(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-05
(54)【発明の名称】基板製造用窒化ケイ素粉末の製造方法およびこれによって製造された窒化ケイ素粉末
(51)【国際特許分類】
C01B 21/082 20060101AFI20240829BHJP
C04B 35/587 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
C01B21/082 C
C04B35/587
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024501475
(86)(22)【出願日】2022-03-18
(85)【翻訳文提出日】2023-11-17
(86)【国際出願番号】 KR2022003813
(87)【国際公開番号】W WO2022197146
(87)【国際公開日】2022-09-22
(31)【優先権主張番号】10-2021-0035999
(32)【優先日】2021-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517428551
【氏名又は名称】アモテック・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パク,キュファン
(72)【発明者】
【氏名】チョン,フン
(57)【要約】
基板製造用窒化ケイ素粉末の製造方法が提供される。本発明の一実施形態による基板製造用窒化ケイ素粉末の製造方法は、金属シリコン粉末および結晶相制御粉末を含む混合原料粉末を製造する段階と、前記混合原料粉末を所定の粒径を有するグラニュールに製造する段階と、前記グラニュールに所定の圧力で窒素ガスを加えながら1200~1500℃の範囲内所定の温度で窒化させる段階と、窒化したグラニュールを粉砕させる段階と、を含む。これによれば、目標とするレベルでα結晶相を有するように粉末を具現することが容易であり、これによって、基板として具現するとき、緻密な密度を有する基板を製造することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属シリコン粉末と、希土類元素含有化合物とマグネシウム含有化合物を含む結晶相制御粉末と、を含む混合原料粉末を製造する段階と、
前記混合原料粉末を有機バインダーと混合し、所定の粒径を有するグラニュールに製造する段階と、
前記グラニュールに所定の圧力で窒素ガスを加えながら1200~1500℃の範囲内所定の温度で窒化させる段階と、
窒化したグラニュールを粉砕させる段階と、を含む基板製造用窒化ケイ素(Si
3N
4)粉末の製造方法。
【請求項2】
前記金属シリコン粉末は、粉砕中に金属不純物で汚染されることを最小化するために、多結晶金属シリコンスクラップ(scrap)または単結晶シリコンウェハースクラップを乾式粉砕させたものである、請求項1に記載の基板製造用窒化ケイ素粉末の製造方法。
【請求項3】
前記金属シリコン粉末は、抵抗率が1~100Ωcmである、請求項1に記載の基板製造用窒化ケイ素粉末の製造方法。
【請求項4】
前記多結晶金属シリコンスクラップまたは単結晶シリコンウェハースクラップは、純度が99%以上である、請求項2に記載の基板製造用窒化ケイ素粉末の製造方法。
【請求項5】
前記金属シリコン粉末は、平均粒径が0.5~4μm、希土類元素含有化合物粉末は、平均粒径が0.1~1μm、マグネシウム含有化合物粉末は、平均粒径が0.1~1μmである、請求項1に記載の基板製造用窒化ケイ素粉末の製造方法。
【請求項6】
前記グラニュールは、D50値が20~55μmである、請求項1に記載の基板製造用窒化ケイ素粉末の製造方法。
【請求項7】
前記希土類元素含有化合物は、酸化イットリウムであり、前記マグネシウム含有化合物は、酸化マグネシウムであり、
混合原料粉末に前記酸化イットリウムは、2~5モル%、前記酸化マグネシウムは、2~10モル%で含まれる、請求項1に記載の基板製造用窒化ケイ素粉末の製造方法。
【請求項8】
窒化時に1000℃以上から所定の温度まで0.5~10℃/分の昇温速度で加熱され、前記窒素ガスは、0.1~0.2MPaの圧力で加えられる、請求項1に記載の基板製造用窒化ケイ素粉末の製造方法。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の製造方法で製造され、多結晶シリコンが9重量%以下である基板製造用窒化ケイ素粉末。
【請求項10】
α結晶相とβ結晶相の重量の総和に対してα結晶相の重量比が0.7以上である、請求項9に記載の基板製造用窒化ケイ素粉末。
【請求項11】
金属シリコン粉末と、希土類元素含有化合物とマグネシウム含有化合物を含む結晶相制御粉末と、を含む混合原料粉末が有機バインダーと混合され、所定の粒径を有するグラニュールで形成された窒化ケイ素粉末製造用組成物。
【請求項12】
前記グラニュールは、D50が20~55μmである、請求項11に記載の窒化ケイ素粉末製造用組成物。
【請求項13】
請求項9に記載の窒化ケイ素粉末を含むスラリーをシート状に成形後に焼結させて製造される窒化ケイ素基板。
【請求項14】
熱伝導度が70W/mK以上であり、3点曲げ強度が650MPa以上である、請求項13に記載の窒化ケイ素基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒化ケイ素粉末に関し、より詳細には、基板製造用窒化ケイ素粉末の製造方法およびこれによって製造された窒化ケイ素粉末に関する。
【背景技術】
【0002】
窒化ケイ素焼結体は、耐摩耗性、耐熱性、低熱膨張性、耐熱衝撃性、および金属に対する耐食性に優れていて、従来からガスタービン用部材、エンジン用部材、製鋼用機械部材などの各種構造用部材に用いられている。また、高い絶縁特性と良好な放熱特性を有するので、セラミック基板などの電気部品素材に用いられている。
【0003】
このような窒化ケイ素焼結体を製造するための窒化ケイ素粉末の合成法としては、四塩化ケイ素とアンモニアを反応させてイミド中間体を作成し、これを熱分解して窒化ケイ素粉末を得るイミド熱分解法が知られている。この方法で合成される窒化ケイ素粉末は、比較的粒度が均一な、平均粒子直径が1μm以下の粉末であり、また、高いα化率を有するα型窒化ケイ素粉末である。α型窒化ケイ素粉末は、焼結温度を高めることによって、焼結時にα型からβ型への相転移が発生し、その結果として、例えば、相対密度が99%を超える緻密な焼結体を得ることができるので、現在広く用いられている。しかしながら、この方法は、原料として高価な化合物を必要とし、製造工程も非常に複雑で、製造コストと時間において不利であるという不都合がある。
【0004】
これより、窒化ケイ素粉末を製造する他の方法として、シリコン固体を窒化して凝集塊を得た後、これを粉砕して、窒化ケイ素粉末を製造する直接窒化法に対する研究が続いている。この方法は、原料コストが比較的安いという利点がある。しかしながら、この方法も、収得される窒化ケイ素粉末の純度の改善のような課題が残っている。すなわち、この方法では、シリコン固体が溶融しない低温で表面から徐々に窒化反応を進行させるので、シリコン固体の粒度をあらかじめ非常に小さくすることが有利であることが知られているが、かえって原料物質であるシリコン固体の粒度を小さく調節する粉砕過程で不純物となる金属物質などの汚染物質が混入する恐れがある。また、汚染物質で汚染された場合、窒化前に汚染物質の除去のための酸洗浄を経なければならないことによる工数の増加、製造時間の延長および製造費用の増加の問題がある。
【0005】
さらには、窒化過程でシリコンが溶出しやすいが、この場合、基板の製造のための焼結時にシリコンの溶融および気化によって基板の熱伝導度および機械的強度が急激に減少する恐れがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前述のような点を勘案して案出したものであって、その目的は、基板への焼結時に熱伝導度が改善され、優れた機械的強度を有する基板を製造するのに適した窒化ケイ素粉末の製造方法とこれを用いて製造された窒化ケイ素粉末を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前述のような点を勘案して案出したものであって、シリコン粉末および結晶相制御粉末を含む混合原料粉末を製造する段階と、前記混合原料粉末に有機バインダーを混合し、所定の粒径を有するグラニュールに製造する段階と、前記グラニュールに所定の圧力で窒素ガスを加えながら1200~1500℃の範囲内所定の温度で窒化させる段階
と、窒化したグラニュールを粉砕させる段階と、を含む基板製造用窒化ケイ素(Si3N4)粉末の製造方法を提供する。
【0008】
本発明の一実施形態によれば、前記金属シリコン粉末は、粉砕中に金属不純物で汚染されることを最小化するために、多結晶金属シリコンスクラップ(scrap)または単結晶シリコンウェハースクラップを乾式粉砕させたものであってもよい。
【0009】
また、前記金属シリコン粉末は、抵抗率が1~100Ωcmであってもよい。
【0010】
また、前記多結晶金属シリコンスクラップまたは単結晶シリコンウェハースクラップは、純度が99%以上であってもよい。
【0011】
また、前記金属シリコン粉末は、平均粒径が0.5~4μm、希土類元素含有化合物粉末は、平均粒径が0.1~1μm、マグネシウム含有化合物粉末は、平均粒径が0.1~1μmであってもよい。
【0012】
また、前記グラニュールは、D50値が100μm以下、より好ましくは、20~55μmであってもよい。
【0013】
また、前記希土類元素含有化合物は、酸化イットリウムであり、前記マグネシウム含有化合物は、酸化マグネシウムであり、混合原料粉末に前記酸化イットリウムが2~5モル%、前記酸化マグネシウムが2~10モル%で含まれ得る。
【0014】
また、窒化時に前記窒素ガスは、0.1~0.2MPaの圧力に加えられてもよい。
【0015】
また、窒化時に1000℃以上から所定の温度まで0.5~10℃/分の昇温速度で加熱され得る。
【0016】
また、本発明は、本発明による製造方法で製造され、多結晶シリコンが9重量%以下の基板製造用窒化ケイ素粉末を提供する。
【0017】
本発明の一実施形態によれば、α結晶相とβ結晶相の重量の総和に対してα結晶相の重量比が0.7以上であってもよい。
【0018】
また、本発明は、金属シリコン粉末と、希土類元素含有化合物とマグネシウム含有化合物を含む結晶相制御粉末と、を含む混合原料粉末が有機バインダーと混合され、所定の粒径を有するグラニュールで形成された窒化ケイ素粉末製造用組成物を提供する。
【0019】
本発明の一実施形態によれば、前記グラニュールは、D50が20~55μmであってもよい。
【0020】
また、本発明は、本発明による製造方法で製造された窒化ケイ素粉末を含むスラリーをシート状に成形した後に焼結させて製造され、熱伝導度が70W/mK以上、3点曲げ強度が650MPa以上の窒化ケイ素基板を提供する。
【発明の効果】
【0021】
本発明による窒化ケイ素粉末の製造方法は、目標とするレベルでα結晶相を有するように粉末を具現することが容易であり、これによって基板への具現時に緻密な密度を有する基板を製造することができる。また、これを用いて焼結された基板の粒界内均一に二次相を形成させることができることにより、製造された基板の熱伝導度をさらに改善させるこ
とができる。また、本発明による窒化ケイ素粉末の場合、不純物の含有量が少ないか、含有せず、特に溶出したケイ素が含まれないことにより、熱伝導度および機械的強度に優れた基板の製造に適している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施することができるように詳細に説明する。本発明は、様々な異なる形態で具現されることができ、ここで説明する実施形態に限定されない。
【0023】
本発明の一実施形態による窒化ケイ素粉末の製造方法は、金属シリコン粉末と、希土類元素含有化合物とマグネシウム含有化合物を含む結晶相制御粉末と、を含む混合原料粉末を製造する段階と、前記混合原料粉末に溶媒および有機バインダーを混合し、スラリーを形成させた後、噴霧乾燥させて、所定の粒径を有するグラニュールを製造する段階と、前記グラニュールに所定の圧力で窒素ガスを加えながら1200~1500℃の範囲内所定の温度で窒化させる段階と、窒化したグラニュールを粉砕させる段階と、を含む。
【0024】
まず、窒化ケイ素粉末の製造方法は、金属シリコン粉末と、希土類元素含有化合物とマグネシウム含有化合物を含む結晶相制御粉末と、を含む混合原料粉末を製造する段階について説明する。
【0025】
前記原料粉末として主剤の金属シリコン粉末は、直接窒化法を用いて窒化ケイ素粉末を製造できる金属シリコン粉末の場合、制限なく使用することができる。一例として、前記金属シリコン粉末は、多結晶金属シリコンスクラップ(scrap)または単結晶シリコンウェハースクラップであってもよい。前記多結晶金属シリコンスクラップは、半導体工程用治具や太陽光パネル製造用に用いられる多結晶金属シリコンの副産物であってもよく、単結晶シリコンウェハースクラップも、シリコンウェハーの製造時に副産物であることから、副産物であるこれらのスクラップを原料粉末として用いることによって製造コストを低減することができる。
【0026】
また、前記多結晶金属シリコンスクラップまたは単結晶シリコンウェハースクラップは、純度が99%以上であってもよく、これによって製造された窒化ケイ素粉末を焼結して基板を製造する場合、熱伝導度と機械的強度を保証するのにさらに有利である。
【0027】
また、前記金属シリコン粉末は、抵抗率が1~100Ωcmであってもよく、これによって本発明が目標とする物性を有する窒化ケイ素粉末を製造することがさらに有利である。
【0028】
なお、原料粉末に用いられる金属シリコン粉末は、好ましくは、多結晶金属シリコンスクラップ(scrap)または単結晶シリコンウェハースクラップを所定のサイズに粉砕させたものであってもよい。この際、粉砕による金属不純物のような汚染物質が原料粉末に混入するのを防止するために、前記粉砕は、乾式粉砕方式を用いることができ、具体的には、ディスクミル、ピンミル、ジェットミルなどの乾式粉砕方式を用いて粉末化させることができる。もし、汚染物質が金属シリコン粉末に含有される場合、汚染物質の除去のための酸洗浄のような洗浄工程をさらに経なければならない製造時間とコストの増加の恐れがある。この際、粉砕された前記金属シリコン粉末の平均粒径は、0.5~4μm、より好ましくは、2~4μmであってもよく、もし、平均粒径が0.5μm未満の場合、乾式粉砕方式を用いて具現しにくく、未粉末化に起因して汚染物質の混入の可能性が大きくなる恐れがあり、シートキャスティング時に緻密化が難しい。また、もし、金属シリコン粉末の平均粒径が4μmを超える場合、窒化が容易でないため、窒化しない部分が存在する恐れがあり、最終基板の緻密化が難しい。
【0029】
なお、具現しようとする窒化ケイ素は、自己拡散が難しく、高温で熱分解することができ、焼結温度が制限されるなどの理由から、基板などへの焼結が容易でなく、緻密な焼結体を具現しにくく、直接窒化法で窒化ケイ素粉末を製造するとき、結晶相の制御が難しいことがあり、このような難点を解決し、酸素などの不純物を除去し、窒化ケイ素粉末が焼結された基板の物性を改善するために、金属シリコン粉末に結晶相制御粉末を混合した混合原料粉末を原料粉末として用いる。前記結晶相制御粉末は、一例として、希土類元素含有化合物、アルカリ土類金属酸化物およびこれらの組み合わせが使用でき、具体的には、酸化マグネシウム(MgO)、酸化イットリウム(Y2O3)、酸化ガドリニウム(Gd2O)、酸化ホルミウム(Ho2O3)、酸化エルビウム(Er2O3)、酸化イルテビウム(Yb2O3)、および酸化ジスプロシウム(Dy2O3)からなる群から選ばれる1種以上が使用できる。ただし、本発明は、窒化ケイ素粉末の結晶相の制御をより容易にするために、酸化マグネシウムおよび酸化イットリウムを結晶相制御粉末に必須的に含有し、前記酸化マグネシウムおよび酸化イットリウムは、製造された窒化ケイ素粉末を用いて基板を製造するとき、より緻密化した高い密度の基板を具現し、焼結中に残留粒界相の量を低減させて、熱伝導度をさらに改善させることができるという利点がある。
【0030】
一例として、混合原料粉末に前記酸化イットリウムが2~5モル%、前記酸化マグネシウムが2~10モル%で含まれ得る。もし、酸化イットリウムが2モル%未満の場合、具現された窒化ケイ素粉末を基板への焼結時、緻密化した基板を具現しにくく、粒界相に酸素を捕捉しにくく、そのため、固溶酸素量が多くなり、焼結された基板の熱伝導度が低く、機械的強度も低下し得る。また、もし、酸化イットリウムが5モル%を超える場合、粒界相が多くなり、具現された窒化ケイ素粉末を焼結した基板の熱伝導度が低下し、破壊靭性が低下する恐れがある。また、酸化マグネシウムが2モル%未満の場合、具現された窒化ケイ素粉末を焼結した基板の熱伝導度および機械的強度が両方とも低く、窒化時にシリコンが溶出する恐れがあり、緻密化基板を製造しにくい。また、もし、酸化マグネシウムが10モル%を超える場合、具現された焼結基板の粒界にマグネシウムの残留量が多くなり、そのため、具現された焼結基板の熱伝導度が低くなり、窒化ケイ素粉末の焼結が容易でなく、破壊靭性が低下する問題がある。
【0031】
また、前記希土類元素含有化合物粉末は、平均粒径が0.1~1μm、マグネシウム含有化合物粉末は、平均粒径が0.1~1μmのものが使用でき、これによって、本発明の目的を達成するのにさらに有利である。
【0032】
次に、準備した混合原料粉末に溶媒および有機バインダーを混合し、スラリーを形成させた後、噴霧乾燥させて、所定の粒径を有するグラニュールを製造する段階を行う。
【0033】
混合原料粉末を直ちに窒化させることなく、所定の粒径を有するグラニュールに製造した後、グラニュールに対して後述する窒化工程を行うが、これによって、混合原料粉末の混合均一性を高めて、製造される窒化ケイ素粉末の結晶相をさらに容易に制御することができ、焼結された基板の粒界内Si2Y2O5の二次相を均一に形成させることができ、焼結された基板の熱伝導度および機械的強度をさらに改善しつつ、均一性を向上させることができる均一な特性を有する窒化ケイ素粉末を製造することができる。
【0034】
前記グラニュールは、D50値が100μm以下、一層好ましくは、20~100μm、より好ましくは、20~55μm、さらに好ましくは、20~40μmであってもよいが、もし、D50が100μmを超える場合、グラニュールの内部に窒素ガスの流入が円滑でないため、窒化が完全に起こらず、窒化しないシリコンが溶融し、グラニュール外に溶出することができ、このような窒化ケイ素粉末を用いて基板を製造する場合、窒化ケイ素粉末の製造時に、溶出したシリコンがさらに基板外に溶出することができる恐れがある
。ここで、D50値とは、レーザー回折散乱法を用いて測定した50%体積基準の値を意味する。
【0035】
なお、前記グラニュールは、乾式噴霧法を用いて収得することができ、乾式噴霧法を行うことができる公知の条件、装置を用いて収得することができ、本発明は、これに対して特に限定しない。また、混合原料粉末は、溶媒と有機バインダーとの混合されたスラリーで具現された後、乾式噴霧されるが、前記溶媒と有機バインダーは、セラミック粉末をグラニュールに具現するために、スラリー化時に使用される溶媒と有機バインダーの場合、制限なく使用することができる。一例として、前記溶媒は、エタノール、メタノール、イソプロパノール、蒸留水およびアセトンの中から選択される1種以上を含むことが好ましい。また、前記有機バインダーは、ポリビニルブチラール(PVB)系バインダーを使用することが好ましい。なお、グラニュールの製造時に有機バインダーが含有されるが、微量で含有する場合、後述する窒化工程前に脱脂工程を別にさらに経なくてもよい。
【0036】
次に、収得されたグラニュールに所定の圧力で窒素ガスを加えながら1200~1500℃の範囲内所定の温度で窒化処理する段階を行う。
【0037】
この際、窒化処理時に、前記窒素ガスは、0.1~0.2MPaの圧力で加えられてもよく、より好ましくは、0.15~0.17MPaの圧力で加えられてもよい。もし、窒素ガス圧力が0.1MPa未満の場合、窒化が完全に起こらないことがある。また、窒素ガス圧力が0.2MPaを超える場合、窒化過程でシリコンが溶出する現象が発生する。また、窒化処理時に1000℃以上から所定の温度まで0.5~10℃/分の昇温速度で加熱され得るが、もし、1000℃以上から所定の温度まで昇温速度が0.5℃/分未満の場合、焼結時間が過度に延びることができる。また、昇温速度が10℃/分を超える場合、シリコンが溶出し、完全に窒化ケイ素に窒化した粉末を製造しにくい。
【0038】
また、窒化処理時に、温度は、1200~1500℃の範囲内で所定の温度に選択され得るが、もし、前記所定の温度が1200℃未満の場合、窒化が均一に起こらないことがある。また、前記所定の温度が1500℃を超える場合、β結晶相が迅速に形成されることにより、このような窒化ケイ素粉末を用いて基板を製造する場合、緻密化が難しい。また、前記所定の温度で30分~5時間窒化が行われ得、これによって、本発明の目的を達成するのにさらに有利である。
【0039】
次に、窒化処理されたグラニュールを粉砕させる段階を行う。
【0040】
窒化処理されたグラニュールを用いて窒化ケイ素粉末を製造する段階であって、粉砕時に汚染物質の混入を防止するように、好ましくは、乾式方法によることができ、一例として、エアージェットミルを用いて行うことができる。
【0041】
また、本発明は、本発明による製造方法で製造され、溶融したシリコン由来の多結晶シリコンが8重量%以下の基板製造用窒化ケイ素粉末を含み、好ましくは、6重量%以下、より好ましくは、4重量%以下、さらに好ましくは、0重量%であることにより、機械的強度および熱伝導度が向上した基板を製造するのに適している。
【0042】
本発明の一実施形態によれば、α結晶相とβ結晶相の重量の総和に対してα結晶相の重量比が0.7以上であってもよいが、もし、α結晶相とβ結晶相の重量の総和に対してα結晶相の重量比が0.7未満の場合、窒化ケイ素粉末を用いて焼結された基板の緻密性を高めにくく、熱伝導度と機械的強度の改善が難しく、特に機械的強度の改善が難しい。
【0043】
また、前記窒化ケイ素粉末は、これによって具現される基板焼結体の粒界相にSi2Y
2O5の二次相をより均一に形成させることができ、これによって、基板の熱伝導度の改善に相乗効果を発現することができる。
【0044】
また、前記窒化ケイ素粉末は、平均粒径が2~4μmであってもよく、これによって、機械的強度および熱伝導度が改善された基板を具現するのにさらに有利である。
【0045】
また、本発明は、本発明による製造方法で製造された窒化ケイ素粉末を含むスラリーをシート状に成形した後に焼結させて製造され、熱伝導度が70W/mK以上、好ましくは、80W/mK以上、より好ましくは、90W/mK以上であり、3点曲げ強度が650MPa以上、好ましくは、680MPa以上、より好ましくは、700MPa以上の窒化ケイ素基板を含む。また、窒化ケイ素基板の均一性に優れていて、窒化ケイ素焼結体を10等分した後、それぞれに対して測定した熱伝導度の標準偏差が5W/mK以下、より好ましくは、3W/mK以下であってもよく、3点曲げ強度の標準偏差は、25MPa以下、より好ましくは、20MPa以下であってもよい。また、窒化ケイ素基板は、焼結密度が3.0g/cm2以上であってもよく、より好ましくは、3.2g/cm2以上であってもよい。
【0046】
前記窒化ケイ素基板は、窒化ケイ素粉末を含むスラリーをシート状に成形した後に焼結させる公知の方法で製造することができ、一例として、前記スラリーをテープキャスティング法を用いてシート状に成形することができる。
【0047】
また、前記スラリーは、溶媒および有機バインダーをさらに含有してもよい。前記溶媒は、有機バインダーを溶解させ、窒化ケイ素粉末を分散させて、粘度を調節するために、有機溶媒を使用することができ、前記有機溶媒として有機バインダーを溶かすことができる物質が使用可能であり、一例として、テルピネオール(Terpineol)、ジヒドロテルピネオール(Dihydro terpineol;DHT)、ジヒドロテルピネオールアセテート(Dihydro terpineol acetate;DHTA)、ブチルカルビトールアセテート(Butyl Carbitol Acetate;BCA)、エチレングリコール、エチレン、イソブチルアルコール、メチルエチルケトン、ブチルカルビトール、テキサノール(texanol)(2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールモノイソブチレート)、エチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、ジメチルスルホキシド、ジエチルフタレート、トルエン、これらの混合物などを使用することができる。この際、前記溶媒は、窒化ケイ素粉末100重量部に対して50~100重量部混合することが好ましい。前記溶媒の含有量が50重量部未満であれば、スラリーの粘度が高く、テープキャスティングを行うのに困難があり、コーティングの厚さを調節するのに困難がありえ、前記溶媒の含有量が100重量部を超える場合、スラリーの粘度が薄すぎて乾燥に時間が長くかかり、コーティング厚さを調節するのに困難がありえる。
【0048】
また、前記有機バインダーは、前記窒化ケイ素粉末100重量部に対して5~20重量部混合することが好ましい。前記有機バインダーとしては、エチルセルロース(ethyl cellulose)、メチルセルロース、ニトロセルロース、カルボキシセルロースなどのセルロース誘導体、またはポリビニルアルコール、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ポリビニルブチラールなどの高分子樹脂であってもよく、テープキャスティング方法(Tape casting method)でシート状の成形体を形成することを考慮して、前記有機バインダーとしてポリビニルブチラールを使用することができる。
【0049】
なお、前記スラリーには、分散剤、可塑剤などシートを成形するためのスラリーに含有される公知の物質をさらに含んでもよいし、本発明は、これに対して特に限定しない。成
形されたシートは、1800~1900℃の温度で0.5~1.0MPa焼結されてもよく、これによって、高品位の窒化ケイ素基板を具現するのにさらに有利である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
下記の実施例に基づいて本発明をより具体的に説明することとするが、下記実施例が本発明の範囲を制限するものではなく、これは、本発明の理解を助けるものと解すべきである。
【0051】
<実施例1>
半導体工程用治具由来の多結晶シリコンスクラップ(純度99.99%、抵抗率1Ωcm)をジェットミルを用いて乾式粉砕させて、平均粒径が4μmの金属シリコン粉末を準備した。これに平均粒径が0.5μmの酸化イットリウム2モル%、平均粒径が0.5μmの酸化マグネシウム5モル%を混合し、混合原料粉末を準備した。準備した混合原料粉末100重量部を溶媒としてのエタノール80重量部、有機バインダーとしてのポリビニルブチラール10重量部と混合し、グラニュール製造用スラリーを製造し、これを熱噴霧装置を用いて噴霧乾燥させて、D50値が20μmのグラニュールを製造した。製造されたグラニュールを窒素ガス圧力0.15MPaで熱処理し、具体的には、1000℃までは昇温速度を5℃/分、1000℃から1400℃までは昇温速度を0.5℃/分とした後、1400℃で2時間熱処理し、窒化処理されたグラニュールを収得し、これをエアージェットミルを用いて粉砕させて、平均粒径が2μmの下記表1のような窒化ケイ素粉末を収得した。
【0052】
その後、収得した窒化ケイ素粉末100重量部に対してポリビニルブチラール樹脂5重量部、溶媒としてトルエンとエタノールを5:5で混合した溶剤50重量部をボールミルで混合、溶解、分散させた。その後、製造されたスラリーを通常のテープキャスティング(Tape casting)方法を用いてシート状に製造した後、170μmのシート状に製造した後、製造されたシート4枚を交差積層した後、窒素雰囲気下で1900℃で4時間熱処理して、表1のような窒化ケイ素基板を製造した。
【0053】
<比較例1>
実施例1と同一に実施して製造するものの、混合原料粉末をグラニュールに具現せず、窒化ケイ素粉末を収得した後、これによって、下記表1のような窒化ケイ素基板を製造した。
【0054】
<実験例1>
実施例1および比較例1で製造された窒化ケイ素粉末または窒化ケイ素基板について下記の物性を評価し、その結果を下記表1に示した。
【0055】
1.D50
レーザー回折散乱法を用いて測定した50%体積基準値をD50値とした。
【0056】
2.焼結密度
製造された基板に対してアルキメデス方法で焼結密度を測定した。
【0057】
3.熱伝導度および均一性
製造された基板を実施例および比較例別に合計10個の試験片を準備した後、これに対して熱伝導度をKSL1604(ISO18755、ASTME1461)方法で測定した後、測定された値の平均値および標準偏差を計算し、標準偏差が0に近いほど熱伝導度が均一であることを意味する。
【0058】
4.3点曲げ強度および均一性
製造された基板を実施例および比較例別に合計10個の試験片を準備した後、製造された基板に対して3点曲げ強度(S)は、KSL1590(ISO14704)方法で測定した後、下記の式に代入して計算された値の平均値および標準偏差を計算した。3点曲げ強度の標準偏差が0に近いほど3点曲げ強度が均一であることを意味する。
【0059】
[式]
S=3PL/(2bd2)
【0060】
式中、Pは、破壊荷重、Lは、地点間の距離、bは、梁の幅、dは、梁の厚さである。
【0061】
【0062】
表1から確認できるように、実施例1による窒化ケイ素基板は、比較例1による窒化ケイ素基板と比べて、熱伝導度および3点曲げ強度に優れており、かつ均一な特性を発現することが分かるが、これは、窒化ケイ素基板の製造に使用される窒化ケイ素粉末のグラニュール化およびこれによる窒化均一性の増大に起因した結果と予想される。
【0063】
<実施例2~9>
実施例1と同一に実施して製造するものの、混合原料粉末において成分の含有量やグラニュールのD50値、窒化条件などを下記表2または表3のように変更して、窒化ケイ素粉末を収得し、これによって、下記表2または表3のような窒化ケイ素粉末および窒化ケイ素基板を製造した。
【0064】
<実験例2>
実施例1~実施例9で製造された窒化ケイ素粉末または窒化ケイ素基板に対して下記の物性を評価し、その結果を下記表2または表3に示した。
【0065】
1.結晶相
窒化ケイ素粉末に対してXRD測定を通じてαおよびβ結晶相を定量化し、下記の式によってα結晶相の重量割合を計算した。
α結晶相の重量比=α/(α+β)
【0066】
2.D67
レーザー回折散乱法を用いて測定した50%体積基準値をD50値とした。
【0067】
3.焼結密度
製造された基板に対してアルキメデス方法で焼結密度を測定した。
【0068】
4.熱伝導度
各実施例別に製造された基板10個に対して、熱伝導度は、KSL1604(ISO18755、ASTME1461)方法で測定し、測定された値の平均値を計算した。
【0069】
5.3点曲げ強度
各実施例別に製造された基板10個に対して、3点曲げ強度(S)は、KSL1590(ISO14704)方法で測定し、下記の式で計算し、計算された値の平均値を計算した。
【0070】
[式]
S=3PL/(2bd2)
【0071】
式で、Pは、破壊荷重、Lは、地点間の距離、bは、梁の幅、dは、梁の厚さである。
【0072】
【0073】
【0074】
表2および表3から確認できるように、実施例は、混合原料粉末を適切なサイズのグラニュールに製造された後、窒化することによって収得された窒化ケイ素粉末を用いて製造された基板の熱伝導度および3点曲げ強度を改善するのに非常に適した粉末であることを確認することができる。ただし、実施例6のように、グラニュールのサイズが大きい場合、窒化ケイ素粉末から溶出するシリコンの含有量が高く、この場合、製造された基板の機械的強度と熱伝導度を改善するのに不十分であることが分かる。
【0075】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の思想は、本明細書に提示される実施形態に制限されず、本発明の思想を理解する当業者は、同じ思想の範囲内で、構成要素の付加、変更、削除、追加などによって他の実施形態を容易に提案できるが、これも、本発明の思想範囲内に入るといえる。
【国際調査報告】