(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-04
(54)【発明の名称】細胞療法により誘発された毒性の監視及び管理
(51)【国際特許分類】
G01N 33/68 20060101AFI20240828BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20240828BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20240828BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240828BHJP
C12N 15/09 20060101ALN20240828BHJP
【FI】
G01N33/68
G01N33/53 D
G01N33/53 M
G01N33/53 P
A61K35/17
A61P35/00
C12N15/09 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024504967
(86)(22)【出願日】2022-07-29
(85)【翻訳文提出日】2024-01-26
(86)【国際出願番号】 US2022074306
(87)【国際公開番号】W WO2023010114
(87)【国際公開日】2023-02-02
(32)【優先日】2021-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】514266932
【氏名又は名称】カイト ファーマ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Kite Pharma, Inc
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ソン チンホワ
【テーマコード(参考)】
2G045
4C087
【Fターム(参考)】
2G045AA13
2G045AA25
2G045CA25
2G045CA26
2G045DA36
2G045FB02
2G045FB03
4C087BB37
4C087BB65
4C087CA12
4C087NA07
4C087ZB26
(57)【要約】
本開示は、概して、細胞療法患者が細胞療法後に毒性を経験する可能性が高いか又はそうではないと同定するための組成物及び方法に関する。方法は、患者における血清IL-15及びMCP-1レベルなどの治療前共変量、又は投与されている細胞の生存率を使用して、そのような毒性の発症の可能性を予測することができるという発見に基づく。患者が毒性を経験する可能性が高いか又はそうではないと同定されると、毒性を監視及び管理するための組成物及び方法も提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者が細胞療法後に毒性を経験する可能性が高いか又はそうではないと同定するための方法であって、
前記患者の血液試料中のIL-15(インターロイキン-15)及びMCP-1(単球走化性タンパク質-1)のうちの少なくとも1つのレベルを測定することと、
IL-15若しくはMCP-1の前記レベルが対応する参照レベルよりも高い場合に、前記患者が前記細胞療法後に毒性を経験する可能性が高いと同定するか、又はIL-15若しくはMCP-1レベルが対応する参照レベルよりも低い場合に、前記患者が前記細胞療法後に毒性を経験する可能性が高くないと同定することと、を含み、
前記細胞療法が、免疫細胞の投与を含む、方法。
【請求項2】
前記患者が毒性を経験する可能性が高いと同定される場合に、前記患者における前記毒性を予防又は治療することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
治療又は予防が、抗ヒスタミン剤、コルチコステロイド、抗低血圧剤、IL-6阻害剤、GM-CSF阻害剤、及び非ステロイド性抗炎症薬からなる群から選択される薬剤の投与を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記治療又は予防が、トシリズマブ、デキサメタゾン、レベチラセタム、レンジルマブ、メチルプレドニゾロン、アナキンラ、シルツキシマブ、ルキソリチニブ、シクロホスファミド、IVIG(静脈内免疫グロブリン)、及びATG(抗胸腺細胞グロブリン)からなる群から選択される薬剤の投与を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記免疫細胞が、キメラ抗原受容体(CAR)を発現するように操作されたT細胞を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記CARが、CD19(分化抗原群19)タンパク質に対する結合特異性を有する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記血液試料が、前記細胞療法前に前記患者から得られた血清試料である、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記血液試料が、前記患者のプレコンディショニング治療後に得られる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記プレコンディショニング治療が、前記患者におけるリンパ球を低減させる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記毒性が、サイトカイン放出症候群(CRS)、神経学的事象(NE)、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記毒性が、早発性毒性である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記早発性毒性が、前記細胞療法後4日以内に発生する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
IL-15又はMCP-1についての前記参照レベルが、前記細胞療法後に前記毒性を経験する患者及び前記細胞療法後に前記毒性を経験しない患者から決定される、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記細胞療法において使用される細胞の生存率を測定することを更に含み、前記IL-15若しくはMCP-1レベルが前記対応する参照レベルよりも高く、前記細胞生存率が参照細胞生存率よりも高い場合に、前記患者が、前記細胞療法後に毒性を経験する可能性が高いと同定されるか、又は前記IL-15若しくはMCP-1レベルが前記対応する参照レベルよりも低く、前記細胞生存率が前記参照細胞生存率よりも低い場合に、前記患者が、前記細胞療法後に毒性を経験する可能性が高くないと同定される、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記患者のベースラインヘモグロビン、ベースライン腫瘍量、ベースラインLDH、ベースラインクレアチニン、及びベースラインカルシウムの1つ以上のレベルを得ることを更に含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
細胞療法を受けている患者における毒性を予防又は治療するための方法であって、
前記患者が細胞療法後に毒性を経験する可能性が高いか又はそうではないと同定することであって、
前記患者の血液試料中のIL-15(インターロイキン-15)及びMCP-1(単球走化性タンパク質-1)のうちの少なくとも1つのレベルを測定することと、
IL-15若しくはMCP-1の前記レベルが対応する参照レベルよりも高い場合に、前記患者が前記細胞療法後に毒性を経験する可能性が高いと同定するか、又はIL-15若しくはMCP-1レベルが対応する参照レベルよりも低い場合に、前記患者が前記細胞療法後に毒性を経験する可能性が高くないと同定することと、を含む、同定することと、
前記患者が前記細胞療法後に毒性を経験する可能性が高いと同定された場合に、サイトカイン放出症候群(CRS)又は神経学的事象(NE)を予防又は治療する薬剤を前記患者に投与することと、を含む、方法。
【請求項17】
前記薬剤が、抗ヒスタミン剤、コルチコステロイド、抗低血圧剤、IL-6阻害剤、GM-CSF阻害剤、及び非ステロイド性抗炎症薬からなる群から選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記薬剤が、トシリズマブ、デキサメタゾン、レベチラセタム、レンジルマブ、メチルプレドニゾロン、アナキンラ、シルツキシマブ、ルキソリチニブ、シクロホスファミド、IVIG(静脈内免疫グロブリン)、及びATG(抗胸腺細胞グロブリン)からなる群から選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記細胞療法において使用される細胞の生存率を測定することを更に含み、前記IL-15若しくはMCP-1レベルが前記対応する参照レベルよりも高く、前記細胞生存率が参照細胞生存率よりも高い場合に、前記患者が、前記細胞療法後に毒性を経験する可能性が高いと同定されるか、又は前記IL-15若しくはMCP-1レベルが前記対応する参照レベルよりも低く、前記細胞生存率が前記参照細胞生存率よりも低い場合に、前記患者が、前記細胞療法後に毒性を経験する可能性が高くないと同定される、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記患者のベースラインヘモグロビン、ベースライン腫瘍量、ベースラインLDH、ベースラインクレアチニン、及びベースラインカルシウムの1つ以上のレベルを得ることを更に含む、請求項16~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
患者が細胞療法後に毒性を経験する可能性が高いと同定するのに有用なキット又はパッケージであって、生物学的試料中のIL-15及びMCP-1の発現レベルを測定するためのポリヌクレオチドプライマ又はプローブ又は抗体を含む、キット又はパッケージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2021年7月30日に出願された米国仮特許出願第63/227,677号、及び2021年11月15日に出願された米国仮特許出願第63/279,615号に対する優先権を主張するものであり、それらの各々の内容全体は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本開示は、患者が細胞療法治療後に毒性を経験する可能性が高いか又はそうではないかどうかを決定するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
キメラ抗原受容体T細胞(Chimeric antigen receptor T cell:CAR T細胞としても知られる)は、免疫療法において使用するための人工T細胞受容体を産生するように遺伝子操作されたT細胞である。CAR-T療法は、リンパ腫及び場合により固形がんの管理を改善する潜在性を有する。2つの抗CD19 CAR T細胞産物である、アキシカブタゲンシロルユーセル(axicabtagene ciloleucel、axi-cel)及びチサゲンレクルユーセルは、再発性/難治性大細胞型B細胞リンパ腫の管理のために承認されている。
【0004】
しかしながら、CAR-T療法は、2つの一般的な毒性である、サイトカイン放出症候群(cytokine release syndrome、CRS)及び免疫エフェクタ細胞関連神経毒性症候群(immune effector cell-associated neurotoxicity syndrome、ICANS)と関連しており、これらは典型的には、療法後に急性に観察される。加えて、遅発性毒性には、長期の血球減少及びオンターゲットオフ腫瘍効果が含まれる。
【0005】
CRSは、CAR-T細胞による腫瘍認識に対するその活性化後のサイトカインの放出によって引き起こされた全身性炎症応答である。CAR-T細胞はまた、マクロファージなどのバイスタンダー免疫細胞を活性化し、次に炎症性サイトカインを放出し、CRSの病態生理に寄与する可能性が高い。CRSは、典型的には、発熱、筋肉痛、硬直、倦怠感、及び食欲不振の症状を伴って発生する。CRSはまた、多臓器機能不全をもたらし得る。
【0006】
ICANSは、CRS中、又はより一般的にはCRSが鎮静した後に発生し得る。ICANSは、典型的には、喚語困難、失語、及び錯乱を伴う中毒性脳症として現れるが、より重度な症例では、意識レベルの低下、昏睡、発作、運動まひ、及び脳浮腫に進行し得る。サイトカイン、ケモカイン、及びCAR-T細胞増殖の程度は、神経毒性の重症度と関連している。
【0007】
CRS及び神経毒性の監視が、CAR-T注入を受けている患者に必要とされる。毒性の潜在的重症度を考慮すると、そのような監視は、認定された医療施設において7日間毎日行われる必要がある。加えて、患者は、注入後少なくとも4週間、認定された医療施設の近くに留まるように指示される。そのような監視は、相当な費用をもたらす。
【0008】
毒性治療を必要とするもののみが施設内に留まることを必要として、不必要な入院を削減するのに役立ち得るように、そのような毒性の発症を予測する方法が強く必要とされている。また、毒性を経験する可能性が高いと予測されるものは、毒性に対する適切な治療又は予防を受けることができる。
【発明の概要】
【0009】
本開示は、細胞療法患者が、細胞療法後に毒性を経験する可能性が高いか又はそうではないと同定するための組成物及び方法を提供する。方法は、患者における血清IL-15及びMCP-1レベルなどの治療前共変量、又は投与されている細胞の生存率を使用して、そのような毒性の発症の可能性を予測することができるという発見に基づく。患者が毒性を経験する可能性が高いか又はそうではないと同定されると、毒性を監視及び管理するための組成物及び方法も提供される。
【0010】
一実施形態は、患者が細胞療法後に毒性を経験する可能性が高いか又はそうではないと同定するための方法であって、患者の血液試料中のIL-15(Interleukin-15:インターロイキン-15)又はMCP-1(monocyte chemoattractant protein-1:単球走化性タンパク質-1)のレベルを測定することと、IL-15若しくはMCP-1レベルが対応する参照レベルよりも高い場合に、患者が細胞療法後に毒性を経験する可能性が高いと同定するか、又はIL-15若しくはMCP-1レベルが対応する参照レベルよりも低い場合に、患者が細胞療法後に毒性を経験する可能性が高くないと同定することと、を含み、細胞療法が、免疫細胞の投与を含む、方法を提供する。
【0011】
いくつかの実施形態では、免疫細胞は、T細胞を含む。いくつかの実施形態では、T細胞は、キメラ抗原受容体(chimeric antigen receptor、CAR)を発現するように操作される。いくつかの実施形態では、CARは、CD19(分化抗原群19)タンパク質に対する結合特異性を有する。いくつかの実施形態では、細胞療法は、アキシカブタゲンシロルユーセルを含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、血液試料は、血清試料である。いくつかの実施形態では、血液試料は、細胞療法前に患者から得られる。いくつかの実施形態では、血液試料は、患者のプレコンディショニング治療後に得られる。いくつかの実施形態では、プレコンディショニング治療は、患者におけるリンパ球を低減させる。いくつかの実施形態では、プレコンディショニングは、細胞療法の5日前、4日前、及び/又は3日前に与えられたシクロホスファミド及びフルダラビンの静脈内(intravenous、iv)投与を含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、毒性は、サイトカイン放出症候群(CRS)、神経学的事象(neurologic event、NE)、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、毒性は、早発性毒性である。いくつかの実施形態では、早発性毒性は、細胞療法後4日以内に発生する。
【0014】
いくつかの実施形態では、IL-15又はMCP-1についての参照レベルは、細胞療法後に毒性を経験する患者及び細胞療法後に毒性を経験しない患者から決定される。
【0015】
いくつかの実施形態では、方法は、細胞療法において使用される細胞の生存率を測定することを更に含み、IL-15若しくはMCP-1レベルが対応する参照レベルよりも高く、細胞生存率が参照細胞生存率よりも高い場合に、患者は、細胞療法後に毒性を経験する可能性が高いと同定されるか、又はIL-15若しくはMCP-1レベルが対応する参照レベルよりも低く、細胞生存率が参照細胞生存率よりも低い場合に、患者は、細胞療法後に毒性を経験する可能性が高くないと同定される。
【0016】
いくつかの実施形態では、IL-15及びMCP-1レベルが対応する参照レベルよりも高く、細胞生存率が参照細胞生存率よりも高い場合に、患者は、細胞療法後に毒性を経験する可能性が高いと同定されるか、又はIL-15及びMCP-1レベルが対応する参照レベルよりも低く、細胞生存率が参照細胞生存率よりも低い場合に、患者は、細胞療法後に毒性を経験する可能性が高くないと同定される。
【0017】
いくつかの実施形態では、方法は、患者のベースラインヘモグロビン、ベースライン腫瘍量、ベースラインLDH、ベースラインクレアチニン、及びベースラインカルシウムの1つ以上のレベルを得ることを更に含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、方法は、患者が毒性を経験する可能性が高いと同定される場合に、医療ケア施設において毒性について患者を監視することを更に含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、方法は、患者が毒性を経験する可能性が高いと同定される場合に、患者における毒性を予防又は治療することを更に含む。いくつかの実施形態では、治療又は予防は、抗ヒスタミン剤、コルチコステロイド、抗低血圧剤、IL-6阻害剤、GM-CSF阻害剤、及び非ステロイド性抗炎症薬からなる群から選択される薬剤の投与を含む。いくつかの実施形態では、治療又は予防は、トシリズマブ、デキサメタゾン、レベチラセタム、レンジルマブ(lenzilumab)、メチルプレドニゾロン、アナキンラ、シルツキシマブ、ルキソリチニブ、シクロホスファミド、IVIG(intravenous immunoglobulin:静脈内免疫グロブリン)、及びATG(antithymocyte globulin:抗胸腺細胞グロブリン)からなる群から選択される薬剤の投与を含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、方法は、患者が毒性を経験する可能性が高くないと同定される場合に、2日以内の医療ケア施設の後に患者を医療ケア施設から解放することを更に含む。
【0021】
また、一実施形態では、患者が細胞療法後に毒性を経験する可能性が高いと同定するのに有用なキット又はパッケージであって、生物学的試料中のIL-15及びMCP-1の発現レベルを測定するためのポリヌクレオチドプライマ又はプローブ又は抗体を含む、キット又はパッケージが提供される。
【0022】
また、一実施形態では、細胞療法を受けている患者における毒性を予防又は治療するための方法であって、サイトカイン放出症候群(CRS)又は神経学的事象(NE)を予防又は治療する薬剤を患者に投与することを含み、患者の血液試料中のIL-15(インターロイキン-15)又はMCP-1(単球走化性タンパク質-1)のレベルが対応する参照レベルよりも高いことに基づいて、患者が細胞療法後に毒性を経験する可能性が高いと同定されている、方法が提供される。
【0023】
いくつかの実施形態では、薬剤は、抗ヒスタミン剤、コルチコステロイド、抗低血圧剤、IL-6阻害剤、GM-CSF阻害剤、及び非ステロイド性抗炎症薬からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、薬剤は、トシリズマブ、デキサメタゾン、レベチラセタム、レンジルマブ、メチルプレドニゾロン、アナキンラ、シルツキシマブ、ルキソリチニブ、シクロホスファミド、IVIG(静脈内免疫グロブリン)、及びATG(抗胸腺細胞グロブリン)からなる群から選択される。
【0024】
また、一実施形態では、コンピュータシステムとともに使用するためのコンピュータプログラム製品であって、コンピュータプログラム製品が、コンピュータ可読記憶媒体及びその中に埋め込まれたコンピュータプログラム機構を含み、コンピュータ機構が、患者が細胞療法後に毒性を経験する可能性が高いと同定するための方法を実行するための実行可能命令を含み、命令が、(i)患者の血液試料中のIL-15(インターロイキン-15)又はMCP-1(単球走化性タンパク質-1)のレベルを得ることと、(ii)レベルを対応する参照レベルと比較することと、を含み、IL-15又はMCP-1レベルが対応する参照レベルよりも高い場合に、患者が細胞療法後に毒性を経験する可能性が高いと同定され、細胞療法が、免疫細胞の投与を含む、コンピュータプログラム製品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【0026】
【
図2】外来患者A3に関する細胞生存率+IL-15+MCP-1を有するBPMのROCを示す。ここで、BPMは、RFCRUSであり、最適なカットオフは0.538である。
【0027】
【
図3】外来患者A3に関する細胞生存率+IL-15+MCP-1を有する訓練データ、BPMに関する予測のボックスプロットを示す。
【0028】
【
図4】外来患者A3に関する細胞生存率+IL-15+MCP-1を有する試験データ、BPMに関する予測のボックスプロットを示す。
【0029】
【
図5】外来患者A3を有する訓練データに関する細胞生存率+IL-15+MCP-1に関する決定ツリーを示し、「N」を有するリーフ上の対象は、「入院患者」として分類される。「Y」を有するリーフ上の対象は、「外来患者」として分類される。
【0030】
【
図6】外来患者A3を有する試験データに関する細胞生存率+IL-15+MCP-1に関する決定ツリーを示し、「N」を有するリーフ上の対象は、「入院患者」として分類される。「Y」を有するリーフ上の対象は、「外来患者」として分類される。
【0031】
【
図7】より高い細胞生存率、IL-15、及びMCP-1が早発性毒性のより高い可能性と関連することを示す、部分依存プロット(均衡化RFに基づく)を示す。
【0032】
【
図8】本開示で説明される実施形態の様々な特徴を実装するために使用され得るコンピューティング構成要素を例解する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
定義
【0034】
以下の説明は、本技術の例示的な実施形態を記載する。しかしながら、そのような説明は、本開示の範囲を限定することを意図するものではなく、代わりに、例示的な実施形態の説明として提供されていると認識されるべきである。
定義
【0035】
本明細書で使用される場合、以下の語、語句、及び記号は、概して、それらが使用されている文脈がそうでないことを示している場合を除き、以下に記載されるような意味を有することが意図されている。
【0036】
本明細書で使用される場合、ある特定の用語は、以下の定義された意味を有し得る。本明細書及び特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が明らかにそうでないことを示さない限り、単数及び複数の言及を含む。例えば、「細胞(a cell)」という用語は、複数の細胞と同様に単一の細胞を含み、それらの混合物を含む。
【0037】
全ての数字表示、例えば、範囲を含む、pH、温度、時間、濃度、及び分子量は、0.1の増分で(+)又は(-)に変動する近似値である。常に明記されているわけではないが、全ての数字表示は、「約」という用語によって先行されることを理解されたい。「約」という用語は、「X+0.1」又は「X-0.1」などの「X」のわずかな増分に加えて、正確な値「X」も含む。また、常に明記されているわけではないが、本明細書に記載される試薬は、例示的にすぎず、そのようなもの等価物が当該技術分野で公知であることも理解されたい。
【0038】
「免疫療法」という用語は、免疫応答を誘発する、増強する、抑制する、又は他の様態で改変することを含む、方法による、疾患に罹患しているか、又は疾患に罹るか若しくは疾患を再発するリスクがある対象の治療を指す。免疫療法の例としては、T細胞療法が挙げられるが、これに限定されない。T細胞療法としては、養子T細胞療法、腫瘍浸潤リンパ球(tumor-infiltrating lymphocyte、TIL)免疫療法、自家細胞療法、遺伝子操作自家細胞療法(engineered autologous cell therapy、eACT(商標))、及び同種異系T細胞移植が挙げられ得る。しかしながら、当業者であれば、本明細書に開示されるコンディショニング方法が任意の移植T細胞療法の有効性を増強することを認識するであろう。T細胞療法の例は、米国特許出願公開第2014/0154228号及び同第2002/0006409号、米国特許第7,741,465号、米国特許第6,319,494号、米国特許第5,728,388号、並びに国際公開第2008/081035号に記載されている。いくつかの実施形態では、免疫療法は、CAR T細胞治療を含む。いくつかの実施形態では、CAR T細胞治療産物は、注入を介して投与される。
【0039】
免疫療法のT細胞は、当該技術分野において公知の任意の供給源に由来し得る。例えば、T細胞は、造血幹細胞集団からインビトロで分化し得るか、又はT細胞は、対象から得られ得る。T細胞は、例えば、末梢血単核細胞(peripheral blood mononuclear cell、PBMC)、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、感染部位からの組織、腹水、胸水、脾臓組織、及び腫瘍から得られ得る。加えて、T細胞は、当該技術分野で利用可能な1つ以上のT細胞株に由来し得る。T細胞はまた、FICOLL(商標)分離及び/又はアフェレーシスなどの当業者に公知の様々な技術を使用して、対象から採取された血液単位から得られ得る。T細胞療法のためのT細胞を単離する追加の方法は、米国特許出願公開第2013/0287748号に開示されており、これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0040】
本明細書で使用される場合、「サイトカイン」は、特定の抗原との接触に応答してある細胞により放出される非抗体タンパク質を指し、ここで、サイトカインは、第2の細胞と相互作用して第2の細胞における応答を媒介する。本明細書で使用される場合、「サイトカイン」は、ある細胞集団により放出される、細胞間メディエーターとして別の細胞に作用するタンパク質を指すことを意味する。サイトカインは、細胞により内因的に発現され得るか、又は対象に投与され得る。サイトカインは、免疫応答を伝播するために、マクロファージ、B細胞、T細胞、及び肥満細胞を含む免疫細胞によって放出され得る。サイトカインは、レシピエント細胞における様々な応答を誘発し得る。サイトカインとしては、恒常性サイトカイン、ケモカイン、炎症誘発性サイトカイン、エフェクタ、及び急性期タンパク質が挙げられ得る。例えば、インターロイキン(IL)7及びIL-15を含む恒常性サイトカインは、免疫細胞の生存及び増殖を促進し、炎症誘発性サイトカインは、炎症応答を促進し得る。恒常性サイトカインの例としては、IL-2、IL-4、IL-5、IL-7、IL-10、IL-12p40、IL-12p70、IL-15、及びインターフェロン(interferon、IFN)ガンマが挙げられるが、これらに限定されない。炎症誘発性サイトカインの例としては、IL-1a、IL-1b、IL-6、IL-13、IL-17a、腫瘍壊死因子(tumor necrosis factor、TNF)-アルファ、TNF-ベータ、線維芽細胞増殖因子(fibroblast growth factor、FGF)2、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(granulocyte macrophage colony-stimulating factor、GM-CSF)、可溶性細胞間接着分子1(soluble intercellular adhesion molecule 1、sICAM-1)、可溶性血管接着分子1(soluble vascular adhesion molecule 1、sVCAM-1)、血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor、VEGF)、VEGF-C、VEGF-D、及び胎盤増殖因子(placental growth factor、PLGF)が挙げられるが、これらに限定されない。エフェクタの例としては、グランザイムA、グランザイムB、可溶性Fasリガンド(soluble Fas ligand、sFasL)、及びパーフォリンが挙げられるが、これらに限定されない。急性期タンパク質の例としては、C反応性タンパク質(C-reactive protein、CRP)及び血清アミロイドA(serum amyloid A、SAA)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
「ケモカイン」は、細胞の走化性又は方向性運動を媒介するサイトカインの一種である。ケモカインの例としては、IL-8、IL-16、エオタキシン、エオタキシン-3、マクロファージ由来ケモカイン(macrophage-derived chemokine、MDC又はCCL22)、単球走化性タンパク質1(monocyte chemotactic protein 1、MCP-1又はCCL2)、MCP-4、マクロファージ炎症性タンパク質1α(macrophage inflammatory protein 1α、MIP-1α、MIP-1a)、MIP-1β(MIP-1b)、ガンマ誘発性タンパク質10(IP-10)、並びに胸腺及び活性化制御ケモカイン(thymus and activation regulated chemokine、TARC又はCCL17)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0042】
「遺伝子操作された」又は「操作された」という用語は、コード領域若しくは非コード領域若しくはその一部を削除すること、又はコード領域若しくはその一部を挿入することなどであるがこれらに限定されない、細胞のゲノムを改変する方法を指す。いくつかの実施形態では、改変されている細胞は、患者又はドナーのいずれかから得られ得るリンパ球、例えば、T細胞である。細胞は、例えば、キメラ抗原受容体(CAR)又はT細胞受容体(T cell receptor、TCR)などの外来性構築物を発現するように改変され得、外来性構築物は細胞のゲノムに組み込まれる。
【0043】
本明細書で使用される場合、「患者」は、がん(例えば、リンパ腫又は白血病)に罹患している任意のヒトを含む。「対象」及び「患者」という用語は、本明細書において互換的に使用される。
【0044】
「低減させる」及び「減少させる」という用語は、本明細書において互換的に使用され、元のもの未満になる任意の変化を示す。「低減させる」及び「減少させる」は、相対的な用語であり、測定前と測定後との比較を必要とする。「低減する」及び「減少させる」は、完全な枯渇を含む。同様に、「増加させる」という用語は、元の値より高くなる任意の変化を示す。「増加させる」、「より高い」、及び「より低い」は、相対的な用語であり、測定前と測定後との比較及び/又は参照標準間の比較を必要とする。いくつかの実施形態では、参照値は、患者の一般集団であり得る一般集団のものから得られる。いくつかの実施形態では、参照値は、一般患者集団の四分位分析から出される。
【0045】
対象の「治療」又は「治療する」は、症状、合併症若しくは状態、又は疾患に関連する生化学的徴候の発症、進行、発生、重症度、又は再発を後退させるか、軽減するか、改善するか、阻害するか、遅延させるか、又は予防することを目的として、対象に対して実行される任意の種類の介入若しくはプロセス、又は対象への活性薬剤の投与を指す。いくつかの実施形態では、「治療」又は「治療する」は、部分寛解を包含する。別の実施形態では、「治療」又は「治療すること」は、完全寛解を含む。
【0046】
本開示は更に、本明細書で同定された目的の遺伝子の発現レベルの決定に少なくとも部分的に基づく診断、予後、及び治療方法を提供する。
【0047】
例えば、本明細書に記載される診断アッセイを使用して得られる情報は、対象が疾患(例えば、サイトカイン放出症候群)に罹っている可能性が高いか、又は疾患を発生させる可能性が高いか、又は治療に好適であるかを決定するのに有用である。診断/予後情報に基づいて、医師は、治療プロトコルを推奨することができる。
【0048】
全体を通して使用される場合、「可能性が高い」という用語は、発生する確率が、発生しない確率よりも高いこと、代替として、所定の平均対照に対して発生する確率がより高いことを指す。非限定的な例として、細胞療法後に毒性を経験する可能性が高い患者は、毒性を経験しない患者よりも毒性を経験する確率がより高い患者を指す。代替として、細胞療法後に毒性を経験する可能性が高い患者は、細胞療法で治療された患者集団における毒性の平均発生と比較して、毒性を経験する統計的機会がより高い患者を指す。当業者であれば、前述の定義に加えて追加の定義を認識するであろう。
【0049】
本明細書に記載される診断アッセイを使用して得られる情報は、単独で使用され得るか、又は他の情報(例えば、行動評価、他の遺伝子の遺伝子型若しくは発現レベル、臨床化学パラメータ、組織病理学的パラメータ、又は対象の年齢、性別、及び体重が挙げられるが、これらに限定されない)と組み合わせて使用され得ることを理解されたい。
早発性急性毒性の予測及び管理
【0050】
現在のCAR-T治療を受けているがん患者については、CAR-T注入後の認定された医療施設におけるCRS及び神経毒性の徴候及び症状についての毎日の監視が必要とされる。グレード3以上のサイトカイン放出症候群(CRS)及び神経学的事象(NE)を有する患者は、集中的な入院患者管理を必要とする。
【0051】
機械学習技術を用いて、本開示は、CAR-T治療を受ける患者における早発性急性毒性を予測するための組成物及び方法を説明する。そのような予測に基づいて、本開示はまた、毒性を経験するリスクがある患者における毒性を予防し、必要に応じて毒性を治療するための方法を提供する。
【0052】
実施例において実証されるように、CAR-T療法のための臨床試験に関与する患者における評価可能な患者から得られたデータからの多変量分析及び機械学習は、早発性CRS又はNEについてのいくつかの比較可能な予測モデルをもたらし、最良性能モデルは、訓練において0.8超及び試験において0.7超のROC(receiver operating characteristic:受信者動作特性)AUC(area under the ROC curve:ROC曲線下面積)を有する。
【0053】
単独で使用した場合、これらの共変量の各々は、独立して、毒性を発生させる可能性と相関した。まとめると、予測力は更に増加する。例示的な共変量としては、産物細胞生存率(又は単に細胞生存率)、注入前0日目の血清IL-15レベル、及び注入前0日目の血清MCP-1(CCL2)レベルが挙げられるが、これらに限定されない。追加の例示的な共変量としては、ヘモグロビンレベル、アルブミンレベル、赤血球数、及びフェリチンレベル(注入前0日目);ウラート、カルシウム、ホスファート、クレアチニン、塩化物、LDH(lactate dehydrogenase:乳酸デヒドロゲナーゼ)、及びIL-17(ベースライン)の血中濃度(レベル);並びに赤血球数、白血球数、好中球数、及び好塩基球数(ベースライン)が挙げられる。
【0054】
本開示の一実施形態によれば、患者が細胞療法後に毒性を経験する可能性が高いと同定するための方法が提供される。いくつかの実施形態では、方法は、患者の試料中のIL-15(インターロイキン-15)のレベルを測定することを伴う。本明細書において、より高いIL-15のレベルが、細胞療法後のより高い毒性発生率と相関することが発見された。したがって、方法は、IL-15レベルが参照レベル(又はカットオフレベル)よりも高い場合に、患者が細胞療法後に毒性を経験する可能性が高いと同定することを更に伴う。
【0055】
本開示の一実施形態によれば、患者が細胞療法後に毒性を経験する可能性が高いと同定するための方法が提供される。いくつかの実施形態では、方法は、患者の試料中のMCP-1(単球走化性タンパク質-1)のレベルを測定することを伴う。本明細書において、より高いMCP-1のレベルが、細胞療法後のより高い毒性発生率と相関することが発見された。したがって、方法は、IL-15レベルが参照レベル(又はカットオフレベル)よりも高い場合に、患者が細胞療法後に毒性を経験する可能性が高いと同定することを更に伴う。
【0056】
本開示の一実施形態によれば、患者が細胞療法後に毒性を経験する可能性が高いと同定するための方法が提供される。いくつかの実施形態では、方法は、細胞の生存率を測定することを伴う。本明細書において、注入されている細胞のより高い生存率が、細胞療法後のより高い毒性発生率と相関することが発見された。したがって、方法は、細胞生存率が参照レベル(又はカットオフレベル)よりも高い場合に、患者が細胞療法後に毒性を経験する可能性が高いと同定することを更に伴う。
【0057】
いくつかの実施形態では、毒性の発症を予測するのに有用な測定は、血中ヘモグロビンレベル、アルブミンレベル、赤血球数、及びフェリチンレベル(注入前0日目);ウラート、カルシウム、ホスファート、クレアチニン、塩化物、LDH(乳酸デヒドロゲナーゼ)、及びIL-17(ベースライン)の血中濃度(レベル);並びに赤血球数、白血球数、好中球数、及び好塩基球数(ベースライン)の共変量のうちのいずれか1つ以上についてのものである。
【0058】
いくつかの実施形態では、血中共変量(例えば、IL-15)は、患者から得られた血液試料において測定される。血液試料は、いくつかの実施形態では、血清試料である。
【0059】
血液試料は、いくつかの実施形態では、指定の時点に従って患者から得られる。例えば、ベースライン共変量について、血液試料は、細胞療法が開始する前に採血される。0日目の共変量については、血液試料は、注入が投与される日である0日目に採血される。いくつかの実施形態では、血液試料は、注入前に採血される。
【0060】
いくつかの実施形態では、患者は、細胞療法前にプレコンディショニング治療を受け、したがって、0日目は、プレコンディショニング治療後である。いくつかの実施形態では、プレコンディショニングは、白血球枯渇又はリンパ球枯渇である。例示的なリンパ球枯渇レジメンは、静脈内シクロホスファミド500mg/m2及びフルダラビン30mg/m2からなり、両方ともCAR-T注入の開始前5日目、4日目、及び3日目に与えられる。
【0061】
上述の共変量のうちのいずれかのIL-15レベル、MCP-1レベル、細胞生存率についての参照レベル(カットオフ値)は、当該技術分野において公知の方法を用いて、実験的に又は履歴データから決定することができる。各対応する共変量についての参照レベルは、測定前又は測定後に決定することができる。いくつかの実施形態では、参照レベルは、同じ細胞療法後に異なる毒性転帰を有する患者を最良に分離(区別)するものである。
【0062】
いくつかの実施形態では、参照レベルは、0.1ng/mLなどの特定の数である。しかしながら、いくつかの実施形態では、参照レベルは、複数の参照標準において暗黙的である。例えば、測定されたレベルは、最近傍方法を使用して、各々が毒性又は非毒性で標識された多数の参照数字の数字と比較することができる。測定されたレベルが、毒性を経験する患者に関連する参照レベルにより近い場合、測定されたレベルは、患者も同様に毒性を経験する可能性が高いことを予測する。この例では、特定の参照レベルは、参照数字から導出されないが、比較が効果的に行われる。
【0063】
いくつかの実施形態では、参照レベルは、測定されたレベルに基づいて可能性を計算するために使用される式において暗黙的である。例えば、線形又は二次判別分析式は、訓練データに基づいて開発することができ、測定されたレベルを入力として取る確率数字を決定するために使用することができる。
【0064】
いくつかの実施形態では、共変量は、組み合わせて使用することができる。例えば、IL-15レベル及びMCP-1レベルの両方が対応する参照レベルよりも高い場合に、患者は、細胞療法後に毒性を経験する可能性が高いと同定される。いくつかの実施形態では、IL-15レベル及び細胞生存率の両方が対応する参照レベルよりも高い場合に、患者は、細胞療法後に毒性を経験する可能性が高いと同定される。いくつかの実施形態では、MCP-1レベル及び細胞生存率の両方が対応する参照レベルよりも高い場合に、患者は、細胞療法後に毒性を経験する可能性が高いと同定される。いくつかの実施形態では、IL-15レベル、MCP-1レベル、及び細胞生存率が全て、対応する参照レベルよりも高い場合に、患者は、細胞療法後に毒性を経験する可能性が高いと同定される。いくつかの実施形態では、追加の共変量のうちの1つ以上も含まれる。
【0065】
いくつかの実施形態では、IL-15についての参照レベル(血漿濃度)は、20pg/mL、21pg/mL、22pg/mL、23pg/mL、24pg/mL、25pg/mL、26pg/mL、27pg/mL、28pg/mL、29pg/mL、30pg/mL、31pg/mL、32pg/mL、33pg/mL、34pg/mL、35pg/mL、36pg/mL、37pg/mL、38pg/mL、39pg/mL、40pg/mL、41pg/mL、42pg/mL、43pg/mL、44pg/mL、45pg/mL、46pg/mL、47pg/mL、48pg/mL、49pg/mL、又は50pg/mLである。例示的な実施形態では、IL-15についての参照レベルは28pg/mLである。
【0066】
いくつかの実施形態では、CCL2についての参照レベル(血漿濃度)は、600pg/mL、620pg/mL、640pg/mL、650pg/mL、660pg/mL、680pg/mL、700pg/mL、720pg/mL、740pg/mL、750pg/mL、760pg/mL、780pg/mL、800pg/mL、820pg/mL、840pg/mL、850pg/mL、860pg/mL、880pg/mL、900pg/mL、920pg/mL、940pg/mL、950pg/mL、960pg/mL、980pg/mL、1000pg/mL、1020pg/mL、1040pg/mL、1050pg/mL、1060pg/mL、1080pg/mL、1100pg/mL、1120pg/mL、1140pg/mL、1150pg/mL、1160pg/mL、1180pg/mL、1200pg/mL、1220pg/mL、1240pg/mL、1250pg/mL、1260pg/mL、1280pg/mL、1300pg/mL、1320pg/mL、1340pg/mL、1350pg/mL、1360pg/mL、1380pg/mL、1400pg/mL、1420pg/mL、1440pg/mL、又は1450pg/mLである。
【0067】
いくつかの実施形態では、産物細胞生存率についての参照レベルは、93%、93.5%、94%、94.5%、95%、95.5%、96%、96.5%、又は97%である。例示的な実施形態では、産物細胞生存率についての参照レベルは、95%である。
【0068】
いくつかの実施形態では、細胞療法は、免疫細胞の投与を伴う療法である。免疫細胞は、限定されないが、T細胞、ナチュラルキラー(natural killer、NK)細胞、単球、又はマクロファージであり得るが、これらに限定されない。
【0069】
いくつかの実施形態では、免疫細胞は、キメラ抗原受容体(CAR)を発現するように操作され、CAR-T細胞、CAR-NK細胞の産生をもたらすが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、CARは、腫瘍抗原に対する結合特異性を有する。
【0070】
「腫瘍抗原」は、腫瘍細胞において産生される抗原性物質であり、すなわち、それは宿主において免疫応答を引き起こす。腫瘍抗原は、腫瘍細胞の同定に有用であり、がん療法における使用のための潜在的な候補である。体内の正常タンパク質は、抗原性ではない。しかしながら、ある特定のタンパク質は、腫瘍形成中に産生又は過剰発現されるため、身体に対して「外来性」であると思われる。これには、免疫系から十分に隔離されている正常なタンパク質、通常は極めて少量で産生されるタンパク質、通常はある特定の発生段階でのみ産生されるタンパク質、又は変異により構造が改変されているタンパク質が含まれ得る。
【0071】
多数の腫瘍抗原が当該技術分野で公知であり、新しい腫瘍抗原は、スクリーニングによって容易に同定することができる。腫瘍抗原の非限定的な例としては、EGFR、Her2、EpCAM、CD19、CD20、CD30、CD33、CD47、CD52、CD133、CD73、CEA、gpA33、ムチン、TAG-72、CIX、PSMA、葉酸結合タンパク質、GD2、GD3、GM2、VEGF、VEGFR、インテグリン、αVβ3、α5β1、ERBB2、ERBB3、MET、IGF1R、EPHA3、TRAILR1、TRAILR2、RANKL、FAP、及びテネイシンが挙げられる。
【0072】
いくつかの実施形態では、CARは、上記で考察した腫瘍抗原のうちのいずれかに対する、又はCD19、CD20、CLL-1、TACI、MAGE、HPV関連タンパク質、GPC-3、及びBCMAのうちのいずれか1つ以上に対する特異性を有する。いくつかの実施形態では、CARは、2つ以上の抗原(例えば、CD19及びCD20)に対する二重特異性を有する。
【0073】
いくつかの実施形態では、CARは、CD19(分化抗原群19)に対する特異性を有する。CD19を標的とする例示的な細胞療法は、アキシカブタゲンシロルユーセルである。Yescarta(登録商標)の商品名で販売されているアキシカブタゲンシロルユーセルは、従来の治療に失敗した大細胞型B細胞リンパ腫の治療である。
【0074】
いくつかの実施形態では、毒性は、サイトカイン放出症候群(CRS)、神経学的事象(NE)、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、毒性は、早発性毒性である。いくつかの実施形態では、早発性毒性は、細胞療法後5日、4日、3日、又は2日以内に発生する。
【0075】
CRSの重要な徴候としては、発熱、低血圧、頻脈、低酸素症、悪寒、及び頭痛が挙げられる。CRSに関連し得る重篤な事象としては、心不整脈(心房性細動及び心室性頻脈を含む)、心停止、心不全、腎不全、毛細血管漏出症候群、低血圧、低酸素症、多臓器不全、及び血球貪食性リンパ組織症/マクロファージ活性化症候群(hemophagocytic lymphohistiocytosis、HLH/macrophage activation syndrome、MAS)が挙げられる。CRSは、4つの異なるグレード、グレード1~4に分類することができる。
【0076】
最も一般的な神経毒性としては、脳症、頭痛、振戦、眩暈、せん妄、失語、及び不眠が挙げられる。重篤な事象としては、白質脳症及び発作が挙げられる。神経毒性は、4つの異なるグレード、グレード1~4に分類することができる。
【0077】
患者は、毒性を経験する可能性が高いこと、毒性の種類、及びグレードを同定され得る。したがって、監視、予防、及び治療を、患者に提供することができる。
【0078】
現在、医療施設においてCAR-T療法を受けている全ての患者について監視が必要とされており、これは相当な費用をもたらす。本技術を用いて、毒性を経験する可能性が高くないと同定されている患者は、外来患者設備で監視することができる。毒性を経験する可能性が高いと同定された患者は、入院患者として監視することができる。
【0079】
予防及び/又は治療手段はまた、毒性を経験する可能性が高いと同定されている患者に対して取ることができる。予測された毒性に応じて、適切な予防/治療手段を取ることができる。例えば、予測されたCRSについては、トシリズマブ8mg/kgを1時間にわたって静脈内投与することができる(800mgを超えない)。代替として、デキサメタゾン10mgを1日1回静脈内投与することができる。また、メチルプレドニゾロンを、より重度のCRSについて使用することができる。
【0080】
予測される神経毒性については、トシリズマブ、デキサメタゾン、レベチラセタム、コルチコステロイド、及び/又はメチルプレドニゾロンを使用することができる。代替的な予防/治療選択肢としては、アナキンラ、シルツキシマブ、ルキソリチニブ、シクロホスファミド、IVIG(静脈内免疫グロブリン)、及びATG(抗胸腺細胞グロブリン)が挙げられる。
【0081】
重度のCRSが、抗ヒスタミン剤又はコルチコステロイドによって予防することができることも知られている。重度の低いCRSの治療は、対症的であり、発熱、筋肉痛、又は倦怠感のような症状に対処する。中等度のCRSは、酸素療法並びに血圧を上昇させるための流体及び抗低血圧剤の付与を必要とする。中等度から重度のCRSについては、コルチコステロイドのような免疫抑制剤の使用が有用であり得る。
【0082】
IL-6阻害剤(例えば、トシリズマブなどの抗IL-6抗体)は、CRSの予防/治療に有用であることが知られている。GM-CSF阻害剤(例えば、レンジルマブなどの抗GM-CSF抗体)はまた、骨髄細胞の活性化を低減させ、IL-1、IL-6、MCP-1、MIP-1、及びIP-10の産生を減少させることによって、サイトカイン放出を予防又は管理するのに有効であり得る。
【0083】
トシリズマブ、デキサメタゾン、レベチラセタム、レンジルマブ、メチルプレドニゾロン、アナキンラ、シルツキシマブ、ルキソリチニブ、シクロホスファミド、IVIG(静脈内免疫グロブリン)、及びATG(抗胸腺細胞グロブリン)。
【0084】
本開示のある実施形態は、患者が細胞療法後に毒性を経験する可能性が高いか又はそうではないと同定するための方法であって、患者の血液試料中のIL-15(インターロイキン-15)及びMCP-1(単球走化性タンパク質-1)のうちの少なくとも1つのレベルを測定することと、IL-15若しくはMCP-1のレベルが対応する参照レベルよりも高い場合に、患者が細胞療法後に毒性を経験する可能性が高いと同定するか、又はIL-15若しくはMCP-1レベルが対応する参照レベルよりも低い場合に、患者が細胞療法後に毒性を経験する可能性が高くないと同定することと、を含む、方法に関する。そのようなある実施形態では、細胞療法は、免疫細胞の投与を含む。
【0085】
本開示のある実施形態は、患者が毒性を経験する可能性が高いと同定される場合に、患者における毒性を予防又は治療することを更に含む、上記方法に関する。
【0086】
本開示のある実施形態は、治療又は予防が、抗ヒスタミン剤、コルチコステロイド、抗低血圧剤、IL-6阻害剤、GM-CSF阻害剤、及び非ステロイド性抗炎症薬からなる群から選択される薬剤の投与を含む、上記方法に関する。
【0087】
本開示のある実施形態は、治療又は予防が、トシリズマブ、デキサメタゾン、レベチラセタム、レンジルマブ、メチルプレドニゾロン、アナキンラ、シルツキシマブ、ルキソリチニブ、シクロホスファミド、IVIG(静脈内免疫グロブリン)、及びATG(抗胸腺細胞グロブリン)からなる群から選択される薬剤の投与を含む、上記方法に関する。
【0088】
本開示のある実施形態は、免疫細胞が、キメラ抗原受容体(CAR)を発現するように操作されたT細胞を含む、上記方法に関する。
【0089】
本開示のある実施形態は、CARが、CD19(分化抗原群19)タンパク質に対する結合特異性を有する、上記方法に関する。
【0090】
本開示のある実施形態は、血液試料が、細胞療法前に患者から得られた血清試料である、上記方法に関する。
【0091】
本開示のある実施形態は、血液試料が、患者のプレコンディショニング治療後に得られる、上記方法に関する。
【0092】
本開示のある実施形態は、プレコンディショニング治療が、患者におけるリンパ球を低減させる、上記方法に関する。
【0093】
本開示のある実施形態は、毒性が、サイトカイン放出症候群(CRS)、神経学的事象(NE)、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、上記方法に関する。
【0094】
本開示のある実施形態は、毒性が、早発性毒性である、上記方法に関する。
【0095】
本開示のある実施形態は、早発性毒性が、細胞療法後4日以内に発生する、上記方法に関する。
【0096】
本開示のある実施形態は、IL-15又はMCP-1についての参照レベルが、細胞療法後に毒性を経験する患者及び細胞療法後に毒性を経験しない患者から決定される、上記方法に関する。
【0097】
本開示のある実施形態は、細胞療法において使用される細胞の生存率を測定することを更に含み、IL-15若しくはMCP-1レベルが対応する参照レベルよりも高く、細胞生存率が参照細胞生存率よりも高い場合に、患者が、細胞療法後に毒性を経験する可能性が高いと同定されるか、又はIL-15若しくはMCP-1レベルが対応する参照レベルよりも低く、細胞生存率が参照細胞生存率よりも低い場合に、患者が、細胞療法後に毒性を経験する可能性が高くないと同定される、上記方法に関する。
【0098】
本開示のある実施形態は、患者のベースラインヘモグロビン、ベースライン腫瘍量、ベースラインLDH、ベースラインクレアチニン、及びベースラインカルシウムの1つ以上のレベルを得ることを更に含む、上記方法に関する。
【0099】
本開示のある実施形態は、細胞療法を受けている患者における毒性を予防又は治療するための方法であって、患者が細胞療法後に毒性を経験する可能性が高いか又はそうではないと同定することであって、患者の血液試料中のIL-15(インターロイキン-15)及びMCP-1(単球走化性タンパク質-1)のうちの少なくとも1つのレベルを測定することと、IL-15若しくはMCP-1のレベルが対応する参照レベルより高い場合に、患者が細胞療法後に毒性を経験する可能性が高いと同定するか、又はIL-15若しくはMCP-1レベルが対応する参照レベルよりも低い場合に、患者が細胞療法後に毒性を経験する可能性が高くないと同定することと、を含む、同定すること、を含む、方法に関する。そのようなある実施形態では、患者が細胞療法後に毒性を経験する可能性が高いと同定されている場合に、サイトカイン放出症候群(CRS)又は神経学的事象(NE)を予防又は治療する薬剤を患者に投与すること。
【0100】
本開示のある実施形態は、薬剤が、抗ヒスタミン剤、コルチコステロイド、抗低血圧剤、IL-6阻害剤、GM-CSF阻害剤、及び非ステロイド性抗炎症薬からなる群から選択される、上記方法に関する。
【0101】
本開示のある実施形態は、薬剤が、トシリズマブ、デキサメタゾン、レベチラセタム、レンジルマブ、メチルプレドニゾロン、アナキンラ、シルツキシマブ、ルキソリチニブ、シクロホスファミド、IVIG(静脈内免疫グロブリン)、及びATG(抗胸腺細胞グロブリン)からなる群から選択される、上記方法に関する。
【0102】
本開示のある実施形態は、細胞療法において使用される細胞の生存率を測定することを更に含み、IL-15若しくはMCP-1レベルが対応する参照レベルよりも高く、細胞生存率が参照細胞生存率よりも高い場合に、患者が、細胞療法後に毒性を経験する可能性が高いと同定されるか、又はIL-15若しくはMCP-1レベルが対応する参照レベルよりも低く、細胞生存率が参照細胞生存率よりも低い場合に、患者が、細胞療法後に毒性を経験する可能性が高くないと同定される、上記方法に関する。
【0103】
本開示のある実施形態は、患者のベースラインヘモグロビン、ベースライン腫瘍量、ベースラインLDH、ベースラインクレアチニン、及びベースラインカルシウムの1つ以上のレベルを得ることを更に含む、上記方法に関する。
キット及びパッケージ、ソフトウェアプログラム
【0104】
本明細書に記載される方法は、例えば、対象が細胞療法後に毒性を有するか、又は毒性を経験するリスクがあるかどうかを決定するために、便宜的に使用され得る、例えば、本明細書に記載される少なくとも1つのプローブ又はプライマ核酸を含む、以下に記載されるものなどの予めパッケージ化された診断キットを利用することによって実行され得る。
【0105】
したがって、本開示のある実施形態は、患者が細胞療法後に毒性を経験する可能性が高いと同定するのに有用なキット又はパッケージであって、生物学的試料中のIL-15及びMCP-1の発現レベルを測定するためのポリヌクレオチドプライマ又はプローブ又は抗体を含む、キット又はパッケージに関する。
【0106】
診断手順は、核酸精製が必要ないように、細胞から単離されたmRNAを用いて、又は生検若しくは切除から得られた生検などの一次組織の(固定及び/又は凍結された)組織切片に対してインサイチュで直接実行することができる。核酸試薬は、そのようなインサイチュ手順のためのプローブ及び/又はプライマとして使用することができる。
【0107】
一実施形態では、患者が細胞療法後に毒性を経験する可能性が高いか又はそうではないと同定するのに有用なキット又はパッケージであって、生物学的試料中のIL-15及びMCP-1の発現レベルを測定するためのポリヌクレオチドプライマ又はプローブ又は抗体を含む、キット又はパッケージが提供される。いくつかの実施形態では、キット又はパッケージは、細胞の生存率を測定するための薬剤を更に含む。
【0108】
一実施形態では、キットは、使用説明書を更に含む。一態様では、キットは、参照遺伝子発現レベルを含むマニュアルを含む。
【0109】
図8は、本技術及び関連技術の任意の実施形態が実装され得るコンピュータシステム800を例解するブロック図である。コンピュータシステム800は、情報を通信するためのバス802又は他の通信機構、情報を処理するためにバス802に連結された1つ以上のハードウェアプロセッサ804を含む。ハードウェアプロセッサ804は、例えば、1つ以上の汎用マイクロプロセッサであり得る。
【0110】
コンピュータシステム800はまた、プロセッサ804によって実行される情報及び命令を記憶するためにバス802に連結されたランダムアクセスメモリ(random access memory、RAM)、キャッシュ、及び/又は他の動的記憶デバイスなどのメインメモリ806を含む。メインメモリ806はまた、プロセッサ804によって実行される命令の実行中に一時変数又は他の中間情報を記憶するために使用され得る。そのような命令は、プロセッサ804にアクセス可能な記憶媒体に記憶されると、コンピュータシステム800を、命令で指定された動作を実行するようにカスタマイズされている専用機械にする。
【0111】
コンピュータシステム800は、プロセッサ804のための静的情報及び命令を記憶するためにバス802に連結された読み取り専用メモリ(read only memory、ROM)808又は他の静的記憶デバイスを更に含む。磁気ディスク、光ディスク、又はUSBサムドライブ(フラッシュドライブ)などの記憶デバイス810は、情報及び命令を記憶するために提供され、バス802に連結される。
【0112】
コンピュータシステム800は、コンピュータのユーザに情報を表示するために、LED又はLCDディスプレイ(又はタッチスクリーン)などのディスプレイ812にバス802を介して連結され得る。英数字及び他のキーを含む入力デバイス814は、情報及びコマンド選択をプロセッサ804に通信するためにバス802に連結される。別の種類のユーザ入力デバイスは、方向情報及びコマンド選択をプロセッサ804に通信するため、並びにディスプレイ812上のカーソル移動を制御するための、マウス、トラックボール、又はカーソル方向キーなどのカーソル制御816である。いくつかの実施形態では、カーソル制御と同じ方向情報及びコマンド選択が、カーソルを用いずにタッチスクリーン上のタッチの受信を介して実装され得る。追加のデータが、外部データ記憶装置818から取り出され得る。
【0113】
コンピュータシステム800は、コンピューティングデバイスによって実行される実行可能ソフトウェアコードとして大容量記憶デバイスに記憶され得るGUIを実装するためのユーザインターフェースモジュールを含み得る。このモジュール及び他のモジュールとしては、例として、ソフトウェア構成要素、オブジェクト指向ソフトウェア構成要素、クラス構成要素、及びタスク構成要素などの構成要素、プロセス、関数、属性、手順、サブルーチン、プログラムコードのセグメント、ドライバ、ファームウェア、マイクロコード、回路、データ、データベース、データ構造、テーブル、アレイ、並びに変数が挙げられ得る。
【0114】
一般に、本明細書で使用される場合、「モジュール」という語は、ハードウェア若しくはファームウェアで具現化される論理、又は、例えば、Java、C、又はC++などのプログラミング言語で書かれた、場合により入口点及び出口点を有するソフトウェア命令の集合を指す。ソフトウェアモジュールは、動的リンクライブラリにインストールされた実行可能プログラムにコンパイル及びリンクされ得るか、又は、例えば、BASIC、Perl、又はPythonなどの解釈されたプログラミング言語で書き込まれ得る。ソフトウェアモジュールが、他のモジュール又はそれら自体から呼び出し可能であり得、及び/又は検出された事象又は割込みに応答して呼び出され得ることが理解されるであろう。コンピューティングデバイス上で実行するように構成されたソフトウェアモジュールは、コンパクトディスク、デジタルビデオディスク、フラッシュドライブ、磁気ディスク、若しくは任意の他の有形媒体などのコンピュータ可読媒体上に、又はデジタルダウンロードとして提供され得る(実行前にインストール、解凍、又は復号を必要とする圧縮又はインストール可能なフォーマットで元々記憶され得る)。そのようなソフトウェアコードは、コンピューティングデバイスによる実行のために、実行中のコンピューティングデバイスのメモリデバイス上に部分的又は完全に記憶され得る。ソフトウェア命令は、EPROMなどのファームウェアに埋め込まれ得る。更に、ハードウェアモジュールが、ゲート及びフリップフロップなどの接続された論理ユニットから構成され得、並びに/又はプログラマブルゲートアレイ若しくはプロセッサなどのプログラマブルユニットから構成され得ることが理解されるであろう。本明細書に記載されるモジュール又はコンピューティングデバイス機能は、好ましくは、ソフトウェアモジュールとして実装され得るが、ハードウェア又はファームウェアで表されてもよい。一般に、本明細書に記載されるモジュールは、それらの物理的編成又は記憶に関わらず、他のモジュールと組み合わせられ得るか、又はサブモジュールに分けられ得る論理モジュールを指す。いくつかの実施形態では、所望の分析のためのコード化は、R Core Team(2019);language and environment for statistical computing(R Foundation for Statistical Computing,Vienna,Austria)において行われている。
【0115】
コンピュータシステム800は、カスタマイズされたハードワイヤードロジック、1つ以上のASIC若しくはFPGA、ファームウェア、及び/又はプログラムロジックを使用して、本明細書に記載される技術を実装し得、これらは、コンピュータシステムと組み合わせて、コンピュータシステム800を専用機械にするか、又はプログラムする。一実施形態によれば、本明細書の技術は、メインメモリ806に含まれる1つ以上の命令の1つ以上のシーケンスを実行するプロセッサ804に応答して、コンピュータシステム800によって実行される。そのような命令は、記憶デバイス810などの別の記憶媒体からメインメモリ806に読み込まれ得る。メインメモリ806に含まれる命令のシーケンスの実行は、プロセッサ804に、本明細書に記載されるプロセス工程を実行させる。代替実施形態では、ソフトウェア命令の代わりに、又はソフトウェア命令と組み合わせて、ハードワイヤード回路を使用し得る。
【0116】
本明細書で使用される場合、「非一時的媒体」という用語及び同様の用語は、機械を特定の様式で動作させるデータ及び/又は命令を記憶する任意の媒体を指す。そのような非一時的媒体は、不揮発性媒体及び/又は揮発性媒体を含み得る。不揮発性媒体は、例えば、記憶デバイス810などの光ディスク又は磁気ディスクを含む。揮発性媒体は、メインメモリ806などの動的メモリを含む。非一時的媒体の一般的な形態としては、例えば、フロッピーディスク、フレキシブルディスク、ハードディスク、ソリッドステートドライブ、磁気テープ、又は任意の他の磁気データ記憶媒体、CD-ROM、任意の他の光データ記憶媒体、穴のパターンを有する任意の物理媒体、RAM、PROM、及びEPROM、FLASH-EPROM、NVRAM、任意の他のメモリチップ又はカートリッジ、並びにそれらのネットワークバージョンが挙げられる。
【0117】
非一時的媒体は、伝送媒体とは別個であるが、伝送媒体とともに使用してもよい。伝送媒体は、非一時的媒体間で情報を転送することに関与する。例えば、伝送媒体は、バス802を含むワイヤを含む、同軸ケーブル、銅線、及び光ファイバを含む。伝送媒体はまた、電波及び赤外線データ通信中に生成されるような音波又は光波の形態を取ることもできる。
【0118】
様々な形態の媒体が、実行のために1つ以上の命令の1つ以上のシーケンスをプロセッサ804に搬送することに関与し得る。例えば、命令は、最初に、リモートコンピュータの磁気ディスク又はソリッドステートドライブ上で搬送され得る。リモートコンピュータは、命令をその動的メモリにロードし、構成要素制御を使用して電話回線で命令を送信することができる。コンピュータシステム800にローカルな構成要素制御は、電話回線でデータを受信し、赤外線送信器を使用してデータを赤外線信号に変換することができる。赤外線検出器は、赤外線信号で搬送されるデータを受信することができ、適切な回路が、データをバス802上に配置することができる。バス802は、データをメインメモリ806に搬送し、プロセッサ804はそこから命令を取り出して実行する。メインメモリ806によって受信された命令は、命令を取り出して実行し得る。メインメモリ806によって受信された命令は、任意選択で、プロセッサ804による実行前又は実行後のいずれかに、記憶デバイス810上に記憶され得る。
【0119】
コンピュータシステム800はまた、バス802に連結された通信インターフェース818を含む。通信インターフェース818は、1つ以上のローカルネットワークに接続されている1つ以上のネットワークリンクに連結する双方向データ通信を提供する。例えば、通信インターフェース818は、統合サービスデジタルネットワーク(integrated services digital network、ISDN)カード、ケーブル構成要素制御、衛星構成要素制御、又は対応する種類の電話回線へのデータ通信接続を提供する構成要素制御であり得る。別の例として、通信インターフェース818は、互換性のあるLAN(又はWANと通信するためのWAN構成要素)へのデータ通信接続を提供するローカルエリアネットワーク(local area network、LAN)カードであり得る。無線リンクも実装され得る。任意のそのような実装では、通信インターフェース818は、様々な種類の情報を表すデジタルデータストリームを搬送する電気信号、電磁信号、又は光信号を送受信する。
【0120】
ネットワークリンクは、典型的には、1つ以上のネットワークを介して他のデータデバイスにデータ通信を提供する。例えば、ネットワークリンクは、ローカルネットワークを介して、インターネットサービスプロバイダ(Internet Service Provider、ISP)によって運用されるホストコンピュータ又はデータ設備への接続を提供し得る。次に、ISPは、現在一般的に「インターネット」と称されている世界規模のパケットデータ通信ネットワークを介してデータ通信サービスを提供する。ローカルネットワーク及びインターネットは両方とも、デジタルデータストリームを搬送する電気信号、電磁信号、又は光信号を使用する。コンピュータシステム800との間でデジタルデータを搬送する、様々なネットワークを介する信号、並びにネットワークリンク上及び通信インターフェース818を介する信号は、伝送媒体の例示的な形態である。
【0121】
コンピュータシステム800は、ネットワーク、ネットワークリンク、及び通信インターフェース818を介して、メッセージを送信し、プログラムコードを含むデータを受信することができる。インターネットの例では、サーバは、インターネット、ISP、ローカルネットワーク、及び通信インターフェース818を介して、アプリケーションプログラムの要求されたコードを伝送し得る。
【0122】
受信されたコードは、受信されるとプロセッサ804によって実行され得、及び/又は後の実行のために記憶デバイス810又は他の不揮発性記憶装置に記憶され得る。前のセクションで記載されたプロセス、方法、及びアルゴリズムの各々は、コンピュータハードウェアを含む1つ以上のコンピュータシステム又はコンピュータプロセッサによって実行されるコードモジュールにおいて具現化され、コードモジュールによって完全に又は部分的に自動化され得る。プロセス及びアルゴリズムは、特定用途向け回路において部分的に又は全体的に実装され得る。
【0123】
上に記載される様々な特徴及びプロセスは、互いに独立して使用され得るか、又は様々な方式で組み合わされ得る。全ての可能な組み合わせ及び下位組み合わせが、本開示の範囲内に入ることが意図されている。加えて、ある特定の方法又はプロセスブロックは、いくつかの実装では省略され得る。本明細書に記載される方法及びプロセスはまた、任意の特定の順序に限定されず、それに関連するブロック又は状態は、適切な他の順序で実行することができる。例えば、記載されたブロック若しくは状態は、具体的に開示された順序以外の順序で実行され得るか、又は複数のブロック若しくは状態は、単一のブロック若しくは状態で組み合わされ得る。例示的なブロック又は状態は、直列に、並列に、又は何らかの他の方式で実行され得る。ブロック又は状態は、開示された例示的な実施形態に追加され得るか、又は開示された例示的な実施形態から除去され得る。本明細書に記載される例示的なシステム及び構成要素は、記載されるものとは異なるように構成され得る。例えば、開示された例示的な実施形態と比較して、要素が追加され得るか、除去され得るか、又は再配置され得る。
【0124】
本明細書に記載される及び/又は添付の図面に示されるフロー図における任意のプロセス説明、要素、又はブロックは、プロセスにおける特定の論理機能又は工程を実装するための1つ以上の実行可能命令を含むモジュール、セグメント、又はコードの部分を潜在的に表すものとして理解されるべきである。当業者によって理解されるように、要素又は機能が削除され、関与する機能に応じて、実質的に同時又は逆の順序を含む、示された又は考察された順序とは異なる順序で実行され得る、代替の実装が、本明細書に記載される実施形態の範囲内に含まれる。
【0125】
上に記載された実施形態に対して多くの変形及び修正を行ってもよく、その要素は、他の許容可能な例の中にあるものとして理解されたいことが強調されるべきである。全てのそのような修正及び変形は、本明細書において本開示の範囲内に含まれることが意図されている。前述の説明は、本発明のある特定の実施形態を詳述する。しかしながら、上記が本文中でいかに詳述されても、本発明を多くの方式で実施することができることが理解されるであろう。また上記のように、本発明のある特定の特徴又は態様を説明するときの特定の用語の使用は、その用語が関連する本発明の特徴又は態様の任意の特定の特性を含むことに限定されるように、その用語が本明細書において再定義されていることを暗示すると解釈されるべきではないことに留意されたい。したがって、実施形態の範囲は、添付の特許請求の範囲及びその任意の等価物に従って解釈されるべきである。
【0126】
本明細書に記載される例示的な方法の様々な動作は、関連する動作を実行するように一時的に(例えば、ソフトウェアによって)構成されるか又は永続的に構成される1つ以上のプロセッサによって、少なくとも部分的に実行され得る。同様に、本明細書に記載される方法は、少なくとも部分的にプロセッサ実装され得、特定のプロセッサ又は複数のプロセッサがハードウェアの例である。例えば、方法の動作のうちの少なくともいくつかは、1つ以上のプロセッサによって実行され得る。更に、1つ以上のプロセッサはまた、「クラウドコンピューティング」環境において、又は「サービスとしてのソフトウェア」(software as a service、SaaS)として、関連する動作の実行をサポートするように動作し得る。例えば、動作の少なくともいくつかは、コンピュータの群(プロセッサを含む機械の例として)によって実行され得、これらの動作は、ネットワーク(例えば、インターネット)を介して、及び1つ以上の適切なインターフェース(例えば、アプリケーションプログラムインターフェース(Application Program Interface、API))を介してアクセス可能である。
【実施例】
【0127】
以下の実施例は、本開示の特定の実施形態を実証するために含まれる。当業者には、以下の実施例に開示される技術は、本開示の実施において十分に機能する技術を表し、したがって、その実施のための特定の様式を構成するとみなすことができることが理解されるべきである。しかしながら、当業者は、本開示に照らして、本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、開示され、依然として類似の又は同様の結果を得る特定の実施形態において多くの変更を行うことができることを理解するべきである。
実施例1:機械学習アルゴリズムに基づく、大細胞型B細胞リンパ腫におけるアキシカブタゲンシロルユーセル後の早発性サイトカイン放出症候群及び神経学的事象の予測
【0128】
臨床治験ZUMA-1では、難治性大細胞型B細胞リンパ腫(large B-cell lymphoma、LBCL)を有する患者におけるアキシカブタゲンシロルユーセル(axi-cel)の重要な研究において、グレード3以上のサイトカイン放出症候群(CRS)及び神経学的事象(NE)が患者の13%及び28%にそれぞれ発生し、集中的な入院患者管理を必要とした。安全性経験の増加に伴い、CRS及びNEの管理は、ZUMA-1のいくつかの探索的安全性管理コホートにおいて評価されている。コホート4は、CRS及びNEの発生率及び重症度に対するレベチラセタム予防並びに早期コルチコステロイド及び/又はトシリズマブの使用を評価した。コホート4の毒性管理レジメンへの予防的コルチコステロイドの追加の影響を、コホート6において評価した。注目すべきことに、一部の治療された患者は、早発性対遅発性のCRS又はNEを有し、別個の管理が当然必要とされる。毒性管理を容易にするために、本実施例は、ZUMA-1データからの機械学習に基づいて、早発性急性毒性(axi-cel後3~4日以内)についての予測アルゴリズムを開発した。
【0129】
方法:この事後分析には、ZUMA-1の第1相及び第2相のコホート1、2、4、及び6からの患者が含まれた。共変量(1500超;axi-cel注入前に測定227)には、ベースライン産物、患者及び腫瘍特性、並びに炎症性可溶性血液バイオマーカーレベルが含まれた。コホート1、2、及び4における患者からのデータを、訓練セット(70%)及び試験セット(30%)にランダムに分けた。単変量及び多変量分析並びに臨床的実現可能性の考慮事項を適用して、更なる分析のための共変量サブセットを選択した。機械学習(例えば、ロジスティック回帰、ランダムフォレスト、XGBoost、及びAdaBoost分類器)を、共変量の3つのカテゴリ(1、臨床的;2、機構[例えば、産物属性、炎症性血液バイオマーカー];3、1及び2のハイブリッド)に適用して、最良性能モデル(試験データに関する曲線下面積[AUC]によって評価される予測性能)を構築した。予測スコアについての最適なカットオフを、受信者動作特性(ROC)又は分類ツリー分析によって選択した。コホート6における患者からのデータは、訓練データを使用して生成された最良性能モデルを検証するために含まれた。
【0130】
結果:ZUMA-1のコホート1、2、及び4における149人の評価可能な患者から得られたデータからの多変量分析及び機械学習は、早発性CRS又はNEについてのいくつかの比較可能な予測モデルをもたらした(訓練において0.8超及び試験において0.7超のROC AUCを有する最良性能モデル)。最良性能モデルにおける共変量には、産物細胞生存率、0日目(axi-cel治療前)に中心的に測定されたIL-15及びCCL2(MCP-1)血清レベル及び局所的に測定された血球数、血液化学分析物、腫瘍量、並びに血清乳酸デヒドロゲナーゼレベルが含まれた。5未満の共変量を有する最良性能モデルは、機構共変量又は共変量のハイブリッドミックスのみを含有した。3共変量機構モデル(産物細胞生存率並びに0日目のIL-15及びCCL2(MCP-1)血清レベル(全て早発性毒性と正に関連する))は、より大きな最良性能モデルと同等に機能した(試験において0.7超のROC AUC)。0日目のIL-15及び産物細胞生存率に基づいて分割した分類ツリーは、毒性の早発性対遅発性によって患者を分類する潜在性を示した(0.85超の特異度)。
【0131】
axi-cel注入前に測定した共変量に適用された機械学習は、毒性予測、監視、及び管理のために使用することができる早発性CRS又はNEの予測モデルをもたらした。高性能ハイブリッドモデル又は機構モデルは、毒性に影響を及ぼすT細胞生存率(産物細胞適合性)及び因子(IL-15及びCCL2)のコンディショニング関連の上昇の重要度を裏付けた。
実施例2:早発性サイトカイン放出症候群及び神経学的事象の予測
【0132】
本実施例は、実施例1におけるアルゴリズムを構築するために使用されたデータと、特徴スクリーニング及び選択、多変量モデリング、モデル評価、並びに予測アルゴリズムによる試験集団に対する分類を含む、予測アルゴリズムを開発する手順とを説明する。
データ
【0133】
全ての分析は、カットオフ日2019年11月6日のZUMA1患者の安全分析セット(すなわち、任意の量のアキシカブタゲンシロルユーセルを受けた)において実行した。
【0134】
集団には、(a)36ヶ月カットオフの時点での第1相、並びに第2相におけるコホート1及びコホート2(第1相は、DLBCL、PMBCL、又はTFLを有する7人の対象を有し、第2相のコホート1は、難治性DLBCLを有する77人の対象を有し、第2相のコホート2は、難治性PMBCL及びTFLを有する24人の対象を有していた)と、(b)第2相のコホート3(再発性又は難治性の移植不適格DLBCL、PMBCL、又はTFLを有する38人の対象)と、(c)第2相のコホート4(2回以上の全身療法の後に再発性又は難治性DLBCL、PMBCL、TFL、又はHGBCLを有する41人の対象)とが含まれた。
【0135】
以下の時間枠を考慮した:1、0日目、1日目、2日目;2、0日目、1日目、2日目、3日目;及び0日目、1日目、2日目、3日目、4日目。上記の時間枠の各々について、以下の3つの外来患者定義を定義した(
図1及び表1参照)。
定義A:(a)所与の時間枠中に、最悪グレード1又はCRSなし(すなわち、CRS最悪グレード1以下)、及び(b)神経学的事象(NE)なしの両方を満たす患者、
定義B:所与の時間枠中にCRS又はNEのいずれの発症もない患者、
定義C(Medical Affair and Clinical Researchによる提案)。
【0136】
上記の「外来患者」基準を満たさなかった患者を、それぞれ各定義について「入院患者」として割り当てた。
【表1】
注記:定義Cにおいて、時間枠は、「外来患者」又は「入院患者」の定義の条件である。例えば、0~2日目が与えられる場合、全ての基準は、注入後0日目、1日目、2日目以内に確認される。
共変量及び特徴選択
【0137】
共変量(又は1500超、axi-cel注入前に測定227)には、ベースライン産物、患者及び腫瘍特性、並びに炎症性可溶性血液バイオマーカーレベルが含まれた。共変量又は分析物の主要なカテゴリとしては、以下が含まれた。
ベースライン特性、例えば、ECOG性能、疾患の種類、疾患ステージ、国際予後指標(International prognostic index、IPI)カテゴリ、腫瘍量など;
化学及び血液学の両方における実験室分析物;
血清サイトカイン及び炎症マーカー;
産物細胞生存率、CD4及びCD8の数及びパーセンテージ、同様にCD4/CD8比、CD4及びCD8に関する表現型/再ゲートされた表現型、共培養におけるIFN-ガンマなどを含む、産物特性;並びに
細胞倍加時間(日単位)及び増殖速度を含む、細胞増殖情報。
【0138】
データをランダムに訓練セット(例えば、試料の70%)に分割して、モデルを適合させ、試験セット(例えば、試料の残りの30%)を使用して、モデル性能の偏りのない評価を提供した。
単変量スクリーニング
【0139】
各共変量の単変量分析を一度に1つずつ行い、ここで、共変量と外来患者/入院患者の状態との関連性を評価し、スクリーニング基準に合格するこれらの変数を選択し、多変量モデリングにおいて使用する。
分析的アプローチによる特徴選択
【0140】
欠測データについてK最近傍(K-Nearest Neighbor、KNN)インピュテーションを実行した後、以下の統計的及びモデルベースのアプローチを、単変量スクリーニングに合格した特徴に適用した。特徴をランク付けし、上位にランク付けされた特徴をこれらのアプローチの各々によって選択する。以下に記載される方法のうちの3つ、4つ、又は5つ全てによって選択された特徴は、「分析的に重要な」特徴とみなされ得る。
【0141】
証拠の重み及び情報価値:証拠の重み(weight of evidence、WOE)+情報価値(information value、IV)は、目的の転帰についての特徴の予測力を推定するために使用される単純な方法である。WOEは、各特徴についてのデータをいくつかのビン(例えば、j=10ビン)に分割し、各ビン内の転帰についての特徴の予測力(すなわち、「証拠」)を計算する。次いで、各特徴について、IVは、全てのビンのWOEを単一のスコアに組み合わせ、これは、IV=Σj(非事象の割合j-事象の割合j)*WOEjとして計算される。より高いIV値を有する特徴は、機械学習モデルのための候補として選択される(例えば、0.3以上のIV値又は0.5以上のIV値は、それぞれ「中程度に良好」又は「良好」とみなされる)。
【0142】
分散分析によるSelectkBest:SelectkBestは、転帰を最良に説明する特徴を同定するために使用される単変量特徴選択方法である。具体的には、各特徴について、分散分析(analysis of variance、ANOVA)を実行し、特徴と転帰との間の説明された変動対説明されていない変動の比を表す対応するF統計量を計算した。次いで、SelectKBest関数は、「最良」特徴として、k最高スコア、例えば、最低p値を有する特徴を選択した。
【0143】
エクストラツリー分類器:エクストラツリー分類器(極度にランダム化されたツリーとしても知られている)は、多くの無相関決定ツリーの結果を「フォレスト」に集約して分類結果を出力する、一種のアンサンブル学習技術である。ジニ重要度を使用して、転帰を予測する際に最も高い重要度を有する特徴(例えば、30の特徴)を選択することができる。
【0144】
再帰的特徴排除(Recursive Feature Elimination、RFE):再帰的特徴排除(RFE)を、特徴(例えば、モデル係数、重要度属性)に割り当てられた重要度重みを有する適合モデルに適用し、所望の数の特徴が達成されるまで、モデルについて最悪性能の特徴を排除する。上位にランク付けされた特徴、例えば30の特徴が、モデル構築のために選択され得る。
【0145】
RFEベースのロジスティック回帰:RFEを、モデル係数によって定義される変数重要度を用いて、ロジスティック回帰モデルに適用した。
【0146】
RFEベースのランダムフォレスト:RFEを、ランダムフォレストを使用して推定されたモデルに適用し、分割は、特定の基準(例えば、ジニ指数がデフォルトとして使用される)を使用して決定され、変数重要度は、特徴重要度スコアを使用して評価された。
SME(主題専門家)による特徴選択
【0147】
SME(主題専門家)は、単変量及び多変量アプローチからの分析的に重要な特徴のリストを検討し、臨床的実現可能性を考慮し、更なる分析のために共変量の以下の3つのカテゴリを提供する。
臨床的共変量。例えば、腫瘍関連(LDH、量)、疾患ステージ、血球数(WBC、RBC)、細胞に関連する分析物(Hgb)、代謝状態に関連する分析物;
機械的共変量。例えば、産物細胞生存率、0日目のIL-15、0日目のMCP-1、サイトカイン、ケモカイン、及び他の産物属性;並びに
ハイブリッド(臨床的+機械的)共変量。
【0148】
共変量のリストを、分類モデル構築のためのインポートされた候補として生成した。
機械学習アルゴリズムによる多変量モデリング
【0149】
5つの機械学習アルゴリズムを、これらのリスト(臨床的共変量、機械的共変量、及びハイブリッド)の各々における共変量に適用した。全ての分類アルゴリズムは、最適な性能をもたらす組み合わせを見つけるために「調整」されるハイパーパラメータのセットに依存する。5つの機械学習アルゴリズムの中で最良の予測性能を有するモデルを、最良性能モデル(Best Performance Model、BPM)とみなした。これらの機械学習アルゴリズムの簡単な説明は、以下のとおりである。
【0150】
ロジスティック回帰:ロジスティック回帰は、特徴の線形結合として発生する二値事象の確率の対数オッズをモデル化するパラメトリック方法である。本発明者らのアプローチでは、ロジスティック回帰アルゴリズムに供給されるランダムアンダーサンプリングデータセットを使用し、これは、LOGREGRUS(Logistic Regression with Random Under Sampling:ランダムアンダーサンプリングを伴うロジスティック回帰)と呼ばれる。
【0151】
ランダムフォレスト:ランダムフォレストは、単一モデル(すなわち、決定ツリー)から生じ得る分散を低減させるように設計されたアンサンブル学習方法である。ランダムフォレスト分類は、ブートストラップ集約(バギング)、すなわち、最初に訓練データをブートストラップし、予測を行い、次いで個々のモデルからの結果を集約して全体的により正確な予測を行う技術を利用する。本実施例は、RFCRUS(Random Forest Classifier with Random Under Sampling:ランダムアンダーサンプリングを伴うランダムフォレスト分類器)と称される、ランダムフォレストアルゴリズムに供給されるランダムアンダーサンプリングデータセットを使用した。
【0152】
極度勾配ブースティング(Extreme Gradient Boosting、XGBoost):ブースティングは、多くの弱学習器(例えば、決定ツリー)が反復的に組み合わされて最終的な強い学習器を形成するアンサンブル機械学習技術である。更なる改善を行うことができなくなるまで、モデルが順次追加される。勾配ブースティングは、任意の微分可能な損失関数及び勾配降下最適化アルゴリズムを使用するブースティングの実装を指す。極度勾配ブースティングは、勾配ブースティングアルゴリズムの迅速かつ効率的な実装を指す。本実施例は、XGBCRUS(XGBoost Classifier with Random Under Sampling:ランダムアンダーサンプリングを伴うXGBoost分類器)と称される、XGBoostに供給されるランダムアンダーサンプリングデータセットを使用した。
【0153】
均衡化ランダムフォレスト分類器(Balanced Random Forest Classifier、BRFC):均衡化ランダムフォレスト分類器(BRFC)は、訓練データの均衡化ブートストラップ試料を使用する点でランダムフォレスト分類器とは異なる。これは、ランダムフォレスト分類器を学習する前に訓練データを前処理しないため、ランダムフォレストアルゴリズムに供給されるランダムアンダーサンプリングデータセットとは異なる。
【0154】
ランダムアンダーサンプリングブースト分類器(RUSBoost):適応ブースティング(Adaptive boosting、AdaBoost)は、複数の弱分類器(すなわち、決定株)を単一の強分類器に組み合わせようとするアンサンブルブースティング機械学習方法である。これは、以前の学習器からの分類に基づいて訓練試料を適応的に再重み付けし、より大きな重みが誤分類された試料に与えられる。最終的な予測は、全ての弱学習器の加重平均であり、強学習器により多くの重みが置かれる。ランダムアンダーサンプリングブースト(Random Under-Sampling Boost、RUSBoost)は、ブースティングアルゴリズムの各反復においてランダムアンダーサンプリングすることによって、AdaBoostを不均衡なデータを有する場合に適応させる。
モデル評価
【0155】
受信者動作特性(ROC)及びAUC:受信者動作特性(ROC)曲線は、分類モデルの性能を評価及び比較するための方法である。分類器についての偽陽性率及び真陽性率は、観察が事象又は非事象として分類されるかどうかを定義する可能な(予測確率)カットポイントのグリッドにわたって評価され、これらの値がプロットされる。ROC曲線下面積(AUC)も計算することができる。
【0156】
表2~表6は、BPMからの選択された共変量及びAUCを示し、ここで、BPMは、5つの機械学習アルゴリズムの中で、試験データから最も高いAUCを有するものとして選択される。
【表2】
9人全ての外来患者定義と正及び負に関連する共変量は、それぞれ↑及び↓で示される。9人の外来患者定義にわたって異なる関連方向を有した共変量は、
【数1】
で示される。100%正確な予測を行うモデルは、1に等しいAUC値を有する。
【表3】
【表4】
9人全ての外来患者定義と正及び負に関連する共変量は、それぞれ↑及び↓で示される。100%正確な予測を行うモデルは、1に等しいAUC値を有する。
【表5】
【表6】
予測アルゴリズムによる試験集団の分類
【0157】
最良の共変量が同定されたら、本実施例は、2つのアプローチを適用して試験集団を分類した。試験集団に対する分類の性能を、混同行列によって測定した。
【0158】
混同行列:分類器のための混同行列は、クラスごとの正確な予測及び不正確な予測の数を分割表の形態で要約する。混同行列は、分類器の予測精度及び分類器が行う可能性が高い誤差の種類を理解するのに有用である。精度(精度は、正又は負のいずれかの真のクラスに正確に分類される観察の割合を表す)、感度(真の陽性率)、及び特異度(真の陰性率)は、混同行列における数から計算される。
モデルベースのアプローチ
【0159】
本実施例は、BPMを訓練データに適用し、予測確率を得て、次いで、訓練データからの対象の予測確率に基づいてROC曲線を作成し、ヨーデン指数が最大であるカットオフ値として最適なカットポイントを選択した(ヨーデン指数=感度+特異度-1)。このカットオフ値を上回る予測確率を有する対象を「外来患者」として分類した。他の患者を「入院患者」として分類した。
【0160】
A3についてのBPM:外来患者定義A3に関する最小機構モデル(細胞生存率+0日目のIL-15+0日目のMCP-1の共変量を使用)について、本実施例は、最良の性能のアルゴリズムとしてランダムフォレスト(Random Forest、RF)を選択した。BPMのROC及びボックスプロット(RFCRUS、最適なカットオフ:0.538)を、外来患者A3に関する細胞生存率+IL-15+MCP-1とともに
図2及び
図3に示す。混同行列を表7に示す。
【表7】
感度:0.7115、特異度:0.7500、精度:0.7308
0.538超の予測確率を有する対象は、「外来患者」として分類される
【0161】
外来患者A3に関する細胞生存率+IL-15+MCP-1を有する試験データ、BPMに関する予測のボックスプロットを
図4に示す。混同行列を表7に示す。
【表8】
感度:0.7000、特異度:0.7143、精度:0.7073
0.538超の予測確率を有する対象は、「外来患者」として分類される
ツリーベースのアプローチ
【0162】
次いで、本実施例は、ツリーのルートノードを構成する訓練データにおける選択された最良の共変量を、後続子を構成するサブセットに分割することによって決定ツリーを構築した。分割は、分類特徴に基づく分割規則のセットに基づいていた。決定ツリーは、高い精度を得るために対象を分類するための、選択された最良の共変量に対する分割の組み合わせとして説明することができる。得られた決定ツリーは、
図5(訓練データ)及び
図6(試験データ)に例解される。対応する混同行列を表9及び表10に示す。
【表9】
感度:0.6275、特異度:0.7500、精度:0.6916
【表10】
感度:0.6000、特異度:0.9048、精度:0.7561
方向性
【0163】
次いで、本実施例は、部分依存プロットを使用して、機械学習モデルにおける他の共変量の効果を活用することによって、発症毒性と共変量との間の関係を示した。プロットを、
図7に提示する。プロットは、細胞生存率についてのカットオフ値が約95%であり、IL-15についてのカットオフ値が約28pg/mLであり、CCL2についてのカットオフ値が約1300pg/mLであることを示唆する。
【0164】
毒性の発症を伴う共変量の方向性は、外来患者(はい/いいえ)~細胞生存率+IL-15+MCP-1のロジスティック回帰における推定係数によっても提示され得る。負係数は、3つの共変量機構共変量が全て早発性毒性と正に関連したことを示す(表11)。
【表11】
* * *
【0165】
別段定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
【0166】
本明細書に例解的に説明される発明は、本明細書に具体的に開示されていない任意の要素又は複数の要素、制限又は複数の制限の非存在下で好適に実施され得る。したがって、例えば、「含む(comprising)」、「含む(including)」、「含有する(containing)」などの用語は、拡張的に読み取られ、限定するものではない。更に、本明細書で用いられる用語及び表現は、説明の用語として使用されており、限定するものではなく、図示及び説明された特徴のいかなる等価物、又はその一部も除外するそのような用語及び表現を使用する意図はないが、特許請求される発明の範囲内で様々な修正が可能であることが認識されている。
【0167】
したがって、本発明は、好ましい実施形態により具体的に開示されてきたが、本明細書に開示される本明細書に具現化される本発明の任意選択の特徴、修正、改善、及び変形は、当業者によって用いられ得、そのような修正、改善、及び変形は、本発明の範囲内にあるとみなされることを理解されたい。本明細書に提供される材料、方法、及び実施例は、好ましい実施形態を代表するものであり、例示的であり、本発明の範囲に対する限定として意図されない。
【0168】
本発明は、本明細書において広範かつ包括的に説明されている。包括的な開示内に属するより狭義の種及び亜属群の各々もまた、本発明の一部を形成する。これは、削除された材料が本明細書に具体的に明記されているかどうかに関わらず、属から任意の対象を除去する条件付き又は否定的制限付きでの本発明の包括的な説明を含む。
【0169】
加えて、本発明の特徴又は態様がマーカッシュ群の観点で説明されている場合、当業者は、本発明がまた、マーカッシュ群の任意の個々のメンバー又はメンバーのサブグループの観点で説明されていることを認識するであろう。
【0170】
本明細書で言及される全ての刊行物、特許出願、特許、及び他の参考文献は、各々が個々に参照により組み込まれるのと同じ程度に、参照によりその全体が明確に組み込まれる。矛盾する場合、定義を含む本明細書が優先される。
【0171】
本開示は上記の実施形態と併せて説明されてきたが、前述の説明及び実施例は例解を意図し、本開示の範囲を限定するものではないことを理解されたい。本開示の範囲内の他の態様、利点、及び修正は、本開示が関連する当業者には明らかであろう。
【手続補正書】
【提出日】2024-02-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者が細胞療法後に毒性を経験する可能性が高いか又はそうではないと同定するための方法であって、
前記患者
より得られた血液試料中のIL-15(インターロイキン-15)及びMCP-1(単球走化性タンパク質-1)のうちの少なくとも1つのレベルを測定することと、
IL-15若しくはMCP-1の前記レベルが対応する参照レベルよりも高い場合に、前記患者が前記細胞療法後に毒性を経験する可能性が高いと同定するか、又はIL-15若しくはMCP-1レベルが対応する参照レベルよりも低い場合に、前記患者が前記細胞療法後に毒性を経験する可能性が高くないと同定することと、を含み、
前記細胞療法が、免疫細胞の投与を含む、方法。
【請求項2】
毒性を経験する可能性が高いと同定され
る患者
に前記毒性
の予防又は治療
を提供する
ための、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記予防又は
治療が、抗ヒスタミン剤、コルチコステロイド、抗低血圧剤、IL-6阻害剤、GM-CSF阻害剤、及び非ステロイド性抗炎症薬からなる群から選択される薬剤の投与を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記
予防又は
治療が、トシリズマブ、デキサメタゾン、レベチラセタム、レンジルマブ、メチルプレドニゾロン、アナキンラ、シルツキシマブ、ルキソリチニブ、シクロホスファミド、IVIG(静脈内免疫グロブリン)、及びATG(抗胸腺細胞グロブリン)からなる群から選択される薬剤の投与を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記免疫細胞が、キメラ抗原受容体(CAR)を発現するように操作されたT細胞を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記CARが、CD19(分化抗原群19)タンパク質に対する結合特異性を有する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記血液試料が、前記細胞療法前に前記患者から得られた血清試料である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記血液試料が、前記患者のプレコンディショニング治療後に得られる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記プレコンディショニング治療が、前記患者におけるリンパ球を低減させる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記毒性が、サイトカイン放出症候群(CRS)、神経学的事象(NE)、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1~
4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記毒性が、早発性毒性である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記早発性毒性が、前記細胞療法後4日以内に発生する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
IL-15又はMCP-1についての前記参照レベルが、前記細胞療法後に前記毒性を経験する患者及び前記細胞療法後に前記毒性を経験しない患者から決定される、請求項1~
4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記細胞療法において使用される細胞の生存率を測定することを更に含み、前記IL-15若しくはMCP-1レベルが前記対応する参照レベルよりも高
く、細胞生存率が参照細胞生存率よりも高い場合に、前記患者が、前記細胞療法後に毒性を経験する可能性が高いと同定されるか、又は前記IL-15若しくはMCP-1レベルが前記対応する参照レベルよりも低
く、細胞生存率が前記参照細胞生存率よりも低い場合に、前記患者が、前記細胞療法後に毒性を経験する可能性が高くないと同定される、請求項1~
4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記患者のベースラインヘモグロビン、ベースライン腫瘍量、ベースラインLDH、ベースラインクレアチニン、及びベースラインカルシウムの1つ以上のレベルを得ることを更に含む、請求項1~
4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
細胞療法後に毒性を経験する可能性が高いと同定された患者におけるサイトカイン放出症候群(CRS)又は神経学的事象(NE)の予防又は治療のための組成物であって、
ここで、前記患者の血液試料中のIL-15
(インターロイキン-15)若しくはMCP-1
(単球走化性タンパク質-1)のレベルが対応する参照レベルよりも高い場合に、前記患者が前記細胞療法後に毒性を経験する可能性が高いと同定
されるか、又は前記患者の血液試料中のIL-15若しくはMCP-1レベルが対応する参照レベルよりも低い場合に、前記患者が前記細胞療法後に毒性を経験する可能性が高くないと同定
される、
前記組成物。
【請求項17】
抗ヒスタミン剤、コルチコステロイド、抗低血圧剤、IL-6阻害剤、GM-CSF阻害剤、及び非ステロイド性抗炎症薬からなる群から選択される
薬剤を含む、請求項16に記載の
組成物。
【請求項18】
トシリズマブ、デキサメタゾン、レベチラセタム、レンジルマブ、メチルプレドニゾロン、アナキンラ、シルツキシマブ、ルキソリチニブ、シクロホスファミド、IVIG(静脈内免疫グロブリン)、及びATG(抗胸腺細胞グロブリン)からなる群から選択される
薬剤を含む、請求項16に記載の
組成物。
【請求項19】
前記IL-15若しくはMCP-1レベルが前記対応する参照レベルよりも高く、
前記細胞療法において使用される細胞
の生存率が参照細胞生存率よりも高い場合に、前記患者が、前記細胞療法後に毒性を経験する可能性が高いと同定されるか、又は前記IL-15若しくはMCP-1レベルが前記対応する参照レベルよりも低く、
前記細胞療法において使用される細胞
の生存率が前記参照細胞生存率よりも低い場合に、前記患者が、前記細胞療法後に毒性を経験する可能性が高くないと同定される、請求項16に記載の
組成物。
【請求項20】
前記患者のベースラインヘモグロビン、ベースライン腫瘍量、ベースラインLDH、ベースラインクレアチニン、及びベースラインカルシウムの1つ以上のレベルを得ることを更に含む、請求項16~19のいずれか一項に記載の
組成物。
【請求項21】
患者が細胞療法後に毒性を経験する可能性が高いと同定するのに有用なキット又はパッケージであって、生物学的試料中のIL-15及びMCP-1の発現レベルを測定するためのポリヌクレオチドプライマ又はプローブ又は抗体を含む、キット又はパッケージ。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0126
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0126】
本明細書に記載される例示的な方法の様々な動作は、関連する動作を実行するように一時的に(例えば、ソフトウェアによって)構成されるか又は永続的に構成される1つ以上のプロセッサによって、少なくとも部分的に実行され得る。同様に、本明細書に記載される方法は、少なくとも部分的にプロセッサ実装され得、特定のプロセッサ又は複数のプロセッサがハードウェアの例である。例えば、方法の動作のうちの少なくともいくつかは、1つ以上のプロセッサによって実行され得る。更に、1つ以上のプロセッサはまた、「クラウドコンピューティング」環境において、又は「サービスとしてのソフトウェア」(software as a service、SaaS)として、関連する動作の実行をサポートするように動作し得る。例えば、動作の少なくともいくつかは、コンピュータの群(プロセッサを含む機械の例として)によって実行され得、これらの動作は、ネットワーク(例えば、インターネット)を介して、及び1つ以上の適切なインターフェース(例えば、アプリケーションプログラムインターフェース(Application Program Interface、API))を介してアクセス可能である。
[項1]
患者が細胞療法後に毒性を経験する可能性が高いか又はそうではないと同定するための方法であって、
前記患者の血液試料中のIL-15(インターロイキン-15)及びMCP-1(単球走化性タンパク質-1)のうちの少なくとも1つのレベルを測定することと、
IL-15若しくはMCP-1の前記レベルが対応する参照レベルよりも高い場合に、前記患者が前記細胞療法後に毒性を経験する可能性が高いと同定するか、又はIL-15若しくはMCP-1レベルが対応する参照レベルよりも低い場合に、前記患者が前記細胞療法後に毒性を経験する可能性が高くないと同定することと、を含み、
前記細胞療法が、免疫細胞の投与を含む、方法。
[項2]
前記患者が毒性を経験する可能性が高いと同定される場合に、前記患者における前記毒性を予防又は治療することを更に含む、項1に記載の方法。
[項3]
治療又は予防が、抗ヒスタミン剤、コルチコステロイド、抗低血圧剤、IL-6阻害剤、GM-CSF阻害剤、及び非ステロイド性抗炎症薬からなる群から選択される薬剤の投与を含む、項2に記載の方法。
[項4]
前記治療又は予防が、トシリズマブ、デキサメタゾン、レベチラセタム、レンジルマブ、メチルプレドニゾロン、アナキンラ、シルツキシマブ、ルキソリチニブ、シクロホスファミド、IVIG(静脈内免疫グロブリン)、及びATG(抗胸腺細胞グロブリン)からなる群から選択される薬剤の投与を含む、項3に記載の方法。
[項5]
前記免疫細胞が、キメラ抗原受容体(CAR)を発現するように操作されたT細胞を含む、項1~4のいずれか一項に記載の方法。
[項6]
前記CARが、CD19(分化抗原群19)タンパク質に対する結合特異性を有する、項5に記載の方法。
[項7]
前記血液試料が、前記細胞療法前に前記患者から得られた血清試料である、項1~6のいずれか一項に記載の方法。
[項8]
前記血液試料が、前記患者のプレコンディショニング治療後に得られる、項7に記載の方法。
[項9]
前記プレコンディショニング治療が、前記患者におけるリンパ球を低減させる、項8に記載の方法。
[項10]
前記毒性が、サイトカイン放出症候群(CRS)、神経学的事象(NE)、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、項1~9のいずれか一項に記載の方法。
[項11]
前記毒性が、早発性毒性である、項10に記載の方法。
[項12]
前記早発性毒性が、前記細胞療法後4日以内に発生する、項11に記載の方法。
[項13]
IL-15又はMCP-1についての前記参照レベルが、前記細胞療法後に前記毒性を経験する患者及び前記細胞療法後に前記毒性を経験しない患者から決定される、項1~12のいずれか一項に記載の方法。
[項14]
前記細胞療法において使用される細胞の生存率を測定することを更に含み、前記IL-15若しくはMCP-1レベルが前記対応する参照レベルよりも高く、前記細胞生存率が参照細胞生存率よりも高い場合に、前記患者が、前記細胞療法後に毒性を経験する可能性が高いと同定されるか、又は前記IL-15若しくはMCP-1レベルが前記対応する参照レベルよりも低く、前記細胞生存率が前記参照細胞生存率よりも低い場合に、前記患者が、前記細胞療法後に毒性を経験する可能性が高くないと同定される、項1~13のいずれか一項に記載の方法。
[項15]
前記患者のベースラインヘモグロビン、ベースライン腫瘍量、ベースラインLDH、ベースラインクレアチニン、及びベースラインカルシウムの1つ以上のレベルを得ることを更に含む、項1~14のいずれか一項に記載の方法。
[項16]
細胞療法を受けている患者における毒性を予防又は治療するための方法であって、
前記患者が細胞療法後に毒性を経験する可能性が高いか又はそうではないと同定することであって、
前記患者の血液試料中のIL-15(インターロイキン-15)及びMCP-1(単球走化性タンパク質-1)のうちの少なくとも1つのレベルを測定することと、
IL-15若しくはMCP-1の前記レベルが対応する参照レベルよりも高い場合に、前記患者が前記細胞療法後に毒性を経験する可能性が高いと同定するか、又はIL-15若しくはMCP-1レベルが対応する参照レベルよりも低い場合に、前記患者が前記細胞療法後に毒性を経験する可能性が高くないと同定することと、を含む、同定することと、
前記患者が前記細胞療法後に毒性を経験する可能性が高いと同定された場合に、サイトカイン放出症候群(CRS)又は神経学的事象(NE)を予防又は治療する薬剤を前記患者に投与することと、を含む、方法。
[項17]
前記薬剤が、抗ヒスタミン剤、コルチコステロイド、抗低血圧剤、IL-6阻害剤、GM-CSF阻害剤、及び非ステロイド性抗炎症薬からなる群から選択される、項16に記載の方法。
[項18]
前記薬剤が、トシリズマブ、デキサメタゾン、レベチラセタム、レンジルマブ、メチルプレドニゾロン、アナキンラ、シルツキシマブ、ルキソリチニブ、シクロホスファミド、IVIG(静脈内免疫グロブリン)、及びATG(抗胸腺細胞グロブリン)からなる群から選択される、項16に記載の方法。
[項19]
前記細胞療法において使用される細胞の生存率を測定することを更に含み、前記IL-15若しくはMCP-1レベルが前記対応する参照レベルよりも高く、前記細胞生存率が参照細胞生存率よりも高い場合に、前記患者が、前記細胞療法後に毒性を経験する可能性が高いと同定されるか、又は前記IL-15若しくはMCP-1レベルが前記対応する参照レベルよりも低く、前記細胞生存率が前記参照細胞生存率よりも低い場合に、前記患者が、前記細胞療法後に毒性を経験する可能性が高くないと同定される、項16に記載の方法。
[項20]
前記患者のベースラインヘモグロビン、ベースライン腫瘍量、ベースラインLDH、ベースラインクレアチニン、及びベースラインカルシウムの1つ以上のレベルを得ることを更に含む、項16~19のいずれか一項に記載の方法。
[項21]
患者が細胞療法後に毒性を経験する可能性が高いと同定するのに有用なキット又はパッケージであって、生物学的試料中のIL-15及びMCP-1の発現レベルを測定するためのポリヌクレオチドプライマ又はプローブ又は抗体を含む、キット又はパッケージ。
【国際調査報告】