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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-03
(54)【発明の名称】電気フィードスルー
(51)【国際特許分類】
   C03C 8/02 20060101AFI20240827BHJP
   H01R 9/16 20060101ALI20240827BHJP
   H02G 3/22 20060101ALI20240827BHJP
   H01R 43/20 20060101ALN20240827BHJP
【FI】
C03C8/02
H01R9/16 101
H02G3/22
H01R43/20 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024508554
(86)(22)【出願日】2022-08-08
(85)【翻訳文提出日】2024-03-12
(86)【国際出願番号】 EP2022072193
(87)【国際公開番号】W WO2023016964
(87)【国際公開日】2023-02-16
(31)【優先権主張番号】102021120789.4
(32)【優先日】2021-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504299782
【氏名又は名称】ショット アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】SCHOTT AG
【住所又は居所原語表記】Hattenbergstr. 10, 55122 Mainz, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ツェッテラー
(72)【発明者】
【氏名】リンダ ヨハナ バーテルト
(72)【発明者】
【氏名】ヨナス ベール
(72)【発明者】
【氏名】ローベアト ヘットラー
(72)【発明者】
【氏名】ヨッヘン ヘルツベルク
(72)【発明者】
【氏名】リカルダ クレッヒェル
(72)【発明者】
【氏名】イーナ ミトラ
(72)【発明者】
【氏名】イーナ フィルバート-デミュート
【テーマコード(参考)】
4G062
5E063
5E086
5G363
【Fターム(参考)】
4G062AA08
4G062AA09
4G062BB05
4G062DA05
4G062DA06
4G062DB03
4G062DB04
4G062DC04
4G062DC05
4G062DD01
4G062DE01
4G062DF01
4G062DF02
4G062EA01
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4G062EA03
4G062EB03
4G062EB04
4G062EC01
4G062EC02
4G062EC03
4G062ED01
4G062ED02
4G062ED03
4G062EE01
4G062EE02
4G062EE03
4G062EE04
4G062EF01
4G062EG01
4G062EG02
4G062EG03
4G062FA01
4G062FA10
4G062FB01
4G062FB02
4G062FB03
4G062FC01
4G062FC02
4G062FD01
4G062FE01
4G062FF01
4G062FF02
4G062FG01
4G062FG02
4G062FG03
4G062FH01
4G062FH02
4G062FH03
4G062FJ01
4G062FK01
4G062FK02
4G062FK03
4G062FL01
4G062GA01
4G062GA02
4G062GA03
4G062GA10
4G062GB01
4G062GC01
4G062GD01
4G062GE01
4G062HH01
4G062HH03
4G062HH05
4G062HH07
4G062HH08
4G062HH09
4G062HH11
4G062HH13
4G062HH15
4G062HH17
4G062HH20
4G062JJ01
4G062JJ03
4G062JJ05
4G062JJ07
4G062JJ10
4G062KK01
4G062KK03
4G062KK05
4G062KK07
4G062KK10
4G062MM09
4G062NN29
4G062NN34
4G062NN40
5E063HB01
5E063XA20
5E086PP14
5E086PP23
5E086PP42
5G363AA03
5G363AA16
5G363BA10
5G363CA20
5G363CB01
5G363CB20
(57)【要約】
本発明は、基体(20)であって、基体(20)を通る少なくとも1つの貫通孔(22)を備えた基体(20)と、基体(20)を通る貫通孔(22)内に収容された絶縁材料(30)と、貫通孔(22)内に収容された絶縁材料(30)を貫通した少なくとも1つの導電体(40)とを備えたフィードスルー(10)であって、基体(20)は、チタンまたはチタン合金を含み、絶縁材料は、ガラスを含み、絶縁材料(30)は、少なくとも一部の領域において基体(20)に対して90度未満の接触角(θ)を有する、フィードスルー(10)に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下:
基体(20)であって、前記基体(20)を通る少なくとも1つの貫通孔(22)を備えた基体(20)と、
前記基体(20)を通る前記貫通孔(22)内に収容された絶縁材料(30)と、
前記貫通孔(22)内に収容された前記絶縁材料(30)を貫通した少なくとも1つの導電体(40)と
を備えたフィードスルー(10)であって、
前記基体(20)は、チタンまたはチタン合金を含み、前記絶縁材料は、ガラスを含み、
前記絶縁材料(30)は、少なくとも一部の領域において前記基体(20)に対して90度未満の接触角(θ)を有する、フィードスルー(10)。
【請求項2】
前記基体(20)に対する前記絶縁材料(30)の接触角(θ)が、56~86度、有利には62~84度、特に好ましくは68~82度、さらにより好ましくは70~80度であり、かつ/または
前記絶縁材料(30)が、少なくとも一部の領域において前記導電体(40)に対して56~86度、有利には62~84度、特に好ましくは68~82度、さらにより好ましくは70~80度の接触角(θ’)を有する、請求項1記載のフィードスルー。
【請求項3】
前記絶縁材料の前記ガラスが、BおよびSiOを含むガラス組成を有し、重量%単位でのSiOの割合に対する重量%単位でのBの割合の比が、少なくとも0.45、有利には少なくとも0.47、特に好ましくは少なくとも0.49であるか、または
前記絶縁材料の前記ガラスが、BおよびSiOを含むガラス組成を有し、重量%単位でのSiOの割合に対する重量%単位でのBの割合の比が、0.45~0.65、有利には0.47~0.64、特に好ましくは0.49~0.63である、請求項1または2記載のフィードスルー。
【請求項4】
前記絶縁材料の前記ガラスが、Bを含むガラス組成を有し、前記ガラス組成におけるBの割合が、少なくとも21重量%、有利には少なくとも22重量%、特に好ましくは少なくとも23重量%もしくは少なくとも25重量%であるか、または
前記絶縁材料の前記ガラスが、Bを含むガラス組成を有し、前記ガラス組成におけるBの割合が、21~33重量%、有利には22~32重量%、特に好ましくは23~31重量%もしくは25~30重量%である、請求項1から3までのいずれか1項記載のフィードスルー。
【請求項5】
前記絶縁材料の前記ガラスが、最高で750℃、有利には最高で700℃、特に好ましくは最高で680℃の軟化温度を有し、かつ/または
前記絶縁材料の前記ガラスが、最高で850℃、有利には最高で800℃、特に好ましくは最高で780℃の球軟化温度を有し、かつ/または
前記絶縁材料の前記ガラスが、最高で950℃、有利には最高で900℃、特に好ましくは最高で850℃の半球温度を有し、かつ/または
前記絶縁材料の前記ガラスが、最高で1050℃、有利には最高で1000℃、特に好ましくは最高で950℃の流動温度を有し、かつ/または
前記絶縁材料の前記ガラスが、食塩溶液中で37.5℃にて貯蔵した場合に耐久性を示す、請求項1から4までのいずれか1項記載のフィードスルー。
【請求項6】
前記絶縁材料の前記ガラスが、Alを含むガラス組成を有し、前記ガラス組成におけるAlの割合が、少なくとも3重量%、有利には少なくとも7重量%、特に好ましくは少なくとも9重量%であるか、または
前記絶縁材料の前記ガラスが、Alを含むガラス組成を有し、前記ガラス組成におけるAlの割合が、3~17重量%、有利には少なくとも7~16.5重量%、特に好ましくは少なくとも9~15重量%である、請求項1から5までのいずれか1項記載のフィードスルー。
【請求項7】
前記絶縁材料の前記ガラスが、NaOを含むガラス組成を有し、前記ガラス組成におけるNaOの割合が、少なくとも10重量%、有利には少なくとも12重量%である、請求項1から6までのいずれか1項記載のフィードスルー。
【請求項8】
前記絶縁材料の前記ガラスが、CaOを含むガラス組成を有し、前記ガラス組成におけるCaOの割合が、最大で11重量%、好ましくは最大で10重量%、特に好ましくは最大で7重量%であり、かつ/または
前記絶縁材料の前記ガラスがTiOを含むガラス組成を有し、前記ガラス組成におけるTiOの割合が、最高で10重量%、有利には最高で5重量%、特に好ましくは最高で4.5重量%である、請求項1から7までのいずれか1項記載のフィードスルー。
【請求項9】
前記絶縁材料の前記ガラスが、KOを含まないかまたはKOを含むガラス組成を有し、前記ガラス組成におけるKOの割合が、7重量%未満、有利には5重量%未満、特に好ましくは3重量%未満であり、かつ/または
前記絶縁材料の前記ガラスが、LiOを含まないかまたはLiOを含むガラス組成を有し、前記ガラス組成におけるLiOの割合が、2重量%未満、有利には1重量%未満、特に好ましくは0.5重量%未満である、請求項1から8までのいずれか1項記載のフィードスルー。
【請求項10】
前記絶縁材料の前記ガラスが、MgOを含まないかまたはMgOを含むガラス組成を有し、前記ガラス組成におけるMgOの割合が、10重量%未満、有利には6.5重量%未満、特に好ましくは5重量%未満であり、かつ/または
前記絶縁材料の前記ガラスが、ZrOを含まないかまたはZrOを含むガラス組成を有し、前記ガラス組成におけるZrOの割合が、0.9重量%未満、有利には0.5重量%未満、特に好ましくは0.1重量%未満である、請求項1から9までのいずれか1項記載のフィードスルー。
【請求項11】
前記絶縁材料の前記ガラスが、Laを含まないかまたはLaを含むガラス組成を有し、前記ガラス組成におけるLaの割合が、1.5重量%未満、有利には1重量%未満、特に好ましくは0.5重量%未満であり、かつ/または
前記絶縁材料の前記ガラスが、Taを含まないかまたはTaを含むガラス組成を有し、前記ガラス組成におけるTaの割合が、2重量%未満、有利には1重量%未満、特に好ましくは0.5重量%未満であり、かつ/または
前記絶縁材料の前記ガラスが、Nbを含まないかまたはNbを含むガラス組成を有し、前記ガラス組成におけるNbの割合が、2重量%未満、有利には1重量%未満、特に好ましくは0.5重量%未満である、請求項1から10までのいずれか1項記載のフィードスルー。
【請求項12】
前記絶縁材料の前記ガラスが、PbOを含まないかまたはPbOを含むガラス組成を有し、前記ガラス組成におけるPbOの割合が、0.05重量%未満、有利には0.03重量%未満、特に好ましくは0.01重量%未満であり、かつ/または
前記絶縁材料の前記ガラスが、BaOを含まないかまたはBaOを含むガラス組成を有し、前記ガラス組成におけるBaOの割合が、10重量%未満、有利には7重量%未満、特に好ましくは5重量%未満であり、かつ/または
前記絶縁材料の前記ガラスが、Vを含まないかまたはVを含むガラス組成を有し、前記ガラス組成におけるVの割合が、0.5重量%未満、有利には0.3重量%未満、特に好ましくは0.1重量%未満である、請求項1から11までのいずれか1項記載のフィードスルー。
【請求項13】
前記絶縁材料の前記ガラスが、Biを含まないかまたはBiを含むガラス組成を有し、前記ガラス組成におけるBiの割合が、2重量%未満、有利には1重量%未満、特に好ましくは0.5重量%未満であり、かつ/または
前記絶縁材料の前記ガラスが、WOを含まないかまたはWOを含むガラス組成を有し、前記ガラス組成におけるWOの割合が、2重量%未満、有利には1重量%未満、特に好ましくは0.5重量%未満であり、かつ/または
前記絶縁材料の前記ガラスが、MoOを含まないかまたはMoOを含むガラス組成を有し、前記ガラス組成におけるMoOの割合が、2重量%未満、有利には1重量%未満、特に好ましくは0.5重量%未満である、請求項1から12までのいずれか1項記載のフィードスルー。
【請求項14】
前記絶縁材料の前記ガラスが、5~10ppm/Kの範囲、有利には6~9ppm/Kの範囲、特に好ましくは7~8ppm/Kの範囲の熱膨張係数CTE(20℃;300℃)を有する、請求項1から13までのいずれか1項記載のフィードスルー。
【請求項15】
前記絶縁材料の前記ガラスが、590℃未満の、有利には570℃未満の、特に好ましくは550℃未満のガラス転移温度Tを有し、かつ/または
前記絶縁材料の前記ガラスが、440~590℃の範囲、有利には460~570℃の範囲、特に480~550℃の範囲のガラス転移温度Tを有する、請求項1から14までのいずれか1項記載のフィードスルー。
【請求項16】
前記絶縁材料が、380nm~780nmのスペクトル範囲内の少なくとも1つの波長に対して、前記基体を通る前記貫通孔に沿って、一方の外面から他方の外面まで、少なくとも25%、有利には少なくとも50%、特に好ましくは少なくとも75%の光透過率Tvisを有し、かつ/または
前記フィードスルーが、前記基体を通る前記貫通孔に沿って前記絶縁材料を通じて光を伝送するための光学インターフェースを備える、請求項1から15までのいずれか1項記載のフィードスルー。
【請求項17】
特に、前記外面に圧力を加えることなく、特にカーボンウェイトで前記外面に圧力を印加することなく、前記絶縁材料が前記貫通孔に融着されている状態で、前記絶縁材料が、少なくとも1つの外面上にグラファイト粒子を含まない、請求項1から16までのいずれか1項記載のフィードスルー。
【請求項18】
前記絶縁材料と前記基体との間の接触面および/または前記フィードスルーが、1×10-8mbar・l/s未満、有利には1×10-9mbar・l/s未満、特に好ましくは1×10-10mbar・l/s未満のヘリウムリークレートを特徴とするハーメチックシール性を示すように、前記基体(20)の前記貫通孔(22)内に収容された前記絶縁材料(30)が、前記基体および/または前記少なくとも1つの前記導電体(40)と接触している、請求項1から17までのいずれか1項記載のフィードスルー。
【請求項19】
前記貫通孔(22)内に収容された前記絶縁材料(30)を貫通した多数の導電体(40)、有利には少なくとも2つの導電体、特に好ましくは少なくとも10個の導電体を備える、請求項1から18までのいずれか1項記載のフィードスルー。
【請求項20】
特にインプラント用の請求項1から19までのいずれか1項記載のフィードスルー、または請求項1から19までのいずれか1項記載のフィードスルーを備えたインプラントであって、
前記絶縁材料の前記ガラスが、特にEN ISO 10993-5による規格に準拠した測定により細胞毒性を示さず、かつ/または
少なくとも2つの導電体が、5mm未満、有利には1mm未満の間隔を有し、かつ/または
前記導電体の軸線に対して垂直な方向において、前記基体を通る前記貫通孔の最大寸法が、10mm未満、有利には2mm未満である、フィードスルーまたはインプラント。
【請求項21】
特に石油/ガス探査装置用の請求項1から19までのいずれか1項記載のフィードスルー、または請求項1から19までのいずれか1項記載のフィードスルーを備えた石油/ガス探査装置であって、
前記フィードスルーが、少なくとも100g、有利には少なくとも500g、特に好ましくは少なくとも750gの耐衝撃性を有し、かつ/またはそのハーメチックシール性、特に請求項18に規定されたハーメチックシール性を保持しながらそのような衝撃負荷に耐え、かつ/または
前記フィードスルーが、少なくとも20grms、有利には少なくとも40grms、特に好ましくは少なくとも60grmsの耐振動性を示し、かつ/またはそのハーメチックシール性、特に請求項18に規定されたハーメチックシール性を保持しながらそのような振動負荷に耐える、フィードスルーまたは石油/ガス探査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電体が貫通したガラス含有絶縁材料が収容された金属含有基体を備えた電気フィードスルーに関する。
【0002】
外側の金属基体と、1つ以上の導体が貫通した絶縁体として機能する内側のガラス部品とを備えた電気フィードスルー(ガラス-金属フィードスルー)は、特にハウジング要素のような気密壁部品など、多くの用途で使用されている。対応する部品は、例えば医療技術分野、例えば植込み型医療機器(IMD)、石油および/またはガス探査分野、航空分野、その他多くの分野で使用されており、一方では、応用分野に応じて異なる要求プロファイルを考慮しなければならない場合があり、他方では、既知の解決策の最適化および更なる開発に関しては共通点がある。
【0003】
総じて、例えば、物理的および/または化学的影響に対するこのようなフィードスルーの耐久性を高め、周囲の基体および/または絶縁材料を貫通した導電体に対する絶縁材料の気密性を向上させ、このようなフィードスルーの製造を最適化し、かつ/または製造コストを削減することが、望ましく、かつ本発明の課題である。
【0004】
このために、基体の特性と、絶縁材料および/または絶縁材料を貫通した導電体の特性とを互いにより良好に調和させることが、特に有利であり、かつ本発明の課題の一態様となり得る。これには特に、個々の構成要素の材料あるいは材料組成の選択が含まれる。
【0005】
医療技術におけるフィードスルーの使用に関して、さらに、使用される構成要素が、少なくとも一時的にまたはさらには(インプラントの場合)永続的に体液と接触し得る際に毒性作用を持たないことが、通常は望ましく、かつ本発明の課題の一態様である。このことは、基体および導電体に加えて、特にガラス(溶出作用による)に関するものであり、そのため、ここでは特に、例えば医療機器やインプラントに対するさらなる適性試験を実施する前に、細胞毒性試験を事前に実施することを提供することができる。
【0006】
この課題を解決するために、本発明は、基体と、基体を通る少なくとも1つの貫通孔と、さらに、基体を通る貫通孔内に収容された絶縁材料と、貫通孔内に収容された絶縁材料を貫通した少なくとも1つの導電体とを備えたフィードスルーであって、基体が、チタンまたはチタン合金を含み、絶縁材料が、ガラスを含み、絶縁材料が、少なくとも一部の領域において基体に対して90度未満の接触角を有する、フィードスルーを提供する。
【0007】
チタンまたはチタン合金(例えばチタングレード1、チタングレード2、チタングレード3、チタングレード4またはチタングレード5、特にTiAl6V4合金)を含むかまたはそれからなる基体と、ガラスを含むかまたはそれからなる絶縁材料と、少なくとも一部の領域において90度未満の接触角とを提供することによって、周囲の基体に対する絶縁材料の気密性を特に向上させ、あるいは物理的および/または化学的影響に対するフィードスルーの耐久性を高めることができる。特に、より高い機械的耐久性を達成することができる。接触角が90度未満であれば、特にガラス封止の向上を達成し、例えば、材料移行部での液体の蓄積を減少させることができるため、例えば、応力亀裂を回避することができる。チタンまたはチタン合金を使用することで、高耐食性、高強度が特に比較的低い密度で可能となり、かつ/または細胞毒性の回避が、特に医療分野での使用に向けて可能となる。
【0008】
絶縁材料から基体への移行部に関して、基体に対する絶縁材料の接触角が56~86度、有利には62~84度、特に好ましくは68~82度、さらにより好ましくは70~80度であることを提供することができる。
【0009】
さらに、絶縁材料から導電体への移行部に関して、絶縁材料が、少なくとも一部の領域において、導電体に対して56~86度、有利には62~84度、特に好ましくは68~82度、さらにより好ましくは70~80度の接触角を有することを提供することができる。
【0010】
導電体は、金属、例えば、NiFe合金、ニオブ、白金、白金合金および/またはモリブデンなどの材料を含むかまたはそれからなることができる。導電体は、5~9ppm/K、有利には7~9ppm/Kの熱膨張係数を有することができる。これにより、チタンを含むかまたはそれからなる基体と組み合わせた場合に、加圧ガラス封止を提供することができ、それにより機械的堅牢性を強化することができる。
【0011】
絶縁材料は、好ましくは、特に175℃または200℃の温度で、少なくとも1GΩの電気絶縁性を提供する。さらに、特にこれらの温度において、好ましくは少なくとも1V/μmのフラッシュオーバー抵抗が提供される。
【0012】
ガラス組成に関して、絶縁材料のガラスが、BおよびSiOを含むガラス組成を有し、重量%単位でのSiOの割合に対する重量%単位でのBの割合の比が、少なくとも0.45、有利には少なくとも0.47、特に好ましくは少なくとも0.49であることを提供することができる。
【0013】
ここで、絶縁材料のガラスが、BおよびSiOを含むガラス組成を有し、重量%単位でのSiOの割合に対する重量%単位でのBの割合の比が、0.45~0.65、有利には0.47~0.64、特に好ましくは0.49~0.63であることが可能である。
【0014】
ガラス組成に関して、絶縁材料のガラスが、Bを含むガラス組成を有し、ガラス組成におけるBの割合が、少なくとも21重量%、有利には少なくとも22重量%、特に好ましくは少なくとも23重量%または少なくとも25重量%であることも提供することができる。
【0015】
ここで、絶縁材料のガラスが、Bを含むガラス組成を有し、ガラス組成におけるBの割合が、21~33重量%、有利には22~32重量%、特に好ましくは23~31重量%または25~30重量%であることが可能である。
【0016】
いくつかの事例では、チタンまたはチタン合金の使用によって、化学反応に関して、ガラス形成酸化物SiOがチタンと反応してチタンケイ化物が形成され、これによりガラス-金属接触部で剥離現象が生じかねないという特殊性が生じることがある。この問題は、特にガラス組成に関する上記のデータによって低減または回避することができる。特に、Bに関する上記のデータによってこの反応を抑制し、TiB層を生成することができ、この層は、チタン含有成分とガラスとの間の化学的および機械的により安定した結合をもたらす。
【0017】
原則的に、チタンは反応性が高いことに留意すべきである。上述したガラス組成により、溶融時に(例えば700~900℃の溶融温度で)チタンがSiOと反応してチタンケイ化物が形成され、この反応に伴って例えば界面で気泡が形成されることを低減または回避することができる。
【0018】
絶縁材料のガラスは、最高で750℃、有利には最高で700℃、特に好ましくは最高で680℃の軟化温度を有することができる。
【0019】
絶縁材料のガラスは、最高で850℃、有利には最高で800℃、特に好ましくは最高で780℃の球軟化温度を有することができる。
【0020】
絶縁材料のガラスは、最高で950℃、有利には最高で900℃、特に好ましくは最高で850℃の半球温度を有することができる。
【0021】
絶縁材料のガラスは、最高で1050℃、有利には最高で1000℃、特に好ましくは最高で950℃の流動温度を有することができる。
【0022】
チタンにおけるガラス封止については、純チタンの相転移温度が880°(α/β)であることに留意すべきである。この温度はチタングレード5(TiAl6V4)の方が高いが、ガラスとの界面における反応機序は同じである。
【0023】
前述の特性により、例えばガラス組成が前述のB含有量を有する場合、有利には、溶融時にホウ素含有量を十分に保持することができる。
【0024】
さらに、絶縁材料のガラスは、好ましくは、食塩溶液中で37.5℃にて貯蔵した場合に耐久性を示すことができる。
【0025】
ガラス組成に関して、さらなる有利な成分を以下に規定する。
【0026】
例えば、絶縁材料のガラスは、Alを含むガラス組成を有し、ガラス組成におけるAlの割合が、少なくとも3重量%、有利には少なくとも7重量%、特に好ましくは少なくとも9重量%であることを提供することができる。
【0027】
ここで、絶縁材料のガラスが、Alを含むガラス組成を有し、ガラス組成におけるAlの割合が、3~17重量%、有利には少なくとも7~16.5重量%、特に好ましくは少なくとも9~15重量%であることが可能である。
【0028】
上記で挙げられた値により、有利に特に耐薬品性を高めることができる。
【0029】
さらに、絶縁材料のガラスは、NaOを含むガラス組成を有することができ、ガラス組成におけるNaOの割合は、少なくとも10重量%、有利には少なくとも12重量%である。
【0030】
ガラス組成に関して、有利には限られた範囲でのみ含まれるさらなる成分を以下に規定する。
【0031】
例えば、絶縁材料のガラスが、CaOを含むガラス組成を有し、ガラス組成におけるCaOの割合が、最高で11重量%、有利には最高で10重量%、特に好ましくは最高で7重量%であることを提供することができる。
【0032】
さらに、絶縁材料のガラスは、TiOを含むガラス組成を有することができ、ガラス組成におけるTiOの割合は、最高で10重量%、有利には最高で5重量%、特に好ましくは最高で4.5重量%である。
【0033】
ガラス組成に関して、有利には含まれないか、実質的に含まれないか、または限られた範囲でのみ含まれるさらなる成分を以下に規定する。
【0034】
例えば、絶縁材料のガラスが、KOを含まないかまたはKOを含むガラス組成を有し、ガラス組成におけるKOの割合が、7重量%未満、有利には5重量%未満、特に好ましくは3重量%未満であることを提供することができる。
【0035】
絶縁材料のガラスは、LiOを含まないかまたはLiOを含むガラス組成を有することもでき、ガラス組成におけるLiOの割合は、2重量%未満、有利には1重量%未満、特に好ましくは0.5重量%未満である。これは、特にコスト上の理由から有利になり得る。さらに、これは、医薬との望ましくない反応を回避することに関して有利になり得る。
【0036】
さらに、絶縁材料のガラスが、MgOを含まないかまたはMgOを含むガラス組成を有し、ガラス組成におけるMgOの割合が、10重量%未満、有利には6.5重量%未満、特に好ましくは5重量%未満であることを提供することができる。
【0037】
絶縁材料のガラスは、ZrOを含まないかまたはZrOを含むガラス組成をさらに含むことができ、ガラス組成におけるZrOの割合は、0.9重量%未満、有利には0.5重量%未満、特に好ましくは0.1重量%未満である。これにより、例えば、有利にはガラスの粘度を低下させ、ガラス封止を改善することができる。さらに、これはコストの面でも有利になり得る。
【0038】
絶縁材料のガラスが、Laを含まないかまたはLaを含むガラス組成を有し、ガラス組成におけるLaの割合が、1.5重量%未満、有利には1重量%未満、特に好ましくは0.5重量%未満であることを提供することができる。これは、特にコスト上の理由から有利になり得る。
【0039】
さらに、絶縁材料のガラスが、Taを含まないかまたはTaを含むガラス組成を有し、ガラス組成におけるTaの割合が、2重量%未満、有利には1重量%未満、特に好ましくは0.5重量%未満であることを提供することができる。これは、特にコスト上の理由から有利になり得る。
【0040】
絶縁材料のガラスは、Nbを含まないかまたはNbを含むガラス組成を有することもでき、ガラス組成におけるNbの割合は、2重量%未満、有利には1重量%未満、特に好ましくは0.5重量%未満である。これは、特にコスト上の理由から有利になり得る。さらに、Nbの割合が高すぎると、多価ゆえにガラス封止に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0041】
ガラス組成に関して、特に細胞毒性の回避に関して有利には含まれない、実質的に含まれない、または限られた範囲でのみ含まれるさらなる成分を以下に規定する。
【0042】
特に、絶縁材料のガラスが、PbOを含まないかまたはPbOを含むガラス組成を有し、ガラス組成におけるPbOの割合が、0.05重量%未満、有利には0.03重量%未満、特に好ましくは0.01重量%未満であることを提供することができる。したがって、ガラスは、特に実質的にPbO不含であってよい。
【0043】
さらに、絶縁材料のガラスが、BaOを含まないかまたはBaOを含むガラス組成を有し、ガラス組成におけるBaOの割合が、10重量%未満、有利には7重量%未満、特に好ましくは5重量%未満であることを提供することができる。ガラスは、特に実質的にBaO不含であってよい。これは、毒性回避の点で有利になり得る。
【0044】
絶縁材料のガラスは、Vを含まないかまたはVを含むガラス組成を有することもでき、ガラス組成におけるVの割合は、0.5重量%未満、有利には0.3重量%未満、特に好ましくは0.1重量%未満である。これは、毒性回避の点でも、コスト上の理由からも有利になり得る。
【0045】
さらに、絶縁材料のガラスは、Biを含まないかまたはBiを含むガラス組成を有することができ、ガラス組成におけるBiの割合は、2重量%未満、有利には1重量%未満、特に好ましくは0.5重量%未満である。これは、白金との反応に関して有利になり得る。
【0046】
絶縁材料のガラスが、WOを含まないかまたはWOを含むガラス組成を有し、ガラス組成におけるWOの割合が、2重量%未満、有利には1重量%未満、特に好ましくは0.5重量%未満であることも提供することができる。これは、酸化状態が変化しやすい成分を避けるという点で有利になり得る。
【0047】
さらに、絶縁材料のガラスは、MoOを含まないかまたはMoOを含むガラス組成を有することができ、ガラス組成におけるMoOの割合は、2重量%未満、有利には1重量%未満、特に好ましくは0.5重量%未満である。これは、酸化状態が変化しやすい成分を避けるという点で有利になり得る。
【0048】
総じて、多価成分を避けることは、環境との相互作用が部分的に未知であるために有利になり得るものであり、したがってこれを提供することができる。
【0049】
ガラスの熱膨張係数(CTE)に関して、絶縁材料のガラスが、5~10ppm/Kの範囲、有利には6~9ppm/Kの範囲、特に好ましくは7~8ppm/Kの範囲のCTE(20℃;300℃)を有することを提供することができる。
【0050】
これにより、特に、チタンまたはチタン合金との材料マッチングを達成することができ、ひいてはフィードスルーの気密性、特にハーメチックシール性を向上させることができる。
【0051】
絶縁材料のガラスは、2.30~2.45g/cmの範囲、有利には2.32~2.43g/cmの範囲、特に2.33~2.42g/cmの範囲の密度を有することができる。
【0052】
さらに、絶縁材料のガラスが、590℃未満の、有利には570℃未満の、特に好ましくは550℃未満のガラス転移温度Tを有することを提供することができる。
【0053】
特に、絶縁材料のガラスは、440~590℃の範囲、有利には460~570℃の範囲、特に480~550℃の範囲のガラス転移温度Tを有することができる。原則として、ガラス転移温度Tが低いと加工の点では有利になり得る。
【0054】
一発展形態において、フィードスルーは、導電体による電気信号伝送に加えて、光信号伝送も可能にすることができる。
【0055】
特に、このために、絶縁材料は、380nm~780nmのスペクトル範囲内の少なくとも1つの波長に対して、基体を通る貫通孔に沿って、一方の外面から他方の外面まで、少なくとも25%、有利には少なくとも50%、特に好ましくは少なくとも75%の光透過率Tvisを有することができる。
【0056】
フィードスルーは、基体を通る貫通孔に沿って絶縁材料を通じて光を伝送するための光学インターフェースをさらに含むことができる。
【0057】
好ましくは、特に、外面に圧力を加えることなく、特にカーボンウェイトで外面に圧力を印加することなく、絶縁材料が貫通孔に融着されている状態で、絶縁材料は、少なくとも1つの外面上にグラファイト粒子を含まない。
【0058】
ハーメチックシール性に関しては、絶縁材料と基体との間の接触面および/またはフィードスルーが、1×10-8mbar・l/s未満、有利には1×10-9mbar・l/s未満、特に好ましくは1×10-10mbar・l/s未満のヘリウムリークレートを特徴とするハーメチックシール性を示すように、基体の貫通孔内に収容された絶縁材料が、基体および/または少なくとも1つの導電体と接触していることを提供することができる。
【0059】
フィードスルーのハーメチックシール性は、例えばヘリウムリーク試験によって確認することができる。
【0060】
有利には、フィードスルーは、貫通孔内に収容された絶縁材料を貫通した多数の導電体、有利には少なくとも2つの導電体、特に好ましくは少なくとも10個の導電体を備えている。
【0061】
基体は、多数の貫通孔を含むことができ、該貫通孔内にそれぞれ絶縁材料が収容されており、それぞれ少なくとも1つの、特に正確に1つの導電体が、貫通孔の絶縁材料を貫通している。
【0062】
チタンまたはチタン合金を含む基体は、板状に形成されていてよい。基体は、第1の面と対向する第2の面とを有することができ、貫通孔は、第1の面と第2の面とを接続する内壁を形成する。基体は、第1および/または第2の面に対して平行に広がる平面を画定することができる。第1および/もしくは第2の面に対して平行に延びる方向に沿って、ならびに/または前述の平面内に延びる方向に沿って、基体は、貫通孔の直径よりも大きい寸法、特に少なくとも2倍、特に少なくとも3倍の寸法を有することができる。
【0063】
貫通孔内に位置する絶縁材料は、基体の両側、すなわち第1の面の側と第2の面の側の双方において90°未満の接触角、特に上述の値を有する接触角を有することができる。絶縁材料は、基体の第1および/または第2の面に対して後退させることができる。換言すれば、絶縁材料は、内壁の位置で基体に対して段差があるように貫通孔内に収容されていてよい。
【0064】
基体は、その平面に対して垂直な厚さであって、貫通孔の内壁の絶縁材料の厚さよりも大きい厚さを有することができる。基体はまた、第1および/もしくは第2の面ならびに/または平面に沿って延びる寸法にわたってこの厚さを有することができ、例えば、基体は、少なくとも貫通孔の直径の2倍の範囲、特に直径の3倍の範囲でこの厚さを有することができる。
【0065】
絶縁材料を貫通した導体は、絶縁材料および/または基体の片側または両側から突出することができる。特に、導体は、基体の第1および/または第2の面から突出することができる。片側または両側の突出部は、内壁における基体の厚さよりも大きくすることができ、特に少なくとも2倍、特に少なくとも3倍とすることができる。突出部は、一方の側で他方の側よりも大きくすることができ、特に少なくとも2倍、特に少なくとも3倍とすることができる。
【0066】
本発明は、特に、インプラント用の上記フィードスルーおよび/または上記フィードスルーを備えたインプラントであって、絶縁材料のガラスが、特にEN ISO 10993-5(2009年7月版)による規格に準拠した測定により細胞毒性を示さない、フィードスルーおよび/またはインプラントに関する。
【0067】
この文脈において、しかし原則としてまた全般的に、フィードスルーが、少なくとも2つの導電体を5mm未満、有利には1mm未満の間隔で有することを提供することができる。
【0068】
さらに、この文脈において、しかしまた全般的に、導電体の軸線に対して垂直な方向において、基体を通る貫通孔の最大寸法が、10mm未満、有利には2mm未満であることを提供することができる。
【0069】
本発明はさらに、特に、石油/ガス探査装置用の上記フィードスルーおよび/または上記フィードスルーを備えた石油/ガス探査装置であって、フィードスルーは、少なくとも100g、有利には少なくとも500g、特に好ましくは少なくとも750gの耐衝撃性を有し、かつ/またはそのハーメチックシール性、特に上記のハーメチックシール性を保持しながらそのような衝撃負荷に耐える、フィードスルーおよび/または石油/ガス探査装置に関する。
【0070】
さらに、この文脈において、しかし原則としてまた全般的に、フィードスルーが、少なくとも20grms、有利には少なくとも40grms、特に好ましくは少なくとも60grmsの耐振動性を示し、かつ/またはそのハーメチックシール性、特に上記のハーメチックシール性を保持しながらそのような振動負荷に耐えることを提供することができる。
【0071】
さらに、この文脈において、しかし原則としてまた全般的に、基体が非磁性構造であることを提供することができる。
【0072】
本発明はさらに、特に、ウェアラブルデバイス用の上記フィードスルーおよび/または上記フィードスルーを備えたウェアラブルデバイスに関する。
【0073】
以下、図面およびいくつかの実施形態例を参照して本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0074】
図1】第1の実施形態によるフィードスルーの概略図である。
図2】絶縁材料と基体あるいは導電体との接触角が記入された、図1に示すフィードスルーの概略断面図である。
図3】第2の実施形態によるフィードスルーの概略図である。
図4】第3の実施形態によるフィードスルーの概略図である。
【0075】
図1を参照すると、フィードスルーは、外側基体20を有し、その中を1つ以上(ここでは2つ)の貫通孔22が通っており、貫通孔22には、それぞれ絶縁材料30が挿入されており、その中に少なくとも1つの導電体40が延在している。ここで、導体は、絶縁材料の片側または両側(この場合は両側)から突出することができる。図示のフィードスルーは2つの内側導体(ピン)を有しており、したがって2極フィードスルーと表現することができる。基体20が外側導体として機能し、したがってさらなる導電体を形成することも可能である。
【0076】
図2を参照すると、貫通孔22に挿入された絶縁材料30は、周囲の基体20に対して90度未満の接触角θを有する。さらに、絶縁材料30は、有利には、90度未満である導電体40に対する接触角θ’も有することができる。原理的には、このまたは所定の接触角θあるいはθ’を達成するために、貫通孔22への絶縁材料30の融着時に、重り、例えばカーボンモールドを使用することができる。しかし、これは、ピン数が多くなると、実用的でなくなることがある。しかし、すでに絶縁材料の濡れ特性に基づいて接触角θ<90°が基体の材料上に形成されるように、絶縁材料を貫通孔22に融着させることも可能であり、これにより、重りを省くことができ、絶縁材料30の外面に炭素粒子が存在しなくなる。特に、接触角という用語は、濡れ角という用語と同義である。
【0077】
図3および図4を参照すると、フィードスルーが複数の内側導体(ピン)を有することができるため、例えば、17ピンのフィードスルー(図3)または30ピンのフィードスルー(図4)を設けることができる。図示のコネクタでは、個々の内側導体40が各々単一の貫通孔22の絶縁材料を通って延在している。しかし、多数または複数の導電体が同じ貫通孔22の同じ絶縁材料を通って延在することも可能である。
【0078】
絶縁材料30が接触角θ<90°で(重りを使用せずに)チタン基体20を濡らすことに関して、絶縁材料30は、特に高ホウ酸塩ガラスとして形成されていてよい。例えば、絶縁材料のガラスが、BおよびSiOを含むガラス組成を有し、重量%単位でのSiOの割合に対する重量%単位でのBの割合の比が少なくとも0.36であり、かつ/または絶縁材料のガラスが、Bを含むガラス組成を有し、ここで、ガラス組成におけるBの割合が、少なくとも20重量%であることを提供することができる。
【0079】
特に、高ホウ酸塩ガラスおよび/または上記のホウ素含有量を有するガラス組成の場合、絶縁材料のガラスが、最高で680℃の軟化温度、最高で780℃の球軟化温度、最高で850℃の半球温度および/または最高で950℃、好ましくは最高で940℃、特に好ましくは最高で900℃の流動温度を有することが有利であり得る。
【0080】
特に、絶縁材料のガラスが950℃未満、好ましくは940℃未満の温度で封止可能であることを提供することができる。よって、確立された加熱顕微鏡法(EHM)の方法論で得られた特徴的な流動点を最高で940℃に制限することが好ましい。
【0081】
チタンまたはチタン合金へのガラス封止を行う場合、このプロセスが、有利にはチタンのα/β相転移の温度範囲を大幅には上回らないか、または特に好ましくはこれを下回るように実施されるよう留意すべきである。
【0082】
一実施形態例によれば、絶縁材料は、重量%単位で以下の組成を有するガラスを含むことができる:
SiO 35~55
20~33
Al 3~23
NaO 5~20
CaO 0~12
TiO 0~10。
【0083】
さらなる実施形態例によれば、絶縁材料は、重量%単位で以下の組成を有するガラスを含むことができる:
SiO 40~51
24~30
Al 7~19
NaO 10~17
CaO 0~7
TiO 0~7。
【0084】
さらなる実施形態例によれば、絶縁材料は、上記の組成を有するガラスを含むことができるが、ただし、重量%単位で以下の割合のBが含まれている:25.0~28.6。
【0085】
さらなる実施形態によれば、絶縁材料は、上記の組成を有するガラスを含むことができるが、ただし、重量%単位で以下の割合のMgOが含まれている:5.5未満、特に5未満、特に4.5未満。
【0086】
特定の実施形態例によれば、絶縁材料は、重量%単位で以下の組成のいずれかを有するガラスを含むことができる(ガラス1~ガラス5):
【表1】
【0087】
ガラス1~ガラス5の実施形態例について、加熱顕微鏡法(EHM)により以下のガラス特性および粉末特性を求めることができた:
【表2】
【0088】
ガラス1~ガラス5について、焼結体を0.9%食塩溶液中で37.5℃にて貯蔵した:
【表3】
【0089】
ガラス1~ガラス5について、焼結体の特性を以下に示す:
【表4】
【0090】
上表のデータは、ガラス2~ガラス5がガラス1よりも高い「耐ガルバニック性」を有することを示している。ここで、「耐ガルバニック性」とは、実質的に、典型的なガルバニック前処理プロセスやガルバニックコーティングプロセスで使用される水性化学薬品(酸、アルカリおよび電解質)に対する耐久性を意味する。高温脱脂剤とは、脱脂用の高温洗浄アルカリ液である。
【0091】
絶縁材料のガラスは、着色成分、例えばCoOや顔料、例えばスピネル系顔料と混合することもできる。
【0092】
さらに、ガラスがフィラー、例えば低膨張フィラー、例えばコージェライトを含むことも可能である。ある割合の低膨張フィラーによって、場合によってはガラスの熱膨張係数を低下させることが可能となる。
【0093】
例えば、11%の割合のコージェライト(フィラーとしてのコージェライトを製造するための溶融物)を使用することにより、特に関連する特性を大きく損なうことなく、ガラスの熱膨張係数(CTE)を2ppm/Kから約7.0ppm/Kの値まで低下させることができる。
【0094】
食塩溶液試験のために、ガラス粉末から試験体(例えば圧縮体)を製造する。この試験体を、小さな塊状物が生成されるまで脱塩水と混合し、次いで手作業で円筒形に圧縮し、窒素下で「球軟化」温度より約30~40℃高い温度で焼結する。試験体の重さは、通常は0.5gである。食塩溶液は0.9%である。ガラスビーカー内で、約120mlの食塩溶液を約37℃に加熱する。試験体をガラスビーカー内の縁部に置く。食塩溶液は明らかに動くが試験体は動かないように、マグネチックスターラーをセットする。ガラスビーカーをガラス蓋で覆い、蒸発による濃度差がほとんど生じないようにする。実験前およびそれぞれ毎日、試験体の重量を測定し、相対的な質量減少を比較値として参照する。
【0095】
以下に、いくつかの比較例ガラス(比較例1~比較例4)を挙げるが、これらについて、上記の実施例のガラス1~ガラス5と同じ方法で特性評価を行った。
【0096】
比較例ガラス:重量%単位での組成:
【表5】
【0097】
比較例ガラス:加熱顕微鏡法(EHM)によるガラス特性および粉末特性:
【表6】
【0098】
比較例ガラスの焼結体:0.9%食塩溶液中で37.5℃での貯蔵:
【表7】
【0099】
比較例:焼結体の特性
【表8】
【0100】
食塩溶液中での貯蔵は、比較例ガラスである比較例1が、上記のガラスに比べて10倍を超える重量減少を生じることを示している。
【0101】
NaCl溶液中で貯蔵した場合のこの不十分な耐久性から、仕様によっては、この比較例1が、体液と接触する用途には不適当であると考えられることが判明した。
【0102】
EHMによる特性評価から、半球温度約880℃、流動温度953℃の比較例2が、好ましいフィードスルーについて限界値であると考えられることが判明した。実験では、フィードスルーの製造には約980℃のガラス封止温度が必要であった。
【0103】
EHMによる特性評価から、半球温度が1000℃を大きく上回る比較例3が、これを下回る温度、または例えば900℃未満の温度ではガラス封止できないことが判明した。
【0104】
比較例4のガラスは、チタン上での流動性が不十分であり、このタイプのガラスは、チタン上での広がりが劣悪であることが判明した。広がりが劣悪であるおよび/または濡れが不十分な場合には、例えば重りの形態で圧力をかけることが必要となり得る。しかし、このようなアプローチは、特に小型化された設計および/または複雑な極形状を有する設計、例えば多数の導電体を有し、かつこれらの導体間の距離が短い設計および/または複数の導電体、例えば10個を超える導電体を有する設計の場合には比較的煩雑であるため、さほど好ましくない。
【0105】
ガラス1~ガラス5ならびに比較例ガラス1および比較例ガラス2は、(重りを使用せずに)チタンに対して90℃未満の濡れ角あるいは接触角を有する。このことは、フィードスルーの製造において多くの利点をもたらし、すなわち、所望の表面形状を得るためにカーボン型をガラスに押し付ける必要がなく、(絶縁の問題を引き起こす可能性がある)カーボン型によるガラス表面の汚染や接着が避けられ、カーボン固定材の膨張係数と金属部品の膨張係数との相違が溶融固定材の設計の障害にならない。
【0106】
実験用ガラスおよび比較例ガラスの製造を、1リットル規模のガラスを溶融し、キャスト品および幅約1~2cmのリボンに成形することにより行った。特に、密度、20℃~300℃の範囲での線熱膨張係数、すなわちCTE(20;300℃)、ならびに粘度定点TgおよびEwを専門的によく用いられている方法にしたがって測定するために、冷却されたキャスト品を使用した。
【0107】
20℃~300℃の範囲での線熱膨張係数CTEの決定を、長さ100mmの固体の長さ変化挙動をダイラトメトリーで測定することによって行った。
【0108】
密度の決定を、浮力測定によって行った。
【0109】
軟化温度Ew(すなわち、lgが7.6の粘度[dPas]の温度)の決定を、正方形フィラメントについての粘度測定によって行った。
【0110】
粉末特性を決定するため、実験用ガラスのリボンを所定の粒度(K3)に粉砕し、次いで特性評価を行った。
【0111】
ガラス封止に関連する温度の決定には、総じて加熱顕微鏡法(EHM)が一般的である。
【0112】
さらに、粉末を焼結して特性評価を行った。焼結体について、ガルバニックプロセスにおける様々な処理を表す化学溶液中での放置後の重量減少を決定した。
【0113】
耐ガルバニック性を決定するために、実験用ガラスの粉砕粉末から圧縮体を製造し、焼結した。次いで、この焼結試料を、ガルバニック処理を模擬した浴に浸し、質量減少を求めた。
【0114】
食塩溶液中での耐久性を決定するため、焼結試料を0.9%食塩溶液中で37.5℃にて1~24日間貯蔵した。その後、質量減少を求めた。
【0115】
細胞毒性を決定するため、規格EN ISO 10993-5:試験管内細胞毒性試験(Test for in vitro cytotoxicity)に準拠して、実験用ガラスの細胞毒性作用を試験した。本発明によるガラスについて、細胞毒性作用は検出されなかった。
【0116】
フィードスルーの製造では、特に溶接性、接合性、はんだ付け性などの機能性を向上させるために、ガルバニック浴での洗浄およびコーティングを使用することができる。したがって、個々の構成要素、特に使用されるガラスは、有利にはそのような浴中での耐久性を有するように形成されている。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】