(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-03
(54)【発明の名称】CLDN18.2標的化抗体、二重特異性抗体、及びそれらの使用
(51)【国際特許分類】
C07K 16/28 20060101AFI20240827BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20240827BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20240827BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20240827BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240827BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240827BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240827BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20240827BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20240827BHJP
C07K 14/725 20060101ALI20240827BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240827BHJP
A61P 15/00 20060101ALI20240827BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240827BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240827BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240827BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20240827BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20240827BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20240827BHJP
G01N 33/531 20060101ALI20240827BHJP
C12Q 1/04 20060101ALN20240827BHJP
【FI】
C07K16/28
C12P21/08 ZNA
C12N15/13
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
C12N1/21
C12N5/10
C07K16/46
C07K19/00
C07K14/725
A61P35/00
A61P15/00
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K39/395 T
A61K39/395 E
A61K39/395 U
A61K39/395 G
A61K39/395 L
A61K39/395 C
A61K47/68
A61K35/17
G01N33/53 D
G01N33/531 A
C12Q1/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024508097
(86)(22)【出願日】2022-08-04
(85)【翻訳文提出日】2024-03-28
(86)【国際出願番号】 CN2022110314
(87)【国際公開番号】W WO2023016348
(87)【国際公開日】2023-02-16
(31)【優先権主張番号】202110909032.3
(32)【優先日】2021-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524050615
【氏名又は名称】ハーバー バイオメッド(シャンハイ)カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジェン,ミン-ジン
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ヨンキアン
(72)【発明者】
【氏名】ザン,ユン
(72)【発明者】
【氏名】ザオ,チュチュ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,ユンシン
(72)【発明者】
【氏名】チェン,フェイ
(72)【発明者】
【氏名】キン,ベイベイ
(72)【発明者】
【氏名】ウー,ユエタオ
(72)【発明者】
【氏名】ディン,イ
【テーマコード(参考)】
4B063
4B064
4B065
4C076
4C084
4C085
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA14
4B063QA18
4B063QA19
4B063QQ02
4B063QQ08
4B063QQ79
4B063QQ96
4B063QR48
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4B064CC15
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4B065AA93Y
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4C076AA95
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4C076EE59
4C084AA02
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4C084ZA811
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4C085GG02
4C087AA01
4C087AA02
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4C087NA13
4C087ZA81
4C087ZB26
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045BA72
4H045CA40
4H045DA50
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA51
4H045FA74
4H045GA15
(57)【要約】
本発明は、CLDN18.2標的化抗体、二重特異性抗体、及びそれらの使用を開示する。CLDN18.2標的化抗体は、CLDN18.2を内生的に発現する腫瘍細胞に対する親和性が高く、且つ高いエンドサイトーシス活性を誘導することができるシングルドメイン重鎖抗体である。二重特異性抗体は、CLDN18.2及びCD3を標的とすることができ、且つFcRnへのFcの結合効果を保持する;一方、FcgRへの結合を、故にFcgRの架橋結合によって引き起こされる非特異的T細胞の活性化を引き下げるようなミュータントFcが好まれる。CRS、例えばIL6及びTNFαにおいて一般的なサイトカインの放出を引き下げることができるように、CD3末端活性が最適化される。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含む重鎖可変領域を含むCLDN18.2標的化抗体であって、前記HCDR1は、配列番号16~18のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2は、配列番号42~46及び配列番号48~54のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR3は、配列番号77~82のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む、抗体。
【請求項2】
前記HCDR1、前記HCDR2、及び前記HCDR3は、配列番号16、配列番号42、及び配列番号77にそれぞれ示されるアミノ酸配列を含むか;又は
前記HCDR1、前記HCDR2、及び前記HCDR3は、配列番号16、配列番号43、及び配列番号78にそれぞれ示されるアミノ酸配列を含むか;又は
前記HCDR1、前記HCDR2、及び前記HCDR3は、配列番号16、配列番号44、及び配列番号79にそれぞれ示されるアミノ酸配列を含むか;又は
前記HCDR1、前記HCDR2、及び前記HCDR3は、配列番号17、配列番号45、及び配列番号80にそれぞれ示されるアミノ酸配列を含むか;又は
前記HCDR1、前記HCDR2、及び前記HCDR3は、配列番号18、配列番号43、及び配列番号80にそれぞれ示されるアミノ酸配列を含むか;又は
前記HCDR1、前記HCDR2、及び前記HCDR3は、配列番号18、配列番号43、及び配列番号78にそれぞれ示されるアミノ酸配列を含むか;又は
前記HCDR1、前記HCDR2、及び前記HCDR3は、配列番号16、配列番号43、及び配列番号81にそれぞれ示されるアミノ酸配列を含むか;又は
前記HCDR1、前記HCDR2、及び前記HCDR3は、配列番号16、配列番号46、及び配列番号82にそれぞれ示されるアミノ酸配列を含むか;又は
前記HCDR1、前記HCDR2、及び前記HCDR3は、配列番号16、配列番号48、及び配列番号78にそれぞれ示されるアミノ酸配列を含むか;又は
前記HCDR1、前記HCDR2、及び前記HCDR3は、配列番号16、配列番号49、及び配列番号78にそれぞれ示されるアミノ酸配列を含むか;又は
前記HCDR1、前記HCDR2、及び前記HCDR3は、配列番号16、配列番号50、及び配列番号78にそれぞれ示されるアミノ酸配列を含むか;又は
前記HCDR1、前記HCDR2、及び前記HCDR3は、配列番号16、配列番号51、及び配列番号78にそれぞれ示されるアミノ酸配列を含むか;又は
前記HCDR1、前記HCDR2、及び前記HCDR3は、配列番号16、配列番号52、及び配列番号78にそれぞれ示されるアミノ酸配列を含むか;又は
前記HCDR1、前記HCDR2、及び前記HCDR3は、配列番号16、配列番号53、及び配列番号79にそれぞれ示されるアミノ酸配列を含むか;又は
前記HCDR1、前記HCDR2、及び前記HCDR3は、配列番号16、配列番号54、及び配列番号78にそれぞれ示されるアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
前記重鎖可変領域はさらに、フレームワーク領域を含み、その中に、HFR1は、配列番号6又は7に示されるアミノ酸配列を含み、HFR2は、配列番号28~34のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含み、HFR3は、配列番号63~68のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含み、HFR4は、配列番号84及び86~89のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の抗体。
【請求項4】
前記重鎖可変領域は、配列番号150~157及び配列番号159~165のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む、請求項3に記載の抗体。
【請求項5】
前記抗体はさらに、重鎖定常領域を含み、好ましくは、前記重鎖定常領域は、hIgG1、hIgG2、hIgG3、及びhIgG4、並びにそれらのバリアントから選択され、より好ましくは、前記重鎖定常領域はhIgG1である、請求項1に記載の抗体。
【請求項6】
前記抗体は、全長抗体、Fab、Fab’、F(ab’)
2、Fv、scFv、二重特異性抗体、多重特異性抗体、重鎖抗体、若しくはシングルドメイン抗体、又は前記抗体から調製されるモノクローナル抗体若しくはポリクローナル抗体である、請求項1~5のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項7】
前記抗体は、配列番号182~189及び配列番号191~197のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含むシングルドメイン抗体である、請求項6に記載の抗体。
【請求項8】
CD3を標的とする第1のタンパク質機能領域及びCLDN18.2を標的とする第2のタンパク質機能領域を含む二重特異性抗体であって;
前記第1のタンパク質機能領域はFabの形態であり、前記第2のタンパク質機能領域はVHの形態であり、好ましくは2又は3つのVHを含み;前記第2のタンパク質機能領域が、直列的に連結された3つのVHを含む場合、前記第1のタンパク質機能領域及び前記第2のタンパク質機能領域は各々、Fcの二本鎖に連結されており;前記第2のタンパク質機能領域が、直列的に連結された2つのVHを含む場合、前記第1のタンパク質機能領域及び前記第2のタンパク質機能領域は各々、Fcの二本鎖に連結されており;前記第2のタンパク質機能領域が3つのVHを含み、前記3つのVHのうちの1つが、前記第1のタンパク質機能領域に連結されている場合、残りの2つのVHは直列的に連結されており、前記第1のタンパク質機能領域、及び前記第2のタンパク質機能領域の直列的に連結された前記2つのVHは各々、Fcの二本鎖に連結されており;
これ以外にも、前記第1のタンパク質機能領域はFabの形態であり、前記第2のタンパク質機能領域はHCAbの形態であり;
これ以外にも、前記第1のタンパク質機能領域はFabの形態であり、前記第2のタンパク質機能領域はVH-HCAbの形態であり、前記第2のタンパク質機能領域は好ましくは、合計4つのVHを含む、二重特異性抗体。
【請求項9】
前記第2のタンパク質機能領域は、HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含む重鎖可変領域を含み、前記HCDR1は、配列番号16~18のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2は、配列番号42~46及び配列番号48~54のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR3は、配列番号77~82のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含み;
好ましくは、前記HCDR1、前記HCDR2、及び前記HCDR3は、配列番号16、配列番号42、及び配列番号77にそれぞれ示されるアミノ酸配列を含むか;又は前記HCDR1、前記HCDR2、及び前記HCDR3は、配列番号16、配列番号43、及び配列番号78にそれぞれ示されるアミノ酸配列を含むか;又は前記HCDR1、前記HCDR2、及び前記HCDR3は、配列番号16、配列番号44、及び配列番号79にそれぞれ示されるアミノ酸配列を含むか;又は前記HCDR1、前記HCDR2、及び前記HCDR3は、配列番号16、配列番号48、及び配列番号78にそれぞれ示されるアミノ酸配列を含むか;又は前記HCDR1、前記HCDR2、及び前記HCDR3は、配列番号16、配列番号49、及び配列番号78にそれぞれ示されるアミノ酸配列を含むか;又は前記HCDR1、前記HCDR2、及び前記HCDR3は、配列番号16、配列番号50、及び配列番号78にそれぞれ示されるアミノ酸配列を含むか;又は前記HCDR1、前記HCDR2、及び前記HCDR3は、配列番号16、配列番号51、及び配列番号78にそれぞれ示されるアミノ酸配列を含むか;又は前記HCDR1、前記HCDR2、及び前記HCDR3は、配列番号16、配列番号52、及び配列番号78にそれぞれ示されるアミノ酸配列を含むか;又は前記HCDR1、前記HCDR2、及び前記HCDR3は、配列番号16、配列番号53、及び配列番号79にそれぞれ示されるアミノ酸配列を含むか;又は前記HCDR1、前記HCDR2、及び前記HCDR3は、配列番号16、配列番号54、及び配列番号78にそれぞれ示されるアミノ酸配列を含み;
より好ましくは、前記重鎖可変領域は、配列番号150~152及び配列番号159~165のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む、請求項8に記載の二重特異性抗体。
【請求項10】
前記第1のタンパク質機能領域は、配列番号101、配列番号116、及び配列番号131にそれぞれ示されるLCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む軽鎖可変領域、並びに配列番号11、配列番号38、及び配列番号72にそれぞれ示されるHCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含む重鎖可変領域を含み;
好ましくは、前記重鎖可変領域は、配列番号149又は配列番号144に示されるアミノ酸配列を含み、前記軽鎖可変領域は、配列番号168に示されるアミノ酸配列を含む、請求項8又は9に記載の二重特異性抗体。
【請求項11】
前記二重特異性抗体は、3つのポリペプチド鎖を以下の形態で含む:
前記Fcの2つのN末端は、前記Fab及び前記VHにそれぞれ連結されており;好ましくは、前記二重特異性抗体は、式:VH
CLDN18.2-VH
CLDN18.2-ヒンジ-CH2-CH3又はVH
CLDN18.2-VH
CLDN18.2-VH
CLDN18.2-ヒンジ-CH2-CH3に示される第1のポリペプチド鎖、式:VH
CD3-CH1-ヒンジ-CH2-CH3に示される第2のポリペプチド鎖、及び式:VL
CD3-CLに示される第3のポリペプチド鎖を有し;
これ以外にも、前記HCAbの1つのC末端は、前記FabのVH又はVLに連結されており;好ましくは、前記二重特異性抗体は、式:VH
CLDN18.2-ヒンジ-CH2-CH3に示される第1のポリペプチド鎖、式:VH
CLDN18.2-ヒンジ-CH2-CH3-VH
CD3-CH1に示される第2のポリペプチド鎖、及び式:VL
CD3-CLに示される第3のポリペプチド鎖を有し;これ以外にも、前記二重特異性抗体は、式:VH
CLDN18.2-ヒンジ-CH2-CH3に示される第1のポリペプチド鎖、式:VH
CLDN18.2-ヒンジ-CH2-CH3-VL
CD3-CLに示される第2のポリペプチド鎖、及び式:VH
CD3-CH1に示される第3のポリペプチド鎖を有し;これ以外にも、前記二重特異性抗体は、式:VH
CLDN18.2-VH
CLDN18.2-ヒンジ-CH2-CH3に示される第1のポリペプチド鎖、式:VH
CLDN18.2-VH
CLDN18.2-ヒンジ-CH2-CH3-VH
CD3-CH1に示される第2のポリペプチド鎖、及び式:VL
CD3-CLに示される第3のポリペプチド鎖を有し;これ以外にも、前記二重特異性抗体は、式:VH
CLDN18.2-VH
CLDN18.2-ヒンジ-CH2-CH3に示される第1のポリペプチド鎖、式:VH
CLDN18.2-VH
CLDN18.2-ヒンジ-CH2-CH3-VL
CD3-CLに示される第2のポリペプチド鎖、及び式:VH
CD3-CH1に示される第3のポリペプチド鎖を有し;
これ以外にも、前記Fabの重鎖のN末端は、1つのVH
CLDN18.2に連結されており、前記重鎖のC末端は、前記Fcの1つのN末端に連結されており、直列的に連結された前記VHのC末端は、前記Fcの他のN末端に連結されており;好ましくは、前記二重特異性抗体は、式:VH
CLDN18.2-VH
CLDN18.2-ヒンジ-CH2-CH3に示される第1のポリペプチド鎖、式:VH
CLDN18.2-VH
CD3-CH1-ヒンジ-CH2-CH3に示される第2のポリペプチド鎖、及び式:VL
CD3-CLに示される第3のポリペプチド鎖を有し;
より好ましくは、異なる機能ユニット、例えば、VH、CH2-CH3、及びVLは、好ましくは配列番号244~248のいずれか1つに示されるアミノ酸配列、好ましくは配列番号246に示される配列を含むリンカーペプチドによって作動可能に連結されており;
より好ましくは、前記Fcの2つのN末端は、前記Fab及び前記VHにそれぞれ連結されており;好ましくは、前記二重特異性抗体は、式:VH
CLDN18.2-リンカーペプチド-VH
CLDN18.2-ヒンジ-CH2-CH3又はVH
CLDN18.2-リンカーペプチド-VH
CLDN18.2-リンカーペプチド-VH
CLDN18.2-ヒンジ-CH2-CH3に示される第1のポリペプチド鎖、式:VH
CD3-CH1-ヒンジ-CH2-CH3に示される第2のポリペプチド鎖、及び式:VL
CD3-CLに示される第3のポリペプチド鎖を有し;
これ以外にも、前記HCAbの1つのC末端は、前記FabのVH又はVLに連結されており;好ましくは、前記二重特異性抗体は、式:VH
CLDN18.2-ヒンジ-CH2-CH3に示される第1のポリペプチド鎖、式:VH
CLDN18.2-ヒンジ-CH2-CH3-リンカーペプチド-VH
CD3-CH1に示される第2のポリペプチド鎖、及び式:VL
CD3-CLに示される第3のポリペプチド鎖を有し;これ以外にも、前記二重特異性抗体は、式:VH
CLDN18.2-ヒンジ-CH2-CH3に示される第1のポリペプチド鎖、式:VH
CLDN18.2-ヒンジ-CH2-CH3-リンカーペプチド-VL
CD3-CLに示される第2のポリペプチド鎖、及び式:VH
CD3-CH1に示される第3のポリペプチド鎖を有し;
これ以外にも、前記VH-HCAbの1つのC末端は、前記FabのVH又はVLに連結されており;好ましくは、前記二重特異性抗体は、式:VH
CLDN18.2-リンカーペプチド-VH
CLDN18.2-ヒンジ-CH2-CH3に示される第1のポリペプチド鎖、式:VH
CLDN18.2-リンカーペプチド-VH
CLDN18.2-ヒンジ-CH2-CH3-リンカーペプチド-VH
CD3-CH1に示される第2のポリペプチド鎖、及び式:VL
CD3-CLに示される第3のポリペプチド鎖を有し;これ以外にも、前記二重特異性抗体は、式:VH
CLDN18.2-リンカーペプチド-VH
CLDN18.2-ヒンジ-CH2-CH3に示される第1のポリペプチド鎖、式:VH
CLDN18.2-リンカーペプチド-VH
CLDN18.2-ヒンジ-CH2-CH3-リンカーペプチド-VL
CD3-CLに示される第2のポリペプチド鎖、及び式:VH
CD3-CH1に示される第3のポリペプチド鎖を有し;
これ以外にも、前記Fabの重鎖のN末端は、1つのVH
CLDN18.2に連結されており、重鎖のC末端は、前記Fcの1つのN末端に連結されており、直列的に連結された前記VHのC末端は、前記Fcの他のN末端に連結されており;好ましくは、前記二重特異性抗体は、式:VH
CLDN18.2-リンカーペプチド-VH
CLDN18.2-ヒンジ-CH2-CH3に示される第1のポリペプチド鎖、式:VH
CLDN18.2-リンカーペプチド-VH
CD3-CH1-ヒンジ-CH2-CH3に示される第2のポリペプチド鎖、及び式:VL
CD3-CLに示される第3のポリペプチド鎖を有する、請求項8又は9に記載の二重特異性抗体。
【請求項12】
前記第1のポリペプチド鎖は、配列番号214に示されるアミノ酸配列を含み、前記第2のポリペプチド鎖は、配列番号213に示されるアミノ酸配列を含み、前記第3のポリペプチド鎖は、配列番号200に示されるアミノ酸配列を含み;
これ以外にも、前記第1のポリペプチド鎖は、配列番号219に示されるアミノ酸配列を含み、前記第2のポリペプチド鎖は、配列番号213に示されるアミノ酸配列を含み、前記第3のポリペプチド鎖は、配列番号200に示されるアミノ酸配列を含み;
これ以外にも、前記第1のポリペプチド鎖は、配列番号220に示されるアミノ酸配列を含み、前記第2のポリペプチド鎖は、配列番号213に示されるアミノ酸配列を含み、前記第3のポリペプチド鎖は、配列番号200に示されるアミノ酸配列を含み;
これ以外にも、前記第1のポリペプチド鎖は、配列番号221に示されるアミノ酸配列を含み、前記第2のポリペプチド鎖は、配列番号213に示されるアミノ酸配列を含み、前記第3のポリペプチド鎖は、配列番号200に示されるアミノ酸配列を含み;
これ以外にも、前記第1のポリペプチド鎖は、配列番号222に示されるアミノ酸配列を含み、前記第2のポリペプチド鎖は、配列番号213に示されるアミノ酸配列を含み、前記第3のポリペプチド鎖は、配列番号200に示されるアミノ酸配列を含み;
これ以外にも、前記第1のポリペプチド鎖は、配列番号223に示されるアミノ酸配列を含み、前記第2のポリペプチド鎖は、配列番号213に示されるアミノ酸配列を含み、前記第3のポリペプチド鎖は、配列番号200に示されるアミノ酸配列を含み;
これ以外にも、前記第1のポリペプチド鎖は、配列番号224に示されるアミノ酸配列を含み、前記第2のポリペプチド鎖は、配列番号213に示されるアミノ酸配列を含み、前記第3のポリペプチド鎖は、配列番号200に示されるアミノ酸配列を含み;
これ以外にも、前記第1のポリペプチド鎖は、配列番号225に示されるアミノ酸配列を含み、前記第2のポリペプチド鎖は、配列番号213に示されるアミノ酸配列を含み、前記第3のポリペプチド鎖は、配列番号200に示されるアミノ酸配列を含み;
これ以外にも、前記第1のポリペプチド鎖は、配列番号226に示されるアミノ酸配列を含み、前記第2のポリペプチド鎖は、配列番号213に示されるアミノ酸配列を含み、前記第3のポリペプチド鎖は、配列番号200に示されるアミノ酸配列を含み;
これ以外にも、前記第1のポリペプチド鎖は、配列番号227に示されるアミノ酸配列を含み、前記第2のポリペプチド鎖は、配列番号228に示されるアミノ酸配列を含み、前記第3のポリペプチド鎖は、配列番号200に示されるアミノ酸配列を含み;
これ以外にも、前記第1のポリペプチド鎖は、配列番号227に示されるアミノ酸配列を含み、前記第2のポリペプチド鎖は、配列番号230に示されるアミノ酸配列を含み、前記第3のポリペプチド鎖は、配列番号229に示されるアミノ酸配列を含み;
これ以外にも、前記第1のポリペプチド鎖は、配列番号219に示されるアミノ酸配列を含み、前記第2のポリペプチド鎖は、配列番号231に示されるアミノ酸配列を含み、前記第3のポリペプチド鎖は、配列番号200に示されるアミノ酸配列を含み;
これ以外にも、前記第1のポリペプチド鎖は、配列番号219に示されるアミノ酸配列を含み、前記第2のポリペプチド鎖は、配列番号232に示されるアミノ酸配列を含み、前記第3のポリペプチド鎖は、配列番号229に示されるアミノ酸配列を含み;
これ以外にも、前記第1のポリペプチド鎖は、配列番号219に示されるアミノ酸配列を含み、前記第2のポリペプチド鎖は、配列番号233に示されるアミノ酸配列を含み、前記第3のポリペプチド鎖は、配列番号200に示されるアミノ酸配列を含み;
これ以外にも、前記第1のポリペプチド鎖は、配列番号234に示されるアミノ酸配列を含み、前記第2のポリペプチド鎖は、配列番号213に示されるアミノ酸配列を含み、前記第3のポリペプチド鎖は、配列番号200に示されるアミノ酸配列を含み;
これ以外にも、前記第1のポリペプチド鎖は、配列番号219に示されるアミノ酸配列を含み、前記第2のポリペプチド鎖は、配列番号209に示されるアミノ酸配列を含み、前記第3のポリペプチド鎖は、配列番号200に示されるアミノ酸配列を含み;
これ以外にも、前記第1のポリペプチド鎖は、配列番号221に示されるアミノ酸配列を含み、前記第2のポリペプチド鎖は、配列番号209に示されるアミノ酸配列を含み、前記第3のポリペプチド鎖は、配列番号200に示されるアミノ酸配列を含み;
これ以外にも、前記第1のポリペプチド鎖は、配列番号236に示されるアミノ酸配列を含み、前記第2のポリペプチド鎖は、配列番号235に示されるアミノ酸配列を含み、前記第3のポリペプチド鎖は、配列番号200に示されるアミノ酸配列を含み;
これ以外にも、前記第1のポリペプチド鎖は、配列番号236に示されるアミノ酸配列を含み、前記第2のポリペプチド鎖は、配列番号237に示されるアミノ酸配列を含み、前記第3のポリペプチド鎖は、配列番号200に示されるアミノ酸配列を含み;
これ以外にも、前記第1のポリペプチド鎖は、配列番号238に示されるアミノ酸配列を含み、前記第2のポリペプチド鎖は、配列番号235に示されるアミノ酸配列を含み、前記第3のポリペプチド鎖は、配列番号200に示されるアミノ酸配列を含み;
これ以外にも、前記第1のポリペプチド鎖は、配列番号239に示されるアミノ酸配列を含み、前記第2のポリペプチド鎖は、配列番号235に示されるアミノ酸配列を含み、前記第3のポリペプチド鎖は、配列番号200に示されるアミノ酸配列を含み;
これ以外にも、前記第1のポリペプチド鎖は、配列番号240に示されるアミノ酸配列を含み、前記第2のポリペプチド鎖は、配列番号235に示されるアミノ酸配列を含み、前記第3のポリペプチド鎖は、配列番号200に示されるアミノ酸配列を含み;
これ以外にも、前記第1のポリペプチド鎖は、配列番号241に示されるアミノ酸配列を含み、前記第2のポリペプチド鎖は、配列番号235に示されるアミノ酸配列を含み、前記第3のポリペプチド鎖は、配列番号200に示されるアミノ酸配列を含み;
これ以外にも、前記第1のポリペプチド鎖は、配列番号242に示されるアミノ酸配列を含み、前記第2のポリペプチド鎖は、配列番号235に示されるアミノ酸配列を含み、前記第3のポリペプチド鎖は、配列番号200に示されるアミノ酸配列を含み;
これ以外にも、前記第1のポリペプチド鎖は、配列番号243に示されるアミノ酸配列を含み、前記第2のポリペプチド鎖は、配列番号235に示されるアミノ酸配列を含み、前記第3のポリペプチド鎖は、配列番号200に示されるアミノ酸配列を含む、
請求項11に記載の二重特異性抗体。
【請求項13】
請求項1~7のいずれか一項に記載の抗体、又は請求項8~12のいずれか一項に記載の二重特異性抗体をコードする単離された核酸。
【請求項14】
請求項13に記載の単離された核酸を含む組換え発現ベクターであって、好ましくは、プラスミド、コスミド、ファージ、又はウイルスベクターであり、前記ウイルスベクターは、好ましくは、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、又はアデノ随伴ウイルスベクターである、組換え発現ベクター。
【請求項15】
請求項14に記載の組換え発現ベクターを宿主細胞内に含む形質転換体であって、好ましくは、前記宿主細胞は、大腸菌(E.coli)TG1、BL21細胞、又はCHO-K1細胞である、形質転換体。
【請求項16】
請求項1~7のいずれか一項に記載の抗体を含むキメラ抗原受容体、又は請求項8~12のいずれか一項に記載の二重特異性抗体。
【請求項17】
請求項1~7のいずれか一項に記載の抗体、又は請求項8~12のいずれか一項に記載の二重特異性抗体を含む遺伝的に修飾された細胞であって、好ましくは、真核細胞、好ましくは単離されたヒト細胞、より好ましくは免疫細胞、例えば、T細胞又はNK細胞である、遺伝的に修飾された細胞。
【請求項18】
二重特異性抗体を調製する方法であって、請求項15に記載の形質転換体を培養することと、前記培養から前記抗体又は前記二重特異性抗体を得ることとを含む方法。
【請求項19】
細胞毒性剤、及び請求項1~7のいずれか一項に記載の抗体又は請求項8~12のいずれか一項に記載の二重特異性抗体を含む抗体-薬物コンジュゲートであって、好ましくは、前記細胞毒性剤はMMAF又はMMAEである、抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項20】
請求項1~7のいずれか一項に記載の抗体又は請求項8~12のいずれか一項に記載の二重特異性抗体、及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物であって、
好ましくはさらに、ホルモン剤、小分子標的剤、プロテアソーム阻害剤、造影剤、診断薬、化学療法剤、腫瘍溶解薬、細胞毒性剤、サイトカイン、共刺激分子の活性化剤、阻害分子の阻害剤、及びワクチンからなる群の1つ以上を含む、医薬組成物。
【請求項21】
CD3及び/又はCLDN18.2関連疾患の予防又は処置のための薬剤の製造における、請求項1~7のいずれか一項に記載の抗体、請求項8~12のいずれか一項に記載の二重特異性抗体、又は請求項20に記載の医薬組成物の使用であって、
前記疾患は、好ましくは癌であり、前記癌は、好ましくは、乳癌、卵巣癌、子宮体癌、腎臓癌、黒色腫、肺癌、胃癌、肝癌、食道癌、子宮頸癌、頭頚部腫瘍、胆管癌、胆嚢癌、膀胱癌、肉腫、又は結腸直腸癌であり;好ましくは、前記癌は、乳癌、卵巣癌、子宮体癌、腎臓癌、又は胆管癌であり;より好ましくは、前記癌は乳癌である、使用。
【請求項22】
請求項1~7のいずれか一項に記載の抗体、請求項8~12のいずれか一項に記載の二重特異性抗体、請求項16に記載のキメラ抗原受容体、請求項17に記載の遺伝的に修飾された細胞、請求項19に記載の抗体-薬物コンジュゲート、又は請求項20に記載の医薬組成物を含むキットであって、
好ましくはさらに、(i)前記抗体若しくはその抗原結合断片、前記抗体-薬物コンジュゲート、又は前記医薬組成物を投与するためのデバイス;及び/或いは(ii)指示事項を含む、キット。
【請求項23】
キットA及びキットBを含むキットオブパーツであって:
前記キットAは、請求項1~7のいずれか一項に記載の抗体、請求項8~12のいずれか一項に記載の二重特異性抗体、請求項16に記載のキメラ抗原受容体、請求項17に記載の遺伝的に修飾された細胞、請求項19に記載の抗体-薬物コンジュゲート、及び/又は請求項20に記載の医薬組成物を含み;
前記キットBは、他の抗腫瘍抗体、又は前記他の抗腫瘍抗体を含む医薬組成物、並びに/又はホルモン剤、小分子標的剤、プロテアソーム阻害剤、造影剤、診断薬、化学療法剤、腫瘍溶解薬、細胞毒性剤、サイトカイン、共刺激分子の活性化剤、阻害分子の阻害剤、及びワクチンからなる群の1つ以上を含む、
キットオブパーツ。
【請求項24】
CLDN18.2媒介疾患又は障害を診断、処置、且つ/又は予防する方法であって、診断、処置、及び/若しくは予防を必要とする患者に、治療的に有効な量の、請求項1~7のいずれか一項に記載の抗体、請求項8~12のいずれか一項に記載の二重特異性抗体、請求項16に記載のキメラ抗原受容体、請求項19に記載の抗体-薬物コンジュゲート、若しくは請求項20に記載の医薬組成物を投与するか、又は診断、処置、及び/若しくは予防を必要とする患者を、請求項23に記載のキットオブパーツにより処置することを含む方法。
【請求項25】
前記疾患又は障害は、腫瘍、好ましくはCLDN18.2陽性腫瘍、より好ましくは、胃癌、食道癌、肺癌、卵巣癌、黒色腫、腎臓癌、乳癌、結腸直腸癌、肝癌、膵癌、膀胱癌、頭頚部癌、気管支癌、神経膠腫、及び/又は白血病である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
CLDN18.2の免疫検出又は判定の方法であって、請求項1~7のいずれか一項に記載の抗体、請求項8~12のいずれか一項に記載の二重特異性抗体、請求項16に記載のキメラ抗原受容体、請求項19に記載の抗体-薬物コンジュゲート、又は請求項20に記載の医薬組成物を用いることを含み、好ましくは、前記検出は、非診断且つ/又は治療目的のものである、方法。
【請求項27】
併用療法であって、これを必要とする患者に、請求項1~7のいずれか一項に記載の抗体、請求項8~12のいずれか一項に記載の二重特異性抗体、請求項16に記載のキメラ抗原受容体、請求項19に記載の抗体-薬物コンジュゲート、又は請求項20に記載の医薬組成物、及び第2の治療剤を投与することを含み、前記第2の治療剤は、好ましくは、他の抗腫瘍抗体、又は前記他の抗腫瘍抗体を含む医薬組成物、並びに/又はホルモン剤、小分子標的剤、プロテアソーム阻害剤、造影剤、診断薬、化学療法剤、腫瘍溶解薬、細胞毒性剤、サイトカイン、共刺激分子の活性化剤、阻害分子の阻害剤、及びワクチンからなる群の1つ以上を含む、併用療法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物医学の分野に、特にCLDN18.2標的化抗体、二重特異性抗体、及びそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
癌は今日、人間の最も致命的な疾患の1つである。世界保健機構(World Health Organization:WHO)のReport 2018に従えば、毎年、癌の約1807万件の新しい症例がある。毎年、およそ955万人が癌で死亡している。WHOの推計に従えば、世界で最も一般的に診断される癌の第5位に、胃癌がランクされている。胃癌は、癌関連の死因の第3位(男性について)に、そして第4位(女性について)にランクされている。毎年、世界中で、胃癌の100万件の新しい症例がある。米国において胃癌と主に診断されている患者のおよそ35%は、転移性胃癌を患う人々である。進行胃癌と診断された人々の5年生存率は5%であり、生存期間の中央値は約6ヵ月である。転移性/再発胃癌を患う患者を処置するためのファーストライン薬物投与は、2つのケースに分けられる:(1)HER2-neu陽性患者について、トラスツズマブが、化学療法薬物と組み合わせて使用される;(2)HER2-neu陰性患者について、処置は化学療法薬剤に限られる;しかしながら、処置成果はよくない(Front Pharmacol. 2018 Sep 13;9:404)。
【0003】
CLDN18(Claudin18)分子のスプライスバリアント1(Genbank受託番号NP_057453、NM016369に基づくCLD18A1、すなわちCLDN18.1)及びスプライスバリアント2(Genbank受託番号NM_001002026、NP_001002026に基づくCLD18A2、すなわちCLDN18.2)は、分子量がおよそ27.9/27.72kDである内在性膜貫通タンパク質(integral transmembrane protein)である。クラウディンは、上皮及び内皮の密着結合部内に位置する内在性膜タンパク質である。密着結合ファミリーの他の2つの主要なタンパク質は、オクルディン及び結合部接着分子(JAM)である。クラウディンは、密着結合部の重要な構成要素であり、上皮細胞の極性を維持するのに、傍細胞拡散を制御するのに、そして細胞の成長及び分化を調節するのに重要な役割を果たす。クラウディンは、十分に構築された上皮内で抗体にほとんど近づくことができないが、腫瘍細胞において曝露されると推測される。クラウディン分子は、細胞質において、細胞膜を4回、N末端及びC末端の双方と交差させる。ヒトCLDN18.2(クラウディン18.2)タンパク質は、全長で261アミノ酸を有する膜貫通タンパク質であり、そのうち1~23は、シグナルペプチドを形成する;当該タンパク質は、シグナルペプチドの後に2つの膜外領域、約55アミノ酸の細胞外ループ1(ECL1)及び約23アミノ酸のECL2を有する。CLDN18.1(クラウディン18.1)及びCLDN18.2は、第1のTM及びループ1(すなわちECL1)を含むN末端の最初の21アミノ酸が異なるが、C末端にて同一のプライマリタンパク質配列を有する。ヒトCLDN18.2及びヒトCLDN18.1のECL1領域は非常に類似しており、ヒトCLDN18.2及びヒトCLDN18.1のECL2領域は同一である。ゆえに、ヒトCLDN18.2タンパク質標的に対する抗体の開発は、ECL1領域にて標的とされる抗体の検索、又はヒトCLDN18.2タンパク質の空間的構造を必要とする。これにより、この側面での研究はより困難となる。CLDN18.1は、正常な肺及び胃の上皮において選択的に発現される(Mol Cell Biol. 2001 Nov;21(21):7380-90)。正常組織におけるCLDN18.2の発現は、胃上皮の分化細胞に高度に限られており、胃幹細胞領域には存在しない。しかし、これは、胃腫瘍、食道腫瘍、膵臓腫瘍、及び肺腫瘍、並びにヒト癌細胞株が挙げられる数種類の癌において、高度に発現される。タンパク質の分子量は、一部の癌及び隣接する正常組織において変動する。健康な組織において観察される高分子量のタンパク質は、組織ライセートを脱グリコシル化化合物PNGaseFにより処理することによって、癌において観察されるのと同じ分子量のものに変換され得る。このことは、クラウディンが、癌において、その正常な組織対応物におけるよりもN-グリコシル化されないことを示唆している。この構造差異は、変更したエピトープを生じさせる可能性がある。古典的N-グリコシル化モチーフは、分子のループD3ドメイン内の位置116のアミノ酸内にある(CN103509110B号明細書)。
【0004】
現時点では、CLDN18.2に対するモノクローナル抗体の研究は、クラウジキシマブ(Claudiximab)(IMAB362)抗体の第II相及び第III相臨床試験に限られている(国際公開第2014/146672号パンフレット参照)。IMAB362は、ADCC(抗体依存性細胞媒介細胞傷害)及びCDC(補体依存性細胞傷害)効果を誘導し、且つ腫瘍致死を媒介することができる。IMAB362は、進行胃食道癌の処置について、第I及びII相臨床試験において有望な影響を示した(Eur J Cancer. 2018 Sep;100:17-26)。しかしながら、IMAB362は、ヒト又はマウスキメラ抗体であるので、免疫原性リスクを包含し、親和性は高くない。多数の悪性腫瘍についての満たされていない医学的な必要性に起因して、より所望される薬学的特徴を有する他のCLDN18.2抗体が必要とされている。したがって、当該技術において、ヒトCLDN18.2タンパク質を標的とする有効な抗体、特に完全ヒトモノクローナル抗体、及び細胞結合活性がより良好なモノクローナル抗体が欠けている。
【0005】
現時点では、臨床開発中のCLDN18.2×CD3二重特異性抗体として、AmgenのAMG910が挙げられる。AMG910は、腫瘍致死を媒介するTDCC(T細胞依存性細胞傷害活性)効果を誘導することができる。しかしながら、先行技術の抗体は、半減期が短い、薬物効果が不十分、サイトカイン放出症候群(CRS)を引き起こす等の問題を有し得る。したがって、ヒトCLDN18.2及びCD3の双方を標的とし、且つカニクイザルCLDN18.2及びCD3に結合することができる、より安全且つより有効な二重特異性抗体を開発する切迫した必要性が存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
ヒトCLDN18.2及びCD3の双方を標的とし、且つカニクイザルCLDN18.2及びCD3に結合することができるヒトCLDN18.2及び二重特異性抗体を標的とする安全且つ有効なモノクローナル抗体を欠いている先行技術における技術的課題を解決するために、本発明は、CLDN18.2標的化モノクローナル抗体、CLDN18.2及びCD3標的化二重特異性抗体、並びにそれらの使用を提供する。
【0007】
上述の技術的課題を解決するために、本発明の第1の態様は、HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含む重鎖可変領域を含むCLDN18.2標的化抗体を提供し、HCDR1は、配列番号16~18のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含み、HCDR2は、配列番号42~46及び配列番号48~54のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含み、HCDR3は、配列番号77~82のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む。
【0008】
本発明の好ましい実施形態において、HCDR1、HCDR2、及びHCDR3は、配列番号16、配列番号42、及び配列番号77にそれぞれ示されるアミノ酸配列を含むか;又は
HCDR1、HCDR2、及びHCDR3は、配列番号16、配列番号43、及び配列番号78にそれぞれ示されるアミノ酸配列を含むか;又は
HCDR1、HCDR2、及びHCDR3は、配列番号16、配列番号44、及び配列番号79にそれぞれ示されるアミノ酸配列を含むか;又は
HCDR1、HCDR2、及びHCDR3は、配列番号17、配列番号45、及び配列番号80にそれぞれ示されるアミノ酸配列を含むか;又は
HCDR1、HCDR2、及びHCDR3は、配列番号18、配列番号43、及び配列番号80にそれぞれ示されるアミノ酸配列を含むか;又は
HCDR1、HCDR2、及びHCDR3は、配列番号18、配列番号43、及び配列番号78にそれぞれ示されるアミノ酸配列を含むか;又は
HCDR1、HCDR2、及びHCDR3は、配列番号16、配列番号43、及び配列番号81にそれぞれ示されるアミノ酸配列を含むか;又は
HCDR1、HCDR2、及びHCDR3は、配列番号16、配列番号46、及び配列番号82にそれぞれ示されるアミノ酸配列を含むか;又は
HCDR1、HCDR2、及びHCDR3は、配列番号16、配列番号48、及び配列番号78にそれぞれ示されるアミノ酸配列を含むか;又は
HCDR1、HCDR2、及びHCDR3は、配列番号16、配列番号49、及び配列番号78にそれぞれ示されるアミノ酸配列を含むか;又は
HCDR1、HCDR2、及びHCDR3は、配列番号16、配列番号50、及び配列番号78にそれぞれ示されるアミノ酸配列を含むか;又は
HCDR1、HCDR2、及びHCDR3は、配列番号16、配列番号51、及び配列番号78にそれぞれ示されるアミノ酸配列を含むか;又は
HCDR1、HCDR2、及びHCDR3は、配列番号16、配列番号52、及び配列番号78にそれぞれ示されるアミノ酸配列を含むか;又は
HCDR1、HCDR2、及びHCDR3は、配列番号16、配列番号53、及び配列番号79にそれぞれ示されるアミノ酸配列を含むか;又は
HCDR1、HCDR2、及びHCDR3は、配列番号16、配列番号54、及び配列番号78にそれぞれ示されるアミノ酸配列を含む。
【0009】
HCDR1、HCDR2、及びHCDR3についてのアミノ酸配列の先の組合せを、以下の表に詳述する。
【0010】
【0011】
本発明の好ましい実施形態において、重鎖可変領域はさらに、フレームワーク領域を含み、その中に、HFR1は、配列番号6又は7に示されるアミノ酸配列を含み、HFR2は、配列番号28~34のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含み、HFR3は、配列番号63~68のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含み、HFR4は、配列番号84及び86~89のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む。
【0012】
本発明の好ましい実施形態において、重鎖可変領域は、配列番号150~157及び配列番号159~165のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む。詳細について、以下の表b参照。
【0013】
【0014】
本発明の好ましい実施形態において、抗体はさらに、重鎖定常領域を含む。より好ましくは、重鎖定常領域は、hIgG1、hIgG2、hIgG3、及びhIgG4、並びにそれらのバリアントから選択される。さらに好ましくは、重鎖定常領域はhIgG1である。
【0015】
本発明の好ましい実施形態において、抗体は、全長抗体、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、scFv、二重特異性抗体、多重特異性抗体、重鎖抗体、若しくはシングルドメイン抗体、又は上述の抗体から調製されるモノクローナル抗体若しくはポリクローナル抗体である。
【0016】
本発明のより好ましい実施形態において、抗体は、配列番号182~189及び配列番号191~197のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含むシングルドメイン抗体である。詳細について、以下の表c参照。
【0017】
【0018】
【0019】
本発明において、「Fab断片」は、1つの軽鎖、並びに1つの重鎖のCH1及び可変領域からなる。Fab分子の重鎖は、別の重鎖分子とジスルフィド結合を形成することができない。「Fc」領域は、抗体のCH1ドメイン及びCH2ドメインを含む2つの重鎖断片を含有する。2つの重鎖断片は、2つ以上のジスルフィド結合、及びCH3ドメインの疎水性相互作用によってまとめられる。「Fab’断片」は、1つの軽鎖、並びにVHドメイン及びCH1ドメインを含む1つの重鎖の一部、並びにCH1ドメインとCH2ドメイン間の、鎖間ジスルフィド結合が2つのFab’断片の2つの重鎖間で形成されてF(ab’)2分子を提供することができる領域を含有する。「F(ab’)2断片」は、2つの軽鎖、並びにCH1ドメインとCH2ドメイン間の定常領域の一部を含む2つの重鎖を、鎖間ジスルフィド結合が2つの重鎖間で形成されるように含有する。ゆえに、F(ab’)2断片は、2つの重鎖間のジスルフィド結合によってまとめられた2つのFab’断片からなる。用語「Fv」は、抗体のシングルアームのVLドメイン及びVHドメインからなる抗体断片を指すが、定常領域を欠いている。
【0020】
本発明において、scFv(単鎖抗体断片)は、当該技術における従来の単鎖抗体であってよく、これは、重鎖可変領域、軽鎖可変領域、及び15~20アミノ酸の短いペプチドを含む。scFvにおいて、VLドメイン及びVHドメインは、単ポリペプチド鎖を生成するのを可能にするリンカーを介して対形成されて一価の分子を形成する[例えば、Bird et al,Science 242:423-426(1988)and Huston et al,Proc. Natl.Acad.Sci.USA 85:5879-5883(1988)参照]。そのようなscFv分子は、一般構造:NH2-VL-リンカー-VH-COOH又はNH2-VH-リンカー-VL-COOHを有し得る。先行技術における適切なリンカーは、反復G4Sアミノ酸配列又はそのバリアントからなる。例えば、アミノ酸配列(G4S)4又は(G4S)3を有するリンカーが用いられ得るが、そのバリアントも用いられ得る。
【0021】
用語「多重特異性抗体」は、その最も広い意味で用いられており、マルチエピトープ特異性を有する抗体を包含する。当該多重特異性抗体として、以下に限定されないが:重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含む抗体であって、VH-VL単位はマルチエピトープ特異性を有する、抗体;2つ以上のVL領域及びVH領域を有する抗体であって、各VH-VL単位は、異なる標的、又は同じ標的の異なるエピトープに結合する、抗体;2つ以上の単可変領域を有する抗体であって、各単可変領域は、異なる標的、又は同じ標的の異なるエピトープに結合する、抗体;全長抗体、抗体断片、二重特異性抗体、トリアボディ、共有結合的に、又は非共有結合的に一緒に連結された抗体断片等が挙げられる。
【0022】
本発明の抗体は、モノクローナル抗体を含む。本発明のモノクローナル抗体又はmAb又はAbは、真核細胞株、原核細胞株、又はファージクローン細胞株に限定されない単一のクローン細胞株から得られる抗体を指す。
【0023】
本発明において、「重鎖抗体」(HCAbとも称される)は、1つのみの重鎖可変領域(VHH)、並びに2つの従来のCH2領域及びCH3領域を含む抗体を指す。
【0024】
本発明において、「シングルドメイン抗体」(「ナノボディ」とも称される)は、重鎖抗体からクローニングされたVHH構造を指す。これは、標的抗原に結合できることが知られている最も小さな単位である。
【0025】
上述の技術的課題を解決するために、本発明の第2の態様は、CD3を標的とする第1のタンパク質機能領域及びCLDN18.2を標的とする第2のタンパク質機能領域を含む二重特異性抗体を提供し;
第1のタンパク質機能領域はFabの形態であり、第2のタンパク質機能領域はVHの形態であり、好ましくは2又は3つのVHを含み;第2のタンパク質機能領域が、直列的に連結された3つのVHを含む場合、第1のタンパク質機能領域及び第2のタンパク質機能領域は各々、Fcの二本鎖に連結されており;第2のタンパク質機能領域が、直列的に連結された2つのVHを含む場合、第1のタンパク質機能領域及び第2のタンパク質機能領域は各々、Fcの二本鎖に連結されており;第2のタンパク質機能領域が3つのVHを含み、3つのVHのうちの1つが、第1のタンパク質機能領域に連結されている場合、残りの2つのVHは直列的に連結されており、第1のタンパク質機能領域、及び第2のタンパク質機能領域の直列的に連結された2つのVHは各々、Fcの二本鎖に連結されており;
これ以外にも、第1のタンパク質機能領域はFabの形態であり、第2のタンパク質機能領域はHCAbの形態であり;
これ以外にも、第1のタンパク質機能領域はFabの形態であり、第2のタンパク質機能領域はVH-HCAbの形態であり、第2のタンパク質機能領域は好ましくは、合計4つのVHを含む。
【0026】
本発明において、第1のタンパク質機能領域及び第2のタンパク質機能領域における「第1」及び「第2」は、実用的な意味を有しておらず、異なる標的について抗原結合ドメインを区別するのに用いられるだけである。あるタンパク質機能領域は、複数の抗原結合ドメインを同じ形態で含んでも異なる形態で含んでもよく;異なるタンパク質機能領域の抗原結合ドメインは、作動可能に一緒に連結され得、同じタンパク質機能領域の異なる抗原結合ドメインは、互いに連結され得ない。
【0027】
例えば、本発明において、第1のタンパク質機能領域は、CD3標的化抗原結合ドメインであり得、第2のタンパク質機能領域は、CLDN18.2標的化抗原結合ドメインであり得る。
【0028】
本発明の好ましい実施形態において、第2のタンパク質機能領域は、HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含む重鎖可変領域を含み、HCDR1は、配列番号16~18のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含み、HCDR2は、配列番号42~46及び配列番号48~54のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含み、HCDR3は、配列番号77~82のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む。
【0029】
より好ましくは、HCDR1、HCDR2、及びHCDR3は、配列番号16、配列番号42、及び配列番号77にそれぞれ示されるアミノ酸配列を含むか;又はHCDR1、HCDR2、及びHCDR3は、配列番号16、配列番号43、及び配列番号78にそれぞれ示されるアミノ酸配列を含むか;又はHCDR1、HCDR2、及びHCDR3は、配列番号16、配列番号44、及び配列番号79にそれぞれ示されるアミノ酸配列を含むか;又はHCDR1、HCDR2、及びHCDR3は、配列番号16、配列番号48、及び配列番号78にそれぞれ示されるアミノ酸配列を含むか;又はHCDR1、HCDR2、及びHCDR3は、配列番号16、配列番号49、及び配列番号78にそれぞれ示されるアミノ酸配列を含むか;又はHCDR1、HCDR2、及びHCDR3は、配列番号16、配列番号50、及び配列番号78にそれぞれ示されるアミノ酸配列を含むか;又はHCDR1、HCDR2、及びHCDR3は、配列番号16、配列番号51、及び配列番号78にそれぞれ示されるアミノ酸配列を含むか;又はHCDR1、HCDR2、及びHCDR3は、配列番号16、配列番号52、及び配列番号78にそれぞれ示されるアミノ酸配列を含むか;又はHCDR1、HCDR2、及びHCDR3は、配列番号16、配列番号53、及び配列番号79にそれぞれ示されるアミノ酸配列を含むか;又はHCDR1、HCDR2、及びHCDR3は、配列番号16、配列番号54、及び配列番号78にそれぞれ示されるアミノ酸配列を含む。詳細について、以下の表d参照。
【0030】
【0031】
さらに好ましくは、重鎖可変領域は、配列番号150~152及び配列番号159~165のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む。それらは全て、表bに一覧にされている。
【0032】
本発明の特定の実施形態において、第1のタンパク質機能領域は、配列番号101、配列番号116、及び配列番号131にそれぞれ示されるLCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む軽鎖可変領域、並びに配列番号11、配列番号38、及び配列番号72にそれぞれ示されるHCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含む重鎖可変領域を含む。
【0033】
好ましくは、重鎖可変領域は、配列番号149又は配列番号144に示されるアミノ酸配列を含み、軽鎖は、配列番号168に示されるアミノ酸配列を含む。
【0034】
上述の第1のタンパク質機能領域のアミノ酸配列は、以下の表eに示される。
【0035】
【0036】
好ましくは、二重特異性抗体は、3つのポリペプチド鎖を以下の形態で含む:
Fcの2つのN末端は、Fab及びVHにそれぞれ連結されており;好ましくは、二重特異性抗体は、式:VHCLDN18.2-VHCLDN18.2-ヒンジ-CH2-CH3又はVHCLDN18.2-VHCLDN18.2-VHCLDN18.2-ヒンジ-CH2-CH3に示される第1のポリペプチド鎖、式:VHCD3-CH1-ヒンジ-CH2-CH3に示される第2のポリペプチド鎖、及び式:VLCD3-CLに示される第3のポリペプチド鎖を有し;
これ以外にも、HCAbの1つのC末端は、FabのVH又はVLに連結されており;好ましくは、二重特異性抗体は、式:VHCLDN18.2-ヒンジ-CH2-CH3に示される第1のポリペプチド鎖、式:VHCLDN18.2-ヒンジ-CH2-CH3-VHCD3-CH1に示される第2のポリペプチド鎖、及び式:VLCD3-CLに示される第3のポリペプチド鎖を有し;これ以外にも、二重特異性抗体は、式:VHCLDN18.2-ヒンジ-CH2-CH3に示される第1のポリペプチド鎖、式:VHCLDN18.2-ヒンジ-CH2-CH3-VLCD3-CLに示される第2のポリペプチド鎖、及び式:VHCD3-CH1に示される第3のポリペプチド鎖を有し;これ以外にも、二重特異性抗体は、式:VHCLDN18.2-VHCLDN18.2-ヒンジ-CH2-CH3に示される第1のポリペプチド鎖、式:VHCLDN18.2-VHCLDN18.2-ヒンジ-CH2-CH3-VHCD3-CH1に示される第2のポリペプチド鎖、及び式:VLCD3-CLに示される第3のポリペプチド鎖を有し;これ以外にも、二重特異性抗体は、式:VHCLDN18.2-VHCLDN18.2-ヒンジ-CH2-CH3に示される第1のポリペプチド鎖、式:VHCLDN18.2-VHCLDN18.2-ヒンジ-CH2-CH3-VLCD3-CLに示される第2のポリペプチド鎖、及び式:VHCD3-CH1に示される第3のポリペプチド鎖を有し;
これ以外にも、Fabの重鎖のN末端は、1つのVHCLDN18.2に連結されており、重鎖のC末端は、Fcの1つのN末端に連結されており、直列的に連結されたVHのC末端は、Fcの他のN末端に連結されており;好ましくは、二重特異性抗体は、式:VHCLDN18.2-VHCLDN18.2-ヒンジ-CH2-CH3に示される第1のポリペプチド鎖、式:VHCLDN18.2-VHCD3-CH1-ヒンジ-CH2-CH3に示される第2のポリペプチド鎖、及び式:VLCD3-CLに示される第3のポリペプチド鎖を有する。
【0037】
より好ましくは、異なる機能ユニット、例えば、VH、CH2-CH3、及びVLは、好ましくは配列番号244~248のいずれか1つに示されるアミノ酸配列、好ましくは配列番号246に示される配列を含むリンカーペプチドによって作動可能に連結される。詳細について、表f参照。
【0038】
【0039】
本発明の一実施形態において、Fcの2つのN末端は、Fab及びVHにそれぞれ連結されており;好ましくは、二重特異性抗体は、式:VH
CLDN18.2-リンカーペプチド-VH
CLDN18.2-ヒンジ-CH2-CH3又はVH
CLDN18.2-リンカーペプチド-VH
CLDN18.2-リンカーペプチド-VH
CLDN18.2-ヒンジ-CH2-CH3に示される第1のポリペプチド鎖、式:VH
CD3-CH1-ヒンジ-CH2-CH3に示される第2のポリペプチド鎖、及び式:VL
CD3-CLに示される第3のポリペプチド鎖を有し(特定の例について、
図4の構造(1)及び(7)参照);
これ以外にも、HCAbの1つのC末端は、FabのVH又はVLに連結されており;好ましくは、二重特異性抗体は、式:VH
CLDN18.2-ヒンジ-CH2-CH3に示される第1のポリペプチド鎖、式:VH
CLDN18.2-ヒンジ-CH2-CH3-リンカーペプチド-VH
CD3-CH1に示される第2のポリペプチド鎖、及び式:VL
CD3-CLに示される第3のポリペプチド鎖を有し;これ以外にも、二重特異性抗体は、式:VH
CLDN18.2-ヒンジ-CH2-CH3に示される第1のポリペプチド鎖、式:VH
CLDN18.2-ヒンジ-CH2-CH3-リンカーペプチド-VL
CD3-CLに示される第2のポリペプチド鎖、及び式:VH
CD3-CH1に示される第3のポリペプチド鎖を有し(特定の例について、
図4の構造(2)及び(3)参照);
これ以外にも、VH-HCAbの1つのC末端は、FabのVH又はVLに連結されており;好ましくは、二重特異性抗体は、式:VH
CLDN18.2-リンカーペプチド-VH
CLDN18.2-ヒンジ-CH2-CH3に示される第1のポリペプチド鎖、式:VH
CLDN18.2-リンカーペプチド-VH
CLDN18.2-ヒンジ-CH2-CH3-リンカーペプチド-VH
CD3-CH1に示される第2のポリペプチド鎖、及び式:VL
CD3-CLに示される第3のポリペプチド鎖を有し;これ以外にも、二重特異性抗体は、式:VH
CLDN18.2-リンカーペプチド-VH
CLDN18.2-ヒンジ-CH2-CH3に示される第1のポリペプチド鎖、式:VH
CLDN18.2-リンカーペプチド-VH
CLDN18.2-ヒンジ-CH2-CH3-リンカーペプチド-VL
CD3-CLに示される第2のポリペプチド鎖、及び式:VH
CD3-CH1に示される第3のポリペプチド鎖を有し(特定の例について、
図4の構造(4)及び(5)参照);
これ以外にも、Fabの重鎖のN末端は、1つのVH
CLDN18.2に連結されており、重鎖のC末端は、Fcの1つのN末端に連結されており、直列的に連結されたVHのC末端は、Fcの他のN末端に連結されており;好ましくは、二重特異性抗体は、式:VH
CLDN18.2-リンカーペプチド-VH
CLDN18.2-ヒンジ-CH2-CH3に示される第1のポリペプチド鎖、式:VH
CLDN18.2-リンカーペプチド-VH
CD3-CH1-ヒンジ-CH2-CH3に示される第2のポリペプチド鎖、及び式:VL
CD3-CLに示される第3のポリペプチド鎖を有する(特定の例について、
図4の構造(6)参照)。
【0040】
本発明の特定の実施形態において、第1のポリペプチド鎖は、配列番号214に示されるアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチド鎖は、配列番号213に示されるアミノ酸配列を含み、第3のポリペプチド鎖は、配列番号200に示されるアミノ酸配列を含み;
これ以外にも、第1のポリペプチド鎖は、配列番号219に示されるアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチド鎖は、配列番号213に示されるアミノ酸配列を含み、第3のポリペプチド鎖は、配列番号200に示されるアミノ酸配列を含み;
これ以外にも、第1のポリペプチド鎖は、配列番号220に示されるアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチド鎖は、配列番号213に示されるアミノ酸配列を含み、第3のポリペプチド鎖は、配列番号200に示されるアミノ酸配列を含み;
これ以外にも、第1のポリペプチド鎖は、配列番号221に示されるアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチド鎖は、配列番号213に示されるアミノ酸配列を含み、第3のポリペプチド鎖は、配列番号200に示されるアミノ酸配列を含み;
これ以外にも、第1のポリペプチド鎖は、配列番号222に示されるアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチド鎖は、配列番号213に示されるアミノ酸配列を含み、第3のポリペプチド鎖は、配列番号200に示されるアミノ酸配列を含み;
これ以外にも、第1のポリペプチド鎖は、配列番号223に示されるアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチド鎖は、配列番号213に示されるアミノ酸配列を含み、第3のポリペプチド鎖は、配列番号200に示されるアミノ酸配列を含み;
これ以外にも、第1のポリペプチド鎖は、配列番号224に示されるアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチド鎖は、配列番号213に示されるアミノ酸配列を含み、第3のポリペプチド鎖は、配列番号200に示されるアミノ酸配列を含み;
これ以外にも、第1のポリペプチド鎖は、配列番号225に示されるアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチド鎖は、配列番号213に示されるアミノ酸配列を含み、第3のポリペプチド鎖は、配列番号200に示されるアミノ酸配列を含み;
これ以外にも、第1のポリペプチド鎖は、配列番号226に示されるアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチド鎖は、配列番号213に示されるアミノ酸配列を含み、第3のポリペプチド鎖は、配列番号200に示されるアミノ酸配列を含み;
これ以外にも、第1のポリペプチド鎖は、配列番号227に示されるアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチド鎖は、配列番号228に示されるアミノ酸配列を含み、第3のポリペプチド鎖は、配列番号200に示されるアミノ酸配列を含み;
これ以外にも、第1のポリペプチド鎖は、配列番号227に示されるアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチド鎖は、配列番号230に示されるアミノ酸配列を含み、第3のポリペプチド鎖は、配列番号229に示されるアミノ酸配列を含み;
これ以外にも、第1のポリペプチド鎖は、配列番号219に示されるアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチド鎖は、配列番号231に示されるアミノ酸配列を含み、第3のポリペプチド鎖は、配列番号200に示されるアミノ酸配列を含み;
これ以外にも、第1のポリペプチド鎖は、配列番号219に示されるアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチド鎖は、配列番号232に示されるアミノ酸配列を含み、第3のポリペプチド鎖は、配列番号229に示されるアミノ酸配列を含み;
これ以外にも、第1のポリペプチド鎖は、配列番号219に示されるアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチド鎖は、配列番号233に示されるアミノ酸配列を含み、第3のポリペプチド鎖は、配列番号200に示されるアミノ酸配列を含み;
これ以外にも、第1のポリペプチド鎖は、配列番号234に示されるアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチド鎖は、配列番号213に示されるアミノ酸配列を含み、第3のポリペプチド鎖は、配列番号200に示されるアミノ酸配列を含み;
これ以外にも、第1のポリペプチド鎖は、配列番号219に示されるアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチド鎖は、配列番号209に示されるアミノ酸配列を含み、第3のポリペプチド鎖は、配列番号200に示されるアミノ酸配列を含み;
これ以外にも、第1のポリペプチド鎖は、配列番号221に示されるアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチド鎖は、配列番号209に示されるアミノ酸配列を含み、第3のポリペプチド鎖は、配列番号200に示されるアミノ酸配列を含み;
これ以外にも、第1のポリペプチド鎖は、配列番号236に示されるアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチド鎖は、配列番号235に示されるアミノ酸配列を含み、第3のポリペプチド鎖は、配列番号200に示されるアミノ酸配列を含み;
これ以外にも、第1のポリペプチド鎖は、配列番号236に示されるアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチド鎖は、配列番号237に示されるアミノ酸配列を含み、第3のポリペプチド鎖は、配列番号200に示されるアミノ酸配列を含み;
これ以外にも、第1のポリペプチド鎖は、配列番号238に示されるアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチド鎖は、配列番号235に示されるアミノ酸配列を含み、第3のポリペプチド鎖は、配列番号200に示されるアミノ酸配列を含み;
これ以外にも、第1のポリペプチド鎖は、配列番号239に示されるアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチド鎖は、配列番号235に示されるアミノ酸配列を含み、第3のポリペプチド鎖は、配列番号200に示されるアミノ酸配列を含み;
これ以外にも、第1のポリペプチド鎖は、配列番号240に示されるアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチド鎖は、配列番号235に示されるアミノ酸配列を含み、第3のポリペプチド鎖は、配列番号200に示されるアミノ酸配列を含み;
これ以外にも、第1のポリペプチド鎖は、配列番号241に示されるアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチド鎖は、配列番号235に示されるアミノ酸配列を含み、第3のポリペプチド鎖は、配列番号200に示されるアミノ酸配列を含み;
これ以外にも、第1のポリペプチド鎖は、配列番号242に示されるアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチド鎖は、配列番号235に示されるアミノ酸配列を含み、第3のポリペプチド鎖は、配列番号200に示されるアミノ酸配列を含み;
これ以外にも、第1のポリペプチド鎖は、配列番号243に示されるアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチド鎖は、配列番号235に示されるアミノ酸配列を含み、第3のポリペプチド鎖は、配列番号200に示されるアミノ酸配列を含む。
【0041】
上述の特定の実施形態における配列に関する情報が、以下の表gに示される。
【0042】
【0043】
【0044】
【0045】
【0046】
【0047】
上述の技術的課題を解決するために、本発明の第3の態様は、本発明の第1の態様に従う抗体又は本発明の第2の態様に従う二重特異性抗体をコードする単離された核酸を提供する。
【0048】
核酸の調製方法は、当該技術における従来の調製方法であり、好ましくは、以下の工程:遺伝子クローニング技術によって上述の抗体をコードする核酸分子を得る工程、又は人工完全配列合成によって上述の抗体をコードする核酸分子を得る工程を含む。
【0049】
ポリヌクレオチド相同体を提供するような置換、欠失、変更、挿入、又は付加が、上述の抗体のアミノ酸配列をコードする塩基配列中に適切に導入され得ることが当業者に知られている。本発明のポリヌクレオチド相同体は、抗体の活性が維持される範囲内で抗体配列をコードする遺伝子の1つ以上の塩基を置換するか、欠失させるか、又は付加することによって生成され得る。
【0050】
上述の技術的課題を解決するために、本発明の第4の態様は、本発明の第3の態様に従う単離された核酸を含む組換え発現ベクターを提供する。組換え発現ベクターは、当該技術における従来の方法を用いることによって、すなわち、本発明の核酸分子を種々の発現ベクターに連結することによって得ることができる。発現ベクターは、当該技術における従来のあらゆるベクターであるが、上述の核酸分子を有することができる場合に限る。
【0051】
好ましくは、組換え発現ベクターは、プラスミド、コスミド、ファージ、又はウイルスベクターであり、ウイルスベクターは好ましくは、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、又はアデノ随伴ウイルスベクターである。
【0052】
上述の技術的課題を解決するために、本発明の第5の態様は、宿主細胞内に本発明の第4の態様に従う組換え発現ベクターを含む形質転換体を提供する;好ましくは、宿主細胞は、大腸菌(E.coli)TG1、BL21細胞、又はCHO-K1細胞である。
【0053】
組換え発現形質転換体は、当該技術における従来の方法を用いることによって、例えば上述の組換え発現ベクターを宿主細胞中に形質転換することによって調製され得る。宿主細胞は、当該技術における従来のあらゆる宿主細胞であるが、上述の組換え発現ベクターの安定した複製を可能にし、且つ担持される核酸が効率的に発現され得る場合に限る。好ましくは、宿主細胞は、大腸菌(E.coli)TG1若しくはBL21細胞(単鎖抗体又はFab抗体を発現する)であるか、又はCHO-K1細胞(全長IgG抗体を発現する)である。本発明の好ましい組換え発現形質転換体は、上述の組換え発現プラスミドを宿主細胞中に形質転換することによって得ることができる。形質転換方法は、当該技術における従来の形質転換方法、好ましくは、化学形質転換法、ヒートショック法、又は電気形質転換法である。
【0054】
本発明において、CLDN18.2標的化抗体を用いて、キメラ抗原受容体(CAR)等を修飾するように、T細胞又はNK細胞等の細胞上に調製することができる。ゆえに、本発明の第6の態様は、本発明の第1の態様に従う抗体又は本発明の第2の態様に従う二重特異性抗体を含むキメラ抗原受容体(CAR)を提供する。
【0055】
例えば、キメラ抗原受容体は、以下の構造:(a)CLDN18.2を特異的に認識する細胞外結合ドメインscFv;(b)ヒンジドメイン;(c)膜貫通ドメイン;(d)共刺激細胞内ドメイン;及び(e)シグナル伝達ドメインを含み得;細胞外結合ドメインは、本発明の第1の態様に従うCLDN18.2標的化抗体を含む。
【0056】
上述の技術的課題を解決するために、本発明の第7の態様は、本発明の第1の態様に従う抗体又は本発明の第2の態様に従う二重特異性抗体を含む遺伝的に修飾された細胞を提供する。好ましくは、遺伝的に修飾された細胞は、真核細胞、好ましくは単離されたヒト細胞、より好ましくは免疫細胞、例えば、T細胞又はNK細胞である。
【0057】
上述の技術的課題を解決するために、本発明の第8の態様は、二重特異性抗体を調製する方法であって、本発明の第5の態様に従う形質転換体を培養することと、培養から抗体又は二重特異性抗体を得ることとを含む方法を提供する。
【0058】
上述の技術的課題を解決するために、本発明の第9の態様は、細胞毒性剤、及び本発明の第1の態様に従う抗体又は本発明の第2の態様に従う二重特異性抗体を含む抗体-薬物コンジュゲート(ADC)を提供し;好ましくは、細胞毒性剤は、MMAF又はMMAEである。
【0059】
抗体-薬物コンジュゲートの調製方法は、当該技術における従来の方法、好ましくはDoronina,2006,Bioconjugate Chem. 17:114-124に記載される調製方法であってよい。好ましくは、調製方法は、最小低コンジュゲート画分(minimal low conjugate fraction:LCF)が10%未満の抗体-薬物コンジュゲートを生成する。
【0060】
抗体-薬物コンジュゲートは、好ましくは澄明な溶液として、当該技術において知られているあらゆる物理的形態で存在し得る。
【0061】
上述の技術的課題を解決するために、本発明の第10の態様は、本発明の第1の態様に従う抗体又は本発明の第2の態様に従う二重特異性抗体、及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。
【0062】
好ましくは、医薬組成物はさらに、ホルモン剤、小分子標的剤、プロテアソーム阻害剤、造影剤、診断薬、化学療法剤、腫瘍溶解薬、細胞毒性剤、サイトカイン、共刺激分子の活性化剤、阻害分子の阻害剤、及びワクチンからなる群の1つ以上を含む。
【0063】
上述の技術的課題を解決するために、本発明の第11の態様は、CD3及び/又はCLDN18.2関連疾患の予防又は処置のための薬剤の製造における、本発明の第1の態様に従う抗体、本発明の第2の態様に従う二重特異性抗体、又は本発明の第10の態様に従う医薬組成物の使用を提供し;
疾患は、好ましくは癌であり、癌は、好ましくは、乳癌、卵巣癌、子宮体癌、腎臓癌、黒色腫、肺癌、胃癌、肝癌、食道癌、子宮頸癌、頭頚部腫瘍、胆管癌、胆嚢癌、膀胱癌、肉腫、又は結腸直腸癌であり;好ましくは、癌は、乳癌、卵巣癌、子宮体癌、腎臓癌、又は胆管癌であり;より好ましくは、癌は乳癌である。
【0064】
上述の技術的課題を解決するために、本発明の第12の態様は、本発明の第1の態様に従う抗体、本発明の第2の態様に従う二重特異性抗体、本発明の第6の態様に従うキメラ抗原受容体、本発明の第7の態様に従う遺伝的に修飾された細胞、本発明の第9の態様に従う抗体-薬物コンジュゲート、又は本発明の第10の態様に従う医薬組成物を含むキットを提供し;
好ましくは、キットはさらに、(i)抗体若しくはその抗原結合断片、抗体-薬物コンジュゲート、又は医薬組成物を投与するためのデバイス;及び/或いは(ii)指示事項を含む。
【0065】
上述の技術的課題を解決するために、本発明の第13の態様は、キットA及びキットBを含むキットオブパーツを提供し:
キットAは、本発明の第1の態様に従う抗体、本発明の第2の態様に従う二重特異性抗体、本発明の第6の態様に従うキメラ抗原受容体、本発明の第7の態様に従う遺伝的に修飾された細胞、本発明の第9の態様に従う抗体-薬物コンジュゲート、及び/又は本発明の第10の態様に従う医薬組成物を含み;
キットBは、他の抗腫瘍抗体、又は他の抗腫瘍抗体を含む医薬組成物、並びに/又はホルモン剤、小分子標的剤、プロテアソーム阻害剤、造影剤、診断薬、化学療法剤、腫瘍溶解薬、細胞毒性剤、サイトカイン、共刺激分子の活性化剤、阻害分子の阻害剤、及びワクチンからなる群の1つ以上を含む。
【0066】
キットA及びキットBは、同時に用いられてもよいし、キットAは、キットBの使用前に用いられてもよいし、キットBは、キットAの使用前に用いられてもよい。使用順は、特定の用途における実際の要求に従って決定することができる。
【0067】
上述の技術的課題を解決するために、本発明の第14の態様は、CLDN18.2媒介疾患又は障害を診断、処置、且つ/又は予防する方法であって、これを必要とする患者に、治療的に有効な量の、本発明の第1の態様に従う抗体、本発明の第2の態様に従う二重特異性抗体、本発明の第6の態様に従うキメラ抗原受容体、本発明の第9の態様に従う抗体-薬物コンジュゲート、若しくは本発明の第10の態様に従う医薬組成物を投与するか、又はこれを必要とする患者を、本発明の第13の態様に従うキットオブパーツを用いて処置することを含む方法を提供する。
【0068】
好ましくは、疾患又は障害は、腫瘍、好ましくはCLDN18.2陽性腫瘍、より好ましくは、胃癌、食道癌、肺癌、卵巣癌、黒色腫、腎臓癌、乳癌、結腸直腸癌、肝癌、膵癌、膀胱癌、頭頚部癌、気管支癌、神経膠腫、及び/又は白血病である。
【0069】
本発明で用いられる「CLDN18.2陽性」は、CLDN18.2タンパク質の過剰発現に、例えばCLDN18.2陽性細胞NUGC4_D8細胞株に言及する;それ以外の場合には、「CLDN18.2陰性」と称される。
【0070】
上述の技術的課題を解決するために、本発明の第15の態様は、CLDN18.2の免疫検出又は判定の方法であって、本発明の第1の態様に従う抗体、本発明の第2の態様に従う二重特異性抗体、本発明の第6の態様に従うキメラ抗原受容体、本発明の第9の態様に従う抗体-薬物コンジュゲート、又は本発明の第10の態様に従う医薬組成物を用いることを含む方法を提供する。好ましくは、検出は、非診断且つ/又は治療目的のものである。
【0071】
上述の技術的課題を解決するために、本発明の第16の態様は、併用療法であって、これを必要とする患者に、本発明の第1の態様に従う抗体、本発明の第2の態様に従う二重特異性抗体、本発明の第6の態様に従うキメラ抗原受容体、本発明の第9の態様に従う抗体-薬物コンジュゲート、又は本発明の第10の態様に従う医薬組成物、及び第2の治療剤を投与することを含み;第2の治療剤は、好ましくは、他の抗腫瘍抗体、又は他の抗腫瘍抗体を含む医薬組成物、並びに/又はホルモン剤、小分子標的剤、プロテアソーム阻害剤、造影剤、診断薬、化学療法剤、腫瘍溶解薬、細胞毒性剤、サイトカイン、共刺激分子の活性化剤、阻害分子の阻害剤、及びワクチンからなる群の1つ以上を含む、併用療法を提供する。
【0072】
本出願において、一覧にされるCDRのアミノ酸配列は全て、Chothiaスキームに従って示される(本発明の特許請求の範囲における配列もまた、Chothiaスキームに従って示される)。しかしながら、抗体のCDRを、種々の方法、例えば、配列変異性に基づくKabatスキーム(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,National Institutes of Health(U.S.),Bethesda,Maryland(1991)参照)、及び構造ループ領域の位置に基づくChothiaスキーム(J Mol Biol 273:927-48,1997参照)を用いて、当該技術において定義することができることは、当業者に周知である。本出願において、Kabatスキーム及びChothiaスキームを含む組み合わせたスキームを用いて、アミノ酸残基を可変ドメイン順に決定することもできる。組み合わせたスキームは、KabatスキームをChothiaスキームと組み合わせて、より大きな範囲を得る。詳細について、表1参照。特に明記しない限り、所与の抗体又はその領域(例えば可変領域)の用語「CDR」及び「相補性決定領域」は、本明細書中に記載される上述の知られているスキームのいずれか1つによって定義される相補性決定領域を包含するものと解釈されることが、当業者によって理解されよう。本発明の特許請求の範囲において請求される範囲は、Chothiaスキームに基づいて示される配列であるが、他のCDR定義のスキームに対応するアミノ酸配列もまた、本発明の範囲内に入るものとする。
【0073】
【0074】
Chothiaスキームにおいて、Laa~Lbbは、抗体の軽鎖のN末端から始まる位置aaから位置bbまでのアミノ酸配列を指し得;Haa~Hbbは、抗体の重鎖のN末端から始まる位置aaから位置bbまでのアミノ酸配列を指し得る。例えば、L24~L34は、抗体の軽鎖のN末端から始まる、Chothiaスキームに従う位置24から位置34までのアミノ酸配列を指し得;H26~H32は、抗体の重鎖のN末端から始まる、Chothiaスキームに従う位置26から位置32までのアミノ酸配列を指し得る。ChothiaスキームによるナンバリングCDR内に挿入部位が存在する位置があることが、当業者に周知である。
【0075】
本発明において、定義される場合を除き、本明細書中で用いられる科学用語及び技術用語は、当業者によって通常理解される意味を有する。加えて、本明細書中で用いられる細胞培養、分子遺伝学、核酸化学、及び免疫学のラボ操作は、対応する分野において広く用いられているルーチン手順である。一方、本発明をより十分に理解するために、関連する用語の定義及び説明が、以下で提供される。
【0076】
本発明に用いられるアミノ酸の3文字コード及び1文字コードは、当業者に知られているか、又はJ.Biol. Chem,243,p3558(1968)に記載されている。
【0077】
本明細書中で用いられる用語「含む(include/includes/including)」又は「含む(comprise/comprises/comprising)」は、組成物及び方法が、記載される要素を含むが、他の要素を排除しないことを意味することが意図される;しかし、「からなる(consist/consists/consisting of)」の場合も、文脈に応じて含まれる。
【0078】
用語「CLDN18.2」は、アイソタイプ、哺乳動物(例えばヒト)CLDN18.2、ヒトCLDN18.2の種相同体、及びCLDN18.2と少なくとも1つの共通のエピトープを含む類似体を含む。CLDN18.2(例えばヒトCLDN18.2)のアミノ酸配列は、NCBIデータベースに示されるように、当該技術において知られている。
【0079】
用語「CLDN18.1」は、アイソタイプ、哺乳動物(例えばヒト)CLDN18.1、ヒトCLDN18.1の種相同体、及びCLDN18.1と少なくとも1つの共通のエピトープを含む類似体を含む。CLDN18.1(例えばヒトCLDN18.1)のアミノ酸配列は、NCBIデータベースに示されるように、当該技術において知られている。
【0080】
用語「エピトープ」は、抗体分子と特異的に相互作用する抗原(例えばヒトCLDN18.2)の部分を指す。本発明における用語「競合する」は、標的(例えばヒトCLDN18.2)への抗CLDN18.2抗体分子の結合に干渉する抗体分子の能力に言及する。結合に対する干渉は、直接的であっても間接的(例えば、抗体分子又は標的のアロステリック調節を介する)であってもよい。競合結合アッセイ(例えば、FACSアッセイ、ELISA、又はBIACOREアッセイ)を用いて、ある抗体分子が、別の抗体分子の、その標的への結合に干渉することができる程度を決定することができる。
【0081】
本発明において用いられる用語「抗体」は、鎖間ジスルフィド結合による、2つの同一の重鎖と2つの同一の軽鎖間の結合によって形成されるテトラペプチド鎖構造の免疫グロブリンを含む。免疫グロブリンは、その重鎖定常領域のアミノ酸組成及び配置が、従ってその抗原性が異なる。したがって、免疫グロブリンは、免疫グロブリンの5つのクラス又はアイソタイプ、すなわち、IgM、IgD、IgG、IgA、及びIgEに分類され得、それらの対応する重鎖はそれぞれ、μ、δ、γ、α、及びε鎖である。同じクラスのIgは、ヒンジ領域のアミノ酸組成、並びに重鎖におけるジスルフィド結合の数及び位置の差異に従って、異なるサブクラスに分割され得;例えば、IgGは、IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4に分割され得る。軽鎖は、定常領域の差異によって、κ鎖又はλ鎖に分類される。5つのクラスのIgは各々、κ鎖又はλ鎖を有し得る。
【0082】
本発明において、本発明の抗体の軽鎖可変領域はさらに、ヒトκ若しくはλ鎖、又はそのバリアントを含む軽鎖定常領域を含んでよい。本発明において、本発明の抗体の重鎖可変領域はさらに、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、又はそのバリアントを含む重鎖定常領域を含んでよい。
【0083】
抗体の重鎖及び軽鎖のN末端近くの約110個のアミノ酸の配列は、かなり変異するので、可変領域(V領域)と称され;C末端の近くの残りのアミノ酸配列は、比較的安定しているので、定常領域(C領域)と称される。可変領域は、3つの超可変領域(HVR)、及び配列が比較的保存されている4つのフレームワーク領域(FWR)を含む。3つの超可変領域は、抗体の特異性を決定するので、相補性決定領域(CDR)としても知られている。軽鎖可変領域(VL)又は重鎖可変領域(VH)は各々、アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順序で配置される3つのCDR領域及び4つのFWR領域:FWR1、CDR1、FWR2、CDR2、FWR3、CDR3、及びFWR4からなる。軽鎖の3つのCDR領域は、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を指し;重鎖の3つのCDR領域は、HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を指す。
【0084】
軽鎖及び重鎖において、可変領域及び定常領域は、約12個以上のアミノ酸の「J」領域によって連結されており、重鎖はさらに、約3個以上のアミノ酸の「D」領域を含む。各重鎖は、重鎖可変領域(VH)及び重鎖定常領域(CH)からなる。重鎖定常領域は、3つのドメイン(CH1、CH2、及びCH3)からなる。各軽鎖は、軽鎖可変領域(VL)及び軽鎖定常領域(CL)からなる。軽鎖定常領域は、1つのドメインCLからなる。抗体の定常領域は、免疫系の種々の細胞(例えばエフェクタ細胞)の、古典的補体系の第1の構成要素(C1q)への結合が挙げられる、免疫グロブリンの、宿主の組織又は因子への結合を媒介することができる。VH領域及びVL領域はさらに、超可変領域(相補性決定領域(CDR)と呼ばれる)に再分割され得、これらの間にフレームワーク領域(FWR)と呼ばれる保存領域が分配されている。VH及びVLは各々、アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順序で配置される3つのCDR及び4つのFWR:FWR1、CDR1、FWR2、CDR2、FWR3、CDR3、及びFWR4からなる。各重鎖/軽鎖の対応する可変領域(VH及びVL)はそれぞれ、抗体結合部位を形成する。特に、重鎖は、3つ以上のCDR、例えば、6、9、又は12個のCDRを含み得る。例えば、本発明の二重特異性抗体において、重鎖は、別の抗体に連結されたIgG抗体の重鎖のN末端を有するScFvであってもよく、この場合、重鎖は9つのCDRを含む。
【0085】
用語「ヒト抗体」は、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列の可変領域及び定常領域を有する抗体を含む。本発明のヒト抗体は、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基(例えば、インビトロでのランダム若しくは部位特異的変異誘発、又はインビボでの体細胞変異によって導入された変異)を含み得る。しかしながら、用語「ヒト抗体」は、マウス等の別の哺乳動物種の生殖細胞系に由来するCDR配列が、ヒトフレームワーク配列中にグラフトされている抗体(すなわち「ヒト化抗体」)を含まない。
【0086】
本明細書中で用いられる用語、抗体に関する「特異的な」は、抗体が特定の抗原を認識するが、試料中の他の分子を実質的に認識しないか、又はこれに結合しないことを意味する。例えば、ある種由来の抗原に特異的に結合する抗体は、1つ以上の種由来の抗原に結合する場合もある。しかしながら、そのような種間交差反応性はそれ自体で、特異性による抗体の分類を変えない。別の例において、抗原に特異的に結合する抗体は、当該抗原に異なる対立遺伝子形態でも結合し得る。しかしながら、そのような交差反応性はそれ自体で、特異性による抗体の分類を変えない。場合によっては、用語「特異性」又は「特異的結合」は、抗体、タンパク質、又はペプチドの、第2の化学物質との相互作用に言及するのに用いられ得、これは、相互作用が、化学物質内の特定の構造(例えば、抗原決定基又はエピトープ)の存在に依存することを意味する;例えば、抗体は一般に、タンパク質ではなく特定のタンパク質構造を認識してこれに結合する。抗体がエピトープ「A」に特異的であれば、標識「A」及び抗体を含有する反応において、エピトープA(又は遊離、非標識A)を含有する分子の存在は、抗体によって結合された標識Aの量を引き下げることとなる。
【0087】
本明細書中で用いられる用語「キメラ抗原受容体」又は「CAR」は、細胞外ドメイン(細胞外結合ドメイン)、ヒンジドメイン、膜貫通ドメイン(膜貫通領域)(抗原及びポリペプチドに結合してドメイン(すなわち細胞内シグナルドメイン)への細胞質シグナルのパスを生じさせることができる)を含む。ヒンジドメインは、細胞外抗原結合領域にフレキシビリティを付与する部分とみなされ得る。細胞内シグナルドメインは、細胞の活性を調節するための第2のメッセンジャを生成することによって、確定したシグナル伝達経路を介して情報を細胞中に送信するタンパク質、又はそのようなメッセンジャに対応することによってエフェクタとして機能するタンパク質を指す。これは、CARの細胞(例えばCART細胞)の免疫エフェクタ機能を促進することができるシグナルを生成する。細胞内シグナルドメインは、シグナル伝達ドメインを含み、そしてまた、共刺激分子に由来する共刺激細胞内ドメインを含み得る。
【0088】
「相同性」、「バリアント配列」、又は「変異」は、2つのポリヌクレオチド配列間の、又は2つのポリペプチド配列間の配列類似性に言及する。2つの比較される配列内の位置が全て、同じ塩基又はアミノ酸モノマーサブユニットによって占有されている場合、例えば、2つのDNA分子の各々における位置がアデニンによって占有されているならば、分子は、当該位置にて相同である。2つの配列間の同一性パーセンテージは、2つの配列によって共有されるマッチ位置又は相同位置の数÷比較される位置の数×100%の関数である。例えば、配列が最適にアラインされている場合、2つの配列内の10個の位置のうち6つがマッチするか、又は相同であるならば、2つの配列は60%相同である。一般に、2つのアラインされた配列が、最も大きな同一性パーセンテージを与えるときに、比較がなされる。「最適化」は、抗原への抗体の結合を維持するか、又は向上させる変異を指す。本発明では、CLDN18.2への結合を維持するか、保存するか、又は向上させる変異を指す。
【0089】
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」、及び「タンパク質」(一本鎖であれば)は、本発明において互換的に用いられる。用語「核酸」、「核酸配列」、「ヌクレオチド配列」、又は「ポリヌクレオチド配列」及び「ポリヌクレオチド」は、互換的に用いられる。
【0090】
用語「変異」は、アミノ酸又はヌクレオチドの置換、付加、及び/又は欠失を含む。「アミノ酸置換」及び「保存的アミノ酸置換」はそれぞれ、アミノ酸残基の、別のアミノ酸残基による置換、及び側鎖が類似するアミノ酸残基による置換である。
【0091】
本明細書中で用いられる「レンチウイルス」は、レトロウイルス(Retroviridae)科の属を指す。レンチウイルスは、レトロウイルスの中で独特であり、非分裂細胞に感染することができ;宿主細胞のDNA中にかなりの量の遺伝的情報を送達することができるので、遺伝子送達ベクターの最も効率的な方法の1つである。HIV、SIV、及びFIVは、レンチウイルスの全ての例である。レンチウイルスに由来するベクターは、かなりの水平遺伝子導入をインビボで達成する手段を提供する。
【0092】
本明細書中で用いられる用語「ベクター」は、単離された核酸を含み、且つ単離された核酸を細胞の内部に送達するのに有用な組成物である。多くのベクターが、当該技術において知られている。以下に限定されないが、直鎖状ポリヌクレオチド、イオン性化合物又は両親媒性化合物と関連するポリヌクレオチド、プラスミド、及びウイルスが挙げられる。ゆえに、用語「ベクター」は、自律的に複製するプラスミド又はウイルスを含む。また、当該用語は、ポリリシン化合物及びリポソーム等の、細胞中への核酸の移入を促進する非プラスミド化合物及び非ウイルス化合物を含むと解釈されるべきである。ウイルスベクターの例として、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクターその他が挙げられるが、これらに限定されない。
【0093】
本発明中で用いられる表現「細胞」及び「細胞株」は、互換的に用いられており、そのような全ての表示は、後代を含む。用語「宿主細胞」は、ベクターを導入することができる細胞を指し、以下に限定されないが、原核細胞、例えば大腸菌(E.coli)、真菌細胞、例えば酵母細胞、又は動物細胞、例えば、線維芽細胞、CHO細胞、COS細胞、NSO細胞、HeLa細胞、BHK細胞、HEK 293細胞、若しくはヒト細胞が挙げられる。
【0094】
用語「形質移入」は、真核細胞中への外来核酸の導入を指す。形質移入は、当該技術において知られている種々の手段によって達成され得、リン酸カルシウム-DNA共沈、DEAE-デキストラン媒介形質移入、ポリブレン媒介形質移入、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、リポソーム融合、リポフェクション、プロトプラスト融合、レトロウイルス感染、及びバイオリスティックが挙げられる。
【0095】
用語「免疫細胞」は、免疫応答を誘発することができる細胞を指す。「免疫細胞」及びその他の文法上の変形は、あらゆる起源の免疫細胞を指し得る。「免疫細胞」の例として、骨髄内で生成される造血幹細胞(HSC)に由来する白血球及びリンパ球(T細胞、B細胞、及びナチュラルキラー(NK)細胞)、並びに骨髄由来の細胞(好中球、好酸球、好塩基球、単球、マクロファージ、樹状細胞)が挙げられる。また、用語「免疫細胞」は、ヒト免疫細胞又は非ヒト免疫細胞を指し得る。
【0096】
本明細書中で用いられる用語「T細胞」は、胸腺において成熟するクラスのリンパ球を指す。T細胞は、細胞媒介性免疫において重要な役割を果たし、他のリンパ球(例えばB細胞)とはT細胞受容体が細胞表面上に存在する点で異なる。「T細胞」は、CD3を発現する全てのタイプの免疫細胞を含み、ヘルパーT細胞(CD4+細胞)、細胞傷害性T細胞(CD8+細胞)、ナチュラルキラーT細胞、制御性T細胞(Treg)、及びγ-δT細胞が挙げられる。「細胞傷害性細胞」として、CD8+T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、及び好中球が挙げられ、これらは細胞傷害性応答を媒介することができる。本明細書中で用いられる用語「NK細胞」は、骨髄から始まって、自然免疫系において重要な役割を果たすクラスのリンパ球を指す。NK細胞は、細胞表面上での抗体及び主要組織適合性複合体の不在下ですら、ウイルス感染細胞、腫瘍細胞、又は他のストレスを受けた細胞に対する迅速な免疫応答を実現する。
【0097】
例えば、免疫細胞は、血液に由来してもよく、例えば、自家T細胞、同種異系T細胞、自家NK細胞、及び同種異系NK細胞があり、又はEBVウイルスによる感染によって調製されるNK細胞株、胚性幹細胞及びiPSCの誘導された分化によって得られるNK細胞、並びにNK92細胞株等の細胞株に由来してもよい。
【0098】
用語「場合による」、「場合によっては」、「いずれか」、又は「のいずれか1つ」は、後に記載される事象又は状況が、必ずしもではないが起こり得ること、そして当該記載が、事象若しくは状況が起こるか、又は起こらない例を含むことを意味する。例えば、「場合によっては、1つの抗体重鎖可変領域を含む」は、特定の配列の抗体重鎖可変領域が、必ずしもではないが存在し得ることを意味する。本明細書中で用いられる「a」及び「an」は、本発明中で、1つ以上の文法上の目的語に言及するのに用いられる。内容において具体的に述べられる場合を除き、用語「又は」は、本発明において、用語「及び/又は」を意味するのに用いられ得、そしてこれと交換可能である。「約」及び「およそ」は通常、測定値の性質又は精度を考慮して、測定される量における許容可能な誤差の程度を意味するものとする。例示的な誤差の程度は、典型的にはその10%以内、より典型的には5%以内である。本発明に開示される方法及び組成物は、指定される配列、バリアント配列、又はこれと実質的に同一であるか、若しくは類似する配列、例えば、指定される配列と少なくとも85%、90%、95%、99%、若しくはこれを超えて同一の配列を有するポリペプチド及び核酸を包含する。アミノ酸配列の文脈において、用語「実質的に同一である」は、本発明において、第1のアミノ酸配列に言及するのに用いられる。
【0099】
本明細書中で用いられる用語EC50は、最大効果の50%の濃度、すなわち、最大効果の50%を引き起こすことができる濃度を指す。
【0100】
本明細書中で用いられる用語「抗体-薬物コンジュゲート」及び「ADC」は、互換的に用いられる。
【0101】
オーリスタチンは、化学構造式がその物性及びドラッガビリティを最適化するように修飾するのが比較的容易である完全合成薬物である。抗体とのコンジュゲーションに用いられるオーリスタチン誘導体として、主に、モノメチルオーリスタチンE(MMAE)及びモノメチルオーリスタチンF(MMAF)が挙げられ、前者は、2-アミノ-1-フェニルプロピル-1-オールを、天然のチューブリンポリメラーゼ阻害剤ドラスタチン-10に由来する合成ペンタペプチドのC末端に加えることによって合成される。種々のヒト腫瘍細胞株に対するMMAEの阻害活性は、1ナノモル未満である。MMAEの細胞傷害活性を引き下げるために、MMAF内のドラスタチン-10のC末端にフェニルアラニンが加えられる。MMAFの細胞膜移動能力は、構造内の導入カルボキシルについて、不十分である。したがって、細胞の生物活性は、著しく引き下げられるが、細胞に対する阻害活性は、抗体とのコンジュゲーション後に大いに向上する(米国特許第7750116号明細書)。
【0102】
一部の実施形態において、抗体細胞傷害性の薬物コンジュゲート又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物は、1つ以上のマイタンシノイド分子とコンジュゲートした本発明の抗体を含む。マイタンシノイドは、チューブリンの重合を阻害することによってチューブリンを無効にする有糸分裂阻害剤である。メイタンシンは元々、西アフリカ低木メイテナス・セラタ(Maytenus serrata)から単離された(米国特許第3,896,111号明細書)。その後、特定の微生物も、メイタンシノイド、例えば、メイタンシノール及びC-3メイタンシノールビネガーを産生することが発見された(米国特許第4,151,042号明細書)。マイタンシノイド薬物モジュールは、抗体-薬物コンジュゲートにおける魅力的な薬物モジュールである。というのも:(i)発酵製品の発酵又は化学修飾又は誘導体化によって調製するのが比較的容易であり;(ii)非ジスルフィドリンカーを介した抗体へのコンジュゲーションに適した官能基により容易に誘導体化され;(iii)血漿中で安定しており;且つ(iv)種々の腫瘍細胞株について有効であるからである。マイタンシノイド薬物モジュールとして用いるのに適したマイタンシン化合物は、当該技術において周知であり、知られている方法に従って天然の源から単離され得るか、又は遺伝子工学技術を用いて生成され得る(Yu et al. (2002)PNAS 99:7968-7973参照)。また、メイタンシノール及びメイタンシノール類似体は、知られている方法に従って合成的に調製することができる。マイタンシノイド薬物モジュールの例示的な実施形態は:本明細書中で開示されるDM1、DM3、及びDM4を含む。
【0103】
本発明の方法、組成物、及び併用療法は、他の活性剤又は治療様式と組み合わされてよく、当該方法は、対象に、場合によっては、PD-1、PD-L1、PD-L2、LAG-3、CTLA-4、Tim-3抗体(免疫治療)、又は他の腫瘍治療抗体、Her-2、EGFR、VEGF、VEGFR抗体その他、並びにADC(例えばT-DM1)、二重特異性抗体、化学療法剤その他の1つ以上の阻害剤と組み合わせて、本発明の抗CLDN18.2抗体分子を、疾患(例えば癌)を処置又は予防するのに有効な量で投与することを含み、そしてさらに、抗CLDN18.2抗体分子、追加の活性剤、又は全てを、単独で(例えば単独療法として)用いた場合の活性剤毎の量又は用量よりも高いか、低いか、又はこれと等しい量又は用量で投与することを含む。投与される抗CLDN18.2抗体、追加の活性剤、又は全てについての量又は用量は、例えば、単独で(例えば単独療法として)用いた場合の活性剤毎の量又は用量よりも少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、又は少なくとも50%低い。
【0104】
さらに、本発明の実施例に記載されるように、抗CLDN18.2抗体、及びCLDN18.2抗体の薬物コンジュゲートは、CLDN18.2に結合して、標的細胞(腫瘍細胞)のアポトーシスを誘導し、腫瘍細胞の増殖を阻害し、且つ腫瘍細胞に及ぼすエフェクタ細胞のインビボADCC及びCDC致死効果を増大させることによって、癌患者を処置する目的を達成することができる。ゆえに、特定の実施形態において、本発明に記載される抗CLDN18.2抗体、及びCLDN18.2抗体の薬物コンジュゲートは、本発明の抗体の抗腫瘍効果、並びに腫瘍細胞の増殖を阻害する方法であって、対象に、治療的に有効な量の、本発明の抗CLDN18.2抗体、及びCLDN18.2抗体の薬物コンジュゲートを、これらの機構を介して投与することを含む方法を示す。当該方法は、癌のインビボ処置に適している。標的特異的治療効果を達成するために、抗CLDN18.2抗体分子は、他の抗体と共に投与されてもよい。CLDN18.2抗体、及び1つ以上の活性剤と組み合わせたCLDN18.2抗体の薬物コンジュゲートを投与する際に、組合せは、あらゆる順序で、又は同時に、一種の癌を有する患者、特にCLDN18.2の発現が高い腫瘍患者に投与され得る。特定の態様において、対象における高増殖性の徴候又は疾患(例えば癌)の処置(例えば、引下げ又は寛解)が実現される。当該方法は、対象に、本発明の1つ以上の抗CLDN18.2抗体又はCLDN18.2抗体の薬物コンジュゲートを、単独で、又は他の活性剤若しくは治療様式と組み合わせて投与することを含む。
【0105】
抗CLDN18.2抗体分子は、単独で、又は別の免疫調節剤(例えば、抗LAG-3、抗Tim-3、抗PD-L、又は抗PD-L1、及び抗CTLA-4抗体分子)と組み合わせて使用されて、胃癌、膵癌、肺癌、食道癌、卵巣癌その他を処置する。抗CLDN18.2抗体分子は、以下の1つ以上と組み合わせて投与され得る:免疫ベースの戦略、標的薬剤(例えば、VEGF阻害剤、例えばVEGFに対するモノクローナル抗体);VEGFチロシンキナーゼ阻害剤、例えば、スニチニブ、ソラフェニブ、及びアパチニブ;VEGFシグナル伝達の下流側メディエータのRNAi阻害剤又は阻害剤、例えばラパマイシン哺乳動物標的(mTOR)の阻害剤。
【0106】
本明細書中で用いられる用語「癌」、「癌患者」は、組織病理学的タイプにも侵入期にも関係なく、全てのタイプの癌性増殖若しくは発癌プロセス、転移性組織、又は悪性形質転換した細胞、組織、若しくは器官を含むことが意図される。例として、固形腫瘍、血液癌、軟部組織腫瘍、及び転移性病変が挙げられるが、これらに限定されない。
【0107】
本発明において開示されるCLDN18.2標的化抗体を用いて適切に処置され得る癌の非限定的な例として、胃癌、食道癌、肺癌、黒色腫、腎臓癌、乳癌、結腸直腸癌、肝癌、膵癌、膀胱癌、神経膠腫、及び/若しくは白血病等、又はそれらの転移性病変が挙げられる。
【0108】
上記の好ましい条件は、当該技術における一般知識に基づいて、本発明の好ましい実施形態を得るように任意に組み合わされてよい。
【0109】
本発明で用いられる試薬及び出発物質は、商業的に入手可能である。
【0110】
本発明の有益な効果は、以下の通りである:
1. 本発明は、親和性、特異性、及びエンドサイトーシス活性が優れる抗CLDN18.2 HCAb抗体を記載する。抗体は、分子量が従来のIgG抗体の約半分しかない「重鎖」を含有する真新しい完全ヒト抗体である。軽鎖の不在に起因して、抗体は、二重特異性抗体の開発に用いることができ、そして軽鎖ミスマッチ、及び二重特異性抗体の開発におけるヘテロ二量体化の共通の問題は回避される。また、ADCに発展する潜在性を有する。特定の好ましい実施形態において、HCAb抗体は、IMAB362類似体と比較して、CLDN18.2を内生的に発現する腫瘍細胞に対する親和性が大きくて、大きなエンドサイトーシス活性を誘導することができる。
2. また、本発明は、インビトロTDCC活性及びインビボ薬物効果が優れるCLDN18.2×CD3二重特異性抗体を記載する。本発明の二重特異性抗体は、CLDN18.2に特異的に結合する活性を有し、且つAmgenの特許の二重特異性抗体類似体よりも良好な殺腫瘍細胞効果を有する。特定の好ましい実施形態において、二重特異性抗体は、Fc断片を有するので、FcRnへのFcの結合効果を保持する;一方、FcgRへの結合を、故にFcgRの架橋結合によって引き起こされる非特異的T細胞の活性化を引き下げるようなミュータントFcが好まれる。CRS、例えばIL6及びTNFαにおいて一般的なサイトカインの放出を引き下げることができるように、CD3末端活性が最適化される。CLDN18.2末端は、軽鎖及び重鎖のミスマッチの共通の問題を回避し、優れた親水性を保持し、且つCLDN18.2の発現が高い腫瘍細胞についての選択性を向上させる、直列的に連結されたVHHの形態である。抗体は、インビボ安定性が良好であり、且つインビボ半減期が長く、大きなインビボ抗腫瘍活性を示す。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【
図1a-c】
図1a~fは、(a~b)NUGC4_D8、(c)SNU601、(d)HEK293/hCLDN18.2、及び(e~f)HEK293/hCLDN18.1細胞に対するHCAB抗体の結合親和性を示す。
【
図1d-f】
図1a~fは、(a~b)NUGC4_D8、(c)SNU601、(d)HEK293/hCLDN18.2、及び(e~f)HEK293/hCLDN18.1細胞に対するHCAB抗体の結合親和性を示す。
【
図2】
図2a~bは、HEK293/hCLDN18.2細胞に対する、(a)PR000400及び(b)PR004549に対するHCAB抗体の競合結合活性を示す。
【
図3】
図3a~bは、試験抗体及びMMAF結合抗ヒトIgG抗体と共培養した場合の標的細胞の生存度を示す。
【
図4a-b】
図4a~hは、CLDN18.2×CD3二重特異性抗体の構造を示す。
【
図4c-d】
図4a~hは、CLDN18.2×CD3二重特異性抗体の構造を示す。
【
図4e-f】
図4a~hは、CLDN18.2×CD3二重特異性抗体の構造を示す。
【
図4g-h】
図4a~hは、CLDN18.2×CD3二重特異性抗体の構造を示す。
【
図5a-c】
図5a~sは、(a~c)HEK293/hCLDN18.2、(d~i)NUGC4_D8、(j~o)Jurkat、及び(p~s)HEK293/hCLDN18.1細胞に対するCLDN18.2×CD3二重特異性抗体の結合親和性を示す。
【
図5d-f】
図5a~sは、(a~c)HEK293/hCLDN18.2、(d~i)NUGC4_D8、(j~o)Jurkat、及び(p~s)HEK293/hCLDN18.1細胞に対するCLDN18.2×CD3二重特異性抗体の結合親和性を示す。
【
図5g-i】
図5a~sは、(a~c)HEK293/hCLDN18.2、(d~i)NUGC4_D8、(j~o)Jurkat、及び(p~s)HEK293/hCLDN18.1細胞に対するCLDN18.2×CD3二重特異性抗体の結合親和性を示す。
【
図5j-l】
図5a~sは、(a~c)HEK293/hCLDN18.2、(d~i)NUGC4_D8、(j~o)Jurkat、及び(p~s)HEK293/hCLDN18.1細胞に対するCLDN18.2×CD3二重特異性抗体の結合親和性を示す。
【
図5m-o】
図5a~sは、(a~c)HEK293/hCLDN18.2、(d~i)NUGC4_D8、(j~o)Jurkat、及び(p~s)HEK293/hCLDN18.1細胞に対するCLDN18.2×CD3二重特異性抗体の結合親和性を示す。
【
図5p-r】
図5a~sは、(a~c)HEK293/hCLDN18.2、(d~i)NUGC4_D8、(j~o)Jurkat、及び(p~s)HEK293/hCLDN18.1細胞に対するCLDN18.2×CD3二重特異性抗体の結合親和性を示す。
【
図5s】
図5a~sは、(a~c)HEK293/hCLDN18.2、(d~i)NUGC4_D8、(j~o)Jurkat、及び(p~s)HEK293/hCLDN18.1細胞に対するCLDN18.2×CD3二重特異性抗体の結合親和性を示す。
【
図6a-b】
図6a~wは、(a)IM95細胞によるCLDN18.2の発現収量、並びに(b~k)NUGC4_D8、(l~o)IM95、(p~s)HEK293/hCLDN18.1、及び(t~w)SNU620細胞に対する二重特異性抗体のTDCC活性を示す。
【
図6c-d】
図6a~wは、(a)IM95細胞によるCLDN18.2の発現収量、並びに(b~k)NUGC4_D8、(l~o)IM95、(p~s)HEK293/hCLDN18.1、及び(t~w)SNU620細胞に対する二重特異性抗体のTDCC活性を示す。
【
図6e-f】
図6a~wは、(a)IM95細胞によるCLDN18.2の発現収量、並びに(b~k)NUGC4_D8、(l~o)IM95、(p~s)HEK293/hCLDN18.1、及び(t~w)SNU620細胞に対する二重特異性抗体のTDCC活性を示す。
【
図6g-h】
図6a~wは、(a)IM95細胞によるCLDN18.2の発現収量、並びに(b~k)NUGC4_D8、(l~o)IM95、(p~s)HEK293/hCLDN18.1、及び(t~w)SNU620細胞に対する二重特異性抗体のTDCC活性を示す。
【
図6i-j】
図6a~wは、(a)IM95細胞によるCLDN18.2の発現収量、並びに(b~k)NUGC4_D8、(l~o)IM95、(p~s)HEK293/hCLDN18.1、及び(t~w)SNU620細胞に対する二重特異性抗体のTDCC活性を示す。
【
図6k-l】
図6a~wは、(a)IM95細胞によるCLDN18.2の発現収量、並びに(b~k)NUGC4_D8、(l~o)IM95、(p~s)HEK293/hCLDN18.1、及び(t~w)SNU620細胞に対する二重特異性抗体のTDCC活性を示す。
【
図6m-n】
図6a~wは、(a)IM95細胞によるCLDN18.2の発現収量、並びに(b~k)NUGC4_D8、(l~o)IM95、(p~s)HEK293/hCLDN18.1、及び(t~w)SNU620細胞に対する二重特異性抗体のTDCC活性を示す。
【
図6o-p】
図6a~wは、(a)IM95細胞によるCLDN18.2の発現収量、並びに(b~k)NUGC4_D8、(l~o)IM95、(p~s)HEK293/hCLDN18.1、及び(t~w)SNU620細胞に対する二重特異性抗体のTDCC活性を示す。
【
図6q-r】
図6a~wは、(a)IM95細胞によるCLDN18.2の発現収量、並びに(b~k)NUGC4_D8、(l~o)IM95、(p~s)HEK293/hCLDN18.1、及び(t~w)SNU620細胞に対する二重特異性抗体のTDCC活性を示す。
【
図6s-t】
図6a~wは、(a)IM95細胞によるCLDN18.2の発現収量、並びに(b~k)NUGC4_D8、(l~o)IM95、(p~s)HEK293/hCLDN18.1、及び(t~w)SNU620細胞に対する二重特異性抗体のTDCC活性を示す。
【
図6u-v】
図6a~wは、(a)IM95細胞によるCLDN18.2の発現収量、並びに(b~k)NUGC4_D8、(l~o)IM95、(p~s)HEK293/hCLDN18.1、及び(t~w)SNU620細胞に対する二重特異性抗体のTDCC活性を示す。
【
図6w】
図6a~wは、(a)IM95細胞によるCLDN18.2の発現収量、並びに(b~k)NUGC4_D8、(l~o)IM95、(p~s)HEK293/hCLDN18.1、及び(t~w)SNU620細胞に対する二重特異性抗体のTDCC活性を示す。
【
図7】
図7は、ヒトCLDN18.2パラロガスファミリータンパク質CLDN1、CLDN2、CLDN3、CLDN4、CLDN6、及びCLDN9を過剰発現する細胞に対するCLDN18.2×CD3二重特異性抗体の結合親和性を示す。
【
図8】
図8a~cは、(a)HEK293/cynoCLDN18.1、(b)HEK293/cynoCLDN18.2、及び(c)カニクイザルCD3+T細胞に対するCLDN18.2×CD3二重特異性抗体の結合親和性を示す。
【
図9】
図9は、cyno T細胞によるHEK293/cynoCLDN18.2細胞に対するCLDN18.2×CD3二重特異性抗体のTDCC活性を示す。
【
図10】
図10a~bは、CLDN18.2×CD3二重特異性抗体によってインビトロで誘導されるサイトカインの放出を示す。(a)TNFα及び(b)IL-6。
【
図11】
図11a~bは、(a)Jurkat及び(b)NUGC4_D8細胞に対するCLDN18.2×CD3二重特異性抗体のADCC活性を示す。
【
図12】
図12a~bは、(a)HEK293/hCLDN18.2及び(b)Jurkat細胞に対するCLDN18.2×CD3二重特異性抗体のCDC活性を示す。
【
図13】
図13a~bは、HEK293/hCLDN18.2細胞に対する、(a)PR000400及び(b)PR004549に対するCLDN18.2×CD3二重特異性抗体の競合結合活性を示す。
【
図14】
図14は、CLDN18.2×CD3二重特異性抗体の薬物動態を示す。
【
図15a-b】
図15a~eは、(a~b)NUGC4_D8 PBMC、(c)SNU620 PBMC、及び(d)HuP-T4 PBMC腫瘍モデルにおけるインビボ薬力学研究、並びに(e)CLDN18.2×CD3二重特異性抗体に関するインビボサイトカインストーム研究を示す。
【
図15c-d】
図15a~eは、(a~b)NUGC4_D8 PBMC、(c)SNU620 PBMC、及び(d)HuP-T4 PBMC腫瘍モデルにおけるインビボ薬力学研究、並びに(e)CLDN18.2×CD3二重特異性抗体に関するインビボサイトカインストーム研究を示す。
【
図15e】
図15a~eは、(a~b)NUGC4_D8 PBMC、(c)SNU620 PBMC、及び(d)HuP-T4 PBMC腫瘍モデルにおけるインビボ薬力学研究、並びに(e)CLDN18.2×CD3二重特異性抗体に関するインビボサイトカインストーム研究を示す。
【発明を実施するための形態】
【0112】
本発明を、以下の実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明を制限することは意図していない。以下の実施例において条件が指定されていない実験手順は、従来の手順及び条件に従って、又は指示事項に従って実行される。
【実施例】
【0113】
実施例1:発現ベクター及び安定形質移入細胞株の調製、並びにマウスの免疫化
1.1. マウスを免疫化するための発現ベクターの調製
完全ヒト化トランスジェニックマウスを免疫化するためのヒトCLDN18.2発現ベクターを、以下のように調製した:ヒトCLDN18.2(Uniprot ID P56856-iso2)をコードするcDNA配列を合成して、ヒトCLDN18.2遺伝子のコード配列を酵素的消化によってpCAGGSプラスミド(YOUBIO,VT1076)中にクローニングした。
【0114】
1.2. 安定形質移入細胞株の調製
ヒトCLDN18.1又はCLDN18.2を安定して発現するHEK293(ATCC、Cat#:CRL-1573)細胞株を、具体的には以下のように構築した:ヒトCLDN18.1(GenScript、OHu29174D)又はCLDN18.2(GenScript、OHu03374D)をコードするプラスミドを、HEK293細胞中に形質移入して、ヒトCLDN18.1又はCLDN18.2を過剰発現させる安定した細胞株を生成した。CLDN18.1及びCLDN18.2の発現を、蛍光活性化細胞ソーティング(FACS)によって検出した。具体的には、20,000個の形質移入細胞を、96ウェルプレートの各ウェル内にプレーティングしてから、市販のウサギ抗ヒトCLDN18抗体(LifeSpan Bio、LS-C168812-400)を加えた。4℃にて1時間のインキュベーション後、細胞をPBSで2回洗浄してから、AF-680コンジュゲート二次ヤギ抗ウサギIgG抗体(Invitrogen、A21109)を加えた。4℃にて1時間のインキュベーション後、細胞をPBSで3回洗浄してから、細胞の蛍光強度をFACS機器(IntelliCytiQue Plus BR)を用いてモニターした。
【0115】
1.3. マウスの免疫化
完全ヒト化トランスジェニックマウス(市販のHarbour HCAB 1.0マウス、Harbour BioMedから購入)を、先で調製したヒトCLDN18.2発現ベクター及びCLDN18.2発現HEK293細胞(HEK293/hCLDN18.2細胞)により免疫化した。遺伝子銃用の銃弾を、ヒトCLDN18.2発現ベクター及び金粉末により調製した。マウスを、腹部の多部位にて遺伝子銃を用いて免疫化した。マウスを、発現ベクターDNA(各時50μg)により2週間隔で免疫化した。3回の免疫化後に、マウスをHEK293/hCLDN18.2細胞により2週間隔で免疫化した(免疫化毎にマウスあたり4×106細胞)。2回の免疫化後に、血液を力価測定のために収集した。マウス血清を、結合親和性について、ヒトCLDN18.2発現CHOK1細胞(kyinno、kc-1180)を用いるFACSによってアッセイした。マウスを、HCABモノクローナル抗体をスクリーニングするために、力価測定の結果に従って選択した。マウスを、免疫原としてのHEK293/hCLDN18.2細胞(マウスあたり4×106細胞)により、スクリーニングの3日前にブースト免疫にかけた。
【0116】
実施例2:抗CLDN18.2 HCABシングルドメイン抗体の生成及びスクリーニング
実施例1において得た、抗CLDN18.2抗体血清力価が高いマウスを選択した。これらのマウスの脾臓を収集して、B細胞を単離した。CD138(BD、558626)陽性形質細胞を、BD FACS AriaIIIセルソーターを用いてソートして、CLDN18.2(CHOK1/hCLDN18.2、kyinno、KC-1180)陽性B細胞集団を、磁気ビーズ(Thermofisher、11206D)を用いて富化した。B細胞のRNAを抽出して、cDNAに逆転写して(SuperScript IV First-Strand合成システム、Invitrogen、18091200)、ヒトVH遺伝子を、特定のプライマーを用いるPCRによって増幅した。PCRプライマー:
5’-GGTGTCCAGTGTSAGGTGCAGCTG-3’(配列番号249)
5’-AATCCCTGGGCACTGAAGAGACGGTGACC-3’(配列番号250)
【0117】
増幅されたVH遺伝子断片を、ヒトIgG1抗体の重鎖Fcドメインの配列をコードする哺乳動物細胞発現プラスミドpCAGベクター中に構築した。
【0118】
構築したプラスミドを、HEK293哺乳動物宿主細胞(ATCC、CRL-1573)中に形質移入して、HCAb抗体の発現上清を得た。一次スクリーニングを、ヒトCLDN18.2を発現するCHOK1/hCLDN18.2を用いるMirrorballによって実行した。陽性クローンを、二次スクリーニング用に選択した。二次スクリーニングを、HEK293/hCLDN18.1及びHEK293/hCLDN18.2細胞を用いるFACSによって実行した。
【0119】
ヒトCLDN18.2に特異的に結合する295個のモノクローナル抗体を得た一方、抗体分子の可変ドメイン及び対応するアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を、従来の配列決定手段を用いて得た。反復配列の除去後に、固有の配列を有し、且つヒトCLDN18.2に特異的に結合する211個の完全ヒトCLDN18.2 HCAbモノクローナル抗体を得た。総合ランキングトップの54個の抗体を、一次スクリーニング結果及び二次スクリーニング結果に従って、組換え発現用に選択した。精製モノクローナル抗体をさらに、ヒトCLDN18.2を内生的に発現する腫瘍細胞への結合能力の有無に関してフローサイトメトリによってスクリーニングして、表3に示すように、総合ランキングのトップ8の抗体配列を候補分子として選択した。
【0120】
抗体のCDRを、種々の方法、例えば、配列変異性に基づくKabatスキーム(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,National Institutes of Health(U.S.),Bethesda,Maryland(1991)参照)、及び構造ループ領域の位置に基づくChothiaスキーム(J Mol Biol 273:927-48,1997参照)を用いて、当該技術において定義することができることは、当業者に周知である。本出願において、Kabatスキーム及びChothiaスキームを含む組み合わせたスキームを用いて、アミノ酸残基を可変ドメイン順に決定することもできる。組み合わせたスキームは、KabatスキームをChothiaスキームと組み合わせて、より大きな範囲を得る。これを本発明の概要の表1に詳述する。この実施例から配列決定後に得た生殖細胞系遺伝子分析及びPTM部位分析を、以下の表2に示す。抗原結合タンパク質の配列番号を、以下の表3に示す。
【0121】
【0122】
【0123】
実施例3:抗CLDN18.2 HCAB抗体の翻訳後修飾部位の除去
PR004533及びPR004536は双方とも、重鎖のCDR2領域内に異性化部位及び脱アミド化部位を有する。CDR2領域内の翻訳後修飾部位について、NS及びDGの4つのアミノ酸が、PCRによってランダムに変異した。PCR生成物を、大腸菌(E.coli)中に電気的に形質移入して、4つのアミノ酸部位のランダム変異ライブラリを確立した。ミュータントライブラリを、CHOK1/hCLDN18.1及びCHOK1/hCLDN18.2細胞を用いるMirrorballによってスクリーニングして、CLDN18.2に特異的に結合する陽性分子を配列決定用に選択した。分子の配列番号を、以下の表4に示す。
【0124】
【0125】
実施例4:全長抗CLDN18.2 HCAbシングルドメイン抗体の調製及び特性評価
4.1. 組換えHCAbシングルドメイン抗体の調製
HCAbシングルドメイン抗体分子をコードする重鎖可変ドメインの配列を得た後に、重鎖可変ドメインの配列を、ヒト抗体の重鎖定常ドメインの対応する配列と融合させて、従来の組換えDNA技術を用いて発現させて、組換えHCAbシングルドメイン抗体分子を得ることができる。この実施例において、抗体の重鎖可変ドメイン(VH)の配列を遺伝的に合成して、HCAbシングルドメイン抗体を生成する全長配列をコードするように、ヒトIgG1抗体の重鎖定常ドメインの配列をコードする哺乳動物細胞発現プラスミドベクター中にクローニングした。この実施例において、免疫化されたHarbour HCAbマウスから得られるモノクローナル抗体分子の可変ドメインの配列は、ヒト抗体配列であったので、完全ヒト抗CLDN18.2組換えHCAb抗体もまた、この実施例から得られた。
【0126】
組換えHCAbシングルドメイン抗体をコードするプラスミドを、哺乳動物宿主細胞(例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞)中に形質移入して、対応する精製組換え抗体を、従来の組換えタンパク質発現精製技術を用いて得ることができる。具体的には、ExpiCHO-S(商標)細胞(Gibco、A29127)を、ExpiCHO(商標)Expression Medium(Gibco、A2910001)中で増殖させた。一過性形質移入の前に、細胞を、3×106~4×106細胞/mLの濃度に調整して、8%CO2シェーカー内で37℃にて24時間培養して、7×106~10×106細胞/mLの細胞濃度に至った。続いて、細胞を6×106細胞/mLに希釈して、10mLの培養細胞を調製した。HCAbシングルドメイン抗体をコードする8μgの上述のプラスミド(プラスミドの、細胞に対する比率は、0.8μg:1mLである)を、0.4mLのOptiPRO(商標)SFM培地(Gibco、12309019)中に溶解させた。結果として生じた混合液を、0.22μm滅菌フィルタを通して濾過した。続いて、32μLのExpiFectamine(商標)CHO試薬(Gibco、A29129)を、0.37mLのOptiPRO(商標)SFM培地(Gibco、12309019)に加えた。ExpiFectamine(商標)CHO試薬溶液を直ぐに、プラスミド溶液にゆっくり加えた。混合液を逆さにして、十分に混合した。プラスミド及び形質移入試薬の混合溶液をゆっくり滴加しながら、フラスコを振盪した。細胞を、8%CO2シェーカー内で37℃にて8~9日間培養した。細胞生存度を8日後に観察した。
【0127】
培養物を収集して、3,300gにて10分間遠心分離してから、上清を収集して、高速で遠心分離して不純物を除去した。MabSelect(商標)(GE Healthcare Life Science、71-5020-91 AE)を含有するグラビティカラム(Bio-Rad、#7311550)をPBS(pH7.4)で平衡化して、2~5カラム容量のPBSでリンスした。上清試料をカラム上にロードした。カラムを、5~10カラム容量のPBSでリンスした。標的タンパク質を、0.1Mグリシン(pH3.5)で溶出した。溶出液を、トリス-HCl(pH8.0)で中立に調整して、濃縮して、限外濾過チューブ(Millipore、UFC901024)によりPBSバッファ中にバッファ交換して、精製された抗体溶液を得た。続いて、精製された抗体溶液を、NanoDrop(Thermo Scientific(商標)NanoDrop(商標)One)を用いて濃度決定に供して、後の使用のためにサブパッケージングして保存した。
【0128】
4.2. SEC-HPLC、HIC-HPLC、及びDSFによる抗体特性評価
適切な量の上述の精製試料を、純度の測定のために、分析SECカラムTSKgel G3000SWxl(HPLCシステムモデル:Agilent 1260 Infinity II)上にロードした。この方法では、以下のパラメータ及び条件を用いた:移動相:1×PBS、pH7.4(Sangon、E607016);室温;流量:1.0mL/分;試料濃度:1mg/mL;注入容量:20μL;検出波長:280nm。記録した後に、クロマトグラムを、ChemStationソフトウェアを用いて積分して、関連データを算出した。分析を生成し、試料中の異なる構成要素について保持時間を報告した。
【0129】
適切な量の上述の精製試料を、純度及び疎水性の測定のために、分析HICカラムTSKge1 Buty1-NPR 4.6*35(HPLCシステムモデル:Agilent 1260 Infinity II)上にロードした。方法は、16分以内の100%移動相A(20mM PB、1.8M(NH4)2SO4、pH6.0)から100%移動相B(20mM PB、pH6.0)の線形勾配からなった。流量を0.7mL/分にセットした。試料濃度は1mg/mLであった。注入容量は20μLであった。検出波長は280nmであった。記録した後に、クロマトグラムを、ChemStationソフトウェアを用いて積分して、関連データを算出した。分析を生成し、試料中の異なる構成要素について保持時間を報告した。
【0130】
この実施例では、タンパク質分子の熱変性温度(Tm)を、差分スキャニング蛍光測定(DSF)によって測定した。10μgのタンパク質を96ウェルPCRプレート(Thermo、AB-0700/W)に加えた後に、2μLの100×希釈色素SYPROTM(Invitrogen、2008138)を加えてから、バッファを加えて、ウェルあたり40μLの最終容量を得た。PCRプレートをシールして、リアルタイム蛍光定量的PCR機器(Bio-Rad CFX96 PCR System)内に置いて、25℃にて5分間インキュベートしてから、0.2℃/0.2分の勾配にて25℃から95℃に徐々に温めて、試験の終了時に25℃に冷却した。FRETスキャニングモードを用いて、データ分析を、Bio-Rad CFX Maestroソフトウェアを用いて実行して、試料のTmを算出した。上述の特性評価の結果を、以下の表5に示す。
【0131】
【0132】
実施例5:細胞に対する抗CLDN18.2 HCAB抗体の結合親和性
抗体の結合親和性を、ヒトCLDN18.1発現HEK293細胞、ヒトCLDN18.2発現HEK293細胞、NUGC4_D8細胞、及びヒトCLDN18.2を内生的に発現するSNU601細胞を用いるFACSによって検出した(Cobioer、CBP60507)。サブクローニングしたNUGC4_D8細胞を、NUGC4細胞(JCRB、JCRB0834)を用いる限界希釈によってスクリーニングした。結合親和性を、以下のように決定した:細胞を、300gにて5分間遠心分離してから、FACSバッファ(2%FBSを含有するPBS)中に再懸濁させた。細胞密度を106細胞/mLに調整して、50μLの細胞懸濁液を96ウェルプレートの各ウェルに加えた。抗体をFACSバッファで様々な濃度に希釈して、50μLの抗体希釈液を96ウェルプレートの各ウェルに加えた。4℃にて2時間のインキュベーション後に、プレートをFACSバッファで2回洗浄した。続いて、APCコンジュゲートヤギ抗ヒトIgG二次抗体(Jackson、109-605-098)を含有するFACSバッファを加えた。4℃にて1時間のインキュベーション後に、プレートをFACSバッファで2回洗浄した。細胞を固定液中に再懸濁させてから、細胞の蛍光を、FACS機器(ACEA NovoCyte)を用いてモニターした。PR000400、IMAB362類似体(社内で生成、国際公開第2014/146672号パンフレット参照、IMAB362と同じ可変領域を有し、IMAB362と、定常領域内の少数のアミノ酸だけ異なる)を、CLDN18.2結合についての陽性対照として用いた。PR004549、CL-1xI2C scFc類似体(社内で生成、国際公開第2020025792A1号パンフレット参照、CL-1xI2C scFcと同じ可変領域を有し、CL-1xI2C scFcと、定常領域内の少数のアミノ酸だけ異なる)を、CLDN18.2結合についての陽性対照として用いた。PR002725抗体を、CLDN18.1結合についての陽性対照として用いた。CN2020/118650号明細書(表6、表7、及び表8)参照。Iso hIgG1(CrownBio、C0001-4)抗体を陰性対照として用いた。
【0133】
図1(a~b)、表9、及び表10は、CLDN18.2を内生的に発現するNUGC4_D8細胞に対する抗体の結合親和性を示す。試験抗体は、NUGC4_D8細胞に用量依存的に結合することができた。結果は、以下のことを示す:PR004533、PR004949、PR004950、PR004952、PR004953、PR007242、PR007243、PR007244、PR007245、PR007246、及びPR007248抗体は、PR000400よりも高い、CLDN18.2を内生的に発現するNUGC4_D8細胞に対する親和性を示す。
図1c及び表11は、CLDN18.2を内生的に発現するSNU601細胞に対する抗体の結合親和性を示す。試験抗体は、SNU601細胞に用量依存的に結合することができた。結果は、以下のことを示す:PR004227、PR004533、PR004536、PR004540、PR004949、PR004950、及びPR004952抗体は、PR000400よりも高い、CLDN18.2を内生的に発現するSNU601細胞に対する親和性を示す。
図1d及び表12は、ヒトCLDN18.2を過剰発現するHEK293細胞(HEK293/hCLDN18.2)に対する抗体の結合親和性を示す。
図1(e~f)は、ヒトCLDN18.1を過剰発現するHEK293細胞(HEK293/hCLDN18.1)に対する抗体の結合親和性を示す。試験抗体は、HEK293/hCLDN18.1細胞に対する結合親和性が低い。上述の結果から、試験抗体は、ECL2ではなくECL1(細胞外ループ1)にてヒトCLDN18.2タンパク質に結合すると推測することができる。
【0134】
【0135】
【0136】
【0137】
【0138】
【0139】
【0140】
【0141】
実施例6:抗CLDN18.2 HCAb抗体の競合結合活性
この実施例は、抗ヒトCLDN18.2 HCAbモノクローナル抗体の、ヒトCLDN18.2抗原のエピトープ領域への結合を研究するものである。競合結合実験を、ヒトCLDN18.2を過剰発現するHEK293/hCLDN18.2細胞を用いて、細胞レベルにて実行した。簡潔に、抗ヒトCLDN18.2抗体PR000400及びPR004549を、ビオチン化キット(ThermoFisher、A35358)を用いて、指示事項に従ってビオチン化した。ビオチン化された50μLの抗ヒトCLDN18.2抗体PR000400又はPR004549を各々、96ウェルV底プレート(Corning、3894)内で、対応する段階希釈した50μLの非ビオチン化抗ヒトCLDN18.2抗体と十分に混合した。続いて、ヒトCLDN18.2を過剰発現するHEK293/hCLDN18.2細胞の懸濁液を、3×106細胞/mLに調整して、50μL/ウェルで播種した。細胞を、4℃にて2時間共インキュベートした。各ウェル内の細胞を、予め冷却した200μLのFACSバッファ(PBS中2%FBS)で2回洗浄して、500gで4℃にて5分間遠心分離してから、上清を破棄した。2回洗浄した後に、蛍光二次抗体(BD、554060、1μg/mLの最終濃度)を加えて、暗所で4℃にて1時間インキュベートした。各ウェル内の細胞を、予め冷却した200μLのFACSバッファ(PBS中2%FBS)で2回洗浄して、500gで4℃にて5分間遠心分離してから、上清を破棄した。最後に、各ウェル内の細胞を、予め冷却した200μLのFACSバッファ中に再懸濁させて、蛍光シグナル値を、BD FACS CANTOIIを用いて読み出した。阻害率は、式、阻害率(%)=(A-B)/A×100を用いて算出した(注:A:ビオチン化された抗体の、ISO hIgG1(Crownbio、C0001-4)との相互作用後の蛍光シグナル;B:ビオチン化された抗体の、非ビオチン化抗体との相互作用後の蛍光シグナル)。
【0142】
図2(a~b)及び表13に示すように、本発明の抗CLDN18.2 HCAb抗体は全て、PR000400又はPR004549の、ヒトCLDN18.2への結合をブロックすることができ、そして抗体の検出されるブロッキング能力は、抗体濃度と正に相関して増大する;阻害率は、>80%に達し得る。このことは、試験HCAbが、PR000400及びPR004549のエピトープと非常に類似するエピトープを有することを示している。試験抗体は、HEK293/hCLDN18.1細胞に対する結合親和性が低い。上述の結果から、試験抗体は、ECL2ではなくECL1(細胞外ループ1)にてヒトCLDN18.2タンパク質に結合すると推測することができる。
【0143】
【0144】
実施例7:抗CLDN18.2 HCAB抗体のエンドサイトーシス活性
CellTiter-Glo発光細胞生存度アッセイキット(Promega、G7573)を用いてMMAFコンジュゲート抗ヒトIgG抗体(Moradec、Cat#:AH-102-AF)と共培養した場合にNUGC4_D8細胞に対して細胞傷害性の致死を誘導する能力について、抗体をアッセイした。NUGC4_D8細胞を、300gで5分間遠心分離してから、培地(RPMI1640+10%FBS)中に再懸濁させて、細胞の密度を2×10
4細胞/mLに調整した。50μLの細胞懸濁液を、96ウェルプレートの各ウェルに加えた。細胞を37℃にて一晩インキュベートした。抗体を、培地で様々な濃度に希釈して、25μLの抗体希釈液を96ウェルプレートの各ウェルに加えた。MMAFコンジュゲート抗ヒトIgG抗体を培地で希釈して、25μLの抗体希釈液を96ウェルプレートの各ウェルに加えて、6.6nMの最終濃度にした。細胞を、37℃にて3日間、抗体とインキュベートした。96ウェルプレートを、室温にて30分間静置したままにして、100μLのCellTiter-Glo発色溶液を室温にて各ウェルに加えた。続いて、試料を、暗所で室温にて10分間インキュベートした。プレートを、PE Enspireにより読み出した。細胞生存度(%)=[(発光試料)/(発光モック対照)]×100。PR000400(IMAB362類似体)を陽性対照として、そしてIso hIgG1(CrownBio、C0001-4)抗体を陰性対照として用いた。
図3(a~b)は、標的細胞の生存度を示す。MMAFコンジュゲート抗ヒトIgG抗体と共培養した場合、試験抗体は、PR000400と比較して、NUGC4_D8細胞に対してより良好な細胞傷害効果を用量依存的に示す。
【0145】
実施例8:CLDN18.2×CD3二重特異性抗体の構造及び設計
選択した抗CLDN8.2及び抗CD3抗体を用いて、二重特異性抗体を調製した。調製されたCLDN18.2×CD3二重特異性抗体は、2つの標的に同時に結合することができ、一方の末端は、腫瘍細胞表面上で特異的に発現されるCLDN18.2を認識することができ、他方の末端は、T細胞上のCD3分子に結合することができる。腫瘍細胞の表面に結合した後に、CLDN18.2×CD3二重特異性抗体分子は、腫瘍細胞の周りでT細胞を動員して活性化することによって、腫瘍細胞を死滅させることができる。
【0146】
図4に示すように、構造(1)は、「2+1」Fab-Fc-Dual VH非対称構造を有する分子である;「2+1」非対称構造を有する分子について、構造は、対応する抗CD3抗体の重鎖及び軽鎖、並びに抗CLDN18.2抗体のDual VHポリペプチド鎖をそれぞれ含む3つのタンパク質鎖を包含する;構造(2)及び(3)は、「2+1」HCAb-Fc-Fab非対称構造を有する分子であった。これは、対応する抗CD3抗体の重鎖及び軽鎖、並びに抗CLDN18.2抗体のHCAbポリペプチド鎖をそれぞれ含む3つのタンパク質鎖を包含する。
【0147】
構造(4)は、「4+1」VH-VH_HC-Fab非対称構造を有する分子であり、これは、対応する抗CD3抗体の重鎖及び軽鎖、並びに抗CLDN18.2抗体の四価VHポリペプチド鎖をそれぞれ含む3つのタンパク質鎖を包含する。
【0148】
構造(5)は、「4+1」VH-VH_LC-Fab非対称の構造を有する分子であり、これは、対応する抗CD3抗体の重鎖及び軽鎖、並びに抗CLDN18.2抗体の四価VHポリペプチド鎖をそれぞれ含む3つのタンパク質鎖を包含する。
【0149】
構造(6)は、「3+1」VH_HC-Fab-Fc-Dual VH非対称構造を有する分子であり、これは、抗CLDN18.2抗体の一価VHに連結された対応するN末端を有する抗CD3抗体の重鎖及び軽鎖、並びに抗CLDN18.2抗体の二価VHポリペプチド鎖をそれぞれ含む3つのタンパク質鎖を包含する。
【0150】
構造(7)は、「3+1」Fab-Fc-VH-VH-VH非対称構造を有する分子であり、これは、対応する抗CD3抗体の重鎖及び軽鎖、並びに抗CLDN18.2抗体の三価VHポリペプチド鎖を含む3つのタンパク質鎖をそれぞれ包含する。
【0151】
構造(8)は、「1+1」Fab-Fc-scFv非対称構造を有する分子であり、これは、対応する抗CD3抗体の重鎖及び軽鎖を含む2つのタンパク質鎖、並びに抗リゾチーム又は抗CLDN18.1抗体のscFvポリペプチド鎖をそれぞれ包含する。
【0152】
ミスマッチ重鎖との副産物の形成(例えば、抗CD3抗体の2つの重鎖のミスマッチ)を最小にするように、ミュータントヘテロ二量体Fc領域を用いた。これは、国際公開第2009080251号パンフレット及び国際公開第2009080252号パンフレットに記載されるような「ノブ-ホール」変異及び修飾ジスルフィド結合を有する。CLDN18.2×CD3二重特異性抗体は、IgG1のFcを有しており、そしてFcのCH3上に、L234A、L235A、又はL234A、L235A、及びG237A(EUインデックスに従って番号付けした)変異を有する。各二重特異性抗体を、以下をコードする3つ又は4つの異なる哺乳動物発現ベクターを同時に形質移入することによって生成した:1)ヘテロ二量体抗体を生成するようにFc領域内に「ホール」変異を有する、対応する抗CLDN18.2抗体の重鎖(FcのCH3は、L234A、L235A、又はL234A、L235A、及びG237A変異を有する);2)ヘテロ二量体抗体を生成するようにFc領域内に「ノブ」変異を有する、対応する抗CD3抗体の重鎖(FcのCH3は、L234A、L235A、又はL234A、L235A、及びG237A変異を有する);及び3)対応する抗CD3抗体の軽鎖。ヒトIgG1のFc領域内の「ノブ」変異は:T366Wからなり、「ホール」変異は:T366S、L368A、及びY407Vからなる。加えて、「ノブ」Fc領域内のS354C、及び「ホール」Y349Cを含めてもよい;これらは、ジスルフィド結合の対を形成して、ヘテロ二量体抗体の安定性及び収量を増大させる。
【0153】
本発明において構築したCLDN18.2×CD3二重特異性抗体に関する具体的な情報を、表14、表15、及び表16に示す。
【0154】
【0155】
【0156】
【0157】
実施例9:CLDN18.2×CD3二重特異性抗体の調製及び特性評価
9.1 組換えCLDN18.2×CD3二重特異性抗体の調製
組換えCLDN18.2×CD3二重特異性抗体をコードする複数のプラスミドを、特定の割合に従って哺乳動物宿主細胞(例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞)中に形質移入して、対応する精製組換え抗体を、従来の組換えタンパク質発現精製技術を用いて得ることができる。具体的には、ExpiCHO-S(商標)細胞(Gibco、A29127)を、ExpiCHO(商標)Expression Medium(Gibco、A2910001)中で増殖させた。一過性形質移入の前に、細胞を、3×106~4×106細胞/mLの濃度に調整して、8%CO2シェーカー内で37℃にて24時間培養して、7×106~10×106細胞/mLの細胞濃度に至った。続いて、細胞を6×106細胞/mLに希釈して、10mLの培養細胞を調製した。CLDN18.2×CD3二重特異性抗体をコードする合計8μgの上述のプラスミド(プラスミドの、細胞に対する比率は、0.8μg:1mLである)を、0.4mLのOptiPRO(商標)SFM培地(Gibco、12309019)中に溶解させた。結果として生じた混合液を、0.22μm滅菌フィルタを通して濾過した。続いて、32μLのExpiFectamine(商標)CHO試薬(Gibco、A29129)を、0.37mLのOptiPRO(商標)SFM培地(Gibco、12309019)に加えた。ExpiFectamine(商標)CHO試薬溶液を直ぐに、プラスミド溶液にゆっくり加えた。混合液を逆さにして、十分に混合した。プラスミド及び形質移入試薬の混合溶液をゆっくり滴加しながら、フラスコを振盪した。細胞を、8%CO2シェーカー内で37℃にて8~9日間培養した。細胞生存度を8日後に観察した。
【0158】
培養物を収集して、3300gにて10分間遠心分離してから、上清を収集して、高速で遠心分離して不純物を除去した。MabSelect(商標)(GE Healthcare Life Science、71-5020-91 AE)を含有するグラビティカラム(Bio-Rad、7311550)をPBS(pH7.4)で平衡化して、2~5カラム容量のPBSでリンスした。上清試料をカラム上にロードした。カラムを、5~10カラム容量のPBSでリンスした。標的タンパク質を、0.1Mグリシン(pH3.5)で溶出した。溶出液を、トリス-HCl(pH8.0)で中立に調整して、濃縮して、限外濾過チューブ(Millipore、UFC901024)によりPBSバッファ中にバッファ交換して、精製された抗体溶液を得た。続いて、精製された抗体溶液を、NanoDrop(Thermo Scientific(商標)NanoDrop(商標)One)を用いて濃度決定に供して、後の使用のためにサブパッケージングして保存した。
【0159】
9.2. SEC-HPLC、HIC-HPLC、及びDSFによる抗体特性評価
適切な量の上述の精製試料を、純度の測定のために、分析SECカラムTSKgel G3000SWxl(HPLCシステムモデル:Agilent 1260 Infinity II)上にロードした。この方法では、以下のパラメータ及び条件を用いた:移動相:1×PBS、pH7.4(Sangon、E607016);室温;流量:1.0mL/分;試料濃度:1mg/mL;注入容量:20μL;検出波長:280nm。記録した後に、クロマトグラムを、ChemStationソフトウェアを用いて積分して、関連データを算出した。分析を生成し、試料中の異なる構成要素について保持時間を報告した。
【0160】
適切な量の上述の精製試料を、純度及び疎水性の測定のために、分析HICカラムTSKge1 Buty1-NPR 4.6*35(HPLCシステムモデル:Agilent 1260 Infinity II)上にロードした。方法は、16分以内の100%移動相A(20mM PB、1.8M(NH4)2SO4、pH6.0)から100%移動相B(20mM PB、pH6.0)の線形勾配からなった。流量を0.7mL/分にセットした。試料濃度は1mg/mLであった。注入容量は20μLであった。検出波長は280nmであった。記録した後に、クロマトグラムを、ChemStationソフトウェアを用いて積分して、関連データを算出した。分析を生成し、試料中の異なる構成要素について保持時間を報告した。
【0161】
この実施例では、タンパク質分子の熱変性温度(Tm)を、差分スキャニング蛍光測定(DSF)によって測定した。10μgのタンパク質を96ウェルPCRプレート(Thermo、AB-0700/W)に加えた後に、2μLの100×希釈色素SYPROTM(Invitrogen、2008138)を加えてから、バッファを加えて、ウェルあたり40μLの最終容量を得た。PCRプレートをシールして、リアルタイム蛍光定量的PCR機器(Bio-Rad CFX96 PCR System)内に置いて、25℃にて5分間インキュベートしてから、0.2℃/0.2分の勾配にて25℃から95℃に徐々に温めて、試験の終了時に25℃に冷却した。FRETスキャニングモードを用いて、データ分析を、Bio-Rad CFX Maestroソフトウェアを用いて実行して、試料のTmを算出した。上述の特性評価の結果を、以下の表17に示す。
【0162】
【0163】
実施例10:細胞に対するCLDN18.2×CD3二重特異性抗体の結合親和性
抗体を、結合親和性について、FACSによってアッセイした。試験細胞は、HEK293/hCLDN18.2、HEK293/hCLDN18.1、NUGC4_D8、及びJurkat細胞を含んだ。結合親和性を、以下のように求めた:細胞を、300gにて5分間遠心分離してから、FACSバッファ(2%FBSを含有するPBS)中に再懸濁させた。細胞密度を10
6細胞/mLに調整して、50μLの細胞懸濁液を96ウェルプレートの各ウェルに加えた。抗体をFACSバッファで様々な濃度に希釈して、50μLの抗体希釈液を96ウェルプレートの各ウェルに加えた。4℃にて2時間のインキュベーション後に、プレートをFACSバッファで2回洗浄した。続いて、APCコンジュゲートヤギ抗ヒトIgG二次抗体(1.5μg/mLの最終濃度、Jackson、109-605-098)を含有するFACSバッファを加えた。4℃にて1時間のインキュベーション後に、プレートをFACSバッファで2回洗浄した。細胞を固定液中に再懸濁させてから、細胞の蛍光を、FACS機器(ACEA NovoCyte)を用いてモニターした。
図5及び表18は、細胞に対する抗体の結合親和性を示す。全ての試験抗体は、CLDN18.2及びCD3発現細胞に結合することができ、CLDN18.1発現細胞に結合しない。
【0164】
【0165】
実施例11:CLDN18.2×CD3二重特異性抗体のTDCC活性
NUGC4_D4、SNU620、IM95、及びHEK293/hCLDN18.1細胞に対するTDCC有効性について、CLDN18.2×CD3二重特異性抗体を、CytoTox 96(登録商標)非放射性細胞傷害アッセイキット(Promega、G1780)を用いてアッセイした。T細胞を、ヒトPBMCから、ヒト総T細胞単離キット(Miltenyi、130-096-535)を用いて単離した。ヒトT細胞及び標的細胞を、培地(RPMI1640+5%FBS)中に再懸濁させた。標的細胞密度を3×10
5細胞/mLに調整し、T細胞密度を1.2×10
6/mLに調整した。50μLの各タイプの細胞を、96ウェルプレートのウェルに加えた(4:1のエフェクタ対標的比)。試験抗体を、培地(RPMI1640+5%FBS)で様々な濃度に希釈して、50μLを96ウェルプレートのウェルに加えた。試料を、37℃にて48時間インキュベートしてから、10×トリトン-X 100ライセート(RPMI1640+5%FBS+10%トリトン-X 100)を、標的細胞最大LDH放出対照ウェル及び容量補正対照ウェルに加えた。混合液を、37℃にて0.5時間十分に混合してインキュベートした。96ウェルプレートを、400gで4分間遠心分離した。50μLの上清をとってから、LDH発色溶液を50μL/ウェルの濃度にて加えた。混合液を光の不在下で室温にて20分間静置したままにした後に、プレートをMD StakMax(OD
490)で読み出した。PR004549をCLDN18.2標的細胞用の陽性対照として、PR004313をCLDN18.1標的細胞用の陽性対照として、そしてPR004312抗体を陰性対照として用いた。結果の算出のために、補正読出しを最初に算出した。培地バックグラウンド対照ウェルの読出しを、実験ウェル、標的細胞自然発生放出LDH対照ウェル、及びエフェクタ細胞自然発生放出LDH対照ウェルの読出しから減算してから、容量補正対照ウェルの読出しを、標的細胞最大LDH放出対照ウェルの読出しから減算した。TDCC活性(%)=(実験ウェルの補正読出し-エフェクタ細胞自然発生放出LDH対照ウェルの補正読出し-標的細胞自然発生放出LDH対照ウェルの補正読出し)/(標的細胞最大LDH放出対照ウェルの補正読出し-標的細胞自然発生放出LDH対照ウェルの補正読出し)×100。
図6は、試験抗体のTDCC活性を示しており、値を表19に詳述する。CLDN18.2を高度に内生的に発現するNUGC4_D8細胞では、試験抗体は、PR004549と比較して、より高いか、又は匹敵するTDCC活性を誘導することができる。一方、CLDN18.2を低く発現するIM95細胞では、試験抗体は、PR004549と比較して、より低いTDCC活性を誘導する。SNU620細胞は、CLDN18.2のアミノ酸149にて、メチオニンからロイシンへの変異を有する。これは、CLDN18.2変異を有する胃癌患者のサブセットを表す。試験抗体は、PR004549と比較して、より高いか、又は匹敵するTDCC活性を誘導することができる。試験抗体は、HEK293/hCLDN 18.1細胞に対して、TDCC効果を誘発できなかった。
【0166】
【0167】
実施例12:BLI法によるヒトFc受容体タンパク質に対する抗体の結合親和性
タンパク質と抗体間の結合動力学を、Octet Red 96e(Fortebio)システムを用いるバイオレイヤーインターフェロメトリ(BLI)技術によって分析した。回転速度を、システムについて1000rpmにセットした。10×動力学バッファ(ForteBio、Cat#18-1105)を、試料の親和性アッセイ及び希釈のために、1×動力学バッファに希釈した。インラインに配置したFAB2Gセンサー(Fortebio、18-5125)を、試験バッファで10分間平衡化してから用いて、抗体(PR002725、PR005397、PR006384、PR005411、PR006292、PR006023、及びPR006293)を、1nmの捕捉高さにて捕捉した。バッファ中で120秒間平衡化した後に、FAB2Gセンサーを、2倍で段階希釈したヒトFc受容体タンパク質に結合させた。タンパク質濃度及び結合解離時間を表20に示す。最後に、FAB2Gセンサーを、再生のために、pH1.5の10mMグリシン-塩酸溶液中に浸漬して、センサーに結合したタンパク質を溶出した。FcRnに対する抗体の親和性アッセイを、pH6.0バッファ及びpH7.4バッファの双方の条件の下で実行した。PR004549について、捕捉センサーはProL(Fortebio、18-5085)である。データ分析を、Octet Data Analysisソフトウェア(Fortebio、バージョン11.0)を用いて実行した場合、0nMを基準ホールとして用いて、基準減算を実行した;「1:1グローバルフィッティング」法を選択してデータをフィットさせて、抗体へのタンパク質の結合の動力学パラメータを算出し、kon(1/Ms)値、kdis(1/s)値、及びKD(M)値を得た。急速結合及び急速解離の相互作用について、「定常状態」法を選択して、データをフィットさせて、KD(M)値を得た。ヒトFc受容体タンパク質に対する抗体の結合親和性を表21に示す。
【0168】
【0169】
【0170】
【0171】
実施例13:BLI法による様々な種のCD3タンパク質に対する抗体の結合親和性
タンパク質と抗体間の結合動力学を、Octet Red 96e(Fortebio)システムを用いるバイオレイヤーインターフェロメトリ(BLI)技術によって分析した。ヒトCD3E(Acro、CDE-H5223)、カニクイザルCD3E(Acro、CDE-C5226)、及びマウスCD3E(Acro、CDE-M5256)を、ビオチン(Thermo Scientific、A39257)と1:3のモル比で混合した。混合液を4℃にて一晩インキュベートしてから、過剰なビオチンを除去してビオチン化CD3Eを得た。回転速度を、システムについて1000rpmにセットした。10×動力学バッファ(ForteBio、Cat#18-1105)を、試料の親和性アッセイ及び希釈のために、1×動力学バッファに希釈した。インラインに配置したSAセンサー(Fortebio、18-5019)を、試験バッファで10分間平衡化してから用いて、ビオチン標識を有するCD3又はビオチン化CD3を、0.2nmの捕捉高さにて捕捉した。バッファ中で120秒間平衡化した後に、CD3を捕捉したSAセンサーを、2倍で段階希釈した抗体に結合させた。抗体濃度を表22に示し、結合及び解離時間を180秒及び300秒にセットした。最後に、SAセンサーを、再生のために、pH1.5の10mMグリシン-塩酸溶液中に浸漬して、センサーに結合した抗体を溶出した。抗体抗CD3e 48-2B(santa cruz biotechnology,s SC-1174)は、マウスの陽性抗体である。データ分析を、Octet Data Analysisソフトウェア(Fortebio、バージョン11.0)を用いて実行した場合、0nMを基準ホールとして用いて、基準減算を実行した;「1:1グローバルフィッティング」法を選択してデータをフィットさせて、抗体へのタンパク質の結合の動力学パラメータを算出し、kon(1/Ms)値、kdis(1/s)値、及びKD(M)値を得た。急速結合及び急速解離の相互作用について、「定常状態」法を選択して、データをフィットさせて、KD(M)値を得た。様々な種のCD3タンパク質に対する抗体の結合親和性を表23に示す。PR002199は、Teneobioの国際公開第2018052503号パンフレットの抗BCMA(TNB308902)×CD3(TNB_F2B)二重特異性抗体に由来した。PR004931は、Rocheの国際公開第2017055389A1号パンフレットの抗CEA×CD3二重特異性抗体に由来した。
【0172】
【0173】
【0174】
実施例14:ヒトCLDN18.2パラロガスタンパク質に対するCLDN18.2×CD3二重特異性抗体の結合親和性
抗体を、FACS(ACEA NovoCyte)によってヒトCLDN18.2パラロガスタンパク質に対する結合親和性についてアッセイした。ヒトCLDN18.2パラロガスファミリーのCLDN1、CLDN2、CLDN3、CLDN4、CLDN6、及びCLDN9遺伝子を、HEK293細胞中に一過的に形質移入した。プラスミドに関する情報を表24に示す。結合親和性を、以下のように判定した:細胞を300gで5分間遠心分離してから、FACSバッファ(2%FBSを含有するPBS)中に再懸濁させた。細胞密度を10
6細胞/mLに調整して、50μLの細胞懸濁液を96ウェルプレートの各ウェルに加えた。抗体をFACSバッファで60nMに希釈して、50μLの抗体希釈液を96ウェルプレートの各ウェルに加えた。4℃にて2時間のインキュベーション後に、プレートをFACSバッファで2回洗浄した。続いて、二次抗体を含有するFACSバッファを加えた。4℃にて1時間のインキュベーション後に、プレートをFACSバッファで2回洗浄した。細胞を固定液中に再懸濁させてから、FACSをランした。陽性対照抗体、陰性対照抗体、及び二次抗体に関する情報を表25に示す。PR005080は、CLDN2結合についての陽性対照として用いたクローン1A2抗体(社内で生成、欧州特許出願公開第3567053A1号明細書参照)であった。FACSの結果を
図7に示す。これは、ヒトCLDN18.2パラロガスファミリータンパク質のCLDN1、CLDN2、CLDN3、CLDN4、CLDN6、及びCLDN9へのPR006384及びPR006292の非特異的結合がなかったことを示す。
【0175】
【0176】
【0177】
実施例15:カニクイザル標的タンパク質に対するCLDN18.2×CD3二重特異性抗体の結合親和性
抗体を、結合親和性について、FACSによってアッセイした。試験細胞は、カニクイザルCLDN18.2発現HEK293細胞(HEK293/cynoCLDN18.2)、カニクイザルCLDN18.1過剰発現HEK293細胞(HEK293/cynoCLDN18.1)、及びカニクイザルCD3陽性T細胞を含んだ。CD3陽性T細胞を、非ヒト霊長類CD3細胞単離キット(Miltenyi、130-092-012)を用いて、カニクイザルPBMCから単離した。結合親和性を、以下のように求めた:細胞を300gにて5分間遠心分離してから、FACSバッファ(2%FBSを含有するPBS)中に再懸濁させた。細胞密度を10
6細胞/mLに調整して、50μLの細胞懸濁液を96ウェルプレートの各ウェルに加えた。抗体をFACSバッファで様々な濃度に希釈して、50μLの抗体希釈液を96ウェルプレートの各ウェルに加えた。4℃にて2時間のインキュベーション後に、プレートをFACSバッファで2回洗浄した。続いて、APCコンジュゲートヤギ抗ヒトIgG二次抗体(1.5μg/mLの最終濃度、Jackson、109-605-098)を含有するFACSバッファを加えた。4℃にて1時間のインキュベーション後に、プレートをFACSバッファで2回洗浄した。細胞を固定液中に再懸濁させてから、FACS(ACEA NovoCyte)をランさせた。
図8及び表26は、カニクイザルCLDN18.1及びCLDN18.2を過剰発現するHEK293細胞、並びにカニクイザルPBMCにおけるCD3陽性T細胞に対する抗体の結合親和性を示す。全ての試験抗体は、CLDN18.2及びCD3発現細胞に結合することができ、CLDN18.1発現細胞に結合しない。
【0178】
【0179】
実施例16:カニクイザルCLDN18.2発現細胞に対するCLDN18.2×CD3二重特異性抗体のTDCC活性
HEK293/cynoCLDN18.2に対するTDCC有効性を誘発する活性について、CLDN18.2×CD3二重特異性抗体を、CytoTox 96(登録商標)非放射性細胞傷害アッセイキット(Promega、G1780)を用いてアッセイした。CD3陽性T細胞を、カニクイザルPBMCから、非ヒト霊長類CD3細胞単離キット(Miltenyi、130-092-012)を用いて単離した。カニクイザルT細胞及び標的細胞を、培地(RPMI1640+5%FBS)中に再懸濁させた。標的細胞密度を3×10
5細胞/mLに調整し、T細胞密度を1.2×10
6/mLに調整した。50μLの各タイプの細胞を、96ウェルプレートのウェルに加えた(4:1のエフェクタ対標的比)。試験抗体を、培地(RPMI1640+5%FBS)で様々な濃度に希釈して、50μLを96ウェルプレートのウェルに加えた。試料を37℃にて24時間インキュベートしてから、10×トリトン-X 100ライセート(RPMI1640+5%FBS+10%トリトン-X 100)を、標的細胞最大LDH放出対照ウェル及び容量補正対照ウェルに加えた。混合液を、37℃にて0.5時間十分に混合してインキュベートした。96ウェルプレートを、400gで4分間遠心分離した。50μLの上清をとってから、LDH発色溶液を50μL/ウェルの濃度にて加えた。混合液を光の不在下で室温にて20分間静置したままにした後に、プレートをMD StakMax(OD
490)で読み出した。結果の算出のために、補正読出しを最初に算出した。培地バックグラウンド対照ウェルの読出しを、実験ウェル、標的細胞自然発生放出LDH対照ウェル、及びエフェクタ細胞自然発生放出LDH対照ウェルの読出しから減算してから、容量補正対照ウェルの読出しを、標的細胞最大LDH放出対照ウェルの読出しから減算した。TDCC活性(%)=(実験ウェルの補正読出し-エフェクタ細胞自然発生放出LDH対照ウェルの補正読出し-標的細胞自然発生放出LDH対照ウェルの補正読出し)/(標的細胞最大LDH放出対照ウェルの補正読出し-標的細胞自然発生放出LDH対照ウェルの補正読出し)×100。
図9は、HEK293/cynoCLDN18.2に対する抗体によって誘導されるTDCC活性を示す。具体的な値を表27に示す。
【0180】
【0181】
実施例17.インビトロサイトカイン放出アッセイ
CLDN18.2×CD3二重特異性抗体を、ヒトPBMCを用いてインビトロ誘導サイトカイン放出についてアッセイして、抗体の安全性を予測した。PBMCを、HEK293/hCLDN18.1細胞の存在又は不在下で、抗体とインキュベートした。PBMC及びHEK293/hCLDN18.1を、培地(RPMI1640+10%FBS)中に再懸濁させた。HEK293/hCLDN18.1細胞の密度を1.5×10
6細胞/mLに調整して、PBMCの細胞密度を2×10
6/mLに調整した。100μLのHEK293/hCLDN18.1細胞及び200μLのPBMCを、48ウェルプレートのウェルに加えた。試験抗体を、培地(RPMI1640+10% FBS)で様々な濃度に希釈して、100μLを48ウェルプレートのウェルに加えて、400μLの最終容量にした。LPS(Sigma、L6529)を陽性対照として用いた。Iso hIgG1(CrownBio、C0001-4)抗体を陰性対照として用いた。試料を37℃にて24時間インキュベートした。上清を300gにて10分間遠心分離して、300μLの上清を収集した。上清中のIL-6(Invitrogen、88-7066)及びTNF-α(Invitrogen、88-7346)の濃度を、ELISAによって定量化した。
図10は、抗体によってインビトロで誘導されたサイトカイン放出を示す。PR004549によって誘導されるIL-6及びTNF-αの放出は、CLDN18.2標的細胞の不在下でPR006292によって誘導されるものよりも高かった。これは、PR006292のより良好な安全性プロファイルを示す。
【0182】
実施例18:CLDN18.2×CD3二重特異性抗体のADCC活性
Jurkat細胞及びHEK293/hCLDN 18.2に対するADCC効果を誘発する活性について、CLDN18.2×CD3二重特異性抗体を、CytoTox 96(登録商標)非放射性細胞傷害アッセイキット(Promega、G1780)を用いてアッセイした。ヒトPBMCを、300gで10分間遠心分離して、培地(RPMI1640+10%FBS)中で一晩培養した。NK細胞をヒトPBMCから、ヒトNK細胞単離キット(Miltenyi、130-092-657)を用いて単離した。Jurkat細胞を300gで5分間、そしてヒトNK細胞を300gで10分間遠心分離した。続いて、細胞を培地(RPMI1640+5%FBS)中に再懸濁させた。標的細胞密度を3×10
5細胞/mLに調整し、NK細胞密度を1.8×10
6/mLに調整した。50μLの各タイプの細胞を、96ウェルプレートのウェルに加えた(6:1のエフェクタ対標的比)。試験抗体を、培地(RPMI1640+5%FBS)で様々な濃度に希釈して、50μLを96ウェルプレートのウェルに加えた。試料を、37℃にて5時間インキュベートしてから、10×トリトン-X 100ライセート(RPMI1640+5%FBS+10%トリトン-X 100)を、標的細胞最大LDH放出対照ウェル及び容量補正対照ウェルに加えた。混合液を、37℃にて0.5時間十分に混合してインキュベートした。96ウェルプレートを、300gで5分間遠心分離した。50μLの上清をとってから、LDH発色溶液を50μL/ウェルの濃度にて加えた。混合液を光の不在下で室温にて20分間静置したままにした後に、プレートをMD StakMax(OD
490)で読み出した。PR003767を陽性対照として、そしてIso hIgG1(CrownBio、C0001-4)抗体を陰性対照として用いた。結果の算出のために、補正読出しを最初に算出した。培地バックグラウンド対照ウェルの読出しを、実験ウェル、標的細胞自然発生放出LDH対照ウェル、及びエフェクタ細胞自然発生放出LDH対照ウェルの読出しから減算してから、容量補正対照ウェルの読出しを、標的細胞最大LDH放出対照ウェルの読出しから減算した。ADCC活性(%)=(実験ウェルの補正読出し-エフェクタ細胞自然発生放出LDH対照ウェルの補正読出し-標的細胞自然発生放出LDH対照ウェルの補正読出し)/(標的細胞最大LDH放出対照ウェルの補正読出し-標的細胞自然発生放出LDH対照ウェルの補正読出し)×100。
図11(a)は、Jurkat細胞に対する抗体のADCC活性を示す。PR006292及びPR004549は、Jurkat細胞に対してADCC効果を誘発することができなかった。
【0183】
CLDN18.2×CD3二重特異性抗体を、NUGC4_D8に対してADCC効果を誘発する活性について、NK92/CD16a細胞を用いてアッセイした。NUGC4_D8及びNK92/CD16aを、培地(RPMI1640+5%FBS)中に再懸濁させた。標的細胞密度を3×10
5細胞/mLに調整して、NK92/CD16a細胞密度を1.8×10
6/mLに調整した。50μLの各タイプの細胞を、96ウェルプレートのウェルに加えた(6:1のエフェクタ対標的比)。試験抗体を、培地(RPMI1640+5%FBS)で様々な濃度に希釈して、50μLを96ウェルプレートのウェルに加えた。試料を37℃にて5時間インキュベートした。PR003197を陽性対照として用いた。
図11(b)は、NUGC4_D8に対する抗体のADCC活性を示す。PR006292及びPR004549は、NUGC4_D8細胞に対してADCC効果を誘発することができなかった。
【0184】
実施例19:CLDN18.2×CD3二重特異性抗体のCDC活性
CLDN18.2抗体を、HEK293/hCLDN18.2及びJurkat細胞に対するCDC効果について、CellTiter-Glo発光細胞生存度アッセイキット(Promega、G7573)を用いてアッセイした。標的細胞を、300gで5分間遠心分離してから、RPMI1640無血清培地中に再懸濁させた。標的細胞密度を2×10
5細胞/mLに調整して、25μLの細胞懸濁液を96ウェルプレートの各ウェルに加えた。抗体を無血清培地で様々な濃度に希釈して、25μLの抗体希釈液を96ウェルプレートの各ウェルに加えた。50μLの正常ヒト血清(Access細胞培養、515)を加えて50%の最終濃度にして、結果として生じた混合液を37℃にて24時間インキュベートした。96ウェルプレートを室温にて30分間静置したままにして、100μLのCellTiter-Glo発色溶液を室温にて各ウェルに加えた。続いて、試料を、光の不在下で室温にて10分間インキュベートした。プレートをPE Enspireにより読み出した。CDC活性(%)=[1-(発光試料)/(発光モック対照)]×100。IMAB362類似体を陽性対照として、そしてIso hIgG1(CrownBio、C0001-4)抗体を陰性対照として用いた。
図12は、Jurkat細胞及びヒトCLDN18.2過剰発現HEK293細胞に対するPR006292抗体のCDC活性を示す。PR006292は、HEK293/hCLDN18.2において、PR004549によって誘導されるものよりも大きなCDC効果を誘導したが、CDC活性は、Jurkat細胞において観察されなかった。CLDN18.2×CD3二重特異性抗体のCDC活性を、表28に具体的に示す。
【0185】
【0186】
実施例20:CLDN18.2×CD3二重特異性抗体の競合結合活性
この実施例は、ヒトCLDN18.2抗原のエピトープ領域への抗ヒトCLDN18.2二重特異性抗体の結合を研究するものである。競合結合実験を、細胞レベルにて、ヒトCLDN18.2過剰発現HEK293/hCLDN18.2細胞を用いて実行した。簡潔に、抗ヒトCLDN18.2抗体PR000400及びPR004549を、ビオチン化キット(ThermoFisher、A35358)を用いて、指示事項に従ってビオチン化した。96ウェルV底プレート(Corning、3894)に、細胞を2×106細胞/mLにて、そしてヒトCLDN18.2過剰発現HEK293T/hCLDN18.2細胞の懸濁液を50μL/ウェルにて加えてから、25μLのビオチン化抗ヒトCLDN18.2抗体PR000400又はPR004549を加えた。混合液を、4℃にて30分間十分に混合してインキュベートして、対応する段階希釈した25μLの非ビオチン化抗ヒトCLDN18.2抗体を加えた。混合液を、4℃にて1時間十分に混合してインキュベートした。各ウェル内の細胞を、200μLの予め冷却したFACSバッファ(DPBS中2%BSA)で2回洗浄して、500gで4℃にて5分間遠心分離してから、上清を破棄した。蛍光二次抗体(Jackson ImmunoResearch、016-540-084、1:500)を加えた。混合液を、光の不在下で4℃にて1時間インキュベートした。各ウェル内の細胞を、200μLの予め冷却したFACSバッファ(DPBS中2%BSA)で2回洗浄して、500gで4℃にて5分間遠心分離してから、上清を破棄した。最後に、各ウェル内の細胞を、200μLの予め冷却したFACSバッファ中に再懸濁させて、蛍光シグナル値を、ACEA_NovoCyteを用いて読み出した。阻害率を、式、阻害率(%)=(A-B)/A×100)(注:A:ISO(hIgG1)(Crownbio、c0001-4)とのビオチン化抗体の相互作用後の蛍光シグナル;B:非ビオチン化抗体とのビオチン化抗体の相互作用後の蛍光シグナル)を用いて算出した。
【0187】
図13及び表29に示すように、本発明の抗CLDN18.2二重特異性抗体は全て、ヒトCLDN18.2へのPR000400又はPR004549の結合をブロックすることができ、そして抗体の検出されるブロッキング能力は、抗体濃度と正に相関して増大する。このことは、これらの抗体が、PR000400及びPR004549のエピトープに非常に類似したエピトープを有することを示している。試験抗体は、HEK293/hCLDN18.1細胞に対する結合親和性が低い。上述の結果から、試験抗体は、ECL2ではなくECL1(細胞外ループ1)にてヒトCLDN18.2タンパク質に結合すると推測することができる。
【0188】
【0189】
実施例21:CLDN18.2×CD3二重特異性抗体の薬物動態研究
薬物動態研究を、BALB/cヌードマウスを用いて、以下のように実行した。18~22gの体重の6頭の雌BALB/cヌードマウスを選択して、抗体投与を静脈注射によって5mg/kgの用量にて受けさせた。一方の群内の3頭のマウスの全血を、投与前、そして投与の15分、24時間(1日)、4日、及び10日後に収集し、他方の群内の3頭のマウスの全血を、投与前、そして投与の5時間、2日、7日、及び14日後に収集した。全血を、30分間静置したままにして凝固させてから遠心分離した。単離した血清試料を、分析にかけるまで-80℃にて低温保存した。マウス血清中の薬物濃度をELISAによって定量化した。総ELISA(トータル法)を、ヤギ抗ヒトFcポリクローナル抗体を用いてマウス血清中のヒトFc含有抗体を捕捉することによって実行して、HRP標識ヤギ抗ヒトFc二次抗体によって検出した。CLDN18.2結合ドメインELISA(Free X法)を、CLDN18.2タンパク質を用いてマウス血清中のCLDN18.2結合ドメイン含有抗体を捕捉することによって実行して、HRP標識ヤギ抗ヒトFc二次抗体によって検出した。血漿濃度データを、Phoenix WinNonlinソフトウェア(バージョン8.2)を用いて非コンパートメント分析(NCA)によって分析して、薬物動態学的パラメータを評価した。
【0190】
PR006292、PR006384、及びPR004549の薬物動態を
図14に示し、薬物動態学的パラメータを表30に示す。PR006292及びPR006384は、マウスにおける安定性がPR004549よりも優れており、マウスにおいて半減期が長く、且つ薬物曝露量が高い。
【0191】
【0192】
実施例22:CLDN18.2×CD3二重特異性抗体に関するインビボ薬力学研究
NUGC4_D8腫瘍モデル
インビボ薬力学研究を、NCGマウスを用いてヒトPBMC免疫系のNUGC4_D8腫瘍モデルを再確立することによって実行した。当該方法は、具体的には以下の通りである。細胞接種の日に、各NCGマウスにNUGC4_D8細胞及びPBMCを皮下接種した。マウスの各群の平均腫瘍容量が90mm3に達したときに、マウスを群に分けて、合計1回の投与を尾静脈を介して実行した。投与の開始後に、体重及び腫瘍容量を週に2回測定した。腫瘍容量を以下のように算出した:腫瘍容量(mm3)=0.5×腫瘍の長径×腫瘍の短径2。データを、t検定を用いて分析した。
【0193】
PR005397、PR005411、及びPR004549のインビボ抗腫瘍効果を
図15(a)に示す。具体的には、接種後25日目のマウスのIso hIgG1対照群の平均腫瘍容量は、1897mm
3であった。接種後25日目の試験薬物PR004549(0.2mg/kg)処置群の平均腫瘍容量は、104mm
3であった。これは、Iso hIgG1対照群の平均腫瘍容量との有意差を示し(p値<0.0001)、腫瘍増殖阻害率TGI(%)は94.48%であった。接種後25日目の試験薬物PR004549(0.04mg/kg)処置群の平均腫瘍容量は、538mm
3であった。これは、Iso hIgG1対照群の平均腫瘍容量との有意差を示し(p値<0.0001)、腫瘍増殖阻害率TGI(%)は71.61%であった。接種後25日目の試験薬物PR005411(0.2mg/kg)処置群の平均腫瘍容量は、30mm
3であった。これは、Iso hIgG1対照群の平均腫瘍容量との有意差を示し(p値<0.0001)、腫瘍増殖阻害率TGI(%)は98.39%であった。接種後25日目の試験薬物PR005411(0.04 mg/kg)処置群の平均腫瘍容量は、263mm
3であった。これは、Iso hIgG1対照群の平均腫瘍容量との有意差を示し(p値<0.0001)、腫瘍増殖阻害率TGI(%)は86.1%であった。接種後25日目の試験薬物PR005397(0.04mg/kg)処置群の平均腫瘍容量は、327mm
3であった。これは、Iso hIgG1対照群の平均腫瘍容量との有意差を示し(p値<0.0001)、腫瘍増殖阻害率TGI(%)は82.75%であった。処置の全体を通して、動物は、薬物に対する良好な寛容性を示し、大きな体重損失及び動物死は起こらなかった。PR005397及びPR005411のインビボ抗腫瘍効果は、PR004549のものよりも優れている。
【0194】
PR006292、PR006293、PR006384、及びPR004549のインビボ抗腫瘍効果を、
図15(b)に示す。具体的には、接種後25日目のマウスのIso hIgG1対照群の平均腫瘍容量は、1355mm
3であった。接種後25日目の試験薬物PR004549(0.2mg/kg)処置群の平均腫瘍容量は、408mm
3であった。これは、Iso hIgG1対照群の平均腫瘍容量との有意差を示し(p値=0.0001)、腫瘍増殖阻害率TGI(%)は69.83%であった。接種後25日目の試験薬物PR004549(0.04mg/kg)処置群の平均腫瘍容量は、743mm
3であった。これは、Iso hIgG1対照群の平均腫瘍容量との有意差を示し(p値=0.0037)、腫瘍増殖阻害率TGI(%)は45.15%であった。接種後25日目の試験薬物PR006293(0.2mg/kg)処置群の平均腫瘍容量は、39mm
3であった。これは、Iso hIgG1対照群の平均腫瘍容量との有意差を示し(p値<0.0001)、腫瘍増殖阻害率TGI(%)は97.06%であった。接種後25日目の試験薬物PR006293(0.04mg/kg)処置群の平均腫瘍容量は、190mm
3であった。これは、Iso hIgG1対照群の平均腫瘍容量との有意差を示し(p値<0.0001)、腫瘍増殖阻害率TGI(%)は85.96%であった。接種後25日目の試験薬物PR006384(0.2mg/kg)処置群の平均腫瘍容量は、81mm
3であった。これは、Iso hIgG1対照群の平均腫瘍容量との有意差を示し(p値<0.0001)、腫瘍増殖阻害率TGI(%)は94%であった。接種後25日目の試験薬物PR006384(0.04mg/kg)処置群の平均腫瘍容量は、752mm
3であった。これは、Iso hIgG1対照群の平均腫瘍容量との有意差を示し(p値=0.0071)、腫瘍増殖阻害率TGI(%)は44.47%であった。接種後25日目の試験薬物PR006292(0.04mg/kg)処置群の平均腫瘍容量は、580mm
3であった。これは、Iso hIgG1対照群の平均腫瘍容量との有意差を示し(p値=0.0006)、腫瘍増殖阻害率TGI(%)は57.15%であった。処置の全体を通して、動物は、薬物に対する良好な寛容性を示し、大きな体重損失及び動物死は起こらなかった。PR006292、PR006293、及びPR006384のインビボ抗腫瘍効果は、PR004549のものよりも優れている。
【0195】
SNU620 PBMC腫瘍モデル
インビボ薬力学研究を、NCGマウスを用いてヒトPBMC免疫系のSNU620腫瘍モデルを再確立することによって実行した。当該方法は、具体的には以下の通りである。細胞接種の日に、各NCGマウスにSNU620腫瘍細胞を皮下接種した。マウスの各群の平均腫瘍容量が70mm3に達したときに、マウスを群に分けて、合計4回の投与を尾静脈を介して実行した。投与の開始後に、体重及び腫瘍容量を週に2回測定した。腫瘍容量を以下のように算出した:腫瘍容量(mm3)=0.5×腫瘍の長径×腫瘍の短径2。データを、t検定を用いて分析した。
【0196】
PR006292及びPR004549のインビボ抗腫瘍効果を
図15(c)に示す。具体的には、接種後36日目のマウスのIso hIgG1対照群の平均腫瘍容量は、847mm
3であった。接種後36日目の試験薬物PR006292(0.2mg/kg)処置群の平均腫瘍容量は、131mm
3であった。これは、Iso hIgG1対照群の平均腫瘍容量との有意差を示し(p値=0.0076)、腫瘍増殖阻害率TGI(%)は84.53%であった。接種後36日目の試験薬物PR006292(0.04mg/kg)処置群の平均腫瘍容量は、505mm
3であった。これは、Iso hIgG1対照群の平均腫瘍容量との有意差を示し(p値=0.3856)、腫瘍増殖阻害率TGI(%)は40.36%であった。接種後36日目の試験薬物PR004549(0.2mg/kg)処置群の平均腫瘍容量は、858mm
3であった。これは、Iso hIgG1対照群の平均腫瘍容量との有意差を示し(p値>0.9999)、腫瘍増殖阻害率TGI(%)は-1.28%であった。接種後36日目の試験薬物PR004549(0.04mg/kg)処置群の平均腫瘍容量は、844mm
3であった。これは、Iso hIgG1対照群の平均腫瘍容量との有意差を示し(p値>0.9999)、腫瘍増殖阻害率TGI(%)は0.39%であった。処置の全体を通して、動物は、薬物に対する良好な寛容性を示し、大きな体重損失及び動物死は起こらなかった。
【0197】
HuP-T4 PBMC腫瘍モデル
インビボ薬力学研究を、NCGマウスを用いてヒトPBMC免疫系のHuP-T4腫瘍モデルを再確立することによって実行した。当該方法は、具体的には以下の通りである。細胞接種の日に、各NCGマウスにHuP-T4腫瘍細胞を皮下接種した。マウスの各群の平均腫瘍容量が130mm3に達したときに、マウスを群に分けて、合計4回の投与を尾静脈を介して実行した。投与の開始後に、体重及び腫瘍容量を週に2回測定した。腫瘍容量を以下のように算出した:腫瘍容量(mm3)=0.5×腫瘍の長径×腫瘍の短径2。データを、t検定を用いて分析した。
【0198】
PR006292のインビボ抗腫瘍効果を
図15(d)に示す。具体的には、接種後36日目のマウスのIso hIgG1対照群の平均腫瘍容量は、1059mm
3であった。接種後36日目の試験薬物PR006292(0.5mg/kg)処置群の平均腫瘍容量は、129mm
3であった。これは、Iso hIgG1対照群の平均腫瘍容量との有意差を示し(p値=0.0022)、腫瘍増殖阻害率TGI(%)は87.75%であった。処置の全体を通して、動物は、薬物に対する良好な寛容性を示し、大きな体重損失及び動物死は起こらなかった。
【0199】
マウスにおけるインビボサイトカイン放出試験
インビボサイトカインストーム研究を、NCGマウスを用いてヒトPBMC免疫系を再確立することによって実行した。当該方法は、具体的には以下の通りである。各NCGマウスに2×107ヒトPBMCを静脈内に注射して、次の日に、PR006292、PR004549、及び対照IgG1抗体を静脈内に投与した。0時間(投与前)、投与後4及び24時間に採血して、血清を収集した。MSD法を利用して、IFN-γ、IL-10、IL-12p70、IL-13、IL-1β、IL-2、IL-4、IL-6、IL-8、及びTNF-αが挙げられる血清中の複数のサイトカインのレベルを検出した。データを、t検定を用いて分析した。
【0200】
図15(e)は、抗体の注射の4時間後にマウス血清中で検出可能であった一部のサイトカインの発現を示す。結果は、PR006292が、対照抗体PR004549と比較して、IFN-γ、IL-2、及びTNF-α等のサイトカインのより低い放出を誘導することを示した。このことは、より良好な安全性を示している。
【配列表】
【国際調査報告】