(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-05
(54)【発明の名称】予測グルコース管理のためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/372 20210101AFI20240829BHJP
A61B 5/37 20210101ALI20240829BHJP
A61B 5/1473 20060101ALI20240829BHJP
A61B 5/1455 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
A61B5/372
A61B5/37
A61B5/1473
A61B5/1455
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024507098
(86)(22)【出願日】2022-08-30
(85)【翻訳文提出日】2024-02-06
(86)【国際出願番号】 US2022075695
(87)【国際公開番号】W WO2023034820
(87)【国際公開日】2023-03-09
(32)【優先日】2021-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515158308
【氏名又は名称】ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ レランド スタンフォード ジュニア ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ファン, ユーハオ
(72)【発明者】
【氏名】ハルパーン, ケイシー
(72)【発明者】
【氏名】パーカー, ジョナサン
(72)【発明者】
【氏名】シヴァチャラン, ラジャット
(72)【発明者】
【氏名】ワン, ジェフリー ビー.
【テーマコード(参考)】
4C038
4C127
【Fターム(参考)】
4C038KK10
4C038KL01
4C038KL05
4C038KL07
4C038KX01
4C127AA03
4C127AA10
4C127BB05
4C127GG11
(57)【要約】
本発明の実施形態による、予測グルコースのためのシステムおよび方法が、図示される。一実施形態は、脳信号レコーダと、コントローラとを含む、グルコース管理デバイスを含み、コントローラは、プロセッサと、メモリとを含み、メモリは、グルコース監視アプリケーションを含有し、グルコース監視アプリケーションは、脳信号レコーダを使用して、ユーザの脳の脳活動信号を記録することと、脳活動信号をデコーディングし、患者の将来的グルコースレベルを予測することとを行うようにプロセッサに指示するように構成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
グルコース管理デバイスであって、前記グルコース管理デバイスは、
脳信号レコーダと、
コントローラと
を備え、
前記コントローラは、
プロセッサと、
メモリと
を備え、
前記メモリは、グルコース監視アプリケーションを含有し、前記グルコース監視アプリケーションは、
前記脳信号レコーダを使用して、ユーザの脳の脳活動信号を記録することと、
前記脳活動信号をデコーディングし、患者の将来的グルコースレベルを予測することと
を行うように前記プロセッサに指示するように構成される、グルコース管理デバイス。
【請求項2】
前記グルコース監視アプリケーションはさらに、推定されるグルコースレベルが閾値を上回って上昇するとき、警告を提供するように前記プロセッサに指示する、請求項1に記載のグルコース管理デバイス。
【請求項3】
前記脳信号レコーダは、脳波記録(EEG)デバイス、機能的近赤外線分光法(fNIRS)デバイス、皮質脳波記録(ECoG)デバイス、脳深部刺激デバイス、および脳磁図(MEG)デバイスから成る群から選択される、請求項1に記載のグルコース管理デバイス。
【請求項4】
前記脳活動信号をデコーディングするために、前記グルコース監視アプリケーションはさらに、前記脳活動信号を頭蓋内活動のスペクトルプロファイル上で訓練された多変量デコーダに提供するように前記プロセッサに指示する、請求項1に記載のグルコース管理デバイス。
【請求項5】
前記脳活動信号は、広帯域脳活動のスペクトルプロファイルを記述する、請求項1に記載のグルコース管理デバイス。
【請求項6】
前記グルコース監視アプリケーションはさらに、グルコースレベルを所望の療法範囲内で管理するために、予測される将来的グルコースレベルに基づいて、療法を前記ユーザに送達するように前記プロセッサに指示する、請求項1に記載のグルコース管理デバイス。
【請求項7】
前記療法は、インスリンポンプを介して前記ユーザに提供される、インスリンである、請求項6に記載のグルコース管理デバイス。
【請求項8】
前記療法は、脳刺激である、請求項6に記載のグルコース管理デバイス。
【請求項9】
前記グルコース監視アプリケーションはさらに、
前記予測される将来的グルコースレベルを前記メモリ内に記憶することと、
グルコースモニタから受信される、測定されたグルコースレベルに基づいて、前記予測される将来的グルコースレベルを検証することと
を行うように前記プロセッサに指示する、請求項1に記載のグルコース管理デバイス。
【請求項10】
前記グルコースレベルは、血液グルコースレベルおよび間質グルコースレベルから成る群から選択される、請求項1に記載のグルコース管理デバイス。
【請求項11】
グルコースレベルを管理する方法であって、前記方法は、
脳信号レコーダを使用して、ユーザの脳の脳活動信号を記録することと、
前記脳活動信号をデコーディングし、患者の将来的グルコースレベルを予測することと
を含む、方法。
【請求項12】
推定されるグルコースレベルが閾値を上回って上昇するとき、警告を提供することをさらに含む、請求項11に記載のグルコースレベルを管理する方法。
【請求項13】
前記脳信号レコーダは、脳波記録(EEG)デバイス、機能的近赤外線分光法(fNIRS)デバイス、皮質脳波記録(ECoG)デバイス、脳深部刺激デバイス、および脳磁図(MEG)デバイスから成る群から選択される、請求項11に記載のグルコースレベルを管理する方法。
【請求項14】
前記脳活動信号をデコーディングすることは、前記脳活動信号を多頭蓋内活動のスペクトルプロファイル上で訓練された変量デコーダに提供することを含む、請求項11に記載のグルコースレベルを管理する方法。
【請求項15】
前記脳活動信号は、広帯域脳活動のスペクトルプロファイルを記述する、請求項11に記載のグルコースレベルを管理する方法。
【請求項16】
グルコースレベルを所望の療法範囲内で管理するために、予測される将来的グルコースレベルに基づいて、療法を前記ユーザに送達することをさらに含む、請求項11に記載のグルコースレベルを管理する方法。
【請求項17】
前記療法は、インスリンポンプを介して前記ユーザに提供される、インスリンである、請求項16に記載のグルコースレベルを管理する方法。
【請求項18】
前記療法は、脳刺激である、請求項16に記載のグルコースレベルを管理する方法。
【請求項19】
前記予測される将来的グルコースレベルを前記メモリ内に記憶することと、
グルコースモニタから受信される、測定されたグルコースレベルに基づいて、前記予測される将来的グルコースレベルを検証することと
をさらに含む、請求項11に記載のグルコースレベルを管理する方法。
【請求項20】
前記グルコースレベルは、血液グルコースレベルおよび間質グルコースレベルから成る群から選択される、請求項11に記載のグルコースレベルを管理する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、米国特許法第119条(e)下、「Systems, Methods, and Composition of Decoding Glucose Using Brain Activity」と題され、2021年8月30日に出願された、米国仮特許出願第63/238,583号の利益および優先権を主張する。米国仮特許出願第63/238,583号の開示は、あらゆる目的のために、参照することによってその全体として本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、概して、脳活動に基づく、患者内の将来的グルコースレベルの予測と、該予測に基づく、先を見越した管理とに関する。
【背景技術】
【0003】
(背景)
グルコースは、あらゆる既知の生命にとって必須エネルギー源である、単糖である。グルコースレベルは、典型的には、2つの異なる測定値に分割される。血液グルコースは、血液中のグルコースの測定値であって、概して、静脈血漿レベルとして測定され、血液が毛細管系を通して循環するにつれて、グルコースの一部が、血漿から間質液に拡散するため、動脈血液中で3~5mg/mL未満である傾向にある。間質グルコースは、対照的に、身体の間質液中のグルコースの測定値である。間質グルコースおよび血液グルコース測定値は、多くの場合、同時に測定される場合でも、実質的に異なる。
【0004】
高血糖症は、患者が過剰な量のグルコースを血液血漿中に有する、医療症状である。これは、典型的には、200mg/dLより高い血液グルコース読取値を指す。糖尿病は、患者が長時間周期にわたって高血糖症を有する、代謝性障害の群である。深刻な合併症が、長期または顕著な高血糖症の間に生じ得る。糖尿病は、十分なインスリンを産生しない膵臓またはインスリンに適切に応答しない身体の細胞に起因する。低血糖症は、患者がグルコースを血液血漿中に殆ど有していない、正反対の医療症状であって、これは、生理学的変化によって緩衝され得るが、深刻な症例では、昏睡、発作、および死亡さえもたらし得る。
【0005】
持続的グルコースモニタ(CGM)は、間質グルコースレベルを周期的に測定する、皮膚下に挿入される、小型のセンサである。CGMは、データを記録し、それを記憶し、かつ危険な間質グルコースレベルが検出される場合、アラームを発報することができる。典型的には、CGMは、指先穿刺血液試験と併用され、患者治療決定を誘導する。
【0006】
脳活動は、脳内で生じている、活動電位を指す。脳活動は、多様な異なる測定値技法を使用して、記録されることができ、これは全て、脳活動に関する異なるビューを生産する。例えば、脳波(EEG)は、脳の表面の中または上に埋め込まれる、電極センサを使用する、皮質脳波記録(ECoG)を介して記録される、脳活動と比較して、より低い分解能方式において、頭皮上の電極センサを使用して、脳内の電気信号を記録する。さらになお、脳の中に埋め込まれる、電極は、数千および数万個ものニューロン(局所電場電位)または単一または小群の系列のニューロン(いわゆる単一またはマルチユニット記録)のさらにより高い空間分解能を有し得る。マイクロ電極アレイまたは単一電極が、脳構造の中に埋め込まれ、特定の着目領域内の個々の活動電位(または「急増」)を記録することができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の要約)
本発明の実施形態による、予測グルコースのためのシステムおよび方法が、図示される。一実施形態は、脳信号レコーダと、コントローラとを含む、グルコース管理デバイスを含み、コントローラは、プロセッサと、メモリとを含み、メモリは、グルコース監視アプリケーションを含有し、グルコース監視アプリケーションは、脳信号レコーダを使用して、ユーザの脳の脳活動信号を記録することと、脳活動信号をデコーディングし、患者の将来的グルコースレベルを予測することとを行うようにプロセッサに指示するように構成される。
【0008】
別の実施形態では、グルコース監視アプリケーションはさらに、推定されるグルコースレベルが閾値を上回って上昇するとき、警告を提供するようにプロセッサに指示する。
【0009】
さらなる実施形態では、脳信号レコーダは、脳波記録(EEG)デバイス、機能的近赤外線分光法(fNIRS)デバイス、皮質脳波記録(ECoG)デバイス、脳深部刺激デバイス、および脳磁図(MEG)デバイスである。
【0010】
さらに別の実施形態では、脳活動信号をデコーディングするために、グルコース監視アプリケーションはさらに、脳活動信号を頭蓋内活動のスペクトルプロファイル上で訓練された多変量デコーダに提供するようにプロセッサに指示する。
【0011】
なおもさらなる実施形態では、脳活動信号は、広帯域脳活動のスペクトルプロファイルを記述する。
【0012】
さらに別の実施形態では、グルコース監視アプリケーションはさらに、グルコースレベルを所望の療法範囲内で管理するために、予測される将来的グルコースレベルに基づいて、療法をユーザに送達するようにプロセッサに指示する。
【0013】
さらに別の実施形態では、療法は、インスリンポンプを介してユーザに提供される、インスリンである。
【0014】
別の付加的実施形態では、療法は、脳刺激である。
【0015】
さらなる付加的実施形態では、グルコース監視アプリケーションはさらに、予測される将来的グルコースレベルをメモリ内に記憶し、グルコースモニタから受信される、測定されたグルコースレベルに基づいて、予測される将来的グルコースレベルを検証するようにプロセッサに指示する。
【0016】
再び、別の実施形態では、グルコースレベルは、血液グルコースレベルおよび間質グルコースレベルから成る群から選択される。
【0017】
再び、さらなる実施形態では、グルコースレベルを管理する方法は、脳信号レコーダを使用して、ユーザの脳の脳活動信号を記録することと、脳活動信号をデコーディングし、患者の将来的グルコースレベルを予測することとを含む。
【0018】
なおもさらに別の実施形態では、本方法はさらに、推定されるグルコースレベルが閾値を上回って上昇するとき、警告を提供することを含む。
【0019】
さらに別のさらなる実施形態では、脳信号レコーダは、脳波記録(EEG)デバイス、機能的近赤外線分光法(fNIRS)デバイス、皮質脳波記録(ECoG)デバイス、脳深部刺激デバイス、および脳磁図(MEG)デバイスから成る群から選択される。
【0020】
さらに別の付加的実施形態では、本方法はさらに、脳活動信号を多頭蓋内活動のスペクトルプロファイル上で訓練された変量デコーダに提供することを含む、脳活動信号をデコーディングすることを含む。
【0021】
なおもさらに付加的実施形態では、脳活動信号は、広帯域脳活動のスペクトルプロファイルを記述する。
【0022】
再び、さらに別の実施形態では、本方法はさらに、グルコースレベルを所望の療法範囲内で管理するために、予測される将来的グルコースレベルに基づいて、療法をユーザに送達することを含む。
【0023】
再び、なおもさらなる実施形態では、療法は、インスリンポンプを介してユーザに提供される、インスリンである。
【0024】
さらに別の付加的実施形態では、療法は、脳刺激である。
【0025】
なおもさらに付加的実施形態では、本方法はさらに、予測される将来的グルコースレベルをメモリ内に記憶することと、グルコースモニタから受信される、測定されたグルコースレベルに基づいて、予測される将来的グルコースレベルを検証することとを含む。
【0026】
再び、さらに別の実施形態では、グルコースレベルは、血液グルコースレベルおよび間質グルコースレベルから成る群から選択される。
【0027】
再び、なおもさらに別の実施形態では、グルコースレベルを予測可能に管理するためのシステムは、脳活動レコーダと、グルコースモニタと、インスリンポンプと、コントローラとを含み、コントローラは、脳活動レコーダを使用して、ユーザの脳活動を記録することと、記録された脳活動に基づいて、患者の将来的高血糖性状態を予測することと、予測される高血糖性状態を回避するために、インスリンを送達するようにインスリンポンプに指示することとを行うように構成される。
【0028】
付加的実施形態および特徴は、部分的に、続く説明に記載され、部分的に、明細書の検討に応じて、当業者に明白となり、本発明の実践によって把握され得る。本発明の本質および利点のさらなる理解は、明細書の残りの部分および本開示の一部を形成する図面を参照することによって実現され得る。
【図面の簡単な説明】
【0029】
説明および請求項は、本発明の例示的実施形態として提示され、本発明の範囲の完全な列挙として解釈されるべきではない、以下の図およびデータグラフを参照することによって、より完全に理解されるであろう。
【0030】
【
図1】
図1は、本発明のある実施形態による、予測グルコース管理システムを図示する。
【0031】
【
図2】
図2は、本発明のある実施形態による、コントローラのためのブロック図を図示する。
【0032】
【
図3】
図3は、本発明のある実施形態による、グルコースレベルを管理するためのプロセスのフローチャートである。
【0033】
【
図4】
図4は、本発明のある実施形態による、グルコースレベルを予測するためのプロセスのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
(詳細な説明)
代謝性症候群および糖尿病は、ますます広く認められている健康症状であって、現在、我々の世界的人口において、より広範な年齢範囲に影響を及ぼしている。具体的には、糖尿病と関連付けられる、有意な罹患率および死亡率は、疾患自体に関する医療支出および疾患進行と関連付けられる障害からの労働力生産性の損失の形態における、個人的および社会的の両方における広範なコストを含む、保健医療システム上の大きな被害をもたらしている。故に、糖尿病およびその後続合併症の発症を防止するための能力は、介入のための公衆衛生の影響力の大きな分野である。加えて、食事挙動および身体の代謝と体重の平衡の生理学的調整は、ホルモン信号伝達および挙動の複雑な交互作用を伴う。本文脈では、血液グルコースレベルの注意深い監視および制御は、低および高血糖症の両方の合併症を防止するための最良かつ最も信頼性がある方法のうちの1つであることが示されている。
【0035】
血液グルコースを制御することは、糖尿病の範囲を超えて重要であって、入院および重症患者における高および低血糖症は両方とも、増加されたコスト、入院期間、罹患率、および死亡率と関連付けられる。患者、特に、集中治療室に収容される者は、深刻な傷害および病気、例えば、外傷性脳損傷(TBI)、頭蓋内出血、脳卒中、くも膜下出血(SAH)、および多くのその他の結果として、ストレス関連高血糖症に悩まされ得る。保守的糖血症制御は、これらの患者におけるより良好な転帰と関連付けられている。
【0036】
現行型の持続的グルコースモニタ(CGM)は、血液グルコースレベルの代替的指標として、間質グルコース測定値に依拠し、これは、固有の遅延時間を有し、投薬療法および極限血液グルコース値によって、干渉を被る。従来のCGMはまた、異常グルコースレベルを予測することが不可能である、すなわち、反応性モダリティとして、それらは、異常がすでに生じてからのみ、低または高血糖症に応答することができる。加えて、深刻な疾患を患う患者は、持続的インスリン注入を含む、従来の治療オプションが無効である、慢性的に上昇したグルコースレベルを有し得る。本明細書に説明されるシステムおよび方法は、続く数時間以内に生じるであろう、患者のグルコースレベルを予測することによって、これらの限界を是正することを模索する。本情報を使用して、先を見越した治療が、有害なグルコースレベルが生じることを回避するために、患者に送達されることができる。
【0037】
多くの実施形態では、本明細書に説明される予測グルコース管理(PGM)システムおよび方法は、患者の将来的グルコースレベルを予測するために、脳活動をデコーディングする。様々な実施形態では、脳活動は、本発明の実施形態の具体的用途の要件に見合うように、脳波記録(EEG)、機能的近赤外線分光法(fNIRS)、脳磁図(MEG)、または任意の他のモダリティ等の非侵襲性モダリティを使用して、測定される。しかしながら、脳活動は、利用可能である場合、(限定ではないが)深部脳刺激(DBS)システムまたはECoG等の頭蓋内センサを使用して、記録されることができる。種々の実施形態では、PGMシステムは、装着可能である、または別様に、臨床設定外の患者の生活に対して低侵襲性である。
【0038】
多数の実施形態では、本明細書に説明されるシステムおよび方法は、グルコースレベルの閉ループ管理を伴い、先を見越した治療が、高または低血糖症を回避するために、患者に提供される。例えば、患者は、将来的グルコース変化を見越して、本発明の実施形態の具体的用途の要件に見合うように、長時間作用型インスリン、インスリン類似物、および/または任意の他の高血糖症制御薬物を送達され得る。さらなる実施例として、脳刺激が、脳内のグルコースエンコーディングネットワークを擾乱させ、続く数時間にわたる血液グルコースレベルを改変するために、提供されてもよい。脳刺激は、本発明の実施形態の具体的用途の要件に見合うように、埋込場所に応じて、すでに埋め込まれているDBS電極、任意の他のタイプの埋込型電極によって、または(限定ではないが)経頭蓋磁気刺激(TMS)、経頭蓋直流電流刺激(tDCS)、経頭蓋集束超音波(tFUS)、および/または任意の他のモダリティ等の非侵襲性脳刺激モダリティを介して、提供されてもよい。種々の実施形態では、脳刺激モダリティは、患者が標準的治療が無効であるとき、インスリンの補助として利用されてもよい。PGMシステムアーキテクチャが、下記にさらに詳細に議論される。
【0039】
(予測グルコース管理システム)
PGMシステムは、脳活動を記録およびデコーディングし、続く数時間以内の患者の可能性が高いグルコースレベルを推定する。典型的には、予測は、少なくとも2~8時間にわたって、正確であるが、患者および症状に応じて、本数は、増加し得る。多くの実施形態では、PGMシステムは、これらの予測を患者および/または医療専門家に提供する。しかしながら、種々の実施形態では、PGMシステムはさらに、グルコースレベルの予測される有害な変化を回避するために、将来的グルコースレベルを持続的に予測し、治療(例えば、薬物送達率、脳刺激等)を改変することによって、閉ループグルコースレベル制御が可能である。このように、PGMは、優れたグルコース管理能力を伴う、人工膵臓システムとしての性能を果たすことができる。いくつかの実施形態では、患者および/または医療専門家の認可が、治療がPGMによって送達および/または修正される前に、要求される。
【0040】
ここで
図1に目を向けると、本発明のある実施形態による、例示的PGMシステムアーキテクチャが、図示される。PGMシステム100は、脳活動レコーダ110を含む。図示される実施形態では、脳活動レコーダ110は、深部脳刺激システムである。しかしながら、容易に理解され得るように、上記に議論されるように、非侵襲性であるものを含む、任意の脳活動レコーダが、使用されることができる。いくつかの実施形態では、脳活動レコーダは、埋込型デバイスではなく、装着可能デバイスである。PGMシステム100はさらに、CGM120を含む。多くの実施形態では、CGMは、正確な間質血液グルコース予測を持続的に確認するために使用され、さらに、冗長警告モダリティとして作用してもよい。しかしながら、CGMは、本発明の実施形態の具体的用途の要件に見合うように、全てのPGMシステム内に存在しなくてもよい。
【0041】
コントローラ130は、脳活動レコーダ110、CGM120、およびインスリン注入ポンプ140と通信可能に結合される。多くの実施形態では、異なる構成要素間の通信は、直接ではなくてもよい。例えば、脳活動レコーダは、直接、コントローラと通信するのではなく、データをCGMに提供してもよく、これは、ひいては、コントローラに提供される。実際、当業者が理解するであろうように、任意の通信アーキテクチャが、本発明の範囲または精神から逸脱することなく、使用されることができる。
【0042】
多数の実施形態では、コントローラは、記録された脳活動を処理し、患者のグルコースレベルに関する予測を発生させる。コントローラは、間質または血液グルコースレベルのうちの1つのみに関する予測を提供してもよい。いくつかの実施形態では、間質および血液グルコースレベル予測の両方が、算出される。さらに、コントローラは、様々なコンピューティングプラットフォームのいずれかを使用して実装されてもよい。種々の実施形態では、コントローラは、スマートフォン、スマートウォッチ、タブレットコンピュータ、パーソナルコンピュータ、および/または任意の他の個人的装着可能デバイスである。いくつかの実施形態では、コントローラは、医療デバイスまたは医療サーバシステム、例えば、病院コンピュータネットワーク、またはクラウド医療システムの中に統合されてもよい。
【0043】
種々の実施形態では、インスリン注入ポンプは、コントローラによって決定付けられるように、インスリンを可変に注入することができる。さらに、インスリンではなく、他の薬物が、患者の必要性に応じて、類似注入ポンプを介して、提供されてもよい。容易に理解され得るように、多くのPGMシステムは、薬物送達が特定の患者にとって推奨されない場合、任意の注入ポンプを含まなくてもよい。同様に、PGMはさらに、脳刺激を代替治療として送達するための方法を含んでもよい。種々の実施形態では、脳活動レコーダはまた、脳刺激デバイスとして機能してもよい。実際、任意の数の異なるPGMシステムアーキテクチャが、本発明の実施形態の具体的用途の要件に見合うように、具体的患者の必要性に応じて、使用されることができる。
【0044】
ここで
図2に目を向けると、本発明のある実施形態による、コントローラのためのブロック図が、図示される。コントローラ200は、プロセッサ210を含む。多くの実施形態では、プロセッサは、(限定ではないが)中央処理ユニット(CPU)、グラフィック処理ユニット(GPU)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、特定用途向け集積回路(ASIC)、および/またはそれらの任意の組み合わせ等、命令を実行することが可能である、論理回路である。多くの実施形態では、1つを上回るプロセッサが、使用されることができる。コントローラ200はさらに、入力/出力(I/O)インターフェース220を含む。I/Oインターフェースは、有線または無線接続を介して、(限定ではないが)ディスプレイ、スピーカ、CGM、脳活動レコーダ、刺激デバイス、注入ポンプ、携帯電話、医療デバイス、コンピュータ、および/または任意の他の構成要素等の異なるPGMシステム構成要素および/または第三者構成要素と通信するために使用されることができる。
【0045】
コントローラ200はさらに、メモリ230を含む。メモリ230は、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、またはそれらの任意の組み合わせから作製されることができる。メモリ230は、グルコース管理アプリケーション232を含有する。グルコース管理アプリケーションは、プロセッサに、本明細書に説明されるような種々のPGMプロセスを行うように指示することができる。多くの実施形態では、メモリ230はさらに、脳活動レコーダから取得される、脳活動データを含有する。脳活動データは、信号または信号のセットとして、脳活動を記述することができる。いくつかの実施形態では、脳活動データは、センサ電極によって記録される、波形を含む。種々の実施形態では、1つ以上の波形は、電極(「チャネル」)毎に記録される。いくつかの実施形態では、脳活動データは、広帯域脳活動のスペクトルプロファイルを記述する。様々な実施形態では、グルコース管理アプリケーションは、脳活動データのための多変量デコーダとして作用するようにプロセッサを構成する。容易に理解され得るように、コントローラは、本発明の範囲または精神から逸脱することなく、類似コンピューティング構成要素を使用して、異なるように製造されることができる。PGMプロセスが、下記にさらに詳細に議論される。
【0046】
(予測グルコース管理)
PGMプロセスは、患者の将来的グルコースレベルを予測するために、脳活動の収集および使用を伴う。多数の実施形態では、治療推奨または治療自体が、グルコースレベルをより健康な範囲に安定させるために、高または低血糖症の予測によってトリガされることができる。末梢グルコースレベルは、主として、概日リズム動態に従う傾向にあり、複数の脳領域を横断して、頭蓋内高周波数活動(HFA、70~170Hz)に著しく一貫する。したがって、全体的脳活動は、予測モデル化プロセスにおいて使用されることができる。いくつかの実施形態では、視床下部、扁桃体、および海馬等の公知のグルコースセンサからの脳活動データが、他の領域および/または全体的脳からの脳活動の代わりに、またはそれと併せて、使用される。
【0047】
1つ以上の脳活動レコーダから生じるデータを処理するために、機械学習モデルが、訓練されることができる。いくつかの実施形態では、訓練プロセスは、その上で訓練されたモデルが使用されるであろう、患者から入手されたデータを使用して、実施される。種々の実施形態では、モデルは、標準化データ上で事前に訓練されることができ、訓練は、患者データを使用して、完了されることができる。種々の実施形態では、モデルは、CGMを使用して測定されるように、予測および後続検証を使用して、持続的に精緻化される。線形モデルは、多くの場合、より現代の機械学習モデルほど予測的ではないと見なされるが、多くの実施形態では、線形モデルは、正確な予測のために十分である。しかしながら、種々の実施形態では、本発明の実施形態の具体的用途の要件に見合うように、(限定ではないが)他のタイプの回帰モデル、ニューラルネットワーク、およびその他等のより複雑な予測機械学習モデルが、使用されることができる。
【0048】
ここで
図3に目を向けると、本発明のある実施形態による、グルコースレベルを予測可能に管理するためのPGMプロセスのためのフローチャートが、図示される。プロセス300は、脳活動レコーダを使用して、脳活動を記録すること(310)と、脳活動データを訓練された予測モデルに提供すること(320)とを含む。予測モデルは、将来的グルコースレベルを予測する(330)。多くの実施形態では、予測の確実性は、将来的に、予測が行われる度にさらに減少し得る。種々の実施形態では、複数の予測が、異なる時点で提供され、医療専門家によって判定されるような所定の信頼度閾値を上回るもののみが、使用される。いくつかの実施形態では、絶対限界が、予測が行われる上限に関して設定される。低および/または高血糖性状態が、予測される場合、医療介入が、それぞれ、グルコースレベルにおける、非健康的急落または急増を回避するために、提供される(340)。種々の実施形態では、医療介入は、例えば、注入ポンプの制御を介して、および/または脳刺激を介して、自動的に提供される。種々の実施形態では、非健康的グルコースレベルが予測されることの警告が、患者および/または医療専門家に提供される。いくつかの実施形態では、確認が、医療介入が提供される前に、要求される。
【0049】
特定のプロセスが、
図3に図示されるが、容易に理解され得るように、種々の修正が、本発明の範囲または精神から逸脱することなく、行われることができる。例えば、事前に記録された脳活動データが、予測を行うために提供および使用されることができる。さらに、介入は、全ての症例において、推奨または提供される必要はない。多くの状況では、単に、警告を有することが有益である。
【0050】
ここで
図4に目を向けると、本発明のある実施形態による、脳活動データに基づいてグルコースレベルを予測するためのPGMプロセスのフローチャートが、図示される。プロセス400は、全ての電極(またはセンサ)チャネルを横断して、特徴ベクトルを発生させること(410)を含む。多数の実施形態では、全てのチャネルを横断した全ての周波数帯域が、単一特徴ベクトルの中に平坦化される。最小絶対値縮小選択演算子(LASSO)モデルが、正則化(430)のために、特徴のサブセットを特徴ベクトルから選択するために使用される(420)。正則化された特徴は、訓練された機械学習モデルに提供され(440)、1つ以上の予測を生産する。多数の実施形態では、類似プロセスが、患者および/または他の患者からの標識された訓練データを使用して、モデルを訓練するために使用される。具体的機械学習モデルが、本明細書で議論されるが、多くの異なる機械学習モデルが、本発明の範囲または精神から逸脱することなく、使用されることができる。
【0051】
PGMの具体的方法が、上記に議論されるが、多くの異なる方法が、本発明の多くの異なる実施形態に従って、実装されることができる。したがって、本発明は、本発明の範囲および精神から逸脱することなく、具体的に説明されるもの以外の方法で実践されてもよいことを理解されたい。したがって、本発明の実施形態は、あらゆる点において、制限的ではなく、例証的と見なされるべきである。故に、本発明の範囲は、図示される実施形態によってではなく、添付の請求項およびそれらの均等物によって、判定されるべきである。
【国際調査報告】