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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-03
(54)【発明の名称】クロマトグラフィベッドインサート
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/60 20060101AFI20240827BHJP
   B01D 15/14 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
G01N30/60 G
B01D15/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024507158
(86)(22)【出願日】2022-08-16
(85)【翻訳文提出日】2024-02-06
(86)【国際出願番号】 US2022040433
(87)【国際公開番号】W WO2023023032
(87)【国際公開日】2023-02-23
(31)【優先権主張番号】63/233,396
(32)【優先日】2021-08-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベイリー, ダニエル エム.
(72)【発明者】
【氏名】シュトロエライン, グイド
【テーマコード(参考)】
4D017
【Fターム(参考)】
4D017AA20
4D017BA20
4D017CA01
4D017CA12
4D017CA13
4D017DA03
4D017EA05
(57)【要約】
クロマトグラフィベッドインサートは、開口部を有するベースと、ベース上に配置され、ベースに対して実質的に垂直に突出する突出部材のアレイとを含む。クロマトグラフィベッドインサートの変位容積%Dは、クロマトグラフィベッドインサートによって定義される容積の50%未満であり、クロマトグラフィベッドインサートは、クロマトグラフィベッドインサートを含まない対応するクロマトグラフィベッドと比較して、クロマトグラフィベッドインサートを含むクロマトグラフィベッドの水力半径RHを少なくとも25%減少させるように構成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロマトグラフィベッドインサートであって、
複数の開口部を含むベースと、
前記ベース上に配置され、前記ベースに対して実質的に垂直に突出する突出部材のアレイとを含み、
前記クロマトグラフィベッドインサートの変位容積%Dは、前記クロマトグラフィベッドインサートによって定義される容積の50%未満であり、
前記クロマトグラフィベッドインサートは、前記クロマトグラフィベッドインサートを含まない対応するクロマトグラフィベッドと比較して、前記クロマトグラフィベッドインサートを含む前記クロマトグラフィベッドの水力半径RHを少なくとも25%減少させるように構成される、クロマトグラフィベッドインサート。
【請求項2】
前記突出部材は、自由端と、前記ベースに接続された固定端とを含む、請求項1に記載のクロマトグラフィベッドインサート。
【請求項3】
前記突出部材のそれぞれは、突出部材の高さ、第1突出部材の厚さ、及び第2突出部材の厚さを有し、前記突出部材は、前記第1突出部材の厚さと前記第2突出部材の厚さとの比が1:1~20:1である、請求項1に記載のクロマトグラフィベッドインサート。
【請求項4】
前記突出部材のそれぞれは、前記第1突出部材の厚さと前記突出部材の高さとの比が1:2~1:20である、請求項3に記載のクロマトグラフィベッドインサート。
【請求項5】
前記ベースは、前記ベースが前記開口部を有するように配置された複数のベース部材を含む、請求項1に記載のクロマトグラフィベッドインサート。
【請求項6】
前記ベース部材は、前記突出部材と実質的に同様の方向に配向された隆起端を含む、請求項5に記載のクロマトグラフィベッドインサート。
【請求項7】
前記ベースは、放射状に対称なパターンを形成する前記開口部を有する、請求項1に記載のクロマトグラフィベッドインサート。
【請求項8】
前記ベースは、正方形の格子を形成する前記開口部を有する、請求項1に記載のクロマトグラフィベッドインサート。
【請求項9】
前記ベースは、六角形の格子を形成する前記開口部を有する、請求項1に記載のクロマトグラフィベッドインサート。
【請求項10】
前記突出部材は、前記突出部材のアレイが放射状に対称なパターンを形成するように前記ベース上に配置される、請求項7に記載のクロマトグラフィベッドインサート。
【請求項11】
前記突出部材は、前記突出部材のアレイが正方形の格子を形成するように前記ベース上に配置される、請求項8に記載のクロマトグラフィベッドインサート。
【請求項12】
それぞれ前記ベース及び前記突出部材のアレイを含む複数の層を含み、
前記層は、第2層上に配置された第1層を含み、前記第1層の前記ベースが前記第2層の前記突出部材の前記アレイ上に配置されたスタックを形成する、請求項1に記載のクロマトグラフィベッドインサート。
【請求項13】
前記第2層に関連付けられた突出部材の第2アレイは、前記第1層に関連付けられた突出部材の第1アレイと位置合わせされる、請求項12に記載のクロマトグラフィベッドインサート。
【請求項14】
前記第1層は第1ベースを含み、前記第2層は第2ベースを含み、前記第2層の各前記突出部材は、前記第1ベースに接続された第1端部と、前記第2ベースに接続された第2端部とを含む、請求項12に記載のクロマトグラフィベッドインサート。
【請求項15】
クロマトグラフィ装置であって、
クロマトグラフィ媒体と、
クロマトグラフィベッドインサートであって、
複数の開口部を含むベースと、
前記ベース上に配置され、前記ベースに対して実質的に垂直に突出する突出部材のアレイとを含む、クロマトグラフィベッドインサートとを含み、
前記クロマトグラフィベッドインサートの変位容積%Dは、前記クロマトグラフィベッドインサートによって定義される容積の50%未満であり、
前記クロマトグラフィベッドインサートは、前記クロマトグラフィベッドインサートを含まない対応するクロマトグラフィ装置と比較して、前記クロマトグラフィ装置の水力半径RHを少なくとも25%減少させるように構成される、クロマトグラフィ装置。
【請求項16】
前記クロマトグラフィ装置は、1cm未満の補正水力半径RHCを有し、前記クロマトグラフィベッドインサートを含まない対応する前記クロマトグラフィ装置は少なくとも1cmのRHを有する、請求項15に記載のクロマトグラフィ装置。
【請求項17】
前記クロマトグラフィ装置は、0.75cm未満の水力半径RHCを有し、前記クロマトグラフィベッドインサートを含まない対応する前記クロマトグラフィ装置は、1~5cmのRHを有する、請求項15に記載のクロマトグラフィ装置。
【請求項18】
前記クロマトグラフィ媒体は、充填された粒子を含む、請求項15に記載のクロマトグラフィ装置。
【請求項19】
前記粒子は、合成樹脂粒子、多糖類粒子、及び無機材料粒子からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項18に記載のクロマトグラフィ装置。
【請求項20】
液体混合物の成分をクロマトグラフィで分離する方法であって、前記方法は、
前記液体混合物と溶出溶媒をクロマトグラフィ装置に通すことと、
前記液体混合物の成分及び前記溶出溶媒からなる群から選択される少なくとも1つを含む画分を回収することとを含み、
前記クロマトグラフィ装置は、
クロマトグラフィ媒体と、
クロマトグラフィベッドインサートであって、
複数の開口部を含むベースと、
前記ベース上に配置され、前記ベースに対して実質的に垂直に突出する突出部材のアレイとを含む、クロマトグラフィベッドインサートとを含み、
前記クロマトグラフィベッドインサートの変位容積%Dは、前記クロマトグラフィベッドインサートによって定義される容積の50%未満であり、
前記クロマトグラフィベッドインサートは、前記クロマトグラフィベッドインサートを含まない対応するクロマトグラフィ装置と比較して、前記クロマトグラフィ装置の水力半径RHを少なくとも25%減少させるように構成される、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、クロマトグラフィベッドインサート、インサートとクロマトグラフィ媒体とを含むクロマトグラフィ装置、及びクロマトグラフィ分離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
過去数十年にわたり、クロマトグラフィは、一般に「生物製剤」と呼ばれる、抗体や他の大きな複雑なタンパク質などの大きなタンパク質の工業規模の調製に広く使用されている。Stickel,et al.,(Biotechnol.Prog.17(2001)755-751)は、これらのクロマトグラフィ操作のスケールアップにおける複雑さを概説し、様々なスケールでの圧縮性媒体の充填ベッドの圧力と流量の関係を報告している。概して、クロマトグラフィは、1つ以上の流体によって輸送される1つ以上の溶質を分離又は分解するプロセスである。典型的には、垂直に配置された中空の円筒形ハウジングに吸着特性を有する樹脂又は媒体が充填又は装填されたクロマトグラフィカラムが利用される。このカラムはいわゆる「充填ベッド」であり、媒体のスラリーをカラムに充填し、次いでベッドに固めることによって形成され得る。充填後、液体移動相がベッドの上又は中を通し、1つ以上の溶質を選択的に分離する。樹脂又は媒体は、1つ以上の溶質の分離差に基づいて選択される。ほとんどのクロマトグラフィ媒体の特徴の1つは、圧縮可能であることである。圧縮可能な性質の媒体により、クロマトグラフィ用チャンバを軸方向に圧縮できるクロマトグラフィカラム装置が進歩した。この軸方向の圧縮は、懸濁したスラリーからベッドを形成し、ベッドの上部にヘッドスペースが形成されないようにゼロ圧縮状態を超えてベッドを圧縮するために使用される。
【0003】
しかし、特に商業生産規模では、ベッド圧縮の増加には有害な側面がある。全体として、小さな直径のベッドでは媒体の圧縮が制限されるため、同じ高さのより圧縮された大きな直径のベッドよりもそれに応じて浸透性が高くなる。製造においては、より大きな直径のベッドがより好ましいため、クロマトグラフィ媒体の圧縮に関連するこれら及び他の有害な態様を取り除く又は回避する必要がある。
【0004】
これらの有害な側面を軽減するためにいくつかの試みがなされてきた。Wrightの米国特許第3,298,527号(特許文献1)は、接液周長を増加させた改良型フローシリンダを提供する。Blaschykの米国公開第2019/0255462 A1号(特許文献2)は、接続されたアームを介して中央でセグメント化されたチャンバを形成する放射状アームを有するクロマトグラフィカラムのインサートに関する。Schoenockの米国特許第5,124,133号(特許文献3)は、側方の流れを防止することによって流れを矯正するために、層を通って垂直に延在するプレートを有するカラム構造を提供する。Heikkila,et al.の米国特許第5,770,061号(特許文献4)は、垂直方向に少なくとも2つのゾーンを有し、相互にオフセットされ、異なる幾何学的形状を有する垂直壁によって画定されるクロマトグラフィカラムに関する。Gerontes,et alは、Chemical Engineering Science 129(2015)25-33(非特許文献1)で、生産速度を向上させるために流量を改善するためのインサートの使用について論じている。
【0005】
しかし、これらの潜在的な解決手段は、効率的なクロマトグラフィ性能を維持しながら、媒体の圧縮及びクロマトグラフィ装置を通る流体の流れに関連する全ての問題を取り除くわけではない。一般に、本開示は、クロマトグラフィ媒体の圧縮を制限し、装置内に追加の接液周長を提供するために水力半径を減少させることによって媒体を安定化することができるクロマトグラフィベッドインサートを提供する。本開示のクロマトグラフィベッドインサートは、容積変位を最小限に抑え、装置を通る容積流束への干渉を最小限に抑えることができる。更に、インサートは、壁支持機構の交差を最小限に抑え、理想的な流体連通が妨げられる領域への装置の分割を最小限に抑えることができる。
【0006】
本明細書に提供される「背景技術」の説明は、本開示の文脈を一般的に提示する目的のためのものである。この背景セクションに記載の範囲で、現在名前が挙がっている発明者の業績、及び出願時に従来技術として認定されない可能性がある記載の態様は、本発明に対する先行技術として明示的にも黙示的にも認められない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第3,298,527号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2019/0255462号明細書
【特許文献3】米国特許第5,124,133号明細書
【特許文献4】米国特許第5,770,061号明細書
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Gerontes,et al “Chemical Engineering Science” 129(2015)25-33
【発明の概要】
【0009】
本開示は、開口部を有するベースと、ベースに配置され、ベースに対して実質的に垂直に突出する突出部材のアレイとを含む、クロマトグラフィベッドインサートに関し、クロマトグラフィベッドインサートの変位容積%Dは、クロマトグラフィベッドインサートによって定義される容積の50%未満であり、クロマトグラフィベッドインサートは、クロマトグラフィベッドインサートを含まない対応するクロマトグラフィベッドと比較して、クロマトグラフィベッドインサートを含むクロマトグラフィベッドの水力半径RHを少なくとも25%減少させるように構成される。
【0010】
いくつかの実施形態では、突出部材は、自由端と、ベースに接続された固定端とを含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、各突出部材は、突出部材の高さ、第1突出部材の厚さ、及び第2突出部材の厚さを有し、突出部材は、第1突出部材の厚さと第2突出部材の厚さとの比が1:1~20:1である。
【0012】
いくつかの実施形態では、各突出部材は、第1突出部材の厚さと突出部材の高さとの比が1:2~1:20である。
【0013】
いくつかの実施形態では、ベースは、ベースが開口部を有するように配置されたベース部材を含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、ベース部材は、突出部材と実質的に同様の方向に配向された隆起端を含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、ベースは、放射状に対称なパターンを形成する開口部を有する。
【0016】
いくつかの実施形態では、ベースは、正方形又は六角形の格子を形成する開口部を有する。
【0017】
いくつかの実施形態では、突出部材は、突出部材のアレイが放射状に対称なパターンを形成するようにベースに配置される。
【0018】
いくつかの実施形態では、突出部材は、突出部材のアレイが格子を形成するようにベースに配置される。
【0019】
いくつかの実施形態では、クロマトグラフィベッドインサートは2つ以上の層を含み、各層はベース及び突出部材のアレイを含み、これらの層は、第2層上に配置された第1層を含み、第1層のベースが第2層の突出部材のアレイ上に配置されたスタックを形成する。
【0020】
いくつかの実施形態では、クロマトグラフィベッドインサートは、ベース間に配置され、各ベースを少なくとも1つの他のベースに接続する層間支持部材を更に含む。
【0021】
いくつかの実施形態では、第2層に関連付けられた突出部材の第2アレイは、第1層に関連付けられた突出部材の第1アレイと位置合わせされる。
【0022】
いくつかの実施形態では、第1層は第1ベースを含み、第2層は第2ベースを含み、第2層の各突出部材は、第1ベースに接続された第1端部と、第2ベースに接続された第2端部とを含む。
【0023】
いくつかの実施形態では、突出部材は、ベースに接続された固定端と自由端とを含む。
【0024】
本開示はまた、複数の開口部を含むベースと、ベース上に配置され、ベースに対して実質的に垂直に突出する突出部材のアレイとを含む、クロマトグラフィベッドインサートと、クロマトグラフィ媒体とを含む、クロマトグラフィ装置に関し、クロマトグラフィベッドインサートは、クロマトグラフィベッドインサートによって定義される容積の50%未満の変位容積(%D)を有し、クロマトグラフィベッドインサートは、クロマトグラフィベッドインサートを含まない対応するクロマトグラフィ装置と比較して、クロマトグラフィ装置の水力半径(RH)を少なくとも25%減少させるように構成される。
【0025】
いくつかの実施形態では、クロマトグラフィベッドインサートを含まない対応するクロマトグラフィ装置は少なくとも1cmの水力半径(RH)を有し、クロマトグラフィ装置は1cm未満の補正水力半径(RHC)を有する。
【0026】
いくつかの実施形態では、クロマトグラフィベッドインサートを含まない対応するクロマトグラフィ装置は1~5cmの水力半径(RH)を有し、クロマトグラフィ装置は0.75cm未満の水力半径(RHC)を有する。
【0027】
いくつかの実施形態では、クロマトグラフィ媒体は、充填された粒子を含む。
【0028】
いくつかの実施形態では、粒子は、合成樹脂粒子、多糖類粒子、及び無機材料粒子からなる群から選択される少なくとも1種である。
【0029】
本開示はまた、液体混合物の成分をクロマトグラフィで分離する方法にも関し、該方法は、液体混合物と溶出溶媒をクロマトグラフィ装置に通すことと、液体混合物の成分及び溶出溶媒からなる群から選択される少なくとも1つを含む画分を回収することとを含む。
【0030】
本明細書に記載の様々な実施形態をより良く理解するために、また、これらの様々な実施形態がどのように実施されるかをより明確に示すために、例として、少なくとも1つの例示的な実施形態を示し、これから説明する添付図面を参照する。図面は、本明細書に記載の教示の範囲を限定することを意図したものではない。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本開示の例示的な実施形態によるクロマトグラフィベッドインサートを示し、図1Aは側面図、図1Bは上面図、図1Cは斜視図を示す。
図2】本開示の例示的な実施形態によるクロマトグラフィベッドインサートを示し、図2Aは側面図、図2Bは上面図、図2Cは斜視図を示す。
図3】本開示の例示的な実施形態による、開口部のベースを示し、図3Aは、開口部が正方形の格子パターンを有するベース、図3Bは、開口部が放射状に対称なパターンを有するベース、図3Cは、開口部が六角形の格子パターンを有するベースを示す。
図4図4Aは、本開示の例示的な実施形態による、正方形の格子パターンを有するベースと、円形の断面を有する突出部材とを含むクロマトグラフィベッドインサートを示す。また、図4Bは、図4Aに示される例示的なクロマトグラフィベッドインサートの拡大図を示し、図4Cは、図4Aに示される例示的なクロマトグラフィベッドインサートの側面図を示す。
図5図5Aは、本開示の例示的な実施形態による、正方形の格子パターンを有するベースと、楕円形の断面を有する突出部材とを含むクロマトグラフィベッドインサートを示す。また、図5Bは、図5Aに示される例示的なクロマトグラフィベッドインサートの拡大図を示し、投影部材の交互パターンが見える。
図6図6A図6Bは、本開示の例示的な実施形態による、ベース部材に存在する隆起端を有するクロマトグラフィベッドインサートを示す。
図7図7A~Dは、本開示の例示的な実施形態による、2つ以上の層を有するクロマトグラフィベッドインサートを示す。
図8図8A図8Bは、表1~5で使用されるラベル付きパラメータを有するクロマトグラフィベッドインサートの概略図を示す。
図9】本開示の例示的な実施形態による、クロマトグラフィベッドインサートを含むクロマトグラフィ装置を示す。
図10】本開示の例示的な実施形態による、クロマトグラフィベッドインサートを含むクロマトグラフィ装置の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下の説明では、他の実施形態が利用されてもよく、本明細書に開示される本実施形態の範囲から逸脱することなく構造的及び運用的変更が行われてもよいことが理解される。
【0033】
[定義]
本明細書で使用される「(1)a」又は「(1つ)an」という用語は、1つ以上と定義される。本明細書で使用される「複数」という用語は、2つ以上として定義される。本明細書で使用される「別の(another)」という用語は、少なくとも第2以上と定義される。本明細書で使用される「含む(including)」及び/又は「有する(having)」という用語は、含む(comprising)(すなわち、オープン言語)と定義される。本書全体を通して「一実施形態」、「ある特定の実施形態」、「実施形態」、「実装形態」、「実施例」又は同様の用語の参照は、実施形態に関連して説明する特定の特徴、構造、又は特性が、本開示の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。それ故に、このようなフレーズまたは本明細書中の様々な場所での出現は、必ずしも全てが同じ実施形態に言及しているわけではない。更に、特定の特徴、構造、又は特性は、限定されることなく、1つ以上の実施形態において任意の適切な方法で組み合わされ得る。
【0034】
本明細書で使用される場合、「任意な(optional)」又は「必要に応じて(optionally)」という用語は、その後に説明されるイベント(複数可)が発生してもよく、若しくは発生しなくてもよいことを意味し、又はその後に説明される構成要素(複数可)が存在してもよく、若しくは存在しなくてもよいこと(例えば、0重量%)を意味する。
【0035】
[クロマトグラフィベッドインサート]
第1態様によれば、本開示は、クロマトグラフィベッドインサート(以下、「インサート」と呼ぶ)に関する。インサートは、複数の開口部と、突出部材のアレイとを含むベースを含み、突出部材は、ベース上に配置され、ベースに対して実質的に垂直に突出する。本開示の例示的な実施形態によるクロマトグラフィベッドが、図1A~1C及び図2A~2Cに示される。
【0036】
一般に、ベースは任意の適切な形状を有することができる。例えば、いくつかの実施形態では、ベースは円盤状である。すなわち、ベースは、上から見ると実質的に円形の輪郭であり、ベースの直径及びベースの厚さを有する。このような円形のベースは、従来のクロマトグラフィカラムに適応又は適合するのに特に有利であり得る。典型的な従来のクロマトグラフィカラムは、円形の断面を有する。ベースの輪郭を従来のクロマトグラフィカラムの断面と一致させることは、例えば、インサートの適切な配向、インサートと従来のクロマトグラフィカラムとの間のシール、インサートの確実な配置(例えば、使用中にインサートが実質的に動かないもの)、又はこれらの組み合わせを確保するのに有利であり得る。他の例では、ベースは、実質的に楕円形の輪郭、三角形、正方形、長方形、ひし形、平行四辺形、五角形、六角形、七角形、八角形などの多角形の輪郭、又は当業者に知られている任意の適切な他の輪郭であり得る。いくつかの実施形態では、複数の開口部がベースに形成される。すなわち、ベースは、開口部が形成又は配置されるベース材料の連続形状を含む。いくつかの実施形態では、ベースは、複数の開口部を形成するように配置された複数のベース部材を含む。すなわち、開口部は、適切な配置で配置されたベース部材間の空間によって形成される。このようなベース部材は、結合、隣接、重ね合わせなどの任意の適切な方法で接続することができる。いくつかの実施形態では、ベースは、第1方向(例えば、図1BのX方向)に配置されたベース部材を含むベース部材の第1層と、第2方向(例えば、図1BのY方向)に配置されたベース部材を含むベース部材の第2層とを含む。いくつかの実施形態では、ベースは、開口部を形成するように配置されたベース部材の単一層を含む。いくつかの実施形態では、ベースは、ベース外周部材を有し得る。このような外周部材は、ベースの固体外周を形成するベース部材とすることができる。図3Aは、外周部材を含むベースの例を示す。いくつかの実施形態では、ベースには、そのような外周部材がなくてもよい。図1A~1Cに示される例示的な実施形態は、そのような外周部材を欠いたインサートを示す。
【0037】
ベース部材は、当業者に知られている任意の適切な形状を有し得る。ベース部材の形状は、断面によって画定することができる。ベース部材が有し得る適切な断面形状の例としては、不規則な形状、円、楕円、正方形、長方形、ひし形、平行四辺形、五角形、六角形、七角形、八角形など、又はそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0038】
一般に、開口部は、当業者に知られている任意の適切な形状を有し得る。例えば、開口部は、円形、楕円形、多角形、不規則な形状、又はそれらの組み合わせであり得る。いくつかの実施形態では、開口部は、ベースに形成された円形の開口部である。図1Bに示される例示的な実施形態では、開口部は、完全な場合(すなわち、ベース又はベース部材によって形成された開口外周を有する)は正方形であり、不完全な場合(すなわち、ベース又はベース部材によって形成される開口外周を有さない)は不規則である。
【0039】
いくつかの実施形態では、開口部は、パターンを形成するように配置される。一般に、開口部は、当業者に知られている任意の適切なパターンを形成するように配置され得る。いくつかの実施形態では、開口部は、放射状に対称なパターンを形成するように配置される。このような放射状に対称なパターンの例を図3Bに示す。この例示的な放射状に対称なパターンでは、ベースは、ベース中心から半径方向外側に配置されたベース部材と、ベース中心から様々な距離で円周方向に配置された円形ベース部材とを含む。この例では、開口部は、均一なサイズ又は均一な形状を有さない。図3Bに示される例示的なベースは外周部材を有さず、完全な開口部と不完全な開口部の両方を含むことに留意されたい。
【0040】
いくつかの実施形態では、開口部は、格子を形成するように配置される。格子は、ベース部材から形成され得る。一般に、格子は、平面をカバーするためにテッセレーションできる任意の適切な形状又は形状の組み合わせを有し得る。このような適切な形状の例としては、三角形、正方形、長方形、ひし形、六角形、正方形と三角形の混合、六角形と三角形の混合、六角形、正方形、三角形の混合、八角形と正方形の混合、十二角形と三角形の混合、十二角形、六角形、正方形の混合、及び平面を覆うようにテッセレーションできる不規則な形状が挙げられるが、これらに限定されない。格子の開口部は、均一なサイズであっても、不均一なサイズであってもよい。格子は、上述したように、完全な開口部と不完全な開口部とを含み得る。開口部の正方形の格子を有するベースの例示的な実施形態が、図3B及び図4A~4Bに示される。六角形の格子状の開口部を有するベースの例示的な実施形態が図3Cに示される。
【0041】
突出部材は、ベース上に配置され、ベースに対して実質的に垂直な方向(例えば、図1AのZ方向)に突出又は延在する。一般に、突出部材は、当業者に知られている任意の適切な形状とすることができる。突出部材の形状は、断面によって画定することができる。ベース部材が有し得る適切な断面形状の例としては、不規則な形状、円、楕円、正方形、長方形、ひし形、平行四辺形、五角形、六角形、七角形、八角形など、又はそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0042】
突出部材は、ベースに垂直な方向(すなわち、図1Aに示すZ方向)の最大距離を指す突出部材の高さ、第1突出部材の厚さ(例えば、長さ)、及び第2突出部材の厚さ(例えば、幅)によって定義されるサイズを有し得る。断面が正方形の突出部材の場合、第1突出部材の厚さ(長さ)と第2突出部材の厚さ(幅)は等しい。円形の断面を有する突出部材の場合、長さと幅は両方とも等しく、円形の断面の直径となる。断面が楕円形の突出部材の場合、第1突出部材の厚さ(長さ)は最大長さを指し、第2突出部材の厚さ(幅)は最大幅を指す。いくつかの実施形態では、突出部材は、第1突出部材の厚さと第2突出部材の厚さとの比が1:1~20:1、好ましくは1:1~10:1、好ましくは1:1~7:1、好ましくは1.5:1~6.5:1、好ましくは2:1~5:1、好ましくは2.25:1~4.75:1、好ましくは2.5:1~4.5:1、好ましくは2.75:1~4.25:1、好ましくは3:1~4:1である。いくつかの実施形態では、突出部材は、長方形の断面を有し、アスペクト比が1.25:1~7:1、好ましくは1.5:1~6.5:1、好ましくは2:1~5:1、好ましくは2.25:1~4.75:1、好ましくは2.5:1~4.5:1、好ましくは2.75:1~4.25:1、好ましくは3:1~4:1である。いくつかの実施形態では、突出部材は、楕円形の断面を有し、アスペクト比が1.25:1~7:1、好ましくは1.5:1~6.5:1、好ましくは2:1~5:1、好ましくは2.25:1~4.75:1、好ましくは2.5:1~4.5:1、好ましくは2.75:1~4.25:1、好ましくは3:1~4:1である。
【0043】
一般に、突出部材は、任意の適切な配置でベース上に配置され得る。突出部材は、好ましくはベースに存在する開口部を妨げないように配置される。いくつかの実施形態では、突出部材は、ベース部材に取り付けられるか、ベース部材上に配置される。突出部材は、一般に、ベース部材の任意の部分に取り付けるか、その上に配置することができる。いくつかの実施形態では、突出部材は、ベース部材が接続又は交差する位置でベースに取り付けられるか、ベース上に配置される。この例は、図4A~4Cに示される。これらの図は、正方形の格子を形成するベース部材の交点又は接合部に配置された円形の断面を有する突出部材を示す。図4A図4Cに示される例示的な実施形態に示される配置により、投影部材が正方形の格子状に配置されることになる。別の例が、図5A~6Bに示される。これらの図は、正方形の格子を形成するベース部材の交点又は接合部に配置された楕円形の断面を有する突出部材を示す。これらの例示的な実施形態では、突出部材は、ベース部材に対して実質的に平行に配向された長さを有する。このような配向は、構造の安定性又は開口部の閉塞を防止するために有利であり得る。
【0044】
突出部材は、任意の適切な配置で配置され得る。このような突出部材の配置は、ベース部材の配置と同じであってもよいし、異なっていてもよい。例えば、ベース部材が六角形の格子を形成する場合、突出部材は六角形の配置又は非六角形の配置を形成するように配置され得る。いくつかの実施形態では、突出部材は、突出部材のアレイが格子を形成するようにベース上に配置される。いくつかの実施形態では、突出部材は、突出部材のアレイが放射状に対称なパターンを形成するようにベース上に配置される。
【0045】
存在し得る突出部材の数又は密度には特に制限はない。図1A~1Cは、図2A~2Cに示される例示的なインサートと比較して、より低い突出部材密度及びより小さい開口部のより密な間隔の配置を有する例示的なインサートを示す。突出部材の密度は、ベースによって囲まれる単位面積当たりの突出部材の数を指し得る。
【0046】
非対称の断面(例えば、長方形又は楕円形)を有する突出部材を有する実施形態では、突出部材は交互配置で配置され得る。このような配置は、第1セットの突出部材が、長さが第1方向(例えば、図6A~6Bに示すようにX方向に沿って)を向くように配向され、第2セットの突出部材が、長さが第2方向(例えば、図6A~6Bに示すようにY方向に沿って)を向くように配向されるように配置された突出部材を有し得る。このような第1セットの突出部材は、任意の適切な数の突出部材、又は存在する突出部材の総数の任意の適切な部分とすることができる。交互は、任意の適切なパターン又は頻度で発生し得る。例えば、隣接する突出部材は、X方向、Y方向、又はその両方に沿って交互に移動することができる。X方向とY方向の両方に交互に配置する例を図6A及び図6Bに示す。
【0047】
いくつかの実施形態では、突出部材はそれぞれ、ベースに接続された固定端と自由端とを含む。自由端は、突出部材のベースに接続された固定端とは反対側の端であり、ベースに接続されない。突出部材は、任意の数の他の突出部材に接続され得る。このような接続は、任意の適切な構造、例えば、以下に説明する別の層のベースからの支柱又はベース部材によって形成され得る。支柱は、任意の適切な配置で配置することができ、任意の適切な方向に向けることができる。例えば、隣接する突出部材の間に配置され、X-Y平面内の一方向に配向される支柱があってもよい(図1Bに示されるラベル付き軸を使用)。別の例では、隣接する突出部材の間に配置され、(図1Aに示されるラベル付き軸を使用して)方向を記述するベクトルに対してZ軸成分を有するように支柱が配向されるように、斜め方向に配向される支柱があってもよい。いくつかの実施形態では、突出部材は別の突出部材に接続されなくてもよい。
【0048】
いくつかの実施形態では、インサートは、キャップを含む。キャップは、上述したベースと同様のものであり得る。すなわち、キャップは複数の開口部を含む。キャップは、いかなる態様においても、インサートの対応するベースと同様であっても異なっていてもよい。図1A~1C及び2A~2Cに示される例示的な実施形態は、キャップを有するインサートを示す。いくつかの実施形態では、キャップは突出部材に接続される。いくつかの実施形態では、キャップは突出部材に接続されない。いくつかの実施形態では、キャップは、第1セットの突出部材に接続され、第2セットの突出部材には接続されない。キャップに接続される突出部材は、キャップに接続されない突出部材と同じであってもよいし、異なってもよい。
【0049】
いくつかの実施形態では、ベース及び/又はキャップは、隆起端を含むベース部材を含む。隆起端は、突出部材と実質的に同様の方向に向けられる。例えば、ベース部材上の隆起端は、必要に応じて、突出部材の自由端及び/又はキャップに向けて配向することができる。隆起端は、任意の適切な輪郭又は断面を有することができる。隆起端を有する例示的な実施形態が図5A及び5Bに示される。これらの図では、隆起端が構造要素510として示される。この例示的な実施形態では、隆起端は実質的に三角形の断面を有する。これらの三角形の隆起端は、実質的に長方形のベース部材上に配置される。結果として得られる全体の断面は、「家屋の形状」を有する不規則な五角形になる。隆起端は、インサートを含むクロマトグラフィ装置を通る材料の流れを導くのに有利であり得る。
【0050】
いくつかの実施形態では、インサートは、2つ以上の層を含む。これらの層のそれぞれは、上述したように、ベース及び突出部材のアレイを含む。これらの層は、上層のベースが下層の突出部材のアレイの上部に位置するスタックを形成するように配置され得る。一般に、インサート内に存在できる層の数に制限はない。いくつかの実施形態では、下層の突出部材は上層のベースに接続される。いくつかの実施形態では、下層の突出部材は自由端を含まない。いくつかの実施形態では、下層の突出部材は上層のベースに接続されない。いくつかの実施形態では、下層の突出部材は自由端を含む。このような配置は、上層のベースと下層の突出部材との間に隙間を形成することができる。いくつかの実施形態では、インセットは、ベース間に配置され、各ベースを少なくとも1つの他のベースに接続する層間支持部材を含む。層間支持部材は、突出部材と実質的に同じであってもよいし、異なってもよい。このような差異は、上述したように、任意の適切なパラメータ、例えば、長さ、幅、アスペクト比、断面形状などにあり得る。一般に、突出部材に適用されるのと同じ説明が層間支持部材にも適用され得る。いくつかの実施形態では、層間支持部材は、突出部材と比較してより大きな厚さ及び/又は幅を有する。このような増加した厚さ及び/又は幅は、インサートに追加の構造的支持を提供するのに有利であり得る。図7A~7Dは、本開示の例示的な実施形態による、2つの層を有するインサートを示す。
【0051】
いくつかの実施形態では、下層に関連付けられた突出部材の下側アレイは、上層に関連付けられた突出部材の上側アレイと位置合わせされる。このような位置合わせは、位置、配向、又はその両方の位置合わせであってもよい。すなわち、上層の突出部材が(図1Bで定義された座標系を使用して)X-Y平面内で下層の突出部材と同様の部分を占めるように、突出部材を配向及び配置することができる。
【0052】
いくつかの実施形態では、ある層のキャップが別の層のベースを形成する。すなわち、第1ベースに配置されて第1層を形成する1セットの突出部材に接続される同じ材料又は構造(複数可)が、材料又は構造に配置されて第2層を形成する1セットの突出部材に接続される。
【0053】
一般に、インサートを構成するために使用できる材料に制限はない。使用できる適切な材料の例としては、ソーダ石灰ガラス、ホウケイ酸ガラス、溶融石英、強化ガラス、及び合わせガラスなどのガラス、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ二フッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリスルホン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、ポリアミド、ポリエーテルアミド、及びそれらのブレンド又はコポリマーなどのポリマー、ステンレス鋼、アルミニウム、チタン、それらの合金などの金属が挙げられるが、これらに限定されない。使用できる好ましい材料は、ポリプロピレン、ポリエチレン、及びステンレス鋼である。ポリマーは、ポリマーを含む複合材料又は強化ポリマーであり得る。例えば、ポリマーは、ガラス繊維、木材繊維、炭素繊維、もしくはアラミド繊維などの繊維、無機粒子、又はそれらの混合物で強化され得る。このような材料は、任意の適切な方法で組み合わせることができる。例えば、インサートの異なる部分は、異なる材料から構築され得、又は異なる材料を含み得る。別の例では、インサートの同じ部分を、ポリマーでコーティングされた金属などの異なる材料から構築し得、又はそれを含み得る。
【0054】
インサートは、クロマトグラフィベッドインサートによって定義される容積の50%未満、好ましくは45%未満、好ましくは40%未満、好ましくは35%未満、好ましくは30%未満、好ましくは27.5%未満、好ましくは25%未満、好ましくは22.5%未満、好ましくは20%未満、好ましくは18%未満、好ましくは16%未満の変位容積(%D)を有する。すなわち、ベースによって囲まれる面積及び突出部材の高さ、ならびに該当する場合にはキャップによって囲まれる面積に基づいて、差し込み部分が占める割合は、上記のパーセンテージ未満である。いくつかの実施形態では、インサートは、クロマトグラフィベッドインサートによって定義される容積の少なくとも5%、好ましくは少なくとも7.5%、好ましくは少なくとも10%、好ましくは少なくとも11%、好ましくは少なくとも11.5%、好ましくは少なくとも12%、好ましくは少なくとも12.5%、好ましくは少なくとも13%、好ましくは少なくとも14%、好ましくは少なくとも15%、好ましくは少なくとも15.5%の変位容積(%D)を有する。クロマトグラフィベッドインサートによって定義される残りの容積は、突出部材間の開口部及び空間によって定義される。いくつかの実施形態では、開口部及び突出部材間の空間によって定義される容積は、クロマトグラフィベッドインサートによって定義される容積の50%、好ましくは52.5%、好ましくは55%、好ましくは57.5%、好ましくは60%、好ましくは62.5%、好ましくは65%、好ましくは67.5%、好ましくは70%、好ましくは72.5%、好ましくは75%、好ましくは77.5%、好ましくは80%、好ましくは82.5%、好ましくは85%、好ましくは84%より大きい。いくつかの実施形態では、開口部及び突出部材間の空間によって定義される容積は、クロマトグラフィベッドインサートによって定義される容積の95%未満、好ましくは92.5%未満、好ましくは90%未満、好ましくは89%未満、好ましくは88.5%未満、好ましくは88%未満、好ましくは87.5%未満、好ましくは87%未満、好ましくは86.5%未満、好ましくは86%未満、好ましくは85.5%未満、好ましくは85%未満、好ましくは84.5%未満である。
【0055】
クロマトグラフィベッドインサートは、クロマトグラフィベッドインサートを含まない対応するクロマトグラフィベッドと比較して、クロマトグラフィベッドインサートを含むクロマトグラフィベッドの水力半径(RH)を少なくとも25%、好ましくは少なくとも30%、好ましくは少なくとも35%、好ましくは少なくとも40%、好ましくは少なくとも45%、好ましくは少なくとも50%、好ましくは少なくとも55%、好ましくは少なくとも60%、好ましくは少なくとも65%、好ましくは少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、好ましくは少なくとも77.5%、好ましくは少なくとも80%、好ましくは少なくとも82.5%、好ましくは少なくとも85%、好ましくは少なくとも87.5%、好ましくは少なくとも90%、好ましくは少なくとも91%、好ましくは少なくとも92%、好ましくは少なくとも93%、好ましくは少なくとも94%、好ましくは少なくとも95%、好ましくは少なくとも95.5%、好ましくは少なくとも96%、好ましくは少なくとも96.5%、好ましくは少なくとも97%、好ましくは少なくとも97.5%、好ましくは少なくとも98%、好ましくは少なくとも98.5%、好ましくは少なくとも99%、好ましくは少なくとも99.5%減少させるように構成される。
【0056】
本明細書で使用する場合、「クロマトグラフィベッドインサートを含まない対応するクロマトグラフィベッド」は、上記インサートを含む別のクロマトグラフィベッドと、上記インサートがないことを除いて実質的に同じクロマトグラフィベッドを指す。このようなクロマトグラフィベッドは、実質的に同じ寸法、及び材料の種類、粒径、充填密度、又は他の適切な尺度を含むクロマトグラフィ材料を有し得る。このようなクロマトグラフィベッドは、実質的に同じ量のクロマトグラフィ材料を有することができるが、そのような材料は、インサートの材料によって占められる容積によって置き換えられることはない。
【0057】
[クロマトグラフィ装置]
本開示はまた、上述のインサートとクロマトグラフィ媒体とを含むクロマトグラフィ装置にも関する。
【0058】
一般に、クロマトグラフィ媒体は、当業者に知られている任意の適切なクロマトグラフィ媒体であり得る。いくつかの実施形態では、クロマトグラフィ媒体は、充填された粒子を含む。いくつかの実施形態では、粒子は、合成樹脂粒子、多糖類粒子、及び無機材料粒子からなる群から選択される少なくとも1種である。いくつかの実施形態では、粒子は多糖類粒子である。いくつかの実施形態では、粒子は合成樹脂粒子である。このような粒子は、サイズ排除クロマトグラフィ、イオン交換クロマトグラフィ、アフィニティークロマトグラフィ、又はそれらの組み合わせなど、あらゆる種類のクロマトグラフィ分離に適し得る。粒子は官能化されてもよい。このような官能基化は、粒子表面上の適切な官能基及び/又は部分の存在が関与し、又はその結果として存在することができる。例えば、粒子は、抗原、抗体、酵素、基質、受容体、又はリガンドで官能化されてもよい。このような官能化は、生物学的検体又は生物学的起源の混合物からの分離又は精製に有利であり得る。
【0059】
いくつかの実施形態では、クロマトグラフィベッドインサートを含まない対応するクロマトグラフィ装置は、少なくとも1cm、好ましくは1~5cm、好ましくは1.5~4.5cm、好ましくは1.75~4.25cm、好ましくは2~4cm、好ましくは2.25~3.75cm、好ましくは2.5~3.5cmの水力半径(RH)を有し、クロマトグラフィ装置は、1cm未満、好ましくは0.95cm未満、好ましくは0.90cm未満、好ましくは0.85cm未満、好ましくは0.80cm未満、好ましくは0.75cm未満、好ましくは0.70cm未満、好ましくは0.65cm未満、好ましくは0.60cm未満、好ましくは0.55cm未満、好ましくは0.50cm未満、好ましくは0.45cm未満、好ましくは0.40cm未満、好ましくは0.35cm未満、好ましくは0.30cm未満、好ましくは0.25cm未満、好ましくは0.20cm未満、好ましくは0.15cm未満、好ましくは0.10cm未満、好ましくは0.05cm未満の補正水力半径(RHC)を有する。いくつかの実施形態では、クロマトグラフィベッドインサートを含まない対応するクロマトグラフィ装置は1~5cmの水力半径(RH)を有し、クロマトグラフィ装置は0.75cm未満の水力半径(RHC)を有する。
【0060】
例示的なクロマトグラフィ装置が、図9及び10に示される。
【0061】
いくつかの実施形態では、クロマトグラフィ装置は、1.05~1.5、好ましくは1.08~1.4、好ましくは1.1~1.3、好ましくは1.13~1.2の圧縮係数を有する。圧縮係数は、クロマトグラフィ装置を形成するために充填された後の、ある量のクロマトグラフィ媒体が占める緩んだ状態の容積と、同量のクロマトグラフィ媒体が占める容積との比である。
【0062】
いくつかの実施形態では、クロマトグラフィ装置は、1,000~10,000cm2/バール時、好ましくは1250~9750cm2/バール時、好ましくは1500~9500cm2/バール時、好ましくは1750~9250cm2/バール時、好ましくは2000~9000cm2/バール時、好ましくは2250~8750cm2/バール時、好ましくは2500~8500cm2/バール時、好ましくは2750~8250cm2/バール時、好ましくは3000~8000cm2/バール時、好ましくは3250~7750cm2/バール時、好ましくは3500~7500cm2/バール時の浸透性を有する。一般に、浸透性は、溶媒の浸透性を指す。このような溶媒は、当業者に知られている任意の適切な溶媒であり得る。
【0063】
[クロマトグラフィによる分離方法]
本開示はまた、液体混合物の成分をクロマトグラフィで分離する方法にも関する。該方法は、液体混合物と溶出溶媒を上記クロマトグラフィ装置に通すことと、液体混合物の成分及び溶出溶媒からなる群から選択される少なくとも1つを含む画分を回収することとを含む。
【0064】
一般に、通しは、当業者に知られている任意の適切な技術によって、又は任意の適切なパラメータを使用して行うことができる。このようなパラメータの例としては、流量、圧力、濃度、温度が挙げられる。例えば、液体混合物及び/又は溶出溶媒は、重力供給機構を使用して通すことができる。別の例では、液体混合物及び/又は溶出溶媒は圧力を加えて通すことができる。該方法は、液体クロマトグラフィの方法であり得る。液体クロマトグラフィ(LC)は、流体が微細物質のカラム(クロマトグラフィ媒体)又は毛細管通路を通って均一に浸透する場合、流体溶液の1つ以上の成分を選択的に保持するプロセスを指す。保持は、1つ以上の固定相とバルク流体(すなわち、移動相)が固定相(複数可)に対して移動する際の、混合物の成分の分布から生じる。「液体クロマトグラフィ」は、逆相液体クロマトグラフィ(RPLC)、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)、超高速液体クロマトグラフィ(UHPLC)、超臨界流体クロマトグラフィ(SFC)、及びイオン交換クロマトグラフィを含むが、これらに限定されない。
【0065】
本明細書で使用される場合、「HPLC」又は「高速液体クロマトグラフィ」という用語は、圧力下で移動相を固定相、通常、高密度充填カラムは強制的に通すことによって分離度が増加する液体クロマトグラフィを指す。
【0066】
本明細書で使用される「UHPLC」又は「超高速液体クロマトグラフィ」という用語は、動作圧力がHPLCよりも高く(例えば、約40MPaと比較して約100MPa)、通常、カラムの直径がより小さく、分解能がより大きくなり得ることを除いて、HPLCに類似した液体クロマトグラフィ技術を指す。
【0067】
イオン交換クロマトグラフィは、分子をそれぞれの荷電基に基づいて分離する。イオン交換クロマトグラフィは、クーロン(イオン)相互作用に基づいて分析対象分子をカラムに保持する。分子は、固定相マトリックスで反対の電荷と静電相互作用を受ける。固定相は通常、荷電したイオン化可能な官能基又はリガンドを含む固定マトリックスで構成される。電気的中性を達成するために、これらの不活性電荷は溶液中の交換可能な対イオンと結合する。精製されるイオン化分子は、固定相上の固定化電荷への結合を巡って、これらの交換可能な対イオンと競合する。これらのイオン化分子は、その電荷に基づいて保持又は溶出される。最初は、固定相に結合しないか結合が弱い分子が最初に洗い流される。固定相に結合する分子を溶出するには、条件を変更する必要がある。結合を巡って分子と競合する交換可能な対イオンの濃度を高めたり、pHを変更したりすることができる。pHの変化は特定の分子の電荷に影響を与えるため、結合が変化する。更に、対イオンの濃度を徐々に変化させて、イオン化した分子を分離することができる。この種類の溶出は勾配溶出と呼ばれる。一方、対イオンの濃度を1ステップで変化させるステップ溶出を使用することもできる。
【0068】
数値的な境界又は範囲が本明細書に記載される場合、その端点が含まれる。また、数値的な境界又は範囲内の全ての値及び部分範囲が、明示的に書き出されるかのように具体的に含まれる。
【0069】
明らかに、上記の教示に照らして、本発明の多くの修正及び変形が可能である。従って、添付の特許請求の範囲内で、本発明は、本明細書に具体的に説明される以外の方法で実施され得ることを理解されたい。
【0070】
本開示の実施形態はまた、以下の括弧内に記載されるとおりであり得る。
【0071】
(1)複数の開口部を含むベースと、ベース上に配置され、ベースに対して実質的に垂直に突出する突出部材のアレイとを含む、クロマトグラフィベッドインサートであって、クロマトグラフィベッドインサートの変位容積(%D)は、クロマトグラフィベッドインサートによって定義される容積の50%未満であり、クロマトグラフィベッドインサートは、クロマトグラフィベッドインサートを含まない対応するクロマトグラフィベッドと比較して、クロマトグラフィベッドインサートを含むクロマトグラフィベッドの水力半径(RH)を少なくとも25%減少させるように構成される、クロマトグラフィベッドインサート。
【0072】
(2)突出部材は、ベースに接続される固定端と自由端とを含む、(1)に記載のクロマトグラフィベッドインサート。
【0073】
(3)各突出部材は、突出部材の高さ、第1突出部材の厚さ、及び第2突出部材の厚さを有し、突出部材は、第1突出部材の厚さと第2突出部材の厚さとの比が1:1~20:1である、(1)~(2)のいずれか一項に記載のクロマトグラフィベッドインサート。
【0074】
(4)突出部材は、第1突出部材の厚さと突出部材の高さとの比が1:2~1:20である、(3)に記載のクロマトグラフィベッドインサート。
【0075】
(5)ベースは、ベースが開口部を有するように配置された複数のベース部材を含む、(1)~(4)のいずれか一項に記載のクロマトグラフィベッドインサート。
【0076】
(6)ベース部材は、突出部材と実質的に同様の方向に配向された隆起端を含む、(5)に記載のクロマトグラフィベッドインサート。
【0077】
(7)ベースは、放射状に対称なパターンを形成する開口部を有する、(1)~(6)のいずれか一項に記載のクロマトグラフィベッドインサート。
【0078】
(8)ベースは、正方形の格子を形成する前記開口部を有する、(1)~(7)のいずれか一項に記載のクロマトグラフィベッドインサート。
【0079】
(9)ベースは、六角形の格子を形成する前記開口部を有する、(1)~(7)のいずれか一項に記載のクロマトグラフィベッドインサート。
【0080】
(10)突出部材は、突出部材のアレイが放射状に対称なパターンを形成するようにベース上に配置される、(7)に記載のクロマトグラフィベッドインサート。
【0081】
(11)突出部材は、突出部材のアレイが正方形の格子を形成するようにベースに配置される、(8)に記載のクロマトグラフィベッドインサート。
【0082】
(12)複数の層を含み、各層はベース及び突出部材のアレイを含み、これらの層は、第2層上に配置された第1層を含み、第1層のベースが第2層の突出部材のアレイ上に配置されたスタックを形成する、(1)~(10)のいずれか一項に記載のクロマトグラフィベッドインサート。
【0083】
(13)第2層に関連付けられた突出部材の第2アレイは、第1層に関連付けられた突出部材の第1アレイと位置合わせされる、(11)に記載のクロマトグラフィベッドインサート。
【0084】
(14)突出部材は、第1ベースに接続された第1端部と、第2ベースに接続された第2端部とを含む、(11)~(12)のいずれか一項に記載のクロマトグラフィベッドインサート。
【0085】
(15)複数の開口部を含むベースと、ベース上に配置され、ベースに対して実質的に垂直に突出する突出部材のアレイとを含む、クロマトグラフィベッドインサートと、クロマトグラフィ媒体とを含む、クロマトグラフィ装置であって、クロマトグラフィベッドインサートは、クロマトグラフィベッドインサートによって定義される容積の50%未満の変位容積(%D)を有し、クロマトグラフィベッドインサートは、クロマトグラフィベッドインサートを含まない対応するクロマトグラフィ装置と比較して、クロマトグラフィ装置の水力半径(RH)を少なくとも25%減少させるように構成される、クロマトグラフィ装置。
【0086】
(16)クロマトグラフィベッドインサートを含まない対応するクロマトグラフィ装置は少なくとも1cmの水力半径(RH)を有し、クロマトグラフィ装置は1cm未満の補正水力半径(RHC)を有する、(15)に記載のクロマトグラフィ装置。
【0087】
(17)クロマトグラフィベッドインサートを含まない対応するクロマトグラフィ装置は1~5cmの水力半径(RH)を有し、クロマトグラフィ装置は0.75cm未満の水力半径(RHC)を有する、(16)に記載のクロマトグラフィ装置。
【0088】
(18)クロマトグラフィ媒体は、充填された粒子を含む、(15)~(17)のいずれか一項に記載のクロマトグラフィ装置。
【0089】
(19)粒子は、合成樹脂粒子、多糖類粒子、及び無機材料粒子からなる群から選択される少なくとも1種である、(18)に記載のクロマトグラフィ装置。
【0090】
(20)液体混合物の成分をクロマトグラフィで分離する方法であって、該方法は、液体混合物と溶出溶媒を(15)~(19)のいずれかに記載のクロマトグラフィ装置に通すことと、液体混合物の成分及び溶出溶媒からなる群から選択される少なくとも1つを含む画分を回収することとを含む、方法。
【0091】
本明細書には多くの具体的な実施の詳細が含まれるが、これらは特許請求の範囲に対する制限として解釈されるべきではなく、むしろ特定の実施形態に固有であり得る特徴の記述として解釈されるべきである。
【0092】
別個の実施形態の文脈で本明細書に記載する、ある特定の特徴は、単一の実施形態において組み合わせて実施することもできる。逆に、単一の実施形態の文脈で説明する様々な特徴は、複数の実施形態において別々に、又は任意の適切なサブ組み合わせで実施することもできる。更に、特徴は、ある特定の組み合わせで作用するものとして上記で説明し、及び当初は更にそのように特許請求の範囲としたが、特許請求の範囲とした組み合わせからの1つ以上の特徴は、場合によっては組み合わせから削除できると共に、特許請求の範囲とした組み合わせは、サブ組み合わせ又はサブ組み合わせの変形に移され得る。
【0093】
従って、前述の説明は、本開示の単なる例示的な実施形態を開示し説明したものである。当業者には理解されるように、本開示は、その精神から逸脱することなく他の特定の形態で具体化することができる。従って、本開示の開示は、例示を目的とするものであり、本開示及び他の特許請求の範囲を限定するものではない。本明細書の教示の容易に認識可能な変形態様を含み、本開示は、一部では、前述の特許請求の用語の範囲を、発明の主題が公衆に捧げられることがないように定義している。
【0094】
以下の実施例は、クロマトグラフィベッドインサート及びクロマトグラフィ装置を製造、特性評価、及び使用するためのプロトコル、ならびに上記方法を実行するためのプロトコルを更に説明することを意図しており、特許請求の範囲を限定することを意図するものではない。
【実施例
【0095】
補正水力半径(RHC
以下の例は、以下の変数を使用し、図8A及び図8Bを参照して、補正水力半径RHCの例示的な計算を提供する。
A=流れに垂直な面積[cm2
P=流れに垂直な接液周長[cm]
H=水力半径[cm]
P=流れに垂直な個々の突出部材の断面積[cm2
P=流れに垂直な突出部材の断面の周長[cm]
N=突出部材の数[#]
I=インサートの断面積[cm2
I=インサートの周長[cm]
C=流れに垂直な補正断面積[cm2
C=流れに垂直な補正接液周長[cm]
HC=補正水力半径[cm]
L=突出部材の断面の最大長さ[cm]
W=突出部材の断面の最大幅[cm]
アスペクト比=L対Wの比
%D=インサートによる初期水圧室容積の変位パーセント[%]
CF=圧縮係数
【0096】
図8Aに示すように、外周Pを伴って流れに垂直な領域Aについて、水力半径は以下のように定義される。
H=A/P (式1)
【0097】
図8Bに示すように、面積APの非交差突出部材及び接液周長PPを介して接液周長に量Nを追加すると、以下の式によって示されるように、水圧室の断面積及び接液周長の両方を大幅に変更することができる。
I=N*AP (式2)
I=N*PP (式3)
C=A-N*AP=A-AI (式4)
C=P+N*PP=P+PI (式5)
【0098】
突出部材は固体であり、流れに対して開放されないため、突出部材を追加すると、接液断面積が減少し得る。各突出部材が追加の接液周長を提供するため、突出部材の追加は接液周長に付加的であり得る。
【0099】
補正水力半径RHCは以下のように定義される。
HC=AC/PC=(A-N*AP)/(P+N*PP) (式6)
【0100】
突出部材によって占められる面積がクロマトグラフィ媒体に利用可能な全体の水圧室容積を減少させるので、突出部材の変位パーセントを減少させることは重要である。流れに垂直な任意の断面における水圧室内のインサートの突出部材による変位のパーセントは、以下のように定義され得る。
%D=N*AP/A*100% (式7)
【0101】
効果的なインサート設計では、RHCと%Dの両方が、好ましくは1cm未満、好ましくは0.75cm未満、好ましくは0.5cm未満の値に減少し、かつ50%未満、好ましくは37.5%未満、好ましくは25%未満に減少する。提供された式に示されるように、PPを増加させながらAPを減少させると、両方の目的が達成される。更に、Nが増加すると、RHCは減少するが、%Dは増加する。
【0102】
壁効果は直径25cm(RH=6.5cm)以下の充填ベッドに影響を及ぼし、直径2.5cm(RH=0.625cm)以下で効果の増加が観察されることが知られている。(Physical and Functional Properties of Chromatography Media-A Down Scale Study,E.Hennson,Uppsala University thesisを参照のこと)従って、必要に応じて、50cm2以上の断面積Aの水圧室に対して≦1cmのRHCを提供できるAP、PP、Nの組み合わせが必要となる。
【0103】
突出部材の輪郭の形状と全体の面積は、PP/AP関係の主要なパラメータである。PP/AP比を高める手段は、以下のように画定される突出部材の形状のアスペクト比を高めることである。
AR=L/W (式8)
【0104】
長方形の突出部材の輪郭の場合、突出部材の断面のAPとPPは以下のように定義され得る。
P=L*W (式9)
P=2*L+2*W (式10)
【0105】
P/APの関係は、ARとAPの観点から以下のように表現できる。
P/AP=2*(1+1/AR)*Sqrt(AR/AP)(式11)
【0106】
式11を使用すると、ARが常に1以上でなければならないことを考慮すると、一定のAPの場合、ARの増加に伴ってPP/AP比が常に増加することがわかる。
【0107】
P/AP比を増加させる第2手段は、突出部材の断面のAPを減少させることである。表1、2、及び3に示すように、APが減少すると、PP/AP比は増加する。
【0108】
P/PPの相関関係は、円形、長方形、楕円形、又は回旋形など、突出部材の幾何学的形状によっても定義される。表1、2、及び3は、それぞれ円形、楕円形、及び長方形の突出部材の輪郭を有する突出部材を含むインセットの構造パラメータの比較を示す。一般に、楕円は、非回旋形状の任意のアスペクト比でPP/APを最大化することがわかっているが、突出部材の断面(<0.5cm2)がますます小さくなると、実際の突出部材の断面の輪郭に関係なく、PP/AP比はますます大きくなる。
【表1】
【表2】
【表3】
【0109】
表4は、流れに垂直な円形の断面を有する様々なサイズの水圧室と、多数の非交差突出部材の追加に基づくRHCとの比較である。この比較において、長方形の突出部材の断面のアスペクト比は5に設定され、RHC<0.5及び≦25%の%Dを得るために必要なN(突出部材の数)を示す。円形及び長方形の突出部材の断面の両方について、これは、一般に、<1cm2、時には<0.5cm2、多くの場合<0.25cm2の突出部材の断面積を必要とする。この設計の外側に位置する非交差支持体が、500cm2以上の大きな水圧エリア内の極端なアスペクト比(AR≧10)の突出部材である実施形態に留意されたい。このような突出部材は、%D<25%の目標のRHCをもたらす場合があるが、このような場合でも、突出部材の断面の最大幅は<0.5cm、多くの場合、≦0.25cmとなる。
【表4】
【0110】
表5は、本開示の潜在的な達成可能な効果を実証するために、未補正の水力半径と補正水力半径を有する円筒形水圧室の比較を示す。ここで、
H=A/P
A=接液面積
P=接液周長
である。
【表5】
【0111】
表6は、本開示の例示的な実施形態による、異なるインサート及びクロマトグラフィ媒体を含むクロマトグラフィ装置の様々なパラメータを示す。圧縮係数(CF)は、媒体の初期体積を、充填ベッドを構成する媒体の最終充填体積で割ったものである。この場合、各粒子をカラムに充填し、液体を複数回通す前後の体積を使用する。典型的には、圧縮係数は、粒子をクロマトグラフィ装置に導入し、未充填の粒子の体積を測定し、次に100~150cm/hrの充填液流量を使用して充填し、充填された粒子の体積を測定することによって測定される。浸透性は、充填ベッドの単位高さあたりの圧力損失に対する線速度の比として定義される。典型的には、浸透性は、線速度と圧力損失の関係が比例する範囲で測定される。このような条件下では、浸透性は一次近似定数になるが、典型的には測定範囲全体の平均値が報告される。
A=装置の断面積[cm2
P=流れに垂直な接液周長[cm]
H=水力半径[cm]
C=流れに垂直な補正断面積[cm2
C=流れに垂直な補正接液周長[cm]
HC=補正水力半径[cm]
L=突出部材の断面の最大長さ[cm]
W=突出部材の断面の最大幅[cm]
アスペクト比=L対Wの比
%D=インサートによる初期水圧室容積の変位パーセント[%]
CF=圧縮係数
【表6】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】