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特表2024-531955大員環二金属触媒および複金属シアン化物触媒の混合物を使用してエポキシドとCO2との共重合によって界面活性剤を調製する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-03
(54)【発明の名称】大員環二金属触媒および複金属シアン化物触媒の混合物を使用してエポキシドとCO2との共重合によって界面活性剤を調製する方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 64/34 20060101AFI20240827BHJP
   C08G 64/02 20060101ALI20240827BHJP
   C08G 64/18 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
C08G64/34
C08G64/02
C08G64/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024508559
(86)(22)【出願日】2022-08-11
(85)【翻訳文提出日】2024-03-21
(86)【国際出願番号】 GB2022052102
(87)【国際公開番号】W WO2023017276
(87)【国際公開日】2023-02-16
(31)【優先権主張番号】2111555.5
(32)【優先日】2021-08-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517022142
【氏名又は名称】エコニック テクノロジーズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ECONIC TECHNOLOGIES LTD
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】リーランド、ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】ケンバー、マイケル
【テーマコード(参考)】
4J029
【Fターム(参考)】
4J029AA09
4J029AB04
4J029AC01
4J029AC02
4J029AD01
4J029AE18
4J029FA01
4J029FB01
4J029HA01
4J029HA05
4J029HC07
4J029JB262
4J029JB272
4J029JC221
4J029JF071
4J029JF131
4J029JF181
4J029JF321
4J029JF361
4J029JF511
4J029JF541
4J029JF561
4J029JF571
4J029KD02
4J029KD06
4J029KE06
4J029KE17
(57)【要約】
本発明は、界面活性剤分子を調製するための触媒方法、その方法によって得られる界面活性剤分子、その界面活性剤分子を含む組成物、およびそのように調製された界面活性剤分子の洗浄製品における使用に関する。本方法は、複金属シアン化物(DMC)触媒、式(I)の触媒、および単官能開始剤化合物の存在下で、二酸化炭素とエポキシドとを反応させるステップを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複金属シアン化物(DMC)触媒、式(I)の触媒、および単官能開始剤化合物の存在下で、二酸化炭素とエポキシドとを反応させるステップを含み、
前記式(I)の触媒は、以下の構造:
【化1】

(式中、MおよびMは、Zn(II)、Cr(II)、Co(II)、Cu(II)、Mn(II)、Mg(II)、Ni(II)、Fe(II)、Ti(II)、V(II)、Cr(III)-X、Co(III)-X、Mn(III)-X、Ni(III)-X、Fe(III)-X、Ca(II)、Ge(II)、Al(III)-X、Ti(III)-X、V(III)-X、Ge(IV)-(X)、またはTi(IV)-(X)から独立に選択され;
およびRは、水素、ハライド、ニトロ基、ニトリル基、イミン、アミン、エーテル基、シリル基、シリルエーテル基、スルホキシド基、スルホニル基、スルフィネート基、もしくはアセチリド基、または任意選択で置換されたアルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、アリールオキシ、アルキルチオ、アリールチオ、脂環式、もしくはヘテロ脂環式基から独立に選択され;
は、任意選択で置換されたアルキレン、アルケニレン、アルキニレン、ヘテロアルキレン、ヘテロアルケニレン、ヘテロアルキニレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、またはシクロアルキレンから独立に選択され、ここで、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、ヘテロアルキレン、ヘテロアルケニレン、およびヘテロアルキニレンには、任意選択で、アリール、ヘテロアリール、脂環式、またはヘテロ脂環式が介在していてもよく;
は、H、または任意選択で置換された脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環式、ヘテロ脂環式、アリール、ヘテロアリール、アルキルヘテロアリール、もしくはアルキルアリールから独立に選択され;
は、Cであり、かつEは、O、S、もしくはNHであるか、またはEは、Nであり、かつEは、Oであり;
、E、E、およびEは、N、NR、O、およびSから選択され、式中E、E、E、またはEがNである場合、
【化2】


【化3】

であり、E、E、E、またはEがNR、O、またはSである場合、
【化4】


【化5】

であり;
は、H、または任意選択で置換された脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環式、ヘテロ脂環式、アリール、ヘテロアリール、アルキルヘテロアリール、-アルキルC(O)OR19、もしくは-アルキルC≡N、もしくはアルキルアリールから独立に選択され;
Xは、OC(O)R、OSO、OSOR、OSO(R、S(O)R、OR、ホスフィネート、ハライド、ナイトレート、ヒドロキシル、カーボネート、アミノ、アミド、または任意選択で置換された脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環式、ヘテロ脂環式、アリール、もしくはヘテロアリールから独立に選択され、
は、独立に、水素、または任意選択で置換された脂肪族、ハロ脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環式、ヘテロ脂環式、アリール、アルキルアリールもしくはヘテロアリールであり;
Gは、存在しないか、またはルイス塩基である中性もしくは陰イオン性供与性配位子から独立に選択される)を有する、界面活性剤分子を調製するための方法。
【請求項2】
単官能開始剤化合物、エポキシド、二酸化炭素、式(I)の触媒、複金属シアン化物(DMC)触媒、および任意選択で溶媒を含む混合物を形成し、続いて温度を少なくとも10℃上昇させるステップを含む、請求項1に記載の界面活性剤分子を調製するための方法。
【請求項3】
(I)
(a)式(I)の触媒、複金属シアン化物(DMC)触媒、および任意選択で二酸化炭素および/または溶媒を、エポキシドおよび任意選択で単官能開始剤化合物および/または二酸化炭素と混合して、混合物(α)を形成するステップ;または
(b)複金属シアン化物(DMC)触媒および任意選択で単官能開始剤化合物、二酸化炭素および/または溶媒を、エポキシドおよび任意選択で二酸化炭素および/または溶媒と混合して、混合物(α)を形成するステップ;または
(c)エポキシド、式(I)の触媒、単官能開始剤化合物、および二酸化炭素、および任意選択で溶媒を混合して、混合物(α)を形成するステップ;または
(d)式(I)の触媒、複金属シアン化物(DMC)触媒、および任意選択で単官能開始剤化合物、エポキシド、二酸化炭素および/または溶媒を混合して、混合物(α)を形成するステップ;および
(II)単官能開始剤化合物、エポキシド、二酸化炭素、式(I)の触媒、複金属シアン化物(DMC)触媒、および/または溶媒のうち1つ以上を混合物(α)に添加して、単官能開始剤化合物、エポキシド、二酸化炭素、式(I)の触媒、複金属シアン化物(DMC)触媒、および任意選択で溶媒を含む混合物(β)を形成し、および/または反応温度を10℃以上上昇させるステップを含む、請求項1または請求項2に記載の界面活性剤分子を調製するための方法。
【請求項4】
混合物(α)が、ステップ(II)の前に約50~90℃、任意選択で約50~80℃、約55~80℃、または約60~80℃の温度に保持される、請求項3(a)、3(c)、または3(d)に記載の方法。
【請求項5】
ステップ(II)において、温度を約60~150℃、任意選択で65~150℃、または80~130℃に上昇させ、任意選択で追加のエポキシドを添加する、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記エポキシドが、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、またはエチレンオキシドとプロピレンオキシドとの混合物であり、好ましくは前記エポキシドがエチレンオキシドである、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
混合物(α)は、ステップ(II)の前に少なくとも約1分間、任意選択で少なくとも約5分間、任意選択で少なくとも約15分間、任意選択で少なくとも約30分間、任意選択で少なくとも約1時間、任意選択で少なくとも約2時間、任意選択で少なくとも約5時間保持される、請求項3~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
混合物(α)は、ステップ(II)の前に少なくとも約1分間、任意選択で少なくとも約5分間、任意選択で少なくとも約15分間、任意選択で少なくとも約30分間、任意選択で少なくとも約1時間、任意選択で少なくとも約2時間、任意選択で少なくとも約3時間、任意選択で少なくとも約4時間、任意選択で少なくとも約8時間、任意選択で少なくとも約16時間保持される、請求項3(c)または4に記載の方法。
【請求項9】
ステップ(I)(a)は、最初に式(I)の触媒、複金属シアン化物(DMC)触媒、および任意選択で二酸化炭素を混合して混合物(α’)を形成し、続いてエポキシドおよび任意選択で単官能開始剤化合物および/または二酸化炭素を添加して混合物(α)を形成するステップを含む、請求項3(a)に従属する場合の請求項4~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
混合物(α’)は、添加の前に約0~250℃、任意選択で約40~150℃、任意選択で約50~150℃、任意選択で約70~140℃、任意選択で約80~130℃の温度に保持される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記方法は連続的であり、混合物(β)中に式(I)の触媒に対する所定のモル比または重量比のエポキシドが存在し、前記方法がさらに
(III)混合物(β)にエポキシドを添加して混合物(γ)を形成するステップであって、前記エポキシドが、混合物(γ)中の式(I)の触媒に対するエポキシドの前記モル比または重量比を前記所定のモル比または重量比の少なくとも約75%にするのに十分な量で添加され、任意選択でステップ(III)が繰り返されるステップを含む、請求項3~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記方法は連続的であり、混合物(β)中に式(I)の触媒に対する所定のモル比または重量比の単官能開始剤化合物が存在し、前記方法がさらに
(III)混合物(β)に単官能開始剤化合物を添加して混合物(γ)を形成するステップであって、前記単官能開始剤化合物が、混合物(γ)中の式(I)の触媒に対する単官能開始剤化合物のモル比または重量比を前記所定のモル比または重量比の少なくとも約75%にするのに十分な量で添加され、任意選択でステップ(III)が繰り返されるステップを含む、請求項3~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記方法は連続的であり、混合物(β)中に式(I)の触媒に対する所定のモル比または重量比の二酸化炭素が存在し、前記方法がさらに
(III)混合物(β)に二酸化炭素を添加して混合物(γ)を形成するステップであって、前記二酸化炭素が、混合物(γ)中の式(I)の触媒に対する二酸化炭素のモル比または重量比を前記所定のモル比または重量比の少なくとも約75%にするのに十分な量で添加され、任意選択でステップ(III)が繰り返されるステップを含む、請求項3~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記方法が連続的であり、混合物(β)中に所定の量の複金属シアン化物(DMC)触媒が存在し、前記方法がさらに
(III)複金属シアン化物(DMC)触媒を混合物(β)に添加して混合物(γ)を形成するステップであって、前記複金属シアン化物(DMC)触媒は、混合物(γ)中の複金属シアン化物(DMC)触媒の量を前記所定の量の約50~550%にするのに十分な量で添加され、任意選択でステップ(III)が繰り返されるステップを含む、請求項3~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記式(I)の触媒の量および前記複金属シアン化物(DMC)触媒の量は、互いに約300:1~約1:100、例えば約120:1~約1:75、例えば約40:1~約1:50、例えば約30:1~約1:30、例えば約20:1~約1:1、例えば約10:1~約2:1、例えば約5:1~約1:5という所定の重量比である、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記複金属シアン化物(DMC)触媒が、他の成分と乾式混合される、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記複金属シアン化物(DMC)触媒がスラリーとして混合され、前記スラリーが前記複金属シアン化物(DMC)触媒と、単官能開始剤化合物および/または溶媒とを含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記式(I)の触媒が、他の成分と乾式混合される、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記式(I)の触媒が、溶液として混合され、前記溶液が、前記式(I)の触媒と、単官能開始剤化合物、エポキシド、および/または溶媒のうちの1つ以上とを含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
エポキシドがステップ(II)において添加される、請求項3~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
式(I)の触媒がステップ(II)において添加される、請求項3~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
複金属シアン化物(DMC)触媒がステップ(II)において添加される、請求項3~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
単官能開始剤化合物がステップ(II)において添加される、請求項3~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
エポキシドおよび単官能開始剤化合物の両方がステップ(II)において添加される、請求項3~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
エポキシド、式(I)の触媒、複金属シアン化物(DMC)触媒、および/または単官能開始剤化合物が、独立して、ステップ(II)において連続的に添加される、請求項3~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
エポキシド、式(I)の触媒、複金属シアン化物(DMC)触媒、および/または単官能開始剤化合物が、独立して、ステップ(II)において不連続的に添加される、請求項3~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記単官能開始剤化合物または各単官能開始剤化合物が、式(II):
Z-R(II)
(式中、Zは、Zに結合した-R基を有し得る任意の基であり得、
各Rは、独立して、-OH、-NHR’、-SH、-C(O)OH、-P(O)(OR’)(OH)、-PR’(O)(OH)、または-PR’(O)OHから選択され;
R’は、H、または任意選択で置換されたアルキル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、もしくはヘテロシクロアルキルから選択される)
を有する、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記単官能開始剤化合物または各単官能開始剤化合物は、アルコール(例えばメタノール、エタノール、1-および2-プロパノール、1-および2-ブタノール、直鎖または分枝のC~C20-モノアルコール(例えばtert-ブタノール、3-ブテン-1-オール、3-ブチン-1-オール、2-メチル-3-ブテン-2-オール、2-メチル-3-ブチン-2-オール、プロパルギルアルコール、2-メチル-2-プロパノール、1-tert-ブトキシ-2-プロパノール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、1-ヘキサノール、2-ヘキサノール、3-ヘキサノール、1-ヘプタノール、2-ヘプタノール、3-ヘプタノール、1-オクタノール、2-オクタノール、3-オクタノール、4-オクタノール、1-デカノール、1-ドデカノール、フェノール、2-ヒドロキシビフェニル、3-ヒドロキシビフェニル、4-ヒドロキシビフェニル、2-ヒドロキシピリジン、3-ヒドロキシピリジン、および4-ヒドロキシピリジン)、エチレン、プロピレン、ポリエチレン、ポリプロピレングリコールのモノエーテルまたはエステル(例えばエチレングリコールモノメチルエーテルおよびプロピレングリコールモノメチルエーテル)、フェノール(例えば直鎖または分枝のC~C20アルキル置換フェノール、例えばノニル-フェノールまたはオクチルフェノール)、単官能カルボン酸(例えばギ酸、酢酸、プロピオン酸、および酪酸)、脂肪酸(例えばステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、安息香酸、およびアクリル酸)、および単官能チオール(例えばエタンチオール、プロパン-1-チオール、プロパン-2-チオール、ブタン-1-チオール、3-メチルブタン-1-チオール、2-ブテン-1-チオール、およびチオフェノール)、またはアミン(例えばブチルアミン、tert-ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、アニリン、アジリジン、ピロリジン、ピペリジン、およびモルホリン)から選択される、請求項1~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記単官能開始剤化合物または各開始剤化合物は、1-オクタノール、1-デカノール、1-ドデカノール、1-テトラデカノール、セチルアルコール、またはステアリルアルコールなどの直鎖または分枝のC~C20アルコールであり、より好ましくは、1-デカノール、1-ドデカノール、1-テトラデカノール、セチルアルコール、またはステアリルアルコールなどの直鎖または分枝のC10~C20アルコールである、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記二酸化炭素が連続的に供給される、請求項1~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
約1バール~約60バールの二酸化炭素、任意選択で約1バール~約40バール、任意選択で約1バール~約20バール、任意選択で約1バール~約15バール、任意選択で約1バール~約10バール、任意選択で約1バール~約5バールの圧力で実施される、請求項1~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記DMC触媒は、少なくとも2個の金属中心およびシアニド配位子に加えて、1つ以上の錯化剤、水、金属塩、および/または酸の少なくとも1つも、任意選択で非化学量論的な量で含む、請求項1~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記DMC触媒が、錯化剤、水、および/または酸のうちの少なくとも1つの存在下で、金属塩の溶液を金属シアン化物塩の溶液で処理することによって調製され、任意選択で、前記金属塩が、式M’(X’)
(式中、M’は、Zn(II)、Ru(II)、Ru(III)、Fe(II)、Ni(II)、Mn(II)、Co(II)、Sn(II)、Pb(II)、Fe(III)、Mo(IV)、Mo(VI)、Al(III)、V(V)、V(VI)、Sr(II)、W(IV)、W(VI)、Cu(II)、およびCr(III)から選択され、
X’は、ハライド、オキシド、ヒドロキシド、スルフェート、カーボネート、シアニド、オキサレート、チオシアネート、イソシアネート、イソチオシアネート、カルボキシレート、およびナイトレートから選択される陰イオンであり、
pは、1以上の整数であり、陰イオンの電荷にpを乗じた数が、M’の原子価を満たす)のものであり、
前記金属シアン化物塩は、式(Y)M”(CN)(A)
(式中、M’’は、Fe(II)、Fe(III)、Co(II)、Co(III)、Cr(II)、Cr(III)、Mn(II)、Mn(III)、Ir(III)、Ni(II)、Rh(III)、Ru(II)、V(IV)、およびV(V)から選択され、
Yは、プロトンまたはアルカリ金属イオンもしくはアルカリ土類金属イオン(例えば、K)であり、
Aは、ハライド、オキシド、ヒドロキシド、スルフェート、シアニド、オキサレート、チオシアネート、イソシアネート、イソチオシアネート、カルボキシレート、およびナイトレートから選択される陰イオンであり、
qおよびbは1以上の整数であり、
cは0または1以上の整数であってもよく、
陰イオンY、CN、およびA上の電荷にそれぞれq、b、およびcを乗じたものの合計(例えば、Y×q+CN×b+A×c)が、M’’の原子価を満たす)
のものであり、
前記少なくとも1つの錯化剤が、(ポリ)エーテル、ポリエーテルカーボネート、ポリカーボネート、ポリ(テトラメチレンエーテルジオール)、ケトン、エステル、アミド、アルコール、尿素、またはそれらの組合せから選択され、
任意選択で、前記少なくとも1つの錯化剤が、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、(m)エトキシエチレングリコール、ジメトキシエタン、tert-ブチルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジグリム、トリグリム、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコールおよびsec-ブチルアルコール、3-ブテン-1-オール、2-メチル-3-ブテン-2-オール、2-メチル-3-ブチン-2-オール、3-メチル-1-ペンチン-3-オール、またはこれらの組合せから選択され、
前記酸は、存在する場合、式HX’’’(式中、X’’’は、ハライド、スルフェート、ホスフェート、ボラート、クロラート、カーボネート、シアニド、オキサレート、チオシアネート、イソシアネート、イソチオシアネート、カルボキシレート、およびナイトレートから選択される陰イオンであり、rは、対イオンX’’’上の電荷に対応する整数である)を有する、請求項1~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記DMC触媒が、式:
M’[M’’(CN)
(式中、M’およびM’’は、請求項96で定義した通りであり、d、e、f、およびgは、整数であり、前記DMC触媒が電気中性を有するように選択され、
任意選択で、dは3であり、eは1であり、fは6であり、gは2である)
を含む、請求項1~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
M’が、Zn(II)、Fe(II)、Co(II)、およびNi(II)から選択され、任意選択でM’がZn(II)である、請求項33または34に記載の方法。
【請求項36】
M’’が、Co(II)、Co(III)、Fe(II)、Fe(III)、Cr(III)、Ir(III)、およびNi(II)から選択され、任意選択で、M’’がCo(II)またはCo(III)である、請求項33~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
反応温度が、前記方法の経過中に上昇する、請求項1~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
工業規模で実施される、請求項1~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
請求項1~38のいずれか一項に記載の方法によって得ることができる界面活性剤分子。
【請求項40】
式(III)または(IV):
【化6】

(式中、各Re1、Re2、Re3、およびRe4は、独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシル、または任意選択で置換されたアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロアルキル、もしくはヘテロアルケニルから選択されるか、あるいはRe1(またはRe2)およびRe3(またはRe4)は、一緒になって、炭素原子および水素原子、ならびに任意選択で1個以上のヘテロ原子を含む、飽和、部分的に不飽和、または不飽和の環を形成し得、
Zは、Zに結合したZ’基を有し得る任意の基であり
Z’は、-O-、-NR’-、-S-、-C(O)O-、-P(O)(OR’)O-、-PR’(O)(O-)、または-PR’(O)O-から選択され、R’は、H、または任意選択で置換されたアルキル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、もしくはヘテロシクロアルキルから選択され、
nおよびmは1以上の整数である)
を有する、請求項39に記載の界面活性剤分子。
【請求項41】
Z’が-O-である場合、ZはC~C25アルキル基である、請求項40に記載の界面活性剤分子。
【請求項42】
ZがC~Cアルキル基である、請求項41に記載の界面活性剤分子。
【請求項43】
ZがC~C25アルキル基である、請求項41に記載の界面活性剤分子。
【請求項44】
洗浄製品における、請求項39~43のいずれか一項に記載の界面活性剤分子の使用。
【請求項45】
請求項39~43のいずれか一項に記載の界面活性剤分子を含む組成物であって、洗浄製品用の界面活性剤配合物である、組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、界面活性剤分子、界面活性剤分子を調製するための触媒的方法、およびそのように調製された界面活性剤分子の使用に関する。本発明は、より詳細には、必ずしも排他的ではないが、重合中の材料の制御された添加によって改善された特異性を有する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
界面活性剤は、典型的には2つの液相間の張力を低下させる化合物である。典型的には、水性系において使用される界面活性剤は、疎水性基および親水性基を含み、両親媒性として説明される。
【0003】
従来、非イオン性界面活性剤の疎水性部分は、石油、またはパーム油などの天然油のいずれかに由来する炭化水素鎖と、石油に由来するポリエーテル鎖とを含む。したがって、代替供給原料、特により持続可能な供給原料から界面活性剤を形成することが望ましい。
【0004】
再生可能な原料として二酸化炭素を使用するが、既存の製造設備で動作することができる適度な圧力下で使用する洗浄システムで使用するための水溶性界面活性剤分子を生成することは有利であろう。複数の反応段階なしにワンポット反応でそれらを製造することも有利であろう。
【0005】
本発明の目的は、2つの触媒系を用いて適度な圧力でCO含有界面活性剤分子を製造する方法を提供することである。
【発明の概要】
【0006】
本発明によれば、界面活性剤分子を調製するための方法であって、複金属シアン化物(DMC)触媒、式(I)の触媒、および単官能開始剤化合物の存在下で二酸化炭素とエポキシドとを反応させることを含み、式(I)の触媒が以下の構造:
【0007】
【化1】
【0008】
(式中、MおよびMは、Zn(II)、Cr(II)、Co(II)、Cu(II)、Mn(II)、Mg(II)、Ni(II)、Fe(II)、Ti(II)、V(II)、Cr(III)-X、Co(III)-X、Mn(III)-X、Ni(III)-X、Fe(III)-X、Ca(II)、Ge(II)、Al(III)-X、Ti(III)-X、V(III)-X、Ge(IV)-(X)、またはTi(IV)-(X)から独立に選択され;
およびRは、水素、ハライド、ニトロ基、ニトリル基、イミン、アミン、エーテル基、シリル基、シリルエーテル基、スルホキシド基、スルホニル基、スルフィネート基、もしくはアセチリド基、または任意選択で置換されたアルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、アリールオキシ、アルキルチオ、アリールチオ、脂環式、もしくはヘテロ脂環式基から独立に選択され;
は、任意選択で置換されたアルキレン、アルケニレン、アルキニレン、ヘテロアルキレン、ヘテロアルケニレン、ヘテロアルキニレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、またはシクロアルキレンから独立に選択され、ここで、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、ヘテロアルキレン、ヘテロアルケニレン、およびヘテロアルキニレンには、任意選択で、アリール、ヘテロアリール、脂環式、またはヘテロ脂環式が介在していてもよく;
は、H、または任意選択で置換された脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環式、ヘテロ脂環式、アリール、ヘテロアリール、アルキルヘテロアリール、もしくはアルキルアリールから独立に選択され;
は、Cであり、かつEは、O、S、もしくはNHであるか、またはEは、Nであり、かつEは、Oであり;
、E、E、およびEは、N、NR、O、およびSから選択され、式中E、E、E、またはEがNである場合、
【0009】
【化2】
【0010】
【0011】
【化3】
【0012】
であり、E、E、E、またはEがNR、O、またはSである場合、
【0013】
【化4】
【0014】
【0015】
【化5】
【0016】
であり;
は、H、または任意選択で置換された脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環式、ヘテロ脂環式、アリール、ヘテロアリール、アルキルヘテロアリール、-アルキルC(O)OR19、もしくは-アルキルC≡N、もしくはアルキルアリールから独立に選択され;
Xは、OC(O)R、OSO、OSOR、OSO(R、S(O)R、OR、ホスフィネート、ハライド、ナイトレート、ヒドロキシル、カーボネート、アミノ、アミド、または任意選択で置換された脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環式、ヘテロ脂環式、アリール、もしくはヘテロアリールから独立に選択され、ここで各Xは、同一であってもまたは異なっていてもよく、Xは、MとMとの間に架橋を形成していてもよく;
は、独立に、水素、または任意選択で置換された脂肪族、ハロ脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環式、ヘテロ脂環式、アリール、アルキルアリールもしくはヘテロアリールであり;
Gは、存在しないか、またはルイス塩基である中性もしくは陰イオン性供与性配位子から独立に選択される)を有する方法が提供される。
【0017】
この方法は、単官能開始剤化合物、エポキシド、二酸化炭素、式(I)の触媒、複金属シアン化物(DMC)触媒、および任意選択で溶媒を含む混合物を形成し、続いて温度を少なくとも10℃上昇させるステップを含み得る。
【0018】
この方法は、以下のステップ:
(I)(a)式(I)の触媒、複金属シアン化物(DMC)触媒、および任意選択で二酸化炭素および/または溶媒を、エポキシドおよび任意選択で単官能開始剤化合物および/または二酸化炭素と混合して、混合物(α)を形成するステップ;または
(b)複金属シアン化物(DMC)触媒および任意選択で単官能開始剤化合物、二酸化炭素および/または溶媒を、エポキシドおよび任意選択で二酸化炭素および/または溶媒と混合して、混合物(α)を形成するステップ;または
(c)エポキシド、式(I)の触媒、単官能開始剤化合物、および二酸化炭素、および任意選択で溶媒を混合して、混合物(α)を形成するステップ;または
(d)式(I)の触媒、複金属シアン化物(DMC)触媒、および任意選択で単官能開始剤化合物、エポキシド、二酸化炭素および/または溶媒を混合して、混合物(α)を形成するステップ;および
(II)単官能開始剤化合物、エポキシド、二酸化炭素、式(I)の触媒、複金属シアン化物(DMC)触媒、および/または溶媒の1つ以上を混合物(α)に添加して、単官能開始剤化合物、エポキシド、二酸化炭素、式(I)の触媒、複金属シアン化物(DMC)触媒、および任意選択で溶媒を含む混合物(β)を形成し、および/または温度を10℃上昇させるステップ
を含むことができる。
【0019】
本明細書に記載される方法によって得ることができる界面活性剤分子、洗浄製品における当該界面活性剤分子の使用、および当該界面活性剤分子を含む組成物であって、洗浄製品用の界面活性剤配合物である組成物も提供される。
【0020】
本発明の界面活性剤分子はまた、農薬、石油増進回収、発泡体の性質を帯びた建築材料、コーティング、塗料、接着剤、自動車用途、および織物製造における機能性添加剤として使用され得る。本発明の界面活性剤分子を含む、そのような用途に使用するのに適した組成物を製剤化することができる。
【0021】
定義
本発明の目的のために、脂肪族基は、直鎖(すなわち、非分枝)、分枝、または環状であり得、完全に飽和され得るか、または1つ以上の不飽和単位を含有し得るが、芳香族ではない炭化水素部分である。「不飽和」という用語は、1つ以上の二重結合および/または三重結合を有する部分を意味する。したがって、「脂肪族」という用語は、アルキル、シクロアルキル、アルケニルシクロアルケニル、アルキニル、またはシクロアルケニル基、およびそれらの組合せを包含するものとする。
【0022】
脂肪族基は、任意選択でC1~30脂肪族基、すなわち、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30個の炭素原子を有する脂肪族基である。脂肪族基は、任意選択でC1~6脂肪族基などの、C1~15脂肪族、任意選択でC1~12脂肪族、任意選択でC1~10脂肪族、任意選択でC1~8脂肪族である。適切な脂肪族基としては、直鎖または分枝鎖のアルキル基、アルケニル基、およびアルキニル基、ならびにそれらの混合物(例えば、(シクロアルキル)アルキル基、(シクロアルケニル)アルキル基、および(シクロアルキル)アルケニル基)が挙げられる。
【0023】
本明細書で使用される「アルキル」という用語は、脂肪族部分から1個の水素原子を除去することによって誘導される飽和した、直鎖または分子鎖炭化水素ラジカルを指す。アルキル基は、「C1~20アルキル基」であってもよく、これは、1~20個の炭素を有する直鎖または分枝鎖であるアルキル基である。したがって、アルキル基は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20個の炭素原子を有する。任意選択で、アルキル基は、C1~15アルキル、任意選択でC1~12アルキル、任意選択でC1~10アルキル、任意選択でC1~8アルキル、任意選択でC1~6アルキル基である。具体的には、「C1~20アルキル基」としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、sec-ペンチル基、イソペンチル基、n-ペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、sec-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、n-オクタデシル基、n-ノナデシル基、n-エイコシル基、1,1-ジメチルプロピル基、1,2-ジメチルプロピル基、2,2-ジメチルプロピル基、1-エチルプロピル基、n-ヘキシル基、1-エチル-2-メチルプロピル基、1,1,2-トリメチルプロピル基、1-エチルブチル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基、1,1-ジメチルブチル基、1,2-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、1,3-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、2-エチルブチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基などが挙げられる。
【0024】
「アルケニル」という用語は、本明細書中で使用される場合、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する直鎖または分枝鎖の脂肪族部分からの単一の水素原子の除去に由来する基を示す。「アルキニル」という用語は、本明細書中で使用される場合、少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を有する直鎖または分枝鎖の脂肪族部分からの1個の水素原子の除去に由来する基を指す。アルケニルおよびアルキニル基は、それぞれ、任意選択で「C2~20アルケニル」および「C2~20アルキニル」、任意選択で「C2~15アルケニル」および「C2~15アルキニル」、任意選択で「C2~12アルケニル」および「C2~12アルキニル」、任意選択で「C2~10アルケニル」および「C2~10アルキニル」、任意選択で「C2~8アルケニル」および「C2~8アルキニル」、任意選択で「C2~6アルケニル」および「C2~6アルキニル」基である。アルケニル基の例としては、エテニル、プロペニル、アリル、1,3-ブタジエニル、ブテニル、1-メチル-2-ブテン-1-イル、アリル、1,3-ブタジエニル、およびアレニルが挙げられる。アルキニル基の例としては、エチニル、2-プロピニル(プロパルギル)、および1-プロピニルが挙げられる。
【0025】
本明細書で使用される「脂環式(cycloaliphatic)」、「炭素環」、または「炭素環式」という用語は、3~20個の炭素原子を有する飽和または部分不飽和の環式脂肪族単環式または多環式(縮合、架橋およびスピロ縮合を含む)環系、すなわち3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20個の炭素原子を有する脂環式(alicyclic)基を指す。任意選択で、脂環式基は、3~15個、任意選択で3~12個、任意選択で3~10個、任意選択で3~8個の炭素原子、任意選択で3~6個の炭素原子を有する。「脂環式」、「炭素環」、または「炭素環式」という用語は、テトラヒドロナフチル環などの1つ以上の芳香族または非芳香族環に縮合した脂肪族環も含み、結合点は脂肪族環上にある。炭素環式基は多環式、例えば二環式または三環式であってもよい。脂環式基は、-CH-シクロヘキシルなどの1つ以上の連結または非連結アルキル置換基を有する脂環式環を含んでもよいことが理解されるであろう。具体的には、炭素環の例としては、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、ノルボルネン、フェニル、シクロヘキセン、ナフタレン、スピロ[4.5]デカン、シクロヘプタン、アダマンタン、およびシクロオクタンが挙げられる。
【0026】
ヘテロ脂肪族基(ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、およびヘテロアルキニルを含む)は、1つ以上のヘテロ原子をさらに含有する上記の脂肪族基である。したがって、ヘテロ脂肪族基は、任意選択で2~21個の原子、任意選択で2~16個の原子、任意選択で2~13個の原子、任意選択で2~11個の原子、任意選択で2~9個の原子、任意選択で2~7個の原子を含み、少なくとも1個の原子は炭素原子である。任意選択的なヘテロ原子は、O、S、N、P、およびSiから選択される。ヘテロ脂肪族基が2個以上のヘテロ原子を有する場合、ヘテロ原子は同じであっても異なっていてもよい。ヘテロ脂肪族基は、置換または非置換、分枝または非分枝、環式または非環式であってもよく、飽和、不飽和、または部分不飽和基を含んでもよい。
【0027】
脂環式基は、3~20個の炭素原子を有する飽和または部分不飽和の環式脂肪族単環式または多環式(縮合、架橋、およびスピロ縮合を含む)環系、すなわち3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20個の炭素原子を有する脂環式基を指す。任意選択で、脂環式基は、3~15個、任意選択で3~12個、任意選択で3~10個、任意選択で3~8個の炭素原子、任意選択で3~6個の炭素原子を有する。「脂環式」という用語は、シクロアルキル、シクロアルケニル、およびシクロアルキニル基を包含する。脂環式基は、-CH-シクロヘキシルなどの1つ以上の連結または非連結アルキル置換基を有する脂環式環を含んでもよいことが理解されるであろう。C3~20シクロアルキル基の例として具体的には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、アダマンチル、およびシクロオクチルが挙げられる。
【0028】
ヘテロ脂環式基は、炭素原子に加えて、O、S、N、P、およびSiから任意選択で選択される1つ以上の環ヘテロ原子を有する、上で定義した脂環式基である。ヘテロ脂環式基は、同じであっても異なっていてもよい1~4個のヘテロ原子を任意選択で含有する。ヘテロ脂環式基は、任意選択で5~20個の原子、任意選択で5~14個の原子、任意選択で5~12個の原子を含有する。
【0029】
アリール基またはアリール環は、5~20個の炭素原子を有する単環式または多環式環系であり、系中の少なくとも1つの環は芳香族であり、系中の各環は3~12個の環員を含有する。「アリール」という用語は、単独で、または「アラルキル」、「アラルコキシ」、もしくは「アリールオキシアルキル」におけるようなより大きな部分の一部として使用することができる。アリール基は、任意選択で「C6~12アリール基」であってもよく、6、7、8、9、10、11、または12個の炭素原子により構成されるアリール基であり、単環式環基または二環式環基などの縮合環基を含む。「C6~10アリール基」の例として具体的には、例えば、フェニル基、ビフェニル基、インデニル基、アントラシル基、ナフチル基、またはアズレニル基などが挙げられる。なお、インダン、ベンゾフラン、フタルイミド、フェナントリジン、テトラヒドロナフタレンなどの縮合環もアリール基に含まれる。
【0030】
単独でまたは別の用語(「ヘテロアラルキル」または「ヘテロアラルコキシ」など)の一部として使用される「ヘテロアリール」という用語は、5~14個の環原子、任意選択で5、6、または9個の環原子を有し;環状配列において共有される6、10、または14個のπ電子を有し;炭素原子に加えて、1~5個のヘテロ原子を有する基を指す。「ヘテロ原子」という用語は、窒素、酸素、または硫黄を指し、窒素または硫黄の任意の酸化形態、および窒素の任意の四級化形態を含む。「ヘテロアリール」という用語はまた、ヘテロアリール環が1つ以上のアリール環、脂環式環、または複素環式環に縮合している基を含み、ラジカルまたは結合点はヘテロ芳香族環上にある。例としては、インドリル、イソインドリル、ベンゾチエニル、ベンゾフラニル、ジベンゾフラニル、インダゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリル、キノリル、イソキノリル、シンノリニル、フタラジニル、キナゾリニル、キノキサリニル、4H-キノリジニル、カルバゾリル、アクリジニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサジニル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、およびピリド[2,3-b]-1,4-オキサジン-3(4H)-オンが挙げられる。したがって、ヘテロアリール基は、単環式または多環式であり得る。
【0031】
「ヘテロアラルキル」という用語は、ヘテロアリールによって置換されたアルキル基を指し、アルキルおよびヘテロアリール部分は、独立して、任意選択で置換されている。
本明細書において使用される、「複素環」、「複素環式」、「複素環式基」、および「複素環式環(heterocyclic ring)」という語は互換的に使用され、上に定義したように、炭素原子に加えて、1個又は複数個の、任意選択で1~4個のヘテロ原子を有する、飽和、部分不飽和、または芳香族である、安定な5~7員の単環式または7~14員の二環式の複素環式部分を指す。複素環の環原子に関連して使用される「窒素」という語は、置換された窒素も含む。
【0032】
脂環式基、ヘテロ脂環式基、アリール基、およびヘテロアリール基の例としては、これらに限定されるものではないが、シクロヘキシル、フェニル、アクリジン、ベンズイミダゾール、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、カルバゾール、シンノリン、ダイオキシン、ジオキサン、ジオキソラン、ジチアン、ジチアジン、ジチアゾール、ジチオラン、フラン、イミダゾール、イミダゾリン、イミダゾリジン、インドール、インドリン、インドリジン、インダゾール、イソインドール、イソキノリン、イソオキサゾール、イソチアゾール、モルホリン、ナフチリジン、オキサゾール、オキサジアゾール、オキサチアゾール、オキサチアゾリジン、オキサジン、オキサジアジン、フェナジン、フェノチアジン、フェノキサジン、フタラジン、ピペラジン、ピペリジン、プテリジン、プリン、ピラン、ピラジン、ピラゾール、ピラゾリン、ピラゾリジン、ピリダジン、ピリジン、ピリミジン、ピロール、ピロリジン、ピロリン、キノリン、キノキサリン、キナゾリン、キノリジン、テトラヒドロフラン、テトラジン、テトラゾール、チオフェン、チアジアジン、チアジアゾール、チアトリアゾール、チアジン、チアゾール、チオモルホリン、チアナフタレン、チオピラン、トリアジン、トリアゾール、およびトリチアンが挙げられる。
【0033】
「ハライド」、「ハロ」、および「ハロゲン」という用語は、互換的に使用され、本明細書において使用される場合、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などを意味し、任意選択で、フッ素原子、臭素原子、または塩素原子を意味し、任意選択でフッ素原子を意味する。
【0034】
ハロアルキル基は、任意選択で「C1~20ハロアルキル基」、任意選択で「C1~15ハロアルキル基」、任意選択で「C1~12ハロアルキル基」、任意選択で「C1~10ハロアルキル基」、任意選択で「C1~8ハロアルキル基」、任意選択で「C1~6ハロアルキル基」であり、それぞれ、少なくとも1個のハロゲン原子、任意選択で1、2、または3個のハロゲン原子で置換された、上に記載したC1~20アルキル、C1~15アルキル、C1~12アルキル、C1~10アルキル、C1~8アルキル、またはC1~6アルキル基である。「ハロアルキル」という用語は、過フッ素化化合物などの、フッ素化または塩素化された基を包含する。具体的には、「C1~20ハロアルキル基」の例としては、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、フルオロエチル基、ジフルオロエチル基、トリフルオロエチル基、クロロメチル基、ブロモメチル基、ヨードメチル基などが挙げられる。
【0035】
アルコキシ基は、任意選択で「C1~20アルコキシ基」、任意選択で「C1~15アルコキシ基」、任意選択で「C1~12アルコキシ基」、任意選択で「C1~10アルコキシ基」、任意選択で「C1~8アルコキシ基」、任意選択で「C1~6アルコキシ基」であり、それぞれ、先に定義したC1~20アルキル、C1~15アルキル、C1~12アルキル、C1~10アルキル、C1~8アルキル、またはC1~6アルキル基に結合しているオキシ基である。具体的には、「C1~20アルコキシ基」の例としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、sec-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、イソヘキシルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、n-ヘプチルオキシ基、n-オクチルオキシ基、n-ノニルオキシ基、n-デシルオキシ基、n-ウンデシルオキシ基、n-ドデシルオキシ基、n-トリデシルオキシ基、n-テトラデシルオキシ基、n-ペンタデシルオキシ基、n-ヘキサデシルオキシ基、n-ヘプタデシルオキシ基、n-オクタデシルオキシ基、n-ノナデシルオキシ基、n-エイコシルオキシ基、1,1-ジメチルプロポキシ基、1,2-ジメチルプロポキシ基、2,2-ジメチルプロポキシ基、2-メチルブトキシ基、1-エチル-2-メチルプロポキシ基、1,1,2-トリメチルプロポキシ基、1,1-ジメチルブトキシ基、1,2-ジメチルブトキシ基、2,2-ジメチルブトキシ基、2,3-ジメチルブトキシ基、1,3-ジメチルブトキシ基、2-エチルブトキシ基、2-メチルペンチルオキシ基、3-メチルペンチルオキシ基などが挙げられる。
【0036】
アリールオキシ基は、任意選択で「C5~20アリールオキシ基」、任意選択で「C6~12アリールオキシ基」、任意選択で「C6~10アリールオキシ基」であり、それぞれ、先に定義したC5~20アリール、C6~12アリール、またはC6~10アリール基に結合しているオキシ基である。
【0037】
アルキルチオ基は、任意選択で「C1~20アルキルチオ基」、任意選択で「C1~15アルキルチオ基」、任意選択で「C1~12アルキルチオ基」、任意選択で「C1~10アルキルチオ基」、任意選択で「C1~8アルキルチオ基」、任意選択で「C1~6アルキルチオ基」であり、それぞれ、先に定義したC1~20アルキル、C1~15アルキル、C1~12アルキル、C1~10アルキル、C1~8アルキル、またはC1~6アルキル基に結合しているチオ(-S-)基である。
【0038】
アリールチオ基は、任意選択で「C5~20アリールチオ基」、任意選択で「C6~12アリールチオ基」、任意選択で「C6~10アリールチオ基」であり、それぞれ、先に定義したC5~20アリール、C6~12アリール、またはC6~10アリール基に結合しているチオ(-S-)基である。
【0039】
アルキルアリール基は、任意選択で「C6~12アリールC1~20アルキル基」、任意選択で「C6~12アリールC1~16アルキル基」、任意選択で「C6~12アリールC1~6アルキル基」であり、これは、任意の位置で上に定義したアルキル基に結合している、上に定義したアリール基である。アルキルアリール基から分子への結合点は、アルキル部を介していてもよく、したがって、任意選択で、アルキルアリール基は、-CH-Phまたは-CHCH-Phである。アルキルアリール基は、「アラルキル」と称することもできる。
【0040】
シリル基は、任意選択で、-Si(Rであり、Rは、独立に、上に定義した脂肪族基、ヘテロ脂肪族基、脂環式基、ヘテロ脂環式基、アリール基、またはヘテロアリール基である。任意選択で、各Rは、独立に、無置換の脂肪族、脂環式、またはアリールである。任意選択で、各Rは、メチル、エチル、またはプロピルから選択されるアルキル基である。
【0041】
シリルエーテル基は、任意選択で、OSi(R基であり、各Rは、独立に、上に定義した脂肪族基、ヘテロ脂肪族基、脂環式基、ヘテロ脂環式基、アリール基、またはヘテロアリール基とすることができる。各Rは、独立に、無置換の脂肪族、脂環式、またはアリールとすることができる。任意選択で、各Rは、任意選択で置換されたフェニルまたは任意選択で置換されたメチル、エチル、プロピル、もしくはブチル(n-ブチル(nBu)またはtert-ブチル(tBu)など)から選択されるアルキル基である。例示的なシリルエーテル基としては、OSi(Me)、OSi(Et)、OSi(Ph)、OSi(Me)(tBu)、OSi(tBu)、およびOSi(Ph)(tBu)が挙げられる。
【0042】
ニトリル基(シアノ基とも称する)は、CN基である。
イミン基は、-CRNR基、任意選択で-CHNRであり、Rは、上に定義した脂肪族基、ヘテロ脂肪族基、脂環式基、ヘテロ脂環式基、アリール基、またはヘテロアリール基である。Rは、無置換の脂肪族、脂環式、またはアリールとすることができる。任意選択で、Rは、メチル、エチル、またはプロピルから選択されるアルキル基である。
【0043】
アセチリド基は、三重結合-C≡C-Rを有し、任意選択で、Rは、水素、上に定義した脂肪族基、ヘテロ脂肪族基、脂環式基、ヘテロ脂環式基、アリール基、またはヘテロアリール基とすることができる。本発明の目的に関し、Rがアルキルである場合、三重結合は、アルキル鎖の任意の位置に存在することができる。Rは、無置換の脂肪族、脂環式、またはアリールとすることができる。任意選択で、Rは、メチル、エチル、プロピル、またはフェニルである。
【0044】
アミノ基は、任意選択で、-NH、-NHR10、または-N(R10であり、R10は、上に定義した脂肪族基、ヘテロ脂肪族基、脂環式基、ヘテロ脂環式基、シリル基、アリール基、またはヘテロアリール基とすることができる。アミノ基がN(R10である場合、各R10基は、同一であってもまたは異なっていてもよいことが理解されるであろう。各R10は、独立に、無置換の脂肪族、脂環式、シリル、またはアリールとすることができる。任意選択で、R10は、メチル、エチル、プロピル、SiMe、またはフェニルである。
【0045】
アミド基は、任意選択で、-NR11C(O)-または-C(O)-NR11-であり、R11は、水素、上に定義した脂肪族基、ヘテロ脂肪族基、脂環式基、ヘテロ脂環式基、アリール基、またはヘテロアリール基とすることができる。R11は、無置換の脂肪族、脂環式、またはアリールとすることができる。任意選択で、R11は、水素、メチル、エチル、プロピル、またはフェニルである。アミド基は、末端に水素、脂肪族基、ヘテロ脂肪族基、脂環式基、ヘテロ脂環式基、アリール基、またはヘテロアリール基を有してもよい。
【0046】
エステル基は、任意選択で、-OC(O)R12-または-C(O)OR12-であり、R12は、上に定義した脂肪族基、ヘテロ脂肪族基、脂環式基、ヘテロ脂環式基、アリール基、またはヘテロアリール基とすることができる。R12は、無置換の脂肪族、脂環式、またはアリールとすることができる。任意選択で、R12は、メチル、エチル、プロピル、またはフェニルである。エステル基は、末端に脂肪族基、ヘテロ脂肪族基、脂環式基、ヘテロ脂環式基、アリール基、またはヘテロアリール基を有することができる。R12が水素である場合、-OC(O)R12-または-C(O)OR12-で定義される基はカルボン酸基となることが理解されるであろう。
【0047】
スルホキシドは、任意選択で-S(O)R13であり、スルホニル基は、任意選択で-S(O)13であり、R13は、上に定義した脂肪族基、ヘテロ脂肪族基、脂環式基、ヘテロ脂環式基、アリール基、またはヘテロアリール基とすることができる。R13は、無置換の脂肪族、脂環式、またはアリールとすることができる。任意選択で、R13は、メチル、エチル、プロピル、またはフェニルである。
【0048】
カルボキシレート基は、任意選択で-OC(O)R14であり、R14は、水素、上に定義した脂肪族基、ヘテロ脂肪族基、脂環式基、ヘテロ脂環式基、アリール基、またはヘテロアリール基とすることができる。R14は、無置換の脂肪族、脂環式、またはアリールとすることができる。任意選択で、R14は、水素、メチル、エチル、プロピル、ブチル(例えば、n-ブチル、イソブチル、またはtert-ブチル)、フェニル、ペンタフルオロフェニル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、エイコシル、トリフルオロメチル、またはアダマンチルである。
【0049】
ホスフィネート基は、任意選択で、-OP(O)(R16または-P(O)(OR16)(R16)であり、各R16は、独立に、水素、または上に定義した脂肪族基、ヘテロ脂肪族基、脂環式基、ヘテロ脂環式基、アリール基、もしくはヘテロアリール基から選択される。R16は、脂肪族、脂環式、またはアリールとすることができ、これは、脂肪族、脂環式、アリール、またはC1~6アルコキシで任意選択で置換されている。任意選択で、R16は、任意選択で置換されたアリールまたはC1~20アルキル、任意選択で、C1~6アルコキシ(任意選択でメトキシ)で任意選択で置換されたフェニル、または無置換のC1~20アルキル(ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、ステアリルなど)である。ホスホネート基は、任意選択で、-P(O)(OR16であり、R16は、上に定義した通りである。-P(O)(OR16基のR16の一方または両方が水素である場合、-P(O)(OR16で定義される基は、ホスホン酸基となることが理解されるであろう。
【0050】
スルフィネート基は、任意選択で、-S(O)OR17または-OS(O)R17であり、R17は、水素、上に定義した脂肪族基、ヘテロ脂肪族基、ハロ脂肪族基、脂環式基、ヘテロ脂環式基、アリール基、またはヘテロアリール基とすることができる。R17は、無置換の脂肪族、脂環式、またはアリールとすることができる。任意選択で、R17は、水素、メチル、エチル、プロピル、またはフェニルである。R17が水素である場合、-S(O)OR17で定義される基は、スルホン酸基となることが理解されるであろう。
【0051】
カーボネート基は、任意選択で-OC(O)OR18であり、R18は、水素、上に定義した脂肪族基、ヘテロ脂肪族基、脂環式基、ヘテロ脂環式基、アリール基、またはヘテロアリール基とすることができる。R18は、任意選択で置換された脂肪族、脂環式、またはアリールとすることができる。任意選択で、R18は、水素、メチル、エチル、プロピル、ブチル(例えば、n-ブチル、イソブチル、またはtert-ブチル)、フェニル、ペンタフルオロフェニル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、エイコシル、トリフルオロメチル、シクロヘキシル、ベンジル、またはアダマンチルである。R17が水素である場合、-OC(O)OR18で定義される基は、炭酸基となることが理解されるであろう。
【0052】
-アルキルC(O)OR19または-アルキルC(O)R19基において、R19は、水素、上に定義した脂肪族基、ヘテロ脂肪族基、脂環式基、ヘテロ脂環式基、アリール基、またはヘテロアリール基である。R19は、無置換の脂肪族、脂環式、またはアリールとすることができる。任意選択で、R19は、水素、メチル、エチル、プロピル、ブチル(例えば、n-ブチル、イソブチル、またはtert-ブチル)、フェニル、ペンタフルオロフェニル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、エイコシル、トリフルオロメチル、またはアダマンチルである。
【0053】
上述の基のいずれかがルイス塩基G中に存在する場合、原子価を満たすために、任意選択で、1つ以上の追加のR基が存在し得ることが理解されるであろう。例えば、アミノ基に関連する追加のR基は、RNHR10を与えるように存在することができ、Rは、水素、上に定義した任意選択で置換された脂肪族基、ヘテロ脂肪族基、脂環式基、ヘテロ脂環式基、アリール基、またはヘテロアリール基である。任意選択で、Rは、水素または脂肪族、脂環式、もしくはアリールである。
【0054】
本明細書において使用される、「任意選択で置換された」という用語は、任意選択で置換される部分の水素原子の1つ以上が適切な置換基に置き換えられていることを意味する。別段の指定がない限り、「任意選択で置換された」基は、その基の置換可能な各位置に適切な置換基を有することができ、任意の所与の構造の1を超える位置を、特定の基から選択される1を超える置換基で置換することができる場合、その置換基は、どの位置においても、同一であってもまたは異なっていてもよい。本発明により想定されている置換基の組合せは、任意選択で、結果として安定な化合物を形成するものである。本明細書において使用される、「安定な」という用語は、化学的に実現可能であり、室温、即ち(16~25℃)で、その検出、単離、および/または化学合成における使用が可能になるように、充分に長く存在することができる化合物を指す。
【0055】
本発明に使用するための任意選択的な置換基としては、これらに限定されるものではないが、ハロゲン、ヒドロキシ、ニトロ、カルボキシレート、カーボネート、アルコキシ、アリールオキシ、アルキルチオ、アリールチオ、ヘテロアリールオキシ、アルキルアリール、アミノ、アミド、イミン、ニトリル、シリル、シリルエーテル、エステル、スルホキシド、スルホニル、アセチリド、ホスフィネート、スルホネート、または任意選択で置換された脂肪族基、ヘテロ脂肪族基、脂環式基、ヘテロ脂環式基、アリール基、もしくはヘテロアリール基(例えば、ハロゲン、ヒドロキシ、ニトロ、カーボネート、アルコキシ、アリールオキシ、アルキルチオ、アリールチオ、アミノ、イミン、ニトリル、シリル、スルホキシド、スルホニル、ホスフィネート、スルホネート、またはアセチリドで任意選択で置換されているもの)が挙げられる。
【0056】
式(I)において、X基およびG基が1つのMまたはM金属中心に結合しているように例示されていたとしても、1つ以上のX基およびG基が、MおよびM金属中心の間に架橋を形成する可能性があることが理解されるであろう。
【0057】
本発明の目的では、エポキシド基質は、限定されない。したがって、エポキシドという用語は、エポキシド部分を含むあらゆる化合物(すなわち、置換されたまたは置換されていないオキシラン化合物)に関する。置換されたオキシランには、一置換されたオキシラン、二置換されたオキシラン、三置換されたオキシラン、および四置換されたオキシランが含まれる。エポキシドは、単一のオキシラン部分を含むことができる。エポキシドは、2つ以上のオキシラン部分を含むことができる。
【0058】
本発明で使用することができるエポキシドの例としては、限定はされないが、シクロヘキセンオキシド、スチレンオキシド、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、置換されたシクロヘキセンオキシド(リモネンオキシド、C1016Oまたは2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、C1122Oなど)、アルキレンオキシド(エチレンオキシドおよび置換されたエチレンオキシドなど)、置換されていないまたは置換されたオキシラン(オキシラン、エピクロロヒドリン、2-(2-メトキシエトキシ)メチルオキシラン(MEMO)、2-(2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ)メチルオキシラン(ME2MO)、2-(2-(2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)メチルオキシラン(ME3MO)など)、1,2-エポキシブタン、グリシジルエーテル、ビニル-シクロヘキセンオキシド、3-フェニル-1,2-エポキシプロパン、1,2-および2,3-エポキシブタン、イソブチレンオキシド、シクロペンテンオキシド、2,3-エポキシ1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン、インデンオキシド、および官能化された3,5-ジオキサエポキシドが挙げられる。官能化された3,5-ジオキサエポキシドの例としては:
【0059】
【化6】
【0060】
が挙げられる。
エポキシド部分は、グリシジルエーテル、グリシジルエステル、またはグリシジルカーボネートであり得る。グリシジルエーテル、グリシジルエステル、グリシジルカーボネートの例としては:
【0061】
【化7】
【0062】
が挙げられる。
上に記述した通り、エポキシド基質は、1つより多くのエポキシド部分を含有することができる。すなわち、これは、ビス-エポキシド、トリス-エポキシド、またはマルチ-エポキシド含有部分であり得る。1つより多くのエポキシド部分を含む化合物の例としては、ビスフェノールAジグリシジルエーテルおよび3,4-エポキシシクロヘキシルメチル3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレートが挙げられる。1つより多くエポキシド部分を有する1つ以上の化合物の存在下で実施される反応は、得られるポリマーにおける架橋結合をもたらすことができることが理解されよう。
【0063】
当業者は、エポキシドを「グリーンな(green)」または再生可能資源から得ることが可能であることを理解するであろう。エポキシドは、標準的な酸化化学を用いて得られる脂肪酸および/またはテルペンから誘導されたものなどの(多価)不飽和化合物から得ることができる。
【0064】
エポキシド部分は、-OH部分または保護された-OH部分を含むことができる。-OH部分は任意の好適な保護基で保護することができる。好適な保護基としては、メチル基または他のアルキル基、ベンジル、アリル、tert-ブチル、テトラヒドロピラニル(THP)、メトキシメチル(MOM)、アセチル(C(O)アルキル)、ベンゾリル(C(O)Ph)、ジメトキシトリチル(DMT)、メトキシエトキシメチル(MEM)、p-メトキシベンジル(PMB)、トリチル、シリル(トリメチルシリル(TMS)、t-ブチルジメチルシリル(TBDMS)、t-ブチルジフェニルシリル(TBDPS)、トリイソプロピルシリルオキシメチル(TOM)、およびトリイソプロピルシリル(TIPS)など)、(4-メトキシフェニル)ジフェニルメチル(MMT)、テトラヒドロフラニル(THF)、およびテトラヒドロピラニル(THP)が挙げられる。エポキシドの純度は、任意選択で少なくとも98%、任意選択で>99%である。「エポキシド」という用語は、1つ以上のエポキシドを包含するものとすることが理解されよう。言い換えれば、「エポキシド」という用語は、単一のエポキシド、または2つ以上の異なるエポキシドの混合物を指す。例えば、エポキシド基質は、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとの混合物、シクロヘキセンオキシドとプロピレンオキシドとの混合物、エチレンオキシドとシクロヘキセンオキシドとの混合物、またはエチレンオキシドとプロピレンオキシドとシクロヘキセンオキシドとの混合物であり得る。
【0065】
ポリエーテルカーボネートおよびポリカーボネートエーテルは、本明細書において互換的に使用され、両方とも、少なくとも1つのエーテル結合、好ましくは複数のエーテル結合、および少なくとも1つのカーボネート結合、好ましくは複数のカーボネート結合を有するポリマーを指す。
【0066】
本明細書において使用する「連続的」という用語は、材料を添加する方式として定義することができ、または全体としての反応方法の性質を指すこともできる。
連続方式の添加という意味では、対応する材料は、反応を行う間中、継続して(continually)または絶えず(constantly)添加される。これは、例えば、材料の流れを一定の流速でまたは流速を変化させて添加することにより達成することができる。換言すれば、1種以上の材料が、基本的に中断することなく添加される。但し、実用上の事情を考慮すると、材料を中断せずに添加する際も、例えば、材料を添加する元の容器に材料を補充したり容器を交換したりするために短時間中断することが必要となり得ることに留意されたい。
【0067】
反応全体が連続的であるという意味では、反応は、長時間、例えば、何日間、何週間、何か月間などに亘り実施することができる。このような連続的反応においては、反応材料を連続的に継ぎ足すことができ、および/または反応生成物を抜き出すこともできる。触媒は反応中に消費されない可能性もあるが、抜き出しを行う際に存在する触媒量が激減することもあるため、触媒を補充する場合もあることが理解されるであろう。
【0068】
連続的反応では、材料の連続的添加を行うことができる。
本明細書で使用される「不連続」という用語は、材料の添加が分割して行われることを意味する。これは、例えば、材料の滴下添加によって達成することができる。あるいは、材料は、添加と添加との間に時間間隔を置いて、容器に分割して添加(すなわち、バッチ供給)されてもよい。これらの時間間隔は、規則的であってもよく、または反応の過程で変化してもよい。そのような時間間隔は、わずか数分であってもよく、または数時間であってもよい。例えば、時間間隔は、1分~12時間;5分~6時間;10分~4時間;15分~3時間;20分~2時間;または30分~1時間であってもよい。材料が分割して添加される(すなわち、バッチ供給される)場合、全体としての反応の過程の間に材料の少なくとも2回の別々の添加がなければならない。
【0069】
連続的反応では、材料の不連続な(すなわち、バッチ式)添加を行うこともできる。
界面活性剤分子とは、それが溶解している媒体の表面張力および/または界面張力を低下させる分子を意味する。水相の文脈において、界面活性剤は、典型的には、疎水性部分および親水性部分を含む。
【発明を実施するための形態】
【0070】
本発明は、式(I)の触媒、複金属シアン化物(DMC)触媒、および単官能開始剤化合物の存在下でエポキシドと二酸化炭素とを反応させることによって、界面活性剤分子を調製するための連続的および不連続的方法に関する。
【0071】
したがって、本発明は、界面活性剤分子を調製するための方法であって、複金属シアン化物(DMC)触媒、式(I)の触媒、および単官能開始剤化合物の存在下で、二酸化炭素とエポキシドとを反応させることを含み、式(I)の触媒が、以下の構造:
【0072】
【化8】
【0073】
(MおよびMは、Zn(II)、Cr(II)、Co(II)、Cu(II)、Mn(II)、Mg(II)、Ni(II)、Fe(II)、Ti(II)、V(II)、Cr(III)-X、Co(III)-X、Mn(III)-X、Ni(III)-X、Fe(III)-X、Ca(II)、Ge(II)、Al(III)-X、Ti(III)-X、V(III)-X、Ge(IV)-(X)、またはTi(IV)-(X)から独立に選択され;
およびRは、水素、ハライド、ニトロ基、ニトリル基、イミン、アミン、エーテル基、シリル基、シリルエーテル基、スルホキシド基、スルホニル基、スルフィネート基、もしくはアセチリド基、または任意選択で置換されたアルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、アリールオキシ、アルキルチオ、アリールチオ、脂環式、もしくはヘテロ脂環式基から独立に選択され;
は、任意選択で置換されたアルキレン、アルケニレン、アルキニレン、ヘテロアルキレン、ヘテロアルケニレン、ヘテロアルキニレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、またはシクロアルキレンから独立に選択され、ここで、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、ヘテロアルキレン、ヘテロアルケニレン、およびヘテロアルキニレンには、任意選択で、アリール、ヘテロアリール、脂環式、またはヘテロ脂環式が介在していてもよく;
は、H、または任意選択で置換された脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環式、ヘテロ脂環式、アリール、ヘテロアリール、アルキルヘテロアリール、もしくはアルキルアリールから独立に選択され;
は、Cであり、かつEは、O、S、もしくはNHであるか、またはEは、Nであり、かつEは、Oであり;
、E、E、およびEは、N、NR、O、およびSから選択され、ここでE、E、E、またはEがNである場合、
【0074】
【化9】
【0075】
【0076】
【化10】
【0077】
であり、E、E、E、またはEがNR、O、またはSである場合、
【0078】
【化11】
【0079】
【0080】
【化12】
【0081】
であり;
は、H、または任意選択で置換された脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環式、ヘテロ脂環式、アリール、ヘテロアリール、アルキルヘテロアリール、-アルキルC(O)OR19、もしくは-アルキルC≡N、もしくはアルキルアリールから独立に選択され;
Xは、OC(O)R、OSO、OSOR、OSO(R、S(O)R、OR、ホスフィネート、ハライド、ナイトレート、ヒドロキシル、カーボネート、アミノ、アミド、または任意選択で置換された脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環式、ヘテロ脂環式、アリール、もしくはヘテロアリールから独立に選択され、ここで各Xは、同一であってもまたは異なっていてもよく、Xは、MとMとの間に架橋を形成していてもよく;
は、独立に、水素、または任意選択で置換された脂肪族、ハロ脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環式、ヘテロ脂環式、アリール、アルキルアリールもしくはヘテロアリールであり;
Gは、存在しないか、またはルイス塩基である中性もしくは陰イオン性供与性配位子から独立に選択される)
を有する。
【0082】
この方法は、単官能開始剤化合物、エポキシド、二酸化炭素、式(I)の触媒、複金属シアン化物(DMC)触媒、および任意選択で溶媒を含む混合物を形成し、続いて温度を少なくとも10℃上昇させるステップを含み得る。
【0083】
この方法は、以下のステップ:
(I)(a)式(I)の触媒、複金属シアン化物(DMC)触媒、および任意選択で二酸化炭素および/または溶媒を、エポキシドおよび任意選択で単官能開始剤化合物および/または二酸化炭素と混合して、混合物(α)を形成するステップ;または
(b)複金属シアン化物(DMC)触媒および任意選択で単官能開始剤化合物、二酸化炭素および/または溶媒を、エポキシドおよび任意選択で二酸化炭素および/または溶媒と混合して、混合物(α)を形成するステップ;または
(c)エポキシド、式(I)の触媒、単官能開始剤化合物、および二酸化炭素、および任意選択で溶媒を混合して、混合物(α)を形成するステップ;または
(d)式(I)の触媒、複金属シアン化物(DMC)触媒、および任意選択で単官能開始剤化合物、エポキシド、二酸化炭素および/または溶媒を混合して、混合物(α)を形成するステップ;および
(II)単官能開始剤化合物、エポキシド、二酸化炭素、式(I)の触媒、複金属シアン化物(DMC)触媒、および/または溶媒の1つ以上を混合物(α)に添加して、単官能開始剤化合物、エポキシド、二酸化炭素、式(I)の触媒、複金属シアン化物(DMC)触媒、および任意選択で溶媒を含む混合物(β)を形成し、任意選択で温度を少なくとも10℃上昇させるステップ
を含むことができる。
【0084】
本発明は、界面活性剤分子を調製する方法に関する。この方法は、好ましくは2段階以上で実施される。このようにして、反応の一部を開始させ、次いで、反応材料のうちの1つ以上をさらに添加し(連続的または不連続的のいずれかの様式で)、および/または反応が継続するにつれて、反応の温度を第2段階で上昇させる。
【0085】
好ましくは、反応は単一の反応器中で起こり、すなわち、ステップ(I)およびステップ(II)は同じ反応器中で起こる。
触媒の活性を増大させるために、第2のステップにおいてある特定の成分を添加することが有用であり得、反応の開始時に材料の全てが提供されるプロセスと比較して、より効率の高いプロセスをもたらすことができる。反応全体を通して存在する大量のいくつかの成分が、触媒の効率を低下させる可能性がある。材料を反応にゆっくり添加することにより、触媒のこの低下した効率を防止することができ、および/または触媒活性を最適化することができる。
【0086】
さらに、反応の開始時に各成分の全量を添加しないことによって、一様な触媒作用およびより均質なポリマー生成物をもたらすことができる。これは、ひいては、より狭い分子量分布、エーテルとカーボネート結合との所望される比率、および/または改良された(すなわち、より低い)多分散指数をもたらすことができる。
【0087】
第1のステップにおいてある特定の成分のみを混合し、第2のステップにおいて残りを添加することはまた、触媒を事前活性化するために有用であり得る。こうした事前活性化は、上述のステップ(I)(a)または(b)ごとに、一方または両方の触媒をエポキシド(および任意選択で他の成分)と混合することによって達成することができる。事前活性化は、ステップ(II)における残りの成分の添加の際に、反応の効率が増加し得るように、一方または両方の触媒を準備するために有用であり得る。
【0088】
本発明が、成長中のポリマー鎖に、カーボネート、およびエーテル結合を付加する反応に関するということが理解されるであろう。第1のステップにおいてある特定の成分のみを混合し、第2のステップにおいて残りを添加することは、反応の第2段階の前に反応の一部を進行させるために有用であり得る。
【0089】
全般的に言えば、本発明の目的は、材料の制御された添加によって重合反応を制御することである。本明細書の方法により、こうした方法によって調製される製品が、必要要件に合わせて作られることを可能にすることができる。
【0090】
ステップ(I)(b)によって形成された混合物(α)は、ステップ(II)の前に、約50~150℃、任意選択で約80~130℃の温度で保持され得る。
ステップ(I)(a)、(c)、または(d)によって形成された混合物(α)は、ステップ(II)の前に、約0~120℃、任意選択で約40~100℃、任意選択で約50~90℃、約50~80℃、約55~80℃、または約60~80℃の温度で保持され得る。
【0091】
ステップ(II)において、温度は、60~150℃、任意選択で65~150℃、任意選択で80~130℃に上昇させることができる。任意選択で、追加のエポキシドも添加される。
【0092】
混合物(α)は、ステップ(II)の前に少なくとも約1分間、任意選択で少なくとも約5分間、任意選択で少なくとも約15分間、任意選択で少なくとも約30分間、任意選択で少なくとも約1時間、任意選択で少なくとも約2時間、任意選択で少なくとも約5時間保持され得る。
【0093】
ステップ(I)(c)によって形成された混合物(α)は、ステップ(II)の前に少なくとも約1分間、任意選択で少なくとも約5分間、任意選択で少なくとも約15分間、任意選択で少なくとも約30分間、任意選択で少なくとも約1時間、任意選択で少なくとも約2時間、任意選択で少なくとも約3時間、任意選択で少なくとも約4時間、任意選択で少なくとも約8時間、任意選択で少なくとも約16時間保持され得る。
【0094】
混合物(α)は、約1重量%未満の水、任意選択で約0.5重量%未満の水、任意選択で約0.1重量%未満の水、任意選択で約0.05重量%未満の水、任意選択で約0重量%の水を含み得る。混合物中の水の存在は、触媒または各触媒の不活性化を引き起こし得る。したがって、混合物中の含水量を最小限にすることが望ましい。
【0095】
ステップ(I)(a)は、最初に式(I)の触媒、複金属シアン化物(DMC)触媒、および任意選択で二酸化炭素を混合して混合物(α’)を形成し、続いてエポキシドおよび任意選択で単官能開始剤化合物および/または二酸化炭素を添加して混合物(α)を形成することを含むことができる。この方法をこのように実施することは、先に記載したように、一方または両方の触媒を事前活性化するのに有用であり得る。
【0096】
混合物(α’)は、その後の添加の前に約0~250℃、任意選択で約40~150℃、任意選択で約50~150℃、任意選択で約70~140℃、任意選択で約80~130℃の温度に保持されてもよい。
【0097】
反応方法は、全体として、バッチ式で行うことができる。そのような場合、本方法は、反応に使用される関連材料(エポキシド、単官能開始剤化合物など)の各々の総量を使用してもよく、その総量の一部は、反応の異なるステップで添加されてもよい。
【0098】
本方法は、エポキシドの総量を使用してもよく、エポキシドの総量の約1~95%がステップ(I)で混合され、残りがステップ(II)で添加されてもよく、任意選択で約1~75%、任意選択で約1~50%、任意選択で約1~40%、任意選択で約1~30%、任意選択で約1~20%、任意選択で約5~20%がステップ(I)で混合される。
【0099】
本方法は、単官能開始剤化合物の総量を使用してもよく、単官能開始剤化合物の総量の約1~95%がステップ(I)で混合され、残りがステップ(II)で添加されてもよく、任意選択で約1~75%、任意選択で約1~50%、任意選択で約1~40%、任意選択で約1~30%、任意選択で約1~20%、任意選択で約5~20%がステップ(I)で混合される。
【0100】
本方法は、式(I)の触媒の総量を使用してもよく、式(I)の触媒の総量の約1~100%がステップ(I)で混合され、残りがステップ(II)で添加されてもよく、任意選択で約1~75%、任意選択で約1~50%、任意選択で約1~40%、任意選択で約1~30%、任意選択で約1~20%、任意選択で約5~20%がステップ(I)で混合される。
【0101】
本方法は、複金属シアン化物(DMC)触媒の総量を使用してもよく、複金属シアン化物(DMC)触媒の総量の約1~100%がステップ(I)で混合され、残りがステップ(II)で添加されてもよく、任意選択で約1~75%、任意選択で約1~50%、任意選択で約1~40%、任意選択で約1~30%、任意選択で約1~20%、任意選択で約5~20%がステップ(I)で混合される。
【0102】
本方法は、二酸化炭素の総量を使用してもよく、二酸化炭素の総量の約1~100%がステップ(I)で混合され、残りがステップ(II)で添加されてもよく、任意選択で約1~75%、任意選択で約1~50%、任意選択で約1~40%、任意選択で約1~30%、任意選択で約1~20%、任意選択で約5~20%がステップ(I)で混合される。
【0103】
本方法は、溶媒の総量を使用してもよく、溶媒の総量の約1~100%がステップ(I)で混合され、残りがステップ(II)で添加されてもよく、任意選択で約1~75%、任意選択で約1~50%、任意選択で約1~40%、任意選択で約1~30%、任意選択で約1~20%、任意選択で約5~20%がステップ(I)で混合される。
【0104】
式(I)の触媒の総量は、本発明の方法が低い触媒負荷で実施され得るように低くてもよい。例えば、式(I)の触媒の触媒投入量は、[式(I)の触媒全体]:[エポキシド全体]が約1:100,000~300,000の範囲、例えば、約1:10,000~100,000[式(I)の触媒全体]:[エポキシド全体]、例えば、約1:10,000~50,000[式(I)の触媒全体]:[エポキシド全体]となる範囲、例えば、約1:10,000[式(I)の触媒全体]:[エポキシド全体]の範囲とすることができる。上述の比はモル比である。これらの比は、本方法で使用されるエポキシドの総量に対する式(I)の触媒の総量の比である。
【0105】
本方法は連続的であってもよく、混合物(β)中に式(I)の触媒に対する所定のモル比または重量比のエポキシドが存在し、本方法は、さらに
(III)混合物(β)にエポキシドを添加して混合物(γ)を形成するステップであって、当該エポキシドが、混合物(γ)中の式(I)の触媒に対するエポキシドのモル比または重量比を当該所定のモル比または重量比の少なくとも約75%にするのに十分な量で添加され、任意選択でステップ(III)が繰り返されるステップを含む。
【0106】
本方法は連続的であってもよく、混合物(β)中に式(I)の触媒に対する所定のモル比または重量比の単官能開始剤化合物が存在し、本方法は、さらに
(III)混合物(β)に単官能開始剤化合物を添加して混合物(γ)を形成するステップであって、当該単官能開始剤化合物が、混合物(γ)中の式(I)の触媒に対する単官能開始剤化合物のモル比または重量比を当該所定のモル比または重量比の少なくとも約75%にするのに十分な量で添加され、任意選択でステップ(III)が繰り返されるステップを含む。
【0107】
本方法は連続的であってもよく、混合物(β)中に式(I)の触媒に対する所定のモル比または重量比の二酸化炭素が存在し、本方法は、さらに
(III)混合物(β)に二酸化炭素を添加して混合物(γ)を形成するステップであって、当該二酸化炭素が、混合物(γ)中の式(I)の触媒に対する二酸化炭素のモル比または重量比を当該所定のモル比または重量比の少なくとも約75%にするのに十分な量で添加され、任意選択でステップ(III)が繰り返されるステップを含む。
【0108】
ステップ(III)は、混合物(γ)中の式(I)の触媒に対するエポキシド、単官能開始剤化合物、二酸化炭素、および/または溶媒のモル比または重量比が、当該所定のモル比または重量比の約75%を下回らないように実施され得る。
【0109】
ステップ(III)は、混合物(γ)中の式(I)の触媒に対するエポキシド、単官能開始剤化合物、二酸化炭素、および溶媒のモル比または重量比が、当該所定のモル比または重量比の約75%を下回らないように実施され得る。
【0110】
本方法は連続的であってもよく、混合物(β)中に所定の量の式(I)の触媒が存在し、本方法は、さらに
(III)式(I)の触媒を混合物(β)に添加して混合物(γ)を形成するステップであって、当該式(I)の触媒は、混合物(γ)中の式(I)の触媒の量を当該所定量の約50~550%にするのに十分な量で添加され、任意選択でステップ(III)が繰り返される、ステップを含む。
【0111】
ステップ(III)は、混合物(γ)中の式(I)の触媒の量が当該所定量の約50%を下回らないように実施することができる。
本方法は連続的であってもよく、混合物(β)中に所定の量の複金属シアン化物(DMC)触媒が存在し、本方法はさらに、
(III)複金属シアン化物(DMC)触媒を混合物(β)に添加して混合物(γ)を形成するステップであって、当該複金属シアン化物(DMC)触媒は、混合物(γ)中の複金属シアン化物(DMC)触媒の量を当該所定の量の約50~550%にするのに十分な量で添加され、任意選択でステップ(III)が繰り返されるステップを含む。
【0112】
ステップ(III)は、混合物(γ)中の複金属シアン化物(DMC)触媒の量が当該所定の量の約50%を下回らないように実施することができる。
材料を添加する速度は、反応温度(発熱)が選択された温度を超えないように選択することができる(すなわち、温度がほぼ一定のままとなるように、余分な熱を放散させるのに充分にゆっくりと材料を添加する)。
【0113】
材料の添加(すなわち、ステップIIIによる)が繰り返される場合、添加は、1回、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回またはそれ以上繰り返されてもよい。
【0114】
式(I)の触媒の量および複金属シアン化物(DMC)触媒の量は、互いに約300:1~約1:100、例えば約120:1~約1:75、例えば約40:1~約1:50、例えば約30:1~約1:30、例えば約20:1~約1:1、例えば約10:1~約2:1、例えば約5:1~約1:5という所定の重量比であり得る。
【0115】
複金属シアン化物(DMC)触媒は、他の成分と乾式混合することができる。
複金属シアン化物(DMC)触媒は、スラリーとして混合されてもよく、当該スラリーは、複金属シアン化物(DMC)触媒および単官能開始剤化合物および/または溶媒を含む。
【0116】
式(I)の触媒は、他の成分と乾式混合することができる。
式(I)の触媒は、溶液として混合されてもよく、当該溶液は、式(I)の触媒と、単官能開始剤化合物、エポキシドおよび/または溶媒のうちの1つ以上とを含む。
【0117】
ステップ(II)でエポキシドを添加してもよい。
ステップ(II)で式(I)の触媒を添加してもよい。
ステップ(II)で複金属シアン化物(DMC)触媒を添加してもよい。
【0118】
ステップ(II)で単官能開始剤化合物を添加してもよい。
ステップ(II)でエポキシドおよび単官能開始剤化合物の両方を添加してもよい。
エポキシド、式(I)の触媒、複金属シアン化物(DMC)触媒、および/または単官能開始剤化合物は、独立して、ステップ(II)において連続的に添加され得る。
【0119】
エポキシド、式(I)の触媒、複金属シアン化物(DMC)触媒、および/または単官能開始剤化合物は、独立して、ステップ(II)において不連続的に添加され得る。
二酸化炭素は連続的に供給されてもよい。
【0120】
本方法は、約1バール~約60バールの二酸化炭素、任意選択で約1バール~約40バール、任意選択で約1バール~約20バール、任意選択で約1バール~約15バール、任意選択で約1バール~約10バール、任意選択で約1バール~約5バールの圧力で実施することができる。
【0121】
反応の温度は、方法の経過中に上昇し得る。
界面活性剤分子を形成するための方法において使用される単官能開始剤化合物は、ヒドロキシル基(-OH)、チオール(-SH)、少なくとも1つのN-H結合を有するアミン(-NHR’)、少なくとも1つのP-OH結合を有する基(例えば、-PR’(O)OH、PR’(O)(OH)、または-P(O)(OR’)(OH))、またはカルボン酸基(-C(O)OH)から選択される基を含み得る。
【0122】
したがって、界面活性剤分子を形成するための方法において使用される単官能開始剤化合物は、式(II)のものであってもよい。
Z-R(II)
Zは、それに結合した-R基を有する任意の基であり得る。したがって、Zは、任意選択で置換されたアルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、アリール、ヘテロアリールから選択され得るか、またはZは、これらの基のいずれかの組み合わせであり得、例えば、Zは、アルキルアリール、ヘテロアルキルアリール、ヘテロアルキルヘテロアリール、またはアルキルヘテロアリール基であり得る。任意選択で、Zは、アルキル、ヘテロアルキル、アリール、またはヘテロアリールである。
【0123】
は、-OH、-NHR’、-SH、-C(O)OH、-P(O)(OR’)(OH)、-PR’(O)(OH)、または-PR’(O)OHであり得、任意選択で、Rは、-OH、-NHR’、または-C(O)OHから選択され、任意選択で、Rは、-OHまたは-C(O)OHから選択される。
【0124】
R’は、Hまたは任意選択で置換されたアルキル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、もしくはヘテロシクロアルキルとすることができ、任意選択で、R’は、Hまたは任意選択で置換されたアルキルである。
【0125】
本方法は、複数の単官能開始剤化合物を含んでもよい。複数の単官能開始剤化合物は、単官能開始剤化合物の混合物として添加されてもよく、または異なる段階で添加されてもよい。好ましくは、1種または2種の異なる単官能開始化合物が存在する。方法が1つより多くのステップを含む場合、混合物(β)中に2つの単官能開始剤化合物が存在してもよく、ステップ(I)における単官能開始剤化合物は、第1の単官能開始剤化合物であり、ステップ(II)は
(A)第1の単官能開始剤化合物、エポキシド、二酸化炭素、式(I)の触媒、複金属シアン化物(DMC)触媒、および/または溶媒のうちの1つ以上を混合物(α)に添加するステップと、
(B)第2の単官能開始剤化合物、および任意選択でエポキシド、二酸化炭素、式(I)の触媒、複金属シアン化物(DMC)触媒、および/または溶媒を添加して、第1の単官能開始剤化合物、第2の単官能開始剤化合物、エポキシド、二酸化炭素、式(I)の触媒、複金属シアン化物(DMC)触媒、および任意選択で溶媒を含む混合物(β)を形成するステップとを含む。
【0126】
ステップ(B)は、ステップ(A)の後に、少なくとも約1分、任意選択で少なくとも約5分、任意選択で少なくとも約15分、任意選択で少なくとも約30分、任意選択で少なくとも約1時間、任意選択で少なくとも約2時間、任意選択で少なくとも約5時間実施することができる。
【0127】
単官能開始剤化合物または各単官能開始化合物は、好ましくはヒドロキシル基を含む。
例示的な単官能開始剤物質には、アルコール、フェノール、アミン、チオール、およびカルボン酸、例えばアルコール(例えばメタノール、エタノール、1-および2-プロパノール、1-および2-ブタノール、直鎖または分枝のC~C20-モノアルコール(例えばtert-ブタノール、3-ブテン-1-オール、3-ブチン-1-オール、2-メチル-3-ブテン-2-オール、2-メチル-3-ブチン-2-オール、プロパルギルアルコール、2-メチル-2-プロパノール、1-tert-ブトキシ-2-プロパノール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、1-ヘキサノール、2-ヘキサノール、3-ヘキサノール、1-ヘプタノール、2-ヘプタノール、3-ヘプタノール、1-オクタノール、2-オクタノール、3-オクタノール、4-オクタノール、1-デカノール、1-ドデカノール、フェノール、2-ヒドロキシビフェニル、3-ヒドロキシビフェニル、4-ヒドロキシビフェニル、2-ヒドロキシピリジン、3-ヒドロキシピリジン、および4-ヒドロキシピリジン))、エチレン、プロピレン、ポリエチレン、ポリプロピレングリコールのモノエーテルまたはエステル(例えばエチレングリコールモノメチルエーテルおよびプロピレングリコールモノメチルエーテル)、フェノール(例えば直鎖または分枝のC~C20アルキル置換フェノール(例えばノニル-フェノールまたはオクチルフェノール)、単官能カルボン酸(例えばギ酸、酢酸、プロピオン酸、および酪酸)、脂肪酸(例えばステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、安息香酸、およびアクリル酸)、および単官能チオール(例えばエタンチオール、プロパン-1-チオール、プロパン-2-チオール、ブタン-1-チオール、3-メチルブタン-1-チオール、2-ブテン-1-チオール、およびチオフェノール)、またはアミン(例えばブチルアミン、tert-ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、アニリン、アジリジン、ピロリジン、ピペリジン、およびモルホリン)が含まれ得る。
【0128】
好ましくは、単官能開始剤は、1-オクタノール、1-デカノール、1-ドデカノール、1-テトラデカノール、セチルアルコール、またはステアリルアルコールなどの直鎖または分枝のC~C20アルコールであり、より好ましくは、それは、1-デカノール、1-ドデカノール、1-テトラデカノール、セチルアルコール、またはステアリルアルコールなどの直鎖または分枝のC10~C20アルコールである。
【0129】
単官能開始剤は、C1214アルコール、C1618アルコール、またはC1820アルコールなどの関連化合物の混合物であってもよい。
単官能開始剤化合物の式(I)の触媒に対する比は、約1000:1~約1:1、例えば、約750:1~約5:1、例えば、約500:1~約10:1、例えば、約250:1~約20:1、または約125:1~約30:1、又は約50:1~約20:1となる量であることができる。これらの比はモル比である。これらの比は、本方法で使用される式(I)の触媒の総量に対する単官能開始剤の総量の比である。これらの比は、材料を添加する間維持することができる。
【0130】
単官能開始剤は、水分を除去するために(例えば、モレキュラーシーブで)事前乾燥されてもよい。記載される上記の反応条件のいずれかが組み合わされ得ることが理解されるであろう。例えば、反応は、60バール以下、例えば約30バール以下、任意選択で20バール以下(例えば10バール以下)で、約5℃~約200℃、例えば約10℃~約150℃、例えば約15℃~約100℃、例えば約20℃~約90℃の範囲の温度で実施され得る。本発明の方法は、約45℃~約90℃で実施することができる。
【0131】
本発明の方法は、例えば洗剤などの洗浄製品において使用することができる界面活性剤分子を調製することが可能である。したがって、本発明のさらなる態様では、洗浄製品における本発明の第1の態様の方法によって形成された界面活性剤分子の使用、ならびに本発明の第1の態様の方法によって形成された界面活性剤分子を含む組成物であって、洗浄製品用の界面活性剤配合物である組成物が提供される。
【0132】
特に、本発明の連続的および不連続的方法は、低い多分散指数(PDI)を有する界面活性剤分子を提供することができる。
本発明の方法は、エーテルおよびカーボネート結合の量を制御することができる界面活性剤分子を製造することができる。したがって、本発明は、n個のエーテル結合およびm個のカーボネート結合を有する界面活性剤分子を提供することができ、ここでnおよびmは整数であり、m/(n+m)は0より大きく1未満である。したがって、n≧1およびm≧1であることが理解されよう。
【0133】
例えば、本発明の方法は、広範囲のm/(n+m)値を有する界面活性剤分子を調製することができる。m/(n+m)は、約0.05、約0.10、約0.15、約0.20、約0.25、約0.25、約0.30、約0.35、約0.40、約0.45、約0.50、約0.55、約0.60、約0.65、約0.70、約0.75、約0.80、約0.85、約0.90、約0.95、またはこれらの特定の値から調製される任意の範囲内であり得ることが理解されるであろう。例えば、m/(n+m)は、約0.05~約0.95、約0.10~約0.90、約0.15~約0.85、約0.20~約0.80、または約0.25~約0.75などであってもよい。
【0134】
上記のように、本発明の方法は、m/(n+m)が約0.1~約0.5、例えば、約0.1~約0.3である界面活性剤分子を調製することができる。
したがって、本発明の方法は、中程度の割合のカーボネート結合を有する界面活性剤分子を調製することを可能にし、例えば、m/(n+m)は、約0.1超、例えば、約0.1超~約0.5未満、例えば、約0.15~約0.4、例えば、約0.2~約0.4であり得る。
【0135】
例えば、本発明の方法によって生成される界面活性剤分子は、以下の式(IIIまたはIV)を有し得る。
【0136】
【化13】
【0137】
ZおよびZ’の同一性は、単官能開始剤化合物の性質に依存し、そしてRe1、Re2、Re3、およびRe4の同一性は、界面活性剤分子を調製するために使用されるエポキシドの性質に依存することが理解される。mおよびnは、界面活性剤分子中のカーボネート結合およびエーテル結合の量を規定する。
【0138】
当業者は、式(IIIおよびIV)のポリマーにおいて、骨格中の互いに隣接するエポキシドモノマー単位が、頭-尾結合、頭-頭結合、または尾-尾結合であり得ることを理解するであろう。
【0139】
また、式(IIIおよびIV)は、カーボネート結合およびエーテル結合を2つの別個の部分に存在するものとして示すことを意図するものではなく、その代わりに、カーボネート結合とエーテル結合との比(m対n)を例示することを意図するものであることも理解されよう。カーボネートおよびエーテル繰り返し単位は、ポリマー骨格に沿ってランダムに分布していてもよい。
【0140】
したがって、本発明の方法によって調製される界面活性剤分子(例えば、式(IIIまたはIV)のポリマー)は、ランダムコポリマー、統計コポリマー、または周期コポリマーと呼ばれ得る。
【0141】
理論に束縛されるものではないが、典型的には、単官能開始剤(Z)に由来する界面活性剤分子の部分は、界面活性剤分子の疎水性部分を形成し、ポリエーテルカーボネートポリマー鎖は、界面活性剤の親水性部分を形成する。
【0142】
当業者は、ポリマーに組み込まれた二酸化炭素の重量%が、ポリマー骨格中のカーボネート結合の量を決定するために決定的に使用することができないことを理解するであろう。例えば、同じ重量%の二酸化炭素を組み込む2つのポリマーは、カーボネート結合対エーテル結合の非常に異なる比を有し得る。これは、二酸化炭素の「取り込み重量%」が、単官能開始剤化合物の長さおよび性質を考慮に入れていないためである。例えば、1つのポリマー(Mn2000g/mol)が、100g/molのモル質量を有する単官能開始剤を使用して調製され、別のポリマー(Mn2000g/mol)が、500g/molのモル質量を有する単官能開始剤を使用して調製され、両方の得られたポリマーが同じm/n比を有する場合、ポリマー中の二酸化炭素の重量%は、全ポリマー分子量(Mn)中の単官能開始剤の質量の割合が異なることに起因して異なる。例えば、m/(m+n)が0.5である場合、記載される2つのポリオールは、それぞれ、26.1重量%および20.6重量%の二酸化炭素含有量を有する。
【0143】
上で強調したように、本発明の方法は、広範なカーボネート結合対エーテル結合(例えば、m/(n+m)は、0より大きく1未満であり得る)を有する界面活性剤分子を調製することができ、これは、エチレンオキシドを使用する場合、約50重量%までの二酸化炭素の取り込みに対応する。以前に報告されているDMC触媒は、一般に、単官能開始剤、エチレンオキシド、およびCOから、最大約0.2のカーボネート結合対エーテル結合の比を有する界面活性剤分子のみを調製することができ、これらの量は、通常、50バールなどの高圧の二酸化炭素でのみ達成することができるので、これは驚くべきことである。
【0144】
他の全ての条件が同じであれば、ポリエーテルは、エポキシドおよび二酸化炭素から製造されるポリカーボネートよりも高い分解温度を有する。したがって、エーテル結合およびカーボネート結合の統計的またはランダムな分布を有する界面活性剤は、ポリカーボネート界面活性剤、またはカーボネート結合のブロックを有する界面活性剤よりも高い分解温度を有する。熱分解の温度は、熱重量分析(TGA)を使用して測定することができる。
【0145】
上記のように、本発明の方法は、ランダムコポリマー、統計コポリマー、または周期コポリマーを調製する。したがって、カーボネート結合は、単一のブロック中には存在せず、それによって、ポリカーボネート界面活性剤と比較して、改善された特性(例えば、改善された熱分解)を有するポリマーを提供する。本発明の方法によって調製されるポリマーは、ランダムコポリマーまたは統計コポリマーであり得る。
【0146】
本発明の方法によって調製される界面活性剤分子は、式(III)または(IV)のものであってもよく、式中、nおよびmは1以上の整数であり、すべてのmおよびn基の合計は4~200であり、m/(m+n)は0超~1.00未満の範囲である。上記に示したように、m/(n+m)は、約0.05、約0.10、約0.15、約0.20、約0.25、約0.25、約0.30、約0.35、約0.40、約0.45、約0.50、約0.55、約0.60、約0.65、約0.70、約0.75、約0.80、約0.85、約0.90、約0.95、またはこれらの特定の値から調製される任意の範囲内であり得る。例えば、m/(n+m)は、約0.1~約0.5、約0.15~約0.4、約0.2~約0.0.4、約0.0.05~約0.5、または約0.05~約0.3などであってもよい。
【0147】
当業者はまた、界面活性剤が少なくとも1つのカーボネートおよび少なくとも1つのエーテル結合を含有しなければならないことを理解するであろう。
各Re1は、独立に、H、ハロゲン、ヒドロキシル、または任意選択で置換されたアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロアルキル、もしくはヘテロアルケニルから選択することができる。Re1は、Hまたは任意選択で置換されたアルキルから選択することができる。
【0148】
各Re2は、独立に、H、ハロゲン、ヒドロキシル、または任意選択で置換されたアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロアルキル、もしくはヘテロアルケニルから選択することができる。Re2は、Hまたは任意選択で置換されたアルキルから選択することができる。
【0149】
各Re3は、独立に、H、ハロゲン、ヒドロキシル、または任意選択で置換されたアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロアルキル、もしくはヘテロアルケニルから選択することができる。Re3は、Hまたは任意選択で置換されたアルキルから選択することができる。
【0150】
各Re4は、独立に、H、ハロゲン、ヒドロキシル、または任意選択で置換されたアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロアルキル、もしくはヘテロアルケニルから選択することができる。Re4は、Hまたは任意選択で置換されたアルキルから選択することができる。
【0151】
e1(またはRe2)およびRe3(またはRe4)は、一緒になって、炭素原子および水素原子、ならびに任意選択で1つ以上のヘテロ原子(例えば、O、N、またはS)を含有する飽和環、部分不飽和環または不飽和環を形成し得ることもまた、理解されるであろう。例えば、Re1およびRe3は、一緒になって、5員環または6員環を形成し得る。
【0152】
上に記述した通り、Re1、Re2、Re3、およびRe4の性質は、反応に使用されるエポキシドに依存する。エポキシドがシクロヘキセンオキシド(CHO)である場合、Re1およびRe3は一緒になって6員アルキル環(例えばシクロヘキシル環)を形成する。エポキシドが、エチレンオキシドである場合、Re1、Re2、Re3、およびRe4は、各々Hである。エポキシドが、プロピレンオキシドである場合、Re1、Re2、およびRe4はHであり、Re3はメチルである(またはエポキシドがポリマー骨格にどのように付加されるかということに応じて、Re1がメチルであり、かつ、Re3がHである)。エポキシドがブチレンオキシドである場合、Re1、Re2、およびRe4はHであり、かつ、Re3はエチルである(またはRe1はエチルであり、かつ、Re3はHである)。エポキシドがスチレンオキシドである場合、Re1、Re2、およびRe4は水素であってよく、Re3はフェニルであってよい(またはRe1はフェニルであり、かつ、Re3はHである)。
【0153】
エポキシドの混合物が使用される場合、Re1、Re2、Re3、および/またはRe4の各存在は、同じでなくてもよい、例えば、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとの混合物が使用される場合、Re1、Re2、Re3、およびRe4は、独立に、水素またはメチルであり得ることも理解されるであろう。
【0154】
したがって、Re1、Re2、Re3、およびRe4は、独立して、水素、アルキル、またはアリールから選択され得るか、またはRe1(またはRe2)およびRe3(またはRe4)は、一緒になって、シクロヘキシル環を形成し得るか、Re1、Re2、Re3、およびRe4は、独立して、水素、メチル、エチル、またはフェニルから選択され得るか、またはRe1(またはRe2)およびRe3(またはRe4)は、一緒になって、シクロヘキシル環を形成し得る。
【0155】
Z’は、反応活性度の高い水素原子を結合に置き換えたことを除いてRに相当する。したがって、Z’が何であるかは、単官能開始剤化合物のRの定義による。したがって、Z’は、-O-、-NR’-、-S-、-C(O)O-、-P(O)(OR’)O-、-PR’(O)(O-)、または-PR’(O)O-(式中、R’は、Hまたは任意選択で置換されたアルキル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、もしくはヘテロシクロアルキルとなり得、任意選択で、R’は、Hまたは任意選択で置換されたアルキルである)となり得、任意選択でZ’は、-C(O)O-、-NR’-、または-O-となり得、各Z’は、-O-、-C(O)O-、またはこれらの組合せとなり得、任意選択で、各Z’は、-O-となり得ることが理解されるであろう。
【0156】
Zはまた、単官能開始剤化合物の性質に依存する。したがって、Zは、任意選択で置換されたアルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、アリール、ヘテロアリールから選択され得るか、またはZは、これらの基のいずれかの組み合わせであり得、例えば、Zは、アルキルアリール、ヘテロアルキルアリール、ヘテロアルキルヘテロアリール、またはアルキルヘテロアリール基であり得る。場合により、Zは、アルキル、ヘテロアルキル、アリール、またはヘテロアリール、例えばアルキルまたはヘテロアルキルである。上記の基の各々は、例えばアルキルによって任意選択で置換されていてもよいことが理解されるであろう。
【0157】
いくつかの用途では、特にZが-O-であり、ZがC~C25アルキル基である場合、比較的短い疎水性部分を有する界面活性剤分子を提供することが望ましい場合がある。この場合、Z’が-O-であるとき、Zは好ましくはC~Cアルキル基である。
【0158】
他の用途では、特にZが-O-であり、ZがC~C25アルキル基である場合、比較的長い疎水性部分を有する界面活性剤分子を提供することが望ましい場合がある。この場合、Z’が-O-であるとき、Zは好ましくはC~C25アルキル基である。
【0159】
当業者は、上記の特徴の各々を組み合わせることができることを理解するであろう。例えば、Re1、Re2、Re3、およびRe4は、独立して、水素、アルキル、またはアリールから選択され得るか、あるいはRe1(またはRe2)およびRe3(またはRe4)は、一緒になって、シクロヘキシル環を形成し得、各Z’は、-O-、-C(O)O-、またはそれらの組合せであり得(任意選択で、各Z’は、-O-であり得る)、Zは、任意選択で置換されたアルキル、ヘテロアルキル、アリール、またはヘテロアリール(例えば、アルキルまたはヘテロアルキル)であり得る。
【0160】
本発明の方法により製造される界面活性剤は、任意選択で低分子量オリゴマーである。界面活性剤分子を調製するために使用されるエポキシドの性質は、得られる生成物の分子量に影響を及ぼすことが理解されよう。したがって、n+mの上限は、本発明の「低分子量」ポリマーを定義するために本明細書中で使用される。
【0161】
本発明の方法は、狭い分子量分布を有する界面活性剤分子を有利に調製することができる。換言すれば、界面活性剤分子は、低い多分散指数(PDI)を有し得る。ポリマーのPDIは、ポリマーの重量平均分子量(M)を数平均分子量(M)で割ることによって決定され、それによってポリマー生成物中の鎖長の分布が示される。両方のポリマーが同じPDIを有する場合であっても、ポリマー鎖長のパーセント変動は、長鎖ポリマーと比較して短鎖ポリマーについてより大きいので、ポリマーの分子量が減少するにつれて、PDIがより重要になることが理解されるであろう。
【0162】
任意選択で、本発明の方法によって生成されるポリマーは、約1~約2未満、任意選択で約1~約1.75未満(例えば、約1~約1.5未満、約1~約1.3未満、約1~約1.2未満、および約1~約1.1未満)のPDIを有する。
【0163】
本発明の方法によって生成されるポリマーのMおよびM、したがってPDIは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を使用して測定することができる。例えば、GPCは、直列の2本のAgilent PLgel μ-m mixed-Eカラムを備えたAgilent 1260 Infinity GPC装置を使用して測定することができる。試料は、分子量分布の狭いポリスチレン標準(例えば、Agilent Technologiesにより提供される、405~49,450g/molの範囲のMnを有するポリスチレン低分子量EasiVials)を基準として、1mL/分の流速を用いて、THF中で、室温(293K)で測定することができる。任意選択で、試料を、Agilent Technologiesより提供されるポリエチレングリコールeasivials等のポリ(エチレングリコール)標準を基準として測定することができる。
【0164】
任意選択で、本発明の方法によって生成される界面活性剤分子は、約400~約10,000Da、任意選択で約500~約3,000Da、または約500~約2,000Daの範囲の分子量を有し得る。
【0165】
本発明の方法は、溶媒の存在下で実施され得るが、この方法は、溶媒の非存在下で実施され得ることもまた、理解されるであろう。溶媒が存在する場合、トルエン、ヘキサン、酢酸t-ブチル、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジオキサン、ジクロロベンゼン、塩化メチレン、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、アセトン、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸n-ブチル、テトラヒドロフラン(THF)などとすることができる。溶媒は、トルエン、ヘキサン、アセトン、酢酸エチル、および酢酸n-ブチルとすることができる。
【0166】
溶媒は、1つ以上の材料を溶解するように作用することができる。一方、溶媒は担体としても作用することができ、1つ以上の材料を懸濁液中に懸濁させるために使用される。溶媒は、本発明の方法のステップを行う際に、1つ以上の材料を添加しやすくするために必要となる場合もある。
【0167】
本方法において使用されるエポキシドは、エポキシド部分を含む任意の適切な化合物であり得る。例示的なエポキシドとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、およびシクロヘキセンオキシドが挙げられる。好ましくは、エポキシドは、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、またはエチレンオキシドとプロピレンオキシドとの混合物である。より好ましくは、エポキシドはエチレンオキシドである。
【0168】
エポキシドは、二酸化炭素との反応の前に、(例えば、蒸留によって、例えば水素化カルシウムで)精製することができる。例えば、エポキシドは、添加される前に蒸留することができる。
【0169】
本発明の方法は任意の規模で実施することができる。この方法は、工業規模で実施することができる。当業者には理解されるように、触媒反応はしばしば熱の発生を伴う(すなわち、触媒反応は一般に発熱性である)。小規模な反応の最中に発生する熱は問題となりにくい。それは、温度上昇があったとしても比較的容易に、例えば、氷浴を使用することによって制御できるためである。より規模の大きい反応、特に工業規模の反応の場合、反応時の発熱は問題となる可能性があり、潜在的な危険性がある。そのため、本明細書中に記載されているいずれかの様式で材料を徐々に添加することによって、触媒反応の速度を制御し、過剰な熱の蓄積を最小限に抑えることができる。反応の速度は、例えば、材料を添加する際の流速を調整することにより制御することができる。したがって、本発明の方法は、工業規模の大規模な触媒反応に適用する場合に特に有利となる。
【0170】
温度は、本発明の方法の経過中に上昇し得る。例えば、本方法は、低温(例えば、約50℃~80℃以下の温度)で開始されてもよく、反応混合物は、本方法の経過中に温度を上昇させてもよい。例えば、反応混合物の温度は、本発明の方法の経過中に、反応開始時の約50℃から反応終了時の約80℃まで上昇する。この温度上昇は、緩やかであってもよいし、急激であってもよい。この温度上昇は、外部加熱源を適用した結果であってもよく、または上記のように発熱反応を介して達成されてもよい。
【0171】
反応混合物の温度は、本発明の方法の経過中に低下し得る。例えば、本方法は、高温(例えば、約90~150℃の温度)で開始されてもよく、反応混合物は、本方法の経過中に冷却されてもよい(例えば、約50℃~80℃以下の温度)。この温度低下は、緩やかであってもよいし、急激であってもよい。この温度低下は、上述したように、外部冷却源を適用した結果であり得る。
【0172】
本発明はまた、上述の方法によって得ることができる界面活性剤分子に関し、好ましくは、界面活性剤分子は、上述の式(III)または式(IV)に従う。本発明はまた、洗浄製品における上述の方法によって得られる界面活性剤分子の使用、および当該界面活性剤分子を含む組成物であって、洗浄製品のための界面活性剤配合物である組成物に関する。
【0173】
式(I)の触媒は、国際公開第2009/130470号、国際公開第2013/034750号、国際公開第2016/012786号、国際公開第2016/012785号、国際公開第2012037282号、および国際公開第2019048878A1号(これらの内容は参照により本明細書に援用される)に開示されているものなどの二金属フェノラートである。
【0174】
式(I)中のR基およびR基の各々は、出現ごとに同一であってもまたは異なっていてもよく、RおよびRは、同一であってもまたは異なっていてもよい。
任意選択で、Rの各出現は同じであり、水素である。
【0175】
は、任意選択で置換されたアルキレン基であり得、任意選択でRは、任意選択で置換されたCまたはCアルキレン基である。Rの例示的な選択肢としては、エチレニル、2,2-フルオロプロピレニル、2,2-ジメチルプロピレニル、プロピレニル、ブチレニル、フェニレニル、シクロヘキシレニル、またはビフェニレニルが挙げられる。任意選択で、Rは、2,2-ジ(アルキル)プロピレニル、任意選択で2,2-ジメチルプロピレニルなどの置換プロピレニルである。
【0176】
任意選択で、E、E、E、およびEは、各々独立して、NR、O、およびSから選択される。Rの例示的な選択肢としては、H、Me、Et、Bn、iPr、tBu、またはPh、および-CH-(ピリジン)が挙げられる。
【0177】
任意選択で、各R4は、水素またはアルキルである。任意選択で、Eの両方の出現がCであり、Eの両方の出現がOである。あるいは、EがOである場合、EはCであり得る。各Xは同じであっても異なっていてもよく、任意選択で各Xは同じである。Xは、2つの金属中心の間に架橋を形成してもよいことも理解されるであろう。
【0178】
任意選択で、各Xは同じであり、OC(O)R基から選択される。任意選択で、各Xは同じであり、OAc、OCCF、またはOC(CHCyから選択される。任意選択で、各Xは同じであり、OAcである。任意選択で、MおよびMの少なくとも1つは、Zn(II)、Cr(III)-X、Co(II)、Mn(II)、Mg(II)、Ni(II)、Fe(II)、およびFe(III)-Xから選択され、任意選択で、MおよびMの少なくとも1つは、Mg(II)、Zn(II)、およびNi(II)から選択され、例えば、MおよびMの少なくとも1つはNi(II)である。
【0179】
DMC触媒は、少なくとも2個の金属中心およびシアニド配位子を含む複雑な化合物である。DMC触媒は、1つ以上の錯化剤、水、金属塩、および/または酸(例えば、非化学量論的な量で)の少なくとも1つを更に含むことができる。
【0180】
この少なくとも2個の金属中心のうち、最初の2個をM’及びM’’で表すことができる。
M’は、Zn(II)、Ru(II)、Ru(III)、Fe(II)、Ni(II)、Mn(II)、Co(II)、Sn(II)、Pb(II)、Fe(III)、Mo(IV)、Mo(VI)、Al(III)、V(V)、V(VI)、Sr(II)、W(IV)、W(VI)、Cu(II)、およびCr(III)から選択することができ、M’は、任意選択で、Zn(II)、Fe(II)、Co(II)、およびNi(II)から選択され、任意選択で、M’はZn(II)である。
【0181】
M’’は、Fe(II)、Fe(III)、Co(II)、Co(III)、Cr(II)、Cr(III)、Mn(II)、Mn(III)、Ir(III)、Ni(II)、Rh(III)、Ru(II)、V(IV)、およびV(V)から選択され、任意選択で、M’’はCo(II)、Co(III)、Fe(II)、Fe(III)、Cr(III)、Ir(III)およびNi(II)から選択され、任意選択で、M’’はCo(II)およびCo(III)から選択される。
【0182】
上述の任意選択的なM’およびM’’の定義は組み合わせることができることが理解されるであろう。例えば、任意選択で、M’は、Zn(II)、Fe(II)、Co(II)、およびNi(II)から選択することができ、M’’は、任意選択で、Co(II)、Co(III)、Fe(II)、Fe(III)、Cr(III)、Ir(III)、およびNi(II)から選択することができる。例えば、M’は、任意選択でZn(II)とすることができ、M’’は、任意選択でCo(II)およびCo(III)から選択することができる。
【0183】
更なる金属中心が存在する場合、この更なる金属中心は、更にM’またはM’’の定義から選択することができる。
本発明のプロセスに使用することができるDMC触媒の例としては、米国特許第3,427,256号明細書、米国特許第5,536,883号明細書、米国特許第6,291,388号明細書、米国特許第6,486,361号明細書、米国特許第6,608,231号明細書、米国特許第7,008,900号明細書、米国特許第5,482,908号明細書、米国特許第5,780,584号明細書、米国特許第5,783,513号明細書、米国特許第5,158,922号明細書、米国特許第5,693,584号明細書、米国特許第7,811,958号明細書、米国特許第6,835,687号明細書、米国特許第6,699,961号明細書、米国特許第6,716,788号明細書、米国特許第6,977,236号明細書、米国特許第7,968,754号明細書、米国特許第7,034,103号明細書、米国特許第4,826,953号明細書、米国特許第4,500704号明細書、米国特許第7,977,501号明細書、米国特許第9,315,622号明細書、欧州特許出願公開第1568414(A)号明細書、欧州特許出願公開第1529566(A)号明細書、および国際公開第2015/022290号に記載されているものが挙げられ、その内容全体を、特に、本明細書に定義した反応のDMC触媒に関連する限り、本明細書の一部としてここに援用する。
【0184】
DMC触媒は:
M’[M’’(CN)
(式中、M’およびM’’は、上に定義した通りであり、d、e、f、およびgは、整数であり、DMC触媒が電気中性を有するように選択される)を含み得ると理解されるであろう。任意選択で、dは3である。任意選択で、eは1である。任意選択で、fは6である。任意選択で、gは2である。任意選択で、M’は、Zn(II)、Fe(II)、Co(II)、およびNi(II)から選択され、任意選択で、M’はZn(II)である。任意選択で、M’’は、Co(II)、Co(III)、Fe(II)、Fe(III)、Cr(III)、Ir(III)、およびNi(II)から選択され、任意選択で、M’’は、Co(II)またはCo(III)である。
【0185】
これらの任意選択的な特徴のいずれかを組み合わせることもでき、例えば、dは3となり、eは1となり、fは6となり、gは2となり、M’はZn(II)となり、M’’はCo(III)となることが理解されるであろう。
【0186】
上述の式を有する好適なDMC触媒としては、ヘキサシアノコバルト(III)酸亜鉛、ヘキサシアノ鉄(III)酸亜鉛、ヘキサシアノ鉄(II)酸ニッケル、およびヘキサシアノコバルト(III)酸コバルトを挙げることができる。
【0187】
DMC触媒の分野においては多くの発展があり、当業者は、DMC触媒が、上述の式に加えて、触媒の活性を高めるための添加剤を更に含むことができることを理解するであろう。したがって、上述の式はDMC触媒の「中核(core)」を成すが、DMC触媒は、1種又は複数種の更なる成分、例えば、少なくとも1種の錯化剤、酸、金属塩、および/または水を化学量論的な量または非化学量論的な量で更に含むことができる。
【0188】
例えば、DMC触媒は、次式:
【0189】
【化14】
【0190】
(式中、M’、M’’、X’’’、d、e、f、およびgは、上に定義した通りである)を有し得る。M’’’は、M’および/またはM’’であってもよい。X’’は、ハライド、オキシド、ヒドロキシド、スルフェート、カーボネート、シアニド、オキサレート、チオシアネート、イソシアネート、イソチオシアネート、カルボキシレート、およびナイトレートから選択される陰イオンであり、任意選択で、X’’は、ハライドである。iは、1以上の整数であり、陰イオンX’’の電荷にiを乗じた数が、M’’’の原子価を満たす。rは、対イオンX’’’の電荷に相当する整数である。例えば、X’’’がClである場合、rは1となる。lは0であるか、または0.1~5の間の数である。任意選択で、lは0.15~1.5の間の数である。
【0191】
は、錯化剤または1つ以上の錯化剤の組合せである。例えば、Rは、(ポリ)エーテル、ポリエーテルカーボネート、ポリカーボネート、ポリ(テトラメチレンエーテルジオール)、ケトン、エステル、アミド、アルコール(例えば、C1-8アルコール)、尿素等、例えば、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、(メ)エトキシエチレングリコール、ジメトキシエタン、tert-ブチルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジグリム、トリグリム、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、3-ブテン-1-オール、2-メチル-3-ブテン-2-オール、2-メチル-3-ブチン-2-オール、3-メチル-1-ペンチン-3-オール、またはこれらの組合せとすることができ、例えば、Rは、tert-ブチルアルコール、ジメトキシエタン、またはポリプロピレングリコールとすることができる。
【0192】
上に示したように、本発明に使用されるDMC触媒中に1種を超える錯化剤を存在させることができる。任意選択で、Rの錯化剤のうちの1種は高分子錯化剤とすることができる。任意選択で、Rは、高分子錯化剤および非高分子錯化剤の組合せとすることができる。任意選択で、錯化剤であるtert-ブチルアルコールおよびポリプロピレングリコールの組合せを存在させることができる。
【0193】
水、錯化剤、酸、および/または金属塩がDMC触媒中に存在しない場合、h、j、k、および/またはlは、それぞれ0となることが理解されるであろう。水、錯化剤、酸、および/または金属塩が存在する場合、h、j、k、および/またはlは、正の数であり、例えば、0~20の間とすることができる。例えば、hは、0.1~4の間とすることができる。jは、0.1~6の間とすることができる。kは、0~20の間とすることができ、例えば、0.1~10の間、例えば、0.1~5の間にある。lは、0.1~5の間、例えば、0.15~1.5の間にある。
【0194】
高分子錯化剤は、任意選択で、ポリエーテル、ポリカーボネートエーテル、及びポリカーボネートから選択される。高分子錯化剤は、DMC触媒の約5%~約80重量%の量、任意選択で、DMC触媒の約10%~約70重量%の量、任意選択で、DMC触媒の約20%~約50重量%の量で存在することができる。
【0195】
DMC触媒は、少なくとも2個の金属中心およびシアニド配位子に加えて、1つ以上の錯化剤、水、金属塩、および/または酸の少なくとも1つも、任意選択で非化学量論的な量で含むことができる。
【0196】
例示的なDMC触媒は、式Zn[Co(CN)・hZnCl・kHO・j[(CHCOH](式中、h、k、およびjは上に定義した通りである)を有するものである。例えば、hは、0~4(例えば、0.1~4)とすることができ、kは、0~20(例えば、0.1~10)とすることができ、jは、0~6(例えば、0.1~6)とすることができる。上に記載したように、DMC触媒は複雑な構造を有し、したがって、追加の成分を含む上式は、限定を意図していない。そうではなく、当業者は、この定義が、本発明に使用することができるDMC触媒を網羅するものではないことを理解するであろう。
【0197】
DMC触媒は、事前活性化されていてもよい。こうした事前活性化は、一方または両方の触媒をアルキレンオキシド(および任意選択で他の成分)と混合することによって達成することができる。DMC触媒の事前活性化は、反応の安全な制御(未反応モノマー含有量の制御されていない増大を防止すること)を可能にし、予測不能な活性化時間を排除するので、有用である。
【実施例
【0198】
方法
核磁気共鳴分光法
H NMRスペクトルは、溶媒CDClを用いて、Bruker AV-400装置で記録した。
【0199】
ゲル浸透クロマトグラフィー
GPC測定を、多分散度の狭いポリ(エチレングリコール)またはポリスチレン標準物質に対し、THF中で、Agilent PLgel Mixed-Eカラムを取り付けたAgilent 1260 Infinity装置を用いて実施した。
【0200】
質量分析
すべての質量分析測定は、MALDIマイクロMXマイクロマス装置を用いて行った。
触媒1:
1-デカノール(5.2g、27.9mmol)およびDMC触媒(t-ブタノールおよびポリエーテル共配位子を含有するヘキサシアノコバルト酸亜鉛触媒)(9.6mg)を含有する100mLのparr圧力反応器を、約100℃で30分間乾燥させた。これに、触媒1(構造(I)に従う2つのNi中心を含む大員環フェノラート触媒)(96mg)およびエチレンオキシドEO(17.6g、400mmol)を充填した。
【0201】
容器をCOで約3bargに加圧し、約60℃に加熱し、その際に圧力をCOで一定の7bargに調整した。
圧力を7バールに維持したが、温度は、8時間後に70℃まで、合計24時間後に75℃まで、合計32時間後に80℃まで、40時間後に85℃まで、50時間後に95℃まで段階的に上昇させた。合計66時間後、反応物を室温未満に冷却し、排気し、NMRおよびGPCによって分析して、約12.1重量%のCOおよび820g/molの質量(多分散性1.44)を有するC12-(CO2.3(EO)12.6である界面活性剤分子を得た。
【国際調査報告】