(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-03
(54)【発明の名称】コロナウイルスに対する阻害剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/519 20060101AFI20240827BHJP
A61K 31/427 20060101ALI20240827BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
A61K31/519
A61K31/427
A61P31/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024505323
(86)(22)【出願日】2022-08-12
(85)【翻訳文提出日】2024-03-22
(86)【国際出願番号】 US2022074929
(87)【国際公開番号】W WO2023023469
(87)【国際公開日】2023-02-23
(32)【優先日】2021-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】500553730
【氏名又は名称】サウスウエスト リサーチ インスティテュート
【住所又は居所原語表記】6220 CULEBRA ROAD SAN ANT ONIO,TEXAS 78238 USA
(71)【出願人】
【識別番号】524037052
【氏名又は名称】ザ ガバメント オブ ザ ユナイテッド ステイツ,アズ リプレゼンティッド バイ ザ セクレタリー オブ ジ アーミー
(71)【出願人】
【識別番号】510244570
【氏名又は名称】ザ ヘンリー エム.ジャクソン ファンデーション フォー ザ アドバンスメント オブ ミリタリー メディシン,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ボフマン,ジョナサン エー.
(72)【発明者】
【氏名】グティエレス,ナディーン エム.
(72)【発明者】
【氏名】マクドナー,ジョセフ エー.
(72)【発明者】
【氏名】キャンベル,ロバート フランシス
(72)【発明者】
【氏名】ジョイス,マイケル ゴードン
(72)【発明者】
【氏名】パンチャル,レカー
(72)【発明者】
【氏名】サンカラ,ラジェシュワー
(72)【発明者】
【氏名】デュプランティエ,アレン
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB03
4C086CB05
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA52
4C086NA14
4C086ZB33
(57)【要約】
【課題】COVID-19で苦しむ対象を治療するための新しい医薬組成物及び方法の提示。
【解決手段】SARS-COV-1、SARS-CoV-2(Covid-19)及びMERS-CoV並びにそれぞれの変異体によって引き起こされるCOVID-19の治療を、それを必要とする哺乳動物対象において行うための方法であって、以下の式の有効量の特定のピロロキナゾリン(化1)又はその薬学的に許容される塩を、任意選択で薬学的に許容されるキャリアにおいて、前記対象に投与することを含む方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
SARS-COV-1、SARS-CoV-2(Covid-19)及びMERS-CoV並びにそれぞれの変異体によって引き起こされるCOVID-19の治療を、それを必要とする哺乳動物対象において行うための方法であって、以下の式の有効量のピロロキナゾリン:
【化1】
式中、X
1及びX
2は、Hである又はX
1及びX
2が単結合によって互いに結合される場合、X
1及びX
2は、CH
2である又はX
1及びX
2が二重結合によって互いに結合される場合、X
1及びX
2は、独立してCH若しくはNである;
それぞれのYは、独立してC又はNである;
Zは、C=O、SO
2、CH
2、CH
2CH
2又は結合である;
R
1は、C
1~C
10アルキル、C
1~C
10アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリルである、式中、それぞれのR
1は、1~3つのCl、Br、F、ヒドロキシ、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、シアノ、エチニル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アシルアミノ、アシル、ニトロ又はトリフルオロメチルと任意選択で独立して置換される;
R
2及びR
3がつながれるYがNである場合、R
2及びR
3は、独立して一対の電子であり、R
2及びR
3がつながれるYがCである場合、独立してH、アルキル、アルケニル又はトリフルオロアルキルである;並びにR
2及びR
3は、一緒に6員環を形成してもよい;
R
4及びR
5は、独立してアミノ基である;
又はその薬学的に許容される塩を、任意選択で薬学的に許容されるキャリアにおいて、前記対象に投与することを含む方法。
【請求項2】
前記ピロロキナゾリンは、7-(2-(トリフルオロメチル)ベンジル)-7H-ピロロ[3,2-f]キナゾリン-1,3-ジアミンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ピロロキナゾリンは、7-(2-メチルベンジル)-7H-ピロロ[3,2-f]キナゾリン-1,3-ジアミンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ピロロキナゾリンは、4-((1,3-ジアミノ-8-メチル-7H-ピロロ[3,2-f]キナゾリン-7-イル)メチル)ベンゾニトリルを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ピロロキナゾリンは、7-アリル-7H-ピロロ[3,2-f]キナゾリン-1,3-ジアミンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ピロロキナゾリンは、7-(2-(フルオロベンジル)-7H-ピロロ[3,2-f]キナゾリン-1,3-ジアミンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ピロロキナゾリンは、7-(ピリジン-3-イルメチル)-7H-ピロロ[3,2-f]キナゾリン-1,3-ジアミンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ピロロキナゾリンは、7-(ピリジン-4-イルメチル)-7H-ピロロ[3,2-f]キナゾリン-1,3-ジアミンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記ピロロキナゾリンは、7-(ピリジン-2-イルメチル)-7H-ピロロ[3,2-f]キナゾリン-1,3-ジアミンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記ピロロキナゾリンは、7-(シクロヘキシルメチル)-7H-ピロロ[3,2-f]キナゾリン-1,3-ジアミンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
7-アリル-7H-ピロロ[3,2-f]キナゾリン-1,3-ジアミンを含む、SARS-COV-1、SARS-CoV-2(Covid-19)及びMERS-CoV並びにそれぞれの変異体に対する抗ウイルス薬。
【請求項12】
SARS-COV-1、SARS-CoV-2(Covid-19)及びMERS-CoV並びにそれぞれの変異体によって引き起こされるCOVID-19の治療を、それを必要とする哺乳動物対象において行うための方法であって、以下の式の有効量のチアゾール:
【化2】
式中、R
1及びR
2は、独立してH又はClである;
又はその薬学的に許容される塩を、任意選択で薬学的に許容されるキャリアにおいて、前記対象に投与することを含む方法。
【請求項13】
前記チアゾールは、(2,4-ジフェニルチアゾール-5-イル)((3aR,6aS)-ヘキサヒドロピロロ[3,4-c]ピロール-2(1H)-イル)メタノンを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記チアゾールは、(4-(4-クロロフェニル)-2-フェニルチアゾール-5-イル)((3aR,6aS)-ヘキサヒドロピロロ[3,4-c]ピロール-2(1H)-イル)メタノンを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記チアゾールは、(2-(4-クロロフェニル)-4-フェニルチアゾール-5-イル)((3aR,6aS)-ヘキサヒドロピロロ[3,4-c]ピロール-2(1H)-イル)メタノンを含む、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
連邦政府による資金提供を受けた研究又は開発に関する陳述
本発明は、米国陸軍医療研究開発指揮部(United States Army Medical Research and Development Command)によって認められたW81XWH-18-2-0040の下で政府の支援によりなされたものである。政府は、本発明においてある一定の権利を有する。
【0002】
分野
本発明は、SARS-COV-1、SARS-CoV-2(Covid-19)、MERS-CoV及びそれぞれの変異体に対する阻害剤に関し、このような呼吸器疾患で苦しむ対象を治療するための方法を含む。
【背景技術】
【0003】
背景
コロナウイルス病-19(COVID-19)は、世界的な大流行を招いた。COVID-19は、報告によれば、2019年末以降にWuhan(Hubei Province、China)において最初に確認され、国際ウイルス分類委員会(International Committee on Taxonomy of Viruses)(ITVC)は、SARS-CoVに対する類似性により、コロナウイルス病-19をSARS-CoV-2と名づけた。
【0004】
SARS-CoV-2は、さまざまな構造タンパク質及び非構造タンパク質をコードすることが知られている。タンパク質は、その上、ウイルスが宿主内部に侵入し、複製する能力を助ける。非構造タンパク質は、メインプロテアーゼMproとしても知られている3-キモトリプシン様プロテアーゼ(3CLpro)を含み、それゆえ、医薬の開発に有望な標的として特定された。Mproの阻害は、ウイルスが複製するのを妨害し、ゆえに、有望な抗コロナウイルス戦略に匹敵するであろう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
したがって、本発明は、COVID-19で苦しむ対象を治療するための新しい医薬組成物及び方法を提示する。医薬組成物は、好ましくは、COVID-19ウイルスメインプロテアーゼMproを標的にし、SARS-COV-1及びMERS-CoV並びにそれぞれの変異体などの多様なCOV種に対して効果的である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図面の簡単な説明
【
図1】
図1は、化合物1:7-(2-(トリフルオロメチル)ベンジル)-7H-ピロロ[3,2-f]キナゾリン-1,3-ジアミンについての用量反応曲線を示す図である。
【
図2】
図2は、化合物2:7-(2-メチルベンジル)-7H-ピロロ[3,2-f]キナゾリン-1,3-ジアミンについての用量反応曲線を示す図である。
【
図3】
図3は、化合物3:4-((1,3-ジアミノ-8-メチル-7H-ピロロ[3,2-f]キナゾリン-7-イル)メチル)ベンゾニトリルについての用量反応曲線を示す図である。
【
図4】
図4は、化合物4:7-アリル-7H-ピロロ[3,2-f]キナゾリン-1,3-ジアミンについての用量反応曲線を示す図である。
【
図5】
図5は、化合物5:(2,4-ジフェニルチアゾール-5-イル)((3aR,6aS)-ヘキサヒドロピロロ[3,4-c]ピロール-2(1H)-イル)メタノンについての用量反応曲線を示す図である。
【
図6】
図6は、化合物6:(4-(4-クロロフェニル)-2-フェニルチアゾール-5-イル)((3aR,6aS)-ヘキサヒドロピロロ[3,4-c]ピロール-2(1H)-イル)メタノンについての用量反応曲線を示す図である。
【
図7】
図7は、化合物7:(2-(4-クロロフェニル)-4-フェニルチアゾール-5-イル)((3aR,6aS)-ヘキサヒドロピロロ[3,4-c]ピロール-2(1H)-イル)メタノンについての用量反応曲線を示す図である。
【
図8】
図8は、投薬後0、0.5、1、2、4、8、12時間から36時間までの時点の10mg/kg、皮下、1日2回の化合物8の投薬についての血漿における動物(マウス)化合物濃度対時間の図を提供する。
【
図9】
図9は、投薬後0、0.5、1、2、4、8、12から36時間までの時点の10mg/kg、皮下、1日2回の肺における同じく化合物8についての動物(マウス)化合物濃度対時間の図を提供する。
【
図10】
図10は、投薬後0、0.5、1、2、4、8、12時間から36時間までの時点の25mg/kg、皮下、1日2回の化合物9の投薬についての血漿における動物(マウス)化合物濃度対時間の図を提供する。
【
図11】
図11は、投薬後0、0.5、1、2、4、8、12から36時間までの時点の25mg/kg、皮下、1日2回の肺における同じく化合物9についての動物(マウス)化合物濃度対時間の図を提供する。
【
図12】
図12は、投薬後0、0.5、1、2、4、8、12時間から36時間までの時点の25mg/kg、皮下、1日2回の化合物10の投薬についての血漿における動物(マウス)化合物濃度対時間の図を提供する。
【
図13】
図13は、投薬後0、0.5、1、2、4、8、12時間から36時間までの時点の25mg/kg、皮下、1日2回の肺における同じく化合物10についての動物(マウス)化合物濃度対時間の図を提供する。
【
図14】
図14は、投薬後0、0.5、1、2、4、8、12時間から36時間までの時点の25mg/kg、皮下、1日2回の化合物11の投薬についての血漿における動物(マウス)化合物濃度対時間の図を提供する。
【
図15】
図15は、投薬後0、0.5、1、2、4、8、12時間から36時間までの時点の25mg/kg、皮下、1日2回の肺における同じく化合物11についての動物(マウス)化合物濃度対時間の図を提供する。
【
図16】
図16は、投薬後0、0.5、1、2、4、8、12時間から36時間までの時点の10mg/kg、皮下、1日2回の化合物12の投薬についての血漿における動物(マウス)化合物濃度対時間の図を提供する。
【
図17】
図17は、投薬後0、0.5、1、2、4、8、12時間から36時間までの時点の10mg/kg、皮下、1日2回の肺における同じく化合物12についての動物(マウス)化合物濃度対時間の図を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
詳細な説明
SARS-COV-1、SARS-CoV-2(Covid-19)及びMERS-CoV並びにそれぞれの変異体で苦しむ対象を治療するための組成物及び方法が、提供される。本明細書における医薬組成物は、好ましくは、保存された結合部位を標的にしてもよい。本明細書において対象、個人、宿主又は患者を指す時は、同じ意味で用いられ、診断、治療、又は療法が所望される任意の哺乳動物対象、特にヒトを指す。治療は、哺乳動物における疾患の任意の治療であってもよく、関連する呼吸器疾患が生じるのを予防すること、疾患を阻害すること、その発症を抑えること又は疾患を軽減すること若しくは疾患の後退を引き起こすことを含む。
【0008】
Mproインビトロスクリーニングプロトコール
最初に、SARS-Cov-2のメインプロテアーゼに対する新しい有望な阻害剤を特定するために、抗ウイルス活性について本明細書において特定された医薬のスクリーニングを行った。詳細には、小分子の一次スクリーニングを、2つ独立した反復試験のプレートにおいて10μMの単一の最終濃度で化合物をテストすることによって実行した。両方の反復実験プレートにおいて>50%の感染阻害及び細胞数における<20%の減少を示した化合物は、ヒットとみなされた。特定したヒットの効力及び選択指数を決定するために、化合物を、30~0.01μMの範囲の濃度の3倍段階希釈による8点用量反応及び4回の反復試験においてテストした。N-ヒドロキシシチジン(NHC)、既知の抗SARS-CoV-2活性を有する抗ウイルス剤を、基準阻害剤として使用した。
【0009】
毒性株によるすべての感染は、CDC及び米国陸軍安全規程(US Army safety regulations)に従ってBSL-3実験室において実行した。SARS-CoV-2の小分子阻害剤を特定するために、VeroE6細胞(ATCC CRL-1586)を、384ウェルイメージングプレート(Aurora Microplates、ABE2-31101A)中に4000細胞/ウェルの密度で播種した。翌日、細胞を、2時間化合物により前処理し、次いで、0.01の感染多重度(MOI)でSARS-CoV-2(USA-WA1/2020)に感染させた。感染の32時間後に、細胞を、10%ホルマリン中で固定した。ウイルス抗原を検出するために、蛍光免疫染色を実行し、ホルマリン固定細胞を、リン酸緩衝食塩水(PBS)により3回洗浄し、次いで、50μlの組み合わせた細胞透過処理及び遮断バッファー(PBS中3%BSA、0.1%Triton X-100)と共に室温(RT)でインキューベートした。1時間後、遮断バッファーを、PBS中で1:1000に希釈した50μl一次抗体溶液(SARS-CoV/SARS-CoV-2 Nucleocapsid Rabbit Mab、Sino Biological、Cat 40143-R001)と交換し、RTで1時間結合させた。50μl PBSによる2回の洗浄後、細胞を、Alexa 488抗ウサギIgG(Invitrogen A11031)の1:500希釈液により30分間染色した。30分後、細胞を、PBSにより3回洗浄した。最終ステップにおいて、PBSを、ウェル当たり50μlの1:10000 Hoechst核染料(Invitrogen H3570)及び細胞質染色剤である5mg/ml HCS Cellmask Deep Red(Invitrogen H32721)、すべてPBSにより希釈、と交換した。
【0010】
ウイルス感染を定量化するために、イメージを、10×空気対物レンズ(air objective)を使用してPerkin Elmer Operaクアッド励起共焦点顕微鏡(quad-excitation confocal microscope)(モデル5025)を使用し、取得した。核、ウイルス核タンパク質及び細胞質は、それぞれ405、488及び640nmチャネルを使用して検出した。ウイルス陽性細胞は、細胞質マスク(cytoplasmic mask)によって示される境界内の488励起シグナルの存在によって特定した。強度カットオフは、非感染対照ウェルにおけるバックグラウンド蛍光の強度によって決定し、個別の実験ごとに補正した。アッセイの頑健性は、プレートごとのZ’値を(Ji-Hu Zhang J,Thomas D.Y.Chung and Kevin R.Oldenburg,A Simple Statistical Parameter for Use in Evaluation and Validation of High Throughput Screening Assays,J.of Biomolecular Screening,4:67,1999)以下の式を使用して計算することによって決定した:
(Z’=(1-(3×シグナルmax(中立(neutral)/感染のみの対照)のSTDEV+3×STDEVシグナルmin(阻害剤/感染なしの対照))/ABS(平均シグナルmax-シグナルminの平均))。
【0011】
Z’>0.5を有するプレートは、データ解析を検討した。化合物の存在下におけるウイルス感染阻害及び細胞毒性のパーセントを決定するために、Acapellaにより生成した細胞データを、Spotfireにインポートする(視覚的解析統計ソフトウェア、Perkin Elmer Inc.、MA)。感染対照(感染及びDMSO処理)ウェルと比べてSARS-CoV-2感染の50%を超える阻害を見せた化合物及び感染対照と比べて細胞数を20%超低下させなかった化合物は、「ヒット」とみなした。ヒット化合物は、次いで、用量反応アッセイのために選択した。
【0012】
化合物の効力(EC50、EC90)、細胞毒性(CC50)及び選択指数(SI)を決定するために、用量反応曲線解析は、GeneDataソフトウェアを使用し、曲線あてはめ手法にLevenberg-Marquardtアルゴリズム(LMA)を適用して実行した。あてはめ手法は、R2>0.8である場合に許容されるとみなされる。
【0013】
上記から、ピロロキナゾリン(pyrroloquinazoline)のファミリーに属している上位の候補を、SARS-COV-1、SARS-CoV-2(Covid-19)及びMERS-CoV並びにそれぞれの変異体の阻害剤として特定した。これらのピロロキナゾリン又はその薬学的に許容される塩は、下記の式Iにおいて特定される:
【化1】
式中、
X
1及びX
2は、Hである又はX
1及びX
2が単結合によって互いに結合される場合、X
1及びX
2は、CH
2である又はX
1及びX
2が二重結合によって互いに結合される場合、X
1及びX
2は、独立してCH若しくはNである;
それぞれのYは、独立してC又はNである;
Zは、C=O、SO
2、CH
2、CH
2CH
2又は結合である;
R
1は、C
1~C
10アルキル、C
1~C
10アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリルである、
式中、それぞれのR
1は、1~3つのCl、Br、F、ヒドロキシ、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、シアノ、エチニル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アシルアミノ、アシル、ニトロ又はトリフルオロメチルと任意選択で独立して置換される;
R
2及びR
3がつながれるYがNである場合、R
2及びR
3は、独立して一対の電子であり、R
2及びR
3がつながれるYがCである場合、独立してH、アルキル、アルケニル又はトリフルオロアルキルである;並びにR
2及びR
3は、一緒に6員環を形成してもよい;並びに
R
4及びR
5は、独立してアミノ基である。
【0014】
本発明は、それゆえ、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-COV-1、SARS-CoV-2(Covid-19)及び中東呼吸症候群コロナウイルス(MERS-CoV)並びにそれぞれの変異体の治療を、それを必要とする哺乳動物対象において行うための方法であって、ウイルスメインプロテアーゼMproを標的にする(と相互作用する)方法に関する。方法は、式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩を、任意選択で薬学的に許容されるキャリアにおいて、対象に投与することを含む。薬学的に許容されるキャリアは、溶液又は懸濁液などの、経口投与に適した剤形を含んでいてもよい。剤形は、錠剤、カプセル又はゲルキャップ(gel cap)などの固形剤であってもよい。薬学的に許容されるキャリアは、静脈内送達に適した製剤を含んでいてもよい。
【0015】
投与は、対象のウイルス量(PCRを介して評価することができる)における低下、対象のウイルス感染症状(例えば熱、酸素飽和度の減少、息切れ、呼吸困難、疲労、筋肉痛、体の痛み、胸痛若しくは胸部圧迫感、頭痛、味覚消失、嗅覚消失、咽頭痛、うっ血、吐き気、嘔吐、下痢、混乱、咳又は発疹)の一つ以上及び/又は臨床状態における改善を提供すると考えられる。臨床状態は、WHO Ordinal Scale for Clinical Improvementを利用して評価されてもよい。
【0016】
好ましくは、本明細書における式Iにおける抗ウイルス薬は、以下を含む。
1.化合物1:以下の一般的な構造を有する7-(2-(トリフルオロメチル)ベンジル)-7H-ピロロ[3,2-f]キナゾリン-1,3-ジアミン:
【化2】
2.化合物2:以下の一般的な構造を有する7-(2-メチルベンジル)-7H-ピロロ[3,2-f]キナゾリン-1,3-ジアミン:
【化3】
3.化合物3:以下の一般的な構造を有する4-((1,3-ジアミノ-8-メチル-7H-ピロロ[3,2-f]キナゾリン-7-イル)メチル)ベンゾニトリル:
【化4】
4.化合物4:以下の一般的な構造を有する7-アリル-7H-ピロロ[3,2-f]キナゾリン-1,3-ジアミン:
【化5】
【0017】
下記の表1は、SARS-CoV-2株に対する上述の化合物についての効力(EC
50、EC
90)、細胞毒性(CC
50)及びSI(選択指数=CC
50/EC
50)に関するデータを提供する。EC
50は、最大の反応の半分を提供する用量を指す。EC
90は、最大の反応の90%を提供する用量を指す。CC
50は、50%の細胞生存率の低下に必要とされる濃度である。化合物1~4についての用量反応曲線を、それぞれ
図1~4に提供する。
【0018】
【0019】
加えて、上記のスクリーニングプロトコールから、チアゾールのファミリーに属している上位の候補を、SARS-COV-1、SARS-CoV-2(Covid-19)及びMERS-CoV並びにそれぞれの変異体のメインプロテアーゼ(M
pro)に対する阻害剤として特定した。これらを、下記の式IIにおいて特定する:
【化6】
【0020】
上記の式において、R1及びR2は、独立してH又はClである。加えて、上記のチアゾールは、その薬学的に許容される塩を含み、任意選択で薬学的に許容されるキャリア中のものであってもよいと考えられる。
【0021】
好ましくは、本明細書における式IIにおける抗ウイルス薬は、以下を含む。
5.化合物5:以下の一般的な構造を有する(2,4-ジフェニルチアゾール-5-イル)((3aR,6aS)-ヘキサヒドロピロロ[3,4-c]ピロール-2(1H)-イル)メタノン:
【化7】
6.化合物6:以下の一般的な構造を有する(4-(4-クロロフェニル)-2-フェニルチアゾール-5-イル)((3aR,6aS)-ヘキサヒドロピロロ[3,4-c]ピロール-2(1H)-イル)メタノン:
【化8】
7.化合物7:以下の一般的な構造を有する(2-(4-クロロフェニル)-4-フェニルチアゾール-5-イル)((3aR,6aS)-ヘキサヒドロピロロ[3,4-c]ピロール-2(1H)-イル)メタノン:
【化9】
【0022】
下記の表2は、SARS-CoV-2株に対する上述の化合物についての効力(EC
50、EC
90)、細胞毒性(CC
50)及びSI(選択指数=CC
50/EC
50)に関するデータを提供する。化合物5~7についての用量反応曲線を、それぞれ
図5~7に提供する。
【0023】
【0024】
上記に加えて、薬物動態学的(PK)試験を、本明細書において言及されるピロロキナゾリンの追加の代表的な化合物に対して終えた。より詳細には、薬物動態学的試験を、以下の構造を有する化合物8、7-(2-(フルオロベンジル)-7H-ピロロ[3,2-f]キナゾリン-1,3-ジアミンについて行った。
【化10】
【0025】
それゆえ、投薬後0、0.5、1、2、4、8、12時間から36時間までの時点の10mg/kg、皮下、1日2回の化合物8の投薬についての血漿における動物(マウス)化合物濃度対時間の図を提供する
図8を参照されたい。
図9は、投薬後0、0.5、1、2、4、8、12から36時間までの時点の10mg/kg、皮下、1日2回の肺における同じく化合物8についての動物(マウス)化合物濃度対時間の図を提供する。下記の表3は、このデータの概要を提供する。
【0026】
【0027】
それゆえ、上記からわかるように、化合物8は、比較的忍容性が良好であり、血漿及び肺の両方において、有意な割合の時間、EC90を上回る濃度レベルを達成した。
【0028】
PK試験を、次に、以下の構造を有する化合物9、7-(ピリジン-3-イルメチル)-7H-ピロロ[3,2-f]キナゾリン-1,3-ジアミンについて行った。
【化11】
【0029】
それゆえ、投薬後0、0.5、1、2、4、8、12時間から36時間までの時点の25mg/kg、皮下、1日2回の化合物9の投薬についての血漿における動物(マウス)化合物濃度対時間の図を提供する
図10を参照されたい。
図11は、投薬後0、0.5、1、2、4、8、12から36時間までの時点の25mg/kg、皮下、1日2回の肺における同じく化合物9についての動物(マウス)化合物濃度対時間の図を提供する。下記の表4は、このデータの概要を提供する。
【0030】
【0031】
それゆえ、上記からわかるように、化合物9もまた、比較的忍容性が良好であり、血漿及び肺の両方において、有意な割合の時間、EC90を上回る濃度レベルを達成した。
【0032】
PK試験を、次に、以下の構造を有する化合物10、7-(ピリジン-4-イルメチル)-7H-ピロロ[3,2-f]キナゾリン-1,3-ジアミンについて行った。
【化12】
【0033】
投薬後0、0.5、1、2、4、8、12時間から36時間までの時点の25mg/kg、皮下、1日2回の化合物10の投薬についての血漿における動物(マウス)化合物濃度対時間の図を提供する
図12を参照されたい。
図13は、投薬後0、0.5、1、2、4、8、12時間から36時間までの時点の25mg/kg、皮下、1日2回の肺における同じく化合物10についての動物(マウス)化合物濃度対時間の図を提供する。下記の表5は、このデータの概要を提供する。
【0034】
【0035】
それゆえ、上記からわかるように、化合物10もまた、比較的忍容性が良好であり、血漿及び肺の両方において、有意な割合の時間、EC90を上回る濃度レベルを達成した。
【0036】
PK試験を、次に、以下の構造を有する化合物11、7-(ピリジン-2-イルメチル)-7H-ピロロ[3,2-f]キナゾリン-1,3-ジアミンについて行った。
【化13】
【0037】
投薬後0、0.5、1、2、4、8、12時間から36時間までの時点の25mg/kg、皮下、1日2回の化合物11の投薬についての血漿における動物(マウス)化合物濃度対時間の図を提供する
図14を参照されたい。
図15は、投薬後0、0.5、1、2、4、8、12時間から36時間までの時点の25mg/kg、皮下、1日2回の肺における同じく化合物11についての動物(マウス)化合物濃度対時間の図を提供する。下記の表6は、このデータの概要を提供する。
【0038】
【0039】
それゆえ、上記からわかるように、化合物11もまた、比較的忍容性が良好であり、血漿及び肺の両方において、有意な割合の時間、EC90を上回る濃度レベルを達成した。
【0040】
PK試験を、次に、以下の構造を有する化合物12、7-(シクロヘキシルメチル)-7H-ピロロ[3,2-f]キナゾリン-1,3-ジアミンについて行った。
【化14】
【0041】
投薬後0、0.5、1、2、4、8、12時間から36時間までの時点の10mg/kg、皮下、1日2回の化合物12の投薬についての血漿における動物(マウス)化合物濃度対時間の図を提供する
図16を参照されたい。
図17は、投薬後0、0.5、1、2、4、8、12時間から36時間までの時点の10mg/kg、皮下、1日2回の肺における同じく化合物12についての動物(マウス)化合物濃度対時間の図を提供する。下記の表7は、このデータの概要を提供する。
【0042】
【0043】
それゆえ、上記からわかるように、化合物12もまた、比較的忍容性が良好であり、血漿及び肺の両方において、有意な割合の時間、EC90を上回る濃度レベルを達成した。
【0044】
下記の表7は、SARS-CoV-2株に対する化合物8~12についての効力(EC50、EC90)、細胞毒性(CC50)及びSI(選択指数=CC50/EC50)に関するデータを提供する。
【0045】
【0046】
前述の本発明が、はっきりと理解されるために例示及び実施例によっていくらか詳細に記載されたが、本発明の教示を考慮すれば、添付の特許請求の範囲の趣旨又は範囲から逸脱することなく、いくらかの変更及び改変がなされてもよいことは、当業者に直ちに明らかになる。
【国際調査報告】