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  • 特表-工具を作製する方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-03
(54)【発明の名称】工具を作製する方法
(51)【国際特許分類】
   C21D 9/00 20060101AFI20240827BHJP
   B23K 1/00 20060101ALI20240827BHJP
   B23B 27/18 20060101ALI20240827BHJP
   B23B 51/00 20060101ALI20240827BHJP
   B23C 5/16 20060101ALI20240827BHJP
   C22C 38/00 20060101ALI20240827BHJP
   B23K 35/30 20060101ALI20240827BHJP
   C23C 14/14 20060101ALI20240827BHJP
   C22C 9/02 20060101ALN20240827BHJP
   C22C 9/05 20060101ALN20240827BHJP
   C22C 9/06 20060101ALN20240827BHJP
   C22C 9/00 20060101ALN20240827BHJP
   C22C 29/08 20060101ALN20240827BHJP
【FI】
C21D9/00 M
B23K1/00 330B
B23B27/18
B23B51/00 M
B23C5/16
C22C38/00 302E
C22C38/00 302N
B23K35/30 310C
C23C14/14 D
C22C9/02
C22C9/05
C22C9/06
C22C9/00
C22C29/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024508926
(86)(22)【出願日】2022-08-15
(85)【翻訳文提出日】2024-04-03
(86)【国際出願番号】 EP2022072751
(87)【国際公開番号】W WO2023020986
(87)【国際公開日】2023-02-23
(31)【優先権主張番号】2130220-3
(32)【優先日】2021-08-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(31)【優先権主張番号】21206226.9
(32)【優先日】2021-11-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520333435
【氏名又は名称】エービー サンドビック コロマント
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ダール, レイフ
(72)【発明者】
【氏名】ウリツカ, ティム
【テーマコード(参考)】
3C037
3C046
4K029
4K042
【Fターム(参考)】
3C037CC08
3C046GG00
4K029AA02
4K029BA12
4K029BD05
4K029CA03
4K029CA13
4K029DD06
4K029EA01
4K029FA04
4K029FA05
4K042AA12
4K042AA25
4K042BA01
4K042CA04
4K042CA06
4K042CA08
4K042CA11
4K042CA12
4K042CA15
4K042DA03
4K042DA05
4K042DA06
4K042DB07
4K042DC01
4K042DC02
4K042DC03
4K042DC04
4K042DE05
(57)【要約】
本発明は、ろう付けによってマルエージング鋼接合相手(1)と超硬合金接合相手(2)とを接合することを含む、工具を作製する方法に関する。本発明はまた、この方法に従って作製された工具に関する。本方法は、少なくとも70重量%のCuを含む充填材を適用する前に、マルエージング鋼部品上にNiコーティングを堆積させることを含む。ろう付け接合部は優れた剪断強度を示す。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超硬合金接合相手をマルエージング鋼接合相手と接合することによって工具を作製する方法であって、
前記マルエージング鋼接合相手の接合面上に0.5μmから15μmの間の厚さを有するNiコーティングを塗布するステップと、
少なくとも70重量%のCuを含む充填材を、前記超硬合金接合相手、および前記マルエージング鋼接合相手の前記接合面と接触して配置するステップと、
前記充填材が間にある前記超硬合金接合相手および前記マルエージング接合相手を、1分から60分の間の時間期間の間、900°Cから1200°Cの間の温度で真空炉における高温のろう付けプロセスにさらすステップと、
前記接合された超硬合金接合相手およびマルエージング接合相手を、5分から12時間の間、300°Cから600°Cの間の温度で焼戻しプロセスにさらすステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記充填剤が少なくとも99重量%のCuを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記Niコーティングが、2μmから10μmの間の厚さを有し、PVD技術を使用して堆積される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記マルエージング鋼が、8~25重量%のNiと、7重量%から27重量%の間の総量でCo、Mo、Ti、AlおよびCrから選択される1つまたは複数の合金元素と、0.03重量%未満のCとを含み、残部がFeおよび不純物である、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記マルエージング鋼が、11~25重量%のNiと、7~15重量%のCoと、3~10重量%のMoと、0.1~1.6重量%のTiと、0~0.15重量%のCrと、0~0.2重量%のAlと、0.03重量%未満のCとを含み、残部がFeおよび不純物である、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記マルエージング鋼が、15~25重量%のNiと、8.5~12.5重量%のCoと、3~6重量%のMoと、0.5~1.2重量%のTiと、0~0.15重量%のCrと、0~0.2重量%のAlと、0.03重量%未満のCとを含み、残部がFeおよび不純物である、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記ろう付けプロセスが、5分から30分の間、950°Cから1170°Cの間の温度で行われる、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記焼戻しプロセスが、2時間から5時間の間、400°Cから600°Cの間の温度で行われる、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
マルエージング鋼接合相手および超硬合金接合相手ならびに前記接合相手を接合するろう付け接合部を備える、請求項1から8のいずれに従って作製された工具。
【請求項10】
前記ろう付け接合部が少なくとも200MPaの剪断強度を有する、請求項9に記載の工具。
【請求項11】
前記マルエージング鋼接合相手が、8~25重量%のNiと、7重量%から27重量%の間の総量でCo、Mo、Ti、AlおよびCrから選択される1つまたは複数の合金元素と、0.03重量%未満のCとの組成を有し、残部がFeおよび不純物である、請求項9または10に記載の工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ろう付けによってマルエージング鋼接合相手と超硬合金接合相手とを接合することを含む、工具を作製する方法に関する。本発明はまた、この方法に従って作製された工具に関する。
【背景技術】
【0002】
ろう付けまたは溶接によって鋼を超硬合金と接合することは、工具を作製する技術分野で長い間知られている。鋼を超硬合金と接合するときのいくつかの課題、例えばCTE(熱膨張係数)の違い、ろう付け接合部の強度、鋼の所望されない硬度プロファイルなどがある。
【0003】
これらの問題の各々を個別に改善することができるいくつかの解決策があるが、それらの解決策はしばしば他の領域において問題を生じ、すべての問題が解決され得るとは限らない。
【0004】
ろう付けの原理は、加熱されると2つの部片を接合する充填材を使用することである。ろう付け接合部を加熱するいくつかのやり方があり、最も一般的なやり方のうちの1つは、誘導コイルを使用する誘導加熱である。コイルを使用することによる利点のうちの1つは、ろう付け接合部の周りの局所領域のみが加熱され、工具の残りは影響を受けないままになることである。しかしながら、この局所的な加熱は、鋼部品において望ましくない硬度プロファイルをもたらすことがあり、これは、鋼部品が回転工具および他の切削工具などを締結するためのねじ切りなどを受けるとき、問題を引き起こすことがある。
【0005】
本発明の1つの目的は、堅固なろう付け接合部と、均一硬度プロファイルおよび高い硬度を有し、したがって耐摩耗性が改善された鋼部品の両方を有する工具を提供することである。
【0006】
本発明の別の目的は、使用し、高い強度を有する予測可能な接合部と予測可能な硬度を有する鋼部品とをもたらすのが容易である、鋼と超硬合金とを接合するプロセスを提供することである。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、超硬合金接合相手をマルエージング鋼接合相手と接合することによって工具を作製する方法に関し、本方法は、
マルエージング鋼接合相手の接合面上に0.5μmから15μmの間の厚さを有するNiコーティングを塗布するステップと、
少なくとも70重量%のCuを含む充填材を、超硬合金接合相手、およびマルエージング鋼接合相手の接合面と接触して配置するステップと、
充填材が間にある超硬合金接合相手およびマルエージング接合相手を、1分から60分の間の時間期間の間、900°Cから1200°Cの間の温度で真空炉において高温にさらすステップと、
接合された超硬合金接合相手およびマルエージング接合相手を、5分から12時間の間、300°Cから600°Cの間の温度で焼戻しプロセスにさらすステップと
を含む。
【0008】
マルエージング鋼は、金属間化合物の沈殿によって硬化される鋼の一種である。マルエージング鋼は、好適に、8~25重量%のNiと、7重量%から27重量%の間、好ましくは7重量%から23重量%の間の合金元素の総量でCo、Mo、Ti、AlおよびCrから選択される1つまたは複数の合金元素とを含有する。マルエージング鋼は、典型的には、従来の鋼よりも少ない、好適に0.03重量%以下の炭素を含有する。残部はFeおよび不純物である。
【0009】
本発明の一実施形態では、本発明によるマルエージング鋼は、11~25重量%のNi、好ましくは15~25重量%のNiを含有する。合金元素は、好適に、7~15重量%の量のCo、好ましくは8.5~12.5重量%のCo、3~10重量%の量のMo、好ましくは3~6重量%のMo、0.1~1.6重量%の量のTi、好ましくは0.5~1.2重量%のTi、0~0.15重量%のCr、0~0.2重量%の量のAl、および0.03重量%未満のCである。残部はFeおよび不純物である。
【0010】
本発明の一実施形態では、マルエージング鋼は、17~19重量%のNiと、8.5~12.5重量%のCoと、4~6重量%のMoと、0.5~1.2重量%のTiと、0~0.15重量%のCrと、0~0.2重量%のAlと、0.03重量%未満のCとの組成を有する。残部はFeおよび不純物である。
【0011】
本明細書で不純物が意味するのは、鋼の特性にいかなる影響も及ぼさないような少量でマルエージング鋼中に存在することができる任意の元素である。不純物の総量は、0.50重量%未満、好ましくは0.15重量%未満である。そのような元素の例は、Mn、P、Si、BおよびSである。
【0012】
本発明の一実施形態では、Mnの量は0.05重量%未満であり、Pの量は0.003重量%未満であり、Siの量は0.004重量%未満であり、Sの量は0.002重量%未満である。
【0013】
Niコーティングは、Niコーティングを堆積させる技術分野で知られている任意のコーティング技術、例えば亜鉛めっきまたはPVDを使用して堆積され得る。Niコーティングの厚さは、0.5μmから20μmの間、好ましくは2μmから10μmの間である。
【0014】
本発明の一実施形態では、Niコーティングは、Niコーティングを堆積させる前にイオンエッチングによって鋼表面を最初に洗浄する工程を含むPVDを使用して堆積される。正確なプロセスパラメータは、使用されるべきである堆積装置の種類が何であるかに応じて当業者によって決定されるべきである。
【0015】
超硬合金接合相手は、当技術分野で一般的な任意の超硬合金から作製され得る。超硬合金は、金属結合相マトリックスに埋め込まれた硬質相を含む。
【0016】
本明細書で超硬合金が意味するのは、硬質相の少なくとも50重量%、好適に少なくとも70重量%がWCであることである。
【0017】
好適に、金属結合相の量は、超硬合金の3重量%から20重量%の間、好ましくは4重量%から15重量%の間である。好ましくは、金属結合相の主成分は、Co、NiおよびFeのうちの1つまたは複数から選択され、より好ましくは金属結合相の主成分はCoである。
【0018】
本明細書で主成分が意味するのは、結合相を形成するために他の元素が添加されないことであるが、例えばCrのような他の成分が添加される場合、それらは、必然的に、焼結中に結合剤中で溶解される。
【0019】
本発明の一実施形態では、超硬合金はまた、元素としてまたは炭化物、窒化物もしくは炭窒化物として存在するCr、Ta、Ti、NbおよびVから選択される超硬合金元素に共通の他の成分を含むことができる。
【0020】
本発明による(ろう付け材料と呼ばれることもある)充填材は、少なくとも70重量%のCu、好ましくは少なくとも80重量%のCuを含有する。残りの元素は、溶融温度と、接合されるべき材料に対する濡れ性とを調整するために、例えばGe、Mn、Ni、Sn、Agであり得る。
【0021】
本発明の一実施形態では、充填材は、少なくとも99重量%のCuである。
【0022】
好適に、充填材は、箔またはワイヤとして設けられる。
【0023】
充填材は、超硬合金基材および鋼部品の接合面上に設けられる。
【0024】
ろう付けプロセス前の充填材の厚さは、材料の種類、すなわち箔またはワイヤに依存する。典型的には、箔の厚さは、5μmから200μmの間、好ましくは15μmから100μmの間である。
【0025】
次いで、充填材が間にある超硬合金接合相手およびマルエージング接合相手は、不活性または還元環境を有する、すなわち最小量の酸素を有する炉内に部品を配置することによって高温にさらされる。好ましくは、炉内のろう付け温度は、900°Cから1200°Cの間、好ましくは950°Cから1170°Cの間、より好ましくは1000°Cから1150°Cの間である。部品が高温にさらされる時間は、1分から60分の間、好ましくは5分から30分の間である。高温での時間がより短い場合、ろう付け接合部が形をなすのに十分な時間がなく、ろう付け接合部の所望の強度は到達されない。高温での時間がより長い場合、これは、鋼特性に悪影響を及ぼすことがある。
【0026】
好適に、ろう付け温度から少なくとも充填材の固相線温度未満の温度、好ましくは300°C未満までの冷却速度は、1°C/分から50°C/分の間、好ましくは3°C/分から10°C/分の間である。
【0027】
ろう付けは、好適に、真空において、または低分圧におけるアルゴンの存在下で行われる。本明細書で真空が意味するのは、炉内の圧力が5×10-4mbar未満、好ましくは5×10-5mbar未満であることである。アルゴンが存在する場合、アルゴン圧力は1×10-2mbar未満である。
【0028】
ろう付け後、部品は、5分から12時間の間、好ましくは2時間から5時間の時間の間、300°Cから600°Cの間、好ましくは400°Cから600°Cの間、最も好ましくは500°Cから600°Cの間の高い時効温度に部品をさらすことによって、時効処理工程を受ける。
【0029】
好適に、時効温度までの加熱速度は、1°C/分から50°C/分の間、好ましくは5°C/分から10°C/分の間である。好適に、時効温度から好ましくは300°C未満の温度までの冷却速度は、1°C/分から50°C/分の間、好ましくは5°C/分から10°C/分の間である。
【0030】
本発明に従って使用されるろう付け炉は、上記で説明されたように、真空、加熱および冷却速度などに関する適切に制御された条件を提供することができる任意の炉であり得る。ろう付け工程および時効処理工程は、同じ炉内、または2つの別個の炉内のいずれかで行われ得る。
【0031】
本発明の一実施形態では、時効処理は、ろう付け工程が行われるのと同じ炉内で、ろう付け工程の直後に行われる。
【0032】
本発明の一実施形態では、時効処理は、真空ろう付けとは異なる炉内で、ろう付け工程の直後に行われる。
【0033】
本発明の一実施形態では、時効処理は、コーティングの堆積前または堆積中に同じ炉/堆積チャンバ内で行われる。
【0034】
工具は、超硬合金部品がろう付けによって鋼部品と接合される、当技術分野で一般的な任意の工具または工具の一部であり得る。例は、ドリル、エンドミル、シャンクのような工具ホルダなどである。
【0035】
本発明の一実施形態では、工具は、インサート、ドリルヘッドなどのような切削工具用の工具ホルダとして使用されるシャンクである。シャンクは、超硬合金部品および鋼部品によって形成され、超硬合金部品は安定性を生じるために使用され、鋼部品は、切削工具を締結するためのねじ切りを生じるために必要である。
【0036】
本発明はまた、上記の方法に従って作製された工具に関する。工具は、マルエージング鋼接合相手および超硬合金接合相手ならびに前記接合相手を接合するろう付け接合部を備える。
【0037】
本明細書でろう付け接合部が意味するのは、充填材によって充填され、ろう付けプロセス中に形成される、超硬合金接合相手とマルエージング鋼接合相手との間の領域または塊である。
【0038】
ろう付け接合部の厚さは、好適に、5μmから200μmの間、好ましくは15μmから100μmの間である。
【0039】
ろう付け接合部は、少なくとも200MPa、好ましくは少なくとも250MPaの剪断強度を有する。
【0040】
ろう付け接合部は、Cuを含み、たいがい、いくらかのNiを含む。Niコーティングは、ろう付け工程後に検出することが極めて困難である。マルエージング鋼接合部材もかなりの量のNiを含有するので、検出されたNiがどこに由来するかを決定することができない。しかしながら、Niコーティングの効果は、ろう付け接合部の剪断強度が測定されたときに明らかである。
【0041】
マルエージング鋼部品の平均硬度は、好適に、350HV1から600HV1の間、好ましくは400HV1から460HV1の間、より好ましくは410HV1~450HV1である。硬度は、1kgf(重量キログラム)の荷重および15秒の荷重時間を印加して、ビッカース硬度計によって測定される。マルエージング鋼部品の全材料(表面ではない)において3×6の刻み目のパターンが適用された。平均値は、これらの測定点の平均である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】1が鋼接合部材であり、2が超硬合金接合部材である、剪断試験デバイスの概略図である。
図2】Aが超硬合金接合部材であり、Bがろう付け接合部であり、Cがマルエージング鋼接合部材である、ろう付け前に鋼接合相手上にNiコーティングが堆積された、本発明によるろう付け接合部のSEM画像を示す図である。
図3】Aが超硬合金接合部材であり、Bがろう付け接合部であり、Cがマルエージング鋼接合部材である、ろう付け前に鋼接合相手上にNiコーティングが堆積されなかった、先行技術によるろう付け接合部のSEM画像を示す図である。
【実施例
【0043】
[実施例1]
10重量%のCoと1重量%の他の炭化物と残りのWCとの組成を有する超硬合金部品とともに、円筒の形態でマルエージング鋼1.2709から作製された鋼部品を準備した。マルエージング鋼は、ろう付け前に約340HV1の硬度を有していた。
【0044】
マルエージング鋼部品の一部上に、アークPVD(物理蒸着)を使用してNiコーティングを堆積させた。最初に試料をイオンエッチングし(100A、1,000Vのバイアス電圧、3Ah)、次いで、5μmの厚さに達するまで90A、30Vのバイアス電圧および90Ahを用いてNiコーティングを堆積させた。
【0045】
100μmの厚さを有する箔の形態で充填材を準備した。充填材の組成は100%Cuであった。
【0046】
マルエージング鋼部品と超硬合金部品との間に、両方の部片が箔と接触するように、箔を配置した。次いで、組み合わされた接合部片をSchmetz真空炉に入れ、最初に温度を20°C/分の速度で650°Cまで上昇させ、接合部片をそこで10分間維持した。次いで、それらの部片を20°C/分の速度で850°Cまで加熱し、そこで10分間維持した。その後、温度を5°C/分の速度で1100°Cのろう付け温度まで上昇させた。ろう付け温度1100°Cを15分間維持した後、部片を5°C/分の速度で300°Cまで冷却した。300°Cの後はフリークーリングであった。
【0047】
ろう付け工程の後、ろう付けされた部片は時効処理プロセスを受け、マルエージング鋼の硬度を高めた。部片をろう付けと同じ炉内に配置し、温度を5°C/分の速度で時効温度まで上昇させた。時効温度580°Cを3時間維持した後、部片を5°C/分の速度で300°Cまで冷却した。300°Cの後はフリークーリングであった。
【0048】
本明細書では、マルエージング鋼にNiコーティングが施された接合された部片を発明1と呼び、マルエージング鋼にNiコーティングが施されていない接合された部片を比較例1と呼ぶ。
【0049】
発明1のろう付け接合部のSEM画像が図2に示され、比較例1のろう付け接合部のSEM画像が図3に示されている。図3に見られるように、ろう付け接合部は、鋼部品の最も近くにいくつかの凹凸および欠陥を含む。
【0050】
高剪断試験結果によって証明される、熱応力割れの兆候のない優れた濡れ性が観察され得る。
【0051】
[実施例2]
(比較例)
10重量%のCoと1重量%の他の炭化物と残りのWCとの組成を有する超硬合金部品とともに、炭素硬化熱間加工鋼1.2344から作製された鋼部品を準備した。
【0052】
100μmの厚さを有する箔の形態で充填材を準備した。ろう付け金属は、100.0重量%のCuの組成を有していた。溶融温度は1085°Cである。
【0053】
マルエージング鋼部品と超硬合金部品との間に箔を配置し、組み合わされた接合部片を炉に入れ、最初に温度を20°C/分の速度で650°Cまで上昇させ、5分間保持した。次いで、650°Cから、温度をろう付け温度TBrazingまで10K/分の速度で上昇させ、ろう付け温度TBrazingは1100°Cであった。TBrazingを15分の滞留時間の間維持し、その後、部片を50K/分の冷却速度で850°Cまで冷却した。850°Cから、標本を2バールの過圧および2500min-1のファン周波数でNにより急冷した。
【0054】
続いて、炭素硬化熱間加工鋼1.2344を有する超硬合金-鋼接合部を、2時間、630°Cで2回時効処理した。
【0055】
本明細書では、試料は比較例2と示される。
【0056】
[実施例3]
ろう付け接合部の剪断強度を測定することによって、接合された部片を評価し、割れなどについてマルエージング鋼部品およびろう付け接合部の硬度を調査した。接合強度特性を査定するために、図1に示すように設定された剪断デバイスを使用して、試料を剪断試験し、図1では、1は鋼製円筒(φ=20mm、h=5mm)の形状の鋼部品であり、2は超硬合金製円筒(φ=10mm、h=5mm)の形状の超硬合金部品である。鋼製円筒は、剪断強度試験デバイスの間隙に配置されるため、荷重方向にのみ移動することができる。デバイスの表面を侵食したノッチは、接合された部品を正しい位置に保持し、ろう付け接合部への均一に分布した力の誘導を保証する。ろう付け接合部が機能しなくなり、超硬合金製円筒が剪断されるまで、印加される力を一定に増加させた。次いで、最大の測定された力と初期接合面(A=78,5mm)との商によって、極限剪断強度を計算した。ろう付け接合部剪断強度の決定の前に、充填材を除去しなかった。ロッドを試験するとき、同じ方法を適用した。
【0057】
1kgf(重量キログラム)の荷重および15秒の荷重時間を印加して、マルエージング鋼部品の断面上でビッカース硬度計によって鋼部品の硬度を測定した。断面における鋼部品の完全なプロファイル(約20×5mm)を覆う3×6の刻み目のパターンを適用した。
表1
図1
図2
図3
【国際調査報告】