(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-30
(54)【発明の名称】合成原油の流れを精製するための方法
(51)【国際特許分類】
C07C 7/10 20060101AFI20240823BHJP
C08J 11/10 20060101ALI20240823BHJP
C07C 11/02 20060101ALI20240823BHJP
C07C 4/22 20060101ALI20240823BHJP
【FI】
C07C7/10
C08J11/10 ZAB
C07C11/02
C07C4/22
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024516475
(86)(22)【出願日】2022-09-16
(85)【翻訳文提出日】2024-03-13
(86)【国際出願番号】 EP2022075716
(87)【国際公開番号】W WO2023041680
(87)【国際公開日】2023-03-23
(32)【優先日】2021-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513277290
【氏名又は名称】オーエムファウ ダウンストリーム ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マシュタリーシュ、マティアス
【テーマコード(参考)】
4F401
4H006
【Fターム(参考)】
4F401AA08
4F401AA11
4F401AA13
4F401AA22
4F401AA24
4F401CA58
4F401CA67
4F401CA69
4H006AA02
4H006AB46
4H006AC91
4H006AD16
4H006BC51
4H006BC53
(57)【要約】
本発明は、合成原油の流れを供給する工程と、第1の精製された合成原油の流れを得るために、合成原油の流れを第1の温度で第1の水溶性洗浄液で洗浄する工程と、第2の精製された合成原油の流れを得るために、第1の精製された合成原油の流れを第2の温度で第2の水溶性洗浄液で洗浄する工程とを含み、前記第1の水溶性洗浄液は塩基性であり、前記第2の水溶性洗浄液は酸性であり、前記第2の温度は前記第1の温度よりも低いことを特徴とする合成原油の流れの精製方法に関する。本発明はさらに、合成原油の製造方法に関し、合成原油の流れ(1)を、好ましくは合成樹脂材料、特に合成樹脂廃棄物の解重合によって製造する工程、および合成原油の流れ(1)を本発明の方法にしたがって精製する工程を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成原油の流れ(1)を精製するための方法であって、
前記合成原油の流れを(1)の供給し、
第1の精製された合成原油の流れ(3)を得るために、前記合成原油の流れ(1)を第1の温度で第1の水溶性洗浄液(2)により洗浄し、
第2の精製された合成原油の流れ(5)を得るために、前記第1の精製された合成原油の流れ(3)を第2の温度で第2の水溶性洗浄液(4)により洗浄する、ことを含み、
前記第1の水溶性洗浄液(2)は塩基性であり、前記第2の水溶性洗浄液(4)は酸性であり、前記第2の温度は前記第1の温度よりも低いことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記第1の温度が95℃以上であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記合成原油の流れ(1)の前記第1の水溶性洗浄液(2)による洗浄が、平均洗浄時間を、少なくとも0.5分、好ましくは少なくとも1分、より好ましくは少なくとも2分、さらにより好ましくは少なくとも5分、最も好ましくは少なくとも12分で実施されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記合成原油の流れ(1)を前記第1の水溶性洗浄液(2)により洗浄することは、前記第1の精製された合成原油の流れ(3)を前記第2の水溶性洗浄液(4)により洗浄することよりも高い圧力で実行される、ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の水溶性洗浄液(2)のpH値が、8以上、好ましくは9以上、より好ましくは10以上、さらに好ましくは11以上、さらに好ましくは12以上、最も好ましくは13以上であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記第2の水溶性洗浄液(4)のpH値が6以下、好ましくは5以下、より好ましくは4以下、最も好ましくは3.5以下であることを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記合成原油の流れ(1)と前記第1の水溶性洗浄液(2)との体積混合比が、5:1から1:5であり、好ましくは2.5:1から1:2.5であり、さらに好ましくは1.5:1から1:1.5であることを特徴とする、請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記合成原油の流れ(1)の前記第1の水溶性洗浄液(2)による洗浄と、前記第1の精製された合成原油の流れ(3)の前記第2の水溶性洗浄液(4)による洗浄との間で、洗浄工程を実行しないことを特徴とする、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
さらに、第3の精製された合成原油の流れ(7)を得るために、前記第2の精製された合成原油の流れ(5)を第3の温度で第3の水溶性洗浄液(6)により洗浄することを含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記第3の水溶性洗浄液(6)のpH値が、3~13、好ましくは4~12、より好ましくは5~11、さらにより好ましくは6~10、さらにより好ましくは6.5~9、最も好ましくは7~8の範囲であることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第3の温度が、前記第1の温度より低いことを特徴とする、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
前記合成原油の流れ(1)の前記第1の水溶性洗浄液(2)による洗浄は、前記第2の精製された合成原油の流れ(5)の前記第3の水溶性洗浄液(6)による洗浄よりも高い圧力で行われることを特徴とする、請求項9から11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記第2の精製された合成原油の流れ(5)と前記第3の水溶性洗浄液(6)との体積混合比が、10:1~1:5であり、好ましくは5:1~1:2.5であり、さらに好ましくは2.5:1~1:1.5であることを特徴とする、請求項9から12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
合成原油の流れ(1)を生成し、好ましくは合成樹脂材料、特に合成樹脂廃棄物を解重合させ、
請求項1から13のいずれか1項に記載の方法による前記合成原油の流れ(1)を精製すること、を含む方法。
【請求項15】
前記合成樹脂材料が、ポリエチレン(PE)と、ポリプロピレン(PP)と、ポリスチレン(PS)と、ポリ塩化ビニル(PVC)と、ポリエチレンテレフタレート(PET)と、ポリアミド(PA)と、スチレン-アクリロニトリル(SAN)と、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)と、のうち少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成原油の流れを精製するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
合成原油は、シンクルードとも呼ばれることもあり、様々な方法から得ることができる。例えば、合成原油は、熱分解によってオイルシェールから得られるシェール油であり得る。別の供給源は、オイルサンド、特に瀝青から得られる炭化水素であり、これから合成原油をアップグレードすることによって得ることができる。さらに、合成原油は、合成樹脂材料、例えば合成樹脂廃棄物から、分解によって製造することもできる。
【0003】
合成原油には通常様々な不純物が含まれており、これらは精製方法や精製プラントに悪影響を及ぼし、特定の精製方法には原油が完全に不適当な状態になることがある。不純物の種類や含有量は、合成原油の入手源や方法によって大きく異なる可能性がある。
【0004】
WO 2020/020769 A1には、水溶性のアルカリ金属水酸化液の存在下で材料を加熱し、水素処理触媒の存在下で水素処理して、塩素含有量が低減された精製材料を得ることを含む、リサイクルまたは再生可能な有機材料の精製方法が記載されている。
【0005】
WO 2021/105326 A1には、液化合成樹脂廃棄物の処理のための方法が記載されている。この方法は、蒸気分解器の供給物を得るために、少なくとも200℃の温度で少なくとも7のpH値を有する水媒体による液化合成樹脂廃棄物の前処理、その後の水素処理および後処理を含む。
【0006】
WO 2014/165859 A1には、合成原油を処理するための方法および装置が記載されており、ここで合成原油は、酸性度レベルを低下させるために塩基性のプロセス水溶性洗浄液で洗浄される。本方法はまた、2つ以上の洗浄ステップを含んでもよい。
【0007】
油を精製または処理するためのさらなる方法は、US 9 045 698 B2、US 2006/144761 A1およびGB 590 635 Aに記載されている。
【0008】
しかしながら、従来から知られている精製方法は、しばしば複雑かつ/または不適当である。特に、不純物、例えば、中性化合物(エステル、アルデヒド、ケトン、有機ハロゲン化合物、アミド、ニトリルなど)や多環アミンは、不十分に、または全く除去されないことが多い。これは、例えば合成樹脂廃棄物から得られる合成原油の場合のように、不純物プロファイルが大きく変化し得る複雑な出発物質の場合に、特に問題となる。不適当に除去された不純物は、その後、精製原油のさらなる処理における問題をもたらし得る。もう1つの問題は、多くの精製処理中に観察されるプラント中の堆積物の形成であり、これがプラントの洗浄をより困難にし、効率的な操業を妨げている。
【発明の概要】
【0009】
したがって、合成原油の精製のための新しいまたは改良された方法が依然として必要である。本発明の目的は、そのような方法を提供することである。特に、本発明の目的は、不純物、特に酸性または塩基性化合物の形態の不純物だけでなく、中性化合物の、特に効率的で徹底的な除去を可能にする合成原油を精製するための方法を提供することである。本発明の別の目的は、精製処理の過程で堆積物の形成を最小限にすることである。他の目的は、可能な限り効率的で経済的な精製方法を提供することである。
【0010】
本発明によれば、この目的は、合成原油の流れを精製するための方法であって、以下のステップを含む方法によって達成される。
合成原油の供給;
第1の精製された合成原油の流れを得るために第1の温度で合成原油の流れを第1の水溶性洗浄液で洗浄し;第1の精製された合成原油の流れを第2の温度で第2の水溶性洗浄液で洗浄して第2の精製された合成原油の流れを得るために、第1の水溶性洗浄液は塩基性であり、第2の水溶性洗浄液は酸性であり、第2の温度は第1の温度より低い。
【0011】
さらなる態様において、本発明は、以下のステップを含む合成原油の製造方法に関する。
好ましくは合成樹脂材料、特に合成樹脂廃棄物の解重合による合成原油の流れの生成;および本発明による合成原油の流れの精製方法による合成原油の流れの精製。
【0012】
本発明の過程において、驚くべきことに、より高い温度で基本的な洗浄工程を行い、続いてより低い温度で酸性の洗浄工程を行うことが有利となった。驚くべき利点は、塩基性洗浄工程が酸性洗浄工程の前に実施されるという事実と、塩基性洗浄工程の温度が酸性洗浄工程よりも高いという事実の両方から生じる。
【0013】
洗浄ステップの順序に関して、驚くべきことに、酸性洗浄ステップの前に基本的な洗浄ステップを実行することは、堆積物のかなりの減少と同様により良い相分離をもたらすことができることが分かった。事前に基本的な洗浄工程を行わずに酸性洗浄工程を実施した場合、発明者らは、堆積物の形成を観察したが、これは主に堆積したワックスカルボン酸であることが判明した。ワックスカルボン酸は、例えば、20~75炭素原子間の鎖長を有する長鎖カルボン酸である。ワックスカルボン酸は、パラフィン性の非分岐鎖および分岐鎖に加えて、芳香族性、オレフィン性および異原子性の官能性を有していてもよい。ワックスカルボン酸は、多くの合成原油中に、特に熱分解油中に(例えば、合成樹脂の熱分解から)含有される。なぜなら、これらの化合物は、熱分解処理において、例えば、導入された酸素との反応から、または既に存在する機能性ポリマーもしくは添加剤によって、ますます形成され得るからである。合成原油中では、ワックスカルボン酸が塩として結合状態で存在することが多い。本発明の過程において、未再処理の合成原油の流れを酸性の水溶性洗浄液で処理すると、結合したワックスカルボン酸がプロトン化され、したがって放出され得ることが見出された。このようにして放出されたワックスカルボン酸は、一方では、不要な堆積物を堆積させ、形成することができ、他方で、放出されたワックスカルボン酸は、界面活性剤として作用し、混合相を形成することができ、または油相中の水、重金属および窒素化合物などの不要な化合物を結合することができることが示されている。また、除去されなかったワックスカルボン酸は、プラントに腐食をもたらし、その後の合成原油のさらなる処理において触媒毒として作用することもある。
【0014】
本発明の過程において、結合したワックスカルボン酸の放出および関連する問題は、酸性洗浄工程の前に塩基性洗浄工程を実施することによって低減され得ることが見出された。塩基性の水溶性洗浄液で洗浄する場合、ワックスカルボン酸は、主に脱プロトン状態で存在し、水相を介して除去することができるので、その後の酸性洗浄工程における悪影響が低減される。第1の水溶性洗浄液および第2の水溶性洗浄液での洗浄の本発明により提供されるシーケンスは、したがって、プラント中の堆積物の減少、より良好な相分離、したがって、不純物のより良好な除去、プラント中の腐食の減少、およびさらなる処理中の触媒の保護をもたらすことができる。
【0015】
さらに、高温で基本的な洗浄工程を行うために、ワックスカルボン酸の除去に有利であることが示されている。高温は、水相中のワックスカルボン酸のより良い溶解度をもたらす。したがって、合成原油の流れの第1の水溶性洗浄液による洗浄が70℃を超える温度で行われるならば、有利である。ワックスカルボン酸の多くの塩、特にアルカリ塩は、これらの温度で水に特によく溶解し、水相を介して特に効率的に除去することができるので、温度が95℃を超える場合に特に有利であることが判明した。
【0016】
従来、合成原油中の酸レベルを低減するためには、主に塩基性の水溶性洗浄液が使用されてきた。本発明の過程において、塩基性の水溶性洗浄液を使用して、エステル、アルデヒド、ケトン、有機ハロゲン化合物、アミドおよびニトリルなどの中性化合物を除去することさえできることが見出された。本発明による方法では、このような中性化合物は、第1の水溶性洗浄液によって加水分解することができる。塩基性の加水分解生成物は、塩基性洗浄の過程で除去される酸性化合物、例えばカルボン酸、ならびにその後の酸性洗浄工程で除去することができる塩基性化合物、例えばアミンを含む。
【0017】
これは、塩基性洗浄工程がより高い温度で実施される場合に、さらなる利点をもたらす。カルボン酸およびフェノールのような酸性化合物は、水溶性洗浄液で除去するために、塩基性洗浄の間に脱プロトン化されるだけでよいが、洗浄条件下で脱プロトン化され得ない中性化合物は、加水分解反応を受けなければならない。加水分解反応は温度に依存し、より高い温度でより速く進行する。そのため、基本的な洗浄ステップの温度が高くなると、中性化合物がより良く除去される。この文脈において、第1の水溶性洗浄液による合成原油の流れの洗浄が70℃を超える温度で行われるならば、それは好ましい。さらに高温、例えば95℃以上、特に100℃以上でさえ、中性化合物の除去に特に適していることが証明されている。
【0018】
塩基性洗浄工程から加水分解生成物を除去することに加えて、本発明による方法において提供される酸性の水溶性洗浄液での第1の精製された合成原油の流れの洗浄は、アミン、ピリジンおよび他の塩基性不純物などのさらなる塩基性化合物の除去を可能にする。その結果、特に多環アミンも効率的に除去できる。多環式アミンは、合成原油中、特に熱分解油中により多く存在することができる。それらは、例えば、窒素源、例えば、添加剤、またはポリアミド(PA)、ポリアクリロニトリル(PAN)またはアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)のようなポリマーの存在下で、亀裂処理で形成することができる。多環アミンの場合、それらは、例えば、重縮合-飽和、モノ-およびポリ不飽和または芳香族環系であってもよい。それらは、合成原油中に部分的に溶解するか、またはコロイド領域に浮遊させることができ、しばしば望ましくない堆積物を生じ、かくして、プラントのより困難な洗浄をもたらす。さらに、それらは、その後の適用における触媒の活性表面のブロッキングを導くことができる。さらに、それらは、塩、塩化物、重金属または硫化物などの望ましくない化合物を有機生成物相に溶解させることができる。多環式アミンは、本発明による方法によって効率的に除去することができることが見出された。多環式アミンの除去のために、酸性洗浄工程が少なくとも20℃の温度で行われる場合が有利であることが証明された。この除去は、温度が少なくとも50℃である場合に特に効率的である。
【0019】
しかしながら、発明の過程において、酸性洗浄工程における温度が高すぎない、特に基本的な洗浄工程における温度より低い場合には、驚くほど有利であることが証明された。したがって、酸性洗浄工程における高温は、生成物回収率の減少ならびに不純物の形成をもたらし得ることが見出された。発明者の見解では、理論に束縛されるものではないが、これは、オレフィンと使用される酸との反応によって、例えば、ヒドロキシスルホン化または硫酸との硫酸化によって、または他の酸との反応によって説明することができる。アルコール、スルホン酸塩、硫酸塩、ヒドロキシスルホン酸塩は不純物として生成することがあり、これは堆積物をもたらし、したがってより困難な洗浄や腐食を招くことがある。したがって、酸性洗浄ステップを120℃以下の温度で実施することが有利であることが証明された。特に、温度が100℃以下、さらに好ましくは95℃以下である場合、これらの悪影響を最小限に抑えることができる。
【0020】
酸性洗浄ステップにおけるより低い温度の更なる利点は、洗浄装置の材料に対する要求が著しく低いことである。高温での酸性の溶液の存在は、多くの場合、特殊な材料またはコーティングの使用を必要とし、これはコストの顕著な増加を招くであろう。
【0021】
本発明による方法における一連の洗浄工程のさらなる利点は、特に、塩基性および酸性洗浄工程が連続方法の一部である好ましい実施形態に関連して、本方法が特に経済的に実施され得ることである。合成原油は通常、高温の処理、例えば、熱分解または分解から得られる。本発明による製造方法がこのような処理の下流にある場合、基本的な洗浄ステップが酸性洗浄ステップの前に実施されていれば、合成原油の流れの加熱は必要とされない。製造方法から得られた合成原油の流れは、第1の温度まで直接または冷却後に第1の水溶性洗浄液で洗浄することができ、それから得られた第1の精製された合成原油の流れは、さらに第2の温度まで冷却された後に第2の水溶性洗浄液で洗浄することができる。合成原油の流れを洗浄ステップ間で加熱する必要がないという事実により、この方法は特に経済的かつ効率的に実施することができる。したがって、本発明による方法に関連して、合成原油の流れが、第1の温度での洗浄と第2の温度での洗浄との間で加熱されない場合、特に好ましい。
【0022】
本発明による方法の好ましい実施形態において、第1の温度は、70℃以上、好ましくは80℃以上、より好ましくは90℃以上、より好ましくは95℃以上、更に好ましくは100℃以上、更に好ましくは105℃以上、更に好ましくは110℃以上、更に好ましくは115℃以上、更に好ましくは120℃以上、更に好ましくは125℃以上、更に好ましくは130℃以上、最も好ましくは135℃以上である。このような高い第1の温度を提供することは、合成原油の流れ中に存在するワックスカルボン酸がより良好に溶解することができ、塩基性洗浄によって除去することができるという利点を有する。高温の第1の温度のさらなる利点は、塩基性の加水分解反応が特に迅速に進行し、したがって中性化合物を特に良好に除去することができることである。第1の温度が、70℃から190℃の範囲、好ましくは80℃から180℃、より好ましくは90℃から170℃、さらに好ましくは95℃から165℃、さらにより好ましくは100℃から160℃、さらに好ましくは105℃から155℃、さらにより好ましくは110℃から150℃、最も好ましくは115℃から145℃である場合に特に好ましい。
【0023】
本発明による方法の好ましい実施形態において、第2の温度は、120℃以下、好ましくは110℃以下、より好ましくは100℃以下、さらに好ましくは95℃以下、さらに好ましくは90℃以下、さらに好ましくは80℃以下、最も好ましくは75℃以下である。このようなより低い温度を提供することは、不純物の形成を減少させることができ、製品歩留まりを増加させることができるという利点を有する。より低い温度の追加の利点は、洗浄装置がより過酷な条件にさらされ、したがってより安価な材料または材料被覆を必要とすることである。同時に、アミンおよびピリジンのような塩基性化合物は、プロトン化のみであるが、中性化合物とは対照的に、これらの化合物を除去するために加水分解反応を必要としないので、依然として効率的に除去することができる。第2の温度が、20℃~120℃の範囲、好ましくは30℃~110℃の範囲、より好ましくは40℃~100℃の範囲、さらに好ましくは50℃~90℃の範囲、さらにより好ましくは60℃~80℃の範囲、さらにより好ましくは65℃~75℃の範囲にある場合に特に好ましい。これは、一方で、温度が不純物の形成を最小限に抑えるのに十分低いという利点を有し、他方で、温度は、特に多環アミンを効率的に除去するのに十分高いという利点を有する。
【0024】
好ましい実施形態では、合成原油の流れの第1の水溶性洗浄液による洗浄は、少なくとも0.5分、好ましくは少なくとも1分、より好ましくは少なくとも2分、さらにより好ましくは少なくとも5分、最も好ましくは少なくとも12分の平均洗浄時間で実施される。塩基性洗浄のためのより長い洗浄時間を提供することは、加水分解反応のより完全な進行を可能にし、その結果、中性化合物をさらに良好に除去することができる。特に、平均洗浄持続時間が、0.5~180分、好ましくは1~120分、より好ましくは2~60分、さらに好ましくは5~30分、最も好ましくは12~20分である場合に好ましい。
【0025】
平均洗浄持続時間は、合成原油の流れを第1の水溶性洗浄液と接触させ、第1の精製された合成原油の流れを第1の水溶性洗浄液から分離する間の平均時間であることが好ましい。洗浄が連続処理で実施される場合、平均洗浄持続時間は、例えばミキサーセトラーにおける洗浄装置の平均滞留時間に対応することが好ましい。
【0026】
好ましい実施形態では、合成原油の流れの第1の水溶性洗浄液による洗浄は、第1の精製された合成原油の流れの第2の水溶性洗浄液による洗浄よりも高い圧力で行われる。基本的な洗浄中により高い圧力を提供することは、より高い温度を可能にし、したがって、不十分に可溶性のワックスカルボン酸並びに中性化合物のより良好な除去を可能にする。対照的に、酸性洗浄においては、より低い圧力が有利である。何故ならば、不要な不純物の形成を減らすことができ、また、材料の要件がより低くなるので、かなりのコスト削減をもたらすことができるからである。
【0027】
好ましい実施形態では、少なくとも合成原油の流れの第1の水溶性洗浄液による洗浄は、圧力容器で行われる。圧力容器を設けることにより、より高い圧力および温度での洗浄が可能となり、したがって、中性化合物だけでなく、不十分に可溶性のワックスカルボン酸のより良好な除去が可能となる。
【0028】
好ましくは、合成原油の流れの第1の水溶性洗浄液による洗浄は、2bar以上、好ましくは3bar以上、より好ましくは5bar以上、さらに好ましくは7bar以上、最も好ましくは10bar以上の圧力で行われる。言及したように、このような高い圧力を提供することは、高温と、中性化合物だけでなく、不十分に可溶性のワックスカルボン酸の良好な除去とを可能にする。第1の水溶性洗浄液による合成原油の流れの洗浄が、2barから50bar、好ましくは3barから35bar、より好ましくは5barから25bar、さらに好ましくは7barから20bar、最も好ましくは10barから18barの範囲の圧力で行われる場合に、特に好ましい。
【0029】
好ましくは、第1の精製された合成原油の流れの第2の水溶性洗浄液による洗浄は、12bar以下、好ましくは7bar以下、より好ましくは6bar以下、さらに好ましくは5bar以下の圧力で行われる。言及したように、このようなより低い圧力を提供することは、より安価な材料の使用を可能にする。第1の精製された合成原油の流れの第2の水溶性洗浄液による洗浄が、1barから12barまでの範囲の圧力、好ましくは1.5barから7barまで、より好ましくは2barから6barまで、さらに好ましくは3barから5barまでの範囲の圧力で行われる場合に、特に好ましい。
【0030】
本発明の範囲において、第1の水溶性洗浄液のpH値が8以上、好ましくは9以上、より好ましくは10以上、さらに好ましくは11以上、さらに好ましくは12以上、最も好ましくは13以上であれば、特に有利であることが証明された。このような高いpH値を与えると加水分解反応が促進され、それによって中性化合物を特に良く除去できる。第1の水溶性洗浄液のpH値が、8~14、好ましくは9~13、より好ましくは9.5~12、最も好ましくは10~11の範囲である場合、特に好ましい。
【0031】
好ましい実施形態において、前記第1の水溶性洗浄液は水酸化ナトリウムを含む。水酸化ナトリウムの濃度が0.5~10wt%の間、特に1~5wt%の間であるならば、特に好ましい。
【0032】
第1の精製された合成原油の流れを第2の水溶性洗浄液で洗浄することに関して、第2の水溶性洗浄液のpH値が6以下、好ましくは5以下、より好ましくは4以下、さらに好ましくは3以下、さらに好ましくは2以下、最も好ましくは1以下であれば特に有利であることが分かった。これにより、例えばアミンやピリジンなどの塩基性不純物を特に効率的に除去することができる。第2の水溶性洗浄液のpH値が0~6、好ましくは1~5、より好ましくは2~4、最も好ましくは2.5~3.5の範囲である場合に特に好ましい。
【0033】
好ましい実施形態において、前記第2の水溶性洗浄液は硫酸を含む。硫酸の濃度は、0.5~10重量%、特に1~5重量%であることが好ましい。
【0034】
合成原油の流れと第1の水溶性洗浄液との容積混合比が5:1から1:5、好ましくは2.5:1から1:2.5、さらに好ましくは1.5:1から1:1.5であれば有利であることが証明された。このような混合比は、ワックスカルボン酸の特に効率的な除去および中性化合物の加水分解の両方、ならびにさらなる酸性不純物の特に効率的な除去を可能にする。
【0035】
有利には、第1の精製された合成原油の流れと第2の水溶性洗浄液との間の容量混合比は、10:1から1:5まで、好ましくは5:1から1:2.5まで、さらに好ましくは2.5:1から1:1.5までである。このような混合比により、特に効率的に塩基性不純物を除去することができる。
【0036】
また、本発明による方法は、さらなる洗浄ステップを受けることができる。例えば、第1の精製された合成原油の流れは、第2の水溶性洗浄液による洗浄が行われる前に、さらなる洗浄または精製工程を受けることが可能である。しかしながら、第1の水溶性洗浄液による合成原油の流れの洗浄と、第2の水溶性洗浄液による第1の精製された合成原油の流れの洗浄との間に、さらなる精製工程が行われない場合、特に、洗浄工程なし、濾過工程なし、および/または水素処理工程なしが好ましい。このことは、とりわけ、塩基性加水分解によって中性化合物から形成される塩基性生成物が、塩基性洗浄工程の直後の酸性洗浄工程で除去できるという利点がある。
【0037】
好ましくは、本発明による方法は、いかなる濾過工程も含まない。濾過工程を避けることは、特に単純で経済的な方法につながる。濾過工程は、特に、合成原油の流れの塩基性の水溶性洗浄液による洗浄がより高い温度で実施される理由のために回避され得る。これにより、特にワックスカルボン酸を効率的に除去することができ、低温ではしばしばより不十分に溶解し、除去が不十分な場合は濾過を必要とすることがある。
【0038】
本発明による方法はまた、不純物の追加の除去のための水素処理工程を含むことができる。しかし、本発明による方法が水素処理工程を含まない場合には好ましい。水素処理工程を回避することは、特に単純で経済的な精製処理をもたらす。本発明により提供される洗浄工程は、水素処理工程が全く提供されなくても、不純物の特に良好な除去を可能にする。
【0039】
特に好ましい実施形態では、本発明による方法は、第3の精製された合成原油の流れを得るために、第2の精製された合成原油の流れを第3の温度で第3の水溶性洗浄液で洗浄する工程をさらに含む。このようなさらなる洗浄工程を提供することにより、塩基性および酸性洗浄工程の後に依然として存在し得る不純物の特に徹底的な除去が可能になる。
【0040】
これに関連して、第3の水溶性洗浄液のpH値が、3~13、好ましくは4~12、より好ましくは5~11、さらにより好ましくは6~10、さらにより好ましくは6.5~9、最も好ましくは7~8の範囲である場合、特に好ましい。この範囲のpH値は、無機および有機塩と同様に、小さな極性中性分子の除去に特に有効である。第3の水溶性洗浄液が塩基性であるか、または実質的に中性であり、特に実質的に中性である場合に特に有利である。
【0041】
好ましい実施形態では、第3の水溶性洗浄液は、中性アミンを含む。これは、続くプラントをより良く保護できる利点がある。
【0042】
好ましい実施形態では、第3の温度は第1の温度よりも低い。これにより、原油の流れを第3の水溶性洗浄液で洗浄する前に加熱する必要がなく、効率的かつ経済的に方法を実施することができる。
【0043】
好ましくは、第3の温度は、120℃以下、好ましくは110℃以下、より好ましくは100℃以下、さらに好ましくは90℃以下、さらに好ましくは80℃以下、最も好ましくは75℃以下である。第3の温度が20℃から120℃の範囲、好ましくは30℃から110℃、より好ましくは40℃から100℃、更に好ましくは50℃から90℃、更に好ましくは60℃から80℃、更に好ましくは65℃から75℃である場合に特に好ましい。
【0044】
第1の水溶性洗浄液による合成原油の流れの洗浄を、第2の精製された合成原油の流れの第3の水溶性洗浄液による洗浄よりも高い圧力で行うと有利であることが証明されている。基本的な洗浄中により高い圧力を提供することは、より高い温度を可能にし、したがって、中性化合物だけでなく、不十分に可溶性のワックスカルボン酸のより徹底的な除去を可能にする。しかしながら、第3の水溶性洗浄液で洗浄する場合、より低い圧力が有利であり、その理由は、これが、使用される材料の要件を減少させ、それが、かなりのコスト削減をもたらし得るからである。
【0045】
好ましい実施形態において、前記第2の精製された合成原油の流れの前記第3の水溶性洗浄液による洗浄は、12bar以下、好ましくは10bar以下、より好ましくは8bar以下、さらに好ましくは7bar以下の圧力で行われる。1bar~12barの範囲の圧力、好ましくは1.5bar~10bar、より好ましくは2bar~8bar、さらに好ましくは3bar~7barの範囲の圧力が特に好ましい。
【0046】
第2の精製された合成原油の流れと第3の水溶性洗浄液との容積混合比が10:1~1:5、好ましくは5:1~1:2.5、さらに好ましくは2.5:1~1:1.5であれば有利であることが証明された。このような混合比により、残存不純物の特に効率的な除去が可能となる。
【0047】
本発明に関連して、合成原油の流れを精製する処理が連続処理である場合に好ましい。バッチ処理と比較して、これはより高い生産性とより短いダウンタイムが達成されるという利点を有する。好ましくは、合成原油の流れを第1の水溶性洗浄液で洗浄する工程、第1の精製された合成原油の流れを第2の水溶性洗浄液で洗浄する工程、および提供される場合、第2の精製された合成原油の流れを第3の水溶性洗浄液で洗浄する工程は、したがって、連続処理の一部である。また、合成原油を製造する本発明による方法が連続処理である場合、すなわち、合成原油の流れの、好ましくは合成樹脂材料の解重合による製造もまた、連続処理の一部である場合にも好ましい。連続処理を提供することは、特に、生産方法から得られる合成原油の流れを第1の温度まで直接または冷却後に第1の水溶性洗浄液で洗浄することができ、または第1の精製された合成原油の流れを第1の温度から第2の温度まで冷却後に第2の水溶性洗浄液で洗浄することができるので、合成原油の流れの加熱を回避できるという利点を有する。
【0048】
典型的には、原油の流れを水溶性洗浄液で洗浄することは、原油の流れを水溶性洗浄液と混合し、その後、精製された原油の流れを水溶性洗浄液から分離することを含む。
【0049】
好ましくは、本発明による方法の洗浄工程は、メカニカルミキサー中、スタティックミキサー中および/またはミキサーセトラー中で実施される。本発明による処理の洗浄ステップがそれぞれミキサーセトラーで行われるならば、特に有利であることが証明されている。典型的には、ミキサーセトラーは、連続的に操作される混合ゾーンおよび連続的に操作されるセトリングゾーンを含み、したがって、合成原油の流れをそれぞれの水溶性洗浄液と混合することを可能にし、並びに相を分離し、精製された合成原油の流れを連続的な処理で分離するその後のセトリング処理を可能にする。
【0050】
本発明に関連して、「合成原油の流れ」は、好ましくは、合成原油または合成原油の留分を含む物質の流れを意味する。合成原油の流れは、合成原油またはその留分からなることが好ましい。本発明の範囲において、合成原油の流れが、熱分解油またはその留分を含み、特にからなる場合が特に好ましい。好ましくは、熱分解油は、バイオマス、特に木材および/または合成樹脂から得られる熱分解油である。本発明による方法は、合成原油の流れが、バイオマスまたは合成樹脂材料、特に合成樹脂材料の解重合から得られる炭化水素混合物である場合に特に適切であることが証明されている。したがって、合成原油の流れは、合成樹脂熱分解物またはその画分、またはバイオマス熱分解物、特に木質熱分解物またはその画分であることが好ましい。しかし、本発明による方法は、他の合成原油およびその留分にもよく適している。さらなる好ましい態様において、合成原油の流れは、好ましくは、シェール油または改質された瀝青からなる。
【0051】
したがって、合成原油を製造するための本発明による方法に関連して、合成原油の流れが合成樹脂材料、好ましくは合成樹脂廃棄物の解重合によって製造される場合が好ましい。当業者は、合成樹脂材料の解重合による合成原油の流れの製造に精通している。このような処理は、例えば、WO 2012/149590 A1およびUS 6,060,631 Aから知られている。
【0052】
合成樹脂材料から得られる合成原油は、典型的には、多くの異なる不純物、特に、ワックスカルボン酸、多環式アミンおよび中性化合物も含有し、これらは、本発明による方法によって特に良好に除去することができる。これは特に合成樹脂廃棄物に当てはまる。通常は、様々な合成樹脂の混合物を含む。さらに、合成樹脂材料は、典型的には、有機リン酸塩またはホスホン酸塩の形態の不純物をもたらし得る添加剤を含有する。このようなホスフェートまたはホスホネートは、本発明による方法において塩基性条件下で加水分解することができ、したがって特に効率的に除去することができる。
【0053】
好ましい実施形態では、合成樹脂材料は、ポリエチレン(PE)と、ポリプロピレン(PP)と、ポリスチレン(PS)と、ポリ塩化ビニル(PVC)と、ポリエチレンテレフタレート(PET)と、ポリアミド(PA)と、スチレン-アクリロニトリル(SAN)と、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)と、のうち少なくとも1つを含む。本発明による方法は、上記の合成樹脂材料から生じる不純物を除去するのに特に適していることが判明している。
【0054】
合成樹脂材料がPVCを含む場合は特に好ましい。これは、典型的には、合成樹脂材料から得られる原油の流れ中の有機塩素化合物の形態の不純物をもたらす。有機塩素化合物は、第1の水溶性洗浄液での洗浄の過程で塩基性加水分解によって特に良好に除去することができる。
【0055】
また、合成樹脂材料がPETを含む場合に特に好ましい。これは、典型的には、合成樹脂材料から得られる原油の流れ中にエステル化合物の形態の不純物をもたらし、これはまた、第1の水溶性洗浄液での洗浄の過程で塩基性加水分解によって特に良好に除去することができる。
【0056】
特に、合成樹脂材料がPA、SAN、および/またはABSを含む場合が好ましい。これらの合成樹脂材料は、典型的には、アミドおよびニトリルの形態の不純物をもたらす。本発明による方法の過程において、これらの化合物はまた、第1の水溶性洗浄液による洗浄の過程において加水分解され得る。塩基性加水分解から形成された塩基性化合物、特にアミンは、その後の酸性の水溶性洗浄液による洗浄において効率的に除去することができる。PA、SANおよびABSは窒素源としての役割も果たすことができ、再配列反応、凝縮反応および/または例えばPE、PPおよびPSとのラジカル反応を通しての多環アミンの生成の増加に寄与する。これらは、本発明により提供される酸性の水溶性洗浄液で洗浄することにより効率的に除去することができる。
【0057】
ここに言及する全てのパラメータは、特に指示がない限り、IUPAC (「標準周囲温度と圧力」)によるSATP条件、特に温度25℃、圧力101,300Paを指す。
【0058】
ここでは、全てのパーセント(%)は、別段の指示がない限り、重量パーセントを指す。
【0059】
別段の指示がない限り、ここで指定するすべての混合比は体積混合比、すなわち対体積比(volume:volume)を指す。
【0060】
洗浄工程のために本明細書中で特定される温度は、好ましくは、それぞれの場合において、混合直後および相分離前の原油の流れおよび水溶性洗浄液の混合物の温度をいう。
【0061】
本発明は、以下の図によって例示されるが、もちろん、それに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【
図1】
図1は、合成原油を製造する本発明による処理の好ましい実施形態の処理フロー図を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0063】
図1に示す実施形態では、合成原油の流れ1は合成樹脂材料の解重合によって得られる。合成樹脂材料は押出機12で圧縮され、脱気され、溶融される。押出機12を出る合成樹脂溶融物は、スタティックミキサー13で、外部溶媒14、好ましくは重質燃料油、および/または、合成樹脂溶融物の粘度を下げるために、リサイクル流れ15として再循環されるすでに分解された合成樹脂材料と混合される。得られた混合物は、合成樹脂材料が、好ましくは400℃~440℃の温度で解重合される解重合反応器16に導入される。亀裂が入った合成樹脂材料は、カラム17の最上部の製品として得られる。さらなるカラム19でガス流18を分離した後、合成原油の流れ1が得られる。
【0064】
図示の実施形態において、合成原油の流れ1は、好ましくは1:1の体積混合比で、第1のミキサーセトラー8の混合ゾーンにおいて第1の水溶性洗浄液2と混合される。第1の水溶性洗浄液2は、pH値が9~12の水酸化ナトリウム溶液であることが好ましい。合成原油の流れ1と第1の水溶性洗浄液2との混合物は、少なくとも95℃の温度を有することが好ましい。合成原油の流れ1は製造処理からミキサーセトラー8に直接供給されるので、この温度に達するのに加熱は不要である。特に高温は、塩基性pH値により脱プロトン化形成で水相に入るワックスカルボン酸の水溶性を改善する。さらに、高温は中性化合物の形成で不純物の加水分解を助長する。酸性の加水分解生成物、例えばカルボン酸は、塩基性pH値のため脱プロトン化され、また帯電化合物として水相へと通過する。その結果、精製された油相は、第1のミキサーセトラー8の沈降ゾーンで水相から分離される。第1のミキサーセトラー8における平均滞留時間は5~30分が好ましい。水相は廃水流11の一部として除去され、油相は第1の精製された合成原油の流れ3として分離される。
【0065】
このようにして得られた第1の精製された合成原油の流れ3は、次いで、第2のミキサー-セトラー9中で第2の水溶性洗浄液4と混合される。第2の水溶性洗浄液4は、pH値が0~5の硫酸水溶性洗浄液であるのが好ましい。また、第1の精製された合成原油の流れ3と第2の水溶性洗浄液4との混合物の温度は、第1の洗浄工程における混合物の温度よりも低く、好ましくは90℃以下である。第2の洗浄工程におけるより低い温度は、付加的な不純物の形成を減少させ、生成物回収率を増加させる。さらに、第2のミキサーセトラー9の材料に対する要求はより低く、特に、高価な材料およびコーティングを必要としない。さらに、第2の洗浄は、より低い圧力で実施することができ、これは、次に、使用される材料に対するより低い要件につながる。特に、アミンまたはピリジンのような塩基性不純物は、酸性の水溶性洗浄液で洗浄することによってプロトン化され、したがって、荷電化合物として水相に通過する。さらに、残った中性化合物も酸性条件下で加水分解できる。続いて、精製された油相は、第2のミキサーセトラー9の沈降ゾーンにおいて水相から再び分離され、水相は廃水流11を介して除去され、第2の精製された合成原油の流れ5が油相から得られる。
【0066】
図示の実施形態において、第2の精製された合成原油の流れ5は、第3のミキサーセトラー10において第3の水溶性洗浄液6で洗浄される。第3の水溶性洗浄液6は、中性の水溶性洗浄液であることが好ましく、本質的に水であることが好ましい。この洗浄工程における温度は、好ましくは、第2の洗浄工程の温度に対応するか、またはそれ以下である。この洗浄工程では、不純物が除去され、その一部は、最初の2つの洗浄工程後に依然として存在し得る(例えば、酸性の加水分解生成物、小さな極性中性分子、ならびに無機および有機塩)。中性洗浄はまた、それから得られる第3の精製された合成原油の流れ7のさらなる使用に関して安全性を高める。洗浄後、水相は廃水流11の一部として再び除去され、第3の精製された合成原油の流れ7が油相から得られる。
【手続補正書】
【提出日】2023-06-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成原油の流れ(1)を精製するための方法であって、
前記合成原油の流れを(1)の供給し、
第1の精製された合成原油の流れ(3)を得るために、前記合成原油の流れ(1)を第1の温度で第1の水溶性洗浄液(2)により洗浄し、
第2の精製された合成原油の流れ(5)を得るために、前記第1の精製された合成原油の流れ(3)を第2の温度で第2の水溶性洗浄液(4)により洗浄する、ことを含み、
前記第1の水溶性洗浄液(2)は塩基性であり、前記第2の水溶性洗浄液(4)は酸性であり、前記第2の温度は前記第1の温度よりも低
く、前記第1の温度は100℃以上であることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記第1の温度が
105℃以上であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記合成原油の流れ(1)の前記第1の水溶性洗浄液(2)による洗浄が、平均洗浄時間を、少なくとも0.5分、好ましくは少なくとも1分、より好ましくは少なくとも2分、さらにより好ましくは少なくとも5分、最も好ましくは少なくとも12分で実施されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記合成原油の流れ(1)を前記第1の水溶性洗浄液(2)により洗浄することは、前記第1の精製された合成原油の流れ(3)を前記第2の水溶性洗浄液(4)により洗浄することよりも高い圧力で実行される、ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の水溶性洗浄液(2)のpH値が、8以上、好ましくは9以上、より好ましくは10以上、さらに好ましくは11以上、さらに好ましくは12以上、最も好ましくは13以上であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記第2の水溶性洗浄液(4)のpH値が6以下、好ましくは5以下、より好ましくは4以下、最も好ましくは3.5以下であることを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記合成原油の流れ(1)と前記第1の水溶性洗浄液(2)との体積混合比が、5:1から1:5であり、好ましくは2.5:1から1:2.5であり、さらに好ましくは1.5:1から1:1.5であることを特徴とする、請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記合成原油の流れ(1)の前記第1の水溶性洗浄液(2)による洗浄と、前記第1の精製された合成原油の流れ(3)の前記第2の水溶性洗浄液(4)による洗浄との間で、洗浄工程を実行しないことを特徴とする、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
さらに、第3の精製された合成原油の流れ(7)を得るために、前記第2の精製された合成原油の流れ(5)を第3の温度で第3の水溶性洗浄液(6)により洗浄することを含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記第3の水溶性洗浄液(6)のpH値が、3~13、好ましくは4~12、より好ましくは5~11、さらにより好ましくは6~10、さらにより好ましくは6.5~9、最も好ましくは7~8の範囲であることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第3の温度が、前記第1の温度より低いことを特徴とする、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
前記合成原油の流れ(1)の前記第1の水溶性洗浄液(2)による洗浄は、前記第2の精製された合成原油の流れ(5)の前記第3の水溶性洗浄液(6)による洗浄よりも高い圧力で行われることを特徴とする、請求項9から11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記第2の精製された合成原油の流れ(5)と前記第3の水溶性洗浄液(6)との体積混合比が、10:1~1:5であり、好ましくは5:1~1:2.5であり、さらに好ましくは2.5:1~1:1.5であることを特徴とする、請求項9から12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
合成原油の流れ(1)を生成し、好ましくは合成樹脂材料、特に合成樹脂廃棄物を解重合させ、
請求項1から13のいずれか1項に記載の方法による前記合成原油の流れ(1)を精製すること、を含む方法。
【請求項15】
前記合成樹脂材料が、ポリエチレン(PE)と、ポリプロピレン(PP)と、ポリスチレン(PS)と、ポリ塩化ビニル(PVC)と、ポリエチレンテレフタレート(PET)と、ポリアミド(PA)と、スチレン-アクリロニトリル(SAN)と、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)と、のうち少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【手続補正書】
【提出日】2024-05-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成原油の流れ(1)を精製するための方法であって、
前記合成原油の流れを(1)の供給し、
第1の精製された合成原油の流れ(3)を得るために、前記合成原油の流れ(1)を第1の温度で第1の水溶性洗浄液(2)により洗浄し、
第2の精製された合成原油の流れ(5)を得るために、前記第1の精製された合成原油の流れ(3)を第2の温度で第2の水溶性洗浄液(4)により洗浄する、ことを含み、
前記第1の水溶性洗浄液(2)は塩基性であり、前記第2の水溶性洗浄液(4)は酸性であり、前記第2の温度は前記第1の温度よりも低く、前記第1の温度は100℃以上であることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記第1の温度が105℃以上であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記合成原油の流れ(1)の前記第1の水溶性洗浄液(2)による洗浄が、平均洗浄時間を、少なくとも0.5
分で実施されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記合成原油の流れ(1)を前記第1の水溶性洗浄液(2)により洗浄することは、前記第1の精製された合成原油の流れ(3)を前記第2の水溶性洗浄液(4)により洗浄することよりも高い圧力で実行される、ことを特徴とする請求項1
または2に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の水溶性洗浄液(2)のpH値が、8以
上であることを特徴とする、請求項1
または2に記載の方法。
【請求項6】
前記第2の水溶性洗浄液(4)のpH値が6以
下であることを特徴とする、請求項1
または2に記載の方法。
【請求項7】
前記合成原油の流れ(1)と前記第1の水溶性洗浄液(2)との体積混合比が、5:1から1:
5であることを特徴とする、請求項1
または2に記載の方法。
【請求項8】
前記合成原油の流れ(1)の前記第1の水溶性洗浄液(2)による洗浄と、前記第1の精製された合成原油の流れ(3)の前記第2の水溶性洗浄液(4)による洗浄との間で、洗浄工程を実行しないことを特徴とする、請求項1
または2に記載の方法。
【請求項9】
さらに、第3の精製された合成原油の流れ(7)を得るために、前記第2の精製された合成原油の流れ(5)を第3の温度で第3の水溶性洗浄液(6)により洗浄することを含む、請求項1
または2に記載の方法。
【請求項10】
前記第3の水溶性洗浄液(6)のpH値が、3~1
3の範囲であることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第3の温度が、前記第1の温度より低いことを特徴とする、請求項
9に記載の方法。
【請求項12】
前記合成原油の流れ(1)の前記第1の水溶性洗浄液(2)による洗浄は、前記第2の精製された合成原油の流れ(5)の前記第3の水溶性洗浄液(6)による洗浄よりも高い圧力で行われることを特徴とする、請求項
9に記載の方法。
【請求項13】
前記第2の精製された合成原油の流れ(5)と前記第3の水溶性洗浄液(6)との体積混合比が、10:1~1:
5であることを特徴とする、請求項
9に記載の方法。
【請求項14】
合成原油の流れ(1)を生成
し、
請求項1
または2に記載の方法による前記合成原油の流れ(1)を精製すること、を含む方法
。
【請求項15】
前記合成原油の流れ(1)が合成樹脂材料の解重合により生成されることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記合成樹脂材料が合成樹脂廃棄物であることを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記合成樹脂材料が、ポリエチレン(PE)と、ポリプロピレン(PP)と、ポリスチレン(PS)と、ポリ塩化ビニル(PVC)と、ポリエチレンテレフタレート(PET)と、ポリアミド(PA)と、スチレン-アクリロニトリル(SAN)と、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)と、のうち少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項
15に記載の方法。
【国際調査報告】