(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-05
(54)【発明の名称】転造工具を製造する方法、転造工具、及びその転造工具を用いた転造加工により歯部を作製する方法
(51)【国際特許分類】
B23P 15/28 20060101AFI20240829BHJP
B23F 21/06 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
B23P15/28 Z
B23F21/06
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024505533
(86)(22)【出願日】2021-09-20
(85)【翻訳文提出日】2024-01-29
(86)【国際出願番号】 EP2021075814
(87)【国際公開番号】W WO2023041186
(87)【国際公開日】2023-03-23
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524038439
【氏名又は名称】アデルベルト ハース ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】ADELBERT HAAS GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ヘルムレ、ヴォルフラム ヨーゼフ
(57)【要約】
切削歯を備えた転造工具を製造する方法であって、転造工具を用いて被加工ワークから歯部を作製するために形成される歯形を定める工程と、被加工ワークから形成される定められた歯形を転造加工法で形成することができる切削歯ジオメトリの刃先を含めた切削歯ジオメトリを決定する工程と、少なくとも2つの異なった部分切削歯ジオメトリであって、異なった部分切削歯ジオメトリが、部分切削歯ジオメトリのうちの少なくとも1つが切削歯ジオメトリの外輪郭の後方に後退するセグメントを有するように、かつ異なった部分切削歯ジオメトリ同士の重なりが切削歯ジオメトリを再現するように形成される、切削歯ジオメトリを少なくとも2つの異なった部分切削歯ジオメトリに分割する工程と、転造工具ブランクを提供する工程と、転造工具ブランクから、異なった部分切削歯ジオメトリを有する切削歯を形成する工程と、を包含する方法、並びにその転造工具、及びその転造工具を用いて歯部を作製する方法が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
切削歯(101、201)を備えた転造工具(100、200)を製造する方法であって、
-前記転造工具(100、200)を用いて被加工ワーク(1、2)から歯部を作製するために形成される歯形を定める工程と、
-前記被加工ワーク(1、2)から形成される前記定められた歯形を転造加工法で形成することができる切削歯ジオメトリ(30、40)の刃先を含めた前記切削歯ジオメトリ(30、40)を決定する工程と、
-前記切削歯ジオメトリ(30、40)を少なくとも2つの異なった部分切削歯ジオメトリ(31、32、41、42)に分割する工程であって、前記異なった部分切削歯ジオメトリ(31、32、41、42)は、前記部分切削歯ジオメトリ(31、32、41、42)のうちの少なくとも1つが前記切削歯ジオメトリ(30、40)の外輪郭の後方に後退するセグメント(31b、32a、32c、41b、32a、32c)を有するように、かつ前記異なった部分切削歯ジオメトリ(31、32、41、42)同士の重なりが前記切削歯ジオメトリ(30、40)を再現するように、形成される、分割する工程と、
-転造工具ブランクを提供する工程と、
-前記転造工具ブランクから、前記異なった部分切削歯ジオメトリ(31、32、41、41)を有する切削歯(101、201)を形成する工程と、を包含する方法。
【請求項2】
前記方法は、切削歯(101、201)が所定の切削歯ジオメトリ(30、40)と、及び/又は部分切削歯ジオメトリ(31、32、41、42)がワーク(1、2)と、相互作用する場合の理論上の材料除去を算定する工程をさらに包含することを特徴とする、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記切削歯ジオメトリ(30、40)を前記部分切削歯ジオメトリ(31、32、41、42)に分割する場合に、理論上の材料除去が予め定められた限界値を下回るがゼロよりも大きい前記切削歯ジオメトリ(30、40)のセグメントが、少なくとも1つの部分切削歯ジオメトリ(31、32、41、42)において、前記切削歯ジオメトリの後方に後退することを特徴とする、
請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記転造工具ブランクから前記異なった部分切削歯ジオメトリ(31、32、41、42)を有する切削歯(101、201)を形成することは、標準化されたプロファイルを有する研削盤、又は標準研削盤を用いて、殊にライン加工で形成されることを特徴とする、
請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
転造加工法で歯形を形成することによって被加工ワーク(1、2)に歯部を作製するための転造工具(100、200)において、前記転造工具(100、200)は、少なくとも2つの異なった部分切削歯ジオメトリ(31、32、41、42)を含む切削歯(101、201)を有し、前記部分切削歯ジオメトリは共同で、前記被加工ワーク(1、2)から形成される定められた歯形を転造加工法で形成することができる切削歯ジオメトリ(30、40)の刃先を含めた前記切削歯ジオメトリ(30、40)を形成し、前記異なった部分切削歯ジオメトリ(31、32、41、42)は、前記部分切削歯ジオメトリ(31、32、41、42)のうちの少なくとも1つを有する少なくとも1つの切削歯(101、201)が前記被加工ワーク(1、2)と相互作用する場合に、前記切削歯ジオメトリ(30、40)の刃先の一部のみが前記被加工ワーク(1、2)と相互作用するように形成されていることを特徴とする、転造工具。
【請求項6】
前記異なった部分切削歯ジオメトリ(31、32、41、42)は、前記それぞれの部分切削歯ジオメトリ(31、32、41、42)を有する切削歯(101、201)が前記被加工ワーク(1、2)と相互作用する場合に、前記切削歯ジオメトリ(30、40)の前記刃先の一部のみが前記被加工ワーク(1、2)と相互作用するように形成されていることを特徴とする、
請求項5に記載の転造工具。
【請求項7】
請求項6に記載の転造工具(100、200)を使用して転造加工することにより歯形を形成することによって被加工ワーク(1、2)に歯部を作製する方法において、
前記歯形の2つの歯の間に所定の空隙を順次形成する場合に、異なった部分切削歯ジオメトリ(31、32、41、42)を有する前記転造工具(100、200)の切削歯(101、201)が順次使用されることを特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転造工具を製造する方法、転造工具、及びその転造工具を用いた転造加工により歯部を作製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
転造加工法、特にホブ加工法、及び特許文献1から知られるスカイビング加工法は、切削により歯部を作製する場合に重要な役割を果たしている。この場合、切削歯を有する転造工具を用いて、切削歯がそれぞれ通常はワークブランクの材料の切屑を除去する一連の切削プロセスで、ワークブランクに歯間空隙が形成され、それにより歯部が作製される。その場合、所定の加工ジオメトリでは、以下に切削歯ジオメトリと呼ばれる刃先の輪郭形状によって定義される転造工具の切削歯の形状は、ワークブランクに形成される歯間空隙の形状によって予め定められる。
【0003】
基本的に、すべての転造加工法において、達成可能な精度と作製される歯部の表面の品質とは切屑発生によって影響される。これまで、特に、切削歯の刃を改善する試みにより、精度と品質を最適化する試みがなされてきた。例えば、刃の制御されない力の作用を最小限に抑えるため、及び耐用年数が改善された工具を得るために丸みを帯びた刃を使用する試みがなされた。しかしながら、その場合、特に刃及び係合する刃の切削開始の正確な位置決めに関して新たな問題が生じることが判明する。切削される材料上での刃の滑り上がり(Aufgleiten)、及び/又は材料の「引き剥がし」によって表面性状が定まらず、それに加えて、「引き剥がし」と材料への刃の押し当てとによって、これと結び付いた不都合な入熱と摩擦損失が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
したがって、本発明の課題は、歯部の品質を向上させる、転造工具を製造する方法、転造工具、及びその転造工具を用いた転造加工により歯部を作製する方法を提供することである。
【0006】
上記課題は、請求項1の特徴を有する方法、請求項5の特徴を有する転造工具、及び請求項7の特徴を有する方法によって解決される。本発明の有利な発展形態は、それぞれの従属請求項の主題である。
【0007】
切削歯を備えた転造工具を製造する本発明による方法は、特に、これまでにも既に必要な工程、すなわち、
-転造工具を用いて被加工ワークから形成される歯形を定める工程と、
-被加工ワークから歯部を作製するために形成される定められた歯形を転造加工法で形成することができる切削歯ジオメトリの刃先を含めた切削歯ジオメトリを決定する工程と、
-転造工具ブランクを提供する工程と、
-転造工具ブランクから、切削歯を形成する工程と、
を包含する。
【0008】
本発明にとって重要であるのは、切削歯ジオメトリが少なくとも2つの異なった部分切削歯ジオメトリに分割され、これらの異なった部分切削歯ジオメトリは、部分切削歯ジオメトリのうちの少なくとも1つが切削歯ジオメトリの外輪郭の後方に後退するセグメントを有するように形成され、かつ異なった部分切削歯ジオメトリ同士の重なりが切削歯ジオメトリを再現するように形成されていることである。好ましくは、部分切削歯ジオメトリの各々がこれらのセグメントを有する。
【0009】
すなわち、所定の歯間空隙を形成するために必要とされる切削歯ジオメトリの刃先の各セグメントが少なくとも1つの部分切削歯ジオメトリの構成要素であるが、逆に、これらのセグメントのうちの少なくとも1つを有していない少なくとも1つの部分切削歯ジオメトリがある。部分切削歯ジオメトリの各々において切削歯ジオメトリの刃先の少なくとも一部が欠けている場合が好ましい。
【0010】
すなわち、ワークに所望の形状の歯間空隙が導入される従来技術による転造工具の同一形状の切削歯の刃先を、本発明では、いくつかの切削歯に分配するということであり、これらの切削歯のうちの少なくとも1つ、好ましくは複数が、1つ又は複数のそのような刃先セグメントの他に、刃先によって輪郭線が予め定められた切削歯ジオメトリ内に位置する更なる刃先セグメントを有する。
【0011】
その場合、切削歯を形成する際に、様々な部分切削歯ジオメトリを有する切削歯が転造工具ブランクから形成される。
すなわち、本発明により製造される転造工具には、様々な形状の切削歯があり、これらの切削歯は、この転造工具を用いてワークを加工する際に、ワークから歯部を作製する場合に定められた歯形と共に歯隙を形成するために、順次、それぞれ少なくとも部分的に係合させられるが、このことは、例えば工具の歯数と作製される歯部との比率を適合させることによって確保でき、その場合、切削により材料を除去することができる。
【0012】
これは、特に、これらの切削歯がワークと少なくとも数回相互作用する場合に、それぞれ形成される歯間空隙の既に部分的に形成された歯形の一部のみが引き続き加工され、すなわちそこでのみ材料が除去されるということをもたらすことができる。この場合、ワークから既に部分的に形成された歯間空隙の歯面の少なくとも1つのセグメントは、完成後に未加工のままの歯形を有する。
【0013】
直感的に、切削歯ジオメトリを部分切削歯ジオメトリに分割することによって加工時間が長くなると思われるかもしれない。しかし実際、かなりの程度、そうならないことが判明している。すなわち、それによって、同時に転造工具によって加工されるワークと相互作用させられる転造工具の歯面セグメントの歯面の数若しくは長さを減じることで、一方では切削時に必要とされる力の付加を減じることができ、他方で、切屑の流れ特性を改善できるというプラスの影響が加工速度に及ぼされる。
【0014】
同時に、この手順は、特に歯面の品質に関して、加工の品質が格段に向上することをもたらすことができる。発明者らの認識によれば、これは、この分割に伴う切屑発生のプロセスにおける変化に起因する。
【0015】
加工品質、特に歯面品質の向上は、部分切削歯ジオメトリへの切削歯ジオメトリの分割が、材料に入り込む際の刃の個々のセグメントの係合に影響を及ぼすこと、及び切屑厚さ若しくは切屑の異なった断片における切屑厚さのばらつきのコントロールを可能にすることによってもたらされる。
【0016】
最適化された部分切削歯ジオメトリをもたらす信頼性の高い予測を得るために、方法が、切削歯が所定の切削歯ジオメトリと、及び/又は部分切削歯ジオメトリがワークと相互作用する場合の理論上の材料除去を算定する工程を更に包含する場合が好ましい。
【0017】
特に、本発明により製造される転造工具及び本発明による転造工具では、(少なくとも)1つの部分切削歯ジオメトリにおける非常に細かい切屑のみを除去し得る歯面を使わず(freistellen)、したがってこの部分切削ジオメトリを有する切削歯が実行する切削プロセスにおいてスキップされるよう、部分切削歯ジオメトリを適合させることにより、切除された切屑がどの箇所でも最小厚さを有することを確保することができる。
【0018】
実際には、これは、切削歯ジオメトリを部分切削歯ジオメトリに分割する場合に、部分切削歯ジオメトリにおいて、理論上の材料除去が予め定められた限界値を下回る切削歯ジオメトリの切削エッジ又は切削エッジのセグメントを使わないことにより行うことができる。
【0019】
本方法の更に有利な実施形態によれば、異なった部分切削歯ジオメトリを有する切削歯を転造工具ブランクから形成することが、標準化されたプロファイルを有する研削盤又は標準研削盤を用いて行われ、それにより、同一の研削盤を用いて異なった切削歯形を殊にライン加工(in zeilender Bearbeitung)で加工/作製できる。これにより、これまで一般的であった切削歯形ごとに個別に作製される成形研削盤の使用とは異なり、より安価であり、それに加えて、様々な部分切削歯ジオメトリを有する切削歯の個別化が簡単に可能になる。
【0020】
転造法で歯形を形成することによって被加工ワークに歯部を作製するための本発明による転造工具は、転造工具が、少なくとも2つの異なった部分切削歯ジオメトリを有する切削歯を備え、部分切削歯ジオメトリは共同で、被加工ワークから形成される定められた歯形を転造法で形成することができる切削歯ジオメトリの刃先を含めた切削歯ジオメトリを形成し、異なった部分切削歯ジオメトリは、部分切削歯ジオメトリのうちの1つを有する少なくとも1つの切削歯が被加工ワークと相互作用する場合に、切削歯ジオメトリの刃先の一部(Untermenge)のみが被加工ワークと相互作用するように形成されていることを特徴とする。
【0021】
異なった部分切削ジオメトリは、それぞれの部分切削歯ジオメトリを有する切削歯が被加工ワークと相互作用する場合に、切削歯ジオメトリの刃先の一部のみが被加工ワークと相互作用するように形成されている場合が特に好ましい。
【0022】
このような転造工具を使用して転造加工することにより歯形を形成することによって、被加工ワークに歯部を作製する本発明による方法は、歯形の2つの歯の間に所定の空隙を順次形成する場合に、異なった部分切削歯ジオメトリを有する転造工具の切削歯が順次使用されることを特徴とする。これは、特に、歯部及び転造工具の歯数が適切に選択される場合にこれらを適合させることによって行うことができる。
【0023】
本発明は、実施例を示す図をもとにして以下に詳しく説明される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1a】外歯を有するワークと、転造加工法でこの歯部をワークに作製できる切削歯ジオメトリを有する工具とを示す図である。
【
図1b】内歯を有するワークと、転造加工法でこの歯部をワークに作製できる切削歯ジオメトリを有する工具とを示す図である。
【
図2a】
図1aによる切削歯ジオメトリを含む切削歯を有する転造工具を用いて
図1aによるワークに歯を作製するときの一連の中間状態を示す図である。
【
図2b】
図1bによる切削歯ジオメトリを含む切削歯を有する転造工具を用いて
図1bによるワークに歯を作製するときの一連の中間状態を示す図である。
【
図3a】
図1aの切削歯ジオメトリと、本発明による2つの部分切削歯ジオメトリへの分割の可能性とを示す図である。
【
図3b】
図3aの2つの部分切削歯ジオメトリの重なりを示す図である。
【
図4a】
図1bの切削歯ジオメトリと、本発明による2つの部分切削歯ジオメトリへの分割の可能性とを示す図である。
【
図4b】
図4aの2つの部分切削歯ジオメトリの重なりを示す図である。
【
図5a】本発明により
図3bによる部分切削歯ジオメトリに(分割された)切削歯を有する転造工具を用いて
図1aによるワークに外歯を作製するときの一連の中間状態を示す図である。
【
図5b】
図4bによる部分切削歯ジオメトリに(分割された)切削歯を有する転造工具を用いて
図1bによるワークに内歯を作製するときの一連の中間状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1aは、左側に、歯間隙1aを形成することによって既にワーク1に完全に導入された外歯を有するワーク1を示し、右側に、複数の同一の切削歯101を有する転造工具100を示し、これらの切削歯の切削歯ジオメトリは刃先の輪郭線によって定められている。
図1において明らかに認められるように、切削歯101が歯間隙1aより格段に幅狭であるにもかかわらず、切削歯がワーク1に歯間隙1aを導入することができるという事実は、ワーク1に歯間隙1aが連続的に切り込まれる転造加工法に典型的な転造工具100のワーク1上での動作の結果である。
【0026】
図1bは、右側に、歯間隙2aを形成することによって既にワーク2に完全に導入された内歯を有するワーク2を示し、右側に、複数の同一の切削歯201を有する転造工具200を示し、これらの切削歯の切削歯ジオメトリは刃先の輪郭線によって定められている。
図1aと
図1bとの比較から認識されるように、内歯と転造工具2の半径比は、外歯と転造工具1の場合よりも格段に類似であり、それにより切削歯201の幅が歯間隙2aの幅と格段に類似している。
【0027】
図2a若しくは
図2bにはそれぞれ、
図1a若しくは
図1bによる切削歯ジオメトリを有する切削歯のみを有する従来技術による転造工具を用いて
図1a若しくは
図1bによるワークに歯部を導入する場合の一連の中間状態が(示される)。これらの図示は、それぞれ大幅に拡大されており、ここに示されるシミュレーションではそれぞれ、約80回の一連の切削によって実現される4mmの全深さを有する歯隙の形成が示される。
【0028】
その場合、
図2aにおいて、歯隙が右から左へ徐々に切り込まれ、それにより第1の材料を除去する切削の後に切削線11、そして第2の材料を除去する切削の後に切削線12等々がワーク表面の一部を形成する。
図2bにおいて、歯隙が左から右へ徐々に切り込まれ、それにより第1の材料を除去する切削後に切削線21、そして第2の材料を除去する切削後に切削線22等々がワーク表面の一部を形成する。
【0029】
したがって、2つの隣接する切削線の間の領域はそれぞれ、歯隙の歯底の方向に続く次の切削の結果として生じる歯を、その「理想形状」で、すなわち切屑が除去される間、切屑の影響を受けない歯を示す。
図2aに示される外歯の切り込みの場合、及び
図2bに示される内歯の切り込みの場合の両方において、非常に密接に並ぶ複数の切削線があることが認識される。それに応じて、
図2a及び
図2bから、従来技術から知られているように転造工具を用いて歯隙を作製する場合に多数の切屑が生じ、切屑が非常に細かい断片を有し、したがって切除時に容易に変形される一方で、不定に切除され、そのことが準最適な切屑発生、及びその結果として準最適な歯部の品質をもたらす。
【0030】
図3a及び
図3bは、外歯を形成するための切削歯ジオメトリ30を本発明により2つの部分切削歯ジオメトリ31、32に分割するための一例を示す。この例では、対応する転造工具が、刃先がそれぞれ、部分切削歯ジオメトリ31、32のうちの1つを含む切削歯のみを有し、これらの切削歯は、異なった部分切削歯ジオメトリの切削歯を用いて連続する切削が行われるように配置されているが、当然、それが有意義であることが明らかならば、より多くの部分切削歯ジオメトリへの分割を行うこともでき、それに加えて、特に
図2a及び
図2bに認識されるように、切除される最初の切屑は切屑断片が細かいという問題をまだ有していないため、刃先が切削歯ジオメトリに対応する切削歯を転造工具に設けることもできる。
【0031】
図3aにおいて、切削歯ジオメトリ30、部分切削歯ジオメトリ31、及び部分切削歯ジオメトリ32がそれぞれ一定のオフセットで互いにずらして示されている。この図に既に認識されるように、部分切削歯ジオメトリ31は、切削歯ジオメトリ30をその先端分だけ短くすることによって作成されるが切削歯ジオメトリの側面を有しているのに対して、部分切削歯ジオメトリ32は、切削歯ジオメトリ30の先端を再現するが、側面領域がより狭くなっている。
【0032】
部分切削歯ジオメトリ31、32が互いに重ね合わせて示される
図3bに認識されるように、部分切削歯ジオメトリ31及び32は共同で、重ねられた部分切削歯ジオメトリ31及び32の外輪郭に相当する切削歯ジオメトリ30を再現する。部分切削歯ジオメトリ31のセグメント31a及び31cは、切削歯ジオメトリ30の側面を形成し、部分切削歯ジオメトリ32のセグメント32bは切削歯ジオメトリ30の先端を形成する。
【0033】
したがって、逆に、部分切削歯ジオメトリ31は、切削歯ジオメトリ30の後方に後退したセグメント31bを有し、部分切削歯ジオメトリ32は、切削歯ジオメトリ30の後方に後退したセグメント32a、32cを有する。
【0034】
図4a及び
図4bは、内歯を導入する切削歯ジオメトリ40と、セグメント41a、41b、41c若しくは42a、42b、42cを有する関連する部分切削歯ジオメトリ41及び42のそれぞれ同様の状況を示しており、したがってこの点では、それぞれ参照符号が適合された
図3aおよび
図3bの説明を参照することができる。
【0035】
しかし明確に強調しておきたいのは、切削歯ジオメトリ30、40の2つ以上の部分切削歯ジオメトリ31、32、41、42への別の分割も可能であり、1つの部分切削歯ジオメトリが必ずしも先端を、そして第2の部分切削歯ジオメトリが切削歯ジオメトリの側面を再現する必要はないということである。
【0036】
この措置の効果は、
図2a及び
図2bのように、ワーク1若しくは2に外歯若しくは内歯を導入する場合のそれぞれ切削線51、52、61、62によって表される一連の中間状態が示される
図5a及び
図5bに認識される。しかし、
図2a及び
図2bとは違い、ここではそれぞれ、図示される例では、部分切削歯ジオメトリ31若しくは41を有する切削歯と部分切削歯ジオメトリ32若しくは42を有する切削歯とが交互に使用されるように転造工具に配置されている、部分切削歯ジオメトリ31、32若しくは41、42を含む異なった種類の各切削歯を有する転造工具を用いて加工される。その場合、歯部の全深さと送りとは
図2a若しくは
図2bのものと同一である。
【0037】
ここでは非常に細かい切屑のみが除去される領域が大幅に減少したことが一目で認識される。これらの領域では、決まった切屑発生を予想でき、そのことが格段に高い歯部の品質をもたらす。
【符号の説明】
【0038】
1、2…ワーク
100、200…転造工具
101、201…切削歯
1a、2a…歯間隙
11、12、21、22、51、52、61、62…切削線
30、40…切削歯ジオメトリ
31、32、41、42…部分切削歯ジオメトリ
31a、31b、31c、32a、32b、32c…部分切削歯ジオメトリのセグメント
41a、41b、41c、42a、42b、42c…部分切削歯ジオメトリのセグメント
【国際調査報告】