(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-03
(54)【発明の名称】ポリマーの接触水素化分解
(51)【国際特許分類】
C08J 11/18 20060101AFI20240827BHJP
B01J 31/26 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
C08J11/18
B01J31/26 M
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024503521
(86)(22)【出願日】2022-07-20
(85)【翻訳文提出日】2024-02-16
(86)【国際出願番号】 US2022037670
(87)【国際公開番号】W WO2023003930
(87)【国際公開日】2023-01-26
(32)【優先日】2021-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】511124183
【氏名又は名称】ノースウェスタン ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100128484
【氏名又は名称】井口 司
(72)【発明者】
【氏名】マークス,トビン ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】クラティシュ,ヨシ
(72)【発明者】
【氏名】メイソン,アレクサンダー ヒース
【テーマコード(参考)】
4F401
4G169
【Fターム(参考)】
4F401AA08
4F401AA09
4F401AA10
4F401CA52
4F401CA67
4F401CA68
4F401EA71
4F401EA77
4F401FA02Z
4G169AA03
4G169AA04
4G169BA01A
4G169BA01B
4G169BA02A
4G169BA05A
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4G169BC51A
4G169BC51B
4G169BC52A
4G169BC52B
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4G169BC55A
4G169BC55B
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4G169BC56B
4G169BC58A
4G169BC59A
4G169BC59B
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4G169BC60B
4G169BC66A
4G169BC67A
4G169BC68A
4G169BC70A
4G169BD11A
4G169BE01A
4G169BE01B
4G169BE37A
4G169BE45A
4G169BE45B
4G169CA04
4G169CC05
4G169DA05
4G169FB13
4G169FB80
4G169FC07
(57)【要約】
ポリマー、水素ガス及び担持有機金属触媒を反応器内に供給する工程を含む、ポリマーの水素化分解の方法が提供される。担持有機金属触媒は、有機金属錯体プレ触媒と酸性金属酸化物担体とから形成されている。ポリマーは、反応器において所定の温度で水素ガスの存在下で担持有機金属触媒と反応して、ポリマーよりも小さい重量平均分子量を有する還元ポリマー生成物を生成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーの水素化分解のための方法であって、
反応器内に、前記ポリマー、水素ガス及び担持有機金属触媒を供給する工程であり、前記担持有機金属触媒が式Iの有機金属錯体プレ触媒と、
MR
mL
x 式I
(式中、mは0以上6以下であり、xは0以上6以下であり、Mは、第3族~第8族遷移金属からなる群から選択される遷移金属であり、Rは、H、C1~C8ヒドロカルビル又はハロゲンからなる群から独立して選択され、各Lは、C1~C12の置換又は非置換ヒドロカルビルからなる群から独立して選択され、ここで、m及びxの値はMの酸化状態に依存する。)
酸性金属酸化物担体と、
から形成されている、工程、並びに
前記反応器において、前記水素ガスの存在下、所定の温度で、前記ポリマーを前記担持有機金属触媒と反応させて、前記ポリマーよりも小さい重量平均分子量を有する還元ポリマー生成物を生成する工程
を含む、方法。
【請求項2】
Mが、第4族、第5族、第6族又は第8族遷移金属からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
Mが、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Fe、Ru、Co又はNiからなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
Lの前記ヒドロカルビルが、C1~C10アルキル、C2~C10アルケニル又はC5~C10アリールからなる群から独立して選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記所定の温度が、60℃以上300℃以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記還元されたポリマー生成物が、揮発性生成物、油状生成物又はワックス状生成物のうちの少なくとも1つである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記還元されたポリマー生成物が、前記還元されたポリマー生成物の総重量に基づいて5重量パーセント未満の前記ワックス状生成物を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ポリマーが、ポリオレフィン、芳香族アルケンの重合によって形成されたポリマー、又は共役ジエンの重合によって形成されたポリマーからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記ポリオレフィンが、ポリエチレン、ポリプロピレン、直鎖若しくは分岐鎖のC4~C12モノオレフィン、それらのコポリマー、又はそれらの組合せからなる群から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
MがZr又はHfからなる群から選択され、mは0であり、各Lは独立してC1~C12アルキルから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
Lがネオペンチルである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記酸性金属酸化物担体が硫酸化金属酸化物である、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記硫酸化金属酸化物が、硫酸化された酸化アルミニウム、硫酸化された酸化ジルコニウム(IV)、硫酸化された酸化スズ(IV)、硫酸化された酸化ハフニウム(IV)、硫酸化された酸化チタン(IV)、硫酸化された酸化鉄(III)、硫酸化された酸化亜鉛(II)、硫酸化された酸化シリカ、又はそれらの組合せからなる群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記担持有機金属触媒が式IIで表される、請求項1に記載の方法。
L
y-xR
x-zM
n+
・・・O
-(酸性金属酸化物担体) 式II
(式中、MはZr、Hf、Ti、Nb、V、Cr、Mo、W、Ta、Co又はNiからなる群から選択され、Rは、水素、ハロゲン又はLから独立して選択され、各Lは、C1~C12の飽和若しくは不飽和ヒドロカルビル、又はC1~C12シリルヒドロカルビルから独立して選択され、nは1であり、yは3であり、xは2又は1であり、zは1又は0である。)
【請求項17】
Mが、Ti、Zr又はHfからなる群から選択され、各LはC3~C8の飽和又は不飽和ヒドロカルビルであり、xは1であり、zは1である、請求項16に記載の方法。
【請求項17】
前記反応器に水素ガスを供給する工程が、前記反応器に0.1気圧以上100気圧以下の圧力の前記水素ガスを供給する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記ポリマーを反応させる工程が、前記ポリマーを前記担持有機金属触媒と、前記水素ガスの存在下で500rpm以上3000rpm以下の速度で撹拌する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記ポリマーを前記担持有機金属触媒と前記水素ガスの存在下で前記所定の温度で反応させる工程が、0.25時間以上24時間以下の期間にわたる、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記反応器内に前記担持有機金属触媒を供給する工程が、前記ポリマーのモノマー単位に基づいて0.01モルパーセント(モル%)以上0.9モル%以下のMを供給する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
式IIの担持有機金属触媒。
L
y-xR
x-zM
n+
・・・O
-(酸性金属酸化物担体) 式II
(式中、Mは、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Fe、Ru、Co又はNiからなる群から選択され、Rは、水素、ハロゲン又はLから独立して選択され、各Lは、C1~C12の飽和若しくは不飽和ヒドロカルビル、又はC1~C12シリルヒドロカルビルから独立して選択され、nは1であり、yは3であり、xは2又は1であり、zは1又は0である。)
【請求項22】
Mが、Ti、Zr又はHfからなる群から選択され、各LはC3~C8の飽和又は不飽和ヒドロカルビルであり、xは1であり、zは1である、請求項21に記載の担持有機金属触媒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権主張
本出願は、2021年7月20日に出願された米国仮出願第63/223,583号の優先権を主張し、その全内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
政府の権利の参照
本発明は、米国エネルギー省によって授与されたDE-FG02-03ER15457の下で米国政府の支援を受けてなされた。米国政府は、本発明に一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
消費者向けポリマー廃棄物の蓄積は、環境に及ぼす深刻な弊害を考慮すると、増大する懸念となっている。これらの材料に社会が大きく依存しているにもかかわらず、米国でリサイクルされている消費者向けポリマーは10%を下回り、大半が埋立地に蓄積されている。ポリプロピレン(PP)系及びポリエチレン(PE)系の材料が、これらの廃棄ポリマーの最大を占め、ほんの一部の現在リサイクルされているこれらの材料は、大部分が機械的手段でリサイクルされている。しかしながら、リサイクルされたポリマーは常に、(純粋なモノマーから直接製造された)新生ポリマーよりも低価値である。したがって、消費者向けポリマー廃棄物から価値のあるポリマー材料を製造する方法を研究する取り組みが増加している。
【発明の概要】
【0004】
本開示は、水素化分解を介してポリマーを解重合するための担持有機金属触媒、及び担持有機金属触媒を使用する方法を提供する。水素化分解とは、水素(H2)によって、炭素-炭素の単結合又は炭素-ヘテロ原子の単結合の接触的開裂を伴う化学反応である。本方法を用いて、ポリオレフィン等のポリマー(例えば、ポリプロピレン又はポリエチレン)の長い炭素鎖を、出発ポリマーよりも分子量が小さい生成物に変換することができる。
【0005】
本開示の担持有機金属触媒は、求電子性が大きい、形式的にカチオン性の、地球に豊富に存在する、シングルサイト有機金属触媒であって、酸性金属酸化物担体(例えば、強いブレンステッド酸性の硫酸化アルミナ担体)上に化学吸着されているものである。本開示の担持有機金属触媒は、触媒作用の開始が、0.02モル%の触媒担持量、0.5気圧のH2/90℃と低く、温和な条件下で分子状及び高分子状飽和炭化水素の迅速な水素化分解的開裂を媒介する。ポリエチレンの場合、軽質炭化水素(例えば、C9未満の炭化水素)への定量的水素化分解は、48分以内に進行し、200℃/2気圧のH2圧力で、活性は、4000モル(CH2単位)・モル(Zr)-1・h-1を上回る。同様の無溶媒条件下で、ポリエチレン-co-1-オクテン、アイソタクチックポリプロピレン、及び使用済みサンドイッチバッグを低分子量炭化水素に迅速に水素化分解する。このような驚くべき結果によって、化石燃料への依存を低減し、今日の社会における大量のプラスチック廃棄物のリサイクル及び再利用に対処する上で役立つ有意義な用途を見出すことができる。
【0006】
本開示の実施形態は、本明細書に定めるポリマーの水素化分解の方法を提供する。本方法は、反応器内に、ポリマー、水素ガス(H2)及び本開示の担持有機金属触媒を供給する工程を含む。担持有機金属触媒は、式Iの有機金属錯体プレ触媒と酸性金属酸化物担体とから形成される。式Iの有機金属錯体プレ触媒は、
MRmLx 式I
(式中、mは0以上6以下であり、xは0以上6以下であり、Mは、第3~第8族遷移金属からなる群から選択される遷移金属であり、Rは、H、C1~C8のヒドロカルビル又はハロゲンからなる群から独立して選択され、各Lは、C1~C12の置換又は非置換ヒドロカルビルからなる群から独立して選択される)である。m及びxの値は、Mの酸化状態に依存する。本方法はさらに、ポリマーを担持有機金属触媒と反応させる工程であって、反応器において所定の温度で水素ガスの存在下で混合物を撹拌しながら、ポリマーよりも重量平均分子量が小さい還元ポリマー生成物を生成する工程を含む。
【0007】
様々な実施形態にとって、Mは、第4族、第5族、第6族又は第8族の遷移金属からなる群から選択される。様々な実施形態にとって、Mは、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Fe、Ru、Co又はNiからなる群から選択される。好ましくは、Mは、第4族、第5族又は第6族の遷移金属からなる群から選択される。好ましくは、Mは、Ti、Zr、Hf、Nb、Ta、Mo又はWからなる群から選択される。最も好ましくは、Mは、Ti、Zr又はHfからなる群から選択される第4族遷移金属に由来する。様々な実施形態にとって、Mはまた、好ましくはZr又はHfからなる群から選択され、式中、mは0であり、各Lは独立してC1~C12アルキルから選択される。
【0008】
様々な実施形態にとって、式IのLのヒドロカルビルは、C1~C10アルキル、C2~C10アルケニル又はC5~C10のアリールからなる群から独立して選択される。本明細書で使用する場合、アリールは、複数の環構造(例えば、縮合環)を含むことができる。好ましくは、式I中のLはネオペンチル(例えば、2,2-ジメチルプロピル)である。
【0009】
様々な実施形態にとって、酸性金属酸化物担体は、硫酸化金属酸化物(例えば、強いブレンステッド酸性の酸化物)である。様々な実施形態にとって、硫酸化金属酸化物は、硫酸化酸化アルミニウム、硫酸化酸化ジルコニウム(IV)、硫酸化酸化スズ(IV)、硫酸化酸化ハフニウム(IV)、硫酸化酸化チタン(IV)、硫酸化酸化鉄(III)、硫酸化酸化亜鉛(II)、硫酸化酸化シリカ又はそれらの組合せからなる群から選択される。
【0010】
様々な実施形態にとって、本方法の所定の温度は60℃以上300℃以下である。好ましくは、本方法の所定の温度は、90℃以上200℃以下である。より好ましくは、本方法の所定の温度は、110℃以上150℃以下である。
【0011】
様々な実施形態にとって、ポリマーを反応させる工程は、ポリマーを担持有機金属触媒と、水素ガスの存在下、500rpm以上3000rpm以下の速度で撹拌する工程を含むことができる。担持有機金属触媒とポリマーとのこのような撹拌により、ポリマーと担持有機金属触媒との完全な混合がより確かになる。
【0012】
様々な実施形態にとって、本開示の方法に従って製造された還元ポリマー生成物の重量平均分子量は、出発ポリマーのよりも小さい。様々な実施形態にとって、還元ポリマー生成物は、それぞれ本明細書で定義する、揮発性生成物、油状生成物又はワックス状生成物のうちの少なくとも1種である。様々な実施形態にとって、還元ポリマー生成物は、還元ポリマー生成物の総重量に基づいて5wt%未満のワックス状生成物を含む。
【0013】
様々な実施形態にとって、ポリマーは、ポリオレフィン、芳香族アルケンの重合によって形成されたポリマー、又は共役ジエンの重合によって形成されたポリマーからなる群から選択される。様々な実施形態にとって、ポリオレフィンは、好ましくは、ポリエチレン、ポリプロピレン、C4~C12の直鎖若しくは分岐鎖のモノオレフィン、それらのコポリマー、又はそれらの組合せからなる群から選択される。より好ましくは、ポリオレフィンは、ポリエチレン、ポリプロピレン又はそれらのコポリマーからなる群から選択される。
【0014】
様々な実施形態にとって、反応器に水素ガスを供給する工程は、0.1気圧以上100気圧以下の圧力の水素ガスを反応器に供給する工程を含む。好ましくは、水素ガスを反応器に供給する工程は、0.2気圧以上50気圧以下の圧力の水素ガスを反応器に供給する工程を含む。より好ましくは、水素ガスを反応器に供給する工程は、0.5気圧以上4気圧以下の圧力の水素ガスを反応器に供給する工程を含む。様々な実施形態にとって、所定の温度で水素ガスの存在下でポリマーを担持有機金属触媒と反応させる工程は、0.25時間以上24時間以下の期間にわたる。様々な実施形態にとって、反応器中に担持有機金属触媒を供給する工程は、ポリマーのモノマー単位(例えば、ポリエチレンの-C2H4-モノマー単位)に基づき0.01モルパーセント(モル%)以上0.9モル%以下のMを供給する工程を含む。
【0015】
様々な実施形態にとって、担持有機金属触媒は、式IIによって表される。
Ly-xRx-zMn+
・・・O-(酸性金属酸化物担体) 式II
式中、Mは、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Fe、Ru、Co又はNiからなる群から選択され、Rは独立して、水素、ハロゲン又はLから選択され、各Lは独立して、C1~C12の飽和若しくは不飽和ヒドロカルビル、又はC1~C12のシリルヒドロカルビルから選択され、nは1であり、yは3であり、xは2若しくは1であり、zは1若しくは0である。一部の実施形態では、Mが可能な最高酸化状態にない場合、nは2又は3であり得る。例えば、MがCo又はFeのいずれかである場合、L2Co2+
・・・O-(酸性金属酸化物担体)又はL2Fe2+
・・・O-(酸性金属酸化物担体)を得るために、nは2であり得、xは1であり得、zは1であり得る。式II中、「・・・」は、担体材料のO-とMn+との間の静電的な非共有結合を表し、「・・・O-」は、脱プロトン化後の弱いルイス塩基性の担体材料を表す。好ましくは、式IIにおいて、Mは、Ti、Zr又はHfからなる群から選択され、各LはC3~C8の飽和又は不飽和ヒドロカルビルであり、nは1であり、yは3であり、x=1であり、z=1である。より好ましくは、式IIにおいて、Mは、Ti、Zr又はHfからなる群から選択され、各LはC5の飽和ヒドロカルビルであり、nは1であり、yは3であり、x=1であり、z=1である。
【0016】
本開示の他の主要な特徴及び利点は、以下の図面、詳細な説明、及び添付の特許請求の範囲を検討することにより、当業者には明らかになるであろう。
【0017】
本開示の例示的な実施形態を、添付の図面を参照して以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】強いルイス塩基性の酸化物担体材料に共有結合した金属アルキルから構成される既存の触媒の一例を示す(
図1A)。緩やかなイオン性の金属-担体相互作用を有する(すなわち、金属と担体材料とは非共有結合している)、非常に弱いルイス塩基性担体上のカチオン性金属アルキルから構成される、本発明の担持有機金属触媒の一例を示す(
図1B)。
【0019】
【
図2】表6の還元ポリマー生成物の揮発性生成物、DCM抽出物及び固形生成物の質量パーセントを示す。
【0020】
【
図3】表7の還元ポリマー生成物の揮発性生成物、DCM抽出物及び固形生成物の質量パーセントを示す。
【0021】
【
図4】表8の還元ポリマー生成物の揮発性生成物、DCM抽出物及び固形生成物の質量パーセントを示す。
【0022】
【
図5】表13の還元ポリマー生成物の揮発性生成物、油状生成物及びワックス状生成物の質量パーセントを示す。
【0023】
【
図6】表14の還元ポリマー生成物の揮発性生成物、油状生成物及びワックス状生成物の質量パーセントを示す。
【0024】
【
図7】様々な撹拌速度における、表17に示されたポリオレフィンの水素化分解生成物(揮発性生成物、DCM抽出物及び固形生成物)の分布を示す。
【0025】
【
図8】表17の還元ポリマー生成物の揮発性生成物、DCM抽出物及び固形生成物の質量パーセントを示す。
【0026】
【
図9】表18の所与の反応条件での示されたポリオレフィンの水素化分解生成物(揮発性生成物、DCM抽出物及び固形生成物)分布を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本開示は、担持有機金属触媒を用いて、水素化分解によってポリマーを解重合する工程を提供する。水素化分解とは、水素(H2)によって、炭素-炭素の単結合又は炭素-ヘテロ原子の単結合の接触的開裂を伴う化学反応である。本発明の方法において、ポリマーは、水素及び本開示の担持有機金属触媒と組み合わされ、ポリマーの水素化分解を誘起するように選択された比較的温和な条件下で、ポリマー断片、すなわち低分子量生成物をもたらす。本発明の方法を用いることで、ポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン又はポリエチレン)などのポリマーの長い炭素鎖を、出発ポリマーよりも分子量が小さい生成物に変換することができる。
【0028】
ポリマーを解重合するための既存の方法と比較すると、本開示は、一般に温和な条件下、例えば、より低い温度、より低いH2圧力、少ない触媒担持量において担持有機金属触媒を活用し、その間ずっと高い反応速度を達成する。さらに、溶媒を使用することもできるが、本開示の方法において溶媒は何ら必要とされない。同時に、本開示の実施形態により、非常に高い活性、例えば、同様の条件を使用する既存の触媒よりも二桁高い活性を達成することが可能となる。
【0029】
本開示の担持有機金属触媒は、求電子性が大きい、形式的にカチオン性の、地球に豊富に存在する、シングルサイト有機金属触媒であって、酸性金属酸化物担体(例えば、強いブレンステッド酸性の硫酸化アルミナ担体)上に化学吸着されているものである。本開示の担持有機金属触媒は、触媒作用の開始が、0.02モル%の触媒担持量、0.5気圧のH2/90℃と低く、温和な条件下で分子状及び高分子状炭化水素(例えば、飽和炭化水素)の迅速な水素化分解的開裂を媒介する。ポリエチレンの場合、揮発性炭化水素(例えば、C9未満の軽質炭化水素)への定量的水素化分解は、48分以内に進行し、200℃/2気圧のH2圧力で、活性は、4000モル(CH2単位)・モル(Zr)-1・h-1を上回る。同様の無溶媒条件下で、ポリエチレン-co-1-オクテン、アイソタクチックポリプロピレン、及び使用済みサンドイッチバッグ(例えば、低密度ポリエチレン)を、出発ポリマーよりも分子量が小さい生成物に迅速に水素化分解する。このような驚くべき結果によって、今日の社会における大量のプラスチック廃棄物のリサイクル及び再利用の側面に対処するとともに、化石燃料への依存を減らす上で役立つ有意義な用途を見出すことができる。
【0030】
定義
本発明の化合物、成分、組成物、及び/又は方法を開示及び説明するに先立ち、本開示は、特に明記されない限り、特定の化合物、成分、組成物、反応物、反応条件、部分、配位子、構造などに限定されず、特に明記されない限り、それ自体として変わり得ることを理解されたい。また、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的としており、限定することを意図していないことも理解されたい。
【0031】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「前記(the)」は、特に明記しない限り、複数の指示対象を含むことにも留意されたい。したがって、例えば、「1つの還元ポリマー生成物(a reduced polymer product)」についての言及は、2つ以上の還元ポリマー生成物を含むことができ、それによって「複数の還元ポリマー生成物(reduced polymer products)」が可能になる。同様に、「1つのハロゲン原子で置換された(substituted with a halogen atom)」部分における「1つのハロゲン原子(a halogen atom)」についての言及は、部分が2個以上のハロゲン原子で置換されてもよいように、2個以上のハロゲン原子を含み、「1つの置換基(a substituent)」についての言及は1つ又はそれ以上の置換基を含み、「1つの配位子(a ligand)」についての言及は1つ又はそれ以上の配位子を含む、等である。
【0032】
本明細書で使用する場合、「ポリマー」は、直鎖若しくは分岐鎖ホモポリマー又は直鎖若しくは分岐鎖コポリマーを含む。ポリマー(例えばホモポリマー、コポリマー、ターポリマー等)は、1つ又はそれ以上の異なるモノマーから誘導される同種又は異種のモノマー(すなわち、マー)単位を2つ以上有する。「ホモポリマー」とは、すべて同種のポリマー単位を有する(例えば、ポリマー単位の100wt%がエチレンに由来し、又はポリマー単位の100wt%がプロピレンに由来する)ポリマーである。「コポリマー」とは、互いに異なる2種以上のポリマー単位を有するポリマー、例えば、エチレンとC3~C10のアルファオレフィンとの共重合によって製造されたポリマー、又はプロピレンとエチレン及び/若しくはC4~C10のアルファオレフィンとの共重合によって製造されたポリマーである。「ターポリマー」とは、互いに異なる3種のポリマー単位を有するポリマーである。ポリマー単位に関して「異なる」とは、少なくとも1個の原子によってポリマー単位が互いに異なるか、又はポリマー単位がアイソメトリックに異なることを指す。したがって、本明細書で使用するとき、コポリマーの定義には、ターポリマー等が含まれる。
【0033】
実施形態は、ポリマーがポリオレフィンであり得ることを可能にする。ポリオレフィンとしては、オレフィンモノマーから製造されたホモポリマー及び/又はコポリマー、例えば、エチレンから製造されたポリマー(すなわちポリエチレン)、プロピレンから製造されたポリマー(すなわちポリプロピレン)、及び直鎖又は分枝鎖の高級アルファオレフィンのC4~C12モノマー(例えば、直鎖又は分岐鎖のC4~C12のモノオレフィン)から製造されたホモポリマー及び/又はコポリマーが挙げられる。高級アルファオレフィンモノマーの例としては、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、及び3,5,5-トリメチル-1-ヘキセンが挙げられるが、これらに限定されない。ポリオレフィンの例としては、エチレン系ポリマーが挙げられ、とりわけ、(例えば、エチレン100wt%から形成される)ポリエチレンのホモポリマー、並びにエチレンを50wt%以上有するもの(例えば、ポリエチレンコポリマー)、エチレン・1-ブテンのコポリマー、エチレン・1-ヘキセンのコポリマー、及びエチレン・1-オクテンのコポリマーが挙げられる。ポリオレフィンの例としては、プロピレン系ポリマーが挙げられ、(例えば、プロピレン100wt%から形成される)ポリプロピレンのホモポリマー、並びにプロピレンを50wt%以上有するもの(例えば、ポリプロピレンコポリマー)、特に、プロピレン・1-ブテンのコポリマー、プロピレン・1-ヘキセンのコポリマー、及びプロピレン・1-オクテンのコポリマーが挙げられる。利用され得る他のオレフィンとしては、例えば、エチレン性不飽和モノマー、炭素原子を4個以上18個以下有するジオレフィン、共役ジエン又は非共役ジエン、ポリエン、ビニルモノマー、芳香族アルケン及び環状オレフィンが挙げられる。モノマーの例としては、ノルボルネン、ノルボルナジエン、イソブチレン、イソプレン、ビニルベンゾシクロブタン、スチレン、アルキル置換スチレン、エチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエン及びシクロペンテンを挙げることができるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、エチレンのコポリマーを製造することができ、エチレンを用いて、炭素原子を4個以上15個以下、好ましくは炭素原子を4個以上12個以下、最も好ましくは炭素原子を4個以上8個以下有する少なくとも1つのアルファオレフィンを有するコモノマーを、例えば気相重合プロセスで重合する。同様に、いくつかの実施形態において、プロピレンのコポリマーを製造することができ、プロピレンを用いて、炭素原子を4個以上15個以下、好ましくは炭素原子を4個以上12個以下、最も好ましくは炭素原子を4個以上8個以下有する少なくとも1つのアルファオレフィンを有するコモノマーを、例えば気相重合プロセスで重合する。別の実施形態において、エチレン及び/又はプロピレンを、少なくとも2つの異なるコモノマー(そのうちの1つがジエンであってもよい)と重合して、ターポリマーを製造することができる。
【0034】
本明細書で使用するとき、本明細書で論じられ特許請求される遷移金属の族は、2022年5月4日版のIUPAC元素周期表の第4~10族に見出せる。
【0035】
本明細書で使用するとき、「ヒドロカルビル」という用語は、炭化水素から水素原子を1個除去することによって形成される一価基、例えば、とりわけ、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘキシルメチル、フェニル、ベンジル、ナフチルを指す。例示的なヒドロカルビルとしては、アルキル、アルケニル及びアリールが挙げられる。ヒドロカルビルは、直鎖状、分枝鎖状又は環状であり得る。
【0036】
本明細書で使用するとき、例えば「置換ヒドロカルビル」における「置換」という用語は、その用語に続く基が、任意の位置の1つ又はそれ以上の水素の代わりに、ハロゲンラジカル、ヒドロキシル基、カルボニル基、カルボキシル基、アミン基、ホスフィン基、アルコキシ基、フェニル基、ナフチル基、(C1~C20)アルキル基、(C2~C10)アルケニル基、及びそれらの組合せ等からなる群から選択される部分を少なくとも1つ有することを指す。ただし、別のタイプの置換、例えば「アルキル置換」又は「アリールで置換」が具体的に述べられている場合を除く。可能な置換基の列挙の前に「置換」という用語が置かれる場合、この用語はその群のすべての構成要素に適用されることが意図される。すなわち、「置換アルキル、アルケニル及びアリール」という文言は、「置換アルキル、置換アルケニル及び置換アリール」と解釈することとする。
【0037】
可能な硫酸化金属酸化物の列挙の前に「硫酸化」という用語が置かれる場合、この用語はその群のすべての構成要素に適用されることが意図される。すなわち、「硫酸化酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム(IV)、酸化スズ(IV)、酸化ハフニウム(IV)、酸化チタン(IV)、酸化鉄(III)、酸化亜鉛(II)、酸化シリカ、又はそれらの組合せ」という文言は、「硫酸化酸化アルミニウム、硫酸化酸化ジルコニウム(IV)、硫酸化酸化スズ(IV)、硫酸化酸化ハフニウム(IV)、硫酸化酸化チタン(IV)、硫酸酸化鉄(III)、硫酸酸化亜鉛(II)、硫酸化酸化シリカ、又はそれらの組合せ」と解釈することとする。
【0038】
本明細書で使用するとき、「アルキル」という用語は、分岐若しくは非分岐(例えば、直鎖)の環状又は非環状の飽和ヒドロカルビルラジカルであって、典型的には1個の水素が不足し、必ずしもそうとは限らないが、1個以上50個以下の炭素原子、より好ましくは1個以上20個以下の炭素原子、最も好ましくは1個以上10個以下の炭素原子を含むものを指し、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、並びにシクロアルキル基(例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロペンチルメチル及びシクロヘキシルエチル)である。
【0039】
本明細書で使用される「アルケニル」という用語は、分岐若しくは非分岐の環状又は非環状ヒドロカルビルラジカルであって、少なくとも1つの二重結合を含み、典型的には、必ずしもそうとは限らないが、2個以上50個以下の炭素原子、より好ましくは2個以上20個以下の炭素原子、最も好ましくは2個以上10個以下の炭素原子を含むものを指し、例えば、とりわけ、エテニル、n-プロペニル、イソプロペニル、n-ブテニル、イソブテニル、4-オクテニル、2-デセニル、シクロペンテニル、シクロペンタジエニル、シクロヘキセニル、及びシクロヘキサジエニルである。
【0040】
「芳香族」という用語は、その通常の意味で使用され、環上の複数の結合にわたって本質的に非局在化する不飽和を含む。本明細書で使用される「芳香族」という用語は、必ずしもそうとは限らないが、典型的には、5個以上50個以下の炭素原子、好ましくは5個以上25個以下の炭素原子、より好ましくは5個以上16個以下の炭素原子を含む芳香環又は芳香環系を含む基を指す。典型的な中性の非置換芳香族化合物としては、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ピリジン、ピラジン、イミダゾール、ピラゾール、オキサゾール、チオフェン、ピロール、トリアゾール、インドール及びベンズイミダゾールが挙げられる。典型的な帯電した非置換芳香族化合物としては、シクロプロペニルカチオン及びシクロペンタジエニルアニオンが挙げられる。
【0041】
本明細書で使用するとき、「アリール」という用語は、芳香環又は芳香環系を含む基であって、必ずしもそうとは限らないが、典型的には、5個以上50個以下の炭素原子、好ましくは5個以上20個以下の炭素原子、より好ましくは5個以上10個以下の炭素原子を含むものを指す。本明細書におけるアリール基としては、単一の芳香環を含む基や、複数の芳香環を含む基であって、複数の芳香環が縮合、共有結合、又は共通の基(例えば、メチレン部分若しくはエチレン部分)に連結しているものが挙げられる。より具体的なアリール基としては、1つの芳香環又は2つ若しくは3つが縮合若しくは連結した芳香環、例えば、フェニル、ナフチル、ビフェニル、ターフェニル、アントラセニル、フェナントレニル、ピリジニル、ピラジニル、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサゾリル、チエニル、ピロリル、トリアゾリル、インドリル及びベンズイミダゾリルがある。アリール基は、非置換であってもよく、あるいはハロゲン(好ましくはフッ素、塩素若しくは臭素、より好ましくはフッ素若しくは臭素、さらにより好ましくはフッ素)、ヒドロカルビル(例えばアルキル、アルケニル若しくはアルキニル)、ヘテロヒドロカルビル、又はヘテロ原子基で置換されていてもよい。特定の実施形態では、アリール置換基(アリール基上の置換基)は、水素以外の原子を1個以上40個以下、好ましくは水素以外の原子を1個以上20個以下、より好ましくは水素以外の原子を1個以上10個以下含む。置換アリール基としては、トリル(メチルフェニル)、キシリル(ジメチルフェニル)、メシチル(トリメチルフェニル)、エチルフェニル、スチリル、アリルフェニル、プロピニルフェニル、クロロフェニル、フルオロフェニル、ジフルオロフェニル、トリフルオロフェニル、テトラフルオロフェニル、ペンタフルオロフェニル、ペンタフルオロビフェニル、メトキシフェニル、エトキシフェニル、ジメトキシフェニル、トリフルオロメチルフェニル、ビス(トリフルオロメチル)フェニル、ジメチルアミノフェニル、ジメチルアミノエチルフェニル、フェノキシフェニル、メチルカルボキシフェニル、エチルカルボキシフェニル、メトキシナフチル、ニトロフェニル、ジニトロフェニル、シアノフェニル、ジシアノフェニル、クロロピリジニル、メチルイミダゾリル、フェニルピロリル及びエチルチエニルが挙げられる。
【0042】
本明細書で使用するとき、「ハロゲン」という用語は、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素を指す。
【0043】
本明細書中で使用するとき、用語「シリルヒドロカルビル」とは、-SiR1R2R3ラジカルを指し、ここで、R1、R2及びR3のそれぞれは、ヒドリド、及び置換されていてもよい、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロ原子含有アルキル、ヘテロ原子含有アルケニル、ヘテロ原子含有アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、シリル、並びにそれらの組合せからなる群から独立して選択される。「シリルヒドロカルビル」において、ケイ素原子が金属と直接結合していてもよいし、「シリルヒドロカルビル」の炭素原子が金属と直接結合していてもよい。
【0044】
「飽和」という用語は、炭素・炭素二重結合、炭素・炭素三重結合、並びに(ヘテロ原子含有基において)炭素・窒素、炭素・リン、及び炭素・ケイ素の二重結合又は三重結合を含まないことを意味する。
【0045】
本明細書で使用する場合、「重量平均分子量」(Mw)という用語は、ポリマーの全体分子量に寄与する個々のポリマー鎖の質量であり、当分野で公知のように、Mwは様々な大きさの分子の重量分率分布から計算される。Mwは、当分野で公知のように、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)、浸透圧測定法、光散乱、粘度測定法、凝固点降下法、沸点上昇法、超遠心分離法、質量分析法及び末端基分析によって測定することができる。
【0046】
本明細書で使用するとき、「揮発性生成物」又は「揮発性物質」という用語は、9個未満の炭素(例えば、C9未満)を有する直鎖又は分岐鎖(可能な場合)炭化水素を指す。
【0047】
本明細書で使用するとき、「油状生成物」又は「DCM抽出物」という用語は、9個以上26個以下の炭素(例えば、C9~C26)を有する直鎖又は分岐鎖炭化水素を指す。
【0048】
本明細書で使用するとき、「ワックス状生成物」又は「固形物」という用語は、27個以上の炭素を有する直鎖又は分岐鎖炭化水素であって、その炭素数が、本開示に従ってワックス状生成物が形成される元のポリマーの炭素数よりも少ないものを指す。
【0049】
本明細書で使用するとき、「~」記号は「およそ」という単語を表す。
【0050】
略語「atm」は、大気圧(1atm=101.325kPa)を表す。略語「mol」はモルを表し、略語「℃」は、セルシウス度を表し、略語「kg」はキログラムを表し、略語「L」はリットルを表し、略語「h」は時間を表し、略語「min」は分を表し、略語「wt%」は重量パーセントを表し、略語「ppm」は百万分率を表し、略語「mg」はミリグラムを表し、「rpm」は、毎分回転数を表し、略語「μm」は、マイクロメートル、すなわち10-6メートルを表す。
【0051】
本開示の担持有機金属触媒を使用する水素化分解によって解重合され得るポリマーとしては、オレフィン(例えばエチレン、プロピレン、ヘキセン、オクテン、及びそれらの組合せ)を重合することによって形成されるポリオレフィンを挙げることができる。本明細書で論じるとき、ポリオレフィンがポリアルファオレフィンであるように、オレフィンはアルファオレフィンであってもよい。様々な実施形態では、ポリマーは、ポリオレフィン、(芳香族アルケン、例えばスチレンの重合によって形成された)ポリマー、及び(共役ジエン、例えばブタジエン、イソプレンなどの重合によって形成された)ポリマーからなる群から好ましくは選択される。様々な実施形態では、ポリオレフィンは、より好ましくは、ポリエチレン、ポリプロピレン、直鎖又は分岐鎖のC4~C12モノオレフィン、それらのコポリマー、又はそれらの組合せからなる群から選択される。最も好ましくは、ポリオレフィンは、ポリエチレン及びポリプロピレン、それらのコポリマー、又はそれらの組合せである。ポリマーは、直鎖状であっても分枝鎖状であってもよい。ポリマーは、ホモポリマーであってもコポリマーであってもよい。ポリマーは、任意のタクチシチー及びタクチック度、例えば90%超のアイソタクチック、アタクチック又はシンジオタクチックを有し得る。ポリマーは、様々な市販品について当分野で公知のように、例えば3~300kg/molの範囲内の様々な重量平均分子量(Mw)を有し得る。
【0052】
本開示の実施形態は、担持有機金属触媒を使用する、本明細書に定めるポリマーの水素化分解の方法を提供する。担持有機金属触媒は、酸性金属酸化物担体と有機金属錯体プレ触媒との特定の組合せから形成される。本明細書に定める、本開示の担持有機金属触媒は、開示されたポリマーの水素化分解において予想外に高い活性を有する。
【0053】
本開示の水素化分解の方法は、反応器内にポリマー、水素ガス(H2)及び担持有機金属触媒を供給する工程を含む。担持有機金属触媒は、式Iの有機金属錯体プレ触媒と酸性金属酸化物担体とから形成される。式Iの有機金属錯体プレ触媒は、
MRmLx 式I
【0054】
式Iにおいて、mは0以上6以下であり、xは0以上6以下である。当業者が理解するように、m及びxの値は、式I中のMの形式的な酸化状態に依存する。例えば、Mが第4族遷移金属(例えば、Zr、Hf又はTi)である場合、mはゼロ(0)であり得、xは4であり得る。さらなる例では、Mが第5族遷移金属(例えば、Nb又はTa)である場合、mは1又は2であり得、xは3であり得る。さらなる例では、Mが第6族遷移金属(例えば、W又はMo)である場合、mは1又は2であり得、xは4であり得る。m及びxの他の値も当然可能である。
【0055】
様々な実施形態では、Mは、第3族~第8族遷移金属からなる群から選択される遷移金属である。様々な実施形態では、Mは、好ましくは、第4族、第5族、第6族又は第8族遷移金属からなる群から選択される。より好ましくは、Mは、第4族、第5族、又は第6族遷移金属からなる群から選択される。Mの具体例としては、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Fe、Ru、Co又はNiからなる群から選択されるものが挙げられる。好ましくは、Mは、Ti、Zr、Hf、Nb、Ta、Mo又はWからなる群から選択される。最も好ましくは、Mは、Ti、Zr又はHfからなる群から選択される第4族遷移金属に由来する。
【0056】
様々な実施形態では、Rは、H、C1~C8ヒドロカルビル又はハロゲンからなる群から独立して選択される。Rがハロゲンである場合、それは好ましくはフッ素である。Rがヒドロカルビルである場合、それは好ましくは、C4~C8ヒドロカルビルである。Rがヒドロカルビルである場合、それはより好ましくは、C5~C6ヒドロカルビルである。Rがヒドロカルビルである場合、それは最も好ましくは、C5ヒドロカルビルであり、ここでMが第5族遷移金属である場合、(=CHtBu)部分が好ましく、Mが第6族遷移金属である場合、(≡CtBu)部分が好ましい。
【0057】
様々な実施形態では、各Lは独立して、C1~C12の置換又は非置換ヒドロカルビルからなる群から選択される。様々な実施形態にとって、式IのLのヒドロカルビルは、C1~C10アルキル、C2~C10アルケニル又はC5~C10のアリールからなる群から独立して選択される。本明細書で使用する場合、アリールは、複数の環構造(例えば、縮合環)を含むことができる。好ましくは、様々な実施形態では、式IのLのヒドロカルビルは、C4~C7アルキル、C3~C7アルケニル又はC5~C8アリールからなる群から独立して選択される。最も好ましくは、式I中のLはネオペンチル(本明細書で「Np」と略され、例えば、2,2-ジメチルプロピル)である。様々な実施形態にとって、各Lは同じであっても異なっていてもよい。
【0058】
より具体的な実施形態として、Mは、好ましくはZr又はHfからなる群から選択される。mは0であり、各Lは独立してC1~C12アルキルから選択され、Lは好ましくはネオペンチル(例えば、2,2-ジメチルプロピル)である。さらなる例では、式Iの有機金属錯体プレ触媒としては、ZrNp4(M=Zr、m=0、x=4及びL=Np)、HfNp4(M=Hf、m=0、x=4、及びL=Np)、TiNp4(M=Ti、m=0、x=4及びL=Np)、NbF2Np3(M=Nb、m=2、R=F、x=3、L=Np)、Ta(=CHtBu)Np3(M=Ta、m=1、R=(=CHtBu)、x=3、L=Np)、Nb(CHtBu)Np3(M=Nb、m=1、R=(=CHtBu)、x=3、L=Np)、W(CtBu)Np3(M=W、m=1、R=(≡CtBu)、x=3、L=Np)、及びMo(CtBu)Np3(M=Mo、m=1、R=(≡CtBu)、x=3、L=Np)を挙げることができるが、これらに限定されない。式Iの他の例示的な有機金属錯体プレ触媒としては、MBz4(Bz=ベンジル;M=Ti、Zr、Hf)、MAllyl4(M=Ti、Zr、Hf)、CrNp4、FeNp4、及びCoNp3を挙げることができる。
【0059】
様々な実施形態において、酸性金属酸化物担体を形成する際に使用される金属酸化物は、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化ケイ素(例えば、SiO2)、酸化ニッケル(II)、酸化ジルコニウム(IV)、酸化スズ(IV)、酸化ハフニウム(IV)、酸化チタン(IV)、酸化鉄(III)、酸化亜鉛(II)、又はそれらの混合物からなる群から選択することができる。様々な実施形態において、酸性金属酸化物担体を形成する際に使用される酸は、硫酸、トリフルオロメタンスルホン酸、フルオロスルホン酸、又はフルオロスルホン酸+五フッ化アンチモン(「マジック酸」)から選択することができる。様々な実施形態にとって、酸性金属酸化物担体は、強いブレンステッド酸性酸化物である。このような酸化物は、一般に、ハメットの酸度関数(すなわち、H0)の値が-15よりも負に大きな数値のものとして分類される。好ましくは、硫酸化金属酸化物が酸性金属酸化物担体として使用され得る。例示的な硫酸化金属酸化物として、硫酸化アルミナ、硫酸化シリカ、又はそれらの組合せが挙示される。また、ゼオライトH-ZSM-5を担体材料として用いてもよい。複数の実施形態にとって、担体材料は、硫酸化アルミナである。
【0060】
酸性金属酸化物担体の形成は、いくつかの方法で達成することができる。例えば、大気条件下、酸(例えば、2.0M硫酸水溶液)を金属酸化物(例えば、酸化アルミニウム)に加え、15~90分の反応時間撹拌することができる。反応混合物の割合(例えば、酸:酸化物のモル比)は、5:1~1:5と様々であり得る。反応時間の後、硫酸化金属酸化物を酸から(例えば、遠心分離によって)分離してから、脱イオン(DI)水を用いて、すすいだDI水のpHが約6に達するまで繰り返しすすぐ。次いで、得られた酸性金属酸化物を真空下、90~140℃の温度で約12~24時間乾燥させる。酸性金属酸化物の固形物を(例えば、乳鉢及び乳棒により)粉砕し、所望のメッシュ(例えば、180メッシュ、80μm)に篩分することができる。次いで、酸性金属酸化物を、O2を(約2L/分)流しながら、400~650℃の温度で2~4時間(例えば、管状炉内で)仮焼成することができ、その後、酸性金属酸化物は、真空下(例えば、高真空ラインに接続して、ポンプで低真空(例えば約10-6トール)まで減圧した管状炉)に300~450℃の温度で1時間載置する。次いで、酸性金属酸化物を真空下で冷却し、不活性(例えば、アルゴン)環境に入れ、その環境内で、酸性金属酸化物を不活性ガス(例えば、アルゴン)下で取り出したり、保管したりすることができる。
【0061】
様々な実施形態では、担持有機金属触媒は、式Iの有機金属錯体プレ触媒と酸性金属酸化物担体とから形成される。担持有機金属触媒の形成は、以下のように化学吸着プロセス(例えば、吸着された物質が静電的化学結合によって保持される吸着)によって達成することができる。(1:20~5:20と様々な)モル比の式Iの有機金属錯体プレ触媒及び酸性金属酸化物担体を、20~30℃の温度でC4~C8の有機溶媒(例えば、n-ペンタン)と合わせてスラリーを形成する。スラリーを30分~4時間反応させる。その後、得られた担持有機金属触媒を濾過し、未使用の有機溶媒で洗浄し、真空下で少なくとも1時間乾燥させる。担持有機金属触媒は、不活性雰囲気(例えば、アルゴン)下で保管する。
【0062】
様々な実施形態について、本明細書で論じられる担持有機金属触媒は、式IIで表される。
Ly-xRx-zMn+
・・・O-(酸性金属酸化物担体) 式II
式中、Mは、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Fe、Ru、Co又はNiからなる群から選択され、Rは、独立して、水素、ハロゲン又はLから選択され、各Lは独立して、C1~C12の飽和若しくは不飽和ヒドロカルビル、又はC1~C12のシリルヒドロカルビルから選択され、nは1であり、yは3であり、xは2又は1であり、zは1又は0である。一部の実施形態では、Mが可能な最高酸化状態にない場合、nは2又は3であり得る。例えば、MがCo又はFeのいずれかである場合、L2Co2+
・・・O-(酸性金属酸化物担体)又はL2Fe2+
・・・O-(酸性金属酸化物担体)を得るために、nは2であり得、xは1であり得、zは1であり得る。式II中、「・・・」は、担体材料のO-とMn+との間の静電的な非共有結合を表し、「・・・O-」は、脱プロトン化後の弱いルイス塩基性の担体材料を表す。好ましくは、式IIについて、Mは、Ti、Zr又はHfからなる群から選択され、各LはC3~C8の飽和又は不飽和ヒドロカルビルであり、nは1であり、yは3であり、xは1であり、zは1である。より好ましくは、式IIについて、Mは、Ti、Zr又はHfからなる群から選択され、各LはC5の飽和ヒドロカルビルであり、nは1であり、yは3であり、xは1であり、zは1である。担持有機金属触媒は、酸性金属酸化物担体が硫酸化金属酸化物担体材料であり、MがTi、Zr又はHfであり、Lがネオペンチルであり、nが1であり、yが3であり、xが1であり、zが1であるものであってもよい。Rがハロゲンである場合、それは好ましくはフッ素である。式IIによって表される担持有機金属触媒のさらなる例としては、M=Zr、L=Np、n=1、y=3、x=1及びz=1であるため、Rが存在しないもの;M=Hf、L=Np、n=1、y=3、x=1及びz=1であるため、Rが存在しないもの;M=Ti、L=Np、n=1、y=3、x=1及びz=1であるため、Rが存在しないもの;M=Ta、L=Np、R=CHtBu、n=1、y=3、x=2及びz=1であるもの;M=Nb、L=Np、R=F、n=1、y=3、x=2及びz=0であるもの;M=Nb、L=Np、R=CHtBu、n=1、y=3、x=2及びz=1であるもの;M=W、L=Np、R=CtBu、n=1、y=3、x=2及びz=1であるもの;並びにM=Ta、L=Np、R=CtBu、n=1、y=3、x=2及びz=1であるものが挙げられる。
【0063】
式Iの有機金属錯体プレ触媒と酸性金属酸化物担体とから担持有機金属触媒を調整する方法は、以下の実施例にも記載される。特に、以下の実施例に記載されるような担持有機金属触媒を調整する際の硫酸処理、仮焼成温度及び不活性溶媒(例えば、乾燥炭化水素)の使用は、所望の担持有機金属触媒を確実に達成するのに役立つ。一実施形態において、担持有機金属触媒は、式L2M+R・・・O-
・・・(酸性金属酸化物担体)によって表すことができ、式中、L及びMは本明細書で定義される通りであり、「+」は、M上の形式的カチオン電荷を表し、Rは、水素又はLであり、「・・・」は、担体材料のO-とM+との間の静電的な非共有結合を表し、「・・・O-」は、脱プロトン化後の弱いルイス塩基性担体材料を表す。
【0064】
本開示の担持有機金属触媒は、
図1Aに示す式で表される既存の触媒とは異なる。特に、本開示の担持有機金属触媒では、Mは形式的にカチオン性であるが、従来の触媒では、Mは形式的に中性である。また、前記担持有機金属触媒では、Mは担体材料に非共有結合/静電結合しているが、既存の触媒ではMは共有結合している。これらの違いを
図1A及び
図1Bに示す。
図1Aは、既存の触媒を表し、
図1Bは、本開示の担持有機金属触媒の一例を表す。
【0065】
本発明の方法はさらに、本明細書に定めるポリマーを、反応器内で所定の温度で水素ガスの存在下、担持有機金属触媒と反応させて、前記ポリマーよりも重量平均分子量が小さい還元ポリマー生成物を生成する工程を含む。様々な実施形態では、ポリマーの表面積は、反応前又は反応中に寸法縮小操作により増大させることができる。このような寸法縮小操作としては、ポリマーを寸法縮小操作前よりも小さい小片に細断(chop)、剪断(shear)、粉砕(pulverize)、剪剃(shave)及び/又は磨下(grate)する作業を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0066】
本方法で使用する条件としては、パラメータ、例えば、所定の温度、H2圧力、時間、及び担持有機金属触媒によってもたらされる金属担持量が挙げられる。一般に、これらのパラメータは、所望の水素化分解反応を誘起するようにその組合せが選択される。さらに、パラメータを調整して、所望の生成物若しくはその収率、生成物分布、活性、ポリマーの転化率又はそれらの組合せを達成することができる。
【0067】
例示的な所定温度としては、60℃~300℃の範囲内の温度が挙げられる。好ましくは、所定温度は、90℃以上200℃以下である。より好ましくは、所定温度は、110℃以上150℃以下である。
【0068】
様々な実施形態にとって、反応器に水素ガスを供給する工程は、0.1気圧以上100気圧以下の圧力の水素ガスを反応器に供給する工程を含む。好ましくは、水素ガスを反応器に供給する工程は、0.2気圧以上50気圧以下の圧力の水素ガスを反応器に供給する工程を含む。より好ましくは、水素ガスを反応器に供給する工程は、0.5気圧以上4気圧以下の圧力の水素ガスを反応器に供給する工程を含む。
【0069】
様々な実施形態にとって、ポリマーを反応させる工程は、ポリマーを担持有機金属触媒と、水素ガスの存在下、500rpm以上3000rpm以下の速度で撹拌する工程を含むことができる。担持有機金属触媒とポリマーとのこのような撹拌により、ポリマーと担持有機金属触媒との完全な混合がより確かになる。
【0070】
様々な実施形態では、反応器中に担持有機金属触媒を供給する工程は、ポリマーのモノマー単位(例えば、ポリエチレンの-C2H4-モノマー単位)に基づいて0.01モルパーセント(モル%)以上0.9モル%以下のMを供給する工程を含む。例えば、例示的な金属担持量としては、金属が(モノマー単位、例えばエチレンから形成されたモノマー単位に基づいて)0.01モル%以上0.6モル%以下の範囲内にある金属担持量が挙げられる。好ましくは、反応器内に担持有機金属触媒を供給する工程は、ポリマーのモノマー単位に基づき、0.005モル%以上2.0モル%以下のMを供給する工程を含む。
【0071】
本方法は、様々なタイプの反応器システム(バッチ反応器システム、半バッチ反応器システム、プラグフロー反応器システム及び連続フロー反応器システム等)を使用して実施することができる。反応器の容積は、所望の還元ポリマー生成物が達成されるように、ポリマーに対して十分な量の水素(例えば、水素のモル数)が反応器内に存在することを確実にするのに十分とすることができる。様々な実施形態では、連続流通反応器システムとしては、管状反応器、連続撹拌タンク反応器システム、流動床反応器及び固定床反応器が挙げられる。本開示の反応に熱を加えるために、反応器は、加熱ジャケット及び/又は加熱コイルを備えることができる。加熱ジャケット及び/又は加熱コイルに蒸気を供給することによって、反応に熱を供給することができる。別法として、加熱ジャケット及び/又は加熱コイルは、熱流体システム(例えば、熱媒油や、水/グリコール混合物)を使用して、本開示の反応に必要な熱を供給することができる。本開示の反応に熱を加えるための他の技術も可能である。
【0072】
様々な実施形態にとって、所定の温度で水素ガスの存在下でポリマーを担持有機金属触媒と反応させる工程は、0.25時間以上24時間以下の期間にわたる。他の反応時間の例としては、0.25時間~8時間の範囲内及び0.25時間~1.5時間の範囲内の反応時間が挙げられる。触媒の反応性、所定の温度、及び反応器内の水素の圧力に応じて、反応時間を変化させて、ポリマーよりも小さい重量平均分子量を有する還元ポリマー生成物の所望の生成物又は生成物プロファイルを達成することができる。
【0073】
様々な実施形態について、本開示の方法に従って製造された還元ポリマー生成物(例えば、水素化分解ポリマー生成物)は、それらが製造される元のポリマーよりも小さい重量平均分子量を有する。本方法によって製造される還元ポリマー生成物は、解重合されるポリマー(例えば、出発ポリマー)の断片を含む。これらの断片の重量平均分子量は、ポリマー自体の重量平均分子量よりも小さい。還元ポリマー生成物は、(重量平均分子量が比較的小さく、一般にガス状/揮発性の形態である)揮発性生成物、(より中程度の重量平均分子量を有し、一般に液状である)油状生成物、及び(より高い重量平均分子量を有するが、依然として元のポリマーよりも重量平均分子量が小さい)ワックス状生成物であると特徴付けることができる。
【0074】
揮発性生成物は、9個未満の炭素を有することで特徴付けることができ、油状生成物は、9個以上26個以下の炭素を有することで特徴付けることができ、ワックス状生成物は、26個を超える(しかし、依然として元のポリマーよりも少ない)炭素を有することで特徴付けることができる。生成物の正確な炭素数範囲及び分子量範囲は、出発ポリマー並びに使用される特定の条件に依存する。同様に、各タイプの生成物の量は、出発ポリマー及び特定の条件に依存する。しかしながら、本方法の実施形態は、主に揮発性生成物及び油状生成物を生成することで特徴付けることができる。複数の実施形態において、生成されるワックス状生成物の量は、還元ポリマー生成物の総重量に基づいて、5wt%未満、4wt%未満、又は3wt%未満であり得る。また、本方法は、ポリマー(例えば、出発ポリマー)よりも分子量が大きな生成物の生成量が本質的にゼロである(すなわち、その量は0.1wt%未満である)ことで特徴付けることができる。これらの値は、特定の条件設定、例えば、150℃、2気圧のH2、2時間、0.06モル%の金属に関して言及され得る。還元ポリマー生成物は、所望に応じて回収及び使用することができる。
【0075】
本発明の方法(及びその中で使用される担持有機金属触媒)は、高い活性及び高い転化率により特徴付けることができる。活性は、ターンオーバー頻度によって定量化することができる。特定の条件設定、例えば150℃、2気圧のH2、2時間、0.06モル%の金属で測定されたターンオーバー頻度は、少なくとも10モル金属・モル基質-1・h-1、少なくとも100モル金属・モル基質-1・h-1、少なくとも250モル金属・モル基質-1・h-1、又は少なくとも500モル金属・モル基質-1・h-1であり得る。転化率は、出発ポリマーの重量の百分率としての、反応後に回収されたジクロロメタン可溶性画分及びガス状画分の合計重量を指す。特定の条件設定、例えば150℃、2気圧のH2、2時間、0.06モル% 金属で測定された転化率は、10%以上、50%以上、90%以上、95%以上、98%以上、又は100%であり得る。
【0076】
本方法を使用することによって得られた結果は、驚くべきものであるのみならずまた予想外でもあることに留意されたい。オレフィン重合及びアレーン水素化を誘起するために同様の触媒が使用されているが、これらはポリマーの水素化分解/解重合とは機構的に異なる。この事実、及び有機金属化学の根底に内在する固有の予測不可能性が、本発明の方法における本担持有機金属触媒の顕著な活性を真に驚くべきものにしている。例えば、以下の実施例で150℃、2気圧のH2、2時間、0.06モル%のZr金属でポリエチレンを解重合するために使用される担持有機金属触媒の活性は、既存の触媒(Zrが形式的に中性であり、金属酸化物担体に共有結合している)よりも約二桁高いことが測定された。より具体的には、実施例で使用される担持有機金属触媒は、別の触媒(「Dufaud,V.R.,et al.,Angew Chem Int Edit 1998,37(6),806-810」において同様の条件下で使用される、硫酸化酸化物担体を用いない)よりも約100倍速くポリエチレンを解重合することができる。別の例として、実施例で使用される担持有機金属触媒は、Dufaudらの同様の条件下で使用される別の触媒よりも約180倍速くアイソタクチックポリプロピレンを解重合することができる。
【実施例】
【0077】
材料及び方法
空気感受性化合物及び感湿化合物を含むすべての手順は、高真空(10-5~10-6トール)ラインに接続された火炎乾燥又は炉乾燥したシュレンク型ガラス器具、又は高容量再循環器(O2は1ppm未満)を備えたアルゴン充填したMBRAUN社製グローブボックス内で、酸素(O2)及び水分(例えば、H2O)を厳密に排除して実行した。高真空ライン(Airgas社製超高純度(UHP)グレード)で使用したアルゴンは、MnO/バーミキュライト及び活性化Davidson4Aモレキュラーシーブカラムに通すことによって精製した。
【0078】
すべての溶媒は使用前に、活性アルミナ/CuOカラムから分注した。n-ペンタン(シグマアルドリッチ社製)は、Na/K合金上で乾燥した後にアルゴングローブボックス内でガラス繊維フィルタに通すことによってさらに精製した。酸化アルミニウム(ガンマ、ナノ粉末20~30nm)は、Nanostructured and Amorphous Materials Inc.社から購入した。硫酸(98%)はFisher社から購入した。n-ヘキサデカン(C16)はシグマアルドリッチ社から購入し、Na上において48時間(h)120℃で加熱した後、室温(23℃)で脱気することによって精製し、さらに使用直前に0.22μmのPTFEシリンジフィルタを3回通過させて精製した。n-ヘキサデカン-d34(98%+D)は、Cambridge Isotope Laboratories Inc.社から購入し、C16と同じ方法で精製した。水素化分解実験の前にC16と直接接触するポリマーを含有するすべての部品(すなわち、シリンジ、シリンジフィルタ、針、テフロン反応器キャップ)は、使用前にアルゴンを充填したグローブボックス内で一晩処理した。仮焼成に使用した酸素(UHPグレード)は、Airgas社から購入し、さらなる精製をすることなく使用した。重水素(シグマアルドリッチ社製)及び水素(H2、Airgas社製UHPグレード)は、酸素/水分トラップ(Matheson社製、モデルMTRP-0042-XX)を通過させることによって精製した。塩化ジルコニウム(IV)及び塩化ネオペンチルマグネシウム(1.0M Et2O溶液)は、シグマアルドリッチ社から購入し、さらなる精製をすることなく使用した。テトラ(ネオペンチル)ジルコニウム(ZrNp4)は、文献手順「Davidson,P.J.;Lappert,M.F.;Pearce,R.J.Organometal.Chem.1973,57,269-277」に従って合成し、70℃及び約10-6トールにおける昇華によって精製した。
【0079】
本実施例のポリオレフィンとしては、Engage(商標)8402ポリオレフィンエラストマー(0.902g/cm3の密度を有するエチレン-オクテンコポリマー);Engage(商標)8450ポリオレフィンエラストマー(0.902g/cm3の密度を有するエチレン-オクテンコポリマー);Affinity(商標)1850Gポリオレフィンプラストマー(0.902g/cm3の密度を有するポリエチレンプラストマー);Affinity(商標)GA 1900ポリオレフィンプラストマー(0.87g/cm3の密度を有するポリエチレンプラストマー)があり、すべてダウ(登録商標)社から入手した。本実施例では、すべてをそのまま使用した。本実施例のためのさらなるポリオレフィンは、高密度ポリエチレン(HDPE)ミルクジャグ及びHDPEフルーツポーチキャップから得られる。
【0080】
実験室合成ポリオレフィンは、高真空下、溶融物(130~165℃)中で48時間(h)乾燥させてから水素化分解反応で使用した。使用直前に、溶融乾燥プロセスによって形成されたパックから、ポリオレフィンの剪剃片を採取した。
【0081】
物理的及び分析的測定
誘導結合プラズマ発光分光法(ICP-AES)分析は、Galbraith Laboratories社(テネシー州ノックスビル)によって行った。水素化分解生成物の1H(500MHz)及び13C(125MHz)NMRスペクトルは、DCHクライオプローブを装着したブルカー社製Avance IIIシステムを用いて得た。1H MAS(400MHz)及び13C CP-MAS(100MHz)固体NMR測定値は、4mmのブルカーHXプローブを装着したブルカー社製Avance IIIシステムを用いて得た。ローター速度は、すべてのスペクトルについて14kHzに設定した。
【0082】
水素化分解生成物混合物のガスクロマトグラフィー質量分析(GC-MS)分析を、DB5カラム(オーブンプログラム:1.)50℃で2分(min)保持 2.)30℃/分で昇温 3.)300℃で2分間保持)を装着したアジレント社製GCMSDで行った。2μL/注入及び100:1の分割比での分割モード注入を使用した。n-ヘキサデカンのGC-MS定量のために、約0.2mg/mLを目標サンプル濃度として、GC-MSによって分析したサンプルの各群について四点較正(0.1mg/mL、0.2mg/mL、0.3mg/mL、0.4mg/mL)を行った。較正標準は、気密性のテフロン弁付きガラス器具に保管した。
【0083】
拡散反射赤外分光法(DRIFTS)測定値は、Harrick社製Praying Mantis DRIFTSアタッチメントを装着したThermo 6700赤外分光計で得た。ZnS窓をDRIFTSセルに使用した。無水KBrをバックグラウンドとして使用した。DRIFTSセルは、すべての測定中、グローブボックスの乾燥したアルゴン(O2は1ppm未満/H2Oは1ppm未満)を含んでいた。表面積測定は、Micromeritics社製の3Flex表面特性解析装置を用いて行った。ブルナウアー-エメット-テラー(BET)表面積は、「S.Brunauer,P.H.Emmett,E.Teller,J.Am.Chem.Soc.1938,60,309-319」に従って窒素ガス吸着分析を使用して測定した。
【0084】
ZrのK吸収端(17998eV)におけるX線吸収端近傍構造(XANES)及び広域X線吸収微細構造(EXAFS)測定は、米国先端放射光施設のDND-CATの5BM-Dビームラインで行った。ΔE/E=1.4×10-4のエネルギー分解能を有する二重Si(111)モノクロメーターをエネルギー選択に使用した。X線エネルギーは、金属Zr箔を用いて較正した。入射X線強度は、Heを600(トール)/N2を100(トール)充填した分光グレードのイオン化室(FMB Oxford社製)によって測定し、高調波除去のためにその最大値の60%に離調した。EXAFSスペクトルは、パッシベーション注入型平面シリコン(PIPS)検出器(Canberra社製)を使用して蛍光モードで収集した。サンプル及び検出器は、X線ビーム方向に対してそれぞれ45度(deg)及び90degに配置した。エネルギースキャンは、EXAFSスペクトルを発生させるZrのK吸収端の下方250eVから上方550eVまで実施した。
【0085】
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)分析は、PLgel 10μm MIXED-B LS300×7.5mmカラムを3本装備したPolymer Laboratories社製PL-GPC220を使用し、0.0125%のブチル化ヒドロキシトルエンで安定化した1,2,4-トリクロロベンゼンを使用して150℃で行った。較正は、ポリスチレン標準(860~3,752,000g/mol)を用いて行った。サンプルは、ポリマーを150℃の安定化トリクロロベンゼンに溶解し、約1.0mg/mLの溶液濃度を得るために一晩中静かに振盪して調製した。サンプルは測定前に、0.5μmの多孔質ステンレス鋼フィルタを通して濾過した。
【0086】
AlS合成
大気条件下、硫酸(脱イオン(DI)水から調製した2.0M水溶液、288mL)を撹拌しながら酸化アルミニウム7.0gに加えた。懸濁液を30分間撹拌した後、遠心分離(毎分4000回転(rpm)、5分)した。浮遊物を捨て、アルミナをDI水に再懸濁し、遠心分離した。この工程をpHが約6に達するまで繰り返した(通例合計7回の洗浄)。得られた固形物を120℃及び約10-6トールで18時間乾燥させた。次いで、固形物を乳鉢及び乳棒で砕き、180メッシュ(80μm)に篩分した。粉末を石英ボートに装填し、管状炉に入れ、O2(約2L/分)を流しながら550℃で3時間仮焼成した。次いで、管状炉に高真空ラインを接続し、約10-6トールになるまで450℃で1時間ポンプ減圧した。炉を真空下で冷却し、アルゴングローブボックスに入れた。AlS(白色粉末、4.83g)を回収し、アルゴン下で密封容器に保存した。
【0087】
担持有機金属触媒(SOC)を形成するためのAlS上のZrNp4の化学吸着
両側にフリットが付いた乾燥した反応容器内で、ZrNp4(66.67mg、0.177ミリモル)及びAlS(1.000g)の十分な混合量の上に、ペンタン25mLを凝縮させた。得られたスラリーは、25℃で1時間撹拌し、次いで濾過した。化学吸着後、固形物は淡黄色になった。含浸した担体をフリット上に収集し、約10mLの量のn-ペンタンで5回洗浄後、真空中で1時間乾燥させた。1H-NMRを使用し、約10mgの固形物を、ベンゼン-d6又はトルエン-d8を溶媒として使用してNMR管に直接添加することによって、物理吸着(弱く結合)した残留ZrNp4の存在を確認した。残留有機金属が存在する場合、ZrNp4が1H-NMR上で不可視となるまで、触媒を上記のようにペンタンでさらに洗浄した。次いで、触媒は、使用に必要とされるまでアルゴングローブボックス内に-40℃で密封容器に保管した。別法として、ZrNp4及びAlSをテフロン密封バルブ内で合わせた後、ペンタンをバルブ内に真空移送した。この混合物を25℃で1時間撹拌した。ペンタンを真空中で除去し、固形物を約10-6トールで1時間乾燥させた後、上記のように保管した。この別法の触媒調製物の触媒活性に差は見られなかった。SOC(AlS/ZrNp2)担持量をICP-AESによって測定したところ、Zrが1.40wt%(Zrが1.38wt%及び1.42wt%の2つのバッチの平均値)であった。N2物理吸着による触媒のBET表面積は184m2/gであった、したがってZr被覆率は0.50Zr/nm2である。
【0088】
AlS/ZrH2、AlS/ZrD2及びpAlS/ZrH2(ペンタン処理AlS/ZrH2)の合成
AlS/ZrH2の合成。グローブボックス内で、AlS/ZrNp2(200mg)を75mLガラス圧力反応器に入れた。反応器を密封し、高圧/高真空ラインに接続して排気した後、1気圧(atm、101.325kPa)のH2を充填した。反応器を150℃に5分間加熱した後、排気した。触媒の色は、淡黄色から無色に変化した。このサイクルをもう一度繰り返した。その後、AlS/ZrH2は必要に応じて、さらなる反応又は測定に使用した。H2の代わりにD2を使用し、AlS/ZrH2に類似の様式でAlS/ZrD2を合成した。pAlS/ZrH2を合成するために、ペンタン(約0.5mL)を、AlS/ZrNp2(200mg)を含む75mL圧力反応器に高圧/高真空ラインで真空移送した。反応器を150℃で5分間加熱した。加熱の最初の30秒間に、無色から淡黄色への色の変化が観察された。触媒は、必要とされるまでアルゴングローブボックス内に-40℃で保管した。
【0089】
AlS/ZrNp2を用いた一般的なヘキサデカン水素化分解手順:
グローブボックス内で、C16を0.22μmのPTFEシリンジフィルタに通して、10mmの卵形撹拌子が入った肉厚ガラス圧力反応器に直接投入した。AlS/ZrNp2を反応器に添加し、アメリカ規格管用テーパねじ(NPT)弁を装着したねじ付きテフロンキャップで密封した。容器をグローブボックスから慎重に取り出し、高圧/高真空ラインに接続した。反応器を室温で90秒(s)間脱気した後、必要な圧力のH2を充填した。所望の温度に設定した油浴に反応器を入れ、約500rpmから撹拌を開始した。油浴の熱電対が反応温度に達したら、タイムインターバルを開始した。タイムインターバルの最後に、反応器を油浴から取り出し、次いで、水浴で室温にまで冷却した。この時点で、必要に応じてヘッドスペースサンプルを採取した。反応器は、NPTバルブを通して通気し、空気に開放した。約5mLのジクロロメタン(DCM)を使用して、テフロンキャップ及びNPTバルブの内部を洗浄した。これらの洗液は、反応器に添加した。洗液は、0.22μmのPTFEフィルタを備えたシリンジに移した。反応器は、約10mLの量の清浄なDCMで4回(x)洗浄し、各回の洗液はシリンジに加えた。洗液は、フィルタを通して100mLメスフラスコに直接入れた。フィルタを約5mLの量の清浄なDCMで4回洗浄し、洗液はメスフラスコに加えた。DCM溶液を移すために使用したピペットも、清浄なDCMで洗浄し、メスフラスコに加えた。溶液を較正マークまで希釈した後、標準的な分析技術を用いてさらに約0.2mg/mLに希釈した。
【0090】
一般的なポリオレフィン水素化分解手順:
グローブボックス内で、AlS/ZrNp2及び所望の量のポリオレフィンサンプルを、一般的には約15質量%の担持量のSOCとともに10mmの卵形撹拌子が入った肉厚ガラス圧力反応器に投入した。実験室調整ポリオレフィンサンプルは、予め溶融したストックの比較的大きなパックから剪剃することによって調製した。ダウ(登録商標)社製ポリオレフィンサンプルは、そのまま使用した。使用済みポリオレフィンサンプルは、チーズ卸し器か鋏のどちらか一方を使用して細分した。反応器を、NPTバルブを装着したねじ付きテフロンキャップで密封した。容器をグローブボックスから慎重に取り出し、高圧/高真空ラインに接続した。反応器を室温で90秒間脱気後、2気圧のH2を充填した。反応器を所望の温度(90~200℃)に設定した油浴に入れた。
【0091】
ポリオレフィンが溶融し、溶融物中の触媒と接触したら、タイムインターバルを開始した。撹拌は通例、300rpmに最初設定し、次いで、ポリオレフィン粘度が十分に低下してから約800rpmに上げた。タイムインターバルの最後に、反応器を油浴から取り出し、次いで、室温まで空冷した。必要に応じて、この時点でヘッドスペースサンプルを採取した。ヘッドスペースサンプルは、排気した500mLのテフロン弁付きガラスバルブに反応器の内容物を拡散させることによって採取した。個々の分析用サンプルは、セプタム及び気密ヘッドスペースシリンジ(50μL)を介して回収した。反応器は、NPTバルブを通して通気し、空気に開放した。DCMを約5mL使用して、テフロンキャップ及びNPTバルブの内部を洗浄した。これらの洗液は、反応器に添加した。固形物は、DCM洗液に懸濁後に濾過して、固形物を単離した。反応器は十分に洗浄し、すべての残留物を除去した。5mLの量のDCMで固形物を3回程度洗浄し、次いで、約1トール(133パスカル)で一晩乾燥させた(固形物画分)。濾液からDCMを除去し(DCM抽出画分)、得られた液体を約1トール(133パスカル)で一晩乾燥させた。
【0092】
AlS/ZrNp2の結果
表1に見られる結果は、AlS/ZrNp2を用いた上記の一般的なヘキサデカン水素化分解手順を使用するC16の完全な転化率を示している。以下のデータについて、表1の実験「a」は、3.0gのC16及び200mgのAlS/ZrNp2(Zrは1.40wt%)を含む500mL反応器において2気圧のH2で行った。表1の実験「b」は、1.483gのC16及び178mgのAlS/ZrNp2(Zrは0.17wt%)を含む350mL反応器において2.5気圧のH2で行った。平均炭素鎖長は、直鎖のみが存在すると仮定して、1H-NMRによって推定した。表1に示すように、C16の転化率は100%であった。
【0093】
【0094】
表2に、圧力を変えたC16水素化分解反応データを提示する。表2に見られる結果は、H2圧力依存性(及び延いてはH2濃度依存性)が存在しないことを示しており、これはH2のゼロ次反応速度と整合する。表2の実験では、反応器内に2.5wt%のAlS/ZrNp2(Zrは1.40wt%)が存在した。表2の実験「a」では、C16に対して7当量のH2が存在した。
【0095】
【0096】
表3に、AlS/ZrNp2(反応器中のZrは1.40wt%、触媒は0.6~5.44wt%)に対する、触媒担持量を変えたC16水素化分解反応データを提示する。データは、転化率と触媒担持量との間の線形関係(R2=0.98451)を示しており、これは触媒濃度についての一次反応速度を示唆している。
【0097】
【0098】
表4に、AlS/ZrNp2(反応器中のZrは1.40wt%、SOCは2.5wt%)に対する、時間の関数としてのC16水素化分解転化率に関するデータを提示する。データは、時間とC16の転化率との間の線形関係(R2=0.9346)を実証しており、これは、速度論実験で使用された条件が擬ゼロ次であることを示唆している。
【0099】
【0100】
表5に、AlS/ZrNp2(反応器内のZrは1.40wt%、触媒は2.5wt%)を用いた、C16水素化分解の温度変化に関するデータを提示する。データは、温度とC16の転化率との間の線形関係(R2=0.99924)を実証しており、これは、反応温度についての一次反応を示唆する。
【0101】
【0102】
表6に、AlS/ZrNp
2(反応器内のZrは1.40wt%、触媒は12.5wt%)を用いた、新品の実験室合成ポリエチレンホモポリマー(M
nは約9kg・mol
-1)のガス状炭化水素及びDCM可溶性炭化水素への転化率に関する、時間の関数としてのデータを提示する。
図2は、表6の還元ポリマー生成物の揮発性物質、DCM抽出物及び固形生成物の質量パーセントを示す。
【0103】
【0104】
表7に、AlS/ZrNp
2(反応器内のZrは1.40wt%、触媒は17wt%)を用いた、新品の実験室合成アイソタクチックポリプロピレンホモポリマー(M
nは約36kg・mol
-1)のガス状炭化水素及びDCM可溶性炭化水素への転化率に関する、時間の関数としてのデータを提示する。
図3は、表7の還元ポリマー生成物の揮発性物質、DCM抽出物及び固形生成物の質量パーセントを示す。
【0105】
【0106】
表8に、AlS/ZrNp
2(反応器内のZrは1.40wt%、触媒は13wt%)を用いた、新品の実験室合成ポリエチレン-co-1-オクテン(1-オクテンの組み込み率は2.5%、M
nは約7kg・mol
-1)のガス状炭化水素及びDCM可溶性炭化水素への転化率に関する、時間の関数としてのデータを提示する。
図4は、表8の還元ポリマー生成物の揮発性物質、DCM抽出物及び固形生成物の質量パーセントを示す。
【0107】
【0108】
AlS/ZrNp2の結果の考察
酸性金属酸化物担体に担持された、d0の形式的にカチオン性のZr(IV)ヒドロカルビルは、報告した反応条件下で現在公知のポリオレフィン及びアルカンの水素化分解に最も迅速な触媒作用を及ぼすことが観察される。弱い酸性表面に担持された形式的に中性に帯電したZr触媒と比較して、この系は活性が少なくとも二桁向上することを示している。速度論的実験によって、反応はヘキサデカンとH2のいずれでもゼロ次であり、触媒で1次であることが示されている。DRIFTS及びSSNMRは両方とも、活性種としてのZr水素化物の存在の証拠を提示している。
【0109】
上記のアルカン(C16)及びポリオレフィンの水素化分解実験で使用されたAlS/ZrNp
2であるSOCは、形式的にカチオン性の(まさに帯電した)Zrアルキル錯体であって、酸性金属酸化物担体(例えば、極めてブレンステッド酸性の高い硫酸化アルミナ担体、
図1B)に吸着し/酸性金属酸化物担体によって活性化しているものである。対照的に、従来のZrのアルカン及びポリオレフィン水素化分解触媒は、形式的に中性に帯電した(すなわち、非帯電の)Zr錯体であって、弱いブレンステッド酸性の担体(
図1A)に共有結合しているものであった。それらのバルク化学量論組成が同様であるにもかかわらず、本カチオン性の非共有結合Zrアルキル錯体は、従来の触媒よりも著しく優れており、2気圧のH
2圧力下、150℃でわずか2時間後に、酸性金属酸化物担体上のZr担持量が(-C
2H
4-モノマー単位に基づく)0.06モル%で、ポリエチレン及び他のポリオレフィンを揮発性生成物(C
9未満)、油状生成物(C
9~C
26)、及び微量のワックス状生成物(C
26~C
60が約3%)に完全に変換することができる。上記の実験で使用した有機金属錯体プレ触媒であるテトラキス(ネオペンチル)ジルコニウムは、一連の電子不足の第4族金属のヒドロカルビル及び水素化物の1種であって、酸性金属酸化物担体、例えば、硫酸化金属酸化物(例えば、硫酸化アルミナ)に固定化することができるものである。同様の触媒がオレフィン重合及びアレーン水素化に活性があることが示されているものの、それらが飽和炭化水素及びポリオレフィンを活性化して、比較的温和な条件下で高収率の解重合/水素化分解生成物を達成することは全く予想外であった。実際、上記で実証されたように、
図1Bに示す例示的な触媒は、アルカン水素化分解に対して極めて活性が高く、低触媒担持量(0.06~0.13モル%のZr)及び温和な条件(150~190℃、2気圧のH
2)を使用して、2時間未満で、ポリエチレン、アイソタクチックポリプロピレン、及びポリエチレン-co-1-オクテンの軽質炭化水素及びワックスへの完全な変換を媒介する。
【0110】
AlS上のHfNp4の化学吸着によるSOCの形成
テトラ(ネオペンチル)ハフニウム(HfNp4)は、文献手順「Davidson,P.J.;Lappert,M.F.;Pearce,R.J.Organometal.Chem.1973,57,269-277」に従って合成し、80℃及び約10-6トールにおいて昇華によって精製した。両側にフリットが付いた乾燥した反応容器中で、十分な混合量のHfNp4(84.0mg、0.181ミリモル)及びAlS(1.000g)上にペンタン25mLを凝縮させた。得られた懸濁液を25℃で1時間撹拌後、濾過した。化学吸着後、固形物は白色のままであった。含浸した担体をフリット上に収集し、約10mLの量のn-ペンタンで5回洗浄後、真空中で1時間乾燥させた。次いで、触媒を、使用に必要とされるまで、アルゴングローブボックス内に25℃で密封容器に保管した。SOC(AlS/HfNp2)の担持量をICP-AESにより測定したところ、Hfは3.28wt%であった。
【0111】
AlS/HfNp2を用いたC16水素化分解の一般的手順
グローブボックス内で、C16を0.22μmのPTFEシリンジフィルタに通して、所望の量のSOCが入った肉厚ガラス圧力反応器に直接入れた。反応器を、NPTバルブを装着したねじ付きテフロンキャップで密封した。次いで、容器を室温で90秒間脱気し、2気圧のH2を再充填した。反応器を150℃に設定した油浴に入れ、約200rpmから撹拌を開始した。油浴の熱電対が147℃に達したら、タイムインターバルを開始した。C16がすべて消失した時間を視認して記録した。ヘッドスペースサンプル及び凝縮サンプルを採取し、それぞれGC-Fid及びGC-MSによって特性評価を行った。
【0112】
表9に、圧力を変えたC16水素化分解反応データを提示する。表9に見られる結果は、H2圧力依存性(及び延いてはH2濃度)依存性が存在しないことを示しており、これはH2のゼロ次反応速度と整合している。表9の実験では、反応器内にAlS/HfNp2であるSOCが4.2wt%存在した(Hfは0.14wt%)。
【0113】
【0114】
表10に、AlS/HfNp2(Hfは3.28wt%)に対するC16水素化分解反応の触媒担持量を変えたデータを提示する。データは、転化率と触媒担持量との間の線形関係(R2=0.9889)を示し、これはSOC濃度についての一次反応速度を示唆している。
【0115】
【0116】
表11に、AlS/HfNp2(Hfは3.28wt%)を用いたC16水素化分解における温度変化に関するデータを提示する。データは、温度とC16の転化率との間の線形関係(R2=0.8404)を示し、これは、反応温度についての一次反応速度を示唆している。
【0117】
【0118】
表12に、AlS/HfNp2(Hfは3.28wt%)を使用し、約1500rpmから撹拌を開始した、Parr社製25mLオートクレーブ内のポリエチレン(Engage(商標)8402)の水素化分解反応から選択されたデータを提示する。
【0119】
【0120】
AlS/HfNp2の結果の考察
AlS/HfNp2であるSOCは、AlS/ZrNp2であるSOCの構造類似体であって、金属がHfに置換されている。上記のデータに見られるように、AlS/HfNp2であるSOCは、ポリオレフィン及びアルカンの水素化分解に迅速な触媒作用を及ぼすことができる。水素化分解の速度は、同じ条件下でZr触媒の速度よりも遅いが、Hf系はより高い熱安定性を有することが観察されている。
【0121】
AlS上のTa(CHtBu)Np3の化学吸着によるSOCの形成
Ta(CHtBu)Np3は、文献手順「Schrock,R.R.;Fellmann,J.D.J.Am.Chem.Soc.,1978,100,3359」に従って合成した。両側に乾燥したフリットが付いた乾燥した反応容器中で、Ta(CHtBu)Np3(100mg、0.215ミリモル)とAlS(1.20g)との混合物にペンタン20mLを真空移送した。得られた懸濁液を25℃で2時間撹拌した後、濾過した。化学吸着後、固形物は淡黄色を呈する。含浸した担体をフリット上に収集し、約10mLの量のペンタンで5回洗浄し、次いで真空中で1時間乾燥させた。触媒は、必要とされるまでアルゴングローブボックス内に-40℃で保管した。ICP-AESによって測定したところ、AlS/Ta(CHtBu)NpであるSOC担持量はTaが2.75wt%であった。
【0122】
AlS上のTiNp4の化学吸着によるSOCの形成
TiNp4は、文献手順「Cheon,J.;Rogers,D.M.;Girolami G.S.J.Am.Chem.Soc.,1997,119,6804」に従って合成した。両側に乾燥したフリットが付いた乾燥した反応容器中で、TiNp4(53mg、0.159ミリモル)とAlS(0.90g)との混合物に20mLのペンタンを真空移送した。得られた懸濁液を25℃で1時間撹拌後、濾過した。化学吸着後、固形物は淡黄色を呈する。含浸した担体をフリット上に収集し、約10mLの量のペンタンで5回洗浄し、次いで真空中で1時間乾燥させた。触媒は、必要とされるまでアルゴングローブボックス内に-40℃で保管した。AlS/TiNp2であるSOC担持量は、Tiが約0.7wt%であった。
【0123】
AlS上のNbF2Np3の化学吸着によるSOCの形成
NbF2Np3は、文献手順「Schrock,R.R.;Fellmann,J.D.J.Am.Chem.Soc.,1978,100,3359」に従って合成した。両側に乾燥したフリットが付いた乾燥した反応容器中で、NbF2Np3(100mg、0.215ミリモル)とAlS(1.20g)との混合物に20mLのペンタンを真空移送した。得られた懸濁液を25℃で2時間撹拌した後、濾過した。含浸した担体をフリット上に収集し、約10mLの量のペンタンで5回洗浄し、次いで真空中で1時間乾燥させた。触媒は、必要とされるまでアルゴングローブボックス内に-40℃で保管した。AlS/NbF2NpであるSOC担持量は、Nbが約1.4wt%であった。
【0124】
AlS上のNb(CHtBu)Np3の化学吸着によるSOCの形成
NbCl2Np3は、文献手順「Schrock,R.R.;Fellmann,J.D.J.Am.Chem.Soc.,1978,100,3359」に従って合成した。50mLのシュレンクフラスコに、99mgのNbCl2Np3(0.26ミリモル)を10mLのペンタン及び撹拌棒とともに仕込んだ。NbCl2Np3溶液をドライアイス-アセトン浴中で10分間冷却した後、カニューレ移送によってLiNp(46mg、0.58ミリモル)のペンタン溶液をゆっくり添加した。得られた懸濁液をさらに10分間撹拌した後、氷浴中で0℃にまで加温した。懸濁液の色は、オレンジイエローからワインレッドに変わった。両側に乾燥したフリットが付いた乾燥した反応容器にAlS(1.20g)を仕込み、次いで、氷水浴で冷却した。上記のワインレッド懸濁液を、カニューレ濾過によってAlS担体に添加した。得られた懸濁液を0℃で1時間撹拌した後、濾過した。化学吸着後、固形物は淡黄色を呈する。含浸した担体をフリット上に収集し、約10mLの量のペンタンで5回洗浄し、次いで真空中で1時間乾燥させた。触媒は、必要とされるまでアルゴングローブボックス内に-40℃で保管した。SOC(AlS/Nb(CHtBu)Np)担持量は、Nbが約1.4wt%であった。
【0125】
AlS上のW(CtBu)Np3の化学吸着によるSOCの形成
W(CtBu)Np3は、文献手順「Dewan,J.C.;Schrock,R.R.J.Am.Chem.Soc.,1978,100,6774」に従って合成した。両側に乾燥したフリットが付いた乾燥した反応容器中で、W(CtBu)Np3(105mg、0.225ミリモル)及びAlS(1.23g)の混合物を66℃の油浴中で5時間加熱した。得られた混合物に20mLのペンタンを真空移送し、次いで濾過した。化学吸着後、固形物は淡褐色を呈する。含浸した担体をフリット上に収集し、約10mLの量のペンタンで5回洗浄し、次いで真空中で1時間乾燥させた。SOCは、必要とされるまでアルゴングローブボックス内に-40℃で保存した。SOC(AlS/W(CtBu)Np)担持量は、Wが約2.8wt%であった。
【0126】
AlS上のMo(CtBu)Np3の化学吸着によるSOCの形成
Mo(CtBu)Np3は、文献手順「McCullough,L.G.;Schrock,R.R.;Dewan,J.C.;Murdzek.J.C.J.Am.Chem.Soc.,1985,107,5987」に従って合成した。両側に乾燥したフリットが付いた乾燥した反応容器中で、Mo(CtBu)Np3(52mg、0.137ミリモル)とAlS(0.75g)との混合物を50℃の油浴中で2時間加熱した。得られた混合物に10mLのペンタンを真空移送し、次いで濾過した。化学吸着後、固形物は淡褐色を呈する。含浸した担体をフリット上に収集し、約10mLの量のペンタンで5回洗浄し、次いで真空中で1時間乾燥させた。触媒は、必要とされるまでアルゴングローブボックス内に-40℃で保管した。SOC(AlS/Mo(CtBu)Np)担持量は、Wが約1.4wt%であった。
【0127】
初期SOCスクリーニングのための一般的なC16水素化分解手順
グローブボックス内で、C16(通例は約1.5g)を0.22μmのPTFEシリンジフィルタに通して、所望の量の触媒(通例は約170mg)が入った肉厚ガラス圧力反応器(容量350mL)に直接入れた。反応器を、NPTバルブを装着したねじ付きテフロンキャップで密封した。次いで、容器を室温で90秒間脱気し、2気圧のH2を再充填した。150℃に設定した油浴に反応器を入れた。油浴の熱電対が147℃に達したら、タイムインターバルを開始した。C16がすべて蒸発した時間を記録した。ヘッドスペースサンプル及び凝縮サンプルを採取し、それぞれGC-Fid及びGC-MSによって特性評価を行った。
【0128】
AlS/Ta(CHtBu)Npのための一般的なポリオレフィン水素化分解手順
グローブボックス内で、AlS/Ta(CHtBu)Np及び所望の量のポリオレフィンサンプルを、約15質量%のSOC担持量が入った肉厚ガラス圧力反応器(容量350mL)に仕込んだ。反応器を、NPTバルブを装着したねじ付きテフロンキャップで密封した。反応器を脱気し、2気圧のH2を再充填した。所望の温度に設定した油浴に反応器を入れた。ポリオレフィンが融解して触媒と接触したら、タイムインターバルを開始した。撹拌は通常、最初300rpmに設定しておき、その後ポリオレフィン粘度が十分に低下してから、600rpmに上げた。タイムインターバルの最後に、容器を油浴から取り出し、次いで、室温まで空冷した。必要に応じて、この時点でヘッドスペースサンプルを採取した。反応器は、NPTバルブを通して通気し、空気に開放した。DCMを約5mL使用して、テフロンキャップ及びNPTバルブの内部を洗浄した。これらの洗液は、反応器に添加した。固形物をDCM洗液中に懸濁し、次いで、回収のために濾過した。反応器を十分な回数洗浄してすべての残留物を除去した。フリット上に回収した固形物を5mLの量のDCMで3回程度洗浄した後、約100ミリトールで一晩乾燥させた(ワックス状生成物)。濾液からDCMを除去し(DCM抽出画分)、得られた液体を約100ミリトールで一晩乾燥させた。
【0129】
【0130】
図5は、表13の還元ポリマー生成物の揮発性生成物、油状生成物及びワックス状生成物の質量パーセントを示す。
【0131】
【0132】
図6は、表14の還元ポリマー生成物の揮発性生成物、油状生成物及びワックス状生成物の質量パーセントを示す。
【0133】
C16水素化分解
グローブボックス内で、300mgのAlS/Ta(CHtBu)Npを肉厚ガラス圧力反応器(容量350mL)に仕込んだ。反応器を、NPTバルブを装着したねじ付きテフロンキャップで密封した。反応器を脱気し、2気圧のH2を再充填した後、200℃の油浴に5分間入れた。反応器を脱気し、1気圧のC16/H2(1:1の比)を再充填した後、200℃の油浴に4時間入れた。ヘッドスペースサンプルをGC-Fidによって測定した。結果を表15に示す。表15に、上記方法に従う水素化分解によって、C16をすべて蒸発させるためのタイムインターバルを記録したものを提示する。
【0134】
【0135】
結論
第V族及び第VI族金属のヒドロカルビル前駆体が酸性硫酸化アルミナ(AlS)上に化学吸着すると、シングルサイトカチオン性の第V族及び第VI族有機金属中心が生成されるが、これはポリオレフィン水素化分解において超活性であった。エタン水素化分解実験によって、第V族金属の新しいC-C結合活性化機構が明らかになる。重金属触媒は、対応するシングルサイトZr触媒よりも高い熱安定性を示す。
【0136】
ポリオレフィン水素化分解
AlS/ZrNp2を用いた一般的な高圧水素化分解手順
グローブボックス内で、磁気結合オーバーヘッド撹拌機及びPTFE反応器ライナーを装着した25~100mLのParr社製反応器に、触媒(通例は10-3wt%)及びポリオレフィンを添加した。反応器を密封し、グローブボックスから取り出し、高真空/高圧ラインに接続した。反応器を約10-3トールまで排気後、所望の圧力のH2(通例は18気圧)を室温で充填した。反応器を所望の温度及び反応温度に加熱し、撹拌(200~1900rpm)を始めて、反応を開始した。150℃より高い温度で反応を実施した場合、所望の温度に達するまで(通例は5~10分間)は、低速撹拌(約200rpm)を手本とした。所望のタイムインターバルにわたって反応を進行させた。タイムインターバルは、撹拌を始めたときに開始するように定めておく。タイムインターバルが経過した後、撹拌を停止し、反応器を炉から取り出し、強制空気冷却を用いて冷却した。反応器を減圧し、ヘッドスペースサンプルを必要に応じて採取した。反応混合物は、一般的なポリマー水素化分解手順に記載されるように後処理した。
【0137】
トルエン膨潤を伴う一般的なポリオレフィン水素化分解手順
AlS/ZrNp2を用いる一般的なポリオレフィン水素化分解手順に記載されているように、反応器にポリオレフィン及びSOCを仕込んだ。乾燥トルエン(0.5~2.0mL)も反応器に添加した。反応器を密封し、グローブボックスから取り出した。約30分間ゆっくり撹拌しながら、反応器を所望の温度に加熱した。トルエンを減圧下(約10-6トール)で除去し、次いで、反応器に所望の圧力のH2を充填した。一般的なポリマー水素化分解手順に記載されているように、反応を実施し、後処理した。
【0138】
気相NMR実験
PTFE密封NMR管に41.50mgの触媒を投入した。管に高圧/高真空ラインを接続し、約10-6トールにまで排気した。管に1気圧のH2を充填し、次いで密封した(内容積は約2.9mL)。NMRスペクトルは10分間隔で取得した。これらの10分間隔の間に、NMR管をマグネットから取り出し、次いで約2分間振盪した。90分後、NMR管を30分間150℃に加熱して反応を完了させた。この後、最終スペクトルを取得し、存在する炭化水素はメタン及びエタンのみであることを確認した。1H-NMR測定値は、BBFOスマートプローブを装着したブルカー社製Avance III(600MHz)を用いて得た。気相NMRスペクトルを得るために以下の取得パラメータを使用した。取得時間:0.5秒、遅延時間:20秒。
【0139】
ポリオレフィン水素化分解実験の活性計算
ポリオレフィン水素化分解の活性は以下のように計算する。
1.)反応生成物は、14.026g・mol-1(-CH2-単位)の分子量を有し、「揮発性物質」画分及び「DCM抽出物」画分のみを含むように採取する。2.)生成物のモル量を、反応に添加したZrのモル数で割る。3.)得られた数を、反応を進行させた時間(h)で割る。得られた数は、以下の単位で表されるポリマー水素化分解反応の活性である。(揮発性物質及びDCM抽出物のCH2モル)・(モルZr)-1・h-1。
【0140】
0.1gのSOC(SOC中に存在するZrは1.4wt%)を用いて、DCM抽出物と揮発性物質とを合わせて0.5g生成する反応を45分間進行させた場合、活性は以下のように計算される。
・0.5g/14.026(g・モル-1)=0.0356モル(-CH2-単位)。
・0.1gのSOCは、0.0014gのZrを含み、0.0014gのZr/91.22(g・モル-1 Zr)=1.535・10-5(モルZr)が反応に添加された。
・(0.0356モルの-CH2-単位)/(1.535・10-5モルのZr)・(0.75h)=3097(モル-CH2-単位)・(モルZr)-1・h-1。
【0141】
表16に、上記のようにガラス反応器中で行われた、ダウ(登録商標)社製ポリエチレン樹脂の水素化分解活性データを提示する。反応の条件は、200℃、0.3gのSOC、1.0gのポリエチレン、2気圧のH2であった。反応は、目視で確認して、かなりの量の出発ポリマーが消費されるまで行った。
【0142】
【0143】
表17に、上記のようにParr社製反応器(25mL)で行った、ダウ(登録商標)社製ポリエチレン樹脂の水素化分解活性データを提示する。反応の条件は、200℃、0.03gの触媒、1.0gのポリエチレン、18気圧のH2(反応器に30℃で充填)であった。反応は、目視で確認して、かなりの量の出発ポリマーが消費されるまで行った。
【0144】
【0145】
表17のポリマー生成物(揮発性物質、DCM抽出物及び固形生成物)の水素化分解の生成物分布を撹拌速度に対して
図7に示す。表17に提示した反応条件に関しては、Engage(商標)8402、Engage(商標)8450及びAffinity(商標)1850-Gの水素化分解の生成物(揮発性物質、DCM抽出物及び固形生成物)の分布を反応時間に対して
図8に示す。
【0146】
表18に、上記のように磁気撹拌子を備えた350mLガラス反応器内で行われた、トルエン膨潤を伴う市販のポリエチレン樹脂の水素化分解活性データを提示する。反応の条件は、200℃、反応1回あたりの触媒が0.1g(Zrは0.0014g)、市販のポリエチレン樹脂が1.0g、H2が2気圧であった。反応は、目視で確認して、かなりの量の出発ポリマーが消費されるまで行った。
【0147】
【0148】
表18に提示した反応条件に関しては、Engage(商標)8402、ミルクジャグ及びHDPEフルーツポーチキャップの水素化分解生成物(揮発性物質、DCM抽出物及び固形生成物)の分布を
図9に示す。
【0149】
「例示的な」という用語は、本明細書では、例、事例、又は例示としての役目を演じることを意味するために使用される。本明細書で「例示的な」として説明される態様又は設計は、必ずしも他の態様又は設計よりも好ましい又は有利であると解釈すべきではない。さらに、本開示の目的のために、特に明記しない限り、「1つの(a)」又は「1つの(an)」は「1つ又はそれ以上の(one or more)」を意味する。
【0150】
すでに付記していなくとも、本開示におけるパラメータのすべての数値は、およそを意味する「約」という用語で始まる。これは、当業者によって理解されるように、関連パラメータの測定につきものの変動を包含する。これはまた、開示された数値の正確な値及び開示された数値に近い値を包含する。
【0151】
本開示の例示的な実施形態の前述の説明は、例示及び説明の目的で提示されている。それは網羅的であること、又は本開示を開示されたまさにその通りの形態に限定することを意図するものではなく、修正及び変形が上記の教示に照らして可能であり、あるいは修正及び変形は本開示の実施から得ることができる。実施形態は、本開示の原理を説明する目的で、そして当業者が本発明を様々な実施形態で、また企図される特定の用途に適した様々な修正を加えて利用することを可能にするための本開示の実際の用途として選択及び説明された。本開示の範囲は、以下の特許請求の範囲によって定められることが意図されている。
【手続補正書】
【提出日】2024-03-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーの水素化分解のための方法であって、
反応器内に、前記ポリマー、水素ガス及び担持有機金属触媒を供給する工程であり、前記担持有機金属触媒が式Iの有機金属錯体プレ触媒と、
MR
mL
x 式I
(式中、mは0以上6以下であり、xは0以上6以下であり、Mは、第3族~第8族遷移金属からなる群から選択される遷移金属であり、Rは、H、C1~C8ヒドロカルビル又はハロゲンからなる群から独立して選択され、各Lは、C1~C12の置換又は非置換ヒドロカルビルからなる群から独立して選択され、ここで、m及びxの値はMの酸化状態に依存する。)
酸性金属酸化物担体と、
から形成されている、工程、並びに
前記反応器において、前記水素ガスの存在下、所定の温度で、前記ポリマーを前記担持有機金属触媒と反応させて、前記ポリマーよりも小さい重量平均分子量を有する還元ポリマー生成物を生成する工程
を含む、方法。
【請求項2】
Mが、第4族、第5族、第6族又は第8族遷移金属からなる群から選択される
か、または、
Mが、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Fe、Ru、Co又はNiからなる群から選択される、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
Lの前記ヒドロカルビルが、C1~C10アルキル、C2~C10アルケニル又はC5~C10アリールからなる群から独立して選択される
か、または、
前記所定の温度が、60℃以上300℃以下である
か、または、
前記還元されたポリマー生成物が、揮発性生成物、油状生成物又はワックス状生成物のうちの少なくとも1つである
か、または、
前記還元されたポリマー生成物が、前記還元されたポリマー生成物の総重量に基づいて5重量パーセント未満の前記ワックス状生成物を含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ポリマーが、ポリオレフィン、芳香族アルケンの重合によって形成されたポリマー、又は共役ジエンの重合によって形成されたポリマーからなる群から選択される、
および/または、前記ポリオレフィンが、ポリエチレン、ポリプロピレン、直鎖若しくは分岐鎖のC4~C12モノオレフィン、それらのコポリマー、又はそれらの組合せからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
MがZr又はHfからなる群から選択され、mは0であり、各Lは独立してC1~C12アルキルから選択される
か、または、
Lがネオペンチルである、
請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記酸性金属酸化物担体が硫酸化金属酸化物である、
および/または、
前記硫酸化金属酸化物が、硫酸化された酸化アルミニウム、硫酸化された酸化ジルコニウム(IV)、硫酸化された酸化スズ(IV)、硫酸化された酸化ハフニウム(IV)、硫酸化された酸化チタン(IV)、硫酸化された酸化鉄(III)、硫酸化された酸化亜鉛(II)、硫酸化された酸化シリカ、又はそれらの組合せからなる群から選択される、
請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記担持有機金属触媒が式IIで表される、請求項1に記載の方法。
L
y-xR
x-zM
n+
・・・O
-(酸性金属酸化物担体) 式II
式中、
MはZr、Hf、Ti、Nb、V、Cr、Mo、W、Ta、Co又はNiからなる群から選択され、Rは、水素、ハロゲン又はLから独立して選択され、各Lは、C1~C12の飽和若しくは不飽和ヒドロカルビル、又はC1~C12シリルヒドロカルビルから独立して選択され、nは1であり、yは3であり、xは2又は1であり、zは1又は0である
か、または、
Mが、Ti、Zr又はHfからなる群から選択され、各LはC3~C8の飽和又は不飽和ヒドロカルビルであり、xは1であり、zは1である。
【請求項8】
前記反応器に水素ガスを供給する工程が、前記反応器に0.1気圧以上100気圧以下の圧力の前記水素ガスを供給する工程を含む
か、または、
前記ポリマーを反応させる工程が、前記ポリマーを前記担持有機金属触媒と、前記水素ガスの存在下で500rpm以上3000rpm以下の速度で撹拌する工程を含む
か、または、
前記ポリマーを前記担持有機金属触媒と前記水素ガスの存在下で前記所定の温度で反応させる工程が、0.25時間以上24時間以下の期間にわたる
か、または、
前記反応器内に前記担持有機金属触媒を供給する工程が、前記ポリマーのモノマー単位に基づいて0.01モルパーセント(モル%)以上0.9モル%以下のMを供給する工程を含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項9】
式IIの担持有機金属触媒。
L
y-xR
x-zM
n+
・・・O
-(酸性金属酸化物担体) 式II
(式中、Mは、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Fe、Ru、Co又はNiからなる群から選択され、Rは、水素、ハロゲン又はLから独立して選択され、各Lは、C1~C12の飽和若しくは不飽和ヒドロカルビル、又はC1~C12シリルヒドロカルビルから独立して選択され、nは1であり、yは3であり、xは2又は1であり、zは1又は0である。)
【請求項10】
Mが、Ti、Zr又はHfからなる群から選択され、各LはC3~C8の飽和又は不飽和ヒドロカルビルであり、xは1であり、zは1である、
請求項9に記載の担持有機金属触媒。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0151
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0151】
本開示の例示的な実施形態の前述の説明は、例示及び説明の目的で提示されている。それは網羅的であること、又は本開示を開示されたまさにその通りの形態に限定することを意図するものではなく、修正及び変形が上記の教示に照らして可能であり、あるいは修正及び変形は本開示の実施から得ることができる。実施形態は、本開示の原理を説明する目的で、そして当業者が本発明を様々な実施形態で、また企図される特定の用途に適した様々な修正を加えて利用することを可能にするための本開示の実際の用途として選択及び説明された。本開示の範囲は、以下の特許請求の範囲によって定められることが意図されている。
本願発明には以下の態様が含まれる。
項1.
ポリマーの水素化分解のための方法であって、
反応器内に、前記ポリマー、水素ガス及び担持有機金属触媒を供給する工程であり、前記担持有機金属触媒が式Iの有機金属錯体プレ触媒と、
MRmLx 式I
(式中、mは0以上6以下であり、xは0以上6以下であり、Mは、第3族~第8族遷移金属からなる群から選択される遷移金属であり、Rは、H、C1~C8ヒドロカルビル又はハロゲンからなる群から独立して選択され、各Lは、C1~C12の置換又は非置換ヒドロカルビルからなる群から独立して選択され、ここで、m及びxの値はMの酸化状態に依存する。)
酸性金属酸化物担体と、
から形成されている、工程、並びに
前記反応器において、前記水素ガスの存在下、所定の温度で、前記ポリマーを前記担持有機金属触媒と反応させて、前記ポリマーよりも小さい重量平均分子量を有する還元ポリマー生成物を生成する工程
を含む、方法。
項2.
Mが、第4族、第5族、第6族又は第8族遷移金属からなる群から選択される、項1に記載の方法。
項3.
Mが、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Fe、Ru、Co又はNiからなる群から選択される、項2に記載の方法。
項4.
Lの前記ヒドロカルビルが、C1~C10アルキル、C2~C10アルケニル又はC5~C10アリールからなる群から独立して選択される、項1に記載の方法。
項5.
前記所定の温度が、60℃以上300℃以下である、項1に記載の方法。
項6.
前記還元されたポリマー生成物が、揮発性生成物、油状生成物又はワックス状生成物のうちの少なくとも1つである、項1に記載の方法。
項7.
前記還元されたポリマー生成物が、前記還元されたポリマー生成物の総重量に基づいて5重量パーセント未満の前記ワックス状生成物を含む、項6に記載の方法。
項8.
前記ポリマーが、ポリオレフィン、芳香族アルケンの重合によって形成されたポリマー、又は共役ジエンの重合によって形成されたポリマーからなる群から選択される、項1に記載の方法。
項9.
前記ポリオレフィンが、ポリエチレン、ポリプロピレン、直鎖若しくは分岐鎖のC4~C12モノオレフィン、それらのコポリマー、又はそれらの組合せからなる群から選択される、項8に記載の方法。
項10.
MがZr又はHfからなる群から選択され、mは0であり、各Lは独立してC1~C12アルキルから選択される、項1に記載の方法。
項11.
Lがネオペンチルである、項10に記載の方法。
項12.
前記酸性金属酸化物担体が硫酸化金属酸化物である、項1から11のいずれか一項に記載の方法。
項13.
前記硫酸化金属酸化物が、硫酸化された酸化アルミニウム、硫酸化された酸化ジルコニウム(IV)、硫酸化された酸化スズ(IV)、硫酸化された酸化ハフニウム(IV)、硫酸化された酸化チタン(IV)、硫酸化された酸化鉄(III)、硫酸化された酸化亜鉛(II)、硫酸化された酸化シリカ、又はそれらの組合せからなる群から選択される、項12に記載の方法。
項14.
前記担持有機金属触媒が式IIで表される、項1に記載の方法。
Ly-xRx-zMn+
・・・O-(酸性金属酸化物担体) 式II
(式中、MはZr、Hf、Ti、Nb、V、Cr、Mo、W、Ta、Co又はNiからなる群から選択され、Rは、水素、ハロゲン又はLから独立して選択され、各Lは、C1~C12の飽和若しくは不飽和ヒドロカルビル、又はC1~C12シリルヒドロカルビルから独立して選択され、nは1であり、yは3であり、xは2又は1であり、zは1又は0である。)
項17.
Mが、Ti、Zr又はHfからなる群から選択され、各LはC3~C8の飽和又は不飽和ヒドロカルビルであり、xは1であり、zは1である、項16に記載の方法。
項17.
前記反応器に水素ガスを供給する工程が、前記反応器に0.1気圧以上100気圧以下の圧力の前記水素ガスを供給する工程を含む、項1に記載の方法。
項18.
前記ポリマーを反応させる工程が、前記ポリマーを前記担持有機金属触媒と、前記水素ガスの存在下で500rpm以上3000rpm以下の速度で撹拌する工程を含む、項1に記載の方法。
項19.
前記ポリマーを前記担持有機金属触媒と前記水素ガスの存在下で前記所定の温度で反応させる工程が、0.25時間以上24時間以下の期間にわたる、項1に記載の方法。
項20.
前記反応器内に前記担持有機金属触媒を供給する工程が、前記ポリマーのモノマー単位に基づいて0.01モルパーセント(モル%)以上0.9モル%以下のMを供給する工程を含む、項1に記載の方法。
項21.
式IIの担持有機金属触媒。
Ly-xRx-zMn+
・・・O-(酸性金属酸化物担体) 式II
(式中、Mは、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Fe、Ru、Co又はNiからなる群から選択され、Rは、水素、ハロゲン又はLから独立して選択され、各Lは、C1~C12の飽和若しくは不飽和ヒドロカルビル、又はC1~C12シリルヒドロカルビルから独立して選択され、nは1であり、yは3であり、xは2又は1であり、zは1又は0である。)
項22.
Mが、Ti、Zr又はHfからなる群から選択され、各LはC3~C8の飽和又は不飽和ヒドロカルビルであり、xは1であり、zは1である、項21に記載の担持有機金属触媒。
【国際調査報告】