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特表2024-532003植物性クリームチーズ製品及び植物性クリームチーズ製品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-04
(54)【発明の名称】植物性クリームチーズ製品及び植物性クリームチーズ製品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23C 20/02 20210101AFI20240828BHJP
   A23L 29/269 20160101ALN20240828BHJP
   A23L 29/238 20160101ALN20240828BHJP
【FI】
A23C20/02
A23L29/269
A23L29/238
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023575979
(86)(22)【出願日】2022-06-10
(85)【翻訳文提出日】2024-01-25
(86)【国際出願番号】 US2022033027
(87)【国際公開番号】W WO2022261450
(87)【国際公開日】2022-12-15
(31)【優先権主張番号】63/209,838
(32)【優先日】2021-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514062242
【氏名又は名称】クラフト・フーズ・グループ・ブランズ・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100225060
【弁理士】
【氏名又は名称】屋代 直樹
(72)【発明者】
【氏名】マデライン エリックソン ゴリス
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー イー マクファーソン
(72)【発明者】
【氏名】ジェニファー サクライ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレア サイエン
(57)【要約】
植物性チーズ製品、特にクリームチーズタイプの製品が本明細書で提示される。植物性チーズ製品は、植物性タンパク質、安定剤、デンプンベースの増粘剤、及び脂肪成分を含むエマルジョンの形態である。植物性チーズは、冷蔵温度及び高温の両方で、伸びやすい食感及び不透明な外観を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
均質な混合物の形態の植物性クリームチーズ製品であって、
前記植物性クリームチーズ製品の重量に対して、約0.2重量%~約8重量%の植物性粗タンパク質と、
約0.01重量%~約5重量%の安定剤と、
約1重量%~約12重量%のデンプンベースの増粘剤と、
約10重量%~約50重量%の脂肪成分と、
を含み、
ここで、前記植物性クリームチーズ製品の前記脂肪成分は、40℃で約1.5μm~約7μmの範囲内のD50値を有する油滴の形態である、
植物性クリームチーズ製品。
【請求項2】
前記植物性クリームチーズ製品の前記脂肪成分は、40℃で約1.5μm~約6.75μmの範囲内のD50値を有する油滴の形態である、請求項1に記載の植物性クリームチーズ製品。
【請求項3】
前記植物性クリームチーズ製品の前記脂肪成分は、分布幅5.0μm以下の油滴の形態である、請求項1または2に記載の植物性クリームチーズ製品。
【請求項4】
前記植物性クリームチーズ製品の前記脂肪成分は、分布幅4.0μm以下の油滴の形態である、請求項1~3のいずれか一項に記載の植物性クリームチーズ製品。
【請求項5】
前記植物性チーズ製品は、10rad/sの周波数及び25℃の温度において約400Pa・s~約1200Pa・sの範囲内の複素粘度を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の植物性クリームチーズ製品。
【請求項6】
前記植物性チーズ製品は、10rad/sの周波数及び25℃の温度において約400Pa・s~約1150Pa・sの範囲内の複素粘度を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の植物性クリームチーズ製品。
【請求項7】
前記植物性チーズ製品は、10rad/sの周波数及び37℃の温度において約300Pa・s~約1000Pa・sの範囲内の複素粘度を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の植物性クリームチーズ製品。
【請求項8】
前記植物性チーズ製品は、10rad/sの周波数及び37℃の温度において約300Pa・s~約750Pa・sの範囲内の複素粘度を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の植物性クリームチーズ製品。
【請求項9】
前記植物性チーズ製品は、25℃の温度で約4000Pa~約8000Paの範囲内の弾性率を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の植物性クリームチーズ製品。
【請求項10】
前記植物性チーズ製品は、25℃の温度で約4000Pa~約7500Paの範囲内の弾性率を有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の植物性クリームチーズ製品。
【請求項11】
前記植物性チーズ製品は、37℃の温度で約3000Pa~約7000Paの範囲内の弾性率を有する、請求項1~10のいずれか一項に記載の植物性クリームチーズ製品。
【請求項12】
前記植物性チーズ製品は、37℃の温度で約3000Pa~約6000Paの範囲内の弾性率を有する、請求項1~11のいずれか一項に記載の植物性クリームチーズ製品。
【請求項13】
前記脂肪成分は、10℃で約50%~約90%、及び20℃で約15%~約45%の範囲内の固形脂肪含量を有する、請求項1~12のいずれか一項に記載の植物性クリームチーズ製品。
【請求項14】
前記デンプンベースの増粘剤はせん断耐性デンプンである、請求項1~13のいずれか一項に記載の植物性クリームチーズ製品。
【請求項15】
前記植物性粗タンパク質は、ソラマメタンパク質、エンドウタンパク質、及び大豆タンパク質のうちの1つ以上を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の植物性クリームチーズ製品。
【請求項16】
前記植物性粗タンパク質はソラマメタンパク質である、請求項1~15のいずれか一項に記載の植物性クリームチーズ製品。
【請求項17】
前記脂肪成分は、ココナッツオイル及びヒマワリ油のうちの1つ以上を含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の植物性クリームチーズ製品。
【請求項18】
前記脂肪成分はココナッツオイルを含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の植物性クリームチーズ製品。
【請求項19】
前記安定剤は少なくとも1つの親水コロイドを含む、請求項1~18のいずれか一項に記載の植物性クリームチーズ製品。
【請求項20】
前記少なくとも1つの親水コロイドは、イヌリン、ペクチン、カルボキシメチルセルロース、カラギーナン、アラビアゴム、キサンタンガム、ローカストビーンガム、及びグアーガムのうちの1つ以上を含む、請求項1~19のいずれか一項に記載の植物性クリームチーズ製品。
【請求項21】
前記少なくとも1つの親水コロイドは、キサンタンガム、ローカストビーンガム、及びグアーガムの組み合わせを含む、請求項1~20のいずれか一項に記載の植物性クリームチーズ製品。
【請求項22】
前記少なくとも1つの親水コロイドはローカストビーンガムを含む、請求項1~21のいずれか一項に記載の植物性クリームチーズ製品。
【請求項23】
前記安定剤は、前記植物性クリームチーズ製品の総重量に対して、約0.01重量%~約1重量%の範囲内の量で存在し、及び前記デンプンベースの増粘剤は、該植物性クリームチーズ製品の総重量に対して、約3重量%~約10重量%の範囲内の量で存在する、請求項1~22のいずれか一項に記載の植物性クリームチーズ製品。
【請求項24】
前記脂肪成分は、前記植物性クリームチーズ製品の総重量に対して、約15重量%~約35重量%の範囲内の量で存在する、請求項1~23のいずれか一項に記載の植物性クリームチーズ製品。
【請求項25】
請求項1~24のいずれか一項に記載の植物性クリームチーズ製品の製造方法であって、
水、植物性粗タンパク質、デンプンベースの増粘剤、安定剤、及び脂肪成分を混合して混合物を形成するステップと、
前記混合物を約150°F~約200°Fの範囲内の温度に加熱するステップと、
前記加熱された混合物を均質化して前記植物性クリームチーズ製品を形成するステップと、を含む、製造方法。
【請求項26】
前記植物性クリームチーズ製品を容器に充填するステップと、該植物性クリームチーズ製品を冷蔵温度まで冷却するステップと、をさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記混合物は、直接蒸気注入を介して、約1秒~約5分間、約150°F~約200°Fの範囲内の温度まで加熱される、請求項25または26に記載の方法。
【請求項28】
前記植物性クリームチーズ製品のpHを約3.5~5.0の範囲内にするために、前記混合物に酸味料を添加するステップをさらに含む、請求項25~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
水は、前記植物性クリームチーズ製品において約50%~約80%の範囲内の水分%になるような量で混合物に添加される、請求項25~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
請求項1~24のいずれか一項に記載の植物性クリームチーズ製品の製造方法であって、
植物性タンパク質を水に添加して第1の混合物を形成するステップと、
10℃で約50%~約90%、及び20℃で約15%~約45%の範囲内の固形脂肪含量を有する脂肪成分を溶融するステップと、
前記溶融した脂肪成分、安定剤、及びデンプンベースの増粘剤を前記第1の混合物に添加し、混合して第2の混合物を形成するステップと、
前記第2の混合物を加熱して該第2の混合物を低温殺菌するステップと、
前記第2の混合物を均質化して前記植物性クリームチーズ製品を形成するステップと、
を含む、製造方法。
【請求項31】
前記植物性クリームチーズ製品を容器に充填するステップと、該植物性クリームチーズ製品を冷蔵温度まで冷却するステップと、をさらに含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記第2の混合物の加熱は、約1秒~約5分間、約150°F~約200°Fの範囲内の温度まで直接蒸気注入によって行われる、請求項30または31に記載の方法。
【請求項33】
前記植物性クリームチーズ製品のpHを約3.5~5.0の範囲内にするために前記第1または第2の混合物に酸味料を添加するステップをさらに含む、請求項30~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
水は、前記植物性クリームチーズ製品中に約50%~約80%の範囲内の水分%になるような量で含まれる、請求項30~33のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願への相互参照]
本出願は、2021年6月11日に出願された米国仮出願第63/209,838号の利益を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本出願は、一般に、植物性クリームチーズ製品を含む、植物性ソフトチーズ製品に関する。
【背景技術】
【0003】
市販の植物性チーズ製品の中には、乳製品ベースのクリームチーズ製品の特定の特性を再現できるものもある。しかし、植物性チーズクリーム製品は、期待される乳製品ベースのクリームチーズの外観、味、または伸びやすさを含めた食感を有さないことがしばしばである。実際、一部の植物性クリームチーズ製品は滑らか、かつクリーミーな食感がなく、塗り広げるのが困難であり得る。さらに、現在入手可能な植物性クリームチーズ製品はしばしば、不快感または後味を有する。これら植物性クリームチーズ製品は、乳製品ベースのチーズを再現した調理及び食事体験を期待する消費者にはあまり受け入れられていない。
【図面の簡単な説明】
【0004】
図1】いくつかの実施形態による植物性チーズ製品を製造するためのプロセスの概略図である。
図2】クリームチーズタイプの植物性食品を塗り広げた生地のオリジナルカラー写真の白黒コピー版である。
図3】2つの例示的なクリームチーズタイプの植物性食品のオリジナルカラー写真の白黒コピー版である。
図4】実施例及び比較例のクリームチーズタイプの植物性食品を塗り広げた生地のオリジナルカラー写真の白黒コピー版である。
図5】比較例のクリームチーズタイプの植物性食品の100μmスケールバーの光学顕微鏡画像である。
図6】比較例のクリームチーズタイプの植物性食品の100μmスケールバーの光学顕微鏡画像である。
図7】比較例のクリームチーズタイプの植物性食品の100μmスケールバーの光学顕微鏡画像である。
図8】実施例のクリームチーズタイプの植物性食品の100μmスケールバーの光学顕微鏡画像である。
図9】実施例のクリームチーズタイプの植物性食品の100μmスケールバーの光学顕微鏡画像である。
図10】実施例のクリームチーズタイプの植物性食品の100μmスケールバーの光学顕微鏡画像である。
図11】実施例のクリームチーズタイプの植物性食品の100μmスケールバーの光学顕微鏡画像である。
図12】サンプルの直径(μm、X軸)の関数として度数分布パーセンテージ(Y軸)を示す、実施例及び比較例のクリームチーズタイプの植物性食品の脂肪滴サイズ分布のグラフである。
図13】サンプルの直径(μm、X軸)の関数として累積分布パーセンテージ(Y軸)を示す、実施例及び比較例のクリームチーズタイプの植物性食品の脂肪滴サイズ分布のグラフである。
図14】実施例及び比較例のクリームチーズタイプの植物性食品を塗り広げた生地のオリジナルカラーのマクロ写真の白黒コピー版である。
図15】ライン位置(X軸)の関数としてサンプルの光強度(Y軸)を示す、実施例及び比較例のクリームチーズタイプの植物性食品の光強度のグラフである。
図16】面積(X軸)の関数としてサンプルの平均強度(Y軸)を示す、実施例及び比較例のクリームチーズタイプの植物性食品の平均強度のグラフである。
図17】温度(℃、X軸)に対するサンプルの硬さ(Pa、Y軸)を示す、実施例及び比較例のクリームチーズタイプの植物性食品のレオメーター温度掃引から作成されたグラフである。
図18】温度(℃、X軸)に対するサンプルの粘度(Pa・s、Y軸)を示す、実施例及び比較例のクリームチーズタイプの植物性食品のレオメーター温度掃引から作成されたグラフである。
図19】温度(℃、X軸)に対するサンプルのTanδ(Y軸)を示す、実施例及び比較例のクリームチーズタイプの植物性食品のレオメーター温度掃引から作成されたグラフである。
図20】実施例及び比較例のクリームチーズタイプの植物性食品のオリジナルカラー写真の白黒コピー版である。
図21】実施例及び比較例のクリームチーズタイプの植物性食品のa(緑-赤)値(Y軸)及びb(青-黄)値(X軸)を示す散布図である。
図22】実施例及び比較例のクリームチーズタイプの植物性食品のL(明度)値を示す棒グラフである。
【0005】
特定の行為および/またはステップは、特定の発生順序で説明または図示される場合があるが、当業者であれば、順序に関するそのような特定が実際上は必要でないことを理解するであろう。本明細書で使用される用語及び表現は、本明細書において別段に特定の意味が記載されている場合を除いて、上記の技術分野の当業者によってそのような用語及び表現に与えられるような通常の技術的意味を有する。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本明細書に記載されるのは植物性チーズ製品であり、いくつかのアプローチでは、植物性クリームチーズ製品または植物性チーズスプレッドなどのソフト植物性チーズ製品の形態であり得る。本明細書で使用される場合、「植物性(plant-based)」という用語は、乳タンパク質などの動物ベースのタンパク質を含まず、植物由来のタンパク質を含む製品または原料を指す。
【0007】
ある特定のアプローチでは、植物性チーズ製品は、乳製品ベースのクリームチーズに類似した外観、味、及び食感を有する。一態様では、植物性チーズ製品は、安定なエマルジョンの形態である。この点において、脂肪滴は植物性チーズ製品中に均一に分散され、冷蔵温度で少なくとも約4週間、別の態様では少なくとも約8週間、別の態様では少なくとも約12週間、相分離(離水)が全く起こらないか、または最小限の相分離(離水)が起こる。
【0008】
乳製品ベースのクリームチーズは一般に、柔らかく、滑らかな食感及び比較的高い脂肪含量(例えば、最終製品重量の約23~35パーセントの脂肪)を特徴とする。しかしながら、本明細書で提示される植物性クリームチーズ製品は、従来の乳製品ベースのクリームチーズ製品の所望の柔らかな食感及び伸びやすさを実現し、いくつかのアプローチでは、従来の乳製品ベースのクリームチーズ製品よりも少ない脂肪量でそれを実現するのに効果的である。さらに、本明細書に開示される植物性チーズ製品は、動物性タンパク質(乳製品ベースのタンパク質を含む)フリーであり得、従来のクリームチーズの冷蔵温度での伸びやすさを含む、所望の食感を生み出すために動物性タンパク質に依存できない。むしろ、植物性タンパク質、安定剤、デンプンベースの増粘剤及び脂肪成分の組み合わせによって、乳製品ベースのクリームチーズ製品に対する消費者の期待と一致する特性を備えた植物性チーズ製品を得ることができることが予想外に判明した。植物性チーズ製品はさらに、冷蔵状態及び、製品が焼かれる可能性が高い温度(例えば、焼いたベーグル上のクリームチーズ)などの高温状態の両方において望ましい不透明な(opaque)外観を特徴とする。本明細書に記載される植物性チーズ製品は、高温(例えば、約55℃まで)においても不透明性を維持することができるという独特の特徴を有する。
【0009】
いくつかのアプローチでは、植物性クリームチーズ製品は、植物性タンパク質、安定剤、デンプンベースの増粘剤、及び脂肪成分を含む。いくつかのアプローチでは、植物性チーズ製品を製造する方法は、水、植物性タンパク質、増粘剤、安定剤、及び脂肪成分を混合して混合物を形成するステップを含む。いくつかの例では、該方法はさらに、直接的な蒸気注入などにより混合物を約150°F~約200°Fの範囲内の温度に加熱して、混合物を低温殺菌するステップ、及び、加熱した混合物を均質化して、安定なエマルジョンの形態の植物性チーズ製品を形成するステップ、を含み得る。他の例では、該方法は、間接的な蒸気注入を介して混合物を約150°F~約200°Fの範囲内の温度に加熱して、混合物を低温殺菌するステップ、及び、加熱した混合物を均質化して、植物性チーズ製品を形成するステップ、を含み得る。蒸気を(直接的または間接的に)注入することなどによる加熱は、均質化の前に行ってもよい。該方法はさらに、植物性チーズ製品を冷蔵温度まで冷却することを含み得る。
【0010】
他のアプローチでは、植物性チーズ製品を製造する方法は、植物性タンパク質を水に加えて第1の混合物を形成するステップを含む。該方法はさらに、脂肪成分を溶融し、溶融した脂肪成分、安定剤、及び増粘剤を第1の混合物に添加し、混合して第2の混合物を形成するステップを含み得る。次いで、第2の混合物を加熱して低温殺菌し、その後、第2の混合物を均質化して、安定なエマルジョンの形態の植物性チーズ製品を形成する。いくつかの例では、加熱は、第2の混合物に直接的に蒸気を注入して第2の混合物を低温殺菌するステップと、第2の混合物を均質化して植物性チーズ製品を形成するステップとを含む。他の例では、該方法は、第2の混合物を間接的に蒸気加熱して第2の混合物を低温殺菌するステップ(例えば、熱ジャケット付き加熱容器の使用を介して)と、第2の混合物を均質化して植物性クリームチーズ製品を形成するステップとを含む。均質化の前に、蒸気による(直接的または間接的)加熱を行ってもよい。いくつかの方法では、直接蒸気注入と間接蒸気注入とで、植物性クリームチーズ製品に対してわずかに異なる最終的な色及び風味の違いが生じる可能性があることが判明している。したがって、いくつかの方法では、製品への色及び風味の混入を避けるために直接蒸気注入が有利であり得る。
【0011】
少なくともいくつかのアプローチでは、植物性チーズ製品を製造する方法は明確に発酵ステップを含まず、得られる植物性チーズ製品は非発酵の植物性チーズ製品として特徴付けられ得る。本明細書で使用される場合、用語「発酵(fermentation)」、「発酵した(fermented)」などは、微生物の存在下で炭水化物などの基質を一定期間インキュベートし、そこで、微生物が基質をアルコールまたは酸に変換するプロセスを指す。例えば、乳酸発酵では、デンプンまたは糖が酵母または細菌株によって乳酸に変換される。少なくともいくつかのアプローチでは、本発明の方法及び植物性チーズ製品は乳酸発酵ステップを含まない。
【0012】
他のアプローチでは、植物性チーズ製品を製造する方法は、発酵ステップを含み得る。これらのアプローチでは、乳酸菌(すなわち、発酵生成物として乳酸を生成する細菌)が使用され得る。例えば、ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)、ラクトコッカス・クレモリス(Lactococcus cremoris)、ストレプトコッカス・ラクティス(Streptococcus lactis)、ストレプトコッカス・サーモフィラス(Streptococcus thermophilus)、ラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)、及びラクトバチルス・ブルガリクス(Lactobacillus bulgaricus)のいずれを用いてもよい。発酵は、一般に、所望のpH(例えば、約3.5~約5.0、別の態様では約3.8~約4.8、別の態様では約4.0~約4.4)に達するまで行われる。
【0013】
本明細書に記載の植物性チーズ製品は、任意の望ましい形状に形成され得る。いくつかの例では、植物性チーズ製品は、ソフトブロックに形成されるか、または容器に充填されるクリームチーズ製品である。
【0014】
植物性チーズ製品は植物性タンパク質を含む。任意の適切な植物性タンパク質が植物性チーズ製品に使用され得る。いくつかの態様では、植物性タンパク質は、ソラマメタンパク質(ソラマメタンパク質(fava bean protein)としても知られる)、大豆タンパク質、レンズ豆タンパク質、ジャガイモタンパク質、ひよこ豆タンパク質、キャノーラタンパク質、及びエンドウ豆タンパク質のうちの1つ以上を含む。一部の植物性タンパク質は、得られる植物性チーズ製品に色または風味を与え得ることがわかっている。したがって、いくつかのアプローチでは、植物性タンパク質は、最終的な植物性チーズ製品の色及び/または風味に対する植物性タンパク質の影響に基づいて選択される。例えば、大豆タンパク質、ソラマメタンパク質、及びひよこ豆タンパク質製品は、クリームチーズ用途に特に適し得ることがわかっている。ソラマメ、大豆、またはひよこ豆のタンパク質を使用すると、最終製品の色は従来の乳製品ベースのクリームチーズに近くなる一方、エンドウ豆またはレンズ豆のタンパク質を含めると、より黄色または黄褐色のチーズ製品が得られ、ジャガイモタンパク質を含めると、灰色の色合いのチーズ製品が得られる。
【0015】
植物性タンパク質は、単離物、濃縮物、または細粉の形態であってもよい。いくつかのアプローチでは、植物性タンパク質は、植物性チーズ製品の乳化に寄与する単離物または濃縮物の形態である。理論に限定されるものではないが、現在、タンパク質単離物または濃縮物であるその他の非タンパク質成分がチーズ製品の食感に有益に寄与すると考えられている。いくつかの態様では、植物性タンパク質は、植物性チーズ製品における唯一のタンパク質源である。この点において、植物性チーズ製品は、例えばカゼイン及びホエーといった動物ベースまたは乳製品ベースのタンパク質を一切含まない。
【0016】
いくつかの態様では、植物性チーズ製品は、例えば、アーモンドタンパク質、ピーナッツタンパク質、及びカシュータンパク質のうちの1つ以上を含むナッツベースのタンパク質を一切含まない。さらにまたは代わりに、植物性チーズ製品は、オート麦タンパク質、米タンパク質、小麦タンパク質、及び/またはヒマワリの種のうちの1つ以上を含まなくてもよい。
【0017】
一つのアプローチでは、植物性タンパク質は、植物性チーズ製品の総重量に対して、約0.2重量%~約8重量%の粗タンパク質、別の態様では約0.25重量%~約8重量%の粗タンパク質、別の態様では約0.3重量%~約8重量%の粗タンパク質、別の態様では約0.35重量%~約8重量%の粗タンパク質、別の態様では約0.2重量%~約6重量%の粗タンパク質、別の態様では約0.25重量%~約6重量%の粗タンパク質、別の態様では約0.3重量%~約6重量%の粗タンパク質、別の態様では約0.35重量%~約6重量%の粗タンパク質、別の態様では約0.2重量%~約5重量%の粗タンパク質、別の態様では約0.25重量%~約5重量%の粗タンパク質、別の態様では約0.3重量%~約5重量%の粗タンパク質、別の態様では約0.35重量%~約5重量%の粗タンパク質、別の態様では約0.2重量%~約4重量%の粗タンパク質、別の態様では約0.25重量%~約4重量%の粗タンパク質、別の態様では約0.3重量%~約4重量%の粗タンパク質、別の態様では約0.35重量%~約4重量%の粗タンパク質、別の態様では約0.25重量%~約3.5重量%の粗タンパク質、別の態様では約0.25重量%~約3重量%の粗タンパク質、別の態様では約0.3重量%~約3重量%の粗タンパク質、別の態様では約0.35重量%~約3重量%の粗タンパク質、別の態様では約0.25重量%~約2.5重量%の粗タンパク質、別の態様では約0.3重量%~約2重量%の粗タンパク質、別の態様では約0.35重量%~2重量%の粗タンパク質、別の態様では約0.25重量%~約1.75重量%の粗タンパク質、別の態様では約0.25重量%~約1.55重量%の粗タンパク質、別の態様では約0.25重量%~約1.5重量%の粗タンパク質、別の態様では約0.3重量%~約1.5重量%の粗タンパク質、別の態様では約0.35重量%~約1.5重量%の粗タンパク質、別の態様では約0.25重量%~約1.0重量%の粗タンパク質、別の態様では約0.3重量%~約1.0重量%の粗タンパク質、別の態様では約0.35重量%~約1.0重量%の粗タンパク質の範囲内の量で存在する。
【0018】
植物性タンパク質成分中の粗タンパク質の量は、タンパク質含有成分の形態(例えば、成分が単離物、濃縮物、または細粉のいずれの形態であるか)に依存し得る。したがって、本明細書の目的のために、粗タンパク質の量は、任意のタンパク質含有成分によって寄与されるタンパク質の量である。例えば、市販のVITESSENCE(商標)Pulse 3600(Ingredion)ソラマメタンパク質製品は、約60%のタンパク質成分及び約40%の非タンパク質成分を含む。植物性チーズ製品が約2重量%のVITESSENCE(商標)パルス3600ソラマメタンパク質製品を含む場合、該植物性チーズ製品は、本明細書の目的のために、約1.2重量%の粗タンパク質を含むことになる。植物性タンパク質成分または植物性チーズ製品中の粗タンパク質の量は、公的分析化学者協会(AOAC)の公式方法992.15(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)によって測定され得る。さらにまたは代わりに、植物性タンパク質成分または植物性チーズ製品中の粗タンパク質の量は、デュマ法(Dumas Method)によって測定してもよい。
【0019】
いくつかのアプローチでは、植物性タンパク質は植物性チーズ製品における唯一の乳化剤であり得る。この点において、いくつかの態様では、植物性チーズ製品は、レシチン、モノグリセリド、ジグリセリド、ポリエチレングリコール、アルギン酸プロピレングリコール、及びポリソルベートを含まない。他のアプローチでは、植物性チーズ製品は、グルコノデルタラクトン、リン酸三カルシウム、砂糖、ベータカロテン(着色)、及びクエン酸ナトリウムのうちのいずれか1つ以上を含まなくてもよい。
【0020】
いくつかのアプローチでは、植物性タンパク質を含めること、特に安定剤及びデンプンベースの増粘剤と組み合わせると、驚くべきことに、植物性チーズ製品の外観及び性能に大きな利点をもたらすことが判明した。安定剤、デンプンベースの増粘剤、及び脂肪成分は、最終食品中の植物性タンパク質と相互作用して、製品の不透明性に寄与する。例えば、植物性タンパク質を使用せずに調製された植物性チーズ製品は、冷蔵温度では白色の外観及び不透明性を示し得るが、高温の粘度はより乏しいため、該植物性チーズ製品を熱い基材に塗布すると不透明性が失われる結果となる。対照的に、植物性チーズ製品が、本明細書に記載される安定剤、デンプンベースの増粘剤、及び脂肪成分と組み合わせながら植物性タンパク質を用いて調製される場合、製品は、焼いたパンまたはベーグルのスライスなど、熱い基材に塗布しても不透明性を維持する。現在、植物性タンパク質は製品母体を安定化させ、脂肪成分のより小さな液滴を維持すると考えられている。植物性タンパク質及びデンプンベースの増粘剤分子は、高温での光散乱に寄与する。植物性タンパク質を含めることにより、865nmの波長での光透過率を低くすることも可能である。
【0021】
さらに、安定剤、デンプンベースの増粘剤、及び脂肪成分は、最終食品中の植物性タンパク質と相互作用して、製品の食感に寄与する。例えば、植物性タンパク質を使用せずに調製された植物性チーズ製品は、冷蔵温度では乳製品ベースのクリームチーズに似た柔らかく滑らかな食感を有し得るが、25℃を超える温度ではより薄く、硬さの劣る食感となり得る。対照的に、植物性チーズ製品が、本明細書に記載される安定剤、デンプンベースの増粘剤、及び脂肪成分と組み合わせながら植物性タンパク質を用いて調製される場合、製品は、植物性タンパク質を使用せずに調製された同様の植物性チーズ製品よりも、より硬く、乳化安定性、及び不透明性を保持する。
【0022】
植物性チーズ製品は、10℃で約50%~約90%、別の態様では約55%~約90%、別の態様では約55%~約85%、別の態様では約60%~約85%の固形脂肪含量、及び、20℃で約15%~約45%、別の態様では約20%~約45%、別の態様では約20%~約40%、別の態様では約25%~約40%の固形脂肪含量を有する脂肪成分をさらに含む。
【0023】
別のアプローチでは、脂肪成分は、10℃で約50%~約90%の固形脂肪含量を有し、かつ20℃で約15%~約45%の固形脂肪含量を有し、別の態様では、10℃で約55%~約90%の固形脂肪含量、かつ20℃で約20%~約45%の固形脂肪含量であり、別の態様では、10℃で約55%~約85%の固形脂肪含量、かつ20℃で約20%~約45%の固形脂肪含量であり、またさらに別の態様では、10℃で約60%~約85%固形脂肪含量、かつ20℃で約25%~約40%は固形脂肪含量である。
【0024】
いくつかのアプローチでは、脂肪成分が特定の範囲内の固形脂肪含量を有する場合、脂肪成分は、乳脂肪と同様に機能的に挙動し得、乳製品ベースのチーズと同様の風味プロフィール、冷たい食感、及び溶融プロフィールを有する植物性チーズ製品に寄与し得る。いくつかの態様では、脂肪成分の固形脂肪含量は、示差走査熱量測定法(DSC)によって測定され得る。示差走査熱量測定では、密閉パンに入れた10mgのサンプルを10℃/分の加熱速度で-500℃~1000℃まで加熱でき、熱流量は温度の関数として測定できる。熱流対温度曲線から、固形脂肪含量対温度曲線を計算することができる。
【0025】
特定の固形脂肪含量を有する1つ以上の固形脂肪、液体油、またはそれらの組み合わせを含む任意の適切な脂肪成分が使用され得る。いくつかの例では、脂肪成分は、ココナッツオイル、パーム油、パーム油画分、シアバター、及びシアオレインなどの植物油または植物ベースの油のうちの1つ以上を含む。これらの例のいくつかでは、脂肪成分は、大豆油、ひまわり油、オリーブオイル、キャノーラオイル、ピーナッツオイル、ゴマ油、及びコーン油のうちの1つ以上をさらに含み、それぞれの温度で所望の固形脂肪含量を提供するための成分の混成物を提供する。少なくともいくつかの態様では、油は精製オイル(例えば、精製ココナッツオイル)である。他の例では、脂肪成分は、ココナッツオイルとヒマワリ油との組み合わせ、例えば、市販のAKOVEG(商標)オイル(AAK USA Inc.により販売)を含む。さらに他の例では、脂肪成分はココナッツオイルを含む。さらにまたは代わりに、植物性チーズ製品は、パーム油及びパーム油画分を含まなくてもよい。
【0026】
1つのアプローチでは、脂肪成分は、植物性チーズ製品の総重量に対して、約10重量%~約50重量%、別の態様では約10重量%~約45重量%、別の態様では約15重量%~約40重量%、別の態様では約15重量%~約35重量%、別の態様では約15重量%~約25重量%、及び別の態様では約20重量%~約30重量%の範囲内の量で存在する。
【0027】
植物性チーズ製品はさらに安定剤を含む。安定剤は、任意の適切な親水コロイドまたは繊維であってもよい。本明細書で使用される場合、安定剤は、植物性チーズ製品の水分管理及び食感を促進する。いくつかの態様では、親水コロイドは、イヌリン、ペクチン、カルボキシメチルセルロース、カラギーナン、アラビアゴム、キサンタンガム、ローカストビーンガム、及びグアーガムのうちの1つ以上を含む。一態様では、親水コロイドは、市販のTICスタビライザー424(イングレディオン)などの、キサンタンガム、ローカストビーンガム、及びグアーガムの組み合わせを含む。別の態様では、親水コロイドはローカストビーンガムを含む。いくつかの態様では、繊維は植物繊維、特に不溶性繊維である。適切な植物繊維としては、例えば、亜麻繊維、麻繊維、及びジュート繊維が挙げられる。1つの例示的な亜麻繊維は、HI-SMOOTH(登録商標)(イタリア、パルマのHIFOOD製の亜麻繊維)である。安定剤は、植物性チーズ製品において乳化安定剤として作用し得る。いくつかの態様では、安定剤は増粘機能も提供し得る。
【0028】
1つのアプローチでは、安定剤は、植物性チーズ製品の総重量に対して、約0.01重量%~約10重量%、別の態様では約0.01重量%~約5重量%、別の態様では約0.01重量%~約1重量%、別の態様では約0.05重量%~約1重量%、別の態様では約0.1重量%~約5重量%、別の態様では約0.25重量%~約5重量%、別の態様では約0.1重量%~約3重量%、別の態様では約0.25重量%~約3重量%、別の態様では約0.1重量%~約2重量%、別の態様では約0.25重量%~約2重量%、別の態様では約0.1重量%~約1重量%、別の態様では約0.25重量%~約1重量%の安定剤の範囲内の量で存在する。
【0029】
植物性チーズ製品は、デンプンベースの増粘剤などの増粘剤をさらに含む。増粘剤は、植物性チーズ製品の所望の食感に寄与することができる。適切な増粘剤としては、例えば、ジャガイモデンプン、コーンスターチ、タピオカデンプン、葛デンプン、または米デンプンなどのデンプンが挙げられる。一態様では、デンプンはせん断耐性がある。本明細書で使用する「せん断耐性がある(shear tolerant)」という用語は、デンプンが、5℃に冷却したときに最終製品の測定可能な粘度の増加に寄与するために、82℃の温度での均質化(例えば、GEA Twin Pandaダイナミックホモジナイザーにおける165barでの1段階均質化)に耐えることができることを意味する。本明細書で使用される場合、「測定可能な粘度の増加(measurable increase in viscosity)」とは、デンプンベースの増粘剤を使用せず、該デンプンベースの増粘剤の代わりに水を追加して製造された、その他の点では同一である製品と比較して、冷却した際の複素粘度が少なくとも5%(または一部の態様では少なくとも10%)増加することを意味する。いくつかの態様では、デンプンは、酵素的に変換されたデンプンまたは酸で希釈されたデンプンなどの変性デンプンである。いくつかの例では、デンプンは、市販のETENIA(商標)457デンプン(Cooperatie Avebe U.A.)などの、酵素的に変換されたジャガイモデンプンである。一態様では、デンプンは、例えば10以下の低ブドウ糖当量(以下、DE)、別の態様では5以下のDE、別の態様では3以下のDE、別の態様では2のDEを有するといった低ブドウ糖当量(DE)マルトデキストリンであるか、またはそれを含む。いくつかの態様では、デンプンは熱可逆性であり、高温では流動可能であり、冷却すると固まる。このようにして、熱可逆性デンプンは、冷却された植物性チーズ製品に対して伸びやすい質感を提供し得る。
【0030】
増粘剤を含めることは、植物性チーズ製品の質感的特徴に寄与し得る。増粘剤を含めると、乳製品ベースのチーズ製品を再現する食感的特徴が得られ得る。例えば、増粘剤は、すくい、広げ、そして口の中で素早く消散するのに十分な固さの質感(食感)を提供し得る。
【0031】
いくつかのアプローチでは、デンプンベースの増粘剤は、植物性チーズ製品の総重量に対して、約1重量%~約25重量%の範囲内の量で存在する。別のアプローチでは、増粘剤は、植物性チーズ製品の総重量に対して、約1重量%~約20重量%、別の態様では約1重量%~約15重量%、別の態様では約1重量%~約12重量%、別の態様では約3重量%~約10重量%、別の態様では約3重量%~約8重量%の範囲内の量で存在する。
【0032】
植物性チーズ製品はさらに水を含む。いくつかの態様では、植物性チーズ製品は、植物性チーズ製品の水分%を、植物性チーズ製品の重量の約50重量%~約80重量%、別の態様では約50重量%~約75重量%、別の態様では約55重量%~約75重量%、別の態様では約55重量%~約70重量%、または別の態様では約60重量%~約70重量%の範囲内にするのに有効な量で水を含む。
【0033】
植物性チーズ製品は酸味料をさらに含んでもよい。いくつかの態様では、植物性チーズ製品は、植物性チーズ製品のpHを約3.5~約5.0、別の態様では約3.8~約4.8、別の態様では約4.0~約4.4にするのに有効な量で酸味料を含む。任意の適切な酸味料が使用され得る。適切な酸としては、リンゴ酸、クエン酸、酢酸、リン酸、及び乳酸が挙げられる。一例では、酸味料は、クエン酸、ソルビン酸、及び乳酸のうちの1つ以上を含む。記載された範囲のpHを提供するために酸味料を含めることは、望ましい風味を提供するだけでなく、製品の微生物安定性に寄与する。酸味料は、植物性チーズ製品の成分に個別に添加してもよく、及び/または酸味料は発酵ステップを介して生成してもよい。例えば、乳酸は、乳酸菌などの酸生成細菌による発酵中に生成され得る。
【0034】
いくつかの態様では、植物性チーズ製品は、塩、保存剤(例えば、ソルビン酸)、着色剤、及び香味料などの1つ以上の追加の成分をさらに含んでもよい。ニンニク、ハーブ(例えば、チャイブ、パセリ、バジル)、スパイス(例えば、シナモン)、果物(例えば、イチゴ、ブルーベリー、パイナップル、モモなど)、ナッツ(例えば、ピーカン)、コショウ(例えば、ハラペーニョ、チポトレ、ピーマン)、甘味料(例えば、蜂蜜、黒糖、スクロース)、オリーブ、ベーコン、サーモン、及び野菜(玉ねぎなど)のうちの1つ以上など、任意の適切な天然または人工香味料を使用してもよい。いくつかの態様では、1つ以上の香味料は、植物性食品中の別の成分の味をマスキングするためのマスキングタイプの香味料を含む。別の態様では、乳製品ベースのチーズ製品の味を再現するための完全な乳製品の香りを再構築するために、1つ以上の香味料を含めてもよい。
【0035】
いくつかの態様では、植物性チーズ製品は、ナッツベースのタンパク質、アーモンドタンパク質、ピーナッツタンパク質、カシューナッツタンパク質、オーツ麦タンパク質、米タンパク質、小麦タンパク質、ヒマワリの種、非植物性タンパク質乳化剤、レシチン、モノグリセリド、ジグリセリド、ポリエチレングリコール、アルギン酸プロピレングリコール、ポリソルベート、パーム油、及びパーム油画分のうちの1つ以上を含まなくてもよい。
【0036】
本明細書に記載の植物性チーズ製品は、さまざまな方法で製造することができる。図1を参照すると、1つのアプローチでは、植物性チーズ製品は、植物性タンパク質、脂肪成分、デンプンベースの増粘剤、水、安定剤、及び酸味料を組み合わせて混合物を形成することを含む方法によって製造することができる。いくつかのアプローチでは、脂肪成分を混合物に加える前に、調理器などで溶融してもよい。香味料または塩などの他の任意の成分は、この時点またはプロセスの後半で添加してもよい。成分はミキサーで混合される。成分は、蒸気が製品混合物に直接注入され得る直接蒸気注入機能を有するミキサー内で混合され得る。このようにして、混合中に直接蒸気を注入することによって成分を加熱してもよい。直接蒸気注入では、蒸気が混合容器内の製品混合物の中またはその上に直接導入される。そのため、直接蒸気注入を用いると、蒸気が製品混合物内に凝縮し、製品混合物内の水分レベルに寄与し得る。間接蒸気注入では、蒸気は製品混合物から分離され、蒸気ジャケット付き混合容器など、製品混合物と熱的に連通する表面に接触することによって製品混合物を間接的に加熱する。いくつかのアプローチでは、成分の混合物は、混合物を低温殺菌するのに有効な時間および温度、例えば、約150°F~約200°F、約160°F~約200°F、約160°F~約190°F、またはいくつかの態様では約170°F~約190°Fの範囲内の温度などで、例えば、約1秒~約5分の時間の間で加熱される。必要に応じて、高温短時間殺菌法も使用してよい。一般に、熱処理の時間は、熱処理の温度に部分的に依存し得る。いくつかの態様では、デンプンベースの増粘剤は、混合物がそのような温度に加熱される前にゼラチン化する可能性があり、加熱は主に混合物を低温殺菌するように作用し得る。他の態様では、加熱により、混合物の低温殺菌、及びデンプンベースの増粘剤のゼラチン化の両方をし得る。いくつかのアプローチでは、製品を混合し続けながら低温殺菌処理が実行される。
【0037】
少なくともいくつかのアプローチでは、間接蒸気注入ではなく直接蒸気注入を介して混合物を加熱することにより、最終的な植物性チーズ製品の外観を改善し得ると企図される。特に、直接蒸気注入によって混合物を加熱すると、乳製品ベースのチーズ製品の色及び輝きをより忠実に模倣した、最終的な植物性チーズ製品の色及び輝きが得られ得る。例えば、直接蒸気注入により混合物を加熱すると、間接蒸気加熱(例えば、発酵ステップが使用される場合)と比較して、オフホワイト色が得られ、かつ褐変(browning)が減少し得る。さらに、直接蒸気注入によって混合物を加熱すると、最終的な植物性チーズ製品にとって望ましい光沢のある湿った外観を得られ得る。
【0038】
いくつかの態様では、成分は、間接蒸気注入機能を有するミキサー内で混合され得る。成分は、混合中に間接蒸気注入によって加熱され得る。いくつかのアプローチでは、成分の混合物は、混合物を低温殺菌し、及び/またはデンプンベースの増粘剤をゼラチン化するのに有効な時間及び温度に加熱される(上述したように)。これらの態様では、乳製品ベースのチーズ製品の外観を再現した外観(例えば、高温で望ましい不透明な外観)を有する植物性チーズ製品が実現され得ることが想定される。
【0039】
次いで、混合物を均質化するか、または高せん断で処理して、植物性チーズ製品を提供する。本明細書における目的のために、「均質化する(homogenize)」という用語は、均質な混合物を提供することができる均質化処理及び高せん断処理の両方を包含するために使用される。混合物は、植物性チーズ製品に滑らかな食感を与えるために、例えばホモジナイザーまたはせん断ポンプなどの任意の適切な器機を使用して均質化され得る。いくつかの態様では、均質化により均質な混合物が提供され、安定剤などの成分が製品全体に均一に分散され得る。均質化により植物性チーズ製品に滑らかな食感を与え得ることが企図される。いくつかの態様では、植物性チーズ製品は、エマルジョンとして特徴付けられ得る。
【0040】
いくつかのアプローチでは、混合物は高圧、すなわち大気圧よりも高い圧力で均質化される。いくつかの態様では、混合物は、約100psi~約3000psi、約100psi~約2000psi、約500psi~約3000psi、約500psi~約1500psi、約700psi~約1300psi、約800psi~約2500psi、または約800psi~約1200psiの範囲内の圧力で均質化される。選択される圧力は、使用される特定の器機に部分的に依存し得る。植物性チーズ製品に所望の滑らかな食感を与える任意の適切な圧力が使用され得る。いくつかの例では、GEAツインパンダダイナミックホモジナイザーが使用され得る。
【0041】
いくつかの態様では、植物性チーズ製品は、高温で植物性チーズ製品が乳製品ベースのクリームチーズに類似した不透明な外観及び/または柔らかく滑らかな食感を有することを可能にする脂肪滴サイズ分布を有する。脂肪滴サイズ分布は、Bruker時間領域核磁気共鳴液滴サイズ分析装置(Bruker TD-NMR液滴サイズ分析装置)を使用して測定され得る。NMR場の減衰曲線(強度対時間)を使用して、脂肪滴のサイズ分布を導き出し得る。
【0042】
一態様では、混合物は、40℃で7μm以下、別の態様では6.75μm以下、別の態様では6.5μm以下、別の態様では6.25μm以下、別の態様では6.0μm以下のD50(すなわち、脂肪滴の直径の50%がこの値未満)を達成するように均質化され得る。
【0043】
別の態様では、混合物は、40℃で約1.5μm~約7μmの範囲内の、別の態様では約1.5μm~約6.75μmの範囲内の、別の態様では約1.5μm~約6.5μmの範囲内の、別の態様では約1.5μm~約6.25μmの範囲内の、別の態様では約1.5μm~約6.0μmの範囲内のD50を達成するように均質化され得る。
【0044】
D50値に加えて、またはその代わりに、植物性チーズ製品は分布幅(つまり、下記[数1]の標準偏差) を有し得るものであり、ここで、40℃で5.0μm以下、別の態様では4.5μm以下、別の態様では4.0μm以下、及び別の態様では3.5μm以下の脂肪滴直径の97.5%はD97.5未満であり、脂肪滴直径の2.5%はD2.5値未満である。現在、油滴サイズの分布幅と組み合わせたD50値が製品のエマルジョン安定性を最もよく示すと考えられている。
【数1】
【0045】
さらにまたは代わりに、混合物は、40℃で16.0μm以下、または15.5μm以下のD97.5(すなわち、脂肪滴直径の97.5%がこの値未満である)を達成するように均質化され得る。さらにまたは代わりに、混合物は、40℃で3.0μm以下、2.75μm以下、2.5μm以下、2.25μm以下、または2.0μm以下のD2.5(すなわち、脂肪滴直径の2.5%がこの値未満である)を達成するように均質化され得る。
【0046】
いくつかの態様では、植物性チーズ製品は、周波数10rad/s、並びに温度25℃及び37℃での複素粘度を有し、それらの温度では植物性チーズ製品が乳製品ベースのクリームチーズに類似した柔らかく滑らかな食感を有することができる。37℃は製品が延ばされ得る熱いベーグルの温度を表し、及び25℃は製品が消費されるときの製品の温度を表すため、25℃及び37℃の温度は、クリームチーズタイプの製品の製品性能に特に有益である。
【0047】
複素粘度は、25℃及び37℃の両方でのエマルジョンの安定性を示す。いくつかの態様では、植物性チーズ製品は、10rad/sの周波数及び25℃の温度において、約400Pa・s~約1200Pa・sの範囲、約400Pa・s~約1150Pa・sの範囲、約400Pa・s~約1000Pa・sの範囲、約400Pa・s~約900Pa・sの範囲、約400Pa・s~約800Pa・sの範囲、約400Pa・s~約750Pa・sの範囲、約400Pa・s~約700Pa・sの範囲、約400Pa・s~約600Pa・sの範囲、約425Pa・s~約1200Pa・sの範囲、約425Pa・s~約1000Pa・sの範囲、約425Pa・s~約900Pa・sの範囲、約425Pa・s~約800Pa・sの範囲、約425Pa・s~約750Pa・sの範囲、約425Pa・s~約700Pa・sの範囲、約425Pa・s~約600Pa・sの範囲、約450Pa・s~約1200Pa・sの範囲、約450Pa・s~約1000Pa・sの範囲、約450Pa・s~約900Pa・sの範囲、約450Pa・s~約800Pa・sの範囲、約450Pa・s~約750Pa・sの範囲、約450Pa・s~約700Pa・sの範囲、約450Pa・s~約600Pa・sの範囲、約500Pa・s~約1200Pa・sの範囲、約500Pa・s~約1000Pa・sの範囲、約500Pa・s~約900Pa・sの範囲、約500Pa・s~約800Pa・sの範囲、約500Pa・s~約750Pa・sの範囲、約500Pa・s~約700Pa・sの範囲、または約500Pa・s~約600Pa・sの範囲内の複素粘度を有する。
【0048】
さらにまたは代わりに、植物性チーズ製品は、10rad/sの周波数及び37℃の温度において、約300Pa・s~約1000Pa・sの範囲、約300Pa・s~約750Pa・sの範囲、約300Pa・s~約600Pa・sの範囲、約300Pa・s~約500Pa・sの範囲、約300Pa・s~約400Pa・sの範囲、約320Pa・s~約1000Pa・sの範囲、約340Pa・s~約1000Pa・sの範囲、約350Pa・s~約1000Pa・sの範囲、約375Pa・s~約1000Pa・sの範囲、約390Pa・s~約1000Pa・sの範囲、約320Pa・s~約600Pa・sの範囲、約350Pa・s~約500Pa・sの範囲、または約375Pa・s~約400Pa・sの範囲内の複素粘度を有し得る。
【0049】
いくつかの態様では、植物性チーズ製品は、該植物性チーズ製品が対応する温度で乳製品ベースのクリームチーズに類似した柔らかく滑らかな食感を有することができる、25℃~37℃の間の温度での弾性率を有する。弾性率は製品の相対的な硬さを示す。いくつかの態様では、植物性チーズ製品は、25℃の温度において、約4000Pa~約8000Paの範囲、約4000Pa~約7500Paの範囲、約4000Pa~約7000Paの範囲、約4000Pa~約6500Paの範囲、約4000Pa~約6000Paの範囲、約4000Pa~約5750Paの範囲、約4250Pa~約8000Paの範囲、約4250Pa~約7500Paの範囲、約4250Pa~約7000Paの範囲、約4250Pa~約6500Paの範囲、約4250Pa~約6000Paの範囲、約4250Pa~約5750Paの範囲、約4500Pa~約8000Paの範囲、約4500Pa~約7500Paの範囲、約4500Pa~約7000Paの範囲、約4500Pa~約6500Paの範囲、約4500Pa~約6000Paの範囲、約4500Pa~約5750Paの範囲、約4750Pa~約8000Paの範囲、約4750Pa~約7500Paの範囲、約4750Pa~約7000Paの範囲、約4750Pa~約6500Paの範囲、約4750Pa~約6000Paの範囲、約4750Pa~約5750Paの範囲、約5000Pa~約8000Paの範囲、約5000Pa~約7500Paの範囲、約5000Pa~約7000Paの範囲、約5000Pa~約6500Paの範囲、約5000Pa~約6000Paの範囲、約5000Pa~約5750Paの範囲、約5250Pa~約8000Paの範囲、約5250Pa~約7500Paの範囲、約5250Pa~約7000Paの範囲、約5250Pa~約6500Paの範囲、約5250Pa~約6000Paの範囲、約5250Pa~約5750Paの範囲、約5500Pa~約8000Paの範囲、約5500Pa~約7500Paの範囲、約5500Pa~約7000Paの範囲、約5500Pa~約6500Paの範囲、約5500Pa~約6000Paの範囲、または約5500Pa~約5750Paの範囲内の弾性率を有する。
【0050】
さらにまたは代わりに、植物性チーズ製品は、37℃の温度において、約3000Pa~約7000Paの範囲、約3000Pa~約6000Paの範囲、約3000Pa~約5500Paの範囲、約3000Pa~約5000Paの範囲、約3000Pa~約4500Paの範囲、約3000Pa~約4000Paの範囲、約3150Pa~約7000Paの範囲、約3150Pa~約6000Paの範囲、約3150Pa~約5500Paの範囲、約3150Pa~約5000Paの範囲、約3150Pa~約4500Paの範囲、約3150Pa~約4000Paの範囲、約3250Pa~約7000Paの範囲、約3250Pa~約6000Paの範囲、約3250Pa~約5500Paの範囲、約3250Pa~約5000Paの範囲、約3250Pa~約4500Paの範囲、約3250Pa~約4000Paの範囲、約3400Pa~約7000Paの範囲、約3400Pa~約6000Paの範囲、約3400Pa~約5500Paの範囲、約3400Pa~約5000Paの範囲、約3400Pa~約4500Paの範囲、約3400Pa~約4000Paの範囲、約3500Pa~約7000Paの範囲、約3500Pa~約6000Paの範囲、約3500Pa~約5500Paの範囲、約3500Pa~約5000Paの範囲、約3500Pa~約4500Paの範囲、約3500Pa~約4000Paの範囲、約3600Pa~約7000Paの範囲、約3750Pa~約7000Paの範囲、約3250Pa~約5000Paの範囲、約3500Pa~約4500Paの範囲、または約3600Pa~約4000Paの範囲内の弾性率を有し得る。
【0051】
複素粘度及び/または弾性率は、レオロジー熱分析を使用して測定され得る。いくつかの例では、TA Instrument ARES-G2レオメーターを使用して、サンプルを5℃/分の速度で0℃から80℃まで加熱しながら、厚さ2mm、直径25mmのサンプルのディスクに正弦波せん断ひずみを印加し、結果として生じる応力波を測定され得る。テスト形状は、500mmのクロスハッチの底部ペルチェプレートを備えた25mmのクロスハッチの平行プレートとしてもよい。幾何学的ギャップはサンプルの厚さと同じであってもよい(例えば、2mm)。サンプルは30℃で装荷(load)され得る。軸力は10g±5gであり、サンプリング速度は12秒/点であり得る。温度の関数としての複素粘度及び/または弾性率は、応力-ひずみ曲線から計算され得る。
【0052】
別のアプローチでは、植物性チーズ製品を製造する方法は、植物性タンパク質を水に加えて第1の混合物を形成するステップを含む。いくつかの態様では、第1の混合物は、植物性タンパク質を水和させるのに適した時間混合され得る。該方法はまた、10℃で約50%~約80%、及び20℃で約15%~約40%の範囲の固形脂肪含量を有する脂肪成分を溶融するステップを含む。該方法はさらに、溶融した脂肪成分、安定剤、及び増粘剤を第1の混合物に添加し、混合して第2の混合物を形成するステップを含む。香味料または塩などの他の任意の成分を、この時点またはプロセスの後半で第2の混合物に添加してもよい。成分は、ミキサー内、また、いくつかの態様では、直接蒸気注入機能を有するミキサー内で混合される。次いで、蒸気が第2の混合物に直接注入されて、第2の混合物が加熱される。いくつかのアプローチでは、第2の混合物は、約150°F~約200°F、約160°F~約200°F、約160°F~約190°F、またはいくつかの態様では約170°F~約190°Fの範囲内の温度に加熱される。いくつかの態様では、増粘剤は、第2の混合物が上記温度に加熱される前にゼラチン化されてもよく、加熱は主に第2の混合物を低温殺菌するために用いられ得る。他の態様では、加熱により、第2の混合物を低温殺菌し、及び増粘剤をゼラチン化し得る。
【0053】
いくつかの態様では、成分の混合物は、第2の混合物を低温殺菌するのに有効な温度まで加熱され、その温度に保持される。いくつかのアプローチでは、第2の混合物は直接蒸気注入によって加熱される。他のアプローチでは、第2の混合物は間接蒸気注入(例えば、熱ジャケット付き容器内)によって加熱される。
【0054】
第2の混合物はまた均質化されて、安定なエマルジョンの形態の植物性チーズ製品が得られる。第2の混合物は、混合物に高せん断力を加えることができる任意の適切な器機、例えばホモジナイザーまたはせん断ポンプを使用して均質化され得る。いくつかのアプローチでは、第2の混合物は高圧で均質化される。いくつかの態様では、第2の混合物が均質化され、均質な混合物が得られ、成分を均一に分散させる。蒸気の注入による加熱は、均質化の前に行ってもよい。
【0055】
別の態様では、本明細書に記載の方法のいずれかは、第1の混合物または第2の混合物のいずれかを含む、上記の混合物のいずれかに水を添加するステップをさらに含み得る。水は、(直接蒸気または間接蒸気)加熱の前または後に混合物に加えてもよい。1つのアプローチでは、水は、約50%~約80%、約55%~約75%、または約60%~約70%の範囲内の植物性食品の水分%を提供するために添加される。
【0056】
別の態様では、本明細書に記載の方法のいずれかは、第1の混合物または第2の混合物のいずれかを含む、上記の混合物のいずれかに酸味料を添加するステップをさらに含み得る。酸味料は、(直接的または間接的)蒸気加熱の前または後に混合物に添加してもよい。1つのアプローチでは、酸味料は、植物性食品のpHを約3.5~約5.0、別の態様では約3.8~約4.8、別の態様では約4.0~約4.4にするために添加される。
【0057】
別の態様では、本明細書に記載の方法のいずれかは、塩、保存剤、香味料、及び着色剤のうちの1つ以上を添加するステップをさらに含み得る。
【0058】
本明細書に記載の方法によって製造された植物性チーズ製品は、適切な消費者サイズの容器に包装され得る。いくつかの態様では、植物性チーズ製品は、容器が高温(つまり、低温殺菌処理の直後、かつ製品が冷蔵温度に冷却される前)で充填される「ホットパッキング」手法によって容器に包装される。いくつかのアプローチでは、植物性チーズ製品は、約145°F~約195°F、約155°F~約195°F、約155°F~約185°F、またはいくつかの態様では約165°F~約185°Fの範囲内の温度で容器に包装される。他の態様では、植物性チーズ製品は、製品が冷たい間に(すなわち、冷蔵温度で)容器が充填される「コールドパッキング」手法によって容器に包装される。
【0059】
本開示をさらに説明するために、本明細書に実施例を示す。これらの実施例は例示を目的として提供されており、本開示の範囲を限定するものとして解釈されるべきではないことを理解されたい。
【実施例
【0060】
[実施例1]
【0061】
本明細書に開示される植物性クリームチーズ製品の一例を調製する。植物性クリームチーズ製品は、植物性タンパク質としてソラマメタンパク質(VITESSENCETM Pulse 3600プロテイン)、増粘剤としてジャガイモデンプン(ETENIATM 457 デンプン)、及び脂肪成分としてココナッツオイルとヒマワリ油との混成物(AKOVAGTM オイル)を含む。
【0062】
植物性クリームチーズ製品は、蒸気注入機能を備えた予熱したミキサー(Breddo)に水を加えることによって調製してもよい。ソラマメタンパク質を最初に水に加えて混合し、タンパク質を水和させる。次いで、ココナッツオイルとヒマワリ油との混成物を溶融する。ココナッツオイルとヒマワリ油との混成物は、10℃で約61%~約67%、及び20℃で約25%~約29%の範囲の固形脂肪含量を有する。次いで、溶融したココナッツオイルとヒマワリ油との混成物、クエン酸、塩、キサンタンガム、ローカストビーンガム、及びグアーガムの混成物、ジャガイモデンプン、香味料、ソルビン酸、並びに乳酸を、水及びタンパク質の混合物に添加する。その後、混合物を蒸気注入及び再循環によって180°Fまで加熱する。混合物の温度が170°Fに達すると、追加の香味料を添加してもよい。混合物の温度が170°Fに達したら、混合物のpH及び水分%をテストする。乳酸は、必要に応じて、最終的な植物性チーズ製品のpHを約4.0~約4.4の範囲にするのに有効な量で添加する。最終的な植物性チーズ製品の水分%を約60%~約70%の範囲内に調整するために、必要に応じて水も添加する。次いで、混合物を180°Fに加熱し、低温殺菌のために180°Fで1分間保持する。そして、混合物をホモジナイザーに加え、滑らかな質感を有する均質な混合物を生成するのに十分な時間、1000psiで混合する。その後、加熱した混合物を容器に包装し、放冷して冷蔵する。
【0063】
植物性チーズ製品の一般的な配合を、最終的な植物性チーズ製品の総重量に基づいて使用した各成分の重量%とともに表1に示す。
【0064】
【表1】
* VITESENCE(商標)パルス3600タンパク質
** AKOVAG(商標)オイル(AAK USA Inc.)
† 安定剤424(Ingredion)
†† ETENIA(商標)457デンプン
【0065】
[実施例2]
【0066】
2つの例示的な植物性クリームチーズ製品を調製した。第1の植物性クリームチーズ製品は、実施例1の表1に示される配合を使用して調製した。比較用の植物性クリームチーズ製品を、以下の表2に示す配合を用いて調製した。第1の植物性クリームチーズ製品は、ソラマメタンパク質を使用して調製し、また、比較用の植物性チーズ製品はタンパク質を使用せず、代わりにタンパク質をSHUR-FIL(登録商標)デンプン(Tate&Lyle)に置き換えて調製した。各植物性クリームチーズ製品は柔らかく、伸びやすい食感を有し、焼きたてのベーグル上に塗った。第1の植物性クリームチーズ製品は、不透明性を保持したが、比較用の植物性クリームチーズ製品は、焼いたベーグルに塗ると半透明になった。図2は、ベーグル上で第1の植物性クリームチーズ製品と比較用の植物性クリームチーズ製品とを比較した画像を提供しており、高温で基材上に広げた場合の製品の外観に及ぼすタンパク質の影響を示す。
【0067】
【表2】
【0068】
[実施例3]
【0069】
2つの例示的な植物性チーズ製品(サンプル「A」及び「B」)を、以下の表3に示す配合を用いて調製した。植物性クリームチーズ製品「A」の調製に使用した混合物は、直接蒸気注入によって加熱した。それに対して、植物性クリームチーズ製品「B」の調製に使用した混合物は、ジャケット付きミキサーを使用して間接蒸気で加熱した。サンプル「A」はオフホワイト色で、光沢のある湿った外観を示したが、サンプル「B」はサンプル「A」よりも若干の褐変とより鈍い外観を示した。図3は、サンプル「A」及びサンプル「B」を比較した画像を提供しており、製品の外観に対する直接蒸気注入の影響を示す。食感及び乳化安定性は両方のサンプルで実質的に類似していたが、サンプルBはわずかに色がくすみ(つまり、オフホワイト色)、調理されキャラメル化された香味の風合いを有した。
【0070】
【表3】
【0071】
[実施例4]
【0072】
植物性チーズ製品についてさらに2つの実施例を調製した。植物性チーズ製品の例はそれぞれ、植物性タンパク質としてソラマメタンパク質(VITESSENCETM Pulse 3600タンパク質)を含んだ。
【0073】
また、植物性チーズ製品について2つの比較例も調製した。比較例の植物性チーズ製品はタンパク質を含まずに調製した。その代わりに、比較例の植物性チーズ製品は、実施例の植物性チーズ製品よりも多量のデンプンを含んだ。以下の表4に示すように、安定剤及びデンプンに低レベルのタンパク質が含まれていることが判明したため、比較例の粗タンパク質パーセントは0.10重量%以下であった。
【0074】
各サンプル(すなわち、実施例の植物性チーズ製品及び比較例の植物性チーズ製品)は、成分を混成し、次いで165barの圧力で均質化することによって調製した。
【0075】
各サンプルの一般的な配合を、(植物性チーズ製品の総重量に対して)使用した各成分の重量%とともに表4に示す。各サンプルの(植物性チーズ製品の総重量に対する)脂肪パーセント、水分パーセント、pH、粗タンパク質パーセント、及び塩パーセントも表4に示す。pH及び粗タンパク質のパーセントは、それぞれ分析試験によって決定した。粗タンパク質のパーセントは、デュマ法またはAOAC公式法992.15によって測定してもよい。表4では、サンプルを「Comp. Ex. A」、「Comp. Ex. B」、「Ex. 0.5 wt% Faba」及び「Ex. 1 wt% Faba」と称する。
【0076】
【表4】
【0077】
各サンプルは柔らかく、伸びやすい食感を有し、焼きたてのベーグル上に塗った。Ex. 0.5 wt% Fabaサンプル及びEx. 1 wt% Fabaサンプルは不透明性を保持したが、Comp. Ex. Aサンプル及びComp. Ex. Bサンプルは、焼いたベーグル上に広げると半透明で光沢があった。図4は、ベーグル上のサンプルを比較した画像を提供しており、高温で基材上に広げた場合の製品の外観に及ぼすタンパク質の影響を示す。
【0078】
<光学顕微鏡>
各サンプルの光学顕微鏡(LM)画像を撮影した。LM画像は、AxoCam MRcデジタルカメラを備え、Zen2.6 Blueソフトウェアによって操作されるZeiss Imager.M2光学顕微鏡で撮影した。
【0079】
Comp. Ex. AサンプルのLM画像を図5及び図6に示す。図5は、光学顕微鏡の微分干渉コントラスト(DIC)光学系の下でのComp. Ex. Aのサンプルを示す。図6は、デンプンを暗青色に染色する染料であるルゴールヨウ素溶液で染色したComp. Ex. Aのサンプルを示す。
【0080】
Comp. Ex. BサンプルのLM画像を図7に示す。図7は、デンプンを暗青色に染色するルゴールヨウ素溶液で染色したComp. Ex. Bサンプルを示す。
【0081】
Ex 0.5 wt% FabaサンプルのLM画像を図8及び図9に示す。図8は、デンプンを暗青色に染色する、ルゴールヨウ素溶液で染色したEx 0.5 wt% Fabaサンプルを示す。図9は、タンパク質をピンク色に染色する染料である酸フクシンで染色したEx 0.5 wt% Fabaサンプルを示す。
【0082】
Ex 1 wt% FabaサンプルのLM画像を図10及び図11に示す。図10は、デンプンを暗青色に染色するルゴールヨウ素溶液で染色したEx 1 wt% Fabaサンプルを示す。図11は、タンパク質をピンク色に染色する酸フクシンで染色したEx 1 wt% Fabaサンプルを示す。
【0083】
図5及び図6に示すように、Comp. Ex. Aサンプル中の脂肪成分は、安定なエマルジョン中で個々の油滴を形成するのではなく、デンプン粒子から分離した遊離油(free oil)として存在した。図7に示すように、Comp. Ex. Bサンプルでは、脂肪成分の一部はデンプン粒子から分離した遊離油として存在し、脂肪成分の一部は液滴として存在した。図5から図7に示すように、デンプンは増粘剤として作用するが、乳化安定性には大きく寄与しなかった。したがって、より大きな脂肪滴が合体して、Comp. Ex. Aサンプル及びComp. Ex. Bサンプル中に遊離油のポケットを形成することができた。
【0084】
図8及び図9に示すように、Ex 0.5 wt% Fabaサンプル中の脂肪成分は液滴として存在し、また、図10及び図11に示すように、Ex 0.5 wt% Fabaサンプル中の脂肪成分は液滴として存在した。図8から図11に示すように、タンパク質は脂肪滴の表面をコーティングすることによってエマルジョンを安定化した。したがって、Ex 0.5 wt% Fabaサンプル及びEx 1 wt% Fabaサンプルでは、より小さな脂肪滴及びより均質な系が維持された。
【0085】
<脂肪滴サイズ分布>
各サンプルの脂肪滴サイズ分布は、Bruker時間領域核磁気共鳴液滴サイズ分析装置(Bruker TD-NMR液滴サイズ分析装置)を使用して、40℃の温度で測定した。NMR場の減衰曲線(強度対時間)を使用して、脂肪滴のサイズ分布を導き出した。測定を3回繰り返して行った。各サンプルの脂肪滴サイズ分布を、図12(直径(μm)の関数としての頻度分布パーセンテージ)及び図13(直径(μm)の関数としての累積分布パーセンテージ)に示す。各サンプルのD2.5(つまり、脂肪滴直径の2.5%がこの値未満である)、D50(つまり、脂肪滴直径の50%がこの値未満である)、D97.5(つまり、脂肪滴直径の97.5%がこの値未満である)、及びおよび分布幅(つまり、下記[数2]の標準偏差)を表5に示す。
【数2】
【0086】
【表5】
【0087】
図12図13、及び表5に示すように、Ex 0.5 wt% Fabaサンプル及びEx 1 wt% Fabaサンプルは、Comp. Ex. Aサンプル及びComp. Ex. Bサンプルよりも脂肪滴が小さかった。Ex 0.5 wt% Fabaサンプル及びEx 1 wt% Fabaサンプルはまた、狭い分布幅も有していた。ソラマメタンパク質を含むサンプルは、植物性タンパク質を含まないサンプルよりも安定化されていたために、脂肪滴が小さく、分布幅が狭いと考えられる。
【0088】
不透明性
【0089】
<光の強度>
図14に示すように、Ex 1 wt% Fabaサンプル及びComp. Ex. Aサンプルのそれぞれを、室温(21℃)で黒色基板上に塗り広げた。Ex 1 wt% Fabaサンプルは不透明であったが、Comp. Ex. Aのサンプルは半透明であった。画像は、室温での製品の外観に対するタンパク質の影響を示している。
【0090】
黒色基板上のEx 1 wt% Fabaサンプル及びComp. Ex. Aサンプルの光強度及び平均強度を測定した。サンプルを、Leica M205 C実体顕微鏡を使用して分析した。マクロ写真画像(図14に示す)は、ライカDMC4500カラーデジタルカメラによって捕捉し、ライカアプリケーションソフトウェア(LAS)によって処理した。各サンプルの図14に示す線に沿った位置の関数としての光強度を図15に示す。各サンプルの図14に示すボックス内の領域にわたる平均強度を図16に示す。
【0091】
図15に示すように、Comp. Ex. Aサンプルは、Ex 1 wt% Fabaサンプルよりも光強度のばらつきが大きかった。Comp. Ex. Aサンプルは、特定のライン位置で高い反射率を有し、光沢を示し、また、特定の位置で低い反射率(すなわち、光が容易に通過する)を有し、半透明性を示した。対照的に、Ex 1 wt% Fabaサンプルは、位置全体にわたってより均一な反射率を示し、不透明性を示した。図16に示すように、Comp. Ex. AサンプルはEx 1 wt% Fabaサンプルよりも高い平均強度を有し、Comp. Ex. AサンプルがEx 1 wt% Fabaサンプルよりも明るく、かつ不透明度が低いことを示した。
【0092】
<比色分析>
各サンプルの反射率による比色分析を、CIELAB色空間で測定した。HunterLab Aeros可視光分光光度計を使用して、室温(20℃~25℃)に保たれた容器内のサンプルの表面から反射された可視光のスペクトルを測定した。反射光の強度を波長(400~700nm)の関数としてプロットした。次いで、反射率スペクトルを使用して、各サンプルの L(明度)値、a(緑-赤)値、及びb(青-黄)値を計算した。各サンプルのL(明度)値、a(緑-赤)値、及びb(青-黄)値を表6に示す。
【0093】
【表6】
【0094】
<光透過>
室温及び高温の両方でサンプルを比較するために、各サンプル(20mm×10mm×2mmのキュベットに保持)を通る波長865nmの光の透過率を、LUMISIZER(登録商標)(LUM GmbH)を用いて2mm(光の経路長)の位置で測定した。サンプルを透過した光の強度を、キュベットの長さ(20mm)に沿ったさまざまな点において時間の関数として測定した。サンプルを透過した光の平均強度は、キュベットの長さに沿った透過率を積分することによって計算した。3分間の終了時の平均透過率をサンプルについて計算した。25℃及び40℃の温度で2回繰り返して測定を行った。各サンプルの平均積分透過率(最後の3分間のパーセント)を表7に示す。
【0095】
【表7】
【0096】
表7に示すように、Ex 0.5 wt% Fabaサンプル及びEx 1 wt% Fabaサンプルは、各温度においてComp. Ex. Aサンプル及びComp. Ex. Bサンプルよりも光透過率が低かった。したがって、光透過率の値は、Ex 0.5 wt% Fabaサンプル及びEx 1 wt% Fabaサンプルが室温及び高温の両方でComp. Ex. Aサンプル及びComp. Ex. Bサンプルよりも高い不透明度を有することを示している。
【0097】
<散乱光子の計数率>
各サンプルの散乱光子計数率(kcps)を25℃、40℃、及び60℃の温度で測定した。散乱光子計数率を測定するために、Malvern Instruments Zeta Sizer Ultra動的光散乱装置を使用した。波長630nmを有し、光子計数率が既知のレーザービームをキュベット内の2mLのサンプルに送り、入射光ビームに対して173度の角度に保持された検出器で散乱光強度を測定した。強度対時間曲線を2分間積分して、散乱光の平均強度を得た。各サンプルから導出された平均計数率(kcps)を表8に示す。
【0098】
【表8】
【0099】
散乱の程度は、サンプル内の粒子の数及び粒子のサイズに比例する。Ex 0.5 wt% Fabaサンプル及びEx 1 wt% Fabaサンプルでは、タンパク質の添加が脂肪成分液滴のサイズを減少させ、脂肪成分液滴による散乱を減少させた。Ex 0.5 wt% Fabaサンプル及びEx 1 wt% Fabaサンプルではまた、タンパク質の添加が、より大きなタンパク質分子の存在に起因して散乱をも増加させた。したがって、Ex 0.5 wt% Fabaサンプル及びEx 1 wt% Fabaサンプルは、25℃及び40℃で平均計数率(kcps)を導出し、これは、Comp. Ex. Aサンプル及びComp. Ex. Bサンプルのそれぞれ導出された平均計数率と同様であった。
【0100】
60℃では、脂肪成分が溶融して合体し、Ex 0.5 wt% Fabaサンプル及びEx 1 wt% Fabaサンプルにタンパク質を添加することで、散乱光強度が大幅に減少した。したがって、60℃で導出された平均計数率(kcps)は、Comp. Ex. Aサンプル及びComp. Ex. Bサンプルが、60℃において、Ex 0.5 wt% Fabaサンプル及びEx 1 wt% Fabaサンプルよりも明るく見えることを示している。
【0101】
食感(質感)
【0102】
<レオロジー熱分析>
TA Instruments ARES-G2 レオメーターを使用して、各サンプルに対してレオロジー熱分析を実施した。レオロジーデータは、サンプルの相対的な硬さ及び食感特性を示した。
【0103】
TA Instruments ARES-G2 レオメーターを使用して、サンプルを5℃/分の速度で0℃~80℃まで加熱しながら、厚さ2mm、直径25mmのディスクサンプルに正弦波せん断ひずみを印加して、結果として生じる応力波を測定した。テスト形状は、500mmのクロスハッチの底部ペルチェプレートを備えた25mmのクロスハッチの平行プレートであった。幾何学的ギャップはサンプルの厚さと同じであった(すなわち2mm)。サンプルは30℃で積載された。軸力は10g±5g、サンプリング速度は12秒/点であった。
【0104】
各サンプルの温度の関数としての複素粘度、弾性率、損失弾性率、並びにTanδ(つまり、損失弾性率(G”)と弾性率(G')との商(G”/G'))は、応力-ひずみ曲線から計算した。弾性率対温度の2つの重ね合わせ曲線が得られるまで、テストを繰り返した。各サンプルの温度(℃)の関数としての弾性率(Pa)を図17に示す。各サンプルの温度(℃)の関数としての周波数10rad/s(Pa・s)での複素粘度を図18に示し、また、各サンプルの温度(℃)の関数としてのtanδを図19に示す。各サンプルの温度5℃(冷蔵温度)、25℃(室温)、37℃(口腔温度)、80℃(加工温度)における弾性率(Pa)、損失弾性率(Pa)、Tanδ、及び複素粘度(Pa・s、周波数10rad/sにおける)を表9に示す。
【0105】
【表9】
【0106】
サンプルは損失弾性率よりも弾性率の値がはるかに大きい粘弾性ゲルであるため、弾性率は硬さとほぼ同じである。図17及び表9に示すように、Ex 0.5 wt% Fabaサンプル及びEx 1 wt% Fabaサンプルは、25℃~55℃の範囲内の温度において、Comp. Ex. Aサンプル及びComp. Ex. Bサンプルよりも高い弾性率を有し、したがってより硬かった。
【0107】
図18および表9に示すように、Ex 0.5 wt% Fabaサンプル及びEx 1 wt% Fabaサンプルは、25℃~55℃の範囲内の温度において、Comp. Ex. Aサンプル及びComp. Ex. Bサンプルよりも高い複素粘度を有した。したがって、図17図18、及び表9は、Ex 0.5 wt% Fabaサンプル及びEx 1 wt% Fabaサンプルが25℃~55℃の範囲内の温度において、望ましい乳製品のような、伸びやすいテクスチャーのサンプルを有したことを示した。
【0108】
25℃未満の温度では、デンプンがゲル化し、サンプルの硬さ及び粘度に寄与した。25℃~55℃の範囲内の温度では、デンプンゲルが溶融するため、Ex 0.5 wt% Fabaサンプル及びEx 1 wt% Fabaサンプルのタンパク質によってもたらされる乳化安定性により、(Comp. Ex. Aサンプル及びComp. Ex. Bサンプルと比較して)これらのサンプルの硬さ及び粘度が増加したと考えられる。さらに、タンパク質の安定化効果がなければ、デンプンゲルが溶融すると、Comp. Ex. Aサンプル及びComp. Ex. Bサンプルの脂肪滴が移動して合体し、その結果、これらのサンプルが(Ex 0.5 wt% Fabaサンプル及びEx 1 wt% Fabaサンプルと比較して)より速く軟化すると考えられている。
【0109】
[実施例5]
【0110】
植物性チーズ製品の追加の例を調製した。この実施例の一般的な配合を、使用した各成分の重量%(植物性チーズ製品の総重量に基づく)とともに表10に示す。この植物性チーズ製品は、望ましい乳製品のような白色を有しており、焼いたパンスライスまたはベーグルに塗布したときに不透明性を維持した。
【0111】
【表10】
【0112】
[実施例6]
得られるクリームチーズ製品に及ぼすタンパク質の影響を比較するために、クリームチーズ系の単純化モデルを作成した。クリームチーズ製品はデンプンベースの増粘剤を含んでいなかった。植物性クリームチーズ製品の13の実施例を調製した。各実施例を調製するために、タンパク質、グルコース、脂肪成分及び水の初期混合物を調製した。次いで、乳酸培養物、塩、及び安定剤を添加し、pH4.6未満になるようにサンプルを40℃で約18時間発酵させた。培養物は、CHR Hansenから入手した市販の培養物であった。発酵後、各サンプルを水浴中において手で混合しながら低温殺菌した。
【0113】
各実施例の初期及び最終混合物の一般的な配合を表11に示す。実施例の一般的な配合を、使用した各成分の重量%(初期混合物の総重量に基づく)とともに表11に示す。
【0114】
【表11】
【0115】
それぞれの実施例は、脂肪成分としてココナッツオイルを、及び安定剤としてローカストビーンガムを含んだ。各実施例に含まれる植物性タンパク質及び培養物を表12に示す。
【0116】
【表12】
【0117】
各実施例を容器に充填した。図20は、各実施例と欧州連合(EU)フィラデルフィア(登録商標)クリームチーズ(本明細書では「Phil EU」と呼ぶ)とを比較した画像を提供する。図20では、実施例は、含まれる植物性タンパク質によって識別される。図20に示すように、実施例1、実施例2、実施例5、実施例6、実施例7、実施例8、実施例12、及び実施例13は、望ましいオフホワイト色を有していた。
【0118】
容器内の各実施例、Phil EU、米国(USA)Philadelphia(登録商標)クリームチーズ(本明細書では「Phil USA」と称する)の反射率による比色を測定した。反射率による比色を、CIELAB 色空間で測定した。ここでは、実施例4で上述したものと同等の比色分析技術を使用した。
【0119】
各サンプルのa(緑-赤)値及びb(青-黄)値を図21に示す。図21のボックスは、望ましいa値とb値との組み合わせを示す。各サンプルのL(明度)値を図22に示す。図22の水平線より上のL値が望ましい。
【0120】
図21及び22に示すように、実施例1、実施例2、実施例5、実施例6、実施例7、実施例8、実施例12、及び実施例13は、望ましいa、b、及びL値を有していた。また、図22に示すように、実施例8は、Phil USAのL値に最も近いL値を有していた。したがって、図20から図22は、大豆、ひよこ豆、及びそら豆タンパク質により、望ましい色の植物性クリームチーズ製品が生成されることを示している。
【0121】
本開示をさらに説明するために、本明細書では態様を示す。これらの態様は例示を目的として提供されており、本開示の範囲を限定するものとして解釈されるべきではないことを理解されたい。
【0122】
[態様]
第1の態様では、本開示は、植物性タンパク質、安定剤、増粘剤、並びに10℃で約50%~約80%、及び20℃で約15%~約40%の範囲内の固形脂肪含量を有する脂肪成分を含む植物性チーズ製品に関する。
【0123】
第2の態様では、本開示は、植物性チーズ製品のpHが約3.5~約5.0であることに有効な量の酸味料をさらに含む、第1の態様の植物性チーズ製品に関する。
【0124】
第3の態様では、本開示は、植物性チーズ製品の水分%が約50%~約80%であることに有効な量の水をさらに含む、第1の態様または第2の態様の植物性チーズ製品に関する。
【0125】
第4の態様では、本開示は、植物性タンパク質がソラマメタンパク質、エンドウ豆タンパク質、及び大豆タンパク質のうちの1つ以上を含む、第1の態様から第3の態様のいずれか1つの植物性チーズ製品に関する。
【0126】
第5の態様では、本開示は、脂肪成分がココナッツオイル及びヒマワリ油を含む、第1の態様から第4の態様のいずれか1つの植物性チーズ製品に関する。
【0127】
第6の態様では、本開示は、増粘剤がデンプンを含む、第1の態様から第5の態様のいずれか1つの植物性チーズ製品に関する。
【0128】
第7の態様では、本開示は、デンプンが酵素的に変換されたジャガイモデンプンである、第6の態様の植物性チーズ製品に関する。
【0129】
第8の態様では、本開示は、安定剤が少なくとも1つの親水コロイドを含む、第1の態様から第7の態様のいずれか1つの植物性チーズ製品に関する。
【0130】
第9の態様では、本開示は、少なくとも1つの親水コロイドが、イヌリン、ペクチン、カルボキシメチルセルロース、カラギーナン、アラビアゴム、キサンタンガム、ローカストビーンガム、及びグアーガムのうちの1つ以上を含む、第8の態様の植物性チーズ製品に関する。
【0131】
第10の態様では、本開示は、少なくとも1つの親水コロイドがキサンタンガム、ローカストビーンガム、及びグアーガムの組み合わせを含む、第8の態様の植物性チーズ製品に関する。
【0132】
第11の態様では、本開示は、少なくとも1つの親水コロイドがローカストビーンガムを含む、第8の態様の植物性チーズ製品に関する。
【0133】
第12の態様では、本開示は、植物性チーズ製品がクリームチーズ製品の形態である、第1の態様から第11の態様のいずれか1つの植物性チーズ製品に関する。
【0134】
第13の態様では、本開示は、植物性チーズ製品が動物由来のタンパク質を含まない、第1の態様から第12の態様のいずれか1つの植物性チーズ製品に関する。
【0135】
第14の態様では、本開示は、植物性タンパク質が、植物性チーズ製品の総重量に対して、粗タンパク質約0.01重量%~約15重量%の範囲内の量で存在する、第1の態様から第13の態様のいずれか1つの植物性チーズ製品に関する。
【0136】
第15の態様では、本開示は、安定剤が植物性チーズ製品の総重量に対して、約0.01重量%~約5重量%の範囲内の量で存在し、かつ、増粘剤が植物性チーズ製品の総重量に対して、約1重量%~約25重量%の範囲内の量で存在する、第1の態様から第14の態様のいずれか1つの植物性チーズ製品に関する。
【0137】
第16の態様では、本開示は、脂肪成分が植物性チーズ製品の総量に対して、約15重量%~約35重量%の範囲内の量で存在する、第1の態様から第15の態様のいずれか1つの植物性チーズ製品に関する。
【0138】
第17の態様では、本開示は、植物性チーズ製品を製造する方法であって、水、植物性タンパク質、増粘剤、安定剤、及び脂肪成分を混合して混合物を形成するステップであって、該脂肪成分は10℃で約50%~約80%、及び20℃で約15%~約40%の範囲内の固形脂肪含量を有する、混合するステップと;直接蒸気注入により混合物を約150°F~約200°Fの範囲内の温度に加熱するステップと;並びに、加熱した混合物を均質化して植物性チーズ製品を形成するステップと、を含み、ここで、蒸気の注入による加熱は、均質化の前または均質化中に行い得る、植物性チーズ製品を製造する方法に関する。
【0139】
第18の態様では、本開示は、植物性チーズ製品を容器に充填するステップをさらに含む、第17の態様の方法に関する。
【0140】
第19の態様では、本開示は、混合物が直接蒸気注入を介して、約1秒~約5分間、約150°F~約200°Fの範囲内の温度まで加熱される、第17の態様または第18の態様の方法に関する。
【0141】
第20の態様では、本開示は、植物性チーズ製品のpHを約3.5~5.0の範囲内にするために混合物に酸味料を添加するステップをさらに含む、第17の態様から第19の態様のいずれか1つの方法に関する。
【0142】
第21の態様では、本開示は、少なくとも1つの香味料を混合物に添加するステップをさらに含む、第17の態様から第20の態様のいずれか1つの方法に関する。
【0143】
第22の態様では、本開示は、植物性チーズ製品の水分%を約50%~約80%の範囲内にするような量で水が混合物に添加される、第17の態様から第21の態様のいずれか1つの方法に関する。
【0144】
第23の態様では、本開示は、植物性タンパク質が植物性チーズ製品の総重量に対して、粗タンパク質約0.01重量%~約15重量%の範囲内の量で存在し;安定剤が植物性チーズ製品の総重量に対して、約0.01重量%~約5重量%の範囲内の量で存在し;増粘剤が植物性チーズ製品の総重量に対して、約1重量%~約25重量%の範囲内の量で存在し;及び脂肪成分が植物性チーズ製品の総重量に対して、約15重量%~約35重量%の範囲内の量で存在する、第17の態様から第22の態様のいずれか1つの方法に関する。
【0145】
第24の態様では、本開示は、植物性チーズ製品を製造する方法であって、植物性タンパク質を水に加えて第1の混合物を形成するステップと;10℃で約50%~約80%、及び20℃で約15%~約40%の範囲内の固形脂肪含量を有する脂肪成分を溶融するステップと;溶融した脂肪成分、安定剤、及び増粘剤を第1の混合物に添加し、混合して第2の混合物を形成するステップと;第2の混合物に直接蒸気を注入して第2の混合物を低温殺菌するステップと;並びに第2の混合物を均質化して植物性チーズ製品を形成するステップと、を含み、ここで、蒸気の注入による加熱は、均質化の前または均質化中に行い得る、植物性チーズ製品を製造する方法に関する。
【0146】
第25の態様では、本開示は、植物性チーズ製品のpHを約3.5~約5.0の範囲内にするのに有効な量の酸味料を第2の混合物に添加するステップをさらに含む、第24の態様の方法に関する。
【0147】
第26の態様では、本開示は、植物性チーズ製品がクリームチーズ製品の形態である、第24の態様または第25の態様の方法に関する。
【0148】
第27の態様では、本開示は、植物性チーズ製品が動物由来のタンパク質を含まない、第24の態様から第26の態様のいずれか1つの方法に関する。
【0149】
第28の態様では、本開示は、植物性タンパク質が植物性チーズ製品の総重量に対して、粗タンパク質約0.01重量%~約15重量%の範囲内の量で存在し;安定剤が植物性チーズ製品の総重量に対して、約0.01重量%~約5重量%の範囲内の量で存在し;増粘剤が植物性チーズ製品の総重量に対して、約1重量%~約25重量%の範囲内の量で存在し;及び、脂肪成分が植物性チーズ製品の総重量に対して、約15重量%~約35重量%の範囲内の量で存在する、第24の態様から第27の態様のいずれか1つの方法に関する。
【0150】
さらにまたは代わりに、本開示は以下の態様に関し得る。
【0151】
第1の態様では、本開示は、植物性クリームチーズの重量に対して、約0.2重量%~約8重量%の植物性粗タンパク質;約0.01重量%~約5重量%の安定剤;約1重量%~約12重量%のデンプンベースの増粘剤;及び約10重量%~約50重量%の脂肪成分を含む均質な混合物の形態の植物性クリームチーズ製品であって、植物性クリームチーズ製品の脂肪成分は、40℃で約1.5μm~約7μmの範囲内のD50値を有する油滴の形態である、植物性クリームチーズ製品に関する。
【0152】
第2の態様では、本開示は、植物性クリームチーズ製品の脂肪成分は、40℃で約1.5μm~約6.75μmの範囲内のD50値を有する油滴の形態である、第1の態様の植物性クリームチーズ製品に関する。
【0153】
第3の態様では、本開示は、植物性クリームチーズ製品の脂肪成分は、分布幅5.0μm以下の油滴の形態である、第1の態様または第2の態様の植物性クリームチーズ製品に関する。
【0154】
第4の態様では、本開示は、植物性クリームチーズ製品の脂肪成分は、分布幅4.0μm以下の油滴の形態である、第1の態様から第3の態様のいずれか1つに記載の植物性クリームチーズ製品に関する。
【0155】
第5の態様では、本開示は、植物性チーズ製品が、10rad/sの周波数及び25℃の温度において約400Pa・s~約1200Pa・sの範囲内の複素粘度を有する、第1の態様から第4の態様のいずれか1つの植物性クリームチーズ製品に関する。
【0156】
第6の態様では、本開示は、植物性チーズ製品が、10rad/sの周波数及び25℃の温度において約400Pa・s~約1150Pa・sの範囲内の複素粘度を有する、第1の態様から第5の態様のいずれか1つの植物性クリームチーズ製品に関する。
【0157】
第7の態様では、本開示は、植物性チーズ製品が、10rad/sの周波数及び37℃の温度において約300Pa・s~約1000Pa・sの範囲内の複素粘度を有する、第1の態様から第6の態様のいずれか1つの植物性クリームチーズ製品に関する。
【0158】
第8の態様では、本開示は、植物性チーズ製品が、10rad/sの周波数及び37℃の温度において約300Pa・s~約750Pa・sの範囲内の複素粘度を有する、第1の態様から第7の態様のいずれか1つの植物性クリームチーズ製品に関する。
【0159】
第9の態様では、本開示は、植物性チーズ製品が25℃の温度で約4000Pa~約8000Paの範囲内の弾性率を有する、第1の態様から第8の態様のいずれか1つの植物性クリームチーズ製品に関する。
【0160】
第10の態様では、本開示は、植物性チーズ製品が25℃の温度で約4000Pa~約7500Paの範囲内の弾性率を有する、第1の態様から第9の態様のいずれか1つの植物性クリームチーズ製品に関する。
【0161】
第11の態様では、本開示は、植物性チーズ製品が37℃の温度で約3000Pa~約7000Paの範囲内の弾性率を有する、第1の態様から第10の態様のいずれか1つの植物性クリームチーズ製品に関する。
【0162】
第12の態様では、本開示は、植物性チーズ製品が37℃の温度で約3000Pa~約6000Paの範囲内の弾性率を有する、第1の態様から第11の態様のいずれか1つの植物性クリームチーズ製品に関する。
【0163】
第13の態様では、本開示は、脂肪成分が10℃で約50%~約90%、及び20℃で約15%~約45%の範囲内の固形脂肪含量を有する、第1の態様から第12の態様のいずれか1つの植物性クリームチーズ製品に関する。
【0164】
第14の態様では、本開示は、デンプンベースの増粘剤がせん断耐性デンプンである、第1の態様から第13の態様のいずれか1つの植物性クリームチーズ製品に関する。
【0165】
第15の態様では、本開示は、植物性粗タンパク質が、ソラマメタンパク質、エンドウタンパク質、及び大豆タンパク質のうちの1つ以上を含む、第1の態様から第14の態様のいずれか1つに記載の植物性クリームチーズ製品に関する。
【0166】
第16の態様では、本開示は、植物性粗タンパク質がソラマメタンパク質である、第1の態様から第15の態様のいずれか1つに記載の植物性クリームチーズ製品に関する。
【0167】
第17の態様では、本開示は、脂肪成分がココナッツオイル及びヒマワリ油のうちの1つ以上を含む、第1の態様から第16の態様のいずれか1つの植物性クリームチーズ製品に関する。
【0168】
第18の態様では、本開示は、脂肪成分がココナッツオイルを含む、第1の態様から第17の態様のいずれか1つの植物性クリームチーズ製品に関する。
【0169】
第19の態様では、本開示は、安定剤が少なくとも1つの親水コロイドを含む、第1の態様から第18の態様のいずれか1つの植物性クリームチーズ製品に関する。
【0170】
第20の態様では、本開示は、少なくとも1つの親水コロイドが、イヌリン、ペクチン、カルボキシメチルセルロース、カラギーナン、アラビアゴム、キサンタンガム、ローカストビーンガム、及びグアーガムのうちの1つ以上を含む、第1の態様から第19の態様のいずれか1つの植物性クリームチーズ製品に関する。
【0171】
第21の態様では、本開示は、少なくとも1つの親水コロイドがキサンタンガム、ローカストビーンガム、及びグアーガムの組み合わせを含む、第1の態様から第20の態様のいずれか1つの植物性クリームチーズ製品に関する。
【0172】
第22の態様では、本開示は、少なくとも1つの親水コロイドがローカストビーンガムを含む、第1の態様から第21の態様のいずれか1つの植物性クリームチーズ製品に関する。
【0173】
第23の態様では、本開示は、安定剤が植物性クリームチーズ製品の総重量に対して、約0.01重量%~約1重量%の範囲内の量で存在し、及びデンプンベースの増粘剤が植物性クリームチーズ製品の総重量に対して、約3重量%~約10重量%の範囲内の量で存在する、第1の態様から第22の態様のいずれか1つの植物性クリームチーズ製品に関する。
【0174】
第24の態様では、本開示は、脂肪成分が植物性クリームチーズ製品の総重量に対して、約15重量%~約35重量%の範囲内の量で存在する、第1の態様から第23の態様のいずれか1つの植物性クリームチーズ製品に関する。
【0175】
第25の態様では、本開示は、水、植物性粗タンパク質、デンプンベースの増粘剤、安定剤、及び脂肪成分を混合して混合物を形成すること、混合物を約150°F~約200°Fの範囲内の温度に加熱すること、並びに加熱された混合物を均質化して植物性クリームチーズ製品を形成すること、を含む、第1の態様から第24の態様のいずれか1つに記載の植物性クリームチーズ製品の製造に関する。
【0176】
第26の態様では、本開示は、植物性クリームチーズ製品を容器に充填するステップと、植物性クリームチーズ製品を冷蔵温度まで冷却するステップと、をさらに含む、第25の態様の方法に関する。
【0177】
第27の態様では、本開示は、混合物は、直接蒸気注入を介して、約1秒~約5分間、約150°F~約200°Fの範囲内の温度まで加熱される、第25の態様または第26の態様の方法に関する。
【0178】
第28の態様では、本開示は、植物性クリームチーズ製品のpHを約3.5~5.0の範囲内にするために、混合物に酸味料を添加するステップをさらに含む、第25の態様から第27の態様のいずれか1つの方法に関する。
【0179】
第29の態様では、本開示は、水が、植物性クリームチーズ製品において約50%~約80%の範囲内の水分%になるような量で混合物に添加される、第25の態様から第28の態様のいずれか1つの方法に関する。
【0180】
第30の態様では、本開示は、植物性タンパク質を水に添加して第1の混合物を形成するステップと、10℃で約50%~約90%、及び20℃で約15%~約45%の範囲内の固形脂肪含量を有する脂肪成分を溶融するステップと、溶融した脂肪成分、安定剤、及びデンプンベースの増粘剤を第1の混合物に添加し、混合して第2の混合物を形成するステップと、第2の混合物を加熱して第2の混合物を低温殺菌するステップと、第2の混合物を均質化して植物性クリームチーズ製品を形成するステップと、を含む、第1の態様から第24の態様のいずれか1つに記載の植物性クリームチーズ製品の製造方法に関する。
【0181】
第31の態様では、本開示は、植物性クリームチーズ製品を容器に充填するステップと、植物性クリームチーズ製品を冷蔵温度まで冷却するステップと、をさらに含む、第30の態様の方法に関する。
【0182】
第32の態様では、本開示は、第2の混合物の加熱が、約1秒~約5分間、約150°F~約200°Fの範囲内の温度まで直接蒸気注入によって行われる、第30の態様または第31の態様の方法に関する。
【0183】
第33の態様では、本開示は、植物性クリームチーズ製品のpHを約3.5~5.0の範囲内にするために第1または第2の混合物に酸味料を添加するステップをさらに含む、第30の態様から第32の態様のいずれか1つの方法に関する。
【0184】
第34の態様では、本開示は、水が、植物性クリームチーズ製品中に約50%~約80%の範囲内の水分%になるような量で含まれる、第30の態様から第33の態様のいずれか1つの方法に関する。
【0185】
本明細書で提供される範囲は、記載された範囲及び記載された範囲内の任意の値または部分範囲を含むことを理解されたい。例えば、約5重量%~約15重量%の範囲は、明示的に列挙された約5重量%から約15重量%の範囲の限界だけでなく、6.35重量%、7.5重量%、10重量%、12.75重量%、14重量%などの個別の値、及び約7重量%から約10.5重量%、約8.5重量%から約12.7重量%、約9.75重量%から約14重量%などの部分範囲をも含むと解釈されるべきである。さらに、「約(about)」が使用されて値を記載する場合、これは、記載された値からのわずかな変動(最大+/-10%)を包含することを意味する。
【0186】
すべてのパーセンテージ及び比率は、特に指定がない限り、重量換算である。すべてのパーセンテージ及び比率は、特に指定がない限り、化合物または組成物の総重量に基づいて計算される。
【0187】
本明細書全体にわたる「ある例」、「一例」、「別の例」、「いくつかの例」、「他の例」などへの言及は、その例に関連して説明される特定の要素(例えば、特徴、構造、及び/または特性)が本明細書に記載される少なくとも1つの例に含まれ、他の例には存在してもしなくてもよいことを意味する。さらに、文脈上明らかに別段の指示がない限り、任意の例について記載された要素は、様々な例において任意の適切な方法で組み合わせることができることを理解されたい。
【0188】
本明細書に開示される例の説明及び特許請求において、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈上明らかに別段の指示がない限り、複数の指示対象を含む。
【0189】
いくつかの例を詳細に説明したが、開示された例は変更できることを理解されたい。したがって、前述の説明は限定的なものではないとみなされるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
【手続補正書】
【提出日】2023-04-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
均質な混合物の形態の非発酵の植物性クリームチーズ製品であって、
前記植物性クリームチーズ製品の重量に対して、約0.2重量%~約8重量%の植物性粗タンパク質と、
約0.01重量%~約5重量%の安定剤と、
約1重量%~約12重量%のデンプンベースの増粘剤と、
約10重量%~約50重量%の脂肪成分と、
を含み、
ここで、前記植物性クリームチーズ製品の前記脂肪成分は、40℃で約1.5μm~約7μmの範囲内のD50値を有する油滴の形態である、
非発酵の植物性クリームチーズ製品。
【請求項2】
前記植物性クリームチーズ製品の前記脂肪成分は、40℃で約1.5μm~約6.75μmの範囲内のD50値を有する油滴の形態である、請求項1に記載の非発酵の植物性クリームチーズ製品。
【請求項3】
前記植物性クリームチーズ製品の前記脂肪成分は、分布幅5.0μm以下の油滴の形態である、請求項1または2に記載の非発酵の植物性クリームチーズ製品。
【請求項4】
前記植物性クリームチーズ製品の前記脂肪成分は、分布幅4.0μm以下の油滴の形態である、請求項1~3のいずれか一項に記載の非発酵の植物性クリームチーズ製品。
【請求項5】
前記植物性チーズ製品は、10rad/sの周波数及び25℃の温度において約400Pa・s~約1200Pa・sの範囲内の複素粘度を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の非発酵の植物性クリームチーズ製品。
【請求項6】
前記植物性チーズ製品は、10rad/sの周波数及び25℃の温度において約400Pa・s~約1150Pa・sの範囲内の複素粘度を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の非発酵の植物性クリームチーズ製品。
【請求項7】
前記植物性チーズ製品は、10rad/sの周波数及び37℃の温度において約300Pa・s~約1000Pa・sの範囲内の複素粘度を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の非発酵の植物性クリームチーズ製品。
【請求項8】
前記植物性チーズ製品は、10rad/sの周波数及び37℃の温度において約300Pa・s~約750Pa・sの範囲内の複素粘度を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の非発酵の植物性クリームチーズ製品。
【請求項9】
前記植物性チーズ製品は、25℃の温度で約4000Pa~約8000Paの範囲内の弾性率を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の非発酵の植物性クリームチーズ製品。
【請求項10】
前記植物性チーズ製品は、25℃の温度で約4000Pa~約7500Paの範囲内の弾性率を有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の非発酵の植物性クリームチーズ製品。
【請求項11】
前記植物性チーズ製品は、37℃の温度で約3000Pa~約7000Paの範囲内の弾性率を有する、請求項1~10のいずれか一項に記載の非発酵の植物性クリームチーズ製品。
【請求項12】
前記植物性チーズ製品は、37℃の温度で約3000Pa~約6000Paの範囲内の弾性率を有する、請求項1~11のいずれか一項に記載の非発酵の植物性クリームチーズ製品。
【請求項13】
前記脂肪成分は、10℃で約50%~約90%、及び20℃で約15%~約45%の範囲内の固形脂肪含量を有する、請求項1~12のいずれか一項に記載の非発酵の植物性クリームチーズ製品。
【請求項14】
前記デンプンベースの増粘剤はせん断耐性デンプンである、請求項1~13のいずれか一項に記載の非発酵の植物性クリームチーズ製品。
【請求項15】
前記植物性粗タンパク質は、ソラマメタンパク質、エンドウタンパク質、及び大豆タンパク質のうちの1つ以上を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の非発酵の植物性クリームチーズ製品。
【請求項16】
前記植物性粗タンパク質はソラマメタンパク質である、請求項1~15のいずれか一項に記載の非発酵の植物性クリームチーズ製品。
【請求項17】
前記脂肪成分は、ココナッツオイル及びヒマワリ油のうちの1つ以上を含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の非発酵の植物性クリームチーズ製品。
【請求項18】
前記脂肪成分はココナッツオイルを含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の非発酵の植物性クリームチーズ製品。
【請求項19】
前記安定剤は少なくとも1つの親水コロイドを含む、請求項1~18のいずれか一項に記載の非発酵の植物性クリームチーズ製品。
【請求項20】
前記少なくとも1つの親水コロイドは、イヌリン、ペクチン、カルボキシメチルセルロース、カラギーナン、アラビアゴム、キサンタンガム、ローカストビーンガム、及びグアーガムのうちの1つ以上を含む、請求項1~19のいずれか一項に記載の非発酵の植物性クリームチーズ製品。
【請求項21】
前記少なくとも1つの親水コロイドは、キサンタンガム、ローカストビーンガム、及びグアーガムの組み合わせを含む、請求項1~20のいずれか一項に記載の非発酵の植物性クリームチーズ製品。
【請求項22】
前記少なくとも1つの親水コロイドはローカストビーンガムを含む、請求項1~21のいずれか一項に記載の非発酵の植物性クリームチーズ製品。
【請求項23】
前記安定剤は、前記植物性クリームチーズ製品の総重量に対して、約0.01重量%~約1重量%の範囲内の量で存在し、及び前記デンプンベースの増粘剤は、該植物性クリームチーズ製品の総重量に対して、約3重量%~約10重量%の範囲内の量で存在する、請求項1~22のいずれか一項に記載の非発酵の植物性クリームチーズ製品。
【請求項24】
前記脂肪成分は、前記植物性クリームチーズ製品の総重量に対して、約15重量%~約35重量%の範囲内の量で存在する、請求項1~23のいずれか一項に記載の非発酵の植物性クリームチーズ製品。
【国際調査報告】