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特表2024-532066ポリカプロラクトン粉末を製造する核形成方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-05
(54)【発明の名称】ポリカプロラクトン粉末を製造する核形成方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/153 20170101AFI20240829BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20240829BHJP
   B33Y 40/00 20200101ALI20240829BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20240829BHJP
   B33Y 80/00 20150101ALI20240829BHJP
   B29C 64/314 20170101ALI20240829BHJP
   C08J 3/14 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
B29C64/153
B33Y70/00
B33Y40/00
B33Y10/00
B33Y80/00
B29C64/314
C08J3/14 CFD
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024504819
(86)(22)【出願日】2022-08-17
(85)【翻訳文提出日】2024-03-18
(86)【国際出願番号】 US2022075072
(87)【国際公開番号】W WO2023023549
(87)【国際公開日】2023-02-23
(31)【優先権主張番号】63/234,812
(32)【優先日】2021-08-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/265,641
(32)【優先日】2021-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/820,405
(32)【優先日】2022-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514073570
【氏名又は名称】ジャビル インク
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100224775
【弁理士】
【氏名又は名称】南 毅
(72)【発明者】
【氏名】ガードナー,トーマス ジョージ
(72)【発明者】
【氏名】パイル,ヴィクトリア ハンナ
(72)【発明者】
【氏名】ヒスロップ,トラヴィス リー
【テーマコード(参考)】
4F070
4F213
【Fターム(参考)】
4F070AA47
4F070AB19
4F070AB23
4F070AC20
4F070AC43
4F070AE28
4F070AE30
4F070DA23
4F070DC07
4F070DC09
4F213AC04
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL03
4F213WL13
4F213WL24
4F213WL26
(57)【要約】
ポリカプロラクトン粉末を粉末床溶融結合3D印刷プロセスに適したものとする特性を有するポリカプロラクトン粉末を調製する方法が開示されている。ここに開示されたポリカプロラクトン粉末は、80J/gと140J/gの間の融解エンタルピーを有する。ここに記載されたポリカプロラクトン粉末は、20マイクロメートルと150マイクロメートルの間のD90を有する。ここに記載されたポリカプロラクトン粉末は、検出量の生体適合性溶媒、生体吸収性溶媒、および/または乳酸エチルを含有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカプロラクトン粒子を含む粉末であって、該ポリカプロラクトン粒子の90体積パーセント超が20マイクロメートルと150マイクロメートルの間の粒径を有し、該ポリカプロラクトン粒子は検出量の核剤を含有し、該ポリカプロラクトン粒子は、生体適合性溶媒または生体吸収性溶媒の少なくとも一方を含む溶媒を検出量で含有する、粉末。
【請求項2】
前記溶媒が乳酸エチルを含む、請求項1記載の粉末。
【請求項3】
前記核剤がヒドロキシアパタイトである、請求項1記載の粉末。
【請求項4】
前記ポリカプロラクトン粒子の90体積パーセント超が、0.75超の真球度を有する、請求項1記載の粉末。
【請求項5】
前記ポリカプロラクトン粒子の80体積パーセント超が、0.80超の真球度を有する、請求項1記載の粉末。
【請求項6】
20マイクロメートル未満の粒径を有するポリカプロラクトン粒子の体積パーセントが、ゼロであるか、または検出不可能である、請求項1記載の粉末。
【請求項7】
前記粉末が、約90J/gから約120J/gの溶融エンタルピーを有する、請求項1記載の粉末。
【請求項8】
ポリカプロラクトン粒子、検出量の乳酸エチル、および検出量の核剤を含む粉末であって、約55℃から約65℃のピーク溶融温度、および約90J/gから約120J/gの溶融エンタルピーを有する粉末。
【請求項9】
前記核剤がヒドロキシアパタイトである、請求項8記載の粉末。
【請求項10】
前記粉末が、約15℃から約35℃の再結晶化ピークを有する、請求項8記載の粉末。
【請求項11】
前記粉末が、約250℃から約425℃の分解開始温度を有する、請求項8記載の粉末。
【請求項12】
前記ポリカプロラクトン粒子の96数パーセント超が、125マイクロメートル未満の粒径を有する、請求項8記載の粉末。
【請求項13】
前記ポリカプロラクトン粒子の90体積パーセント超が、0.75超の真球度を有する、請求項8記載の粉末。
【請求項14】
検出量の乳酸エチルおよび検出量の核剤を有する、ポリカプロラクトン粒子を含む粉末であって、該ポリカプロラクトン粒子の96数パーセント超が、125マイクロメートル未満の粒径を有し、該ポリカプロラクトン粒子の90体積パーセントが、0.75超の真球度を有し、該ポリカプロラクトン粒子が、0.5%w/wと5%w/wの間に調節され、その間に維持された含水率を有する、粉末。
【請求項15】
前記核剤がヒドロキシアパタイトである、請求項14記載の粉末。
【請求項16】
請求項1記載の粉末を製造する方法において、
ポリカプロラクトンおよび極性有機溶媒を混ぜ合わせる工程、
前記極性有機溶媒中に前記ポリカプロラクトンを溶解させて溶液を形成する工程、
前記溶液を、溶解したポリカプロラクトンの少なくとも一部を該溶液から沈殿させる温度に冷却する工程、
前記溶液に核剤を添加する工程、
沈殿したポリカプロラクトンを前記溶液から分離する工程、
分離された沈殿したポリカプロラクトンを洗浄して、洗浄済みポリカプロラクトンを形成する工程、および
前記洗浄済みポリカプロラクトンを乾燥させて、乾燥ポリカプロラクトンを形成する工程、
を有してなる方法。
【請求項17】
混ぜ合わされたポリカプロラクトンおよび前記極性有機溶媒を加熱する工程をさらに含む、請求項16記載の方法。
【請求項18】
150マイクロメートル未満の粒径を有する乾燥ポリカプロラクトン粒子をそれより大きい乾燥ポリカプロラクトン粒子から分離して、サイズ分けされたポリカプロラクトンを形成する分離工程をさらに含む、請求項16記載の方法。
【請求項19】
混ぜ合わされたポリカプロラクトン/核剤混合物中の核剤のパーセントが、約0.5質量パーセントと約10質量パーセントの間である、請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記核剤がヒドロキシアパタイトである、請求項16記載の方法。
【請求項21】
前記サイズ分けされたポリカプロラクトン粒子の90体積パーセント超が、0.75超の真球度を有する、請求項16記載の方法。
【請求項22】
前記サイズ分けされたポリカプロラクトン粒子の80体積パーセント超が、0.80超の真球度を有する、請求項16記載の方法。
【請求項23】
前記極性有機溶媒が、酢酸エチル、乳酸エチル、γ-バレロラクトン、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、テトラヒドロフラン(THF)、ジクロロメタン(DCM)、クロロホルム、アセトン、およびジメチルスルホキシド(DMSO)からなる群より選択される、請求項16記載の方法。
【請求項24】
前記極性有機溶媒が乳酸エチルである、請求項23記載の方法。
【請求項25】
請求項1記載の粉末を製造する方法において、
ポリカプロラクトンおよび乳酸エチルを混ぜ合わせる工程、
前記乳酸エチル中に前記ポリカプロラクトンおよび少なくとも1種類の核剤を溶解させて溶液を形成する工程、
前記溶液を、溶解したポリカプロラクトンの少なくとも一部を該溶液から沈殿させる温度に冷却する工程、
沈殿したポリカプロラクトンを前記溶液から分離する工程、
分離された沈殿したポリカプロラクトンを洗浄して、洗浄済みポリカプロラクトンを形成する工程、および
前記洗浄済みポリカプロラクトンを乾燥させて、乾燥ポリカプロラクトンを形成する工程、
を有してなる方法。
【請求項26】
前記少なくとも1種類の核剤がヒドロキシアパタイトを含む、請求項25記載の方法。
【請求項27】
前記溶液が加熱される、請求項25記載の方法。
【請求項28】
積層造形方法において、
隣接するポリカプロラクトン粒子を選択的に溶融または焼結する工程、
を含み、
前記ポリカプロラクトン粒子の96数パーセント超が、125マイクロメートル未満の粒径を有し、該ポリカプロラクトン粒子の90体積パーセント超が、0.75超の真球度を有し、
前記ポリカプロラクトン粒子は、検出量のヒドロキシアパタイトを含有し、
前記ポリカプロラクトン粒子は、検出量の乳酸エチルを含有する、方法。
【請求項29】
前記ポリカプロラクトン粒子が、0.5%w/wと5%w/wの間に調節され、その間に維持された含水率を有する、請求項28記載の方法。
【請求項30】
請求項1記載の粉末から作られた物品。
【請求項31】
請求項1記載の粉末から作られた医療用品。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の説明】
【0001】
本特許出願は、ここに全て引用される、2021年8月19日に出願された米国仮特許出願第63/234812号、および2021年12月17日に出願された米国仮特許出願第63/265641号に優先権を主張するものである。
【技術分野】
【0002】
本開示は、ポリカプロラクトン(PCLとも称される)粉末の製造に関する。開示されたポリカプロラクトン粉末は、3D印刷または成形などの他の公知の製造方法により三次元物体を製造するための構築材料として使用することができる。開示されたポリカプロラクトン粉末は、選択的レーザ焼結(SLS)により埋め込み型物体を製造するのに適しているであろう。
【背景技術】
【0003】
生体適合性かつ生体吸収性のポリマーが、人体にとって非毒性の医療移植片を製造するのに使用されることがある。
【0004】
3Dプリンターは、例えば、隣接する材料が冷却の際に互いに固化するようにそれらを溶融および/または焼結することによって、隣接する材料を互いに接合することで、固体の三次元物体を作る。3Dプリンターは、通常、コンピュータ支援設計(CAD)モデルの指示に従い、層毎に物体を構築する。3D印刷は、ある種の積層造形である。積層造形には、材料の押出し、粉末床溶融結合、結合剤噴射、ヴァット光重合、シート積層、指向性エネルギー堆積、および材料噴射が含まれるであろう。
【0005】
選択的レーザ焼結(SLS)は、数ある中でも、医療移植片を作るために使用することのできる3D印刷の一種である。SLS装置では、印刷/構築材料が、特定の粒径分布および他の特徴を有する粉末の形態にあることが要求されることがある。その装置では、印刷材料がある程度の流動性を有することも要求されることがある。流動性により、印刷材料が均一に広がり、所定の領域を焼結するために電磁エネルギー(典型的に、レーザエネルギーの形態にある)を施す前に構築材料の新たな層がそれぞれ配置されるであろう。
【0006】
3D印刷用途としては、SLS(選択的レーザ焼結)、MJF(マルチジェットフュージョン)、HSS(高速焼結)、および電子写真術が挙げられるであろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
SLS印刷材料の流動性を改善するために、流動補助剤(flow aid)が添加されることがある。しかしながら、ある流動補助剤を医療移植片に添加することは、その添加により患者の体に副作用が生じる可能性があるので、望ましくないであろう。したがって、医療移植片を製造するためのSLS粉末を製造する場合、一部の例では、流動補助剤の必要を最小にするか、またはなくすために、良好な粒子真球度(sphericity)を有することが望ましいことがある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、SLS装置に使用するのに適合することのできる部分結晶性ポリカプロラクトン粉末を製造する溶媒沈殿方法に関する。
【0009】
特許請求の範囲内の多数のバリエーションに、PCL粉末の調製およびPBFプロセスを含む積層造形プロセスにおけるその使用に関連するプロセス、組成物、および製造物品が含まれるであろう。
【0010】
少なくとも1つのバリエーションは、ポリカプロラクトン粒子を含む粉末を含むであろう。その粉末は、粒子の90体積パーセント超が20マイクロメートルと150マイクロメートルの間の粒径を有する。その粉末は、検出量の溶媒および検出量の核剤を有し、その溶媒は生体適合性溶媒または生体吸収性溶媒である。あるバリエーションでは、溶媒は乳酸エチルである。あるバリエーションでは、核剤はヒドロキシアパタイトである。あるバリエーションでは、ポリカプロラクトン粒子の90体積パーセント超が、0.75超の真球度を有する。別のバリエーションでは、ポリカプロラクトン粒子の90体積パーセント超が、0.80超の真球度を有する。あるバリエーションでは、20マイクロメートル未満の粒径を有するポリカプロラクトン粒子の体積パーセントは、ゼロであるか、または検出できない。あるバリエーションでは、前記粉末は、約55℃から約65℃のピーク溶融温度および約90J/gから約120J/gの融解エンタルピーを有する。あるバリエーションでは、その粉末は、約15℃から約35℃の再結晶化ピークを有する。あるバリエーションでは、その粉末は、約250℃から約425℃の分解温度を有する。あるバリエーションでは、ポリカプロラクトン粒子の96数パーセント(number percent)超が、125マイクロメートル未満の粒径を有する。あるバリエーションでは、ポリカプロラクトン粒子は、0.5%w/wと5%w/wの間に調節され、その間に維持される含水率を有する。
【0011】
少なくとも1つのバリエーションは、極性有機溶媒中でポリカプロラクトンを混ぜ合わせる工程、極性有機溶媒中にポリカプロラクトンを溶解させて溶液を形成する工程、その溶液を、溶解したポリカプロラクトンの少なくとも一部を沈殿させる温度に冷却する工程を含むことのある、PCL粉末を調製する方法を含むことがある。沈殿を促進するために、溶液に核剤が添加されることがある。その粉末は溶液から分離されて、後に、第2のより薄いPCL溶液、並びに原料PCLからの汚染物質;例えば、残留触媒、開始剤、重合溶媒、単量体、およびオリゴマーが残される。次いで、分離された粉末は、洗浄され、乾燥されることがある。あるバリエーションでは、この方法は、混ぜ合わされたポリカプロラクトンおよび極性有機溶媒を加熱する工程をさらに含む。あるバリエーションでは、その方法は、150マイクロメートル未満の粒径を有する乾燥ポリカプロラクトン粒子を、それより大きい乾燥ポリカプロラクトン粒子から分離して、サイズ分けされたポリカプロラクトンを形成する分離工程をさらに含む。あるバリエーションでは、混ぜ合わされたポリカプロラクトン/核剤混合物中の核剤のパーセントは、約0.5質量パーセントと10質量パーセントの間である。あるバリエーションでは、核剤はヒドロキシアパタイトである。あるバリエーションでは、極性有機溶媒は、酢酸エチル、乳酸エチル、γ-バレロラクトン、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、テトラヒドロフラン(THF)、ジクロロメタン(DCM)、クロロホルム、アセトン、およびジメチルスルホキシド(DMSO)からなる群より選択される。
【0012】
少なくとも1つのバリエーションは、ポリカプロラクトンと極性有機溶媒を混ぜ合わせる工程、およびポリカプロラクトンを少なくとも1種類の核剤と共に極性有機溶媒中に溶解させる工程を含む、ポリカプロラクトン粒子を含む粉末を製造する方法を含むことがある。次に、その溶液は、溶解したポリカプロラクトンの少なくとも一部を溶液中に沈殿させるより低い温度に冷却されることがある。沈殿したポリカプロラクトンは溶液から分離され、洗浄され、乾燥される。あるバリエーションでは、その方法は、溶液を加熱する工程を含む。
【0013】
少なくとも1つのバリエーションは、隣接するポリカプロラクトン粒子を選択的に溶融または焼結する工程を含む積層造形方法を含むことがある。ポリカプロラクトン粒子の95数パーセント超が、125マイクロメートル未満の粒径を有し、ポリカプロラクトン粒子の90体積パーセント超が、0.75超の真球度を有する。ポリカプロラクトン粒子は、検出量の乳酸エチルおよび検出量のヒドロキシアパタイトを含有する。あるバリエーションでは、ポリカプロラクトン粒子は、0.5%w/wと5%w/wの間に調節され、その間に維持される含水率を有する。
【0014】
少なくとも1つのバリエーションは、ポリカプロラクトン粒子を含む物品を含むことがある。ポリカプロラクトン粒子の90体積パーセント超が、20マイクロメートルと150マイクロメートルの間の粒径を有する。ポリカプロラクトン粒子は、検出量の核剤を含有する。ポリカプロラクトン粒子は、生体適合性溶媒または生体吸収性溶媒の少なくとも一方を含む溶媒を検出量で含有する。
【0015】
少なくとも1つのバリエーションは、ポリカプロラクトン粒子を含む医療用品を含むことがある。ポリカプロラクトン粒子の90体積パーセント超が、20マイクロメートルと150マイクロメートルの間の粒径を有する。ポリカプロラクトン粒子は、検出量の核剤を含有する。ポリカプロラクトン粒子は、生体適合性溶媒または生体吸収性溶媒の少なくとも一方を含む溶媒を検出量で含有する。
【0016】
そのような方法により調製されたPCL粉末を含む、PBFプロセスに使用するための粉末組成物が提供される。物体は、PBFプロセスにおいてそのようなPCL粉末を使用して、その物体を形成することによって、調製することができる。
【0017】
装置、システム、および方法のバリエーションの開示された実例は、SLS、MJF、HSS、および電子写3D印刷用途に使用するための適切な特性および特徴を有するPCL粉末を提供する。本開示の実施の形態は、ポリマーを溶媒から沈殿させることによって形成された沈殿PCL粉末を提供し、次いで、沈殿した粉末ポリマーを粉末系3D印刷プロセスに利用することができる。
【0018】
さらなる適用性の領域が、ここに与えられた記載から明白になるであろう。この概要における説明と具体例は、説明目的のためだけを意図しており、本開示の範囲または特許請求の範囲を限定する意図はない。
【0019】
バリエーションは、ポリカプロラクトン粒子を含む粉末を含むことがある。少なくとも1つのバリエーションにおいて、ポリカプロラクトン粒子の90体積パーセント超は、20マイクロメートルと150マイクロメートルの間の粒径を有する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】少なくとも1つのバリエーションによる、ポリカプロラクトン粉末を製造する方法を示す流れ図
図2】少なくとも1つのバリエーションにより製造されたポリカプロラクトンの試料について行った熱重量分析(TGA)からの結果を示すグラフ
図3】少なくとも1つのバリエーションにより沈殿したポリカプロラクトンの示差走査熱量測定(DSC)曲線を示すグラフ
図4】少なくとも1つのバリエーションにより製造されたSLS級の粉末に関する粒径体積分布を示すグラフ
図5】少なくとも1つのバリエーションにより製造されたSLS級の粉末に関する粒径数分布を示すグラフ
図6】少なくとも1つのバリエーションにより製造されたポリカプロラクトン粉末に関する粉末データを示す表
図7】少なくとも1つのバリエーションによる、4%w/w(質量/質量)のヒドロキシアパタイト(HAとも称される)を含むポリカプロラクトンを使用してSLS印刷された棒材の写真
図8A】SLSで作製されたポリカプロラクトン(4%w/wのヒドロキシアパタイトを含む)引張棒材を引っ張ることによって生じた引張プロットを示すグラフ
図8B図8Aにおける引張試験から得られた材料特性の纏めを示す表
図9】少なくとも1つのバリエーションによる、ヒドロキシアパタイトで核形成された結果として得られたポリカプロラクトン粉末のDSC曲線を示すグラフ
図10】少なくとも1つのバリエーションによる粒子の個数粒度分布を示すグラフ
図11】少なくとも1つのバリエーションによる粒子の個数粒度分布を示すグラフ
図12A】少なくとも1つのバリエーションによる、4%w/wのヒドロキシアパタイトで核形成されたポリカプロラクトン粉末を示す図
図12B】少なくとも1つのバリエーションによる、4%w/wのヒドロキシアパタイトがドライブレンドされ、24時間に亘り静置されたポリカプロラクトン粉末を示す図
図13】少なくとも1つのバリエーションによる、そのままで沈殿したポリカプロラクトンと、核剤の機能を果たすヒドロキシアパタイトで沈殿したポリカプロラクトンとの間の粒径分布の比較を示す表
図14A】少なくとも1つのバリエーションによる方法で調製されたポリカプロラクトンパックを示す図
図14B】少なくとも1つのバリエーションによる方法で調製されたポリカプロラクトンパックを示す図
図14C】少なくとも1つのバリエーションによる方法で調製されたポリカプロラクトンパックを示す図
図14D】少なくとも1つのバリエーションによる方法で調製されたポリカプロラクトンパックを示す図
図14E】少なくとも1つのバリエーションによる方法で調製されたポリカプロラクトンパックを示す図
図14F】少なくとも1つのバリエーションによる方法で調製されたポリカプロラクトンパックを示す図
図14G】少なくとも1つのバリエーションによる方法で調製されたポリカプロラクトンパックを示す図
図15】少なくとも1つのバリエーションによる、乳酸エチル中で再沈殿したポリカプロラクトン粉末のDSC曲線を示すグラフ
図16】少なくとも1つのバリエーションによる、核剤としての4%w/wのヒドロキシアパタイトの存在下で再沈殿したポリカプロラクトン粉末のDSC曲線を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下の記載は、1つ以上の発明の主題、製造および使用の性質上で実例に過ぎず、本出願または本出願に優先権を主張して出願されるような他の出願、もしくはそこから発行された特許において請求される任意の特定の発明の範囲、適用、または使用を限定する意図はない。開示された方法に関して、提示された工程の順序は、本質的に実例であり、それゆえ、工程の順序は、様々な実施の形態で異なることがある。ここに使用される名詞は、その対象が「少なくとも1つ」存在し、可能であれば、そのような対象が複数存在してもよいことを示す。特に明記のない限り、技術の最も広い範囲を記載する上で、本記載における全ての数量は、「約」という単語により修飾されると理解されるべきであり、全ての幾何学的および空間的記述語は、「実質的に」という単語により修飾されると理解されるべきである。「約」は、数値に適用される場合、計算または測定により、その値におけるある程度のわずかな不正確さを持たせられる(値における正確さへのある取組み;その値にほぼまたは合理的に近い;ほとんど)ことを示す。何らかの理由で、「約」および/または「実質的に」により与えられる不正確さが、当該技術分野でこの通常の意味により理解されない場合、ひいては、ここに使用されているような「約」および/または「実質的に」は、少なくとも、そのようなパラメータを測定または使用する通常の方法から生じるかもしれない変動を示す。
【0022】
本発明の実施の形態を説明し、主張するために、含む、含有する、または有するなどの非制限的用語の同義語として、制約がない用語「含む(comprising)」がここに使用されているが、実施の形態は、代わりに、「からなる(consisting of)」または「から実質的になる(consisting essentially of)」などのより制限的な用語を使用して説明されることがある。したがって、材料、成分、または工程段階を記載する任意の所定の実施の形態について、本発明の技術はまた、下記のような追加の材料、成分、またはプロセスが本出願で明白に記載されていなくても、追加の材料、成分、またはプロセスを除き(からなるための)、実施の形態の重要な特性に影響を与える追加の材料、成分、またはプロセスを除く(から実質的になるための)、そのような材料、成分、または工程段階からなる、またはそれらから実質的になる実施の形態を具体的に含むものである。例えば、要素A、BおよびCを列挙する組成物またはプロセスの記載は、要素Dがここに除外されるものとして明白に記載されていないにもかかわらず、当該技術分野において記載され得る要素Dを除き、A、BおよびCからなる実施の形態、およびそれから実質的になる実施の形態を具体的に想定している。
【0023】
2つ以上の項目、要素、成分、または材料のリストに関して、ここに用いられている「または」という用語は、列挙された項目、要素、成分、または材料が互い排他的であるような完全な選言を示すものではない。例えば、「X、Y、またはZ」は、X、Y、Zの各々が互いに排他的であることを意味するものではない。X、Y、Zの2つ以上は、互いに部分的または完全に重複し得る、もしくはX、Y、またはZの少なくとも1つは、X、Y、またはZの別のものの少なくとも1つに含まれ得る、またはその亜属であり得る。別の例として、「細胞は、単層、三次元、またはビーズ上で成長することがある」とは、ビーズ上で成長した細胞が、三次元で成長した細胞を含まないことを意味するものではない。さらなる例として、「生体適合性溶媒;生体吸収性溶媒、または乳酸エチルの少なくとも1つ」とは、乳酸エチルも、乳酸エチルを含む溶媒も、生体適合性溶媒または生体吸収性溶媒ではないことを意味するものではない、もしくは、生体適合性溶媒または生体吸収性溶媒が、乳酸エチルであり得ない、または乳酸エチルを含み得ないことを意味するものでもない。
【0024】
ここに言及されるように、範囲の開示は、特に指定しない限り、端点を含み、全範囲に入る全ての個別の値およびさらに分割された範囲を含む。それゆえ、例えば、「AからBまで」または「約Aから約Bまで」の範囲は、AおよびBを含む。特定のパラメータ(量、質量パーセントなど)についての値および値の範囲の開示は、ここに有用な他の値および値の範囲を排除するものではない。所定のパラメータに対する2つ以上の特定の例示的な値が、そのパラメータについて主張され得る値の範囲の端点を定義し得ることが想定される。例えば、パラメータXが、値Aを有するとここに例示され、値Zを有するとも例示されている場合、パラメータXは、約Aから約Zの値の範囲を有するであろうと想定される。同様に、あるパラメータに関する値の2つ以上の範囲(そのような範囲が、入れ子になっているか、重複しているか、または別個のものであるかにかかわらず)の開示は、開示された範囲の端点を使用して主張され得る値の範囲の全ての可能な組合せを包含すると想定される。例えば、パラメータXが1~10、または2~9、または3~8の範囲の値を有するとここに例示されている場合、パラメータXは、1~9、1~8、1~3、1~2、2~10、2~8、2~3、3~10、3~9などを含む他の値の範囲を有する可能性も想定される。
【0025】
ある要素または層が、別の要素または層「上にある」、「に係合される」、「に接続される」、または「に結合される」と称される場合、それは、他方の要素または層上に直接ある、係合される、接続されるまたは結合されることがある、もしくは介在する要素または層が存在することがある。これとは対照的に、ある要素または層が別の要素または層「上に直接ある」、「直接係合される」、「直接接続される」、または「直接結合される」と称される場合、介在する要素または層は存在しないであろう。要素間の関係を説明するために使用される他の単語も、同様に解釈されるべきである(例えば、「間」対「直接的に間」、「隣接」対「直接的に隣接」など)。ここに使用されるように、「および/または」という用語は、関連して列挙された項目の1つ以上の任意と全ての組合せを含む。
【0026】
本明細書では、第1、第2、第3などの用語を用いて、様々な要素、構成要素、領域、層および/またはセクションを説明することがあるが、これらの要素、構成要素、領域、層および/またはセクションは、これらの用語によって限定されるべきものではない。これらの用語は、ある要素、構成要素、領域、層、またはセクションを別の領域、層、またはセクションから区別するためだけに使用されることがある。「第1」、「第2」などの用語、および他の数値用語は、ここに使用される場合、文脈によって明確に示されない限り、順序または順番を意味することはない。それゆえ、後述する第1の要素、構成要素、領域、層またはセクションは、例示の実施の形態の教示から逸脱することなく、第2の要素、構成要素、領域、層またはセクションと称することができる。
【0027】
「内側」、「外側」、「真下」、「下」、「下方」、「上」、「上方」などの空間的に相対的な用語は、図に示されるように、ある要素または特徴の他の要素または特徴に対する関係を記載するのに、説明を容易にするためにここに使用されることがある。空間的に相対的な用語は、図に描かれた向きに加えて、使用または動作中の装置の異なる向きを包含するように意図されることがある。例えば、図中の装置がひっくり返された場合、他の要素または特徴の「下」または「真下」として記載された要素は、ひいては、他の要素または特徴の「上」に方向付けられるであろう。それゆえ、例示の用語「下」は、上と下の両方の向きを包含することがある。装置は、他に向けられても(90度回転または他の向き)よく、ここに使用される空間的に相対的な記述子は、それに応じて解釈される。
【0028】
PCLポリマーの粒径は、積層造形プロセスにおける使用に影響することがある。ここに用いられているように、D50(「体積中位径」または「体積による平均粒径」として知られている)は、基準試料の全分布における粒子の50体積%が、述べられた粒径以下の粒径を有する、粉末の粒径を称する。同様に、D10は、基準試料の全分布における粒子の10体積%が、述べられた粒径以下の粒径を有する、粉末の粒径を称し、D90は、基準試料の全分布における粒子の90体積%が、述べられた粒径以下の粒径を有する、粉末の粒径を称する。粒径は、直径で粒径を測定するための当該技術分野で公知のどの適切な方法で測定されてもよい。ここに提供される半結晶性ポリマー粉末は、150μm未満のD90粒径を有することがある。
【0029】
ここに用いられているように、「層」は、少なくとも所定の厚さを有する、規則的かまたは不規則な任意の形状を有する便宜上の用語である。特定の実施の形態において、二次元のサイズと輪郭が予め定められており、特定の実施の形態において、層の三次元全てのサイズと形状が予め定められている。各層の厚さは、積層造形方法に応じて、幅広く変動し得る。特定の実施の形態において、形成されたままの各層の厚さは、先のまたは後の層と異なることがある。特定の実施の形態において、各層の厚さは、同じであることがある。特定の実施の形態において、形成されたままの各層の厚さは、0.5ミリメートル(mm)から5mmであることがある。
【0030】
特定のバリエーションは、積層造形プロセスで複数の層を既定のパターンに形成する工程を含むことがある。多数のバリエーションにおいて、積層造形で、2つ以上の層、または20以上の層が製造されることがある。層の最大数は、大幅に異なり、例えば、製造されている物体のサイズ、使用される技術、使用される設備の生産量と能力、および最終物体に望ましい詳細のレベルなどの検討事項によって、決まるであろう。例えば、5から100,000層が形成されることがある、または20から50,000層が形成されることがある、または50から50,000層が形成されることがある。
【0031】
「粉末床溶融結合(“powder bed fusing”または“powder bed fusion”)」という用語は、ポリマーが選択的に焼結または溶融され、層毎に溶融結合されて、3D物体を提供するプロセスを意味するためにここに使用される。焼結は、固体粉末組成物の密度の約90%未満の密度を有する物体をもたらすことがあるのに対し、溶融は、固体粉末組成物の90%~100%の密度を有する物体を提供することがある。ここに提供されるような半結晶性ポリマーを使用すると、結果として生じる密度が、射出成形方法で達成される密度に近づけるような溶融が促進されるであろう。
【0032】
粉末床溶融結合は、全てのレーザ焼結プロセスおよび全ての選択的レーザ焼結プロセス、並びにASTM F2792-12aにより定義される他の粉末床溶融結合技術をさらに含む。例えば、粉末組成物の焼結は、レーザにより生じるもの以外の電磁放射線の適用によって達成することができ、焼結の選択性は、例えば、阻害剤、吸収剤、サセプタ、または電磁放射線(例えば、マスクの使用または指向性レーザビーム)の選択的適用により達成される。例えば、赤外放射線源、マイクロ波発生器、レーザ、放射加熱器、ランプ、またはその組合せを含む、どの他の適切な電磁放射線源を使用してもよい。特定の実施の形態において、選択的マスク焼結(「SMS」)技術を使用して、三次元物体を製造してもよい。SMSプロセスのさらなる議論について、例えば、赤外放射線を選択的に遮断し、粉末層の一部の選択的照射をもたらすために、遮蔽マスクが使用される、SMS装置を記載している、その全ての内容がここに引用される、米国特許第6531086号明細書を参照のこと。本発明の技術の粉末組成物から物体を製造するためにSMSプロセスを使用する場合、粉末組成物の赤外吸収特性を向上させる1種類以上の材料を粉末組成物に含ませることが望ましいことがある。例えば、粉末組成物は、1種類以上の吸熱体(例えば、ガラス繊維またはガラスマイクロビーズ)または暗色材料(例えば、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、または炭素繊維)を含むことがある。
【0033】
ここに記載された半結晶性ポリマー粉末を含む組成物を粉末床溶融結合することにより製造された全ての三次元物体もここに含まれる。物体の層毎の製造後、その物体は、優れた解像度、耐久性、および強度を示すことがある。そのような物体には、試作品、最終製品、並びに最終製品の金型としての使途を含む、多種多様な使途を有する様々な製造物品が含まれるであろう。
【0034】
物体は既定パターンから形成されることがあり、このパターンは、当該技術分野で公知のように、ここに記載されるように、所望の物体の三次元デジタル表現から決定されることがある。材料は、三次元物体を作るために、コンピュータ制御下で、例えば、コンピュータ支援設計(CAD)の作業により、接合または固化されることがある。
【0035】
詳しくは、粉末床溶融結合(例えば、レーザ焼結)された物体は、レーザ焼結プロセスを含むどの適切な粉末床溶融結合プロセスを使用して、PCL粉末を含む組成物から製造されてもよい。これらの物体は、いくつかの実施の形態において、ポリマーマトリクス全体に分散された強化粒子を有することがあるポリマーマトリクスを含む、複数の重なった接着性焼結層を含むことがある。レーザ焼結プロセスが公知であり、これは、ポリマー粒子の選択的焼結に基づき、ポリマー粒子の層がレーザエネルギーに短期間暴露され、レーザエネルギーに暴露されたポリマー粒子が、それゆえ、互いに結合される。ポリマー粒子の層の連続焼結により、三次元物体が製造される。選択的レーザ焼結プロセスに関する詳細が、一例として、その各々の全ての内容がここに引用される、米国特許第6136948号明細書および国際公開第96/06881号に見つかる。しかしながら、ここに記載された半結晶性ポリマー粉末は、従来技術の他の高速試作形成または高速製造プロセス、特に、先に記載されたプロセスにも使用してもよい。例えば、半結晶性ポリマー粉末は、具体的に、米国特許第6136948号明細書または国際公開第96/06881号に記載されたような、SLS(選択的レーザ焼結)プロセスにより、国際公開第01/38061号に記載されたような、SIBプロセス(粉末の結合の選択的阻害)により、欧州特許第0431924号明細書に記載されたような、3D印刷により、または独国特許第10311438号明細書に記載されたような、マイクロ波プロセスにより、粉末からの成形型の製造に使用されることがある。これらの特許文献の各々の全ての内容が、ここに引用される。
【0036】
粉末床溶融結合物体の溶融結合層は、選択的レーザ焼結加工に適したどの厚さのものであってもよい。個々の層は各々、平均で、少なくとも50μm厚、少なくとも80μm厚、または少なくとも100μm厚であってよい。数多くのバリエーションにおいて、複数の焼結層の各々は、平均で、500μm未満の厚さ、300μm未満の厚さ、または200μm未満の厚さである。それゆえ、いくつかの実施の形態に関する個々の層は、50から500μm、80から300μm、または100から200μm厚であってよい。選択的レーザ焼結以外の層毎の粉末床溶融結合プロセスを使用して本発明の技術の粉末組成物から製造された三次元物体は、先に記載されたものと同じかまたは異なる層厚を有することがある。
【0037】
数多くのバリエーションは、選択的レーザ焼結(SLS)、マルチジェットフュージョン(MJF)、高速焼結(HSS)、および電子写真(EPG)3D印刷に使用するのに適切な特徴を有するPCL粉末を製造し、使用する方法を提供することがある。少なくとも1つのバリエーションは、極性有機溶媒中のPCLの飽和溶液からのポリマーの沈殿により形成された沈殿PCL粉末を提供し、そのポリマーに晶子を形成させ、次いで、PBF 3D印刷プロセスに沈殿したポリマー粉末を利用することができる。PCL粉末の数多くのバリエーションは、最適化された粒径とその分散度、形状、結晶化度を含む、PBFプロセスに最適化された特徴を示すことがあるのと同時に、その製造に分散剤を使用しない単一溶媒プロセスを使用する。
【0038】
PCL粉末を調製する方法は、乳酸エチル中にバルクPCLを溶解させて、高温で溶液を形成する工程;その溶液を室温に冷却して、150マイクロメートル(ミクロン、またはμm)未満のD90値、100μm以下のD50値、または0から100μmのD50値を有する沈殿物としてPCL粉末を形成する工程を含むことがある。この方法は、粒子が、上述したプロセスの結果と比べて上述した印刷プロセスに適した、特定のサイズ(平均直径で約30μmから約40μm)、低分散度、回転楕円形状、および結晶特性を示すことがある生成物も生じることがある。再沈殿の作用は、PCLを精製する働きもする。
【0039】
そのような方法により調製されたPCL粉末を含む、PBFプロセスに使用するための粉末組成物が提供される。PBFプロセスにそのようなPCL粉末を使用して、物体を形成することによって、物体を調製することができる。
【0040】
特定の実施の形態において、エステル、例えば、乳酸エチルなどの極性溶媒にバルクPCLを溶解させて、第1の温度で溶解ポリマーの第1の溶液を形成する工程を含む、PCL粉末を調製する方法が提供される。この第1の溶液は、次に、第1の温度より低い第2の温度に冷却される。溶解PCLの一部が、第2の温度になる途中か、またはその温度に到達した際のいずれかで、第1の溶液から粉末として沈殿し、第2のより薄いPCL溶液が後に残される。沈殿PCL粉末は、例えば、重力濾過、真空濾過、または遠心分離によって、第2の溶液の残りから分離されることがある。分離されたPCL粉末は、水または有機溶媒で洗浄させることもある。ただし、洗浄溶媒が、再沈殿に使用される溶媒と混和性であること、および洗浄溶媒が、ポリマー粉末を有害な程度(例えば、許容できない材料の過剰な損失および/または許容できない粒径の過剰な減少)まで溶解せず、ポリマー粉末生成物の溶媒では全くないであろうという条件であるが。分離されたPCL粉末は、もし適用されている場合、任意の洗浄手順の後に、乾燥されることもある。特定の実施の形態において、極性溶媒として、乳酸エチルが挙げられるであろう。他の実施の形態において、極性溶媒は、乳酸エチルから実質的になることがある。またさらなる実施の形態において、極性溶媒は乳酸エチルからなることがある。
【0041】
再沈殿でPCL粉末を調製する方法に、様々な溶媒温度が利用されることがある。溶解工程は、極性溶媒中のPCLを加熱して、室温より高い第1の温度で溶解PCLの第1の溶液を形成する工程を含むことがある。冷却工程は、第1の溶液を第2の温度に冷却する工程を含むことがあり、この第2の温度は、ポリマー溶液の沈殿温度より低く、周囲温度(「室温」)以下であることがある。周囲(「室内」)温度は、約20~25℃(68~77°F)であると理解される。
【0042】
PCLの様々な実施の形態は、以下の物理的特徴を示すことがある。PCL粉末は、約150μm未満のD90粒径を有することがある。特定の実施の形態において、PCL粉末は、約100μm未満のD50を有することがある。PCL粉末は、約1マイクロメートルから約100μmのD50値を有することがある。特定の実施の形態は、PCL粉末が、約30μmから約40μmのD50値を有する場合を含む。PCL粉末は、回転楕円体粒子の形態にあることがある。
【0043】
ポリマー粉末の融点および融解エンタルピーは、示差走査熱量測定(DSC);例えば、20℃/分で走査されるTA Instruments Discovery Series DSC 250を使用して決定されることがある。
【0044】
ポリマーの結晶化度パーセントは、PCLについて、139.5J/gの値を有すると報告されている(Gupta and Geeta, J. Appl. Polym.. Sci. 2012, 123(4), 1944-1950)、理論的100%の結晶性ポリマーの融解エンタルピーに対する、DSCで測定された融解エンタルピーの比で決定されることがある。結晶化度パーセントは、粉末X線結晶学で直接決定され、直接線形関係で融解エンタルピーに相関付けられることもある。
【0045】
ポリマー粉末の粉体流は、ASTM D1895の方法Aを使用して測定されることがあり、10mmのノズル径を持つ円錐体を使用して決定した。
【0046】
いくつかの実施の形態において、ポリマー粉末の粒径は、当該技術分野で公知のレーザ回折で決定される。例えば、粒径は、Microtrac S3500などのレーザ回折計を使用して決定することができる。
【0047】
特定の実施の形態において、PBF 3D印刷プロセスに使用するための粉末組成物が提供され、ここで、そのような粉末組成物は、ここに提供された方法にしたがって調製されたPCL粉末を含む。例えば、PBFプロセスに使用するための粉末組成物は、約150μm未満のD90粒径、および約30μmから約40μmのD50値を有するPCL粉末を含むことがある。そのような粉末組成物は、異なる物理的特徴を有するPCL粉末並びにここに記載されたような添加剤と他の成分の混合物を含むことがある。
【0048】
特定の実施の形態において、ここに開示された方法により調製された再沈殿PCL粉末は、物体を形成するためにPBF 3D印刷プロセスに使用される。物体を調製するための特定の方法は、約150μm未満のD90粒径、および約30μmから約40μmのD50値を有するPCL粉末を提供する工程を含む。次いで、このPCL粉末は、物体を形成するためにPBFプロセスに使用される。
【0049】
特定の実施の形態において、積層造形プロセスで調製される1つ以上の物体が提供される。そのような方法は、ここに記載された方法の1つ以上により調製されたPCL粉末を提供する工程を含むことがある。次いで、このPCL粉末は、1つ以上の物体を形成するためにPBFプロセスに使用される。
【0050】
特定の実施の形態は、三次元物体を形成するためにPCL粉末を含む粉末組成物を使用する粉末床溶融結合のための方法を含むことがある。再沈殿PCL粉末の良好な流動性のために、滑らかで緻密な粉末床が形成され、焼結物体の精度と密度を最適にすることができる。
【0051】
特定の実施の形態において、PCL粉末を調製する方法は、室温より高い温度で乳酸エチルなどの極性溶媒にバルクPCLを溶解させる工程を含む。周囲(「室内」)温度は、約20~25℃(68~77°F)であると理解され、よって、PCLは、周囲温度より高い温度で乳酸エチル中に溶解されることがある。PCLは、乳酸エチル溶媒中に可溶性であり、それゆえ、PCL溶液が形成される。一般に、その溶液は、溶解PCLの量が、溶媒を周囲温度でそれを溶液に維持できる量よりも多くなるように、室温より高い温度で調製されることがある。PCLの乳酸エチル溶媒中への混合は、インラインまたはバッチ式で行われることがある。そのプロセスは、製造規模で容易に行われるであろう。室温(例えば、約20℃)に冷却する際に、溶解PCLは、結晶化し、乳酸エチル溶媒から沈殿し始め、PCL沈殿物が形成される。
【0052】
沈殿後、乳酸エチル溶媒は、例えば、濾過や遠心分離によって除去される。次いで、PCL粉末は、再沈殿溶媒と混和性であり、妥当に揮発性である溶媒、例えば、水で洗浄され、洗浄溶媒を除去するために濾過され、熱の適用の有無にかかわらず、真空の印加にかかわらずに、乾燥されることがある。PCLの可溶性が最小であるか、またはPCLが不溶性である洗浄溶媒を使用することが、さらに都合よい。
【0053】
ここに記載されているように、PCLは、極性有機溶媒中に溶解される。例えば、PCLは、PCLの飽和溶液を生じる条件下で溶媒中に溶解されることがあり、ここで、条件を変えること(例えば、溶液の温度を低下させること)により、そこからPCL粉末が沈殿する。特定の実施の形態において、溶媒は、乳酸エチル、並びに1種類以上の他のエステルまたは1種類以上の他の極性有機溶媒を含むことがある。特定の実施の形態において、溶媒は乳酸エチルから実質的になることがあり、ここで、PCLの結晶化に実質的に影響する他の成分は存在しない。特定の実施の形態において、溶媒は、実質的に100%乳酸エチルであることがある。乳酸エチル中のPCLの溶液からPCL粉末を沈殿させる際に、溶解PCLの一部が溶液中に残ることがあることにさらに留意されたい。特定の実施の形態において、再沈殿溶媒と混和性であるが、PCLの溶解を支援しない二次溶媒をPCL/溶媒溶液に添加して、沈殿を誘発することがある。特定の実施の形態において、粉末形態にある核剤の使用により、沈殿を誘発することがあり、粒径と粒径の分散度を制御するのに役立てることがあり、粉末粒子の全体的な回転楕円形状を改善するのに役立てることがある。したがって、溶液の残りから沈殿PCL粉末を分離すると、溶解PCLの一部を含む乳酸エチルの溶液が残る。
【0054】
乳酸エチルは、PCLを十分に溶解するという点で前記プロセスに有用な溶媒であり;PBF 3D印刷プロセスに適した特徴を有する粉末を生成することがここに示され;周囲温度から十分に離れた沸点を有し、沈殿中に幅広い冷却範囲が可能になり;一般に入手できる有効な洗浄溶媒(例えば、水または低分子量アルコール)と混和性であり;哺乳類において比較的非毒性であることが示されて(食品添加物としての使用が示されて)おり;体内で分解されて、エタノールと乳酸を形成することがある。
【0055】
特定の実施の形態において、沈殿PCL粉末は、150μm未満のD85粒径、特に、150μm未満のD90粒径を有する。特定の実施の形態は、PCL粉末が150μm未満のD90粒径を有する場合を含む。粒子の100%が150μm未満のサイズを有するPCL粉末も、この方法により製造されることがある。PCL粉末は、100μm以下のD50値も有することがある。特に、PCL粉末は、10μmから100μmのD50値を有することがある。PCL粉末の平均粒径は、100μm以下である、または0から100μmのD50値を含むことがある。
【0056】
特定の実施の形態において、物品を調製する方法は、PCL粉末を含む粉末組成物を提供する工程、および粉末組成物に粉末床溶融結合プロセスを使用して、三次元物体を形成する工程を含む。少なくとも1種類のPCL粉末は、直径が150μm未満のD50粒径を有することがあり、上述した方法により製造される。実施の形態は、150μm未満のD90粒径、100μm以下のD50値、または0から100μmのD50値を有するものを含む。
【0057】
PCL粉末は、粉末組成物中の唯一の成分として使用され、粉末床溶融結合工程に直接適用されることがある。あるいは、PCL粉末は、最初に、他のポリマー粉末、例えば、別の結晶性ポリマーまたは非晶質ポリマー、もしくは半結晶性ポリマーと非晶質ポリマーの組合せと混合されることがある。粉末床溶融結合に使用される粉末組成物は、粉末組成物中の全てのポリマー材料の総質量に基づいて、50質量%から100質量%のPCL粉末を含むことがある。
【0058】
PCL粉末は、粉末床溶融結合方法に有用な粉末を作るために、1種類以上の添加剤/成分と組み合わされることもある。そのような随意的な成分は、粉末床溶融結合またはそれから調製される物体における粉末組成物の性能に悪影響を与えずに、特定の機能を果たすのに十分な量で存在することがある。随意的な成分は、PCL粉末または随意的な流動剤(flow agent)の平均粒径の範囲内に入るD50値を有することがある。必要であれば、各随意的な成分は、PCL粉末に実質的に類似であることがある、所望の粒径および/または粒径分布に粉砕されることがある。随意的な成分は、粒状物質であることがあり、充填剤、流動剤、および着色剤などの有機材料と無機材料を含むことがある。さらに他の追加の随意的な成分としては、例えば、トナー、増量剤、充填剤、着色料(例えば、顔料および染料)、滑剤、耐食剤、チキソトロピー剤(thixotropic agent)、分散剤、酸化防止剤、接着促進剤、光安定剤、有機溶媒、界面活性剤、難燃剤、帯電防止剤、可塑剤、先のものの少なくとも1つを含む組合せも挙げられるであろう。さらに別の随意的な成分は、PCL粉末の特性を変える第2のポリマーであることもある。特定の実施の形態において、各随意的な成分は、仮にも存在する場合、粉末組成物の総質量に基づいて、0.01質量%から30質量%の量で粉末組成物中に存在することがある。粉末組成物中の全ての随意的な成分の総量は、粉末組成物の総質量に基づいて、0質量%超から30質量%までに及ぶことがある。そのような添加剤は、粉末床においてIRレーザエネルギーの熱エネルギーへの変換も向上させることがある。
【0059】
各随意的な成分が、粉末床溶融結合プロセス、例えば、レーザ焼結プロセス中に溶融することは必要ではない。しかしながら、各随意的な成分は、強力で耐久性のある物体を形成するために、PCLポリマーと均質的に適合するように選択されることがある。随意的な成分は、例えば、形成される物体に追加の強度を与える補強剤であることがある。補強剤の例としては、ガラス繊維、炭素繊維、タルク、粘土、珪灰石、ガラスビーズ、およびその組合せの内の1種類以上が挙げられる。そのような添加剤は、粉末床においてIRレーザエネルギーの熱エネルギーへの変換も向上させることがある。
【0060】
粉末組成物は、必要に応じて、流動剤を含有することがある。詳しくは、粉末組成物は、粉末組成物の総質量に基づいて、0.01質量%から5質量%、特に、0.05質量%から1質量%の量で粒状流動剤を含むことがある。特定の実施の形態において、粉末組成物は、粉末組成物の総質量に基づいて、0.1質量%から0.25質量%の量で粒状流動剤を含む。粉末組成物中に含まれる流動剤は、10μm以下の中央粒径を有する粒状無機材料であることがあり、水和シリカ、非晶質アルミナ、ガラス状シリカ、ガラス状リン酸塩、ガラス状ホウ酸塩、ガラス状酸化物、チタニア、タルク、マイカ、ヒュームドシリカ、カオリン、アタパルジャイト、ケイ酸カルシウム、アルミナ、ケイ酸マグネシウム、およびその組合せからなる群より選択さることがある。流動剤は、半結晶性ポリマー粉末が流れ、粉末床溶融結合装置(例えば、レーザ焼結装置)の構築面上に平らになるのに十分な量で存在することがある。そのような添加剤は、粉末床においてIRレーザエネルギーの熱エネルギーへの変換も向上させることがある。
【0061】
粉末組成物は、SLSプロセスにおいてレーザエネルギーの熱エネルギーへの変換を促進させるIR吸収剤を必要に応じて含有することがある。IR吸収剤は、金属酸化物(例えば、チタニア、シリカ、ガラス、酸化タングステン(VI))、金属ナノ粒子(例えば、金ナノロッド)、またはIRレーザの波長(典型的に、943cm-1に相当する10.6μm)で強力に吸収する有機化合物など、様々な無機または有機物質の1つ以上であることがある。
【0062】
別の随意的な成分は、物体の所望の色を与える着色剤、例えば、カーボンブラックのような顔料または染料である。着色剤は、着色剤が組成物またはそれから調製された物体に悪影響を与えない限り、制限されず、着色剤は、粉末床溶融結合プロセスの条件下および熱および/または電磁放射線、例えば、焼結プロセスに使用されるレーザへの曝露下で、その色を維持するのに十分に安定である。そのような添加剤は、粉末床においてIRレーザエネルギーの熱エネルギーへの変換も向上させることがある。
【0063】
またさらなる添加剤の例としては、トナー、増量剤、充填剤、滑剤、耐食剤、チキソトロピー剤、分散剤、酸化防止剤、接着促進剤、光安定剤、有機溶媒、界面活性剤、難燃剤、帯電防止剤、可塑剤、そのようなものの組合せが挙げられる。そのような添加剤は、粉末床においてIRレーザエネルギーの熱エネルギーへの変換も向上させることがある。
【0064】
さらに別の随意的な成分は、PCL粉末の特性を変える第2のポリマーであることもある。
【0065】
粉末組成物は、溶融結合可能な(fusible)粉末組成物であり、選択的レーザ焼結などの粉末床溶融結合プロセスに使用されることがある。溶融結合可能な粉末組成物から部品を製造するための、特に、ここに開示された溶融結合可能なPCL粉末から部品を製造するための、選択的レーザ焼結システムの一例を、下記のように説明することができる。PCL粉末を含む粉末組成物の1つの薄層が焼結チャンバ上に広げられる。レーザビームが、CADモデルの断面切片に対応するコンピュータ制御パターンをトレースして、溶融温度よりわずかに低く予熱された粉末を選択的に溶融する。粉末の1層が焼結された後、粉末床ピストンが所定の増分(典型的に100μm)だけ降下され、粉末の別の層がローラによって先に焼結された層の上に広げられる。次いで、全物体が完成するまで、レーザが各連続層を溶融し、先の層に溶融結合しながら、このプロセスを繰り返す。このように、ここに記載されたPCL粉末を使用して、複数の溶融結合層から作られた三次元物体を製造することができる。
【0066】
1つ以上のバリエーションは、以下に限られないが、PCL粉末の調製における単一溶媒の使用(これにより、溶媒の回収とその再利用が容易になる)を含むことのある、1つ以上の利点を提供するように構成され、準備されることがある。数多くのバリエーションにおいて、開示された方法の少なくとも1つにより製造されるPCL粉末は、改善されたPBF性能を与える。したがって、選択的レーザ焼結(SLS)、マルチジェットフュージョン(MJF)、高速焼結(HSS)、および電子写真3D印刷を含む、粉末床の溶融結合を利用する積層造形プロセスは、ここに記載されたように製造されたPCL粉末を形成し、使用することによって、恩恵を受けるであろう。特に、埋め込み型の生体吸収性医療機器の3D印刷は、ここに記載されたPCL粉末材料から恩恵を受けるであろう。
【0067】
数多くのバリエーションにおいて、再沈殿プロセスは、PCL材料を精製して、残留触媒、開始剤、単量体、および他の汚染物質を除去する働きをすることがある。PCLを溶解させることによって、固体中の隙間に捕捉された汚染物質が、結果として生じるPCL溶液中に放出される。PCLが沈殿したときに、固体中に再び入り込む汚染物質の数量は、取り込む可能性が低いこと、並びに汚染物質を排除する晶子の形成の性質の両方のために、著しく少ない。再沈殿プロセスは、汚染物質のレベルをさらに減少させるために、新たな汚染されていない溶媒で繰り返してもよい。PCLから除去すべき一般的な汚染物質としては、ε-カプロラクトンを重合するプロセスにおけるスズ触媒の一般的な利用から残留するスズ化合物である。
【0068】
数多くのバリエーションは、積層造形に適した粉末を製造する方法であって、適切なポリマー材料および溶媒を混ぜ合わせる工程;積層造形に適したポリマー材料を溶媒に溶解させて、溶液を形成する工程;その溶液を、積層造形に適した溶解ポリマー材料の少なくとも一部を溶液から沈殿させる温度に冷却する工程;沈殿したポリマー材料を溶液から分離する工程;分離された沈殿したポリマー材料を洗浄して、洗浄済みポリマー材料を形成する工程;および洗浄済みポリマー材料を乾燥させて、積層造形に適した乾燥ポリマー材料を形成する工程を含む方法を含むことがある。
【0069】
少なくとも1つのバリエーションにおいて、ポリカプロラクトン粉末は、ポリカプロラクトンを加熱された溶媒に溶解させることによって、形成されることがある。あるいは、溶媒に、加熱は必要ないことがある。溶媒は、非毒性の生体適合性溶媒であることがある。少なくとも1つのバリエーションにおいて、溶媒は乳酸エチルであることがある。単一溶媒が使用されることがある。γ-バレロラクトンおよび酢酸エチルなどの再沈殿溶媒が使用されることがある。キシレンと石油エーテル、テトラヒドロフランとメタノール、またはジクロロメタンと水などの再沈殿系が使用されることがある。特定のバリエーションにおいて、ポリビニルピロリドンなどの分散剤も利用されることがある。
【実施例
【0070】
ポリカプロラクトン粉末の再沈殿
図1は、少なくとも1つのバリエーションによる、ポリカプロラクトン粉末を製造する方法を示している。ポリカプロラクトンと溶媒は、例えば、工程101に示されるように、混ぜ合わされる。どのサイズのポリカプロラクトン片を使用してもよい。溶媒は、上述した溶媒の1つ以上であってよい。単一溶媒を使用してもよい。ポリカプロラクトンは、ポリカプロラクトンの添加の際に溶媒の温度が低下するのを防ぐために、溶媒に添加される前に、加熱されることがある。溶媒が加熱されることがある。必要に応じて、溶媒は、加熱を必要としないことがある。少なくとも1つのバリエーションにおいて、ポリカプロラクトンは、ポリカプロラクトンの融点より高く加熱され、次いで、溶媒に添加されることがある。溶媒は、これもポリカプロラクトンの融点より高い温度を有することがある。ポリカプロラクトン/溶媒の組合せは、例えば、撹拌によって、混合されることがある。毎分200から800回転の撹拌速度が使用されることがある。少なくとも1つのバリエーションにおいて、600から700rpmの撹拌速度が使用されることがある。ポリカプロラクトンの濃度は、1%w/vから20%w/vに及ぶことがあり、この場合、ポリカプロラクトンの濃度は、ポリカプロラクトンの質量(グラム、g)を溶媒の体積(ミリリットル、ml)で割ることによって、計算される。あるバリエーションでは、ポリカプロラクトンの濃度は、(a)13%w/vから15%w/v、または(b)8%w/vから10%w/vであることがある。新たなまたは再生(ポリカプロラクトンを再沈殿させるために以前に使用された)溶媒が使用されることがある。工程102で、溶媒/ポリカプロラクトンの混合物の温度は、設定温度に制御されることがある。1つのバリエーションにおいて、設定温度は、60℃と145℃(範囲の端点を含む)の間にあることがある。少なくとも1つのバリエーションにおいて、設定温度は、80℃から110℃(範囲の端点を含む)に及ぶことがある。設定温度は、溶媒の融点に非常に近い(例えば、約5℃以内)温度であることがある。乳酸エチル溶媒の沸点は、約154℃であることがある。溶媒の温度が設定温度と等しいことがある。ポリカプロラクトンは、工程102で示されるように、溶媒に溶解して、溶液を作ることがある。工程102は、全てのポリカプロラクトンが溶解するまで継続することがある。全てのポリカプロラクトンが溶解したときに、溶液は完全に透明に見えるであろうし、目に見える固形物は最小にしか、または全く存在しないであろう。
【0071】
工程103で、ポリカプロラクトン溶液の温度が低下することがある。冷却工程により、温度が溶液の飽和点を通り、それより低く低下することがあり、これにより、溶解したポリカプロラクトンが溶液から沈殿することがある。1つのバリエーションにおいて、ポリカプロラクトン/溶媒の溶液の温度は、室温まで低下することがある。工程104で、沈殿したポリカプロラクトンが溶液から分離されることがある。分離は、例えば、真空濾過により、または篩い分け、遠心分離、サイクロン分離器、空気分級、乾燥などの他の分離技術により行われることがある。ポリカプロラクトンが工程104で溶液から分離された後、ポリカプロラクトンは、洗浄工程105で洗浄されることがある。ポリカプロラクトンから残留溶媒を置き換えるおよび/または抽出するために、水などの混和性洗液が使用されることがある。洗液は、ポリカプロラクトンと混ぜ合わされることがあり、その混合物が撹拌されることがある。あるいは、洗液は、溶媒を置き換えおよび/または抽出し、それをポリカプロラクトンから洗浄するために、メッシュまたはスクリーンの上に配置されたポリカプロラクトン固体に噴霧されることがある。工程105に、他の液体置換または抽出方法も使用してよい。ポリカプロラクトンが洗浄された後、それを乾燥してもよい。ポリカプロラクトンは、周囲温度(例えば、20℃)から50℃に及ぶ温度に加熱することによって、乾燥されることがある。ポリカプロラクトンは、高温空気(または窒素などの他の気体)がその上を通過して、水蒸気を運び去るときに静止していることがある。あるいは、ポリカプロラクトンは、乾燥工程中に、洗液のポリカプロラクトンから周囲環境への物質移動を改善するために、回転ドラムにかけられる、または他のやり方で動かされることがある。真空系を使用して、乾燥工程中にポリカプロラクトンが曝露される圧力を低下させて、乾燥に必要なエネルギーを減少させる、および/またはより完璧な乾燥を行うことがある。
【0072】
乾燥したポリカプロラクトン粒子は、工程107でサイズにより分離されることがある。サイズ分離は、30から150μm、20から150μm、または1から150μmの範囲内の粒径を有するポリカプロラクトン粒子を分離/単離することができる。サイズ分離は、SLS印刷などの特定の最終用途に望ましい範囲内の直径を有するポリカプロラクトン粒子を分離することができる。サイズ分離は、篩い分け、サイクロン分離器、空気分級などによって行われることがある。最後に、ポリカプロラクトンまたはポリカプロラクトンのあるサイズの部分が、物品を製造するための構築材料として使用されることがある。例えば、ポリカプロラクトンのあるサイズの部分は、3D印刷物体を製造するために、SLSプリンターで構築材料として使用されることがある。少なくとも1つのバリエーションにおいて、サイズ分離工程は排除され、粉末は、サイズ分離工程を行わずに、最終使用用途(例えば、SLS印刷)に使用される。
【0073】
粉末の特徴付け
いくつかのバリエーションにしたがって沈殿したポリカプロラクトン粉末により、図2から5に示された性質がもたらされた。図2は、少なくとも1つのバリエーションにしたがって製造されたポリカプロラクトンの試料について行った熱重量分析(TGA)からの結果を示す。TGAでは、試料を加熱し、温度の上昇につれてその質量を測定する。残留溶媒の存在と熱分解温度が、TGAの結果により確認されるであろう。何故ならば、それらは、質量損失の速度変化として現れるであろうからである。TGAグラフの第2のプロット(線)は、TGA曲線の導関数であり、質量の変化率を示す。図2に示されるように、少なくとも1つのバリエーションにおける分解の開始は、水分による3%の質量損失の358℃で始まった。
【0074】
図3は、少なくとも1つのバリエーションにより沈殿したポリカプロラクトンの示差走査熱量測定(DSC)曲線を示す。図3のバリエーションに示されるように、第1の溶融ピークの開始は49.81℃であり、ピーク温度は58.39℃であり、エンタルピーは101.86J/gである。図3における再結晶化ピークは、25.87℃で始まり、ピークは21.02℃であり、エンタルピーは66.219J/gである。図3における第2の溶融ピークは、45.68℃で始まり、エンタルピーは55.090J/gである。
【0075】
数多くのバリエーションにおいて、乳酸エチル溶媒を使用すると、以下:(a)約287℃と約420℃の間の分解開始温度、(b)約0質量%と約3質量%の間のTGA質量損失、(c)約49℃と約58℃の間の第1の溶融開始温度、(d)約58℃と約65℃の間の第1の溶融ピーク温度、(e)約97J/gと約111J/gの間の第1の溶融ピークエンタルピー、(f)約25℃と約34℃の間の再結晶化開始温度、(g)約21℃と約28℃の間の再結晶化ピーク温度、(h)約56J/gと約67J/gの間の再結晶化エンタルピー、(i)約45℃と約54℃の間の第2の溶融開始温度、(j)約51℃と約58℃の間の第2の溶融ピーク温度、(k)約26J/gと約58J/gの間の第2の溶融エンタルピー、(l)体積パーセントで決定した場合の、約32μmと約517μmの間のD10、(m)体積パーセントで決定した場合の、約50μmと約944μmの間のD50、(n)体積パーセントで決定した場合の、約83μmと約1297μmの間のD90、(o)約0体積%と約100体積%の間の、150μm超の直径を有する粒子の体積パーセント、(p)0体積%と1体積%の間の、20μm未満の直径を有する粒子の体積パーセント、(q)数パーセントで決定した場合の、約14μmと約245μmの間のD10、(r)数パーセントで決定した場合の、24μmと359μmの間のD50、(s)数パーセントで決定した場合の、48μmと876μmの間のD90、(t)約0数%と約100数%の間の、150μm超の直径を有する粒子の数パーセント、または(u)約0数パーセントと約35数パーセントの間の、20μm未満の直径を有する粒子の数パーセントの内の少なくとも1つを有するポリカプロラクトン粒子が得られるであろう。
【0076】
データを解釈する場合、yμmのDは、試料中の粒子のxパーセントが、yμmより小さい粒径を有したことを意味する。例えば、100μmのD50(体積パーセントで決定した場合)は、試料中の粒子の50%(体積)が、100μmより小さい粒径を有したことを意味する。
【0077】
乳酸エチル溶媒を使用したバリエーションにおいて、方法は、粒子の約70体積パーセントから約100体積パーセントが20μmと150μmの間の粒径を有する粒子を含有するポリカプロラクトン粉末を生成することがある。バリエーションは、粒子の80体積パーセント超、90体積%超、95体積%超、98体積%超、またさらには99体積%超が20μmと150μmの間の粒径を有する粒子を含有するポリカプロラクトン粉末を生成することがある。
【0078】
乳酸エチル溶媒を使用したバリエーションにおいて、方法は、粒子の約70数パーセントから約100数パーセントが20μmと150μmの間の粒径を有する粒子を含有するポリカプロラクトン粉末を生成することがある。バリエーションは、粒子の80数パーセント超、90数%超、95数%超、98数%超、またさらには99数%超が20μmと150μmの間の粒径を有する粒子を含有するポリカプロラクトン粉末を生成することがある。開示された再沈殿方法を実施して、ポリカプロラクトン粉末を製造する場合、NMR(核磁気共鳴分光法)、GC(ガスクロマトグラフ)、TGA(熱重量分析)などの分析方法を使用して、ポリカプロラクトン粉末中の微量の残留溶媒を検出することができる。
【0079】
酢酸エチル溶媒を使用すると、以下の特徴:(a)約329℃と約475℃の間の分解開始温度、(b)約0質量%と約0.5質量%の間のTGA質量損失、(c)約52℃と約57℃の間の第1の溶融開始温度、(d)約64℃と約67℃の間の第1の溶融ピーク温度、(e)約96J/gと約105J/gの間の第1の溶融ピークエンタルピー、(f)約27℃と約31℃の間の再結晶化開始温度、(g)約22℃と約26℃の間の再結晶化ピーク温度、(h)約48J/gと約63J/gの間の再結晶化エンタルピー、(i)約50℃と約60℃の間の第2の溶融開始温度、(j)約56℃と約59℃の間の第2の溶融ピーク温度、(k)約50J/gと約55J/gの間の第2の溶融エンタルピー、(l)体積パーセントで決定した場合の、約28μmのD10、(m)体積パーセントで決定した場合の、約1066μmのD50、(n)体積パーセントで決定した場合の、約1283μmのD90、(o)約67体積%の、150μm超の直径を有する粒子の体積パーセント、(p)約1体積%の、20μm未満の直径を有する粒子の体積パーセント、(q)数パーセントで決定した場合の、約46μmのD10、(r)数パーセントで決定した場合の、約25μmのD50、(s)数パーセントで決定した場合の、約3μmのD90、(t)約0数%の、150μm超の直径を有する粒子の数パーセント、または(u)約33数パーセントの、20μm未満の直径を有する粒子の数パーセントの内の少なくとも1つを有するポリカプロラクトン粉末が得られるであろう。
【0080】
少なくとも1つのバリエーションにしたがって生成されたポリカプロラクトンは、0.3から3.0デシリットル毎グラム(dl/gm)(この範囲の端点を含む)の、25℃でクロロホルム中で決定した、固有粘度を有することがある。少なくとも1つのバリエーションにしたがって生成されたポリカプロラクトンは、1.1から1.4デシリットル毎グラム(dl/gm)(この範囲の端点を含む)の、25℃でクロロホルム中で決定した、固有粘度を有することがある。ポリカプロラクトンは、架橋スチレン-ジビニルベンゼンカラムを使用したゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定して、ポリスチレン基準に対して較正された、5,000から200,000ダルトン、特に、100,000から150,000ダルトンの重量平均分子量を有することがある。GPC試料は、1mg毎mL(mg/mL)の濃度で調製され、1.5mL毎分の流量で溶出される。
【0081】
図4は、少なくとも1つのバリエーションにより生成されたSLS級の粉末に関する粒径体積分布を示す。図4に示されたバリエーションなどの少なくとも1つのバリエーションによれば、分布は、62.14μmのD10、102.2μmのD50、および156.6μmのD90を有するほぼガウス分布であることがある。
【0082】
図5は、少なくとも1つのバリエーションにより生成されたSLS級の粉末に関する粒径数分布を示す。分布は、比較的抑制されることがあり、100μm辺りで下落が生じ、31.23μmのD10、59.88μmのD50、および105.0μmのD90を有する。
【0083】
図6は、少なくとも1つのバリエーションにより生成されたポリカプロラクトン粉末の粉末データを示す。図6は、少なくとも1つのバリエーションのポリカプロラクトン粉末が、58.4℃の溶融ピーク温度を有したことを示す。この図は、少なくとも1つのバリエーションにより生成されたポリカプロラクトンが、微細な粒子(20μm未満の直径を有する粒子と定義される)を含有しなかったことも示す。このことは、微細な粒子は、粉末の流動性を妨げるであろうから、ある用途においては有益であろう。少なくとも1つのバリエーションにより生成された粒子の回転楕円特徴も試験した。ポリカプロラクトン粒子の90.54%v/v(体積/体積または「体積パーセント」)が、0.75超の真球度を有した。ポリカプロラクトン粒子の80.64%v/vが、0.80超の真球度を有した。真球度値は、式1で計算した。Dは式2で定義され、Dは式3で定義されている。より高い真球度値は、より良好な流動性に相関する。少なくとも1つのバリエーションにおいて、1.25未満のハウスナー比を有するポリカプロラクトン粉末が生成されることがある。ここで、ハウスナー比は、フワフワ(fluffy)(嵩)密度に対するタップ密度の比と定義される。
【0084】
【数1】
【0085】
【数2】
【0086】
【数3】
【0087】
SLS試験
少なくとも1つのバリエーションにしたがって生成されたポリカプロラクトンは、ヒドロキシアパタイトなどの1種類以上の他の生体適合性成分とブレンドされることがある。少なくとも1つのバリエーションにおいて、ヒドロキシアパタイトは、ポリカプロラクトンの質量の0.5%w/wと10%w/wの間の量でポリカプロラクトンに添加されることがある。ヒドロキシアパタイトは、歯のエナメル質と骨の両方に見られる鉱物であり、骨組織工学で使用される。バリエーションにおいて、他の成分がポリカプロラクトンに添加されることがある。他の成分としては、ガラス繊維、炭素繊維、タルク、粘土、ウォラストナイト、ガラスビーズ、またはその組合せの1つ以上のタイプが挙げられるであろう。
【0088】
少なくとも1つのバリエーションにしたがって生成されたポリカプロラクトンは、4%w/wのヒドロキシアパタイト(ヒドロキシアパタイトの質量は、ポリカプロラクトンの質量の4%であった)とブレンドされ、SLSプリンターで使用されて、引張棒材を製造した。0.18mmの走査間隔で、40Wの二重レーザ走査を使用して、56.5℃の部品温度および40℃の供給温度で、7つの引張棒材を作製した。次いで、ASTM D638-タイプ4引張方法を使用して、引張棒材を引っ張った。引張速度は5.00mm/分であった。図7は、4%w/wのヒドロキシアパタイト(HA)を含むポリカプロラクトンを使用してSLS印刷した棒材の写真である。図8Aは、SLSで作製されたポリカプロラクトン(4%w/wのヒドロキシアパタイトを含む)引張棒材を引っ張ることによって生じた引張プロットを示す。図8Bは、図8Aにおける引張試験から得られた材料特性の纏めを示す。
【0089】
少なくとも1つのバリエーションよれば、ポリカプロラクトン/ヒドロキシアパタイト粉末の含水率は、SLS装置で粉末を使用する前に、調節されることがある。水は、吸熱体の機能を果たすことによって、溶融プロセスを支援することがある。ヒドロキシアパタイトは、乾燥剤の機能を果たすことによって、溶融プロセスを阻害することがある。ヒドロキシアパタイトは、その(ヒドロキシアパタイトの)IR吸収特質のために、ポリカプロラクトン粉末の融解を促進することがある。ポリカプロラクトン/ヒドロキシアパタイト粉末中の水分(水の)量が、その材料で構築されるSLS印刷部品の品質に影響することが研究者によって見出された。ポリカプロラクトン/ヒドロキシアパタイトの低水分は、部品の品質にとって有害であることがある。良好な印刷部品の品質を確実にするために、ポリカプロラクトン粉末またはバリエーションのポリカプロラクトン/ヒドロキシアパタイトブレンドに水が添加されることがある。例えば、ポリカプロラクトン粉末またはポリカプロラクトン/ヒドロキシアパタイトブレンドの含水率は、粉末の含水率が増減するように調節されることがある。含水率は、例えば、粉末に水を添加することによって、または粉末を調湿雰囲気内に配置することによって、調節されることがある。ポリカプロラクトン粉末またはポリカプロラクトン/ヒドロキシアパタイトブレンド中の含水率は、粉末の含水率が0.5%w/wと5%w/wの間となるように調節されることがある。少なくとも1つのバリエーションにおいて、粉末は、約3%w/wの水(水分)を含有することがある。
【0090】
ヒドロキシアパタイトなどの核剤
少なくとも1つのバリエーションにおいて、溶媒/ポリカプロラクトン混合物は、核剤をさらに含むことがある。少なくとも1つのバリエーションにおいて、溶媒/ポリカプロラクトン混合物は、核剤としてヒドロキシアパタイトをさらに含むことがある。
【0091】
実施例
手順:
250mLの三角フラスコに乳酸エチル(100mL)を入れ、80℃に加熱した。一旦、設定温度に到達したら、ポリカプロラクトンとヒドロキシアパタイトを添加した。ポリカプロラクトンは、溶媒中に12%w/v(g/mL)の添加量であり、ヒドロキシアパタイトはポリカプロラクトンの4%w/wであった。この混合物を、ポリマーが完全に溶解するまで撹拌し、次いで、熱を除去し、再沈殿を生じさせた。撹拌子が動けなくなるほど混合物が沈殿した時点で、濾過して、溶媒を回収し、3時間に亘り室温の脱イオン水で洗浄し、濾過し、72時間に亘り蒸発皿で空気乾燥させた。
【0092】
観察:
ポリカプロラクトンが溶解した際に、溶液は、おそらく、ヒドロキシアパタイト粒子(乳酸エチル中に可溶性ではない)のために、不透明のままであった。
【0093】
熱を除去してから2時間以内に、混合物は沈殿した。250mLの規模では、これは、核剤を含まないポリカプロラクトン溶液の2倍速い。乳酸エチルの43.5%を回収した。
【0094】
粉末分析:
図9は、少なくとも1つのバリエーションによる、ヒドロキシアパタイトで核形成された、結果として得られたポリカプロラクトン粉末のDSC曲線を示す。第1の溶融曲線は、62.42℃のピークおよび101.68J/gのエンタルピーを有する。再結晶化曲線は、26.62℃のピークおよび59.38J/gのエンタルピーを有する。第2の溶融曲線は、57.80℃のピークおよび45.78J/gのエンタルピーを有する。
【0095】
図10は、少なくとも1つのバリエーションによる、19.14μmのD10、30.58μmのD50、および53.13μmのD90を有する、粒子の個数粒度分布を示す。全粒子の12.74%だけが、所望のSLS範囲(所望のSLS範囲は、20μmと150μmの間の粒径範囲である)から外れ、全粒子の99.95%が150μmより小さく、粒子の12.69%が20μmより小さい。
【0096】
図11は、少なくとも1つのバリエーションによる、31.47μmのD10、61.25μmのD50、および120.6μmのD90を有する、粒子の個数粒度分布を示す。全粒子の4.04%だけが、所望のSLS範囲(所望のSLS範囲は、20μm~150μmであろう)から外れ、全粒子の96.87%が150μmより小さく、粒子の0.91%が20μmより小さい。
【0097】
核剤を含まない粉末との比較:
図12Aおよび12Bは、4%w/wのヒドロキシアパタイトで核形成されたポリカプロラクトン粉末(12A)と、4%w/wのヒドロキシアパタイトとブレンドされ、24時間に亘り静置されたポリカプロラクトン粉末(12B)との比較を示す。図面(図12Aおよび12B)は、約8gのポリカプロラクトン/ヒドロキシアパタイトブレンドを溶融することによって調製されたパックを比較している。試料「(12A)」は、再沈殿する前に添加された4%w/wのヒドロキシアパタイトを有し、それを核剤として機能させた。試料「(12B)」は、ドライブレンド形態で粉末篩い分けした後に添加された4%w/wのヒドロキシアパタイトを有した。
【0098】
ヒドロキシアパタイトが核剤として添加されるバリエーションでは、ヒドロキシアパタイトは、ポリカプロラクトン沈殿工程中に添加されて、ヒドロキシアパタイト、ポリカプロラクトン、および溶媒を含む溶液を形成することがある。少なくとも1つのバリエーションにおいて、ヒドロキシアパタイトの量は、ヒドロキシアパタイトがポリカプロラクトンの質量の0.5%w/wと10%w/wの間の量で存在するように溶媒/溶液に添加されることがある。次いで、ポリカプロラクトンが溶液から沈殿して、ヒドロキシアパタイトを含有する沈殿ポリカプロラクトン粉末を形成することがある。この方法は、パック「(12A)」として図12Aに示されたパックなどのパックを調製するために使用されることがある。パック調製方法は、ポリカプロラクトン含有材料を溶融する工程、次いで、その材料を冷まし、固化させる工程を含むことがある。
【0099】
ヒドロキシアパタイトがポリカプロラクトンとドライブレンドされるバリエーションでは、ポリカプロラクトンは、溶媒から沈殿され、乾燥されることがある。次いで、乾燥ポリカプロラクトンをある量のヒドロキシアパタイトとブレンドして、ポリカプロラクトンとヒドロキシアパタイトを含む粉末を形成することがある。この方法は、パック「(12B)」として図12Bに示されたパックなどのパックを調製するために使用されることがある。パック調製方法は、ポリカプロラクトン含有材料を溶融する工程、次いで、その材料を冷まし、固化させる工程を含むことがある。
【0100】
図13は、そのままで沈殿したポリカプロラクトンと、核剤として機能するヒドロキシアパタイトで沈殿したポリカプロラクトンとの間の粒径分布の比較を示す。図13に示されるように、再沈殿工程で核剤としてヒドロキシアパタイトを添加することによって、粒径分布が改善され、20から150μmの範囲内に入るポリカプロラクトン粒子がより多くなることがある。
【0101】
粉末がSLSに適しているか否かを決定するときに、体積分布と数分布の両方が検討される。理想的な状況では、体積分布と数分布が同一であり、D50が60μmであり、分布が30μmと150μmとの間にあり、その範囲から外れる粉末が最小である。しかしながら、実際には、このようにはならない。それゆえ、体積分布は、粉末がSLSに適しているか否を判定するために見られ、数分布は、生じるかもしれない潜在的な問題があるか否かを判定するために見られる。例えば、30μmより小さいまたは20μmより小さい粒子が多すぎると、流動問題が生じることがあるのに対し、150μmより大きい粒子が多すぎると、解像度の問題が生じることがある。
【0102】
図13は、核剤として機能するヒドロキシアパタイトの有無で沈殿したポリカプロラクトンの粒径分布の間の比較を示す。体積分布を見ると、両方の粉末は相対的にガウス分布を有するが、ヒドロキシアパタイトで沈殿したポリカプロラクトンは、ほぼ理想的なD50を有する。それに加え、ヒドロキシアパタイトで沈殿したポリカプロラクトンは、所望の範囲(所望の範囲は、端点を含む、20μmと150μmの直径の間の粒径サイズ範囲でることがある)から外れた粒子の体積%が小さい。数分布を見ると、ヒドロキシアパタイトで沈殿したポリカプロラクトンは、核剤を含まないポリカプロラクトンよりも、20μmより小さい粒子を12.7%多く有する。しかしながら、ほぼ理想的な体積分布のために、核剤を含むポリカプロラクトン粉末が好ましいであろう。
【0103】
図14Aは、対流式オーブン内でバージンポリカプロラクトンを溶融する(環境湿度で)ことによって調製したパックを示す。図14Aは、図14B~Gのように、1つのパックの2つの反対側(上面と底面)を示す。図14Bは、IR(赤外)下でバージンポリカプロラクトンを溶融する(環境湿度で)ことによって調製したパックを示す。図14Cは、新たに作られたポリカプロラクトンを4%w/wのヒドロキシアパタイトとドライブレンドし、その後、対流式オーブン内で溶融することによって調製したパックを示す。図14Dは、新たに作られたポリカプロラクトンを4%w/wのヒドロキシアパタイトとドライブレンドし、その後、IR下で溶融することによって調製したパックを示す。図14Eは、4%w/wのヒドロキシアパタイトをポリカプロラクトンとドライブレンドし、そのブレンドを24時間に亘り周囲条件で経時変化させ、その後、経時変化したブレンドを対流式オーブン内で溶融することによって調製したパックを示す。図14Fは、4%w/wのヒドロキシアパタイトをポリカプロラクトンとドライブレンドし、そのブレンドを24時間に亘り周囲条件で経時変化させ、その後、経時変化したブレンドをIR下で溶融することによって調製したパックを示す。図14Gは、粉末沈殿プロセスで形成された、核剤として4%w/wのヒドロキシアパタイトを含む(すなわち、ヒドロキシアパタイトは、沈殿中に溶媒に添加されて、ヒドロキシアパタイト、ポリカプロラクトン、および溶媒を含む溶液を形成した)ポリカプロラクトンを対流式オーブン内で溶融することによって調製したパックを示す。図14Gに示されるように、乳酸エチル中のポリカプロラクトンの沈殿中に核剤としてヒドロキシアパタイトを添加することにより、外観が均質なパックが製造された。言い換えると、理論で束縛するものではないが、沈殿プロセス中に核剤としてヒドロキシアパタイトを使用すると、溶融物体の全体に亘りヒドロキシアパタイトとポリカプロラクトンの濃度が均一となり、十分に混合されているであろう溶融物体が得られるようである。
【0104】
図15は、乳酸エチル中で再沈殿したポリカプロラクトン粉末のDSC曲線を示す。図に示されるように、最初に、ポリカプロラクトンを毎分20℃の昇温速度で100℃に加熱した。第1の溶融ピーク温度は58.39℃であり、溶融エンタルピーは99.928J/gであった。次に、ポリカプロラクトン試料を毎分20℃の冷却速度で-10℃に冷却した。再結晶化ピーク温度は21.02℃であり、エンタルピーは62.261J/gであった。次に、ポリカプロラクトン試料を二度目で、20℃/分の速度で100℃に加熱した(図15の底部の破線で示されるように)。第2の加熱サイクルは、51.22℃の溶融ピーク温度、および52.677J/gの溶融エンタルピーを示した。
【0105】
図16は、核剤としての4%w/wのヒドロキシアパタイトの存在下で再沈殿した(乳酸エチル中において)ポリカプロラクトン粉末のDSC曲線を示し、ここで、4%w/wのヒドロキシアパタイトは、乳酸エチルに添加されたヒドロキシアパタイトの質量を、乳酸エチルに添加されたポリカプロラクトンの質量で割ることによって計算した。図16でデータを生成するのに使用したDSCプロトコルは、図15でデータを生成するのに使用したDSCプロトコルと同じであった。最初に、試料を20℃/分の昇温速度で100℃に加熱し、次いで、試料を20℃/分の速度で-10℃に冷却し、次いで、試料を20℃/分の昇温速度で100℃に再び加熱した。図16に示されるように、核剤としてのヒドロキシアパタイトの存在下で再沈殿したポリカプロラクトン試料は、62.42℃の第1の溶融ピーク温度、および101.68J/gのエンタルピーを有した。その試料は、26.62℃の再結晶化ピーク温度、および59.376J/gのエンタルピーを有した。最後に、試料は、57.80℃の第2のピーク溶融温度、および45.775J/gのエンタルピーを有した。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9
図10
図11
図12A
図12B
図13
図14A
図14B
図14C
図14D
図14E
図14F
図14G
図15
図16
【手続補正書】
【提出日】2024-04-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0105
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0105】
図16は、核剤としての4%w/wのヒドロキシアパタイトの存在下で再沈殿した(乳酸エチル中において)ポリカプロラクトン粉末のDSC曲線を示し、ここで、4%w/wのヒドロキシアパタイトは、乳酸エチルに添加されたヒドロキシアパタイトの質量を、乳酸エチルに添加されたポリカプロラクトンの質量で割ることによって計算した。図16でデータを生成するのに使用したDSCプロトコルは、図15でデータを生成するのに使用したDSCプロトコルと同じであった。最初に、試料を20℃/分の昇温速度で100℃に加熱し、次いで、試料を20℃/分の速度で-10℃に冷却し、次いで、試料を20℃/分の昇温速度で100℃に再び加熱した。図16に示されるように、核剤としてのヒドロキシアパタイトの存在下で再沈殿したポリカプロラクトン試料は、62.42℃の第1の溶融ピーク温度、および101.68J/gのエンタルピーを有した。その試料は、26.62℃の再結晶化ピーク温度、および59.376J/gのエンタルピーを有した。最後に、試料は、57.80℃の第2のピーク溶融温度、および45.775J/gのエンタルピーを有した。
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
実施形態1
ポリカプロラクトン粒子を含む粉末であって、該ポリカプロラクトン粒子の90体積パーセント超が20マイクロメートルと150マイクロメートルの間の粒径を有し、該ポリカプロラクトン粒子は検出量の核剤を含有し、該ポリカプロラクトン粒子は、生体適合性溶媒または生体吸収性溶媒の少なくとも一方を含む溶媒を検出量で含有する、粉末。
実施形態2
前記溶媒が乳酸エチルを含む、実施形態1に記載の粉末。
実施形態3
前記核剤がヒドロキシアパタイトである、実施形態1に記載の粉末。
実施形態4
前記ポリカプロラクトン粒子の90体積パーセント超が、0.75超の真球度を有する、実施形態1に記載の粉末。
実施形態5
前記ポリカプロラクトン粒子の80体積パーセント超が、0.80超の真球度を有する、実施形態1に記載の粉末。
実施形態6
20マイクロメートル未満の粒径を有するポリカプロラクトン粒子の体積パーセントが、ゼロであるか、または検出不可能である、実施形態1に記載の粉末。
実施形態7
前記粉末が、約90J/gから約120J/gの溶融エンタルピーを有する、実施形態1に記載の粉末。
実施形態8
ポリカプロラクトン粒子、検出量の乳酸エチル、および検出量の核剤を含む粉末であって、約55℃から約65℃のピーク溶融温度、および約90J/gから約120J/gの溶融エンタルピーを有する粉末。
実施形態9
前記核剤がヒドロキシアパタイトである、実施形態8に記載の粉末。
実施形態10
前記粉末が、約15℃から約35℃の再結晶化ピークを有する、実施形態8に記載の粉末。
実施形態11
前記粉末が、約250℃から約425℃の分解開始温度を有する、実施形態8に記載の粉末。
実施形態12
前記ポリカプロラクトン粒子の96数パーセント超が、125マイクロメートル未満の粒径を有する、実施形態8に記載の粉末。
実施形態13
前記ポリカプロラクトン粒子の90体積パーセント超が、0.75超の真球度を有する、実施形態8に記載の粉末。
実施形態14
検出量の乳酸エチルおよび検出量の核剤を有する、ポリカプロラクトン粒子を含む粉末であって、該ポリカプロラクトン粒子の96数パーセント超が、125マイクロメートル未満の粒径を有し、該ポリカプロラクトン粒子の90体積パーセントが、0.75超の真球度を有し、該ポリカプロラクトン粒子が、0.5%w/wと5%w/wの間に調節され、その間に維持された含水率を有する、粉末。
実施形態15
前記核剤がヒドロキシアパタイトである、実施形態14に記載の粉末。
実施形態16
実施形態1に記載の粉末を製造する方法において、
ポリカプロラクトンおよび極性有機溶媒を混ぜ合わせる工程、
前記極性有機溶媒中に前記ポリカプロラクトンを溶解させて溶液を形成する工程、
前記溶液を、溶解したポリカプロラクトンの少なくとも一部を該溶液から沈殿させる温度に冷却する工程、
前記溶液に核剤を添加する工程、
沈殿したポリカプロラクトンを前記溶液から分離する工程、
分離された沈殿したポリカプロラクトンを洗浄して、洗浄済みポリカプロラクトンを形成する工程、および
前記洗浄済みポリカプロラクトンを乾燥させて、乾燥ポリカプロラクトンを形成する工程、
を有してなる方法。
実施形態17
混ぜ合わされたポリカプロラクトンおよび前記極性有機溶媒を加熱する工程をさらに含む、実施形態16に記載の方法。
実施形態18
150マイクロメートル未満の粒径を有する乾燥ポリカプロラクトン粒子をそれより大きい乾燥ポリカプロラクトン粒子から分離して、サイズ分けされたポリカプロラクトンを形成する分離工程をさらに含む、実施形態16に記載の方法。
実施形態19
混ぜ合わされたポリカプロラクトン/核剤混合物中の核剤のパーセントが、約0.5質量パーセントと約10質量パーセントの間である、実施形態18に記載の方法。
実施形態20
前記核剤がヒドロキシアパタイトである、実施形態16に記載の方法。
実施形態21
前記サイズ分けされたポリカプロラクトンの90体積パーセント超が、0.75超の真球度を有する、実施形態18に記載の方法。
実施形態22
前記サイズ分けされたポリカプロラクトンの80体積パーセント超が、0.80超の真球度を有する、実施形態18に記載の方法。
実施形態23
前記極性有機溶媒が、酢酸エチル、乳酸エチル、γ-バレロラクトン、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、テトラヒドロフラン(THF)、ジクロロメタン(DCM)、クロロホルム、アセトン、およびジメチルスルホキシド(DMSO)からなる群より選択される、実施形態16に記載の方法。
実施形態24
前記極性有機溶媒が乳酸エチルである、実施形態23に記載の方法。
実施形態25
実施形態1に記載の粉末を製造する方法において、
ポリカプロラクトンおよび乳酸エチルを混ぜ合わせる工程、
前記乳酸エチル中に前記ポリカプロラクトンおよび少なくとも1種類の核剤を溶解させて溶液を形成する工程、
前記溶液を、溶解したポリカプロラクトンの少なくとも一部を該溶液から沈殿させる温度に冷却する工程、
沈殿したポリカプロラクトンを前記溶液から分離する工程、
分離された沈殿したポリカプロラクトンを洗浄して、洗浄済みポリカプロラクトンを形成する工程、および
前記洗浄済みポリカプロラクトンを乾燥させて、乾燥ポリカプロラクトンを形成する工程、
を有してなる方法。
実施形態26
前記少なくとも1種類の核剤がヒドロキシアパタイトを含む、実施形態25に記載の方法。
実施形態27
前記溶液が加熱される、実施形態25に記載の方法。
実施形態28
積層造形方法において、
隣接するポリカプロラクトン粒子を選択的に溶融または焼結する工程、
を含み、
前記ポリカプロラクトン粒子の96数パーセント超が、125マイクロメートル未満の粒径を有し、該ポリカプロラクトン粒子の90体積パーセント超が、0.75超の真球度を有し、
前記ポリカプロラクトン粒子は、検出量のヒドロキシアパタイトを含有し、
前記ポリカプロラクトン粒子は、検出量の乳酸エチルを含有する、方法。
実施形態29
前記ポリカプロラクトン粒子が、0.5%w/wと5%w/wの間に調節され、その間に維持された含水率を有する、実施形態28に記載の方法。
実施形態30
実施形態1に記載の粉末から作られた物品。
実施形態31
実施形態1に記載の粉末から作られた医療用品。

【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカプロラクトン粒子を含む粉末であって、該ポリカプロラクトン粒子の90体積パーセント超が20マイクロメートルと150マイクロメートルの間の粒径を有し、該ポリカプロラクトン粒子は検出量の核剤を含有し、該ポリカプロラクトン粒子は、生体適合性溶媒または生体吸収性溶媒の少なくとも一方を含む溶媒を検出量で含有する、粉末。
【請求項2】
前記溶媒が乳酸エチルを含む、請求項1記載の粉末。
【請求項3】
前記核剤がヒドロキシアパタイトである、請求項1記載の粉末。
【請求項4】
前記ポリカプロラクトン粒子の90体積パーセント超が、0.75超の真球度を有する、請求項1記載の粉末。
【請求項5】
前記ポリカプロラクトン粒子の80体積パーセント超が、0.80超の真球度を有する、請求項1記載の粉末。
【請求項6】
20マイクロメートル未満の粒径を有するポリカプロラクトン粒子の体積パーセントが、ゼロであるか、または検出不可能である、請求項1記載の粉末。
【請求項7】
前記粉末が、約90J/gから約120J/gの溶融エンタルピーを有する、請求項1記載の粉末。
【請求項8】
ポリカプロラクトン粒子、検出量の乳酸エチル、および検出量の核剤を含む粉末であって、約55℃から約65℃のピーク溶融温度、および約90J/gから約120J/gの溶融エンタルピーを有する粉末。
【請求項9】
前記核剤がヒドロキシアパタイトである、請求項8記載の粉末。
【請求項10】
前記粉末が、約15℃から約35℃の再結晶化ピークを有する、請求項8記載の粉末。
【請求項11】
前記粉末が、約250℃から約425℃の分解開始温度を有する、請求項8記載の粉末。
【請求項12】
前記ポリカプロラクトン粒子の96数パーセント超が、125マイクロメートル未満の粒径を有する、請求項8記載の粉末。
【請求項13】
前記ポリカプロラクトン粒子の90体積パーセント超が、0.75超の真球度を有する、請求項8記載の粉末。
【請求項14】
検出量の乳酸エチルおよび検出量の核剤を有する、ポリカプロラクトン粒子を含む粉末であって、該ポリカプロラクトン粒子の96数パーセント超が、125マイクロメートル未満の粒径を有し、該ポリカプロラクトン粒子の90体積パーセントが、0.75超の真球度を有し、該ポリカプロラクトン粒子が、0.5%w/wと5%w/wの間に調節され、その間に維持された含水率を有する、粉末。
【請求項15】
前記核剤がヒドロキシアパタイトである、請求項14記載の粉末。
【請求項16】
請求項1記載の粉末を製造する方法において、
ポリカプロラクトンおよび極性有機溶媒を混ぜ合わせる工程、
前記極性有機溶媒中に前記ポリカプロラクトンを溶解させて溶液を形成する工程、
前記溶液を、溶解したポリカプロラクトンの少なくとも一部を該溶液から沈殿させる温度に冷却する工程、
前記溶液に核剤を添加する工程、
沈殿したポリカプロラクトンを前記溶液から分離する工程、
分離された沈殿したポリカプロラクトンを洗浄して、洗浄済みポリカプロラクトンを形成する工程、および
前記洗浄済みポリカプロラクトンを乾燥させて、乾燥ポリカプロラクトンを形成する工程、
を有してなる方法。
【請求項17】
混ぜ合わされたポリカプロラクトンおよび前記極性有機溶媒を加熱する工程をさらに含む、請求項16記載の方法。
【請求項18】
150マイクロメートル未満の粒径を有する乾燥ポリカプロラクトン粒子をそれより大きい乾燥ポリカプロラクトン粒子から分離して、サイズ分けされたポリカプロラクトンを形成する分離工程をさらに含む、請求項16記載の方法。
【請求項19】
混ぜ合わされたポリカプロラクトン/核剤混合物中の核剤のパーセントが、約0.5質量パーセントと約10質量パーセントの間である、請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記核剤がヒドロキシアパタイトである、請求項16記載の方法。
【請求項21】
前記サイズ分けされたポリカプロラクトンの90体積パーセント超が、0.75超の真球度を有する、請求項18記載の方法。
【請求項22】
前記サイズ分けされたポリカプロラクトンの80体積パーセント超が、0.80超の真球度を有する、請求項18記載の方法。
【請求項23】
前記極性有機溶媒が、酢酸エチル、乳酸エチル、γ-バレロラクトン、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、テトラヒドロフラン(THF)、ジクロロメタン(DCM)、クロロホルム、アセトン、およびジメチルスルホキシド(DMSO)からなる群より選択される、請求項16記載の方法。
【請求項24】
前記極性有機溶媒が乳酸エチルである、請求項23記載の方法。
【請求項25】
請求項1記載の粉末を製造する方法において、
ポリカプロラクトンおよび乳酸エチルを混ぜ合わせる工程、
前記乳酸エチル中に前記ポリカプロラクトンおよび少なくとも1種類の核剤を溶解させて溶液を形成する工程、
前記溶液を、溶解したポリカプロラクトンの少なくとも一部を該溶液から沈殿させる温度に冷却する工程、
沈殿したポリカプロラクトンを前記溶液から分離する工程、
分離された沈殿したポリカプロラクトンを洗浄して、洗浄済みポリカプロラクトンを形成する工程、および
前記洗浄済みポリカプロラクトンを乾燥させて、乾燥ポリカプロラクトンを形成する工程、
を有してなる方法。
【請求項26】
前記少なくとも1種類の核剤がヒドロキシアパタイトを含む、請求項25記載の方法。
【請求項27】
前記溶液が加熱される、請求項25記載の方法。
【請求項28】
積層造形方法において、
隣接するポリカプロラクトン粒子を選択的に溶融または焼結する工程、
を含み、
前記ポリカプロラクトン粒子の96数パーセント超が、125マイクロメートル未満の粒径を有し、該ポリカプロラクトン粒子の90体積パーセント超が、0.75超の真球度を有し、
前記ポリカプロラクトン粒子は、検出量のヒドロキシアパタイトを含有し、
前記ポリカプロラクトン粒子は、検出量の乳酸エチルを含有する、方法。
【請求項29】
前記ポリカプロラクトン粒子が、0.5%w/wと5%w/wの間に調節され、その間に維持された含水率を有する、請求項28記載の方法。
【請求項30】
請求項1記載の粉末から作られた物品。
【請求項31】
請求項1記載の粉末から作られた医療用品。
【国際調査報告】