(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-03
(54)【発明の名称】昆虫を閉じ込めるための箱形空間を定める、昆虫卵の大規模生産のためのケージ
(51)【国際特許分類】
A01K 67/033 20060101AFI20240827BHJP
【FI】
A01K67/033 502
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024514522
(86)(22)【出願日】2022-08-22
(85)【翻訳文提出日】2024-04-26
(86)【国際出願番号】 FR2022051596
(87)【国際公開番号】W WO2023031536
(87)【国際公開日】2023-03-09
(32)【優先日】2021-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522455227
【氏名又は名称】イノヴァフィード
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】オグリ,バスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ドサン,グザヴィエ
(72)【発明者】
【氏名】クラフ,ギュスタヴォ
(72)【発明者】
【氏名】シュステル,ゲラルディーヌ
(72)【発明者】
【氏名】メルニエ,エマニュエル
(72)【発明者】
【氏名】ヴィダル,オリビエ
(57)【要約】
昆虫卵の工業的生産のためのケージであって、天井、および4つの側壁によって画定される囲いから構成されており、前記ケージは、昆虫を閉じ込めるための箱形空間を定め、前記囲いは、蛹の少なくとも1つの容器を収容するためのエリアと、前記ケージ内に閉じ込められた昆虫が産んだ卵を収集するためのコレクタを取り付けて抜き取るための手段と、を含む、ケージにおいて、前記囲いの前壁は、蛹の少なくとも1つの容器を収容するための前記エリアにアクセスするための、第1の扉によって閉じることができる少なくとも1つの第1の開口部と、オペレータが前記ケージの内部にアクセスできるようにするための第2の扉と、卵コレクタを挿入および除去するための追加の閉鎖手段がはられた少なくとも1つの開口部と、を有し、前記ケージは、暗い内部空間を有し、当該収容エリアは、一方では前記第1の扉と連通しており、他方では前記囲いの残りの部分と連通していることを特徴とする、ケージ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
昆虫卵の工業的生産のためのケージであって、
天井(60)、および前壁(10)を含む4つの側壁(10、20、30、40)によって画定される囲いから構成されており、
前記ケージは、昆虫を閉じ込めるための箱形空間を定め、
前記囲いは、
蛹の少なくとも1つの容器(16)を収容するためのエリア(14)と、
前記ケージ(100)内に閉じ込められた昆虫が産んだ卵を収集するためのコレクタを取り付けて抜き取るための手段と、
を含む、ケージにおいて、
前記囲いの前壁(10)は、
蛹の少なくとも1つの容器(16)を収容するための前記エリア(14)にアクセスするための、第1の扉(12、13)によって閉じることができる少なくとも1つの第1の開口部(11)と、
オペレータが前記ケージの内部にアクセスできるようにするための第2の扉と、
卵コレクタを挿入および除去するための追加の閉鎖手段がはられた少なくとも1つの開口部(17、18)と、
を有し、
前記ケージは、暗い内部空間(14)を構成する収容エリア(14)を有し、
当該暗い内部空間(14)は、一方では前記第1の扉(12、13)と連通しており、他方では前記囲いの残りの部分と連通している
ことを特徴とする、ケージ。
【請求項2】
前記暗いエリア(14)は、前記ケージ(10)の明るいエリアの方を向いた少なくとも1つの側部出口(15)を有することを特徴とする、請求項1に記載のケージ。
【請求項3】
複数の前記壁のうちの1つの壁(10)は、産卵手段の断面に適合された断面を有する少なくとも1つの開口部(19)を有することを特徴とする、請求項1に記載のケージ。
【請求項4】
前記ケージの平坦な二表面間の接合部は、丸みを帯びた形状を有することを特徴とする、請求項1に記載のケージ。
【請求項5】
昆虫卵の工業的生産のためのアセンブリにおいて、
請求項1~4の少なくとも1項に記載のケージを複数並置したものから構成されることを特徴とする、アセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔発明の分野〕
本発明は、例えば動物またはヒトの食物を幼虫から生産するための、節足動物、特に昆虫、特にアメリカミズアブ(black soldier fly)の大規模飼育の分野に関する。より詳細には、本発明は、蛹の導入から始まり卵の収集で終わる、昆虫の生殖および交配の工程のための装置に関する。卵は次いで、孵化工程のための別の装置へ移される。
【0002】
この生殖および交配の工程は、一般に、ケージの内部で行われる。当該ケージでは、包囲された空間内に閉じ込められたままの状態で十分な生活空間が昆虫に与えられている。最適な条件が保証されるように、気候(環境)条件がこれらのケージ内で制御される。
【0003】
〔従来技術〕
特許FR3027488には、少なくとも1つの閉鎖チャンバと、当該チャンバの環境条件を制御するためのシステムと、を備えることを特徴とする昆虫飼育ユニットが開示されている。前記閉鎖チャンバは、昆虫を収容するための少なくとも1つの上部区画をさらに備える。前記上部区画は、概してエサを与えるために使用される、少なくとも1つのエアロックを備える。また、前記閉鎖チャンバは、前記上部区画に収容された昆虫卵を受け入れるための少なくとも1つの下部区画を備える。前記閉鎖チャンバは、前記上部区画と前記下部区画とを分離するための少なくとも1つの分離要素をさらに備える。前記分離要素は、細孔を備える。前記上部区画と前記下部区画とは、互いに独立に、前記チャンバからの取り外しおよび分離が可能である。
【0004】
米国特許第10,667,502号も知られている。当該米国特許には、複数の温室本体を含む、成虫のアメリカミズアブのための大規模の繁殖連棟温室が開示されている。各温室本体は、蛹室と、繁殖産卵室と、を備える。前記蛹室と前記繁殖産卵室との間には、隔壁が設けられている。前記隔壁には、前記蛹室と前記繁殖産卵室とを連通する扉穴が設けられている。前記蛹室は、不透明である。前記温室本体は、前記繁殖産卵室に太陽光を導入する導光装置をさらに備える。
【0005】
〔従来技術の欠点〕
これらのソリューションは、十分に満足のゆくものではない。蛹を収容する容器の導入、卵の除去、およびメンテナンス作業が、壁を有する空間内で実施され、その壁は、アブ(双翅目昆虫:fly)が閉じ込められた空間からアブが逃げ出すことを防ぐ必要があるからである。より一般的には、背景技術のソリューションには、特に卵コレクタの導入または抜き取りの間に、アブがケージから逃げ出してしまう過剰なリスクが残る。
【0006】
さらに、背景技術のソリューションは、比較的複雑な幾何学的形状を有する。隅部にはアブが捕捉され得、十分なクリーニングが困難となり得る。
【0007】
さらに、背景技術のソリューションは、複数の隅部を有する複雑な幾何学的形状のゆえに、コレクタの外側に卵が産み付けられるリスクを増大させる欠点を有する。実際、アブには、隅部に卵を産み付ける傾向があることが知られている。
【0008】
最後に、背景技術のソリューションは、アブが存在しない場合のクリーニングまたはメンテナンスの処置にとって最適なものではない。
【0009】
〔本発明が提供するソリューション〕
これらの欠点に対処するために、本発明は、その最も一般的な意味において、請求項1に記載の昆虫卵の工業的生産のためのケージに関する。
【0010】
前記暗いエリアは、前記ケージの明るいエリアの方を向いた少なくとも1つの側部出口を有することが有利である。
【0011】
一変形形態によれば、複数の前記壁のうちの1つの壁は、産卵手段の断面に適合された断面を有する少なくとも1つの開口部を有する。
【0012】
前記ケージの平坦な二表面間の接合部は、丸みを帯びた形状を有することが好ましい。鋭い角部および隅部を回避することによって、コレクタの外側に卵が産み付けられる割合が減少する。これらの接合部は主に、複数の壁の組立てに関連する。また、それらは任意選択的に、複数の前記壁への付属物の接続にも関連する。
【0013】
また、本発明は、上記要素の少なくとも1つによる複数のケージを並置したものに関する。
【0014】
〔非限定的な例示的一実施形態の詳細な説明〕
その他の特徴および利点は、添付の図面を参照した、単なる例示としてのみ与えられた本発明の以下の説明から、明らかになるだろう:
-
図1は、本発明によるケージを備える設備の斜視図を示す、
-
図2は、本発明によるケージのための卵コレクタの挿入および除去のための追加の封止閉鎖手段がはられた開口部の斜視図を示す。
【0015】
(一般原理)
本発明は、昆虫を生産および変態させるための工業システムの文脈において、卵の生産に専用される昆虫飼育設備に関する。通常、かかる設備は、産卵チャンバ内で幼虫期を終える昆虫の蛹を受け入れるように構成され、かつ、羽化する成虫が交配して、概して産卵場所のばらつきを避けるための産卵手段と結びついたコレクタ上に卵を産み付けることを可能にするように構成された当該産卵チャンバを備える。コレクタ(例えば、畝部付きパネル)は、卵のクラスタ化および収集ならびに輸送が容易となるよう、産卵エリアを構成する。これらのコレクタは、次いで、卵の成熟および保管のための別の設備内へ移動される。多くの場合、成虫は、昆虫間の繁殖を促す少なくとも1つの波長の光を用いて照明が制御された状況に置かれる。波長のほかに、照明強度もまた、この強度を変調し、照明の有る期間と照明の無い期間とを交互にすることによって、繁殖を促進するように、一日の間に制御される。
【0016】
取扱いおよびクリーニングが単純であることは、工業生産を制御できるようにするために、非常に重要な問題である。設備は、制御された気候条件を有する建物内に設置された、開放底部を有するケージ(100、101)のグループを備える。これは、自然照明の場合はガラス張りされ、または人工照明の場合は不透明である。建物の床は、ケージ(100、101)の下側閉鎖部として機能する。建物の床は、廃棄物収集のための排出手段を有してもよい。この建物の内部では、温度のみが調節されている:この温度の値は、建物内に存在するオペレータにとっての作業条件を許容可能なものとしつつ、ケージ内部の値にできるだけ近いものである必要がある。次いで、第2のシステムによって、ケージ内の気候条件(特に、湿度および温度)をより微細に制御することが可能になる。
【0017】
各ケージ(100、101)は、ケージ内を移動する昆虫を閉じ込めるための箱形空間を定めるように意図された軽構造である。グループの中央部に位置するケージ(100)は、例えばプレキシグラス(商標名)製の剛性前壁(10)、隣り合う2つのケージに共通の2つの側壁(40)、隣り合う2つのケージに共通の後壁(20)、および天井(60)から構成されている。グループの端に位置するケージ(101)は、2つの側壁(30、40)から構成されている。
【0018】
特定の一実施形態によれば、壁(20)は、網状壁と剛性壁とが混合したものから構成されている。取り付け装置が取り付けられるように、剛性壁がコレクタに面して設けられている。空気が循環できるよう、残りの部分は網状であるだろう。壁(30)は、剛性であり(剛性が高く)、封止されている。壁(30)によって、複数のケージのグループが画定されるからである。
【0019】
好ましくは、ケージは、底部を有しない開放底部構造を形成している。ケージは、例えば廃棄物収集のための排出手段を備えた建物の床上に置かれ、当該床に取り付けられる。
【0020】
空気が循環できるように、(底部、頂部、および側部における、隅部を避けるための丸みを帯びた小さなコーニスを除いて、)壁(40)は、全体が網で作られている。
【0021】
この実施例では、前壁(10)は、2つの扉(12、13)が設けられた開口部(11)を有する。この開口部(11)は、ケージ(100、101)の内部に例えば不透明な壁によって形成された、暗くかつ照明されていない羽化エアロック(14)内へ開口している。この羽化エアロックを気候条件下で配置できるように、複数の壁のうちの少なくとも1つの壁は、空気に対して透過性を有する。このエアロック(14)は、ダクト(15)を介して囲いの残りの部分と連通しており、これによって、アブは羽化後に、生殖産卵空間に入ることが可能になる。エアロック(14)を構成する壁の不透明性に起因する明るさの差異によって、アブが幼虫エリアから出ることが促進される。
【0022】
扉(12、13)によって、エアロック(14)への入口を開き、少なくとも1つの蛹容器(16)を導入することができる。エアロック(14)内が暗いことは、エアロック(14)内にアブがほとんど存在しないことを意味しており、扉(12、13)によって、逃げ出してしまうリスクなく、蛹容器(16)を導入または除去することが可能となる。任意選択的に、温度を下げることによって、アブの活動性を低減させることができ、その結果、逃げ出してしまうリスクを最小限に抑えられる。
【0023】
また、前壁(10)は、産卵コレクタの下方に配置され得る、例えばフェロモンまたは培地を装荷した産卵手段を導入するための、開口部(19)を備える。開口部(19)には、弾性封止リップが設けられていることが有利である。
【0024】
これらの産卵コレクタは、剛性前壁(10)および剛性後壁(20)に堅固に接続された支持体に取り付けられ、畝部付きプレートの形態をとる。
【0025】
また、逃げ出してしまうことを防止する機械的障壁、または弾性封止リップが設けられた開口部(17、18)は、コレクタの取扱い操作の間に昆虫がケージから逃げ出してしまうことを防止しつつ、当該コレクタの導入および抜き取りをすることを可能にする。
【0026】
扉(15)によって、特に修理またはクリーニングの作業のために、オペレータがケージに入れるようになっている。
【0027】
好ましくは、ケージは、グループを形成するように並置されており、典型的には2~40個のケージが並置され、好ましくは8~16個のケージが並置されている。個々のケージと比較したときの利点は、気候条件の管理に関連している:実際、複数のケージのグループによって、HVAC(Heating, Ventilation and Air Conditioning)(加熱、換気、および空調)機器を大幅に削減することが可能である。個々のケージのスケールではなく、複数のケージのグループのスケールで、当該条件が管理されるからである。したがって、(グループのサイズが妥当なままである限り、)このグループ化によって、精度のいかなる損失も招来されるものではない。複数のケージの所与のグループ内の各ケージは、同じ経年数を有することとなるため、同じ気候条件を必要とし得る。このことはまた、生産性の点でも有利である。全てのケージが同時に、耐用年数の終わりに達するからである:驚くべきことに、アブの後処理、およびクリーニングは、複数のケージのグループについて行うことができる。
【0028】
(卵コレクタを挿入および除去するための相補的な封止手段がはられた開口部の例)
図2は、卵コレクタを挿入および除去するための追加の封止閉鎖手段がはられた開口部の一例を示す。
【0029】
それは、2つの曲げ加工されたシート(または、プラスチック部品)(80、90)のアセンブリから構成されている。2つの曲げ加工されたシート(80、90)は各々、卵コレクタを挿入および除去するよう適合されたスロット(95)を有する。すなわち、スロット(95)は、ケージ内のアブが当該ケージから逃げ出し得ることを防止する間隙を有するスロットを卵コレクタが通過できるように、当該卵コレクタの断面に基づいて決定される形状および寸法を有する。
【0030】
このスロット(95)は、横軸(81)の周りにおいて傾斜する扉(85)によって掩蔽することができる。もちろん、ヒンジは、垂直軸(縦軸)に対して設けることもできる。弾性磁石ラッチ(82)等の機械的ソリューションによって、スロット(95)に押し当てられる位置に扉(85)が保持されることが保証される。
【0031】
布または網によって形成された可撓性ケージ壁の場合、2つの部品(80;90)は、壁に形成された切抜き部の両側に配置され、任意選択的に、破断を回避するように編組され、次いで、当該2つの部品(80、90)を通過するねじによって、互いに固定される。追加のアクセスが可能となるように、網に形成されたスロット(95)には、扉(85)の両側にジッパーが設けられてもよい。
【0032】
このアセンブリは、剛性ケージ壁についても同様である。この場合、スロット(95)の寸法よりも大きく2つの部品(80、90)の断面よりも小さい寸法を有する切抜き部が、それらを壁の両側に配置できるように形成される。
【0033】
正確なセンタリング(中央配置)が保証されるように、例えば卵コレクタのガイドレールの前端部におけるねじ止めによって、シート(80)を取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本発明によるケージを備える設備の斜視図を示す。
【
図2】本発明によるケージのための卵コレクタの挿入および除去のための追加の封止閉鎖手段がはられた開口部の斜視図を示す。
【国際調査報告】