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特表2024-532083眼内レンズの自動移送のための方法及び装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-05
(54)【発明の名称】眼内レンズの自動移送のための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/16 20060101AFI20240829BHJP
   B65G 47/91 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
A61F2/16
B65G47/91 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024506493
(86)(22)【出願日】2022-08-10
(85)【翻訳文提出日】2024-02-01
(86)【国際出願番号】 IB2022057459
(87)【国際公開番号】W WO2023021374
(87)【国際公開日】2023-02-23
(31)【優先権主張番号】63/233,420
(32)【優先日】2021-08-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】319008904
【氏名又は名称】アルコン インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】ダービト ヒミョン キム
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ ルートビヒ
(72)【発明者】
【氏名】ゲーアハルト クロコウ
【テーマコード(参考)】
3F072
4C097
【Fターム(参考)】
3F072AA28
3F072KD03
3F072KD27
3F072KE05
4C097AA25
4C097BB01
4C097SA10
(57)【要約】
光学レンズ本体(10)と、光学レンズ本体(10)の周縁に取り付けられて光学レンズ本体(10)の周縁から外方に延びる2つのハプティック(11)とを含む眼内レンズ(1)の自動移送のための方法が開示される。方法は、開始位置において眼内レンズ(1)をピックアップするステップと、眼内レンズ(1)を目的位置まで移動させるステップと、目的位置において眼内レンズ(1)を放出するステップとを含み、開始位置において眼内レンズ(1)をピックアップすることは、眼内レンズ(1)のハプティック(11)においてのみ眼内レンズ(1)を把持することを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学レンズ本体(10)と、前記光学レンズ本体(10)の周縁に取り付けられて前記光学レンズ本体(10)の前記周縁から外方に延びる2つのハプティック(11)とを含む眼内レンズ(1)の自動移送のための方法であって、前記方法は、
開始位置において前記眼内レンズ(1)をピックアップするステップと、
前記眼内レンズ(1)を目的位置まで移動させるステップと、
前記目的位置において前記眼内レンズ(1)を放出するステップと、を含み、
前記開始位置において前記眼内レンズ(1)をピックアップすることは、
前記眼内レンズ(1)の前記ハプティック(11)においてのみ前記眼内レンズ(1)を把持すること、
を含む、方法。
【請求項2】
前記ハプティック(11)においてのみ前記眼内レンズ(1)を把持することは、把持具の吸引ポート(730;860、870)を前記眼内レンズ(1)の前記ハプティック(11)に隣接して位置決めして前記吸引ポート(730;860、870)に真空を加えることによって前記眼内レンズ(1)の前記ハプティック(11)においてのみ前記眼内レンズ(1)を前記把持具に取り付けるための前記吸引ポート(730;860、870)を含む、前記把持具(7;8)を使用して行われ、前記目的位置において前記把持具から前記眼内レンズ(1)を放出することは、前記吸引ポート(730;860、870)に過圧を加えて前記吸引ポート(730;860、870)から前記眼内レンズ(1)の前記ハプティック(11)を取り外すことによって行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記把持具(7;8)の前記吸引ポート(730;860、870)は、前記把持具の遠位端に配置され且つ前記把持具から離れて遠位方向に突出する2つの吸引ポート(730;860、870)であって、前記2つの吸引ポート(730;860、870)の各々は、その遠位端に、レンズ取付面(732;864)によって取り囲まれた吸引開口(731;861、871)を含む、前記2つの吸引ポート(730;860、870)を含み、前記方法は、
前記2つの吸引ポートの一方の吸引ポート(730;860)の前記吸引開口(731;861)が、それに隣接して配置された前記2つのハプティック(11)の一方のハプティック(11)の一部によって覆われるように、前記一方の吸引ポート(730;860)の前記遠位端を前記眼内レンズ(1)の前記2つのハプティック(11)の前記一方に隣接して位置決めすることと、
前記2つの吸引ポートの他方の吸引ポート(730;870)の前記吸引開口(730;871)が前記2つのハプティック(11)の他方のハプティック(11)の一部によって覆われるように、前記他方の吸引ポート(730;870)を前記眼内レンズ(1)の前記2つのハプティック(11)の前記他方に隣接して位置決めすることと、
前記2つの吸引ポートの前記吸引開口(731;861、871)に前記真空を加えて、前記2つのハプティック(11)の前記一方を前記一方の吸引ポート(730;860)の前記レンズ取付面(732、864)に及び前記2つのハプティック(11)の前記他方を前記他方の吸引ポート(730;870)の前記レンズ取付面(732;874)に取り付けることと、
を更に含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記把持具(7)は、前記把持具(7)の前記遠位端に固定して配置された前記2つの吸引ポート(730)を有する把持具である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記把持具(8)は、前記把持具の前記遠位端に回転可能に配置された前記2つの吸引ポート(860、870)を有する把持具であり、前記2つの吸引ポート(860)の各々は、前記2つの吸引ポート(860、870)の前記レンズ取付面(864、874)によって画定された平面に対して垂直なそれぞれの所定の回転軸線を中心に回転可能に配置される、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記方法は、
前記2つの吸引ポート(860、870)の前記吸引開口(861、871)に前記真空を加える前に、前記眼内レンズ(1)の前記2つのハプティック(11)の各々の実際の回転向きを決定することと、
前記一方の吸引ポート(860)の前記回転向きが前記2つのハプティック(11)の前記一方のハプティック(11)の前記決定された実際の回転向きと一致し、前記他方の吸引ポート(870)の前記回転向きが前記2つのハプティック(11)の前記他方のハプティック(11)の前記決定された実際の回転向きと一致するまで、前記2つの吸引ポート(860、870)の各々を前記それぞれの所定の回転軸線を中心に回転させることと、その後、
前記2つの吸引ポートの前記吸引開口(861、871)に前記真空を加えて、前記2つのハプティック(11)の前記一方を前記一方の吸引ポート(860)の前記レンズ取付面(864)に及び前記2つのハプティック(11)の前記他方を前記他方の吸引ポート(870)の前記レンズ取付面(874)に取り付けることと、
を更に含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記方法は、
前記眼内レンズ(1)の前記2つのハプティック(11)の前記一方のハプティック(11)又は前記2つのハプティック(11)の前記他方のハプティック(11)の前記実際の回転向きが、それぞれの所定の回転向きから逸脱した場合、
前記2つのハプティック(11)の各々が前記所定の回転向きを有するまで、前記それぞれの所定の回転軸線を中心に前記一方の吸引ポート(860)の前記レンズ取付面(864)に取り付けられた前記2つのハプティック(11)の前記一方と共に前記一方の吸引ポート(860)を、及び/又は前記他方の吸引ポート(870)の前記レンズ取付面(874)に取り付けられた前記2つのハプティック(11)の前記他方と共に前記他方の吸引ポート(870)を回転させることと、
前記目的位置において、前記2つのハプティック(11)の各々が前記所定の回転向きを有する状態で前記2つの吸引ポート(860、870)の前記吸引開口(861、871)に前記過圧を加えることと、
を更に含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
周縁を有する光学レンズ本体(10)と、前記光学レンズ本体(10)の前記周縁に取り付けられて前記光学レンズ本体(10)の前記周縁から外方に延びる2つのハプティック(11)とを含む眼内レンズ(1)の自動移送のための装置(5)であって、前記装置は、把持具(7;8)であって、
真空又は過圧の供給のための圧力供給コネクタ(72;82)と、
前記把持具の遠位端に配置され、前記把持具から離れて遠位方向に突出する2つの吸引ポート(730;860、870)であって、前記2つの吸引ポート(730;860、870)の各々は、その遠位端に、レンズ取付面(732;864、874)によって取り囲まれた吸引開口(731;861、871)を含む、2つの吸引ポート(730;860、870)と、
2つの別個の流体流路(712、734、735;866、868)であって、前記2つの別個の流体流路の各々は、前記2つの吸引ポートのそれぞれの吸引ポートを真空又は過圧の供給のための前記圧力供給コネクタ(72;82)と流体的に接続して、前記圧力供給コネクタ(72;82)と前記吸引ポート(730;860、870)の前記吸引開口(731;861、871)との間に2つの別個の流体接続を形成する、前記2つの別個の流体流路(712、734、735;866、868)と、
を含む、前記把持具(7;8)を含み、
前記2つの吸引ポートは、前記眼内レンズの前記ハプティック(11)を前記吸引ポート(730;860、870)の前記レンズ取付面(732;864、874)に取り付けることによって前記ハプティック(11)においてのみ前記眼内レンズ(1)を把持するための、及び前記レンズ取付面(732;864、874)から前記眼内レンズ(1)の前記ハプティック(11)を取り外すことによって前記眼内レンズ(1)を放出するための、前記レンズ取付面(732;864、874)によって画定された平面において測定された5mm~17mmの範囲の距離(d;e)だけ互いに間隔をおいて配置される、装置。
【請求項9】
前記2つの吸引ポート(730)は、前記把持具(7)の前記遠位端に固定して配置される、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記2つの吸引ポート(860、870)は、前記把持具(8)の前記遠位端に回転可能に配置され、前記2つの吸引ポート(860、870)の各々は、前記レンズ取付面(864、874)によって画定された前記平面に垂直なそれぞれの所定の回転軸線を中心に回転可能に配置される、請求項8に記載の装置。
【請求項11】
前記把持具は、2つの独立した回転モータ、各々が回転駆動シャフト(840、850)を有する第1の回転モータ(84)及び第2の回転モータ(5)を更に含み、前記第1の回転モータ(84)の回転駆動シャフト(840)は、第1の把持具フィンガ(86)の遠位端に配置された、2つの吸引ポートの一方(860)を有する第1の把持具フィンガ(86)に、耐トルク性コネクタによって接続され、第2の回転モータ(5)の回転駆動シャフト(850)は、第2の把持具フィンガ(87)の遠位端に配置された、2つの吸引ポートの他方(870)を有する第2の把持具フィンガ(87)に、更なる耐トルク性コネクタによって接続される、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記耐トルク性コネクタ及び前記更なる耐トルク性コネクタの各々は、永久磁石(841、851)と、感磁性材料で作られた2つのピン(842、843、852、853)とを含む磁気クラッチを含み、前記永久磁石(841、851)は、トルクに耐えるように前記回転駆動シャフト(840、850)の遠位端に装着され、前記第1の把持具フィンガ又は第2の把持具フィンガ(86、87)のそれぞれの第1の把持具フィンガ又は第2の把持具フィンガ(86、87)の近位端の方に面し、前記2つのピン(842、843、852、853)は、前記第1の把持具フィンガ又は第2の把持具フィンガ(86、87)の前記それぞれの第1の把持具フィンガ又は第2の把持具フィンガ(86、87)の前記近位端に配置され、前記永久磁石の(841、851)の方に面し、前記2つのピン(842、843、852、853)の前記遠位端は、前記第1の把持具フィンガ又は第2の把持具フィンガ(86、87)の前記それぞれの第1の把持具フィンガ又は第2の把持具フィンガ(86、87)に固定して接続され、前記2つのピン(842、843、852、853)の前記近位端は、前記永久磁石(841、851)に磁気的に結合される、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記第1の把持具フィンガ(86)は、前記一方の吸引ポート(860)のすぐ近位に配置された当接フランジ(869)を含み、前記第2の把持具フィンガ(87)は、前記他方の吸引ポート(870)のすぐ近位に配置された更なる当接フランジ(879)を含み、前記把持具(8)は、その遠位端に、前記把持具の両側で前記把持具の前記遠位端から遠位方向に突出する第1の当接突起及び第2の当接突起(813、814)を含み、前記第1の当接突起(813)は、前記第1の把持具フィンガ(86)の前記当接フランジ(869)が前記第1の当接突起(813)に当接したときに前記一方の吸引ポート(860)の所定の回転向きを定めるための、前記当接フランジ(869)用のストッパを形成し、前記第2の当接突起(814)は、前記第2の把持具フィンガ(87)の前記更なる当接フランジ(879)が前記第2の当接突起(814)に当接したときに前記他方の吸引ポート(870)の所定の回転向きを定めるための、前記更なる当接フランジ(879)用のストッパを形成する、請求項11又は12に記載の装置。
【請求項14】
レンズキャリア(2)によって支持された眼内レンズ(1)を照明するための照明源(51)と、前記レンズキャリア(2)によって支持された前記眼内レンズの場所及び前記眼内レンズ(1)の前記ハプティック(11)の回転向きを決定するために、前記レンズキャリア(2)によって支持された前記照明された眼内レンズ(1)の画像を撮像するためのカメラ(52)とを更に含み、前記2つの吸引ポート(730;860、870)の前記回転向きが前記眼内レンズ(1)の前記2つのハプティック(11)の前記決定された実際の回転向きと一致するように、前記2つの吸引ポート(730;860、870)を備えた前記把持具(7、8)を前記2つの吸引ポート(730;860、870)が前記眼内レンズ(1)の前記ハプティック(11)に隣接して配置される場所まで移動させるための、前記カメラ(52)と前記把持具(7、8)とに結合された制御ユニットを更に含む、請求項8~13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
異なる種類のレンズキャリア(2、3)を支持プレート(50)に装着するための複数の装着位置(500)を含む前記支持プレート(50)を更に含み、前記装着位置(500)に装着された異なる種類の少なくとも2つの異なるレンズキャリア(2、3)を更に含み、前記支持プレート(50)、前記装着位置(500)、及び前記異なる種類の前記少なくとも2つのレンズキャリア(2、3)は、前記レンズキャリア(2、3)上に配置された眼内レンズが、レンズキャリアの前記種類にかかわらず、前記吸引ポート(730;860、870)の前記レンズ取付面(732;864、874)によって画定された前記平面に平行な同じ平面内に配置されるように構成される、請求項14に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
本出願は、発明者らがDavid Heemyung、Christoph Ludwig、及びGerhard Klokowである、2021年8月16日に出願された、「METHOD AND APPARATUS FOR THE AUTOMATED TRANSFER OF AN INTRAOCULAR LENS」という名称の米国仮特許出願第63/233,420号明細書の優先権の利益を主張するものであり、その全体が参照により、あたかも本明細書に十分且つ完全に記載されているかのように本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、眼内レンズ(IOL)を取り扱う分野に関し、特に、開始位置から目的位置への眼内レンズの自動移送のための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0003】
眼内レンズは、その名前が示すように、患者の眼内に移植され、非常に多くの場合、眼内レンズは、(例えば、白内障の治療において)眼の天然の水晶体に代わるものとして使用される。眼内レンズは、典型的には、光学レンズ本体(所要の屈折力を提供する)と、光学レンズ本体の周縁に取り付けられてレンズ本体の周縁から外方に延びる2つのハプティックとを含む。ハプティックの目的は、光学レンズ本体を含む眼内レンズを患者の眼の水晶体嚢内に適切に位置決めすることである。それゆえ、明らかに、患者の眼内に移植された時点で、所要の屈折力を提供する眼内レンズの光学レンズ本体は、患者の視力に悪影響を及ぼし得る欠陥の全くないものでなければならないので、眼内レンズは、製造及び取り扱い中に可能な細心の注意を払って扱わなければならない繊細な医療用品である。
【0004】
製造及びその後の包装中に、眼内レンズを異なるステーション/位置の間で移送しなければならない。例えば、眼内レンズは、第1の製造ステップ中に眼内レンズを支持する1つのキャリア又は固定具からその後の製造ステップで眼内レンズを支持する別のキャリア又は固定具に(例えば、眼内レンズの洗浄中に使用されるキャリア又は固定具から眼内レンズの検査中に使用されるキャリア又は固定具に)移送しなければならない。現時点では、取り扱い/移送工程の多くは、光学レンズ本体への傷付き又は他の損傷が検査時の眼内レンズの不合格につながり得るので、光学レンズ本体への傷付き又は他の損傷を回避するために、光学レンズ本体の周縁において眼内レンズを注意深く把持することを可能にする、例えば(鉗子に類似した)特定の器具などの特定の器具を使用する術者によって多かれ少なかれ手作業で実行される。しかしながら、これらの手作業による取り扱い/移送工程は、術者にとって煩雑であり、術者が細心の注意を払ったとしても、手作業では簡単にできないので、様々な眼内レンズが、キャリア又は固定具上の必ずしも同じ場所に載置されるわけではない。よって、再現性及び信頼性の観点から、また効率の観点から、手作業による工程は不利である。
【0005】
可撓性材料で作られた眼内レンズに関して発生する別の問題は、製造工程中にハプティックが僅かに屈曲され又は曲げられ得ることである。しかしながら、検査の際に、光学レンズ本体は、その完全性及び規格への適合性について検査されるだけでなく、ハプティックを含む眼内レンズの全体の寸法の測定も行われ、眼内レンズの全体の寸法が所定の規格を満たしているかどうかが判定される。ハプティックが規則的な向きを有しないようにハプティックが製造中に屈曲され又は曲げられる場合、これは、ハプティックが適切な向きに配置されている場合には、眼内レンズが規格に適合するが、(眼内レンズの全体の寸法に関しては規格を満たしていないので)検査時の眼内レンズの不合格につながり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
それゆえ、本発明の目的は、前述の欠点を克服する方法及び装置を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、それぞれの独立請求項の特徴によって規定されるような装置及び方法を提案することによって前述の欠点を克服する。方法及び装置の有利な態様は、それぞれの従属請求項に規定される。
【0008】
特に、光学レンズ本体と、光学レンズ本体の周縁に取り付けられて光学レンズ本体の周縁から外方に延びる2つのハプティックとを含む眼内レンズの自動移送のための方法は、
開始位置において眼内レンズをピックアップするステップと、
眼内レンズを目的位置まで移動させるステップと、
目的位置において眼内レンズを放出するステップと
を含み、
開始位置において眼内レンズをピックアップすることは、
眼内レンズのハプティックにおいてのみ眼内レンズを把持することを含む。
【0009】
本発明による方法の一態様によれば、ハプティックにおいてのみ眼内レンズを把持することは、把持具の吸引ポートを眼内レンズのハプティックに隣接して位置決めして吸引ポートに真空を加えることによって眼内レンズのハプティックにおいてのみ眼内レンズを把持具に取り付けるための吸引ポートを含む把持具を使用して行われる。目的位置において把持具から眼内レンズを放出することは、吸引ポートに過圧を加えて吸引ポートから眼内レンズのハプティックを取り外すことによって行われる。
【0010】
本発明による方法の更なる態様によれば、把持具の吸引ポートは、把持具の遠位端に配置され、把持具から離れて遠位方向に突出する2つの吸引ポートを含む。2つの吸引ポートの各々は、その遠位端に、レンズ取付面によって取り囲まれた吸引開口を含む。この態様によれば、方法は、
2つの吸引ポートの一方の吸引ポートの吸引開口が、それに隣接して配置された2つのハプティックの一方のハプティックの一部によって覆われるように、その一方の吸引ポートの遠位端を眼内レンズの2つのハプティックの一方に隣接して位置決めすることと、
2つの吸引ポートの他方の吸引ポートの吸引開口が2つのハプティックの他方のハプティックの一部によって覆われるように、その他方の吸引ポートを眼内レンズの2つのハプティックの他方に隣接して位置決めすることと、
2つの吸引ポートの吸引開口に真空を加えて、2つのハプティックの一方を一方の吸引ポートのレンズ取付面に及び2つのハプティックの他方を他方の吸引ポートのレンズ取付面に取り付けることと
を更に含む。
【0011】
本発明による方法の一態様では、把持具は、把持具の遠位端に固定して配置された2つの吸引ポートを有する把持具である。
【0012】
本発明による方法の別の態様では、把持具は、把持具の遠位端に回転可能に配置された2つの吸引ポートを有する把持具である。2つの吸引ポートの各々は、2つの吸引ポートのレンズ取付面によって画定された平面に垂直なそれぞれの所定の回転軸線を中心に回転可能に配置される。
【0013】
本発明による方法のなお更なる態様によれば、方法は、
2つの吸引ポートの吸引開口に真空を加える前に、眼内レンズの2つのハプティックの各々の実際の回転向きを決定することと、
一方の吸引ポートの回転向きが2つのハプティックの一方のハプティックの決定された実際の回転向きと一致し、他方の吸引ポートの回転向きが2つのハプティックの他方のハプティックの決定された実際の回転向きと一致するまで、2つの吸引ポートの各々をそれぞれの所定の回転軸線を中心に回転させることと、その後、
2つの吸引ポートの吸引開口に真空を加えて、2つのハプティックの一方を一方の吸引ポートのレンズ取付面に及び2つのハプティックの他方を他方の吸引ポートのレンズ取付面に取り付けることと
を更に含む。
【0014】
更に、本発明による方法の更なる態様に従って、方法は、
眼内レンズの2つのハプティックの一方のハプティック又は2つのハプティックの他方のハプティックの実際の回転向きが、それぞれの所定の回転向きから逸脱した場合、
2つのハプティックの各々が所定の回転向きを有するまで、それぞれの所定の回転軸線を中心に一方の吸引ポートのレンズ取付面に取り付けられた2つのハプティックの一方と共に一方の吸引ポートを、及び/又は他方の吸引ポートのレンズ取付面に取り付けられた2つのハプティックの他方と共に他方の吸引ポートを回転させることと、
目的位置において、2つのハプティックの各々が所定の回転向きを有する状態で2つの吸引ポートの吸引開口に過圧を加えることと
を更に含む。
【0015】
周縁を有する光学レンズ本体と、光学レンズ本体の周縁に取り付けられて光学レンズ本体の周縁から外方に延びる2つのハプティックとを含む眼内レンズの自動移送のための装置は、把持具を含み、把持具は、
真空又は過圧の供給のための圧力供給コネクタと、
把持具の遠位端に配置され、把持具から離れて遠位方向に突出する2つの吸引ポートであって、2つの吸引ポートの各々は、その遠位端に、レンズ取付面によって取り囲まれた吸引開口を含む、2つの吸引ポートと、
2つの別個の流体流路であって、2つの別個の流体流路の各々は、2つの吸引ポートのそれぞれの吸引ポートを真空又は過圧の供給のための圧力供給コネクタと流体的に接続して、圧力供給コネクタと吸引ポートの吸引開口との間に2つの別個の流体接続を形成する、2つの別個の流体流路と
を含む。
【0016】
2つの吸引ポートは、眼内レンズのハプティックを吸引ポートのレンズ取付面に取り付けることによってハプティックにおいてのみ眼内レンズを把持するための、及びレンズ取付面から眼内レンズのハプティックを取り外すことによって眼内レンズを放出するための、レンズ取付面によって画定された平面において測定された5mm~17mm(ミリメートル)の範囲の距離だけ互いに間隔をおいて配置される。
【0017】
本発明による装置の一態様によれば、2つの吸引ポートは、把持具の遠位端に固定して配置される。
【0018】
本発明による装置の別の態様によれば、2つの吸引ポートは、把持具の遠位端に回転可能に配置される。2つの吸引ポートの各々は、レンズ取付面によって画定された平面に垂直なそれぞれの所定の回転軸線を中心に回転可能に配置される。
【0019】
本発明による装置の更なる態様に従って、把持具は、2つの独立した回転モータ、各々が回転駆動シャフトを有する第1の回転モータ及び第2の回転モータを更に含む。第1の回転モータの回転駆動シャフトは、第1の把持具フィンガの遠位端に配置された、2つの吸引ポートの一方を有する第1の把持具フィンガに、耐トルク性コネクタによって接続され、第2の回転モータの回転駆動シャフトは、第2の把持具フィンガの遠位端に配置された、2つの吸引ポートの他方の吸引ポートを有する第2の把持具フィンガに、更なる耐トルク性コネクタによって接続される。
【0020】
本発明による装置のなお更なる態様に従って、耐トルク性コネクタ及び更なる耐トルク性コネクタの各々は、永久磁石と、感磁性材料で作られた2つのピンとを含む磁気クラッチを含む。永久磁石は、トルクに耐えるように回転駆動シャフトの遠位端に装着され、第1の把持具フィンガ又は第2の把持具フィンガのそれぞれの第1の把持具フィンガ又は第2の把持具フィンガの近位端の方に面する。2つのピンは、第1の把持具フィンガ又は第2の把持具フィンガのそれぞれの第1の把持具フィンガ又は第2の把持具フィンガの近位端に配置され、永久磁石の方に面する。2つのピンの遠位端は、第1の把持具フィンガ又は第2の把持具フィンガのそれぞれの第1の把持具フィンガ又は第2の把持具フィンガに固定して接続され、2つのピンの近位端は、永久磁石に磁気的に結合される。
【0021】
本発明による装置のなお更なる態様に従って、第1の把持具フィンガは、一方の吸引ポートのすぐ近位に配置された当接フランジを含み、第2の把持具フィンガは、他方の吸引ポートのすぐ近位に配置された更なる当接フランジを含む。把持具は、その遠位端に、把持具の両側で把持具の遠位端から遠位方向に突出する第1の当接突起及び第2の当接突起を含む。第1の当接突起は、第1の把持具フィンガの当接フランジが第1の当接突起に当接したときに一方の吸引ポートの所定の回転向きを定めるための、当接フランジ用のストッパを形成し、第2の当接突起は、第2の把持具フィンガの更なる当接フランジが第2の当接突起に当接したときに他方の吸引ポートの所定の回転向きを定めるための、更なる当接フランジ用のストッパを形成する。
【0022】
本発明による装置の更なる態様によれば、装置は、レンズキャリアによって支持された眼内レンズを照明するための照明源と、レンズキャリアによって支持された眼内レンズの場所及び眼内レンズのハプティックの回転向きを決定するために、レンズキャリアによって支持された照明された眼内レンズの画像を撮像するためのカメラとを更に含む。装置は、2つの吸引ポートの回転向きが眼内レンズの2つのハプティックの決定された実際の回転向きと一致するように、2つの吸引ポートを備えた把持具を2つの吸引ポートが眼内レンズのハプティックに隣接して配置される場所まで移動させるための、カメラと把持具とに結合された制御ユニットを更に含む。
【0023】
更に、本発明による装置の更なる態様に従って、装置は、異なる種類のレンズキャリアを支持プレートに装着するための複数の装着位置を含む支持プレートを更に含む。装置は、装着位置に装着された異なる種類の少なくとも2つの異なるレンズキャリアを更に含む。支持プレート、装着位置、及び異なる種類の少なくとも2つのレンズキャリアは、前記レンズキャリア上に配置された眼内レンズが、レンズキャリアの種類にかかわらず、吸引ポートのレンズ取付面によって画定された平面に平行な同じ平面内に配置されるように構成される。
【0024】
本発明による方法は、高い再現性及び信頼性で行うことができる自動化された方法であるという点で有利である。特に、2つのハプティックにおいてのみIOLを把持し、同じ方式で且つ同じ場所でIOLを(例えばキャリア上の)目的位置に繰り返し載置することによって、IOLをピックアップすることができる。したがって、IOLは、IOLの光学レンズ本体への傷付き又は損傷が完全に回避され得るように、光学レンズ本体においては(その周縁でさえ)全く把持されない。
【0025】
IOLの把持が、吸引ポートを含む把持具を用いて行われる場合、吸引ポートがIOLのハプティックに隣接して位置決めされ得るとともに、ハプティックにおいてのみIOLを吸引ポートに(より正確には、吸引ポートのレンズ取付面に)取り付けるために、吸引ポートに真空が加えられ得る。目的位置において把持具からIOLを放出することは、吸引ポートから(より正確には、吸引ポートのレンズ取付面から)IOLのハプティックを取り外すために、吸引ポートに過圧を加えることを通して行われ得る。これによって、光学レンズ本体への把持具の接触なしにIOLを非常に注意深く取り扱うことが可能となる。
【0026】
例えば、2つの吸引ポートを備えた把持具が使用され得、2つの吸引ポートの各々は、その遠位端に、レンズ取付面によって取り囲まれた吸引開口を含む。そして、一方の吸引ポートの遠位端は、2つのハプティックの一方に隣接して位置決めされ、他方の吸引ポートの遠位端は、2つのハプティックの他方に隣接して位置決めされる。吸引ポートは、各吸引ポートの吸引開口がそれぞれのハプティックの一部によって覆われるように位置決めされる。この点に関して「覆われる」という用語は、吸引開口を取り囲むレンズ取付面にIOLが既に取り付けられていることも、吸引開口がハプティックの一部によって完全に覆われていることも意味しない。むしろ、「覆われる」という用語は、それぞれのハプティックの一部とそれぞれの吸引開口との少なくとも50%の一定の重なりを説明するように意図されている。
【0027】
次に、レンズ取付開口を取り囲むレンズ取付面にハプティックが取り付くようにするために、吸引開口に真空が加えられる。そして、これによって、把持動作後に吸引ポートの吸引開口がそれぞれのハプティックの一部によって完全に覆われないシナリオが生じ得るが、僅かな漏れ流れにもかかわらず、それぞれのハプティックは、それぞれのレンズ取付面にしっかりと取り付けられたままである。しかしながら、理想的には、吸引開口がそれぞれのハプティックの一部によって完全に覆われ、その結果、IOLが把持具に取り付けられた時点で、漏れ流れが全くなくなり、レンズ取付面にハプティックが強力に取り付けられる。
【0028】
概して、ハプティックは、明確に定められた位置及び明確に定められた(所望)向きで光学レンズ本体に取り付けられる。よって、吸引ポートが把持具の遠位端に(ハプティックの前記明確に定められた位置及び向きと一致する距離及び向きを吸引ポートが有するような場所に)固定して配置された把持具を使用することが可能である。したがって、構造上の観点から比較的簡単な把持具でIOLを確実にピックアップすることが可能である。
【0029】
代替的に、2つの吸引ポートが把持具の遠位端に回転可能に配置された把持具が使用され得る。各吸引ポートは、吸引ポートのレンズ取付面によって画定された平面に垂直なそれぞれの所定の回転軸線を中心に回転可能である。かかる把持具は、構造上の観点からより複雑ではあるが、把持具では、前記明確に定められた(所望の)位置及び向きからのハプティックの実際の位置及び向きの逸脱が考慮され得る。
【0030】
そのような把持具を使用する場合、IOLの2つのハプティックの各々の実際の位置及び向きをまず決定し、次いで、吸引開口とハプティックのそれぞれの部分との最大限の重なりが生じるように、所定の回転軸線を中心に吸引ポートの各々を回転させることが可能である。その後にのみ、最大限の重なりで、理想的にはハプティックが吸引開口を完全に覆った状態でIOLのハプティックが吸引ポートのレンズ取付面に取り付くようにするために、吸引開口に真空が加えられる。
【0031】
本発明による装置に関して、装置は、吸引ポートの吸引開口に真空を加えることを通じてハプティックにおいてのみIOLを把持具に取り付けることによってIOLを把持することが可能であるので有利である。これを達成するために、圧力供給コネクタに真空が供給され、圧力供給コネクタから、2つの別個の流体流路を用いて、把持具の遠位端における2つの吸引ポートの吸引開口に真空が更に供給される。次いで、IOLのハプティック(より正確には、ハプティックの一部)が、吸引ポートの吸引開口を取り囲むレンズ取付面に取り付けられる。IOLが把持具から取り外されるときに、圧力供給コネクタに過圧が供給され、圧力供給コネクタから、吸引ポートの吸引開口に過圧が更に供給され、したがって把持具からIOLを取り外す(IOLが注意深く吹き飛ばされる)。吸引ポートは、5mm~17mmの範囲の距離だけ互いに間隔をおいて配置され、典型的には9mm~10mmの範囲にある。
【0032】
2つの吸引ポートは、把持具の遠位端に固定して、すなわち、吸引ポート間に一定の距離をおいて配置され得る。既に述べたように、概して、ハプティックは、明確に定められた位置及び明確に定められた(所望)向きで光学レンズ本体に取り付けられる。次に、固定して配置される吸引ポートは、吸引ポートのレンズ取付面に吸着されるべきIOLのハプティックの部分間の距離と一致する一定の距離をおいて配置される。したがって、構造上の観点から比較的簡単な把持具でIOLを確実にピックアップすることが可能である。
【0033】
代替的に、2つの吸引ポートは、吸引ポートの各々が、レンズ取付面によって画定された平面に垂直なそれぞれの所定の回転軸線を中心に回転可能に配置される状態で、把持具の遠位端に回転可能に配置され得る。かかる把持具は、構造上の観点からより複雑ではあるが、把持具では、前記明確に定められた(所望の)位置及び向きからのハプティックの実際の位置及び向きの逸脱が考慮され得る。そして、IOLの2つのハプティックの各々の実際の位置及び向きをまず決定し、次いで、吸引開口とレンズ取付面に吸着されるハプティックのそれぞれの部分との最大限の重なりが生じるように、所定の回転軸線を中心に吸引ポートの各々をハプティックの実際の位置及び向きまで回転させることが可能である。その後にのみ、最大限の重なりで、理想的にはハプティックが吸引開口を完全に覆った状態でIOLのハプティックが吸引ポートのレンズ取付面に取り付くようにするために、吸引開口に真空が加えられる。
【0034】
IOLの2つのハプティックの実際の位置及び向きを決定するために、装置は、レンズキャリアによって支持されたIOLを照明するための(例えば、暗視野照明用に構成された)照明源を含み得る。装置は、照明されたIOLの画像を撮像するためのカメラを更に含み得る。このIOLの画像から、レンズキャリアによって支持されたIOLの2つのハプティックの実際の場所及び向きを(例えば、画像解析を通じて)決定することができる。装置は、カメラと把持具とに結合された制御ユニットを更に含み得る。カメラによって撮像されたIOLの画像から決定された場所及び向きに応じて、制御ユニットは、2つの吸引ポートを備えた把持具を、2つの吸引ポートがIOLのハプティックに隣接して配置される場所まで移動させる。把持具が前述の回転可能に配置された吸引ポートを含む場合、理想的にはハプティックが吸引開口を完全に覆った状態で、吸引開口とハプティックの対応する部分との最大限の重なりが生じるように、吸引ポートをハプティックの実際の位置及び向きまで回転させ得る。把持具が、固定して配置された吸引ポートを含む場合、吸引ポートとハプティックの対応する部分との最大限の重なりが生じる場所まで把持具を移動させる。既に述べたように、これによって、把持動作後に吸引ポートの吸引開口がそれぞれのハプティックの一部によって完全に覆われないシナリオが生じ得る。しかしながら、僅かな漏れ流れが生じたとしても、それぞれのハプティックは、それぞれのレンズ取付面にしっかりと取り付けられたままである。
【0035】
再現性及び信頼性を更に高めるために、装置は、異なる種類のレンズキャリア(例えば、IOLを洗浄するために使用されるレンズキャリア及びIOLの検査のために使用されるレンズキャリア)が装着され得る複数の装着位置を含む支持プレートを更に含み得る。異なる種類の2つ(又は3つ以上)のレンズキャリアは、例えば、1つの種類のレンズキャリア(例えば、IOLを洗浄するためのレンズキャリア)から異なる種類のレンズキャリア(例えば、IOLの検査のためのレンズキャリア)にIOLを移送するために、支持プレートの装着位置に装着され得る。支持プレート、装着位置、及び異なる種類のレンズキャリアは、前記レンズキャリア上に配置されたIOLが、レンズキャリアの種類にかかわらず、吸引ポートのレンズ取付面によって画定された平面に平行な同じ平面内に常に配置されるように構成される。これによって、前記平面に垂直なz方向(すなわち、装着プレートに向かう及び装着プレートから離れる方向)に且つ前記平面に平行な平面内で把持具を移動させるロボットに把持具を固定して取り付けることが可能となる。そして、少なくともz方向に関して、ロボットは、IOLとの又は支持プレート上に配置されたレンズキャリアのいずれかとの把持具の衝突を回避するために、z方向における特定の場所を越えて把持具を移動させるように教示され得る。また、ロボットには、IOLをピックアップするためのz方向における最適な場所がどこであるかが教示され得る。これらの場所は、把持具を交換しなければならないとしても、装着される新しい把持具が交換される把持具と同じ寸法を有する限り、ロボットに一度しか教示されない場合がある。
【0036】
回転可能に配置された2つの吸引ポートを回転させるために、把持具は、2つの独立した回転モータ、第1の回転モータ及び第2の回転モータを含み得る。これらの第1のモータ及び第2のモータの各々は、回転駆動シャフトを有する。第1のモータの回転駆動シャフトは、耐トルク性コネクタによって第1の把持具フィンガに接続される。第1の把持具フィンガは、この第1の把持具フィンガの遠位端に配置された第1の吸引ポートを有する。同様に、第2のモータの回転駆動シャフトは、耐トルク性コネクタによって第2の把持具フィンガに接続される。第2の把持具フィンガは、この第2の把持具フィンガの遠位端に配置された第2の吸引ポートを有する。これによって、第1の把持具フィンガ及び第2の把持具フィンガを独立して回転させ、それによって、それぞれの吸引ポートを、それぞれの吸引ポートの吸引開口がIOLのそれぞれのハプティックの対応する部分との最大限の重なりを有する場所まで、回転させることが可能となる。第1の回転モータ及び第2の回転モータのそれぞれの駆動シャフトの耐トルク性の接続によって、第1の把持具フィンガ又は第2の把持具フィンガの遠位端に配置されたそれぞれの吸引ポートのそれぞれの回転位置の非常に精密な調整が可能となる。
【0037】
多くの耐トルク性の接続(形状係止接続を含む)が一般に考慮されるが、そのような耐トルク性の接続の1つの有利な例としては、永久磁石と、感磁性材料(磁化可能材料)で作られた2つのピンとを含む磁気クラッチが挙げられる。永久磁石は、トルクに耐えるようにそれぞれの回転モータの回転駆動シャフトの遠位端に装着され得、第1の把持具フィンガ又は第2の把持具フィンガのそれぞれの第1の把持具フィンガ又は第2の把持具フィンガの近位端の方に面する。感磁性材料で作られた2つのピンも、第1の把持具フィンガ又は第2の把持具フィンガのそれぞれの第1の把持具フィンガ又は第2の把持具フィンガの近位端に配置され、永久磁石の方に面する。2つのピンの遠位端は、第1の把持具フィンガ又は第2の把持具フィンガのそれぞれの第1の把持具フィンガ又は第2の把持具フィンガに固定して接続され(例えば、2つのピンの遠位端は、対応する孔に圧入され)、その一方で、2つのピンの近位端は、永久磁石に磁気的に結合される(例えば、2つのピンの近位端面は、永久磁石の遠位端面に当接し得る)。このような磁気クラッチは、構造上の観点から簡単であり、それと同時に、信頼性の高い耐トルク性の接続を形成する。それぞれのモータの回転駆動シャフトを回転させると、2つのピンも回転し、2つのピンは、それぞれの第1の把持具フィンガ又は第2の把持具フィンガに固定して接続されているため、回転駆動シャフトが回転するのと全く同じ角度だけそれぞれの第1の把持具フィンガ又は第2の把持具フィンガを回転させる。これによって、第1の把持具フィンガ又は第2の把持具フィンガの遠位端に配置されたそれぞれの吸引ポートのそれぞれの回転位置の非常に精密な調整が可能となる。
【0038】
第1の把持具フィンガは、(2つの吸引ポートの)一方の吸引ポートのすぐ近位に配置された当接フランジを追加的に含み得、第2の把持具フィンガは、(2つの吸引ポートの)他方の吸引ポートのすぐ近位に配置された更なる当接フランジを含み得る。把持具は、その遠位端に、両側で把持具の遠位端から遠位方向に突出する第1の当接突起及び第2の当接突起を含み得る。第1の当接突起は、第1の把持具フィンガの当接フランジが第1の当接突起に当接したときに(2つの吸引ポートの)一方の吸引ポートの所定の回転向きを定めるための、当接フランジ用のストッパを形成する。同様に、第2の当接突起は、第2の把持具フィンガの更なる当接フランジが第2の当接突起に当接したときに(2つの吸引ポートの)他方の吸引ポートの所定の回転向きを定めるための、更なる当接フランジ用のストッパを形成する。
【0039】
これは、2つの吸引ポートの所定の回転向きを個別に定めるための建設的な手段を表す。例えば、把持具フィンガの各々は、その当接フランジがそれぞれの当接突起に当接する場所まで回転され得る。次いで、この所定の向きから開始して、それぞれの吸引ポートを、それぞれの吸引ポートの吸引開口とIOLのそれぞれのハプティックの把持される部分との重なりが最大となる所望の回転向きまで回転させることができる。例えば、これらの明確に定められた所定の向きは、IOLの画像を撮像し、IOLのそれぞれのハプティックの実際の回転向きを決定した時点で、第1の把持具フィンガ及び第2の把持具フィンガの各々が(この明確に定められた所定の向きから開始して)それぞれのハプティックの実際の回転向きまで回転され得るように、制御ユニットに記憶され得る。これによって、2つの吸引ポートの所望の向きの非常に正確な調整が可能となる。
【0040】
本発明による方法及び装置の更なる有利な態様は、概略図を用いて本発明の実施形態の以下の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】眼内レンズ(IOL)の製造中に使用されるレンズキャリアからIOLの検査中に使用されるレンズキャリアへの移送工程を図示する。
図2】本発明による眼内レンズの自動移送のための装置の一実施形態の斜視図を示す。
図3】それぞれの開始位置からそれぞれの目的位置へのIOLの移送を図示する模式図を示す。
図4図2の装置の実施形態のいくつかの構成要素の斜視図を示す。
図5】本発明による装置の把持具の第1の実施形態の分解斜視図を示す。
図6図5の組み立てられた把持具を通る縦断面図を示す。
図7図6の細部VIIの拡大図を示す。
図8図5の把持具のエンドピースの上面斜視図を示す。
図9図5の把持具のエンドピースの底面斜視図を示す。
図10図5の把持具のエンドピースの底面図を示す。
図11図5の把持具のエンドピースの断面図を示す。
図12図8のエンドピースの一部の部分断面図を示す。
図13図11の細部XIIIを示す。
図14】把持具の第1の実施形態によってIOLのハプティックにおいて把持されたIOLを示す。
図15】把持具の第1の実施形態によるIOLの載置中の検査キャリアの一部の上面斜視図を示す。
図16】本発明による装置の把持具の第2の実施形態の斜視図を示す。
図17図16に示す把持具の実施形態の側面図を示す。
図18図17の線XVIII-XVIIIに沿った把持具の縦断面図を示す。
図19図18の線XIX-XIXに沿った把持具の縦断面図を示す。
図20図16の把持具の把持具フィンガの斜視図を示す。
図21図19の把持具フィンガの側面図を示す。
図22図21の線XXII-XXIIに沿った把持具フィンガの縦断面図を示す。
図23図22の細部XXIIIを示す。
図24図20の把持具フィンガの上面図を示す。
図25図20の把持具フィンガの底面図を示す。
図26図25の細部XXVIを拡大図で示す。
図27】ハプティックの規則的な向きを有するIOLが取り付けられた図16の把持具の底面図を示す。
図28】ハプティックの不規則な向きを有するIOLが取り付けられた図16の把持具の底面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0042】
添付の特許請求の範囲を含む本明細書で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その(the)」は、文脈上別段の明示的な定めがない限り、複数形を含む。特定の数値又は値の範囲に関して「約」という用語を使用する場合、この用語は、文脈上別段の明確な定めがない限り、「約」という用語に関連して言及される特定の数値が含まれ、明示的に開示されるという意味で理解されるべきである。例えば、「約」数値a~「約」数値bの範囲が開示される場合、これは、数値a~数値bの範囲を含み、明示的に開示するものと理解されるべきである。また、特徴が「又は」という用語と組み合わされるときは常に、「又は」という用語は、「又は」という用語を排他的であると理解しなければならないことが本明細書から明らかでない限り、「及び」も含むものと理解されるべきである。
【0043】
図1は、IOL1の製造中に使用され得る第1の種類のレンズキャリア2からIOL1の検査中に使用され得る第2の種類のレンズキャリア3(第1の種類と異なる場合も異ならない場合もある)に眼内レンズ1(以下では「IOL」と称される)を移送する工程を図示する。図1で分かるように、IOL1は、従来のものであるとともに当業者にはよく理解されるように、光学レンズ本体10と、光学レンズ本体10の周縁から外方に延びる2つのハプティック11とを含む。光学レンズ本体10は、IOL1が患者の眼の水晶体嚢内に移植された後に眼の網膜上に画像を生成するIOL1の構成要素であるので、IOL1の特に繊細な構成要素であり、それに対して、2つのハプティック11は、IOL1全体、特に水晶体嚢内の光学レンズ本体10の適切な配置に役立つ。
【0044】
既に更に上述したように、IOL1の光学レンズ本体10は、その完全性及び規格への適合性について検査されるだけでなく、ハプティックを含む眼内レンズの全体の寸法も測定される。一例として、光学レンズ本体10の直径は、4.9mm~7.1mmの範囲の値である所定の値を有し、IOL1の全体の直径(2つのハプティック11の先端間の距離)は、典型的には10.5mm~14.5mmの範囲であるが、それよりも大きくなることさえある。ほんの一例として、光学レンズ本体10の直径は、6.0mm又は6.3mmであり得、IOL1(ハプティックを含む)の全体の直径は、13.3mmであり得る。
【0045】
IOLは、典型的には、手術処置中に、切開部(強膜トンネル)を通して水晶体嚢にIOL1を挿入するために眼に小さな切開部のみが必要となるように、IOL1の寸法ができるだけ小さくなるように一時的に縮小され得るので、高い可撓性を呈する材料(例えば、シリコーンハイドロゲル)で作られる。
【0046】
IOL1が作られる材料の可撓性に起因して、ハプティック11は、製造工程中に僅かに屈曲され又は曲げられ得る。これを図示するために、第1の種類の2つのそのようなレンズキャリア2が図1に示されている。第1の種類のレンズキャリア2は、IOL1をレンズキャリア2上の適所に保持するためのいくつかの小さなピン21(又はスタッド)を含む。
【0047】
図1の左側に示すレンズキャリア2上のIOL1のハプティック11は、光学レンズ本体10に対して規則的な向きで配置され、それに対して、図1の右側に示すレンズキャリア2上のIOL1の2つのハプティック11の一方は、光学レンズ本体10から離れる方向に屈曲され又は曲げられ、その一方で、2つのハプティック11の他方のハプティック11は、光学レンズ本体10に向けて屈曲され又は曲げられる。典型的には、ハプティック11のこの屈曲又は曲げは、それぞれのハプティック11がレンズ本体10に取り付けられた部分を中心にそれぞれのハプティック11を僅かに枢動させていることを意味する。そして、図1の右側のレンズキャリア2上に示すIOL1の光学レンズ本体10が変位され、ハプティック11が光学レンズ本体10に対して規則的な向きから屈曲されるが、IOL1の寸法は、ハプティック11が光学レンズ本体10に対して規則的な向きに配置されるとしても、十分に規格の範囲内である。
【0048】
よって、図1の左側に示す第1の種類のレンズキャリア2からIOL1の検査のために使用される第2の種類のレンズキャリア3へのIOL1の簡単な移送は、(IOL1に欠陥が全くないと仮定して)検査時の「合格」(すなわち、肯定的な結果)につながり得るが、図1の右側に示すレンズキャリア2からレンズキャリア3へのIOL1の簡単な移送は、眼内レンズの全体の直径が規格外であるので、検査時の「不合格」(すなわち、否定的な結果)につながり得る。後者の検査結果は、(ハプティックが適切な向きに配置されている場合にはIOL1が適切な寸法を有するので)望ましくない結果であり、回避することができる。
【0049】
第2の種類のレンズキャリア3は、IOL1をレンズキャリア3上の適所に保持するためのいくつかの小さなピン31(又はスタッド)を含む。レンズキャリア3は検査開口30を更に含み、IOL1は、この検査開口30を通してIOL1のレンズ本体10の検査を可能にするために、IOL1のレンズ本体10が検査開口30の上に配置されるように、レンズキャリア3上に配置される。図1の左側に示す第1の種類のレンズキャリア2から又は図1の右側に示す第1の種類のレンズキャリア2から第2の種類のレンズキャリア3にIOL1を移送する工程は、それぞれの矢印4によって図示されている。
【0050】
図2は、IOL1の自動移送のための装置5の一実施形態の斜視図を示す。装置5のこの実施形態は、異なる種類のレンズキャリアを支持プレート50に装着するための複数の個々の装着位置500を含む支持プレート50を含む。これらの装着位置500は、図3を参照してより詳述するように、行と列のマトリクス状配置で配置される。図2では、第2の種類の1つのレンズキャリア3が、装着位置の1つにおいて支持プレート5に装着されるものとして示され、その一方で、第1の種類のレンズキャリア2(図2には図示せず、図1を参照)は、矢印の先端が指す装着位置500において装着され得る。図示の実施形態では、個々の装着位置及び異なる種類のレンズキャリアは、レンズキャリアの種類にかかわらず、そのようなレンズキャリア上に載置されたIOL1が常に同じ平面内(支持プレート50の平面に平行)に配置されるように構成される。
【0051】
装置5は、照明源51と、カメラ52(図2では見えない、図4を参照)と、真空又は過圧の供給を制御するための制御弁53とを更に含む。装置5は、以下でより詳細に説明するように、IOL1の2つのハプティック11においてのみIOL1を把持するための把持具6であって、支持プレート50上に配置された1つの種類のレンズキャリアから支持プレート50上に配置された別の種類のレンズキャリアにIOL1を移送するための把持具6を更に含む。一例として、IOL1は、図1に示す第1の種類のレンズキャリア2(IOL1の製造中に使用される)から第2の種類のレンズキャリア3(IOL1の検査中に使用される)に搬送され得る。
【0052】
装置5は、IOL1が把持具6によって適切に把持されていること並びにIOL1を第2の種類のレンズキャリア3上に載置する前にIOL1及びハプティック11が把持具6に実際にどのように取り付けられているかを確認するための追加のカメラ59(図2に破線によって概略的に示す)を更に含み得る。このカメラは、下方からの視野を有する。すなわち、視野は、IOL1が取り付けられる把持具6の遠位端に向かう、下方からの視野である。したがって、追加のカメラ59は、IOL1をレンズキャリア3上に確実にうまく載置できるように、ハプティック11が適切な回転向きにあることを確認するのに役立ち得る。
【0053】
それぞれの開始位置からそれぞれの目的位置へのIOL1の移送を図示する模式図が図3に示されており、この例示の模式図は、図2に示す支持プレート50上の個々の装着位置500に対応する。個々の装着位置500は、rA、rB、rC、rD、及びrEによって示す行と、c1、c2、c3、及びc4によって示す列とに沿って配置される。よって、模式図の最下行では、個々の装着位置がA1(行A、列1)、A2、A3、及びA4で示され、その一方で、模式図の最上行では、個々の装着位置がE1、E2、E3、及びE4で示され、それぞれの装着位置500の中心が十字線によって示されている。
【0054】
例えば、行rAでは、装着位置A3に配置された第1の種類のレンズキャリア2(図1を参照)から装着位置A4に配置された第2の種類のレンズキャリア3(図1を参照)へのIOL1(図1を参照)の移送が、実線矢印4によって示されている。検査が成功した後に、IOLは、装着位置A4における第2の種類のレンズキャリア3から装着位置A2に配置された第3の種類のレンズキャリア(収容キャリア、図示せず)に移送され得、これは、破線矢印40によって示されている。
【0055】
図2に示す装置5に再び移ると、それぞれの行に沿った移動を行うために、把持具6及び他の構成要素(照明源51、カメラ52、制御弁53)は、装置5の固定して配置されたアーム55に沿って移動させ得るスライド54に装着される。列の方向への移動のために、支持プレート50は、レール57に沿って移動可能である更なるスライド56上に装着される。把持具6は、IOL1が第1の種類のそれぞれのレンズキャリア2上に又は第2の種類のレンズキャリア3(若しくは任意の更なるレンズキャリア)上に配置された支持プレート50によって画定された平面に垂直な方向に、支持プレート50に向かって又は支持プレート50から離れて別個に(すなわち、他の構成要素なしに)移動可能である。
【0056】
図4は、スライド54に装着された、図2の装置の実施形態のいくつかの構成要素、特に照明源51、カメラ52、制御弁53、及び把持具6を示す。照明源51は、支持プレート5に向けて下方に光を放射するための環状照明源であり、軸線511に沿って長手方向に延びる中心貫通開口510であって、この貫通開口510を通して検査されるIOL1(図4には図示せず)の画像をカメラ52が撮像することを可能にする中心貫通開口510を有する。したがって、検査されるIOL1は、暗視野照明構成で照明され得る。
【0057】
前述したように、把持具6は、支持プレート50に向かう及び支持プレート50から離れる方向(行及び列のx-y方向に垂直なz方向)に移動可能であり、この方向は、図4の両矢印によって示されている。それゆえ、把持具6は、以下でより詳細に説明する方式で装着用シャフト58に装着される。この装着用シャフト58は、軸線511に対して一定の所定の横方向変位(x-y平面内の位置)で配置される。そのため、ピックアップされるIOL1の位置(x-y平面内)がカメラ52を用いて決定された時点で、軸線511に対する装着用シャフト58の既知の横方向変位によって、IOL1をピックアップするために(装着用シャフト58に装着された)把持具6を移動させなければならない位置が装置5に正確に知られる。装着用シャフト58に装着された把持具6は、所定の全長を有するので、装着用シャフト58に装着された時点で、把持具6の遠位端を1回移動させ得る最下位置(z方向における位置)を決定しさえすればよい。この最下位置では、把持具6の遠位端(以下で説明するように、IOL1を把持するための吸引ポート)は、それぞれのレンズキャリア上に配置されたIOL1の僅か上方に配置される。IOL1は、既に上述したように、使用されるレンズキャリアの種類にかかわらず、常に同じ平面内に配置される。この最下位置では、把持具6は、以下でより詳細に説明するように、それぞれのレンズキャリアからIOL1をピックアップし得る。把持具6を交換しなければならない場合には、装着用シャフト58から把持具6を簡単に外して新しい把持具6を装着用シャフトに装着することが可能である。新しい把持具6は古い把持具6と同じ寸法を有するので、把持具6の最下位置を装置に再び教示する必要はなく、むしろ、既に決定された最下位置を維持することができ、その結果、IOL1は、ピックアップされる際に損傷を受ける可能性がない。図2及び図4では把持具に参照番号6が割り当てられているが、把持具の実施形態の以下の説明では、把持具の実施形態をより良好に区別できるように、把持具には6以外の参照番号が割り当てられる。
【0058】
本発明による装置5の把持具7の第1の実施形態について、図5図15を用いて以下に説明する。図5に分解図で示す把持具7の第1の実施形態は、装着用スタッド70を貫通して横断方向に延びる貫通孔700を有する装着用スタッド70を含み、その結果、把持具7全体が、装置5の装着用シャフト58に設けられた貫通孔580と把持具7の装着用スタッド70の貫通孔700(図6を参照)とを貫通して延びる取付ねじ581を用いて装置5の装着用シャフト58に装着され得る。把持具7は、把持具本体71に装着された、2つの圧力供給コネクタ72、例えば小さなホースステムを備えた把持具本体71を更に含む。真空又は過圧は、代替的に、供給コネクタ72の各々に供給され得る。把持具7は、把持具本体71の遠位端に装着される、2つの吸引ポート730を備えた把持具エンドピース73を更に含む。装着中に把持具本体71に対するエンドピース73の適切な位置決めを達成するために、2つの位置決めピン710は、把持具本体71の遠位端に配置され、把持具本体から離れて遠位方向に突出している。把持具エンドピース73は、円錐状先端を有する止めねじ75の係合のために張力ボルト74の近位端に配置された円錐状切欠き740を有する小さな張力ボルト74を用いて把持具本体71に装着される。止めねじ75は、張力ボルト74を適切に位置決めするために、張力ボルト74の円錐状切欠き740内に係合するように把持具本体71のねじ付き貫通孔711にねじ込まれ、張力ボルト74は、把持具エンドピース73を把持具本体71に抗して引っ張る。2つの別個の供給流路(すなわち、互いに流体接続していない供給流路)が把持具本体71の内部に設けられ、1つのそのような供給流路712が図5に破線で示されている。図6は、装着用シャフト58に装着された組み立てられた把持具7を示し、図7は、止めねじ75が張力ボルト74の円錐状切欠き740内にどのように係合し、張力ボルト74を所望の場所まで上方に引っ張り、それによって把持具エンドピース73を把持具本体71に抗して引っ張るかを詳細に示す。
【0059】
図8図13は、把持具エンドピース73をより詳細に示す。把持具エンドピース73は、2つの(中空)吸引ポート730を含み、各々は、湾曲スロットの形状を有する吸引開口731を有し、レンズ取付面732によって取り囲まれる。図8に示す上面斜視図から、把持具エンドピース73が、把持具エンドピース73を把持具本体71に対して適切に位置決めするために、把持具本体71から離れて遠位方向に突出する2つの位置決めピン710を収容するための2つの有底孔737(図12も参照)を含むことが分かる。把持具エンドピース73は、張力ボルト74を収容するための中央の段付き貫通孔733(図11も参照)と、2つの凹部734とを更に含む。凹部734の各々の底部から、供給孔735は、それぞれの吸引ポート730まで下方に延び、それぞれの吸引ポート730の吸引開口731内に開口する。図10で既に分かるが、図11及び図13で更によく分かるように、供給孔735は、円形断面を有し、吸引開口731からある程度の軸方向距離をおいて終端する。また、図11に示すように、Oリング736は、凹部734の各々内に配置され、それぞれのOリング736は、把持具エンドピース73の上面を越えて上方に突出するような軸方向高さを有する。
【0060】
把持具エンドピース73を把持具本体71に装着する際に、把持具本体71から離れて遠位方向に突出する2つの位置決めピン710は、把持具エンドピース73の有底孔737に入り込み、止めねじ75が張力ボルト74の円錐状切欠き740に係合し始めた時点で、張力ボルト74が上方に引っ張られ、それによって把持具エンドピース73を把持具本体71に抗して引っ張る。この引っ張り動作を通じて、2つのOリング736は、2つの別個の耐圧流体流路が確立されるように圧縮され、各耐圧流体流路は、それぞれの吸引ポート730に真空を供給するために(IOL1をピックアップするために)、又はそれぞれの吸引ポート730に過圧を供給するために(IOL1を放出するために)、圧力供給コネクタ72の1つを吸引ポート730のそれぞれの吸引ポート730の吸引開口731に流体的に接続する。耐圧流体流路の各々は、把持具本体71を貫通して延びる供給流路712によって、更に、凹部734と、凹部734の底部から吸引ポート730の吸引開口731まで下方に延びる供給孔735とによって形成される。
【0061】
図8図13で分かるように、2つの吸引ポート730は、把持具7の遠位端に、又はより正確には、把持具7の把持具エンドピース73の遠位端に固定して配置される。「固定して配置される」という用語は、2つの吸引ポート730間の距離d(図10を参照)及び互いに対する回転向きを変更できないことを意味する。2つの吸引ポート間の距離dは、5mm~17mmの範囲の値を有し、この距離dは、いずれの場合も、把持されるIOL1の光学本体10の直径よりも大きいので、IOL1は、ハプティック11においてのみ把持され得る)。より好ましくは、この距離dの値は、8mm~12mmの範囲であり、一例として、距離dの値は、9.8mmであり得る。距離dは、吸引ポート730の取付面732によって画定された平面において測定され、この平面は、図11に破線で示され、図面の平面に垂直に延びる。
【0062】
図1の左側に示すように、第1の種類のレンズキャリア2上にハプティック11が規則的に配置されたIOL1を把持するために、吸引ポート730のレンズ取付面732がIOL1のハプティック11に隣接して、すなわち、ハプティック11の上方に短い距離(例えば、0.05~0.5mmの範囲、好ましくは約0.15mm)をおいて位置決めされるまで把持具7をIOL1に向けて移動させる。次に、圧力供給コネクタ72を通して及び耐圧流体流路を通して吸引ポート730の吸引開口731に真空が供給され、したがって、IOL1のハプティック11を吸引ポート730のレンズ取付面732に吸着させることによってレンズキャリア2からIOL1が把持される(IOL1がピックアップされる)。IOL1のハプティック11がレンズ取付面732に取り付けられたこの状態が図14に示されている(把持具7の把持具エンドピース73のみがそこに示されている)。IOL1が把持された場合には、IOL1が把持されていない場合と比較して、実際に加えられた真空が高まるので、IOL1が把持されたことを検出することができる。
【0063】
次に、IOL1が取り付けられた把持具7を、目的位置、例えば、図1に示す第2の種類のレンズキャリア3の上方の位置まで移動させる。開始位置と目的位置の両方は、装置54が、IOL1のピックアップされる位置を正確に知り(特にIOL1のハプティック11の位置も精密に知り)、把持具7から取り外されるIOL1の位置(すなわち、レンズキャリア3及びピン31及び検査開口30の位置)を正確に知るように、カメラ52(図4を参照)を用いて精密に決定されている。これは、把持具7の2つの吸引ポート730と、IOL1のハプティック11が載置されるキャリア3の位置と、IOL1を適所に保持するためのピン31とを概略的に示す、図15に図示されている。把持具からIOL1を取り外すために、圧力供給コネクタ72を通して及び耐圧流体流路を通して、過圧が吸引ポート730の吸引開口731に供給される。真空(IOL1の把持及び搬送中)又は過圧(IOL1の取り外し中)の交互供給は、制御弁53(図4を参照)によって制御される。
【0064】
本発明による装置5の把持具8の第2の実施形態について、図16図28を参照して以下に説明する。把持具7の第1の実施形態(図5図15を参照)と比較したときの把持具8のこの第2の実施形態の1つの大きな違いは、以下で更に詳細に説明するように、把持具8のこの第2の実施形態では(中空)吸引ポート860及び870が所定の回転軸線を中心に回転可能に配置されることである。図16に示す把持具8の斜視図と、図17に示す把持具8の側面図で分かるように、把持具8は、装着用スタッド80を貫通して横断方向に延びる貫通孔800を有する装着用スタッド80を含み、その結果、把持具8全体が、装置5の装着用シャフト(図6を参照)に設けられた貫通孔580と把持具8の装着用スタッド80の貫通孔800とを貫通して延びる取付ねじ581を用いて装置5の装着用シャフト58に装着され得る。把持具8は、上側本体部分810と下側本体部分811とを有する把持具本体81を更に含み、上側本体部分810と下側本体部分811とは、ねじ812を用いて互いに取り付けられる(図18を参照)。把持具8は、各々が(把持具の第1の実施形態と同様に)吸引ポートに真空又は過圧を交互に供給するための、2つの圧力供給コネクタ82を更に含む。
【0065】
その上、把持具8は、2つの独立した回転モータ、第1の回転モータ84及び第2の回転モータ85を含む。図18で最もよく分かるように、第1の回転モータ84は、回転駆動シャフト840を含み、第2の回転モータ85は、回転駆動シャフト850を含む。第1の回転モータ84の回転駆動シャフト840は、耐トルク性コネクタを介して第1の把持具フィンガ86に接続され、第2の回転モータ85の回転駆動シャフト850は、更なる耐トルク性コネクタを介して第2の把持具フィンガ87に接続される。
【0066】
第1の回転モータ84の回転駆動シャフト840を第1の把持具フィンガ86に接続する耐トルク性コネクタは、磁気クラッチを含む。この磁気クラッチは、感磁性材料、例えば感磁性ステンレス鋼で作られた2つのピン842、843(図19を参照)に加えて、トルクに耐えるように回転駆動シャフト840の遠位端に(例えば、接着)装着された永久磁石841を含む。永久磁石841は、トルクに耐えるようにスリーブ845に装着された駆動ブッシュ844内に配置され、スリーブ845は、トルクに耐えるように第1の回転モータ84の駆動シャフト840に装着される。2つのピン842、843は、駆動ブッシュ844の遠位端面におけるそれぞれの開口を貫通して延び、第1の把持具フィンガ86の近位端面におけるそれぞれの有底孔862、863に圧入される(図22も参照)。適切な装着を確実にするために、2つのピン842、843は、異なる直径を有し得る。一例として、把持具フィンガ86は、硬質の耐久性プラスチック材料から作られ得る。したがって、耐トルク性コネクタは、第1の回転モータ84が回転駆動シャフト840を駆動した時点で、第1の把持具フィンガ86も確実に回転させる。
【0067】
同様に、第2の回転モータ85の第2の回転駆動シャフト850を第2の把持具フィンガ87に接続する更なる耐トルク性コネクタは、磁気クラッチを含む。この磁気クラッチは、ここでもまた、感磁性材料、例えば感磁性ステンレス鋼で作られた2つのピン852、853(図18ではピン852のみを視認できる)に加えて、トルクに耐えるように第2の回転モータ85の第2の回転駆動シャフト850の遠位端に(例えば、接着)装着された永久磁石851を含む。永久磁石851は、トルクに耐えるようにスリーブ855に装着された駆動ブッシュ854内に配置され、スリーブ855は、トルクに耐えるように第2の回転モータ85の駆動シャフト850に装着される。2つのピン852、853は、駆動ブッシュ854の遠位端面におけるそれぞれの開口を貫通して延び、第2の把持具フィンガ87の近位端面におけるそれぞれの有底孔(図22に示す第1の把持具フィンガ86の有底孔862、863と同様の)に圧入される。ここでもまた、適切な装着を確実にするために、2つのピン852、853は、異なる直径を有し得る。第2の把持具フィンガ87もまた、硬質の耐久性プラスチック材料から作られ得る。したがって、更なる耐トルク性コネクタは、第2の回転モータ85が回転駆動シャフト850を駆動した時点で、第2の把持具フィンガ87も確実に回転させる。
【0068】
第1の把持具フィンガ86及び第2の把持具フィンガ87は、同様の構造とされるので、以下では、図20図26を用いて第1の把持具フィンガ86のみをより詳細に説明する。第1の把持具フィンガ86は、(吸引ポート860が把持具フィンガ86の回転軸線に対して偏心して配置された状態で)第1の把持具フィンガ86の遠位端に配置された吸引ポート860を含む。吸引ポート860は、レンズ取付面864によって取り囲まれた吸引開口861を含む(これらの要素は、把持具の第1の実施形態の構造と同様の構造を有する)。把持具フィンガ86は、既に上で説明したように、磁気クラッチのピン842及び843を収容するための有底孔862及び863(図19を参照)を更に含む。把持具フィンガ86は、3つの溝、すなわち、上溝865、中間溝866、及び下溝867を更に含む。上溝865及び下溝867は各々、Oリング88(図18及び図19を参照)を受け入れる専用のものであり、その一方で、中間溝866は空のままである。したがって、把持具本体81の下側本体部分811内での第1の把持具フィンガ86の耐圧性に優れた配置が達成され、それと同時に、第1の把持具フィンガ86は、把持具本体81の下側本体部分811内で回転可能である。
【0069】
第1の把持具フィンガ86の回転は、第1の回転モータ84の回転シャフト840の長手方向中心軸線と一致する所定の第1の回転軸線(図18の線XIX-XIXに相当する)の周りで起こり得る。このことは、第2の回転モータ85の回転シャフト850の長手方向中心軸線を中心に回転可能である第2の把持具フィンガ87にも同様に当てはまる。両方の回転軸線は、吸引ポート860及び861のレンズ取付面864及び874によって画定された平面に垂直であり、この平面は、図17に破線によって示され、図面の平面に垂直に延びる。
【0070】
流体流路868は、中間溝866の底部(径方向最内面)から、把持具フィンガ86の内部に径方向に且つ吸引ポート860の吸引開口861まで下方に延びる。把持具本体81の下側本体部分811内の第1の把持具フィンガ86の耐圧性に優れた配置によって、圧力供給コネクタ82を通して供給された真空又は過圧が、圧力供給コネクタ82と吸引ポート860の吸引開口861とを流体的に接続する流体流路を通して供給され、この流体流路は、中間溝866と、吸引ポート860の吸引開口861まで下方に延びる流体流路868とを貫通して形成される。
【0071】
第1の把持具フィンガ86は、吸引ポート860のすぐ近位に配置された当接フランジ869を更に含む。図16で最もよく分かるように、把持具8は、その遠位端に(又はより正確には、把持具本体81の下側本体部分811の遠位端に)、第1の当接突起813及び第2の当接突起814(一方は、第1の把持具フィンガ86の当接フランジ869用であり、他方の当接突起は、第2の把持具フィンガ87の当接フランジ879用である)を含む。第1の当接突起813及び第2の当接突起814は、下側本体部分810の遠位端から、したがって把持具本体81の遠位端から遠位方向に突出する。これらの第1の当接突起813は、第1の把持具フィンガ86の当接フランジ869用のストッパを形成し、第2の当接突起814は、第2の把持具フィンガ87の当接フランジ879用のストッパを形成する。したがって、第1の当接突起813は、当接フランジ869が第1の当接突起813に当接したときに、第1の把持具フィンガ86の吸引ポート860の所定の回転向きを定め、第2の当接突起814は、当接フランジ879が第2の当接突起814に当接したときに、第2の把持具フィンガ87の吸引ポート870の所定の回転向きを定める。それゆえ、第1の当接突起813及び第2の当接突起814は、基準動作中に第1の把持具フィンガ86及び第2の把持具フィンガ87を回転させることができる、第1の把持具フィンガ86及び第2の把持具フィンガ87に対する基準回転位置としての役割を果たし得る。この基準回転位置から、第1の把持具フィンガ86及び第2の把持具フィンガ87を所望の回転位置まで回転させることができる。
【0072】
当然ながら、把持具8は、ハプティック11が規則的な向きに配置されたIOL1を確実にピックアップするのに特に適している(すなわち、ハプティック11は、図1の左側のレンズキャリア2上に配置されたIOL1について示すように配置されている)。しかしながら、把持具8はまた、ハプティック11が不規則な向きに配置されたIOL1を確実にピックアップするのに特に適している(すなわち、ハプティック11は、図1の右側のレンズキャリア2上に配置されたIOL1について示すように、曲げられ又は屈曲されている)。これについて、図27及び図28を用いて以下に説明する。
【0073】
図27は、第1の把持具フィンガ86の吸引ポート860及び第2の把持具フィンガ87の吸引ポート870のレンズ取付面にIOL1のハプティック11が取り付けられたIOL1を示す。この場合、IOL1のハプティック11は、図1の左側のレンズキャリア2上のIOL1について示すように、規則的な向きに配置されている。カメラ52がIOL1の画像を撮像したときに、画像解析が行われ、この画像解析からIOL1のハプティック11の回転向きが決定される。ハプティック11が規則的な向きに配置されている場合、カメラ52と把持具8とに結合された制御ユニット(図示せず)は、IOL1が位置する(x-y平面内の)位置まで把持具8を移動させる。第1の把持具フィンガ86の吸引ポート860がIOL1の関連するハプティック11の向きと一致する所与の向きを有する図27に示す回転向きまで、第1の把持具フィンガ86を回転させる。これを達成するために、制御ユニットは、第1の回転モータ84を駆動し、それによって、吸引ポート860が、関連するハプティック11の向きと一致する所与の向きを有するまで、(上で詳細に説明したような磁気クラッチを用いて)第1の把持具フィンガ86を回転させる。同様に、制御ユニットは、第2の回転モータ85を駆動し、それによって、吸引ポート870が、関連するハプティック11の向きと一致する所与の向きを有するまで、(上で詳細に説明したような磁気クラッチを再び用いて)第2の把持具フィンガ87を回転させる。この向きでは、2つの吸引ポート860及び870間の距離eは、約9.8mmであり得、この距離は、いずれの場合も、把持されるIOL1の光学本体10の直径よりも大きいので、IOL1は、ハプティック11においてのみ把持され得る)。概して、この距離eは5mm~17mmの範囲であり、より好ましくは、距離eは8mm~12mmの範囲である。そのため、カメラ52(図4を参照)が、キャリア上に配置されたIOL1の画像を撮影した時点で、IOL1の光学本体10の中心が、画像処理ソフトウェアを用いて決定され得、次いで、ハプティック11の回転向きも決定される。その後、第1の把持具フィンガ86及び第2の把持具フィンガ87をハプティック11の回転向きまで回転させる。
【0074】
分かるように、この実施形態では、距離eは、固定されず、吸引ポート860及び吸引ポート870の回転向きに応じて変化し得る。次に、吸引ポート860及び吸引ポート870が各々、関連するハプティック11の上方に短い距離(例えば、0.05mm~0.5mm、好ましくは0.15mm)をおいて配置されるまで、把持具8を下降させる。その後、制御弁53を用いて圧力供給コネクタ82に真空が供給され、その結果、IOL1のハプティック11が、それぞれ、吸引ポート860のレンズ取付面と吸引ポート870のレンズ取付面に吸着され、したがってIOL1がピックアップされる。IOL1が把持された場合には、IOL1が把持されていない場合と比較して、実際に加えられた真空が高まるので、IOL1が把持されたことを検出することができる。次に、IOL1が取り付けられた(IOL1がハプティック11においてのみ把持された)把持具8を再び上昇させ、続いてレンズキャリア3の位置(x-y平面内)まで移動させる(図1)。次いで、吸引ポート860及び吸引ポート870がキャリア3の上方に短い距離をおいて配置されるまで、把持具8を再び下降させる。その後、圧力供給コネクタ82への過圧の供給を通じて、IOL1が把持具8から取り外され、この供給は、制御弁53によって再び制御される。
【0075】
これは、図1の右側のレンズキャリア2上に配置されたIOL1について示すように、ハプティック11が不規則な向きに配置されたIOL1に対しても同様に行うことができる。これは図28から明らかである。図1の右側のレンズキャリア2上に配置されたIOL1のハプティック11の向きは、図1の左側のレンズキャリア2上に配置されたIOL1のハプティック11の規則的な向きと異なるため、第1の把持具フィンガ86の吸引ポート860及び第2の把持具フィンガ87の吸引ポート870が、図1の右側に示すレンズキャリア2上に配置されたIOL1の関連するハプティック11の向きと一致する所要の向きを有するように、把持具8の第1の把持具フィンガ86及び第2の把持具フィンガ87を異なる回転向きまで(すなわち、不規則な回転向きまで)回転させなければならない。この回転は、ここでもまた、ハプティック11が不規則な向きで配置されたIOL1の画像を撮像するカメラ52を用いて、IOL1のハプティック11の不規則な回転向きを決定するために行われる画像解析を通じて行われる。分かるように、この向きでは、2つの吸引ポート860及び870間の距離eは約9.8mmであり得る。第1の把持具フィンガ86の吸引ポート860及び第2の把持具フィンガ87の吸引ポート870を所要の向きまで回転させた時点で、把持具8を下降させ、圧力供給コネクタ82に真空が供給され、その結果、IOLのハプティック11がそれぞれの吸引ポートのレンズ取付面に吸着され、したがってIOL1がピックアップされる。次いで、IOL1が取り付けられた(IOL1が、ここでもまた、不規則な向きを依然として有するハプティック11においてのみ把持された)把持具8をレンズキャリア3まで移動させる(図1)。レンズキャリア3へのIOL1の移動中に、把持具8を上昇させた後に、又は把持具8がレンズキャリア3の上方の位置に到達した時点で、但し、いずれの場合も、把持具8からIOL1を放出する前に、IOL1のハプティック11が規則的な向きを有するように、第1の把持具フィンガ86及び第2の把持具フィンガ87を再び回転させる。その後、把持具8を下降させ、供給コネクタ82への過圧の供給を通じて、IOL1が把持具8から取り外され、レンズキャリア3上に載置され、この供給は、制御弁53によって再び制御される。
【0076】
本発明の実施形態について、図面を用いて説明してきた。しかしながら、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、むしろ、本発明の基礎となる教示から逸脱することなく多くの変更及び修正が可能である。それゆえ、保護範囲は、説明した実施形態に限定されるものではなく、むしろ、添付の特許請求の範囲によって定義される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
【国際調査報告】