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特表2024-531966操作されたADAR動員RNA及びその使用方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-03
(54)【発明の名称】操作されたADAR動員RNA及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20240827BHJP
   C12N 15/11 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
C12N15/09 100
C12N15/11 Z ZNA
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024509501
(86)(22)【出願日】2022-08-18
(85)【翻訳文提出日】2024-04-15
(86)【国際出願番号】 CN2022113304
(87)【国際公開番号】W WO2023020574
(87)【国際公開日】2023-02-23
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2021/113290
(32)【優先日】2021-08-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2022/085144
(32)【優先日】2022-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】507232478
【氏名又は名称】北京大学
【氏名又は名称原語表記】PEKING UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】No.5, Yiheyuan Road, Haidian District, Beijing 100871, China
(71)【出願人】
【識別番号】522264261
【氏名又は名称】北京▲輯▼因医▲療▼科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】EDIGENE THERAPEUTICS (BEIJING) INC.
【住所又は居所原語表記】Floor 2,Building 2, No.22 Kexueyuan Road, Changping District, Beijing 102206, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】魏 文▲勝▼
(72)【発明者】
【氏名】伊 宗裔
(72)【発明者】
【氏名】袁 ▲鵬▼▲飛▼
(57)【要約】
本願は、標的RNA中のアデノシンを脱アミノ化するために宿主細胞にデアミナーゼ動員RNAを導入することによってRNAを編集する方法を提供する。本願はまた、RNAのオフターゲット編集を低減する方法を提供する。本願はさらに、前記RNA編集方法に使用されるデアミナーゼ動員RNA、ならびにそれを含む組成物及びキットを提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
デアミナーゼ動員RNA(dRNA)、またはdRNAをコードする核酸配列を含む構築物を宿主細胞に導入することを含む、前記宿主細胞において標的RNA中の標的アデノシンを編集する方法であって、
(1)前記dRNAが、標的RNAにハイブリダイズして二本鎖RNAを形成することができる標的化RNA配列を含み、前記二本鎖RNAが、前記標的RNA中の非標的アデノシンを含有するバルジを含み、かつ
(2)前記dRNAが、RNAに作用するアデノシンデアミナーゼ(ADAR)を動員することができる、方法。
【請求項2】
前記二本鎖RNAが、前記標的RNA中の各非標的アデノシンにバルジを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記標的化RNA配列が、前記標的RNA中の非標的アデノシンの反対側の1つ以上のヌクレオチドを欠いていることを除いて、前記標的RNAに相補的である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記標的化RNA配列が、前記標的RNA中の非標的アデノシンの反対側の2つ以上の連続するヌクレオチドを欠いていることを除いて、前記標的RNAに相補的である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
dRNA、または標的化RNA配列を含むその構築物を使用する方法と比較して、前記方法は、標的RNA中の非標的アデノシンの編集レベルが減少し、前記標的化RNA配列が、前記標的RNA中の非標的アデノシンの反対側のヌクレオチドを有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記dRNAが線形RNAである、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記dRNAが環状RNAを形成することができる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記dRNAが環状RNAである、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記dRNAが、前記標的化RNA配列の末端に隣接するリンカー核酸配列を含み、前記リンカー核酸配列が、前記dRNAのいかなる部分とも実質的に二次構造を形成しない、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
前記dRNAが、前記標的化RNA配列の末端を置換するリンカー核酸配列を含み、前記リンカー核酸配列が、前記dRNAのいかなる部分とも実質的に二次構造を形成しない、請求項7または8に記載の方法。
【請求項11】
dRNA、またはdRNAをコードする核酸配列を含む構築物を宿主細胞に導入することを含む、前記宿主細胞において標的RNA中の標的アデノシンを編集する方法であって、
(1)前記dRNAが、標的RNAにハイブリダイズすることができる標的化RNA配列を含み、前記dRNAが、前記標的化RNA配列の末端に隣接するリンカー核酸配列を含み、前記リンカー核酸配列が、前記dRNAのいかなる部分とも実質的に二次構造を形成しなく、
(2)前記dRNAが、ADARを動員することができ、かつ
(3)前記dRNAが、環状RNA、または環状RNAを形成し得る線形RNAである、方法。
【請求項12】
前記dRNAが、環状RNAである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記dRNAが、環状RNAを形成することができる線形RNAである、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記リンカー核酸配列の長さが約5ヌクレオチド(nt)~約500ntである、請求項9~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記リンカー核酸配列の長さが約50nt~約500ntである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記リンカー核酸配列の長さが70nt以下であり、場合により、前記リンカー核酸配列の長さが10nt~50nt、10nt~40nt、10nt~30nt、10nt~20nt、20nt~50nt、20nt~40nt、20nt~30nt、30nt~50nt、30nt~40nt、または40nt~50ntの間の任意の整数である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記リンカー核酸配列の長さが、約20nt~約60ntであり、場合により、前記リンカー核酸配列の長さが、約30nt、または約50ntである、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記リンカー核酸配列の少なくとも約50%、60%、70%、80%、85%、90%、または95%のいずれか1つがアデノシンまたはシチジンを含み、任意選択で、前記リンカー核酸配列の100%がアデノシンまたはシチジンを含む、請求項9~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記リンカー核酸配列が、ポリアデノシン(ポリA)、ポリグアノシン(ポリG)、またはポリシトシン(ポリC)配列を含む、請求項9~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記リンカー核酸配列の少なくとも50%がアデノシンを含む、請求項9~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記リンカー核酸配列がジヌクレオチド反復配列を含む、請求項9~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記リンカー核酸配列が配列番号22を含む、請求項9~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記dRNAが、前記標的化RNA配列の5’末端に隣接する第1のリンカー核酸配列と、前記標的化RNA配列の3’末端に隣接する第2のリンカー核酸配列とを含む、請求項9~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記dRNAが、前記標的化RNA配列の5’末端に隣接する第1のリンカー核酸配列と、前記標的化RNA配列の3’末端を置換する第2のリンカー核酸配列とを含む、請求項9~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記dRNAが、前記標的化RNA配列の5’末端を置換する第1のリンカー核酸配列と、前記標的化RNA配列の3’末端に隣接する第2のリンカー核酸配列とを含む、請求項9~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記dRNAが、前記標的化RNA配列の5’末端を置換する第1のリンカー核酸配列と、前記標的化RNA配列の3’末端を置換する第2のリンカー核酸配列とを含む、請求項9~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記第1のリンカー核酸配列が、前記第2のリンカー核酸配列と同じである、請求項23~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記第1のリンカー核酸配列が、前記第2のリンカー核酸配列とは異なる、請求項23~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記dRNAが環状RNAであり、前記リンカー核酸配列が、前記標的化RNA配列の5’末端と前記標的化RNA配列の3’末端とを連結する、請求項9~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記dRNAが環状RNAであり、前記dRNAが、前記標的化RNA配列の5’末端に隣接する3’触媒グループIイントロンフラグメントによって認識可能な3’エクソン配列と、前記標的化RNA配列の3’末端に隣接する5’触媒グループIイントロンフラグメントによって認識可能な5’エクソン配列とをさらに含む、請求項12~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記dRNAが、3’連結配列と5’連結配列とをさらに含む、請求項12~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記3’連結配列と前記5’連結配列が互いに少なくとも部分的に相補的である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記3’連結配列及び前記5’連結配列の長さが、約20~約75ヌクレオチドである、請求項31または32に記載の方法。
【請求項34】
前記dRNAがRNAリガーゼRtcBによって環状化される、請求項31~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記dRNAが、T4 RNAリガーゼ1(Rnl1)またはRNAリガーゼ2(Rnl2)によって環状化される、請求項31~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
dRNAまたは前記dRNAをコードする核酸配列を含む構築物が、用量依存的に前記標的RNA中の標的アデノシンを編集する、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記方法が、前記dRNAをコードする核酸配列を含む構築物を前記宿主細胞に導入することを含む、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記構築物が、前記dRNAをコードする核酸配列に作動可能に連結されたプロモーターをさらに含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記プロモーターがポリメラーゼIIプロモーター(「Pol IIプロモーター」)である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記プロモーターがポリメラーゼIIIプロモーター(「Pol IIIプロモーター」)である、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
前記構築物がウイルスベクターまたはプラスミドである、請求項37~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記構築物がアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記構築物が自己相補的AAV(scAAV)ベクターである、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記ADARが前記宿主細胞によって内因的に発現される、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記宿主細胞がT細胞である、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記標的化RNA配列の長さが50ntを超える、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記標的化RNA配列の長さが約100~約200ntである、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記標的化RNA配列が、前記標的RNA中の標的アデノシンの真向かいのシチジン、アデノシンまたはウリジンを含む、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記標的化RNA配列が、前記標的RNA中の標的アデノシンの真向かいのシチジンミスマッチを含む、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記シチジンミスマッチが、前記標的化RNA配列の3’末端から少なくとも20ヌクレオチド、及び前記標的化RNA配列の5’末端から少なくとも5ヌクレオチドに位置する、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記標的RNA中の標的アデノシンの5’に最も近い隣接物が、U、C、A、及びGから選ばれるヌクレオチドであり、優先度がU>C≒A>Gであり、前記標的RNAにおける標的アデノシンの3’に最も近い隣接物が、G、C、A、及びUから選ばれるヌクレオチドであり、優先度がG>C>A≒Uである、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
前記標的アデノシンが、UAGの3塩基モチーフに位置し、前記標的化RNAが、前記3塩基モチーフのウリジンの真向かいのA、前記標的アデノシンの真向かいのシチジン、及び前記3塩基モチーフのグアノシンの真向かいのシチジン、グアノシン、またはウリジンを含む、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
前記標的RNAが、プレメッセンジャーRNA、メッセンジャーRNA、リボソームRNA、転移RNA、長鎖非コードRNA、及び低分子RNAからなる群から選択されるRNAであり、任意選択で、前記標的RNAが、プレメッセンジャーRNAである、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
ADAR3阻害剤及び/またはインターフェロン刺激剤を前記宿主細胞に導入することをさらに含む、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
それぞれが異なる標的RNAを標的とする複数のdRNAまたは構築物を前記宿主細胞に導入することを含む、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
前記標的RNAの編集効率が少なくとも40%である、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
ADARを前記宿主細胞に導入することをさらに含む、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
前記標的RNA中の標的アデノシンの脱アミノ化が、前記標的RNA中のミスセンス変異、早期終止コドン、異常なスプライシングもしくは選択的スプライシング、または前記標的RNA中のミスセンス変異、早期終止コドン、異常なスプライシングもしくは選択的スプライシングの復帰を引き起こす、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
前記標的RNA中の標的アデノシンの脱アミノ化が、前記標的RNAによってコードされるタンパク質の点突然変異、トランケート、伸長及び/またはミスフォールディング、あるいは前記標的RNA中のミスセンス変異、早期終止コドン、異常なスプライシングもしくは選択的スプライシングの復帰による機能的で、完全長の、正しくフォールディングされた、及び/または野生型タンパク質を引き起こす、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記宿主細胞が真核細胞であり、任意選択で、前記宿主細胞が哺乳動物細胞である、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
前記宿主細胞がヒトまたはマウス細胞である、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記請求項のいずれか一項に記載の方法によって生成された編集されたRNA、または編集されたRNAを有する宿主細胞。
【請求項63】
請求項1~61のいずれか一項に記載の方法にしたがって、個体の細胞内に疾患または症状に関連する標的RNAを編集することを含む、前記個体の前記疾患または症状を治療または予防する方法。
【請求項64】
前記疾患または症状が、遺伝性遺伝子疾患、または1つ以上の後天性遺伝子突然変異に関連する疾患または症状である、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記疾患または症状が、単一遺伝子あるいは多遺伝子疾患または症状である、請求項63に記載の方法。
【請求項66】
前記標的RNAが、GからAへの変異を有する、請求項63~65のいずれか一項に記載の方法。
【請求項67】
(i)前記標的RNAがTP53、KRASであり、かつ前記疾患または症状ががんであり、
(ii)前記標的RNAがIDUAであり、かつ前記疾患または症状がムコ多糖症I型(MPS I)であり、
(iii)前記標的RNAがCOL3A1であり、かつ前記疾患または症状がエーラス・ダンロス(Ehlers-Danlos)症候群であり、
(iv)前記標的RNAがBMPR2であり、かつ前記疾患または症状がジュベール(Joubert)症候群であり、
(v)前記標的RNAがFANCCであり、かつ前記疾患または症状がファンコニ貧血であり、
(vi)前記標的RNAがMYBPC3であり、かつ前記疾患または症状が原発性家族性肥大型心筋症であり、
(vii)前記標的RNAがIL2RGであり、かつ前記疾患または症状がX連鎖重度複合免疫不全症であり、
(viii)前記標的RNAがMALAT1であり、かつ前記疾患または症状が高血糖症であり、または
(ix)前記標的RNAがRAB7Aであり、かつ前記疾患または症状がシャルコー・マリー・トゥース(Charcot-Marie-Tooth)症候群2B型(CMT2B)である、
請求項63~66のいずれか一項に記載の方法。
【請求項68】
標的RNAにハイブリダイズして二本鎖RNAを形成することができる標的化RNA配列を含む、標的RNAを編集するためのdRNAであって、前記二本鎖RNAが、前記標的RNA中の非標的アデノシンを含有するバルジを含む、dRNA。
【請求項69】
標的RNAにハイブリダイズすることができる標的化RNA配列を含む、標的RNAを編集するためのdRNAであって、前記dRNAが、前記標的化RNA配列の末端に隣接するリンカー核酸配列を含み、前記リンカー核酸配列が、前記dRNAのいかなる部分とも実質的に二次構造を形成しなく、前記dRNAが、環状RNA、または環状RNAを形成することができる線形RNAである、dRNA。
【請求項70】
請求項68または69に記載のdRNAをコードする核酸配列を含む、構築物。
【請求項71】
前記構築物が、前記dRNAをコードする核酸配列に作動可能に連結されたプロモーターをさらに含み、前記プロモーターがPol IIIプロモーターである、請求項70に記載の構築物。
【請求項72】
請求項68~72のいずれか一項に記載の構築物またはdRNAを含む、宿主細胞。
【請求項73】
請求項68~72のいずれか一項に記載の構築物またはdRNA、及び宿主細胞内で標的RNAを編集するための説明書を含む、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、アデノシンデアミナーゼを動員して標的RNA中の1つ以上のアデノシンを脱アミノ化することができる操作された線形または環状RNAを使用してRNAを編集するための方法及び組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ゲノム編集は、生物医学研究及び疾患治療法の開発のための強力なツールである。ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、CRISPRシステムのCasタンパク質などの人工ヌクレアーゼを使用した編集技術は、無数の生物のゲノムを操作するために適用されている。最近、デアミナーゼタンパク質(RNAに作用するアデノシンデアミナーゼ(ADAR)など)を利用して、RNA編集用の新しいツールが開発された。哺乳類細胞には、Adar1(2つのアイソフォーム、p110とp150)、Adar2とAdar3(触媒的に不活性)の3種類のADARタンパク質がある。ADARタンパク質の触媒基質は二本鎖RNAであり、ADARはアデノシン(A)ヌクレオベースから-NH2基を除去し、Aをイノシン(I)に変更することができる。(I)は、その後の細胞の転写及び翻訳プロセス中にグアノシン(G)として認識され、シチジン(C)とペアリングする。標的化RNA編集を実現するには、ADARタンパク質またはその触媒ドメインをλNペプチド、SNAPタグ、またはCasタンパク質(dCas13b)に融合し、ガイドRNAがキメラADARタンパク質を標的部位に動員するように設計された。あるいは、ADAR1またはADAR2タンパク質及びR/Gモチーフを持つガイドRNAの過剰発現により、標的化RNA編集が達成できることが報告されている。
【0003】
しかしながら、現在利用可能なADARを介したRNA編集技術には、一定の制限がある。例えば、遺伝子治療の最も効率的なインビボ送達はウイルスベクターを介するものであるが、非常に望ましいアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターはカーゴサイズ(約4.5kb)によって制限されるため、タンパク質とガイドRNAの両方を収容することが困難になる。さらに、ADAR1の過剰発現は、RNAの異常な過剰編集により多発性骨髄腫に発がん性を与え、広範なグローバルなオフターゲット編集を引き起こすことが最近報告された。さらに、非ヒト起源のタンパク質またはそのドメインの異所性発現には、免疫原性を引き起こす潜在的なリスクが伴う。さらに、既存の適応免疫及びp53媒介DNA損傷応答は、Cas9などの治療用タンパク質の有効性を妨げる可能性がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本願は、環状ADAR動員RNA(「circ-dRNA」または「circ-arRNA」)を含む、ADAR動員RNA(「dRNA」または「arRNA」)を使用するRNA編集の方法を提供し、RNAタンパク質に作用する内因性アデノシンデアミナーゼ(「ADAR」)を使用してRNA編集をすることができる。また、本明細書では、操作されたdRNA、またはこれらの方法で使用するための操作されたdRNAをコードする核酸配列を含む構築物、ならびにそれらを含む組成物及びキットも提供される。さらに本明細書では、個体の細胞の疾患または症状に関連する標的RNAを編集することを含む、個体の疾患または症状を治療または予防する方法が提供される。
【0005】
一態様では、本明細書は、デアミナーゼ動員RNA(dRNA)、またはdRNAをコードする核酸配列を含む構築物を宿主細胞に導入することを含む、前記宿主細胞において標的RNA中の標的アデノシンを編集する方法を提供し、ここで、(1)前記dRNAは、標的RNAにハイブリダイズして二本鎖RNAを形成することができる標的化RNA配列を含み、前記二本鎖RNAは、前記標的RNA中の非標的アデノシンを含有するバルジを含み、かつ(2)前記dRNAは、RNAに作用するアデノシンデアミナーゼ(ADAR)を動員することができる。いくつかの実施形態では、二本鎖RNAが、標的RNA中の各非標的アデノシンにバルジを含む。いくつかの実施形態では、標的化RNA配列が、標的RNA中の非標的アデノシンの反対側の1つ以上のヌクレオチドを欠いていることを除いて、標的RNAに相補的である。いくつかの実施形態では、標的化RNA配列が、標的RNA中の非標的アデノシンの反対側の2つ以上の連続するヌクレオチドを欠いていることを除いて、標的RNAに相補的である。いくつかの実施形態では、前記方法は、標的RNA中の非標的アデノシンの編集レベルを減少させることを含む。
【0006】
上記のいずれか一項の方法によるいくつかの実施形態では、dRNAが線形RNAである。いくつかの実施形態では、dRNAは、環状RNAを形成することができる線形RNAである。いくつかの実施形態では、dRNAが環状RNAである。
【0007】
上記のいずれか一項の方法によるいくつかの実施形態では、dRNAが、標的化RNA配列の末端に隣接するリンカー核酸配列を含み、リンカー核酸配列が、dRNAのいかなる部分とも実質的に二次構造を形成しない。
【0008】
上記のいずれか一項の方法によるいくつかの実施形態では、dRNAが、標的化RNA配列の末端を置換するリンカー核酸配列を含み、リンカー核酸配列が、dRNAのいかなる部分とも実質的に二次構造を形成しない。
【0009】
別の態様では、本明細書は、dRNA、またはdRNAをコードする核酸配列を含む構築物を宿主細胞に導入することを含む、前記宿主細胞において標的RNA中の標的アデノシンを編集する方法を提供し、ここで、(1)dRNAが、標的RNAにハイブリダイズすることができる標的化RNA配列を含み、dRNAが、標的化RNA配列の末端に隣接するリンカー核酸配列を含み、リンカー核酸配列が、dRNAのいかなる部分とも実質的に二次構造を形成しなく、(2)dRNAが、ADARを動員することができ、かつ(3)dRNAが、環状RNA、または環状RNAを形成し得る線形RNAである。いくつかの実施形態では、dRNAが、環状RNAである。いくつかの実施形態では、dRNAが、環状RNAを形成することができる線形RNAである。
【0010】
上記のいずれか一項の方法によるいくつかの実施形態では、dRNAがリンカー核酸配列を含み、リンカー核酸配列の長さが約5ヌクレオチド(nt)~約500ntである。いくつかの実施形態では、リンカー核酸配列の長さが約50nt~約500ntである。いくつかの実施形態では、リンカー核酸配列の長さが約5ヌクレオチド(nt)~約500ntである。いくつかの実施形態では、リンカー核酸配列の長さが70nt以下であり、場合により、リンカー核酸配列の長さが10nt~50nt、10nt~40nt、10nt~30nt、10nt~20nt、20nt~50nt、20nt~40nt、20nt~30nt、30nt~50nt、30nt~40nt、または40nt~50ntの間の任意の整数である。いくつかの実施形態では、リンカー核酸配列の長さが、約20nt~約60ntであり、場合により、リンカー核酸配列の長さが、約30nt、または約50ntである。いくつかの実施形態では、リンカー核酸配列の少なくとも約50%、60%、70%、80%、85%、90%、または95%のいずれか1つがアデノシンまたはシチジンを含み、任意選択で、リンカー核酸配列の100%がアデノシンまたはシチジンを含む。いくつかの実施形態では、リンカー核酸配列が、ポリアデノシン(ポリA)、ポリグアノシン(ポリG)、またはポリシトシン(ポリC)配列を含む。いくつかの実施形態では、リンカー核酸配列の少なくとも50%がアデノシンを含む。いくつかの実施形態では、リンカー核酸配列がジヌクレオチド反復配列を含む。いくつかの実施形態では、リンカー核酸配列は、(AT)を含み、ここで、nは3以上の整数である。いくつかの実施形態では、リンカー核酸配列が配列番号22を含む。
【0011】
上記のいずれか一項の方法によるいくつかの実施形態では、dRNAが、リンカー核酸配列を含み、dRNAが、標的化RNA配列の5’末端に隣接する第1のリンカー核酸配列と、標的化RNA配列の3’末端に隣接する第2のリンカー核酸配列とを含む。いくつかの実施形態では、dRNAが、標的化RNA配列の5’末端に隣接する第1のリンカー核酸配列と、前記標的化RNA配列の3’末端を置換する第2のリンカー核酸配列とを含む。いくつかの実施形態では、dRNAが、標的化RNA配列の5’末端を置換する第1のリンカー核酸配列と、標的化RNA配列の3’末端に隣接する第2のリンカー核酸配列とを含む。いくつかの実施形態では、dRNAが、標的化RNA配列の5’末端を置換する第1のリンカー核酸配列と、標的化RNA配列の3’末端を置換する第2のリンカー核酸配列とを含む。いくつかの実施形態では、第1のリンカー核酸配列が、第2のリンカー核酸配列と同じである。いくつかの実施形態では、第1のリンカー核酸配列が、第2のリンカー核酸配列とは異なる。いくつかの実施形態では、dRNAが環状RNAであり、リンカー核酸配列が、標的化RNA配列の5’末端と標的化RNA配列の3’末端とを連結する。
【0012】
上記のいずれか一項の方法によるいくつかの実施形態では、dRNAが環状RNAであり、dRNAが、標的化RNA配列の5’末端に隣接する3’触媒グループIイントロンフラグメントによって認識可能な3’エクソン配列と、標的化RNA配列の3’末端に隣接する5’触媒グループIイントロンフラグメントによって認識可能な5’エクソン配列とをさらに含む。
【0013】
上記のいずれか一項の方法によるいくつかの実施形態では、dRNAが、3’連結配列(ライゲーション配列)と5’連結配列とをさらに含む。いくつかの実施形態では、3’連結配列と5’連結配列が互いに少なくとも部分的に相補的である。いくつかの実施形態では、3’連結配列及び5’連結配列の長さが、約20~約75ヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、連結配列の長さが約5ヌクレオチド(nt)~約500ntである。いくつかの実施形態では、連結配列の長さが70nt以下であり、場合により、連結配列の長さが10nt~50nt、10nt~40nt、10nt~30nt、10nt~20nt、20nt~50nt、20nt~40nt、20nt~30nt、30nt~50nt、30nt~40nt、または40nt~50ntの間の任意の整数である。いくつかの実施形態では、連結配列の長さが、約20nt~約60ntであり、場合により、連結配列の長さが、約30nt、または約50ntである。いくつかの実施形態では、連結配列の少なくとも約50%、60%、70%、80%、85%、90%、または95%のいずれか1つがアデノシンまたはシチジンを含み、任意選択で、連結配列の100%がアデノシンまたはシチジンを含む。いくつかの実施形態では、dRNAがRNAリガーゼRtcBによって環状化される。いくつかの実施形態では、RNAリガーゼRtcBが宿主細胞内に内因的に発現される。いくつかの実施形態では、dRNAが、T4 RNAリガーゼ1(Rnl1)またはRNAリガーゼ2(Rnl2)によって環状化される。
【0014】
上記のいずれか一項の方法によるいくつかの実施形態では、dRNAまたはdRNAをコードする核酸配列を含む構築物が、用量依存的に標的RNA中の標的アデノシンを編集する。
【0015】
上記のいずれか一項の方法によるいくつかの実施形態では、前記方法が、dRNAをコードする核酸配列を含む構築物を前記宿主細胞に導入することを含む。いくつかの実施形態では、構築物が、dRNAをコードする核酸配列に作動可能に連結されたプロモーターをさらに含む。いくつかの実施形態では、プロモーターがポリメラーゼIIプロモーター(「Pol IIプロモーター」)である。いくつかの実施形態では、プロモーターがポリメラーゼIIIプロモーター(「Pol IIIプロモーター」)である。いくつかの実施形態では、前記構築物がウイルスベクターまたはプラスミドである。いくつかの実施形態では、前記構築物がアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである。いくつかの実施形態では、前記構築物が自己相補的AAV(scAAV)ベクターである。
【0016】
上記のいずれか一項の方法によるいくつかの実施形態では、ADARが宿主細胞によって内因的に発現される。いくつかの実施形態では、宿主細胞がT細胞である。
【0017】
上記のいずれか一項の方法によるいくつかの実施形態では、標的化RNA配列の長さが約100~約200nt(例えば、約150ntまたは約170nt)である。いくつかの実施形態では、標的化RNA配列が、標的RNA中の標的アデノシンの真向かいのシチジン、アデノシンまたはウリジンを含む。いくつかの実施形態では、標的化RNA配列が、標的RNA中の標的アデノシンの真向かいのシチジンミスマッチを含む。いくつかの実施形態では、シチジンミスマッチが、標的化RNA配列の3’末端から少なくとも20ヌクレオチド、及び標的化RNA配列の5’末端から少なくとも5ヌクレオチドに位置する。いくつかの実施形態では、標的RNA中の標的アデノシンの5’に最も近い隣接物が、U、C、A、及びGから選ばれるヌクレオチドであり、優先度がU>C≒A>Gであり、標的RNAにおける標的アデノシンの3’に最も近い隣接物が、G、C、A、及びUから選ばれるヌクレオチドであり、優先度がG>C>A≒Uである。いくつかの実施形態では、標的アデノシンが、UAGの3塩基モチーフに位置し、標的化RNAが、3塩基モチーフのウリジンの真向かいのA、標的アデノシンの真向かいのシチジン、及び3塩基モチーフのグアノシンの真向かいのシチジン、グアノシン、またはウリジンを含む。
【0018】
上記のいずれか一項の方法によるいくつかの実施形態では、標的RNAが、プレメッセンジャーRNA、メッセンジャーRNA、リボソームRNA、転移RNA、長鎖非コードRNA、及び低分子RNAからなる群から選択されるRNAである。いくつかの実施形態では、標的RNAが、プレメッセンジャーRNAである。
【0019】
上記のいずれか一項の方法によるいくつかの実施形態では、前記方法は、ADAR3阻害剤及び/またはインターフェロン刺激剤を前記宿主細胞に導入することをさらに含む。
【0020】
上記のいずれか一項の方法によるいくつかの実施形態では、前記方法は、それぞれが異なる標的RNAを標的とする複数のdRNAまたは構築物を前記宿主細胞に導入することを含む。
【0021】
上記のいずれか一項の方法によるいくつかの実施形態では、標的RNAの編集効率が少なくとも40%である。
【0022】
上記のいずれか一項の方法によるいくつかの実施形態では、前記方法は、ADARを前記宿主細胞に導入することをさらに含む。
【0023】
上記のいずれか一項の方法によるいくつかの実施形態では、標的RNA中の標的アデノシン脱アミノ化が、標的RNA中のミスセンス変異、早期終止コドン、異常なスプライシングもしくは選択的スプライシング、または標的RNA中のミスセンス変異、早期終止コドン、異常なスプライシングもしくは選択的スプライシングの復帰を引き起こす。いくつかの実施形態では、標的RNA中の標的アデノシンの脱アミノ化が、標的RNAによってコードされるタンパク質の点突然変異、トランケート(切断)、伸長及び/またはミスフォールディング、あるいは標的RNA中のミスセンス変異、早期終止コドン、異常なスプライシングもしくは選択的スプライシングの復帰による機能的で、完全長の、正しくフォールディングされた、及び/または野生型タンパク質を引き起こす。
【0024】
上記のいずれか一項の方法によるいくつかの実施形態では、宿主細胞が真核細胞である。いくつかの実施形態では、宿主細胞が哺乳動物細胞である。いくつかの実施形態では、宿主細胞がヒトまたはマウス細胞である。
【0025】
別の態様では、本明細書は、上記のいずれか一項の方法によって生成された編集されたRNA、または編集されたRNAを有する宿主細胞を提供する。
【0026】
別の態様では、本明細書は、上記のいずれか一項の方法にしたがって、個体の細胞内に疾患または症状に関連する標的RNAを編集することを含む、個体の前記疾患または症状を治療または予防する方法を提供する。いくつかの実施形態では、前記疾患または症状が、遺伝性遺伝子疾患、または1つ以上の後天性遺伝子変異に関連する疾患または症状である。いくつかの実施形態では、前記疾患または症状が、単一遺伝子または多遺伝子疾患または症状である。いくつかの実施形態では、標的RNAが、GからAへの変異を有する。
【0027】
上記のいずれか一項の方法によるいくつかの実施形態では、標的RNAがTP53であり、前記疾患または症状ががんである。いくつかの実施形態では、標的RNAがIDUAであり、前記疾患または症状がムコ多糖症I型(MPS I)である。いくつかの実施形態では、標的RNAがCOL3A1であり、前記疾患または症状がエーラス・ダンロス(Ehlers-Danlos)症候群である。いくつかの実施形態では、標的RNAがBMPR2であり、前記疾患または症状がジュベール(Joubert)症候群である。いくつかの実施形態では、標的RNAがFANCCであり、前記疾患または症状がファンコニ貧血である。いくつかの実施形態では、標的RNAがMYBPC3であり、前記疾患または症状が原発性家族性肥大型心筋症である。いくつかの実施形態では、標的RNAがIL2RGであり、前記疾患または症状がX連鎖重度複合免疫不全症である。いくつかの実施形態では、標的RNAがMALAT1であり、前記疾患または症状が高血糖症である。いくつかの実施形態では、標的RNAがRAB7Aであり、前記疾患または症状がシャルコー・マリー・トゥース(Charcot-Marie-Tooth)症候群2B型(CMT2B)である。
【0028】
上記のいずれか一項の方法に使用するための組成物、キット、及び製品も提供される。
【0029】
別の態様では、本明細書は、標的RNAにハイブリダイズして二本鎖RNAを形成することができる標的化RNA配列を含む、標的RNAを編集するためのdRNAを提供し、ここで、二本鎖RNAが、標的RNA中に非標的アデノシンを含有するバルジを含む。いくつかの実施形態では、二本鎖RNAが、標的RNA中の各非標的アデノシンにバルジを含む。いくつかの実施形態では、標的化RNA配列が、標的RNA中の非標的アデノシンの反対側の1つ以上のヌクレオチドを除いて、標的RNAに相補的である。いくつかの実施形態では、標的化RNA配列が、標的RNA中の非標的アデノシンの反対側の2つ以上の連続するヌクレオチドを除いて、標的RNAに相補的である。いくつかの実施形態では、前記方法は、標的RNA中の非標的アデノシンの編集レベルを減少させることを含む。
【0030】
上記のいずれか一項のdRNAによるいくつかの実施形態では、dRNAが線形RNAである。いくつかの実施形態では、dRNAは、環状RNAを形成することができる線形RNAである。いくつかの実施形態では、dRNAが環状RNAである。
【0031】
上記のいずれか一項のdRNAによるいくつかの実施形態では、dRNAが、標的化RNA配列の末端に隣接するリンカー核酸配列を含み、リンカー核酸配列が、dRNAのいかなる部分とも実質的に二次構造を形成しない。いくつかの実施形態では、dRNAが、標的化RNA配列の末端を置換するリンカー核酸配列を含み、リンカー核酸配列が、dRNAのいかなる部分とも実質的に二次構造を形成しない。
【0032】
本明細書で提示される別の態様は、標的RNAにハイブリダイズすることができる標的化RNA配列を含む、標的RNAを編集するためのdRNAであり、ここで、dRNAが、標的化RNA配列の末端に隣接するリンカー核酸配列を含み、リンカー核酸配列が、dRNAのいかなる部分とも実質的に二次構造を形成しなく、dRNAが、環状RNA、または環状RNAを形成することができる線形RNAである。いくつかの実施形態では、dRNAが、環状RNAである。いくつかの実施形態では、dRNAが、環状RNAを形成することができる線形RNAである。
【0033】
本明細書で提示される別の態様は、標的RNAにハイブリダイズすることができる標的化RNA配列を含む、標的RNAを編集するためのdRNAであり、ここで、前記dRNAが、標的化RNA配列の末端を置換するリンカー核酸配列を含み、リンカー核酸配列が、dRNAのいかなる部分とも実質的に二次構造を形成しなく、dRNAが、環状RNA、または環状RNAを形成することができる線形RNAである。いくつかの実施形態では、dRNAが、環状RNAである。いくつかの実施形態では、dRNAが、環状RNAを形成することができる線形RNAである。
【0034】
上記のいずれか一項のdRNAによるいくつかの実施形態では、dRNAがリンカー核酸配列を含み、リンカー核酸配列の長さが約5ヌクレオチド(nt)~約500ntである。いくつかの実施形態では、リンカー核酸配列の長さが約50nt~約500ntである。いくつかの実施形態では、リンカー核酸配列の長さが約5ヌクレオチド(nt)~約500ntである。いくつかの実施形態では、リンカー核酸配列の長さが70nt以下であり、場合により、リンカー核酸配列の長さが10nt~50nt、10nt~40nt、10nt~30nt、10nt~20nt、20nt~50nt、20nt~40nt、20nt~30nt、30nt~50nt、30nt~40nt、または40nt~50ntの間の任意の整数である。いくつかの実施形態では、リンカー核酸配列の長さが、約20nt~約60ntであり、場合により、リンカー核酸配列の長さが、約30nt、または約50ntである。いくつかの実施形態では、リンカー核酸配列の少なくとも約50%、60%、70%、80%、85%、90%、または95%のいずれか1つがアデノシンまたはシチジンを含み、任意選択で、リンカー核酸配列の100%がアデノシンまたはシチジンを含む。いくつかの実施形態では、リンカー核酸配列が、ポリアデノシン(ポリA)、ポリグアノシン(ポリG)、またはポリシトシン(ポリC)配列を含む。いくつかの実施形態では、リンカー核酸配列の少なくとも50%がアデノシンを含む。いくつかの実施形態では、リンカー核酸配列がジヌクレオチド反復配列を含む。いくつかの実施形態では、リンカー核酸配列は、(AT)を含み、ここで、nは3以上の整数である。
【0035】
上記のいずれか一項のdRNAによるいくつかの実施形態では、dRNAが、リンカー核酸配列を含み、dRNAが、標的化RNA配列の5’末端に隣接する第1のリンカー核酸配列と、標的化RNA配列の3’末端に隣接する第2のリンカー核酸配列とを含む。いくつかの実施形態では、dRNAが、標的化RNA配列の5’末端に隣接する第1のリンカー核酸配列と、標的化RNA配列の3’末端を置換する第2のリンカー核酸配列とを含む。いくつかの実施形態では、dRNAが、標的化RNA配列の5’末端を置換する第1のリンカー核酸配列と、標的化RNA配列の3’末端に隣接する第2のリンカー核酸配列とを含む。いくつかの実施形態では、dRNAが、標的化RNA配列の5’末端を置換する第1のリンカー核酸配列と、標的化RNA配列の3’末端を置換する第2のリンカー核酸配列とを含む。いくつかの実施形態では、第1のリンカー核酸配列が、第2のリンカー核酸配列と同じである。いくつかの実施形態では、第1のリンカー核酸配列が、第2のリンカー核酸配列とは異なる。いくつかの実施形態では、dRNAが環状RNAであり、リンカー核酸配列が、標的化RNA配列の5’末端と標的化RNA配列の3’末端とを連結する。
【0036】
上記のいずれか一項のdRNAによるいくつかの実施形態では、dRNAが環状RNAであり、dRNAが、標的化RNA配列の5’末端に隣接する3’触媒グループIイントロンフラグメントによって認識可能な3’エクソン配列と、標的化RNA配列の3’末端に隣接する5’触媒グループIイントロンフラグメントによって認識可能な5’エクソン配列とをさらに含む。
【0037】
上記のいずれか一項のdRNAによるいくつかの実施形態では、dRNAが、3’連結配列と5’連結配列とをさらに含む。いくつかの実施形態では、3’連結配列と5’連結配列が互いに少なくとも部分的に相補的である。いくつかの実施形態では、3’リンカー配列及び5’リンカー配列の長さが、約20~約75ヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、dRNAがRNAリガーゼRtcBによって環状化される。いくつかの実施形態では、RNAリガーゼRtcBが宿主細胞内に内因的に発現される。いくつかの実施形態では、dRNAが、T4 RNAリガーゼ1(Rnl1)またはRNAリガーゼ2(Rnl2)によって環状化される。
【0038】
上記のいずれか一項のdRNAによるいくつかの実施形態では、標的化RNA配列の長さが約100~約200nt(例えば、約150ntまたは約170nt)である。いくつかの実施形態では、標的化RNA配列が、標的RNA中の標的アデノシンの真向かいのシチジン、アデノシンまたはウリジンを含む。いくつかの実施形態では、標的化RNA配列が、標的RNA中の標的アデノシンの真向かいのシチジンミスマッチを含む。いくつかの実施形態では、シチジンミスマッチが、標的化RNA配列の3’末端から少なくとも20ヌクレオチド、及び標的化RNA配列の5’末端から少なくとも5ヌクレオチドに位置する。いくつかの実施形態では、標的RNA中の標的アデノシンの5’に最も近い隣接物が、U、C、A、及びGから選ばれるヌクレオチドであり、優先度がU>C≒A>Gであり、標的RNAにおける標的アデノシンの3’に最も近い隣接物が、G、C、A、及びUから選ばれるヌクレオチドであり、優先度がG>C>A≒Uである。いくつかの実施形態では、標的アデノシンが、UAGの3塩基モチーフに位置し、標的化RNAが、3塩基モチーフのウリジンの真向かいのA、標的アデノシンの真向かいのシチジン、及び3塩基モチーフのグアノシンの真向かいのシチジン、グアノシン、またはウリジンを含む。
【0039】
上記のいずれか一項のdRNAによるいくつかの実施形態では、標的RNAが、プレメッセンジャーRNA、メッセンジャーRNA、リボソームRNA、転移RNA、長鎖非コードRNA、及び低分子RNAからなる群から選択されるRNAである。いくつかの実施形態では、標的RNAが、プレメッセンジャーRNAである。
【0040】
いくつかの実施形態では、上記のいずれか一項のdRNAをコードする核酸配列を含む、構築物が提供される。いくつかの実施形態では、構築物が、dRNAをコードする核酸配列に作動可能に連結されたプロモーターをさらに含み、ここで、該プロモーターがPol IIIプロモーターである。いくつかの実施形態では、前記構築物がウイルスベクターまたはプラスミドである。いくつかの実施形態では、前記構築物がアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである。いくつかの実施形態では、前記構築物が自己相補的AAV(scAAV)ベクターである。
【0041】
いくつかの実施形態では、上記のいずれか一項の構築物またはdRNAを含む、宿主細胞が提供される。いくつかの実施形態では、上記のいずれか一項の構築物またはdRNAを含むキットが提供され、ここで、キットは、宿主細胞内で標的RNAを編集するための説明書をさらに含む。
【0042】
なお、本明細書に記載される様々な実施形態の1つ、一部、またはすべての特徴を組み合わせて、本願の他の実施形態を形成できることを理解されたい。本願のこれら及び他の実施形態については、以下の発明を実施するための形態でさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1A図1A~1Cは、pol IIプロモーター(CMV)によって駆動されるarRNAを発現するプラスミド及びPol IIIプロモーター(U6)によって駆動されるarRNAを発現するプラスミドのトランスフェクション後のFACS分析を示す図である。図1Aは、U6またはCMVプロモーターを介して遺伝的にコードされたarRNAの概略図を示す。蛍光レポーター遺伝子1を標的とする151-nt arRNAが、ヒトU6またはCMVプロモーターの下で発現された。レポーター遺伝子1では、mCherry遺伝子とEGFP遺伝子が、3xGGGGSコード領域とインフレームUAG終止コドンを含む配列によって連結された。レポーター遺伝子によって発現される細胞はmCherryタンパク質のみを産生し、レポーター遺伝子転写物のUAG終止コドンを標的編集することでUAGをUIGに変換し、下流でのEGFP発現が可能になる。
図1B図1Bは、GAPDHで正規化したarRNA発現レベルのFACS結果を示す。
図1C図1Cは、EGFPパーセンテージのFACS結果を示し、レポーター遺伝子を安定的に発現するHEK293T細胞におけるレポーター遺伝子転写物を標的とするさまざまなプロモーター駆動型arRNAの編集効率を示す。EGFP+細胞の割合は、mCherryによって測定されたトランスフェクション効率によって正規化される。
図2A図2A~2Nは、環状ADAR動員RNA(circ-arRNA)の編集有効性を示し、circ-arRNAが内因性転写物に対して効率的かつ耐久性のあるプログラム可能なRNA編集が可能であることを示す図である。図2Aは、蛍光レポーター遺伝子1を標的とする遺伝子コーディングcirc-arRNAの模式図を示す。
図2B図2Bは、線形arRNA及びcirc-arRNAの発現レベルを示す定量的PCRの結果を示す。データは平均±S.E.M.(n=3)として表され、nは並行して実行された独立した実験の数を表す;対応のない両側スチューデントt検定、****P<0.0001。
図2C図2Cは、レポーター遺伝子を安定的に発現するHEK293T細胞におけるレポーター転写物を標的とするU6プロモーター及びCMVプロモーターによって駆動されるcirc-arRNAの編集効率を示すEGFPパーセンテージのFACS結果を示す。EGFPパーセンテージは、mCherryによって決定されたトランスフェクション効率によって正規化された。データは平均±S.E.M.(n=3)として表され、nは並行して実行された独立した実験の数を表す;対応のない両側スチューデントt検定、****P<0.0001。
図2D図2Dは、EGFPパーセンテージのFACS結果を示し、レポーター遺伝子を安定的に発現するHEK293T細胞におけるレポーター遺伝子転写物を標的とする異なるarRNAバージョンの編集効率を示す。EGFPパーセンテージは、mCherryによって決定されたトランスフェクション効率によって正規化された。
図2E図2Eは、U6駆動の線形arRNA及びcirc-arRNAをトランスフェクションした後の2、9、及び18日目の、レポーター遺伝子を安定的に発現するHEK293T細胞におけるEGFP発現を示す。スケールバーは200μmである。データは平均値±S.E.M.(n=3)、nは並行して実行された独立した実験の数を表す。
図2F図2Fは、内因性ADARに対するarRNA及びcirc-arRNAの依存性を示すEGFPパーセンテージのFACS結果を示す。EGFPパーセンテージは、mCherryによって決定されたトランスフェクション効率によって正規化された。データは平均値±S.E.M.(n=3)、nは並行して実行された独立した実験の数を表す。
図2G図2Gは、複数の細胞株におけるレポーター遺伝子転写物を標的とするarRNAの異なるバージョンの編集効率を示すEGFPパーセンテージのFACS結果を示す。EGFPパーセンテージは、mCherryによって決定されたトランスフェクション効率によって正規化された。
図2H図2Hは、6つの遺伝子(PPIA、KRAS、RAB7A、FANCC、MALAT1、及びTP53)及びそれらの対応するarRNA/circ-arRNAの内因性転写産物の概略図を示す。
図2I図2Iは、HEK293T細胞におけるU6駆動線形arRNA及びcirc-arRNAによる、PPIA、KRAS、RAB7A、FANCC、MALAT1、及びTP53転写物の標的アデノシンに対する編集比率を示すディープシーケンシングの結果を示す。データは平均値±S.E.M.(n=3)、nは並行して実行された独立した実験の数を表す。
図2J図2Jは、線形arRNAに対して正規化された編集比率の対応する倍率変化を示す。有意性は対応のない両側スチューデントt検定を使用して分析された;circ-arRNA151については****P=1.33124×10-10、circ-arRNA151_AC50についてはP=1.20289×10-10である;中心線、中央値;限界、75%及び25%;ひげ、最大値と最小値;部位あたりn=3、20部位。
図2K図2Kは、AAV送達circ-arRNAに感染したHEK293T細胞における標的化編集率を示す次世代シーケンシング(NGS)の結果を示し、n=2、平均±s.d.。
図2L図2Lは、AAV送達circ-arRNAに感染したヒト初代肝細胞における標的化編集率を示す次世代シークエンシングの結果を示し、n=2、平均±s.d.。
図2M図2Mは、AAV送達circ-arRNAに感染した脳オルガノイドPPIAにおける標的化編集率を示す次世代シークエンシングの結果を示す。n=2、平均±s.d.。
図2N図2Nは、AAV送達circ-arRNAに感染した脳オルガノイドFANCCにおける標的化編集率を示す次世代シーケンシングの結果を示し、n=4、平均±s.d.。
図3A図3A~3Eは、インビトロ環状化された環状ADAR動員RNA(circ-arRNA)による標的化RNA編集のための内因性ADARタンパク質を示す。図3Aは、インビトロ転写によって環状化されたcirc-arRNAのHPLCクロマトグラフィーの結果を示す。上:T4 Rnl処理なしの前駆体。中央:T4 Rnl1によって連結されたcirc-arRNA。下:T4 Rnl2によって連結されたcirc-arRNA。
図3B図3Bは、レポーター遺伝子転写物の標的部位のAからIへの変換率のディープシークエンシング解析を示す。データは平均値±S.E.M.を表す。
図3C図3Cは、T4 Rnlによって環状化されたcirc-arRNAをHEK293T細胞に導入することによる、PPIB転写物の標的化されたアデノシンに対する編集率を示すディープシーケンシングの結果を示す。
図3D図3Dは、グループIリボザイム自己触媒的に結合したcirc-arRNAをハーラー(Hurler)症候群マウスから産生した初代MEF細胞株に導入することによるIdua転写物の標的化されたアデノシンの編集率を示すディープシーケンシングの結果を示す。データは平均値±S.E.M.を表す。n=2または3、nは並行して実行される独立した実験の数を表す。
図3E図3Eは、前駆体(上)、T4 RNAリガーゼ1で連結されたcirc-arRNA(中央)、及びT4 RNAリガーゼ2で連結されたcirc-arRNA(下)でトランスフェクションした後の標的領域のサンガーシーケンシングの結果を示すエレクトロフェログラムを示す。
図4A図4A~4Jは、circ-arRNAによるRNA編集の全トランスクリプトームの特異性、circ-arRNA151-PPIAのオフターゲット部位分析を示し、PPIAの発現レベル及びスプライシングパターンがcirc-arRNA151-PPIAの影響を受けないことを示す。図4A~4Bは、circ-arRNA151及びADAR2DD過剰発現グループの全トランスクリプトームオフターゲット分析の結果を示す。PPIAのオンターゲット部位を図4Aに示す。PPIAターゲティングRNAグループ及びADAR2DD過剰発現グループで同定された潜在的なオフターゲット部位は標識されていない。
図4B図4A~4Bは、circ-arRNA151及びADAR2DD過剰発現グループの全トランスクリプトームオフターゲット分析の結果を示す。PPIAターゲティングRNAグループ及びADAR2DD過剰発現グループで同定された潜在的なオフターゲット部位は標識されていない。
図4C図4Cは、天然編集部位に対するcirc-arRNA151-PPIAの効果の全トランスクリプトーム分析を示す。3つの独立した実験が実行された。
図4D図4Dは、オフターゲット部位の分布を示す。
図4E図4Eは、circ-arRNA151の最小自由エネルギーとRNAハイブリッドのオフターゲット部位領域を示す。
図4F図4Fは、トランスクリプトームレベルのRNA配列データからの、対照RNA151(Ctrl-RNA151)及びcirc-arRNA151(circ-arRNA151)の効果の差次的遺伝子発現解析を示す。FPKM値はSTRINGTIEツールを使用して計算され、グローバルな差次的遺伝子発現はピアソン相関係数分析を使用して評価された。
図4G図4Gは、対照RNA151及びcirc-arRNA151-PPIAでトランスフェクトされた細胞におけるPPIAタンパク質発現レベルを示す免疫ブロットを示す。
図4H図4Hは、GAPDHに対して正規化した、HEK293T細胞における標的化PPIA転写物の発現レベルに対するcirc-arRNA対対照RNAの効果を示す定量的PCRを示す。n=3、平均±SD。
図4I図4Iは、2つの主要なPPIAスプライシングアイソフォームのFPKMを示す。ns、有意ではない;n=2、平均±SD。対応のない両側スチューデントのt検定、ns、有意ではない。
図4J図4Jは、標的遺伝子のスプライス接合部を示す。上、RNAシーケンス解析におけるPPIAスプライシングアイソフォーム。中央、対照RNA151のPPIAスプライシング接合部。下、circ-arRNA151のPPIAスプライシング接合部。
図5A図5A~5Mは、操作されたcirc-arRNAによる隣接塩基のオフターゲット編集、ならびにADAR及びインターフェロン刺激遺伝子の相対的な定量的発現レベルを示す。図5Aは、蛍光レポーター遺伝子1を標的とするarRNAの概略図を示し、標的となるアデノシンに対向するヌクレオチド欠失(線形arRNAΔC)(上)、及びEGFPパーセンテージは、レポーターを安定して発現するHEK293T細胞におけるarRNA及びarRNAΔCを標的とするレポーター転写物の編集効率を示す(下)。
図5B図5Bは、蛍光レポーター1を標的とするcirc-arRNAの概略図を示し、標的となるアデノシン(circ-arRNAΔC)に対向するヌクレオチド欠失(上)、及びEGFPパーセンテージは、レポーターを安定して発現するHEK293T細胞におけるarRNA及びarRNAΔCを標的とするレポーター転写物の編集効率を示す(下)。
図5C図5Cは、circ-arRNA151(上)及びcirc-arRNA151-AΔ8(下)によって標的化されるPPIA転写配列の概略図を示す。標的化されるアデノシンは76番目にある。circ-arRNA151-AΔ8は、容易に編集可能なモチーフ(editing prone motif)における潜在的なオフターゲットを最小限に抑えるために、A18番目(A18th)、A25番目、A33番目、A41番目、A42番目、A47番目、A59番目、及びA87番目にアデノシン欠失を持っている。
図5D図5Dは、circ-arRNA151及びcirc-arRNA151-AΔ8のPPIA転写物のオンターゲット編集比率を示す。
図5E図5Eは、A18番目、A25番目、A33番目、A41番目、A42番目、A47番目、A59番目、及びA87番目におけるcirc-arRNA151及びcirc-arRNA151-AΔ8のオフターゲット編集比率を示す。
図5F図5Fは、151ntのarRNAによってカバーされるPPIA転写物配列の概略図を示す。黒い矢印は標的とされたアデノシンを示し、潜在的なオフターゲットのアデノシンは赤色でマークされている。容易に編集可能なモチーフにおける潜在的なオフターゲット編集を最大限に低減するように、PPIA転写物を標的とするcirc-arRNA151-AΔ14には、A6番目、A13番目、A18番目、A25番目、A33番目、A41番目、A42番目、A47番目、A59番目、A72番目、A87番目、A103番目、A110番目、及びA129番目の反対側にU欠失がある。
図5G図5Gは、circ-arRNA151_AC50及びcirc-arRNA151-AΔ14_AC50グループにおけるオフターゲットアデノシンの編集比率を示す;n=3、平均±s.d。
図5H図5Hは、PPIA転写物中のcirc-arRNA151_AC50及びcirc-arRNA151-AΔ14_AC50によってカバーされるアデノシンの編集比率ヒートマップを示す;n=3。灰色の三角形は、circ-arRNA151-AΔ14_AC50のU欠失の位置を表し、青い三角形は、circ-arRNA151-AΔ5に基づくcirc-arRNA151-AΔ8の追加のU欠失の位置を表す。circ-arRNA151-AΔ14_AC50におけるU欠失の位置は、灰色、青色及び黒色の三角形で示されている。
図5I図5Iは、circ-RNA151_AC50の編集された読み取り値を示すIGVの結果を示す。
図5J図5Jは、circ-arRNA151-AΔ14_AC50の編集された読み取り値を示すIGVの結果を示す。
図5K図5Kは、インビトロ環状化circ-arRNA151-AΔ14が用量依存的に標的部位で効率的なRNA編集を達成することを示す。n=2、平均±SD。
図5L図5Lは、GAPDHに対して正規化された、ADAR1p110、ADAR1p150、及びADAR2の相対発現レベルを示すヒートマップを示す。
図5M図5Mは、GAPDHに対して正規化されたインターフェロン刺激遺伝子の相対発現レベルを示すヒートマップを示す;n=2、平均±SD。
図6A図6A~6Gは、circ-arRNAによって回復された変異体TP53W53Xの転写調節活性を示す。図6Aは、circ-arRNA151_AC50(上)及びcirc-arRNA151-AΔ4_AC50(下)によって標的化されるTP53転写配列の概略図を示す。
図6B図6Bは、circ-arRNA151、circ-arRNA151-AG1、circ-arRNA151-AG4、circ-arRNA151-AΔ1、circ-arRNA151-AΔ4、circ-arRNA151_AC50、及びcirc-arRNA151-AΔ4_AC50によるTP53W53X転写物の標的化編集を示すディープシーケンシングの結果を示す。
図6C図6Cは、HEK293T TP53-/-細胞におけるTP53W53X転写物からのcirc-arRNAによる全長p53タンパク質の産生の回復を示すウェスタンブロットを示す。
図6D図6Dは、同時トランスフェクトされたエクオレア-ルシフェラーゼベクターによって正規化された、復元されたp53タンパク質の転写調節活性を検出するためのp53-ホタルルシフェラーゼレポーターシステムの使用を示す。
図6E図6Eは、A18番目、A25番目、A33番目、A41番目、A42番目、A47番目、A59番目及びA87番目におけるcirc-arRNA151及びcirc-arRNA151-AΔ8のオフターゲット編集比率のディープシーケンシングの結果を示す。すべてのデータは平均値±S.E.M.(n=3)を表し、nは並行して実行された独立した実験の数を示す。
図6F図6Fは、臨床的に関連するc.158GからAへのナンセンス変異(Trp53Ter)を含む151-ntのarRNAによってカバーされるTP53W53X転写物配列の概略図を示す。黒い矢印は、標的化されたアデノシンを示す。TP53W53X転写物を標的とするcirc-arRNAは、容易に編集可能なモチーフにおける潜在的なオフターゲット編集を最小限に抑えるために、A66番目、A36番目、A111番目、及びA114番目の反対側にU欠失をもつように設計された。
図6G図6Gは、TP53W53X転写物(青色で強調表示)中の示されたcirc-arRNAによってカバーされるアデノシンの編集比率のヒートマップを示す。Δはcirc-arRNAのU欠失部位を示す;n=3。
図7A図7A~7Cは、circ-arRNAによるハーラー症候群マウスにおけるIDUA活性の回復を示す図である。図7Aは、マウス肝細胞におけるIdua転写物の標的化アデノシンの編集比率を示すディープシーケンシングの結果を示す。
図7B図7Bは、4-メチルウンベリフェロンIDUA基質に対するIDUAの触媒活性を示す。
図7C図7Cは、異なる処理におけるIdua転写物の発現レベルを示す定量的PCR結果を示す。シグナルはGAPDH転写物で正規化された。すべてのデータは平均±S.E.M.(n≧3)として表され、nは並行して実行された独立した実験の数を表す;対応のない両側スチューデントt検定、*P<0.05;**P<0.01。
図8A図8Aは、arRNA配列の5’末端及び3’末端に隣接する隣接リンカー配列を有する環状arRNA(circ-arRNA)の概略図を示す図である。
図8B図8Bは、circ-arRNAの様々な設計における隣接リンカー配列の位置を示す図である。
図8C図8Cは、LLC-MK2細胞及びFRHK-4細胞におけるmf-PPIA-UTR2を標的とする様々なcirc-arRNAのオンターゲット編集効率を示す図である。
図8D図8Dは、LLC-MK2細胞においてcirc-arRNA171、circ-arRNA171-L、circ-arRNA171-R、及びcirc-arRNA171-LRを使用したmf-PPIA-UTR2アンプリコンの各アデノシン(位置はx軸にマークされている)編集(つまり、AからGへの変換)率を示す図である。
図8E図8Eは、LLC-MK2細胞及びFRHK-4細胞におけるmf-PPIA-3を標的とする様々なcirc-arRNAのオンターゲット編集効率を示す図である。
図8F図8Fは、FRHK-4細胞におけるcirc-arRNA171、circ-arRNA171-R、及び無関係arRNA(UT)を使用した、mf-PPIA-3アンプリコンにおける各アデノシンの編集比率を示す図である。
図8G図8Gは、LLC-MK2細胞及びFRHK-4細胞におけるmf-IDUA-1を標的とする様々なcirc-arRNAのオンターゲット編集効率を示す。
図8H図8Hは、LLC-MK2細胞におけるcirc-arRNA171、circ-arRNA171+LR、及び無関係arRNA(UT)を使用した、mf-IDUA-1アンプリコンにおける各アデノシンの編集比率を示す図である。
図9A図9Aは、FRHK及びLLC-MK2細胞におけるcirc-arRNA171及びU欠失(-1、-2、-3、-4、-43、-432、及び-4321)を含むcirc-arRNA構築物の使用による、mf-PPIA-3アンプリコンの位置127(4オフターゲット)、132(3オフターゲット)、155(オンターゲット)、160(2オフターゲット)、及び168(1オフターゲット)の編集比率のヒートマップを示す図である。
図9B図9Bは、FRHK及びLLC-MK2細胞におけるcirc-arRNA171及びU欠失(-1、-2、-3、-4、-43、-432、及び-4321)を含むcirc-arRNA構築物の使用による、mf-IDUA-1アンプリコンの位置62(4オフターゲット)、91(3オフターゲット)、102(2オフターゲット)、118(1オフターゲット)、及び134(オンターゲット)の編集比率のヒートマップを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
本出願は、宿主細胞における標的RNAを編集するために、改善されたRNA編集法及び特別に設計されたRNA(本明細書ではデアミナーゼ動員RNA(「dRNA」)またはADAR-動員RNA(「arRNA」)、またはこれらのarRNAをコードする核酸を含む構築物と呼ばれる)を提供する。
【0045】
「LEAPER」(内因性ADARを使用したRNAのプログラム可能編集)は、本願の発明者らによって以前に開発されており、内因性ADARを利用して、dRNAを用いて標的RNAを編集する。LEAPER法は、WO2021/008447及びPCT/CN2021/071292に記載されており、それらの内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。具体的には、標的転写物に部分的に相補的な標的化RNAを使用してネイティブADAR1またはADAR2を動員し、オンターゲットRNA上の特定の部位でアデノシンをイノシンに変換する。したがって、宿主細胞内でADARタンパク質を異常発現または過剰発現させることなく、一部のシステムではRNA編集を実現できる。
【0046】
本願は、編集効率の向上、オフターゲット(本明細書では「バイスタンダー編集」とも呼ばれる)効果の低減、及び/またはより正確で耐久性のあるRNA編集を可能にする改良されたLEAPER方法を提供する。いくつかの実施形態では、dRNAは線形または環状であり、dRNAは、標的RNA中の非標的アデノシンと塩基対を形成する1つ以上のウリジンの欠失を含む。いくつかの実施形態では、dRNAは、環状RNA、または環状RNAを形成することができる線形RNAであり、環状RNAは、標的RNAに部分的に相補的な標的化RNA配列に隣接する1つ以上のリンカー配列を含む。リンカー配列は、二次構造を形成しやすいRNA配列を標的とする環状dRNAのオンターゲット編集効率を高めることができる。本明細書に記載される環状dRNAは、線形dRNAと比較して安定性及び有効性が向上する。ここで説明する方法は、病原性点突然変異を修正するために使用することに成功している。改良されたLEAPER方法は、治療や生物医学研究に幅広い応用可能性をもたらすことができる。
【0047】
したがって、本願の一態様は、デアミナーゼ動員RNA(dRNA)、またはdRNAをコードする核酸配列を含む構築物を宿主細胞に導入することを含む、前記宿主細胞において標的RNA中の標的アデノシンを編集する方法を提供し、ここで、(1)dRNAが、標的RNAにハイブリダイズして二本鎖RNAを形成することができる標的化RNA配列を含み、二本鎖RNAが、標的RNA中の非標的アデノシンを含有するバルジを含み、かつ(2)dRNAが、RNAに作用するアデノシンデアミナーゼ(ADAR)を動員することができる。
【0048】
本願の別の態様は、dRNA、またはdRNAをコードする核酸配列を含む構築物を宿主細胞に導入することを含む、前記宿主細胞において標的RNA中の標的アデノシンを編集する方法を提供し、ここで、(1)dRNAが、標的RNAにハイブリダイズすることができる標的化RNA配列を含み、dRNAが、標的化RNA配列の末端に隣接するリンカー核酸配列を含み、リンカー核酸配列が、dRNAのいかなる部分とも実質的に二次構造を形成しなく、(2)dRNAが、ADARを動員することができ、かつ(3)dRNAが、環状RNA、または環状RNAを形成し得る線形RNAである。
【0049】
本願の別の態様は、dRNA、またはdRNAをコードする核酸配列を含む構築物を宿主細胞に導入することを含む、前記宿主細胞において標的RNA中の標的アデノシンを編集する方法を提供し、ここで、(1)dRNAが、標的RNAにハイブリダイズすることができる標的化RNA配列を含み、dRNAが、標的化RNA配列の末端を置換するリンカー核酸配列を含み、リンカー核酸配列が、dRNAのいかなる部分とも実質的に二次構造を形成しなく、(2)dRNAが、ADARを動員することができ、かつ(3)dRNAが、環状RNA、または環状RNAを形成し得る線形RNAである。
【0050】
I.定義
他に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書で言及されるすべての特許、出願、公開出願、及びその他の刊行物は、その全体が参照により組み込まれる。このセクションに記載されている定義が、参照により本明細書に組み込まれる特許、出願、またはその他の出版物に記載されている定義と相反または矛盾している限り、このセクションに記載されている定義は、参照により本明細書に組み込まれる定義より優先される。
【0051】
明確にするために別個の実施形態の文脈で説明される本開示の特定の特徴は、単一の実施形態に組み合わせて提供されてもよいことを理解されたい。逆に、簡潔にするために単一の実施形態の文脈で説明される本開示のさまざまな特徴は、個別に、または任意の適切なサブコンビネーションで提供されてもよい。特定の方法ステップ、試薬、または条件に関する実施形態のすべての組み合わせが特に本開示に含まれ、あたかも各組み合わせが個別に明示的に開示されているかのように本明細書に開示される。
【0052】
本明細書で使用される場合、「バルジ」という用語は、核酸二本鎖の一方の鎖における1つ以上の不対ヌクレオチド(例えば、非標的アデノシン)によって形成される核酸二本鎖における非対称のバブリング領域を指す。本明細書に記載のバルジは、一方の鎖に完全に不対の領域を有し、反対側の鎖には対応する相補的領域を一切有さない場合がある。あるいは、本明細書に記載されるバルジは、異なる数のヌクレオチドを有する2つの非相補的領域(各鎖に1つ)から形成され得、これは、ワトソン・クリック塩基対を形成しないミスマッチヌクレオチドをさらに含み得る。2つの非相補的領域のうち長い方は、反対側の鎖の非相補的領域内のどのヌクレオチドとも対にならない少なくとも1つのヌクレオチド(例えば、非標的アデノシン)を有する。すなわち、反対側の鎖は、バルジに隣接する核酸配列に相補的な核酸配列を含むが、反対側の鎖はバルジ内のヌクレオチド(例えば、非標的アデノシン)に対向する少なくとも1つのヌクレオチドを含まない。本明細書で使用される場合、「バルジ」には、核酸二本鎖の一方の鎖内に位置するヌクレオチドの完全なミスマッチ領域は含まれない。すなわち、反対側の鎖は、バルジ内のすべてのヌクレオチドに相補的ではないヌクレオチドを含み、その結果、核酸二本鎖に対称的なバブリングが生じる。いくつかの実施形態では、バルジは、不対ヌクレオチドを有する鎖内に1、2、3、4、5、または5を超えるヌクレオチドを含む。例えば、図5Aの模式図に示される二本鎖は、mRNA鎖(上部鎖)に1ヌクレオチドを含むバルジを有し、このヌクレオチドは線形arRNAdC鎖(下部鎖)ヌクレオチドに対応するものを持たない非標的アデノシンである。
【0053】
第1の核酸鎖及び第2の核酸鎖が二本鎖核酸領域を形成する場合、第2の核酸鎖の第2のヌクレオシドと塩基対合した第1の核酸鎖の第1のヌクレオシドは、本明細書では互いに「対向する」または「対応する」と記載される。すなわち、第1のヌクレオシドは第2のヌクレオシドに対向し、第2のヌクレオシドは第1のヌクレオシドに対向する。
【0054】
「ポリヌクレオチド」、「核酸」、「ヌクレオチド配列」及び「核酸配列」という用語は置き換えて使用できる。それらは、デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドのいずれか、またはそれらの類似体のいずれかの任意の長さのヌクレオチドのポリマー形態を指す。当業者であれば、ウラシルを表すのに「u」を使用し、チミンを表すのに「t」を使用する代わりに、ウラシルとチミンの両方を「t」で表すことができることを理解するであろう。また、リボ核酸(RNA)に関しては、特に明記しない限り、「t」はウラシルを表すために使用されることが理解されるであろう。
【0055】
「デアミナーゼ動員RNA」、「dRNA」、「ADAR動員RNA」及び「arRNA」という用語は、本明細書では置き換えて使用でき、RNA中の標的アデノシンを脱アミノ化するためにADARを動員することができる操作されたRNAを指す。
【0056】
「グループIイントロン」及び「グループI触媒イントロン」という用語は互換的に使用され、RNA前駆体からのそれ自体の切除を触媒する自己スプライシングリボザイムを指す。グループIイントロンは、5’触媒グループIイントロンフラグメントと3’触媒グループIイントロンフラグメントの2つのフラグメントを含み、フォールディング機能と触媒機能(つまり、自己スプライシング活性)を保持している。天然環境では、5’触媒グループIイントロンフラグメントの5’末端に、5’触媒グループIイントロンフラグメントによって認識可能な5’エクソン配列を含む5’エクソンが隣接しており、3’触媒グループIイントロンフラグメントの3’末端に、3’触媒グループIイントロンフラグメントによって認識可能な3’エクソン配列を含む3’エクソンが隣接している。本明細書で使用される場合、「5’エクソン配列」及び「3’エクソン配列」という用語は、グループIイントロンに対する自然環境におけるエクソンの順序にしたがって標識される。
【0057】
本明細書で使用される「アデニン」、「グアニン」、「シトシン」、「チミン」、「ウラシル」及び「ヒポキサンチン」という用語は、核酸塩基それ自体を指す。「アデノシン」、「グアノシン」、「シチジン」、「チミジン」、「ウリジン」及び「イノシン」という用語は、リボースまたはデオキシリボース糖部分に結合された核酸塩基を指す。「ヌクレオシド」という用語は、リボースまたはデオキシリボースに結合した核酸塩基を指す。「ヌクレオチド」という用語は、それぞれの核酸塩基-リボシル-リン酸または核酸塩基-デオキシリボシル-リン酸を指す。アデノシンとアデニン(略して「A」)、グアノシンとグアニン(略して「G」)、シトシンとシチジン(略して「C」)、ウラシルとウリジン(略して、「U」)、チミン及びチミジン(略して「T」)、イノシン及びヒポキサンチン(略して「I」)は、対応する核酸塩基、ヌクレオシドまたはヌクレオチドを指し、交換可能に使用される。文脈が明らかに異なって要求しない限り、核酸塩基、ヌクレオシド及びヌクレオチドという用語は交換可能に使用されることがある。
【0058】
「機能的タンパク質」という用語は、遺伝性疾患または遺伝的症状の治療において機能的である、天然に存在するタンパク質、その機能的変異体、またはその操作された誘導体を指す。疾患または症状は、機能的タンパク質に対応する野生型の天然タンパク質における突然変異などの変化によって、全体的または部分的に引き起こされる可能性がある。
【0059】
参照タンパク質の「機能的バリアント」という用語は、参照タンパク質またはその一部に由来し、参照タンパク質と実質的に同じ活性(例えば、標的結合活性または酵素活性)を有するバリアントポリペプチドを指す。「実質的に同じ活性」とは、参照タンパク質の活性の少なくとも約20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、またはそれ以上の活性レベルを意味する。
【0060】
本開示は、バリアント及び誘導体を含む、いくつかのタイプのポリヌクレオチドまたはポリペプチドに基づく組成物を提供する。これらには、例えば、置換、挿入、欠失及び共有結合バリアント及び誘導体が含まれる。「誘導体」という用語は「バリアント」という用語と同義であり、一般に、参照分子または出発分子に対して何らかの方法で修飾及び/または変更された分子を指す。
【0061】
本明細書で使用される「導入すること」または「導入」という用語は、dRNAなどの1つ以上のポリヌクレオチド、または本明細書に記載のベクターを含む1つ以上の構築物、その1つ以上の転写物の宿主細胞への送達を指す。本発明は、プレメッセンジャーRNA、メッセンジャーRNA、リボソームRNA、トランスファーRNA、長鎖非コードRNA、及び低分子RNA(例えば、miRNA)などのRNAの標的編集を達成するための基本プラットフォームとして機能する。本願の方法は、ウイルス、リポソーム、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、及びコンジュゲーションを含むがこれらに限定されない多くの送達システムを使用して、本明細書に記載されるdRNAまたは構築物の前記宿主細胞への導入を達成することができる。従来のウイルス及び非ウイルス遺伝子導入法を使用して、哺乳動物細胞または標的組織に核酸を導入できる。このような方法は、本願のdRNAをコードする核酸を培養中の細胞または宿主生物に投与するために使用することができる。非ウイルスベクター送達システムには、DNAプラスミド、RNA(例えば、本明細書に記載の構築物の転写物)、裸の核酸、及び送達ビヒクル(例えば、リポソーム)と複合体を形成した核酸が含まれる。ウイルスベクター送達システムには、宿主細胞に送達するためのエピソームゲノムまたは組み込まれたゲノムを有するDNAウイルス及びRNAウイルスが含まれる。
【0062】
本出願の文脈において、「標的RNA」は、デアミナーゼ動員RNA配列がそれと完全な相補性または実質的な相補性を有するように設計され、標的配列とdRNAとの間のハイブリダイゼーションが、標的アデノシンを含む二本鎖RNA(dsRNA)領域を形成するRNA配列を指し、それはRNAに作用するアデノシンデアミナーゼ(ADAR)が、標的アデノシンを脱アミノ化するように動員する。一部の実施形態において、ADARは、真核細胞(好ましくは、哺乳動物細胞、より好ましくは、ヒト細胞)などの宿主細胞に自然に存在する。一部の実施形態において、ADARは、宿主細胞に導入される。
【0063】
本明細書で使用される場合、「作動可能に連結された」とは、第2の核酸配列に作動可能に連結された第1の核酸配列である場合、第1の核酸配列が第2の核酸配列と機能的関係にある状況を指す。例えば、プロモーターがコード配列の転写に影響を及ぼす場合、プロモーターはコード配列に作動可能に連結される。同様に、シグナルペプチドがポリペプチドの細胞外分泌に影響を及ぼす場合、シグナルペプチドのコード配列は、ポリペプチドのコード配列に作動可能に連結される。通常、作動可能に連結された核酸配列は連続しており、2つのタンパク質コード領域を連結するために必要な場合にはオープンリーディングフレームが整列している。
【0064】
本明細書で使用される場合、「連結する」とは、例えば挿入された核酸配列を介して核酸配列を直接的または間接的に結合することを意味する。
【0065】
本明細書で使用される場合、「相補性」は、従来のワトソン-クリック(Watson-Crick)塩基対形成によって別の核酸と水素結合を形成する核酸の能力を指す。パーセント相補性は、第2の核酸と水素結合(すなわち、ワトソン-クリック(Watson-Crick)塩基対形成)を形成することができる核酸分子中の残基のパーセンテージを示す(例えば、10のうち約5、6、7、8、9、10がそれぞれ約50%、60%、70%、80%、90%、及び100%相補的である)。「完全に相補的」とは、核酸配列のすべての連続する残基が、第2の核酸配列における同じ数の連続する残基と水素結合を形成することを意味する。本明細書で使用される「実質的に相補的」とは、約40、50、60、70、80、100、150、200、250またはそれ以上のヌクレオチドの領域にわたって、少なくとも約70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、または100のいずれか1つである相補性の程度、またはストリンジェントな条件下でハイブリダイズする2つの核酸を指す。
【0066】
本明細書で使用される場合、ハイブリダイゼーションの「ストリンジェントな条件」とは、標的配列に対して相補性を有する核酸が主に標的配列とハイブリダイズし、実質的に非標的配列にハイブリダイズしない条件を指す。ストリンジェントな条件は一般に配列に依存し、多くの要因によって異なる。一般に、配列が長いほど、その配列がその標的配列に特異的にハイブリダイズする温度は高くなる。ストリンジェントな条件の非限定的な例は、Tijssen(1993),Laboratory Techniques In Biochemistry And Molecular Biology- Hybridization With Nucleic Acid Probes Part I,Second Chapter “Principles of principles of hybridization and the strategy of nucleic acid probe assay”,Elsevier,N,Yに詳細に記載されている。
【0067】
「ハイブリダイゼーション」とは、1つ以上のポリヌクレオチドが反応して、ヌクレオチド残基の塩基間の水素結合を介して安定化される複合体を形成する反応を指す。水素結合は、ワトソンクリック(Watson-Crick)塩基対形成、フーグスティーン(Hoogstein)結合、またはその他の配列特異的な方法で発生できる。所定の配列とハイブリダイズすることができる配列は、所定の配列の「相補体」と呼ばれる。
【0068】
「被験者」、「患者」、または「個体」は、ヒトまたは他の動物、典型的にはヒトなどの哺乳動物を含む。いくつかの実施形態では、治療薬及び組成物が投与される患者などの被験者は、哺乳動物、典型的にはヒトなどの霊長類である。いくつかの実施形態では、霊長類はサルまたは類人猿である。被験者は男性でも女性でもよく、幼児、青少年、青年、成人、高齢者を含む任意の適切な年齢であってもよい。いくつかの実施形態では、被験者は、げっ歯類、イヌ、ネコ、ウシまたはウマなどの家畜などの非霊長類哺乳動物である。
【0069】
本明細書で使用されるように、「治療」という用語は、臨床病理中に治療される個体または細胞の自然なプロセスに対して有益かつ望ましい効果をもたらすように設計された臨床介入を指す。本開示の目的のために、所望の治療結果には、疾患進行速度の低下、疾患状態の改善または緩和、及び予後の緩和または改善が含まれるが、これらに限定されない。例えば、がん細胞の増殖の減少(または破壊)、がん細胞の死滅の増加、疾患によって引き起こされる症状の緩和、疾患の蔓延の予防、疾患の再発の予防、疾患に罹患しているヒトの生活の質の改善、疾患の治療に必要な他の薬剤の剤量の低減、疾患の進行の遅延、及び/または個体の生存期間の延長が含まれるがこれらに限定されない、がんに関連する1つ以上の症状が軽減または除去された場合、その個体は成功裏に「治療」された。
【0070】
本明細書で使用されるように、物質の「有効量」または「治療有効量」という用語は、特定の状態の測定可能な改善または予防を達成するために必要な少なくとも最小濃度である。本明細書における有効量は、患者の病状、年齢、性別及び体重、ならびに個体において所望の反応を誘発する物質の能力などの要因に応じて変化し得る。有効量は、治療のあらゆる毒性または有害な効果が、治療上有益な効果によって相殺される量でもある。がんの場合、有効量には、腫瘍の縮小を引き起こす、及び/または腫瘍増殖速度を低下させる(例えば、腫瘍増殖を阻害する)、またはがんにおける他の望ましくない細胞増殖を防止もしくは遅延させるのに十分な量が含まれる。いくつかの実施形態では、有効量は、がんの進行を遅らせるのに十分な量である。いくつかの実施形態では、有効量は、再発を予防または遅らせるのに十分な量である。いくつかの実施形態では、有効量は、個体における再発率を低下させるのに十分な量である。有効量を1回または複数回投与することができる。有効量の薬剤または組成物は、(i)がん細胞の数を減少させ、(ii)腫瘍のサイズを減少させ、(iii)末梢臓器へのがん細胞の浸潤をある程度阻害、遅延、遅くし、好ましくは防止することができ、(iv)腫瘍転移を阻害し(すなわち、ある程度減速させ、好ましくはある程度まで停止させる)、(v)腫瘍増殖を阻害し、(vi)腫瘍の発生及び/または再発を予防または遅延させ、(vii)腫瘍の再発率を低下させ、及び/または(viii)がんに関連する1つ以上の症状をある程度軽減する。有効量を1回または複数回投与することができる。本開示の目的のため、薬物、化合物、または医薬組成物の有効量は、直接的または間接的に予防的または治療的処置をもたらすのに十分な量である。臨床の文脈で理解されるように、有効量の薬剤、化合物または医薬組成物は、別の薬剤、化合物または医薬組成物と組み合わせて達成される場合もあれば、別の薬物、化合物または医薬組成物と組み合わせずに達成される場合もある。したがって、「有効量」は、1つまたは複数の治療薬が投与される場合に考慮され得、また、1つまたは複数の他の薬剤と組み合わせて、所望の結果が、達成される可能性があるまたは達成できる場合、有効量の単一薬剤の投与を考慮してもよい。
【0071】
本明細書で使用される「野生型」という用語は、変異体またはバリアントとは異なり、自然界に見られる生物、株、遺伝子または特徴の典型的な形態を指すと当業者に理解される用語である。
【0072】
本明細書に記載の「宿主細胞」とは、本明細書に記載のように修飾されることができる限り、宿主細胞として使用することができる任意の細胞型を指す。例えば、宿主細胞は、RNAに作用するアデノシンデアミナーゼ(ADAR)を内因的に発現する宿主細胞であり得るか、またはRNAに作用するアデノシンデアミナーゼ(ADAR)が本分野で既知の方法によって導入される宿主細胞であり得る。例えば、宿主細胞は、原核細胞、真核細胞、または植物細胞であってもよい。一部の実施形態において、宿主細胞は、ヒト細胞株または非ヒト細胞株を含む哺乳動物細胞株などの予め確立された細胞株に由来する。一部の実施形態において、宿主細胞は、ヒト個体などの個体に由来する。
【0073】
「組換えAAVベクター(rAAVベクター)」とは、少なくとも1つ、実施形態では2つのAAV逆方向末端反復配列(ITR)に隣接する1つ以上の異種配列(すなわち、非AAV由来の核酸配列)を含むポリヌクレオチドベクターを指す。このようなrAAVベクターが、適切なヘルパーウイルス(または適切なヘルパー機能を発現するウイルス)に感染し、AAV rep及びcap遺伝子産物(すなわち、AAV Rep及びCapタンパク質)を発現する宿主内に存在する場合、それらは複製され、感染性ウイルス粒子にパッケージングされ得る。rAAVベクターがより大きなポリヌクレオチド(例えば、染色体、またはクローニングもしくはトランスフェクションに使用されるプラスミドなどの別のベクター)に組み込まれる場合、rAAVベクターは「プレベクター」と呼ばれることができ、AAVパッケージング機能と適切な補助機能の存在下で複製してカプセル化することによって「救出」できる。rAAVベクターは、プラスミド、線状人工染色体、脂質と複合体を形成したもの、リポソームにカプセル化されたもの、ウイルス粒子、特にAAV粒子にカプセル化されたものを含むがこれらに限定されない、様々な形態のいずれであってもよい。rAAVベクターをAAVウイルスキャプシドにパッケージングして、「組換えアデノ随伴ウイルス粒子(rAAV粒子)」を生成することができる。
【0074】
「AAV逆方向末端反復(ITR)」配列は、当技術分野で周知の用語であり、天然の一本鎖AAVゲノムの両端に存在する約145ヌクレオチドの配列である。ITRの最も外側の125ヌクレオチドは、2つの逆の配向のいずれかで存在する可能性があり、異なるAAVゲノム間及び単一AAVゲノムの末端間で不均一性が生じる。最も外側の125ヌクレオチドには、ITRのこの部分内で鎖内塩基対形成が発生できるようにする、いくつかの短い自己相補的領域(A、A’、B、B’、C、C’、及びD領域と呼ばれる)も含まれている。
【0075】
したがって、ペプチドまたはポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、本開示の範囲内に含まれ、前記ペプチドまたはポリペプチドは、参照配列、特に本明細書に開示されるポリペプチド配列の置換、挿入及び/または付加、欠失及び共有結合修飾を含む。例えば、配列タグまたはアミノ酸、例えば1つ以上のリジンをペプチド配列に(例えば、N末端またはC末端に)付加することができる。配列タグは、ペプチドの検出、精製、または位置特定に使用できる。リジンを使用すると、ペプチドの溶解度を高めたり、ビオチン化を可能にしたりできる。あるいは、ペプチドまたはタンパク質のアミノ酸配列のカルボキシル及びアミノ末端領域に位置するアミノ酸残基を任意に削除して、トランケートされた配列を提供することができる。配列の使用に応じて、例えば、可溶性または固体支持体に連結されたより大きな配列の一部として配列を発現する場合、特定のアミノ酸(例えば、C末端残基またはN末端残基)が代替的に削除され得る。
【0076】
「非天然的に存在する」または「操作された」という用語は置き換えて使用され、人工の関与を示す。核酸分子またはポリペプチドに言及する場合、これらの用語は、核酸分子またはポリペプチドが、自然界で自然に結合し、自然界に見出される少なくとも1つの他の成分を少なくとも実質的に含まないことを意味する。
【0077】
本明細書で使用される場合、「発現」とは、ポリヌクレオチドがDNAテンプレートから(例えば、mRNAまたは他のRNA転写物へ)転写されるプロセス、及び/または転写されたmRNAのその後のペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質への翻訳を指す。転写物及びコードされたポリペプチドは、総称して「遺伝子産物」と呼ばれることがある。ポリヌクレオチドがゲノムDNAに由来する場合、発現には真核細胞におけるmRNAのスプライシングが含まれ得る。
【0078】
本明細書で使用される場合、「担体」には、曝露される細胞または哺乳動物に対して使用される用量及び濃度で非毒性である薬学的に許容される担体、賦形剤、または安定剤が含まれる。典型的には、生理学的に許容される担体は、pH緩衝水溶液である。生理学的に許容される担体の非限定的な例としては、リン酸塩、クエン酸塩、及び他の有機酸などの緩衝液;アスコルビン酸などの抗酸化剤;低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性重合体;グリシン、グルタミン、アスパラギン酸、アルギニンまたはリシンなどのアミノ酸;単糖、二糖、及びグルコース、マンノース、またはデキストリンを含む他の糖類;EDTAなどのキレート剤;マンニトールまたはソルビトールなどの糖アルコール;ナトリウムなどの塩形成対イオン;及び/またはTWEEN(商標)、ポリエチレングリコール(PEG)、及びPLURONICS(商標)などの非イオン性界面活性剤が挙げられる。
【0079】
「プロトコル」という用語は、治療用製品の市販パッケージに通常含まれている説明書を指し、そのような治療製品の使用に関する適応症、使用法、投与量、投与、併用療法、禁忌、及び/または警告などの情報が含まれている。
【0080】
「製品」は、少なくとも1つの試薬、例えば、疾患または症状を治療するための薬剤を含む任意の製品(例えば、パッケージまたは容器)またはキットである。いくつかの実施形態では、製品またはキットは、本明細書に記載の方法を実行するためのユニットとして宣伝、配布、または販売される。
【0081】
本明細書で使用される場合、「からなる」、「含有」、及び「含む」という用語は、オープンで非限定的な意味で使用される。また、本明細書に記載される本願の態様及び実施形態は、「から構成される」及び/または「本質的に…から構成される」態様及び実施形態を含み得ることも理解されよう。
【0082】
「約」という用語が明示的に使用されるかどうかにかかわらず、本明細書で与えられる各量は、実際の所定の値を意味し、また、当業者の通常の技術に基づいて合理的に推測できるそのような所定の値の近似値も意味することが理解されるであろう。この近似値は、そのような所定の値の実験条件及び/または測定条件から得られる等価物及び近似値を含む。本明細書における値またはパラメータの「約」への言及には、値またはパラメータ自体に関する変動が含まれる(及び説明される)。例えば、「約X」についての記述には、「X」に関する記述が含まれる。
【0083】
本明細書で使用される場合、「ではない」値またはパラメータへの言及は、一般に、その値またはパラメータとは「異なる」ことを意味し、説明する。例えば、X型疾患の治療に使用されない方法は、その方法がX型以外の疾患の治療に使用されることを意味する。
【0084】
本明細書において使用される用語「約X~Y」は、「約X~約Y」と同じ意味を有する。
【0085】
本明細書及び添付の請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈上明らかに別段の指示がない限り、複数の指示対象を含む。また、任意の要素を除外するように請求項を作成できることにも注意されたい。したがって、この記述は、請求項の要素を参照する場合、または「否定的な」制限を使用する場合に、「のみ」や「だけ」などの排他的な用語を使用するための先行根拠として機能することを目的としている。
【0086】
本明細書で使用される「及び/または」という用語、例えば、「A及び/またはB」などの語句は、AとBとの両方、AまたはB、A(単独)、及びB(単独)を含むことを意図する。同様に、本明細書で使用される用語「及び/または」、「A、B及び/またはC」などの語句は、以下の実施形態のそれぞれを包含することを意図している:A、B及びC;A、BまたはC;AまたはC;AまたはB;BまたはC;AとC;AとB;BとC;A(単独);B(単独);C(単独)。
【0087】
II.RNA編集方法
本明細書では、標的化RNA配列を含むデアミナーゼ動員RNA(dRNA)を使用して宿主細胞内の標的RNAを編集する方法が提供され、このデアミナーゼ動員RNAは、標的RNA内の非標的アデノシンを含む領域の反対側の1つ以上のヌクレオシドの欠失を有し、及び/または標的化RNA配列の5’及び/または3’末端に隣接する1つ以上のリンカー核配列酸を含み、ここで、dRNAはRNAに作用するアデノシンデアミナーゼ(ADAR)を動員できる。dRNAは、以下のセクションIII(「dRNA、構築物及びライブラリー」)に記載されるdRNAのいずれかであり得る。いくつかの実施形態では、dRNAは線形である。いくつかの実施形態では、dRNAは環状である。いくつかの実施形態では、dRNAは、環状RNAを形成することができる線形RNAである。いくつかの実施形態では、前記方法は、dRNAをコードする核酸配列を含む構築物を使用する。前記構築物は、以下のセクションIIIに記載される構築物のいずれであってもよい。
【0088】
いくつかの実施形態では、dRNA、またはdRNAをコードする核酸配列を含む構築物を宿主細胞に導入することを含む、前記宿主細胞において標的RNA中の標的アデノシンを編集する方法が提供され、ここで、(1)dRNAは、標的RNAにハイブリダイズして二本鎖RNAを形成することができる標的化RNA配列を含み、二本鎖RNAは、標的RNA中の非標的アデノシンを含有するバルジを含み、(2)dRNAは、ADARを動員することができる。いくつかの実施形態では、二本鎖RNAが、標的RNA中の各非標的アデノシンにバルジを含む。いくつかの実施形態では、標的化RNA配列が、標的RNA中の非標的アデノシンの反対側の1つ以上のヌクレオチドを欠いていることを除いて、標的RNAに相補的である。いくつかの実施形態では、dRNAは線形である。いくつかの実施形態では、dRNAは環状である。いくつかの実施形態では、dRNAは、環状RNAを形成することができる線形RNAである。いくつかの実施形態では、前記方法は、任意のタンパク質またはタンパク質(例えば、Cas、ADAR、またはADARとCasの融合タンパク質)をコードする核酸を含む構築物を前記宿主細胞に導入することを含まない。
【0089】
いくつかの実施形態では、dRNA、またはdRNAをコードする核酸配列を含む構築物を宿主細胞に導入することを含む、前記宿主細胞において標的RNA中の標的アデノシンを編集する方法が提供され、ここで、(1)dRNAが、標的RNAにハイブリダイズすることができる標的化RNA配列を含み、dRNAが、標的化RNA配列の末端に隣接するリンカー核酸配列を含み、リンカー核酸配列が、dRNAのいかなる部分とも実質的に二次構造を形成しなく、(2)dRNAが、ADARを動員することができ、(3)dRNAが、環状RNA、または環状RNAを形成し得る線形RNAである。いくつかの実施形態では、リンカー核酸配列の長さが、約5nt~約500nt、例えば、約50nt~約200ntである。いくつかの実施形態では、リンカー核酸配列が、ポリアデノシン(ポリA)、ポリグアノシン(ポリG)、またはポリシトシン(ポリC)配列を含む。いくつかの実施形態では、リンカー核酸配列の少なくとも50%がアデノシンを含む。いくつかの実施形態では、リンカー核酸配列がジヌクレオチド反復配列を含み、例えば、(AT)を含み、ここで、nは3以上の整数である。いくつかの実施形態では、リンカー核酸配列が配列番号22を含む。いくつかの実施形態では、前記方法は、任意のタンパク質またはタンパク質(例えば、Cas、ADAR、またはADARとCasの融合タンパク質)をコードする核酸を含む構築物を前記宿主細胞に導入することを含まない。
【0090】
いくつかの実施形態では、dRNA、またはdRNAをコードする核酸配列を含む構築物を宿主細胞に導入することを含む、前記宿主細胞において標的RNA中の標的アデノシンを編集する方法が提供され、ここで、(1)dRNAが、標的RNAにハイブリダイズすることができる標的化RNA配列を含み、dRNAが、標的化RNA配列の5’末端に隣接する第1のリンカー核酸配列と、標的化RNA配列の3’末端に隣接する第2のリンカー核酸配列とを含み、リンカー核酸配列が、dRNAのいかなる部分とも実質的に二次構造を形成しなく、(2)dRNAが、ADARを動員することができ、(3)dRNAが、環状RNA、または環状RNAを形成し得る線形RNAである。いくつかの実施形態では、第1のリンカー核酸配列及び/または第2のリンカー核酸配列の長さが、約5nt~約500nt、例えば、約50nt~約200ntである。いくつかの実施形態では、第1のリンカー核酸配列が、第2のリンカー核酸配列と同じである。いくつかの実施形態では、第1のリンカー核酸配列が、第2のリンカー核酸配列とは異なる。いくつかの実施形態では、第1のリンカー核酸配列及び/または第2のリンカー核酸配列が、ポリアデノシン(ポリA)、ポリグアノシン(ポリG)、またはポリシトシン(ポリC)配列を含む。いくつかの実施形態では、第1のリンカー核酸配列及び/または第2のリンカー核酸配列がジヌクレオチド反復配列を含み、例えば、(AT)を含み、ここで、nは3以上の整数である。いくつかの実施形態では、第1のリンカー核酸配列及び/または第2のリンカー核酸配列が配列番号22を含む。いくつかの実施形態では、dRNAが環状RNAであり、リンカー核酸配列が、標的化RNA配列の5’末端と標的化RNA配列の3’末端とを連結する。いくつかの実施形態では、前記方法は、任意のタンパク質またはタンパク質(例えば、Cas、ADAR、またはADARとCasの融合タンパク質)をコードする核酸を含む構築物を前記宿主細胞に導入することを含まない。
【0091】
いくつかの実施形態では、dRNA、またはdRNAをコードする核酸配列を含む構築物を宿主細胞に導入することを含む、前記宿主細胞において標的RNA中の標的アデノシンを編集する方法が提供され、ここで、(1)dRNAが、標的RNAにハイブリダイズして二本鎖RNAを形成することができる標的化RNA配列を含み、二本鎖RNAが、標的RNA中の非標的アデノシンを含有するバルジを含み、dRNAが、標的化RNA配列の末端に隣接するリンカー核酸配列を含み、リンカー核酸配列が、dRNAのいかなる部分とも実質的に二次構造を形成しなく、(2)dRNAが、ADARを動員することができ、(3)dRNAが、環状RNA、または環状RNAを形成し得る線形RNAである。いくつかの実施形態では、二本鎖RNAが、標的RNA中の各非標的アデノシンにバルジを含む。いくつかの実施形態では、標的化RNA配列が、標的RNA中の非標的アデノシンの反対側の1つ以上のヌクレオチドを欠いていることを除いて、標的RNAに相補的である。いくつかの実施形態では、リンカー核酸配列の長さが、約5nt~約500nt、例えば、約50nt~約200ntである。いくつかの実施形態では、リンカー核酸配列が、ポリアデノシン(ポリA)、ポリグアノシン(ポリG)、またはポリシトシン(ポリC)配列を含む。いくつかの実施形態では、リンカー核酸配列の少なくとも50%がアデノシンを含む。いくつかの実施形態では、リンカー核酸配列がジヌクレオチド反復配列を含み、例えば、(AT)を含み、ここで、nは3以上の整数である。いくつかの実施形態では、リンカー核酸配列が配列番号22を含む。いくつかの実施形態では、dRNAが、標的化RNA配列の5’末端に隣接する第1のリンカー核酸配列と、標的化RNA配列の3’末端に隣接する第2のリンカー核酸配列とを含む。いくつかの実施形態では、dRNAが、標的化RNA配列の5’末端に隣接する第1のリンカー核酸配列と、標的化RNA配列の3’末端を置換する第2のリンカー核酸配列とを含む。いくつかの実施形態では、dRNAが、標的化RNA配列の5’末端を置換する第1のリンカー核酸配列と、標的化RNA配列の3’末端に隣接する第2のリンカー核酸配列とを含む。いくつかの実施形態では、dRNAが、標的化RNA配列の5’末端を置換する第1のリンカー核酸配列と、標的化RNA配列の3’末端を置換する第2のリンカー核酸配列とを含む。いくつかの実施形態では、第1のリンカー核酸配列が、第2のリンカー核酸配列と同じである。いくつかの実施形態では、第1のリンカー核酸配列が、第2のリンカー核酸配列とは異なる。いくつかの実施形態では、dRNAが環状RNAであり、リンカー核酸配列が、標的化RNA配列の5’末端と標的化RNA配列の3’末端とを連結する。いくつかの実施形態では、前記方法は、任意のタンパク質またはタンパク質(例えば、Cas、ADAR、またはADARとCasの融合タンパク質)をコードする核酸を含む構築物を宿主細胞に導入することを含まない。
【0092】
いくつかの実施形態では、環状dRNA、または環状dRNAをコードする核酸配列を含む構築物を宿主細胞に導入することを含む、前記宿主細胞において標的RNA中の標的アデノシンを編集する方法が提供され、ここで、(1)環状dRNAは、標的RNAにハイブリダイズして二本鎖RNAを形成することができる標的化RNA配列を含み、二本鎖RNAは、標的RNA中の非標的アデノシンを含有するバルジを含み、(2)環状dRNAは、ADARを動員することができる。いくつかの実施形態では、二本鎖RNAが、標的RNA中の各非標的アデノシンにバルジを含む。いくつかの実施形態では、標的化RNA配列が、標的RNA中の非標的アデノシンの反対側の1つ以上のヌクレオチドを欠いていることを除いて、標的RNAに相補的である。いくつかの実施形態では、環状dRNAが、標的化RNA配列の末端に隣接するリンカー核酸配列をさらに含み、リンカー核酸配列が、dRNAのいかなる部分とも実質的に二次構造を形成しない。いくつかの実施形態では、環状dRNAが、標的化RNA配列の末端を置換するリンカー核酸配列をさらに含み、リンカー核酸配列が、dRNAのいかなる部分とも実質的に二次構造を形成しない。いくつかの実施形態では、リンカー核酸配列の長さが、約5nt~約500nt、例えば、約50nt~約200ntである。いくつかの実施形態では、リンカー核酸配列が配列番号22を含む。いくつかの実施形態では、リンカー核酸配列が、標的化RNA配列の5’末端と標的化RNA配列の3’末端とを連結する。いくつかの実施形態では、dRNAが、標的化RNA配列の5’末端に隣接する第1のリンカー核酸配列と、標的化RNA配列の3’末端に隣接する第2のリンカー核酸配列とを含む。いくつかの実施形態では、dRNAが、標的化RNA配列の5’末端に隣接する第1のリンカー核酸配列と、標的化RNA配列の3’末端を置換する第2のリンカー核酸配列とを含む。いくつかの実施形態では、dRNAが、標的化RNA配列の5’末端を置換する第1のリンカー核酸配列と、標的化RNA配列の3’末端に隣接する第2のリンカー核酸配列とを含む。いくつかの実施形態では、dRNAが、標的化RNA配列の5’末端を置換する第1のリンカー核酸配列と、標的化RNA配列の3’末端を置換する第2のリンカー核酸配列とを含む。いくつかの実施形態では、dRNAが、標的化RNA配列の5’末端に隣接する3’触媒グループIイントロンフラグメントによって認識可能な3’エクソン配列と、標的化RNA配列の3’末端に隣接する5’触媒グループIイントロンフラグメントによって認識可能な5’エクソン配列とをさらに含む。いくつかの実施形態では、dRNAが、3’連結配列と5’連結配列とをさらに含む。いくつかの実施形態では、前記方法は、任意のタンパク質またはタンパク質(例えば、Cas、ADAR、またはADARとCasの融合タンパク質)をコードする核酸を含む構築物を宿主細胞に導入することを含まない。
【0093】
いくつかの実施形態では、(a)dRNA、またはdRNAをコードする核酸配列を含む構築物、及び(b)ADAR、またはADARをコードする核酸を含む構築物を宿主細胞に導入することを含む、前記宿主細胞において標的RNA中の標的アデノシンを編集する方法が提供され、ここで、(1)dRNAは、標的RNAにハイブリダイズして二本鎖RNAを形成することができる標的化RNA配列を含み、二本鎖RNAは、標的RNA中の非標的アデノシンを含有するバルジを含み、(2)dRNAは、ADARを動員することができる。いくつかの実施形態では、二本鎖RNAが、標的RNA中の各非標的アデノシンにバルジを含む。いくつかの実施形態では、標的化RNA配列が、標的RNA中の非標的アデノシンの反対側の1つ以上のヌクレオチドを欠いていることを除いて、標的RNAに相補的である。いくつかの実施形態では、ADARは、宿主細胞の内因的にコードされたADARであり、ADARの導入は、宿主細胞においてADARを過剰発現することを含む。いくつかの実施形態において、ADARは、宿主細胞に対して外因性である。いくつかの実施形態において、ADARをコードする核酸を含む構築物は、プラスミド、またはウイルスベクター(例えば、scAAVなどのAAV)などのベクターである。
【0094】
いくつかの実施形態では、(a)dRNA、またはdRNAをコードする核酸配列を含む構築物、及び(b)ADAR、またはADARをコードする核酸を含む構築物を宿主細胞に導入することを含む、前記宿主細胞において標的RNA中の標的アデノシンを編集する方法が提供され、ここで、(1)dRNAは、標的RNAにハイブリダイズすることができる標的化RNA配列を含み、dRNAが、標的化RNA配列の末端に隣接するリンカー核酸配列を含み、前記リンカー核酸配列が、dRNAのいかなる部分とも実質的に二次構造を形成しなく、(2)dRNAが、ADARを動員することができ、(3)dRNAが、環状RNA、または環状RNAを形成し得る線形RNAである。いくつかの実施形態では、リンカー核酸配列の長さが、約5nt~約500nt、例えば、約50nt~約200ntである。いくつかの実施形態では、リンカー核酸配列が、ポリアデノシン(ポリA)、ポリグアノシン(ポリG)、またはポリシトシン(ポリC)配列を含む。いくつかの実施形態では、リンカー核酸配列の少なくとも50%がアデノシンを含む。いくつかの実施形態では、リンカー核酸配列がジヌクレオチド反復配列を含み、例えば、(AT)を含み、ここで、nは3以上の整数である。いくつかの実施形態では、リンカー核酸配列が配列番号22を含む。いくつかの実施形態では、dRNAが、標的化RNA配列の5’末端に隣接する第1のリンカー核酸配列と、標的化RNA配列の3’末端に隣接する第2のリンカー核酸配列とを含む。いくつかの実施形態では、dRNAが、標的化RNA配列の5’末端に隣接する第1のリンカー核酸配列と、標的化RNA配列の3’末端を置換する第2のリンカー核酸配列とを含む。いくつかの実施形態では、dRNAが、標的化RNA配列の5’末端を置換する第1のリンカー核酸配列と、標的化RNA配列の3’末端に隣接する第2のリンカー核酸配列とを含む。いくつかの実施形態では、dRNAが、標的化RNA配列の5’末端を置換する第1のリンカー核酸配列と、標的化RNA配列の3’末端を置換する第2のリンカー核酸配列とを含む。いくつかの実施形態では、ADARは、宿主細胞の内因的にコードされたADARであり、ADARの導入は、宿主細胞においてADARを過剰発現することを含む。いくつかの実施形態において、ADARは、宿主細胞に対して外因性である。いくつかの実施形態において、ADARをコードする核酸を含む構築物は、プラスミド、またはウイルスベクター(例えば、scAAVなどのAAV)などのベクターである。
【0095】
いくつかの実施形態では、(a)dRNA、またはdRNAをコードする核酸配列を含む構築物、及び(b)ADAR、またはADARをコードする核酸を含む構築物を宿主細胞に導入することを含む、前記宿主細胞において標的RNA中の標的アデノシンを編集する方法が提供され、ここで、(1)dRNAは、標的RNAにハイブリダイズして二本鎖RNAを形成することができる標的化RNA配列を含み、二本鎖RNAは、標的RNA中の非標的アデノシンを含有するバルジを含み、dRNAが、標的化RNA配列の末端に隣接するリンカー核酸配列を含み、前記リンカー核酸配列が、dRNAのいかなる部分とも実質的に二次構造を形成しなく、(2)dRNAが、ADARを動員することができ、(3)dRNAが、環状RNA、または環状RNAを形成し得る線形RNAである。いくつかの実施形態では、二本鎖RNAが、標的RNA中の各非標的アデノシンにバルジを含む。いくつかの実施形態では、標的化RNA配列が、標的RNA中の非標的アデノシンの反対側の1つ以上のヌクレオチドを欠いていることを除いて、標的RNAに相補的である。いくつかの実施形態では、リンカー核酸配列の長さが、約5nt~約500nt、例えば、約50nt~約200ntである。いくつかの実施形態では、リンカー核酸配列が、ポリアデノシン(ポリA)、ポリグアノシン(ポリG)、またはポリシトシン(ポリC)配列を含む。いくつかの実施形態では、リンカー核酸配列の少なくとも50%がアデノシンを含む。いくつかの実施形態では、リンカー核酸配列がジヌクレオチド反復配列を含み、例えば、(AT)を含み、ここで、nは3以上の整数である。いくつかの実施形態では、リンカー核酸配列が配列番号22を含む。いくつかの実施形態では、dRNAが、標的化RNA配列の5’末端に隣接する第1のリンカー核酸配列と、標的化RNA配列の3’末端に隣接する第2のリンカー核酸配列とを含む。いくつかの実施形態では、dRNAが、標的化RNA配列の5’末端に隣接する第1のリンカー核酸配列と、標的化RNA配列の3’末端を置換する第2のリンカー核酸配列とを含む。いくつかの実施形態では、dRNAが、標的化RNA配列の5’末端を置換する第1のリンカー核酸配列と、標的化RNA配列の3’末端に隣接する第2のリンカー核酸配列とを含む。いくつかの実施形態では、dRNAが、標的化RNA配列の5’末端を置換する第1のリンカー核酸配列と、標的化RNA配列の3’末端を置換する第2のリンカー核酸配列とを含む。いくつかの実施形態では、dRNAが環状RNAであり、リンカー核酸配列が、標的化RNA配列の5’末端と標的化RNA配列の3’末端とを連結する。いくつかの実施形態では、ADARは、宿主細胞の内因的にコードされたADARであり、ADARの導入は、宿主細胞においてADARを過剰発現することを含む。いくつかの実施形態において、ADARは、宿主細胞に対して外因性である。いくつかの実施形態において、ADARをコードする核酸を含む構築物は、プラスミド、またはウイルスベクター(例えば、scAAVなどのAAV)などのベクターである。
【0096】
いくつかの実施形態では、本発明は、本明細書に開示される標的RNA中の標的アデノシンを編集する方法を提供し、ここで、dRNA、またはdRNAをコードする核酸配列を含む構築物は、用量依存的に標的RNA中の標的アデノシンを編集する。
【0097】
いくつかの実施形態では、dRNA、またはdRNAをコードする核酸配列を含む構築物を宿主細胞に導入することを含む、前記宿主細胞において標的RNA中の非標的アデノシン編集(本明細書では「バイスタンダー編集」とも呼ばれる)を減少させる方法が提供され、ここで、(1)dRNAは、標的RNAにハイブリダイズして二本鎖RNAを形成することができる標的化RNA配列を含み、二本鎖RNAは、標的RNA中の非標的アデノシンを含有するバルジを含み、(2)dRNAは、ADARを動員することができ、ここで、標的RNAと相補的な標的化RNA配列を含むdRNAを用いる方法と比較して、非標的アデノシンの編集比率が低減される。いくつかの実施形態では、二本鎖RNAが、標的RNA中の各非標的アデノシンにバルジを含む。いくつかの実施形態では、標的化RNA配列が、標的RNA中の非標的アデノシンの反対側の1つ以上のヌクレオチドを欠いていることを除いて、標的RNAに相補的である。いくつかの実施形態では、標的化RNA配列が、標的RNA中の非標的アデノシンの反対側の2つ以上の連続するヌクレオチドを欠いていることを除いて、標的RNAに相補的である。いくつかの実施形態では、dRNAが、標的化RNA配列の末端に隣接するリンカー核酸配列を含み、リンカー核酸配列が、dRNAのいかなる部分とも実質的に二次構造を形成しない。いくつかの実施形態では、dRNAが、標的化RNA配列の末端を置換するリンカー核酸配列を含み、リンカー核酸配列が、dRNAのいかなる部分とも実質的に二次構造を形成しない。いくつかの実施形態では、リンカー核酸配列の長さが、約5nt~約500nt、例えば、約50nt~約200ntである。いくつかの実施形態では、リンカー核酸配列が、ポリアデノシン(ポリA)、ポリグアノシン(ポリG)、またはポリシトシン(ポリC)配列を含む。いくつかの実施形態では、リンカー核酸配列の少なくとも50%がアデノシンを含む。いくつかの実施形態では、リンカー核酸配列がジヌクレオチド反復配列を含み、例えば、(AT)を含み、ここで、nは3以上の整数である。いくつかの実施形態では、リンカー核酸配列が配列番号22を含む。いくつかの実施形態では、dRNAが、標的化RNA配列の5’末端に隣接する第1のリンカー核酸配列と、標的化RNA配列の3’末端に隣接する第2のリンカー核酸配列とを含む。いくつかの実施形態では、dRNAが環状RNAであり、リンカー核酸配列が、標的化RNA配列の5’末端と標的化RNA配列の3’末端とを連結する。いくつかの実施形態では、標的RNAに相補的な標的化RNA配列を含むdRNAを使用する方法と比較して、非標的アデノシンの編集率は、少なくとも約20%、30%、50%、60%、70%、80%、90%、95%またはそれ以上減少する。
【0098】
いくつかの実施形態では、dRNA、またはdRNAをコードする核酸配列を含む構築物を宿主細胞に導入することを含む、前記宿主細胞において標的RNA中の標的アデノシンの編集効率を高める方法が提供され、ここで、(1)dRNAは、標的RNAにハイブリダイズすることができる標的化RNA配列を含み、dRNAが、標的化RNA配列の末端に隣接するリンカー核酸配列を含み、リンカー核酸配列が、dRNAのいかなる部分とも実質的に二次構造を形成しなく、(2)dRNAは、ADARを動員することができ、ここで、リンカー核酸配列を含まないdRNAを用いた方法と比較して、標的アデノシンの編集効率が向上する。いくつかの実施形態では、リンカー核酸配列の長さが、約5nt~約500nt、例えば、約50nt~約200ntである。いくつかの実施形態では、リンカー核酸配列が、ポリアデノシン(ポリA)、ポリグアノシン(ポリG)、またはポリシトシン(ポリC)配列を含む。いくつかの実施形態では、リンカー核酸配列がジヌクレオチド反復配列を含み、例えば、(AT)を含み、ここで、nは3以上の整数である。いくつかの実施形態では、リンカー核酸配列が配列番号22を含む。いくつかの実施形態では、dRNAが、標的化RNA配列の5’末端に隣接する第1のリンカー核酸配列と、標的化RNA配列の3’末端に隣接する第2のリンカー核酸配列とを含む。いくつかの実施形態では、dRNAが環状RNAであり、リンカー核酸配列が、標的化RNA配列の5’末端と標的化RNA配列の3’末端とを連結する。いくつかの実施形態では、dRNAが、標的RNAにハイブリダイズして二本鎖RNAを形成することができる標的化RNA配列を含み、二本鎖RNAが、標的RNA中の非標的アデノシンを含有するバルジを含む。いくつかの実施形態では、二本鎖RNAが、標的RNA中の各非標的アデノシンにバルジを含む。いくつかの実施形態では、標的化RNA配列が、標的RNA中の非標的アデノシンの反対側の1つ以上のヌクレオチドを欠いていることを除いて、標的RNAに相補的である。いくつかの実施形態では、リンカー核酸配列を含まないdRNAを使用する方法と比較して、標的アデノシンの編集効率は、少なくとも約50%、2倍、3倍、4倍、2倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍またはそれ以上増加する。
【0099】
一態様では、本願は、複数のdRNA、またはdRNAをコードする1つ以上の構築物を宿主細胞に導入することによって、前記宿主細胞内で複数(例えば、少なくとも約2、3、4、5、10、20、50、100、1000またはそれ以上)の標的RNAを編集する方法を提供する。
【0100】
いくつかの実施形態では、宿主細胞は原核細胞である。いくつかの実施形態において、宿主細胞は真核細胞である。いくつかの実施形態では、宿主細胞は哺乳動物細胞である。いくつかの実施形態では、宿主細胞はヒト細胞である。いくつかの実施形態では、宿主細胞はネズミ細胞である。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、植物細胞または真菌細胞である。
【0101】
いくつかの実施形態では、宿主細胞は、HEK293T、HT29、A549、HepG2、RD、SF268、SW13及びHeLa細胞などの細胞株である。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、線維芽細胞、上皮細胞、または免疫細胞などの初代細胞である。いくつかの実施形態では、宿主細胞はT細胞である。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、有糸分裂後の細胞である。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、脳細胞、例えば、小脳細胞などの中枢神経系(CNS)の細胞である。
【0102】
いくつかの実施形態では、ADARは宿主細胞に対して内因性である。いくつかの実施形態において、RNAに作用するアデノシンデアミナーゼ(ADAR)は、宿主細胞に自然にまたは内因的に存在し、例えば、真核細胞に自然にまたは内因的に存在する。いくつかの実施形態において、ADARは、宿主細胞によって内因的に発現される。いくつかの実施形態において、ADARは、前記宿主細胞に外因的に導入される。いくつかの実施形態では、ADARは、ADAR1及び/またはADAR2である。いくつかの実施形態では、ADARは、hADAR1、hADAR2、マウスADAR1及びADAR2からなる群から選択される1つ以上のADARである。いくつかの実施形態では、ADARは、ADAR1のp110アイソフォーム(「ADAR1p110」)及び/またはADAR1のp150アイソフォーム(「ADAR1p150」)などのADAR1である。いくつかの実施形態では、ADARはADAR2である。いくつかの実施形態において、ADARは、宿主細胞によって発現されるADAR2、例えば、小脳細胞によって発現されるADAR2である。
【0103】
いくつかの実施形態において、ADARは、宿主細胞に対して外因性のADARである。いくつかの実施形態において、ADARは、天然に存在するADARの多動性変異体である。いくつかの実施形態では、ADARは、E1008Q変異を含むADAR1である。いくつかの実施形態において、ADARは、結合ドメインを含む融合タンパク質ではない。いくつかの実施形態において、ADARは、操作された二本鎖核酸結合ドメインを含まない。いくつかの実施形態では、ADARは、dRNAの相補的RNA配列に融合されたMS2ヘアピンに結合するMCPドメインを含まない。
【0104】
いくつかの実施形態では、宿主細胞は、高い発現レベルのADAR1(ADAR1p110及び/またはADAR1p150など)を有し、例えば、β-チューブリンのタンパク質発現レベルより、少なくとも約10%、20%、50%、100%、2倍、3倍、5倍またそれ以上のいずれか1つ高い。いくつかの実施形態において、宿主細胞は、高い発現レベルのADAR2を有し、例えば、β-チューブリンのタンパク質発現レベルより、少なくとも約10%、20%、50%、100%、2倍、3倍、5倍またはそれ以上のいずれか1つ高い。一部の実施形態において、宿主細胞は、低い発現レベルのADAR3を有し、例えば、β-チューブリンのタンパク質発現レベルより、少なくとも約5倍、3倍、2倍、100%、50%、20%またはそれ以下のいずれか1つ低い。
【0105】
特定の実施形態では、この方法は、ADAR3の阻害剤を前記宿主細胞に導入することをさらに含む。一部の実施形態において、ADAR3の阻害剤は、ADAR3に対するRNAiであり、例えば、ADAR3に対するshRNAまたはADAR3に対するsiRNAである。一部の実施形態では、この方法は、インターフェロンの刺激剤を前記宿主細胞に導入することをさらに含む。一部の実施形態において、ADARは、インターフェロンによって誘導可能であり、例えば、ADARは、ADARp150である。一部の実施形態において、インターフェロンの刺激剤は、IFNαである。一部の実施形態において、ADAR3の阻害剤及び/またはインターフェロンの刺激剤は、dRNAをコードする同じ構築体(例えば、ベクター)によってコードされる。
【0106】
特定の実施形態では、この方法は、自然免疫応答などの免疫応答を誘導しない。一部の実施形態において、この方法は、宿主細胞においてインターフェロン及び/またはインターロイキンの発現を誘導しない。一部の実施形態において、この方法は、宿主細胞においてIFN-β及び/またはIL-6発現を誘導しない。
【0107】
dRNA、その構築物、及びADARをコードする核酸を含む核酸は、ウイルス送達または非ウイルス送達を含む、当技術分野で知られている任意の方法を使用して送達され得る。
【0108】
核酸の非ウイルス送達の方法には、リポフェクション、ヌクレオフェクション、マイクロインジェクション、バイオリスティック、ビロソーム、リポソーム、免疫リポソーム、ポリカチオンまたは脂質:核酸コンジュゲート、エレクトロポレーション、ナノ粒子、エキソソーム、微小胞、または遺伝子銃、裸のDNA及び人工ビリオンが含まれる。
【0109】
核酸の送達のためのRNAまたはDNAウイルスベースのシステムの使用は、ウイルスを特定の細胞に標的化し、ウイルスペイロードを細胞核に輸送するのに高い効率を有する。特定の実施形態では、この方法は、dRNAをコードするウイルスベクター(scAAVなどのAAV、またはレンチウイルスベクターなど)を宿主細胞に導入することを含む。例えば、本明細書に記載される構築物は、以下のセクションIII「dRNA、構築物及びライブラリー」に記載されるいずれかのウイルスベクターであってもよい。
【0110】
いくつかの実施形態では、この方法は、dRNAをコードするプラスミドを宿主細胞に導入することを含む。いくつかの実施形態において、この方法は、dRNA(例えば、合成dRNA)を宿主細胞にエレクトロポレーションすることを含む。いくつかの実施形態において、この方法は、宿主細胞へのdRNAのトランスフェクションを含む。
【0111】
特定の実施形態では、標的RNAの編集効率は、少なくとも約10%、例えば少なくとも約15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、またはそれ以上のいずれか1つである。いくつかの実施形態では、標的RNAの編集効率は少なくとも約40%である。いくつかの実施形態では、編集効率はサンガー配列決定によって決定される。いくつかの実施形態では、編集効率は、次世代配列決定によって決定される。いくつかの実施形態では、編集効率は、EGFPなどの蛍光レポーター遺伝子などのレポーター遺伝子の発現を評価することによって決定される。
【0112】
特定の実施形態では、この方法は、オフターゲット編集比率が低い。いくつかの実施形態では、この方法は、標的RNA中の非標的Aに対して約1%未満(例えば、約0.5%、0.1%、0.05%、0.01%、0.001%未満、またはそれ以下のいずれか1つ)の編集効率を有する。いくつかの実施形態では、この方法は、標的RNA中の非標的Aを編集しない。いくつかの実施形態では、この方法は、非標的RNA中のAに対して約0.1%未満(例えば、約0.05%、0.01%、0.005%、0.001%、0.0001%、またはそれ以下のいずれか1つ)の編集効率を有する。
【0113】
脱アミノ化後、標的RNA及び/または標的RNAによってコードされるタンパク質の修飾は、標的RNA中の標的アデノシンの位置に応じて異なる方法を使用して確定することができる。例えば、標的RNAにおいて「A」が「I」に編集されているかどうかを確認するために、本分野で知られているRNA配列決定法を使用して、RNA配列の修飾を検出することができる。標的アデノシンがmRNAのコード領域にある場合、RNA編集によりmRNAによってコードされるアミノ酸配列が変化することができる。例えば、点突然変異をmRNAに導入し得、「A」から「I」へ変換されたので、mRNA中の先天のまたは後天的な点突然変異を野生型遺伝子産物に復帰し得る。本分野で知られている方法によるアミノ酸配列決定を使用して、コードされたタンパク質中のアミノ酸残基の変化を見つけることができる。終止コドンの修飾は、機能的、伸長、トランケートされた、完全長及び/または野生型タンパク質の存在を評価することによって決定することができる。例えば、標的アデノシンがUGA、UAG、またはUAA終止コドンに位置する場合、標的A(UGAまたはUAG)または複数のA(UAA)の修飾は、リードスルー変異及び/または伸長タンパク質を作成することができる。あるいは、標的RNAによってコードされるトランケートされたタンパク質を復帰して、機能的な完全長及び/または野生型タンパク質を作成することができる。標的RNAの編集はまた、標的RNAに異常なスプライシング部位及び/または選択的スプライシング部位を生成することができ、したがって、伸長、トランケート、またはミスフォールディングされたタンパク質、または標的RNAにコードされた異常なスプライシングまたは選択的スプライシング部位の復帰によって、機能的で正しくフォールディングされた完全長及び/または野生型タンパク質を作成する。一部の実施形態において、本出願は、先天性及び後天性の両方の遺伝的変化、例えば、ミスセンス突然変異、早期終止コドン、異常なスプライシングまたは標的RNAによってコードされる選択的スプライシング部位の編集を考慮する。既知の方法を使用して、標的RNAによってコードされるタンパク質の機能を評価することで、RNA編集が所望の効果を達成したかどうかを確認できる。アデノシン(A)のイノシン(I)への脱アミノ化は、タンパク質をコードする変異RNAの標的位置で変異したAを修正することができるため、イノシンへの脱アミノ化の同定は、機能性タンパク質が存在するかどうか、または変異したアデノシンの存在によって引き起こされる疾患または薬剤耐性関連RNAは、復帰または部分的に復帰されたかという評価を提供することができる。同様に、アデノシン(A)からイノシン(I)への脱アミノ化は、得られたタンパク質に点突然変異を導入する可能性があるため、イノシンへの脱アミノ化の特定は、疾患の原因または疾患の関連因子を特定するための機能的指標を見つけることができる。
【0114】
標的アデノシンの存在が異常なスプライシングを引き起こす場合、読み出しは異常なスプライシングの発生と頻度の評価であってもよい。一方、スプライシング部位を導入するために、標的アデノシンの脱アミノ化が必要な場合、類似した方法を使用して、必要なタイプのスプライシングが起こるかどうかをチェックすることができる。標的アデノシンの脱アミノ化後にイノシンの存在を同定するための例示的な適切な方法は、当業者に周知の方法を使用したRT-PCR及び配列決定である。
【0115】
標的アデノシンの脱アミノ化の効果には、例えば、点突然変異、早期終止コドン、異常なスプライシング部位、選択的なスプライシング部位、及び得られたタンパク質のミスフォールディングが含まれる。これらの効果は、遺伝的に受け継がれているか、後天的な遺伝子変異によって引き起こされているかにかかわらず、疾患に関連するRNA及び/またはタンパク質の構造的及び機能的変化を誘発するか、薬剤耐性の発生に関連するRNA及び/またはタンパク質の構造的及び機能的変化を誘発することができる。したがって、本願のdRNA、dRNAをコードする構築物、及びRNA編集方法は、疾患に関連するRNA及び/またはタンパク質の構造及び/または機能を変えることによって、遺伝性の疾患もしくは症状、または後天性遺伝子変異に関連する疾患もしくは症状の予防もしくは治療に使用することができる。
【0116】
一部の実施形態では、標的RNAはプレメッセンジャーRNAである。一部の実施形態では、標的RNAはメッセンジャーRNAである。一部の実施形態では、標的RNAは制御性RNAである。一部の実施形態において、標的RNAは、リボソームRNA、転移RNA、長鎖非コードRNAまたは低分子RNA(例えば、miRNA、pri-miRNA、pre-miRNA、piRNA、siRNA、snoRNA、snRNA、exRNAまたはscaRNA)である。標的アデノシンの脱アミノ化の効果には、例えば、リボソームRNA、転移RNA、長鎖非コードRNAまたは低分子RNA(例えば、miRNA)の、標的RNAの三次元構造の変化及び/または機能喪失もしくは機能の獲得を含む、構造及び機能の変化が含まれる。一部の実施形態において、標的RNAにおける標的Aの脱アミノ化は、標的RNAの1つ以上の下流分子(例えば、タンパク質、RNA及び/または代謝産物)の発現レベルを変化させる。下流分子の発現レベルの変化は、発現レベルの増加または減少であってもよい。
【0117】
本出願の一部の実施形態は、宿主細胞における標的RNAの多重編集に係り、これは、宿主細胞における標的遺伝子の異なるバリアントまたは異なる遺伝子をスクリーニングするために使用できる。前記方法が複数のdRNAを前記宿主細胞に導入することを含み、複数のdRNAの少なくとも2つのdRNAは、異なる配列を有し、及び/または異なる標的RNAを有する。一部の実施形態において、各dRNAは、異なる配列及び/または異なる標的RNAを有する。一部の実施形態では、この方法は、宿主細胞内の単一の標的RNAに複数(例えば、少なくとも2、3、5、10、50、100、1000またはそれ以上)の修飾を生成する。一部の実施形態では、この方法は、宿主細胞内の複数(例えば、少なくとも2、3、5、10、50、100、1000またはそれ以上)の標的RNAに修飾を生成する。一部の実施形態では、この方法は、複数の宿主細胞群における複数の標的RNAを編集することを含む。一部の実施形態において、各宿主細胞群は、異なるdRNA、または他の宿主細胞群とは異なる標的RNAを有するdRNAを受ける。
【0118】
また、本明細書に記載の方法のいずれか1つによって生成された、編集されたRNA、または編集されたRNAを有する宿主細胞が提供される。一部の実施形態では、編集されたRNAはイノシンを含む。一部の実施形態において、宿主細胞は、ミスセンス突然変異、早期終止コドン、選択的スプライシング部位、または異常なスプライシング部位を有する標的RNAを含む。一部の実施形態において、宿主細胞は、変異された、トランケートされた、またはミスフォールディングされたタンパク質を含む。一部の実施形態において、この方法は標的RNAの機能を回復する。
【0119】
III.dRNA、構築物及びライブラリー
本出願はさらに、本明細書に記載のRNA編集方法または治療方法のいずれかにおいて使用され得る、dRNA、dRNAをコードする構築物、及び複数のdRNAまたはその構築物を含むライブラリーをさらに提供する。本明細書に記載されているdRNAまたは構築物の特徴及びパラメータのいずれかを、あたかもすべての組み合わせが個別に記載されているかのように、互いに組み合わせることができることが意図されている。
【0120】
一態様では、本願は、標的RNAにハイブリダイズして二本鎖RNAを形成することができる標的化RNA配列を含む、標的RNAを編集するためのdRNAを提供し、ここで、二本鎖RNAが、標的RNA中の非標的アデノシンを含有するバルジを含む。いくつかの実施形態では、二本鎖RNAが、標的RNA中の各非標的アデノシンにバルジを含む。いくつかの実施形態では、標的化RNA配列が、標的RNA中の非標的アデノシンの反対側の1つ以上のヌクレオチドを欠いていることを除いて、標的RNAに相補的である。いくつかの実施形態では、標的化RNA配列が、標的RNAに相補的な配列中の1つ以上の非標的アデノシンの反対側にある1つ以上のウリジン残基を欠いている。いくつかの実施形態では、dRNAが線形RNAである。いくつかの実施形態では、dRNAが環状RNAである。いくつかの実施形態では、dRNAは、環状RNAを形成することができる線形RNAである。
【0121】
一態様では、本願は、標的RNAにハイブリダイズすることができる標的化RNA配列を含む、標的RNAを編集するためのdRNAを提供し、ここで、dRNAが、標的化RNA配列の末端に隣接するリンカー核酸配列を含み、リンカー核酸配列が、dRNAのいかなる部分とも実質的に二次構造を形成しなく、dRNAが、環状RNA、または環状RNAを形成することができる線形RNAである。いくつかの実施形態では、リンカー核酸配列の長さが、約5nt~約500nt、例えば、約50nt~約200ntである。いくつかの実施形態では、リンカー核酸配列が、ポリアデノシン(ポリA)、ポリグアノシン(ポリG)、またはポリシトシン(ポリC)配列を含む。いくつかの実施形態では、リンカー核酸配列の少なくとも50%がアデノシンを含む。いくつかの実施形態では、リンカー核酸配列がジヌクレオチド反復配列を含み、例えば、(AT)を含み、ここで、nは3以上の整数である。いくつかの実施形態では、リンカー核酸配列が配列番号22を含む。いくつかの実施形態では、dRNAが環状RNAである。いくつかの実施形態では、dRNAが、標的化RNA配列の5’末端に隣接する第1のリンカー核酸配列と、標的化RNA配列の3’末端に隣接する第2のリンカー核酸配列とを含む。いくつかの実施形態では、dRNAが、標的化RNA配列の5’末端に隣接する第1のリンカー核酸配列と、標的化RNA配列の3’末端を置換する第2のリンカー核酸配列とを含む。いくつかの実施形態では、dRNAが、標的化RNA配列の5’末端を置換する第1のリンカー核酸配列と、標的化RNA配列の3’末端に隣接する第2のリンカー核酸配列とを含む。いくつかの実施形態では、dRNAが、標的化RNA配列の5’末端を置換する第1のリンカー核酸配列と、標的化RNA配列の3’末端を置換する第2のリンカー核酸配列とを含む。
【0122】
一態様では、本願は、標的RNAにハイブリダイズすることができる標的化RNA配列を含む、標的RNAを編集するためのdRNAを提供し、ここで、二本鎖RNAが、標的RNA中の非標的アデノシンを含有するバルジを含み、dRNAが、標的化RNA配列の末端に隣接するリンカー核酸配列を含み、リンカー核酸配列が、dRNAのいかなる部分とも実質的に二次構造を形成しなく、dRNAが、環状RNA、または環状RNAを形成することができる線形RNAである。いくつかの実施形態では、dRNAが、環状RNAである。いくつかの実施形態では、標的化RNA配列が、標的RNA中の非標的アデノシンの反対側の1つ以上のヌクレオチドを欠いていることを除いて、標的RNAに相補的である。いくつかの実施形態では、リンカー核酸配列の長さが、約5nt~約500nt、例えば、約50nt~約200ntである。いくつかの実施形態では、リンカー核酸配列が、ポリアデノシン(ポリA)、ポリグアノシン(ポリG)、またはポリシトシン(ポリC)配列を含む。いくつかの実施形態では、リンカー核酸配列がジヌクレオチド反復配列を含み、例えば、(AT)を含み、ここで、nは3以上の整数である。いくつかの実施形態では、リンカー核酸配列が配列番号22を含む。いくつかの実施形態では、dRNAが、標的化RNA配列の5’末端に隣接する第1のリンカー核酸配列と、標的化RNA配列の3’末端に隣接する第2のリンカー核酸配列とを含む。いくつかの実施形態では、dRNAが、標的化RNA配列の5’末端に隣接する第1のリンカー核酸配列と、標的化RNA配列の3’末端を置換する第2のリンカー核酸配列とを含む。いくつかの実施形態では、dRNAが、標的化RNA配列の5’末端を置換する第1のリンカー核酸配列と、標的化RNA配列の3’末端に隣接する第2のリンカー核酸配列とを含む。いくつかの実施形態では、dRNAが、標的化RNA配列の5’末端を置換する第1のリンカー核酸配列と、標的化RNA配列の3’末端を置換する第2のリンカー核酸配列とを含む。
【0123】
一態様では、本願は、本明細書に記載のいずれか1つのdRNAをコードする核酸配列を含む構築物を提供する。特定の実施形態において、前記構築物は、ウイルスベクターまたはプラスミドである。一部の実施形態では、前記構築物はアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである。いくつかの実施形態では、前記構築物は自己相補的AAV(scAAV)ベクターである。いくつかの実施形態では、構築物は単一のdRNAをコードする。一部の実施形態では、構築物は、複数の(例えば、約1、2、3、4、5、10、20またはそれ以上の)dRNAをコードする。
【0124】
一態様では、本願は、本明細書に記載の複数のdRNAまたは複数の構築物を含むライブラリーを提供する。
【0125】
一態様では、本願は、デアミナーゼ動員RNAまたは本明細書に記載の構築物を含む組成物または宿主細胞を提供する。特定の実施形態において、宿主細胞は、原核細胞または真核細胞である。いくつかの実施形態において、宿主細胞は哺乳動物細胞である。いくつかの実施形態において、宿主細胞はヒト細胞である。
【0126】
dRNA
本出願のdRNAは、標的RNAにハイブリダイズする標的化RNA配列を含む。標的化RNA配列は、標的RNAと完全に相補的または実質的に相補的であり、標的RNAへの標的化RNA配列のハイブリダイゼーションを可能にする。一部の実施形態において、標的化RNA配列は、標的RNAと100%の配列相補性を有する。一部の実施形態において、標的化RNA配列は、標的RNA中の少なくとも約20、40、60、80、100、150、200、またはそれ以上のヌクレオチドの連続ストレッチと少なくとも約70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%以上のいずれか1つの相補性を有する。一部の実施形態において、標的化RNA配列と標的RNAとの間のハイブリダイゼーションによって形成されたdsRNAは、1つ以上以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上)の非ワトソン-クリック(Watson-Crick)塩基対(すなわち、ミスマッチ)を有する。
【0127】
いくつかの実施形態では、標的化RNA配列と標的RNAとの間のハイブリダイゼーションによって形成されるdsRNA(本明細書では「二本鎖RNA」とも呼ばれる)は、1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上)の不対ヌクレオチドを有する。いくつかの実施形態では、標的化RNA配列と標的RNAとの間のハイブリダイゼーションによって形成されるdsRNAは、標的RNA内に1つ以上の不対非標的アデノシンを有する。いくつかの実施形態では、dRNAは、標的RNA中の1つ以上の非標的アデノシンの反対側の1つ以上のヌクレオチドを欠いている。いくつかの実施形態では、dRNA中の標的化RNA配列は、標的RNA中の各非標的アデノシンの反対側のヌクレオチドを欠いている。いくつかの実施形態では、dRNA中の標的化RNA配列は、標的RNA中の非標的アデノシンを含む領域に対向する2つ以上(例えば、2、3、4またはそれ以上)の連続するヌクレオチドを欠いている。いくつかの実施形態では、dRNA中の標的化RNA配列は、標的RNA中の1つ以上の非標的アデノシンの反対側の1つ以上のヌクレオチドを欠いていることを除いて、標的RNAに相補的である。いくつかの実施形態では、dRNA中の標的化RNA配列は、標的RNA中の各非標的アデノシンの反対側のヌクレオチドが存在しないことを除いて、標的RNAに相補的である。
【0128】
dsRNA内の不対ヌクレオチドはバルジを引き起こす。いくつかの実施形態では、標的RNAは、dRNAにハイブリダイズして、標的RNA中の非標的アデノシンを含むバルジを含むdsRNAを形成する。dRNAと標的RNAのハイブリダイゼーションによって形成されるdsRNAのバルジには、標的RNA中の非標的アデノシンが含まれている。バルジは、モノヌクレオチドバルジ、すなわち、不対の非標的アデノシンを含むもの、またはポリヌクレオチドバルジ、すなわち、不対の非標的アデノシンに隣接する追加の不対またはミスマッチのヌクレオチドを含むものであり得る。いくつかの実施形態では、バルジは、標的RNA内の1つを超える(例えば、2、3、4、5、またはそれ以上)不対ヌクレオチドを含むことができ、すなわち、バルジは、非標的アデノシン残基の5’及び/または3’側に直接隣接する不対ヌクレオチドで構成される。いくつかの実施形態では、バルジは、非標的アデノシン残基の5’及び/または3’側に直接隣接する1つ以上(例えば、2、3、4、5、またはそれ以上)のミスマッチヌクレオチドを含むことができる。いくつかの実施形態では、バルジは、不対の非標的アデノシン、非標的アデノシン残基の5’側及び/または3’側に隣接する1つ以上の不対ヌクレオチド、ならびに非標的アデノシン残基の5’側及び/または3’側に隣接する1つ以上のミスマッチヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、バルジの長さは、1nt、2nt、3ntまたはそれ以上である。
【0129】
いくつかの実施形態では、二本鎖RNAは、2つ以上のバルジ、例えば2、3、4、5、6、またはそれ以上のバルジのいずれかを含み、各バルジは標的RNA内の非標的アデノシンを含む。いくつかの実施形態では、二本鎖RNAは、標的RNA内の各非標的アデノシンにバルジを含む。
【0130】
一部の実施形態において、dRNAと標的RNAとの間のハイブリダイゼーションによって形成されたdsRNAは、ミスマッチを含まない。一部の実施形態において、dRNAと標的RNAとの間のハイブリダイゼーションによって形成されるdsRNAは、1つ以上、例えば、1、2、3、4、5、6、7またはそれ以上のミスマッチ(例えば、同じタイプまたは異なるタイプのミスマッチ)を含む。一部の実施形態において、dRNAと標的RNAとの間のハイブリダイゼーションによって形成されるdsRNAは、1つ以上の種類のミスマッチ、例えば、G-A、C-A、U-C、A-A、G-G、C-C、及びU-Uからなる群から選択される1、2、3、4、5、6、7種類のミスマッチを含む。
【0131】
いくつかの実施形態では、ミスマッチは標的アデノシンの上流(5’)または下流(3’)に位置し、これにより標的RNAにおける標的アデノシンの編集効率が促進され得る。いくつかの実施形態では、二本鎖RNAは、標的アデノシンの上流及び/または下流に追加のミスマッチを有する。
【0132】
いくつかの実施形態において、標的化RNA配列は、例えば、1、2、3、4、5、6またはそれ以上のGなどの1つ以上のグアノシンをさらに含み、それぞれが標的RNA中の非標的アデノシンの真向かいにある。いくつかの実施形態において、標的化RNA配列は、標的RNA中の非標的アデノシンに対向する2つ以上の連続するミスマッチヌクレオチド(例えば、2、3、4、5またはそれ以上のミスマッチヌクレオシド)を含む。
【0133】
いくつかの実施形態では、dRNAは、標的RNA中の1つ以上の非標的アデノシンの反対側のGを含み、かつ標的RNA中の1つ以上の非標的アデノシンの反対側のヌクレオチドを欠く、標的化RNA配列を含む。二本鎖RNAは、1つ以上の非標的アデノシンを含む1つ以上のバルジを有し、dRNAにおいて標的RNA内の他の非標的アデノシンの反対側のGを含むことができる。
【0134】
いくつかの実施形態において、標的RNAは、例えば、約15、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1つ以下の非標的Aなど、約20以下の非標的Aを含む。非標的Aに対向するUの欠失及び/またはGは、dRNA中の隣接するミスマッチまたは不対ヌクレオチドとともに、ADARによるオフターゲット編集効果を低減する可能性がある。
【0135】
いくつかの実施形態では、dRNAは、標的化RNA配列の末端に隣接する1つまたは複数のリンカー核酸配列(本明細書では「隣接リンカー配列」とも呼ばれる)を含み、リンカー核酸配列は、dRNAのいずれの部分とも実質的に二次構造を形成しない。本願の発明者らは、隣接リンカー配列を含めることにより、標的RNA中の標的アデノシンの編集効率を改善できることを発見した。いかなる理論にも束縛されるものではないが、リンカー核酸配列は環状dRNAの柔軟性を高めることができ、これにより標的RNA配列の標的化RNAへのハイブリダイゼーションを促進することができるという仮説が立てられる。
【0136】
いくつかの実施形態では、dRNAは単一のリンカー核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、dRNAは、標的化RNA配列の5’末端にリンカー核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、dRNAは、標的化RNA配列の3’末端にリンカー核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、dRNAは、標的化配列の5’末端に第1のリンカー核酸配列を含み、標的化RNA配列の3’末端に第2のリンカー核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、dRNAは、標的化RNA配列の5’末端と3’末端を直接または間接的に連結するリンカー核酸配列を含む環状RNAである。第1のリンカー核酸配列と第2のリンカー核酸配列は、同じ配列であってもよいし、異なる配列であってもよい。
【0137】
いくつかの実施形態では、リンカー核酸配列(第1のリンカー核酸配列及び第2のリンカー核酸配列を含む)の長さは、少なくとも約5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、350、400、450または500ntのいずれかである。いくつかの実施形態では、リンカー核酸配列(第1のリンカー核酸配列及び第2のリンカー核酸配列を含む)の長さは、約500、450、400、350、300、250、200、150、100、90、80、70、60、50、40、30、20、10または5nt以下のいずれかである。いくつかの実施形態では、リンカー核酸配列(第1のリンカー核酸配列及び第2のリンカー核酸配列を含む)の長さは、約5~10、10~20、20~50、5~50、10~100、5~50、50~100、100~200、200~300、300~400、400~500、5~100、5~200、5~300、5~400、5~500、50~200、50~300、50~400または50~500ntである。いくつかの実施形態では、リンカー核酸配列(第1のリンカー核酸配列及び第2のリンカー核酸配列を含む)は、長さが約50ntである。いくつかの実施形態では、第1のリンカー核酸配列と第2のリンカー核酸配列は同じ長さである。いくつかの実施形態では、第1のリンカー核酸配列と第2のリンカー核酸配列は、異なる長さである。
【0138】
リンカー核酸配列(第1のリンカー核酸配列及び第2のリンカー核酸配列を含む)は、dRNAのどの部分とも二次構造を実質的に形成しない。例えばRNAフォールディングを含むRNAの二次構造を予測するための計算ツールが当技術分野で知られている。いくつかの実施形態では、リンカー核酸配列は、長さが約3、4、5、6、またはそれ以上の塩基対のうちのいずれか1つより長い標的化RNA配列の一部と二本鎖領域を形成しない。いくつかの実施形態では、リンカー核酸配列は、長さが3、4、5、または6ヌクレオチドを超える相補的領域を含まない。いくつかの実施形態では、第1のリンカー核酸配列は、第2のリンカー核酸配列に対して3、4、5、または6ヌクレオチド長を超える相補的領域を有さない。
【0139】
リンカー核酸配列(第1のリンカー核酸配列及び第2のリンカー核酸配列を含む)は、モノヌクレオチドもしくはジヌクレオチドの反復配列、またはランダム配列であってもよい。いくつかの実施形態では、リンカー核酸配列が、ポリアデノシン(ポリA)、ポリグアノシン(ポリG)、またはポリシトシン(ポリC)配列を含む。いくつかの実施形態では、リンカー核酸配列の少なくとも50%がアデノシンを含む。いくつかの実施形態では、リンカー核酸配列がジヌクレオチド反復配列を含み、例えば、ATまたはTA反復配列を含む。いくつかの実施形態では、リンカー核酸配列が(AT)を含み、ここで、nは3以上の整数である。いくつかの実施形態では、リンカー核酸配列が配列番号22を含む。
【0140】
いくつかの実施形態では、リンカー核酸配列が環状dRNAの標的化RNA配列の5’末端と3’末端を連結するリンカー配列として使用される。
【0141】
ADAR、例えば、ヒトADAR酵素は、多くの要因に応じて、異なる特異性を有する二本鎖RNA(dsRNA)構造を編集する。重要な要素の1つは、dsRNA配列を構成する2本の鎖の相補性の程度である。dRNAと標的RNAの間の完全な相補性により、通常、ADARの触媒ドメインが無差別にアデノシンを脱アミ化する。ADARの特異性と効率は、dsRNA領域にミスマッチを導入することで修飾できる。例えば、編集されるアデノシンの脱アミノ化の特異性及び効率を高めるために、A-Cミスマッチが好ましく推奨される。dRNAと標的RNAとの間のdsRNAのハイブリダイゼーション及びdsRNAの生成に十分な相補性があれば、dRNAとその標的RNAとの間のdsRNA形成には必ずしも完全な相補性は必要とされない。一部の実施形態において、最適なアラインメント時に、dRNA配列またはその一本鎖RNA領域は、標的RNAとの配列相補性が、少なくとも約70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%である。最適なアラインメントは、配列をアラインメントするための任意の適切なアルゴリズムを使用して決定することができ、その非限定的な例には、Smith-Watermanアルゴリズム、Needleman-Wimschアルゴリズム、Burrows-Wheeler変換に基づくアルゴリズム(例えば、Burrows Wheeler Aligner)が含まれる。
【0142】
標的アデノシンに隣接するヌクレオチドもまた、脱アミノ化の特異性及び効率に影響を及ぼす。例えば、アデノシン脱アミノ化の特異性と効率の観点から、標的RNA配列で編集される標的アデノシンの5'最近傍は、優先度U>C≒A>Gを有し、標的RNA配列で編集される標的アデノシンの3'最近傍は、優先度G>C>A≒Uを有する。一部の実施形態において、標的RNA中の標的アデノシンが、UAG、UAC、UAA、UAU、CAG、CAC、CAA、CAU、AAG、AAC、AAA、AAU、GAG、GAC、GAA及びGAUからなる群から選択される3塩基モチーフであり得る場合、アデノシンの脱アミノ化の特異性と効率は、他の3塩基モチーフのアデノシンよりも高い。一部の実施形態では、編集される標的アデノシンが3塩基モチーフUAG、UAC、UAA、UAU、CAG、CAC、AAG、AACまたはAAAにある場合、アデノシンの脱アミノ化の効率は、他のモチーフのアデノシンよりも高い。同じ3塩基モチーフに関して、dRNAの異なるデザインも異なる脱アミノ化効率につながる可能性がある。3塩基モチーフUAGを例として取り上げると、一部の実施形態において、dRNAが、編集される標的アデノシンの真向かいのシチジン(C)、ウリジンの真向かいにあるアデノシン(A)、グアノシンの真向かいにあるシチジン(C)、グアノシン(G)、またはウリジン(U)を含む場合、標的アデノシンの脱アミノ化の効率は、他のdRNA配列を使用した場合よりも高い。一部の実施形態では、dRNAが標的RNAのUAGに対向するACC、ACGまたはACUを含む場合、標的RNAのUAGにおけるAの編集効率は、約25%~90%(例えば、約25%~80%、25%~70%、25%~60%、25%~50%、25%~40%、または25%~30%)に達することができる。
【0143】
標的アデノシンに加えて、標的RNAには1つ以上の編集するのが望ましくないアデノシン(本明細書において「非標的A」と呼ばれる)が存在する可能性がある。これらのアデノシンに関しては、それらの編集効率を可能な限り低下させることが好ましい。本発明者らにより、非標的Aの反対側のUが欠失すると、dRNAと標的RNAの二本鎖内で不対の非標的Aを有するバルジが形成され、非標的Aのオフターゲット編集が大幅に減少することが見出された。dRNAはさらに、非標的アデノシンの5’側または3’側に直接隣接する1つ以上の不対ヌクレオチド及び/または1つ以上のミスマッチヌクレオチドを含み得る。本明細書で使用する「不対」という用語は、二本鎖核酸の第一鎖のヌクレオチドが二本鎖核酸の第二鎖のどのヌクレオチドとも塩基対形成しないことを意味する。いくつかの実施形態では、グアノシンが標的RNAのアデノシンの真向かいにある場合、脱アミノ化効率が有意に低下する。したがって、オフターゲット脱アミノ化を減少させるために、dRNAは、第1の非標的アデノシンの反対側の1つ以上のヌクレオチド(例えば、U)を欠失するように、及び/または標的RNAにおいて編集される第2の非標的アデノシンの直接反対側のヌクレオチドを有するように設計することができる。
【0144】
標的RNA配列を編集する際の特異性と効率の望ましいレベルは、さまざまなアプリケーションによって異なる。本特許出願の説明に従って、当業者は、必要に応じて標的RNA配列に相補的または実質的に相補的な配列を有するdRNAを設計することができ、また、試行錯誤を繰り返しながら、所望の結果を取得できる。本明細書で使用されるように、「ミスマッチ」という用語は、ワトソン-クリック(Watson-Crick)の塩基対形成規則に従って完全な塩基対を形成しない二本鎖RNA(dsRNA)中の反対のヌクレオチドを指す。ミスマッチの塩基対には、例えば、G-A、C-A、U-C、A-A、G-G、C-C、U-U塩基対が含まれる。A-Cマッチを例にとると、一つの標的アデノシン残基が標的RNAで編集される場合、dRNAは、編集されるAに対向するCを含むように設計され、標的RNAとdRNAの間のハイブリダイゼーションによって形成されたdsRNAにおいてA-Cミスマッチを生成する。
【0145】
dRNAの標的化RNA配列は一本鎖である。dRNAは、完全な一本鎖であるか、または1つ以上(例えば、1、2、3、またはそれ以上)の二本鎖領域及び/または1つ以上のステムループ領域を有し得る。
【0146】
本明細書に記載のdRNAには、標的RNAに対して少なくとも部分的に相補的な標的化RNA配列が含まれる。特定の実施形態では、dRNA中の標的化RNA配列の長さは、少なくとも約40、45、50、55、60、65、70、75、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、または250ヌクレオチド(nt)のいずれかを含む。特定の実施形態では、dRNA中の標的化RNA配列の長さは、約40、45、50、55、60、65、70、75、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、または250ヌクレオチド以下のいずれかを含む。特定の実施形態において、dRNA中の標的化RNA配列の長さは、約40~260、45~250、50~240、60~230、65~220、70~220、70~210、70~200、70~190、70~180、70~170、70~160、70~150、70~140、70~130、70~120、70~110、70~100、70~90、70~80、75~200、80~190、85~180、90~170、95~160、100~200、100~150、100~175、110~200、110~160、110~175、110~150、140~160、105~140、または105~155ヌクレオチドの長さのいずれかを有する。一部の実施形態では、dRNA中の標的化RNA配列の長さは約100~200ntである。一部の実施形態では、dRNA中の標的化RNA配列の長さは約70nt(例えば、71nt)である。一部の実施形態では、dRNA中の標的化RNA配列の長さは約120nt(例えば、121nt)である。一部の実施形態では、dRNA中の標的化RNA配列の長さは約150nt(例えば、151nt)である。一部の実施形態では、dRNA中の標的化RNA配列の長さは約170nt(例えば、171nt)である。一部の実施形態では、dRNA中の標的化RNA配列の長さは約200nt(例えば、201nt)である。一部の実施形態では、dRNA中の標的化RNA配列の長さは約220nt(例えば、221nt)である。
【0147】
いくつかの実施形態では、標的化RNA配列は、標的RNAの標的アデノシン残基の真向かいにあるシチジン、アデノシン、またはウリジンを含む。一部の実施形態では、標的化RNA配列は、標的RNAの標的アデノシン残基の真向かいにあるシチジンミスマッチを含む。一部の実施形態において、シチジンミスマッチは、標的化RNA配列の5’末端から少なくとも5ヌクレオチド、例えば、少なくとも10、15、20、25、30、またはそれ以上のヌクレオチド離れた箇所に位置している。一部の実施形態において、シチジンミスマッチは、相補的RNA配列の3’末端から少なくとも20ヌクレオチド、例えば、少なくとも25、30、35、またはそれ以上のヌクレオチド離れた箇所に位置している。一部の実施形態において、シチジンミスマッチは、標的化RNA配列の3’末端から20(例えば、15、10、5以下)ヌクレオチド内に位置していない。一部の実施形態において、シチジンミスマッチは、標的化RNA配列の3’末端から少なくとも20ヌクレオチド(例えば、少なくとも25、30、35、またはそれ以上のヌクレオチド)及び5’末端から少なくとも5ヌクレオチド(例えば、少なくとも10、15、20、25、30、またはそれ以上のヌクレオチド)離れて位置する。一部の実施形態において、シチジンミスマッチは、標的化RNA配列の中心に位置する。一部の実施形態において、シチジンミスマッチは、dRNAの標的化配列の中心から20ヌクレオチド(例えば、15、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1ヌクレオチド)内に位置する。
【0148】
特定の実施形態において、標的アデノシン残基の5’に最も近い隣接物が、U、C、A、及びGから選ばれるヌクレオチドであり、優先度がU>C≒A>Gであり、標的アデノシン残基の3’に最も近い隣接物が、G、C、A、及びUから選ばれるヌクレオチドであり、優先度がG>C>A≒Uである。一部の実施形態では、標的アデノシン残基の5'に最も近い隣接物がCまたはAである。一部の実施形態では、標的アデノシン残基の3’に最も近い隣接物がGである。一部の実施形態では、標的アデノシン残基の3’に最も近い隣接物がCである。
【0149】
いくつかの実施形態では、標的アデノシン残基は、標的RNA中のUAG、UAC、UAA、UAU、CAG、CAC、CAA、CAU、AAG、AAC、AAA、AAU、GAG、GAC、GAA、及びGAUからなる群より選ばれる3塩基モチーフに位置する。いくつかの実施形態では、3塩基モチーフはUAGであり、dRNAは、3塩基モチーフのUの真向かいにあるA、標的Aの真向かいにあるC、及び3塩基モチーフのGの真向かいにあるC、G、またはUを含む。特定の実施形態では、3塩基モチーフは、標的RNAのUAGであり、dRNAは、標的RNAのUAGに対向するACC、ACG、またはACUを含む。特定の実施形態では、3塩基モチーフは、標的RNAのUAGであり、dRNAは、標的RNAのUAGに対向するACCを含む。
【0150】
一部の実施形態において、dRNAは、標的化RNA配列の他に、dRNAを安定化するための領域、例えば、1つ以上の二本鎖領域及び/またはステムループ領域をさらに含むことができる。一部の実施形態において、dRNAの二本鎖領域またはステムループ領域は、約200、150、100、50、40、30、20、10またはそれ以下の塩基対のうちの1つを含むことができる。一部の実施形態において、dRNAは、ステムループまたは二本鎖領域を含まない。一部の実施形態では、dRNAは、ADAR動員ドメインを含む。一部の実施形態では、dRNAは、ADAR動員ドメインを含まない。
【0151】
dRNAは、1つ以上の修飾を含み得る。一部の実施形態において、dRNAは、核酸塩基修飾及び/または骨格修飾を含む1つ以上の修飾ヌクレオチドを有する。RNAの例示的な修飾には、ホスホロチオエート骨格修飾、リボースにおける2’-置換(例えば、2’-O-メチル及び2’-フルオロ置換)、LNA、及びL-RNAが含まれるが、これらに限定されない。
【0152】
いくつかの実施形態では、dRNAは化学修飾を含まない。一部の実施形態において、dRNAは、2’-O-メチルヌクレオチドまたはホスホロチオエート結合を有するヌクレオチドなどの化学的に修飾されたヌクレオチドを含まない。一部の実施形態において、dRNAは、最初の3つ及び最後の3つの残基にのみ2’-O-メチル化及びホスホロチオエート結合修飾を含む。一部の実施形態において、dRNAは、アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)ではない。
【0153】
dRNAは、dRNAの発現及び/または環状化を促進する1つまたは複数の追加の発現エレメントをさらに含み得る。
【0154】
いくつかの実施形態では、dRNAが、標的化RNA配列の5’末端に隣接する3’触媒グループIイントロンフラグメントによって認識可能な3’エクソン配列と、標的化RNA配列の3’末端に隣接する5’触媒グループIイントロンフラグメントによって認識可能な5’エクソン配列とをさらに含む。いくつかの実施形態では、T4ファージTd遺伝子のグループI触媒イントロンは、リボザイムのフォールディングに重要な構造要素を保存するように二分される。次いで、エクソンフラグメント2をエクソンフラグメント1の上流に連結し、標的化RNA配列(5’及び/または3’末端に隣接するリンカー核酸配列を含んでいてもよい)をエクソン-エクソン接合部の間に挿入する。
【0155】
いくつかの実施形態では、dRNAは、環状RNAを形成することができる線形RNAである。いくつかの実施形態では、環状化は、例えば、Litke,J.L.&Jaffrey,S.R.Highly efficient expression of circular RNA aptamers in cells using autocatalytic transcripts.Nat Biotechnol 37,667-675(2019)に記載されているTornado発現系(「Twister-optimized RNA for durable overexpression」)を使用して行われ、その全体が参照により組み込まれる。簡単に言うと、Tornadoによって発現される転写物には、ツイスターリボザイムが隣接する標的RNAが含まれている。ツイスターリボザイムは、自己切断可能な任意の触媒性RNA配列である。リボザイムは急速に自己触媒的切断を受け、RNAリガーゼによって連結された末端が残る。
【0156】
いくつかの実施形態では、dRNAは、5’及び/または3’連結配列が(直接的または間接的に)隣接する標的化RNA配列を含む。いくつかの実施形態では、dRNAは3’連結配列を含む。いくつかの実施形態では、dRNAは5’連結配列を含む。いくつかの実施形態では、dRNAは、3’連結配列及び5’連結配列を含む。いくつかの実施形態では、3’連結配列及び5’連結配列は、互いに少なくとも部分的に相補的である。いくつかの実施形態では、3’連結配列及び5’連結配列は、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%互いに相補的である。いくつかの実施形態では、3’連結配列と5’連結配列は互いに完全に相補的である。いくつかの実施形態では、5’及び/または3’ 連結配列は、5’-ツイストリボザイム及び/または3’-ツイストリボザイムによってさらに隣接される。
【0157】
いくつかの実施形態では、dRNAは、環状RNAを形成することができる線形RNAであり、ここで、dRNAは、5’から3’まで、5’連結配列、第1のリンカー核酸配列、標的化RNA配列、第2のリンカー核酸配列、及び3’連結配列を含む。いくつかの実施形態では、dRNAは、環状RNAを形成することができる線形RNAであり、ここで、dRNAは、5’から3’まで、5’連結配列、リンカー核酸配列、標的化RNA配列、及び3’連結配列を含む。いくつかの実施形態では、dRNAは、環状RNAを形成することができる線形RNAであり、ここで、dRNAは、5’から3’まで、5’連結配列、標的化RNA配列、リンカー核酸配列、及び3’連結配列を含む。いくつかの実施形態では、dRNAは、環状RNAを形成することができる線形RNAであり、dRNAは、5’から3’まで、5’連結配列、標的化RNA配列、及び3’連結配列を含む。いくつかの実施形態では、3’連結配列は配列番号11を含む。いくつかの実施形態では、5’連結配列は配列番号12を含む。
【0158】
いくつかの実施形態では、dRNAは、標的化RNA配列の5’末端と3’末端を直接的または間接的に連結する連結配列を含む環状RNAである。いくつかの実施形態では、連結配列は、T4 RNAリガーゼ(例えば、Rnl1またはRnl2)などのリガーゼによって互いに連結された5’連結配列及び3’連結配列を含む。いくつかの実施形態では、連結配列は配列番号10を含む。
【0159】
いくつかの実施形態では、dRNAは、時計回り方向に、連結配列、第1のリンカー核酸配列、標的化RNA配列、及び第2のリンカー核酸配列を含む環状RNAであり、連結配列は、第一のリンカー核酸配列の5’末端を、第二のリンカー核酸配列の3’末端に直接に連結する。いくつかの実施形態では、dRNAは、時計回りの方向に連結配列、リンカー核酸配列、及び標的化RNA配列を含む環状RNAであり、ここで、連結配列は、リンカー核酸配列の5’末端を、標的化RNA配列の3’末端に直接に連結する。いくつかの実施形態では、dRNAは、時計回りの方向に連結配列、標的化RNA配列、及びリンカー核酸配列を含む環状RNAであり、連結配列は標的化RNA配列の5’末端をリンカー核酸配列の3’末端に直接に連結する。いくつかの実施形態では、dRNAは、連結配列及び標的化RNA配列を含む環状RNAであり、連結配列は、標的化RNA配列の5’末端を標的化RNA配列の3’末端に直接に連結する。
【0160】
いくつかの実施形態では、3’ 連結配列及び5’ 連結配列は、独立して、長さが少なくとも約20ヌクレオチド、少なくとも約25ヌクレオチド、少なくとも約30ヌクレオチド、少なくとも約35ヌクレオシド、少なくとも約40ヌクレオチド、少なくとも約45ヌクレオチド、少なくとも約50ヌクレオチド、少なくとも約55ヌクレオチド、少なくとも約60ヌクレオチド、少なくとも約65ヌクレオチド、少なくとも約70ヌクレオチド、少なくとも約75ヌクレオチド、少なくとも約80ヌクレオチド、少なくとも約85ヌクレオチド、少なくとも約90ヌクレオチド、少なくとも約95ヌクレオチド、または少なくとも約100ヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、3’ 連結配列及び5’ 連結配列は、独立して、長さが約20~30ヌクレオチド、約30~40ヌクレオチド、約40~50ヌクレオチド、約50~60ヌクレオチド、約60~70ヌクレオチド、約70~80ヌクレオチド、約80~90ヌクレオチド、約90~100ヌクレオチド、約100~125ヌクレオチド、約125~150ヌクレオチド、約20~50ヌクレオチド、約50~100ヌクレオチド、または約100~150ヌクレオチドである。
【0161】
いくつかの実施形態では、dRNAは、RNAリガーゼによって環状化される。RNAリガーゼの非限定的な例としては、RtcB、T4 RNAリガーゼ1(Rnl1)、T4 RNAリガーゼ2(Rnl2)、Rnl3、及びTr11が挙げられる。いくつかの実施形態では、RNAリガーゼは宿主細胞内で内因的に発現される。いくつかの実施形態では、RNAリガーゼはRNAリガーゼRtcBである。いくつかの実施形態では、この方法は、RNAリガーゼ(例えば、RtcB)を前記宿主細胞に導入することをさらに含む。
【0162】
いくつかの実施形態では、dRNAは、前記宿主細胞への導入前に環状化される。いくつかの実施形態では、dRNAは化学的に合成される。いくつかの実施形態では、dRNAは、インビトロ酵素ライゲーション(例えば、RNAまたはDNAリガーゼを使用)または化学ライゲーション(例えば、臭化シアンまたは類似の縮合剤を使用)によって環化される。
【0163】
本明細書に記載のdRNAは、CRISPR/Casシステムで使用されるtracrRNA、crRNA、またはgRNAを含まない。いくつかの実施形態では、dRNAは、ADAR動員ドメインを含まない。「ADAR動員ドメイン」は、ADARに高い親和性で結合するヌクレオチド配列または構造、あるいは操作されたADAR構築体においてADARに融合された結合パートナーに結合するヌクレオチド配列であり得る。例示的なADAR動員領域には、GluR-2、GluR-B(R/G)、GluR-B(Q/R)、GluR-6(R/G)、5HT2C、及びFlnA(Q/R)ドメインが含まれるが、これらに限定されない;たとえば、Wahlstedt、Helene、and Marie,“Site-selective versus promiscuous A-to-I editing”、Wiley Interdisciplinary Reviews:RNA 2.6(2011):761-771は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。一部の実施形態では、dRNAは二本鎖部分を含まない。一部の実施形態では、dRNAは、MS2ステムループなどのヘアピンを含まない。一部の実施形態では、dRNAは一本鎖である。
【0164】
いくつかの実施形態では、dRNAは、標的化RNA配列の5’末端に連結されたsnoRNA配列(「5’snoRNA配列」)を含む。いくつかの実施形態では、dRNAは、標的化RNA配列の3’末端に連結されたsnoRNA配列(「3’snoRNA配列」)を含む。いくつかの実施形態では、dRNAは、標的化RNA配列の5’末端に連結されたsnoRNA配列(「5’snoRNA配列」)及び標的化RNA配列の3’末端に連結されたsnoRNA配列(「3’snoRNA配列」)を含む。いくつかの実施形態では、snoRNA配列は、長さが少なくとも約50ヌクレオチド、少なくとも約60ヌクレオチド、少なくとも約70ヌクレオチド、少なくとも約80ヌクレオチド、少なくとも約90ヌクレオチド、少なくとも約100ヌクレオチド、少なくとも約110ヌクレオチド、少なくとも約120ヌクレオチド、少なくとも約130ヌクレオチド、少なくとも約140ヌクレオチド、少なくとも約150ヌクレオチド、少なくとも約160ヌクレオチド、少なくとも約170ヌクレオチド、少なくとも約180ヌクレオチド、少なくとも約190ヌクレオチド、または少なくとも約200ヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、snoRNA配列は、長さが約50~75ヌクレオチド、約75~100ヌクレオチド、約100~125ヌクレオチド、約125~150ヌクレオチド、約150~175ヌクレオチド、約175~200ヌクレオチド、約50~100ヌクレオチド、約100~150ヌクレオチド、約150~200ヌクレオチド、約125~175ヌクレオチド、または約100~200ヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、snoRNA配列は、C/D Box snoRNA配列である。いくつかの実施形態では、snoRNA配列は、H/ACA Box snoRNA配列である。いくつかの実施形態では、snoRNA配列は、複合C/D Box及びH/ACA Box snoRNA配列である。いくつかの実施形態では、snoRNA配列はオーファンsnoRNA配列である。
【0165】
核小体低分子RNA(snoRNA)は、リボソームRNA、トランスファーRNA、核内低分子RNAなどの他のRNAの化学修飾をガイドすることが知られている小さな非コードRNA分子である。特定の二次構造の特徴に応じて、snoRNAにはBox C/DとBox H/ACAの2つの主要なカテゴリがある。snoRNAの両方の構造的特徴により、snoRNAは対応するRNA結合タンパク質(RBP)及びアクセサリータンパク質に結合して、機能的な小核小体リボ核タンパク質(snoRNP)複合体を形成することができる。Box C/D snoRNAはメチル化に関連すると考えられ、H/ACA box snoRNAはシュードウリジル化に関連すると考えられている。他のsnoRNAファミリーには、例えば、複合H/ACA及びC/D Box snoRNA、ならびにオーファンsnoRNAが含まれる。本明細書に記載されるsnoRNA配列は、天然に存在するsnoRNA、その一部、またはその変異体を含み得る。
【0166】
構築物
本願は、dRNA及び/またはADARをコードする構築物を提供する。いくつかの実施形態では、dRNAをコードするヌクレオチド配列を含む構築物(例えば、ウイルスベクターなどのベクター)が提供される。いくつかの実施形態では、ADARをコードするヌクレオチド配列を含む構築物(例えば、ウイルスベクターなどのベクター)が提供される。いくつかの実施形態では、dRNAをコードする第1のヌクレオチド配列とADARをコードする第2のヌクレオチド配列とを含む構築物が提供される。いくつかの実施形態では、第1のヌクレオチド配列及び第2のヌクレオチド配列は、同じプロモーターに作動可能に連結される。いくつかの実施形態では、第1のヌクレオチド配列及び第2のヌクレオチド配列は、異なるプロモーターに作動可能に連結される。いくつかの実施形態では、プロモーターは誘導性である。いくつかの実施形態では、構築物はADARをコードしない。いくつかの実施形態では、前記ベクターは、ADAR3阻害剤(例えば、ADAR3 shRNAまたはsiRNA)及び/またはインターフェロン刺激剤(例えば、IFN-α)をコードする核酸配列をさらに含む。
【0167】
本明細書で使用される「構築物」という用語は、RNAに転写される、またはタンパク質に発現されることができるコード核酸配列を含むDNAまたはRNA分子を指す。いくつかの実施形態では、構築物は、RNAまたはタンパク質をコードする核酸配列に作動可能に連結された1つ以上の調節エレメントを含む。構築物が宿主細胞に導入されると、適切な条件下で、構築物中のコード核酸配列が転写または発現され得る。
【0168】
本明細書に記載の構築物は、コードヌクレオチド配列の転写または発現を制御するように、dRNAをコードする核酸配列に作動可能に連結されているプロモーターを含むことができる。プロモーターは、その制御下にあるコードヌクレオチド配列の5'(上流)に配置することができる。プロモーターとコード配列との間の距離は、そのプロモーターと、プロモーターに由来する遺伝子においてそれが制御する遺伝子との間の距離とほぼ同じであってもよい。本分野で知られているように、この距離の変動は、プロモーター機能を失うことなく適応され得る。一部の実施形態において、構築物は、コードヌクレオチド配列の転写または発現を調節する5’UTR及び/または3’UTRを含む。いくつかの実施形態では、プロモーターは2つ以上のdRNAの発現を駆動する。
【0169】
プロモーターは、ポリメラーゼIIプロモーター(「Pol IIプロモーター」)またはポリメラーゼIIIプロモーター(「Pol IIIプロモーター」)であり得る。dRNAが線形RNAである。いくつかの実施形態では、構築物は、dRNAをコードする核酸配列に作動可能に連結されたPol IIプロモーターを含む。Pol IIプロモーターの非限定的な例としては、CMV、SV40、EF-1a、CAG、及びRSVが挙げられる。いくつかの実施形態では、Pol IIプロモーターはCMVプロモーターである。いくつかの実施形態では、CMVプロモーターは、配列番号5の核酸配列を含む。
【0170】
いくつかの実施形態では、dRNAが環状RNA、または環状RNAを形成することができる線形RNAであり、構築物はPol IIIプロモーターを含む。いくつかの実施形態では、プロモーターはU6プロモーターである。いくつかの実施形態では、U6プロモーターは配列番号6の核酸配列を含む。
【0171】
一部の実施形態において、前記構築物は、本出願において開示されるdRNAのいずれか1つをコードするベクターである。「ベクター」という用語は、それが連結されている別の核酸を輸送することができる核酸分子を指す。ベクターには、一本鎖、二本鎖、または部分的に二本鎖である核酸分子;1つ以上の自由端を含み、自由端を含まない(例えば、環状)核酸分子;DNA、RNA、またはその両方を含む核酸分子;及び本分野で知られている他の種類のポリヌクレオチドが含まれるが、これらに限定されない。ベクターの1つのタイプは「プラスミド」であり、これは、標準的な分子クローニング技術などによって、追加のDNAセグメントを挿入できる環状の二本鎖DNAループを指す。特定のベクターは、それらが導入された宿主細胞において自律複製することができる(例えば、細菌の複製起点を有する細菌ベクター及びエピソーム哺乳動物ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソマル哺乳動物ベクター)は、宿主細胞への導入後に前記宿主細胞のゲノムに組み込まれ、それにより、宿主ゲノムと共に複製される。さらに、特定のベクターは、それらが作動可能に連結されているコードヌクレオチド配列の転写または発現を指導することができる。このようなベクターは、本明細書では「発現ベクター」と呼ばれる。
【0172】
いくつかの実施形態では、前記構築物はウイルスベクターである。いくつかの実施形態では、前記構築物はレンチウイルスベクターである。いくつかの実施形態では、前記ベクターは組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターである。任意のAAV血清型の使用は、本開示の範囲内であるとみなされる。いくつかの実施形態では、rAAVベクターは、AAV血清型に由来するベクターであり、AAV ITRがAAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV2R471A、AAV DJ、ヤギAAV、ウシAAVまたはマウスAAVカプシド血清型などであることが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、構築物は、1つ以上のAAV逆方向末端反復(ITR)配列に隣接している。いくつかの実施形態では、構築物は2つのAAV ITRに隣接している。いくつかの実施形態では、AAV ITRは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV2R471A、AAV DJ、ヤギAAV、ウシAAV、またはマウスAAV血清型ITRである。いくつかの実施形態では、AAV ITRはAAV2 ITRである。
【0173】
いくつかの実施形態では、前記ベクターはスタッファー核酸(stuffer nucleid acid)をさらに含む。いくつかの実施形態では、スタッファー核酸は、dRNAをコードする核酸の上流または下流に位置する。いくつかの実施形態では、前記ベクターは自己相補的rAAVベクターである。いくつかの実施形態では、前記ベクターは、dRNAをコードする第1の核酸配列と、dRNAに相補的な配列をコードする第2の核酸配列とを含み、第1の核酸配列は、その長さの大部分または全部に沿って第2の核酸配列と鎖内塩基対を形成することができる。いくつかの実施形態では、第1の核酸配列と第2の核酸配列は、変異AAV ITRによって連結されており、変異AAV ITRは、D領域の欠失を含み、かつ末端分解(terminal resolution)配列の変異を含む。いくつかの実施形態では、前記ベクターはrAAV粒子にカプセル化される。いくつかの実施形態では、AAVウイルス粒子は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV2R471A、AAV2/2-7m8、AAV DJ、AAV2 N587A、AAV2 E548A、AAV2 N708A、AAV2 V708K、AAV2-HBKO、AAVDJ8、AAVPHP.B、AAVPHP.eB、AAVBR1、AAVHSC15、AAVHSC17、ヤギAAV、AAV1/AAV2キメラ、ウシAAV、マウスAAVまたはrAAV2/HBoV1血清型カプシドを含む。
【0174】
いくつかの実施形態では、構築物は、dRNAをコードする核酸の3’末端に連結された3’ツイストリボザイム配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、構築物は、dRNAをコードする核酸配列の5’末端に連結された5’ツイストリボザイム配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、構築物は、dRNAをコードする核酸配列の3’末端に連結された3’ツイストリボザイム配列、及びdRNAをコードする核酸配列の5’末端に連結された5’ツイストリボザイム配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、3’ツイストリボザイム配列はツイスターP3 U2Aであり、5’ツイストリボザイム配列はツイスターP1である。いくつかの実施形態では、5’ツイストリボザイム配列はツイスターP3 U2Aであり、3’ツイストリボザイム配列はツイスターP1である。いくつかの実施形態では、dRNAは自己触媒的切断を受ける。いくつかの実施形態では、触媒されたdRNA産物は、3’末端に5’-ヒドロキシル基及び2’,3’-環状リン酸エステルを含む。
【0175】
調製方法
本明細書に記載のdRNAは、化学合成及びインビトロ転写を含む、当技術分野で知られている任意の方法を使用して調製することができる。環状dRNAは、線形RNAの化学的ライゲーション、酵素的ライゲーション、またはリボザイム自己触媒作用によって調製できる。いくつかの実施形態では、環状dRNAは、インビトロで線形RNAを環状化することによって調製される。
【0176】
いくつかの実施形態において、本出願は、上記実施形態のいずれかの環状dRNAを形成することができる線形RNAを提供する。いくつかの実施形態では、線形RNAは、臭化シアンまたは類似の縮合剤を使用する化学環化法によって環化することができる。いくつかの実施形態では、線形RNAは、5’触媒性グループIイントロンフラグメント及び3’触媒性グループIイントロンフラグメントを含むグループIイントロンの自己触媒作用によって環化され得る。いくつかの実施形態では、線形RNAはリガーゼによって環状化され得る。いくつかの実施形態では、線形RNAは、T4 RNAリガーゼによって環状化され得る。いくつかの実施形態では、線形RNAは、DNAリガーゼによって環状化され得る。適切なリガーゼには、T4 DNAリガーゼ(T4 Dnl)、T4 RNAリガーゼ1(T4 Rnl1)、及びT4 RNAリガーゼ2(T4 Rnl2)が含まれるが、これらに限定されない。環状dRNAは、ゲル精製または高速液体クロマトグラフィー(HPLC)などの当技術分野で知られている方法を使用して精製することができる。
【0177】
いくつかの実施形態では、線形RNAを化学的に環状化して、環状dRNAを提供することができる。一部の化学的方法では、核酸(線形または環状ポリリボヌクレオチドなど)の5’及び3’末端に化学反応性基が含まれており、これらの反応性基が近づけると、分子の5’末端と3’末端との間に新しい共有結合を形成することができる。5’末端にはNHSエステル反応性基を含めることができ、3’末端には3’アミノ末端ヌクレオチドを含めることができるため、有機溶媒中では、線形RNA分子の3’末端にある3’アミノ末端ヌクレオチドは、5’-NHSエステル部分に対して求核攻撃をし、新しい5’-/3’-アミド結合を形成する。
【0178】
いくつかの実施形態では、環状dRNAは、線形RNAのリボザイム自己触媒的環状化によって得ることができる。いくつかの実施形態では、線形RNAはインビトロで環状化される。いくつかの実施形態では、リボザイムによる自己触媒的環化は、(a)線形RNAを、グループIイントロン(またはその5’及び3’触媒性グループIイントロンフラグメント)の自己触媒作用を活性化する条件に供して、環状化RNA産物を提供すること;(b)環状化RNA産物を単離して環状dRNAを提供することを含む。
【0179】
いくつかの実施形態では、この方法は、まず線形RNAをコードする配列をプラスミドベクターにクローニングし、次に組換えプラスミドを線状化することによって線形RNAを取得するステップを含む。いくつかの実施形態では、組換えプラスミドは、制限酵素消化によって線状化される。いくつかの実施形態では、組換えプラスミドはPCR増幅によって線状化される。いくつかの実施形態では、この方法は、線形プラスミドテンプレートを使用するインビトロ転写をさらに含む。いくつかの実施形態では、インビトロ転写は、T7プロモーターによって駆動される。いくつかの実施形態では、この方法は、線形RNA転写物を精製することをさらに含む。いくつかの実施形態では、線形RNAはゲル精製法によって精製される。
【0180】
いくつかの実施形態では、本出願は、グループIイントロンのリボザイム自己触媒作用によって線形RNA(例えば、精製された線形RNA)を環状化する方法を提供する。スプライシングプロセス中、グアノシンヌクレオチドの3’ヒドロキシル基は5’スプライシング部位でエステル交換反応を起こす。5’イントロンの半分が切除され、中間体の末端にある遊離ヒドロキシル基が3’スプライス部位で2回目のエステル交換を受け、その結果、中間領域が環化して3’イントロンが切除される。いくつかの実施形態では、グループIイントロンまたは5’及び3’触媒グループIイントロンフラグメントの自己触媒作用を活性化するための条件は、GTP及びMg2+の添加である。いくつかの実施形態では、GTP及びMg2+を55℃で添加することによって線形RNAを15分間環状化するステップが提供される。いくつかの実施形態では、この方法は、線形RNA転写物を消化するためにRNase Rで処理することをさらに含む。いくつかの実施形態では、この方法は、環状dRNAを単離するステップをさらに含む。いくつかの実施形態では、環状dRNAを単離するステップは、環状dRNAをゲルで精製することを含む。
【0181】
いくつかの実施形態では、環状dRNAは、RNAリガーゼなどのリガーゼを使用して線形RNAを環状化することによって得ることができる。いくつかの実施形態では、線形RNAはインビトロで環状化される。いくつかの実施形態では、線形RNAは、T4 RNAリガーゼによって環状化され得る。いくつかの実施形態では、線形RNAは、標的化RNA配列の5’末端に位置する5’連結配列と、標的化RNA配列の3’末端に位置する3’連結配列とを含み、5’連結配列及び3’連結配列はRNAリガーゼを通過して互いに結合する。非限定的な例において、線形RNAは、T4 DNAリガーゼ(T4 Dnl)、T4 RNAリガーゼ1(T4 Rnl1)、及びT4 RNAリガーゼ2(T4 Rnl2)などのリガーゼによって環状化され得る。線形RNAは、一本鎖核酸リンカー(スプリントDNAなど)の存在下または非存在下で環状化できる。
【0182】
いくつかの実施形態では、DNAまたはRNAリガーゼを使用して、5’-リン酸化核酸分子(例えば、線形RNA)を核酸(例えば、線形核酸)の3’-ヒドロキシル基に酵素的に連結して、新しいホスホジエステル結合を形成することができる。反応例では、製造業者のプロトコールに従って、線形環状RNAを1~10ユニットのT4 RNAリガーゼ(New England Biolabs,Ipswich,MA)とともに37℃で1時間インキュベートした。ライゲーション反応は、酵素的ライゲーション反応を促進するために、並置された5’及び3’領域と塩基対形成できる線形核酸の存在下で発生する。いくつかの実施形態では、ライゲーションはスプリントライゲーションである。例えば、SPLINTR(登録商標)リガーゼなどのスプリントリガーゼをスプリントライゲーションに使用することができる。スプリントライゲーションの場合、一本鎖RNAなどの一本鎖ポリヌクレオチド(スプリント)は、線形ポリリボヌクレオチドの両端にハイブリダイズするように設計することができ、これにより、一本鎖スプリントにハイブリダイズするときに2つの末端が並置され得る。したがって、スプリントリガーゼは、並置された線形ポリリボヌクレオチドの2つの末端のライゲーションを触媒して、環状ポリリボヌクレオチドを生成することができる。いくつかの実施形態では、環状dRNAを合成するためにDNAまたはRNAリガーゼを使用することができる。非限定的な例として、リガーゼは、環状(circ)リガーゼまたは環状(circular)リガーゼであり得る。
【0183】
IV.治療方法
本明細書に記載のRNA編集方法及び組成物は、遺伝性遺伝子疾患及び薬剤耐性を含むがこれらに限定されない、個体の疾患または病症を治療または予防するために使用することができる。
【0184】
一部の実施形態では、本明細書に記載のRNA編集方法のいずれか1つを使用して標的RNAを編集することを含む、エクスビボで個体(例えば、ヒト個体)の細胞内の標的RNAを編集する方法が提供される。
【0185】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のいずれかのRNA編集方法を使用して、個体の細胞内に疾患または症状に関連する標的RNAを編集することを含む、個体(例えば、ヒト個体)の疾患または症状を治療または予防する方法が提供される。ここで、dRNAは、疾患または症状に関連する標的RNAにハイブリダイズする標的化RNA配列を含む。いくつかの実施形態では、この方法は、dRNA、またはdRNAをコードする核酸を含む構築物をエクスビボで個体の単離された細胞に導入することを含む。いくつかの実施形態では、この方法は、有効量のdRNAまたはdRNAをコードする核酸を含む構築物を個体に投与することを含む。
【0186】
一部の実施形態では、標的RNAは、個体の疾患または病症に関連する。一部の実施形態では、前記疾患または病症は、遺伝性遺伝子疾患、または1つ以上の後天性遺伝子突然変異(例えば、薬剤耐性)に関連する疾患または病症である。一部の実施形態では、この方法は、個体から細胞を得ることをさらに含む。一部の実施形態では、ADARは、単離された細胞において内因的に発現されるADARである。一部の実施形態では、この方法は、ADARまたはADARをコードする核酸を含む構築物を単離された細胞に導入することを含む。一部の実施形態では、この方法は、編集されたRNAを有する細胞を培養することをさらに含む。一部の実施形態では、この方法は、編集されたRNAを有する細胞を個体に投与することをさらに含む。一部の実施形態では、前記疾患または病症は、遺伝性遺伝子疾患、または1つ以上の後天性遺伝子突然変異(例えば、薬剤耐性)に関連する疾患または病症である。
【0187】
本願の方法を使用した治療に適した疾患及び病症は、RNA転写物におけるミスセンス変異、早期終止コドン、異常なスプライシング、または選択的なスプライシングを引き起こすGからAへの突然変異のような変異に関連する疾患を含む。本出願の方法によって回復され得る疾患関連突然変異の例には、癌に関連するTP53W53X(例えば、158G>A)、I型ムコ多糖症(MPS I)に関連するIDUAW402X(例えば、エキソン9におけるTGG>TAG突然変異)、エーラース・ダンロス症候群に関連するCOL3A1W1278X(例、3833G>A突然変異)、原発性肺高血圧症に関連するBMPR2W298X(例、893G>A)、ジュベール症候群に関連するAHI1W725X(例、2174G>A)症候群、ファンコニ貧血に関連するFANCCW506X(例、1517G>A)、原発性家族性肥大性心筋症に関連するMYBPC3W1098X(例、3293G>A)、及びX連鎖重症複合免疫不全症に関連するIL2RGW237X(例、710G>A)が含まれるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、前記疾患または病症は癌である。一部の実施形態では、前記疾患または病症は単一遺伝子疾患である。一部の実施形態では、前記疾患または病症は多遺伝子性疾患である。
【0188】
一部の実施形態において、本明細書に記載のいずれかのRNA編集方法を使用して個体の細胞において標的RNAを編集することを含む、個体において変異(例えば、G>A突然変異)を有する標的RNAに関連するがんを治療する方法が提供される。一部の実施形態において、標的RNAは、TP53W53X(例えば、158G>A)である。
【0189】
一部の実施形態において、本明細書に記載のいずれかのRNA編集方法を使用して個体の細胞において標的RNAを編集することを含む、個体に変異(例えば、G>A突然変異)を有する標的RNAに関連するMPS I(例えば、ハーラー(Hurler)症候群またはシャイエ(Scheie)症候群)を治療する方法が提供される。一部の実施形態において、標的RNAは、IDUAW402X(例えば、エクソン9におけるTGG>TAG突然変異)である。
【0190】
一部の実施形態において、本明細書に記載のいずれかのRNA編集方法を使用して個体の細胞において標的RNAを編集することを含む、個体に変異(例えば、G>A突然変異)を有する標的RNAに関連するエーラス-ダンロス(Ehlers-Danlos)症候群を治療または予防する方法が提供される。一部の実施形態において、標的RNAは、COL3A1W1278X(例えば、3833G>A突然変異)である。
【0191】
一部の実施形態において、本明細書に記載のいずれかのRNA編集方法を使用して個体の細胞において標的RNAを編集することを含む、個体において変異(例えば、G>A突然変異)を有する標的RNAに関連する原発性肺高血圧症を治療する方法が提供される。一部の実施形態において、標的RNAは、BMPR2W298X(例えば、893G>A)である。
【0192】
一部の実施形態において、本明細書に記載のいずれかのRNA編集方法を使用して個体の細胞において標的RNAを編集することを含む、個体において変異(例えば、G>A突然変異)を有する標的RNAに関連するジュベール(Joubert)症候群を治療する方法が提供される。一部の実施形態において、標的RNAは、AH11W725X(例えば、2174G>A)である。
【0193】
一部の実施形態において、本明細書に記載のいずれかのRNA編集方法を使用して個体の細胞において標的RNAを編集することを含む、個体において変異(例えば、G>A突然変異)を有する標的RNAに関連するファンコニ貧血を治療する方法が提供される。一部の実施形態において、標的RNAは、FANCCW506X(例えば、1517G>A)である。
【0194】
一部の実施形態において、本明細書に記載のいずれかのRNA編集方法を使用して個体の細胞において標的RNAを編集することを含む、個体において変異(例えば、G>A突然変異)を有する標的RNAに関連する原発性家族性肥大型心筋症を治療する方法が提供される。一部の実施形態において、標的RNAは、MYBPC3W1098X(例えば、3293G>A)である。
【0195】
一部の実施形態において、本明細書に記載のいずれかのRNA編集方法を使用して個体の細胞において標的RNAを編集することを含む、個体において変異(例えば、G>A突然変異)を有する標的RNAに関連するX連鎖重症複合免疫不全を治療する方法が提供される。一部の実施形態において、標的RNAは、IL2RGW237X(例えば、710G>A)である。
【0196】
一部の実施形態において、本明細書に記載のいずれかのRNA編集方法を使用して個体の細胞において標的RNAを編集することを含む、個体において変異(例えば、G>A突然変異)を有する標的RNAに関連する高血糖症を治療する方法が提供される。一部の実施形態において、標的RNAは、MALAT1である。
【0197】
一部の実施形態において、本明細書に記載のいずれかのRNA編集方法を使用して個体の細胞において標的RNAを編集することを含む、個体において変異(例えば、G>A突然変異)を有する標的RNAに関連するシャルコー・マリー・トゥース病2B型(CMT2B)を治療する方法が提供される。一部の実施形態において、標的RNAは、RAB7Aである。
【0198】
一般に、組成物(例えば、dRNAまたはdRNAをコードする構築物)の投与量、スケジュール、及び投与経路は、個体のサイズ及び状態に従って、そして標準的な製薬実践に従って決定されることができる。例示的な投与経路には、静脈内、動脈内、腹腔内、肺内、小胞内、筋肉内、気管内、皮下、眼内、髄腔内、または経皮が含まれる。
【0199】
本出願のRNA編集方法は、動物細胞、例えば哺乳動物細胞で使用できるだけでなく、植物または真菌のRNA、例えば、内因的に発現されたADARを有する植物または真菌のRNAの修飾にも使用することができる。本明細書に記載の方法は、改善された特性を有する遺伝子操作された植物及び真菌を生成するために使用することができる。
【0200】
さらに、本明細書に記載のいずれかの治療方法に使用する本明細書に記載のいずれかのdRNA、構築物、編集されたRNAを有する細胞及び組成物、ならびに、疾患または症状を治療する薬剤の製造における本明細書に記載のいずれかのdRNA、構築物、編集された細胞及び組成物が提供される。
【0201】
V.組成物、キット及び製品
本明細書はさらに、本明細書に記載のdRNA、構築物、ライブラリー、または編集されたRNAを有する宿主細胞のいずれか1つを含む組成物(医薬組成物など)を提供する。
【0202】
一部の実施形態では、本明細書に記載のdRNAまたはdRNAをコードする構築物のいずれか1つ、及び薬学的に許容される担体、賦形剤または安定剤を含む医薬組成物が提供される(Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980))。許容される担体、賦形剤、または安定剤は、使用される投与量及び濃度でレシピエントに対して毒性がなく、リン酸塩、クエン酸塩、及び他の有機酸などの緩衝剤;アスコルビン酸及びメチオニンを含む酸化防止剤;防腐剤(例えば、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;ヘキサメトニウムクロリド;ベンザルコニウムクロリド、ベンゼトニウムクロリド;フェノール、ブチルアルコールまたはベンジルアルコール;p-ヒドロキシ安息香酸メチルまたはp-ヒドロキシ安息香酸プロピルなどのp-ヒドロキシ安息香酸アルキル;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾールなど);低分子量(約10残基未満)のポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性重合体;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニンまたはリシンなどのアミノ酸;単糖、二糖、及びグルコース、マンノース、またはデキストリンを含む他の糖類;EDTAなどのキレート剤;ショ糖、マンニトール、トレハロースまたはソルビトールなどの糖;ナトリウムなどの塩形成対イオン;金属錯体(例:Zn-タンパク質錯体);及び/またはTWEEN(商標)、PLURONICS(商標)またはポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤を含む。一部の実施形態では、凍結乾燥製剤が提供される。インビボ投与に使用される医薬組成物は、無菌でなければならない。これは、例えば、滅菌濾過膜による濾過によって容易に達成され得る。
【0203】
本明細書に記載のdRNA、構築物、組成物、ライブラリー、または編集された宿主細胞のいずれか1つを含む、本明細書に記載のRNA編集方法または治療方法のいずれか1つに使用できるキットまたは製品がさらに提供される。
【0204】
一部の実施形態において、dRNA、またはdRNAをコードする核酸配列を含む構築物を含む、宿主細胞内に標的RNAを編集するためのキットが提供され、ここで、dRNAは、標的RNAにハイブリダイズして二本鎖RNAを形成する標的化RNA配列を含み、標的RNAは、疾患または症状に関連し、二本鎖RNAは、標的RNA中の非標的アデノシンを含有するバルジを含み、dRNAは、ADARを動員して、標的RNA中の標的アデノシン残基を脱アミノ化することができる。一部の実施形態では、dRNAは環状である。一部の実施形態では、dRNAは、標的化RNA配列の末端に隣接するリンカー核酸配列を含む。
【0205】
一部の実施形態において、dRNA、またはdRNAをコードする核酸配列を含む構築物を含む、宿主細胞内に標的RNAを編集するためのキットが提供され、ここで、dRNAは、標的RNAにハイブリダイズする標的化RNA配列を含み、標的RNAは、疾患または症状に関連し、dRNAは、標的化RNA配列の末端に隣接するリンカー核酸配列を含み、リンカー核酸配列は、dRNAのいかなる部分とも実質的に二次構造を形成しなく、dRNAは、ADARを動員して、標的RNA中の標的アデノシン残基を脱アミノ化することができ、かつdRNAは、環状RNA、または環状RNAを形成し得る線形RNAである。
【0206】
一部の実施形態において、前記キットは、ADARまたはADARをコードする核酸を含む構築物をさらに含む。一部の実施形態において、前記キットは、ADAR3の阻害剤またはその構築物をさらに含む。一部の実施形態において、前記キットは、インターフェロンの刺激物またはその構築物をさらに含む。一部の実施形態では、前記キットは、本明細書に記載のRNA編集方法または治療方法のいずれか1つを実行するための説明書をさらに含む。
【0207】
本出願のキットは、適切な包装に入っている。適切な包装には、バイアル、ボトル、ジャー、柔軟な包装(例えば、密封されたポリエステルフィルムまたはビニール袋)などが含まれるが、これらに限定されない。キットは、トランスフェクションまたは形質導入試薬、細胞培養培地、緩衝液、及び解釈情報などの追加コンポーネントを選択可能に提供する場合がある。
【0208】
したがって、本出願はまた、製品を提供する。前記製品は、容器と、容器上または容器に関連付けられたラベルまたはプロトコルを含むことができる。適切な容器には、バイアル(密封されたバイアルなど)、ボトル、ジャー、柔軟な包装などが含まれる。一部の実施形態では、容器は医薬組成物を収容し、滅菌アクセスポートを有してもよい(例えば、容器は、静脈内溶液バッグまたは皮下注射針によって貫通可能なストッパーを有するバイアルであってもよい)。医薬組成物を収容する容器は、再構成された製剤の反復投与(例えば、2~6回の投与)を可能にする多用途バイアルであってもよい。プロトコルとは、治療用製品の市販パッケージに通常含まれている説明書を指し、そのような製品の使用に関する適応症、使用法、投与量、投与、禁忌、及び/または警告などの情報が含まれている。また、前記製品は、注射用静菌性水(BWFI)、リン酸緩衝生理食塩水、リンゲル液及びデキストロース溶液などの薬学的に許容される緩衝液を含む第2の容器をさらに含んでもよい。それは、他の緩衝液、希釈剤、フィルター、針、及び注射器を含む、商業的及びユーザーの観点から望ましい他の材料をさらに含んでもよい。
【0209】
キットまたは製品は、薬局(例えば、病院薬局及び調剤薬局)での保管及び使用に十分な量で包装された、複数の単位用量の医薬組成物の及び使用説明書を含んでもよい。
【0210】
実施例
以下の実施例は、本出願の例示的なもののみであるため、いかなる方法でも本発明を限定すると見なされるべきではない。以下の例示的な実施形態及び実施例、ならびに詳細な説明は、限定としてではなく、例示として提供されている。
【0211】
材料及び方法
(プラスミドの構築)
線形arRNAを発現する構築物の場合、arRNAの配列を合成し、pLenti-sgRNA-lib 2.0(Addgene#89638)バックボーンにGolden Gateクローニングによってクローニングし、arRNAの転写をhU6またはCMVプロモーターによってそれぞれ駆動した。遺伝子コードされたcirc-arRNA発現構築物については、まず、Twister P3 U2A、5’連結配列、3’連結配列、及びTwister P148を含むpLenti-sgRNA-lib 2.0ベクターに基づいてクローニングベクターを構築した。次に、arRNA配列を合成し、Golden Gateクローニングによって自己触媒性環状RNA発現ベクターにクローニングした。
【0212】
編集効率をさらに向上させるために、circ-arRNA151に20ntのスペーサーと30ntのポリAC配列を隣接させ、次に遺伝的にコードされたcirc-arRNA発現ベクターにGolden Gateクローニングによってクローニングした。
【0213】
オフターゲット編集を減らすために、潜在的なオフターゲットアデノシンの反対側のヌクレオチドを削除し、遺伝的にコードされたcirc-arRNA発現ベクターにクローニングした。
【0214】
二重蛍光レポーターについては、mCherry及びEGFP(EGFPの開始コドンATGが削除された)コード配列をPCRによって増幅し、BsmBI(ThermoFisher Scientific、ER0452)を使用して消化し、続いて、T4 DNAリガーゼ(NEB、M0202L)を介した3×GGGGSリンカーとのライゲーションが行われた。そして、ライゲーション産物をpLenti-CMV-MCS-PUROバックボーンに挿入した。
【0215】
病原性変異を有する遺伝子を発現する構築物については、TP53(Vigenebioから注文、中国医学科学院病原体生物学研究所のJ.Wangの研究室からの贈り物)の全長コード配列は、対応する遺伝子をコードする構築物から増幅され、誘発PCRによりG>A突然変異を導入した。増幅産物は、Gibsonクローニング法によりpLenti-CMV-MCS-mCherryバックボーンにクローニングされた。
【0216】
(インビトロでの環状RNAの生成及び精製)
環状RNA(circRNA)の生成は、Abe,N.et al.“Preparation of Circular RNA In Vitro,”Circular RNAs.Humana Press,New York,NY,2018.181-192、及びChen,H.et al.“Preferential production of RNA rings by T4 RNA ligase 2 without any splint through rational design of precursor strand,”Nucleic Acids Research 48,e54-e54(2020)に記載の方法にしたがう。簡単に説明すると、HISCRIBE(商標)T7 High Yield RNA Synthesis Kit(New England Biolabs、#E2040S)を使用して、線状化環状RNAプラスミドテンプレートからインビトロ転写(IVT)によって環状RNA前駆体を合成した。IVT後、IVT生成物をDNase I(New England Biolabs、#M0303S)で30分間処理してDNAテンプレートを消化した。T4 Rnl環化の場合、T4 Rnl 1(New England Biolabs、#M0239L)またはT4 Rnl 2(New England Biolabs、#M0204L)を線形環状RNA前駆体に添加し、DNase I消化後37℃で一晩インキュベートした。自己触媒環化のグループ1では、DNase I消化後、GTPを最終濃度2mMで反応に添加し、反応を55℃で15分間インキュベートして、環状RNAの環化を触媒した。次いで、環状化したcirc-arRNAを、Monarch RNA Cleanup Kit(New England Biolabs、#T2040L)を使用してカラム精製した。そして、カラム精製したRNAを65℃で3分間加熱し、氷上で冷却した。反応物をRNase R(Epicenter、#RNR07250)で37℃で15分間処理して、circRNAを濃縮した。RNase Rで処理したRNAをカラム精製した。
【0217】
circ-arRNAをさらに濃縮するために、精製したRNase Rで処理したcirc-arRNAを、粒径5μm、孔径2000Åの4.6×300mmサイズ排除カラム(Sepax Technologies、#215980P-4630)を備えた高速液体クロマトグラフィー(Agilent HPLC1260)を使用してRNaseフリーTE緩衝液中で分析した。circ-arRNAが豊富な画分を収集し、カラム精製に供した(New England Biolabs、#T2040L)。精製したcirc-arRNAの免疫原性をさらに低下させるために、circ-arRNAを65℃で3分間加熱し、氷上で冷却し、次いでクイックCIPホスファターゼ(New England Biolabs、#M0525S)で処理した。最後に、RNA Clean & Concentrator Kit(ZYMO、#R1018)を使用して、circ-arRNAをカラム精製し、濃縮した。
【0218】
(細胞培養とトランスフェクション)
HeLa細胞株はZ.Jiangの研究室(北京大学)から入手し、HEK293T細胞株はC.Zhangの研究室(北京大学)から入手した。A549細胞株はEdiGeneからのものであった。C2C12細胞株はProcellから購入した。MEF細胞はIdua-W392Xマウスから生成された。Hep G2/RPE1/SF268/Cos7/NIH3T3細胞株は、北京大学の我らの研究室で維持されていた。これらの哺乳類細胞株を、1%ペニシリン-ストレプトマイシンを補充した10%ウシ胎児血清(BI)を含むダルベッコ改良イーグル培地(Corning、10-013-CV)中で37℃、5%COで培養した。
【0219】
メーカーのプロトコルにしたがって、X-tremeGENE HP DNAトランスフェクション試薬(Roche、06366546001)またはPEI(Proteintech、B600070)を使用してプラスミドを細胞にトランスフェクトし、Lipofectamine MessengerMax(Invitrogen、LRNA003)を使用してインビトロで環状化されたRNAを細胞にトランスフェクトした。
【0220】
(細胞株の構築)
安定したレポーター細胞株の場合、レポーター構築物(pLenti-CMV-MCS-PUROバックボーン)を、2つのウイルスパッケージングプラスミドpR8.74及びpVSVGとともにHEK293T細胞に同時トランスフェクトした。72時間後、上清ウイルスを回収し、-80℃で保存した。HEK293T細胞をレンチウイルスに感染させた後、mCherry陽性細胞を蛍光活性化細胞選別(FACS)で選別して培養し、検出可能なEGFPバックグラウンドのない二重蛍光レポーターを安定して発現する単一クローン細胞株を選択した。HEK293T ADAR1-/-及びTP53-/-細胞株は、Zhou,Y.,Zhang,H.&WeiW, “Simultaneous generation of multi-gene knockouts in human cells,”FEBS Letters 11(2016)に記載の方法に従って生成された。ADAR1を標的とするシングルガイドRNAと、CMV駆動ピューロマイシン耐性遺伝子を含むPCRで増幅されたドナーDNAをHEK293T細胞に同時トランスフェクトした。次に、トランスフェクションの7日後に細胞をピューロマイシンで処理した。ピューロマイシン耐性細胞から単一クローンを単離した後、シーケンシングとウエスタンブロットによる検証を行った。
【0221】
(内因性または外因性で発現した転写産物のRNA編集)
二重蛍光レポーターでのRNA編集を評価するために、HEK293Tレポーター細胞を12ウェルプレート(1~3×10細胞/ウェル)に播種した。24時間後、細胞を2μgの線形arRNAまたはcirc-arRNAプラスミドでトランスフェクトした。トランスフェクションの48時間後、編集効率をEGFP比率によって測定した。二重蛍光レポーター細胞と同様に、ADAR1-/- HEK293T細胞をレポーター遺伝子と線形arRNAまたはcirc-arRNAプラスミドによってトランスフェクトした。
【0222】
複数の細胞株でのRNA編集効率を評価するために、1×10(HeLa、Hep G2、A549、RPE1、SF268、C2C12、NIH3T3)または4×10(HEK293T)細胞を12ウェルプレートに播種した。24時間後、レポーター遺伝子とarRNAプラスミドをこれらの細胞に同時トランスフェクトした。編集効率は、EGFP比率によって測定された。
【0223】
EGFP比率を評価するために、トランスフェクションの48時間後に、フローサイトメトリー(FACS分析)によって細胞を選別して収集した。mCherryシグナルは、レポーター遺伝子/circ-arRNA発現細胞の蛍光選択マーカーとして機能し、EGFP/mCherry細胞のパーセンテージは編集効率の読み取り値として計算された。
【0224】
内因性mRNA転写産物のRNA編集を評価するために、HEK293T細胞を6ウェルプレートに播種した(8×10細胞/ウェル)。24時間後、細胞を3μgの線形または環状arRNAプラスミドによってトランスフェクトした。トランスフェクションの48時間後、細胞をFACS分析によって選別して収集した。ディープシーケンシングによって編集効率を測定した。
【0225】
AからIへの編集比率の次世代シーケンシング(NGS)定量化について、トランスフェクションの48時間後に、細胞をFACSアッセイによって選別及び収集してRNA単離(Zymo、R1055)をした。次に、逆転写PCR(RT-PCR)(TIANGEN、KR118)を介して全RNAをcDNAに逆転写し、対応するプライマーmCherry-SpeI-F(配列番号1)、mCherry-BsmBI-R1(配列番号2)及びEGFP-BsmBI-F1(配列番号3)を使用して、標的部位をPCR増幅した。PCR産物は、サンガーシーケンシングまたは次世代シーケンシング(NGS)(Illumina HiSeq X Ten)用に精製された。
【0226】
(標的部位のRNA編集分析)
ディープシーケンシング分析では、arRNAカバー配列の標的部位配列(上流及び下流20-nt)を使用してインデックスが生成された。読み取り値は、BWA(v.0.7.10-r789)を使用してアライメント及び定量化された。次に、BAMをSamtoolsアライメントで選別し、REDitools(v.1.0.4)を使用してRNA編集部位を分析した。パラメータは、-U[AGまたはTC]-t8-n0.0-T6-6-e-d-uであった。フィッシャーの正確確率検定(p値<0.05)によって計算されたarRNA標的化領域内のすべての有意なAからGへの変換は、arRNAによる編集と見なされた。標的アデノシンを除く変換は、オフターゲット編集であった。対照群と実験群に同時に現れた変異は単一ヌクレオチド多型によるものと見なされた。
【0227】
(全トランスクリプトームRNAシーケンシング分析)
青色蛍光タンパク質(BFP)発現カセットを有する対照RNA151またはcirc-arRNA151-PPIA発現プラスミドをHEK293T細胞にトランスフェクトした。BFP細胞はトランスフェクションの48時間後にFACSによって濃縮され、RNAはRNAprep Pure Microキット(TIANGEN、DP420)で精製された。次に、NEBNext Poly(A)mRNA磁性分離モジュール(New England Biolabs、E7490)を使用してmRNAを精製し、IlluminaのNEBNext Ultra II RNALibrary Prep Kit(New England Biolabs、E7770)で処理した後、Illumina HiSeq X Tenプラットフォーム(2×150塩基対ペアエンド;各サンプル30G)を使用してディープシーケンス分析を行った。トランスフェクションによる非特異的影響を排除するために、トランスフェクション試薬でのみ細胞を処理したモック群を含めた。各群には4つの複製が含まれていた。
【0228】
バイオインフォマティクス分析パイプラインは、Vogelらの研究に従った。分析の品質管理はFastQCを使用して行われ、品質トリムはCutadaptに基づいた(各リードの最初の6bpがトリムされ、最大20bpが品質トリムされた)。AWKスクリプトを使用して、導入されたcirc-arRNAをフィルタリングした。トリミング後、90nt未満の長さのリードはフィルタリングされた。続いて、フィルタリングされたリードは、STARソフトウェアによってリファレンスゲノム(GRCh38-hg38)にマッピングされた。GATK Haplotypcallerを使用してバリアントを呼び出した。GATKによって生成された原始VCF(Variant Call Format)ファイルは、GATK VariantFiltration、bcftools、及びANNOVARによってフィルタリングされ、注釈が付けられた。dbSNP、1000 Genome及びEVSのバリアントはろ過された。次に、各群の6つの複製の共有バリアントがRNA編集部位として選択された。モック(mock)群のRNA編集レベルをバックグラウンドとして表示し、モック群のバリアントを差し引くことにより、対照RNA151及びcirc-arRNA151-PPIAのグローバルターゲットを取得した。
【0229】
circ-arRNAが自然な編集ホメオスタシスを混乱させるかどうかを評価するために、対照RNA151及びcirc-arRNA151-PPIAが共有するグローバル編集部位を分析した。ネイティブのAからIへの編集部位でのRNA編集比率の差は、ピアソン(Pearson)の相関係数分析で評価された。
【0230】
(p53の転写調節活性アッセイ)
TP53W53X cDNA発現プラスミドとcirc-arRNA発現プラスミドを、p53の転写調節活性を検出するために、p53-ホタルルシフェラーゼシス報告プラスミド(YRGene、VXS0446)及びウミシイタケシフェラーゼプラスミド(北京大学Z.Jiang研究室から)とともに使用した。トランスフェクションの48時間後、細胞を回収し、製造元のプロトコルに従ってPromega Dual-Gloルシフェラーゼアッセイシステム(Promega、E2940)でアッセイした。Infinite M200リーダー(TECAN)を用いて発光を測定した。p53誘導性ルシフェラーゼの倍率変化を、ホタルの発光とウミシイタケの発光の比として計算した。
【0231】
ウエスタンブロット
p53(Santa Cruz、sc-126)及びβ-チューブリン(CWBiotech、CW0098)に対するマウスモノクローナル一次抗体を使用した。HRPがコンジュゲートされたヤギ抗マウスIgG(H+L、115-035-003)二次抗体は、Jackson ImmunoResearchから購入した。そして、2×10個の細胞を選別して溶解し、等量の各溶解物のタンパク質をSDS-PAGE用にロードした。次に、サンプルタンパク質をポリ二フッ化ビニリデンメンブレン(Bio-Rad Laboratories)に移し、一次抗体(p53、1:300、抗チューブリン、1:2000)でイムノブロットした。続いて、二次抗体のインキュベーション(1:3,000)及び曝露を行った。実験は3回繰り返された。半定量分析は、Image Labソフトウェアを使用して行われた。
【0232】
(動物実験)
Idua-W392Xマウスを、Jackson Laboratoryから購入した。すべてのマウスを、北京大学実験動物センターでSPF(特定病原体を含まない)条件下で繁殖及び飼育した。動物実験は北京大学実験動物センターによって承認され、国家衛生研究所の実験動物の管理と使用に関するガイドに従って実施された。
【0233】
circ-arRNA AAV8はPackGene Biotechによってパッケージングされた。6~8週齢で、AAVをマウスあたり1×1013ベクターゲノムの用量で尾静脈を介してIDUA-W392Xマウス(B6.129S-Iduatml.1Kmke/J)に注射した。実験期間中(4~5週間)、マウスを週に4回モニタリングした。
【0234】
採取したマウス組織を1mL Trizol中でホモジナイズし、クロロホルム抽出法によりRNAを抽出した。次に、組織の逆転写されたRNAがPCRにかけられ、サンガーシーケンシングまたは次世代シーケンシングによって分析された。
【0235】
(IDUA触媒活性アッセイ)
採取した細胞ペレットを1×PBS緩衝液中の28μLの0.5%Triton X-100で再懸濁及び溶解し、氷上で30分間保持した。次に、25μLの細胞溶解液を25μLの190μM 4-メチルウンベリフェリル-α-L-イデュロニダーゼ基質(Cayman、2A-19543-500)に添加し、0.2%Triton X-100を含む0.4Mギ酸ナトリウム緩衝液[pH3.5]に溶解し、暗所で37℃で90分間インキュベートした。触媒反応は、200μLの0.5M NaOH/グリシン緩衝液[pH10.3]を添加してクエンチし、4℃で2分間遠心分離した。上澄みを96ウェルプレートに移し、Infinite M200リーダー(TECAN)を使用して365nm及び450nmの発光波長で蛍光を測定した。
【0236】
(統計)
群比較のために、対応のない両側スチューデントt検定を実行した。全トランスクリプトームRNA-seqデータについては、DESeq2(v.1.18.1)を使用して統計的有意性を分析した。統計分析は、R及びPrism8(GraphPad Software,Inc.)を使用して実行された。
【0237】
実施例1.Pol IIプロモーターから生成されるarRNAにより、高いRNA編集効率が実現できる
RNAポリメラーゼII(Pol II)が編集効率を改善できるかどうかをテストするために、Pol IIプロモーター(CMV)によって駆動されるarRNAを発現するプラスミドを構築した。mCherryとEGFPの間にインフレーム終止コドンを含むレポーターシステム(レポーター1、図1A)を使用して、CMV及びU6(Pol III)プロモーターによって駆動されるarRNA間のRNA編集効率(arRNA151)を比較した。未処理の細胞をモック(未処理)として使用した。
【0238】
使用した配列は次のとおりである:arRNA151は配列番号4の配列を有する。CMVプロモーターは、配列番号5の核酸配列を有する。U6プロモーターは、配列番号6の核酸配列を有する。二重蛍光レポーター遺伝子1は、mCherryの配列(配列番号7)、3×GSリンカー及び標的とされるAを含む配列(配列番号8)、ならびにeGFPの配列(配列番号9)を含む。
【0239】
CMV-arRNAは、RNA編集においてU6-arRNAよりも優れていることが分かった(図1B~1C)。これらの結果は、arRNAの存在量がLEAPER効率にとって重要であり、5’-Cap及び3’-poly(A)が標的化編集中のarRNAを妨げないことを示している。
【0240】
実施例2.circ-arRNAにより、効率的かつ耐久性のあるプログラム可能なRNA編集が可能になる
arRNAの環状化がRNAの安定性と半減期を改善できるかどうかを試験するために、実施例1に記載のように、mCherryとEGFPの間にインフレーム終止コドンを含むレポーター遺伝子1を安定して発現するHEK293T細胞(図2A)を、レポーター1を標的とするcirc-arRNA151を発現するプラスミドによってトランスフェクトした。EGFP蛍光は、RNAに対する標的編集の効率を示す。
【0241】
arRNA(circ-arRNA)の環状化効率は、対応するプライマー対を使用した標的遺伝子座のPCR増幅によって決定され、PCR産物はサンガー配列決定のために精製された。サンガー配列決定により、circ-arRNAが正常に生成されたことが示された。レポーター1を使用して、CMV(Pol II)またはU6(Pol III)プロモーターによって駆動される151nt arRNA(arRNA151;配列番号4)とcirc-arRNA(circ-arRNA151)の間でRNA編集効率を比較した。U6-circ-arRNA151は、RNA編集においてCMV-arRNA151よりも優れていることが判明した(図2B)。circ-arRNA151は、配列番号4の5’と3’を連結する配列番号10の連結リンカー配列を有する。3’連結リンカー配列は配列番号11であり、5’連結リンカー配列は配列番号12である。RNA生成量をさらに増加させるために、Pol IIプロモーター(CMV)によって駆動されるcirc-arRNA151を発現するプラスミドを構築した。サロゲートレポーターアッセイにおけるEGFP発現によって示されるように、U6-circ-arRNA151はRNA編集においてCMV-circ-arRNA151よりも優れていることが判明した(図2C)。上記の結果に基づいて、RNA編集においては、CMVプロモーターよりもU6プロモーターによって駆動されるcirc-arRNAの編集効率が優れていることが証明されたため、以下のすべての実験にはU6プロモーターを使用した。
【0242】
レポーター1を使用して、U6プロモーターによって駆動されるarRNA(arRNA151)とcirc-arRNA(circ-arRNA151)の間でRNA編集効率を比較した。非標的化RNAをトランスフェクトした細胞を対照として使用した(対照RNA151)。トランスフェクトされたHEK293T細胞におけるEGFP百分率の有意な増加によって示されるように、circ-arRNAはarRNAよりも優れていることが判明した(図2D)。さらに、このRNA編集は持続的であり、少なくとも約18日間持続した(図2E)。
【0243】
circ-arRNAによるRNA編集が内因性ADAR1タンパク質にも依存するかどうかをテストするために、レポーター1と、レポーター1を標的とするcirc-arRNA151を発現するプラスミドを、ADAR1ノックアウト有り及びなしのHEK293T細胞にトランスフェクトした(HEK293T ADAR-/-)。EGFP百分率は、mCherryによって決定されたトランスフェクション効率によって正規化された。HEK293T ADAR-/-細胞における編集によって生成されたEGFPシグナルの完全な消失によって示されるように、arRNAとcirc-arRNAの両方のRNA編集は内因性ADARに依存していることが分かった(図2F)。
【0244】
arRNAとcirc-arRNAのRNA編集効率を、HeLa、HepG2、A549、RPE1、SF268、C2C12、NIH3T3、Cos7を含む複数細胞型でさらに比較した(図2G)。circ-arRNAは、あらゆる細胞型においてarRNAよりも優れた性能を発揮することが判明した。circ-arRNAが内因性転写物に対して効率的なRNA編集を実行できるかどうかをテストするために、6つの内因性転写物、PPIA(配列番号13)、KRAS(配列番号44)、RAB7A(配列番号45)、FANCC(配列番号46)、MALAT1(配列番号47)及びTP53(配列番号16)を標的とするcirc-arRNA151を設計した(図2H)。次世代配列決定(NGS;Illumina HiSeq X Ten)によって、逆転写されたRNAをPCR増幅及び精製した。次世代シークエンシングの結果は、6つの転写物すべての中で、circ-arRNAが標的RNA編集において線形対応物よりも優れた性能を発揮することを示した(図2I)。さらに、定量的PCRによって決定された同様の相対RNA発現によって示されるように、circ-arRNAは、PPIA及びFANCC遺伝子転写物の発現に対していかなるRNAi効果も示さなかった(データは示さず)。
【0245】
次に、circ-arRNAが内因性転写物の複数の標的部位で効率的なRNA編集も達成できるかどうかをテストするために、9つの内因性遺伝子PPIB、GUSB、KRAS、MALAT1、TUBB、RAB7A、PPIA、SMYD5及びCTNNB1の20の異なるRNA部位を標的とするために151-ntのcirc-arRNAを設計した(表2)。次世代シーケンシングでは、20部位のうち17部位において、circ-arRNAが線形対応物よりも標的RNA編集において優れた性能を発揮することが示された。しかし、circ-arRNAは、MALAT1(部位1)では同等の編集率を示し、KRAS(部位1及び2)ではさらに編集比率が低下した。これら3つの部位を標的とするcirc-arRNAは、標的の認識や標的編集活性を媒介する機能を妨げる構造を持っている可能性がある。circ-arRNAに隣接する柔軟なRNAリンカーの付加により編集活性を媒介する能力をさらに最適化できるかどうかをテストするために、50ヌクレオチドの柔軟なポリAC RNAリンカー(AC50と呼ばれる)を隣接するcirc-arRNA151に付加し、circ-arRNA151と比較して、これらのcirc-arRNA_AC50リンカーは、14部位で編集比率が向上した。実際、KRAS(部位1及び2)を標的とするcirc-arRNA_AC50は、最初のcirc-arRNAの編集効率を、対応する線形arRNAの編集効率に匹敵するレベルまで改善した。平均して、circ-arRNA及びcirc-arRNA_AC50の編集効率は、線形対応物よりもそれぞれ2.3倍及び3.1倍高かった(図2J)。
【0246】
アデノ随伴ウイルス(AAV)を使用して、circ-arRNAをHEK293T細胞、ヒト初代肝細胞、及びヒト脳オルガノイドに送達した。次世代シークエンシングの結果は、AAV送達circ-arRNAが、線形対応物と比較して、これらすべての細胞及びオルガノイドにおいて、より高いレベルの標的編集を、長期間持続する方法で生成することを示した(図2K~N)。
【0247】
【表1】
【0248】
【表2】
【0249】
【表3】
【0250】
【表4】
【0251】
【表5】
【0252】
【表6】
【0253】
【表7】
【0254】
【表8】
【0255】
【表9】
【0256】
【表10】
【0257】
【表11】
【0258】
【表12】
【0259】
実施例3.インビトロ環化戦略を使用したLEAPER用のcirc-arRNAの生成
circ-arRNAを生成するためのインビトロ戦略をテストするために(図2A)、インビトロ転写によって作成された線形arRNAをT4 Rnll及びRnl2との2種類のT4 RNAリガーゼ50によって環状化し、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって精製した(図3A)。EGFPレポーター42を含むHEK293T細胞にトランスフェクションした後、1、3、7日目にEGFP発現が観察された。これらの精製されたcirc-arRNAは、線状バージョンよりも高く、より長く持続するEGFPシグナルレベルを生成できることが観察された。さらに、サンガーシーケンシング(図3E)及び次世代シーケンシング(図3B)では、circ-arRNAレポーターの転写物における標的部位のアデノシンからイノシン(AからI)への変換率は、線形arRNAの5倍以上高かった。さらに、内因性PPIB転写物上でインビトロで送達されたcirc-arRNAの編集比率も50%以上に達することができた(図3C)。
【0260】
グループIリボザイム媒介自己触媒活性51,52を研究するために、グループIリボザイム自己触媒結合したcirc-arRNAを、ハーラー症候群マウスから産生した初代MEF細胞株に導入した。病原性点突然変異(IDUAW392X)を持つIdua転写物の標的とされるアデノシンに対する編集比率を測定した。未処理の細胞をモック対照(未処理)として使用した。非標的化RNAをトランスフェクトした細胞も対照(対照RNA)として使用した。次世代シーケンシングの結果は、グループIリボザイム自己触媒作用によって生成されたcirc-arRNAが、MEF細胞におけるIDUAW392X転写物の病原性点突然変異を約25%の編集比率で修正できることを示した(図3D)。これらの結果は、インビボまたはインビトロで生成されたcirc-arRNAが、内因性転写物において効率的かつ持続的な標的RNA編集を達成できることを実証している。
【0261】
実施例4.circ-arRNAのRNA編集特異性
circ-arRNAのRNA編集特異性を評価するために、全トランスクリプトームRNAシーケンシング分析を実行した。HEK293T細胞をcirc-arRNA151-PPIA発現プラスミドでトランスフェクトした。非標的化RNAをトランスフェクトした細胞を対照(対照RNA)として使用した。全トランスクリプトームRNAシーケンシングの結果、circ-arRNA151-PPIAトランスフェクション群には17の潜在的なオフターゲット編集(図4A)と1つのPPIAオンターゲット部位があることが示された。対照的に、多くの報告されているRNA編集ツールで使用されているADAR2デアミナーゼドメイン(ADAR2DD)過剰発現群では、対照と比較してRNAトランスクリプトームに16,588近くのオフターゲット編集が発生した(図4B)。したがって、ADAR2DD過剰発現群(16588のオフターゲット)におけるオフターゲット編集は、circ-arRNA群(17のオフターゲット)よりもはるかに高かった。circ-arRNA151-PPIAトランスフェクショング群で同定された17のオフターゲット部位のほとんどは、イントロン及び偽遺伝子領域に位置していた(図4D)。最小自由エネルギー分析により、これらのオフターゲットヒットのすべてが、circ-arRNA151-PPIAと安定した二重鎖を形成できず(図4E)、したがって実際の配列依存性のオフターゲットである可能性が低いことが示された。
【0262】
circ-arRNA151-PPIAが標的とされるPPIA転写物の発現レベルに影響を与えるかどうかをテストするために、上記の全トランスクリプトームのRNA-seqデータを使用してさらなる分析を実行した。PPIA転写物におけるcirc-arRNA151-PPIA媒介編集は、PPIA転写物の発現にもスプライシングパターン(図4F及び4H~J)にも影響を与えず、PPIAのタンパク質レベル(図4G)にも影響を及ぼさなかった。さらに、circ-arRNA151-PPIA群と対照RNA151群が共有するA-to-IのRNA編集部位を比較すると、互いに非常に類似しており、circ-arRNAが内因性ADARデアミナーゼのネイティブなA-to-I編集機能にほとんど影響を及ぼさないことが示された(図4C)。
【0263】
実施例5.操作されたcirc-arRNAによる隣接塩基のオフターゲットの低減
標的とされる転写物のarRNAで覆われた領域における隣接塩基のオフターゲットをテストするために、mCherryとEGFPの間にインフレーム終止コドンを含むレポーター1を安定的に発現するHEK293T細胞を、レポーター1を標的とする線形arRNAまたは環状arRNAのいずれかでトランスフェクトした(図5A~5B、上図)。ADAR1/2デアミナーゼの触媒特性に基づいて54-56、線形arRNA(図5A、下図)またはcirc-arRNA(図5B、下図)における標的とされるアデノシンの反対側のヌクレオチドを削除すると(それぞれ、arRNAΔC及びcirc-arRNAΔC)、標的とされるRNAの編集が完全に除去されることが判明した。
【0264】
バイスタンダー(bystander)オフターゲットを減らすために、circ-arRNAで覆われた領域内の不要なアデノシンの反対側のヌクレオチドを削除した(図5C)。内因性PPIA転写物(配列番号13の標的配列)を標的とするcirc-arRNAの異なるバージョンが設計され、これには、circ-arRNA151-PPIA(配列番号14の標的化RNA配列を有する)、circ-arRNA151-AΔ5-PPIA(配列番号139の標的化RNA配列)、circ-arRNA151-AΔ8-PPIA(配列番号15の標的化RNA配列を有する)、circ-arRNA151-AC50-PPIA(配列番号115の標的化RNA配列を有する)、及びcirc-arRNA151-AΔ14_AC50-PPIA(配列番号141の標的化RNA配列を有する)が含まれ、潜在的なオフターゲット部位の反対側にあるcirc-arRNA上のウリジンが保持または削除されていた(図5C及び5F、及び表2)。circ-arRNA151-AΔ8では、配列番号14の位置18、25、33、41、42、47、59及び87のウリジンが欠失されており、これは標的RNA内の8つの潜在的なオフターゲット部位に対応する。標的化RNA配列の5’末端と3’末端は、配列番号10の連結リンカー配列を介して互いに連結されていた。次世代シークエンシングの結果は、circ-arRNA151図5D)と比較して、circ-arRNA151-AΔ8を使用するとより高いオンターゲット編集比率が達成されるため、オンターゲット編集比率はcirc-arRNA上のU欠失の影響を受けないことを示した。注目すべきことに、circ-arRNA151-AΔ8は、試験した8つの部位すべてでオフターゲット編集を有意に減少させた(図5E)。これらの結果は、哺乳動物細胞において、ミスマッチまたはバルジのある不完全二本鎖RNA(dsRNA)内のアデノシンがADARによって高い特異性と効率で効果的に編集できることを裏付けている57,58。さらに、circ-arRNA151-AΔ14_AC50は、標的部位で60%の編集効率を依然として維持しながら、すべてのバイスタンダーオフターゲットをほぼ除去することが判明した(図5G及び5H)。標的部位周囲のNGS読み取り値は、circ-arRNA151-AΔ14_AC50が、編集された転写物の>90%においてバイスタンダーオフターゲットを伴わない標的とされる編集を生成できることを示した(図5I及び5J)。
【0265】
次に、インビトロで合成されたcirc-arRNA151-AΔ14をテストしたところ、用量依存的な方法で効率的な編集も可能であることが判明した(図5K)。欠失の有無にかかわらず、circ-arRNAはADARの発現レベルに影響を与えず、先天性免疫応答を誘発しなかった(図5L及び5M)。
【0266】
実施例6.高い効率と特異性を備えたcirc-arRNAによるp53転写活性の回復
circ-arRNAの潜在的な治療用途を探るために、50%を超えるヒトのがんで頻繁に変異が起こるTP53腫瘍抑制遺伝子が標的とされた59。TP53のc.158GからAへのバリアントは、臨床的に関連するナンセンス突然変異(Trp53Ter)であり、機能しないトランケートされたタンパク質を生成する(図6F)。柔軟なRNAリンカーが隣接する、及び/またはU欠失を有する、TP53W53Xを標的とするcirc-arRNAの異なるバージョンを設計した(図6A)。TP53W53X転写物の標的配列は配列番号16である。標的化RNA配列は次のとおりである:circ-arRNA151(配列番号17)、circ-arRNA151-AG1(配列番号18)、circ-arRNA151-AG4(配列番号19)、circ-arRNA151-AΔ1(配列番号20)、circ-arRNA151-AΔ4(配列番号21)、circ-arRNA151_AC50(配列番号17)、及びcirc-arRNA151-AΔ4_AC50(配列番号21)。circ-arRNA151、circ-arRNA151-AG1、circ-arRNA151-AG4及びcirc-arRNA151-AΔ1、circ-arRNA151-AΔ4は、配列番号10の連結リンカー配列を有する。circ-arRNA151-AG1の標的化RNA配列において、配列番号17の66番目のウリジンがGに置換されている。circ-arRNA151-AG4の標的化RNA配列において、配列番号17の36、66、111及び114番目のウリジンがGに置換された。circ-arRNA151-AΔ1の標的化RNA配列においては、配列番号17の66番目のウリジンが欠失されている。circ-arRNA151-AΔ4の標的化RNA配列では、配列番号17の36、66、111及び114番目のウリジンが欠失されている。
【0267】
次世代シーケンシング解析では、標的とされるアデノシンの編集比率が変動しており、circ-arRNA151では約30%であり、circ-arRNA151-AG1、circ-arRNA151-AG4、及びcirc-arRNA151-AΔ1では約40%であり、1つの望ましくないオフターゲット部位にA-GミスマッチまたはU欠失を有し(図6B及び表2)、すべて対応する線形arRNAバージョンよりも高いことが示された42。さらに、4つの潜在的なオフターゲット部位にU欠失を有するcirc-arRNA151-AΔ4は、約50%というより高い編集比率をもたらした(図6B)。
【0268】
arRNA配列に隣接する柔軟なRNAリンカーをcirc-arRNAに付加すると、標的化RNAへの結合能力が向上し、編集効率が向上するかどうかをテストするために、AC50(配列番号22)と呼ばれる50ntポリAC RNAリンカーを、circ-arRNA151及びcirc-arRNA151-AΔ4の両方の隣接arRNA配列に付加し、circ-arRNA151_AC50及びcirc-arRNA151-AΔ4_AC50が得られた。次世代シーケンス解析では、柔軟なリンカーを使用したこのような最適化により、特にcirc-arRNA151-AΔ4_AC50について、標的化RNA編集効率が向上し、約70%の編集が行われたことが示された(図6B)。
【0269】
転写物編集に加えて、すべてのcirc-arRNAバージョンは、HEK293T TP53-/-細胞における全長p53タンパク質の産生を効果的にレスキューすることができた(図6C)。以前に報告されたp53-ルシフェラーゼシス報告システム60,61を使用して、circ-arRNAのすべてのバージョンがp53の転写調節機能を回復できることが分かった(図6D)。さらに、線形arRNAバージョン42と比較して、circ-arRNA151-AΔ4_AC50は最も高い編集比率を示し、最も高い転写調節活性を回復した(図6D)。
【0270】
circ-arRNAで覆われる領域内の潜在的なオフターゲットも調べた。circ-arRNA上の潜在的なオフターゲットAヌクレオチドの反対側にあるUヌクレオチドが削除されると、4つの予測部位上のバイスタンダーオフターゲットがほぼ消失し(図6E及び6G)、オンターゲット編集比率がさらに上昇することが分かった(図6B)。標的とされる部位におけるcirc-arRNA151_AC50の編集効率はcirc-arRNA151-AΔ4よりも高かったが(図6B)、そのバイスタンダーオフターゲット効果の割合が低いため、circ-arRNA151-AΔ4の機能回復レベルはcirc-arRNA151_AC50よりもはるかに高かった(図6D及び6G)。まとめると、これらの結果は、LEAPER2.0と呼ばれるアップグレードされたLEAPERバージョンが、オフターゲット効果を排除しながらオンターゲット編集比率を大幅に向上できることを示した。
【0271】
実施例7.circ-arRNAによるハーラー症候群マウスにおけるα-L-イズロニダーゼ(IDUA)活性の回復
ハーラー症候群は、ムコ多糖類の代謝を担うリソソーム代謝酵素であるα-L-イズロニダーゼ(IDUA)の欠損に起因するムコ多糖症I型の最も重篤なサブタイプである。circ-arRNAの治療可能性を探るために、ハーラー症候群のマウスモデルを使用した。このマウスモデルは、Iduaのエクソン9にホモ接合W392X(TGGからTAG)点変異を持っており、これは臨床的ハーラー症候群の患者で見られるW402X変異と類似している。
【0272】
それぞれIduaの成熟mRNAまたはpre-mRNAを標的とする2つのバージョンのcirc-arRNAを設計した。IDUAW392Xpre-mRNA転写物は、配列番号23の標的配列を有する。IDUAW392XmRNA転写物は、配列番号25の標的配列を有する。circ-arRNAmRNA-151(配列番号26の標的化RNA配列を有する)またはcirc-arRNApre-mRNA-151(配列番号24の標的化RNA配列を有する)は、自己相補的AAV(scAAV)ウイルスの形質導入によってIdua-W392Xマウスに送達された。4週間後にマウスを殺処分し、肝臓組織を採取して、標的化RNA編集及びα-L-イズロニダーゼの触媒活性を測定した。次世代シーケンシング解析により、circ-arRNA151/mRNAターゲティングとcirc-arRNA151/pre-RNAターゲティングの両方が、標的化編集比率10%に達していることが示された(図7A)。さらに、両方のcirc-arRNAは、Idua転写物の量に影響を与えることなく(図7C)、Idua-W392Xマウスの肝臓組織におけるIDUA触媒活性を有意に回復した(図7B)。これらの結果は、特定の臨床的単一遺伝子疾患における正確、効率的、持続的な標的とされるRNAの編集を有するLEAPER2.0の治療可能性を実証している。
【0273】
実施例8.隣接リンカー配列及び/またはU欠失を持つcirc-arRNA
この実施例は、circ-RNA内の柔軟なリンカー配列(すなわち、隣接リンカー)の付加と、非標的アデノシンの反対側の1つ以上のUの削除が、オンターゲット及びオフターゲット編集比率に対する影響を説明する。
【0274】
(隣接するリンカー)
circ-arRNAにarRNA配列に隣接する柔軟なRNAリンカーを付加すると、標的化RNAへの結合能力が向上し、その結果、オンターゲット編集効率が向上し、及び/またはバイスタンダーオフターゲット編集効果が低減できるかどうかをテストするには、50nt PolyAC RNAリンカー(AC50(配列番号22)と呼ばれる)を、環状171nt arRNA(circ-arRNA171)配列の5’または3’末端の異なるヌクレオチド位置に隣接するように付加した。図8A~8Bを参照されたい。arRNA配列のストレッチに5つを超えるGがある状況では、ストレッチ内の中央のGがAに置き換えられた。
【0275】
3つの標的配列を試験した:(1)内因性PPIA転写物の3’UTRの129番目のA(「mf-PPIA-UTR2」;配列番号27);(2)内因性PPIA転写物の3’UTRの155番目のA(「mf-PPIA-3」;配列番号28);(3)内因性IDUA-1転写物の3’UTRの134番目のA(「mf-IDUA-1」;配列番号29)。カニクイザルの参照配列は、NCBI識別子NC_022274で見つけることができる。アカゲザルUsh2aエクソンの参照配列はXM_005540847である。各circ-arRNA171の標的化RNA配列は、各標的配列の配列と相補的である。
【0276】
簡単に説明すると、胎児アカゲザル腎臓細胞(FRHK-4)及びアカゲザル腎臓細胞(LLC-MK2)を、circ-arRNA及びeGFPを発現する組換えAAVプラスミドでトランスフェクトした。rAAVプラスミドは、発現カセットに隣接するAAV2 ITRを有し、5’から3’へ、arRNAに作動可能に連結されたU6プロモーター、CAGプロモーター、EGFP、及びWPREが含まれる。トランスフェクションの48時間後、細胞からRNAサンプルを取得した。FRHK-4実験では、GFPの発現に基づいて細胞をFACSソーティングに供した。標的RNAのアンプリコンが得られ、NGS分析に供された。
【0277】
図8Cに示すように、mf-PPIA-UTR2を標的とする様々なcirc-arRNAは、オンターゲットの編集効率が向上したarRNA領域の5’配列(-L)を部分的に置換するリンカーを有するcirc-arRNAを除き、ソーティングの有無にかかわらず、同等のオンターゲット編集効率をもたらした。さらに、図8Dに示すように、arRNA配列を5’末端(-L)及び/または3’末端(-R)でAC50リンカーで部分的に置換すると、標的RNA転写物の置換領域におけるバイスタンダーオフターゲット編集が減少した。さらに、オンターゲット編集効率ならびにオフターゲット編集パターン及び効率は、171nt線形及び環状arRNAで同様であることが判明した(データは示さず)。
【0278】
標的に応じて、隣接リンカーの異なる位置は、オンターゲット編集効率に異なる影響を与える。しかし、例えば、mf-PPIA3標的に関しては、arRNA領域の3’配列(-R)を部分的に置き換えるリンカーを有するcirc-arRNAは、一貫して元のcirc-arRNA171と同等のオンターゲット編集効率をもたらした(図8E)。mf-PPIA-UTR2と同様に、arRNA配列の5’末端(-L)及び/または3’末端(-R)でAC50リンカーで部分的に置換すると、標的RNA転写物の置換領域におけるバイスタンダーオフターゲット編集が減少した(図8F;-Lデータは示されていない)。127、132、160、及び168位で高いAからGへの変換率が観察された。
【0279】
mf-IDUA-1標的に関しては、arRNA配列の5’配列(-L)または3’配列(-R)を部分的に置換するリンカーを有するcirc-arRNAは、両方ともオンターゲット編集効率を低下させた。arRNA配列(RL)の5’末端と3’末端の両方に隣接するリンカー配列を有するcirc-arRNAは、元のcirc-arRNA171と同等のオンターゲット編集効率を有していた(図8G)。バイスタンダーのオフターゲット編集効果を図8Hに示す。62、91、102、及び118位で高いAからGへの変換率が観察された。
【0280】
理論に束縛されるものではないが、circ-arRNAに隣接配列を含めることでオンターゲット編集効率が向上するかどうかは、arRNAが複雑な二次構造を形成できるかどうかに依存する可能性がある。-L、-R、及び-LR circ-arRNAを使用した、arRNAのAC50リンカー置換領域に対応するmRNA領域におけるオフターゲット編集の減少は、ADAR編集には二本鎖RNAの形成が必要であるという以前の観察と一致している。
【0281】
Uの欠失
バイスタンダーのオフターゲット編集を減らすために、mf-PPIA-3及びmf-IDUA-1を標的とする、特定の非標的Aの反対側にUを有するcirc-arRNAを構築した。以下の表1は、circ-arRNAにおける欠失したU残基に対応する非標的A残基の位置、及び対応するcirc-arRNA配列を列挙する。
【0282】
【表13】
【0283】
circ-arRNAを使用したmf-PPIA-3及びmf-IDUA-1の非標的及び標的A位置におけるAからGへの編集比率をそれぞれ図9A及び図9Bのヒートマップに示す。「X」のマークが付いている構築物には利用可能なデータがない。mf-PPIA-3(図9A)に関しては、4つのオフターゲットAは高い分子内オフターゲット編集比率を有していた。arRNA内の各オフターゲットA残基の反対側にあるU残基を欠失させると、オフターゲット編集率が大幅に低下し、場合によってはほぼ0になる。arRNA内の複数のオフターゲットA残基の反対側にあるU残基を欠失させると、複数のオフターゲットA残基のオフターゲット編集比率を同時に低下させることができる。特定のU残基またはその組み合わせを欠失させると、オンターゲット編集比率が向上する可能性がある。
【0284】
mf-IDUA-1(図9B)に関しては、分子内オフターゲット率は一般に高くなかった。ただし、標的AはIDUA3’UTRの末端に近いため、リバースプライマーがarRNAを増幅する可能性があり、その結果、オンターゲット比率が異常に高くなる。両方の細胞型における同様のオフターゲット編集パターンは、非標的Aの反対側にあるUを欠失させると、mf-IDUA-1のオンターゲット編集比率が増加する可能性があることを示唆している。
【0285】
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【0286】
配列表
配列番号1 mCherry-SpeI-F
TATAACTAGTATGGTGAGCAAGGGCGAGGAG
【0287】
配列番号2 mCherry-BsmBI-R1
TATACGTCTCATCTACAGATTCTTCCGGCGTGTATACCTTC
【0288】
配列番号3 EGFP-BsmBI-F1
TATACGTCTCATAGAGATCCCCGGTCGCCACCGTGAGCAAGGGCGAGGAGCTG
【0289】
配列番号4 arRNA151
ACUACAGUUGCUCCGAUAUUUAGGCUACGUCAAUAGGCACUAACUUAUUGGCGCUGGUGAACGGACUUCCUCUCGAGUACCAGAAGAUGACUACAAAACUCCUUUCCAUUGCGAGUAUCGGAGUCUGGCUCAGUUUGGCCAGGGAGGCACU
【0290】
配列番号5 CMVプロモーター
CGTTACATAACTTACGGTAAATGGCCCGCCTGGCTGACCGCCCAACGACCCCCGCCCATTGACGTCAATAATGACGTATGTTCCCATAGTAACGCCAATAGGGACTTTCCATTGACGTCAATGGGTGGAGTATTTACGGTAAACTGCCCACTTGGCAGTACATCAAGTGTATCATATGCCAAGTACGCCCCCTATTGACGTCAATGACGGTAAATGGCCCGCCTGGCATTATGCCCAGTACATGACCTTATGGGACTTTCCTACTTGGCAGTACATCTACGTATTAGTCATCGCTATTACCATGGTGATGCGGTTTTGGCAGTACATCAATGGGCGTGGATAGCGGTTTGACTCACGGGGATTTCCAAGTCTCCACCCCATTGACGTCAATGGGAGTTTGTTTTGGCACCAAAATCAACGGGACTTTCCAAAATGTCGTAACAACTCCGCCCCATTGACGCAAATGGGCGGTAGGCGTGTACGGTGGGAGGTCTATATAAGCAGAGCT
【0291】
配列番号6 U6プロモーター
GAGGGCCTATTTCCATGATTCCTTCATATTTGCATATACGATACAAGGCTGTTAGAGAGATAATTAGAATTAATTTGACTGTAAACACAAAGATATTAGTACAAAATACGTGACGTAGAAAGTAATAATTTCTTGGGTATTTGCAGTTTTTAAAATTATGTTTTAAAATGGACTATCATATGCTTACCGTAACTTGAAAGTATTTCGATTTCTTGGCTTTATATATCTTGTGGAAAGGAC
【0292】
配列番号7 mCherry
ATGGTGAGCAAGGGCGAGGAGGATAACATGGCCATCATCAAGGAGTTCATGCGCTTCAAGGTGCACATGGAGGGCTCCGTGAACGGCCACGAGTTCGAGATCGAGGGCGAGGGCGAGGGCCGCCCCTACGAGGGCACCCAGACCGCCAAGCTGAAGGTGACCAAGGGTGGCCCCCTGCCCTTCGCCTGGGACATCCTGTCCCCTCAGTTCATGTACGGCTCCAAGGCCTACGTGAAGCACCCCGCCGACATCCCCGACTACTTGAAGCTGTCCTTCCCCGAGGGCTTCAAGTGGGAGCGCGTGATGAACTTCGAGGACGGCGGCGTGGTGACCGTGACCCAGGACTCCTCCCTGCAGGACGGCGAGTTCATCTACAAGGTGAAGCTGCGCGGCACCAACTTCCCCTCCGACGGCCCCGTAATGCAGAAGAAGACCATGGGCTGGGAGGCCTCCTCCGAGCGGATGTACCCCGAGGACGGCGCCCTGAAGGGCGAGATCAAGCAGAGGCTGAAGCTGAAGGACGGCGGCCACTACGACGCTGAGGTCAAGACCACCTACAAGGCCAAGAAGCCCGTGCAGCTGCCCGGCGCCTACAACGTCAACATCAAGTTGGACATCACCTCCCACAACGAGGACTACACCATCGTGGAACAGTACGAACGCGCCGAGGGCCGCCACTCCACCGGCGGCATGGACGAGCTGTACAAG
【0293】
配列番号8 3 × GSリンカー及び標的とされるアデノシン
CTGCAGGGCGGAGGAGGCAGCGGCGGAGGAGGCAGCGGCGGAGGAGGCAGCAGAAGGTATACACGCCGGAAGAATCTGTAGAGATCCCCGGTCGCCACC
【0294】
配列番号9 eGFP
GTGAGCAAGGGCGAGGAGCTGTTCACCGGGGTGGTGCCCATCCTGGTCGAGCTGGACGGCGACGTAAACGGCCACAAGTTCAGCGTGTCCGGCGAGGGCGAGGGCGATGCCACCTACGGCAAGCTGACCCTGAAGTTCATCTGCACCACCGGCAAGCTGCCCGTGCCCTGGCCCACCCTCGTGACCACCCTGACCTACGGCGTGCAGTGCTTCAGCCGCTACCCCGACCACATGAAGCAGCACGACTTCTTCAAGTCCGCCATGCCCGAAGGCTACGTCCAGGAGCGCACCATCTTCTTCAAGGACGACGGCAACTACAAGACCCGCGCCGAGGTGAAGTTCGAGGGCGACACCCTGGTGAACCGCATCGAGCTGAAGGGCATCGACTTCAAGGAGGACGGCAACATCCTGGGGCACAAGCTGGAGTACAACTACAACAGCCACAACGTCTATATCATGGCCGACAAGCAGAAGAACGGCATCAAGGTGAACTTCAAGATCCGCCACAACATCGAGGACGGCAGCGTGCAGCTCGCCGACCACTACCAGCAGAACACCCCCATCGGCGACGGCCCCGTGCTGCTGCCCGACAACCACTACCTGAGCACCCAGTCCGCCCTGAGCAAAGACCCCAACGAGAAGCGCGATCACATGGTCCTGCTGGAGTTCGTGACCGCCGCCGGGATCACTCTCGGCATGGACGAGCTGTACAAGTAA
【0295】
配列番号10 連結リンカー配列
CTGCCATCAGTCGGCGTGGACTGTAGAACCATGCCGACTGATGGCAG
【0296】
配列番号11 3’ 連結リンカー配列
CTGCCATCAGTCGGCGTGGACTGTAG
【0297】
配列番号12 5’ 連結リンカー配列
AACCATGCCGACTGATGGCAG
【0298】
配列番号13 PPIA 標的配列
GAUGUAGGCUUUAUUUUAAGCAGUAAUGGGUUACUUCUGAAACAUCACUUGUUUGCUUAAUUCUACACAGUACUUAGAUUUUUUUUACUUUCCAGUCCCAGGAAGUGUCAAUGUUUGUUGAGUGGAAUAUUGAAAAUGUAGGCAGCAACUG
【0299】
配列番号14 PPIA circ-arRNA151の標的化RNA配列
CAGUUGCUGCCUACAUUUUCAAUAUUCCACUCAACAAACAUUGACACUUCCUGGGACUGGAAAGUAAAAAAAAUCCAAGUACUGUGUAGAAUUAAGCAAACAAGUGAUGUUUCAGAAGUAACCCAUUACUGCUUAAAAUAAAGCCUACAUC
【0300】
配列番号15 PPIA circ-arRNA151-AΔ8の標的化RNA配列
CAGUUGCUGCCUACAUUUUCAAUAUUCCACUCAACAAACAUUGACACUUCCUGGGACUGGAAAGAAAAAAAAUCCAAGUACUGUGUAGAAUAAGCAAACAAGGAUGUCAGAAGAACCCAUACUGCUAAAAUAAAGCCUACAUC
【0301】
配列番号16 TP53標的配列
CUACUUCCUGAAAACAACGUUCUGUCCCCCUUGCCGUCCCAAGCAAUGGAUGAUUUGAUGCUGUCCCCGGACGAUAUUGAACAAUGGUUCACUGAAGACCCAGGUCCAGAUGAAGCUCCCAGAAUGCCAGAGGCUGCUCCCCCCGUGGCCC
【0302】
配列番号17 TP53 circ-arRNA151の標的化RNA配列
GCUGGUGCAGGGGCCACGGGGGGAGCAGCCUCUGGCAUUCUGGGAGCUUCAUCUGGACCUGGGUCUUCAGUGAACCAUUGUUCAAUAUCGUCCGGGGACAGCAUCAAAUCAUCCAUUGCUUGGGACGGCAAGGGGGACAGAACGUUGUUUU
【0303】
配列番号18 TP53 circ-arRNA151-AG1の標的化RNA配列
GCUGGUGCAGGGGCCACGGGGGGAGCAGCCUCUGGCAUUCUGGGAGCUUCAUCUGGACCUGGGUCUUCAGUGAACCAUUGUUCAAGAUCGUCCGGGGACAGCAUCAAAUCAUCCAUUGCUUGGGACGGCAAGGGGGACAGAACGUUGUUUU
【0304】
配列番号19 TP53 circ-arRNA151-AG4の標的化RNA配列
GCUGGUGCAGGGGCCACGGGGGGAGCAGCCUCUGGCAGUCGGGGAGCUUCAUCUGGACCUGGGUCUUCAGUGAACCAUUGUUCAAGAUCGUCCGGGGACAGCAUCAAAUCAUCCAGUGCUUGGGACGGCAAGGGGGACAGAACGUUGUUUU
【0305】
配列番号20 TP53 circ-arRNA151-AΔ1の標的化RNA配列
GCUGGUGCAGGGGCCACGGGGGGAGCAGCCUCUGGCAUUCUGGGAGCUUCAUCUGGACCUGGGUCUUCAGUGAACCAUUGUUCAAAUCGUCCGGGGACAGCAUCAAAUCAUCCAUUGCUUGGGACGGCAAGGGGGACAGAACGUUGUUUU
【0306】
配列番号21 TP53 circ-arRNA151-AΔ4の標的化RNA配列
GCUGGUGCAGGGGCCACGGGGGGAGCAGCCUCUGGCAUCGGGAGCUUCAUCUGGACCUGGGUCUUCAGUGAACCAUUGUUCAAAUCGUCCGGGGACAGCAUCAAAUCAUCCAUGCUUGGGACGGCAAGGGGGACAGAACGUUGUUUU
【0307】
配列番号22 AC50リンカー配列
AAAAACAAAAAACAAAAAAAACAAAAAAAAAACCAAAAAAACAAAACACA
【0308】
配列番号23 IDUA pre-mRNA配列
AGGAAGCCAGAUGCUAGGUAUGAGAGAGCCAACAGCCUCAGCCCUCUGCUUGGCUUAUAGAUGGAGAACAACUCUAGGCAGAGGUCUCAAAGGCUGGGGCUGUGUUGGACAGCAAUCAUACAGUGGGUGUCCUGGCCAGCACCCAUCACCC
【0309】
配列番号24 IDUA pre-mRNA配列に使用されるcirc-arRNA151の標的化RNA配列(下線Cは標的Aに対向する)
GGGUGAUGGGUGCUGGCCAGGACACCCACUGUAUGAUUGCUGUCCAACACAGCCCCAGCCUUUGAGACCUCUGCCCAGAGUUGUUCUCCAUCUAUAAGCCAAGCAGAGGGCUGAGGCUGUUGGCUCUCUCAUACCUAGCAUCUGGCUUCCU
【0310】
配列番号25 IDUA mRNA配列
CCCACGUGCAGUUGCUGCGAAAGCCAGUACUCACAGUCAUGGGGCUCAUGGCCCUGUUGGAUGGAGAACAACUCUAGGCAGAGGUCUCAAAGGCUGGGGCUGUGUUGGACAGCAAUCAUACAGUGGGUGUCCUGGCCAGCACCCAUCACCC
【0311】
配列番号26 IDUA mRNA配列に使用されるcirc-arRNA151の標的化RNA配列(下線Cは標的Aに対向する)
GGGUGAUGGGUGCUGGCCAGGACACCCACUGUAUGAUUGCUGUCCAACACAGCCCCAGCCUUUGAGACCUCUGCCCAGAGUUGUUCUCCAUCUAUAAGCCAAGCAGAGGGCUGAGGCUGUUGGCUCUCUCAUACCUAGCAUCUGGCUUCCU
【0312】
配列番号27 mf-PPIA-UTR2
GGCCACCAUGCCCAGCUGCUGCCUACAUUUUCAAUAUUCUACUCAACAAACAUUGAGACUUCCUGGGUCUGGAAAGAAAGAAAUCCAAGUAUUAUGUAGACUUAAGCAAACAAGUGAUGUUUCAGAAGUAACCCAUUACUGCUUAAAAUAAAGCCUACAUCAACACUCUAA
【0313】
配列番号28 mf-PPIA-3
CAUGGAACCCAAAGGGAACUGCAGCGAGAGCACAAAGAUUCUAGGAUACUGCGAGCAAAUGGGGUGGAGGGGUGCUCUCCUGAGCCACAGAAGGAAUGGUCUGGUGGUUAAGAUAAAACACAAGUCAAACUUAUUCGAGUUGUCCACAGUCAGCAAUGGUGAUCUUCUUGC
【0314】
配列番号29 mf-IDUA-1
UAAAAGAAAAUAAUAAAAUAUAAAAAUAUAUUGCAAAGGAGGUGAUGAGAGGGCAGCGUGGGCACAGUGCAACCCCAGCUCGCCGACCGCCAGUGGAGGUGCAGCCCAGUGGGGCUCAGCACAGGCUCAUGGAUUUCCAGGGGCUGGAGGCCCUCUUGGCACAGGGACCUC
【0315】
配列番号30 mf-PPIA-3 circ-arRNA-1
CAUGGAACCCAAAGGGAACUGCAGCGAGAGCACAAAGAUUCUAGGAUACUGCGAGCAAAUGGGGUGGAGGGGGCUCUCCUGAGCCACAGAAGGAAUGGUCUGGUGGUUAAGAUAAAACACAAGUCAAACUUAUUCGAGUUGUCCACAGUCAGCAAUGGUGAUCUUCUUGC
【0316】
配列番号30 mf-PPIA-3 circ-arRNA-2
CAUGGAACCCAAAGGGAACUGCAGCGAGAGCACAAAGAUUCUAGGAUACUGCGAGCAAAUGGGGUGGAGGGGUGCUCUCCGAGCCACAGAAGGAAUGGUCUGGUGGUUAAGAUAAAACACAAGUCAAACUUAUUCGAGUUGUCCACAGUCAGCAAUGGUGAUCUUCUUGC
【0317】
配列番号32 mf-PPIA-3 circ-arRNA-3
CAUGGAACCCAAAGGGAACUGCAGCGAGAGCACAAAGAUUCUAGGAUACUGCGAGCAAAUGGGGUGGAGGGGUGCUCUCCUGAGCCACAGAAGGAAUGGUCUGGUGGUAAGAUAAAACACAAGUCAAACUUAUUCGAGUUGUCCACAGUCAGCAAUGGUGAUCUUCUUGC
【0318】
配列番号33 mf-PPIA-3 circ-arRNA-4
CAUGGAACCCAAAGGGAACUGCAGCGAGAGCACAAAGAUUCUAGGAUACUGCGAGCAAAUGGGGUGGAGGGGUGCUCUCCUGAGCCACAGAAGGAAUGGUCUGGUGGUUAAGAAAAACACAAGUCAAACUUAUUCGAGUUGUCCACAGUCAGCAAUGGUGAUCUUCUUGC
【0319】
配列番号34 mf-PPIA-3 circ-arRNA-43
CAUGGAACCCAAAGGGAACUGCAGCGAGAGCACAAAGAUUCUAGGAUACUGCGAGCAAAUGGGGUGGAGGGGUGCUCUCCUGAGCCACAGAAGGAAUGGUCUGGUGGUAAGAAAAACACAAGUCAAACUUAUUCGAGUUGUCCACAGUCAGCAAUGGUGAUCUUCUUGC
【0320】
配列番号35 mf-PPIA-3 circ-arRNA-432
CAUGGAACCCAAAGGGAACUGCAGCGAGAGCACAAAGAUUCUAGGAUACUGCGAGCAAAUGGGGUGGAGGGGUGCUCUCCGAGCCACAGAAGGAAUGGUCUGGUGGUAAGAAAAACACAAGUCAAACUUAUUCGAGUUGUCCACAGUCAGCAAUGGUGAUCUUCUUGC
【0321】
配列番号36 mf-PPIA-3 circ-arRNA-4321
CAUGGAACCCAAAGGGAACUGCAGCGAGAGCACAAAGAUUCUAGGAUACUGCGAGCAAAUGGGGUGGAGGGGGCUCUCCGAGCCACAGAAGGAAUGGUCUGGUGGUAAGAAAAACACAAGUCAAACUUAUUCGAGUUGUCCACAGUCAGCAAUGGUGAUCUUCUUGC
【0322】
配列番号37 mf-IDUA-1 circ-arRNA-1
UAAAAGAAAAUAAUAAAAUAUAAAAAUAUAUUGCAAAGGAGGUGAUGAGAGGGCAGCGUGGGCACAGUGCAACCCCAGCUCGCCGACCGCCAGUGGAGGGCAGCCCAGUGGGGCUCAGCACAGGCUCAUGGAUUUCCAGGGGCUGGAGGCCCUCUUGGCACAGGGACCUC
【0323】
配列番号38 mf-IDUA-1 circ-arRNA-2
UAAAAGAAAAUAAUAAAAUAUAAAAAUAUAUUGCAAAGGAGGUGAUGAGAGGGCAGCGUGGGCACAGUGCAACCCCAGCUCGCCGACCGCCAGUGGAGGUGCAGCCCAGUGGGGCCAGCACAGGCUCAUGGAUUUCCAGGGGCUGGAGGCCCUCUUGGCACAGGGACCUC
【0324】
配列番号39 mf-IDUA-1 circ-arRNA-3
UAAAAGAAAAUAAUAAAAUAUAAAAAUAUAUUGCAAAGGAGGUGAUGAGAGGGCAGCGUGGGCACAGUGCAACCCCAGCUCGCCGACCGCCAGUGGAGGUGCAGCCCAGUGGGGCUCAGCACAGGCCAUGGAUUUCCAGGGGCUGGAGGCCCUCUUGGCACAGGGACCUC
【0325】
配列番号40 mf-IDUA-1 circ-arRNA-4
UAAAAGAAAAUAAUAAAAUAUAAAAAUAUAUUGCAAAGGAGGUGAUGAGAGGGCAGCGUGGGCACAGUGCAACCCCAGCUCGCCGACCGCCAGUGGAGGUGCAGCCCAGUGGGGCUCAGCACAGGCUCAUGGAUUUCCAGGGGCUGGAGGCCCUCUGGCACAGGGACCUC
【0326】
配列番号41 mf-IDUA-1 circ-arRNA-43
UAAAAGAAAAUAAUAAAAUAUAAAAAUAUAUUGCAAAGGAGGUGAUGAGAGGGCAGCGUGGGCACAGUGCAACCCCAGCUCGCCGACCGCCAGUGGAGGUGCAGCCCAGUGGGGCUCAGCACAGGCCAUGGAUUUCCAGGGGCUGGAGGCCCUCUGGCACAGGGACCUC
【0327】
配列番号42 mf-IDUA-1 circ-arRNA-432
UAAAAGAAAAUAAUAAAAUAUAAAAAUAUAUUGCAAAGGAGGUGAUGAGAGGGCAGCGUGGGCACAGUGCAACCCCAGCUCGCCGACCGCCAGUGGAGGUGCAGCCCAGUGGGGCCAGCACAGGCCAUGGAUUUCCAGGGGCUGGAGGCCCUCUGGCACAGGGACCUC
【0328】
配列番号43 mf-IDUA-1 circ-arRNA-4321
UAAAAGAAAAUAAUAAAAUAUAAAAAUAUAUUGCAAAGGAGGUGAUGAGAGGGCAGCGUGGGCACAGUGCAACCCCAGCUCGCCGACCGCCAGUGGAGGGCAGCCCAGUGGGGCCAGCACAGGCCAUGGAUUUCCAGGGGCUGGAGGCCCUCUGGCACAGGGACCUC
【0329】
配列番号44 KRASの標的配列
ACUGAAGGCGGCGGCGGGGCCAGAGGCUCAGCGGCUCCCAGGCCUGCUGAAAAUGACUGAAUAUAAACUUGUGGUAGUUGGAGCUGGUGGCGUAGGCAAGAGUGCCUUGACGAUACAGCUAAUUCAGAAUCAUUUUGUGGACGAAUAUGAU
【0330】
配列番号45 RAB7Aの標的配列
AAUGCAGGCCUGUAAGGUGGAGGGUUGAACCCUGUUUGGAUUGCAGAGUGUUACUCAGAAUUGGGAAAUCCAGCUAGCGGCAGUAUUCUGUACAGUAGACACAAGAAUUAUGUACGCCUUUUAUCAAAGACUUAAGAGCCAAAAAGCUUUU
【0331】
配列番号46 FANCCの標的配列
CUGCGGAGGUCCCUUUGAGAGCUGGUUCCUGUUCAUUCACUUCGGAGGAUGGGCUGAGAUGGUGGCAGAGCAAUUACUGAUGUCGGCAGCCGAACCCCCCACGGCCCUGCUGUGGCUCUUGGCCUUCUACUACGGCCCCCGUGAUGGGAGG
【0332】
配列番号47 MALAT1の標的配列
UCAGUUGCGUAAUGGAAAGUAAAGCCCUGAACUAUCACACUUUAAUCUUCCUUCAAAAGGUGGUAAACUAUACCUACUGUCCCUCAAGAGAACACAAGAAGUGCUUUAAGAGGUAUUUUAAAAGUUCCGGGGGUUUUGUGAGGUGUUUGAU
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図2G
図2H
図2I
図2J
図2K
図2L
図2M
図2N
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図4G
図4H
図4I
図4J
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図5G
図5H
図5I
図5J
図5K
図5L
図5M
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図6G
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図8F
図8G
図8H
図9A
図9B
【配列表】
2024531966000001.xml
【手続補正書】
【提出日】2024-05-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
デアミナーゼ動員RNA(dRNA)、またはdRNAをコードする核酸配列を含む構築物を宿主細胞に導入することを含む、前記宿主細胞において標的RNA中の標的アデノシンを編集する方法であって、
(1)前記dRNAが、標的RNAにハイブリダイズして二本鎖RNAを形成することができる標的化RNA配列を含み、前記二本鎖RNAが、前記標的RNA中の非標的アデノシンを含有するバルジを含み、かつ
(2)前記dRNAが、RNAに作用するアデノシンデアミナーゼ(ADAR)を動員することができる、方法。
【請求項2】
前記二本鎖RNAが、前記標的RNA中の各非標的アデノシンにバルジを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記標的化RNA配列が、前記標的RNA中の非標的アデノシンの反対側の1つ以上のヌクレオチドを欠いていることを除いて、前記標的RNAに相補的である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記dRNAが線形RNAであ好ましくは、前記dRNAが環状RNAを形成することができる、若しくは、前記dRNAが環状RNAである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記dRNAが、前記標的化RNA配列の末端に隣接するリンカー核酸配列を含み、前記リンカー核酸配列が、前記dRNAのいかなる部分とも実質的に二次構造を形成しないか、若しくは、前記dRNAが、前記標的化RNA配列の末端を置換するリンカー核酸配列を含み、前記リンカー核酸配列が、前記dRNAのいかなる部分とも実質的に二次構造を形成しない、請求項に記載の方法。
【請求項6】
dRNA、またはdRNAをコードする核酸配列を含む構築物を宿主細胞に導入することを含む、前記宿主細胞において標的RNA中の標的アデノシンを編集する方法であって、
(1)前記dRNAが、標的RNAにハイブリダイズすることができる標的化RNA配列を含み、前記dRNAが、前記標的化RNA配列の末端に隣接するリンカー核酸配列を含み、前記リンカー核酸配列が、前記dRNAのいかなる部分とも実質的に二次構造を形成しなく、
(2)前記dRNAが、ADARを動員することができ、かつ
(3)前記dRNAが、環状RNA、線形RNA、または環状RNAを形成し得る線形RNAである、方法。
【請求項7】
前記リンカー核酸配列の長さが約5ヌクレオチド(nt)~約500ntであ
好ましくは、前記リンカー核酸配列の長さが約50nt~約500ntであり、
更に好ましくは、前記リンカー核酸配列の長さが70nt以下であり、場合により、前記リンカー核酸配列の長さが10nt~50nt、10nt~40nt、10nt~30nt、10nt~20nt、20nt~50nt、20nt~40nt、20nt~30nt、30nt~50nt、30nt~40nt、または40nt~50ntの間の任意の整数であり、又は、
更に好ましくは、前記リンカー核酸配列の長さが、約20nt~約60ntであり、場合により、前記リンカー核酸配列の長さが、約30nt、または約50ntである、請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記リンカー核酸配列の少なくとも約50%、60%、70%、80%、85%、90%、または95%のいずれか1つがアデノシンまたはシチジンを含み、任意選択で、前記リンカー核酸配列の100%がアデノシンまたはシチジンを含及び/又は、
(b)前記リンカー核酸配列が、ポリアデノシン(ポリA)、ポリグアノシン(ポリG)、またはポリシトシン(ポリC)配列を含み、及び/又は、
(c)前記リンカー核酸配列の少なくとも50%がアデノシンを含み、及び/又は、
(d)前記リンカー核酸配列がジヌクレオチド反復配列を含み、及び/又は、
(e)前記リンカー核酸配列が配列番号22を含む、
請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
(a)前記dRNAが、前記標的化RNA配列の5’末端に隣接する第1のリンカー核酸配列と、前記標的化RNA配列の3’末端に隣接する第2のリンカー核酸配列とを含又は
(b)前記dRNAが、前記標的化RNA配列の5’末端に隣接する第1のリンカー核酸配列と、前記標的化RNA配列の3’末端を置換する第2のリンカー核酸配列とを含み、又は
(c)前記dRNAが、前記標的化RNA配列の5’末端を置換する第1のリンカー核酸配列と、前記標的化RNA配列の3’末端に隣接する第2のリンカー核酸配列とを含み、又は
(d)前記dRNAが、前記標的化RNA配列の5’末端を置換する第1のリンカー核酸配列と、前記標的化RNA配列の3’末端を置換する第2のリンカー核酸配列とを含み、又は、
(e)前記dRNAが環状RNAであり、前記リンカー核酸配列が、前記標的化RNA配列の5’末端と前記標的化RNA配列の3’末端とを連結する、
請求項6又は7に記載の方法。
【請求項10】
前記標的化RNA配列の長さが50ntを超え、好ましくは、前記標的化RNA配列の長さが約100~約200ntである、請求項1、2、6及び7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
(a)ADAR3阻害剤及び/またはインターフェロン刺激剤を、及び/又は
(b)それぞれが異なる標的RNAを標的とする複数のdRNAまたは構築物を、及び/又は
(c)ADARを、
前記宿主細胞に導入することをさらに含む、請求項1、2、6及び7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記標的RNA中の標的アデノシンの脱アミノ化が、前記標的RNA中のミスセンス変異、早期終止コドン、調整的スプライシング、異常なスプライシングもしくは選択的スプライシング、または前記標的RNA中のミスセンス変異、早期終止コドン、調整的スプライシング、異常なスプライシングもしくは選択的スプライシングの復帰を引き起こし、
好ましくは、前記標的RNA中の標的アデノシンの脱アミノ化が、前記標的RNAによってコードされるタンパク質の点突然変異、トランケート、伸長及び/またはミスフォールディング、あるいは前記標的RNA中のミスセンス変異、早期終止コドン、調整的スプライシング、異常なスプライシングもしくは選択的スプライシングの復帰による機能的で、完全長の、正しくフォールディングされた、及び/または野生型タンパク質を引き起こす、
請求項1、2、6及び7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記宿主細胞が真核細胞であり、若しくは、前記宿主細胞が哺乳動物細胞であ更に若しくは前記宿主細胞がヒトまたはマウス細胞である請求項1、2、6及び7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
標的RNAにハイブリダイズして二本鎖RNAを形成することができる標的化RNA配列を含む、標的RNAを編集するためのdRNAであって、前記二本鎖RNAが、前記標的RNA中の非標的アデノシンを含有するバルジを含む、dRNA、又は前記dRNAをコードする核酸配列を含む、構築物
【請求項15】
標的RNAにハイブリダイズすることができる標的化RNA配列を含む、標的RNAを編集するためのdRNAであって、前記dRNAが、前記標的化RNA配列の末端に隣接する若しくは置換するリンカー核酸配列を含み、前記リンカー核酸配列が、前記dRNAのいかなる部分とも実質的に二次構造を形成しなく、前記dRNAが、環状RNA、線形RNA、または環状RNAを形成することができる線形RNAである、dRNA、又は前記dRNAをコードする核酸配列を含む、構築物
【国際調査報告】