(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-05
(54)【発明の名称】永久電気双極子を有するセパレータを備えるスーパーキャパシタ
(51)【国際特許分類】
H01G 11/52 20130101AFI20240829BHJP
H01G 11/04 20130101ALI20240829BHJP
H01G 11/84 20130101ALI20240829BHJP
【FI】
H01G11/52
H01G11/04
H01G11/84
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024505124
(86)(22)【出願日】2022-08-11
(85)【翻訳文提出日】2024-03-25
(86)【国際出願番号】 GB2022052097
(87)【国際公開番号】W WO2023021274
(87)【国際公開日】2023-02-23
(32)【優先日】2021-08-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】595042184
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ サリー
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バクストン、ウェスリー
(72)【発明者】
【氏名】ストローヤン、ヴラド
【テーマコード(参考)】
5E078
【Fターム(参考)】
5E078AA07
5E078BA36
5E078CA06
5E078CA07
5E078CA08
5E078CA12
5E078CA21
5E078LA03
(57)【要約】
第1の電極、第2の電極、及び第1の電極及び第2の電極の間に配置されたセパレータを備えるスーパーキャパシタが開示される。セパレータは永久電気双極子を備え、スーパーキャパシタが充電状態にある間に、第1及び第2の電極に蓄積されたイオンの自己放電拡散を抑制するためのエネルギー障壁を提供するように、永久電気双極子が配向されるように配置される。いくつかの実施形態では、セパレータは、例えば、エレクトロスピニングによって形成され得るナノファイバフィルムを有する。スーパーキャパシタを製造する方法も開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スーパーキャパシタであって、
第1の電極;
第2の電極;
前記第1の電極及び前記第2の電極の間に配置されたセパレータ、前記セパレータは、永久電気双極子を有し、ここで、前記セパレータは、前記スーパーキャパシタが充電状態にある間に、前記第1の電極及び前記第2の電極に蓄積されたイオンの自己放電拡散を抑制するためのエネルギー障壁を提供するように、前記永久電気双極子が配向されるように配置される
を備えるスーパーキャパシタ。
【請求項2】
前記第1の電極及び前記第2の電極が炭素を有する、請求項1に記載のスーパーキャパシタ。
【請求項3】
前記第2の電極の質量は、前記第1の電極の質量よりも大きい、請求項2に記載のスーパーキャパシタ。
【請求項4】
前記セパレータは、複数のナノファイバを含むナノファイバフィルムを有する、請求項1~3のいずれか1項に記載のスーパーキャパシタ。
【請求項5】
前記複数のナノファイバは、ランダムに配向されている、請求項4に記載のスーパーキャパシタ。
【請求項6】
前記複数のナノファイバが整列している、請求項4に記載のスーパーキャパシタ。
【請求項7】
前記複数のナノファイバは、600nmよりも小さい又はそれに等しい平均直径を有する、請求項4に記載のスーパーキャパシタ。
【請求項8】
前記複数のナノファイバは、50nmよりも大きい又はそれに等しい平均直径を有する、請求項4に記載のスーパーキャパシタ。
【請求項9】
前記ナノファイバフィルムの平均細孔径は、1μm未満である、請求項4に記載のスーパーキャパシタ。
【請求項10】
前記セパレータは、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載のスーパーキャパシタ。
【請求項11】
前記セパレータは、界面活性剤を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載のスーパーキャパシタ。
【請求項12】
前記界面活性剤は、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を有する、請求項11に記載のスーパーキャパシタ。
【請求項13】
前記セパレータ内のSDSの質量百分率濃度は、15%よりも小さい又はそれに等しい、請求項12に記載のスーパーキャパシタ。
【請求項14】
前記セパレータ内のSDSの質量百分率濃度は、1%よりも大きい又はそれに等しい、請求項12に記載のスーパーキャパシタ。
【請求項15】
第1の電極、第2の電極及びセパレータを備えるスーパーキャパシタを製造する方法であって、前記セパレータは、永久電気双極子を有し、前記方法は、
前記スーパーキャパシタが充電状態にある間に、前記第1の電極及び前記第2の電極に蓄積されたイオンの自己放電拡散を抑制するためのエネルギー障壁を提供するように、前記永久電気双極子が配向されるように、前記第1の電極及び前記第2の電極の間に前記セパレータを配置する段階
を備える方法。
【請求項16】
セパレータ材料を分極して永久電気双極子を誘導するように、前記永久電気双極子を有さない前記セパレータ材料を処理する段階
を備える、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記セパレータ材料を処理する段階は、前記セパレータ材料を分極して前記永久電気双極子を誘導するように電界を印加する段階を有する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記電界は、前記セパレータ材料を分極する方向に印加され、前記永久電気双極子を前記方向に誘導する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記セパレータ材料を処理する段階は、前記セパレータ材料を少なくとも部分的に溶融するのに十分な温度まで前記セパレータ材料を加熱する段階を有する、請求項16~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記セパレータ材料は重合体を有し、前記セパレータ材料を処理する段階は、前記セパレータ材料を分極して前記永久電気双極子を誘導するように前記重合体を延伸する段階を有する、請求項16~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記セパレータ材料を処理する段階は、前記セパレータ材料を分極して前記永久電気双極子を誘導する充填材料を組み込む段階を有する、請求項16~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記分極されたセパレータ材料から前記セパレータを製造する段階
を備える、請求項16~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記セパレータ材料を処理して永久電気双極子を誘導する前に、前記永久電気双極子を有さない前記セパレータ材料から前記セパレータを製造する段階
を備える、請求項16~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
セパレータ材料の前駆体溶液をエレクトロスピニングして永久電気双極子を有する分極されたナノファイバフィルムを生成することによって前記セパレータを製造する段階
を備える、請求項15に記載の方法。
【請求項25】
前記セパレータ材料の前記前駆体溶液中のSDSの質量百分率濃度は、約1%及び約2%の間である、請求項24に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セパレータを備えるスーパーキャパシタに関する。より詳細には、本発明は、永久電気双極子を有するセパレータを備えるスーパーキャパシタに関する。
【背景技術】
【0002】
スーパーキャパシタは、移動電気デバイスなどの電気デバイスの従来の電源を置き換える、又は補完する可能性がある開発中の技術である。従来のリチウム電池よりも短い充電時間、より高い電力密度、及び競合するエネルギー密度により、スーパーキャパシタは、電気自動車又は携帯電話などの用途に利益をもたらす可能性のある多くの利点がある。
【0003】
スーパーキャパシタは、セパレータ及び電解質によって分離された2つの電極で構成される。充電中、カチオンは負に帯電した電極に蓄積され、アニオンは正に帯電した電極に蓄積される。スーパーキャパシタを充電している外部電源が取り外されると、スーパーキャパシタ全体に濃度勾配が存在し、蓄積された電荷キャリアがそれぞれの電極から離れて拡散することが促進される。この現象は一般に「自己放電」と呼ばれ、現在のスーパーキャパシタの既知の問題である。この現象により、長期間にわたってエネルギー貯蔵効率が低下する。これは、デバイスが長期間のアイドル状態になり得るアプリケーションでスーパーキャパシタを使用する場合に有害である。したがって、当技術分野では、自己放電の影響を受けにくい改良されたスーパーキャパシタが必要とされている。
【発明の概要】
【0004】
本発明の第1の態様によれば、第1の電極;第2の電極;第1の電極及び第2の電極の間に配置されたセパレータを備えるスーパーキャパシタが提供され、セパレータは、永久電気双極子を備え、セパレータは、スーパーキャパシタが充電状態にある間に、第1及び第2の電極に蓄積されたイオンの自己放電拡散を抑制するためのエネルギー障壁を提供するように、永久電気双極子が配向されるように配置される。
【0005】
第1の態様によるいくつかの実施形態では、第1及び第2の電極は炭素を含む。
【0006】
第1の態様によるいくつかの実施形態では、第2の電極の質量は、第1の電極の質量よりも大きい。
【0007】
第1の態様によるいくつかの実施形態では、セパレータは、複数のナノファイバを含むナノファイバフィルムを有する。いくつかの実施形態では、複数のナノファイバはランダムに配向されている。他の実施形態では、複数のナノファイバは整列している。
【0008】
第1の態様によるいくつかの実施形態では、複数のナノファイバは600nmよりも小さい又はそれに等しい平均直径を有する。第1の態様によるいくつかの実施形態では、複数のナノファイバは50nmよりも大きい又はそれに等しい平均直径を有する。第1の態様によるいくつかの実施形態では、ナノファイバフィルムの平均細孔径は1μm未満である。
【0009】
第1の態様によるいくつかの実施形態では、セパレータはポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride:PVDF)を有する。
【0010】
第1の態様によるいくつかの実施形態では、セパレータは界面活性剤を有する。例えば、いくつかの実施形態では、界面活性剤はドデシル硫酸ナトリウム(sodium dodecyl sulphate:SDS)を有する。セパレータ中のSDSの質量百分率濃度は、10%よりも小さい又はそれに等しいものであり得、及び/又は5%よりも大きい又はそれに等しいものであり得る。第1の態様によるいくつかの実施形態では、セパレータは、約1%から約2%の間のSDSの質量濃度を有する前駆体溶液から形成される。
【0011】
本発明の第2の態様によれば、第1の電極、第2の電極及びセパレータを含むスーパーキャパシタを製造する方法が提供され、セパレータは、永久電気双極子を備え、方法は、スーパーキャパシタが充電状態にある間に、第1及び第2の電極に蓄積されたイオンの自己放電拡散を抑制するためのエネルギー障壁を提供するように、永久電気双極子が配向されるようにセパレータを第1の電極及び第2の電極の間に配置する段階を備える。
【0012】
第2の態様によるいくつかの実施形態では、方法は、セパレータ材料を分極して永久電気双極子を誘導するように、永久電気双極子を有さないセパレータ材料を処理する段階を備える。
【0013】
第2の態様によるいくつかの実施形態では、セパレータ材料を処理する段階は、セパレータ材料を分極して永久電気双極子を誘導するように電界を印加する段階を有する。
【0014】
第2の態様によるいくつかの実施形態では、電界は、セパレータ材料を分極する方向に印加され、永久電気双極子を上記方向に誘導する。
【0015】
第2の態様によるいくつかの実施形態では、セパレータ材料を処理することは、セパレータ材料を少なくとも部分的に溶融するのに十分な温度までセパレータ材料を加熱することを有する。
【0016】
第2の態様によるいくつかの実施形態では、セパレータ材料は重合体を有し、セパレータ材料を処理することは、セパレータ材料を分極して永久電気双極子を誘導するように重合体を延伸することを有する。
【0017】
第2の態様によるいくつかの実施形態では、セパレータ材料を処理することは、セパレータ材料を分極して永久電気双極子を誘導する充填材料を組み込むことを有する。
【0018】
第2の態様によるいくつかの実施形態では、方法は、分極されたセパレータ材料からセパレータを製造することを備える。
【0019】
第2の態様によるいくつかの実施形態では、方法は、セパレータ材料を処理して永久電気双極子を誘導する前に、永久電気双極子を有さないセパレータ材料からセパレータを製造することを備える。
【0020】
第2の態様によるいくつかの実施形態では、方法は、セパレータ材料の前駆体溶液をエレクトロスピニングして永久電気双極子を有する分極されたナノファイバフィルムを生成することによってセパレータを製造することを備える。
【0021】
第2の態様によるいくつかの実施形態では、ナノファイバフィルムの複数のナノファイバがランダムに配向されるように、セパレータ材料の前駆体溶液がエレクトロスピニングされる。
【0022】
第2の態様によるいくつかの実施形態では、ナノファイバフィルムの複数のナノファイバを整列させるように、セパレータ材料の前駆体溶液がエレクトロスピニングされる。
【0023】
第2の態様によるいくつかの実施形態では、ナノファイバフィルムの複数のナノファイバが、600nmよりも小さい又はそれに等しい平均直径を有するように、セパレータ材料の前駆体溶液がエレクトロスピニングされる。
【0024】
第2の態様によるいくつかの実施形態では、ナノファイバフィルムの複数のナノファイバが、50nmよりも大きい又はそれに等しい平均直径を有するように、セパレータ材料の前駆体溶液がエレクトロスピニングされる。
【0025】
第2の態様によるいくつかの実施形態では、ナノファイバフィルムの平均細孔径は1μm未満である。
【0026】
第2の態様によるいくつかの実施形態では、セパレータはポリフッ化ビニリデン(PVDF)を有する。
【0027】
第2の態様によるいくつかの実施形態では、セパレータは界面活性剤を有する。
【0028】
第2の態様によるいくつかの実施形態では、界面活性剤はドデシル硫酸ナトリウム(sodium dodecyl sulphate:SDS)を有する。
【0029】
第2の態様によるいくつかの実施形態では、セパレータ材料内のSDSの質量百分率濃度は、10%よりも小さい又はそれに等しい。
【0030】
第2の態様によるいくつかの実施形態では、セパレータ材料内のSDSの質量百分率濃度は、5%よりも大きい又はそれに等しい。
【0031】
第2の態様によるいくつかの実施形態では、セパレータ材料前駆体溶液中のSDSの質量百分率濃度は、約1%及び約2%の間である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
次に、本発明の実施形態を、単なる例として、添付の図面を参照して説明する。
【0033】
【
図1】本発明の一実施形態による、永久電気双極子を有するセパレータを備えるスーパーキャパシタの概略断面図を示す。
【
図2a】
図1のスーパーキャパシタ内の永久電気双極子を有するセパレータの存在によりアニオンが経験するエネルギー障壁を示す。
【
図2b】
図1のスーパーキャパシタ内の永久電気双極子を有するセパレータの存在によりカチオンが経験するエネルギー障壁を示す。
【
図3】本発明の一実施形態による、ナノファイバフィルムを有するスーパーキャパシタのためのセパレータを示す図である。
【
図4】本発明の一実施形態による、
図3のナノファイバフィルムを形成するのに適したエレクトロスピニングプロセスを示す。
【
図5a】本発明の一実施形態による、永久電気双極子を有するセパレータを備えるスーパーキャパシタの自己放電挙動を示すグラフである。
【
図5b】従来のスーパーキャパシタの自己放電挙動を示すグラフである。
【
図6】本発明の一実施形態による、永久電気双極子を有するセパレータを備えるスーパーキャパシタの拡散係数を従来のスーパーキャパシタの拡散係数と比較したグラフである。
【
図7】本発明の一実施形態による、永久電気双極子を有するセパレータを備えるスーパーキャパシタの経時的にプロットされた開始エネルギー密度の百分率を従来のスーパーキャパシタの百分率と比較するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下の詳細な説明では、単に例示として、本発明の特定の例示的な実施形態のみが示され、説明されている。当業者であれば理解されるように、説明した実施形態は、すべて本発明の範囲から逸脱することなく、様々な異なる方法で修正され得る。したがって、図面及び説明は本質的に例示的なものと見なされるべきであり、限定的なものとして見なされるべきではない。明細書全体を通じて、同様の参照番号は同様の要素を示す。
【0035】
図1は、本発明の一実施形態による、第1の電極101、第2の電極102、セパレータ103及び電解質104を備えるスーパーキャパシタ100の概略断面図を示す。第1の電極101及び第2の電極102は、外部電源に電気的に接続されるように構成されている。外部電源107に接続すると、負の第1の電極101及び正の第2の電極102の間に電界が生成される。短絡を防止するために、セパレータ103が第1の電極及び第2の電極の間に配置され、電気絶縁体として機能する。
【0036】
本発明のいくつかの実施形態では、第1及び第2の電極は炭素を有し得る。炭素は、電荷キャリアを蓄積するための大きな表面積も有する高導電性材料として機能する。さらに、第1及び第2の電極は、第2の電極の表面積が第1の電極の表面積よりも大きくなるように構成され得る。言い換えれば、正の電極は負の電極よりも大きな表面積を有し得る。この利点は、スーパーキャパシタがより多くの電荷を蓄積できることである。イオンのサイズはイオンの電荷に応じて異なり得、通常、アニオンはカチオンよりも大きいことが理解されるであろう。したがって、本発明のいくつかの実施形態では、正の電極及び負の電極上の逆帯電イオンの濃度が等しくなるように、負の電極に蓄積されるカチオンのサイズが相対的に小さいのに比べて、正の電極に蓄積されるアニオンのサイズが大きいことを考慮して、正の電極の表面積は負の電極の表面積よりも大きくなり得る。
【0037】
いくつかの実施形態では、任意の所与のスーパーキャパシタ内の電極は、正の電極及び負の電極が異なる組成を有するように、異なる材料を有し得る。例えば、いくつかの実施形態では、スーパーキャパシタは、炭素電極及び擬似容量性の電極の両方を組み込み得る。
【0038】
セパレータ103は、電解質104と物理的に接触している。電解質104は、複数のカチオン105及び複数のアニオン106を有する。セパレータ103の材料は、充電及び放電中にカチオン105及びアニオン106がセパレータを通過できるように透過可能になるように構成される。セパレータの材料は、電解質104内でのカチオン105及びアニオン106の移動性に大きな影響を与えることなく、カチオン105及びアニオン106がセパレータを通って移動できるように、カチオン105及びアニオン106よりも直径が大きい細孔を有し得る。
【0039】
セパレータ103は、セパレータ103全体に永久電界が存在するように、永久電気双極子をさらに有する。永久電気双極子は、結果として生じる永久電気双極子、又は配向された永久電気双極子としても説明され得る。これらの用語はすべて、セパレータの正味の巨視的分極を指すために使用され得る。
【0040】
永久電気双極子は、材料内の複数の電気双極子の正味の累積効果の結果であり、
図1の右から左を指す矢印で示された電気力線で示される。永久電気双極子は、カチオン105及びアニオン106が第1の電極101及び第2の電極102の間を拡散するときの移動方向と整列させるように配置される。本実施形態では、永久電気双極子は、セパレータ103の面に対して実質的に垂直な方向となるように配置される。セパレータ103は、第1及び第2の電極101、102の両方と平行な面で第1の電極101及び第2の電極102の間に配置されるので、このようにして、永久電気双極子は、カチオン105及びアニオン106が第1の電極101及び第2の電極102の間を拡散するときの移動方向と整列させるように配置される。電気双極子がセパレータの面に対して垂直であることの利点は、カチオン105平行及びアニオン106に提供されるエネルギー障壁を最大化し、それによって、カチオン105及びアニオン106の拡散をより効果的に抑制することである。しかし、本発明の他の実施形態では、永久電気双極子は、セパレータの面に対して垂直でない方向に配置され得る。そのような実施形態では、セパレータは、電気双極子が第1及び第2の電極101、102に対して垂直方向に配向されている場合よりも低い程度ではあるが、カチオン105及びアニオン106の拡散を抑制するエネルギー障壁を依然として提供することが理解されるであろう。
【0041】
第1の電極101は、スーパーキャパシタ100の負端子となるように配置され、第2の電極102は、スーパーキャパシタ100の正端子となるように配置される。充電中、カチオン105は第1の電極101に引き寄せられ、第1の電極の表面に蓄積される。逆に、アニオン106は第2の電極102に引き寄せられ、第2の電極の表面に蓄積される。充電プロセスは、電極細孔の電解質が完全に飽和した時点で完了したと見なされ得るが、実際には、この限界に達する前に充電が終了し得る。
【0042】
高濃度のカチオン105及びアニオン106は、イオン電荷キャリア密度の勾配を生成する。これにより、同じ電極における同様の荷電種の近接により、カチオン105及びアニオン106に電極の表面から離れる方向に静電反発力が作用することになる。これにより、自己放電の拡散電流と呼ばれる電流が生成される。これは、回路を完成させる負荷がない場合でも、スーパーキャパシタが一定期間にわたって徐々に電荷を失う、自己放電現象の主な原因である。
【0043】
本実施形態のセパレータは、正の第2の電極102の表面に近いアニオン106がセパレータ103内の双極子によって静電的に反発するように配置されたセパレータの永久電気双極子の結果として、自己放電現象を抑制するように構成されている。同様に、負の第1の電極101に近接したカチオン105は、反対方向に対応する効果を経験する。さらに、セパレータ103内の永久電気双極子の存在により、スーパーキャパシタの充電時にイオンが電極の細孔内で急速に移動し、第1及び第2の電極101、102に蓄積された電荷の所与のレベルに達するのに必要な総充電時間を短縮するのに役立つ。
【0044】
図2a及び
図2bは、
図1のスーパーキャパシタ内の永久電気双極子を有するセパレータの存在により、それぞれアニオン及びカチオンが経験するエネルギー障壁を示す概略エネルギー図を示している。各図の縦軸はエネルギーレベル(E)を表し、横軸は
図1に示すスーパーキャパシタ100の断面を通る線X-X'に沿った距離を表し、ここで、Xは第1の電極101に近接する位置であり、X'は第2の電極102に近接する位置である。
【0045】
本実施形態では、セパレータ103は、エネルギー障壁201、211を提供するように、材料の永久電気双極子が第1の電極101及び第2の電極102の間に配向されるように配置される。
図2aは、アニオン202のエネルギー障壁201を示している。エネルギー障壁201は、アニオン202が、スーパーキャパシタ100の自己放電中にアニオン202が移動する方向である、XからX'に向かう方向に移動することを抑制する。
図2bは、カチオン212のエネルギー障壁211を示している。エネルギー障壁211は、カチオン212が、スーパーキャパシタ100の自己放電中にカチオン212が移動する方向である、X'からXに向かう方向に移動することを抑制する。
【0046】
その結果、セパレータ103構造内の双極子及び電極101、102の表面上のイオン電荷キャリアの間の相互作用により、デバイスが充電されると、拡散律速反応に対するエネルギー障壁が生じる。これにより、セパレータ103は、スーパーキャパシタ100が充電状態にある間、第1及び第2の電極101、102上に蓄積されたイオンの自己放電拡散を抑制する。セパレータ103をこのように構成することにより、スーパーキャパシタ100は、より低い電気直列抵抗(Electric Series Resistance:ESR)を有し、これにより、自己放電が発生する速度を低下させるという利点に加え、効率的な充電及び放電のために、セパレータ103の細孔内でのより速いイオンの移動が可能になる。
【0047】
図3は、本発明の一実施形態による、ナノファイバフィルム300を有するスーパーキャパシタのためのセパレータを示す。この実施形態では、スーパーキャパシタは、複数のナノファイバ301を含むナノファイバフィルム300を含むセパレータを有する。ナノファイバ301は、互いに積層されてナノファイバフィルム300を生成する。複数のナノファイバ301は、実施形態に応じて、ナノファイバフィルム内でランダムに配向又は整列され得る。本発明者らは、直径が600nmを超えるナノファイバは、ナノファイバフィルム内の電気活性相が少なくなる傾向があることを発見した。したがって、複数のナノファイバは600nmよりも小さい又はそれに等しい平均直径を有し得る。さらに、本発明者らは、直径が50nm未満の繊維は電気活性相を高い割合で含む傾向がないことを発見した。したがって、複数のナノファイバは50nmを超える平均直径を有し得る。したがって、本発明のいくつかの実施形態では、複数のナノファイバは、50nmから600nmの間の平均直径を有し得る。
【0048】
ナノファイバフィルム300は、ナノファイバ301間の空間によって画定される複数の細孔302を有する。複数の細孔302は、充電及び放電中のカチオン105及びアニオン106の移動性に重大な影響を及ぼさないように、カチオン105及びアニオン106が容易に通過できるのに十分な大きさである。いくつかの実施形態では、ナノファイバフィルム300は、75%及び85%の間の平均気孔率を有し得る。他の実施形態では、セパレータに使用されるナノファイバフィルムは、可能な値の広い範囲内の気孔率を有し得る。例えば、本発明のいくつかの実施形態では、セパレータは、例えば、ナノファイバ軽量スポンジを含むセパレータの場合、35%と低い気孔率、又は99.6%と高い気孔率を有し得る。一般に、気孔率を増加させると、スーパーキャパシタの等価直列抵抗(Equivalent Series Resistance:ESR)を減少させる効果がある。さらに、細孔径が大きくなると、電極が細孔を通じて互いに接触し、短絡が生じる危険性が高まり得る。したがって、本発明のいくつかの実施形態では、セパレータは、電極間の短絡の危険性を低減するために、1μm以下の平均細孔径を有し得る。例えば、いくつかの実施形態では、セパレータは、1μm以下の平均細孔径を有するナノファイバフィルムを有し得る。
【0049】
いくつかの実施形態では、セパレータ103は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)から形成されたナノファイバを含むナノファイバフィルムを有する。PVDFベースの材料は、従来の商用レベルのセパレータと比較して、スーパーキャパシタ用セパレータとして優れた特性を有している。PVDFは、α、β、γ、δ、εの5つの多形で構成される半結晶性重合体の形態で存在する。β相及びγ相は両方とも極性を持っており、圧電特性を示すことができる。β相は、重合体鎖全体にわたって陰性のフッ素原子及び陽性の水素原子が平行に整列されているため、最大の電気双極子モーメントを示し、したがって、重合体構造内のこれらの結晶相の割合が増加し、PVDF材料の極性特性及び圧電特性の両方が最大化される。したがって、本発明のいくつかの実施形態では、セパレータ103は、β-PVDFから形成されたナノファイバを有するナノファイバフィルムを備え得、それによって、代替材料と比較して強力な永久電気双極子を提供する。
【0050】
本発明のいくつかの実施形態では、セパレータは、限定されないが、以下のPVDF共重合体を含む他のPVDFベースの材料を有し得る。
・ ポリ(フッ化ビニリデン-co-トリフルオロエチレン)(PVDF-TRFE)
・ ポリ(フッ化ビニリデン-co-ヘキサフルオロプロピレン)(PVDF-HFP)
・ ポリ(フッ化ビニリデン-co-クロロトリフルオロエチレン)(PVDF-CTFE)
・ ポリ(フッ化ビニリデン-co-ブロモトリフルオロエチレン)(PVDF-BTFE)さらに、本発明の他の実施形態では、セパレータは、限定されないが、以下を含むPVDF以外の材料を有し得る。
・ 奇数ナイロン、例えば、ナイロン11
・ ポリ乳酸(PLA)
・ セルロース及びその誘導体
・ ポリウレタン(PU)
・ ポリイミド
・ ポリウレア前述したように、セパレータ103は、電解質104と物理的に接触するように配置される。いくつかの実施形態では、セパレータ103は疎水性材料を有し得る。疎水性材料は、特に水性電解質が使用される場合、電解質104をはじく傾向がある。結果として、電解質104はセパレータ103の細孔302を完全に飽和させない場合があり、その結果、充電及び放電中にセパレータ103を通るカチオン105及びアニオン106の移動が抑制され得る。
【0051】
したがって、本発明のいくつかの実施形態では、セパレータ103は、セパレータ材料を疎水性状態から親水性状態に変換するか、又はセパレータ材料の既存の親水性を高めるように構成された界面活性剤を有し得る。このように、界面活性剤をセパレータ103に追加すると、セパレータ103が電解質104を効果的に吸収するのに役立ち得る。これにより、同じ材料で形成されるが界面活性剤を有さないセパレータと比較して、スーパーキャパシタ100の充電及び放電中のイオン電荷キャリアのより速い移動が可能になり、スーパーキャパシタ100をより迅速に充電及び放電することが可能になる。例えば、いくつかの実施形態では、界面活性剤はドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を有し得る。ナノファイバ構造内の高濃度のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)界面活性剤は、ナノファイバ内の極性β相結晶相の割合を増加させるだけでなく、材料を疎水性から高度に親水性のフィルムに変換し、水性ベースのスーパーキャパシタデバイスの充電時の電解質イオンの高速移動も可能にする。
【0052】
界面活性剤が使用される場合、通常、疎水性挙動から親水性挙動への移行が発生する界面活性剤の臨界濃度が存在し得る。この臨界濃度は、浸透閾値と呼ばれ得る。SDSの場合、浸透閾値は通常、前駆体溶液中の濃度が約1%~1.5%で発生し得る。したがって、SDSが界面活性剤として使用される本発明のいくつかの実施形態では、前駆体溶液中のSDSの質量濃度は少なくとも約1%であり得る。前駆体溶液中のPVDFの質量濃度は、例えば、約22%であり得るが、他の実施形態では、他の濃度が使用され得る。前駆体溶液中のSDSの質量濃度が約1%であれば、SDSの質量濃度が約5%のナノファイバフィルムが得られ得る。したがって、そのような実施形態では、セパレータが親水性状態にあることを保証するために、セパレータ内のSDSの質量濃度は少なくとも約1%であり得る。
【0053】
加えて、界面活性剤の濃度を2%以上などにさらに増加させると、前駆体溶液の導電性が高くなりすぎて、エレクトロスピニングプロセスに問題が発生する可能性がある危険性が高まり得る。したがって、SDSが界面活性剤として使用され、エレクトロスピニングプロセスが使用される本発明のいくつかの実施形態では、前駆体溶液中のSDSの質量濃度は、溶液が効果的にエレクトロスピニングできることを保証するために、約2%に等しい又はそれよりも少なくなり得る。前駆体溶液中のSDSの質量濃度が約2%であれば、SDSの質量濃度が約10%のナノファイバフィルムが得られ得る。したがって、そのような実施形態では、セパレータ内のSDSの質量濃度は約15%よりも少ない又はそれに等しくなり得る。いくつかの実施形態によれば、セパレータ内のSDSの質量百分率濃度は、約1%及び約15%の間であり得る。いくつかの実施形態では、セパレータ内のSDSの質量百分率濃度は、約2%及び約10%の間であり得る。いくつかの実施形態では、セパレータ内のSDSの質量百分率濃度は、約5%及び約8%であり得る。
【0054】
図1に示すようなスーパーキャパシタ100は、
図2a及び
図2bに示すように、永久電気双極子がエネルギー障壁を提供するように配向されるように、第1及び第2の電極101、102の間にセパレータ103を配置することによって製造され得る。上で説明したように、永久電気双極子をこのように配向させることは、スーパーキャパシタ100が充電状態にある間に、第1及び第2の電極101、102上に蓄積されたイオン105、106の自己放電拡散を抑制する効果を有する。
【0055】
本発明のいくつかの実施形態では、スーパーキャパシタ100を製造する方法は、セパレータ材料を分極して永久電気双極子を誘導するように、最初は永久電気双極子を有さないセパレータの材料を処理するステップをさらに備え得る。いくつかの実施形態では、セパレータ材料を処理することは、セパレータ材料を分極して永久電気双極子を誘導するように電界を印加することを有し得る。例えば、セパレータ材料は、圧電材料特性又は強誘電材料特性を有し得る。セパレータ材料に電界を印加することは、セパレータ材料内のドメインの双極子配列を増加させる効果を有する。これは、セパレータ材料を少なくとも部分的に溶融するのに十分な温度までセパレータ材料を加熱することと組み合わせて行われ得る。セパレータ材料に対する効果は、セパレータ材料の全体的な正味双極子が増強されることである。
【0056】
電界は、セパレータ材料を分極して特定の方向に永久電気双極子を誘導するように選択された方向に印加し得る。例えば、セパレータは、実質的に平面又はシートの形態であり得る。この例示的な実施形態では、電界はセパレータ材料の面に対して実質的に垂直な方向に印加され、その結果、得られる永久電気双極子が、セパレータ材料の面に対して実質的に垂直な方向にも現れ得る。
【0057】
いくつかの実施形態では、セパレータ材料を処理することは、セパレータ材料を分極して永久電気双極子を誘導するために、熱アニーリング及び延伸、又は電界の印加又はその2つの組み合わせを使用することを含み得る。熱放射の形態でエネルギーを導入すると、セパレータ材料の展性が高まる。これにより、延伸又は電界の印加、又はその2つの組み合わせと組み合わせたとき、材料の双極子が整列する能力が向上し、セパレータ材料の正味の電気双極子が増加し得る。
【0058】
いくつかの実施形態では、セパレータ材料を処理することは、セパレータ材料を分極して永久電気双極子を誘導及び/又は増強するための重合体延伸を有し得るか、又はセパレータ材料を分極して永久電気双極子を誘導及び/又は増強するように充填材料を組み込むことを有し得る。重合体延伸の場合、延伸によりせん断が誘導され、分子が互いに滑り始める。この滑り動作及び結果として生じる摩擦は、分子を延伸力の方向に整列させるように作用し、電気活性相を含む結晶相への再組織化を引き起こし得る。
【0059】
SDS界面活性剤を追加すると、重合体内の電気活性相をさらに増強できる。これは、重合体鎖のCH2基及び界面活性剤によって運ばれる負の電荷間の相互作用によるものである。他のアニオン性界面活性剤、例えば、SDBSも同じ傾向に従う。本発明のいくつかの実施形態では、カチオン界面活性剤も使用でき、その場合、CF2基、及び界面活性剤によって運ばれる正の電荷間で相互作用が発生する。
【0060】
核形成剤を追加すると重合体鎖と相互作用してベータ相が増強される。本発明の実施形態では、核形成剤として追加され得る材料の例には、限定されないが、炭素材料、様々な金属酸化物(ZNO、TiO2、CUO)、及びセラミック充填材(BaTiO3、PZT、BNT)が含まれる。また、個別の双極子が恒久的に整列するように強制されている場合、圧電材料を導入することが、双極子の増強につながり得る。いくつかの実施形態によれば、圧電材料はナノ粒子の形態で追加され得る。ナノ粒子の形態で圧電材料を組み込む利点は、圧電材料が他の物理的形態と比較して表面積が大きく、核形成剤としての圧電材料の有効性が高まることである。さらに、小サイズにより、ナノ粒子をより容易にナノファイバに組み込むことが可能になり得る。
【0061】
上記で説明したように、セパレータが永久電気双極子を有さない材料から製造される実施形態では、永久電気双極子を誘導するように材料を処理できる。いくつかのそのような実施形態では、セパレータ材料をバルクで製造し、次いで、永久電気双極子を誘導する前に、例えば、非分極前駆体材料をセパレータの所望の形状及び寸法に切断するか、又はそうでなければ形成することによって、個別のセパレータに形成できる。次いで、正しい方向に永久電気双極子を誘導するように、個別のセパレータを上記で説明したように処理できる。永久電気双極子を有さない材料から始める代わりに、本発明の他の実施形態では、セパレータは既に恒久的に分極された材料から製造され得る。
【0062】
図4は、
図3に示すようなセパレータを形成するためのエレクトロスピニングプロセスを示している。エレクトロスピニングプロセスには、PVDFなどの材料の溶解液を中空針状ノズルを有する紡糸口金401に充填することが含まれる。次いで、紡糸口金401は、例えば、電気接続403、404を通じて紡糸口金401及びマンドレル402の間に高電圧を印加することによって、電界下に置かれる。
図4に示す実施形態では、紡糸口金401への電気接続403は高電圧電源の正端子に接続され、マンドレル402への電気接続404は接地される。これにより、紡糸口金401及びマンドレル402の間に電界が生成される。
【0063】
次いで、機械力が紡糸口金401に加えられ、中空針状ノズルを通る溶液の流れが生成される。静電気力が液体の表面張力に打ち勝つと、帯電したジェットが紡糸口金401の先端から噴射される。空中にいる間、重合体ジェットはテイラーコーンを形成し、乾燥してマンドレル402のコレクタプレート上に着地する前に、運ばれた表面電荷間の反発力により延伸及びホイッピング振動を経験する。マンドレル402は、分極ナノファイバが円筒形状の周りに巻き付き、長いPVDFナノファイバの薄膜を形成するように回転するように構成されている。この方法でセパレータ材料の前駆体溶液をエレクトロスピニングしてセパレータを製造するには、高電界下で重合体を延伸する必要があり、これにより永久電気双極子を有する高度に分極されたナノファイバフィルムが生成される。
【0064】
このプロセスは、ナノファイバがマンドレル402上でランダムに配向されるように前駆体溶液をエレクトロスピニングするように構成され得る。あるいは、このプロセスは、ナノファイバがマンドレル402上で整列するように前駆体溶液をエレクトロスピニングするように構成され得る。当業者はエレクトロスピニングのプロセスに精通しており、フィルム内に、要件に応じてランダムにし得るか、又は整列させ得るナノファイバの所望の配向を生成するようにプロセスパラメータ(例えば、印加される電界の強度及び方向、液体の粘度及び/又は温度、マンドレル402の回転速度、など)を選択し得ることを理解するであろう。
【0065】
本発明の一実施形態によれば、ナノファイバは50nm及び600nmの間の平均直径を有し得る。得られるナノファイバの直径を制御するために使用される方法には、溶液粘度、流量、温度及び湿度などの環境因子、紡糸口金401及びマンドレル402の間の電位、及び紡糸口金401及びマンドレル402の間の分離距離を修正する段階が含まれ得る。
【0066】
同様に、一般に、ナノファイバフィルムは、任意の適切な気孔率を有し得る。いくつかの実施形態では、ナノファイバフィルムは、75%及び85%の間の平均気孔率を有し得る。上記で説明したように、75%及び85%の間のような比較的高い気孔率を使用することで、比較的低いESRを有するスーパーキャパシタを提供できる。
【0067】
前駆体溶液は、前駆体溶液が紡糸口金401から噴射されたとき、PVDFを含む永久電気双極子を有する材料が生成されるように、PVDFを有し得る。前駆体溶液はまた、前駆体溶液が紡糸口金401から噴射されたとき、界面活性剤を含む永久電気双極子を有する材料が生成されるように、界面活性剤を有し得る。界面活性剤は、SDSを有し得る。前駆体溶液及び永久電気双極子を有する材料に含まれるSDSの体積濃度は、1%及び2%の間であり得る。
【0068】
永久電気双極子を含む材料を有するセパレータを生成する代替及び/又は追加の方法には、永久電気双極子を含む材料を分極させる効果を高めるための熱アニーリングの使用が含まれる。これには、材料を昇温まで加熱し、この温度を適切な時間維持するように、セパレータ材料を熱エネルギーにさらすことが含まれる。昇温中、材料は電界にさらされる。これにより、材料の分極が増強される。
【0069】
図5aは、提案されたスーパーキャパシタ(F1.5%SDS)の自己放電特性を示す実験データを示すグラフである。
図5bは、現在のスーパーキャパシタ(Celgard)の自己放電特性を示す実験データを示すグラフである。電解質のバルク及び電解質の表面の間にイオン輸送抵抗が加わると、スーパーキャパシタデバイスの自己放電特性に大きな影響を与え、ここで、
図5a及び
図5bは、電極細孔の電解質が完全に飽和していることを確認するために、デバイスを充電して、1.6Vで1時間保持した後の、各デバイスの開路電位、OCPと時間の関係を示している。
【0070】
両方のデバイスでの、自己放電の主な原因は拡散律速反応に由来するものであり、その後のファラデー反応によるわずかな寄与及びオーミックな漏れによる影響は最小限に抑えられるが、F1.5%SDSセルの自己放電率は、拡散寄与が大幅に減少するため低減する。
図5aに示すように、F1.5%SDSセルは最初の1時間で384mV/hrの自己放電率を示し、元の電圧の76%を保持できる。自己放電の大部分は最初の1時間で発生するため、5時間を超えると自己放電率は109mV/hrまで低下し、電圧はさらに10%損失しただけで、66%まで減少し、この時点でエネルギー密度は44%まで減少した。10時間の全期間にわたって、放電率は66mV/hrに緩和され、ここでは59%の電圧が保持され、35%のエネルギーがデバイス内に保存される。これはCelgardの大幅に改良されたものであり、
図5bに示すこのデバイスは、最初の1時間以内に673mV/hrの自己放電率を示し、この期間の電圧の58%及びエネルギー密度の33.5%しか保持できない。
【0071】
図6は、提案されたスーパーキャパシタ及び現在のスーパーキャパシタの拡散係数を示す実験データを示したグラフである。F1.5%SDSセパレータからのイオン輸送抵抗の追加による自己放電率の低下は、拡散係数mを抽出することでさらに分析でき、これは、
図6の各デバイスについて示されており、自己放電プロセス全体を通じて拡散係数が時間に対して段階的にプロットされており、ここでは、Celgard及びF1.5%SDSについてそれぞれ7.8×10-3V・s-1/2及び4.7×10-3V・s-1/2の初期記録があり、拡散係数の40%減少を示している。
【0072】
OCPが減衰し、イオンが電極から拡散して離れ始めるにつれて、両方のデバイスの拡散係数は着実に低下し、電極細孔内でイオン濃度及び電解質のバルクの間の平衡状態にゆっくりと到達する。10時間の時点までに、拡散係数はCelgard及びF1.5%SDSでそれぞれ5.2×10-3V・s-1/2及び2.4×10-3V・s-1/2に減少する。
【0073】
図7は、提案されたスーパーキャパシタ及び現在のスーパーキャパシタの経時的な開始エネルギー密度の百分率を例示する実験データを示すグラフである。これは、現在の従来のスーパーキャパシタ(Celgrad)及び提案されたスーパーキャパシタ(F1.5%SDS)の性能の違いを明確に示している。最も顕著な違いは、実験の最初の2時間で発生し、Celgardセルは約80%のエネルギー密度の減少を経験する。しかし、F1.5%SDSはエネルギー密度の約50%を保持しており、同じ期間では50%の減少である。
【0074】
F1.5%SDSはまた、初期のエネルギー密度の急激な低下後、10時間後のエネルギー保持率が34%増加するため、Celgradセルよりも性能が優れている。
【0075】
実証されているように、EDLCスーパーキャパシタデバイスに電気活性セパレータ材料として圧電ナノファイバフィルムを組み込むことで、これらのデバイスの自己放電特性を低減する効果的な手段が提供され得る。スーパーキャパシタの自己放電特性は3つの主要な機構によって特徴づけられ、電解質の拡散及び再分配がこの動作の主な要因となる。材料内に永久双極子が存在する濡れ性の高いSDSドープPVDFナノファイバセパレータを組み込むことで、デバイス内の電解質イオンと相互作用する電界が提供され、イオン拡散のエネルギー障壁を形成し、その結果、デバイスの固有静電容量を損なうことなく、商用レベルの非電気活性セパレータ材料を組み込んだデバイスと比較して、スーパーキャパシタの自己放電が43%減少する。この新しい機構は、特にエネルギースカベンジング及びハーベスティングの分野でエネルギー貯蔵効率の向上をもたらし、さらに、スーパーキャパシタデバイスの長期エネルギー貯蔵用途への道を提供し得る。
【0076】
本発明の特定の実施形態を図面を参照して本明細書で説明したが、添付の特許請求の範囲で定義される本発明の範囲から逸脱することなく、多くの変形及び修正が可能であることが理解されるであろう。
【国際調査報告】