(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-03
(54)【発明の名称】メマンチンエナント酸塩を含む認知症治療用経皮吸収製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/13 20060101AFI20240827BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20240827BHJP
A61K 9/70 20060101ALI20240827BHJP
A61K 47/14 20170101ALI20240827BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20240827BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20240827BHJP
A61K 47/44 20170101ALI20240827BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
A61K31/13
A61P25/28
A61K9/70 401
A61K47/14
A61K47/12
A61K47/10
A61K47/44
A61K47/32
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024514107
(86)(22)【出願日】2022-09-01
(85)【翻訳文提出日】2024-03-01
(86)【国際出願番号】 KR2022013084
(87)【国際公開番号】W WO2023033557
(87)【国際公開日】2023-03-09
(31)【優先権主張番号】10-2021-0116832
(32)【優先日】2021-09-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513131590
【氏名又は名称】ドン-ア エスティ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110003579
【氏名又は名称】弁理士法人山崎国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100118647
【氏名又は名称】赤松 利昭
(74)【代理人】
【識別番号】100123892
【氏名又は名称】内藤 忠雄
(74)【代理人】
【識別番号】100169993
【氏名又は名称】今井 千裕
(74)【代理人】
【識別番号】100173978
【氏名又は名称】朴 志恩
(72)【発明者】
【氏名】ジャン、スン-ウー
(72)【発明者】
【氏名】シン、チャン-イェル
(72)【発明者】
【氏名】キム、ヘ-スン
(72)【発明者】
【氏名】ヒュン、サン-ミン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ヨン-ジク
(72)【発明者】
【氏名】シン、チャン-ヨン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ジェ-ハン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA72
4C076AA73
4C076BB31
4C076CC01
4C076DD37E
4C076DD41E
4C076DD46E
4C076EE03G
4C076EE09G
4C076EE49G
4C076EE53E
4C076FF34
4C076GG00
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA29
4C206KA09
4C206MA02
4C206MA05
4C206MA52
4C206MA83
4C206NA05
4C206NA10
4C206NA11
4C206ZA15
(57)【要約】
本発明は、支持層、薬物含有層および剥離層から構成されたメマンチン含有経皮吸収製剤において、薬物含有層はメマンチンエナント酸塩、可溶化剤および粘着剤を含有する、認知症治療用経皮吸収製剤を提供する。本発明による認知症治療用経皮吸収製剤は、結晶析出がなく、高い皮膚透過度を示し、臨床的に使用可能なパッチ面積を容易に調節するだけでなく、同時に放出速度を調節して皮膚の吸収速度を制御することにより、薬物によって現れる皮膚刺激を最小限に抑えることができ、薬物の損失を最小限に抑えて経済的利点を実現するとともに薬物の過剰投与を防ぐことができる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持層、薬物含有層および剥離層を含むメマンチン含有経皮吸収製剤において、
前記薬物含有層はメマンチンエナント酸塩、可溶化剤および粘着剤を含有する、認知症治療用経皮吸収製剤。
【請求項2】
前記メマンチンエナント酸塩は、前記薬物含有層の全重量に対して1~20重量%含有されることを特徴とする、請求項1に記載の認知症治療用経皮吸収製剤。
【請求項3】
前記可溶化剤は、前記メマンチンエナント酸塩に対して30mg/ml以上の溶解度を有することを特徴とする、請求項1に記載の認知症治療用経皮吸収製剤。
【請求項4】
前記可溶化剤は、プロピレングリコールモノカプリレート、プロピレングリコールモノラウレート、ジイソプロピルアジペート、ジイソプロピルセバケート、オレイン酸、イソプロピルパルミテート、グリセリルモノカプリレート、イソステアレート、ココイルカプリロカプレート、セチル2-エチルヘキサノエート、オレオイルマクロゴール-6-グリセリド、プロピレングリコールジカプリロカプレート、プロピレングリコールジカプリロカプレート、プロピレングリコールジカプロレート/ジカプレート、グリセリルモノオレエート、1-ドデシル-2-ピロリジノン、リノレオイルマクロゴール-6グリセリド、ポリグリセリル-3ジオレエート、エチルオレエート、イソプロピルイソステアレート、イソプロピルミリステート、中鎖トリグリセリド、イソセチルミリステート、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、ピナッツオイル、およびジエチレングリコールモノエチルエーテルの中から1種以上選択されることを特徴とする、請求項3に記載の認知症治療用経皮吸収製剤。
【請求項5】
前記可溶化剤は、プロピレングリコールモノカプリレート、ジイソプロピルアジペート、ジイソプロピルセバケート、イソプロピルパルミテート、イソプロピルミリステート、オレオイルマクロゴール-6-グリセリド、イソプロピルイソステアレート、およびオレイルアルコールの中から1種以上選択されることを特徴とする、請求項4に記載の認知症治療用経皮吸収製剤。
【請求項6】
前記可溶化剤は、前記薬物含有層の全重量に対して1~40重量%の量で存在する、請求項1に記載の認知症治療用経皮吸収製剤。
【請求項7】
前記粘着剤は、スチレン-イソプレン-スチレンブロックコポリマー(SIS)、アクリル系ポリマー、およびポリイソブチレンポリマーの中から選択される粘着剤であることを特徴とする、請求項1に記載の認知症治療用経皮吸収製剤。
【請求項8】
前記粘着剤はスチレン-イソプレン-スチレンブロックコポリマーである、請求項7に記載の認知症治療用経皮吸収製剤。
【請求項9】
前記スチレン-イソプレン-スチレンブロックコポリマーは、薬物含有層の全重量に対して10~70重量%含有されることを特徴とする、請求項8に記載の認知症治療用経皮吸収製剤。
【請求項10】
前記粘着剤はアクリル系ポリマーである、請求項7に記載の認知症治療用経皮吸収製剤。
【請求項11】
前記アクリル系ポリマーは、前記薬物含有層の全重量に対して50~90重量%含有されることを特報とする、請求項10に記載の認知症治療用経皮吸収製剤。
【請求項12】
前記粘着剤はポリイソブチレンポリマーである、請求項7に記載の認知症治療用経皮吸収製剤。
【請求項13】
前記ポリイソブチレンポリマーは、前記薬物含有層の全重量に対して10~90重量%含有されることを特徴とする、請求項12に記載の認知症治療用経皮吸収製剤。
【請求項14】
前記薬物含有層は可塑剤をさらに含有する、請求項1に記載の経皮吸収製剤。
【請求項15】
(a)有機溶媒に可溶化剤、粘着剤およびメマンチンエナント酸塩を溶解させるステップと、
(b)前記(a)ステップで製造された溶液を剥離層に塗布し、乾燥させて薬物含有層を形成するステップと、
(c)前記薬物含有層を支持層とラミネートするステップと、を含む、メマンチンエナント酸塩含有経皮吸収製剤の製造方法。
【請求項16】
前記有機溶媒は、酢酸エチル、トルエン、ヘキサン、2-プロパノール、メタノール、エタノール、塩化メチレン、およびテトラヒドロフランの中から選択されることを特徴とする、請求項15に記載の経皮吸収製剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メマンチンの改善された薬学的塩、および、これを含む、皮膚透過度に優れ、持続的に長時間放出され且つ皮膚低刺激性を有する認知症治療用経皮吸収製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
アルツハイマー認知症は、皮質または脳領域の細胞喪失と共に神経変性過程によって引き起こされる。このような原因としては、脳の神経伝達物質であるアセチルコリンが減少するか、或いは他の神経伝達物質であるグルタミン酸塩(glutamate)が過剰活性化されて神経の死滅が誘導されることが知られている。特に、グルタミン酸塩は、記憶と学習に非常に重要な役割を果たす神経伝達物質であって、グルタミン酸塩がN-メチル-D-アスパラギン酸塩(N-Methyl-D-aspartic acid、以下「NMDA」という)受容体を刺激し続けると、過剰なカルシウムがニューロンに流入して、細胞骨格、細胞膜およびDNAなどの細胞構成要素が分解されるアポトーシス過程が進行し、これは、長期的に神経変性を引き起こすことが知られている。
【0003】
メマンチン(Memantine)は、NMDA受容体アンタゴニストであり、代表的な市販製品としては、2003年にアメリカ食品医薬品局の許可を受けた経口用錠剤であるEbixa(登録商標)がある。メマンチンのNMDA受容体遮断は、認知症患者に発生しうる神経細胞損傷を防ぎ、残っている神経細胞の生理的機能を復元して症状を好転させることが報告されている。これは、軽度のアルツハイマー患者よりは、中等度或いは重度のアルツハイマー患者に対して効能を示し、アセチルコリン分解酵素阻害剤を使用しても明らかな症状の改善がない場合、中等度以上のアルツハイマー病において単独で投与するか或いはアセチルコリン分解酵素阻害剤と併用して使用される。メマンチンの初期用量は5mgであり、1週目には1日5mg、2週目には1日10mg(1/2錠ずつ1日2回)、3週目には1日15mg(朝1錠、夕方1/2錠)を服用し、4週目からは1日20mgを維持用量とし、10mgの錠を1日2回服用する。メマンチン経口用錠剤の服用は、急激な血中濃度上昇によりめまい、頭痛、便秘、眠気、血圧増加、呼吸困難などの副作用を誘発し、嚥下能力が低下した高齢患者の場合、服薬便宜性に問題となっている実情である。
【0004】
また、現在、経口用製剤として市販されるメマンチンは、水溶性の塩酸塩形態であり、経皮吸収製剤に用いられるアクリル粘着剤およびゴム粘着剤などの油性粘着剤に溶解することは非常に困難であり、時間経過に伴ってメマンチン塩酸塩が結晶化して沈殿するという問題があり、これは、皮膚透過度の低下および粘着力の低下などにつながる。メマンチン塩酸塩の代わりにメマンチン遊離塩基に対する経皮吸収製剤に関する研究が行われたが、メマンチン遊離塩基の場合、薬物の分配係数であるlogPが3.28であって、親油性が強くて皮膚透過が容易であるが、強い皮膚刺激を誘発し、融点10℃以下の物理的特性により揮発性が高いため、経皮吸収製剤の製造及び保管時に有効薬物の減少及び安定性の問題等が発生することがある。
【0005】
前記メマンチン含有薬物の服薬に伴う問題、薬物の副作用などおよびメマンチン塩の物理化学的特性に起因する問題点を解決するために、メマンチンまたはその塩を含有する認知症治療用経皮吸収製剤に関する様々な研究が国内外で行われたが、経皮吸収製剤の低い皮膚透過度と皮膚刺激性、および結晶析出による物理化学的安定性の問題により未だ市販のメマンチン含有経皮吸収製剤はない実情である。
【0006】
メマンチン含有経皮吸収製剤の低い皮膚透過度および皮膚刺激安全性を克服しようとする研究が、米国公開特許公報第2019-0183810号、韓国公開特許公報第2019-0032551号、韓国登録特許公報第10-1964295号、米国特許公報第8,882,729号およびWO2014/174564号などの様々な先行文献に開示されている。
【0007】
米国公開特許公報第2019-0183810号は、揮発性液体であるか、或いは接着性マトリックスにおいて低い融点を有するメマンチン遊離塩基と、グリコール酸塩、乳酸塩、アルファヒドロキシ酪酸塩、ピルビン酸塩、アセト酢酸塩およびレブリン酸塩の反対アニオンを含有する経皮吸収製剤に関するものであり、メマンチン遊離塩基の主成分の損失を防止し、約3~7日間メマンチンの治療血中濃度を達成するために、多重層の薬物含有層を含む経皮薬物送達システムが開示されているが、ヒト死体皮膚(Human cadaver skin)における最大皮膚透過度が10μg/cm2/hrと不十分なレベルであり、十分な皮膚透過度および安全性について教示するものではない。
【0008】
韓国公開特許公報第2019-0032551号は、薬物貯蔵層内でメマンチン塩酸塩を重炭酸ナトリウムまたは重炭酸塩カリウムなどのアルカリ塩と反応させて生成されたメマンチン塩基を含む多重層の経皮薬物送達システムに関するものであり、経口製剤として使用されるメマンチン塩酸塩を経皮吸収製剤として適用する際に発生する問題である低い溶解度による結晶析出を防止し、低い皮膚透過度を改善しようとし、ヒト死体皮膚で7日間一定に15μg/cm2/hrのレベルで皮膚透過を示したが、これは、十分な皮膚透過度と薬物の血中曝露および皮膚刺激の安全性について教示するものではない。
【0009】
韓国登録特許公報第10-1964295号は、メマンチン遊離塩基の高い皮膚透過に対する放出速度を調節して経皮投与時の皮膚刺激を最小限に抑えるために、放出調節剤としてステアリン酸塩、ポリメタクリレート、分子量400,000~3,000,000のポリビニルピロリドン高分子またはこれらの混合物を含有した経皮吸収製剤に関する。これは、ヒト死体皮膚における皮膚吸収率が24時間20μg/cm2/hレベル以下である場合、ヒト皮膚刺激に対する紅斑および浮腫が最小限に抑えられることを開示しているが、長期間経皮吸収製剤付着時の薬物の持続的な皮膚透過及び安全性について教示するものではない。
【0010】
米国特許公報第8,882,729号は、メマンチンまたは生理学的に適した塩のうちの1つを含む経皮治療システムに関するものであり、薬物貯蔵層内でメマンチン塩酸塩を塩化カルシウム、ナトリウムエタノラートなどのアルカリ塩と反応させて生成されたメマンチン遊離塩基を含む多重層の経皮薬物送達システムが開示されている。この従来技術は、ウサギ動物モデルにおいて投与3日後、メマンチンの血漿濃度が維持できることを開示しており、臨床試験を介して24時間投与間隔時の薬物動態学的研究を通じて、300時間後、65ng/mL以上の最小血漿濃度を推測したが、これは、皮膚透過性に関連して、先行技術には実験データが開示されていないため、実際の長期的な経皮吸収製剤付着時の持続的な皮膚透過及び安全性について教示するものではない。
【0011】
WO2014/174564号は、薬物含有層に有機酸を含む、メマンチンまたはその薬学的に許容される塩を含む接着パッチ薬物製剤に関するものであり、このような有機酸としては、シュウ酸およびアゼライン酸などのジカルボン酸;グリコール酸及び乳酸などのヒドロキシカルボン酸;安息香酸およびサリチル酸などの芳香族カルボン酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ウンデセン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸、オレイン酸およびイソステアリン酸が挙げられる。この従来技術は、パッチの製造または貯蔵時にメマンチン結晶化およびメマンチン揮発を抑制して含有量が維持されることを開示しているが、皮膚透過性に関連して実験データが開示されておらず、実際の長期的な経皮吸収製剤付着時の持続的な皮膚透過および安全性について教示するものではない。
【0012】
そこで、本発明者らは、低い皮膚透過度或いは強い皮膚刺激性を示すメマンチン含有経皮吸収製剤の問題点を克服するために、メマンチン遊離塩基に対して薬理学的に使用可能な様々な新規塩を合成し、可溶化剤(吸収促進剤または皮膚透過増進剤)に対する溶解度評価、皮膚透過度評価、結晶析出評価、無毛マウスとウサギにおける皮膚刺激評価及び薬物動態学的評価を介して、公知のメマンチンの塩だけでなく他の新規塩を含有する経皮吸収製剤に比べて、メマンチンエナント酸塩を含有する経皮吸収製剤が、様々な可溶化剤に対して結晶析出がなくかつ高い皮膚透過度を示し、長期間一定の放出形態を示す経皮吸収製剤を製造することができることを見出した。また、メマンチン遊離塩基を含有する経皮吸収製剤は、深刻な紅斑や浮腫などの中等度以上の皮膚刺激を示すのに対し、メマンチンエナント酸塩を含有する経皮吸収製剤は、7日間付着時には弱い皮膚刺激を示して皮膚刺激性を改善することを見出し、本発明に至った。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、メマンチンの薬物結晶析出がなく、高い皮膚透過度を示し、長期間一定の放出パターンを有し、且つ皮膚刺激安全性が改善されたメマンチンの塩を含有する経皮吸収製剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、メマンチンのエナント酸塩を提供する。
【0015】
本発明の薬物含有層に用いられる前記メマンチンは、脳の興奮性神経伝達物質であるグルタメートの受容体であるNMDA物質に選択的に結合して、脳の神経損傷を保護するNMDA受容体アンタゴニストであって、メマンチンエナント酸塩を用いる。
【0016】
メマンチンの塩が経皮吸収製剤の目的に符合できるようにするためには、(1)可溶化剤への高い溶解度、(2)優れた皮膚透過度、(3)結晶析出最小化、および(4)皮膚刺激極小化などの4つの物理化学的基準を満たさなければならない。
【0017】
本発明のメマンチンエナント酸塩は、下記の実施例および実験例から分かるように、メマンチンの経皮吸収製剤を特に適切にする優れた剤形特性の独特な組み合わせを有する。すなわち、本発明のメマンチンエナント酸塩は、上記の4つの条件を全て満たす特性を示した。ところが、本発明で比較実験した様々な塩は、いずれのものも上記の4つの基準を全て満たしておらず、特に市販のメマンチン塩酸塩は、パッチ内の低い溶解度、低い皮膚透過度を示した。
【0018】
したがって、本発明によるメマンチンエナント酸塩は、メマンチン含有経皮吸収製剤の製造において、非常に適した優れた溶解度、優れた皮膚透過度、結晶析出最小化および皮膚刺激極小化の独特な組み合わせを提供する。
【0019】
本発明の別の態様は、支持層、薬物含有層および剥離層から構成されたメマンチン含有経皮吸収製剤において、薬物含有層は、メマンチンエナント酸塩、可溶化剤および粘着剤を含有する認知症治療用経皮吸収製剤を提供する。
【0020】
本発明の薬物含有層に含有されるメマンチンエナント酸塩は、薬物含有層の全重量に対して1~20重量%、好ましくは1.5~15重量%、より好ましくは2~10重量%含有できる。
【0021】
本発明の可溶化剤は、メマンチンエナント酸塩に対して30mg/ml以上の溶解度を有する可溶化剤を用いることができる。例えば、プロピレングリコールモノカプリレート、プロピレングリコールモノラウレート、ジイソプロピルアジペート、ジイソプロピルセバケート、オレイン酸、イソプロピルパルミテート、グリセリルモノカプリレート、イソステアレート、ココイルカプリロカプレート、セチル2-エチルヘキサノエート、オレオイルマクロゴール-6-グリセリド、プロピレングリコールジカプリロカプレート、プロピレングリコールジカプリロカプレート、プロピレングリコールジカプロレート/ジカプレート、グリセリルモノオレエート、1-ドデシル-2-ピロリジノン、リノレオイルマクロゴール-6グリセリド、ポリグリセリル-3ジオレエート、エチルオレエート、イソプロピルイソステアレート、イソプロピルミリステート、中鎖トリグリセリド、イソセチルミリステート、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、ピナッツオイル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルは、メマンチンエナント酸塩に対して30mg/ml以上の溶解度を有し、好ましくは、プロピレングリコールモノカプリレート、ジイソプロピルアジペート、ジイソプロピルセバケート、イソプロピルパルミテート、イソプロピルミリステート、オレオイルマクロゴール-6-グリセリド、イソプロピルイソステアレート、およびオレイルアルコールの中から1種以上選択できる。
【0022】
このような可溶化剤の含有量は、経皮吸収製剤の十分な皮膚透過増進効果を考慮して、薬物含有層の全重量に対して1重量%以上40重量%以下、好ましくは2重量%以上30重量%以下、より好ましくは3重量%以上20重量%以下、さらに好ましくは5重量%以上15重量%以下である。
【0023】
本発明の粘着剤は、スチレン-イソプレン-スチレンブロックコポリマー(SIS)、アクリル系ポリマー、またはポリイソブチレンポリマーの中から選択できる。
【0024】
本発明に用いられるアクリル系ポリマーとは、アクリルエステルをアクリル酸またはその誘導体と共重合させて得ることができる高分子を意味する。例えば、Duro-Tak 87-9301、Duro-Tak 87-2510、Duro-Tak 87-2287、Duro-Tak 87-4287、Duro-Tak 87-2516、Duro-Tak 87-235A、Duro-Tak 87-2051などがあるが、これに限定されない。このようなアクリル系ポリマーの含有量は、薬物含有層の全重量に対して50重量%以上90重量%以下、好ましくは55重量%以上85重量%以下、より好ましくは65重量%以上75重量%以下、さらに好ましくは70重量%以上80重量%以下である。
【0025】
本発明に使用されるポリイソブチレンポリマーは、イソブチレンを重合して製造されたポリマーであって、500~1,000,000またはそれ以上の分子量の範囲であり得る。ポリイソブチレンポリマーの含有量は、薬物含有層の全重量に対して、通常10重量%以上、好ましくは20重量%以上、より好ましくは30重量%以上、さらに好ましくは40重量%以上であり、通常90重量%以下、好ましくは80重量%以下、より好ましくは70重量%以下、さらに好ましくは60重量%以下である。
【0026】
本発明において特に好ましい粘着剤としては、ゴム系粘着剤であるスチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体である。スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体は、スチレンおよびイソプレンからなる熱可塑性エラストマーであり、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体ゴム中のスチレン含有量およびジブロック(diblock)含有量に応じて融点や溶液粘度などの様々な性質が変化する。
【0027】
本発明に使用されるスチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体は、特に限定されないが、好ましくは、日本医薬品添加物規格集2013年版に記載の「スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体の粘度測定方法」によってスチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体の溶液粘度を測定したとき、溶液粘度の下限は、0.5Pa*s以上、好ましくは0.7Pa*s以上、さらに好ましくは0.9Pa*s以上であり、溶液粘度の上限は、特に限定されないが、2.0Pa・s以下、好ましくは1.8Pa・s以下である。
【0028】
薬物含有層中の粘着剤の含有量があまり少ない場合には、薬物含有層の形状を維持することが難しく、過度に多い場合には、薬物の皮膚透過度減少の欠点がある。したがって、本発明のスチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体の含有量は、薬物含有層の全重量に対して10重量%以上70重量%以下、より好ましくは15重量%以上65重量%以下、さらに好ましくは20重量%以上60重量%以下、特に好ましくは25重量%以上55重量%以下である。
【0029】
本発明が提供する経皮吸収型剤形における粘着物組成物には、可塑剤を含有させることができる。本発明に使用できる可塑剤としては、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイル、オリーブ油、ツバキ油、トール油、ヒマシ油、ミリスチン酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、鉱油、オクチルドデシルミリステート、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノカプリレートなどがあるが、これらに限定されない。これらの成分は、2種以上混合して使用してもよく、このような可塑剤の含有量は、経皮吸収製剤の十分な凝集力の維持を考慮して、薬物含有層の全重量に対して10重量%以上80重量%以下、好ましくは20重量%以上75重量%以下、より好ましくは25重量%以上70重量%以下、さらに好ましくは30重量%以上65重量%以下である。
【0030】
本発明の薬物含有層には、経皮吸収製剤の粘着力を調整するために粘着付与樹脂を追加することができる。使用可能な粘着付与樹脂としては、ロジン誘導体、脂環族飽和炭化水素樹脂、脂肪族系炭化水素樹脂などが挙げられ、本発明ではテルペン樹脂を代表的に使用したが、これに限定されない。しかし、粘着付与剤が薬物含有層に含有される場合、薬物含有層中の粘着付与剤の含有量は、皮膚刺激などを減少させるために、好ましくは薬物含有層の全重量に対して20重量%以下であり、好ましくは15重量%以下、より好ましくは10重量%以下、さらに好ましくは8重量%以下であり、粘着付与剤がないことが最も好ましい。すなわち、パッチの皮膚接着力に関連して、粘着付与剤の含有量は、薬物含有層中のメマンチンエナント酸塩、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体、可溶化剤及び可塑剤の種類及び配合比に応じて調整できる。また、粘着付与剤の添加なしに十分な皮膚粘着力を有する場合、粘着付与剤は不要である。
【0031】
本発明における支持層の「支持体」は、特に限定されず、経皮吸収製剤などに汎用されるものを用いることができる。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等の伸縮性又は非伸縮性織布又は不織布、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリウレタン、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル等のフィルムまたはポリオレフィン、ポリオレタンなどの発泡性支持体が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、複数種が積層されたものを用いてもよい。また、支持体に静電気が蓄積されることを防止するために、支持体を構成する電気織布、不織布、フィルム等に帯電防止剤を含有してもよい。また、粘着剤層との良好な投錨性を得るために、支持体として不織布もしくは織布、またはフィルムの積層体を用いることができる。支持体の厚さは、フィルムに対しては通常10μm~100μm、好ましくは15μm~50μmであり、織布、不織布、発泡性支持体などの多孔性シートに対しては通常50μm~2,000μm、好ましくは100μm~1,000μmである。
【0032】
また、本発明における剥離層は、経皮吸収製剤などに汎用される一般的な剥離ライナーを用いることができる。剥離ライナーとしては、グラシン紙、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリスチレンなどの樹脂フィルム、アルミニウムフィルム、発泡ポリエチレンフィルムまたは発泡ポリプロピレンフィルムなどを用いることができ、さらにシリコン加工したものやフッ素樹脂で加工したもの、エンボス加工、親水性加工、疎水性加工などをしたものなどを用いることができる。当該剥離ライナーの厚さは、通常10μm~200μm、好ましくは15μm~150μmである。
【0033】
さらに、本発明の経皮吸収製剤は、添加物、溶解剤、経皮吸収促進剤、香味剤、着色剤などを含むことができる。
【0034】
本発明において、経皮吸収製剤の製造方法は、粘着剤、メマンチンエナント酸塩、安定化剤及び可塑剤などを溶媒に溶解又は分散させて組み合わせ、得られた溶液又は分散液を剥離層の表面上に塗布し、乾燥させた後、支持体をラミネートさせることにより製造することができる。本発明の一つの実施形態として、(1)有機溶媒にメマンチンエナント酸塩および本発明による可溶化剤混合物を溶解させるステップ、(2)前記ステップで製造された溶液を剥離層に塗布し、乾燥させて薬物含有層を形成するステップ、および(3)前記薬物含有層を支持層とラミネートするステップを含んでメマンチン経皮吸収製剤を製造することができる。
【0035】
前記本発明による製造方法に用いられる溶媒としては、例えば、酢酸エチル、トルエン、ヘキサン、2-プロパノール、メタノール、エタノール、塩化メチレン、テトラヒドロフランなどが挙げられ、粘着剤などを溶媒に溶解または分散させるときの温度は、特に限定されないが、温度が高いほど溶媒蒸発可能性が高まり、かつ温度に応じてメマンチンエナント酸塩が分解されて類縁物質が多量に生成されることができるため、好ましくは80℃以下、より好ましくは60℃以下である。
【0036】
また、本発明は、前記実施形態で得られた溶液または分散液を剥離層の表面上に塗布する方法、乾燥させる方法、および支持体ラミネート方法は、通常の経皮吸収製剤の製造方法によって製造することができる。
【0037】
本発明が提供する経皮吸収製剤は、必要に応じて抗酸化剤を用いることができる。抗酸化剤としては、一般的に知られている抗酸化剤またはその誘導体を用いることができ、その例としては、アスコルビン酸、そのエステル誘導体、重亜硫酸ナトリウム、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、システイン、グルタチオン、トリプトファン、メチオニン、メタスルホン酸、リンゴ酸、クエン酸、ベンゾトリアゾール、モノチオグリセリンなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【発明の効果】
【0038】
本発明によるメマンチンエナント酸塩を含有する経皮吸収製剤は、薬物結晶析出がなく、高い皮膚透過度を示し、長期間一定の放出パターンを有し、皮膚刺激が最小化されて安全性が改善された。
【0039】
したがって、本発明による経皮吸収製剤は、従来の認知症治療用経口剤に代えて有用に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】メマンチンエナント酸塩とメマンチンレブリン酸塩の可溶化剤の種類による溶解度を示す。
【0041】
【
図2】メマンチン塩の種類による経皮吸収製剤の皮膚透過度を示す。
【0042】
【
図3】可溶化剤ジイソプロピルセバケートに対するメマンチン塩の種類による皮膚透過度を示す。
【0043】
【
図4】可溶化剤ジイソプロピルアジペートに対するメマンチン塩の種類による皮膚透過度を示す。
【0044】
【
図5】可溶化剤イソプロピルパルミテートに対するメマンチン塩の種類による皮膚透過度を示す。
【0045】
【
図6】可溶化剤イソプロピルミリステートに対するメマンチン塩の種類による皮膚透過度を示す。
【0046】
【
図7】可溶化剤オレオイルマクロゴール-6-グリセリドに対するメマンチン塩の種類による皮膚透過度を示す。
【0047】
【
図8】可溶化剤イソプロピルイソステアレートに対するメマンチン塩の種類による皮膚透過度を示す。
【0048】
【
図9】可溶化剤オレイルアルコールに対するメマンチン塩の種類による皮膚透過度を示す。
【0049】
【
図10】メマンチンエナント酸経皮吸収製剤の可溶化剤の減量および粘着剤の変更による皮膚透過度を示す。
【0050】
【0051】
【
図12】ウサギにおけるメマンチンエナント酸塩含有経皮吸収製剤の血中濃度プロファイルを示す。
【0052】
【
図13】無毛マウスにおけるメマンチンエナント酸塩含有経皮吸収製剤の血中濃度プロファイルを示す。
【0053】
【
図14】無毛マウスにおけるメマンチンエナント酸塩含有経皮吸収製剤のサイズおよび用量による血中濃度プロファイルを示す。
【0054】
【
図15】無毛マウスにおけるメマンチンエナント酸塩含有経皮吸収製剤のサイズおよび用量による血中最高濃度および血中薬物濃度-時間曲線下面積プロファイルを示す。
【0055】
【発明を実施するための形態】
【0056】
以下、実施例及び実験例によって本発明をさらに詳細に説明する。これらの実施例および実験例は本発明を具体的に説明するためのものであり、本発明の範囲はこれらの実施例および実験例によって限定されるものではない。
【0057】
<製造例1>メマンチン塩の製造
【0058】
1.メマンチンエナント酸塩の製造
【0059】
メマンチン遊離塩基170.0gを反応部に投入した後、アセトニトリル3.4Lを投入した。エナント酸124.1gを投入した後、60℃で1時間攪拌した。常温に冷却した後、一晩撹拌した。生成された固体を濾過し、アセトニトリルで洗浄した後、常温で一晩真空乾燥して表題の化合物269.5g(91%)を得た。
【0060】
1H NMR(400MHz、DMSO-d6):2.07(m、3H)、1.44(t、2H)、1.42(s、1H)、1.22(m、10H)、1.06(d、1H)、1.02(d、1H)、0.84(t、3H)、0.79(s、6H)
【0061】
2.メマンチン乳酸塩の製造
【0062】
メマンチン遊離塩基30.0gを反応部に投入した後、イソプロピルエーテル600mLを投入した。乳酸15.2gを投入した後、60℃で1時間攪拌した。常温で3時間撹拌の後に生成された固体を濾過し、イソプロピルエーテルで洗浄した後、常温で一晩真空乾燥して表題の化合物42.2g(93%)を得た。
【0063】
1H NMR(400MHz、DMSO-d6):3.57(m、1H)、2.11(s、1H)、1.56(s、2H)、1.38(dd、2H)、1.08(m、6H)、0.82(s、6H)
【0064】
3.メマンチンカプリル酸塩の製造
【0065】
メマンチン遊離塩基3.0gを反応部に投入した後、アセトン30mLを投入した。カプリル酸2.7mLを投入した後、60℃で30分間攪拌した。常温に冷却した後、一晩撹拌した。生成された固体を濾過し、アセトンで洗浄した後、常温で一晩真空乾燥して表題の化合物4.6g(85%)を得た。
【0066】
1H NMR(600MHz、DMSO-d6):2.05(s、1H)、2.02(t、2H)、1.42-1.44(m、4H)、1.22-1.28(m、16H)、1.08(dd、1H)、1.02(dd、1H)、0.84(t、3H)、0.79(s、6H)
【0067】
4.メマンチンレブリン酸塩の製造
【0068】
メマンチン遊離塩基180.0gを反応部に投入した後、アセトン450mLと酢酸エチル450mLを投入した。レブリン酸117.2gを投入した後、常温で1時間攪拌した。反応物を減圧濃縮した後、濃縮残余物にn-ヘキサン900mLを投入した。常温で3時間攪拌した後、固体を濾過し、n-ヘキサンで洗浄した後、常温で一晩真空乾燥して表題の化合物277.5g(93%)を得た。
【0069】
1H NMR(400MHz、DMSO-d6):2.49(t、2H)、2.18(t、2H)、2.07(s、4H)、1.49(s、1H)、1.30(d、2H)、1.28(s、2H)、1.24(d、2H)、1.08(d、1H)、1.04(d、1H)、0.80(s、6H)
【0070】
5.メマンチン吉草酸塩の製造
【0071】
メマンチン遊離塩基2.0gを反応部に投入した後、アセトニトリル40mLを投入して溶解させた。吉草酸1.3gを投入した後、常温で5時間攪拌した。生成された固体を濾過し、少量のアセトニトリルで洗浄した後、常温で一晩真空乾燥して表題の化合物2.80g(89%)を得た。
【0072】
1H NMR(400MHz、DMSO-d6):2.05(s、1H)、2.00(t、2H)、1.41(m、2H)、1.28(d、2H)、1.25(d、2H)、1.21(s、2H)、1.07(d、1H)、1.03(d、1H)、0.83(t、3H)、0.79(s、6H)
【0073】
6.メマンチンキシナホ酸塩の製造
【0074】
メマンチン遊離塩基2.0gを反応部に投入した後、メタノール20mLを投入して溶解させた。1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸ン2.3gを投入した後、常温で3時間攪拌した。反応混合物に水(20mL)を加えた後、さらに2時間撹拌した。生成された固体を濾過し、少量の水で洗浄した後、常温で一晩真空乾燥して表題の化合物3.94g(96%)を得た。
【0075】
1H NMR(400MHz、DMSO-d6):8.16(d、1H)、7.69(dd、2H)、7.42(t、1H)、7.35(t、1H)、7.00(d、1H)、2.12(s、1H)、1.60(s、2H)、1.41(d、2H)、1.38(d、2H)、1.26(s、1H)、1.11(d、1H)、1.06(d、1H)、0.81(s、6H)
【0076】
7.メマンチン(+)-カンファースルホン酸塩の製造
【0077】
メマンチン遊離塩基2.0gを反応部に投入した後、アセトン10mLを投入した。カンファースルホン酸2.9gを投入した後、室温で3時間攪拌した。生成された固体を濾過し、アセトンで洗浄した後、常温で一晩真空乾燥して表題の化合物4.3g(93%)を得た。
【0078】
1H NMR(400MHz、DMSO-d6):7.44(bs、1H)、3.35(s、1H)、2.85(d、1H)、2.68(m、1H)、2.77(d、1H)、2.21(dd、1H)、2.15(m、1H)、1.93(t、1H)、1.85(m、1H)、1.80(d、1H)、1.59(s、2H)、1.40(q、4H)、1.28(m、6H)、1.56(d、1H)、1.08(d、1H)、1.03(s、3H)、0.84(s、6H)、0.73(s、3H)
【0079】
8.メマンチンヘミアジピン酸塩の製造
【0080】
メマンチン遊離塩基2.0gを反応部に投入した後、アセトン60mLを投入して溶解させた。アジピン酸0.82gを投入した後、60℃に昇温して1時間攪拌し、常温に冷却して3時間攪拌した。生成された固体を濾過し、アセトン10mLで洗浄した後、常温で一晩真空乾燥して表題の化合物2.75g(76%)を得た。
【0081】
1H NMR(400MHz、DMSO-d6):2.09(m、2H)、2.04(s、1H)、1.46(s、2H)、1.38(s、2H)、1.21(s、2H)、1.16(d、2H)、1.05(d、1H)、1.02(d、1H)、0.79(s、6H)
【0082】
9.メマンチンヘミエジシル酸塩の製造
【0083】
メマンチン遊離塩基2.0gを反応部に投入した後、アセトニトリル60mLを投入して溶解させた。エジシル酸1.06gを投入した後、60℃に昇温して1時間攪拌し、常温に冷却して3時間攪拌した。生成された固体を濾過し、アセトニトリル10mLを洗浄した後、濾過の後、常温で一晩真空乾燥して表題の化合物2.50g(82%)を得た。
【0084】
1H NMR(400MHz、DMSO-d6):7.81(s、2H)、2.66(s、2H)、2.13(s、1H)、1.59(s、2H)、1.40(d、2H)、1.37(d、2H)、1.27(s、2H)、1.12(d、1H)、1.08(d、1H)、0.83(s、6H)
【0085】
10.メマンチンヘミフマル酸塩の製造
【0086】
メマンチン遊離塩基2.0gを反応部に投入した後、アセトン60mLを投入して溶解させた。フマル酸0.65gを投入した後、60℃に昇温して1時間攪拌し、常温に冷却して3時間攪拌した。生成された固体を濾過し、アセトン10mLで洗浄した後、常温で一晩真空乾燥して表題の化合物2.58g(98%)を得た。
【0087】
1H NMR(400MHz、DMSO-d6):6.29(s、1H)、3.33(s、1H)、2.08(s、1H)、1.47(s、2H)、1.28(d、2H)、1.24(s、2H)、1.22(d、2H)、1.08(d、1H)、1.04(d、1H)、0.80(s、2H)
【0088】
11.メマンチンヘミグルタミン酸塩の製造
【0089】
メマンチン遊離塩基2.0gを反応部に投入した後、アセトン60mLを投入して溶解させた。グルタル酸0.74gを投入した後、60℃に昇温して1時間攪拌し、常温に冷却して3時間攪拌した。生成された固体を濾過し、アセトン10mLで洗浄した後、常温で一晩真空乾燥して表題の化合物2.71g(99%)を得た。
【0090】
1H NMR(400MHz、DMSO-d6):2.12(d、2H)、2.06(s、1H)、1.65(m、1H)、1.42(s、1H)、1.25(d、2H)、1.24(s、2H)、1.22(d、2H)、1.07(d、1H)、1.03(d、1H)、0.80(s、6H)
【0091】
12.メマンチンヘミリンゴ酸塩の製造
【0092】
メマンチン遊離塩基2.0gを反応部に投入した後、酢酸エチル60mLを投入して溶解させた。L-リンゴ酸0.75gを投入した後、60℃に昇温して1時間攪拌し、常温に冷却して3時間攪拌した。生成された固体を濾過し、酢酸エチル10mLで洗浄した後、常温で一晩真空乾燥して表題の化合物2.55g(93%)を得た。
【0093】
1H NMR(400MHz、DMSO-d6):3.80(d、0.5H)、2.43(d、0.5H)、2.21(d、0.5H)、2.08(s、1H)、1.47(s、2H)、1.29(d、2H)、1.24(s、2H)、1.22(d、2H)、1.11(d、1H)、1.09(d、1H)、0.81(s、6H)
【0094】
13.メマンチンヘミマレイン酸塩の製造
【0095】
メマンチン遊離塩基2.0gを反応部に投入した後、アセトニトリル60mLを投入して溶解させた。マレイン酸0.65gを投入した後、60℃に昇温して1時間攪拌し、常温に冷却して3時間攪拌した。生成された固体を濾過し、アセトニトリル10mLで洗浄した後、常温で一晩真空乾燥して表題の化合物2.56g(97%)を得た。
【0096】
1H NMR(400MHz、DMSO-d6):6.01(s、1H)、2.08(s、1H)、1.44(s、2H)、1.26(d、2H)、1.24(s、2H)、1.22(d、2H)、1.10(d、1H)、1.04(d、1H)、0.80(s、6H)
【0097】
14.メマンチンヘミマロン酸塩の製造
【0098】
メマンチン遊離塩基2.0gを反応部に投入した後、アセトン60mLを投入して溶解させた。マロン酸0.58gを投入した後、60℃に昇温して1時間攪拌し、常温に冷却して3時間攪拌した。生成された固体を濾過し、アセトン10mLで洗浄した後、常温で一晩真空乾燥して表題の化合物2.57g(99%)を得た。
【0099】
1H NMR(400MHz、DMSO-d6):2.67(s、1H)、2.07(s、1H)、1.44(s、1H)、1.28(d、2H)、1.26(s、2H)、1.23(d、2H)、1.08(d、1H)、1.04(d、1H)、0.80(s、6H)
【0100】
15.メマンチンヘミムチン酸塩の製造
【0101】
メマンチン遊離塩基2.0gを反応部に投入した後、ジメチルスルホキシド20mL、アセトン60mLを投入して溶解させた。ムチン酸1.17gを投入した後、60℃に昇温して1時間攪拌し、常温に冷却して3時間攪拌した。生成された固体を濾過し、アセトン10mLで洗浄した後、常温で一晩真空乾燥して表題の化合物2.97g(94%)を得た。
【0102】
1H NMR(400MHz、DMSO-d6):3.72(s、1H)、3.48(s、1H)、3.33(br、2H)、2.10(s、1H)、1.53(s、2H)、1.35(d、2H)、1.31(d、2H)、1.25(s、2H)、1.10(d、1H)、1.06(d、1H)、0.82(s、6H)
【0103】
16.メマンチンヘミナフタレンジスルホン酸塩の製造
【0104】
メマンチン遊離塩基2.0gを反応部に投入した後、アセトン20mLを投入して溶解させた。1,5-ナフタレンジスルホン酸4.4gを投入した後、常温で3時間攪拌した。反応混合物に水20mLを加えた後、さらに2時間撹拌した。生成された固体を濾過し、少量の水で洗浄した後、常温で一晩真空乾燥して表題の化合物2.50g(48%)を得た。
【0105】
1H NMR(400MHz、DMSO-d6):8.85(d、1H)、7.93(d、1H)、7.42(m、1H)、2.11(s、1H)、1.56(s、2H)、1.38(d、2H)、1.34(d、2H)、1.25(s、2H)、1.11(d、1H)、1.05(d、1H)、0.81(s、6H)
【0106】
17.メマンチンオロト酸塩の製造
【0107】
メマンチン遊離塩基2.0gを反応部に投入した後、アセトニトリル60mLを投入して溶解させた。オロチン酸1.94gを投入した後、60℃に昇温して1時間攪拌し、常温に冷却して3時間攪拌した。生成された固体を濾過し、アセトニトリル10mLで洗浄した後、常温で一晩真空乾燥して表題の化合物2.78g(71%)を得た。
【0108】
1H NMR(400MHz、DMSO-d6):11.10(s、1H)、10.15(s、1H)、8.00(s、2H)、5.81(s、1H)、2.13(s、1H)、1.60(s、2H)、1.42(d、2H)、1.38(d、2H)、1.27(s、2H)、1.12(d、1H)、1,07(d、1H)、0.82(s、6H)
【0109】
18.メマンチンヘミシュウ酸塩の製造
【0110】
メマンチン遊離塩基2.0gを反応部に投入した後、アセトン60mLを投入して溶解させた。シュウ酸0.50gを投入した後、60℃に昇温して1時間攪拌し、常温に冷却して3時間攪拌した。生成された固体を濾過し、アセトン10mLで洗浄した後、常温で一晩真空乾燥して表題の化合物2.40g(96%)を得た。
【0111】
1H NMR(400MHz、DMSO-d6):2.07(s、1H)、1.46(s、1H)、1.30(d、2H)、1.28(s、2H)、1.24(d、2H)、1.08(d、1H)、1.04(d、1H)、0.80(s、6H)
【0112】
19.メマンチンヘミピメリン酸塩の製造
【0113】
メマンチン遊離塩基2.0gを反応部に投入した後、アセトン60mLを投入して溶解させた。ピメリン酸0.89gを投入した後、60℃に昇温して1時間攪拌し、常温に冷却して3時間攪拌した。生成された固体を濾過し、アセトン10mLで洗浄した後、常温で一晩真空乾燥して表題の化合物2.85g(99%)を得た。
【0114】
1H NMR(400MHz、DMSO-d6):2.07(m、2H)、2.04(s、1H)、1.44(m、2H)、1.38(s、2H)、1.19(s、2H)、1.17(d、2H)、1.05(d、1H)、1.02(d、1H)、0.79(s、6H)
【0115】
20.メマンチンヘミセバシン酸塩の製造
【0116】
メマンチン遊離塩基2.0gを反応部に投入した後、アセトン60mLを投入して溶解させた。セバシン酸1.13gを投入した後、60℃に昇温して1時間攪拌し、常温に冷却して3時間攪拌した。生成された固体を濾過し、アセトン10mLで洗浄した後、常温で一晩真空乾燥して表題の化合物3.06g(98%)を得た。
【0117】
1H NMR(400MHz、DMSO-d6):2.07(m、2H)、20.4(s、1H)、1.44(m、2H)、1.38(s、2H)、1.21(s、2H)、1.16(d、2H)、1.05(d、1H)、1.02(d、1H)、0.78(s、6H)
【0118】
21.メマンチンヘミスベリン酸塩の製造
【0119】
メマンチン遊離塩基2.0gを反応部に投入した後、アセトン60mLを投入して溶解させた。スベリン酸0.97gを投入した後、60℃に昇温して1時間攪拌し、常温に冷却して3時間攪拌した。生成された固体を濾過し、アセトン10mLで洗浄した後、常温で一晩真空乾燥して表題の化合物2.92g(98%)を得た。
【0120】
1H NMR(400MHz、DMSO-d6):2.09(m、2H)、2.03(s、1H)、1.43(m、2H)、1.35(s、2H)、1.21(s、2H)、1.18(d、2H)、1.14(d、2H)、1.04(d、1H)、1.02(d、1H)、0.78(s、6H)
【0121】
22.メマンチンヘミコハク酸塩の製造
【0122】
メマンチン遊離塩基2.0gを反応部に投入した後、酢酸エチル60mLを投入して溶解させた。コハク酸0.66gを投入した後、60℃に昇温して1時間攪拌し、常温に冷却して3時間攪拌した。生成された固体を濾過し、酢酸エチル10mLで洗浄した後、常温で一晩真空乾燥して表題の化合物2.60g(98%)を得た。
【0123】
1H NMR(400MHz、DMSO-d6):2.21(s、2H)、2.07(s、1H)、1.44(s、1H)、1.28(d、2H)、1.26(s、2H)、1.22(d、2H)、1.08(d、1H)、1.04(d、1H)、0.80(s、6H)
【0124】
23.メマンチンヘミ-L-酒石酸塩の製造
【0125】
メマンチン遊離塩基2.0gを反応部に投入した後、アセトン60mLを投入して溶解させた。L-酒石酸0.84gを投入した後、60℃に昇温して1時間攪拌し、常温に冷却して3時間攪拌した。生成された固体を濾過し、アセトン10mLで洗浄した後、常温で一晩真空乾燥して表題の化合物2.79g(98%)を得た。
【0126】
1H NMR(400MHz、DMSO-d6):3.78(s、1H)、2.10(s、1H)、1.58(s、2H)、1.41(d、2H)、1.36(d、2H)、1.25(s、2H)、1.10(d、1H)、1.07(d、1H)、0.81(s、6H)
【0127】
24.メマンチンテレフタル酸塩の製造
【0128】
メマンチン遊離塩基2.0gを反応部に投入した後、ジメチルスルホキシド20mLを投入して溶解させた。テレフタル酸2.0gを投入した後、常温で3時間攪拌した。反応混合物に水20mLを加えた後、さらに2時間撹拌した。生成された固体を濾過し、少量の水で洗浄した後、常温で一晩真空乾燥して表題の化合物3.64g(94%)を得た。
【0129】
1H NMR(400MHz、DMSO-d6):7.90(s、4H)、2.11(s、1H)、1.64(s、2H)、1.48(d、2H)、1.42(d、2H)、1.26(s、2H)、1.11(d、1H)、1.06(d、1H)、0.81(s、6H)
【0130】
25.メマンチンL-アスパラギン酸塩の製造
【0131】
メマンチン遊離塩基10.0gを反応部に投入した後、メタノール100mLを投入した。L-アスパラギン酸7.4gを投入した後、60℃で1時間攪拌した。常温に冷却した後、一晩撹拌した。生成された固体を濾過し、メタノールで洗浄した後、常温で一晩真空乾燥して表題の化合物9.0g(52%)を得た。
【0132】
1H NMR(600MHz、DMSO-d6):7.96(br s、4H)、3.32(t、1H)、3.15(d、1H)、2.40(ddd、1H)、2.15(ddd、1H)、2.10(s、1H)、1.54(s、2H)、1.37(dd、2H)、1.31(dd、2H)、1.22-1.26(m、4H)、1.12(dd、1H)、1.06(dd、1H)、0.8(s、6H)
【0133】
26.メマンチンヘミパモ酸塩の製造
【0134】
メマンチン塩酸塩5.0gを反応部に投入した後、エタノール50mLを投入した。パモ酸二ナトリウム9.0gをエタノール50mLに溶解して反応部に投入した。常温で1.5時間攪拌した後、5℃に冷却して一晩攪拌した。生成された固体を濾過し、エタノールで洗浄した後、常温で一晩真空乾燥して表題の化合物1.7g(14%)を得た。
【0135】
1H NMR(600MHz、DMSO-d6):8.19(d、1H)、8.15(s、1H)、8.02(s、3H)、7.63(d、1H)、7.10(dt、1H)、6.99(dt、1H)、4.65(s、1H)、2.15(s、1H)、1.64(s、2H)、1.46(dd、2H)、1.40(dd、2H)、1.29(s、4H)、1.15(dd、1H)、1.09(dd、1H)、0.84(s、6H)
【0136】
27.メマンチンシピオン酸塩の製造
【0137】
メマンチン遊離塩基2.0gを反応部に投入した後、アセトニトリル15mLを投入した。シピオン酸1.8mLを投入した後、室温で3時間撹拌した。生成された固体を濾過し、アセトニトリルで洗浄した後、常温で一晩真空乾燥して表題の化合物3.5g(96%)を得た。
【0138】
1H NMR(400MHz、DMSO-d6):2.08(m、3H)、1.67(m、3H)、1.55(m、3H)、1.45(s、3H)、1.40(s、2H)、1.22(m、6H)、1.06(m、4H)、0.79(s、6H)
【0139】
28.メマンチンD-グルクロン酸塩の製造
【0140】
メマンチン遊離塩基2.0gを反応部に投入した後、エタノール60mLを投入した。グルクロン酸2.2gを投入した後、60℃で1時間攪拌した。常温で3時間攪拌した後、生成された固体を濾過し、エタノールで洗浄した後、常温で一晩真空乾燥して表題の化合物3.9g(91%)を得た。
【0141】
1H NMR(600MHz、DMSO-d6):6.04(s、1H)、5.30(bs、1H)、4.37(bs、1H)、3.92(s、1H)、3.76(s、1H)、3.44(s、1H)、2.93(d、1H)、2.79(d、1H)、2.14(s、1H)、1.73(d、1H)、1.63(d、1H)、1.56(d、1H)、1.51(d、1H)、1.46(d、1H)、1.41(d、1H)、1.28(s、2H)、1.14(q、2H)、0.84(s、3H)
【0142】
29.メマンチン馬尿酸塩の製造
【0143】
メマンチン遊離塩基2.0gを反応部に投入した後、アセトニトリル80mLを投入した。馬尿酸2.0gを投入した後、60℃で1時間攪拌した。常温で3時間攪拌した後、生成された固体を濾過し、アセトニトリルで洗浄した後、常温で一晩真空乾燥して表題の化合物3.9g(98%)を得た。
【0144】
1H NMR(400MHz、DMSO-d6):8.04(bs、1H)、7.50(m、1H)、7.44(m、2H)、3.57(d、2H)、2.09(s、1H)、1.54(s、2H)、1.30(d、2H)、1.28(s、2H)、1.24(d、2H)、1.10(d、1H)、1.04(d、1H)、0.81(s、6H)
【0145】
30.メマンチンD-グルコン酸塩の製造
【0146】
メマンチン遊離塩基10.0gを反応部に投入した後、アセトン100mLを投入した。グルコン酸3.4mLを投入した後、60℃で1時間攪拌した。常温で3時間攪拌した後、生成された固体を濾過し、アセトンで洗浄した後、常温で一晩真空乾燥して表題の化合物2.8g(13%)を得た。
【0147】
1H NMR(400MHz、DMSO-d6):3.74(d、1H)、3.58(d、1H)、3.57(d、1H)、3.46(s、1H)、3.40(d、1H)、3.32(m、2H)、2.12(s、1H)、1.57(s、1H)、1.36(d、2H)、1.27(s、2H)、1.24(d、2H)、1.13(d、1H)、1.06(d、1H)、0.83(s、6H)
【0148】
31.メマンチンラウリン酸塩の製造
【0149】
メマンチン遊離塩基1gを反応部に投入した後、n-ヘキサン15mLを投入した。ラウリン酸1.12gを投入した後、常温で1時間攪拌した。反応物を減圧濃縮した後、常温で一晩真空乾燥して表題の化合物2.12g(100%)を得た。
【0150】
1H NMR(600MHz、CD3OD):4.97(s、2H)、2.24(m、1H)、2.15(t、2H)、1.71(s、2H)、1.59(m、2H)、1.52(d、2H)、1.47(d、2H)、1.41(s、4H)、1.24-1.32(m、17H)、1.19(d、1H)、0.89-0.92(m、9H)
【0151】
32.メマンチンパルミチン酸塩の製造
【0152】
メマンチン遊離塩基1gを反応部に投入した後、n-ヘキサン15mLを投入した。パルミチン酸1.43gを投入した後、常温で1時間攪拌した。反応物を減圧濃縮した後、常温で一晩真空乾燥して表題の化合物2.43g(100%)を得た。
【0153】
1H NMR(600MHz、CD3OD):4.96(s、2H)、2.24(m、1H)、2.15(t、2H)、1.71(s、2H)、1.59(m、2H)、1.52(d、2H)、1.46(d、2H)、1.41(s、4H)、1.24-1.32(m、25H)、1.19(d、1H)、0.89-0.92(m、9H)
【0154】
33.メマンチンデカン酸塩の製造
【0155】
メマンチン遊離塩基1gを反応部に投入した後、n-ヘキサン15mLを投入した。デカン酸0.96gを投入した後、常温で1時間攪拌した。反応物を減圧濃縮した後、常温で一晩真空乾燥して表題の化合物1.96g(100%)を得た。
【0156】
1H NMR(600MHz、CD3OD):5.01(s、2H)、2.24(m、1H)、2.15(t、2H)、1.71(s、2H)、1.60(m、2H)、1.53(d、2H)、1.47(d、2H)、1.41(s、4H)、1.23-1.32(m、13H)、1.19(d、1H)、0.89-0.92(m、9H)
【0157】
34.メマンチンミリスチン酸塩の製造
【0158】
メマンチン遊離塩基1gを反応部に投入した後、n-ヘキサン15mLを投入した。ミリスチン酸1.27gを投入した後、常温で1時間攪拌した。反応物を減圧濃縮した後、常温で一晩真空乾燥して表題の化合物2.27g(100%)を得た。
【0159】
1H NMR(600MHz、CD3OD):4.95(s、2H)、2.24(m、1H)、2.15(t、2H)、1.71(s、2H)、1.59(m、2H)、1.52(d、2H)、1.46(d、2H)、1.41(s、4H)、1.24-1.32(m、21H)、1.19(d、1H)、0.89-0.92(m、9H)
【0160】
<実験例1>可溶化剤プロピレングリコールモノカプリレートに対する溶解度の評価
【0161】
前記製造例1の1~34で製造された様々なメマンチン塩の可溶化剤に対する溶解度を評価し、経皮吸収製剤として使用可能なメマンチン塩を選定しようとした。
【0162】
メマンチン塩の可溶化剤に対する溶解度を評価するために、プロピレングリコールモノカプリレートに対して溶解度評価を行った。溶解度評価は、プロピレングリコールモノカプリレート1mLに、製造例1の1~34で製造されたメマンチン塩に対してメマンチン遊離塩基として50mgに相当する量を添加して、24時間25℃の振盪恒温水槽に処理した後、上澄み液を分離して25℃、13000rpmで25分間遠心分離した後、上澄み液を0.45μmのフィルターに通した。この濾液を適正の比率でエタノールに希釈し、容量50mLのフラスコに希釈液5mLまたは標準液(メマンチン塩酸塩1g/L)5mL、0.015M FMOC(fluorenylmethoxycarbonyl chloride)溶液4mL、0.05M pH8.5のホウ酸塩バッファ4mLを加えて混合し、希釈剤(diluent)(0.05M、pH8.5のホウ酸塩バッファ:アセトニトリル=1:1)を入れて50mLに合わせて20分間常温に置いた。
【0163】
この液のメマンチン溶解度を液体クロマトグラフィー法で算出し、その範囲を表1に示した。
【0164】
<液体クロマトグラフィーの条件>
【0165】
カラム:Kromasil C18、4.6×150mm、5μm
【0166】
移動相:pH3.0のリン酸カリウム緩衝液:アセトニトリル=20:80
【0167】
カラム温度:30℃
【0168】
流速:2.0mL/min
【0169】
サンプル注入量:20μL
【0170】
紫外部吸光光度計:265nm
【0171】
下記表1から分かるように、可溶化剤プロピレングリコールモノカプリレートに対する製造例1の1~34で製造されたメマンチン塩の溶解度評価結果、エナント酸塩、乳酸塩、シピオン酸塩、カプリル酸塩、ラウリン酸塩、レブリン酸塩、パルミチン酸塩、吉草酸塩、デカン酸塩およびミリスチン酸塩は、30mg/mL以上の高い可溶化剤溶解度を示すため、経皮吸収製剤は製剤の設計が可能であることを確認した。
【0172】
【0173】
<実験例2>可溶化剤に対する油相皮膚透過度のスクリーニング評価
【0174】
前記実験例1で評価された様々なメマンチン塩の溶解度試験結果に基づいて、メマンチン塩に対して可溶化剤プロピレングリコールモノカプリレートの溶解度が30mg/mL以上のメマンチン塩を選定して、インビトロ(in-vitro)透過度評価を行った。薬物透過実験用拡散装置(Franz diffusion cell)のレセプターチャンバー(Receptor chamber)に水溶液として、10%エタノール及び0.02%アジドナトリウム(sodium azide)が添加されたpH7.4のリン酸緩衝液を入れ、温度を32±0.5℃に維持し、600rpmで撹拌した。pH7.4のリン酸緩衝液を加え、温度を32±0.5℃に維持し、600rpmで撹拌した。薬物透過実験用拡散装置に、ヒト死体皮膚(Human Cadaver Skin)をドナーチャンバー(Donor Chamber)とレセプターチャンバー(Receptor Chamber)との間に固定した。50mg/mL濃度のメマンチン塩-可溶化剤溶液200μlを皮膚上に均一に適用させ、7日透過させた後、メマンチン透過量を液体クロマトグラフィー法で測定し、その結果を下記表2に示す。
【0175】
下記表2から分かるように、それぞれメマンチン塩をプロピレングリコールモノカプリレートに溶解した油相皮膚透過度を評価した結果、レブリン酸塩、乳酸塩及びエナント酸塩は、7日間の皮膚透過量が約3000μg/cm2以上、7日間の皮膚透過速度が18μg/cm2/hr以上であって、遊離塩基に比べて1.4~1.7倍ほど高いのに対し、カプリル酸塩、ラウリン酸塩、パルミチン酸塩、シピオン酸塩、デカン酸塩及びミリスト酸塩は、遊離塩基に比べて低い皮膚透過量を示した。これにより、レブリン酸塩、乳酸塩およびエナント酸塩は経皮吸収製剤の設計時に十分な皮膚透過度を示すため、経皮吸収製剤は製剤の設計が可能であることを確認した。
【0176】
【0177】
<実験例3>可溶化剤の種類によるメマンチンの溶解度評価
【0178】
前記実験例2で選定されたメマンチンエナント酸塩の経皮吸収製剤の設計のために、様々な可溶化剤に対する溶解度評価を行った。また、実験例2で経皮吸収製剤の設計が可能であると評価されたが、先行文献に公知になっているレブリン酸塩を比較実験群として進行した。溶解度評価は、それぞれの可溶化剤1mLにメマンチンエナント酸塩とメマンチンレブリン酸塩を過量添加して24時間25℃の振盪恒温水槽に処理した後、上澄み液を分離して25℃、13000rpmで25分間遠心分離した後、上澄み液を0.45μmのフィルターに通した。この濾液を適正の比率でエタノールに希釈して、容量50mLのフラスコに希釈液5mLまたは標準液(メマンチン塩酸塩1g/L)5mL、0.015M FMOC溶液4mL、0.05M pH8.5のホウ酸塩バッファ4mLを入れて混合し、希釈剤(diluent)(0.05M pH8.5のホウ酸塩バッファ:アセトニトリル=1:1)を加えて50mLに合わせて20分間常温にした。
【0179】
この液のメマンチン溶解度を液体クロマトグラフィー法で測定して
図1に示した。
【0180】
図1から分かるように、溶解度評価の結果、メマンチンエナント酸塩がメマンチンレブリン酸塩に比べて全般的に高い可溶化剤の溶解度を示した。一般に、経皮吸収製剤において、薬物の可溶化剤に対する溶解度が低い場合、結晶析出により薬物が十分に放出されないという問題が発生するおそれがあり、薬物を十分に溶解させるための大量の可溶化剤を使用する場合には、製剤の性状が適さないおそれがある。したがって、可溶化剤に対する溶解度の高いメマンチンエナント酸塩を含有する経皮吸収製剤は、製剤の設計が容易であるという利点があるといえる。
【0181】
さらに、メマンチンエナント酸塩、遊離塩基および他の塩の性質による経皮透過性を比較するために、様々な溶解度を有する可溶化剤8種を選定し、下記実施例および比較例のメマンチンおよびその塩含有経皮吸収製剤を製造した。
【0182】
<実施例1>本発明によるメマンチン経皮吸収製剤の製造
【0183】
本発明のメマンチンエナント酸塩を含有する経皮吸収製剤を次のように製造して実施例1とした。下記表3に記載の組成でスチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体17.6g、オクチルドデシルミリステート7g及びプロピレングリコールモノカプリレート6.5gを酢酸エチル32gに溶かした後、メマンチンエナント酸塩3.45gを加えて均一に溶かした。得られた溶液を、シリコーンコーティングされたPETフィルムに単位面積当たりの薬物含有量がメマンチンとして3.0mg/cm2となるように塗布して、80℃のオーブンで30分間乾燥させた後、支持フィルム(Backing film)とラミネートして経皮吸収製剤を製造した。
【0184】
【0185】
<実施例2~8>可溶化剤種類別メマンチン経皮吸収製剤の製造
【0186】
前記実験例3で記述したように、溶解度の結果に基づいて、様々なメマンチン溶解度を有する8種の可溶化剤を選定した。前記実施例1とは可溶化剤のみを異ならせた実施例2~8を、下記表4に記載の組成で実施例1と同様の方法によってメマンチン含有経皮吸収製剤を製造した。
【0187】
【0188】
<実施例9~11>本発明の可溶化剤の減量及び粘着剤の変更によるメマンチン経皮吸収製剤の製造
【0189】
本発明の実施例1とは可溶化剤の量を異ならせた実施例9、実施例3とは可溶化剤の量を異ならせた実施例10、及び実施例3とは粘着剤を変えた実施例11を、下記表5に記載の組成で前記実施例1と同様の方法によってメマンチン含有経皮吸収製剤を製造した。
【0190】
【0191】
<実施例12>本発明の可溶化剤及び粘着剤の変更によるメマンチン経皮吸収製剤の製造
【0192】
米国公開特許公報第2019-0183810号に記載された例として、メマンチンレブリン酸塩に代えてメマンチンエナント酸塩を添加し、下記表6のような成分と含有量で製造した。
【0193】
メマンチンエナント酸塩5.61g、プロピレングリコール3gをトルエン26.9g及びイソプロピルアルコール0.6gに溶解させ、ヒュームドシリカ1.75gを加えて分散させた後、ポリイソブチレン24.8g(固体として14.9g)を添加及び攪拌して薬物混合液を製造した。得られた溶液を、シリコーンコーティングされたPETフィルムに塗布して60℃のオーブンで30分間乾燥させた後、支持フィルム(Backing film)とラミネートして薬物層を製造した。同様の方法で粘着層混合液を製造した後、シリコーンコーティングされたPETフィルムに塗布して乾燥させた後、粘着層上にPETフィルムを除去した薬物層を積層して実施例12を製造した。
【0194】
【0195】
<比較例1~4>メマンチン遊離塩基及び塩変更した経皮吸収製剤の製造
【0196】
メマンチンエナント酸塩の特徴を他の塩と比較するために、メマンチン遊離塩基、市販品に用いられているメマンチン塩酸塩、及び実験例2における経皮吸収製剤は、製剤の設計が可能であると評価されたメマンチンレブリン酸塩、メマンチン乳酸塩を下記表7に記載の組成に実施例1と同様の方法で経皮吸収製剤を製造してそれぞれ比較例1~4とした。さらに比較例1と同様の組成にし、有効成分の量だけ異ならせた(2mg/cm2)経皮吸収製剤を製造して比較例1-1とした。
【0197】
【0198】
<比較例5>メマンチン遊離塩基およびレブリン酸含有経皮吸収製剤の製造
【0199】
米国公開特許公報第2019-0183810号に記載された例として、メマンチン遊離塩基にレブリン酸を添加して塩を形成したパッチを下記表8の成分と含有量で製造した。具体的に、比較例5は、次の通りに製造した。メマンチン遊離塩基3.25g、レブリン酸2.1gおよびプロピレングリコール3gをトルエン26.9gおよびイソプロピルアルコール0.6gに溶解させ、ヒュームドシリカ1.75gを加えて分散させた後、ポリイソブチレン24.8g(固体として14.9)を添加および撹拌して薬物混合液を製造した。得られた溶液をシリコーンコーティングされたPETフィルムに塗布して60℃のオーブンで30分間乾燥させた後、支持フィルム(Backing film)とラミネートして薬物層を製造した。同様の方法で粘着層混合液を製造し、シリコーンコーティングされたPETフィルムに塗布して乾燥させた後、粘着層上に、PETフィルムを除去した薬物層を積層して比較例5を製造した。
【0200】
【0201】
<比較例6>メマンチン塩酸および重炭酸ナトリウムを含有した二重層インサイチュ(in-situ)経皮吸収製剤の製造
【0202】
韓国公開特許公報第2019-0032551号に記載された例として、メマンチン塩酸塩インサイチュ(In-situ)経皮吸収製剤を下記表9のような成分と含有量で製造して比較例6とした。具体的には、オクチルドデカノール3g及びグリセロール3gを酢酸エチル44g及びイソプロピルアルコール2.79gに溶解させ、メマンチン塩酸塩7.5g、重炭酸ナトリウム2.9gを加えて攪拌した後、Kollidone CL-M4.5gを入れて分散させ、Durotak 87-4287(固体として9.1g)23.3gを添加および撹拌して薬物混合液を製造した。得られた溶液を、シリコーンコーティングされたPETフィルムに塗布して60℃のオーブンで30分間乾燥させた後、支持フィルム(Backing film)とラミネートして薬物層を製造した。同様の方法で粘着層混合液を製造した後、シリコーンコーティングされたPETフィルムに塗布して乾燥させた後、粘着層上にPETフィルムを除去した薬物層を積層して比較例6を製造した。
【0203】
【0204】
<比較例7>放出調節剤の含まれたメマンチン遊離塩基含有経皮吸収製剤の製造
【0205】
韓国登録特許公報第10-1964295号に記載された例として、放出調節剤の含まれたメマンチン遊離塩基含有パッチを下記表10のような成分と含有量で製造した。具体的に、比較例7は次のとおりに製造した。ジブチルヒドロキシトルエン0.02g、PVP90F1g、及びステアリン酸1gをエタノール2gに溶解させ、メマンチン遊離塩基2g、アクリレートポリマー(87-9301)43.78g(固体として15.98gに相当する混合液の量)を添加して粘着型アクリレート薬物混合液を製造した。得られた溶液を、シリコーンコーティングされたPETフィルムに塗布して室温で10分間乾燥させ、70℃のオーブンで20分間乾燥させた後、支持フィルム(Backing film)とラミネートして薬物層を製造した。同様の方法で放出調節層混合液を製造し、シリコーンコーティングされたPETフィルムに塗布して乾燥させた後、放出調節層上にPETフィルムを除去した薬物層を積層して比較例7を製造した。
【0206】
【0207】
<比較例8>メマンチン塩酸塩とナトリウムエタノラートを含有した単層インサイチュ(InーSitu)経皮吸収製剤の製造
【0208】
米国特許公報第8,882,729号に記載された例として、メマンチン塩酸インサイチュ(In-situ)経皮吸収製剤を下記表11のような成分と含有量で製造して比較例8とした。具体的には、メマンチン塩酸塩2gを酢酸エチル0.66gに懸濁させ、Durotak 87-2516(固体として16.6g)41gを添加及び撹拌した後、ナトリウムエタノラート1.4gを入れて撹拌することにより薬物混合液を製造した。得られた溶液を、シリコーンコーティングされたPETフィルムに塗布して80℃のオーブンで30分間乾燥させた後、支持フィルム(Backing film)とラミネートして比較例8を製造した。
【0209】
【0210】
<比較例9>メマンチンカプリル酸塩およびアクリル系粘着剤経皮吸収製剤の製造
【0211】
WO2014/174564号に記載された例として、メマンチンカプリル酸塩を含有する経皮吸収製剤を下記表12のような成分と含有量で製造して比較例9とした。具体的には、NaOH0.46gをメタノール7.71mLに溶解させ、メマンチン塩酸塩2.5gを加えて混合した後、カプリル酸2.00gを入れて混合し、トルエン(Toluene)17.5gおよびDurotak 87-4287(固体として20.04g)51.39g添加及び攪拌した混合液を、シリコーンコーティングされたPETフィルムに塗布して80℃のオーブンで30分間乾燥させた後、支持フィルム(Backing film)とラミネートして比較例9を製造した。
【0212】
【0213】
<比較例10~15>可溶化剤ジイソプロピルセバケートおよびジイソプロピルアジペートに対するメマンチン遊離塩基および塩変更した経皮吸収製剤の製造
【0214】
メマンチンエナント酸塩の特徴を他の塩と比較するために、本発明の実施例2とは有効成分の塩を異ならせた比較例10~12、実施例3とは有効成分の塩を異ならせた比較例13~15を、下記表13に記載の組成で実施例1と同様の方法によって経皮吸収製剤を製造した。
【0215】
【0216】
<比較例16~21>可溶化剤イソプロピルパルミテートおよびイソプロピルミリステートに対するメマンチン遊離塩基および塩変更した経皮吸収製剤の製造
【0217】
メマンチンエナント酸塩の特徴を他の塩と比較するために、本発明の実施例4とは有効成分の塩を異ならせた比較例16~18、実施例5とは有効成分の塩を異ならせた比較例19~21を、下記表14に記載の組成で実施例1と同様の方法によって経皮吸収製剤を製造した。
【0218】
【0219】
<比較例22~27>可溶化剤オレオイルマクロゴール-6-グリセリドおよびイソプロピルイソステアレートに対するメマンチン遊離塩基および塩変更した経皮吸収製剤の製造
【0220】
メマンチンエナント酸塩の特徴を他の塩と比較するために、本発明の実施例6とは有効成分の塩を異ならせた比較例22~24、実施例7とは有効成分の塩を異ならせた比較例25~27を、下記表15に記載の組成で実施例1と同様の方法によって経皮吸収製剤を製造した。
【0221】
【0222】
<比較例28~30>可溶化剤オレイルアルコールに対するメマンチン遊離塩基および塩変更した経皮吸収製剤の製造
【0223】
メマンチンエナント酸塩の特徴を他の塩と比較するために、本発明の実施例8とは有効成分の塩を異ならせた比較例28~30を、下記表16に記載の組成で実施例1と同様の方法によって経皮吸収製剤を製造した。
【0224】
【0225】
<実験例5>メマンチン経皮吸収製剤の皮膚透過度評価
【0226】
実施例1~10および比較例1~30で製造されたそれぞれの経皮吸収製剤のインビトロ(in-vitro)透過度評価を、薬物透過実験用拡散装置(Franz diffusion cell)を用いて行った。レセプターチャンバー(Receptor chamber)に水溶液として、10%エタノール及び0.02%アジドナトリウム(sodium azide)が添加されたpH7.4のリン酸緩衝液を入れ、温度を32±0.5℃に維持し、600rpmで撹拌した。薬物透過実験用拡散装置に、ヒト死体皮膚をドナーチャンバーとレセプターチャンバーとの間に固定した。前記実施例1~10および比較例1~30で製造されたそれぞれの経皮吸収製剤をドナーセルのサイズに合わせて切断して皮膚上に適用させ、時間経過に伴うメマンチン透過量を液体クロマトグラフィー法で測定した。実施例1~10および比較例1~30で製造されたパッチの時間による薬物放出様相を
図2~
図10に示した。
【0227】
1.メマンチン塩の種類による経皮吸収製剤の皮膚透過度比較評価
【0228】
図2に示すように、メマンチン塩酸塩を含有する比較例2は、7日間の皮膚透過度が199.3μg/cm
2であってメマンチンがほとんど透過されず、メマンチンレブリン酸塩を含有する比較例3とメマンチン乳酸塩を含有する比較例4は、比較例2よりは皮膚透過度が高いが、7日間の皮膚透過度がそれぞれ1217.9μg/cm
2、711.1μg/cm
2であって含有量の半分未満と確認されており、先行技術の例として記載された比較例5~9と比較しても、本発明の実施例1は少なくとも1.56倍の皮膚透過度を示して依然として高い結果を示した。
【0229】
一方、メマンチンエナント酸塩を含有する実施例1は、7日間の皮膚透過度が1972.6μg/cm2であって比較例2~4に比べて1.6倍~9.9倍を示すため、皮膚透過度が著しく高いことが分かった。
【0230】
また、メマンチン遊離塩基を含有する比較例1は、皮膚透過度が1814.8μg/cm2を示したが、短時間で急激な皮膚透過を示して極度の皮膚刺激を引き起こすおそれがあるという問題がある。これに対し、メマンチンエナント酸塩を含有する実施例1は、長時間一定の皮膚透過放出パターンを示した。
【0231】
したがって、本発明のメマンチンエナント酸塩を用いた経皮吸収製剤は、徐放出剤形の設計が容易であるだけでなく、ヒトへの皮膚刺激を最小限に抑えることができるという利点があることが分かった。
【0232】
2.可溶化剤溶解度及びメマンチン塩による経皮吸収製剤の皮膚透過度評価
【0233】
前記実験例3の溶解度試験結果で述べたように、可溶化剤の溶解度を問わず、メマンチンエナント酸塩含有経皮吸収製剤が高い皮膚透過度および一定の放出パターンを示すことを確認するために、様々な溶解度を有する可溶化剤を添加して製造した実施例および比較例の皮膚透過度を評価した。
【0234】
可溶化剤は、ジイソプロピルセバケート、ジイソプロピルアジペート、イソプロピルパルミテート、イソプロピルミリステート、イソプロピルイソステアレート、オレイルアルコールであって、溶解度50mg/g以上レベルの可溶化剤を選定した。
【0235】
図3に示すように、可溶化剤としてジイソプロピルセバケートを添加した実施例2は、可溶化剤としてプロピレングリコールモノカプリレートを添加した実施例1と同等の皮膚透過度結果を示しており、比較例11(メマンチン塩酸塩含有)および比較例12(メマンチンレブリン酸塩含有)に比べて高い皮膚透過度を維持した。また、実施例2は、比較例10(メマンチン遊離塩基含有)に比べて長時間一定の皮膚透過放出パターンを示したが、これは
図2の結果と同じ傾向であることが分かった。
【0236】
図4に示すように、可溶化剤としてジイソプロピルアジペートを添加した実施例3は、実施例1と同等の皮膚透過度結果を示しており、比較例14(メマンチン塩酸塩含有)及び比較例15(メマンチンレブリン酸塩含有)に比べて高い皮膚透過度を維持した。また、実施例3は、比較例13(メマンチン遊離塩基含有)に比べて長時間一定の皮膚透過放出パターンを示した。
【0237】
図5に示すように、可溶化剤としてイソプロピルパルミテートを添加した実施例4は、実施例1と同等の皮膚透過度結果を示しており、比較例17(メマンチン塩酸塩含有)及び比較例18(メマンチンレブリン酸塩含有)に比べて高い皮膚透過度を維持した。また、実施例4は、比較例16(メマンチン遊離塩基含有)に比べて長時間一定の皮膚透過放出パターンを示した。
【0238】
図6に示すように、可溶化剤としてイソプロピルミリステートを添加した実施例5は、実施例1と同等の皮膚透過度結果を示しており、比較例20(メマンチン塩酸塩含有)及び比較例21(メマンチンレブリン酸塩含有)に比べて高い皮膚透過度を維持した。また、実施例5は、比較例19(メマンチン遊離塩基含有)に比べて長時間一定の皮膚透過放出パターンを示した。
【0239】
図7に示すように、可溶化剤としてオレオイルマクロゴール-6-グリセリドを添加した実施例6は、実施例1と同等の皮膚透過度結果を示しており、比較例23(メマンチン塩酸塩含有)及び比較例24(メマンチンレブリン酸塩含有)に比べて高い皮膚透過度を維持した。また、実施例6は、比較例22(メマンチン遊離塩基含有)に比べて長時間一定の皮膚透過放出パターンを示した。
【0240】
図8に示すように、可溶化剤としてイソプロピルイソステアレートを添加した実施例7は、実施例1と同等の皮膚透過度結果を示しており、比較例26(メマンチン塩酸塩含有)及び比較例27(メマンチンレブリン酸塩含有)に比べて高い皮膚透過度を維持した。また、実施例7は、比較例25(メマンチン遊離塩基含有)に比べて長時間一定の皮膚透過放出パターンを示した。
【0241】
図9に示すように、可溶化剤としてオレイルアルコールを添加した実施例8は、実施例1と同等の皮膚透過度結果を示しており、比較例29(メマンチン塩酸塩含有)及び比較例30(メマンチンレブリン酸塩含有)に比べて高い皮膚透過度を維持した。また、実施例8は、比較例28(メマンチン遊離塩基含有)に比べて長時間一定の皮膚透過放出パターンを示した。
【0242】
3.メマンチンエナント酸経皮吸収製剤の可溶化剤の減量及び粘着剤の変更による皮膚透過度評価
【0243】
図10に示すように、実施例1及び3の可溶化剤であるプロピレングリコールモノカプリレートとジイソプロピルアジペートを減量して製造した実施例9及び10は、可溶化剤の減量に関係なく、実施例1及び3と同等の皮膚透過度を示した。実施例3の粘着剤の組成をアクリル系粘着剤に変更した実施例11も、粘着剤の変更に関係なく、実施例1及び3と同等の皮膚透過度を示した。また、先行技術の例に記載した組成と同様の組成にし、有効成分のみメマンチンエナント酸塩に変更した実施例12は、ポリイソブチレン系粘着剤を用いたにもかかわらず、実施例1及び3と同等の皮膚透過度結果を示しており、同じ組成にメマンチンレブリン酸塩を含有した比較例5に比べて1.85倍の高い皮膚透過度結果を示している。これにより、可溶化剤の減量および様々な粘着剤の変更時にも、メマンチンエナント酸塩を含有した経皮吸収製剤は依然として皮膚透過度を示すことを確認した。
【0244】
<実験例6>薬物結晶析出の研究
【0245】
実施例1~10及び比較例2によって製造された経皮吸収製剤の薬物結晶析出有無を評価した。結晶析出様相は、実施例1~10によって製造された経皮吸収製剤を25℃60%RHで1ヶ月間保管した後、結晶の生成を顕微鏡で観察した。その結果は下記表17の通りである。
【0246】
【0247】
表17に示すように、実施例1~8の可溶化剤種類別結晶生成を確認した結果、結晶析出様相がないことを確認したのに対し、メマンチン塩酸塩を含有した比較例2は結晶析出が確認された。また、メマンチンエナント酸塩と実施例9および実施例10のプロピレングリコールモノカプリレートおよびジイソプロピルアジペートの可溶化剤を1:1で添加しても、結晶析出がないことを確認した。
【0248】
<実験例7>皮膚刺激性の評価
【0249】
本発明によるメマンチン経皮吸収製剤の皮膚刺激性の程度を評価した。上記評価のために、本発明のメマンチンエナント酸塩を含有した実施例9および実施例10と同一用量のメマンチン遊離塩基を含有した比較例1、メマンチン遊離塩基の用量を70%のレベルに減少した比較例1-1、遊離塩基換算の際に、同用量のメマンチンレブリン酸塩を含有した比較例3と比較例5、及びメマンチン塩酸を含有した比較例6を比較評価した。
【0250】
1.ウサギにおける皮膚刺激性の評価
【0251】
試験方法は、白ウサギ5匹を用いて、きれいに除毛した後、実施例9~10、比較例1-1、比較例3、比較例5及び比較例6を5cm
2切断して付着7日後に脱着した。評価は、経皮吸収製剤付着部位の紅斑と浮腫形成の有無を、パッチ脱着直後及び脱着後48時間に目視で確認された皮膚反応に対して表18に記載の方法で評点を付けて、表19による皮膚刺激指数(PII、primary irritation index)を評価し、その結果を表20および
図11に示した。
【0252】
2.無毛マウスにおける皮膚刺激性の評価
【0253】
試験方法は、無毛マウス4匹を用いて、きれいに除毛した後、実施例9および10、比較例1、比較例3、比較例5及び比較例6を1cm2切断して付着7日後に脱着した。評価は、経皮吸収製剤付着部位の紅斑と浮腫形成の有無を、パッチ脱着直後及び脱着後48時間に目視で確認された皮膚反応に対して表18に記載の方法で評点を付けて、表19による皮膚刺激指数(PII、primary irritation index)を評価し、その結果を表20に示した。
【0254】
【0255】
【0256】
【0257】
前記表20及び
図11に示すように、ウサギにおける皮膚刺激性評価結果、本発明のメマンチンエナント酸塩を含有した実施例9及び実施例10は、皮膚刺激指数がそれぞれ0.6及び1.5であって、弱い刺激物質であることが判明し、それぞれの残存量は19.1%および1.9%と確認され、メマンチンの十分な皮膚吸収を示した。これに対し、メマンチン遊離塩基を含有した比較例1-1は、皮膚刺激指数が2.1であって、メマンチン遊離塩基の用量を減少したにもかかわらず、明らかな紅斑と浮腫によって中等度刺激物質であることが判明し、残存量は残っていない。また、メマンチンレブリン酸塩を含有した比較例3と比較例5、及びメマンチン塩酸塩を含有した比較例6は、皮膚刺激指数が1以下であり、非刺激或いは弱い刺激物質であることが判明し、残存量が31.8%~72.9%レベルと確認されて、メマンチンエナント酸塩に比べて皮膚吸収が低いと確認された。
【0258】
前記表20に示すように、無毛マウスにおける皮膚刺激性の評価結果、本発明のメマンチンエナント酸塩を含有した実施例9及び実施例10は、皮膚刺激指数がそれぞれ0.75及び0.38であって、弱い刺激或いは非刺激物質であることが判明し、それぞれの残存量は15.2%および17.4%と確認されて、メマンチンの十分な皮膚吸収を示した。これに対し、メマンチン遊離塩基を含有した比較例1は、皮膚刺激指数が5.25であり、重度の紅斑と痂皮及び重度の浮腫により強い刺激物質であることが判明し、残存量は1.5%未満と確認された。また、メマンチンレブリン酸塩を含有した比較例3と比較例5、およびメマンチン塩酸塩を含有した比較例6は、皮膚刺激指数が1以下であり、非刺激或いは弱い刺激物質であることが判明し、残存量が66.5%~78.9%のレベルであって、メマンチンの皮膚吸収が低いと確認された。
【0259】
これにより、本発明のメマンチンエナント酸塩を含有した経皮吸収製剤は、メマンチンレブリン酸塩およびメマンチン塩酸塩を含有した経皮吸収製剤に比べて十分な皮膚吸収を示しながら、メマンチン遊離塩基を含有した経皮吸収製剤に比べて皮膚刺激性が著しく低いことが分かる。
【0260】
<実験例8>薬物動態学的評価
【0261】
本発明によるメマンチン経皮吸収製剤の薬物動態学的評価を行った。前記評価のために、本発明のメマンチンエナント酸塩を含有した実施例10と、メマンチンレブリン酸塩を含有した比較例3と、経口投与剤として参考例1(メマンチン塩酸塩10mgを含有している経口用製剤であるEbixa(登録商標)、遊離塩基8.3mg含有)を比較評価した。
【0262】
1.ウサギにおける薬物動態学的評価
【0263】
実施例10は、経皮吸収製剤を、遊離塩基をそれぞれ106mgと160mgの用量で含有したサイズに成形し、比較例3は、メマンチンレブリン酸塩を除いては同じ組成を有する経皮吸収製剤であって、遊離塩基を140mgの用量で含有したサイズに成形してウサギに付着させた後、7日後にパッチを脱着し、パッチ付着後0、4、8、24、30、48、72、96、144、168時間に採血して血漿中のメマンチンの量を測定した。参考例1は、0.5%カルボキシメチルセルロース(carboxymethylcellulose、CMC)溶液にEbixa(登録商標)1錠を2mLで懸濁させた後、懸濁液2mLを経口投与し、投与後0、0.5、1、2、4、6、24時間に採血して血漿中のメマンチン量を測定した。
【0264】
【0265】
前記表21から分かるように、ウサギにおいて本発明のメマンチンエナント酸塩を含有した実施例10と、メマンチンレブリン酸塩を含有した比較例3の7日間パッチ付着及び参考例1のEbixa(登録商標)錠10mg経口投与との薬物動態学的比較の際に、実施例10の106mgパッチ付着の場合には、AUCが10518.1ng*hr/mLであり、比較例3の140mgパッチ付着の場合には、AUCが3381.2ng*hr/mLであり、参考例1の経口投与1日用量のAUCは、148.8ng*hr/mLと確認された。これは、同じ薬物投与用量に換算して計算したとき、参考例1に比べて、実施例10はAUCが約550%向上し、比較例3は130%向上して、本発明によるメマンチンエナント酸塩を含有した経皮吸収製剤は、メマンチン塩酸塩を含有した経口投与およびメマンチンレブリン酸塩を含有した比較例3に比べて著しく高い薬物血中濃度を達成することを確認した。また、実施例10の投与用量に応じてパッチのサイズを成形して評価した結果、経皮吸収製剤の面積を増量させることにより血中濃度が上昇することが分かり、パッチのサイズ調整に応じて経皮吸収製剤の用量を調節することが容易であることが分かる。
【0266】
2.無毛マウスにおける薬物動態学的評価
【0267】
実施例10は、経皮吸収製剤を、遊離塩基をそれぞれ10mg、20mg及び30mgの用量で含有したサイズに成形し、比較例3は、遊離塩基を9mgの用量で含有したサイズに成形し、上記の1.ウサギにおける薬物動態学的評価と同様の方法で、参考例1を投与した後、投与後0、0.5、1、2、4、6、24時間に採血して血漿中のメマンチン量を測定した。
【0268】
【0269】
前記表22から分かるように、無毛マウスにおいて本発明のメマンチンエナント酸塩を含有した実施例10とメマンチンレブリン酸塩を含有した比較例3の7日間パッチ付着、及び参考例1Ebixa(登録商標)錠10mg経口投与との薬物動態学的比較の際に、実施例10の10mgパッチ付着の場合には、AUCが6374.7ng*hr/mLであり、比較例3の9mgパッチ付着の場合には、AUCが3999.0ng*hr/mLであり、参考例1の経口投与のAUCは、2862.2ng*hr/mLと確認された。これは、同じ薬物投与用量に換算して計算したとき、参考例1に比べて、実施例10は約185%のAUCが向上し、比較例3は130%のAUCが向上して、本発明によるメマンチンエナント酸塩を含有した経皮吸収製剤は、メマンチン塩酸塩を含有した経口投与、およびメマンチンレブリン酸塩を含有した比較例3に比べて高い薬物血中濃度を達成することを確認した。
【0270】
【0271】
また、前記表23と
図15から分かるように、実施例10のパッチ面積を、10mg、20mg及び30mgを含有したサイズに増加させて成形して評価した結果、経皮吸収製剤の面積を増量させることにより、血中最高濃度および血中薬物濃度-時間曲線下面積が比例的に上昇することが分かり、パッチサイズの調節に応じて経皮吸収製剤の用量を調節することが容易であることが分かる。
【0272】
前記結果をまとめた本発明は、メマンチンエナント酸塩を含有した経皮吸収製剤が、メマンチンの他の塩を含有した経皮吸収製剤に比べて結晶析出がなく、高い皮膚透過度を示す特徴がある。これは、血中曝露が用量比例的な特性を示しており、これは、臨床的に使用可能なパッチ面積を容易に調節するだけでなく、面積を減少させるという利点がある。同時に放出速度を調節して皮膚の吸収速度を制御することにより、薬物によって現れる皮膚刺激を最小限に抑えることができるという利点がある。さらに、投与後のパッチ内の薬物の残存量が投与前の薬物の含有量に比べて約20重量%以下であることを確認した。これは、残存薬物の損失を最小限に抑えて経済的利点を実現するとともに、薬物の過剰投与を防ぐことができるという利点がある。
【国際調査報告】