IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヴィンチ ファーマシューティカルズ インコーポレイテッドの特許一覧

<>
  • 特表-眼科用デバイスおよび方法 図1
  • 特表-眼科用デバイスおよび方法 図2
  • 特表-眼科用デバイスおよび方法 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】眼科用デバイスおよび方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 9/007 20060101AFI20240822BHJP
   A61M 37/00 20060101ALI20240822BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240822BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20240822BHJP
   A61K 9/00 20060101ALI20240822BHJP
   A61K 31/196 20060101ALI20240822BHJP
   A61K 31/405 20060101ALI20240822BHJP
   A61K 31/155 20060101ALI20240822BHJP
   A61K 31/16 20060101ALI20240822BHJP
   A61K 31/192 20060101ALI20240822BHJP
   A61K 31/381 20060101ALI20240822BHJP
   A61K 31/407 20060101ALI20240822BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20240822BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20240822BHJP
   A61L 27/18 20060101ALI20240822BHJP
   A61L 27/44 20060101ALI20240822BHJP
   A61L 27/54 20060101ALI20240822BHJP
   A61L 27/38 20060101ALI20240822BHJP
   A61L 27/16 20060101ALI20240822BHJP
   A61L 27/58 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
A61F9/007 170
A61M37/00 550
A61K45/00
A61K47/34
A61K9/00
A61K31/196
A61K31/405
A61K31/155
A61K31/16
A61K31/192
A61K31/381
A61K31/407
A61K47/32
A61P27/02
A61L27/18
A61L27/44
A61L27/54
A61L27/38 100
A61L27/16
A61L27/58
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024537305
(86)(22)【出願日】2022-08-26
(85)【翻訳文提出日】2024-04-26
(86)【国際出願番号】 US2022075538
(87)【国際公開番号】W WO2023028600
(87)【国際公開日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】63/260,621
(32)【優先日】2021-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/397,202
(32)【優先日】2022-08-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524072835
【氏名又は名称】ヴィンチ ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】VINCI PHARMACEUTICALS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100189131
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 拓郎
(74)【代理人】
【識別番号】100182486
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 正展
(74)【代理人】
【識別番号】100147289
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 裕子
(72)【発明者】
【氏名】チャキー, カール
(72)【発明者】
【氏名】ジョイア, フィリップ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C081
4C084
4C086
4C206
4C267
【Fターム(参考)】
4C076AA94
4C076BB32
4C076CC10
4C076EE03
4C076EE04
4C076EE05
4C076EE06
4C076EE07
4C076EE10
4C076EE12
4C076EE13
4C076EE19
4C076EE22A
4C076EE24
4C076EE24A
4C076EE25
4C076EE25A
4C076EE26
4C076EE27
4C076EE27A
4C076EE45
4C076EE48
4C076FF21
4C076FF31
4C076FF34
4C081AB21
4C081AC06
4C081AC16
4C081BA16
4C081BB02
4C081BB06
4C081CA042
4C081CA052
4C081CA082
4C081CA092
4C081CA161
4C081CA211
4C081CA252
4C081CA272
4C081CC01
4C081DA01
4C081DC04
4C084AA17
4C084MA05
4C084MA34
4C084MA67
4C084NA10
4C084NA12
4C084ZA33
4C086AA01
4C086AA10
4C086BB02
4C086BC14
4C086CB03
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA34
4C086MA67
4C086NA10
4C086NA12
4C086ZA33
4C206AA01
4C206AA10
4C206DA22
4C206FA31
4C206HA31
4C206JA59
4C206KA01
4C206MA03
4C206MA05
4C206MA54
4C206MA87
4C206NA10
4C206NA12
4C206ZA33
4C267AA74
4C267BB40
4C267CC13
4C267GG01
(57)【要約】
新規な多層眼用インプラントデバイスが提供される。ある態様では、デバイスは、患者の眼のテノン嚢下空間に存在するように適合される。あるシステムでは、インプラントデバイスの別個の層は、別個の治療剤、例えば、望ましい薬理学的効果を送達することができる2つ以上の異なる薬剤を含有するであろう。ある好ましいシステムでは、別個のデバイス層内の別個の治療剤は、協調的薬理学的効果を提供してもよく、例えば、第1の層は、一次治療剤を含有してもよく、第2の層は、副作用を低減させる、または一次治療剤の患者取り込みを増進させる、もしくは他の送達増進等の支持的利益を一次治療剤に提供する治療剤を含有してもよい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼用インプラントデバイスであって、
ポリマーを含む第1の層と、
1)前記第1の層とは異なり、2)1つ以上の治療剤を含む第2の層と、
第3の層と、
を含むデバイス。
【請求項2】
前記第3の層は、前記第1および前記第2の層とは異なる、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記第3の層が1つ以上の速度制御剤を含む、請求項1または2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記第3の層は、前記第1の層と前記第2の層との間に介在される、請求項1~3のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項5】
前記第3の層の断面厚さは、前記第1の層の断面厚さよりも小さい、請求項1~4のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項6】
前記第3の層の断面厚さは、前記第2の層の断面厚さよりも小さい、請求項1~5のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項7】
前記第3の層が治療剤を含まない、請求項1~6のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項8】
前記第3の層がポリマーを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項9】
前記第3の層はポリイミドを含む、請求項8に記載のデバイス。
【請求項10】
前記第1の層が治療剤を含有しない、請求項1~9のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項11】
前記第2の層は、Si材料を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項12】
前記第2の層が、前記第1の層のポリマーとは異なるポリマーを含む、請求項1~11のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項13】
前記第1の層は、前記第1の硬化層の前記円周方向延在部の表面が眼の強膜と接触することが可能であるように、前記第2の層を越えて円周方向に延在する、請求項1~12のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項14】
前記第2の層の少なくとも1つの表面が、被験体の眼の強膜と接触し得る、請求項1~13のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項15】
前記第1、第2、または第3の層のいずれとも異なる第4の層を備える、請求項1~14のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項16】
隣接する層とは異なる第4の層を含む、請求項1~15のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項17】
前記第4の層が、前記デバイスの外側層である、請求項16に記載のデバイス。
【請求項18】
前記第4の層は、2つの他のデバイス層の間に介在される、請求項16に記載のデバイス。
【請求項19】
前記第1、第2、第3、または第4の層のいずれとも異なる第5の層を備える、請求項1~18のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項20】
隣接する層とは異なる第5の層を含む、請求項1~26のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項21】
前記第5の層は、前記デバイスの外側層である、請求項20に記載のデバイス。
【請求項22】
前記第5の層は、2つの他のデバイス層の間に介在される、請求項20に記載のデバイス。
【請求項23】
前記デバイスが、ブロムフェナク;ジクロフェナク;インドメタシン;ネパフェナク;メトホルミン;N-アセチルシステインアミド(NACアミド);フルルビプロフェン;スプロフェン;および/もしくはケトロラク、またはそれらの薬学的に受容可能な塩のうちの1つ以上を含む、請求項1~22のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項24】
前記デバイスが、1つ以上のNSAID剤を含む、請求項1~22のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項25】
前記デバイスが湾曲した表面を有する、請求項1~24のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項26】
前記デバイスは、円形または楕円形である、請求項1~25のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項27】
患者に移植する際に固定を強化する構成を有する、請求項1~26のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項28】
前記デバイスの少なくとも1つの層が、生分解性または生体侵食性材料を含む、請求項1~27のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項29】
前記デバイスの少なくとも1つの外層が、生分解性または生体侵食性材料を含む、請求項1~27のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項30】
前記デバイスの少なくとも1つの層が、ポリ乳酸-ポリグリコール酸(PLGA)材料を含む、請求項1~29のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項31】
前記デバイスの少なくとも1つの層が、ポリ(グリセロールセバケート)(PGS)材料を含む、請求項1~29のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項32】
前記デバイスの少なくとも1つの層が、ポリ(グリセロールセバケートウレタン)(PGSU)材料を含む、請求項1~29のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項33】
少なくとも1つの層が、治療剤の拡散に対して実質的に不透過性である、請求項1~32のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項34】
前記少なくとも1つの不透過層が、ポリビニルアセテート、架橋ポリビニルアルコール、架橋ポリビニルブチレート、エチレンエチルアクリレート共重合体、ポリエチルヘキシルアクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアセタール、プラスチック化エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリビニルエステル、ポリビニルブチレート、ポリビニルホルマール、ポリアミド、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、可塑化ポリ塩化ビニル、可塑化ナイロン、可塑化ソフトナイロン、可塑化ポリエチレンテレフタレート、天然ゴム、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、架橋ポリビニルピロリドン、ポリトリフルオロクロロエチレン、塩素化ポリエチレン、ポリ(1,4’-イソプロピリデンジフェニレンカーボネート)、塩化ビニリデン、アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル-フマル酸ジエチル共重合体、シリコーンゴム、医療グレードポリジメチルシロキサン、エチレン-プロピレンゴム、シリコーン-カーボネート共重合体、塩化ビニリデン-塩化ビニル共重合体、塩化ビニル-アクリロニトリル共重合体、塩化ビニリデン-アクリロニトリド共重合体の1つ以上のポリマーを含む、請求項33に記載のデバイス。
【請求項35】
1つ以上の層が、それぞれ約1.5mm以下の厚さである、請求項1~34のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項36】
1つ以上の層がそれぞれ1mm以下の厚さである、請求項1~35のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項37】
1つ以上の層が、それぞれ約0.8mm以下の厚さである、請求項1~36のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項38】
1つ以上の層がそれぞれ約0.5mm以下の厚さである、請求項1~37のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項39】
少なくとも1つの層が、ポリビニルアセテート、架橋ポリビニルアルコール、架橋ポリビニルブチレート、エチレンエチルアクリレート共重合体、ポリエチルヘキシルアクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアセタール、プラスチック化エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリビニルエステル、ポリビニルブチレート、ポリビニルホルマール、ポリアミド、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、可塑化ポリ塩化ビニル、可塑化ナイロン、可塑化ソフトナイロン、可塑化ポリエチレンテレフタレート、天然ゴム、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、架橋ポリビニルピロリドン、ポリトリフルオロクロロエチレン、塩素化ポリエチレン、ポリ(1,4’-イソプロピリデンジフェニレンカーボネート)、塩化ビニリデン、アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル-フマル酸ジエチル共重合体、シリコーンゴム、医療グレードポリジメチルシロキサン、エチレン-プロピレンゴム、シリコーン-カーボネート共重合体、塩化ビニリデン-塩化ビニル共重合体、塩化ビニル-アクリロニトリル共重合体、塩化ビニリデン-アクリロニトリド共重合体の1つまたは複数を含む、請求項1~38のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項40】
少なくとも1つの層が、眼への前記治療剤の眼透過性を増加させる眼用透過剤を含む、請求項1~39のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項41】
層が、制御放出組成物と混合された治療剤を含む、請求項1~40のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項42】
層が、1つまたは複数のポリマーを含む制御放出組成物を含む、請求項1~41のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項43】
少なくとも1つのデバイス層が、1つまたは複数の生分解性ポリマーを含む、請求項1~42のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項44】
少なくとも1つのデバイス層が、1)1つまたは複数の治療剤および、2)1つまたは複数の生分解性ポリマーを含む、請求項1~43のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項45】
前記1つ以上の生分解性ポリマーが、患者の眼において長時間にわたって分解し、それによって、前記1つ以上の治療剤を前記患者に投与する、請求項43または44に記載のデバイス。
【請求項46】
前記1つ以上の生分解性ポリマーが、ポリ(乳酸-co-グリコリド)、ポリ乳酸-ポリグリコール酸ブロック共重合体(PLGA)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシルメチルセルロース、ポリグリコリド-ポリビニルアルコール、クロスカルメロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリグリコール酸-ポリビニルアルコール共重合体(PGA/PVA)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ポリカプロラクトンポリエチレングリコール共重合体、ポリ(グリセロールセバケート)(PGS)材料および/またはポリ(グリセロールセバケートウレタン)(PGSU)材料を含む、請求項43~45のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項47】
患者の眼に治療剤を送達するための方法であって、
(a)請求項1~46のいずれか一項に記載のインプラントデバイスを提供する工程であって、前記デバイスが1つまたは複数の治療剤を含む工程と、
(b)前記デバイスを患者の眼に挿入する工程と、
を含む方法。
【請求項48】
前記デバイスが、テノン嚢下空間に配置され、そして眼の強膜と接触する、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記1つ以上の治療剤が、約2週間~約6週間の送達期間を有する、請求項47または48に記載の方法。
【請求項50】
患者が黄斑変性症に罹患している、請求項47~49のいずれか一項記載の方法。
【請求項51】
患者が加齢性黄斑変性(AMD)に罹患している、請求項47~50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
前記デバイスが、前記眼の黄斑の近くの前記眼の後部に配置される、請求項47~51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
アプリケータ装置を使用して、前記デバイスを眼のテノン嚢下空間に配置する、請求項47~52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
(a)請求項1~46のいずれか一項に記載のインプラントデバイスと
(b)眼障害を治療するための前記デバイスの使用のための説明書と
を含むキット。
【請求項55】
インジェクター装置または他のアプリケーション装置をさらに含む、請求項54に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、1)2022年8月11日に出願された米国仮出願第63/397,202号、および2)2021年8月26日に出願された米国仮出願第63/260,621号の優先権を主張し、これらの出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、概して、眼のための局所療法に関し、より具体的には、眼用インプラントデバイスに関する。ある態様では、インプラントデバイスは、患者の眼のテノン嚢下空間内に存在するように適合される。
【背景技術】
【0003】
眼の多くの疾患および障害の治療において、特に変性または持続性の状態の場合に、埋め込み可能な徐放性送達デバイスが望まれている。Gote et al,Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics,September 2019,370(3)602~624を参照されたい。
【0004】
治療薬を眼に投与するための特定の眼用インプラントおよび配置が報告されている。特に有用なシステムが、米国特許第10,881,609号に開示されている。
【0005】
新しい眼用インプラントデバイスおよび薬物送達システムを有することが望まれる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここで、患者の眼への治療剤の投与に有用な新規な眼用インプラントデバイスが提供される。
【0007】
一態様では、眼用インプラントデバイスは、3つ以上の層を含み、各層は、隣接する層とは異なる。
【0008】
このような多層移植デバイスは、治療剤の送達の増強を含む、顕著な利点を提供し得ることが見出された。例えば、複数の層は、患者への治療剤の所望の送達速度を可能にすることができる。
【0009】
1つの好ましい態様において、眼用インプラントデバイスは3つ以上の層を含み、1つ以上の治療剤がデバイスの少なくとも1つの層に存在する。
【0010】
ある好ましい態様において、眼用インプラントデバイスは3つ以上の層を含み、1つ以上の治療剤がデバイスの少なくとも2つまたは3つの層に存在する。別々の層に存在する治療剤は、好適には、同じであっても異なっていてもよい。
【0011】
あるシステムでは、インプラントデバイスの別個の層は、別個の治療剤、例えば、所望の薬理学的効果を送達することができる2つ以上の異なる薬剤を含有するであろう。ある好ましいシステムでは、別個のデバイス層中の異なる治療剤は、協調した薬理学的効果を提供してもよく、例えば、第1の層は、一次治療剤を含有してもよく、第2の層は、副作用を低減させる、または一次治療剤の患者取り込みを増進させる、または他の送達増進等の支持的利益を一次治療剤に提供する治療剤を含有してもよい。
【0012】
特に好ましいシステムでは、少なくとも1つの投与された治療薬は、デバイスによって投与されている別個の一次治療薬のリンパクリアランスまたは吸収を制御または調節し得る。一次治療剤およびリンパ管吸着モジュレータは、好適には、インプラントデバイスの別個の層に含有され得る。
【0013】
さらなる特定の好ましいシステムにおいて、少なくとも1つの投与される治療剤は、線維症を制御し、そして別の異なる治療剤と組み合わせて投与されるステロイドまたは他の薬剤(非ステロイド剤を含む)を含み得る。抗線維症剤および追加の別個の治療剤は、好適には、インプラントデバイスの別個の層に含有され得る。
【0014】
好ましいシステムにおいて、多層眼用インプラントデバイスが提供される。
(a)ポリマーを含む第1の層と
(b)1)前記第1の層とは異なり、2)1つ以上の治療剤を含む第2の層と
(c)第3の層とインプラントデバイスは、好適には、少なくとも1つの他の層とは異なる1つまたは複数の追加の層(4つ、5つまたはそれ以上の層)を有してもよい。
【0015】
1つのシステムにおいて、一次治療剤は、2つ以上の別個のインプラント層内に包まれた内部コア層に装填され得る。治療薬コア層に当接または隣接する第1の層は、治療薬に対して実質的に不透過性であってもよく、対向するインプラントデバイス側等への治療薬の指向性送達を提供する。好適には、対向する治療コア層上の治療剤コア層に隣接または接するさらなる層は、患者への投与のためにコア層からその第2の層を通る治療剤の長期の制御可能な放出を提供する1つ以上の材料を含み得る。例えば、コア治療薬に隣接するさらなる層は、経時的に分解し得るか、またはそうでなければ治療薬の放出を調節し得る1つ以上のポリマーを含み得る。そのようなポリマーは、種々の生分解性または生侵食性ポリマー、例えば、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)、ポリ(カプロラクトン)(PCL)、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、ポリエチレングリコールジアクリレート(PEGDA)、ポリ(セバシン酸グリセロール)(PGS)および/またはポリ(セバシン酸グリセロールウレタン)(PGSU)のいずれかを含み得る。
【0016】
別の多層移植デバイスシステムにおいて、1つ以上の治療剤が、2つ以上のデバイス層に含まれ得る。例えば、コアデバイス層は、一次治療剤を含有してもよく、コア層に隣接する第2の層は、例えば、可能性のある副作用を治療するために、または一次治療剤の曝露の増強等の所望のバイオアベイラビリティを提供するために、コア層の一次治療剤を支持し得る第2の別個の治療剤を含んでもよい。あるいは、インプラントデバイスコア層は、第2の治療薬を含んでもよく、より外側のインプラントデバイス層は、患者に投与される一次治療薬を含んでもよい。
【0017】
好ましいデバイスにおいて、好適には、インプラントデバイスは、湾曲した表面を有する。
【0018】
好ましいシステムにおいて、第3の層は、1つ以上の速度制御剤および/または1つ以上の治療剤を含み、それによって、1つ以上の治療剤の投与速度および期間は、1、2、3、4、5、6日以上、または1、2、3、4週間以上を含む長期間、または1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、15、18、21、24、27、30、33もしくは36ヶ月以上などのより長期間に延長され得る。
【0019】
ある好ましいシステムでは、第3の層は、第1の層と第2の層との間に介在される。好ましいシステムでは、第3の層は、インプラントデバイスの最外層である。
【0020】
インプラントデバイスの別個の層は、様々な構成を有し得る。例えば、好適には、第3の層の断面厚さは、第1の層の断面厚さよりも小さく、および/または第3の層の断面厚さは、第2の層の断面厚さよりも小さい。
【0021】
好適には、第3の層は、ポリイミドなどのポリマー、または第3の層を通る治療薬の輸送を阻害することができる1つ以上の他の材料を含む他の材料を含む。
【0022】
ある実施形態において、第1の層は、第1の層がインプラントデバイスの最外層である場合を含めて、治療剤を含有しない。好適には、第2の層は、第1の層のポリマーとは異なるポリマーを含む。
【0023】
ある好ましい構成では、第1の層は、第1の硬化層の円周方向延在部の表面が眼の強膜と接触することが可能であるように、第2の層を越えて円周方向に延在する。好ましくは、第2の層の少なくとも1つの表面は、対象の眼の強膜と接触することができる。
【0024】
ある好ましいシステムでは、インプラントデバイスは、第1、第2、または第3の層のいずれとも異なる第4の層を備えてもよい。
【0025】
特定の他の好ましいシステムでは、インプラントデバイスは、隣接する層とは異なる第4の層を含む。
【0026】
さらなる特定の好ましいシステムにおいて、移植デバイスは、第1、第2、第3または第4の層のいずれとも異なる第5の層を備え得る。
【0027】
さらなる好ましいシステムにおいて、インプラントデバイスは、隣接する層とは異なる第5の層を備える。
【0028】
ある好ましい態様において、インプラントデバイスは、単一の治療剤を含有する。その治療薬は、多層デバイスの単一層中に存在することが適切であり得る。ある態様では、デバイスの各層は、単一のタイプのポリマーを含んでもよい。
【0029】
多層眼用インプラントデバイスは、好ましくは、対象への投与のために、1つまたは複数の非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、特に、ブロムフェナク;ジクロフェナク;インドメタシン;ネパフェナク;メトホルミン;フルルビプロフェン;スプロフェン;および/もしくはケトロラク、または薬学的に許容されるその塩のうちの1つまたは複数を含む。
【0030】
別の態様では、多層眼用インプラントデバイスは、好ましくは、対象への投与のためのN-アセチルシステインアミド(NACアミドまたはNACA)を含む。
【0031】
別の態様では、多層眼用インプラントデバイスは、好ましくは、被験体への投与のためのラタノプロストなどの1つまたは複数のプロスタグランジンを含む。
【0032】
本発明の眼用インプラントデバイスはまた、1つ以上の他の治療剤を含み得る。
【0033】
一態様では、インプラントデバイスの層(例えば、第1の層)は、別の層(例えば、第2の層)とは異なると考えられ、2つの層は、組成および/または機能が異なる。例えば、第1の層は、1つ以上の治療剤を含有してもよく、少なくとも同じまたは任意の治療剤を含有しない隣接層は、本明細書で言及されるような別個の層である。このような例示的な系において、これらの2つの層のポリマーマトリックスは、同じであっても異なっていてもよい。
【0034】
別個の層はまた、1つ以上の同じポリマーまたは他の材料を含み得るが、少なくとも1つのポリマーなどの少なくとも1つの材料が異なり得る。例えば、外側の薬物送達調節層は、インプラントデバイスから患者への治療剤の放出を調節する追加のポリマーを含んでもよい。
【0035】
他の実施形態では、2つの層は、層を通る治療剤の透過性などの機能が異なる場合には、別個のものとなる。
【0036】
単一層はまた、好適には、層全体にわたって均一な組成を有していなくてもよい。例えば、層の断面厚さの第1の部分は、隣接する層と比較的同様であり得るが、層の第2の部分は、層の第1の部分に存在しないポリマーまたは治療剤等のより有意な量の成分を有し得る。
【0037】
層断面にわたるこのような傾斜組成プロファイルは、インプラントデバイスからの長期薬物送達などのより正確なデバイス機能を提供することができる。
【0038】
別個のデバイス層はまた、インプラントデバイスの製造中に別個の工程で製造されてもよい。例えば、デバイス基板は、コーティングなどによって適用された第1の層組成物を有してもよく、別個の後続の工程において、第2の層組成物が、第1の層または第1の層上に適用された別の他の材料上にコーティングなどによって適用されてもよい。単一層は、複数の工程、例えば複数のポリマー堆積工程で製造されてもよい。
【0039】
各層の厚さは、好適には、広く変化し得る。典型的な層の厚さは、約30μm~5または8mm、より典型的には30μm~0.5、0.6、0.7、0.8、0.9または1もしくは2mmまたはそれ以上の範囲であり得る。特定の態様では、治療薬を含む層は、治療薬を含有しない隣接層よりも比較的大きな厚さを有し得る。ある態様では、インプラントデバイスの1つまたは複数の層は、それぞれ約2mm以下の厚さ、例えば、1.9、1.8、1.7、1.6、1.5、1.4、1.3、1.2、1.1、1、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3または0.2mm以下の厚さである。治療剤を含む層(複数可)について、層の厚さは、少なくとも部分的に、治療剤の溶解度、及び標的放出持続時間を達成するのに必要な治療剤の量によって決定され得る。
【0040】
上述したように、本発明のインプラントデバイスは、好ましくは、湾曲した表面を有する。好ましい構成では、インプラントデバイスは円形または楕円形である。さらなる好ましい構成では、インプラントデバイスは、患者に移植する際に固定を強化する構成を有する。例えば、インプラントデバイスは、デバイスへの縫合糸の取り付けを可能にする特徴を備えてもよい。
【0041】
一態様では、好ましくは、インプラントデバイスの少なくとも1つの層は、生体内で経時的に分解するポリマー材料などの生分解性または生体侵食性材料を含む。ある特定の実施形態では、インプラントデバイスの複数の層またはすべての層が、1つまたは複数の生分解性または生体侵食性材料を含むことができる。
【0042】
一実施形態では、外層(すなわち、患者組織に露出されるか、またはそうでなければ患者組織と直接接触する拡張断面表面を有するインプラントデバイス層)は、生分解性または生体侵食性材料を含む。
【0043】
インプラントデバイス層に組み込まれ得る例示的な生分解性または生体侵食性ポリマーは、例えば、ポリ(乳酸-co-グリコリド)、ポリ乳酸-ポリグリコール酸ポリマー(PLGA)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシルメチルセルロース、ポリグリコリド-ポリビニルアルコール、クロスカルメロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム)、ポリグリコール酸-ポリビニルアルコール共重合体(PGA/PVA)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ポリ(グリセロールセバケート)(PGS)、ポリ(グリセロールセバケートウレタン)(PGSU)および/またはポリカプロラクトンポリエチレングリコールポリマー材料を含む。
【0044】
一態様では、好ましくは、インプラントデバイスの少なくとも1つの層は、ポリ乳酸-ポリグリコール酸(PLGA)材料を含む。
【0045】
一態様では、好ましくは、インプラントデバイスの少なくとも1つの層は、ポリ乳酸-ポリグリコール酸(PLGA)材料を含み、そのデバイス層は、1つまたは複数の治療剤を含む。
【0046】
一態様では、好ましくは、インプラントデバイスの少なくとも1つの層は、ポリ(グリセロールセバケート)(PGS)材料を含む。
【0047】
一態様では、好ましくは、インプラントデバイスの少なくとも1つの層は、ポリ(グリセロールセバケート)(PGS)材料を含み、そのデバイス層は、1つまたは複数の治療剤を含む。
【0048】
一態様では、好ましくは、インプラントデバイスの少なくとも1つの層は、ポリ(グリセロールセバケートウレタン)(PGSU)材料を含む。
【0049】
一態様では、好ましくは、インプラントデバイスの少なくとも1つの層は、ポリ(グリセロールセバケートウレタン)(PGSU)材料を含み、そのデバイス層は、1つまたは複数の治療剤を含む。
【0050】
本発明のインプラントデバイスにおいて、好適には、少なくとも1つの層は、治療剤の拡散に対して少なくとも実質的に不透過性である。このような層は、患者への治療剤の拡散を方向付けることができる。例えば、少なくとも1つの不透過層は、ポリビニルアセテート、架橋ポリビニルアルコール、架橋ポリビニルブチレート、エチレンエチルアクリレート共重合体、ポリエチルヘキシルアクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアセタール、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリビニルエステル、ポリビニルブチレート、ポリビニルホルマール、ポリアミド、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、可塑化ポリ塩化ビニル、可塑化ナイロン、可塑化ソフトナイロン、可塑化ポリエチレンテレフタレート、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、架橋ポリビニルピロリドン、ポリトリフルオロクロロエチレン、塩素化ポリエチレン、ポリ(1,4’-イソプロピリデンジフェニレンカーボネート)、塩化ビニリデン、アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル-フマル酸ジエチル共重合体、シリコーンゴム、医療グレードポリジメチルシロキサン、エチレン-プロピレンゴム、シリコーン-カーボネート共重合体、塩化ビニリデン-塩化ビニル共重合体、塩化ビニル-アクリロニトリル共重合体、塩化ビニリデン-アクリロニトリド共重合体の1つまたは複数のポリマーを含むことができる。
【0051】
好適には、少なくとも1つのインプラントデバイス層は、ポリビニルアセテート、架橋ポリビニルアルコール、架橋ポリビニルブチレート、エチレンエチルアクリレート共重合体、ポリエチルヘキシルアクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアセタール、プラスチック化エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリビニルエステル、ポリビニルブチレート、ポリビニルホルマール、ポリアミド、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、可塑化ポリ塩化ビニル、可塑化ナイロン、可塑化ソフトナイロン、可塑化ポリエチレンテレフタレート、天然ゴム、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、架橋ポリビニルピロリドン、ポリトリフルオロクロロエチレン、塩素化ポリエチレン、ポリ(1,4’-イソプロピリデンジフェニレンカーボネート)、塩化ビニリデン、アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル-フマル酸ジエチル共重合体、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、シリコーンゴム、医療グレードポリジメチルシロキサン、エチレン-プロピレンゴム、シリコーン-カーボネート共重合体、塩化ビニリデン-塩化ビニル共重合体、塩化ビニル-アクリロニトリル共重合体、塩化ビニリデン-アクリロニトリド共重合体の1つまたは複数を含んでもよい。
【0052】
外側の移植デバイス層のための好ましい材料は、LDPE(低密度ポリエチレン)を含むポリエチレンである。
【0053】
1つ以上の治療剤を含むインプラントデバイス層のための好ましい材料としては、酢酸ビニルおよびエチレン-酢酸ビニル(EVA)が挙げられる。また、生体侵食性デバイス層(例えば、ポリ(グリセロールセバケートウレタン)(PGSU)を含むインプラント層)が1つ以上の治療剤を含むことが好ましい場合もある。
【0054】
一態様では、少なくとも1つのインプラントデバイス層は、眼への治療剤の眼透過性を増加させる透過性エンハンサーを含む。
【0055】
一態様では、インプラントデバイス層は、制御放出組成物と混合された治療剤を含んでもよい。適切な制御放出組成物は、1つまたは複数の生分解性ポリマーなどの1つまたは複数のポリマーを含むことができ、1つまたは複数の生分解性ポリマーは、患者の眼の中で長時間にわたって分解し、それによって1つまたは複数の治療剤を患者に投与することができる。インプラントデバイス層に組み込まれ得る例示的な生分解性ポリマーは、例えば、ポリ(乳酸-co-グリコリド)、ポリ乳酸-ポリグリコール酸ブロック共重合体(PLGA)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシルメチルセルロース、ポリグリコリド-ポリビニルアルコール、クロスカルメロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリグリコール酸-ポリビニルアルコールブロック共重合体(PGA/PVA)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ポリ(グリセロールセバケート)(PGS)、ポリ(グリセロールセバケートウレタン)(PGSU)および/またはポリカプロラクトンポリエチレングリコール共重合体を含む。
【0056】
生体侵食性層はまた、とりわけ、層のポリマーマトリックスの架橋密度の選択、層材料および層厚さの選択によって、所望の放出速度を提供するように構成され得る。特定の期間にわたって侵食されることが意図される層の所望の分解速度は、他の特徴の中でも、種々の材料、架橋密度および層の厚さを用いて移植デバイス層を試験することによって、経験的に容易に同定され得る。
【0057】
さらなる態様では、(a)本明細書に開示されるようなインプラントデバイスを提供する工程であって、デバイスが1つまたは複数の治療剤を含む工程と、(b)デバイスを患者の眼に挿入する工程とを含む、患者の眼に治療剤を送達するための方法が提供される。
【0058】
好ましくは、インプラントデバイスは、テノン嚢下空間に配置され、眼の強膜と接触する。
【0059】
患者は、黄斑変性症、特に加齢黄斑変性(AMD)を含む様々な障害及び疾患について治療され得る。
【0060】
ある特定の態様では、患者は、糖尿病性黄斑浮腫(DME)について処置され得る。一実施形態では、患者は、黄斑領域の網膜内の細胞外空間における過剰な流体の蓄積を含み得る糖尿病性黄斑浮腫に罹患しているか、または罹患しやすいと特定され得、特定された患者は、本明細書に開示されるインプラントで治療される。
【0061】
ある態様では、患者は、類嚢胞黄斑浮腫またはCMEの治療を受けてもよい。一実施形態では、患者は、類嚢胞黄斑浮腫に罹患しているか、または感受性であると同定され得、同定された患者は、本明細書に開示されるインプラントで治療される。
【0062】
治療キットも提供され、(a)本明細書に開示されるようなインプラントデバイスと、(b)眼障害を治療するためのインプラントデバイスの使用のための説明書とを備えてもよい。
【0063】
治療キットは、好適には、他の成分を含んでもよい。
【0064】
さらに、ヒトにおける黄斑変性症などの眼の疾患または障害の治療または予防のための本明細書に記載のインプラントデバイスの有効性を評価するための方法であって、a)本明細書に記載のインプラントデバイスをヒトの眼のテノン嚢下空間に配置する工程と、b)適切な分析技術を使用してヒトの眼を検査し、それによって、評価される眼の疾患または障害に対するインプラントデバイスの有効性を評価する工程とを含む方法が提供される。
【0065】
例えば、2色(青、赤)マイクロペリメトリー、低輝度視力、多焦点網膜電図検査、動的ペリメトリー、色覚評価、光ストレス試験および静的ペリメトリー、コントラスト感度、qCST、BCVA、qVA、OCT/FAF/IR/OCT-A/フラボ-タンパク質検出/カラー眼底写真などの様々な分析または調査手順のいずれかを利用することができる。
【0066】
本発明の他の態様は、以下に開示される。
【図面の簡単な説明】
【0067】
図1図1は、好ましい多層インプラントデバイスを概略的に示す。
図2図2は、さらに好ましい多層移植デバイスを概略的に示す。
図3図3は、以下の実施例2のインプラントの写真である。
【発明を実施するための形態】
【0068】
説明したように、様々な態様において、眼の障害の治療または予防のための治療剤を含む複合眼用インプラントデバイスが提供される。好ましいシステムでは、インプラントデバイスは、眼の障害の治療または予防の間、治療剤の持続放出を提供する。このデバイス構成は、テノン嚢下(球鞘としても知られる)への配置に特によく適しているが、それに限定されず、便利で有用な他の眼領域上または他の眼領域中に設置され得る。
【0069】
本発明のインプラントデバイスは、例えば、加齢黄斑変性、緑内障、糖尿病性網膜症、ブドウ膜炎、新生児の未熟児網膜症、脈絡膜黒色腫、脈絡膜転移、及び網膜毛細血管血管腫を含む、多くの眼疾患及び適応症を治療するために使用することができる。
【0070】
多層眼用インプラントデバイス
図面を参照すると、図1は、複数の層12、14、16および18を含む好ましい眼用インプラントデバイス10を概略的に示す。インプラントデバイスはまた、好適には、さらなる層を含み得る。
【0071】
好適には、1つ以上の層は、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)などの1つ以上の治療剤、または以下に開示される治療剤を含む他の薬剤を含む。
【0072】
あるシステムでは、図1に示される層12または18などの最外層は、薬物放出速度制限膜として機能し得る。例えば、層は、層を通ってデバイスから強膜表面11への1つ以上の治療薬の流れを調節することができるポリマーマトリックス(架橋マトリックスを含む)であってもよい。
【0073】
一構成では、層14は、1つまたは複数の治療薬を含むことができる。層は、好適には、治療剤が混合される1つ以上のポリマーを含む。ある態様では、インプラントデバイス層は、2つ以上の異なるポリマーのブレンドではなく、単一のポリマーを含有することが好ましい場合がある。
【0074】
1つの構成において、層12は、薬物拡散バリア層として機能し得る。例えば、層は、層14に存在する治療薬が層16を通過するのを実質的に妨げるポリマーまたはポリマーマトリックスを含んでもよい。
【0075】
一構成では、層18は、さらなるポリマー層であってもよい。一態様では、層18は、層14に存在する1つまたは複数の治療剤と同じであっても異なっていてもよい1つまたは複数の治療剤を含有してもよい。上記のように、特定の好ましい局面において、層18の1つ以上の治療剤は、層14に存在する治療剤とは異なる。層18の治療剤は、好適には、テノン嚢/結膜表面20に投与され得る。
【0076】
他の態様では、層18は、治療薬を含有しなくてもよい。
【0077】
他の好ましいシステムにおいて、図1に示される層14および/または16のような包まれた層または内側層は、1つ以上の治療剤を含み得る。そのような構成では、図1に示される外層12および/18は、層14または16から対象への治療剤の放出を調節することなどによって、薬物投与を制御するように機能することができる。例えば、層12および/または18は、1、2、3、4、5、6、または7日以上などの長期間、または2、3、4、5、6、7、または8週間以上などの期間、または0.5年、1年、1.5年、2年、2.5年、3年以上などの上記で論じたようなより長期間にわたって、インプラントデバイスから治療薬を放出する1つまたは複数の生体侵食性または生分解性材料を含むことができる。
【0078】
種々の層12、14、16、18は、ポリビニルアセテート、架橋ポリビニルアルコール、架橋ポリビニルブチレート、エチレンエチルアクリレート共重合体、ポリエチルヘキシルアクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアセタール、プラスチック化エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリビニルエステル、ポリビニルブチレート、ポリビニルホルマール、ポリアミド、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、可塑化ポリ塩化ビニル、可塑化ナイロン、可塑化ソフトナイロン、可塑化ポリエチレンテレフタレート、天然ゴム、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、架橋ポリビニルピロリドン、ポリトリフルオロクロロエチレン、塩素化ポリエチレン、ポリ(1,4’-イソプロピリデンジフェニレンカーボネート)、塩化ビニリデン、アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル-フマル酸ジエチル共重合体、シリコーンゴム、医療グレードポリジメチルシロキサン、エチレン-プロピレンゴム、シリコーン-カーボネート共重合体、塩化ビニリデン-塩化ビニル共重合体、塩化ビニル-アクリロニトリル共重合体、塩化ビニリデン-アクリロニトリド共重合体、これらのポリマーの任意の適切な等価物、またはこれらのポリマーの任意の適切な等価物、またはこれらの組み合わせのような1つ以上のポリマーを含み得る。
【0079】
あるシステムでは、酢酸ビニルまたはエチレン酢酸ビニル(EVA)材料が、1つまたは複数のインプラントデバイス層に好ましい材料である。
【0080】
インプラントデバイスの寸法は、様々であってもよい。しかしながら、この特定の実施形態では、インプラントデバイス10は、7mmの直径(図1で寸法bとして示される)および2mmの厚さ(図1で寸法aとして示される)を有する。この特定の実施形態では、2つの層16および18のそれぞれは、1mmの厚さである。上述したように、層16及び18は、例えば0.5mm~25mmを含む広範囲の厚さであることができる。この特定の実施例において、層18の外面18’は、平均的な人間の眼のテノン嚢の表面の曲率半径にほぼ一致するために、1cm以下の曲率半径を有する。同様に、層12も、平均的な人間の眼の強膜の曲率半径に概ね一致するように構成された同様の曲率半径で湾曲している。これらの寸法は、ヒトのテノン嚢下空間における強膜接触を伴う移植に適切な特徴を有する移植デバイス10を提供する。これらの寸法は、例えばラット、マウス、またはウサギなどの実験動物で使用するために設計されたインプラントデバイスに対して適切に修正されるべきであることが当業者によって理解されるであろう。選択された実験動物の眼の平均寸法ならびにテノン嚢および強膜の曲率半径の知識を備えて、本発明による眼用インプラントデバイスの寸法は、当業者によって選択され得、適切な成形ツールは、過度の実験を伴わずに構築され得る。
【0081】
あるシステムでは、図1に示すように、層16に分散された治療薬の拡散に対して一般に耐性のある上層12および/または14を有する眼用インプラントデバイスを提供することが有利であり得る。特定の実施形態において、層12は、治療剤に対して不透過性である。他の実施形態では、治療薬は、層16を通る治療薬の拡散速度よりも大きい、層12内の拡散速度を有する。特定のインプラントデバイス層を通る治療剤の示差的な拡散特性は、治療剤が必要とされない組織への治療剤の損失を防止する利点を提供する。例えば、層16を通る治療剤の拡散速度の低下は、黄斑への移動のための強膜および脈絡膜への治療剤の一方向拡散を促進する。層16または18(存在する場合、18)に対して層12および/または14中の治療剤の拡散特性が減少することによって提供されるさらなる利点は、治療剤が、望ましくない副作用を引き起こし得る他の組織への移動のために、テノン嚢および結膜を介してリンパ系に入ることを防止することにおいて得られる。したがって、本開示のある実施形態では、上記で議論されるように、インプラントデバイスの1つ以上の層はさらに、リンパ吸収を遮断する薬剤を含む。
【0082】
さらに上述したように、別個のインプラントデバイス層は、他の協調的な多剤療法を含んでもよい。例えば、議論されるように、1つの層は、ステロイドまたは5-フルオロウラシルまたはマイトマイシンCのような抗線維症剤を含み得、そして好適には、別の層は、1つ以上のさらなる異なる治療剤を含む。
【0083】
特定の実施形態において、層14中の投与される治療剤は、ネパフェナクなどの非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)である。薬物は、図1に示される層12を通る拡散を介して放出される。
【0084】
特定の好ましい実施形態において、移植デバイス10は、移植デバイス表面が強膜の表面上に載った状態で、患者の眼のテノン嚢下空間に配置される。好ましくは、対向する上部インプラントデバイス層は、テノン嚢の表面の曲率に概ね一致する曲率を有する。そのような構成は、テノン嚢がインプラントデバイス10の上縁と接触する結果としての眼への不快感を最小限にすることができる。ある好ましい構成では、インプラントデバイスの湾曲した上面は、平滑であり、代替インプラントの鋭い縁がテノン嚢を完全に穿刺し、結膜を貫通する場合に、そうでなければテノン嚢の組織およびおそらく結膜にも刺激および/または損傷を引き起こすであろう、鋭い縁を有していない。
【0085】
ある好ましいシステムでは、治療剤がインプラントデバイス層14に集中し、上層12が治療剤の拡散を可能にするので、インプラントデバイスに含まれる1つ以上の治療剤が強膜に放出される。あるシステムでは、移植デバイスによって投与される治療剤は、拡散または能動的生理学的機構のいずれか、またはそれらの組み合わせによって、所望の薬学的効果が得られるであろう黄斑に移送されてもよい。
【0086】
少なくとも5つの異なるインプラントデバイス層を含む、さらに好ましいインプラントデバイス30が図2に示されている。したがって、図2のインプラントデバイス30は、層32、34、36、38、および40を含む。層のいずれかは、1つ以上の治療剤を含み得る。1つ以上の層は、例えば、治療剤を放出する1つ以上の生体侵食性または生分解性材料を介して、上記のように治療剤の放出を調節することによって、薬物投与を制御するように機能し得る。
【0087】
1つの好ましいシステムにおいて、デバイス30は、強膜表面31に接触する薬物放出速度制限膜32を備える。例えば、層32は、層を通ってデバイスから強膜表面31への1つ以上の治療剤の流れを調節することができるポリマーマトリックス(架橋マトリックスを含む)であってもよい。
【0088】
一構成では、層36は、1つまたは複数の治療薬を含むことができる。層は、好適には、治療剤が混合される1つ以上のポリマーを含む。一構成では、層32または34は、薬物拡散バリア層として機能し得る。例えば、層は、層36中に存在する治療剤が層32を通過するのを実質的に妨げるポリマーまたはポリマーマトリックスを含んでもよい。
【0089】
一構成では、層38は、さらなるポリマー層であってもよい。一態様では、層38は、層36に存在する1つまたは複数の治療剤と同じであっても異なっていてもよい1つまたは複数の治療剤を含有してもよい。上述のように、特定の好ましい態様では、層38の1つ以上の治療薬は、層36に存在する治療薬とは異なる。層38の治療薬は、好適には、テノン嚢/結膜表面42に投与され得る。
【0090】
一構成では、層40は、テノン嚢/結膜表面42に接触する薬物放出速度制限膜である。したがって、例えば、層40は、層を通ってデバイスから強膜表面への1つまたは複数の治療剤の流れを調節することができるポリマーマトリックス(架橋マトリックスを含む)であってもよい。
【0091】
治療剤
上述のように、インプラントデバイスは、様々な治療薬を含み、対象に投与することができる。
【0092】
一態様では、本発明のインプラントデバイスを用いて患者に投与することができる1つまたは複数の治療剤には、それだけには限定されないが、以下が含まれる;フマギリン類似体、ミノシクリン、フルオロキノロン、セファロスポリン抗生物、herbimycon A、テトラサイクリン、クロルテトラサイクリン、バシトラシン、ネオマイシン、ポリミキシン、グラミシジン、オキシテトラサイクリン、クロランフェニコール、ゲンタミシンおよびエリトロマイシンなどの抗生物剤;スルホンアミド、スルファセタミド、スルファメチゾール、sulfoxazole、ニトロフラゾン、および/またはプロピオン酸ナトリウムなどの抗菌剤。
【0093】
別の態様では、本発明のインプラントデバイスを用いて患者に投与され得る1つまたは複数の治療剤は、WO2021/092470に開示されている化合物を含むN-アセチルシステイン(NAC)アルキル-エステル類似体化合物を含む。
【0094】
別の態様では、本発明のインプラントデバイスを用いて患者に投与され得る1つまたは複数の治療剤は、N-アセチルシステインアミド(NACアミドまたはNACA)を含む。
【0095】
別の態様では、本発明のインプラントデバイスを用いて患者に投与することができる1つまたは複数の治療薬は、ラタノプロストなどの1つまたは複数のプロスタグランジンを含む。
本発明の眼用インプラントデバイスはまた、1つ以上の
【0096】
別の態様では、本発明のインプラントデバイスを用いて患者に投与することができる1つまたは複数の治療薬には、イドクスウリジン、ファンビル、ホスホノ蟻酸三ナトリウム、トリフルオロチミジン、アシクロビル、ガンシクロビル、DDIおよびAZT、プロテアーゼおよび/またはインテグラーゼ阻害剤などの抗ウイルス剤が含まれる。
【0097】
別の態様では、本発明のインプラントデバイスを用いて患者に投与することができる1つまたは複数の治療剤には、β遮断薬(チモロール、ベタキソロール、アテノロール)、プロスタグランジン類似体、降圧脂質、および/または炭酸脱水酵素阻害薬などの抗緑内障剤が含まれる。
【0098】
別の態様では、本発明のインプラントデバイスを用いて患者に投与され得る1つまたは複数の治療剤は、アンタゾリン、メタピリリン、クロルフェニラミン、ピリラミンおよび/またはプロフェンピリダミンなどの抗アレルギー剤を含む。
【0099】
別の態様では、本発明のインプラントデバイスを用いて患者に投与することができる1つまたは複数の治療剤には、ヒドロコルチゾン、レフルノミド、リン酸デキサメタゾン、フルオシノロンアセトニド、メドリゾン、メチルプレドニゾロン、リン酸プレドニゾロン、酢酸プレドニゾロン、フルオロメタロン、ベタメタゾン、トリアムシノロンアセトニド、副腎皮質ステロイドおよびそれらの合成類似体、および/または6-マンノース・ホスフェートなどの抗炎症剤が含まれる。
【0100】
別の態様では、本発明のインプラントデバイスを用いて患者に投与することができる1つまたは複数の治療剤には、フルコナゾール、アンホテリシンB、リポソーマルアンホテリシンB、ボリコナゾール、イミダゾール系抗真菌剤、チアゾール抗真菌剤、エキノキャンディン様リポペプチド抗菌剤、抗真菌剤の液体製剤などの抗真菌剤;スラミンおよび/またはプロタミンなどのポリカチオンおよびポリアニオンが含まれる。
【0101】
別の態様では、本発明のインプラントデバイスを用いて患者に投与することができる1つまたは複数の治療剤は、フェニレフリン、ナファゾリン、および/またはテトラヒドラゾリンなどの充血除去剤を含む。
【0102】
別の態様では、本発明のインプラントデバイスを用いて患者に投与され得る1つ以上の治療剤としては、2-メトキシエストラジオールおよびそのアナログ(例えば、2-プロピニル-エストラジオール、2-プロペニル-エストラジオール、2-エトキシ-6-オキシム-エストラジオール、2-ヒドロキシエストロン、4-メトキシエストラジオール)、VEGF抗体およびVEGFアンチセンスのようなVEGFアンタゴニスト、血管形成抑制性ステロイド(例えば、酢酸アネコルタブおよびそのアナログ、17-エチニルエストラジオール、ノルエチノドレル、メドロキシプロゲステロン、メストラノール、エチステロンのような血管形成抑制性活性を有するアンドロゲン)、チミジンキナーゼインヒビターのような潜在的な抗脈絡膜新生血管形成剤であり得るものを含む抗新脈管形成化合物が挙げられる。
【0103】
別の態様では、本発明のインプラントデバイスを用いて患者に投与することができる1つまたは複数の治療剤には、フルオシノロンアセトニドおよびトリアムシノロンアセトニドを含む副腎皮質ステロイドおよびそれらの合成類似体、ならびにすべての血管新生抑制性ステロイドが含まれる。
【0104】
別の態様では、本発明のインプラントデバイスを用いて患者に投与することができる1つまたは複数の治療剤には、シクロスポリンA、プログラフ(タクロリムス)、マクロライド免疫抑制剤、ミコフェノール酸モフェチル、ラパマイシン、およびムラミルジペプチドなどの免疫学的応答修飾剤が含まれる。
【0105】
別の態様において、本発明のインプラントデバイスを用いて患者に投与され得る1つ以上の治療剤は以下の1つまたは複数の抗癌剤を含む:5-フルオロウラシル、シスプラチンおよびカルボプラチンなどの白金配位錯体、アドリアマイシン、メトトレキサートなどの代謝拮抗物質、アントラサイクリン抗体、パクリタキセルおよびドセタキセルなどの抗有糸分裂薬、エトポシドなどのエピドフィルトキシン、カルムスチンを含むニトロソ尿素、シクロホスファミドを含むアルキル化剤;三酸化ヒ素;アナストロゾール;クエン酸タモキシフェン;トリプトレリンパモエート;ゲムツズマブオゾガマイシン;イリノテカン塩酸塩;酢酸ロイプロリド;ベキサロテン;エキセメストラン;塩酸エピルビシン;オンダンセトロン;テモゾロマイド;トポアテン塩酸塩;クエン酸タモキシフェン;イリノテカン塩酸塩;トラスツズマブ;バルルビシン;ゲムシタビン;酢酸ゴセレリン;キャペシタビン;アルデスロイキン;リッキシマブ;オプレルベキン;インターフェロンα-2a;レトロゾール;トレミフェンクエン酸塩;ミトキサントロン塩酸塩;イリノテカン;トポテカン;リン酸エトポシド;ゲムシタビン;およびアミホスチン;アンチセンス剤;抗真菌剤;ピロカルピン、サリチル酸エセリン、カルバコール、ジイソプロピルフルオロリン酸、ヨウ化ホスホリン、および臭化デメカリウムなどの縮瞳剤および抗コリンエステラーゼ剤;硫酸アトロピン、シクロペンタン、ホマトロピン、スコポラミン、トロピカミド、ユーカトロピン、およびヒドロキシアンフェタミンなどの散瞳剤;分化誘導因子剤;エピネフリンなどの交感神経様作用薬;リドカインおよびベンゾジアゼパムなどの麻酔剤;血管収縮剤;血管拡張剤;アンジオスタチン、エンドスタチン、マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤、血小板第4因子、インターフェロンγ、インスリン、成長ホルモン、インスリン関連成長因子、熱ショックタンパク質、ヒト化抗lL2受容体mAb(ダクリズマブ)、エタネルセプト、モノおよびポリクローナル抗体、サイトカイン、サイトカインに対する抗体などのポリペプチドおよびタンパク質剤。
【0106】
別の態様では、本発明のインプラントデバイスを用いて患者に投与することができる1つまたは複数の治療剤には、ニモジピンおよびジルチアゼムを含むカルシウムチャネルアンタゴニスト、ニューロイムノフィリンリガンド、ニューロトロピン、メマンチン、ならびに他のNMDAアンタゴニストなどの神経保護剤が含まれる。
【0107】
別の態様において、本発明のインプラントデバイスを用いて患者に投与され得る1つ以上の治療剤は、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤、エストラジオールおよび類似体、ビタミンB12類似体、α-トコフェノール、NOS阻害剤、抗酸化剤(例えば、グルタチオン、スーパーオキシドジスムターゼ)、コバルトおよび銅合金、神経栄養受容体(Aktキナーゼ)、増殖因子、ニコチンアミド(ビタミンB3)、α-トコフェノール(ビタミンE)、琥珀酸、ジヒドロキシリポ酸、フシジン酸;コルキシン、ビンクリスチン、サイトカラシンBなどの細胞内輸送/移動性切迫剤;カルボニックアンヒドラーゼ阻害剤;インテグリンアンタゴニスト;イデベノン、ラパミシン、2-シアン-3,12-ジオキソオレアナ-1,9ジエン-28-イミダゾリド(CDDO-Im)、2-シアン-3,12-ジオキソオレアナ-1,9(11)-ジエン-28-酸-エチルアミド(CDDO-エチルアミド)、および2-シアン-3,12-ジオキソオレアナ-1,9(11)-ジエン-28-酸トリフルオロエチルアミド(CDDO-TFEA)などの親油性剤;ならびに潤滑剤を含む。
【0108】
特定の態様では、開示されるような多層移植デバイスを用いて患者の眼に投与される好ましい治療剤は、1つ以上の非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、例えば、ブロムフェナク;ジクロフェナク;インドメタシン;ネパフェナク;メトホルミン;N-アセチルシステインアミド(NACアミド);フルルビプロフェン;スプロフェン;および/もしくはケトロラク、またはその薬学的に許容される塩のうちの1つ以上を含む。
【0109】
遊離塩基形態またはその薬学的に許容される塩もしくはエステルなどの、薬剤の任意の薬学的に許容される形態を使用することができる。この特定の実施形態では、本発明のインプラントデバイスによって提供される治療薬の投与量は、1~100mgの範囲である。
多層眼用インプラントデバイスの投与または使用
【0110】
インプラントデバイスを投与するための1つの好ましい態様では、結膜下マトリックスインプラントデバイスは、好ましくは、テノン嚢下空間内の表面上皮の後ろに配置される。これは、外来患者の状況で実施され得る外科的処置によって行われる。眼瞼鏡を配置し、結膜インプラントデバイスが配置される領域の上の結膜を通して、放射状の切開を行う。ウェスコット鋏を使用してテノン嚢の後方を切開し、インプラントデバイスを挿入する。結膜を、連続10-0ビクリル縫合糸を用いて再接近させる。眼は、薬物の容易な浸透を可能にしない多くの障壁を有する。これらには、眼の前面(角膜)上の表面上皮、および網膜血管内または網膜色素上皮間のいずれかの血液/網膜関門が含まれ、これらは両方とも密着結合を有する。これらのインプラントデバイスは、一般に、小さい齧歯動物(すなわち、マウスおよびラット)の眼に対しては直径約1~2mm、ウサギおよびヒトの眼に対しては直径3~4mm、ウマの眼に対しては直径6~8mmである。
【0111】
特定の実施形態では、アプリケータ装置を使用して、インプラントデバイスをテノン嚢下空間に注入する。このような装置は、当該技術分野において知られており、眼の硝子体液中への眼内注射、特に白内障手術後の眼内レンズ移植に使用されている。特定の実施形態では、装置は、結膜およびテノン嚢の表面に係合してテノン嚢下空間への開口部を生成する開創器を備える。装置はまた、装置の引き出しが、所望の位置でインプラントデバイスを保持しながら、周囲の組織が所定の位置に戻るように崩壊することを可能にするように、インプラントデバイスをテノン嚢下空間に押し込むための手段を備える。
【0112】
さらに、薬物拡散が角膜に入るのを促進するために、移植デバイスが角膜輪部(すなわち、結膜が眼の前方に付着する領域)の近くに配置される場合、1つまたは2つの吸収性縫合糸(例えば、10-0吸収性ビクリル縫合糸)でマトリックス移植デバイスを固定することが好ましい場合がある。これは、インプラントの周辺端部から約250~500μm離れたインプラントの周辺部分に30ゲージ針で穴を開けることによって行われてもよい。
【0113】
これらの穴は、互いに180°の角度をなしている。これは、本開示の特定の結膜下マトリックスインプラントデバイスが、角膜の近くに配置される場合、まばたきするときの上眼瞼の作用のために、押し出されるリスクがより高いために行われる。本明細書に開示される結膜下マトリックス移植デバイスが、角膜輪部から約4mm以上離れて配置される場合、縫合は任意である。
【0114】
縫合糸に加えて、例えば、インプラントデバイスを標的部位に接着するための生体適合性接着剤を含む、他の取り付け手段を用いることができる。
【0115】
このマトリックスインプラントデバイスは、種々の疾患を治療するために、治療レベルの異なる医薬品を眼に送達することができる。ウサギモデルを使用して、眼に配置されたインプラントから放出された薬物は、血液中に無視できるレベルの薬物を生成する。これは、全身性薬物副作用の機会を有意に減少させる。本開示のこのインプラントデバイス設計は、完成したデバイスに存在する独特の薬理学的性能特性をもたらし、付与する独特の方法論および材料の選択によって調製される。
【0116】
親油性薬剤
本開示によれば、インプラントデバイスの治療剤または成分は、親油性薬剤を含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなってもよい。そのような親油性薬剤は、小分子であってもよい。親油性薬剤は、拡散、浸食、溶解または浸透によってインプラントデバイスから放出され得る。薬物放出持続成分は、1つ以上の生分解性ポリマーまたは1つ以上の非生分解性ポリマーを含み得る。
【0117】
一実施形態では、眼内インプラントデバイスは、親油性薬剤を含む。インプラントデバイスに使用され得る親油性薬剤または他の薬剤としては、米国特許出願公開第20140031408号明細書(その内容は、全体として参照により本明細書に組み込む)に開示されているものが挙げられる。
【0118】
別の実施形態において、眼内インプラントデバイスは、親油性薬剤を含む治療剤または治療成分を含む。
【0119】
好ましいシステムにおいて、本発明のインプラントデバイスは、眼からの親油性薬剤の迅速な排除にもかかわらず、維持されたレベルでの治療剤の持続送達または制御送達を提供する。本発明のインプラントデバイスからの親油性薬剤の制御された送達は、親油性薬剤を含む液体処方物の眼内注射に関連し得る、血液-房水関門および血液-網膜関門の毒性または劣化を減少させて、親油性薬剤が眼に投与されることを可能にする。
【0120】
本発明のインプラントデバイスは、非滲出性加齢性黄斑変性、滲出性加齢性黄斑変性、脈絡膜血管新生、急性黄斑神経網膜障害、嚢胞様黄斑浮腫、糖尿病黄斑浮腫、ベーチェット病、糖尿病性網膜症、網膜動脈閉塞疾患、中心網膜静脈閉塞、ブドウ膜炎網膜疾患、網膜剥離、外傷、レーザー処置によって引き起こされる状態、光力学療法によって引き起こされる状態、光凝固、放射線網膜症、網膜上膜、増殖性糖尿病網膜症、網膜分枝静脈閉塞、前部虚血性視神経障害、非網膜症糖尿病網膜機能不全、色素性網膜炎、眼腫瘍、眼新生物などに関連する少なくとも1つの症状を処置、予防、または軽減するなど、様々な眼状態を処置するために眼領域に配置され得る。
【0121】
本開示によるキットは、本インプラントデバイスのうちの1つ以上と、インプラントデバイスを使用するための取扱説明書とを備えてもよい。例えば、説明書は、インプラントデバイスを患者にどのように投与するか、およびインプラントデバイスで治療され得る状態のタイプを説明し得る。キットはまた、例えば、注入デバイスまたは他のアプリケータツールをさらに含み得る。
【0122】
本発明のインプラントデバイスは容易に製造することができる。例示的な好ましい製造プロトコルは、以下の実施例に記載される。射出成形および圧縮成形が好ましい製造方法である。
【0123】
一般に、所望のインプラントデバイス層、例えば、1つ以上の治療剤の所望の分布を有するポリマーマトリックスが調製され得る。この混合物は、混合物が堆積される第1の層である場合には、除去可能な基板であってもよい基板上にコーティングすることなどによって適用されてもよく、または混合物は、1つ以上の以前に適用された層の上に適用されてもよい。インプラントデバイスを形成する際に、金型を利用してもよい。デバイス複合体は、射出成形または圧縮成形プロセスなどの1つ以上の工程において、熱および/または圧力下で硬化させることができる。
【0124】
一般的定義
以下の一般的な定義は、本開示の理解を容易にするために提供される。
【0125】
本明細書で使用される場合、用語「曲率半径」は、所与の点で曲面に最もよく適合する円の半径を指す。
【0126】
本明細書で使用される場合、用語「透過剤」は、治療剤の透過性を増加させる分子を指す。眼用浸透剤は、眼の組織に対する治療剤の浸透性を増加させる。
【0127】
本明細書で使用される場合、用語「眼用浸透剤」(「輸送促進剤」としても知られる)は、眼の組織への治療剤の浸透性を増加させる化合物を指す。メチルスルホニルメタンは、眼科用浸透剤の非限定的な例である。
【0128】
本明細書で使用される場合、用語「マイクロペリメトリー」は、網膜および中心窩の特定の領域の視覚機能を評価するために使用される技術をいう。これは、検査される眼における網膜の視覚機能の退行または進行を測定する定量化可能な方法を提供する。光のドットが特定の強度で網膜上に投影され、患者は光の受信を確認するように求められる。患者の反応に続く刺激強度の変化は、網膜の視覚機能を評価する手段を提供する。マイクロペリメトリーの変形には、動的ペリメトリー、2色(赤および青)ペリメトリーおよび静的ペリメトリーが含まれ、当業者には公知である。
【0129】
本明細書で使用される場合、「多焦点網膜電図検査」という用語は、網膜細胞の活性を決定するための技術を指す。生体電気的変化が網膜内で起こると、その変化は角膜表面に伝播する。これらの小さい(そしてしばしば非常に速い)信号は、角膜の表面に配置された電極によって捕捉され得る。被験者は、中心から外側に向かってサイズが増加する六角形のアレイを含むディスプレイの中心を凝視する。
【0130】
面積当たりの錐体光受容体の数は網膜の異なる部分で変化するので、六角形のサイズは調整され、ほぼ同じ数の錐体が各六角形によって刺激される。被験者がディスプレイを見ている間に、単一の連続的な網膜電図記録が得られる。
【0131】
本明細書で使用される場合、「眼内インプラント」は、眼に配置されるように構造化され、サイズ決定され、または他の方法で構成されたデバイスまたは要素を指す。眼内インプラントは、一般に、眼の生理学的状態と生体適合性であり、有害な副作用を引き起こさない。眼内インプラントデバイスは、眼の視力を乱すことなく眼に配置され得る。
【0132】
本明細書で使用される場合、「眼領域」または「眼部位」は、一般に、眼の前眼部および後眼部を含む眼球の任意の領域を指し、一般に、限定されないが、眼球に見られる任意の機能的(例えば、視力のための)もしくは構造的組織、または眼球の内部もしくは外部を部分的もしくは完全に裏打ちする組織もしくは細胞層を含む。眼領域における眼球の領域の具体例としては、前眼房、後眼房、硝子体腔、脈絡膜、脈絡膜上腔、結膜、結膜下腔、強膜上腔、角膜内腔、角膜上腔、強膜、毛様体扁平部、外科的に誘導された無血管領域、黄斑、および網膜が挙げられる。
【0133】
本明細書で使用される場合、「眼の状態」は、眼または眼の部分もしくは領域の1つに影響を及ぼすかまたは関与する疾患、病気または状態である。大まかに言えば、眼は、眼球、ならびに眼球を構成する組織および流体、眼周囲筋(斜筋および直筋など)、ならびに眼球内にあるかまたは眼球に隣接する視神経の部分を含む。
【0134】
「前眼部状態」は、水晶体嚢または毛様体筋の後壁の前に位置する、眼周囲筋、眼瞼または眼球組織もしくは流体などの前(すなわち、眼の前部)眼領域または部位に影響を及ぼすかまたはそれを含む疾患、病気または状態である。したがって、前眼部の状態は、結膜、角膜、前眼房、虹彩、後眼房(網膜の後ろであるが、水晶体嚢の後壁の前)、水晶体または水晶体嚢、ならびに前眼部領域または部位を血管新生または神経支配する血管および神経に主に影響を及ぼすか、またはそれらに関与する。したがって、前眼部の状態は、例えば、無水晶体症、偽水晶体、非点収差、眼瞼痙攣、白内障、結膜疾患、結膜炎、角膜疾患、角膜潰瘍、ドライアイ症候群、眼瞼疾患、涙器疾患、涙道閉塞症、近眼、老眼、瞳孔障害、屈折障害、および斜視などの病気、病気または状態を含むことができる。緑内障治療の臨床的目標は、眼の前眼房における房水の高血圧を低下させる(すなわち、眼内圧を低下させる)ことであり得るため、緑内障はまた、前眼部状態であると考えることもできる。
【0135】
「後眼部症状」は、脈絡膜または強膜(水晶体嚢の後壁を通る平面の後方の位置にある)、硝子体、硝子体腔、網膜、視神経(すなわち視神経円板)、ならびに後眼部領域または部位を血管新生または神経支配する血管および神経などの後眼部領域または部位に主に影響を及ぼすかまたは関与する疾患、病気または症状である。したがって、後眼部症状は、例えば、急性黄斑神経網膜症;ベーチェット病;脈絡膜血管新生;糖尿病ブドウ膜炎;ヒストプラスマ症;真菌またはウイルスによる感染症などの感染症;急性黄斑変性症、非滲出性加齢性黄斑変性症および滲出性加齢性黄斑変性症などの黄斑変性症;黄斑浮腫、類嚢胞黄斑浮腫および糖尿病黄斑浮腫などの浮腫;多病巣性脈絡膜炎;後眼部または後眼部位に影響を及ぼす眼外傷;眼腫瘍;網膜中心静脈閉塞症、糖尿病性網膜症(増殖性糖尿病性網膜症を含む)、増殖性硝子体網膜症(PVR)、網膜動脈閉塞疾患、網膜剥離、ブドウ膜炎網膜疾患などの網膜障害;交感性眼炎;Vogt Koyanagi-Harada(VKH)症候群;ブドウ膜拡散;眼のレーザー処置によって引き起こされるかまたは影響される後眼部症状;光力学療法、光凝固、放射線網膜症、網膜上膜障害、網膜分枝静脈閉塞、前部虚血性視神経障害、非網膜症糖尿病網膜機能不全、色素性網膜炎、および緑内障によって引き起こされるかまたは影響される後眼部症状を含み得る。緑内障は、治療目標が網膜細胞または視神経細胞の損傷または喪失による視力喪失を予防するかまたは視力喪失の発生を低減すること(すなわち、神経保護)であるため、後眼部状態とみなすことができる。
【0136】
用語「生分解性ポリマー」は、インビボで分解するポリマー(単数または複数)をいい、ここで、経時的なポリマー(単数または複数)の分解は、治療剤の放出と同時にまたはその後に起こる。具体的には、ポリマーの膨潤を介して薬物を放出するように作用するメチルセルロースなどのヒドロゲルは、「生分解性ポリマー」という用語から特に除外される。用語「生分解性」および「生体内分解性」は、等価であり、そして本明細書中で交換可能に使用される。生分解性ポリマーは、ホモポリマー、共重合体、または2つより多くの異なるポリマー単位を含むポリマーであり得る。
【0137】
本明細書で使用される「治療する」、「治療すること」、または「治療」という用語は、眼の状態、眼の傷害もしくは損傷の低減もしくは消散もしくは予防、または傷害もしくは損傷した眼組織の治癒を促進することを指す。
【0138】
本明細書で使用される「治療有効量」という用語は、眼または眼の領域に著しい負のまたは有害な副作用を引き起こすことなく、眼の状態を処置する、または眼の傷害もしくは損傷を低減もしくは予防するのに必要とされる薬剤のレベルまたは量を指す。
【0139】
以下の非限定的な実施例は、例示的なものである。
【実施例
【0140】
実施例1
図1に概略的に示されているインプラントデバイスは、以下のようにして準備される。
【0141】
薬物層組成物は、薬物化合物(ネパフェナクまたは他の治療剤)をエチレン-酢酸ビニル(EVA)と混合することによって調製される。混合物を70℃で約30分間加熱する。
【0142】
次いで、EVA-治療剤組成物を、熱および圧力を加えてデバイス形状を確立することができる型に入れる。次いで、インプラントデバイスの構成におけるEVA-治療剤組成物層を、鋳型から取り出し、そして冷却する。酢酸ビニルフィルムをEVA-治療薬層の対向する側に配置する。介在する接着材料を使用して、層を固定することができる。シリコーン接着剤(例えば、BIO-PSA 7-4302、DOW CORNING)は、1つの好適な材料である。
【0143】
得られる多層インプラントデバイスは、好適には、直径(図1の寸法b)が8~10mmであり、全体の厚さ(図1の寸法a)が1.8~2.0mmである。インプラントデバイスは、好適には、厚さ0.050mmのLDPEバリア層に結合された0.065mmのEVAフィルムである外層を有する。ネパフェナクまたは他の治療剤は、0.45mmのEVAフィルムによって覆われた1.3mm厚のコアEVA層に含まれる。
【0144】
実施例2:さらなるインプラントデバイスの製造
好ましい多層移植デバイスを、上記実施例1の手順によって調製した。インプラントデバイス断面の写真を図3に示す。図3に示すように、インプラントデバイスは、5重量パーセントの治療薬を含む酢酸ビニルポリマーの内層を有する。450μmの酢酸ビニル(5%)層が、インプラントデバイス層の1つの表面に隣接し、低密度ポリエチレン(LDPE)層が、反対側の内層表面に当接する。外側の450μmの酢酸ビニル(5%)層がLDPE層をオーバーコートする。
【0145】
実施例3:乾燥AMDのマウスモデルにおけるネパフェナクを含有する多層眼用インプラントデバイスの投与
ヒドロキノンは、タバコの煙の酸化剤成分として知られている。ハイドロキノンで処置されたマウスは、ドライ型AMDのモデルとして使用され得ることが見出されている(Espinosa-Heidmann et al., Invest. Ophthal. Vis. Sci., 2006, 47-729)。老齢の雄マウス(>60週、n=4)に、0.8%ヒドロキノンを補充した高脂肪食(TD 88051;Harlan Teklad)を最低8週間与える。あるいは、ヒドロキノンを、代替モデルとして結膜下に4週間まで注射することができる。黄斑変性症の他のモデル(ApoEプロモーターの制御下でのY402H CFHトランスジェニック、Cc12-/-Cx3crl-/-マウス、Sod1-/-マウス、OXYラット、ならびに他の動物モデルを含む)もまた使用され得る。
【0146】
上記実施例1に記載されるような多層眼用移植デバイスを、処置されたマウスに投与する。インプラントデバイスは、円形で、直径2.0mmおよび厚さ1mmであり、3mgおよび5mgの用量のネパフェナクを含有する。
【0147】
齧歯類のテノン嚢下空間に試験インプラントデバイスを配置すると、試験物質の強膜上クリアランスがもたらされることが開示されている(Chan, Pridgen and Csaky, 2010, Exp. Eye Res. 90,501)。したがって、移植片の外科的配置は、テノン嚢下空間にデバイスを配置する前に結膜およびテノン嚢筋膜をできるだけ後方に切開することによって行われる。
【0148】
次いで、マウスをモニターして、組織学、網膜電図検査、または網膜色素上皮もしくは光受容体における遺伝子発現の変化を使用して眼を検査することによって、経時的な薬物の放出を決定する。薬物の存在を示す細胞の形態学的変化の確認は、黄斑変性症を処置するプロセスにおける、デバイスから周囲組織へのネパフェナクの移動におけるインプラントデバイスの有効性を示す。
【0149】
実施例4:投与プロトコル
1日目に、試験デバイス投与の前に、対象の眼を1%トロピカミドHClで散大させ、各対象にブプレノルフィン(およそ0.03mg/kg SQ)を投与する。対象は、20~50mg/kgケタミンおよび4~10mg/kgキシラジンIMを使用して注射のために鎮静されてもよく、眼は、局所5%ベタジン溶液を使用して無菌で準備され、続いて、滅菌洗眼液ですすぐことができる。次いで、0.5%プロパラカインHClを1滴適用する。上結膜をコリブリ鉗子で優しくつかみ、5mm結膜切開を縁に対して2~3mm後方に平行に行う。ウェスコットはさみを用いて、テノン嚢下空間を開き、上方を掘り進む。次いで、移植片をテノン嚢下空間に配置し、テノン嚢および結膜を、張力をかけずに8-0または9-0ナイロンで閉じる。投与のためにNACAを含む実施例1のインプラントを使用することができる。このプロセスは、反対側の眼に対して繰り返され得る。外科的処置の後、インプラントのデジタル写真を撮影し、1滴のネオマイシンポリミキシンB硫酸塩グラミシジン眼科用溶液またはオフロキサシンを眼表面に局所的に適用することができる。
【0150】
実施例5:黄斑変性症患者の治療。
患者は、加齢性黄斑変性に罹患していると診断される。
【0151】
上記実施例1に記載されているように、3mgの用量のネパフェナクを含有する4層眼用インプラントデバイス(円形、直径2.0mm、厚さ1.0mm)を提供する。インプラントデバイスは、テノン嚢下空間内の表面上皮の背後に配置される。眼瞼スペキュラムを配置し、移植デバイスを配置する領域上の結膜を通して結膜の放射状切開を行う。ウェスコット鋏を使用してテノン嚢の後方を切開し、インプラントデバイスを挿入する。結膜を、連続10-0ビクリル縫合糸を用いて再接近させる。
【0152】
均等物および範囲
当業者は、本明細書に記載される開示に従う特定の実施形態に対する多くの等価物を認識するか、または単なる慣用的な実験を使用して確認することができる。本開示の範囲は、上記の説明に限定されることを意図しておらず、むしろ添付の特許請求の範囲に記載されている通りである。
【0153】
引用された全ての情報源、例えば、本明細書に引用された参考文献、刊行物、データベース、データベースエントリー、および技術は、引用に明示的に記載されていなくても、参照により本出願に組み込まれる。引用された情報源と本出願との矛盾する記述の場合、本出願における記述が支配するものとする。
図1
図2
図3
【国際調査報告】