ng/ml EGF、0.1ng/ml EGFもしくは約0.1ng/ml EGF、0.2ng/ml EGFもしくは約0.2ng/ml EGF、0.3ng/ml EGFもしくは約0.3ng/ml EGF、0.4ng/ml EGFもしくは約0.4ng/ml EGF、または0.5ng/ml EGFもしくは約0.5ng/ml EGFが補充される。いくつかの態様では、高カルシウム培地に、10μg/ml BPEもしくは約10μg/ml BPE、20μg/ml BPEもしくは約20μg/ml BPE、30μg/ml BPEもしくは約30μg/ml BPE、40μg/ml BPEもしくは約40μg/ml BPE、または50μg/ml BPEもしくは約50μg/ml BPEが補充される。いくつかの態様では、高カルシウム培地に、0.1μg/mlもしくは約0.1μg/ml、0.2μg/mlもしくは約0.2μg/ml、0.3μg/mlもしくは約0.3μg/ml、0.4μg/mlもしくは約0.4μg/ml、0.5μg/mlもしくは約0.5μg/ml、0.6μg/mlもしくは約0.6μg/ml、0.7μg/mlもしくは約0.7μg/ml、または0.8μg/mlもしくは約0.8μg/mlのヒドロコルチゾンが補充される。いくつかの態様では、高カルシウム培地に、約0.2ng/ml EGF、30μg/ml BPE、および0.4μg/ml ヒドロコルチゾンが補充される。いくつかの態様では、高カルシウム培地は、無血清である。いくつかの態様では、高カルシウム培地は、無血清のケラチノサイト培養培地である。
【0129】
いくつかの態様では、ケラチノサイトは、高カルシウム培地中、基板上、例えば、コラーゲン被覆基板の上および下で、重層表皮が得られるまで約2~4週間、約2~3週間または約3週間培養することができる。いくつかの態様では、ケラチノサイトは、高カルシウム培地中、例えば、コラーゲン被覆基板の上および下で、重層表皮が得られるまで14日間、15日間、16日間、17日間、18日間、19日間、20日間、21日間、22日間、23日間、24日間、25日間、26日間、27日間、または28日間培養することができる。いくつかの態様では、高カルシウム培養培地は、重層表皮が得られるまで毎日取り換えることができる。いくつかの態様では、高カルシウム培養培地は、重層表皮が得られるまで1日おきに取り換えることができる。
【0130】
気液界面を導入したら、基板、例えば、コラーゲン被覆基板の上および/または下に位置する分化したケラチノサイトは、代用皮膚を形成する細胞の最上面が、組織培養培地ではなく気体環境に曝露され、かつ/または、代用皮膚の基底層の細胞が、気体環境ではなく組織培養培地に曝露されるように配置設定され得る。気液界面の導入は、代用皮膚の二相培養、すなわち、気体環境と液体環境での培養を容易にすることができる。例えば、培地中の代用皮膚は、使用において、角層が、組織培養培地ではなく気体環境に曝露され、かつ/あるいは、基底層および/または真皮もしくは真皮等価物が、気体環境ではなく組織培養培地に曝露されるように配置設定され得る。これは、液界面の高さを制御することおよび/または基板、例えば、コラーゲン被覆基板の場所を位置調整することによって達成され得る。いくつかの態様では、基板、例えば、トランズウェルまたはインサートは、トランズウェルの底部が液体に触れるが、液体が表皮/表皮等価物の上部と接触しないように位置調整され得る。
【0131】
ケラチノサイト培養培地は、約33.0~37.5℃、例えば、約34~37.5℃、約35~37.5℃、約36~37.5℃または約37℃の温度であり得る。組織培養培地はまた、約6.1~7.9、例えば、約6.2~7.7、約6.3~7.7、約6.4~7.7、約6.5~7.7、約6.6~7.7、約6.7~7.6、約6.8~7.6、約6.9~7.6、約7~7.6、約7.1~7.6、約7.1~7.5または約7.2~7.4のpHであり得る。組織培養培地は、約2~10%、約2~8%、約3~7%、約4~6%、または約5%のCO2を含み得る。いくつかの態様では、代用皮膚の最上面は、組織培養培地に曝露されず、代用皮膚の最下面または基底面は、気体環境に曝露されない。
【0132】
皮膚試料ホルダーが、無菌性を維持するためにラミナーフローフード中に設置され得る。大気モニターが、気体環境中の条件を監視するために使用され得る。いくつかの態様では、気体環境は、約37℃または約37℃未満、例えば、約10~36℃、約12~32℃、約14~29℃、約15~25℃、約18~25℃、約19~24℃、または約20~22℃の温度を有することができる。気体環境はまた、約90%または約90%未満、例えば、約0~89%、約0~85%、約10~80%、約15~75%、約20~74%、約23~70%、約25~65%、約30~50%、約35~50%、約40~50%、または約40~45%の相対湿度を有し得る。
【0133】
いくつかの態様では、代用皮膚の培養のための気体環境は、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.1%、0.09%、0.08%、0.07%、0.06%、0.05%、0.045%または0.04%未満のCO2を含み得る。いくつかの態様では、気体環境は、0.02~0.05%または0.035~0.045%のCO2を含み得る。いくつかの態様では、気体環境は、18~25%、18~24%、18~23%、19~23%、19~22%、20~22%または約21%のO2を含み得る。いくつかの態様では、気体環境は、約78%のN2、および/または約1%のアルゴンを含有し得る。いくつかの態様では、気体環境は、大気空気、圧縮空気および/または医療用空気を含み得る。いくつかの局面では、医療用空気は、無菌圧縮空気のことを指し得、医療用空気は、大気空気(例えば、大体78%のN2および21%のO2)に似た気体の組成を有し得る。いくつかの局面では、気体環境は、衛生的な内部室または生理学的条件を模倣し得る。
【0134】
B. 成長因子およびインスリンを送達するための重層表皮を含む代用皮膚の操作
重層表皮の細胞を含む代用皮膚に核酸分子、例えば、ポリヌクレオチドを導入する方法が、本明細書に提供される。いくつかの態様では、任意の所望の核酸分子、任意の核酸分子を含有する媒体、構築物または複合体を導入する方法が、本明細書に提供される。いくつかの態様では、重層表皮の細胞は、対象への送達、例えば、分泌のために、導入された核酸をタンパク質に翻訳することができる。いくつかの態様では、重層表皮のケラチノサイトに、所望の機能を有するまたは所望の機能を有する選択されたポリペプチドをコードする核酸分子が形質導入されている。
【0135】
いくつかの態様では、記載される通りの成長因子またはインスリンをコードするポリヌクレオチドは、重層表皮の細胞に、ウイルスまたは非ウイルスによる方法によって導入することができる。いくつかの態様では、非ウイルスによる送達法は、DNA(例えば、二本鎖環状または線状)、RNA、リボザイム、またはアプタマーの導入を含む。いくつかの態様では、導入は、組換えインスリンまたは成長因子をコードするポリヌクレオチドを含有するウイルスベクターを使用することを伴う。例として、アデノウイルスベクターを使用することができる。いくつかの態様では、導入される核酸分子は、異種核酸分子または導入遺伝子を含有する構築物として提供することができる。
【0136】
細胞に核酸をインビトロまたはインビボのいずれかで導入するための当業者に公知の多数の構築物がある。いくつかの態様では、そのような構築物は、ウイルスベースの送達系(例えば、形質導入のための)、および非ウイルスベースの送達系(例えば、トランスフェクション)を含む。いくつかの態様では、導入されるポリヌクレオチドは、ベクター(例えば、ウイルスベクターまたは発現ベクター)、ナノ粒子(例えば、標的化または放射性標識ナノ粒子)またはプラスミドで送達される核酸分子を含有する構築物であることができる。そのような構築物は、当技術分野において周知であり、本明細書に記載される組成物および方法との使用に容易に適合可能である。
【0137】
上に提供された態様のいずれかにおいて、本明細書に提供される組換え成長因子および組換えインスリンをコードするポリヌクレオチドは、細胞に、組換えDNAおよびクローニング技術を使用して導入することができる。そのために、組換え分子、例えば、組換え成長因子または組換えインスリンをコードする組換えDNA分子が調製される。そのようなDNA分子を調製する方法は、当技術分野において周知である。例として、ペプチドをコードする配列を、好適な制限酵素を使用してDNAから切除することもできる。あるいは、DNA分子を、化学合成技術、例えばホスホロアミダイト法を使用して合成することもできる。また、これらの技術の組み合わせを使用することもできる。場合によっては、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を通じて、組換えまたは合成核酸を作製してもよい。組換え分子をコードするDNAインサートを、適切な形質導入/トランスフェクションベクターにクローニングすることができ、これも当業者に公知である。また、核酸分子を含有する発現ベクターも提供される。
【0138】
いくつかの態様では、発現ベクターは、タンパク質の発現および分泌に適した条件下で、分化した重層表皮の適切な細胞中に、組換え成長因子および組換えインスリンを発現可能である。いくつかの局面では、核酸分子または発現ベクターは、適切な発現制御配列に機能的に連結された組換え分子をコードするDNA分子を含む。DNA分子がベクターに挿入される前または後のいずれかにこの機能的連結を達成する方法は、周知である。発現制御配列には、プロモーター、アクチベーター、エンハンサー、オペレーター、リボソーム結合部位、開始シグナル、終止シグナル、キャップシグナル、ポリアデニル化シグナル、および転写または翻訳の制御に関与する他のシグナルが含まれる。
【0139】
いくつかの態様では、組換え分子の発現は、発現を制御または調節するためのプロモーターまたはエンハンサーによって制御される。プロモーターは、組換え分子をコードする核酸分子の一部分に機能的に連結される。
【0140】
結果として得られたDNA分子をその上に有する組換え発現ベクターは、適切な宿主を形質転換するために使用される。この形質転換は、当技術分野において周知の方法を使用して実施することができる。いくつかの態様では、結果として得られたDNA分子をその上に有する発現ベクターは、適切な細胞を形質転換する、例えば、形質導入するために使用される。導入は、当技術分野において周知の方法を使用して実施することができる。例示的な方法には、ウイルス、例えば、アデノウイルス、形質導入、トランスポゾンおよびエレクトロポレーションを介したものを含む、核酸の移入のための方法が含まれる。いくつかの態様では、発現ベクターは、ウイルスベクターである。いくつかの態様では、核酸は、アデノウイルス形質導入法によって細胞に移入される。
【0141】
いくつかの局面では、重層表皮を含む代用皮膚のケラチノサイトに導入するための成長因子およびヒトインスリンの前駆体をコードするポリヌクレオチドが、本明細書に提供される。いくつかの態様では、導入する段階は、重層表皮を含む代用皮膚の細胞をポリヌクレオチド(例えば、ウイルスベクター中に存在する)と、最大10分間もしくは約10分間、最大20分間もしくは約20分間、最大30分間もしくは約30分間、最大45分間もしくは約45分間、最大60分間もしくは約60分間、最大75分間もしくは約75分間、最大90分間もしくは約90分間、または最大120分間もしくは約120分間接触させることを含む。いくつかの態様では、導入する段階は、重層表皮の層、例えば、基底層をポリヌクレオチド(例えば、ウイルスベクター中に存在する)と、最大10分間もしくは約10分間、最大20分間もしくは約20分間、最大30分間もしくは約30分間、最大45分間もしくは約45分間、最大60分間もしくは約60分間、最大75分間もしくは約75分間、最大90分間もしくは約90分間、または最大120分間もしくは約120分間接触させることを含む。
【0142】
1. 代用皮膚への送達のためのポリヌクレオチドおよびそれによってコードされる分泌ポリペプチド
いくつかの局面では、重層表皮を含む代用皮膚にポリヌクレオチドを導入することを含む方法が、本明細書に提供される。いくつかの態様では、代用皮膚に送達または導入される特定のポリヌクレオチドは、限局された標的領域に存在する場合および/または血流に分泌される場合に有用な活性または性質をその発現によりもたらす核酸分子であるか、またはそれを含む。いくつかの態様では、重層表皮を含む代用皮膚にポリヌクレオチドを導入することは、所望効果または治療効果を有する1つまたは複数のコードされたポリペプチドの産生、例えば、分泌をもたらす。いくつかの態様では、送達または導入された核酸分子は、重層表皮の細胞によって翻訳されて、所望の奏効、例えば、創傷治癒の状況下に創傷閉鎖をもたらす1つまたは複数のタンパク質を産生および/または分泌することができる。
【0143】
いくつかの態様では、核酸分子は、媒体、例えば、ウイルスベクターの一部として、複合体もしくは構築物として、または裸のDNAとして送達または導入することができる。いくつかの態様では、核酸分子は、核酸分子を含有するベクターまたはプラスミド、例えばウイルスベクターまたは非ウイルスベクターを含むことができる。いくつかの態様では、核酸分子は、リポソーム中に封入することができる。いくつかの態様では、核酸分子は、他の作用物質、例えば標的リガンドまたは他の部分と複合体化して、ナノ粒子として送達することができる。
【0144】
いくつかの態様では、代用皮膚の細胞に導入されるポリヌクレオチドは、1つまたは複数の所望のポリペプチド、例えば、成長ホルモンおよびインスリンまたはそのバリアントをコードする核酸分子であるか、またはそれを含む。いくつかの態様では、コードされたポリペプチドは、重層表皮を含む代用皮膚の細胞から分泌または放出させることができる。いくつかの態様では、代用皮膚の細胞に導入されるポリヌクレオチドは、成長因子、例えば、VEGFまたはその任意のアイソフォーム、ならびに細胞成長、細胞分化または細胞代謝を調節するホルモンタンパク質、例えば、プロインスリンおよび/またはインスリンをコードすることができる。
【0145】
a. 組換え成長因子
代用皮膚のケラチノサイトに組換え成長因子をコードするポリヌクレオチドを導入する方法が、本明細書に提供される。いくつかの態様では、本明細書に提供される方法は、重層表皮から構成される代用皮膚の細胞に、組換え成長因子をコードするポリヌクレオチドを形質導入することを含む。いくつかの態様では、ポリヌクレオチド分子は、受容体に結合する成長因子もしくはその部分またはリガンドに結合する成長因子受容体もしくはその部分であるポリペプチドをコードすることができる。
【0146】
いくつかの態様では、成長因子をコードする核酸分子が、重層表皮のケラチノサイトに導入される。いくつかの態様では、重層表皮のケラチノサイトに、上皮成長因子(EGF)、エリスロポエチン(EPO)、線維芽細胞成長因子(FGF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、肝細胞成長因子(HGF)、インスリン様成長因子(IGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、トランスフォーミング成長因子αおよびβ、血管内皮成長因子(VEGF)、ならびにそれらの任意のアイソフォームまたは選択的スプライスバリアントから選択される成長因子をコードするポリヌクレオチドが形質導入される。いくつかの態様では、重層表皮の細胞に、本発明において使用され得るPDGF/VEGFファミリーのタンパク質の他のメンバーをコードするポリヌクレオチド、例えば、血管内皮成長因子B(VEGF-B)ポリペプチド、血小板由来成長因子A(PDGF-A)ポリペプチド、血小板由来成長因子B(PDGF-B)ポリペプチド、c-fos誘導成長因子(FIGF)ポリペプチド、または胎盤成長因子(P1GF)ポリペプチドが形質導入される。
【0147】
いくつかの態様では、該ポリヌクレオチドは、成長因子の分泌を容易にするシグナルペプチドを含有する成長因子配列をコードする。いくつかの態様では、シグナルペプチドは、前駆成長因子配列中に存在し、切断されることで、分泌可能な成熟成長因子を形成する。いくつかの態様では、シグナルペプチドは、成長因子の内因性または天然シグナルペプチドである。いくつかの態様では、シグナルペプチドは、異なるタンパク質由来の異種シグナルペプチドである。いくつかの態様では、シグナルペプチドは、代用皮膚の細胞から成長因子が発現される際に切断される。いくつかの態様では、分泌可能な成長因子配列は、シグナルペプチドを欠いている。いくつかの態様では、成長因子が、細胞から分泌可能である。いくつかの態様では、組換え成長因子が、重層表皮から分泌可能である。いくつかの態様では、重層表皮の細胞は、組換え成長因子を分泌する。
【0148】
いくつかの態様では、成長因子は、VEGF-Aであるか、またはそのアイソフォームもしくは選択的にスプライシングされたバリアントである。VEGF-Aは、血管新生の重要なメディエーターであり、VEGF受容体(VEGFR)のクラスIVチロシンキナーゼ受容体ファミリーを介してシグナル伝達する。VEGF-Aリガンドは、VEGFR1とVEGFR2の両方に結合するが、これらは主にVEGFR2を介してシグナル伝達し、内皮細胞の増殖、生存、遊走および血管透過性をもたらす。別個のVEGF-Aアイソフォームが選択的スプライシングから生じる。VEGF-R(例えば、VEGFR2)に結合する能力を保持するVEGF-Aの任意のアイソフォームまたは選択的にスプライシングされたバリアントが、提供される代用皮膚において企図される。通常、VEGF-Aアイソフォームは、その長さが異なり、VEGF xxx(ここで、xxxは、最終タンパク質配列中に存在するアミノ酸の数を表す)と命名される。
【0149】
例示的なVEGF-Aアイソフォームには、血管内皮成長因子A(VEGF-A)ポリペプチドのVEGF 206(SEQ ID NO:11)、VEGF-AのアイソフォームVEGF 189(SEQ ID NO:19)、VEGF-AのアイソフォームVEGF 183(SEQ ID NO:20)、VEGF-AのアイソフォームVEGF 148(SEQ ID NO:21)、VEGF-AのアイソフォームVEGF 145(SEQ ID NO:22)、VEGF-AのアイソフォームVEGF 165B(SEQ ID NO:23)、VEGF-AのアイソフォームVEGF 121(SEQ ID NO:24)、VEGF-AのアイソフォームVEGF111(SEQ ID NO:25)、VEGF-AのアイソフォームVEGF 165(SEQ ID NO:7)、VEGF-AのアイソフォームL-VEGF165(SEQ ID NO:26)、VEGF-AのアイソフォームL-VEGF 121(SEQ ID NO:27)、VEGF-AのアイソフォームL-VEGF 189(SEQ ID NO:28)、VEGF-AのアイソフォームL-VEGF 206(SEQ ID NO:29)、VEGF-Aのアイソフォーム15(SEQ ID NO:30)、VEGF-Aのアイソフォーム16(SEQ ID NO:31)、VEGF-Aのアイソフォーム17(SEQ ID NO:32)、またはVEGF-Aのアイソフォーム18(SEQ ID NO:33)が含まれるが、これらに限定されない。また、細胞から発現および産生された際に切断されてシグナルペプチドを欠いたその成熟配列も含まれることが理解される。
【0150】
いくつかの態様では、該ポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:7、11および19~33のいずれか1つに示されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%もしくは少なくとも約80%、少なくとも85%もしくは少なくとも約85%、少なくとも90%もしくは少なくとも約90%、または少なくとも95%もしくは少なくとも約95%の配列同一性を有し、VEGFR(例えば、VEGFR-2)への結合を保持する、組換えヒトVEGF-Aアイソフォームをコードする。いくつかの態様では、該ポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:7、11および19~33のいずれか1つに示される組換えヒトVEGF-Aアイソフォームをコードする。いくつかの態様では、該ポリヌクレオチドは、シグナルペプチドを含有するタンパク質をコードし、シグナルペプチドは、シグナルペプチドを欠いたタンパク質が構成性分泌経路などを介して分泌されるように、タンパク質分解により切断および除去される。いくつかの態様では、該ポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:7、11および19~33のいずれか1つに示されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%もしくは少なくとも約80%、少なくとも85%もしくは少なくとも約85%、少なくとも90%もしくは少なくとも約90%、または少なくとも95%もしくは少なくとも約95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有し、VEGFR(例えば、VEGFR-2)への結合を保持する、VEGF-Aアイソフォームをコードする。いくつかの態様では、該ポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:7、11および19~33のいずれか1つに示される組換えVEGF-Aアイソフォームをコードする。いくつかの態様では、該ポリヌクレオチドは、タンパク質分解により切断および除去されるシグナルペプチドを欠いているタンパク質をコードし、例えば、コードされたタンパク質は、SEQ ID NO:7、11および19~33のいずれか1つに示されるシグナルペプチドを欠いている(例えば、アミノ酸残基1~26を欠いている)。いくつかの態様では、該ポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:4に示される配列に対して少なくとも80%もしくは少なくとも約80%、少なくとも85%もしくは少なくとも約85%、少なくとも90%もしくは少なくとも約90%、または少なくとも95%もしくは少なくとも約95%の配列同一性を有する配列を含む。いくつかの態様では、該ポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:4に示される配列を含む。いくつかの態様では、該ポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:4に示される。いくつかの態様では、該ポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:7に示される配列に対して少なくとも80%もしくは少なくとも約80%、少なくとも85%もしくは少なくとも約85%、少なくとも90%もしくは少なくとも約90%、または少なくとも95%もしくは少なくとも約95%の配列同一性を有する配列、あるいはシグナルペプチドを欠いているその配列を含む、組換えヒトVEGF-Aをコードする。いくつかの態様では、該ポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:7に示される配列またはシグナルペプチドを欠いているその配列を含む組換えヒトVEGF-Aをコードする。いくつかの態様では、該ポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:7またはシグナルペプチドを欠いているその配列に示される組換えヒトVEGF-Aをコードする。
【0151】
いくつかの態様では、成長因子配列をコードするポリヌクレオチドは、VEGFの分泌を容易にするシグナルペプチドを含有する。いくつかの態様では、シグナルペプチドは、前駆成長因子配列中に存在し、切断されることで、分泌可能な成熟成長因子を形成する。いくつかの態様では、シグナルペプチドは、成長因子の内因性または天然シグナルペプチドである。いくつかの態様では、シグナルペプチドは、異なるタンパク質由来の異種シグナルペプチドである。いくつかの態様では、シグナルペプチドは、
として示される配列である。いくつかの態様では、シグナルペプチドは、代用皮膚の細胞からVEGFが発現される際に切断される。
【0152】
いくつかの態様では、成長因子は、PDGF/VEGFファミリーのタンパク質のメンバーである。いくつかの態様では、該ポリヌクレオチドは、血管内皮成長因子B(VEGF-B)ポリペプチド(例えば、SEQ ID NO:12)、c-fos誘導成長因子(FIGF)ポリペプチド(VEGF-Dとも称される)(例えば、SEQ ID NO:13)、血小板由来成長因子A(PDGF-A)ポリペプチド(例えば、SEQ ID NO:14)、血小板由来成長因子B(PDGF-B)ポリペプチド(例えば、SEQ ID NO:15)、または胎盤成長因子(PLGF)ポリペプチド(例えば、SEQ ID NO:16)、およびそれらの任意のアイソフォームまたは選択的にスプライシングされたバリアントである成長因子をコードする。
【0153】
いくつかの態様では、該ポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:12~16のいずれか1つに示されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%もしくは少なくとも約80%、少なくとも85%もしくは少なくとも約85%、少なくとも90%もしくは少なくとも約90%、または少なくとも95%もしくは少なくとも約95%の配列同一性を有するアミノ酸配列、あるいはその選択的にスプライシングされた形態またはアイソフォームを有する組換えヒト成長因子をコードする。いくつかの態様では、該ポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:12~16のいずれか1つに示される組換えヒト成長またはその選択的にスプライシングされた形態もしくはアイソフォームをコードする。いくつかの態様では、該ポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:12~16のいずれか1つに示される組換えヒト成長因子をコードする。いくつかの態様では、コードされたタンパク質は、シグナルペプチドを欠いており、シグナルペプチドは、コードされたタンパク質がSEQ ID NO:12~16のいずれか1つに示されるシグナルペプチドを欠くようにタンパク質分解により切断および除去される(例えば、配列表を参照のこと)。
【0154】
いくつかの態様では、成長因子をコードするポリヌクレオチドを含む代用皮膚のケラチノサイトは、成長因子を分泌または放出する。いくつかの態様では、成長因子をコードするポリヌクレオチドを含む代用皮膚のケラチノサイトは、成熟成長因子を分泌または放出する。いくつかの態様では、成長因子をコードするポリヌクレオチド分子を含む代用皮膚のケラチノサイトは、成熟成長因子を分泌または放出し、ここで、成長因子は、VEGFまたはその任意のアイソフォームを含む。いくつかの態様では、分泌されるVEGFをコードするポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:4に示される配列に対して少なくとも80%もしくは少なくとも約80%、少なくとも85%もしくは少なくとも約85%、少なくとも90%もしくは少なくとも約90%、または少なくとも95%もしくは少なくとも約95%の配列同一性を有する配列を含む。いくつかの態様では、VEGFをコードするポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:4に示される配列を含む。いくつかの態様では、該VEGFアイソフォームは、SEQ ID NO:7に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%もしくは少なくとも約80%、少なくとも85%もしくは少なくとも約85%、少なくとも90%もしくは少なくとも約90%、または少なくとも95%もしくは少なくとも約95%の配列同一性を有する配列を含む。いくつかの態様では、該VEGFアイソフォームは、SEQ ID NO:7に示されるアミノ酸配列を含む。いくつかの態様では、重層表皮の基底層の細胞は、組換え成長因子を分泌する。
【0155】
b. 組換えインスリン
インスリンは、分子量が5808ダルトンの51個のアミノ酸残基から構成されるポリペプチドである。インスリンは、膵臓のランゲルハンス島ベータ細胞において産生される。例示的なヒトインスリンは、24アミノ酸シグナルペプチドを含有する110アミノ酸前駆体ポリペプチドとして翻訳され、ERで、シグナル配列が切断され、その結果、プロインスリンになる。プロインスリン分子は、その後、プロホルモン変換酵素(例えば、PC1/3)として知られるタンパク質分解酵素の作用によっておよびエキソプロテアーゼカルボキシペプチダーゼE(CPE)の作用によって、成熟インスリンへと変換される(Ramzy et al, Diabetes 2020; 69(7): 1451-1462)。この切断は、4個の塩基性アミノ酸残基および残りの31アミノ酸Cペプチドまたは連結鎖(プレプロインスリンポリペプチドのアミノ酸残基57~87に対応する)の除去をもたらす。結果として生じたインスリンは、ジスルフィド結合によって架橋されている、21アミノ酸A鎖(プロインスリンポリペプチドのアミノ酸残基66~86に対応する)および30アミノ酸B鎖(プロインスリンポリペプチドのアミノ酸残基1~30に対応する)を含有する。通常、成熟インスリンは、3つのジスルフィド橋を含有する:1つはA鎖の7位とB鎖の7位の間、2番目はA鎖の20位とB鎖の19位の間、そして、3番目はA鎖の6位と11位の間。
【0156】
いくつかの態様では、本明細書に提供される方法は、組換えヒトインスリンの前駆体をコードするポリヌクレオチドを代用皮膚のケラチノサイトに導入することを含む。いくつかの態様では、本明細書に提供される方法は、プロインスリンをコードするポリヌクレオチドを代用皮膚のケラチノサイトに導入することを含む。
【0157】
いくつかの態様では、該ポリヌクレオチドは、天然または野生型インスリンポリペプチドである組換えレギュラーインスリンをコードする。これらには、組換え型のヒトインスリン、ならびにウシ、ブタおよび他の種由来のインスリンが含まれる。いくつかの態様では、組換えインスリンは、Humulin(登録商標)R、Novolin(登録商標)RおよびVelosulin(登録商標)として販売されているレギュラーヒトインスリンの組換えインスリンである。いくつかの態様では、組換えインスリンは、Iletin II(登録商標)として販売されているレギュラーブタインスリンの組換えインスリンである。
【0158】
いくつかの態様では、該ポリヌクレオチドは、組換えヒトインスリンをコードする。いくつかの態様では、該ポリヌクレオチドは、インスリンのプロインスリン前駆体型をコードする。いくつかの態様では、ヒトインスリンの前駆体は、ヒトプロインスリンである。いくつかの態様では、該ポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:5に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%もしくは少なくとも約80%、少なくとも85%もしくは少なくとも約85%、少なくとも90%もしくは少なくとも約90%、または少なくとも95%もしくは少なくとも約95%の配列同一性を有するヒトプロインスリンアミノ酸配列をコードする。いくつかの態様では、該ポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:5に示されるヒトプロインスリンをコードする。
【0159】
いくつかの態様では、該ポリヌクレオチドは、ヒトインスリンのバリアント、例えば機能的バリアントまたは種もしくはアレルバリアントであるか、あるいは活性を有するヒトインスリンの切断型である、組換えインスリンをコードする。いくつかの態様では、アレルおよび種バリアント、スプライスバリアントによってコードされるバリアントならびに他の機能的バリアント、例えばインスリン類似体または他の誘導体型もしくは修飾型を含む、インスリンのバリアントをコードするそのようなポリヌクレオチドは、インスリンがヒトインスリン受容体に結合して、グルコース取り込みおよび貯蔵の増大ならびに/または内因性グルコース産生の減少をもたらすシグナル伝達カスケードを始動させる限り、SEQ ID NO:5に示されるヒトインスリンの配列に対してまたはAおよびB鎖を含有するそのプロセシングされたインスリンに対して少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の配列同一性を有するインスリンをコードする。
【0160】
いくつかの態様では、該ポリヌクレオチドは、ヒトインスリンの種バリアントである組換えインスリンをコードする。これらには、ウシおよびブタに由来するインスリンが含まれるが、これらに限定されない。ウシインスリンは、ヒトインスリンと、A鎖のアミノ酸8および10とB鎖のアミノ酸30が異なる(SEQ ID NO:17)。ブタインスリンは、ヒトインスリンと、B鎖のアミノ酸30だけが異なり、そこには、ウシ配列のように、トレオニンの代わりにアラニン置換がある(SEQ ID NO:18)。いくつかの態様では、該ポリヌクレオチドは、インスリンがヒトインスリン受容体に結合して、グルコース取り込みおよび貯蔵の増大ならびに/または内因性グルコース産生の減少をもたらすシグナル伝達カスケードを始動させる限り、ウシまたはブタインスリンのプロインスリン前駆体型、例えばSEQ ID NO:17のプロインスリン型(例えば、SEQ ID NO:17のアミノ酸25~105)またはSEQ ID NO:18のプロインスリン型(例えば、SEQ ID NO:18のアミノ酸25~105)、あるいはSEQ ID NO:17もしくはSEQ ID NO:18に示されるインスリンに対してまたはAおよびB鎖を含有するそのプロセシングされたインスリンに対して少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の配列同一性を有する配列をコードする。
【0161】
いくつかの態様では、該ポリヌクレオチドは、ヒトインスリンと比較して1つまたは複数のアミノ酸修飾を含有するヒトインスリンのバリアントをコードする。例示的なインスリン類似体(AおよびB鎖)は、速効性および遅効性の類似体型または超活性インスリンを含む(例えば、Vajo et al. 2001 Endocrine Reviews 22:706-717を参照のこと)。速効性インスリン類似体は、通常1つまたは複数のアミノ酸変化を含有するインスリンの修飾型である。該類似体は、レギュラーインスリンと比較して吸収率および作用発現を高める目的で、インスリン分子の自己会合が減少するように設計される。例えば、インスリン類似体には、グルリジン(LysB3、GluB29)、HMR-1 153(LysB3、IleB28)、HMR-1423(GlyA21、HisB32)、インスリンアスパルト(AspB28)、インスリンリスプロ(LysB28、ProB29)およびAspB10が含まれるが、これらに限定されない。上のすべての例で、類似体の命名法は、鎖のN末端から番号付けしてインスリンのAまたはB鎖上の特定位置にあるアミノ酸置換の記述に基づいており、配列の残部は、天然ヒトインスリンの配列である。
【0162】
いくつかの態様では、該ポリヌクレオチドは、インスリンAspB10である組換えインスリンをコードする。インスリンAspB10は、野生型インスリン中の10位にある天然に存在するヒスチジン(H)がアスパラギン酸(D)に置換される(例えば、HからDへの置換(substation))B鎖の単一アミノ酸変化を含有するヒトインスリン類似体ポリペプチドである。置換の結果、レギュラーインスリン(例えば、野生型ヒトインスリン)より2倍速く吸収される超活性インスリンになる。いくつかの局面では、インスリンAspB10は、レギュラーインスリン(例えば、野生型ヒトインスリン)と比較して増加したインスリン受容体への結合親和性を有する。いくつかの態様では、該ポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:36に示されるA鎖およびSEQ ID NO:41に示されるB鎖を含有するインスリンAspB10のプロインスリン前駆体型をコードする。
【0163】
いくつかの態様では、該ポリヌクレオチドは、インスリングラルギンである組換えインスリンをコードする。B鎖のC末端への2つのアルギニンの付加のせいで、グラルギンインスリンの等電点はシフトして、酸性pHでより可溶性になる。酸感受性のアスパラギンに起因する脱アミド化および二量体化を防ぐために、A鎖にさらなるアミノ酸変化(N21G)が存在する。いくつかの態様では、該ポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:34に示されるA鎖およびSEQ ID NO:35に示されるB鎖を含有するインスリングラルギンのプロインスリン前駆体型をコードする。
【0164】
いくつかの態様では、該ポリヌクレオチドは、インスリンリスプロである組換えインスリンをコードする。ヒトインスリンリスプロは、B鎖の28および29位に、野生型インスリン中のこの位置にあるPro-LysがLys-Proに反転するようなアミノ酸変化を含有するインスリンポリペプチド製剤である。これら2つのアミノ酸の反転の結果、自己会合する傾向が低下したポリペプチドになり、これにより、より迅速な作用発現が可能になる。具体的には、B鎖中の配列反転は、2つの疎水性相互作用の排除と、二量体を安定化させる2つのベータプリーツシート水素結合の弱体化をもたらす(DeFelippis et al., Insulin Chemistry and Pharmacokinetics. In Ellenberg and Rifkin's Diabetes Mellitus 2002 pp. 481-500, McGraw-Hill Professional)。アミノ酸修飾により、インスリンリスプロは、レギュラーインスリンよりも迅速に作用する。いくつかの態様では、該ポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:36に示されるA鎖およびSEQ ID NO:37に示されるB鎖を含有するインスリンリスプロのプロインスリン前駆体型をコードする。
【0165】
いくつかの態様では、該ポリヌクレオチドは、インスリンアスパルトである組換えインスリンをコードする。ヒトインスリンアスパルトは、ヒトインスリンのB鎖の28位にプロリンからアスパラギン酸へのアミノ酸置換を含有するインスリンポリペプチド製剤である。インスリンアスパルトにおける修飾は、負に荷電した側鎖カルボキシル基を付与して、電荷反発を生じさせ、単量体-単量体相互作用を不安定にする。さらに、プロリンの除去は、単量体間の重要な疎水性相互作用を排除する(DeFelippis et al., Insulin Chemistry and Pharmacokinetics. In Ellenberg and Rifkin's Diabetes Mellitus 2002 pp. 481-500, McGraw-Hill Professional)。いくつかの態様では、該ポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:36に示されるA鎖およびSEQ ID NO:38に示されるB鎖を含有するインスリンアスパルトのプロインスリン前駆体型をコードする。
【0166】
いくつかの態様では、該ポリヌクレオチドは、インスリングルリジンである組換えインスリンをコードする。ヒトインスリングルリジンは、ヒトインスリンのB鎖の配列と比較して、B鎖のB3位にアスパラギンからリシンへのおよびアミノ酸B29にリシンからグルタミン酸へのアミノ酸置換を含有するインスリンポリペプチド製剤である。この修飾は、ポリペプチド分子を、ヒトインスリンと比較して自己会合しにくくする。いくつかの態様では、該ポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:36に示されるA鎖およびSEQ ID NO:39に示されるB鎖を含有するインスリングルリジンのプロインスリン前駆体型をコードする。
【0167】
いくつかの態様では、該ポリヌクレオチドは、プロインスリンがA鎖およびB鎖を含有する二本鎖型へと容易に切断されるように修飾されたインスリンのプロインスリン型をコードする。いくつかの場合、ヒトケラチノサイト、例えば、HaCaT細胞は、成熟インスリンの産生のためにプロインスリンを効率的に切断する上で必要な酵素を欠いている。例として、エンドペプチダーゼ、例えばPC-2およびPC-3が存在しないか、またはインスリンの切断に十分な高いレベルでは存在しない。その代わり、ケラチノサイトは、サブチリシン様プロタンパク質転換酵素ファミリーの酵素に属するカルシウム依存性切断酵素である、フューリンを発現する。いくつかの態様では、該ポリヌクレオチドは、修飾されたヒトプロインスリンであるヒトプロインスリンをコードする。いくつかの態様では、コードされた修飾ヒトプロインスリンは、ケラチノサイト、例えば、HaCaT細胞において発現される酵素、例えば、プロテアーゼによって認識される配列を含み、これにより、コードされたプロインスリンは、ケラチノサイトにおいて、ジスルフィド結合などによって連結されたA鎖およびB鎖を含有する二本鎖型へとプロセシングされることが可能になる。いくつかの態様では、プロテアーゼは、フューリンであり、修飾されたヒトプロインスリンは、少なくとも1つのフューリン認識配列を含む。いくつかの態様では、コードされた修飾ヒトプロインスリンは、Arg31-Arg32切断部位(B-Cジャンクション)およびLys64-Arg65切断部位(C-Aジャンクション)を含有する配列の代わりに導入された2つのフューリン認識配列を含む。いくつかの態様では、少なくとも1つのフューリン認識配列は、コンセンサス配列R-X-R-R[ここでXは任意のアミノ酸である](SEQ ID NO:8)、またはR-X-K-R[ここでXは任意のアミノ酸である](SEQ ID NO:9)を含む。いくつかの態様では、フューリン切断部位は、RTKR(SEQ ID NO:10)である。いくつかの態様では、フューリン切断部位は、RQKR(SEQ ID NO:42)である。
【0168】
いくつかの態様では、該ポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:36に示されるA鎖およびSEQ ID NO:41に示されるB鎖を含有するAspB10インスリンであるプロインスリンをコードし、プロインスリンはさらに、2つのフューリン認識配列を含有する。いくつかの態様では、フューリン認識配列の各々は、コンセンサス配列R-X-R-R[ここでXは任意のアミノ酸である](SEQ ID NO:8)、またはR-X-K-R[ここでXは任意のアミノ酸である](SEQ ID NO:9)を含む。いくつかの態様では、フューリン切断部位の1つは、RTKR(SEQ ID NO:10)である。いくつかの態様では、フューリン切断部位の1つは、RQKR(SEQ ID NO:42)である。いくつかの態様では、該ポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:6に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%もしくは少なくとも約80%、少なくとも85%もしくは少なくとも約85%、少なくとも90%もしくは少なくとも約90%、または少なくとも95%もしくは少なくとも約95%の配列同一性を有する配列を含む修飾されたヒトプロインスリンをコードし、プロインスリンは、フューリン認識部位およびB鎖の10位にAspのアミノ酸置換を含有する。いくつかの態様では、該ポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:6に示されるアミノ酸配列を含む修飾されたヒトプロインスリンをコードする。いくつかの態様では、該ポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:6に示される修飾されたヒトプロインスリンをコードする。
【0169】
任意の提供される態様のいくつかにおいて、該ポリヌクレオチドは、成長因子の分泌を容易にするシグナルペプチドをさらに含有するプレプロインスリンである。いくつかの態様では、シグナルペプチドが、コードされたプレプロインスリンから切断されて、分泌可能な成熟プロインスリンを形成する。いくつかの態様では、シグナルペプチドは、代用皮膚の細胞からインスリンが発現される際に切断される。いくつかの態様では、成熟プロインスリン型は、記載の通りにAおよびB鎖を含有する二本鎖型である組換えインスリンへとさらにプロセシングされる。いくつかの態様では、シグナルペプチドは、インスリンの内因性または天然シグナルペプチドである。いくつかの態様では、シグナルペプチドは、異なるタンパク質由来の異種シグナルペプチドである。いくつかの態様では、該配列は、シグナルペプチド
をコードする。
【0170】
いくつかの態様では、該ポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:2に示される配列に対して少なくとも80%もしくは少なくとも約80%、少なくとも85%もしくは少なくとも約85%、少なくとも90%もしくは少なくとも約90%、または少なくとも95%もしくは少なくとも約95%の配列同一性を有する配列を含み、コードされたプロインスリンは、フューリン認識部位およびB鎖の10位にアスパラギン酸(Asp、D)のアミノ酸置換を含有する。いくつかの態様では、該ポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:2に示される配列を含む。いくつかの態様では、該ポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:2に示される。
【0171】
2. 発現構築物および調節エレメント
いくつかの局面では、重層表皮を含む代用皮膚の細胞での組換え成長因子および組換えインスリンの発現を容易にする発現構築物および調節エレメントが、本明細書に提供される。いくつかの態様では、重層表皮の細胞、例えば、基底層の細胞に、本明細書に記載される調節エレメントを含む発現構築物が形質導入される。いくつかの態様では、発現カセットは、バイシストロン性発現カセットであり、成長因子をコードするポリヌクレオチドとインスリンをコードするポリヌクレオチドが、発現カセット中でバイシストロン性エレメントによって分離されている。
【0172】
a. プロモーター
本明細書に記載されるポリヌクレオチドは、その発現を制御または調節するためのプロモーターまたはエンハンサーによって駆動され得る。いくつかの態様では、プロモーターは、比較的高い発現が所望される核酸のコード領域に機能的に連結される。いくつかの態様では、プロモーターは、翻訳後に翻訳後修飾を必要とする核酸のコード領域に機能的に連結される。プロモーターの非限定例には、サイトメガロウイルス(CMV)、シミアンウイルス40(SV40)、ホスホグリセリン酸キナーゼ1(PGK1)、ユビキチンC(Ubc)、ヒトベータアクチン、CAG、TRE、UAS、Ac5、ポリへドロン、CaMKIIa、GALl、GAL 10、TEF1、GDS、ADH1、CaMV35S、Ubi、HI、U6、SSFV、MNDU3、およびEFl-a(別名Efla)が含まれる。
【0173】
いくつかの態様では、プロモーターは、組織特異的であることができる。組織特異的プロモーターは、プロモーターを活性化するための適切な転写因子を有するある細胞集団においてタンパク質の産生を可能にする。数多くのプロモーターが市販されており、当技術分野において広く知られている;例示的な配列は、Entrez Gene ID 1915で見いだすことができる。いくつかの態様では、プロモーターは、サイトメガロウイルス前初期プロモーター(CMV)、シミアンウイルス40初期プロモーター(SV40)、またはラウス肉腫ウイルスLTRプロモーター(RSV)の群から選択される。
【0174】
当業者に公知の任意の強力なプロモーターを、DNAの発現を駆動するために使用することができる。プロモーターは、構成的プロモーター、例えばCMVプロモーター、組織特異的プロモーター、誘導性または調節可能プロモーターであることができる。いくつかの態様では、細胞に導入すべきポリヌクレオチドは、核酸の発現が転写の適切な誘導因子の存在または非存在を制御することによって制御可能になるように、コード領域に機能的に連結された誘導性プロモーターを含有する。
【0175】
いくつかの態様では、プロモーターは、コードされたポリペプチドの調節発現を可能にする、調節プロモーターおよび転写因子発現系、例えば公開されているテトラサイクリン調節系または他の調節可能な系(例えば、WO01/30843を参照のこと)である。例示的な他のプロモーターは、組織選択的プロモーター、例えば、米国特許第5,998,205号に記載されているものであり、これらには、例えば、フェトプロテイン、DF3、チロシナーゼ、CEA、サーファクタントタンパク質およびErbB2プロモーターが含まれる。例示的な調節可能プロモーター系は、例えば、Clontech(Palo Alto, Calif.)から入手可能なTet-On(およびTet-Off)系である。このプロモーター系は、テトラサイクリンまたはテトラサイクリン誘導体(例えば、ドキシサイクリン)によって制御される導入遺伝子の調節発現を可能にする。他の調節可能プロモーター系は公知である(例えば、リガンド結合ドメインおよび転写調節ドメイン、例えばホルモン受容体由来のものを含有する遺伝子スイッチを説明している「Regulation of Gene Expression Using Single-Chain, Monomeric, Ligand Dependent Polypeptide Switches」という表題の米国特許公報第2002-0168714号を参照のこと)。
【0176】
いくつかの態様では、プロモーターは、構成的プロモーターである。例示的なプロモーターには、CMVプロモーター、短縮型CMVプロモーター、ヒト血清アルブミンプロモーターまたはC-1-アンチトリプシンプロモーターが含まれるが、これらに限定されない。いくつかの態様では、プロモーターは、公知の転写リプレッサーの結合部位が欠失している短縮型CMVプロモーターである。CMV由来プロモーターは、ヒトまたはサル起源のものであることができる。いくつかの態様では、プロモーターは、誘導性プロモーターである。例えば、プロモーターは、誘導性エクジソンプロモーターである。プロモーターの他の例には、ステロイドプロモーター、例えばエストロゲンおよびアンドロゲンプロモーター、ならびにメタロチオネインプロモーターが含まれる。いくつかの態様では、エンハンサーは、組織特異的または非特異的エンハンサーであることができる。例えば、エンハンサーは、肝臓特異的エンハンサーエレメントである。例示的なエンハンサーエレメントには、ヒト血清アルブミン(HSA)エンハンサー、ヒトプロトロンビン(HPrT)エンハンサー、C-1-ミクログロブリンエンハンサー、イントロンアルドラーゼエンハンサーおよびアポリポタンパク質E肝制御領域が含まれるが、これらに限定されない。
【0177】
いくつかの態様では、プロモーター、例えば、動物ウイルス由来プロモーター、哺乳動物細胞由来プロモーター、または両プロモーターのハイブリッドプロモーターなどを非限定的に使用することができる。多くの場合、治療遺伝子を含めた遺伝子を比較的高いレベルで発現させることが望ましい。高発現プロモーターの例には、CMVプロモーター(Foecking M. K. et al., Gene 1986;45:101-105)およびCAGプロモーター(Niwa H. et al., Gene 1991;108:193-200)などが含まれる。CMVプロモーターは、サイトメガロウイルス(CMV)の前初期(IE)遺伝子のエンハンサーおよびプロモーターからなり、CAGプロモーターは、CMVのIEエンハンサー、ニワトリβ-アクチンプロモーター、スプライスアクセプターおよびウサギβ-グロビンのポリ(A)配列からなる。したがって、CMVプロモーターとCAGプロモーターは共に、CMVのIE遺伝子のエンハンサーを含有する(Boshart M. et al., Cell 1985;41:521-530)。本明細書において使用される場合、CMVのIE遺伝子のこのエンハンサーは、単に「CMVエンハンサー」と呼ばれる場合がある。
【0178】
構成的プロモーターの例には、CAGプロモーター、CMVプロモーター、EF-1αプロモーター、SRαプロモーター、SV40プロモーター、RSVプロモーター、アデノウイルス主要後期プロモーター(MLP)などが含まれる。誘導性プロモーターの例には、メタロチオネイン遺伝子プロモーター、マウス乳腺腫瘍ウイルス(MMTV)プロモーターなどが含まれる。さらに、構成的プロモーターの発現がテトラサイクリンまたはエクジソンによって誘導される系を使用することができる。そのようなプロモーターを有する発現ベクターおよび発現誘導系は、市販されているかまたは公的機関から入手可能である。商品は、入手可能な場合、Invitrogen Inc.、Clontech Inc.などから購入することができる。
【0179】
いくつかの態様では、CMVエンハンサーを含有する上記プロモーターに加え、SV40プロモーター、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター(Takebe Y. et al., Mol. Cell. Biol. 1988;8:466-472)などの同じくウイルスに由来するプロモーターを使用することもできる。
【0180】
いくつかの局面では、成長因子およびインスリンまたはそのバリアントなどの遺伝子を発現するCAGプロモーターを有するウイルスベクターが、本明細書に提供される。いくつかの態様では、ほとんどの翻訳後修飾を受けるタンパク質をコードする核酸配列は、プロモーター、例えば、CAGプロモーターの下流にある任意の他のヌクレオチドの前にある。いくつかの態様では、成長因子をコードする核酸配列は、プロモーターの下流にあるインスリンまたはそのバリアントをコードする核酸配列の上流にある。他のタンパク質をコードする異なる導入遺伝子と共に他の特異的または無差別プロモーターが使用されてもよいので、これらの態様は、限定として解釈されるべきではない。本発明のアデノウイルスベクターに挿入すべき遺伝子は、特に限定されず、成長因子およびホルモン(例えば、インスリン)などのタンパク質をコードする遺伝子が使用されてよい。
【0181】
いくつかの態様では、CAGプロモーターのヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:1に対して少なくとも60%の配列同一性または類似性を有するヌクレオチド配列を含むヌクレオチド配列に置き換えることができる。いくつかの態様では、好ましいヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:1と少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、または100%類似する。
【0182】
いくつかの態様では、異なるポリペプチド鎖の各々をコードするコード配列を、同じであっても異なっていてもよいプロモーターに機能的に連結することができる。いくつかの態様では、核酸分子は、成長因子をコードするポリヌクレオチドおよびインスリンをコードするポリヌクレオチドの発現を駆動するプロモーターを含有することができる。
【0183】
b. バイシストロン性エレメント
いくつかの態様では、コードポリヌクレオチドを含有する発現カセットは、マルチシストロン性(バイシストロン性またはトリシストロン性、例えば、米国特許第6,060,273号を参照のこと)であることができる。いくつかの態様では、転写ユニットは、バイシストロン性エレメントを含有するバイシストロン性ユニットとして操作することができ、これにより、単一プロモーターからのメッセージによる遺伝子産物の共発現が可能になる。いくつかの態様では、バイシストロン性エレメントは、IRES(内部リボソーム進入部位)である。いくつかの態様では、バイシストロン性エレメントは、自己切断配列、例えば2A配列(例えば、P2A、FTAまたはT2A)であり得る。
【0184】
内部リボソーム進入部位(IRES)は、複数のタンパク質コード領域が続くバイまたはマルチシストロン性RNA転写物内の内部開始コドン(通常はAUG)から翻訳を開始する配列である。IRESは、脳心筋炎ウイルスおよび関連ピコルナウイルスにおいて特徴付けられている(例えば、Jackson et al., RNA 1995;1:985-1000およびHerman, Trends in Biochemical Sciences 1989;14(6):219-222)。IRES配列はまた、カルジオウイルス、ライノウイルス、アフトウイルス、C型肝炎ウイルス(HCV)、フレンドマウス白血病ウイルス(FrMLV)およびモロニーマウス白血病ウイルス(MoMLV)などの他のウイルス由来のmRNAにおいても検出される。細胞RNA中のIRESの存在も記載されている。IRESを含有する細胞mRNAの例には、免疫グロブリン重鎖結合タンパク質(BiP)、血管内皮成長因子(VEGF)、線維芽細胞成長因子2、インスリン様成長因子、翻訳開始因子eIF4G、ならびに酵母転写因子TFIIDおよびHAP4をコードするものが含まれる(例えば、Macejak et al., Nature 1991;353:90-94;Oh et al., Genes Dev. 1992;6:1643-1653;Vagner et al., Mol. Cell. Biol. 1995;15:35-44;He et al., PNAS 1996;93:7274-7278;He et al., Gene 1996;175:121-125;Tomanin et al., Gene 1997;193:129-140;Gambotto et al., Cancer Gene Therapy 1999;6:45-53;Qiao et al., Cancer Gene Therapy 1999;6:373-379)。IRESエレメントを含有する発現ベクターは、記載されている。例えば、PCT/US98/03699およびPCT/EP98/07380を参照されたい。
【0185】
いくつかの態様では、本明細書に記載されるウイルスベクターは、1つまたは複数の導入遺伝子を含む。一例では、該ベクターは、2つの導入遺伝子、例えば、成長因子をコードする導入遺伝子およびインスリンをコードする導入遺伝子、またはそのバリアントをコードする。いくつかの態様では、同じ調節エレメントは、第1および第2の導入遺伝子に対して転写制御を発揮し、任意で、1つの導入遺伝子が内部リボソーム進入部位の翻訳制御下にある。いくつかの態様では、異なるエレメントが、2つの導入遺伝子の各々の転写を調節し、1つの導入遺伝子が任意でIRESの翻訳制御下にある。
【0186】
c. 3'非翻訳領域(UTR)
3'-非翻訳領域(3'-UTR)は、通常、mRNAのタンパク質コード領域(すなわち、オープンリーディングフレーム)とポリ(A)配列との間に位置するmRNAの一部である。mRNAの3'-UTRは、アミノ酸配列に翻訳されない。3'-UTR配列は、一般的に、遺伝子発現プロセス中にそれぞれのmRNAに転写される遺伝子によってコードされる。ゲノム配列は、最初に、任意のイントロンを含む未成熟mRNAに転写される。次いで、未成熟mRNAは、成熟プロセスにおいて成熟mRNAへとさらにプロセシングされる。この成熟プロセスは、5'-キャッピング、任意のイントロンを切除する未成熟mRNAのスプライシングおよび3'端の修飾、例えば未成熟mRNAの3'端のポリアデニル化、ならびに任意のエンドまたはエキソヌクレアーゼによる切断などの段階を含む。3'-UTRは、タンパク質コード領域の終止コドンの3'側、好ましくはタンパク質コード領域の終止コドンの直ぐ3'側に位置し、かつポリ(A)配列の5'側、好ましくはポリ(A)配列の直ぐ5'側のヌクレオチドに伸びる、成熟mRNAの配列に対応し得る。「に対応する」という用語は、3'-UTR配列が、RNA配列、例えば3'-UTR配列を定義するために使用されるmRNA配列中のRNA配列、またはそのようなRNA配列に対応するDNA配列であり得ることを示している。「遺伝子の3'-UTR」、例えば「インスリン遺伝子の3'-UTR」という用語は、この遺伝子に由来する成熟mRNA、すなわち、遺伝子の転写および未成熟mRNAの成熟によって得られるmRNAの3'-UTRに対応する配列である。「遺伝子の3'-UTR」という用語は、3'-UTRのDNA配列およびRNA配列を包含する。
【0187】
いくつかの態様では、好適な3'-UTR配列は、所望の1つまたは複数の導入遺伝子をコードするヌクレオチド配列に機能的に連結され得る。いくつかの態様では、3'-UTR配列は、成長因子およびインスリンまたはそのバリアントをコードするヌクレオチド配列に機能的に連結され得る。いくつかの態様では、好適な3'-UTR領域は、該ヌクレオチド配列と天然に関連するものであり得るか、または異なる遺伝子、例えば、ウシ成長ホルモン3'-UTR領域(bGHポリアデニル化シグナル、SV40ポリアデニル化シグナル、SV40ポリアデニル化シグナルおよびエンハンサー配列)などに由来し得る。本発明との関連で、「SV40」を指す場合、SV40ポリアデニル化シグナルのことに言及している。「SV40エンハンサー配列」を指す場合、SV40ポリアデニル化シグナルおよびエンハンサー配列のことに言及している。
【0188】
いくつかの態様では、3'-UTR配列は、3'-ポリ(A)テールまたはポリ(A)配列とも呼ばれるポリ-Aテールを含む。ポリ-Aテールは、RNA分子の3'端に付加されたアデノシンヌクレオチドの長い配列である。ポリアデニル化は、RNA分子などの核酸分子への、例えば、未成熟mRNAへのポリ(A)配列の付加である。ポリアデニル化は、ポリアデニル化シグナルによって誘導され得る。このシグナルは、好ましくは、ポリアデニル化されるRNA分子などの核酸分子の3'端の連続したヌクレオチド内に位置する。ポリアデニル化シグナルは、通常、アデニンおよびウラシル/チミンヌクレオチドからなる六量体、好ましくは六量体配列AAUAAAを含む。他の配列、好ましくは六量体配列も想定される。ポリアデニル化は、通常、プレmRNA(未成熟mRNAとも呼ばれる)のプロセシングの間に起こる。通常、RNAの成熟(プレmRNAから成熟mRNAへ)は、ポリアデニル化の段階を含む。
【0189】
いくつかの態様では、本明細書に記載される発現構築物は、最大約400アデノシンヌクレオチド、例えば、約25~約400、約50~約400、約50~約300、約50~約250、約60~約250アデノシンヌクレオチド、約70~約250アデノシンヌクレオチド、約80~約250アデノシンヌクレオチド、約90~約250アデノシンヌクレオチド、約100~約250アデノシンヌクレオチド、約100~約200アデノシンヌクレオチド、または約100~約150アデノシンヌクレオチドを有するポリ-Aテールを含む3'-UTR領域を含み得る。
【0190】
3. 形質導入のためのウイルスベクター
外因性核酸配列をウイルスベクターに挿入する場合にウイルスを遺伝子送達媒体として使用することができる。組換え成長因子(例えば、本明細書に記載される通りのいずれか、例えばVEGF)をコードするポリヌクレオチドと、組換えインスリン、例えば組換えヒトインスリン(例えば、記載される通りのいずれか)をコードするポリヌクレオチドとを含有するウイルスベクターが、本明細書に提供される。また、本明細書に記載される通りの発現カセットのいずれか、例えばバイシストロン性発現カセットを含有するウイルスベクターも本明細書に提供される。
【0191】
ウイルスは、ウイルスDNAを宿主細胞に移入するのに効率的であるので、核酸分子、例えば、ポリヌクレオチドをインビボ送達する際に有用である。これらは、ウイルス付着タンパク質(例えば、カプシドまたは糖タンパク質)に応じて、特定の標的細胞に感染し、それに取り込まれることが可能であり、非必須遺伝子を除去するおよび異種核酸分子を付加するためにこれらを操作することができる。多くのウイルスベクターが当業者に公知である。本明細書の方法において使用できるウイルスの例には、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、アルファウイルス、バキュロウイルス、ヘパドナウイルス(hepadenaviruses)、ポックスウイルス、ヘルペスウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス、オルトミクソウイルス、パポバウイルス、パラミクソウイルス、およびパルボウイルスが含まれるが、これらに限定されない。ウイルスの選択は、当業者の技能の範囲内であり、ウイルスDNAの複製もしくは組み込みに対する要求、ウイルスの向性および/またはウイルスの免疫原性などの多数の要因に左右される。
【0192】
そのようなウイルスおよびその誘導体は、当業者に周知であり、利用可能である。例えば、多くが、American Type Culture Collection(ATCC、Rockville, Md.)から、または商業供給業者(例えば、Vector Biolabs, Philadelphia, Pa.;Applied Biological Materials, Inc., Richmond, British Columbia, Canada)から入手可能である。組換えウイルスの作製において使用するためのウイルスベクターは、複製可能ウイルスおよび複製欠損ウイルスを含む。複製欠損ウイルスでは、ウイルスは、通常、ウイルス複製に関連する1つまたは複数の遺伝子を欠いており、いくつかの場合、感染の最初のサイクルを超えて複製できない。複製欠損ウイルスを産生するために、トランスファーベクター、パッケージングベクターまたはヘルパーウイルスが必要とされ得る。例えば、パッケージングベクターは、コスミドとしてまたは欠損ベクターのパッケージングのためのウイルス構造タンパク質を提供する細胞株中に提供することができる。ウイルスベクターはまた、最適な導入遺伝子に機能的に連結されたプロモーターおよびエンハンサーなどの調節エレメントを含む発現カセットを含有することができる。任意の好適なプロモーターを使用することができる。好適なプロモーターおよびエンハンサーは、最適なウイルスベクターにおいて使用するために当技術分野において広く利用可能である。
【0193】
a. アデノウイルスベクター
アデノウイルスベクターは、分裂細胞と非分裂細胞の両方への向性、最小限の病原性能、ベクターストックの調製のために高力価まで複製する能力、および大きなインサートを運搬する潜在性を含め、遺伝子送達媒体として使用するためにいくつかの利点を有する(例えば、Berkner Curr. Top. Micro. Immunol. 1992;158:39-66;Jolly et al. Cancer Gene Therapy 1994;1:51-64を参照のこと)。アデノウイルスは、約36kbのゲノムを有する核DNAウイルスであり、古典遺伝学および分子生物学で研究を通じて十分に特徴付けられている(Horwitz, M. S., "Adenoviridae and Their Replication in Virology, 2nd edition, Fields, B. N., et al., eds., Raven Press, New York, 1990)。ゲノムは、2つの時期的なウイルスタンパク質クラスの生成を指して、初期(E1~E4として公知)および後期(L1~L5として公知)転写ユニットに分類される。これらのイベント間の境界線は、ウイルスDNA複製である。アデノウイルスは、呼吸器および消化管の上皮細胞に天然向性を示す。アデノウイルスはまた、肝臓の細胞、例えば肝細胞および内皮細胞にも感染でき、これは、全身投与後に肝臓にウイルスが排出されると起こり得る。ウイルス表面のペントン塩基および繊維タンパク質は、ウイルス向性を担っている。アデノウイルス粒子と宿主細胞との間の複数の相互作用が、効率的な細胞侵入を促進するために必要とされる(Nemerow, Virology 2000;274:1-4)。
【0194】
サブグループCアデノウイルス、例えばアデノウイルス2および5(Ad2またはAd5)について、ウイルス侵入経路は、十分に特徴付けられており、2つの別々の細胞表面イベントが関わると考えられる。最初に、アデノウイルス繊維ノブとコクサッキー-アデノウイルス受容体(CAR)との間の高親和性相互作用が、細胞表面へのアデノウイルス粒子の付着を媒介する。続くペントンと細胞表面インテグリンαvβ3およびαvβ5(共受容体として作用する)の会合が、ウイルス内部移行を増進する。肺上皮細胞を含めた多くのヒト組織で発現されるCAR(Bergelson et al., Science 1997;275:1320-1323)は、サブグループBを除いたほとんどのアデノウイルスサブグループに対する細胞受容体として機能するようである(Bergelson et al., Science 1997;275:1320-1323;Roelvink et al., J. Virol. 1998;72:7909-7915)。いくつかの態様では、重層表皮を含む代用皮膚の細胞に形質導入するために使用されるアデノウイルスは、5型アデノウイルスである。いくつかの態様では、重層表皮を含む代用皮膚の基底細胞に形質導入するために使用されるアデノウイルスは、5型アデノウイルスである。
【0195】
アデノウイルスは、6種の別個のサブグループA~Fに分類される50を超える血清型を含む。American Type Culture Collection(ATCC, Rockville, Md.)ならびに他の商業および非商業販売業者から入手可能であるこれらのアデノウイルス血清型のいずれかを、本明細書の方法において使用でき、または当技術分野において公知であるようにさらなる改変の供給源として使用できる。また、任意の他の供給源から入手可能なアデノウイルスの任意の他の血清型を使用することができ、またはさらに改変することができる。例として、アデノウイルスは、サブグループA(例えば、血清型12、18、31)、サブグループB(例えば、血清型3、7、11a、11p. 14、16、21、34、35、50)、サブグループC(例えば、血清型1、2、5、6)、サブグループD(例えば、血清型8、9、10、13、15、17、19、19p. 20、22-30、32、33、36~39、42~49、51)、サブグループE(例えば、血清型4)、サブグループF(例えば、血清型40、41)、または任意の他のアデノウイルス血清型のものであることができる。ある特定の態様では、アデノウイルスは、サブグループCアデノウイルスであるか、またはサブグループCアデノウイルスに由来する。好ましい例では、アデノウイルスは、サブグループCの5型アデノウイルスである。アデノウイルスベクターは、当技術分野において入手可能であり(例えば、American Type Culture Collection(ATCC, Rockville, Md.)から入手可能である)、多くの異なるアデノウイルス血清型由来の野生型アデノウイルスタンパク質の配列が当技術分野において周知である(例えば、Roberts et al. J. Biol. Chem. 1984;259:13968-13975;Chroboczek et al. Virology 1992;186:280-285;Sprengel et al. J. Virol. 1994;68:379-389;Chillon et al. J. Virol. 1999;73:2537-2540;Davison et al. J. Mol. Biol. 1993;234:1308-1316;www.binfgmu.edu/wiki/index.php/Human Adenovirus Genome Sequences and Annotationsを参照のこと)。アデノウイルスベクターは、当業者が広く利用可能であり、例えば、American Type Culture Collection(ATCC)または他の商業もしくは非商業販売業者から入手可能である。ATCCから、アデノウイルスは、ATCC番号VR-1~VR-1616として入手可能である。例えば、野生型アデノウイルス5型は、VR-5およびVR-1082して入手可能である。当技術分野および本明細書に記載されるように、または当業者に公知の任意の好適な方法によって、上記血清型のいずれかに由来する任意の多数の組換えまたは改変アデノウイルスを作製することができる。
【0196】
本明細書に記載される方法において使用するためのアデノウイルスベクターは、最初期遺伝子領域(E1~E4)中に少なくとも1つの欠失を含有する欠損アデノウイルスベクターを含むことができる。アデノウイルスベクターに対する改変は、当技術分野において公知の欠失を含む。そのような欠失は、E1、E2a、E2b、E3、またはE4コード領域の1つまたは複数において行うことができる。例えば、遺伝子治療用のアデノウイルスベクターは、E1、E2a、E2b、E3および/またはE4遺伝子の代わりに異種核酸分子を置換することによって調製することができる。欠失は、制限エンドヌクレアーゼを使用して達成することができる。例えば、E1a領域は、E1a領域内の都合のよい制限エンドヌクレアーゼ部位を使用して欠失させることができる。しばしば、新たなウイルス粒子へのパッケージングに必要なサイズ制約を充足したまま大きな外来DNA片の挿入を可能とするために、制限エンドヌクレアーゼ付加によりE3の一部分も欠失される。これらの領域の欠失により、アデノウイルスベクターのクローニング容量は、約8kbであることができる。そのようなアデノウイルスベクターは、通常、E1aおよびE1b領域を含むE1などの最初のウイルス初期遺伝子領域中の少なくとも1つの欠失により、複製欠損アデノウイルスと称される。
【0197】
いくつかの態様では、重層表皮を含む代用皮膚の細胞に形質導入するために使用されるアデノウイルスは、複製欠損5型アデノウイルスである。いくつかの態様では、重層表皮を含む代用皮膚の細胞に形質導入するために使用されるアデノウイルスは、領域E1に欠失を有する複製欠損5型アデノウイルスである。いくつかの態様では、重層表皮を含む代用皮膚の細胞に形質導入するために使用されるアデノウイルスは、領域E3に欠失を有する複製欠損5型アデノウイルスである。いくつかの態様では、重層表皮を含む代用皮膚の細胞に形質導入するために使用されるアデノウイルスは、領域E1およびE3に欠失を有する複製欠損5型アデノウイルスである。いくつかの態様では、重層表皮を含む代用皮膚の基底細胞に形質導入するために使用されるアデノウイルスは、領域E1および/またはE3に欠失を有する複製欠損5型アデノウイルスである。
【0198】
初期遺伝子、例えばウイルス領域E1およびE3の欠失は、組換えアデノウイルスを複製欠損にし、その後に感染した標的細胞において感染性ウイルス粒子を産生できない。したがって、初期遺伝子欠失アデノウイルスのゲノム複製、例えばE1欠失アデノウイルスのゲノム複製を可能にするために、またウイルス粒子を産生するために、欠けている遺伝子産物を提供する補完系が必要である。例えば、E1補完は、通常、E1を発現する細胞株、例えば、293と呼ばれるヒト胎児腎臓パッケージング細胞株、すなわち上皮細胞株(ATCCに登録番号CRL-1573で寄託)によって提供される。細胞株293は、アデノウイルスのE1領域を含有し、これは、細胞株でのE1欠失ウイルスの成長を支援するE1遺伝子領域産物を提供する(例えば、Graham et al., J. Gen. Virol. 36:59-71, 1977を参照のこと)。さらに加えて、アデノウイルスE4領域の一部分を有する欠損アデノウイルスの産生に使用可能な細胞株が報告されている(例えば、国際公開出願第WO 96/22378号を参照のこと)。また、E3をベクターから欠失させることもできるが、ベクター産生に必要とされないため、これを補完産生細胞から省くことができる。補完産生細胞株および補完産生細胞株の作製法は、当技術分野において公知である(例えば、Morris et al., BMC Biotechnology 2010;10(92)を参照のこと)。
【0199】
複製欠損ウイルスのベクターとしての使用の有益性は、これらが、最初に感染した細胞内で複製できるが新たな感染性ウイルス粒子を形成できないために、他の細胞型に伝播できる範囲が限定されるという点である。また、複数の欠損アデノウイルスベクターおよび補完細胞株も記載されている(例えば、国際PCT公報第WO95/34671号、米国特許第5,994,106号を参照のこと)。複製欠損アデノウイルスの構築が記載されている(Berkner et al., J. Virol. 1987;61:1213-20;Massie et al., Mol. Cell. Biol. 1986;6:2872-83;Haj-Ahmad et al., J. Virol. 1986;57:267-74;Davidson et al., J. Virol. 1987;61:1226-39;Zhanget al., BioTechniques 1993;15:868-72;Berkner Nuc. Acids Res. 1983;11:6003:Ghosh-Choudhury Biochem. Biophys. Res. Commun., 1987;147:964;Gilardi et al., FEBS 1990;267:60;Mittal Virus Res. 1993;28:67;Yang PNAS 1993;90:4601;および国際公開PCT WO1995/026411)。
【0200】
アデノウイルスベクターはまた、すべてのウイルス遺伝子が除去されてベクターの増殖に必要な逆位末端配列(ITR)だけが残った「ガットレス(gutless)」または「ガッテッド(gutted)」ベクターを含む。そのようなアデノウイルスベクターは、ベクターゲノムの複製およびパッケージングに必要な最小シス作用性ヌクレオチド配列を含有するアデノウイルスのゲノムに由来するため、シュードアデノウイルスベクター(PAV)と命名される。PAVベクターは、複製起源を含有する5' ITRおよび3' ITRヌクレオチド配列、ならびにPAVゲノムのパッケージングに必要なシス作用性ヌクレオチド配列を含有する。これらは、適切な調節エレメント(例えば、プロモーターまたはエンハンサー)と共に1個超の導入遺伝子を含有するように改変することができる。PAVは、ほとんどのウイルスコード配列の欠失を含有するため、8kbをはるかに超えるサイズの運搬容量を有し、サイズが最大36kbである(例えば、米国特許第5,882,887号または同第5,670,488号;PCT公報第WO96/40955号、同第WO97/25466号、同第WO95/29993号、同第WO97/00326号;Morral et al. Hum. Gene Ther. 1998;10:2709-2716、Kochanek et al. PNAS 1996;93:5731-5736;Parks et al. PNAS 1996;93:13565-13570;Lieber et al. J. Virol. 1996;70:8944-8960;Fisher et al. J. Virol. 1996;217:11-22を参照のこと)。
【0201】
PAVは、産生細胞への「ヘルパー」ウイルスとの同時感染により成長し(例えば、E1欠失アデノウイルスベクターを使用)、そこで、パッケージング細胞は、E1遺伝子産物を発現する。ヘルパーウイルスは、粒子アセンブルに必要なウイルス構造タンパク質の産生を含め、欠けているアデノウイルス機能をトランス補完する。例えば、ヘルパーアデノウイルスベクターゲノムおよびガットレスアデノウイルスベクターゲノムがパッケージング細胞に送達される。細胞は、標準的な細胞維持または成長条件下で維持され、これによりヘルパーベクターゲノムおよびパッケージング細胞は、一緒に、アデノウイルスベクター粒子のパッケージングのための補完タンパク質を提供する。そのようなガットレスアデノウイルスベクター粒子は、標準的な技法によって回収される。ヘルパーベクターゲノムは、プラスミドもしくは類似の構築物の形態で標準的なトランスフェクション技法によって送達ことができ、または該ゲノムを含有するウイルス粒子による感染を通じて送達することができる。そのようなウイルス粒子は、一般的にヘルパーウイルスと呼ばれる。同じく、ガットレスアデノウイルスベクターゲノムも、トランスフェクションまたはウイルス感染によって細胞に送達ことができる。
【0202】
アデノウイルスはまた、複製条件付きアデノウイルスも含み、このウイルスは、異種プロモーターの制御下での複製に必須のアデノウイルス遺伝子を配置した結果、ある特定の種類の細胞または組織で複製するが他の種類では複製しないウイルスである(上で考察;また、米国特許第5,998.205号、米国特許第5,801,029号ならびにUS2003/0104625および対応する国際PCT公報第WO2002/067861号として公開された米国特許出願第10/081,969号も参照のこと)。
【0203】
アデノウイルスはまた、例えば、ウイルスの向性を変えるために、標的化リガンドを含有することでその標的化リガンドに対する受容体(タンパク質、脂質、炭水化物またはそれらの部分)を発現する特定の標的細胞への感染が高まるように改変されているアデノウイルスも含む。アデノウイルスベクターなどは治療的適用に多くの可能性を秘めているが、特定の細胞型へのアデノウイルスベクターの送達を制限するCARの広範な組織分布によって、その有用性は限定されている。さらに、インビボのある特定の細胞上のCARおよび/またはC、インテグリン受容体の非存在は、アデノウイルスベクターによって標的化できる細胞または組織型を制限する。したがって、アデノウイルスはまた、所望の細胞受容体または組織特異的受容体に対する標的リガンドを組み込むために、天然受容体への結合を低減または除去すること、および/あるいはカプシドタンパク質、例えばHIループ、繊維のC末端、ヘキソンのL1ループもしくはペントン塩基のRGDループ、またはカプシドタンパク質IXを操作することによって改変されているアデノウイルスも含む(例えば、Krasnykh et al., Mol. Ther, 2000; 1(5):P391-405およびWickham, Gene Ther. 2000; 7:110-4を参照のこと)。カプシドタンパク質は、例えば、標的リガンドの付加または他の種類のアデノウイルス繊維による繊維の置換によって改変することができる。標的リガンドは、細胞内または細胞上のある部分、例えば細胞表面タンパク質、脂質、炭水化物または他の部分に結合する、任意のタンパク質またはその部分であることができる。例えば、標的リガンドには、成長因子、接着分子、サイトカイン、タンパク質ホルモン、神経ペプチド(神経伝達物質)および一本鎖抗体、またはそれらの好適な部分が含まれるが、これらに限定されない。他の例では、アデノウイルスベクターを、アダプター分子、例えば、標的化リガンドを有している抗Ad一本鎖抗体(sclv)を含有する抗体および融合タンパク質もしくはCARの細胞外ドメインとコンジュゲートするか、または標的化リガンドを含有するポリマー、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)部分で化学修飾することができる(例えば、Mizuguchi et al. (2004) Hum. Gene Ther.15:1034-44;Eto et al. (2008) Int. J. Pharm., 354:3-8を参照のこと)。
【0204】
上記のアデノウイルスのいずれか、または当技術分野において公知のいずれかを、本明細書における送達物質として使用するために所望の異種核酸分子を含有するよう改変することができる。所望の異種核酸配列を含有するアデノウイルスは、当業者に公知の任意の技法によって調製することができる(Levrero et al., Gene 1991;101(2):195-201, EP185 573;Graham, EMBO.J. 3 (1984) 2917;WO95/26411)。特に、そのようなウイルスは、アデノウイルスベクターと異種DNA配列を担持するプラスミドとの間の相同組換えによって調製することができる。相同組換えは、適切な細胞株へのアデノウイルスベクターとプラスミドの共トランスフェクション後に起こり得る。使用される細胞株は、一般的に、形質転換可能なものである。トランスフェクションは、産生細胞へのアデノウイルス粒子の侵入を誘導する試薬の存在下で実施することができる。そのような試薬には、ポリカチオンおよび二機能性試薬が含まれるが、これらに限定されない。
【0205】
いくつかの態様では、アデノウイルスが欠損アデノウイルスである(初期遺伝子、例えば、E1および/もしくはE3、または繊維タンパク質の欠失により)場合、アデノウイルスがパッケージングされるまたは成長する細胞株は、欠損アデノウイルスゲノム部分を補完可能な配列を、例えば組換えのリスクを避けるために組み込み型で含有する。補完細胞株の例には、Ad5アデノウイルスのゲノムの左手部分を含有するヒト胎児腎臓株293(HEK293)(Graham et al., J Gen Virol. 1977; 36(1):59-74)が含まれるが、これに限定されない。補完細胞はまた、例えば、アデノウイルスE1遺伝子を含有するPER.C6細胞株の細胞も含む(PER.C6は、例えば、Crucell, the Netherlandsから入手可能;ECACC登録番号96022940で寄託;また、Fallaux et al. Hum Gene Ther. 1998; 9(13):1909-17;米国特許第5,994,128号も参照のこと)。補完細胞株の別の例は、A549由来細胞株AE1-2aである(例えば、Gorziglia et al. J Virol. 1996; 70(6):4173-4178およびVon Seggern et al. (1998) J. Gen. Virol. 1998; 79, 1461-1468を参照のこと)。いくつかの態様では、補完細胞または細胞株において増殖したアデノウイルスは、従来の分子生物学技術に従って回収および精製される。
【0206】
遺伝子治療でのアデノウイルスの使用を例証している参考文献には、Vorburger and Hunt, The Oncologist 2002;7:46-59およびSt. George, Gene Therapy 2003; 10:1135-1141が含まれるが、これらに限定されない。
【0207】
b. アデノ随伴ウイルス(AAV)
送達物質として使用するためのウイルスベクターは、アデノ随伴ウイルス(AAV)を含む。AAVは、ゲノムサイズが4.6kbの一本鎖ヒトDNAパルボウイルスである。AAVゲノムは、2つの主要な遺伝子:rep遺伝子およびcap遺伝子を含有する。rep遺伝子は、repタンパク質(Rep. 76、Rep. 68、Rep. 52およびRep 40)をコードする。cap遺伝子は、AAV複製、救済、転写および組み込みをコードし、一方、capタンパク質は、AAVウイルス粒子を形成する。AAVは、AAVを産生感染(すなわち、宿主細胞でそれ自体を産生)可能にする必須遺伝子産物の供給をアデノウイルスまたは他のヘルパーウイルス(例えば、ヘルペスウイルス)に依存していることに由来して名付けられている。ヘルパーウイルスの非存在下では、AAVは、ヘルパーウイルス、通常はアデノウイルスによる宿主細胞の重感染により救済されるまで、プロウイルスとして宿主細胞の染色体に組み込まれる(Muzyczka, Curr. Top. Micro. Immunol. 1992;158:97-129)。
【0208】
AAVウイルスは、細胞ゲノムに組み込まれ得る。組み込み機構は、ウイルス複製、救済、パッケージングおよび組み込みに必要なシス作用性ヌクレオチド配列を含有するAAVゲノムの両端の逆位末端配列(ITR)の存在によって媒介される。repタンパク質によってトランスで媒介されるITRの組み込み機能は、AAVゲノムが、ヘルパーウイルスの非存在下で感染後に細胞染色体に組み込まれることを可能にする。AAVの組み込みの部位は、十分に確立されており、ヒトの第19番染色体に限局している(Kotin et al., PNAS 1990;87:2211-2215)。組み込み部位に関する知識は、宿主遺伝子を活性化もしくは不活化するまたはコード配列を中断する恐れのある細胞ゲノムへのランダム挿入イベントの危険性を低減する。AAVはまた、その宿主範囲が広範であり、多くの細胞型に対して向性を示すので、遺伝子治療用途にも有用である。AAVはまた、非分裂細胞と分裂細胞の両方に感染することができる。
【0209】
AAVベクターは、AAV-1、AAV-2、AAV-3、AAV-4、AAV-5、AAV-6、AAV-7、AAV-8またはAAV-9を含む任意の天然に存在するAAV血清型に由来し得る。そのようなウイルスは、当業者に周知で、利用可能である(例えば、Grimm et al. (2003) Current Gene Therapy, 3:28.1-304;Muramatsu et al. (1996) Virol., 221:208-217;Chiorini et al. (1997) J. Virol. 71:6823-6833;Chiorini (1999) J. Virol., 73: 1309-1319;Rutledge et al. (1998) J. Virol, 72:309-319;Xiao et al. (1999). Virol., 73:3994-4003;Gao et al. (2002) Proc Natl. Acad. Sci., 99:1 1854-11859;Kotin (1994) Human Gene Therapy, 5:793-801を参照のこと)。他の血清型も公知で、利用可能であり、AAV-8~AAV-12が含まれる。例えば、多くのAAVベクターが、American Type Culture Collection(ATCC, Rockville, Md.;例えば、VR-197、VR-645、VR-646、VR-680、VR-681、VR-1449、VR-1523、VR-1616を参照のこと)から入手可能である。また、適合可能な宿主細胞およびヘルパーウイルスも利用可能である。AAVベクターはまた、AAV-2ベクターゲノムが他のAAV血清型のカプシドにクロスパッケージされている「偽型」AAVベクターを含む(Burger et al., Mol Ther. 2004; 10(2):302-17および米国特許第7,094,604号)。そのような偽型AAVベクターは、AAV-2由来血清型の制限、例えば、肝臓または筋肉細胞などの一部の細胞への形質導入における非効率性を克服する。
【0210】
多くのAAVベクターは、全身発現を達成する送達法に従って、骨格筋および心筋などの複数の組織にわたって広範な形質導入を示す。これらは、例えば、AAV血清型6、8および9を含む。特に、AAVベクターは、アデノウイルス関連血清型9(AAV-9;GenBank登録番号AY530629.1;Gao et al. J. Virol., 2004; 78:6381-6388)を含む。AAV-9は、血液脳関門を迂回して中枢神経系(CNS)を標的化できるベクターである(例えば、Foust et al., Nature Biotechnology, 2009; 27:59-65;Duque et al. Mol. Ther:, 2009; 17:1187-1196を参照のこと)。よって、脳またはCNSに影響を及ぼすまたは関連する本明細書における神経変性疾患または他の疾患の例では、全身に送達(例えば、血中での発現のために肝臓またはその部分に送達)するための関心対象のタンパク質をコードする送達物質として、AAV-9を使用することができる。
【0211】
AAVベクターは、関心対象の異種核酸を含有する組換えAAVベクターを含む。そのようなベクターを作製するための手順は、当業者に公知である。例えば、AAVベクター作製の標準的なアプローチは、AAV ITR配列に挟まれた関心対象の核酸分子を含有するAAVベクターゲノムの宿主細胞へのトランスフェクション、トランスで必要とされるAAV repおよびcapタンパク質の遺伝子をコードするプラスミドによる宿主細胞へのトランスフェクション、ならびにトランスで必要とされる非AAVヘルパー機能を供給するヘルパーウイルスによるトランスフェクション細胞への感染を必要とする(Muzyczka Curr. Top. Micro. Immunol., 1992; 158:97-129および米国特許第5,139,941号)。ヘルパーウイルスは、アデノウイルスまたは他のヘルパーウイルスであることができる。ヘルパーウイルスタンパク質がAAV rep遺伝子の転写を活性化し、次いで、repタンパク質がAAV cap遺伝子の転写を活性化する。次いで、capタンパク質がITR配列を利用して、AAVゲノムをウイルス粒子にパッケージングする。
【0212】
あるいは、ヘルパー機能遺伝子を含有するプラスミドを、複製機能源として使用できる周知のヘルパーウイルスの1つによる感染と組み合わせて使用して、AAVビリオンの組換えを助けることができる(例えば、米国特許第5,622,856号および同第5,139,941号を参照のこと)。同様に、当業者は、アクセサリー機能遺伝子を含有するプラスミドを、野生型AAVによる感染と組み合わせて活用して、必要な複製機能を提供することができる。また、組換えビリオン(rAAV)を産生させるために三重トランスフェクション法も使用でき、これは、ヘルパーウイルスを必要としない方法である(例えば、米国特許第6,001,650号を参照のこと)。これは、rAAVビリオン産生に3つのベクター:AAVヘルパー機能ベクター、アクセサリー機能ベクターおよびrAAVベクターを使用することによって達成される。
【0213】
遺伝子治療でのAAVウイルスの使用を例証している参考文献には、Sheridan, Nature Biotechnology 2011; 29:121-128が含まれるが、これに限定されない。
【0214】
c. レトロウイルスベクター
送達物質として使用するためのウイルスベクターは、レトロウイルスベクターを含む。レトロウイルスベクターは、再配列されていない単一コピー遺伝子を幅広い齧歯類、霊長類およびヒト体細胞に送達する能力があるため、細胞への核酸の送達によく適する。レトロウイルスベクターは、宿主細胞のゲノムに組み込まれる。他のウイルスベクターとは異なり、これらは、分裂細胞にのみ感染する。レトロウイルスは、RNAウイルスであり、そのためウイルスゲノムはRNAである。宿主細胞にレトロウイルスが感染すると、ゲノムRNAは、DNA中間体に逆転写され、これが感染細胞の染色体DNAに非常に効率的に組み込まれる。この組み込まれたDNA中間体は、プロウイルスと称される。プロウイルスの転写および感染性ウイルスへのアセンブルは、適切なヘルパーウイルスの存在下で、または混在するヘルパーウイルスの同時産生なしにカプシド化を可能にする適切な配列を含有する細胞株において起こる。カプシド化のための配列が適切なベクターとの共トランスフェクションによって提供されるなら、組換えレトロウイルスの産生にヘルパーウイルスは必要ない。
【0215】
レトロウイルスゲノムおよびプロウイルスDNAは、2つの長い末端反復(LTR)配列に挟まれた3つの遺伝子:gag、polおよびenvを有する。gag遺伝子は、内部構造(マトリックス、カプシドおよびヌクレオカプシド)タンパク質をコードし、env遺伝子は、ウイルスエンベロープ糖タンパク質をコードする。pol遺伝子は、ウイルスRNAを二本鎖DNAに転写するRNA依存性DNAポリメラーゼ逆転写酵素、逆転写酵素によって産生されたDNAを宿主染色体DNAに組み込むインテグラーゼ、ならびにコードされたgagおよびpol遺伝子をプロセシングするように作用するプロテアーゼを含む、産物をコードする。5'および3' LTRは、ビリオンRNAの転写およびポリアデニル化を促進する役目を果たす。LTRは、ウイルス複製に必要な他のすべてのシス作用性配列を含有する。
【0216】
レトロウイルスベクターは、Coffin et al., Retroviruses, Cold Spring Harbor Laboratory Press (1997)に記載されている。例示的なレトロウイルスは、モロニーマウス白血病ウイルス(MMLV)またはマウス幹細胞ウイルス(MSCV)である。レトロウイルスベクターは、複製可能または複製欠損であることができる。通常、レトロウイルスベクターは、複製欠損であり、さらなるビリオン複製およびパッケージングラウンドに必要な遺伝子のコード領域が欠失しているかまたは他の遺伝子に置き換わっている。結果として、ウイルスは、最初の標的細胞が感染すると、その通常の溶解性経路を継続できない。そのようなレトロウイルスベクターおよびそのようなウイルスを産生するために必要な作用因子(例えば、パッケージング細胞株)は、市販されている(例えば、Clontechから入手可能なレトロウイルスベクターおよび系、例えばカタログ番号634401、631503、631501などを参照のこと、Clontech, Mountain View, Calif.)。
【0217】
そのようなレトロウイルスベクターは、複製に必要なウイルス遺伝子を送達すべき核酸分子に置き換えることによって、送達物質として産生させることができる。得られたゲノムは、各端にLTRを含有し、その間に所望の1つまたは複数の遺伝子がある。レトロウイルスを産生する方法は、当業者に公知である(例えば、WO1995/26411を参照のこと)。レトロウイルスベクターは、1つまたは複数のヘルパープラスミドを含有するパッケージング細胞株中に産生させることができる。パッケージング細胞株は、ベクターのカプシド産生およびビリオン成熟に必要なウイルスタンパク質を提供する(例えば、gag、polおよびenv遺伝子)。通常、ベクタープラスミド間で組換えが起こらないように、少なくとも2つの別々のヘルパープラスミド(gagおよびpol遺伝子と;env遺伝子を別々に含有する)が使用される。例えば、標準的なトランスフェクション法、例えばリン酸カルシウム媒介トランスフェクションを使用して、レトロウイルスベクターをパッケージング細胞株に移入することができる。パッケージング細胞株は、当業者に周知であり、市販されている。例示的なパッケージング細胞株は、GP2-293パッケージング細胞株である(カタログ番号631505、631507、631512、Clontech)。ビリオン産生の十分な時間の後、ウイルスが回収される。所望により、回収したウイルスを使用して第2のパッケージング細胞株に感染させ、例えば、様々な宿主向性を有するウイルスを産生させることができる。その最終結果として、関心対象の核酸を含むが、新たなウイルスが宿主細胞内で形成され得ないように他の構造遺伝子を欠いた複製不能な組換えレトロウイルスとなる。
【0218】
遺伝子治療でのレトロウイルスベクターの使用を例証している参考文献には、Clowes et al., Clin. Invest. 1994;93:644-651;Kiem et al., Blood 1994;83:1467-1473;Salmons and Gunzberg, Human Gene Therapy 1993;4:129 141;Grossman and Wilson, Curr. Opin. in Genetics and Devel. 1993;3:110-114;Sheridan, Nature Biotechnology 2011;29:121;Cassani et al., Blood 2009;114:3546-3556が含まれる。
【0219】
d. レンチウイルスベクター
レンチウイルスは、レトロウイルスのサブクラスである。例示的なレンチウイルスは、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、サル免疫不全ウイルス(SIV)、およびネコ免疫不全ウイルス(FIV)である。他のレトロウイルスとは異なり、レンチウイルスは、非分裂細胞のゲノムに組み込むことが可能である。したがって、例えば、レンチウイルスベクターは、初代肝臓細胞に遺伝子を効率的かつ恒久的に送達し、非分裂初代肝臓細胞のゲノムに組み込まれることが報告されている(Lewis and Emerman, J. Virol. 1994;68:510-6)。レンチウイルスベクターはまた、MMLVレトロウイルスベクターと同じ転写サイレンシング機構を苦にしない。レンチウイルスは、核移入機構と相互作用し、ヌクレオポアを介するウイルス組み込み前複合体の活性輸送を媒介する、マトリックスまたはVPRなどのいくつかのビリオンタンパク質に含有される核親和性(karyophilic)決定基を有するという点で、他のレトロウイルスと異なる。それゆえ、宿主細胞のゲノムへのレンチウイルス組み込みは、細胞の分裂に依存しない。
【0220】
他のレトロウイルスと同様に、レンチウイルスは、ウイルスタンパク質をコードする主遺伝子であるgag、polおよびenv遺伝子を含有する。加えて、合成の調節、ウイルスRNAのプロセシングおよび他の複製機能に関与する他のアクセサリー遺伝子(例えば、HIVにおけるTatおよびRev)もある。これらは、2つの長い末端反復(LTR)配列に挟まれている。複製サイクルは、宿主細胞受容体へのウイルス糖タンパク質の結合、膜の融合、および細胞へのウイルスの侵入により開始される。侵入すると、ウイルスは脱殻し、逆転写が起こり、その結果、組み込み前複合体(PIC)の形成に至る。PICの形成において、またPICを介して核エンベロープを通り細胞の核に能動的に進入することにより非分裂細胞に感染するレンチウイルスの能力において、他のアクセサリー遺伝子が役割を果たす。プロウイルスが核エンベロープに進入すると、プロウイルスそれ自体が宿主ゲノムに組み込まれる。
【0221】
例示的なレンチウイルスベクターは、HIV-1、HIV-2、SIVまたはFIVをベースとしている。安全なレンチウイルスベクターを作製するために、数種のプラスミドベクター、例えば4プラスミドベクター系を含有するパッケージング細胞株が作られる。例えば、第1のプラスミドは、プロモーター、gagおよびpolならびに転写されたウイルスRNAが新たなウイルスのアセンブリに組み込まれることを可能にするPsiパッケージング配列だけを含有するように欠失されるアクセサリータンパク質(例えば、tat、brf、vprおよびnef)を含有し、第2のプラスミドは、逆転写酵素を含有し、第3のプラスミドは、水疱性口内炎ウイルスエンベロープタンパク質(VSV-G)に置き換わったenv遺伝子を含有し、そして、第4のプラスミドは、複製に必要なウイルス遺伝子が送達すべき核酸分子に置き換わった関心対象のベクターである。
【0222】
そのようなレンチウイルスベクター、ならびにレンチウイルスを産生する系および方法は、当技術分野において公知である(例えば、Buchshacher and Wong-Staal, Blood 2000; 95:2499-2504;Blomer et al., J. Virol. 1997;71:6641-9;Choi et al., Stem Cells 2001;19:236-46;米国特許第6,218,186号を参照のこと)。レンチウイルスベクターは、複製欠損であり、複製に必要な遺伝子を含有しない。レンチウイルスを産生させるために、数種のパッケージングプラスミドが、パッケージング細胞株、一般的にHEK 293の誘導体または他の類似細胞株(例えば、293FT細胞、カタログ番号R700-07、Invitrogen, Life Technologies, Carlsbad, Calif.);293LTV細胞株、カタログ番号LTV-100、Cell Biolabs, Inc., San Diego, Calif.;Lenti Pac 293Ta細胞株、カタログ番号CLV-PK-01、GeneCo poeia, Rockville, Md.)にトランスフェクトされる。パッケージングプラスミドは、別々に、ビリオンタンパク質(例えば、カプシドおよび逆転写酵素)およびベクターによって送達される核酸分子(パッケージング細胞株にトランスフェクトされ得る)をコードする。一本鎖RNAウイルスゲノムが転写され、これがビリオンにパッケージングされる。レンチウイルスベクターを作製する方法は、当業者に周知である(例えば、Naldine et al., Science 1996;272:263-267を参照のこと)。レンチウイルスベクターおよびウイルスを産生させる系は、市販されている(例えば、レンチウイルス発現ベクター、例えば、Cell Biolabs, Inc.から入手可能なpSMPUWレンチウイルスベクターおよびその誘導体、ならびにレンチウイルス発現およびパッケージング系を参照のこと)。
【0223】
レンチウイルスベクターは、遺伝子治療用途に使用されている(例えば、Manilla et al., Human Gene Therapy 2005;16:17-25;Sheridan, Nature Biotechnology 2011;29:121を参照のこと)。特に、レンチウイルスベクターは、低分子干渉RNA(siRNA)の送達に使用されている(Sachdeva et al., Journal of Medical Virology 2007;79:118-26)。
【0224】
C. 凍結保存および貯蔵
いくつかの局面では、代用皮膚を製造する方法であって、1)ケラチノサイトを重層表皮へと分化させる段階であって、重層表皮が基底層、有棘層、顆粒層、および角質層を含む、段階と;2)重層表皮の細胞にポリヌクレオチドを導入して代用皮膚を生産する段階であって、代用皮膚が成長因子およびインスリンを含む、段階を含む、方法が本明細書に提供される。いくつかの局面では、代用皮膚を製造する方法であって、1)ケラチノサイトを重層表皮へと分化させる段階であって、重層表皮が基底層、有棘層、顆粒層、および角質層を含む、段階と;2)重層表皮の細胞にポリヌクレオチドを含むウイルスベクターを形質導入して代用皮膚を生産する段階であって、代用皮膚が成長因子およびインスリンを含む、段階を含む、方法が本明細書に提供される。いくつかの態様では、本明細書に提供される方法はさらに、重層表皮を含む代用皮膚を凍結保存および貯蔵する方法であって、その細胞が、成長因子およびインスリンを産生する、例えば分泌する、方法を含む。いくつかの態様では、本明細書に提供される方法はさらに、凍結保存および貯蔵の前に代用皮膚に対して品質管理評価を実施する方法を含む。
【0225】
いくつかの態様では、重層表皮を含む代用皮膚は、凍結保存される。いくつかの態様では、重層表皮を含む代用皮膚は、凍結保存の前に凍結保護物質で製剤化される。いくつかの態様では、凍結保護物質は、アルブミンおよび単糖を含む。いくつかの態様では、凍結保護物質は、ヒトアルブミンおよびグルコース、例えば、D-グルコースを含む。いくつかの態様では、凍結保護物質は、DMSOを含まない。
【0226】
いくつかの態様では、品質管理評価は、重層表皮を含む代用皮膚を凍結保護物質で製剤化する前に実施される。品質管理評価は、ある特定のタンパク質、例えば、表皮分化のマーカーの同定および/または検出、効力の評価、ならびに純度の評価を含むことができるが、これらに限定されない。品質管理評価はさらに、無菌性および安全性の評価を含むことができる。
【0227】
いくつかの態様では、品質管理評価は、形質導入に使用されるベクターのウイルスゲノムに関連する遺伝子を同定および/または検出することを含む。いくつかの態様では、品質管理評価は、アデノウイルスベクターに関連する遺伝子を同定および/または検出することを含む。いくつかの態様では、複製不能ウイルスと複製可能ウイルスとを識別するためにアデノウイルス遺伝子が同定および/または検出される。いくつかの態様では、品質管理評価は、アデノウイルス遺伝子E1、E4のレベルを同定および/または検出することを含む。いくつかの態様では、品質管理評価は、PCR、例えば、qPCR、および/または免疫組織染色によるなどの当業者に公知の方法を使用して、代用皮膚に関連する分子、例えば、組換え成長因子、組換えインスリン、フィラグリン、ラミニンおよびトランスグルタミナーゼのレベルを同定および/または検出することを含む。
【0228】
いくつかの態様では、品質管理評価は、代用皮膚から分泌された分子、例えば、組換え成長因子およびCペプチドを、ELISAを使用するなどして検出することを含む。いくつかの態様では、品質管理評価は、代用皮膚から分泌された組換え成長因子および組換えインスリンの効力を、血管新生アッセイ、例えば、内皮管腔形成アッセイを使用するなどして評価することを含む。いくつかの態様では、品質管理評価は、当業者に公知の方法を使用した、純度、例えば、ウシコラーゲンの純度の評価を含む。いくつかの態様では、品質管理評価は、当業者に公知の方法、例えば、PCRを使用してエンドトキシンを検出するなどによる無菌性の評価を含む。いくつかの態様では、本明細書に提供される通りの代用皮膚のすべての成分が、感染性因子についてのスクリーニングを受ける。いくつかの態様では、ケラチノサイト、例えば、HaCaT、マスターセルバンクは、腫瘍原性および染色体異常についてスクリーニングされる。
【0229】
いくつかの態様では、凍結保存された代用皮膚の包装または貯蔵は、ドレッシング、例えば吸収ガーゼなどの吸収材の使用を含み、ここで、凍結保存された代用皮膚は、ドレッシング上に載置される。いくつかの態様では、ドレッシング、例えばガーゼ上に載置される凍結保存された代用皮膚のサイズは、約30~55cm2、約30~50cm2、約35~45cm2、約40~50cm2、約40~45cm2、または約45~50cm2である。いくつかの態様では、ドレッシング、例えばガーゼ上に載置される凍結保存された代用皮膚のサイズは、30cm2もしくは約30cm2、31cm2もしくは約31cm2、32cm2もしくは約32cm2、33cm2もしくは約33cm2、34cm2もしくは約34cm2、35cm2もしくは約35cm2、36cm2もしくは約36cm2、37cm2もしくは約37cm2、38cm2もしくは約38cm2、39cm2もしくは約39cm2、40cm2もしくは約40cm2、41cm2もしくは約41cm2、42cm2もしくは約42cm2、43cm2もしくは約43cm2、44cm2もしくは約44cm2、45cm2もしくは約45cm2、46cm2もしくは約46cm2、47cm2もしくは約47cm2、48cm2もしくは約48cm2、49cm2もしくは約49cm2、または50cm2もしくは約50cm2である。
【0230】
いくつかの態様では、凍結保存された代用皮膚の包装または貯蔵は、吸収ガーゼの使用を含み、例えば、ここで、凍結保存された代用皮膚は、吸収ガーゼ上に載置される。いくつかの態様では、ドレッシングは、吸収ガーゼを含む。いくつかの態様では、吸収ガーゼは、ワセリンペトロラタムガーゼである。いくつかの態様では、代用皮膚が設置されるドレッシング、例えばガーゼのサイズは、約40~60cm2、約45~60cm2、約45~55cm2、または約50~60cm2である。いくつかの態様では、凍結保存された代用皮膚が設置されるドレッシング、例えばガーゼのサイズは、40cm2もしくは約40cm2、41cm2もしくは約41cm2、42cm2もしくは約42cm2、43cm2もしくは約43cm2、44cm2もしくは約44cm2、45cm2もしくは約45cm2、46cm2もしくは約46cm2、47cm2もしくは約47cm2、48cm2もしくは約48cm2、49cm2もしくは約49cm2、50cm2もしくは約50cm2、51cm2もしくは約51cm2、52cm2もしくは約52cm2、53cm2もしくは約53cm2、54cm2もしくは約54cm2、55cm2もしくは約55cm2、56cm2もしくは約56cm2、57cm2もしくは約57cm2、58cm2もしくは約58cm2、59cm2もしくは約59cm2、または60cm2もしくは約60cm2である。
【0231】
いくつかの態様では、ドレッシング、例えば吸収ガーゼのサイズと、ドレッシング上に載置される凍結保存された代用皮膚のサイズの比は、約1:1~約1.5:1である。いくつかの態様では、ドレッシング、例えば吸収ガーゼのサイズと、ドレッシング上に載置される凍結保存された代用皮膚のサイズの比は、約1:1、約1.1:1、約1.2:1、約1.3:1、約1.4:1、または約1.5:1である。
【0232】
いくつかの態様では、凍結保存された代用皮膚は、容器中に包装または貯蔵される。いくつかの態様では、滅菌ドレッシング上に載置された凍結保存された代用皮膚は、容器中に包装または貯蔵される。いくつかの態様では、容器は、無菌である。いくつかの態様では、容器は、熱を使用して密封される、例えば、熱密封可能であるまたは熱密封される。いくつかの態様では、容器は、無菌であり、熱密封可能であるまたは熱密封される。いくつかの態様では、容器は、透明である。いくつかの態様では、容器は、ポリエステル樹脂を含む。いくつかの態様では、容器は、バッグである。いくつかの態様では、容器中に包装または貯蔵された代用皮膚は、パッケージに収納される。いくつかの態様では、容器およびパッケージの一方または両方が、無菌および/または熱密封可能である。いくつかの態様では、任意で容器中に貯蔵された凍結保存された代用皮膚は、約-20℃、-30℃、-40℃、-50℃、-60℃、-70℃、または-80℃で貯蔵することができる。
【0233】
いくつかの態様では、凍結保存された代用皮膚は、最大6ヶ月間貯蔵することができる。いくつかの態様では、凍結保存された代用皮膚は、最大6ヶ月間貯蔵することができ、組換え成長因子および組換えインスリンを有効量で提供する、例えば分泌する、機能を保持することができる。いくつかの態様では、凍結保存された代用皮膚は、最大5ヶ月間貯蔵することができ、組換え成長因子および組換えインスリンを有効量で提供する、例えば分泌する、機能を保持することができる。いくつかの態様では、凍結保存された代用皮膚は、最大4ヶ月間貯蔵することができ、組換え成長因子および組換えインスリンを有効量で提供する、例えば分泌する、機能を保持することができる。いくつかの態様では、凍結保存された代用皮膚は、最大3ヶ月間貯蔵することができ、組換え成長因子および組換えインスリンを有効量で提供する、例えば分泌する、機能を保持することができる。
【0234】
IV. 代用皮膚を使用する方法
いくつかの局面では、重層表皮を含む代用皮膚を使用する方法であって、その細胞が、成長ホルモンおよびインスリンまたはそのバリアントを産生する、例えば分泌する、方法が、本明細書に提供される。いくつかの態様では、本明細書に提供される代用皮膚は、創傷の状態を改善するおよび/または創傷治癒を促進するために、対象、例えば、ヒト対象に適用することができる。いくつかの態様では、本明細書に提供される代用皮膚は、創傷治癒を促進するおよび/または創傷の微生物感染を防止するために、糖尿病対象に適用することができる。
【0235】
A. 終末糖化産物
いくつかの態様では、本明細書に提供される通りの代用皮膚は、終末糖化産物(AGE)を伴う状態、例えば悪化したまたは長期化した創傷治癒を改善するために使用することができる。動物、すなわちヒトの血中および細胞内環境中の還元糖(例えば、グルコース)の濃度上昇は、通常、糖化および脱水縮合複合体AGEの非酵素的形成をもたらす。AGE複合体産物は、遊離アミノ基上、タンパク質上、脂質上およびDNA上で形成される(Bucala and Cerami, Adv Pharmacol 1992;23:1-34;Bucala et al., Proc Natl Acad Sci 1993;90:6434-6438;Bucala et al., Proc Natl. Acad Sci 1984;81:105-109)。一例では、糖尿病患者のAGEレベルは、持続的な高血糖値の結果として著しく増加し、組織タンパク質の構造および機能の変化、AGE特異的受容体を通じた細胞応答の刺激ならびに/または活性酸素種(ROS)の発生を含めた多様な機構を通じて頻繁に組織損傷を導く(Boel et al., J Diabetes Complications 1995;9:104-29)。AGEは、創傷、例えば、微小な傷(nicks)、切り傷(cuts)、やけど(burns)、びらん(sores)、潰瘍、膿瘍および/または任意の他の形態の身体傷害を経験している真性糖尿病(diabetes mellitus)罹患患者において合併症を引き起こすことが示されている。いくつかの態様では、本明細書に提供される通りの代用皮膚から分泌可能な成長因子およびインスリンは、全身グルコースレベルに影響を与えることなく、対象の皮膚において血管新生を促進し、AGEの量を低減させることができる。
【0236】
AGEの蓄積は、とりわけ糖尿病患者における創傷治癒に関係するため、皮膚機能の低下につながる可能性がある(Putte et al., Scars Burn Heal. 2016; 5(2):1-14)。AGEは、糖尿病対象の皮膚(Peppa et al., Diabetes 2003; 52(11):2805-2813)、さらには骨(Santana et al., Diabetes 2003;52(6):1502-10)の遅延したまたは不完全な創傷治癒に関与する。遅延したまたは長期化した創傷治癒では、創傷閉鎖によって示されるような創傷が治癒するまでの時間は、いくつかの場合、健常または非糖尿病対象で観察される治癒までの時間を上回る。いくつかの態様では、本明細書に提供される通りの代用皮膚は、糖尿病対象での創傷治癒時間(例えば、創傷閉鎖までの時間)を、非糖尿病対象で同じ効果が達成されるのに必要な同等の時間まで短縮することができる。
【0237】
いくつかの場合、不完全な創傷治癒は、創傷治癒過程中の上皮組織化における異常のことを指し、これは、瘢痕を形成する能力の低下を含むことができる。瘢痕形成は、創傷治癒の主要部である。瘢痕は、創傷治癒過程中に、創傷形成前に存在していた正常皮膚の代わりに形成される線維組織の領域である。瘢痕は、正常皮膚と比べて、変化した細胞外マトリックスを示し、低下したエラスチン繊維レベルを有する。健常皮膚では、ほぼすべての創傷がある程度の瘢痕化を生じる。いくつかの態様では、本明細書に提供される通りの代用皮膚は、瘢痕形成を誘導し、それにより創傷治癒過程を容易にすることができる。
【0238】
創傷は、急性または慢性として記載することができる。急性創傷は、通常、時が経つにつれてではなくむしろ突然起こる皮膚への損傷の結果である(例えば、外科的創傷または外傷性創傷)。正常対象では、急性創傷は、通常、正常な創傷治癒過程に従って予測可能および予想される速度で治癒する。これに対して、慢性創傷は、創傷治癒の段階が規則的かつ時間的に正しい様式で進行しない創傷である(例えば、30日で治癒に向けた実質的な進行を示さない)。いくつかの態様では、本明細書に提供される通りの代用皮膚は、急性創傷に適用することができる。いくつかの態様では、本明細書に提供される通りの代用皮膚は、慢性創傷に適用することができる。慢性創傷の非限定例には、静脈鬱滞性潰瘍、糖尿病性足潰瘍、および褥瘡性潰瘍が含まれる。非治癒性創傷は、大きな保健医療負担となっている。非治癒性創傷は、入院の長期化、生活の質の低下、死亡リスクの上昇、切断の必要性、および長期療養施設への退院の可能性増加をもたらし得る。
【0239】
B. 糖尿病足創傷および感染
潰瘍、びらん、病変および/または膿瘍を含めた糖尿病足創傷は、よく見られる2つの糖尿病合併症である末梢神経障害および血管不全から生じる。以降、本明細書において糖尿病足と称される糖尿病足病変は、高い罹患率を有する病態であり、頻繁な入院、長期入院および切断が一部理由で患者の生活の質に悪影響を及ぼす(Alosaimi et al., Journal of Foot and Ankle Research 2019; 12:57)。2型糖尿病(真性糖尿病)と診断された10人に1人が、足病変のリスク因子を有すると推定されている(Boulton et al., Lancet 2005; 366(9498):1719-24)。
【0240】
全糖尿病患者の約15%~25%が疾患の過程で足または下肢潰瘍を発症するだろう(Boulton et al., Lancet 2005; 366(9498):1719-24、およびPinzur and Dart, Foot Ankle Clin. 2001;6(2):205-142005)。リスク因子には、長期の真性糖尿病(>10年)、年齢(>50歳)、潰瘍または切断歴、神経障害、関節症または血管系疾患の存在、他の糖尿病合併症の存在、患者の低い社会経済的地位および/または社会的孤立、貧しい食生活、フットケアに対する不十分な教育、ならびに血管系疾患に関連する他のリスク因子が含まれる(Nongmaithem et al., J Family Med Prim Care 2016;5(2):399-403)。
【0241】
糖尿病足の診断は、損傷および/または切断のリスクを伝える。創傷または病変は、とりわけ、喫煙者および下肢の血管合併症既往者を含めたハイリスク患者にとって脅威である。糖尿病足の早期検出は、モノフィラメントの使用、触診、外観および感覚検査を含めた足診察を通じて実施される。予防的措置が失敗して損傷が生じるかまたはハイリスク足が確認される場合、とりわけ他の四肢の潰瘍または切断歴のある症例において、集学的管理が実施されるべきである。
【0242】
ワグナー分類(病変を0~5のスケールにグレード分けし、5は最も重症の疾患を示す)が、神経障害性糖尿病足の管理戦略を決定するために広く使用されている。治療の第一目的は、創傷閉鎖である。初期の低い重症度の管理は、安静、足部挙上および経口抗生物質治療を必要に応じて含み得る。これらの手段に対して奏効が観察されなければ、より積極的な介入を患者に紹介すべきである。初期治療に奏効しないならびに/または重症(重度)の創傷および/もしくは感染を呈する病変を有する対象には、外科的介入および/または静脈内抗生物質治療が推奨される(Frykberg, Am Fam Physician. 2002;66(9):1655-1663)。
【0243】
(表1)ワグナーの糖尿病性足潰瘍のグレード分類体系
*Frykberg, Am Fam Physician. 2002;66(9):1655-1663から引用
【0244】
現在利用可能な代用皮膚または皮膚等価物は、多様な異なる組成物、例えば、ケラチノサイト幹細胞、正常不死化ケラチノサイト(NIKS)および/またはヒト線維芽細胞、ならびに構造物、例えば、表皮層の形態の構造物を含む組成物または真皮および表皮層の形態の構造物を含む組成物のものである。これらの代用皮膚は、広範な異なる分子、例えば、成長因子、コラーゲンおよび/または細胞外マトリックスタンパク質を分泌することができる。例えば、Dermagraft(登録商標)およびApligraf(登録商標)は、糖尿病患者の創傷、例えば、糖尿病性足潰瘍および/または静脈性下肢潰瘍を治療するためにFDAによる承認を取得している代用皮膚である。しかしながら、現在利用可能な代用皮膚は、高額な費用を伴う複数回の適用の必要性を含め、多くの制限を有している。いくつかの態様では、本明細書に提供される通りの代用皮膚は、糖尿病対象における創傷治癒時間を、わずか1回の適用で、非糖尿病対象で同じ効果が達成されるのに必要な同等の時間まで短縮することができる。いくつかの態様では、本明細書に提供される通りの代用皮膚は、糖尿病対象における創傷治癒時間を、わずか2回の適用で、非糖尿病対象で同じ効果が達成されるのに必要な同等の時間まで短縮することができる。いくつかの態様では、本明細書に提供される通りの代用皮膚は、糖尿病対象における創傷治癒時間を、わずか3回の適用で、非糖尿病対象で同じ効果が達成されるのに必要な同等の時間まで短縮することができる。いくつかの態様では、本明細書に提供される通りの代用皮膚は、糖尿病対象における創傷治癒時間を、わずか4回の適用で、非糖尿病対象で同じ効果が達成されるのに必要な同等の時間まで短縮することができる。
【0245】
いくつかの態様では、本明細書に提供される通りの代用皮膚は、対象の皮膚または創傷に適用される。いくつかの態様では、本明細書に提供される通りの吸収ドレッシング、例えばガーゼ上に載置された代用皮膚は、対象の皮膚または創傷に適用される。いくつかの態様では、本明細書に提供される通りの代用皮膚は、10日毎に1回、11日毎に1回、12日毎に1回、13日毎に1回、14日毎に1回、15日毎に1回、16日毎に1回、17日毎に1回、18日毎に1回、19日毎に1回、20日毎に1回、または21日毎に1回交換することができる。いくつかの態様では、本明細書に提供される通りの代用皮膚は、対象に適用したまま、交換せずに、少なくとも10日間、少なくとも11日間、少なくとも12日間、少なくとも13日間、少なくとも14日間、少なくとも15日間、少なくとも16日間、少なくとも17日間、少なくとも18日間、少なくとも19日間、少なくとも20日間、または少なくとも21日間そのままにしておくことができる。
【0246】
いくつかの態様では、本明細書に提供される通りの代用皮膚は、組換え成長因子および組換えインスリンの持続放出を提供することができる。いくつかの態様では、本明細書に提供される通りの代用皮膚からの組換え成長因子および組換えインスリンの持続放出は、最大2日間もしくは約2日間、最大3日間もしくは約3日間、最大4日間もしくは約4日間、最大5日間もしくは約5日間、最大6日間もしくは約6日間、最大7日間もしくは約7日間、最大8日間もしくは約8日間、最大9日間もしくは約9日間、最大10日間もしくは約10日間、最大11日間もしくは約11日間、最大12日間もしくは約12日間、最大13日間もしくは約13日間、または最大14日間もしくは約14日間持続する。いくつかの態様では、本明細書に提供される通りの代用皮膚からの組換え成長因子および組換えインスリンの持続放出は、最大1週間もしくは約1週間、最大2週間もしくは約2週間、最大3週間もしくは約3週間、最大1~2週間もしくは約1~2週間、または最大2~3週間もしくは約2~3週間持続する。
【0247】
皮膚の微生物叢は、様々なウイルス、細菌および真菌から構成され、糖尿病対象の創傷は、特に感染しやすい。微生物の存在だけが、感染の指標となるわけではない。感染は、全身的な兆候(例えば、発熱、寒気および白血球増多)、膿もしくは分泌物、または局所的な炎症症状(例えば、熱感、発赤、疼痛または圧痛、および硬結)の存在によって臨床的に診断されなければならない。
【0248】
感染の診断を複雑にすることに加え、慢性創傷は、治癒の遅れ、異常呈色、脆弱性または悪臭をさらに呈し得る。足の問題の最初の出現および全身感染または代謝障害が明らかになったときに、感染を疑うべきである。末梢神経障害または虚血を含む血管系の異常は、炎症を隠すまたは模倣する可能性がある(Lipsky, Clinical Infectious Diseases 2004;39:S104-14)。興味深いことに、全身毒性の兆候、例えば、敗血症、全身性炎症反応症候群(SIRS)または多臓器不全症候群(MODS)は、糖尿病足感染症において稀にしか報告されていない。しかしながら、例えば、SIRSが明らかな場合、糖尿病足感染症は、下肢を脅かすだけでなく生命を脅かすことになる可能性が高い(Lin et al., J. Clin. Med. 2019;8(10):1538)。特に重症度がいかに速く、時として数時間のうちに拡大し得ることを考慮に入れ、感染の疑いがあれば、積極的に追跡すべきである。
【0249】
一例では、糖尿病足創傷は、表面的なものから重症のものまで幅広い感染をもたらす可能性があり、感染は皮膚および/または骨の深部層まで広がる。感染は、外科的介入のリスク因子であり、外科的介入は、足温存の小手術または切断のような大手術を含み得る。ある推定によれば、切断の60%は感染性足潰瘍の起こった後である(Lipsky, Clinical Infectious Diseases 2004; 39:S104-14)。感染を予防する方法は、患者への深刻な影響を考慮すれば最も重要である。さらに、予防は、高価でかつ患者に有害なオフターゲット効果を招き得る抗生物質治療の必要性を回避する。
【0250】
いくつかの態様では、本明細書に提供される通りの代用皮膚は、微生物感染を予防するために使用することができる。いくつかの態様では、本明細書に提供される通りの代用皮膚は、細菌感染を予防するために使用することができる。いくつかの態様では、本明細書に提供される通りの代用皮膚は、ウイルス感染を予防するために使用することができる。いくつかの態様では、本明細書に提供される通りの代用皮膚は、対象の1つまたは複数の創傷の微生物感染を予防するために使用することができる。いくつかの態様では、本明細書に提供される通りの代用皮膚は、対象の1つまたは複数の創傷の細菌感染を予防するために使用することができる。いくつかの態様では、本明細書に提供される通りの代用皮膚は、対象の1つまたは複数の創傷のウイルス感染を予防するために使用することができる。いくつかの態様では、本明細書に提供される通りの代用皮膚は、糖尿病対象の1つまたは複数の創傷の微生物感染を予防するために使用することができる。いくつかの態様では、本明細書に提供される通りの代用皮膚は、糖尿病対象の1つまたは複数の創傷の細菌感染を予防するために使用することができる。いくつかの態様では、本明細書に提供される通りの代用皮膚は、糖尿病対象の1つまたは複数の創傷のウイルス感染を予防するために使用することができる。
【0251】
V. 例示的な態様
提供される態様には以下が含まれる:
1. 基底層、有棘層、顆粒層、および角質層を含む重層表皮を含む代用皮膚であって、
該重層表皮の細胞が、組換え成長因子および組換えインスリンを発現する、
前記代用皮膚。
2. 組換え成長因子および組換えインスリンが、重層表皮の細胞から分泌可能である、態様1の代用皮膚。
3. 重層表皮が厚さ100~200μmである、態様1または態様2の代用皮膚。
4. 組換え成長因子および組換えインスリンを発現する重層表皮の細胞が、基底層の細胞を含む、態様1~3のいずれかの代用皮膚。
5. 組換えインスリンが、組換えヒトインスリンであるかまたは組換えヒトインスリンを含む、態様1~4のいずれかの代用皮膚。
6. 組換えインスリンが、
(i)SEQ ID NO:5に示されるアミノ酸配列;
(ii)SEQ ID NO:5と少なくとも85%、少なくとも90%、もしくは少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する機能性バリアント;または
(iii)A鎖およびB鎖を含む、(i)もしくは(ii)の2鎖形態
を有し、
任意で、該A鎖と該B鎖とがジスルフィド結合によって連結されている、
態様1~5のいずれかの代用皮膚。
7. 組換えインスリンが、
(i)SEQ ID NO:5に示されるアミノ酸配列、
(ii)SEQ ID NO:5と少なくとも85%、少なくとも90%、もしくは少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する機能性バリアント
をコードするポリヌクレオチドによってコードされる、態様1~6のいずれかの代用皮膚。
8. 組換えインスリンが、SEQ ID NO:5に示される野生型インスリンと比較して改変ヒトプロインスリンのB鎖内の位置10にヒスチジンからアスパラギン酸への変異を含むAspB10インスリン類似体である、態様1~7のいずれかの代用皮膚。
9. エンドペプチダーゼArg31-Arg32切断部位またはエンドペプチダーゼLys64-Arg65切断部位の代わりに少なくとも1つのフューリン認識配列を含むプロインスリンをコードするポリヌクレオチドを含む、態様1~8のいずれかの代用皮膚。
10. 少なくとも1つのフューリン認識配列が、エンドペプチダーゼArg31-Arg32切断部位およびエンドペプチダーゼLys64-Arg65切断部位の代わりにある、態様9の代用皮膚。
11. 少なくとも1つのフューリン認識配列が、コンセンサス配列:
Xが任意のアミノ酸である、R-X-R-R(SEQ ID NO:8)、または
Xが任意のアミノ酸である、R-X-K-R(SEQ ID NO:9)
を含む、態様9または態様10の代用皮膚。
12. 少なくとも1つのフューリン切断部位が、RTKR(SEQ ID NO:10)またはRQKR(SEQ ID NO:42)である、態様9~11のいずれかの代用皮膚。
13. 組換えインスリンが、
(i)SEQ ID NO:6に示されるアミノ酸配列;
(ii)SEQ ID NO:6と少なくとも85%、少なくとも90%、もしくは少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する機能性バリアント;または
(iii)A鎖およびB鎖を含む、(i)もしくは(ii)の2鎖形態
を有し、
任意で、該A鎖と該B鎖とがジスルフィド結合によって連結されている、
態様1~12のいずれかの代用皮膚。
14. 組換えインスリンが、SEQ ID NO:6に示される配列、または、A鎖およびB鎖を含む(i)もしくは(ii)の2鎖形態を含み、任意で、該A鎖と該B鎖とがジスルフィド結合によって連結されている、態様1~13のいずれかの代用皮膚。
15. 組換えインスリンが、SEQ ID NO:36に示されるA鎖およびSEQ ID NO:41に示されるB鎖を含み、任意で、該A鎖と該B鎖とがジスルフィド結合によって連結されている、態様1~14のいずれかの代用皮膚。
16. 組換えインスリンが、SEQ ID NO:2に示される配列と少なくとも85%もしくは少なくとも約85%、少なくとも90%もしくは少なくとも約90%、または少なくとも95%もしくは少なくとも約95%の配列同一性を有する配列を含むポリヌクレオチドによってコードされる、態様1~15のいずれかの代用皮膚。
17. 組換えインスリンが、SEQ ID NO:2に示される配列を含む、態様1~16のいずれかの代用皮膚。
18. 組換え成長因子が、上皮細胞成長因子(EGF)、エリスロポエチン(EPO)、線維芽細胞成長因子(FGF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、肝細胞成長因子(HGF)、インスリン様成長因子(IGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、形質転換成長因子αおよびβ、血管内皮成長因子(VEGF)、上皮細胞成長因子受容体(EGFR)、線維芽細胞成長因子受容体(FGFR)、ならびにそれらの任意のアイソフォームまたは選択的スプライシングされたバリアントからなる群より選択される、態様1~17のいずれかの代用皮膚。
19. 組換え成長因子が、VEGFまたはそのアイソフォームもしくは選択的スプライシングされたバリアントである、態様1~5のいずれかの代用皮膚。
20. VEGFが、SEQ ID NO:4に示される配列と少なくとも85%もしくは少なくとも約85%、少なくとも90%もしくは少なくとも約90%、または少なくとも95%もしくは少なくとも約95%の配列同一性を有するポリヌクレオチド配列によってコードされる、態様19の代用皮膚。
21. VEGFが、SEQ ID NO:4に示される配列を含むポリヌクレオチド配列によってコードされる、態様19または態様20の代用皮膚。
22. VEGFが、
SEQ ID NO:7に示される配列と少なくとも85%もしくは少なくとも約85%、少なくとも90%もしくは少なくとも約90%、または少なくとも95%もしくは少なくとも約95%の配列同一性を有する配列、または
シグナルペプチドを欠如するその配列
を含む、態様19~21のいずれかの代用皮膚。
23. VEGFが、
SEQ ID NO:7に示される配列、または
シグナルペプチドを欠如するその配列
を含む、態様19~22のいずれかの代用皮膚。
24. VEGFが、SEQ ID NO:44に示される配列と少なくとも85%もしくは少なくとも約85%、少なくとも90%もしくは少なくとも約90%、または少なくとも95%もしくは少なくとも約95%の配列同一性を有する配列を含む、態様19~23のいずれかの代用皮膚。
25. VEGFが、SEQ ID NO:44に示される配列を含む、態様19~24のいずれかの代用皮膚。
26. 組換え成長因子および組換えインスリンが、バイシストロン性エレメントによって分離された組換え成長因子をコードするポリヌクレオチドおよび組換えインスリンをコードするポリヌクレオチドを含むバイシストロン性発現カセットによってコードされる、態様1~25のいずれかの代用皮膚。
27. バイシストロン性エレメントがIRESである、態様26の代用皮膚。
28. 組換え成長因子をコードするポリヌクレオチドおよび組換えインスリンをコードするポリヌクレオチドが、プロモーターと機能的に連結されている、態様1~27のいずれかの代用皮膚。
29. プロモーターが構成的プロモーターまたは誘導性プロモーターである、態様28の代用皮膚。
30. プロモーターがCAGプロモーターである、態様28または態様29の代用皮膚。
31. 組換え成長因子をコードするポリヌクレオチドが、バイシストロン性発現カセット内の組換えインスリンをコードするポリヌクレオチドの上流にある、態様26~30のいずれかの代用皮膚。
32. 任意で管腔形成アッセイで評価した場合、重層表皮の細胞が、組換え成長因子または組換えインスリンのいずれかを単独で含む代用皮膚と比べてより大きな改善を血管新生再構築の1つまたは複数のマーカーにもたらすレベルで組換え成長因子および組換えインスリンを分泌する、態様1~31のいずれかの代用皮膚。
33. 血管新生再構築のマーカーが、少なくとも3つのコード(chord)の結合部位として定義されるノードまたはユニオンの数における増加である、態様32の代用皮膚。
34. 血管新生再構築のマーカーが、2つ以上のノードによって囲まれた閉回路として定義されるウェブの数における増加である、態様32の代用皮膚。
35. 血管新生再構築のマーカーが、2つのノードを一緒に結合するコードとして定義される主セグメントの数における増加である、態様32の代用皮膚。
36. 重層表皮の細胞が、定量化可能なレベルの組換え成長因子および組換えインスリンを継続的に分泌する、態様1~35のいずれかの代用皮膚。
37. 重層表皮の細胞が、組換え成長因子および組換えインスリンを、最大2日もしくは約2日、最大3日もしくは約3日、最大4日もしくは約4日、最大5日もしくは約5日、最大6日もしくは約6日、最大7日もしくは約7日、最大8日もしくは約8日、最大9日もしくは約9日、最大10日もしくは約10日、最大11日もしくは約11日、最大12日もしくは約12日、最大13日もしくは約13日、または最大14日もしくは約14日にわたって継続的に分泌する、態様1~36のいずれかの代用皮膚。
38. 重層表皮の細胞が、組換え成長因子および組換えインスリンを、最大1週間もしくは約1週間、最大2週間もしくは約2週間、最大3週間もしくは約3週間、最大1~2週間もしくは約1~2週間、または最大2~3週間もしくは約2~3週間にわたって継続的に分泌する、態様1~37のいずれかの代用皮膚。
39. 重層表皮の細胞が、最大2日もしくは約2日、最大3日もしくは約3日、最大4日もしくは約4日、最大5日もしくは約5日、最大6日もしくは約6日、最大7日もしくは約7日、最大8日もしくは約8日、最大9日もしくは約9日、最大10日もしくは約10日、最大11日もしくは約11日、最大12日もしくは約12日、最大13日もしくは約13日、または最大14日もしくは約14日にわたって検出できる定量化可能なレベルの組換え成長因子およびCペプチドを分泌する、態様1~38のいずれかの代用皮膚。
40. 重層表皮の細胞が、最大1週間もしくは約1週間、最大2週間もしくは約2週間、最大3週間もしくは約3週間、最大1~2週間もしくは約1~2週間、または最大2~3週間もしくは約2~3週間にわたって検出できる定量化可能なレベルの組換え成長因子およびCペプチドを分泌する、態様1~39のいずれかの代用皮膚。
41. 重層表皮の細胞が、対象の皮膚における終末糖化産物(AGE)のレベルを低減するレベルの組換え成長因子および組換えインスリンを分泌する、態様1~40のいずれかの代用皮膚。
42. 重層表皮の細胞がケラチノサイトから分化した細胞である、態様1~41のいずれかの代用皮膚。
43. ケラチノサイトがヒトケラチノサイトである、態様42の代用皮膚。
44. ケラチノサイトがHaCaTケラチノサイト細胞である、態様42または態様43の代用皮膚。
45. 組換えヒト成長因子および組換えインスリンをコードするポリヌクレオチドを含む、バイシストロン性発現カセット。
46. 組換えインスリンが、組換えヒトインスリンであるかまたは組換えヒトインスリンを含む、態様45のバイシストロン性発現カセット。
47. コードされる組換えインスリンが、
(i)SEQ ID NO:5に示されるアミノ酸配列を有する、または
(ii)SEQ ID NO:5と少なくとも85%、少なくとも90%、もしくは少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する機能性バリアントである、
態様45または態様46のバイシストロン性発現カセット。
48. 組み換えインスリンをコードするポリヌクレオチドが、
(i)SEQ ID NO:5に示されるアミノ酸配列を含む、または
(ii)SEQ ID NO:5と少なくとも85%、少なくとも90%、もしくは少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する機能性バリアントである、
態様45~47のいずれかのバイシストロン性発現カセット。
49. コードされる組換えインスリンが、SEQ ID NO:5に示される野生型インスリンと比較して改変ヒトプロインスリンのB鎖内の位置10にヒスチジンからアスパラギン酸への変異を含むAspB10インスリン類似体である、態様45~48のいずれかのバイシストロン性発現カセット。
50. 組換えインスリンをコードするポリヌクレオチドが、エンドペプチダーゼArg31-Arg32切断部位またはエンドペプチダーゼLys64-Arg65切断部位の代わりに少なくとも1つのフューリン認識配列を含むプロインスリンをコードする、態様45~49のいずれかのバイシストロン性発現カセット。
51. 少なくとも1つのフューリン認識配列が、エンドペプチダーゼArg31-Arg32切断部位およびエンドペプチダーゼLys64-Arg65切断部位の代わりにある、態様50のバイシストロン性発現カセット。
52. 少なくとも1つのフューリン認識配列が、コンセンサス配列:
Xが任意のアミノ酸である、R-X-R-R(SEQ ID NO:8)、または
Xが任意のアミノ酸である、R-X-K-R(SEQ ID NO:9)
を含む、態様50または態様51のバイシストロン性発現カセット。
53. 少なくとも1つのフューリン切断部位が、RTKR(SEQ ID NO:10)またはRQKR(SEQ ID NO:42)である、態様50~52のいずれかのバイシストロン性発現カセット。
54. コードされる組換えインスリンが、
(i)SEQ ID NO:6に示されるアミノ酸配列を有する、または
(ii)SEQ ID NO:6と少なくとも85%、少なくとも90%、もしくは少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する機能性バリアントである、
態様45~53のいずれかのバイシストロン性発現カセット。
55. コードされる組換えインスリンが、SEQ ID NO:6に示される配列を含む、態様45~54のいずれかのバイシストロン性発現カセット。
56. 組換えインスリンをコードするポリヌクレオチドが、SEQ ID NO:2に示される配列と少なくとも85%もしくは少なくとも約85%、少なくとも90%もしくは少なくとも約90%、または少なくとも95%もしくは少なくとも約95%の配列同一性を有する配列を含む、態様45~55のいずれかのバイシストロン性発現カセット。
57. 組換えインスリンをコードするポリヌクレオチドが、SEQ ID NO:2に示される配列を含む、態様45~56のいずれかのバイシストロン性発現カセット。
58. コードされる組換え成長因子が、上皮細胞成長因子(EGF)、エリスロポエチン(EPO)、線維芽細胞成長因子(FGF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、肝細胞成長因子(HGF)、インスリン様成長因子(IGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、形質転換成長因子αおよびβ、血管内皮成長因子(VEGF)、上皮細胞成長因子受容体(EGFR)、線維芽細胞成長因子受容体(FGFR)、およびそれらの任意のアイソフォームまたは選択的スプライシングされたバリアントからなる群より選択される、態様45~57のいずれかのバイシストロン性発現カセット。
59. 組換え成長因子が、VEGFまたはそのアイソフォームもしくは選択的スプライシングされたバリアントである、態様45~58のいずれかのバイシストロン性発現カセット。
60. 成長因子をコードするポリヌクレオチドが、SEQ ID NO:4に示される配列と少なくとも85%もしくは少なくとも約85%、少なくとも90%もしくは少なくとも約90%、または少なくとも95%もしくは少なくとも約95%の配列同一性を有する配列を含む、態様59のバイシストロン性発現カセット。
61. 成長因子をコードするポリヌクレオチドが、SEQ ID NO:4に示される配列を含む、態様59または態様60のバイシストロン性発現カセット。
62. コードされるVEGFが、SEQ ID NO:7に示される配列と少なくとも85%もしくは少なくとも約85%、少なくとも90%もしくは少なくとも約90%、または少なくとも95%もしくは少なくとも約95%の配列同一性を有する配列、またはシグナルペプチドを欠如するその配列を含む、態様59~61のいずれかのバイシストロン性発現カセット。
63. コードされるVEGFが、SEQ ID NO:7に示される配列またはシグナルペプチドを欠如するその配列を含む、態様59~62のいずれかのバイシストロン性発現カセット。
64. コードされるVEGFが、SEQ ID NO:44に示される配列と少なくとも85%もしくは少なくとも約85%、少なくとも90%もしくは少なくとも約90%、または少なくとも95%もしくは少なくとも約95%の配列同一性を有する配列を含む、態様59~63のいずれかのバイシストロン性発現カセット。
65. コードされるVEGFが、SEQ ID NO:44に示される配列を含む、態様59~64のいずれかのバイシストロン性発現カセット。
66. 組換え成長因子をコードするポリヌクレオチドおよび組換えインスリンをコードするポリヌクレオチドが、バイシストロン性エレメントによって分離されている、態様45~65のいずれかのバイシストロン性発現カセット。
67. バイシストロン性エレメントがIRESである、態様66のバイシストロン性発現カセット。
68. 組換え成長因子をコードするポリヌクレオチドおよび組換えインスリンをコードするポリヌクレオチドが、プロモーターと機能的に連結されている、態様45~67のいずれかのバイシストロン性発現カセット。
69. 前記プロモーターが同じである、態様68のバイシストロン性発現カセット。
70. プロモーターが、構成的プロモーターまたは誘導性プロモーターである、態様68または態様69のバイシストロン性発現カセット。
71. プロモーターがCAGプロモーターである、態様68~70のいずれかのバイシストロン性発現カセット。
72. 組換え成長因子をコードするポリヌクレオチドが、バイシストロン性発現カセットにおいて組換えインスリンをコードするポリヌクレオチドの上流にある、態様68~71のいずれかのバイシストロン性発現カセット。
73. 態様45~72のいずれかのバイシストロン性発現カセットを含む、ベクター。
74. ウイルスベクターである、態様73のベクター。
75. ウイルスベクターがアデノウイルスベクターである、態様74のベクター。
76. 非複製的5型アデノウイルスである、態様73~75のいずれかのベクター。
77. 前記非複製的アデノウイルスが、E1およびE3領域を欠如または欠失している、態様73~76のいずれかのベクター。
78. バイシストロン性発現カセットが、前記E1領域に挿入されている、態様73~77のいずれかのベクター。
79. (1)ケラチノサイトを重層表皮に分化させる段階であって、該重層表皮が基底層、有棘層、顆粒層、および角質層を含む、段階;ならびに
(2)代用皮膚を産生させるために態様45~72のいずれかのバイシストロン性発現カセットまたは態様73~78のいずれかのベクターを該重層表皮の細胞に導入する段階であって、該代用皮膚が、組換え成長因子および組換えインスリンを含む、段階
を含む、代用皮膚を製造する方法。
80. 導入する段階が、態様73~78のいずれかのウイルスベクターの形質導入による、態様79の方法。
81. (1)ケラチノサイトを重層表皮に分化させる段階であって、該重層表皮が基底層、有棘層、顆粒層、および角質層を含む、段階;ならびに
(2)代用皮膚を産生させるために態様73~78のいずれかのウイルスベクターを該重層表皮の細胞に形質導入する段階であって、該代用皮膚が、成長因子およびインスリンを含む、段階
を含む、代用皮膚を製造する方法。
82. (1)ケラチノサイトを重層表皮に分化させる段階であって、該重層表皮が基底層、有棘層、顆粒層、および角質層を含む、段階;ならびに
(2)代用皮膚を産生させるために改変プロインスリンおよび成長因子をコードするアデノウイルスベクターを該重層表皮の細胞に形質導入する段階であって、該代用皮膚が、成長因子およびインスリンを含む、段階
を含む、代用皮膚を製造する方法。
83. 導入または形質導入する時点で、重層表皮の細胞がオクルディンおよびクローディンを発現する、態様79~81のいずれかの方法。
84. 前記基底層の細胞が導入または形質導入される、態様79~83のいずれかの方法。
85. 段階(1)における分化の前に、ケラチノサイトを低カルシウム培地中で2週間、3週間、4週間、5週間、または6週間、任意で4週間または約4週間にわたって培養する段階を含む、態様79~84のいずれかの方法。
86. 低カルシウム培地が、前記細胞を播種する時点でまたは前記培養する段階の際に0.01~0.1mMのカルシウム濃度を含む、態様85の方法。
87. 低カルシウム培地が、前記細胞を播種する時点でまたは前記培養する段階の際に最大0.05mMまたは約0.05mMのカルシウム濃度を含む、態様85または態様86のいずれかの方法。
88. 低カルシウム培地が、前記細胞を播種する時点でまたは前記培養する段階の際に約0.03mMであるカルシウム濃度を含む、態様85~87のいずれかの方法。
89. 低カルシウム培地が、上皮細胞成長因子(EGF)およびウシ下垂体抽出物(BPE)をさらに含む、態様85~88のいずれかの方法。
90. 低カルシウム培地が、前記細胞を播種する時点でまたは前記培養する段階の際に0.05ng/mL~1ng/mlのEGFおよび1μg/ml~100μg/mlのBPEを含む、態様89の方法。
91. 低カルシウム培地が、前記細胞を播種する時点でまたは前記培養する段階の際に0.2ng/mlまたは約0.2ng/mlのEGFおよび30μg/mlまたは約30μg/mlのBPEを含む、態様89または態様90の方法。
92. ケラチノサイトがヒトケラチノサイトである、態様79~91のいずれかの方法。
93. ケラチノサイトがHaCaTケラチノサイト細胞である、態様79~92のいずれかの方法。
94. 段階(1)が、細胞外マトリックス基質上でケラチノサイトを培養することを含む、態様79~93のいずれかの方法。
95. 細胞外マトリックス基質がコラーゲンである、態様94の方法。
96. 細胞外マトリックス基質がヒトへの使用の認定を受けている、態様94または態様95の方法。
97. ケラチノサイトが、細胞外マトリックス基質上に5×106個/mlから50×106個/mlの間の細胞密度で播種される、態様94~96のいずれかの方法。
98. 細胞密度が、10×106個/ml、20×106個/ml、30×106個/mlもしくは40×106個/ml、または約10×106個/ml、20×106個/ml、30×106個/mlもしくは40×106個/ml、または前記のいずれかの間の任意の値である、態様97の方法。
99. 細胞密度が、20×106個/mlまたは約20×106個/mlである、態様97または態様98の方法。
100. 細胞外マトリックス基質が、トランズウェルインサート上にコーティングされている、態様94~99のいずれかの方法。
101. 段階(1)における培養が約23~28日間である、態様94~99のいずれかの方法。
102. 段階(1)における培養が、低カルシウム培地中での第1のインキュベーションおよび高カルシウム培地中での第2のインキュベーションを含む、態様94~100のいずれかの方法。
103. 低カルシウム培地中での第1のインキュベーションが約3~5日間であり、高カルシウム培地中での第2のインキュベーションが約20~23日間である、態様101の方法。
104. 低カルシウム培地が、0.01~0.1mMのカルシウムを含む、態様102または態様103の方法。
105. 高カルシウム培地が、1.0~3.0mMを含む、態様102~104のいずれかの方法。
106. 低カルシウム培地が、0.03mMのカルシウムを含み、高カルシウム培地が、2.4mMのカルシウムを含む、態様102~105のいずれかの方法。
107. 低カルシウム培地および高カルシウム培地が、EGFおよびBPEをさらに含む、態様101~106のいずれかの方法。
108. 低カルシウム培地および高カルシウム培地が、0.05ng/mL~1ng/mlのEGFおよび1μg/ml~100μg/mlのBPEを含む、態様107の方法。
109. 低カルシウム培地および高カルシウム培地が、0.2ng/mlまたは約0.2ng/mlのEGFおよび30μg/mlまたは約30μg/mlのBPEを含む、態様107または態様108のいずれかの方法。
110. 高カルシウム培地が、ヒドロコルチゾンをさらに含む、態様102~109のいずれかの方法。
111. 高カルシウム培地が、0.1~1.0μg/mlのヒドロコルチゾンを含む、態様110の方法。
112. 高カルシウム培地が、0.4μg/mlまたは約0.4μg/mlのヒドロコルチゾンを含む、態様110または態様111の方法。
113. 低カルシウム培地が無血清培地である、態様85~112のいずれかの方法。
114. 高カルシウム培地が無血清培地である、態様102~113のいずれかの方法。
115. 第2のインキュベーションの間に高カルシウム培地中でケラチノサイトを培養する際に気液界面が導入され、基底層の細胞が、高培養培地に曝露されるが気体環境には曝露されない、態様102~114のいずれかの方法。
116. 第1のインキュベーションの間に低カルシウム培地が毎日交換される、態様102~114のいずれかの方法。
117. 第2のインキュベーションの間に高カルシウム培地が毎日交換される、態様102~116のいずれかの方法。
118. 段階(2)の後で、凍結保護物質を用いて代用皮膚を製剤化する段階をさらに含む、態様79~117のいずれかの方法。
119. 凍結保護物質が、ヒトアルブミンおよびグルコースを含む、態様118の方法。
120. 段階(2)の後に代用皮膚を凍結させる段階をさらに含む、態様79~119のいずれかの方法。
121. 代用皮膚に品質管理評価を行う段階をさらに含み、任意で、該品質管理評価が、凍結保護物質を用いて代用皮膚を製剤化する前に行われる、態様79~120のいずれかの方法。
122. 段階(2)の完了から品質管理段階の間に最大24時間または約24時間が経過する、態様121の方法。
123. 品質管理段階が、プロインスリン、改変プロインスリン、インスリン、インスリンバリアント、成長因子、およびそれらのバリアントからなる群より選択される1つまたは複数のポリペプチドを検出することを含む、態様121または態様122の方法。
124. 吸収ガーゼ上に代用皮膚を配置する段階をさらに含む、態様79~123のいずれかの方法。
125. ケラチノサイトが不死化ケラチノサイトを含む、態様79~124のいずれかの方法。
126. ケラチノサイトが、HaCaT細胞株、NM1細胞株、もしくはNIKS細胞株からの細胞、および/またはHaCaT細胞株、NM1細胞株、もしくはNIKS細胞株に由来する細胞を含む、態様79~125のいずれかの方法。
127. 態様79~126のいずれかの方法のいずれかによって産生された、代用皮膚。
128. 態様1~44または態様127のいずれかの代用皮膚および凍結保護物質を含む、凍結保存された代用皮膚。
129. 凍結保護物質が、ヒトアルブミン(0.02g/mL)およびD-グルコース(0.09g/mL)を含む、態様128の凍結保存された代用皮膚。
130. 態様1~44もしくは態様127のいずれかの代用皮膚または態様128もしくは態様129の凍結保存された代用皮膚と、吸収ガーゼとを含む代用皮膚ドレッシングであって、該凍結保存された代用皮膚が該吸収ガーゼ上に載置されている、前記代用皮膚ドレッシング。
131. 吸収ガーゼがワセリンペトロラタム(Vaseline Petrolatum)ガーゼである、態様130の代用皮膚ドレッシング。
132. 凍結保存された代用皮膚のサイズが、約40~50cm2、約40~45cm2、または約45~50cm2であり、吸収ガーゼのサイズが、約40~60cm2、約45~60cm2、約45~55cm2である、態様130または態様131の代用皮膚ドレッシング。
133. 凍結保存された代用皮膚のサイズが、41cm2または約41cm2、42cm2または約42cm2、43cm2または約43cm2、44cm2または約44cm2、45cm2または約45cm2、46cm2または約46cm2、47cm2または約47cm2であり、吸収ガーゼのサイズが、約47cm2または約47cm2、48cm2または約48cm2、49cm2または約49cm2、50cm2または約50cm2、51cm2または約51cm2、52cm2または約52cm2、53cm2または約53cm2である、態様130または態様131の代用皮膚ドレッシング。
134. 無菌である、態様1~44もしくは127のいずれかの代用皮膚、態様128もしくは態様129の凍結保存された代用皮膚、または態様130~133のいずれかの代用皮膚ドレッシング。
135. 態様1~44もしくは127のいずれかの代用皮膚、態様127もしくは態様128の凍結保存された代用皮膚、または態様130~134のいずれかの代用皮膚ドレッシングを含む、容器。
136. バッグである、態様135の容器。
137. 無菌であり、かつ/または熱密封されている、態様135または136の容器。
138. バッグである、態様135~137のいずれかの容器を含むパッケージ。
139. 無菌であり、かつ/または熱密封されている、態様138のパッケージ。
140. 態様1~44もしくは127のいずれかの代用皮膚または態様128もしくは129の凍結保存された代用皮膚を吸収ガーゼ上に配置する段階を含む、代用皮膚ドレッシングを調製するための方法。
141. 吸収ガーゼがワセリンペトロラタムガーゼである、態様140の方法。
142. 凍結保存された代用皮膚のサイズが、約40~50cm2、約40~45cm2、または約45~50cm2であり、吸収ガーゼのサイズが、約40~60cm2、約45~60cm2、約45~55cm2である、態様140または態様141の方法。
143. 凍結保存された代用皮膚のサイズが、41cm2または約41cm2、42cm2または約42cm2、43cm2または約43cm2、44cm2または約44cm2、45cm2または約45cm2、46cm2または約46cm2、47cm2または約47cm2であり、吸収ガーゼのサイズが、約47cm2または約47cm2、48cm2または約48cm2、49cm2または約49cm2、50cm2または約50cm2、51cm2または約51cm2、52cm2または約52cm2、53cm2または約53cm2である、態様140または態様141の方法。
144. 態様1~44もしくは態様127のいずれかの代用皮膚、態様128もしくは態様129の凍結保存された代用皮膚、または態様130~133のいずれかの代用皮膚ドレッシングを創傷に適用する段階を含む、創傷治癒を促進する方法。
145. 代用皮膚が微生物感染を予防する、態様144の方法。
146. 代用皮膚が、急性創傷および/または慢性創傷に適用される、態様144または態様145の方法。
147. 創傷が、びらん、開放創、潰瘍、および膿瘍からなる群より選択される、態様144~146のいずれかの方法。
148. 代用皮膚が、糖尿病患者の創傷に適用される、態様144~147のいずれかの方法。
149. 創傷が糖尿病性潰瘍である、態様144~148のいずれかの方法。
150. 創傷が糖尿病性足潰瘍である、態様144~149のいずれかの方法。
151. 創傷が静脈性下肢潰瘍である、態様144~150のいずれかの方法。
【実施例】
【0252】
VI. 実施例
以下の実施例は、例証を目的としてのみ含まれるものであり、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0253】
実施例1:ケラチノサイトから表皮への分化およびアデノウイルス形質導入のための方法
この実施例は、細胞HaCaT株(自然突然変異により不死化したヒトケラチノサイト)からのヒトケラチノサイトの培養と、上皮層のすべて(基底層、有棘層、顆粒層および角層)が得られるまでのそれらの分化と、それに続く、分化した上皮層からの導入遺伝子発現のためのアデノウイルスベクターを用いた形質導入による、代用皮膚の作製を説明する。
【0254】
分化前に、HaCaT細胞を、5型アデノウイルスの形質導入に適した基底層が得られるように細胞特性を変化させるため、低カルシウム(0.03mM)培地中で4週間維持した。分化のために、HaCaT細胞を、75mm2培養瓶中に播種し、次いで、集密度が大体80%に達したら1:4の比率で継代培養した。細胞は、カルシウムを終濃度0.03mMまで添加することにより改質し、0.2ng/mL内皮成長因子(EGF)および30μg/mLウシ脳下垂体抽出物(BPE)を補充した、無血清かつカルシウム不含ケラチノサイト培地(ThermoFisher, Cat. No. 37010022)中で培養した。
【0255】
トランズウェル(登録商標)ポリエステルインサート(孔径3μMおよび直径75mm)を、pH 7.4に達するように1M NaOHで中和させたヒトでの使用が認定されたウシコラーゲン(2.5mg/mL)を含有する中和ウシコラーゲン溶液23.5mLで覆った。中和ウシコラーゲン溶液で覆ったインサートを、37℃で45分間インキュベートした。コラーゲンがゼリー状になったら、1×PBSで2回の洗浄を行った。0.03mMカルシウム、0.2ng/mL EGFおよび30μg/ml BPEを補充した無血清かつカルシウム不含ケラチノサイト培地を、細胞播種のためにトランズウェルインサートの上下に加えた。次いで、培養したHaCaT細胞(20×106個)を低カルシウム培地中に播種し、培地は4日間毎日取り換えた。
【0256】
5日目に、インサート上の培地を廃棄し、低カルシウム培地を、0.2ng/mL EGF、30μg/mLウシ脳下垂体抽出物、0.4μg/mLヒドロコルチゾンおよび2.4mMカルシウムを有する補充無血清ケラチノサイト培地と交換した。細胞の基底域だけが培地と接触し、細胞表面の上部が大気に曝露されるように、気液界面を導入した。細胞を37℃かつ5% CO
2でインキュベートし、培地を21日間毎日取り換えた。この期間の後、
図1Bの25日目のエオジン・ヘマトキシリン染色が示しているように、厚さ150μMの完全に重層された表皮が生成した。
【0257】
培地中のカルシウム濃度の増大(0.01~0.1mMから2.4mMに)は、オクルディンおよびクローディンタンパク質の存在を増大させる。上皮を通過する拡散に影響するタイトジャンクションの主要な膜貫通タンパク質であるオクルディンおよびクローディンの発現は、適正な基底側方(basal-lateral)伝達に必要である。5日目から21日目まで、代用皮膚を高カルシウム濃度で維持した。
【0258】
26日目に、基底層を非複製5型アデノウイルスに曝露させる前に、ピンセットでインサートから皮膚を剥がし、インサートから取り出して代用皮膚を得た。導入遺伝子発現のモデルとして、代用皮膚に、GFPを発現する非複製5型アデノウイルス(Ad-CMV-GFP)を形質導入した。代用皮膚の形質導入は、1×PBSで洗浄した後に無血清培地中で実施した。アデノウイルスは、代用皮膚と37℃かつ5% CO2でインキュベートする1時間前に、ケラチノサイト培地中で調製した。
【0259】
蛍光顕微鏡法による評価は、基底細胞がAd-CMV-GFP形質導入に対して透過性であったこと、そして、GFP発現が代用皮膚の基底細胞に共局在したことを示した(データ示さず)。これらの結果は、代用皮膚の基底細胞にアデノウイルスが形質導入されたこと、そして、形質導入されたアデノウイルスベクターによってコードされたタンパク質を代用皮膚表皮が産生可能であったことを示している。
【0260】
形質導入の24時間後、代用皮膚を包装するために、凍結保護媒体を加え、代用皮膚をワセリンガーゼ上に載せ、そのガーゼパックを容器に入れることによって製剤化した。凍結保護媒体は、無血清ケラチノサイト培地に加えられたヒトアルブミン(0.02g/mL)およびD-グルコース(0.09g/mL)から構成された。次いで、容器を-20℃で最大6ヶ月間保存することができる。代用皮膚を作製および形質導入するためのプロセスは、
図1Aに描写している。
【0261】
実施例2:インスリンおよびVEGFをコードするアデノウイルス発現ベクターの作製
この実施例は、操作された代用皮膚でのタンパク質発現を容易にするために使用したアデノウイルスベクターの構造を説明する。本明細書に記載される代用皮膚を、インスリンおよびVEGFを発現および放出するように形質導入した。
【0262】
Ad-CAG-VEGF-INSと命名された5型アデノウイルスは、ヒト改変プロインスリン(SEQ ID NO:2)およびヒトVEGF(SEQ ID NO:4)をコードするヌクレオチドを、CAGプロモーター(SEQ ID NO:1)の制御下での導入遺伝子のバイシストロン性発現のためにIRES(SEQ ID NO:3)によって分離して作製された。コードされたヒトVEGFは、アイソフォーム165(VEGF165;SEQ ID NO:7)に対応する。コードされたヒト改変プロインスリン配列(SEQ ID NO:6、シグナルペプチドなしの成熟配列)は、SEQ ID NO:5に示される野生型プロインスリンをコードする前駆体配列(野生型ヒトインスリンNP_000198.1のアミノ酸25~110、野生型ヒトインスリンNM_000207.3のヌクレオチド60~389によってコードされる)と比較して変異を含有する。該変異は、自然突然変異により不死化したヒトケラチノサイト(HaCaT細胞)から構成される本明細書に記載される代用皮膚から、ヒトインスリンが適切に分泌され、放出後も機能的であることができるように組み入れられた。成熟インスリンは、膵臓のβ細胞による、C鎖とB鎖(Arg-Arg二塩基部位)間での切断およびC-A鎖(Lys-Arg二塩基部位)間での切断によってプロセシングされる。これらの酵素的切断は、それぞれ、代用皮膚を形成するHaCaT細胞中に存在しないエンドペプチダーゼPC3およびPC2によって行われる。したがって、これらの改変は、HaCaT内在酵素によるプロセシングのために所望の位置にフューリン切断部位を作製することによって達成された。具体的には、フューリンコンセンサス配列(例えば、R-X-[R/K]-R)(SEQ ID NO:8またはSEQ ID NO:9、例えば、SEQ ID NO:10)をA-CおよびB-Cジャンクションに導入し、B鎖の10位をヒスチジン(H)残基からアスパラギン酸(D)に改変した。
【0263】
E1およびE3領域を欠失させることによってアデノウイルスを複製欠損にし、CAG-VEGF-INS配列を含有する発現カセットをE1領域中に置換した。具体的には、発現カセットをDual-Basicアデノウイルスシャトルベクター中にサブクローニングし、Ad5(DE1/DE3)ベクター(Vector Biolabs, Philadelphia, Pa.)により組換えを行った。アデノウイルスをHEK293細胞中にパッケージングし、塩化セシウム超遠心分離法で精製し、従来のHEK293プラークアッセイを使用して力価測定した。
図2は、アデノウイルスベクターおよび発現カセットの構造を示している。
【0264】
実施例3:形質導入表皮細胞のインビトロ評価は、インスリンおよびVEGFの継続的な発現および放出を明らかにする
この実施例は、VEGF-Aおよびインスリンを継続的に放出する遺伝子改変された基底ケラチノサイトから構成される代用皮膚の作製を説明する。代用皮膚は、実施例1に記載の通り、完全に重層された表皮が形成されるまで培養培地中のカルシウムレベルを増大させることにより細胞HaCaT株のヒトケラチノサイトを分化させ、続いて、重層表皮の細胞に実施例2に記載のAd-CAG-VEGF-INS発現構築物を形質導入することによって作製された。
【0265】
代用皮膚からのインスリンおよびVEGFの放出を、1週間にわたってインビトロで評価し、形質導入表皮細胞のタンパク質発現および放出プロファイルを判定した。タンパク質発現のレベルおよび持続時間は、とりわけ適用頻度を決める際に、重要な因子である。
【0266】
実施例2に記載のアデノウイルスベクターを使用して、代用皮膚の基底細胞(n=3)に感染多重度(MOI)12で実施例1に記載の方法を使用して形質導入した。次いで、形質導入した代用皮膚を凍結保存し、-20℃の冷凍庫で貯蔵した。形質導入した代用皮膚は、この実験を行う前に融解させた。タイムコース実験を、7日間にわたり24時間毎に培養培地100μLを回収することによって実施した。ヒトインスリンおよびVEGFの発現を、製造業者(それぞれ、InvitrogenおよびCloud-Clone)の説明書に従ってELISAによって判定した。実験は3連で実施した。具体的には、インスリンは、プロインスリン(SEQ ID NO:5および6の残基33~63に対応する)からインスリンの切断過程で放出される31アミノ酸から構成されるペプチドである、Cペプチドを検出することによって測定した。
【0267】
図3Aおよび
図3Bは、それぞれ、7日間にわたるCペプチドおよびVEGFの平均検出レベルを示している。両タンパク質とも、実験を通して検出可能であり続け、4.9ng/mL未満のVEGFレベルおよび0.49 IU未満のインスリンレベル(約0.0011pmol/L、IU=約2.247ng/mLインスリンを基準)が観測された。これらの結果は、インスリンおよびVEGFが基底細胞から放出されること、そして、タンパク質の発現が少なくとも1週間持続することを示している。さらに、検出されたレベルは、全身性の副次効果または副作用を誘発するレベルを下回り、これらはさらに、個々に治療量以下と見なすこともできる。
【0268】
実施例4:VEGFとインスリンとの間の相乗効果のインビトロ評価
VEGFとインスリンとの間の相乗効果を、タンパク質レベルで、実施例3で測定された範囲内で評価した。本研究は、インスリンとVEGFの組み合わせが、いずれかのタンパク質単独よりも大きな治療有益性を生み出すかどうかを判定するために実行した。
【0269】
VEGFおよび/またはインスリンの血管新生への影響を評価するために、内皮細胞管腔形成アッセイを実施した。このアッセイにおいて、基底膜マトリックス(Matrigel)上での内皮細胞の培養は、血管新生表現型に特徴的な毛細血管に似た管状構造の形成をもたらす。実施例3で検出されたタンパク質の範囲に従って、0.1UIのインスリンと組み合わせた2ng/mL VEGFの活性を評価した。実験の準備のために、1:1の比率で希釈したmatrigel(Corning Cat.)30μLで96ウェルプレートを覆った。プレートを37℃で20分間インキュベートし、ゼリー状になったら、血清不含のDMEM-F12で洗浄した。約42,000個のマウス血管内皮腫内皮細胞(EOMA細胞)を、0.5%の疑似体液(SBF)を含有するDMEM-F12 60μLに播種した。EOMA細胞を、37℃、5% CO2で20分間インキュベートし、その後、接着細胞をかき乱さずに培地40μLを廃棄した。
【0270】
次いで、刺激溶液または対照溶液(60μL)を細胞に加えた。刺激には、ヒトVEGF 165(SEQ ID NO:7)をコードするアデノウイルスをMOI=12でトランスフェクトしたNIH3T3細胞、実施例2に記載の通り改変されたプロインスリン(SEQ ID NO:6)をコードするアデノウイルスをMOI=24でトランスフェクトしたNIH3T3細胞、およびプロインスリンとVEGF(それぞれ、24 MOIおよび12 MOI)の組み合わせをトランスフェクトしたNIH3T3細胞からの上清を含めた。陰性対照は、非トランスフェクトNIH3T3細胞の上清であり、陽性対照は、5% SBFを含むDMEM-F12であった。細胞を37℃かつ5% CO2で1.5時間インキュベートし、その時点で、各上清刺激を追加で60μL加えた。実験は3連で実施した。初期刺激曝露から合計3時間後、各群で試料毎に少なくとも4枚の写真を撮った。Image J用のAngiogenesis Analyzerを使用して、内皮管腔形成を定量した。
【0271】
図4A~4Cは、各実験群で観察された様々な創傷治癒特徴を示している。
図4Aは、2つ以上のノードに囲まれた閉回路として定義されるウェブの数を示している。
図4Bは、少なくとも3つのコードの結合部位として定義されるユニオンとも称されるノードの数を示している。
図4Cは、2つのノードを一緒につなぐコードである主要セグメントの数を示している。いずれの場合も、組み合わせ群で観察された創傷治癒特徴の数は、単剤処置群(VEGF単独またはインスリン単独)で観察された特徴を大きく上回った。結果は、濃度2ng/mLのVEGFまたは0.1UIのインスリンの個別発現が、創傷治癒のためのセグメント、ノードまたは血管新生網の形成を誘導しなかったことを示した。インスリン単独と比較して、VEGFと組み合わせたインスリンは、すべての評価(ウェブ、ノードおよび主要セグメント)で有意に大きい創傷治癒特徴を示した。VEGF単独と比較して、組み合わせは、すべての群を通して一貫してより多くの創傷治癒特徴をもたらし、主要セグメントの評価で有意性のレベルに達した。
【0272】
まとめると、これらの結果は、組み合わせて送達するとインスリンとVEGFの治療有益性が相乗的に増強され得ることを示している。この研究はさらに、治療効果が、各タンパク質が低レベルで、すなわち全身効果または毒性を誘発する可能性が低い量で最大化され得ることも裏付けている。
【0273】
実施例5:インスリンおよびVEGFを放出する代用皮膚は、糖尿病ラットおよび高血糖ブタにおいて創傷治癒を改善する
2つの動物モデル、糖尿病ラットおよび糖尿病ブタを使用して、VEGF/インスリン代用皮膚の創傷治癒への影響を評価した。
【0274】
A. ラット
重量200g~250gの30匹のウィスター系ラット(4週齢)を設定湿度53%の温度制御室(22℃)で飼育した。ラットを12時間明暗サイクルのマイクロインシュレーターに収容した。実験を開始する前に、ラットをこの環境に1週間順応させた。
【0275】
糖尿病を誘導するために、60mg/kgストレプトゾシン(ストレプトゾトシンとしても公知)(Sigma-Aldrich)を、腹腔内(I.P.)経路を介してラットに投与した。ストレプトゾシンは、I.P.注射の直前に0.01Mクエン酸ナトリウム緩衝液(pH 4.5)中に調製した。注射後72時間の時点で350mg/dl(15mM)以上のグルコース濃度を有するラットを糖尿病と診断した。血中グルコースレベルは、Accu-Chek(登録商標)Instant glucometer(Roche Corp)を使用し、反応性ストリップを用いて判定した。
【0276】
2ヶ月間にわたって高血糖状態を維持した糖尿病ラットを、2つの群:糖尿病対照群(代用皮膚なし)および糖尿病処置群(代用皮膚)に分けた。本研究において健常ラットを第3の群に含めた。各群のすべてのラットの背部に1cm2穴の傷を付け創傷を作った。対照糖尿病群および健常群の創傷に、ワセリンガーゼを貼付した。処置群の糖尿病ラットの創傷に、VEGF/インスリン代用皮膚を貼付した。本研究の継続期間全体にわたってガーゼドレッシングを3日毎に交換した。これに対して、代用皮膚は1回だけ適用した。創傷は、完全な創傷閉鎖が観察されるまで3日毎に測定した。
【0277】
図5Aは、3つの実験群間の21日間にわたる開放創傷域の割合を示している。創傷開始から完全な創傷閉鎖までの時間は、健常対照群と代用皮膚で処置した糖尿病群共に21日だった。比較して、ガーゼドレッシングで処置した糖尿病群では、治癒までの時間が1週間超伸びた(創傷閉鎖までの時間=30日)。1日目および21日目の創傷の代表画像を
図5Bに示している。
【0278】
創傷治癒活性のさらなる評価として、組織学的検査を実施して瘢痕形成に対する代用皮膚の効果を判定した。各実験群について、創傷開始後21日目に、瘢痕化域の横断面を組織病理学検査用に採取した。
図6に示しているように、真皮と表皮の両方の構造および再構築は、健常ラットと代用皮膚で処置した糖尿病ラットとの間で同等であった。これに対して、糖尿病試料の検査は、組織の炎症、細胞浸潤および肥厚化を明らかにした。まとめると、これらの結果は、代用皮膚のインビボでの創傷治癒活性の立証を提示しており、実施例3および4に記載される知見と整合する。
【0279】
B. ブタ
外科的アプローチを採用して、ブタにおいて高血糖を誘導させた。無菌技術を使用して、頸部の腹側筋膜上の左頸静脈を露出させ、次いで、18G×30mmのカテーテルを左頸静脈に挿入して、血液15mLを採取した。試料収集後、カテーテルを縫合により血管に固定し、血管アクセスを維持するために静脈灌流装置を接続した。ベースライン血糖測定値を得るために、各耳から1つの血液試料を取った。1つの単回用量の124mg/kgストレプトゾシンを、注入ポンプを使用し、血管アクセスを通じて15分間投与した。これに続いて、5%グルコース溶液(200mL)を30分間にわたって投与した。ストレプトゾシンおよびグルコースを投与したら、各耳から新たなグルコース測定値を取り、血中グルコースレベルの上昇を確認した。
【0280】
注入後最初の48時間の間に正常な挙動および180mg/dL未満の血糖レベルを示すブタを対照群に含めた。ブタの絶食状態時および朝食の1時間後にグルコース測定を実施した。350mg/dL超のグルコースレベルが測定されたら、約250mg/dLの高血糖レベルを維持するためにインスリンアスパルト(NovoMix(登録商標))、インスリンイソフェン(Aurax(登録商標))およびインスリングラルギン(Lantus(登録商標))を投与した。ブタを高血糖状態に2ヶ月間維持して、皮膚に糖化作用を誘導した。ブタは各群に合計3匹であった。
【0281】
2ヶ月間の後、麻酔をかけたブタの背部に、脊柱を基準として使用して4×3cmの創傷を3ヵ所付けた。創傷は、中心線から2cmの位置にあり、それらの間に5cmの間隔があった。創傷は、位置依存指定(location-based designations)を用いて特定し、すなわち、創傷#1は頭蓋骨の左側に位置し、創傷#2は尾部左側に位置し、創傷#3は中央右側に位置した。
【0282】
麻酔剤の効果が消えたら、痛みを緩和するために筋肉内注射を介して0.01~0.03mg/kgブプレノルフィン(Brospine(登録商標))を投与した。創傷開始後の最初の3日間(1~3日目)、8時間毎にブプレノルフィン1用量を投与した。3日目以降(4~6日目)、1時間当たり1用量を投与した。7~9日目は、24時間毎に1用量を与えた。処置を行う医師の裁量で、感染発生時に、3.0mg/kgエンロフロキサシン(24時間毎)または15mg/kg 3 Sulfas(登録商標)(スルファメサジン、スルファメラジンおよびスルファジアジン、等分で)(12時間毎)のいずれかを筋肉内(I.M.)経路を介して8日間投与する抗菌処置を施した。
【0283】
創傷開始後0、1、4、7、11、18、21、25および28日目に基準センチメートルスケールで創傷の写真を撮った。最初の7日間に創傷を食塩溶液で清浄し、新たな滅菌ガーゼおよびドレッシングが提供された。代用皮膚を貼付した創傷については、処置具の濡れまたはずれを避けるために創傷の周囲にだけ洗浄を行った。最初の7日間の後、写真を撮った日を含め1日おきにガーゼおよびドレッシングを交換した。比較として、VEGF/インスリン代用皮膚を1回だけ適用した。感染の兆候を示した創傷に対して鎮静下で外科的壊死組織切除を行った。ImageIソフトウェアを使用してその面積(cm2)を測定することにより創傷の閉鎖を評価した。
【0284】
図7Aは、健常ブタ、糖尿病ブタ(代用皮膚なし)およびVEGF/インスリン代用皮膚で処置した糖尿病ブタの間の創傷面積(cm
2)の比較を示している。ラット研究の結果と同じく、健常対照群とVEGF/インスリン代用皮膚で処置した群において同じ期間に完全な創傷閉鎖が観察された。健常対照および代用皮膚で処置したブタでは25日目に完全な創傷閉鎖が認められた一方、糖尿病ブタ(代用皮膚なし)では28日目まで観察可能な創傷域が持続した。糖尿病群について開放創傷が持続していたことを考慮して、完全な創傷閉鎖まで観察を延長した。
図7Bに示しているように、完全な創傷治癒は、糖尿病群では52日目まで達成されず、代用皮膚処置群ではほぼ4週間後に治癒が観察された。
図8は、3つのブタ群間の経時的な創傷治癒の代表画像を示している。代用皮膚群での写真の創傷は、14日目に閉鎖が始まり、本研究全体を通して感染の兆候は観察されなかった。上と下のパネルに示されるように、健常対照およびVEGF/インスリン代用皮膚で処置した糖尿病対象の創傷は、それぞれ、23日目に閉鎖した。この同じ日に、糖尿病ブタの創傷はまだ開放したままであり、感染の存在が認められた(中央のパネル)。
【0285】
図9は、創傷を付けた後1日目および7日目の、創傷清浄およびガーゼドレッシングで処置した糖尿病ブタとVEGF/インスリン代用皮膚で処置した糖尿病ブタの創傷を示している。糖尿病ブタ創傷(代用皮膚なし)では3日目から感染が認められた。比較として、VEGF/インスリンで処置した糖尿病ブタは、感染の兆候を示さず、それゆえ、抗生物質治療を必要としなかった。糖尿病ブタ(代用皮膚なし)での感染の処置は、45日間にわたる、経口の、例えば、3 Sulfas(登録商標)および局所抗生物質、例えば、局所スルファジアジン銀から構成された。
【0286】
グルコースレベルを創傷開始前の1週間(-7日目)から創傷後の11日目まで測定し、インスリンおよびVEGFを放出する表皮の全身効果を評価した。
図10は、すべての実験群間の検出血中グルコースレベル(mg/dL)を示している。レベルは、健常群では比較的低いレベル(約100mg/dL)で維持された。両糖尿病群について、本研究の過程全体を通して、血中グルコースに約100mg/dLもの大きな変動があった。糖尿病対照と比べて、VEGF/インスリン代用皮膚での処置は、血中グルコースレベルを劇的に変えることはなかった。これらの結果は、分子間の増強された相乗効果が、より速くかつ秩序だった治癒および瘢痕化を可能にするだけでなく、毒性の欠如および産物の安全性をも確保するという観察と一致する。
【0287】
まとめると、これらのインビボ研究は、糖尿病マウスの創傷処置に対するVEGF/インスリン代用皮膚の強力な創傷治癒活性および安全性を裏付けている。ラットとブタの両方で、VEGF/インスリン代用皮膚で処置した糖尿病皮膚は、健常皮膚のものと同等の時間軸で治癒した。さらに、VEGF/インスリン代用皮膚での処置は、微生物感染を伴うことなく、また全身血中グルコースレベルを劇的に変えることはなかったが、このことは、インスリンおよびVEGFが、血糖に大きく影響する量で存在しないことを示している。治療有益性に加えて、本研究は、代用皮膚の繰り返しの取り換えが不必要であることを実証しており、このことは、患者コンプライアンスに肯定的な意義を与える利点である。
【0288】
実施例6:VEGF/インスリン代用皮膚からのインスリンおよびVEGFの持続放出は、ブタ皮膚中の終末糖化産物(AGE)の存在を減少させる
高血糖は、タンパク質または脂質に糖分子(グルコースまたはフルクトース)が共有結合した結果として起こる糖化などにより、細胞および組織のタンパク質および脂質に構造変化を引き起こす。糖化したタンパク質または脂質は、AGEと称される。高いAGE濃度は、糖尿病患者の皮膚に見いだされ、治癒過程を阻害するように働く。終末糖化産物(AGE)濃度に対する代用皮膚の効果を判定するために、実施例5のブタの皮膚を調べた。
【0289】
実施例5のブタ研究に記載の実験群:健常ブタ、糖尿病ブタ(代用皮膚なし)およびVEGF/インスリン代用皮膚で処置した糖尿病ブタに対して皮膚生検を実施した。実施例5に記載の通り、各糖尿病群のブタは、血糖レベル>350mg/dLを2ヶ月間維持した。VEGF/インスリン代用皮膚で処置したブタについて、創傷開始時と創傷治癒が明らかとなった2日後(25日目または約25日目)に、真皮および表皮の試料を採取した。健常および糖尿病対照について、創傷を付けた瞬間と創傷が21日後(健常ブタ)または60日後(糖尿病ブタ)に治癒したときに、皮膚試料生検を取った。
【0290】
各生検について、採取した試料の一部を分割し、分析天秤を用いて重さを量った。約20mgの組織を、TissueRuptorを用いて、プロテアーゼ阻害剤Complete(Sigma)を含む500μLの1×PBS中で破砕した。次いで、試料を4,000rpmで5分間遠心分離し、破砕した組織を沈殿させ、上清を除去した。タンパク質推定のBradford法(Sigma)を使用して、タンパク質濃度を50μg/mLに調整した。ELISAキットを使用し、試料の1:10希釈物を用いてAGEを定量した。ELISAを製造業者の説明書に従って実施した。簡潔に述べると、希釈試料50μLと希釈ビオチン化抗体(1:100)50μLを45分間インキュベートした。この初期インキュベーションの後、約359μLの1×洗浄液で3回の洗浄を完了した。次いで、HRPを有する二次抗体(1:100)100μLを加え、37℃で30分間インキュベートした。このインキュベーションの終わりに、350μLの1×洗浄液で5回の洗浄を実施した。洗浄液の除去後、90μLの3,3',5,5'-テトラメチルベンジジン(TMB)を加え、37℃で15分間インキュベートした。停止溶液50μLを加えることによって反応を停止した。吸光度を450nmで読み取り、標準曲線のデータから得られた二次多項式回帰方程式(R2=0.99)を使用して計算を行って、AGE濃度を得た。
【0291】
AGE ELISAキット(データはng/mL単位)で得られた濃度からタンパク質1mg当たりの濃度をng単位で算出した。
図11は、ELISAから算出した場合の、創傷治癒の前後の、実験群毎のAGEの量(タンパク質1mg当たりのng単位)を示している。結果は、健常群ではAGEのレベルが創傷開始から治癒へ増加し、糖尿病(代用皮膚なし)群ではAGEは比較的高いレベルで維持されたことを示した。VEGF/インスリン代用皮膚での処置は、創傷開始から治癒へAGEの数を減少させた。注目すべきことに、創傷開始の時点で、VEGF/インスリン代用皮膚処置群中のAGEは、糖尿病群のものと類似していたが、VEGF/インスリン代用皮膚での処置は、AGEを健常皮膚で観察されたレベルまで減少させた。
【0292】
AGEの低減は、改善された血管新生ならびに感染および炎症の制御に関連する。この研究は、VEGF/インスリン代用皮膚での処置が、たとえ糖化が進行した皮膚(AGEのレベルは、健常皮膚中に存在する量の大体2倍であった)であっても、AGEを減少させることが可能であることを裏付けている。これらの結果は、VEGF/インスリン代用皮膚の創傷治癒効果が、AGE低減によって媒介され得ることを示している。
【0293】
実施例7:VEGF/インスリン代用皮膚は、非腫瘍原性である
20mm2の非形質導入代用皮膚(対照)またはAd-CAG-VEFG-INSアデノウイルスを形質導入した20mm2の代用皮膚を6週齢のヌードマウス(BALB/c nu/nu)の肩甲骨間領域に皮下移植した後、腫瘍形成を評価した。腫瘍成長を1週間間隔で測定した。Ad-CAG-VEFG-INSアデノウイルスを形質導入した代用皮膚は、ヌードマウスに移植した4ヶ月後、腫瘍形成を示さなかった(データ示さず)。MCF-7ヒト乳がん細胞を注射した陽性対照ヌードマウスは、皮下注射の1ヶ月後に腫瘍成長を示した(データ示さず)。
【0294】
実施例8:代用皮膚を生産するためのヒトケラチノサイト株の細胞遺伝学的性質の評価
上の実施例に記載の通り、代用皮膚の生産は、最初に細胞HaCaT株のヒトケラチノサイトを低カルシウム培地中で培養して形質導入に適した基底層を生成させ、続いて、それらを分化させることを伴う。HaCaT細胞は、その成長および分化能の面で正常ヒトケラチノサイトに酷似している;しかしながら、これらは、いくつかの染色体異常を有する不死化した細胞株である。HaCaT細胞は、安定した染色体含有量を保持し、依然として非腫瘍原性であるが、基底層を培養するための低カルシウムかつ無血清培地中での培養後の細胞の細胞遺伝学的特徴を特徴付けるために実験を行った。
【0295】
HaCat株を、ウシ胎児血清不含の低カルシウム(0.03mM)培地中、基底層を培養する条件下で4週間成長させ、これをHaLow細胞(血清不含、低カルシウムのHaCat)と名付けた。細胞が合計3ヶ月間培養下にあった継代2から始めて、増殖期間中、HaLow細胞の染色体構成を追跡した。半集密の細胞培養物を、0.08μg/ml KaryoMAX(商標)Colcemid(商標)(ThermoFisher 15212012)により37℃で2時間処理した。細胞を、Recombinant Trypsin EDTA Solution(Sartorius 03-079-1A 10分)による後続処理により剥離させ、遠心分離し、細胞ペレットを75mM KC1の低張溶液に再懸濁した。室温で15分間インキュベーションした後、細胞をメタノール/酢酸(3:1)の3回の交換により固定し、スライドガラス上に広げ、16時間後にGバンディングを行った。通常、15の分裂中期を顕微鏡によって分析し、少なくとも5つのカリオグラムを作成した。
【0296】
図12に示しているように、継代7での細胞の細胞遺伝学的分析は、以下のカリオグラムを示した:65、XXX、+1、-2、add(3)(p25)、-3、add(4)(p15)、-4、-4、-5、6、-7、+8、i(9)(q10)、-9、-10、+der(11)del11(q23)、+11、+12、+13、-14、15、+16、+17、+18、+19、+20、+21、+22、+6mar、+min。ほとんどの細胞が、マーカー染色体の形成に関与する染色体の完全または部分的一染色体性から生じた平均65個の染色体を有する低三倍体(hypotriploid)であった。すべての分裂中期が、XO性染色体構成(Y染色体を欠く)を有していた。この細胞遺伝学的プロファイルは、改変培養条件下での成長への細胞の適応を示しているが、カリオグラムは、HaCaT細胞を起源とする細胞と一致する。実施例7における結果と併せて、この結果は、低カルシウムかつ血清不含中でのインキュベーション後に、細胞株HaLowが、ある特定の細胞遺伝学的特性を有し、代用皮膚で使用された際に非腫瘍原性であることを示している。
【0297】
実施例9:代用皮膚からの上皮成長因子の発現および放出
上皮成長因子(EGF)は、糖尿病性足潰瘍(DFU)における創傷修復および再生の重要なプロモーターである。DFUでは、創傷治癒過程は、糖尿病患者の高い血中グルコースレベルが原因の終末糖化産物(AGE)の蓄積によって妨害される。AGEは、EGF受容体に競合的に結合し、したがって、EGFの結合を抑制し、血管内皮細胞および線維芽細胞への初期損傷を永続させる。EGFを含む成長因子を創傷環境に送達するための現行技術は、細胞外マトリックスに直接投与した際のEGFの非常に短いインビボ半減期が主に原因で効果的でない。
【0298】
EGFの発現および培地中への放出を、ヒトEGFを発現するアデノウイルス(Ad-CMV-hEGF)を形質導入した代用皮膚の培養物において、ヒトEGFを発現するアデノウイルスを代用皮膚に形質導入した以外は上の実施例に実質的に記載される方法を使用して評価した。代用皮膚に、ヒト上皮成長因子を発現する5×106のIFU(感染単位)のアデノウイルス(Ad-CMV-hEGF、GenBank:BC113461)を形質導入した。インキュベーションの72時間後に、形質導入および非形質導入代用皮膚の培養物から培養培地を収集し、代用皮膚から培養培地に分泌されたhEGFタンパク質を市販の酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)キット(R&D Systems)で定量した。
【0299】
図13に示しているように、ヒト上皮成長因子(hEGF)の濃度は、非形質導入実験対照の培養培地中の濃度より、hEGFを発現するアデノウイルス(Ad-CMV-hEGF)を形質導入した代用皮膚の培養培地において有意に高かった。
【0300】
これらの結果は、hEGFをコードするポリヌクレオチドを担持するアデノウイルスを形質導入したときに、本明細書に提供される代用皮膚が、hEGFを効果的に発現し、培養培地中に放出することができることを示している。
【0301】
これらの結果は、成長因子を発現および放出するアデノウイルスで代用皮膚由来の細胞を遺伝子改変することにより、EGFなどの他の組換え成長因子を使用して、創傷治癒中に成長因子を放出する代用皮膚を生産できることを裏付けている。理論に束縛されるものではないが、この結果は、代用皮膚において他の組換え成長因子をインスリンと組み合わせて使用することもでき、それにより、代用皮膚から創傷へのインスリン放出がAGEの存在を阻害し、EGF受容体の活性化を可能にすることを裏付けている。
【0302】
本発明は、特定の開示された態様に範囲が限定されることを意図しておらず、これらの態様は、例えば、本発明の様々な局面を例証するために提供される。記載される組成物および方法に対する様々な改変が、本明細書における説明および教示から明らかになろう。そのような変形は、本開示の範囲および精神から逸脱することなしに実践することができ、本開示の範囲内に入ることが意図される。
【0303】
【配列表】
【国際調査報告】