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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-03
(54)【発明の名称】新規の抗SIRPA抗体
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/28 20060101AFI20240827BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20240827BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20240827BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20240827BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240827BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20240827BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20240827BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240827BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240827BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20240827BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240827BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240827BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20240827BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240827BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20240827BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20240827BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240827BHJP
   A61P 7/00 20060101ALI20240827BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20240827BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20240827BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20240827BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20240827BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240827BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20240827BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240827BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240827BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20240827BHJP
   A61P 21/04 20060101ALI20240827BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20240827BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20240827BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20240827BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20240827BHJP
   G01N 33/577 20060101ALI20240827BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
C07K19/00
C12N15/13
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
A61K39/395 N
A61K39/395 T
A61K39/395 Y
A61P35/00
A61P31/00
A61P29/00
A61P37/06
A61P37/02
A61P25/00
A61P7/00
A61P9/10 101
A61P3/04
A61P3/10
A61P19/02
A61P17/00
A61P35/02
A61P43/00 121
A61K45/00
A61P11/00
A61P21/04
A61P1/00
A61P11/06
A61P29/00 101
A61P17/06
G01N33/53 D
G01N33/577 B
C07K16/46
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024505469
(86)(22)【出願日】2022-07-28
(85)【翻訳文提出日】2024-03-28
(86)【国際出願番号】 US2022074286
(87)【国際公開番号】W WO2023010100
(87)【国際公開日】2023-02-02
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2021/109041
(32)【優先日】2021-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2022/104562
(32)【優先日】2022-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】520502972
【氏名又は名称】エルピサイエンス(スーチョウ)・バイオファーマ,リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】520502983
【氏名又は名称】エルピサイエンス・バイオファーマ,リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100163784
【弁理士】
【氏名又は名称】武田 健志
(72)【発明者】
【氏名】ルー,ホンタオ
(72)【発明者】
【氏名】ニウ,シャオフェン
(72)【発明者】
【氏名】ワン,フェンリー
(72)【発明者】
【氏名】ワン,チュンニェン
(72)【発明者】
【氏名】チャオ,ジンフェン
(72)【発明者】
【氏名】シン,ロウメイ
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ハイイン
(72)【発明者】
【氏名】ユー,ジンフェン
(72)【発明者】
【氏名】リー,レイ
(72)【発明者】
【氏名】ウー,ジーハオ
(72)【発明者】
【氏名】ガオ,ルイ
(72)【発明者】
【氏名】チウ,ヤンシェン
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA02
4B064CA05
4B064CA06
4B064CA08
4B064CA10
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4B064DA13
4B065AA01X
4B065AA01Y
4B065AA57X
4B065AA57Y
4B065AA72X
4B065AA72Y
4B065AA83X
4B065AA83Y
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065BC01
4B065CA44
4B065CA46
4C084AA19
4C084MA02
4C084NA05
4C084ZA02
4C084ZA36
4C084ZA45
4C084ZA59
4C084ZA66
4C084ZA70
4C084ZA89
4C084ZA94
4C084ZA96
4C084ZB07
4C084ZB08
4C084ZB11
4C084ZB15
4C084ZB26
4C084ZB27
4C084ZB32
4C084ZC35
4C084ZC75
4C085AA14
4C085AA16
4C085AA25
4C085AA27
4C085BB01
4C085BB11
4C085BB36
4C085BB41
4C085BB43
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA09
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA50
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、抗SIRPα抗体またはその抗原結合性断片、これらをコードする単離されたポリヌクレオチド、これらを含む医薬組成物、およびそれらの使用を提供する。
【選択図】図1-1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトSIRPαに特異的に結合することができる抗体またはその抗原結合性断片であって、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3を含む重鎖可変領域ならびに/またはLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む軽鎖可変領域を含み、
a)HCDR1が、DYYMS(配列番号1)のアミノ酸配列を含み、かつ/または
HCDR2が、FIKNEANGYTTESSASVKG(配列番号2)のアミノ酸配列を含み、かつ/または
HCDR3が、YDYYGSNYNWYFDA(配列番号3)のアミノ酸配列を含み、かつ/または
LCDR1が、KASQNVRTAVA(配列番号4)のアミノ酸配列を含み、かつ/または
LCDR2が、LASKRHT(配列番号5)のアミノ酸配列を含み、かつ/または
LCDR3が、LQHWIHPLT(配列番号6)のアミノ酸配列を含み、
b)HCDR1が、 YYMH(配列番号18)のアミノ酸配列を含み、かつ/または
HCDR2が、RIDPED KYAPKFQG(配列番号19)のアミノ酸配列を含み、かつ/または
HCDR3が、G 18 Y(配列番号20)のアミノ酸配列を含み、かつ/または
LCDR1が、SASSSVSSSYLY(配列番号10)のアミノ酸配列を含み、かつ/または
LCDR2が、STSNLAS(配列番号11)のアミノ酸配列を含み、かつ/または
LCDR3が、 QWSSYPYT(配列番号21)のアミノ酸配列を含み、
c)HCDR1が、TYGMS(配列番号22)のアミノ酸配列を含み、かつ/または
HCDR2が、WINTYSGV 19 ADDF G(配列番号38)のアミノ酸配列を含み、かつ/または
HCDR3が、DPH YG 10 SPAWF 11 Y(配列番号39)のアミノ酸配列を含み、かつ/または
LCDR1が、 12 ASQ 13 VGI 14 VA(配列番号40)のアミノ酸配列を含み、かつ/または
LCDR2が、SASNR 15 T(配列番号41)のアミノ酸配列を含み、かつ/または
LCDR3が、QQYS 16 YP 17 T(配列番号42)のアミノ酸配列を含み、
d)HCDR1が、EYVLS(配列番号43)のアミノ酸配列を含み、かつ/または
HCDR2が、EIYPGTITTYYNEKFKG(配列番号44)のアミノ酸配列を含み、かつ/または
HCDR3が、FYDYDGGWFAY(配列番号45)のアミノ酸配列を含み、かつ/または
LCDR1が、SASSSVSSSDLH(配列番号46)のアミノ酸配列を含み、かつ/または
LCDR2が、GTSNLAS(配列番号47)のアミノ酸配列を含み、かつ/または
LCDR3が、QQWSGYPWT(配列番号48)のアミノ酸配列を含み、
がAまたはDであり、XがGまたはAであり、XがTまたはSであり、XがLまたはYであり、XがEまたはAであり、XがYまたはHであり、XがYまたはCであり、XがKまたはQであり、XがYまたはSであり、X10がNまたはTまたはSであり、X11がPまたはAまたはVであり、X12がEまたはKであり、X13がNまたはIであり、X14がSまたはAであり、X15がYまたはFであり、X16がSまたはTまたはAであり、X17がFまたはLであり、X18がSまたは不在であり、X19がSまたはPである、上記抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項2】
a)HCDR1が、XYYMH(配列番号18)のアミノ酸配列を含み、かつ/または
b)HCDR2が、RIDPEDXEXKYAPKFQG(配列番号19)のアミノ酸配列を含み、かつ/または
c)HCDR3が、GX18Y(配列番号20)のアミノ酸配列を含み、かつ/または
d)LCDR1が、SASSSVSSSYLY(配列番号10)のアミノ酸配列を含み、かつ/または
e)LCDR2が、STSNLAS(配列番号11)のアミノ酸配列を含み、かつ/または
f)LCDR3が、XQWSSYPYT(配列番号21)のアミノ酸配列を含み、
がAまたはDであり、XがGまたはAであり、XがTまたはSであり、XがLまたはYであり、XがEまたはAであり、XがYまたはHであり、X18がSまたは不在である、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項3】
a)HCDR1が、AYYMH(配列番号7)もしくはDYYMH(配列番号13)のアミノ酸配列を含み、かつ/または
b)HCDR2が、RIDPEDGESKYAPKFQG(配列番号8)、RIDPEDGETKYAPKFQG(配列番号14)、およびRIDPEDAETKYAPKFQG(配列番号17)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、かつ/または
c)HCDR3が、GSYEY(配列番号9)もしくはGLAY(配列番号15)のアミノ酸配列を含み、かつ/または
d)LCDR1が、SASSSVSSSYLY(配列番号10)のアミノ酸配列を含み、かつ/または
e)LCDR2が、STSNLAS(配列番号11)のアミノ酸配列を含み、かつ/または
f)LCDR3が、YQWSSYPYT(配列番号12)もしくはHQWSSYPYT(配列番号16)のアミノ酸配列を含む、請求項2に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項4】
a)HCDR1が、TYGMS(配列番号22)のアミノ酸配列を含み、かつ/または
b)HCDR2が、WINTYSGVX19TXADDFXG(配列番号38)のアミノ酸配列を含み、かつ/または
c)HCDR3が、DPHXYGX10SPAWFX11Y(配列番号39)のアミノ酸配列を含み、かつ/または
d)LCDR1が、X12ASQX13VGIX14VA(配列番号40)のアミノ酸配列を含み、かつ/または
e)LCDR2が、SASNRX15T(配列番号41)のアミノ酸配列を含み、かつ/または
f)LCDR3が、QQYSX16YPX17T(配列番号42)のアミノ酸配列を含み、
がYまたはCであり、XがKまたはQであり、XがYまたはSであり、X10がNまたはTまたはSであり、X11がPまたはAまたはVであり、X12がEまたはKであり、X13がNまたはIであり、X14がSまたはAであり、X15がYまたはFであり、X16がSまたはTまたはAであり、X17がFまたはLであり、X19がSまたはPである、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項5】
a)HCDR1が、TYGMS(配列番号22)のアミノ酸配列を含み、かつ/または
b)HCDR2が、WINTYSGVSTCADDFKG(配列番号23)、WINTYSGVPTYADDFQG(配列番号28)、およびWINTYSGVPTYADDFKG(配列番号33)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、かつ/または
c)HCDR3が、DPHSYGNSPAWFPY(配列番号24)、DPHYYGTSPAWFAY(配列番号29)、およびDPHYYGSSPAWFVY(配列番号34)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、かつ/または
d)LCDR1が、KASQNVGISVA(配列番号25)、KASQIVGIAVA(配列番号30)、およびEASQIVGIAVA(配列番号35)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、かつ/または
e)LCDR2が、SASNRYT(配列番号26)およびSASNRFT(配列番号31)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、かつ/または
f)LCDR3が、QQYSSYPLT(配列番号27)、QQYSTYPFT(配列番号32)、およびQQYSAYPFT(配列番号37)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項4に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項6】
重鎖可変領域が、
a)配列番号1の配列を含むHCDR1、配列番号2の配列を含むHCDR2、および配列番号3の配列を含むHCDR3、または
b)配列番号7の配列を含むHCDR1、配列番号8の配列を含むHCDR2、および配列番号9の配列を含むHCDR3、または
c)配列番号13の配列を含むHCDR1、配列番号14もしくは配列番号17の配列を含むHCDR2、および配列番号15の配列を含むHCDR3、または
d)配列番号22の配列を含むHCDR1、配列番号23の配列を含むHCDR2、および配列番号24の配列を含むHCDR3、または
e)配列番号22の配列を含むHCDR1、配列番号28の配列を含むHCDR2、および配列番号29の配列を含むHCDR3、または
f)配列番号22の配列を含むHCDR1、配列番号33の配列を含むHCDR2、および配列番号34の配列を含むHCDR3、または
g)配列番号43の配列を含むHCDR1、配列番号44の配列を含むHCDR2、および配列番号45の配列を含むHCDR3
を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項7】
軽鎖可変領域が、
a)配列番号4の配列を含むLCDR1、配列番号5の配列を含むLCDR2、および配列番号6の配列を含むLCDR3、または
b)配列番号10の配列を含むLCDR1、配列番号11の配列を含むLCDR2、および配列番号12の配列を含むLCDR3、または
c)配列番号10の配列を含むLCDR1、配列番号11の配列を含むLCDR2、および配列番号16の配列を含むLCDR3、または
d)配列番号25の配列を含むLCDR1、配列番号26の配列を含むLCDR2、および配列番号27の配列を含むLCDR3、または
e)配列番号30の配列を含むLCDR1、配列番号31の配列を含むLCDR2、および配列番号32の配列を含むLCDR3、または
f)配列番号35の配列を含むLCDR1、配列番号26の配列を含むLCDR2、および配列番号37の配列を含むLCDR3、または
g)配列番号46の配列を含むLCDR1、配列番号47の配列を含むLCDR2、および配列番号48の配列を含むLCDR3
を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項8】
a)HCDR1が配列番号1の配列を含み、HCDR2が配列番号2の配列を含み、HCDR3が配列番号3の配列を含み、LCDR1が配列番号4の配列を含み、LCDR2が配列番号5の配列を含み、LCDR3が配列番号6の配列を含むか、または
b)HCDR1が配列番号7の配列を含み、HCDR2が配列番号8の配列を含み、HCDR3が配列番号9の配列を含み、LCDR1が配列番号10の配列を含み、LCDR2が配列番号11の配列を含み、LCDR3が配列番号12の配列を含むか、または
c)HCDR1が配列番号13の配列を含み、HCDR2が配列番号14もしくは配列番号17の配列を含み、HCDR3が配列番号15の配列を含み、LCDR1が配列番号10の配列を含み、LCDR2が配列番号11の配列を含み、LCDR3が配列番号16の配列を含むか、または
d)HCDR1が配列番号22の配列を含み、HCDR2が配列番号23の配列を含み、HCDR3が配列番号24の配列を含み、LCDR1が配列番号25の配列を含み、LCDR2が配列番号26の配列を含み、LCDR3が配列番号27の配列を含むか、または
e)HCDR1が配列番号22の配列を含み、HCDR2が配列番号28の配列を含み、HCDR3が配列番号29の配列を含み、LCDR1が配列番号30の配列を含み、LCDR2が配列番号31の配列を含み、LCDR3が配列番号32の配列を含むか、または
f)HCDR1が配列番号22の配列を含み、HCDR2が配列番号33の配列を含み、HCDR3が配列番号34の配列を含み、LCDR1が配列番号35の配列を含み、LCDR2が配列番号26の配列を含み、LCDR3が配列番号37の配列を含むか、または
g)HCDR1が配列番号43の配列を含み、HCDR2が配列番号44の配列を含み、HCDR3が配列番号45の配列を含み、LCDR1が配列番号46の配列を含み、LCDR2が配列番号47の配列を含み、LCDR3が配列番号48の配列を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項9】
重鎖HFR1、HFR2、HFR3、およびHFR4のうちの1つもしくは複数、ならびに/または軽鎖LFR1、LFR2、LFR3、およびLFR4のうちの1つもしくは複数をさらに含み、
a)HFR1が、EVQLVQSGAEVKKPGATVKISCKX20SGFNIK(配列番号84)もしくはその少なくとも80%の配列同一性のある相同配列を含み、かつ/または
b)HFR2が、WVQQAPGKGLEWIG(配列番号74)もしくはその少なくとも80%の配列同一性のある相同配列を含み、かつ/または
c)HFR3配列が、RVTITADTSTX21TAYMELSSLRSEDTAVYYCDR(配列番号85)もしくはその少なくとも80%の配列同一性のある相同配列を含み、かつ/または
d)HFR4が、WGQGTLVTVSS(配列番号76)もしくはその少なくとも80%の配列同一性のある相同配列を含み、かつ/または
e)LFR1が、EIVLTQSPATLSLSPGERATLSC(配列番号77)もしくはその少なくとも80%の配列同一性のある相同配列を含み、かつ/または
f)LFR2が、WYQQKPGQAPKLWIY(配列番号78)もしくはその少なくとも80%の配列同一性のある相同配列を含み、かつ/または
g)LFR3が、GIPARFSGSGSGTDX22TLTISSLEPEDFAVYYC(配列番号86)もしくはその少なくとも80%の配列同一性のある相同配列を含み、かつ/または
h)LFR4が、FGQGTKLEIK(配列番号80)もしくはその少なくとも80%の配列同一性のある相同配列を含み、
20がAまたはVであり、X21がNまたはDであり、X22がYまたはFである、請求項1~8のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項10】
a)HFR1が、EVQLVQSGAEVKKPGATVKISCKASGFNIK(配列番号83)もしくはEVQLVQSGAEVKKPGATVKISCKVSGFNIK(配列番号73)もしくはその少なくとも80%の配列同一性のある相同配列を含み、かつ/または
b)HFR2が、WVQQAPGKGLEWIG(配列番号74)もしくはその少なくとも80%の配列同一性のある相同配列を含み、かつ/または
c)HFR3配列が、RVTITADTSTNTAYMELSSLRSEDTAVYYCDR(配列番号75)もしくはRVTITADTSTDTAYMELSSLRSEDTAVYYCDR(配列番号82)もしくはその少なくとも80%の配列同一性のある相同配列を含み、かつ/または
d)HFR4が、WGQGTLVTVSS(配列番号76)もしくはその少なくとも80%の配列同一性のある相同配列を含み、かつ/または
e)LFR1が、EIVLTQSPATLSLSPGERATLSC(配列番号77)もしくはその少なくとも80%の配列同一性のある相同配列を含み、かつ/または
f)LFR2が、WYQQKPGQAPKLWIY(配列番号78)もしくはその少なくとも80%の配列同一性のある相同配列を含み、かつ/または
g)LFR3が、GIPARFSGSGSGTDYTLTISSLEPEDFAVYYC(配列番号79)もしくはGIPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYC(配列番号81)もしくはその少なくとも80%の配列同一性のある相同配列を含み、かつ/または
h)LFR4が、FGQGTKLEIK(配列番号80)もしくはその少なくとも80%の配列同一性のある相同配列を含む、請求項9に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項11】
重鎖可変領域が、配列番号63、配列番号65、および配列番号67からなる群から選択される配列、ならびに少なくとも80%の配列同一性を有ししかもヒトSIRPαに対する特異的結合親和性を保持しているその相同配列を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項12】
軽鎖可変領域が、配列番号64および配列番号66からなる群から選択される配列、ならびに少なくとも80%の配列同一性を有ししかもヒトSIRPαに対する特異的結合親和性を保持しているその相同配列を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項13】
a)重鎖可変領域が配列番号49の配列を含み、軽鎖可変領域が配列番号50の配列を含むか、または
b)重鎖可変領域が配列番号51の配列を含み、軽鎖可変領域が配列番号52の配列を含むか、または
c)重鎖可変領域が配列番号53の配列を含み、軽鎖可変領域が配列番号54の配列を含むか、または
d)重鎖可変領域が配列番号55の配列を含み、軽鎖可変領域が配列番号56の配列を含むか、または
e)重鎖可変領域が配列番号57の配列を含み、軽鎖可変領域が配列番号58の配列を含むか、または
f)重鎖可変領域が配列番号59の配列を含み、軽鎖可変領域が配列番号60の配列を含むか、または
g)重鎖可変領域が配列番号61の配列を含み、軽鎖可変領域が配列番号62の配列を含むか、または
h)重鎖可変領域が配列番号63の配列を含み、軽鎖可変領域が配列番号64の配列を含むか、または
i)重鎖可変領域が配列番号63の配列を含み、軽鎖可変領域が配列番号66の配列を含むか、または
j)重鎖可変領域が配列番号65の配列を含み、軽鎖可変領域が配列番号64の配列を含むか、または
k)重鎖可変領域が配列番号67の配列を含み、軽鎖可変領域が配列番号64の配列を含むか、または
l)重鎖可変領域が配列番号67の配列を含み、軽鎖可変領域が配列番号66の配列を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項14】
1つまたは複数のアミノ酸残基の置換または修飾をさらに含み、しかもヒトSIRPαに対する特異的結合親和性を保持している、請求項1~13のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項15】
前記置換または修飾のうちの少なくとも1つが、重鎖可変領域もしくは軽鎖可変領域のCDR配列のうちの1つもしくは複数の中、および/または非CDR配列のうちの1つもしくは複数の中にある、請求項14に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項16】
Fc領域、任意選択でヒト免疫グロブリン(Ig)のFc領域、または任意選択でヒトIgGのFc領域をさらに含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項17】
Fc領域が、ヒトIgG4に由来する、請求項16に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項18】
ヒトIgG4に由来するFc領域が、S228Pの変異および/またはL235Eの変異を含む、請求項17に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項19】
ヒト化されている、請求項1~18のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項20】
モノクローナル抗体、二重特異的抗体、多重特異的抗体、組換え抗体、キメラ抗体、標識抗体、二価抗体、抗イディオタイプ抗体、または融合タンパク質である、請求項1~19のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項21】
ダイアボディ、Fab、Fab’、F(ab’)、Fd、Fv断片、ジスルフィド安定化Fv断片(dsFv)、(dsFv)、二重特異的dsFv(dsFv-dsFv’)、ジスルフィド安定化ダイアボディ(dsダイアボディ)、単鎖抗体分子(scFv)、scFvダイマー(二価ダイアボディ)、多重特異的抗体、ラクダ化単一ドメイン抗体、ナノボディ、ドメイン抗体、または二価ドメイン抗体である、請求項1~20のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項22】
a)SIRP-アルファv1とCD47との間の相互作用を完全にブロックすることができること、
b)競合的ELISAによって測定して、10nM以下(もしくは5nM以下)のIC50で、または競合的FACSによって測定して、0.6nM以下(もしくは0.5nM以下)のIC50で、SIRP-アルファv1とCD47との間の相互作用をブロックすることができること、
c)SIRP-アルファv2とCD47との間の相互作用を完全にブロックすることができること、
d)競合的ELISAによって測定して、10nM以下(もしくは5nM以下)のIC50で、または競合的FACSによって測定して、0.8nM以下(もしくは0.7nM以下)のIC50で、SIRP-アルファv2とCD47との間の相互作用をブロックすることができること、
e)T細胞によるIFNγ分泌、CD4 T細胞増殖、またはCD8 T細胞増殖に対して有意な阻害を有さないこと、
f)CD47により媒介されるSIRPアルファへのSHP1の動員をブロックすることができること、
g)標的抗体の抗体依存性細胞性ファゴサイトーシス(ADCP)作用を増加させることができること、
h)YNQKEGHFPRVTTVSDL(配列番号36)、SGAGTEL(配列番号72)、TNVDPVGESVS(配列番号87)、およびTNVDPVGESVSY(配列番号90)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むエピトープに結合することができること、
からなる群から選択される、1つまたは複数の特性を有する、請求項1~21のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項23】
ヒトSIRPαとの結合について、配列番号53の配列を含む重鎖可変領域および配列番号54の配列を含む軽鎖可変領域を含む抗体と競合する、抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項24】
ヒトSIRPαとの結合について配列番号55の配列を含む重鎖可変領域および配列番号56の配列を含む軽鎖可変領域を含む抗体と競合する、抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項25】
ヒトSIRPαとの結合について、配列番号61の配列を含む重鎖可変領域および配列番号62の配列を含む軽鎖可変領域を含む抗体と競合する、抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項26】
二重特異的である、請求項1~25のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項27】
SIRPα以外の第2の抗原と特異的に結合することができる、請求項26に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項28】
第2の抗原が、腫瘍抗原、腫瘍表面抗原、炎症性抗原、感染性微生物の抗原である、請求項27に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項29】
SIRPα上の第2のエピトープに特異的に結合することができる、請求項27に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項30】
1つまたは複数のコンジュゲート部分に連結された、請求項1~29のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項31】
コンジュゲート部分がクリアランス修飾剤、化学療法剤、毒素、放射性同位体、ランタニド、発光標識、蛍光標識、酵素基質標識、DNAアルキル化剤、トポイソメラーゼ阻害剤、チューブリンバインダー、精製部分、またはその他の抗がん薬物を含む、請求項30に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項32】
請求項1~31のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合性断片および1つまたは複数の薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物。
【請求項33】
請求項1~32のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合性断片をコードする、単離されたポリヌクレオチド。
【請求項34】
請求項33に記載の単離されたポリヌクレオチドを含む、ベクター。
【請求項35】
請求項34に記載のベクターを含む、宿主細胞。
【請求項36】
請求項34に記載のベクターが発現される条件下で請求項35に記載の宿主細胞を培養するステップを含む、請求項1~31のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合性断片を発現する方法。
【請求項37】
in vitroにおいてファゴサイトーシスを誘導する方法であって、請求項1~31のいずれか一項に記載の抗体もしくはその抗原結合性断片または請求項32に記載の医薬組成物の存在下において、標的細胞を、任意選択で該標的細胞上の標的抗原に特異的に結合する標的抗体と組み合わせて、SIRPα陽性ファゴサイトーシス細胞試料と接触させて、それにより、SIRPα陽性ファゴサイトーシス細胞による標的細胞のファゴサイトーシスを誘導するステップを含む、上記方法。
【請求項38】
対象において標的細胞のファゴサイトーシスを誘導する方法であって、対象に、任意選択で標的細胞上の標的抗原に特異的に結合する標的抗体と組み合わせて、請求項1~31のいずれか一項に記載の抗体もしくはその抗原結合性断片または請求項32に記載の医薬組成物を、標的細胞のファゴサイトーシスを誘導するのに有効な用量で投与するステップを含む、上記方法。
【請求項39】
対象における標的細胞に対する標的抗体の抗体依存性細胞性ファゴサイトーシス(ADCP)作用を増加させる方法であって、
対象に、標的抗体と組み合わせて、治療有効量の請求項1~31のいずれか一項に記載の抗体もしくはその抗原結合性断片または請求項32に記載の医薬組成物を投与して、それにより、標的細胞に対する標的抗体のADCPを増加させるステップを含み、
該標的抗体が、標的細胞上に発現される標的抗原に結合する、上記方法。
【請求項40】
対象における標的細胞のファゴサイトーシスの誘導により利益を得ることができる疾患、障害、または状態を処置し、防止し、または軽減する方法であって、対象に、任意選択で標的細胞上の標的抗原に特異的に結合する標的抗体と組み合わせて、治療有効量の請求項1~31のいずれか一項に記載の抗体もしくはその抗原結合性断片または請求項32に記載の医薬組成物を投与するステップを含む、上記方法。
【請求項41】
対象におけるSIRPα関連の疾患、障害、または状態を処置し、防止し、または軽減する方法であって、対象に、任意選択で標的細胞上の標的抗原に特異的に結合する標的抗体と組み合わせて、治療有効量の請求項1~31のいずれか一項に記載の抗体もしくはその抗原結合性断片または請求項32に記載の医薬組成物を投与するステップを含む、上記方法。
【請求項42】
標的細胞が、CD47発現細胞である、請求項37~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
標的細胞が、がん細胞、炎症細胞、および/または慢性感染細胞である、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
標的抗原が、腫瘍抗原、腫瘍表面抗原、炎症性抗原、感染性微生物の抗原である、請求項39に記載の方法。
【請求項45】
抗体またはその抗原結合性断片が、配列番号13の配列を含むHCDR1、配列番号14または配列番号17の配列を含むHCDR2、配列番号15の配列を含むHCDR3、配列番号10の配列を含むLCDR1、配列番号11の配列を含むLCDR2、および配列番号16の配列を含むLCDR3を含む、請求項39~44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記疾患、障害、または状態が、がん、固形腫瘍、慢性感染症、炎症性疾患、多発性硬化症、自己免疫疾患、神経疾患、脳損傷、神経損傷、赤血球増加症、ヘモクロマトーシス、外傷、敗血症性ショック、線維症、アテローム性動脈硬化症、肥満、II型糖尿病、移植片機能不全、または関節炎である、請求項40または41に記載の方法。
【請求項47】
がんが、肛門がん、虫垂がん、星状細胞腫、基底細胞癌、胆嚢がん、胃がん、肺がん、気管支がん、骨がん、肝胆管がん、膵がん、乳がん、肝がん、卵巣がん、精巣がん、腎がん、腎盂尿管がん、唾液腺がん、小腸がん、尿道がん、膀胱がん、頭頚部がん、頭頚部扁平上皮細胞癌、脊椎がん、脳がん、頸がん、子宮がん、子宮内膜がん、結腸がん、結腸直腸がん、直腸がん、食道がん、胃腸管がん、皮膚がん、前立腺がん、下垂体がん、膣がん、甲状腺がん、咽喉がん、膠芽細胞腫、黒色腫、骨髄異形成症候群、肉腫、奇形腫、慢性リンパ球性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、急性リンパ球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫(NHL)、多発性骨髄腫、TまたはB細胞リンパ腫、GI器官間質腫、軟組織腫瘍、肝細胞癌、および腺癌である、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
がんがCD47陽性がんである、請求項46または47に記載の方法。
【請求項49】
対象が、ヒトである、請求項37~48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記投与が経口、経鼻、静脈内、皮下、舌下、または筋肉内投与を介する、請求項37~49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
治療有効量の追加の治療剤を投与するステップをさらに含む、請求項37~50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
追加の治療剤が、化学療法剤、抗がん薬、放射線療法剤、免疫療法剤、抗血管新生剤、標的療法剤、細胞療法剤、遺伝子療法剤、ホルモン療法剤、抗ウイルス剤、抗生剤、鎮痛剤、抗酸化剤、金属キレート剤、サイトカイン、抗感染剤、および抗炎症剤からなる群から選択される、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
請求項1~31のいずれか一項に記載の抗体もしくはその抗原結合性断片または請求項32に記載の医薬組成物、および標的細胞上に発現される標的抗原に結合する標的抗体を含む、キット。
【請求項54】
標的抗原が、腫瘍抗原、腫瘍表面抗原、または感染物質表面抗原である、請求項53に記載のキット。
【請求項55】
追加の治療剤をさらに含む、請求項53または54に記載のキット。
【請求項56】
SIRPα陽性細胞を請求項1~31のいずれか一項に記載の抗体もしくはその抗原結合性断片または請求項32に記載の医薬組成物に曝露するステップを含む、SIRPα陽性細胞におけるSIRPαの活性を調節する方法。
【請求項57】
前記細胞がファゴサイトーシス細胞である、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
試料を請求項1~31のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合性断片と接触させるステップ、および該試料中におけるSIRPαの存在または量を決定するステップを含む、試料中におけるSIRPαの存在または量を検出する方法。
【請求項59】
i)対象におけるSIRPα関連の疾患、障害、または状態を処置し、防止し、または軽減するため、
ii)対象において標的細胞のファゴサイトーシスを誘導するため、
ii)対象における標的細胞に対する標的抗体の抗体依存性細胞性ファゴサイトーシス(ADCP)作用を増加させるため
の医薬の製造における、請求項1~31のいずれか一項に記載の抗体もしくはその抗原結合性断片または請求項32に記載の医薬組成物の使用。
【請求項60】
対象における疾患、障害、または状態の処置において標的抗体を強化する方法であって、対象に、標的抗体と組み合わせて、治療有効量の請求項1~31のいずれか一項に記載の抗体もしくはその抗原結合性断片または請求項32に記載の医薬組成物を投与して、それにより、対象における疾患、障害、または状態の処置において標的抗体を強化するステップを含む、上記方法。
【請求項61】
前記疾患、障害、または状態が、免疫関連疾患もしくは障害、腫瘍およびがん、自己免疫疾患、または感染性疾患である、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
免疫関連疾患または障害が、全身性エリテマトーデス、急性呼吸促迫症候群(ARDS)、脈管炎、重症筋無力症、特発性肺線維症、クローン病、喘息、リウマチ性関節炎、移植片対宿主病、脊椎関節症(たとえば、強直性脊椎炎、乾癬性関節炎、炎症性腸疾患を伴う孤発性急性腸炎性関節炎、反応性関節炎、ベーチェット病、分類不能型脊椎関節症、前部ブドウ膜炎、および若年性特発性関節炎)、多発性硬化症、子宮内膜症、糸球体腎炎、敗血症、糖尿病、急性冠症候群、虚血再灌流、乾癬、進行性全身性硬化症、アテローム性動脈硬化症、シェーグレン症候群、強皮症、または炎症性自己免疫性筋炎からなる群から選択される、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
腫瘍およびがんが、固形腫瘍または血液悪性腫瘍であり、任意選択で、非小細胞肺がん、小細胞肺がん、腎細胞がん、結腸直腸がん、卵巣がん、乳がん、膵がん、胃癌、膀胱がん、食道がん、中皮腫、黒色腫、頭頚部がん、甲状腺がん、肉腫、前立腺がん、膠芽細胞腫、子宮頸がん、胸腺癌、白血病、リンパ腫、骨髄腫、菌状息肉腫、メルケル細胞がん、および他の血液悪性腫瘍、たとえば、古典的ホジキンリンパ腫(CHL)、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫、T細胞/組織球豊富型B細胞リンパ腫、EBV陽性および陰性PTLD、ならびにEBV関連びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、形質芽細胞性リンパ腫、節外性NK/T細胞リンパ腫、鼻咽頭癌、およびHHV8関連原発性滲出性リンパ腫、ホジキンリンパ腫、中枢神経系(CNS)の新生物、たとえば、原発性CNSリンパ腫、脊髄軸腫瘍、脳幹部神経膠腫、肛門がん、虫垂がん、星状細胞腫、基底細胞癌、胆嚢がん、胃がん、肺がん、気管支がん、骨がん、肝胆管がん、膵がん、乳がん、肝がん、卵巣がん、精巣がん、腎がん、腎盂尿管がん、唾液腺がん、小腸がん、尿道がん、膀胱がん、頭頚部がん、脊椎がん、脳がん、頸がん、子宮がん、子宮内膜がん、結腸がん、結腸直腸がん、直腸がん、食道がん、胃腸管がん、皮膚がん、前立腺がん、下垂体がん、膣がん、甲状腺がん、咽喉がん、膠芽細胞腫、黒色腫、骨髄異形成症候群、肉腫、奇形腫、慢性リンパ球性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、急性リンパ球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、TもしくはB細胞リンパ腫、GI器官間質腫、軟組織腫瘍、肝細胞癌、ならびに腺癌、またはこれらの転移からなる群から選択される、請求項61に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[001]本開示は一般に、新規の抗SIRPα抗体に関する。
【背景技術】
【0002】
[002]シグナル調節タンパク質アルファ(SIRPα)は、骨髄系細胞および樹状細胞に主として発現される阻害性受容体である。SIRPαに加えて、SIRPファミリーにはまた、SIRPβおよびSIRPγを含め、いくつかの他の膜貫通糖タンパク質も含まれる。SIRPファミリーのそれぞれのメンバーは、別個の膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインとともに、3つの類似の細胞外Ig様ドメインを含む。CD47は、細胞外のN末端側IgVドメイン、5つの膜貫通ドメイン、および短いC末端側の細胞内尾部を有する、広範に発現される膜貫通糖タンパク質である。CD47は、SIRPαの細胞リガンドとしての機能を果たす。CD47がSIRPαに結合することにより、ファゴサイトーシスを抑制する「私を食べないで」のシグナルが送達され、食細胞上のSIRPαのCD47媒介性係合をブロックすることにより、「私を食べて」のシグナルを有する生細胞の除去を引き起こすことができる。腫瘍細胞は、マクロファージ媒介性破壊を回避するために、CD47を過剰発現していることが多い。CD47とSIRPαとの相互作用は、マクロファージ媒介性ファゴサイトーシスの調節に関与していることが示されている(Takenaka et al.,Nature Immunol.,8(12):1313-1323,2007)。広範な前臨床モデルでは、CD47とSIRPαとの相互作用をブロックする治療法により、in vitroにおけるがん細胞のファゴサイトーシスおよびin vivoにおける抗腫瘍免疫応答を刺激する。現在、CD47を標的とする複数の薬剤(抗CD47抗体およびSIRPα融合タンパク質)が、臨床試験へと進んでいる。しかしながら、これらの薬剤は、溶血性貧血および血小板減少症と関連付けられている。安全性の問題に加えて、CD47の普遍的な発現もまた、抗原シンクを引き起こし得、これにより有効性の低減がもたらされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
[003]新規の抗SIRPα抗体へのニーズが依然としてある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
[004]本開示を通して、冠詞「a」、「an」、および「the」は、本明細書において、その冠詞の文法的目的物の1つまたはそれ超(即ち、少なくとも1つ)を意味するために用いられる。例として、「抗体」は1つの抗体または2つ以上の抗体を意味する。
【0005】
[005]一態様では、本開示は、ヒトSIRPαに特異的に結合することができる抗体またはその抗原結合性断片であって、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3を含む重鎖可変領域ならびに/またはLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む軽鎖可変領域を含み、
a)HCDR1が、DYYMS(配列番号1)のアミノ酸配列を含み、かつ/または
HCDR2が、FIKNEANGYTTESSASVKG(配列番号2)のアミノ酸配列を含み、かつ/または
HCDR3が、YDYYGSNYNWYFDA(配列番号3)のアミノ酸配列を含み、かつ/または
LCDR1が、KASQNVRTAVA(配列番号4)のアミノ酸配列を含み、かつ/または
LCDR2が、LASKRHT(配列番号5)のアミノ酸配列を含み、かつ/または
LCDR3が、LQHWIHPLT(配列番号6)のアミノ酸配列を含み、
b)HCDR1が、 YYMH(配列番号18)のアミノ酸配列を含み、かつ/または
HCDR2が、RIDPED KYAPKFQG(配列番号19)のアミノ酸配列を含み、かつ/または
HCDR3が、G 18 Y(配列番号20)のアミノ酸配列を含み、かつ/または
LCDR1が、SASSSVSSSYLY(配列番号10)のアミノ酸配列を含み、かつ/または
LCDR2が、STSNLAS(配列番号11)のアミノ酸配列を含み、かつ/または
LCDR3が、 QWSSYPYT(配列番号21)のアミノ酸配列を含み、
c)HCDR1が、TYGMS(配列番号22)のアミノ酸配列を含み、かつ/または
HCDR2が、WINTYSGV 19 ADDF G(配列番号38)のアミノ酸配列を含み、かつ/または
HCDR3が、DPH YG 10 SPAWF 11 Y(配列番号39)のアミノ酸配列を含み、かつ/または
LCDR1が、 12 ASQ 13 VGI 14 VA(配列番号40)のアミノ酸配列を含み、かつ/または
LCDR2が、SASNR 15 T(配列番号41)のアミノ酸配列を含み、かつ/または
LCDR3が、QQYS 16 YP 17 T(配列番号42)のアミノ酸配列を含み、
d)HCDR1が、EYVLS(配列番号43)のアミノ酸配列を含み、かつ/または
HCDR2が、EIYPGTITTYYNEKFKG(配列番号44)のアミノ酸配列を含み、かつ/または
HCDR3が、FYDYDGGWFAY(配列番号45)のアミノ酸配列を含み、かつ/または
LCDR1が、SASSSVSSSDLH(配列番号46)のアミノ酸配列を含み、かつ/または
LCDR2が、GTSNLAS(配列番号47)のアミノ酸配列を含み、かつ/または
LCDR3が、QQWSGYPWT(配列番号48)のアミノ酸配列を含み、
がAまたはDであり、XがGまたはAであり、XがTまたはSであり、XがLまたはYであり、XがEまたはAであり、XがYまたはHであり、XがYまたはCであり、XがKまたはQであり、XがYまたはSであり、X10がNまたはTまたはSであり、X11がPまたはAまたはVであり、X12がEまたはKであり、X13がNまたはIであり、X14がSまたはAであり、X15がYまたはFであり、X16がSまたはTまたはAであり、X17がFまたはLであり、X18がSまたは不在であり、X19がSまたはPである、
抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0006】
[006]ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体またはその抗原結合性断片は、
a)XYYMH(配列番号18)のアミノ酸配列を含むHCDR1、および/または
b)RIDPEDXEXKYAPKFQG(配列番号19)のアミノ酸配列を含むHCDR2、および/または
c)GX18Y(配列番号20)のアミノ酸配列を含むHCDR3、および/または
d)SASSSVSSSYLY(配列番号10)のアミノ酸配列を含むLCDR1、および/または
e)STSNLAS(配列番号11)のアミノ酸配列を含むLCDR2、および/または
f)XQWSSYPYT(配列番号21)のアミノ酸配列を含むLCDR3
を含み、XはAまたはDであり、XはGまたはAであり、XはTまたはSであり、XはLまたはYであり、XはEまたはAであり、XはYまたはHであり、X18はSまたは不在である。
【0007】
[007]ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体またはその抗原結合性断片は、
a)AYYMH(配列番号7)もしくはDYYMH(配列番号13)のアミノ酸配列を含むHCDR1、ならびに/または
b)RIDPEDGESKYAPKFQG(配列番号8)、RIDPEDGETKYAPKFQG(配列番号14)、およびRIDPEDAETKYAPKFQG(配列番号17)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むHCDR2、ならびに/または
c)GSYEY(配列番号9)もしくはGLAY(配列番号15)のアミノ酸配列を含むHCDR3、ならびに/または
d)SASSSVSSSYLY(配列番号10)のアミノ酸配列を含むLCDR1、ならびに/または
e)STSNLAS(配列番号11)のアミノ酸配列を含むLCDR2、ならびに/または
f)YQWSSYPYT(配列番号12)もしくはHQWSSYPYT(配列番号16)のアミノ酸配列を含むLCDR3
を含む。
【0008】
[008]ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体またはその抗原結合性断片は、
a)TYGMS(配列番号22)のアミノ酸配列を含むHCDR1、および/または
b)WINTYSGVX19TXADDFXG(配列番号38)のアミノ酸配列を含むHCDR2、および/または
c)DPHXYGX10SPAWFX11Y(配列番号39)のアミノ酸配列を含むHCDR3、および/または
d)X12ASQX13VGIX14VA(配列番号40)のアミノ酸配列を含むLCDR1、および/または
e)SASNRX15T(配列番号41)のアミノ酸配列を含むLCDR2、および/または
f)QQYSX16YPX17T(配列番号42)のアミノ酸配列を含むLCDR3
を含み、XはYまたはCであり、XはKまたはQであり、XはYまたはSであり、X10はNまたはTまたはSであり、X11はPまたはAまたはVであり、X12はEまたはKであり、X13はNまたはIであり、X14はSまたはAであり、X15はYまたはFであり、X16はSまたはTまたはAであり、X17はFまたはLであり、X19はSまたはPである。
【0009】
[009]ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体またはその抗原結合性断片は、
a)TYGMS(配列番号22)のアミノ酸配列を含むHCDR1、ならびに/または
b)WINTYSGVSTCADDFKG(配列番号23)、WINTYSGVPTYADDFQG(配列番号28)、およびWINTYSGVPTYADDFKG(配列番号33)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むHCDR2、ならびに/または
c)DPHSYGNSPAWFPY(配列番号24)、DPHYYGTSPAWFAY(配列番号29)、およびDPHYYGSSPAWFVY(配列番号34)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むHCDR3、ならびに/または
d)KASQNVGISVA(配列番号25)、KASQIVGIAVA(配列番号30)、およびEASQIVGIAVA(配列番号35)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むLCDR1、ならびに/または
e)SASNRYT(配列番号26)およびSASNRFT(配列番号31)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むLCDR2、ならびに/または
f)QQYSSYPLT(配列番号27)、QQYSTYPFT(配列番号32)、およびQQYSAYPFT(配列番号37)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むLCDR3
を含む。
【0010】
[0010]ある特定の実施形態では、重鎖可変領域は、
a)配列番号1の配列を含むHCDR1、配列番号2の配列を含むHCDR2、および配列番号3の配列を含むHCDR3、または
b)配列番号7の配列を含むHCDR1、配列番号8の配列を含むHCDR2、および配列番号9の配列を含むHCDR3、または
c)配列番号13の配列を含むHCDR1、配列番号14もしくは配列番号17の配列を含むHCDR2、および配列番号15の配列を含むHCDR3、または
d)配列番号22の配列を含むHCDR1、配列番号23の配列を含むHCDR2、および配列番号24の配列を含むHCDR3、または
e)配列番号22の配列を含むHCDR1、配列番号28の配列を含むHCDR2、および配列番号29の配列を含むHCDR3、または
f)配列番号22の配列を含むHCDR1、配列番号33の配列を含むHCDR2、および配列番号34の配列を含むHCDR3、または
g)配列番号43の配列を含むHCDR1、配列番号44の配列を含むHCDR2、および配列番号45の配列を含むHCDR3
を含む。
【0011】
[0011]ある特定の実施形態では、軽鎖可変領域は、
a)配列番号4の配列を含むLCDR1、配列番号5の配列を含むLCDR2、および配列番号6の配列を含むLCDR3、または
b)配列番号10の配列を含むLCDR1、配列番号11の配列を含むLCDR2、および配列番号12の配列を含むLCDR3、または
c)配列番号10の配列を含むLCDR1、配列番号11の配列を含むLCDR2、および配列番号16の配列を含むLCDR3、または
d)配列番号25の配列を含むLCDR1、配列番号26の配列を含むLCDR2、および配列番号27の配列を含むLCDR3、または
e)配列番号30の配列を含むLCDR1、配列番号31の配列を含むLCDR2、および配列番号32の配列を含むLCDR3、または
f)配列番号35の配列を含むLCDR1、配列番号26の配列を含むLCDR2、および配列番号37の配列を含むLCDR3、または
g)配列番号46の配列を含むLCDR1、配列番号47の配列を含むLCDR2、および配列番号48の配列を含むLCDR3
を含む。
【0012】
[0012]ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体またはその抗原結合性断片は、
a)配列番号1の配列を含むHCDR1、配列番号2の配列を含むHCDR2、および配列番号3の配列を含むHCDR3、配列番号4の配列を含むLCDR1、配列番号5の配列を含むLCDR2、および配列番号6の配列を含むLCDR3、または
b)配列番号7の配列を含むHCDR1、配列番号8の配列を含むHCDR2、および配列番号9の配列を含むHCDR3、配列番号10の配列を含むLCDR1、配列番号11の配列を含むLCDR2、および配列番号12の配列を含むLCDR3、または
c)配列番号13の配列を含むHCDR1、配列番号14もしくは配列番号17の配列を含むHCDR2、および配列番号15の配列を含むHCDR3、配列番号10の配列を含むLCDR1、配列番号11の配列を含むLCDR2、および配列番号16の配列を含むLCDR3、または
d)配列番号22の配列を含むHCDR1、配列番号23の配列を含むHCDR2、および配列番号24の配列を含むHCDR3、配列番号25の配列を含むLCDR1、配列番号26の配列を含むLCDR2、および配列番号27の配列を含むLCDR3、または
e)配列番号22の配列を含むHCDR1、配列番号28の配列を含むHCDR2、および配列番号29の配列を含むHCDR3、配列番号30の配列を含むLCDR1、配列番号31の配列を含むLCDR2、および配列番号32の配列を含むLCDR3、または
f)配列番号22の配列を含むHCDR1、配列番号33の配列を含むHCDR2、および配列番号34の配列を含むHCDR3、配列番号35の配列を含むLCDR1、配列番号26の配列を含むLCDR2、および配列番号37の配列を含むLCDR3、または
g)配列番号43の配列を含むHCDR1、配列番号44の配列を含むHCDR2、および配列番号45の配列を含むHCDR3、配列番号46の配列を含むLCDR1、配列番号47の配列を含むLCDR2、および配列番号48の配列を含むLCDR3
を含む。
【0013】
[0013]ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体またはその抗原結合性断片は、重鎖HFR1、HFR2、HFR3、およびHFR4のうちの1つもしくは複数、ならびに/または軽鎖LFR1、LFR2、LFR3、およびLFR4のうちの1つもしくは複数をさらに含み、ここで、
a)HFR1は、EVQLVQSGAEVKKPGATVKISCKX20SGFNIK(配列番号84)もしくはその少なくとも80%の配列同一性のある相同配列を含み、かつ/または
b)HFR2は、WVQQAPGKGLEWIG(配列番号74)もしくはその少なくとも80%の配列同一性のある相同配列を含み、かつ/または
c)HFR3配列は、RVTITADTSTX21TAYMELSSLRSEDTAVYYCDR(配列番号85)もしくはその少なくとも80%の配列同一性のある相同配列を含み、かつ/または
d)HFR4は、WGQGTLVTVSS(配列番号76)もしくはその少なくとも80%の配列同一性のある相同配列を含み、かつ/または
e)LFR1は、EIVLTQSPATLSLSPGERATLSC(配列番号77)もしくはその少なくとも80%の配列同一性のある相同配列を含み、かつ/または
f)LFR2は、WYQQKPGQAPKLWIY(配列番号78)もしくはその少なくとも80%の配列同一性のある相同配列を含み、かつ/または
g)LFR3は、GIPARFSGSGSGTDX22TLTISSLEPEDFAVYYC(配列番号86)もしくはその少なくとも80%の配列同一性のある相同配列を含み、かつ/または
h)LFR4は、FGQGTKLEIK(配列番号80)もしくはその少なくとも80%の配列同一性のある相同配列を含み、
20はAまたはVであり、X21はNまたはDであり、X22はYまたはFである。
【0014】
[0014]ある特定の実施形態では、
a)HFR1は、EVQLVQSGAEVKKPGATVKISCKASGFNIK(配列番号83)もしくはEVQLVQSGAEVKKPGATVKISCKVSGFNIK(配列番号73)もしくはその少なくとも80%の配列同一性のある相同配列を含み、かつ/または
b)HFR2は、WVQQAPGKGLEWIG(配列番号74)もしくはその少なくとも80%の配列同一性のある相同配列を含み、かつ/または
c)HFR3配列は、RVTITADTSTNTAYMELSSLRSEDTAVYYCDR(配列番号75)もしくはRVTITADTSTDTAYMELSSLRSEDTAVYYCDR(配列番号82)もしくはその少なくとも80%の配列同一性のある相同配列を含み、かつ/または
d)HFR4は、WGQGTLVTVSS(配列番号76)もしくはその少なくとも80%の配列同一性のある相同配列を含み、かつ/または
e)LFR1は、EIVLTQSPATLSLSPGERATLSC(配列番号77)もしくはその少なくとも80%の配列同一性のある相同配列を含み、かつ/または
f)LFR2は、WYQQKPGQAPKLWIY(配列番号78)もしくはその少なくとも80%の配列同一性のある相同配列を含み、かつ/または
g)LFR3は、GIPARFSGSGSGTDYTLTISSLEPEDFAVYYC(配列番号79)もしくはGIPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYC(配列番号81)もしくはその少なくとも80%の配列同一性のある相同配列を含み、かつ/または
h)LFR4は、FGQGTKLEIK(配列番号80)もしくはその少なくとも80%の配列同一性のある相同配列を含む。
【0015】
[0015]ある特定の実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号63、配列番号65、および配列番号67からなる群から選択される配列、ならびに少なくとも80%の配列同一性を有ししかもヒトSIRPαに対する特異的結合親和性を保持しているその相同配列を含む。
【0016】
[0016]ある特定の実施形態では、軽鎖可変領域は、配列番号64、および配列番号66からなる群から選択される配列、ならびに少なくとも80%の配列同一性を有ししかもヒトSIRPαに対する特異的結合親和性を保持しているその相同配列を含む。
【0017】
[0017]ある特定の実施形態では、
a)重鎖可変領域が配列番号49の配列を含み、軽鎖可変領域が配列番号50の配列を含むか、または
b)重鎖可変領域が配列番号51の配列を含み、軽鎖可変領域が配列番号52の配列を含むか、または
c)重鎖可変領域が配列番号53の配列を含み、軽鎖可変領域が配列番号54の配列を含むか、または
d)重鎖可変領域が配列番号55の配列を含み、軽鎖可変領域が配列番号56の配列を含むか、または
e)重鎖可変領域が配列番号57の配列を含み、軽鎖可変領域が配列番号58の配列を含むか、または
f)重鎖可変領域が配列番号59の配列を含み、軽鎖可変領域が配列番号60の配列を含むか、または
g)重鎖可変領域が配列番号61の配列を含み、軽鎖可変領域が配列番号62の配列を含むか、または
h)重鎖可変領域が配列番号63の配列を含み、軽鎖可変領域が配列番号64の配列を含むか、または
i)重鎖可変領域が配列番号63の配列を含み、軽鎖可変領域が配列番号66の配列を含むか、または
j)重鎖可変領域が配列番号65の配列を含み、軽鎖可変領域が配列番号64の配列を含むか、または
k)重鎖可変領域が配列番号67の配列を含み、軽鎖可変領域が配列番号64の配列を含むか、または
l)重鎖可変領域が配列番号67の配列を含み、軽鎖可変領域が配列番号66の配列を含む。
【0018】
[0018]ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体またはその抗原結合性断片は、1つまたは複数のアミノ酸残基の置換または修飾をさらに含み、しかもヒトSIRPαに対する特異的結合親和性を保持している。
【0019】
[0019]ある特定の実施形態では、置換または修飾のうち少なくとも1つは、重鎖可変領域または軽鎖可変領域のCDR配列の1つもしくは複数の中、および/または非CDR配列の1つもしくは複数の中にある。
【0020】
[0020]ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体またはその抗原結合性断片は、Fc領域、任意選択でヒト免疫グロブリン(Ig)のFc領域、または任意選択でヒトIgGのFc領域をさらに含む。
【0021】
[0021]ある特定の実施形態では、Fc領域は、ヒトIgG4に由来する。
[0022]ある特定の実施形態では、ヒトIgG4に由来するFc領域は、S228Pの変異および/またはL235Eの変異を含む。
【0022】
[0023]ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体またはその抗原結合性断片は、ヒト化されている。
[0024]ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体またはその抗原結合性断片は、モノクローナル抗体、二重特異的抗体、多重特異的抗体、組換え抗体、キメラ抗体、標識抗体、二価抗体、抗イディオタイプ抗体、または融合タンパク質である。
【0023】
[0025]ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体またはその抗原結合性断片は、ダイアボディ、Fab、Fab’、F(ab’)、Fd、Fv断片、ジスルフィド安定化Fv断片(dsFv)、(dsFv)、二重特異的dsFv(dsFv-dsFv’)、ジスルフィド安定化ダイアボディ(dsダイアボディ)、単鎖抗体分子(scFv)、scFvダイマー(二価ダイアボディ)、多重特異的抗体、ラクダ化単鎖ドメイン抗体、ナノボディ、ドメイン抗体、または二価ドメイン抗体である。
【0024】
[0026]ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体またはその抗原結合性断片は、
a)SIRP-アルファv1とCD47との間の相互作用を完全にブロックすることができること、
b)競合的ELISAによって測定して10nM以下(もしくは5nM以下)のIC50で、または競合的FACSによって測定して0.6nM以下(もしくは0.5nM以下)のIC50で、SIRP-アルファv1とCD47との間の相互作用をブロックすることができること、
c)SIRP-アルファv2とCD47との間の相互作用を完全にブロックすることができること、
d)競合的ELISAによって測定して10nM以下(もしくは5nM以下)のIC50で、または競合的FACSによって測定して0.8nM以下(もしくは0.7nM以下)のIC50で、SIRP-アルファv2とCD47との間の相互作用をブロックすることができること、
e)T細胞によるIFNγ分泌、CD4 T細胞増殖、またはCD8 T細胞増殖に対して有意な阻害を有さないこと、
f)CD47により媒介されるSIRPアルファへのSHP1の動員をブロックすることができること、
g)標的抗体の抗体依存性細胞性ファゴサイトーシス(ADCP)作用を増加させることができること、
h)YNQKEGHFPRVTTVSDL(配列番号36)、SGAGTEL(配列番号72)、TNVDPVGESVS(配列番号87)、およびTNVDPVGESVSY(配列番号90)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むエピトープに結合することができること、
からなる群から選択される1つまたは複数の特性を有する。
【0025】
[0027]別の態様では、本開示はまた、ヒトSIRPαとの結合について、配列番号53の配列を含む重鎖可変領域および配列番号54の配列を含む軽鎖可変領域を含む抗体と競合する、抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0026】
[0028]別の態様では、本開示はまた、ヒトSIRPαとの結合について、配列番号55の配列を含む重鎖可変領域および配列番号56の配列を含む軽鎖可変領域を含む抗体と競合する、抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0027】
[0029]別の態様では、本開示はまた、ヒトSIRPαとの結合について、配列番号61の配列を含む重鎖可変領域および配列番号62の配列を含む軽鎖可変領域を含む抗体と競合する、抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0028】
[0030]ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体またはその抗原結合性断片は、二重特異的である。
[0031]ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体またはその抗原結合性断片は、SIRPα以外の第2の抗原と特異的に結合することができる。
【0029】
[0032]ある特定の実施形態では、第2の抗原は、腫瘍抗原、腫瘍表面抗原、炎症性抗原、感染性微生物の抗原である。
[0033]ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体またはその抗原結合性断片は、SIRPα上の第2のエピトープに特異的に結合することができる。
【0030】
[0034]ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体またはその抗原結合性断片は、1つまたは複数のコンジュゲート部分に連結されている。
[0035]ある特定の実施形態では、コンジュゲート部分はクリアランス修飾剤、化学療法剤、毒素、放射性同位体、ランタニド、発光標識、蛍光標識、酵素基質標識、DNAアルキル化剤、トポイソメラーゼ阻害剤、チューブリンバインダー、精製部分、またはその他の抗がん薬物を含む。
【0031】
[0036]別の態様では、本開示はまた、本明細書で提供される抗体またはその抗原結合性断片および1つまたは複数の薬学的に許容される担体を含む医薬組成物も提供する。
[0037]別の態様では、本開示はまた、本明細書で提供される抗体またはその抗原結合性断片をコードする単離されたポリヌクレオチドも提供する。
【0032】
[0038]別の態様では、本開示はまた、本明細書で提供される単離されたポリヌクレオチドを含むベクターを提供する。
[0039]別の態様では、本開示はまた、本明細書で提供されるベクターを含む宿主細胞を提供する。
【0033】
[0040]別の態様では、本開示はまた、本明細書で提供される抗体またはその抗原結合性断片を発現させる方法であって、本明細書で提供される宿主細胞を、本明細書で提供されるベクターが発現される条件下で培養するステップを含む、方法を提供する。
【0034】
[0041]別の態様では、本開示はまた、in vitroにおいてファゴサイトーシスを誘導する方法であって、本明細書で提供される抗体もしくはその抗原結合性断片または本明細書で提供される医薬組成物の存在下において、標的細胞を、任意選択で標的細胞上の標的抗原に特異的に結合する標的抗体と組み合わせて、SIRPα陽性ファゴサイトーシス細胞試料と接触させて、それにより、SIRPα陽性ファゴサイトーシス細胞による標的細胞のファゴサイトーシスを誘導するステップを含む、方法を提供する。
【0035】
[0042]別の態様では、本開示はまた、対象において標的細胞のファゴサイトーシスを誘導する方法であって、対象に、任意選択で標的細胞上の標的抗原に特異的に結合する標的抗体と組み合わせて、本明細書で提供される抗体もしくはその抗原結合性断片または本明細書で提供される医薬組成物を、標的細胞のファゴサイトーシスを誘導するのに有効な用量で投与するステップを含む、方法を提供する。
【0036】
[0043]別の態様では、本開示はまた、対象における標的細胞に対する標的抗体の抗体依存性細胞性ファゴサイトーシス(ADCP)作用を増加させる方法であって、
対象に、標的抗体と組み合わせて、治療有効量の本明細書で提供される抗体もしくはその抗原結合性断片または本明細書で提供される医薬組成物を投与して、それにより、標的細胞に対する標的抗体のADCPを増加させるステップを含み、
標的抗体が、標的細胞上に発現される標的抗原に結合する、
方法を提供する。
【0037】
[0044]別の態様では、本開示はまた、対象における標的細胞のファゴサイトーシスの誘導により利益を得ることができる疾患、障害、または状態を処置し、防止し、または軽減する方法であって、対象に、任意選択で標的細胞上の標的抗原に特異的に結合する標的抗体と組み合わせて、治療有効量の本明細書で提供される抗体もしくはその抗原結合性断片または本明細書で提供される医薬組成物を投与するステップを含む、方法を提供する。
【0038】
[0045]別の態様では、本開示はまた、対象におけるSIRPα関連の疾患、障害、または状態を処置し、防止し、または軽減する方法であって、対象に、任意選択で標的細胞上の標的抗原に特異的に結合する標的抗体と組み合わせて、治療有効量の本明細書で提供される抗体もしくはその抗原結合性断片または本明細書で提供される医薬組成物を投与するステップを含む、方法を提供する。
【0039】
[0046]ある特定の実施形態では、標的細胞は、CD47発現細胞である。
[0047]ある特定の実施形態では、標的細胞は、がん細胞、炎症細胞、および/または慢性感染細胞である。
【0040】
[0048]ある特定の実施形態では、標的抗原は、腫瘍抗原、腫瘍表面抗原、炎症性抗原、感染性微生物の抗原である。
[0049]ある特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号13の配列を含むHCDR1、配列番号14または配列番号17の配列を含むHCDR2、配列番号15の配列を含むHCDR3、配列番号10の配列を含むLCDR1、配列番号11の配列を含むLCDR2、および配列番号16の配列を含むLCDR3を含む。
【0041】
[0050]ある特定の実施形態では、疾患、障害、または状態は、がん、固形腫瘍、慢性感染症、炎症性疾患、多発性硬化症、自己免疫疾患、神経疾患、脳損傷、神経損傷、赤血球増加症、ヘモクロマトーシス、外傷、敗血症性ショック、線維症、アテローム性動脈硬化症、肥満、II型糖尿病、移植片機能不全、または関節炎である。
【0042】
[0051]ある特定の実施形態では、がんは、肛門がん、虫垂がん、星状細胞腫、基底細胞癌、胆嚢がん、胃がん、肺がん、気管支がん、骨がん、肝胆管がん、膵がん、乳がん、肝がん、卵巣がん、精巣がん、腎がん、腎盂尿管がん、唾液腺がん、小腸がん、尿道がん、膀胱がん、頭頚部がん、頭頚部扁平上皮細胞癌、脊椎がん、脳がん、頸がん、子宮がん、子宮内膜がん、結腸がん、結腸直腸がん、直腸がん、食道がん、胃腸管がん、皮膚がん、前立腺がん、下垂体がん、膣がん、甲状腺がん、咽喉がん、膠芽細胞腫、黒色腫、骨髄異形成症候群、肉腫、奇形腫、慢性リンパ球性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、急性リンパ球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫(NHL)、多発性骨髄腫、TまたはB細胞リンパ腫、GI器官間質腫、軟組織腫瘍、肝細胞癌、および腺癌である。
【0043】
[0052]ある特定の実施形態では、がんは、CD47陽性がんである。
[0053]ある特定の実施形態では、対象はヒトである。
[0054]ある特定の実施形態では、投与は経口、経鼻、静脈内、皮下、舌下、または筋肉内の投与である。
【0044】
[0055]ある特定の実施形態では、本明細書で提供される方法は、治療有効量の追加の治療剤を投与するステップをさらに含む。
[0056]ある特定の実施形態では、追加の治療剤は、化学療法剤、抗がん薬、放射線療法剤、免疫療法剤、抗血管新生剤、標的療法剤、細胞療法剤、遺伝子療法剤、ホルモン療法剤、抗ウイルス剤、抗生剤、鎮痛剤、抗酸化剤、金属キレート剤、サイトカイン、抗感染剤、および抗炎症剤からなる群から選択される。
【0045】
[0057]別の態様では、本開示はまた、本明細書で提供される抗体もしくはその抗原結合性断片または本明細書で提供される医薬組成物、および標的細胞上に発現される標的抗原に結合する標的抗体を含む、キットを提供する。
【0046】
[0058]ある特定の実施形態では、標的抗原は、腫瘍抗原、腫瘍表面抗原、または感染物質表面抗原である。
[0059]ある特定の実施形態では、本明細書で提供されるキットは、追加の治療剤をさらに含む。
【0047】
[0060]別の態様では、本開示はまた、SIRPα陽性細胞におけるSIRPαの活性を調節する方法であって、SIRPα陽性細胞を、本明細書で提供される抗体もしくはその抗原結合性断片または本明細書で提供される医薬組成物に曝露するステップを含む、方法を提供する。
【0048】
[0061]ある特定の実施形態では、細胞は、ファゴサイトーシス細胞である。
[0062]別の態様では、本開示はまた、試料を本明細書で提供される抗体もしくはその抗原結合性断片と接触させるステップ、ならびに試料中におけるSIRPαの存在または量を決定するステップを含む、試料中におけるSIRPαの存在または量を検出する方法も提供する。
【0049】
[0063]別の態様では、本開示はまた、
i)対象におけるSIRPα関連の疾患、障害、または状態を処置し、防止し、または軽減するため、
ii)対象において標的細胞のファゴサイトーシスを誘導するため、
ii)対象における標的細胞に対する標的抗体の抗体依存性細胞性ファゴサイトーシス(ADCP)作用を増加させるため
の医薬品の製造における、本明細書で提供される抗体もしくはその抗原結合性断片または本明細書で提供される医薬組成物の使用を提供する。
【0050】
[0064]別の態様では、本開示はまた、対象における疾患、障害、または状態の処置において標的抗体を強化する方法であって、対象に、標的抗体と組み合わせて、治療有効量の本明細書で提供される抗体もしくはその抗原結合性断片または本明細書で提供される医薬組成物を投与して、それにより、対象における疾患、障害、または状態の処置において標的抗体を強化するステップを含む、方法を提供する。
【0051】
[0065]ある特定の実施形態では、疾患、障害、または状態は、免疫関連疾患もしくは障害、腫瘍およびがん、自己免疫疾患、または感染性疾患である。
[0066]ある特定の実施形態では、免疫関連疾患または障害は、全身性エリテマトーデス、急性呼吸促迫症候群(ARDS)、脈管炎、重症筋無力症、特発性肺線維症、クローン病、喘息、リウマチ性関節炎、移植片対宿主病、脊椎関節症(たとえば、強直性脊椎炎、乾癬性関節炎、炎症性腸疾患を伴う孤発性急性腸炎性関節炎、反応性関節炎、ベーチェット病、分類不能型脊椎関節症、前部ブドウ膜炎、および若年性特発性関節炎)、多発性硬化症、子宮内膜症、糸球体腎炎、敗血症、糖尿病、急性冠症候群、虚血再灌流、乾癬、進行性全身性硬化症、アテローム性動脈硬化症、シェーグレン症候群、強皮症、または炎症性自己免疫性筋炎からなる群から選択される。
【0052】
[0067]ある特定の実施形態では、腫瘍およびがんは、固形腫瘍または血液悪性腫瘍であり、任意選択で、非小細胞肺がん、小細胞肺がん、腎細胞がん、結腸直腸がん、卵巣がん、乳がん、膵がん、胃癌、膀胱がん、食道がん、中皮腫、黒色腫、頭頚部がん、甲状腺がん、肉腫、前立腺がん、膠芽細胞腫、子宮頸がん、胸腺癌、白血病、リンパ腫、骨髄腫、菌状息肉腫、メルケル細胞がん、および他の血液悪性腫瘍、たとえば、古典的ホジキンリンパ腫(CHL)、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫、T細胞/組織球豊富型B細胞リンパ腫、EBV陽性および陰性PTLD、ならびにEBV関連びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、形質芽細胞性リンパ腫、節外性NK/T細胞リンパ腫、鼻咽頭癌、およびHHV8関連原発性滲出性リンパ腫、ホジキンリンパ腫、中枢神経系(CNS)の新生物、たとえば、原発性CNSリンパ腫、脊髄軸腫瘍、脳幹部神経膠腫、肛門がん、虫垂がん、星状細胞腫、基底細胞癌、胆嚢がん、胃がん、肺がん、気管支がん、骨がん、肝胆管がん、膵がん、乳がん、肝がん、卵巣がん、精巣がん、腎がん、腎盂尿管がん、唾液腺がん、小腸がん、尿道がん、膀胱がん、頭頚部がん、脊椎がん、脳がん、頸がん、子宮がん、子宮内膜がん、結腸がん、結腸直腸がん、直腸がん、食道がん、胃腸管がん、皮膚がん、前立腺がん、下垂体がん、膣がん、甲状腺がん、咽喉がん、膠芽細胞腫、黒色腫、骨髄異形成症候群、肉腫、奇形腫、慢性リンパ球性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、急性リンパ球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、TもしくはB細胞リンパ腫、GI器官間質腫、軟組織腫瘍、肝細胞癌、ならびに腺癌、またはこれらの転移からなる群から選択される。
【図面の簡単な説明】
【0053】
図1-1】[0068]図1は、抗SIRPα抗体025c、015c、042c、059c、hu1H9G4(図1A)、071c、073c(図1B)のCHOK1-ヒトSIRPα v1細胞に対する、および005c(図1C)の293F-ヒトSIRPα v1細胞に対する、FACS結合曲線を示す。
図1-2】同上。
図1-3】同上。
図2-1】[0069]図2は、CHOK1-ヒトSIRPα v2細胞に対する抗SIRPα抗体025c、015c、042c、071c、073c、hu1H9G4(図2A)、025c、059c、005c、HEFLB(図2B)のFACS結合曲線を示す。
図2-2】同上。
図3-1】[0070]図3は、抗SIRPα抗体のCHOK1-ヒトSIRPβ細胞に対するFACS結合曲線(図3C)、ならびにそれらの組換えタンパク質ヒトSIRPβ ECD(図3Aおよび3B)およびヒトSIRPβl ECD(図3Dおよび3E)に対するELISA結合曲線を示す。
図3-2】同上。
図3-3】同上。
図4-1】[0071]図4は、抗SIRPα抗体の293F-ヒトSIRPγ細胞に対するFACS結合曲線(図4Aおよび図4B)、ならびにそれらの組換えタンパク質カニクイザルSIRPγ ECDに対するELISA結合曲線(図4C)を示す。
図4-2】同上。
図5-1】[0072]図5は、抗SIRPα抗体の組換えタンパク質C57BL/6マウスSIRPα ECDに対するELISA結合(図5A)、ならびにそれらのCHOK1-カニクイザルSIRPα細胞に対するFACS結合曲線(図5Bおよび図5C)を示す。
図5-2】同上。
図6】[0073]図6は、競合的ELISAアッセイによって測定した、抗SIRPα抗体025c、015c、042c、059c、071c、073c、hu1H9G4(図6A)、025c、005c、059c(図6B)のCD47とSIRPα v1との相互作用のブロッキング活性を示す。
図7】[0074]図7は、競合的ELISAアッセイによって測定した、抗SIRPα抗体025c、059c(図7A)、025c、015c、042c、071c、073c、hu1H9G4(図7B)のCD47とSIRPα v2との相互作用のブロッキング活性を示す。
図8-1】[0075]図8は、SHP-1動員アッセイの原理(図8A)、およびこのアッセイによって測定した、抗SIRPα抗体のSHP-1動員のブロッキング活性(図8B)を示す。
図8-2】同上。
図9-1】[0076]図9は、HDX-MSによって測定した、抗SIRPα抗体025c(図9A)、042c(図9B)、073c(図9C)、hu1H9G4(図9D)、HEFLB(図9E)の可能性のある結合エピトープを示す。
図9-2】同上。
図9-3】同上。
図9-4】同上。
図10-1】[0077]図10は、示される抗体の存在下におけるヒトマクロファージによるRaji細胞(図10A)、DLD1細胞(図10B)、ならびにRaji/PD-L1細胞(図10Cおよび図10D)のファゴサイトーシスを示す。
図10-2】同上。
図10-3】同上。
図11-1】[0078]図11は、示される抗体の存在下におけるヒトM0分極化マクロファージ(図11A)またはヒトM1分極化マクロファージ(図11B)によるRaji/PD-L1細胞のファゴサイトーシスを示す。
図11-2】同上。
図12-1】[0079]図12は、抗SIRPα処置および抗CLDN18.2処置の組合せの活性を評価するin vivo同系マウス結腸癌モデルの結果を示す。図12Aは、研究の終了時におけるそれぞれの腫瘍の重量を示し、図12Bは、それぞれの研究群の平均腫瘍体積成長曲線を示し、図12Cは、それぞれの腫瘍の個別の体積成長曲線を示す。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001。
図12-2】同上。
図12-3】同上。
図12-4】同上。
図12-5】同上。
図12-6】同上。
図12-7】同上。
図13-1】[0080]図13は、抗SIRPα抗体の存在下における同種樹状細胞により刺激されたT細胞のIFNγ分泌(図13A)、CD4+ T細胞(図13B)およびCD8+ T細胞(図13C)の増殖比を示す。
図13-2】同上。
図14-1】[0081]図14は、ヒト化抗体の、CHOK1-ヒトSIRPα v1細胞(図14A)、CHOK1-ヒトSIRPα v2細胞(図14B)、CHOK1-ヒトSIRPβ細胞(図14C)、および293F-SIRPγ細胞(図14D)に対するFACS結合曲線を示す。
図14-2】同上。
図15】[0082]図15は、競合的ELISAアッセイによって測定した、ヒト化抗体のCD47とSIRPαとの相互作用のブロッキング活性を示す。(図15A)ヒトCD47とヒトSIRPα v1との相互作用のブロッキング、(図15B)ヒトCD47とヒトSIRPα v2との相互作用のブロッキング。
図16】[0083]図16は、競合的FACSアッセイによって測定した、ヒト化抗体のCD47とSIRPαとの相互作用のブロッキング活性を示す。(図16A)ヒトCD47とヒトSIRPα v1との相互作用のブロッキング、(図16B)ヒトCD47とヒトSIRPα v2との相互作用のブロッキング。
図17】[0084]図17は、SHP-1動員アッセイによって測定した、ヒト化抗体のSHP-1動員のブロッキング活性を示す。
図18-1】[0085]図18は、示される抗体の存在下におけるヒトマクロファージによるRaji/PD-L1細胞のファゴサイトーシスを示す。(図18A図18C、および図18E)抗SIRPα抗体に加えて抗PD-L1抗体の存在下における、SIRPAホモ接合性v1/v1(A)、SIRPAホモ接合性v2/v2(C)、またはSIRPAヘテロ接合性v1/v2(E)ドナーに由来するヒトマクロファージによるRaji/PD-L1細胞のファゴサイトーシス、(図18Bおよび図18D)抗SIRPα抗体に加えてリツキシマブの存在下における、SIRPAホモ接合性v1/v1(B)またはSIRPAホモ接合性v2/v2(D)ドナーのヒトマクロファージによるRaji/PD-L1細胞のファゴサイトーシス。
図18-2】同上。
図18-3】同上。
図18-4】同上。
図18-5】同上。
【発明を実施するための形態】
【0054】
[0086]本発明の詳細な説明
[0087]以下の本開示の記述は、本開示の種々の実施形態を説明することを意図しているのみである。したがって、議論する特定の改変は本開示の範囲を限定するものと解釈すべきではない。本開示の範囲から逸脱することなしに種々の等価物、変更、および改変ができることは、当業者には明らかであり、そのような等価の実施形態が本明細書に含まれるべきことが理解される。出版物、特許、および特許出願を含む本明細書で引用した全ての参照文献は、参照により全体として本明細書に組み込まれる。
【0055】
[0088]定義
[0089]本明細書で用いる用語「抗体」は、特定の抗原に結合する任意の免疫グロブリン、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多価抗体、二価抗体、一価抗体、多重特異的抗体、または二重特異的抗体を含む。天然のインタクトな抗体は2つの重(H)鎖および2つの軽(L)鎖を含む。哺乳動物の重鎖はアルファ、デルタ、イプシロン、ガンマ、およびミューに分類され、それぞれの重鎖は可変領域(VH)ならびに第1、第2、第3、および任意選択で第4の定常領域(それぞれCH1、CH2、CH3、CH4)からなる。哺乳動物の軽鎖はλまたはκと分類され、それぞれの軽鎖は可変領域(VL)および定常領域からなる。抗体は「Y」の形状を有し、Yの軸はジスルフィド結合を介して互いに結合した2つの重鎖の第2および第3の定常領域からなる。Yのそれぞれのアームは、1本の軽鎖の可変および定常領域に結合した1本の重鎖の可変領域および第1の定常領域を含む。軽鎖および重鎖の可変領域は抗原の結合に関与している。両方の鎖の可変領域は一般に、相補性決定領域(CDR)(LCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む軽鎖CDR、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3を含む重鎖CDR)と呼ばれる3つの高度に可変性のループを含む。本明細書で開示する抗体および抗原結合性断片のCDRの境界は、Kabat、IMGT、Chothia、またはAl-Lazikaniの規則によって定義され、または同定されてよい(Al-Lazikani,B.,Chothia,C.,Lesk,A.M.,J.Mol.Biol.,273(4),927(1997);Chothia,C.et al.,J Mol Biol.Dec 5;186(3):651-63(1985);Chothia,C.and Lesk,A.M.,J.Mol.Biol.,196,901(1987);Chothia,C.et al.,Nature.Dec 21-28;342(6252):877-83(1989);Kabat E.A.et al.,Sequences of Proteins of immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991);Marie-Paule Lefranc et al.,Developmental and Comparative Immunology,27:55-77(2003);Marie-Paule Lefranc et al.,Immunome Research,1(3),(2005);Marie-Paule Lefranc,Molecular Biology of B cells(second edition),chapter 26,481-514,(2015))。3つのCDRは、CDRよりも高度に保存され、高度に可変性のループを支持するスキャフォールドを形成するフレームワーク領域(FR)(LFR1、LFR2、LFR3、およびLFR4を含む軽鎖FR、ならびにHFR1、HFR2、HFR3、およびHFR4を含む重鎖FR)として知られる隣接する区間の間に挿入されている。重鎖および軽鎖の定常領域は抗原結合には関与しないが、種々のエフェクター機能を呈する。抗体は、その重鎖の定常領域のアミノ酸配列に基づいてクラスに割り付けられる。抗体の5つの主なクラスまたはアイソタイプはIgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMであり、これらはそれぞれアルファ、デルタ、イプシロン、ガンマ、およびミュー重鎖の存在によって特徴付けられる。主な抗体クラスのいくつかは、IgG1(ガンマ1重鎖)、IgG2(ガンマ2重鎖)、IgG3(ガンマ3重鎖)、IgG4(ガンマ4重鎖)、IgA1(アルファ1重鎖)、またはIgA2(アルファ2重鎖)等のサブクラスに分割される。
【0056】
[0090]ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体はその任意の抗原結合性断片を包含する。本明細書で用いる用語「抗原結合性断片」は、1つまたは複数のCDRを含む抗体の一部から形成された抗体断片、または抗原に結合するが、インタクトな天然の抗体構造を含まない任意の他の抗体断片を意味する。抗原結合性断片の例には、限定なく、ダイアボディ、Fab、Fab’、F(ab’)、Fv断片、ジスルフィド安定化Fv断片(dsFv)、(dsFv)、二重特異的dsFv(dsFv-dsFv’)、ジスルフィド安定化ダイアボディ(dsダイアボディ)、単鎖抗体分子(scFv)、scFvダイマー(二価ダイアボディ)、二重特異的抗体、多重特異的抗体、ラクダ化単鎖ドメイン抗体、ナノボディ、ドメイン抗体、または二価ドメイン抗体が含まれる。抗原結合性断片は、親抗体が結合する同じ抗原に結合することができる。
【0057】
[0091]「Fab」は、抗体に関して、ジスルフィド結合によって単一の重鎖の可変領域および第1の定常領域に結合した単一の軽鎖(可変領域と定常領域の両方)からなる抗体の部分を意味する。
【0058】
[0092]「Fab’」は、ヒンジ領域の一部を含むFab断片を意味する。
[0093]「F(ab’)」は、Fab’のダイマーを意味する。
[0094]「Fc」は、抗体(たとえばIgG、IgA、またはIgDアイソタイプ)に関して、ジスルフィド結合を介して第2の重鎖の第2および第3の定常ドメインに結合した第1の重鎖の第2および第3の定常ドメインからなる抗体の部分を意味する。IgMおよびIgEアイソタイプの抗体に関するFcは、第4の定常ドメインをさらに含む。抗体のFc部分は、抗体依存性細胞媒介細胞毒性(ADCC)および補体依存性細胞毒性(CDC)等の種々のエフェクター機能に関与しているが、抗原結合には機能しない。
【0059】
[0095]「Fv」は、抗体に関して、完全な抗原結合部位を担う抗体の最小断片を意味する。Fv断片は、単一の重鎖の可変領域に結合した単一の軽鎖の可変領域からなる。
[0096]「単鎖Fv抗体」または「scFv」は、直接またはペプチドリンカー配列を介して相互に連結された軽鎖可変領域および重鎖可変領域からなる操作された抗体を意味する(Huston JS et al.Proc Natl Acad Sci USA,85:5879(1988))。
【0060】
[0097]「単鎖Fv-Fc抗体」または「scFv-Fc」は、抗体のFc領域に連結されたscFvからなる操作された抗体を意味する。
[0098]「ラクダ化単鎖ドメイン抗体」、「重鎖抗体」、または「HCAb」は、2つのVドメインを含み、軽鎖を含まない抗体を意味する(Riechmann L.and Muyldermans S.,J Immunol Methods.Dec 10;231(1-2):25-38(1999);Muyldermans S.,J Biotechnol.Jun;74(4):277-302(2001);WO94/04678;WO94/25591;米国特許第6,005,079号)。重鎖抗体はもともとラクダ科(ラクダ、ヒトコブラクダ、およびリャマ)に由来する。ラクダ化抗体は軽鎖を有しないが、真正の抗原結合能力を有する(Hamers-Casterman C.et al.,Nature.Jun 3;363(6428):446-8(1993);Nguyen VK.et al.Immunogenetics.Apr;54(1):39-47(2002);Nguyen VK.et al.Immunology.May;109(1):93-101(2003))。重鎖抗体の可変ドメイン(VHHドメイン)は、適応免疫応答によって生成される既知の最小の抗原結合単位を表す(Koch-Nolte F.et al.,FASEB J.Nov;21(13):3490-8.Epub 2007 Jun 15(2007))。
【0061】
[0099]「ナノボディ」は、重鎖抗体のVHHドメインおよび2つの定常ドメイン、CH2およびCH3からなる抗体断片を意味する。
[00100]「ダイアボディ」または「dAb」には、2つの抗原結合部位を有する小さな抗体断片が含まれ、断片は同じポリペプチド鎖の中でVドメインに連結されたVドメインを含む(V-VまたはV-V)(たとえばHolliger P.et al.,Proc Natl Acad Sci USA.Jul 15;90(14):6444-8(1993);EP404097;WO93/11161を参照)。同じ鎖の中の2つのドメインの間での対形成を可能にするには短すぎるリンカーを用いることによって、ドメインは別の鎖の相補的なドメインと対を形成することを強制され、それにより2つの抗原結合部位が創出される。抗原結合部位は同じまたは異なる抗原(またはエピトープ)を標的とし得る。ある特定の実施形態では、「二重特異的dsダイアボディ」は、2つの異なる抗原(またはエピトープ)を標的とするダイアボディである。
【0062】
[00101]「ドメイン抗体」は、重鎖の可変領域または軽鎖の可変領域のみを含む抗体断片を意味する。ある例では、2つ以上のVドメインがペプチドリンカーと共有結合的に接合されて、二価または多価のドメイン抗体が創出される。二価ドメイン抗体の2つのVドメインは、同じまたは異なる抗原を標的とし得る。
【0063】
[00102]本明細書で用いる用語「価」は、所与の分子の中の特定した数の抗原結合部位の存在を意味する。用語「一価」は、ただ一つの単一の抗原結合部位を有する抗体または抗原結合性断片を意味し、用語「多価」は、複数の抗原結合部位を有する抗体または抗原結合性断片を意味する。したがって、用語「二価」、「四価」、および「六価」は、抗原結合性分子の中のそれぞれ2つの結合部位、4つの結合部位、および6つの結合部位の存在を示す。一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は二価である。
【0064】
[00103]本明細書で用いる場合、「二重特異的」抗体は、2つの異なるモノクローナル抗体に由来する断片を有し、2つの異なるエピトープに結合することができる人工の抗体を意味する。2つのエピトープは同じ抗原の上に存在してもよく、または2つの異なる抗原の上に存在してもよい。
【0065】
[00104]ある特定の実施形態では、「scFvダイマー」は、別のV-V部分と二量化した(ペプチドリンカーによって二量化された)V-Vを含む二価ダイアボディまたは二重特異的scFv(BsFv)であり、それにより1つの部分のVが他の部分のVと協調して、同じ抗原(またはエピトープ)または異なる抗原(またはエピトープ)を標的とすることができる2つの結合部位を形成する。他の実施形態では、「scFvダイマー」は、(ペプチドリンカーによって連結された)VL1-VH2と会合した(これもペプチドリンカーによって連結した)VH1-VL2を含む二重特異的ダイアボディであり、それによりVH1とVL1が協調し、VH2とVL2が協調して、それぞれの協調した対が異なる抗原特異性を有する。
【0066】
[00105]「dsFv」は、単一の軽鎖の可変領域と単一の重鎖の可変領域との間の連結がジスルフィド結合であるジスルフィド安定化Fv断片を意味する。一部の実施形態では、「(dsFv)」または「(dsFv-dsFv’)」は、3つのペプチド鎖、即ちペプチドリンカー(たとえば長い可撓性リンカー)によって連結され、ジスルフィド架橋を介してそれぞれ2つのV部分に結合した2つのV部分を含む。一部の実施形態では、dsFv-dsFv’は、ジスルフィドで対を形成したそれぞれの重鎖および軽鎖が異なる抗原特異性を有する二重特異的である。
【0067】
[00106]本明細書で用いる用語「キメラ」は、1つの種に由来する重鎖および/または軽鎖の一部と、異なる種に由来する重鎖および/または軽鎖の残りとを有する抗体または抗原結合性断片を意味する。説明的な例では、キメラ抗体はヒトに由来する定常領域と、マウス等の非ヒト動物に由来する可変領域とを含んでよい。一部の実施形態では、非ヒト動物は哺乳動物、たとえばマウス、ラット、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、モルモット、またはハムスターである。
【0068】
[00107]本明細書で用いる用語「ヒト化」は、抗体または抗原結合性断片が非ヒト動物に由来するCDR、ヒトに由来するFR領域、および適用される場合にはヒトに由来する定常領域を含むことを意味する。
【0069】
[00108]本明細書で用いる用語「親和性」は、免疫グロブリン分子(即ち抗体)またはその断片と抗原との間の非共有結合相互作用の強さを意味する。
[00109]本明細書で用いる用語「特異的結合」または「特異的に結合する」は、たとえば抗体と抗原のような2つの分子の間の非ランダム結合反応を意味する。特異的結合は、たとえば抗原と抗原結合性分子との間の結合が平衡に達したときのK値、即ち解離速度と会合速度との比(koff/kon)によって表される結合親和性において特徴付けることができる。Kは、それだけに限らないが、表面プラスモン共鳴法、ミクロスケールサーモフォレーシス法、HPLC-MS法、およびフローサイトメトリー(FACSなど)法を含む当技術分野で既知の任意の従来法を用いて決定してよい。10-6M以下(たとえば5×10-7M以下、2×10-7M以下、10-7M以下、5×10-8M以下、2×10-8M以下、10-8M以下、5×10-9M以下、4×10-9M以下、3×10-9M以下、2×10-9M以下、または10-9M以下)のK値は、抗体またはその抗原結合性断片とSIRPα(たとえばヒトSIRPα)との間の特異的結合を示し得る。
【0070】
[00110]本明細書で用いる「ヒトSIRPαとの結合について競合する」能力は、第1の抗体または抗原結合性断片の、ヒトSIRPαと第2の抗SIRPα抗体との間の結合相互作用を何らかの検出可能な程度で阻害する能力を意味する。ある特定の実施形態では、ヒトSIRPαとの結合について競合する抗体または抗原結合性断片は、ヒトSIRPαと第2の抗ヒトSIRPα抗体との間の結合相互作用を少なくとも85%、または少なくとも90%阻害する。ある特定の実施形態では、この阻害は95%より大きく、または99%より大きくてよい。
【0071】
[0077]本明細書で用いる用語「エピトープ」は、それに抗体が結合する抗原の上の特定の原子またはアミノ酸の群を意味する。2つの抗体が抗原に対して競合的結合を示せば、それらは抗原の中の同じまたは密接に関連したエピトープに結合し得る。エピトープは線状またはコンフォメーション状(即ち、隔たれたアミノ酸残基を含む)であってよい。たとえば、抗体または抗原結合性断片が参照抗体の抗原への結合を少なくとも85%、または少なくとも90%、または少なくとも95%ブロックすれば、その抗体または抗原結合性断片は、参照抗体と同じ/密接に関連したエピトープと結合するとみなしてよい。
【0072】
[0078]本明細書で用いる用語「アミノ酸」は、それぞれのアミノ酸に特有の側鎖とともにアミン(-NH)およびカルボキシル(-COOH)官能基を含む有機化合物を意味する。本開示においてアミノ酸の名称は標準的な1文字または3文字のコードとして表すこともでき、それらを以下に要約する。
【0073】
【表1】
【0074】
[0079]アミノ酸配列に関する「保存的置換」は、アミノ酸残基を、同様の物理化学的特性を有する側鎖を有する異なるアミノ酸残基で置き換えることを意味する。たとえば、保存的置換は、疎水性側鎖を有するアミノ酸残基(たとえばMet、Ala、Val、Leu、およびIle)の間で、中性親水性側鎖を有するアミノ酸残基(たとえばCys、Ser、Thr、Asn、およびGln)の間で、酸性側鎖を有するアミノ酸残基(たとえばAsp、Glu)の間で、塩基性側鎖を有するアミノ酸残基(たとえばHis、Lys、およびArg)の間で、または芳香族側鎖を有するアミノ酸残基(たとえばTrp、Tyr、およびPhe)の間で行うことができる。当技術分野で既知のように、保存的置換は通常、タンパク質のコンフォメーション構造において顕著な変化を生じず、したがってタンパク質の生物学的活性を保持することができる。
【0075】
[0080]本明細書で用いる用語「相同」は、最適に整列させたときに別の配列と少なくとも60%(たとえば少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%)の配列同一性を有する核酸配列(またはその相補的ストランド)またはアミノ酸配列を意味する。
【0076】
[0081]アミノ酸配列(または核酸配列)に関する「配列同一性パーセント(%)」は、配列を整列させ、必要な場合には同一のアミノ酸(または核酸)の数が最大になるようにギャップを導入した後の、参照配列におけるアミノ酸(または核酸)残基と同一である候補配列におけるアミノ酸(または核酸)残基のパーセンテージとして定義される。換言すれば、アミノ酸配列(または核酸配列)の配列同一性パーセント(%)は、比較する参照配列に関して同一であるアミノ酸残基(または塩基)の数を、候補配列または参照配列のどちらか短い方におけるアミノ酸残基(または塩基)の全数で除することによって計算することができる。アミノ酸残基の保存的置換は、同一の残基とみなしてもよく、みなさなくてもよい。アミノ酸(または核酸)の配列同一性パーセントを計算するための整列は、たとえばBLASTN、BLASTp(U.S.National Center for Biotechnology Information(NCBI)のウェブサイトから入手可能、Altschul S.F.et al.,J.Mol.Biol.,215:403-410(1990);Stephen F.et al.,Nucleic Acids Res.,25:3389-3402(1997)も参照されたい)、ClustalW2(European Bioinformatics Instituteのウェブサイトから入手可能、Higgins D.G.et al.,Methods in Enzymology,266:383-402(1996);Larkin M.A.et al.,Bioinformatics(Oxford,England),23(21):2947-8(2007)も参照されたい)、およびALIGNまたはMegalign(DNASTAR)ソフトウェア等の公衆利用可能なツールを用いて達成することができる。当業者であれば、ツールによって提供されるデフォルトパラメーターを用いてもよく、またはたとえば好適なアルゴリズムを選択することによって整列のために適切なパラメーターをカスタマイズしてもよい。
【0077】
[0082]本明細書で用いる「エフェクター機能」は、抗体のFc領域の、C1複合体およびFc受容体等のそのエフェクターへの結合に帰せられる生物学的活性を意味する。例示的なエフェクター機能には、抗体とC1複合体上のC1qとの相互作用によって媒介される補体依存性細胞毒性(CDC)、抗体のFc領域のエフェクター細胞上のFc受容体への結合によって媒介される抗体依存性細胞媒介細胞毒性(ADCC)、およびファゴサイトーシスが含まれる。エフェクター機能は、Fc受容体結合アッセイ、C1q結合アッセイ、および細胞溶解アッセイ等の種々のアッセイを用いて評価することができる。
【0078】
[0083]「単離された」物質は、天然の状態から人の手によって改変されている。「単離された」組成物または物質が天然に生じるならば、それはその元の環境から変化しもしくは除去されているか、またはその両方である。たとえば、生きている動物の中に天然に存在するポリヌクレオチドまたはポリペプチドは「単離されて」いないが、同じポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、その天然の状態において共存する物質から十分に分離されて実質的に純粋な状態で存在するならば、「単離されて」いる。「単離された核酸配列」は、単離された核酸分子の配列を意味する。ある特定の実施形態では、「単離された抗体またはその抗原結合性断片」は、電気泳動法(SDS-PAGE、等電点電気泳動、キャピラリ電気泳動等)またはクロマトグラフィー法(イオン交換クロマトグラフィーまたは逆相HPLC)によって決定して少なくとも60%、70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の純度を有する抗体またはその抗原結合性断片を意味する。
【0079】
[0084]本明細書で用いる用語「ベクター」は、その中に遺伝要素が作動可能に挿入され、その遺伝要素の発現が生じて、それにより、その遺伝要素によってコードされるタンパク質、RNA、またはDNAが産生され、またはその遺伝要素が複製されるビヒクルを意味する。ベクターは、宿主細胞をトランスフォーム、トランスデュース、またはトランスフェクトして、それが宿主細胞の中に運搬する遺伝要素の発現を生じさせるために用い得る。ベクターの例には、プラスミド、ファージミド、コスミド、酵母人工染色体(YAC)、細菌人工染色体(BAC)、またはP1由来人工染色体(PAC)等の人工染色体、ラムダファージまたはM13ファージ等のバクテリオファージ、および動物ウイルスが含まれる。ベクターは、プロモーター配列、転写開始配列、エンハンサー配列、選択可能な要素、およびレポーター遺伝子等の発現を制御するための種々の要素を含んでよい。さらに、ベクターは複製の起点を含んでよい。ベクターは、ウイルス粒子、リポソーム、またはタンパク質コーティングを含むがこれらに限定されない、ベクターの細胞内への進入を補助する物質を含んでもよい。ベクターは発現ベクターまたはクローニングベクターであってよい。本開示は、抗体またはその抗原結合性断片をコードする本明細書で提供される核酸配列、核酸配列に作動可能に連結された少なくとも1つのプロモーター(たとえばSV40、CMV、EF-1α)、および少なくとも1つの選択マーカーを含むベクター(たとえば発現ベクター)を提供する。
【0080】
[0085]本明細書で用いる語句「宿主細胞」は、その中に外来のポリヌクレオチドおよび/またはベクターを導入することができ、またはこれらが導入された細胞を意味する。
[0086]用語「対象」は、ヒトおよび非ヒト動物を含む。非ヒト動物は、全ての脊椎動物、たとえば哺乳動物および非ヒト霊長類、マウス、ラット、ネコ、ウサギ、ヒツジ、イヌ、雌ウシ、ニワトリ、両生類、および爬虫類等の非哺乳動物を含む。注記した場合を除いて、用語「患者」または「対象」は、本明細書では相互交換可能に用いられる。
【0081】
[0087]用語「抗腫瘍活性」は、腫瘍細胞の増殖、生存性、または転移活性の低減を意味する。たとえば、抗腫瘍活性は、治療のない対照と比較して、治療中に生じる異常な細胞の増殖速度の低下、または腫瘍のサイズの安定性もしくは低減、あるいは治療による長期生存によって示すことができる。そのような活性は、異種移植モデル、同種移植モデル、マウス乳腺腫瘍ウイルス(MMTV)モデル、および抗腫瘍活性を検討するための当技術分野で既知のその他のモデルを含むがこれらに限らない許容されたin vitroまたはin vivoの腫瘍モデルを用いて評価することができる。
【0082】
[0088]本明細書で用いる疾患、障害、もしくは状態を「処置すること」またはそれらの「処置」は、疾患、障害、もしくは状態を防止しまたは軽減すること、疾患、障害、もしくは状態の発症または発生速度を遅くすること、疾患、障害、もしくは状態を発生させるリスクを低減すること、疾患、障害、もしくは状態に関連する症状の発生を防止しまたは遅延させること、疾患、障害、もしくは状態に関連する症状を低減しまたは終止させること、疾患、障害、もしくは状態を完全にまたは部分的に寛解させること、疾患、障害、もしくは状態を治癒させること、またはそれらのいくつかの組合せを含む。
【0083】
[0089]用語「診断」、「診断する」、または「診断すること」は、SIRPα関連疾患の同定のような、病的な状態、疾患、または状態の同定を意味し、または特定の処置レジメンによって恩恵を受ける可能性のあるSIRPα関連疾患を有する対象の同定を意味する。一部の実施形態では、診断はSIRPαの異常な量または活性の同定を含む。一部の実施形態では、診断は対象におけるがんまたは自己免疫疾患の同定を意味する。
【0084】
[0090]本明細書で用いる場合、用語「生物学的試料」または「試料」は、目的の対象から得られまたは由来し、たとえば物理的、生化学的、化学的、および/または生理学的特徴に基づいて特徴付けおよび/または同定される、細胞および/またはその他の分子実体を含む生物学的組成物を意味する。生物学的試料は、当業者には既知の任意の方法によって得られる対象の細胞、組織、臓器、および/または生物学的流体を含むが、これらに限定されない。一部の実施形態では、生物学的試料は流体試料である。一部の実施形態では、流体試料は全血、血漿、血清、粘液(鼻漏および痰を含む)、腹水、胸膜液、胸水、唾液、尿、滑液、脳脊髄液(CSF)、胸腔穿刺液、腹部の液、腹水、または心嚢液である。一部の実施形態では、生物学的試料は対象の心臓、肝臓、脾臓、肺、腎臓、皮膚、または血管から得られる組織または細胞である。
【0085】
[0091]「SIRPα」は、本明細書で使用される場合、主として骨髄系細胞、樹状細胞によって発現され、幹細胞またはニューロンによっても発現される、シグナル調節タンパク質(SIRP)ファミリーの調節性膜糖タンパク質を指す。SIRPαの構造には、細胞外ドメインおよび細胞質ドメインが含まれる。SIRPαの細胞外ドメインは、1つの膜遠位側Ig可変様(IgV)フォールドおよび2つの膜近位側Ig定常様(IgC)フォールドからなる。SIRPαのIgVドメインは、CD47の細胞外Igドメインの結合を担う。ある特定の実施形態では、SIRPαは、ヒトSIRPαである。ヒトSIRPαをコードする遺伝子は、多型遺伝子であり、複数のバリアントがヒト集団において説明されている。最も一般的なタンパク質バリアントは、SIRPα v1およびSIRPα v2(受託番号NP_542970(P78324)およびCAA71403)である。本明細書で使用されるSIRPαは、他の動物種、たとえば、とりわけマウスおよびカニクイザルに由来し得る。ハツカネズミ(マウス)SIRPαタンパク質の例示的な配列は、NCBI参照配列番号NP_031573またはBAA20376.1またはBAA13521.1に開示されている。カニクイザル(サル)SIRPαタンパク質の例示的な配列は、NCBI参照配列番号NP_001271679に開示されている。
【0086】
[0092]SIRPαに加えて、SIRPファミリーにはまた、SIRPβおよびSIRPγを含め、いくつかの他の膜貫通糖タンパク質も含まれる。SIRPファミリーのそれぞれのメンバーは、別個の膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインとともに、3つの類似の細胞外Ig様ドメインを含む。SIRPベータ遺伝子によってコードされる「SIRPβ」は、DNAX活性化タンパク質12またはDAP12と称される膜貫通タンパク質とのその会合を通じて、その細胞質尾部の細胞内シグナル伝達によって正のシグナルを生成する。DAP12の細胞質尾部は、SIRPβ1を活性化機序に連結させる免疫受容体活性化チロシンモチーフ(ITAM)を有する。SIRPgとも名付けられる「SIRPγ」は、SIRPG遺伝子によってコードされ、細胞外IgドメインはSIRPαおよびSIRPβに高度に相同であるが、SIRPγの細胞質尾部は異なる。SIRPγもまた、CD47に結合することが示されているが、SIRPαよりも親和性は低い。
【0087】
[0093]用語「抗SIRPα抗体」は、SIRPα(たとえばヒトまたはサルのSIRPα)に特異的に結合することができる抗体を意味する。用語「抗ヒトSIRPα抗体」は、ヒトSIRPαに特異的に結合することができる抗体を意味する。
【0088】
[0094]本明細書で用いる「SIRPα関連」の疾患、障害、または状態は、SIRPαの増加したまたは減少した発現または活性によって惹起され、悪化され、またはその他に関連する任意の疾患または状態を意味する。一部の実施形態では、SIRPα関連の疾患、障害、または状態は、たとえば自己免疫疾患等の免疫関連障害である。一部の実施形態では、SIRPα関連の疾患、障害、または状態は、たとえばがん等の過剰な細胞の増殖に関連する障害である。ある特定の実施形態では、SIRPα関連の疾患または状態は、SIRPα遺伝子および/またはSIRPαシグネチャー遺伝子の発現または過剰発現を特徴とする。ある特定の実施形態では、SIRPα関連疾患または状態は、CD47の発現または過剰発現を特徴とする。
【0089】
[0095]用語「薬学的に許容される」は、指定した担体、ビヒクル、希釈剤、賦形剤、および/または塩が一般に、その製剤を構成する他の成分と化学的におよび/または物理的に適合性があり、その受容者に生理学的に適合性があることを示す。
【0090】
[0096]「SIRPα陽性細胞」という用語は、本明細書で使用される場合、細胞の表面上にSIRPαを発現する細胞(たとえば、ファゴサイトーシス細胞)を指す。一部の実施形態では、「SIRPα陽性細胞」は、細胞の表面上にSIRPβまたはSIRPγも発現し得る。
【0091】
[0097]抗SIRPα抗体
[0098]本開示は、抗SIRPα抗体およびその抗原結合性断片を提供する。本明細書で提供される抗SIRPα抗体および抗原結合性断片は、SIRPαに特異的に結合することができる。
【0092】
[0099]ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体およびその抗原結合性断片は、バイオレイヤーインターフェロメトリー技術(Octetシステム)を使用して、10-7M以下、8×10-8M以下、5×10-8M以下、2×10-8M以下、8×10-9M以下、5×10-9M以下、2×10-9M以下、10-9M以下、8×10-10M以下、7×10-10M以下、または6×10-10M以下、または5×10-10M以下、または4×10-10M以下のK値で、ヒトSIRPαに特異的に結合する。Octetシステムは、バイオレイヤーインターフェロメトリー(BLI)技術に基づいており、たとえば、Sultana A.et al.,Current protocols in protein science,02 Feb 2015,79:19.25.1-19.25.26を参照されたい。ある特定の実施形態では、K値は、本開示の実施例5.2.5に記載される方法によって測定される。
【0093】
[00100]本明細書で提供される抗体またはその抗原結合性断片のヒトSIRPαへの結合は、「50%効果濃度」(EC50)値によっても表すことができる。EC50値は、その最大の結合の50%が観察される抗体の濃度を意味する。EC50値は当技術分野で既知の結合アッセイ、たとえば酵素連結免疫吸着アッセイ(ELISA)等の直接または間接結合アッセイ、フローサイトメトリーアッセイ、およびその他の結合アッセイによって測定することができる。ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体およびその抗原結合性断片は、酵素連結免疫吸着アッセイ(ELISA)によって測定して、0.5nM以下、0.2nM以下、0.1nM以下、0.09nM以下、0.08nM以下、0.07nM以下、0.06nM以下、または0.05nM以下のEC50(即ち、50%結合濃度)で、ヒトSIRPα v1またはヒトSIRPα v2に特異的に結合する。
【0094】
[00101]ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体およびその抗原結合性断片は、FACSアッセイによって測定して、4nM以下(たとえば、3nM以下、2nM以下、1.5nM以下、1.0nM以下)のEC50でヒトSIRPα v1に特異的に結合する。
【0095】
[00102]ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体およびその抗原結合性断片は、FACSアッセイによって測定して、12.1nM以下(たとえば、6nM以下、5nM以下、4nM以下、3nM以下、2nM以下、1nM以下、0.9nM以下、0.8nM以下、0.7nM以下)のEC50で、ヒトSIRPα v2に特異的に結合する。
【0096】
[00103]ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体およびその抗原結合性断片は、マウスSIRPαへの特異的結合を有さない。マウスSIRPαへの「特異的結合を有さない」抗体またはその抗原結合性断片は、マウスSIRPαに対して検出可能な結合を示さないもの、または同等のアッセイ条件下において対照抗体のものと同程度のレベルでマウスSIRPαに対して結合を示すものである。対照抗体は、マウスSIRPαに結合しないことが知られている任意の抗体であり得る。
【0097】
[00104]ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体およびその抗原結合性断片は、FACSアッセイによって測定して、40nM以下(たとえば、30nM以下、1nM以下、0.9nM以下、0.8nM以下、0.7nM以下、0.4nM以下)のEC50で、SIRPβに特異的に結合する。
【0098】
[00105]ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体およびその抗原結合性断片は、ELISAアッセイによって測定して、3nM以下(たとえば、2nM以下、0.9nM以下、0.8nM以下、0.7nM以下、0.5nM以下、0.4nM以下、0.3nM以下、0.1nM以下、0.05nM以下)のEC50で、SIRPβ ECDに特異的に結合する。
【0099】
[00106]ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体およびその抗原結合性断片は、FACSアッセイによって測定して、80nM以下(たとえば、50nM以下、40nM以下、20nM以下、10nM以下、1nM以下、0.3nM以下)のEC50で、SIRPγに結合する。
【0100】
[00107]ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗SIRPα抗体またはその抗原結合性断片は、SIRP-アルファとCD47との間の相互作用を完全にブロックすることができる。2つの相互作用する分子間の「相互作用を完全にブロックする」とは、抗体が、2つの相互作用する分子間の結合を少なくとも80%阻害することができるか、または2つの分子の相互作用によって誘導されるシグナル伝達を少なくとも50%阻害することができることを意味する。SIRP-アルファとCD47との間の相互作用によって誘導されるシグナル伝達は、SIRP-アルファの細胞内部分(たとえば、C末端尾部)へのSHP1動員を特徴とし得る。
【0101】
[00108]ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗SIRPα抗体またはその抗原結合性断片は、SIRP-アルファv1とCD47との間の相互作用を完全にブロックすることができる。ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗SIRPα抗体またはその抗原結合性断片は、競合的ELISAアッセイによって測定して、SIRP-アルファv1とCD47との間の結合の少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%をブロックすることができる。ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗SIRPα抗体またはその抗原結合性断片は、競合的FACSアッセイによって測定して、SIRP-アルファv1とCD47との間の結合の少なくとも97%または少なくとも98%をブロックすることができる。ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗SIRPα抗体またはその抗原結合性断片は、競合的ELISAアッセイによって測定して4nM以下(もしくは3nM以下)のIC50で、または競合的FACSアッセイによって測定して0.6nM以下(もしくは0.5nM以下)のIC50で、SIRP-アルファv1とCD47との間の相互作用をブロックすることができる。
【0102】
[00109]ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗SIRPα抗体またはその抗原結合性断片は、SIRP-アルファv2とCD47との間の相互作用を完全にブロックすることができる。ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗SIRPα抗体またはその抗原結合性断片は、競合的ELISAアッセイによって測定して、SIRP-アルファv2とCD47との間の結合の少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、または98%をブロックすることができる。ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗SIRPα抗体またはその抗原結合性断片は、競合的FACSアッセイによって測定して、SIRP-アルファv2とCD47との間の結合の少なくとも98%または少なくとも99%をブロックすることができる。ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗SIRPα抗体またはその抗原結合性断片は、競合的ELISAアッセイによって測定して55nM以下(もしくは6nM以下、5nM以下、3nM以下、もしくは2nM以下)のIC50で、または競合的FACSアッセイによって測定して、3nM以下(もしくは2nM以下)のIC50で、SIRP-アルファv2とCD47との間の相互作用をブロックすることができる。
【0103】
[00110]ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗SIRPα抗体またはその抗原結合性断片は、SIRP-アルファとCD47との相互作用によって誘導されるシグナル伝達の少なくとも50%、60%、70%、または80%をブロックすることができる。
【0104】
[00111]ある特定の実施形態では、抗体は、SIRP-アルファとCD47との間の相互作用によって誘導されるシグナル伝達をブロックし得るが、SIRP-アルファとCD47との間の結合を有意にブロックしない。換言すれば、SIRP-アルファおよびCD47は、そのような抗SIRP-アルファ抗体の存在下において互いに結合することができるが、それらは、シグナル伝達における有効性が低くなる。
【0105】
[00112]ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗SIRPα抗体またはその抗原結合性断片は、T細胞によるIFNγ分泌、CD4 T細胞増殖、またはCD8 T細胞増殖に対して有意な阻害を有さない。SIRPγ-CD47相互作用を通じた抗原提示細胞へのヒトT細胞の付着は、T細胞増殖を共刺激することが報告されている。T細胞増殖は、当該技術分野において公知の方法を使用して、たとえば、本開示の実施例4.2.9に記載されるものなどのT細胞増殖アッセイによって、たとえば、CellTrace Violet(Life Technologies)標識化を使用して増殖集団を判定することによって、判定することができる。本開示に示されるように、ヒトSIRPγに対する結合活性に関係なく、本明細書で提供される抗体またはその抗原結合性断片は、CD4 T細胞もしくはCD8 T細胞の増殖を有意に低減させることも、IFNγ分泌に影響を及ぼすこともない。
【0106】
[00113]ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗SIRPα抗体またはその抗原結合性断片は、T細胞によるIFNγ分泌、CD4 T細胞増殖、またはCD8 T細胞増殖に対して、対照抗体(たとえば、SIRPαに結合せず、T細胞増殖に影響を及ぼさないことが知られている抗体)で得られる対照レベルと比べて、50%以下(または40%以下、30%以下、20%以下、もしくは10%以下)の阻害を示す。ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗SIRPα抗体またはその抗原結合性断片は、T細胞によるIFNγ分泌、CD4 T細胞増殖、またはCD8 T細胞増殖に対して、検出可能な阻害を示さない。
【0107】
[00114]ある特定の実施形態では、単剤としての本明細書で提供される抗SIRPα抗体またはその抗原結合性断片は、ある特定のCD47発現細胞、たとえば、Raji細胞のファゴサイトーシスを誘導しない。
【0108】
[00115]ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗SIRPα抗体またはその抗原結合性断片は、標的抗体の抗体依存性細胞性ファゴサイトーシス(ADCP)作用を増加させることができる。ある特定の実施形態では、標的抗体は、標的細胞上に発現される標的抗原に結合し、標的細胞に対する標的抗体のADCP作用が、増加される。ある特定の実施形態では、標的細胞はまた、CD47を発現する。
【0109】
[00116]ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗SIRPα抗体またはその抗原結合性断片は、YNQKEGHFPRVTTVSDL(配列番号36)のアミノ酸配列を含むエピトープに結合することができる。
【0110】
[00117]ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗SIRPα抗体またはその抗原結合性断片は、SGAGTEL(配列番号72)および/またはTNVDPVGESVS(配列番号87)のアミノ酸配列を含むエピトープに結合することができる。
【0111】
[00118]ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗SIRPα抗体またはその抗原結合性断片は、TNVDPVGESVSY(配列番号90)のアミノ酸配列を含むエピトープに結合することができる。
【0112】
[00119]例示的な抗SIRPα抗体
[00120]ある特定の実施形態では、本開示は、抗体005、015、025、042、071、073、および/または059の1つまたは複数の(たとえば1、2、3、4、5、または6つの)CDR配列を含む抗SIRPα抗体およびその抗原結合性断片を提供する。ある特定の実施形態では、本開示は、抗体005、015、025、042、071、073、および/または059のキメラ抗体、ヒト化抗体、抗体誘導体、および抗体バリアントを提供する。
【0113】
[00121]本明細書で用いる抗体「005」および「005c」は、それぞれ、配列番号49のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域および配列番号50のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含むモノクローナルハイブリドーマ抗体およびキメラ抗体を意味する。
【0114】
[00122]本明細書で用いる抗体「015」および「015c」は、それぞれ、配列番号51のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域および配列番号52のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含むモノクローナルハイブリドーマ抗体およびキメラ抗体を意味する。
【0115】
[00123]本明細書で用いる抗体「025」および「025c」は、それぞれ、配列番号53の配列を有する重鎖可変領域および配列番号54の配列を有する軽鎖可変領域を含むモノクローナルハイブリドーマ抗体およびキメラ抗体を意味する。
【0116】
[00124]本明細書で用いる抗体「042」および「042c」は、それぞれ、配列番号55の配列を有する重鎖可変領域および配列番号56の配列を有する軽鎖可変領域を含むモノクローナルハイブリドーマ抗体およびキメラ抗体を意味する。
【0117】
[00125]本明細書で用いる抗体「059」および「059c」は、それぞれ、配列番号57の配列を有する重鎖可変領域および配列番号58の配列を有する軽鎖可変領域を含むモノクローナルハイブリドーマ抗体およびキメラ抗体を意味する。
【0118】
[00126]本明細書で用いる抗体「071」および「071c」は、それぞれ、配列番号59の配列を有する重鎖可変領域および配列番号60の配列を有する軽鎖可変領域を含むモノクローナルハイブリドーマ抗体およびキメラ抗体を意味する。
【0119】
[00127]本明細書で用いる抗体「073」および「073c」は、それぞれ、配列番号61の配列を有する重鎖可変領域および配列番号62の配列を有する軽鎖可変領域を含むモノクローナルハイブリドーマ抗体およびキメラ抗体を意味する。
【0120】
[00128]以下の表1は、抗体005、015、025、042、071、073、059、005c、015c、025c、042c、059c、071c、および073のCDRのアミノ酸配列を示す。表1におけるCDRの境界は、Kabatの規則によって定義または同定されたものであるが、当業者であれば、CDRが、IMGT、Chothia、もしくはAl-Lazikaniなどの他の規則を使用して定義されてもよいか、または2つ以上の規則を使用した混合様式で定義されてもよいことを理解することができる。以下の表2は、抗体005、015、025、042、071、073、059、005c、015c、025c、042c、059c、071c、および073の重鎖および軽鎖の可変領域のアミノ酸配列を示す。
【0121】
[00129]
【0122】
【表2-1】
【0123】
【表2-2】
【0124】
はAまたはDであり、XはGまたはAであり、XはTまたはSであり、XはLまたはYであり、XはEまたはAであり、XはYまたはHであり、XはYまたはCであり、XはKまたはQであり、XはYまたはSであり、X10はNまたはTまたはSであり、X11はPまたはAまたはVであり、X12はEまたはKであり、X13はNまたはIであり、X14はSまたはAであり、X15はYまたはFであり、X16はSまたはTまたはAであり、X17はFまたはLであり、X18はSまたは不在であり、X19はSまたはPである。
【0125】
[00130]
【0126】
【表3-1】
【0127】
【表3-2】
【0128】
[00131]抗体005、015、025、042、059、071、073、005c、015c、025c、042c、059c、071c、および073のそれぞれがSIRPαに結合することができ、抗原結合特異性が一次的にCDR1、CDR2、およびCDR3領域によって提供されることを考えれば、抗体005、015、025、042、059、071、073、005c、015c、025c、042c、059c、071c、および073のHCDR1、HCDR2、およびHCDR3の配列、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3の配列は「混合および整合されて」(即ち、異なる抗体のCDRは混合および整合され得るが、それぞれの抗体はHCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含まなくてはならない)、本開示の抗SIRPα結合分子を創出することができる。そのような「混合および整合された」抗体のSIRPα結合は、上記および実施例に記載した結合アッセイを用いて試験することができる。好ましくは、VH CDR配列が混合および整合される場合には、特定のVH配列からのHCDR1、HCDR2、および/またはHCDR3配列は、構造的に同様のCDR配列で置き換えられる。同様に、VL CDR配列が混合および整合される場合には、特定のVL配列からのLCDR1、LCDR2、および/またはLCDR3配列は、好ましくは構造的に同様のCDR配列で置き換えられる。モノクローナルハイブリドーマ抗体005、015、025、042、059、071、および073、またはキメラ抗体005c、015c、025c、042c、059c、071c、および073cについて1つまたは複数のVHおよび/またはVL CDR領域配列を本明細書で開示されるCDR配列からの構造的に同様の配列で置換することによって、新規のVHおよびVL配列が創出され得ることは、当業者には容易に明白になる。
【0129】
[00132]ある特定の実施形態では、本開示は、配列番号1、7、13、18、22および43からなる群から選択される配列を含むHCDR1、配列番号2、8、14、17、19、23、28、33、38および44からなる群から選択される配列を含むHCDR2、および配列番号3、9、15、20、24、29、34、39および45からなる群から選択される配列を含むHCDR3、ならびに/または配列番号4、10、25、30、35、40および46からなる群から選択される配列を含むLCDR1、配列番号5、11、26、31、41および47からなる群から選択される配列を含むLCDR2、および配列番号6、12、16、21、27、32、37、42および48からなる群から選択される配列を含むLCDR3を含む抗SIRPα抗体およびその抗原結合性断片を提供する。
【0130】
[00133]ある特定の実施形態では、本開示は、XYYMH(配列番号18)のアミノ酸配列を含むHCDR1、RIDPEDXEXKYAPKFQG(配列番号19)のアミノ酸配列を含むHCDR2、GX18Y(配列番号20)のアミノ酸配列を含むHCDR3、配列番号10のアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号11のアミノ酸配列を含むLCDR2、およびXQWSSYPYT(配列番号21)のアミノ酸配列を含むLCDR3を含み、XがAまたはDであり、XがGまたはAであり、XがTまたはSであり、XがLまたはYであり、XがEまたはAであり、XがYまたはHであり、X18がSまたは不在である、抗SIRPα抗体およびその抗原結合性断片を提供する。
【0131】
[00134]ある特定の実施形態では、本開示は、配列番号7および13からなる群から選択される配列を含むHCDR1、ならびに/または配列番号8、14、および17からなる群から選択される配列を含むHCDR2、ならびに/または配列番号9および15からなる群から選択される配列を含むHCDR3、ならびに/または配列番号10の配列を含むLCDR1、ならびに/または配列番号11の配列を含むLCDR2、ならびに/または配列番号12および16からなる群から選択される配列を含むLCDR3を含む、抗SIRPα抗体およびその抗原結合性断片を提供する。
【0132】
[00135]ある特定の実施形態では、本開示は、配列番号22のアミノ酸配列を含むHCDR1、WINTYSGVX19TXADDFXG(配列番号38)のアミノ酸配列を含むHCDR2、DPHXYGX10SPAWFX11Y(配列番号39)のアミノ酸配列を含むHCDR3、X12ASQX13VGIX14VA(配列番号40)のアミノ酸配列を含むLCDR1、SASNRX15T(配列番号41)のアミノ酸配列を含むLCDR2、およびQQYSX16YPX17T(配列番号42)のアミノ酸配列を含むLCDR3を含み、XがYまたはCであり、XがKまたはQであり、XがYまたはSであり、X10がNまたはTまたはSであり、X11がPまたはAまたはVであり、X12がEまたはKであり、X13がNまたはIであり、X14がSまたはAであり、X15がYまたはFであり、X16がSまたはTまたはAであり、X17がFまたはLであり、X19がSまたはPである、抗SIRPα抗体およびその抗原結合性断片を提供する。
【0133】
[00136]ある特定の実施形態では、本開示は、配列番号22の配列を含むHCDR1、ならびに/または配列番号23、28、および33からなる群から選択される配列を含むHCDR2、ならびに/または配列番号24、29、および34からなる群から選択される配列を含むHCDR3、ならびに/または配列番号25、30、および35の配列を含むLCDR1、ならびに/または配列番号31および26からなる群から選択される配列を含むLCDR2、ならびに/または配列番号27、32、および37からなる群から選択される配列を含むLCDR3を含む、抗SIRPα抗体およびその抗原結合性断片を提供する。
【0134】
[00137]ある特定の実施形態では、本開示は、配列番号1の配列を含むHCDR1、配列番号2の配列を含むHCDR2、配列番号3の配列を含むHCDR3、配列番号4の配列を含むLCDR1、配列番号5の配列を含むLCDR2、および配列番号6の配列を含むLCDR3を含む、抗SIRPα抗体およびその抗原結合性断片を提供する。
【0135】
[00138]ある特定の実施形態では、本開示は、配列番号7の配列を含むHCDR1、配列番号8の配列を含むHCDR2、配列番号9の配列を含むHCDR3、配列番号10の配列を含むLCDR1、配列番号11の配列を含むLCDR2、および配列番号12の配列を含むLCDR3を含む、抗SIRPα抗体およびその抗原結合性断片を提供する。
【0136】
[00139]ある特定の実施形態では、本開示は、配列番号13の配列を含むHCDR1、配列番号14または17の配列を含むHCDR2、配列番号15の配列を含むHCDR3、配列番号10の配列を含むLCDR1、配列番号11の配列を含むLCDR2、および配列番号16の配列を含むLCDR3を含む抗SIRPα抗体およびその抗原結合性断片を提供する。
【0137】
[00140]ある特定の実施形態では、本開示は、配列番号22の配列を含むHCDR1、配列番号23の配列を含むHCDR2、配列番号24の配列を含むHCDR3、配列番号25の配列を含むLCDR1、配列番号26の配列を含むLCDR2、および配列番号27の配列を含むLCDR3を含む、抗SIRPα抗体およびその抗原結合性断片を提供する。
【0138】
[00141]ある特定の実施形態では、本開示は、配列番号22の配列を含むHCDR1、配列番号28の配列を含むHCDR2、配列番号29の配列を含むHCDR3、配列番号30の配列を含むLCDR1、配列番号31の配列を含むLCDR2、および配列番号32の配列を含むLCDR3を含む、抗SIRPα抗体およびその抗原結合性断片を提供する。
【0139】
[00142]ある特定の実施形態では、本開示は、配列番号22の配列を含むHCDR1、配列番号33の配列を含むHCDR2、配列番号34の配列を含むHCDR3、配列番号35の配列を含むLCDR1、配列番号26の配列を含むLCDR2、および配列番号37の配列を含むLCDR3を含む、抗SIRPα抗体およびその抗原結合性断片を提供する。
【0140】
[00143]ある特定の実施形態では、本開示は、配列番号43の配列を含むHCDR1、配列番号44の配列を含むHCDR2、配列番号45の配列を含むHCDR3、配列番号46の配列を含むLCDR1、配列番号47の配列を含むLCDR2、および配列番号48の配列を含むLCDR3を含む、抗SIRPα抗体およびその抗原結合性断片を提供する。
【0141】
[00144]CDRは抗原結合に関与していることが知られている。しかし、6つのCDRの全てが不可欠または不変ではないことが見出されている。換言すれば、SIRPαへの特異的な結合特異性および/または親和性を実質的に保持しながら、抗SIRPα抗体005、015、025、042、059、071、および073、または抗SIRPαキメラ抗体005c、015c、025c、042c、059c、071c、および073cにおける1つまたは複数のCDRを置き換える、または変更する、または修飾することが可能である。
【0142】
[00145]ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体およびその抗原結合性断片は、その抗体およびその抗原結合性断片がSIRPαに特異的に結合することができる限り、好適なフレームワーク領域(FR)配列を含む。上の表1で提供したCDR配列はマウス抗体から得られるが、これらは組換え手法等の当技術分野で既知の好適な方法を用いてとりわけマウス、ヒト、ラット、ウサギ等の任意の好適な種の任意の好適なFR配列にグラフトすることができる。
【0143】
[00146]ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体および抗原結合性断片は、ヒト化される。ヒト化抗体またはその抗原結合性断片は、ヒトにおけるその低減した免疫原性において望ましい。ヒト化抗体は、非ヒトCDR配列がヒトまたは実質的にヒトのFR配列にグラフトされているので、その可変領域においてキメラである。抗体または抗原結合性断片のヒト化は本質的に、非ヒト(マウス等)CDR遺伝子をヒト免疫グロブリン遺伝子中の対応するヒトCDR遺伝子で置換することによって実施することができる(たとえばJones et al.(1986)Nature 321:522-525;Riechmann et al.(1988)Nature 332:323-327;Verhoeyen et al.(1988)Science 239:1534-1536を参照されたい)。
【0144】
[00147]この目的を達成するために、当技術分野で既知の方法を用いて好適なヒト重鎖および軽鎖の可変ドメインを選択することができる。説明的な例では、「ベストフィット」アプローチを用いることができ、ここでは非ヒト(たとえばげっ歯類)抗体の可変ドメイン配列が既知のヒト可変ドメイン配列に対してスクリーニングまたはBLAST処理され、非ヒトクエリー配列に最も近いヒト配列が同定され、非ヒトCDR配列をグラフトするためのヒトスキャフォールドとして用いられる(たとえばSims et al.,(1993)J.Immunol.151:2296;Chothia et al.(1987)J.Mot.Biol.196:901を参照されたい)。あるいは、非ヒトCDRのグラフト化のために、全てのヒト抗体のコンセンサス配列に由来するフレームワークを用いてもよい(たとえばCarter et al.(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:4285;Presta et al.(1993)J.Immunol.,151:2623を参照されたい)。
【0145】
[00148]以下の表3は、hu025.021、hu025.023、hu025.033、hu025.059、およびhu025.060と表記される、抗体025の5つのヒト化抗体のCDRアミノ酸配列を示す。CDRの境界部は、Kabatの慣例によって定義または特定した。以下の表3は、5つのヒト化抗体hu025.021、hu025.023、hu025.033、hu025.059、およびhu025.060の6つのCDRのアミノ酸配列を示す。以下の表4は、5つのヒト化抗体hu025.021、hu025.023、hu025.033、hu025.059、およびhu025.060の重鎖および軽鎖可変領域アミノ酸配列を示す。以下の表5は、5つのヒト化抗体hu025.021、hu025.023、hu025.033、hu025.059、およびhu025.060のFRアミノ酸配列を示す。
【0146】
[00149]
【0147】
【表4】
【0148】
[00150]
【0149】
【表5】
【0150】
[00151]
【0151】
【表6-1】
【0152】
【表6-2】
【0153】
20はAまたはVであり、X21はNまたはDであり、X22はYまたはFである。
[00152]ある特定の実施形態では、本明細書で提供されるヒト化抗体またはその抗原結合性断片は、非ヒトであるCDR配列を除いて、実質的に全てのヒト配列からなっている。一部の実施形態では、可変領域FRおよび存在する場合には定常領域は、完全にまたは実質的にヒト免疫グロブリン配列からのものである。ヒトFR配列およびヒト定常領域配列は異なるヒト免疫グロブリン遺伝子由来でよく、たとえばFR配列は1つのヒト抗体由来であり、定常領域は別のヒト抗体に由来する。一部の実施形態では、ヒト化抗体またはその抗原結合性断片は、ヒト重鎖HFR1~4、および/または軽鎖LFR1~4を含む。
【0154】
[00153]一部の実施形態では、ヒトに由来するFR領域は、それが由来する元のヒト免疫グロブリンと同じアミノ酸配列を含んでよい。一部の実施形態では、ヒトFRの1つまたは複数のアミノ酸残基は、親の非ヒト抗体からの対応する残基で置換される。これは、ある特定の実施形態ではヒト化抗体またはその断片を非ヒト親抗体の構造に密接に近似させ、それによって結合特性を最適化(たとえば結合親和性を増大)させるために望ましい。ある特定の実施形態では、本明細書で提供されるヒト化抗体またはその抗原結合性断片は、ヒトFR配列のそれぞれにおいて10、9、8、7、6、5、4、3、2、もしくは1個以下のアミノ酸残基の置換、または重鎖もしくは軽鎖の可変ドメインの全てのFR配列において10、9、8、7、6、5、4、3、2、もしくは1個以下のアミノ酸残基の置換を含む。一部の実施形態では、アミノ酸残基におけるそのような変化は、重鎖FR領域にのみ、軽鎖FR領域にのみ、または両方の鎖に存在し得る。ある特定の実施形態では、ヒトFR配列の1つまたは複数のアミノ酸はランダムに変異して結合親和性を増大させる。ある特定の実施形態では、ヒトFR配列の1つまたは複数のアミノ酸は親の非ヒト抗体の対応するアミノ酸に復帰変異して結合親和性を増大させる。
【0155】
[00154]ある特定の実施形態では、本開示はまた、EVQLVQSGAEVKKPGATVKISCKX20SGFNIK(配列番号84)の配列またはその少なくとも80%の配列同一性のある相同配列を含む重鎖HFR1、WVQQAPGKGLEWIG(配列番号74)の配列またはその少なくとも80%の配列同一性のある相同配列を含む重鎖HFR2、RVTITADTSTX21TAYMELSSLRSEDTAVYYCDR(配列番号85)の配列またはその少なくとも80%の配列同一性のある相同配列を含む重鎖HFR3、およびWGQGTLVTVSS(配列番号76)の配列またはその少なくとも80%の配列同一性のある相同配列を含む重鎖HFR4を含み、X20がAまたはVであり、X21がNまたはDである、ヒト化抗SIRPα抗体およびその抗原結合性断片も提供する。
【0156】
[00155]ある特定の実施形態では、本開示はまた、EIVLTQSPATLSLSPGERATLSC(配列番号77)の配列またはその少なくとも80%の配列同一性のある相同配列を含む軽鎖LFR1、WYQQKPGQAPKLWIY(配列番号78)の配列またはその少なくとも80%の配列同一性のある相同配列を含む軽鎖LFR2、GIPARFSGSGSGTDX22TLTISSLEPEDFAVYYC(配列番号86)の配列またはその少なくとも80%の配列同一性のある相同配列を含む軽鎖LFR3、およびFGQGTKLEIK(配列番号80)の配列またはその少なくとも80%の配列同一性のある相同配列を含む軽鎖LFR4を含み、X22がYまたはFである、ヒト化抗SIRPα抗体およびその抗原結合性断片も提供する。
【0157】
[00156]ある特定の実施形態では、本開示はまた、配列番号73および83からなる群から選択される配列を含む重鎖HFR1、配列番号74の配列を含む重鎖HFR2、配列番号75および82からなる群から選択される配列を含む重鎖HFR3、ならびに配列番号76の配列を含む重鎖HFR4、ならびに/または配列番号77からなる群から選択される配列を含む軽鎖LFR1、配列番号78からなる群から選択される配列を含む軽鎖LFR2、配列番号79および81からなる群から選択される配列を含む軽鎖LFR3、ならびに配列番号80からなる群から選択される配列を含む軽鎖LFR4を含む、ヒト化抗SIRPα抗体およびその抗原結合性断片も提供する。
【0158】
[00157]ある特定の実施形態では、本開示はまた、hu025.021-VH/hu025.023-VH(配列番号63)、hu025.033-VH(配列番号65)、およびhu025.059-VH/hu025.060-VH(配列番号67)からなる群から選択される重鎖可変領域に含まれるHFR1、HFR2、HFR3、および/またはHFR4配列を含む、ヒト化抗SIRPα抗体およびその抗原結合性断片も提供する。
【0159】
[00158]ある特定の実施形態では、本開示は、hu025.021-VL/hu025.033-VL/hu025.059-VL(配列番号64)、およびhu025.023-VL/hu025.060-VL(配列番号66)からなる群から選択される軽鎖可変領域に含まれるLFR1、LFR2、LFR3、および/またはLFR4配列を含む、ヒト化抗SIRPαおよびその抗原結合性断片をも提供する。
【0160】
[00159]ある特定の実施形態では、本明細書で提供されるヒト化抗SIRPα抗体およびその抗原結合性断片は、配列番号63、配列番号65、および配列番号67からなる群から選択される重鎖可変ドメイン配列、ならびに/または配列番号64、および配列番号66からなる群から選択される軽鎖可変ドメイン配列を含む。
【0161】
[00160]本開示はまた、
1)配列番号63の重鎖可変領域および配列番号64の軽鎖可変領域を含む抗体「hu025.021」、
2)配列番号63の重鎖可変領域および配列番号66の軽鎖可変領域を含む抗体「hu025.023」、
3)配列番号65の重鎖可変領域および配列番号64の軽鎖可変領域を含む抗体「hu025.033」、
4)配列番号67の重鎖可変領域および配列番号64の軽鎖可変領域を含む抗体「hu025.059」、ならびに
5)配列番号67の重鎖可変領域および配列番号66の軽鎖可変領域を含む抗体「hu025.060」
を含む025の例示的なヒト化抗体を提供する。
【0162】
[00161]これらの例示的なヒト化抗SIRPα抗体はSIRPαに対する特異的な結合能力または親和性を保持しており、その観点において親のマウス抗体025と少なくとも同程度またはそれより優れていた。詳細な情報は、実施例5.2に提供される。
【0163】
[00162]一部の実施形態では、本明細書で提供される抗SIRPα抗体および抗原結合性断片は、重鎖可変ドメインの全てもしくは一部、および/または軽鎖可変ドメインの全てもしくは一部を含む。一実施形態では、本明細書で提供される抗SIRPα抗体またはその抗原結合性断片は、本明細書で提供される重鎖可変ドメインの全てまたは一部からなる単鎖ドメイン抗体である。そのような単鎖ドメイン抗体のさらなる情報は当技術分野で利用可能である(たとえば米国特許第6,248,516号を参照されたい)。
【0164】
[00163]ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗SIRPα抗体またはその抗原結合性断片は、免疫グロブリン(Ig)の定常領域をさらに含み、これは任意選択で重鎖および/または軽鎖の定常領域をさらに含む。ある特定の実施形態では、重鎖定常領域はCH1、ヒンジ、および/またはCH2-CH3領域(または任意選択でCH2-CH3-CH4領域)を含む。ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗SIRPα抗体またはその抗原結合性断片は、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4の重鎖定常領域を含む。ある特定の実施形態では、軽鎖定常領域はCκまたはCλを含む。本明細書で提供される抗SIRPα抗体またはその抗原結合性断片の定常領域は、野生型の定常領域の配列と同一であってもよく、1つまたは複数の変異において異なってもよい。
【0165】
[00164]ある特定の実施形態では、重鎖定常領域はFc領域を含む。Fc領域は、抗体依存性細胞性細胞毒性(ADCC)および抗体の補体依存性細胞毒性(CDC)等のエフェクター機能を媒介することが知られている。異なるIgアイソタイプのFc領域はエフェクター機能を誘導する異なる能力を有する。たとえば、IgG1およびIgG3のFc領域は、IgG2およびIgG4のFc領域より効果的にADCCとCDCの両方を誘導することが認識されている。ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗SIRPα抗体およびその抗原結合性断片は、ADCCまたはCDCを誘導することができるIgG1またはIgG3アイソタイプのFc領域を含み、あるいはエフェクター機能が低減しまたは枯渇したIgG4もしくはIgG2アイソタイプの定常領域を含む。ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗SIRPα抗体またはその抗原結合性断片は、野生型ヒトIgG4 Fc領域または他の野生型ヒトIgG4対立遺伝子を含む。
【0166】
[00165]ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗SIRPα抗体またはその抗原結合性断片は、低減されたエフェクター機能を有する。ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗SIRPα抗体またはその抗原結合性断片は、IgG1アイソタイプのFc領域を含み、エフェクター機能を低減または排除するために1つまたは複数のアミノ酸の置換を含む。IgG1におけるそのような置換の例は、234、235、237、および238、268、297、309、330、および331からなる群から選択される位置におけるものであり得る。ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗SIRPα抗体またはその抗原結合性断片はIgG1アイソタイプのものであり、N297A、N297Q、N297G、L235E、L234A、L235A、L234F、L235E、P331Sからなる群から選択される1つもしくは複数のアミノ酸の置換、およびそれらの任意の組合せを含む。
【0167】
[00166]ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗SIRPα抗体またはその抗原結合性断片は、IgG2アイソタイプのものであり、エフェクター機能を低減または排除するために、H268Q、V309L、A330S、P331S、V234A、G237A、P238S、H268Aからなる群から選択される1つまたは複数のアミノ酸の置換、およびそれらの任意の組合せ(たとえばH268Q/V309L/A330S/P331S、V234A/G237A/P238S/H268A/V309L/A330S/P331S)を含む。
【0168】
[00167]ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗SIRPα抗体またはその抗原結合性断片は、IgG4アイソタイプのものであり、エフェクター機能を低減または排除するために1つまたは複数のアミノ酸の置換を含む。IgG4におけるそのような置換の例は、228、234、235、237、238、265、297、322、329、および331からなる群から選択される位置におけるものであり得る。そのような置換の例としては、限定することなく、S228P、L235E、L234A、L235A、N297A、N297Q、N297G、P329G、K322Q、P331S、D265A、G237A、P238S、およびそれらの任意の組合せが挙げられる。
【0169】
[00168]ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗SIRPα抗体および抗原結合性断片は、IgG4アイソタイプのものであり、228および235の1つまたは複数の点に1つまたは複数のアミノ酸の置換を含む。ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗SIRPα抗体および抗原結合性断片は、IgG4アイソタイプのものであり、Fc領域にS228Pの変異を含む。ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗SIRPα抗体および抗原結合性断片は、IgG4アイソタイプのものであり、Fc領域にL235Eの変異を含む。
【0170】
[00169]ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗SIRPα抗体またはその抗原結合性断片はIgG2/IgG4交差アイソタイプのものである。IgG2/IgG4交差アイソタイプの例はRother RP et al.,Nat Biotechnol 25:1256-1264(2007)に記載されている。
【0171】
[00170]ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体またはその抗原結合性断片は、診断用および/または治療用に提供するために十分なSIRPαに対する特異的結合親和性を有する。
【0172】
[00171]本明細書で提供される抗体またはその抗原結合性断片は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、組換え抗体、二重特異的抗体、多重特異的抗体、標識抗体、二価抗体、抗イディオタイプ抗体、または融合タンパク質であってよい。組換え抗体は、動物体内でなくin vitroで組換え法を用いて調製された抗体である。
【0173】
[00172]ある特定の実施形態では、本開示は、SIRPαとの結合について本明細書で提供される抗体またはその抗原結合性断片と競合する、抗SIRPα抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0174】
[00173]ある特定の実施形態では、本開示は、ヒトSIRPαとの結合について配列番号53の配列を含む重鎖可変領域および配列番号54の配列を含む軽鎖可変領域を含む抗体と競合する、抗SIRPα抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0175】
[00174]ある特定の実施形態では、本開示は、ヒトSIRPαとの結合について配列番号55の配列を含む重鎖可変領域および配列番号56の配列を含む軽鎖可変領域を含む抗体と競合する、抗SIRPα抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0176】
[00175]ある特定の実施形態では、本開示は、ヒトSIRPαとの結合について配列番号61の配列を含む重鎖可変領域および配列番号62の配列を含む軽鎖可変領域を含む抗体と競合する、抗SIRPα抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0177】
[00176]ある特定の実施形態では、本開示は、HEFLBまたはhu1H9G4によって結合されるものとは異なるエピトープに結合する、抗SIRPα抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0178】
[00177]本明細書で用いる「HEFLB」は、配列番号68のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域および配列番号69のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む抗体またはその抗原結合性断片を意味する。
【0179】
[00178]本明細書で用いる「hu1H9G4」は、配列番号70のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域および配列番号71のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む抗体またはその抗原結合性断片を意味する。
【0180】
[00179]表6は、HEFLBおよびhu1H9G4のVHおよびVLのアミノ酸配列を示す。
[00180]
【0181】
【表7】
【0182】
[00181]抗体バリアント
[00182]本明細書で提供される抗体およびその抗原結合性断片は、本明細書で提供される抗体配列の種々のバリアントをも包含する。
【0183】
[00183]ある特定の実施形態では、抗体バリアントは、上の表1および表3で提供したCDR配列の1つもしくは複数、上の表2および表4で提供した重鎖可変領域もしくは軽鎖可変領域の非CDR配列の1つもしくは複数、ならびに/または定常領域(たとえばFc領域)における1つまたは複数の修飾または置換を含む。そのようなバリアントはSIRPαに対するそれらの親抗体の結合特異性を保持しているが、修飾または置換によって与えられる1つまたは複数の望ましい特性を有する。たとえば、抗体バリアントは、改善された抗原結合親和性、改善されたグリコシル化パターン、低減されたグリコシル化のリスク、低減された脱アミノ化、低減されまたは枯渇したエフェクター機能、改善されたFcRn受容体結合、増大した薬物動態学的半減期、pH感受性、および/またはコンジュゲート化に対する適合性(たとえば導入された1つまたは複数のシステイン残基)を有し得る。
【0184】
[00184]当技術分野で既知の方法、たとえば「アラニンスキャニング変異生成」を用いて親抗体配列をスクリーニングして、修飾しまたは置換するために好適なまたは好ましい残基を同定してよい(たとえばCunningham and Wells (1989) Science,244:1081-1085を参照されたい)。簡単には、標的の残基(たとえばArg、Asp、His、Lys、およびGlu等の荷電残基)を同定し、中性または陰荷電のアミノ酸(たとえばアラニンまたはポリアラニン)で置き換えることができ、修飾された抗体を産生して目的の特性についてスクリーニングする。特定のアミノ酸の位置における置換によって目的の機能の変化が実証されれば、その位置を修飾または置換のための可能性のある残基として同定することができる。可能性のある残基は、異なる種類の残基(たとえばシステイン残基、陽荷電残基等)で置換することによってさらに評価してよい。
【0185】
[00185]親和性バリアント
[00186]抗体の親和性バリアントは、上の表1および表3で提供した1つもしくは複数のCDR配列、上の表5で提供した1つもしくは複数のFR配列、または上の表2および表4で提供した重鎖または軽鎖の可変領域配列における修飾または置換を含んでよい。CDR領域は可変領域において2つのFR領域に隣接していることが当技術分野で公知であるので、FR配列は、上の表1および表3におけるCDR配列および上の表2および表4における可変領域配列に基づいて当業者によって容易に同定することができる。親和性バリアントはSIRPαに対する親抗体の特異的結合親和性を保持し、または親抗体よりも改善されたSIRPα特異的結合親和性さえも有する。ある特定の実施形態では、CDR配列、FR配列、または可変領域配列における置換の少なくとも1つ(または全て)は、保存的置換を含む。
【0186】
[00187]当業者であれば、上の表1および表3で提供したCDR配列、ならびに上の表2および表4で提供した可変領域配列において、1つまたは複数のアミノ酸残基が置換され、しかも得られる抗体もしくは抗原結合性断片がまだSIRPαに対する結合親和性もしくは結合容量を保持し、または改善された結合親和性もしくは容量さえも有することが理解される。この目的を達成するために、当技術分野で既知の種々の方法を用いることができる。たとえば、ファージディスプレイ技術を用いて抗体バリアント(FabまたはscFvバリアント等)のライブラリーを生成して発現させ、次いでヒトSIRPαへの結合親和性についてスクリーニングすることができる。別の例として、コンピューターソフトウェアを用いて抗体のヒトSIRPαへの結合を仮想的に模擬し、結合界面を形成する抗体上のアミノ酸残基を同定することができる。そのような残基は、結合親和性の低減を防止するために置換において避けるか、またはより強い結合を提供するために置換の標的としてもよい。
【0187】
[00188]ある特定の実施形態では、本明細書で提供されるヒト化抗体またはその抗原結合性断片は、CDR配列の1つもしくは複数において、および/またはFR配列の1つもしくは複数において、1つまたは複数のアミノ酸残基の置換を含む。ある特定の実施形態では、親和性バリアントは、CDR配列中および/またはFR配列中、合計で20、15、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1以下の置換を含む。
【0188】
[00189]ある特定の実施形態では、抗SIRPα抗体またはその抗原結合性断片は、上の表1および表3に列挙したCDRと少なくとも80%(たとえば少なくとも85%、88%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%)の配列同一性を有する1つ、2つ、または3つのCDR配列を含み、しかもその親抗体と同様またはそれより高いレベルでさえSIRPαに対する特異的結合親和性を保持している。
【0189】
[00190]ある特定の実施形態では、抗SIRPα抗体またはその抗原結合性断片は、上の表2および表4に列挙した可変領域配列と少なくとも80%(たとえば少なくとも85%、88%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%)の配列同一性を有する1つまたは複数の可変領域配列を含み、しかもその親抗体と同様またはそれより高いレベルでさえSIRPαに対する特異的結合親和性を保持している。一部の実施形態では、上の表2および表4に列挙した可変領域配列において全部で1~10個のアミノ酸が置換され、挿入され、または欠失している。一部の実施形態では、置換、挿入、または欠失は、CDRの外(たとえばFRの中)の領域で起こる。
【0190】
[00191]グリコシル化バリアント
[00192]本明細書で提供される抗SIRPα抗体またはその抗原結合性断片は、抗体またはその抗原結合性断片のグリコシル化の程度を増加しまたは減少することによって得られるグリコシル化バリアントをも包含する。
【0191】
[00193]抗体またはその抗原結合性断片は、グリコシル化部位を導入しまたは除去する1つまたは複数の修飾を含んでよい。グリコシル化部位は、炭水化物部分(たとえばオリゴ糖構造)を結合することができる側鎖を有するアミノ酸残基である。抗体のグリコシル化は、典型的にはN連結またはO連結である。N連結は、アスパラギン残基、たとえばアスパラギン-X-セリンおよびアスパラギン-X-スレオニン等のトリペプチド配列においてXがプロリンを除く任意のアミノ酸である、アスパラギン残基の側鎖への炭水化物部分の結合を意味する。O連結グリコシル化は、糖、N-アセチルガラクトサミン、ガラクトース、またはキシロースのうちの1つの、ヒドロキシアミノ酸、最も一般的にはセリンまたはスレオニンへの結合を意味する。天然のグリコシル化部位の除去は、たとえば配列中に存在する上記のトリペプチド配列(N連結グリコシル化部位について)またはセリンもしくはスレオニン残基(O連結グリコシル化部位について)の1つが置換されるようにアミノ酸配列を改変することによって、便利に達成することができる。そのようなトリペプチド配列またはセリンもしくはスレオニン残基を導入することによって、新たなグリコシル化部位を同様に創出することができる。
【0192】
[00194]ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗SIRPα抗体および抗原結合性断片は、グリコシル化部位を除去するためにN297における変異(たとえば、N297A、N297Q、またはN297G)を含む。
【0193】
[00195]システイン操作されたバリアント
[00196]本明細書で提供される抗SIRPα抗体またはその抗原結合性断片は、導入された1つまたは複数の遊離のシステインアミノ酸残基を含む、システイン操作されたバリアントをも包含する。
【0194】
[00197]遊離のシステイン残基は、ジスルフィド架橋の部分ではない残基である。システイン操作されたバリアントは、操作されたシステインの部位で、たとえばマレイミドまたはハロアセチルによって、たとえば細胞毒性および/またはイメージング化合物、標識、またはとりわけ放射性同位体とコンジュゲートするために有用である。抗体またはその抗原結合性断片を操作して遊離のシステイン残基を導入する方法は当技術分野で既知であり、たとえばWO2006/034488を参照されたい。
【0195】
[00198]Fcバリアント
[00199]本明細書で提供される抗SIRPα抗体またはその抗原結合性断片は、たとえばADCCおよびCDC等の改変されたエフェクター機能を提供するために、Fc領域および/またはヒンジ領域に1つまたは複数のアミノ酸残基の修飾または置換を含むFcバリアントをも包含する。抗体操作によってADCC活性を改変する方法は当技術分野において記載されており、たとえばShields RL.et al.,J Biol Chem.2001.276(9):6591-604;Idusogie EE.et al.,J Immunol.2000.164(8):4178-84;Steurer W.et al.,J Immunol.1995,155(3):1165- 74;Idusogie EE.et al.,J Immunol.2001,166(4):2571-5;Lazar GA.et al.,PNAS,2006,103(11):4005-4010;Ryan MC.et al.,Mol.Cancer Ther.,2007,6:3009-3018;Richards JO,.et al.,Mol Cancer Ther.2008,7(8):2517-27;Shields R.L.et al.,J.Biol.Chem,2002,277:26733-26740;Shinkawa T.et al.,J.Biol.Chem,2003,278:3466-3473を参照されたい。
【0196】
[00200]本明細書で提供される抗体または抗原結合性断片のCDC活性は、たとえばC1q結合および/またはCDCを改善しまたは減退させることによって改変することもできる(たとえばWO99/51642;Duncan & Winter Nature 322:738-40(1988);米国特許第5,648,260号;米国特許第5,624,821号;ならびにFc領域バリアントの他の例に関してはWO94/29351を参照されたい)。Fc領域のアミノ酸残基329、331、および322から選択される1つまたは複数のアミノ酸を異なるアミノ酸残基で置き換えて、C1qの結合および/または低減されもしくは消失された補体依存性細胞毒性(CDC)を改変することができる(たとえばIdusogieらによる米国特許第6,194,551号を参照されたい)。1つまたは複数のアミノ酸置換を導入して、抗体の補体を固定する能力を改変することもできる(BodmerらによるPCT公開WO 94/29351を参照されたい)。
【0197】
[00201]ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗SIRPα抗体またはその抗原結合性断片は、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4アイソタイプのものであり得、本明細書で開示されるように、低減されたエフェクター機能を有する。
【0198】
[00202]ある特定の実施形態では、抗SIRPα抗体またはその抗原結合性断片は、新生児Fc受容体(FcRn)へのpH依存性結合を改善する1つまたは複数のアミノ酸の置換を含む。そのようなバリアントは酸性pHでFcRnに結合してこれをリソソーム内での分解から逃れさせ、次いで転座して細胞外に放出されることを可能にするので、延長された薬物動態学的半減期を有することができる。抗体またはその抗原結合性断片を操作してFcRnとの結合親和性を改善する方法は当技術分野で公知であり、たとえばVaughn,D.et al.,Structure,6(1):63-73,1998;Kontermann,R.et al.,Antibody Engineering,Volume 1,Chapter 27:Engineering of the Fc region for improved PK,published by Springer,2010;Yeung,Y.et al.,Cancer Research,70:3269-3277(2010);and Hinton,P.et al.,J.Immunology,176:346-356(2006)を参照されたい。
【0199】
[00203]ある特定の実施形態では、抗SIRPα抗体またはその抗原結合性断片は、Fc領域の界面においてヘテロ二量化を容易にしおよび/または促進する1つまたは複数のアミノ酸の置換を含む。これらの修飾は、第1のFcポリペプチドへの突出部の導入および第2のFcポリペプチドへの空洞の導入を含み、突出部が空洞の中に位置して第1および第2のFcポリペプチドの相互作用が促進され、ヘテロ二量体または複合体が形成される。これらの修飾を有する抗体を生成する方法は、たとえば米国特許第5,731,168号に記載されているように当技術分野で既知である。
【0200】
[00204]抗原結合性断片
[00205]抗SIRPα抗原結合性断片も、本明細書で提供される。種々の型の抗原結合性断片が当技術分野で既知であり、たとえばそのCDRが上の表1および表3に示され、可変配列が上の表2および表4に示される、例示的な抗体ならびにその種々のバリアント(親和性バリアント、グリコシル化バリアント、Fcバリアント、システイン操作されたバリアント、その他)を含む本明細書で提供される抗SIRPα抗体に基づいて開発することができる。
【0201】
[00206]ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗SIRPα抗原結合性断片は、ダイアボディ、Fab、Fab’、F(ab’)、Fd、Fv断片、ジスルフィド安定化Fv断片(dsFv)、(dsFv)、二重特異的dsFv(dsFv-dsFv’)、ジスルフィド安定化ダイアボディ(dsダイアボディ)、単鎖抗体分子(scFv)、scFvダイマー(二価ダイアボディ)、多重特異的抗体、ラクダ化単鎖ドメイン抗体、ナノボディ、ドメイン抗体、および二価ドメイン抗体である。
【0202】
[00207]そのような抗原結合性断片の産生のために種々の手法を用いることができる。実例的な方法には、インタクトな抗体の酵素消化(たとえばMorimoto et al.,Journal of Biochemical and Biophysical Methods 24:107-117(1992);およびBrennan et al.,Science,229:81(1985)を参照されたい)、E.coli等の宿主細胞による組換え発現(たとえばFab、Fv、およびScFv抗体断片のため)、上で論じたファージディスプレイライブラリーからのスクリーニング(たとえばScFvのため)、およびF(ab’)断片を形成するための2つのFab’-SH断片の化学的カップリング(Carter et al.,Bio/Technology 10:163-167(1992))が含まれる。抗体断片の産生のためのその他の手法は、当業者には明らかになる。
【0203】
[00208]ある特定の実施形態では、抗原結合性断片はscFvである。scFvの生成は、たとえばWO 93/16185;米国特許第5,571,894号および第5,587,458号に記載されている。ScFvはアミノまたはカルボキシル末端でエフェクタータンパク質と融合して、融合タンパク質を提供することができる(たとえばAntibody Engineering,Borrebaeck編を参照されたい)。
【0204】
[00209]ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗SIRPα抗体またはその抗原結合性断片は、二価、四価、六価、または多価である。二価を超えるいずれの分子も多価と考えられ、たとえば三価、四価、六価等を包含する。
【0205】
[00210]二価分子は、2つの結合部位がいずれも同じ抗原または同じエピトープへの結合について特異的であれば、単一特異的である。これは、ある特定の実施形態では、抗原またはエピトープに対して一価の対応物よりも強い結合を提供する。同様に、多価分子も単一特異的であり得る。ある特定の実施形態では、二価または多価の抗原結合性部分において、結合部位の第1の価および結合部位の第2の価は構造的に同一である(即ち、同じ配列を有する)か、または構造的に異なる(即ち、同じ特異性であるが異なる配列を有する)。
【0206】
[00211]二価も、2つの結合部位が異なる抗原またはエピトープに特異的であれば、二重特異的であり得る。これは多価分子にもあてはまる。たとえば、三価分子は、2つの結合部位が第1の抗原(またはエピトープ)に対して単一特異的で、第3の結合部位が第2の抗原(またはエピトープ)に対して特異的であれば、二重特異的であり得る。
【0207】
[00212]二重特異的抗体
[00213]ある特定の実施形態では、抗SIRPα抗体またはその抗原結合性断片は、二重特異的である。
【0208】
[00214]ある特定の実施形態では、抗SIRPα抗体またはその抗原結合性断片は、SIRPα以外の第2の抗原に特異的に結合することができる。ある特定の実施形態では、第2の抗原は、腫瘍抗原、腫瘍表面抗原、または感染物質表面抗原である。ある特定の実施形態では、第2の抗原は、CD19、CD20、CD22、CD24、CD25、CD30、CD33、CD38、CD44、CD52、CD56、CD70、CD96、CD97、CD99、CD123、CD279(PD-1)、CD274(PD-L1)、GPC-3、B7-H3、B7-H4、TROP2、CLDN18.2、EGFR、HER2、CD117、C-Met、PTHR2、およびHAVCR2(TIM3)からなる群から選択される。
【0209】
[00215]ある特定の実施形態では、本明細書で提供される二重特異的抗体またはその抗原結合性断片は、SIRPα上の第2のエピトープに特異的に結合することができる。
[00216]コンジュゲート
[00217]一部の実施形態では、抗SIRPα抗体またはその抗原結合性断片は、1つまたは複数のコンジュゲート部分をさらに含む。コンジュゲート部分は、抗体またはその抗原結合性断片に連結することができる。コンジュゲート部分は、抗体またはその抗原結合性断片に結合することができる部分である。種々のコンジュゲート部分が本明細書で提供される抗体またはその抗原結合性断片に連結され得ることが意図されている(たとえば「Conjugate Vaccines」,Contributions to Microbiology and Immunology,J.M.Cruse and R.E.Lewis,Jr.(eds.),Carger Press,New York,(1989)を参照されたい)。これらのコンジュゲート部分は、とりわけ共有結合、親和性結合、インターカレーション、配位結合、複合体化、会合、ブレンド、または付加によって、抗体またはその抗原結合性断片に連結され得る。一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、リンカーを介して1つまたは複数のコンジュゲートに連結することができる。
【0210】
[00218]ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体またはその抗原結合性断片は、エピトープ結合部分の外に、1つまたは複数のコンジュゲート部分への結合に利用できる特定の部位を含むように操作してよい。たとえば、そのような部位は、コンジュゲート部分への共有結合リンケージを容易にする1つまたは複数の反応性アミノ酸残基、たとえばシステインまたはヒスチジン残基を含んでよい。
【0211】
[00219]ある特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、コンジュゲート部分に間接的に、または別のコンジュゲート部分を通して連結されてもよい。たとえば、本明細書で提供される抗体またはその抗原結合性断片をビオチンにコンジュゲートさせ、次いでアビジンにコンジュゲートした第2のコンジュゲートに間接的にコンジュゲートしてよい。一部の実施形態では、コンジュゲート部分は、クリアランス修飾剤(たとえば半減期を延長させるPEG等のポリマー)、化学療法剤、毒素、放射性同位体、ランタニド、検出可能な標識(たとえば発光標識、蛍光標識、酵素基質標識)、DNAアルキル化剤、トポイソメラーゼ阻害剤、チューブリンバインダー、精製部分、またはその他の抗がん薬物を含む。
【0212】
[00220]「毒素」は、細胞に有害なまたは細胞に損傷を与えもしくはこれを殺す任意の薬剤であり得る。毒素の例には、タキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、エチジウムブロミド、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、MMAE、MMAF、DM1、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアンスラシンジオン、ミトキサントロン、ミスラマイシン、アクチノマイシンD、1-デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、プロマイシンおよびそのアナログ、抗代謝物(たとえばメトトレキサート、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、シタラビン、5-フルオロウラシルデカルバジン)、アルキル化剤(たとえばメクロレタミン、チオエパクロラムブシル、メルファラン、カルムスチン(BSNU)およびロムスチン(CCNU)、シクロホスファミド、ブスルファン、ジブロモマニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンC、およびcis-ジクロロジアミン白金(II)(DDP)シスプラチン、アンスラサイクリン類(たとえばダウノルビシン(以前はダウノマイシン)およびドキソルビシン)、抗生剤(たとえばダクチノマイシン(以前はアクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミスラマイシンおよびアンスラマイシン(AMC))、抗有糸分裂剤(たとえばビンクリスチンおよびビンブラスチン)、トポイソメラーゼ阻害剤、ならびにチューブリンバインダーが限定なく含まれる。
【0213】
[00221]検出可能な標識の例には、蛍光標識(たとえばフルオレセイン、ローダミン、ダンシル、フィコエリスリン、またはテキサスレッド)、酵素基質標識(たとえばセイヨウワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、ルセリフェラーゼ類、グルコアミラーゼ、リゾチーム、サッカライドオキシダーゼ類、またはβ-D-ガラクトシダーゼ)、放射性同位体(たとえば123I、124I、125I、131I、35S、H、111In、112In、14C、64Cu、67Cu、86Y、88Y、90Y、177Lu、211At、186Re、188Re、153Sm、212Bi、および32P、その他のランタニド)、発光標識、色素体部分、ジゴキシゲニン、ビオチン/アビジン、DNA分子、または検出用の金が含まれてよい。
【0214】
[00222]ある特定の実施形態では、コンジュゲート部分は、抗体の半減期を延長することを補助するクリアランス修飾剤であり得る。説明的な例には、水溶性ポリマー、たとえばPEG、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマー、その他が含まれる。ポリマーは任意の分子量のものであってよく、分枝しても分枝しなくてもよい。抗体に結合されるポリマーの数は変動し、2つ以上のポリマーが結合される場合にはこれらは同じ分子または異なる分子であり得る。
【0215】
[00223]ある特定の実施形態では、コンジュゲート部分は磁気ビーズ等の精製部分であり得る。
[00224]ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体またはその抗原結合性断片は、コンジュゲートのための基礎として用いられる。
【0216】
[00225]ポリヌクレオチドおよび組換え方法
[00226]本開示は、本明細書で提供される抗SIRPα抗体またはその抗原結合性断片をコードする単離されたポリヌクレオチドを提供する。本明細書で用いる用語「核酸」または「ポリヌクレオチド」は、一本鎖または二本鎖の形態のデオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)およびそのポリマーを意味する。他に指示しなければ、特定のポリヌクレオチド配列は、その保存的に修飾されたバリアント(たとえば縮重コドン置換)、対立遺伝子、オルソログ、SNP、および相補的配列をも黙示的に包含し、ならびに明白に示された配列を包含する。具体的には、縮重コドン置換は、その中の1つまたは複数の選択された(または全ての)コドンの第3の位置が混合された塩基および/またはデオキシイノシン残基で置換された配列を生成することによって達成され得る(Batzer et al.,Nucleic Acid Res.19:5081(1991);Ohtsuka et al.,J.Biol.Chem.260:2605-2608(1985);およびRossolini et al.,Mol.Cell.Probes 8:91-98(1994)を参照されたい)。
【0217】
[00227]モノクローナル抗体をコードするDNAは、従来の手順を用いて(たとえば抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを用いることによって)容易に単離され、シーケンシングされる。コードするDNAは、合成法によって得てもよい。
【0218】
[00228]抗SIRPα抗体またはその抗原結合性断片をコードする単離されたポリヌクレオチドは、当技術分野で既知の組換え手法を用いて、さらなるクローニング(DNAの増幅)または発現のためにベクターに挿入することができる。多くのベクターが利用可能である。ベクター成分には一般に、それだけに限らないが、以下の1つまたは複数が含まれる。シグナル配列、複製の起源、1つまたは複数のマーカー遺伝子、エンハンサー要素、プロモーター(たとえばSV40、CMV、EF-1α)、および転写終止配列。
【0219】
[00229]本開示は、本明細書で提供される単離されたポリヌクレオチドを含むベクターを提供する。ある特定の実施形態では、本明細書で提供されるポリヌクレオチドは、抗体またはその抗原結合性断片、核酸配列に作動可能に連結された少なくとも1つのプロモーター(たとえばSV40、CMV、EF-1α)、および少なくとも1つの選択マーカーをコードする。ベクターの例には、それだけに限らないが、レトロウイルス(レンチウイルスを含む)、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス(たとえばヘルペスシンプレックスウイルス)、ポックスウイルス、バキュロウイルス、パピローマウイルス、パポバウイルス(たとえばSV40)、ラムダファージ、およびM13ファージ、プラスミドpcDNA3.3、pMD18-T、pOptivec、pCMV、pEGFP、pIRES、pQD-Hyg-GSeu、pALTER、pBAD、pcDNA、pCal、pL、pET、pGEMEX、pGEX、pCI、pEGFT、pSV2、pFUSE、pVITRO、pVIVO、pMAL、pMONO、pSELECT、pUNO、pDUO、Psg5L、pBABE、pWPXL、pBI、p15TV-L、pPro18、pTD、pRS10、pLexA、pACT2.2、pCMV-SCRIPT.RTM.、pCDM8、pCDNA1.1/amp、pcDNA3.1、pRc/RSV、PCR2.1、pEF-1、pFB、pSG5、pXT1、pCDEF3、pSVSPORT、pEF-Bos等が含まれる。
【0220】
[00230]抗体またはその抗原結合性断片をコードするポリヌクレオチド配列を含むベクターを、クローニングまたは遺伝子発現のために宿主細胞に導入することができる。本明細書におけるベクター中でのクローニングまたはDNA発現に適した宿主細胞は、原核細胞、酵母、または上述の高等な真核細胞である。この目的に適した原核細胞には、グラム陰性またはグラム陽性の生命体等の真正細菌、たとえばエシェリキア属、たとえば大腸菌等の腸内細菌科、エンテロバクター属、エルウィニア属、クレブシエラ属、プロテウス属、サルモネラ属、たとえばSalmonella typhimurium、セラチア属、たとえばSerratia marcescans、およびシゲラ属、ならびにB.subtilisおよびB.licheniformis等のバチルス属、P.aeruginosa等のシュードモナス属、ならびにストレプトミセス属が含まれる。
【0221】
[00231]原核細胞に加えて、糸状菌または酵母等の真核微生物は、抗SIRPα抗体コーディングベクターのための好適なクローニングまたは発現用の宿主である。低級真核宿主微生物の中で、Saccharomyces cerevisiaeまたは一般的な製パン用酵母が最も一般に使用されている。しかし、Schizosaccharomyces pombe、たとえばK.lactis、K.fragilis(ATCC 12,424)、K.bulgaricus(ATCC 16,045)、K.wickeramii(ATCC 24,178)、K.waltii(ATCC 56,500)、K.drosophilarum(ATCC 36,906)、K.thermotolerans、およびK.marxianus等のクルイベロミセス宿主、ヤロウィア(EP 402,226)、Pichia pastoris(EP 183,070)、カンジダ、Trichoderma reesia(EP 244,234)、Neurospora crassa、Schwanniomyces occidentalis等のシュワニオミセス、およびたとえばNeurospora、Penicillium、Tolypocladium等の糸状菌、ならびにA.nidulansおよびA.niger等のアスペルギルス属の宿主等の他の多数の属、種、および株が一般に利用可能であり、本明細書で有用である。
【0222】
[00232]本明細書で提供されるグリコシル化抗体またはその抗原結合性断片の発現のために好適な宿主細胞は、多細胞生命体に由来する。無脊椎動物の細胞の例には、植物および昆虫の細胞が含まれる。多数のバキュロウイルス株およびバリアント、ならびにSpodoptera frugiperda(毛虫)、Aedes aegypti(蚊)、Aedes albopictus(蚊)、Drosophila melanogaster(ミバエ)、およびBombyx mori等の宿主からの対応する許容される昆虫宿主細胞が同定されている。トランスフェクションのための種々のウイルス株、たとえばAutographa californica NPVのL-1バリアントおよびBombyx mori NPVのBm-5株は公に利用可能であり、そのようなウイルスは本発明に従って本明細書のウイルスとして、特にSpodoptera frugiperda細胞のトランスフェクションのために用いてよい。木綿、トウモロコシ、ジャガイモ、大豆、ペチュニア、トマト、およびタバコの植物細胞培養も宿主として利用することができる。
【0223】
[00233]しかし、関心は脊椎動物細胞において最大であり、培養における脊椎動物細胞の増殖(組織培養)が通常の手順になっている。有用な哺乳動物宿主細胞株の例には、SV40でトランスフォームされたサル腎CV1株(COS-7、ATCC CRL 1651)、ヒト胚腎株(懸濁培養における増殖のためにサブクローニングした293または293細胞、Graham et al.,J.Gen Virol.36:59(1977))、ベビーハムスター腎細胞(BHK、ATCC CCL 10)、チャイニーズハムスター卵巣細胞/-DHFR(CHO、Urlaub et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216(1980))、マウスセルトリ細胞(TM4、Mather,Biol.Reprod.23:243-251(1980))、サル腎細胞(CV1 ATCC CCL 70)、アフリカミドリザル腎細胞(VERO-76、ATCC CRL-1587)、ヒト子宮頚癌細胞(HELA、ATCC CCL 2)、イヌ腎細胞(MDCK、ATCC CCL 34)、バッファローラット肝細胞(BRL 3A、ATCC CRL 1442)、ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL 75)、ヒト肝細胞(Hep G2、HB 8065)、マウス乳腺腫瘍(MMT 060562、ATCC CCL51)、TRI細胞(Mather et al.,Annals N.Y.Acad.Sci.383:44-68(1982))、MRC5細胞、FS4細胞、ならびにヒト肝細胞がん株(Hep G2)がある。一部の実施形態では、宿主細胞は、CHO、BHK、NS0、293等の哺乳動物培養細胞株、およびそれらの誘導体である。
【0224】
[00234]宿主細胞は、抗SIRPα抗体の産生のための上記の発現またはクローニング用のベクターによってトランスフォームされ、プロモーターの誘導、トランスフォーマントの選択、または所望の配列をコードする遺伝子の増幅のために適するように修飾された従来の栄養培地中で培養される。別の実施形態では、抗体は当技術分野で既知の相同組換えによって産生してよい。ある特定の実施形態では、宿主細胞は、本明細書で提供される抗体またはその抗原結合性断片を産生することができる。
【0225】
[00235]本開示はまた、本開示のベクターが発現される条件下で、本開示で提供される宿主細胞を培養するステップを含む、本明細書で提供される抗体またはその抗原結合性断片を発現する方法を提供する。本明細書で提供される抗体またはその抗原結合性断片を産生するために用いる宿主細胞は、種々の培地中で培養してよい。HamのF10(Sigma)、Minimal Essential Medium(MEM)(Sigma)、RPMI-1640(Sigma)、およびDulbeccoのModified Eagle’s Medium(DMEM)(Sigma)等の市販の培地は、宿主細胞を培養するために好適である。さらに、Ham et al.,Meth.Enz.58:44(1979)、Barnes et al.,Anal.Biochem.102:255(1980)、米国特許第4,767,704号、第4,657,866号、第4,927,762号、第4,560,655号、もしくは第5,122,469号、WO 90/03430、WO 87/00195、または米国特許Re.30,985に記載された培地のいずれも、宿主細胞の培養培地として用いてよい。これらの培地のいずれにも、ホルモンおよび/またはその他の成長因子(インスリン、トランスフェリン、または上皮細胞成長殖因子等)、塩(塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、およびリン酸塩)、緩衝剤(HEPES等)、ヌクレオチド(アデノシンおよびチミジン等)、抗生剤(GENTAMYCIN(商標)薬物等)、微量元素(通常マイクロモル範囲の最終濃度で存在する無機化合物として定義される)、およびグルコースもしくは当量のエネルギー源を必要に応じて補ってよい。当業者に既知の他の任意の必要な補助物も、適切な濃度で含んでよい。温度、pH、その他の培養条件は、発現のために選択した宿主細胞とともに既に用いられたものであり、当業者には明白になる。
【0226】
[00236]組換え手法を用いる場合には、抗体は細胞内で、細胞膜周辺腔で、産生され、または培地中に直接分泌することができる。抗体が細胞内で産生される場合には、第1のステップとして、宿主細胞または溶解した断片の粒子状のデブリは、たとえば遠心分離または限外濾過によって除去される。Carter et al.,Bio/Technology 10:163-167(1992)は、大腸菌の細胞膜周辺腔に分泌される抗体を単離する手順を記載している。簡単には、酢酸ナトリウム(pH3.5)、EDTA、およびフェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF)の存在下に約30分かけて細胞ペーストを解凍する。細胞デブリは遠心分離によって除去することができる。抗体が培地中に分泌される場合には、そのような発現システムからの上清を、一般に市販のタンパク質濃縮フィルター、たとえばAmiconまたはMilliporeのPellicon限外濾過ユニットを用いてまず濃縮する。タンパク質分解を阻害するためにPMSF等のプロテアーゼ阻害剤を前記ステップのいずれにも含ませ、外来の夾雑物の増殖を防止するために抗生剤を含ませてよい。
【0227】
[00237]細胞から調製した抗SIRPα抗体またはその抗原結合性断片は、たとえばヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、DEAEセルロースイオン交換クロマトグラフィー、硫酸アンモニウム沈降、塩析、およびアフィニティクロマトグラフィーを用いて精製することができ、アフィニティクロマトグラフィーが好ましい精製手法である。
【0228】
[00238]ある特定の実施形態では、固相に固定化されたプロテインAが、抗体およびその抗原結合性断片の免疫アフィニティ精製のために用いられる。アフィニティリガンドとしてのプロテインAの好適性は、抗体中に存在する任意の免疫グロブリンのFcドメインの種およびアイソタイプによる。プロテインAは、ヒトガンマ1、ガンマ2、またはガンマ4の重鎖に基づく抗体を精製するために用いることができる(Lindmark et al.,J.Immunol.Meth.62:1-13(1983))。全てのマウスアイソタイプおよびヒトガンマ3についてはプロテインGが推奨される(Guss et al.,EMBO J.5:1567 1575(1986))。アフィニティリガンドが結合するマトリックスはアガロースであることが最も多いが、他のマトリックスも利用可能である。制御された細孔ガラスまたはポリ(スチレンジビニル)ベンゼン等の機械的に安定なマトリックスは、アガロースによって達成されるよりも速い流量および短い処理時間を可能にする。抗体がCH3ドメインを含む場合には、Bakerbond ABX(商標)樹脂(J.T.Baker,Phillipsburg,N.J.)が精製に有用である。イオン交換カラム上の分別、エタノール沈降、逆相HPLC、シリカ上のクロマトグラフィー、ヘパリンSEPHAROSE(商標)上のクロマトグラフィー、アニオンまたはカチオン交換樹脂(ポリアスパラギン酸カラム等)上のクロマトグラフィー、クロマトフォーカシング、SDS-PAGE、および硫酸アンモニウム沈降等のタンパク質精製のための他の手法も、回収すべき抗体に応じて利用可能である。
【0229】
[00239]任意の予備的な精製ステップに続いて、目的の抗体および夾雑物を含む混合物を、約2.5~4.5のpHで溶出緩衝液を用い、好ましくは低い塩濃度(たとえば約0~0.25Mの塩)で実施する低pH疎水性相互作用クロマトグラフィーに供してよい。
【0230】
[00240]医薬組成物
[00241]本開示は、抗SIRPα抗体またはその抗原結合性断片および1つもしくは複数の薬学的に許容される担体を含む医薬組成物をさらに提供する。
【0231】
[00242]本明細書で開示する医薬組成物における使用のための薬学的に許容される担体には、たとえば薬学的に許容される液体、ゲル、もしくは固体の担体、水性ビヒクル、非水性ビヒクル、抗微生物剤、等張剤、緩衝剤、抗酸化剤、麻酔剤、懸濁/分散剤、隔離剤もしくはキレート化剤、希釈剤、アジュバント、賦形剤、または非毒性補助物質、当技術分野で既知の他の成分、またはそれらの種々の組合せが含まれ得る。
【0232】
[00243]好適な成分には、たとえば抗酸化剤、充填材、結合剤、崩壊剤、緩衝剤、保存剤、滑剤、香味剤、増粘剤、着色剤、乳化剤、または糖およびシクロデキストリン等の安定剤が含まれ得る。好適な抗酸化剤には、たとえばメチオニン、アスコルビン酸、EDTA、チオ硫酸ナトリウム、白金、カタラーゼ、クエン酸、システイン、チオグリセロール、チオグリコール酸、チオソルビトール、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、および/またはプロピルガレートが含まれ得る。本明細書で開示したように、本明細書で提供される抗体またはその抗原結合性断片およびコンジュゲートを含む組成物におけるメチオニン等の1つもしくは複数の抗酸化剤の含有により、抗体またはその抗原結合性断片の酸化が低減される。この酸化の低減によって結合親和性の喪失が防止されまたは低減され、それにより抗体の安定性が改善され、保存期間が最大化される。したがって、ある特定の実施形態では、本明細書で開示した1つもしくは複数の抗体またはその抗原結合性断片およびメチオニン等の1つもしくは複数の抗酸化剤を含む医薬組成物が提供される。抗体または抗原結合性断片をメチオニン等の1つもしくは複数の抗酸化剤と混合することによって、本明細書で提供される抗体または抗原結合性断片の酸化を防止し、保存期間を延長し、および/または効率を改善する方法がさらに提供される。
【0233】
[00244]さらに説明すると、薬学的に許容される担体には、たとえば注射用塩化ナトリウム、リンゲル注射液、等張デキストロース注射液、注射用滅菌水、もしくはデキストロースおよびラクテート化リンゲル注射液等の水性ビヒクル、植物由来の固定化油、綿実油、コーン油、ゴマ油、またはピーナツ油等の非水性ビヒクル、静細菌性または静真菌性の濃度の抗微生物剤、塩化ナトリウムもしくはデキストロース等の等張剤、リン酸塩もしくはクエン酸塩等の緩衝剤、重硫酸ナトリウム等の抗酸化剤、プロカイン塩酸塩等の局所麻酔剤、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、もしくはポリビニルピロリドン等の懸濁分散剤、Polysorbate80(TWEEN-80)等の乳化剤、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)もしくはEGTA(エチレングリコール四酢酸)等の隔離剤もしくはキレート化剤、エチルアルコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、水酸化ナトリウム、塩酸、クエン酸、または乳酸が含まれ得る。多数回投与用容器中の医薬組成物には、フェノール類もしくはクレゾール類、水銀化合物、ベンジルアルコール、クロロブタノール、メチルおよびプロピルp-ヒドロキシ安息香酸エステル、チメロサール、塩化ベンザルコニウム、および塩化ベンゼトニウムを含む、担体として利用される抗微生物剤を添加してよい。好適な賦形剤には、たとえば水、食塩液、デキストロース、グリセロール、またはエタノールが含まれ得る。好適な非毒性補助物質には、たとえば湿潤もしくは乳化剤、pH緩衝剤、安定剤、溶解促進剤、または酢酸ナトリウム、ソルビタンモノラウレート、トリエタノールアミンオレエート、もしくはシクロデキストリン等の薬剤が含まれ得る。
【0234】
[00245]医薬組成物は、液体溶液、懸濁液、エマルジョン、ピル、カプセル、錠剤、持続放出製剤、または粉末であり得る。経口製剤には、医薬グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウム等の標準的な担体が含まれ得る。
【0235】
[00246]ある特定の実施形態では、医薬組成物は注射可能な組成物に製剤化される。注射可能な医薬組成物は、たとえば液体溶液、懸濁液、エマルジョン、を生成するために好適な液体溶液、懸濁液、エマルジョン、または固体形態等の任意の従来の形態で調製してよい。注射用の調製物には、即時注射可能な無菌かつ/または非発熱性の溶液、皮下注射用錠剤を含む使用直前に溶媒と即時混合できる凍結乾燥粉末等の無菌の乾燥した可溶性製品、即時注射可能な無菌の懸濁液、使用直前にビヒクルと即時混合できる無菌の乾燥した不溶性製品、ならびに無菌かつ/または非発熱性のエマルジョンが含まれ得る。溶液は水性または非水性であってよい。
【0236】
[00247]ある特定の実施形態では、単位用量の調製物がアンプル、バイアル、または針付きシリンジの中に包装される。非経口投与のための全ての調製物は、当技術分野で知られており実践されているように、無菌かつ非発熱性であるべきである。
【0237】
[00248]ある特定の実施形態では、無菌の凍結乾燥された粉末は、本明細書で開示した抗体または抗原結合性断片を好適な溶媒に溶解することによって調製される。溶媒は、粉末または粉末から調製される再構成された溶液の安定性またはその他の薬理学的要素を改善する賦形剤を含んでよい。用い得る賦形剤には、それだけに限らないが、水、デキストロース、ソルビタール、フルクトース、コーンシラップ、キシリトール、グリセリン、グルコース、スクロース、またはその他の好適な薬剤が含まれる。溶媒は、一実施形態ではほぼ中性のpHで、クエン酸塩、リン酸ナトリウムもしくはカリウム、またはその他の当業者には既知のそのような緩衝剤等の緩衝剤を含んでよい。引き続く溶液の無菌濾過およびそれに続く当業者には既知の標準的条件下における凍結乾燥によって、望ましい製剤が提供される。一実施形態では、得られる溶液は凍結乾燥のためのバイアルに分注される。各バイアルは、抗SIRPα抗体もしくはその抗原結合性断片、またはその組成物の単一用量または多回用量を含み得る。用量または用量の組に必要な量より少量(たとえば約10%)多くバイアルを過剰充填することは、正確な試料取り出しおよび正確な投与を容易にするために許容される。凍結乾燥された粉末は、約4℃~室温等の適切な条件下で保存することができる。
【0238】
[00249]凍結乾燥された粉末を注射用水で再構成することによって、非経口投与における使用のための製剤が提供される。一実施形態では、再構成のために、無菌かつ/もしくは非発熱性の水またはその他の好適な液体担体を、凍結乾燥された粉末に添加する。正確な量は与えられる選択した療法に依存し、実験的に決定することができる。
【0239】
[00250]キット
[00251]ある特定の実施形態では、本開示は、本明細書で提供される抗体もしくはその抗原結合性断片を含むキットを提供する。
【0240】
[00252]ある特定の実施形態では、本開示は、本明細書で提供される抗体またはその抗原結合性断片、および標的細胞上に発現される標的抗原に結合する標的抗体を含む、キットを提供する。ある特定の実施形態では、標的細胞は、CD47を発現する、腫瘍細胞、炎症細胞、および/または慢性感染細胞であり得る。
【0241】
[00253]ある特定の実施形態では、標的抗原は、腫瘍抗原、腫瘍表面抗原、または感染物質表面抗原である。
[00254]ある特定の実施形態では、キットは、追加の治療剤をさらに含む。追加の治療剤は、抗がん治療剤、抗炎症剤、または抗感染剤であり得る。
【0242】
[00255]ある特定の実施形態では、追加の治療剤は、化学療法剤、抗がん薬物、放射線療法、免疫療法剤、抗血管新生剤、標的療法、細胞療法、遺伝子療法、ホルモン療法、抗ウイルス剤、抗生剤、鎮痛剤、抗酸化剤、金属キレート剤、およびサイトカインからなる群から選択される。
【0243】
[00256]そのようなキットは、当業者には容易に明白になるように、所望であればたとえば1つもしくは複数の薬学的に許容される担体を含む容器、追加の容器、その他の種々の従来の医薬キット成分の1つまた複数をさらに含み得る。投与すべき成分の量を示す、挿入物またはラベルとしての説明書、投与のためのガイドライン、および/または成分を混合するためのガイドラインも、キットに含ませることができる。
【0244】
[00257]使用の方法
[00258]別の態様では、本開示は、in vitroにおいて標的細胞のファゴサイトーシスを誘導する方法であって、本明細書で提供される抗体またはその抗原結合性断片の存在下において、標的細胞を、SIRPα陽性ファゴサイトーシス細胞試料と接触させて、それにより、SIRPα陽性ファゴサイトーシス細胞による標的細胞のファゴサイトーシスを誘導するステップを含む、方法を提供する。
【0245】
[00259]別の態様では、本開示は、in vitroにおいて標的細胞のファゴサイトーシスを誘導する方法であって、本明細書で提供される抗体もしくはその抗原結合性断片および標的細胞上の標的抗原に特異的に結合する標的抗体の存在下において、標的細胞を、SIRPα陽性ファゴサイトーシス細胞試料と接触させて、それにより、SIRPα陽性ファゴサイトーシス細胞による標的細胞のファゴサイトーシスを誘導するステップを含む、方法を提供する。
【0246】
[00260]一部の実施形態では、標的細胞は、CD47発現細胞である。
[00261]一態様では、本開示は、対象において標的細胞のファゴサイトーシスを誘導する方法であって、対象に、本明細書で提供される抗体もしくはその抗原結合性断片および/または本明細書で提供される医薬組成物を、標的細胞のファゴサイトーシスを誘導するのに有効な用量で投与するステップを含む、方法を提供する。
【0247】
[00262]一態様では、本開示は、対象において標的細胞のファゴサイトーシスを誘導する方法であって、対象に、標的細胞上の標的抗原に特異的に結合する標的抗体と組み合わせて、本明細書で提供される抗体もしくはその抗原結合性断片および/または本明細書で提供される医薬組成物を、標的細胞のファゴサイトーシスを誘導するのに有効な用量で投与するステップを含む、方法を提供する。
【0248】
[00263]一態様では、本開示は、対象における標的細胞に対する標的抗体の抗体依存性細胞性ファゴサイトーシス(ADCP)作用を増加させる方法であって、対象に、Fc領域を有する標的抗体と組み合わせて、治療有効量の本明細書で提供される抗体もしくはその抗原結合性断片および/または本明細書で提供される医薬組成物を、投与して、それにより、標的細胞に対する標的抗体のADCPを増加させるステップを含み、標的抗体が、標的細胞上に発現される標的抗原に結合する、方法を提供する。ある特定の実施形態では、標的抗体は、標的細胞上に発現される標的抗原に結合し、標的細胞に対する標的抗体のADCP作用が、増加される。標的細胞は、CD47を発現する、腫瘍細胞、炎症細胞、および/または慢性感染細胞であり得る。
【0249】
[00264]一態様では、本開示は、対象における疾患、障害、または状態の処置において標的抗体(たとえば、抗CD20抗体、抗PD-L1抗体、および抗クローディン18.2抗体)を強化する方法であって、対象に、標的抗体(たとえば、抗CD20抗体、抗PD-L1抗体、および抗クローディン18.2抗体)と組み合わせて、治療有効量の本明細書で提供される抗体もしくはその抗原結合性断片および/または本明細書で提供される医薬組成物を投与して、それにより、対象における疾患、障害、または状態の処置において標的抗体を強化するステップを含む、方法を提供する。本明細書で用いる場合、用語「強化する」または「強化すること」は、治療有効性を増加させることを意味する。
【0250】
[00265]ある特定の実施形態では、標的抗体は、Fc領域を有する。ある特定の実施形態では、疾患、障害、または状態は、免疫関連疾患もしくは障害、腫瘍およびがん、自己免疫疾患、または感染性疾患である。ある特定の実施形態では、免疫関連疾患または障害は、全身性エリテマトーデス、急性呼吸促迫症候群(ARDS)、脈管炎、重症筋無力症、特発性肺線維症、クローン病、喘息、リウマチ性関節炎、移植片対宿主病、脊椎関節症(たとえば、強直性脊椎炎、乾癬性関節炎、炎症性腸疾患を伴う孤発性急性腸炎性関節炎、反応性関節炎、ベーチェット病、分類不能型脊椎関節症、前部ブドウ膜炎、および若年性特発性関節炎)、多発性硬化症、子宮内膜症、糸球体腎炎、敗血症、糖尿病、急性冠症候群、虚血再灌流、乾癬、進行性全身性硬化症、アテローム性動脈硬化症、シェーグレン症候群、強皮症、または炎症性自己免疫性筋炎からなる群から選択される。
【0251】
[00266]ある特定の実施形態では、本明細書で提供される方法によって処置可能な状態または障害には、腫瘍およびがんが含まれる。がんおよび腫瘍の例としては、非小細胞肺がん、小細胞肺がん、腎細胞がん、結腸直腸がん、卵巣がん、乳がん、膵がん、胃癌、膀胱がん、食道がん、中皮腫、黒色腫、頭頚部がん、甲状腺がん、肉腫、前立腺がん、膠芽細胞腫、子宮頸がん、胸腺癌、白血病、リンパ腫、骨髄腫、菌状息肉腫、メルケル細胞がん、および他の血液悪性腫瘍、たとえば、古典的ホジキンリンパ腫(CHL)、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫、T細胞/組織球豊富型B細胞リンパ腫、EBV陽性および陰性PTLD、ならびにEBV関連びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、形質芽細胞性リンパ腫、節外性NK/T細胞リンパ腫、鼻咽頭癌、およびHHV8関連原発性滲出性リンパ腫、ホジキンリンパ腫、中枢神経系(CNS)の新生物、たとえば、原発性CNSリンパ腫、脊髄軸腫瘍、脳幹部神経膠腫、肛門がん、虫垂がん、星状細胞腫、基底細胞癌、胆嚢がん、胃がん、肺がん、気管支がん、骨がん、肝胆管がん、膵がん、乳がん、肝がん、卵巣がん、精巣がん、腎がん、腎盂尿管がん、唾液腺がん、小腸がん、尿道がん、膀胱がん、頭頚部がん、脊椎がん、脳がん、頸がん、子宮がん、子宮内膜がん、結腸がん、結腸直腸がん、直腸がん、食道がん、胃腸管がん、皮膚がん、前立腺がん、下垂体がん、膣がん、甲状腺がん、咽喉がん、膠芽細胞腫、黒色腫、骨髄異形成症候群、肉腫、奇形腫、慢性リンパ球性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、急性リンパ球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、TもしくはB細胞リンパ腫、GI器官間質腫、軟組織腫瘍、肝細胞癌、ならびに腺癌、またはこれらの転移が挙げられる。
【0252】
[00267]別の態様では、本開示はまた、対象における標的細胞のファゴサイトーシスの誘導により利益を得ることができる疾患、障害、または状態を処置する方法であって、対象に、治療有効量の本明細書で提供される抗体もしくはその抗原結合性断片および/または本明細書で提供される医薬組成物を投与するステップを含む、方法を提供する。
【0253】
[00268]別の態様では、本開示はまた、対象における標的細胞のファゴサイトーシスの誘導により利益を得ることができる疾患、障害、または状態を処置する方法であって、対象に、標的細胞上の標的抗原に特異的に結合する標的抗体と組み合わせて、治療有効量の本明細書で提供される抗体もしくはその抗原結合性断片および/または本明細書で提供される医薬組成物を投与するステップを含む、方法を提供する。
【0254】
[00269]別の態様では、本開示はまた、対象におけるSIRPα関連の疾患、障害、または状態を処置する方法であって、対象に、治療有効量の本明細書で提供される抗体もしくはその抗原結合性断片および/または本明細書で提供される医薬組成物を投与するステップを含む、方法を提供する。
【0255】
[00270]別の態様では、本開示はまた、対象におけるSIRPα関連の疾患、障害、または状態を処置する方法であって、対象に、SIRPα関連の疾患と関連する標的細胞上の標的抗原に特異的に結合する標的抗体と組み合わせて、治療有効量の本明細書で提供される抗体もしくはその抗原結合性断片および/または本明細書で提供される医薬組成物を投与するステップを含む、方法を提供する。
【0256】
[00271]一部の実施形態では、標的細胞は、CD47発現細胞である。一部の実施形態では、標的細胞は、がん細胞、炎症細胞、および/または慢性感染細胞を含む。
[00272]ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体またはその抗原結合性断片が、標的抗体と組み合わせて使用される場合、本明細書で提供される抗体またはその抗原結合性断片は、非標的細胞(たとえば、標的抗原を発現しないもの)よりも、標的細胞の選択的なファゴサイトーシスを誘導することができる。
【0257】
[00273]一部の実施形態では、標的細胞は、標的抗原を発現する。一部の実施形態では、標的抗原は、腫瘍抗原、腫瘍表面抗原、炎症性抗原、または感染性微生物の抗原である。一部の実施形態では、標的抗原は、腫瘍抗原(たとえば、腫瘍関連抗原(TAA)、腫瘍特異的抗原(TSA)、たとえばネオ抗原)、または感染細胞上に提示される抗原(たとえば、B型肝炎表面抗原(HBsAg))であり得る。
【0258】
[00274]一部の実施形態では、対象は、ヒトである。一部の実施形態では、対象は、SIRPα v1ホモ接合性である。一部の実施形態では、対象は、SIRPα v2ホモ接合性である。一部の実施形態では、対象は、SIRPα v1/v2ヘテロ接合性である。
【0259】
[00275]一部の実施形態では、対象は、がん、固形腫瘍、慢性感染症、炎症性疾患、多発性硬化症、自己免疫疾患、神経疾患、脳損傷、神経損傷、赤血球増加症、ヘモクロマトーシス、外傷、敗血症性ショック、線維症、アテローム性動脈硬化症、肥満、II型糖尿病、移植片機能不全、および関節炎からなる群から選択される疾患、障害、または状態を有する。
【0260】
[00276]一部の実施形態では、がんは、CD47陽性がんである。一部の実施形態では、処置しようとする対象は、CD47陽性がんを有すると同定されている。本明細書で使用される「CD47陽性」がんは、がん細胞においてCD47タンパク質を発現すること、またはがん細胞において、正常細胞において予想されるよりも有意に高いレベルでCD47を発現することを特徴とするがんを指す。目的とされる生物学的試料におけるCD47の存在および/または量は、生物学的試料が由来する対象が、抗SIRPα抗体に応答し得る可能性が高いかどうかを示し得る。様々な方法を使用して、対象から得られた試験生物学的試料におけるCD47の存在および/または量を決定することができる。たとえば、試験生物学的試料を、発現されるCD47タンパク質に結合しそれを検出する抗CD47抗体またはその抗原結合性断片に曝露してもよい。あるいは、CD47はまた、qPCR、逆転写酵素PCR、マイクロアレイ、SAGE、FISHなどの方法を使用して、核酸発現レベルで検出することもできる。一部の実施形態では、試験試料は、がん細胞もしくは組織、または腫瘍浸潤性免疫細胞に由来する。ある特定の実施形態では、試験生物学的試料におけるCD47の存在または上方制御されたレベルは、応答性の尤度を示す。「上方制御された」という用語は、本明細書で使用される場合、同じ方法を使用して検出した参照試料におけるCD47の発現レベルと比較して、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、35%以上、40%以上、45%以上、50%以上、55%以上、60%以上、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、またはそれ以上の、試験試料中のCD47の発現レベルにおける全体的な増加を指す。参照試料は、健常個体もしくは非罹患個体から得られた対照試料、または試験試料が得られた同じ個体から得られた健常試料もしくは非罹患試料であり得る。たとえば、参照試料は、試験試料(たとえば、腫瘍)に隣接したまたはその付近の非疾患試料であり得る。参照レベルは、任意選択で別の遺伝子(たとえば、ハウスキーピング遺伝子)の発現レベルに対して正規化された、同じ組織型の正常細胞において見出されるCD47発現レベルであり得る。あるいは、参照レベルは、健常対象において見出されるCD47発現レベルであってもよい。参照試料は、健常個体もしくは非罹患個体から得られた対照試料、または試験試料が得られた同じ個体から得られた健常試料もしくは非罹患試料であり得る。一部の実施形態では、参照は、目的の試験または判定と実質的に同時に試験および/または判定される。一部の実施形態では、参照は、任意選択で有形媒体において具現化された、ヒストリカル参照である。典型的には、当業者には理解されるように、参照は、評価するものと比較可能な条件下または状況下において、判定または特徴付けられる。
【0261】
[00277]これらの実施形態のある特定のものでは、標的抗体または1つもしくは複数の追加の治療剤と組み合わせて投与される本明細書で提供される抗体またはその抗原結合性断片は、その標的抗体または1つもしくは複数の追加の治療剤と同時に投与してよく、あるいはこれらの実施形態のある特定のものでは、抗体またはその抗原結合性断片および標的抗体または追加の治療剤は、同じ医薬組成物の一部として投与してもよい。しかしながら、標的抗体または追加の治療剤と「組み合わせて」投与される抗体またはその抗原結合性断片は、その薬剤と同時にまたは同じ組成物中で投与されなくてもよい。標的抗体または別の薬剤の前にまたはその後に投与される抗体またはその抗原結合性断片は、その抗体または抗原結合性断片および標的抗体または第2の薬剤が異なる経路を介して投与されたとしても、その語句が本明細書で使用されれば、その薬剤と「組み合わせて」投与されたと考えられる。可能な場合には、本明細書で開示される抗体またはその抗原結合性断片と組み合わせて投与される標的抗体または追加の治療剤は、その追加の治療剤の製品情報シートに列挙されたスケジュールに従って、またはPhysicians’ Desk Reference 2003(Physicians’ Desk Reference,57版;Medical Economics Company;ISBN:1563634457;57版(2002年11月)もしくは当該技術分野で公知のプロトコルに従って、投与される。
【0262】
[00278]別の態様では、治療有効量の本明細書で提供される抗体もしくはその抗原結合性断片、および/または本明細書で提供される医薬組成物を、疾患、障害、または状態の処置を必要とする対象に投与するステップを含む、SIRPαの活性を調節することによる恩恵を受ける対象における疾患、障害、または状態を処置する方法が提供される。ある特定の実施形態では、疾患または状態は、SIRPαに関連する疾患、障害、または状態である。
【0263】
[00279]本明細書で提供される抗体または抗原結合性断片の治療有効量は、たとえば体重、年齢、過去の病歴、現在の投薬、対象の健康状態および交差反応の可能性、アレルギー、感受性、および有害な副反応、ならびに投与経路および疾患発生の程度等の当技術分野で既知の種々の因子に依存する。用量は、これらのおよびその他の状況または要求によって指示されるように、当事者(たとえば医師または獣医師)によって比例的に低減されまたは増加されてよい。
【0264】
[00280]一部の実施形態では、本明細書で提供される抗体または抗原結合性断片は、約0.01mg/kg~約100mg/kgの治療有効用量で投与してよい。ある特定の実施形態では、投与用量は処置の経過にわたって変化してよい。たとえばある特定の実施形態では、初期の投与用量は引き続く投与用量より高くてよい。ある特定の実施形態では、投与用量は対象の反応に応じて処置の経過にわたって変動してよい。
【0265】
[00281]投薬レジメンは、最適の所望の応答(たとえば治療応答)が提供されるように調整してよい。たとえば、単一用量を投与してもよく、いくつかに分割した用量を経時的に投与してもよい。
【0266】
[00282]本明細書で提供される抗体またはその抗原結合性断片は、当技術分野で既知の任意の経路、たとえば非経口(たとえば皮下、腹腔内、静脈内注入を含む静脈内、筋肉内、または皮内注射)または非-非経口(たとえば経口、鼻内、眼内、舌下腺、直腸、または局所)経路によって投与してよい。
【0267】
[00283]一部の実施形態では、本明細書で提供される抗体またはその抗原結合性断片は、単独で、または治療有効量の追加の治療剤と組み合わせて、投与してよい。たとえば、本明細書で開示する抗体またはその抗原結合性断片は、追加の治療剤、たとえば化学療法剤、抗がん薬、放射線療法剤、免疫療法剤、抗血管新生剤、標的療法剤、細胞療法剤、遺伝子療法剤、ホルモン療法剤、抗ウイルス剤、抗生剤、鎮痛剤、抗酸化剤、金属キレート剤、およびサイトカインと組み合わせて投与してよい。
【0268】
[00284]本明細書で用いる用語「免疫療法」は、免疫系を刺激してがん等の疾患と闘わせるか、一般的な方法で免疫系を強化する療法の型を意味する。免疫療法の例には、チェックポイント調節剤、養子細胞移植、サイトカイン、腫瘍溶解性ウイルス、および治療用ワクチンが限定なく含まれる。
【0269】
[00285]「標的療法」は、がんに関連する特定の分子、たとえばがん細胞には存在するが正常な細胞には存在しない、もしくはがん細胞でより豊富に存在する特定のタンパク質、またはがんの成長および生存に寄与するがん微小環境における標的分子に作用する療法の型である。標的療法は治療剤を腫瘍に標的させ、それにより正常組織を治療剤の影響から救う。
【0270】
[00286]別の態様では、本開示は、SIRPα陽性細胞を本明細書で提供される抗体またはその抗原結合性断片に曝露するステップを含む、SIRPα陽性細胞におけるSIRPαの活性を調節する方法をさらに提供する。一部の実施形態では、SIRPα陽性細胞はファゴサイトーシス細胞(たとえば、マクロファージ)である。
【0271】
[00287]別の態様では、本開示は、試料を本明細書で提供される抗体もしくはその抗原結合性断片と接触させるステップ、および試料中のSIRPαの存在または量を決定するステップを含む、試料中のSIRPαの存在または量を検出する方法を提供する。
【0272】
[00288]別の態様では、本開示は、a)対象から得た試料を本明細書で提供される抗体もしくはその抗原結合性断片と接触させるステップ、b)試料中のSIRPαの存在または量を決定するステップ、およびc)SIRPαの存在または量を対象におけるSIRPα関連の疾患、障害、またはステータスの存在または状態と相関させるステップを含む、対象におけるSIRPα関連の疾患、障害、または状態を診断する方法を提供する。
【0273】
[00289]別の態様では、本開示は、SIRPα関連の疾患、障害、または状態の検出に有用な、任意選択で検出可能な部分とコンジュゲートした、本明細書で提供される抗体またはその抗原結合性断片を含むキットを提供する。キットは、使用説明書をさらに含んでよい。
【0274】
[00290]別の態様では、本開示は、対象におけるSIRPα関連の疾患、障害、または状態を処置し、防止し、または軽減するための医薬の製造における、およびSIRPα関連の疾患、障害、または状態を診断するための診断試薬の製造における、本明細書で提供される抗体またはその抗原結合性断片の使用をも提供する。
【0275】
[00291]以下の実施例は、特許請求する発明をより良く説明するために提供され、本発明の範囲を限定するものと解釈すべきではない。以下に記載する全ての特定の組成物、材料、および方法は全体としてまたは部分的に、本発明の範囲に含まれる。これらの特定の組成物、材料、および方法は本発明を限定することを意図しておらず、本発明の範囲に含まれる特定の実施形態を説明するのみである。当業者であれば、発明の能力を行使することなく、また本発明の範囲から逸脱せずに、等価の組成物、材料、および方法を開発することができる。本発明の境界内に留まりつつ、本明細書に記載した手順の中で多くの変形を行うことができることが理解されよう。そのような変形が本発明の範囲に含まれることは、本発明者らの意図である。
【実施例
【0276】
実施例1.試薬の生成
[00260]1.1.参照抗体の生成
[00261]抗SIRPα参照抗体HEFLB(米国出願公開第US20140242095号を参照されたい)またはhu1H9G4(国際公開第WO2019/023347号Alを参照されたい)の可変領域をコードするDNA配列を、ヒトIgG定常領域を発現するベクターにクローニングした。HEFLBおよびhu1H9G4の可変領域アミノ酸配列は、本開示の表6に示される。発現プラスミドをトランスフェクトしたExpi293細胞(Invitrogen)を、37℃で5日間、培養した。次いで、培養培地を収集し、遠心分離して細胞ペレットを除去した。回収した上清をプロテインAアフィニティクロマトグラフィーで精製した。HEFLBおよびhu1H9G4は、いずれも、定常領域にS228Pの変異を有するヒトIgG4モノクローナル抗体である。
【0277】
[00262]1.2.SIRPα、SIRPβおよびSIRPγ安定発現細胞株の生成
[00263]全長ヒトSIRPα v1(NP_542970)、ヒトSIRPβ(O00241)、カニクイザルSIRPα(NP_001271679)、またはC57BL/6マウスSIRPα(NP_031573)をコードするDNA配列を、それぞれ、pIRESベクター(Clontech)にクローニングした。ヒトSIRPγ(Q9P1W8)発現プラスミドを、Sino Biological(HG16111-CF)から購入した。
【0278】
[00264]ヒトSIRPα v1またはヒトSIRPγ発現プラスミドをトランスフェクトした293F細胞(Invitrogen)を、選択的に培養し、安定なクローンを得、それを確認した。
【0279】
[00265]類似の方式で、ヒトSIRPα v1、ヒトSIRPβ、カニクイザルSIRPα、またはC57BL/6マウスSIRPα発現プラスミドをトランスフェクトしたCHOK1細胞(Invitrogen)を、選択的に培養し、安定なクローンを得、それを確認した。
【0280】
[00266]外来ヒトSIRPα v2(CAA71403.1)を安定に発現するCHOK1細胞株を、KYinno(KC-1720)から購入した。
[00267]1.3.組換えタンパク質の生成
[00268]組換えタンパク質ヒトIgG Fc(hFc)タグ化ヒトCD47細胞外ドメイン(ECD、NP_001768.1、M1-E141)、ヒトSIRPα v1 ECD(NP_542970、M1-R370)、ヒトSIRPα v2 ECD(CAA71403.1、M1-R369)、またはヒトSIRPγ ECD(Q9P1W8、M1-P360)を、Chempartnerによって生成した。組換えタンパク質6xHisタグ化C57BL/6マウスSIRPα ECD、ヒトSIRPβL ECD(NP_001129316.1)、およびマウスヒトIgG Fc(mFc)タグ化ヒトCD47 ECD、ヒトSIRPα v1を、Biointronから購入した。組換えタンパク質6xHisタグ化ヒトSIRPα v1 ECD、ヒトSIRPα v2 ECD、ヒトSIRPβ ECD(O00241)を、Sino Biologicalから購入した。
【0281】
実施例2.抗体の生成
[00269]2.1.タンパク質免疫化のための免疫原の調製
[00270]hFcタグ化ヒトSIRPα v1 ECD組換えタンパク質を、タンパク質免疫化のための免疫原として使用した(実施例1.3を参照されたい)。
【0282】
[00271]2.2.細胞免疫化のための免疫原の調製
[00272]ヒトSIRPα v1を安定に発現する293F細胞を、細胞免疫化のための免疫原として使用した(実施例1.2を参照されたい)。
【0283】
[00273]2.3.遺伝子免疫化のための免疫原の調製
[00274]全長ヒトSIRPα v1タンパク質(NP_542970)をコードするDNA配列を、pCPベクター(Chempartner)にクローニングした。次いで、調製したプラスミドを、遺伝子免疫化のための免疫原としてコロイド金ブレット(Bio-Rad)上にコーティングした。
【0284】
[00275]2.4.免疫化
[00276]Balb/cおよびSJL/Jマウス(SLAC)に、ヒトSIRPα v1 ECD組換えタンパク質を使用したタンパク質免疫化、ヒトSIRPα v1を安定に発現する293F細胞を使用した細胞免疫化、およびヒトSIRPα v1発現プラスミドをコーティングした金ブレットを使用した遺伝子免疫化という3つの異なる戦略によって、免疫化を行った。ヒトSIRPα v1 ECD組換えタンパク質を用いたELISAアッセイおよびヒトSIRPα v1を安定に発現するCHOK1細胞を用いたFACSアッセイを使用して、免疫化したマウスの血清力価を検出した。血清力価が高かったマウスを、ハイブリドーマ融合のために選択した。
【0285】
[00277]2.5.ハイブリドーマの生成
[00278]最後の追加免疫の5日後に、マウスを屠殺し、脾細胞を収集した。1%(v/v)のNHOHを添加して、赤血球を溶解させた。次いで、洗浄した脾細胞を、高効率電気融合またはPEG方法によって、SP2/0マウス骨髄腫細胞(ATCC)と融合させた。細胞融合の後、融合した細胞を、20% FBSおよび1% HATを含有する200μlのDMEM培地とともに、2×10個の細胞/ウェルの密度で96ウェルプレートに播種した。
【0286】
[00279]2.6.ハイブリドーマのスクリーニング
[00280]融合の10~12日後に、融合プレートを、主として、ヒトSIRPα v1 ECD組換えタンパク質を用いたELISAアッセイまたはヒトSIRPα v1およびv2を安定に発現するCHOK1細胞を用いたAcumenアッセイ(TTP Labtech)によって、スクリーニングした。二次スクリーニングのために、陽性ウェルから得られたハイブリドーマ細胞を増幅させて24ウェルプレートに入れた。二次スクリーニングにおいて、結合活性を、ヒトSIRPα v1およびv2 ECD組換えタンパク質を用いたELISAアッセイおよびヒトSIRPα v1を安定に発現するCHOK1細胞を用いたFACSアッセイによって、評価した。異なるヒトSIRPαバリアントに対して上位の結合活性を有するクローンを、サブクローニングに選択した。加えて、ヒトSIRPα/β/γに対する特異性、種間交差反応性、CD47とSIRPαとの相互作用のブロッキング活性もまた、ハイブリドーマの特徴付けのために、二次スクリーニングにおいて検出した(特徴付けアッセイ方法については実施例3を参照されたい)。
【0287】
[00281]2.7.ハイブリドーマのサブクローン
[00282]それぞれの選択したクローンのハイブリドーマ細胞を、限界希釈によって、1つの細胞/ウェルの密度で、96ウェルプレートに播種した。プレートを、ハイブリドーマの一次スクリーニングと同じ方式でスクリーニングした(実施例2.6を参照されたい)。陽性単一クローンを選択し、ハイブリドーマの二次スクリーニングと同じ方式で特徴付けを行った(実施例2.6を参照されたい)。次いで、上位の結合活性を有するモノクローナルハイブリドーマ細胞株を、さらなるハイブリドーマ抗体産生、特徴付け、およびシーケンシングのために得た。合計7つの抗体クローンを、機能性ヒットとして同定し、これらのクローンから精製したハイブリドーマ抗体に、それぞれ、005、015、025、042、059、071、および073として割り当てた(実施例3)。
【0288】
実施例3.抗体の特徴付け
[00283]3.1.ハイブリドーマ抗体の産生および精製
[00284]約14日間の培養の後に、ハイブリドーマ細胞培養培地を収集し、遠心分離して、細胞を除去した。0.22μmのPES膜を通して濾過し、pHを7.4に調整した後、回収した上清を、プロテインA親和性クロマトグラフィーカラム(GE)にロードした。抗体を、0.1Mクエン酸ナトリウム緩衝液(pH3.0)によって溶出させた後、即座にTris緩衝液(pH8.0)を使用して中和した。PBS緩衝液で透析した後、抗体濃度を、Nano Drop(Thermo Fisher)によって判定した。タンパク質の純度を、SDS-PAGEおよびHPLC-SEC(Agilent)によって評価した。内毒素レベルを、Endochrome-Kキット(Charles River)を用いて検出した。
【0289】
[00285]3.2.結合特異性の検出
[00286]精製したハイブリドーマ抗体のヒトSIRPαバリアントに対する結合特異性を、組換えタンパク質Fcタグ化ヒトSIRPα v1 ECDおよびヒトSIRPα v2 ECDを使用して、ELISAアッセイによって検出した。簡単に述べると、抗体を、ELISAマイクロプレートにコーティングした抗原とともに、37℃で1時間インキュベートした。洗浄した後、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)で標識した抗マウスIgG二次Ab(Sigma)を添加し、37℃で1時間インキュベートした。次いで、100μl/ウェルのTMB溶液(Biotechnology)を添加した。15分間室温でインキュベートした後、反応を、50μlの1N HClを添加することによって停止させた。OD 450nmを読み取り、GraphPad Prism9.0を使用してEC50を計算した。HEFLBおよび7つの機能性抗体の結合特異性特性を、表8に要約する。HEFLBを除き、試験した全ての抗体が、ヒトSIRPα v1およびヒトSIRPα v2の両方に結合する。HEFLBは、ヒトSIRPα v1にのみ結合することができ、ヒトSIRPα v2には結合できない。
【0290】
[00287]3.3.種間交差反応性の検出
[00288]精製したハイブリドーマ抗体のヒト、カニクイザル、およびマウスSIRPαに対する種間交差反応性を、ヒトSIRPα v1、CHOK1-カニクイザルSIRPα、およびC57BL/6マウスSIRPαを安定に発現するCHOK1細胞を使用して、FACSアッセイによって判定した。簡単に述べると、抗体を、2×10個の標的細胞とともに、4℃で1時間インキュベートした。洗浄した後、蛍光標識した抗マウスIgG二次抗体(Life Technologies)を添加し、4℃で1時間インキュベートした。幾何学的中央値蛍光強度を検出し、GraphPad Prism9.0を使用してEC50を計算した。HEFLBおよび7つの機能性抗体の種間交差反応性特性を、表8に要約する。HEFLBを除き、試験した全ての抗体が、カニクイザルSIRPαに結合することができる。試験した抗体のいずれもが、C57BL/6マウスSIRPαに結合することができない。
【0291】
[00289]3.4.CD47/SIRPαの相互作用のブロッキング活性の検出
[00290]競合的ELISAアッセイを使用して、精製したハイブリドーマ抗体が、CD47とSIRPαとの相互作用をブロックすることができるかどうかを判定した。簡単に述べると、抗体およびビオチン標識した可溶性ヒトSIRPα v1 ECD組換えタンパク質を、ELISAマイクロプレートにコーティングしたヒトCD47 ECD組換えタンパク質とともに共インキュベートした。洗浄した後、HRPで標識したストレプトアビジン(HRP-SA、Sigma)を添加し、37℃で1時間インキュベートした。次いで、100μl/ウェルのTMB溶液(Biotechnology)を添加した。15分間室温でインキュベートした後、反応を、50μlの1N HClを添加することによって停止させた。OD 450nmを読み取った。ELISAのマイクロプレートにコーティングしたヒトCD47 ECD組換えタンパク質へのビオチン標識したヒトSIRPα v1 ECD組換えタンパク質の結合のブロックによって、ブロッキング比を判定した。GraphPad Prism9.0を使用して計算したIC50および上位ブロッキング比を、表8に要約する。005を除き、試験した全ての抗体が、ヒトCD47とヒトSIRPα v1との相互作用をブロックすることができる。
【0292】
[00291]3.5.赤血球凝集活性の検出
[00292]抗CD47抗体は、赤血球(RBC)凝集を促進し得、これは、安全性に関するリスクにつながる可能性がある。精製したハイブリドーマ抗体の赤血球凝集活性について試験した。簡単に述べると、ヒトRBCを、PBS中に10%に希釈し、100nMの抗体の存在下において、37℃で1時間インキュベートした。赤血球凝集の根拠は、赤血球凝集していないRBCのはっきりとした赤い点(punctuate red dot)と比較してぼんやりと現れる、定まっていないRBCの存在によって示される。赤血球凝集インデックスは、抗体の存在下におけるRBCペレットの面積を定量し、抗体の不在下におけるものに対して正規化することによって判定した。表8に要約されるように、7つ全ての機能性抗体は、赤血球凝集活性を示さなかった。
【0293】
[00293]3.6.SHP-1動員の検出
[00294]精製したハイブリドーマ抗体が、CD47/SIRPαに媒介される「私を食べないで」のシグナル伝達をブロックする有効性を、細胞に基づくSHP-1動員アッセイによって評価した(図8A)。全長ヒトSIRPα v1を、そのC末端に融合されたベータ-gal断片(ED)を有するように操作し、SHP-1のSH2ドメインを、相補的なベータ-gal断片(EA)を有するように操作した。これらのコンストラクトを、K562細胞において安定に発現させた。ヒトCD47発現細胞との共培養を通じたリガンド結合は、SIRPα-ED融合タンパク質のリン酸化をもたらし、SHP-1-EAの動員を引き起こし、これにより、活性なベータ-gal酵素の創出が強制される。この活性酵素は、基質を加水分解して、レポーター活性の尺度として化学発光を創出する。ブロッキング比を、ベータ-gal酵素活性のブロックによって判定した。表8に要約されるように、抗SIRPαハイブリドーマ抗体005、015、025、042、059、071、および073は、CD47/SIRPαに媒介される「私を食べないで」のシグナル伝達を強力に破壊した。これらの7つの抗体は、機能性ヒットであると考えられた。
【0294】
[00295]3.7.ハイブリドーマのシーケンシング
[00296]モノクローナルハイブリドーマ細胞から単離した総RNAを、SMARTScribe逆転写酵素の技術マニュアルに従ってアイソタイプ特異的アンチセンスプライマーまたはユニバーサルプライマーのいずれかを使用してcDNAに逆転写した。次いで、cDNAを鋳型として使用して、GenScriptのcDNA末端の高速増幅(RACE、rapid amplification of cDNA ends)の標準操作手順(SOP)に従って、重鎖および軽鎖の抗体断片を増幅させた。増幅させた抗体断片を、標準的なクローニングベクターに別個にクローニングした。コロニーPCRを行って、正しいサイズのインサートを有するクローンに関してスクリーニングし、インサート断片を、DNAシーケンシングによって分析した。最後に、コンセンサス配列を、重鎖および軽鎖の抗体可変領域として同定した。
【0295】
実施例4.キメラ抗体の生成および特徴付け
[00297]4.1.キメラ抗体の生成および産生
[00298]ハイブリドーマシーケンシング結果に応じて、マウス抗SIRPα機能性ヒットを、特徴付けのためにS228Pの変異を有するヒトIgG4キメラ抗体に変換した。簡単に述べると、重鎖可変領域をコードするDNA配列を、S228Pの変異を有するヒトIgG4重鎖定常領域を有するpcDNA3.4-hIgG4Pベクター(Biointron)にクローニングした。軽鎖可変領域をコードするDNA配列を、ヒトカッパ軽鎖定常領域を有するpcDNA3.4-hIgGkベクター(Biointron)にクローニングした。抗体重鎖および軽鎖発現プラスミドを共トランスフェクトしたExpi293細胞(Life Technologies)を、37℃で5日間増殖させた。結果として得られるキメラ抗体は、本明細書において、005c、015c、025c、042c、059c、071c、および073cと称され、ここで、接尾辞「c」は、キメラを示す。
【0296】
[00299]4.2.キメラ抗体の特徴付け
[00300]4.2.1結合特異性の検出
[00301]精製したキメラ抗体のヒトSIRPαバリアントに対する結合活性を、ヒトSIRPα v1を安定に発現するCHOK1細胞(図1Aおよび1B)または293F細胞(図1C)、ならびにヒトSIRPα v2を安定に発現するCHOK1細胞(図2Aおよび2B)を使用して、FACSアッセイによって検出した。図1A、1B、および1Cに示されるように、試験した全ての抗体が、細胞表面ヒトSIRPα v1に強力に結合する。図2に示されるように、HEFLBを除き、試験した全ての抗体が、細胞表面ヒトSIRPα v2に結合する。GraphPad Prism9.0を使用して計算したEC50および上位シグナルを、表9に要約する。
【0297】
[00302]精製したキメラ抗体のSIRPβおよびSIRPβlに対する結合活性を、組換えタンパク質ヒトSIRPβ ECD(図3Aおよび3B)、ヒトSIRPβl ECD(図3Dおよび3E)を使用してELISAアッセイによって、ならびにヒトSIRPβ(図3C)を安定に発現するCHOK1細胞を使用してFACSアッセイによって、検出した。図3A~3Cに示されるように、試験した全ての抗体が、異なるレベルでヒトSIRPβに結合し、中でも042c、071c、および073cは、弱い結合を有した。図3Dおよび3Eに示されるように、試験した全ての抗体が、ヒトSIRPβlに強力に結合した。GraphPad Prism9.0を使用して計算したEC50および上位シグナルを、表10に要約する。
【0298】
[00303]精製したキメラ抗体のSIRPγに対する結合活性を、組換えタンパク質カニクイザルSIRPγ ECDを使用してFACSアッセイによって(図4C)、ヒトSIRPγを安定に発現する293F細胞を使用してFACSアッセイによって(図4Aおよび4B)検出した。図4Aおよび4Bに示されるように、試験した全ての抗体が、異なるレベルでヒトSIRPγに結合し、中でも042c、059c、071c、および073cは、非常に弱い結合を有する。図4Cに示されるように、005c、042c、および073cは、カニクイザルSIRPγに対する非常に弱い結合を有し、これは、ヒトSIRPγに対する結合活性と相関性がある。GraphPad Prism9.0を使用して計算したEC50および上位シグナルを、表11に要約する。
【0299】
[00304]4.2.2種間交差反応性の検出
[00305]精製したキメラ抗体の種間交差反応性を、組換えタンパク質C57BL/6マウスSIRPα ECDを使用してELISAアッセイによって(図5A)、カニクイザルSIRPαを安定に発現するCHOK1細胞を使用してFACSアッセイによって(図5Bおよび5C)検出した。試験した全ての抗体が、異なるレベルでカニクイザルSIRPαに結合するが、C57BL/6マウスSIRPαに対する種間交差反応性は有さない。GraphPad Prism9.0を使用して計算したEC50および上位シグナルを、表12に要約する。
【0300】
[00306]4.2.3.CD47/SIRPαの相互作用のブロッキング活性の検出
[00307]競合的ELISAアッセイを使用して、精製したキメラ抗体が、CD47とSIRPαとの相互作用をブロックすることができるかどうかを判定した。簡単に述べると、抗体とmFcタグ化ヒトCD47 ECD組換えタンパク質とを、ELISAマイクロプレートにコーティングしたヒトSIRPα v1 ECD(図6Aおよび6B)またはヒトSIRPα v2 ECD(図7Aおよび7B)組換えタンパク質とともに共インキュベートした。洗浄した後、HRP標識した抗マウスFc二次抗体(Sigma)を添加し、37℃で1時間インキュベートした。次いで、100μl/ウェルのTMB溶液(Biotechnology)を添加した。15分間室温でインキュベートした後、反応を、50μlの1N HClを添加することによって停止させた。OD 450nmを読み取った。ELISAのマイクロプレートにコーティングしたヒトSIRPα ECD組換えタンパク質へのヒトCD47 ECD組換えタンパク質の結合のブロックによって、ブロッキング比を判定した。GraphPad Prism9.0を使用して計算したIC50および上位ブロッキング比を、表13に要約する。005を除き、試験した全ての抗体が、ヒトCD47と異なるヒトSIRPαバリアントとの間の相互作用をブロックすることができる。
【0301】
[00308]4.2.4.SHP-1動員アッセイ
[00309]精製したキメラ抗体が、CD47/SIRPαに媒介される「私を食べないで」のシグナル伝達をブロックする有効性を、細胞に基づくSHP-1動員アッセイによって評価した(図8B、実施例3.6に記載の方法を参照されたい)。IC50および上位ブロッキング比を、GraphPad Prism9.0を使用して計算した。表14に要約されるように、試験した全ての抗体が、CD47/SIRPαに媒介される「私を食べないで」のシグナル伝達を異なるレベルで破壊することができる。特に、005cは、CD47とSIRPαとの相互作用をブロックしないが、CD47結合によりもたらされるSIRPα細胞内尾部へのSHP-1動員を阻害することができる。
【0302】
[00310]4.2.5.親和性の検出
[00311]精製したキメラ抗体を、バイオレイヤーインターフェロメトリー技術(Octet system)を使用してヒトSIRPα v1、ヒトSIRPα v2に対する結合親和性に関して特徴付けた。会合および解離の曲線は1:1結合モデルに合致し、それぞれの抗体についてKa/Kd/KD値を計算した。それぞれの抗体についての親和性データKa/Kd/KD値を、表15に要約する。
【0303】
[00312]4.2.6.エピトープの分析
[00313]競合的ELISAアッセイを、精製したキメラ抗体のエピトープビニングに使用した。簡単に述べると、過剰な競合抗体およびmFcタグ化ヒトSIRPα v1 ECD組換えタンパク質を、ELISAマイクロプレートにコーティングした抗体とともに共インキュベートした。洗浄した後、HRP標識した抗マウスFc二次抗体(Sigma)を添加し、37℃で1時間インキュベートした。次いで、100μl/ウェルのTMB溶液(Biotechnology)を添加した。15分間室温でインキュベートした後、反応を、50μlの1N HClを添加することによって停止させた。OD 450nmを読み取った。競合比を計算した。SIRPαとの結合について互いに競合し得る抗体は、関連する結合エピトープを有し得る。表16に示されるように、025cは、ヒトSIRPαに対して、042c、073c、およびhu1H9G4との競合的結合を示さなかったため、これは、異なるエピトープに結合し得ることが示された。042c、073c、およびhu1H9G4の間の競合は、双方向ではなく、それらの結合エピトープは、関連しているが完全に同一ではない可能性があることが示された。
【0304】
[00314]025c、042c、073c、HEFLB、およびhu1H9G4のエピトープマッピングを、さらに、水素重水素交換質量分析(HDX-MS)を使用して行った。図9Aに示されるように、025c結合は、Hisタグ化ヒトSIRPα v1 ECDのYNQKEGHFPRVTTVSDLの領域について低い水素重水素交換比をもたらし、これらのアミノ酸が、025cの結合に重要であり得ることが示された。図9Bに示されるように、042c結合は、Hisタグ化ヒトSIRPα v1 ECDのSGAGTELおよびTNVDPVGESVSの2つの領域について低い水素重水素交換比をもたらし、これらのアミノ酸が、042cの結合に重要であり得ることが示された。図9Cに示されるように、073c結合は、Hisタグ化ヒトSIRPα v1 ECDのTNVDPVGESVSYの領域について低い水素重水素交換比をもたらし、これらのアミノ酸が、073cの結合に重要であり得ることが示された。特に、これらの3つの領域は、CD47が結合するSIRPα ECDのIgVドメインには位置しておらず、042cおよび073cが、CD47とSIRPαとの相互作用をブロックするアロステリック抗体として機能し得るか、または042cおよび073cのブロッキング活性が立体障害作用であることを示す。図9Dに示されるように、hu1H9G4結合は、Hisタグ化ヒトSIRPα v1 ECDのYNQKEGHFPRVTTVSDLの領域について低い水素重水素交換比をもたらし、これらのアミノ酸が、hu1H9G4の結合に重要であり得ることが示された。図9Eに示されるように、HEFLB結合は、hisタグ化ヒトSIRPα v1 ECDのVGPIQWの領域について低い水素重水素交換比をもたらし、これらのアミノ酸が、HEFLBの結合に重要であり得ることが示された。
【0305】
[00315]競合的ELISAデータおよびHDX-MSデータをまとめると、025c、042c、および073cが、異なる結合エピトープを有し得、それらがまた参照抗体hu1H9G4およびHEFLBとも異なると結論付けられる。
【0306】
[00316]4.2.7.In Vitroファゴサイトーシスアッセイ
[00317]精製したキメラ抗体の機能有効性を、フローサイトメトリーに基づくファゴサイトーシスアッセイによって評価した。簡単に述べると、異なるSIRPA遺伝子型を有するM0非分極化またはM1分極化ヒト単球由来マクロファージを、試験した抗体の存在下において、CellTrace Violet(Life Technologies)標識したCD47発現がん細胞とともに共培養した。ファゴサイトーシスは、cell trace violet色素について陽性であるマクロファージのパーセンテージを判定することによってアッセイした。非分極化マクロファージについては、末梢血単核細胞を、7~9日間、10% FBSおよび50ng/ml M-CSFを補充した1640において10cm組織培養プレートに播種した。接着細胞を、M0非分極化マクロファージとして回収した。M1分極化マクロファージについては、末梢血単核細胞を、5日間、10% FBSおよび50ng/ml GM-CSFを補充した1640において10cm組織培養プレートに播種した。50ug/mlのIFNγおよび100ug/mlのLPSを、追加の2~4日間の培養のために添加した。接着細胞を、M1分極化マクロファージとして回収した。
【0307】
[00318]図10Aに示されるように、015c、025c、042c、059c、071c、および073cは、SIRPAヘテロ接合性v1/v2個体から得られたM0マクロファージによるRaji細胞の腫瘍細胞取り込みを増強させる単剤活性を示さなかった。しかしながら、リツキシマブ(抗CD20抗体)の存在下において、ヒトCD47とヒトSIRPα v2との間の相互作用をブロックする活性が弱い059cを除き、試験した全ての他の精製したキメラ抗体が、Raji細胞のマクロファージに媒介される抗体依存性細胞性ファゴサイトーシス(ADCP)を増強させた。
【0308】
[00319]図10Bに示されるように、059cを除き、セツキシマブ(抗EGFR抗体)の存在に関係なく、試験した全ての他の精製した抗体が、SIRPAホモ接合性v2/v2個体から得られたM0マクロファージによるDLD-1細胞の腫瘍細胞取り込みを効果的に増強させた。
【0309】
[00320]SIRPα抗体に加えてPD-L1抗体の組合せを、SIRPAホモ接合性v1/v1(図10C)またはv2/v2(図10D)個体から得られたM0マクロファージを使用してファゴサイトーシスアッセイにおいて試験した。PD-L1抗体の存在下において、005c、025c、042c、および073cは、PD-L1を安定に発現するRaji細胞のマクロファージに媒介されるADCPを効果的に強化した。
【0310】
[00321]025cに加えてPD-L1抗体C71、および025cに加えてリツキシマブの組合せもまた、SIRPAホモ接合性v1/v1個体から得られたM0非分極化またはM1分極化マクロファージを使用してファゴサイトーシスにおいて試験した。M1分極化マクロファージ(図11B)は、M0非分極化マクロファージ(図11A)と比較して弱いファゴサイトーシス能力を示した。マクロファージ分極化ステータスに関係なく、PD-L1抗体またはリツキシマブの存在下において、025cは、PD-L1を安定に発現するRaji細胞のマクロファージに媒介されるADCPを効果的に強化した。PD-L1重鎖抗体C71は、以下に示されるVHアミノ酸配列を有する。
【0311】
[00322]抗PD-L1重鎖抗体C71.VH、配列番号91:
[00323]EVQVVESGGGLVQSGGSLKLSCAGSGFTESAGFMVWHRQVPGKERELVALIATPSGSTNYADSVKGRFTISRDNGKNTVYLQMNSLKPEDTAVYYCNIRGYWGQGTLVTVSS
[00324]これらのデータは、本明細書で提供される抗体またはその抗原結合性断片が、ある特定の腫瘍細胞の標的抗原に特異的な抗体と組み合わせて使用した場合に、そのような腫瘍細胞のマクロファージに媒介されるADCPを強化することを示唆する。
【0312】
[00325]4.2.8.In Vivo抗腫瘍活性
[00326]ヒトCD47/ヒトSIRPα二重ノックインマウスに、ヒトCD47およびヒトクローディン18.2(CLDN18.2)を安定に発現するMC38細胞を接種した。処置群は、ビヒクル(PBS)、アイソタイプ対照、1kg当たり10mg(mpk)の抗CLDN18.2 mAb(22E12)、および10mpkの抗CLDN18.2 mAb(22E12)に加えて3または10mpkの抗SIRPα mAbの組合せが含まれる。腫瘍が70~75mmの平均体積に達したときに処置を開始した。マウスに、1週間に2回で5回、腹腔内(IP)投薬した。腫瘍体積を、1週間に2回測定した。最終投薬の3日後に、マウスを屠殺し、腫瘍を計量した。統計学的分析を、異なる処置群の平均腫瘍重量/体積をアイソタイプ対照群のものと比較する一方向または二方向anovaによって行った。図12Aおよび12Bに示されるように、10mpkの抗CLDN18.2 mAb(22E12)に加えて10mpkの抗SIRPαの組合せは、MC38腫瘍成長を有意に阻害した。10mpkの025cの組合せ群では6つの腫瘍のうち6つ、3mpkの042cの組合せ群では6つの腫瘍のうち1つ、および10mpkの042cの組合せ群では6つの腫瘍のうち2つが、縮小された(図12C)。抗CLDN18.2 mAb(22E12)のVHおよびVLアミノ酸配列を、以下に示す。
【0313】
[00327]抗CLDN18.2 mAb(22E12) VH、配列番号88
[00328]QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTNWVHWVRQAPGQGLEWMGEINPTNARSNYNEKFKKRVTMTRDTSTSTVYMELSSLRSEDTAVYYCARIYYGNSFAHWGQGTLVTVSS
[00329]抗CLDN18.2 mAb(22E12) VL、配列番号89
[00330]DIVMTQSPDSLAVSLGERATINCKSSQSLLNAGNQKNYLTWYQQKPGQPPKLLIYWSSTRESGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQAEDVAVYYCQNNYYYPLTFGGGTKLEIK
[00331]4.2.9.混合リンパ球反応アッセイ(MLR)
[00332]SIRPγ-CD47相互作用を通じた抗原提示細胞へのヒトT細胞の結合は、T細胞増殖を共刺激することが報告された。精製したキメラ抗体のうちのいくつかは、ヒトSIRPγに強力に結合するため(図4)、T細胞の増殖および活性化を妨害する可能性を排除するために、精製したキメラ抗体を、MLRアッセイにおいて試験した。簡単に述べると、CellTrace Violetで標識したヒト初代T細胞を、in vitroで生成した同種成熟樹状細胞で5日間、刺激した。示される抗体を、試験の開始時から、飽和濃度(100nM)で添加した。CellTrace Violetの低い染色を使用して、増殖集団を判定した。IFNγ分泌は、ヒトIFNガンマキット(Cisbio)で判定した。図13に示されるように、ヒトSIRPγに対する結合活性とは関係なく、015c、025c、042c、059c、071c、および073cは、IFNγ分泌(図13A)、CD4 T細胞増殖(図13B)、およびCD8 T細胞増殖(図13C)に対して有意な影響を示さなかった。予測されるように、抗SIRPγ抗体LSB2.20(Biolegend)は、T細胞活性化の強力な阻害剤である。特に、hu1H9G4は、このアッセイにおいて、IFNγ分泌およびT細胞増殖の明白な阻害を示した。
【0314】
実施例5.抗体ヒト化
[00333]5.1.ヒト化
[00334]CDRグラフト化方法を、025cのヒト化に使用した。簡単に述べると、IGHV1-69-2*01およびIGKV3-11*01を、それぞれ、もともとのマウス抗体配列に対するそれらの相同性に基づいて、重鎖および軽鎖のヒト化鋳型としてまず選択した。CDRを、次いで、KabatおよびChothiaのシステムの組合せを使用して定義した重鎖CDR1を除き、Kabatの定義を使用して定義した。グラフトするために、可能性のあるホットスポットを除去したCDR、および異なる組合せの025cからのカノニカル残基を、鋳型にグラフトし、結果として得られたバリアント(定常領域にS228Pの変異を有するヒトIgG4抗体)を、96ウェルの高スループットなタンパク質発現システムによって発現させた。産生された全てのバリアントを、FACSアッセイで試験して、ヒトSIRPα v1およびヒトSIRPα v2への上位結合物質を、さらなる特徴付けに選択した。良好な結合活性を有する得られたヒト化抗体は、hu025.021、hu025.023、hu025.033、hu025.059、およびhu025.060と表記し、ここで、接頭辞「hu」は、「ヒト化」を示し、接尾辞の数字は、ヒト化抗体のシリアル番号を表す。
【0315】
[00335]5.2.ヒト化抗体の特徴付け
[00336]5.2.1.結合特異性の検出
[00337]ヒト化抗体のヒトSIRPαバリアントに対する結合活性を、ヒトSIRPα v1(図14A)、ヒトSIRPα v2(図14B)、またはヒトSIRPβ(図14C)を安定に発現するCHOK1細胞、ヒトSIRPγを安定に発現する293F細胞(図14D)を使用して、FACSアッセイによって検出した。試験した全てのヒト化抗体は、親抗体025cと同様のSIRPファミリーメンバーへの結合活性を保持することが確認された。GraphPad Prism9.0を使用して計算したEC50および上位シグナルを、表17に要約する。
【0316】
[00338]5.2.2.CD47/SIRPαの相互作用のブロッキング活性の検出
[00339]ヒト化抗体を、競合的ELISAアッセイを用いてCD47とSIRPαとの相互作用をブロックする能力に関して試験した(実施例4.2.3.に記載される方法を参照されたい)。図15に示されるように、試験した全てのヒト化抗体は、親抗体025cと同様のヒトCD47と異なるヒトSIRPαバリアントとの間の相互作用をブロックする活性を保持することが確認された。GraphPad Prism9.0を使用して計算したIC50および上位ブロッキング比を、表18に要約する。
【0317】
[00340]ヒト化抗体および参照抗体のブロッキング活性をさらに比較するために、競合的FACSアッセイもまた設定した。簡単に述べると、抗体とmFcタグ化ヒトCD47 ECD組換えタンパク質とを、ヒトSIRPα v1(図16A)またはヒトSIRPα v2(図16B)を安定に発現するCHOK1細胞とともに共インキュベートした。洗浄した後、色素標識した抗マウスFc二次抗体(Sigma)を添加し、37℃で1時間インキュベートした。蛍光強度を検出した。SIRPαを発現するCHOK1細胞へのヒトCD47 ECD組換えタンパク質結合のブロックによって、ブロッキング比を判定した。Hu1H9G4は、ヒトCD47とヒトSIRPα v2との相互作用をブロックする弱い活性を示した。特に、HEFLBは、ヒトSIRPα v2に関してまったく機能しない。GraphPad Prism9.0を使用して計算したIC50および上位ブロッキング比を、表19に要約する。
【0318】
[00341]5.2.4.SHP-1動員アッセイ
[00342]ヒト化抗体が、CD47/SIRPαに媒介される「私を食べないで」のシグナル伝達をブロックする有効性を、細胞に基づくSHP-1動員アッセイによって評価した(図17、実施例3.6に記載の方法を参照されたい)。試験した全てのヒト化抗体は、親抗体025cと同様のCD47結合により生じるSIRPα細胞内尾部へのSHP-1動員をブロックする活性を保持することが確認された。GraphPad Prism9.0を使用して計算したIC50および上位ブロッキング比を、表20に要約する。
【0319】
[00343]5.2.5.親和性の検出
[00344]ヒト化抗体を、表面プラズモン共鳴技術(Biacore system)を使用してヒトSIRPα v2、ヒトSIRPα v1に対する結合親和性に関して特徴付けた。会合および解離の曲線は1:1結合モデルに合致し、それぞれの抗体についてKa/Kd/KD値を計算した。それぞれの抗体についての親和性データKa/Kd/KD値を、表21に要約する。
【0320】
[00345]5.2.6.In Vitroファゴサイトーシスアッセイ
[00346]in vitro機能検証のために、SIRPα抗体に加えてPD-L1抗体またはリツキシマブの組合せを、SIRPAホモ接合性v1/v1(図18Aおよび18B)、v2/v2(図18Cおよび18D)、またはヘテロ接合性v1/v2個体から得られたM0マクロファージを使用してファゴサイトーシスアッセイにおいて試験した(実施例4.2.7に記載される方法を参照されたい)。試験した全てのヒト化抗体は、PD-L1抗体またはリツキシマブの存在下において、親抗体025cと同様の、PD-L1を安定に発現するRaji細胞のマクロファージに媒介されるADCPを強化する活性を保持することが確認された。参照抗体および005cもまた、これらのアッセイにおいて並列して試験した。図18Aおよび18Bに示されるように、CD47結合により生じるSIRPα細胞内尾部へのSHP-1動員をブロックすることができるがCD47とSIPRαとの相互作用をブロックしない005cは、PD-L1抗体またはリツキシマブの存在下において、PD-L1を安定に発現するRaji細胞のマクロファージに媒介されるADCPを効果的に強化した。図18C、18D、および18Eに示されるように、ヒトSIRPα v2に結合することができないHEFLBは、SIRPAホモ接合性v2/v2およびヘテロ接合性v1/v2個体から得られたマクロファージに関してまったく機能しなかった。
【0321】
【表8】
【0322】
【表9】
【0323】
【表10】
【0324】
【表11】
【0325】
【表12】
【0326】
【表13】
【0327】
【表14】
【0328】
【表15】
【0329】
【表16】
【0330】
【表17】
【0331】
【表18】
【0332】
【表19】
【0333】
【表20】
【0334】
【表21】
図1-1】
図1-2】
図1-3】
図2-1】
図2-2】
図3-1】
図3-2】
図3-3】
図4-1】
図4-2】
図5-1】
図5-2】
図6
図7
図8-1】
図8-2】
図9-1】
図9-2】
図9-3】
図9-4】
図10-1】
図10-2】
図10-3】
図11-1】
図11-2】
図12-1】
図12-2】
図12-3】
図12-4】
図12-5】
図12-6】
図12-7】
図13-1】
図13-2】
図14-1】
図14-2】
図15
図16
図17
図18-1】
図18-2】
図18-3】
図18-4】
図18-5】
【配列表】
2024531900000001.xml
【国際調査報告】