(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-03
(54)【発明の名称】スキャフォールド内に治療薬剤を有する吸収性血管内ステント
(51)【国際特許分類】
A61F 2/91 20130101AFI20240827BHJP
A61F 2/958 20130101ALI20240827BHJP
A61L 31/06 20060101ALI20240827BHJP
A61L 31/10 20060101ALI20240827BHJP
A61L 31/16 20060101ALI20240827BHJP
A61L 31/12 20060101ALI20240827BHJP
A61L 31/14 20060101ALI20240827BHJP
A61K 31/436 20060101ALI20240827BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240827BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20240827BHJP
A61P 9/14 20060101ALI20240827BHJP
A61F 2/82 20130101ALI20240827BHJP
【FI】
A61F2/91
A61F2/958
A61L31/06
A61L31/10
A61L31/16
A61L31/12 100
A61L31/14 500
A61L31/14
A61K31/436
A61P29/00
A61P9/00
A61P9/14
A61F2/82
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023571212
(86)(22)【出願日】2022-08-10
(85)【翻訳文提出日】2023-11-15
(86)【国際出願番号】 US2022040014
(87)【国際公開番号】W WO2023018844
(87)【国際公開日】2023-02-16
(32)【優先日】2021-08-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517308415
【氏名又は名称】エフェモラル メディカル インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【氏名又は名称】森本 有一
(74)【代理人】
【識別番号】100126848
【氏名又は名称】本田 昭雄
(72)【発明者】
【氏名】ルイス ビー.シュワルツ
(72)【発明者】
【氏名】イバン ツベタノフ
(72)【発明者】
【氏名】アレックス エストラーダ
(72)【発明者】
【氏名】ユージーン マイケル
【テーマコード(参考)】
4C081
4C086
4C267
【Fターム(参考)】
4C081AC09
4C081AC10
4C081BA16
4C081BB06
4C081CA171
4C081CA172
4C081CC01
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4C081EA02
4C081EA06
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4C086MA03
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4C086MA67
4C086NA10
4C086NA12
4C086ZA36
4C086ZA44
4C086ZB11
4C267AA44
4C267AA55
4C267BB06
4C267BB11
4C267BB12
4C267BB40
4C267BB47
4C267CC08
4C267FF05
4C267GG02
4C267GG16
(57)【要約】
ステントとして血管を通る血流を維持又は増強するためのデバイス、システム、及び方法が提供される。血管に埋め込まれるように構成されている、バルーン拡張型生体吸収性血管ステント要素が本明細書に記載される。ステント要素は、スキャフォールドと、生体吸収性構造ポリマーを含むコーティング層と、を含む。治療薬剤は、スキャフォールドコーティング上に提供され、かつスキャフォールドの構造ポリマー内に組み込まれる。生体吸収性血管ステントを作製する方法は、本明細書に記載される付加製造プロセスを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管を通る血流を維持又は増強するために前記血管内に配置するためのデバイスであって、前記デバイスは、
ステントとして前記血管に埋め込まれるように構成されている、1つ以上のバルーン拡張型生体吸収性血管ステント要素を含み、
前記ステント要素は、
生体吸収性構造ポリマーを含むスキャフォールドと、
生体吸収性コーティングポリマーを含むコーティング層であって、前記コーティング層は、前記スキャフォールドをコーティングする、コーティング層と、
治療薬剤であって、前記治療薬剤は、前記コーティング層及び前記スキャフォールドの両方の中に含有される、治療薬剤と、を含む、デバイス。
【請求項2】
前記コーティング層は、およそ80~90パーセントの前記治療薬剤を含み、前記スキャフォールドは、およそ10~20パーセントの前記薬剤を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記スキャフォールドは、前記コーティング層が完全に分解した後に分解するにつれて、前記薬剤を放出するように構成されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記治療薬剤は、炎症、細胞機能障害、細胞活性化、細胞増殖、新生内膜形成、肥厚、後期アテローム硬化性変化、又は血栓症を予防又は減衰させる、請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
前記薬剤は、シロリムス、エベロリムス、ゾタロリムス、タクロリムス、ノボリムス、リダフロリムス、テムシロリムス、又はピメクロリムスである、請求項4に記載のデバイス。
【請求項6】
前記生体吸収性構造ポリマーは、L-ラクチド、ポリ(L-乳酸)(PLLA)、ポリ(D-乳酸)(PDLA)、ポリ(D、L-乳酸)(PDLLA)、半結晶性ポリラクチド、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)、ポリ(ヨウ素化デスアミノチロシル-チロシンエチルエステル)カーボネート、ε-カプロラクトン、ポリカプロラクトン(PCL)、サリチレート系ポリマー、ポリジオキサノン(PDS)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリ(ヒドロキシブチレート-co-バレレート)、ポリオルトエステル、ポリアンヒドリド、ポリ(グリコール酸-co-トリメチレンカーボネート)、ポリ(ヨウ素化デスアミノチロシル-チロシンエチルエステル)カーボネート、ポリホスホエステル、ポリホスホエステルウレタン、ポリ(アミノ酸)、シアノアクリレート、ポリ(トリメチレンカーボネート)、ポリ(イミノカーボネート)、ポリアルキレンオキサレート、ポリホスファゼン、ポリイミノカーボネート、及び脂肪族ポリカーボネート、フィブリン、フィブリノーゲン、セルロース、デンプン、コラーゲン、ポリカーボネートウレタンを含むポリウレタン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、エチレンビニルアセテート、エチレンビニルアルコール、ポリシロキサン及び置換ポリシロキサンを含むシリコーン、ポリエチレンオキシド、ポリブチレンテレフタレート-co-PEG、PCL-co-PEG、PLA-co-PEG、PLLA-co-PCL、ポリアクリレート、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、又はこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項7】
前記構造ポリマーは、L-ラクチドとε-カプロラクトンとのコポリマーを含む、請求項6に記載のデバイス。
【請求項8】
前記コーティングは、不揮発性抗酸化剤を更に含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項9】
生体吸収性血管ステントを作製する方法であって、前記方法は、
付加製造プロセスを用いて、生体吸収性構造ポリマーからバルーン拡張型血管スキャフォールドを形成することと、
前記スキャフォールドの表面上にコーティングを適用することであって、前記コーティングは、治療薬剤と、前記スキャフォールドの前記表面上に前記治療薬剤のためのマトリックスを提供するように構成され、それにより、前記治療薬剤の経時的な制御放出を可能にする、生体吸収性コーティングポリマーと、前記治療薬剤を溶解させ、前記構造ポリマーに浸透させるように構成され、それにより、前記薬剤を前記構造ポリマー内に挿入する、溶媒と、を含む、適用することと、
前記コーティングを乾燥させて前記溶媒を除去し、それにより、前記治療薬剤を前記構造ポリマー内に閉じ込めることと、を含む、方法。
【請求項10】
前記コーティングは、およそ80~90パーセントの前記治療薬剤を含み、前記スキャフォールドは、およそ10~20パーセントの前記薬剤を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記溶媒は、前記スキャフォールドの前記構造ポリマーを膨潤又は軟化させるように構成されている、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記スキャフォールドは、前記コーティング層が完全に分解した後に分解するにつれて、前記治療薬剤を放出するように構成されている、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記治療薬剤は、炎症、細胞機能障害、細胞活性化、細胞増殖、新生内膜形成、肥厚、後期アテローム硬化性変化、又は血栓症を予防又は減衰させる、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記薬剤は、シロリムス、エベロリムス、ゾタロリムス、タクロリムス、ノボリムス、リダフロリムス、テムシロリムス、又はピメクロリムスである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記生体吸収性構造ポリマーは、L-ラクチド、ポリ(L-乳酸)(PLLA)、ポリ(D-乳酸)(PDLA)、ポリ(D、L-乳酸)(PDLLA)、半結晶性ポリラクチド、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)、ポリ(ヨウ素化デスアミノチロシル-チロシンエチルエステル)カーボネート、ε-カプロラクトン、ポリカプロラクトン(PCL)、サリチレート系ポリマー、ポリジオキサノン(PDS)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリ(ヒドロキシブチレート-co-バレレート)、ポリオルトエステル、ポリアンヒドリド、ポリ(グリコール酸-co-トリメチレンカーボネート)、ポリ(ヨウ素化デスアミノチロシル-チロシンエチルエステル)カーボネート、ポリホスホエステル、ポリホスホエステルウレタン、ポリ(アミノ酸)、シアノアクリレート、ポリ(トリメチレンカーボネート)、ポリ(イミノカーボネート)、ポリアルキレンオキサレート、ポリホスファゼン、ポリイミノカーボネート、及び脂肪族ポリカーボネート、フィブリン、フィブリノーゲン、セルロース、デンプン、コラーゲン、ポリカーボネートウレタンを含むポリウレタン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、エチレンビニルアセテート、エチレンビニルアルコール、ポリシロキサン及び置換ポリシロキサンを含むシリコーン、ポリエチレンオキシド、ポリブチレンテレフタレート-co-PEG、PCL-co-PEG、PLA-co-PEG、PLLA-co-PCL、ポリアクリレート、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、又はこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記構造ポリマーは、L-ラクチドとε-カプロラクトンとのコポリマーを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記溶媒は、アセトニトリルを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記コーティングは、不揮発性抗酸化剤を更に含む、請求項9に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2021年8月11日に出願された、「ABSORBABLE INTRAVASCULAR STENTS HAVING A THERAPEUTIC DRUG WITHIN THE SCAFFOLD」と題する、米国仮特許出願第63/231,862号に対する利益及び優先権を主張するものであり、上記の参照出願の完全な開示が、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本出願は、全般的には医療デバイスの分野に関する。特に、本出願は、血管(動脈及び静脈)の開存性(血流)を維持することを意図した血管内ステントの設計及び製造に関する。
【背景技術】
【0003】
アテローム動脈硬化性心血管疾患又は「動脈硬化」は、世界の主要な死因及び障害であり、ヒトの全死亡率のほぼ3分の1を占める。先進国の中には、危険因子の修正及び生活習慣行動の変化において大きな進歩を遂げた国もあるが、アテローム性動脈硬化性疾患の世界的な有病率は依然として上昇しており、2030年までに年間2300万人を超える死亡が予測されている。その経済的負担は驚異的であり、米国だけでも、アテローム性動脈硬化症とその後遺症の治療にかかる推定年間費用は、2,000億ドルを超える。
【0004】
アテローム性動脈硬化症は、病理学的な動脈老化のプロセスである。若年期には、動脈中膜内のしなやかなエラスチン線維が、動脈の脈動及び脈波伝播に必要な構造的弾性及び伸展性を提供する。しかしながら、何十年にもわたって、持続的な圧力及び運動が構造マトリックスタンパク質をゆっくりと変性させ、エラスチンの疲労及び破壊を引き起こす。その結果、ゆっくりではあるが容赦なく伸展性が失われ、動脈壁は慢性的に硬化する。脈動性及び波反射が失われると、流速分布が鈍くなり、流れの逆転が失われ、順行性流れの係数が減衰する。これにより、拡張期に長期間の相対的な停滞が生じ、壁の粒子及び細胞での滞留時間が長くなる。停滞した境界層の下の機能不全の壁は、循環するアテローム生成コレステリル脂肪アシルエステル及びトリグリセリド粒子、特にアポリポタンパク質B含有リポタンパク質を蓄積し始める。リポタンパク質の酸化的修飾は、上にある内皮を活性化してケモカインを分泌し、これは、内皮に沿って転がる血液由来の単球を引き付けて、接着分子及び組織因子の曝露によって粘着性になった血管表面につなぎとめる。しっかりと付着した単球の血管外漏出は、肥厚した内皮下腔内に細胞を閉じ込める。このように開始された進行中の病理学的プロセスは、コレステロール担持泡沫細胞、炎症性及び造血細胞の継続的な動員及び浸潤、並びに脂質マトリックスの進行性蓄積及び平滑筋増殖を介して脂肪性の閉塞性病変を生成し、これはゆっくりと内皮を上昇させ、動脈内腔に侵入し始める。アテローム性動脈硬化プラークは、重要な臓器への血液と酸素の流れを減少させるのに十分な大きさに成長すると、胸痛(狭心症)、ミニストローク(一過性脳虚血発作)、及び循環不全(跛行)の慢性臨床症候群を引き起こす。硬直化した中心部と変性した線維性被膜を伴うより複雑なプラークは、突然破裂して、それらが存在する動脈の急性閉塞につながる可能性がある。これらは、心臓発作(心筋梗塞)、脳卒中(脳血管障害)、及び壊疽(重症肢虚血)の重症な生命を脅かす臨床事象を生じさせる。
【0005】
末期病変のために選択される治療は、治癒を促進し、開存性を高める抗増殖化合物を含有する血管内ステントの経皮再疎通及び埋め込みである。薬剤溶出ステントは、無傷のデバイスの上に薬剤層を形成する溶液をステントに浸漬又は噴霧することによって形成される。
【0006】
永久金属インプラントに関連する無数の問題に対処するために、展開後にゆっくりと溶解するステントが、長い間想像されてきた。いわゆる「生体吸収性血管スキャフォールド」(bioresorbable vascular scaffold、BVS)は、(1)金属インプラントの永続性のない効果的なスキャフォールディング、(2)再狭窄の低減及び長期開存性の増強につながる炎症及び慢性異物反応の減衰、(3)適応血管リモデリングの支援、(4)生理的血管作用機能の回復、並びに(5)経過観察中の撮像及び監視の促進を含む、いくつかの重要な生物学的及び生理学的利点を潜在的に提供する。しかしながら、生体吸収性血管スキャフォールドは、薬剤溶出コーティングが完全に吸収された後であっても、スキャフォールドの分解生成物によって誘発される潜在的な炎症反応を引き起こす可能性がある。
【0007】
したがって、薬剤のより長期間の放出を提供する脈管構造における使用のためのステントを有することは有利であると考えられる。これらの目的のうちの少なくともいくつかは、以下に記載される実施形態によって満たされるであろう。
【発明の概要】
【0008】
本明細書の実施形態は、血管を通る血流を維持又は増強するために血管内に配置するためのデバイスについて記載する。デバイスは、ステントとして血管に埋め込まれるように構成されている、1つ以上のバルーン拡張型生体吸収性血管ステント要素を含み得る。ステント要素は、生体吸収性構造ポリマーを含むスキャフォールドと、生体吸収性コーティングポリマーを含むコーティング層であって、コーティング層が、スキャフォールドをコーティングする、コーティング層と、治療薬剤であって、治療薬剤が、コーティング層及びスキャフォールドの両方の中に含有される、治療薬剤と、を含み得る。一実施形態では、コーティング層は、およそ80~90パーセントの治療薬剤を含み、スキャフォールドは、およそ10~20パーセントの薬剤を含む。スキャフォールドは、コーティング層が完全に分解した後に分解するにつれて、薬剤を放出するように構成され得る。治療薬剤は、炎症、細胞機能障害、細胞活性化、細胞増殖、新生内膜形成、肥厚、後期アテローム硬化性変化、又は血栓症を予防し得るか、又は減衰させ得る。様々な実施形態では、薬剤は、シロリムス、エベロリムス、ゾタロリムス、タクロリムス、ノボリムス、リダフロリムス、テムシロリムス、又はピメクロリムスである。
【0009】
いくつかの実施形態では、ステントは、L-ラクチド、ポリ(L-乳酸)(poly(L-lactic acid、PLLA)、ポリ(D-乳酸)(poly(D-lactic acid)、PDLA)、ポリ(D、L-乳酸)(poly(D, L-lactic acid)PDLLA)、半結晶性ポリラクチド、ポリグリコール酸(polyglycolic acid、PGA)、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)(poly(lactic-co-glycolic acid)、PLGA)、ポリ(ヨウ素化デスアミノチロシル-チロシンエチルエステル)カーボネート、ε-カプロラクトン、ポリカプロラクトン(polycaprolactone、PCL)、サリチレート系ポリマー、ポリジオキサノン(polydioxanone、PDS)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリ(ヒドロキシブチレート-co-バレレート)、ポリオルトエステル、ポリアンヒドリド、ポリ(グリコール酸-co-トリメチレンカーボネート)、ポリ(ヨウ素化デスアミノチロシル-チロシンエチルエステル)カーボネート、ポリホスホエステル、ポリホスホエステルウレタン、ポリ(アミノ酸)、シアノアクリレート、ポリ(トリメチレンカーボネート)、ポリ(イミノカーボネート)、ポリアルキレンオキサレート、ポリホスファゼン、ポリイミノカーボネート、及び脂肪族ポリカーボネート、フィブリン、フィブリノーゲン、セルロース、デンプン、コラーゲン、ポリカーボネートウレタンを含むポリウレタン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、エチレンビニルアセテート、エチレンビニルアルコール、ポリシロキサン及び置換ポリシロキサンを含むシリコーン、ポリエチレンオキシド、ポリブチレンテレフタレート-co-PEG、PCL-co-PEG、PLA-co-PEG、PLLA-co-PCL、ポリアクリレート、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、又はこれらの組み合わせを含む材料から形成され得る。一実施形態では、構造ポリマーは、L-ラクチドとε-カプロラクトンとのコポリマーを含む。一実施形態では、コーティングは、不揮発性抗酸化剤を更に含む。
【0010】
別の態様では、生体吸収性血管ステントを作製する方法は、付加製造プロセスを用いて、生体吸収性構造ポリマーからバルーン拡張型血管スキャフォールドを形成することと、スキャフォールドの表面上にコーティングを適用することであって、コーティングは、治療薬剤と、スキャフォールドの表面上に治療薬剤のためのマトリックスを提供するように構成され、それにより、治療薬剤の経時的な制御放出を可能にする、生体吸収性コーティングポリマーと、治療薬剤を溶解させ、構造ポリマーに浸透させるように構成され、それにより、薬剤を構造ポリマー内に挿入する、溶媒と、を含む、適用することと、コーティングを乾燥させて溶媒を除去し、それにより、治療薬剤を構造ポリマー内に閉じ込めることと、とを含む。溶媒は、スキャフォールドの構造ポリマーを膨潤又は軟化させるように構成され得る。一実施形態では、構造ポリマーは、L-ラクチドとε-カプロラクトンとのコポリマーを含む。溶媒は、アセトニトリルを含み得る。コーティングは、不揮発性抗酸化剤を更に含み得る。
【0011】
本開示のこの態様及び他の態様が、本明細書に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本実施形態は、添付の図面と併せて解釈すると、以下の詳細な説明及び添付の特許請求の範囲からより容易に明らかになる他の利点及び特徴を有する。
【
図1】血管内ステントの典型的な径方向の抵抗力を示す。
【
図3A】バルーン拡張型多要素ステントの展開を示す。
【
図3B】バルーン拡張型多要素ステントの展開を示す。
【
図3C】バルーン拡張型多要素ステントの展開を示す。
【
図4A】股関節及び膝が完全に屈曲した状態での膝窩動脈に埋め込まれた多要素ステントを示す。
【
図5A】ステントパターンの一実施形態であり、ある要素の二次元描写である。
【
図5B】ステントパターンの一実施形態であり、
図5Aのセルの拡大図である。
【
図5C】ステントパターンの一実施形態であり、
図5Aのステント要素を円筒形で示す。
【
図5D】ステントパターンの一実施形態であり、
図5Aのステント要素を円筒形で示す。
【
図8】一実施形態による、ステントを形成するために使用されるマイクロステレオリソグラフの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を特定の実施形態を参照して開示してきたが、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更を行い、同等物を置換することができることが当業者によって理解されるであろう。加えて、本発明の範囲から逸脱することなく、本発明の教示に対する特定の状況又は材料に適応させるために、多くの改変を行うことができる。
【0014】
本明細書及び特許請求の範囲全体を通して、以下の用語は、文脈が明らかに別段指示しない限り、本明細書に明示的に関連付けられた意味を取る。「a」、「an」、及び「the」の意味には、複数の参照が含まれる。「in」の意味は、「in」及び「on」を含む。図面を参照すると、同様の番号は、図全体を通して同様の部分を示す。追加的に、単数形への言及は、別段明記しない限り、又は本明細書の開示と矛盾しない限り、複数形への言及を含む。
【0015】
「例示的」という単語は、本明細書では、「例、事例、又は例示としての役割を果たす」ことを意味するために使用される。「例示的」として本明細書で説明される任意の実装形態は、必ずしも他の実装形態よりも有利であると解釈されるべきではない。
【0016】
本明細書では、図を参照して様々な実施形態について記載される。図は、縮尺通りに描かれておらず、実施形態の説明を容易にすることのみを意図している。それらは、本発明の網羅的な説明として、又は本発明の範囲に対する限定として意図されていない。加えて、例示される実施形態は、示されている全ての態様又は利点を有する必要はない。特定の実施形態に関連して記載される態様又は利点は、必ずしもその実施形態に限定されず、そのように例示されていなくても、任意の他の実施形態で実施することができる。
【0017】
図1は、血管内ステントの典型的な径方向の抵抗力を示す。典型的な「生体吸収性血管スキャフォールド」(BVS)又は吸収性ステントは、2N/cm未満の径方向の抵抗力を有する。同様に、典型的な自己拡張型金属ステント(self-expanding metal stent、SES)は、2N/cm未満の径方向の抵抗力を有する。典型的なバルーン拡張型金属ステント(balloon-expandable metal stent、BES)は、時には18N/cmを超える、はるかに高い径方向の抵抗力を有する。
【0018】
本明細書の実施形態は、典型的な吸収性又は自己拡張型金属ステント(SES)によって提供されるものよりもはるかに大きく、かつバルーン拡張可能な金属ステント(BES)によって提供されるものに相当する、一時的な剛性の径方向の支持を提供することによって長い血管の流路(開存性)を維持する、新規の血管内吸収性デバイスの設計について記載する。いったん埋め込まれると、吸収性デバイスは、高度の径方向の力を付与し、罹患した動脈を開いたままにし、この力は、大直径の末梢バルーン拡張型金属ステントとほぼ同等である。
【0019】
径方向の力と長手方向の可撓性の両方を組み合わせるように設計されたほとんどのステントパターンとは対照的に、本明細書に記載されるパターンは、径方向の力及び剛性を最大化し、長手方向及び軸方向の可撓性を排除するように特に調整されている。
【0020】
本明細書に記載されるデバイスは、多要素血管ステント(又は「血管スキャフォールド」)である。これらのステントは、互いに分離しているが、まとめて多要素ステントと呼ばれることもある、複数の短い剛性の円筒形ステントセグメント又は要素で構成されている。
【0021】
概して、本明細書に記載される多要素ステントの要素うちの少なくとも2つは、蛇行性の末梢血管など、それらが配置される血管の応力に耐える所望のレベルの強度を提供するのに十分な剛性がある。同時に、多要素ステントはまた、複数の別個の要素から構成されているため、可撓性であり、したがって、湾曲した蛇行性の血管内に配置することができる。いくつかの実施形態では、これらの要素のうちの少なくとも2つは、多要素ステントにおいて剛性又は径方向の強度が変化する。一実施形態では、外側要素は、多要素ステントにおいて内側要素よりも径方向の強度が低くてもよい。別の実施形態では、多要素ステントは、動静脈瘻などにおいて、多要素ステントの長さに沿って連続的に増加する径方向の強度を有する要素を含む。したがって、要素の径方向の強度は変化し、標的動脈の既知の特性によって調整され得る。
【0022】
追加的に、本明細書に記載される多要素ステントは、バルーン拡張型ステントが、典型的には、自己拡張型ステントよりも強いため、通常、自己拡張型ではなくバルーン拡張型である。ステントの各バルーン拡張型要素は、記載される構造及び材料に起因して、比較的高い径方向の力(剛性)を有し得る。ステント要素は、鋼製又はコバルトクロム製などの、従来のバルーン拡張型金属ステントと同様又はそれ以上の大きさの自己拡張型ステントよりも径方向の強度が大幅に高い場合、径方向に剛性があると定義される。
【0023】
膨張型バルーンに連続して装着すると、長い血管に同時に並べて埋め込むことができる。生物の運動中、要素は、独立して移動することができ、個々の形状及び強度を維持し、同時に、血管のステントのない介在要素は、邪魔されずにねじれ、曲がり、かつ回転することができる。その結果、剛性に維持された流路を有する治療済みの血管が得られ、生物が動いている間にも無制限に可撓性である。
【0024】
記載される実施形態は、(1)バルーン拡張を介して展開される剛性デバイスが、動脈壁に対する一時的な影響及び正確な埋め込みの相対的な容易さを考慮した血管内ステントの最適設計を表し、(2)長い剛性デバイスが、骨格運動で曲がる、かつねじれる動脈に安全に埋め込むことができず、(3)曲がる、かつねじれる長い動脈が、ステントのない介在動脈要素が邪魔されずに動くことを可能にする複数の短いBESで効果的に治療することができ、(4)ステント要素の長さ、数、及び間隔が、標的動脈の既知の予測可能な曲げ特性によって決定することができ、(5)動脈が、ほんの一時的にスキャフォールドを必要とするだけでよく、ステントの溶解が遅れても、治療の長期的な効果にはほとんど影響しない、という原理を利用している。
【0025】
完全に組み立てられたデバイスの一実施形態を
図2Aに示す。単一のバルーン膨張及びデバイスの展開により、罹患した動脈の長いセグメントを治療することができる一方で、座る又は歩行するなどの骨格運動とともに動脈が曲がるという動脈の重要な能力を依然として維持する。多要素ステント200は、複数のステント要素201を含む。個々のバルーン拡張型ステント要素201は、送達を容易にするために、膨張型バルーン203に圧着される。
図2Bは、
図2Aのステント要素201の拡大図である。個々の要素201は、バルーン203の長手方向の長さに沿って連続的に位置付けられ、ステント要素201が互いに接触しないように離間されている。更に、その間隔は、展開後、ステント要素201が骨格運動中に接触しないか、又は重ならないような間隔である。要素201の数、要素の長さ、及び要素201間の間隙202は、標的血管位置に応じて変化し得る。一実施形態では、多要素ステント200における各要素201は、同じ長さを有する。3つ以上の要素201、よって2つ以上の間隙202を有する多要素ステントでは、間隙は、同じ長さであり得る。
【0026】
図3A~
図3Cは、バルーン拡張型多要素ステントの展開を示す。
図3Aでは、バルーンに装着された多要素ステントが、病変まで前進している。
図3Bでは、バルーン及びステントが、拡張されている。
図3Cでは、バルーンは引き抜かれ、多要素ステントは、依然として動脈内に残されている。
【0027】
図4Aは、股関節及び膝が完全に屈曲した状態での膝窩動脈に埋め込まれた多要素ステントを示す。
図4Bは、
図4Aの埋め込まれたデバイスを三次元で示す。個々のステント要素401は、動脈が大きく曲がっているときでもこれらのステント要素が重ならないように離間されている。妨げられていない動脈の動きは、ステントのない間隙402の屈曲又は延伸を通じてもたらされる。
【0028】
ステント要素は、様々な形状及び構成を含み得る。ステント要素のうちのいくつか又は全てが、交差する支柱によって形成された閉鎖セル構造を含み得る。閉鎖セル構造は、ダイヤモンド形、正方形、長方形、平行四辺形、三角形、五角形、六角形、七角形、八角形、クローバ、小葉形、円形、楕円形、及び/又は卵形の形状を含み得る。また、閉鎖セルは、H字型スロット、I字型スロット、J字型スロットなどのスロット型形状を含み得る。追加的又は代替的に、ステントは、螺旋構造、蛇行構造、ジグザグ構造などの開放セル構造を含み得る。支柱の交差は、尖った、垂直な、丸い、先端の丸い、平坦な、斜角の、かつ/又は面取りされたセル角を形成し得る。一実施形態では、ステントは、異なるセル形状、配向、及び/又はサイズを有する複数の異なるセルを含み得る。様々なセル構造が、「MULTI-ELEMENT BIORESORBABLE INTRAVASCULAR STENT」と題された国際出願PCT/US16/20743号、「ABSORBABLE INTRAVASCULAR DEVICES THAT EXHIBIT THEIR GREATEST RADIAL STRENGTH AT THEIR NOMINAL DIAMETERS」と題された国際出願PCT/US20/19132号、及び「ABSORBABLE INTRAVASCULAR DEVICES THAT SHORTENED UPON EXPANSION CREATING SPACE FOR VASCULAR MOVEMENT」と題された国際出願PCT/US19/35861号に記載されており、これらの全開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0029】
図2Bに戻ると、この例示的な実施形態では、ステント要素201は、ダイヤモンド形状の閉鎖セルパターンを有する。要素201は、混合されたダイヤモンド形状の閉鎖セル204、205を含む。ダイヤモンド形状のセル204は、繰り返しパターンで長手方向及び/又は円周方向に整列され得る。同様に、ダイヤモンド形状のセル205は、繰り返しパターンで長手方向及び/又は円周方向に整列され得る。追加的又は代替的に、ダイヤモンド形状のセル204及びダイヤモンド形状のセル205は、交互のパターンで螺旋状に整列され得る。一実施形態では、ダイヤモンド形状のセル204及びダイヤモンド形状のセル205は、円周方向にオフセットされている。追加的に、ダイヤモンド形状のセル205は、4つの隣接するダイヤモンド形状のセル204の間の中央位置に形成され得る。長手方向に整列されたダイヤモンド形状のセル204の2つの角の間の支柱206の幅は、長手方向に整列されたダイヤモンド形状のセル205の2つの角の間の支柱207の幅よりも大きい。
【0030】
ステントパターンの一実施形態を、
図5A~
図5Dに示す。ステント要素501は、比較的厚い支柱幅及び斜めに角度が付けられた連結部を有するダイヤモンド形状の閉鎖セルパターンを有する。要素501は、ダイヤモンド形状の閉鎖セル504を含む。要素501は、225マイクロメートル以上の幅の支柱506を含み得る。要素501は、同様に、225マイクロメートル以上の厚さの支柱506を含み得る。一実施形態では、要素501は、およそ250マイクロメートルの幅及び/又は厚さを有する支柱506を含む。ダイヤモンド形状のセル504の2つの角の間の支柱506の幅及び/又は高さは、ダイヤモンド形状のセル504の辺を形成する支柱506の幅及び/又は高さよりも大きくても小さくてもよい。本明細書で設計された実際のレーザ切断ステントの一例を
図6に示す。
【0031】
本明細書には、スキャフォールド構造材料内に組み込まれた薬剤を有する吸収性薬剤含有ステントの様々な設計が記載されている。スキャフォールドは、穴の開いた管設計の構造的生分解性ポリマー又はコポリマーから構成されてもよく、その上に薬剤含有コーティングが適用される。コーティングは、治療薬剤及び溶媒(複数可)から構成することができ、その結果、溶媒が薬剤を溶解し、構造ポリマーを膨潤及び/又は軟化させるが、適用プロセスにおいてそれを認め得るほど溶解又は変形させない。コーティングは、任意選択で、有機マトリックス(生分解性ポリマー、オリゴマー、又は他の賦形剤)及び/又はコーティング溶媒(単数若しくは複数)に可溶性である抗酸化剤を含有する。噴霧、浸漬、又はトラフコーティング法によって適用されるとき、薬剤溶媒コーティングは、スキャフォールド表面に薬剤を適用することに加えて、ベースポリマーに浸透し、その中に薬剤を挿入する。室温又は高温のいずれかで、任意選択で真空中で乾燥させると、溶媒が除去され、スキャフォールド構造ポリマー内に吸収薬剤が閉じ込められる。一実施形態では、コーティングは、薬剤安定性を保存するために、構造ポリマー及び抗酸化剤と適合する溶解された生分解性ポリマーを含有する。コーティング中のポリマーの存在は、スキャフォールド表面上に薬剤のためのマトリックスを提供し、拡散を介した経時的な制御放出を可能にする。
【0032】
本明細書に記載されるステントは、様々な異なる材料から形成され得る。一実施形態では、ステントは、ポリマー又はコポリマーで形成され得る。様々な代替実施形態では、ステント又はステント要素は、ポリ乳酸、ポリ(ε-カプロラクトン)、ポリグリコール酸、及びポリヒドロキシアルカノエートなどのポリエステル、ポリエステルアミドなどのアミノ酸系ポリマー、ポリトリメチレンカーボネートなどのポリカーボネート、並びに本明細書に記載されるタイプの任意及び全てのコポリマーなどであるが、これらに限定されない、人体で無毒に溶解するであろう任意の好適な生体吸収性材料から作製され得る。一実施形態では、ステントポリマーは、95/5モル比のL-ラクチド及びε-カプロラクトン、Purasorb9538から構成される。他の実施形態では、およそ80/20~90/10、およそ90/10~95/5、又はおよそ95/5~98/2などの他のモル比を使用することができる。
【0033】
様々な実施形態では、任意の好適なポリマー又はコポリマーを使用して、ステントを構築することができる。「ポリマー」という用語は、ランダム、交互、ブロック、グラフト、分岐、架橋、混合物、混合物の組成物、及びこれらの変形物を含む、天然又は合成に関わらない、ホモポリマー、コポリマー、ターポリマーなどを含む、重合反応の生成物を含むことを意図している。ポリマーは、粒子として真溶液中にあるか、飽和しているか、若しくは懸濁されているか、又は有益な薬剤中で過飽和であり得る。ポリマーは、生体適合性又は生分解性であり得る。限定ではなく例示の目的で、ポリマー材料には、L-ラクチド、ポリ(D-乳酸)(PDLA)、ポリ(D、L-乳酸)(PDLLA)、ポリ(ヨウ素化デスアミノチロシル-チロシンエチルエステル)カーボネート、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)、ポリ(ヨウ素化デスアミノチロシル-チロシンエチルエステル)カーボネート、サリチレート系ポリマー、半結晶性ポリラクチド、ホスホリルコリン、ε-カプロラクトン、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ-D、L-乳酸、ポリ-L-乳酸、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリ(ヒドロキシブチレート-co-バレレート)、ポリジオキサノン(PDS)、ポリオルトエステル、ポリアンヒドリド、ポリ(グリコール酸)、ポリ(グリコール酸-co-トリメチレンカーボネート)、ポリホスホエステル、ポリホスホエステルウレタン、ポリ(アミノ酸)、シアノアクリレート、ポリ(トリメチレンカーボネート)、ポリ(イミノカーボネート)、ポリアルキレンオキサレート、ポリホスファゼン、ポリイミノカーボネート、及び脂肪族ポリカーボネート、フィブリン、フィブリノーゲン、セルロース、デンプン、コラーゲン、ポリカーボネートウレタンを含むポリウレタン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、エチレンビニルアセテート、エチレンビニルアルコール、ポリシロキサン及び置換ポリシロキサンを含むシリコーン、ポリエチレンオキシド、ポリブチレンテレフタレート-co-PEG、PCL-co-PEG、PLA-co-PEG、PLLA-co-PCL、ポリアクリレート、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、並びにこれらの組み合わせが含まれ得るが、これらに限定されない。他の好適なポリマーの非限定的な例としては、熱可塑性エラストマー全般、ポリオレフィンエラストマー、EPDMゴム、及びポリアミドエラストマー、並びにアクリルポリマーとその誘導体、ナイロン、ポリエステル、及びエポキシを含む生体安定性プラスチック材料が挙げられる。
【0034】
いくつかの実施形態では、ステントは、ポリ-L-ラクチド(PLLA)又はポリ(D、L-乳酸)(PDLLA)のような材料での、1つ以上のコーティングを含み得る。しかしながら、これらの材料は、単なる例であり、本発明の範囲を限定するものとみなされるべきではない。コーティングは、薬剤と、薬剤を溶解し、スキャフォールド構造ポリマーを膨潤又は軟化させることができる溶媒と、を含み得る。溶媒は、任意の単一の溶媒又は溶媒の組み合わせであり得る。限定ではなく例示の目的で、好適な溶媒の例としては、水、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、アルコール、ケトン、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、ジヒドロフラン、ジメチルアセトアミド、アセトニトリル、アセテート、及びこれらの組み合わせが挙げられる。ステントポリマーが95/5モル比のL-ラクチド及びε-カプロラクトンから構成される実施形態では、1つの好適な溶媒は、アセトニトリルである。
【0035】
治療薬剤は、炎症、細胞機能障害、細胞活性化、細胞増殖、新生内膜形成、肥厚、後期アテローム硬化性変化、及び/又は血栓症などの管腔内介入の病理学的結果を予防するか、又は減衰させることを意図する任意の薬品であってもよい。一実施形態では、薬剤は、シロリムス及び/又はその誘導体であり得る。このような治療剤の例としては、抗血栓剤、抗凝固剤、抗血小板剤、抗脂質剤、血栓溶解剤、抗増殖剤、抗炎症剤、過形成を阻害する薬剤、平滑筋細胞阻害剤、抗生物質、成長因子阻害剤、細胞接着阻害剤、細胞接着促進剤、有糸分裂阻害薬、抗フィブリン、抗酸化剤、抗腫瘍剤、内皮細胞の回復を促進する薬剤、マトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤、代謝拮抗物質、抗アレルギー性物質、ウイルスベクター、核酸、モノクローナル抗体、チロシンキナーゼ阻害剤、アンチセンス化合物、オリゴヌクレオチド、細胞浸透促進剤、血糖降下剤、脂質低下剤、タンパク質、核酸、赤血球新生刺激に有用な薬剤、血管新生剤、抗潰瘍/逆流防止剤、及び制嘔吐剤/制吐剤、フェノフィブラートなどのPPARαアゴニスト、ロシグリタゾン及びピオグリタゾンなどの選択されるPPAR-γアゴニスト、ヘパリンナトリウム、LMWヘパリン、ヘパロイド、ヒルジン、アルガトロバン、フォルスコリン、バプリプロスト、プロスタサイクリン、及びプロスタシリン類似体、デキストラン、D-phe-pro-arg-クロロメチルケトン(合成抗トロンビン)、糖タンパク質IIb/IIIa(血小板膜受容体拮抗抗体)、組換体ヒルジン、トロンビン阻害剤、インドメタシン、サリチル酸フェニル、β-エストラジオール、ビンブラスチン、ABT-627(アストラセンタン)、テストステロン、プロゲステロン、パクリタキセル、メトトレキサート、フォテムシン、RPR-101511A、シクロスポリンA、ビンクリスチン、カルベジオール、ビンデシン、ジピリダモール、メトトレキサート、葉酸、トロンボスポンジン模倣薬、エストラジオール、デキサメタゾン、メトリザミド、イオパミドール、イオヘキソール、イオプロミド、イオビトリドール、イオメプロール、イオペントール、イオベルソル、イオキシラン、イオジキサノール、及びイオトロラン、アンチセンス化合物、平滑筋細胞増殖阻害剤、脂質低下剤、放射線不透過剤、抗腫瘍薬、ロバスタチン、アトルバスタチン、シンバスタチン、プラバスタチン、セリバスタチン、及びフルバスタチンなどのHMG CoAレダクターゼ阻害剤、並びにこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0036】
抗血栓剤、抗凝固剤、抗血小板剤、及び血栓溶解剤の例としては、ヘパリンナトリウム、未分画ヘパリン、ダルテパリン、エノキサパリン、ナドロパリン、レビパリン、アルドパリン、及びセルタパリンなどの低分子量ヘパリン、ヘパリノイド、ヒルジン、アルガトロバン、フォルスコリン、バプリプロスト、プロスタサイクリン、及びプロスタシリン類似体、デキストラン、D-phe-pro-arg-クロロメチルケトン(合成抗トロンビン)、ジピリダモール、糖タンパク質IIb/IIIa(血小板膜受容体拮抗抗体)、組換体ヒルジン、及びビバリルジン、トロンビン阻害剤などのトロンビン阻害剤、並びにウロキナーゼ、組換体ウロキナーゼ、プロウロキナーゼ、組織プラスミノーゲン活性化因子、アテプラーゼ、及びテネクテプラーゼなどの血栓溶解剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0037】
細胞増殖抑制剤又は抗増殖剤の例としては、エベロリムス、ゾタロリムス、タクロリムス、ノボリムス、リダフロリムス、テムシロリムス、及びピメクロリムスを含む、ラパマイシン及びその類似体、アンジオペプチン、カプトプリル、シラザプリル、又はリシノプリルなどのアンジオテンシン変換酵素阻害剤、ニフェジピン、アムロジピン、シルニジピン、レルカニジピン、ベニジピン、トリフルペラジン、ジルチアゼム、及びベラパミルなどのカルシウムチャネル遮断薬、線維芽細胞成長因子拮抗薬、魚油(オメガ3-脂肪酸)、ヒスタミン拮抗薬、ロバスタチン、エトポシド及びトポテカンなどのトポイソメラーゼ阻害剤、並びにタモキシフェンなどの抗エストロゲンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0038】
抗炎症剤の例としては、コルヒチン、並びにベタメタゾン、コルチゾン、デキサメタゾン、ブデソニド、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、及びヒドロコルチゾンなどのグルココルチコイドが挙げられるが、これらに限定されない。非ステロイド性抗炎症剤には、フルルビプロフェン、イブプロフェン、ケトプロフェン、フェノプロフェン、ナプロキセン、ジクロフェナク、ジフルニサル、アセトミノフェン、インドメタシン、スリンダク、エトドラク、ジクロフェナク、ケトロラック、メクロフェナム酸、ピロキシカム、及びフェニルブタゾンが含まれるが、これらに限定されない。
【0039】
抗腫瘍薬の例としては、アルトレタミン、ベンダムシン、カルボプラチン、カルムスチン、シスプラチン、シクロホスファミド、フォテムスチン、イホスファミド、ロムスチン、ニムスチン、プレドニムスチン、及びトレオスルフィンを含むアルキル化剤、ビンクリスチン、ビンブラスチン、パクリタキセル、ドセタキセルを含む有糸分裂阻害薬、メトトレキサート、メルカプトプリン、ペントスタチン、トリメトレキサート、ゲムシタビン、アザチオプリン、及びフルオロウラシルを含む代謝拮抗剤、塩酸ドキソルビシン及びマイトマイシンなどの抗生物質、並びにエストラジオールなどの内皮細胞の回復を促進する薬剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0040】
抗アレルギー剤には、ペミロラストニトロプルシドカリウム、ホスホジエステラーゼ阻害剤、プロスタグランジン阻害剤、スラミン、セロトニン遮断薬、ステロイド、チオプロテアーゼ阻害剤、トリアゾロピリミジン、及び一酸化窒素が含まれるが、これらに限定されない。
【0041】
コーティングは、適切な界面接着を提供するように、選択されたコーティング溶媒に可溶性であり、ベース構造ポリマーと化学的に適合するポリマーを含み得る。ポリマーはまた、ほとんど非晶質の薬剤を収容するための固体マトリックスを提供し、拡散を介して動脈組織への制御放出を提供する。構造ポリマーとして95/5比のL-ラクチド及びε-カプロラクトン、コーティング溶媒としてアセトニトリル、及び薬剤としてシロリムスの例では、コーティングポリマーは、ポリ-L-ラクチド(PLLA)のポリマーであってもよい。シロリムス又はその誘導体の場合、製剤中に不揮発性抗酸化剤を含めることは、薬剤分解を遅らせるのに有用である。
【0042】
コーティング製剤の一実施形態は、シロリムス、アセトニトリル、PLLA、及び抗酸化剤を含む。PLLAとシロリムスの比は、70/30である。95/5比のL-ラクチド及びε-カプロラクトンスキャフォールド上に適用され、乾燥されると、シロリムスの約10~20パーセントがスキャフォールド中に堆積され、一方、残りの80~90パーセントは、表面コーティングマトリックス中に存在する。
【0043】
一実施形態では、コーティングポリマーの分子量は、構造ポリマーの分子量よりも低く、構造ポリマーよりも速く分解し、早く質量を失う。したがって、コーティングマトリックス、及び表面コーティング層内に含有される薬剤の全ては、構造ポリマーが組織中に依然として存在するときに消失する。スキャフォールドポリマーが分解するにつれて、乳酸及び6-ヒドロキシヘキサン酸などの酸性モノマーを遊離し、これが組織炎症を誘導し得る。スキャフォールドポリマー内に埋め込まれた抗炎症特性を有する薬剤を有することは、炎症に対抗し、かつ後期抗炎症効果を提供することによって治癒反応を増強する。
【0044】
本明細書に記載されるステントは、3段階又は4段階の薬剤放出を示し得る。一実施形態では、ステントは、埋め込み後短期間、コーティングからの薬剤の初期高放出速度を提供する。その後、放出は、コーティングからの薬剤のより漸進的な放出である。コーティングが完全に分解した後、スキャフォールドは、薬剤の全てが溶出するまで、より低い速度で薬剤を放出し続ける。
図7は、ステントの経時的な薬剤放出を示す。グラフは、コーティングされたスキャフォールドからのシロリムスの累積放出パーセントを示す。高い持続レベルの放出は、およそ1日目から23日目まで示される。これに続いて、およそ270日目まで、より漸進的な放出が行われる。この期間におけるコーティング質量分解のプロセスは、およそ270日目~310日目までのコーティング中の残りの薬剤の放出を引き起こす。スキャフォールド自体に残っている薬剤は、スキャフォールド質量が分解するまで、この点を越えて低速で溶出し続ける。
【0045】
ステントは、加算法又は減算法を使用して製造され得る。記載される実施形態のうちのいずれにおいても、ステント又はステント要素は、シートとして製造される場合があり、円筒形に巻かれ得る。代替的に、ステント又はステント要素は、付加製造プロセスを用いて、円筒形に製造され得る。一実施形態では、ステントは、材料を円筒形の管に押し出すことによって形成され得る。いくつかの実施形態では、より長いステント要素が、製造プロセス中に形成され得、次に、より小さいステント要素/複数の要素に切断されて、多要素ステントを提供し得る。一実施形態では、ステント管は、ステント要素を形成するためのパターンでレーザ切断され得る。
【0046】
ここで、
図8を参照すると、一実施形態では、ステントは、マイクロステレオリソグラフィシステム100(又は「3D印刷システム」)を使用して製造され得る。様々な実施形態で使用され得る、現在利用可能なシステムのいくつかの例としては、MakiBox A6, Makible Limited, Hong Kong、CubeX, 3D Systems, Inc., Circle Rock Hill, SC、及び3D-Bioplotter, (EnvisionTEC GmbH, Gladbeck, Germany)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0047】
マイクロステレオリソグラフィシステムは、照明器、動的パターン生成器、画像形成器、及びZステージを含み得る。照明器は、光源、フィルタ、電気シャッタ、コリメートレンズ、及び動的マスクを生成するデジタルミラーデバイス(digital mirror device、DMD)に均一に強い光を投射する反射鏡を含み得る。
図10は、DMDボード、Zステージ、ランプ、プラットフォーム、樹脂バット、及び対物レンズを含む、マイクロステレオリソグラフィシステム100の一実施形態のこれらの構成要素のうちのいくつかを示す。3D印刷システム/マイクロステレオリソグラフィシステム及び他の付加製造システムの詳細は、当該技術分野でよく知られているため、本明細書には記載しない。しかしながら、様々な実施形態によれば、現在知られているか、又は今後開発されるかに関わらず、本発明の範囲内でステントを製造するために、任意の付加製造システム又はプロセスを潜在的に使用することができる。言い換えれば、本発明の範囲は、任意の特定の付加製造システム又はプロセスにも限定されるものではない。
【0048】
一実施形態では、システム100は、動的マスク投射マイクロステレオリソグラフィを使用してステントを製造するように構成され得る。一実施形態では、製造方法は、コンピュータプログラムで3Dモデルをスライスし、システム内で層ごとに画像を固化及び積層することによって、3D微細構造スキャフォールドを最初に生成することを含み得る。一実施形態では、システムの反射鏡を使用して、動的マスクを生成するDMD上に均一に強い光を投射する。動的パターン生成器は、マスクと同様の白黒領域を生成することによって、製造モデルのスライスされた区分の画像を作成する。最後に、画像を積層するために、解像度Zステージが上下に移動して、次の硬化のために樹脂表面をリフレッシュする。一実施形態では、Zステージ構築サブシステムは、約100nmの解像度を有し、基板を取り付けるためのプラットフォーム、ポリマー液体溶液を含有するためのバット、及び溶液の温度を制御するためのホットプレートを含む。Zステージは、下方に深く移動し、所定の位置まで上方に移動し、次に溶液が均一に分散されるまで一定の時間待機することによって、所望の層厚で新しい溶液表面を作製する。
【0049】
特定の実施形態を示し、説明してきたが、それらは、本発明を限定することを意図したものではない。本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、様々な変更及び改変を実施形態のうちのいずれに対しても行うことができる。本発明は、代替例、改変例、及び同等物を網羅することを意図している。
【国際調査報告】