(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-05
(54)【発明の名称】非対称(メタ)アクリレート官能性ジシロキサンを作製するための方法
(51)【国際特許分類】
C07F 7/08 20060101AFI20240829BHJP
【FI】
C07F7/08 X
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024507941
(86)(22)【出願日】2022-07-21
(85)【翻訳文提出日】2024-02-07
(86)【国際出願番号】 US2022073980
(87)【国際公開番号】W WO2023023435
(87)【国際公開日】2023-02-23
(32)【優先日】2021-08-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100217663
【氏名又は名称】末広 尚也
(72)【発明者】
【氏名】チョウ、シアオユアン
(72)【発明者】
【氏名】ジョフル、エリック
【テーマコード(参考)】
4H049
【Fターム(参考)】
4H049VN01
4H049VP02
4H049VQ30
4H049VQ78
4H049VR11
4H049VR22
4H049VR23
4H049VR41
4H049VS12
4H049VS30
4H049VU20
4H049VV20
4H049VW01
4H049VW02
4H049VW05
4H049VW33
(57)【要約】
共加水分解法が、(メタ)アクリル官能性シラン、ジオルガノヒドリドハロシラン、及び水から非対称(メタ)アクリレート官能性ジオルガノシロキサンを調製するために使用される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非対称(メタ)アクリレート官能性ジオルガノシロキサンを作製するための方法であって、
(1)単一反応器内で、出発物質であって、
(A)式R
1R
2
2SiXの(メタ)アクリル官能性シラン(式中、R
1は、(メタ)アクリルオキシアルキル基であり、各R
2は、独立して選択されるアルキル基であり、Xは、独立して、ハロゲン原子及びアルコキシ基からなる群から選択される)、
(B)式R
2
2HSiXのジオルガノヒドリドハロシラン(式中、各R
2は、独立して選択されるアルキルである)、及び
(C)水
から本質的になる出発物質を共加水分解し、
それにより、シロキサン層及び水層を含む生成物を形成することを含み、前記シロキサン層が、前記非対称(メタ)アクリレート官能性ジオルガノシロキサンを含む共加水分解生成物及び副生成物を含む、方法。
【請求項2】
(A)前記(メタ)アクリル官能性シラン及び(B)前記ジオルガノヒドリドハロシランが、ある期間にわたって(C)前記水に添加される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(1)が、>0~<10℃の温度で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
(2)工程(1)後に、前記シロキサン層と前記水層とを分離し、前記共加水分解生成物を水で洗浄することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
(3)工程(2)中又は工程(2)後に中和剤を添加することを更に含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記共加水分解生成物を乾燥させることを更に含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記共加水分解生成物をストリッピング又は蒸留することを更に含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
各R
1が、(メタ)アクリルオキシプロピルであり、各R
2が、メチルであり、各Xが、クロロ又はメトキシである、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記非対称(メタ)アクリレート官能性ジオルガノシロキサンが、式:
【化1】
(式中、R
2は、上記の通りであり、各R
3は、独立して、H及びメチルからなる群から選択され、各R
4は、独立して選択される二価炭化水素基である)
を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記副生成物が、
【化2】
又は両方の組み合わせ(式中、R
2は、上記の通りであり、各R
3は、独立して、H及びメチルからなる群から選択され、各R
4は、独立して選択される二価炭化水素基である)からなる群から選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
請求項1~5のいずれか一項に記載の方法によって調製された共加水分解生成物。
【請求項12】
請求項7に記載の方法によって調製された非対称(メタ)アクリレート官能性ジオルガノシロキサン。
【請求項13】
前記非対称(メタ)アクリレート官能性ジオルガノシロキサンが、式:
【化3】
(式中、R
2は、上記の通りであり、各R
3は、独立して、H及びメチルからなる群から選択され、各R
4は、独立して選択される二価炭化水素基である)
を有する、請求項12に記載の非対称(メタ)アクリレート官能性ジオルガノシロキサン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、米国特許法第119条(e)の下、2021年8月19日に出願された米国仮特許出願63/234,948号の利益を主張するものである。米国仮特許出願第63/234,948号は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、非対称(メタ)アクリレート官能性ジオルガノシロキサンを作製するための方法に関する。より具体的には、本発明は、α-ヒドリド,ω-(メタ)アクリル末端ジオルガノシロキサンオリゴマーを作製するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
序論
水素化ケイ素及びSiHMAなどの(メタ)アクリル官能基の両方を含有する非対称ジオルガノシロキサンは、フリーラジカル重合を受けることができるケイ素系及びケイ素修飾ポリマー並びに樹脂を生成するための多用途基本単位として有用である。これらのフリーラジカル重合性材料は、建築、自動車、ホームケア、及びパーソナルケアを含む多くの産業分野で使用することができる。
【0004】
SiHMAの調製方法は限られている。欧州特許第3387045(B1)号には、ヒドロシリル化反応触媒の存在下で、オルガノハイドロジェンシロキサンオリゴマーとカルボン酸アルケニルエステルとのヒドロシリル化反応を介してアクリレート官能性ジオルガノシロキサンを作製するための方法が開示されている。ヒドロシリル化反応触媒は、イリジウム錯体である。高価なヒドロシリル化反応用触媒を使用しない、SiHMAなどの非対称ジシロキサンを調製するための改善され、より安価な方法に対する業界の必要性が存在する。
【発明の概要】
【0005】
非対称(メタ)アクリレート官能性ジオルガノシロキサンを作製するための方法は、(A)式R1R2
2SiXの(メタ)アクリル官能性シラン(式中、各R1は、独立して選択される(メタ)アクリルオキシアルキル基であり、各R2は、独立して選択されるアルキル基であり、各Xは、独立して、ハロゲン及びアルコキシからなる群から選択される)と、(B)式R2
2HSiXのジオルガノヒドリドハロシラン(式中、R2及びXは、上記の通りである)と、(C)水と、を含む、出発物質の共加水分解を含む。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本明細書に記載の方法で使用される出発物質は、(A)式R1R2
2SiXの(メタ)アクリル官能性シラン(式中、R1は、(メタ)アクリルオキシアルキル基であり、各R2は、独立して選択されるアルキル基であり、Xは、ハロゲン又はアルコキシから選択される)と、(B)式R2
2HSiXのジオルガノヒドリドハロシランと、(C)水と、を含む。
【0007】
(A)(メタ)アクリル官能性シラン
(メタ)アクリル官能性シランは、式R1R2
2SiX(式中、R1は、独立して選択される(メタ)アクリルオキシアルキル基であり、各R2は、独立して選択されるアルキル基であり、各Xは、独立して、ハロゲン又はアルコキシから選択される)を有する。R1の(メタ)アクリルオキシアルキル基は、式:
【0008】
【化1】
(式中、R
3は、H及びメチルからなる群から選択され、R
4は、アルカン-ジイル基である)を有し得る。R
4の好適な基は、2~6個の炭素原子のアルカン-ジイル基であり得る。あるいは、R
4は、エタン-1,2-ジイル、プロパン-1,2-ジイル、プロパン-1,3-ジイル、ブタン-1,4-ジイル、若しくはヘキサン-1,6-ジイルであり得るか、又はR
4は、エタン-1,2-ジイル若しくはプロパン-1,3-ジイルであり得る。あるいは、R
1の(メタ)アクリルオキシアルキル基は、3-メタクリルオキシプロピル及び3-アクリルオキシプロピルからなる群から選択され得る。
【0009】
R2の一価炭化水素基は、アルキル基又はアリール基であり得る。R2の好適なアルキル基は、メチル、エチル、プロピル(例えば、イソプロピル及び/又はn-プロピル)、ブチル(例えば、イソブチル、n-ブチル、tert-ブチル、及び/又はsec-ブチル)、ペンチル(例えば、イソペンチル、ネオペンチル、及び/又はtert-ペンチル)、ヘキシル、並びに6個の炭素原子の分岐状飽和炭化水素基によって例示されるが、これらに限定されない。あるいは、R2のアルキル基は、メチル、エチル、又はプロピルであり得る。R2の好適なアリール基は、フェニル、トリル、キシリル、ベンジル、及び2-フェニルエチルによって例示されるが、これらに限定されない。あるいは、R2は、メチル基又はフェニル基であり得る。あるいは、各R2は、メチルであり得る。
【0010】
Xのハロゲンは、臭素(Br)、塩素(Cl)、フッ素(F)、及びヨウ素(I)からなる群から選択され得る。あるいは、Xは、Br、Cl、及びIからなる群から選択され得る。あるいは、Xは、Br、Cl、及びFからなる群から選択され得る。あるいは、Xは、Br及びClからなる群から選択され得る。あるいは、各Xは、Clであり得る。あるいは、Xは、1~4個の炭素原子のアルコキシ基などのアルコキシ基であり得る。あるいは、Xは、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、及びブトキシからなる群から選択され得る。
【0011】
出発物質(A)は、1つの(メタ)アクリル官能性シラン、又は少なくとも1つの特性、例えば、基R1の選択、基R2の選択、及び/又はXの選択において互いに異なる2つ以上の(メタ)アクリル官能性シランの組み合わせであり得る。(メタ)アクリル官能性シランは、当該技術分野において既知である。式
【0012】
【化2】
の3-メタクリルオキシプロピルジメチルクロロシラン及び式
【0013】
【化3】
の3-メタクリルオキシプロピルジメチルメトキシシランなどの(メタ)アクリル官能性シランは、Morrisville(Pennsylvania,USA)のGelest Inc.から市販されている。
【0014】
(B)ジオルガノヒドリドハロシラン
本方法で使用されるジオルガノヒドリドハロシランは、式R2
2HSiX(式中、R2及びXは、上記の通りである)を有する。好適なジオルガノヒドリドハロシランの例としては、ジメチルクロロシラン(Me2HSiCl)、ジメチルブロモシラン(Me2HSiBr)、ジエチルクロロシラン(Et2HSiCl)、及びジエチルブロモシラン(Et2HSiBr)が挙げられる。あるいは、ジオルガノヒドリドハロシランは、ジメチルジクロロシランであり得る。
【0015】
ジオルガノヒドリドハロシランは、当該技術分野において既知であり、直接法などの既知の方法によって作製され得、市販されている。例えば、ジメチルヒドリドクロロシランは、DSC及びGelest Inc.を含む様々な供給元から入手可能である。出発物質(B)は、1つのジオルガノヒドリドハロシラン、又は少なくとも1つの特性、例えば基R2の選択及び/又はXの選択において互いに異なる2つ以上のジオルガノヒドリドハロシランの組み合わせであり得る。
【0016】
出発物質(A)及び(B)の量は、各選択された種及び生成される所望の非対称(メタ)アクリレート官能性ジオルガノシロキサンの種を含む種々の要因に依存するが、(A)(メタ)アクリル官能性シラン及び(B)ジオルガノヒドリドハロシランの量は、1:1.2~1:3のモル比(A):(B)を提供するのに十分であり得る。あるいは、(A)及び(B)の量は、1:1~1:10のモル比(A):(B)を提供するのに十分であり得る。
【0017】
(C)水
本明細書に記載の方法において使用される水は、一般に限定されず、未希釈(すなわち、担体ビヒクル/溶媒が全く存在しない)及び/又は純粋(すなわち、鉱物及び/又は他の不純物を含まないか、若しくは実質的に含まない)状態で利用され得る。例えば、水は、上記のハロシラン、すなわち、出発物質(A)及び(B)との共加水分解反応の前に処理され得るか、又は未処理であり得る。水を精製するために使用され得るプロセスの例としては、蒸留、濾過、脱イオン化、及びそれらの2つ以上の組み合わせが挙げられ、これによって、水が、脱イオン化、蒸留、及び/又は濾過され得る。あるいは、水は、未処理であり得る(例えば、水道水、すなわち、都市用水系によって提供されるか、又は更なる精製無しで使用される井戸水であり得る)。あるいは、水は、ハロシランとの共加水分解反応の前に精製され得る。
【0018】
水は、様々な要因、例えば、選択されるハロシラン(A)及び(B)の具体的な種、採用される反応パラメータ、並びに反応のスケール(例えば、共加水分解される出発物質(A)及び(B)の総量)に応じて当業者によって選択される任意の量で利用され得る。
【0019】
共加水分解生成物
上記の方法によって調製される共加水分解生成物中の非対称(メタ)アクリレート官能性ジオルガノシロキサンは、式:
【0020】
【化4】
(式中、R
2、R
3、及びR
4は、上記の通りである)を有し得る。
【0021】
共加水分解生成物は、
【0022】
【化5】
又は両方の組み合わせ(式中、R
2、R
3、及びR
4は、上記の通りである)からなる群から選択される副生成物を更に含み得る。
【0023】
方法の工程
非対称(メタ)アクリレート官能性ジオルガノシロキサンを作製するための方法は、(1)単一反応器内における出発物質の共加水分解であって、出発物質が、(A)(メタ)アクリル官能性シラン、(B)ジオルガノヒドリドハロシラン、及び(C)水から本質的になり、それにより、非対称(メタ)アクリレート官能性ジオルガノシロキサン及び副生成物を含む共加水分解生成物を形成する、共加水分解を含み、出発物質(A)、(B)、及び(C)、並びに非対称(メタ)アクリレート官能性ジオルガノシロキサン及び副生成物は、上述の通りである。反応器は特に限定されず、工程(1)における共加水分解反応中に>0~<10℃の温度を維持することができる任意のバッチ又は連続反応器であり得る。工程(1)において、(A)(メタ)アクリル官能性シラン及び(B)ジオルガノヒドリドハロシランは、例えば、(A)及び(B)の別々の流れをジャケット付きケトルなどのバッチ反応器に計量供給することによって、又は(A)及び(B)を組み合わせて反応器に計量供給され得るハロシランの混合物を形成することによって、ある期間にわたって(C)水に添加され得る。工程(1)は、相分離するシロキサン層及び水層を含む生成物を形成する。シロキサン層は、非対称(メタ)アクリレート官能性ジオルガノシロキサン及び副生成物を含む共加水分解生成物を含む。
【0024】
本方法は、任意選択で、工程(1)後に、(2)シロキサン層と水層とを分離し、共加水分解生成物を追加の水で洗浄することを更に含み得る。追加の水は、出発物質(C)について上記の通りである。本方法は、任意選択で、(3)工程(2)中又は工程(2)後に(D)中和剤を添加することを更に含み得る。中和剤は、例えば、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、重炭酸カリウム、炭酸カリウム、水酸化カリウム、又はそれらの組み合わせであり得る。あるいは、中和剤は、NaHCO3であり得る。
【0025】
本方法は、任意選択で、非対称(メタ)アクリレート官能性ジオルガノシロキサンを精製し、副生成物を回収し、及び/又は共加水分解生成物中のあらゆる望ましくない物質を除去するための1つ以上の追加の工程を更に含み得る。例えば、本方法は、工程(1)後に、又は存在する場合には工程(2)及び/若しくは(3)後に、共加水分解生成物を乾燥させて、残留水の全て又は一部を除去することを更に含み得る。乾燥は、吸収剤又は吸着剤の添加などの任意の便宜的な手段によって行われ得る。乾燥剤の例は、無機微粒子であり得る。吸着剤は、10マイクロメートル以下、あるいは5マイクロメートル以下の粒径を有し得る。吸着剤は、例えば、10Å(オングストローム)以下、あるいは5Å以下、あるいは3Å以下といった、水及びアルコールを吸着するのに十分な平均孔径を有し得る。吸着剤の例としては、菱沸石、モルデン沸石及び方沸石などの沸石、アルカリ金属のアルミノケイ酸塩、シリカゲル、シリカマグネシアゲル、活性炭、活性アルミナ、酸化カルシウム及びこれらの組み合わせなどのモレキュラーシーブが挙げられる。あるいは、乾燥剤は、硫酸ナトリウム又は活性炭であり得る。
【0026】
市販の乾燥剤の例としては、乾燥モレキュラーシーブ、例えば、Grace Davidsonから商品名SYLOSIV(商標)で、及びZeochem(Louisville,Kentucky,U.S.A.)から商品名PURMOLで市販されている3Å(オングストローム)のモレキュラーシーブ、並びにIneos Silicas(Warrington,England)から入手可能なDoucil zeolite 4Aなどの4Åのモレキュラーシーブが挙げられる。他の有用なモレキュラーシーブとしては、MOLSIV ADSORBENT TYPE 13X、3A、4A及び5A(これらは全て、UOP(Illinois,U.S.A.)から市販されている)、SILIPORITE NK 30AP及び65xP(Atofina(Philadelphia,Pennsylvania,U.S.A.))、並びにW.R.Grace(Maryland,U.S.A.)から入手可能なモレキュラーシーブが挙げられる。
【0027】
本方法は、任意選択で、例えば、乾燥剤(使用される場合)及び中和中に形成される任意の塩を除去するために、上記の工程のうちのいずれか1つ以上の後に共加水分解生成物を濾過することを更に含み得る。
【0028】
本方法は、任意選択で、共加水分解生成物をストリッピング又は蒸留することを更に含み得る。ストリッピング及び/又は蒸留が、上記の非対称(メタ)アクリレート官能性ジオルガノシロキサン及び/又は副生成物、例えば、上記の通り
【0029】
【化6】
からなる群から選択される副生成物を精製するために使用され得る。理論に束縛されることを望むものではないが、副生成物の一方又は両方は、リサイクルされ、及び/又は他のプロセスにおいて使用され得ると考えられる。
【0030】
使用方法
上記の非対称(メタ)アクリレート官能性ジオルガノシロキサンは、フリーラジカル重合を受けることができるケイ素系及びケイ素修飾ポリマー並びに樹脂の生成に使用され得る。これらのフリーラジカル重合性材料は、建築、自動車、ホームケア、及びパーソナルケアを含む多くの産業分野で使用することができる。例えば、米国特許第9,587,063号には、非対称-テレケリックポリジヒドロカルビルシロキサンを調製するための2-プロペン酸,2-メチル,3-(1,1,3,3-テトラメチル-1-1ジシロキサニル)プロピルエステル(SiHMA)の使用が記載されている。米国特許第4,504,629号には、UV、過酸化物、嫌気性又は他のラジカル硬化系を使用して、それほど過酷ではない条件下で硬化されるか、又は他のビニルモノマーと共硬化され得るメタクリレート官能性グラフトポリマーを作製するためのグラフト化剤としてのSiHMAの使用が記載されている。出願公開第2012121950(A)号には、改善された靭性及び熱安定性を有するハイブリッド材料を作製するためにシリコーン修飾ポリ(メタ)アクリル酸エステルを調製するためのモノマーとしてのSiHMAの使用が記載されている。欧州特許出願第3594263(A1)号には、SiHMA及びビニル末端PDMSから作製されたメタクリロイルオキシ末端PDMSを含有する酸素硬化性シリコーン組成物が記載されている。本明細書に記載の通り調製された非対称(メタ)アクリレート官能性ジオルガノシロキサンは、これらの用途に使用され得る。
【実施例】
【0031】
これらの実施例は、当業者に本発明を例示するために提供されるものであり、特許請求の範囲に記載される本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない。これらの実施例で使用した出発材料を、以下の表1に記載する。
【0032】
【0033】
この実施例1では、以下の通り、MASiMe2Cl:Me2HSiCl=1:3の比を使用して、反応スキーム1に従って、MASiMe2ClとMe2HSiClとの共加水分解からSiHMAの調製を行った。
【0034】
【0035】
熱電対、添加漏斗、及び水性NaOHスクラバーに接続された出口を備えた100mLの3つ口フラスコに、DI H2O(15.5g)を充填し、氷/水浴中に浸漬した。系を窒素でスパージした。3-メタクリルオキシプロピルジメチルクロロシラン(MASiMe2Cl、10.0g、0.045mol)及びジメチルクロロシラン(Me2HSiCl、12.9g、0.136mol)をグローブボックス内で混合し、不活性条件下でシリンジを介して添加漏斗に移した。クロロシランの混合物を添加漏斗から5℃の水に激しく撹拌しながら20分かけて滴加し、その間、反応温度を10℃未満で維持した。添加後、得られた2層混合物を約5℃で更に15分間撹拌した後、分離した。pHが中性に達するまで、シロキサン層を飽和NaHCO3(15g)で2回洗浄し、続いてDI H2O(15g)で2回洗浄した。次いで、シロキサン層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過して、透明な黄色の濾液(9.6g)を得た。GC分析は、共加水分解生成物が、SiHMA(74.4%)、M’M’(14.0%)、及びMMAMMA(2.2%)を含有することを示した。次いで、共加水分解生成物を真空下でストリッピングして、ストリッピングされた生成物(6.9g)を得、これをGC及び1H NMRによって特性評価した。ストリッピングされた生成物は、GCに基づいて、SiHMA(78.4%)、M’M’(0.7%)、及びMMAMMA(2.7%)を含有していた。1H NMR(CDCl3):δ6.16(m,1H),5.22(m,1H),4.94(m,1H),4.05(t,2H),1.86(s,3H),1.58(m,2H),0.45(m,2H),0.13(s,6H),0.0(s,6H)。
【0036】
この実施例2では、MASiMe2Cl:Me2HSiCl=1:1.2の比を使用して、反応スキーム1に従って、MASiMe2ClとMe2HSiClとの共加水分解からSiHMAの調製を行った。以下の点を除いて実施例1の手順を繰り返した。10.0g(0.045mol)の量の3-メタクリルオキシプロピルジメチルクロロシラン(MASiMe2Cl)及び5.1g(0.054mol)の量のジメチルクロロシラン(Me2HSiCl)をグローブボックス内で混合し、添加漏斗に移した。クロロシランの混合物の添加後、得られた2層混合物を約5℃で更に1時間撹拌した後、分離した。そして、濾過後、9.5gの量の透明な黄色の濾液を得た。GC分析は、粗生成物が、SiHMA(74.6%)、M’M’(0.41%)、及びMMAMMA(10.9%)を含有することを示した。次いで、共加水分解生成物を真空下でストリッピングして、ストリッピングされた生成物(9.1g)を得、これをGC及び1H NMRによって特性評価した。ストリッピングされた生成物は、GCに基づいて、SiHMA(75.4%)、M’M’(0.35%)、及びMMAMMA(10.6%)を含有していた。
【0037】
【0038】
この実施例3では、MASiMe2OMe:Me2HSiCl=1:1.2の重量比を使用して、反応スキーム2に従って、MASiMe2OMeとMe2HSiClとの共加水分解からSiHMAの調製を行った。以下の点を除いて実施例1の手順を繰り返した。10.0g(0.046mol)の量の3-メタクリルオキシプロピルジメチルメトキシシラン(MASiMe2OMe)及び5.2g(0.055mol)の量のジメチルクロロシラン(Me2HSiCl)をグローブボックス内で混合し、添加漏斗に移した。クロロシランの混合物を15.8gの量の水に添加した後、得られた2層混合物を約5℃で更に1時間撹拌した後、分離した。そして、濾過後、9.7gの量の無色透明の濾液を得た。GC分析は、粗生成物が、SiHMA(85.8%)、M’M’(0.46%)、及びMMAMMA(10.7%)を含有することを示した。次いで、共加水分解生成物を真空下でストリッピングして、ストリッピングされた生成物(9.4g)を得、これをGC及び1H NMRによって特性評価した。ストリッピングされた生成物は、GCに基づいて、SiHMA(85.4%)、M’M’(0.26%)、及びMMAMMA(10.5%)を含有していた。
【0039】
この実施例4では、MASiMe2OMe:Me2HSiCl=1:3の比を使用して、反応スキーム2に従って、MASiMe2OMeとMe2HSiClとの共加水分解からSiHMAの調製を行った。以下の点を除いて実施例1の手順を繰り返した。50.0g(0.231mol)の量の3-メタクリルオキシプロピルジメチルメトキシシラン(MASiMe2OMe)及び65.6g(0.693mol)の量のジメチルクロロシラン(Me2HSiCl)をグローブボックス内で混合し、添加漏斗に移した。クロロシランの混合物を79gの量の水に添加した後、得られた2層混合物を約5℃で更に15分間撹拌した後、分離した。そして、濾過後、76.7gの量の無色透明の濾液を得た。GC分析は、粗生成物が、SiHMA(80.8%)、M’M’(16.1%)、及びMMAMMA(1.6%)を含有することを示した。
【0040】
実施例4における粗生製物の蒸留。短経路蒸留設定を使用した。実施例4からの粗SiHMA(20g)を50mL丸底フラスコに装填した。真空を印加して圧力を1mmHgまで低下させ、このレベルで維持した。フラスコを69~71℃で1時間加熱して低沸点物(low boilers)を回収した。残留物質を<0.1mmHg下にて77~89℃で約1.5時間更に蒸留し、透明な留出物(SiHMA)を回収した。底部は、全くゲル化してない透明な液体であり、このことは、共加水分解経路から作製された物質の良好な安定性を示唆している。14gのSiHMA(純度98%)を70%の収率で得て、以下の表2に示されるように、GC及び1H NMRによって特性評価した。
【0041】
【0042】
比較例。短経路蒸留設定を使用した。米国特許第10280265(B2)号に記載されているIr触媒ヒドロシリル化法を使用して作製された粗SiHMA(20g)を50mLのフラスコに装填した。真空を印加して圧力を1mmHgまで低下させ、このレベルで維持した。フラスコを70℃で1時間加熱して低沸点物を除去した。残留物質を<0.1mmHg下にて76~87℃で1時間更に蒸留し、透明な留出物(SiHMA)を回収した。底部はゲル化し、このことは、本明細書に記載の共加水分解経路からのものと比較して、Ir触媒ヒドロシリル化から作製された物質の安定性が低いことを示唆している。10.49gのSiHMA(純度89%、これは、共加水分解からの98%純度よりも低い)が、共加水分解経路の70%収率よりも低い53%の収率で得られた。
【0043】
解決されるべき課題
Pt又はIrなどのヒドロシリル化反応触媒の存在下で、オルガノハイドロジェンシロキサンオリゴマーとカルボン酸アルケニルエステルとのヒドロシリル化反応を介して非対称(メタ)アクリレート官能性ジオルガノシロキサンを作製するための方法は、得られる粗反応生成物が不安定であるという欠点に悩まされる。ヒドロシリル化反応触媒は、粗生成物が非対称(メタ)アクリレート官能性ジオルガノシロキサンを精製する条件に曝された場合、例えば、加熱してストリッピング又は蒸留された場合、不安定性を引き起こし得る。理論に束縛されるものではないが、ヒドロシリル化反応触媒は、ケイ素結合水素原子と(メタ)アクリレート官能基との間の反応から潜在的にゲル化を引き起こし得ると考えられる。所望の生成物が精製中に消費され、望ましくない副生成物を生成し得るため、この不安定性は、収率を低下させ得る。この不安定性を防ぐために阻害剤が使用される場合、コストが増大し、プロセスの収率損失を防ぐのに十分な程度に不安定性を防ぐには依然として不十分であり得る。
【0044】
解決策
本明細書に記載の方法は、著しい収率損失又は選択性の損失を伴わずに非対称(メタ)アクリレート官能性ジオルガノシロキサンを提供する。
【0045】
用語の定義及び使用
全ての量、比率、及び百分率は、別途指定がない限り、重量に基づく。「発明の概要」及び「要約書」は、参照により本明細書に組み込まれる。明細書の文脈により別途指定がない限り、冠詞「a」、「an」、及び「the」は各々、1つ以上を指す。「~を含む(comprising)」、「~から本質的になる(consisting essentially of)」、及び「~からなる(consisting of)」という移行句は、Manual of Patent Examining Procedure Ninth Edition,Revision 08.2017,Last Revised January 2018のセクション§2111.03 I.、II.、及びIIIに記載されているように使用される。実例を列記するための「例えば(for example)」「例えば(e.g.,)」、「など(such as,)」、及び「が挙げられる(including)」の使用は、列記されている例のみに限定しない。したがって、「例えば(for example)」又は「など(such as)」は、「例えば、それらに限定されないが(for example, but not limited to)」又は「~などであるが、それらに限定されない(such as, but not limited to)」を意味し、他の同様又は同等の例を包含する。本明細書で使用される略語は、表3における定義を有する。
【0046】
【0047】
本発明は例示的な様式で記載されており、使用されている用語は、限定というよりむしろ説明の用語の性質であることが意図されることを理解されたい。本明細書で特定の特徴又は態様の記述が依拠している任意のマーカッシュ群に関して、異なる、特殊な、及び/又は不測の結果が、全ての他のマーカッシュ群の要素から独立して、それぞれのマーカッシュ群の各要素から得られる場合がある。マーカッシュ群の各要素は、個別に、及び/又は組み合わせて依拠され得、添付の特許請求の範囲内の具体的な実施形態のための十分なサポートを提供する。
【0048】
試験方法
GC法。クロマトグラフィ機器は、炎イオン化検出器を備えたHewlett Packard 5890 Series II GC及びHewlett Packard 6890 Series Autoinjectorからなっていた。30mのHP-5カラムを用いて、78mL/分のヘリウム流量及び1.05mL/分のカラム流量で分離を行った。1mLのジクロロメタン中100μLとしてサンプルを調製した。180℃の注入器温度及び300℃の検出器温度とともに2μLの注入体積を使用し、データを36.33分間収集した。オーブン法は、40℃の初期温度を1分間保持し、続いて5℃/分で150℃まで上昇させ、15℃/分で275℃まで上昇させ、最後に275℃の最終温度を5分間保持することからなっていた。
【0049】
NMR。プロトン(1H)核磁気共鳴(nuclear magnetic resonance、NMR)スペクトルを、400MHzで動作するAgilent 400-MR NMR分光計(mi-MR-05)で記録した。ピーク周波数は、ppmで記録する。1mLの重水素化クロロホルム(CDCl3)中100μLのサンプルを用いて、1Hサンプルを流した。Mnovaソフトウェアを使用して、スペクトルを分析した。
【手続補正書】
【提出日】2024-02-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非対称(メタ)アクリレート官能性ジオルガノシロキサンを作製するための方法であって、
(1)単一反応器内で、出発物質であって、
(A)式R
1R
2
2SiXの(メタ)アクリル官能性シラン(式中、R
1は、(メタ)アクリルオキシアルキル基であり、各R
2は、独立して選択されるアルキル基であり、Xは、独立して、ハロゲン原子及びアルコキシ基からなる群から選択される)、
(B)式R
2
2HSiXのジオルガノヒドリドハロシラン(各R
2は、独立して選択されるアルキルである)、及び
(C)水
から本質的になる出発物質を共加水分解し、
それにより、シロキサン層及び水層を含む生成物を形成することを含み、前記シロキサン層が、前記非対称(メタ)アクリレート官能性ジオルガノシロキサンを含む共加水分解生成物及び副生成物を含む、方法。
【請求項2】
(A)前記(メタ)アクリル官能性シラン及び(B)前記ジオルガノヒドリドハロシランが、ある期間にわたって(C)前記水に添加される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(1)が、>0~<10℃の温度で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
(2)工程(1)後に、前記シロキサン層と前記水層とを分離し、前記共加水分解生成物を水で洗浄することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
(3)工程(2)中又は工程(2)後に中和剤を添加することを更に含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記共加水分解生成物を乾燥させることを更に含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記共加水分解生成物をストリッピング又は蒸留することを更に含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
各R
1が、(メタ)アクリルオキシプロピルであり、各R
2、がメチルであり、各Xが、クロロ又はメトキシである、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記非対称(メタ)アクリレート官能性ジオルガノシロキサンが、式:
【化1】
(式中、R
2は、上記の通りであり、各R
3は、独立して、H及びメチルからなる群から選択され、各R
4は、独立して選択される二価炭化水素基である)
を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記副生成物が、
【化2】
又は両方の組み合わせ(式中、R
2は、上記の通りであり、各R
3は、独立して、H及びメチルからなる群から選択され、各R
4は、独立して選択される二価炭化水素基である)からなる群から選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【国際調査報告】