(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-03
(54)【発明の名称】認知機能を改善する精神的イメージベースのニューロフィードバック
(51)【国際特許分類】
A61B 5/31 20210101AFI20240827BHJP
G09B 19/00 20060101ALI20240827BHJP
A61B 5/16 20060101ALI20240827BHJP
A61B 10/00 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
A61B5/31
G09B19/00 H
A61B5/16 120
A61B10/00 H
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024502209
(86)(22)【出願日】2022-07-05
(85)【翻訳文提出日】2024-03-12
(86)【国際出願番号】 US2022036103
(87)【国際公開番号】W WO2023287608
(87)【国際公開日】2023-01-19
(32)【優先日】2021-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518223753
【氏名又は名称】ブラウン ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100128347
【氏名又は名称】西内 盛二
(72)【発明者】
【氏名】町澤 昌宏
【テーマコード(参考)】
4C038
4C127
【Fターム(参考)】
4C038PP01
4C038PP03
4C038PS03
4C127AA03
(57)【要約】
ニューロフィードバックトレーニングには、精神的イメージジを視覚化する被験者が、前記精神的イメージに関する視覚作業記憶を定量化する神経信号を頭皮電極を使用して記録できることを含むことができる。誘導期間中に神経信号内で認知機能に関する神経活動に基づいて、視覚化された前記被験者のパフォーマンスをスコアすることができる。前記被験者へ前記視覚作業記憶に関する成功率を通知するために、前記スコアに基づいて前記被験者にフィードバックを提供することができる。前記ニューロフィードバックトレーニングの目標は、前記被験者の認知機能を改善することであってもよい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者を一定期間でニューロフィードバックトレーニングに参加させることと、
前記ニューロフィードバックトレーニングの各試験期間において、
精神的イメージに関する視覚作業記憶を定量化する神経信号を頭皮電極を使用して記録すること、
前記神経信号内に誘導期間中において認知機能に関する神経活動に基づいて前記被験者のパフォーマンスをスコアすること、及び、
前記スコアに基づいて前記被験者にフィードバックを提供することで前記視覚作業記憶に関する成功率を前記被験者へ通知することを実行することとを含み、
前記一定期間の後、前記被験者の前記認知機能が改善される、ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記ニューロフィードバックトレーニングの各試験期間に、前記頭皮電極を前記被験者の頭皮上に位置決めすることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記頭皮電極は、能動電極および/または受動電極を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記頭皮電極に対して1つまたは複数の後頭頂チャネルおよび/または1つまたは複数の後頭チャネルを含むチャネルを確立する、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記神経信号は、前記1つまたは複数の後頭頂チャネルの少なくとも1つおよび/または前記1つまたは複数の後頭チャネルの少なくとも1つから測定される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記スコアは、前記誘導期間中における前記認知機能に関する前記神経活動とベースライン神経活動とを比較することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ベースライン神経活動は、前記誘導期間前の固定期間中に決定されまたは前記誘導期間中に適応的に決定される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記固定期間は、前記誘導期間の前の5秒以下であり、
前記誘導期間は、5秒以下である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記試験期間に前記ベースライン神経活動を適応的に調整する、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記フィードバックは、神経信号が記録されてから5秒以内に表示される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記フィードバックは、前記試験中に表示され、前記試験期間中に一定の間隔で更新される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
両側性または片側性の半球活動、または前記半球間の両側性の差異を反映する、
ベースラインに対する前記神経活動における遅い皮質電位の変化に基づいて、前記被験者のパフォーマンスをスコアする、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記被験者は、プロンプトなしで精神的イメージを形成する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記精神的イメージは、前記被験者の記憶に基づいて作成される、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記ニューロフィードバックトレーニングの各試験の後に、前記被験者に前記スコアを改善するよう指示することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記認知機能は、視覚注意力、集中力、短期記憶、感情または創造力に関連する、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
ユーザが前記精神的イメージを想像している時に一点に注視する、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記点は、モニタ上の形状である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
視覚刺激、聴覚刺激および/または触覚刺激の方式で前記フィードバックを提供する、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記フィードバックは、前記視覚作業記憶に関する成功率を示すスコアを反映している、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記スコアは、前記精神的イメージの独自性または前記精神的イメージの習熟度を反映している、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
被験者をニューロフィードバックトレーニング試験に参加させるように構成されるシステムであって、
命令を記憶するメモリと、
プロセッサと、を含み、
前記プロセッサは、前記メモリへアクセスして前記命令を実行することにより、
精神的イメージに関する視覚作業記憶を定量化する神経信号を複数の頭皮電極から受信し、
前記神経信号内に誘導期間中において認知機能に関する神経活動に基づいて前記被験者のパフォーマンスをスコアし、
前記スコアに基づいて前記被験者にフィードバックを提供することで前記視覚作業記憶に関する成功率を前記被験者へ通知するように構成され、
前記試験の後、前記被験者の認知機能が改善される、システム。
【請求項23】
前記被験者の頭皮上の所定の位置に位置決めされて前記神経信号を記録するように構成される前記複数の頭皮電極をさらに含む、請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
前記頭皮電極は、能動電極および/または受動電極を含む、請求項23に記載のシステム。
【請求項25】
前記頭皮電極のそれぞれは、チャネルに関連し、前記チャネルは、後頭頂チャネルと後頭チャネルとのうちの少なくとも1つである、請求項23に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
(関連出願)
本願は、2021年7月12日に提出された「MENTAL IMAGE-BASED NEUROFEEDBACK TO IMPROVE COGNITIVE FUNCTION」と題する、米国仮特許出願第63/220,646号の利益を主張する。この出願の主題は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(政府支援)
本発明は、米国国立衛生研究所によって授与された承認番号R01EY019466およびR01EY027841、米国―イスラエル二国間科学財団によって授与された承認番号BSF 2016058、および日本科学技術庁によって授与された承認番号JPMJCE1311の下で政府の支援を受けてなされたものである。米国、イスラエルおよび日本の政府は、本発明に関して一定の権利を有する。
【技術分野】
【0003】
本開示は、概してニューロフィードバックに関し、より具体的には、少なくとも1つの認知機能を改善するために、精神的イメージ(mental image)に関連する神経信号に基づいてニューロフィードバックを提供する改善システムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0004】
ニューロフィードバックは、脳活動をリアルタイムで測定し、ユーザにフィードバックを提供することにより、オペラント条件付けを通じて脳の機能および構成を修正するために使用することができる。ニューロフィードバックトレーニングは、認知障害のある患者の特定の障害(例えば、ADHD(注意欠陥多動性障害)、うつ病、不安、外傷性脳損傷、脳卒中、てんかんなど)の症状を軽減し、認知障害を持つ患者の認知機能(例えば、視覚注意力、作業記憶、集中力、短期記憶、感情、創造力など)を向上するために採用されている。最近、ニューロフィードバックトレーニングが注目を集めている。特に、ゲームプレイ(gameplay)は、認知能力を向上させる簡単な方法として宣伝されている。しかしながら、ゲームプレイやその他の簡単なニューロフィードバック技術を使用したタスクでの長時間のトレーニングは、基本的な高次認知機能に一般化される認知機能を確実に向上するわけではなく、むしろトレーニングされたタスクのパフォーマンスを改善させるだけであることが示されている。
【発明の概要】
【0005】
基本的な高次認知機能に一般化される認知機能を改善しない行動トレーニング技術(ゲームプレイおよび他の簡単なニューロフィードバック技術など)の替代として、本開示は、基本的な高次認知機能に一般化される認知機能を確実に改善させるニューロフィードバック技術を採用するシステムおよび方法を提供する。本発明によって提供されるニューロフィードバック技術は、ユーザが精神的イメージを想像(または精神化)することにより、精神的イメージに基づいて以前のスコアを改善しようとし、精神的イメージに基づいて新たなスコアを提供する。
【0006】
システムは、被験者をニューロフィードバックトレーニング試験に参加させるように構成されてもよい。前記システムは、命令を記憶するメモリと、プロセッサと、を含む。前記プロセッサは、前記メモリへアクセスして命令を実行することにより、精神的イメージに関する視覚作業記憶を定量化する神経信号を複数の頭皮電極から受信し、神経信号内に誘導期間(induction period)中において認知機能に関する神経活動に基づいて被験者のパフォーマンスをスコアし、且つ前記スコアに基づいて前記被験者にフィードバックを提供することで前記視覚作業記憶に関する成功率を前記被験者へ通知するように構成される。前記試験の後、前記被験者の前記認知機能が改善される。
【0007】
ニューロフィードバックトレーニングのための方法は、被験者の認知機能を改善することができる。前記方法は、被験者を一定期間でニューロフィードバックトレーニングに参加させることを含む。前記ニューロフィードバックトレーニングの各試験期間において、精神的イメージに関する視覚作業記憶を定量化する神経信号を頭皮電極を使用して記録することと、前記神経信号内に誘導期間中において認知機能に関する神経活動に基づいて前記被験者のパフォーマンスをスコアすることと、前記スコアに基づいて前記被験者にフィードバックを提供することで前記視覚作業記憶に関する成功率を前記被験者へ通知することとを実行する。前記一定期間の後、前記被験者の前記認知機能が改善される。
【0008】
本開示の前述および他の特徴は、添付の図面を参照しながら以下の説明を閲読した後、当業者にとって明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】認知機能を改善するために、精神的イメージに関する神経信号に基づいてニューロフィードバックを提供する例示的なシステムの図である。
【
図2】
図1のシステムによって実行されるニューロフィードバックトレーニングの異なる期間を示す図である。
【
図3】本明細書に記載のニューロフィードバックトレーニングの単一試験を実行するための方法のプロセスフロー図である。
【
図4】
図3の試験にスコアを提供するための方法のプロセスフロー図である。
【
図5】CDAチャネルの頭皮グラフィーおよび各グループの対応するフィードバックスコアを示す。
【
図6】ニューロフィードバックトレーニング試験の概略図である。
【
図7】作業フローをリアルタイムで算出する流れ図である。
【
図8】ゴー(go)信号開始後で400~1000 msおよび1000~5000 ms内の平均ERPの頭皮グラフィーを示し、灰色の丸は関心のある目標チャネルを示す。
【
図9】400~1000 msおよび1000~5000 ms内の各グループの総平均半球差分ERP波形(左半球―右半球電極)を示す。
【
図10】トレーニングセッション(session)(1日目〜5日目)内のCDAチャネルの総平均半球差分振幅を示す。
【
図11】トレーニング前後の注意効率スコアおよび視覚作業記憶スコアを示す。
【
図12】作業記憶の増加が左側性CDAの程度に関連し、行動変化が右側性CDAの程度に関連しないことを示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
I.定義
別途定義しない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語は、当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。
【0011】
本明細書で使用される、単数形「一」、「1つの」および「前記」は、文脈上で明確な指示がない限り、複数形も含むことができる。
【0012】
本明細書で使用される、「含む」および/または「含有する」という技術用語は、記載される特徴、ステップ、操作、要素および/または部品の存在を指定することができるが、1つまたは複数の他の特徴、ステップ、操作、要素、部品および/またはグループの存在または追加を排除するものではない。
【0013】
本明細書で使用される、「および/または」という技術用語は、関連する列挙された項目の1つまたは複数の任意およびすべての組み合わせを含んでもよい。
【0014】
本明細書で使用される、「第1」、「第2」などの技術用語は、これら技術用語によって説明される要素を限定するものではない。これら技術用語は、ある要素を別の要素と区別するためにのみ使用される。したがって、以下で説明する「第1」要素は、本開示の教示から逸脱することなく「第2」要素と呼ぶこともできる。操作(またはアクション/ステップ)の順序は、特に明記しない限り、特許請求の範囲または図面に示された順序に限定されない。
【0015】
本明細書で使用される、「ニューロフィードバック」という技術用語は、ユーザが通常はリアルタイムで脳活動のフィードバック(例えば、感覚フィードバック)に対して反応するという形態のバイオフィードバックを指してもよい。
【0016】
本明細書で使用される、「ニューロフィードバックトレーニング」という技術用語は、オペラント条件付けを通じて脳の機能または構成を修正するためのニューロフィードバックの使用を指してもよい。オペラント条件付けは、自己調整を促進するフィードバック(例えば、感覚フィードバック)に基づいてもよい。例えば、ニューロフィードバックトレーニングは、特定の障害(例えば、ADHD、うつ病、不安、外傷性脳損傷、脳卒中、てんかんなど)の症状を軽減し、認知機能を向上するために採用されている。
【0017】
本明細書で使用される、「認知機能」という技術用語は、広義の技術用語であり、知識取得、情報操作および推論に関与する精神的プロセスを指してもよい。認知機能は、視覚关注、作業記憶(視覚作業記憶とも呼ばれる)、集中力、短期記憶、感情、創造力などを含んでもよい。
【0018】
本明細書で使用される、「精神的イメージ」、「精神的映像」、「精神的想像」などの技術用語は、あるオブジェクト、イベントおよび/またはシーンを知覚する体験に類似し得る感覚体験を指してもよいが、関連するオブジェクト、イベントまたはシーンが実際に感覚に呈示しない場合に発生する。言い換えれば、精神的イメージは、努力の有無にかかわらず、「想像」、「作成」、「精神化」などされることができる。
【0019】
本明細書で使用される、「ユーザ」、「参加者」、「被験者」などの技術用語は、ニューロフィードバックトレーニングに参加したまたは参加しようとする任意の人間を指してもよい。
【0020】
本明細書で使用される、「コントローラ」という技術用語は、ニューロフィードバックトレーニングを実行する任意の人を指してもよく、1つまたは複数のコンピューティングデバイスおよび/またはニューロフィードバックトレーニングを実行する人間を含んでもよい。
【0021】
本明細書で使用される、「リアルタイム」という技術用語は、イベントの後にフィードバックが利用可能になる時間を指してもよい。場合によっては、フィードバックがあるイベントの後で10秒以内に利用可能になると、フィードバックはリアルタイムになる可能性がある。他の場合に、あるイベントの後で5秒以内にフィードバックが利用可能になると、フィードバックはリアルタイムになる可能性がある。より多くの他の場合に、あるイベントの後で1秒以内にフィードバックが発生すると、フィードバックはリアルタイムになる可能性がある。より多くの他の場合に、あるイベントの後で50ミリ秒以内にフィードバックが発生すると、フィードバックはリアルタイムになる可能性がある。
【0022】
II.概要
伝統的に、ゲームプレイおよび他の簡単なニューロフィードバック技術は、認知機能を向上できる治療として宣伝された。しかしながら、ゲームプレイおよび他の簡単なニューロフィードバック技術は、認知機能を確実に向上したり、より高次の認知機能に一般化したりすることができないことが示されている。ゲームプレイおよび他の簡単なニューロフィードバック技術の代替として、本開示は、ユーザが想像する精神的イメージに基づくニューロフィードバック技術を採用して認知機能を改善するシステムおよび方法を提供する。本明細書に記載のニューロフィードバック技術は、人間が統計的経験を学習して蓄積する能力を利用することで、1つまたは複数の認知機能を改善する。特に、当該ニューロフィードバック技術は、1つまたは複数の試験を含み、前記試験には、頭皮電極(ニューロフィードバックトレーニングを行っているユーザに装着される)を使用して、精神的イメージに関する視覚作業記憶を定量化する神経信号が記録され、神経信号内に誘導期間中において認知機能に関する神経活動に基づいてユーザのパフォーマンスがスコアされ、被験者に視覚作業記憶に関する成功率が通知されるために、スコアに基づいてユーザにフィードバックを提供する。ユーザは、異なる試験にわたるスコアを改善することを目的とする。1つまたは複数の試験の後、認知機能が改善される。
【0023】
III.システム
本開示の一様態は、精神的イメージを形成するユーザに関する神経信号に基づいてニューロフィードバックを提供することができるシステム10(
図1)を含んでもよい。精神的イメージは、何を想像するかについてプロンプトされることなく、ユーザによって作成/形成されえる。例えば、精神的イメージは、ユーザに固有の記憶に基づいてもよい。精神的イメージは、異なるユーザごとに、および/またはニューロフィードバックトレーニング試験ごとに、異なってもよいが、異なる必要はない。例えば、あるユーザは、聴覚的な音の精神的イメージ(例えば、その母親の声を聞いている)を形成することができるが、別のユーザは晴れた日のビーチでの視覚的な精神的イメージを形成することができる。言い換えれば、特定の精神的イメージは重要ではないが、ユーザが精神的イメージを作成しているという事実がニューロフィードバックの主題である。
図1のシステムによって提供されるニューロフィードバックは、1つまたは複数の認知機能を向上することが示されており、認知機能を確実に向上しないことが示されているゲームプレイおよび他の簡単なニューロフィードバック技術によって提供されるニューロフィードバックよりも優れている。
【0024】
ユーザは、
図1のシステムを使用して、1つまたは複数の試験を含んでもよいニューロフィードバックトレーニングに参加する。システム10は単一ニューロフィードバックトレーニング試験を実行することについて記載されているが、システム10は、1つまたは複数のニューロフィードバックトレーニング試験(例えば、以下の実験セクションで説明されるように)を行うために使用することができることが理解すべきである。
【0025】
システム10は、頭皮電極12、ディスプレイ14および1つまたは複数のコンピューティングデバイス16を含んでもよい。頭皮電極12は、入力/出力ポート(I/O1)18を介して1つまたは複数のコンピューティングデバイス16に接続することができるが、ディスプレイ14は、別の入力/出力ポート(I/O2)22を介して1つまたは複数のコンピューティングデバイス16に接続することができる。入力/出力ポート18、22のそれぞれは、1つまたは複数のコンピューティングデバイス16と、対応する入力/出力ポートに接続されたデバイス(例えば、頭皮電極12またはディスプレイ14)との間のデータ通信/転送を容易にするように構成された回路システム(この回路システムは、異なるポートでは同じであっても異なっていてもよい)を含んでもよい。また、対応する入力/出力ポートのそれぞれは、有線および/または無線通信に用いるように構成されてもよい。なお、1つまたは複数のコンピューティングデバイス16が3つ以上のポートを有してもよいことが理解すべきである。
【0026】
頭皮電極12は、神経信号を記録するために、被験者の頭皮上の所定の位置に配置または位置決めされるように構成されてもよい。頭皮電極12は、能動電極および/または受動電極であってもよい。一例として、頭皮電極12は、EEG電極(例えば、従来の湿式Ag/AgCl電極、能動乾燥湿式単一金ピンベース電極、ハイブリッド乾燥複数スパイクベース電極、受動乾燥固体ゲルベース電極など)であってもよい。包括的な標準EEG分析では、64個もの電極が使用される。システム10は、64個もの頭皮電極12を使用することもできるが、その代わりに、伝統的に使用されているEEG電極の一部のみを利用することもできる(例えば、後頭頂部(posterior―parietal)EEG電極および/または後頭部(occipital)EEG電極のみを利用する)。頭皮電極12のそれぞれは、チャネルに関連付けることができる(例えば、頭皮電極は、1つまたは複数の後頭頂チャネルに関連付けられる後頭頂部に位置決めされる電極および/または1つまたは複数の後頭チャネルに関連付けられる後頭部の近くに位置決めされる電極)を含んでもよい。一例として、場合によっては、1つまたは複数の後頭頂チャネルのうちの少なくとも1つおよび/または1つまたは複数の後頭チャネルのうちの少なくとも1つから神経信号を測定することができる。頭皮電極12は、入力/出力ポート(I/O1)18に接続された1つまたは複数のチャネルを介して神経信号を1つまたは複数のコンピューティングデバイス16に伝送することができる。コンピューティングデバイス16および/または頭皮電極12に関連付けられる1つまたは複数の追加部品は、頭皮電極12によって記録された神経信号に対して前処理タスクを実行することができることが理解すべきである。
【0027】
ディスプレイ14は、ニューロフィードバックトレーニング期間に、視覚信号、聴覚信号、触覚信号などをユーザに与えることができる。ディスプレイ14は、モニタ(例えば、視覚刺激を提供できる)、スピーカ(例えば、聴覚刺激を提供できる)および/または異なる周辺デバイス(例えば、触覚刺激を提供できる)を含んでもよい。例えば、ディスプレイ14は、ユーザがニューロフィードバックトレーニング試験を開始および/または停止するための指示、またはニューロフィードバックトレーニング試験に関するスコアなどのフィードバックの指示を表示することができる。ディスプレイ14は、入力/出力ポート(I/O2)22を介して、1つまたは複数のコンピューティングデバイス16との間でデータを送受信することができる。
【0028】
1つまたは複数のコンピューティングデバイス16は、1つまたは複数のプロセッサ20とのデータ通信のために接続される入力/出力ポート18、22(および任意の追加のポート)を含んでもよい。なお、1つまたは複数のプロセッサ20は、1つまたは複数の非一時的メモリデバイスとのデータ通信のために接続されてもよい。一例として、1つまたは複数のプロセッサ20と1つまたは複数の非一時的メモリデバイス24とを含む。1つまたは複数のコンピューティングデバイス16は、1つまたは複数のプロセッサ20とのデータ通信のために接続される、例示されていない追加の部品を有することもできる。
【0029】
1つまたは複数のコンピューティングデバイス16は、1つまたは複数のプロセッサ20が1つまたは複数の非一時的メモリデバイス24に記憶された命令に基づいて複数のタスク(例えば、
図1および
図2に示す)を実行するようにプログラムすることができる。1つまたは複数のコンピューティングデバイス16は、デスクトップコンピュータ、ポータブルコンピュータ(例えば、ラップトップ、スマートフォン、タブレットなど)などとして実装することができる。1つまたは複数のコンピューティングデバイス16は、ニューロフィードバックトレーニングを実行するためにコントローラ(人間の介入によって、または自律的に)として機能することができる。なお、1つまたは複数のコンピューティングデバイス16は、前述の部品のみに限定されず、1つまたは複数のコンピューティングデバイスは、例示されていない追加の部品を有してもよいことが留意されたい。
【0030】
1つまたは複数の非一時的メモリデバイス24は、機械可読命令および/またはデータを記憶するように構成されてもよい。1つまたは複数の非一時的メモリデバイス24は、例えば揮発性メモリ(例えば、RAM)、不揮発性メモリ(例えば、ハードディスク、フラッシュメモリ、ソリッドステートドライブなど)または両方の組み合わせとして実施することができる。1つまたは複数のプロセッサ20(例えば、1つまたは複数のプロセッサコア)は、1つまたは複数の非一時的メモリデバイス24にアクセスし、機械可読命令を実行するためにシステム内に構成されてもよい。
【0031】
一例として、1つまたは複数の非一時的メモリデバイス24は、オペレーティングシステム、1つまたは複数のアプリケーションプログラム、他のプログラムモジュールおよびプログラムデータを含む、様々な機械可読命令およびデータを記憶することができる。オペレーティングシステムは、メーカーやシステムごとに異なる、任意の適切なオペレーティングシステムまたはオペレーティングシステムの組み合わせであってもよい。いくつかの例では、アプリケーションプログラムおよびプログラムモジュールは、ニューロフィードバックトレーニングの一部または全部を実施することができる。例えば、プログラムモジュールは、ベースラインモジュール26、スコアモジュール28およびフィードバックモジュール30(システム10は、例示されているプログラムモジュールよりも多くのプログラムモジュールを有してもよい)を含んでもよい。なお、非一時的メモリ24は、パラメータ32(例えば、ユーザおよび/またはニューロフィードバックトレーニング試験に関するデータ、設定など)またはユーザおよび/またはニューロフィードバックトレーニング試験に関する他の情報を記憶することができる。一例として、パラメータ32は、ユーザのスコアの調整パラメータを含んでもよい。
【0032】
図2に示すように、システム10を使用するニューロフィードバックトレーニング試験は、固定期間(fixation period)44、誘導期間46およびフィードバック期間48を含んでもよい。ベースラインモジュール26は、固定期間44中に実行されることができ、スコアモジュール28は、誘導期間46中に実行されることができ、フィードバックモジュール30は、フィードバック期間48中に実行されることができる。プログラムモジュールは、また、今説明したものとは異なる期間中に部分的または完全に実行されてもよい。
【0033】
固定期間は、ユーザがディスプレイ14上の固定点42を注視する時であってもよい。例えば、固定点42は、モニタ(ディスプレイ14)上の形状のような視覚画像であってもよい。しかしながら、固定点42は視覚図像である必要はない。固定期間は、例えば20秒以下、10秒以下、または5秒以下であってもよい。ベースラインスコアは、固定期間44中にベースラインモジュール26によって決定することができる(例えば、固定期間中に頭皮電極12によって記録されたデータに基づいて、および/または保存されたデータに基づいて、データは前処理されてもよい)。代替として、または追加として、ベースラインモジュール26は、誘導期間46の少なくとも一部の間、ベースラインスコアを適応的に決定することができる。ユーザが積極的に精神的イメージを作成していない時に、ベースラインモジュール26は、ユーザの神経活動に基づいてベースラインスコアを決定することができる。場合によっては、ベースラインスコアが(例えば、スコアモジュール28によって)ゼロ値に設定されることができ、スコアがゼロ値に基づいて調整されることができる。固定期間44および誘導期間46は、連続して生じる異なる期間である必要はないことが留意されたい。代替として、固定期間44は、誘導期間46中に発生してもよい。
【0034】
誘導期間46は、固定期間44の後に(例えば、5秒以下)発生することができるが、固定期間44は、代替として誘導期間46内であってもよい。誘導期間46中に、ユーザは、精神的イメージを作成(または精神化)することができ、頭皮電極12は、精神的イメージを作成/精神化している時にユーザの神経信号を記録することができる。精神的イメージは、ユーザの体験(あるオブジェクト、イベントおよび/またはシーンを知覚するなどの)ユーザの経験に類似し得る精神的感覚経験であってもよい。ニューロフィードバックトレーニング試験中に、精神的に知覚されたオブジェクト、イベントおよび/またはシーンは、実際に感覚に呈示しない。個々のユーザの精神的イメージは、別のユーザの精神的イメージと同じである必要はないことが留意されたい。また、1人のユーザが複数のニューロフィードバックトレーニング試験を完了した場合、当該ユーザの精神的イメージが前記試験における1つまたは複数の期間において異なってもよいが、異なる必要はないことが留意されたい。なお、ほとんどの場合、システム10は、精神的イメージに関する内容(または精神的イメージが聴覚的、視覚的、触覚的などであるべきかどうかさえも)のプロンプトをユーザに提供しない。しかしながら、場合によっては、システム10は、ユーザが精神的イメージの作成を開始/停止すべきであることをディスプレイ上に示すことができる。なお、誘導段階47中に、目標特徴を算出することができる。当該目標特徴は、頭皮電極12からの神経信号内にあることができ、スコアを決定/調整するために使用することができる。
【0035】
誘導期間46中に、ユーザが精神的イメージを構築する時のパフォーマンスを(例えば、スコアモジュール28によって)スコアすることができる。一例として、頭皮電極12によって記録される神経活動の様態の変化に基づいて(例えば、1つまたは複数の遅い皮質電位)、ベースラインに対するスコアを決定することができる。遅い皮質電位は、通常、対側性遅延活動(CDA)のように、数百ミリ秒から数秒続く神経信号で見られる、皮質の電気活動に関する電位におけるイベントに関する変位である。しかしながら、改善を目標とする認知機能に基づいて、CDA以外の遅い皮質電位を使用することもできる。例えば、神経活動における1つまたは複数の遅い皮質電位は、両側性または片側性の半球活動、または半球間の両側性の差異を反映してもよい。スコアには、誘導期間中において認知機能に関する神経活動をベースライン神経活動と比較することが含まれる。ベースラインは、スコアと同じ1つまたは複数の遅い皮質電位に基づいてもよいことに注意してください。
【0036】
スコアを(例えば、スコアモジュール28によって)算出した後、フィードバック期間48中に(例えば、フィードバックモジュール30によって)ディスプレイ14を介してフィードバックを(例えば、視覚的に、聴覚的におよび/または触覚的に)表示する。フィードバックは、特定の認知機能に関する成功を例示することができる。フィードバックは、スコアの表現(例えば、良いスコアは、正のグラフィック示しおよび/または正の聴覚的示しを有してもよく、悪いスコアは、負のグラフィック示しおよび/または負の聴覚的示しを有してもよい)であってもよい。例えば、スコアは、ディスプレイ14上に表示することができる(スコアが良いか悪いかのインジケータを含んでもよい)。一例として、神経信号が記録されてから5秒以内にスコアを表示できる。別の例として、より良い精神的イメージ(または精神的イメージを改善する)を作成することをユーザに奨励するために、試験中に一定間隔(例えば、予め定義した間隔)でスコアを更新することができる。ユーザに進度が通知されるように、試験中にスコアが調整されてもよい。ニューロフィードバックトレーニングが複数の試験を含む場合、フィードバック期間48は、被験者に将来スコアを改善するように指示および/または奨励するフィードバックモジュール30を含んでもよい。ニューロフィードバックトレーニングの目標は、ユーザの認知機能を改善することである(ユーザが特定の試験中に成功したか否かに関係なく、認知機能は改善できる)。
【0037】
IV.方法
本開示の別の様態は、精神的イメージに関する神経信号に基づいてニューロフィードバックトレーニングを提供するための方法50および方法60(
図3および
図4)を含んでもよい。
図1および
図2に示されるシステム10を使用して方法50および方法60を実行することができる。具体的には、方法50および方法60の1つまたは複数のステップは、メモリ24に記憶されてプロセッサ20によって実行されることができる。
【0038】
簡単な目的のため、方法50および方法60は、連続して実行されるものとしてとして示され、説明される。しかしながら、いくつかのステップは異なる順序で、および/または本明細書に示され説明される他のステップと同時に行われる可能性があるため、本開示は、例示されている順序によって限定されないことが理解および認識べきである。また、方法50および方法60を実施することは例示されている様態のすべてが必要であるわけではなく、方法50および方法60は例示されている様態に限定されるわけでもない。
【0039】
次に
図5を参照すると、例示されているのは、本明細書に記載のニューロフィードバックトレーニングの単一試験を実行するための方法50である。この方法50は、ニューロフィードバックトレーニングが完了するまで一定期間中に複数回実行されることができる。この一定期間は、分、時間、日、週、月、または年のオーダーであってもよい。方法50の目標は、ある認知機能を改善することにある。認知機能は、例えば視覚注意、作業記憶(視覚作業記憶とも呼ばれる)、集中力、短期記憶、感情、創造力などを含んでもよい。
【0040】
52において、ユーザが精神的イメージを作成している時に(例えば、頭皮電極12によって)記録された神経信号を(例えば、コンピューティングデバイス16によって)受信することができる。神経信号は、精神的イメージに関する視覚作業記憶および/または別の認知機能を定量化することができる。頭皮電極は、ユーザの頭皮上に位置決めすることができ、能動電極または受動電極を含んでもよい。頭皮電極は、1つまたは複数の後頭頂チャネルおよび/または1つまたは複数の後頭チャネル(例えば、EEGチャネル)に連結されてもよい。
【0041】
54において、神経信号から目標特徴(例えば、神経信号の特徴)を算出することができる。例えば、目標特徴は、ニューロフィードバックトレーニングによって改善しようとしている目標認知機能に関連付けることができる。56において、目標特徴に基づいてフィードバックスコアを(例えば、コンピューティングデバイス16のフィードバックモジュール30によって)調整することができる。
【0042】
神経信号内の神経活動に基づいてユーザのパフォーマンスを(例えば、調整されたフィードバックスコアを用いてコンピューティングデバイス16上のスコアモジュール28によって)スコアすることができる。スコアは、誘導期間中に発生することができ、ベースラインスコア(固定期間中にまたは誘導期間中にユーザが精神的イメージを作成していない、または作成しようとしていない時間で決定される)に基づいてもよい。誘導期間は固定期間に続いてもよいが、固定期間は誘導期間内にあってもよい。誘導期間中に、ユーザは精神的イメージを作成(または精神化)することができ、頭皮電極から神経信号を記録できる。精神的イメージは、ユーザがあるオブジェクト、イベントおよび/またはシーンを知覚するに類似し得る感覚体験であってもよいが、関連するオブジェクト、イベントまたはシーンが実際に感覚に呈示しない場合に発生する。精神的イメージは、何を想像するかについてプロンプトされることなく、ユーザによって作成/形成されえる。例えば、精神的イメージは、ユーザに固有の記憶に基づいてもよい。精神的イメージは、異なるユーザごとに、および/またはニューロフィードバックトレーニング試験ごとに、異なってもよいが、異なる必要はない。例えば、あるユーザは、聴覚的な音の精神的イメージ(例えば、その母親の声を聞いている)を形成することができるが、別のユーザは晴れた日のビーチでの視覚的な精神的イメージを形成することができる。言い換えれば、特定の精神的イメージは重要ではないが、ユーザが精神的イメージを作成しているという事実がニューロフィードバックの主題である。また、個々のユーザの精神的イメージは、ニューロフィードバックトレーニングの複数の試験の間に変化してもよいことが留意されたい。精神的イメージの内容に関するプロンプトはユーザに提供されないが、ユーザに精神的イメージの作成の開始/停止を指示するプロンプトが提供され得る。
【0043】
ユーザに精神的イメージに関する成功率を通知するために、ユーザにフィードバック(例えば、ディスプレイ14を介して)を提供してもよい。フィードバックは、ユーザが精神的イメージを作成することに成功したことを示すことができ、特定の認知機能の改善に関連付けることができる。例えば、スコアはディスプレイ14によって呈示することができる(スコアが良いか悪いかのインジケータを含むこともできる)。スコアは、視覚的、聴覚的、触覚的などの形で表示することができる。一例として、神経信号を記録した後にスコアを表示することができる。別の例として、当該試験における精神的イメージ化を改善することをユーザに奨励するために、試験中に一定間隔(例えば、予め定義した間隔)でスコアを更新することができる。ニューロフィードバックトレーニングの各試験の後、被験者に将来スコアを改善するように指示することができる。ニューロフィードバックトレーニングの目標は、ユーザの認知機能を改善することである(単一試験の成功に関係なく発生し得る)。
【0044】
次に
図6を参照すると、例示されているのは、ニューロフィードバックトレーニングの単一試験(
図3に示す試験のように)にスコアを提供するための例示方法60である。異なる/追加のステップはスコアを算出するために必要であってもよいことが理解すべきである。62において、ベースライン神経活動を(例えば、コンピューティングデバイス16のベースラインモジュール26によって)決定することができる。固定期間中にベースラインを決定することができる。固定期間は、ユーザがディスプレイ上の点(例えば、ディスプレイ14上の固定点42)(または他のタイプの視覚図像、ただし視覚図像でなくてもよい)を注視する時であってもよい。固定期間は、例えば20秒以下、10秒以下、または5秒以下であってもよい。固定期間中または誘導期間の少なくとも一部中にベースラインスコアを適応的に決定することができる。ユーザが精神的イメージを積極的に作成していない時、ベースラインスコアは、ユーザの神経活動に基づいても良い。場合によっては、ベースラインスコアがゼロ値に設定されることができ、スコアがゼロ値に基づいて調整されることができる。固定期間および誘導期間は、連続して生じる異なる期間であってもよいが、連続して生じる異なる期間である必要がないことが留意されたい。代替として、固定期間は、誘導期間中に発生してもよい。
【0045】
64において、神経活動を示す神経信号を(例えば、コンピューティングデバイス16のI/O118によって)受信することができる。誘導期間中に、ユーザは精神的イメージを作成(または精神化)することができ、頭皮電極(例えば、頭皮電極12)は、ユーザが精神的イメージを作成/精神化している時に、ユーザの神経信号を記録することができる。さらなるアクションが発生する前に神経信号を前処理することができる。精神的イメージは、(あるオブジェクト、イベントおよび/またはシーン)を知覚する、ユーザの体験に類似し得る精神的感覚経験であってもよい。ニューロフィードバックトレーニング試験中に、精神的に知覚されたオブジェクト、イベントおよび/またはシーンは実際に感覚に呈示しない。個々のユーザの精神的イメージは、別のユーザの精神的イメージと同じである必要はないことが留意されたい。また、1人のユーザが複数のニューロフィードバックトレーニング試験を完了した場合、当該ユーザの精神的イメージが前記試験における1つまたは複数の期間において異なってもよいが、異なる必要はないことが留意されたい。
【0046】
66において、ベースライン神経活動に対して、神経信号の神経活動を(コンピューティングデバイス16のスコアモジュール28によって)スコアすることができる。スコアは、例えば誘導期間中に発生することができ、誘導期間中に認知機能に関する神経活動をベースライン神経活動と比較することを含んでもよい。一例として、神経活動の一様態の変化(例えば、1つまたは複数の遅い皮質電位)に基づいて、ベースラインに対するスコアを決定することができる。遅い皮質電位は、通常、対側性遅延活動(CDA)(しかしながら、改善を目標とする認知機能に基づいて他の遅い皮質電位を使用してもよい)のように、皮質の電気活動に関する電位におけるイベントに関する変位である。例えば、神経活動における1つまたは複数の遅い皮質電位は、両側性または片側性の半球活動、または半球間の両側性の差異を反映することができる。
【0047】
IV.実験
以下の実験は、本明細書に記載のシステムおよび方法によって使用できる、脳波(EEG)に基づく視覚イメージによるニューロフィードバックトレーニングを実証する。ニューロフィードバックトレーニングは、様々な認知能力に共通すると考えられている高次認知機能を含む、1つまたは複数のコア認知機能を向上できる。そのようなコア認知機能は、作業記憶容量(capacity)(注意と記憶機能に固有)と、作業記憶容量を反映するニューラル特徴(signature)、対側性遅延活動(CDA)、低速イベントに関する電位(ERP)成分であり、前記成分は、十分に確立されたERPマーカでEEG読み取りデータ内で見つかるが、リアルタイムのニューロフィードバックトレーニングにはまだ使用されていない。なお、ニューロフィードバックトレーニングは、向上された認知機能に接続された皮質の解剖学的構成を変化させることができる。
【0048】
手順:
研究参加者(n=14)は、ユーザとも呼ばれ、2つのグループのうちの1つにランダムに割り当てられる。1つのグループ(n=7)は左半球優位のCDA(‘LHG’)でトレーニングされ、もう1つのグループ(n=7)は右半球優位のCDA(‘RHG’)でトレーニングされる(
図5)。
図5に示すように、両側優位のCDA(‘BHG’)は調査されていないが、サンプルのユースケース(use―case)の目的で示されていることが留意してください。
【0049】
各グループは、ニューロフィードバックトレーニングの100回の試験(5日間、1日当たり20回の試験)に参加する。次の例では、人間が前記試験および数日間にわたるニューロフィードバックトレーニングによって神経活動に関する統計的経験を学習および蓄積する能力を利用する。ニューロフィードバックトレーニングがない場合、通常、神経活動を認識することは困難である。毎日、各参加者のタスクは、できるだけ多くの試験で高スコアを実現することである。学習(例えば、脳活動の状態を了解する)は、試行錯誤に基づいている。1日の終わりに、参加者にはどの試験が成功したかが通知される(成功は、50以上のフィードバックスコアとして測定され、特定の参加者のベースライン期間と比較して1標準偏差を超える値に相当する)。各参加者は、その試験に対してどのようなイメージを思い浮かべたかを尋ねられた。参加者のタスクは、特に最後のトレーニングセッションで、できるだけ多くの試験で高スコアを実現する独自の戦略を見つけることである(スコアの範囲は最低0から最高100まで)。
【0050】
図6に示すように、各試験は、固定段階(ベースラインを決定するために4000~5000 ms続く)、ゴー段階(EEGを記録する時に5000 ms続く)、停止段階(前処理が発生する時に2500 ms続く)およびフィードバック段階(試験にスコアを提供する時に3000 ms続く)に分割される。固定段階では、参加者はそれらの目が円の中心にある固定点を注視するように求められる。ゴー段階では、参加者は停止段階になるまで、それらの目を閉じて、それらが望む任意のものの精神的イメージを形成(または「精神化」)するように求められ、停止段階では、参加者は自由にそれらの目を開けて精神化を停止する。精神的イメージに関する任意のバイアスを最小化するために、参加者には、目標神経活動が視覚注意に関連していると考えられることだけが通知される。ゴー段階では、各参加者の頭皮全体をカバーする32つのチャネルの能動電極(Brain Products、actiCAP、BrainAmp Standard増幅器)から高品質のEEGデータが収集され、参加者が精神的イメージを作成することに集中している時にEEGデータのCDA成分がリアルタイムで算出される。次に、CDA成分が定量化され、フィードバック段階でスコア(0から100)が画面上に視覚化される。
【0051】
EEG 手順
図7は、この研究後の分析作業フローを示している。Brain Products GMBHからの32チャネルactiCAP電極を有したBrainAmp Standard増幅器を使用してEEG信号を継続的に監視し、Brain Products GMBHの遠隔データアクセス(RDA)TCP/IPプロトコルを使用して各試験中においてEEG信号をリアルタイムで(500 Hzで)PCに抽出する。各試験について、後頭頂部および側後頭チャネル(すなわち、P5/6、P7/8、PO3/4、PO7/8およびO1/2)から「ゴー(Go)」アレイの開始に対する単一試験ERP(イベントに関する電位)を算出する。信号オフセットで、逆高速フーリエ変換フィルタ(ハイパス フィルタなし)を使用して30 Hzで元EEGデータをローパスフィルタし、その後、元EEGデータは乳様突起に(mastoid)に再参照され、ベースライン期間(ベースライン期間は「ゴー信号」の開始前の5000 msである)に正規化される。1つの試験内の過剰な振幅変化(>100 μV/秒)があった任意のチャネルは除外される。次に、各半球の平均ERPが取得される(左半球チャネルの1つの平均ERPと右半球の別の平均ERP)。ベースライン期間(ベースライン期間=ゴー信号の開始に対して―500~0 ms)では、対応する全てのチャネルの活動の平均値で絶対振幅を正規化することによって、生成された平均ERPの絶対振幅をZスコアに変換する。各半球について、電極アレイ全体でゴー段階からのZ変換振幅が平均化され(ゴー段階=提示開始後0~5000 ms)、その後、各半球について、平均化されたZ変換された振幅が対応する全てのチャネルで平均化される。2つの半球間のZスコアの差が算出され、正規累積分布関数を使用してZスコアがパーセンタイルに変換される。目標半球のZスコアが別の半球よりも大きい(より負である)場合、より大きな円が参加者に呈示される。目標半球のスコアが別の半球より小さい(より正である)場合、より小さな円が参加者に呈示される。円の直径の範囲は1.6°~20°の視角である。円のサイズとスコアの視覚化は、より大きなCDAを生成する試験を奨励し、両側で等しいかより小さなCDA振幅を生成する試験を阻止するために、参加者がいつより高いスコアを有したかを明らかに知るように調整される。
【0052】
結果
図8は、ニューロフィードバック試験中のEEG応答を示す。総平均差分ERP(
図9)は、各グループが予期したとおり一致した方法でそれらのCDAを生成することに成功したことを表明している。左半球グループ(‘LHG’)は、約3~400ミリ秒に左方向に向かってCDAを生成することに成功した。誘導されたCDAは、トレーニングセッションで改善された(
図10)。これらの結果は、CDAニューロフィードバックがグループレベル全体で成功したことを示している。
【0053】
CDAニューロフィードバックトレーニングの前後で、個々のユーザの注意力および作業記憶のパフォーマンスを評価した。5日間にわたる集中トレーニングの後、割り当てられたグループに関係なく(
図11、左)、参加者は、それらが集中する能力(注意効率)を大幅に向上させ、そして最も重要なことに、前記方法は、高い効果量で作業記憶能力を確実に向上させており(Cohen′s d、0.94、
図4、右)、これは以前は不可能であった。また、
図12において、作業記憶力の増加は、左側性CDA(左)の程度に関連し、行動変化も右側性CDA(右)の程度に関連しなかった。
【0054】
上記の説明から、当業者は、改善、変化および修正を認識するであろう。そのような改善、変化および修正は、当業者の技術の範囲内であり、添付の特許請求の範囲によってカバーされることが意図されている。
【手続補正書】
【提出日】2024-03-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者を一定期間でニューロフィードバックトレーニングに参加させることと、
前記ニューロフィードバックトレーニングの各試験期間において、
精神的イメージに関する視覚作業記憶を定量化する神経信号を頭皮電極を使用して記録すること、
前記神経信号内に誘導期間中において認知機能に関する神経活動に基づいて前記被験者のパフォーマンスをスコアすること、及び、
前記スコアに基づいて前記被験者にフィードバックを提供することで前記視覚作業記憶に関する成功率を前記被験者へ通知することを実行することとを含み、
前記一定期間の後、前記被験者の前記認知機能が改善され
、
前記フィードバックは、前記視覚作業記憶に関する成功率を示すスコアを反映し、
前記スコアは、前記精神的イメージの独自性または前記精神的イメージの習熟度を反映している、ことを特徴とする方法。
【請求項2】
被験者をニューロフィードバックトレーニング試験に参加させるように構成されるシステムであって、
命令を記憶するメモリと、
プロセッサと、を含み、
前記プロセッサは、前記メモリへアクセスして前記命令を実行することにより、
精神的イメージに関する視覚作業記憶を定量化する神経信号を複数の頭皮電極から受信し、
前記神経信号内に誘導期間中において認知機能に関する神経活動に基づいて前記被験者のパフォーマンスをスコアし、
前記スコアに基づいて前記被験者にフィードバックを提供することで前記視覚作業記憶に関する成功率を前記被験者へ通知するように構成され、
前記試験の後、前記被験者の認知機能が改善される、システム。
【請求項3】
前記被験者の頭皮上の所定の位置に位置決めされて前記神経信号を記録するように構成される前記複数の頭皮電極をさらに含む、請求項
2に記載のシステム。
【請求項4】
前記頭皮電極は、能動電極および/または受動電極を含む、請求項
3に記載のシステム。
【請求項5】
前記頭皮電極のそれぞれは、チャネルに関連し、前記チャネルは、後頭頂チャネルと後頭チャネルとのうちの少なくとも1つである、請求項
3に記載のシステム。
【国際調査報告】