(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-03
(54)【発明の名称】電荷を帯びた放射性核種の製造及び分離のシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
G21G 4/08 20060101AFI20240827BHJP
G21K 1/00 20060101ALI20240827BHJP
A61N 5/10 20060101ALN20240827BHJP
【FI】
G21G4/08 Z
G21K1/00 R
G21G4/08 G
A61N5/10 H
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024508392
(86)(22)【出願日】2022-08-11
(85)【翻訳文提出日】2024-04-08
(86)【国際出願番号】 EP2022072556
(87)【国際公開番号】W WO2023017122
(87)【国際公開日】2023-02-16
(32)【優先日】2021-08-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521555409
【氏名又は名称】ニュークリア・リサーチ・アンド・コンサルタンシー・グループ
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ニューランド、ピーター ヨス
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン デル ボーン、ディオン
(72)【発明者】
【氏名】ツヴァーグストラ、オエネ
(72)【発明者】
【氏名】バッカー、クラース
(72)【発明者】
【氏名】ブシャートスカヤ、ユリア
(72)【発明者】
【氏名】デ グルート、サンダー
【テーマコード(参考)】
4C082
【Fターム(参考)】
4C082AC05
(57)【要約】
放射性核種の生成及び分離のための方法及び装置は、放射性ガスを供給することと、放射性ガスを崩壊させて電荷を帯びた娘放射性核種を形成することと、放射性ガスと接触する液体を供給することと、電荷を帯びた娘放射性核種(16)を2つの電極(5、6)間の電界に供することによって、電荷を帯びた娘放射性核種(16)を液体中に吸収させることと、電荷を帯びた娘放射性核種(16)を含む液体を分離することと、を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射性核種を生成及び分離する方法であって、
a.放射性ガスを供給することと、
b.前記放射性ガスを崩壊させて電荷を帯びた娘放射性核種を形成することと、
c.前記放射性ガスと接触する液体を供給することと、
d.前記電荷を帯びた娘放射性核種(16)を2つの電極(5、6)間の電界に供することにより、前記電荷を帯びた娘放射性核種(16)を前記液体中に吸収させることと、
e.前記電荷を帯びた娘放射性核種(16)を含む前記液体を分離することと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記放射性ガスは、キャリアガスと共にガス流で供給される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記娘放射性核種(16)が、Pb-214、Pb-212、Pb-211及び/又はBi-214、Bi-212、Bi-211であり、好ましくはPb-212である、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記液体が水性液体であり、7未満、好ましくは6未満、より好ましくは4未満のpHを有する、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
放射性核種の調整及び分離のための装置であって、
放出容器及び収集容器(3)を含み、前記放出容器は前記収集容器(3)に接続されているか、又は前記放出容器及び前記収集容器(3)が単一の容器に含まれており、
a.前記放出容器が、
i.放射性ガスを放出する発生源と、
ii.任意選択で、ガス入口と、を備え、
b.前記収集容器(3)が、
i.電源(8)に接続された電極(5)と、
ii.前記電源(8)に接続された電極(6)と、
iii.液体セクション(7)と、
iv.任意選択で、ガス出口(11)と、を含む、
装置。
【請求項6】
前記電極(5)が、前記液体セクション(7)の外側に配置されている、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記電極(6)が、前記液体セクション(7)内に配置されている、請求項5又は請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記電極(6)が液体(7A)に浸漬されるように、前記電極(6)が前記液体セクション(7)内に配置されている、請求項5から請求項7までのいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
前記電極(6)は、液体(7A)によって前記電極(5)から分離されている、請求項5から請求項8までのいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
前記電極(5)及び前記電極(6)は、互いに電気的に絶縁されている、請求項5から請求項9までのいずれか1項に記載の装置。
【請求項11】
前記電極(5)は、前記電極(6)から絶縁されているか、又は前記電極(6)と電気的に接触していない、請求項5から請求項10までのいずれか1項に記載の装置。
【請求項12】
前記収集容器(3)は、前記液体セクション(7)に接続された保持セクションを収容する、請求項5から請求項11までのいずれか1項に記載の装置。
【請求項13】
前記保持セクションは、電荷を帯びた娘放射性核種(16)を生成するのに十分な時間、前記放射性ガスを収集することができる、請求項5から請求項12までのいずれか1項に記載の装置。
【請求項14】
前記電極(6)は、液体(7A)内、液体(7A)の近傍、又は液体(7A)の背後に設けられている、請求項5から請求項13までのいずれか1項に記載の装置。
【請求項15】
前記収集容器(3)又は前記保持セクションは、ガス出口(11)を含む、請求項5から請求項14までのいずれか1項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電界を用いた電荷を帯びた娘放射性核種(charged daughter radionuclides)の捕捉に続く放射性ガスの崩壊によって形成される放射性核種の製造方法及び装置に関する。本発明はさらに、治療用途に使用する放射性核種の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
標的アルファ線治療(TAT:targeted alpha therapy)では、特定の癌細胞(の受容体)に付着する化合物にアルファ線を放出する放射性核種(単に「核種」という場合がある)が結合されることによって、健康な細胞にはほとんど影響を与えずに、癌細胞に(致命的な)線量のアルファ線を照射する。この方法の展望は、標的治療アプローチによって、大きな副作用を伴わない効果的な治療を行うことである。ルテチウム-177のようなベータ線放出核種は、すでにこの種の標的治療への応用に大きな展望を示しているが、アルファ線放出核種は、単独で放射線損傷を与える核種として使用されるか、或いは他のベータ線放出核種やオージェ電子放出核種や他の種類の治療と組み合わせて使用されることにより、より高い治療効果が期待できる。例えば、アクチニウム-225(Ac-225)、アスタチン-211(At-211)、トリウム-227(Th-227)、ラジウム-223(Ra-223)など、様々なアルファ線放出核種が、放射性核種と化合物との化学結合、半減期、崩壊連鎖特性、アルファ線損傷プロファイルなどの標的化合物の特性や要件に応じて、TATに使用されることが予測され得る。また、どのアルファ線放出核種が広く臨床に導入されるかは、入手のしやすさ、価格の手頃さ、使いやすさ、及び製造のしやすさによって決まる。
【0003】
TATは、アルファ粒子を放出する放射性核種が、生物学的標的に特異的に向けられるものであり、新たな標的が検証されるにつれて、癌を治療するためにより多くの注目を集めている。モノクローナル抗体などのバイオベクターは、アルファ線放出核種をこれらの細胞に選択的に輸送することができる。TATは、ベータ線放出核種による標的コンジュゲート治療(beta- emitter targeted conjugate therapy)よりも、治療可能な比率を向上させる可能性がある。アルファ粒子によって生成される短い経路長と強いイオン化経路とにより、アルファ線放出核種は、微小転移や外科的デバルキング後の残存腫瘍を含む腫瘍組織の効果的な治療に適している。鉛-212(Pb-212)は、ビスマス-212(Bi-212)のより長寿命の親核種であり、Bi-212の生体内での(in vivo)ジェネレータとして機能する。Pb-212は、in vitro及びin vivoの両方のモデルにおいて有意な有用性を実証している。Pb-212-TCMC-トラスツズマブ(trastuzumab)の第I相(Phase I)臨床試験における最近の評価により、卵巣癌患者の治療のためのTATにおけるPb-212の実現可能性が実証されている。このように、この発明は、放射性核種の製造、放射性標識化学、分子機構、及び癌の管理及び治療のための前臨床及び臨床の標的放射線治療へのPb-212の適用における進歩を強調する。
【0004】
Pb-212は、一部のアルファ線治療に非常に適した放射性核種となり得る特定の特徴を有している。Pb-212自体は、半減期が10時間強のベータ線放出核種であり、崩壊連鎖中に1つのアルファ線放出核種を有している。このことは、標的化合物が腫瘍部位から比較的早く離脱する治療には有益であり得る。これらのケースでは、例えば、現在非常に一般的な放射性核種であるAc-225は、半減期が長いため、アルファ線による損傷が不十分であるか、又は標的外の損傷を引き起こし得る。また、Pb-212の崩壊連鎖における単一のアルファ線放出核種は、他のアルファ線放出核種の崩壊連鎖において生じる複数のアルファ線放出が無い場合、アルファ線放出は一般に標的化合物からの核種の解離につながるので、標的外への影響を回避することができる。これらの解離した親核種の娘核種は、その後、患者内に分配され得るため、その後の娘核種のアルファ線放出による標的外損傷をもたらす可能性がある。
【0005】
しかしながら、一般にアルファ線放出核種を製造することは困難であり、かつPb-212崩壊連鎖の半減期が短いため、適切で経済的な供給連鎖を確立することが課題となっている。
【0006】
Pb-212の不必要な崩壊を避けるために搬送時間を最小限にして、Pb-212の信頼性の高い製造を可能にするために、Pb-212の親核種であるRa-224及びTh-228を用いたジェネレータアプローチが使用されている。Th-228は半減期が1.9年の放射性核種であり、例えば、Th-232から抽出され得るし、又は中性子照射されたRa-226から抽出され得る。Th-228は、半減期が約3.5日の放射性核種であるRa-224を連続的に生成するジェネレータとして使用することができる。Ra-224はその後、局所的に、患者の近くで、又は病院付近の中央製造場所で、Pb-212を製造するためのジェネレータとして使用され得る。
【0007】
Pb-212の公知の製造ルートは、アクチニド分離化学でよく知られている一般的なカラム分離技術を使用しており、例えば、欧州特許第3474904号明細書、国際公開第2017/220767号及び国際公開第2017/093069号に記載されている。
【0008】
欧州特許第2854870号明細書には、Pb-212が、固体媒体に結合しているRa-224の崩壊によって形成され、Pb-212の抽出に続いて複数のクロマトグラフィー分離を行うことによりPb-212を単離する方法が記載されている。国際公開第2017/220767号には、ゲル濾過クロマトグラフィーを用いたPb-212標識タンパク質の生成が記載されている。国際公開第2017/093069号には、クロマトグラフィーカラム上での一連の洗浄及び溶出工程を経て、固体媒体からPb-212を得る方法が記載されている。
【0009】
これらのルートの欠点は、複雑なダブルジェネレータアプローチである。
【0010】
Ra-224ジェネレータの定期的な搬送は、その使用が約1週間に制限されているため面倒であり、したがって頻繁な交換が必要である。さらなる欠点は、Th-228がカラムから頻繁に溶出することに起因する損失であり、これは、カラムが特に(アルファ)放射線損傷により劣化するため、Th-228をカラム上に長時間保持することができないからである。したがって、定期的なカラム交換とそれに伴う製品ロスは避けられない。(アルファ)放射線損傷によるカラム劣化は、Th-228を充填したカラムをベースにしたジェネレータの使用を妨げるが、これは頻繁なRa-224の搬送を制限するためには好ましいことである。
【0011】
Pb-212を生成する他の方法は、例えば、米国特許第5038046号明細書に記載されており、この文献には、Th-228から発生したラドン-220(Rn-220)の崩壊を介したPb-212のための方法及びジェネレータが記載されている。Pb-212の収集は、水溶性の多孔質吸収体内で行われる。Eiswirth et al. J. of Chem. Education, 1982, 59, 608には、堆積したPb-212が溶出する白金電極を用いた放射性核種の静電分離を用いた、ラザフォードの「トリウムカウ(thorium cow)」について報告している。米国特許出願公開第2018/00847474号明細書には、可溶性塩が充填されたカラム上で極低温冷却することによりRn-220を捕捉し、このRn-220をPb-212に崩壊させることにより、ガス状のRn-220の放射性崩壊によりPb-212などの娘核種を生成するための方法論が記載されている。その後、塩の溶解により、所望のPb-212の放射性核種を捕捉することが可能になる。
【0012】
電界によって誘起される堆積については、Shinagawa et al., J. Nucl. Sci. Tech., 1968, 408や、Shinagawa, J. Nucl. Sci. Tech., 1977, 163に記載されており、これらの文献では、Th-228発生源を用いて気相中でPb-212を生成し、グリッド上で収集する。Takemi et al., J. Nucl. Sci. Tech., 1973, 155; J. Nucl. Sci. Tech., 1976, 270には、セットアップされた3つの電極を使用し、ステンレス鋼グリッド上にPb-212を収集することによって、親核種からPb-212などの娘核種を気体電着(gaseous electrodeposition)することが記載されている。Hassfjell et al. Applied Radiation and Isotopes 2001, 45, 1021-1025には、Th-228ステアリン酸バリウムからRn-220を生成するPb-212ジェネレータが記載されている。崩壊生成物であるポロニウム-216(Po-216)及びPb-212が、ポリエチレンボトルの壁に堆積され、その後、酸性溶液で洗い流される。Hassfjel et al., Applied Radiation and Isotopes 2001, 55, 433-439には、Th-228をRn-220に崩壊させてPb-212を生成するためのプロセス及び装置が記載されている。ラドンが有機溶媒(ヘキサン/メタノール)の溶液を通してバブリングされた。形成されたPb-212は、有機溶媒中と気泡発生器のガラス表面上に収集され、酸性溶液で洗い流された。これらの方法はすべて、所望の放射性核種を電極又は表面から収集する必要があり、その結果、ハンドリングの増加、Pb-212損失の可能性、及び電極又は表面による汚染の可能性につながる。
【0013】
電荷を帯びた放射性核種を電極上又は表面上で静電的に捕捉することの欠点の1つは、反跳効果(recoil effect)にある。Th-228又はRa-224からの放射性崩壊経路において、Rn-220とそれに続く娘核種であるPo-216及びPb-212とが、その後のアルファ粒子の放出によって形成される。放出されるアルファ粒子は、放出の反跳効果によって娘核種が発生源物質に埋め込まれ得るようなエネルギーを有している。この反跳の問題の一部は、米国特許出願公開第2018/008474744号明細書では、溶液中にガス流又はバブリングを提供することによって解決されている。しかしながら、Rn-220からPo-216への崩壊だけでなく、Po-216からPb-212への崩壊もアルファ崩壊を伴う。Po-216の静電捕捉を使用すると、イオン化したPo-216が電極上に堆積し、Pb-212の一部がPo-216の崩壊後に反跳効果により静電捕捉装置の電極に埋め込まれる。これは、収率及び効率を大幅に低下させる。
【0014】
この分野における既存の技術に対するさらなる改良を提供し、工業規模又は病院規模で医療用途のPb-212放射性核種を製造することが可能であり、以下の1つ以上を提供することができる、装置及び方法を提供することが望ましい。
【0015】
(1) 高収率のPb-212
(2) 少なくとも99.95%に等しい放射線物質の純度(radiological purity)を有するPb-212
(3) 現在の技術水準の方法によって製造されたPb-212よりも高い化学的純度(chemical purity)を有するPb-212
(4) Pb-212の半減期が相対的に短いことから、現在の技術水準の方法よりも迅速にPb-212を製造すること
(5) 自動化された方法でPb-212を製造すること
(6) 手動操作の回数を最小限に抑制してPb-212を製造すること
(7) 担当者が汚染されるリスクを抑制するために、閉鎖系でPb-212を製造すること
(8) クロマトグラフィーカラムの使用の回避し、必要なプロセス工程数を最小限に抑制してPb-212を製造すること
(9) 装置の定期的な輸送や装置の交換又は再装填を避けるために、装置の使用時間を最大化し、その間にPb-212を製造すること
【発明の概要】
【0016】
本発明者らは、ガス状の発生源(gaseous source)から生成される電荷を帯びた放射性核種の生成、捕捉、及び分離のための一般的な解決策を見出した。放射性ガスを発生させ、その放射性ガスを電荷を帯びた放射性核種に崩壊させ、電界を印加することによって、イオンが電極の1つに選択的に引き寄せられる。電荷を帯びた放射性核種が電極に向かう軌道上に(in the line of flight)液体を配置することによって、電荷を帯びた放射性核種は液体中に捕捉される。得られた溶液は、電荷を帯びた放射性核種を直ちに含有し、電荷を帯びた放射性核種の直接堆積や、その後の電極表面での崩壊や反跳による埋め込みが大幅に回避される。
【0017】
したがって、一態様では、本発明は、以下の工程、すなわち、
a.放射性ガスを供給することと、
b.前記放射性ガスを崩壊させて電荷を帯びた娘放射性核種を形成することと、
c.前記放射性ガスと接触する液体を供給することと、
d.前記電荷を帯びた娘放射性核種(16)を2つの電極間の電界に供することにより、前記電荷を帯びた娘放射性核種(16)を前記液体中に吸収させることと、
e.前記電荷を帯びた娘放射性核種(16)を含む前記液体を分離することと、
を含む、放射性核種の生成方法に関する。
【0018】
一態様では、本発明は、放出容器(1)及び収集容器(3)を含む放射性核種の調製及び分離のための装置に関し、前記放出容器(1)は前記収集容器(3)に接続されるか、又は前記放出容器(1)及び前記収集容器(3)は単一の容器に含まれる。
a.前記放出容器(1)は、
i.放射性ガスを放出する発生源物質(2)と、
ii.任意選択で、ガス入口(4)と、を備え、
b.収集容器(3)は、
i.電源(8)に接続された第1の電極(5)と、
ii.前記電源(8)に接続された第2の電極(6)と、
iii.液体セクション(7)と、
iv.任意選択で、ガス出口(11)と、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、放出容器(1)及び収集容器(3)が一体である、本発明の実施形態の概略図である。
【
図2】
図2は、放出容器(1)及び収集容器(3)が接続部(15)を介して接続された別体であり、放射性ガスの発生源が流体中の放射線源(2)によって提供される、本発明の実施形態の概略図である。
【
図3】
図3は、放出容器(1)及び収集容器(3)が接続部(15)を介して接続された別体であり、放射性ガスの発生源が固体の放射線源(2)によって提供される、本発明の実施形態の概略図である。
【
図4】
図4は、放出容器(1)及び収集容器(3)が接続部(15)を介して接続された別体であり、放射性ガスの発生源が固体又は流体の放射線源(2)によって提供され、ガス流が液体(7A)を通してバブリングされて、電荷を帯びた娘核種のイオン(16)を捕捉する、本発明の実施形態の概略図である。
【
図5A】
図5Aは、電極(6)が液体セクション(7)の下でかつ収集容器(3)の外側に設けられる(又は埋め込まれる)、本発明の一部の実施形態の概略図である。
【
図5B】
図5Bは、電極(6)が液体セクション(7)内に設けられる(又は埋め込まれる)、本発明の一部の実施形態の概略図である。
【
図5C】
図5Cは、電極(6)が液体(7A)を収集する収集容器(3)の外壁内に設けられる(又は埋め込まれる)、本発明の一部の実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
したがって、本発明は、以下の工程、すなわち、
a.放射性ガスを供給することと、
b.前記放射性ガスの崩壊を可能にして電荷を帯びた娘放射性核種を形成することと、
c.前記放射性ガスと接触する液体(7A)を供給することと、
d.前記電荷を帯びた娘放射性核種(16)を2つの電極(5、6)間の電界に供することにより、前記電荷を帯びた娘放射性核種(16)を前記液体(7A)中に吸収させることと、
e.前記電荷を帯びた娘放射性核種(16)を含む前記液体(7A)を分離することと、
を含む、放射性核種の生成方法に関する。
【0021】
本発明の利点の1つは、電荷を帯びた娘放射性核種(娘核種)(16)のための方法及び装置(生成装置(generator)))を、所望の生成物を得るためにカラム材料を用いたクロマトグラフィー分離を用いることなく提供することにある。本方法は、高純度の娘核種(16)の提供をもたらす。本方法は、液体(7A)中に娘核種(16)を直接(追加の工程なしに)提供することにつながり、液体(7A)からの娘核種(16)のさらなる分離又はその直接的な使用に適している。これは、廃棄物及び材料損失の観点から有益である。さらなる利点は、カラム劣化が避けられることであり、これにより生成装置を長期間使用することが可能になる。これは、より長い半減期を有する親放射性核種(親核種)の使用によってさらに増強される。本発明の液体(7A)における電気的な捕捉は、カラム材料汚染のリスクなしに高純度の生成物を得ることができる。
【0022】
電荷を帯びた放射性核種(16)は、ガス流中に電界を印加することによって、それらが形成される放射性ガスから回収することができる。電界は十分な強度を有し、それによって、電荷を帯びた娘核種(16)を、電界発生装置の逆極性の電荷を帯びた電極上に堆積させる。正電荷を帯びた放射性核種の捕捉を目的とする好ましい実施形態では、正極はガス流を取り囲み、正電荷を帯びた放射性核種を反発させ、正電荷を帯びた放射性核種を負極に誘導し、正電荷同士の電気的反発により堆積を回避する。溶液中に負極を設けることによって、電荷を帯びた放射性核種は、電極上ではなく溶液中に捕捉される。放射性ガスの半減期に応じて放射性ガスが崩壊し、娘核種(16)が液体(7A)中に捕捉される一定期間の後、液体(7A)中に捕捉された娘核種は、液体(7A)を分離し、液体(7A)から娘核種を分離するか、又は放射線治療などの用途に向けて娘核種(16)を処理することによって回収することができる。
【0023】
放射性ガスは、ガスとして提供することもできるし、放射性ガスに崩壊する放射線源物質(radioactive source material)(2)などのガスジェネレータを供給することによって生成することもできる。放射性ガスの流量(flow)に応じてキャリアガスを使用して、放射性ガスの電荷を帯びた娘核種(16)が液体(7A)に吸収(捕捉)されるのに十分な流量を提供するガス流を生成することができる。
【0024】
電荷を帯びた娘核種(16)が捕捉される液体(7A)は、好ましくは、電荷を帯びた娘核種(16)を含有するガスとの直接接触から電極を遮蔽又は浸漬するのに十分な量で提供される。このように電荷を帯びた娘核種(16)を捕捉することによって、引き寄せられた電荷を帯びた娘核種(16)は液体(7A)中に捕捉され、それらの運動エネルギーが減少し、電極に付着する可能性が低くなる。また、液体(7A)中での電荷を帯びた娘核種(16)のその後の放射性崩壊により、放射性核種が電極に付着したり、電極に埋め込まれたりする可能性が低くなる。
【0025】
放射性ガスの発生源(放出源(emanation source))は、トリウム(Th)、ウラン(U)及び/又はラジウム(Ra)放射性核種、又は崩壊連鎖中にガス状の娘核種を有する別の放射性核種とすることができる。放射性ガスの発生源は、単一の(点)発生源要素として提供することができるが、実施形態では、発生源を、溶液、粉末、発泡体、箔、スポンジ、塩として、又は担体上に提供することが好ましい。放射性ガスの発生源を微細に分散又は溶解した形態で提供することによって、放出ガスはより容易に発散され、娘核種を発生源物質(2)中に埋め込み、収率を低下させる反跳効果(recoil effect)のリスクがより少なくなる。
【0026】
放射性ガスは、放射性ガスを搬送するガス流を提供することによって、放出源から効果的に除去することができる。したがって、実施形態では、放射性ガスは(キャリア)ガス流中に供給される。
【0027】
例えば、Pb-212放射性核種の生成を目的とする実施形態では、発生源物質であるRa-224又はTh-228が供給され、自然崩壊連鎖によって放射性ガスの形成が可能になろう。好ましい実施形態では、放射性ガスはラドン、好ましくはラドン-220(半減期51秒)である。Rn-220(ラドン)は、Po-216(ポロニウム)及びPb-212(鉛)の電荷を帯びた放射性核種に崩壊する。この崩壊は、ラドンと任意のキャリアガスとによって生成されるガス流中で起こり、電子を失うことによって、正電荷を帯びたポロニウムイオンと鉛イオンとを生成する。Po-216の半減期は0.15秒である。ひとたびラドンガスが形成され、電界の及ぶ範囲内に入ると、Po-216の電荷を帯びた放射性核種は、おそらくマイクロ秒単位で液体中に設けられた電極に向かって移動する。Po-216の電荷を帯びた放射性核種はPb-212に崩壊する。このPb-212への崩壊は、主に液体(7A)中で起きる。形成されたPb-212は、電極に向かって移動することができるが、電極に埋め込まれる可能性は低い。なぜなら、崩壊の反跳効果は主に液体(7A)中で発生し、特に、本明細書で上述した従来技術と比較した場合、反跳効果は電極の表面では発生しないか又は発生する程度が低いからである。
【0028】
代替的な実施形態では、放射性ガスを放出することができる発生源物質はRa-226とすることができる。放射線照射されたRa-226を使用することにより、Th-228を得るための精製工程を回避することができ、Th-228のRn-220(t1/2= 55秒)同位体を経たPb-212への崩壊を介して動作することが可能である。放射線照射されたRa-226を直接使用すると、Rn-219(t1/2=4秒)及びRn-222(t1/2=3.82日)が存在することになり、これはPb-212中に不純物を生じさせる。処理装置の特性(例えば、流量、フィルタ、及び収集容積)を最適化することによって、Pb-212は主に収集容積内に捕捉されるが、Pb-不純物(例えば、Pb-214)は収集容積内では崩壊しない。これにより、高純度のPb-212を得ることができる。
【0029】
実施形態では、Ra-226など、放射性ガスの代替放射線源又は複合放射線源を使用することができる。Th-228を得るためにRa-226に放射線を照射すると、(Ac-227を介して)Th-227も形成される。Th-227は、(気体の)Rn-219(t1/2=4秒)に崩壊する可能性がある。この影響は、形成された放射性ガス(Rn-220とRn-219の混合物)を、電界に曝されていないチャンバ内に保持することによって低減することができる。このガスは、形成されたRn-219の自然崩壊を可能にするために、比較的短い時間(約1分間)保持され得る。次いで、Rn-220の崩壊が電界の存在下で収集容器内において発生し、Rn-219の崩壊生成物が本質的に存在しない状態でPb-212の捕捉を可能にする。したがって、実施形態では、本方法は、放射性ガスを電界に供する前に、好ましくは30秒~180秒の間、電界の非存在下で放射性ガスを保持することを含む。したがって、実施形態では、装置は、放出容器(1)と収集容器(2)との間に任意選択で管を介して配置されたチャンバを含み、好ましくは、チャンバは、収集容器(3)内の電界に供されないか、又は電界によって影響を受けない。
【0030】
実施形態では、Th-228又はRa-224発生源などの放射性ガスの発生源を液体中に設けることができ、ラドン、より好ましくはRn-220などの放射性ガスが気泡を形成することができる。気泡形成は、キャリアガス流を用いてキャリアガスを供給することによって促進することができる。放射性ガスの発生源が溶液中にない場合、キャリアガスが、放出源から放射性ガスを搬送することになろう。放射性ガスは、気泡表面に付着したり、及び/又は気泡に入り込むことができるし、液体から放出されたり、ガス流によって液体から搬送されたりすることが可能である。気泡が小さいほど、また気泡の量が多いほど、より多くの放射性ガスを流体から抽出することができる。ガス流が相対的に少なく、かつ気泡の量が最大であることが好ましい。好ましくは、生成される放射性ガスのほとんど(90%より多く、好ましくは大部分)が効果的に除去される。放射性ガスが、流体から気泡と共に又は流体から気泡内に取り込まれるように、気泡表面が最大化されることが好ましい。これは複数の方法で達成することができるが、ガス流を最小限にする必要がある場合には気泡の量を最大化する(気泡サイズを最小化する)ことが好ましい。バブリングの原理は、米国特許出願公開第2018/0047474号明細書に記載されている。収集容器(3)に必要な体積を制限するためには、キャリアガス流を最小限にすることが好ましい。
【0031】
Th-228及び/又はRa-224などの放射性ガスの発生源物質(2)が設けられた表面に沿ってキャリアガスを流すことによって、ガス状の娘核種を除去することができる。ガス状の娘核種(Th-228及び/又はRa-224の場合、これはRn-220である)は、拡散及び/又は反跳によって放出され、ガス流によって発生源の表面から(さらに)取り出される。
【0032】
放射性ガスの発生源が供給される流体は、水性流体、電荷を帯びた(イオン性)流体、有機溶媒、又はそれらの混合物とすることができる。有機溶媒は、DMF、DMSO、低級(C1~C4)アルコールなどの極性有機溶媒とすることができる。放射性ガスの発生源は、流体中の溶液、分散液、又はエマルジョンとして提供することができる。好ましい実施形態では、水性流体は、水、水性緩衝液、及び酸性水溶液からなる群から選択される1つ以上である。Th-228塩の溶液など、放射性ガスの発生源が溶解している水性流体が好ましい。酸性水溶液中の酸は、鉱物及び有機酸からなる群から選択されることが好ましく、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、酢酸、クエン酸及びそれらの混合物からなる群から選択されることが好ましい。鉱酸が好ましく、塩酸がより好ましい。Th-228又はRa-224のような放射性ガスの発生源の適切な溶解を提供するために、流体は、好ましくは7未満、好ましくは6未満、より好ましくは4未満のpHのような酸性のpHを有する。Th-228イオン又はRa-224イオンのような放射性ガスの発生源の溶解イオンの錯体形成に適した代替の錯化剤及び配位子(例えば、EDTA及び他の窒素含有大環状化合物又はクラウンエーテル)を使用することができる。
【0033】
実施形態において、トリウム放射性核種は、Th-232、Th-230、Th-228、Th-227、好ましくはTh-228であり得る。トリウム放射性核種は、ウラン親核種であるU-232として提供されてもよい。実施形態において、ラジウム放射性核種は、Ra-226、Ra-224、Ra-223、好ましくはRa-224とすることができる。実施形態において、ラドン放射性核種は、Rn-222、Rn-220、Rn-219、好ましくはRn-220とすることができる。
【0034】
Pb-212の生成を目的とし、カラム装置における従来のPb-212生成と比較した実施形態では、放射性ガスの発生源であるU-232/Th-228/Ra-224を含む放出セクション内の流体又は固体の発生源は、キャリアガス流に曝され(ガス流により、ラドンが放出される発生源からガス状の娘核種を除去することが可能になる)、それによってガス状のRn-220を発生源から抽出することができる。ガス状のRn-220が崩壊すると、電荷を帯びた娘核種(16)であるポロニウムと鉛は、正極に反発し、電界の負極に引き寄せられる。負極を溶液中に設けることによって(例えば、電極を液体中に浸漬することによって)、ポロニウムイオン及び鉛イオンは、電極表面ではなく、溶液中に直接捕捉される。十分な量の物質が捕捉されると、負極が浸漬された液体を直接除去することによって、鉛を回収することができる。溶解液の量は、少なくとも負極全体が液体によって覆われている限り、重要ではない。放射性核種の濃度は、溶解液の量を増減することにより、必要に応じて調整することができる。本発明の方法は、Pb-212の回収において、カラム装置と少なくとも同様の効率を有するが、カラムの使用を回避することにより、廃棄物の流出と溶出損失とを抑制し、放射線損傷によるカラム劣化を回避する。
【0035】
本発明の方法の実施形態において得られる電荷を帯びた娘放射性核種(16)は、Pb-214、Pb-212、Pb-211及び/又はBi-214、Bi-212、Bi-211であり、好ましくはPb-214、Pb-212及びPb-211であり、より好ましくはPb-212である。
【0036】
娘核種(16)の捕捉に使用される液体(7A)は、好ましくは、生成される放射性核種の放射性崩壊の結果として液体(7A)が分解することなく娘核種(16)を捕捉することができる液体(7A)である。液体(7A)は、娘核種(16)の容易でかつ便利なさらなるハンドリングを可能にする液体とすることができる。
【0037】
したがって、実施形態では、液体(7A)は、水性液体、電荷を帯びた(イオン性)液体、有機溶媒、又はそれらの混合物である。有機溶媒は、DMF、DMSO、低級(C1~C4)アルコールなどの極性有機溶媒とすることができる。好ましい実施形態では、水性液体は、水、水性緩衝液、及び酸性水溶液からなる群から選択される1つ以上である。水性液体を使用することによって、Pb-212などの電荷を帯びた娘核種は、標的アルファ線治療(TAT)などのさらなる処理に直接利用可能である。塩化ナトリウムなどの塩が液体中に存在することで、導電性溶液としての液体の機能を補助して、電荷を帯びた放射性核種を引き寄せ、電荷を帯びた娘核種を捕捉することができるようになり、生理学的に許容される塩溶液を使用することにより、捕捉された電荷を帯びた娘核種の直接的なさらなる処理を可能にする。
【0038】
酸性水溶液中の酸は、鉱物及び有機酸からなる群から選択されることが好ましく、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、酢酸、クエン酸及びそれらの混合物からなる群から選択されることが好ましい。鉱酸が好ましく、塩酸がより好ましい。電荷を帯びた娘核種を適度に溶解させるために、液体(7A)は、7未満、好ましくは6未満、より好ましくは4未満のpHのような酸性のpHを有する。EDTA及び他の窒素含有大環状化合物又はクラウンエーテルなど、電荷を帯びた放射性核種の錯体形成に適した代替の錯化剤及び配位子を使用することができる。
【0039】
発生源物質(2)から放出された放射性ガスは、キャリアガスを用いて搬送することができる。キャリアガスの使用は、放出されたガスを発生源から遠ざけるので有利である。他の箇所で概説したように、Th-228/Ra-228/Rn-220/Po-216/Pb-212経路の場合のように、アルファ崩壊は、その特徴の1つとして反跳効果の存在を有する。反跳効果により、形成された放射性核種は、周囲の固体物質中に埋め込まれ、そこから除去することが困難になる場合がある。キャリアガスは、形成された放射性ガスを発生源から遠ざけるのに役立つ。
【0040】
キャリアガスは、好ましくは不活性ガス及び/又は希ガス、或いは存在する放射性核種の放射性崩壊の影響を受けないガスである。したがって、キャリアガスは、放射性崩壊の影響を受けない限り、空気、酸素、又は二酸化炭素であってもよい。したがって、キャリアガスは、窒素、ヘリウム、アルゴン、二酸化炭素、空気、及びそれらの混合物からなる群から選択することができる。窒素及び/又はヘリウム、或いはそれらの混合物が好ましい。
【0041】
キャリアの流量(flow)は変化してもよく、状況に応じて決定され得る。流量は、放射性ガスを発生源物質(2)から遠ざけるのに十分に大きな流量とすることが好ましい。
【0042】
放射性ガス及び任意のキャリアガスの流量は、崩壊による損失、中和による損失、又は崩壊及び反跳による固体物質への埋め込みによる損失を回避するのに十分でなければならない。ガスの流量は、アルファ粒子を伴ういかなる放射性崩壊も、反跳効果により発生源物質に埋め込まれた娘核種(16)を残さないような距離にわたって、発生源物質(2)から発生、放出される放射性ガスを搬送するのに十分でなければならない。電荷を帯びた娘核種(16)がすべて液体(7A)に埋め込まれた電極に向かって引き寄せられるように、この流量は、放射性ガス及び形成された電荷を帯びた娘核種(16)が電界の及ぶ範囲内に入るのに十分に大きな流量でなければならない。ガスの流量は、好ましくは、1分当たりのシステム総容積に対して1:1~1:25の比率で選択されるべきである。例えば、システム総容積が250mLである場合、ガスの流量は、好ましくは10mL/分~250mL/分の範囲で選択されるべきである。
【0043】
発生源物質であるTh-228/Ra-224の放射性崩壊連鎖において、Rn-220は、放射性ガスとして放出され、ガス流によって発生源物質(2)の表面から除去され得る。Rn-220はアルファ粒子を放出して、放射性の電荷を帯びた娘核種(charged radioactive daughter radionuclide)として半減期が非常に短いPo-216イオンを生成する。Po-216もアルファ粒子を放出して、放射性の電荷を帯びた娘核種としてPb-212を生成する。放射性の電荷を帯びた娘核種であるPo-216及びPb212の両方は、電極(5、6)間に印加される電界による影響を受け得る。
【0044】
電界は、2つの電極(5、6)(正極と負極)の間に供される。各電極は、1つ以上のマルチ電極(one or more multiple electrodes)を含むことができる。電界は、電流が流れないように2つの電極(5、6)を互いに絶縁することによって、電極(5、6)間に維持される。電界は、電荷を帯びた娘核種(16)をすべて捕捉するために維持される。
【0045】
電荷を帯びた娘核種(16)は、2つの電極(5、6)の間で電界に曝される。電極(5、6)間の電界は、電荷を帯びた娘核種(16)を、電荷を帯びた娘核種とは逆極性の電荷を持つ電極に引き寄せる。電荷を帯びた娘核種(16)は、逆極性の電荷を持つ電極によって斥けられる。電荷を帯びた娘核種(16)を電極に引き付ける効率は、特に、電界の強度(the strength of the electric field)に依存する。電極(5、6)間の電界の強度は、電荷を帯びた娘核種(16)が電極に引き寄せられるような強度である。電界の強度は、媒質である誘電体にも依存する。電極(5,6)に印加される電圧は、通常は10~10000ボルトの間、100~7500ボルトの間、500~5000ボルトの間である。これにより、適度な電界が得られる。
【0046】
一実施形態では、ガスは液体と接触し、液体(7A)は、電荷、好ましくは負電荷を保持している。液体(7A)に電界を印加することによって、液体(7A)に負電荷を付与することができる。液体(7A)に電荷を付与することによって、逆極性の電荷を帯びた娘核種(16)が液体(7A)に引き寄せられ、液体(7A)内に捕捉される。正電荷を帯びた娘核種(16)(Po-216、Pb-212など)の捕捉を目的とする実施形態では、液体(7A)は負電荷を帯びている。
【0047】
本発明の方法は、減圧下(0.01バールから1バールまで)、常圧下(ambient pressure)(約1バール)又は加圧下(1バールより大きい)で実施することができる。本発明の方法は、5℃~100℃、より好ましくは10℃~90℃の温度で実施することができる。ガス放出源から放射性ガスを除去するために、ガス放出源の周囲温度(ambient)より高い温度を使用することが有利であると考えられる。
【0048】
電極(5,6)間の電界により、放射性の電荷を帯びた娘核種(16)が液体中に吸収される。これにより、液体(7A)中に放射性の電荷を帯びた娘核種(16)がある溶液が得られる。この目的のために、液体(7A)は、電極(5、6)の(電界の)間に配置される。電界は、放射性の電荷を帯びた娘核種(16)を、電極(5、6)の一方に引き寄せ、他方の電極(5、6)から遠ざける。電極の(正又は負)の電荷の適切な選択と、電極(5,6)間の液体(7A)の位置決めにより、放射性の電荷を帯びた娘核種(16)が液体(7A)中に捕捉される(陽イオンは負極に、陰イオンは正極に)。イオンを引き寄せる電極を、液体中に、液体下に、液体に浸した状態(immersed)で、液体に囲まれた状態で、又は液体中に沈めた状態(submerged)で配置することによって、電極に引き寄せられる電荷を帯びた娘核種(16)が液体(7A)中に捕捉される。このプロセスにおける捕捉ステップにより、放射性の娘核種イオンは液体(7A)中に直接供給され、放射性核種が電極表面に直接堆積されることが抑制又は防止される。液体(7A)は、分離されるか、そのまま使用されるか、又はさらなるステップ(精製、錯体化、及び標的放射線治療における放射性医薬品最終生成物のさらなる標識又は合成のための放射化学物質としての使用など)に供することができる。
【0049】
好ましい実施形態では、本発明は、Pb-212放射性核種の生成方法であって、
a.Rn-220ガスを供給することと、
b.放射性ガスを崩壊させて、Po-216及び/又はPb-212を含む電荷を帯びた娘核種(16)を形成することと、
c.放射性ガスと接触する液体(7A)を供給することと、
d.電荷を帯びた娘核種(16)を2つの電極(5,6)間の電界に供することにより、Po-216及び/又はPb-212を含む電荷を帯びた娘核種(16)を液体中に吸収させることと、
e.電荷を帯びた娘核種(16)を含む液体(7A)を分離することと、
を含む方法に関する。
【0050】
Pb-212の生成方法において、Rn-220ガスは、アルファ粒子の放出によって、電荷を帯びた娘核種としてのPo-216に崩壊する。Po-216は、電界により、数ミリ秒のうちに逆極性の電荷を帯びた電極に向かって移動する。Po-216はその後、好ましくは主に液体(7A)中で、Pb-212に崩壊する。
【0051】
さらなる態様では、本発明は、放出容器(1)及び収集容器(3)を備える放射性核種の調製及び分離のための装置に関し、放出容器は収集容器(3)に接続されるか、又は放出容器(1)及び収集容器(3)は単一の容器に含まれ、
a.放出容器(1)は、
i.放射性ガスを放出する発生源物質(2)と、
ii.任意選択で、ガス入口(4)と、を備え、
b.収集容器(3)は、
i.電源(8)に接続された第1の電極(5)と、
ii.電源(8)に接続された第2の電極(6)と、
iii.液体セクション(7)と、
iv.任意選択で、ガス出口(11)と、を含む。
【0052】
本発明の装置では、放射性ガスの発生源(2)をラドン放出源とすることができる。本発明の装置(電荷を帯びた放射性核種の生成装置)は、放射線耐性を有する不活性材料から製造することができ、生成装置における条件に長期間耐えることができ、したがって、U-232/Th-228/Ra-224などの親核種を収容することができる。
【0053】
放射性ガスを放出する発生源物質(2)を含む放出容器(1)は、放射性ガスを放出する発生源物質(2)を含む流体を収容することが可能な容器の形態で、又は放射性ガスを放出する発生源(2)を単一の(点状の)発生源要素として提供することが可能な形態で提供することができるが、実施形態では、発生源を、溶液、粉末、発泡体、箔、スポンジ、塩として、又は担体上において提供することが好ましい。発生源物質(2)は、元素の形態で提供されてもよく、又は塩や酸化物などの化合物として提供されてもよい。
【0054】
放出容器(1)は、ガス入口(4)をさらに備えることができる。ガス入口(4)は、放出された放射性ガスを搬送するためのキャリアガスの供給に使用することができる。放出容器(1)は、例えば発生源物質(2)が枯渇した場合に、放射性ガスを放出する発生源物質(2)の交換を可能にするために、収集容器(3)に取り外し可能に接続することができる。ガス入口(4)に接続された別個のガス供給装置が設けられてもよい。
【0055】
放出容器(1)は、収集容器(3)に取り外し可能に接続することができる。放出容器(1)は、収集容器(3)と直接接続することもできるし、接続管などの接続要素(15)を介して接続することもできる。放出容器(1)は、収集容器(3)の一端で収集容器(3)に接続される。接続要素(15)はまた、ガスを放出容器(1)から収集容器(3)に搬送するために、放出容器(1)のガス出口として機能することができる。放出容器(1)及び収集容器(3)は、共に密閉容器を形成する。気体及び液体は、液体及び/又は気体のために設けられた入口及び出口を通して密閉容器に供給され、密閉容器から除去され得る。
【0056】
収集容器(3)は、電源/電圧発生器(8)に接続された2つの電極(5)及び電極(6)を備えている。収集容器(3)は、容積(保持セクション)を有する。保持セクションの容積は、放射性ガスが主に(90%より多い)電荷を帯びた娘核種に崩壊するのに十分な時間だけ、放射性ガスが(任意選択で、キャリアガスによって生成される流れと組み合わされて)この容積内に留まるように選択される。実施形態では、保持セクションは、電荷を帯びた娘核種を生成するのに十分な時間、放射性ガスを収集することができる。例えば、半減期が51秒のラドン-220の場合、好ましい収集時間は約5分である。通常、好ましい収集時間は、放射性ガスの半減期の1倍~10倍、好ましくは約3倍~7倍である。好ましい収集時間は、以下の2つの間の妥協点である。
-必要な滞留時間が長過ぎる場合、収集容器(3)は大き過ぎる必要があるか、又は、放出容器を通る流量が少な過ぎる。
-必要とされる滞留時間が短過ぎる場合、Rn-220のかなりの割合が収集容器(3)の外側で崩壊し、収率に寄与しない。
【0057】
2つの電極(5、6)の間に電位差を与えて、電界を生成することができる。2つの電極(5、6)は、電気絶縁(12)を介して互いに電気的に絶縁されている。収集容器(3)の内壁は、一方の電極(5)を形成することができる。収集容器(3)の他方の遠位端であって、放出容器(1)に接続された端部から離れた部分に、他方の電極(6)を設けることができる。電極(5、6)の極性は、電源/電圧発生器(8)によって選択することができる。電極(6)は、液体(7A)中に設けられるか、又は液体(7A)の下方に配置される。液体(7A)は、好ましくは収集容器(3)の下端に配置される。液体(7A)を収容する収集容器(3)のセクションは、液体セクション(7)として図示することができる。液体セクション(7)は、液体(7A)を収容する。液体(7A)は少なくとも部分的に、2つの電極(5、6)間の電界内にある。電極(6)は、好ましくは液体(7A)中に浸漬されるか、又は電極(5、6)間の電界が液体(7A)を通過し、放射性の電荷を帯びた娘核種に電気力を及ぼすことができるように、容器の下部に包含されるか又は組み込まれるなど、液体の下側の別個のセクションに配置される。
【0058】
ガス出口(11)は、収集容器(3)に接続されている。ガス出口(11)は、放出源からのガス流が収集容器(3)を通ってガス出口(11)に流れるように、収集容器(3)内の液体(7A)の表面近傍に配置されている。
【0059】
キャリアガスは、放射性ガスを、放出容器(1)から収集容器(3)に搬送することができる。自然放射性崩壊によって、放射性ガスは、放射性の電荷を帯びた娘核種を形成する。電荷を帯びた娘核種、Rn-220の好ましいケースでは、電荷を帯びた娘核種(16)であるPo-216及びPb-212が形成され、ガス容積を取り囲む電極(5)により反発され、負極(6)により引き寄せられ、液体(7A)によって吸収される。形成された放射性の電荷を帯びた娘核種(16)は、液体セクション(7)から除去することにより分離することができる。液体セクション(7)からの除去及び/又は交換は、液体セクション(7)に液体入口(9)及び/又は液体出口(10)を設けることによって達成することができる。ガス流は、ガス出口(11)を通って収集容器(3)を出ることができる。ガス出口(11)は、液体表面の上方に配置することができるが、実施形態では、液体(7A)を通して排出ガスを搬送し又は気泡化することができる。排出されたガスは、フィルタ(13)を通して望ましくない粒子及び化合物から濾過され、ガス排出口(14)を通して排出され得る。あるいは、ガスは、ガス出口(11)とガス入口(4)との間に接続部を設けることによって再循環されてもよい。除去された流体は、放射性の娘核種イオンを含む液体を含有する。
【0060】
実施形態において、放射性ガスを放出する発生源は、トリウム放射性核種、又はラジウム放射性核種とすることができる。放出容器(1)は、例えば、発生源物質(2)が枯渇した場合に、放射性ガスを放出する発生源物質(2)の交換を可能にするために、収集容器(3)に取り外し可能に接続することができる。あるいは、放出容器(1)は、発生源物質(2)の交換を可能にするために、発生源物質(2)を収容する挿入可能なモジュールを含む。
【0061】
実施形態では、収集容器(3)、好ましくは液体セクション(7)は、液体出口及び/又は液体入口を備えている。液体(7A)の入口及び/又は出口が存在することにより、装置を分解することなく、形成された電荷を帯びた娘核種(16)を含む液体(7A)の交換及び/又は除去を行うことが可能になる。
【0062】
実施形態では、電極(6)は、収集容器(3)の液体セクション(7)の外側に配置される。この実施形態では、収集容器(3)の外側に配置される電極は、例えば、液体セクション(7)の真下に配置されてもよく、又は液体セクション(7)の材料に組み込まれるか/埋め込まれてもよい。液体セクション(7)の材料は、電界が電荷を帯びた娘核種に引力を及ぼすことを可能にする、比較的低い誘電率を有する固体材料であることが好ましい。例えば、プラスチック、ガラス、又は複合材料である。
【0063】
実施形態では、電極(6)は、液体セクション(7)内の液体(7A)中に配置される。好ましくは、電極(6)は、電極(6)が液体(7A)中に浸漬されるように、液体セクション(7)内に配置される。特定の実施形態では、電極(6)は、液体(7A)によって電極(5)から分離されることが好ましい。好ましくは、電極(6)は、電気絶縁(12)を使用して、電極(5)から絶縁され/電極(5)とは電気的に接触していない。実施形態では、収集容器(3)は、液体セクション(7)に接続された保持セクションを備えている。保持セクション(18)は、放射性ガスの崩壊によって電荷を帯びた娘核種(16)が形成されるのに十分な時間だけ、ガスを保持する役割を果たす。保持セクション(18)は、放出セクション(又は接続管)と液体セクション(7)との間に配置される。液体セクション(7)に接続された保持セクション(18)は、液体セクション(7)から電気的に絶縁されていてもよい。
【0064】
2つの電極(5、6)は、好ましくは、電極上に電圧が印加され得るように接続されている。電圧は、電極(5、6)に接続された電圧発生器(8)によって供給され得る。
【0065】
実施形態では、保持セクション(18)又は液体セクション(7)が、ガス出口(11)を含んでいる。
【0066】
実施形態では、電極(5)は、保持セクション(18)を大幅に取り囲む導電性材料である。好ましい実施形態では、保持セクション(18)は導電性材料である。実施形態では、電極(6)は、貴金属、白金(Pt)、タングステン(W)、ステンレス鋼、合金、炭素、銅、アルミニウムなどの導電性材料である。電極が液体と直接接触する実施形態では、材料の選択は、貴金属、Pt、W、ステンレス鋼、合金、炭素などのように、液体(酸性溶液など)に対して不活性であることが好ましい。実施形態では、ガス出口(11)は、カーボンフィルタ又はHEPAフィルタなどのフィルタを含んでいる。
【0067】
図1に示すように、一実施形態では、放出容器(1)及び収集容器(3)は一体化することができ、例えば、放射線源を上部に設置し、キャリアガスがこの放射線源を通って収集容器(3)に放射性ガスを搬送することができる。収集容器(3)の壁、特に保持セクション(18)は、電源に接続されて電極(5)として機能し、形成された電荷を帯びた娘核種の堆積を防止するための電荷に設定される。電極(5、6)間に発生した電界により電荷を帯びた娘核種が移動して液体(7A)に吸収されるように、液体(7A)は、液体セクション(7)内において、電源に接続される電極(6)(電荷を帯びた娘放射性核種と逆の極性に帯電している)が液体(7A)中に浸漬される位置、及び/又は液体(7A)が電極を取り囲む位置に設けられる、すなわち、電極(5,6)間に配置される。電極(5、6)間の電界によって、電荷を帯びた娘核種(Rn-220からPb-212への崩壊連鎖の場合は正電荷を帯びている)は、電極(Rn-220からPb-212への崩壊連鎖の場合は負電荷を帯びている)に引き寄せられ、その後、液体セクション(7)において液体(7A)に捕捉され、吸収される。
【0068】
図2に示すように、一実施形態では、放出容器(1)及び収集容器(3)は、接続管(15)を介して接続された2つの別体とすることができる。放出容器(1)は、Th-228及び/又はRa-224などの放射線源を含む液体を収容する。この実施形態では、放射線源は、固体の放射線源物質中の娘核種の反跳を回避する溶液として提供され得る。放出されたガスは、液体から気泡を発生させることができ、任意選択で、放射性ガスが収集容器(3)に沿って搬送されるように、放射線源物質(2)を含む液体にガス入口(4)からキャリアガスをバブリングすることによって補助される。
【0069】
図3に示すように、一実施形態では、放出容器(1)及び収集容器(3)は、接続管(15)を介して接続された2つの別体とすることができる。放出容器(1)は、Th-228及び/又はRa-224などの放射線源を含む固体を収容する。この実施形態では、放射線源は、固体の放射線源物質(2)中の娘核種の反跳を回避するために、薄層又はスポンジ状材料の形態で、及び/又は親核種が薄層で堆積される大きな表面積を有する材料の形態で提供され得る。放出されたガスは、拡散によって放射線源物質(2)から離れるように移動することができ、任意選択で、放射性ガスが収集容器(3)に沿って搬送されるように、放射線源物質(2)を含む固体に沿ってガス入口(4)からキャリアガスを供給することによって補助される。
【0070】
図4に示すように、一実施形態では、液体セクション(7)は、例えばU型構造のように、(管状の)屈曲部によって接続された2つの(管状の)脚部を有するように構成することができる。接続された2つ脚部は、液体(7A)を収容する。気体の流れがないときの液体(7A)の平衡液面(equilibrium level)は、屈曲部の上方に位置することができる。一方の脚部の液面は、収集容器(3)内のガスと接触している。収集容器(3)に接続された脚部に圧力がかかると、その側の液体(7A)の液面が下がることになる。接続管又はガス通過部(17)を設けて、余分なガスを他方の脚部に移動させることができる。余分なガスは液体(7A)を通って気泡となり、ガス排出口(14)から排出される前に、ガスからのイオンの除去を改善することができる。
【0071】
図5に示すように、一実施形態では、電極(6)の配置は、液体セクション(7)の下方かつ外側(
図5A)、液体セクション(7)の内部(
図5B)、及び液体セクション(7)の材料に埋め込まれた状態(
図5C)として図示されている。
【実施例】
【0072】
Pb-212生成装置の実験用装置
【0073】
(実験用装置)
種々の放射性核種の放射能量(radioactivity amounts)は、高純度ゲルマニウム検出器を用いて測定される。
実験用装置は、25mLの放出バイアルに接続されたガス流コントローラ(gas flow controller)からなる。放出バイアルは、400mL収集容器に接続され、この収集容器は、ガス入口、ガス出口、液体入口/出口、及び高電圧電源(0~5kV)の負極に接続された白金電極を含んでいる。収集容器の内壁には銅箔の層が取り付けられ、銅箔の層は電源の正極に接続されている。収集容器のガス出口は、ゼオライトモレキュラーシーブで充填された捕捉カラムに接続されている。
【0074】
(試薬)
[Th-228]ThCl4の水溶液は、NRG社から入手した。その他の試薬(0.1M HCl)は、すべてシグマ アルドリッチ (Sigma-Aldrich)社から入手した。キャリアガスとしては窒素ガスが使用される。
【0075】
(Pb-212放射能の測定)
鉛-212(Pb-212)の放射能(radioactivity)は、Pb-212の短寿命の娘核種であるタリウム-208(Tl-208)の明瞭な2.6MeVガンマ光子エネルギーに基づいて、ガンマ線分光法によって測定される。ガンマ線のエネルギーが高いため、自己遮蔽及び他の物質による遮蔽を無視することができ、Tl-208の定量的測定が可能となり、したがってPb-212放射能も定量的に測定することができる。測定されるガンマ線のエネルギーが高く、点状の放射線源となるため、適切な距離で測定することにより、放射線源の幾何学形状にかかわらず、定量的に測定を行うことができる。
【0076】
(発生源であるTh-228のTh-228放射能の測定)
発生源であるトリウム-228(Th-228)のTh-228の量は、Pb-212が完全に成長した後に、又は時間間隔をあけて測定し、経時的な成長を決定することによって、形成されたPb-212のガンマ線分光法測定により測定される。
【0077】
(発生源であるTh-228のPb-212生成能力の決定)
放出容器において発生源であるTh-228から生成されるPb-212の生成能力は、ラドン-220(Rn-220)を含有するキャリアガスを複数の捕捉カラム(ゼオライト)に通すことによって決定される。このカラムは、ガス流と組み合わせて、ガス流中のあらゆるラドン種(radon species)及び娘核種を捕捉するサイズであり、すべてのラドンとラドンの娘核種とが捕捉されていることを確認し、ラドンが環境に漏出しないことを確実にするために、さらなるカラムが直列に追加される。捕捉されたRn-220は、捕捉カラム上でPb-212に崩壊する。捕捉カラム上のPb-212の放射能(activity)をガンマ線分光法によって測定することにより、放出容器内のTh-228発生源から得られるRn-220/Pb-212の量を(相対的に)定量化することができる。この作業は、発生源から放出されるラドンが安定し、実験過程で変化しないことを確実にするために、定期的に繰り返される。
【0078】
(浸漬された電極を用いた0.1M HCl中のPb-212捕集効率の決定)
[Th-228]ThCl4溶液(5mL、50MBq(メガベクレル))を、放出バイアルに加える。続いて、収集液が、負極を完全に浸漬するのに十分に大きい容量で収集容器に加えられる。2つの電極間に3.5kVの電圧が印加され、50mL/分の窒素流が、[Th-228]ThCl4溶液を通してバブリングされ、数時間から24時間までの範囲の様々な時間で収集チャンバを通してカラムに導かれる。その後、ガス流と電源とがオフにされ、収集液が収集容器から回収される。
【0079】
捕集効率は、収集液中に収集されたPb-212の量を測定し、これを先に決定された発生源であるTh-228の生成能力と比較することによって決定される。モレキュラーシーブで充填された捕捉カラム上に収集されたPb-212の量を測定して、Th-228発生源から放出されたが、収集液中に収集されなかったPb-212の量を決定する。測定された総量は、発生源から発生すると予想される量に加算される。
【符号の説明】
【0080】
1 放出容器
2 発生源物質
3 収集容器
4 ガス入口
5 電極
6 電極
7 液体セクション
7A 液体
8 電源
9 液体入口
10 液体出口
11 ガス出口
12 電気絶縁
13 フィルタ
14 ガス排出口
15 接続管
16 電荷を帯びた娘放射性核種(娘核種)
17 ガス通過部
18 保持セクション
【手続補正書】
【提出日】2024-05-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射性核種を生成及び分離する方法であって、
a.放射性ガスを供給することと、
b.前記放射性ガスを崩壊させて電荷を帯びた娘放射性核種を形成することと、
c.前記放射性ガスと接触する液体を供給することと、
d.前記電荷を帯びた娘放射性核種(16)を2つの電極(5、6)間の電界に供することにより、前記電荷を帯びた娘放射性核種(16)を前記液体中に吸収させることと、
e.前記電荷を帯びた娘放射性核種(16)を含む前記液体を分離することと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記放射性ガスは、キャリアガスと共にガス流で供給される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記娘放射性核種(16)が、Pb-214、Pb-212、Pb-211
、Bi-214、Bi-212、及びBi-211の少なくとも1つである、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記液体が水性液体であり、
7未満のpHを有する、
請求項1に記載の方法。
【請求項5】
放射性核種の調整及び分離のための装置であって、
放出容器及び収集容器(3)を含み、前記放出容器は前記収集容器(3)に接続されているか、又は前記放出容器及び前記収集容器(3)が単一の容器に含まれており、
a.前記放出容器が、
i.放射性ガスを放出する発生源と、
ii.任意選択で、ガス入口と、を備え、
b.前記収集容器(3)が、
i.電源(8)に接続された電極(5)と、
ii.前記電源(8)に接続された電極(6)と、
iii.液体セクション(7)と、
iv.任意選択で、ガス出口(11)と、を含む、
装置。
【請求項6】
前記電極(5)が、前記液体セクション(7)の外側に配置されている、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記電極(6)が、前記液体セクション(7)内に配置されている、
請求項5に記載の装置。
【請求項8】
前記電極(6)が液体(7A)に浸漬されるように、前記電極(6)が前記液体セクション(7)内に配置されている、
請求項5に記載の装置。
【請求項9】
前記電極(6)は、液体(7A)によって前記電極(5)から分離されている、
請求項5に記載の装置。
【請求項10】
前記電極(5)及び前記電極(6)は、互いに電気的に絶縁されている、
請求項5に記載の装置。
【請求項11】
前記電極(5)は、前記電極(6)から絶縁されているか、又は前記電極(6)と電気的に接触していない、
請求項5に記載の装置。
【請求項12】
前記収集容器(3)は、前記液体セクション(7)に接続された保持セクションを収容する、
請求項5に記載の装置。
【請求項13】
前記保持セクションは、電荷を帯びた娘放射性核種(16)を生成するのに十分な時間、前記放射性ガスを収集することができる、
請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記電極(6)は、液体(7A)内、液体(7A)の近傍、又は液体(7A)の背後に設けられている、
請求項5に記載の装置。
【請求項15】
前記収集容器(3)又は前記保持セクションは、ガス出口(11)を含む、
請求項12に記載の装置。
【国際調査報告】