(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-05
(54)【発明の名称】アルファ-1アンチトリプシン発現を阻害するための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/113 20100101AFI20240829BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20240829BHJP
A61P 19/04 20060101ALI20240829BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240829BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240829BHJP
A61K 31/713 20060101ALI20240829BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240829BHJP
A61K 31/712 20060101ALI20240829BHJP
A61K 31/7125 20060101ALI20240829BHJP
A61K 47/54 20170101ALI20240829BHJP
A61K 9/51 20060101ALI20240829BHJP
A61K 9/12 20060101ALI20240829BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20240829BHJP
A61K 9/72 20060101ALI20240829BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
C12N15/113 Z ZNA
A61P1/16
A61P19/04
A61P35/00
A61K48/00
A61K31/713
A61P43/00 111
A61K31/712
A61K31/7125
A61K47/54
A61K9/51
A61K9/12
A61K9/10
A61K9/72
A61P11/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022578621
(86)(22)【出願日】2021-10-29
(85)【翻訳文提出日】2022-12-19
(86)【国際出願番号】 US2021072116
(87)【国際公開番号】W WO2023027759
(87)【国際公開日】2023-03-02
(32)【優先日】2021-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】323007098
【氏名又は名称】ノボ ノルディスク エー/エス
【氏名又は名称原語表記】Novo Nordisk A/S
【住所又は居所原語表記】Novo alle 1 DK-2880 Bagsvaerd Denmark
(74)【代理人】
【識別番号】100150142
【氏名又は名称】相原 礼路
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン, ボブ デール
(72)【発明者】
【氏名】パーセル, ナタリー ウェイン
(72)【発明者】
【氏名】ライ, チェンジュン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA16
4C076AA65
4C076AA93
4C076BB01
4C076BB13
4C076BB15
4C076BB16
4C076BB21
4C076BB27
4C076BB29
4C076BB30
4C076BB31
4C076CC09
4C076CC15
4C076CC16
4C076CC29
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4C084AA13
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4C084MA63
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZA59
4C084ZA75
4C084ZA96
4C084ZB26
4C084ZC02
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA13
4C086MA16
4C086MA38
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4C086MA56
4C086MA60
4C086MA63
4C086MA66
4C086NA14
4C086ZA59
4C086ZA75
4C086ZA96
4C086ZB26
4C086ZC02
(57)【要約】
本開示は、dsRNA、例えばダイサー基質siRNA(DsiRNA)剤の使用を通じて、α-1アンチトリプシン標的RNA及びタンパク質レベルを低減させるのに有用な化合物、組成物、及び方法に関する。
【選択図】
図1-1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
α-1アンチトリプシン(A1AT)の発現を低減させるオリゴヌクレオチドであって、前記オリゴヌクレオチドが15~30ヌクレオチドのアンチセンス鎖及び15~50ヌクレオチドのセンス鎖を含み、前記アンチセンス鎖は、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、及び32から選択されるヌクレオチド配列を有し、前記センス鎖は、前記アンチセンス鎖に相補性の領域を有し、必要に応じて前記センス鎖は、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、及び31から選択されるヌクレオチド配列を含む、前記オリゴヌクレオチド。
【請求項2】
前記センス鎖及び前記アンチセンス鎖は、
(a)それぞれ配列番号1及び2、
(b)それぞれ配列番号3及び4、
(c)それぞれ配列番号5及び6、
(d)それぞれ配列番号7及び8、
(e)それぞれ配列番号9及び10、
(f)それぞれ配列番号11及び12、
(g)それぞれ配列番号13及び14、
(h)それぞれ配列番号15及び16、
(i)それぞれ配列番号17及び18、
(j)それぞれ配列番号19及び20、
(k)それぞれ配列番号21及び22、
(l)それぞれ配列番号23及び24、
(m)それぞれ配列番号25及び26、
(n)それぞれ配列番号27及び28、
(o)それぞれ配列番号29及び30、及び
(p)それぞれ配列番号31及び32からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む、請求項1に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項3】
α-1アンチトリプシン(A1AT)の発現を低減させるオリゴヌクレオチドであって、前記オリゴヌクレオチドは、15~30のヌクレオチドのアンチセンス鎖及び15~50ヌクレオチドのセンス鎖を含み、前記アンチセンス鎖は、配列番号26に示されるヌクレオチド配列とは3ヌクレオチド以下だけ異なる少なくとも連続する19ヌクレオチドを含み、前記センス鎖は、配列番号25に示されるヌクレオチド配列を含む、前記オリゴヌクレオチド。
【請求項4】
前記センス鎖及び前記アンチセンス鎖は、二本鎖領域を形成し、前記アンチセンス鎖は、長さが19~30ヌクレオチドである、請求項3に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項5】
前記アンチセンス鎖は、配列番号26のヌクレオチド配列とは2ヌクレオチド以下だけ異なる少なくとも連続する19ヌクレオチドを含む、請求項3に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項6】
前記オリゴヌクレオチドは、少なくとも1つの修飾ヌクレオチドを含む、請求項1~5のいずれか1項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項7】
前記オリゴヌクレオチドの全てのヌクレオチドが修飾される、請求項6に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項8】
前記修飾ヌクレオチドが、2’-修飾を含む、請求項6または7に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項9】
前記2’-修飾は、2’-フルオロ修飾、2’-O-メチル修飾から選択されるか、または両方である、請求項8に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項10】
前記アンチセンス鎖は、22ヌクレオチドを含み、前記センス鎖は、36ヌクレオチドを含み、前記アンチセンス鎖及び前記センス鎖は、5’~3’に番号付けされ、前記センス鎖の1、2、4、6、7、12、14、16、18~26、もしくは31~36位、及び/または前記アンチセンス鎖の1、6、8、11~13、15、17、もしくは19~22位の1つ以上の位置が、2’-O-メチルで修飾される、請求項1~6のいずれか1項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項11】
前記アンチセンス鎖は、22ヌクレオチドを含み、前記センス鎖は、36ヌクレオチドを含み、前記アンチセンス鎖及び前記センス鎖は、5’~3’に番号付けされ、前記センス鎖の3、5、8~11、13、15、もしくは17位、及び/または前記アンチセンス鎖の2~5、7、9、10、14、16、もしくは18位の1つ以上は、2’-フルオロで修飾される、請求項1~6のいずれか1項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項12】
前記アンチセンス鎖は、22ヌクレオチドを含み、前記センス鎖は、36ヌクレオチドを含み、前記アンチセンス鎖及び前記センス鎖は、5’~3’に番号付けされ、前記センス鎖の1、2、4~7、11、14~16、18~26、もしくは31~36位、及び/または前記アンチセンス鎖の1、4、6、8~11、13、15、17、18、もしくは20~22位の1つ以上の位置が、2’-O-メチルで修飾され、前記センス鎖の3、8~10、12、13、及び17位、及び/または前記アンチセンス鎖の2、3、5、7、12、14、16、及び19位の1つ以上の位置が、2’-フルオロで修飾される、請求項1~6のいずれか1項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項13】
前記アンチセンス鎖は、22ヌクレオチドを含み、前記センス鎖は、36ヌクレオチドを含み、前記アンチセンス鎖及び前記センス鎖は、5’~3’に番号付けされ、前記センス鎖の1、2、4~7、11、14~16、18~26、もしくは31~36位、及び/または前記アンチセンス鎖の1、4、6、8、9、11~13、15、18、もしくは20~22位の1つ以上の位置が、2’-O-メチルで修飾され、前記センス鎖の3、8~10、12、13、もしくは17位、及び/または前記アンチセンス鎖の2、3、5、7、10、14、16、17、もしくは19位の1つ以上の位置が、2’-フルオロで修飾される、請求項1~6のいずれか1項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項14】
前記オリゴヌクレオチドは、少なくとも1つの修飾ヌクレオチド間結合を含む、先行請求項のいずれか1項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項15】
前記少なくとも1つの修飾ヌクレオチド間結合は、ホスホロチオアート結合である、請求項14に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項16】
前記オリゴヌクレオチドは、前記センス鎖の1位と2位、前記アンチセンス鎖の1位と2位、前記アンチセンス鎖の2位と3位、前記アンチセンス鎖の3位と4位、前記アンチセンス鎖の20位と21位、及び前記アンチセンス鎖の21位と22位のそれぞれの間にホスホロチオエート結合を有する、請求項1~15のいずれか1項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項17】
前記アンチセンス鎖の第1の位置のウリジンはリン酸類似体を含む、先行請求項のいずれか1項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項18】
前記アンチセンス鎖の1位に以下の構造:
【化1】
を含む、請求項17に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項19】
前記センス鎖は、S1-L-S2として示されるステムループを含み、S1は、S2に相補的であり、Lは、S1とS2との間に長さが3~5ヌクレオチドのループを形成し、必要に応じてLはテトラループである、先行請求項のいずれか1項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項20】
前記テトラループは配列5’-GAAA’3’を含む、請求項19に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項21】
前記オリゴヌクレオチドは、1つ以上のN-アセチルガラクトサミン(GalNAc)部分に付着している、請求項1~20のいずれか1項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項22】
前記センス鎖上の-GAAA-配列の1つ以上のヌクレオチドが、一価のGalNAc部分にコンジュゲートされている、請求項20に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項23】
前記-GAAA-配列は以下の構造を含み、
【化2】
Lは、置換及び非置換アルキレン、置換及び非置換アルケニレン、置換及び非置換アルキニレン、置換及び非置換ヘテロアルキレン、置換及び非置換ヘテロアルケニレン、置換及び非置換ヘテロアルキニレン、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択される、結合、クリックケミストリーハンドル、または長さが1~20の連続した共有結合原子を含むリンカーを表し、
Xは、O、S、またはNである、請求項22または22に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項24】
Lは、アセタールリンカーである、請求項23に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項25】
Xは、Oである、請求項23または24に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項26】
前記-GAAA-配列は以下の構造:
【化3】
を含む、請求項20及び請求項22~25のいずれか1項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項27】
α-1アンチトリプシン(A1AT)の発現を低減させるオリゴヌクレオチドであって、前記オリゴヌクレオチドが15~30ヌクレオチドのアンチセンス鎖及び15~50ヌクレオチドのセンス鎖を含み、前記アンチセンス鎖は、配列番号34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76、78、80、82、84、86、88、90、92、94、96、98、100、102、及び104から選択されるヌクレオチド配列を有し、前記センス鎖は、前記アンチセンス鎖に相補性の領域を有し、必要に応じて前記センス鎖は、配列番号33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75、77、79、81、83、85、87、89、91、93、95、97、99、101、及び103から選択されるヌクレオチド配列を含む、前記オリゴヌクレオチド。
【請求項28】
前記センス鎖及び前記アンチセンス鎖は、
(a)それぞれ配列番号33及び34、
(b)それぞれ配列番号35及び36、
(c)それぞれ配列番号37及び38、
(d)それぞれ配列番号39及び40、
(e)それぞれ配列番号41及び42、
(f)それぞれ配列番号43及び44、
(g)それぞれ配列番号45及び46、
(h)それぞれ配列番号47及び48、
(i)それぞれ配列番号49及び50、
(j)それぞれ配列番号51及び52、
(k)それぞれ配列番号53及び54、
(l)それぞれ配列番号55及び56、
(m)それぞれ配列番号57及び58、
(n)それぞれ配列番号59及び60、
(o)それぞれ配列番号61及び62、
(p)それぞれ配列番号63及び64、
(q)それぞれ配列番号65及び66、
(r)それぞれ配列番号67及び68、
(s)それぞれ配列番号69及び70、
(t)それぞれ配列番号71及び72、
(u)それぞれ配列番号73及び74、
(v)それぞれ配列番号75及び76、
(w)それぞれ配列番号77及び78、
(x)それぞれ配列番号79及び80、
(y)それぞれ配列番号81及び82、
(z)それぞれ配列番号83及び84、
(aa)それぞれ配列番号85及び86、
(bb)それぞれ配列番号87及び88、
(cc)それぞれ配列番号89及び90、
(dd)それぞれ配列番号91及び92、
(ee)それぞれ配列番号93及び94、
(ff)それぞれ配列番号95及び96、
(gg)それぞれ配列番号97及び98、
(hh)それぞれ配列番号99及び100、
(ii)それぞれ配列番号101及び102、及び
(jj)それぞれ配列番号103及び104からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む、請求項27に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項29】
A1ATの発現を低減させるオリゴヌクレオチドであって、前記オリゴヌクレオチドが、配列番号26に示される配列を含むアンチセンス鎖及び配列番号105に示される配列を含むセンス鎖を含み、
前記センス鎖の1、2、4~7、11、14~16、18~26、もしくは31~36位、及び前記アンチセンス鎖の1、4、6、8~11、13、15、17、18もしくは20~22位の全ての位置が2’-O-メチルで修飾され、前記センス鎖の3、8~10、12、13、及び17位、ならびに前記アンチセンス鎖の2、3、5、7、12、14、16、及び19位の全ての位置が2’-フルオロで修飾され、
前記オリゴヌクレオチドは、前記センス鎖の1位と2位、前記アンチセンス鎖の1位と2位、前記アンチセンス鎖の2位と3位、前記アンチセンス鎖の3位と4位、前記アンチセンス鎖の20位と21位、及び前記アンチセンス鎖の21位と22位のそれぞれの間にホスホロチオエート結合を有し、
前記オリゴヌクレオチドは、前記アンチセンス鎖の1位に以下の構造を含み、
【化4】
前記センス鎖上の-GAAA-配列の各ヌクレオチドは、一価のGalNAc部分にコンジュゲートされており、前記-GAAA-配列は以下の構造:
【化5】
を含む、前記オリゴヌクレオチド。
【請求項30】
A1ATの発現を低減させるオリゴヌクレオチドであって、前記オリゴヌクレオチドが、配列番号103のヌクレオチド配列を含むセンス鎖、及び配列番号104のヌクレオチド配列を含むアンチセンス鎖を含み、前記アンチセンス鎖は、A1AT RNA転写物に相補性の領域を有し、前記オリゴヌクレオチドは、以下の構造:
【化6】
を有するコンジュゲート形態である、前記オリゴヌクレオチド。
【請求項31】
先行請求項のいずれか1項に記載のオリゴヌクレオチドを含む組成物。
【請求項32】
Na
+対イオンをさらに含む、請求項31に記載の組成物。
【請求項33】
請求項1~30のいずれか1項に記載のオリゴヌクレオチドと、
薬学的に許容可能な担体または希釈剤と、を含む組成物。
【請求項34】
アルファ1アンチトリプシン(A1AT)の発現を阻害する二本鎖リボ核酸(dsRNA)剤であって、前記dsRNAが、二本鎖領域を形成するセンス鎖及びアンチセンス鎖を含み、前記アンチセンス鎖は、配列番号26のヌクレオチド配列とは4ヌクレオチド以下だけ異なる少なくとも連続した15ヌクレオチドを含み、前記アンチセンス鎖は長さが19~35ヌクレオチドである、前記二本鎖リボ核酸剤。
【請求項35】
前記二本鎖領域の全てのヌクレオチドは、修飾ヌクレオチドであり、前記修飾ヌクレオチドは、2’-O-メチル修飾ヌクレオチド及び2’-フルオロ修飾ヌクレオチドからなる群より選択され、前記dsRNAは、1つ以上のN-アセチルガラクトサミン(GalNAc)部分に付着している、請求項34に記載のdsRNA剤。
【請求項36】
前記アンチセンス鎖は、長さが19~30ヌクレオチドであり、前記センス鎖は長さが32~80ヌクレオチドの間であり、かつテトラループを含む、請求項34または35に記載のdsRNA剤。
【請求項37】
前記センス鎖は、配列番号25に示されるヌクレオチド配列を含む、請求項34~36のいずれか1項に記載のdsRNA剤。
【請求項38】
前記アンチセンス鎖は、配列番号104に示される配列を含み、前記センス鎖は、配列番号103に示される配列を含む、請求項34~37のいずれか1項に記載のdsRNA剤。
【請求項39】
請求項34~38のいずれか1項に記載のdsRNA剤を含む組成物。
【請求項40】
Na
+対イオンをさらに含む、請求項39に記載の組成物。
【請求項41】
請求項34~38のいずれか1項に記載のdsRNA剤と、
薬学的に許容可能な担体または希釈剤と、を含む組成物。
【請求項42】
対象にオリゴヌクレオチドを送達する方法であって、請求項1~30のいずれか1項に記載のオリゴヌクレオチド、請求項31~33のいずれか1項に記載の組成物、請求項34~38のいずれか1項に記載のdsRNA剤、または請求項39~41のいずれか1項に記載の組成物を投与することを含む、前記方法。
【請求項43】
前記オリゴヌクレオチド、前記組成物、または前記dsRNA剤を送達して、前記対象における肝疾患もしくは障害を治療または予防し、前記肝疾患もしくは障害は、慢性肝疾患、肝炎、肝硬変、肝線維症、及び肝細胞癌からなる群から選択される、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記対象がヒトである、請求項42または43に記載の方法。
【請求項45】
前記オリゴヌクレオチド、前記組成物、または前記dsRNA剤は、前記対象に静脈内または皮下投与される、請求項42~44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
哺乳動物において標的α-1アンチトリプシンmRNAの発現を低減させる方法であって、請求項1~30のいずれか1項に記載のオリゴヌクレオチド、請求項31~33のいずれか1項に記載の組成物、請求項34~38のいずれか1項に記載のdsRNA剤、または請求項39~41のいずれか1項に記載の組成物を、前記哺乳動物における標的α-1アンチトリプシンmRNAの発現を低減させるのに十分な量で、投与することを含む、前記方法。
【請求項47】
前記オリゴヌクレオチドは脂質ナノ粒子(LNP)に製剤化される、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記オリゴヌクレオチドまたは前記dsRNA剤は、1日につき、前記哺乳動物1キログラム当たり1マイクログラム~5ミリグラム、1キログラム当たり100マイクログラム~0.5ミリグラム、1キログラム当たり0.001~0.25ミリグラム、1キログラム当たり0.01~20マイクログラム、1キログラム当たり0.01~10マイクログラム、1キログラム当たり0.10~5マイクログラム、及び1キログラム当たり0.1~2.5マイクログラムからなる群から選択される投与量で投与される、請求項42~47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
前記哺乳動物の組織では、前記オリゴヌクレオチド、前記組成物、または前記dsRNA剤を前記哺乳動物に投与してから少なくとも3日後、α-1アンチトリプシンmRNAレベルの少なくとも70%の量(%で表する)が減少する、請求項46~48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項50】
前記組織は肝臓組織である、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記投与ステップは、静脈内注射、筋肉内注射、腹腔内注射、注入、皮下注射、経皮、エアロゾル、直腸、膣、局所、経口、及び吸入送達からなる群から選択される投与経路を含む、請求項42~44及び46~50のいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
動物の肝疾患もしくは障害を治療または予防する方法であって、請求項1~30のいずれか1項に記載のオリゴヌクレオチド、請求項31~33のいずれか1項に記載の組成物、請求項34~38のいずれか1項に記載のdsRNA剤、または請求項39~41のいずれか1項に記載の組成物を、前記対象における前記肝疾患もしくは障害を治療または予防するのに十分な量で、前記対象に投与することを含み、前記肝疾患もしくは障害が、慢性肝疾患、肝炎、肝硬変、COPD、肺気腫、肝線維症、及び肝細胞癌からなる群から選択される、前記方法。
【請求項53】
前記動物がヒトである、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
請求項1~30のいずれか1項に記載のオリゴヌクレオチド、請求項31~33のいずれか1項に記載の組成物、請求項34~38のいずれか1項に記載のdsRNA剤、または請求項39~41のいずれか1項に記載の組成物と、α-1アンチトリプシン発現の低減を必要とする対象においてそれを行うための説明書と、を含むキット。
【請求項55】
請求項1~30のいずれか1項に記載のオリゴヌクレオチド、請求項31~33のいずれか1項に記載の組成物、請求項34~38のいずれか1項に記載のdsRNA剤、または請求項39~41のいずれか1項に記載の組成物の、α-1アンチトリプシン発現の低減を必要とする対象においてそれを行う薬物の製造における使用。
【請求項56】
前記対象が肝疾患もしくは障害を有する、請求項54に記載のキットまたは請求項55に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
アルファ1-アンチトリプシン(A1AT、またはSERPINA1、またはSerpina1もしくはAAT)は、セルピンスーパーファミリーに属するプロテアーゼ阻害剤である。一般的に血清トリプシン阻害剤として知られている。アルファ1-アンチトリプシンは、様々なプロテアーゼを阻害することから、アルファ1プロテイナーゼ阻害剤(A1PI)とも呼ばれている(Gettins P.G. et al.,Chem Rev 102:4751-804)。アルファ1-アンチトリプシンは、炎症細胞の酵素、特に好中球エラスターゼから組織を保護し、血液の参考基準値が1.5~3.5グラム/リットルである。しかしながら、急性炎症時には数倍のレベル上昇が起こる可能性がある(Kushner and Mackiewicz,ACUTE-PHASE PRОTEINS:МОLECULAR BIОLОGY,BIОCHEМISTRY AND CLINICAL APPLICATIОNS(CRC Press);1993,Chapter 1, pp.3-19)。AATが存在しない場合、AATと酵素エラスターゼのバランスが崩れ、損傷を引き起こす可能性がある。通常、酵素エラスターゼは、感染症と戦う上で重要な役割を果たすものであるが、多すぎると健康な組織に害を及ぼす可能性もある。高濃度では、肺の内側及び肺胞に損傷を与え、より具体的には、そのような状況では、エラスターゼが自由に肺の弾力性に寄与するエラスチンを分解する。その結果、成人には肺気腫もしくは慢性閉塞性肺疾患(COPD)、及び成人もしくは子供には肝硬変などの呼吸器合併症を引き起こす(Gadek JE et al.,Lung,1990,168 Suppl:552-64;Birrer P,AGENTS ACTIОNS SUPPL.,1993,40:3-12)。さらに、AAT欠損は肝臓に影響を与え、機能低減につながり、肝硬変や肝癌のリスクを増加させる。人生の最初の30年間は、AAT欠損症を有する人にとって肺疾患よりも肝臓疾患の方が一般的である(Gadek JE et al.,Lung,1990)。何人かの個体において、AAT欠損は、皮膚に痛みを伴う赤い結節を頻繁に発生し得る。AAT遺伝子の1つまたは両方のコピーに変異がある人は、アルファ-1抗トリプシン欠損症に苦しむ可能性があり、これは、肺と肝臓のエラスターゼ活性が通常よりも高いため、肺気腫または慢性肝疾患を発症するリスク(DeMeo DL,and Silverman EK(March 2004)、Alpha1-antitrypsin deficiency. 2:genetic aspects of alpha(1)-antitrypsin deficiency:phenotypes and genetic modifiers of emphysema risk,THОRAX59(3):259-64)として表れる。SERPINA1は、染色体14q32に局在し、75個を超えるSERPINA1遺伝子の変異が特定されており、多く人々に臨床的に重大な影響を及ぼしている(Silverman E.K.,Sandhaus RA(2009),Alpha1-Antitrypsin Deficiency,New England Journal of Medicine 360 (26):2749-57)。最も一般的な重度欠損の原因であるPiZは、342位のグルタミン酸からリジンへの変異(dbSNP:rs28929474)をもたらす単一塩基対置換であり、PiSは、264位のグルタミン酸からバリンへの変異(dbSNP:rs17580)によってもたらされる。
【0002】
罹患者におけるアルファ-1アンチトリプシンの欠損は、野生型の機能的なアルファ-1アンチトリプシンの欠損である。しかしながら、場合によっては、個体がかなりの量のアルファ-1アンチトリプシンを産生していても、産生されるアルファ-1アンチトリプシンタンパク質の一部がミスフォールドされているか、またはタンパク質の本来の機能を損なうかもしくは排除する変異を含んでいる。場合によっては、個体は、体内の合成部位から作用部位に適切に輸送できない、ミスフォールドタンパク質を生成する。
【0003】
アルファ-1アンチトリプシン欠損症に起因する肝疾患は、このようなミスフォールドタンパク質によって誘発される可能性がある。アルファ-1アンチトリプシンの突然変異形態、(例えば、342位(前処理された形態では366位)のグルタミン酸からリジンへの変異を有する一般的なPiZバリアント)は、肝細胞内で産生され(肝臓の肝実質細胞は、通常、大量の循環AATを産生する)、ミスフォールド構成では、そのような形態は細胞から容易に輸送されない。これにより、肝細胞にミスフォールドタンパク質が蓄積され(肝実質細胞、変異型Zタンパク質の負担が最も大きい肝細胞は、最終的にアポトーシスをもたらす細胞内損傷のカスケードを受ける可能性がある。肝細胞のアポトーシスと再生のこの慢性的なサイクルは、最終的には線維症及び臓器損傷を引き起こし得る。)、慢性肝疾患、肝炎、肝硬変、肝線維症、及び/または肝細胞癌を含むがこれらに限定されない1つ以上の肝疾患もしくは障害が誘発される可能性がある(Rudnick DA,and Perlmutter DH.,Alpha-1-antitrypsin deficiency:a new paradigm for hepatocellular carcinoma in genetic liver disease,Hepatology;2005,42(3):514-21)。AAT欠損症を有するヒトには、息切れ、痰もしくは喀痰の産生を伴う過度の咳、喘鳴、運動能力の低下及び持続的な低エネルギー状態または疲労、息を吸うときの胸の痛みの増加を含み他の症状が現れることがある。これらの症状は慢性的であるか、風邪もしくはインフルエンザなどの急性呼吸器感染症と共に発生し得る。まれに、AATは脂肪織炎と呼ばれる皮膚疾患を引き起こす場合があり、その結果、硬化した斑点や痛みを伴う赤いしこりが生じることがある(Gadek JE et al.,LUNG,1990)。
【0004】
現在、アルファ-1アンチトリプシン欠損症に関連する肝疾患の患者をうまく治療するための選択肢はほとんどなく、そのような選択肢には、肝炎ワクチン接種、支持療法、及び有害物質(例えば、アルコール及びNSAID)の回避が含まれるが、いずれも標的療法を提供していない。アルファ-1アンチトリプシンの置換は、これらの患者の肝疾患に影響しないが、肝移植は効果的であり得る。したがって、アルファ-1アンチトリプシン欠損症に関連する肝疾患を有する患者を治療する組成物及び方法が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
本開示は、肝臓におけるアルファ-1アンチトリプシン(α-1アンチトリプシンまたはA1ATもしくはSERPINA1)の発現を低減させるように機能するオリゴヌクレオチド(例えば、RNAiオリゴヌクレオチド)の発見に部分的に基づいている。具体的には、アルファ-1アンチトリプシンmRNA内の標的配列が同定され、これらの標的配列に結合してアルファ-1アンチトリプシンmRNA発現を阻害するオリゴヌクレオチドが生成された。本明細書に示されるように、オリゴヌクレオチドは、マウスアルファ-1アンチトリプシンの発現を阻害し、及び/または肝臓におけるサル及びヒトアルファ-1アンチトリプシンの発現を阻害した。理論に拘束されるものではないが、本明細書に記載のオリゴヌクレオチドは、アルファ-1アンチトリプシン発現に関連する疾患、障害または状態(例えば、肺炎症、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺気腫及び/または慢性肝疾患、例えば、慢性肝疾患、肝炎、肝硬変、肝線維症、及び/または肝細胞癌)の治療に有用である。いくつかの実施形態において、本明細書に記載のオリゴヌクレオチドは、α-1アンチトリプシンの変異に関連する疾患、障害または状態の治療に有用である。アルファ-1アンチトリプシンの発現を低減させるオリゴヌクレオチドは、米国特許第9,458,457号に記載されており、その内容は、本参照により本明細書に組み込まれる。
【0006】
いくつかの態様において、本開示は、α-1アンチトリプシン(A1AT)の発現を低減させるオリゴヌクレオチドであって、当該オリゴヌクレオチドが15~30ヌクレオチドのアンチセンス鎖及び15~50ヌクレオチドのセンス鎖を含み、アンチセンス鎖は、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30及び32から選択されるヌクレオチド配列を有し、センス鎖は、アンチセンス鎖に相補性の領域を有し、必要に応じてセンス鎖は、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29及び31から選択されるヌクレオチド配列を含む、オリゴヌクレオチドを提供する。
【0007】
前述のまたは関連する態様のいずれかにおいて、センス鎖及びアンチセンス鎖は、以下からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む。
(a)それぞれ配列番号1及び2
(b)それぞれ配列番号3及び4
(c)それぞれ配列番号5及び6
(d)それぞれ配列番号7及び8
(e)それぞれ配列番号9及び10
(f)それぞれ配列番号11及び12
(g)それぞれ配列番号13及び14
(h)それぞれ配列番号15及び16
(i)それぞれ配列番号17及び18
(j)それぞれ配列番号19及び20
(k)それぞれ配列番号21及び22
(l)それぞれ配列番号23及び24
(m)それぞれ配列番号25及び26
(n)それぞれ配列番号27及び28
(o)それぞれ配列番号29及び30
(p)それぞれ配列番号31及び32
【0008】
別の態様において、本開示は、α-1アンチトリプシン(A1AT)の発現を低減させるオリゴヌクレオチドであって、当該オリゴヌクレオチドは、15~30ヌクレオチドのアンチセンス鎖及び15~50ヌクレオチドのセンス鎖を含み、アンチセンス鎖は、配列番号26に示されるヌクレオチド配列とは3ヌクレオチド以下だけ異なる少なくとも連続した19ヌクレオチドを含み、センス鎖は、配列番号25に示されるヌクレオチド配列を含む、オリゴヌクレオチドを提供する。別の態様において、本開示は、α-1アンチトリプシン(A1AT)の発現を低減させるオリゴヌクレオチドであって、当該オリゴヌクレオチドは、15~30のヌクレオチドのアンチセンス鎖及び15~50ヌクレオチドのセンス鎖を含み、アンチセンス鎖は、配列番号26に示されるヌクレオチド配列とは3ヌクレオチド以下だけ異なる少なくとも連続する19ヌクレオチドを含み、センス鎖は、配列番号105に示されるヌクレオチド配列を含む、オリゴヌクレオチドを提供する。
【0009】
前述のまたは関連する態様のいずれかにおいて、センス鎖及びアンチセンス鎖は、二本鎖領域を形成し、アンチセンス鎖は、長さが19~30ヌクレオチドである。別の態様において、アンチセンス鎖は、配列番号26のヌクレオチド配列とは2ヌクレオチド以下だけ異なる少なくとも連続する19ヌクレオチドを含む。
【0010】
前述のまたは関連する態様のいずれかにおいて、オリゴヌクレオチドは、少なくとも1つの修飾ヌクレオチドを含む。いくつかの態様において、オリゴヌクレオチドの全てのヌクレオチドが修飾される。いくつかの態様において、修飾ヌクレオチドは、2’-修飾を含む。いくつかの態様において、2’-修飾は、2’-フルオロ修飾、2’-O-メチル修飾から選択されるか、または両方である。
【0011】
前述のまたは関連する態様のいずれかにおいて、アンチセンス鎖は、22ヌクレオチドを含み、センス鎖は、36ヌクレオチドを含み、アンチセンス鎖及びセンス鎖は、5’~3’に番号付けされ、センス鎖の1、2、4、6、7、12、14、16、18~26、もしくは31~36位、及び/またはアンチセンス鎖の1、6、8、11~13、15、17、もしくは19~22位の1つ以上の位置が、2’-O-メチルで修飾される。別の態様において、センス鎖の3、5、8~11、13、15、もしくは17位、及び/またはアンチセンス鎖の2~5、7、9、10、14、16、もしくは18位の1つ以上は、2’-フルオロで修飾される。さらに別の態様において、センス鎖の1、2、4~7、11、14~16、18~26、もしくは31~36位、及び/またはアンチセンス鎖の1、4、6、8~11、13、15、17、18、もしくは20~22位の1つ以上の位置が、2’-O-メチルで修飾され、センス鎖の3、8~10、12、13、及び17位、及び/またはアンチセンス鎖の2、3、5、7、12、14、16、及び19位の1つ以上の位置が、2’-フルオロで修飾される。別の態様において、センス鎖の1、2、4~7、11、14~16、18~26、もしくは31~36位、及び/またはアンチセンス鎖の1、4、6、8、9、11~13、15、18、もしくは20~22位の1つ以上の位置が、2’-O-メチルで修飾され、センス鎖の3、8~10、12、13、もしくは17位、及び/またはアンチセンス鎖の2、3、5、7、10、14、16、17、もしくは19位の1つ以上の位置が、2’-フルオロで修飾される。
【0012】
前述のまたは関連する態様のいずれかにおいて、オリゴヌクレオチドは、少なくとも1つの修飾ヌクレオチド間結合を含む。いくつかの態様において、少なくとも1つの修飾ヌクレオチド間結合は、ホスホロチオエート結合である。いくつかの態様において、オリゴヌクレオチドは、センス鎖の1位と2位、アンチセンス鎖の1位と2位、アンチセンス鎖の2位と3位、アンチセンス鎖の3位と4位、アンチセンス鎖の20位と21位、及びアンチセンス鎖の21位と22位のそれぞれの間にホスホロチオエート結合を有する。
【0013】
前述のまたは関連する態様のいずれかにおいて、アンチセンス鎖の第1の位置のウリジンはリン酸類似体を含む。いくつかの態様において、オリゴヌクレオチドは、アンチセンス鎖の1位に以下の構造を有する。
【化1】
【0014】
前述のまたは関連する態様のいずれかにおいて、オリゴヌクレオチドは、1つ以上のN-アセチルガラクトサミン(GalNAc)部分に付着している。
【0015】
前述のまたは関連する態様のいずれかにおいて、センス鎖は、S1-L-S2として示されるステムループを含み、S1は、S2に相補的であり、Lは、S1とS2との間に長さが3~5ヌクレオチドのループを形成する。いくつかの態様において、Lはテトラループである。いくつかの態様において、テトラループは配列5’-GAAA’3’を含む。いくつかの態様において、センス鎖上の-GAAA-配列の1つ以上のヌクレオチドが、一価のGalNAc部分にコンジュゲートしている。いくつかの態様において、-GAAA-配列は以下の構造を含み、
【化2】
式中、
Lは、置換及び非置換アルキレン、置換及び非置換アルケニレン、置換及び非置換アルキニレン、置換及び非置換ヘテロアルキレン、置換及び非置換ヘテロアルケニレン、置換及び非置換ヘテロアルキニレン、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択される、結合、クリックケミストリーハンドル、または長さが1~20個の連続した共有結合原子を含むリンカーを表し、
Xは、O、S、またはNである。いくつかの態様において、Lは、アセタールリンカーである。いくつかの態様において、Xは、Oである。
【0016】
いくつかの態様において、-GAAA-配列は以下の構造を有する。
【化3】
【0017】
別の態様において、本開示は、α-1アンチトリプシン(A1AT)の発現を低減させるオリゴヌクレオチドであって、当該オリゴヌクレオチドが15~30ヌクレオチドのアンチセンス鎖及び15~50ヌクレオチドのセンス鎖を含み、アンチセンス鎖は、配列番号34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76、78、80、82、84、86、88、90、92、94、96、98、100、102、及び104から選択されるヌクレオチド配列を有し、センス鎖は、アンチセンス鎖に相補性の領域を有し、必要に応じてセンス鎖は、配列番号33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75、77、79、81、83、85、87、89、91、93、95、97、99、101、及び103から選択されるヌクレオチド配列を含む、オリゴヌクレオチドを提供する。
【0018】
前述のまたは関連する態様のいずれかにおいて、センス鎖及びアンチセンス鎖は、以下からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む。
(a)それぞれ配列番号33及び34
(b)それぞれ配列番号35及び36
(c)それぞれ配列番号37及び38
(d)それぞれ配列番号39及び40
(e)それぞれ配列番号41及び42
(f)それぞれ配列番号43及び44
(g)それぞれ配列番号45及び46
(h)それぞれ配列番号47及び48
(i)それぞれ配列番号49及び50
(j)それぞれ配列番号51及び52
(k)それぞれ配列番号53及び54
(l)それぞれ配列番号55及び56
(m)それぞれ配列番号57及び58
(n)それぞれ配列番号59及び60
(o)それぞれ配列番号61及び62
(p)それぞれ配列番号63及び64
(q)それぞれ配列番号65及び66
(r)それぞれ配列番号67及び68
(s)それぞれ配列番号69及び70
(t)それぞれ配列番号71及び72
(u)それぞれ配列番号73及び74
(v)それぞれ配列番号75及び76
(w)それぞれ配列番号77及び78
(x)それぞれ配列番号79及び80
(y)それぞれ配列番号81及び82
(z)それぞれ配列番号83及び84
(aa)それぞれ配列番号85及び86
(bb)それぞれ配列番号87及び88
(cc)それぞれ配列番号89及び90
(dd)それぞれ配列番号91及び92
(ee)それぞれ配列番号93及び94
(ff)それぞれ配列番号95及び96
(gg)それぞれ配列番号97及び98
(hh)それぞれ配列番号99及び100
(ii)それぞれ配列番号101及び102
(jj)それぞれ配列番号103及び104
【0019】
さらなる態様において、本開示は、A1ATの発現を低減させるオリゴヌクレオチドであって、当該オリゴヌクレオチドが、配列番号26に示される配列を含むアンチセンス鎖と、配列番号105に示される配列を含むセンス鎖とを有し、
センス鎖の1、2、4~7、11、14~16、18~26、もしくは31~36位、及びアンチセンス鎖の1、4、6、8~11、13、15、17、18もしくは20~22位の全ての位置が2’-O-メチルで修飾され、センス鎖の3、8~10、12、13、及び17位、ならびにアンチセンス鎖の2、3、5、7、12、14、16、及び19位の全ての位置が2’-フルオロで修飾され、
当該オリゴヌクレオチドは、センス鎖の1位と2位、アンチセンス鎖の1位と2位、アンチセンス鎖の2位と3位、アンチセンス鎖の3位と4位、アンチセンス鎖の20位と21位、及びアンチセンス鎖の21位と22位のそれぞれの間にホスホロチオエート結合を有し、
当該オリゴヌクレオチドは、アンチセンス鎖の1位に以下の構造を含み、
【化4】
センス鎖上の-GAAA-配列の各ヌクレオチドは、一価のGalNAc部分にコンジュゲートされており、-GAAA-配列は以下の構造を含む、オリゴヌクレオチドを提供する。
【化5】
【0020】
さらなる態様において、本開示は、A1ATの発現を低減させるオリゴヌクレオチドであって、当該オリゴヌクレオチドが、配列番号103のヌクレオチド配列を含むセンス鎖と、配列番号104のヌクレオチド配列を含むアンチセンス鎖とを含み、アンチセンス鎖は、A1AT RNA転写物に相補性の領域を有し、当該オリゴヌクレオチドは、以下の構造を有するコンジュゲート形態である、オリゴヌクレオチドを提供する。
【化6-1】
【化6-2】
【0021】
別の態様において、本開示は、本明細書に記載のオリゴヌクレオチドを含む組成物を提供する。いくつかの態様において、組成物はNa+対イオンを含む。別の態様において、本開示は、本明細書に記載のオリゴヌクレオチドを含む組成物と、薬学的に許容される担体または希釈剤を提供する。
【0022】
なおさらなる態様において、本開示は、アルファ1アンチトリプシン(A1AT)の発現を阻害する二本鎖リボ核酸(dsRNA)剤であって、dsRNAが、二本鎖領域を形成するセンス鎖及びアンチセンス鎖を含み、アンチセンス鎖は、配列番号26のヌクレオチド配列とは4ヌクレオチド以下だけ異なる少なくとも連続した15ヌクレオチドを含み、アンチセンス鎖は長さが19~35ヌクレオチドである、二本鎖リボ核酸剤を提供する。いくつかの態様において、二本鎖領域の全てのヌクレオチドは修飾ヌクレオチドであり、修飾ヌクレオチドは、2’-O-メチル修飾ヌクレオチド及び2’-フルオロ修飾ヌクレオチドからなる群より選択され、dsRNAは、1つ以上のN-アセチルガラクトサミン(GalNAc)部分に付着している。いくつかの態様において、アンチセンス鎖は長さが19~30ヌクレオチドであり、センス鎖は長さが32~80ヌクレオチドの間であり、かつテトラループを含む。いくつかの態様において、センス鎖は、配列番号25に示されるヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様において、センス鎖は、配列番号105に示されるヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様において、アンチセンス鎖は、配列番号104に示される配列を含み、センス鎖は、配列番号103に示される配列を含む。
【0023】
さらなる態様において、本開示は、本明細書に記載のdsRNA剤を含む組成物を提供する。いくつかの態様において、組成物はNa+対イオンを含む。別の実施形態において、組成物は、薬学的に許容される担体または希釈剤を含む。
【0024】
いくつかの態様において、本開示は、対象にオリゴヌクレオチドを送達する方法であって、本明細書に記載のオリゴヌクレオチド、dsRNA剤、または組成物を投与することを含む方法を提供する。いくつかの態様において、オリゴヌクレオチド、組成物、またはdsRNA剤を送達して、当該対象における肝疾患もしくは障害を治療または予防し、当該肝疾患もしくは障害は、慢性肝疾患、肝炎、肝硬変、肝線維症、及び肝細胞癌からなる群から選択される。いくつかの態様において、対象はヒトである。いくつかの態様において、オリゴヌクレオチド、組成物、またはdsRNA剤は、対象に静脈内または皮下投与される。
【0025】
別の態様において、本開示は、哺乳動物において標的α-1アンチトリプシンmRNAの発現を低減させる方法であって、当該哺乳動物における標的α-1アンチトリプシンmRNAの発現を低減させるのに十分な量で、本明細書に記載のオリゴヌクレオチド、dsRNA剤、または組成物を投与することを含む当該方法を提供する。特定の実施形態において、オリゴヌクレオチドは脂質ナノ粒子(LNP)に製剤化される。
【0026】
前述のまたは関連する態様のいずれかにおいて、オリゴヌクレオチドまたはdsRNA剤は、1日につき、当該哺乳動物1キログラム当たり1マイクログラム~5ミリグラム、1キログラム当たり100マイクログラム~0.5ミリグラム、1キログラム当たり0.001~0.25ミリグラム、1キログラム当たり0.01~20マイクログラム、1キログラム当たり0.01~10マイクログラム、1キログラム当たり0.10~5マイクログラム、及び1キログラム当たり0.1~2.5マイクログラムからなる群から選択される投与量で投与される。
【0027】
前述のまたは関連する態様のいずれかにおいて、当該哺乳動物の組織では、オリゴヌクレオチド、組成物、またはdsRNA剤を当該哺乳動物に投与してから少なくとも3日後、α-1アンチトリプシンmRNAレベルの少なくとも70%の量(%で表する)が減少する。いくつかの態様において、組織は肝臓組織である。
【0028】
前述または関連する態様のいずれかにおいて、当該投与ステップは、静脈内注射、筋肉内注射、腹腔内注射、注入、皮下注射、経皮、エアロゾル、直腸、膣、局所、経口、及び吸入送達からなる群から選択される投与経路を含む。
【0029】
別の態様において、本開示は、動物の肝疾患もしくは障害を治療または予防する方法であって、対象における肝疾患もしくは障害を治療または予防するのに十分な量で本明細書に記載のオリゴヌクレオチド、dsRNA剤、または組成物を当該対象に投与することを含み、肝疾患もしくは障害が、慢性肝疾患、肝炎、肝硬変、COPD、肺気腫、肝線維症、及び肝細胞癌からなる群から選択される、方法を提供する。いくつかの態様において、動物はヒトである。
【0030】
さらなる態様において、本開示は、本明細書に記載のオリゴヌクレオチド、dsRNA剤、または組成物と、α-1アンチトリプシン発現の低減を必要とする対象においてそれを行うための説明書とを含むキットを提供する。いくつかの態様において、対象は肝疾患もしくは障害を有する。
【0031】
またさらなる態様において、本開示は、本明細書に記載のオリゴヌクレオチド、dsRNA剤、または組成物を、α-1アンチトリプシン発現の低減を必要とする対象においてそれを行う薬物の製造において使用することを提供する。いくつかの態様において、当該対象は肝疾患もしくは障害を有する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1-1】表2に提供したように、示されたSERPINA1 RNAiオリゴヌクレオチドの1、0.1、または0.01nMの処置の24時間後、Huh7細胞中に残存するヒトSERPINA1 mRNAの残存率(%)を示すグラフを提供する。試料は、モックのトランスフェクト対照に対して正規化された。
【
図1-2】表2に提供したように、示されたSERPINA1 RNAiオリゴヌクレオチドの1、0.1、または0.01nMの処置の24時間後、Huh7細胞中に残存するヒトSERPINA1 mRNAの残存率(%)を示すグラフを提供する。試料は、モックのトランスフェクト対照に対して正規化された。
【
図2A】N-アセチルガラクトサミン(GalNAc)コンジュゲート二本鎖RNAi(dsRNAi)オリゴヌクレオチドである、SERPINA1-1459の配列及び化学修飾パターンを示す概略図を提供する。2’-OMe=2’-O-メチル、2’-F=2’-フルオロ。出現順に配列番号103~104をそれぞれ開示する。
【
図2B】SERPINA1-1459オリゴヌクレオチド(
図2Aに示す)の用量応答を示すグラフを提供する。血清中に残っているヒトZ-AATタンパク質の割合(%)は、PBS処理マウスのZ-AATタンパク質の%に対して、PBS中で製剤化された1、3、もしくは10mg/kg(n=5)のSERPINA1-1459を皮下(SC)注射した後、表示した時間にPiZマウスで測定した。*=独立t検定によるP≦0.05、**=独立t検定によるP≦0.01、***=独立t検定によるP≦0.001、****=独立t検定によるP<0.0001
【
図2C】決定された50%有効用量(ED50)(C)を示すグラフを提供する。血清中に残っているヒトZ-AATタンパク質の割合(%)は、PBS処理マウスのZ-AATタンパク質の%に対して、PBS中で製剤化された1、3、もしくは10mg/kg(n=5)のSERPINA1-1459を皮下(SC)注射した後、表示した時間にPiZマウスで測定した。*=独立t検定によるP≦0.05、**=独立t検定によるP≦0.01、***=独立t検定によるP≦0.001、****=独立t検定によるP<0.0001
【
図3】3mg/kgのSERPINA1-1459を4週間ごとに1回、22週間にわたって6回投与(すなわち、0日目に初回投与、4、8、12、16、20週目に投与)した後の、PiZマウスの肝臓に残っているヒトSERPINA1 mRNAの割合(%)を示すグラフを提供する。治療は、5、12、または49週齢で開始され、研究の完了時(それぞれ、27、34、または71週齢)に肝臓の末端試料を収集した。生理食塩水処理マウスを対照として使用した。*=生理食塩水処理対照と比較してP<0.05、****=生理食塩水処理対照と比較してP≦0.0001。
【
図4】
図3に説明されたように処理されたPiZマウスの血液中に残っているヒトZ-AATタンパク質の割合(%)を示すグラフを提供する。研究の4、8、12、16、20週目、及び研究終了時に血液を採取した。生理食塩水処理マウスを対照として使用した。*=生理食塩水処理対照と比較してP<0.05、***=生理食塩水処理対照と比較してP≦0.001、****=生理食塩水処理対照と比較してP≦0.0001。
【
図5】3mg/kgのSERPINA1-1459を4週間ごとに1回、22週間にわたって6回投与(すなわち、0日目に初回投与、4、8、12、16、20週目に投与)した後の、PiZマウスの肝臓に残っているヒトZ-AATタンパク質を測定したウェスタンブロット画像を提供する。治療は、5週齢で開始され、研究の完了時(27週齢)に肝臓の末端試料を収集した。生理食塩水処理マウスを対照として使用した。
【
図6】
図5のウェスタンブロットに基づいて測定したヒトZ-AATタンパク質レベルを定量化したグラフを提供する。*=生理食塩水処理対照と比較してP<0.05、****=生理食塩水処理対照と比較してP≦0.0001。
【
図7】3mg/kgのSERPINA1-1459を4週間ごとに1回、22週間にわたって6回投与した後(すなわち、0日目に初回投与、4、8、12、16、20週目に投与)の、PiZマウスの肝臓に残っている総ヒトZ-AATタンパク質を測定(総A1ATタンパク質抗体を使用して測定)した免疫組織化学画像を提供する。治療は、5週齢で開始され、研究の完了時(27週齢)に肝臓の試料を収集した。生理食塩水処理マウスを対照として使用した。ベースライン試料は、5週齢のマウスから収集した。
【
図8】3mg/kgのSERPINA1-1459を4週間ごとに1回、22週間にわたって6回投与(すなわち、0日目に初回投与、4、8、12、16、20週目に投与)した後の、PiZマウスの肝臓におけるヒトZ-AATポリマー負荷を測定した免疫組織化学画像を提供する。治療は、5週齢で開始され、研究の完了時(27週齢)に肝臓の末端試料を収集した。生理食塩水処理マウスを対照として使用した。ベースライン試料は、5週齢のマウスから収集した。
【
図9】3mg/kgのSERPINA1-1459を4週間ごとに1回、22週間にわたって6回投与(すなわち、0日目に初回投与、4、8、12、16、20週目に投与)した後の、PiZマウスの肝臓におけるヒトZ-AATポリマー負荷を測定した免疫組織化学画像を提供する。治療は、49週齢で開始され、研究の完了時(71週齢)に肝臓の末端試料を収集した。生理食塩水処理マウスを対照として使用した。ベースライン試料は、49週齢のマウスから収集した。
【
図10】3mg/kgのSERPINA1-1459を4週間ごとに1回、22週間にわたって6回投与(すなわち、0日目に初回投与、4、8、12、16、20週目に投与)した後の、PiZマウスの肝臓における肝細胞内小球形成を測定した過ヨウ素酸シッフジアスターゼ(PAS-D)画像を提供する。治療は、5週齢で開始され、研究の完了時(27週齢)に肝臓の末端試料を収集した。生理食塩水処理マウスを対照として使用した。ベースライン試料は、5週齢のマウスから収集した。
【
図11】3mg/kgのSERPINA1-1459を4週間ごとに1回、22週間にわたって6回投与(すなわち、0日目に初回投与、4、8、12、16、20週目に投与)した後の、PiZマウスの肝臓における細胞増殖(Ki67)を測定した免疫組織化学画像を提供する。治療は、5週齢で開始され、研究の完了時(27週齢)に肝臓の末端試料を収集した。生理食塩水処理マウスを対照として使用した。ベースライン試料は、5週齢のマウスから収集した。
【
図12】3mg/kgのSERPINA1-1459を4週間ごとに1回、22週間にわたって6回投与(すなわち、0日目に初回投与、4、8、12、16、20週目に投与)した後の、PiZマウスの肝臓における肝線維症の免疫組織化学像(シリウスレッド染色)を提供する。治療は、5週齢で開始され、研究の完了時(27週齢)に肝臓の末端試料を収集した。生理食塩水処理マウスを対照として使用した。ベースライン試料は、5週齢のマウスから収集した。
【
図13】3mg/kgのSERPINA1-1459を4週間ごとに1回、22週間にわたって6回投与(すなわち、0日目に初回投与、4、8、12、16、20週目に投与)した後の、PiZマウスの肝臓におけるアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、及びアルカリホスファターゼのレベルを示すグラフを提供する。治療は、5、12、または49週齢で開始され、研究の完了時(それぞれ27、34、または71週齢)に血液の末端試料を収集した。生理食塩水処理マウスを対照として使用した。*=生理食塩水処理対照と比較してP<0.05、****=生理食塩水処理対照と比較してP≦0.0001。
【
図14】SERPINA1-1459で処理したPiZマウスにおけるSERPINA1 mRNA、血清Z-AATタンパク質、肝臓のZ-AATタンパク質、及び肝小球の用量依存的ノックダウンを示すグラフを示す。治療は、5週齢で開始され、0、0.3、1、または3mg/kgのSERPINA1-1459を4回投与した後、18週齢に検体を収集した。生理食塩水処理マウスを対照として使用した。
【
図15】0、0.3、1、または3mg/kgのSERPINA1-1459を4週間ごとに1回で4回投与した後、PiZマウスの肝臓の過ヨウ素酸シッフジアスターゼ(PAS-D)染色による用量依存的肝細胞内小球形成を測定した肝臓組織試料の画像を提供する。治療は、5週齢で開始され、18週齢の研究の完了時に肝臓の末端試料を収集した。生理食塩水処理マウスを対照として使用した。
【
図16】1、3、または10mg/kgのSERPINA1-1459の単回皮下(SC)投与で処理した非ヒト霊長類(NHP)の平均及び個別体重を示すグラフを提供する。
【
図17A】1、3、または10mg/kgのSERPINA1-1459の単回皮下(SC)投与後の、NHPの血中に残っているA1ATタンパク質(すなわち、循環A1ATタンパク質)の割合(%)(すなわち、循環A1ATタンパク質)を示すグラフを提供する。
【
図17B】1、3、または10mg/kgのSERPINA1-1459の単回皮下(SC)投与後の、NHPの血中に残っているA1ATタンパク質(すなわち、循環A1ATタンパク質)の割合(%)を示すグラフを提供する。血清は、29、57、85、及び127日目に収集した。対照血清(投与前に収集)を使用した。
【
図18】0、30、100、または300mg/kgのSERPINA1-1459を繰り返し投与(4週間ごと、4回投与)した後のカニクイザルの循環A1ATタンパク質の濃度を示すグラフを示す。A1ATタンパク質は、若年または若い成体のサルでは87日目に、若年サルでは141日目に測定された。対照血清(非処理)を使用した。
【
図19】0、20、60、または180mg/kgのSERPINA1-1459を繰り返し投与(4週間ごと、10回投与)した後のカニクイザルの肝臓に残っているSERPINA1 mRNAの割合(%)を示すグラフを提供する。「主要研究群」は、最終用量の投与の2日後に剖検されており、「R」は、対象をSERPINA1-1459の最終投与から8週間後に剖検した回復時の剖検を表す。
【
図20】ニックの入ったテトラループ構造の模式図を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0033】
長さが25~35ヌクレオチド鎖を含む二本鎖RNA(dsRNA)剤が、哺乳類細胞での標的遺伝子発現の効果的な阻害剤として記述されている(Rossi et al.,米国特許出願第2005/0244858号及びUS2005/0277610)。このような長さのdsRNA剤は、RNA干渉(RNAi)経路のDicer酵素によって処理されると考えられており、このような薬剤は「Dicer基質siRNA」(「DsiRNA」)剤と呼ばれている。DsiRNA剤のさらなる修飾構造は、従来より記述されている(Rossi et al.,米国特許出願第2007/0265220号)。効果的なDicer基質の伸長形態についても、近年記述されている(例えば、Brown,米国特許第8,349,809号、米国特許第10,370,655号、及びUS2010/0173974)。本明細書で提供されるのは、α-1アンチトリプシンを標的とする改善された核酸剤である。α-1アンチトリプシンを標的とするものは、具体的に例示されている。
【0034】
いくつかの態様によると、本開示は、肝臓におけるα-1アンチトリプシンまたはSERPINA1発現を低減させるオリゴヌクレオチド(例えば、RNAiオリゴヌクレオチド)を提供する。いくつかの実施形態において、本明細書で提供されるオリゴヌクレオチドは、肝臓におけるα-1アンチトリプシン発現に関連する疾患を治療するように設計される。いくつかの点において、本開示は、細胞(例えば、肝細胞)または臓器(例えば、肝臓)におけるα-1アンチトリプシン発現を低減させることによって、α-1アンチトリプシン発現に関連する疾患を治療する方法を提供する。
【0035】
いくつかの態様において、本開示は、α-1アンチトリプシン(A1AT)の発現を低減させるオリゴヌクレオチドであって、当該オリゴヌクレオチドが、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、及び32、ならびに配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、及び31に示される5’~3’配列をそれぞれ有するアンチセンス鎖及びセンス鎖を含む、オリゴヌクレオチドを提供する。特定の実施形態において、オリゴヌクレオチドは、少なくとも1つの修飾ヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチドの全てのヌクレオチドが修飾される。いくつかの実施形態において、修飾ヌクレオチドは、2’-修飾を含む。いくつかの実施形態において、2’-修飾は、2’-フルオロまたは2’-O-メチルである。
【0036】
いくつかの態様において、本開示は、α-1アンチトリプシン(A1AT)の発現を低減させるオリゴヌクレオチドであって、当該オリゴヌクレオチドが、配列番号26に示される5’~3’配列を含むアンチセンス鎖と、配列番号25に示される5’~3’配列を含むセンス鎖とを有する。別の態様において、本開示は、α-1アンチトリプシン(A1AT)の発現を低減させるオリゴヌクレオチドであって、当該オリゴヌクレオチドが、配列番号26に示される5’~3’配列を含むアンチセンス鎖と、配列番号105に示される5’~3’配列を含むセンス鎖とを有する。特定の実施形態において、オリゴヌクレオチドは、少なくとも1つの修飾ヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチドの全てのヌクレオチドが修飾される。いくつかの実施形態において、修飾ヌクレオチドは、2’-修飾を含む。いくつかの実施形態において、2’-修飾は、2’-フルオロまたは2’-O-メチルである。
【0037】
いくつかの実施形態において、センス鎖は、5’~3’に番号付けられた36ヌクレオチドを含み、アンチセンス鎖は、5~3’に番号付けられた22ヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態において、センス鎖の1、2、4、6、7、12、14、16、18~26、もしくは31~36位、及び/またはアンチセンス鎖の1、6、8、11~13、15、17、もしくは19~22位の位置にある1つ以上のヌクレオチドが、2’-O-メチルで修飾される。いくつかの実施形態において、センス鎖の3、5、8~11、13、15、もしくは17位、及び/またはアンチセンス鎖の2~5、7、9、10、14、16、もしくは18位の位置にある1つ以上のヌクレオチドが、2’-フルオロで修飾される。
【0038】
特定の実施形態において、センス鎖の1、2、4、6、7、12、14、16、18~26、もしくは31~36位、及び/またはアンチセンス鎖の1、3、5、8、10~12、14、15、17、19、もしくは22位の位置にある1つ以上のヌクレオチドが、2’-O-メチルで修飾される。いくつかの実施形態において、センス鎖の3、5、8~11、13、15、もしくは17位、及び/またはアンチセンス鎖の2~4、6、7、9、13、16、18、20、もしくは21位の位置にある1つ以上のヌクレオチドが、2’-フルオロで修飾される。
【0039】
特定の実施形態において、センス鎖の1、2、4~7、11、14~16、18~26、もしくは31~36位、及び/またはアンチセンス鎖の1、4、6、8、9、11~13、15、18、もしくは20~22位の位置にある1つ以上のヌクレオチドが、2’-O-メチルで修飾される。いくつかの実施形態において、センス鎖の3、8~10、12、13、もしくは17位、及び/またはアンチセンス鎖の2、3、5、7、10、14、16、17、もしくは19位の位置にある1つ以上のヌクレオチドが、2’-フルオロで修飾される。
【0040】
特定の実施形態において、センス鎖の1、2、4~7、11、14~16、18~26、もしくは31~36位、及び/またはアンチセンス鎖の1、4、6、8~11、13、15、17、18、もしくは20~22位の位置にある1つ以上のヌクレオチドが、2’-O-メチルで修飾される。いくつかの実施形態において、センス鎖の3、8~10、12、13、もしくは17位、及び/またはアンチセンス鎖の2、3、5、7、12、14、16、もしくは19位の位置にある1つ以上のヌクレオチドが、2’-フルオロで修飾される。
【0041】
特定の追加の実施形態において、センス鎖の1~7、及び12~36位、及び/またはアンチセンス鎖の1、6、8~13、及び15~22位の位置にある1つ以上のヌクレオチドが、2’-O-メチルで修飾される。いくつかの実施形態において、センス鎖の8~11位、及び/またはアンチセンス鎖の2~5、7、及び14位の位置にある1つ以上のヌクレオチドが、2’-フルオロで修飾される。
【0042】
いくつかの実施形態において、センス鎖の1、2、4~7、11、14~16、18~26、もしくは31~36位、及び/またはアンチセンス鎖の1、4、6、9、11、13、15、17、18、もしくは20~22位の位置にある1つ以上のヌクレオチドが、2’-O-メチルで修飾される。いくつかの実施形態において、センス鎖の3、8~10、12、13、及び17位、及び/またはアンチセンス鎖の2、3、5、7、8、10、12、14、16、及び19位の位置にある1つ以上のヌクレオチドが、2’-フルオロで修飾される。
【0043】
特定の実施形態において、本開示は、α-1アンチトリプシン(A1AT)の発現を低減させるオリゴヌクレオチドであって、当該オリゴヌクレオチドが、配列番号34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76、78、80、82、84、86、88、90、92、94、96、98、100、102、及び104、ならびに配列番号33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75、77、79、81、83、85、87、89、91、93、95、97、99、101、及び103から選択される配列をそれぞれ有するアンチセンス鎖及びセンス鎖を含む、オリゴヌクレオチドを提供する。
【0044】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のオリゴヌクレオチドは、少なくとも1つの修飾ヌクレオチド間結合を含む。少なくとも1つの修飾ヌクレオチド間結合は、ホスホロチオエート結合である。
【0045】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のオリゴヌクレオチドは、センス鎖の1位と2位、アンチセンス鎖の1位と2位、アンチセンス鎖の2位と3位、アンチセンス鎖の3位と4位、アンチセンス鎖の20位と21位、及びアンチセンス鎖の21位と22位のそれぞれの間にホスホロチオエート結合を有する。
【0046】
いくつかの実施形態において、アンチセンス鎖の第1の位置のウリジンはリン酸類似体を含む。特定の態様において、オリゴヌクレオチドは、アンチセンス鎖の1位に以下の構造を有する。
【化7】
【0047】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のオリゴヌクレオチドは、S1-L-S2に示されるステムループを有するセンス鎖を含み、S1はS2に相補的であり、Lは、S1とS2との間に長さが3~5ヌクレオチドのループを形成し、必要によってLは、テトラループである。いくつかの実施形態において、テトラループは配列5’-GAAA-3’を含む。いくつかの実施形態において、センス鎖上の-GAAA-配列の1つ以上のヌクレオチドが、一価のGalNAc部分にコンジュゲートされている。
【0048】
上記の開示された実施形態のいずれかにおいて、-GAAA-配列は以下の構造を有する。
【化8】
式中、
Lは、置換及び非置換アルキレン、置換及び非置換アルケニレン、置換及び非置換アルキニレン、置換及び非置換ヘテロアルキレン、置換及び非置換ヘテロアルケニレン、置換及び非置換ヘテロアルキニレン、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択される、結合、クリックケミストリーハンドル、または長さが1~20個の連続した共有結合原子を含むリンカーを表し、
Xは、O、S、またはNである。
【0049】
特定の実施形態において、Lはアセタールリンカーである。いくつかの実施形態において、Xは、Oである。
【0050】
一部の実施形態において、-GAAA-配列は、以下の構造を有する。
【化9】
【0051】
いくつかの態様において、本開示は、本明細書に記載のオリゴヌクレオチド及びNa+対イオンを含む組成物を提供する。
【0052】
いくつかの態様において、本開示は、
図2Aに示される化学構造を有する組成物を提供する。
【0053】
いくつかの態様において、本開示は、A1ATの発現を低減させるオリゴヌクレオチドであって、当該オリゴヌクレオチドが、配列番号26に示される配列を含むアンチセンス鎖と、配列番号105に示される配列を含むセンス鎖とを有し、
【0054】
センス鎖の1、2、4~7、11、14~16、18~26、もしくは31~36位、及びアンチセンス鎖の1、4、6、8~11、13、15、17、18もしくは20~22位の全ての位置が2’-O-メチルで修飾され、センス鎖の3、8~10、12、13、及び17位、ならびにアンチセンス鎖の2、3、5、7、12、14、16、及び19位の全ての位置が2’-フルオロで修飾され、
【0055】
当該オリゴヌクレオチドは、センス鎖の1位と2位、アンチセンス鎖の1位と2位、アンチセンス鎖の2位と3位、アンチセンス鎖の3位と4位、アンチセンス鎖の20位と21位、及びアンチセンス鎖の21位と22位のそれぞれの間にホスホロチオエート結合を有し、
【0056】
当該オリゴヌクレオチドは、アンチセンス鎖の1位に以下の構造を含み、
【化10】
【0057】
センス鎖上の-GAAA-配列の各ヌクレオチドは、以下の構造を有する一価のGalNAc部分にコンジュゲートされている、オリゴヌクレオチドと、
【化11】
薬学的に許容される担体または希釈剤と、を含む組成物を提供する。
【0058】
別の態様において、本開示は、対象にオリゴヌクレオチドを送達する方法であって、本明細書に記載の組成物またはオリゴヌクレオチドを対象に投与することを含む方法を提供する。
【0059】
いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチドを送達して当該対象における肝疾患もしくは障害を治療または予防し、当該肝疾患もしくは障害は、慢性肝疾患、肝炎、肝硬変、肝線維症、及び肝細胞癌からなる群から選択される。特定の実施形態では、対象は、ヒトである。特定の例において、オリゴヌクレオチドまたは組成物は、対象に静脈内または皮下投与される。
【0060】
いくつかの態様において、本開示は、A1ATの発現を低減させるオリゴヌクレオチドであって、当該オリゴヌクレオチドが、配列番号26に示される配列を含むアンチセンス鎖と、配列番号105に示される配列を含むセンス鎖とを有し、
【0061】
センス鎖の1、2、4~7、11、14~16、18~26、もしくは31~36位、及びアンチセンス鎖の1、4、6、8~11、13、15、17、18もしくは20~22位の全ての位置が2’-O-メチルで修飾され、センス鎖の3、8~10、12、13、及び17位、ならびにアンチセンス鎖の2、3、5、7、12、14、16、及び19位の全ての位置が2’-フルオロで修飾され、
【0062】
当該オリゴヌクレオチドは、センス鎖の1位と2位、アンチセンス鎖の1位と2位、アンチセンス鎖の2位と3位、アンチセンス鎖の3位と4位、アンチセンス鎖の20位と21位、及びアンチセンス鎖の21位と22位のそれぞれの間にホスホロチオエート結合を有し、
【0063】
当該オリゴヌクレオチドは、アンチセンス鎖の1位に以下の構造を含み、
【化12】
【0064】
センス鎖上の-GAAA-配列の各ヌクレオチドは、以下の構造を有する一価のGalNAc部分にコンジュゲートされている、オリゴヌクレオチド。
【化13】
【0065】
別の態様において、本開示は、A1ATの発現を低減させるオリゴヌクレオチドであって、当該オリゴヌクレオチドが、配列番号26に示される配列を含むアンチセンス鎖と、配列番号105に示される配列を含むセンス鎖とを有し、
【0066】
センス鎖の1、2、4~7、11、14~16、18~26、もしくは31~36位、及び/またはアンチセンス鎖の1、4、6、8、9、11~13、15、18、もしくは20~22位の全ての位置が2’-O-メチルで修飾され、センス鎖の3、8~10、12、13、もしくは17位、ならびにアンチセンス鎖の2、3、5、7、10、14、16、17、もしくは19位の全ての位置が2’-フルオロで修飾され、
【0067】
当該オリゴヌクレオチドは、センス鎖の1位と2位、アンチセンス鎖の1位と2位、アンチセンス鎖の2位と3位、アンチセンス鎖の3位と4位、アンチセンス鎖の20位と21位、及びアンチセンス鎖の21位と22位のそれぞれの間にホスホロチオエート結合を有し、
【0068】
当該オリゴヌクレオチドは、アンチセンス鎖の1位に以下の構造を含み
【化14】
センス鎖上の-GAAA-配列の各ヌクレオチドは、以下の構造を有する一価のGalNAc部分にコンジュゲートされている、オリゴヌクレオチド。
【化15】
【0069】
特定の実施形態において、本開示は、本明細書に記載のオリゴヌクレオチドを含む組成物を提供する。いくつかの実施形態において、当該組成物はさらにNa+対イオンを含む。
【0070】
特定の実施形態において、本開示は、哺乳動物において標的α-1アンチトリプシンmRNAの発現を低減させる方法であって、当該哺乳動物における標的α-1アンチトリプシンmRNAの発現を低減させるのに十分な量で、本明細書に記載されたように投与することを含む当該方法を提供する。特定の実施形態において、オリゴヌクレオチドは脂質ナノ粒子(LNP)に製剤化される。いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチドは、1日につき、当該哺乳動物1キログラム当たり1マイクログラム~5ミリグラム、1キログラム当たり100マイクログラム~0.5ミリグラム、1キログラム当たり0.001~0.25ミリグラム、1キログラム当たり0.01~20マイクログラム、1キログラム当たり0.01~10マイクログラム、1キログラム当たり0.10~5マイクログラム、及び1キログラム当たり0.1~2.5マイクログラムからなる群から選択される投与量で投与される。
【0071】
いくつかの実施形態において、当該哺乳動物の組織では、本明細書に記載のオリゴヌクレオチドを当該哺乳動物に投与してから少なくとも3日後、α-1アンチトリプシンmRNAレベルの少なくとも70%の量(%で表する)が減少する。いくつかの実施形態において、当該組織は肝臓組織である。
【0072】
特定の実施形態において、当該投与ステップは、静脈内注射、筋肉内注射、腹腔内注射、注入、皮下注射、経皮、エアロゾル、直腸、膣、局所、経口、及び吸入送達からなる群から選択される投与モードを含む。
【0073】
別の態様において、本開示は、対象の肝疾患もしくは障害を治療または予防する方法であって、当該対象における肝疾患もしくは障害を治療または予防するのに十分な量で本明細書に記載のオリゴヌクレオチドまたは組成物を当該対象に投与することを含み、肝疾患もしくは障害が、慢性肝疾患、肝炎、肝硬変、肝線維症、及び肝細胞癌からなる群から選択される、方法を提供する。特定の実施形態において、当該対象は、ヒトである。
α-1アンチトリプシン発現のオリゴヌクレオチド阻害剤
α-1アンチトリプシン標的配列
【0074】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のオリゴヌクレオチド(例えば、RNAiオリゴヌクレオチド)は、α-1アンチトリプシンmRNAを含む標的配列を標的とする。いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチド、またはその一部、断片、もしくは鎖(例えば、二本鎖(ds)RNAiオリゴヌクレオチドのアンチセンス鎖またはガイド鎖)は、α-1アンチトリプシン発現を阻害することで、α-1アンチトリプシンmRNAを含む標的配列に結合またはアニールする。
【0075】
いくつかの実施形態において、当該オリゴヌクレオチドは、α-1アンチトリプシン発現をインビボで阻害する目的で、α-1アンチトリプシン標的配列を標的とする。いくつかの実施形態において、α-1アンチトリプシン標的配列を標的とするオリゴヌクレオチドによるα-1アンチトリプシン発現の阻害量またはその程度は、オリゴヌクレオチドの効力と相関する。いくつかの実施形態において、α-1アンチトリプシン標的配列を標的とするオリゴヌクレオチドによるα-アンチトリプシン発現の阻害量またはその程度は、当該オリゴヌクレオチドで治療される、α-アンチトリプシン発現に関連する疾患、障害、または状態を有する対象または患者における治療上の有効量またはその程度と相関する。
【0076】
複数の異なる種のmRNAを含む(例えば、ヒト、カニクイザル、マウス、及びラット、例えば、実施例2及び3を参照)、α-1アンチトリプシンをコードするmRNAのヌクレオチド配列の検査を通じて、ならびにインビトロ及びインビボ試験の結果として(例えば、実施例2~8を参照)、α-1アンチトリプシンmRNAの特定のヌクレオチド配列が、他のヌクレオチド配列よりもオリゴヌクレオチドに基づく阻害を受けやすく、したがって、本明細書に記載のオリゴヌクレオチドの標的配列として有用であることを見出した。いくつかの実施形態において、本明細書に記載のオリゴヌクレオチド(例えば、RNAiオリゴヌクレオチド)のセンス鎖は、α-1アンチトリプシン標的配列を含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載のオリゴヌクレオチド(例えば、RNAiオリゴヌクレオチド)のセンス鎖の一部または領域は、α-1アンチトリプシン標的配列を含む。いくつかの実施形態において、α-1アンチトリプシン標的配列は、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、及び31のうちのいずれか1つの配列を含むか、またはそれからなる。いくつかの実施形態において、α-1アンチトリプシン標的配列は、配列番号25の配列を含むか、またはそれからなる。
【0077】
α-1アンチトリプシン標的配列
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のオリゴヌクレオチド(例えば、RNAiオリゴヌクレオチド)は、細胞中のα-1アンチトリプシンmRNAを標的とし、α-1アンチトリプシンの発現を阻害及び/または低減させる目的で、α-1アンチトリプシンmRNAに相補性の領域(例えば、α-1アンチトリプシンmRNAの標的配列内)を有する。いくつかの実施形態において、本明細書に記載のオリゴヌクレオチドは、相補的な(ワトソンクリック)塩基対合によってα-1アンチトリプシン標的配列に結合またはアニールする相補性の領域を有するα-1アンチトリプシン標的配列(例えば、dsRNAiオリゴヌクレオチドのアンチセンス鎖またはガイド鎖)を有する。標的配列または相補性の領域は、一般的に、α-1アンチトリプシンの発現を阻害及び/または低減させる目的で、長さ及び塩基含有量がオリゴヌクレオチド(またはその鎖)のα-1アンチトリプシンmRNAへの結合またはアニーリングを可能にすることに好適である。いくつかの実施形態において、標的配列または相補性の領域は、長さが少なくとも約12、少なくとも約13、少なくとも約14、少なくとも約15、少なくとも約16、少なくとも約17、少なくとも約18、少なくとも約19、少なくとも約20、少なくとも約21、少なくとも約22、少なくとも約23、少なくとも約24、少なくとも約25、少なくとも約26、少なくとも約27、少なくとも約28、少なくとも約29、または少なくとも約30ヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、標的配列または相補性の領域は、長さが約12~約30(例えば、12~30、12~22、15~25、17~21、18~27、19~27、または15~30)ヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、標的配列または相補性の領域は、長さが約12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30ヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、標的配列または相補性の領域は、長さが18ヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、標的配列または相補性の領域は、長さが19のヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、標的配列または相補性の領域は、長さが20のヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、標的配列または相補性の領域は、長さが21のヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、標的配列または相補性の領域は、長さが22のヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、標的配列または相補性の領域は、長さが23のヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、標的配列または相補性の領域は、長さが24のヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチドは、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、及び31のいずれか1つの配列に相補的である標的配列または相補性の領域を含み、標的配列または相補性の領域は、長さが18ヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチドは、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、及び31のいずれか1つの配列に相補的である標的配列または相補性の領域を含み、標的配列または相補性の領域は、長さが19ヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチドは、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、及び31のいずれか1つの配列に相補的である標的配列または相補性の領域を含み、標的配列または相補性の領域は、長さが20ヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチドは、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、及び31のいずれか1つの配列に相補的である標的配列または相補性の領域を含み、標的配列または相補性の領域は、長さが21ヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチドは、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、及び31のいずれか1つの配列に相補的である標的配列または相補性の領域を含み、標的配列または相補性の領域は、長さが22ヌクレオチドである。
【0078】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のオリゴヌクレオチド(例えば、RNAiオリゴヌクレオチド)は、α-1アンチトリプシン標的配列に完全に相補的である標的配列または相補性の領域(例えば、二本鎖オリゴヌクレオチドのアンチセンス鎖またはガイド鎖)を含む。いくつかの実施形態において、標的配列または相補性の領域は、α-1アンチトリプシン標的配列に部分的に相補的である。いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチドは、α-1アンチトリプシンの配列に完全に相補的である標的配列または相補性の領域を含む。いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチドは、α-1アンチトリプシンの配列に部分的に相補的である標的配列または相補性の領域を含む。
【0079】
いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチドは、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、及び31のいずれか1つの配列に完全に相補的である標的配列または相補性の領域を含む。いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチドは、配列番号25に示される配列に完全に相補的である標的配列または相補性の領域を含む。いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチドは、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、及び31のいずれか1つの配列に部分的に相補的である標的配列または相補性の領域を含む。いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチドは、配列番号25に示される配列に部分的に相補的である標的配列または相補性の領域を含む。
【0080】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のオリゴヌクレオチド(例えば、RNAiオリゴヌクレオチド)は、α-1アンチトリプシンmRNAを含むヌクレオチドの連続配列に相補的である標的配列または相補性の領域を含み、ヌクレオチドの連続配列は、長さが約12~約30ヌクレオチド(例えば、長さが12~30、12~28、12~26、12~24、12~20、12~18、12~16、14~22、16~20、18~20または18~19ヌクレオチド)である。いくつかの実施形態において、当該オリゴヌクレオチドは、α-1アンチトリプシンmRNAを含むヌクレオチドの連続配列に相補的である標的配列または相補性の領域を含み、ヌクレオチドの連続配列は、長さが10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20ヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、当該オリゴヌクレオチドは、α-1アンチトリプシンmRNAを含むヌクレオチドの連続配列に相補的である標的配列または相補性の領域を含み、ヌクレオチドの連続配列は、長さが19ヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、当該オリゴヌクレオチドは、α-1アンチトリプシンmRNAを含むヌクレオチドの連続配列に相補的である標的配列または相補性の領域を含み、ヌクレオチドの連続配列は、長さが20ヌクレオチドである。
【0081】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のオリゴヌクレオチド(例えば、RNAiオリゴヌクレオチド)は、ヌクレオチドの連続配列に相補的である標的配列または相補性の領域を含み、標的領域または相補性の領域は、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、及び31から選択され、必要によってヌクレオチドの連続配列は、長さが19ヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、当該オリゴヌクレオチドは、ヌクレオチドの連続配列に相補的である標的配列または相補性の領域を含み、標的領域または相補性の領域は、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、及び31から選択され、ヌクレオチドの連続配列は、長さが19ヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、当該オリゴヌクレオチドは、ヌクレオチドの連続配列に相補的である標的配列または相補性の領域を含み、標的領域または相補性の領域は、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、及び31から選択され、ヌクレオチドの連続配列は、長さが20ヌクレオチドである。
【0082】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のオリゴヌクレオチド(例えば、RNAiオリゴヌクレオチド)の標的配列または相補性の領域は、ヌクレオチドの連続配列に相補的であり、標的領域または相補性の領域は、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、及び31から選択され、アンチセンス鎖の全長にまたがっている。いくつかの実施形態において、当該オリゴヌクレオチドの標的配列または相補性の領域は、ヌクレオチドの連続配列に相補的であり、標的領域または相補性の領域は、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、及び31から選択され、アンチセンス鎖の全長の一部にまたがっている。いくつかの実施形態において、本明細書に記載のオリゴヌクレオチド(例えば、RNAiオリゴヌクレオチド)は、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、及び31のいずれか1つに示される配列の1~20ヌクレオチドにまたがる一続きの連続ヌクレオチドに少なくとも部分的に(例えば、完全に)相補的である(例えば、dsRNAのアンチセンス鎖上の)相補性の領域を含む。
【0083】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のオリゴヌクレオチド(例えば、RNAiオリゴヌクレオチド)は、対応するα-1アンチトリプシン標的配列と1つ以上の塩基対(bp)ミスマッチを有する標的配列または相補性の領域を含む。いくつかの実施形態において、標的配列または相補性の領域は、適切なハイブリダイゼーション条件下でα-1アンチトリプシンmRNAに結合またはアニールする標的配列または相補性の領域の能力、及び/またはα-1アンチトリプシン発現を阻害するオリゴヌクレオチドの能力が維持される場合、対応するα-1アンチトリプシン標的配列と、最大約1、最大約2、最大約3、最大約4、最大約5などのミスマッチを有し得る。あるいは、標的配列または相補性の領域は、適切なハイブリダイゼーション条件下でα-1アンチトリプシンmRNAに結合またはアニールする標的配列または相補性の領域の能力、及び/またはα-1アンチトリプシン発現を阻害するオリゴヌクレオチドの能力が維持される場合、対応するα-1アンチトリプシン標的配列と、1以下、2以下、3以下、4以下、または5以下のミスマッチを有し得る。いくつかの実施形態において、当該オリゴヌクレオチドは、対応する標的配列と1つのミスマッチを有する標的配列または相補性の領域を含む。いくつかの実施形態において、当該オリゴヌクレオチドは、対応する標的配列と2つのミスマッチを有する標的配列または相補性の領域を含む。いくつかの実施形態において、当該オリゴヌクレオチドは、対応する標的配列と3つのミスマッチを有する標的配列または相補性の領域を含む。いくつかの実施形態において、当該オリゴヌクレオチドは、対応する標的配列と4つのミスマッチを有する標的配列または相補性の領域を含む。いくつかの実施形態において、当該オリゴヌクレオチドは、対応する標的配列と5つのミスマッチを有する標的配列または相補性の領域を含む。いくつかの実施形態において、当該オリゴヌクレオチドは、対応する標的配列と、1つを超えるミスマッチ(例えば、2、3、4、5、またはそれ以上のミスマッチ)を有する標的配列または相補性の領域を含み、少なくとも2つ(例えば、全て)のミスマッチが連続して配置されるか(例えば、2、3、4、5またはそれ以上の連続したミスマッチ)、またはミスマッチが標的配列または相補性の領域の全体に散在している。いくつかの実施形態において、当該オリゴヌクレオチドは、対応する標的配列と、1つを超えるミスマッチ(例えば、2、3、4、5、またはそれ以上のミスマッチ)を有する標的配列または相補性の領域を含み、少なくとも2つ(例えば、全て)のミスマッチが連続して配置されるか(例えば、2、3、4、5またはそれ以上の連続したミスマッチ)、または少なくとも1つ以上のミスマッチしていない塩基対が、ミスマッチの間に位置するか、もしくはそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態において、当該オリゴヌクレオチドは、ヌクレオチドの連続配列に相補的な標的配列または相補性の領域を含み、標的領域または相補性の領域は、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、及び31から選択され、標的配列または相補性の領域は、対応するα-1アンチトリプシン標的配列と、最大約1、最大約2、最大約3、最大約4、最大約5などのミスマッチを有し得る。いくつかの実施形態において、当該オリゴヌクレオチドは、ヌクレオチドの連続配列に相補的な標的配列または相補性の領域を含み、標的領域または相補性の領域は、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、及び31から選択され、標的配列または相補性の領域は、対応するα-1アンチトリプシン標的配列と、1以下、2以下、3以下、4以下、または5以下のミスマッチを有し得る。いくつかの実施形態において、当該オリゴヌクレオチドは、ヌクレオチドの連続配列に相補的な標的配列または相補性の領域を含み、標的領域または相補性の領域は、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、及び31から選択され、標的配列または相補性の領域は、対応するα-1アンチトリプシン標的配列と、最大約1、最大約2、最大約3、最大約4、最大約5などのミスマッチを有し得る。いくつかの実施形態において、当該オリゴヌクレオチドは、ヌクレオチドの連続配列に相補的な標的配列または相補性の領域を含み、標的領域または相補性の領域は、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、及び31から選択され、標的配列または相補性の領域は、対応するα-1アンチトリプシン標的配列と、1以下、2以下、3以下、4以下、または5以下のミスマッチを有し得る。
【0084】
オリゴヌクレオチドの種類
RNAiオリゴヌクレオチド、アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)、miRNAなどを含むが、これらに限定されない様々な種類及び/または構造のオリゴヌクレオチドは、本明細書に記載の方法においてα-1アンチトリプシンを標的とすることに有用である。α-1アンチトリプシン発現を阻害するために、本明細書またはその他に記載されているオリゴヌクレオチドの種類のいずれも、α-1アンチトリプシン標的配列を本明細書に組み込むフレームワークとして使用することが意図されている。
【0085】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のオリゴヌクレオチドは、ダイサー介入の上流または下流のRNA干渉(RNAi)経路に関与することによって、α-1アンチトリプシン発現を阻害する。例えば、RNAiオリゴヌクレオチドは、各鎖が約19~25ヌクレオチドのサイズを有し、1~5ヌクレオチドの少なくとも1つの3’オーバーハングを有するRNAiオリゴヌクレオチドが開発されている(例えば、米国特許第8,372,968号を参照)。ダイサーによって処理されて活性RNAi産物を生成する、より長いオリゴヌクレオチドも開発されている(例えば、米国特許第8,883,996号を参照)。さらなる研究により、鎖のうちの1つが熱力学的に安定するテトラループ構造を含む構造を含む、少なくとも1つの鎖の少なくとも1つの末端が二重鎖標的領域を超えて伸長された伸長dsRNAが生成された(例えば、米国特許第8,513,207号及び第8,927,705号、ならびに国際特許出願公開第WO2010/033225号を参照)。このような構造には、一本鎖(ss)伸長(分子の片側または両側)及び二本鎖(ds)伸長が含まれ得る。
【0086】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のオリゴヌクレオチドは、ダイサー介入(例えば、ダイサー切断)の下流でRNAi経路に関与する。いくつかの実施形態において、当該オリゴヌクレオチドは、センス鎖の3’末端にオーバーハング(例えば、長さが1、2、または3ヌクレオチド)を有する。いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチド(例えば、siRNA)は、標的RNAに対してアンチセンスである21ヌクレオチドのガイド鎖及び相補的なパッセンジャー鎖を含み、両方の鎖がアニールして19bpの二重鎖、及びいずれか一方または両方の3’末端に2ヌクレオチドのオーバーハングを形成する。23ヌクレオチドのガイド鎖及び21ヌクレオチドのパッセンジャー鎖を含むオリゴヌクレオチドを含む、より長いオリゴヌクレオチド設計も可能であり、分子の右側に平滑末端(パッセンジャー鎖の3’末端/ガイド鎖の5’末端)があり、かつ分子の左側に2ヌクレオチドの3’-ガイド鎖オーバーハング(パッセンジャー鎖の5’末端/ガイド鎖の3’末端)がある。このような分子には、21bpの二重鎖領域がある。例えば、米国特許第9,012,138号及び第9,012,621号、ならびに第9,193,753号を参照されたい。
【0087】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のオリゴヌクレオチドは、センス鎖及びアンチセンス鎖を含み、その両方の長さが約17~36(例えば、17~36、20~25、または21~23)ヌクレオチドの範囲にある。いくつかの実施形態において、本明細書に記載のオリゴヌクレオチドは、センス鎖及びアンチセンス鎖を含み、その両方の長さが約19~22ヌクレオチドの範囲にある。いくつかの実施形態において、センス鎖及びアンチセンス鎖は等しい長さを有する。いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチドは、センス鎖及びアンチセンス鎖を含み、センス鎖もしくはアンチセンス鎖のいずれか一方、またはセンス鎖及びアンチセンス鎖の両方に3’-オーバーハングがある。いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチドがセンス鎖及びアンチセンス鎖を含み、両方とも長さが約21~23ヌクレオチドの範囲にある場合、センス鎖、アンチセンス鎖、またはセンス鎖及びアンチセンス鎖の両方上の3’オーバーハングは、長さが1または2ヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、当該オリゴヌクレオチドは、22ヌクレオチドのガイド鎖及び20ヌクレオチドのパッセンジャー鎖を含み、分子の右側に平滑末端(パッセンジャー鎖の3’末端/ガイド鎖の5’末端)があり、かつ分子の左側に2ヌクレオチドの3’-ガイド鎖オーバーハング(パッセンジャー鎖の5’末端/ガイド鎖の3’末端)がある。このような分子には、20bpの二重鎖領域がある。
【0088】
本明細書の組成物及び方法で使用する他のオリゴヌクレオチド設計には、16量体siRNA(例えば、NUCLEIC ACIDS IN CHEMISTRY AND BIOLOGY. Blackburn(ed.),Royal Society of Chemistry,2006を参照)、shRNA(例えば、19bp以下のステムを有する、例えば、Moore et al.(2010) METHODS MOL. BIOL. 629:141-158を参照)、平滑末端siRNA(例えば、長さ19bps、例えば、Kraynack & Baker(2006) RNA 12:163-176を参照)、非対称siRNA(aiRNA、例えば、Sun et al.(2008) NAT. BIOTECHNOL. 26:1379-1382を参照)、非対称短二重鎖siRNA(例えば、Chang et al.(2009) MOL. THER. 17:725-32を参照)、フォークsiRNA(例えば、Hohjoh(2004) FEBS LETT. 557:193-198を参照)、ss siRNA(Elsner(2012) NAT. BIOTECHNOL. 30:1063)、ダンベル型の環状siRNA(例えば、Abe et al.(2007) J. AM. CHEM. SOC. 129:15108-09を参照)、及び小さな内部セグメント干渉RNA(siRNA、例えば、Bramsen et al.(2007) NUCLEIC ACIDS RES. 35:5886-97を参照)が含まれる。α-1アンチトリプシンの発現を低減または阻害するいくつかの実施形態で使用され得るオリゴヌクレオチド構造のさらなる非限定的な例としては、マイクロRNA(miRNA)、短鎖ヘアピンRNA(shRNA)、及び短鎖siRNA(例えば、Hamilton et al.(2002) EMBO J. 21:4671-79を参照し、米国特許出願公開第2009/0099115も参照されたい)。
【0089】
さらに、いくつかの実施形態において、本明細書におけるα-1アンチトリプシン発現を低減または阻害するオリゴヌクレオチドは一本鎖(ss)である。このような構造は、一本鎖RNAi分子を含むが、それに限定されない。最近の取り組みにより、ss RNAi分子の活性が実証されている(例えば、Matsui et al.(2016) MOL. THER. 24:946-55を参照)。しかしながら、いくつかの実施形態において、本明細書に記載のオリゴヌクレオチドはアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)である。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、5’から3’方向に書かれた場合、特定の核酸の標的セグメントの逆相補体を含み、適切に修飾された(例えば、Gapmer型)核酸塩基配列を含む一本鎖オリゴヌクレオチドであり、細胞内でその標的RNAのRNaseH媒介切断を誘導するか、または(例えば、mixmer型)細胞内で標的mRNAの翻訳を阻害する。本明細書で使用するASOは、例えば、米国特許第9,567,587号に示されているものを含んで、当技術分野で知られている任意の適切な方法で修飾され得る(例えば、長さ、核酸塩基(ピリミジン及びプリン)の糖部分、及び核酸塩基の複素環部分の改変を含む)。さらに、ASOは、特定の標的遺伝子の発現を低減させるために何十年も使用されている(例えば、Bennett et al.(2017)ANNU. REV.PHARMACOL.57:81-105)。
【0090】
いくつかの実施形態において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、α-1アンチトリプシンmRNAと相補性の領域を共有する。いくつかの実施形態において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、または31を標的とする。いくつかの実施形態において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、長さが15~50ヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、長さが15~25ヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、長さが22ヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、または31のいずれか1つに相補的である。いくつかの実施形態において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、長さが少なくとも連続15ヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、長さが少なくとも連続19ヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、長さが少なくとも連続20ヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、標的配列とは、1、2、または3ヌクレオチドが異なる。
【0091】
二本鎖オリゴヌクレオチド
いくつかの態様において、本開示は、センス鎖(本明細書ではパッセンジャー鎖とも呼ばれる)及びアンチセンス鎖(本明細書ではガイド鎖とも呼ばれる)を含む、α-1アンチトリプシンmRNAを標的とし、(例えば、RNAi経路を介して)α-1アンチトリプシン発現を阻害する二本鎖(ds)RNAiオリゴヌクレオチドを提供する。いくつかの実施形態において、センス鎖及びアンチセンス鎖は別々の鎖であり、共有結合していない。いくつかの実施形態において、センス鎖及びアンチセンス鎖は共有結合している。いくつかの実施形態において、センス鎖及びアンチセンス鎖は二重鎖領域を形成し、センス鎖及びアンチセンス鎖、またはその一部は、互いに相補的な方法で(例えば、ワトソンクリック塩基対形成によって)結合する。
【0092】
いくつかの実施形態において、センス鎖は、第1の領域(R1)及び第2の領域(R2)を有し、R2は、第1のサブ領域(S1)、テトラループ(L)もしくはトリループ(triL)、及び第2のサブ領域(S2)を含み、LまたはtriLは、S1及びS2の間に位置し、S1及びS2は、第2の二重鎖(D2)を形成する。D2は、様々な長さを有してもよい。いくつかの実施形態において、D2は、長さが約1~6bpである。いくつかの実施形態において、D2は、長さが2~6、3~6、4~6、5~6、1~5、2~5、3~5、または4~5bpである。いくつかの実施形態において、D2は、長さが1、2、3、4、5、または6bpである。いくつかの実施形態において、D2は、長さが6bpである。
【0093】
いくつかの実施形態において、センス鎖及びアンチセンス鎖のR1は、第1の二重鎖(D1)を形成する。いくつかの実施形態において、D1は、長さが少なくとも約15(例えば、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20、または少なくとも21)ヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、D1は、長さが約12~30ヌクレオチド(例えば、長さが12~30、12~27、15~22、18~22、18~25、18~27、18~30、または21~30ヌクレオチド)の範囲内である。いくつかの実施形態において、D1は、長さが少なくとも12ヌクレオチド(例えば、長さが少なくとも12、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、または少なくとも30ヌクレオチド)である。いくつかの実施形態において、D1は、長さが12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30ヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、D1は、長さが20ヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、センス鎖及びアンチセンス鎖を含むD1は、センス鎖及び/またはアンチセンス鎖の全長にまたがっていない。いくつかの実施形態において、センス鎖及びアンチセンス鎖を含むD1は、センス鎖もしくはアンチセンス鎖のいずれか、または両方の全長にまたがっている。いくつかの実施形態において、センス鎖及びアンチセンス鎖を含むD1は、センス鎖及びアンチセンス鎖の両方の全長にまたがっている。
【0094】
いくつかの実施形態において、本明細書で提供されるオリゴヌクレオチド(例えば、RNAiオリゴヌクレオチド)は、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、または31のいずれか1つの配列を含むセンス鎖と、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、24、26、28、30、または32から選択される相補的な配列を含むアンチセンス鎖とを含み、それらは、表1に示す。
【0095】
いくつかの実施形態において、本明細書で提供されるオリゴヌクレオチド(例えば、RNAiオリゴヌクレオチド)は、以下から選択されるヌクレオチド配列を含むセンス鎖及びアンチセンス鎖を含む。
(a)それぞれ配列番号25及び26
(b)それぞれ配列番号27及び28
(c)それぞれ配列番号29及び30
(d)それぞれ配列番号31及び32
(e)それぞれ配列番号97及び98
(f)それぞれ配列番号99及び100
(g)それぞれ配列番号101及び102
(h)それぞれ配列番号103及び104
【0096】
いくつかの態様において、センス鎖は、配列番号31の配列を有し、アンチセンス鎖は、配列番号32の配列を含む。いくつかの態様において、センス鎖は、配列番号25の配列を有し、アンチセンス鎖は、配列番号26の配列を含む。いくつかの実施形態において、センス鎖は、配列番号25の配列を有し、アンチセンス鎖は、配列番号105の配列を含む。
【0097】
いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチド(例えば、dsRNAiオリゴヌクレオチド)または他の核酸の構造を説明する際に、配列表に示される配列を参照し得ることを理解されたい。そのような実施形態において、実際のオリゴヌクレオチドまたは他の核酸は、特定の配列と本質的に同一もしくは類似の相補的特性を保持しながら、当該特定の配列と比較したときに、1つ以上の代替ヌクレオチド(例えば、DNAヌクレオチドのRNA対応物またはRNAヌクレオチドのDNA対応物)及び/または1つ以上の修飾ヌクレオチド及び/または1つ以上の修飾ヌクレオチド間結合及び/または1つ以上の他の修飾を有し得る。
【0098】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のオリゴヌクレオチド(例えば、RNAiオリゴヌクレオチド)は、25ヌクレオチドのセンス鎖及び27ヌクレオチドのアンチセンス鎖を含み、ダイサー酵素によって作用されると、アンチセンス鎖が成熟RISCに組み込まれる。いくつかの実施形態において、当該オリゴヌクレオチドのセンス鎖は、27ヌクレオチドよりも長い(例えば、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、または50ヌクレオチド)。いくつかの実施形態において、当該オリゴヌクレオチドのセンス鎖は、25ヌクレオチドよりも長い(例えば、26、27、28、29、または30ヌクレオチド)。いくつかの実施形態において、当該オリゴヌクレオチドのセンス鎖は、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、または31から選択されるヌクレオチド配列を有し、当該ヌクレオチド配列は、27ヌクレオチドよりも長い(例えば、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、または50ヌクレオチド)。いくつかの実施形態において、当該オリゴヌクレオチドのセンス鎖は、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、または31から選択されるヌクレオチド配列を有し、当該ヌクレオチド配列は、25ヌクレオチドよりも長い(例えば、26、27、28、29、または30ヌクレオチド)。
【0099】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のオリゴヌクレオチド(例えば、RNAiオリゴヌクレオチド)は、他の5’末端と比較したとき、熱力学的に不安定な1つの5’末端を有する。いくつかの実施形態において、センス鎖の3’末端に平滑末端を含み、アンチセンス鎖の3’末端に3’オーバーハングを含む非対称オリゴヌクレオチドを提供する。いくつかの実施形態において、アンチセンス鎖上の3’オーバーハングは、長さが約1~8ヌクレオチドである(例えば、長さが1、2、3、4、5、6、7、または8ヌクレオチド)。いくつかの実施形態において、当該オリゴヌクレオチドは、アンチセンス(ガイド)鎖の3’末端に二つ(2)のヌクレオチドを含むオーバーハングを有する。ただし、他のオーバーハングも可能である。いくつかの実施形態において、オーバーハングは、長さが1~6のヌクレオチド、必要に応じて、長さが1~5、1~4、1~3、1~2、2~6、2~5、2~4、2~3、3~6、3~5、3~4、4~6、4~5、5~6ヌクレオチド、または1、2、3、4、5、または6ヌクレオチドを含む3’-オーバーハングである。しかしながら、いくつかの実施形態において、当該オーバーハングは、長さが1~6のヌクレオチド、必要に応じて、長さが1~5、1~4、1~3、1~2、2~6、2~5、2~4、2~3、3~6、3~5、3~4、4~6、4~5、5~6ヌクレオチド、または1、2、3、4、5、または6ヌクレオチドを含む5’-オーバーハングである。いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチドは、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、または31から選択されるヌクレオチド配列を含むセンス鎖を含み、当該オリゴヌクレオチドは、長さが1~6のヌクレオチドを含む5’-オーバーハングを含む。いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチドは、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、24、26、28、30、または32から選択されるヌクレオチド配列を含むアンチセンス鎖を含み、当該オリゴヌクレオチドは、長さが1~6のヌクレオチドを含む5’-オーバーハングを含む。いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチドは、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、または31から選択されるヌクレオチド配列を含むセンス鎖と、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、24、26、28、30、または32から選択されるヌクレオチド配列を含むアンチセンス鎖とを有し、当該オリゴヌクレオチドは、長さが1~6のヌクレオチドを含む5’-オーバーハングを含む。
【0100】
いくつかの実施形態において、アンチセンス鎖の3’末端の二つ(2)の末端ヌクレオチドが修飾される。いくつかの実施形態において、アンチセンス鎖の3’末端の二つ(2)の末端ヌクレオチドは、標的mRNA(例えば、α-1アンチトリプシンmRNA)と相補的である。いくつかの実施形態において、アンチセンス鎖の3’末端の二つ(2)の末端ヌクレオチドは、標的mRNAと相補的ではない。いくつかの実施形態において、本明細書に記載のオリゴヌクレオチドのアンチセンス鎖の3’末端の二つ(2)の末端ヌクレオチドは、不対である。いくつかの実施形態において、本明細書に記載のオリゴヌクレオチドのアンチセンス鎖の3’末端の二つ(2)の末端ヌクレオチドは、不対のGGを含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載のオリゴヌクレオチドのアンチセンス鎖の3’末端の二つ(2)の末端ヌクレオチドは、標的mRNAに相補的ではない。いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチドの各3’末端の二つ(2)の末端ヌクレオチドはGGである。いくつかの実施形態において、本明細書に記載のオリゴヌクレオチドの各3’末端の1つまたは二つ(2)両方の末端GGヌクレオチドは、標的mRNAと相補的ではない。いくつかの実施形態において、当該オリゴヌクレオチドは、ヌクレオチドの連続配列に相補的な標的配列または相補性の領域を含み、標的領域または相補性の領域は、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、または31から選択され、本明細書に記載のオリゴヌクレオチドのアンチセンス鎖の3’末端の二つ(2)の末端ヌクレオチドは、不対のGGを含む。いくつかの実施形態において、当該オリゴヌクレオチドは、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、24、26、28、30、または32から選択されるヌクレオチド配列を含むアンチセンス鎖を含み、オリゴヌクレオチドのアンチセンス鎖の3’末端の二つ(2)の末端ヌクレオチドは、不対GGを含む。いくつかの実施形態において、当該オリゴヌクレオチドは、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、または31から選択されるヌクレオチド配列を含むセンス鎖と、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、24、26、28、30、または32から選択されるヌクレオチド配列を含むアンチセンス鎖とを有し、オリゴヌクレオチドのアンチセンス鎖の3’末端の二つ(2)の末端ヌクレオチドは、不対GGを含む。
【0101】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のオリゴヌクレオチド(例えば、RNAiオリゴヌクレオチド)を含むセンス鎖とアンチセンス鎖との間には、1つ以上(例えば、1、2、3、4、または5)のミスマッチ(複数可)が存在する。センス鎖とアンチセンス鎖との間に1つを超えるミスマッチが存在する場合、それらは連続して(例えば、2つ、3つ、またはそれ以上連続して)配置されるか、または相補性の領域全体に散在し得る。いくつかの実施形態において、センス鎖の3’末端は、1つ以上のミスマッチを含む。いくつかの実施形態において、二つ(2)のミスマッチがセンス鎖の3’末端に組み込まれる。いくつかの実施形態において、本明細書に記載のオリゴヌクレオチドのセンス鎖の3’末端における塩基ミスマッチまたはセグメントの不安定化は、オリゴヌクレオチドの効力を改善または増加させる。
【0102】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のオリゴヌクレオチドのセンス鎖及びアンチセンス鎖は、以下からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む。
(a)それぞれ配列番号25及び26
(b)それぞれ配列番号27及び28
(c)それぞれ配列番号29及び30
(d)それぞれ配列番号31及び32
(e)それぞれ配列番号97及び98
(f)それぞれ配列番号99及び100
(g)それぞれ配列番号101及び102
(h)それぞれ配列番号103及び104
【0103】
当該センス鎖とアンチセンス鎖との間に1つ以上(例えば、1、2、3、4、または5)のミスマッチ(複数可)が存在する。
【0104】
アンチセンス鎖
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のオリゴヌクレオチド(例えば、RNAiオリゴヌクレオチド)のアンチセンス鎖は、「ガイド鎖」と呼ばれる。例えば、アンチセンス鎖は、RNA誘導性サイレンシング複合体(RISC)に係合し、Ago2などのアルゴノートタンパク質に結合して、または1つ以上の同様の因子に係合もしくは結合して、標的遺伝子のサイレンシングを導く場合、ガイド鎖と呼ばれる。いくつかの実施形態において、ガイド鎖に対して相補性の領域を有するセンス鎖は、「パッセンジャー鎖」と呼ばれる。
【0105】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のオリゴヌクレオチド(例えば、RNAiオリゴヌクレオチド)は、長さが最大で50ヌクレオチド(例えば、長さが最大50、最大40、最大35、最大30、最大27、最大25、最大21、最大19、最大17、または最大12ヌクレオチド)であるアンチセンス鎖を含む。いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチドは、長さが、少なくとも約12ヌクレオチド(例えば、長さが少なくとも12、少なくとも15、少なくとも19、少なくとも21、少なくとも22、少なくとも25、少なくとも27、少なくとも30、少なくとも35、または少なくとも38ヌクレオチド)であるアンチセンス鎖を含む。いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチドは、長さが、約12~約40(例えば、12~40、12~36、12~32、12~28、15~40、15~36、15~32、15~28、17~22、17~25、19~27、19~30、20~40、22~40、25~40または32~40)ヌクレオチドの範囲にあるアンチセンス鎖を含む。いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチドは、長さが15~30ヌクレオチドのアンチセンス鎖を含む。いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるオリゴヌクレオチドのいずれか1つのアンチセンス鎖は、長さが、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、または40ヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチドは、長さが22ヌクレオチドのアンチセンス鎖を含む。
【0106】
いくつかの実施形態において、α-1アンチトリプシンを標的とする本明細書に開示されるオリゴヌクレオチド(例えば、RNAiオリゴヌクレオチド)は、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、24、26、28、30、または32のいずれか1つに示される配列を含むか、またはそれからなるアンチセンス鎖を含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載のオリゴヌクレオチドは、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、24、26、28、30、または32のいずれか1つに示される配列の、少なくとも約12(例えば、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20、少なくとも21、少なくとも22、または少なくとも23)連続ヌクレオチドを含むアンチセンス鎖を含む。いくつかの実施形態において、α-1アンチトリプシンを標的とする本明細書に開示されるオリゴヌクレオチドは、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、24、26、28、30、または32のいずれか1つに示される配列を含むか、またはそれからなるアンチセンス鎖を含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載のオリゴヌクレオチドは、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、24、26、28、30、または32のいずれか1つに示される配列の、少なくとも約12(例えば、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20、少なくとも21、少なくとも22、または少なくとも23)連続ヌクレオチドを含むアンチセンス鎖を含む。いくつかの実施形態において、α-1アンチトリプシンを標的とする本明細書に開示されるオリゴヌクレオチドは、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、24、26、28、30、または32のいずれか1つに示される配列を含むか、またはそれからなるアンチセンス鎖を含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載のオリゴヌクレオチドは、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、24、26、28、30、または32のいずれか1つに示される配列の、少なくとも約12(例えば、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20、少なくとも21、少なくとも22、または少なくとも23)連続ヌクレオチドを含むアンチセンス鎖を含む。
【0107】
センス鎖
いくつかの実施形態において、α-1アンチトリプシンmRNAを標的とし、α-1アンチトリプシン発現を阻害する本明細書に開示されるオリゴヌクレオチド(例えば、RNAiオリゴヌクレオチド)は、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、または31のいずれか1つに示されるセンス鎖配列を含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載のオリゴヌクレオチドは、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、または31のいずれか1つに示される配列の、少なくとも約12(例えば、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20、少なくとも21、少なくとも22、または少なくとも23)連続ヌクレオチドを含むセンス鎖を有する。いくつかの実施形態において、α-1アンチトリプシンmRNAを標的とし、α-1アンチトリプシン発現を阻害する本明細書に開示されるオリゴヌクレオチドは、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、または31のいずれか1つに示されるセンス鎖配列を含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載のオリゴヌクレオチドは、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、または31のいずれか1つに示される配列の、少なくとも約12(例えば、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20、少なくとも21、少なくとも22、または少なくとも23)連続ヌクレオチドを含むセンス鎖を有する。いくつかの実施形態において、α-1アンチトリプシンmRNAを標的とし、α-1アンチトリプシン発現を阻害する本明細書に開示されるオリゴヌクレオチドは、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、または31のいずれか1つに示されるセンス鎖配列を含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載のオリゴヌクレオチドは、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、または31のいずれか1つに示される配列の、少なくとも約12(例えば、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20、少なくとも21、少なくとも22、または少なくとも23)連続ヌクレオチドを含むセンス鎖を有する。
【0108】
いくつかの実施形態において、本明細書で提供されるオリゴヌクレオチド(例えば、RNAiオリゴヌクレオチド)は、長さが最大で50ヌクレオチド(例えば、長さが最大50、最大40、最大36、最大30、最大27、最大25、最大21、最大19、最大17、または最大12ヌクレオチド)であるセンス鎖(またはパッセンジャー鎖)を含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載のオリゴヌクレオチドは、長さが、少なくとも約12ヌクレオチド(例えば、長さが少なくとも12、少なくとも15、少なくとも19、少なくとも21、少なくとも25、少なくとも27、少なくとも30、少なくとも36、または少なくとも38ヌクレオチド)であるセンス鎖を含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載のオリゴヌクレオチドは、長さが、約12~約50(例えば、12~50、12~40、12~36、12~32、12~28、15~40、15~36、15~32、15~28、17~21、17~25、19~27、19~30、20~40、22~40、25~40または32~40)ヌクレオチドの範囲にあるセンス鎖を含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載のオリゴヌクレオチドは、長さが15~50ヌクレオチドのセンス鎖を含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載のオリゴヌクレオチドは、長さが18~36ヌクレオチドのセンス鎖を含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載のオリゴヌクレオチドは、長さが、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、または50ヌクレオチドのセンス鎖を含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載のオリゴヌクレオチドは、長さが36ヌクレオチドのセンス鎖を含む。
【0109】
いくつかの実施形態において、本明細書で提供されるオリゴヌクレオチド(例えば、RNAiオリゴヌクレオチド)は、センス鎖の3’末端にステムループ構造を含むセンス鎖を含む。いくつかの実施形態において、ステムループは、鎖内塩基対形成によって形成される。いくつかの実施形態において、センス鎖は、その5’末端にステムループ構造を含む。いくつかの実施形態において、ステムループのステムは、長さが2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14ヌクレオチドの二重鎖を含む。いくつかの実施形態において、ステムループのステムは、長さが2ヌクレオチドの二重鎖を含む。いくつかの実施形態において、ステムループのステムは、長さが3ヌクレオチドの二重鎖を含む。いくつかの実施形態において、ステムループのステムは、長さが4ヌクレオチドの二重鎖を含む。いくつかの実施形態において、ステムループのステムは、長さが5ヌクレオチドの二重鎖を含む。いくつかの実施形態において、ステムループのステムは、長さが6ヌクレオチドの二重鎖を含む。いくつかの実施形態において、ステムループのステムは、長さが7ヌクレオチドの二重鎖を含む。いくつかの実施形態において、ステムループのステムは、長さが8ヌクレオチドの二重鎖を含む。いくつかの実施形態において、ステムループのステムは、長さが9ヌクレオチドの二重鎖を含む。いくつかの実施形態において、ステムループのステムは、長さが10ヌクレオチドの二重鎖を含む。いくつかの実施形態において、ステムループのステムは、長さが11ヌクレオチドの二重鎖を含む。いくつかの実施形態において、ステムループのステムは、長さが12ヌクレオチドの二重鎖を含む。いくつかの実施形態において、ステムループのステムは、長さが13ヌクレオチドの二重鎖を含む。いくつかの実施形態において、ステムループのステムは、長さが14ヌクレオチドの二重鎖を含む。
【0110】
いくつかの実施形態において、ステムループは、分解(例えば、酵素分解)に対するオリゴヌクレオチド保護を提供し、標的細胞、組織、もしくは臓器(例えば、肝臓)への標的化及び/または送達を促進し、もしくはその両方である。例えば、いくつかの実施形態において、ステムループのループは、標的mRNA(例えば、α-1アンチトリプシンmRNA)への標的化、標的遺伝子発現(例えば、α-1アンチトリプシン発現)の阻害、及び/または標的細胞、組織、もしくは臓器(例えば、肝臓)への送達、取り込み、及び/または浸透、またはそれらの組み合わせを促進、改善、または増加させる1つ以上の修飾を含むヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態において、ステムループ自体またはステムループへの修飾(複数可)は、オリゴヌクレオチドの固有の遺伝子発現阻害活性に影響を与えないか、または実質的に影響を与えないが、標的細胞、組織、または臓器(例えば、肝臓)へのオリゴヌクレオチドの安定性(例えば、分解に対する保護を提供)及び/または送達、取り込み、及び/または浸透を促進、改善、または増加させる。いくつかの実施形態において、本明細書に記載のオリゴヌクレオチドは、S1-L-S2として示されるステムループを(例えば、その3’末端に)含むセンス鎖を含み、S1はS2に相補的であり、Lは、S1とS2との間に、長さが最大約10ヌクレオチド(例えば、長さ3、4、5、6、7、8、9、または10ヌクレオチド)の連結ヌクレオチドの一本鎖ループを形成する。いくつかの実施形態において、当該ループ(L)は、長さが3ヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、当該ループ(L)は、長さが4ヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、当該ループ(L)は、長さが5ヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、当該ループ(L)は、長さが6ヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、当該ループ(L)は、長さが7ヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、当該ループ(L)は、長さが8ヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、当該ループ(L)は、長さが9ヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、当該ループ(L)は、長さが10ヌクレオチドである。
【0111】
いくつかの実施形態において、本明細書で提供されるオリゴヌクレオチド(例えば、RNAiオリゴヌクレオチド)は、標的配列またはヌクレオチドの連続配列に相補的である相補性の領域を含み、標的領域または相補性の領域は、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、及び31から選択され、オリゴヌクレオチドは、(例えば、その3’末端に)S1-L-S2として示されるステムループを含むセンス鎖を含み、S1は、S2に相補的であり、Lは、S1とS2との間に、長さが最大約10ヌクレオチド(例えば、長さが3、4、5、6、7、8、9、または10ヌクレオチド)の一本鎖ループを形成する。いくつかの実施形態において、当該オリゴヌクレオチドは、標的配列またはヌクレオチドの連続配列に相補的である相補性の領域を含み、標的領域または相補性の領域は、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、及び31から選択され、オリゴヌクレオチドは、(例えば、その3’末端に)S1-L-S2として示されるステムループを含むセンス鎖を含み、S1は、S2に相補的であり、Lは、S1とS2との間に、長さが4ヌクレオチドの一本鎖ループを形成する。
【0112】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の構造S1-L-S2を有するステムループのループ(L)は、トリループである。いくつかの実施形態において、当該オリゴヌクレオチドは、ヌクレオチドの連続配列に相補的である標的配列または相補性の領域を含み、標的領域または相補性の領域は、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、及び31、ならびにトリループから選択される。いくつかの実施形態において、トリループは、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、修飾ヌクレオチド、リガンド(例えば、送達リガンド)、及びそれらの組み合わせを含む。
【0113】
いくつかの実施形態において、上記に記載の構造S1-L-S2を有するステムループのループ(L)は、テトラループである。いくつかの実施形態において、本明細書に記載のオリゴヌクレオチドは、ヌクレオチドの連続配列に相補的である標的配列または相補性の領域を含み、標的領域または相補性の領域は、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、及び31、ならびにテトラループから選択される。いくつかの実施形態において、テトラループは、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、修飾ヌクレオチド、リガンド(例えば、送達リガンド)、及びそれらの組み合わせを含む。
【0114】
二重鎖の長さ
いくつかの実施形態において、センス鎖とアンチセンス鎖との間に形成される二重鎖は、長さが少なくとも約12(例えば、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20、または少なくとも21)ヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、センス鎖とアンチセンス鎖との間に形成される二重鎖は、長さが12~30ヌクレオチド(例えば、長さが12~30、12~27、12~22、15~25、18~30、18~22、18~25、18~27、18~30、19~30、または21~30ヌクレオチド)の範囲内である。いくつかの実施形態において、センス鎖とアンチセンス鎖との間に形成される二重鎖は、長さが12、13、14、15、16、17、18、19、29、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30ヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、センス鎖とアンチセンス鎖との間に形成される二重鎖は、長さが12ヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、センス鎖とアンチセンス鎖との間に形成される二重鎖は、長さが13ヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、センス鎖とアンチセンス鎖との間に形成される二重鎖は、長さが14ヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、センス鎖とアンチセンス鎖との間に形成される二重鎖は、長さが15ヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、センス鎖とアンチセンス鎖との間に形成される二重鎖は、長さが16ヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、センス鎖とアンチセンス鎖との間に形成される二重鎖は、長さが17ヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、センス鎖とアンチセンス鎖との間に形成される二重鎖は、長さが18ヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、センス鎖とアンチセンス鎖との間に形成される二重鎖は、長さが19ヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、センス鎖とアンチセンス鎖との間に形成される二重鎖は、長さが20ヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、センス鎖とアンチセンス鎖との間に形成される二重鎖は、長さが21ヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、センス鎖とアンチセンス鎖との間に形成される二重鎖は、長さが22ヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、センス鎖とアンチセンス鎖との間に形成される二重鎖は、長さが23ヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、センス鎖とアンチセンス鎖との間に形成される二重鎖は、長さが24ヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、センス鎖とアンチセンス鎖との間に形成される二重鎖は、長さが25ヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、センス鎖とアンチセンス鎖との間に形成される二重鎖は、長さが26ヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、センス鎖とアンチセンス鎖との間に形成される二重鎖は、長さが27ヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、センス鎖とアンチセンス鎖との間に形成される二重鎖は、長さが28ヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、センス鎖とアンチセンス鎖との間に形成される二重鎖は、長さが29ヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、センス鎖とアンチセンス鎖との間に形成される二重鎖は、長さが30ヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、センス鎖とアンチセンス鎖との間に形成される二本鎖は、センス鎖及び/またはアンチセンス鎖の全長にまたがっていない。いくつかの実施形態において、センス鎖とアンチセンス鎖との間の二重鎖は、センス鎖またはアンチセンス鎖のいずれかの全長にまたがっている。いくつかの実施形態において、センス鎖とアンチセンス鎖との間の二重鎖は、センス鎖及びアンチセンス鎖の両方の全長にまたがっている。いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチドのセンス及びアンチセンス鎖は、それぞれ配列番号33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75、77、79、81、83、85、87、89、91、93、95、97、99、101、及び103、ならびに配列番号34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76、78、80、82、84、86、88、90、92、94、96、98、100、102、及び104から選択されるヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチドのセンス鎖及びアンチセンス鎖は、以下からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む。
(a)それぞれ配列番号25及び26
(b)それぞれ配列番号27及び28
(c)それぞれ配列番号29及び30
(d)それぞれ配列番号31及び32
(e)それぞれ配列番号97及び98
(f)それぞれ配列番号99及び100
(g)それぞれ配列番号101及び102
(h)それぞれ配列番号103及び104
当該センス鎖とアンチセンス鎖との間に形成される二重鎖は、長さが12~30ヌクレオチド(例えば、長さが12~30、12~27、12~22、15~25、18~30、18~22、18~25、18~27、18~30、19~30、または21~30ヌクレオチド)の範囲内である。
【0115】
オリゴヌクレオチド末端
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるオリゴヌクレオチド(例えば、RNAiオリゴヌクレオチド)は、センス鎖及びアンチセンス鎖を含み、一方または両方の鎖の末端は平滑末端を含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載のオリゴヌクレオチドは、センス鎖及びアンチセンス鎖を含み、一方または両方の鎖の末端は、1つ以上のヌクレオチドを含むオーバーハングを含む。いくつかの実施形態において、オーバーハングを構成する1つ以上のヌクレオチドは、不対ヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、本明細書に記載のオリゴヌクレオチドは、センス鎖及びアンチセンス鎖を含み、センス鎖の3’末端及びアンチセンス鎖の5’末端は平滑末端を含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載のオリゴヌクレオチドは、センス鎖及びアンチセンス鎖を含み、センス鎖の5’末端及びアンチセンス鎖の3’末端は平滑末端を含む。
【0116】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のオリゴヌクレオチドは、センス鎖及びアンチセンス鎖を含み、一方または両方の鎖の3’末端は、1つ以上のヌクレオチドを含む3’-オーバーハングを含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載のオリゴヌクレオチドは、センス鎖及びアンチセンス鎖を含み、当該センス鎖は、1つ以上のヌクレオチドを含む3’-オーバーハングを含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載のオリゴヌクレオチドは、センス鎖及びアンチセンス鎖を含み、当該アンチセンス鎖は、1つ以上のヌクレオチドを含む3’-オーバーハングを含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載のオリゴヌクレオチドは、センス鎖及びアンチセンス鎖を含み、当該センス鎖及びアンチセンス鎖の両方は、1つ以上のヌクレオチドを含む3’-オーバーハングを含む。
【0117】
いくつかの実施形態において、3’-オーバーハングは、長さが約一(1)~二十(20)ヌクレオチド(例えば、長さが約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または約20ヌクレオチド)である。いくつかの実施形態において、3’オーバーハングは、長さが約一(1)~十九(19)、一(1)~十八(18)、一(1)~十七(17)、一(1)~十六(16)、一(1)~十五(15)、一(1)~十四(14)、一(1)~十三(13)、一(1)~十二(12)、一(1)~十一(11)、一(1)~十(10)、一(1)~九(9)、一(1)~八(8)、一(1)~七(7)、一(1)~六(6)、一(1)~五(5)、一(1)~四(4)、一(1)~三(3)、または約一(1)~二(2)ヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、3’オーバーハングは、長さが一(1)ヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、3’オーバーハングは、長さが二(2)ヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、3’オーバーハングは、長さが三(3)ヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、3’オーバーハングは、長さが四(4)ヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、3’オーバーハングは、長さが五(5)ヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、3’オーバーハングは、長さが六(6)ヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、3’オーバーハングは、長さが七(7)ヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、3’オーバーハングは、長さが八(8)ヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、3’オーバーハングは、長さが九(9)ヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、3’オーバーハングは、長さが十(10)ヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、3’オーバーハングは、長さが十一(11)ヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、3’オーバーハングは、長さが十二(12)ヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、3’オーバーハングは、長さが十三(13)ヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、3’オーバーハングは、長さが十四(14)ヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、3’オーバーハングは、長さが十五(15)ヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、3’オーバーハングは、長さが十六(16)ヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、3’オーバーハングは、長さが十七(17)ヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、3’オーバーハングは、長さが十八(18)ヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、3’オーバーハングは、長さが十九(19)ヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、3’オーバーハングは、長さが二十(20)ヌクレオチドである。
【0118】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるオリゴヌクレオチド(例えば、RNAiオリゴヌクレオチド)は、センス鎖及びアンチセンス鎖を含み、アンチセンス鎖は3’オーバーハングを含み、オリゴヌクレオチドのセンス及びアンチセンス鎖は、それぞれ配列番号33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75、77、79、81、83、85、87、89、91、93、95、97、99、101、及び103、ならびに配列番号34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76、78、80、82、84、86、88、90、92、94、96、98、100、102、及び104から選択されるヌクレオチド配列を含む。
【0119】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるオリゴヌクレオチド(例えば、RNAiオリゴヌクレオチド)は、センス鎖及びアンチセンス鎖を含み、アンチセンス鎖は3’オーバーハングを含み、オリゴヌクレオチドのセンス鎖及びアンチセンス鎖は、以下からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む。
(a)それぞれ配列番号25及び26
(b)それぞれ配列番号27及び28
(c)それぞれ配列番号29及び30
(d)それぞれ配列番号31及び32
また、当該アンチセンス鎖は、長さが約一(1)~二十(20)ヌクレオチド(例えば、長さが約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または約20ヌクレオチド)である3’オーバーハングを含み、必要に応じて、3’オーバーハングは、長さが二(2)ヌクレオチドである。
【0120】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のオリゴヌクレオチドは、センス鎖及びアンチセンス鎖を含み、一方または両方の鎖の5’末端は、1つ以上のヌクレオチドを含む5’-オーバーハングを含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載のオリゴヌクレオチドは、センス鎖及びアンチセンス鎖を含み、当該センス鎖は、1つ以上のヌクレオチドを含む5’-オーバーハングを含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載のオリゴヌクレオチドは、センス鎖及びアンチセンス鎖を含み、当該アンチセンス鎖は、1つ以上のヌクレオチドを含む5’-オーバーハングを含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載のオリゴヌクレオチドは、センス鎖及びアンチセンス鎖を含み、当該センス鎖及びアンチセンス鎖の両方は、1つ以上のヌクレオチドを含む5’-オーバーハングを含む。
【0121】
いくつかの実施形態において、5’-オーバーハングは、長さが約一(1)~二十(20)ヌクレオチド(例えば、長さが約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または約20ヌクレオチド)である。いくつかの実施形態において、5’オーバーハングは、長さが約一(1)~十九(19)、一(1)~十八(18)、一(1)~十七(17)、一(1)~十六(16)、一(1)~十五(15)、一(1)~十四(14)、一(1)~十三(13)、一(1)~十二(12)、一(1)~十一(11)、一(1)~十(10)、一(1)~九(9)、一(1)~八(8)、一(1)~七(7)、一(1)~六(6)、一(1)~五(5)、一(1)~四(4)、一(1)~三(3)、または約一(1)~二(2)ヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、5’オーバーハングは、長さが一(1)ヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、5’オーバーハングは、長さが二(2)ヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、5’オーバーハングは、長さが三(3)ヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、5’オーバーハングは、長さが四(4)ヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、5’オーバーハングは、長さが五(5)ヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、5’オーバーハングは、長さが六(6)ヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、5’オーバーハングは、長さが七(7)ヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、5’オーバーハングは、長さが八(8)ヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、5’オーバーハングは、長さが九(9)ヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、5’オーバーハングは、長さが十(10)ヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、5’オーバーハングは、長さが十一(11)ヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、5’オーバーハングは、長さが十二(12)ヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、5’オーバーハングは、長さが十三(13)ヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、5’オーバーハングは、長さが十四(14)ヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、5’オーバーハングは、長さが十五(15)ヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、5’オーバーハングは、長さが十六(16)ヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、5’オーバーハングは、長さが十七(17)ヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、5’オーバーハングは、長さが十八(18)ヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、5’オーバーハングは、長さが十九(19)ヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、5’オーバーハングは、長さが二十(20)ヌクレオチドである。
【0122】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるオリゴヌクレオチド(例えば、RNAiオリゴヌクレオチド)は、センス鎖及びアンチセンス鎖を含み、アンチセンス鎖は5’オーバーハングを含み、オリゴヌクレオチドのセンス鎖及びアンチセンス鎖は、以下からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む。
(a)それぞれ配列番号25及び26
(b)それぞれ配列番号27及び28
(c)それぞれ配列番号29及び30
(d)それぞれ配列番号31及び32
また、当該アンチセンス鎖は、長さが約一(1)~二十(20)ヌクレオチド(例えば、長さが約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または約20ヌクレオチド)である5’オーバーハングを含み、必要に応じて、5’オーバーハングは、長さが二(2)ヌクレオチドである。
【0123】
いくつかの実施形態において、センス鎖及び/またはアンチセンス鎖の3’末端または5’末端を含む1つ以上(例えば、2、3、4、5、またはそれ以上)のヌクレオチドが修飾されている。例えば、いくつかの実施形態において、アンチセンス鎖の3’末端の1つまたは2つの末端ヌクレオチドが修飾される。いくつかの実施形態において、アンチセンス鎖の3’末端の最後のヌクレオチドが修飾されており、例えば、2’-修飾、例えば、2’-O-メトキシエチルを含む。いくつかの実施形態において、アンチセンス鎖の3’末端の最後の1つまたは2つの末端ヌクレオチドは、標的と相補的である。いくつかの実施形態において、アンチセンス鎖の3’末端の最後の1つまたは2つのヌクレオチドは、標的と相補的ではない。
【0124】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるオリゴヌクレオチド(例えば、RNAiオリゴヌクレオチド)は、センス鎖及びアンチセンス鎖を含み、センス鎖の3’末端は本明細書に記載のステムループを含み、アンチセンス鎖の3’末端は、本明細書に記載の3’オーバーハングを含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載のオリゴヌクレオチド(例えば、RNAiオリゴヌクレオチド)は、本明細書に記載のニックの入ったテトラループ構造を形成するセンス鎖及びアンチセンス鎖を含み、センス鎖の3’末端は本明細書に記載のステムループを含み、ループは、本明細書に記載のテトラループであり、アンチセンス鎖の3’末端は、本明細書に記載の3’オーバーハングを含む。いくつかの実施形態において、3’オーバーハングは、長さが二(2)ヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、3’オーバーハングを含む二つ(2)のヌクレオチドは、両方ともグアニン(G)核酸塩基を含む。典型的には、アンチセンス鎖の3’オーバーハングを含むヌクレオチドの一方または両方が標的mRNAと相補的ではない。例示的なオリゴヌクレオチド構造を
図20に提供する。
【0125】
オリゴヌクレオチド修飾
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のオリゴヌクレオチド(例えば、RNAiオリゴヌクレオチド)は修飾を含む。オリゴヌクレオチド(例えば、RNAiオリゴヌクレオチド)は、特異性、安定性、送達性、生物学的利用能、ヌクレアーゼ分解耐性、免疫原性、塩基対合特性、RNA分布及び細胞内取り込み、ならびに治療もしくは研究用途に関連するその他の特徴を改善または制御するために、様々な方法で修飾され得る。
【0126】
いくつかの実施形態において、修飾は修飾糖である。いくつかの実施形態において、修飾は5’末端リン酸基である。いくつかの実施形態において、修飾は、修飾されたヌクレオチド間結合である。いくつかの実施形態において、修飾は修飾塩基である。いくつかの実施形態において、本明細書に記載のオリゴヌクレオチドは、本明細書に記載の修飾のいずれか1つまたはそれらの任意の組み合わせを含むことができる。例えば、いくつかの実施形態において、本明細書に記載のオリゴヌクレオチドは、少なくとも1つの修飾糖、5’末端リン酸基、少なくとも1つの修飾ヌクレオチド間結合、及び少なくとも1つの修飾塩基を含む。いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチドのセンス鎖及びアンチセンス鎖は、以下からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む。
(a)それぞれ配列番号25及び26
(b)それぞれ配列番号27及び28
(c)それぞれ配列番号29及び30
(d)それぞれ配列番号31及び32
当該オリゴヌクレオチドは、少なくとも1つの修飾糖、5’末端リン酸基、少なくとも1つの修飾ヌクレオチド間結合、及び少なくとも1つの修飾塩基を含む。
【0127】
オリゴヌクレオチド(例えば、RNAiオリゴヌクレオチド)上の修飾の数及びそれらのヌクレオチド修飾の位置は、オリゴヌクレオチドの特性に影響を与える可能性がある。例えば、オリゴヌクレオチドは、脂質ナノ粒子(LNP)または類似の担体にコンジュゲートもしくは内包することにより、インビボで送達し得る。しかしながら、オリゴヌクレオチドがLNPまたは類似の担体により保護されていない場合、そのヌクレオチドの少なくとも一部が修飾されていることが有利であり得る。したがって、いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチドのヌクレオチドの全てまたは実質的に全てが修飾されている。いくつかの実施形態において、半分を超えるヌクレオチドが修飾されている。いくつかの実施形態において、半分未満のヌクレオチドが修飾されている。いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチドを含む全てのヌクレオチドの糖部分は、2’位で修飾される。修飾は、可逆的であってもよく、または不可逆的であってもよい。いくつかの実施形態において、本明細書で開示されるオリゴヌクレオチドは、所望の特徴(例えば、酵素分解からの保護、インビボ投与後に所望の細胞を標的とする能力、及び/または熱力学的安定性)を引き起こすのに十分な数及びタイプの修飾ヌクレオチドを有する。
【0128】
糖修飾
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のオリゴヌクレオチド(例えば、RNAiオリゴヌクレオチド)は修飾糖を含む。いくつかの実施形態において、修飾糖(本明細書では糖類似体とも呼ばれる)は、例えば、1つ以上の修飾が、糖の2’、3’、4’、及び/または5’炭素位置に生じる修飾デオキシリボースまたはリボース部分を含む。また、いくつかの実施形態において、修飾糖は、ロックド核酸(「LNA」、例えば、Koshkin et al.(1998) TETRAHEDON 54:3607-30を参照)、アンロックド核酸(「UNA」、例えば、Snead et al.(2013) MOL. THER-NUCL. ACIDS 2:e103を参照)、及びブリッジ核酸(「BNA」、例えば、Imanishi & Obika(2002) CHEM COMMUN.(CAMB) 21:1653-59を参照)に提示されているものなどの非天然代替炭素構造を含んでいてもよい。
【0129】
いくつかの実施形態において、糖のヌクレオチド修飾は、2’-修飾を含む。いくつかの実施形態において、2’-修飾は、2’-O-プロパルギル、2’-O-プロピルアミン、2’-アミノ、2’-エチル、2’-フルオロ(2’-F)、2’-アミノエチル(EA)、2’-O-メチル(2’-OMe)、2’-O-メトキシエチル(2’-MOE)、2’-O-[2-(メチルアミノ)-2-オキソエチル](2’-O-NMA)、または2’-デオキシ-2’-フルオロ-β-d-アラビノ核酸(2’-FANA)であってもよい。いくつかの実施形態において、修飾は、2’-F、2’-OMeまたは2’-MOEである。いくつかの実施形態において、糖の修飾は、糖環の1つ以上の炭素の修飾を含んでいてもよい糖環の修飾を含む。例えば、ヌクレオチドの糖の修飾は、糖の1’-炭素もしくは4’-炭素に連結されている糖の2’-酸素、またはエチレンもしくはメチレン架橋を介して1’-炭素もしくは4’-炭素に連結されている2’-酸素を含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、修飾ヌクレオチドは、2’-炭素から3’-炭素の結合を欠如する非環式糖を有する。いくつかの実施形態において、修飾ヌクレオチドは、例えば、糖の4’位にチオール基を有する。
【0130】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のオリゴヌクレオチド(例えば、RNAiオリゴヌクレオチド)は、少なくとも約1修飾ヌクレオチド(例えば、少なくとも1、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも35、少なくとも40、少なくとも45、少なくとも50、少なくとも55、少なくとも60、またはそれ以上)を含む。いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチドのセンス鎖は、少なくとも約1修飾ヌクレオチド(例えば、少なくとも1、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも35、またはそれ以上)を含む。いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチドのアンチセンス鎖は、少なくとも約1修飾ヌクレオチド(例えば、少なくとも1、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、またはそれ以上)を含む。
【0131】
いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチドのセンス鎖の全てのヌクレオチドが修飾される。いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチドのアンチセンス鎖の全てのヌクレオチドが修飾される。いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチドの全てのヌクレオチド(すなわち、センス鎖及びアンチセンス鎖の両方)が修飾される。いくつかの実施形態において、修飾ヌクレオチドは、2’-修飾(例えば、2’-Fもしくは2’-OMe、2’-MOE、及び2’-デオキシ-2’-フルオロ-β-d-アラビノ核酸酸)を含む。
【0132】
いくつかの実施形態において、本開示は、異なる修飾パターンを有するオリゴヌクレオチドを提供する。いくつかの実施形態において、本明細書に記載のオリゴヌクレオチドは、実施例及び配列表に示される修飾パターンを有するセンス鎖と、実施例及び配列表に示される修飾パターンを有するアンチセンス鎖とを含む。
【0133】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるオリゴヌクレオチド(例えば、RNAiオリゴヌクレオチド)は、2’-Fで修飾されたヌクレオチドを有するアンチセンス鎖を含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載のオリゴヌクレオチドは、2’-F及び2’-OMeで修飾されたヌクレオチドを含むアンチセンス鎖を含む。いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるオリゴヌクレオチドは、2’-Fで修飾されたヌクレオチドを有するセンス鎖を含む。いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるオリゴヌクレオチドは、2’-F及び2’-OMeで修飾されたヌクレオチドを含むセンス鎖を含む。
【0134】
いくつかの実施形態において、センス鎖の8、9、10、または11位の1つ以上が、2’-F基で修飾される。いくつかの実施形態において、センス鎖の3、8、9、10、12、13、及び17位の1つ以上が、2’-F基で修飾される。いくつかの実施形態において、アンチセンス鎖の2、3、4、5、7、10、及び14位の1つ以上が、2’-F基で修飾される。いくつかの実施形態において、2、3、4、5、7、8、10、14、16、及び19位の1つ以上が2’-F基で修飾される。いくつかの実施形態において、センス鎖の1~7位及び12~20位のヌクレオチドのそれぞれの糖部分が2’-OMeで修飾される。いくつかの実施形態において、センス鎖の1~7位、12~27位、及び31~36位のヌクレオチドのそれぞれの糖部分が2’-OMeで修飾される。いくつかの実施形態において、センス鎖の6、9、11~13、15、17、18、及び20~22位のヌクレオチドのそれぞれの糖部分が2’-OMeで修飾される。いくつかの実施形態において、センス鎖の1、2、4、6、7、12、14、16、18~26、もしくは31~36位、及び/またはアンチセンス鎖の1、6、8、11~13、15、17、もしくは19~22位の位置にある1つ以上が、2’-O-メチルで修飾される。いくつかの実施形態において、センス鎖の3、5、8~11、13、15、もしくは17位、及び/またはアンチセンス鎖の2~5、7、9、10、14、16、もしくは18位の位置にある1つ以上が2’-フルオロで修飾される。
【0135】
いくつかの実施形態において、センス鎖の3、8~10、12、13、及び17位のヌクレオチドが2’-F基で修飾される。いくつかの実施形態において、アンチセンス鎖の2、3、5、7、12、14、16、及び19位のヌクレオチドが2’-F基で修飾される。いくつかの実施形態において、センス鎖の1、2、4~7、11、14~16、18~26、及び31~36位のヌクレオチドが2’-OMeで修飾される。いくつかの実施形態において、アンチセンス鎖の1、4、6、8~11、13、15、17、18、及び20~22位のヌクレオチドが2’-OMeで修飾される。いくつかの実施形態において、センス鎖の1、2、4~7、11、14~16、18~26、及び31~36位、及び/またはアンチセンス鎖の1、4、6、8~11、13、15、17、18、及び20~22位の位置にあるヌクレオチドが、2’-O-Meで修飾される。いくつかの実施形態において、センス鎖の3、8、9、10、12、13、及び17位、及び/またはアンチセンス鎖の2、3、5、7、12、14、16、及び19位の位置にあるヌクレオチドが、2’-フルオロで修飾される。
【0136】
いくつかの実施形態において、センス鎖の1~7、及び12~36位、及び/またはアンチセンス鎖の1、6、8~13、及び15~22位の位置にある1つ以上が、2’-O-メチルで修飾される。いくつかの実施形態において、センス鎖の8~11位、及び/またはアンチセンス鎖の2~5、7、及び14位の位置にある1つ以上が、2’-フルオロで修飾される。
【0137】
いくつかの実施形態において、センス鎖の1、2、4~7、11、14~16、18~26、もしくは31~36位、及び/またはアンチセンス鎖の1、4、6、8~11、13、15、17、18、もしくは20~22位の位置にある1つ以上が、2’-O-メチルで修飾される。いくつかの実施形態において、センス鎖の3、8~10、12、13、及び17位、及び/またはアンチセンス鎖の2、3、5、7、12、14、16、及び19位の位置にある1つ以上が、2’-フルオロで修飾される。
【0138】
いくつかの実施形態において、センス鎖の1、2、4~7、11、14~16、18~26、もしくは31~36位、及び/またはアンチセンス鎖の1、4、6、8、9、11~13、15、18、もしくは20~22位の位置にある1つ以上が、2’-O-メチルで修飾される。いくつかの実施形態において、センス鎖の3、8~10、12、13、もしくは17位、及び/またはアンチセンス鎖の2、3、5、7、10、14、16、17、もしくは19位の位置にある1つ以上が、2’-フルオロで修飾される。
【0139】
いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチドのセンス鎖及びアンチセンス鎖は、以下からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む。
(a)それぞれ配列番号25及び26
(b)それぞれ配列番号27及び28
(c)それぞれ配列番号29及び30
(d)それぞれ配列番号31及び32
当該センス鎖の3、8~10、12、13、もしくは17位の位置にある1つ以上が、2’-F基で修飾される。
【0140】
いくつかの実施形態において、本明細書で提供されるオリゴヌクレオチドは、1つ以上のヌクレオチドに糖部分を有するアンチセンス鎖を含む。糖部分は、2’-Fで修飾されるか、または2’-O-プロパルギル、2’-O-プロピルアミン、2’-アミノ、2’-エチル、2’-アミノエチル(EA)、2’-O-メチル(2’-OMe)、2’-O-メトキシエチル(2’-MOE)、2′-O-[2-(メチルアミノ)-2-オキソエチル](2’-O-NMA)、及び2’-デオキシ-2’-フルオロ-β-d-アラビノ核酸(2’-FANA)からなる群から選択される修飾のいずれかで修飾される。
【0141】
5’末端リン酸
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のオリゴヌクレオチド(例えば、RNAiオリゴヌクレオチド)は、センス鎖及びアンチセンス鎖を含み、当該アンチセンス鎖は5’末端リン酸を含む。いくつかの実施形態において、RNAiオリゴヌクレオチドの5’末端リン酸基は、Ago2との相互作用を増強する。しかしながら、5’-リン酸基を含むオリゴヌクレオチドは、ホスファターゼまたは他の酵素による分解に感受性である場合があり、インビボでのそれらの性能及び/または生物学的利用能が制限され得る。いくつかの実施形態において、本明細書に記載のオリゴヌクレオチドは、そのような分解に耐性のある5’リン酸類似体を含む。いくつかの実施形態において、リン酸類似体は、オキシメチルホスホネート、ビニルホスホネート、もしくはマロニルホスホネート、またはそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチド鎖の5’末端は、天然5’-リン酸基の静電気的及び立体的特性を模倣する化学部分(「リン酸模倣体」)に付着されている。いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチドのセンス鎖及びアンチセンス鎖は、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、及び31、ならびに配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、及び32から選択されるヌクレオチド配列をそれぞれ含む。
【0142】
いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチドのセンス鎖及びアンチセンス鎖は、以下からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む。
(a)それぞれ配列番号25及び26
(b)それぞれ配列番号27及び28
(c)それぞれ配列番号29及び30
(d)それぞれ配列番号31及び32
当該オリゴヌクレオチドは、5’末端リン酸を含み、必要に応じて、5’末端リン酸類似体を含む。
【0143】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のオリゴヌクレオチド(例えば、RNAiオリゴヌクレオチド)は、糖の4’-炭素位置にリン酸類似体を有する(「4’-リン酸類似体」と呼ばれる)。例えば、国際特許出願公開第WO2018/045317号を参照されたい。いくつかの実施形態において、本明細書に記載のオリゴヌクレオチドは、5’末端ヌクレオチドに4’-リン酸類似体を含む。いくつかの実施形態において、リン酸類似体は、オキシメチル基の酸素原子が糖部分(例えば、その4’-炭素)またはその類似体に結合しているオキシメチルホスホネートである。別の実施形態において、4’-リン酸類似体は、チオメチルホスホネートまたはアミノメチルホスホネートであり、チオメチル基の硫黄原子またはアミノメチル基の窒素原子は、糖部分の4’-炭素またはその類似体に結合している。いくつかの実施形態において、4’-リン酸類似体は、オキシメチルホスホネートである。いくつかの実施形態において、オキシメチルホスホネートは、式-O-CH2-PO(OH2)、-O-CH2-PO(OR)2、または-O-CH2-POOH(R)で表され、Rは、独立に、H、CH3、アルキル基、CH2CH2CN、CH2OCOC(CH3)3、CH2OCH2CH2Si(CH3)3、または保護基から選択される。いくつかの実施形態において、アルキル基はCH2CH3である。より典型的には、Rは、独立に、H、CH3、またはCH2CH3から選択される。いくつかの実施形態において、RはCH3である。いくつかの実施形態において、4’-リン酸類似体は、4’-オキシメチルホスホネートである。
【0144】
いくつかの実施形態において、4’-リン酸類似体は、4’-(メトキシホスホネートメチル)である。いくつかの実施形態において、本明細書で提供されるオリゴヌクレオチドは、5’末端ヌクレオチドに4’-リン酸類似体を含むアンチセンス鎖を含み、5’末端ヌクレオチドは、以下の構造を含む。
【化16】
4’-O-モノメチルホスホネート-2’O-メチルウリジンホスホロチオエート[Meホスホネート-4O-mUs][MeMOP]
【0145】
修飾ヌクレオチド間結合
いくつかの実施形態において、本明細書で提供されるオリゴヌクレオチド(例えば、RNAiオリゴヌクレオチド)は、修飾ヌクレオチド間結合を含む。いくつかの実施形態において、リン酸修飾または置換によって、オリゴヌクレオチドは、少なくとも約1(例えば、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、または少なくとも5)修飾ヌクレオチド間結合を含む。いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるオリゴヌクレオチドのいずれか1つは、約1~約10(例えば、1~10、2~8、4~6、3~10、5~10、1~5、1~3、または1~2)修飾ヌクレオチド間結合を含む。いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるオリゴヌクレオチドのいずれか1つは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10修飾ヌクレオチド間結合を含む。
【0146】
修飾ヌクレオチド間結合は、ホスホロジチオエート結合、ホスホロチオエート結合、ホスホトリエステル結合、チオノアルキルホスホネート結合、チオンアルキルホスホトリエステル結合、ホスホルアミダイト結合、ホスホネート結合、またはボラノホスフェート結合であり得る。いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるオリゴヌクレオチドのいずれか1つの少なくとも1つの修飾ヌクレオチド間結合は、ホスホロチオエート結合である。
【0147】
いくつかの実施形態において、本明細書で提供されるオリゴヌクレオチド(例えば、RNAiオリゴヌクレオチド)は、センス鎖の1位と2位、アンチセンス鎖の1位と2位、アンチセンス鎖の2位と3位、アンチセンス鎖の3位と4位、アンチセンス鎖の20位と21位、及びアンチセンス鎖の21位と22位の1つ以上の位置の間にホスホロチオエート結合を有する。いくつかの実施形態において、本明細書に記載のオリゴヌクレオチドは、センス鎖の1位と2位、アンチセンス鎖の1位と2位、アンチセンス鎖の2位と3位、アンチセンス鎖の20位と21位、及びアンチセンス鎖の21位と22位のそれぞれの間にホスホロチオエート結合を有する。いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチドのセンス鎖及びアンチセンス鎖は、以下からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む。
(a)それぞれ配列番号25及び26
(b)それぞれ配列番号27及び28
(c)それぞれ配列番号29及び30
(d)それぞれ配列番号31及び32
当該オリゴヌクレオチドは、修飾ヌクレオチド間結合を含む。
【0148】
塩基修飾
いくつかの実施形態において、本明細書で提供されるオリゴヌクレオチド(例えば、RNAiオリゴヌクレオチド)は、1つ以上の修飾核酸塩基を含む。いくつかの実施形態において、修飾核酸塩基(本明細書では塩基類似体とも呼ばれる)は、ヌクレオチド糖部分の1’位に結合する。いくつかの実施形態において、修飾核酸塩基は窒素塩基である。いくつかの実施形態において、修飾核酸塩基は窒素原子を含まない。例えば、米国特許出願公開第2008/0274462号を参照されたい。いくつかの実施形態において、修飾ヌクレオチドはユニバーサル塩基を含む。いくつかの実施形態において、修飾ヌクレオチドは核酸塩基を含まない(脱塩基)。いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチドのセンス鎖及びアンチセンス鎖は、以下からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む。
(a)それぞれ配列番号25及び26
(b)それぞれ配列番号27及び28
(c)それぞれ配列番号29及び30
(d)それぞれ配列番号31及び32
当該オリゴヌクレオチドは、1つ以上の修飾核酸塩基を含む。
【0149】
いくつかの実施形態において、ユニバーサル塩基は、修飾ヌクレオチドのヌクレオチド糖部分の1’位に、または二重鎖に存在する場合は、二重鎖の構造を実質的に変更することなく1つよりも多くのタイプの塩基の反対側に位置していることができるヌクレオチド糖部分置換の等価位置に位置するヘテロ環部分である。いくつかの実施形態において、ユニバーサル塩基を含む一本鎖核酸は、標的核酸(例えば、α-1アンチトリプシンmRNA)と完全に相補的な参照一本鎖核酸(例えば、オリゴヌクレオチド)と比較して、相補的な核酸とで形成される二重鎖よりも低いTmを有する標的核酸との二重鎖を形成する。いくつかの実施形態において、ユニバーサル塩基を含む一本鎖核酸は、ユニバーサル塩基が単一のミスマッチを生成する塩基と置換されている参照一本鎖核酸と比較して、ミスマッチ塩基を含む核酸とで形成される二重鎖よりも高いTmを有する標的核酸との二重鎖を形成する。
【0150】
ユニバーサル結合ヌクレオチドの非限定的な例としては、イノシン、1-β-D-リボフラノシル-5-ニトロインドール、及び/または1-β-D-リボフラノシル-3-ニトロピロールが挙げられるが、これらに限定されない(米国特許出願公開第2007/0254362号、Van Aerschot et al.(1995) NUCLEIC ACIDS RES. 23:4363-4370、Loakes et al.(1995) NUCLEIC ACIDS RES. 23:2361-66、及びLoakes & Brown(1994) NUCLEIC ACIDS RES. 22:4039-43を参照)。
【0151】
標的指向性リガンド
いくつかの実施形態において、本明細書で提供されるオリゴヌクレオチド(例えば、RNAiオリゴヌクレオチド)を、1つ以上の細胞もしくは細胞タイプ、組織、臓器、または解剖学的領域もしくは区画に標的化することが望ましい。このような戦略は、オリゴヌクレオチドもしくはその効果(例えば、α-1アンチトリプシン発現の阻害または減少)から利益を得ない細胞、組織、臓器、または解剖学的領域もしくは区画への、望ましくない影響及び/またはオリゴヌクレオチドの過度の損失を避けるのに役立ち得る。したがって、いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるオリゴヌクレオチド(例えば、RNAiオリゴヌクレオチド)は、特定の細胞もしくは細胞タイプ、組織、臓器、または解剖学的領域もしくは区画への標的化及び/または送達の促進のために(肝臓へのオリゴヌクレオチドの送達を容易にするために)修飾される。いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチドは、1つ以上の標的指向性リガンド(複数可)にコンジュゲートされた少なくとも1つのヌクレオチド(例えば、1、2、3、4、5、6、またはそれ以上のヌクレオチド)を含む。いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチドのセンス鎖及びアンチセンス鎖は、以下からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む。
(a)それぞれ配列番号25及び26
(b)それぞれ配列番号27及び28
(c)それぞれ配列番号29及び30
(d)それぞれ配列番号31及び32
当該オリゴヌクレオチドは、少なくとも1つのヌクレオチドにコンジュゲートされた標的指向性リガンドを含む。
【0152】
いくつかの実施形態において、標的指向性リガンドは、炭水化物、アミノ糖、コレステロール、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、またはタンパク質の一部(例えば、抗体もしくは抗体断片)、または脂質を含む。いくつかの実施形態において、標的指向性リガンドは、GalNAc部分を含む炭水化物である。
【0153】
いくつかの実施形態において、本明細書で提供されるオリゴヌクレオチド(例えば、RNAiオリゴヌクレオチド)の1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、または6)のヌクレオチドは、それぞれ別の標的指向性リガンド(例えば、GalNAc部分)にコンジュゲートされる。いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチドの2~4ヌクレオチドがそれぞれ別の標的指向性リガンドにコンジュゲートされる。いくつかの実施形態において、標的指向性リガンドは、標的指向性リガンドが歯ブラシの毛のようであり、オリゴヌクレオチドが歯ブラシのようであるように、センス鎖またはアンチセンス鎖のいずれかの末端で2~4ヌクレオチドにコンジュゲートされる(例えば、標的指向性リガンドは、センス鎖またはアンチセンス鎖の5’もしくは3’末端の2~4ヌクレオチドのオーバーハングまたは伸長にコンジュゲートされる)。例えば、オリゴヌクレオチドは、センス鎖の5’末端または3’末端のいずれかにステムループを含み得、ステムのループの1、2、3、または4ヌクレオチドは、標的指向性リガンドに個別にコンジュゲートされ得る。いくつかの実施形態において、本開示によって提供されるオリゴヌクレオチド(例えば、RNAiオリゴヌクレオチド)は、センス鎖の3’末端にステムループを含み、ステムループのループは、トリループまたはテトラループを含み、トリループまたはテトラループを含む3または4ヌクレオチドは、それぞれ標的指向性リガンドに個別にコンジュゲートされる。
【0154】
GalNAcは、アシアロ糖タンパク質受容体(ASGPR)の高親和性炭水化物リガンドであり、主に肝実質細胞の表面に発現し、末端ガラクトースまたはGalNAc残基(アシアロ糖タンパク質)を含む循環糖タンパク質の結合、内在化、及びその後の除去に主要な役割を果たす。本開示のオリゴヌクレオチドへのGalNAc部分のコンジュゲーション(間接的または直接的のいずれか)を用いて、これらのオリゴヌクレオチドを細胞上に発現するASGPRに標的化することができる。いくつかの実施形態において、本開示のオリゴヌクレオチド(例えば、RNAiオリゴヌクレオチド)は、少なくとも1つ以上のGalNAc部分にコンジュゲートされ、GalNAc部分は、オリゴヌクレオチドをヒト肝細胞(例えば、ヒト肝実質細胞)上に発現するASGPRに標的化する。いくつかの実施形態において、GalNAc部分は、オリゴヌクレオチドを肝臓に標的化する。
【0155】
いくつかの実施形態において、本開示のオリゴヌクレオチド(例えば、RNAiオリゴヌクレオチド)は、一価のGalNAc部分に直接的または間接的にコンジュゲートされる。いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチドは、1つを超える一価のGalNAcに直接的にまたは間接的にコンジュゲートされている(すなわち、2つ、3つ、または4つの一価のGalNAc部分にコンジュゲートされており、典型的に3つまたは4つの一価のGalNAc部分にコンジュゲートされている)。いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチドは、1つ以上の二価のGalNAc、三価のGalNAc、または四価のGalNAc部分にコンジュゲートされる。
【0156】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のオリゴヌクレオチド(例えば、RNAiオリゴヌクレオチド)の一つ(1)以上(例えば、1、2、3、4、5、または6)のヌクレオチドが、それぞれGalNAc部分にコンジュゲートされる。いくつかの実施形態において、テトラループの二つ(2)~四つ(4)のヌクレオチドが、それぞれ別個のGalNAc部分にコンジュゲートされる。いくつかの実施形態において、トリループの一つ(1)~三つ(3)のヌクレオチド、それぞれ別個のGalNAc部分にコンジュゲートされる。いくつかの実施形態において、標的指向性リガンドは、GalNAc部分が歯ブラシの毛のようであり、オリゴヌクレオチドが歯ブラシのようであるように、センス鎖またはアンチセンス鎖のいずれかの末端で二つ(2)~四つ(4)のヌクレオチドにコンジュゲートされる(例えば、リガンドは、センス鎖またはアンチセンス鎖の5’もしくは3’末端の二つ(2)~四つ(4)のヌクレオチドのオーバーハングまたは伸長にコンジュゲートされる)。いくつかの実施形態において、GalNAc部分は、センス鎖のヌクレオチドにコンジュゲートされる。例えば、三つ(3)または四つ(4)のGalNAc部分をセンス鎖のテトラループ内のヌクレオチドにコンジュゲートさせることができ、各GalNAc部分は一つ(1)のヌクレオチドにコンジュゲートされる。
【0157】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のオリゴヌクレオチド(例えば、RNAiオリゴヌクレオチド)は、テトラループを含み、当該テトラループ(L)は、アデニン(A)及びグアニン(G)ヌクレオチドの任意の組み合わせである。いくつかの実施形態において、テトラループ(L)は、以下に示すように、本明細書に記載の任意のリンカーを介してテトラループの任意の1つ以上のグアニン(G)ヌクレオチドに結合した一価のGalNAc部分を含む(X=ヘテロ原子)。
【化17】
【0158】
いくつかの実施形態において、テトラループ(L)は、以下に示すように、本明細書に記載の任意のリンカーを介してテトラループの任意の1つ以上のアデニンヌクレオチドに結合した一価のGalNAcを有する(X=ヘテロ原子)。
【化18】
【0159】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のオリゴヌクレオチド(例えば、RNAiオリゴヌクレオチド)は、以下に示すように、[ademG-GalNAc]または2’-アミノジエトキシメタノール-グアニン-GalNAcと呼ばれる、グアニン(G)ヌクレオチドに結合された一価のGalNAc部分を含む。
【化19】
【0160】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のオリゴヌクレオチドは、以下に示すように、[ademA-GalNAc]または2’-アミノジエトキシメタノール-アデニン-GalNAcと呼ばれる、アデニンヌクレオチドに結合された一価のGalNAc部分を含む。
【化20】
【0161】
そのような結合の例を、5’から3’方向にヌクレオチド配列GAAAを含むループについて下記に示す(L=リンカー、X=ヘテロ原子)。このようなループは、例えば、
図20に示される、本明細書で提供されるセンス鎖の27~30位に存在し得る。化学式中、
【化21】
はオリゴヌクレオチド鎖への結合点を表すために用いられている。
【化22】
【0162】
適当な方法または化学的手法(例えば、クリックケミストリー)を用いて標的指向性リガンドをヌクレオチドに連結することができる。いくつかの実施形態において、標的指向性リガンドは、クリックリンカーを使用して本明細書に記載のオリゴヌクレオチド(例えば、RNAiオリゴヌクレオチド)を含むヌクレオチドにコンジュゲートされる。いくつかの実施形態において、アセタールベースのリンカーを用いて標的指向性リガンドを本明細書に記載のオリゴヌクレオチドのいずれか1つのヌクレオチドにコンジュゲートする。アセタールベースのリンカーは、例えば、国際特許出願公開第WO2016/100401号に開示される。いくつかの実施形態において、リンカーは、不安定なリンカーである。しかしながら、別の実施形態において、リンカーは安定している。GalNAc部分がアセタールリンカーを使用してループのヌクレオチドに結合されている、5’から3’方向にヌクレオチドGAAAを含むループの例を以下に示す。このようなループは、例えば、
図20に示されるセンス鎖のいずれか1つの27~30位に存在し得る。化学式中、
【化23】
は、オリゴヌクレオチド鎖への結合点である。
【0163】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のオリゴヌクレオチド(例えば、RNAiオリゴヌクレオチド)は、テトラループを有するセンス鎖を含み、四つ(4)のGalNAc部分がテトラループを含むヌクレオチドにコンジュゲートされ、各GalNAc部分は、一つ(1)のヌクレオチドにコンジュゲートされる。いくつかの実施形態において、本明細書に記載のオリゴヌクレオチド(例えば、RNAiオリゴヌクレオチド)は、GalNAcコンジュゲートヌクレオチドを含むテトラループを有するセンス鎖を含み、テトラループは以下の構造を含む。
【化24】
【0164】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のオリゴヌクレオチド(例えば、RNAiオリゴヌクレオチド)は、テトラループを有するセンス鎖を含み、三つ(3)のGalNAc部分がテトラループを含むヌクレオチドにコンジュゲートされ、各GalNAc部分は、一つ(1)のヌクレオチドにコンジュゲートされる。いくつかの実施形態において、本明細書に記載のオリゴヌクレオチド(例えば、RNAiオリゴヌクレオチド)は、GalNAcコンジュゲートヌクレオチドを含むテトラループを有するセンス鎖を含み、テトラループは以下の構造を含む。
【化25】
【0165】
上述したように、様々な適切な方法または化学合成技術(例えば、クリックケミストリー)を用いて、標的指向性リガンドをヌクレオチドに連結させることができる。いくつかの実施形態において、標的指向性リガンドは、クリックリンカーを使用してヌクレオチドにコンジュゲートされる。いくつかの実施形態において、アセタールベースのリンカーを用いて標的指向性リガンドを本明細書に記載のオリゴヌクレオチドのいずれか1つのヌクレオチドにコンジュゲートする。アセタールベースのリンカーは、例えば、国際特許出願公開第WO2016/100401号に開示される。いくつかの実施形態において、リンカーは、不安定なリンカーである。しかしながら、別の実施形態において、リンカーは安定したリンカーである。
【0166】
いくつかの実施形態において、二重鎖伸長部分(例えば、長さが最大bp3、4、5、または6)が、標的指向性リガンド(例えば、GalNAc部分)とオリゴヌクレオチドとの間に提供される。いくつかの実施形態において、本明細書に記載のオリゴヌクレオチド(例えば、RNAiオリゴヌクレオチド)は、それにコンジュゲートされたGalNAcを有さない。
【0167】
いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチドのセンス鎖及びアンチセンス鎖は、以下からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む。
(a)それぞれ配列番号25及び26
(b)それぞれ配列番号27及び28
(c)それぞれ配列番号29及び30
(d)それぞれ配列番号31及び32
当該オリゴヌクレオチドは、ヌクレオチドにコンジュゲートされた少なくとも1つのGalNAc部分を含む。
【0168】
α-1アンチトリプシン発現を低減させるための例示的なオリゴヌクレオチド
いくつかの実施形態において、本開示は、α-1アンチトリプシン発現を低減させるオリゴヌクレオチド(例えば、RNAiオリゴヌクレオチド)を提供し、当該オリゴヌクレオチドは、以下に示すセンス鎖及びアンチセンス鎖を含む。
センス鎖:5’-[mAs][mA][fA][mC][mC][mC][mU][fU][fU][fG][mU][fC][fU][mU][mC][mU][fU][mA][mA][mA][mG][mC][mA][mG][mC][mC][ademG-GalNAc][ademA-GalNAc][ademA-GalNAc][ademA-GalNAc][mG][mG][mC][mU][mG][mC]-3’(配列番号:101)、
以下にハイブリダイズされる:
アンチセンス鎖:5’[Meホスホネート-4O-mUs][fUs][fUs][mA][fA][mG][fA][mA][mG][mA][mC][fA][mA][fA][mG][fG][mG][mU][fU][mUs][mGs][mG]-3’(配列番号:104)、
ここで、mX=2’-O-メチル修飾ヌクレオチド、fX=2’-フルオロ修飾ヌクレオチド、-S-=ホスホロチオエート結合、-=ホスホジエステル結合、[Meホスホネート-4O-mX]=5’-メトキシホスホネート-4-オキシ修飾ヌクレオチド、及びademA-GalNAc=アデニンヌクレオチドに結合したGalNAc、ならびにademG-GalNAc=グアニンヌクレオチドに結合したGalNAc。
【0169】
いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチドのセンス鎖及びアンチセンス鎖は、以下から選択されるヌクレオチド配列を含む。
(a)それぞれ配列番号33及び34
(b)それぞれ配列番号35及び36
(c)それぞれ配列番号37及び38
(d)それぞれ配列番号39及び40
(e)それぞれ配列番号41及び42
(f)それぞれ配列番号43及び44
(g)それぞれ配列番号45及び46
(h)それぞれ配列番号47及び48
(i)それぞれ配列番号49及び50
(j)それぞれ配列番号51及び52
(k)それぞれ配列番号53及び54
(l)それぞれ配列番号55及び56
(m)それぞれ配列番号57及び58
(n)それぞれ配列番号59及び60
(o)それぞれ配列番号61及び62
(p)それぞれ配列番号63及び64
(q)それぞれ配列番号65及び66
(r)それぞれ配列番号67及び68
(s)それぞれ配列番号69及び70
(t)それぞれ配列番号71及び72
(u)それぞれ配列番号73及び74
(v)それぞれ配列番号75及び76
(w)それぞれ配列番号77及び78
(x)それぞれ配列番号79及び80
(y)それぞれ配列番号81及び82
(z)それぞれ配列番号83及び84
(aa)それぞれ配列番号85及び86
(bb)それぞれ配列番号87及び88
(cc)それぞれ配列番号89及び90
(dd)それぞれ配列番号91及び92
(ee)それぞれ配列番号93及び94
(ff)それぞれ配列番号95及び96
(gg)それぞれ配列番号97及び98
(hh)それぞれ配列番号99及び100
(ii)それぞれ配列番号101及び102
(jj)それぞれ配列番号103及び104
【0170】
いくつかの実施形態において、本開示は、配列番号103のヌクレオチド配列を含むセンス鎖と、配列番号104のヌクレオチド配列を含むアンチセンス鎖とを含むオリゴヌクレオチドを提供する。
【0171】
いくつかの実施形態において、本開示は、配列番号103のヌクレオチド配列を含むセンス鎖と、配列番号104のヌクレオチド配列を含むアンチセンス鎖とを含むオリゴヌクレオチド(例えば、RNAiオリゴヌクレオチド)であって、以下の構造を有するコンジュゲート形態である、当該オリゴヌクレオチドを提供する。
【化26-1】
【化26-2】
【0172】
製剤
オリゴヌクレオチドの使用のための種々の製剤(例えば、医薬製剤)が開発されている。例えば、オリゴヌクレオチド(例えば、RNAiオリゴヌクレオチド)は、分解を最小限に抑え、送達及び/または取り込みを促進し、または製剤中のオリゴヌクレオチドに別の有益な特性を与える製剤を使用して対象または細胞環境に送達することができる。いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチド(例えば、RNAiオリゴヌクレオチド)を含む本明細書に記載の組成物は、α-1アンチトリプシンの発現を低減させる。そのような組成物は、対象の標的細胞の近接環境または全身のいずれかへと投与されると、オリゴヌクレトチドの十分な部分が細胞内に進入し、α-1アンチトリプシンの発現を低減するように、好適に製剤化することができる。様々な好適なオリゴヌクレオチド製剤のいずれかを使用して、本明細書で開示されるα-1アンチトリプシンを低減させるオリゴヌクレオチドを送達することができる。いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチドは、リン酸緩衝生理食塩溶液、リポソーム、ミセル構造、及びカプシドなどの緩衝溶液で製剤化されている。本明細書に記載のオリゴヌクレオチドはいずれも、核酸としてだけでなく、薬学的に許容される塩の形態で提供されてもよい。
【0173】
カチオン性脂質を用いたオリゴヌクレオチドの製剤を使用して、細胞内へのオリゴヌクレオチドのトランスフェクションを容易にすることができる。例えば、リポフェクチン、カチオン性グリセロール誘導体、及びポリカチオン性分子(例えば、ポリリジン)などのカチオン性脂質を使用することができる。好適な脂質としては、オリゴフェクタミン、リポフェクタミン(Life Technologies)、NC388(Ribozyme Pharmaceuticals,Inc.,Boulder,Colo.)、またはFuGene6(Roche)が挙げられ、これらはいずれも製造元の指示に従って使用することができる。
【0174】
したがって、いくつかの実施形態において、製剤は脂質ナノ粒子を含む。いくつかの実施形態において、賦形剤は、リポソーム、脂質、脂質複合体、マイクロスフェア、マイクロ粒子、ナノスフェア、もしくはナノ粒子を含むか、またはそれを必要とする対象の細胞、組織、臓器、もしくは体内への投与用に別様に製剤化してもよい(例えば、Remington:THE SCIENCE AND PRACTICE OF PHARMACY,22nd edition,Pharmaceutical Press,2013を参照)。
【0175】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の製剤は、賦形剤を含む。いくつかの実施形態において、賦形剤は、組成物に、安定性の向上、吸収の向上、溶解度の向上、及び/または活性成分の治療上の増強を付与する。いくつかの実施形態において、賦形剤は、緩衝剤(例えば、クエン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、トリス塩基、もしくは水酸化ナトリウム)または媒体(例えば、緩衝溶液、ペトロラタム、ジメチルスルホキシド、もしくは鉱油)である。いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチドは、その貯蔵寿命を延長するために凍結乾燥され、その後、使用(例えば、対象への投与)前に溶液化される。したがって、本明細書に記載のオリゴヌクレオチドのいずれか1つを含む組成物中の賦形剤は、凍結乾燥保護剤(例えば、マンニトール、ラクトース、ポリエチレングリコール、もしくはポリビニルピロリドン)または崩壊温度調節剤(例えば、デキストラン、フィコール(商標)、もしくはゼラチン)であってもよい。
【0176】
いくつかの実施形態において、医薬組成物は、その意図されている投与経路と適合するように製剤化されている。投与経路の例としては、非経口(例えば、静脈内、筋肉内、腹腔内、皮内、皮下)、経口(例えば、吸入)、経皮(局所)、経粘膜、及び直腸内投与が挙げられる。
【0177】
注射使用に好適な医薬組成物としては、無菌水溶液(水溶性である)または無菌注射溶液もしくは分散剤の即時調製用の分散物及び無菌粉末が挙げられる。静脈内投与の場合、好適な担体としては、生理食塩水、静菌水、Cremophor EL(商標)(BASF,Parsippany,N.J.)またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)が挙げられる。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコールなど)及びそれらの好適な混合物を含む溶媒または分散媒であってもよい。多くの場合、組成物には、等張剤、例えば、糖、マンニトール、ソルビトールなどの多価アルコール、塩化ナトリウムが含まれていることが好ましいだろう。無菌注射溶液は、必要量のオリゴヌクレオチドを、上記に列挙されている成分の1つまたは組み合わせを有する選択された溶媒に組み込み、必要に応じて、その後ろ過滅菌することにより調製することができる。
【0178】
いくつかの実施形態において、組成物は、少なくとも約0.1%またはそれよりも多くの治療剤(例えば、α-1アンチトリプシンの発現を低減するためのRNAiオリゴヌクレオチド)を含んでいてもよいが、活性成分(複数可)のパーセンテージは、全組成物の重量または体積の約1%~約80%またはそれよりも多くてもよい。溶解度、生物学的利用能、生物学的半減期、投与経路、製品貯蔵寿命などの要因、ならびに他の薬学的考慮項目が、そのような医薬品製剤を調製する当業者により企図されるだろう。したがって、様々な投薬量及び治療レジメンが妥当であり得る。
【0179】
使用方法
α-1アンチトリプシン発現の低減
いくつかの実施形態において、本開示は、α-1アンチトリプシン発現を低減する有効量の本明細書で提供されるオリゴヌクレオチド(例えば、RNAiオリゴヌクレオチド)を細胞もしくは細胞集団に接触または送達するための方法が提供される。いくつかの実施形態において、α-1アンチトリプシン発現の低減は、細胞におけるα-1アンチトリプシンmRNA、α-1アンチトリプシンタンパク質、またはα-1アンチトリプシン活性の量またはレベルの低減を測定することによって決定される。これらの方法は、本明細書に記載され、当業者に知られているものを含む。
【0180】
本明細書で提供される方法は、任意の適切な細胞タイプに有用である。いくつかの実施形態において、細胞は、α-1アンチトリプシンmRNAを発現する任意の細胞(例えば、肝実質細胞)である。いくつかの実施形態において、細胞は、対象から得られた初代細胞である。いくつかの実施形態において、初代細胞は、細胞が天然表現型特性を実質的に維持するように継代の回数が限定されている。いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチドが送達される細胞は、エクスビボまたはインビトロである(すなわち、培養中の細胞に、または細胞が存在する生物に送達することができる)。
【0181】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のオリゴヌクレオチド(RNAiオリゴヌクレオチド)は、オリゴヌクレオチドを含む溶液を注射すること、オリゴヌクレオチドで覆われている粒子で衝撃すること、オリゴヌクレオチドを含む溶液に細胞もしくは細胞集団を露出させること、またはオリゴヌクレオチドの存在下で細胞膜をエレクトロポレーションすることを含むが、これらに限定されない当業者に知られている核酸送達法を使用して、細胞もしくは細胞集団に送達される。脂質媒介性担体輸送、化学媒介性輸送、及びリン酸カルシウムなどのカチオン性リポソームトランスフェクションなどの、オリゴヌクレオチドを細胞に送達するための当業者に知られている他の方法を使用してもよい。
【0182】
いくつかの実施形態において、α-1アンチトリプシンの発現の低減は、α-1アンチトリプシンの発現に関連する細胞もしくは細胞集団の1つ以上の分子、特性、または特徴を評価するアッセイまたは技術によって、または細胞もしくは細胞集団内のα-1アンチトリプシンの発現を直接的に示す分子(例えば、α-1アンチトリプシンmRNAまたはα-1アンチトリプシンタンパク質)を評価するアッセイまたは技術によって決定される。いくつかの実施形態において、本明細書で提供されるオリゴヌクレオチドが、α-1アンチトリプシンの発現を低減する程度は、オリゴヌクレオチドと接触した細胞もしくは細胞集団におけるα-1アンチトリプシンの発現と、適切な対照(例えば、オリゴヌクレオチドと接触していない適切な細胞もしくは細胞集団、または対照オリゴヌクレオチドと接触した適切な細胞もしくは細胞集団)とを比較することによって評価される。いくつかの実施形態において、対照細胞もしくは細胞集団におけるα-1アンチトリプシンの発現の対照量もしくはレベルは、その対照量もしくはレベルをアッセイまたは技術を行うごとに測定しなくてもよいように、予め定められる。所定のレベルまたは値は、様々な形態をとることができる。いくつかの実施形態において、所定のレベルまたは値は、中央値または平均などの、単一のカットオフ値であり得る。
【0183】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のオリゴヌクレオチド(例えば、RNAiオリゴヌクレオチド)を細胞もしくは細胞集団に接触または送達すると、オリゴヌクレオチドと接触していないかまたは対照オリゴヌクレオチドと接触した細胞もしくは細胞集団におけるα-1アンチトリプシンの発現が減少する。いくつかの実施形態において、α-1アンチトリプシンの発現の低減は、α-1アンチトリプシンの発現の対照量もしくはレベルと比較して、約1%以下、約5%以下、約10%以下、約15%以下、約20%以下、約25%以下、約30%以下、約35%以下、約40%以下、約45%以下、約50%以下、約55%以下、約60%以下、約70%以下、約80%以下、または約90%以下である。いくつかの実施形態において、α-1アンチトリプシンの発現の対照量もしくはレベルは、α-1アンチトリプシンmRNA及び/または本明細書に記載のオリゴヌクレオチドと接触していない細胞もしくは細胞集団中のα-1アンチトリプシンタンパク質の量もしくはレベルである。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法による細胞もしくは細胞集団に本明細書に記載のオリゴヌクレオチドを送達する効果は、任意の有限期間または時間(例えば、分、時間、日、週、月)の後に評価される。例えば、いくつかの実施形態において、α-1アンチトリプシンの発現は、オリゴヌクレオチドを細胞もしくは細胞集団に接触または送達してから、少なくとも約4時間、約8時間、約12時間、約18時間、約24時間、または少なくとも約1日、約2日、約3日、約4日、約5日、約6日、約7日、約8日、約9日、約10日、約11日、約12日、約13日、約14日、約21日、約28日、約35日、約42日、約49日、約56日、約63日、約70日、約77日、または約84日以上の時間が経過した後の細胞もしくは細胞集団で決定する。いくつかの実施形態において、α-1アンチトリプシンの発現は、オリゴヌクレオチドを細胞もしくは細胞集団に接触または送達してから、少なくとも約1ヶ月、約2ヶ月、約3ヶ月、約4ヶ月、約5ヶ月、または約6ヶ月以上の時間が経過した後の細胞もしくは細胞集団で決定する。
【0184】
いくつかの実施形態において、本明細書で提供されるオリゴヌクレオチド(例えば、RNAiオリゴヌクレオチド)は、オリゴヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドを含む鎖(例えば、そのセンス鎖及びアンチセンス鎖)を細胞内で発現するように操作された導入遺伝子の形態で送達される。いくつかの実施形態において、本明細書に記載のオリゴヌクレオチドは、本明細書に開示される任意のオリゴヌクレオチドを発現するように操作された導入遺伝子を使用して送達される。導入遺伝子は、ウイルスベクター(例えば、アデノウイルス、レトロウイルス、ワクシニアウイルス、ポックスウイルス、アデノ随伴ウイルス、もしくは単純ヘルペスウイルス)または非ウイルスベクター(例えば、プラスミドもしくは合成mRNA)を使用して送達され得る。いくつかの実施形態において、導入遺伝子は、対象に直接注入することができる。
【0185】
治療方法
本開示は、α-1アンチトリプシンの発現に関連する疾患、障害、及び状態の治療方法で使用する医薬品として使用されるオリゴヌクレオチド(例えば、RNAiオリゴヌクレオチド)を提供する。また、本開示は、α-1アンチトリプシン発現を低減させることから利益を得る対象(例えば、α-1アンチトリプシン発現に関連する疾患、障害、または状態を有するヒト)を治療するため、使用のための、または使用に適合可能なオリゴヌクレオチドを提供する。いくつかの点において、本開示は、α-1アンチトリプシンの発現に関連する疾患、障害、または状態を有する対象を治療するため、使用のための、または使用に適合可能なオリゴヌクレオチドを提供する。また、本開示は、α-1アンチトリプシン発現に関連する疾患、障害、または状態を治療するための医薬品もしくは医薬組成物の製造に、使用のための、または使用に適合可能なオリゴヌクレオチドを提供する。いくつかの実施形態において、使用のための、または使用に適合可能なオリゴヌクレオチドは、α-1アンチトリプシンmRNAを標的とし、(例えば、RNAi経路を介して)α-1アンチトリプシン発現を低減する。いくつかの実施形態において、使用のための、または使用に適合可能なオリゴヌクレオチドは、α-1アンチトリプシンmRNAを標的とし、α-1アンチトリプシンmRNA、α-1アンチトリプシンタンパク質、及び/またはα-1アンチトリプシン活性の量もしくはレベルを低減させる。
【0186】
さらに、本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態において、α-1アンチトリプシン発現に関連する疾患、障害、または状態を有するか、またはこれらの素因がある対象は、本明細書で提供されるオリゴヌクレオチド(例えば、RNAiオリゴヌクレオチド)を用いて治療のために選択される。いくつかの実施形態において、当該方法は、α-1アンチトリプシンmRNA、α-1アンチトリプシンタンパク質、またはそれらの組み合わせなど、α-1アンチトリプシン発現に関連するか、またはその素因がある疾患、障害、または状態のマーカー(例えば、バイオマーカー)を有する個体を選択することを含むが、これらに限定されない。同様に、以下に詳述するように、本開示で提供される方法のいくつかの実施形態は、α-1アンチトリプシン発現のマーカー(例えば、α-1アンチトリプシンmRNA)のベースライン値を測定または取得するなどのステップと、その後、そのように取得した値を1つ以上の他のベースライン値またはオリゴヌクレオチドを投与した後に得られる値と比較し、治療の有効性を評価するステップとを含み得る。
【0187】
本開示は、本明細書で提供されるオリゴヌクレオチドを用いて、α-1アンチトリプシン発現に関連する疾患、障害、または状態を有するか、有することが疑われるか、または発症する危険性がある対象を治療する方法も提供する。いくつかの態様において、本開示は、本明細書に記載のオリゴヌクレオチドを用いて、α-1アンチトリプシン発現に関連する疾患、障害、または状態の発症もしくは進行を治療もしくは減弱する方法を提供する。別の態様において、本開示は、本明細書で提供されるオリゴヌクレオチドを用いて、α-1ンチトリプシン発現に関連する疾患、障害、または状態を有する対象が1つ以上の治療的利益を受ける方法を提供する。本明細書の方法のいくつかの実施形態において、対象は、本明細書で提供されるオリゴヌクレオチドのいずれか1つ以上を治療有効量で投与することによって治療される。いくつかの実施形態において、治療は、α-1アンチトリプシンの発現を低減させることを含む。いくつかの実施形態において、対象は治療的に処置を受ける。いくつかの実施形態において、対象は予防的に処置を受ける。
【0188】
いくつかの実施形態において、α-1アンチトリプシン発現に関連する疾患、障害、または状態を有する患者は、少なくとも1つの突然変異対立遺伝子を含む。突然変異対立遺伝子は遺伝するため、患者はα-1アンチトリプシンをコードする突然変異対立遺伝子の1つまたは2つのコピーを有し得る。M遺伝子/対立遺伝子は、α-1アンチトリプシン遺伝子の最も一般的な対立遺伝子であり、正常レベルのα-1アンチトリプシンタンパク質を産生する。Z遺伝子/対立遺伝子は、遺伝子の最も一般的なバリアントであり、α-1アンチトリプシン欠損症を引き起こす。いくつかの実施形態において、Z対立遺伝子は、E342K変異の存在によるものである。S遺伝子/対立遺伝子は、α-1アンチトリプシン欠損症を引き起こすあまり一般的ではない別のバリアントである。いくつかの実施形態において、S対立遺伝子は、E264V変異の存在によるものである。
【0189】
いくつかの実施形態において、α-1アンチトリプシン発現に関連する疾患、障害、または状態は、Z対立遺伝子の1つのコピー及びM対立遺伝子の1つのコピーの存在によるものである(すなわち、PiMZ患者と呼ばれるZ対立遺伝子ヘテロ接合体)。いくつかの実施形態において、α-1アンチトリプシン発現に関連する疾患、障害、または状態は、Z対立遺伝子の2つのコピーの存在によるものである(すなわち、PiZZ患者と呼ばれるZ対立遺伝子ホモ接合体)。いくつかの実施形態において、α-1アンチトリプシン発現に関連する疾患、障害、または状態は、S対立遺伝子の1つのコピー及びM対立遺伝子の1つのコピーの存在によるものである(すなわち、PiSZ患者と呼ばれるS対立遺伝子ヘテロ接合体)。
【0190】
本明細書の方法のいくつかの実施形態において、本明細書に記載の1つ以上のオリゴヌクレオチド(例えば、RNAiオリゴヌクレオチド)、または1つ以上のオリゴヌクレオチドを含む医薬組成物を、α-1アンチトリプシン発現に関連する疾患、障害、または状態を有する対象に投与し、当該対象においてα-1アンチトリプシンの発現が減少し、それによって当該対象が治療される。いくつかの実施形態において、対象におけるα-1アンチトリプシンmRNAの量またはレベルが低減する。いくつかの実施形態において、対象におけるα-1アンチトリプシンタンパク質の量またはレベルが低減する。いくつかの実施形態において、対象におけるα-1アンチトリプシン活性の量またはレベルが低減する。
【0191】
本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態において、本明細書で提供されるオリゴヌクレオチド(例えば、RNAiオリゴヌクレオチド)、または当該オリゴヌクレオチドを含む医薬組成物は、1つ以上のオリゴヌクレオチドまたは医薬組成物の投与前のα-1アンチトリプシン発現に比べ、α-1アンチトリプシンに関連する疾患、障害、または状態を有する対象のα-1アンチトリプシンの発現が、少なくとも約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約99%、または99%超減少するように、当該対象に投与される。いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチドもしくは複数のオリゴヌクレオチドまたは医薬組成物を受けていない対象、または対照オリゴヌクレオチドもしくは複数の対照オリゴヌクレオチド、医薬組成物もしくは治療を受けた対象(例えば、参照もしくは対照対象)におけるα-1アンチトリプシン発現に比べ、対象のα-1アンチトリプシン発現が、少なくとも約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約99%、または99%超減少する。
【0192】
本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態において、本明細書に記載のオリゴヌクレオチドもしくは複数のオリゴヌクレオチド(例えば、RNAiオリゴヌクレオチド)、または当該オリゴヌクレオチドもしくは複数のオリゴヌクレオチドを含む医薬組成物は、当該オリゴヌクレオチドまたは医薬組成物の投与前のα-1アンチトリプシンmRNAの量もしくはレベルに比べ、α-1アンチトリプシン発現に関連する疾患、障害、または状態を有する対象のα-1アンチトリプシンmRNAの量もしくはレベルが、少なくとも約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約99%、または99%超減少するように、当該対象に投与される。いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチドもしくは複数のオリゴヌクレオチドまたは医薬組成物を受けていない対象、または対照オリゴヌクレオチドもしくは複数の対照オリゴヌクレオチド、医薬組成物もしくは治療を受けた対象(例えば、参照もしくは対照対象)におけるα-1アンチトリプシンmRNAの量もしくはレベルに比べ、対象のα-1アンチトリプシンmRNAの量もしくはレベルが、少なくとも約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約99%、または99%超減少する。
【0193】
本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態において、本明細書に記載のオリゴヌクレオチドもしくは複数のオリゴヌクレオチド、または当該オリゴヌクレオチドもしくは複数のオリゴヌクレオチドを含む医薬組成物は、当該オリゴヌクレオチドまたは医薬組成物の投与前のα-1アンチトリプシンタンパク質の量もしくはレベルに比べ、α-1アンチトリプシン発現に関連する疾患、障害、または状態を有する対象のα-1アンチトリプシンタンパク質の量もしくはレベルが、少なくとも約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約99%、または99%超減少するように、当該対象に投与される。いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチドもしくは複数のオリゴヌクレオチドまたは医薬組成物を受けていない対象、または対照オリゴヌクレオチド、複数の対照オリゴヌクレオチド、または医薬組成物もしくは治療を受けた対象(例えば、参照もしくは対照対象)におけるα-1アンチトリプシンタンパク質の量もしくはレベルに比べ、対象のα-1アンチトリプシンタンパク質の量もしくはレベルが、少なくとも約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約99%、または99%超減少する。
【0194】
本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態において、本明細書に記載のオリゴヌクレオチドもしくは複数のオリゴヌクレオチド(例えば、RNAiオリゴヌクレオチド)、または当該オリゴヌクレオチドもしくは複数のオリゴヌクレオチドを含む医薬組成物は、当該オリゴヌクレオチドまたは医薬組成物の投与前のα-1アンチトリプシン活性の量もしくはレベルに比べ、α-1アンチトリプシンに関連する疾患、障害、または状態を有する対象のα-1アンチトリプシン活性/発現の量もしくはレベルが、少なくとも約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約99%、または99%超減少するように、当該対象に投与される。いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチドまたは医薬組成物を受けていない対象、または対照オリゴヌクレオチド、医薬組成物もしくは治療を受けた対象(例えば、参照もしくは対照対象)におけるα-1アンチトリプシン活性の量もしくはレベルに比べ、対象のα-1アンチトリプシン活性の量もしくはレベルが、少なくとも約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約99%、または99%超減少する。
【0195】
本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態において、本明細書に記載のオリゴヌクレオチドもしくは複数のオリゴヌクレオチド(例えば、RNAiオリゴヌクレオチド)、または当該オリゴヌクレオチドもしくは複数のオリゴヌクレオチドを含む医薬組成物を、投与前のアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)レベルに比べてASTが減少するように、α-1アンチトリプシンに関連する疾患、障害、または状態を有する対象に投与する。本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態において、本明細書に記載のオリゴヌクレオチドもしくは複数のオリゴヌクレオチド(例えば、RNAiオリゴヌクレオチド)、または当該オリゴヌクレオチドもしくは複数のオリゴヌクレオチドを含む医薬組成物を、投与前のアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)レベルに比べてALTが減少するように、α-1アンチトリプシンに関連する疾患、障害、または状態を有する対象に投与する。本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態において、本明細書に記載のオリゴヌクレオチドもしくは複数のオリゴヌクレオチド(例えば、RNAiオリゴヌクレオチド)、または当該オリゴヌクレオチドもしくは複数のオリゴヌクレオチドを含む医薬組成物を、投与前のアルカリホスファターゼレベルに比べてアルカリホスファターゼが減少するように、α-1アンチトリプシンに関連する疾患、障害、または状態を有する対象に投与する。
【0196】
対象または対象から得られる試料におけるα-1アンチトリプシンの発現、α-1アンチトリプシンmRNA、α-1アンチトリプシンタンパク質、α-1アンチトリプシン活性の量もしくはレベル、またはα-1アンチトリプシン発現の調節に関連するか、もしくは影響を受けるバイオマーカー(例えば、血漿バイオマーカー)を決定する好適な方法は、当技術分野で知られている。さらに、本明細書に記載の実施例は、α-1アンチトリプシンの発現を決定する方法を例示する。
【0197】
いくつかの実施形態において、α-1アンチトリプシンの発現、α-1アンチトリプシンmRNA、α-1アンチトリプシンタンパク質、α-1アンチトリプシン活性の量もしくはレベル、またはα-1アンチトリプシン発現の調節に関連するか、もしくは影響を受けるバイオマーカー、またはそれらの任意の組み合わせは、細胞(例えば、肝実質細胞)、細胞集団もしくは細胞群(例えば、オルガノイド)、臓器(例えば、肝臓)、血液もしくはその分画(例えば、血漿)、組織(例えば、肝臓組織)、試料(例えば、肝生検試料)、または対象から取得もしくは単離された任意の他の適切な生物学的材料において減少する。いくつかの実施形態において、α-1アンチトリプシンの発現、α-1アンチトリプシンmRNA、α-1アンチトリプシンタンパク質、α-1アンチトリプシン活性の量もしくはレベル、またはα-1アンチトリプシン発現の調節に関連するか、もしくは影響を受けるバイオマーカー、またはそれらの任意の組み合わせは、1つを超えるタイプ(複数可)の細胞(例えば、肝実質細胞及び1つ以上の他のタイプ(複数可)の細胞)、1つを超える細胞群、1つを超える臓器(例えば、肝臓及び1つ以上の他の臓器(複数可))、1つを超える血液の分画(例えば、血漿及び1つ以上の他の血液分画(複数可))、1つを超えるタイプの組織(例えば、肝臓組織及び1つ以上の他のタイプ(複数可)の組織)、または1つを超えるタイプの試料(例えば、肝生検試料及び1つ以上の他のタイプ(複数可)の生検試料)において減少する。
【0198】
それらの高い特異性のため、本明細書で提供されるオリゴヌクレオチド(例えば、dsRNAiオリゴヌクレオチド)は、細胞及び組織(複数可)、または臓器(複数可)(例えば、肝臓)の標的遺伝子(例えば、α-1アンチトリプシンmRNA)のmRNAを特異的に標的とする。疾患の予防において、標的遺伝子は、疾患の開始もしくは維持のために必要とされたか、またはより高い疾患にかかるリスクと関連するとして同定されたものでもよい。疾患の治療において、オリゴヌクレオチドは、疾患を示すか、または媒介する役割を果たす細胞、組織(複数可)、もしくは臓器(複数可)(例えば、肝臓)と接触することができる。例えば、α-1アンチトリプシン発現に関連する障害もしくは状態に関連する野生型(すなわち、ネイティブ)または変異遺伝子の全部または一部と実質的に同一のオリゴヌクレオチド(例えば、RNAiオリゴヌクレオチド)を、肝実質細胞もしくはその他の肝細胞などの目的の細胞もしくは組織タイプと接触させるか、またはそれらに導入してもよい。
【0199】
いくつかの実施形態において、標的遺伝子は、ヒト標的などの任意の哺乳動物由来の標的遺伝子であり得る。本明細書に記載の方法によって、任意の標的遺伝子をサイレンシングしてもよい。
【0200】
本明細書に記載の方法は、典型的には、本明細書のオリゴヌクレオチド(例えば、RNAiオリゴヌクレオチド)を有効量、すなわち、望ましい治療結果を生み出すか、または生じる量で対象に投与することに関連している。治療上許容される量は、疾患または障害を治療することが可能な量であり得る。任意の1人の対象に対する適切な投与量は、対象のサイズ、体表面積、年齢、投与される組成物、組成物中の活性成分(複数可)、投与の時間及び経路、一般的な健康状態、及び同時に投与されている他の薬剤を含む特定の因子に応じて決められる。
【0201】
いくつかの実施形態において、本明細書の組成物(例えば、本明細書に記載のRNAiオリゴヌクレオチドを含む組成物)のいずれか1つを、経腸的に(例えば、経口、胃栄養チューブによって、十二指腸栄養チューブによって、胃瘻を介して、または直腸に)、非経口的に(例えば、皮下注射、静脈内注射もしくは注入、動脈内注射もしくは注入、骨内注入、筋肉内注射、脳内注射、脳室内注射、髄腔内注射)、局所的に(例えば、経皮、吸入、点眼、または粘膜を介して)、または標的臓器への直接注射(例えば、対象の肝臓)することによって、対象に投与する。典型的には、本明細書に記載のオリゴヌクレオチドは、静脈内にまたは皮下に投与される。
【0202】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のオリゴヌクレオチド(例えば、RNAiオリゴヌクレオチド)、または当該オリゴヌクレオチドを含む医薬組成物は、単独でまたは組み合わせて投与される。いくつかの実施形態において、本明細書に記載のオリゴヌクレオチドは、同時、連続(任意の順序)、または断続的な組み合わせで投与される。例えば、2つのオリゴヌクレオチドを同時投与してもよい。あるいは、1つのオリゴヌクレオチドを投与し、任意の時間(例えば、1時間、1日、1週、または1ヶ月)後に、2番目のオリゴヌクレオチドを投与してもよい。
【0203】
いくつかの実施形態において、治療される対象は、ヒトもしくは非ヒト霊長類または他の哺乳動物対象である。他の例示的な対象としては、イヌ及びネコなどの愛玩動物、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ニワトリなどの家畜、ならびにマウス、ラット、モルモット、ハムスターなどの動物が挙げられる。
【0204】
キット
いくつかの実施形態において、本開示は、本明細書に記載のオリゴヌクレオチド(例えば、RNAiオリゴヌクレオチド)を含むキット及び使用説明書を提供する。いくつかの実施形態において、キットは、本明細書に記載のオリゴヌクレオチドと、キットの使用説明書を含む添付文書と、及び/またはその任意の構成要素を含む。いくつかの実施形態において、キットは、好適な容器内に、本明細書に記載のオリゴヌクレオチド、1つ以上の対照物、ならびに様々な緩衝剤、試薬、酵素、及び当該技術分野で周知の他の標準的な構成要素を含む。いくつかの実施形態において、上記容器は、オリゴヌクレオチドを投入し、場合によっては、適切に分注する、少なくとも1つのバイアル、ウェル、試験管、フラスコ、ボトル、シリンジ、または他の容器手段を含む。追加の構成要素を提供するいくつかの実施形態においては、キットは、この構成要素が配置される追加の容器を含む。また、キットは、オリゴヌクレオチド及び任意の他の試薬を商業販売のために厳重に封じ込める手段を含む。このような容器は、所望のバイアルが保持される、射出成形またはブロー成形のプラスチック容器を含み得る。容器及び/またはキットは、使用説明及び/または警告を載せたラベルを含み得る。
【0205】
いくつかの実施形態においては、キットは、本明細書に記載のオリゴヌクレオチド(例えば、RNAiオリゴヌクレオチド)及び医薬的に許容可能な担体、またはオリゴヌクレオチドを含む医薬組成物、及びα-1アンチトリプシン発現に関連する疾患、障害、または状態の治療もしくは進行の遅延を必要とする対象においてそれを行うための説明書を含む。
【0206】
定義
本明細書で用いられる用語「アンチセンスオリゴヌクレオチド」は、標的とするmRNA、特に、mRNAのシード配列の全部または一部と相補的な配列を有しているため、mRNAと二重鎖を形成し得る核酸を基盤とする分子を網羅するものである。したがって、本明細書で用いられる用語「アンチセンスオリゴヌクレオチド」は、「相補的な核酸を基盤とする抑制剤」と表され得る。
【0207】
本明細書で使用される「およそ」または「約」は、1つ以上の目的の値に適用される場合、記載されている参照値と同様の値を指す。いくつかの実施形態において、「約」は、別様の記述がない限りもしくは文脈からそうでないことが明白でない限り(そのような数値が、考え得る値の100%を超えることになる場合を除き)、記載されている参照値のいずれかの方向の(それを超えるかまたはその未満)、25%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%以下の値内に入る値の範囲を指す。
【0208】
本明細書で使用される場合、「投与する」、「投与すること」、「投与」などは、薬学的に有用な形で(例えば、対象の疾患、障害、または状態を治療するために)対象に物質(例えば、オリゴヌクレオチド)を与えることを意味する。
【0209】
本明細書で使用される場合、「減弱する」、「減弱すること」、「減弱」などは、減少または効果的に停止することを指す。非限定的な例として、本明細書における治療の1つ以上は、肝疾患及び/または肺疾患の発症もしくは進行を低減または効果的に停止させ得る。肝疾患としては、対象の慢性肝疾患、肝炎、肝硬変、肝線維症、及び/または肝細胞癌が挙げられるがこれらに限定されなく、肺疾患としては、対象の喘息、気管支拡張症、呼吸不全、血管炎、肺炎症、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺気腫が挙げられるが、これらに限定されない。この減弱は、例えば、慢性肝疾患、肝炎、肝硬変、肝線維症、肝細胞癌、肺炎症、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、及び/または肺気腫の1つ以上の態様(例えば、症状、組織特性、及び細胞、炎症、または免疫学的活性など)の軽減、慢性肝疾患、肝炎、肝硬変、肝線維症、肝細胞癌、肺炎症、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、及び/または肺気腫の1つ以上の態様の検出可能な進行(悪化)がないこと、または対象においてそうではない場合に予想される慢性肝疾患、肝炎、肝硬変、肝線維症、肝細胞癌、肺炎症、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、及び/または肺気腫の検出可能な態様がないことによって例示され得る。
【0210】
本明細書で使用する場合、「相補的」は、2つのヌクレオチドが互いに塩基対を形成することを可能とする2つのヌクレオチド間(例えば、2つの反対の核酸または単一の核酸鎖の反対の領域について)の構造的関係を指す。例えば、一方の核酸のプリンヌクレオチドは、反対の核酸のピリミジンヌクレオチドと相補的であり、互いに水素結合を形成することによって一緒に塩基対を形成し得る。いくつかの実施形態において、相補的なヌクレオチドは、ワトソンクリック法または安定な二重鎖の形成を可能とする他のいずれかの方法で塩基対を形成し得る。いくつかの実施形態において、2つの核酸は、本明細書に記載の相補性の領域を形成するように、互いに相補的な複数のヌクレオチドの領域を有し得る。
【0211】
本明細書で使用される場合、「デオキシリボヌクレオチド」は、リボヌクレオチドに比べ、その五炭糖の2’位にヒドロキシルの代わりに水素を有するヌクレオチドを指す。修飾デオキシリボヌクレオチドは、糖、リン酸基、もしくは塩基におけるまたは糖、リン酸基、もしくは塩基の修飾もしくは置換を含む、2’位以外での原子の1以上の修飾または置換を有するデオキシリボヌクレオチドである。
【0212】
本明細書で使用される場合、「二本鎖オリゴヌクレオチド」または「dsオリゴヌクレオチド」は、実質的に二重鎖形態のオリゴヌクレオチドを指す。いくつかの実施形態において、二本鎖オリゴヌクレオチドの二重鎖領域(複数可)の相補的な塩基対合は、共有結合的に分離された核酸鎖のヌクレオチドの逆平行配列間で形成される。いくつかの実施形態において、二本鎖オリゴヌクレオチドの二重鎖領域(複数可)の相補的な塩基対合は、共有結合的に連結された核酸鎖のヌクレオチドの逆平行配列間で形成される。いくつかの実施形態において、二本鎖オリゴヌクレオチドの二重鎖領域(複数可)の相補的な塩基対合は、折り畳まれた(例えば、ヘアピンを介して)単一の核酸鎖から形成され、一緒に塩基対を形成するヌクレオチドの相補的な逆平行配列を提供する。いくつかの実施形態において、二本鎖オリゴヌクレオチドは、互いに完全に二重鎖を形成した2つの共有結合的に分離された核酸鎖を含む。しかしながら、いくつかの実施形態において、二本鎖オリゴヌクレオチドは、(例えば一端または両端にオーバーハングを有する)部分的に二重鎖を形成した、2つの共有結合的に分離された核酸鎖を含む。いくつかの実施形態において、二本鎖オリゴヌクレオチドは、部分的に相補的なヌクレオチドの逆平行配列を含み、したがって、1以上のミスマッチを有し得、これらは内部ミスマッチまたは末端ミスマッチを含み得る。
【0213】
本明細書で使用する場合、「二重鎖」は、核酸(例えば、オリゴヌクレオチド)に関して、ヌクレオチドの2つの逆平行配列の相補的塩基対合を介して形成された構造を指す。
【0214】
本明細書で使用する場合、「賦形剤」は、例えば、所望の稠度もしくは安定化効果を提供するか、またはそれに寄与するために組成物に含まれ得る非治療剤を指す。
【0215】
本明細書で使用する場合、「肝実質細胞」または「複数の肝実質細胞」は、肝臓の実質組織の細胞を指す。これらの細胞は、肝臓の質量の約70%~85%を構成し、血清アルブミン、FBN、及びプロトロンビン群の凝固因子(第3因子及び第4因子を除く)を産生する。肝細胞系譜細胞のマーカーとしては、限定されるものではないが、トランスサイレチン(Ttr)、グルタミンシンセターゼ(Glul)、肝細胞核因子1a(Hnf1a)、及び肝細胞核因子4a(Hnf4a)を含む。成熟肝細胞のマーカーとしては、限定されるものではないが、シトクロムP450(Cyp3a11)、フマリルアセト酢酸ヒドラーゼ(Fah)、グルコース6-リン酸(G6p)、アルブミン(Alb)、及びOC2-2F8を含み得る。例えば、Huch et al.(2013) NATURE 494:247-50を参照されたい。
【0216】
本明細書で使用される場合、「肝毒性剤」は、肝臓に対してそれ自体が毒性であるか、またはプロセシングされて、肝臓に対して毒性である代謝物質を形成し得る化学的化合物、ウイルス、または他の物質を指す。肝毒性剤としては、限定されるものではないが、四塩化炭素(CCl4)、アセトアミノフェン(パラセタモール)、塩化ビニル、ヒ素、クロロホルム、非ステロイド系抗炎症薬(アスピリン及びフェニルブタゾンなど)を含み得る。
【0217】
本明細書で使用される「SERPINA1」もしくは「A1AT」または「アルファ1-アンチトリプシン」という用語は、セルピンスーパーファミリーに属するプロテアーゼ阻害剤を指す。「SERPINA1」という用語は、特に明記しない限り、全てのアイソフォームを指すことを意図している。また、「SERPINA1」は、タンパク質をコードする遺伝子を指す場合もある。一般的に血清トリプシン阻害剤として知られている。アルファ1-アンチトリプシンは、様々なプロテアーゼを阻害することから、アルファ1-プロテイナーゼ阻害剤(A1PI)とも呼ばれている(Gettins P G. Chem Rev 102:4751-04)。それは、組織を炎症細胞の酵素、特に好中球エラスターゼから保護し、1.5~3.5グラム/リットルの血中の基準範囲を有するが、急性炎症の際に、何倍ものレベル上昇が起こり得る(Kushner,Mackiewicz,Acute-phase glycoproteins:molecular biology,biochemistry,and clinical applications,(CRC Press). pp. 3-19)。AATが存在しない場合、好中球エラスターゼは、肺の弾性に寄与するエラスチンを無制限に破壊し、成人の肺気腫または慢性閉塞性肺疾患(COPD)、及び成人または小児の肝硬変などの呼吸器合併症を生じる。AAT遺伝子の一方または両方のコピーに突然変異を有する個体は、アルファ-1アンチトリプシン欠損症に罹患する可能性があり、それは、肺及び肝臓の正常なエラスターゼ活性よりも大きいことによる、肺気腫または慢性肝臓疾患発症のリスクとして現れる。
【0218】
前述のように、α-1アンチトリプシン発現に関連する特定の疾患状態において、個体がかなりの量のアルファ-1アンチトリプシンを産生していても、産生されるα-1アンチトリプシンタンパク質のかなりの割合がミスフォールドされているか、またはタンパク質の機能を損なう突然変異を含んでいる。そのような特定の場合、個体は、体内の合成部位から作用部位に適切に輸送できない、ミスフォールドタンパク質を生成する。
【0219】
α-1アンチトリプシン欠損症に起因する肝疾患は、このようなミスフォールドタンパク質によって誘発される可能性がある。α-1アンチトリプシンの突然変異形態、(例えば、342位(前処理された形態では366位)のグルタミン酸からリジンへの変異を有する一般的なPiZバリアント)は、肝細胞内で産生され(肝臓の肝実質細胞は、通常、大量の循環AATを産生する)、ミスフォールド構成では、そのような形態は細胞から容易に輸送されない。これにより、肝細胞内にミスフォールドタンパク質が蓄積され、限定されるものではないが、慢性肝臓疾患、肝臓の炎症、肝硬変、肝線維症、及び/または肝細胞癌を含む1種以上の肝疾患もしくは障害を誘発し得る。
【0220】
本明細書で使用される場合、「不安定なリンカー」は、(例えば、酸性pHによって)切断され得るリンカーを指す。「かなり安定なリンカー」とは、切断できないリンカーを指す。
【0221】
本明細書で使用される場合、「肝臓炎症」または「肝炎」は、肝臓が、特に、傷害または感染の結果として、肝毒性剤への曝露により引き起こされ得るように、腫大し、機能障害を起こし、及び/または苦痛を起こす身体状態を指す。症状としては、黄疸(皮膚または目が黄色になること)、疲労、虚弱、悪心、嘔吐、食欲減退、及び体重減少を含み得る。肝炎は、治療せずにおくと、線維症、肝硬変、肝不全、または肝臓癌へと進行し得る。
【0222】
本明細書で使用される場合、「肝線維症」または「肝臓の線維症」は、炎症及び肝臓細胞死に起因するコラーゲン(I、III、及びIV)、FBN、ウンズリン、エラスチン、ラミニン、ヒアルロナン、及びプロテオグリカンを含んでいてもよい細胞外マトリックスタンパク質の肝臓における過剰蓄積を指す。肝線維症は、治療せずにおくと、肝硬変、肝不全、または肝臓癌へと進行し得る。
【0223】
本明細書で使用される場合、「ループ」は、(例えば、リン酸緩衝液中、細胞内など)適切なハイブリダイゼーション条件下で、非対合領域に隣接する2つの逆平行領域がハイブリダイズして二重鎖(「ステム」と呼ばれる)を形成するように、互いに十分に相補的である核酸の2つの逆平行領域により隣接されている核酸(例えば、オリゴヌクレオチド)の非対合領域を指す。
【0224】
本明細書で使用する場合、「メタボリック症候群」または「代謝性肝疾患」とは、限定されるものではないが、腹部肥満、血圧上昇、空腹時血漿グルコースの上昇、高血清トリグリセリド、肝線維症、及び高密度リポタンパク質(HDL)レベルの低レベルの病状を含む関連病状及び関連する病理のクラスターを特徴とする障害を指す。本明細書で使用される場合、メタボリック症候群または代謝性肝疾患という用語は、メタボリック症候群及び代謝性肝疾患に関連する広範な直接的及び間接的な症状、疾患、及び病理を網羅し、文書全体で使用される条件の拡張リストを含む。
【0225】
本明細書で使用される場合、「修飾ヌクレオチド間結合」は、ホスホジエステル結合を含む参照ヌクレオチド間結合に比べ、1つ以上の化学修飾を有するヌクレオチド間結合を指す。いくつかの実施形態において、修飾ヌクレオチドは、天然に存在しない結合である。典型的には、修飾ヌクレオチド間結合は、修飾ヌクレオチド間結合が存在する核酸に1つ以上の望ましい特性を付与する。例えば、修飾ヌクレオチド間結合は、熱安定性、分解に対する耐性、ヌクレアーゼ耐性、溶解度、生物学的利用能、生物活性、免疫原性低減などを向上し得る。
【0226】
本明細書で使用される場合、「修飾ヌクレオチド」は、アデニンリボヌクレオチド、グアニンリボヌクレオチド、シトシンリボヌクレオチド、ウラシルリボヌクレオチド、アデニンデオキシリボヌクレオチド、グアニンデオキシリボヌクレオチド、シトシンデオキシリボヌクレオチド及びチミジンデオキシリボヌクレオチドから選択される対応する参照ヌクレオチドに比べ、1つ以上の化学修飾を有するヌクレオチドを指す。いくつかの実施形態において、修飾ヌクレオチドは、非天然ヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、修飾ヌクレオチドは、その糖、核酸塩基、及び/またはリン酸基に1つ以上の化学修飾を有する。いくつかの実施形態において、修飾ヌクレオチドは、対応する参照ヌクレオチドにコンジュゲートされた1つ以上の化学部分を有する。典型的には、修飾ヌクレオチドは、修飾ヌクレオチドが存在する核酸に1つ以上の望ましい特性を付与する。例えば、修飾ヌクレオチドは、熱安定性、分解に対する耐性、ヌクレアーゼ耐性、溶解度、生物学的利用能、生物活性、免疫原性低減などを向上し得る。
【0227】
本明細書で使用される場合、「ニックの入ったテトラループ構造」は、個別のセンス(パッセンジャー)鎖及びアンチセンス(ガイド)鎖により特徴付けられるRNAiオリゴヌクレオチドの構造を指しており、センス鎖は、アンチセンス鎖と相補的な領域を有し、鎖の少なくとも一方が、一般にセンス鎖が、この少なくとも一方の鎖内に形成される隣接ステム領域を安定させるように構成されているテトラループを有する。
【0228】
本明細書で使用される場合、「オリゴヌクレオチド」は、(例えば、長さが約100未満のオリゴヌクレオチドの)短い核酸を指す。オリゴヌクレオチドは、一本鎖(ss)であってもよくまたはdsであってもよい。オリゴヌクレオチドは、二重鎖領域を有していてもよくまたは有していなくてもよい。一組の非限定的な例として、オリゴヌクレオチドは、限定されるものではないが、低分子干渉RNA(siRNA)、マイクロRNA(miRNA)、短鎖ヘアピンRNA(shRNA)、ダイサー基質干渉RNA(dsiRNA)、アンチセンスオリゴヌクレオチド、短鎖siRNA、またはss siRNAであってもよい。いくつかの実施形態において、二本鎖(dsRNA)は、RNAiオリゴヌクレオチドである。
【0229】
本明細書で使用される場合、「オーバーハング」は、一方の鎖または領域が二重鎖を形成する相補鎖の末端を超えて、その一方の鎖または領域が伸長することに起因する末端非塩基対合ヌクレオチド(複数可)を指す。いくつかの実施形態において、オーバーハングは、オリゴヌクレオチドの5’末端または3’末端の二重鎖領域から伸長する1つ以上の非対合ヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態において、オーバーハングは、オリゴヌクレオチドのアンチセンス鎖またはセンス鎖の3’または5’オーバーハングである。
【0230】
本明細書で使用される場合、「リン酸類似体」は、リン酸基の静電特性及び/または立体特性を模倣する化学部分を指す。いくつかの実施形態において、リン酸類似体は、しばしば酵素的除去を受けやすい5’-リン酸の代わりに、オリゴヌクレオチドの5’末端ヌクレオチドに配置される。いくつかの実施形態において、5’リン酸類似体は、ホスファターゼ耐性結合を含む。リン酸類似体の例としては、限定されるものではないが、5’メチレンホスホネート(5’-MP)及び5’-(E)-ビニルホスホネート(5’-VP)などの5’ホスホネートが挙げられる。いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチドは、5’末端ヌクレオチドの糖の4’位の炭素にリン酸類似体を有する(「4’-リン酸類似体」と呼ばれる)。4’-リン酸類似体の例としては、オキシメチル基の酸素原子が糖部分(例えば、その4’-炭素)に結合したオキシメチルホスホネートまたはその類似体が挙げられる。例えば、米国特許仮出願第62/383,207号(2016年9月2日出願)及び米国特許仮出願第62/393,401号(2016年9月12日出願)を参照されたい。オリゴヌクレオチドの5’末端に対する他の修飾が開発されている(例えば、国際特許出願第WO2011/133871号、米国特許第8,927,513号、及びPrakash et al.(2015)Nucleic Acids Res. 43:2993-3011を参照)。
【0231】
本明細書で使用される場合、ある遺伝子(例えば、α-1アンチトリプシン)の「発現の低減」は、適切な参照(例えば、参照細胞、細胞集団、試料、または対象)に比べ、その遺伝子によってコードされるRNA転写産物(例えば、α-1アンチトリプシンmRNA)またはタンパク質の量もしくはレベルの減少、及び/または細胞、細胞集団、試料、または対象におけるその遺伝子の活性量もしくはレベルの減少を指す。例えば、細胞を本明細書に記載のオリゴヌクレオチド(例えば、α-1アンチトリプシンmRNAを含むヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列を有するアンチセンス鎖を含むオリゴヌクレオチド)と接触させる行為は、オリゴヌクレオチドで処理されていない細胞に比べ、(例えば、RNAi経路によるα-1アンチトリプシンmRNAの分解を介して)α-1アンチトリプシンmRNA、タンパク質、及び/または活性の量もしくはレベルの減少をもたらし得る。同様に、本明細書で使用される場合、「発現の低減」は、遺伝子(例えば、α-1アンチトリプシン)の発現の低減をもたらす行為を指す。
【0232】
本明細書で使用される場合、「α-1アンチトリプシン発現の低減」は、適切な参照(例えば、参照細胞、細胞集団、試料、または対象)に比べ、細胞、細胞集団、試料、または対象におけるα-1アンチトリプシンmRNA、α-1アンチトリプシンタンパク質、及び/またはα-1アンチトリプシン活性の量もしくはレベルの減少を指す。
【0233】
本明細書で使用される場合、「相補性の領域」は、ヌクレオチドの逆平行配列と十分に相補的であることにより、(例えば、リン酸緩衝液中、細胞内など)適切なハイブリダイゼーション条件下で2つのヌクレオチド配列間のハイブリダイゼーションを可能にするような、核酸のヌクレオチド配列(例えば、オリゴヌクレオチド)を指す。いくつかの実施形態において、本明細書に記載のオリゴヌクレオチドは、mRNA標的配列に相補的な領域を有する標的配列を含む。
【0234】
本明細書で使用される場合、「リボヌクレオチド」は、そのペントース糖として、2’位にヒドロキシル基を有するリボースを有するヌクレオチドを指す。修飾されたリボヌクレオチドとは、リボース、リン酸基、もしくは塩基に、またはリボース、リン酸基、もしくは塩基の修飾または置換を含む、2’位以外の原子の1つ以上の修飾または置換を有するリボヌクレオチドである。
【0235】
本明細書で使用される場合、「RNAiオリゴヌクレオチド」は、(a)センス鎖(パッセンジャー)とアンチセンス鎖(ガイド)とを有する二本鎖オリゴヌクレオチドであって、アンチセンス鎖またはアンチセンス鎖の一部がアルゴノート2(Ago2)エンドヌクレアーゼによって標的mRNA(例えば、α-1アンチトリプシンmRNA)の切断に使用される二本鎖オリゴヌクレオチド、または(b)一本のアンチセンス鎖を有する一本鎖オリゴヌクレオチドであって、そのアンチセンス鎖(またはそのアンチセンス鎖の一部)が、Ago2エンドヌクレアーゼによって標的mRNA(例えば、α-1アンチトリプシンmRNA)の切断に使用される一本鎖オリゴヌクレオチドのいずれかを指す。
【0236】
本明細書で使用される場合、「鎖」は、ヌクレオチド間結合(例えば、ホスホジエステル結合、またはホスホロチオエート結合)を介して互いに連結されたヌクレオチドの一本の連続した配列を指す。いくつかの実施形態において、鎖は、2つの遊離末端(例えば、5’末端及び3’末端)を有する。
【0237】
本明細書で使用される場合、「対象」は、マウス、ウサギ、及びヒトを含む任意の哺乳動物を意味する。いくつかの実施形態では、対象は、ヒトまたはNHPである。さらに、「個体」または「患者」は、「対象」と互換的に用いられる場合がある。
【0238】
本明細書で使用される場合、「合成」は、人工的に合成された(例えば、仕組み(例えば、固体核酸合成装置)を使用して)、またはそれ以外でその分子を通常生成する天然のソース(例えば、細胞または生物)に由来していない核酸または他の分子を指す。
【0239】
本明細書で使用される場合、「標的指向性リガンド」は、目的の組織または細胞の同種分子(例えば、受容体)に選択的に結合し、別の物質を目的の組織または細胞に対して標的化するためにその別の物質に結合することができる分子(例えば、炭水化物、アミノ糖、コレステロール、ポリペプチド、または脂質)を指す。例えば、いくつかの実施形態において、標的指向性リガンドは、オリゴヌクレオチドを目的の特定の組織または細胞に標的化するためにそのオリゴヌクレオチドにコンジュゲートされていてもよい。いくつかの実施形態において、標的指向性リガンドは、細胞表面受容体に選択的に結合する。したがって、いくつかの実施形態において、標的指向性リガンドは、オリゴヌクレオチドにコンジュゲートされている場合、細胞の表面に発現される受容体に選択的に結合し、オリゴヌクレオチド、標的指向性リガンド、及び受容体を含む複合体が細胞によりエンドソーム内部移行されることによって、特定の細胞内へのオリゴヌクレオチドの送達を促進する。いくつかの実施形態において、標的指向性リガンドは、オリゴヌクレオチドが、細胞内で標的指向性リガンドから放出されるように、細胞内部移行後にまたは細胞内部移行中に切断されるリンカーを介してオリゴヌクレオチドにコンジュゲートされている。
【0240】
本明細書で使用される場合、「テトラループ」は、ヌクレオチドの隣接配列のハイブリダイゼーションにより形成される隣接二重鎖の安定性を増加させるループを指す。安定性の増加は、無作為に選択されたヌクレオチドの配列からなる同等の長さの一組のループから平均的に予想される隣接ステム二重鎖のTmよりも高い隣接ステム二重鎖の融解温度(Tm)の上昇として検出可能である。例えば、テトラループは、少なくとも2塩基対(bp)の長さの二重鎖を含むヘアピンに、10mMのNa2HPO4中で、少なくとも約50℃、少なくとも約55℃、少なくとも約56℃、少なくとも約58℃、少なくとも約60℃、少なくとも約65℃、または少なくとも約75℃のTmをもたらし得る。いくつかの実施形態では、テトラループは、少なくとも2塩基対(bp)の長さの二重鎖を含むヘアピンに、10mMのNaH2PO4中で、少なくとも約50℃、少なくとも約55℃、少なくとも約56℃、少なくとも約58℃、少なくとも約60℃、少なくとも約65℃、または少なくとも約75℃のTmをもたらし得る。いくつかの実施形態において、テトラループは、スタッキング相互作用によって、隣接したステム二重鎖のbpを安定化し得る。また、テトラループのヌクレオチド間の相互作用としては、限定されるものではないが、非ワトソンクリック型塩基対形成、スタッキング相互作用、水素結合、及び接触相互作用が挙げられる(Cheong et al.(1990)NATURE 346:680-82、Heus&Pardi(1991)SCIENCE.253:191-94)。いくつかの実施形態において、テトラループは、3~6ヌクレオチドを含むかまたはそれらからなり、典型的には4~5ヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、テトラループは、3、4、5、または6ヌクレオチドを含むかまたはそれからなり、修飾されていてもよく、または修飾されていなくてもよい(例えば、標的指向性部分にコンジュゲートされていてもよく、またはコンジュゲートされていなくてもよい)。いくつかの実施形態において、テトラループは、4ヌクレオチドからなる。テトラループでは任意のヌクレオチドを使用することができ、Cornish-Bowden(1985)NUCLEIC ACIDS RES.13:3021-30に記載されるようにそのようなヌクレオチドの標準的なIUPAC-IUB記号を使用し得る。例えば、文字「N」は、任意の塩基がその位置にあり得ることを意味するために使用されてもよく、文字「R」は、A(アデニン)またはG(グアニン)がその位置にあり得ることを示すために使用されてもよく、「B」は、C(シトシン)、G(グアニン)、またはT(チミン)がその位置にあり得ることを示すために使用されてもよい。テトラループの例としては、テトラループのUNCGファミリー(例えば、UUCG)、テトラループのGNRAファミリー(例えば、GAAA)、及びCUUGテトラループが挙げられる(Woese et al.(1990)PROC. NATL. ACAD. SCI. USA 87:8467-71、Antao et al.(1991)NUCLEIC ACIDS RES.19:5901-05)。DNAテトラループの例としては、テトラループのd(GNNA)ファミリー(例えば、d(GTTA))、テトラループのd(GNRA)ファミリー、テトラループのd(GNAB)ファミリー、テトラループのd(CNNG)ファミリー、及びテトラループのd(TNCG)ファミリー(例えば、d(TTCG))が挙げられる。例えば、Nakano et al.(2002)BIOCHEM.41:14281-92、Shinji et al.(2000)NIPPON KAGAKKAI KOEN YOKOSHU 78:731を参照されたい。いくつかの実施形態において、テトラループは、ニックの入ったテトラループ構造に含まれる。
【0241】
本明細書で使用される場合、「治療する」または「治療すること」は、例えば、既存の状態(例えば、疾患、障害)に関して対象の健康及び/または福祉を向上させるために、または状態が発生する可能性を予防または減少させるために、治療剤(例えば、本明細書のオリゴヌクレオチド)を対象に投与することにより、ケアの提供を必要とする対象にそれを行う行為を指す。いくつかの実施形態において、治療は、対象が経験する状態(例えば、疾患、障害)の少なくとも1つの徴候、症状、または寄与要因の頻度または重症度を低減することを含む。
【実施例】
【0242】
実施例1:RNAiオリゴヌクレオチドの調製
オリゴヌクレオチド合成及び精製
前述の実施例に記載のオリゴヌクレオチド(RNAiオリゴヌクレオチド)は、本明細書に記載の方法を使用して化学合成される。一般に、RNAiオリゴヌクレオチドは、既知のホスホルアミダイト合成(例えば、Hughes and Ellington(2017) Cold Spring Harb Perspect Biol. 9(1):a023812、及び、Beaucage S.L.,and Caruthers M.H.,Studies on Nucleotide Chemistry V:Deoxynucleoside Phosphoramidites-A New Class of Key Intermediates for Deoxypolynucleotide Synthesis,TETRAHEDRON LETT. 1981;22:1859-62を参照)を用いることに加え、19~23量体のsiRNAについて説明した固相オリゴヌクレオチド合成法を使用して合成される(例えば、Scaringe et al.(1990)NUCLEIC ACIDS RES.18:5433-41、及びUsman et al.(1987)J. Am. Chem. Soc. 109:7845-45を参照。また、米国特許第5,804,683号、米国特許第5,831,071号、米国特許第5,998,203号、米国特許第6,008,400号、米国特許第6,111,086号、米国特許第6,117,657号、米国特許第6,353,098号、米国特許第6,362,323号、米国特許第6,437,117号、及び米国特許第6,469,158号を参照)。
【0243】
標準方法(Integrated DNA Technologies,Coralville,IA)に従って、個々のRNA鎖を合成してHPLC精製した。例えば、固相ホスホラミダイト化学反応を使用してRNAオリゴヌクレオチドを合成し、脱保護し、標準技法(Damha&Olgivie(1993)METHODS MOL. BIOL.20:81-114、Wincott et al.(1995)NUCLEIC ACIDS RES.23:2677-84)を使用してNAP-5カラム(Amersham Pharmacia Biotech,Piscataway,N.J.)上で脱塩した。15分間の段階的線形勾配を使用したAmersham Source 15Qカラム(1.0cm×25cm、Amersham Pharmacia Biotech)上でイオン交換高速液体クロマトグラフィー(IE-HPLC)を使用して、オリゴマーを精製した。勾配は、緩衝液A:B 90:10から緩衝液A:B 52:48に変化させたが、ここで緩衝液Aは、100mMのトリスpH8.5、緩衝液Bは、100mMのトリスpH8.5、1MのNaClであった。260nmで試料をモニタリングし、全長オリゴヌクレオチド種に相当するピークを回収してまとめ、NAP-5カラムで脱塩して凍結乾燥した。
【0244】
Beckman PACE 5000(Beckman Coulter, Inc.,Fullerton,CA)上のキャピラリ電気泳動(CE)によって、各オリゴマーの純度を決定した。CEキャピラリは、100μmの内径を有し、ssDNA 100Rゲル(Beckman-Coulter)を含有する。典型的には、約0.6nmoleのオリゴヌクレオチドが、キャピラリに注入され、444V/cmの電場で泳動し、260nmにおけるUV吸光度によって検出された。変性Tris-ホウ酸塩-7M-尿素泳動緩衝剤をBeckman-Coulterから購入した。以下で説明される実験で使用するためにCEによって評価されるように、少なくとも90%純粋であるオリゴリボヌクレオチドが得られた。製造業者の推奨プロトコルに従って、Voyager DE(商標)Biospectometry Work station(Applied Biosystems,Foster City,CA)上でのマトリックス支援レーザ脱離/イオン化飛行時間(MALDI-TOF)質量分析法によって、化合物の同一性を検証した。しばしば期待分子量の0.2%以内で、全てのオリゴマーの相対分子量が得られた。
【0245】
二本鎖の調製
例えば、一本鎖RNAオリゴマーを、100mM酢酸カリウム、30mM HEPES、pH7.5からなる二重鎖緩衝液中(例えば、100μM濃度で)再懸濁させた。相補的なセンス鎖及びアンチセンス鎖を、等モル量で混合して、例えば50μM二重鎖の、最終溶液を得た。試料をRNA緩衝液(IDT)中、100℃に5分間加熱し、使用前に室温まで放冷した。RNAiオリゴヌクレオチドを-20℃で貯蔵した。一本鎖RNAオリゴマーを凍結乾燥して貯蔵するか、またはヌクレアーゼを含まない水中、-80℃で貯蔵した。
【表1】
【0246】
表1に提供されるオリゴヌクレオチド配列を使用して、36量体のパッセンジャー鎖及び22量体のガイド鎖を有するニックの入ったテトラループ構造を含む修飾オリゴヌクレオチドを生成した。具体的に、表3に提供されるSERPINA1 RNAiオリゴヌクレオチドのパッセンジャー鎖及びガイド鎖は、それぞれ修飾ヌクレオチド及びホスホロチオエート結合の異なるパターンを含む(配列番号33~102)。修飾されたヌクレオチド及びホスホロチオエート結合のパターンを以下に示す。
パターンA(SM1047/ASM1508)
センス鎖:[mXs][mX][fX][mX][mX][mX][mX][fX][fX][fX][mX][fX][fX][mX][mX][mX][fX][mX][mX][mA][mG][mC][mA][mG][mC][mC][prgG-peg-GalNAc][prgA-peg-GalNAc][prgA-peg-GalNAc][prgA-peg-GalNAc][mG][mG][mC][mU][mG][mC]
アンチセンス鎖
[ホスホネート-4O-mUs][fXs][fXs][mX][fX][mX][fX][fX][mX][fX][mX][fX][mX][fX][mX][fX][mX][mX][fX][mXs][mGs][mG]
パターンB(SM988/ASM1266)
センス鎖:[mXs][mX][fX][mX][fX][mX][mX][fX][fX][fX][fX][mX][fX][mX][fX][mX][fX][mX][mX][mX][mG][mC][mA][mG][mC][mC][prgG-peg-GalNAc][prgA-peg-GalNAc][prgA-peg-GalNAc][prgA-peg-GalNAc][mG][mG][mC][mU][mG][mC]
アンチセンス鎖
[ホスホネート-4O-mUs][fXs][fXs][mX][fX][mX][fX][mX][mX][fX][mX][mX]
[mX][fX][mX][fX][fX][mX][fX][mXs][mGs][mG]
パターンC(SM1218/ASM1508)
センス鎖:
[mXs][mX][fX][mX][mX][mX][mX][fX][fX][fX][mX][fX][fX][mX][mX][mX][fX][mX[mX][mA][mG][mC][mC][prgG-peg-GalNAc][prgA-peg-GalNAc][prgA-peg-GalNAc][prgA-peg-GalNAc][mG][mG][mC]
アンチセンス鎖
[ホスホネート-4O-mUs][fXs][fXs][mX][fX][mX][fX][fX][mX][fX][mX][fX][mX][fX][mX][fX][mX][mX][fX][mXs][mGs][mG]
パターンD(SM1178/ASM1266)
センス鎖:[mXs][mX][fX][mX][fX][mX][mX][fX][fX][fX][fX][mX][fX][mX][fX][mX][fX][mX][mX][mA][mG][mC][mC][prgG-peg-GalNAc][prgA-peg-GalNAc][prgA-peg-GalNAc][prgA-peg-GalNAc][mG][mG][mC]
アンチセンス鎖
[ホスホネート-4O-mUs][fXs][fXs][mX][fX][mX][fX][mX][mX][fX][mX][mX][mX][fX][mX][fX][fX][mX][fX][mXs][mGs][mG]
パターンE(SM1217/ASM1508)
センス鎖:
[mXs][mX][fX][mX][mX][mX][mX][fX][fX][fX][mX][fX][fX][mX][mX][mX][fX][mX][mX][mX][mG][mC][mA][mG][mC][mC][ademG-GalNAc][ademA-GalNAc][ademA-GalNAc][ademA-GalNAc][mG][mG][mC][mU][mG][mC]
アンチセンス鎖:
[Meホスホネート-4O-mXs][fXs][fXs][mX][fX][mX][fX][fX][mX][fX][mX][fX][mX][fX][mX][fX][mX][mX][fX][mXs][mGs][mG]
パターンF(SM1217/ASM1704)
センス鎖:
[mXs][mX][fX][mX][mX][mX][mX][fX][fX][fX][mX][fX][fX][mX][mX][mX][fX][mX][mX][mX][mG][mC][mA][mG][mC][mC][ademG-GalNAc][ademA-GalNAc][ademA-GalNAc][ademA-GalNAc][mG][mG][mC][mU][mG][mC]
アンチセンス鎖:
[Meホスホネート-4O-mXs][fXs][fXs][mX][fX][mX][fX][mX][mX][mX][mX][fX][mX][fX][mX][fX][mX][mX][fX][mXs][mGs][mG]
【表2】
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【0247】
実施例2:インビトロでのA1AT/SERPINA1発現のRNAiオリゴヌクレオチド阻害
N-アセチルガラクトサミン(GalNAc)にコンジュゲートするSERPINA1特異的低分子干渉RNA(siRNA)が開発されている。SERPINA1 RNAiオリゴヌクレオチドは、RNA干渉(RNAi)戦略を使用して(McManus M.T.,and P.A. Sharp. 2002.‘Gene silencing in mammals by small interfering RNAs’,Nat Rev Genet,3(10):737-47)、SERPINA1 mRNA、及びアルファ-1アンチトリプシン欠損症(A1ATD)を有する対象の肝臓における突然変異形態アルファ-1アンチトリプシン(Z-AAT)タンパク質の蓄積を減少させる。これは、GalNAcにコンジュゲートされる非常に強力なsiRNAを使用することによって達成され、皮下(SC)投与後に肝実質細胞によって選択的に取り込まれて肝臓のZ-AATタンパク質の濃度を低減させる。肝臓での凝集したZ-AATタンパク質の分解障害は、Z-AATタンパク質の毒性蓄積とA1ATD関連の肝疾患を誘発する。したがって、SERPINA1遺伝子発現を標的とすることによって肝臓のZ-AATタンパク質のレベルを直接低減させることは、治療上の利益を提供する。
【0248】
この研究の目的は、ヒト肝癌細胞株HuH-7におけるインビトロでのヒトSERPINA1転写産物を標的とする(修飾パターンA~Dを有する)SERPINA1 RNAiオリゴヌクレオチドの活性を比較することであった。
【0249】
材料及び方法
試験品の調製
表3に記載のSERPINA1 RNAiオリゴヌクレオチドは、固相合成によって調製し、強陰イオン交換クロマトグラフィー(Chemgenes,Wilmington MA)を使用して精製された。エレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI MS)を使用して、配列の同一性を確認した。RNA二重鎖は、260nmでのUV吸光度によって濃度正規化された。
【0250】
HuH-7細胞の細胞培養及びトランスフェクション
ヒト肝細胞癌細胞株であるHuH-7(Japanese Collection of Research Bioresources JCRB,Japan)は、10%FBS(Thermo Fisher Scientific,Waltham,MA)を含むDMEM(Thermo Fisher Scientific,Waltham,MA)で保持された。細胞を、5%CO2及び37℃で加湿インキュベータ内で一晩保持した。リポフェクタミンRNAi MAX(ThermoFisher Scientific,Waltham,MA)及び指定試験品をOptiMEM(ThermoFisher Scientific)で希釈した。希釈試薬と希釈試験品(表3)を混合し、室温で15分間インキュベートして複合体を形成した。この複合体を細胞に添加し、24時間インキュベートした。HuH-7細胞は、製造業者のプロトコルに従って、OptiMEM培地(ThermoFisher Scientific)中に3つの濃度の指定試験品を含むリポフェクタミンRNAiMAX(ThermoFisher Scientific)を使用して逆トランスフェクトした。被験品の最終濃度は、1、0.1、及び0.01nMであった。最終的な細胞濃度は、96ウェルモートプレート(ThermoFisher Scientific)において2×104細胞/ウェルであった。
【0251】
RNA抽出及びcDNA合成
トランスフェクション複合体との24時間インキュベーションの後、細胞を1× PBSで1回洗浄し、iScript RT-qPCR溶解緩衝液(Bio-Rad,Hercules,CA)を使用して溶解した。ライセート中のRNAは、製造業者のプロトコルに従って、高容量cDNA逆転写キット(Thermo Fisher Scientific,Waltham,MA)を使用して逆転写した。
【0252】
リアルタイムqPCR及びデータ解析
合成されたcDNAは、iQ Power Mix(Bio-Rad,Hercules,CA)による定量的PCRに使用された。プライマー及びプローブは、Integrated DNA Technology(Coralville,IA)から購入した。qPCR反応は、CFX-384システム(Bio-Rad,Hercules,CA)上で実行され、データをDDCt法を使用して分析した。遺伝子発現データをモックのトランスフェクトされた試料に対して正規化した。
【0253】
結果及び結論
複数のコンジュゲートは、HuH-7細胞におけるSERPINA1発現の良好なノックダウンを示した(
図1)。
【0254】
実施例3:マウスにおけるSERPINA1-1459の薬力学的有効性、用量反応、及び持続時間の評価
実施例2の結果に基づいて、配列番号105のセンス鎖及び配列番号25のアンチセンス鎖を含むSERPINA1-1459を、さらなる研究のために選択した。SERPINA1-1459は、修飾パターンF(
図2Aに示す配列番号103に示されるセンス鎖及び配列番号104に示されるアンチセンス鎖)を用いて生成された。この実施例及び以下の実施例において、「SERPINA1-1459」はこれらの修飾配列を指す。具体的に、この研究は、アルファ-1-アンチトリプシン欠損症(A1ATD)のPiZマウスモデルへの単回ボーラス皮下(SC)注射後の薬力学的有効性、用量反応、及び修飾SERPINA1-1459活性の持続時間を評価するために設計され、このモデルは、ヒトSERPINA1遺伝子の突然変異を保有し、ヒトZ-AATタンパク質を発現する。
【0255】
具体的には、肝臓のヒトZ-AATタンパク質を発現する雄のPiZマウスは、St.Louis UniversityのJ.Teckman博士の実験室で提供した株からのマウスを使用して確立した繁殖コロニーから得られた(Carlson et al.,Accumulation of PiZ antitrypsin causes liver damage in transgenic mice,(May 1989),JOURNAL OF CLINICAL INVESTIGATION 83(4):1183-90、Rudnick et al.,HEPATOLOGY,Vol. 39,No. 4,2004)。マウス(4週齢)は、特定の病原体のない畜産条件下で飼育され、実験用飼料と水は自由に摂取した。雄のPiZマウスは、研究の開始の際に、無作為に研究群に分けられた(n=群当たり5)。
【0256】
1、3、もしくは10mg/kgの投与群について、各試験品をPBSで0.1、0.3、もしくは1.0mg/mLの濃度にそれぞれ希釈した。投与量は、投与日(1日目)にSC投与前に採取したマウスの個々の体重に基づいて計算された。用量製剤化は、使い捨ての1.0mL注射器を使用してマウスの背中に投与された。研究1日目に、マウスに0(リン酸緩衝生理食塩水[PBS])、1、3、または10mg/kgのSERPINA1-1459を1回皮下(SC)注射した。ビヒクル対照マウスには、試験品と等体積及び方法でPBSを投与した(10mL/kg)。
【0257】
血液試料は、投与前及び研究期間全体(1及び3mg/kg投与群では8週間及びPBS及び10mg/kg投与群では10週間)にわたって毎週収集された。対照パラメータは、投与前の測定からのものとした。血液試料は尾静脈から採取した。96ウェルv底プレートの各ウェルには、ヒトA1AT SimpleStep ELISAキット(Abcam,Cambridge,MA)からの98μLの希釈剤NSが事前に充填されていた。マウスを加熱ランプの下で予熱し、拘束器に入れた。尾静脈に小さな穴を開け、20μLシングルチャンネルピペットを使用して2μLの血液を取り出した。200μLのシングルチャンネルピペットを使用して、試料を完全に混合した。試料を等分し、-80℃で保存した。肝臓におけるSERPINA1-1459活性のバイオマーカーである血清Z-AAT濃度は、血清試料中の酵素免疫測定法(ELISA)によって測定された。
【0258】
アッセイの日に、血液試料を氷上で解凍し、希釈剤NSでさらに希釈した(最終希釈:1:5,000)。製造業者の指示に従って、ヒトアルファ1アンチトリプシン検出用の市販のELISAキット(Abcam,Cambridge,MA、カタログ番号ab189579)を使用して、50μLの希釈血液中のZ-AATタンパク質濃度を測定した。試料は、ELISAによって二重に分析した。SERPINA1-1459処理後の循環Z-AATタンパク質濃度の減少は、投与前及び時間一致したPBS Z-AATタンパク質濃度に対する循環Z-AATタンパク質濃度の減少率として計算された。
【0259】
SERPINA1-1459の投与(
図2A)により、
図2Bに示すように、1mg/kg投与群の単回SC投与の1週後に最大の減少を伴う循環Z-AATタンパク質濃度の確実かつ用量依存的な減少をもたらした。この時点で、ベースラインと比較した循環Z-AATタンパク質濃度の最大減少は2.1倍(51%減少、P≦0.01)であった。循環Z-AATタンパク質濃度の最大の減少は、3mg/kg及び10mg/kg投与群の単回SC投与の2週後であった。この時点で、ベースラインと比較した循環Z-AATタンパク質濃度の最大減少は、3mg/kg及び10mg/kg投与群のそれぞれに対して6.6倍(85%減少)及び33.3倍(97%減少)(P<0.0001、両方の群)であった。Z-AATタンパク質の循環濃度は、1、3、及び10mg/kg投与群のそれぞれにおいて、3、7、または9週後にゆっくりとベースライン濃度に戻ってきた。SERPINA1-1459によるマウスの循環Z-AATタンパク質濃度の減少に対する50%有効用量(ED
50)は、PiZマウスにおいて1mg/kgと推定された(
図2C)。したがって、SERPINA1-1459投与後に観察された循環Z-AATレベルの低減は、最大応答及びその応答の持続時間の両方の点において用量依存的であった。
【0260】
A1ATD患者の肝疾患の進行は、肝実質細胞におけるZ-AATの進行性蓄積に関連している。SERPINA1-1459は、PiZZ(重度のアルファ1アンチトリプシン欠損症)患者の肝疾患の進行を遅延させたり、停止させたり、場合によっては逆行させたりする有意義な治療的介入を生み出す可能性がある。したがって、SERPINA1-1459は、肝疾患のPiZZ患者の生命を救う治療的介入を表している可能性がある。
【0261】
実施例4:SERPINA1-1459を用いた治療後のA1ATD関連肝疾患表現型に対する肝臓のヒトZ-AATノックダウンの有効性評価
A1ATD関連肝疾患表現型に対するヒトZ-AATノックダウンの有効性を評価するために、SERPINA1-1459の有効性を雄雌PiZマウスで評価した(実施例3に記載)。
【0262】
具体的に、マウス(5~49週齢)は、特定の病原体のない畜産条件下で飼育され、実験用飼料と水は自由に摂取した。合計44匹のPiZマウスが最初に研究に割り当てられた。マウス遺伝子型の最終確認により、9匹のマウスがヒトSERPINA1遺伝子を発現していないことが明らかになり、よって研究から除外された。マウスには、3mg/kgのSERPINA1-1459を4週間ごとに1回、22週間にわたって6回SC投与(すなわち、0日目に初回投与、4、8、12、16、20週目に投与)した。投与は、5、12、及び49週齢の雄雌PiZマウスで開始され、それぞれ27、34、または71週齢で研究が終了した。
【0263】
材料及び方法
RT-qPCRによるSERPINA1 mRNAの測定
SERPINA1 mRNAのノックダウンと、ヒトZ-AATタンパク質の細胞内保持、細胞増殖の増加につながる対応する再生刺激、及び進行性肝線維症を含む、PiZマウスモデルで保存されていることが以前に示されたA1ATD関連肝疾患の特徴に対する有効性を測定するために、末端肝組織を採取した(Rudnick et al. et al.,HEPATOLOGY,Vol. 39,No. 4,2004、Marcus et al. Hepatol Res. 2010 June,40(6):641-653、及びTang et al. Am J Physiol Gastrointest Liver Physiol 311:G156-G165,2016)。末端血清試料は、トランスアミナーゼを含む血清化学パラメータの測定のために収集された。具体的には、約50mgの試料を、Tissuelyser IIを使用して0.75mLのフェノール/グアニジンベースのQIAzol Lysis Reagent(Qiagen,Valencia,CA)でホモジナイズした。ホモジネートを1-ブロモ-3-クロロプロパン(Sigma-Aldrich,St. Louis,MO)で抽出した。製造業者の指示に従って、MagMaX Technology(ThermoFisher Scientific,Waltham,MA)を使用して、0.2mLの水相からRNAを抽出した。RNAは、260及び280ナノメートルでの分光分析を使用して定量化された。Integrated DNA Technologies(Coralville,IA)のRT-qPCRプライマー及びプローブ、ならびにThermoFisher Scientific(Waltham,MA)及びBioRad Laboratories(Hercules,CA)の試薬を使用して、ハウスキーピング遺伝子であるヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Hprt)に対して正規化したSERPINA1 mRNAレベルを測定した。SERPINA1-1459処置群におけるSERPINA1 mRNAの減少の程度は、同齢のマウスからの生理食塩水で処置した対照群の平均発現レベルに対する発現のパーセント(Hprtに対して正規化)として計算されており、生理食塩水で処置した対照群のSERPIN1 mRNA発現は、100%と設定された。平均±標準偏差のグラフを作成し、GraphPad Prism(GraphPad Software,La Jolla,CA)を使用してデータを分析した。独立t検定を実行して、SERPINA1-1459処置群のSERPINA1 mRNAレベル(Hprtに対して正規化)を、同齢マウスの生理食塩水処置対照群と比較した。確認のため、PCRを2回実行した。
【0264】
A1AT ELISA
製造業者の指示に従って、ヒトアルファ1アンチトリプシン(SERPINA1)ELISAキット(Abcam,Cambridge,MA)を使用し、50μLの希釈血液試料(全血をELISAキットのアッセイバッファーで1:5,000に希釈)中のヒトZ-AATタンパク質濃度を二重に測定した。PiZマウスは、ヒトZ-AATタンパク質のみを発現するため、ヒト特異的抗A1AT ELISAは循環ヒトZ-AATタンパク質レベルの尺度となる。SERPINA1-1459処置群におけるヒトZ-AATタンパク質濃度の低下は、投与前のヒトZ-AAT濃度に対する、及び雌雄独立して同一の日の同齢対照(生理食塩水処置)群の平均発現レベルに対する発現率として計算され、対照群のヒトZ-AATタンパク質濃度は100%に設定された。GraphPad Prism(GraphPad Software,La Jolla,CA)で平均±標準偏差のグラフを作成し、GraphPad Prismを使用してデータを分析した。独立t検定を実行して、SERPINA1-1459処置群のヒトZ-AATタンパク質レベルを、同時点で、同齢マウスの生理食塩水処置対照群と比較した。
【0265】
ヒトZ-AATタンパク質のウェスタンブロット
T-PER Tissue Protein Extraction Reagent及びプロテアーゼ阻害剤カクテル(ThermoFisher Scientific,Waltham,MA)と共にTissueLyser II(Qiagen,Valencia,CA)を使用し、組織ライセートを調製した。総タンパク質濃度は、BCA Protein Assay(ThermoFisher Scientific,Waltham,MA)で測定し、推定された同等のタンパク質濃度をNuPAGE 4~12%のBi-Tris SDS-PAGE(ThermoFisher Scientific, Waltham,MA)で解決した。電気泳動したタンパク質は、iBlot Dry Blotting System(ThermoFisher Scientific, Waltham,MA)を使用してニトロセルロース膜に転写し、非特異的結合を防ぐためにOdyssey遮断緩衝液(Li-Cor Biosciences, Lincoln,NE)で遮断した。次に、膜をウサギ抗ヒトA1AT抗体(Abcam,Cambridge,MA)及びマウス抗グリセルアルデヒド3-リン酸デヒドロゲナーゼ抗体(Abcam,Cambridge,MA)とインキュベートした。抗ウサギIRDye 680及び抗マウスIRDye 800二次抗体(Li-Cor Biosciences,Lincoln,NE)を検出に使用し、Odyssey赤外線画像システム(Li-Cor Biosciences,Lincoln,NE)を使用して信号強度を測定した。PiZマウスは、ヒトZ-AATタンパク質のみを発現するため、ヒト特異的抗A1AT抗体は、ヒトZ-AATタンパク質レベルの尺度となる。SERPINA1-1459処置群におけるヒトZ-AATタンパク質の減少の程度は、同齢のマウスからの生理食塩水で処置した対照群の平均レベルに対する発現のパーセントとして計算されており、生理食塩水で処置した対照群のヒトZ-AATタンパク質レベルは、100%と設定された。GraphPad Prism(GraphPad Software,La Jolla,CA)で平均±標準偏差のグラフを作成し、GraphPad Prismを使用してデータを分析した。独立t検定を実行して、SERPINA1-1459処置群のヒトZ-AATタンパク質レベルを、同齢マウスの生理食塩水処置対照群と比較した。
【0266】
免疫組織化学
肝臓組織を採取し、10%の中性緩衝ホルマリンで一晩固定し、70%のエタノールに移した。Mass Histology Service(Worcester,MA)で、パラフィンへの包埋とスライドの準備を完了した。製造業者の指示に従って、ジアスターゼ消化による過ヨウ素酸シッフ染色(PAS-D)及びシリウスレッド(Abcam,Cambridge,MA)染色を行った。免疫組織化学(IHC)実験では、パラフィン切片を脱パラフィンし、再水和した。A1AT、ヒトZ-AATポリマー、及びKi67 IHC試料に対して、熱を介した抗原回復(クエン酸緩衝液、pH6.0)を実行した。内因性ペルオキシダーゼ及びアルカリホスファターゼをBLOXALL溶液(Vector Laboratories,Burlingame,CA)でブロックした。ウサギモノクローナル抗A1AT抗体(1:500希釈、Abcam,Cambridge,MA)、マウスモノクローナル抗Z-AATポリマー2C1抗体(1:50,Hycult Biotech,Wayne,PA)、及びウサギモノクローナル抗Ki67抗体(1:100希釈、Abcam,Cambridge,MA)をSignalStain(登録商標)抗体希釈液(Cell Signaling Technology,Danvers,MA)で希釈し、4℃で一晩インキュベートした。PiZマウスは、ヒトZ-AATタンパク質のみを発現するため、ヒト特異的抗A1AT抗体は、ヒトZ-AATタンパク質レベルの尺度となる。一次抗体の結合は、SignalStain(登録商標)DAB基質キット(Cell Signaling Technology,Danvers,MA)を用いて、ヤギ抗ウサギIgG HRP抗体(Antibodies-online,Atlanta,GA)またはヤギ抗マウスIgG HRP抗体(Abcam,Cambridge,MA)を使用して検出した。結果は、Olympus VS-ASW画像解析ソフトウェアを使用したOlympusBX61VS スライドスキャナーを使用して視覚化した。
【0267】
肝酵素の分析
最終採血は、血液化学パラメータの測定のために血清に処理した。アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、及びアルカリホスファターゼのレベルは、IDEXX BioResearch Laboratories(Grafton,MA)によって測定された。GraphPad Prism(GraphPad Software,La Jolla,CA)で平均±標準偏差のグラフを作成し、GraphPad Prismを使用してデータを分析した。独立t検定を実行して、SERPINA1-1459処置群のALT、AST、またはALPレベルを、同齢マウスの生理食塩水処置対照群と比較した。
【0268】
結果
SERPINA1-1459の反復投与は、PiZマウスにおけるSERPINA1 mRNA発現を有意に減少させた(
図3に示す)。4週間ごとにSERPINA1-1459を6回投与すると、5(P<0.0001)及び12(P≦0.05)週齢のPiZマウスにおけるSERPINA1 mRNAの発現が有意に減少された。群ごとのマウスの数が少ないため、49週齢のPiZマウスの統計的有意性は計算できなかった。
【0269】
SERPINA1-1459の反復投与は、PiZマウスにおける循環ヒトZ-AATタンパク質レベルを有意に減少させた(ELISAにより測定、
図4)。ヒトZ-AATレベルは、SERPINA1-1459の単回投与後に減少し、この減少は、5、12、及び49週齢のPiZマウスでSERPINA1-1459を4週間ごとに5回追加投与しても維持された。
【0270】
SERPINA1-1459の反復投与は、肝臓組織試料のウェスタンブロット及びIHCによって示されるように、5~27週齢の処置されたPiZマウスの肝臓のヒトZ-AATタンパク質レベルを大幅に低減させた。ヒトZ-AATタンパク質は、SERPINA1-1459処置マウスにおいてウェスタンブロットによっては検出できず(
図5及び
図6)、肝臓組織のIHCにおいて効果的に減少した(
図7)。同様の減少が、それぞれ34及び71週目で組織を採取した12及び49週齢で治療を開始したマウスで観察された(データは示さない)。
【0271】
SERPINA1-1459によるPiZマウスの治療は、A1AT関連の肝病理を低減する。
PiZZ患者において、突然変異型ヒトZ-AATタンパク質は、肝実質細胞内でホモポリマーとしてミスフォールドされ、凝集する傾向がある。この凝集タンパク質の分解障害は、結果としてA1ATD関連肝疾患を有する一部の患者の肝臓にヒトZ-AATの有毒な蓄積を誘発する。ヒトZ-AATポリマー特異的抗体を使用したIHC(Tan et al. Int J Biochem Cell Biol. 2015 Jan;58:81-91)は、5週齢でSERPINA1-1459による処置を開始したPiZマウスの治療によって、肝臓におけるヒトZ-AATポリマー負荷が効果的に減少できることを示している(
図8)。
【0272】
さらに、SERPINA1-1459処置は、49週齢で処置を開始したPiZマウスの肝臓における高いヒトZ-AATポリマー負荷を効果的に減少させた(
図9)。
【0273】
ヒトで見られるように、PiZマウス肝実質細胞の小胞体(ER)における突然変異型ヒトZ-AATの組織病理学的特徴は、ジアスターゼ耐性(PAS-D)である過ヨウ素酸シッフで染色される細胞内小球である(Rudnick et al., et al., HEPATOLOGY, Vol. 39, No. 4, 2004、Perlmutter et al., PEDIATRIC RESEARCH Vol. 60, No. 2, 2006)。5週齢で開始したPiZマウスのSERPINA1-1459処置は、肝小球形成を有効に阻害することを誘発した(
図10)。
【0274】
PiZマウス肝臓における突然変異型ヒトZ-AATタンパク質の細胞内保持は、細胞増殖の増加につながる再生刺激と関連している(Rudnick et al., et al., HEPATOLOGY, Vol. 39, No. 4, 2004)。5週齢でSERPINA1-1459処置を開始したPiZマウスは、対照処置マウスと比較して、増殖細胞マーカーであるKi-67の免疫組織化学による評価で、細胞増殖の効果的な減少を示した(
図11)。
【0275】
PiZマウスの肝臓の慢性損傷は、加齢に伴う進行性肝線維症と関連していることが示されている(Brunt et al., J PEDIATR GASTROENTEROL NUTR. 2010 November ;51(5):626-630)。27週齢のPiZマウス肝臓のシリウスレッド染色は、SERPINA1-1459で処置されたマウスの肝臓で肝線維症の発生を顕著に減少したことを示している(
図12)。
【0276】
PiZマウスにおけるSERPINA1 mRNAの持続的なノックダウンは、十分に許容される。5、12、または49週齢でSERPINA1-1459処理を開始したPiZマウスは、ALT、AST、またはアルカリホスファターゼを含む重要な血清生化学パラメータのレベルの上昇を誘発しなかった(
図13)。
【0277】
全体的に、これらの結果は、PiZマウスにおけるSERPINA1 mRNAの持続的なノックダウンが十分に許容され、トランスアミナーゼ活性を含む血清生化学値に異常がないことを示している。
【0278】
実施例5:SERPINA1-1459で処置したPiZマウスにおけるSERPINA1 mRNA及びヒトZ-AATタンパク質の用量依存的ノックダウンは、肝小球の減少と相関する
この研究の目的は、突然変異ヒトZ-AATタンパク質を発現するPiZマウスの肝小球を少なくとも50%減少させるために必要な、SERPINA1-1459によるSERPINA1 mRNAノックダウンのレベルを評価することであった。具体的には、マウス(5週齢)に0、0.3、1、または3mg/kgのSERPINA1-1459を4週ごとに1回、4回のSC投与を行った。
【0279】
SERPINA1-1459の最終投与から1週間後、SERPINA1 mRNAならびに循環及び肝臓のヒトZ-AATタンパク質レベルが用量依存的に有意に減少した(
図14)。SERPINA1-1459の最終投与から1週間後、肝小球の同様の用量依存的減少が観察された(
図14)。1または3mg/kgのSERPINA1-1459を4回投与した後、肝小球の少なくとも50%の減少が観察された。
【0280】
ヒトで見られるように、PiZマウス肝実質細胞のERにおける突然変異型ヒトZ-AATの組織病理学的特徴は、ジアスターゼ耐性(PAS-D)である過ヨウ素酸シッフで染色される細胞内小球である(Rudnick et al., 2004, Analyses of hepatocellular proliferation in a mouse model of alpha-1-antitrypsin deficiency, HEPATOLOGY, 39:1048-55、Perlmutter et al., 2006, Pathogenesis of chronic liver injury and hepatocellular carcinoma in alpha-1-antitrypsin deficiency, PEDIATR RES 60(2):233-8)。5週齢のPiZマウスのSERPINA1-1459による処置は、肝小球形成の用量依存的な阻害をもたらした(
図15)。
【0281】
実施例6:カニクイザルに単回ボーラス皮下(SC)注射後のSERPINA1-1459の薬力学的有効性、用量反応、及び作用の持続時間の評価。
研究の主な目的は、カニクイザルに単回ボーラス皮下(SC)注射後のSERPINA1-1459の薬力学的有効性、用量反応、及び作用の持続時間を決定することであった。二次的な目的は、標準的な血液学及び臨床血液化学(CBC)パラメータ、体重、及び潜在的な注射部位反応を適切な時点でモニタリングすることにより、忍容性の予備評価を得ることであった。
【0282】
雌のカニクイザルを、研究手順を実施する前に少なくとも1週間順応させたCharles River Laboratories(Shrewsbury,MA)にて受け取った。指定された手順中を除いて、PMI Nutrition International認定の霊長類の食餌を1日2回に動物に提供した。水は全ての動物に自由に与えられた。動物は社会的に収容され、環境の豊かさを提供した。プロトコルで指定された試験終了時(169日目)に、全てのサルは健康であり、試験コロニーに戻った。
【0283】
簡単に要約すると、2~4歳までの年齢の非ナイーブな雌のカニクイザルの3つの群(n=5、各群)は、1mg/kg(群1)、3mg/kg(群2)、または10mg/kg(群3)のSERPINA1-1459の単回SCボーラス注射を受けた。投与後3日間、注射部位の炎症を綿密にモニターした。臨床観察を毎日記録した。
【0284】
血液試料は、24週間の研究期間にわたって毎週収集され、血清及び血漿に処理した。具体的には、採血手順の前に、全ての動物を一晩絶食させた。臨床血液化学(CBC)及び血液学パラメータは、投与前及び48時間後の試料を使用してCharles Riverで実施した。血清及び血漿は、Charles Riverで2mLの血液試料から処理され、複数の保存用バイアルに分割されて液体窒素で瞬間凍結された。CBC及び血液学に使用されるものを除く全ての試料は、ドライアイスでDicerna Pharmaceuticalsに出荷された。血清A1ATタンパク質濃度は、Dicerna PharmaceuticalsでELISAによって定量化された。他の全ての試料は-80℃でアーカイブされた。
【0285】
対照パラメータは、-5、-3日目、及び1日目の注射直前の投与前測定からのものであった。肝臓におけるSERPINA1-1459活性のバイオマーカーである血清アルファ-1アンチトリプシン(A1AT)濃度は、血清試料中にELISAによって測定された。
【0286】
毎日の臨床観察、臨床血液化学、及び血液学パラメータは目立たず、投与前の対照と変わらなかった(データは示していない)。体重は、この年齢の雌のサルの通常の歴史的成長範囲と一致する方法で研究期間にわたって増加し、どの時点でも群間で差はなかった(
図16、左側のパネルは平均パーセント変化±SEMを示し、右側のパネルは個々の動物の値を示す)。注射部位では、いずれの動物のいずれの用量レベルでも、炎症反応やその他の反応は観察されなかった。まとめると、これらの結果は、最大10mg/kgのSERPINA1-1459を単回にSC投与することが、ヒト以外の霊長類で十分に許容されたことを示す。
【0287】
製造業者の指示に従って、ヒトアルファ1アンチトリプシン検出用の市販のELISAキット(Abcam,Cambridge,MA)を使用して、25μLの血清中のA1ATタンパク質濃度を測定した。試料は、ELISAによって二重に分析した。SERPINA1-1459処置後の血清中のA1ATタンパク質濃度の減少は、投与前のA1AT血清タンパク質濃度のパーセント減少として計算された。
【0288】
SERPINA1-1459の投与により、全ての群で循環A1ATタンパク質濃度が用量依存的に確実に減少し、単回のSC投与の4週後に最大の減少が見られた。この時点で、ベースラインと比較した循環A1ATタンパク質濃度の最大減少は、1mg/kg群で2.2倍(55%減少)、3mg/kg群で4.8倍(79%減少)、10mg/kg群で6.7倍(84%減少)であった(P<0.0001、全群)(
図17A)。4週目に観察された最大の薬力学的効果は、1mg/kg群では7週目まで、3mg/kg及び10mg/kg投与群では8週目まで維持され、その後、A1ATの循環濃度はゆっくりとベースライン濃度に戻った。1mg/kg投与群では、A1ATタンパク質濃度は、投与後約18週間でベースラインに戻った。3mg/kg及び10mg/kg投与群では、研究の最終日(24週目)までにベースライン濃度に達しておらず、それぞれ研究終了時にベースライン血清A1AT濃度の86%及び62%に達した。70~80%の循環A1ATが肝実質細胞によって生成されることが報告されており(Janciauskiene et al. Respiratory Medicine(2011) 105, 1129e1139)、従って10mg/kg群で達成された84%の減少は、達成可能な最大効果に近かった可能性がある(
図17A及び17B)。これは、薬力学的反応が、3mg/kg及び10mg/kgの投与群で用量比例よりも小さかったという観察によってさらに裏付けられている。しかしながら、1mg/kg投与群の結果は、SERPINA1-1459の50%有効用量(ED50)が非ヒト霊長類でおよそ1mg/kgであることを示唆している。
【0289】
考察及び結論
毎日の臨床観察、CBC、及び血液学は目立たず、投与前の対照と変わらなかった。体重は、研究期間全体にわたって各投与群で増加し、いずれの時点でも群間で差はなかった。注射後72時間まで、いずれの動物のいずれの用量レベルでも、注射部位反応は観察されなかった。まとめると、これらの観察は、最大10mg/kgのSERPINA1-1459を単回にSC投与することが、ヒト以外の霊長類で十分に許容されたことを示す。さらに、SERPINA1-1459の投与により、全ての投与群のサルで循環A1ATタンパク質濃度が用量依存的に確実に減少した。
【0290】
一部のPiZZ患者に見られる肝臓病状の効果的な治療法は、満たされない医学的要求が高いことを示している(Lomas, DA. New therapeutic targets for alpha-1 antitrypsin deficiency. Chronic obstructive pulmonary diseases(Miami,Fla.). 2018;5(4):233-43)。SERPINA1-1459は、SERPINA1 mRNA及びA1ATタンパク質レベルを選択的に低減させ、肝臓のZ-AATタンパク質蓄積を低減させるように設計されたsiRNA治療薬である。肝実質細胞によって生成されたA1ATは、循環系に分泌されるため、A1AT血清濃度は、肝臓を直接サンプリングせずにSERPINA1-1459の有効性を評価するのに有用なバイオマーカーとなる。
【0291】
A1ATD患者の肝疾患の進行は、肝実質細胞におけるZ-AATの進行性蓄積に関連している(Teckman, J.H., 2013 COPD. 2013 Mar;10 Suppl 1:35-43)。SERPINA1-1459は、PiZZ患者の肝疾患の進行を遅延させたり、停止させたり、場合によっては逆行させたりする有意義な治療的介入を生み出す可能性がある。したがって、SERPINA1-1459は、肝疾患及び関連症状を有するPiZZ患者の生命を救う治療的介入を表している可能性がある。
【0292】
実施例7:SERPINA1-1459で処置したカニクイザルにおけるA1ATタンパク質の用量依存的ノックダウン
本研究のこの段階の目的は、この反復投与毒性試験でカニクイザルに30、100、または300mg/kgのSERPINA1-1459を4回SC投与した場合、87日目及び141日目の循環A1ATタンパク質濃度が減少することで評価されるSERPINA1-1459の薬力学的効果を決定することであった。若い成体(約42ヶ月齢)及び若年(約15ヶ月齢)のサルに、研究の1日目及び28日ごとにSERPINA1-1459を投与した。
【0293】
製造業者の指示に従って、ヒトアルファ1アンチトリプシン(SERPINA1)のELISAキット(Abcam,Cambridge,MA)を使用して、25μLの血清中のA1ATタンパク質濃度を二重測定した。SERPINA1-1459処置群におけるA1ATタンパク質濃度の低下は、雌雄独立して同一の日の同齢対照(生理食塩水処置)群の平均発現レベルに対する発現率として計算され、対照群のA1ATタンパク質濃度は100%に設定された。
【0294】
GraphPad Prism(GraphPad Software,La Jolla,CA)で平均±標準誤差のグラフを作成し、GraphPad Prismを使用してデータを分析した。独立t検定を用いて、同じ時点の同齢の対照群におけるSERPINA1-1459処置群のA1ATタンパク質濃度を比較した。統計的有意性は、サルが3匹以上の群でのみ計算された。
【0295】
A1ATタンパク質濃度に対するSERPINA1-1459の阻害効果を
図18に示す。87日目に採取された血液中の循環A1ATタンパク質濃度の薬力学的分析により、若い成体及び若年サルにおいて57.3%~83.8%の減少が示される。無治療期間の終了日に、若年サルの循環A1ATタンパク質濃度の57.8%~75.8%の減少が持続された。雌雄の若年サルの間で、循環A1ATタンパク質濃度の減少に有意な差は見られなかったが、循環A1ATタンパク質濃度は、雄の若い成体サルよりも雌で大幅に減少した。SERPINA1-1459処置により、雄の若い成体サルと比較して、雄の若年サルの循環A1ATタンパク質濃度が大幅に減少した。用量反応は明らかではなかった。
【0296】
3ヶ月の投与期間の終了日(87日目)に採取された血液中の循環A1ATタンパク質濃度の薬力学的分析により、若い成体及び若年サルにおいておよそ70%~80%の減少が示される。無治療期間の終了日(141日目)に、若年サルの循環A1ATタンパク質濃度のおよそ65%の減少が持続された。薬力学的効果における有意な用量、性別、または年齢に関連した違いは明らかではなかった。
【0297】
実施例8:SERPINA1-1459の長期処置の用量反応は、SERPINA1 mRNAノックダウン及び治療耐性を示す
本研究の目的は、カニクイザルにおけるSERPINA1-1459の9ヶ月反復投与(4週ごと、10回投与)皮下注射の薬力学的効果を決定することであった。
【0298】
雌雄のカニクイザル群に、対照(生理食塩水)または20、60、もしくは180mg/kgのSERPINA1-1459を皮下(SC)注射した。各群には、255日目に剖検を受けた主な研究動物と、253日目の投与後に治療を中止した回復動物(R)の両方が含まれていた。これらの動物は、309日目(投与8週後)に剖検された。SERPINA1-1459は、9ヶ月間、28日ごとに合計10回の皮下投与を受けた。毎月のSC投与量は、各投与セッションの2日前に収集された体重に基づいていた。
【0299】
検証されていない方法を使用し、定量的逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-qPCR)を使用してSERPINA1 mRNA発現を測定することにより、全ての投与群の主要研究及び回復剖検の両方で、雄雌の肝臓試料を分析した。
【0300】
SERPINA1-1459の薬力学(PD)は、全ての処置群の雄雌のカニクイザル由来の肝臓で分析された(
図19)。SERPINA1 mRNAの発現は、全てのSERPINA1-1459投与群の最終(主要試験)及び回復時点の両方において、対照で見られるレベルの5%未満に減少した。対照動物の変動性(18~188%の範囲)にもかかわらず、SERPINA1-1459の強力な活性は、20mg/kgを投与した回復動物を除き、最終時点及び回復時点のカニクイザルにおけるSERPINA1-1459の全ての用量レベルで、SERPINA1 mRNA発現の有意な減少によって実証された。雄雌のサルの間で、発現または活性に明らかな差はなかった。主要時点及び回復時点の間でSERPINA1 mRNA発現に有意な差はなく、mRNA発現が回復していないことが示唆された。SERPINA1-1459の9ヶ月にわたる皮下反復投与(10回投与)は、カニクイザルにおいて最大180mg/kgのレベルで良好に忍容された。
【0301】
追加の引用
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【表4-2】
【表4-3】
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【0302】
【配列表】
【国際調査報告】