(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-03
(54)【発明の名称】部分的にコーティングされた触媒層を有する微粒子フィルタ
(51)【国際特許分類】
B01J 35/57 20240101AFI20240827BHJP
B01J 37/08 20060101ALI20240827BHJP
B01J 37/02 20060101ALI20240827BHJP
B01J 23/63 20060101ALI20240827BHJP
B01D 53/86 20060101ALI20240827BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20240827BHJP
B01D 46/00 20220101ALI20240827BHJP
F01N 3/035 20060101ALI20240827BHJP
F01N 3/24 20060101ALI20240827BHJP
F01N 3/10 20060101ALI20240827BHJP
F01N 3/28 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
B01J35/57 L
B01J37/08 ZAB
B01J37/02 301D
B01J35/57 E
B01J23/63 A
B01D53/86 245
B01D53/86 280
B01D53/94 222
B01D53/94 245
B01D53/94 280
B01D46/00 302
B01D53/86 222
F01N3/035 A
F01N3/24 E
F01N3/10 A
F01N3/28 301P
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024508500
(86)(22)【出願日】2022-08-10
(85)【翻訳文提出日】2024-03-11
(86)【国際出願番号】 CN2022111444
(87)【国際公開番号】W WO2023016489
(87)【国際公開日】2023-02-16
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2021/112033
(32)【優先日】2021-08-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505470786
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】エルマーズ、インガ
(72)【発明者】
【氏名】ワルツ、フロリアン
(72)【発明者】
【氏名】チアン、ジュンコン
(72)【発明者】
【氏名】シアニ、アッティリオ
(72)【発明者】
【氏名】シームント、ステファン
(72)【発明者】
【氏名】シュミッツ、トーマス
【テーマコード(参考)】
3G091
3G190
4D058
4D148
4G169
【Fターム(参考)】
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(57)【要約】
内燃機関からの排気ガス用の触媒化微粒子フィルタであって、全長Lの微粒子フィルタと、微粒子フィルタ上にコーティングされ、第1の組成物を含む第1の触媒層であって、第1の組成物は、第1の担体材料と、第1の白金族金属及び/又は第1の触媒活性遷移金属と、を含む、第1の触媒層と、微粒子フィルタ上にコーティングされ、第2の組成物を含む第2の触媒層であって、第2の組成物は第2の担体材料を含む、第2の触媒層と、を含み、当該第1の触媒層は、当該微粒子フィルタの一部分の上に存在し、当該微粒子フィルタの軸方向の上流端又は下流端のいずれかから長さL1にわたって延び、L1は、Lの20~90%の範囲にある、触媒化微粒子フィルタが開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関からの排気ガス用の触媒化微粒子フィルタであって、
全長Lの微粒子フィルタ(PF)と、
前記微粒子フィルタ上にコーティングされ、第1の組成物を含む第1の触媒層であって、前記第1の組成物は、第1の担体材料と、第1の白金族金属(PGM)及び/又は第1の触媒活性遷移金属と、を含む、第1の触媒層と、
前記微粒子フィルタ上にコーティングされ、第2の組成物を含む第2の触媒層であって、前記第2の組成物は第2の担体材料を含む、第2の触媒層と、を含み、
前記第1の触媒層は、前記PFの一部の上に存在し、前記PFの軸方向の上流端又は下流端のいずれかから長さ(L1)にわたって延び、L1は、Lの20~90%の範囲にある、触媒化微粒子フィルタ。
【請求項2】
L1は、Lの25%~85%、好ましくはLの28%~80%の範囲にある、請求項1に記載の触媒化微粒子フィルタ。
【請求項3】
前記第1の触媒層の重量と前記PFのうちの前記第1の触媒層でコーティングされた部分の体積との比が、10~160g/L、好ましくは15~150g/L又は20~120g/Lの範囲にある、請求項1又は2に記載の触媒化微粒子フィルタ。
【請求項4】
前記第1の触媒層の重量と前記PFの総体積との比が、10~120g/L、好ましくは20~100g/Lの範囲にある、請求項1~3のいずれか一項に記載の触媒化微粒子フィルタ。
【請求項5】
前記第1の担体材料は、少なくとも1種の耐火性金属酸化物を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の触媒化微粒子フィルタ。
【請求項6】
前記第1の触媒層はウォッシュコートである、請求項1~5のいずれか一項に記載の触媒化微粒子フィルタ。
【請求項7】
前記第1の触媒活性遷移金属は、Cu、Fe、Co、Ni、La、Ce、Ag若しくはMn又はそれらの任意の組み合わせから選択され、好ましくはCe、Mn、Cu若しくはFe又はそれらの任意の組み合わせから選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の触媒化微粒子フィルタ。
【請求項8】
前記第2の担体材料は、少なくとも1種の無機材料を含み、好ましくは、前記無機材料は、無機酸化物及び無機塩から選択される、請求項1~7のいずれか一項に記載の触媒化微粒子フィルタ。
【請求項9】
前記第2の組成物は微粒子の形態にあり、好ましくは、前記第2の組成物は、0.1~50μm、好ましくは1~20μmのD90、より好ましくは3~10μmのD90を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の触媒化微粒子フィルタ。
【請求項10】
前記第2の触媒層の重量と前記PFの総体積との比が、0.5~20g/L、好ましくは0.6~15g/L、より好ましくは0.7~12g/Lの範囲にある、請求項1~9のいずれか一項に記載の触媒化微粒子フィルタ。
【請求項11】
前記第2の触媒層は、前記PFの全長L上に存在する、請求項1~10のいずれか一項に記載の触媒化微粒子フィルタ。
【請求項12】
前記第1の触媒層は前記PFの上流端から延びている、請求項1~11のいずれか一項に記載の触媒化微粒子フィルタ。
【請求項13】
前記第1の触媒層は前記PFの下流端から延びている、請求項1~11のいずれか一項に記載の触媒化微粒子フィルタ。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の触媒化微粒子フィルタを調製するための方法であって、
i)全長Lのフィルタ基材を提供するステップと、
ii)前記微粒子フィルタの前記上流端又は前記下流端のいずれかから前記第1の組成物を含有するスラリーで前記フィルタ基材をコーティングするステップと、
iii)ステップii)で得られた前記フィルタ基材を前記第2の組成物で更にコーティングするステップと、を含み、
前記フィルタ基材のうちの前記第1の組成物でコーティングされた部分の長さ(L1)がLの20~90%の範囲にある、方法。
【請求項15】
ステップ(iii)は、ステップ(ii)で得られた前記フィルタ基材を、前記フィルタ基材の片側を通してガスキャリアを介して微粒子形態の前記第2の組成物でコーティングすることによって行われる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
ステップ(ii)は、コーティング後に、前記コーティングされたフィルタ基材をか焼することを更に含む、請求項14又は15に記載の方法。
【請求項17】
内燃機関からの排気ガスの処理のための方法であって、前記機関からの前記排気ガスを請求項1~13のいずれか一項に記載の前記触媒化微粒子フィルタを通して流動させることを含む、方法。
【請求項18】
前記排気ガスは、未燃焼炭化水素、一酸化炭素、窒素酸化物、及び微粒子状物質を含む、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関からの排気ガスの処理のための部分的にコーティングされた触媒層を有する触媒化微粒子フィルタに関し、触媒化微粒子フィルタを調製するための方法に関し、及び内燃機関からの排気ガスの処理のための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関からの排気ガスは、窒素、水蒸気及び二酸化炭素を比較的多く含む。しかし、排気ガスはまた、不完全燃焼からの一酸化炭素、未燃燃料からの炭化水素、過度の燃焼温度からの窒素酸化物(NOx)、及び微粒子状物質(PM)などの有害物質及び/又は毒性物質を比較的少量含む。
【0003】
特定の内燃機関、例えば、希薄燃焼エンジン、ディーゼルエンジン、天然ガスエンジン、発電所、焼却炉、及びガソリンエンジンは、かなりの量の煤及び他の微粒子状物質を含む排気ガスを生成する傾向がある。通常、微粒子状物質排出量は、PM含有排気ガスを粒子フィルタに通すことによって改善することができる。
【0004】
2016年12月23日に、中華人民共和国の環境保護省(Ministry of Environmental Protection:MEP)は、中国6号規制の最終法案及び軽量車両からの排出量の測定方法(GB18352.6-2016、以下中国6号と呼ぶ)を公表したが、これは中国5号の排出基準よりもはるかに厳しい。特に、中国第6b号は、微粒子状物質(PM)に対する規制を取り入れ、オンボード診断(OBD)要件を採用している。更に、車両は国際調和軽量車両試験サイクル(WLTC)の下で試験されるべきであると施行されている。WLTCは、多くの急加速及び長時間の高速要件を含み、これは、リッチ(ラムダ<1)条件下又はディープリッチ(ラムダ<0.8)条件下で長時間(例えば、5秒超)に(燃料パドルが完全に押し下げられる必要があるため)「開ループ」状況を引き起こし得る高出力を要求する。
【0005】
微粒子基準がより厳しくなるにつれて、優れた濾過効率及び低い背圧を有する改善された微粒子フィルタを提供する必要性が生じる。
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的は、内燃機関からの排気ガス用の触媒化微粒子フィルタを提供することであり、この触媒化微粒子フィルタは、
全長Lの微粒子フィルタ(PF)と、
微粒子フィルタ上にコーティングされ、第1の組成物を含む第1の触媒層であって、第1の組成物は、第1の担体材料と、第1の白金族金属(PGM)及び/又は第1の触媒活性遷移金属と、を含む、第1の触媒層と、
微粒子フィルタ上にコーティングされ、第2の組成物を含む第2の触媒層であって、第2の組成物は第2の担体材料を含む、第2の触媒層と、を含み、
当該第1の触媒層は、当該PFの一部の上に存在し、当該PFの軸方向の上流端又は下流端のいずれかから長さ(L1)にわたって延び、L1は、Lの20~90%の範囲にある。
【0007】
本発明の別の目的は、内燃機関からの排気ガスの処理のための触媒化微粒子フィルタを調製するための方法を提供することである。
【0008】
本発明の更なる目的は、内燃機関からの排気ガスの処理のための方法であって、エンジンからの排気ガスを本発明による触媒化微粒子フィルタを通して流動させるステップを含む方法を提供することである。
【0009】
驚くべきことに、上記の目的は、以下の実施形態によって達成され得ることが見出された。
【0010】
項目1.内燃機関からの排気ガス用の触媒化微粒子フィルタであって、
全長Lの微粒子フィルタ(PF)と、
微粒子フィルタ上にコーティングされ、第1の組成物を含む第1の触媒層であって、第1の組成物は、第1の担体材料と、第1の白金族金属(PGM)及び/又は第1の触媒活性遷移金属と、を含む、第1の触媒層と、
微粒子フィルタ上にコーティングされ、第2の組成物を含む第2の触媒層であって、第2の組成物は第2の担体材料を含む、第2の触媒層と、を含み、
当該第1の触媒層は、当該PFの一部の上に存在し、当該PFの軸方向の上流端又は下流端のいずれかから長さ(L1)にわたって延び、L1は、Lの20~90%の範囲にある、触媒化微粒子フィルタ。
項目2.L1は、Lの25%~85%、好ましくはLの28%~80%の範囲にある、項目1に記載の触媒化微粒子フィルタ。
項目3.第1の触媒層の重量とPFのうちの第1の触媒層でコーティングされた部分の体積との比が、10~160g/L、好ましくは15~150g/L又は20~120g/Lの範囲にある、項目1又は2に記載の触媒化微粒子フィルタ。
項目4.第1の触媒層の重量とPFの総体積との比が、10~120g/L、好ましくは20~100g/Lの範囲にある、項目1~3のいずれか一項に記載の触媒化微粒子フィルタ。
項目5.第1の担体材料は、少なくとも1種の耐火性金属酸化物を含む、項目1~4のいずれか一項に記載の触媒化微粒子フィルタ。
項目6.第1の触媒層はウォッシュコートである、項目1~5のいずれか一項に記載の触媒化微粒子フィルタ。
項目7.第1の触媒活性遷移金属は、Cu、Fe、Co、Ni、La、Ce、Ag若しくはMn又はそれらの任意の組み合わせから選択され、好ましくはCe、Mn、Cu若しくはFe又はそれらの任意の組み合わせから選択される、項目1~6のいずれか一項に記載の触媒化微粒子フィルタ。
項目8.第2の担体材料は、少なくとも1種の無機材料を含み、好ましくは、無機材料は、無機酸化物及び無機塩から選択される、項目1~7のいずれか一項に記載の触媒化微粒子フィルタ。
項目9.第2の組成物は微粒子の形態にあり、好ましくは、第2の組成物は、0.1~50μm、好ましくは1~20μmのD90、より好ましくは3~10μmのD90を有する、項目1~8のいずれか一項に記載の触媒化微粒子フィルタ。
項目10.第2の触媒層の重量とPFの総体積との比が、0.5~20g/L、好ましくは0.6~15g/L、より好ましくは0.7~12g/Lの範囲にある、項目1~9のいずれか一項に記載の触媒化微粒子フィルタ。
項目11.第2の触媒層は、PFの全長L上に存在する、項目1~10のいずれか一項に記載の触媒化微粒子フィルタ。
項目12.当該第1の触媒層はPFの上流端から延びている、項目1~11のいずれか一項に記載の触媒化微粒子フィルタ。
項目13.当該第1の触媒層はPFの下流端から延びている、項目1~11のいずれか一項に記載の触媒化微粒子フィルタ。
項目14.項目1~13のいずれか一項に記載の触媒化微粒子フィルタを調製するための方法であって、
i)全長Lのフィルタ基材を提供するステップと、
ii)微粒子フィルタの上流端又は下流端のいずれかから第1の組成物を含有するスラリーでフィルタ基材をコーティングするステップと、
iii)ステップii)で得られたフィルタ基材を第2の組成物で更にコーティングするステップと、を含み、
フィルタ基材のうちの第1の組成物でコーティングされた部分の長さ(L1)がLの20~90%の範囲にある、方法。
項目15.ステップ(iii)は、ステップ(ii)で得られたフィルタ基材を、フィルタ基材の片側を通してガスキャリアを介して微粒子形態の第2の組成物でコーティングすることによって行われる、項目14に記載の方法。
項目16.ステップ(ii)は、コーティング後に、コーティングされたフィルタ基材をか焼することを更に含む、項目14又は15に記載の方法。
項目17.内燃機関からの排気ガスの処理のための方法であって、機関からの排気ガスを項目1~13のいずれか一項に記載の触媒化微粒子フィルタを通して流動させることを含む、方法。
項目18.排気ガスは、未燃焼炭化水素、一酸化炭素、窒素酸化物、及び微粒子状物質を含む、項目17に記載の方法。
【0011】
本発明の触媒化微粒子フィルタは、背圧を増加させることなく、より良好な濾過効率を得ること、及び/又は濾過効率を低下させることなく、より低い背圧を生成すること、及び/又は濾過効率を低下させることなく、若しくは背圧を増加させることなく、より少ない量の第2の触媒層を使用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施例1及び実施例2において調製されたフレッシュな状態の触媒化微粒子フィルタの背圧のプロットである。
【
図2】実施例1及び実施例2において調製されたフレッシュな状態の触媒化微粒子フィルタの濾過効率のプロットである。
【
図3】実施例3、4、5及び6において調製されたフレッシュな状態の触媒化微粒子フィルタの背圧のプロットである。
【
図4】実施例3、4、5及び6において調製されたフレッシュな状態の触媒化微粒子フィルタの濾過効率のプロットである。
【
図5】実施例7、8、9及び10において調製されたフレッシュな状態の触媒化微粒子フィルタの背圧のプロットである。
【
図6】実施例7、8、9及び10において調製されたフレッシュな状態の触媒化微粒子フィルタの濾過効率のプロットである。
【
図7(a)】例示的なウォールフローフィルタを示す図である。
【
図7(b)】例示的なウォールフローフィルタを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の略語が使用される。
「HC」=炭化水素。
「NOx」=窒素酸化物。
「CO」=一酸化炭素。
「WLTC」=国際調和軽量車両試験サイクル。
「PM」=微粒子状物質。
「CCC」=密結合触媒。
「UFC」=床下触媒。
「OSC」=酸素貯蔵成分。
「PGM」=白金族金属。
「WFF」=ウォールフローフィルタ。
「SCR触媒」=選択的接触還元触媒。
「DOC」=ディーゼル酸化触媒。
「DEC」=ディーゼル発熱触媒。
「TWC触媒」=三元変換触媒。
【0014】
定義されていない冠詞「a」、「an」、「the」は、その冠詞に続く用語によって指定される種のうちの1つ以上を意味する。
【0015】
本開示の文脈において、特徴について言及された任意の特定の値(終点としての範囲において言及された特定の値を含む)は、新たな範囲を形成するために組み換えられ得る。
【0016】
本開示の文脈において、そのように定義された各態様は、そうでないことが明確に示されない限り、任意の他の態様又は複数の態様と組み合わされ得る。特に、好ましい又は有利であると示された任意の特徴は、好ましい又は有利であると示された任意の他の1特徴又は複数の特徴と組み合わされてもよい。
【0017】
本明細書で使用される場合、用語「触媒」又は「触媒組成物」は、反応を促進する材料を指す。
【0018】
本明細書で使用される場合、「上流」及び「下流」という用語は、エンジンが上流位置にあり、テールパイプ及びフィルタなどの任意の汚染低減物品がエンジンから下流にある状態で、エンジンからテールパイプに向かうエンジン排気ガス流の流動に従う相対的な方向を指す。
【0019】
「排気ガス」、「排気流」、「エンジン排気流」、「排気ガス流」などの用語は、同様に固体又は液体の微粒子状物質を含有し得る流動するエンジン流出ガスの任意の組み合わせを指す。この流れは、ガス状成分を含み、例えば、希薄燃焼エンジンの排気であり、これは、液滴、固体粒子などのある種の非ガス状成分を含有することがある。希薄燃焼エンジンの排気流は、典型的には、燃焼生成物、炭化水素、不完全燃焼生成物、窒素酸化物、可燃性及び/又は炭素質の微粒子状物質(煤)、並びに未反応酸素及び/又は窒素を更に含む。
【0020】
本明細書で用いられるとき、「ウォッシュコート」という用語は、基材に塗布された触媒材料又は他の材料の薄い接着性コーティングの技術において通常の意味を有する。
【0021】
ウォッシュコートは、液体媒体中に特定の固体含有量(例えば、10~90重量%又は30~90重量%)の粒子を含有するスラリーを調製することによって形成され、次いで、これは基材上にコーティングされ、乾燥されてウォッシュコート層を提供する。
【0022】
触媒は「フレッシュ(fresh)」であってもよく、これは、それが新しいものであり、長期間にわたって熱又は熱応力に曝露されていないことを意味する。「フレッシュ」はまた、触媒が最近調製され、いかなる排気ガスにも曝露されていないことを意味し得る。同様に、「エイジド(aged)」触媒は、新しいものではなく、長期間(すなわち、3時間超)にわたって排気ガス及び/又は高温(すなわち、500℃超)に曝露されたものである。
【0023】
触媒材料又は触媒ウォッシュコート中の「担体」は、沈殿、会合、分散、含浸、又は他の適切な方法によって、金属(例えば、PGM)、安定剤、促進剤、結合剤などを受容する材料を指す。例示的な担体としては、本明細書において以下に記載されるような耐火性金属酸化物担体が挙げられる。
【0024】
「耐火性金属酸化物担体」は、例えば、アルミナ、シリカ、チタニア、セリア、及びジルコニア、マグネシア、酸化バリウム、酸化マンガン、酸化タングステン、及び希土類金属酸化物、希土類金属酸化物、卑金属酸化物、並びにそれらの物理的混合物、化学的組み合わせ及び/又は原子的にドープされた組み合わせを含む金属酸化物であり、高表面積又は活性化アルミナなどの活性化化合物を含む。金属酸化物の例示的な組み合わせとしては、アルミナ-ジルコニア、アルミナ-セリア-ジルコニア、ランタナ-アルミナ、ランタナ-ジルコニア-アルミナ、バリア-アルミナ、バリア-ランタナ-アルミナ、バリア-ランタナ-ネオジミアアルミナ、及びアルミナ-セリアが挙げられる。例示的なアルミナとしては、大細孔ベーマイト、ガンマ-アルミナ、及びデルタ/シータアルミナが挙げられる。例示的なプロセスにおいて出発物質として使用される有用な市販のアルミナとしては、高嵩密度ガンマ-アルミナ、低又は中嵩密度大細孔ガンマ-アルミナ、並びに低嵩密度大細孔ベーマイト及びガンマ-アルミナなどの活性アルミナが挙げられる。このような材料は一般に、得られる触媒に耐久性を与えると考えられている。
【0025】
「高表面積耐火性金属酸化物担体」とは、具体的には、20オングストロームより大きい細孔と広範な細孔分布を有する担体粒子を指す。高表面積耐火性金属酸化物担体、例えば、アルミナ担体材料は、「ガンマアルミナ」又は「活性アルミナ」とも呼ばれ、典型的には、60平方メートル/グラム(「m2/g」)を超え、多くの場合、最大約200m2/g以上のフレッシュな材料のBET表面積を示す。このような活性アルミナは、通常、アルミナのγ相とδ相の混合物であるが、かなりの量のη、κ及びθアルミナ相を含有してもよい。
【0026】
「NOx」という用語は、NO又はNO2などの酸化窒素化合物を指す。
【0027】
本明細書で使用される場合、「酸素貯蔵成分」(OSC)という用語は、多価状態を有し、還元条件下で一酸化炭素(CO)及び/又は水素などの還元剤と活発に反応し、次いで酸化条件下で酸素又は窒素酸化物などの酸化剤と反応することができる実体を指す。酸化物貯蔵成分の例としては、希土類酸化物、特にセリア、ランタナ、プラセオジミア、ネオジミア、ニオビア、ユーロピア、サマリア、イッテルビア、イットリア、ジルコニア、及びこれらの混合物が挙げられる。一実施形態では、酸化物貯蔵成分は、セリア-ジルコニア複合体又は希土類安定化セリア-ジルコニアを含む。
【0028】
白金族金属(PGM)成分とは、PGM(Ru、Rh、Os、Ir、Pd、Pt及び/又はAu)を含む任意の成分を指す。例えば、PGMは、0価の金属形態であってもよく、あるいはPGMは、酸化物形態であってもよい。「PGM成分」への言及は、任意の原子価状態のPGMの存在を許容する。用語「白金(Pt)成分」、「ロジウム(Rh)成分」、「パラジウム(Pd)成分」、「イリジウム(Ir)成分」、「ルテニウム(Ru)成分」などは、それぞれの白金族金属化合物、錯体などを指し、これらは、焼成又は触媒の使用の際に、分解するか、そうでなければ触媒的に活性な形態、通常は金属又は金属酸化物に変換する。
【0029】
本発明の一態様は、内燃機関からの排気ガス用の触媒化微粒子フィルタであって、
全長Lの微粒子フィルタ(PF)と、
微粒子フィルタ上にコーティングされ、第1の組成物を含む第1の触媒層であって、第1の組成物は、第1の担体材料と、第1の白金族金属(PGM)及び/又は第1の触媒活性遷移金属と、を含む、第1の触媒層と、
微粒子フィルタ上にコーティングされ、第2の組成物を含む第2の触媒層であって、第2の組成物は第2の担体材料を含む、第2の触媒層と、を含み、
当該第1の触媒層は、当該PFの一部の上に存在し、当該PFの軸方向の上流端又は下流端のいずれかから長さ(L1)にわたって延び、L1は、Lの20~90%の範囲にある、触媒化微粒子フィルタを対象とする。
【0030】
微粒子フィルタ
微粒子フィルタは、典型的には多孔質基材から形成される。多孔質基材は、例えば、コージエライト、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ジルコニア、ムライト、スポジュメン、アルミナ-シリカ-マグネシア、ケイ酸ジルコニウム、及び/又はチタン酸アルミニウムなどのセラミック材料、典型的にはコージエライト又は炭化ケイ素を含んでもよい。多孔質基材は、内燃機関の排気処理システムにおいて典型的に使用されるタイプの多孔質基材であってもよい。
【0031】
内燃機関は、希薄燃焼エンジン、ディーゼルエンジン、天然ガスエンジン、発電所、焼却炉、又はガソリンエンジンであってもよい。
【0032】
多孔質基材は、従来のハニカム構造を示してもよい。フィルタは、従来の「貫流フィルタ」の形態をとることができる。あるいは、フィルタは、従来の「ウォールフローフィルタ」(WFF)の形態をとってもよい。そのようなフィルタは、当技術分野で知られている。
【0033】
微粒子フィルタは、好ましくはウォールフローフィルタである。
図7(a)及び
図7(b)を参照すると、例示的なウォールフローフィルタが提示されている。ウォールフローフィルタは、排気ガス(13)(微粒子状物質を含む)の流動を、多孔質材料で形成された壁を通過するように押しやることによって機能する。
【0034】
ウォールフローフィルタは、典型的には、第1の面と第2の面とを有し、第1の面と第2の面との間に長手方向を規定する。使用時、第1の面及び第2の面のうちの一方は、排気ガス(13)の入口面(上流端)となり、他方は、処理された排気ガス(14)の出口面(下流端)となる。従来のウォールフローフィルタは、長手方向に延びる第1及び第2の複数のチャネルを有する。第1の複数のチャネル(11)は、入口面(01)で開放されており、出口面(02)で閉鎖されている。第2の複数のチャネル(12)は、出口面(02)で開放されており、入口面(01)で閉鎖されている。チャネルは、チャネル間に一定の壁厚を提供するために互いに平行であることが好ましい。その結果、入口面から複数のチャネルのうちの1つに入るガスは、チャネル壁の入口側(21)から出口側(22)へとチャネル壁(15)を通って他の複数のチャネルへ拡散することなく、モノリスから出ることができない。チャネルは、チャネルの開放端へのシーラント材料の導入によって閉鎖される。好ましくは、第1の複数のチャネルの個数は、第2の複数のチャネルの個数に等しく、各複数の個数がモノリス全体にわたって均一に分布している。好ましくは、長手方向に直交する平面内で、ウォールフローフィルタは、1平方インチ当たり100~500個、好ましくは200~400個のチャネルを有する。例えば、入口面(01)上で、開放チャネル及び閉鎖チャネルの密度は、1平方インチ当たり200~400チャネルである。チャネルは、長方形、正方形、円形、楕円形、三角形、六角形、又は他の多角形の断面を有することができる。
【0035】
第1の触媒層
本発明によれば、第1の触媒層は、微粒子フィルタの上流端又は下流端のいずれかから延びている。
【0036】
PFのうちの第1の触媒でコーティングされた部分の長さ(L1)は、微粒子フィルタの全長(L)の20~90%の範囲、好ましくは全長Lの25%~85%の範囲であってよく、例えば、L1は、全長Lの25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、又は90%、好ましくは全長Lの28%~80%又は30%~78%又は40%~60%であってよい。
【0037】
一実施形態では、第1の触媒層の重量とPFのうちの第1の触媒層でコーティングされた部分の体積との比は、10~160g/L、例えば10g/L、20g/L、30g/L、40g/L、50g/L、60g/L、80g/L、100g/L、120g/L、140g/L又は160g/L、好ましくは15~150g/L、又は20~150g/L、又は30~150g/L、又は40~150g/L、又は55~145g/L、20~120g/L、又は30~120g/L、又は40~120g/L、又は55~120g/L、又は20~100g/L、又は30~100g/L、又は40~100g/Lの範囲にある。
【0038】
PFのうちの第1の触媒層でコートされた部分の体積に関して、半径R、高さHの円筒の形態をなす微粒子フィルタを例にとると、L1がLの50%である場合、PFのうちの第1の触媒層でコートされた部分の体積は、πR2×H×0.5のように計算され得る。
【0039】
一実施形態では、第1の触媒層の重量とPFの総体積との比は、10~120g/L、例えば10g/L、20g/L、30g/L、40g/L、50g/L、60g/L、70g/L、80g/L、90g/L、又は100g/L、好ましくは20~100g/L又は30~90g/L又は35~75g/Lの範囲にあり得る。
【0040】
本発明によれば、第1の触媒層は第1の組成物を含み、第1の組成物は、第1の担体材料と、第1の白金族金属(PGM)及び/又は第1の触媒活性遷移金属と、を含む。
【0041】
第1の白金族金属(PGM)は、Ru、Rh、Os、Ir、Pd、Pt及びAuから選択され得る。好ましい実施形態において、PGMは、Pt、Rh及びPdから選択される。
【0042】
第1の触媒層中の第1のPGMの重量とPFのうちの第1の触媒層でコーティングされた部分の体積との比は、0.1~3g/L、例えば0.1g/L、0.12g/L、0.15g/L、0.18g/L、0.2g/L、0.25g/L、0.3g/L、0.5g/L、0.8g/L、1.0g/L、1.5g/L、2g/L、2.5g/L又は3g/L、好ましくは0.15~2.5g/L、又は0.18~2.2g/Lの範囲にあり得る。
【0043】
第1の触媒層中の第1のPGMの重量とPFの総体積との比は、0.07~1.8g/L、例えば0.08g/L、0.09g/L、0.1g/L、0.12g/L、0.15g/L、0.18g/L、0.2g/L、0.25g/L、0.3g/L、0.5g/L、0.8g/L、1g/L、1.2g/L、1.5g/L、1.6g/L又は1.8g/L、好ましくは0.1~1.5g/L又は0.15~1.2g/Lの範囲にあり得る。
【0044】
第1の触媒活性遷移金属は、Cu、Fe、Co、Ni、La、Ce、Ag若しくはMn、又はそれらの任意の組み合わせから選択されてよく、好ましくはCe、Mn、Cu若しくはFe、又はそれらの任意の組み合わせから選択されてよい。
【0045】
第1の触媒層中の第1の触媒活性遷移金属の重量とPFのうちの第1の触媒層でコーティングされた部分の体積との比は、1.5~18g/L、例えば1.0g/L、1.5g/L、2g/L、2.5g/L、3g/L、4g/L、5g/L、6g/L、8g/L、10g/L、12g/L、14g/L、16g/L又は18g/L、好ましくは2~15g/Lの範囲にあり得る。
【0046】
第1の触媒層中の第1の触媒活性遷移金属の重量とPFの総体積との比は、1~15g/L、例えば1.0g/L、1.5g/L、2g/L、2.5g/L、3g/L、4g/L、5g/L、6g/L、8g/L、10g/L、12g/L、14g/L又は15g/L、好ましくは1.5~10g/Lの範囲にあり得る。
【0047】
本発明によれば、当該第1の触媒層は、当該PFの一部分上に存在し、長さ(L1)にわたって当該PFの軸方向の上流端又は下流端のいずれかから延びている。本発明によれば、残りの部分は、第1の組成物を含む層を実質的に含まない。本明細書で使用される場合、「第1の組成物を含む層を実質的に含まない」とは、残りの部分における第1の組成物を含む層の重量と微粒子フィルタの残りの部分の体積との比が、5g/L未満、好ましくは3g/L未満、より好ましくは2g/L未満又は1g/L未満又は0.5g/L未満又は0.1g/L未満であることを意味する。
【0048】
本発明によれば、第1の組成物は、第1の担体材料を含む。好ましくは、第1の担体材料は、少なくとも1種の耐火性金属酸化物を含む。
【0049】
耐火性金属酸化物は、PGM及び/又は触媒活性遷移金属の担体として使用され得る。耐火性金属酸化物の詳細については、「耐火性金属酸化物担体」についての上記の説明が参照され得る。一実施形態において、耐火性金属酸化物は、アルミナ、ジルコニア、シリカ、チタニア、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0050】
好ましい実施形態において、第1の組成物は、少なくとも1種の酸素貯蔵成分(OSC)を更に含むことができる。OSCの詳細は、「酸素貯蔵成分」についての上記の説明が参照され得る。
【0051】
好ましい実施形態において、第1の組成物は、少なくとも1種のドーパントを更に含むことができる。本明細書で使用される場合、用語「ドーパント」は、意図的に添加されたドーパントを有さない第1の組成物と比較して、第1の組成物の活性を増強するために意図的に添加される成分を指す。本開示において、例示的なドーパントは、ランタン、ネオジム、プラセオジム、イットリウム、バリウム、セリウム、ニオブ及びそれらの組み合わせなどの金属の酸化物である。
【0052】
第1の組成物は、選択的接触還元(SCR)触媒、ディーゼル酸化触媒(DOC)、AMOx触媒、NOxトラップ、NOx吸収体触媒のうちの1つ以上を更に含み得る。
【0053】
本明細書で使用される場合、「選択的接触還元」及び「SCR」という用語は、窒素還元剤を使用して窒素酸化物を窒素(N2)に還元する触媒プロセスを指す。SCR触媒は、MOR、USY、ZSM-5、ZSM-20、β-ゼオライト、CHA、LEV、AEI、AFX、FER、SAPO、ALPO、バナジウム、酸化バナジウム、酸化チタン、酸化タングステン、酸化モリブデン、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化ニオブ、鉄、酸化鉄、酸化マンガン、銅、モリブデン、タングステン、及びそれらの混合物の前方(front)で選択された少なくとも1種の材料を含むことができる。SCR触媒の活性成分のための担体構造は、任意の適切なゼオライト、ゼオタイプ、又は非ゼオライト化合物を含むことができる。あるいは、SCR触媒は、活性成分として、金属、金属酸化物、又は混合酸化物を含んでもよい。遷移金属担持ゼオライト(例えば、銅-チャバザイト又はCu-CHA、並びに銅-レビ沸石又はCu-LEV、並びにFe-ベータ)及びゼオタイプ(例えば、銅-SAPO又はCu-SAPO)が好ましい。
【0054】
本明細書で使用される場合、「ディーゼル酸化触媒」及び「DOC」という用語は、当該技術分野において周知であるディーゼル酸化触媒を指す。ディーゼル酸化触媒は、COをCO2に、気相HC及びディーゼル微粒子の有機画分(可溶性有機画分)をCO2及びH2Oに酸化するように設計されている。典型的なディーゼル酸化触媒は、アルミナ、シリカ-アルミナ、チタニア、シリカ-チタニア、及びゼオライトなどの高表面積無機酸化物担体上に白金及び任意選択のパラジウムを含む。本明細書で使用される場合、この用語は、発熱を生じるDEC(ディーゼル発熱触媒)を含む。
【0055】
本明細書で使用される場合、「アンモニア酸化触媒」及び「AMOx」という用語は、排気ガス流からアンモニアを除去するのに有効な、1つ以上の白金族金属(PGM)などの少なくとも担持された貴金属成分を含む触媒を指す。特定の実施形態において、貴金属は、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、銀又は金を含んでもよい。特定の実施形態において、貴金属成分は、貴金属の物理的混合物又は化学的若しくは原子的にドープされた組み合わせを含む。
【0056】
貴金属成分は、典型的には、高表面積耐火性金属酸化物担体上に堆積される。好適な高表面積耐火性金属酸化物の例としては、アルミナ、シリカ、チタニア、セリア、及びジルコニア、マグネシア、酸化バリウム、酸化マンガン、酸化タングステン、及び希土類金属酸化物、卑金属酸化物、並びにこれらの物理的混合物、化学的組み合わせ、及び/又は原子的にドープされた組み合わせが挙げられる。
【0057】
本明細書で使用される場合、用語「NOx吸着触媒」及び「NOxトラップ(希薄NOxトラップとも呼ばれ、略称は「LNT」である)は、希薄燃焼内燃機関からの窒素酸化物(NO及びNO2)排出を吸着によって還元するための触媒を指す。典型的なNOxトラップとしては、Mg、Ca、Sr及びBaの酸化物などのアルカリ土類金属酸化物、Li、Na、K、Rb及びCsの酸化物などのアルカリ金属酸化物、並びにCe、La、Pr及びNdの酸化物などの希土類金属酸化物が挙げられ、アルミナ担体上に分散された白金などの貴金属触媒と組み合わされて、内燃機関からの排気ガスの浄化に使用されている。NOx貯蔵のためにはバリアが通常好ましく、バリアはリーンなエンジン動作で硝酸塩を形成し、リッチ条件下で比較的容易に硝酸塩を放出するためである。
【0058】
一実施形態において、第1の触媒層はウォッシュコートである。ウォッシュコートの詳細については、「ウォッシュコート」についての上記の説明が参照され得る。
【0059】
一実施形態において、第1の触媒層は、第1の組成物から形成される。
【0060】
一実施形態では、第1の触媒層は、PFの上流端から延びている。一実施形態では、第1の触媒層は、PFの下流端から延びている。
【0061】
第2の触媒層
本発明によれば、本発明の触媒化微粒子フィルタは、微粒子フィルタ上にコーティングされた第2の触媒層を更に含み、第2の触媒層は第2の組成物を含み、第2の組成物は第2の担体材料を含む。
【0062】
本発明によれば、第2の担体材料は、少なくとも1種の無機材料を含み、好ましくは、無機材料は、無機酸化物及び無機塩から選択される。
【0063】
無機材料及び無機塩は、アルミナ、ジルコニア、セリア、シリカ、チタニア、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化マンガン、酸化カルシウム、シリケートゼオライト、アルミノシリケートゼオライト、セリア以外の希土類金属酸化物、Al、Zr、Ti、Si及びCeの2種以上を含む混合酸化物、セリウムジルコニウム混合酸化物、水和アルミナ、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム及び炭酸亜鉛から、好ましくはガンマアルミナなどのアルミナから選択されてよい。
【0064】
本発明によれば、第2の組成物は微粒子の形態にある。一実施形態では、第2の組成物は、0.1~50μm、例えば0.2、0.5、0.8、1、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、15、18、20、25、30、35、40、45μm、好ましくは1~20μmのD90を有し、より好ましくは3~10μm、例えば4、5、6、7、8、又は9μmのD90を有する。一実施形態において、第2の組成物は、1.2~8μm、好ましくは1.8~6μm、例えば、2、3、4、又は5μmのD50を有する。一実施形態において、第2の組成物は、0.4~2.2μm、好ましくは0.6~1.5μmのD10を有する。
【0065】
「D90」、「D50」及び「D10」は、累積粒度分布において、小粒径側からの累積重量が90%、50%及び10%に達する点を指す、それらの通常の意味を有する。D90は、それぞれ粒度分布を測定することによって決定される値である。粒度分布は、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定される。
【0066】
一実施形態では、第2の担体材料は、例えば100~250m2/gの範囲、好ましくは120~200m2/gの範囲の77K窒素収着によって特徴付けられる高いBET比表面積を有する。好ましい実施形態において、無機材料は、空気中で1000℃で4時間か焼した後に、50~120m2g-1、好ましくは60~95m2/gの範囲の77K窒素収着によって特徴付けられる比表面積を有する。
【0067】
一実施形態では、第2の組成物は、好ましくは白金(Pt)、パラジウム(Pd)及びロジウム(Rh)、並びにこれらの混合物からなる群から選択される白金族金属(PGM)を更に含む。PGMは、排気ガス中のNOx、CO及び炭化水素をN2、CO2及びH2Oに変換し、微粒子フィルタ上に捕捉された微粒子物質の酸化を引き起こすのに触媒的に有効な量で存在する。好ましい実施形態において、第2の組成物は、PGM含有無機材料を含む。PGM含有無機材料は、無機材料にPGM含有液体、例えば、アミン錯体溶液又はPGMの硝酸塩(例えば、硝酸白金、硝酸パラジウム、及び硝酸ロジウム)の溶液を含浸させることによって調製され得る。含浸後、混合物はか焼され得る。
【0068】
一実施形態において、第2の触媒層及び第2の組成物は、白金族金属を含まない。
【0069】
第2の触媒層の重量とPFの総体積との比は、0.5~20g/Lの範囲、例えば、0.6g/L、0.7g/L、0.8g/L、0.9g/L、1.0g/L、2.0g/L、5g/L、8g/L、10g/L、12g/L、15g/L、18g/L、又は20g/L、好ましくは0.6~15g/L、より好ましくは0.7~12g/Lにあり得る。
【0070】
本発明によれば、第2の触媒層は、PFの全長L上に存在する。本発明によれば、第2の触媒層は、入口チャネル上に存在してもよい。
【0071】
本発明によれば、第2の触媒層は、ガスキャリアを介してコーティングされてもよい。ガスキャリアを介したコーティングの詳細は、本発明の触媒微粒子フィルタを調製するための方法におけるステップ(iii)についての以下の説明が参照され得る。
【0072】
一実施形態において、第2の触媒層は、第2の組成物から形成される。
【0073】
触媒化微粒子フィルタを調製するための方法及びPFの使用
本発明の別の態様は、本発明による触媒化微粒子フィルタを調製するための方法であって、
i)全長Lのフィルタ基材を提供するステップと、
ii)微粒子フィルタの上流端又は下流端のいずれかから第1の組成物を含有するスラリーでフィルタ基材をコーティングするステップと、
iii)ステップii)で得られたフィルタ基材を第2の組成物で更にコーティングするステップと、を含み、
フィルタ基材のうちの第1の組成物でコーティングされた部分の長さ(L1)がLの20~90%の範囲にある、方法に関する。
【0074】
ステップii)におけるスラリーは、液体媒体(水など)を白金族金属(PGM)成分及び耐火性金属酸化物、並びに存在する場合にはOSC及びドーパントと混合することによって形成され得る。好ましい実施形態において、PGM成分(例えば、PGM塩の溶液の形態)は、例えば、湿潤粉末を得るための初期湿潤技術によって、耐火性金属酸化物担体上に(例えば、粉末として)含浸され得る。金属成分を担体粒子上に含浸又は堆積させるために使用される液体媒体が、金属又はその化合物又はその錯体又は触媒組成物中に存在し得る他の成分と不利に反応せず、加熱及び/又は減圧の適用時に揮発又は分解によって除去することができる限り、PGM成分の水溶性PGM化合物又は塩又は水分散性化合物又は錯体が使用され得る。一般に、経済性と環境面の両方の観点から、PGM成分の可溶性化合物、塩、又は錯体の水溶液が有利に利用される。いくつかの実施形態において、PGM成分は、共含浸法によって担体上に担持される。共含浸技術は当業者に公知であり、例えば、関連する教示について参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,943,548号に開示されている。湿潤粉末が水などの液体媒体と混合されて、スラリーを形成し得る。
【0075】
スラリーは粉砕されて、粒子の混合及び均質な材料の形成が促進され得る。粉砕は、ボールミル、連続ミル、又は他の同様の装置で達成されてよく、スラリーの固形分は、例えば、約20~60重量%、より具体的には約30~40重量%であり得る。一実施形態において、粉砕後のスラリーは、約1~約30ミクロンのD90粒径によって特徴付けられる。D90は、粒子の90%がより微細な粒径を有する粒径として定義される。
【0076】
次いで、当技術分野で知られている堆積方法を使用して、PFの上流端又は下流端のいずれかから微粒子フィルタ上にスラリーがコーティングされた。
【0077】
スラリーでコーティングした後、フィルタ基材は乾燥され得る。スラリー中の水の大部分は、その後のか焼中に生成される水分の量が減少するように、乾燥によって除去され得る。従来の乾燥方法としては、高温での乾燥(例えば、100~200℃で1分~2時間)又はマイクロ波による乾燥が挙げられる。マイクロ波乾燥の入力電力は1kW~12kWであってもよく、持続時間は5分~2時間であってもよい。次に、フィルタ基材は、通常、か焼される。例示的なか焼プロセスは、約400~約700℃の温度で約10分~約3時間、空気中で熱処理することを含む。か焼ステップ中に、PGM成分は、金属又はその金属酸化物の触媒的に活性な形態に変換される。上記のプロセスは、必要に応じて繰り返され得る。
【0078】
ステップ(iii)は、ステップ(ii)で得られたフィルタ基材を、フィルタ基材の片側を通してガスキャリアを介して微粒子形態の第2の組成物でコーティングすることによって行われ得る。
【0079】
第2の組成物は、入口チャネル上にコーティングされ得る。
【0080】
第2の組成物でコーティングした後、フィルタ基材は乾燥及び/又はか焼されてもよく、例えば120~200℃で乾燥されること、及び/又は350~550℃で30分~3時間か焼されることが可能である。
【0081】
本発明の更なる態様は、内燃機関からの排気ガスの処理のための方法であって、エンジンからの排気ガスを、本発明による微粒子フィルタ又は本発明による方法によって調製された微粒子フィルタを通して流動させるステップを含む方法に関する。排気ガスは、未燃焼炭化水素、一酸化炭素、窒素酸化物、及び微粒子状物質を含む。
【0082】
実施例
本発明は、以下の実施例によって更に説明されるが、これらは本発明を説明するために記載されており、本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。特に明記しない限り、全ての部及び百分率は重量によるものであり、全ての重量百分率は、特に明記しない限り、含水量を除外することを意味する乾燥基準で表される。実施例の各々において、フィルタ基材はコージェライト製であった。
【0083】
実施例1-比較例
実施例1の触媒化微粒子フィルタは、フィルタ基材の全長にわたって軸方向に延びる、上流端からコーティングされた第1の触媒層と、ウォールフローフィルタ基材の上流端からコーティングされた第2の触媒層との二重コートを使用して調製した。ウォールフローフィルタ基材は、118.4mm(D)×127mm(L)のサイズ、1.4Lの体積、300セル/平方インチのセル密度、約200μmの壁厚、65%の気孔率、及び水銀圧入測定による直径17μmの平均細孔径を有していた。
【0084】
第1の触媒層は、20g/ft3(0.71g/L、Pd/Rh=3/1)のPGM担持量を有する三元変換(TWC)触媒複合体を含有していた。Pd/Rh含有触媒層を以下のように調製した。
【0085】
硝酸パラジウム溶液の形態のパラジウムを、プラネタリーミキサーによって、耐火性アルミナ及び約40重量%のセリアを有する安定化セリア-ジルコニア複合体上に含浸させて、初期湿潤を達成しながら湿潤粉末を形成した。硝酸ロジウム溶液の形態のロジウムを、プラネタリーミキサーによって、耐火性アルミナ及び約40重量%のセリアを有する安定化セリア-ジルコニア複合体上に含浸させて、初期湿潤を達成しながら湿潤粉末を形成した。上記湿潤粉末を水に添加し、続いて水酸化バリウム及び硝酸ジルコニウム溶液を添加することによって水性スラリーを形成した。次に、スラリーを90%の粒径が5μmになるまで粉砕した。次いで、スラリーをウォールフローフィルタ基材の上流端からコーティングし、基材の全長を覆った。コーティング後、フィルタ基材+ウォッシュコートを150℃で乾燥させ、次いで550℃の温度で約1時間にわたってか焼した。か焼されたPd/Rh触媒層は、68.4重量%のセリア-ジルコニア複合体、0.70重量%のパラジウム、0.23重量%のロジウム、4.6重量%の酸化バリウム、1.4重量%の酸化ジルコニアを有し、残りはアルミナであった。第1の触媒層の総担持量は、1.24g/in3(75.67g/L)であった。
【0086】
第2の触媒層は、高表面積アルミナ粉末(約150m2/g)であった。この粉末は、90%が5μm、50%が2μm、10%が0.8μmである粒度分布、及び空気中で1000℃で4時間にわたってか焼した後に66m2/gである比表面積(BETモデル、77K窒素吸着測定)を有した。この粉末をガスキャリアと混合し、室温で上流端からフィルタ基材に吹き込んだ。ガスキャリアの流量は500kg/hrであった。第2の触媒層の担持量は0.115g/in3(7.02g/L)であった。
【0087】
実施例2
実施例2の触媒化微粒子フィルタは、フィルタ基材の長さの50%にわたって軸方向に延びる、上流端からコーティングされた第1の触媒層と、ウォールフローフィルタ基材の上流端からコーティングされた第2の触媒層との二重コートを使用して調製した。ウォールフローフィルタ基材は、118.4mm(D)×127mm(L)のサイズ、1.4Lの体積、300セル/平方インチのセル密度、約200μmの壁厚、65%の気孔率、及び水銀圧入測定による直径17μmの平均細孔径を有していた。
【0088】
第1の触媒層は、コーティングされた領域に対して40g/ft3(Pd/Rh=3/1、1.41g/L)のPGM担持量を有する三元変換(TWC)触媒複合体を含有していた。Pd/Rh含有触媒層を以下のように調製した。
【0089】
硝酸パラジウム溶液の形態のパラジウムを、プラネタリーミキサーによって、耐火性アルミナ及び約40重量%のセリアを有する安定化セリア-ジルコニア複合体上に含浸させて、初期湿潤を達成しながら湿潤粉末を形成した。硝酸ロジウム溶液の形態のロジウムを、プラネタリーミキサーによって、耐火性アルミナ及び約40重量%のセリアを有する安定化セリア-ジルコニア複合体上に含浸させて、初期湿潤を達成しながら湿潤粉末を形成した。上記湿潤粉末を水に添加し、続いて水酸化バリウム及び硝酸ジルコニウム溶液を添加することによって水性スラリーを形成した。次に、スラリーを90%の粒径が5μmになるまで粉砕した。次いで、スラリーをウォールフローフィルタ基材の上流端からコーティングし、フィルタ基材の全長の50%を覆った。コーティング後、フィルタ基材+ウォッシュコートを150℃で乾燥させ、次いで550℃の温度で約1時間にわたってか焼した。か焼されたPd/Rh触媒層は、68.0重量%のセリア-ジルコニア複合体、1.16重量%のパラジウム、0.39重量%のロジウム、4.5重量%の酸化バリウム、1.4重量%の酸化ジルコニアを有し、残りはアルミナであった。第1の触媒層の総担持量は、コーティングされた領域に対して1.50g/in3(91.54g/L)であった。
【0090】
第2の触媒層は、高表面積アルミナ粉末(約150m2/g)であった。この粉末は、90%が5μm、50%が2μm、10%が0.8μmである粒度分布、及び空気中で1000℃で4時間にわたってか焼した後に66m2/gである比表面積(BETモデル、77K窒素吸着測定)を有した。この粉末をガスキャリアと混合し、室温で上流端からフィルタ基材に吹き込んだ。ガスキャリアの流量は500kg/hrであった。第2の触媒層の担持量は0.0574g/in3(3.50g/L)であった。
【0091】
実施例3-比較例
実施例3の触媒化微粒子フィルタは、第1の触媒層の総担持量が0.74g/in3(45.16g/L)であったこと、第1の触媒層のPGM担持量が6g/ft3(Pd/Rh=1/1、0.21g/L)であったこと、及び第2の触媒層の担持量が0.0164g/in3(1.00g/L)であったことを除いて、実施例1と同様の方法で調製した。
【0092】
実施例4
実施例4の触媒化微粒子フィルタは、フィルタ基材の長さの75%にわたって軸方向に延びる、上流端からコーティングされた第1の触媒層と、ウォールフローフィルタ基材の上流端からコーティングされた第2の触媒層との二重コートを使用して調製した。ウォールフローフィルタ基材は、118.4mm(D)×127mm(L)のサイズ、1.4Lの体積、300セル/平方インチのセル密度、約200μmの壁厚、65%の気孔率、及び水銀圧入測定による直径17μmの平均細孔径を有していた。
【0093】
第1の触媒層は、コーティングされた領域に対して8g/ft3(Pd/Rh=1/1、0.28g/L)のPGM担持量を有する三元変換(TWC)触媒複合体を含有していた。Pd/Rh含有触媒層を以下のように調製した。
【0094】
硝酸パラジウム溶液の形態のパラジウムを、プラネタリーミキサーによって、耐火性アルミナ及び約40重量%のセリアを有する安定化セリア-ジルコニア複合体上に含浸させて、初期湿潤を達成しながら湿潤粉末を形成した。硝酸ロジウム溶液の形態のロジウムを、プラネタリーミキサーによって、耐火性アルミナ及び約40重量%のセリアを有する安定化セリア-ジルコニア複合体上に含浸させて、初期湿潤を達成しながら湿潤粉末を形成した。上記湿潤粉末を水に添加し、続いて水酸化バリウム及び硝酸ジルコニウム溶液を添加することによって水性スラリーを形成した。次に、スラリーを90%の粒径が5μmになるまで粉砕した。次いで、スラリーをウォールフローフィルタ基材の上流端からコーティングし、フィルタ基材の全長の75%を覆った。コーティング後、フィルタ基材+ウォッシュコートを150℃で乾燥させ、次いで550℃の温度で約1時間にわたってか焼した。か焼されたPd/Rh触媒層は、68.7重量%のセリア-ジルコニア複合体、0.23重量%のパラジウム、0.23重量%のロジウム、4.6重量%の酸化バリウム、1.4重量%の酸化ジルコニアを有し、残りはアルミナであった。第1の触媒層の総担持量は、コーティングされた領域に対して0.99g/in3(60.41g/L)であった。
【0095】
第2の触媒層は、高表面積アルミナ粉末(約150m2/g)であった。この粉末は、90%が5μm、50%が2μm、10%が0.8μmである粒度分布、及び空気中で1000℃で4時間にわたってか焼した後に66m2/gである比表面積(BETモデル、77K窒素吸着測定)を有した。この粉末をガスキャリアと混合し、室温で上流端からフィルタ基材に吹き込んだ。ガスキャリアの流量は500kg/hrであった。第2の触媒層の担持量は0.0164g/in3(1.00g/L)であった。
【0096】
実施例5
実施例5の触媒化微粒子フィルタは、第1の触媒層の総担持量が、コーティングされた領域に対して(フィルタ基材の長さの50%に対して軸方向に)1.48g/in3(90.32g/L)であったこと、第1の触媒層のPGM担持量が、コーティングされた領域に対して12g/ft3(Pd/Rh=1/1、0.42g/L)であったこと、及び第2の触媒層の担持量が0.0164g/in3(1.00g/L)であったこと、を除いて実施例2と同様の方法で調製された。
【0097】
実施例6
実施例6の触媒化微粒子フィルタは、フィルタ基材の長さの33%にわたって軸方向に延びる、上流端からコーティングされた第1の触媒層と、ウォールフローフィルタ基材の上流端からコーティングされた第2の触媒層との二重コートを使用して調製した。ウォールフローフィルタ基材は、118.4mm(D)×127mm(L)のサイズ、1.4Lの体積、300セル/平方インチのセル密度、約200μmの壁厚、65%の気孔率、及び水銀圧入測定による直径17μmの平均細孔径を有していた。
【0098】
第1の触媒層は、コーティングされた領域に対して18g/ft3(Pd/Rh=1/1、0.64g/L)のPGM担持量を有する三元変換(TWC)触媒複合体を含有していた。Pd/Rh含有触媒層を以下のように調製した。
【0099】
硝酸パラジウム溶液の形態のパラジウムを、プラネタリーミキサーによって、耐火性アルミナ及び約40重量%のセリアを有する安定化セリア-ジルコニア複合体上に含浸させて、初期湿潤を達成しながら湿潤粉末を形成した。硝酸ロジウム溶液の形態のロジウムを、プラネタリーミキサーによって、耐火性アルミナ及び約40重量%のセリアを有する安定化セリア-ジルコニア複合体上に含浸させて、初期湿潤を達成しながら湿潤粉末を形成した。上記湿潤粉末を水に添加し、続いて水酸化バリウム及び硝酸ジルコニウム溶液を添加することによって水性スラリーを形成した。次に、スラリーを90%の粒径が5μmになるまで粉砕した。次いで、スラリーをウォールフローフィルタ基材の上流端からコーティングし、フィルタ基材の全長の33%を覆った。コーティング後、フィルタ基材+ウォッシュコートを150℃で乾燥させ、次いで550℃の温度で約1時間にわたってか焼した。か焼されたPd/Rh触媒層は、68.7重量%のセリア-ジルコニア複合体、0.23重量%のパラジウム、0.23重量%のロジウム、4.6重量%の酸化バリウム、1.4重量%の酸化ジルコニアを有し、残りはアルミナであった。第1の触媒層の総担持量は、コーティングされた領域に対して2.22g/in3(135.47g/L)であった。
【0100】
第2の触媒層は、高表面積アルミナ粉末(約150m2/g)であった。この粉末は、90%が5μm、50%が2μm、10%が0.8μmである粒度分布、及び空気中で1000℃で4時間にわたってか焼した後に66m2/gである比表面積(BETモデル、77K窒素吸着測定)を有した。この粉末をガスキャリアと混合し、室温で上流端からフィルタ基材に吹き込んだ。ガスキャリアの流量は500kg/hrであった。第2の触媒層の担持量は0.0164g/in3(1.00g/L)であった。
【0101】
実施例7-比較例
実施例7の触媒化微粒子フィルタは、第2の触媒層の総担持量が0.115g/in3(7.02g/L)であったことを除いて実施例3と同様の方法で調製した。
【0102】
実施例8
実施例8の触媒化微粒子フィルタは、第2の触媒層の総担持量が0.111g/in3(6.77g/L)であったことを除いて実施例4と同様の方法で調製した。
【0103】
実施例9
実施例9の触媒化微粒子フィルタは、第2の触媒層の総担持量が0.106g/in3(6.47g/L)であったことを除いて実施例5と同様の方法で調製した。
【0104】
実施例10
実施例10の触媒化微粒子フィルタは、フィルタ基材の長さの50%にわたって軸方向に延びる、下流端からコーティングされた第1の触媒層と、ウォールフローフィルタ基材の上流端からコーティングされた第2の触媒層との二重コートを使用して調製した。ウォールフローフィルタ基材は、118.4mm(D)×127mm(L)のサイズ、1.4Lの体積、300セル/平方インチのセル密度、約200μmの壁厚、65%の気孔率、及び水銀圧入測定による直径17μmの平均細孔径を有していた。
【0105】
第1の触媒層は、コーティングされた領域に対して12g/ft3(Pd/Rh=1/1、0.42g/L)のPGM担持量を有する三元変換(TWC)触媒複合体を含有していた。Pd/Rh含有触媒層を以下のように調製した。
【0106】
硝酸パラジウム溶液の形態のパラジウムを、プラネタリーミキサーによって、耐火性アルミナ及び約40重量%のセリアを有する安定化セリア-ジルコニア複合体上に含浸させて、初期湿潤を達成しながら湿潤粉末を形成した。硝酸ロジウム溶液の形態のロジウムを、プラネタリーミキサーによって、耐火性アルミナ及び約40重量%のセリアを有する安定化セリア-ジルコニア複合体上に含浸させて、初期湿潤を達成しながら湿潤粉末を形成した。上記粉末を水に添加し、続いて水酸化バリウム及び硝酸ジルコニウム溶液を添加することによって水性スラリーを形成した。次に、スラリーを90%の粒径が5μmになるまで粉砕した。次いで、スラリーをウォールフローフィルタ基材の下流端からコーティングし、フィルタ基材の全長の50%を覆った。コーティング後、フィルタ基材+ウォッシュコートを150℃で乾燥させ、次いで550℃の温度で約1時間にわたってか焼した。か焼されたPd/Rh触媒層は、68.7重量%のセリア-ジルコニア複合体、0.23重量%のパラジウム、0.23重量%のロジウム、4.6重量%の酸化バリウム、1.4重量%の酸化ジルコニアを有し、残りはアルミナであった。第1の触媒層の総担持量は、コーティングされた面積に対して2.22g/in3(135.47g/L)であった。
【0107】
第2の触媒層は、高表面積アルミナ粉末(約150m2/g)であった。この粉末は、90%が5μm、50%が2μm、10%が0.8μmである粒度分布、及び空気中で1000℃で4時間にわたってか焼した後に66m2/gである比表面積(BETモデル、77K窒素吸着測定)を有した。この粉末をガスキャリアと混合し、室温で上流端からフィルタ基材に吹き込んだ。ガスキャリアの流量は500kg/hrであった。第2の触媒層の担持量は0.106g/in3(6.47g/L)であった。
【0108】
実施例11-触媒化微粒子フィルタの濾過効率及び背圧の試験
フレッシュな状態(0km、又は開封直後の状態)における上記実施例の濾過効率と背圧の両方を、エンジンベンチ上で測定した。サンプルを、300kg/hの排気流量及び830℃の排気温度で定常状態で稼働している2.0Lのターボチャージャー付きのインライン4エンジンの下流に設置した。微粒子状物質の濃度は約106/ccであった。
【0109】
微粒子状物質の排出及び圧力降下をサンプルの上流と下流の両方で監視し、収集したデータを使用して、サンプルの濾過効率及び背圧を計算した。
濾過効率=1-(PN下流/PN上流)×100%
背圧=dP上流-dP下流
式中、
PN下流は、フィルタの下流で測定された微粒子状物質の数であり、
PN上流は、フィルタの上流で測定された微粒子状物質の数であり、
dP上流は、フィルタの上流で測定された圧力降下であり、
dP下流は、フィルタの上流で測定された圧力降下である。
【0110】
実施例1及び2の触媒化微粒子フィルタ
図1及び
図2に示されるように、適用された第2の触媒層の量が著しく少ない(-50%)にもかかわらず、実施例2は、好ましいはるかに低い背圧を有しながらも、比較例1に匹敵する濾過効率を示すことができた。
【0111】
実施例3~6の触媒化微粒子フィルタ
図3に示されるように、第1の触媒層の同じユニバーサルウォッシュコート担持量及びガスキャリアを吹き込まれた第2の触媒層の同じ材料担持量で、第1の触媒層の最も短いコーティング長さを有する実施例6は、実施例3、4及び5よりも約5%高い背圧を示し、これらの背圧は、記載された条件下で同様に測定された。
【0112】
興味深いことに、
図4に示されるように、これらのサンプルのフレッシュ濾過効率は、サンプルの第1の触媒層のコーティングされた長さに反比例し、すなわち、濾過効率は、比較例3の67%から、実施例4の71%、実施例5の73%、及び実施例6の77%へと増加した。一方、第1の触媒層のコーティング長さは、比較例3では基材全長の100%から、実施例4の75%、実施例5の50%、及び実施例6の33%へと減少した。
【0113】
実施例7~10の触媒化微粒子フィルタ
図5及び
図6に示されるように、実施例8~10では、より少量の第2の触媒層が適用されたにもかかわらず、それらは、比較例7と比較して同等以上の濾過効率を示し、背圧ペナルティもほとんどなかった。
【国際調査報告】