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特表2024-532077トンネルバリアを持つ半導体-超伝導体ハイブリッドデバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-05
(54)【発明の名称】トンネルバリアを持つ半導体-超伝導体ハイブリッドデバイス
(51)【国際特許分類】
   H10N 60/00 20230101AFI20240829BHJP
【FI】
H10N60/00 Z ZAA
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024506160
(86)(22)【出願日】2021-09-01
(85)【翻訳文提出日】2024-01-31
(86)【国際出願番号】 EP2021074183
(87)【国際公開番号】W WO2023030626
(87)【国際公開日】2023-03-09
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】314015767
【氏名又は名称】マイクロソフト テクノロジー ライセンシング,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100229448
【弁理士】
【氏名又は名称】中槇 利明
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ジーイン
(72)【発明者】
【氏名】レバジャック,ヴカン
(72)【発明者】
【氏名】レマン,マチルド,フローレ
(72)【発明者】
【氏名】コウウェンホーフェン,レオナルダス,ペトルス
【テーマコード(参考)】
4M113
【Fターム(参考)】
4M113AC45
4M113AC50
4M113CA03
4M113CA12
(57)【要約】
デバイスは、半導体コンポーネントと超伝導体コンポーネントとを有する半導体-超伝導体ハイブリッド構造であり、超伝導体コンポーネントはアルミニウムの層を有する、半導体-超伝導体ハイブリッド構造と、半導体-超伝導体ハイブリッド構造とトンネル連通する少なくとも1つの導電リードと、半導体-超伝導体ハイブリッド構造と少なくとも1つの導電リードとの間に配置されたトンネルバリアと、を有する。導電リードは、超伝導体コンポーネントが半導体コンポーネントを導電リードから遮蔽するように、超伝導体コンポーネントの上に配置される。トンネルバリアは、超伝導体コンポーネントと少なくとも1つの導電リードとの間に配置される。該デバイスを製造する方法及び動作させる方法も提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体コンポーネントと超伝導体コンポーネントとを有する半導体-超伝導体ハイブリッド構造であり、前記超伝導体コンポーネントはアルミニウムの層を有する、半導体-超伝導体ハイブリッド構造と、
前記半導体-超伝導体ハイブリッド構造とトンネル連通する少なくとも1つの導電リードと、
前記半導体-超伝導体ハイブリッド構造と前記少なくとも1つの導電リードとの間に配置されたトンネルバリアと、
を有し、
前記少なくとも1つの導電リードは、前記超伝導体コンポーネントが前記半導体コンポーネントを前記少なくとも1つの導電リードから遮蔽するように、前記超伝導体コンポーネントの上に配置され、
前記トンネルバリアは、前記超伝導体コンポーネントと前記少なくとも1つの導電リードとの間に配置され、
前記トンネルバリアは、前記超伝導体コンポーネントに一体的に形成された自然酸化アルミニウム層からなる、
デバイス。
【請求項2】
前記トンネルバリアは、前記超伝導体コンポーネントのエッジを越えて延在しない、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記半導体コンポーネントはナノワイヤの形態である、請求項1又は2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記ナノワイヤは複数のファセットを持ち、前記超伝導体コンポーネントは前記複数のファセットのうちのサブセットの上に配置されている、請求項3に記載のデバイス。
【請求項5】
当該デバイスは導電リードのペアを含み、前記ペアの各導電リードが、前記半導体-超伝導体ハイブリッド構造のそれぞれの端部と連通し、オプションで、前記超伝導体コンポーネントはアイランドである、請求項1乃至4のいずれかに記載のデバイス。
【請求項6】
当該デバイスは、前記半導体-超伝導体ハイブリッド構造のバルクセグメントとトンネル連通する導電リードを含む、請求項1乃至5のいずれかに記載のデバイス。
【請求項7】
前記半導体-超伝導体ハイブリッド構造及び前記少なくとも1つの導電リードは基板上に配置されており、少なくとも1つのシャドーウォールが前記基板上に配置されている、請求項1乃至6のいずれかに記載のデバイス。
【請求項8】
前記少なくとも1つのシャドーウォールは、支持部及び張り出し部を含み、
前記張り出し部は、前記基板の上に張り出し、前記支持部によって支持されている、
請求項7に記載のデバイス。
【請求項9】
デバイスを製造する方法であって、
基板上に半導体コンポーネントを準備し、
前記半導体コンポーネントの上に超伝導体コンポーネントを作製することによって半導体-超伝導体ハイブリッド構造を形成し、前記超伝導体コンポーネントはアルミニウムの層を有し、
前記アルミニウムを部分的に酸化して、前記超伝導体コンポーネント上の自然酸化アルミニウムからなるトンネルバリアを形成し、
前記トンネルバリア上に少なくとも1つの導電リードを作製する、
ことを有する方法。
【請求項10】
前記基板は、予めパターン形成されたゲート電極を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記アルミニウムを部分的に酸化することは、前記アルミニウムを二酸素及び/又はオゾンに曝露することを有する、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
当該方法は更に、前記超伝導体コンポーネントを作製する前に、前記基板上に少なくとも1つのシャドーウォールを作製することを有し、
前記超伝導体コンポーネントを作製することは、超伝導金属が堆積されないシャドー領域を前記少なくとも1つのシャドーウォールが画成するように選択された第1の方向から、前記アルミニウムを指向的に堆積させることを有する、
請求項9乃至11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも1つのシャドーウォールは、支持部及び張り出し部を含み、
前記張り出し部は、前記基板の上に張り出し、前記支持部によって支持され、
前記少なくとも1つの導電リードを作製することは、前記第1の方向とは異なる第2の方向から導電材料を指向的に堆積させることを有し、前記第2の方向は、前記少なくとも1つのシャドーウォールが前記導電材料の堆積を制御するように選択される、
請求項12に記載の方法。
【請求項14】
i)前記超伝導体コンポーネント、前記トンネルバリア、及び前記少なくとも1つの導電リードは、エッチングの使用なしで作製され、且つ/或いは
ii)当該方法は、密閉された装置内で実行され、前記デバイスの製造が完了するまで前記基板が前記装置から取り出されない、
請求項9乃至13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
請求項1乃至8のいずれかに記載のデバイスを動作させる方法であって、
前記超伝導体コンポーネントが超伝導性を示すように、前記超伝導体コンポーネントの臨界温度よりも低い温度まで前記デバイスを冷却し、
前記半導体-超伝導体ハイブリッド構造に磁場を印加し、
前記半導体-超伝導体ハイブリッド構造を静電的にゲート制御し、
前記少なくとも1つの導電リードを通るトンネル電流を測定する、
ことを有する方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
超伝導体に近づかれたナノワイヤは、正しい条件を与えられると、物質のトポロジカル相をホストすると期待される。このことは、それらをフォールトトレラント量子コンピュータのビルディングブロックとしての有望な候補としている。
【0002】
トポロジカル相は、ナノワイヤの端部に一対のマヨラナゼロモード(Majorana zero mode;“MZM”)の形態で現れる。ワイヤのバルクに沿って、端部から離れて、単一電子スペクトルのギャップが存在する。実験では典型的に、ナノワイヤの端部でトンネル分光法を使用して、トンネルコンダクタンスのゼロバイアスピーク(“ZBP”)を検出する。
【0003】
そのようなナノワイヤのネットワークを形成し、該ネットワークの所々にトポロジカルレジームを誘起することにより、量子コンピューティングの目的で操作されることができる量子ビットを作り出すことが可能である。量子ビットは、キュービットとも称され、2つの可能な結果を持つ測定をその上で行うことができるが、任意の所与の時点(測定されないとき)で実際に、それら相異なる結果に対応する2つの状態の量子重ね合わせであることができる要素である。
【0004】
ナノワイヤは、その幅及び厚さよりも何倍も大きい長さ寸法を持った、半導体材料の細長い部分の形態をとることができる。ナノワイヤは準一次元の系である。ナノワイヤの少なくとも一部上に従来からの超伝導体の層が配置される。
【0005】
MZMを生成するのに有用な別の系は、従来からの超伝導体への近接結合を有する2次元電子ガス(“2DEG”)に基づく半導体ナノワイヤである。該超伝導体は、典型的に、エピタキシャル2Dウエハスタックの一部として成長されるが、また、製造中の材料成長後に堆積されることもできる。この材料プラットフォームは、かなり大きいスピン軌道結合及び大きい電子g因子を持ち、これらが、トポロジカル状態の形成のための鍵となる要因である。2Dプラットフォームは、エッチング及び堆積を伴うトップダウンリソグラフィパターニングを介して複雑なデバイスジオメトリを可能にする。
【0006】
トポロジカル相を誘起するため、超伝導体(例えば、アルミニウム)が超伝導挙動を示す温度までデバイスが冷却される。超伝導体が、隣接する半導体に近接効果を引き起こし、それにより、超伝導体との界面付近の半導体の領域も超伝導特性を示し、すなわち、隣接する半導体の中に超伝導ペアリングギャップが誘起される。磁場が印加されると、半導体-超伝導体ハイブリッドの両端にMZMが形成される。
【0007】
磁場の役割は、半導体中のスピン縮退を解除(リフト)することである。量子系の文脈における縮退は、相異なる量子状態が同じエネルギー準位を持つ場合を指す。縮退を解除するとは、それらの状態が相異なるエネルギー準位を採るようにさせることを指す。スピン縮退は、相異なるスピン状態が同じエネルギー準位を持つ場合を指す。スピン縮退は磁場によって解除されることができ、異なるようにスピン偏極した電子間でエネルギー準位分裂を生じさせる。これはゼーマン効果として知られている。ゼーマンエネルギー、すなわち、エネルギーレベル分裂の大きさは、僅かな超伝導ギャップを閉じ、系内にトポロジカルギャップを再び開くために、少なくとも超伝導ギャップと同じ大きさであるべきである。
【0008】
MZMを誘起することはまた、静電ポテンシャルでナノワイヤをゲート制御することによって、ナノワイヤ内の電荷キャリアの静電ポテンシャルを調整することを必要とし得る。静電ポテンシャルは、ゲート電極を用いて印加される。静電ポテンシャルを印加することは、半導体コンポーネントの伝導帯又は価電子帯における電荷キャリアの数を操作する。
【0009】
半導体-超伝導体ハイブリッド系の電子特性を測定する必要がある。このような測定を行うために用いられる1つの技術はトンネル分光法である。トンネル分光測定を行うために、半導体-超伝導体ハイブリッド構造の近くに導電リードが配置される。半導体-超伝導体ハイブリッド構造と導電リードとの間にトンネル電流が流れる。この電流の特性(例えば、その大きさ、周波数、位相)が測定される。そのような測定に基づいて半導体-超伝導体ハイブリッド構造の特性に関する情報を推測することができる。
【0010】
図1は、トンネル分光測定を行うための典型的な系100を示している。当該系は、ナノワイヤの形態の半導体コンポーネント110を含む。半導体コンポーネント上に超伝導体コンポーネント120が配置される。半導体ナノワイヤ110の端部に常伝導リード130が配置される。超伝導体コンポーネントは、ナノワイヤ110の該端部まで延在せず、ある空間だけ常伝導リードから離される。ゲート誘電体142とゲート電極144とを有するゲートスタックが、半導体ナノワイヤ110の上に配置される。ゲート電極144は、上記空間内の半導体材料をゲート制御するように構成される。ゲート電極に静電場を印加することは、デバイスの半導体-超伝導体ハイブリッド部分と常伝導リードとの間にトンネル障壁を作り出す。該トンネル障壁は、半導体コンポーネント110の内部に作り出され、すなわち、半導体の一部がトンネルバリアとして機能するようにされる。
【発明の概要】
【0011】
一態様において、デバイスが提供され、当該デバイスは、半導体コンポーネントと超伝導体コンポーネントとを有する半導体-超伝導体ハイブリッド構造であり、前記超伝導体コンポーネントはアルミニウムの層を有する、半導体-超伝導体ハイブリッド構造と、前記半導体-超伝導体ハイブリッド構造とトンネル連通する少なくとも1つの導電リードと、前記半導体-超伝導体ハイブリッド構造と前記少なくとも1つの導電リードとの間に配置されたトンネルバリアと、を有する。前記導電リードは、前記超伝導体コンポーネントが前記半導体コンポーネントを前記導電リードから遮蔽するように、前記超伝導体コンポーネントの上に配置される。前記トンネルバリアは、前記超伝導体コンポーネントと前記少なくとも1つの導電リードとの間に配置される。前記トンネルバリアは、前記超伝導体コンポーネントに一体的に形成された自然酸化アルミニウム層からなる。超伝導体コンポーネントが導電リードと半導体コンポーネントとの間に配置されるので、超伝導体コンポーネントが高エネルギー電子を遮断することができ、それにより、低エネルギー電子(例えば、MZMに対応するもの)がいっそう容易に検出されることを可能にする。超伝導体コンポーネントに一体にトンネルバリアを形成することは、導電リードと半導体-超伝導体ハイブリッド構造との間に高品質の誘電体バリアを提供する。
【0012】
他の一態様において、デバイスを製造する方法が提供される。当該方法は、基板上に半導体コンポーネントを準備し、前記半導体コンポーネントの上に超伝導体コンポーネントを作製することによって半導体-超伝導体ハイブリッド構造を形成し、前記超伝導体コンポーネントはアルミニウムの層を有し、前記アルミニウムを部分的に酸化して、前記超伝導体コンポーネント上の自然酸化アルミニウムからなるトンネルバリアを形成し、前記トンネルバリア上に少なくとも1つの導電リードを作製する、ことを有する。
【0013】
より更なる一態様において、ここに規定されるデバイスを動作させる方法が提供される。当該方法は、前記超伝導体コンポーネントが超伝導性を示すように、前記超伝導体コンポーネントの臨界温度よりも低い温度まで前記デバイスを冷却し、前記半導体-超伝導体ハイブリッド構造に磁場を印加し、前記半導体-超伝導体ハイブリッド構造を静電的にゲート制御し、前記少なくとも1つの導電リードを通るトンネル電流を測定する、ことを有する。
【0014】
この概要は、詳細な説明で更に後述される複数の概念の一部を簡略化した形態で紹介するために提示されるものである。この概要は、特許請求される事項の主要な特徴又は本質的な特徴を特定することを意図したものではないし、特許請求される事項の範囲を限定するために使用されることを意図したものでもない。特許請求される事項は、ここに記載される欠点のいずれか又は全てを解決する実装に限定されるものでもない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
本開示の実施形態の理解を助けるとともに、それらの実施形態がどのように実施され得るかを示すために、単に例として、添付の図面を参照する。
図1】比較例に従ったデバイスの概略断面図である。
図2】比較例のデバイス内のジャンクションにおける位置の関数としての電位の図である。
図3】理想的なジャンクションにおける位置の関数としての電位の図である。
図4】一例のデバイスの長さに沿った概略断面図である。
図5図4の線Aに沿った断面図である。
図6】デバイスを製造する方法のフローチャートである。
図7】一例のデバイスの製造に有用なシャドーウォールの概略斜視図である。
図8】2つの端子を持つデバイスを製造するのに有用なシャドーウォールの配置の平面図である。
図9】3つの端子を持つデバイスを製造するのに有用なシャドーウォールの配置の平面図である。
図10】ナノワイヤの各端部の導電リードと、ナノワイヤのバルク領域と連通した導電リードとを持つデバイスを製造するのに有用なシャドーウォールの配置の平面図である。
図11】デバイスを動作させる方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
ここで使用されるとき、動詞‘有する’は、‘含む又はからなる’の省略表現として使用される。換言すれば、動詞‘有する’は、閉じていない用語であることを意図しているが、特に、化学組成に関連して使用される場合、閉じた用語‘からなる’でのこの用語の置き換えが明示的に企図される。
【0017】
例えば“頂部”、“底部”、“左”、“右”、“上”、“下”、“水平”、及び“垂直”などの方向用語は、ここでは説明の便宜上使用され、関連する図に示された向きに関する。基板がデバイスの“底部”となるように取られる。誤解を避けるために、この用語は、外部座標系におけるデバイスの向きを限定することを意図していない。
【0018】
ここで使用されるとき、用語“超伝導体コンポーネント”及び“超伝導金属”は、それぞれ、その材料の臨界温度Tより低い温度に冷却されたときに超伝導となるコンポーネント及び金属を指す。これらの用語の使用は、使用中でないデバイスの温度を限定することを意図していない。
【0019】
“ナノワイヤ”は、ナノスケール幅と、少なくとも100、又は少なくとも500、又は少なくとも1000の長さ対幅の比とを持つ細長い部材である。ナノワイヤは、10-500nm、オプションで50-100nm又は75-125nmの範囲内の幅を持ち得る。長さは典型的に、例えば少なくとも1μm又は少なくとも10μmといった、マイクロメートルのオーダーのものである。特に、ナノワイヤは、80-100nmの範囲内の直径と、10-15μmの範囲内の長さとを持ち得る。
【0020】
“半導体-超伝導体ハイブリッド構造”は、適切な動作条件下で超伝導体コンポーネントが近接効果によって半導体コンポーネント内に超伝導性を誘起するように構成された、半導体コンポーネント及び超伝導体コンポーネントを有する。特に、この用語は、例えばマヨラナゼロモードなどのトポロジカル挙動又は量子コンピューティング用途に有用な他の励起を示すことが可能な構造を指す。動作条件は、一般に、構造体を超伝導体コンポーネントのTcより低い温度に冷却すること、構造体に磁場を印加すること、及び構造体の少なくとも一部に静電ゲーティングを適用することを有する。一般に、半導体コンポーネントの少なくとも一部は超伝導体コンポーネントと密接に接触し、例えば、超伝導体コンポーネントが半導体コンポーネント上にエピタキシャル成長され得る。しかしながら、半導体コンポーネントと超伝導体コンポーネントとの間に1つ以上の更なるコンポーネントを持つ特定のデバイス構造が提案されている。
【0021】
“指向性堆積プロセス”は、材料又は材料の前駆体の方向付けられたビームを用いて表面上に材料を堆積させるプロセスである。指向性堆積プロセスでは、材料が表面上に吸着される位置がビームの方向によって決定される。ビームは表面に対して一定の方位角を持ち、換言すれば、堆積の間、表面に対するビームの方向が固定される。指向性堆積を達成するために使用され得るプロセスの例は、分子線エピタキシー、熱蒸着、及び電子ビーム蒸着を含む。
【0022】
分かったことには、図1に示したタイプのデバイスは、マヨラナゼロモードの信頼できる検出を可能にしないことがある。これは何故なら、そのようなデバイスでは、マヨラナゼロモードに似た特徴を持つ取るに足らない状態しか誘起されないことがあるためである。例えば、アンドレーエフ状態が、この比較デバイスのトンネル接合(ジャンクション)に誘起され得る。
【0023】
この比較デバイスでは、トンネルジャンクションが静電的に画成される。これは、ジャンクションに、図2に示すような不均一な又は滑らかな静電ポテンシャルプロファイルを持たせ得る。不均一なポテンシャルプロファイルは、“擬似マヨラナ”、すなわち、真のMZMの可視性を低下させる取るに足らない状態を生成し得る。この効果は、Vuik, et al.,SciPost Phys.7,061 (2019)に記載されている。
【0024】
図3に示すような鋭い静電ポテンシャルプロファイルを有するトンネルバリアを持つデバイスを提供することが望ましい。取るに足らない状態をあまり伴わず、及び/又はMZMのいっそう容易な検出を可能にし得るトンネル接合を持つデバイスがここに提供される。
【0025】
ここで図4及び図5を参照して、一例のデバイス400を説明する。図4は、デバイスの長さに沿って取られた概略断面図である。図5は、図4のA線に沿って取られた概略断面図である。
【0026】
デバイス400は、半導体-超伝導体ハイブリッド構造と、半導体-超伝導体ハイブリッド構造上に配置されたトンネルバリアと、半導体-超伝導体ハイブリッド構造の一端においてトンネルバリア上に配置された導電リードとを含む。
【0027】
当該デバイスは基板上に配置されてもよい。基板は、典型的に、ウエハ、すなわち、一片の単結晶材料を有する。ウエハ材料の一例はインジウム燐である。ウエハ材料の他の例は、ガリウム砒素、インジウムアンチモン、インジウム砒素、及びシリコンを含む。基板は、ウエハ上又はウエハを覆って配置された追加の構造を更に有した、より精巧なワークピースであってもよい。基板は、2つ以上の材料の層を含んでもよい。多層基板の例は、シリコン・オン・インシュレータ基板、特に、スマートカットプロセスによって得ることが可能なシリコン・オン・インシュレータ基板である。
【0028】
半導体-超伝導体ハイブリッド構造は、半導体コンポーネント410と超伝導体コンポーネント420とを有する。超伝導体コンポーネント420は、近接効果によって半導体コンポーネント410内に超伝導性を誘起するように構成される。適切な条件下で、これは、ハイブリッド構造内に例えばマヨラナゼロモードなどの有用な励起を誘起することができる。
【0029】
半導体コンポーネントは、様々な手法で実装され得る。この例において、半導体コンポーネント410はナノワイヤの形態である。半導体ナノワイヤは、例えば、選択エリア成長(selective area growth;“SAG”)又は蒸気-液体-固体(vapour-liquid-solid;“VLS”)プロセスによって製造され得る。選択エリア成長についての技術は、例えば、Davies Proc. SPIE 2140, Epitaxial Growth Processes, 58 (doi:10.1117/12.175795);Fahed, Doctoral thesis: Selective area growth of in-plane III-V nanostructures using molecular beam epitaxy, 2016 (http://www.theses.fr/2016LIL10114);Fukui et al, Appl. Phys. Lett. 58, 2018 (1991) (doi: 10.1063/1.105026);and Aseev et al. Nano Letters 2019 19 (1), 218-227, doi: 10.1021/acs.nanolett.8b03733に開示されている。
【0030】
半導体ナノワイヤの製造には多様な半導体材料が有用である。半導体材料の1つの例示的なクラスはIII-V族半導体である。半導体コンポーネント410は、例えば、式1:
InAsSb1-x (式1)
の材料を有することができ、ここで、xは0から1の範囲内である。換言すれば、半導体コンポーネント410は、インジウムアンチモン(x=0)、インジウム砒素(x=1)、又は、モル基準で50%のインジウムと可変比率のヒ素及びアンチモン(0<x<1)とを含む三元混合物を有し得る。
【0031】
図示したナノワイヤ410は、6つの結晶面又はファセット411、412、413、414、415、416を持つVLSナノワイヤである。この例において、超伝導体コンポーネント420、トンネルバリア425、及び導電リード430は、これらのファセットのうちのサブセット上に配置されている。このサブセットは、頂部ファセット411と、ナノワイヤ410の片側の2つのファセット412、413とを有する。超伝導体コンポーネント、トンネルバリア、及び導電リードは、ファセット415及び416を有するナノワイヤの反対側の上に延在していない。底部ファセット414は基板と接触する。超伝導体材料の指向性堆積によって超伝導体コンポーネント420が製造される実装において、ナノワイヤの片側は陰にされて、超伝導体材料を受けないことができる。
【0032】
超伝導体コンポーネント420、トンネルバリア425、及び導電リード430は、異なる厚さを持ち得る。超伝導体コンポーネント420、トンネルバリア425、及び導電リード430の厚さは、異なるファセット間で変わり得る。例えば、ファセット411上の超伝導体コンポーネント420の部分の厚さは、ファセット412上の部分の厚さと異なり得る。
【0033】
超伝導体コンポーネント420は超伝導金属の層を有し、超伝導金属はアルミニウムである。アルミニウムの使用は、自然酸化アルミニウム層の形態のトンネルバリアがその場(インサイチュ)酸化で形成されることを可能にする。超伝導体コンポーネントは、4-10nmの範囲内の厚さを持ち得る。
【0034】
超伝導体コンポーネント420は、更なるコンポーネントに電気的に接続されない超伝導体材料のアイランドとし得る。アイランドの形態の超伝導体コンポーネントを含むデバイスは、トポロジカルキュービットのコンポーネントとして有用であり得る。あるいは、超伝導体コンポーネント420は、電気的なグランドに接続されてもよい。超伝導体コンポーネント420をグランドに接続することは、半導体-超伝導体ハイブリッド構造に対してトンネル分光測定を行うことを可能にするのに有用であり得る。トンネル分光測定では、超伝導体コンポーネント420が接地され、導電リード430に電圧が印加され、導電リードを通る電流が測定される。
【0035】
超伝導体コンポーネント420上にトンネルバリア425が配置される。導電リード430はトンネルバリア425上に配置される。
【0036】
導電リード430は電極であり、典型的に、使用時に常伝導体として機能するように構成される。導電リードは、例えば白金、銀、又は金などの常伝導性の金属から製造され得る。特に、導電リードが半導体-超伝導体ハイブリッド構造の超伝導体コンポーネントに対して垂直に延びる場合には、代わりに超伝導体金属を用いることができ、超伝導体材料は、臨界磁場の異方性を示すことができ、印加される磁場に対するそれらの向きに応じて常伝導挙動又は超伝導挙動のいずれかを示すことができる。
【0037】
動作時に、導電リード430を用いて、半導体-超伝導体ハイブリッド構造に対してトンネル分光測定を行うことができる。この目的のために、導電リード430は増幅器回路に接続され得る。増幅器回路は、デバイスと同じ基板上に配置されてもよいし、異なる基板上に配置されてもよい。接続は、任意の好適構成の伝送線路、コンタクトパッド、ワイヤボンド、及び/又はこれらに類するものとし得る。
【0038】
導電リード430は、半導体コンポーネントのうち、超伝導体コンポーネント420にも覆われている部分の上のみ延在する。これは、以下にて更に説明するように、超伝導体コンポーネントは、ある限度を超えるエネルギーを持つ電子を選択的に遮蔽することができるので、導電リード430が半導体-超伝導体ハイブリッドデバイス内の化学ポテンシャルを乱すことを防止することができる。
【0039】
トンネルバリア425は、半導体-超伝導体ハイブリッド構造と導電リードとの間で電子のトンネリングを可能にする誘電体層である。
【0040】
分かっていることには、超伝導体コンポーネントを介した半導体コンポーネントから導電リードへの電子のトンネリングが可能である。例えばマヨラナゼロモードといった、関心ある状態は、超伝導ギャップより下に存在する孤立状態である。超伝導体コンポーネントは、超伝導ギャップより下の状態を持たない。有用なことに、同時に、超伝導体コンポーネントは、導電リードによって誘起される電界から半導体-超伝導体ハイブリッド構造を遮蔽する。
【0041】
トンネルバリアは誘電体であり、低エネルギー域に状態を持たない。従って、トンネルバリアは、半導体-超伝導体ハイブリッド構造からの信号を妨げない。
【0042】
トポロジカル状態にある電子は、これらの電子の最大コヒーレンス長が超伝導体コンポーネント及びトンネルバリアの厚さよりも大きいので、超伝導体及びトンネルバリアをトンネリングすることができる。バルク超伝導体における最大コヒーレンス長ξは、等式1:
【数1】
に従って計算され、ここで、
【数2】
は、換算プランク定数であり、vはフェルミ速度であり、Δは、このハイブリッド系の誘導超伝導エネルギーギャップである。
【0043】
電子を、例えばナノワイヤといった1次元系、又は例えば2DEGなどの2次元系に制約(constrain)することは、最大コヒーレンス長を変化させる。このような系における最大コヒーレンス長は、等式2:
【数3】
によって近似されることができ、ここで、lは、次元的に制約された系における電子の平均自由行程である。
【0044】
超伝導体コンポーネントとトンネルバリアとの合計厚さは、関心ある励起の最大コヒーレンス長よりも小さいように選択される。実際には、この制約は特に限定するものではない。報告されていることには、取るに足らないサブギャップ状態は最大で約300nmまでのコヒーレンス長を持ち得る(Menard, et al., PRL 124, 036802 (2020))。理論化されていることには、マヨラナゼロモードは、一部のデバイスにおいて、最大で1μmまでの又はそれよりも大きいコヒーレンス長を持つことができる。これらのコヒーレンス長は、超伝導体コンポーネント420及びトンネルバリア425の典型的な厚さよりも実質的に大きい。例として、ハイブリッドデバイスの超伝導体コンポーネントは、概して、15nm以下の厚さを持つ。トンネルバリアは、概して、1nmから4nmの範囲内の厚さを持つ。
【0045】
導電リード430は、超伝導体コンポーネント420によって覆われた半導体コンポーネント410の部分の上にのみ延在する。これは、超伝導体コンポーネントが、導電リードによって誘起される電場からデバイスのハイブリッド部分を遮蔽するので、半導体コンポーネント410内の化学ポテンシャルに対する導電リード430の影響を低減させる。
【0046】
遮蔽効果は、導電リードが、ナノワイヤのバルクセグメント、換言すれば、ナノワイヤの端部にないセグメントとトンネル連通する実装において、特に有利であり得る。遮蔽されていない導電リードがバルクと連通する比較例では、リードがトポロジカル相を破壊することがある。遮蔽されていないリードは、トポロジカルギャップよりも大きい量だけ、ナノワイヤ内の化学ポテンシャルを摂動させ得る。例示として、アルミニウム及びインジウムアンチモンを有するハイブリッド構造における最大トポロジカルギャップは約250μeVである。
【0047】
導電リード430は、超伝導体コンポーネントを備えていないナノワイヤの部分の上には延在しない。
【0048】
静電的にトンネルバリアが画成されるのではないため、トンネル接合におけるポテンシャルがより鋭く、図3に示した理想的なポテンシャルに近づく。これは、疑似MZMの生成を回避することができ、それにより、真のMZMがいっそう容易に検出されることを可能にする。
【0049】
トンネルバリア425は、超伝導体コンポーネント420と一体的に形成される。超伝導体コンポーネント420はアルミニウムを有し、トンネルバリア425は、該アルミニウム上に形成された自然酸化アルミニウム層からなる。このような層は、アルミニウムを酸素ガスに曝露することによって形成され得る。自然酸化膜層の厚さは、酸素ガスの圧力を変化させることによって制御されることができる。例えば、上記少なくとも1つの導電リードの下にあるトンネルバリアの部分は、1nmから2nmの範囲内の厚さt1を持つことができる。
【0050】
堆積の使用なしで、超伝導体コンポーネントに対してトンネルバリアをインサイチュで一体的に形成することによって、より高品質のトンネルバリアを得ることができる。自然酸化アルミニウムからなるトンネルバリアは、例えば蒸着された酸化アルミニウム層などの、堆積された誘電体材料の層を含むバリアよりも良好に機能することが分かっている。酸化アルミニウムをインサイチュで形成することは、誘電体層の汚染を回避し得る。酸化アルミニウム層をインサイチュで形成することは、アルミニウム層の厚さについて、より精密な制御を可能にし得る。自然酸化アルミニウム層は、蒸着された酸化アルミニウム層よりも少ないトラップ電荷を持ち得る。
【0051】
図示したデバイスには様々な変更が為され得る。
【0052】
デバイス例400は、半導体-超伝導体ハイブリッド構造の一端に単一の導電リードを持っている。変形例において、如何なる数のリードが存在してもよい。
【0053】
例えば、一対の導電リードが半導体-超伝導体ハイブリッド構造のそれぞれの端部に設けられてもよい。マヨラナゼロモードがハイブリッド構造の両端にペアで存在し、各端部にリードを設けることは、それ故に、マヨラナゼロモードを検出するのに有用であり得る。
【0054】
代わりに、あるいは加えて、半導体-超伝導体ハイブリッド構造のバルク部分、すなわち、ハイブリッド構造の端部から離れた部分の上に導電リードが配置されてもよい。マヨラナゼロモードが形成されると、トポロジカル相転移が起こり、すなわち、バルク内の超伝導ギャップが閉じ、次いで再び開く。従って、ナノワイヤのバルク上でトンネル分光測定を行えることは、マヨラナゼロモードが検出されることを可能にし得る。
【0055】
一例のデバイス構成は、半導体-超伝導体ハイブリッド構造の各端部の導電リードと、半導体-超伝導体ハイブリッド構造のバルク部分の上に配置された1つ以上の導電リードとを含む。超伝導体コンポーネントがハイブリッド構造を導電リードから遮蔽するように導電リードを配置することにより、導電リードがバルク部分の上に延在する場合であっても、トポロジカル相の破壊が回避され得る。
【0056】
デバイス例は、VLSナノワイヤとして示された半導体ナノワイヤを含んでいる。代わりにSAGナノワイヤが使用されてもよい。
【0057】
ここに記載された原理は、任意のタイプの半導体-超伝導体ハイブリッド系に適用され得る。半導体コンポーネントは必ずナノワイヤの形態であるわけではない。半導体コンポーネントは、代わりに、2次元電子ガス(“2DEG”)又は2次元正孔ガス(“2DHG”)をホストするように構成された半導体ヘテロ構造の形態であってもよい。
【0058】
半導体ヘテロ構造は、下部バリアと上部バリアとの間に配置された量子井戸を有し得る。量子井戸は、下部バリア及び上部バリアの材料とは異なる材料を含む。量子井戸は、下部バリア及び上部バリアの(1つ以上の)材料とは異なる材料を有する。下部バリア層及び上部バリア層の材料は、各々独立して選択されることができる。
【0059】
下部及び上部バリアは、量子井戸内に電荷キャリアをトラップするように機能する。量子井戸層は、下部バリア及び上部バリアの材料と比較して相対的に小さいバンドギャップを持つ半導体材料の層を有し得る。量子井戸を形成するのに有用な例示的な材料は、例えば、Odoh及びNjapba,“A Review of Semiconductor Quantum Well Devices”,Advances in Physics Theories and Applications,vol.46,2015,pp.26-32、及び、S.Kasap,P.Capper(編集),“Springer Handbook of Electronic and Photonic Materials”,DOI 10.1007/978-3-319-48933-9_40に記載されている。
【0060】
半導体-超伝導体ハイブリッドデバイスは、半導体-超伝導体ハイブリッド構造の1つ以上の部分をゲート制御するためのゲートスタックを含んでもよい、静電的なゲート制御は、ハイブリッド構造の挙動をチューニングするのに有用である。如何なる数のゲート電極が含められてもよい。
【0061】
次に、図6を参照して、ここに記載されるデバイスを製造する方法の一例を説明する。図6は、当該方法を概説するフロー図である。
【0062】
基板上にデバイスが製造される。上述のように、基板はウエハを有し得る。基板は、予めパターン形成されていてもよい。換言知れば、ゲート電極、コンタクトパッド、リード、アイソレーション層、及びシャドーウォールから選択される1つ以上のコンポーネントが、半導体-超伝導体ハイブリッドデバイスを形成する前に基板上に設けられてもよい。
【0063】
ブロック601にて、基板上に半導体コンポーネントが準備される。半導体コンポーネントは、様々な方法で実装され得る。半導体コンポーネントを形成するのに用いられるプロセスは適宜に選択され得る。
【0064】
一例のプロセスは、選択エリア成長SAGである。SAGは、基板の上にアモルファスマスクを形成し、次いで、マスクの開口内で基板上に半導体コンポーネントをエピタキシャル成長させることを伴う。SAGは、水平に配向されたナノワイヤを製造するのに有用である。
【0065】
他の一例のプロセスは、蒸気液体固体VLSプロセスである。VLSは、成長基板上のナノワイヤの成長を制御するために液体触媒の液滴を用いる。VLSは、垂直に配向されたナノワイヤを生成する。VLSナノワイヤは、オプションで、成長基板から劈開され、そして、成長基板又は異なる基板のいずれかの上に水平に配置され得る。
【0066】
より更なる可能性は、基板の表面全体にわたって半導体をエピタキシャル成長させることである。斯くして、各々が独立して選択された材料を有する複数の層が構築され得る。このアプローチは、2DEG構造の製造に有用である。
【0067】
ブロック602にて、半導体コンポーネントの上に超伝導体コンポーネントを作製することによって、半導体-超伝導体ハイブリッド構造が形成される。超伝導体コンポーネントは超伝導金属の層を有する。
【0068】
超伝導体コンポーネントを作製することには様々なプロセスが使用され得る。例えば、超伝導体材料が、基板の表面全体にわたってグローバルに堆積され、次いで、リソグラフィ又はリフトオフによってパターニングされ得る。リソグラフィプロセス及びリフトオフプロセスはエッチング工程を含む。
【0069】
エッチングの使用を避けることが一般に望ましい。エッチングは、半導体コンポーネントにダメージを与えたり、及び/又は半導体と超伝導体との間の界面を劣化させたりすることがあり、これらは、例えばMZMなどの励起を誘起又は観察することをより困難にし得るものである。
【0070】
エッチングの使用は、ターゲット領域上に選択的に材料を堆積させることによって回避され得る。これは、シャドーウォールによって制御される指向性堆積の使用によって達成され得る。指向性堆積プロセスは、基板に対して特定の方向からターゲット基板に向けて材料のビームを方向付けることを伴う。シャドーウォールは、ビームの経路を遮るように構成された構造であり、それにより、その材料が堆積されないシャドー領域を生み出す。シャドーウォールの様々な例が、WO2019/099171A2、US10,629,798、US2020/0243742A1、及びWO2021/112856A1に記載されている。シャドー領域の形状は、シャドーウォールの形状及び材料のビームが堆積される方向を選択することによって制御され得る。
【0071】
シャドーウォールが用いられる実装において、シャドーウォールは、半導体コンポーネントを準備する前又は後に基板上に形成され得る。
【0072】
ブロック603にて、超伝導金属を試薬と反応させてトンネルバリアを形成する。この処理は、ブロック602で堆積された超伝導体材料の層の一部を誘電体層に変換する。
【0073】
超伝導金属がアルミニウムである実装において、この処理は、二酸素、オゾン、又はこれらの混合物を有するガスにアルミニウム金属を曝露することを有し得る。ガスの圧力を制御することにより、トンネルバリアの厚さを調整することができる。
【0074】
トンネルバリアを形成することは、基板上に追加の誘電体材料を堆積させることを有しない。トンネルバリアは、超伝導体の一部を誘電体に変換することによって、例えば、アルミニウム層の一部を自然酸化アルミニウム層に変換することによって、インサイチュで形成される。
【0075】
ブロック604にて、トンネルバリア上に少なくとも1つの導電リードが作製される。導電リードは、超伝導体コンポーネントが半導体コンポーネントを当該導電リードから遮蔽するように配置される。換言すれば、導電リードは、超伝導体コンポーネントによって覆われていない半導体コンポーネントの部分の上には延在しない。
【0076】
導電リードを作製するのに用いられるプロセスは適宜に選択され得る。金属電極を作製するための様々な技術が知られている。
【0077】
特に、導電リードは、シャドーウォールの使用によって制御される指向性堆積を用いて作製され得る。有用なことに、超伝導体コンポーネントがシャドーウォールの使用を通じて作製される実装では、同じシャドーウォールを使用して、超伝導体コンポーネントの作製及び導電リードの作製の両方を制御することができる。導電リードが超伝導体コンポーネントのうち選択された部分の上にのみ適用されるように、超伝導体コンポーネント及び導電リードが相異なる角度から堆積されてもよい。
【0078】
製造後、例えば酸化ハフニウムなどの誘電体の保護層がデバイスの上に適用され得る。所望に応じて保護層上にゲート電極が作製され得る。
【0079】
あるいは、ブロック601の処理の前に、ゲート電極及びゲート誘電体が基板に組み込まれてもよい。これは、ボトムゲート型デバイスをもたらす。ゲート電極を予めパターン形成することは、超伝導体コンポーネントを作製した後に行われる製造工程を最小限にする。これは、汚れていない半導体-超伝導体界面を得ることを可能にし得る。高品質の界面は、より確実にマヨラナゼロモードを得ることを可能にし得る。
【0080】
当該方法は、例えば真空チャンバと該真空チャンバに接続された酸化チャンバとを有した、密閉された装置内で実行され得る。酸化チャンバは、真空チャンバのためのロードロックであってもよい。当該方法は、装置からデバイスを取り出すことなく行われることができ、換言すれば、デバイスを開放雰囲気に曝露することなく行われることができる。例えば水蒸気への曝露を避けることは、材料層の表面へのダメージを防止し得る。
【0081】
当該方法は、例えばイオンミリング又はウェットエッチングといったエッチングの使用がないものとし得る。エッチングを避けることは、材料又は材料境界へのダメージを回避し得る。
【0082】
上述したように、超伝導体コンポーネント及び導電リードは、好ましくは、シャドーウォールによって制御される指向性堆積によって作製される。図7に、シャドーウォール700の1つの説明例を示す。
【0083】
シャドーウォール例700は、2つの支持部710a、710bと、張り出し部720とを有する。支持部710a、710bは各々、支柱の形態をしている。張り出し部720は、支柱710a、710bを橋渡しする。張り出し部720は、基板705の領域705aの上に張り出しており、換言すれば、張り出し部720と基板705の表面との間には空間が存在する。
【0084】
支持部の数、形状、相対的な位置、及び寸法は特に限定されない。シャドーウォールが複数の支持部を含む場合、それらの支持部の形状及び寸法は独立に選択され得る。
【0085】
張り出し部を含めることはオプションである。如何なる数の張り出し部が存在してもよく、張り出し部の形状及び寸法は所望のように選択され得る。
【0086】
シャドーウォールの形状及び寸法、シャドーウォールから半導体コンポーネントまでの距離、並びに堆積される材料のビームの方向を選択することにより、異なるパターンの材料を基板上に堆積させることができる。例えば、比較的浅い角度から届く材料は、張り出し部720の下の隙間を通過することができ、張り出し部720によって阻止されることになるもっと急な角度から適用される材料には到達できない基板上の位置に到達し得る。
【0087】
支持部と張り出し部とを持つシャドーウォールは、二段階プロセスによって作製され得る。第1段階は、シャドーウォールの支持部の形状を画成するためのマスクを形成することを含む。第2段階は、マスクを用いてシャドーウォールを形成する。
【0088】
第1段階は、基板上に第1のレジストを形成することを有する。第1のレジストの一部が選択的に露光され、次いで現像されて、チャネルを画成するマスクを形成する。
【0089】
第1のレジストは、電子ビームレジスト、好ましくはポジ型電子ビームレジストとし得る。ポジ型電子ビームレジストは、電子ビームに曝されると現像剤溶媒中でいっそう可溶性になるものである。ポジ型電子ビームレジストの例は、アクリレートポリマー及びコポリマーを含む。例えば、ポジ型電子ビームレジストは、ポリ(メチルメタクリレート)、メチルメタクリレート-メタクリル酸コポリマー、又はクロロメチルメタクリレートとメチルスチレンとのコポリマーとし得る。クロロメチルメタクリレートとメチルスチレンとのコポリマーは、CSARという商品名で市販されている。特に、第1のレジストは、ポリ(メチルメタクリレート)PMMAとすることができる。
【0090】
露光及び現像条件は、選択されたレジストに基づいて適宜に選択され得る。例えば、第1のレジストがポリ(メチルメタクリレート)を有する場合、メチルイソブチルケトンとイソプロピルアルコールとの混合物を有する現像液が用いられ得る。
【0091】
第2段階で、第2のレジストがチャネル内及びマスク上に形成される。第1のレジストと第2のレジストは異なる材料を有する。第2のレジストの露光部分が、これらの部分をシャドーウォールに変換する。
【0092】
第2のレジストは、シャドーウォールが無機材料を有するように選択され得る。第2のレジストは、例えば、水素シルセスキオキサン(“HSQ”)又はメチルシルセスキオキサン(“MSQ”)などのシルセスキオキサンを有することができる。HSQを電子ビームに曝すことは、HSQを酸化シリコンに変換する。
【0093】
第2のレジストは、マスクを攻撃しない現像液を用いて現像されることができる。第1のレジストが例えばポリ(メチルメタクリレート)などのアクリレートポリマー又はコポリマーを有する例では、第2のレジスト用の現像液は塩基を有し得る。該塩基は、例えばテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(“TMAH”)、水酸化カリウム、又は水酸化ナトリウムといった塩基を有し得る。様々な現像液が市販されている。例示的なTMAH系の現像液は、MF-321及びMF-322という商品名で入手可能である。
【0094】
そして、マスクを除去してシャドーウォールを生じさせ得る。マスクを除去することは、第1のレジストを剥離することを有し得る。シャドーウォールが完全なまま残る限り、レジスト剥離のための如何なる適切な技術が用いられてもよい。例は、臨界点乾燥と組み合わせての溶媒の使用、又は酸素プラズマの使用を含む。第1のレジストとしてポリ(メチルメタクリレート)が用いられる実装において、溶媒は例えばアセトンとし得る。
【0095】
ここに記載されるタイプのデバイスを製造するのに有用なシャドーウォールの例示的な配置を、図8図10に示す。図8図10は、半導体ナノワイヤに対して配置されたシャドーウォールを示す概略平面図である。理解されるように、図8図10は模式的である。図示したシャドーウォールの様々な部分の形状、サイズ、及び位置は、各々独立に変更され得る。
【0096】
図8は、アイランドの形態の超伝導体コンポーネントを持つとともに一対のリードを半導体-超伝導体ハイブリッド構造のそれぞれの端部に含むデバイスを製造するのに有用なシャドーウォールの配置例を示している。図8は、ナノワイヤ805に対して配置されたシャドーウォール812、814、816、822、824を示している。
【0097】
この例におけるシャドーウォールは、左支持部812、中央支持部814、及び右支持部816を含むユニタリ(単一)構造である。左支持部812及び右支持部816は、それぞれの張り出し部822、824によって中央支持部814に接続される。支持部同士の間に空間832、834が設けられる。
【0098】
シャドーウォールの各部分とナノワイヤとの間の距離が独立して選択され得る。例えば、左支持部814とナノワイヤ805との間の距離が、張り出し部822とナノワイヤ805との間の距離と異なっていてもよい。
【0099】
使用時に、ハイブリッド構造の超伝導体コンポーネントを作製するために、シャドーウォールがナノワイヤの前の領域は陰にするが、ナノワイヤ805の前面805aは陰にしないように選択された第1の角度からナノワイヤ805に向けて、超伝導体材料が方向付けられる。ナノワイヤは“自己シャドーイング”であり、ナノワイヤの前側805aがナノワイヤの裏側805bを影にし、その結果、図5に示したように、ナノワイヤの複数のファセットのうちのサブセットに超伝導体材料が到達する。
【0100】
理解されるように、ナノワイヤは、シャドーウォールを形成する前又は後のいずれに準備されてもよい。
【0101】
導電リードを作製するために、材料のビームが、第1の角度よりも浅い第2の角度からナノワイヤ805に向けて方向付けられる。支持部812、814、816がビームを阻止するが、ビームは部分822、824の下を通ることができ、それにより、ナノワイヤ上に堆積して導電リードを形成する。
【0102】
材料は、支持部812と814との間、及び814と816との間の空間832、834内にも堆積される。これらの領域に堆積された材料は、リードを更なるコンポーネントに接続するための伝送線路として作用することができる。超伝導体コンポーネントの場合に、張り出し部822及び824は、ナノワイヤ805から空間832、834まで延在する超伝導体の連続したストリップの形成を防止する影を投じる。リードを堆積させる前に超伝導体コンポーネントの上にトンネルバリアが形成されるので、リードは超伝導体コンポーネントに電気的に接続しない。従って、この配置のシャドーウォールを用いて、更なるコンポーネントに電気的に接続されない超伝導アイランドがナノワイヤ上に形成され得る。超伝導アイランドを持つデバイスは、トポロジカルキュービットを構築するのに有用である。
【0103】
図9は、代わりのシャドーウォールの配置を示している。図9の例は、中央シャドーウォール914の下を延在する金属コンタクト940を含むことによって、図8の例とは異なる。このようなコンタクト940は、超伝導体コンポーネントの中央をグランドに接続するのに有用である。超伝導体コンポーネントがグランドに接続されるデバイスは、非局所的なコンダクタンス測定を行うのに有用である。
【0104】
図8の例と同様に、図9の例は、左支持部912、中央支持部914、及び右支持部916を含んだユニタリ構造であるシャドーウォールを含んでいる。左支持部912及び右支持部916は、それぞれの張り出し部922、924によって中央支持部914に接続される。支持部同士の間に空間932、934が設けられる。
【0105】
基板上に金属コンタクト940が設けられる。該コンタクトは、半導体コンポーネントを作製する前に基板上に形成され得る。これは、半導体-超伝導体ハイブリッド構造へのダメージの危険を冒すことなく、金属コンタクト940をパターン形成するためのエッチングの使用を可能にする。該金属コンタクトは、シャドーウォールを形成する前に作製され、中央支持部914の下を延在する。
【0106】
シャドーウォールの配置は、半導体-超伝導体ハイブリッド構造の所望の構成及びリードの配置に応じて適宜に変更され得る。図示した例は、単一の半導体-超伝導体ハイブリッド構造を含んでいるが、複数のこのような構造を組み込んだデバイスも企図される。例えば、トポロジカルキュービットデバイスは、ネットワークに配置された複数のハイブリッド構造を含み得る。
【0107】
シャドーウォールの更なる配置例が図10に示されている。ナノワイヤ1005の位置も示されている。図10の例は、トポロジカルセグメントの各端部の導電リードと、トポロジカルセグメントのバルクと連通する導電リードとを持つデバイスを製造するのに有用である。
【0108】
この例のシャドーウォールは、4つの支持部1012、1014、1016、1018を含んでいる。隣接するシャドー支持部のペアが張り出し部1022、1024、1026によって接続される。また、導電リードを収容するために、隣接する支持部のペアの間に空間832、834、836も設けられる。
【0109】
次に図11を参照して、ここで提供されるデバイスを動作させる方法を説明する。図11は、当該方法を概説するフロー図を示している。
【0110】
ブロック1101にて、超伝導体コンポーネントが超伝導性を示すように、超伝導体コンポーネントの臨界温度より低い動作温度までデバイスが冷却される。典型的に、デバイスは1Kより低い温度で動作される。例えば希釈冷凍機といった様々な好適な極低温システムが記載されている。動作中、デバイスは該動作温度に維持される。
【0111】
ブロック1102にて、半導体-超伝導体ハイブリッド構造に磁場が印加される。磁場を印加することは、デバイスにおけるスピン縮退を解除する。換言すれば、磁場なしでは同じエネルギーを持つ異なるスピン状態が、異なるエネルギーレベルをとるようにされる。
【0112】
半導体コンポーネントがナノワイヤの形態である実装において、磁場は概して、ナノワイヤに平行に印加される成分を含む。磁場は、ナノワイヤに平行に1Tから2Tの程度の磁場強度を持ち得る。少なくとも1つの導電リードが超伝導体材料で形成され、ナノワイヤに対して垂直な方向に延在する実装において、磁場は、導電リードを常伝導体として機能させ得る。
【0113】
磁場は、典型的に、外部の電磁石を用いて印加される。代わりに、あるいは加えて、デバイスは、内部で磁場を印加するための強磁性絶縁体コンポーネントを含んでいてもよい。強磁性絶縁体コンポーネントは、超伝導体コンポーネントと半導体コンポーネントとの間に配置され得る。強磁性絶縁体コンポーネントを形成するのに有用な材料の例は、EuS、EuO、GdN、YFe12、BiFe12、YFeO、Fe、Fe、SrCrReO、CrBr/CrI、及びYTiOを含む。半導体-超伝導体ハイブリッドデバイスのための強磁性絶縁体コンポーネントは、例えば、WO2021/110274A1に記載されている。
【0114】
ブロック1103にて、半導体-超伝導体ハイブリッド構造が静電的にゲート制御される。静電的なゲート制御は、半導体コンポーネント内の利用可能な電荷キャリアの数を変更することができ、デバイスの挙動をチューニングすることができる。デバイスの異なる部分を、所望に応じて異なる静電場にさらしてもよい。静電場は、適切なゲート電極を用いて印加され得る。
【0115】
ブロック1104にて、少なくとも1つの導電リードを通るトンネル電流が測定される。この動作は、少なくとも1つの導電リードを通る交流電流の周波数、振幅、及び/又は位相を測定することを含み得る。導電リードに接続された増幅器回路を用いて、信号の強度を増大させることができる。トンネル電流の測定は、例えば、デバイスがトポロジカルキュービットのコンポーネントである実装におけるデータの読み出しに有用であり得る。
【0116】
デバイスが2つ以上の導電リードを含む実装において、測定は、それらの導電リードのうちの任意数において行われ得る。例えば、半導体-超伝導体ハイブリッド構造のそれぞれの端部に配置された一対の導電リードを通るトンネル電流を測定することにより、半導体-超伝導体ハイブリッド構造中の非局所的なコンダクタンスの測定が可能になり得る。
【0117】
測定は、デバイスが動作温度にある間、且つ磁場及び静電場を印加している間に行われる。磁場及び/又は静電場の強度及び/又は方向は様々とされ得る。
【0118】
理解されることには、以上の実施形態は単なる例として説明されている。
【0119】
より一般的には、ここに開示される一態様によれば、デバイスが提供され、当該デバイスは、半導体コンポーネントと超伝導体コンポーネントとを有する半導体-超伝導体ハイブリッド構造であり、超伝導体コンポーネントはアルミニウムの層を有する、半導体-超伝導体ハイブリッド構造と、半導体-超伝導体ハイブリッド構造とトンネル連通する少なくとも1つの導電リードと、半導体-超伝導体ハイブリッド構造と前記少なくとも1つの導電リードとの間に配置されたトンネルバリアと、を有する。導電リードは、超伝導体コンポーネントが半導体コンポーネントを導電リードから遮蔽するように、超伝導体コンポーネントの上に配置される。トンネルバリアは、超伝導体コンポーネントと前記少なくとも1つの導電リードとの間に配置される。トンネルバリアは、超伝導体コンポーネントに一体的に形成された自然酸化アルミニウム層からなる。超伝導体コンポーネントが導電リードと半導体コンポーネントとの間に配置されるので、超伝導体コンポーネントが高エネルギー電子を遮断することができ、それにより、低エネルギー電子(例えば、MZMに対応するもの)がいっそう容易に検出されることを可能にする。超伝導体コンポーネントに一体にトンネルバリアを形成することは、導電リードと半導体-超伝導体ハイブリッド構造との間に高品質の誘電体バリアを提供する。
例えば、例えば蒸着されるといった堆積された誘電体層を更に含むデバイスと比較して少ない汚染のみが存在し得る。
【0120】
トンネルバリアは、アルミニウムの自然酸化膜からなる。トンネルバリアは、故に、超伝導体コンポーネントと一体的に形成される。自然酸化膜を用いることは、堆積された層とは対照的に、トンネルバリアの汚染を回避することができ、それにより、改善された誘電特性を可能にし得る。
【0121】
自然酸化膜は、アルミニウムを酸化ガス、特に、二酸素(O)、オゾン(O)、又はこれらの混合物、に曝露することによって都合よく形成されることができる。自然酸化膜の厚さは、酸化ガスの圧力を選択することによって制御されることができる。
【0122】
トンネルバリアは、1nmから4nm、オプションで1nmから2nmの範囲内の厚さを持ち得る。超伝導体コンポーネントは、6nmから10nmの範囲内の厚さを持ち得る。半導体-超伝導体ハイブリッド系における関心ある励起のコヒーレンス長は、典型的に数百ナノメートルのオーダーであり、電子はこれらの厚さの層を容易にトンネリングすることができる。
【0123】
超伝導体コンポーネントはアルミニウムの層を有する。アルミニウムは、半導体材料、特に式1の材料において超伝導性を誘起するのに特に有効であることが分かっている。さらに、酸化アルミニウムは、アルミニウム層上に容易に形成され得るとともに、良好な化学的及び物理的安定性と、良好な誘電特性とを持つ。
【0124】
典型的に、トンネルバリアは、超伝導体コンポーネントのエッジを越えて延在しない。製造中に、トンネルバリアは、超伝導体コンポーネントの部分的な厚さを誘電体に変換することによって形成される。その結果、トンネルバリアは、典型的に、超伝導体コンポーネントのエッジを越えて延在しない。
【0125】
一般に、上記少なくとも1つの導電リードは、超伝導体コンポーネント及びトンネルバリアによって覆われていない半導体コンポーネントのいかなる部分の上にも延在しない。これは、超伝導体コンポーネントによる上記少なくとも1つの導電リードからの半導体コンポーネントのより効果的な遮蔽を可能にし得る。
【0126】
上記少なくとも1つの導電リードは常伝導性の金属を有し得る。あるいは、上記少なくとも1つの導電リードは超伝導金属で形成されてもよい。そのような実装において、上記少なくとも1つの導電リードは、上記少なくとも1つの導電リードが超伝導体コンポーネントの臨界磁場よりも低い臨界磁場を持つように配向され得る。上記少なくとも1つの導電リードは、一般に、半導体材料、より詳細には、静電的にゲート制御される半導体材料を有しない。
【0127】
半導体コンポーネントはナノワイヤの形態とし得る。ナノワイヤは、80-100nmの範囲内の直径と、10-15μmの範囲内の長さとを持ち得る。ナノワイヤは複数のファセットを持ち得る。超伝導体コンポーネントは、複数のファセットのうちのサブセットの上に配置され得る。例えば、製造中に、超伝導体材料は、ナノワイヤの第1の露出された側から堆積されることができ、ナノワイヤは、ナノワイヤの第2の陰になった側に材料が堆積されないように自己シャドーイングであることができる。そのような実装において、上記サブセットは、露出された側のファセットである。
【0128】
あるいは、半導体コンポーネントは、2次元電子ガス又は2次元正孔ガスをホストするように構成された半導体ヘテロ構造であってもよい。そのような実装において、デバイスは更に、半導体ヘテロ構造内に活性チャネルを画成するように構成された1つ以上のゲート電極を有することができ、超伝導体コンポーネントは、活性チャネルの上に配置されることができる。活性チャネルはナノワイヤの形態であることができる。
【0129】
当該デバイスは、導電リードのペアを含むことができ、ペアの各導電リードが、半導体-超伝導体ハイブリッド構造のそれぞれの端部と連通する。MZMがペアで存在し、ペアの各MZMがナノワイヤのそれぞれの端部にあるので、ナノワイヤの端部にリードを配置することは、MZMの検出に有用であり得る。
【0130】
超伝導体コンポーネントはアイランドとし得る。そのような実装において、超伝導体コンポーネントは、如何なる更なるコンポーネントにも導電接続されない。超伝導アイランドを持つデバイスは、キュービットデバイスのコンポーネントとして有用であり得る。
【0131】
代わりに、超伝導体コンポーネントは電気的に接地されてもよい。超伝導体コンポーネントを接地することは、導電リードを用いて半導体-超伝導体ハイブリッド構造体に対してトンネル分光測定を行うことを可能にし得る。
【0132】
当該デバイスは、半導体-超伝導体ハイブリッド構造のバルクセグメントとトンネル連通する導電リードを含んでもよい。超伝導体コンポーネントが、該導電リードによって誘起される電場からハイブリッド構造を遮蔽する。これは、トポロジカル相を壊すことなく、半導体-超伝導体ハイブリッド構造のバルクセグメント上に導電リードを配置することを可能にし得る。
【0133】
当該デバイスのバルク、すなわち、当該デバイスの端部から離れた領域上での測定は、MZMの存在を確認するのに有用であり得る。何故なら、バルクギャップが閉じて再び開くことを伴うトポロジカル相転移は、MZMが形成されるときに起こるはずだからである。バルクと連通する如何なる数の導電リードが存在してもよい。
【0134】
半導体-超伝導体ハイブリッド構造及び上記少なくとも1つの導電リードは、基板上に配置され得る。基板上に少なくとも1つのシャドーウォールが更に配置され得る。該少なくとも1つのシャドーウォールは、支持部と張り出し部とを含み得る。そのような実装において、張り出し部は、基板の上に張り出し、支持部によって支持される。シャドーウォールは、エッチングの使用を必要とせずに、例えば超伝導体コンポーネント及び導電リードといった金属コンポーネントの製造を可能にするのに有用である。エッチングプロセスは、半導体コンポーネント、及び/又は半導体コンポーネントと超伝導体コンポーネントとの間の界面を、損傷又は劣化させ得るものであり、製造中のエッチングの使用を回避する又は少なくとも最小限に抑えることが望ましい。
【0135】
当該デバイスはボトムゲート型であることができる。半導体コンポーネント及び超伝導体コンポーネントが形成される前に、基板上にボトムゲート及びゲート誘電体が形成され得る。これは、半導体-超伝導体ハイブリッド界面を形成した後に行われる製造工程の数を最小限にすることができ、それにより、該界面の劣化を回避し得る。
【0136】
他の一態様において、本開示は、デバイスを製造する方法を提供する。当該方法は、基板上に半導体コンポーネントを準備し、半導体コンポーネントの上に超伝導体コンポーネントを作製することによって半導体-超伝導体ハイブリッド構造を形成し、超伝導体コンポーネントはアルミニウムの層を有し、アルミニウムを部分的に酸化して、超伝導体コンポーネント上の自然酸化アルミニウムからなるトンネルバリアを形成し、トンネルバリア上に少なくとも1つの導電リードを作製する、ことを有する。トンネルバリアをインサイチュで形成することにより、堆積された誘電体材料をトンネルバリアが含む方法と比較して、より高品質の誘電体が得られ得る。
【0137】
トンネルバリアを形成することは、誘電体材料の層の堆積を含まない。トンネルバリアは超伝導金属の化合物からなる。
【0138】
当該方法は、上述のデバイスを製造するために用いられることができる。
【0139】
基板は、予めパターン形成されることができ、金属コンポーネントと、該金属コンポーネントを覆う誘電体層とを含んでいてもよい。特に、基板は、予めパターン形成されたゲート電極を含み得る。予めパターン形成されたコンポーネントを設けることは、半導体-超伝導体界面を製造した後に行われる製造処理の数を最小限にすることを可能にし得る。
【0140】
トンネルバリアはアルミニウムの自然酸化膜からなる。アルミニウムを部分的に酸化することは、二酸素、オゾン、又はこれらの混合物を有するガスにアルミニウムを曝露することを有し得る。酸化物層の厚さは、ガスの圧力を選択することによって制御されることができる。
【0141】
当該方法は更に、超伝導体コンポーネントを作製する前に、基板上に少なくとも1つのシャドーウォールを作製することを有し得る。超伝導体コンポーネントを作製することは、超伝導金属が堆積されないシャドー領域を上記少なくとも1つのシャドーウォールが画成するように選択された第1の方向から、超伝導金属を指向的に堆積させることを有し得る。シャドーウォールは、例えば金属層といった材料の制御された堆積を可能にし、エッチングの使用なしにデバイスを製造することを可能にし得る。
【0142】
上記少なくとも1つのシャドーウォールは、支持部及び張り出し部を含み得る。そのような実装において、張り出し部は、基板の上に張り出し、支持部によって支持される。上記少なくとも1つの導電リードを作製することは、第1の方向とは異なる第2の方向から導電材料を指向的に堆積させることを有することができ、第2の方向は、上記少なくとも1つのシャドーウォールが導電材料の堆積を制御するように選択される。張り出し部を有するシャドーウォールを設けることにより、超伝導体コンポーネント及び上記少なくとも1つの導電リードの両方の堆積を単一のシャドーウォールを用いて制御し得る。
【0143】
超伝導体コンポーネント、トンネルバリア、及び上記少なくとも1つの導電リードは、エッチングの使用なしで作製され得る。例えばイオンミリングなどのエッチングプロセスは、デバイスのコンポーネントを損傷又は劣化させてしまい得る。
【0144】
当該方法は、密閉された装置内で実行され得る。例えば、半導体コンポーネント及び超伝導体コンポーネントは、真空チャンバ内で作製されることができ、酸化は、該真空チャンバに接続されたロードロック内で行われることができる。そのような実装において、基板は好ましくは、デバイスの製造が完了するまで装置から取り出されない。これは、さもなければコンポーネントの表面を損傷又は劣化させ得るものである開放雰囲気へのデバイスの暴露を回避する。
【0145】
より更なる一態様は、ここに規定されるデバイスを動作させる方法を提供する。当該方法は、超伝導体コンポーネントが超伝導性を示すように、超伝導体コンポーネントの臨界温度よりも低い温度までデバイスを冷却し、半導体-超伝導体ハイブリッド構造に磁場を印加し、半導体-超伝導体ハイブリッド構造を静電的にゲート制御し、少なくとも1つの導電リードを通るトンネル電流を測定する、ことを有する。
【0146】
当該方法は、例えば、トポロジカルキュービットの状態を読み取る状況において有用であり得る。
【0147】
ここでの開示を所与として、当業者には、開示された技術の他の変形又はユースケースが明らかになり得る。本開示の範囲は、記載された実施形態によって限定されるものではなく、添付の請求項によってのみ限定される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
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図10
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【国際調査報告】