IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ディー.エム.エスの特許一覧

特表2024-531949コークス形成を伴わない固体炭化水素原料の触媒分解によりエネルギー生成物を生成する為の方法及び装置
<>
  • 特表-コークス形成を伴わない固体炭化水素原料の触媒分解によりエネルギー生成物を生成する為の方法及び装置 図1
  • 特表-コークス形成を伴わない固体炭化水素原料の触媒分解によりエネルギー生成物を生成する為の方法及び装置 図2
  • 特表-コークス形成を伴わない固体炭化水素原料の触媒分解によりエネルギー生成物を生成する為の方法及び装置 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-03
(54)【発明の名称】コークス形成を伴わない固体炭化水素原料の触媒分解によりエネルギー生成物を生成する為の方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   C10G 3/00 20060101AFI20240827BHJP
   C10G 1/10 20060101ALI20240827BHJP
   B09B 3/40 20220101ALI20240827BHJP
   B01J 21/16 20060101ALN20240827BHJP
   B09B 101/85 20220101ALN20240827BHJP
【FI】
C10G3/00 Z
C10G1/10
B09B3/40 ZAB
B01J21/16 Z
B09B101:85
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024508425
(86)(22)【出願日】2022-08-12
(85)【翻訳文提出日】2024-04-05
(86)【国際出願番号】 EP2022072668
(87)【国際公開番号】W WO2023017150
(87)【国際公開日】2023-02-16
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524052734
【氏名又は名称】ディー.エム.エス
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】デゥモンス,ピエール
【テーマコード(参考)】
4D004
4G169
4H129
【Fターム(参考)】
4D004AA02
4D004AA12
4D004BA03
4D004CA25
4D004CB01
4D004CC09
4D004CC11
4D004CC15
4D004DA02
4D004DA03
4D004DA06
4D004DA07
4G169AA02
4G169BA15B
4G169CA04
4G169CA10
4H129AA01
4H129BA03
4H129BA04
4H129BA08
4H129BB04
4H129BC07
4H129BC09
4H129BC13
4H129BC14
4H129KA02
4H129KC04Y
4H129KC13Y
4H129KC28Y
4H129NA23
(57)【要約】
【要約】 本発明は、コークス、ダイオキシン、及び/又はフランの形成を伴わずに破砕固形物を低温で触媒分解することにより少なくとも一つのエネルギー生成物(10)を生成する為の方法に関しており、触媒分解に対して不活性である、分解油(2)と呼ばれる第1油と、少なくとも一つの炭化水素化合物を内含する破砕固形物と、少なくとも一つの分解触媒と、少なくとも一つのアルカリ化合物とを内含して分解分散体と呼ばれる組成物の流れが、分解分散体の破砕固形物の少なくとも一つの炭化水素化合物を触媒分解することにより少なくとも一つの気体エネルギー生成物(10)が生成されるように選択される250℃と350℃の間であって分解温度と呼ばれる温度に調整され、分解温度での分解分散体の流れは、大気圧より低い、分解圧と呼ばれる圧力の気体雰囲気(14)との接触状態で気密性の分解反応器(120)に投入される方法であって、分解反応器(120)の気体雰囲気(14)と、膨張気体状態から凝縮液体状態への状態変化によって形成される真空圧と、熱化学的真空ポンプ(130)での分解圧での凝縮油(12)の蒸発温度より高い温度で還流され、凝縮油(12)と呼ばれる第2不活性油とを発生させる、熱化学的真空ポンプ(130)と呼ばれる装置の気体雰囲気との間での気体交換連通を通して、気体雰囲気(14)は分解圧に維持されて、膨張気体状態から凝縮液体状態への凝縮油(12)の状態変化は、分解反応器(120)の気体雰囲気(14)との気体交換連通状態において熱化学的真空ポンプ(130)で生じ、凝縮油(12)は、その状態変化温度が分解圧での分解温度のレベルであるように選択されることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コークス、ダイオキシン、及び/又はフランの形成を伴わずに破砕固形物(1)を低温で触媒分解することにより、短鎖アルカン燃料、アルケン、二水素ガス、及び二酸化炭素で形成されるグループから選択される少なくとも一つの有価生成物(10)を生成する為の方法であって、
触媒分解に対して不活性である、分解油(2)と呼ばれる第1油と、
少なくとも一つの炭化水素化合物(13)を含む破砕固形物(1)と、
少なくとも一つの触媒分解用触媒(7)と、
少なくとも一つのアルカリ化合物(8)と、
を内含するいわゆる分解分散組成物(6)の流れが、前記分解分散体(6)の前記破砕固形物(1)の少なくとも一つの炭化水素化合物(13)を触媒分解することにより少なくとも一つの気体有価生成物(10)が生成され得るように選択される250℃~300℃の、分解温度と呼ばれる温度に調整され、
前記分解温度での前記分解分散体(6)の前記流れは、大気圧を下回る、分解圧と呼ばれる圧力の気体雰囲気(14)との接触状態で気密性の分解反応器(120)へ投入され、
前記分解反応器(120)の前記気体雰囲気(14)と、膨張気体状態から凝縮液体状態への状態変化によって形成される低圧と熱化学的真空ポンプ(130)において前記分解圧での凝縮油(12)の蒸発温度を上回る温度で還流され、凝縮油(12)と呼ばれる第2不活性油とを発生させる、前記熱化学的真空ポンプ(130)と呼ばれる装置の気体雰囲気との間での気体交換連通を通して、前記気体雰囲気(14)は前記分解圧に維持され、前記膨張気体状態から前記凝縮液体状態への前記凝縮油(12)の前記状態変化は、前記分解反応器(120)の前記気体雰囲気(14)との気体交換連通状態にある前記熱化学的真空ポンプ(130)で生じ、
前記凝縮油(12)は、その状態変化温度が前記分解圧での前記分解温度のレベルであるように選択される、
方法。
【請求項2】
前記分解圧は、最高で100hPaに等しい、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記膨張気体状態から前記凝縮液体状態への前記凝縮油(12)の前記状態変化は、前記熱化学的真空ポンプ(130)の管形部材(146)の下方のいわゆる凝縮区画(162)で開始され、
前記管形部材(146)は、前記分解により前記分解反応器(120)で形成される前記有価生成物(10)を分別凝縮装置(131)へ誘導することを可能にし、
前記凝縮区画(162)は、前記分解反応器(120)の前記気体雰囲気との気体流通状態にあり、
前記凝縮区画(162)は、前記気体状態の前記凝縮油(12)の流れを受容し、前記気体状態での前記凝縮油(12)の前記温度を前記分解圧での前記凝縮油(12)の前記凝縮温度を下回る温度まで低下させ、前記膨張気体状態から前記凝縮液体状態への前記凝縮油(12)の前記流れの凝縮を可能にし、かかる凝縮により前記低圧を発生させるのに適応している、
請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記凝縮油(12)との熱交換と、前記膨張気体状態から前記凝縮液体状態への前記凝縮油(12)の前記状態変化とを可能にするとともに、
前記凝縮区画(162)と前記管形部材(146)の上部との間での圧力差を圧力損失により維持する、
のに適応した、前記凝縮区画(162)の上に位置するとともに金属メッシュ(150)を含む多孔部材を含む前記管形部材(146)の中間下方のいわゆる圧力損失区画(149)において、前記膨張気体状態から前記凝縮液体状態への前記凝縮油(12)の前記状態変化が継続する、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
触媒分解中に、前記熱化学的真空ポンプ(130)の下部を形成する加熱部材のボイラ(147)と呼ばれる容器において、前記分解圧での前記凝縮油(12)の前記蒸発温度をほぼ上回らない温度まで前記凝縮油(12)が加熱される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記触媒分解の準備ステップ(170)中に、
前記分解反応器(120)において前記分解油(2)の槽が前記分解温度まで加熱され、
前記分解反応器(120)と前記熱化学的ポンプ(130)とに共通する前記気体雰囲気(14)を機械的吸引ポンプ(115)によって圧送(174)することにより、前記気体雰囲気(14)が前記分解圧を下回るいわゆる開始圧に調整され、
前記ボイラ(147)において、前記開始圧での前記凝縮油(12)の前記蒸発温度を下回り、かつ前記蒸発温度に近い温度まで前記凝縮油(12)の槽が予熱され、そして、
前記分解反応器(120)及び前記熱化学的真空ポンプ(130)の前記気体雰囲気(14)の前記開始圧での機械的圧送(174)が中断され、
前記ボイラ(147)において前記分解圧での前記凝縮油(12)の前記蒸発温度を上回るが前記蒸発温度に近い温度まで前記凝縮油(12)が加熱され、それによって、前記凝縮油(12)の蒸気が前記凝縮区画で上昇して前記圧力損失区画(149)において前記凝縮区画(162)との接触状態で凝縮し、それによって、前記温度は一定となり、前記分解温度の前記レベルでの前記温度の連続性により前記分解反応器の前記気体雰囲気を前記分解圧の前記レベルに維持する連続的蒸発/凝縮レジームが確立され、
前記触媒分解の開始ステップ(173)中に、前記分解分散体(6)が前記分解圧での前記分解温度まで加熱されて維持されるように、前記分解分散体(6)の流れと高温の再生利用分解油の流れとが前記反応器(120)へ導入されて前記分解反応器(120)の共通箇所で混合され、それによって、前記分解圧での前記気体雰囲気(14)で前記気体状態の有価生成物(10)が形成される、
請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記触媒分解により生成される気体状態の前記有価生成物(10)は、前記管形部材(146)の上方のいわゆる熱タッピング区画(163)へ、そして前記液体状態の前記燃料(11)の流れを前記熱化学的真空ポンプ(130)の上部へ導入することにより誘発される熱タッピングの作用により分別凝縮装置(131)へ投入され、前記液体状態の前記燃料(11)は、前記圧力損失区画(149)の方向に前記熱タッピング区画(163)を下降するにつれて蒸発し、
こうして蒸発した前記燃料(11)は、前記分解により生成された前記気体状態の前記有価生成物(10)の前記温度を下回る温度であり、
蒸発した前記燃料(11)の前記流れは、前記分別凝縮装置(131)への前記気体状態の有価生成物(10)の前記流れの熱タッピングにより上昇を可能にする、
請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
蒸発した前記燃料(11)の前記流れは、前記触媒分解により生成される前記気体状態の前記有価生成物(10)との接触状態で加熱され、前記熱化学的真空ポンプ(130)及び前記分別凝縮装置(131)で再生利用される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記分解分散体(6)の流れと、前記分解圧での前記固形物(1)の各炭化水素化合物(13)の前記分解温度を上回る温度まで予め加熱された前記分解油(2)の流れとを混合することにより、前記分解分散体(6)は前記分解反応器(120)で加熱され、コークス、ダイオキシン、及び/又はフランの形成を伴わずに前記分解分散体(6)が前記分解温度に達するように前記混合は行われる、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記触媒分解中に前記分解分散体(6)は超音波による処理を受ける、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記液体状態の燃料(11)の形成に適した条件において、前記触媒分解により形成される前記気体状態の少なくとも一つの有価生成物(10)の凝縮が行われる、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
浸透作用により、あるいは他の何らかの適切な手段により、前記凝縮による残留気体生成物から二酸化炭素が抽出される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
コークス、ダイオキシン、及び/又はフランの形成を伴わない破砕固形物(1)の低温での触媒分解の為の装置(100)であって、
前記触媒分解に対して不活性である、分解油(2)と呼ばれる第1油と、
少なくとも一つの炭化水素合成物(13)を含む破砕固形物(1)と、
少なくとも一つの触媒分解用触媒(7)と、
少なくとも一つのアルカリ化合物(8)と、
を含むいわゆる分解分散組成物(6)の流れを、前記分解分散体(6)の前記破砕固形物(1)の少なくとも一つの炭化水素化合物(13)の前記触媒分解による気体状態の少なくとも一つの有価生成物(10)の生成を可能にするように選択される250℃~300℃のいわゆる分解温度で加熱するとともに、
前記分解反応器(120)において前記分解分散体(6)を気体雰囲気(14)との接触状態に維持する、
のに適応した気密性の分解反応器(120)を含む、装置(100)であり、
この分解装置(100)は、それが大気圧を下回るいわゆる分解圧に前記気体雰囲気(14)を維持するのに適応した手段を含むとともに、
それが前記分解反応器(120)の前記気体雰囲気(14)との気体交換連通状態にあるいわゆる熱化学的真空ポンプ装置(130)を含み、
前記熱化学的真空ポンプ(130)は、前記膨張気体状態から前記凝縮液体状態への第2の不活性のいわゆる凝縮油(12)の状態変化を可能にし、前記凝縮油(12)は前記分解圧での前記凝縮油(12)の蒸発温度を上回る温度まで加熱されるとともに、この状態変化により生じる低圧により前記分解反応器(120)の前記気体雰囲気(14)を前記分解圧に維持するのに適応しており、
前記凝縮油(12)は、その状態変化温度が前記分解圧での前記分解温度のレベルであるように選択される、
装置。
【請求項14】
前記熱化学的真空ポンプ(130)は、
前記凝縮油(12)を前記蒸発温度まで加熱するのに適応した、前記凝縮油(12)を加熱する為のいわゆるボイラ部材(147)と、
前記分解により前記分解反応器(120)に形成される気体状態の有価生成物(10)を分別凝縮装置(131)へ誘導する為の管形部材(146)であって、前記管形部材(146)は、前記加熱部材(147)の上に位置して前記加熱部材(147)へ吐出を行ない、
前記分解反応器(120)の気体雰囲気と気体流体連通状態にあって、気体状態にある前記凝縮油(12)の流れを受容して前記分解圧での前記凝縮油(12)の前記蒸発温度を下回る温度まで温度を低下させ、前記膨張気体状態から前記凝縮液体状態への前記凝縮油(12)の前記流れの凝縮を可能にし、前記分解反応器(120)の前記気体雰囲気の前記圧力を前記分解圧に維持するのに適応した下方のいわゆる凝縮区画(162)と、
前記凝縮区画(162)の上に位置して、前記膨張気体状態から前記凝縮液体状態への前記凝縮油(12)の前記状態変化を完了するのに適応した金属メッシュ(150)を含む多孔部材を備える中間のいわゆる圧力損失区画(149)と、
を形成する管形部材(146)と、
を含み、
前記凝縮区画(162)は、前記圧力損失区画(149)と、前記分解反応器(120)及び前記熱化学的真空ポンプ(130)の共通の前記気体雰囲気(14)との気体交換連通状態にある、
請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記分別凝縮装置(131)は、前記気体状態での少なくとも一つの有価生成物(10)の蒸留/凝縮とそれの液体燃料(11)への転換の為の装置(131)である、請求項13又は14に記載の装置。
【請求項16】
前記管形部材(146)は、前記圧力損失区画(149)から下向きに延在して、前記気体状態の前記有価生成物(10)を前記分別凝縮装置(131)へ投入するのに適応した上方のいわゆる熱タッピング区画(163)を形成し、
前記熱タッピング区画(163)は、前記管形部材(146)での熱タッピングを強化することにより前記気体状態での前記有価生成物(10)の上昇と、前記分別凝縮装置(131)へのこれらの有価生成物(10)の導入とを可能にする前記熱タッピング区画(163)での液体状態の有価生成物(11)の流れの為の入口(154)を、上部(151)に備える、
請求項15に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コークス、ダイオキシン、及び/又はフランの形成を伴わずに、少なくとも一つの炭化水素化合物を含む破砕状態の固形物―特に廃棄物―を低温で触媒分解することによりエネルギー生成物を生成する為の方法及び装置に関する。
【0002】
この種の方法及びこの種の装置は、
アルカンの合成に使用可能な二酸化炭素(CO)、及び/又は、
再生可能バイオマス及び/又は廃棄物の分解から得られる時には「グリーン」二水素(H)として分類される二水素(H)ガス、及び/又は、
合成ポリマー(例えば、PE,PVC,PP,PET,PMMA)の生成での使用に適応しているが、二水素(H)ガスと反応して燃料などのエネルギー生成物を形成することも可能である不飽和炭化水素―特にアルケンなど再生利用される直線炭素鎖を含む炭化水素、及び/又は、
ガソリンエンジン又はディーゼルエンジン又はターボジェット又はターボコンプレッサの燃料として使用可能な―1個(CH)と18個(C1838)の間の数の炭素原子を含有する―「ディーゼル」又は「軽油」、「ガソリン」又は「灯油」として知られる短鎖飽和炭化水素(アルカン)などのエネルギー生成物、
などのエネルギー生成物の生成を可能にするのに適応している。
【0003】
ゆえに本発明は特に、少なくとも一つの炭化水素化合物を含有する固形物―特に廃棄物と考えられるこの種の原料―の変換を可能にするとともに、付加価値の高い有価生成物の形で、特に燃料、二水素及び/又は二酸化炭素及び/又は不飽和炭化水素などのエネルギー生成物の形で固形物に価値を付与するこの種の方法及びこの種の装置に関する。この種の原料及びこの種の廃棄物は、バイオマス、石油誘導体、及び/又は、「プラスチック」原料としても知られる合成ポリマー原料などこれらの廃棄物を含有し得る。この種の原料及びこの種の廃棄物は、一般廃棄物の不活性画分を含有し得る。この種の原料及びこの種の廃棄物は、特に一般廃棄物の選択的分類作業の結果として生じ得る。
【0004】
本文を通して、
「分解」の語は、炭化水素化合物より低い分子量の炭化水素に炭化水素化合物を転換する熱反応を指し、原子間共有結合の破断を含意する。
「炭化水素原料」の表現は、少なくとも一つの炭化水素化合物、すなわち炭素原子と水素原子とでほぼ形成される少なくとも一つの化合物を含む原料を指す。これは炭化水素化合物のみで形成される原料であり得る。また、少なくとも一つの炭化水素化合物と、炭素及び水素を含まない少なくとも一つの化合物とを含む原料であり得る。この種の炭化水素原料は、例えば酸素(O)、窒素(N)、リン(P)、硫黄(S)、少なくとも一つのハロゲン(Cl,Br,F,I)等のような少なくとも一つのヘテロ原子を含む少なくとも一つの炭化水素化合物を含み得る。この種の「炭化水素原料」はバイオマスを含む原料であり得る。この種の炭化水素化合物は、バイオマス及び/又は石油誘導体及び/又はこれらの廃棄物を含み得る。
「廃棄物」の語は、除去又は貯蔵の為の適切な再処理の対象であり得る原料の未使用部を指す。例えば、産業廃棄物、農業廃棄物―植物の無価値部分―、又は一般廃棄物であり得る。
【背景技術】
【0005】
特許文献1には、炭化水素を含有する原料を250℃~360℃の温度において真空内で触媒分解する為の方法及び装置が記載されている。特許文献1では、真空ポンプによって真空が発生する。気体状態の化合物が連続的に生成される分解反応器の雰囲気を被制御真空状態に維持する際には問題が生じる。これは技術的に複雑であって経済的に必ずしも実行可能ではない。
【0006】
本発明は、この欠点を軽減することを目的としている。
【0007】
それゆえ本発明は、触媒分解中に低圧制御の促進を可能にする、低温及び低圧での触媒分解の為の方法及び装置を提案することを目的としている。
【0008】
コークス、ダイオキシン、及び/又はフランの形成を伴わない固体炭化水素原料の触媒分解により燃料を生成する為の方法及び装置は、特許文献2からも周知である。特許文献2には、固形物の少なくとも一つの炭化水素化合物の分解温度を上回るが、伝導型加熱装置の金属壁、特に鉄又はニッケルを含んで400℃以上の温度まで加熱される金属壁との接触状態、あるいは金属壁にコークスが既に形成されている時には360℃以上の温度まで加熱される金属壁との接触状態で形成される傾向にある不要な炭素副産物であるコークスの形成温度より低い温度で、分解に関して不活性である油における少なくとも一つの炭化水素化合物と分解触媒とアルカリ化合物とを含む破砕状態の固形物の分散体を加熱し、伝導型加熱装置の金属壁との接触状態でのコークスの形成は熱伝導を減少させて加熱装置を急速に作動不能にすることが記載されている。
【0009】
分解分散体が分解温度に達するように400℃より高い温度まで又は360℃より高い温度まで必然的に加熱される伝導型加熱装置の金属壁との接触状態に分解分散体を置くことによる分解分散体の加熱を防止する為に、特許文献2は、各炭化水素化合物の分解温度を下回り、かつコークス形成温度を下回る温度で、準備した一定量のこの分解分散体を、破砕状態の固形物を実質的に含まない一定量の不活性油及び触媒と混合することにより分解分散体を加熱して、形成された混合物が少なくとも分解温度に等しくコークス形成温度を下回る温度に達するように分解温度より高い温度まで不活性液体が加熱されることを提案している。
【0010】
特許文献2による方法によって、コークス形成問題が解決される。
【0011】
そういうわけで、分解反応の効率を向上させて膨大な量の再生可能な有価生成物を得る為の工業的解決法が必要とされている。特に、コークス、ダイオキシン、及び/又はフランの形成を伴わずに、低温熱化学経路により、炭化水素化合物又はその廃棄物を含む固形物をこのような有価生成物、特に二酸化炭素、エネルギー生成物、及び/又は二水素に変換することを可能にする為の解決法が必要とされている。特に、同等の化石起源生成物の生成コストに匹敵する生成コストを有して、周知の廃棄物処理による温室効果ガス排出抑制によってこのような排出物の大幅な削減を可能にする生成が行われる、この種の有価生成物を得る為のこの種の解決法が期待される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】独国特許出願公告第10210060675号明細書
【特許文献2】国際公開第2018/127438号
【特許文献3】欧州特許第0563173号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ゆえに本発明は、工業規模での作業を可能にするのに充分なほど実装及び使用において簡単かつ確実である、少なくとも一つの炭化水素化合物を含む固形物の低温での触媒分解により有価生成物を生成する為の方法及び装置を提案することを目的とする。
【0014】
本発明は特に、コークス、ダイオキシン、及び/又はフランの形成の防止を可能にするこの種の方法及びこの種の装置を提案することを目的とする。
【0015】
本発明は特に、少なくとも部分的に自動化され得るこの種の方法及びこの種の装置を提案することを目的とする。
【0016】
それゆえ本発明は、工業規模での生成に匹敵する効率での有価生成物の生成を可能にするこの種の方法及びこの種の装置を提案することを目的とする。
【0017】
本発明はまた、必要なエネルギー入力が最適化されて、これらの有価生成物―特に二酸化炭素、不飽和炭化水素、燃料、及び/又は二水素などのエネルギー生成物の生成の全体的なエネルギーバランスが最適化されるこの種の方法及びこの種の装置を提案することを目的とする。
【0018】
本発明はまた、少なくとも一つの炭化水素化合物を含む廃棄物などの固形物、特にバイオマス及び/又は石油誘導体及び/又は石油誘導体などの廃棄物を含む固形物を、破砕状態の固形物の低温での触媒分解による分解の結果生じるような有価生成物に実質的に完全に変換することを可能にし、触媒分解による分解の直後に、そしてバイオマス、二水素(H)及び/又は二酸化炭素(CO)の分解と燃料のアルカン構成要素へのアルケンの水素化によりアルケンへの分解生成物の再合成が行われる、この種の方法及びこの種の装置を提案することを目的とする。本発明は特に、経済的に許容可能な製造コストでアルカン燃料の合成において試薬として使用され得る二酸化炭素(CO)の製造を可能にするこの種の方法及びこの種の装置を提案することを目的とする。本発明は特に、製造コストが経済的に許容可能である燃料アルカンの合成で試薬として使用され得る二酸化炭素の生成を可能にするこの種の方法及びこの種の装置を提案することを目的とする。本発明は特に、大気中二酸化炭素の抽出の代替案であるこの種の方法及びこの種の装置を提案することを目的とする。
【0019】
本発明は、このような有価生成物の連続的な、すなわち装填中断を伴わない短い時間周期での生成を可能にするこの種の方法及びこの種の装置を提案することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
これを目的として、本発明は、少なくとも一つの有価生成物、特に、コークス、ダイオキシン、及び/又はフランの形成を伴わずに破砕固形物―特に廃棄物―を低温で触媒分解することにより、燃料(アルカン)、アルケン、二水素(H)ガス、及び二酸化炭素(CO)などのエネルギー生成物で形成されるグループから選択される少なくとも一つの有価生成物を生成する為の方法に関しており、
触媒分解に対して不活性であって分解油と呼ばれる第1油、すなわち触媒分解中に構造的な化学的変性が生じず触媒分解中に液体状態に維持されるように選択される油と、
少なくとも一つの炭化水素化合物を含む破砕固形物、特にバイオマス及び/又は石油誘導体及び/又はこれらの廃棄物と、
少なくとも一つの触媒分解用触媒、特に分割状態の固体触媒と、
少なくとも一つのアルカリ化合物と、
を内含するいわゆる分解分散組成物の流れが、分解分散体の破砕固形物の少なくとも一つの炭化水素化合物を触媒分解することにより少なくとも一つの気体有価生成物、特に少なくとも一つのエネルギー生成物の生成を可能にするように選択される250℃~300℃、好ましくは260℃~280℃の分解温度と呼ばれる温度に調整され、この分解温度での分解分散体の流れが、大気圧を下回るいわゆる分解圧の気体雰囲気との接触状態で気密性の分解反応器に投入される。
【0021】
本発明によるこの種の方法では、低温での触媒分解により、破砕状態の固形物の少なくとも一つの炭化水素化合物を、炭化水素化合物の分子量より小さい分子量を有する有価生成物に変換する。特に、この種の炭化水素化合物は、分解温度がコークス、ダイオキシン、及び/又はフランの形成温度を下回る時に、コークス、ダイオキシン、及び/又はフランの形成を伴わずに、アルカン及びアルケン、二水素(H)ガス、及び二酸化炭素(CO)で形成されるグループから特に選択される有価生成物に変換される。
【0022】
破砕状態の固形物―特に、バイオマス及び/又は石油由来のポリマー化合物及び/又はこのようなポリマー化合物の廃棄物を含む破砕状態の固形物の分解は、瞬時にアルケンの再合成を引き起こし、バイオマスと二酸化炭素と二水素との分解の後に、コークス、ダイオキシン、及び/又はフランの形成を伴わずに、燃料を形成するアルカンへのアルケンの水素化が生じる。
【0023】
開始原料―廃棄物―の選択と炭化水素化合物についてのその組成とに応じて、少なくとも一つの炭化水素化合物が、不飽和炭化水素及び二水素(H)ガスなどの有価生成物に変換される。特に、バイオマスを含む原料の触媒分解により、該当する場合には二水素(H)とともに二酸化炭素(CO)が形成される。そして開始原料の選択と組成とに応じて、燃料を構成する飽和炭化水素への不飽和炭化水素又はアルケンの水素化の為に、主として二水素(H)ガス及び二酸化端素の最終生成に触媒分解を順応させることが可能である。
【0024】
分解分散体とこの分解分散体の上方の気体雰囲気との間に延在する界面において分解の開始により形成される固体/液体/分解気体の三状態による膨張泡状体の少なくとも一部について―特にほとんどについて―反応の開始後に触媒分解反応が発生することに発明者は気付いた。特にコークス、ダイオキシン、及び/又はフランの形成を伴わずに触媒分解を促進するにはこの気体雰囲気を低圧に維持することが有利であると判断された。分解中に形成されるこの三状態の泡状体は、破砕状態の固形物、触媒、アルカリ化合物などの固体と、本質的には分解油の形の液体と、触媒分解により形成される気体組成物とから成り、特に短鎖炭化水素、二酸化炭素(CO)、水蒸気、二水素(H)ガスを含む。この種の触媒分解は、分解圧として知られる低圧の気体雰囲気で得られ、分解触媒の存在下で気体状態の有価生成物への炭化水素化合物の破砕及び解離に必要なエネルギー量を減少させるとともに、大気圧での同じ炭化水素化合物の分解温度を下回る分解温度でこの分解を達成する。それゆえこの種の触媒分解は、低圧で、そしてコークス、ダイオキシン、及び/又はフランの形成温度を下回る温度で行われる。
【0025】
さらに、少なくとも一部が脱気による脱酸素を受ける前に分解分散体自体が受ける大気圧を下回る分解圧は、分解分散体の上方の気体雰囲気に酸素分圧が限定されることを可能にするとともに、触媒分解により形成される二水素(H)ガスの被制御発熱燃焼の制限又は完全な抑制と、続いてこの燃焼による水蒸気の生成と、この二水素(H)ガスの被制御発熱燃焼による分解分散体の被制御加熱とを可能にする。
【0026】
本発明によれば、分解圧での分解分散体の各炭化水素化合物の分解温度より蒸発温度がはるかに高くなるように、分解油が選択される。それゆえこの分解油は触媒分解に関して不活性であり、また触媒分解中に液体状態に保たれる。
【0027】
幾つかの実施形態において、分解圧は最高で100hPaに等しく、特に最高で60hPaに等しく、好ましくは30hPa~50hPaであって、コークス、ダイオキシン、及び/又はフランの形成を伴わずに少なくとも一つの―特に各々の―炭化水素化合物の低温での触媒分解を可能にする。
【0028】
本発明によれば、分解反応器の気体雰囲気と、凝縮油として知られる第2不活性油の―膨張気体状態から凝縮液体状態への―状態変化により低圧を発生させる一次凝縮器又は熱化学的真空ポンプと称される装置の気体雰囲気との間での気体交換連通により、気体雰囲気が分解圧に維持され、熱化学的真空ポンプにおいて分解圧での凝縮油の蒸発温度を上回る温度まで還流が加熱され、分解反応器の気体雰囲気との気体交換連通状態にある熱化学的真空ポンプで膨張気体状態から凝縮液体状態への状態変化が生じ、
状態変化温度が分解圧での分解温度のレベルになるように凝縮油が選択される。
【0029】
圧力が分解圧のレベルであって触媒分解により形成される各有価生成物の(分解圧での)凝縮温度を上回る時に分解温度のレベルの状態変化温度となるように、凝縮油が選択される。
【0030】
本発明によれば、低温での触媒分解の開始前に、何らかの圧送手段により、例えば機械的ポンプ(真空ポンプ)によって、分解反応器と熱化学的真空ポンプとの共通気体雰囲気が、分解圧を下回るいわゆる開始圧に調整される。そして、分解の開始後に、分解反応器と熱化学的真空ポンプとの共通雰囲気が熱化学的真空ポンプによって低圧に維持される。
【0031】
本発明によれば、分解反応器の雰囲気を分解圧に維持する為に必要なエネルギー入力が最適化され、これらの有価生成物の生成の全体的エネルギーバランスも最適化される。
【0032】
凝縮油は触媒分解に関して不活性である、すなわち、状態変化に固有の温度及び圧力条件に置かれて気体状態の有価生成物との接触状態にある時にいかなる化学的変性も受けない。
【0033】
分解反応器の気体雰囲気との気体交換連通状態にある熱化学的真空ポンプにおいて、凝縮油の凝縮液体状態から膨張気体状態への状態変化(蒸発)は、ボイラとして知られる容器での凝縮油の還流加熱により生じ、加熱部材は、熱化学的真空ポンプの下部を形成して、分解圧での凝縮油の蒸発温度を上回る(わずかに上回る)温度である。
【0034】
本発明によれば、膨張気体状態から凝縮液体状態への凝縮油の状態変化は、熱化学的真空ポンプの管形部材の下方のいわゆる凝縮区画で開始され、管形部材は、分解により分解反応器で形成される有価生成物を分別凝縮装置へ誘導することを可能にし、
凝縮区画は分解反応器の気体雰囲気との気体流通状態にあり、
凝縮区画は、気体状態の凝縮油の流れを受容すること、気体状態の凝縮油の温度を分解圧での凝縮油の凝縮温度を下回る温度まで低下させ、膨張気体状態から凝縮液体状態への凝縮油の流れの凝縮を可能にし、この凝縮により低圧を発生させるのに適応している。
【0035】
膨張気体状態から凝縮液体状態への凝縮油の状態変化は、分解反応器の気体雰囲気との気体流通状態にある凝縮区画の雰囲気で誘発される。この状態変化は、凝縮区画で凝縮油の蒸気を冷却することにより生じる。この状態変化は、触媒分解により形成される気体状態の有価生成物の生成により分解反応器で形成される圧力の上昇を相殺する低圧を、熱化学的真空ポンプの雰囲気と分解反応器の気体雰囲気とで発生させる。(凝縮油と分解から得られる有価生成物との)蒸気の温度は、それぞれの加熱により一定に維持され、凝縮油の状態変化圧力の上下と分解圧の上下での圧力の変動は、この変動を妨害する凝縮油の凝縮の強化又は停止を招く。
【0036】
分解反応器での分解圧の確立後に、(例えば有価生成物の生成増加による)分解反応器の雰囲気での圧力上昇は、熱化学的真空ポンプにおける膨張気体状態から凝縮液体状態への凝縮油の凝縮と、この増加を相殺する圧力の低下とを促進する。逆に、(例えば有価生成物の生成減少による)分解反応器の雰囲気の圧力低下は、熱化学的真空ポンプにおける凝縮液体状態から膨張気体状態への凝縮油の蒸発と、この低下を相殺する圧力上昇とを促進する。熱化学的真空ポンプの雰囲気と分解反応器の雰囲気との圧力は、分解圧のレベルで安定化する。この熱化学的真空ポンプは、分解反応器の雰囲気の安定的な減圧を維持する為のポンプとして作用する。
【0037】
発明者は、熱化学的真空ポンプによって分解中に分解分散体との接触状態にある気体雰囲気を、低圧―すなわち大気圧を下回る圧力、特に最高で100hPaに等しい、特に最高で60hPaに等しい、好ましくは30hPa~50hPaの圧力―に維持することが可能かつ有利であると判断した。この熱化学的真空ポンプでは、(分解圧での)凝縮油の蒸発温度をわずかに上回る温度での膨張気体状態と、凝縮区画での凝縮油の蒸発温度をわずかに下回る温度での凝縮液体状態との間での連続的な動的状態変化を凝縮油が分解圧において受ける。ボイラ及び分解反応器の調節可能加熱手段により分解温度のレベルに温度が維持されるとすぐに、分解圧のレベルで圧力が安定化する。凝縮区画及び分解反応器の雰囲気での分解圧に対する圧力の増加は、蒸気の生成を中断して圧力を降下させる傾向がある。凝縮区画及び分解反応器の雰囲気での分解圧に対する圧力の低下は、蒸気の生成を促進して圧力を上昇させる傾向がある。
【0038】
凝縮区画は熱化学的真空ポンプの管形部材の下部を構成し、管形部材は、分解により反応器に形成される有価生成物を、炭化水素の選択的凝縮と、該当する場合には二酸化炭素及び二水素ガスの浸透作用による分離とを可能にするのに適応した分別凝縮装置に誘導することを可能にする。凝縮区画は凝縮反応器の気体雰囲気との気体流通状態にあり、気体状態の凝縮油の流れを受容し、気体状態の凝縮油の温度を凝縮圧での凝縮油の凝縮温度を下回る温度まで低下させ、膨張気体状態から凝縮液体状態への凝縮油の流れの凝縮を可能にし、この凝縮により低圧を発生させ、そして凝縮液体状態の凝縮油をボイラに戻すことを可能にするのに適応している。凝縮区画でのこの凝縮により、分解反応器の気体雰囲気は分解圧を下回る圧力に維持される。
【0039】
幾つかの実施形態では、凝縮区画の上に位置して、
凝縮油との熱交換と、膨張気体状態から凝縮液体状態への凝縮油の状態変化とを可能にして、
圧力損失(水頭損失)により、凝縮区画と管形部材の上部との間の圧力差を動的に維持する、
のに適応した金属メッシュを含む多孔部材を含む管形部材の中間のいわゆる圧力損失区画の下部において、膨張気体状態から凝縮液体状態への凝縮油の状態変化が継続する。
【0040】
圧力損失区画は、凝縮区画と、圧力損失区画の上方に延在する管形部材の上部との間の圧力差を動的に維持するのに適応している。
【0041】
発明者は、分解圧での蒸発温度より(わずかに)高い温度での油の還流の被制御凝縮加熱の後に、膨張気体状態と凝縮液体状態との間での凝縮油の連続的な状態変化が起こり、この連続的状態変化が熱化学的真空ポンプでの凝縮油の蒸発/凝縮の連続的な動的レジームの誘起を可能にすると判断した。この動的レジームでは、分解から生じる気体状態の有価生成物と凝縮油の蒸気との混合により形成される上昇流が瞬時に充満する真空空間が生まれる。凝縮区画での凝縮後に凝縮油はボイラへ落下して、分解蒸気は気体状態の有価生成物で形成され、単位体積質量が大きい上昇流に抗して下降することは不可能であり、上向流により加えられる動圧の作用により凝縮区画の上部と圧力損失区画の底部とに凝縮油が蓄積する。
【0042】
これらの実施形態において、―特に高密度の金属メッシュにより形成される―多孔部材は、圧力損失を発生させ、凝縮区画と上方にある管形部材のいわゆる熱タッピング区画との間での動圧差の維持を可能にする部材である。
【0043】
幾つかの実施形態において、膨張気体状態から凝縮液体状態への状態変化は圧力損失区画で完了する。これらの実施形態で、圧力損失区画の多孔部材―特に高密度金属メッシュ―は、凝縮区画で開始されて圧力損失区画の金属メッシュとの接触状態で完了する膨張気体状態から凝縮液体状態への凝縮油の状態変化を促進するように凝縮油との熱交換を促進して、分解反応器での低圧を維持させるのに適応している。
【0044】
幾つかの実施形態では、膨張気体状態から凝縮液体状態への凝縮油の流れの凝縮の完了を可能にする外周保冷シースが圧力損失区画に設けられ得る。
【0045】
凝縮油の還流加熱は、凝縮区画への膨張気体状態の凝縮油の流れを形成してこの膨張気体状態の凝縮油の流れを凝縮区画で凝縮させることと、凝縮油の動的凝縮相を一定時間維持して、凝縮区画と圧力損失区画の少なくとも下部で維持される低圧を発生させることとを可能にする。ここで、分解により形成されて凝縮区画で案内される気体状態の有価生成物が、蒸発した凝縮油の単位体積質量より小さい単位体積質量を有して、必然的に変位して蓄積するとともに凝縮油の凝縮の結果生じた動的媒体の上方に沈滞すると発明者は判断した。圧力損失区画により発生される圧力損失は、圧力損失区画、特にその上部での多孔部材―特に高密度金属メッシュ―において気体状態の有価生成物のこの沈滞とこの蓄積とを強化する。この沈降とこの蓄積とは、管形部材の上部と凝縮区画との間の圧力差を維持する或る種の障壁を動的に形成して、凝縮油の動的凝縮相は分解反応器の気体雰囲気を低圧に維持することを継続的に可能にする。
【0046】
この動圧の作用により、気体状態の有価生成物は多孔部材と金属メッシュとの間の下方接点に最大圧ゾーンを形成し、多孔部材の上部と重ねられた熱タッピング区画とにおける低圧の管理によりこのゾーンから有価生成物が抽出される。
【0047】
気体状態での有価生成物の循環を完全に中断することなく、最大圧ゾーンでの気体状態の有価生成物の圧力損失と蓄積とは、分解圧の妨害を防止する種類の反応器の閉止と同等になるのに充分な動的障壁を構成する。それゆえ、分解反応器の機能を妨害することなく、気体状態の有価生成物が、凝縮区画を介して、またボイラを介して分解反応器により形成される包囲空間から抽出され、熱タッピング区画へ進む。
【0048】
幾つかの実施形態では、触媒分解中に、熱化学的真空ポンプの下部のボイラにおいて分解圧での凝縮油の蒸発温度をほぼ上回らない温度まで凝縮油が加熱される。それゆえこの凝縮油は、分解圧で蒸発温度に達して蒸発するように加熱され、それにもかかわらず凝縮油が達する温度は蒸発温度より高いが、凝縮区画及び圧力損失区画での凝縮油の充分に急速な冷却を可能にするのに充分なほど蒸発温度に近く、分解反応器において気体状態の有価生成物の生成により発生する高圧を相殺する低圧が凝縮により発生する。
【0049】
幾つかの実施形態では、触媒分解(前の)準備段階中に、
分解反応器において分解油の槽が分解温度まで加熱される。これらの実施形態によれば、分解油の槽には固形物、触媒、アルカリ性物質が含まれず、触媒分解前の準備ステップ中にこの槽で触媒分解は発生せず、
分解反応器と熱化学的真空ポンプとに共通する気体雰囲気が、機械的吸引ポンプ(真空ポンプ)によってこの気体雰囲気を給送することにより、分解圧を下回るいわゆる開始圧―特に10hPa未満、好ましくは1~5hPa―に調整され、
凝縮油の槽は、熱化学的真空ポンプの下部のボイラにおいて、開始圧での凝縮油の蒸発温度を下回るこれに近い温度まで加熱され、その後、
開始圧での分解反応器及び熱化学的真空ポンプの気体雰囲気の機械的圧送が中断される―気体雰囲気ではこの開始圧が維持される―、その後、
凝縮油は、熱化学的真空ポンプのボイラにおいて、分解温度と分解圧での凝縮油の蒸発温度とを上回るがこれに近い温度まで加熱され、こうして熱化学的真空ポンプの凝縮区画で凝縮油の高温蒸気が上昇し、圧力は開始圧から増加して分解圧に達し、
温度が分解温度のレベルであって圧力が分解圧に達すると、本発明による方法では、凝縮油の蒸気が凝縮区画及び圧力損失区画との接触状態で凝縮するように凝縮油の性質に応じて条件を組み合わせ、こうして温度は分解温度のレベルで一定に維持され、分解温度のレベルでの温度の連続性により分解反応器の気体雰囲気を分解圧のレベルに維持する連続的蒸発/凝縮レジームが―凝縮油の定義に合わせて―確立され、
その後で、触媒分解開始ステップ中に、分解分散体の流れと高温の再生利用分解油の流れとが、
分解圧での分解温度に分解分散体が加熱及び維持されることで分解反応が開始及び維持され、気体状態の有価生成物が分解圧の気体雰囲気で生成されるとともに、
分解反応器で分解温度が維持され、特に有価生成物の蒸発のエンタルピーと分解反応器の壁での熱損失とが相殺される、
のに充分な温度で混合物を形成するように、分解反応器の同じ箇所へ導入され、混合される。
【0050】
本発明によれば、分解反応器の気体雰囲気を低圧に維持する為の連続的な機械ポンプ手段は必要とされない。これらの実施形態において、凝縮油は何らかの手段によりボイラで加熱される。
【0051】
幾つかの実施形態で、触媒分解により生成されて圧力損失区画の下部に蓄積する気体状態の有価生成物は、液体状態の燃料、特に触媒分解により形成される有価生成物の分別凝縮により形成される液体燃料の流れを熱化学的真空ポンプの上部へ導入することにより誘発される熱タッピング作用により、熱化学的真空ポンプの管形部材の上方のいわゆる熱タッピング区画へ、そして分別凝縮装置へ送られ、液体状態の燃料は、熱タッピング区画で圧力損失区画の方向に進む際に蒸発し、こうして蒸発した燃料は、触媒分解により形成される気体状態の有価生成物の温度を下回る温度であり、蒸発燃料の流れでは、上昇及び下降の流れの単位体積質量及び温度の差により、分別凝縮装置への気体状態の有価生成物の流れの熱タッピングによる上昇が可能であり、熱タッピングは、軸方向の高温気体の単位体積質量より高い単位体積質量を持つ低温気体の周囲での下降が単位体積質量の低い気体の軸方向移動を招くという原理による。これらの実施形態によれば、液体燃料、特に触媒分解により形成される液体燃料の流れを管形部材の上部へ導入することにより熱タッピング区画で生じる熱タッピングによって、触媒分解により生成される気体状態の有価生成物が圧力損失区画から抽出されて、熱化学的真空ポンプの上部で分別凝縮装置へ送られる。
【0052】
幾つかの実施形態では、管形部材の上部を構成するいわゆる熱タッピング区画で生じる、
分別凝縮装置でのエネルギー生成物―特にアルカン―の凝縮により分別凝縮装置で生じる低圧と、
熱タッピングと、
の作用により、触媒分解の結果生じる気体状態の有価生成物が圧力損失区画から抽出される。
【0053】
これらの実施形態によれば、蒸発燃料は、熱タッピング区画で圧力損失区画の方向に前進する際に、触媒分解により形成される気体生成物の温度を下回る温度であり、その単位体積質量は同じ気体生成物の単位体積質量より大きく、軸方向の高温気体生成物の単位体積質量より大きい単位体積質量を持つ低温の気体生成物の周囲での下降により単位体積質量の低い気体生成物が上向きに送られるという原理に従って、蒸発燃料の流れは、気体状態の有価生成物の流れが凝縮装置へ前進することを可能にする。
【0054】
これらの実施形態によれば、燃料の下降流は、触媒分解により生成される気体状態の有価生成物の上昇流との接触状態で加熱されて蒸発し、熱化学的真空ポンプ及び/又は分別凝縮装置で再生利用される。熱タッピング区画が充分な高さであれば生成されて蒸留出口温度で再導入される燃料の15%から20%程度である対応量の燃料の導入により充分な熱タッピングが得られると、発明者は判断した。
【0055】
幾つかの実施形態によれば、分解分散体の流れと、破砕状態の固形物の各炭化水素化合物の分解圧での分解温度を上回る温度に予め加熱された分解油の流れ―特に再生利用分解油の流れ―とを混合することにより分解反応器で分解分散体が加熱され、固形物の熱分解の温度(既に形成されたコークスの存在下では360℃)を下回る温度(例えば310℃~320℃)の分解油の流れとの混合により分解分散体の加熱を利用することで、コークス、ダイオキシン、及び/又はフランの形成を伴わずに分解分散体が分解圧での分解温度(260℃~280℃)に達するように、混合が行われる。これらの実施形態によれば、分解分散体の各炭化水素化合物の分解温度を下回る温度の分解分散体の流れと、分解分散体の少なくとも一つの―特に各々の―炭化水素化合物の分解温度を上回る温度まで混合前に加熱された分解油の流れとを混合することにより、分解温度―特に分解圧での分解温度―に達するように、そして形成された混合物が分解分散体の少なくとも一つの―特に各々の―炭化水素化合物の分解温度に達してこれを超えるように、分解分散体が加熱される。この実施形態によれば、混合前に、分解分散体の流れは分解分散体の各炭化水素化合物の分解温度を下回る温度であり、コークス、ダイオキシン、及び/又はフランの形成温度を下回る温度でもある。少なくとも一つ―特に全て―の炭化水素化合物の分解温度を上回る温度まで混合前に加熱された分解油には、触媒とアルカリ化合物と炭化水素化合物とは含まれず、コークス、ダイオキシン、及び/又はフランの形成は許容されない。この実施形態では、コークス、ダイオキシン、及び/又はフランの形成温度(360℃から400℃)より必然的に高い温度まで加熱された熱交換器の壁と分解分散体が接触せずに分解分散体が分解温度に達するので、分解圧において分解分散体はその中心で分解温度に達する。
【0056】
考えられ得る幾つかの実施形態では、分解分散体の二酸素(O)ガスによって、触媒分解により形成される二水素(H)ガスの発熱燃焼反応を起こすことができる二酸素(O)ガスを内含する酸素化組成物の流れを分解分散体へ給送することにより、分解圧での分解温度に分解分散体が維持される。
【0057】
幾つかの実施形態では、触媒分解により分解分散体に形成される二水素(H)ガスの被制御発熱燃焼による、点火を伴わない反応に適応した燃料として、酸素化組成物の被制御流量を分解前又は分解中に分解分散体へ導入することにより、分解分散体の少なくとも一つの―特に各々の―炭化水素化合物の分解温度に分解分散体が調整及び/又は維持される。この発熱燃焼は、コークス、ダイオキシン、及び/又はフランの形成を伴わずに形成される有価生成物の分解、分解及び蒸発の継続により形成される有価生成物―特に燃料―の蒸発エンタルピーをその場で相殺することを可能にするので、有利である。
【0058】
幾つかの実施形態では、分解分散体が分解温度に達する前に酸素化組成物の流れが分解分散体に追加される。酸素化分解分散体が分解温度に達する前に被制御量の二酸素(O)ガスが酸素化分解分散体に存在する、すなわち、分解前に酸素化分解分散体に二酸素(O)ガスが分散されるという事実により、酸素化分解分散体が触媒分解温度に達して二水素(H)ガスが生成される時には、形成されるとすぐに、この二水素(H)ガスが二酸素(O)ガスともに、酸素化組成物の流れの制御により完全に制御される二水素(H)ガスの発熱燃焼反応に関与することが可能である。
【0059】
二水素(H)ガスの被制御発熱燃焼反応では、有価生成物の発熱蒸発のエンタルピーの少なくとも一部の相殺が可能であり、酸素化分解分散体の温度は、触媒分解を継続することと気体状態の有価生成物が蒸留段階に入ることとを可能にする温度に維持される。
【0060】
幾つかの実施形態では、分解圧での分解分散体の各炭化水素化合物の分解温度に達するべく分解分散体の温度の上昇を可能にする熱エネルギーの内部発生を可能にするように、最初の分解段階へのこのような導入が行われる。
【0061】
幾つかの実施形態によれば、熱エネルギーの内部発生を可能にして、形成される炭化水素の蒸発エンタルピーの相殺により分解反応中に形成される炭化水素の気体状態の維持を促進することを可能にするように、最終分解段階でこのような導入が行われる。
【0062】
幾つかの実施形態において、この分解分散体は、触媒分解中に超音波による処理を受ける。超音波によるこのような処理は、分解中に反応性の触媒種の可能な限り均質な分散を超音波振動による機械的作用により可能にする。
【0063】
幾つかの実施形態によれば、触媒分解により形成される気体状態の少なくとも一つの有価生成物は、液体状態の燃料の形成を許容する条件下で凝縮する。幾つかの実施形態において、気体状態の有価生成物の分別凝縮は、有価生成物の分別に適しており、互いに分離した有価生成物―特に燃料―を形成する条件において行われる。この分離は、何らかの周知の手段による、例えば分別蒸留装置による分別凝縮によって実施される。分別凝縮によるこのような分離は、大気圧で実施される。
【0064】
幾つかの実施形態によれば、以下のステップのうち少なくとも一つが行われる:
有価生成物から形成される凝縮物を水冷凝縮器によって凝縮することにより、(炭化水素化合物の触媒分解により形成される有価生成物とは考えられないが、分解中に形成される二水素と充分に脱酸素化された固形物からの酸素との燃焼により形成され得る)有価生成物と水とを分離するステップ、
様々な燃料、特に軽油、灯油、及びガソリンを分離する為の適切な条件下において大気圧で凝縮物を蒸留するステップ、
蒸留により水を除去するステップ、
二酸化炭素と二水素との浸透作用により分離するステップ。
【0065】
幾つかの実施形態では、非凝縮気相が気体有価生成物の分別凝縮によりこの分離中に回収されて液体有価生成物を形成し、非凝縮気相は、特に短鎖飽和炭化水素及び/又は分解後の余分な二水素(H)ガス及び/又は二酸化炭素(CO)を含む可能性があり、非凝縮気相は、二水素(H)ガスと短鎖飽和炭化水素と二酸化炭素(CO)との浸透作用による少なくとも一つの分離/浄化ステップを受ける。これらの実施形態において、凝縮による他の残留気体から二酸化炭素を分離するのに浸透作用又は他のいずれかの手段が使用される。浸透作用又は他の適切な手段により凝縮物の残留気体生成物から二酸化炭素が抽出される。
【0066】
本発明は、コークス、ダイオキシン、及び/又はフランの形成を伴わずに破砕固形物の低温での触媒分解の為の装置にも関しており、この装置は、
触媒分解に対して不活性であって分解油と呼ばれる第1油と、
少なくとも一つの炭化水素化合物を含む破砕固形物と、
少なくとも一つの触媒分解用触媒と、
少なくとも一つのアルカリ化合物と、
を含むいわゆる分解分散組成物の流れを、250℃~300℃のいわゆる分解温度で加熱するのに適応しており、気体状態の少なくとも一つの有価生成物、特に、分解分散体の破砕固形物の少なくとも一つの炭化水素化合物の触媒分解により二酸化炭素と燃料及び二水素などのエネルギー生成物により形成されるグループから選択される少なくとも一つの有価生成物の生成を可能にするとともに、分解分散体を分解反応器の気体雰囲気との接触状態に維持するように選択される気密性の分解反応器を含み、分解装置は、大気圧を下回るいわゆる分解圧に気体雰囲気を維持するのに適応した手段、特に熱化学的手段を含むことを特徴とする。
【0067】
本発明は特に、本発明による方法を実行するのに使用可能な触媒分解装置に関する。
【0068】
本発明によれば、本発明の触媒分解装置は、分解反応器の気体雰囲気との気体交換連通状態にあるいわゆる一次凝縮器又は熱化学的真空ポンプ装置を含み、この熱化学的真空ポンプは、膨張気体状態から凝縮液体状態への触媒分解により形成される各有価生成物の凝縮温度を上回る凝縮温度を持つ第2の不活性のいわゆる凝縮油であって分解圧での蒸発温度を上回る温度まで加熱される凝縮油の状態変化を可能にするとともに、この状態変化により生じる低圧により分解反応器の気体雰囲気を分解圧に維持するのに適応している。
【0069】
これらの実施形態によれば、この熱化学的真空ポンプは、実質的に垂直の配向を持つ管形部材を含み、そのいわゆる凝縮区画は分解反応器の気体雰囲気との気体交換連通状態にある。熱化学的真空ポンプは、凝縮油として知られる第2不活性油の、膨張気体状態から凝縮液体状態への状態変化を可能にするのに適応し、触媒分解により形成される各有価生成物の凝縮温度を上回るとともに、圧力が分解圧のレベルである時には分解温度に等しい凝縮温度を有するように凝縮油が選択される。底部に延在して凝縮区画と連通するボイラは、蒸発温度を上回る温度に凝縮油を加熱するのに適応している。特に機械的排出手段により、ボイラの圧力は分解圧を下回るレベルまで予め下げられ、分解圧での蒸発温度を上回る温度での凝縮油の加熱及び蒸発の作用により、圧力が上昇する。反応器との連通状態にある凝縮区画での圧力が分解圧に達した時に、温度のわずかな低下は定義上、凝縮油の蒸気の凝縮を招く。圧力は分解圧のレベルで安定化して調節可能な温度は一定であり、圧力の上下変動は凝縮流の反対の意味での変性を招く。
【0070】
この熱化学的真空ポンプは、分解圧で、そして分解圧での状態変化温度のレベルをわずかに上回る温度レベルで加熱することによって予め蒸発した凝縮油の凝縮により生じる圧力低下によって、分解反応器の気体雰囲気の圧力を分解圧のレベルに維持するのに適応しており、熱化学的真空ポンプの凝縮区画と反応器の気体雰囲気との圧力は、機械的手段を用いて、分解圧のレベルを下回るまで予め下げられている。
【0071】
幾つかの実施形態よれば、熱化学的真空ポンプは、
凝縮油を蒸発温度まで加熱する為のボイラとして知られる部材と、
分解により分解反応器に形成される気体状態の有価生成物を蒸留装置へ誘導する為の管形部材であって、加熱部材の上に位置して加熱部材へ吐出を行ない、
分解反応器の気体雰囲気との気体流通状態にあって、気体状態の凝縮油の流れを受容して、分解圧での凝縮油の蒸発温度を下回る温度まで温度を低下させ、膨張気体状態から凝縮液体状態への凝縮油の流れの凝縮を可能にし、分解反応器の気体雰囲気の圧力を分解圧に維持するのに適応しているいわゆる下方凝縮区画と、
凝縮区画の上に位置して、金属メッシュを含む多孔部材を備え、膨張気体状態から凝縮液体状態への凝縮油の状態変化を完了するのに適応している中間のいわゆる圧力損失区画と、
を形成する管形部材と、
を含み、
凝縮区画は、圧力損失区画と、そして分解反応器と熱化学的真空ポンプとに共通する気体雰囲気との気体交換連通状態にある。
【0072】
これらの実施形態によれば、凝縮区画は、下方の加熱部材から上方の圧力損失区画まで連続的に延在し、圧力損失区画は下方の圧力損失区画から上方のいわゆる熱タッピング区画まで連続的に延在して、圧力損失区画から分別凝縮装置へ有価生成物を送る。
【0073】
凝縮区画は、気体状態の凝縮油の流れを受容し、気体状態の凝縮油の温度を分解圧での凝縮油の蒸発温度を下回る温度まで低下させて膨張気体状態から凝縮液体状態への凝縮油の流れの凝縮を可能にするとともに、分解反応器の気体雰囲気の圧力を分解圧に維持するのに適応している。
【0074】
圧力損失区画は、循環を妨げないが管形部材の底部と上部との間での異なる圧力状態を維持するのに充分であるように気体状態の有価生成物の循環に対する障壁を動的に設けるのに適応している。
【0075】
幾つかの実施形態によれば、管形部材は、下方の圧力損失区画から延在して気体状態の有価生成物を分別凝縮装置へ送るのに適応しているいわゆる上方の熱タッピング区画を形成し、熱タッピング区画は、熱タッピング区画での液体状態の有価生成物の流れの為の入口―特に周囲入口―を上部に備えて、管形部材での熱タッピングの強化と分別凝縮装置へのこれらの有価生成物の流入とにより、気体状態の有価生成物を分別凝縮装置へ前進―特に上昇―させることを可能にする。
【0076】
これらの実施形態において、液体状態の有価生成物の蒸発は、存在する気体の単位体積質量の差の累積作用と、この凝縮によりこれと隣接する分別凝縮装置で形成される低圧とによる管形部材での熱タッピングの強化により、分解で生成された気体状態の有価生成物の上昇を誘発する蒸気の下降流を形成する。
【0077】
幾つかの実施形態によれば、分別凝縮装置は、気体状態の少なくとも一つの有価生成物の蒸留/凝縮と液体燃料への変換の為の装置である。
【0078】
幾つかの実施形態によれば、分解反応器は、分解温度の分解分散体との接触状態にある内面を有し、分解反応器の内面は、分解反応器の壁を構成する鉄及び/又はニッケルとの接触状態でコークスの形成を妨害するのに適応したセラミックの層でコーティングされている。
【0079】
幾つかの実施形態によれば、本発明による装置は、
分解反応器において分解分散体の流れを準備、加熱、及び誘導すること、
準備―特に分解反応器からの溢流の再生利用及び回収―を行ない、各炭化水素化合物の分解温度を上回って熱分解及びコークスの形成可能性についての360℃閾値を下回る温度まで加熱し、分解反応器において分解油の流れを誘導すること、
分解圧の分解反応器において、分解分散体の流れと分解油の流れとを混合することで、コークスの形成を伴わずに触媒分解反応を行なうこと、
大気圧を下回る分解圧の分解反応器において分解分散体を気体雰囲気との接触状態に置くこと、
触媒分解により形成される気体状態の有価生成物を凝縮し、液体状態の単数又は複数の燃料を生成すること、
分解油を触媒分解出口へ再循環させること、
分解出口で触媒を回収し、これを再生利用することと、
反応器への触媒の懸濁液の給送及び保持を管理すること、
再生利用を目的として、分解後に触媒の残留画分を回収すること、
に必要な要素のうち少なくとも二つを一体的に含む。
【0080】
本発明は、以上又は以下で述べられる特徴のうち幾つか又は全ての組合せその他を特徴とする、固体炭化水素原料の触媒分解の為の方法及び装置にも関する。これらについていかなる形式的提示が行われても、逆の内容が明記されない限り、上記又は下記で述べられる様々な特徴は密接又は緊密に関連していると考えてはならず、本発明は、これらの構造又は機能的特徴のうち一つのみ、あるいは構造的又は機能的特徴のうち幾つかのみ、あるいはこれらの構造的又は機能的特徴のうち一つの一部のみ、あるいはこれらの構造的又は機能的特徴のうち幾つか又は全てのまとまり、組合せ、あるいは並列に関するものであることが考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
本発明の他の目的、特徴、及び利点は、添付の図を参照して幾つかの可能な実施形態についての以下の非限定的な記載を読むことで明白になり、図1及び図2は本発明の一つの特定実施形態による分解装置の二つの並置部分を示したものである。
図1】本発明による分解装置100の一つの特定実施形態を示す概略図である。
図2図1に示されている分解装置100への導入前における分解分散体の準備の為の方法及びユニット110の一つの特定実施形態を示す、図1と相補的な概略図である。
図3】本発明による触媒分解方法の一つの特定実施形態のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0082】
図1及び2では、純粋に図示の明瞭性を理由として、縮尺及び比率は必ずしも厳密には一致していない。本文全体で、「上流」及び「下流」の語は、分解装置100に供給を行なう為の上流の貯蔵ホッパ101と分解反応器120との間において少なくとも一つの炭化水素化合物及び/又は炭化水素分散体3及び/又は乾燥分散体4及び/又は脱気分散体5及び/又は分解分散体6を含む固体のいわゆる炭化水素原料1の破砕状態での流方向に対して、そして分解反応器120の気体雰囲気を低圧に維持する為の熱化学的真空ポンプ130又は一次凝縮器130への、そして形成される有価生成物10の為と燃料11の生成の為の分別凝縮装置131への、大気圧を下回る圧力の分解反応器120の気体雰囲気の間で触媒分解により形成される有価生成物10の流方向に対して規定される。「下方」、「上方」、「上部」、「底部」の語は、作動状態の分解装置についてのものであると理解されるべきある、すなわち分解油の槽が装置の底部の分解反応器の底部を占めて、分解中に形成される蒸気を回収する為の部材が装置の上部に所在する。
【0083】
炭化水素原料1―特に廃棄物―を分解する為の本発明による装置100の一つの特定実施形態の概略図が、図1に示されている。分解装置100は、触媒分解に関して不活性である第1のいわゆる分解油2における炭化水素原料1の炭化水素分散体3の流れを準備する為のユニット110を上流端部に含む。準備ユニット110は、例えば、破砕状態の炭化水素原料1を貯蔵して分解装置100に炭化水素原料1を供給する為のホッパ101を含む。幾つかの有利な実施形態によれば、炭化水素原料1は、20mm程度より小さい最大寸法と、3mm以下、特に2mm程度の少なくとも一つの寸法とを有する固体破片の形である。炭化水素原料1は好ましくは、10cm以下の固有面積と、3mm以下、好ましくは特に2mm未満の厚さとを有する固体粒子の形である。言うまでもなく、炭化水素原料1の破砕の為の手段を設けるのは当然である。炭化水素原料1は、適切な方法により、特に押出機―例えば単軸押出機又は二軸押出機―での炭化水素原料1の押出により、あるいは破砕炭化水素原料1を形成する炭化水素原料1の砕片分離により破砕される。
【0084】
この炭化水素原料1は、少なくとも一つの炭化水素化合物、すなわち炭素の原子と水素の原子とで主に形成される少なくとも一つの化合物を含むように選択される。炭化水素化合物のみで形成される原料であってもよい。少なくとも一つの炭化水素化合物と炭素及び水素を含まない少なくとも一つの化合物とを含む原料であってもよい。この種の炭化水素原料は、例えば酸素(O)、窒素(N)、リン(P)、硫黄(S)、又は少なくとも一つのハロゲン(Cl,Br,F,I)等のような少なくとも一つのヘテロ原子を含む少なくとも一つの炭化水素化合物を含み得る。炭化水素原料1は、バイオマスから得られる炭化水素化合物を含む原料であり得る。炭化水素原料1は廃棄物、すなわち原料の未使用部分であり、この未使用部分は、これを貯蔵することを目的として焼却及び/又は適切な処理による除去を必要とする。これは例えば、不活性原料―ガラスなど―又は変換不能な原料を分離することを意図した機械的分類の後で得られる産業廃棄物、農業廃棄物―植物の無価値部分―又は一般廃棄物であり得る。少なくとも一つの炭化水素化合物、特に少なくとも一つの有機化合物、セルロース原料、及び/又は合成ポリマー原料を含有する固体廃棄物であり得る。このような廃棄物は、腐敗しやすい原料を実質的に含まない。しかしながら、一般廃棄物のケースでは、このような廃棄物は腐敗しやすい原料を含み得る。腐敗しやすい原料と燃焼性原料とをこの一般廃棄物から分離できるように、一般廃棄物を適切なプレスで圧縮する処理によりこのような廃棄物が形成され得る。例えば特許文献3に記載されているような押出プレスによって、このような分離が行われ得る。一般的に、生の状態でのこのような破砕固体廃棄物は10%と30%まで間の含水量を有し得る。例えば、一般廃棄物は、水と、ウェットパルプの形で発酵が行われて固体炭化水素原料―特に廃棄物―を形成する画分とを抽出するのに適した条件において750バールより高い圧力までの圧縮を受ける。
【0085】
少なくとも一つの炭化水素化合物を含む破砕状態の固形物1を貯蔵する為と、この固形物1を分解装置100に供給する為のホッパ101は、固形物1の乾燥及び脱酸素の為のコンベヤ104へ破砕固形物1を搬送する為のコンベヤ103へホッパ101により送達される炭化水素原料の流れを制御する為の少なくとも一つの部材102を備える。制御部材102は、下流の分解反応器120での触媒分解反応を制御し、かつ触媒分解試薬を分解反応器120に供給する導管の全ての閉塞を防止することができるように分解装置100へ導入される破砕固形物1の流れを調節することを可能にする。搬送コンベヤ103は、破砕固形物1の確実な定期的誘導と乾燥コンベヤ104への導入とを可能にするのであれば、いかなるタイプ及びいかなる長さのものでもよい。搬送コンベヤ103は、それ自体周知のモータ180―特に電気モータ―により回転駆動されるリードスクリュコンベヤであり得る。
【0086】
示されていない幾つかの実施形態において、分解装置へ導入される破砕固形物1の流れを制御及び調節する為の部材は、乾燥/脱酸素コンベヤへの破砕状態の炭化水素原料の被制御導入の為の、そして計量装置の起動中に乾燥/脱酸素コンベヤと脱気部材との内部体積を低圧に維持するのに適応している計量装置を含む。
【0087】
図1に示されている乾燥/脱酸素コンベヤ104は、実質的に垂直の軸線を備えて下向き方向に広がって重力の補助で破砕固形物1の案内及び誘導を可能にする円錐台形コンベヤ105をその上流部155に含み、円錐台形導管105は、搬送コンベヤ103の下流端部の間に延在して接合部を形成し、乾燥/脱酸素コンベヤ104の上流部に吐出を行なう。円錐台形コンベヤ105は、モータ182により回転駆動される回転スクリュを装備し、回転スクリュは円錐台形導管105と協働して破砕固形物1の流れを重力により乾燥/脱酸素コンベヤ104の上流部155へ落下させる。
【0088】
乾燥/脱酸素コンベヤ104は、実質的に水平の長手軸線でモータ183により回転駆動されるリードスクリュを含むタイプのものである。乾燥/脱酸素コンベヤ104は、180℃の最高温度と102℃の最低温度まで、特に102℃~130℃の温度に破砕固形物1を加熱する為の手段107を備える。加熱手段107は、乾燥/脱酸素コンベヤ104の中間部156での破砕固形物1の輸送中に蒸気の形での水14の蒸発及び抽出を可能にする。この乾燥は、分解油2での破砕固形物1の分散を促進するとともに遊離水の不在を保証することを可能にする。乾燥/脱酸素コンベヤ104の加熱手段107は、高温の分解油2の流れ、特に触媒分解の後でこれにより再生利用及び加熱される分解油2の流れを受容するのに適応した乾燥/脱酸素コンベヤ104を伝導により加熱する為の外部シース108も含む。外部シース108は乾燥/脱酸素コンベヤ104の中間部156に対向して、外部シース108で循環する高温の分解油2と乾燥/脱酸素コンベヤ104で循環する炭化水素分散体3との間での熱の交換と、炭化水素分散体3の加熱とを可能にする。
【0089】
外部シース108の入口159において、分解油2の流れは150℃~200℃―特に180℃から190℃程度―の温度であり得る。分解油の連通の為のオリフィス112を介して、外部加熱シース108は乾燥/脱酸素コンベヤ104の内部空間111へ吐出を行い、オリフィス112はコンベヤ104の外壁に形成され、それによって、高温の分解油2は破砕固形物1との接触状態に置かれて、分解油2に分散されるこの固形物1のいわゆる炭化水素分散体3を形成する。
【0090】
実質的に100℃より高い温度―特に100℃~280℃の温度―に脱気分散体5と脱気分散体5の固形物1とを調整するように適応及び制御される、脱気分散体5を伝導により加熱する為の追加手段109を加熱外部シース108に設けて、脱気分散体5の残留水と高温の分解油2に分散された乾燥原料とが事実上は存在しないことを保証するのは当然である。
【0091】
幾つかの実施形態では、実質的に破砕固形物からの水、すなわち破砕固形物を構成してこれから抽出可能でない水のみが破砕固形物1に残るように、乾燥ステップ175が予め行われる。
【0092】
開始原料である破砕固形物1及び/又は炭化水素分散体3の破砕固形物1及び/又は乾燥分散体4の破砕固形物1及び/又は脱気分散体5の破砕固形物1及び/又は分解分散体6の破砕固形物1の粒子サイズ範囲を調節する追加ステップ175を行なうのは当然である。このような粒子サイズ範囲の調節は、何らかの適切な破砕手段により行われる。
【0093】
乾燥/脱酸素コンベヤ104の中間部156は、機械的吸引ポンプ115により低圧―すなわち大気圧を下回る圧力―に維持されるベル114を含む脱気部材113を備える。乾燥/脱酸素コンベヤ104は、脱気―特に少なくとも部分的に脱酸素―されて乾燥された破砕固形物1の分散体5を分解油2において形成すること可能にする。
【0094】
このような実施形態によれば、大気圧の酸素分圧を下回る酸素分圧を有する気体雰囲気との接触状態に破砕固形物1の分散体を維持することにより、この脱酸素が行われる。例えば、分解油2における破砕状態の固形物1の分散体を、不活性ガスで形成される雰囲気との接触状態に維持することにより、このような脱酸素が行われる。大気との接触状態にある分散体を、大気圧を下回る圧力に維持することにより、このような脱酸素を行なうのは当然である。
【0095】
高温の分解油2に分散される乾燥後の破砕固形物1のこのような脱気とこのような脱酸素177とは、分解分散体6に存在する二酸素(O)ガスにより分解中に発生される気体状態の二水素(H)の発熱燃焼反応の可能な限り精密な制御を可能にする。実際に、バイオマス、すなわち植物由来の原料及び/又は動物由来の原料の少なくとも一部から成って分解中に気体状態の二水素(H)を形成する傾向のある原料を含有する固形物―特に廃棄物―の触媒分解により有価生成物―特に燃料―を生成する本発明による方法の幾つかの実施形態では、分解分散体6の非制御加熱を妨げるようにこの非制御発熱燃焼反応を妨げることが必要である。他の実施形態によれば、分解中に生成された気体状態の二水素(H)の消費を妨げる必要があり、気体状態の二水素(H)はこれらの実施形態で期待される有価生成物である。
【0096】
このような脱酸素177は、分解油2における破砕固形物1の分散体に存在する酸素(O)分子量の被制御値を制御することを可能にする。これは、以下を招きやすい触媒分解反応中の二水素(H)の発熱燃焼をこの値の制御により制限することも可能にする:
水蒸気のランダムな形成と分解反応中に発生する蒸気の温度の非制御上昇。蒸気温度のこのような上昇は有価生成物、特に燃料の凝縮を妨げる種類のものであり、
分解室での分解分散体の温度、特に(脱酸素ステップが行われない時に観察される)600℃程度の温度の非制御上昇。この温度は、コークスの形成を伴わない分解反応については不適当である。
【0097】
乾燥/脱酸素コンベヤ104は、分解油2における乾燥及び脱気固形物1の分散体4の循環の為の下流端部116を有する。乾燥/脱酸素コンベヤ104のこの下流端部116は、分解分散体の準備の為の導管117を形成し、分解触媒7の流れを供給する導管118とアルカリ生成物8の流れを供給する導管119とが準備導管117に吐出を行なう。準備導管117の下流端部106は、駆動部材123により垂直回転軸で回転駆動される、形成された混合物の積極的な混合の為の手段122を備える混合室121へ、吐出を行なう。分解分散体6の構成要素の間、すなわち炭化水素原料1と分解触媒7とアルカリ化合物8と分解油2との間での接触を促進するように混合手段122が選択される。混合室121が分解分散体6の混合と固形物1の細断の為の室であるのは当然である。
【0098】
アルカリ化合物8は、分解分散体6のpHを8.5より高く、特に8~9にするのに充分な単数又は複数の量で供給される。この種のpH値は一方では、触媒分解反応を促進―特に許容―することを可能にする。また分解分散体6と接触する分解装置100の部品の腐食を制限することも可能にする。また塩素化炭化水素化合物の触媒分解を行なうことも可能にする。本発明による方法の幾つかの実施形態では、アルカリ化合物8として石灰又は酸化カルシム(CaO)が使用される。
【0099】
分解油2は、触媒分解に関して不活性である油、すなわち破砕状態の固形物である炭化水素化合物の分解及び有価生成物への変換の為の条件(触媒、温度等)に置かれた時に化学的変性を受けない油である。これは、触媒分解に関して不活性であって分解温度で安定している鉱油であり得る。分解温度で液体状態、大気温度で液体状態、そして0℃の温度で液体状態である鉱油で分解油2が形成される。分解油2は、分解触媒7の密度より低く炭化水素原料1の密度より低い密度を有し得る。幾つかの実施形態によれば、分解油2は0.85程度の比重を有する。
【0100】
分解油2は、例えば、膨張プロセスでの分解泡状体9と固形物(触媒、固体残留物等)からの分解油2の液体/固体分離により、分解分散体6の分解により形成される膨張プロセスでの触媒分解分散体に基づく再生利用な不活性油であり得る。この分離は何らかの手段により実行され得る。高密度の固形物が沈降する液体/固体分離装置によって実行され得る。これは破砕固形物を濾過及び保持する液体/固体分離装置であり得る。再生利用される分解油2と分解油2より高密度の固形物と分解油2より低密度の原料との分離を可能にする浮動型の液体/固体分離装置であってもよい。
【0101】
少なくとも一つの分解触媒7は、炭化水素化合物を炭化水素に触媒分離する為の触媒である。少なくとも一つの分解触媒7は、ケイ酸カリウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、ゼオライト、及びベントナイトで形成されるグループから選択される。他の分解触媒が使用されてもよい。この種の触媒は比較的低コストの触媒でもある。少なくとも一つの分解触媒7は、破砕状態において固体である。
【0102】
少なくとも一つの炭化水素化合物を含有する破砕固形物1の流れ、単数又は複数の分解触媒7の流れ、単数又は複数の―特に直線の―アルカリ化合物8の流れ、そして消費又は再生利用されない分解油2の流れは、分解分散体6におけるその比率を適切に保つのに適応している。
【0103】
幾つかの実施形態では、20%程度~50%程度である破砕状態での固形物1の体積と分解分散体6の体積との割合を有するように、混合が行われる。
【0104】
混合室121は、混合室121での混合中に分解分散体を加熱する為の外部シース124を装備し、分解油2を加熱する為の第1手段125により、(分解圧での)分解分散体6の各炭化水素化合物の分解温度を下回り、かつコークス、ダイオキシン、及び/又はフランの形成の為の温度を下回る温度に加熱された高温の分解油2の流れが、混合室に流入する。第1加熱手段125により加熱された高温の分解油2の流れが、周囲シース124、そして乾燥/脱酸素コンベヤ104を加熱する為の外部シース108を流れて、破砕固形物1との接触状態にある高温の分解油2の流れを導入する為のオリフィス112を介して乾燥/脱酸素コンベヤ104の内部空間111へ吐出されるように、分解油2を加熱する為の第1手段125は周囲シースの(分解油2の循環方向での)上流に配設される。それゆえ分解分散体6の乾燥/脱酸素及び加熱を目的とする破砕固形物1の予熱が最適化され、この加熱に必要なコストが最小化する。
【0105】
混合室121で混合された分解分散体6は混合室121の出口129へ送られて、分解反応器120の反応を開始する為の混合室127へ分解分散体6を供給及び導入する為のスクリュコンベヤ126に受け取られる。混合室127へ分解分散体6を導入する為のコンベヤ126は、分解分散体6の流れと破砕炭化水素原料1の少なくとも一つの炭化水素化合物の分解温度を上回る温度まで予め加熱された分解油2の流れとが合流するゾーン128で混合室127へ吐出を行なうので、少なくとも合流ゾーン128では、少なくとも一つの炭化水素化合物の分解温度を上回る温度に混合物が達する。分解が開始される。加熱手段125,132により加熱される加熱油2の流れの循環の為の周囲シース136を供給コンベヤ126が備え、この流れと高温分解油2の温度とは、破砕固形物1の少なくとも一つの炭化水素化合物の分解温度に可能な限り近いが、それでも分解温度より低く、コークス、ダイオキシン、及び/又はフランの形成温度より低い分解分散体6の加熱を可能にするように調節される。
【0106】
分解装置100は、高温分解油2と分解分散体6との合流による混合ゾーン128での混合物が、分解分散体6の少なくとも一つの―特に各々の―炭化水素化合物の分解温度に達するかこれを超えるように、破砕炭化水素原料1の少なくとも一つの炭化水素化合物の分解温度を上回る温度まで分解油2の流れを加熱するための第2手段132を含む。高温分解油2の流れは、分解触媒7と炭化水素原料1とアルカリ化合物8とを含まないので、少なくとも一つの炭化水素化合物の分解温度を上回る温度まで、そして該当する場合にはコークス、ダイオキシン、及び/又はフランの形成温度を上回る温度までの加熱では、コークス、ダイオキシン、及び/又はフランの形成を伴わない。分解反応器120の出口133で受け取られた分解油2の流れに基づいて第2加熱手段132により破砕固形物1の少なくとも一つの炭化水素化合物の分解温度を上回る温度までこの分解油2の流れが加熱される。
【0107】
第1及び第2加熱手段125,132での分解油2の各流れは、これら分解油2の流れを圧送する為の手段134,135により形成及び制御され、これらの流れの各々の温度は、各分解油2の流れの使用目的に応じて調節される。
【0108】
それゆえ、分解温度を上回る温度までの加熱の為に、分解分散体を加熱するように、そして(破砕固形物に応じて240℃~300℃―特に260℃と280℃の間である)分解温度に少なくとも等しいコア温度に達するように、必然的にコークスの形成温度以上、特に360℃以上―特に400℃―を上回る温度を持つ伝導加熱部材の加熱面との接触状態に分解分散体6は置かれない。
【0109】
本発明による方法の全ての実施形態では、分解分散体6を伝導加熱部材の加熱面と接触させることなく分解温度に達し、加熱面は必然的に、コークス、ダイオキシン、及び/又はフランの形成温度を上回る温度まで加熱されて、コークス、ダイオキシン、及び/又はフランの形成を招く。
【0110】
分解分散体6の流れと高温分解油2の流れとが合流ゾーン128で混合されるので、混合室127でのこの混合により、分解分散体6の少なくとも一つの―特に各々の―炭化水素化合物の分解温度を上回る温度に分解分散体6が達する。この手段により少なくとも一つの炭化水素化合物の分解が混合室127で開始される。
【0111】
混合室127は、分解温度に加熱された分解分散体6の上昇流を形成する混合タービン153を底部に備え、分解分散体6の流れにより、そして高温分解油2の流れにより、底部でこの上昇流が混合室127から給送される。混合タービン153は、シャフト及びモータ184により回転駆動される。分解分散体6の上昇流は混合室127において分解反応器120の上方のいわゆる生産室137へ前進して、混合後の固体/液体組成物と、触媒分解の結果生じて混合後の固体/液体組成物に分散される有価生成物10で形成される気相とを内含する泡状体9を膨張プロセスで形成する。気相は特に、気体状態の短鎖炭化水素、触媒分解により発生される二水素(H)ガス、二酸化炭素(CO)ガス、そして水蒸気を含む。触媒分解反応の開始は、連続的な分解に瞬時に関与する傾向にある単数及び複数の触媒の分解及び遊離による単数又は複数の触媒の解離を招く。生産室137では分解反応が継続する。分解の最終段階での分解分散体6の流れ、すなわち、破砕固形物1と分解油2より高い単位体積質量により分解油2から分離した分解触媒8とを実質的に含まない流れは、生産室137の上部へ溢流して溢流縁部178を形成する。溢流により戻される分解油2の流れは、分解油2を再生利用する為の回路138で再生利用され得るように分解反応器120の出口133で回収される。再生利用回路138は、供給リザーバとの連通状態にある再生利用回路138に分解油2を供給する為の導管161を備える再生利用カラム160を含む。同様に、単数又は複数の分解触媒は、分解反応器120の底部142での沈降の後に回収される。単数又は複数の触媒7は、混合室127へ、及び/又は、生産室137へ、及び/又は、分解分散体の流れと高温分解油2の流れとの合流ゾーン128へ、デフレクタ141,143により案内され得る。単数又は複数の触媒のこのような再分散は、分解反応器120における分解中の分解分散体6の径方向攪拌の為の装置144により可能となり、混合室127及び生産室137での反応種の接触時間を増加させ得る。径方向攪拌装置144はモータ185により回転駆動される。
【0112】
気体状態の有価生成物10(炭化水素、二酸化炭素(CO)、二酸素(H)、水蒸気)は、少なくとも一つの―特に各々の―炭化水素化合物の分解温度を上回る温度まで加熱された分解分散体6に出現するので、分解反応の進行による膨張プロセスで分解分散体6の分解油2とともに(油/気体)の泡状体9を形成する。
【0113】
幾つかの実施形態において、混合室127及び/又は生産室137は、分解が行われるプロセスにおける分解分散体6での触媒分解を促すように配設される少なくとも一つの超音波発生器を備え得る。超音波発生器は、分子間衝突の促進と存在する反応種及び触媒種の反応性とにより、分解油2での破砕固形物と触媒とアルカリ化合物との分解及び分散最適化の間に、超音波の機械的振動作用によりこれらの種の均質な分散を達成することができる。
【0114】
混合室127及び/又は生産室137において分解分散体6を加熱する為の他の補足的手段が考えられる。特に、このような補足的加熱手段は、触媒分解により形成される有価生成物の蒸発のエンタルピーを相殺する分解分散体6の補足的加熱を適用するのに適応し得る。
【0115】
分解反応器120は、触媒分解により形成される気体状態の有価生成物を回収する為の少なくとも一つのドーム139を備えている。ドーム139は、気体流体に対して密閉されて分解分散体6との接触状態の気体雰囲気14を格納する閉空間140を分解反応器120の上方に画定する。
【0116】
本発明による方法では、ドーム139の気体雰囲気14が大気圧を下回る圧力に維持される。特にドーム139において、進行中の触媒分解から生じる泡状体9との接触状態に維持されるこの種の低圧は、分解中の化学種の解離エネルギーの減少、分解温度の低下、それゆえこの解離に必要なエネルギー入力の減少とを可能にし、この減少はコークス形成温度を下回る値までの温度の低下を可能にする。
【0117】
ドーム139の気体雰囲気14は、気体状態の有価生成物10の回収の為に、ドーム139の気体雰囲気との連通状態にある機械的吸引ポンプ115又は真空ポンプによって大気圧を下回る圧力まで―特に一時的に―調整及び維持され得る。
【0118】
他の幾つかの特定実施形態において、膨張気体状態から凝縮液体状態への凝縮油12として知られる第2不活性油の流れの動的凝縮を含む方法により、ドーム139の気体雰囲気14は大気圧を下回る圧力に維持され、膨張気体状態での凝縮油12のこの流れは、標準的な加熱手段により加熱されるボイラ147での加熱による凝縮油12の蒸発/凝縮により、熱化学的真空ポンプ130で生じる。
【0119】
これらの他の特定実施形態において、凝縮油12は触媒分解に関して不活性である油、すなわち触媒に適切な温度条件において気体状態の有価生成物との接触状態に置かれた時に化学的変性を受けない油である。分解により形成される有価生成物10の蒸発温度を上回る温度で蒸発可能であるように選択される。それゆえ凝縮油12は、分解により形成される有価生成物10が同じ分解圧での凝縮油12の蒸発/凝縮温度において気体状態であるように選択される。
【0120】
これら他の特定実施形態において、熱化学的真空ポンプ130は、触媒分解温度を上回る(が大きくは上回らない)蒸発温度を有するように選択される一定量の凝縮油12を格納するのに適応しているボイラ147を含む。ボイラ147は、分解圧での凝縮油12の蒸発温度を上回るがこれに近く、そして分解により形成される気体有価生成物10と同じ圧力での凝縮温度を上回る温度に凝縮油12を加熱する為の手段を備える。凝縮油12は、本発明による触媒分解方法の使用条件において化学的に安定した熱媒油である。凝縮油12は、低圧での加熱中に脱気を受けないように、そして泡状体を生成しないように選択される。例えば凝縮油12は26個の炭素原子を有する鉱油であり、大気圧でのその蒸発温度は412℃程度であり、50hPaの圧力でのその蒸発温度は290℃程度であって、選択された分解温度に近い値を有する。
【0121】
これら他の特定実施形態において、分解により分解反応器120で形成される有価生成物10を分別凝縮装置131へ誘導する為の管形部材146がボイラ147の上に位置している。管形部材146は以下を含む:
底部でボイラ147と、側部で分解反応器129の雰囲気と、そして上部で管形部材146の中間のいわゆる圧力損失区画149と連通するいわゆる底部の凝縮区画162。大気温度の大気との接触状態にある外部まで延在しているという点で、凝縮区画162は保冷されている。凝縮区画162は、ボイラ147から上昇する凝縮油12の蒸気の凝縮を開始し、凝縮により凝縮区画162に低圧を発生させ、凝縮区画162の上に位置する中間のいわゆる圧力損失区画149との組合せで、凝縮区画162と分解反応器120の雰囲気とを低圧に維持することで、凝縮区画162と、圧力損失区画149の上方に延在する管形部材146の上部のいわゆる熱タッピング区画163との間に圧力差が確立され、
熱交換を促進して圧力損失区画149での凝縮油12の蒸気の継続的な冷却及び凝縮とボイラへ147への方向における形成凝縮物の還流とを可能にするのに適応した高密度金属メッシュ150を形成する互い違いの保冷プレートを備える中間のいわゆる圧力損失区画149。金属メッシュ150は圧力損失区画149の内部と外部との間での熱交換と、気体状態の凝縮油12の継続的な冷却とを促進して、金属メッシュ150との接触状態でこれを凝縮させる。金属メッシュ150は圧縮チップに類似した高密度交互配置の金属要素を支承するグリル又はスクリーンで製作され、管形部材146において気体を上昇させるとともにボイラ147へ凝縮物を落下させる。金属要素の密度により、金属メッシュ150は圧力損失を生じる。この圧力損失は、膨張気体状態から凝縮液体状態への凝縮油12の動的状態変化との組合せで、凝縮区画162及び圧力損失区画149での低圧の動的維持を可能にする。凝縮区画162と圧力損失区画149とは組合せにより、凝縮区画162及び分解反応器120における低圧の維持を可能にし、
圧力損失区画149から延出して高価値気体生成物10を分別凝縮装置131へ送るのに適応した上方のいわゆる熱タッピング区画163。
【0122】
管形部材146は好ましくは、大気圧を下回る、特に最高で100hPhに等しい―例えば300mm程度の―圧力での分解の結果として生じる高価値気体生成物10の循環を可能にするのに充分な直径と、熱タッピングの作用により高価値気体生成物10を―例えば4000mm程度上昇させるように選択される高さとをいずれかの断面に有する円筒形状のものである。
【0123】
(膨張気体状態から凝縮液体状態への状態変化及び凝縮油12の凝縮により)凝縮区画162と圧力損失区画149とで形成される低圧が、それ自体が低圧に維持されているドーム139の大気で伝搬されるように、凝縮区画162はドーム139の吐出先端148の前に延在する。それゆえ、金属メッシュ150及び関連の圧力損失との接触状態にある凝縮油12の気体/液体凝縮により、ドーム139、分解反応器120、そして管形部材146の雰囲気において低圧が維持される。それゆえ、大気圧を下回るいわゆる分解圧で、そしてこの分解圧での各炭化水素化合物の分解温度に少なくとも等しい温度で、分解反応室120及び生産室137で分解反応が進行する。低圧により、コークス、ダイオキシン、及び/又はフランの形成を伴わずに分解が行われ、こうして炭化水素化合物の解離に必要なエネルギーと、分解温度と、コークス、ダイオキシン、及び/又はフランの形成に必要なエネルギー量より少なく保たれるエネルギー量とが低下する。
【0124】
幾つかの実施形態では、凝縮油12の蒸気の保冷とこの蒸気の凝縮の為の外部シース158を圧力損失区画149が備えるので有利である。保冷シース158は凝縮区画162の前、そして圧力損失区画149の底部の前に延在する。保冷シース158は、熱エネルギー熱交換流体の流れを通過させて、凝縮油12の凝縮を促進し得る。
【0125】
触媒分解により形成される気体状態の有価生成物10を回収する為のドーム139が吐出端部148を介して凝縮区画162と連通することにより、分解により形成される気体状態の有価生成物10の蒸気がボイラ147からの気体状態の凝縮油12と混合され、ボイラにより管形部材146へ送られる。凝縮区画162において、そして圧力損失区画149において、分解により形成される有価生成物10の凝縮温度を上回って分解温度を上回る凝縮温度を有するように凝縮油12が選択される時に、凝縮油12の蒸気のみが液化される。
【0126】
凝縮油12の凝縮蒸気の体積流量を分解により形成される気体状態の有価生成物10の同じ圧力での形成流量と少なくとも等しくする為には、大気圧を下回る、特に最高で100hPaに等しい分解圧に分解反応器120の雰囲気を維持する必要があると発明者は判断した。この目的の為、圧力損失区画149を介した熱エネルギーの排出能力により凝縮区画162及び圧力損失区画149で凝縮が完了する凝縮油12の蒸気の形成流量を制御するようにボイラ147での凝縮油12の加熱温度を調節すれば充分である。分解中に形成される(例えば280℃の)有価生成物の蒸気の温度に近い温度である例えば290℃程度の温度のボイラ147で形成される凝縮油12の蒸気は有価生成物の蒸気との混合によりそれほど加熱されないので、管形部材146での混合物の急速な冷却により凝縮区画162及び圧力損失区画149での凝縮油12の凝縮が急速に起こり、凝縮物は凝縮油12の蒸発温度と非常に近い温度でボイラ147へ戻って、低エネルギー入力による低圧での蒸発を可能にするとの判断も下されている。
【0127】
ボイラ147へ落下する凝縮油12の凝縮中に、蒸発する凝縮油12の一部又は全てが、分解反応器120での分解により形成される有価生成物10の蒸気との接触状態にあって、ボイラ147において一定の熱で蒸発する凝縮油12の凝縮による真空の増加を招くことは当然である。そして代わりに圧力損失区画149の温度を制御することによりボイラ147へのエネルギー入力を減少させる必要がある。
【0128】
ボイラ147へのエネルギー入力はいかなる種類のものでもよい。例えば、触媒分解により形成される有価生成物10の一部の燃焼により、エネルギーがボイラ147へ入力されてもよい。他のエネルギー源も可能である。
【0129】
管形部材146は、分別凝縮装置131との連通の為のバルブ152をその上部に備える。いかなるタイプの分別凝縮装置131が使用されてもい。分別凝縮装置131は、分解中に形成される有価生成物10の蒸気の冷却及び凝縮により多様な炭化水素鎖長を持つアルカン混合物の生成を可能にするように選択され得る。分別凝縮装置131は、軽油と灯油とが分離されるそれ自体周知の大気圧蒸留カラムによる分別を可能にするように選択され、残留気体(CO,H)は、存在している水が分離された後に回収される。二水素(H)及び炭化水素(CO)の生成が所望される幾つかの実施形態において、反応によるこれらの非凝縮気体は浸透作用により分離され得る。
【0130】
大気圧を下回る分解圧、特に最高で100hPaに等しい分解圧で行われる触媒分解プロセスを開始する段階では、分解圧で分解分散体6の少なくとも一つの炭化水素化合物の分解温度に近い温度―特に280℃程度の温度―まで分解油2が加熱される。この開始段階で、分解反応器120には炭化水素化合物が含まれず、分解分散体6を分解反応器120へ装填する為のコンベヤ126に分解分散体6が保持されている。分解は生じない。ボイラ147では、蒸発温度をわずかに下回る温度に凝縮油12が維持される。そして管形部材146、分解反応器120の生産室137、ボイラ147の雰囲気を、5hPa程度又はこれを下回る低い最大真空圧(いわゆる開始圧)に置くように、機械的吸引ポンプ115が起動される。機械的吸引ポンプ115はこの閉空間に存在する気体を吸引して、分解反応器120と熱化学的真空ポンプ130との気体雰囲気の圧力を低下させる。幾つかの実施形態では、5hPa程度の必要な低い圧力値に圧力が達すると機械的吸引ポンプ115が停止し、低圧が維持される。
【0131】
開始段階に続く段階で、ボイラ147の加熱温度はこの5hPaを下回る圧力での凝縮油12の蒸発温度をわずかに上回る温度まで上昇し、こうして凝縮油12の蒸気が発生し、吸引により管形部材146へ上昇することで圧力が上昇する。凝縮油12の蒸気は低圧での蒸発温度をわずかに上回る温度まで加熱され、この蒸気は、管形部材146の底部の凝縮区画162及び圧力損失区画149で凝縮し、ドーム139と、ドーム139の吐出先端148と、管形部材146との雰囲気を低圧に維持する。分解反応器の雰囲気を分解圧に近い圧力に維持する永続的レジームが確立される。この平衡レジームが達成されるとすぐに、混合及び分解反応開始の為の室127へ分解分散体6の流れが導入されることで、少なくとも一つの炭化水素化合物の分解反応が5hPa程度の圧力において280℃に近い温度で開始される。分解により形成される有価生成物10の蒸気は低圧の全ての体積に分散され、管形部材146の底部で凝縮油12の蒸気と混合される。分解反応器120と熱化学的真空ポンプ130との気体雰囲気の圧力が上昇する。凝縮区画162と圧力損失区画149とは、雰囲気を低圧に維持する為のポンプに類似した動的な熱化学的真空ポンプのように作用する。分解触媒による分解反応器120での気体有価生成物10の体積が、凝縮区画162及び圧力損失区画149での凝縮油12の凝縮により空いた体積と相殺されるとすぐに、特に最高で100hPaに等しい低圧が装置の閉空間140で維持される。分解反応器120のこの低圧は、コークス、ダイオキシン、及び/又はフランの形成を伴わない低温での効果的な触媒分解を可能にする。分解反応器120と熱化学的真空ポンプ130とに共通するこの気体雰囲気14は、ボイラ147への熱エネルギー入力により調節され得る。分解により形成される同じ量の気体有価生成物について、凝縮後における気体状態の凝縮油12の体積の変化は、気体有価生成物10が占められる体積と気体雰囲気の圧力との変化を起こす。
【0132】
開始段階に続く段階で、乾燥/脱酸素コンベヤ104の温度を180℃に近い温度に、分解分散体6を分解反応器120へ装填する為のコンベヤ126の温度を240‐250℃に近い温度に、そして分解反応器120の分解油2の温度を50hPa程度の圧力での各炭化水素化合物の分解温度と実質的に等しい温度に調節することは当然である。乾燥/脱酸素コンベヤ104の180℃までの予熱の期間は、60分から90分程度のものであり得る。分解分散体6を分解反応器120へ装填するためのコンベヤ126の240‐250℃までの予熱の期間は30分から60分程度のものであり、3000L程度の体積の分解反応器120に充填される分解油2の槽を加熱する期間は15分から30分程度のものでる。分解圧での分解分散体6の各炭化水素化合物の分解温度を上回る温度まで混合物が加熱されるように、分解分散体6の流れと、分解分散体6の各炭化水素化合物の分解温度を上回る温度に加熱される分解油2の流れとを分解反応器へ導入するとすぐに、触媒分解が開始されて有価生成物10が形成される。
【0133】
幾つかの実施形態において、管形部材146は、液体状態の有価生成物11を管形部材146へ導入する為の周囲入口154をその上部151に備える。この入口154は、液体状態の有価生成物11の被制御流を管形部材146へ導入することを目的としており、気体有価生成物10の高温蒸気との接触状態にある管形部材146でのその蒸発は、分解により形成される気体有価生成物10の蒸気の熱タッピングと上昇とを強化する。
【0134】
アルカン、二酸化炭素(CO)、二水素(H)、そして該当する場合には水(HO)など、分解により形成される気体状態での有価生成物10の単位体積質量が、凝縮油12の蒸気の単位体積質量よりはるかに小さいことに発明者は気付き、実験によりこれが確認された。それゆえ、単位体積質量の小さいこの蒸気は、最大真空ゾーン157へ吸入されるとすぐに、熱化学的真空ポンプ130において、そして蒸気自体の単位体積質量より高い平均単位体積質量の媒体において、再下降することはもはやなく、管形部材146において一層急速に上昇する。それゆえ、管形部材146の上部に向かって押し上げられると、分解により気体状態で形成された有価生成物10の蒸気が金属メッシュ150の最大真空ゾーン157の上方へ前進する。
【0135】
発明者は、液体燃料11の流れを管形部材146の上部へ導入することにより、気体有価生成物10の蒸気の上向き移動を強化し、管形部材の上部に向かってこの蒸気を同伴させることが可能であることに気付いた。この液体燃料は、管形部材146の上部に向かって前進する有価生成物10の蒸気との接触状態になった時に蒸発し、この加熱により形成される燃料11の蒸気は必然的に、管形部材146の上部に向かって前進する有価生成物10の温度を下回る温度である。管形部材146の内側で周囲に形成される燃料11の低温蒸気は、熱タッピングの増加による有価生成物の高温蒸気の軸方向同伴を可能にする。単位体積質量の低い有価生成物10の高温蒸気は、管形部材146の上部に向かって同伴される。燃料の低温蒸気は、管形部材146の底部に向かって前進する際に加熱され、そして燃料11の蒸気の下降流により上部に向かって同伴される。連続的な移動が確立される。タッピング区画に充分な高さがある仮定すると、例えば130℃程度の温度である蒸留出口温度で生成されて再導入される燃料の正味バランスの15%から20%程度の比率を注入することによる熱タッピングで充分である。
【0136】
幾つかの特定実施形態において、分解装置100の機能が長期にわたって中断された後に、可燃性蒸気は、分解装置100―特にドーム139、熱化学的真空ポンプ130、及び/又は多孔部材の金属メッシュ150に蓄積する傾向がある。開始段階では、分解装置100の予熱ステップの間に脱気バルブ(不図示)を開く必要がある。脱気バルブを開いたままにして、分解油2を再生利用する為の回路と、分解油2を加熱する為の第1及び/又は第2手段125,132とを起動させることにより、分解装置100の温度上昇が開始される。分解装置100で循環する分解油2は、分解温度に近い温度まで加熱される。
【0137】
これと平行して、分解温度を下回るがこれに近い温度までボイラ147の凝縮油12が加熱される。この予熱ステップに続いて、分解反応器120及び熱化学的(気密性)真空ポンプ130の雰囲気を、分解圧を下回るが、ボイラ147での凝縮油12の蒸発を起こすのに充分なほど低くはない開始圧力にするように、脱気バルブが閉じられて機械的吸引ポンプ115が始動する。雰囲気が開始圧にある時に、凝縮油12の加熱がボイラ147で強化されて凝縮油12の瞬時蒸発が開始される。この蒸発により圧力が増加する。サーモスタットがボイラ147を制御して、凝縮区画162の底部の温度を分解温度のレベルで安定化させる。凝縮区画162で圧力が分解圧に達した時に、凝縮油12の蒸気が凝縮する。そして分解温度及び分解圧での永続的な蒸発/凝縮レジームが確立される。
【0138】
ここに記載されている実施形態において、炭化水素原料1と分解触媒7と何らかのアルカリ化合物8とを含まない分解油2―特に再生利用分解油2―の流れが、分解温度を上回る、例えば310℃~320℃の温度まで第2加熱手段132により予熱されるので、高温の分散油2と分解分散体6との合流による混合によって混合ゾーン128の混合物が(有価生成物の損失及び蒸発エンタルピーを相殺する為に)、分解圧での分解分散体6の少なくとも一つの―特に各々の―炭化水素化合物の分解温度に達してこれを超える。分解反応が開始され、この反応により気体状態の有価生成物10が形成される。分解反応器120及び熱化学的真空ポンプ130の雰囲気で圧力が上昇し、こうして機能が再開される。つまり凝縮油12の凝縮流が増加してボイラ147では沸騰が減少又は停止し、圧力が低下して分解圧を安定させる。逆に、分解反応器120及び熱化学的真空ポンプ130の雰囲気で圧力が低下すると、凝縮油12の凝縮が減少し、ボイラ147では沸騰が開始するか増加し、圧力が上昇して分解圧で安定する。
【0139】
凝縮してボイラ147に落下する凝縮油12により、そして分解の結果として生じて、損失区画149の底部での気体流により形成される動圧の作用により再度下降することのない気体有価生成物10の上向き排出によって、凝縮区画162の中心に低圧ゾーンが形成される。
【0140】
例1:おがくずの触媒分解
おがくずは、100kg/時で13個の炭素原子(C1328)と二水素(H)と二酸化炭素(CO)とを含む中間組成を持つ炭化水素を形成するように、50hPaの圧力で触媒分解を受ける。おがくず1トンの触媒分解では、1.4モル/秒の二酸化炭素(CO)と0.15モル/秒のトリカデン(C1328)と0.69モル/秒の二水素ガス(H)にそれぞれ対応する679kgの(CO)と306kgの炭化水素トリカデン(C1328)と15kgの二水素ガス(H)とが形成される。分解により形成される気体有価生成物の体積は、これらの気体有価生成物が占める体積の2.0L/秒程度の増加について、2.2モル/秒程度のものである。分解反応器の雰囲気での有価生成物10のこの体積増加を相殺する為と、50hPaの圧力を維持する為に、26個の炭素原子(C26)を含む分子量366の鉱油が、気体状態の鉱油を821g/秒で形成するようにボイラで蒸発され、その凝縮は気体有価生成物10の形成を相殺する。
【0141】
少なくとも一つの炭化水素化合物13を含む破砕固形物1―特に廃棄物―の、低温及び低圧すなわち大気圧を下回る圧力での触媒分解により、有価生成物10―特に燃料11、二酸化炭素(CO)、及び/又は二水素(H)ガスを生成する、本発明による方法のブロック図が、図3に示されている。
【0142】
本発明による方法は、大気圧の共通気体雰囲気を形成する分解反応器120と熱化学的真空ポンプ130とを含む分解装置100で実行される。本発明による方法では、低圧での触媒分解の開始前の準備段階170において、分解分散体6の流れと分解油2の流れの各々が、分解圧で分解温度に達することが可能であって分解反応器120への導入中に少なくとも一つの―特に各々の―炭化水素化合物の触媒分解を開始するのに適切な温度で分解反応器120へ導入されるように、適切な予熱が行われる。これを目的として、特に、
分解分散体6を混合及び反応開始室127へ装填する為に分解分散体6の流れがコンベヤ126で245℃程度の温度に達するように、分解分散体6と、
分解反応器120と混合分解反応開始室127で分解油2の流れが280℃程度の温度に達するように、分解油2と、
が予熱される。
【0143】
言うまでもなく、化合物、試薬、触媒の全てを予熱すること、そして分解反応器120で分解される前に分解分散体6の準備の為にユニット110で使用される分解油2の破砕固形物1を分散することは当然である。乾燥/脱酸素コンベヤ104の加熱シース108で180℃程度の温度に達するように分解油2の流れを加熱することは当然である。最適な使用温度に可能な限り近い温度まで炭化水素分散体3及び/又は乾燥分散体4及び/又は脱気分散体5と分解油2とを予熱することは当然である。この予熱は、使用温度に可能な限り近い温度での各化合物の準備を可能にするのに適切な何らかの手段により実行される。
【0144】
図3に示されている方法の実施形態では、上述の温度に達して分解分散体6が分解反応器120へ導入されるように準備された時に、熱化学的真空ポンプ130のボイラ147で凝縮油12を加熱するステップ171が開始される。凝縮油12のこの加熱171により、5hPa程度の上述の圧力での凝縮油12の蒸発温度に可能な限り近いがそれでもこれを下回る温度まで凝縮油12が加熱される。予熱されたボイラ147において凝縮油12は凝縮液体状態のままであり、その気体雰囲気14は大気圧である。
【0145】
図3に示されている方法の実施形態では、上述の温度に達した時に、分解分散体6は分解反応室120へ導入されるように準備され、凝縮油は5hPaの蒸発温度を下回る温度まで予熱され、分解反応器120のドーム139と熱化学的真空ポンプ130とに共通する雰囲気14は、機械的吸引ポンプ115によって圧送174される。この圧送174により、ドーム139と分解反応器120と熱化学的真空ポンプ130とに共通する雰囲気15の圧力が例えば5hPa程度の圧力まで低下することで、低圧の共通雰囲気15に存在する気体が排出される。凝縮油12の温度が5hPaでの凝縮油12の蒸発温度を下回るので、凝縮油12はボイラ147で凝縮液体状態にある。
【0146】
図3に示されている方法の実施形態では、凝縮油12が膨張気体状態となり、熱化学的真空ポンプ130で循環し、少なくとも一部が凝縮区画162で、及び/又は圧力損失区画149との接触状態で凝縮するように、熱化学的真空ポンプ130のボイラ147において5hPaの圧力での凝縮油12の蒸発温度を上回る温度まで凝縮油12が加熱される。凝縮区画162での、そして圧力損失区画149の(該当する場合には保冷シース158での熱交換流体の循環により増幅される)金属メッシュ150との接触状態でのこの凝縮172により、ドーム139と分解反応器120と熱化学的真空ポンプ130とに共通する気体雰囲気15が5hPa程度の低圧に維持される。
【0147】
図3に示されている方法の実施形態では、分解反応器120での少なくとも一つの炭化水素化合物の分解温度に混合物が達するように、分解反応器120への分解分散体6の導入により、そして加熱分解油2との接触状態での混合により、分解開始段階173が行われる。このような加熱は、例えば、分解分散体6での各炭化水素化合物の分解温度を上回る温度まで加熱された分解油2の流れを追加することにより達成され得る。予熱された分解分散体6の流れと、各炭化水素化合物の分解温度を上回る温度まで加熱された分解油2の流れとの―特に分解反応器120の混合室127の合流ゾーン128における―この混合は、各炭化水素化合物の分解温度がこの混合により達成されるように行われる。気体状態の有価生成物10が触媒分解により形成され、圧力が上昇した分解反応器100の気体雰囲気15に放出される。
【0148】
30hPa~50hPaの値の―気体有価生成物10による―気体雰囲気16の圧力上昇は、熱化学的真空ポンプ130での凝縮油12の凝縮により、気体雰囲気16の圧力での凝縮油12の蒸発温度をわずかに上回る温度まで凝縮油12を加熱することにより相殺される。凝縮油12の加熱及び蒸発の調節により分解圧に達し、これに維持される。熱化学的真空ポンプ130での凝縮油12の加熱と蒸発と凝縮により、―特に最高で50hPaに等しい値の―永続的な低分圧が確立される。この50hPaの圧力で、触媒分解により形成される気体有価生成物10の生成体積流量と凝縮油12の凝縮体積流量の絶対値が等しくなるとすぐに、この種の永続的な低分圧が維持される。凝縮油12の蒸発流を調節することにより、そしてボイラ147によりこの蒸発の為に得られる熱エネルギーにより、凝縮油12の凝縮体積流量が制御されるので有利である。
【0149】
図3に示されている方法の実施形態では、分解により生成される有価生成物10の各々の蒸発温度を上回る(最高で60hPa凝縮に等しい)分解圧での油12の蒸発温度に少なくとも等しい温度に凝縮油12の蒸気がなるとすぐに、触媒分解により―特に最高で100hPaに等しい―分解圧で形成される気体有価生成物10が触媒反応器120のドーム139と熱化学的真空ポンプ130の圧力損失区画149とで上昇し、この温度は凝縮を可能にするには高すぎる。有価生成物10の高温蒸気は、管形部材146で上昇することにより圧力損失区画149に達する。凝縮油12の高温蒸気は同じ温度での有価生成物10の高温蒸気の単位体積質量より大きい単位体積質量を有し、それゆえ、気体状態の有価生成物10は熱化学的真空ポンプ130での下降を妨げられて金属メッシュ150に蓄積し、その後で蓄積物の上部が熱タッピングにより管形部材146の上部に向かって同伴される。
【0150】
図3に示されている方法の実施形態において、液体状態の燃料11の流れを管形部材146の上部154に追加することにより熱タッピング179が誘発される時には、これがさらに当てはまる。―管形部材146の上部154への方向に前進する気体有価生成物10の温度より必然的に低い温度の―この燃料流の燃料11は、これらの上昇有価生成物10の蒸気により、そして蒸気との接触状態で蒸発し、有価生成物の温度は、強制冷却が無ければ240℃程度の値に維持される。蒸発燃料の流れと有価生成物の流れとの温度差により、蒸発した燃料の単位体積質量は必然的に気体有価生成物10の単位体積質量より多く、長さの大きい管形部材146で熱タッピング179が確立される。二つの気体の単位体積質量の差と温度差とにより、熱タッピング179の条件が組み合わされ、有価生成物10が管形部材146で前進して分別凝縮装置131に達する。
【0151】
図3に示されている方法の実施形態において、管形部材146の上端部145は、装置、特に分別凝縮カラム131の下部と連通し、蒸発/凝縮温度に応じて凝縮物(灯油、軽油等)の分離を可能にする分別凝縮のステップ―特に分別蒸留ステップ―169が続く。蒸留に続いて、130℃程度の温度と大気圧において、灯油の凝縮の結果生じる残留気体流が水凝縮カラムで100℃を下回る温度まで冷却される。凝縮水はカラムの底部において液体の形で回収され、サイフォンによって重力によりこれから抽出される。
【0152】
図3に示されている方法の実施形態において、二酸化炭素(CO)と二水素ガス(H)とは浸透作用168により分離される。
【0153】
本発明は、上に記載されたもの以外の多数の変形及び用途に適している。特に、他に明記されなければ、上に記載された実施形態の各々の様々な構造的及び機能的特性が、組み合わされる、及び/又は、密接及び緊密に互いに結び付いているのではなく、逆に単なる並列と考えられなければならないことは言うまでもない。さらに、上に記載された様々な実施形態の構造的及び/又は機能的特性は、多様な並列又は多様な組合せの幾つか又は全ての対象となり得る。例えば、分解装置の様々な構成要素の寸法、空間での管理、そして設計について、無限の変形が自由である。
【符号の説明】
【0154】
1 炭化水素原料
2 高温分解油
3 炭化水素分散体
4 乾燥分散体
5 脱気分散体
7 分解触媒
8 アルカリ生成物
9 泡状体
10 有価生成物
11 燃料
12 凝縮油
14 気体雰囲気
15 共通雰囲気
100 分解装置
101 貯蔵ホッパ
102 制御部材
103 搬送コンベヤ
104 乾燥/脱酸素コンベヤ
105 円錐台形コンベヤ
106 下流端部
107 加熱手段
108 外部加熱シース
109 追加手段
110 準備ユニット
111 内部空間
112 オリフィス
113 脱気部材
114 ベル
115 機械的吸引ポンプ
116 下流端部
117 準備導管
118,119 導管
120 分解反応器
121 混合室
122 混合手段
123 駆動部材
124 外部シース
125 加熱手段
126 スクリュコンベヤ/供給コンベヤ
127 混合室
128 合流ゾーン
129 出口
130 熱化学的真空ポンプ
131 分別凝縮装置
132 第2加熱手段
134,135 圧送手段
136 周囲シース
137 生産室
138 再生利用回路
139 ドーム
140 閉空間
141,143 デフレクタ
142 底部
144 攪拌装置
146 管形部材
147 ボイラ
148 吐出先端
149 圧力損失区画
150 金属メッシュ
151 上部
152 バルブ
153 混合タービン
154 周囲入口
155 上流部
156 中間部
158 外部シース
159 入口
168 浸透作用ステップ
169 分別凝縮ステップ
170 準備ステップ
171 加熱ステップ
172 凝縮ステップ
173 分解開始ステップ
174 機械的圧送ステップ
178 溢流縁部
179 熱タッピングステップ
180,182,184,185 モータ
図1
図2
図3
【国際調査報告】