(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-03
(54)【発明の名称】線維芽細胞増殖因子受容体1阻害剤療法に対する応答性を同定する方法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6869 20180101AFI20240827BHJP
C07K 16/18 20060101ALI20240827BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240827BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240827BHJP
A61K 31/506 20060101ALI20240827BHJP
A61K 31/496 20060101ALI20240827BHJP
A61K 31/498 20060101ALI20240827BHJP
A61K 31/5377 20060101ALI20240827BHJP
A61K 31/47 20060101ALI20240827BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20240827BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20240827BHJP
【FI】
C12Q1/6869 Z ZNA
C07K16/18
A61P35/00
A61P43/00 111
A61K31/506
A61K31/496
A61K31/498
A61K31/5377
A61K31/47
G01N33/53 M
C12N15/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024508079
(86)(22)【出願日】2022-08-11
(85)【翻訳文提出日】2024-04-05
(86)【国際出願番号】 EP2022072607
(87)【国際公開番号】W WO2023017133
(87)【国際公開日】2023-02-16
(32)【優先日】2021-08-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】308027710
【氏名又は名称】ウニヴェルジテート・ツー・ケルン
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マルチャーズ フロリアン
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ロマン
【テーマコード(参考)】
4B063
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA19
4B063QQ02
4B063QQ08
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4C086NA05
4C086ZB26
4C086ZC42
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA40
4H045CA40
4H045DA75
4H045DA76
4H045EA50
(57)【要約】
本発明は、癌に罹患している被験体を線維芽細胞増殖因子受容体1(FGFR1)阻害剤療法に対するレスポンダー又は非レスポンダーとして識別する方法に関する。該方法は、FGFR1遺伝子の遺伝子改変の存在又は非存在の決定を伴い、遺伝子バリエーションは、FGFR1遺伝子のORF内又は近傍内に断裂が位置する切断-融合-架橋様(BFB様)機構によって引き起こされるコピー数変動である。これらの断裂はFGFR阻害剤感受性と関連しており、FGFR1内の染色体内tail-to-tail断裂は、FGFR阻害剤療法についての患者の層別化に使用することができる癌におけるFGFR阻害剤治療の予測治療マーカーとして機能する可能性がある。さらに、癌治療に用いるFGFR1の阻害剤、及び癌等の障害に関連する遺伝子バイオマーカーを識別する方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
線維芽細胞増殖因子受容体1(FGFR1)阻害剤療法に対するレスポンダー又は非レスポンダーとして癌に罹患している被験体を識別する方法であって、前記方法が、
a)前記癌に関連する遺伝物質を含む生体試料を前記被験体から提供する工程と、
b)前記遺伝物質中において、FGFR1遺伝子の遺伝子改変の存在又は非存在を判定する工程と、
なお、前記遺伝子改変は、前記FGFR1遺伝子のORF内又は近傍内に断裂が存在する、切断-融合-架橋様(BFB様)機構等の染色体断裂によって引き起こされるコピー数変動である;
を含み、
前記被験体の前記生体試料中の前記FGFR1遺伝子における前記遺伝子改変の存在が、前記被験体がFGFR1阻害剤療法に対するレスポンダーであることを示す、方法。
【請求項2】
前記癌が、固形癌、好ましくは乳癌、胃癌、膀胱癌、又は肺癌等のFGFR1の発現を特徴とする癌、最も好ましくは扁平上皮肺癌(SQLC)等の非小細胞肺癌(NSCLC)である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記被験体が、ヒト、好ましくはSQLC等のNSCLCと診断されたヒト患者である請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記生体試料が、前記被験体の腫瘍細胞を含む、好ましくは前記生体試料が、腫瘍生検である、又は切除された原発性腫瘍の試料である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記FGFR1阻害剤が、NVP-BGJ398、AZD4547、TKI258、JNJ42756493、ペミガチニブ、ルシタニブ、ロガラチニブ、Debio 1347、FIIN2、LY2874455、PRN1371及びポナチニブからなる群より選択される阻害剤等の選択的又は非選択的FGFR1阻害剤である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記遺伝子改変が、
a)FGFR1の細胞外ドメインの少なくとも一部の短縮をもたらすFGFR1遺伝子座の遺伝子修飾、及び/又は、
b)FGFR1遺伝子の遺伝子コピー数増加、又はその修飾バリアント、及び/又は、
c)前記FGFR1遺伝子の連続回文配列、又は部分FGFR1遺伝子、及び/又は、
d)非カノニカルATG開始コドンの翻訳開始をもたらす前記FGFR1遺伝子座の遺伝子修飾、
である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記遺伝子改変が、FGFR1の外部ドメイン欠失バリアントの発現をもたらす前記FGFR1遺伝子の改変であり、好ましくはFGFR1の前記バリアントが、FGFR1のエクソン1~エクソン9における非カノニカルATGから翻訳される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
患者における癌の治療に使用されるFGFR1の阻害剤であって、前記癌が、FGFR1遺伝子の、又は前記FGFR1遺伝子のフラグメントの連続回文コピー数変動を含む前記FGFR1遺伝子における遺伝子改変を含むゲノムを特徴とし、任意に、前記癌が、固形癌、好ましくは乳癌、胃癌、膀胱癌又は肺癌等のFGFR1の発現を特徴とする癌、最も好ましくは扁平上皮肺癌(SQLC)等の非小細胞肺癌(NSCLC)である、患者における癌の治療に使用されるFGFR1の阻害剤。
【請求項9】
前記FGFR1の阻害剤が、好ましくはFGFR、好ましくはFGFR1に特異的に結合して阻害する、低分子阻害剤、抗体等の抗原結合タンパク質、又は任意の抗体誘導体であり、任意に、前記FGFR1の阻害剤が、NVP-BGJ398、AZD4547、TKI258、JNJ42756493、ペミガチニブ、ルシタニブ、ロガラチニブ、Debio 1347、FIIN2、LY2874455、PRN1371及びポナチニブからなる群より選択される阻害剤等の選択的又は非選択的FGFR1阻害剤である、請求項8に記載の使用のためのFGFR1の阻害剤。
【請求項10】
前記遺伝子改変が、前記FGFR1遺伝子の、又は前記FGFR1遺伝子のフラグメントの局所増幅であり、任意に、前記FGFR1遺伝子のフラグメントが、発現可能な配列であり、かつFGFR1タンパク質バリアント、好ましくは外部ドメイン欠失FGFR1タンパク質バリアントをもたらす、請求項8又は9に記載の使用のためのFGFR1の阻害剤。
【請求項11】
前記治療が、前記患者をFGFR1阻害剤療法に対するレスポンダーとして識別する予備工程を含み、前記予備工程が、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法を含む、請求項8~10のいずれか一項に記載の使用のためのFGFR1阻害剤。
【請求項12】
被験体における癌の診断、予後、層別化及び/又は治療法のモニタリングの方法であって、
a)前記被験体からの生体試料を提供する工程と、
b)前記生体試料中において、好ましくはFGFR1の細胞外ドメインが欠失している、切断-融合-架橋様(BFB様)機構、例えばtail-to-tail BFB様機構等の染色体断裂であって、FGFR1遺伝子のORF内又は近傍内に前記断裂が存在する染色体断裂、前記FGFR1遺伝子のmRNA転写産物の改変、FGFR1タンパク質の改変、前記FGFR1遺伝子のmRNA転写産物のレベルの変化、及び/又は前記FGFR1タンパク質のレベルの変化の存在又は非存在を判定する工程と、
を含み、
健康な対照又は基準の値と比較して、工程(b)で判定された前記染色体断裂、前記FGFR1遺伝子のmRNA転写産物の改変、前記FGFR1タンパク質の改変、前記FGFR1遺伝子のmRNA転写産物のレベルの差、及び/又は前記FGFR1タンパク質のレベルの差の存在が、前記被験体における癌の存在を示す、方法。
【請求項13】
前記染色体断裂が、
(i)FGFR1の細胞外ドメインの少なくとも一部の短縮をもたらす前記FGFR1遺伝子座の遺伝子修飾、及び/又は、
(ii)FGFR1の、若しくは前記FGFR1遺伝子のフラグメントの局所増幅、及び/又は、
(iii)前記FGFR1遺伝子の連続回文配列、若しくは部分FGFR1遺伝子、及び/又は、
(iv)非カノニカルATG開始コドンの翻訳開始をもたらす、前記FGFR1遺伝子座の遺伝子修飾、
を誘導する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記FGFR1遺伝子の遺伝子修飾、及び/又はmRNA転写産物の改変が、配列番号2、3、10、11、15、16、20、21、25、28、31、34若しくは37のいずれか1つによる核酸配列を含み、及び/又は改変FGFR1タンパク質が、配列番号9、14、19、24、26、29、32若しくは35のいずれか1つによるアミノ酸配列を含む、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
前記癌が固形癌であり、好ましくは乳癌、胃癌、膀胱癌又は肺癌等のFGFR1の発現を特徴とする癌であり、最も好ましくは扁平上皮肺癌(SQLC)等の非小細胞肺癌(NSCLC)である、請求項12~14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌に罹患している被験体を、線維芽細胞増殖因子受容体1(FGFR1)阻害剤療法に対するレスポンダー又は非レスポンダーとして識別する方法に関する。この方法は、FGFR1遺伝子の遺伝子改変の存在又は非存在の判定を伴い、遺伝子改変は、染色体断裂によって引き起こされるコピー数変動である。切断-融合-架橋様(BFB様)機構はこれらのコピー数変動の主要な原因であり、FGFR1遺伝子のORF内又は近傍内の断裂を誘導する。断裂は、FGFR1の発現の調節解除、又はカノニカルFGFR1 ATG開始コドンの欠失をもたらし、FGFR阻害剤の感受性と関連し、FGFR1中又はそれに近い染色体内tail-to-tail断裂は、FGFR阻害剤療法のための患者の層別化に使用することができる癌におけるFGFR阻害剤療法の予測治療マーカーとして機能する可能性がある。さらに、癌の治療に用いるFGFR1の阻害剤、癌等の障害に関連する遺伝子バイオマーカーを識別する方法が提供される。
【背景技術】
【0002】
受容体チロシンキナーゼの線維芽細胞増殖因子受容体1(FGFR)ファミリーは、5つの高度に保存されたメンバー、すなわち、線維芽細胞増殖因子受容体1(FGFR1)、線維芽細胞増殖因子受容体2(FGFR2)、線維芽細胞増殖因子受容体3(FGFR3)、線維芽細胞増殖因子受容体4(FGFR4)、及び線維芽細胞増殖因子受容体様1(FGFRL1)を含む。FGFRファミリーの完全長の代表的なタンパク質メンバーは、2つ又は3つの免疫グロブリン様ドメイン、1つの疎水性膜貫通セグメント、及び細胞質チロシンキナーゼドメインで構成される細胞外領域のみからなる。タンパク質の細胞外部分は線維芽細胞増殖因子と相互作用し、下流シグナルのカスケードが動き始める。
【0003】
FGFR1はfms関連チロシンキナーゼ-2及びCD331としても知られており、FGFR1遺伝子はヒトの8番染色体上のp11.23の位置(すなわち8p11.23)に位置する。この遺伝子は24個のエクソンを含み、エクソン8A又はエクソン8Bにおいて交互にスプライシングされる前駆体mRNAをコードし、それによってFGFR1の2つの異なるアイソフォーム、FGFR1-IIIb(FGFR1bとも呼ばれる)とFGFR1-IIIc(FGFR1cとも呼ばれる)をそれぞれコードする2つのmRNAを生成する。FGFR1-IIIcはFGFR1遺伝子の機能の大部分を担っているように見えるが、FGFR1-IIIbはマイナーでやや冗長な機能的役割しか持たないようである。さらに、少なくとも9つのFGFR1スプライスバリアントの発現についても説明される(遺伝子:FGFR1(ENSG00000077782)-ホモ・サピエンス-Ensemblゲノムブラウザ103)。特に、胚発生の間に、幾つかの細胞が、FGFRの細胞外部分のみを発現する可能性が高い。興味深いことに、この部分の分泌はFGFトラップとして機能し(FGFはFGFR1の活性化リガンドである)、FGFRシグナル伝達をFGF勾配によって調節する。
【0004】
以前の研究は、FGFR1の発現増強と、乳癌、膀胱癌及び肺癌等の様々な癌との関連を明らかにした。また、FGFR1遺伝子の発現における体細胞変異及びエピジェネティックな変化は、膠芽腫、黒色腫、乳癌、血液癌、及び肺癌を含む様々な癌と関連していることがわかっている。FGFR1遺伝子は、重複、他の遺伝子との融合、及び点突然変異の結果、ヒトの癌においてしばしば活性化される。したがってFGFR1は原癌遺伝子に分類される。また、幾つかの癌性疾患は原則としてFGFR1に依存していることが知られている。以上のことから、FGFR阻害剤は、遺伝子増幅又はFGFR1のメンバーの発現増加を伴う癌患者の治療において、実行可能な治療選択肢となり得る。現在、複数のFGFR阻害剤が臨床試験中である。
【0005】
特許文献1は、線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)阻害剤による治療に反応する癌患者を識別する方法、及び癌患者の治療方法を開示する。この方法は、FGFR変異体遺伝子パネルからの1つ以上のFGFR変異体の存在について患者からの生体試料を評価することを伴う。
【0006】
特許文献2は、FGFRの状態及びc-mycの状態の評価を含むFGFR阻害剤に対する哺乳動物の腫瘍細胞又は癌細胞の応答性を予測する方法を開示し、FGFR及びc-mycの状態は、該阻害剤に対する応答性の指標である。
【0007】
特許文献3は、癌を有することが疑われる被験体から試料を入手し、その試料中に線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)の融合が存在するかどうかを判定することによって癌を特徴づける方法であって、FGFR融合がFGFR遺伝子座を含み、FGFR融合の存在又は非存在に基づいて癌を特徴づける方法を開示する。
【0008】
肺癌は、2種類の多様な癌、すなわち非小細胞肺癌(NSCLC)と小細胞肺癌(SCLC)に分類される。NSCLCという用語はSCLC以外のあらゆる種類の上皮性肺癌を含み、肺癌全体の約85%を占める。残念ながら、NSCLCのほとんどの症例はSCLCと比較して化学療法に比較的非感受性である。NSCLCの最も一般的なタイプは、扁平上皮肺癌(SQLC)、大細胞癌、及び腺癌である。
【0009】
扁平上皮肺癌(SQLC)は肺癌のサブタイプとしては2番目に多く、癌の中でも最も予後が悪い。残念ながら、扁平上皮肺癌では、肺腺癌で起こるような効果的な薬物治療の機会を提供する遺伝的に活性化されたキナーゼ標的(EGFR変異及びALK再編成等)は今のところ同定されていない。FGFR1の再発増幅(8p11.23に位置する)の発見は、そのような増幅を持つ患者がFGFR阻害の恩恵を受けるかもしれないという期待を高めた。臨床試験では、FGFR1増幅腫瘍を有する患者のうち、単一薬剤のFGFR阻害に対して永続性のある応答を示したのは少数派(およそ10%)であった。NSCLC、特にSQLC等の新規癌治療方法の継続的な必要性から、線維芽細胞増殖因子受容体阻害療法のレスポンダーと非レスポンダーを区別する信頼性の高い方法が急務となっている。したがって、本発明の根本にある技術的課題は、線維芽細胞増殖因子受容体の阻害剤による抗癌治療に対する被験体及び/又は細胞の応答性を評価する手段及び方法を提供することである。
【0010】
上記技術的課題は、請求項に特徴づけられる実施形態の提供によって解決される。
【0011】
本発明は、驚くべきことに、本明細書において以下及び下記の(appended)実施例に示されているように、8p腕内で切断-融合-架橋様(BFB様)機構が起こり得ることが判明したため、上記特定された技術的課題を解決する。興味深いことに、BFB様機構は、8p腕内において幾つかのhead-to-head及びtail-to-tailの断裂を誘導する。FGFR1転写開始部位に近いtail-to-tail断裂は、局所FGFR1増幅を誘導し、FGFR1転写の調節を解除し、FGFR阻害剤の感受性と関連している。さらに、FGFR1のエクソン1~エクソン9内のtail-to-tail断裂は、カノニカルFGFR1 ATG開始コドンの欠失を誘導し、癌細胞は下流のフレーム内ATG開始コドンを使用する。これは、しばしばFGFR1の細胞外部分に遅れた短縮型FGFR1バージョンの転写につながり、FGFR1シグナル伝達に対する阻害機能を有する。したがって、FGFR1及びFGFR1に近いこれらのtail-to-tail染色体内断裂は、FGFR阻害剤療法のための患者の層別化に使用することができるNSCLC、特にSQLC等の癌におけるFGFR阻害剤療法の予測治療マーカーとして機能する可能性がある。FGFR1遺伝子の遺伝子改変の存在又は非存在の分析は、遺伝子改変がFGFR1遺伝子のORF内又は近傍内に位置する断裂によって引き起こされるコピー数変動であり、FGFR1阻害剤療法による癌/腫瘍治療に対する腫瘍/癌細胞又は個体の応答性の信頼できる予測を提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許出願公開第20160090633号
【特許文献2】欧州特許出願公開第2695950号
【特許文献3】欧州特許出願公開第3102705号
【発明の概要】
【0013】
一般に、また、簡潔な説明によって、本発明の主要な態様を以下のように説明することができる。
【0014】
第1の態様においては、本発明は、癌に罹患している被験体を、線維芽細胞増殖因子受容体1(FGFR1)阻害剤療法に対するレスポンダー又は非レスポンダーとして識別する方法に関する。
【0015】
第2の態様においては、本発明は、患者における癌の治療に使用されるFGFR1の阻害剤に関する。
【0016】
第3の態様においては、本発明は、癌に罹患している被験体を、受容体結合剤による治療法に対するレスポンダー又は非レスポンダーとして識別する方法に関する。
【0017】
第4の態様においては、本発明は、障害に関連する遺伝子バイオマーカーを識別する方法に関する。
【0018】
第5の態様においては、本発明は、被験体における癌の診断、予後、層別化及び/又は治療法のモニタリングの方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の要素について説明する。これらの要素は、具体的な実施形態を伴って列挙されているが、どのような方法でも、またいくつでも組み合わされて、追加の実施形態を生み出し得ることを理解されたい。種々の記載例及び好ましい実施形態は、本発明を明示的に記載した実施形態のみに限定するものと解するべきではない。この記載は、2つ以上の明示的に記載された実施形態を組み合わせる、又は1つ以上の明示的に記載された実施形態を任意の数の開示された及び/又は好ましい要素と組み合わせる実施形態を支持し、包含するものと解すべきである。さらに、本出願における記載された全てのあらゆる要素の順列及び組み合わせは、文脈が別段の指示をしない限り、本出願の記載によって開示されたものと見なされるべきである。
【0020】
第1の態様においては、本発明は、線維芽細胞増殖因子受容体1(FGFR1)阻害剤療法に対するレスポンダー又は非レスポンダーとして癌に罹患している被験体を識別する方法であって、方法が、
a)癌に関連する遺伝物質を含む生体試料を被験体から提供する工程と、
b)遺伝物質中において、FGFR1遺伝子の遺伝子改変の存在又は非存在を判定する工程と、
なお、遺伝子改変は、FGFR1遺伝子のORF内又は近傍内に断裂が存在する、切断-融合-架橋様(BFB様)機構等の染色体断裂によって引き起こされるコピー数変動である;
を含み、
被験体の生体試料中のFGFR1遺伝子における遺伝子改変の存在が、被験体がFGFR1阻害剤療法に対するレスポンダーであることを示す、方法に関する。
【0021】
本明細書で使用される場合、「被験体」又は「患者」という用語は、特定の治療の受け手となる任意の動物(例えば哺乳動物)を指し、限定されるものではないが、ヒト、ヒト以外の霊長類、げっ歯類等を含む。典型的には、本明細書において「被験体」及び「患者」という用語は、ヒトの被験体を指す際に同じ意味で使用される。特に好ましい実施形態においては、被験体は、マウス、ラット、モルモット、ウサギ、ネコ、イヌ、サル、又はヒト等の哺乳動物であり、好ましくはヒト(ヒト患者等)、より好ましくは癌に罹患するリスクのあるヒト患者であり、最も好ましくは肺移植、肺同種移植、造血幹細胞の移植、化学療法、及び/又は放射線療法を受けたことがあるヒト患者であり、任意に、該ヒト患者は、癌に罹患するリスクがある。
【0022】
本明細書で使用される場合、「癌に罹患するリスクがある被験体」又は「癌に罹患するリスクがあるヒト患者」という用語は、癌を示す1つ以上の症状を呈する被験体を指す。
【0023】
本発明による方法は、癌に罹患している被験体を、線維芽細胞増殖因子受容体1(FGFR1)阻害剤療法に対するレスポンダー又は非レスポンダーとして識別するのに有用であり、ここで、癌は、任意の種類の癌である。特に好ましい実施形態においては、癌は、固形癌、好ましくは乳癌、胃癌、膀胱癌、又は肺癌等のFGFR1の発現を特徴とする癌、最も好ましくは扁平上皮肺癌(SQLC)等の非小細胞肺癌(NSCLC)である。
【0024】
好ましい実施形態においては、癌に罹患している被験体を線維芽細胞増殖因子受容体1(FGFR1)阻害剤療法に対するレスポンダー又は非レスポンダーとして識別する方法は、in vitro又はex vivoの方法である。本明細書に記載される方法は非侵襲的であるため、「生体試料の提供」という用語は、被験体に対して行われる外科的処置を含むと解釈されないことが好ましい。好ましい実施形態においては、被験体は、ヒト、好ましくはSQLC等のNSCLCと診断されたヒト患者である。
【0025】
本発明と関連して、「診断」又は「診断(の)」という用語は、病態の存在又は性質を特定することを意味する。診断方法は、感度及び特異度が異なる。診断アッセイの「感度」は、病気の人の陽性率(「真陽性」の割合)である。アッセイによって検出されなかった病気の人は「偽陰性」である。病気ではなく、アッセイで陰性と判定された被験体は、「真陰性」と呼ばれる。診断アッセイの「特異度」は、1から偽陽性率を引いたもので、「偽陽性」率は病気のない人が陽性になる割合として定義される。特定の診断方法では、病状の確定診断ができない場合があるが、その方法が、診断に役立つ肯定的な兆候を提供すれば十分である。
【0026】
本明細書で使用される場合、「生体試料」という用語は、取得され、FGFR1遺伝子の遺伝子改変の存在又は非存在についてアッセイされ得る試料を指し、遺伝子改変とは、断裂が本発明により開示されたFGFR1遺伝子のORF内又は近傍内に位置する、切断-融合-架橋様(BFB様)機構等の染色体断裂によって引き起こされるコピー数変動である。生体試料は、生体液(例えば、血液、脳脊髄液、尿、血漿、血清)、組織生検等を含み得る。生体試料が、被験体の腫瘍細胞を含む、好ましくは生体試料が、腫瘍生検である、又は切除された原発性腫瘍の試料であることが好ましい。
【0027】
FGFR1依存性の根本的な機構を理解するため、本発明者らは、FGFR阻害時に応答が不明なFGFR1増幅原発腫瘍の全ゲノムシーケンシング及びトランスクリプトームシーケンシングを行った。さらに、本発明者らは、FGFR阻害時の応答が一部の試料で知られていたFGFR1増幅試料のディープシーケンシングを行った(実施例セクションを参照されたい)。両方のコホートにおいて、本発明者らは、FGFR1の転写開始部位に近い染色体内tail-to-tail断裂がFGFR1の局所増幅を担うことを特定した。本発明の過程で、これらの特異的な断裂は、驚いたことに、扁平上皮肺癌における切断-融合-架橋様(BFB様)機構によって好んで引き起こされることがわかった。増幅機構は8p腕内でhead-to-head、続いてtail-to-tailの染色体内断裂を誘導する。
【0028】
この機構に基づいて、本発明者らは、観察された8p11-p12コピー数のプロファイルを再構築することができ、8p腕内の全てのゲノム断裂のみを考慮に入れた。さらに、本発明者らは、FGFR1の転写開始側に近いtail-to-tail断裂が多数の8p11-p12増幅試料で発生し、FGFR1の局所増幅につながることを示すことができた。これは主にFGFR阻害剤療法に応答する細胞株、PDXモデル、及び患者試料で観察された。さらに、本発明者らはまた、FGFR1を増幅した一部の試料では、FGFR1のオープンリーディングフレーム(ORF)内で断裂が起こり、外部ドメインを欠くFGFR1(ΔEC-FGFR1)の体細胞改変バリアントの発現を引き起こすことを示すことができた。具体的には、本発明者らは、IHC染色、トランスクリプトームシーケンシング、及びゲノム機能解析によって示されるように、FGFR1の短いバリアント、特に非カノニカルインフレームATG開始コドンを使用して発癌性FGFR1を欠損した改変FGFR1転写産物の発現を観察した。
【0029】
改変FGFR1転写産物の過剰発現はBaf3細胞を形質転換させ、FGFR1依存的な表現型をもたらす。本発明者らの結果は、FGFR1の外部ドメインの短縮は、8p11.23増幅扁平上皮肺癌においてtail-to-tail断裂によって引き起こされる頻繁な事象であることを実証する。FGFR阻害剤感受性及びFGFR1の染色体内tail-to-tail断裂と関連するこれらの断裂は、FGFR阻害剤療法のための患者の層別化に使用することができる扁平上皮肺癌におけるFGFR阻害剤療法の予測治療マーカーとして機能する可能性がある。
【0030】
したがって、本発明の方法及び手段を、患者をFGFR阻害剤療法に対するレスポンダーと非レスポンダーに層別化するために使用することができる。本発明の目的における「層別化する」又は「層別化」という用語は、患者の入院、1つ以上の薬物の使用、効果及び/又は投与量、治療手段、又は疾患の経過及び治療若しくは病因の経過のモニタリング、又は例えば新規若しくは既存のサブタイプへの疾患の分類、又は疾患とその患者の鑑別といった、本発明による方法が患者の治療及び治療法に関する可能な決定を下せる利点を指す。
【0031】
本発明の方法及び手段は、癌の治療法、特に癌患者におけるFGFR阻害剤療法をモニターするためにも使用できる。「治療法のモニタリング」という用語は、本発明の目的において、治療法を受ける被験体における疾患の進行を観察することを意味する。言い換えれば、治療中の被験体は、定期的に適用される治療法の効果についてモニターされ、医師は、処方された治療が有効かどうかを治療中の早い段階で推定することができ、したがって、それに応じて治療レジメンを調整することができる。
【0032】
本明細書で使用される場合、「阻害剤に対する応答性」又は「阻害剤に対して応答性の個体」という用語は、本発明と関連して、哺乳動物腫瘍細胞(又は哺乳動物腫瘍)又は哺乳動物癌細胞(又は哺乳動物癌)又は癌に罹患している個体、癌に罹患しているか若しくは罹患しやすいと疑われる個体が、FGFR1の阻害剤(又はFGFR1の阻害剤による治療)に対する応答を示すことを意味する。当業者は、FGFR1の阻害剤に応答すると予測される細胞(複数の場合もある)又は個体(複数の場合もある)が、確かにFGFR1の阻害剤(又はFGFR1の阻害剤による治療)に対する応答を示すことを容易に確認する立場にある。例えば、阻害剤に対する応答は、腫瘍の増殖の減少及び/又は停止、及び/又は腫瘍の大きさの縮小、転移の形成の防止、又は転移の数若しくは大きさの縮小等、癌の苦しみの減少に反映される場合がある。
【0033】
本明細書で使用される場合、「応答」という用語は、本発明で特定された個体/患者又は腫瘍細胞の「完全応答」又は「部分応答」の形で反映される場合がある。かかる「完全応答」又は「部分応答」は、主に、FGFR1の細胞外ドメインの少なくとも一部の短縮をもたらすFGFR1遺伝子座の遺伝子修飾、及び/又はFGFR1遺伝子の標的遺伝子コピー数増加、又はその修飾バリアント、及び/又はFGFR1遺伝子の連続回文配列、若しくは部分的なFGFR1遺伝子を持つ腫瘍細胞又は個体で見ることができる。したがって、「完全応答」又は「部分応答」、特に「完全応答」が好ましい。
【0034】
この文脈において、「応答」という用語は「腫瘍の縮小」を指すことがある。「腫瘍の縮小」とは、FGFR1阻害剤による治療開始時(すなわち、FGFR1阻害剤による治療前)の初期の体積と比較して、FGFR1阻害剤による治療時の腫瘍の体積の減少を指し得る。例えば、腫瘍体積が初期体積の約65%未満であれば、治療によって腫瘍が縮小したことになる。例えば、FGFR1阻害剤による治療開始時(すなわち治療前)の初期腫瘍体積(100%)と比較して65%未満(約1%~64%のように)の腫瘍体積は、「部分応答」(又は部分寛解;例えば、FGFR1阻害剤による治療に応答した、腫瘍サイズの減少、又は体内の癌の程度の減少)を表すことができる。「部分応答」は、治療開始時(すなわち治療前)の初期腫瘍体積と比較した、一連の治療中の(一時的な)腫瘍の縮小/腫瘍体積の減少を包含し得る。
【0035】
好ましくは、癌に罹患しており、本発明に従って線維芽細胞増殖因子受容体1(FGFR1)阻害剤療法に対するレスポンダー又は非レスポンダーとして識別された患者群が「完全応答」を示す。本明細書で使用される場合、「完全応答」という用語は、FGFR1阻害剤(又はFGFR1阻害剤による治療)に応答して、癌の兆候が全て消失することを指し得る。本明細書では、「完全応答」という用語と「完全寛解」という用語は同じ意味で使用することができる。例えば、「完全応答」は、腫瘍が消失するまで腫瘍が縮小し続けることに反映される場合がある。例えば、FGFR1阻害剤による治療開始時(すなわち、治療前)の腫瘍体積が初期腫瘍体積(100%)と比較して0%であれば「完全応答」を表すことができる。したがって、本明細書で使用される場合、「阻害剤に対する応答性」又は「阻害剤に対して応答性の個体」とは、本発明に従って応答することが予測される腫瘍(細胞)、癌(細胞)又は個体の「完全応答」/「完全応答性」を示し得る。
【0036】
本発明の線維芽細胞増殖因子受容体1(FGFR1)阻害剤療法に対して、癌に罹患している被験体をレスポンダー又は非レスポンダーとして識別するためのあらゆる方法及び手段は、サンプリングされた標本の従来の組織学的分析によって補完することができ、これにより、癌のより早期かつ特異的な診断が可能となり、より良い結果をもたらす可能性のある早期治療が可能となる。
【0037】
本発明と関連して、「FGFR1阻害剤」又は「FGFR1の阻害剤」若しくは「FGFR1の拮抗剤」という用語又はこれらに類する表現は、FGFR1の発現、機能及び/又は安定性の調節因子としての活性を有する任意の化合物又はFGFR1のバリアントを包含する。幾つかの実施形態においては、FGFR1阻害剤は、低分子、ポリペプチド、ペプチド、糖タンパク質、ペプチド模倣タンパク質、抗原結合タンパク質(ABP)(例えば、抗体、抗体様分子若しくはその他の抗原結合誘導体、又はその抗原結合フラグメント)、DNA又はRNA等の核酸、例えばアンチセンス又は阻害性DNA又はRNA、リボザイム、RNA又はDNAアプタマー、RNAi、siRNA、shRNA等から選択することができ、ペプチド核酸(PNA)等のそのバリアント又は誘導体、CRISPR/Cas9コンストラクト及び/又はガイド核酸(gRNA又はgDNA)及び/又はtracrRNA等の標的遺伝子編集のための遺伝子コンストラクトを含む。
【0038】
好ましい実施形態においては、FGFR1阻害剤は、NVP-BGJ398、AZD4547、TKI258、JNJ42756493、ペミガチニブ、ルシタニブ、ロガラチニブ、Debio 1347、FIIN2、LY2874455、PRN1371及びポナチニブからなる群より選択される阻害剤等の選択的又は非選択的FGFR1阻害剤、例えば、FGFR1、FGFR2、FGFR3、及び/又はFGFR4の阻害剤である。
【0039】
別の好ましい実施形態は、癌に罹患している被験体をFGFR1阻害剤療法のレスポンダー又は非レスポンダーとして識別する方法に関連し、遺伝子改変は、
a)FGFR1の細胞外ドメインの少なくとも一部の短縮をもたらす、FGFR1遺伝子座の遺伝子修飾、及び/又は、
b)FGFR1遺伝子の遺伝子コピー数増加、又はその修飾バリアント、及び/又は、
c)FGFR1遺伝子の連続回文配列、又は部分的なFGFR1遺伝子、及び/又は、
d)非カノニカルATG開始コドンの翻訳開始をもたらす、FGFR1遺伝子座の遺伝子修飾である。
【0040】
FGFR1のバリアントは、幾つかの実施形態においては、配列番号1(ヒトFGFR1アミノ酸配列)と少なくとも60%、70%、80%、90%、好ましくは少なくとも80%、例えば少なくとも90%、最も好ましくは、配列番号1と少なくとも95%(少なくとも98%等)の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質である。本発明の好ましい一実施形態においては、FGFR1のバリアントは、配列番号1に示すアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0041】
本明細書で使用される場合、「同一性」又はパーセント「同一性」という用語は、2つ以上の核酸又はタンパク質/ポリペプチド配列と関連して本明細書の任意の箇所で使用される場合、同一の2つ以上の配列若しくは部分配列、又は配列比較アルゴリズムを使用して、若しくは手動アライメント及び目視検査(NCBIウェブサイト等を参照)によって測定した、同じアミノ酸残基若しくはヌクレオチドの指定された割合(すなわち、比較ウィンドウ又は指定された領域に対して最大限の対応が得られるように比較及び整列した場合、指定された領域に対して、好ましくは、その完全長配列に対して、約60%又は少なくとも約60%の同一性、好ましくは65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、若しくは94%、又は少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、若しくは94%の同一性、より好ましくは約95%、96%、97%、98%、99%、又は少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%、又はそれ以上の同一性)を持つ(又は少なくとも持っている)2つ以上の配列若しくは部分配列を指す。
【0042】
特に好ましい実施形態においては、遺伝子改変は、FGFR1の外部ドメイン欠失バリアントの発現をもたらすFGFR1遺伝子の改変であり、好ましくはFGFR1のバリアントが、FGFR1のエクソン1~エクソン9における非カノニカルATGから翻訳される。
【0043】
本発明の更なる態様は、患者における癌の治療に使用されるFGFR1の阻害剤であって、癌が、FGFR1遺伝子の、又はFGFR1遺伝子のフラグメントの連続回文コピー数変動を含むFGFR1遺伝子における遺伝子改変を含むゲノムを特徴とする、患者における癌の治療に使用されるFGFR1の阻害剤に関する。FGFR1遺伝子又はFGFR1遺伝子のフラグメントの連続回文コピー数変動を含むFGFR1遺伝子中のかかる遺伝子改変は、調節されていない転写の原因となり得る。
【0044】
好ましい実施形態は、患者における癌の治療に使用するFGFR1の阻害剤に関し、連続回文コピー数変動は外向性回文である。
【0045】
更なる実施形態は、FGFR1の阻害剤が、好ましくはFGFR、好ましくはFGFR1に特異的に結合して阻害する、低分子阻害剤、抗体等の抗原結合タンパク質、又は任意の抗体誘導体である、患者における癌の治療に用いるFGFR1の阻害剤に関する。
【0046】
特に好ましい実施形態においては、FGFR1の阻害剤は、FGFR1、FGFR2、FGFR3、及び/又はFGFR4、好ましくはFGFR1の選択的又は非選択的阻害剤であり、例えば、NVP-BGJ398、AZD4547、TKI258、JNJ42756493、ペミガチニブ、ルシタニブ、ロガラチニブ、デビオ1347、FIIN2、LY2874455、PRN1371及びポナチニブからなる群より選択される阻害剤である。
【0047】
本発明による患者における癌の治療に用いるFGFR1の阻害剤は、あらゆる種類の癌の治療に有用である。好ましい実施形態においては、FGFR1の阻害剤は、癌が固形癌、好ましくは乳癌、胃癌、膀胱癌、又は肺癌等のFGFR1の発現を特徴とする癌であり、最も好ましくは扁平上皮肺癌(SQLC)等の非小細胞肺癌(NSCLC)である、患者における癌の治療に使用するためのものである。
【0048】
更に別の好ましい実施形態は、被験体における増殖性疾患の治療及び/又は予防に用いる化合物に関連し、増殖性疾患とは、少なくとも1つの先行療法による治療に難治性又は抵抗性の癌である。
【0049】
特に好ましい実施形態においては、遺伝子改変は、FGFR1遺伝子の、又はFGFR1遺伝子のフラグメントの局所増幅である。
【0050】
更なる実施形態は、FGFR1遺伝子のフラグメントが、発現可能な配列であり、かつFGFR1タンパク質バリアント、好ましくは外部ドメイン欠失FGFR1タンパク質バリアントをもたらす、患者における癌の治療に用いるFGFR1の阻害剤に関する。
【0051】
更に別の実施形態は、治療が、患者をFGFR1阻害剤療法に対するレスポンダーとして識別する予備工程を含み、予備工程が、本発明の第1の態様による方法を含む、患者における癌の治療に用いるFGFR1阻害剤に関する。
【0052】
他の態様のいずれか及び特に好ましい実施形態のいずれかと組み合わせることができる別の態様において、本発明は、薬学的に許容可能な担体及び/又は賦形剤と共に、前述の癌の治療及び/又は予防に用いる医薬組成物を提供する。
【0053】
本発明の医薬組成物は、その意図した投与経路に適合するように配合される。投与経路の例としては、非経口投与、例えば、髄腔内投与、動脈内投与、静脈内投与、皮内投与、皮下投与、経口投与、経皮投与(局所投与)、脳室内投与、実質内投与、腫瘍内投与、及び経粘膜投与等が挙げられる。一般に、本発明の医薬組成物は、FGFR1を阻害するための1つ以上の化合物、及び/又は少なくとも1つの薬学的に許容可能な担体及び/又は賦形剤を含む。本明細書に記載の医薬組成物は、特に、増殖性疾患に対する本明細書に記載の治療方法における使用に有用である。
【0054】
経口、皮内、又は皮下の適用に使用される溶液又は懸濁液は、以下の成分を含むことができる:注射用水等の滅菌希釈液、生理食塩水、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン;プロピレングリコール又はその他の合成溶媒;ベンジルアルコール又はメチルパラベン等の抗菌剤;アスコルビン酸又は硫酸水素ナトリウム等の抗酸化剤;エチレンジアミン四酢酸等のキレート剤;酢酸塩、クエン酸塩又はリン酸等の緩衝剤、及び塩化ナトリウム又はデキストロース等の浸透圧調整剤。
【0055】
さらに、本発明の更なる態様は、増殖性疾患の治療及び/又は予防のための医薬品の製造のためのFGFR1阻害剤の使用に関する。
【0056】
本明細書に開示される化合物及び医薬組成物は、治療有効量のFGFR1の阻害剤を被験体に投与することを含む、癌に罹患している被験体を予防又は治療する方法において特に有用である。本発明の他のいずれか1つの態様及び/又は実施形態と組み合わせることができる本発明の更に別の態様においては、被験体における癌疾患の治療及び/又は予防の方法であって、治療有効量のFGFR1阻害剤を被験体に投与する1つ以上の工程を含む、方法を提供する。
【0057】
治療又は予防は、幾つかの実施形態においては、治療有効量のFGFR1阻害剤の投与を含み、該阻害剤は、好ましくは、静脈内投与、膣内投与、経口投与、鼻腔内投与、髄腔内投与、動脈内投与、皮内投与、皮下投与、経皮投与(局所投与)、脳室内投与、実質内投与、腫瘍内投与、経粘膜投与、直腸投与、気管支投与、及び/又は非経口投与、又は臨床的/医学的に認められた任意の方法で、上記被験体に投与される。
【0058】
さらに、上記治療有効量のFGFR1阻害剤は、錠剤、丸剤、カプセル、トローチ、ドラジェ、粉末、エアロゾルスプレー、鼻スプレー、坐剤、ゲル、軟膏、膏薬(salve)、クリーム、及び/又は溶液の形で提供されることが好ましい。
【0059】
本明細書で使用される場合、「治療有効量」という用語は、本明細書に開示されている発明に従って、例えば研究者又は臨床医が求めている組織、系、動物又はヒト被験体の生物学的又は医学的な応答を引き出す化合物又は医薬組成物の量を意味する。さらに、「治療有効量」という用語は、かかる量を受けていない対応する被験体と比較して、治療の改良、疾患、障害若しくは副作用の治療、治癒、予防若しくは改善、又は疾患若しくは障害の進行率の低下をもたらす任意の量を意味する。
【0060】
本発明による疾病の予防又は治療のため、FGFR1阻害剤(又はこれを含む医薬組成物)の適切な投与量は、治療される癌の種類、疾患の重症度及び経過、FGFR1阻害剤及び/又は医薬組成物が予防又は治療の目的で投与されるか否か、以前の治療法、患者の病歴、年齢、サイズ/体重、及びFGFR1阻害剤に対する応答、及び主治医の判断に依存する。FGFR1の阻害剤及び/又は医薬組成物は、患者に1回又は一連の治療にわたって適切に投与される。かかるFGFR1の阻害剤及び/又は医薬組成物を一連の治療にわたって投与する場合、所与の治療経過における投与回数の合計は、合計で約2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回、又は約10回超の治療になることがある。例えば、1週間、1ヶ月、更には数ヶ月間にわたって、毎日1回(又は1日に2回、3回、若しくは4回)の治療が行われてもよい。或る特定の実施形態においては、治療の経過が無期限に継続することもある。
【0061】
本発明の別の態様は、癌に罹患した被験体を受容体結合剤による治療に対するレスポンダー又は非レスポンダーとして識別する方法に関し、この方法は、
a)癌に関連する遺伝物質を含む被験体からの生体試料を提供する工程と、
b)癌に関連する細胞において発現される受容体をコードする遺伝子の遺伝子改変の存在又は非存在を遺伝物質中で判定する工程と、
なお、遺伝子改変は、
i.受容体をコードする遺伝子のコピー数増加、及び/又は、
ii.受容体の短縮型細胞外ドメインを含む、又は細胞外ドメインを含まないバリアント受容体タンパク質をコードするバリアント受容体遺伝子である;
を含み、
被験体の生体試料中の遺伝子改変の存在は、被験体が受容体結合剤による治療に対するレスポンダーであることを示す。
【0062】
好ましい実施形態は、癌に罹患している被験体を、受容体結合剤による治療に対するレスポンダー又は非レスポンダーとして識別する方法に関し、受容体結合剤は、該遺伝子改変の影響を受ける受容体に特異的に結合し、好ましくは、受容体結合剤は受容体の阻害剤である。
【0063】
別の好ましい実施形態においては、遺伝子改変は、バリアント受容体タンパク質をコードするバリアント受容体遺伝子のコピー数増加である。
【0064】
本発明の更なる態様は、障害に関連する遺伝子バイオマーカーを特定する方法に関し、この方法は、
a)障害に罹患していることがわかっている患者群の多数の遺伝子試料、及び障害に罹患していないことがわかっている対照群の多数の遺伝子試料を提供する工程と、
b)1つ以上の候補遺伝子改変について、対照群の多数の遺伝子試料と比較して、患者群の多数の遺伝子試料における有意に高い発生確率を決定する工程と、
なお、候補遺伝子改変は、切断-融合-架橋(BFB)機構によるtail-to-tail断裂又は正常染色体断裂の結果であり、任意に、遺伝子の局所増幅が誘導され、好ましくは、ゲノム配列の連続回文コピー数変化である;
を含み、
候補遺伝子改変が、対照群の多数の遺伝子試料と比較して、患者群の多数の遺伝子試料内で有意に起こる場合、候補遺伝子改変は障害に関連するバイオマーカーである。
【0065】
本発明に関連して、「バイオマーカー」又は「マーカー」は、或る特定の状態を有する被験体から採取した試料中に差次的に存在する、該条件を有しない被験体から採取した比較可能な試料と比較した、遺伝子改変を指す。
【0066】
一実施形態においては、遺伝子試料は、ゲノムDNAを含む生体試料、好ましくは液体試料、例えば血液、血漿、血清、唾液、尿に由来するもの、又は障害によって影響を受ける腫瘍組織の試料等の組織試料である。
【0067】
更なる実施形態は、障害に関連する遺伝子バイオマーカーを特定する方法に関し、障害は、癌等の増殖性障害、好ましくは液性癌又は固形癌である。別の好ましい実施形態においては、癌は、乳癌、胃癌、膀胱癌又は肺癌であり、最も好ましくは、扁平上皮肺癌(SQLC)等の非小細胞肺癌(NSCLC)である。
【0068】
特に好ましい実施形態においては、遺伝子改変はコピー数増加である。
【0069】
別の実施形態においては、ゲノム配列はタンパク質コード遺伝子の完全又は部分的な配列を含む。
【0070】
更に別の実施形態は、障害に関連する遺伝子バイオマーカーを特定する方法に関し、タンパク質コード遺伝子の部分配列は、例えば、FGFR1のエクソン1~エクソン9中の非カノニカルATGを使用して、好ましくはカノニカルATG開始コドンを使用せずに、短縮型オープンリーディングフレーム又は回文遺伝子座からのタンパク質の発現を依然として可能にする。
【0071】
更なる実施形態においては、切断-融合-架橋様(BFB様)機構の断裂等の染色体断裂は、タンパク質コード遺伝子のオープンリーディングフレーム(ORF)内に位置し、好ましくは転写開始部位に近接しており、近接は、転写開始部位から1mb以内、好ましくは800kb以内、より好ましくは400kb以内である。
【0072】
更に別の実施形態は、障害に関連する遺伝子バイオマーカーを特定する方法に関し、タンパク質コード遺伝子の部分配列が発現可能な配列であり、FGFR1タンパク質バリアント、好ましくは外部ドメイン欠失FGFR1タンパク質バリアントをもたらす。
【0073】
さらに、他の態様のいずれか又は特に好ましい実施形態のいずれかと組み合わせることができる本発明の更に別の態様は、FGFR1遺伝子の遺伝子改変の存在又は非存在を判定する手段を含むキットに関する。好ましくは、本発明のキットは、本発明による方法を実施するためのキットであって、FGFR1遺伝子の遺伝子改変の存在又は非存在を判定する手段を含み、遺伝子改変は、断裂がFGFR1遺伝子のORF内又は近傍内に位置する、切断-融合-架橋様(BFB様)機構等の染色体断裂によって引き起こされるコピー数変動である。
【0074】
任意に、このキットは、ラベル若しくは別の添付文書、及び/又はその成分を保持する容器の形で、適切な操作パラメータの指示を更に含むことができる。例えば、このキットは、プローブに血漿の試料が接触した後のプローブの洗浄方法を消費者に知らせる標準的な説明書を有してもよい。
【0075】
他の態様のいずれか及び特に好ましい実施形態のいずれかと組み合わせることができる本発明の更なる態様においては、本発明は、以下を含むキットを提供する:
i)本発明による使用のための治療有効量の化合物、又は本発明による使用のための医薬組成物、
ii)使用のための該治療有効量の該化合物、又は使用のための該医薬組成物を適用するための説明書、並びに、
iii)任意に、該化合物又は該医薬組成物を保持する容器、及び説明書。
【0076】
任意に、このキットは、ラベル又は別の添付文書の形で、適切な操作パラメータの説明書を更に含むことができる。例えば、このキットは、プローブに血漿の試料が接触した後のプローブの洗浄方法を消費者に知らせる標準的な説明書を有してもよい。いずれの実施形態においても、キットは、試験試料を対照情報スタンダードと比較できるように、任意に、スタンダード又は対照情報を更に含んでもよい。
【0077】
さらに、本発明の更なる態様は、被験体における癌の診断、予後、層別化及び/又は治療法のモニタリングの方法であって、
a)被験体からの生体試料を提供する工程と、
b)生体試料中において、好ましくはFGFR1の細胞外ドメインが欠失している、FGFR1遺伝子のORF内又は近傍内に断裂が存在する切断-融合-架橋様(BFB様)機構等の染色体断裂、FGFR1遺伝子のmRNA転写産物の改変、FGFR1タンパク質の改変、FGFR1遺伝子のmRNA転写産物のレベルの変化、及び/又はFGFR1タンパク質のレベルの変化の存在又は非存在を判定する工程と、
を含み、
健康な対照又は基準の値と比較して、工程(b)で判定された染色体断裂、FGFR1遺伝子のmRNA転写産物の改変、FGFR1タンパク質の改変、FGFR1遺伝子のmRNA転写産物のレベルの差、及び/又はFGFR1タンパク質のレベルの差の存在が、被験体における癌の存在を示す、方法に関する。
【0078】
上記の診断法の好ましい実施形態においては、染色体断裂は、tail-to-tailの切断-融合-架橋様(BFB様)機構であり、断裂は、FGFR1遺伝子のORF内又は近傍内に位置する。
【0079】
別の好ましい実施形態においては、染色体断裂が、
a.FGFR1の細胞外ドメインの少なくとも一部の短縮をもたらすFGFR1遺伝子座の遺伝子修飾、及び/又は、
b.FGFR1の、若しくはFGFR1遺伝子のフラグメントの局所増幅、及び/又は、
c.FGFR1遺伝子の連続回文配列、若しくは部分FGFR1遺伝子、及び/又は、
d.非カノニカルATG開始コドンの翻訳開始をもたらす、FGFR1遺伝子座の遺伝子修飾、
を誘導する。
【0080】
FGFR1遺伝子の遺伝子修飾の存在、及び/又はFGFR1遺伝子のmRNA転写産物の改変により、N末端短縮FGFR1ポリペプチドが翻訳されることが更に好ましい。したがって、この方法は、好ましくは被験体からの生体試料中のN末端短縮FGFR1を検出することを含む。より好ましくは、この方法は、少なくとも1つのIG様ドメインが欠落している短縮型FGFR1ポリペプチドの検出を含む。特に好ましい実施形態においては、被験体の癌の診断、予後、層別化及び/又は治療法のモニタリングの方法の工程b)の判定は、免疫組織化学(IHC)によって行われる。
【0081】
更に別の好ましい実施形態においては、短縮型FGFR1バリアントは、RNA技術「Archer」(Democratizing precision oncology (archerdx.com))又は(Archer FusionPlex Comprehensive Thyroid & Lung (CTL)|Diagnostica Longwood (dlongwood.com))により、被験体における癌の診断、予後、層別化及び/又は治療法のモニタリングの方法の工程b)において検出される。
【0082】
更に別の好ましい実施形態においては、遺伝子改変、FGFR1遺伝子のmRNA転写産物の改変、又はFGFR1タンパク質の改変は、配列番号2~配列番号37のいずれか1つによる配列を含む。
【0083】
別の好ましい実施形態は、被験体における癌の診断、予後、層別化及び/又は治療法のモニタリングの上記の方法に関し、遺伝子改変及び/又はFGFR1遺伝子のmRNA転写産物の改変は、配列番号2、配列番号3、配列番号10、配列番号11、配列番号15、配列番号16、配列番号20、配列番号21、配列番号25、配列番号28、配列番号31、配列番号34若しくは配列番号37のいずれか1つによる核酸配列を含み、及び/又は改変FGFR1タンパク質は、配列番号9、配列番号14、配列番号19、配列番号24、配列番号26、配列番号29、配列番号32若しくは配列番号35のいずれか1つによるアミノ酸配列を含む。
【0084】
被験体における癌の診断、予後、層別化及び/又は治療法のモニタリングの上記方法は、あらゆる種類の癌の診断、予後、層別化及び/又はモニタリングに有用である。好ましくは、癌は固形癌であり、より好ましくは乳癌、胃癌、膀胱癌又は肺癌等のFGFR1の発現を特徴とする癌であり、最も好ましくは扁平上皮肺癌(SQLC)等の非小細胞肺癌(NSCLC)である。
【0085】
本明細書で使用される場合、「(本)発明の」、「本発明による」、「本発明によれば(よる)」等の用語は、本明細書に記載される及び/又は特許請求の範囲に記載される本発明の全ての態様及び実施形態を指すことを意図する。
【0086】
本明細書で使用される場合、「~を含む(comprising)」という用語は、「~を含む(including)」及び「~のみからなる(consisting of)」の双方を包含するものと解釈され、双方の意味が具体的に意図されており、したがって、本発明に従って個別に開示された実施形態を意味する。本明細書で使用される場合、「及び/又は」は、他方の有無にかかわらず、指定された2つの特徴又は構成要素のそれぞれの具体的な開示として解釈されるものとする。例えば、「A及び/又はB」は、本明細書で個々に定められているのと同様に、(i)A、(ii)B、並びに(iii)A及びBのそれぞれの具体的な開示であると受け取られる。本発明の状況において、「約」及び「およそ」という用語は、当該特徴の技術的効果を引き続き確保するために、当業者が理解する精度の間隔を示す。この用語は、典型的には、±20%、±15%、±10%、及び例えば±5%の指定の数値からの偏差を示す。当業者によって理解されるように、所与の技術的効果に対する数値に関する具体的なかかる偏差は、技術的効果の性質に依存する。例えば、天然の又は生物学的な技術的効果は、一般的に、人為的又は工学的な技術的効果よりもかかる偏差が大きい場合がある。当業者によって理解されるように、所与の技術的効果に対する数値に関する具体的なかかる偏差は、技術的効果の性質に依存する。例えば、天然の又は生物学的な技術的効果は、一般的に、人為的又は工学的な技術的効果よりもかかる偏差が大きい場合がある。単数名詞を指すときに不定冠詞又は定冠詞、例えば「1つの(a)」、「1つの(an)」又は「その(the)」が使われる場合、別段の具体的な記述がない限り、これは、その名詞の複数形を含む。
【0087】
本発明の教示を具体的な課題又は環境に適用し、本発明のバリエーション又はそれに対する付加的な特徴(更なる態様及び実施形態等)を包めることは、本明細書に含まれる教示に照らして、当業者の技能の範囲内であると理解されるものとする。
【0088】
文脈により他に指示されない限り、上に提示される特徴の説明及び定義は、本発明の任意の特定の態様又は実施形態に限定されず、記載される全ての態様及び実施形態に同様に当てはまる。
【0089】
本明細書で引用される全ての参照文献、特許、及び出版物は、引用することでそれらの全体が本明細書の一部をなす。
【0090】
図面及び配列の簡単な説明
図面は以下を示す。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【
図1】FGFR阻害剤応答が不明な試料のコピー数分析を示す図である。a)染色体8p11-p12に8p11-p12増幅を有する25の原発性扁平上皮肺癌腫瘍についてプロットした平均コピー数。腫瘍/正常全ゲノムシーケンシングデータからコピー数を算出し、ROBOCOP(平均シーケンシング深度40倍)でプロットした。線番号2はFGFR阻害剤応答が不明な25の試料の平均コピー数を示す。線番号1はFGFR1(400kbの範囲)に近いtail-to-tail断裂を持つ9つの原発腫瘍試料の平均コピー数を示す。線番号3はFGFR1(>1mb)に近いtail-to-tail断裂のない16の原発腫瘍試料の平均コピー数を示す。遺伝子の場所は、右向きの三角形(プラス鎖にコードされる)又は左向きの三角形(マイナス鎖にコードされる)で注釈される。FGFR1の場所が強調され、FGFR1に近いtail-to-tail断裂の場所も強調される(左グラフ)。9試料の増幅ピークをズームする(右グラフ)。FGFR1及びNSD3の場所を、遺伝子内で検出されたhead-to-head(中灰色の矢印)、正常(薄い灰色の矢印)、及びtail-to-tail(黒い矢印)の断裂と共に示す。b)NSD3短(上、1AA~645AA)とNSD3長(下、1AA~1437AA)のドメイン構造。中灰色の矢印はhead-to-head、薄い灰色の矢印は正常の断裂を示す。N末端は右、C末端は左である。c)FGFR1アルファのドメイン構造(3つのIGドメイン)。検出されたtail-to-tail断裂を示す(黒い矢印)。TM=膜貫通ドメイン、AB=アシッドボックス(自己阻害機能)、N末端(右)からC末端(左、1AA~822AA)。d)8p11-p12増幅を形成する2つのランダムに発生する切断-融合-架橋機構の模式図。この2つの例は、連続した断裂の順序(矢印、並びにI、II、III及びIVで示される)のみが異なる。e)一度に同じゲル上で行われた、腫瘍DNA、一致する正常DNA(上)及び対応する対照(下、アクチンプライマー及びテンプレートなし)を使用する、検出されたhead-to-head断裂(回文)に対する1プライマーネステッドPCR。f)1つの腫瘍/正常全ゲノム配列決定試料のコピー数プロット(シーケンシング深さ60倍)。リード数から算出した推定コピー数プロット(上)、純度推定で補正したリード数から算出した積分コピー数プロット(中)、及び切断-融合-架橋(BFB)機構を考慮した検出された断裂とそれらのカバレッジのみから生成したコピー数プロット(下)。g)
図1f(下)に示すBFBの進化。8p腕は中心体からAで始まる文字で示される。合計7個の断裂が検出された。正常な断裂が1個(中灰色の矢印で示される)、切断-融合-架橋断裂が6個(1つ目の架橋及び黒い矢印で示される)である。
【
図2】FGFR阻害剤応答が既知の試料のコピー数分析を示す図である。a)FGFR阻害剤BGJ398及びAZD4547に対してスクリーニングされた8細胞株の平均GI50値。バーは番号(1)(GI50>1μM)又は番号(2)(GI50>1μM)によって示される。b)FGFR阻害に感受性のない6細胞株(番号(1)で示す)及びFGFR阻害に感受性のある2細胞株(番号(2)で示す)の平均コピー数。ゲノムシーケンシング又は全エクソソームシーケンシングデータからコピー数を抽出し、ROBOCOPで8番染色体(hg19)に対してプロットした。NSD3及びFGFR1の場所は背景が灰色である。c)BGJ398対ビヒクルで治療された8例の患者由来異種移植片腫瘍モデルの平均腫瘍増殖縮小率。全てのモデルでFGFR1 FISHによるFGFR1増幅が確認された。各バーは、少なくとも6匹のマウス及び12の腫瘍の実験を表す。バーを、番号(1)(腫瘍縮小率<30%)又は番号(2)(腫瘍縮小率>30%)で示す。d)5例のFGFR阻害の恩恵を受けない患者由来異種移植片腫瘍モデル(番号(1)で示す)及び3例のFGFR阻害の恩恵を受ける患者由来異種移植片腫瘍(PDX)モデル(番号(2)で示す)の平均コピー数。ゲノムシーケンシングデータからコピー数を抽出し、ROBOCOPで8番染色体(hg19)に対してプロットした。e)FGFR1増幅を持ち、BGJ398で治療された扁平上皮肺癌患者の腫瘍体積変化。腫瘍体積変化をRECIST基準で測定した。5名の患者はFGFR阻害時に進行性の疾患を有し(番号(1)で示す)、3名の患者はFGFR阻害時に永続的な部分応答を示した(番号(2)で示す)。TUM003及びTUM007は治療中に死亡し、応答の兆候はなかった。
*で標識された試料は、RECISTデータが入手できない標識FGFR阻害剤治療患者であった。f)進行性疾患を有する患者5名(番号(2)で示す)とFGFR阻害時に永続的な部分応答を有する患者4名の平均コピー数(番号(1)で示す、患者1名はオフラベルで使用したFGFR阻害剤(GW786034 HCl)で治療)。ハイブリッドキャプチャに基づくシーケンシングからコピー数を抽出し、ROBOCOPで8番染色体(hg19)に対してプロットした。g)FGFR1の場所にズームしたハイブリッドキャプチャに基づくゲノムシーケンシング(深度558倍)コピー数プロット(中央)。オフラベルで使用したFGFR阻害剤(GW786034 HCl)による治療に応答した患者に由来する腫瘍試料。ゲノム断裂を伴うFGFR1の正常なエクソン構造を示す(下)。断裂カバレッジ(上)及び断裂の場所を示す(矢印)。対応するHEとpFGFR1のIHC染色を示す(右)。h)結果として生じたtail-to-tail断裂の再編成を示す(破線)。i)FGFR1の場所にズームしたハイブリッドキャプチャに基づくゲノムシーケンシング(深度615倍)コピー数プロット(中央)。腫瘍試料はFGFR阻害剤(BGJ398)による治療に応答した患者に由来する。FGFR1の正常なエクソン構造(下)、tail-to-tail断裂の場所(矢印)、及び断裂カバレッジ(上)を示す。j)結果として生じたtail-to-tail断裂の再編成を示す(破線)。
【
図3】新規な発癌遺伝子外部ドメイン欠失FGFR1バージョンの同定を示す図である。a)腫瘍/正常全ゲノム配列決定された(カバレッジ30倍)原発性扁平上皮肺癌腫瘍のコピー数プロット、及びROBOCOPでプロットした(中央)。この領域に位置する遺伝子(中央、下;プラス鎖、マイナス鎖)、断裂カバレッジ(上)、tail-to-tail断裂の場所(矢印及び黒い破線)を示す。上に示される染色体位置とは無関係に、ゲノム断裂を伴うNSD3及びFGFR1の正常なエクソン構造をアスタリスクで示す(下)。b)結果として生じたt-to-t断裂の再編成(破線、上)、及び全トランスクリプトームシーケンシングデータからのスパニングリード(下)を示す。c)t-to-t断裂及びFGFR1にまたがる2つの異なるプライマー対を持つ対応するcDNA(左)及び一致した正常なcDNA(右)からのPCR。d)FGFR1の場所にズームしたハイブリッドキャプチャに基づくゲノムシーケンシング(深度468倍)コピー数プロット(中央)。腫瘍試料はFGFR阻害時の応答が不明な患者に由来する。FGFR1の正常なエクソン構造(下)、tail-to-tail断裂の場所(矢印)、及び断裂カバレッジ(上)を示す。e)結果として生じたt-to-t断裂の再編成を示す(破線)。f)ARCHERシーケンシング技術によって検出された断裂スパニングリードを示す。g)形質転換Baf3細胞(Baf3 FGFR1 ΔEC及び対照としてBaf3 EML4-ALK)と、空のベクター(Baf3 e.V.)、FGFR1アルファ(Baf3 FGFR1
アルファ)及びFGFR1ベータ(Baf3 FGFR1
ベータ)で形質導入した非形質転換Baf3細胞の免疫ブロッティング。Baf3 e.V、FGFR1アルファ及びベータをIL3で培養する。h)漸増濃度のFGFR阻害剤BGJ398又はi)FGFR阻害剤AZD4547を用いたBaf3 e.V.、FGFR1ベータ、及び外部ドメイン欠損FGFR1(FGFR1 ΔEC、エクソン9中のインフレームATGを使用、NM_015850)のスクリーニング(96時間後に細胞ATP含有量を測定)。Baf3 e.V.とBaf3 FGFR1ベータをIL3でスクリーニングし、Baf3 FGFR1 ΔECをIL3枯渇条件下でスクリーニングした。
【0092】
配列は、以下を示す。
【0093】
配列番号1:ヒト線維芽細胞増殖因子受容体1(FGFR1)のアミノ酸配列
Met Trp Ser Trp Lys Cys Leu Leu Phe Trp Ala Val Leu Val Thr Ala Thr Leu Cys Thr Ala Arg Pro Ser Pro Thr Leu Pro Glu Gln Ala Gln Pro Trp Gly Ala Pro Val Glu Val Glu Ser Phe Leu Val His Pro Gly Asp Leu Leu Gln Leu Arg Cys Arg Leu Arg Asp Asp Val Gln Ser Ile Asn Trp Leu Arg Asp Gly Val Gln Leu Ala Glu Ser Asn Arg Thr Arg Ile Thr Gly Glu Glu Val Glu Val Gln Asp Ser Val Pro Ala Asp Ser Gly Leu Tyr Ala Cys Val Thr Ser Ser Pro Ser Gly Ser Asp Thr Thr Tyr Phe Ser Val Asn Val Ser Asp Ala Leu Pro Ser Ser Glu Asp Asp Asp Asp Asp Asp Asp Ser Ser Ser Glu Glu Lys Glu Thr Asp Asn Thr Lys Pro Asn Arg Met Pro Val Ala Pro Tyr Trp Thr Ser Pro Glu Lys Met Glu Lys Lys Leu His Ala Val Pro Ala Ala Lys Thr Val Lys Phe Lys Cys Pro Ser Ser Gly Thr Pro Asn Pro Thr Leu Arg Trp Leu Lys Asn Gly Lys Glu Phe Lys Pro Asp His Arg Ile Gly Gly Tyr Lys Val Arg Tyr Ala Thr Trp Ser Ile Ile Met Asp Ser Val Val Pro Ser Asp Lys Gly Asn Tyr Thr Cys Ile Val Glu Asn Glu Tyr Gly Ser Ile Asn His Thr Tyr Gln Leu Asp Val Val Glu Arg Ser Pro His Arg Pro Ile Leu Gln Ala Gly Leu Pro Ala Asn Lys Thr Val Ala Leu Gly Ser Asn Val Glu Phe Met Cys Lys Val Tyr Ser Asp Pro Gln Pro His Ile Gln Trp Leu Lys His Ile Glu Val Asn Gly Ser Lys Ile Gly Pro Asp Asn Leu Pro Tyr Val Gln Ile Leu Lys Thr Ala Gly Val Asn Thr Thr Asp Lys Glu Met Glu Val Leu His Leu Arg Asn Val Ser Phe Glu Asp Ala Gly Glu Tyr Thr Cys Leu Ala Gly Asn Ser Ile Gly Leu Ser His His Ser Ala Trp Leu Thr Val Leu Glu Ala Leu Glu Glu Arg Pro Ala Val Met Thr Ser Pro Leu Tyr Leu Glu Ile Ile Ile Tyr Cys Thr Gly Ala Phe Leu Ile Ser Cys Met Val Gly Ser Val Ile Val Tyr Lys Met Lys Ser Gly Thr Lys Lys Ser Asp Phe His Ser Gln Met Ala Val His Lys Leu Ala Lys Ser Ile Pro Leu Arg Arg Gln Val Thr Val Ser Ala Asp Ser Ser Ala Ser Met Asn Ser Gly Val Leu Leu Val Arg Pro Ser Arg Leu Ser Ser Ser Gly Thr Pro Met Leu Ala Gly Val Ser Glu Tyr Glu Leu Pro Glu Asp Pro Arg Trp Glu Leu Pro Arg Asp Arg Leu Val Leu Gly Lys Pro Leu Gly Glu Gly Cys Phe Gly Gln Val Val Leu Ala Glu Ala Ile Gly Leu Asp Lys Asp Lys Pro Asn Arg Val Thr Lys Val Ala Val Lys Met Leu Lys Ser Asp Ala Thr Glu Lys Asp Leu Ser Asp Leu Ile Ser Glu Met Glu Met Met Lys Met Ile Gly Lys His Lys Asn Ile Ile Asn Leu Leu Gly Ala Cys Thr Gln Asp Gly Pro Leu Tyr Val Ile Val Glu Tyr Ala Ser Lys Gly Asn Leu Arg Glu Tyr Leu Gln Ala Arg Arg Pro Pro Gly Leu Glu Tyr Cys Tyr Asn Pro Ser His Asn Pro Glu Glu Gln Leu Ser Ser Lys Asp Leu Val Ser Cys Ala Tyr Gln Val Ala Arg Gly Met Glu Tyr Leu Ala Ser Lys Lys Cys Ile His Arg Asp Leu Ala Ala Arg Asn Val Leu Val Thr Glu Asp Asn Val Met Lys Ile Ala Asp Phe Gly Leu Ala Arg Asp Ile His His Ile Asp Tyr Tyr Lys Lys Thr Thr Asn Gly Arg Leu Pro Val Lys Trp Met Ala Pro Glu Ala Leu Phe Asp Arg Ile Tyr Thr His Gln Ser Asp Val Trp Ser Phe Gly Val Leu Leu Trp Glu Ile Phe Thr Leu Gly Gly Ser Pro Tyr Pro Gly Val Pro Val Glu Glu Leu Phe Lys Leu Leu Lys Glu Gly His Arg Met Asp Lys Pro Ser Asn Cys Thr Asn Glu Leu Tyr Met Met Met Arg Asp Cys Trp His Ala Val Pro Ser Gln Arg Pro Thr Phe Lys Gln Leu Val Glu Asp Leu Asp Arg Ile Val Ala Leu Thr Ser Asn Gln Glu Tyr Leu Asp Leu Ser Met Pro Leu Asp Gln Tyr Ser Pro Ser Phe Pro Asp Thr Arg Ser Ser Thr Cys Ser Ser Gly Glu Asp Ser Val Phe Ser His Glu Pro Leu Pro Glu Glu Pro Cys Leu Pro Arg His Pro Ala Gln Leu Ala Asn Gly Gly Leu Lys Arg Arg
【0094】
本発明によれば、FGFR1遺伝子の遺伝子改変は、tail-to-tail切断-融合-架橋(BFB)様機構等の染色体断裂の結果である。これらは、mRNAレベル等幾つかのレベルで検出され得る。一般に、切断-融合-架橋様(BFB様)機構等の染色体断裂後に、FGFR1のエクソン1~エクソン9にある任意のインフレームの非カノニカルATG開始コドンが改変FGFR1の転写に使用され得る。例として、配列番号2は、tail-to-tail切断-融合-架橋(BFB)機構によるFGFR1遺伝子の遺伝子改変の結果を示す。
【0095】
配列番号2
GTGGGAGAGTGACACACAAAACACCCCGGGAAGCCGGAGGAGGCGTGGAAAGGTGGGGCCCGGGAGGTAAAACTGGGATCGGCGCGTTCAGTGAGGCTGATTAAAGAACAACGCGCAACCAGCGCCATACGGCGCTCCTCAGGGTGACTCGGCTCTCTAGCTCTTAAGGGTTAGAAGCGACCCTCGCACGGTCCCCGGTGCCACCTGGAGCATCATAATGGACTCTGTGGTGCCCTCTGACAAGGGCAACTACACCTGCATTGTGGAGAATGAGTACGGCAGCATCAACCACACATACCAGCTGGATGTCGTGGAGCGGTCCCCTCACCGGCCCATCCTGCAAGCAGGGTTGCCCGCCAACAAAACAGTGGCCCTGGGTAGCAACGTGGAGTTCATGTGTAAGGTGTACAGTGACCCGCAGCCGCACATCCAGTGGCTAAAGCACATCGAGGTGAATGGGAGCAAGATTGGCCCAGACAACCTGCCTTATGTCCAGATCTTGAAGACTGCTGGAGTTAATACCACCGACAAAGAGATGGAGGTGCTTCACTTAAGAAATGTCTCCTTTGAGGACGCAGGGGAGTATACGTGCTTGGCGGGTAACTCTATCGGACTCTCCCATCACTCTGCATGGTTGACCGTTCTGGAAGCCCTGGAAGAGAGGCCGGCAGTGATGACCTCGCCCCTGTACCTGGAGATCATCATCTATTGCACAGGGGCCTTCCTCATCTCCTGCATGGTGGGGTCGGTCATCGTCTACAAGATGAAGAGTGGTACCAAGAAGAGTGACTTCCACAGCCAGATGGCTGTGCACAAGCTGGCCAAGAGCATCCCTCTGCGCAGACAGGTAACAGTGTCTGCTGACTCCAGTGCATCCATGAACTCTGGGGTTCTTCTGGTTCGGCCATCACGGCTCTCCTCCAGTGGGACTCCCATGCTAGCAGGGGTCTCTGAGTATGAGCTTCCCGAAGACCCTCGCTGGGAGCTGCCTCGGGACAGACTGGTCTTAGGCAAACCCCTGGGAGAGGGCTGCTTTGGGCAGGTGGTGTTGGCAGAGGCTATCGGGCTGGACAAGGACAAACCCAACCGTGTGACCAAAGTGGCTGTGAAGATGTTGAAGTCGGACGCAACAGAGAAAGACTTGTCAGACCTGATCTCAGAAATGGAGATGATGAAGATGATCGGGAAGCATAAGAATATCATCAACCTGCTGGGGGCCTGCACGCAGGATGGTCCCTTGTATGTCATCGTGGAGTATGCCTCCAAGGGCAACCTGCGGGAGTACCTGCAGGCCCGGAGGCCCCCAGGGCTGGAATACTGCTACAACCCCAGCCACAACCCAGAGGAGCAGCTCTCCTCCAAGGACCTGGTGTCCTGCGCCTACCAGGTGGCCCGAGGCATGGAGTATCTGGCCTCCAAGAAGTGCATACACCGAGACCTGGCAGCCAGGAATGTCCTGGTGACAGAGGACAATGTGATGAAGATAGCAGACTTTGGCCTCGCACGGGACATTCACCACATCGACTACTATAAAAAGACAACCAACGGCCGACTGCCTGTGAAGTGGATGGCACCCGAGGCATTATTTGACCGGATCTACACCCACCAGAGTGATGTGTGGTCTTTCGGGGTGCTCCTGTGGGAGATCTTCACTCTGGGCGGCTCCCCATACCCCGGTGTGCCTGTGGAGGAACTTTTCAAGCTGCTGAAGGAGGGTCACCGCATGGACAAGCCCAGTAACTGCACCAACGAGCTGTACATGATGATGCGGGACTGCTGGCATGCAGTGCCCTCACAGAGACCCACCTTCAAGCAGCTGGTGGAAGACCTGGACCGCATCGTGGCCTTGACCTCCAACCAGGAGTACCTGGACCTGTCCATGCCCCTGGACCAGTACTCCCCCAGCTTTCCCGACACCCGGAGCTCTACGTGCTCCTCAGGGGAGGATTCCGTCTTCTCTCATGAGCCGCTGCCCGAGGAGCCCTGCCTGCCCCGACACCCAGCCCAGCTTGCCAATGGCGGACTCAAACGCCGCTGACTGCCACCCACACGCCCTCCCCAGACTCCACCGTCAGCTGTAACCCTCACCCACAGCCCCTGCTGGGCCCACCACCTGTCCGTCCCTGTCCCCTTTCCTGCTGGCAGGAGCCGGCTGCCTACCAGGGGCCTTCCTGTGTGGCCTGCCTTCACCCCACTCAGCTCACCTCTCCCTCCACCTCCTCTCCACCTGCTGGTGAGAGGTGCAAAGAGGCAGATCTTTGCTGCCAGCCACTTCATCCCCTCCCAGATGTTGGACCAACACCCCTCCCTGCCACCAGGCACTGCCTGGAGGGCAGGGAGTGGGAGCCAATGAACAGGCATGCAAGTGAGAGCTTCCTGAGCTTTCTCCTGTCGGTTTGGTCTGTTTTGCCTTCACCCATAAGCCCCTCGCACTCTGGTGGCAGGTGCCTTGTCCTCAGGGCTACAGCAGTAGGGAGGTCAGTGCTTCGTGCCTCGATTGAAGGTGACCTCTGCCCCAGATAGGTGGTGCCAGTGGCTTATTAATTCCGATACTAGTTTGCTTTGCTGACCAAATGCCTGGTACCAGAGGATGGTGAGGCGAAGGCCAGGTTGGGGGCAGTGTTGTGGCCCTGGGGCCCAGCCCCAAACTGGGGGCTCTGTATATAGCTATGAAGAAAACACAAAGTGTATAAATCTGAGTATATATTTACATGTCTTTTTAAAAGGGTCGTTACCAGAGATTTACCCATCGGGTAAGATGCTCCTGGTGGCTGGGAGGCATCAGTTGCTATATATTAAAAACAAAAAAGAAAAAAAAGGAAAATGTTTTTAAAAAGGTCATATATTTTTTGCTACTTTTGCTGTTTTATTTTTTTAAATTATGTTCTAAACCTATTTTCAGTTTAGGTCCCTCAATAAAAATTGCTGCTGCTTCA
【0096】
配列番号2中の下線部は転写されており、以下の配列番号3に示される。
【0097】
配列番号3
ATGGACTCTGTGGTGCCCTCTGACAAGGGCAACTACACCTGCATTGTGGAGAATGAGTACGGCAGCATCAACCACACATACCAGCTGGATGTCGTGGAGCGGTCCCCTCACCGGCCCATCCTGCAAGCAGGGTTGCCCGCCAACAAAACAGTGGCCCTGGGTAGCAACGTGGAGTTCATGTGTAAGGTGTACAGTGACCCGCAGCCGCACATCCAGTGGCTAAAGCACATCGAGGTGAATGGGAGCAAGATTGGCCCAGACAACCTGCCTTATGTCCAGATCTTGAAGACTGCTGGAGTTAATACCACCGACAAAGAGATGGAGGTGCTTCACTTAAGAAATGTCTCCTTTGAGGACGCAGGGGAGTATACGTGCTTGGCGGGTAACTCTATCGGACTCTCCCATCACTCTGCATGGTTGACCGTTCTGGAAGCCCTGGAAGAGAGGCCGGCAGTGATGACCTCGCCCCTGTACCTGGAGATCATCATCTATTGCACAGGGGCCTTCCTCATCTCCTGCATGGTGGGGTCGGTCATCGTCTACAAGATGAAGAGTGGTACCAAGAAGAGTGACTTCCACAGCCAGATGGCTGTGCACAAGCTGGCCAAGAGCATCCCTCTGCGCAGACAGGTAACAGTGTCTGCTGACTCCAGTGCATCCATGAACTCTGGGGTTCTTCTGGTTCGGCCATCACGGCTCTCCTCCAGTGGGACTCCCATGCTAGCAGGGGTCTCTGAGTATGAGCTTCCCGAAGACCCTCGCTGGGAGCTGCCTCGGGACAGACTGGTCTTAGGCAAACCCCTGGGAGAGGGCTGCTTTGGGCAGGTGGTGTTGGCAGAGGCTATCGGGCTGGACAAGGACAAACCCAACCGTGTGACCAAAGTGGCTGTGAAGATGTTGAAGTCGGACGCAACAGAGAAAGACTTGTCAGACCTGATCTCAGAAATGGAGATGATGAAGATGATCGGGAAGCATAAGAATATCATCAACCTGCTGGGGGCCTGCACGCAGGATGGTCCCTTGTATGTCATCGTGGAGTATGCCTCCAAGGGCAACCTGCGGGAGTACCTGCAGGCCCGGAGGCCCCCAGGGCTGGAATACTGCTACAACCCCAGCCACAACCCAGAGGAGCAGCTCTCCTCCAAGGACCTGGTGTCCTGCGCCTACCAGGTGGCCCGAGGCATGGAGTATCTGGCCTCCAAGAAGTGCATACACCGAGACCTGGCAGCCAGGAATGTCCTGGTGACAGAGGACAATGTGATGAAGATAGCAGACTTTGGCCTCGCACGGGACATTCACCACATCGACTACTATAAAAAGACAACCAACGGCCGACTGCCTGTGAAGTGGATGGCACCCGAGGCATTATTTGACCGGATCTACACCCACCAGAGTGATGTGTGGTCTTTCGGGGTGCTCCTGTGGGAGATCTTCACTCTGGGCGGCTCCCCATACCCCGGTGTGCCTGTGGAGGAACTTTTCAAGCTGCTGAAGGAGGGTCACCGCATGGACAAGCCCAGTAACTGCACCAACGAGCTGTACATGATGATGCGGGACTGCTGGCATGCAGTGCCCTCACAGAGACCCACCTTCAAGCAGCTGGTGGAAGACCTGGACCGCATCGTGGCCTTGACCTCCAACCAGGAGTACCTGGACCTGTCCATGCCCCTGGACCAGTACTCCCCCAGCTTTCCCGACACCCGGAGCTCTACGTGCTCCTCAGGGGAGGATTCCGTCTTCTCTCATGAGCCGCTGCCCGAGGAGCCCTGCCTGCCCCGACACCCAGCCCAGCTTGCCAATGGCGGACTCAAACGCCGCTGA
【0098】
配列番号2及び配列番号3のクローニングに使用されるプライマーを、以下の配列番号4~配列番号8として示す。
【0099】
配列番号4:CACCTGGAGCATCATAATGGA (212_attB1_S00674)
【0100】
配列番号5:TGGAGCATCATAATGGACTCTG (213_attB1_S00674)
【0101】
配列番号6:AGTCAGCGGCGTTTGAGTC (220_attB2_FGFR1)
【0102】
配列番号7:GTGTGGGTGGCAGTCAGC (221_attB2_FGFR1)
【0103】
配列番号8:CAGTCAGCGGCGTTTGAGT (222_attB2_FGFR1)
【0104】
配列番号3の翻訳は、配列番号9のアミノ酸配列を含むタンパク質を生成する。
【0105】
配列番号9
MDSVVPSDKGNYTCIVENEYGSINHTYQLDVVERSPHRPILQAGLPANKTVALGSNVEFMCKVYSDPQPHIQWLKHIEVNGSKIGPDNLPYVQILKTAGVNTTDKEMEVLHLRNVSFEDAGEYTCLAGNSIGLSHHSAWLTVLEALEERPAVMTSPLYLEIIIYCTGAFLISCMVGSVIVYKMKSGTKKSDFHSQMAVHKLAKSIPLRRQVSADSSASMNSGVLLVRPSRLSSSGTPMLAGVSEYELPEDPRWELPRDRLVLGKPLGEGCFGQVVLAEAIGLDKDKPNRVTKVAVKMLKSDATEKDLSDLISEMEMMKMIGKHKNIINLLGACTQDGPLYVIVEYASKGNLREYLQARRPPGLEYCYNPSHNPEEQLSSKDLVSCAYQVARGMEYLASKKCIHRDLAARNVLVTEDNVMKIADFGLARDIHHIDYYKKTTNGRLPVKWMAPEALFDRIYTHQSDVWSFGVLLWEIFTLGGSPYPGVPVEELFKLLKEGHRMDKPSNCTNELYMMMRDCWHAVPSQRPTFKQLVEDLDRIVALTSNQEYLDLSMPLDQYSPSFPDTRSSTCSSGEDSVFSHEPLPEEPCLPRHPAQLANGGLKRR
【0106】
注目すべきことに、配列番号9のアミノ酸配列を含む改変FGFR1タンパク質は、604個のアミノ酸を持ち、N末端短縮により、改変FGFR1タンパク質は、1つのIG様ドメインと、プロテインキナーゼドメインとを含む。
【0107】
FGFR1阻害剤療法に対するレスポンダーである被験体の例示的な原発性腫瘍試料のFGFR1転写産物は、以下の例示的な配列番号に示される。原則として、以下の全てのバリアントは転写可能である(5’UTRなし)。例として、配列番号10は、試料A921の転写産物を示し、エクソン9以前のイントロン内にtail-to-tail断裂が観察された。
【0108】
配列番号10
CCCTGGAAGAGAGGCCGGCAGTGATGACCTCGCCCCTGTACCTGGAGATCATCATCTATTGCACAGGGGCCTTCCTCATCTCCTGCATGGTGGGGTCGGTCATCGTCTACAAGATGAAGAGTGGTACCAAGAAGAGTGACTTCCACAGCCAGATGGCTGTGCACAAGCTGGCCAAGAGCATCCCTCTGCGCAGACAGGTGTCTGCTGACTCCAGTGCATCCATGAACTCTGGGGTTCTTCTGGTTCGGCCATCACGGCTCTCCTCCAGTGGGACTCCCATGCTAGCAGGGGTCTCTGAGTATGAGCTTCCCGAAGACCCTCGCTGGGAGCTGCCTCGGGACAGACTGGTCTTAGGCAAACCCCTGGGAGAGGGCTGCTTTGGGCAGGTGGTGTTGGCAGAGGCTATCGGGCTGGACAAGGACAAACCCAACCGTGTGACCAAAGTGGCTGTGAAGATGTTGAAGTCGGACGCAACAGAGAAAGACTTGTCAGACCTGATCTCAGAAATGGAGATGATGAAGATGATCGGGAAGCATAAGAATATCATCAACCTGCTGGGGGCCTGCACGCAGGATGGTCCCTTGTATGTCATCGTGGAGTATGCCTCCAAGGGCAACCTGCGGGAGTACCTGCAGGCCCGGAGGCCCCCAGGGCTGGAATACTGCTACAACCCCAGCCACAACCCAGAGGAGCAGCTCTCCTCCAAGGACCTGGTGTCCTGCGCCTACCAGGTGGCCCGAGGCATGGAGTATCTGGCCTCCAAGAAGTGCATACACCGAGACCTGGCAGCCAGGAATGTCCTGGTGACAGAGGACAATGTGATGAAGATAGCAGACTTTGGCCTCGCACGGGACATTCACCACATCGACTACTATAAAAAGACAACCAACGGCCGACTGCCTGTGAAGTGGATGGCACCCGAGGCATTATTTGACCGGATCTACACCCACCAGAGTGATGTGTGGTCTTTCGGGGTGCTCCTGTGGGAGATCTTCACTCTGGGCGGCTCCCCATACCCCGGTGTGCCTGTGGAGGAACTTTTCAAGCTGCTGAAGGAGGGTCACCGCATGGACAAGCCCAGTAACTGCACCAACGAGCTGTACATGATGATGCGGGACTGCTGGCATGCAGTGCCCTCACAGAGACCCACCTTCAAGCAGCTGGTGGAAGACCTGGACCGCATCGTGGCCTTGACCTCCAACCAGGAGTACCTGGACCTGTCCATGCCCCTGGACCAGTACTCCCCCAGCTTTCCCGACACCCGGAGCTCTACGTGCTCCTCAGGGGAGGATTCCGTCTTCTCTCATGAGCCGCTGCCCGAGGAGCCCTGCCTGCCCCGACACCCAGCCCAGCTTGCCAATGGCGGACTCAAACGCCGCTGACTGCCACCCACACGCCCTCCCCAGACTCCACCGTCAGCTGTAACCCTCACCCACAGCCCCTGCTGGGCCCACCACCTGTCCGTCCCTGTCCCCTTTCCTGCTGGCAGGAGCCGGCTGCCTACCAGGGGCCTTCCTGTGTGGCCTGCCTTCACCCCACTCAGCTCACCTCTCCCTCCACCTCCTCTCCACCTGCTGGTGAGAGGTGCAAAGAGGCAGATCTTTGCTGCCAGCCACTTCATCCCCTCCCAGATGTTGGACCAACACCCCTCCCTGCCACCAGGCACTGCCTGGAGGGCAGGGAGTGGGAGCCAATGAACAGGCATGCAAGTGAGAGCTTCCTGAGCTTTCTCCTGTCGGTTTGGTCTGTTTTGCCTTCACCCATAAGCCCCTCGCACTCTGGTGGCAGGTGCCTTGTCCTCAGGGCTACAGCAGTAGGGAGGTCAGTGCTTCGTGCCTCGATTGAAGGTGACCTCTGCCCCAGATAGGTGGTGCCAGTGGCTTATTAATTCCGATACTAGTTTGCTTTGCTGACCAAATGCCTGGTACCAGAGGATGGTGAGGCGAAGGCCAGGTTGGGGGCAGTGTTGTGGCCCTGGGGCCCAGCCCCAAACTGGGGGCTCTGTATATAGCTATGAAGAAAACACAAAGTGTATAAATCTGAGTATATATTTACATGTCTTTTTAAAAGGGTCGTTACCAGAGATTTACCCATCGGGTAAGATGCTCCTGGTGGCTGGGAGGCATCAGTTGCTATATATTAAAAACAAAAAAGAAAAAAAAGGAAAATGTTTTTAAAAAGGTCATATATTTTTTGCTACTTTTGCTGTTTTATTTTTTTAAATTATGTTCTAAACCTATTTTCAGTTTAGGTCCCTCAATAAAAATTGCTGCTGCTTCA
【0109】
配列番号10中の下線部は転写されており、以下の配列番号11に示される。
【0110】
配列番号11
ATGACCTCGCCCCTGTACCTGGAGATCATCATCTATTGCACAGGGGCCTTCCTCATCTCCTGCATGGTGGGGTCGGTCATCGTCTACAAGATGAAGAGTGGTACCAAGAAGAGTGACTTCCACAGCCAGATGGCTGTGCACAAGCTGGCCAAGAGCATCCCTCTGCGCAGACAGGTGTCTGCTGACTCCAGTGCATCCATGAACTCTGGGGTTCTTCTGGTTCGGCCATCACGGCTCTCCTCCAGTGGGACTCCCATGCTAGCAGGGGTCTCTGAGTATGAGCTTCCCGAAGACCCTCGCTGGGAGCTGCCTCGGGACAGACTGGTCTTAGGCAAACCCCTGGGAGAGGGCTGCTTTGGGCAGGTGGTGTTGGCAGAGGCTATCGGGCTGGACAAGGACAAACCCAACCGTGTGACCAAAGTGGCTGTGAAGATGTTGAAGTCGGACGCAACAGAGAAAGACTTGTCAGACCTGATCTCAGAAATGGAGATGATGAAGATGATCGGGAAGCATAAGAATATCATCAACCTGCTGGGGGCCTGCACGCAGGATGGTCCCTTGTATGTCATCGTGGAGTATGCCTCCAAGGGCAACCTGCGGGAGTACCTGCAGGCCCGGAGGCCCCCAGGGCTGGAATACTGCTACAACCCCAGCCACAACCCAGAGGAGCAGCTCTCCTCCAAGGACCTGGTGTCCTGCGCCTACCAGGTGGCCCGAGGCATGGAGTATCTGGCCTCCAAGAAGTGCATACACCGAGACCTGGCAGCCAGGAATGTCCTGGTGACAGAGGACAATGTGATGAAGATAGCAGACTTTGGCCTCGCACGGGACATTCACCACATCGACTACTATAAAAAGACAACCAACGGCCGACTGCCTGTGAAGTGGATGGCACCCGAGGCATTATTTGACCGGATCTACACCCACCAGAGTGATGTGTGGTCTTTCGGGGTGCTCCTGTGGGAGATCTTCACTCTGGGCGGCTCCCCATACCCCGGTGTGCCTGTGGAGGAACTTTTCAAGCTGCTGAAGGAGGGTCACCGCATGGACAAGCCCAGTAACTGCACCAACGAGCTGTACATGATGATGCGGGACTGCTGGCATGCAGTGCCCTCACAGAGACCCACCTTCAAGCAGCTGGTGGAAGACCTGGACCGCATCGTGGCCTTGACCTCCAACCAGGAGTACCTGGACCTGTCCATGCCCCTGGACCAGTACTCCCCCAGCTTTCCCGACACCCGGAGCTCTACGTGCTCCTCAGGGGAGGATTCCGTCTTCTCTCATGAGCCGCTGCCCGAGGAGCCCTGCCTGCCCCGACACCCAGCCCAGCTTGCCAATGGCGGACTCAAACGCCGCTGA
【0111】
配列番号10及び配列番号11のクローニングに使用されるプライマーを、以下の配列番号12及び配列番号13として示す。
【0112】
配列番号12-CCGGCAGTGATGACCTCG (214_attB1_A921)
【0113】
配列番号13-CAGTGATGACCTCGCCCC (215_attB1_A921)
【0114】
配列番号11の翻訳は、配列番号14のアミノ酸配列を含むタンパク質を生成する。
【0115】
配列番号14
MTSPLYLEIIIYCTGAFLISCMVGSVIVYKMKSGTKKSDFHSQMAVHKLAKSIPLRRQVSADSSASMNSGVLLVRPSRLSSSGTPMLAGVSEYELPEDPRWELPRDRLVLGKPLGEGCFGQVVLAEAIGLDKDKPNRVTKVAVKMLKSDATEKDLSDLISEMEMMKMIGKHKNIINLLGACTQDGPLYVIVEYASKGNLREYLQARRPPGLEYCYNPSHNPEEQLSSKDLVSCAYQVARGMEYLASKKCIHRDLAARNVLVTEDNVMKIADFGLARDIHHIDYYKKTTNGRLPVKWMAPEALFDRIYTHQSDVWSFGVLLWEIFTLGGSPYPGVPVEELFKLLKEGHRMDKPSNCTNELYMMMRDCWHAVPSQRPTFKQLVEDLDRIVALTSNQEYLDLSMPLDQYSPSFPDTRSSTCSSGEDSVFSHEPLPEEPCLPRHPAQLANGGLKRR
【0116】
注目すべきことに、配列番号14のアミノ酸配列を含む改変FGFR1タンパク質は、452個のアミノ酸を持ち、N末端短縮によりIG様ドメインを含まないが、プロテインキナーゼドメインを含む。本発明の状況では、配列番号14のアミノ酸配列を含むポリペプチドは、ΔEC-FGFR1とも称される。配列番号14中の二重下線付き残基は膜貫通ドメインを形成し、一重下線付き残基はキナーゼドメインを形成する。
【0117】
配列番号15は、試料p68の転写産物を示す。
【0118】
配列番号15
CCGTAGCTCCATATTGGACATCCCCAGAAAAGATGGAAAAGAAATTGCATGCAGTGCCGGCTGCCAAGACAGTGAAGTTCAAATGCCCTTCCAGTGGGACCCCAAACCCCACACTGCGCTGGTTGAAAAATGGCAAAGAATTCAAACCTGACCACAGAATTGGAGGCTACAAGGTCCGTTATGCCACCTGGAGCATCATAATGGACTCTGTGGTGCCCTCTGACAAGGGCAACTACACCTGCATTGTGGAGAATGAGTACGGCAGCATCAACCACACATACCAGCTGGATGTCGTGGAGCGGTCCCCTCACCGGCCCATCCTGCAAGCAGGGTTGCCCGCCAACAAAACAGTGGCCCTGGGTAGCAACGTGGAGTTCATGTGTAAGGTGTACAGTGACCCGCAGCCGCACATCCAGTGGCTAAAGCACATCGAGGTGAATGGGAGCAAGATTGGCCCAGACAACCTGCCTTATGTCCAGATCTTGAAGACTGCTGGAGTTAATACCACCGACAAAGAGATGGAGGTGCTTCACTTAAGAAATGTCTCCTTTGAGGACGCAGGGGAGTATACGTGCTTGGCGGGTAACTCTATCGGACTCTCCCATCACTCTGCATGGTTGACCGTTCTGGAAGCCCTGGAAGAGAGGCCGGCAGTGATGACCTCGCCCCTGTACCTGGAGATCATCATCTATTGCACAGGGGCCTTCCTCATCTCCTGCATGGTGGGGTCGGTCATCGTCTACAAGATGAAGAGTGGTACCAAGAAGAGTGACTTCCACAGCCAGATGGCTGTGCACAAGCTGGCCAAGAGCATCCCTCTGCGCAGACAGGTGTCTGCTGACTCCAGTGCATCCATGAACTCTGGGGTTCTTCTGGTTCGGCCATCACGGCTCTCCTCCAGTGGGACTCCCATGCTAGCAGGGGTCTCTGAGTATGAGCTTCCCGAAGACCCTCGCTGGGAGCTGCCTCGGGACAGACTGGTCTTAGGCAAACCCCTGGGAGAGGGCTGCTTTGGGCAGGTGGTGTTGGCAGAGGCTATCGGGCTGGACAAGGACAAACCCAACCGTGTGACCAAAGTGGCTGTGAAGATGTTGAAGTCGGACGCAACAGAGAAAGACTTGTCAGACCTGATCTCAGAAATGGAGATGATGAAGATGATCGGGAAGCATAAGAATATCATCAACCTGCTGGGGGCCTGCACGCAGGATGGTCCCTTGTATGTCATCGTGGAGTATGCCTCCAAGGGCAACCTGCGGGAGTACCTGCAGGCCCGGAGGCCCCCAGGGCTGGAATACTGCTACAACCCCAGCCACAACCCAGAGGAGCAGCTCTCCTCCAAGGACCTGGTGTCCTGCGCCTACCAGGTGGCCCGAGGCATGGAGTATCTGGCCTCCAAGAAGTGCATACACCGAGACCTGGCAGCCAGGAATGTCCTGGTGACAGAGGACAATGTGATGAAGATAGCAGACTTTGGCCTCGCACGGGACATTCACCACATCGACTACTATAAAAAGACAACCAACGGCCGACTGCCTGTGAAGTGGATGGCACCCGAGGCATTATTTGACCGGATCTACACCCACCAGAGTGATGTGTGGTCTTTCGGGGTGCTCCTGTGGGAGATCTTCACTCTGGGCGGCTCCCCATACCCCGGTGTGCCTGTGGAGGAACTTTTCAAGCTGCTGAAGGAGGGTCACCGCATGGACAAGCCCAGTAACTGCACCAACGAGCTGTACATGATGATGCGGGACTGCTGGCATGCAGTGCCCTCACAGAGACCCACCTTCAAGCAGCTGGTGGAAGACCTGGACCGCATCGTGGCCTTGACCTCCAACCAGGAGTACCTGGACCTGTCCATGCCCCTGGACCAGTACTCCCCCAGCTTTCCCGACACCCGGAGCTCTACGTGCTCCTCAGGGGAGGATTCCGTCTTCTCTCATGAGCCGCTGCCCGAGGAGCCCTGCCTGCCCCGACACCCAGCCCAGCTTGCCAATGGCGGACTCAAACGCCGCTGACTGCCACCCACACGCCCTCCCCAGACTCCACCGTCAGCTGTAACCCTCACCCACAGCCCCTGCTGGGCCCACCACCTGTCCGTCCCTGTCCCCTTTCCTGCTGGCAGGAGCCGGCTGCCTACCAGGGGCCTTCCTGTGTGGCCTGCCTTCACCCCACTCAGCTCACCTCTCCCTCCACCTCCTCTCCACCTGCTGGTGAGAGGTGCAAAGAGGCAGATCTTTGCTGCCAGCCACTTCATCCCCTCCCAGATGTTGGACCAACACCCCTCCCTGCCACCAGGCACTGCCTGGAGGGCAGGGAGTGGGAGCCAATGAACAGGCATGCAAGTGAGAGCTTCCTGAGCTTTCTCCTGTCGGTTTGGTCTGTTTTGCCTTCACCCATAAGCCCCTCGCACTCTGGTGGCAGGTGCCTTGTCCTCAGGGCTACAGCAGTAGGGAGGTCAGTGCTTCGTGCCTCGATTGAAGGTGACCTCTGCCCCAGATAGGTGGTGCCAGTGGCTTATTAATTCCGATACTAGTTTGCTTTGCTGACCAAATGCCTGGTACCAGAGGATGGTGAGGCGAAGGCCAGGTTGGGGGCAGTGTTGTGGCCCTGGGGCCCAGCCCCAAACTGGGGGCTCTGTATATAGCTATGAAGAAAACACAAAGTGTATAAATCTGAGTATATATTTACATGTCTTTTTAAAAGGGTCGTTACCAGAGATTTACCCATCGGGTAAGATGCTCCTGGTGGCTGGGAGGCATCAGTTGCTATATATTAAAAACAAAAAAGAAAAAAAAGGAAAATGTTTTTAAAAAGGTCATATATTTTTTGCTACTTTTGCTGTTTTATTTTTTTAAATTATGTTCTAAACCTATTTTCAGTTTAGGTCCCTCAATAAAAATTGCTGCTGCTTCA
【0119】
配列番号15中の下線部は転写されており、以下の配列番号16に示される。
【0120】
配列番号16
ATGGAAAAGAAATTGCATGCAGTGCCGGCTGCCAAGACAGTGAAGTTCAAATGCCCTTCCAGTGGGACCCCAAACCCCACACTGCGCTGGTTGAAAAATGGCAAAGAATTCAAACCTGACCACAGAATTGGAGGCTACAAGGTCCGTTATGCCACCTGGAGCATCATAATGGACTCTGTGGTGCCCTCTGACAAGGGCAACTACACCTGCATTGTGGAGAATGAGTACGGCAGCATCAACCACACATACCAGCTGGATGTCGTGGAGCGGTCCCCTCACCGGCCCATCCTGCAAGCAGGGTTGCCCGCCAACAAAACAGTGGCCCTGGGTAGCAACGTGGAGTTCATGTGTAAGGTGTACAGTGACCCGCAGCCGCACATCCAGTGGCTAAAGCACATCGAGGTGAATGGGAGCAAGATTGGCCCAGACAACCTGCCTTATGTCCAGATCTTGAAGACTGCTGGAGTTAATACCACCGACAAAGAGATGGAGGTGCTTCACTTAAGAAATGTCTCCTTTGAGGACGCAGGGGAGTATACGTGCTTGGCGGGTAACTCTATCGGACTCTCCCATCACTCTGCATGGTTGACCGTTCTGGAAGCCCTGGAAGAGAGGCCGGCAGTGATGACCTCGCCCCTGTACCTGGAGATCATCATCTATTGCACAGGGGCCTTCCTCATCTCCTGCATGGTGGGGTCGGTCATCGTCTACAAGATGAAGAGTGGTACCAAGAAGAGTGACTTCCACAGCCAGATGGCTGTGCACAAGCTGGCCAAGAGCATCCCTCTGCGCAGACAGGTGTCTGCTGACTCCAGTGCATCCATGAACTCTGGGGTTCTTCTGGTTCGGCCATCACGGCTCTCCTCCAGTGGGACTCCCATGCTAGCAGGGGTCTCTGAGTATGAGCTTCCCGAAGACCCTCGCTGGGAGCTGCCTCGGGACAGACTGGTCTTAGGCAAACCCCTGGGAGAGGGCTGCTTTGGGCAGGTGGTGTTGGCAGAGGCTATCGGGCTGGACAAGGACAAACCCAACCGTGTGACCAAAGTGGCTGTGAAGATGTTGAAGTCGGACGCAACAGAGAAAGACTTGTCAGACCTGATCTCAGAAATGGAGATGATGAAGATGATCGGGAAGCATAAGAATATCATCAACCTGCTGGGGGCCTGCACGCAGGATGGTCCCTTGTATGTCATCGTGGAGTATGCCTCCAAGGGCAACCTGCGGGAGTACCTGCAGGCCCGGAGGCCCCCAGGGCTGGAATACTGCTACAACCCCAGCCACAACCCAGAGGAGCAGCTCTCCTCCAAGGACCTGGTGTCCTGCGCCTACCAGGTGGCCCGAGGCATGGAGTATCTGGCCTCCAAGAAGTGCATACACCGAGACCTGGCAGCCAGGAATGTCCTGGTGACAGAGGACAATGTGATGAAGATAGCAGACTTTGGCCTCGCACGGGACATTCACCACATCGACTACTATAAAAAGACAACCAACGGCCGACTGCCTGTGAAGTGGATGGCACCCGAGGCATTATTTGACCGGATCTACACCCACCAGAGTGATGTGTGGTCTTTCGGGGTGCTCCTGTGGGAGATCTTCACTCTGGGCGGCTCCCCATACCCCGGTGTGCCTGTGGAGGAACTTTTCAAGCTGCTGAAGGAGGGTCACCGCATGGACAAGCCCAGTAACTGCACCAACGAGCTGTACATGATGATGCGGGACTGCTGGCATGCAGTGCCCTCACAGAGACCCACCTTCAAGCAGCTGGTGGAAGACCTGGACCGCATCGTGGCCTTGACCTCCAACCAGGAGTACCTGGACCTGTCCATGCCCCTGGACCAGTACTCCCCCAGCTTTCCCGACACCCGGAGCTCTACGTGCTCCTCAGGGGAGGATTCCGTCTTCTCTCATGAGCCGCTGCCCGAGGAGCCCTGCCTGCCCCGACACCCAGCCCAGCTTGCCAATGGCGGACTCAAACGCCGCTGA
【0121】
配列番号15及び配列番号16のクローニングに使用されるプライマーを、以下の配列番号17及び配列番号18として示す。
【0122】
配列番号17-TTGGACATCCCCAGAAAAGA (216_attB1_p68)
【0123】
配列番号18-CCATATTGGACATCCCCAGA (217_attB1_p68)
【0124】
配列番号16の翻訳は、配列番号19のアミノ酸配列を含むタンパク質を生成する。
【0125】
配列番号19
MEKKLHAVPAAKTVKFKCPSSGTPNPTLRWLKNGKEFKPDHRIGGYKVRYATWSIIMDSVVPSDKGNYTCIVENEYGSINHTYQLDVVERSPHRPILQAGLPANKTVALGSNVEFMCKVYSDPQPHIQWLKHIEVNGSKIGPDNLPYVQILKTAGVNTTDKEMEVLHLRNVSFEDAGEYTCLAGNSIGLSHHSAWLTVLEALEERPAVMTSPLYLEIIIYCTGAFLISCMVGSVIVYKMKSGTKKSDFHSQMAVHKLAKSIPLRRQVSADSSASMNSGVLLVRPSRLSSSGTPMLAGVSEYELPEDPRWELPRDRLVLGKPLGEGCFGQVVLAEAIGLDKDKPNRVTKVAVKMLKSDATEKDLSDLISEMEMMKMIGKHKNIINLLGACTQDGPLYVIVEYASKGNLREYLQARRPPGLEYCYNPSHNPEEQLSSKDLVSCAYQVARGMEYLASKKCIHRDLAARNVLVTEDNVMKIADFGLARDIHHIDYYKKTTNGRLPVKWMAPEALFDRIYTHQSDVWSFGVLLWEIFTLGGSPYPGVPVEELFKLLKEGHRMDKPSNCTNELYMMMRDCWHAVPSQRPTFKQLVEDLDRIVALTSNQEYLDLSMPLDQYSPSFPDTRSSTCSSGEDSVFSHEPLPEEPCLPRHPAQLANGGLKRR
【0126】
配列番号19のアミノ酸配列を有する改変FGFR1タンパク質は、2つのIG様ドメインと、プロテインキナーゼドメインとを含む660個のアミノ酸を持つ。
【0127】
配列番号20は、試料A1116の転写産物を示す。注目すべきことに、5’UTR(FGFR1のイントロン1)内の断裂は、DNAレベルで多数の調節エレメントの欠失をもたらす。mRNAレベルでは、(FGFR1のエクソン1からコードされる)5’UTRの欠失が観察され得る。配列番号20は、エクソン2にコードされるwt-FGFR1のATG開始コドンを含む。配列番号20の転写産物の翻訳は、wt-FGFR1に対応する(配列番号1;FGFR1 NM_015850)。
【0128】
配列番号20
ACTGCTGGAGTTAATACCACCGACAAAGAGATGGAGGTGCTTCACTTAAGAAATGTCTCCTTTGAGGACGCAGGGGAGTATACGTGCTTGGCGGGTAACTCTATCGGACTCTCCCATCACTCTGCATGGTTGACCGTTCTGGAAGCCCTGGAAGAGAGGCCGGCAGTGATGACCTCGCCCCTGTACCTGGAGATCATCATCTATTGCACAGGGGCCTTCCTCATCTCCTGCATGGTGGGGTCGGTCATCGTCTACAAGATGAAGAGTGGTACCAAGAAGAGTGACTTCCACAGCCAGATGGCTGTGCACAAGCTGGCCAAGAGCATCCCTCTGCGCAGACAGGTAACAGTGTCTGCTGACTCCAGTGCATCCATGAACTCTGGGGTTCTTCTGGTTCGGCCATCACGGCTCTCCTCCAGTGGGACTCCCATGCTAGCAGGGGTCTCTGAGTATGAGCTTCCCGAAGACCCTCGCTGGGAGCTGCCTCGGGACAGACTGGTCTTAGGCAAACCCCTGGGAGAGGGCTGCTTTGGGCAGGTGGTGTTGGCAGAGGCTATCGGGCTGGACAAGGACAAACCCAACCGTGTGACCAAAGTGGCTGTGAAGATGTTGAAGTCGGACGCAACAGAGAAAGACTTGTCAGACCTGATCTCAGAAATGGAGATGATGAAGATGATCGGGAAGCATAAGAATATCATCAACCTGCTGGGGGCCTGCACGCAGGATGGTCCCTTGTATGTCATCGTGGAGTATGCCTCCAAGGGCAACCTGCGGGAGTACCTGCAGGCCCGGAGGCCCCCAGGGCTGGAATACTGCTACAACCCCAGCCACAACCCAGAGGAGCAGCTCTCCTCCAAGGACCTGGTGTCCTGCGCCTACCAGGTGGCCCGAGGCATGGAGTATCTGGCCTCCAAGAAGTGCATACACCGAGACCTGGCAGCCAGGAATGTCCTGGTGACAGAGGACAATGTGATGAAGATAGCAGACTTTGGCCTCGCACGGGACATTCACCACATCGACTACTATAAAAAGACAACCAACGGCCGACTGCCTGTGAAGTGGATGGCACCCGAGGCATTATTTGACCGGATCTACACCCACCAGAGTGATGTGTGGTCTTTCGGGGTGCTCCTGTGGGAGATCTTCACTCTGGGCGGCTCCCCATACCCCGGTGTGCCTGTGGAGGAACTTTTCAAGCTGCTGAAGGAGGGTCACCGCATGGACAAGCCCAGTAACTGCACCAACGAGCTGTACATGATGATGCGGGACTGCTGGCATGCAGTGCCCTCACAGAGACCCACCTTCAAGCAGCTGGTGGAAGACCTGGACCGCATCGTGGCCTTGACCTCCAACCAGGAGTACCTGGACCTGTCCATGCCCCTGGACCAGTACTCCCCCAGCTTTCCCGACACCCGGAGCTCTACGTGCTCCTCAGGGGAGGATTCCGTCTTCTCTCATGAGCCGCTGCCCGAGGAGCCCTGCCTGCCCCGACACCCAGCCCAGCTTGCCAATGGCGGACTCAAACGCCGCTGACTGCCACCCACACGCCCTCCCCAGACTCCACCGTCAGCTGTAACCCTCACCCACAGCCCCTGCTGGGCCCACCACCTGTCCGTCCCTGTCCCCTTTCCTGCTGGCAGGAGCCGGCTGCCTACCAGGGGCCTTCCTGTGTGGCCTGCCTTCACCCCACTCAGCTCACCTCTCCCTCCACCTCCTCTCCACCTGCTGGTGAGAGGTGCAAAGAGGCAGATCTTTGCTGCCAGCCACTTCATCCCCTCCCAGATGTTGGACCAACACCCCTCCCTGCCACCAGGCACTGCCTGGAGGGCAGGGAGTGGGAGCCAATGAACAGGCATGCAAGTGAGAGCTTCCTGAGCTTTCTCCTGTCGGTTTGGTCTGTTTTGCCTTCACCCATAAGCCCCTCGCACTCTGGTGGCAGGTGCCTTGTCCTCAGGGCTACAGCAGTAGGGAGGTCAGTGCTTCGTGCCTCGATTGAAGGTGACCTCTGCCCCAGATAGGTGGTGCCAGTGGCTTATTAATTCCGATACTAGTTTGCTTTGCTGACCAAATGCCTGGTACCAGAGGATGGTGAGGCGAAGGCCAGGTTGGGGGCAGTGTTGTGGCCCTGGGGCCCAGCCCCAAACTGGGGGCTCTGTATATAGCTATGAAGAAAACACAAAGTGTATAAATCTGAGTATATATTTACATGTCTTTTTAAAAGGGTCGTTACCAGAGATTTACCCATCGGGTAAGATGCTCCTGGTGGCTGGGAGGCATCAGTTGCTATATATTAAAAACAAAAAAGAAAAAAAAGGAAAATGTTTTTAAAAAGGTCATATATTTTTTGCTACTTTTGCTGTTTTATTTTTTTAAATTATGTTCTAAACCTATTTTCAGTTTAGGTCCCTCAATAAAAATTGCTGCTGCTTCA
【0129】
配列番号20中の下線部は転写されており、以下の配列番号21に示される。
【0130】
配列番号21
ATGGAGGTGCTTCACTTAAGAAATGTCTCCTTTGAGGACGCAGGGGAGTATACGTGCTTGGCGGGTAACTCTATCGGACTCTCCCATCACTCTGCATGGTTGACCGTTCTGGAAGCCCTGGAAGAGAGGCCGGCAGTGATGACCTCGCCCCTGTACCTGGAGATCATCATCTATTGCACAGGGGCCTTCCTCATCTCCTGCATGGTGGGGTCGGTCATCGTCTACAAGATGAAGAGTGGTACCAAGAAGAGTGACTTCCACAGCCAGATGGCTGTGCACAAGCTGGCCAAGAGCATCCCTCTGCGCAGACAGGTAACAGTGTCTGCTGACTCCAGTGCATCCATGAACTCTGGGGTTCTTCTGGTTCGGCCATCACGGCTCTCCTCCAGTGGGACTCCCATGCTAGCAGGGGTCTCTGAGTATGAGCTTCCCGAAGACCCTCGCTGGGAGCTGCCTCGGGACAGACTGGTCTTAGGCAAACCCCTGGGAGAGGGCTGCTTTGGGCAGGTGGTGTTGGCAGAGGCTATCGGGCTGGACAAGGACAAACCCAACCGTGTGACCAAAGTGGCTGTGAAGATGTTGAAGTCGGACGCAACAGAGAAAGACTTGTCAGACCTGATCTCAGAAATGGAGATGATGAAGATGATCGGGAAGCATAAGAATATCATCAACCTGCTGGGGGCCTGCACGCAGGATGGTCCCTTGTATGTCATCGTGGAGTATGCCTCCAAGGGCAACCTGCGGGAGTACCTGCAGGCCCGGAGGCCCCCAGGGCTGGAATACTGCTACAACCCCAGCCACAACCCAGAGGAGCAGCTCTCCTCCAAGGACCTGGTGTCCTGCGCCTACCAGGTGGCCCGAGGCATGGAGTATCTGGCCTCCAAGAAGTGCATACACCGAGACCTGGCAGCCAGGAATGTCCTGGTGACAGAGGACAATGTGATGAAGATAGCAGACTTTGGCCTCGCACGGGACATTCACCACATCGACTACTATAAAAAGACAACCAACGGCCGACTGCCTGTGAAGTGGATGGCACCCGAGGCATTATTTGACCGGATCTACACCCACCAGAGTGATGTGTGGTCTTTCGGGGTGCTCCTGTGGGAGATCTTCACTCTGGGCGGCTCCCCATACCCCGGTGTGCCTGTGGAGGAACTTTTCAAGCTGCTGAAGGAGGGTCACCGCATGGACAAGCCCAGTAACTGCACCAACGAGCTGTACATGATGATGCGGGACTGCTGGCATGCAGTGCCCTCACAGAGACCCACCTTCAAGCAGCTGGTGGAAGACCTGGACCGCATCGTGGCCTTGACCTCCAACCAGGAGTACCTGGACCTGTCCATGCCCCTGGACCAGTACTCCCCCAGCTTTCCCGACACCCGGAGCTCTACGTGCTCCTCAGGGGAGGATTCCGTCTTCTCTCATGAGCCGCTGCCCGAGGAGCCCTGCCTGCCCCGACACCCAGCCCAGCTTGCCAATGGCGGACTCAAACGCCGCTGA
【0131】
配列番号20及び配列番号21のクローニングに使用されるプライマーを、以下の配列番号22及び配列番号23として示す。
【0132】
配列番号22-CCGACAAAGAGATGGAGGTG (218_attB1_FGFR1_Virtuell)
【0133】
配列番号23-CAAAGAGATGGAGGTGCTTCAC (219_attB1_FGFR1_Virtuell)
【0134】
配列番号25は、FGFR1阻害剤療法に対するレスポンダーの更なる例示的な試料のFGFR1転写産物である。
【0135】
配列番号25
ATGGTGGGGTCGGTCATCGTCTACAAGATGAAGAGTGGTACCAAGAAGAGTGACTTCCACAGCCAGATGGCTGTGCACAAGCTGGCCAAGAGCATCCCTCTGCGCAGACAGGTGTCTGCTGACTCCAGTGCATCCATGAACTCTGGGGTTCTTCTGGTTCGGCCATCACGGCTCTCCTCCAGTGGGACTCCCATGCTAGCAGGGGTCTCTGAGTATGAGCTTCCCGAAGACCCTCGCTGGGAGCTGCCTCGGGACAGACTGGTCTTAGGCAAACCCCTGGGAGAGGGCTGCTTTGGGCAGGTGGTGTTGGCAGAGGCTATCGGGCTGGACAAGGACAAACCCAACCGTGTGACCAAAGTGGCTGTGAAGATGTTGAAGTCGGACGCAACAGAGAAAGACTTGTCAGACCTGATCTCAGAAATGGAGATGATGAAGATGATCGGGAAGCATAAGAATATCATCAACCTGCTGGGGGCCTGCACGCAGGATGGTCCCTTGTATGTCATCGTGGAGTATGCCTCCAAGGGCAACCTGCGGGAGTACCTGCAGGCCCGGAGGCCCCCAGGGCTGGAATACTGCTACAACCCCAGCCACAACCCAGAGGAGCAGCTCTCCTCCAAGGACCTGGTGTCCTGCGCCTACCAGGTGGCCCGAGGCATGGAGTATCTGGCCTCCAAGAAGTGCATACACCGAGACCTGGCAGCCAGGAATGTCCTGGTGACAGAGGACAATGTGATGAAGATAGCAGACTTTGGCCTCGCACGGGACATTCACCACATCGACTACTATAAAAAGACAACCAACGGCCGACTGCCTGTGAAGTGGATGGCACCCGAGGCATTATTTGACCGGATCTACACCCACCAGAGTGATGTGTGGTCTTTCGGGGTGCTCCTGTGGGAGATCTTCACTCTGGGCGGCTCCCCATACCCCGGTGTGCCTGTGGAGGAACTTTTCAAGCTGCTGAAGGAGGGTCACCGCATGGACAAGCCCAGTAACTGCACCAACGAGCTGTACATGATGATGCGGGACTGCTGGCATGCAGTGCCCTCACAGAGACCCACCTTCAAGCAGCTGGTGGAAGACCTGGACCGCATCGTGGCCTTGACCTCCAACCAGGAGTACCTGGACCTGTCCATGCCCCTGGACCAGTACTCCCCCAGCTTTCCCGACACCCGGAGCTCTACGTGCTCCTCAGGGGAGGATTCCGTCTTCTCTCATGAGCCGCTGCCCGAGGAGCCCTGCCTGCCCCGACACCCAGCCCAGCTTGCCAATGGCGGACTCAAACGCCGCTGA
【0136】
配列番号25の翻訳は、配列番号26のアミノ酸配列を含むタンパク質を生成する。
【0137】
配列番号26
MVGSVIVYKMKSGTKKSDFHSQMAVHKLAKSIPLRRQVSADSSASMNSGVLLVRPSRLSSSGTPMLAGVSEYELPEDPRWELPRDRLVLGKPLGEGCFGQVVLAEAIGLDKDKPNRVTKVAVKMLKSDATEKDLSDLISEMEMMKMIGKHKNIINLLGACTQDGPLYVIVEYASKGNLREYLQARRPPGLEYCYNPSHNPEEQLSSKDLVSCAYQVARGMEYLASKKCIHRDLAARNVLVTEDNVMKIADFGLARDIHHIDYYKKTTNGRLPVKWMAPEALFDRIYTHQSDVWSFGVLLWEIFTLGGSPYPGVPVEELFKLLKEGHRMDKPSNCTNELYMMMRDCWHAVPSQRPTFKQLVEDLDRIVALTSNQEYLDLSMPLDQYSPSFPDTRSSTCSSGEDSVFSHEPLPEEPCLPRHPAQLANGGLKRR
【0138】
配列番号26のアミノ酸配列を含む改変FGFR1タンパク質は、ΔEC-FGFR1(配列番号14)と比較して、N末端短縮のため追加の21アミノ酸を欠く。配列番号26はΔEC-21-FGFR1とも呼ばれる。配列番号26中の二重下線付き残基は、より短い膜貫通ドメインの一部であり、一重下線付き残基はキナーゼドメインを形成する。
【0139】
配列番号25のクローニングに使用されるフォワードプライマーを、以下の配列番号27に示す。配列番号27-ATGGTGGGGTCGGTCAT(230_F_ΔEC-21-FGFR1)。配列番号25のクローニング用リバースプライマーとして、FGFR1のエクソン1~エクソン12の任意のリバースプライマーを使用することができる。
【0140】
配列番号28は、FGFR1阻害剤療法に対するレスポンダーの更なる例示的な試料のFGFR1転写産物である。
【0141】
配列番号28
ATGAAGAGTGGTACCAAGAAGAGTGACTTCCACAGCCAGATGGCTGTGCACAAGCTGGCCAAGAGCATCCCTCTGCGCAGACAGGTGTCTGCTGACTCCAGTGCATCCATGAACTCTGGGGTTCTTCTGGTTCGGCCATCACGGCTCTCCTCCAGTGGGACTCCCATGCTAGCAGGGGTCTCTGAGTATGAGCTTCCCGAAGACCCTCGCTGGGAGCTGCCTCGGGACAGACTGGTCTTAGGCAAACCCCTGGGAGAGGGCTGCTTTGGGCAGGTGGTGTTGGCAGAGGCTATCGGGCTGGACAAGGACAAACCCAACCGTGTGACCAAAGTGGCTGTGAAGATGTTGAAGTCGGACGCAACAGAGAAAGACTTGTCAGACCTGATCTCAGAAATGGAGATGATGAAGATGATCGGGAAGCATAAGAATATCATCAACCTGCTGGGGGCCTGCACGCAGGATGGTCCCTTGTATGTCATCGTGGAGTATGCCTCCAAGGGCAACCTGCGGGAGTACCTGCAGGCCCGGAGGCCCCCAGGGCTGGAATACTGCTACAACCCCAGCCACAACCCAGAGGAGCAGCTCTCCTCCAAGGACCTGGTGTCCTGCGCCTACCAGGTGGCCCGAGGCATGGAGTATCTGGCCTCCAAGAAGTGCATACACCGAGACCTGGCAGCCAGGAATGTCCTGGTGACAGAGGACAATGTGATGAAGATAGCAGACTTTGGCCTCGCACGGGACATTCACCACATCGACTACTATAAAAAGACAACCAACGGCCGACTGCCTGTGAAGTGGATGGCACCCGAGGCATTATTTGACCGGATCTACACCCACCAGAGTGATGTGTGGTCTTTCGGGGTGCTCCTGTGGGAGATCTTCACTCTGGGCGGCTCCCCATACCCCGGTGTGCCTGTGGAGGAACTTTTCAAGCTGCTGAAGGAGGGTCACCGCATGGACAAGCCCAGTAACTGCACCAACGAGCTGTACATGATGATGCGGGACTGCTGGCATGCAGTGCCCTCACAGAGACCCACCTTCAAGCAGCTGGTGGAAGACCTGGACCGCATCGTGGCCTTGACCTCCAACCAGGAGTACCTGGACCTGTCCATGCCCCTGGACCAGTACTCCCCCAGCTTTCCCGACACCCGGAGCTCTACGTGCTCCTCAGGGGAGGATTCCGTCTTCTCTCATGAGCCGCTGCCCGAGGAGCCCTGCCTGCCCCGACACCCAGCCCAGCTTGCCAATGGCGGACTCAAACGCCGCTGA
【0142】
配列番号28の翻訳は、配列番号29のアミノ酸配列を含むタンパク質を生成する。
【0143】
配列番号29
MKSGTKKSDFHSQMAVHKLAKSIPLRRQVSADSSASMNSGVLLVRPSRLSSSGTPMLAGVSEYELPEDPRWELPRDRLVLGKPLGEGCFGQVVLAEAIGLDKDKPNRVTKVAVKMLKSDATEKDLSDLISEMEMMKMIGKHKNIINLLGACTQDGPLYVIVEYASKGNLREYLQARRPPGLEYCYNPSHNPEEQLSSKDLVSCAYQVARGMEYLASKKCIHRDLAARNVLVTEDNVMKIADFGLARDIHHIDYYKKTTNGRLPVKWMAPEALFDRIYTHQSDVWSFGVLLWEIFTLGGSPYPGVPVEELFKLLKEGHRMDKPSNCTNELYMMMRDCWHAVPSQRPTFKQLVEDLDRIVALTSNQEYLDLSMPLDQYSPSFPDTRSSTCSSGEDSVFSHEPLPEEPCLPRHPAQLANGGLKRR
【0144】
配列番号29のアミノ酸配列を含む改変FGFR1タンパク質は、ΔEC-FGFR1(配列番号14)と比較した場合、30個のアミノ酸を欠く。配列番号29はΔEC-30-FGFR1とも称される。N末端短縮により、配列番号29のアミノ酸配列を含むタンパク質は、IG様ドメインを持たないが、キナーゼドメインを持つ。配列番号29中の下線付き残基はキナーゼドメインを形成する。
【0145】
配列番号28のクローニングに使用されるフォワードプライマーを、以下の配列番号30に示す。配列番号30-ATGAAGAGTGGTACCAAGAAGAGTG(231_F_ΔEC-30-FGFR1)。配列番号28のクローニング用リバースプライマーとして、FGFR1のエクソン1~エクソン12の任意のリバースプライマーを使用することができる。
【0146】
配列番号31は、FGFR1阻害剤療法に対するレスポンダー更なる例示的な試料のFGFR1転写産物である。
【0147】
配列番号31
ATGCTAGCAGGGGTCTCTGAGTATGAGCTTCCCGAAGACCCTCGCTGGGAGCTGCCTCGGGACAGACTGGTCTTAGGCAAACCCCTGGGAGAGGGCTGCTTTGGGCAGGTGGTGTTGGCAGAGGCTATCGGGCTGGACAAGGACAAACCCAACCGTGTGACCAAAGTGGCTGTGAAGATGTTGAAGTCGGACGCAACAGAGAAAGACTTGTCAGACCTGATCTCAGAAATGGAGATGATGAAGATGATCGGGAAGCATAAGAATATCATCAACCTGCTGGGGGCCTGCACGCAGGATGGTCCCTTGTATGTCATCGTGGAGTATGCCTCCAAGGGCAACCTGCGGGAGTACCTGCAGGCCCGGAGGCCCCCAGGGCTGGAATACTGCTACAACCCCAGCCACAACCCAGAGGAGCAGCTCTCCTCCAAGGACCTGGTGTCCTGCGCCTACCAGGTGGCCCGAGGCATGGAGTATCTGGCCTCCAAGAAGTGCATACACCGAGACCTGGCAGCCAGGAATGTCCTGGTGACAGAGGACAATGTGATGAAGATAGCAGACTTTGGCCTCGCACGGGACATTCACCACATCGACTACTATAAAAAGACAACCAACGGCCGACTGCCTGTGAAGTGGATGGCACCCGAGGCATTATTTGACCGGATCTACACCCACCAGAGTGATGTGTGGTCTTTCGGGGTGCTCCTGTGGGAGATCTTCACTCTGGGCGGCTCCCCATACCCCGGTGTGCCTGTGGAGGAACTTTTCAAGCTGCTGAAGGAGGGTCACCGCATGGACAAGCCCAGTAACTGCACCAACGAGCTGTACATGATGATGCGGGACTGCTGGCATGCAGTGCCCTCACAGAGACCCACCTTCAAGCAGCTGGTGGAAGACCTGGACCGCATCGTGGCCTTGACCTCCAACCAGGAGTACCTGGACCTGTCCATGCCCCTGGACCAGTACTCCCCCAGCTTTCCCGACACCCGGAGCTCTACGTGCTCCTCAGGGGAGGATTCCGTCTTCTCTCATGAGCCGCTGCCCGAGGAGCCCTGCCTGCCCCGACACCCAGCCCAGCTTGCCAATGGCGGACTCAAACGCCGCTGA
【0148】
配列番号31の翻訳は、配列番号32のアミノ酸配列を含むタンパク質を生成する。
【0149】
配列番号32
MLAGVSEYELPEDPRWELPRDRLVLGKPLGEGCFGQVVLAEAIGLDKDKPNRVTKVAVKMLKSDATEKDLSDLISEMEMMKMIGKHKNIINLLGACTQDGPLYVIVEYASKGNLREYLQARRPPGLEYCYNPSHNPEEQLSSKDLVSCAYQVARGMEYLASKKCIHRDLAARNVLVTEDNVMKIADFGLARDIHHIDYYKKTTNGRLPVKWMAPEALFDRIYTHQSDVWSFGVLLWEIFTLGGSPYPGVPVEELFKLLKEGHRMDKPSNCTNELYMMMRDCWHAVPSQRPTFKQLVEDLDRIVALTSNQEYLDLSMPLDQYSPSFPDTRSSTCSSGEDSVFSHEPLPEEPCLPRHPAQLANGGLKRR
【0150】
配列番号32のアミノ酸配列を含む改変FGFR1タンパク質は、ΔEC-FGFR1(配列番号14)と比較した場合、85個のアミノ酸を欠く。配列番号32はΔEC-85-FGFR1とも称される。配列番号32のアミノ酸配列を含むタンパク質は、N末端短縮により、IG様ドメインを持たないが、キナーゼドメインを持つ。配列番号32中の下線付き残基はキナーゼドメインを形成する。
【0151】
配列番号31のクローニングに使用されるフォワードプライマーを、以下の配列番号33に示す。配列番号33-CATGCTAGCAGGGGTCTCT(232_F_ΔEC-85-FGFR1)。配列番号25のクローニング用リバースプライマーとして、FGFR1のエクソン1~エクソン12の任意のリバースプライマーを使用することができる。
【0152】
配列番号34は、FGFR1阻害剤療法に対するレスポンダーの更なる例示的な試料のFGFR1転写産物である。
【0153】
配列番号34
ATGCTAGCAGGGGTCTCTGAGTATGAGCTTCCCGAAGACCCTCGCTGGGAGCTGCCTCGGGACAGACTGGTCTTAGGCAAACCCCTGGGAGAGGGCTGCTTTGGGCAGGTGGTGTTGGCAGAGGCTATCGGGCTGGACAAGGACAAACCCAACCGTGTGACCAAAGTGGCTGTGAAGATGTTGAAGTCGGACGCAACAGAGAAAGACTTGTCAGACCTGATCTCAGAAATGGAGATGATGAAGATGATCGGGAAGCATAAGAATATCATCAACCTGCTGGGGGCCTGCACGCAGGATGGTCCCTTGTATGTCATCGTGGAGTATGCCTCCAAGGGCAACCTGCGGGAGTACCTGCAGGCCCGGAGGCCCCCAGGGCTGGAATACTGCTACAACCCCAGCCACAACCCAGAGGAGCAGCTCTCCTCCAAGGACCTGGTGTCCTGCGCCTACCAGGTGGCCCGAGGCATGGAGTATCTGGCCTCCAAGAAGTGCATACACCGAGACCTGGCAGCCAGGAATGTCCTGGTGACAGAGGACAATGTGATGAAGATAGCAGACTTTGGCCTCGCACGGGACATTCACCACATCGACTACTATAAAAAGACAACCAACGGCCGACTGCCTGTGAAGTGGATGGCACCCGAGGCATTATTTGACCGGATCTACACCCACCAGAGTGATGTGTGGTCTTTCGGGGTGCTCCTGTGGGAGATCTTCACTCTGGGCGGCTCCCCATACCCCGGTGTGCCTGTGGAGGAACTTTTCAAGCTGCTGAAGGAGGGTCACCGCATGGACAAGCCCAGTAACTGCACCAACGAGCTGTACATGATGATGCGGGACTGCTGGCATGCAGTGCCCTCACAGAGACCCACCTTCAAGCAGCTGGTGGAAGACCTGGACCGCATCGTGGCCTTGACCTCCAACCAGGAGTACCTGGACCTGTCCATGCCCCTGGACCAGTACTCCCCCAGCTTTCCCGACACCCGGAGCTCTACGTGCTCCTCAGGGGAGGATTCCGTCTTCTCTCATGAGCCGCTGCCCGAGGAGCCCTGCCTGCCCCGACACCCAGCCCAGCTTGCCAATGGCGGACTCAAACGCCGCTGA
【0154】
配列番号34の翻訳は、配列番号35のアミノ酸配列を含むタンパク質を生成する。
【0155】
配列番号35
MLKSDATEKDLSDLISEMEMMKMIGKHKNIINLLGACTQDGPLYVIVEYASKGNLREYLQARRPPGLEYCYNPSHNPEEQLSSKDLVSCAYQVARGMEYLASKKCIHRDLAARNVLVTEDNVMKIADFGLARDIHHIDYYKKTTNGRLPVKWMAPEALFDRIYTHQSDVWSFGVLLWEIFTLGGSPYPGVPVEELFKLLKEGHRMDKPSNCTNELYMMMRDCWHAVPSQRPTFKQLVEDLDRIVALTSNQEYLDLSMPLDQYSPSFPDTRSSTCSSGEDSVFSHEPLPEEPCLPRHPAQLANGGLKRR
【0156】
配列番号35のアミノ酸配列を含む改変FGFR1タンパク質は、ΔEC-FGFR1(配列番号14)と比較した場合、144個のアミノ酸を欠く。したがって、配列番号35はΔEC-144-FGFR1とも称される。N末端短縮により、配列番号35のアミノ酸配列を含むタンパク質はIG様ドメインを持たず、おそらく機能性キナーゼドメインも持たない。しかしながら、配列番号35のアミノ酸配列のキナーゼドメインの一部を形成する残基には下線を付してある。
【0157】
配列番号34のクローニングに使用されるフォワードプライマーを、以下の配列番号36に示す。配列番号36-ATGCTAGCAGGGGTCTCTGA(233_F_ΔEC-144-FGFR1)。配列番号25のクローニング用リバースプライマーとして、FGFR1のエクソン1~エクソン12の任意のリバースプライマーを使用することができる。
【0158】
配列番号37は、野生型FGFR1(NM_015850)を示す。
【0159】
配列番号37
ATGTGGAGCTGGAAGTGCCTCCTCTTCTGGGCTGTGCTGGTCACAGCCACACTCTGCACCGCTAGGCCGTCCCCGACCTTGCCTGAACAAGCCCAGCCCTGGGGAGCCCCTGTGGAAGTGGAGTCCTTCCTGGTCCACCCCGGTGACCTGCTGCAGCTTCGCTGTCGGCTGCGGGACGATGTGCAGAGCATCAACTGGCTGCGGGACGGGGTGCAGCTGGCGGAAAGCAACCGCACCCGCATCACAGGGGAGGAGGTGGAGGTGCAGGACTCCGTGCCCGCAGACTCCGGCCTCTATGCTTGCGTAACCAGCAGCCCCTCGGGCAGTGACACCACCTACTTCTCCGTCAATGTTTCAGATGCTCTCCCCTCCTCGGAGGATGATGATGATGATGATGACTCCTCTTCAGAGGAGAAAGAAACAGATAACACCAAACCAAACCCCGTAGCTCCATATTGGACATCCCCAGAAAAGATGGAAAAGAAATTGCATGCAGTGCCGGCTGCCAAGACAGTGAAGTTCAAATGCCCTTCCAGTGGGACCCCAAACCCCACACTGCGCTGGTTGAAAAATGGCAAAGAATTCAAACCTGACCACAGAATTGGAGGCTACAAGGTCCGTTATGCCACCTGGAGCATCATAATGGACTCTGTGGTGCCCTCTGACAAGGGCAACTACACCTGCATTGTGGAGAATGAGTACGGCAGCATCAACCACACATACCAGCTGGATGTCGTGGAGCGGTCCCCTCACCGGCCCATCCTGCAAGCAGGGTTGCCCGCCAACAAAACAGTGGCCCTGGGTAGCAACGTGGAGTTCATGTGTAAGGTGTACAGTGACCCGCAGCCGCACATCCAGTGGCTAAAGCACATCGAGGTGAATGGGAGCAAGATTGGCCCAGACAACCTGCCTTATGTCCAGATCTTGAAGACTGCTGGAGTTAATACCACCGACAAAGAGATGGAGGTGCTTCACTTAAGAAATGTCTCCTTTGAGGACGCAGGGGAGTATACGTGCTTGGCGGGTAACTCTATCGGACTCTCCCATCACTCTGCATGGTTGACCGTTCTGGAAGCCCTGGAAGAGAGGCCGGCAGTGATGACCTCGCCCCTGTACCTGGAGATCATCATCTATTGCACAGGGGCCTTCCTCATCTCCTGCATGGTGGGGTCGGTCATCGTCTACAAGATGAAGAGTGGTACCAAGAAGAGTGACTTCCACAGCCAGATGGCTGTGCACAAGCTGGCCAAGAGCATCCCTCTGCGCAGACAGGTAACAGTGTCTGCTGACTCCAGTGCATCCATGAACTCTGGGGTTCTTCTGGTTCGGCCATCACGGCTCTCCTCCAGTGGGACTCCCATGCTAGCAGGGGTCTCTGAGTATGAGCTTCCCGAAGACCCTCGCTGGGAGCTGCCTCGGGACAGACTGGTCTTAGGCAAACCCCTGGGAGAGGGCTGCTTTGGGCAGGTGGTGTTGGCAGAGGCTATCGGGCTGGACAAGGACAAACCCAACCGTGTGACCAAAGTGGCTGTGAAGATGTTGAAGTCGGACGCAACAGAGAAAGACTTGTCAGACCTGATCTCAGAAATGGAGATGATGAAGATGATCGGGAAGCATAAGAATATCATCAACCTGCTGGGGGCCTGCACGCAGGATGGTCCCTTGTATGTCATCGTGGAGTATGCCTCCAAGGGCAACCTGCGGGAGTACCTGCAGGCCCGGAGGCCCCCAGGGCTGGAATACTGCTACAACCCCAGCCACAACCCAGAGGAGCAGCTCTCCTCCAAGGACCTGGTGTCCTGCGCCTACCAGGTGGCCCGAGGCATGGAGTATCTGGCCTCCAAGAAGTGCATACACCGAGACCTGGCAGCCAGGAATGTCCTGGTGACAGAGGACAATGTGATGAAGATAGCAGACTTTGGCCTCGCACGGGACATTCACCACATCGACTACTATAAAAAGACAACCAACGGCCGACTGCCTGTGAAGTGGATGGCACCCGAGGCATTATTTGACCGGATCTACACCCACCAGAGTGATGTGTGGTCTTTCGGGGTGCTCCTGTGGGAGATCTTCACTCTGGGCGGCTCCCCATACCCCGGTGTGCCTGTGGAGGAACTTTTCAAGCTGCTGAAGGAGGGTCACCGCATGGACAAGCCCAGTAACTGCACCAACGAGCTGTACATGATGATGCGGGACTGCTGGCATGCAGTGCCCTCACAGAGACCCACCTTCAAGCAGCTGGTGGAAGACCTGGACCGCATCGTGGCCTTGACCTCCAACCAGGAGTACCTGGACCTGTCCATGCCCCTGGACCAGTACTCCCCCAGCTTTCCCGACACCCGGAGCTCTACGTGCTCCTCAGGGGAGGATTCCGTCTTCTCTCATGAGCCGCTGCCCGAGGAGCCCTGCCTGCCCCGACACCCAGCCCAGCTTGCCAATGGCGGACTCAAACGCCGCTGA
【実施例】
【0160】
本発明の或る特定の態様及び実施形態が、ここで例として、本明細書に示す説明、図面及び表を参照しながら説明される。本発明の方法、使用及びその他の態様のかかる例は、あくまでも代表例であり、本発明の範囲をかかる代表例のみに限定するものと解釈すべきではない。
【0161】
実施例は以下を示す:
【0162】
実施例1:扁平上皮肺癌における切断-融合-架橋様機構による8p腕内のhead-to-headに続くtail-to-tailの染色体内断裂の同定
本発明者らは、8p11-8p12の異種増幅パターン等の明確な8p11増幅ゲノム構造が、遺伝子型及び表現型のFGFR1依存性、すなわちFGFR1増幅腫瘍のFGFR阻害剤(FGFRi)療法に対する応答性につながるかどうかを分析した。具体的には、本発明者らは、FGFR阻害に対する応答性が不明な8p11-12増幅扁平上皮肺癌を最初に分析した。
【0163】
ヒト肺腫瘍標本(初期研究コホート):本発明者らは、複数の共同研究機関から新鮮凍結組織標本、凍結切片又は新鮮凍結材料から抽出したゲノムDNAとして提供された合計計27の新鮮凍結扁平上皮肺癌腫瘍(SQLC)試料を収集した。全ての腫瘍試料は、少なくとも60%の純度を有し、壊死の広範な兆候がないことが病理学的に評定された。さらに、これらの腫瘍試料は少なくとも2人の独立した専門家病理医によって審査され、SQLCの診断はH&E染色及び免疫組織化学によって組織学的に確認された。免疫組織化学では、4%PBS緩衝ホルマリンで組織を固定し、パラフィン(FFPE)に包埋した。免疫組織化学を、pFGFR1に対する特異的抗体(Abnova、Y154)を用いて3μmスライドで以前に記載されるように行った。
【0164】
EDTA-抗凝固血液又は隣接する非腫瘍性肺組織の形で、適合する正常材料が提供された。適合する正常組織は病理学的評定により腫瘍汚染がないことが確認された。さらに、SNP 6.0アレイ及びシークエンス分析により、同一患者から腫瘍及び適合する正常材料が取得されたことが確認された。ヒト腫瘍試料は書面によるインフォームドコンセントに従ってIRB承認プロトコルの下で患者から取得され、患者材料を-80℃で保存した。
【0165】
ゲノム及びトランスクリプトームシーケンシング:bwa-mem(0.7.13-r1126;https://github.com/lh3/bwa)を使用してシーケンシングリードを参照ゲノム(NCBI build 37/hg19)にアラインメントし、PCR重複の可能性及び重複するリード対の領域をマスキングし、突然変異及び全ゲノムの場合はゲノム再編成を呼び出すために使用される様々なカウント統計を収集することによってデータが処理される。最後に、Sclustを試料純度推定及びコピー数分析に使用する。TRUPを用いてRNA-seqデータを分析した。
【0166】
ARCHERシーケンシング:製造業者の指示に従って、Maxwell RSC RNA FFPEキットと組み合わせたMaxwell RSC(Promega)を使用して、FFPE材料からRNAを抽出した。TURBO DNAフリーキット(Thermo Fisher Scientific)でゲノムDNAの除去を行い、Qubit RNA HSアッセイキット(Thermo Fisher)を用いてtRNAとRNAの両方を定量した。RNAの完全性の分析を、4200 TapeStation System(Agilent Technologies、米国カリフォルニア州サンタクララ)で行った。
【0167】
融合検出には、ライブラリー調製用に200ng tRNAインプットを用いて、製造業者の指示に従ってArcher FusionPlex Lung Panel(ArcherDX)を使用した。KAPA Library定量キット(Roche、米国カリフォルニア州プレザントン)を用いて精製したライブラリーを定量した。Nextseq System(Illumina、米国カリフォルニア州サンディエゴ)でシーケンシングを行い、Archer Suite Analysis v 6.2.7(ArcherDX)で結果を分析した。Archer Suite Analysisソフトウェアは逆位を標識することができないため、bamファイルを抽出してIntegrative Genomics Viewer(IGV)に直接ロードし、tail-to-tail断裂を可視化した。
【0168】
コンピューター分析:コピー数をGISTIC(GISTIC2.0 facilitates sensitive and confident localization of the targets of focal somatic copy-number alteration in human cancersを参照)及びROBOCOPで可視化した。FGFR1領域におけるコピー数の情報を試料間で要約するため、FGFR1遺伝子座の周囲2MBのビューウィンドウを10’000ビンに分割した。次いで、利用可能な染色体セグメントベースのコピー数データを各試料についてこれらのビンにマッピングした。次に、或る特定の条件内の全ての試料のコピー数のビン当たりの平均を計算し、ウィンドウサイズを10(全ゲノムシーケンシングデータの場合)とし、これらの数字のうち500をCAGEデータにおいてノイズを低減するローリング平均を求めた。コピー数のローリングビン平均を決定するプロセスは、ここではROBOCOPアルゴリズムとして定義される。染色体のセグメンテーションと(増幅された)FGFR1遺伝子座におけるセグメントコピー数の値の配列nが与えられた場合、このアプローチは最初の野生型セグメンテーションに回文BFB変換を適用することで、おおよそのコピー数配列「n’」を推定する。シーケンス間の類似性/距離は、近似n’が与えられたときに配列nを観察するポアソン尤度として測定される。提供されたJavaアプリケーションを使用して、BFB推論は2つの工程、すなわち(1)n’の推定(java bfb.BFB_Algo counts:n mode:substring model:Poisson maxError:0)、及び(2)n’をBFB変換の配列に変換すること(java bfb.BFB_Algo counts:n' mode:search)で行われた。興味深いことに、BFBが少なくとも8セグメントの近似を持つアンプリコンのみが高信頼(n=11)であると考えられ、一方、8セグメント未満のアンプリコン及び/又は折り返し型逆位による支持がないアンプリコンは、BFBを基礎メカニズムとして確実に推論するには曖昧すぎた(n=14)。
【0169】
本発明者らは、腫瘍及びそれらの適合する正常組織の全ゲノムシーケンシング及びトランスクリプトーム(25のうち22)シーケンシングを行った。予想通り、25個の試料全ての平均コピー数をプロットしたところ、FGFR1と隣接するNSD3遺伝子(FDR q=1.3×10
-38)を中心に増幅されていることが明らかになった(
図1a)。8p11-12アンプリコンの正確なゲノム構造を解読するために、本発明者らは、発生する全ての再編成を調べ、参照ゲノム(正常、head-to-head、又はtail-to-tail)と比較して、それらの向きに従って命名した。本発明者らは、FGFR1の転写開始側に近いtail-to-tail断裂を持つアンプリコンのみが、FGFR1/NSD3周辺を中心とした増幅パターンを駆動することを見出した。本発明者らは、FGFR1の上流400キロベース(kb)の領域内でtail-to-tail断裂が起こった9つの試料を特定した(36%)。これらの試料は、FGFR1という1つの遺伝子のみに焦点を当てた550kbの局所アンプリコンを示したが、明瞭なtail-to-tail断裂がない腫瘍では、増幅領域は3倍(1.7mb)大きかった(
図1a)。アンプリコンがFGFR1を中心とする、9標本中5標本(56%)において、局所増幅につながる第2の断裂が、NSD3(又はWHSC1L1)遺伝子内にあった。これらの断裂は、主にhead-to-head断裂(5個中4個)であり、NSD3のエクソン13~エクソン23の欠失につながる(
図1b)。NSD3内にhead-to-head断裂を有する腫瘍は、触媒SETドメインを欠損するNSD3の短いアイソフォームの発現増加を示し、非発癌性であることが報告されている。反対に、FGFR1の細胞内部分を特に増幅する別の腫瘍では、FGFR1内のtail-to-tail断裂が起こる(
図1c)。この断裂の影響を以下に述べる(
図3)。したがって、25個の8p増幅扁平上皮肺癌標本のうち9個において、tail-to-tail再編成は、FGFR1のみを中心とする局所増幅を引き起こした。これらの腫瘍のうち4つにおいて、本発明者らは、破壊的なゲノム事象に起因するSETドメインをコードするエクソンを欠くNSD3の非発癌性バージョンが優勢に発現していることを見出した(
図1b)。
【0170】
更に詳細な解析により、8p上のゲノム再編成のパターンはテロメア喪失、切り取られた読み取り方向、コピー数変動、及び少なくとも8つのコピー数セグメントという特徴的な性質を持つ切断-融合-架橋(BFB)サイクルに由来することを示した(
図1d)。FGFR1を増幅した25例全てにおいて、テロメア喪失が観察され、これは染色体内のhead-to-head融合及びtail-to-tail融合を頻繁に伴っていた(切り取られた読み取り方向によってhead-to-head断裂又はtail-to-tail断裂として検出)(
図1d、
図1e)。こうして本発明者らは、腫瘍の44%(25個中11個)でBFBが8p増幅の根本的な原因であることを確実に特定することができた。試料の56%では、セグメント化が低いか、観察された再編成からの支持がないため、BFB機構が不確実であった(48%)か、又は除外(8%)された。最後に、本発明者らは、再びBFB機構を確認し、観察されたゲノム断裂のみを考慮して、根本的な機構としてのBFBの組み立て理論に従って、1つの腫瘍において正確な8pアンプリコンを正しく再構築することができた(
図1f、
図1g)。要約すると、扁平上皮肺癌における8p増幅は、大多数の症例で切断融合架橋によって引き起こされる。FGFR1転写開始側に近い染色体内tail-to-tail断裂とそれに続くNSD3内又はそれに近いhead-to-head断裂は、局所増幅及びFGFR1を中心とする増幅を引き起こす。
【0171】
まとめると、本発明者らは、8p11-8p12の増幅は、BFB様機構によって駆動されることを示した。FGFR1転写開始側に近い染色体内のtail-to-tail断裂は局所増幅を引き起こし、FGFR阻害剤の感受性と関連している。
【0172】
実施例2:8p11-p12増幅肺癌腫瘍を形成する切断-融合-架橋機構とFGFR1阻害剤依存性の根本的な機構の確認
8p11-8p12増幅肺癌腫瘍の理解を深め、8p12-8p11アンプリコン構造の特定のパターンとFGFR1の依存性を結びつけるために、本発明者らはFGFR阻害に対する既知の感度を持つ26個の8p増幅腫瘍標本の独立したコホートを分析した。詳細には、本発明者らは、FGFR1を増幅した8つの肺癌細胞株を分析し(
図2a、
図2b)、そのうち6個は低分子阻害剤であるBGJ398及びAZD4547によるFGFR阻害に耐性であり(半増殖阻害濃度、すなわちGI
50、>1μM)、2個の細胞株は感受性であった(GI
50<1μM、H1581及びDMS114)(
図2a)。8pアンプリコンの特定の構造がFGFR依存性を決定するという本発明者らの仮説を確認し、感受性細胞株ではアンプリコンはFGFR1とNSD3を中心とするが、耐性細胞株では増幅はFGFR1に対して局所でもなく、FGFR1を中心としなかった(
図2b)。注目すべきことに、本発明者らは、最も高感度な細胞株H1581に1つの破壊的なNSD3断裂ポイントを見つけ、NSD3のエクソン15をANK1のエクソン10とのフレーム外融合に再編成した。
【0173】
さらに、本発明者らは、患者由来の8p12-8p11増幅扁平上皮肺癌異種移植モデルを分析した。全体として、本発明者らは、EpoBerlinの患者由来異種移植片(PDX)モデル35例、Crown Bioscience Inc.からのPDXモデル39例、以前に記載されたMoro Massimoの試料3例に対してFGFR1蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)を行った。さらに、本発明者らは、NSGマウスにマトリゲル(Corning)5μl~10μlと共に生検(DMEM培地中で輸送)に由来する腫瘍片2mm
3~3mm
3を皮下に移植して、8つのPDXモデルを確立した。本発明者らは、8つのFGFR1増幅モデルを特定し、CAGEシーケンシングを行った。FGFR1増幅を確認するCAGEシーケンシング試料は、BGJ398(Tocris Bioscience、20mg/kg、33%のPEG300、5%のグルコースに溶解、毎週ストックを新しく調製し、4℃で保存)又はビヒクル(33%PEG300、5%グルコース)で1群あたり少なくとも3匹ずつ毎日経口治療した。患者由来異種移植(PDX)モデル8例のうち3例はFGFR阻害に感受性であった(
図2c)。ゲノムシーケンシングデータから抽出した染色体遺伝子のコピー数を分析すると、高感度PDXモデルではNSD3とFGFR1を中心とした増幅パターンが再び明らかになった(
図2d)。注目すべきことに、本発明者らは、或る感受性モデルでは、エクソン9~エクソン23を欠失する有害なhead-to-head NSD3再編成を観察したが、これは非感受性モデルのいずれにも見られなかった。対照的に、非感受性PDXモデルでは、8p増幅はFGFR1中心ではなく、8p11-8p12遺伝子座内でも局所ではなく、本発明者らは、FGFR1遺伝子に影響を与える破壊的なhead-to-head再編成を見出し、1つの非感受性PDXではエクソン6~エクソン18を欠失したが、これはどの感受性モデルでも検出されなかった。
【0174】
最後に、本発明者らは、FGFR1増幅扁平上皮肺癌を有する患者10名から得られた生検標本を分析した。試料はホルマリン固定生検であり、治療前に採取した。これらの患者のうち8名は、第I相臨床試験の一環としてFGFR阻害剤BGJ398で治療されており(
図2e)、1名は、FGFRも阻害するマルチキナーゼ阻害剤であるパゾパニブの適用外使用に応答した。この10名の患者のうち、4名は9ヶ月~17ヶ月持続する部分応答(最大腫瘍径の少なくとも30%の腫瘍縮小と定義)を経験し、6名はFGFR阻害剤による治療下で進行性の疾患を有した。患者試料から入手可能なDNAの量が少ないことを考慮して、本発明者らは、ゲノム8p11-8p12遺伝子座の大部分と並んで、追加の226遺伝子をカバーするように調整されたハイブリッドキャプチャに基づくシーケンシングアッセイを開発した。本発明者らは、このアプローチを用いて、平均シークエンス深度470倍で10個の臨床標本を配列決定した。本発明者らは、FGFR阻害剤BGJ398に対する応答を経験していない患者から得られた5つの腫瘍標本のうち3つに8pの非局所増加に加えて、3つの異なるPIK3CA変異(G118S、E545K、及びH1047R)を見出した。一般にFGFR阻害に応答しなかった患者は、ADAMファミリー遺伝子を中心とした増幅を示す(
図2e、
図2f)。対照的に、染色体遺伝子のコピー数を詳細に解析したところ、FGFR阻害に対して測定可能な応答を有する患者では、FGFR1/NSD3を中心とした局所増幅が明らかになった(
図2e、
図2f)。さらに、本発明者らは、応答患者群でNSD3内に1つの有害なhead-to-head断裂(9個の試料のうち1個、エクソン6~エクソン23を欠失)を認めた。
【0175】
本発明者らは、FGFR阻害剤で治療を受けた患者、PDXモデル、及び細胞株のプール分析では、FGFR1転写開始側に近いtail-to-tail断裂によって、局所FGFR1増幅及びFGFR1中心増幅が誘導されることを見出した。これらの断裂は、9名中7名(78%)の「レスポンダー」(すなわち、FGFR阻害に感受性のある腫瘍/細胞株)と、12名中3名(25%)の非レスポンダー(すなわち、非感受性の腫瘍/細胞株、5つの細胞株試料では、全エクソソームシーケンシングデータのみが利用可能)で起こった。したがって、FGFR1の転写開始部位に近いtail-to-tail断裂は局所増幅を誘導し、FGFR阻害に対する感受性と関連していた(p=0.03、フィッシャーの正確確率検定)。さらに、本発明者らは、感受性の試料において、エクソン6~エクソン23を欠失する3つの破壊的なNSD3断裂(33%)を見出したが、これは非感受性モデルのいずれでも見られなかった。
【0176】
4名の感受性患者のうち2名から得られた腫瘍では、本発明者らは、FGFR1の最初のエクソン(カノニカルATG開始コドンを含む)を欠失するtail-to-tailの再編成を特定し(
図2g~
図2j)、したがって、有害なゲノム事象の可能性を示唆した。1人目の患者では、エクソン2とエクソン3の間に再編成が起こった(
図2h)。2人目の患者における断裂はエクソン1とエクソン2の間に起こった(
図2j)。そこで、本発明者らは、FGFR1のORFの残りの部分は下流の代替開始コドンによって保存されているのではないかと推測した。この考えを裏付けるように、本発明者らは、これら2つの標本のうちの1つの組織を得ることができ、この標本はpFGFR1陽性に染色され、したがって、無傷で活性化されたFGFR1シグナル伝達を示した(
図2g、右パネル)。
【0177】
実施例3:FGFR1/NSD3とFGFR1の間の非コード領域からの染色体内tail-to-tail断裂の特定
本発明者らの仮説を更に裏付けるものとして、本発明者らは、前述の腫瘍において、NSD3に有害な断裂がない、NSD3/FGFR1中心増幅による同様の断裂を特定した(
図3a)。この腫瘍は、FGFR1の転写開始側に近い高度に覆われたtail-to-tail断裂を呈し、断裂増幅による早期事象、及びFGFR1内の非コード領域の染色体内tail-to-tail断裂を示した。この断裂により、カノニカルATG開始コドンを含むFGFR1のエクソン1~エクソン7を欠失した(
図3a、
図3b)。しかしながら、この試料は、NSD3
長(1キロベースミリオン当たり12フラグメント)と比較してFGFR1(1キロベースミリオン当たり18フラグメント)の転写が50%高く、断裂ポイント全体での転写が明らかとなった。さらに、本発明者らは、断裂ポイントをカバーするプライマーを用いた逆転写酵素PCRにより、再編成された遺伝子の転写を確認し、続いてシーケンシングを行った(
図3c)。最後に、本発明者らは、FGFR1内にtail-to-tail断裂を有する追加のFGFR1増幅腺扁平上皮癌を特定した(
図3d)。この断裂は、FGFR1のエクソン1~エクソン8の欠失をもたらした(
図3e)。ここでも、N末端の欠失の状況でFGFR1遺伝子を無傷で発現させるという本発明者らの仮説を支持して、本発明者らは、断裂ポイントを横切って活性な転写を見出した(
図3f)。この腫瘍においても、本発明者らは、免疫化学におけるpFGFR1の陽性染色を観察した。したがって、FGFR1内の4つのtail-to-tail断裂は全て、遺伝子の5’部分(エクソン8まで)のエクソンのゲノム欠失をもたらし、外部ドメインを欠くFGFR1のN末端短縮バージョンの発現、並びに膜貫通ドメイン及びキナーゼドメインをコードする領域(エクソン9~エクソン18)の増幅を伴った。
【0178】
FGFR1のN末端部分(外部ドメインを含む)は受容体の自己阻害と同様にリガンド特異性を担う。さらに、エクソン9は、フレーム内非カノニカルATG開始コドンを持ち、FGFR1エクトドメイン全体の欠失は、リガンド非依存的な二量体化をもたらす。そこで本発明者らは、遺伝子内tail-to-tail再編成によるFGFR1の外部ドメインのN末端欠失が、FGFR1依存性、ひいてはFGFR阻害に対する感受性を引き起こすキナーゼの発癌性バージョンを生成する可能性があるという仮説を立てた。
【0179】
本発明者らは、免疫ブロッティングを用いて、遺伝子内tail-to-tail再編成によるFGFR1のエクトドメインのN末端欠失がFGFR1依存性を引き起こすキナーゼの発癌性バージョンを生成するかどうかを解析した。簡潔には、細胞を冷PBSで洗浄し、プロテアーゼ(Roche)とホスファターゼ阻害剤(Calbiochem)のカクテルで補ったRIPA溶解バッファーに溶解した。氷上で20分間インキュベーションした後、溶解液を18000gで25分間遠心分離した。上清中のタンパク質濃度を、BCAタンパク質アッセイ(ThermoScientific)を用いて測定した。等量のタンパク質(30μg~60μg)を変性させて4%~12%のSDS-PAGEゲル上で分離した後、ニトロセルロース膜(Amersham Hybond-C Extra)上にブロッティングした。免疫ブロッティングには、β-アクチン(MP Bioscience)、ホスホ-FGFR(Tyr653、Tyr654)、ホスホ-AKT(Ser473)、AKT、ホスホ-ERK、及び全ERK、全FGFR1(Abcam)、並びにウサギ及びマウスに対するコンジュゲート抗体(Millipore)を用いた。
【0180】
本発明者らは、さらに、マウスBa/F3細胞におけるΔEC-FGFR1の異所性発現がIL3非依存的な細胞増殖をもたらすことを観察した。対照的に、野生型(wt)FGFR1の過剰発現は、IL-3の独立性を誘導するのに十分ではなかった。さらに、ΔEC-FGFR1を発現するBa/F3細胞は、FGFR阻害剤であるBGJ398及びAZD4547によるFGFR阻害に対して非常に感受性であった(
図3g、
図3h、
図3i)。
【0181】
まとめると、本発明者らは、扁平上皮肺癌における8p11-8p12増幅が、典型的には、切断融合架橋によって引き起こされることを発見した。増幅機構は、8p腕内でhead-to-head、続いてtail-to-tailの染色体内断裂を誘導する。この機構に基づいて、本発明者らは、観察された8p11-p12コピー数のプロファイルを、8p腕内の全てのゲノム断裂を考慮して再構築することができた。さらに、FGFR1の転写開始側に近いtail-to-tail断裂は、FGFR1/NSD3の局所増幅及びFGFR1/NSD3を中心とする高振幅の増幅をもたらし、FGFR阻害に対する感受性と関連していた。対応するhead-to-head断裂はNSD3(WHSC1L1)内に頻繁に位置し、これは、エクソン6~エクソン23の欠失につながり、その結果、NSD3の触媒SETドメイン(エクソン19~エクソン20)が欠失した。52の試料を全て合わせると、非発癌性NSD3短(エクソン1~エクソン10)の局所FGFR1増幅駆動発現を持つ18の試料で、9個中8個(89%)のNSD3断裂が検出された。対照的に、4個のFGFR1増幅試料(本研究で使用したFGFR1増幅試料の8%)では、FGFR1のオープンリーディングフレーム(ORF)内でtail-to-tail断裂が発生し、エクソン1~エクソン8の範囲の遺伝子の様々な部分が欠失された。これらの断裂は、エクソン9における非カノニカルインフレームATG開始コドンを用いて、外部ドメインを欠くFGFR1の短い発癌性バージョンの発現を誘導した。機構的には、外部ドメインを欠くFGFR1バリアントによるリガンド非依存的な二量体化が以前に報告されている。しかしながら、かかるバリアントを引き起こす体細胞ゲノム改変は現在まで記載されていない。
【0182】
断裂ポイントにわたる発現を証明するため、tail-to-tail再編成並びにΔEC-FGFR1バリアントを検証するため、本発明者らは、試料S00674とそれに対応する正常(グルノーブルのElisabeth Brambillaにより提供された)の1μgの全RNAからcDNAを生成した。製造業者の指示に従ってSuperScripIIIキット(Invirtrogen)を使用してcDNAを生成し、続いて191_F1_S00674/201_R9_S00674及び193_F2_S00674/202_R10_S00674の断裂スパニングプライマーを使用してPCRを行った。この試料では、(この断裂の回文性に基づいて)PCRランごとに1つのプライマーのみを使用するネステッドPCRによって、head-to-head再編成を検証した。1回目のランでは、本発明者らは、プライマー261_6_R1を使用した。2回目のラン(最初のPCRからの4μlのテンプレート)では、本発明者らは、プライマー262_6_R2を使用した。予想されるバンドサイズは794塩基対(全ゲノムシーケンシングデータに基づく)であった。H1581細胞のcDNA(100ng)を用いてattBオーバーハングプライマーによりFGFR1を増幅し、BPクローナーゼ(Invitrogen)を用いてpDONR.221に反転させた。コンピテント大腸菌(E. coli)株DH5α(Invitrogen)の細菌形質転換を、製造業者の指示に従って行った。NucleoSpinミニキット(Machery Nagel)を用いて、プラスミドDNAのミニ調製物からシングルクローンを配列決定した。プラスミドDNAのミディ調製には、本発明者らは、NucleoBond Xtra Midi EFキット(Machery Nagel)を使用した。異なるFGFR1バリアントを、ギブソンアッセンブリ(Gibson Assembly)、並びに234_F_ΔEC-21-FGFR1、235_F_ΔEC-30-FGFR1、236_F_ΔEC-85-FGFR1、237_F_ΔEC-144-FGFR1、及び211_R_FGFR1_GAのプライマーを用いて、並べて生成した。
【0183】
結論として、本発明者らの知見は、FGFR1の染色体内tail-to-tail断裂(場合によってはキナーゼの外部ドメイン欠損バージョンを引き起こす)が、治療上関連するFGFR依存性を持つ扁平上皮肺癌を定義する可能性があることを示唆している。かかる再編成を有する患者は、FGFR阻害剤による治療の恩恵を受ける可能性がある。
【配列表】
【国際調査報告】