(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-05
(54)【発明の名称】関節鏡視下ポンプの生理食塩水管理
(51)【国際特許分類】
A61M 1/00 20060101AFI20240829BHJP
【FI】
A61M1/00 140
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024500304
(86)(22)【出願日】2022-07-08
(85)【翻訳文提出日】2024-02-29
(86)【国際出願番号】 EP2022069166
(87)【国際公開番号】W WO2023281092
(87)【国際公開日】2023-01-12
(32)【優先日】2021-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514046806
【氏名又は名称】メドス・インターナショナル・エスエイアールエル
【氏名又は名称原語表記】Medos International SARL
【住所又は居所原語表記】Chemin-Blanc 38, CH-2400 Le Locle, Switzerland
(71)【出願人】
【識別番号】324008283
【氏名又は名称】デュマス・オリバー・ジェイ
(71)【出願人】
【識別番号】324008308
【氏名又は名称】グリンベルグ・エドアルド
(71)【出願人】
【識別番号】324008319
【氏名又は名称】コンフォーイ・マイケル
(71)【出願人】
【識別番号】324008320
【氏名又は名称】ミゲル・ペドロ・ジェイ
(71)【出願人】
【識別番号】324008331
【氏名又は名称】グード・ギャレット
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】デュマス・オリバー・ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】グリンベルグ・エドアルド
(72)【発明者】
【氏名】コンフォーイ・マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ミゲル・ペドロ・ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】グード・ギャレット
【テーマコード(参考)】
4C077
【Fターム(参考)】
4C077DD01
4C077DD16
4C077EE02
4C077EE04
4C077HH05
4C077HH15
4C077JJ04
4C077JJ16
(57)【要約】
概して、関節鏡視下ポンプの生理食塩水管理のためのデバイス、システム、及び方法が提供される。典型的な実施形態では、ポンプを含むポンプシステムは、外科的処置の実施中に、ポンプによって手術部位にポンピングされる流体を管理するように構成されている。手術部位にポンピングされる流体を管理するように構成されているポンプシステムは、ポンプシステムが手術部位における流体損失を監視することによって、手術部位における流体圧力を管理することができる。他の実施形態では、手術部位にポンピングされる流体を管理するように構成されているポンプシステムは、ポンプシステムが所定のタイミングスケジュールに従って、手術部位における流体圧力を管理することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外科用システムであって、
外科的処置の実施中に関節に流体をポンピングして、前記関節における流体圧力を、記憶された設定点に調整するように構成された関節鏡視下ポンプと、
プロセッサであって、
前記関節への前記流体の前記ポンピングを制御することと、
前記関節における流体損失を推定することと、
前記推定された流体損失に従って、前記外科的処置の前記実施と共にリアルタイムで、前記設定点を調節することと、を行うように構成されている、プロセッサと、を含む、システム。
【請求項2】
前記流体損失を推定することは、前記外科的処置の前記実施中に、ある期間にわたって前記関節にポンピングされた前記流体の流量を監視することを含み、
前記調節することは、前記流体が、第1の期間中に前記設定点に従って、かつ前記期間の後に前記調節された設定点に従って、前記関節にポンピングされるように、前記期間の後に行われる、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記ポンプは、前記外科的処置の前記実施中に、前記関節から流体をポンピングするように構成され、
前記流体損失を推定することは、前記関節にポンピングされた前記流体の流量から、前記関節からポンピングされた前記流体の流量を減算することを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記流体損失の前記推定は、前記外科的処置の前記実施中の複数分にわたるものであり、
前記流体は、前記複数分の間に前記設定点に従って前記関節にポンピングされ、
前記調節することは、前記複数分が経過した後に行われ、
前記流体は、前記複数分が経過した後に、前記調節された設定点に従って前記関節にポンピングされる、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記ポンプは、前記設定点を内部に記憶するように構成されたメモリを含み、
前記ポンプは、前記プロセッサを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記流体は、生理食塩水である、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
外科用システムであって、
外科的処置の実施中に関節に流体をポンピングして、前記関節における流体圧力を、記憶された設定点に調整するように構成された関節鏡視下ポンプと、
プロセッサであって、
前記関節への前記流体の前記ポンピングを制御することと、
前記流体の前記ポンピングと共にリアルタイムで所定の時間量の各後続の経過の後に、前記設定点を所定の量だけ減少させることが前記設定点を所定の最小圧力閾値未満にするかどうかを判定することと、前記設定点を前記所定の量だけ減少させることが前記設定点を前記所定の最小圧力閾値未満にすると判定することに応答して、前記設定点を維持することと、前記設定点を前記所定の量だけ減少させることが前記設定点を前記所定の最小圧力閾値未満にしないと判定することに応答して、前記設定点を前記所定の量だけ減少させることと、を行うように構成されている、プロセッサと、を含む、システム。
【請求項8】
前記流体は、前記所定の時間量が経過したことを前記ポンプが最初に判定する前の複数分の間に、前記設定点に従って前記関節にポンピングされ、
前記設定点の前記減少は、前記複数分が経過した後に行われ、
前記流体は、前記複数分が経過した後に、前記減少した設定点に従って前記関節にポンピングされる、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記流体は、前記所定の時間量が経過したかどうかを前記ポンプが最初に判定する前に、第1の所定の時間量の間、前記設定点に従って前記関節にポンピングされる、請求項7に記載のシステム。
【請求項10】
前記ポンプは、前記設定点を内部に記憶するように構成されたメモリを含み、
前記ポンプは、前記プロセッサを含む、請求項7に記載のシステム。
【請求項11】
前記流体は、生理食塩水である、請求項7に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2021年7月8日に出願された「Arthroscopic Pump Saline Management」と題する米国特許出願第17/370,688号、及び2022年7月6日に出願された「Arthroscopic Pump Saline Management」と題する米国特許仮出願第63/358,598号に対する優先権を主張するものであり、これらは、それらの全体が参照により本明細書によって組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本開示は、概して、関節鏡視下ポンプの生理食塩水管理に関する。
【背景技術】
【0003】
関節鏡視下ポンプは、軟質組織焼灼、輪郭修復、切断、凝固、及び温度制御などの種々の機能に関連して、種々の外科的処置において使用される。外科的処置の実施中、関節鏡視下ポンプは、手術部位、例えば、患者の関節への生理食塩水などの流体の潅注(流入)、及び手術部位からの流体の吸引(流出)を提供することができる。ポンプは、関節における流体圧力を制御して、アクセスを容易にするための関節拡張の提供、良好な視認性の維持、及び/又は出血の制御を支援することができる。しかしながら、外科的処置の長さが増加するにつれて、手術部位における軟質組織は、弛緩するようになり、関節における持続的な圧力に起因して、生理食塩水をますます漏出させる。したがって、外科的処置の長さが増加するにつれて、より多くの生理食塩水を手術部位に供給しながら、生理食塩水の漏出を考慮しなければならない。より多くの生理食塩水の使用は、より多くの生理食塩水が外科的処置中の使用のために購入されなければならないため、外科的処置のコストを増加させる。外科的処置がより長く継続するほどより膨大な生理食塩水が使用される複数の外科的処置にわたって、病院又は他の購買者にとって、コストの増加は、悪化する。
【0004】
また、看護師又は他の医療関係者が外科的処置中に生理食塩水バッグを交換して適切な生理食塩水供給を確実にすることは、困難である場合があり、その理由は、看護師又は他の医療関係者が外科的処置中に実施することに対して責任がある多くの他の作業もあるからである。
【0005】
加えて、外科的処置の前半よりも組織切断が少なくなるため、外科的処置の後半では出血の可能性がより低くなるため、典型的には、外科的処置の後半においては、より少ない生理食塩水しか必要とされない。したがって、外科的処置の後半に手術部位への生理食塩水の送達を増加させることは、出血を制御するためには、過剰かつ不要であり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、関節鏡視下ポンプのための改善されたデバイス、システム、及び方法の必要性が残されている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
概して、関節鏡視下ポンプの生理食塩水管理のためのデバイス、システム、及び方法が提供される。
【0008】
一態様では、外科用システムが提供され、一実施形態では、外科的処置の実施中に関節に流体をポンピングして、関節における流体圧力を、記憶された設定点に調整するように構成された関節鏡視下ポンプを含む。外科用システムはまた、プロセッサであって、関節への流体のポンピングを制御することと、関節における流体損失を推定することと、推定された流体損失に従って、外科的処置の実施と共にリアルタイムで、設定点を調節することと、を行うように構成されている、プロセッサも含む。
【0009】
外科用システムは、任意の数の変形を有することができる。例えば、流体損失を推定することは、外科的処置の実施中に、ある期間にわたって手術部位にポンピングされた流体の流量を監視することを含むことができ、調節することは、流体が、第1の期間中に設定点に従って、かつ期間の後に調節された設定点に従って、関節にポンピングされるように、その期間の後に行うことができる。別の例の場合、ポンプは、外科的処置の実施中に、関節から流体をポンピングするように構成することができ、流体損失を推定することは、関節にポンピングされた流体の流量から、関節からポンピングされた流体の流量を減算することを含むことができる。更に別の例の場合、流体損失の推定は、外科的処置の実施中の複数分にわたるものとすることができ、流体は、複数分の間に設定点に従って関節にポンピングされ得、調節することは、複数分が経過した後に行うことができ、流体は、複数分が経過した後に、調節された設定点に従って関節にポンピングされ得る。別の例の場合、ポンプは、設定点を内部に記憶するように構成されたメモリを含むことができ、ポンプは、プロセッサを含むことができる。また更に別の例の場合、流体は、生理食塩水とすることができる。
【0010】
別の実施形態では、外科用システムは、外科的処置の実施中に関節に流体をポンピングして、関節における流体圧力を、記憶された設定点に調整するように構成された関節鏡視下ポンプを含む。システムはまた、プロセッサであって、関節への流体のポンピングを制御することと、流体のポンピングと共にリアルタイムで所定の時間量の各後続の経過の後に、設定点を所定の量だけ減少させることが設定点を所定の最小圧力閾値未満にするかどうかを判定することと、設定点を所定の量だけ減少させることが設定点を所定の最小圧力閾値未満にすると判定することに応答して、設定点を維持することと、設定点を所定の量だけ減少させることが設定点を所定の最小圧力閾値未満にしないと判定することに応答して、設定点を所定の量だけ減少させることと、を行うように構成されている、プロセッサも含む。
【0011】
このシステムは、あらゆる方法で変更可能である。例えば、流体は、所定の時間量が経過したことをポンプが最初に判定する前に、複数分の間、設定点に従って関節にポンピングされ得、設定点の減少は、複数分が経過した後に行われ得、流体は、複数分が経過した後に、減少した設定点に従って関節にポンピングされ得る。別の例の場合、流体は、所定の時間量が経過したかどうかをポンプが最初に判定する前に、第1の所定の時間量の間、設定点に従って関節にポンピングされ得る。更に別の例の場合、ポンプは、設定点を内部に記憶するように構成されたメモリを含むことができ、ポンプは、プロセッサを含むことができる。また更に別の例の場合、流体は、生理食塩水とすることができる。
【0012】
別の態様において、一実施形態では、外科的方法が提供され、この方法は、外科的処置の実施中に手術部位に流体をポンピングして、手術部位における流体圧力を圧力設定点に調整することと、手術部位における流体損失を推定することと、推定された流体損失に従って、外科的処置の実施と共にリアルタイムで、圧力設定点を調節することと、を含む。
【0013】
外科的方法は、あらゆる方法で変更可能である。例えば、流体損失を推定することは、外科的処置の実施中に、ある期間にわたって手術部位にポンピングされた流体の流量を監視することを含むことができ、調節することは、流体が第1の期間中に圧力設定点に従って、かつその期間の後に調節された圧力設定点に従って、手術部位にポンピングされるように、その期間の後に行われ得る。別の例の場合、調節された圧力設定点に従って手術部位に流体をポンピングすることは、手術部位における流体圧力を徐々に低下させることができる。
【0014】
また更に別の例の場合、外科的方法はまた、外科的処置の実施中に、手術部位から流体をポンピングすることを含むこともでき、流体損失を推定することは、手術部位にポンピングされた流体の流量から、手術部位からポンピングされた流体の流量を減算することを含むことができる。いくつかの実施形態では、流体損失を推定することはまた、外部吸引源によって影響を受ける流量を示す流体流量測定値をフィルタリングすることを含むこともできる。
【0015】
また更に別の例の場合、流体損失の推定は、外科的処置の実施中の複数分にわたるものとすることができ、流体は、複数分の間、圧力設定点に従って手術部位にポンピングされ得、調節することは、複数分が経過した後に行われ得、流体は、複数分が経過した後に、調節された圧力設定点に従って手術部位にポンピングされ得る。別の例の場合、潅注ポンプは、手術部位に流体をポンピングすることができ、プロセッサは、手術部位への流体のポンピングを制御することができ、推定すること及び調節することを実施することができる。更に別の例の場合、関節鏡視下ポンプは、手術部位に流体をポンピングすることができ、手術部位から流体をポンピングすることができ、手術部位は、関節を含むことができ、流体は、生理食塩水とすることができる。
【0016】
別の実施形態では、外科的方法は、外科的処置の実施中に、関節圧力設定点に従って関節に流体をポンピングすることと、外科的処置の実施中に、関節からの流体漏出を監視することと、監視することに基づいて、外科的処置の実施中に関節圧力設定点を変更し、外科的処置の実施中に、変更された関節圧力設定点に従って関節に流体をポンピングすることと、を含む。
【0017】
外科的方法は、任意の数の変形例を有することができる。例えば、外科的処置の実施中に、変更された関節圧力設定点に従って関節に流体をポンピングすることは、関節における流体圧力を徐々に低下させることができ、関節からの流体漏出を制御することができる。いくつかの実施形態では、外科的方法はまた、流体圧力を徐々に低下させる割合、及び最小流体圧力限界のうちの少なくとも1つを設定することを含むこともできる。
【0018】
別の例の場合、外科的方法はまた、外科的処置の実施中に、関節から流体をポンピングすることを含むこともでき、関節圧力設定点を変更することは、関節にポンピングされた流体の流量から、関節からポンピングされた流体の流量を減算することを含むことができる。更に別の例の場合、外科的方法はまた、外科的処置の実施中に、基準線入口漏出を決定することを含むこともできる。別の例の場合、潅注ポンプは、関節に流体をポンピングすることができ、プロセッサは、関節への流体のポンピングを制御することができ、監視すること及び変更することを実施することができる。なおも別の例の場合、流体は、生理食塩水とすることができる。
【0019】
別の実施形態において、外科的方法は、外科的処置の実施中に手術部位に流体をポンピングして、手術部位における流体圧力を圧力設定点に調整することと、流体のポンピングが開始した後に、外科的処置の実施と共にリアルタイムで、圧力設定点を所定の最小圧力閾値未満に降下させることなく、複数の所定の時間の各々において圧力設定点を減少させることと、を含む。
【0020】
この方法は、任意の数の変形例を有することができる。例えば、減少した圧力設定点に従って手術部位に流体をポンピングすることは、手術部位における流体圧力を徐々に低下させることができる。別の例の場合、流体は、所定の時間量が経過したことをポンプが最初に判定する前の複数分の間、圧力設定点に従って手術部位にポンピングされ得、減少させることは、複数分が経過した後に行われ得、流体は、複数分が経過した後に、減少した圧力設定点に従って手術部位にポンピングされ得る。更に別の例の場合、方法はまた、圧力設定点が所定の最小圧力閾値未満に降下することを防止するように、圧力設定点を減少させる代わりに、所定の時間のうちの別の1つの時間において圧力設定点を維持することを含むこともできる。また更に別の例の場合、方法はまた、流体が手術部位にポンピングされ始めてから第1の所定の時間量が経過したことを判定することを含むこともでき、複数の所定の時間のうちの第1の時間の経過は、第1の所定の時間量が経過した後まで行われることができない。別の例の場合、潅注ポンプは、手術部位に流体をポンピングすることができ、プロセッサは、手術部位に流体をポンピングすることを制御し、減少させることを実施することができる。また更に別の例の場合、関節鏡視下ポンプは、手術部位に流体をポンピングすることができ、手術部位から流体をポンピングすることができ、手術部位は、関節を含むことができ、流体は、生理食塩水とすることができる。
【0021】
別の実施形態では、外科的方法は、外科的処置の実施中に、関節圧力設定点に従って関節に流体をポンピングすることと、流体のポンピング中に、所定の時間量の経過を監視することと、監視することに基づいて、外科的処置の実施中に関節圧力設定点を減少させ、外科的処置の実施中に、減少した関節圧力設定点に従って関節に流体をポンピングすることと、を含む。関節圧力設定点は、所定の最小圧力閾値未満に減少されない。
【0022】
この方法は、あらゆる方法で変更可能である。例えば、外科的処置の実施中に、変更された関節圧力設定点に従って関節に流体をポンピングすることは、関節における流体圧力を徐々に低下させることができ、関節からの流体漏出を制御する。別の例では、方法はまた、関節圧力設定点の各減少量、及び所定の最小圧力閾値のうちの少なくとも1つを設定することを含むこともできる。更に別の例の場合、所定の時間量の経過を監視することは、第1の所定の時間量の経過を監視すること、及びその後に第2の所定の時間量の経過を繰り返し監視することを含むことができ、関節圧力設定点は、第2の所定の時間量の最初の監視された経過まで減少されることができない。また更に別の例の場合、関節圧力設定点は、所定の時間量の最初の監視された経過まで減少されることができない。更に別の例の場合、潅注ポンプは、関節に流体をポンピングすることができ、プロセッサは、関節への流体のポンピングを制御することができ、監視すること及び減少させることを実施する。別の例の場合、流体は、生理食塩水とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
本開示は、以下の詳細な説明を添付図面と併せ読むことで、より完全に理解されよう。
【
図1】関節鏡視下流体ポンプの一実施形態の斜視図である。
【
図2】流入管材、シース、及び流出管材を介して手術部位に動作可能に結合された、
図1のポンプのブロック図である。
【
図3】
図1のポンプの流体管理の一実施形態の状態図である。
【
図4】流体管理のプロセスの一実施形態のフローチャートである。
【
図5】関節圧力対手術時間、及び入口漏出流量対手術時間を示すグラフである。
【
図6】流体管理のプロセスの別の実施形態のフローチャートである。
【
図7】流体管理のプロセスの更に別の実施形態のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
ここで、本明細書で開示するデバイス及び方法の構造、機能、製造、及び使用の原理の全体的な理解が得られるように、特定の例示的な実施形態を説明する。これらの実施形態の1つ又は2つ以上の実施例が、添付の図面に例解されている。当業者であれば、本明細書で詳細に説明し、添付の図面に示されるデバイス、システム、及び方法は、非限定的な例示的実施形態であり、本発明の範囲は、特許請求の範囲のみによって定義されることが理解されるであろう。例示的な一実施形態に関連して例解又は記載される特徴は、他の実施形態の特徴と組み合わせることができる。このような改変及び変形は、本発明の範囲内に含まれるものとする。
【0025】
更に、本開示においては、実施形態の同様の名称の構成要素は概して同様の特徴を有するものであり、したがって、特定の実施形態において、同様の名称の各構成要素の各特徴については必ずしも完全に詳しく述べることはしない。追加的に、開示されるシステム、デバイス、及び方法の説明で直線寸法又は円寸法が使用される限りにおいて、そのような寸法は、そのようなシステム、デバイス、及び方法と組み合わせて使用することができる形状の種類を限定しようとするものではない。当業者には、そのような直線寸法及び円寸法に相当する寸法を、任意の幾何学的形状について容易に決定することができる点が認識されるであろう。システム及びデバイス、並びにその構成要素のサイズ及び形状は、少なくとも、システム及びデバイスが内部で使用される対象の解剖学的構造、システム及びデバイスが使用される構成要素のサイズ及び形状、並びにシステム及びデバイスが使用される方法及び手術に依存し得る。
【0026】
当業者であれば、ある時間が正確には必ずしもある時間でない場合であっても、測定器の感度などの任意の数の要因に起因して、概ねその時間であるとみなしてもよいことを理解するであろう。当業者であれば、ある値が正確には必ずしもある値でない場合であっても、測定器の感度などの任意の数の要因に起因して、実質的にその値であるとみなしてもよいことを理解するであろう。
【0027】
概して、関節鏡視下ポンプの生理食塩水管理のためのデバイス、システム、及び方法が提供される。例示的な実施形態では、ポンプを含むポンプシステムは、外科的処置の実施中に、そのポンプによって手術部位にポンピングされる流体を管理するように構成されている。このポンプシステムは、手術部位における流体圧力を維持するように構成されている。しかしながら、手術部位における流体圧力を維持することは、経時的に軟質組織を伸張又は弛緩させ、したがって、流体の漏出を増加させることになる。したがって、外科的処置が長く続くほど、多くの流体がますます漏出することになり、それによって、流体圧力を維持するために、手術部位にポンピングされる流体をますます多く必要とする。流体が手術部位にポンピングされる外科的処置の長さは、異なるが、少なくとも約20分継続し、約3時間継続し、状況によっては約3時間より長く継続する場合がある。約20分~約40分後、軟質組織は、典型的には、流体漏出を悪化させるほど膨張する。手術部位にポンピングされる流体を管理するように構成されているポンプシステムは、そのポンプシステムが、本明細書では入口損失とも称される、手術部位における流体損失を監視することによって、手術部位における流体圧力を管理することができる。言い替えると、ポンプシステムは、入口において伸張された軟質組織によって引き起こされる流体漏出を監視するように構成され得る。
【0028】
流体損失を監視することにより、流体損失が外科的処置の過程にわたって増加するにつれて、ポンプシステムが手術部位において維持されている流体圧力を減少させることができる。流体圧力がより低いほど、その流体圧力を維持するようにポンピングされる流体がより少なくなる。したがって、外科的処置の全長にわたって手術部位により少ない流体をポンピングすることができるため、外科的処置においてより少ない流体を使用することができ、それによって、外科的処置毎の生理食塩水のコストを節約する。外科的処置の全長にわたってより少ない流体が要求されるため、外科的処置において、より少ない流体供給バッグ(又は他の供給容器)が要求され得、それによって、看護師及び/又は他の医療関係者が外科的処置中に使用済み又は部分的に使用済みの供給バッグ(又は他の供給容器)を交換する時間を節約する。ほとんど又は全ての組織切断が外科的処置の初期段階で行われる傾向があるため、生理食塩水は、典型的には、外科的処置の後半において、外科的処置の初期段階ほど多くの出血を制御する必要がなく、したがって、外科的処置の後半に手術部位への生理食塩水送達を低下させることは、出血制御に悪影響を及ぼさない。
【0029】
いくつかの実施形態では、手術部位にポンピングされる流体を管理するように構成されているポンプシステムは、そのポンプシステムが、所定のタイミングスケジュールに従って、手術部位における流体圧力を管理することが可能である。そのような実施形態では、手術部位における流体損失は、監視される必要はない。代わりに、所定のタイミングスケジュールは、流体損失が外科的処置の過程にわたって増加するにつれて、ポンプシステムが、手術部位において維持されている流体圧力を低下させることが可能である。手術部位における流体損失を監視しないことにより、ポンプシステムのより単純なプログラミングを可能にすることができ、かつ/又はポンプシステム上に搭載されたより少ない及び/若しくはより小さい処理リソース(例えば、プロセッサ、メモリなど)を可能にすることができる。より単純なプログラミング、並びにより少ない及び/又はより小さい処理リソースは、それぞれ、手術部位における流体損失を監視するように構成されたポンプシステムよりも安価なポンプシステム及び/又はより小さいポンプシステムを可能にすることができる。
【0030】
典型的な実施形態では、本明細書に説明されるポンプ流体管理のデバイス、システム、及び方法は、関節鏡視下ポンプを用いた関節鏡視下の外科的処置の文脈で使用される。本明細書に説明されるポンプ流体管理は、関節鏡視下ポンプ及び関節鏡視下の使用に関して考察されるが、本明細書に説明されるポンプ流体管理は、非関節鏡視下の外科的処置において、かつ他のタイプのポンプを用いて使用され得る。加えて、本明細書に説明されるポンプ流体管理は、手術部位にポンピングされる生理食塩水を管理するように実装することができ、手術部位にポンピングされる他のタイプの流体ポンプも、同様に管理することができる。
【0031】
関節鏡視下ポンプの一例として、Depuy Mitek of Raynham社、MAから入手可能なFMS VUE(登録商標)IIがある。関節鏡視下ポンプの種々の実施形態、関節圧力推定の種々の実施形態、及びポンプと共に使用することができる組織シェーバーの様々な実施形態が、2020年12月29日に公開された「Methods,Systems,And Devices For Joint To Pump Elevation Level User Interfaces,Autocalibration For Joint Elevation,And Joint Pressure Estimation」と題する米国特許第10,874,776号、2017年10月10日に公開された「Tissue Shaving Device Having A Fluid Removal Path」と題する米国特許第9,782,193号、2015年11月17日に公開された「Tissue Shavers」と題する米国特許第9,186,166号、及び2017年5月4日に刊行された「Anti-Clogging Fluid Management System」と題する米国特許出願公開第2017/0120039号に更に記載されており、これらは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0032】
図1及び
図2は、ポンプ10によって手術部位100にポンピングされる流体を管理するように構成された関節鏡視下ポンプ10を含むポンプシステムの一実施形態を例示している。典型的な実施形態では、手術部位100は、膝又は肩などの関節にある。
【0033】
ポンプ10は、様々な構成を有することができる。この例示された実施形態では、
図3にも示されるように、ポンプ10は、手術部位100に流体をポンピングするように構成された、本明細書では「流入ポンプ」とも呼ばれる、潅注ポンプ28を含み、ポンプ10は、手術部位100から流体をポンピングするように構成された、本明細書では「流出ポンプ」とも呼ばれる、吸引ポンプ30を含む。典型的な実施形態では、流体は、生理食塩水であるが、上述したように、別の流体とすることができる。ポンプ10は、流体がポンプ10と手術部位との間で流れることを可能にするための関節流入管材102を含む。
図2は、流入管材102を介して手術部位100に動作可能に接続されたポンプ10を概略的に例示しており、吸引ポンプ30に、そしてその後、廃棄物リザーバに戻る流出管材104を例示している。ポンプ10はまた、手術部位100にポンピングされる流体を内部に収容する充填チャンバ又はリザーバ12も含む。チャンバ12は、この例示された実施形態のように、流体の流れを滑らかにし、かつリザーバ12の上部にある感知管を用いて圧力感知を提供するために使用することができる。圧力は、チャンバ12内の流体レベルで感知され、よって、流体レベルは、有効な圧力センサ場所である。
【0034】
この例示された実施形態のポンプ10は、手術部位100における流体圧力を推定するように構成されている。上述したように、典型的な実施形態では、手術部位100は、関節のところにあり、このため、ポンプ10は、関節における流体圧力を推定するように構成されている。
【0035】
ポンプシステムはまた、潅注ポンプ及び吸引ポンプを制御するように構成されているプロセッサ22も含む。ポンプ10は、リザーバ12内の流体圧力、及びポンプモータ速度、例えば、ポンプ10を駆動するように構成されたモータ24の速度に基づいて、ポンプ10における流体圧力を測定するように構成されている。ポンプ10は、プロセッサ22によって制御されるときに、ポンプ10において測定される圧力を調節するように構成されて、1つ又は2つ以上の制御アルゴリズムを使用して、手術部位100における推定された圧力を決定する。1つ又は2つ以上の制御アルゴリズムは、ポンプシステムのメモリ26に記憶され、プロセッサ22によって実行可能である。プロセッサ22及びメモリ26は、
図2では、ポンプ10の一部として示されているが、他の実施形態では、プロセッサ22及び/又はメモリ26は、ポンプシステム内の他の場所に配置することができる。例えば、コンピュータシステム、例えば、ラップトップコンピュータ、デスクトップコンピュータ、タブレットコンピュータ、サーバなどは、ポンプ10と(有線及び/又は無線で)通信するように構成され、プロセッサ22及び/又はメモリ26を含むことができる。
【0036】
ポンプシステムはまた、ポンプ10とのユーザー対話を容易にするように構成されたユーザーインターフェースも含む。ユーザーインターフェースは、外科的処置の実施中に、ポンプ10の使用によって、リアルタイムで関節圧力(この例示された実施形態では、mmHg単位)を表示するように構成された第1のディスプレイ14を含む。第1のディスプレイ14上に示された流体圧力は、手術部位における流体の推定された圧力である。ユーザーインターフェースはまた、ポンプ10に動作可能に結合されたシェーバーの速度(この例示された実施形態では、毎分回転数(RPM))を表示するように構成された第2のディスプレイ16も含む。この例示された実施形態における第2のディスプレイ16はまた、ポンプ充填チャンバアイコン18と、ポンプ充填チャンバアイコン18に対して3つの位置のうちの1つに存在して、手術部位100が充填チャンバ12の上方に持ち上げられている(患者アイコン20が上部位置にある)か、手術部位100が充填チャンバ12と同じ高さにある(患者アイコン20が中央又は中立の位置にある)か、又は手術部位100が充填チャンバ12よりも下方にある(患者アイコン20が下方の位置にある)かどうか、を示すように構成された患者アイコン20と、を示すようにも構成されている。
【0037】
この例示された実施形態のポンプ10は、手術部位100における流体圧力を推定するように構成されている。この推定は、外科的処置の実施と共にアルタイムで計算される。この推定は、様々な方法で計算することができる。この例示された実施形態では、手術部位100における推定された流体圧力は、ポンプ10と手術部位100との間の高さの差、及び流体がポンプ10と手術部位100との間で流れる管材のうちの少なくとも1つに基づく。典型的な実施形態では、ポンプ10は、これらの2つの要因の各々に基づいて圧力を推定するように構成されているが、圧力は、これらの要因のうちの1つのみを使用して推定することができる。流入管材102及び流出管材104の各々は、関連付けられたシースを有し、その場合、流体圧力は、管材102及びその関連付けられたシースに基づいて推定することができる。
【0038】
図4は、ポンプによって手術部位にポンピングされた流体を管理するプロセス200の一実施形態を例示している。プロセス200は、
図1~
図3のポンプ10に関して説明されているが、他のポンプも同様に使用することができる。また、プロセス200は、関節のところにある手術部位100に関して説明されているが、他の手術部位も可能である。
【0039】
プロセス200において、ポンプ10、例えば、流入ポンプ28は、手術部位100における圧力の設定点300に従って、流入管材102を通して手術部位100に流体をポンピングする202。この例示された実施形態における設定点300は、
図5のグラフに示されるように、60mmHgである。設定点300は、手術部位100についての目標圧力を反映する。設定点300は、メモリ26に記憶されている変更不可能であり、かつ予めプログラミングされた値とすることができる。あるいは、設定点300は、ポンプ10が手術部位100に流体をポンピングし始める前に、外科医又は他のユーザーが、例えば、圧力±矢印ボタン及び実行/停止ボタンを使用するポンプのユーザーインターフェースを介して、特定の外科的処置のためにポンプ10に入力することができる調節可能な値とすることができる。次いで、入力設定点は、メモリ26に記憶することができる。
【0040】
ポンプ10が手術部位100に流体をポンピングする202と、ポンプ10、例えば、そのプロセッサ22は、手術部位100における流体損失を推定する204。
図5のグラフは、手術時間(時間:分)にわたる入口漏出流量(mL/分)を示す線302を示しているが、ここで、手術時間は、ポンプが外科的処置において流体をポンピングしている時間の長さを反映する。典型的な実施形態では、流体損失を推定すること204は、手術部位100にポンピングされた流体の流量を監視することを含むことができる。流量を監視する実施形態が、以下に更に説明される。
【0041】
ポンプ10が手術部位100に流体をポンピングする202と、ポンプ10、例えば、そのプロセッサ22は、設定点を調節する206。この調節206は、ポンプ10が手術部位100に流体をポンピングし202、かつポンプ10、例えば、流出ポンプ30が手術部位100から流体をポンピングする状態で、ポンプ10が使用されている外科的処置の実施と共にリアルタイムで行われる。調節206は、手術部位100における推定された204流体損失に基づく。一般に、ポンプ10、例えば、そのプロセッサ22は、推定204流体損失を使用して、設定点をより低い圧力値に調節する206。設定点を調節する実施形態が、以下で更に説明される。より低い圧力が手術部位100に維持される必要があるため、設定点を低減することは、より少ない流体が手術部位100にポンピングされることを可能にする。
【0042】
設定点調節206の後、ポンプ10は、ここでより低い圧力値に調節された設定点に従って、手術部位100に流体をポンピングし続ける202。
図5のグラフは、手術部位100における圧力が約40分経過した手術時間(0:40)から減少することを示す点線304を示しているが、これは、設定点調節206が外科的処置において最初に行われたときである。この減少は、設定点調節206、及びその調節された206設定点に従ったポンプの流体のポンピング202に起因する。設定点が調節されず206、その後、手術部位100に流体をポンピングすることを制御する際に使用される場合、関節圧力は、元の設定点300(この例示された実施形態では、60mmHg)に留まることになる。
図5のグラフはまた、手術時間にわたる設定点調節後の入口漏出流量を示す点線306も示している。入口漏出流量306は、調節された206設定点が約40分経過した手術時間において使用され始めると、実質的に一定である。入口漏出流量306は、この例示された実施形態では、実質的に、約150mL/分で一定であるが、設定点調節後の入口漏出流量306は、別の外科的処置では異なる可能性がある。設定点が調節されず206、その後、手術部位100にポンピングする流体を制御する際に調節されるときに使用される場合、入口漏出流量は、実質的に一定(線306)ではなく、外科的処置が経時的に継続するにつれて、逆に増加し続けることになる(線302)。
【0043】
上述したように、この例示された実施形態におけるポンプ10は、手術部位100における流体圧力を推定するように構成されている。
図5のグラフはまた、圧力対手術時間の線308と、手術部位における流体圧力を推定しない代わりにポンプにおける流体圧力を測定するポンプについての入口漏出流量対手術時間の線310と、を示している。ポンプ圧力は、高さ、管材、又はシースの損失という理由から、手術部位圧力と等しくない。時間ゼロ(ポンプが流体をポンピングする開始時間)から、漏出流量線310は、組織が軟質化して、より多くの入口損失が生じるにつれて増加し、よって、圧力線308は減少する。低下する圧力は、最終的に、
図5のグラフにおける約1:10の時間において、経時的により少ない漏出を引き起こし始めるが、その理由は、組織がより少なく軟質化し、かつ/又は軟質化のピークに到達したからである。言い替えると、線310によって反映されているように、入口漏出流量は、そのようなポンプを使用するときに自然に修正されるが、これは、圧力がポンプにおいて測定されていることに起因して、圧力が経時的に自然に減少するためであり、これは、高さ、管材、又はシースの損失を考慮していない。関節圧力は、そのようなポンプを用いて経時的に減少する場合があるが、圧力は、外科的処置を実施する外科医及び/又は他の医療専門家にとっては既知ではなく、圧力は、所望の最小圧力未満に降下する可能性があり、それによって、外科的処置の実施をより困難にする。
図5は、約1:45の時間においてポンプに生じている(線310)、約200mmHgの所望の最小圧力未満のこの望ましくない降下を示している。所望の最小圧力は、この示された例では、約40mmHgであるが、別の値、例えば、約40mmHg、約35mmHg、約30mmHg、約25mmHg、約20mmHgなどの約20mmHg~約40mmHgの範囲内の値、又は別の値とすることができる。逆に、設定点が調節されている、ポンプ10についての圧力対時間の点線304は、以下で更に説明されるように、圧力が約40mmHgの所望の最小圧力未満に決して降下しないことを示している。加えて、ポンプ10についての圧力対時間の点線304は、所望の最小圧力が約1:45の時間に到達していることを示しているが、これに対して、他のポンプの圧力対時間の点線310は、所望の最小圧力がもっと前に約1:30の時間において到達していることを示している。したがって、ポンプ10は、他のポンプが達成することができるよりも長い間、手術部位100における圧力をより高くすることが可能である。
【0044】
図6は、ポンプによって手術部位にポンピングする流体を管理するプロセス400の一実施形態を例示している。このプロセス400は、
図1~
図3のポンプ10に関して説明されているが、他のポンプも同様に使用することができる。また、プロセス400は、関節に存在する手術部位100に関して説明されているが、他の手術部位も可能である。
【0045】
プロセス400において、ポンプ10、例えば、流入ポンプ28は、手術部位100における圧力の設定点に従って、流入管材102を通して手術部位100に流体をポンピングする402。上述したように、設定点は、ポンプのメモリ26に記憶することができ、予め設定された値又は調節可能な値とすることができる。流体を手術部位100にポンピングするための設定点は、
図3の変数Pjoint_Setpointによって表される。関節圧力は、
図3の変数Pjointによって表される。
【0046】
プロセス400は、ポンプ10が流体節約モードにあるかどうかを判定すること404を含む。この例示された実施形態のポンプ10は、2つの流体管理モードを有する。第1の非流体節約モードでは、ポンプ10は、外科的処置におけるポンプの使用全体にわたって流体の流れを管理する際に同じ設定点を使用する。この非流体節約モードでは、設定点は、その設定点が設定された(予め設定されたか、又はユーザーによって設定されたかのいずれかの)後には、調節されない。第2の流体節約モードでは、ポンプ10は、外科的処置においてポンプを使用する間に、例えば、ポンプ10が手術部位100に流体をポンピングすると共にリアルタイムで、設定点を調節することができる。したがって、第2のモードにあるポンプ10は、外科的処置中の異なる時間において異なる設定点を使用することができる。他の実施形態では、ポンプは、流体節約モードのみを含むことができる。そのような実施形態では、プロセス400は、流体節約モードがオン状態であるかどうかを判定すること404を含まない。
【0047】
ポンプ10は、外科医又は他のユーザーを促して、例えば、ポンプのユーザーインターフェースを介して、非流体節約モード又は流体節約モードを選択させることができる。外科医又は他のユーザーは、例えば、ポンプ10が使用されることになる外科的処置が比較的短く、したがって、入口漏出が多くの、又は任意の悪影響を引き起こすことになる処置ではないと予想される場合、ポンプ10が非流体節約モードで動作することを決定できる。一般に、入口漏出は、約30分~約60分後に、例えば、生理食塩水の使用の増加を必要とすること、膨張を引き起こすこと、視認性の低下を引き起こすことなどの悪影響を引き起こし始める傾向がある。したがって、外科医又は他のユーザーは、例えば、約30分未満、約40分未満、約50分未満、又は約60分未満であると予想される外科的処置のために、非流体節約モードを選択することを決定できる。例として
図5のグラフを使用すると、外科的処置は、約40分以下と予想することができ、この場合、流体節約モードと非流体節約モードとの間で流体管理に差はない。外科医又は他のユーザーは、例えば、ポンプ10が使用されることになる外科的処置が比較的長いと予想されるか、又は別の例について、外科医又は他のユーザーが、外科的処置が予想よりも長く続く場合、流体節約モードを有効にする保守的なアプローチを好む場合に、ポンプ10が流体節約モードで動作することを決定できる。典型的な実施形態では、モード指示は、ポンプ10が流体をポンピングし始める402前に、提供される。しかしながら、このモード指示は、ポンプが流体をポンピングし始めること402と、最初の所定の時間量との間のある時点で提供することができる(以下で更に説明される)。
【0048】
ポンプ10が、例えば、メモリ26に記憶されたモードフラグをチェックすることによって、非流体節約モードにあると判定される404場合、ポンプ10は、外科的処置におけるポンプの使用全体にわたって、予め設定された設定点に従って流体をポンピングする406。ポンプ10が流体節約モードにある場合、ポンプ10は、手術部位100への流体の流量を監視する408。一般に、監視すること408は、手術部位における流体損失を推定する。典型的な実施形態では、手術部位100への流体の流量を監視すること408は、ポンピング402の開始から最初の所定の時間量、例えば、
図5のグラフの時間ゼロから経過した時間の間に、所定の頻度で、例えば、5秒毎に、10秒毎に、15秒毎に、20秒毎に、25秒毎に、30秒毎に、又は別の頻度で、流量を測定することを含む。流量を測定することは、手術部位100にポンピングされる流体の流量(
図3のQoutによって表される)から、手術部位100からポンピングされる流体の流量(
図3のQinによって表される)を減算することを含む。概して、最初の所定の時間量は、入口漏出が悪影響を引き起こし始める可能性が低い時間量である。例えば、最初の所定の時間量は、約10分~約15分の範囲内、例えば、10分、11分、12分、13分、14分、15分、又は別の時間量であり得るが、他の最初の所定の時間量も可能である。ポンプ10は、任意の突然変化した流量測定値を、そのような測定値をフィルタリング除去するフィルタを使用して除外するように構成することができ、そのような突然変化した流量測定値は、外部吸引源(例えば、RF電極、外部吸引を伴うシェーバーなど)によって影響を受ける流量を示している。
【0049】
例えば、ポンプのプロセッサ22と通信するタイマー又はカウンタを使用して、ポンプ10が、最初の所定の時間量が経過したと判定する410まで、ポンプ10が流体をポンピングし続ける402ときに、監視すること408は、継続する。監視された408流量の平均、例えば、各(Qin-Qout)測定値の平均は、ポンプ10によって、例えば、そのポンプのプロセッサ22によって計算することができ、基礎入口漏出値を表す。この平均は、流体がポンピングされている特定の組織、初期設定点、及び/又は他の要因などの1つ又は2つ以上の要因という理由で、異なる外科的処置において異なる可能性が高いであろう。
【0050】
最初の所定の時間量が経過したと判定された410ときに、ポンプ10は、第2の所定の時間量が経過したと判定される414まで、設定点に従って流体をポンピングし続ける412。例えば、この例示された実施形態のように、最初の所定の時間量が約40分である場合、ポンプ412は、第2の所定の時間量が
図5のグラフの時間0:40から経過するまで、流体をポンピングし続ける412。一般に、第2の所定の時間量は、設定点がどのくらいの頻度で調節されるかを画定する。典型的な実施形態では、第2の所定の時間量は、約3分未満である非ゼロの時間、例えば、約3分、約2.5分、約2分、約1.5分、約1分、約30秒、約20秒、又は約別の時間量である。
【0051】
第2の所定の時間量が経過したと判定された414ときに、ポンプ10は、調節された設定点を計算する416。設定点を計算すること416は、現在の測定された入口漏出を基礎入口漏出と比較することを含む。したがって、ポンプ10は、第2の所定の時間量が経過したと判定された414ときに、手術部位100への流体の流量を測定して、現在の測定された入口漏出を識別する。現在の測定された入口漏出が基礎入口漏出に漏出偏差を加えたものよりも大きい場合、ポンプ10は、設定点を所定の減少量だけ減少させて、調節された設定点を達成する。この所定の減少量は、例えば、1mmHg、0.5mmHg、2mmHg、又は別の量とすることができる。漏出偏差は、入口漏出が基礎入口漏出を設定値だけ超えないことを確実にするのに役立つ予め設定された値である。典型的な実施形態では、漏出偏差は、30mL/分~50mL/分の範囲内の値である。この例示された実施形態では、漏出偏差は、40mmHgである。いくつかの実施形態では、漏出偏差は、時間依存的であり得、所望の経時的な流体使用プロファイルに基づいて、経時的に変化し得る。例えば、外科的処置がより長く続くほど、手術部位100における圧力をより低くする必要があるため、漏出偏差は、一定の割合で経時的に低減し得る。現在の測定された入口漏出が基礎入口漏出に漏出偏差を加えたものよりも小さい場合、ポンプ10は、設定点を所定の増加量だけ増加させて、調節された設定点を達成する。所定の増加量は、例えば、1mmHg、0.5mmHg、2mmHg、又は別の量とすることができる。典型的な実施形態では、所定の増加量は、所定の減少量と同じであるが、このことは、外科的処置を実施する外科医及び/又は他の医療専門家によって実質的に検出不可能な円滑な圧力遷移を維持するのに役立ち得る。
【0052】
いくつかの実施形態では、所定の減少量及び増加量は、予め設定され、かつ調節不可能である。他の実施形態では、所定の減少量及び増加量は、ポンプのユーザーインターフェースを介して入力されることなどによって、ユーザーによって調節可能である。ユーザーは、外科医の好み、実施されている外科的処置のタイプ(例えば、半月板切除、ACL修復、PCL修復、関節唇手術、回旋腱板手術、二頭筋手術、股関節手術など)、及び/又は他の要因に基づいて、異なる外科的処置において異なる所定の減少量及び増加量を所望することができる。
【0053】
手術部位100に流体をポンピングする際に使用するための新しい設定点として、調節された設定点をメモリ26に記憶する前に、ポンプ10、例えば、そのポンプのプロセッサ22は、調節された設定点が所定の最小圧力閾値よりも大きいかどうかを判定する418。この所定の最小圧力閾値は、例えば、それが低すぎる圧力の悪影響をもたらす可能性があるために、ポンプ10が手術部位100においてそれ以下に維持するべきではない最小圧力を表す。この例示された実施形態では、所定の最小圧力閾値は、圧力の点線304が40mmHgを下回らない
図5のグラフに反映されているように、40mmHgである。したがって、入口漏出流量はまた、
図5の示された例では200mL/分である最小レベルを下回ることを防止することもできる。いくつかの実施形態では、所定の最小圧力閾値は、予め設定され、かつ調節不可能である。他の実施形態では、最小圧力閾値は、ポンプのユーザーインターフェースを介して入力させることなどによって、ユーザーによって調節可能である。ユーザーは、外科医の好み、実施されている外科的処置のタイプ(例えば、半月板切除、ACL修復、PCL修復、関節唇手術、回旋腱板手術、二頭筋手術、股関節手術など)、及び/又は他の要因に基づいて、異なる外科的処置において異なる最小圧力閾値を所望することができる。
【0054】
調節された設定点が所定の圧力閾値よりも大きくない場合、ポンプ10は、メモリ26に記憶された設定点を維持し420、流体は、メモリ26に既に記憶された設定点に従って、手術部位100にポンピングされ続ける412。言い替えると、調節された設定点は、流体をポンピングする際に使用するための新しい設定点としてメモリ26に保存されない。調節された設定点が所定の圧力閾値よりも大きい場合、ポンプ10は、調節された設定点を新しい設定点としてメモリ26に保存することによって、メモリ26に記憶された設定点を変更する422。
【0055】
次いで、流体は、新しく決定された調節された設定点である、メモリ26に記憶された設定点に従って、手術部位100にポンピングされ続ける412。したがって、設定点が外科的処置の実施中に経時的に繰り返し調節され、流体が設定点に従って手術部位にポンピングされる412ときに、手術部位100における流体圧力は、例えば、約0.1mmHg~約0.2mmHg/分の範囲内のある割合で徐々に低減させることができるが、
図5のグラフに反映されているように、所定の最小圧力閾値未満に降下しない。
【0056】
プロセス400は、ポンプ10が手術部位100に流体をポンピングすることを停止するまで、継続する。
【0057】
いくつかの実施形態では、最初の所定の時間量が経過したと判定された410ときに第2の所定の時間量を待つ代わりに、ポンプ10は、第2の所定の時間量が経過したかどうかを最初に判定する414ことなく、設定点を調節する416ことができる。したがって、設定点を最初に調節する416前に、ポンプ10が設定点を調節する416前に経過した時間は、実質的にゼロとすることができる。
【0058】
プロセス400は、ポンプ流入のための設定点を維持することに関して説明されているが、ポンプ流出のための設定点も同様に管理することができる。手術部位100から流体をポンピングするための設定点は、
図3の変数Qout_Setpointによって表され、ポンプ流出のための管理された設定点である。
【0059】
デュアルポンプシステム、例えば、流入ポンプ28及び流出ポンプ30を含む、
図3に示されている、流体流出のための第1のポンプ、及び流体流出のための第2のポンプでは、ポンプ流体管理は、上で説明したように、実装され得る。他の実施形態では、関節鏡視下ポンプ(又は他のタイプのポンプ)は、手術部位に流体をポンピングするように構成された単一ポンプシステムとして構成することができ、例えば、潅注ポンプを含むことができるが、手術部位から流体をポンピングすることはできない。そのような単一ポンプシステムでは、本明細書で説明されるようなポンプ流体管理は、流出がゼロであると仮定した上で実装され得る。言い替えると、手術部位にポンピングされる流体の流量(Qoutによって表される)は、ゼロであると仮定されている。
【0060】
図6のプロセス400は、手術部位への流体の流量を監視すること408を含むが、上述したように、いくつかの実施形態では、ポンプシステムは、手術部位への流体の流量を監視しない。したがって、そのような実施形態におけるポンプシステムは、手術部位における流体損失を推定しない。代わりに、上述したように、ポンプシステムは、所定のタイミングスケジュールに従って、手術部位における流体圧力を管理するように構成されている。この所定のタイミングスケジュールは、ポンプが手術部位に流体をポンピングし始める前に、ポンプにおいて、例えば、メモリ26などのメモリに予めプログラミングすることができる。この所定のタイミングスケジュールは、経過時間に基づいて手術部位における圧力の設定点の調節を制御し、その結果、設定点は、ポンプが手術部位に流体をポンピング開始後、所定の時間においてのみ調節することができる。したがって、このポンプは、
図6のプロセス400におけるような、手術部位への流体の流量を監視し、実装するように構成されたポンプよりも、より単純なプログラミング、より低いコスト、及び/又はより小さいサイズを有することができる。
【0061】
ポンプは、調節により設定点が所定の最小圧力閾値未満になる場合、いくつかの所定の時間のうちの任意の1つ又は2つ以上の時間における設定点も調節しないように構成されている。所定の最小圧力閾値は、例えば、低すぎる圧力の悪影響をもたらす可能性があるため、ポンプが手術部位において維持するべきではない最小圧力を表す。例えば、所定の最小圧力閾値は、約40mmHgとすることができるか、若しくは別の値、例えば、約35mmHg、約30mmHg、約25mmHg、約20mmHgなどの約20mmHg~約40mmHgの範囲内の値、又は別の値とすることができる。したがって、入口漏出流量はまた、最小レベル、例えば、200mL/分を下回ることを防止することもできる。上述したものと同様に、所定の最小圧力閾値は、予め設定されて、かつ調節不可能であってもよく、又は最小圧力閾値は、ユーザーによって調節可能であってもよい。
【0062】
図7は、ポンプによって手術部位にポンピングされた流体を管理するプロセス500の別の実施形態を例示している。この例示された実施形態では、ポンプは、所定のタイミングスケジュールに従って、手術部位における流体圧力を管理する。本明細書に説明されるポンプ10などのポンプは、プロセス500において使用されて、手術部位、例えば、手術部位100に流体をポンピングすることができる。上述したものと同様に、ポンプは、プロセッサ、例えば、プロセッサ22を含むことができ、そのプロセッサは、メモリ、例えば、メモリ26に記憶され、かつプロセッサによって実行可能である1つ又は2つ以上の制御アルゴリズムを使用するように構成されている。また、プロセス500は、関節に存在する手術部位に関して説明されているが、他の手術部位も可能である。
【0063】
プロセス500において、ポンプ、例えば、ポンプの流入ポンプは、手術部位における圧力の設定点に従って、例えば、流入管材を通して手術部位に流体をポンピングする502。上述したように、設定点は、ポンプのメモリ、例えば、メモリ26に記憶することができ、予め設定された値又は調節可能な値とすることができる。
【0064】
プロセス500は、
図4のプロセス400に関して上述した判定すること404と同様に、ポンプ10が流体節約モードにあるかどうかを判定すること504を含む。また、上述したものと同様に、ポンプは、外科医又は他のユーザーを促して、例えば、ポンプのユーザーインターフェースを介して、非流体節約モード又は流体節約モードを選択させることができる。加えて、上述したように、いくつかの実施形態では、ポンプは、流体節約モードのみを含むことができる。そのような実施形態では、プロセス500は、流体節約モードがオン状態であるかどうかを判定すること504を含まない。
【0065】
ポンプ10が、例えば、ポンプのメモリに記憶されたモードフラグをチェックすることによって非流体節約モードにあると判定された場合504、ポンプは、外科的処置におけるポンプの使用全体を通じて、予め設定された設定点に従って流体をポンピングする506。
【0066】
いくつかの実施態様では、ポンプは、流体をポンピングし始める506前に、設定点が所定の最小圧力閾値未満であるかどうかを判定する。上述したように、所定の最小圧力閾値は、例えば、低すぎる圧力の悪影響をもたらす可能性があるため、ポンプ10が手術部位においてそれ以下に維持するべきではない最小圧力を表す。したがって、流体をポンピングし始める506前にそのような判定を行うことにより、悪影響を回避することができる。ポンプが、設定点が所定の最小圧力閾値を下回らないと判定した場合、プロセス500は、本明細書に説明されているように継続する。ポンプが、設定点が所定の最小圧力閾値未満であると判定した場合、ポンプは、外科医又は他のユーザーに促して、例えば、ポンプのユーザーインターフェースを介して、設定点が所定の最小圧力閾値を上回るように新しい設定点を入力させることができるか、又はポンプは、設定点が所定の最小圧力閾値にあるか、若しくは別の予め設定された開始値になるように設定点を自動的に変更することができる。
【0067】
ポンプが流体節約モードにあると判定された場合504、例えば、ポンプのプロセッサ、例えば、プロセッサ22と通信するタイマー又はカウンタを使用して、最初の所定の時間量が経過したとポンプが判定する508まで、ポンプは、流体をポンピングすることを継続する。一般に、最初の所定の時間量は、入口漏出が悪影響を及ぼし始める可能性が低い場合の時間量である。例えば、最初の所定の時間量は、約10分~約15分の範囲内、例えば、10分、11分、12分、13分、14分、15分、40分、又は別の時間量とすることができるが、他の最初の所定の時間量も可能である。
【0068】
最初の所定の時間量が経過したと判定されると508、ポンプは、設定点を減少させることにより、設定点が所定の最小圧力閾値未満になるかどうかを判定する510。ポンプは、設定点を所定の量だけ減少させるように構成されている。この所定の量は、例えば、約1mmHg~約2mmHg/分の範囲内の値、又は別の例の場合、約0.1mmHg~約0.2mmHg/分の範囲内の値とすることができる。したがって、設定点を減少させることが、調節された、例えば減少された設定点を所定の最小圧力閾値未満にすることになるかどうかを、ポンプが判定すること510は、現在の設定点を所定の量だけ減少させることが、設定点を所定の最小圧力閾値未満にすることになるかどうかを、ポンプが判定することを含む。ポンプは、判定510を行う際に、設定点を実際に低減しなくてもよく、代わりに、所定の量だけ減少された場合に設定点がどれだけ低減するかを反映する計算、次いで、計算された値の、所定の最小圧力閾値との比較を行うことができる。他の実施形態では、ポンプは、判定510を行う際に設定点を実際に低減することができ、次いで、メモリに保存された現在の減少したばかりの設定点を、所定の最小圧力閾値と比較することができる。
【0069】
調節された設定点が所定の最小圧力閾値よりも大きくない場合、ポンプは、メモリに記憶された設定点を維持し512、流体は、メモリに既に記憶された設定点に従って、手術部位にポンピングされ続ける。言い替えると、減少した設定点は、流体をポンピングする際に使用するための新しい設定点としては、メモリに保存されない。ポンプが判定510を行う際に設定点を実際に低減し、次いで所定の最小圧力閾値未満であると判定510された減少した設定点を保存した実施形態では、ポンプは、調節された設定点をメモリに保存しており、したがって、メモリに保存された、所定の最小圧力閾値を上回る以前の設定点に戻すように、設定点を所定の量だけ増加させる。
【0070】
調節された設定点が所定の最小圧力閾値よりも大きい場合、ポンプは、設定点を所定の量だけ減少させ、かつ調節された設定点を新しい設定点としてメモリに保存することによって、メモリに記憶された設定点を変更する514(ただし、上述したように、いくつかの実施形態では、調節された設定点は、判定すること510の一部としてメモリに既に保存されている)。したがって、設定点が外科的処置の実施中に経時的に繰り返し調節され、かつ流体が設定点に従って手術部位にポンピングされるとき、手術部位における流体圧力は、徐々に低減され得るが、所定の最小圧力閾値未満に降下しない。
【0071】
ポンプは、例えば、タイマー又はカウンタを使用して、第2の所定の時間量が経過したと判定される516まで、設定点に従って流体をポンピングし続ける。一般に、第2の所定の時間量は、設定点がどのくらいの頻度で調節されるかを画定する。典型的な実施形態では、第2の所定の時間量は、約3分未満である非ゼロの時間、例えば、約4分、約3分、約2.5分、約2分、約1.5分、約1分、約30秒、約20秒、又は約別の時間量である。第2の所定の時間量が経過したと判定されると516、ポンプは、設定点を減少させることにより、設定点が所定の最小圧力閾値未満になるかどうかを再度判定し510、上述したように、設定点を維持する512か、又は設定点を変更する514かのいずれかを行う。
【0072】
プロセス500は、ポンプが第2の所定の時間量が再度経過したと判定した516状態で継続し、その結果、ポンプが手術部位に流体をポンピングすることを停止するまで、ポンプは、設定点を減少させることが設定点を所定の最小圧力閾値未満にするかどうかなどを再度判定する510。
【0073】
いくつかの実施形態では、最初の所定の時間量が経過したと判定された508ときに、設定点を減少させることが設定点を所定の最小圧力閾値未満にすることになるかどうかを判定する510代わりに、ポンプは、設定点を減少させることが設定点を所定の最小圧力閾値未満にすることになるかどうかを判定する510前に、第2の所定の時間量が経過したかどうかを判定することができる。したがって、
図7に示されている方法500の代替的な方法として、設定点を減少させることが設定点を所定の最小圧力閾値未満にすることになるかどうかを最初に判定する510前に、ポンプがそのような判定510を行う前に経過した追加の時間(例えば、第2の所定の時間量)が存在し得る。
【0074】
当業者は、上述した実施形態に基づくデバイス、システム、及び方法の更なる特徴及び利点を理解するであろう。したがって、本開示は、添付の特許請求の範囲によって示される場合を除き、具体的に示され、かつ説明されている内容によって限定されるものではない。本明細書で引用される全ての刊行物及び参考文献は、全ての目的のために参照によりその全体が本明細書に明示的に組み込まれる。
【0075】
本開示は、本明細書で提供される開示全体の文脈内で、例示のみを目的として上で説明された。本開示の全体的な範囲から逸脱することなく、特許請求の範囲の趣旨及び範囲内の修正を行い得ることが理解されよう。
【0076】
〔実施の態様〕
(1) 外科用システムであって、
外科的処置の実施中に関節に流体をポンピングして、前記関節における流体圧力を、記憶された設定点に調整するように構成された関節鏡視下ポンプと、
プロセッサであって、
前記関節への前記流体の前記ポンピングを制御することと、
前記関節における流体損失を推定することと、
前記推定された流体損失に従って、前記外科的処置の前記実施と共にリアルタイムで、前記設定点を調節することと、を行うように構成されている、プロセッサと、を含む、システム。
(2) 前記流体損失を推定することは、前記外科的処置の前記実施中に、ある期間にわたって前記関節にポンピングされた前記流体の流量を監視することを含み、
前記調節することは、前記流体が、第1の期間中に前記設定点に従って、かつ前記期間の後に前記調節された設定点に従って、前記関節にポンピングされるように、前記期間の後に行われる、実施態様1に記載のシステム。
(3) 前記ポンプは、前記外科的処置の前記実施中に、前記関節から流体をポンピングするように構成され、
前記流体損失を推定することは、前記関節にポンピングされた前記流体の流量から、前記関節からポンピングされた前記流体の流量を減算することを含む、実施態様1に記載のシステム。
(4) 前記流体損失の前記推定は、前記外科的処置の前記実施中の複数分にわたるものであり、
前記流体は、前記複数分の間に前記設定点に従って前記関節にポンピングされ、
前記調節することは、前記複数分が経過した後に行われ、
前記流体は、前記複数分が経過した後に、前記調節された設定点に従って前記関節にポンピングされる、実施態様1に記載のシステム。
(5) 前記ポンプは、前記設定点を内部に記憶するように構成されたメモリを含み、
前記ポンプは、前記プロセッサを含む、実施態様1に記載のシステム。
【0077】
(6) 前記流体は、生理食塩水である、実施態様1に記載のシステム。
(7) 外科的方法であって、
外科的処置の実施中に手術部位に流体をポンピングして、前記手術部位における流体圧力を圧力設定点に調整することと、
前記手術部位における流体損失を推定することと、
前記推定された流体損失に従って、前記外科的処置の前記実施と共にリアルタイムで、前記圧力設定点を調節することと、を含む、方法。
(8) 前記流体損失を推定することは、前記外科的処置の前記実施中に、ある期間にわたって前記手術部位にポンピングされた前記流体の流量を監視することを含み、
前記調節することは、前記流体が、第1の期間中に前記圧力設定点に従って、かつ前記期間の後に前記調節された圧力設定点に従って、前記手術部位にポンピングされるように、前記期間の後に行われる、実施態様7に記載の方法。
(9) 前記調節された圧力設定点に従って前記手術部位に前記流体をポンピングすることは、前記手術部位における流体圧力を徐々に低下させる、実施態様7に記載の方法。
(10) 前記外科的処置の前記実施中に、前記手術部位から流体をポンピングすることを更に含み、
前記流体損失を推定することは、前記手術部位にポンピングされた前記流体の流量から、前記手術部位からポンピングされた前記流体の流量を減算することを含む、実施態様7に記載の方法。
【0078】
(11) 前記流体損失を推定することはまた、外部吸引源によって影響を受ける前記流量を示す流体流量測定値をフィルタリングすることも含む、実施態様10に記載の方法。
(12) 前記流体損失の前記推定は、前記外科的処置の前記実施中の複数分にわたるものであり、
前記流体は、前記複数分の間、前記圧力設定点に従って前記手術部位にポンピングされ、
前記調節することは、前記複数分が経過した後に行われ、
前記流体は、前記複数分が経過した後に、前記調節された圧力設定点に従って前記手術部位にポンピングされる、実施態様7に記載の方法。
(13) 潅注ポンプが、前記手術部位に前記流体をポンピングし、
プロセッサが、前記手術部位への前記流体の前記ポンピングを制御し、前記推定すること及び前記調節することを実施する、実施態様7に記載の方法。
(14) 関節鏡視下ポンプが、前記手術部位に前記流体をポンピングし、前記手術部位から前記流体をポンピングし、
前記手術部位は、関節を含み、
前記流体は、生理食塩水である、実施態様7に記載の方法。
(15) 外科的方法であって、
外科的処置の実施中に、関節圧力設定点に従って関節に流体をポンピングすることと、
前記外科的処置の前記実施中に、前記関節からの流体漏出を監視することと、
前記監視することに基づいて、前記外科的処置の前記実施中に前記関節圧力設定点を変更し、前記外科的処置の前記実施中に前記変更された関節圧力設定点に従って前記関節に流体をポンピングすることと、を含む、方法。
【0079】
(16) 前記外科的処置の前記実施中に前記変更された関節圧力設定点に従って前記関節に前記流体をポンピングすることは、前記関節における流体圧力を徐々に低下させ、前記関節からの流体漏出を制御する、実施態様15に記載の方法。
(17) 前記流体圧力を徐々に低下させる割合、及び最小流体圧力限界のうちの少なくとも1つを設定することを更に含む、実施態様16に記載の方法。
(18) 前記外科的処置の前記実施中に、前記関節から流体をポンピングすることを更に含み、
前記関節圧力設定点を変更することは、前記関節にポンピングされた前記流体の流量から、前記関節からポンピングされた前記流体の流量を減算することを含む、実施態様15に記載の方法。
(19) 前記外科的処置の前記実施中に、基準線入口漏出を決定することを更に含む、実施態様15に記載の方法。
(20) 潅注ポンプが、前記関節に前記流体をポンピングし、
プロセッサが、前記関節への前記流体の前記ポンピングを制御し、前記監視すること及び前記変更することを実施する、実施態様15に記載の方法。
【0080】
(21) 前記流体は、生理食塩水である、実施態様15に記載の方法。
(22) 外科用システムであって、
外科的処置の実施中に関節に流体をポンピングして、前記関節における流体圧力を、記憶された設定点に調整するように構成された関節鏡視下ポンプと、
プロセッサであって、
前記関節への前記流体の前記ポンピングを制御することと、
前記流体の前記ポンピングと共にリアルタイムで所定の時間量の各後続の経過の後に、前記設定点を所定の量だけ減少させることが前記設定点を所定の最小圧力閾値未満にするかどうかを判定することと、前記設定点を前記所定の量だけ減少させることが前記設定点を前記所定の最小圧力閾値未満にすると判定することに応答して、前記設定点を維持することと、前記設定点を前記所定の量だけ減少させることが前記設定点を前記所定の最小圧力閾値未満にしないと判定することに応答して、前記設定点を前記所定の量だけ減少させることと、を行うように構成されている、プロセッサと、を含む、システム。
(23) 前記流体は、前記所定の時間量が経過したことを前記ポンプが最初に判定する前の複数分の間に、前記設定点に従って前記関節にポンピングされ、
前記設定点の前記減少は、前記複数分が経過した後に行われ、
前記流体は、前記複数分が経過した後に、前記減少した設定点に従って前記関節にポンピングされる、実施態様22に記載のシステム。
(24) 前記流体は、前記所定の時間量が経過したかどうかを前記ポンプが最初に判定する前に、第1の所定の時間量の間、前記設定点に従って前記関節にポンピングされる、実施態様22に記載のシステム。
(25) 前記ポンプは、前記設定点を内部に記憶するように構成されたメモリを含み、
前記ポンプは、前記プロセッサを含む、実施態様22に記載のシステム。
【0081】
(26) 前記流体は、生理食塩水である、実施態様22に記載のシステム。
(27) 外科的方法であって、
外科的処置の実施中に手術部位に流体をポンピングして、前記手術部位における流体圧力を圧力設定点に調整することと、
前記流体の前記ポンピングが開始した後に、前記外科的処置の前記実施と共にリアルタイムで、前記圧力設定点を所定の最小圧力閾値未満に降下させることなく、複数の所定の時間の各々において前記圧力設定点を減少させることと、を含む、方法。
(28) 前記減少した圧力設定点に従って前記手術部位に前記流体をポンピングすることは、前記手術部位における流体圧力を徐々に低下させる、実施態様27に記載の方法。
(29) 前記流体は、所定の時間量が経過したことを前記ポンプが最初に判定する前の複数分の間、前記圧力設定点に従って前記手術部位にポンピングされ、
前記減少させることは、前記複数分が経過した後に行われ、
前記流体は、前記複数分が経過した後に、前記減少した圧力設定点に従って前記手術部位にポンピングされる、実施態様27に記載の方法。
(30) 前記圧力設定点が所定の最小圧力閾値未満に降下することを防止するように、前記圧力設定点を減少させる代わりに、前記所定の時間のうちの別の1つの時間において前記圧力設定点を維持することを更に含む、実施態様27に記載の方法。
【0082】
(31) 流体が前記手術部位にポンピングされ始めてから第1の所定の時間量が経過したことを判定することを更に含み、
前記複数の所定の時間のうちの第1の所定の時間の経過は、前記第1の所定の時間量が経過した後まで行われない、実施態様27に記載の方法。
(32) 潅注ポンプが、前記手術部位に前記流体をポンピングし、
プロセッサが、前記手術部位に前記流体を前記ポンピングすることを制御し、前記減少させることを実施する、実施態様27に記載の方法。
(33) 関節鏡視下ポンプが、前記手術部位に前記流体をポンピングし、前記手術部位から前記流体をポンピングし、
前記手術部位は、関節を含み、
前記流体は、生理食塩水である、実施態様27に記載の方法。
(34) 外科的方法であって、
外科的処置の実施中に、関節圧力設定点に従って関節に流体をポンピングすることと、
前記外科用流体の前記ポンピング中に、所定の時間量の経過を監視することと、
前記監視することに基づいて、前記外科的処置の前記実施中に前記関節圧力設定点を減少させ、前記外科的処置の前記実施中に、前記減少した関節圧力設定点に従って前記関節に流体をポンピングすることと、を含み、
前記関節圧力設定点は、所定の最小圧力閾値未満に減少されない、方法。
(35) 前記外科的処置の前記実施中に、前記変更された関節圧力設定点に従って前記関節に前記流体をポンピングすることは、前記関節における流体圧力を徐々に低下させ、前記関節からの流体漏出を制御する、実施態様34に記載の方法。
【0083】
(36) 前記関節圧力設定点の各減少量、及び所定の最小圧力閾値のうちの少なくとも1つを設定することを更に含む、実施態様35に記載の方法。
(37) 前記所定の時間量の前記経過を監視することは、第1の所定の時間量の前記経過を監視すること、及びその後に第2の所定の時間量の経過を繰り返し監視することを含み、
前記関節圧力設定点は、前記第2の所定の時間量の最初の監視された経過まで減少されない、実施態様34に記載の方法。
(38) 前記関節圧力設定点は、前記所定の時間量の最初の監視された経過まで減少されない、実施態様34に記載の方法。
(39) 潅注ポンプが、前記関節に前記流体をポンピングし、
プロセッサが、前記関節への前記流体の前記ポンピングを制御し、前記監視すること及び前記減少させることを実施する、実施態様34に記載の方法。
(40) 前記流体は、生理食塩水である、実施態様34に記載の方法。
【国際調査報告】