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特表2024-531861SGLT-2阻害剤を含む糖尿病性眼疾患の予防または治療用薬学的組成物
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  • 特表-SGLT-2阻害剤を含む糖尿病性眼疾患の予防または治療用薬学的組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-03
(54)【発明の名称】SGLT-2阻害剤を含む糖尿病性眼疾患の予防または治療用薬学的組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20240827BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240827BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20240827BHJP
   A61P 27/06 20060101ALI20240827BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20240827BHJP
   A61K 31/381 20060101ALI20240827BHJP
   A61K 31/351 20060101ALI20240827BHJP
   A61K 31/7048 20060101ALI20240827BHJP
   A61P 27/12 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
A61K45/00
A61P43/00 111
A61P27/02
A61P27/06
A61P9/10
A61K31/381
A61K31/351
A61K31/7048
A61P27/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023571133
(86)(22)【出願日】2022-08-29
(85)【翻訳文提出日】2023-11-14
(86)【国際出願番号】 KR2022012895
(87)【国際公開番号】W WO2023033483
(87)【国際公開日】2023-03-09
(31)【優先権主張番号】10-2021-0117133
(32)【優先日】2021-09-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0107682
(32)【優先日】2022-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523431132
【氏名又は名称】デウン セラピューティクス インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100179648
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 咲江
(74)【代理人】
【識別番号】100222885
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 康
(74)【代理人】
【識別番号】100140338
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100227695
【弁理士】
【氏名又は名称】有川 智章
(74)【代理人】
【識別番号】100170896
【弁理士】
【氏名又は名称】寺薗 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100219313
【弁理士】
【氏名又は名称】米口 麻子
(74)【代理人】
【識別番号】100161610
【弁理士】
【氏名又は名称】藤野 香子
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【弁理士】
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】パク,サン ハン
(72)【発明者】
【氏名】カン,ボク キ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ドン ファン
(72)【発明者】
【氏名】カン,ミン ヒョン
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA17
4C084MA58
4C084NA14
4C084ZA33
4C084ZA36
4C084ZC20
4C084ZC41
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA07
4C086BB03
4C086EA11
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA58
4C086NA14
4C086ZA33
4C086ZA36
4C086ZC20
4C086ZC41
(57)【要約】
本発明は、SGLT-2(Sodium-glucose Cotransporter-2)阻害剤を含む糖尿病性眼疾患の予防または治療用薬学的組成物及びそれを用いた糖尿病性眼疾患の予防または治療方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
SGLT-2(Sodium-glucose Cotransporter-2)阻害剤を含む、糖尿病性眼疾患の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項2】
前記SGLT-2阻害剤は、エルツグリフロジン(Ertugliflozin)、イプラグリフロジン(Ipragliflozin)、ダパグリフロジン(Dapagliflozin)、エンパグリフロジン(Empagliflozin)及びトポグリフロジン(Tofogliflozin)からなる群から選ばれる少なくとも1つである、請求項1に記載の糖尿病性眼疾患の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項3】
前記SGLT-2阻害剤は、下記化1~化5からなる群から選ばれる少なくとも1つである、請求項1に記載の糖尿病性眼疾患の予防または治療用組成物。
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

【化5】
【請求項4】
前記糖尿病性眼疾患は糖尿病性網膜症、黄斑浮腫、白内障、緑内障及び麻痺性斜視からなる群から選ばれる少なくとも1つである、請求項1に記載の糖尿病性眼疾患の予防または治療用組成物。
【請求項5】
前記組成物は、点眼投与用である、請求項1に記載の糖尿病性眼疾患の予防または治療用組成物。
【請求項6】
請求項1に記載の組成物を個体に投与する段階を含む、糖尿病性眼疾患の予防または治療方法。
【請求項7】
前記投与する段階は点眼投与されるものである、請求項6に記載の糖尿病性眼疾患の予防または治療方法。
【請求項8】
SGLT-2(Sodium-glucose Cotransporter-2)阻害剤の糖尿病性眼疾患に対する予防または治療用途。
【請求項9】
前記SGLT-2阻害剤は、エルツグリフロジン(Ertugliflozin)、イプラグリフロジン(Ipragliflozin)、ダパグリフロジン(Dapagliflozin)、エンパグリフロジン(Empagliflozin)及びトポグリフロジン(Tofogliflozin)からなる群から選ばれる少なくとも1つである、請求項8に記載の用途。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SGLT-2(Sodium-glucose Cotransporter-2)阻害剤を含む糖尿病性眼疾患の予防または治療用薬学的組成物及びそれを用いた糖尿病性眼疾患の予防または治療方法に関する。
【背景技術】
【0002】
西欧型食生活などによって、糖尿病及びそれに伴う糖尿病性眼疾患による失明の割合がますます増加し、これに応じた医療費負担が増大している。
【0003】
糖尿病性眼疾患の1つである糖尿病性網膜症(Diabetic Retinopathy,DR)は、最も一般的な微小血管複合症であり、糖尿病患者及び生産可能な人口の視力損傷を引き起こす主な原因である。糖尿病性網膜症が進行するにつれて、糖尿病性網膜症の後期に新生血管が深刻な視力損傷を引き起こすが、血管漏水による黄斑浮腫は、糖尿病性網膜症のいずれの段階でも起こり、視力を損傷させることがある。
【0004】
特に、糖尿病性網膜症は、糖尿病がよく調節されて血糖が正常範囲で維持されても、糖尿病が発症してから10~15年になるとよく現れ、糖尿病患者において失明を引き起こす最大の原因疾患であり、世界3大失明リスク疾患として知られている。
【0005】
このような糖尿病性眼疾患の場合、失明リスクが非常に高いため、治療効果は高いが眼球に投与される治療剤の特性上、患者の拒否感があるため、患者の服薬の利便性まで考慮された治療剤が持続的に求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、SGLT-2阻害剤またはその薬学的に許容可能な塩を含む糖尿病性眼疾患の予防または治療用薬学的組成物を提供することである。
【0007】
本発明の他の目的は、前記薬学的組成物を個体に投与する段階を含む糖尿病性眼疾患の予防または治療方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記のような目的を達成するための本発明の一態様は、SGLT-2阻害剤またはその薬学的に許容可能な塩を含む糖尿病性眼疾患の予防または治療用薬学的組成物に関する。
【0009】
本発明において、「SGLT-2(Sodium-glucose cotransporter-2)阻害剤」は、腎臓近位尿細管においてSGLT-2を抑制することにより、ブドウ糖の再吸収を抑制する薬剤である。
【0010】
具体的には、前記SGLT-2阻害剤は、エルツグリフロジン(Ertugliflozin)、イプラグリフロジン(Ipragliflozin)、ダパグリフロジン(Dapagliflozin)、エンパグリフロジン(Empagliflozin)、トポグリフロジン(Tofogliflozin)及びその薬学的に許容可能な塩からなる群から選ばれる少なくとも1つであってもよいが、これに制限されるものではない。
【0011】
また、具体的には、前記エルツグリフロジンは、下記化1で表される。
【0012】
【化1】
【0013】
前記イプラグリフロジンは、下記化2で表される。
【0014】
【化2】
【0015】
前記ダパグリフロジンは、下記化3で表される。
【0016】
【化3】
【0017】
前記エンパグリフロジンは、下記化4で表される。
【0018】
【化4】
【0019】
前記トポグリフロジンは、下記化5で表される。
【0020】
【化5】
【0021】
本発明において、「糖尿病性眼疾患」とは、糖尿病によるあらゆる形態の眼疾患を意味し、概して目の奥に位置する網膜に栄養を供給する血管が弱くなり、老廃物が蓄積されるか、または出血が発生する。具体的には、前記糖尿病性眼疾患は、糖尿病性網膜症、黄斑浮腫、白内障、緑内障及び麻痺性斜視からなる群から選ばれる少なくとも1つであってもよいが、これに制限されるものではなく、糖尿病患者において発生する眼疾患または糖尿病による合併症のいずれかとして発生した眼疾患であれば、すべて含まれてもよい。
【0022】
糖尿病は、微小血管に病変を起こす代謝性疾患であり、糖尿病により高血糖状態が持続すると目の中の網膜の毛細血管が破壊され、新しい血管が作られるようになるが、このように生じた血管は出血しやすいため、網膜が分離することになる。これにより、目に行かなければならない栄養供給がスムーズにできず、結局、視神経の機能が低下する疾患である。
【0023】
糖尿病性網膜症であり、前記糖尿病性網膜症は、非増殖性網膜症と増殖性網膜症の両方を含む。
【0024】
前記「黄斑浮腫」は、網膜の中心部にある黄斑に浮腫が生じる疾患である。糖尿病によって黄斑内の血管が詰まると新生血管ができるが、この弱い血管から水や血が漏れ、溜まって黄斑浮腫が発生する。
【0025】
前記「緑内障」は、眼球の内部が維持している一定の圧力(眼圧)が高くなるなど、様々な危険要因によって視神経に異常が生じ、放置すると視野がますます狭くなり、失明に至る疾患である。緑内障は、糖尿病患者において正常人より3倍程度多く発生することが知られており、緑内障発生の最も主要な要素である眼圧が21mmHg以上に増加した場合も、糖尿病患者において正常人より2倍高いと報告されたことがある。
【0026】
前記「白内障」は、水晶体が混濁して透明性を失う病気で、糖尿病がある場合、正常に比べて白内障にかかる確率が5倍程度高く、全患者の約13%で白内障の所見を示す。白内障の発症年齢も糖尿病患者において比較的早く現れることが知られている。
【0027】
前記「麻痺性斜視」とは、脳から眼球を動かす筋肉に電気信号を伝達する過程に問題が生じて発生する斜視をいう。麻痺性斜視患者の36~42%は、糖尿病患者であり、糖尿病患者はそうでない人に比べて麻痺性斜視の頻度が6倍高い。糖尿病患者の場合、高血糖によって様々な異常な代謝過程が亢進するようになり、この過程で活性酸素、最終糖化産物など有害な物質が蓄積して神経及び血管損傷を引き起こす。このような血管損傷によって眼球を動かす筋肉を支配する神経に血液供給が低下して栄養供給が円滑にできなくなり、低酸素状態に陥って神経損傷が加速化し、糖尿による麻痺性斜視が発生することがある。
【0028】
本発明の組成物は、非経口投与されてもよく、具体的には、眼球に投与されるものであってもよい。特に、点眼投与用として点眼剤の形態であってもよい。
【0029】
また、具体的には、点眼投与用として1日1回投与されるものであってもよいが、これに制限されるものではない。
【0030】
本発明の一実施例では、SGLT-2阻害剤を含む組成物を点眼剤として点眼に投与し、糖尿病性眼疾患に対して優れた治療効果を示すことを確認した。特に、従来の眼疾患治療剤が硝子体内に注射を通じて投与されるのとは異なり、点眼剤として眼球に簡便に投与されたもので、服薬の利便性が大きく増大した効果があり、本発明の組成物は眼疾患治療に効果的に適用されてもよい。
【0031】
本発明において、「予防」とは、本発明の組成物が糖尿病性眼疾患の発生を遅らせるすべての行為を意味する。
【0032】
本発明において、「治療」とは、本発明の組成物が糖尿病性眼疾患の症状が好転または有利に変更されるようにするすべての行為を意味する。
【0033】
本発明の薬学的組成物は、薬学的に有効な量で適用されてもよく、「薬学的に有効な量」とは医学的治療に適用可能な合理的な受恵/危険比率で疾患を治療するのに十分な量を意味し、有効用量水準は、患者の性別、年齢、疾病の種類、重症度、薬物の活性、薬物に対する敏感度、投与時間、投与経路及び排出比率、治療期間、同時に使用される薬物を含む要素及びその他の医学分野でよく知られている要素によって決定されてもよい。
【0034】
本発明のさらに他の態様は、前記薬学的組成物を個体に投与する段階を含む、糖尿病性眼疾患の予防または治療方法に関する。
【0035】
本発明の「個体」は、本発明による薬学的組成物の投与によって症状が好転される糖尿病性眼疾患を有する動物またはヒトを含む。「糖尿病性眼疾患」は、前述の通りである。
【0036】
本発明による治療用組成物を個体に投与することにより、糖尿病性眼疾患を効果的に予防及び治療しうる。
【0037】
本発明の「投与」とは、何らかの適切な方法により、ヒトまたは動物に所定の物質を導入することを意味し、本発明による治療用組成物の投与経路は、目的組織に到達できる限り、いずれかの一般的な経路を通じて経口または非経口投与されてもよい。また、本発明による治療用組成物は、有効成分が標的細胞に移動できる任意の装置によって投与されてもよい。
【0038】
本発明による薬学的組成物の好ましい投与量は、患者の状態及び体重、疾患の程度、薬物形態、投与経路及び期間によって異なるが、当業者によって適切に選ばれてもよい。
【発明の効果】
【0039】
本発明のSGLT-2阻害剤またはその薬学的に許容可能な塩を含む薬学的組成物は、糖尿病性眼疾患に対して優れた治療効果を示すことができる。
【0040】
特に、硝子体内に注射を通じて投与される従来の治療剤とは異なり、点眼剤として1日1回眼球に簡便に点眼され、服薬の利便性が大きく増大した効果があり、注射による眼球組織及び細胞の損傷を防止しうる。
【0041】
本発明の効果は、前記効果に限定されるものではなく、本発明の詳細な説明または請求範囲に記載された発明の構成から推論可能なすべての効果を含むものと理解されなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1図1は、本発明の組成物投与後21日目の蛍光強度を測定した結果を示す。
図2図2は、本発明の組成物投与後21日目の眼底撮影写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。ただし、下記実施例は本発明を例示するものであり、本発明が下記実施例によって限定されるものではない。
【0044】
製造例1.SGLT-2阻害剤を含む点眼剤形の製造
ガラスバイアルに適量の注射用水と可溶化剤、浸透圧調節剤を秤量して投入した。その後、60℃以上に加温及び攪拌して完全に溶かした後、主成分の該当量を秤量してガラスバイアルに徐々に投入し、完全に溶かした。その後、水酸化ナトリウム及びリン酸ナトリウム二水和物を使用して適正なpH範囲である7レベルに調節した後、残りの適量の注射用水を投入した。製造した透明液を0.22μmサイズのフィルターで除菌ろ過して無菌化して充填した。
【0045】
主成分として以下のようなSGLT-2阻害剤のうち1つを使用し、その各濃度別組成は、下記の通りである。
【0046】
実施例1.エルツグリフロジン(Ertugliflozin)2.0%含有点眼剤
【0047】
【表1】
【0048】
実施例2.イプラグリフロジン(Ipragliflozin)1.0%含有点眼剤
【0049】
【表2】
【0050】
実施例3.ダパグリフロジン(Dapagliflozin)2.0%含有点眼剤
【0051】
【表3】
【0052】
実施例4.エンパグリフロジン(Empagliflozin)1.0%含有点眼剤
【0053】
【表4】
【0054】
実施例5.トポグリフロジン(Tofogliflozin)2.0%含有点眼剤
【0055】
【表5】
【0056】
比較例1.ビヒクル(vehicle)
各点眼剤の有効成分を除いた共通賦形剤の組み合わせを比較例1として製造して投与した。
【0057】
【表6】
【0058】
比較例2.ラニビズマブ(Ranibizumab)
陽性対照群としてルセンティス(LUCENTIS(R))を購入して投与した。
【0059】
実験例1.糖尿病性網膜症に対する薬理効果の確認
1-1.糖尿病性網膜症動物モデルの作製
Brown Norway rat,BN/SsN Slcを用いた。入手後14日の純化期間中に一般症状を観察して健康状態を確認し、健康な雄36匹を実験に使用した。
【0060】
ラット(rat)は、温度23±3℃、相対湿度55±15%、換気回数10~20回/hr、照明時間12時間及び照度150~300Luxに設定して飼育し、飼育期間中の動物室の温/湿度、換気回数及び照度などの環境条件は、定期的に測定した。純化、投与及び観察期間中にげっ歯類用ポリカーボネート飼育ケース(W170×L235×H125mm)で3匹/飼育ケース以下で飼育し、飼育ケース、敷物及び水瓶は週1回以上交換した。
【0061】
純化期間中に健康であると判定された動物にストレプトゾトシン(streptozotocin,STZ)を投与し、投与7日目に血糖を測定して測定値が300mg/dL以上の動物のみを選択して順位付けした血糖に応じて各群の平均血糖ができるだけ均一に分布するようにランダムに分配した。ストレプトゾトシンは、誘発当日に60mg/kgの用量で単回尾静脈内投与した。
【0062】
1-2.試験群の構成と投与量の設定
試験群の構成及び試験物質の投与量の設定は、下記表1に示す通りである。G1は、糖尿病性網膜症が誘発されない正常対照群、G2は、糖尿病性網膜症が誘導された対照群で、比較例1のビヒクル(vehicle)を投与した群、G3及びG4は、陽性対照物質である比較例2のラニビズマブ投与群であり、G5~G9は、それぞれ実施例1~5によるSGLT-2阻害剤投与群である。
【0063】
【表7】
【0064】
硝子体内投与の場合、動物が麻酔された状態で当該動物の右眼球に31gauge注射針が装着された注射器を用いて硝子体内に注射し、試験物質投与日に単回投与した。投与量は、1μL/eyeまたは5μL/eyeとした。
【0065】
点眼投与の場合、動物を補正した後、ピペットを用いて試験物質10μLを当該動物の右眼球の角膜の中央に点眼し、試験物質投与開始日(Day0)から投与開始後20日目まで1日1回投与した。投与量は、10μL/eyeとした。
【0066】
1-3.眼底撮影及び網膜蛍光強度の分析
試験物質投与開始後21日目にラットの右眼球に散瞳薬(ミドリアシル1%点眼液)を点眼した後、麻酔を行った後、2%fluorescein sodium salt solutionを尾静脈を通じて注入した後、眼底カメラ(TRC-50IX,TOPCON,Japan)を用いて2分以内に撮影した。網膜の確認及び薬効は、網膜蛍光眼底写真を用いて評価した。イメージ分析は、ImageJ software(NIH,Bethesda,MD)を用いて網膜血管周辺部の蛍光強度(fluorescein intensity in non-vascular regions of retina)を測定し、正常対照群(G1)の平均値を基準(100%)として各個体別測定値の相対レベル(%)を分析して群間比較した。
【0067】
その結果、表2及び図1図13に示すように、各試験物質の投与開始後21日目にすべての糖尿病誘発群(G2~G9)の蛍光強度レベルは、正常対照群(G1)に比べて有意に高く、特に、ビヒクルのみを投与したG2での蛍光強度が高く現れた。
【0068】
SGLT-2阻害剤を投与した群(G5~G9)の場合、G2に比べて蛍光強度が有意に減少し、ラニビズマブ(LUCENTIS(R))を投与した陽性対照群であるG3及びG4より蛍光感度が減少した。
【0069】
【表8】
【0070】
***/* A significant difference at p<0.001/p<0.05 compared to the G1
### A significant difference at p<0.001 compared to the G2。
【0071】
本発明は、糖尿病性眼疾患の予防及び治療に使用可能なSGLT-2阻害剤を新たに発掘することにより、SGLT-2阻害剤が従来の糖尿病性網膜症、糖尿病性黄斑浮腫などに使用される抗VEGF抗体治療剤であるラニビズマブ(LUCENTIS(R))よりも優れた効果を示すことができることを確認した。
【0072】
本発明のSGLT-2阻害剤は、エルツグリフロジン(Ertugliflozin)、イプラグリフロジン(Ipragliflozin)、ダパグリフロジン(Dapagliflozin)、エンパグリフロジン(Empagliflozin)、トポグリフロジン(Tofogliflozin)は、従来の糖尿病性眼疾患治療剤が硝子体内に注射を通じて投与されるのとは異なり、点眼剤として眼球に簡便に1日1回投与されることで、服薬の利便性が大幅に改善され、注射による眼球組織及び細胞の損傷を防止できる効果がある。
【0073】
1-4.統計学的分析
本実験の結果について資料の正規性を仮定し、一元配置分散分析(One-way ANOVA)で検定し、ANOVAの結果が有意な場合、Dunnett’s multiple comparison testを用いて事後検定を行った。
【0074】
統計学的分析は、Prism 7.04(GraphPad Software Inc.、San Diego,CA,USA)を用いて行われ、p値が0.05未満の場合、統計学的に有意であるものと判定した。
【0075】
前述した本発明の説明は例示のためのものであり、本発明が属する技術分野の通常の知識を有する者は、本発明の技術的思想や必須的な特徴を変更することなく、他の具体的な形態に容易に変形が可能であることが理解できるだろう。したがって、前述した実施例は、すべての点で例示的なものであり、限定的なものではないと理解しなければならない。例えば、単一の形態で説明されている各構成要素は分散して実施されてもよく、同様に分散されていると説明されている構成要素も結合された形態で実施されてもよい。
【0076】
本発明の範囲は後述する請求範囲によって示され、請求範囲の意味と範囲、及びその均等概念から導出されるすべての変更または変形された形態が本発明の範囲に含まれるものと解釈されるべきである。
図1
図2
【国際調査報告】