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特表2024-531962新規のポリペプチドおよびこれを含むグラム陰性菌に対する抗生剤
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-03
(54)【発明の名称】新規のポリペプチドおよびこれを含むグラム陰性菌に対する抗生剤
(51)【国際特許分類】
   C12N 9/36 20060101AFI20240827BHJP
   C07K 14/435 20060101ALI20240827BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20240827BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240827BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20240827BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20240827BHJP
   C12N 7/01 20060101ALI20240827BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20240827BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20240827BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240827BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240827BHJP
   C12N 15/56 20060101ALI20240827BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20240827BHJP
   A61K 38/47 20060101ALI20240827BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20240827BHJP
   A01N 37/46 20060101ALI20240827BHJP
   A01N 63/60 20200101ALI20240827BHJP
   A01N 63/20 20200101ALI20240827BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20240827BHJP
   C11D 3/48 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
C12N9/36
C07K14/435 ZNA
C07K19/00
C12N15/63 Z
C12N15/62 Z
C12N15/12
C12N7/01
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N15/56
A61K38/16
A61K38/47
A61P31/04
A01N37/46
A01N63/60
A01N63/20
A01P3/00
C11D3/48
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024509135
(86)(22)【出願日】2022-08-18
(85)【翻訳文提出日】2024-04-10
(86)【国際出願番号】 KR2022012373
(87)【国際公開番号】W WO2023022546
(87)【国際公開日】2023-02-23
(31)【優先権主張番号】10-2021-0109266
(32)【優先日】2021-08-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0012566
(32)【優先日】2022-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0070371
(32)【優先日】2022-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】522448643
【氏名又は名称】ライセンテク カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】LyseNTech Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】C-1002, 253, Pangyo-ro, Bundang-gu, Seongnam-si, Gyeonggi-do, Republic of Korea
(71)【出願人】
【識別番号】517050879
【氏名又は名称】ハンクク ユニバーシティ オブ フォーリン スタディーズ リサーチ アンド ビジネス ファウンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ミュン ヒジュン
(72)【発明者】
【氏名】キム ミン ス
(72)【発明者】
【氏名】ホン ヘ-ウォン
(72)【発明者】
【氏名】キム ユン ドゥク
(72)【発明者】
【氏名】チャン チェヨン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4H003
4H011
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA87X
4B065AA90Y
4B065AA98X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA31
4B065CA43
4B065CA44
4C084AA02
4C084AA07
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA22
4C084BA23
4C084BA41
4C084CA01
4C084CA53
4C084DA42
4C084DC22
4C084NA14
4C084ZB351
4C084ZB352
4H003FA34
4H011AA01
4H011AA03
4H011BB06
4H011BB19
4H011BB21
4H011DA13
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA50
4H045DA89
4H045EA06
4H045EA07
4H045EA29
4H045FA74
(57)【要約】
エンドリシン活性を有する新規のポリペプチド、当該ポリペプチドおよび抗生物質活性蛋白質を含む融合ポリペプチド、および当該ポリペプチドおよび/または融合ポリペプチドのグラム陰性病原菌に対する抗生用途および/またはグラム陰性病原菌感染および/またはグラム陰性病原菌感染に係る病気または症状の予防および/または治療用途を提供する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号2のアミノ酸配列を含むか、
配列番号2のアミノ酸配列における39位、43位、45位、73位、81位、101位、および113位からなる群より選択された1以上の位置のアミノ酸が本来とは異なるアミノ酸に置換された変異を含む、
ポリペプチド。
【請求項2】
下記の1)ないし7)からなる群より選択された1種以上の変異を含む、請求項1に記載のポリペプチド。
1)配列番号2のアミノ酸配列における39位の残基に対応するアミノ酸が、セリン、アルギニン、リシン、アスパラギン酸、グルタミン酸、スレオニン、アスパラギン、グルタミン、システイン、グリシン、プロリン、アラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、チロシン、またはトリプトファンに置換、
2)配列番号2のアミノ酸配列における43位の残基に対応するアミノ酸が、ヒスチジン、アルギニン、リシン、グルタミン酸、セリン、スレオニン、アスパラギン、グルタミン、システイン、グリシン、プロリン、アラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、チロシン、またはトリプトファンに置換;
3)配列番号2のアミノ酸配列における45位の残基に対応するアミノ酸が、グルタミン酸、アルギニン、ヒスチジン、リシン、アスパラギン酸、セリン、アスパラギン、グルタミン、システイン、グリシン、プロリン、アラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、チロシン、またはトリプトファンに置換;
4)配列番号2のアミノ酸配列における73位の残基に対応するアミノ酸が、バリン、アルギニン、ヒスチジン、リシン、アスパラギン酸、グルタミン酸、セリン、スレオニン、アスパラギン、グルタミン、システイン、グリシン、プロリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、チロシン、またはトリプトファンに置換;
5)配列番号2のアミノ酸配列における81位の残基に対応するアミノ酸が、セリン、アルギニン、ヒスチジン、リシン、アスパラギン酸、グルタミン酸、スレオニン、アスパラギン、グルタミン、システイン、グリシン、プロリン、バリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、チロシン、またはトリプトファンに置換;
6)配列番号2のアミノ酸配列における101位の残基に対応するアミノ酸が、アラニン、アルギニン、ヒスチジン、リシン、アスパラギン酸、グルタミン酸、セリン、アスパラギン、グルタミン、システイン、グリシン、プロリン、バリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、チロシン、またはトリプトファンに置換;および
7)配列番号2のアミノ酸配列における113位の残基に対応するアミノ酸が、バリン、アルギニン、ヒスチジン、リシン、アスパラギン酸、グルタミン酸、セリン、スレオニン、アスパラギン、グルタミン、システイン、グリシン、プロリン、アラニン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、チロシン、またはトリプトファンに置換。
【請求項3】
配列番号2のアミノ酸配列における39位の残基に対応するアミノ酸がセリンに、
配列番号2のアミノ酸配列における43位の残基に対応するアミノ酸がヒスチジンに、
配列番号2のアミノ酸配列における45位の残基に対応するアミノ酸がグルタミン酸に、
配列番号2のアミノ酸配列における73位の残基に対応するアミノ酸がバリンに、
配列番号2のアミノ酸配列における81位の残基に対応するアミノ酸がセリンに、および
配列番号2のアミノ酸配列における101位の残基に対応するアミノ酸がアラニンに置換された変異を含む、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項4】
配列番号2のアミノ酸配列における113位の残基に対応するアミノ酸がバリンに置換された変異をさらに含む、請求項3に記載のポリペプチド。
【請求項5】
配列番号6のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項6】
セクロピンA(セクロピンセクロピンA)をさらに含む、請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項7】
前記セクロピンAが、配列番号8または配列番号9のアミノ酸配列を含む、請求項6に記載のポリペプチド。
【請求項8】
前記セクロピンAおよび前記ポリペプチドが、N-末端から順に連結されている、請求項6に記載のポリペプチド。
【請求項9】
前記セクロピンAおよび前記ポリペプチドは、ペプチドリンカーによって連結されている、請求項6に記載のポリペプチド。
【請求項10】
配列番号10のアミノ酸配列を含む、請求項6に記載のポリペプチド。
【請求項11】
グラム陰性菌に対して抗生物質活性を有する、請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項12】
グラム陰性菌に対して抗生物質活性を有する、請求項6に記載のポリペプチド。
【請求項13】
請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載のポリペプチド、または前記ポリペプチドおよびセクロピンAを含む融合ポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド。
【請求項14】
請求項13に記載のポリヌクレオチドを含む、組換えベクター。
【請求項15】
請求項13に記載のポリヌクレオチド、またはこれを含む組換えベクターを含む、組換え細胞。
【請求項16】
請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載のポリペプチド、または前記ポリペプチドおよびセクロピンAを含む融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む、バクテリオファージ。
【請求項17】
配列番号1の核酸配列を含む、請求項16に記載のバクテリオファージ。
【請求項18】
請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載のポリペプチド、または前記ポリペプチドおよびセクロピンAを含む融合ポリペプチド、
前記ポリペプチドまたは前記融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
前記ポリヌクレオチドを含む組換えベクター、および
前記ポリヌクレオチドまたは組換えベクターを含む組換え細胞、
からなる群より選択された1種以上を含む、抗生剤。
【請求項19】
ポリミキシン系抗生剤をさらに含む、請求項18に記載の抗生剤。
【請求項20】
前記ポリミキシン系抗生剤は、ポリミキシンB、コリスチン、またはこれらの組み合わせである、請求項19に記載の抗生剤。
【請求項21】
グラム陰性菌に対して抗生物質活性を有する、請求項18に記載の抗生剤。
【請求項22】
前記グラム陰性菌は、シュードモナス属細菌、アシネトバクター属細菌、エスケリキア属細菌、エンテロバクター属細菌、およびクレブシエラ属細菌からなる群より選択された1種以上である、請求項21に記載の抗生剤。
【請求項23】
請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載のポリペプチド、または前記ポリペプチドおよびセクロピンAを含む融合ポリペプチド、
前記ポリペプチドまたは前記融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
前記ポリヌクレオチドを含む組換えベクター、および
前記ポリヌクレオチドまたは組換えベクターを含む組換え細胞、
からなる群より選択された1種以上を有効性分として含む、
グラム陰性菌の感染またはグラム陰性菌によって誘発される病気の予防または治療用の医薬組成物。
【請求項24】
前記グラム陰性菌は、シュードモナス属細菌、アシネトバクター属細菌、エスケリキア属細菌、エンテロバクター属細菌、およびクレブシエラ属細菌からなる群より選択された1種以上である、請求項23に記載の医薬組成物。
【請求項25】
前記グラム陰性菌は、シュードモナス属細菌であり、
シュードモナス属細菌によって誘発される病気は、皮膚感染、床擦れ、肺炎、菌血症、敗血症、心内膜炎、髄膜炎、外耳炎、中耳炎、角膜炎、骨髄炎、腸炎、腹膜炎、または嚢胞性線維症である、請求項23に記載の医薬組成物。
【請求項26】
前記グラム陰性菌は、アシネトバクター属細菌であり、
アシネトバクター属細菌によって誘発される病気は、皮膚感染、肺炎、菌血症、または敗血症である、請求項23に記載の医薬組成物。
【請求項27】
前記グラム陰性菌は、エスケリキア属細菌であり、
エスケリキア属細菌によって誘発される病気は、腸炎、クローン病、潰瘍性大膓炎、細菌性赤痢、尿道感染症、皮膚感染、菌血症、または敗血症である、請求項23に記載の医薬組成物。
【請求項28】
請求項18に記載の抗生剤を含む、飼料添加剤。
【請求項29】
請求項18に記載の抗生剤を含む、消毒剤。
【請求項30】
請求項18に記載の抗生剤を含む、洗浄剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示内容は、エンドリシン活性を有する新規のポリペプチド、エンドリシンペプチドと抗生物質活性蛋白質とを含む融合蛋白質、および前記ポリペプチドおよび/または融合蛋白質のグラム陰性病原菌に対する抗生剤および/またはグラム陰性病原菌感染および/またはグラム陰性病原菌感染に係る病気または症状の予防および/または治療用医薬組成物としての用途を提供する。
【背景技術】
【0002】
バクテリオファージ(bacteriophage)は、特定の細菌に感染し、感染した細菌の成長を抑制して阻害する細菌特異的なウイルスを意味する。バクテリオファージは、自身の宿主バクテリアに感染(infection)した後、細菌細胞内部で増殖し、増殖後に子孫バクテリオファージがバクテリアの外に出るとき、バクテリオファージの蛋白質であるエンドリシンを用いて宿主の細菌の細胞壁を破壊する方式で細菌を死滅させる能力を有する。したがって、バクテリオファージのエンドリシン活性を有する物質は、抗生剤候補物質として有用に適用することができる。
【0003】
近来、抗生剤耐性細菌が急速に増加していて、いかなる抗生剤でも治療できない多剤耐性細菌も増えている。特に、グラム陰性菌のうちの一つであるシュードモナスエルギノーザ(Pseudomonas aeruginosa)は、全世界的に新たな治療手段の開発が至急なESKAPE(Enterococcus faecium、Staphylococcus aureus、Klebsiella pneumoniae、Acinetobacter baumannii、Pseudomonas aeruginosa、and Enterobacter species)bacteriaのうちの一つであり、大腸菌(Escherichia coli)は、多様な感染症に関わるbacteriaである。したがって、既存の抗生剤とは差別化される治療手段の開発が要求される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一態様は、配列番号2のアミノ酸配列における39位、43位、45位、73位、81位、101位、および113位からなる群より選択された1以上の位置に対応するアミノ酸が、本来とは異なるアミノ酸に置換された変異を含む、変異型ポリペプチドを提供する。
【0005】
他の態様は、セクロピンA(Cecropin A)および配列番号2のアミノ酸配列を含むポリペプチド、または前記変異型ポリペプチドを含む、融合ポリペプチドを提供する。
【0006】
また他の態様は、変異型ポリペプチドまたは融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを提供する。
【0007】
また他の態様は、ポリヌクレオチドを含む、組換えベクターを提供する。
【0008】
また他の態様は、ポリヌクレオチドまたはこれを含む組換えベクターを含む、組換え細胞を提供する。
【0009】
また他の態様は、変異型ポリペプチドまたは融合ポリペプチド、
変異型ポリペプチドまたは融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
ポリヌクレオチドを含む組換えベクター、および
ポリヌクレオチドまたは組換えベクターを含む組換え細胞、
からなる群より選択された1種以上を含む、抗生剤を提供する。
【0010】
また他の態様は、変異型ポリペプチドまたは融合ポリペプチド、
変異型ポリペプチドまたは融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
ポリヌクレオチドを含む組換えベクター、および
ポリヌクレオチドまたは組換えベクターを含む組換え細胞、
からなる群より選択された1種以上を含む、グラム陰性菌の感染またはグラム陰性菌によって誘発される病気の予防または治療用医薬組成物を提供する。
【0011】
また他の態様は、抗生剤を含む、飼料添加剤を提供する。
【0012】
また他の態様は、抗生剤を含む、消毒剤を提供する。
【0013】
また他の態様は、抗生剤を含む、洗浄剤を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
標準治療抗生剤と共に用いるとき、観察された上昇効果だけでなくグラム陰性病原体に対する向上した抗菌活性を有する、改変されたエンドリシンを提供する。
【0015】
一態様は、配列番号2または6のポリペプチドを提供する。ポリペプチドは、グラム陰性菌に対するエンドリシン(エンドリシン)として作用することができ、抗生剤として有用である。ポリペプチドを組換えで合成する場合、配列番号2または6のアミノ酸配列のN-末端に第一のアミノ酸残基としてメチオニン(M)が付加されてもよい。
【0016】
他の態様は、配列番号2または6のポリペプチドと抗生剤蛋白質、例えば、セクロピンA(例えば、配列番号8、または配列番号9)を含む融合ポリペプチドを提供する。融合ポリペプチドでは、ポリペプチドと抗生剤蛋白質とは直接(リンカーなしに)またはペプチドリンカーを介して互いに融合することができる。例えば、融合ポリペプチドは、配列番号10のアミノ酸配列を含んでもよい。
【0017】
配列番号2(EC340)
VSRNISNNGIKFTAAFEGFRGTAYRATPNEKYLTIGYGHYGPDVTPGKTITPGQGLLLLNRDMAKAVAAVDAAAHHSLTQAQFDAVCDLVYNAGAGVIAATTGTGKALRSGDIATLRAKLALFINQNGKPLLGLRRRTAGRLALFDGKPWQEAEAIGRAVKG
【0018】
配列番号6(mtEC340)
VSRNISNNGIKFTAAFEGFRGTAYRATPNEKYLTIGYGSYGPHVEPGKTITPGQGLLLLNRDMAKAVAAVDAVAHHSLTQSQFDAVCDLVYNAGAGVIAAATGTGKALRSGDVATLRAKLALFINQNGKPLLGLRRRTAGRLALFDGKPWQEAEAIGRAVKG
【0019】
配列番号10(LNT113; Cecropin A-GGGGSx3 linker-mtEC340)
MKWKLFKKIEKVGQNIRDGIIKAGPAVAVVGQATQIAKGGGGSGGGGSGGGGSVSRNISNNGIKFTAAFEGFRGTAYRATPNEKYLTIGYGSYGPHVEPGKTITPGQGLLLLNRDMAKAVAAVDAVAHHSLTQSQFDAVCDLVYNAGAGVIAAATGTGKALRSGDVATLRAKLALFINQNGKPLLGLRRRTAGRLALFDGKPWQEAEAIGRAVKG
【0020】
配列番号8(Cecropin A)
KWKLFKKIEKVGQNIRDGIIKAGPAVAVVGQATQIAK
【0021】
配列番号9(Cecropin A、M is added to N-terminus of 配列番号8)
MKWKLFKKIEKVGQNIRDGIIKAGPAVAVVGQATQIAK
【0022】
他の態様は、ポリペプチドまたは融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを提供する。
【0023】
他の態様は、ポリヌクレオチドを含む組換えベクターを提供する。組換えベクターは発現ベクターであってもよい。
【0024】
他の態様は、ポリヌクレオチドまたは組換えベクターを含む組換え細胞を提供する。組換え細胞は、ポリヌクレオチドの発現のために用いられてもよい。
【0025】
他の態様は、下記からなる群より選択された1種以上を含む抗生剤を提供する。
ポリペプチド、例えば、配列番号2または6;
融合ポリペプチド、例えば、配列番号10;
ポリペプチドまたは融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
ポリヌクレオチドを含む組換えベクター;および
ポリヌクレオチドまたは組換えベクターを含む組換え細胞。
【0026】
抗生剤は、一つまたは複数(例:2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20)のグラム陰性菌に対して抗生効果がある。
【0027】
他の態様は、グラム陰性細菌の感染および/またはグラム陰性細菌感染に係る(これによって誘発される)症状または病気を予防および/または治療するための薬学的組成物を提供し、薬学的組成物は、下記からなる群より選択される1種以上を含んでもよい。
先に説明したポリペプチド、例えば、配列番号2または6;
先に説明した融合ポリペプチド、例えば、配列番号10;
ポリペプチドまたは融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
ポリヌクレオチドを含む組換えベクター;および
ポリヌクレオチドまたは組換えベクターを含む組換え細胞。
【0028】
薬学的組成物は、一つ以上の薬学的に許容される担体をさらに含んでもよい。
【0029】
他の態様は、下記からなる群より選択される1種以上を含む薬学的組成物を経口または非経口に(例えば、静脈内、皮下、腹腔内、または筋肉内など)投与するステップを含む、グラム-陰性細菌の感染および/またはグラム-陰性細菌感染に係る(これによって誘発される)症状または病気を予防および/または治療方法を提供する。
先に説明したポリペプチド、例えば、配列番号2または6;
先に説明した融合ポリペプチド、例えば、配列番号10;
ポリペプチドまたは融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
ポリヌクレオチドを含む組換えベクター;および
ポリヌクレオチドまたは組換えベクターを含む組換え細胞。
【発明の効果】
【0030】
本明細書で提供される野生型または変異型ポリペプチドまたは融合ポリペプチドは、多様なグラム-陰性菌に対して優れた抗菌効能を有するので、薬学的組成物だけでなく抗生剤として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1図1は、大腸菌を感染するバクテリオファージEC340-M-11-12のエンドリシン(EC340)遺伝子を発現する発現ベクターの開裂地図である。
図2図2は、バクテリオファージEC340-M-11-12由来のエンドリシン(EC340)の精製過程を示す。
図3図3は、バクテリオファージEC340-M-11-12由来のエンドリシン(EC340)の試験管内の大腸菌、アシネトバクターバウマニおよびシュードモナスエルギノーザに対する抗生効果を示すグラフである。
図4a図4aおよび図4bは、本出願で用いられたエンドリシンの構成と酵素活性を示す。図4aは、EC340、mtEC340およびLNT113のドメイン構造を示す。それは、細胞壁結合ドメイン(CBD)がない予測されたリゾチームドメインを有している。E.coliファージPBEC131のEC340は、アミノ酸のいくつかの置換を受けた(mtEC340)。置換されたアミノ酸の位置が表示された。mtEC340は、セクロピンセクロピンAがN-末端に融合しており、LNT113と命名した。
図4b図4bは、SDS-PAGEおよび後続のザイモグラム分析で精製されたエンドリシン、EC340(19.5kDa)、mtEC340(18.2kDa)およびLNT113(23.2kDa)の分析結果を示す。
図5a図5aないし図5dは、エンドリシンの抗菌活性を示す。図5aないし図5dに、20mMのTris-HCl緩衝液(pH7.5)で2時間E.coli菌株(図5a、図5c;ATCC 8739、ATCC 25922、CCARM 1A746、CCARM 1B684およびK.pneumoniae菌株(図5b、図5d;ATCC 700603、KCTC 2208、CCARM 10143、F85)に対するエンドリシン(2μM)の抗菌活性を示した。Trisバッファーは、陰性対照群(Control)として用いられた。点線は、検出限界を示す。t-検定以外にも二元配置ANOVAが行われており、垂直棒の上に水平棒として表示された(*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001)。
図5b】同上
図5c】同上
図5d】同上
図6a図6aないし図6eは、LNT113の細胞浸透および抗菌活性を示す。図6a:グラム陰性E.coli ATCC 8739の外膜透過性はNPN分析によって決定された。CecA-EGFP、EGFPに融合されたセクロピンA;cecA+mtEC340、セクロピンセクロピンAおよびmtEC340をそれぞれ2μMの混合物に別途に添加した;PMB、ポリミキシンB。
図6b図6bは、LNT113は、セクロピンセクロピンAおよび/またはmtEC340に比べてE.coli ATCC 8739に対して向上した抗菌活性を示した。いずれも0.5mMの最終濃度で処理した。
図6c図6cは、大腸菌ATCC 8739に対する多様な濃度のLNT113(0.1、0.3、0.9または2.7μM)の抗菌活性を示す。
図6d図6dは、異なる時間にてエンドリシン(0.5μM)を添加した後、細菌(E.coli ATCC 8739)生存率が減少することを示す。点線は、検出限界を示す。
図6e図6eは、MCR-1陽性大腸菌FORC81に対するLNT113の抗菌活性を示す。細胞を2時間0.2または2μM濃度のLNT113またはコリスチンで処理した。点線は、検出限界を示す。星印は、対照群との統計的差を示す(*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001)。
図7a図7aないし図7bは、LNT113の細胞毒性および溶血活性を示す。 図7aは、Huh7細胞株でLNT113の細胞毒性分析を示す。細胞を異なる濃度のLNT113と共に24時間または48時間インキュベーションした。細胞毒性の陽性対照群としてTriton X-100を用いた。
図7b図7bは、LNT113の溶血活性を示す。赤血球をPBSまたは、LNT113と共に37°Cで1時間培養し、570nmで上澄み液の吸光度を測定して溶血活性を確認した。溶血活性の陽性対照群としてTriton X-100 0.1%を用いた。
図8図8は、3つの異なるE.coli菌株に対するLNT113は、コリスチンと併用処理時に上昇効果を示す。E.coliで、LNT113とコリスチンのisobologram.FIC指数(FICI)は、LNT113およびコリスチンのFIC(Fractional Inhibitory Concentration)の合計を示す。
図9図9は、EC340の部位指定変異の誘発に用いられる推定エンドリシンのアミノ酸配列整列(CLUSTALオメガ)(CLUSTALオメガを用いるEC340エンドリシンと類似の蛋白質の多重配列整列(バージョン1.2.4))を示す。
図10a図10aおよび図10bは、E.coli ATCC 8739(図10a)およびK.pneumoniae KCTC 2208(図10b)に対するエンドリシンの抗菌活性を示す。幾何級数的に成長したバクテリア細胞を、37℃で2時間150mMのNaClの存在または不在下で、2つの異なる緩衝液(20mMのTris-HCl、pH7.5または20mMのHEPES、pH7.5)で2μMのエンドリシンと共に培養した。点線は、検出限界を示す。t-検定以外にも二元配置ANOVAが行われており、垂直棒の上に水平棒として表示された(*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001)。
図10b】同上
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0033】
細菌を宿主にして増殖して天然の抗生剤として用いられるバクテリオファージが、細菌に侵入して内部で増殖を終えると、完成されたファージ粒子が細菌外部に放出され、このとき、細菌の細胞壁を攻撃して分解し、外部に放出される通路を作る酵素がエンドリシンである。全てのバクテリオファージは、そのゲノム内にこのようなエンドリシン遺伝子を有し、増殖時に発現したエンドリシン蛋白質を用いる。細菌を宿主にして増殖するバクテリオファージと細胞壁を分解する特性を有するバクテリオファージに由来のエンドリシンは、天然の抗生剤として用いることができる。本明細書では、新規のバクテリオファージを分離し、バクテリオファージとこれに由来のエンドリシンの抗生効果を立証し、バクテリオファージとこれに由来のエンドリシンの抗生剤および/またはこれに関連する用途を提供する。
【0034】
グラム陽性細菌の場合には、最も外壁に細胞壁が位置するので、外部からエンドリシンを添加すると、細胞壁が直ちに攻撃されて分解される。これに対し、グラム陰性細菌の場合には、最も外部に外細胞膜が存在し、その内部に細胞壁が位置するので、外部からエンドリシンを添加しても、まず外細胞膜を通過してこそ細胞壁に接することになる。したがって、基本的に、エンドリシンは、グラム陰性細菌には効果がないと知らされてきた。
【0035】
本明細書で提供されるエンドリシン活性を有するポリペプチドは、グラム陰性菌を死滅させる効果を有することを特徴とする。
【0036】
エンドリシンまたはムレイン加水分解酵素ともいうバクテリオファージリシンは、溶菌周期の最後の段階でバクテリオファージによって生成される加水分解酵素であって、宿主の細胞壁を切断できるので、ファージが内部で増殖した後に宿主バクテリアで破裂することができる。外部からグラム陰性菌に組換え蛋白質として適用すると、外膜の存在によってリシンが細胞壁に容易に到達できない。本出願で、大腸菌を感染させるファージPBEC131から得たエンドリシンEC340は、外膜透過性を改善し、グラム陰性バクテリアに対する活性を増加させるように改変されている。改変されたエンドリシンであるLNT113は、標準治療抗生剤との潜在的な上昇効果についてテストされた。メロペネム、チゲサイクリン、クロラムフェニコール、アジスロマイシンおよびシプロフロキサシンでは付加効果が示されたのに対し、コリスチンでは上昇効果が立証された。セフタジジムおよびカナマイシンはいずれもLNT113エンドリシンと相乗効果や相加効果が示さなかった。さらに、相乗効果および付加効果は、抗生剤種類、外膜通過メカニズム、分子量またはテストした各抗生剤の殺菌特性によって一般化することができなかった。
【0037】
Hyalophora cecropiaの血リンパから分離されたセクロピンAは37個のアミノ酸ペプチドであって、両親媒性alpha-helix構造を有しており、グラム陰性菌の外膜と相互作用して抗菌活性を示す。本出願で、セクロピンAとmtEC340との融合は、細胞膜透過性を1.8倍増加させ、抗菌性を2~4log増加させた。セクロピンAは、膜破壊を誘導するものと報告されているが、一般に同意された作用方式はまだ明らかになっていない。セクロピンAは、自己促進吸収によって外膜を横切って膜の歪みを引き起こすものと提案されている。外膜の歪みは本出願で立証されているように、セクロピン融合エンドリシンおよびセクロピン自体の吸収を促進して融合蛋白質の抗菌効能をはるかに高めることができる。
【0038】
1990年代からコリスチンは、多剤耐性病原体の急激な増加に対する最後の手段として使用された。LNT113は、チェッカーボード分析でコリスチンと相乗効果があるものと確認された。コリスチンは、脂質多糖類(LPS)の脂質Aと直接相互作用して、合成LPS/リン脂質二重層でLPS-コリスチンクラスタを形成して抗菌活性に重要な役割を果たす。脂質A生合成に関わる遺伝子の変異は、LPS欠乏バクテリアを生成してコリスチン耐性を誘発する。また他の耐性機序は、ホスホエタノールアミントランスフェラーゼ酵素ファミリーのメンバーであるMCR-1に関連して、ホスホエタノールアミンを脂質Aに添加してコリスチンの付着を妨げる。このようなコリスチンと脂質Aとの相互作用は、エンドリシンのより効率的な吸収を可能にして融合蛋白質のより高い抗菌効能をもたらすことができる。LNT113とコリスチン以外の抗生剤との間には相乗効果が観察されなかった。付加効果も対象菌株によって異なるように示され、以前の報告書と一致した。このような相異は抗生剤感受性とは無関係であった。MDR菌株CCARM 1A746(表1)は、LNT113の抗菌効果を色々な方式で抑制する多重耐性メカニズムの存在によってより高いFICI値を示した。他の種類の抗生剤による併用効果の一般化は不可能であった。例えば、テストした二つのベータ-ラクタム抗生剤のうちの一つのセフタジジムは、LNT113とほとんど相加効果を示さないのに対し、他のベータ-ラクタム抗生剤のメロペネムは若干の相加効果を示した。外膜通過機序によってアジスロマイシンのようなマクロライドとカナマイシンのようなアミノグリコシドは、脂質媒介経路を用いるのに対し、ベータラクタムはポリン媒介拡散を用いる。言い換えると、本出願でグループ間で一貫したパターンが観察されなかった。また、テストした各抗生剤の分子量や静菌または殺菌作用メカニズムも一貫したパターンを示していない。
【0039】
要約すると、本出願で改変されたエンドリシンLNT113を生産し、試験管内で抗菌効能を確認した。このエンドリシンは、コリスチンとの相乗効果と標準治療抗生剤との一部追加効果を有しているので、現在の抗生剤耐性問題を克服するための新たな方式として用いることができる。
【0040】
用語の定義
本明細書で、ポリヌクレオチド(「遺伝子」と混用することがある)またはポリペプチド(「蛋白質」と混用することがある)が、「特定の核酸配列またはアミノ酸配列を含む」または「特定の核酸配列またはアミノ酸配列からなる」とは、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドが、特定の核酸配列またはアミノ酸配列を必須的に含むことを意味することができ、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの本来の機能および/または目的する機能を維持する範囲で、特定の核酸配列またはアミノ酸配列に変異(欠失、置換、変形、および/または付加)が加えられた「実質的に同等な配列」を含むもの(または、変異を排除しないもの)と解釈することができる。
【0041】
一例で、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドが、「特定の核酸配列またはアミノ酸配列を含む」または「特定の核酸配列またはアミノ酸配列からなるまたは表示される」とは、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドが、(i)特定の核酸配列またはアミノ酸配列を必須的に含むか、または(ii)特定の核酸配列またはアミノ酸配列と96%以上、96.3%以上、97%以上、97.7%以上、98%以上、98.5%以上、99%以上、99.2%以上、99.5%以上、または99.9%以上の同一性(identity)を有するアミノ酸配列からなるか、これを必須的に含み、本来の機能および/または目的する機能を維持することを意味することができる。本明細書で、本来の機能は、エンドリシン酵素機能(例えば、ペプチドグリカン加水分解活性)、セクロピンA活性(例えば、細胞膜溶解活性)、および/または抗生作用であるか(アミノ酸配列の場合)、またはエンドリシン酵素機能、セクロピンA活性、および/または抗生作用を有する蛋白質コードする機能(核酸配列の場合)であることができ、目的する機能は、グラム陰性菌に対する抗生物質活性を意味することができる。
【0042】
本明細書で、用語「同一性(identity)」は与えられた核酸配列またはアミノ酸配列と一致する程度を意味し、百分率(%)で表することができる。核酸配列に対する相同性の場合、例えば、文献によるアルゴリズムBLAST(参照:KarlinおよびAltschul、Pro.Natl.Acad.Sci.USA、90、5873、1993)やPearsonによるFASTA(参照:Methods Enzymol.、183、63、1990)を用いて決定することができる。このようなアルゴリズムBLASTに基づいて、BLASTNやBLASTXと呼ばれるプログラムが開発されている(参照:http://www.ncbi.nlm.nih.gov)。
【0043】
本明細書で提供される蛋白質またはポリペプチドは、天然から分離および/または精製されるか、組換えまたは化学的に合成されたものであってもよい。本明細書で提供される蛋白質またはポリペプチドのアミノ酸配列が、N-末端から第一のアミノ酸残基としてメチオニン(Met、M)またはMet-Ala-Ser(MAS)配列を含む場合、蛋白質またはポリペプチドが組換えで生産されたものであってもよく、N-末端から第一のアミノ酸位置のメチオニンは開始コドンによってコードされたものであってもよい。したがって、本明細書で提供される蛋白質またはポリペプチドのアミノ酸配列が、N-末端に組換え生産によるメチオニンを含む場合、蛋白質またはポリペプチドが他の方法(例えば、化学的合成または天然から分離)で得られる場合には、組換え生産によるN-末端の第一の位置のメチオニンを除いた第二のアミノ酸残基から開始されるアミノ酸配列またはMAS配列の次のアミノ酸残基(例えば、第四のアミノ酸残基)から開始されるアミノ酸配列を含むものと解釈することができる。
【0044】
エンドリシンは、バクテリオファージがコードするペプチドグリカン加水分解酵素を意味する。エンドリシンは、バクテリオファージ増殖の溶解回路で、後期遺伝子の発現の間に合成され、バクテリア性ペプチドグリカンの分解を通じて感染した細胞から子孫ビリオンの放出を媒介する。酵素的活性の面で、エンドリシンは、通常グルコサミニダーゼ(Glucosaminidase)、ムラミダーゼ(muramidase)(lysozymeの一種)、トランスグリコシラーゼ(transglycosylase)、アミダーゼ(amidase)、エンドペプチダーゼ(endopeptidase)などからなる群より選択された一つ以上の活性を有するものであってもよい。
【0045】
本明細書で、ポリヌクレオチド(「遺伝子」と混用することがある)またはポリペプチド(「蛋白質」と混用することがある)が、「特定の核酸配列またはアミノ酸配列を含む」または「特定の核酸配列またはアミノ酸配列からなる」とは、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドが、特定の核酸配列またはアミノ酸配列からなるか、これを必須的に含むことを意味することができ、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの本来の機能および/または目的する機能を維持する範囲で、特定の核酸配列またはアミノ酸配列に変異(欠失、置換、変形、および/または付加)が加えられた「実質的に同等な配列」を含むもの(または、変異を排除しないもの)と解釈することができる。
【0046】
本明細書で、本来の機能は、エンドリシン酵素機能(例えば、ペプチドグリカン加水分解活性)(アミノ酸配列の場合)、またはエンドリシン酵素機能を有する蛋白質をコードする機能(核酸配列の場合)であることができ、目的する機能は、シュードモナス属細菌、例えば、シュードモナスエルギノーザに対する抗生物質活性を意味することができる。
【0047】
本明細書で提供されるポリペプチドは、天然由来のものでなくてもよく、組換えまたは化学的に合成されたものであってもよい。ポリペプチドが組換えで生産される場合、精製のために通常のシグナルペプチド、切断部位、tagなどが結合された形態であってもよい。したがって、非制限的な一例で、本明細書で提供されるポリペプチドは、蛋白質の組換え生産過程に通常使用可能なシグナルペプチド、切断部位、タグ(例えば、Hisタグ、GST(glutathione-s-transferase)タグ、MBP(maltose binding protein)タグなど)などからなる群より選択された一つ以上をさらに含む形態であるか、これらが除去された精製された形態であってもよい。
【0048】
バクテリオファージ
一例は、新規のバクテリオファージを提供する。
【0049】
バクテリオファージは、配列番号1の核酸配列を含むか、配列からなるポリヌクレオチド、または、
配列番号1の核酸配列と96.5%以上、97%以上、97.5%以上、98%以上、98.5%以上、99%以上、99.5%以上、または99.9%以上の相同性または同一性を有する核酸配列を含むか、配列からなるポリヌクレオチドを含んでもよい。
【0050】
バクテリオファージは、下記で説明する野生型ポリペプチド、野生型ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、変異型ポリペプチド、変異型ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、融合ポリペプチド、および融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドからなる群より選択される1種以上を含むものであってもよい。
【0051】
以下、ポリペプチドおよびポリヌクレオチドについて詳細に説明する。
【0052】
野生型ポリペプチドおよびこれをコードするポリヌクレオチド
一例は、新規のポリペプチドを提供する。ポリペプチドは、配列番号2のアミノ酸配列を含むものであってもよい。
【0053】
ポリペプチドは、バクテリオファージに由来のものであってもよい。ポリペプチドは、バクテリオファージに由来のエンドリシン活性を有するものであってもよい。ポリペプチドは、分子量が約19kDa(19kDa±2)であるものであってもよい。一例で、ポリペプチドは、配列番号1の核酸配列を含むバクテリオファージに由来のものであってもよい。ポリペプチドは、グラム陰性菌に対して抗生物質活性を有するものであってもよい。
【0054】
他の例は、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを提供する。ポリヌクレオチドは、配列番号3の核酸配列を含むものであってもよい。
【0055】
本明細書で、特に記載されない限り、配列番号2のアミノ酸配列を含むポリペプチドとしてエンドリシン活性を有するポリペプチドは、
(1)配列番号2のアミノ酸配列からなるか、またはこれを必須的に含むポリペプチド、および/または、
(2)配列番号2のアミノ酸配列と98.8%以上、99%以上、99.2%以上、99.4%以上、99.6%以上、または99.9%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなるか、これを必須的に含み、エンドリシン酵素機能(例えば、ペプチドグリカン加水分解活性)および/またはシュードモナス属細菌、例えば、シュードモナスエルギノーザに対する抗生物質活性を有する(維持する)ポリペプチド、
を意味するものであってもよい。
【0056】
また、本明細書で、特に記載されない限り、配列番号2のアミノ酸配列を含むまたは配列番号2のアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、
(a)配列番号2のアミノ酸配列からなるか、またはこれを必須的に含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、および/または、
(b)配列番号2のアミノ酸配列と98.8%以上、99%以上、99.2%以上、99.4%以上、99.6%以上、または99.9%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなるか、これを必須的に含み、エンドリシン酵素機能(例えば、ペプチドグリカン加水分解活性)および/またはシュードモナス属細菌、例えば、シュードモナスエルギノーザに対する抗生物質活性を有する(維持する)ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、および/または、
(c)配列番号3の核酸配列を含むポリヌクレオチドを意味することができ、
配列番号3の核酸配列を含むポリヌクレオチドは、
(d)配列番号3の核酸配列からなるか、またはこれを必須的に含むポリヌクレオチドを意味するものであってもよい。
【0057】
変異型ポリペプチドおよびこれをコードするポリヌクレオチド
一例は、新規の変異型ポリペプチドを提供する。変異型ポリペプチドは、配列番号2のアミノ酸配列のポリペプチドに変異を含む変異型ポリペプチドであってもよい。ポリペプチドは、バクテリオファージに由来のものであってもよい。ポリペプチドは、バクテリオファージに由来のエンドリシン活性を有するものであってもよい。ポリペプチドは、グラム陰性菌に対して抗生物質活性を有するものであってもよい。
【0058】
変異型ポリペプチドは、配列番号2のアミノ酸配列を含むポリペプチドに一つ以上のアミノ酸残基が置換、欠失、または挿入された変異を含む変異型ポリペプチドであってもよい。ポリペプチドは、組換えまたは合成的(例えば、化学的合成)に製造されたものであってもよい。
【0059】
本出願の変異導入の対象となるポリペプチドは、配列番号2のアミノ酸配列からなるか、配列番号2のアミノ酸配列を含み、エンドリシン活性を有するものであってもよいが、これに制限されない。つまり、配列番号2のアミノ酸配列の前後への無意味な配列追加または自然に発生し得る変異、あるいは、そのサイレント変異(silent mutation)を除くのではなく、配列番号2のアミノ酸配列を含む蛋白質と互いに同一または対応する活性を有する場合であれば、本出願の変異導入の対象となる蛋白質に該当できる。例えば、本出願の変異導入の対象となる蛋白質は、配列番号2のアミノ酸配列またはこれと98.8%以上、99%以上、99.2%以上、99.4%以上、99.6%以上、または99.9%以上の相同性または同一性を有するアミノ酸配列で構成される蛋白質であってもよい。また、このような相同性または同一性を有し、蛋白質に対応する効能を示すアミノ酸配列であれば、一部の配列が欠失、変形、置換または付加されたアミノ酸配列を有する蛋白質も、本出願の変異対象となる蛋白質の範囲内に含まれもよい。
【0060】
他の例で、ポリペプチドは、配列番号2のアミノ酸配列に、配列番号2のアミノ酸配列のN-末端から39位、43位、45位、73位、81位、101位、および113位からなる群より選択された1種以上(例えば、2種以上、3種以上、4種以上、5種以上、6種以上、または7種全て)の位置に対応するアミノ酸が、本来のアミノ酸と異なるアミノ酸に置換された変異を含む変異型ポリペプチドであってもよい。
【0061】
具体的に、ポリペプチドは、配列番号2のアミノ酸配列に、下記1)ないし7)の中から選択された1種以上(例えば、2種以上、3種以上、4種以上、5種以上、6種以上、または7種全て)の変異を含む変異型ポリペプチドであってもよい。
1)配列番号2のアミノ酸配列のN-末端から39位の残基に対応するアミノ酸が、他のアミノ酸、つまり、セリン、アルギニン、リシン、アスパラギン酸、グルタミン酸、スレオニン、アスパラギン、グルタミン、システイン、グリシン、プロリン、アラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、チロシン、またはトリプトファンに置換;
2)配列番号2のアミノ酸配列のN-末端から43位の残基に対応するアミノ酸が、他のアミノ酸、つまり、ヒスチジン、アルギニン、リシン、グルタミン酸、セリン、スレオニン、アスパラギン、グルタミン、システイン、グリシン、プロリン、アラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、チロシン、またはトリプトファンに置換;
3)配列番号2のアミノ酸配列のN-末端から45位の残基に対応するアミノ酸が、他のアミノ酸、つまり、グルタミン酸、アルギニン、ヒスチジン、リシン、アスパラギン酸、セリン、アスパラギン、グルタミン、システイン、グリシン、プロリン、アラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、チロシン、またはトリプトファンに置換;
4)配列番号2のアミノ酸配列のN-末端から73位の残基に対応するアミノ酸が、他のアミノ酸、つまり、バリン、アルギニン、ヒスチジン、リシン、アスパラギン酸、グルタミン酸、セリン、スレオニン、アスパラギン、グルタミン、システイン、グリシン、プロリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、チロシン、またはトリプトファンに置換;
5)配列番号2のアミノ酸配列のN-末端から81位の残基に対応するアミノ酸が、他のアミノ酸、つまり、セリン、アルギニン、ヒスチジン、リシン、アスパラギン酸、グルタミン酸、スレオニン、アスパラギン、グルタミン、システイン、グリシン、プロリン、バリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、チロシン、またはトリプトファンに置換;
6)配列番号2のアミノ酸配列のN-末端から101位の残基に対応するアミノ酸が、他のアミノ酸、つまり、アラニン、アルギニン、ヒスチジン、リシン、アスパラギン酸、グルタミン酸、セリン、アスパラギン、グルタミン、システイン、グリシン、プロリン、バリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、チロシン、またはトリプトファンに置換;および
7)配列番号2のアミノ酸配列のN-末端から113位の残基に対応するアミノ酸が、他のアミノ酸、つまり、バリン、アルギニン、ヒスチジン、リシン、アスパラギン酸、グルタミン酸、セリン、スレオニン、アスパラギン、グルタミン、システイン、グリシン、プロリン、アラニン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、チロシン、またはトリプトファンに置換。
【0062】
一例で、変異型ポリペプチドは、配列番号2のアミノ酸配列に、配列番号2のアミノ酸配列のN-末端から39位の残基、43位の残基、45位の残基、73位の残基、101位の残基、および113位の残基に対応するアミノ酸からなる群より選択された1種以上のアミノ酸が、本来のアミノ酸と異なるアミノ酸に置換されたものであってもよい。
【0063】
一例で、変異型ポリペプチドは、配列番号2のアミノ酸配列に、配列番号2のアミノ酸配列のN-末端から39位の残基、72位の残基、101位の残基、および113位の残基に対応するアミノ酸からなる群より選択された1種以上のアミノ酸が、本来のアミノ酸と異なるアミノ酸に置換されたものであってもよい。
【0064】
一例で、変異型ポリペプチドは、配列番号2のアミノ酸配列に、配列番号2のアミノ酸配列のN-末端から43位の残基、および45位の残基に対応するアミノ酸からなる群より選択された1種以上のアミノ酸が、本来のアミノ酸と異なるアミノ酸に置換された変異を含むものであってもよい。
【0065】
一例で、変異型ポリペプチドは、配列番号2のアミノ酸配列に、
(1)配列番号2のアミノ酸配列のN-末端から39位の残基、72位の残基、101位の残基、および113位の残基に対応するアミノ酸からなる群より選択された1種以上のアミノ酸が、本来のアミノ酸と異なるアミノ酸に置換され、
(2)配列番号2のアミノ酸配列のN-末端から43位の残基、45位の残基、および81位の残基に対応するアミノ酸からなる群より選択された1種以上のアミノ酸が、さらに本来のアミノ酸と異なるアミノ酸に置換された変異を含むものであってもよい。
【0066】
一例で、変異型ポリペプチドは、配列番号2のアミノ酸配列に、
(1)配列番号2のアミノ酸配列のN-末端から43位の残基、および45位の残基に対応するアミノ酸からなる群より選択された1種以上のアミノ酸が、本来のアミノ酸と異なるアミノ酸に置換され、
(2)配列番号2のアミノ酸配列のN-末端から39位の残基、73位の残基、81位の残基、および101位の残基に対応するアミノ酸からなる群より選択された1種以上のアミノ酸が、さらに本来のアミノ酸と異なるアミノ酸に置換された変異を含むものであってもよい。
【0067】
一例で、変異型ポリペプチドは、配列番号2のアミノ酸配列に、
(1)配列番号2のアミノ酸配列のN-末端から39位の残基、43位の残基、35位の残基、72位の残基、101位の残基、および113位の残基に対応するアミノ酸からなる群より選択された1種以上のアミノ酸が、本来のアミノ酸と異なるアミノ酸に置換され、
(2)配列番号2のアミノ酸配列のN-末端から81位の残基に対応するアミノ酸からなる群より選択された1種以上のアミノ酸が、さらに本来のアミノ酸と異なるアミノ酸に置換されたものであってもよい。
【0068】
一具体例で、変異型ポリペプチドは、配列番号2のアミノ酸配列に、配列番号2のアミノ酸配列のN-末端から39位の残基に対応するアミノ酸がセリンに、配列番号2のアミノ酸配列のN-末端から43位の残基に対応するアミノ酸がヒスチジンに、配列番号2のアミノ酸配列のN-末端から45位の残基に対応するアミノ酸がグルタミン酸に、配列番号2のアミノ酸配列のN-末端から73位の残基に対応するアミノ酸がバリンに、配列番号2のアミノ酸配列のN-末端から81位の残基に対応するアミノ酸がセリンに、配列番号2のアミノ酸配列のN-末端から101位の残基に対応するアミノ酸がアラニンに、および配列番号2のアミノ酸配列のN-末端から113位の残基に対応するアミノ酸がバリンに置換された変異を含むものであってもよい。
【0069】
一具体例で、変異型ポリペプチドは、
(1)配列番号6のアミノ酸配列を含むか、配列番号6のアミノ酸配列からなるか、または、
(2)配列番号6のアミノ酸配列と96%以上、96.3%以上、97%以上、97.7%以上、98%以上、98.5%以上、99%以上、99.2%以上、99.5%以上、または99.9%以上の相同性または同一性を有するアミノ酸配列を含むか、アミノ酸配列からなるものであってもよい。
【0070】
変異型ポリペプチドのうち、配列番号2のアミノ酸配列のN-末端から39位、43位、45位、73位、81位、101位、および113位のアミノ酸残基に対応するアミノ酸からなる群より選択された1種以上のアミノ酸を除いた一部のアミノ酸配列が欠失、変形、置換または付加されても、エンドリシン活性を示す限り、本出願の変異型ポリペプチドに含まれ得ることは自明である。
【0071】
例えば、アミノ酸配列N-末端、C-末端および/または内部に本出願の変異型ポリペプチドの機能を変更しない配列追加または欠失、自然に発生し得る変異、サイレント変異(silent mutation)または保存的置換を有する場合である。
【0072】
「保存的置換(conservative substitution)」は、あるアミノ酸を類似の構造的および/または化学的性質を有するまた他のアミノ酸に置換させることを意味する。このようなアミノ酸置換は、一般に残基の極性、電荷、溶解度、疎水性、親水性および/または両親媒性(amphipathic nature)での類似性に基づいて生じ得る。通常、保存的置換は、蛋白質またはポリペプチドの活性にほとんど影響を与えない場合もあれば、影響を与えない場合もある。
【0073】
つまり、本出願の変異型ポリペプチドは、配列番号2のアミノ酸配列のN-末端から39位、43位、45位、73位、81位、101位、および113位からなる群より選択された1種以上(例えば、2種以上、3種以上、4種以上、5種以上、6種以上、または7種全て)の位置に対応するアミノ酸が、本来のアミノ酸と異なるアミノ酸に置換され、配列番号6のアミノ酸配列と96%以上、96.3%以上、97%以上、97.7%以上、98%以上、98.5%以上、99%以上、99.2%以上、99.5%以上、または99.9%以上の相同性または同一性を有するアミノ酸配列を有するか、含むか、または配列番号6のアミノ酸配列と96%以上、96.3%以上、97%以上、97.7%以上、98%以上、98.5%以上、99%以上、99.2%以上、99.5%以上、または99.9%以上のアミノ酸配列からなるか、必須的に構成されてもよいがが、これに制限されるものではない。
【0074】
また一例で、本出願の変異型ポリペプチドは、配列番号2のアミノ酸配列と98.8%以上、99%以上、99.2%以上、99.4%以上、99.6%以上、または99.9%以上の相同性または同一性を有するアミノ酸配列で、配列番号2のアミノ酸配列のN-末端から39位、43位、45位、73位、81位、101位、および113位からなる群より選択された1種以上(例えば、2種以上、3種以上、4種以上、5種以上、6種以上、または7種全て)の位置に対応するアミノ酸が、本来のアミノ酸と異なるアミノ酸に置換された配列を有するか、含むか、または、
配列番号2のアミノ酸配列と98.8%以上、99%以上、99.2%以上、99.4%以上、99.6%以上、または99.9%以上の相同性または同一性を有するアミノ酸配列で、配列番号2のアミノ酸配列のN-末端から39位、43位、45位、73位、81位、101位、および113位からなる群より選択された1種以上(例えば、2種以上、3種以上、4種以上、5種以上、6種以上、または7種全て)の位置に対応するアミノ酸が、本来のアミノ酸と異なるアミノ酸に置換された配列からなるか、必須的に構成されてもよいがが、これに制限されるものではない。
【0075】
一例で、変異型ポリペプチドは、
(1)配列番号6または配列番号7のアミノ酸配列を含むかまたはアミノ酸配列からなるか、または、
(2)配列番号6のアミノ酸配列と96%以上、96.3%以上、97%以上、97.7%以上、98%以上、98.5%以上、99%以上、99.2%以上、99.5%以上、または99.9%以上の相同性(identity)または同一性を有するアミノ酸配列を含むかまたはアミノ酸配列からなるものであってもよい。
【0076】
他の例は、変異型ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを提供する。
【0077】
ポリヌクレオチドは、配列番号12の核酸配列を含むものであってもよい。
【0078】
本明細書で、特に記載されない限り、配列番号6または配列番号7のアミノ酸配列を含むまたは配列番号6または配列番号7のアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、
(a)配列番号6または配列番号7のアミノ酸配列からなるか、またはこれを必須的に含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、および/または、
(b)配列番号6または配列番号7のアミノ酸配列と98.5%以上、99%以上、99.5%以上、または99.9%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなるか、これを必須的に含み、エンドリシン酵素機能(例えば、ペプチドグリカン加水分解活性)および/またはシュードモナス属細菌、例えば、シュードモナスエルギノーザに対する抗生物質活性を有する(維持する)ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、および/または、
(c)配列番号12の核酸配列を含むポリヌクレオチドを意味することができ、
配列番号12の核酸配列を含むポリヌクレオチドは、
(d)配列番号12の核酸配列からなるか、またはこれを必須的に含むポリヌクレオチドを意味するものであってもよい。
【0079】
融合ポリペプチドおよびこれをコードするポリヌクレオチド
他の例は、新規の融合ポリペプチドを提供する。融合ポリペプチドは、野生型ポリペプチドまたは変異型ポリペプチド(以下、「野生型または変異型ポリペプチド」と記載する)、およびセクロピンA(セクロピンセクロピンA)を含むものであってもよい。セクロピンAは、蛾(Hyalophora cecropia)に由来のものであってもよく、例えば、配列番号8または配列番号9のアミノ酸配列を含むか、アミノ酸配列からなるものであってもよい。ポリペプチドは、グラム陰性菌に対して抗生物質活性を有するものであってもよい。
【0080】
一例で、融合ポリペプチドは、
野生型ポリペプチドまたは変異型ポリペプチド、および
セクロピンAをさらに含むものであってもよい。
【0081】
融合ポリペプチドにおけるセクロピンA(例えば、配列番号8または配列番号9)および野生型または変異型ポリペプチド(例えば、配列番号2、配列番号6、または配列番号7のアミノ酸配列を含むポリペプチド)は、順序に関係なく連結されたものであってもよい。つまり、融合ポリペプチドにおいて、セクロピンAと野生型または変異型ポリペプチドは、N-末端から、セクロピンAおよびポリペプチドの順序またはポリペプチドおよびセクロピンAの順序に連結されたものであってもよく、例えば、セクロピンAおよびポリペプチドの順序に連結されたものであってもよい。
【0082】
また、セクロピンA(セクロピンA)(例えば、配列番号8または配列番号9)およびポリペプチド(例えば、配列番号2、配列番号6、または配列番号7)は、ペプチドリンカーを通じて連結されるか、リンカーなしに直接連結されたものであってもよい。
【0083】
一例で、融合ポリペプチドは、
(1)配列番号10または配列番号11のアミノ酸配列を含むかまたはアミノ酸配列からなるか、または、
(2)配列番号10のアミノ酸配列と96%以上、96.3%以上、97%以上、97.7%以上、98%以上、98.5%以上、99%以上、99.2%以上、99.5%以上、または99.9%以上の相同性(identity)または同一性を有するアミノ酸配列を含むかまたはアミノ酸配列からなるものであってもよい。
【0084】
融合ポリペプチドは、ポリペプチドまたはセクロピンAと比較して、グラム陰性菌に対して優れた抗生物質活性および/または優れた細胞外膜透過(outer membrane permeabilization)活性を有するものであってもよい。融合ポリペプチド、ポリペプチドまたはセクロピンAは、組換えまたは合成的(例えば、化学的合成)に製造されたものであってもよい。
【0085】
本明細書で提供される融合ポリペプチドにおいて、セクロピンAとポリペプチドとは、ペプチドリンカーを通じて連結されるか、ペプチドリンカーなしに直接連結されたものであってもよい。ペプチドリンカーは、1ないし100個、2ないし50個、1ないし30個、2ないし20個、または2ないし10個の任意のアミノ酸からなるポリペプチドであってもよく、その含まれるアミノ酸種類には制限がない。ペプチドリンカーは、例えば、Gly、Ser、Leu、Gln、Asn、ThrおよびAlaからなる群より選択された1種以上のアミノ酸残基をそれぞれ一つ以上含んでもよい。ペプチドリンカーに適したアミノ酸配列は当業界に公知されている。一方、リンカーは、融合蛋白質の構造および/または機能に影響を与えない限度内で、その長さを多様に決定することができる。例えば、ペプチドリンカーは、Gly、Ser、Leu、Gln、Asn、ThrおよびAlaからなる群より選択された1種以上を合計1ないし100個、2ないし50個、1ないし30個、2ないし20個、または2ないし10個を含んで構成されたものであってもよい。一例で、ペプチドリンカーは、GSGSGS(配列番号12)、(G)4~10(例、GGGGGG、GGGGGGGG、など)、(GGGGS)1~5(例、(GGGGS)、など)、(EAAAK)1~5(例、(EAAAK)、(EAAAK)、など)、(EAAAK)(GGGGS)等で表されるものであってもよいが、これに制限されるものではない。
【0086】
他の例は、融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを提供する。
【0087】
ポリヌクレオチドは、配列番号13の核酸配列を含むものであってもよい。
【0088】
他の例は、野生型または変異型ポリペプチド、または融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド(例えば、配列番号3、配列番号12、または配列番号13)を提供する。
【0089】
組換えベクターおよび組換え細胞
他の例は、先に説明した野生型または変異型ポリペプチド(例えば、配列番号2、配列番号6、または配列番号7のアミノ酸配列を含むポリペプチド)または、先に説明した融合ポリペプチド(例えば、配列番号10または配列番号11)をコードするポリヌクレオチドを含む組換えベクターを提供する。組換えベクターは、発現ベクターとして用いることができる。
【0090】
他の例は、野生型または変異型ポリペプチドまたは融合ポリペプチドを適した宿主細胞で発現させるステップを含む、野生型または変異型ポリペプチドまたは融合ポリペプチドの製造方法を提供する。野生型または変異型ポリペプチドまたは融合ポリペプチドを適した宿主細胞で発現させるステップは、ポリヌクレオチドまたはこれを含む組換えベクターを含む組換え細胞を培養することによって行うことができる。
【0091】
エンドリシンの製造方法は、発現させるステップ以降に、発現したエンドリシンを分離および/または精製するステップをさらに含んでもよい。
【0092】
ポリヌクレオチドまたはベクターの宿主細胞への導入は、公知された形質転換方法を当業者が適切に選んで行うことができる。本明細書で、用語「形質転換」は、ポリペプチド(野生型または変異型ポリペプチド、または融合ポリペプチド、以下、同一である。)をコードするポリヌクレオチドを含むベクターを宿主細胞内に導入して、宿主細胞内でポリヌクレオチドがコードするポリペプチドが発現できるようにすることを意味する。形質転換されたポリヌクレオチドは、宿主細胞内で発現しさえすれば、宿主細胞の染色体内に挿入されて位置するかまたは染色体外に位置するかにかかわず、これらをいずれも含んでもよい。ポリヌクレオチドは、宿主細胞内に導入されて発現できるものであれば、その導入される形態には制限がない。例えば、ポリヌクレオチドは自体的に発現するのに必要な全ての要素を含む遺伝子構造体である発現カセット(expression cassette)の形態で宿主細胞に導入されてもよい。発現カセットは、通常ポリヌクレオチドに作動可能に連結されているプロモーター(promoter)、転写終結信号、リボソーム結合部位および/または翻訳終結信号などの発現調節要素を含んでもよい。発現カセットは、自己複製が可能な発現ベクター形態であってもよい。また、ポリヌクレオチドは、その自体の形態で宿主細胞に導入され、宿主細胞で発現に必要な配列と作動可能に連結されているものであってもよい。で用語「作動可能に連結」されたものとは、ポリヌクレオチドの転写調節(例、転写開始)を行うことができるように、発現調節要素(例、プロモーター)とポリヌクレオチドとが機能的に連結されていることを意味することができる。作動可能な連結は、当業界の公知された遺伝子組換え技術を用いて行うことができる。
【0093】
ポリヌクレオチドを宿主細胞に形質転換する方法は、核酸を細胞(微生物)内に導入するいかなる方法でも行うことができ、宿主細胞によって当分野において公知された形質転換技術を適切に選んで行うことができる。公知された形質転換方法として、エレクトロポレーション(electroporation)、リン酸カルシウム(CaPO)沈澱法、塩化カルシウム(CaCl)沈澱法、マイクロインジェクション(microinjection)、ポリエチレングリコール(PEG)沈澱法(polyethylene glycol-mediated uptake)、DEAE-デキストラン法、陽イオンリポソーム法、リポフェクション(lipofection)、酢酸リチウム-DMSO法などが挙げられるが、これに制限されるものではない。
【0094】
本明細書で、用語「ベクター」は、適した宿主内で目的蛋白質を発現できるように適した調節配列に作動可能に連結されたポリヌクレオチドの塩基配列を含有するDNA構造体を意味する。調節配列は、転写を開始できるプロモーター、転写を調節するための任意のオペレーター配列、適したmRNAリボソーム結合部位をコードする配列、および/または転写および/または解読の終結を調節する配列を含んでもよい。ベクターは適した宿主細胞内に形質転換された後、宿主細胞のゲノム(遺伝体)と無関係に発現するか、宿主細胞のゲノム内に統合することができる。
【0095】
本明細書で使用可能なベクターは、宿主細胞内で複製可能なものであれば特に限定されず、通常使用される全てのベクターの中から選択されてもよい。通常使用されるベクターの例としては、天然状態であるか組換えられた状態のプラスミド、コスミド、ウイルス、バクテリオファージなどが挙げられる。例えば、ベクターとして、ファージベクターまたはコスミドベクターとして、pWE15、M13、MBL3、MBL4、IXII、ASHII、APII、t10、t11、Charon4A、およびCharon21Aなどを用いてもよく、プラスミドベクターとして、pBR系、pUC系、pBluescriptII系、pGEM系、pTZ系、pCL系およびpET系などを用いてもよい。具体的には、pDZ、pACYC177、pACYC184、pCL、pECCG117、pUC19、pBR322、pMW118、pCC1BACベクターなどが挙げられるが、これに制限されない。
【0096】
ベクターは、染色体内の挿入有無を確認するための選択マーカー(selection marker)をさらに含んでもよい。選択マーカーは、ベクターに形質転換された細胞を選別、つまり、ポリヌクレオチドの挿入有無を確認するためのものであって、薬物耐性、栄養要求性、細胞毒性剤に対する耐性または表面蛋白質の発現のような選択可能表現型を与える遺伝子の中から選択されて用いられてもよい。選択試薬(selective agent)が処理された環境では、選択マーカーを発現する細胞だけ生存するか他の表現形質を示すので、形質転換された細胞を選別することができる。
【0097】
抗生剤
他の例は、
野生型または変異型ポリペプチド(例えば、配列番号2、配列番号6、または配列番号7)または融合ポリペプチド(例えば、配列番号10または配列番号11)、
野生型または変異型ポリペプチド、または融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
ポリヌクレオチドを含む組換えベクター、および
およびポリヌクレオチドまたは組換えベクターを含む組換え細胞、
からなる群より選択された1種以上を含む、抗生剤を提供する。
【0098】
他の例は、野生型または変異型ポリペプチド、または融合ポリペプチド、
野生型または変異型ポリペプチド、または融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
ポリヌクレオチドを含む組換えベクター、および
およびポリヌクレオチドまたは組換えベクターを含む組換え細胞、
からなる群より選択された1種以上をグラム陰性菌に対する抗生(例えば、グラム陰性菌の成長(または、生長)の阻害(または、抑制)、グラム陰性菌の殺菌、防除など)に用いるための用途を提供する。
【0099】
他の例は、野生型または変異型ポリペプチド、または融合ポリペプチド、
野生型または変異型ポリペプチド、または融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
ポリヌクレオチドを含む組換えベクター、および
およびポリヌクレオチドまたは組換えベクターを含む組換え細胞、
からなる群より選択された1種以上の有効量をグラム陰性菌に対する抗生(または、グラム陰性菌の殺菌、防除など)を必要とする対象に適用(または、投与)するステップを含む、グラム陰性菌の殺菌方法(または、防除方法、成長阻害方法)を提供する。
【0100】
他の例は、野生型または変異型ポリペプチド、または融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
ポリヌクレオチドを含む組換えベクター、および
およびポリヌクレオチドまたは組換えベクターを含む組換え細胞、
からなる群より選択された1種以上を抗生剤製造に用いるための用途を提供する。
【0101】
抗生剤は、グラム陰性菌に対して抗生効果を有するものであってもよい。
【0102】
グラム陰性菌は、シュードモナス属細菌、アシネトバクター属細菌、エスケリキア属細菌、エンテロバクター属細菌、クレブシエラ属細菌などからなる群より選択された1種以上(例えば、1種、2種、3種、4種、または5種)であってもよい。
【0103】
例えば、シュードモナス属細菌は、シュードモナスエルギノーザ(Pseudomonas aeruginosa)であってもよく、アシネトバクター属細菌は、アシネトバクターバウマニ(Acinetobacter baumannii)であってもよく、エスケリキア属細菌は、大腸菌(Escherichia coli)であってもよく、エンテロバクター属細菌は、エンテロバクターアエロゲネス(Enterobacter aerogenes;または、Klebsiella aerogenesとも知られている)またはエンテロバクタークロアカ(Enterobacter cloacae)であってもよく、クレブシエラ属細菌は、クレブシエラニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0104】
一例で、大腸菌は、接着浸潤性大腸菌(または大腸菌AIEC(Adherent-invasive E.coli)菌株)、大腸菌ATCC(American type culture collection)菌株、大腸菌UPEC(Uropathogenic E.coli)菌株、大腸菌CCARM(Culture collection of antimicrobial resistance microbes)菌株、大腸菌FORC81菌株(コリスチン耐性大腸菌)、または大腸菌Clinical菌株であってもよいが、これに制限されるものではない。一例で、大腸菌は、ATCC 8739、ATCC 25922、ATCC 51739、CCARM 1A746、CCARM 1G490、F485、F524、F576、F716、F852、FORC81、UPEC90、UPEC3038、UPEC3042、UPEC3051、UPEC 3150、UPEC3151、UPEC3163、UPEC3164、UPEC3168、UPEC3181、ECOR1、ECOR2、ECOR9、ECOR15、ECOR35、ECOR36、ECOR43、ECOR45、ECOR52、およびECOR69等からなる群より選択された1種以上であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0105】
一例で、アシネトバクターバウマニ(Acinetobacter baumannii)は、ATCC 19606、ATCC 17978、CCARM 12001、F4、F65、F66、およびF67等からなる群より選択された1種以上であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0106】
一例で、シュードモナスエルギノーザ(Pseudomonas aeruginosa)は、PA01、ATCC 15522、F102、F125、F141、F171、およびF388等からなる群より選択された1種以上であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0107】
一例で、エンテロバクターアエロゲネス(Enterobacter aerogenes;または、Klebsiella aerogenesとも知られている)は、CCARM 16006、CCARM 16008、CCARM 16010、およびF276等からなる群より選択された1種以上であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0108】
一例で、エンテロバクタークロアカ(Enterobacter cloacae)は、ATCC 13047、CCARM 0252、およびCCARM 16003等からなる群より選択された1種以上であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0109】
本明細書で提供される抗生剤は、先に説明した野生型または変異型ポリペプチド(例えば、配列番号2、配列番号6、または配列番号7)または融合ポリペプチド(例えば、配列番号10または配列番号11)、野生型または変異型ポリペプチドまたは融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、ポリヌクレオチドを含む組換えベクター、およびポリヌクレオチドまたは組換えベクターを含む組換え細胞からなる群より選択された1種以上(以下、第1抗生剤)に加え、他の抗生剤(第2抗生剤)をさらに含むものであってもよい。
【0110】
第2抗生剤は、通常使用される抗生剤、例えば、グラム陰性菌に対して抗生物質活性を有する抗生剤の中から選択された1種以上であってもよい。一例で、第2抗生剤は、ポリミキシン(polymyxin)系抗生剤、セフタジジム(セフタジジム)、メロペネム(meropenem)、カナマイシン(カナマイシン)、チゲサイクリン(tigecycline)、クロラムフェニコール(chloramphenicol)、アジスロマイシン(azithromycin)、シプロフロキサシン(ciprofloxacin)、またはこれらから選択された1種以上の組み合わせであってもよいが、これに制限されるものではない。
【0111】
一例で、第2抗生剤は、ポリミキシン(polymyxin)系抗生剤であってもよく、例えば、ポリミキシンB(polymyxin B)、コリスチン(コリスチン)、またはその組み合わせであってもよいが、これに制限されるものではない。
【0112】
このように、抗生剤(第1抗生剤)を他の抗生剤(第2抗生剤)と共に併用することによって、第1抗生剤自体の抗生効果による上昇効果および低い濃度の第2抗生剤としても優れた抗生効果を発揮できるようにする利点を有する。これによって、高濃度の抗生剤使用による毒性(例えば、腎臓毒性、肝臓毒性など)等の副作用を減少させることができる。また、他の機序の抗生剤併用による抗生剤耐性菌の出現を抑制することができる。
【0113】
よって、一例は、
野生型または変異型ポリペプチド(例えば、配列番号2、配列番号6、または配列番号7)または融合ポリペプチド(例えば、配列番号10または配列番号11)、野生型または変異型ポリペプチドまたは融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、ポリヌクレオチドを含む組換えベクター、およびポリヌクレオチドまたは組換えベクターを含む組換え細胞からなる群より選択された1種以上(以下、第1抗生剤);および
(b)第2抗生剤
を含む併用抗生剤を提供する。
【0114】
本明細書で、用語「抗生剤」は、グラム陰性菌に対して成長阻害能および/または死滅能を有する全ての形態の製剤を包括するものであって、特別な言及がない限り、抗菌剤、防腐剤、殺菌剤などと互換的に使用することができる。
【0115】
一例で、第1抗生剤および第2抗生剤が組合わせて用いられる場合の組合比は、第2抗生剤の濃度(μg/ml)を1にするとき、第1抗生剤を0.01ないし1024μg/ml、0.01ないし512μg/ml、0.01ないし128μg/ml、0.01ないし16μg/ml、0.01ないし1μg/ml、0.03125ないし1024μg/ml、0.03125ないし512μg/ml、0.03125ないし128μg/ml、0.03125ないし16μg/ml、0.03125ないし1μg/ml、0.5ないし1024μg/ml、0.5ないし512μg/ml、0.5ないし128μg/ml、0.5ないし16μg/ml、0.5ないし1μg/ml、1ないし1024μg/ml、1ないし512μg/ml、1ないし256μg/ml、1ないし128μg/、1ないし64μg/ml、1ないし32μg/ml、1ないし16μg/ml、1ないし8μg/ml、1ないし4μg/ml、1ないし2μg/ml、2ないし1024μg/ml、2ないし512μg/ml、2ないし256μg/ml、2ないし128μg/ml、2ないし64μg/ml、2ないし32μg/ml、2ないし16μg/ml、2ないし8μg/ml、2ないし4μg/ml、4ないし1024μg/ml、4ないし512μg/ml、4ないし256μg/ml、4ないし128μg/ml、4ないし64μg/ml、4ないし32μg/ml、4ないし16μg/ml、4ないし8μg/ml、8ないし1024μg/ml、8ないし512μg/ml、8ないし256μg/ml、8ないし128μg/ml、ないし64μg/ml、8ないし32μg/ml、8ないし16μg/ml、16ないし1024μg/ml、16ないし512μg/ml、16ないし256μg/ml、16ないし128μg/ml、16ないし64μg/ml、16ないし32μg/ml、32ないし1024μg/ml、32ないし512μg/ml、32ないし256μg/ml、32ないし128μg/ml、32ないし64μg/ml、64ないし1024μg/ml、64ないし512μg/ml、64ないし256μg/ml、64ないし128μg/ml、128ないし1024μg/ml、128ないし512μg/ml、128ないし256μg/ml、256ないし1024μg/ml、256ないし512μg/ml、または512ないし1024μg/mlの比率で組み合わせて用いてもよいが、これに制限されるものではない。
【0116】
医薬組成物
他の例は、野生型または変異型ポリペプチド(例えば、配列番号2、配列番号6、または配列番号7)または融合ポリペプチド(例えば、配列番号10または配列番号11)、
野生型または変異型ポリペプチド、または融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
ポリヌクレオチドを含む組換えベクター、および
およびポリヌクレオチドまたは組換えベクターを含む組換え細胞、
からなる群より選択された1種以上を含む、
グラム陰性菌の感染またはグラム陰性菌によって誘発される病気の予防および/または治療用医薬組成物を提供する。
【0117】
他の例は、野生型または変異型ポリペプチド、または融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
ポリヌクレオチドを含む組換えベクター、および
およびポリヌクレオチドまたは組換えベクターを含む組換え細胞、
からなる群より選択された1種以上をグラム陰性菌の感染またはグラム陰性菌によって誘発される病気の予防および/または治療に用いるための用途を提供する。
【0118】
他の例は、野生型または変異型ポリペプチド、または融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
ポリヌクレオチドを含む組換えベクター、および
およびポリヌクレオチドまたは組換えベクターを含む組換え細胞、
からなる群より選択された1種以上をグラム陰性菌の感染またはグラム陰性菌によって誘発される病気の予防および/または治療用組成物の製造に用いるための用途を提供する。
【0119】
他の例は、抗生剤または併用抗生剤を有効性分として含む、グラム陰性菌の感染またはグラム陰性菌によって誘発される病気の予防および/または治療用医薬組成物を提供する。
【0120】
他の例は、抗生剤または併用抗生剤の薬学的有効量をグラム陰性菌の感染またはグラム陰性菌によって誘発される病気の予防および/または治療を必要とする対象に投与するステップを含む、グラム陰性菌の感染またはグラム陰性菌によって誘発される病気の予防または治療方法を提供する。予防または治療方法は、投与するステップ以前に、グラム陰性菌の感染またはグラム陰性菌によって誘発される病気の予防または治療を必要とする対象を確認するステップをさらに含んでもよい。グラム陰性菌は前述の通りである。
【0121】
グラム陰性菌によって誘発される病気は、グラム陰性菌の感染が原因になる全ての病気の中から選択されてもよく、例えば、皮膚感染、床擦れ、肺炎、菌血症、敗血症、心内膜炎、髄膜炎、外耳炎、中耳炎、角膜炎、骨髄炎、腸炎、腹膜炎、嚢胞性線維症などのようなシュードモナス属細菌によって誘発される病気;皮膚感染、肺炎、菌血症、敗血症などのようなアシネトバクター属細菌によって誘発される病気;腸炎、クローン病、潰瘍性大膓炎、細菌性赤痢、尿道感染症、皮膚感染、菌血症、敗血症などのようなエスケリキア属細菌によって誘発される病気などからなる群より選択されてもよいが、これに制限されるものではない。
【0122】
本明細書で用いられているように、薬学的有効量は、所望する効果が得られる有効成分の含有量または投与量を意味する。医薬組成物内の有効成分の含有量または投与量は、製剤化方法、投与方式、患者の年令、体重、性別、病的状態、食べ物、投与時間、投与間隔、投与経路、排泄速度および反応感応性のような要因によって多様に処方することができる。例えば、有効成分がポリペプチドの場合、1回投与量は、0.001ないし1000mg/kg、0.01ないし100mg/kg、0.01ないし50mg/kg、0.01ないし20mg/kg、0.01ないし10mg/kg、0.01ないし5mg/kg、0.1ないし100mg/kg、0.1ないし50mg/kg、0.1ないし20mg/kg、0.1ないし10mg/kg、0.1ないし5mg/kg、1ないし100mg/kg、1ないし50mg/kg、1ないし20mg/kg、1ないし10mg/kg、または1ないし5mg/kg範囲であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0123】
他の例で、薬学組成内の耐有効成分の含有量は、全体医薬組成物重量を基準に、0.01重量%ないし99.9重量%、0.01重量%ないし90重量%、0.01重量%ないし80重量%、0.01重量%ないし70重量%、0.01重量%ないし60重量%、0.01重量%ないし50重量%、0.01重量%ないし40重量%、0.01重量%ないし30重量%、1重量%ないし99.9重量%、1重量%ないし90重量%、1重量%ないし80重量%、1重量%ないし70重量%、1重量%ないし60重量%、1重量%ないし50重量%、1重量%ないし40重量%、1重量%ないし30重量%、5重量%ないし99.9重量%、5重量%ないし90重量%、5重量%ないし80重量%、5重量%ないし70重量%、5重量%ないし60重量%、5重量%ないし50重量%、5重量%40重量%、5重量%ないし30重量%、10重量%ないし99.9重量%、10重量%ないし90重量%、10重量%ないし80重量%、10重量%ないし70重量%、10重量%ないし60重量%、10重量%ないし50重量%、10重量%ないし40重量%、または10重量%ないし30重量%であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0124】
また、医薬組成物は、有効成分以外に、薬学的に許容可能な担体をさらに含んでもよい。薬学的に許容可能な担体は、蛋白質、核酸、または細胞を含む薬物の製剤化に通常用いられるものであって、生物体を刺激せず有効成分の生物学的活性および/または特性を阻害しない担体を意味することができる。一例で、担体は、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アカシアゴム、リン酸カルシウム、アルギネート、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微細結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、メチルセルロース、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ミネラルオイルなどからなる群より選択された1種以上であってもよいが、これに限定されるのではない。医薬組成物はまた、医薬組成物の製造に通常用いられる希釈剤、賦形剤、潤滑剤、湿潤剤、甘味剤、香味剤、乳化剤、懸濁剤、保存剤などからなる群より選択された1種以上をさらに含んでもよい。
【0125】
医薬組成物の投与対象は、ヒト、猿などの霊長類、マウス、ラットなどの齧歯類、犬、猫、豚、牛、馬、羊、ヤギ、などの家畜類、鶏、鴨、ガチョウ、キジ、ウズラ、七面鳥などの家禽類などを含む哺乳類から選択された1種以上、またはこれらに由来の細胞、組織、またはこれらの培養物であってもよい。
【0126】
医薬組成物は、経口投与または非経口的投与によって投与されるか、細胞、組織、または体液に接触させることによって投与されるものであってもよい。具体的に、非経口投与である場合には、皮下注入、筋肉注入、静脈内注入、腹腔注入、内皮投与、局所投与、鼻内投与、肺内投与および直腸内投与などで投与することができる。経口投与時に、蛋白質またはペプチドは消化されるため、経口用組成物は活性薬剤をコーティングするか、胃での分解から保護されるように剤形化しれなければならない。鼻内投与時に、医薬組成物を希釈して噴霧器や噴霧システムを通じて鼻腔から吸収されるようにする鼻腔噴霧を通じて投与することができ、鼻腔噴霧のための鼻腔噴霧剤または呼吸器用剤形にはエアゾール剤などが挙げられる。
【0127】
また、医薬組成物は、オイルまたは水性媒質中の溶液、注射剤、懸濁液、シロップ剤、乳化液形態、塗布剤、パッチ、エキス剤、散剤、粉末剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、エアゾール剤などの形態に剤形化してもよく、剤形化のために分散剤または安定化剤をさらに含んでもよい。
【0128】
他の例は、野生型または変異型ポリペプチド(例えば、配列番号2、配列番号6、または配列番号7)または融合ポリペプチド(例えば、配列番号10または配列番号11)、
野生型または変異型ポリペプチド、または融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
ポリヌクレオチドを含む組換えベクター、および
およびポリヌクレオチドまたは組換えベクターを含む組換え細胞、
からなる群より選択された1種以上を含む、
飼料添加剤を提供する。
【0129】
他の例は、抗生剤または併用抗生剤を有効性分として含む、飼料添加剤を提供する。
【0130】
他の例は、飼料添加用組成物を含む飼料を提供する。
【0131】
飼料は、抗生剤または併用抗生剤を飼料添加剤形態に別途に製造して飼料に混合するか、飼料製造時に直接添加して製造することができる。
【0132】
飼料内の抗生剤または併用抗生剤は、液状または乾燥状態であってもよく、例えば、乾燥された粉末形態であってもよい。抗生剤は、全体飼料重量の0.005ないし10重量%、0.05ないし10重量%、0.1ないし10重量%、0.005ないし5重量%、0.05ないし5重量%、0.1ないし5重量%、0.005ないし2重量%、0.05ないし2重量%、または0.1ないし2重量%の量で含まれてもよいが、これに制限されるものではない。また、飼料は、抗生剤または併用抗生剤以外に飼料の保存性を高めることができる通常の添加剤をさらに含んでもよい。
【0133】
本明細書で、抗生剤または併用抗生剤が添加できる飼料は、市販の飼料、または穀物類、根果類、食品加工副産物類、藻類、繊維質類、製薬副産物類、油脂類、デンプン類、ヒョウタン類、穀物副産物類、蛋白質類、無機物類、油脂類、鉱物性類、単細胞蛋白質、動物性プランクトン類、残った飲食物などからなる群より選択されてもよいが、これに制限されるものではない。
【0134】
他の例は、抗生剤または併用抗生剤を有効性分として含む食品添加剤または飲用水添加剤を提供する。抗生剤または併用抗生剤を飲用水に混合して供給することによって、飲用水内のグラム陰性菌の数字を減少させることができる。グラム陰性菌は、前述の通りである。
【0135】
他の例は、野生型または変異型ポリペプチド(例えば、配列番号2、配列番号6、または配列番号7)または融合ポリペプチド(例えば、配列番号10または配列番号11)、
野生型または変異型ポリペプチド、または融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
ポリヌクレオチドを含む組換えベクター、および
およびポリヌクレオチドまたは組換えベクターを含む組換え細胞、
からなる群より選択された1種以上を含む、
消毒剤を提供する。
【0136】
他の例は、抗生剤または併用抗生剤を有効性分として含む、消毒剤を提供する。
【0137】
他の例は、抗生剤または併用抗生剤を消毒が必要な対象に適用するステップを含む、消毒方法を提供する。消毒剤は、病原菌感染を防止するために製剤を総称するものであって、一般生活消毒剤、食品および調理場所および設備の消毒剤、養鶏場、畜舎などの建物、畜体、飲水、敷き藁、卵座、運搬車量、食器などの各種生育用品の消毒などに用いられてもよい。
【0138】
他の例は、抗生剤または併用抗生剤を有効性分として含む洗浄剤を提供する。他の例は、抗生剤または併用抗生剤を洗浄が必要な対象に適用するステップを含む、洗浄方法を提供する。抗生剤が、グラム陰性菌に対して抗生効果を有するので、グラム陰性菌に露出されるか露出される可能性がある個体の皮膚表面または身体の各部位などを洗浄する用途に適用することができる。グラム陰性菌は、前述の通りである。
【実施例
【0139】
以下、実施例を通じて本発明を詳細に説明する。
【0140】
下記の実施例は、単に本発明を例示するためのものであって、本発明を制限するものと解釈されない。
【0141】
材料および方法
製造例1.バクテリオファージEC340-M-11-12の分離およびEC340エンドリシンの精製
1.1.菌株の培養条件
大腸菌(ATCC 8739)を宿主として用いており、LB(Luria-Bertani)培地で37℃条件で振盪培養した。
【0142】
1.2.バクテリオファージの分離
大腸菌に感染するバクテリオファージを選別するために、大韓民国京畿道果川市の果川下水処理場でサンプルを採取した。採取したサンプルと大腸菌を37℃で3時間振盪培養した後、500rpmで20分間遠心分離して上澄み液を回収した。次いで、上澄み液を0.45μmフィルターでろ過した後、二重寒天層プラーク分析法(double agar layer plaque assay)を行った。
【0143】
分析法を簡略に説明すると、上層(top)アガー5mlに宿主バクテリア大腸菌とバクテリオファージの培養液を0.1M.O.I.で混合して寒天プレートに注ぎ、37℃で24時間培養し、プラークを得た。過程を繰り返し行うことによって精製された純粋なバクテリオファージを確保することができ、このバクテリオファージを、バクテリオファージEC340-M-11-12と命名した。
【0144】
1.3.バクテリオファージEC340-M-11-12のゲノム分離および分析
製造例1.2.で確保されたバクテリオファージEC340-M-11-12のゲノムに対する配列分析を実施した。200mlのLB培地に大腸菌をOD600=0.5まで培養した後、ここにろ過したバクテリオファージ10pfu/mlまたは0.1 M.O.I.に感染させて溶菌した。以降、ここに塩化ナトリウムを最終濃度1Mになるように追加した後、4℃で1時間放置した。次いで、11,000×gで10分間遠心分離した後、沈殿物にPEG(ポリエチレングリコール8000)を10%(w/v)に入れ、4℃で1時間放置した。次いで、11,000×gで10分間遠心分離した後、上澄み液を除去し、沈殿物をSM緩衝液[100mMのNaCl、10mMのMgSO(七水和物)、50mMのTris-HCl、pH7.5]で懸濁した。ここにクロロホルムを1:1の比率で入れてボルテックスした後、3,000×gで15分間遠心分離して上澄み液を得た。
【0145】
ポリカーボネート試験管に40%(w/v)グリセロール3mlを入れ、次いで5%(w/v)グリセロール4mlを混ざらないように入れた。ここに用意した上澄み液を入れ、4℃で11,000×gで1時間遠心分離した。次いで、上澄み液を除去した後、沈殿物をSM緩衝液で再懸濁してバクテリオファージゲノムDNAを得た。バクテリオファージゲノムDNAは、phage DNA isolation kit(Norgen biotek corp.)を製造会社マニュアルに従って用いて分離した。のように分離されたゲノム試料を用いてゲノムに対する塩基配列を分析した(L.A.S、Illumina MiSeq platform)。
【0146】
最終的に分析されたバクテリオファージEC340-M-11-12ゲノムは、全体核酸配列長さが42、751bpである。バクテリオファージEC340-M-11-12ゲノムの全長核酸配列を配列番号1に示した。ゲノム核酸配列情報に基づいてWeb上のBLASTを用いて既に知られたバクテリオファージゲノム配列との類似性(Similarity)を調査した。BLAST調査結果、バクテリオファージEC340-M-11-12のゲノム配列は、エスケリキアバクテリオファージvB_EcoS-Golestan(GenBank accession No.:NC_042084.1)とquery coverage:80%、identity:93.45%の配列相同性を有するものと確認された。このような事実に基づいてバクテリオファージEC340-M-11-12は、既に知らされない新たなバクテリオファージであることを確認した。
【0147】
1.4.EC340Mエンドリシンのクローニングおよび精製
分析されたバクテリオファージEC340-M-11-12のゲノム配列(配列番号1)に対するORF searchを通じて、489bp(配列番号3)のORFがエンドリシン遺伝子であるものと推定して、バクテリオファージEC340-M-11-12由来のエンドリシンおよびこれをコードする遺伝子をそれぞれEC340エンドリシンおよびEC340遺伝子と命名した。
【0148】
プライマー(F:5'-AAGGATCCGTGTCTCGAAACATタグCAACAATGGC-3’(配列番号4)、R:5’-AACTCGAGACCTTTCACCGCGCGCC-3'(配列番号5))を用いて、バクテリオファージEC340-M-11-12のゲノムに対してPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)を行って、EC340遺伝子(配列番号1内の489bpの長さの核酸配列)を得た。EC340遺伝子によって暗号化されるEC340エンドリシンのアミノ酸配列を配列番号2(162aa)に示した。PCRは、次の条件で行った:ステップ1:94℃、5分; ステップ2:94℃、30秒; ステップ3:52℃、45秒; ステップ4:72℃、1分; ステップ5:ステップ2~4を30回繰り返し; ステップ6:72℃、10分。得られたPCR産物をN末端 6XHis-タグを有するpET-21aベクター(Novagen)のBamHI/XhoI部位にクローニングして、EC340エンドリシン発現のための発現ベクター(pET-EC340プラスミド)を用意した。用意された発現ベクターpET-EC340を、図1に模式的に示した。
【0149】
用意されたpET-EC340 plasmidを大腸菌BL21-pLysS株(Novagen)に形質転換した後、液体LB培地(1%のトリプトン、0.5%(w/v)酵母エキス、0.5%(w/v)NaCl)で、OD600=0.5まで培養した。その後、1mMのIPTG(イソプロピルβ-d-1-チオガラクトピラノシド)を添加した後、37℃で4時間振盪培養した。細胞を回収後、溶解バッファー(50mMのNaHPO、300mMのNaCl、10mMのイミダゾール)で再懸濁し、1mのMPMSFおよび1mg/mlのリゾチームを入れ、氷で30分間静置した。超音波で細胞を溶解し、13,000rpmで40分遠心分離して上澄み液を得た。これをNi-NTAアガロースレジン(Qiagen)がパックされたカラムに通過させた。その後、洗浄バッファー(50mMのNaHPO、300mMのNaCl、30mMのイミダゾール)で洗浄した後、溶出バッファー(50mMのNaHPO、300mMのNaCl、300mMのイミダゾール)で溶出して、EC340蛋白質(6xHisタグを含む)を精製した。
【0150】
15%のSDS-PAGEでEC340蛋白質の純度を確認し、BradfordアッセイでEC340蛋白質の濃度を測定した。精製過程中に得られたそれぞれの反応物をSDS-PAGEを通じて確認した結果を図2に示した。SDS-PAGEを通じて確認した精製したEC340蛋白質の分子量は、約19kDaであった。
【0151】
製造例2.バクテリア菌株および培養条件
本研究に用いられた菌株は、American Type Culture Collection(ATCC、USA)、Korean Collection for Type Cultures(KCTC、Korea)およびCulture Collection of Antimicrobial Resistant Microbes(CCRM、Korea)から入手した。F菌株と尿路病原性(uropathogenic)大腸菌(UPEC)菌株は臨床的に分離しており、ゴ・グァンス(成均館大学校医科大学)教授から提供された。付着性侵襲性大腸菌(Adherent invasive E.coli(AIEC))収集(ECOR)菌株は、Christel Neut教授から提供された(Rahmouni et al.、2018)。MCR-1陽性E.coli FORC81菌株は、リュ・サンリョル教授(ソウル大学校)から提供された(Kim et al.、2019)。この作業に用いられた全ての菌株は、LB(lysogeny broth)またはCAA培地(5g/lのカザミノ酸、5.2mMのKHPOおよび1mMのMgSO)で37℃で成長させた。
【0152】
製造例3.バクテリオファージおよびエンドリシン
下記の実施例で用いたバクテリオファージPBEC131は、製造例1で得たものと同一である。
【0153】
推定エンドリシンを発現する遺伝子(配列番号3)は、バクテリオファージPBEC131から得ており、推定リゾチーム様スーパーファミリードメイン(putative lysozyme-like superfamily domain)は、BLASTpを通じて発見された。
【0154】
製造例4.分子クローニング
BamHIおよびXhoI制限部位を用いてバクテリオファージPBEC131の推定エンドリシンをコードする遺伝子(配列番号3)をpET21a+(Novagen、USA)にクローニングし、EC340遺伝子と命名した。EC340ポリペプチドは、配列番号2のアミノ酸配列で表される。
【0155】
変異EC340(mtEC340;配列番号6)は、配列番号2のアミノ酸配列で7個のアミノ酸を代替して生成された(図4a;H39S、D43H、T45E、A73V、A81S、T101A、およびI113V)。
【0156】
LNT113(配列番号10)は、抗菌性ペプチドセクロピンA(NCBI PRF 0708214A;配列番号8)を変異EC340(mtEC340;配列番号6)のN-末端に(GGGGS)リンカーと融合して構築した。(つまり、下記の実施例で、セクロピンAおよび変異型ポリペプチド(mtEC340)を含む融合ポリペプチドをLNT113と命名した。)
【0157】
本出願の実施例で用いた全ての構成物には、親和性精製のためのC-末端ヘキサ-ヒスチジンタグ(HHHHHH)を有する。また、強化緑色蛍光蛋白質(EGFP;GenBank accession no.AAB02576.1)をコードする遺伝子を、pET21a+ベクターに5'末端にセクロピンセクロピンA(CecA)をコードする遺伝子と共にクローニングした。
【0158】
用いられた配列:
His(6H)タグがある組換えmtEC340[メチオニン(Met)+mtEC340(配列番号6)+Hisタグ(HHHHHH)](配列番号7)
MVSRNISNNGIKFTAAFEGFRGTAYRATPNEKYLTIGYGSYGPHVEPGKTITPGQGLLLLNRDMAKAVAAVDAVAHHSLTQSQFDAVCDLVYNAGAGVIAAATGTGKALRSGDVATLRAKLALFINQNGKPLLGLRRRタグRLALFDGKPWQEAEAIGRAVKGLEHHHHHH(配列番号7)
組換え融合蛋白質LNT113[メチオニン(Met)+セクロピンA+GGGGSx3 linker+mtEC340+His タグ(HHHHHH)](配列番号11)
MKWKLFKKIEKVGQNIRDGIIKAGPAVAVVGQATQIAKGGGGSGGGGSGGGGSVSRNISNNGIKFTAAFEGFRGTAYRATPNEKYLTIGYGSYGPHVEPGKTITPGQGLLLLNRDMAKAVAAVDAVAHHSLTQSQFDAVCDLVYNAGAGVIAAATGTGKALRSGDVATLRAKLALFINQNGKPLLGLRRRタグRLALFDGKPWQEAEAIGRAVKGLEHHHHHH(配列番号11)
【0159】
製造例5.組換え蛋白質の精製
蛋白質発現のために、E.coli BL21(DE3)Star(Invitrogen、USA)にエンドリシン発現ベクターを導入した。セクロピンA(CecA)融合EGFPをインコードする遺伝子を保有するプラスミドを発現のために、E.coli BL21(DE3) pLysS(Novagen)に導入した。細胞をLBブロスで指数期(OD600=0.4~0.5)まで成長させた後、イソプロピルβ-D-1-チオガラクトピラノシド(IPTG;Duchefa、The Netherlands)で25℃で5時間0.5mM濃度で誘導した。バクテリア細胞を遠心分離によって採取し、ペレットをリン酸緩衝食塩水(PBS)で洗浄した。細胞を溶解緩衝液(20mMのTris-HCl、pH7.5、300mMのNaClおよび20mMのイミダゾール)で再懸濁し、5分間超音波処理(Sonics、USA)で破壊した。細胞溶解物から30分間15,000×gで遠心分離して上澄み液を得た。抽出物をFPLC(AKTA go、Cytiva、UK)を用いてNi-NTA親和性クロマトグラフィーコラムにローディングした。20ないし500mMのイミダゾールの線状勾配を用いて蛋白質を溶離した。その後、蛋白質を陽イオン交換クロマトグラフィーのために、HiTrap SP HPコラム(Cytiva)にローディングし、20mMのTris-HCl、pH7.5で、0ないし1MのNaClの線状勾配で溶離した。その後、蛋白質を保存緩衝液(20mMのTris-HCl、pH7.5、150mMのNaCl緩衝液(pH7.5))で透析した。
【0160】
製造例6.ザイモグラム分析(Zymogram Assay)
ザイモグラム分析は、以前に説明された方法を一部修正して行った(Khakhum et al.、2016)。つまり、一晩E.coli ATCC 8739の培養物を採取し、リン酸緩衝食塩水(PBS)で一度洗浄した後、4,000×gで15分間遠心分離して採取した。その後、ペレットを3mlの脱イオン水で再懸濁させた。細胞をオートクレーブし、重合前に15%のSDS-PAGEゲルに添加した。その後、3μgの精製されたエンドリシン(EC340、mtEC340または、LNT113)を2xサンプルバッファー(0.5mMのTris-HCl、pH6.8、20%のグリセロール、0.2%のブロモフェノールブルー)と混合してSDS-PAGEにロードした。電気泳動後、ゲルを1時間脱イオン水で洗浄し、反応緩衝液(1%のTriton X-100、20mMのTris-HCl、pH7.5)で室温でインキュベーションした。エンドリシンの酵素活性は、E.coli溶解物を含有するゲルの透明な領域で観察された。
【0161】
製造例7.抗菌活性分析
精製された蛋白質の抗菌活性は、E.coliおよび色々なK.pneumoniae菌株についてテストされた。細菌を指数期(OD600=0.5)まで成長させ、12,000×gで3分間遠心分離して採取した。その後、ペレットを反応緩衝液(20mMのTris-HCl、pH7.5)で洗浄し、緩衝液で約10cells/mlに希釈した。次いで、100μlの細菌懸濁液を反応緩衝液に100μlの精製されたエンドリシンと混合し、37℃で2時間インキュベーションした。最後に、混合物をPBSで希釈し、LBプレートにローディングした。37℃で一晩培養した後、細菌コロニーを計数した。全ての分析は、三重に行われた。
【0162】
同一の反応を20mMのHEPES-NaOH、150mMのNaCl[pH7.4]から選択された対象細菌に対して行い、Trisの可能な固有抗菌活性とturgor圧力に対するエンドリシンの依存性を排除した(図10aおよび図10b)。図10は、E.coli ATCC 8739(A)(図10a)およびK.pneumoniae KCTC 2208(B)(図10b)に対するエンドリシンの抗菌活性に対するNaClの効果を示す。幾何級数的に成長した細菌細胞を37℃で2時間、低等張性バッファー(low tonicity buffers)(20mMのTris-HCl、pH7.5または20mMのHEPES、pH7.5)または高等張性バッファー(high tonicity buffers)(150mMのNaClが含まれた緩衝液)で2μMのエンドリシンと共に培養した。保存緩衝液(20mMのTris-HCl、pH7.5、150mMのNaCl緩衝液(pH7.5))で処理された細胞は、陰性対照群として用いられた。点線は、検出限界(1Log CFU/ml)を示す。
【0163】
製造例8.1-N-フェニルナフチルアミン(NPN)吸収分析
NPN吸収分析は、以前に説明した方法で行われた(Helander and Mattila-Sandholm、2000)。つまり、指数期(OD600=0.4)まで成長したE.coli ATCC 8739を洗浄し、緩衝液(5mMのHEPES、pH7.2)に約10cells/mlで再懸濁させた。40μMのNPN(Sigma-Aldrich)50μlを96ウェルブラックプレートで最終濃度2μMになるように精製されたエンドリシンまたはセクロピンA(AbClon、韓国)50μlと混合した。外膜透過剤、1mMのEDTA(Duchefa)および2μMのPolymyxin B(Sigma-Aldrich)を陽性対照群として用いた。その後、各ウェルに細胞懸濁液100μlを添加して37℃で5分間培養した。緩衝液単独、緩衝液+NPN、細菌懸濁液+緩衝液および細菌懸濁液+緩衝液+NPNを陰性対照群として用いた。蛍光は、マイクロプレートリーダー(SpectraMax iD3、Molecular Devices、USA)を用いて励起(350nm)および放出(420nm)で測定された。NPN吸収因子は、バックグラウンドの除去後に蛍光値(サンプルがある細胞混合物の蛍光値からNPNがない値を減算した値)を、NPNがないバッファーの蛍光値から減算したバッファーがある細胞懸濁液の蛍光値で除算して計算した。
【0164】
製造例9.溶血分析
試験管内の溶血活性試験に羊の赤血球(Sheep RBC)を用いた。1mlの赤血球(MB Cell、Korea)を9mlのPBSで希釈した。その後、180μlのRBC溶液を20μlのLNT113(最終濃度、2~128μg/ml)、PBS(陰性対照群)または0.1%のTriton X-100(陽性対照群)に添加して37℃で30分間培養した。混合物を500×gで5分間遠心分離し、上澄み液を96-ウェルマイクロプレートに移した。吸光度は570nmで測定された。溶血率は、下記の数式1を用いて計算された。
【0165】
【数1】
【0166】
製造例10.試験管内細胞毒性分析
ヒト肝細胞癌腫細胞株Huh7(韓国細胞株バンクから入手した)をLNT113の細胞毒性分析に用いた。まず、1x10 Huh7細胞を96-ウェルプレートに接種した。24時間後、LNT113(最終濃度、125または250μg/ml)、1%のTriton X-100(陽性対照群)またはPBS(陰性対照群)を細胞に添加して、24時間または48時間培養した。その後、WST-8 Cell Viability Assay Kit(Dyne Bio、Korea)のテトラゾリウム塩溶液10μlを各ウェルに添加した。5%のCO培養器で37℃、1時間培養後、450nmでホルマザンの生成を測定した。
【0167】
製造例11.最小抑制濃度(MIC)および最小殺菌濃度(MBC)の測定
LNT113または抗生剤のMICは、以前に説明された方法(Heselpoth et al.、2019)に従って、96ウェル・丸底・マイクロプレートでブロス微量稀釈方法の修正を用いて決定された。幾何級数的に成長した細胞を、CAA培地に10CFU/mlの濃度に希釈した後、組換えLNT113(1-64μg/ml)または抗生剤と共に35℃で20時間培養した。MIC値は、バクテリア成長を完全に抑制する最も低い抗菌濃度として決定された。MBCは、LB寒天にMICテストプレートの各ウェルで混合物10μlをスポッティングして決定した。MBCは、プレートで成長がない最も低い抗菌剤の濃度と定義された。全ての分析は、二重に行われた。
【0168】
製造例12.チェッカーボードアッセイ(Checkerboard Assay)
以前に説明した通り、連続稀釈方法を用いてチェッカーボードアッセイ(Checkerboard Assay)を行った(Thummeepak et al.、2016)。LNT113は、垂直に2倍希釈されており、抗生剤は、96ウェルマイクロプレートで水平に連続希釈された。各ウェルにCAA培地で10CFU/ml濃度のバクテリアを添加した。35℃で20時間インキュベーションした後、成長しない細胞に対してMICを目視で確認した。LNT113または抗生剤に対する部分抑制濃度(FIC)は、二つの薬物のMICを各薬物単独のMICと組み合わせて除算して計算した。二つの薬物の相互作用を確認するために、各薬物のFICを加算したFIC指数(FICI)を用いた。FICIは、相乗効果(synergitic effect)≦0.5、相加効果(additive)>0.5~≦1、インディペンデント効果(indifference)>1.0~≦2、拮抗効果(antagonism)>2と見なした。
【0169】
製造例13.統計分析
全ての統計分析には、Prismバージョン9(GraphPadソフトウェア)が用いられた。試験管内の研究の場合、全ての実験は3重に行われており、結果は平均±平均の標準誤差(SEM)で提供された。Tukeyの多重比較テストがある二元配置Anovaを用いて各データセット間の差異点を比較した。
【0170】
実験結果
実施例1.エンドリシンEC340のグラム陰性菌に対する死滅能の調査
本実施例では、エンドリシンEC340のアシネトバクターバウマニ(ATCC 19606)、シュードモナスエルギノーザ(ATCC 13388)および大腸菌(ATCC 8739)を対象に抗菌活性を確認するためにバクテリア死滅能を試験した。
【0171】
In vitro試験
このために、2μM濃度のエンドリシンEC340とそれぞれの試験菌を反応バッファー(20mMのTris-Cl、pH7.5)に最終体積が200μlになるように入れ、37℃で2時間静置した。2時間後、アシネトバクターバウマニ、シュードモナスエルギノーザおよび大腸菌のコロニー数を確認し、その結果を図3に示した。図3に示されているように、エンドリシンEC340は、アシネトバクターバウマニ、シュードモナスエルギノーザおよび大腸菌これに対する死滅能を有することを確認した。
【0172】
実施例2.バクテリオファージPBEC131由来のエンドリシンおよびその変形
バクテリオファージPBEC131の162個のアミノ酸で構成されたORFは推定エンドリシンであって注釈が付けられている。EC340(配列番号2) と命名されたこのエンドリシンには、ファージ関連リゾチーム(ムラミダーゼ)ドメイン(pfam00959)を有する(図4a)。この遺伝子を発現ベクターにクローニングして発現させ、精製されたエンドリシンでザイモグラム分析(zymogram assay)を行って(製造例6参照)酵素活性を観察した(図4bのEC340)。
【0173】
エンドリシンの活性を向上させるために、EC340と配列が非常に類似の8個の蛋白質(GenBank accession no.QQNO11705.1、QNO11629.1、QNO11777.1、QBJ02951.1、HAM5207786.1、YP_009168880.1、QIG59335.1、およびYP_009113200.1)でBLASTpを行った(図9)。また、https://swissmodel.expasy.org/で蛋白質のコンピュータ支援モデリングを実行した。特に、外部に露出したアミノ酸H39S、A73V、T101AおよびI113Vの変化が蛋白質の疎水性を増加させ、膜通過性の改善をもたらすことができると考えられた。D43HおよびT45Eの変更は、外部に露出したヒンジ領域にあるものであり、ここで荷電されたアミノ酸のスイッチは、当該領域に対して立体的にさらに安定した特性をもたらすことがある。蛋白質の第三の螺旋領域に位置したA81Sの変化は、蛋白質の特性に目立った変化をもたらさない可能性もある。EC340の酵素活性ドメイン内の7個のアミノ酸位置に変異が導入され(図4a;H39S、D43H、T45E、A73V、A81S、T101A、およびI113V)GRAVY(Grand average of hydropathicity index;ペプチドの疎水性値を示すのに用いられる指標)に若干の変化が生じた。つまり、配列番号10のアミノ酸配列で表される変異型ポリペプチドmtEC340は、配列番号2のアミノ酸配列で表されるEC340で、H39S、D43H、T45E、A73V、A81S、T101A、およびI113V変異を含むポリペプチドである。
【0174】
mtEC340変異は、基準菌株、薬物耐性菌株および臨床的に分離された菌株を含め、E.coliまたは、K.pneumoniaeの多様な菌株についてテストする時に、最大1log(図5aないし図5d)まで増加された抗菌活性を示した(抵抗プロファイルは、下記の表1に表される)。エンドリシンに対するより高い抗菌効能は、K.pneumoniaeよりE.coliで観察された。これは、K.pneumoniaeのカプセル厚さが、E.coliで観察されるるものの16倍以上という以前の報告書と一致する。
【0175】
【表1】
【0176】
表1は、薬物耐性菌株に対する多様な抗生剤のMICに関するものである。
Source:http://knrrb.ccarm-bio.or.kr
-:not determined
【0177】
つまり、図5aないし図5dで確認できるように、E.coli ATCC 8739、E.coli ATCC 25922、E.coli CCARM 1A746、E.coli CCARM 1B684、K.pneumoniae ATCC 700603、K.pneumoniae KCTC 2208、K.pneumoniae CCARM 10143、およびK.pneumoniae F85菌株に何も処理しない場合(Control)、EC340を処理した場合、mtEC340を処理した場合、およびLNT113を処理した場合で、細菌数を測定した結果、EC340、mtEC340、およびLNT113はいずれも優れた抗菌活性が示された。そのうち、mtEC340およびLNT113はさらに優れた抗菌活性が示されることを確認した。
【0178】
また、本実験に用いられたK.pneumoniae菌株のうちの一つのATCC 700603は、カプセル構造を有するものと知られている。厚いカプセルは、ペプチドグリカン細胞壁に対するエンドリシンの接近を妨げる可能性がある。K.pneumoniaeカプセル多糖類は、ポリミキシンおよびラクトフェリンのような抗菌ペプチドに対する耐性を媒介するものと報告された。活性をさらに増加させるために、mtEC340のN-末端に抗菌性ペプチドのセクロピンセクロピンAの37個のアミノ酸配列(配列番号8)を融合してエンドリシンLNT113(配列番号10)を構築した。これは、mtEC340と比較すると、活動において最大4-log増加を示した。テストした全ての菌株に対して2時間培養後、生存可能な細菌細胞が検出されなかった。エンドリシンの抗菌活性は、潜在的に膨圧に依存し、Tris自体が外膜透過剤として作用できるので、多様な生理的条件(150mMのNaClを含むTrisバッファーまたは150mMのNaClを含むHepesバッファー(図10aおよび図10b))で追加抗菌分析を行った。予想外に、抗バクテリア活性は、NaClがないTrisバッファーよりHepesバッファーでさらに高かった。しかし、NaClを追加すると、EC340およびmtEC340がほとんど不活性化した。しかし、以前に報告されているように、セクロピンセクロピンA融合エンドリシン(LNT113)を用いた場合、塩存在の否定的な影響が大きく減少した。
【0179】
実施例3.LNT113の向上した細胞透過性によって向上した抗菌効能
一般に、外用エンドリシンは、グラム陰性菌に外膜が存在するため、ペプチドグリカン層に到達しにくい。外膜と相互作用するセクロピンAとの融合は膜浸透性を増加させなければならない。
【0180】
NPN(1-N-フェニルナフチルアミン)分析を通じて(製造例8参照)セクロピンAおよび/またはエンドリシンを含むの色々な構成物の膜貫通能力を比較した(図6a)。
【0181】
図6a(E.coli ATCC 8739の外膜透過性)で確認できるように、mtEC340に比べてセクロピンAが融合されたLNT113(図6aのLNT113)を処理した細胞で膜浸透性が1.8倍増加するものと観察された。これはまた、セクロピンセクロピンA単独(図6aのCecA)より1.3倍さらに高かった。また、mtEC340とセクロピンセクロピンAとを併用投与した時(図6aのCecA+mtEC340)、膜透過度が増加した。反対に、EGFPに融合されたセクロピンA(図6aのCecA+EGFP)は、LNT113と比較すると、メンブレインを透過する能力が制限されていることを示しており、これは、AMPとメンブレインを透過する強力な能力を示すエンドリシンとの連携が追加効果を達成するのに必要であることを示唆する。
【0182】
図6bに示す各構造物の殺菌効能は、図6aに示しているように、膜を透過する能力に比例した。試験管内で、LNT113は容量および時間によって抗菌活性を示した(大腸菌ATCC 8739(図6c)および図6d)。コリスチン耐性菌株のE.coli FORC81は、LNT113に対する感受性についてテストされた(E.coli FORC81(図6e))。2μMの濃度で、コリスチン処理された細胞で1.2-log減少が観察されたのに対し、同一の濃度でLNT113は、検出限界以下にバクテリア細胞の量を減少させることに成功した。
【0183】
実施例4.最小抑制濃度(MIC)の決定
E.coliは、ヒトと動物の多様な病気に関連がある。病原性大腸菌は、尿路、腎臓、血流など人体の多様な部位に群集を形成して病気を誘発する。MIC測定を通じて(製造例11参照)多様なE.coli菌株でLNT113の抗菌活性を確認した(表2)。
【0184】
【表2】
【0185】
表2は、多様な大腸菌菌株に対するLNT113のMICおよびMBCに関するものである。
【0186】
標的菌株には、基準菌株、薬物耐性菌株(CCRMおよびFORC81)、臨床的に分離された菌株(F)、尿路病原性菌株(UPEC)および付着性侵襲性菌株(ECOR)が含まれた。MICは、大部分の菌株で4-64μg/mlであるものと示された(1mMのLNT113は、23.2mg/mlであり、1mg/mlのLNT113は、0.0431mMである)。エンドリシンEC340またはmtEC340に対するMICは>128mg/mlであった(表3)。
【0187】
また、最小殺菌濃度(MBC)は、MICと同一であり、作用方式が殺菌であることを示唆する。LNT113のMICは、A.baumannii、P.aeruginosa、K.pneumoniaeのような多様なグラム陰性菌に対して確認された(表4)。
【0188】
【表3】
【0189】
表3は、大腸菌菌株でコリスチンと組み合わせられたエンドリシンのMIC(μg/ml)に関するものである。
【0190】
【表4】
【0191】
表4は、多様なグラム陰性菌に対するLNT113のMIC(μg/ml)に関するものである。
【0192】
菌株には、基準菌株、臨床的に分離された菌株および薬物耐性菌株が含まれる。用いられた薬物耐性菌株に対する抗生剤のMICは、表1に記載されている。MICは、4-32μg/ml範囲であった。Salmonella typhimuriumおよびSalmonella enteritidisの場合、MICは>64μg/mlであった。
【0193】
実施例5.LNT113の細胞毒性および溶血活性
LNT113の細胞毒性を確認するために、ヒト肝癌細胞株Huh7に対してWST-1分析を行った(製造例10参照)。LNT113を48時間250または125μg/mlで処理した場合、細胞生存率の減少が観察されなかった(図7a)。
【0194】
溶血活性を測定するために、LNT113を2~128μg/mlの濃度で赤血球に添加した。LNT113の溶血活性は観察されなかった(図7b)。
【0195】
実施例6.LNT113と多様な抗生剤との相乗効果
LNT113と多様な抗生剤との結合効果を確認するために、チェッカーボードアッセイ(checkerboard assay)を行った(製造例12参照)。まず、FICI(fractional inhibitory concentration index)を測定して、大腸菌菌株でLNT113とコリスチンとの組み合わせ効果を観察した。LNT113およびコリスチンのFICフローティングを含め、isobologramで表されるcheckerboard分析結果は、図8に示した。E.coli ATCC 8739で、コリスチンとLNT113とをいずれも処理したとき、二つの値の和(FICI)は0.25であった。これは、二つの製剤の相乗効果を示す。UPEC 3150菌株の場合、FICIは0.375と上昇效果を示した。E.coli FORC81の場合、FICIは0.5とまた他の上昇效果を示した。コリスチン耐性大腸菌FORC81で、コリスチンのMICを4mg/mlのLNT113と組み合わせて処理されるとき、16mg/mlから1mg/mlに減少したという点は注目するに値する(表3)。
【0196】
LNT113と8個の他の抗生剤の間の相乗効果は、FICIを決定することによって、5個の他のE.coli菌株に対して確認された(表5)。
【0197】
【表5】
【0198】
表5は、多様な抗生剤を用いたLNT113の部分抑制濃度指数(FICI)に関するものである。
(*:not determined
FICI:≦0.5、synergy;>0.5-≦1.0、additive;>1.0to≦2、indifference;>2.0、antagonism)
【0199】
5個の菌株のうち4個の菌株で、コリスチンとの相乗効果が観察されたのに対し、他の全ての組み合わせでは、付加(additive)または無関係な(indifferent)効果が観察された。
【0200】
またMICが>128mg/mlのエンドリシンEC340またはmtEC340があるとき、コリスチンのMICが顕著に減少するということを観察した(表3)。
【0201】
以上の説明から、本出願の属する技術分野における当業者は、本出願がその技術的な思想や必須的特徴を変更することなく、他の具体的な形態で実施できることを理解するはずである。これに関連して、以上で記述した実施例は、あらゆる面で例示的なものであって限定的なものではないものと理解しなければならない。本出願の範囲は、詳細な説明よりは後述する特許請求の範囲の意味および範囲およびその等価概念から導出される全ての変更または変形された形態が、本出願の範囲に含まれるものと解釈されなければならない。
図1
図2
図3
図4a
図4b
図5a
図5b
図5c
図5d
図6a
図6b
図6c
図6d
図6e
図7a
図7b
図8
図9
図10a
図10b
【配列表】
2024531962000001.xml
【国際調査報告】