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特表2024-531911高圧遮断器および高圧遮断器用の絶縁ロッドの長さを調整するためのシステムおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-03
(54)【発明の名称】高圧遮断器および高圧遮断器用の絶縁ロッドの長さを調整するためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   H01H 33/42 20060101AFI20240827BHJP
【FI】
H01H33/42 K
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024506507
(86)(22)【出願日】2022-07-05
(85)【翻訳文提出日】2024-02-01
(86)【国際出願番号】 EP2022068590
(87)【国際公開番号】W WO2023011822
(87)【国際公開日】2023-02-09
(31)【優先権主張番号】21189177.5
(32)【優先日】2021-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523380173
【氏名又は名称】ヒタチ・エナジー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HITACHI ENERGY LTD
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フラー,ニルス
(72)【発明者】
【氏名】シュテディング,ギュンター
【テーマコード(参考)】
5G028
【Fターム(参考)】
5G028AA24
5G028EB12
(57)【要約】
高圧遮断器および高圧遮断器用の絶縁ロッドの長さを調整するためのシステムおよび方法が開示される。高圧遮断器(1)の絶縁ロッド(5)の長さを調整するためのシステム(10)は、クラッチ(11)および取付部(12)を備える。クラッチ(11)は、所与のねじ山ピッチを有するねじ山(18)を備え、取付部(12)は、クラッチ(11)のねじ山(18)と協調して形成された所与のねじ山ピッチを有するねじ山(19)を含む。取付部(12)は、ねじ山(18、19)によってクラッチ(11)と調整可能に結合され、取付部(12)は、絶縁ロッド(5)とのシステム(10)の組み立て状態に関して、および長手方向軸(A)に関して、取付部(12)に対するクラッチ(11)の回転により絶縁ロッド(5)の長さが調整可能であるように、絶縁ロッド(5)と固定的に結合されるように構成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧遮断器(1)の絶縁ロッド(5)の長さを調整するためのシステム(10)であって、
前記絶縁ロッド(5)を前記高圧遮断器(1)のレバーに結合して、前記高圧遮断器(1)の電気接点の分離を引き起こす作用運動を伝達するように構成されたクラッチ(11)であって、所与のねじ山ピッチを有するねじ山(18)を含むクラッチ(11)と、
前記クラッチ(11)の前記ねじ山(18)と協調して形成された所与のねじ山ピッチを有するねじ山(19)を含む取付部(12)であって、前記取付部(12)は、前記ねじ山(18、19)によって前記クラッチ(11)に調整可能に結合され、前記取付部(12)は、前記絶縁ロッド(5)との前記システム(10)の組み立て状態に関して、および長手方向軸(A)に関して、前記絶縁ロッド(5)の前記長さが、前記取付部(12)に対する前記クラッチ(11)の回転により調整可能であるように、前記絶縁ロッド(5)に固定的に結合されるように構成されている、取付部(12)と、
を備える、システム(10)。
【請求項2】
前記取付部(12)はスリーブとして成形され、そのねじ山(19)は前記取付部(12)の内側に雌ねじとして形成され、前記クラッチ(11)の前記ねじ山(18)は前記クラッチ(11)の外側に雄ねじとして形成され、前記クラッチ(11)が前記スリーブの形状の取付部(12)内に延在する、請求項1に記載のシステム(10)。
【請求項3】
前記取付部(12)に対する前記クラッチ(11)の望ましくない回転を打ち消すように構成された、前記クラッチ(11)に結合された固定部材(14)を備える、請求項1または2に記載のシステム(10)。
【請求項4】
前記取付部(12)および前記クラッチ(11)は各々、固定開口部(16、17)を備え、前記固定部材は、前記取付部(12)および前記クラッチ(11)の前記固定開口部(16、17)内に延在するロックピン(14)として形成される、請求項3に記載のシステム(10)。
【請求項5】
前記絶縁ロッド(5)を備える前記システム(10)の組み立て状態および前記絶縁ロッド(5)の調整された長さに関して、前記固定部材(14)の位置を固定するように構成されたばねクリップ(20)として形成された固定要素を備える、請求項3または4に記載のシステム(10)。
【請求項6】
前記クラッチ(11)は、内側逃がし凹部(21)を制限するそのねじ山(18)の領域内のスリーブとして成形されている、請求項1~5のいずれか1項に記載のシステム(10)。
【請求項7】
前記取付部(12)は、前記クラッチ(11)に面する支持凹部(13)を制限する支持部(27)を備え、前記クラッチ(11)は、そのねじ山(18)に隣接する肩部(23)を備え、前記支持部(27)および前記肩部(23)は、前記クラッチ(11)および前記取付部(12)の案内支持された結合が設定されるように互いに協調して形成される、請求項1~6のいずれか1項に記載のシステム(10)。
【請求項8】
前記クラッチ(11)および前記取付部(12)の前記ねじ山(18、19)は各々、前記絶縁ロッド(5)との前記取付部(12)の組立状態に関する前記取付部(12)の引張強度に応じて予め形成される、前記長手方向軸(A)に関する長さを備える、請求項1~7のいずれか1項に記載のシステム(10)。
【請求項9】
前記クラッチ(11)の前記ねじ山(18)は、絶縁ロッド(5)との前記取付部(12)の組み立て状態に関する前記取付部(12)の材料および/または引張強度に応じて予め形成される、前記長手方向軸(A)を横切る直径を備える、請求項1~8のいずれか1項に記載のシステム(10)。
【請求項10】
前記クラッチ(11)および前記取付部(12)の前記ねじ山(18、19)は、互いに協調して形成され、それらのねじ山ピッチは、前記取付部(12)に対して前記クラッチ(11)を前記長手方向軸(A)周りに180°回転させると前記絶縁ロッド(5)の長さを前記ねじ山ピッチの半分だけ変化させるように与えられる、請求項1~9のいずれか1項に記載のシステム(10)。
【請求項11】
前記高圧遮断器(1)の電気接点を分離するように構成された絶縁ロッド(5)と、
前記取付部(12)によって前記絶縁ロッド(5)と結合された、請求項1~10のいずれか1項に記載の前記絶縁ロッド(5)の長さを調整するためのシステム(10)と、
を備える、高圧遮断器(1)。
【請求項12】
高圧遮断器(1)の絶縁ロッド(5)の長さを調整する方法であって、
前記絶縁ロッド(5)を前記高圧遮断器(1)のレバーに結合して、前記高圧遮断器(1)の電気接点の分離を引き起こす作用運動を伝達するように構成されたクラッチ(11)を設けることであって、前記クラッチ(11)は、所与のねじ山ピッチを有するねじ山(18)を含む、ことと、
前記クラッチ(11)の前記ねじ山(18)と協調して形成されたねじ山(19)を含む取付部(12)を設けることと、
前記クラッチ(11)が前記ねじ山(18、19)によって前記取付部(12)と調整可能に結合されるように、前記取付部(12)を前記クラッチ(11)と結合することと、
前記取付部(12)を前記絶縁ロッド(5)と固定的に結合することと、
長手方向軸(A)に関して前記取付部(12)に対して前記クラッチ(11)を回転させ、それによって前記絶縁ロッド(5)の前記長さを調整することと、
を含む、方法。
【請求項13】
前記クラッチ(11)および前記取付部(12)は各々、固定開口部(16、17)を備え、
ロックピン(14)として形成された固定部材(14)を設けることと、
前記ロックピン(14)を前記取付部(12)および前記クラッチ(11)の前記固定開口部(16、17)に挿入し、それによって、前記長手方向軸(A)を中心とする回転に関して前記取付部(12)に対して前記クラッチ(11)を固定することと、
を含む請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、高圧遮断器用の絶縁ロッドの長さを調整するためのシステムおよび方法に関する。本開示はさらに、対応する高圧遮断器に関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
遮断器は、例えば、過負荷または短絡からの過電流によって引き起こされる損傷から電気を保護するように設計された自動的に動作する電気スイッチである。したがって、高圧遮断器は、例えば10kV以上の高圧範囲で動作するように構成されたセキュリティスイッチまたは開閉装置である。この点で、高圧用途向けの安定かつ信頼性の高い遮断器を提供することが課題である。
【課題を解決するための手段】
【0003】
本開示の実施形態は、高圧遮断器用の絶縁ロッドの長さを調整するためのシステムに関する。本開示のさらなる実施形態は、そのようなシステムを含む対応する高圧遮断器に関する。本開示のさらなる実施形態は、高圧遮断器用の絶縁ロッドの長さを調整する方法に関する。
【0004】
一実施形態によれば、高圧遮断器の絶縁ロッドの長さを調整するためのシステムは、クラッチおよび取付部を備える。クラッチは、絶縁ロッドを高圧遮断器のレバーと結合して、高圧遮断器の電気接点の分離を引き起こす作用運動を伝達するように構成される。クラッチは、所与のねじ山ピッチを有するねじ山を含む。取付部はまた、クラッチのねじ山と協調して形成された所与のねじ山ピッチを有するねじ山を備える。取付部およびクラッチは、それらのねじ山によって互いに調整可能に結合される。取付部は、絶縁ロッドとのシステムの組み立て状態に関して、および長手方向軸に関して、それらのねじ山によって取付部に対するクラッチの回転により絶縁ロッドの長さが調整可能であるように、絶縁ロッドと固定的に結合されるように構成される。
【0005】
システムの記載された構成により、高圧遮断器の絶縁ロッドの安全で信頼性の高い長さ調整が低コストで実現可能である。クラッチは、遮断器のレバー機構と接続するための結合部と、絶縁ロッドの有効長さを調整するためのねじ山を含む調整部とを備える。結合部と調整部とは、例えば一体に形成される。取付部はまた、遮断器の絶縁ロッドと接続するための結合部と、クラッチと相互作用して絶縁ロッドの有効長さを調整するためのねじ山を含む調整部とを備える。取付部は、例えば、一体に形成することもできる。したがって、このシステムは、明確な構造で低コストで実現可能であり、レバー機構と高圧遮断器の絶縁ロッドとの間に中間モジュールを形成する。
【0006】
本開示の認識は、高圧遮断器の性能がアーク放電および公称接点の移動特性に依存するということである。タイミングおよび接点の分離は、関連する電気を遮断器が遮断する能力にとって最も重要である。タイミングは、主にドライブとリンケージの走行特性の影響を受ける。製造公差は、リンケージの不正確さの主な原因である。組立公差および製造公差の影響を排除するために、クラッチを取付部に対して回転させることによって、組立工程中に絶縁ロッドの長さを調整することができる。
【0007】
システムを使用することにより、インタラプタ部品の製造公差にもかかわらず、電気接点の分離の正確なタイミングを保証することが可能である。システムは、絶縁ロッドの長さの調整を単純化し、したがって製造公差および組立公差を規定値に補償するのに寄与する。
【0008】
一実施形態によれば、取付部はスリーブとして成形され、そのねじ山は、取付部の内側に雌ねじとして形成される。クラッチのねじ山は、システムの組み立て状態に関してクラッチがスリーブの形状の取付部内に延びるように、クラッチの外側の雄ねじとして形成される。このような構成により、クラッチや取付部の細いねじ山のみを用いて安全で信頼性の高い長さ調整を行うことができる。
【0009】
例えば、クラッチおよび取付部のねじ山は、互いに協調して形成され、取付部に対してクラッチを長手方向軸周りに180°だけ回転させると絶縁ロッドの長さが0.5mm変化するような所与のねじ山ピッチを備える。さらなる実施形態によれば、ねじ山ピッチは、絶縁ロッドの長さのより正確な調整またはより粗い設定を可能にするために代替的に形成することができる。特に、取付部に対してクラッチを長手方向軸周りに180°だけ回転させると、ねじ山ピッチの半分だけ絶縁ロッドの長さが変化する。この説明に関連して、記載された絶縁ロッドの長さは、形成された絶縁ロッド要素の元の固定長さではなく、クラッチおよび取付部およびそれらの係合ねじ山によって提供される調整可能な長さと合わせた、絶縁ロッドの元の長さの有効長さに関連する。
【0010】
さらなる実施形態によれば、システムは、取付部に対するクラッチの望ましくない回転を打ち消すように構成された、クラッチに結合された固定部材を備える。例えば、固定部材は、ロックピンまたはボルトとして形成される。この点において、取付部およびクラッチは各々、固定開口部を備え、ロックピンは、クラッチのさらなる回転を打ち消すために長さ調整後にこれらの固定開口部に挿入される。代替的または追加的に、固定部材は、調整されたクラッチを固定するためのナットを備えることができる。ナットは、クラッチおよび取付部のねじ山に有利に予圧をかけることをさらに可能にすることができる。しかしながら、組み立て中に絶縁ロッドの長さを調整するために多くの要素を使用する複雑な組み立ては必要ない。さらに、取付部に対するクラッチの調整された位置を固定するために追加の接着剤も必要ない。
【0011】
従来の設計を考慮すると、記載されたシステムは、調整可能要素を固定するためのトルク印加および接着剤の使用を必要としない。一方で、絶縁ロッドのクラッチにトルクを印加すると、隣接する部品に過負荷がかかることによる機械的故障のリスクが高まる。他方で、塗布された接着剤が適切に硬化せず、それによって調整された接続が緩むという決定的なリスクがある。接着剤は、それが汚れているおよび/または脂っぽく、したがって確実に乾燥しないというリスクを伴う。
【0012】
したがって、記載されたシステムを使用することにより、その明確な構造のために組み立てエラーのリスクも低減される。システムは、組み立て中に絶縁ロッドの長さを調整する便利で確実な方法を提供し、調整は、いかなる工具も必要としない。
【0013】
さらなる実施形態によれば、取付部に対するクラッチの固定位置は、固定要素によって定位置にさらに固定することができる。そのような固定要素は、システムおよび絶縁ロッドの組立調整された状態に対して固定部材の位置を固定するように構成されたばねクリップとして形成することができる。
【0014】
システムのさらなる実施形態によれば、クラッチは、内側逃がし凹部を制限するそのねじ山の領域においてスリーブとして成形される。そのような意識的に形成された開口部は、力および張力分布の改善に寄与することができる。逃がし凹部は、例えば、長手方向軸に沿ってクラッチを完全に貫通することができる。あるいは、逃がし凹部は、所与の深さでクラッチの調整部に形成される。逃がし凹部の形状は、結合部に向かう方向に先細になる円錐であってもよい。あるいは、長手方向軸に関して、逃がし凹部は、ねじ山を支持するクラッチの周囲壁によって円筒状に制限される。
【0015】
長手方向軸は、基本的に、クラッチ、取付部、および絶縁ロッドの対称軸を表す。したがって、組み立て状態によれば、取付部は、長手方向軸に沿ってクラッチと絶縁ロッドとの間に配置される。長手方向軸はまた、取付部に対するクラッチの回転軸を表すことができる。
【0016】
クラッチは、例えば鋼から作製することができる。絶縁ロッドも鋼から作製することができる。取付部は、例えばアルミニウム製であり、絶縁ロッドに接着固定されている。
【0017】
システムのさらなる実施形態によれば、取付部は、クラッチに面する支持凹部を制限する支持部を備える。クラッチは、そのねじ山を有するその調整部に隣接する肩部を備える。取付部の支持部とクラッチの肩部とは、クラッチと取付部との案内された支持結合が設定されるように互いに協調して形成されている。取付部は、クラッチに面する開口部を備えるスリーブまたはチューブとして実現することができる。支持部では、取付部の壁が支持凹部を制限してクラッチの挿入を案内し、クラッチの肩部と相互作用してクラッチを調整状態で支持する。支持部は、例えば、ねじ山に隣接して形成される。支持凹部は、摺動嵌合によって案内孔を形成する穿孔として製造することができる。
【0018】
クラッチおよび取付部のねじ山は各々、絶縁ロッドとの取付部の組み立て状態に関する取付部の引張強度に応じて予め形成される、長手方向軸に関する長さを備えることができる。代替的または追加的に、クラッチのねじ山は、絶縁ロッドとの取付部の組み立て状態に関する取付部の材料および/または引張強度に応じて予め形成される、長手方向軸を横切る直径を備える。クラッチおよび取付部のねじ山は、相互作用するクラッチ、取付部および絶縁ロッドの正確な調整および安定した確実な保持を可能にするために細いねじ山として形成される。したがって、ねじ山の直径および/または長さは、作用する力の完全な支持を可能にするために可能な限り大きくおよび/または長く形成される。
【0019】
一実施形態によれば、高圧遮断器は、高圧遮断器の電気接点を分離するように構成された絶縁ロッドと、絶縁ロッドの長さを調整するための上述のシステムの一実施形態とを備える。システムは、取付部によって絶縁ロッドと直接的または間接的に結合される。高圧遮断器がシステムの一実施形態を備える結果として、システムの記載された特徴および特性も高圧遮断器に関して開示され、逆もまた同様である。
【0020】
一実施形態によれば、高圧遮断器の絶縁ロッドの長さを調整する方法は、クラッチおよび取付部にそれぞれのねじ山および所与のねじ山ピッチを設けることを含む。方法は、クラッチが取付部と調整可能に結合されるように、ねじ山を使用したねじ止めによって取付部をクラッチと結合することをさらに含む。方法は、取付部を絶縁ロッドと固定的に結合することをさらに含む。取付部と絶縁ロッドとの結合は、クラッチと取付部との結合に対して後に、または事前に行うことができる。方法は、長手方向軸に関して取付部に対してクラッチを回転させ、それによって絶縁ロッドの長さを調整することをさらに含む。
【0021】
記載された方法は、組み立て中の高圧遮断器の絶縁ロッドの長さの簡単で正確な調整を可能にし、遮断器の安定した信頼できる機能に寄与する。方法が前述のシステムの一実施形態を使用する調整プロセスに対応する結果として、システムの記載された特徴および特性も方法に関して開示され、逆もまた同様である。
【0022】
本方法の一実施形態によれば、クラッチおよび取付部は各々、固定開口部を備え、本方法は、例えばロックピンとして形成された固定部材を設けることをさらに含む。本方法は、ロックピンを取付部およびクラッチの固定開口部に挿入し、それによって取付部に対して長手方向軸に関してクラッチを回転可能に固定することをさらに含む。
【0023】
したがって、本開示はいくつかの態様を含み、それぞれの特徴が特定の態様の文脈で明示的に言及されていなくても、態様の1つに関して説明されたすべての特徴は、他の態様に関しても本明細書に開示される。
【0024】
記載されたシステム、記載された高圧遮断器、および記載された方法は、動作中のねじ山の緩みのリスクを低減することを可能にする。確実で安定した保持を確立するために、接着剤などの追加の固定部品は必要ない。さらに、このシステムは、締め付けトルクに起因して組み立て中に隣接する部品に過負荷がかかるリスクを低減することを可能にする。クラッチおよび取付部は、ねじ止めによって接続可能であり、それらの所与のねじ山ピッチに起因して正確な調整を可能にするように構成される。絶縁ロッドの長さを調整するために特別な工具は必要とされない。加えて、取付部の支持凹部の内側に組み立てられたクラッチの機械的安定性を著しく高めることができる。
【0025】
例示的な実施形態を、概略図および参照番号を用いて以下に説明する。図は以下を示す。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】高圧遮断器の一実施形態の断面側面図である。
図2】高圧遮断器の絶縁ロッドの長さを調整するためのシステムの一実施形態の断面側面図である。
図3】高圧遮断器の絶縁ロッドの長さを調整するためのシステムの一実施形態の断面側面図である。
図4】高圧遮断器の絶縁ロッドの長さを調整するためのシステムの斜視図である。
図5】高圧遮断器の絶縁ロッドの長さを調整するためのシステムの斜視図である。
図6図1図5によるシステムのクラッチの斜視図である。
図7図1図5によるシステムの取付部の斜視図である。
図8】高圧遮断器の絶縁ロッドの長さを調整する方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
添付の図面は、さらなる理解を提供するために含まれる。図に示される実施形態は例示的な表現であり、必ずしも一定の縮尺で描かれていないことを理解されたい。同一の参照番号は、同一の機能を有する要素または構成要素を示す。要素または構成要素が異なる図においてそれらの機能に関して互いに対応する限り、以下の図の各々についてその説明は繰り返さない。明確にするために、要素は、場合によってはすべての図に対応する参照符号で表示されない場合がある。
【0028】
図1は、高圧遮断器1の一実施形態を側面断面図で示す。遮断器1は、例えば10kV以上の高圧範囲で動作するように構成されたセキュリティスイッチまたは開閉装置を実現する。
【0029】
遮断器1は、遮断器1のレバー機構と絶縁ロッド5との間の中間調整モジュールを実現するシステム10を備え、これは、遮断器1の電気接点を分離して、例えば過負荷または短絡からの過電流によって引き起こされる損傷から電気を保護するように構成される。絶縁ロッド5は、遮断器1の内部の可動接点部に接続され、遮断器1の支持絶縁体の要素を実現する支持部2、3、4によって支持される。支持部2、3、および4は、遮断器または遮断器1の通電構成要素を接地に向かって絶縁するように構成される。
【0030】
図2図3は、遮断器1の絶縁ロッド5の長さを調整するためのシステム10の一実施形態を断面側面図で示す。図4図5は、システム10を斜視図で示す。図6は、システム10のクラッチ11を斜視図で示し、図7は、システム10の取付部12を斜視図で示す。図8は、遮断器1の絶縁ロッド5の長さを調整する方法のフローチャートを示す。
【0031】
クラッチ11は、結合部24、肩部23、および調整部22(図3)を備える一体に形成される。肩部23は、クラッチ11の長手方向軸Aに関してそれぞれ隣り合う結合部24と調整部22との間に形成されている。長手方向軸Aはまた、クラッチ11、取付部12、および絶縁ロッド5の対称軸を表す。
【0032】
クラッチ11は、遮断器1のレバー機構に結合されて、遮断器1の電気接点の分離を引き起こす作用運動を伝達するように構成される。したがって、クラッチ11は、レバー機構のレバーのための結合インターフェースを提供する結合部24内のクラッチ開口部15を備える。クラッチ11は、肩部23の方向に先細になっている。調整部22において、クラッチ11は、所与のねじ山ピッチを有するねじ山18を備える。ねじ山18は、取付部12に面する調整部22の外側で雄ねじとして形成されている(図3および図6参照)。
【0033】
取付部12はまた、クラッチ11のねじ山18と協調して形成された所与のねじ山ピッチを有するねじ山19を備える。取付部12はスリーブの形状であり、ねじ山19は、クラッチ11に面する取付部12の内側で雌ねじとして形成されている(図3および図7参照)。取付部12は、ねじ山18、19によってクラッチ11と調整可能に結合される(図2および図3参照)。取付部12は、例えば接着接続によって絶縁ロッド5と固定的に結合される。
【0034】
取付部12は、結合部25および支持部27を備える一体に形成される(図3参照)。支持部27は、クラッチ11の肩部23と協調して形成され、クラッチ11の案内された挿入および肩部23との相互作用による安定した保持を可能にする。
【0035】
取付部12は、チューブまたはスリーブとして形成される。絶縁ロッド5もまた、チューブまたはスリーブとして構成される。取付部12は、圧入および/または接着接続によって内側で絶縁ロッド5に接続されるように、絶縁ロッド5内に部分的に延在する。さらに、クラッチ11は、支持部27および肩部23の支持された嵌合によって、ならびにねじ山18、19による非確実嵌合および/または形状嵌合によって、取付部12内に部分的に延在する。
【0036】
取付部12は、長手方向軸Aに沿ってクラッチ11と絶縁ロッド5との間に配置される。長手方向軸Aはまた、取付部12に対するクラッチ11の回転軸を表す。したがって、絶縁ロッド5の長さの正確な調整は、相互作用する細いねじ山18、19による取付部12に対するクラッチ11の回転により可能になる。
【0037】
係合ねじ山長さLは、調整可能距離Dおよび絶縁ロッド5の長さの調整を規定する調整部22の所与の長さによって調整することができる(図3および図6参照)。調整可能距離Dは、クラッチ11のクラッチ開口部15とリング4の外側との間の距離によって与えられる。係合ねじ山長さLは、例えば、可能な限り長くなるように構成される。係合ねじ山長さLの形成は、取付部12およびクラッチ11の材料特性、および/または絶縁ロッド5に固定的に接続された取付部12の引張強度に依存する。例えば、クラッチ11および取付部12のねじ山18、19は、M26ねじサイズに属し、したがって26mmの直径を備え、係合ねじ山長さLは、ねじ山18、19の直径の2、3倍、したがって59、8mmの値を有するべきである。そのような係合ねじ山長さLを使用することにより、完全な力吸収または力分散が可能になる。しかしながら、意図される用途に応じて、所定の係合ねじ山長さおよび絶縁ロッド5の長さを設定するために、より短いまたはより長い長さも可能である。ねじ山18および19の長さは、等しくても異なっていてもよい。これにより、クラッチ11の雄ねじ18の長さを取付部12の雄ねじ19の長さよりも短くすることができる。
【0038】
クラッチ11は、そのねじ山18または内側逃がし凹部21を制限する調整部22の領域においてスリーブとして成形される。そのような意識的に形成された開口部は、力および張力分布の改善に寄与することができる。逃がし凹部21は、所与の深さで長手方向軸Aに沿ってクラッチ11を貫通し、円筒形状を備えるか、またはその外面でねじ山18を支持するクラッチ11の周囲壁によって円筒状に制限される。
【0039】
クラッチ11および取付部12は各々、ロックピン14として形成された固定部材を受け入れるように形成された固定開口部16、17を備える(図3図6参照)。システム10および絶縁ロッド5の組立調整された状態に関して、ロックピン14は、取付部12に対するクラッチ11の望ましくない回転を打ち消すために固定開口部16、17内に延在する。取付部の固定開口部16は、調整可能な長さを提供するために長孔として形成され、さらにロックピン14が調整可能な絶縁ロッド5の異なる長さ位置で取付部12およびクラッチ11を通って延びることを可能にする。
【0040】
取付部12の固定開口部16は、図4および図5に示すように、片側が開口した長孔とすることができる。クラッチ11の固定開口部17は、図2図3、および図5図6に示すように、ロックピン14の大きさに合わせた円筒状の孔として形成することができる。さらに、クラッチ11は、その開口部15を横切るその結合部24の領域でクラッチを貫通する長孔として形成されたさらなるクラッチ開口部26を備えることができる。また、クラッチ開口部26は、遮断器1のレバー機構との安定した接続を可能にする。
【0041】
さらに、システム10は、絶縁ロッド5を備えるシステム10の組み立て状態および絶縁ロッド5の調整された長さに関して、ロックピン14の位置を固定するように構成されたばねクリップ20として形成された固定要素を備える。
【0042】
図8および図示のフローチャートによれば、遮断器1の絶縁ロッド5の長さを組み立てて調整するための方法は、以下のように処理することができる。
【0043】
ステップS1において、クラッチ11および取付部12には、それらのねじ山18、19および関連するねじ山ピッチ、ならびにそれらのそれぞれの開口部15、16、17、26および/または凹部13、21が設けられる。
【0044】
ステップS2において、取付部12は、例えば圧入および/または接着接続によって絶縁ロッド5と固定される。
【0045】
ステップS3において、クラッチ11の肩部23が取付部12の支持部27に配置されるまで、クラッチ11を取付部12にねじ込むことによってクラッチ11を取付部12に結合する。したがって、取付部12およびクラッチ11は、ねじ山18、19によって互いに調整可能に結合される。
【0046】
ステップS4において、絶縁ロッド5の長さの調整を行うことができる。これにより、クラッチ11は、絶縁ロッド5、取付部12、およびクラッチ11の所望の有効長さが設定されるまで、長手方向軸Aに関して取付部12に対して回転される。
【0047】
さらなるステップS5において、ロックピン14が設けられ、取付部12およびクラッチ11の固定開口部16、17に挿入されて、取付部12に対するクラッチ11の回転調整位置を固定する。
【0048】
したがって、クラッチ11は、取付部12に係合するロックピン14によってその位置に固定される。ロックピン14は、ばねクリップ20によって固定することができる。
【0049】
絶縁ロッド5の長さは、クラッチ11を180°回転させることで調整できる。調整増分は、これによりねじ山ピッチによって定義される。機械的安定性を高めるために、クラッチ11は、支持凹部13によって案内される肩部23と、取付部12の支持部27とを備え、曲げモーメントまたは横力の場合のノッチ効果を低減する。さらに、逃がし凹部21は、ねじ山18、19からクラッチ11への力の連続的な印加を保証する。
【0050】
上述の図1図8に示す実施形態は、高圧遮断器1の絶縁ロッド5の長さを調整するためのシステム10の例示的な実施形態を表す。したがって、それらはすべての実施形態の完全なリストを構成するものではない。実際の構成は、図に示す実施形態とは異なり得る。
【符号の説明】
【0051】
参照符号
1 高圧遮断器
2 フランジ
3 チューブ
4 リング
5 絶縁ロッド
10 システム
11 クラッチ
12 取付部
13 支持凹部
14 固定部材/ロックピン
15 クラッチ開口部
16 取付部の固定開口部
17 クラッチの固定開口部
18 クラッチの雄ねじ
19 取付部の雌ねじ
20 ばねクリップ
21 逃がし凹部
22 クラッチの調整部
23 クラッチの肩部
24 クラッチの結合部
25 取付部の結合部
26 クラッチ開口部
27 取付部の支持部
A 高圧遮断器/クラッチの長手方向軸
D 調整可能距離
L 係合ねじ山長さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2024-03-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧遮断器(1)の絶縁ロッド(5)の長さを調整するためのシステム(10)であって、
前記絶縁ロッド(5)を前記高圧遮断器(1)のレバーに結合して、前記高圧遮断器(1)の電気接点の分離を引き起こす作用運動を伝達するように構成されたクラッチ(11)であって、所与のねじ山ピッチを有するねじ山(18)を含むクラッチ(11)と、
前記クラッチ(11)の前記ねじ山(18)と協調して形成された所与のねじ山ピッチを有するねじ山(19)を含む取付部(12)であって、前記取付部(12)は、前記ねじ山(18、19)によって前記クラッチ(11)に調整可能に結合され、前記取付部(12)は、前記絶縁ロッド(5)との前記システム(10)の組み立て状態に関して、および長手方向軸(A)に関して、前記絶縁ロッド(5)の前記長さが、前記取付部(12)に対する前記クラッチ(11)の回転により調整可能であるように、前記絶縁ロッド(5)に固定的に結合されるように構成されている、取付部(12)と
前記取付部(12)に対する前記クラッチ(11)の望ましくない回転を打ち消すように構成された、前記クラッチ(11)に結合された固定部材(14)と、を備え、
前記取付部(12)および前記クラッチ(11)は各々、固定開口部(16、17)を備え、前記固定部材は、前記取付部(12)および前記クラッチ(11)の前記固定開口部(16、17)内に延在するロックピンとして形成される、システム(10)。
【請求項2】
前記取付部(12)はスリーブとして成形され、そのねじ山(19)は前記取付部(12)の内側に雌ねじとして形成され、前記クラッチ(11)の前記ねじ山(18)は前記クラッチ(11)の外側に雄ねじとして形成され、前記クラッチ(11)が前記スリーブの形状の取付部(12)内に延在する、請求項1に記載のシステム(10)。
【請求項3】
前記絶縁ロッド(5)を備える前記システム(10)の組み立て状態および前記絶縁ロッド(5)の調整された長さに関して、前記固定部材(14)の位置を固定するように構成されたばねクリップ(20)として形成された固定要素を備える、請求項またはに記載のシステム(10)。
【請求項4】
前記クラッチ(11)は、内側逃がし凹部(21)を制限するそのねじ山(18)の領域内のスリーブとして成形されている、請求項1または2に記載のシステム(10)。
【請求項5】
前記取付部(12)は、前記クラッチ(11)に面する支持凹部(13)を制限する支持部(27)を備え、前記クラッチ(11)は、そのねじ山(18)に隣接する肩部(23)を備え、前記支持部(27)および前記肩部(23)は、前記クラッチ(11)および前記取付部(12)の案内支持された結合が設定されるように互いに協調して形成される、請求項1または2に記載のシステム(10)。
【請求項6】
前記クラッチ(11)および前記取付部(12)の前記ねじ山(18、19)は各々、前記絶縁ロッド(5)との前記取付部(12)の組立状態に関する前記取付部(12)の引張強度に応じて予め形成される、前記長手方向軸(A)に関する長さを備える、請求項1または2に記載のシステム(10)。
【請求項7】
前記クラッチ(11)の前記ねじ山(18)は、絶縁ロッド(5)との前記取付部(12)の組み立て状態に関する前記取付部(12)の材料および/または引張強度に応じて予め形成される、前記長手方向軸(A)を横切る直径を備える、請求項1または2に記載のシステム(10)。
【請求項8】
前記クラッチ(11)および前記取付部(12)の前記ねじ山(18、19)は、互いに協調して形成され、それらのねじ山ピッチは、前記取付部(12)に対して前記クラッチ(11)を前記長手方向軸(A)周りに180°回転させると前記絶縁ロッド(5)の長さを前記ねじ山ピッチの半分だけ変化させるように与えられる、請求項1または2に記載のシステム(10)。
【請求項9】
前記高圧遮断器(1)の電気接点を分離するように構成された絶縁ロッド(5)と、
前記取付部(12)によって前記絶縁ロッド(5)と結合された、請求項1または2に記載の前記絶縁ロッド(5)の長さを調整するためのシステム(10)と、を備える、高圧遮断器(1)。
【請求項10】
高圧遮断器(1)の絶縁ロッド(5)の長さを調整する方法であって、
前記絶縁ロッド(5)を前記高圧遮断器(1)のレバーに結合して、前記高圧遮断器(1)の電気接点の分離を引き起こす作用運動を伝達するように構成されたクラッチ(11)を設けることであって、前記クラッチ(11)は、所与のねじ山ピッチを有するねじ山(18)を含み、前記クラッチ(11)は、固定開口部(17)を備える、ことと、
前記クラッチ(11)の前記ねじ山(18)と協調して形成されたねじ山(19)を含む取付部(12)を設けることであって、前記取付部(12)は、固定開口部(16)を備える、ことと
前記クラッチ(11)が前記ねじ山(18、19)によって前記取付部(12)と調整可能に結合されるように、前記取付部(12)を前記クラッチ(11)と結合することと、
前記取付部(12)を前記絶縁ロッド(5)と固定的に結合することと、
長手方向軸(A)に関して前記取付部(12)に対して前記クラッチ(11)を回転させ、それによって前記絶縁ロッド(5)の前記長さを調整することと、
ロックピンとして形成される固定部材(14)を設けることと、
前記ロックピンを前記取付部(12)および前記クラッチ(11)の前記固定開口部(16、17)に挿入し、それによって、前記長手方向軸(A)を中心とする回転に関して前記取付部(12)に対して前記クラッチ(11)を固定することと、を含む、方法。
【国際調査報告】